世の中のみんなが未来の完全な自動運転車に注目している中で、Toyota Research InstituteのCEO Gill Prattは、それは想像以上に複雑であり、ゆっくりとしか進まない、と述べる。
Prattによると、SAEの“Level 5”に相当する完全な自動運転は、“実現が近いとは到底言えない”。Prattは、完全な自動運転に到達する時期についても、同社は何一つ目標や想定を持っていない、と何度も語った。それは、彼が今日(米国時間1/4)のCESの会場で、新しいコンセプトカーConcept-iを披露したときのスピーチで語られた。
Prattはこう語る: “人類は歴史的に、機械の欠陥による傷害や死亡に対する許容度がゼロである。AIのようなすばらしい機械ですら、欠陥を免れることはできない。今はまだ、Level 5に近いとすら言えない。これからも多くの年月とテスト走行等を必要とし、シミュレーションと現実世界の両方でテストを重ね、Level 5が要請している自律性を完璧に実現しなければならない”。
もちろん、彼の発言は全然意外ではない。Teslaのオートパイロットのような最新の自律運転機能ですら、限られた状況での利用を前提しており、あくまでも運転の補助機能でしかない。しかもそういう条件の中ですら、人間運転者がたえず周囲に気を配っていなければならない。したがってそれは、、危険が生じそうなときに運転者に警告し、それを未然に防ぐための技術、と位置づけなければならない。
しかし彼のような業界内部からの懸念表明は、自律的車両でUberなどのエンドユーザーサービスをサポートしようとしたときにぶつかる問題やトラブルも、反映している。Uberのような企業は乗客の送迎において、一定の限られた状況をよく定義実現できるとしても、より確実な自動運転の実現にはもっと長い時間を要するのならば、安全要件のすべてを満たすためにはそんなに早く人間運転手をゼロにはできないことになる。これが自動運転車を売りたい自動車メーカーと、そのエンドユーザーサービスであるUberのような企業との間に横たわる、大きな問題だ。Uberも、まだ当分は、人間運転者が頼りだ。
Concept-iは運転者のビヘイビアを学習し、“Yui”と呼ばれるAIエージェントが活躍する。AIは運転者との関わりを持ち、周囲に対する運転者のコンスタントな注意を支援する。Toyota Research Instituteが今行っている二つの研究開発のうち、そのひとつであるGuardianは、運転者の素早い反応/応答を必要とする状況で彼/彼女をアシストし、もうひとつのChauffeurは、自動運転の研究開発努力の一環だ。
AIと運転者との関わり、エンゲージメントは、単純に車内でYuriに話しかけることで実現する。それにより運転者の注意喪失を防ぐ。たとえばテキストメッセージを読んだり書いたりという注意喪失状況は、それらをYuriがやってくれることによって、防げるだろう。でも、そんな状況のデータが今後たくさん集まれば、危険な状況への理解が深まり、自動運転の前段階である拡張運転体験(augmented driving experience)の改良に資するだろう。
今、および近い将来、メーカーはLevel 4の自動運転を目指すが、その広範な実用化には数十年を要するだろう。Prattは、そう言う。現時点の最大の課題のひとつは、運転者が絶対に既存の自律システムを過信しないようにすることと、しかし運転中にテキスティングを始めるぐらいは(適切に)信頼することだ、とPrattは語っている。
〔訳注: Toyota Research Instituteの発足時に、“目的は自動運転車の開発ではなくて、事故ゼロ車の研究開発”、と宣言されている。関連記事(日本語)。〕
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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))