電子回路工作の課題を毎月一つずつ送ってくる学習サービスTron-Club

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ここでご紹介するTron-Clubは、名前だけ見るとTronのファンクラブみたいで、毎週全員がユニタードを着て集まり、「シュー」という音を発声しながら目に見えないライトサイクルに乗ってるふりをするパーティーを、連想する。でも実はこのサービスは、電子回路をユーザのご家庭にお届けするのだ。なんのために? それは、あなたが電子工学を勉強するためだ。今では、そろばんの学習よりも、そちらが万人の義務だよ。

ハードウェアは日に日に、作るのも理解するのも容易になり、プログラミングの方が難しいと思うこともある。でもPythonの文を一行書くのは簡単だが、電子回路を作るのはそんなに簡単ではない。Tron-Clubの‘生徒’になると、たとえば圧電式ブザーを鳴らす回路なんかを作れてしまう〔製品例〕。今役に立たなくても、こんなレパートリーは、そのうちきっと役に立つだろう。

教育目的の電子回路玩具は、もともとそれほど好きではない。昔からあった電子工作キットに毛が生えたようなのは、全然つまらない。でも今では大人も子どももArduinoやRaspberry Piで勉強できるし、とくにTron-Clubのキットは、具体的な目的があって回路を作りたい大人を助ける。

サービスの料金は月額14ユーロ(年額150ユーロ)+送料だ。キャンセルは、いつでもできる。

電子工作は大きな音を出したり、おかしな煙を出すことだ、と思っていた人も、Tron-Clubならもっと楽しく電子工学を学べるだろう。目をいためないように、気をつけようね。

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(翻訳:iwatani(a.k.a.
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Raspberry Piで野生動物を自動撮影するカメラロボットが子どもたちに電子工作とプログラミングを教える

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子どもにプログラミングを教えると称する製品が、このところとても多い。KanoのDIYコンピュータキットとか、ボードゲームのロボット亀さんなど、たくさんプログラマブルロボットや、科学教育風味の玩具が、市場を争っている。

ここでご紹介するイギリスのNaturebytesは、それらとは一味違う。同社のねらいは、子どもがいろいろハックできるテクノロジと、アウトドアへの関心を結びつけることだ。子ども用の辞書から「どんぐり」や「キンポウゲ」などの言葉が姿を消し、代わって「ブロードバンド」や「カットアンドペースト」が載りつつある今は、テクノロジがおちびさんたち全員を、単なるデジタルの消費者に変えてしまう危険性が、あるのかもしれない。

Naturebytesが今日(米国時間6/26)Kickstarterでローンチしたのは、野生動物をとらえるための罠だが、もちろん捕獲用の罠ではなく、Raspberry Piを搭載したカメラで彼らの姿を撮影するだけだ。子どもたちに自然を体験させつつ、電子工作やプログラミングも楽しんでもらう、という製品だ。テクノロジとアウトドアを結びつけるのは、何もなければ自然の中でただ走りまわるだけの子どもたちにとっても、良いことかもしれない。しかも自然環境の中にテクノロジを埋め込む同社の製品は、物のインターネットと呼ばれる近未来の技術動向にも合っている。

このカメラトラップ(“カメラ罠”)は全天候型で、風雨に耐える。Raspberry Pi Model Aプロセッサと電池とカメラと赤外線センサで構成され、もっと上位機種のPiを使ってもよい。センサが動きを感知すると撮影が行われて、走り去る野生動物などが撮れる。製品は組み立てキットなどで、子どもが自分で組み立てて構造などを理解する。今後のための拡張機能としては、撮った写真をWiFiで自動的にアップロードする機能などがある。

また子どもたちは、自分が撮った野生動物の写真をNaturebytesのWebサイトで共有でき、そこから、同好会のようなグループに参加できる。PiとPi用のカメラがすでにあるなら、45ポンドのキットを買ってケースを自分で3Dプリントする。全部入っているキットなら85ポンド、アクセサリ込みなら95ポンドだ。

現時点(日本時間6/27 09:20)で、目標額3万ポンドに対し6000ポンド集まっている。あと28日あるから、まずいけるだろう。発売予定は、今年の12月だ。

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SamsungがIoTのための専用ネットワークSigfoxの巨額資金調達に参加…自らのARTIKプラットホームのベースに

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Sigfoxの1億1500万ドル(1億ユーロ)という巨額なラウンドは、まだ終わっていない。今日(米国時間6/15)はSamsungも記者会見で、このフランスのスタートアップへの投資を発表した。同社による追加投資の額は公表されていないが、情報筋によると、さらに二社が、Sigfoxの現在のラウンドで投資をしている。うち一社は、Samusungクラスの大手テク企業だそうだ。そこからの発表も、いずれあるだろう。

今日の記者会見は、Samsungが同社の新しいプラットホームARTIKを紹介するビッグツアーの一環だ。ARTIKは、インターネットに接続されるオブジェクトのためのハードウェア+ソフトウェアのソリューションで、そんなオブジェクトの専門企業を顧客としてねらっている。汎用ボード製品やセンサ、関連チップなどでSamsungは、IntelやQualcommと競合することになる。

Samsungの社長でCSO(Chief Strategy Officer)のYoung Sohnはこう述べる: “Sigfoxに投資をしたが、より重要なのは同社が弊社のパートナーであることだ。すなわち、ARTIKのデベロッパキットにはSigfox互換のハードウェアチップが含まれていて、そのまますぐに、Sigfoxのネットワークを使って仕事ができる”。

フランスのスタートアップであるSigfoxは、インターネットに接続されるオブジェクトのため専用の、ローコストなセルラネットワークを作っている。このネットワークを介して小さなオブジェクトがSigfoxのサーバと会話する…その電池はとても小さく、そしてハードウェアは安い。たとえばSigfoxのネットワークのユーザであるWeenatは、ライブのデータファーミングのためのセンサを作っている。それらの、電池効率が良くて長時間稼働するデバイスを、今の(主に携帯電話用の)セルネットワークで実効的に使用することはできない。

10年間Arevaを統率してきたAnne Lauvergeonが、2014年に同社の取締役会に加わった。今回の資金調達は彼女の手腕、という噂もある。たしかにそれは、Sigfoxの従来の資金調達のやり方と違う。同社はVCに頼るというよりも、キャリアや大手上場企業に直接働きかけて、彼らに投資機会を提供してきた。現在のラウンドの投資家にも、スペインや韓国、日本などのキャリアの名が見える(Telefonica、SK Telecom、NTT DOCOMO)し、またフランスの大企業GDF Suez(今はEngie)、Air Liquide、Eutelsatなども加わっている。

Samsungは今日、クラウドサービスやそのほかのソフトウェアサービスの拠点として、パリにイノベーションセンターを開く、と発表した。“実はわが社は、フランスにおけるテクノロジ産業への取り組みがとても活発だと考えている。Samsungとしても、そのお仲間に加わらないという選択肢はありえない。今後も、フランスにおける投資を継続していきたい”、とSohnは語った。
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元任天堂の2人が「4Kデジタル窓」で起業、アトモフがKickstarterでキャンペーン中

都会でのワンルームアパートなどでは窓がなかったり、あったとしても窓を開けたら隣接ビルの壁がせまっていたりと閉塞感でいっぱいになったりすることがある。任天堂でUI開発を担当していた2人が創業したアトモフは、デジタルな壁掛け窓に風景動画を表示して癒してくれるデバイス「Atmoph Window」(アトモフウィンドウ)でこれに応えようとしている。Kickstarterで5月13日から先行予約を開始して、6月1日朝現在は11日を残して目標額10万ドルのところ9万3000ドルまで資金を集めつつある。

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姜京日(かん きょうひ)アトモフCEOはによれば、競合製品としては、日本だとFramed * 2.0、海外ではElectric Objectsがある。ただ、どちらもアートを飾るデジタルディスプレイで、あくまでも風景を表示する「窓」を目指すアトモフのコンセプトとは異なる。アートは空間を広げないが、窓は開放感を生むからだ。

映しだされるのは、アトモフが世界各地で撮影した独自の4K動画。今のところニュージーランドや日本などで80本ほど撮影していて、今後も追加していくそうだ。動画はクラウド経由でダウンロードでき、切り替えはiPhone/Androidアプリから行う。アプリからは動画リストの表示やリモコンモード、地名や場所に関する情報などが見られる。

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「窓」というコンセプトなので、今後はライブストリームも行う。たとえば、人が行き交うロンドンの雑踏だとか、京都の静寂の禅寺に驟雨が降る風景、ニュージーランドの芝生をウロウロする羊だとか、そうしたものを映し出す配信スポットを追加していく。こうやって風景を映すことで旅行など新たなビジネスへつながる可能性がある、ということもアトモフでは考えているようだ。

また、面白いのはアトモフには近接センサーが搭載してあって、天気や時刻、カレンダー表示にも対応すること。手をかざせば、すぐに必要な情報が表示される。一方で、写真やPDF、Webページを表示するようなことは今後もせず、「便利な表示デバイス」にしてしまって「窓」というコンセプトが壊れることはやらないそうだ。この辺りはアトモフ内で議論を続けていて、例えば窓の向こうがイギリスの図書館の中、というように別の空間と繋がるのは「あり」の範囲かもと議論しているという。Kickstarterでキャンペーン開始してすぐに支援者から独自アップロード機能へのリクエストがあったのを受けて、所有者自身がアップした動画についてのみアトモフで表示可能にするよう方針変更したそうだ。

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アトモフの筐体設計と基板設計は終わっていて、量産前のプロトタイプとしては完成している。現在は製造と組み立てのために工場などの業者を関西中心にまわっている段階だ。パートナー選定が終わって、6月にKickstererキャンペーンが終了後したら、7月から量産体制に入る。

アトモフのKicksterer価格は以下となる。27インチディスプレイ(1920×1080ピクセル)モデルのリテール価格は699ドルだが、Kickstarterでの通常価格は549ドル、スーパーアーリーバードが399ドルで100台、アーリーバードが499ドルで250台となっている。399ドルは既に売り切れとのこと。

製品が売れている地域は、国内が半分、海外が半分。海外では主にアメリカ、ドイツ、イギリス、イタリア、カナダ、中国、パキスタンなどから買われているという。数台セットで施設やお店、カフェなどが買っていくという。

縦位置の4K動画というのは世の中になく、自分たちでコンテンツ作りをする必要があった。撮影は早朝から夜中まで車で回りベストショットを探し求めた。状景の音も同時にマイクで収録している。実際の撮影ではトラブルもあったそう。1週間のニュージーランドでの撮影時、誰もいない荒野でレンタカーのタイヤがパンクし、携帯の電波もなく、もう終わったかと泣きたくなったことがあったという。なんとか通行人に助けられ、スペアタイヤで車工場を探し、修理に2日かかったとか。

姜京日アトモフCEOは、青山学院大学で機械工学、南カリフォルニア大学でコンピュータサイエンス修士卒業。小さなWeb制作会社をした後、NHN JapanでUI開発を4年、任天堂でゲーム機のUI、ネットワークサービス、各種Webサービスの開発をしていた。

創業のきっかけは、10年前に留学した米国の小さな部屋にいたときに、窓の目前がビルで、窓を開けるとビルの壁がすぐそこに見える状態だったこと。なんとかしたいと思ったのが、ずっと頭にあったという。また、趣味でeMaginのZ800、Oculusなどのヘッドマウントディスプレイを色々試しているときに、ゲーム終了後に電源を切るとまた閉塞感のある現実に戻ってしまうことに気がついた。これを窓型ディスプレイで解決できないかと考えたそうだ。

任天堂での同僚が共同創業者の中野恭兵氏だ。任天堂の入社面接で会ってから退職するまで同じUI開発チームのリーダーで、Yahoo、ミクシィでの経験もあり、一緒に働いていて得るものが大きかったという。アトモフの初期プロトタイプを見せ、開発を一緒にやってもらえないかと誘ってみたところコミットしたいとの回答を得たという。現在、中野氏はアトモフでソフトウェア統括を主に担っている。

これからの展望として姜京日アトモフCEOは、「製造が成功し、皆さんに来年3月に届けることを最優先します。その後もっと大きな窓や、世界のカメラマンによるマーケットプレイスのようなものも構築したいと考えています」と述べている。

日本発スタートアップであるアトモフがデジタルな壁掛け窓としての市場をどこまで開拓できるのか注目したい。

Hiroki Takeuchi / POYNTER CEO Ph.D

ジーンズのLevi’sがGoogleの‘インターネット接続織物’Jacquardプロジェクトの初のパートナーに

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GoogleがI/O 2015で披露したProject Jacquardは、インターネットに接続された織物で、衣類の表面からデバイスに接続してそれらを動かせるだけでなく、従来どおりにファッションの素材にもなる。すでにLevi’sが最初のパートナーになっているところから見ても、かなり将来性のある技術のようだ。

サンフランシスコに本社のあるLevi’sはジーンズのメーカーとして有名だが、今では総合衣料メーカーと言ってよい。今日(米国時間5/29)のI/Oで、ATAPのプレゼンテーションに登場したLevi’sの代表は、この新しい技術に飛びついた理由を説明した。そのキモは、デバイスと人間の日常生活とを、もっとしっくり馴染んだものにすること。いちいち気にせずにデバイスを利用できることだ。

アプリは同社独自で作るつもりのようだが、デベロッパコミュニティからの協力も求めている。この新たな技術を前提とすると、同社によれば、デベロッパも“ファッションデザイナー”だそうだ。

このパートナーシップはまだきわめて初期段階のようで、プロダクトの発表もない。でもここでおもしろいのは、技術開発がもはやGoogle自身の研究部門に閉じ込められないことだ。世界的に著名な老舗ファッションブランドとの協働により、Jacquardという一見突飛な技術から、人間の日常に定着する何かが生まれるかも、と期待される。

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自分の家/部屋の空気の質を詳細に監視できる空気モニタAwairが予約販売を開始

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2月にアクセラレータのR/GAから巣立ったBitfinderが、同社のメインの製品、空気監視システムAwairの予約販売を開始した。

Awairは室内用の空気モニタで、複数のセンサが、気温、湿度、二酸化炭素(CO2)、微粒子粉塵(PM2.5)、揮発性有機化合物(VOC)(主に毒性有機溶剤)などを検出する。情報は同社のアプリケーションにセキュアに送られ、分析結果が報告される。

またAwairはチップ化されてもいるので、そのほかのデバイス(加湿器、空気清浄機など)に組み込むことも可能だ。Philips Hue(スマート電球)やMisfit Shine(アクティビティモニタ)とも統合でき、今後はNestやIFTTTなどにも対応する予定だ。究極的には、家中のあらゆるものにAwairが内蔵されていて、空気の質を監視してくれるようになるかもしれない。

Awairからのセンサデータを受け取ったBitfinderは、ユーザの空気に関する好みと一般的なアルゴリズムに基づいてAwair Scoreと名づけた評価点を計算する。一律的機械的でなく、ある程度の状況知(例:ここは寝室だから〜〜)が加わるのが、本製品の特長だ。

Awairは、ご覧のようにスピーカーのような形をしていて、協同ファウンダのRonald Roによると、Bluetoothスピーカーを置けるようなところならどこにでも置ける。本物の木でできており、意図的に昔ふうのデザインだ。状況や目的によっては、複数のAwairをひとつの部屋のあちこちに置いて、空気の質を監視することもできる(例: 窓際はどうか)。

予約価格は149ドルで、発売は今秋を予定している。実売価格は、149ドルよりも高くなるそうだ。

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NYでものづくり系アクセラレーター「FabFoundry」を立ち上げ—Six Apart元代表・関氏、次のチャレンジ

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FabFoundryの創業メンバー。中央が創業者の関信浩氏

ブログCMSの草分け的存在である「Movable Type」。その開発元であるSix Apart, Ltd.(現SAY Media)の日本法人であるシックス・アパート株式会社を設立し、同社や2013年6月に新設したSix Apart,Incの代表を務めてきた関信浩氏。そんな関氏が新会社FabFoundryを立ち上げ、米国ニューヨークでIoTやハードウェアなど、「ものづくり」の領域を対象にしたアクセラレーションプログラムを開始する。

少しややこしいので、先に現在のSix Apartについて説明しておく。もともとMovable Typeを開発していたのは2001年設立の米Six Apart, Ltd.。同社は2010年、広告ネットワークなどを展開する米VideoEgg社と合併してSAY Media, Inc.となっている。

Six Apart, Ltd.の日本法人であったシックス・アパート株式会社(2003年12月設立)はこの買収後も社名を変更することなく、引き続きMovable Typeの開発を進めてきた。そして2011年1月に米国法人からMovable Typeのブランドなどすべての権利を譲り受け、同年2月には買収でインフォコム傘下となった。

その後は海外展開に向けて2013年6月に米国法人Six Apart, Inc.をニューヨークに設立し、関氏がPresident/CEOに就任。2014年3月には本社機能も米国に移し、日本法人をその100%子会社とした。関氏も、このタイミングでニューヨークに拠点を移している。

そんな関氏だが、5月に開かれた取締役会でSix Apart,Inc.のCEOを退任し顧問に。それと合わせてFabFoundryを立ち上げるに至った。

ニューヨークで新しいことをしていきたい

「Six Apartに関わって11年半、ニューヨークに来てちょうど1年。そろそろ新しいことをしていきたいと思った」——FabFoundryを立ち上げたきっかけについて関氏はこう語る。

もともとニューヨークでは、Movable Type事業に加えて新規事業を展開する予定だったという関氏。ただ今回のFabFoundryは、関氏や後述の共同創業者のほか、エンジェルなどが出資。インフォコムグループとは独立した法人となる。

「今後はSix Apartの顧問を務めると同時に、インフォコム(米国法人のInfocom America)で、グループのシナジーに向けた投資・買収なども手がけていく。ただ新規事業についてはSix Apartの外でやった方がいいだろうと話していた」「アクセラレーターと言えば投資のイメージがあるが、その事業モデル自体が新しい。FabFoundryはアクセラレーターというビジネスを立ち上げるスタートアップと思っている」(関氏)

FabFoundryのメンバーは関氏のほかに3人。共同創業者のKristen Smith氏(冒頭の写真右)は、教育プログラムなどを展開するKohl’s Design It! Labの元事業開発担当。ものづくりの機材にも詳しいBrian Lee氏(同写真左)は元デザイン工房経営者現在ホワイトハウスのプログラムに参加中で写真には入っていない事業開発担当バイス・プレジデントのCarlton Reeves氏は、ウィスコンシン大学で起業プログラムを指導してきた人物だ。

FabCafe New Yorkを立ち上げ、プログラムの拠点に

では具体的にFabFoundryはどういったスキームでアクセラレーターとして活動していくのか。資金に関しては日米で「まさに調達の真っ最中」とのことだが、シード期のものづくりスタートアップに3カ月のプログラムを提供。あわせて5万ドル程度の出資をしていくのだそうだ。

その活動の中心となるのが、今秋オープン予定のFabCafe New Yorkだ。FabCafeはもともと、ロフトワークが2012年3月に東京・渋谷にスタートしたものづくりカフェ。カフェの中にレーザーカッターや3Dプリンタを導入しており、コーヒーを飲みつつ、さまざまなものづくりができるスペースになっている。

東京・渋谷にあるFabCafe。中央の黄色い箱のような機材がレーザーカッター

東京・渋谷にあるFabCafe。中央右よりの黄色い箱のような機材がレーザーカッターだ

現在は東京のほか、台北やバルセロナ、バンコクなどに展開。これらは現地のパートナーが運営を担当しているそうで、FabFoundryも同様のスキームでニューヨークにFabCafeをオープンする予定なのだという。

サンフランシスコに目を向ければ、レーザーカッターや3Dプリンタを利用できるものづくりの拠点「TechShop」なんかもあるようだけれども、ニューヨークでは学校などを除いてまだまだそんなスペースは少ないそう。カフェの物件については「現在検討中」ということだったが、渋谷のFabCafe以上に大きなスペースで、より多くの機材を導入する予定だ。

「カフェの中でプログラムを提供すれば、スタートアップが『3Dプリンティングをしたい』と思った際にもわざわざマシンを買う必要がないし、プリンターなど機材のエンジニアが常駐するので彼らのリソースを使うこともできる。とにかくインキュベーション、アクセラレーションの最初の部分は起業家に何かを与えることからだと思っている」(関氏)

今後の目標は、スタートアップ100社への投資。それも1〜2割は米国外のスタートアップにしたいのだそうだ。「シリコンバレーには行きやすくなったが、ニューヨークはこれから。他の地域のスタートアップがここからグローバルを目指すのであれば、その“進学先”になってもいいと思っている」(関氏)

FabCafe New Yorkでは、プログラム以外にも機材の有料利用やワークショップ、スポンサードイベントの開催なども進める。「当初はアクセラレータープログラムだけでのリターンはあまり考えていない。カフェ自体がそこまで儲かるものではないが、スタッフが食べていける程度にはなると思う」(関氏)

関氏はカフェというスペース自体が、ものづくりスタートアップを生み出す仕組みの中心になることを期待する。「起業するかしないのかという初期段階のアイデア出しから、ネットワーキングして、さらにはプログラムに参加して、成長して巣立つ—そのエコシステムを作っていきたい。そこで敷居を下げるという意味で大事なのが『カフェ』。そこにふらっと来て、『やってみよう』となる。これはFabCafeが東京でもやってきたこと」(関氏)

ニューヨーク発スタートアップ、2つの強み

TechCrunchでもおなじみの企業が立ち並ぶサンフランシスコやシリコンバレーなど、僕らはどうしても「米国≒西海岸」と考えがちだ。じゃあニューヨークでスタートアップすることにどういう意味あるのだろうか。関氏は2つの強みを挙げる。

1つはニューヨークの市場の大きさ。ニューヨーク市内で849万人(2014年)、周辺都市圏を含めると2000万人規模。ここまで人口が集約しているエリアは米国にもほかに存在しない(ベイエリア全体で710万人程度だ)。目の前に広がるこの巨大マーケットは何よりの魅力になる。

もう1つは、金融、ファッション、デザインなどの業界の中心地だということ。IoTやハードウェアというのは、ウェブサービスなんかと比較して生活に密接している領域だ。例えばウェアラブルデバイスなんてものは、今後ファッション業界ともっと近づいてかないといけない。そう考えると、トレンドを世界に発信しているニューヨークという場所は非常に有利だというのだ。

関氏はニューヨークについて、「テック企業からは距離が遠い。生活に溶け込む製品(のメーカー)は大企業しかいない」とも語る。「重要な拠点だけどもハイテクスタートアップはいない。いないからこそ、そこに行って挑戦する。ドットコムバブルがはじけた直後のシリコンバレーと同じ感覚がある」(関氏)。

子どもたちにプログラミングを教えるTynkerが、これからはロボットやドローンなどのデバイスも教材に

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子どもたちにゲームを作らせながらプログラミングを教えるTynkerが、今度はゲームを作るだけでなく、デバイスをコントロールするプログラミングの教程を加えた。デバイスは、ドローンやロボット、照明器具のような“スマートホーム”製品など、さまざまだ。同社はこの新しい教育課程を、今週サンマテオで行われたBay Area Maker Faireで発表し、またiPadとAndroidタブレットのアプリケーションの提供も開始する。

同社はこれまで、子どもたちがドラッグ&ドロップでキャラクターを動かしながらプレイするゲームを作り、それによってプログラミングの基本概念を習得するための、ツールやチュートリアルを主に作ってきた

過去3年間で、Tynkerでプログラミングを始めた子どもたちは2300万名を超え、合衆国とカナダとイギリスとオーストラリアで計2万あまりの学校が同社のカリキュラムを利用している。各月に100万から200万のユーザがTynkerにログインし、同社のユーザベースは1か月に50万ずつ増加している。

同社のiPadアプリはAppleのストアの展示商品にプレロードされていて、子どもたちが遊べるようになっている。Androidのアプリも、Googleの今度のDesigned for Familiesでローンチする。CEOのKrishna Vedatiによると、今年の同社の決算は黒字になりそうだ。

これからは“物のインターネット”へのプログラミングが加わるので、子どもたちはこれまでのように純粋にソフトウェアだけのプログラミングではなく、ドローンを飛ばせたり玩具をコントロールしたり、ロボットに命令するなど現実世界のオブジェクトの制御を体験することになる。立ち上げにあたってTynkerが協力を求めるのは、ドローンのParrotやロボットのSphero、照明システムHue/LuxのPhilips、などの企業だ。協力企業は今後さらに増える、と同社は言っている。

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子どもたちがTynkerのビジュアルなインタフェイスから、これらのオブジェクトをコントロールするプログラムを作れるために、新たなコードブロックが導入され、いくつかのサンプルコード的なテンプレートも提供される。たとえば”Flappy Drone”は、ドローンを障害物をよけながら飛ばせるプログラミングの例だ。人気のモバイルゲーム”Flappy Bird”に似ているので、この名前がつけられている。このほか、ロボットのレーシングゲームRobo Race、ドローンに曲芸飛行をやらせるStunt Pilot、インターネットに接続されている照明システムのコントロール、などが用意されている。

Vedatiによると今後Tynkerは、もっと多くの機種のドローンや、リモートコントロール玩具などをサポートし、AppleのApple HomeKitやParrotのFlower Powerなどとも統合し、またLegoやArduino、Raspberry Piなどのためのシンプルなプログラミングインタフェイスも提供して行く。

新たなコードブロックと学習用のパズルは、Google PlayiTunesで入手できる。

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CHIPは売価9ドルの何でもできる超小型コンピュータ

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クレジットカードぐらいの大きさのコンピュータが必要な人には、これで決まりだ。定価9ドルのシングルボードコンピュータCHIPは、Linuxを搭載し、コンピュータにできることは何でもできる。…Quakeをプレイすることも。

このボードにはWi-FiとBluetoothがあり、オプションで、VGAやHDMIで大型モニタにも接続できる。プロセッサのスピードは1GHz、RAM 512Mb、ストレージ4Gbだ。Debianの軽量バージョンをインストールできるし、タッチスクリーンとキーボードを備えたPocketCHIPというものも使える。こちらは初期のGame Boyぐらいの大きさだ。

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なぜこんなものを? そう、まず、なんと言ってもかわいい。コンピュータ本体は9ドル、VGAやHDMIが必要ならアダプタで10〜15ドル増しだ。これだけでも、すごい。Raspberry Piと同じく、まさに、メディアはメッセージだ。これだけ小さくて安いコンピュータがあるなら、誰もがコンピュータの新しい使い方を考えだすことができる。そのために最初から、いくつかのオプションハードウェアが提供されている。背中におんぶした子どもにゲームをプレイさせられるし、超小型コンピュータとしていろんな拡張が考えられる。

CHIPはKickstarterで目標額の5万ドルをとっくに突破し、今や30万ドルに迫る勢いだ(日本時間5/9 09:00)。発売は1年後で、ハードウェアアクセラレータのHaxlr8rが支えているから、製造能力もしっかりある。Raspberry Pi 2でこんなものを作ってもよいけど、CHIPならウェアラブルやそのほかの応用マイクロデバイスの実験を、すぐに開始できる。数年後に大ブームになると言われるIoTの敷居をぐーんと下げ、その裾野を大きく広げたと言えるだろう。いずれにしても、この、誰でも欲しくなりそうなおちびさんを使って、これからホビイストたちがどんなことをするか、そっちの方も楽しみだ。

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15歳の少年たちが作ったFollowPlantsは植物がソーシャルメディアにアップデートをポストする

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植物がツイートできるとしたら、彼らはどんな話をするんだろう? そう、Disrupt NYのハッカソンに登場したFollowPlantsのチームなら、それを知っているだろう。

といっても、植物が考えや感覚をシェアするわけではない(それはありえないだろう)。FollowPlantsを使うためには、まずセンサ(複数)を植物の近くにインストールする。そしてそのセンサからのデータが、自動的にツイートに翻訳されるのだ。“いいお天気だね!”、とか、“水が欲しいよ!”、とか。

チームのメンバーAkiva LipshitzとIlan Katzは、植物からのそんなツイートの記録は、たとえば、スーパーなどの野菜売り場で野菜の品質にうるさい消費者の買う気をそそるのに役立つ、と提案する。ツイートを見れば、それがどんな野菜かよく分かる、というのだ。それに、農家から消費者への親しいコミュニケーションにもなる。

また今後FollowPlantsは、植物以外のプロダクツからのアップデートをポストするためにも使える。そういうアップデートは、NexmoのAPIを使えばできるそうだ。

彼らのデモは、Webをインタフェイスとして使った。植物を位置情報でブラウズ(閲覧)し、気に入ったらそれを買うこともできる。センサはKatzらがArduinosを使って自作したやつだが、会場のインターネット接続に問題があったため、その画像は見せられなかった。また、ほかの二人のメンバーはハードウェア音痴だった。

ともかく、この作品が印象に残るのは、ニュージャージー州Teaneckから来たLipshitz とKatzが二人とも15歳だったせいもある。Lipshitzは、1年前からプログラミングを始めた。彼は将来会社を作りたいという夢を持っていて、今回はKatzに、ハッカソンに一緒に行ってくれ、と頼んだ。

15歳の子どもがニューヨークへ行って徹夜でプログラミングをする、と聞いた親はなんと言ったか? 親たちはしぶしぶOKしたらしいが、この記事を読んだら考えが変わるかも。

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Windows 10 IoTをRaspberry Pi 2にインストールする方法

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Windows 10が複数のシングルボードコンピュータ向けにもリリースされたので、Raspbianのようなオープンソースのオペレーティングシステムより意外と良いかも?、という関心が界隈で芽生えている。では、Raspberry PiでどうやってWindowsを動かすのか? そしてそれは、何のために?

まず、Windows 10をRaspberry PiやArduino、Galileo、MinnowBoardFirstなどにインストールしてみたい人には、MicrosoftのGitHubページをおすすめしたい。嬉しいことに、ここには詳細で完全なドキュメンテーションが揃っている。それらは、“Windows Embedded IoT”のオフィシャルイメージをこれらのデバイスで使うためのインストラクションだ。それはここでもダウンロードできる。

OSXユーザへの注記: 最初ぼくは、Raspberry Pi 2用のSDカードをOS XやLinuxを使ってフラッシュするやり方を書こうと思っていたけど、残念ながらMicrosoftのFFUイメージファイルはWindows上の特殊なファイル操作ソフトでないと扱えない。ファイル名の拡張子を変えてもだめだったし、いろいろググっても名答はない。答が見つかったら、この記事をアップデートしよう。〔SDカードをフラッシュするために使うコンピュータは、Windows 10が動いていることが必要。〕

それでは、Windows 10 IoTをRaspberry Piにインストールしよう。

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1. Microsoft Connectのアカウントを作る。

2. ファイルWindows_IoT_Core_RPI2_BUILD.zipをダウンロードする(この中にflash.ffuがある)。このファイルを、アクセス可能な場所に置く。

3. 8GBのClass 10 SDカードをコンピュータに挿入する。

4. コマンドプロンプトを開き、次のようにタイプする:

diskpart
list disk
exit

これでSDカードのドライブ番号がわかるので、それを次のステップで使う。

5. Microsoftのインストラクションに従ってWindows 10からSDカードをフラッシュする。

そのやり方は、管理者のコマンドプロンプトから下のコマンドでイメージをSDカードに載せる(下のPhysicalDriveNの’N’は、前のステップで見つけた値。たとえばSDカードのディスク番号が3なら、下は/ApplyDrive:\.PhysicalDrive3になる):

dism.exe /Apply-Image /ImageFile:flash.ffu /ApplyDrive:\.PhysicalDriveN /SkipPlatformCheck

6. SDカードを慎重に取り出す。

これで、Raspberry Pi 2はこのカードでブートする。

[ツイート訳: Windows IoTのシェルはWin 10のいわゆる‘ユニバーサルアプリケーション’の一つだ。Raspberry Piにできるのは、これだけだけど。:D]

これは一体、何のためにやるのだろう? Microsoft自身の言葉によると、“Windows 10 IoT CoreはWindows 10の新しいエディションで、メイカーたちや商用デバイスの作者が無料または低価格で入手できる小さなデバイスでの使用に向いている”。つまり、Windowsの簡素化されたバージョンを、自分のデバイスに容易にフラッシュできる、ということだ。ArduinoやRaspbianをこれまで使っていた人なら、Windowsのこのバージョンにすぐになじめるだろう。

これの上でFar Cryをプレイする、というようなことではなくて、これにたとえばリレーやLEDなどをつないでIoTシステムを作るためのベースだ、と考えた方がよい。UIも、自分で独自のプログラムを作らないかぎり、とても簡素だ。

[related_articles]〔原文関連記事の日本語訳〕
This DIY Raspberry Pi Laptop Is Perfect For Your Weekend Machinations
Raspberry Pi Sales Pass 5 Million
Raspberry Pi 2 Arrives: 6x Faster, An “Entry-Level PC” For $35

 

これは、Microsoftにしては意外なほどフレンドリーなやり方だ。でも、根っからのオープンソースファンですら、Raspberry Piで組み込みシステムを作る人が増えることは大歓迎だろう。OSが何であれ。

Windows 10を使って何かクールなものを作った人は、ぜひ教えてほしい。今後の本誌記事で、ぜひ取り上げさせていただきたい。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

超音波で直腸の動きを検知、排泄タイミング予測デバイスでTriple Wが資金調達

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排泄タイミングのお知らせがスマホに表示されるIoTデバイスを提供しようという日本人チームによるスタートアップ、Triple W(トリプル・ダブリュー)は、この4月末にニッセイ・キャピタルやアイスタイルキャピタルから資金調達をしたことをTechCrunch Japanに明らかにした。金額は非公開だがハードウェアスタートアップのシード投資としては大きめのようだ。

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さて、排尿や排便といった排泄タイミングを予測できるということで、それが一体なんのビジネスになるのかと思う人もいるだろう。米国サンフランシスコのバークレーを拠点に起業した中西敦士CEOによれば、以下の需要があるという。

  • 脊椎損傷患者:脊椎損傷のために便意を感じられない 10万人(日本)
  • 介護事業:高齢者の排泄介助は介護の柱の1つ。急に排泄を要求されても介護士は困る 600万人(日本)
  • 過敏性腸症候群:便が出るかどうかの判断にストレスを感じる 1200万人(日本)
  • 更年期女性:軟失禁 排尿のタイミングに困る 800万人(日本)
  • 育児:乳幼児のオムツ替えのタイミング
  • 女性:女性の48%が便秘に悩んでいる 4000万人(日本)

このように多くの人が排泄関連で困っている。これら需要に対し排泄予知ウェアラブルD Freeは、お腹に貼付けるタイプのデバイスから腸に照射した超音波をセンサーで検知し、そのデータを機械学習することで排泄タイミングを予測するデバイスを開発している。

超音波を使ったコンシューマー向けデバイスは、主にkHz帯が中心に使われているが、より詳細な部位を検知できるMHz帯のデバイスは少なく、今回のデバイスでは医療向けと同様のMHz帯を使用している。センサー情報はクラウド上で機械学習し、排泄タイミングを予測するというが、予測のためのロジックはまだ開発途上のようだ。白鳥病院外科 部長 山川 俊紀氏(日本大腸肛門病学会)がアドバイザーとなっている。市場規模としては、介護等でのオムツの市場規模1700億円、排泄関連の薬の市場規模1000億円があり、これらに匹敵する規模であるという。

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デバイスの価格としては、4月24日からREADYFOR(レディーフォー)(クラウドファンディング)で2万4000円で募集開始するという。

デバイス開発で難しかった点は、直腸の膨らみを超音波センサーでひろえるかを確かめるときや、デバイスをどうやってお腹に装着するか、という点という。なぜデバイスをお腹に貼るのかというと、最も正確に膀胱・直腸の変化を捉えることができるからだそうだ。ただし、パンツ一体型やクリップ型、超音波振動子以外は万歩計のようにズボンに引っ掛けるタイプなど、利用シーンによって使い分けることも考案中という。またお腹に貼るのは、デバイス背面にジェルパッドを貼り付けることで腹部に貼れるようにしたそうだ。腹部とデバイスの間に空気が入らないようにするためでもある。

中西氏は、米国University of BerkeleyビジネススクールMBT(Management and Business Track)コースに留学中、バークレイ市内で引越しをしたときに荷物を抱えたまま便意を催し大変困った経験からこのサービスを考えたという。MBTコースでは4カ月間、Draper Nexusというベンチャーキャピタルでインターンを行った。このときDraper Nexusの Mitch Kitamura氏とスタートアップのディスカッションをしたときにこのサービスについて話したという。このようないきさつのため米国と日本にオフィスがある。

日本支社代表の小林氏は中西氏とは大学同期で、かねてからスタートアップの際にはいっしょにやりたいという話をしていて立ち上げ後にジョインした。他にもオリンパス工業でもともと内視鏡関連のエンジニアだった人物、ソフトエンジニア兼PM、マーケティング担当など6名が在籍する。

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どうしてIoTのようなものづくりに敢えて挑戦するのか中西氏にきいてみた。彼は以前、青年海外協力隊に参加して、フィリピンでマニラ麻の販売量を増やすためマニラ麻を使ったジーンズをつくったことがあるそうだ。そのときに、ものづくりを通じて人助けができることに喜びを感じたという。今回のデバイスの筐体は3Dプリンタでプロトタイプを作ってあるそうだ。

サービスの今後の展開としては、総合健康管理ツールを目指すようだ。排泄の情報は、その人の食事、運動、メンタルの指標となり得る。これを病気の早期発見や、生命保険のフェアバリューとして使うことができるという。

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D Freeが、これから実際の市場で普及するのかどうかといったことは未知数だ。ただ、一般に思われている以上に排泄にまつわる悩みを抱える人は多いし、これは場合によっては人間の尊厳にかかわる深刻な問題だ。米国で流行っているものをコピーして日本にもってくるということはしたくなかったという中西氏だが、あまり前例を聞いたことがない排泄検知ウェアラブルというジャンルで日本のチームでどこまでこの問題を解決できるのか注目だ。

Hiroki Takeuchi / POYNTER CEO Ph.D)

もはや国境は意識しない、日本発IoTスタートアップの強みと課題

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新経済連盟が開催するカンファレンス「新経済サミット2015」が4月7日から8日にかけて東京で開催された。初日となる4月7日には「世界を担う日本発のIoT 〜グローバルマーケットで日本企業はどのように闘うのか〜」と題するセッションが開催された。IoT(モノのインターネット)の時代、世界で勝つ為に求められるものは何か。官民それぞれの立場から意見が交わされた。

登壇したのは総務省 情報通信国際戦略局 通信規格課  標準化推進官の山野哲也氏、経済産業省 商務情報政策局 情報経済課長の佐野究一郎氏、WiL 共同創業者ジェネラルパートナーの西條晋一氏、イクシー代表取締役社長の近藤玄大氏、Cerevo代表取締役の岩佐琢磨氏の5人。モデレーターはABBALab代表取締役の小笠原治氏が務めた。

国はIoTをどう見ているか

総務省や経産省は、IoTをどう捉えているのだろうか? 経産省の佐野氏は、ドイツの国策である「インダストリー4.0」やアメリカGE社のIoTプラットフォーム「Predix」といった、生産工程の自動化・デジタル化、センサー・人工知能(AI)を使った開発パフォーマンス向上施策を例に挙げ、海外でのIoTの急速な広がりを説く。

では日本はどうなっているのかというと、産業競争力会議においてビッグデータやIoT、AIの推進に取り組む事が決まった段階であり、具体的な政策のあり方は検討中とのこと。今後は「ベンチャー企業の力をいかに増やすかが重点事項」と課題を語る。

山野氏は総務省の観点から標準化について解説。IoTには4つの要素があるという。

・センサーで情報を集める技術
・収集した膨大なデータをネットワークに送る技術
・膨大なデータを解析し、意味あるデータを発掘する技術
・得られた意味をデバイスにフィードバックする技術

それぞれの要素別に見ると国際標準化は進みつつあるとし、M2Mの標準化団体oneM2Mを例として挙げた。ただ国内における標準化作業は出遅れている感が否めないとのこと。

IoTビジネスはに国境はない

「世界と戦う」という意味について、実際にIoTでビジネスを立ち上げているスタートアップはどう考えているのだろうか。

Cerevoの岩佐氏は、日本、海外という意識は全くしていないと言う。インターネットという世界共通プロトコル上で動作する「モノ」を販売しているため、発表すればおのずと世界中から注文が来るとのこと。むしろわざわざ「グローバル」と意識をすることなく、それで世界で成功できるのがハードウェアの良い点だと持論を述べた。

筋電義手「handiii」を手がけるイクシーの近藤氏は、「モノは分かりやすいので、コンテンツが良ければどこでも売れる」と説明。handiiiをSouth by Southwest(SXSW)でデモした時の反響の大きさを例に挙げた。handiiiは医療分野のプロダクトであり、国によって法律が異なるためローカライズは困難を極めるプロダクトだ。だがイクシーでは極力データも公開し、各国の研究機関と共同で開発を進めていきたいとした。

ベンチャー投資を手がける傍らでソニーと合弁会社「Qrio」を立ち上げ、スマートロックの開発しているWiLの西條氏も、「モノ(ハードウェア)は非言語なのでイメージされやすく、世界展開はしやすい」と語る。

日本でビジネスを行う3つメリット

スタートアップ側の登壇者3人が「国境はあまり意識していない」と語るが、モデレーターの小笠原氏は、日本でビジネスをすることの利点を尋ねた。

「そもそも僕ら(日本でビジネスをするスタートアップ)は有利」——岩佐氏はそう語る。その理由の1つめは「Japanブランド」。先代の方々(これまでの日本のメーカー)が築き上げてきた信頼のおかげで、全く同じ製品だったとしても日本製が選ばれるのは大きいとした。2つめは「家電設計者の多さ」。これだけ家電開発者が多い国は世界を見渡してもほかにない。これがIoT時代の武器になると話す。3つめは「時差」。家電やハードウェアのほとんどの工場は現在アジアに集中しており、時差も少なくいざとなれば3〜4時間で行ける距離にある日本は欧米と比較して地理的にも有利だとした。

また近藤氏は、「長期的に日本に留まるかは分からない」とは言うものの、「日本人のこだわり、職人気質はプロトタイプを開発する上でメリットになった」と言う。

IoTスタートアップ、挑戦するには「いい時期」

セッション終了後の囲み取材で、西條氏、岩佐氏、近藤氏から、ハードウェア、IoTスタートアップに挑戦する人に向けたメッセージを貰ったので、以下にご紹介する。

WiL 西條氏

起業するにもいろんな方法がある。イクシーやCerevoのように自力でやる方法もあれば、WiLのように大企業とコラボレーションする方法もある。「メンバーが不足しているからできない」と諦めて欲しくない。自分は文系人間でものづくりの経験も無かったが、今は非常に良いチームができている。いろんな山の登り方がある。やりたいという気持ちを大事にしてほしい。

Cerevo 岩佐氏

基本は「やりたいと思った時がやり時」だが、ここ1〜2年急激にハードウェアスタートアップがやりやすくなった。2007年当時はハードウェアスタートアップとか言うと笑われる時代だったが、今はDMM.make AKIBAの様なシェアオフィスもあり、興味を持ってくれる投資家も増えた。始めるにはいい時期。あと、ITでの起業というとエンジニアが起業するイメージが強いが、自分の周りでは文系、調整型の人間が立ち上げた企業が成功している。ぜひ文系の人にも挑戦してほしい。

イクシー 近藤氏

むしろ今の学生はすでに起業している。大学の研究室の成果をクラウドファンディングに乗せて製品化を目指すような流れが普通になってきている。逆に、定年退職したベテラン職人が起業するようになると面白いと思う。

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左から小笠原氏、山野氏、佐野氏、西條氏、岩佐氏、近藤氏

 

HAXLR8Rのレポートに見る、ハードウェアスタートアップのトレンドと予想

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深圳市(中国)に拠点をもつハードウェアスタートアップをインキュベートするHAXLR8Rが、興味深いレポート「Hardware Trend 2015」を2月末にリリースした。少し時間が経っているが、2015年のハードウェアスタートアップのトレンドを知るには非常に有用な資料だから、その要点と、目を引いたプロダクトをいくつかTechCrunch Japanでも紹介しよう。

ちなみに、HAXLR8Rは去年、本家TechCrunch「Lean Hardware」というハードウェアスタートアップ関連の連載をしてきた(日本語には未訳)。HAXLR8Rを含む中国語圏の動向を伝える記事としては、「米西海岸と急接近、中国深圳や香港、台湾に根付くハードウェアスタートアップの今」も参考にしてほしい。

さてレポートだが、以下の構成となっている。

1. Hardwear Trends
2. Fundings & Exits
3. Ecosystem Growth
4. Lifestyle
5. Personal Health
6. 3D Printing
7. Smart Home
8. AR/VR
9. Drones
10. Robotics
11. Twelve wares to avoid
12. Prototyping
13. Manufacturing
14. China Rising

HAXLR8Rのジェネラル・パートナーであるBenjamin Joffeによると、レポートの要旨は以下の通りだ。

  • レポートではハードウェアスタートアップへの投資とイグジットをピックアップしている。2014年には多くのハードウェアスタートアップに投資され、Oculus VR、Beats Electronics、Nest Labsんどがその地歩を固めた。
  • ハードウェアスタートアップのエコシステムは、ハッカースペース、メーカーズフェア、インキュベーター等により急成長している。
  • ウェアラブル、トラッキングデバイスのマーケットは活況となってきている。トラッキングデバイス、新センサーは、ヘルスケアや身体能力強化にフォーカスしてきている。
  • 3Dプリントは商品として認知されてきている。
  • スマートデバイスはドア鍵、ドアベル、セキュリティカメラ、サーモスタットから家庭内に浸透してきている。
  • AR、VRは消費者へのリーチ寸前で2015年クリスマスにはヒットすると予測している。
  • ドローンとロボットは拡大している。ロボットはワークショップ、ラボや家庭に入ってきている。清掃、調理、サービス、庭掃除、保管、ピンポンで遊んでくれるなど多岐ににわたる。
  • プロトタイプ製作は以前より安価、簡単、迅速になったプラットフォームがでてきている。電子回路をプリントできるものまで出てきている。
  • 深圳がハードウェアスタートアップのプロトタイプ製作、製品製造の拠点となってきている。
  • 中国と深圳はグローバルスタートアップに目を向けている。
  • これからは構造がシンプルな製品はみな”Xiaomization”されるリスクにさらされる(Xiaomi(小米)の新しい流通モデルに破壊されるリスク)。Xiaomi は既にSamsung、GoPro、Dropcamなど多くと競合関係になっている。

レポートの中にあることだが、大きなトレンドとして「深圳がハードウェアのシリコンバレー化してきた」ということがある。かつては中国といえば低レベルな製品を安価に製造するだけの工場と思われていたのが、現在は様変わりしている。深圳ではその地域一帯が工場で埋め尽くされており、しかもユニークなプロトタイプ製作と量産のエコシステムを形成しているのである。深圳、香港、台湾では以前よりもプロトタイプ製作が容易になってきているようだ。

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深圳の電子部品マーケットは数十の高層ビルにわたって展開されている。これは一見秋葉原と同じようなマーケットに見えるが、深圳のマーケット店舗は周辺の工場と直結しており、単品〜1000個のパーツまで柔軟に供給できるようになっているのが異なる点であろう。

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さて、レポートは192ページにわたるスライドになっているが、この中から興味深かったプロダクトを搔いつまんで紹介しよう。

Shot Stats Challenger

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KickStarterプロジェクト。 テニスをする人はすぐにわかると思うが、打球時の衝撃を和らげるゴム製品と同様な、ガットとガットの間に装着するタイプのもので、Bluetoothでスマートフォンと通信し、ラケットスイングのスピードを測定したり、ガットの衝撃からラケットのどの部分でボールを捉えているかチェックできる。

Roadie

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ライブ中にMCをしながらギターのチューンを変えるのは結構大変な作業だ。MCに集中するとチューンができない、チューニングに集中するとMCがとまってしまう、というジレンマに遭遇する。多勢のオーディエンスの前で無言でペグをまわしているときほど気まずい瞬間はない。しかも、あわててしまうとチューンがぴったり合わなかったりする。そんなギタリストの救世主がRoadieかもしれない。従来はチューナーのメーターを見ながら手動でギターのペグをまわしていたのを、チューナーとモータが一体化してペグまで自動でまわしてチューンしてくれる。これならMCで談笑しながらチューンも自動で完了させることが可能となる。

Giant 3D Printer

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3Dプリンタは色々なバリエーションが出てきて、プリントできるサイズも大きなものが可能となってきている。中国の巨大な3Dプリンタは1日で10棟の家を建てることが出来る。しかも1棟50万円程度と安価である。荒天や極寒においてもほぼ自動で短時間に家が建つのであれば、災害時の仮設住宅建設などに最適かもしれない。

Beddit

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薄いシーツ型センサーを布団に敷いて睡眠をモニタし、スマートフォンアプリにデータを送信。睡眠が浅いときに目覚まし機能がはたらく。いろんな睡眠時の情報をモニタしてくれる。

Mousr

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ネコを家の中だけで飼っている家庭が増えてきた。しかし、ネコは元々は野生動物。家の中の環境に慣れているはずがない。ネコは本来1日20回狩りをするという。家の中で飼われてそんないつもの行動が制限されてしまってはネコにとって大きなストレスとなる。ストレスが溜まったばかりに飼い主に面倒を起こしたりする。そこで、Mousrは、ロボットネズミとしてネコから逃げ回り、ネコの狩猟行動をシミュレートしてあげる優れものだ。これで家庭内も円満に。

Copenhagen Wheel

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米国発のスタートアップSuperpedestrian社が開発した、自転車の後輪ホイールを交換するだけで電動アシスト自転車にすることができるCopenhagen Wheel。製品名のCopenhagenは自転車大国デンマークの首都名が由来。ホイールの赤い円盤内にモーター、バッテリー、ジャイロなどを搭載。

HUVr

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ハードウェアスタートアップの中には駄目なものも出てきている。例えばHUVrだ。これはホバーボードをうたっていたが全くのフェイクだった。あったらいいなと誰もが夢想するものだが、現実はあまくはなかった。反重力でも何でもいいから実現されることを願っている。

Hendo

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ところがカリフォルニアのスタートアップHendo Hoverは、レンツの法則を応用して強力な地場を発生させ浮上させるホバーボードをKickstarterで資金調達完了してしまった。1台約100万円だが既にKickstarterでの予約は完売状態。HUVrのフェイク動画から考えたら夢のようだし、夢を実現してしまうところがまたすばらしい。

OTTO hackable Camera

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オークランドに拠点を置くの Next Thing Co.がつくったスマホアプリと連動するGIF動画を簡単に制作できるデバイス(カメラ)だ。カメラのクランクをひっぱってまわすだけでGIF動画が撮影でき、画像エフェクトもかけられる。Wifiでスマホアプリと同期して、アプリ上で撮ったGIF動画を友人と共有したりできる。

以上スライドの中からいくつか紹介したがこれ以外にも192ページにわたってスライドレポートになっているので2015年ハードウェアトレンドを占うのに参考にしてみてはどうだろうか。

Hiroki Takeuchi / POYNTER CEO Ph.D)

必要な処理のすべてをWeb上のREST APIにやらせるIoTボードOnion OmegaはRaspberry Piの1/4のサイズ

Raspberry Piによって、コンピューティングを伴うハードウェアとソフトウェアの実験の、敷居がとても低くなった。そして今日ここでご紹介するのは、そのコンセプトをさらに徹底させて、Raspberry Piの1/4ほどのサイズにLinuxとWiFiを搭載したマイコンボードだ。

このOnion Omegaと呼ばれるボードは、ソフトウェアデベロッパがハードウェアを自分で作らなくてもIoTアプリケーションを作ったり、ほかのプロダクトを改造したりできるための開発プラットホームだ。Onion Omegaを利用すると、既存のハードウェアプロジェクトにちょっと何かを加えることも容易にできる。WiFiとLinuxのほかに、16MBのローカルストレージと64MBのRAM(400MHz, DDR2)、USB 2.0対応のピン、100MbpsのEthernetなどを備える。

Onion Omegaの制作チームはボストンや、トロント、深圳などに分散していて、かねてから、IoTの開発を容易化する、新しい開発スタイルを学ばなくてもWeb開発と同じ要領でそれができる、拡張が容易である、メインのコンピューティングはすべてクラウドから提供する、を目標に掲げて努力を積み重ねてきた。Onion Omegaにはいくつかの拡張モジュールのオプションがあり、最初からさまざまなサービスに接続でき、それらのREST APIsに無料でアクセスできる。またこのボードをいろんなハードウェアに対応してプログラミングするための、既製アプリケーションやライブラリも‘アプリストア’から提供する。

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Onion Omegaを使ったプロジェクトの実例がすでにいくつかあり、たとえば上のピンポン投擲機は、誰もがWebからその‘射撃’をプレイできる。

Onion Omegaの構想は多くの人の関心を呼び、Kickstarterですでに55000ドルを集めた。それは、目標額15000ドルの4倍近い。予約購入したい者は、25ドルでOmegaとDock(専用ドック)、あと10ドルでお好みの拡張モジュールを選べる。支援者に実物が届くのは、今年の8月の予定だ。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

メタップスが今度はロボット領域に進出、ユカイ工学と組んで開発者のマネタイズ支援

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決済、人工知能と新しい領域に次々と進出しているメタップスだが、今度はロボット開発者向けのマネタイズ支援プラットフォーム「Metaps Robotics」を提供するという。これに先駆けて4月7日、ユカイ工学との業務提携を発表した。

国内でもハードウェアやIoT関連のスタートアップが徐々に立ち上がっているが、メタップスでは開発者のマネタイズには課題があると説明。そのマネタイズを支援する開発社向けのプラットフォームを今夏以降提供していくという。

提携するユカイ工学は、ソーシャルロボットの「ココナッチ」、家庭向けコミュニケーションロボット「BOCCO(ボッコ)」などの自社プロダクトとして展開。BOCCOは現在Kickstarterにて2万ドル以上を集めて、プロジェクトを達成させている。また同時に、IoT関連の受託開発も幅広く手がけている。最近では電通ブルーが発表したスマートロック「246(ニーヨンロック)」なんかも同社が手がけている。

今後は両者の知見とノウハウを融合させて、クラウド、センサー、ハード、アプリを連動させた新しいビジネスモデルの確立とロボット産業の発展に寄与する——としているのだけれども、正直それだけでは何をするのか分からない。そもそもこのタイミングでなぜメタップスがロボット開発者支援をするだろうか。

メタップス代表取締役の佐藤航陽氏にその詳細を聞いたところ、「現在のスマートフォン向けのアプリ収益化プラットフォームを、時計やテレビや車などあらゆるスマートデバイスに広げていきたいと考えている。自社でAIに関しても投資をしてきたので、今後はIoTとAIの融合によるロボット市場の拡大も期待した上で、これまでのノウハウを有効活用できると考えている」という回答を得た。

さらに実際のマネタイズについては「ECと広告を予定している。SPIKEの決済でEC支援を手がけてきたのでこれを活用していく。広告に関しては、メタップスで提供してきた広告エンジンを横展開。より適切なマッチングを行って開発者に収益を分配したい」としている。なお、ロボットの製造支援といった部分にはタッチせず、あくまで開発者のマネタイズ支援を手がけるとのこと。

これまでスマホアプリやウェブサイトで手がけてきたマネタイズをロボットやIoT領域にも生かすということのようだが、その詳細は現時点ではまだはっきりとは分からない。実際サービスが始まるタイミングで改めて聞いてみたい。

LINEで鍵の授受も、後付型スマートロック「Akerun」が3万6000円で4月に販売開始へ

昨年のTechCrunch Tokyoのスタートアップバトルのファイナリスト、フォトシンスのスマートロック「Akerun」が、いよいよ発売開始となる。発売日は4月23日で価格は3万6000円。予約は本日こちらからできる。

Akerunは「サムターン」と呼ばれる指でひねるドアの鍵に取り付けることで、スマホから鍵の開閉ができるデバイス。建物の中、ドアの内側につけたAkerunは、ドアの外でユーザーがかざすスマホとBluetooth通信による認証を行い、モーターによる制御で物理的に既存ロックを開閉をする。スマホによる明示的な開閉のほかにも、お出かけのときには扉が閉まったことを検知してオートロックする機能もある。内側からはスマホなしでも、Akerunに指でタッチするだけでサムターンを回して開けることができる。

スマホが鍵となるだけでも結構便利そうだが、ネットワーク上での鍵のシェアも可能で、FacebookやLINEを使って友人や家族のスマホに対して鍵をシェアすることが可能だ。登録者の入退室はスマホのアプリ上でリアルタイムで閲覧できる。

サポートするスマホOSはiOS7以上、Android4.4以上でBLE4.0に対応する。バッテリは2年間もち、残量が減ったときにはアプリが通知したり、交換バッテリを郵送するオプションもある。

不動産の内見やホテルのフロント業務、空きスペース貸しに市場

ネットワーク上で鍵のやり取りや無効化ができることから、フォトシンスでは鍵の受け渡し業務があるホテルや不動産関連ビジネスを行う企業との提携も進めており、今日都内で行われた製品発表会では、3つの事業会社との実証実験的な取り組みを発表した。

1つは、NTTドコモ・ベンチャーズがドーミーインと4月から始める「Webチェックインシステム」。同社代表取締役社長の栄藤稔氏は、アメリカでヒルトングループが2016年までに4000の施設でスマートロックを導入するような事例をあげて「米国ではゆるかに、しかし着実に(スマートロックが)拡大している。日本でも追いつきたい」と話した。

2つめは、不動産のネクストが3月19日から足立区、江戸川区、横浜など一部地域で開始している「スマート内覧システム」。これまで不動産の内覧には内覧日時の調整や鍵の受け渡しなど煩雑な手続きが必要だったが、ネット上で鍵の受け渡しができれば業務が簡素化する。さらに「法規制の緩和を見込めば、空き家の不動産運用も簡単になる」と、発表会に登壇したネクスト代表取締役社長の井上高志氏はいう。テストは4月末まで行う。

もう1つは、三井不動産が今週以降に実験を開始する「どこでもオフィス」(仮称)だ。三井不動産は300棟のビル、80万坪のオフィス床を運用しているが、ニーズの変化に対応するためにあえて満室とせずに一定の空室率を保っているという。この空きスペースを有効に活用するために、机や椅子、無線LANなどの環境を用意することを検討しているという。

フォトシンス代表取締役社長の河瀬航大氏によれば、電子鍵市場自体は496億円程度とみているものの、鍵の開閉を高齢者見守りに使えば、この市場は132億円、ホテルのフロント業務は876億円、不動産の仲介市場は2328億円、店舗の防犯・勤怠管理市場は1263億円など関連市場は大きい。例えば、アルバイトに物理的な鍵を渡さずに済むことや退職時に鍵を無効化できること、タイムカード代わりになることなども考えられるという。

国内のスマートロック市場といえば、2014年12月にはソニーがWiLと共同で新会社「Qrio」を設立して現在製品化を進めているのが注目されている。スマートロック市場は後付け方式で立ち上がり、数年もすれば新築住宅やホテル、商業施設では標準装備となる可能性もある。とすれば、勝負は管理サービス側の作り込みと大手企業との提携数ということになるかもしれない。実証実験的な側面があるとはいえ、製品リリースと同時に大手3社と提携を発表できたことでAkerunが一歩市場をリードしているといえそうだ。

ところで、Akerunは一般的には「スマートロック」と呼ばれることが多いが、フォトシンスでは「スマートロックロボット」と自社製品を呼んでいる。これには、ドア一体型のコンシェルジュのようなものを目指しているという意図があって、今後は天気が悪いと「傘を持っていったほうがいいよ」と教えてくれたり、次の電車の時刻を教えてくれたりといったホームオートメーションの一角を担うという将来像も見据えているということのようだ。


CerevoがSxSWでお披露目したのはウェブサービスを繋ぐ鍵「Hackey」

米国オースティンでは現在、音楽や映像、ITなどを取り扱ったイベント「South By Southwest(SxSW)」が開催中だ。すでに米TechCrunchからQuirkyの翻訳記事も届いているし、続報もいろいろと出てくると思う。

そんなSxSWに日本のハードウェアスタートアップの雄、Cerevoが出展中だ。同社は3月16日、開発中の新製品「Hackey(ハッキー)」を発表。現地にて実物を展示している。

Hackeyは、無線でインターネット接続する手のひらサイズの鍵型スイッチだ。サイズは直径56mm、高さ51mm、重量は未定だ。無線LANを搭載、電源はACアダプタ、2015年夏頃のリリースを予定する。予定価格は90ドル前後。

ウェブサービス「IFTTT」に連携可能で、IFTTTのレシピ(特定の条件「トリガー」と特定の動作「アクション」を組み合わせてることで、さまざまなウェブサービスを連携してりようできるプログラムのようなもの)にHackeyのスイッチを組み込むことができる。

Cerevoのリリースでは、「帰宅した子供がキーをひねって会社にいる親に帰宅を伝える」「自宅に設置した鍵をひねって安否を伝える」といった使い方を紹介しているが、対応するのはTwitterやFacebookをはじめとした100以上のサービスなので、その可能性は幅広い。Cerevoでは開発者向けにHackeyの制御用APIを公開する予定で、対応サービスやガジェットの開発も可能になる。

そのほかウェブから情報を受け取ってLEDの制御も可能。さらに鍵ユニットは着脱可能で、市販の直径16mmパネルマウント型スイッチと互換性があるため、鍵ユニットを外してボタンに装着する、オリジナルのボタンを作るといったカスタマイズも可能だそうだ。


家庭用スマートデバイスは、オタクだけでなく大衆向けにする必要がある

家の中のデバイスがインターネットとつながることで、様々なことが可能になるだろう。しかし、そのようなスマートデバイスが一般に普及するようになるまでには、まだ多くの課題が残っているとQuirkyのCEO、Ben KaufmanはSXSWで話した。

「家具や家電をインターネットにつなげて今までにない機能を持たせることを皆が考えています。どのようにそれを実現するかを検討することは、とても面白いことです。しかしQuirkyを始め、この分野でそれを完全に成し遂げた企業はまだ現れていません」。South by Southwestの今日のイベントでAndreessen HorowitzのScott Weissとの対談でKaufmanはそう話した。

第一の課題は取り付け方法だとKaufmanは言った。箱から取り出して、コンセントに挿すだけで使えるのが理想的だが、現実はそう上手くいかない。例えば、インターネットと繋がるスマートロックを取り付ける場合、既存の錠を取り外し、ねじ穴を開け、スマートロック専用の器具を取り付ける作業が必要だ。サーモスタットをスマート化したNestでも、複数の回線とつなぐ作業が必要だ。だれもがその手間をかけてまで取り付けたいとは思わない、とKaufmanは説明した。

二つ目の課題は、端末を起動させるまでの準備だ。製品の取り付けが完了したら、今度はインターネットに接続しなければならない。今はまだWifiと繋げる方法が煩雑で、これを簡単につなげることができなければ、そこで諦めてしまう人が後を絶たないだろう。

次の問題は、バッテリーが持つ長さだ。Kaufmanは自社で開発した卵のトレーの話を引き合いに出した。彼は笑いながら、この製品は人が卵を買うよりも高い頻度でバッテリーを交換しなければならなかったと話した。もし3つのドアと窓に取り付けた25個のスマートロックのバッテリーを半年に一度は取り替えなければならないとしたら、顧客は不満に思うだろうと指摘した。

頭に留めておきたいのは、これらのスマートデバイスは、「電気のスイッチ」のような、ほぼ何のメンテナンスも必要としないものをリプレースしようとしていることだ。こうした電気スイッチのような物はバッテリーの交換やソフトウェアのアップデートをしなくても問題なく使えるのだ。

最後の問題は、ソフトウェアの観点から、どのようにデバイスに関わり、得られた情報を有効活用して物事を効率化するかということだ。今現在、デバイスの効率を高める為には、集められたデータを見てユーザー自身が何かを変えなければならないと彼は説明した。

「一番の価値は、得られたデータで物事を可視化し、インターフェイスを限りなくシンプルにすることで得られます。今はまだ、情報を表示してユーザーに動いてもらわなければなりません。例えば、何かの月々の料金を節約する為には、12ヶ月分のデータを見て、自分で各種の設定を変える必要があるのです。データを活用して、その一連のプロセスをプログラムに落とし込むことで、手動の作業を無くすことを進めていくべきでしょう。全てを自動化するということです。」と彼は説明した。

対談の後の質問で、参加者の一人が「おばあちゃんでもデバイスを使えるようになるでしょうか?」との質問があったが、そうまでなるには、まだまだ時間が必要であるとのことだ。

セキュリティーもスマートデバイスとスマート化した家の大きな懸念の一つだ。データのプライバシーの扱い方や、ハッカーからデバイスを守るといったことだ。スマートロックはハッカーの攻撃に屈してはならないし、誰も暖房や冷房、電気使用量の情報やデバイス製造元とのやりとりを共有したくはないだろう。このようなデバイスを販売する企業はこの問題について慎重に取り組まなければならない。

Kaufmanは、小売店での教育の問題についても指摘した。DIY商品を取り扱う店舗の従業員は既存の商品の販売には長年の経験があるだろうが、新しいスマートデバイスを販売するにはそれに応じたトレーニングが必要だと話した。予算の限られているスタートアップにとって、販売員が適切に販売が行えるように教育する費用を捻出するのは難しいかもしれない。

General Electricsと提携したQuirkyは、新しい発明品が簡単に手に入るようにする為に立ち上げたと、Kaufmanは話した。ユーザーコミュニティーから意見を募り、製品を発明していくこのプラットフォームはこれまで一定の成果を上げてきた。2013年頃から、意見の大半がインターネット接続関連のアイディアで占めるようになった為、取り扱う製品をスマートデバイスに特化させた。

発明家が商品を考えたり、販売したりできる場を提供してきた同社だが、ローンチしてから1億ドルの損失を出している。

Weissは、今のスマートデバイスの状況はパソコンの黎明期と似ていると話した。誰かが趣味として作る時期は過ぎたが、まだスマートデバイスが活躍するまでは技術的なハードルをいくつか超える必要がある。煩雑なプロセスの大部分が自動化されるまでは、これらのデバイスはオタクが熱狂するだけの製品に留まるだろう。

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(翻訳:Nozomi Okuma /Website/ facebook


なくしたりどこかに置き忘れたらブザー音で所在を教えてくれる財布Woolet

物のインターネットで、人間と物との関わりがこれまでになく深くなるだろう。トースターをハグしたり、冷蔵庫と結婚したり、浴室の体重計と寝たりするかもしれない。でも、自ら進んで、人間に声をかけてくれる「物」は、Wooletが初めてだ。

Wooletはおさいふだが、ビーコンを発してスマートフォンと通信する。おさいふを置き忘れたり、なくしたりすると、スマートフォンがブザー音で教えてくれる。しかもWooletにもブザーがあって、スマホとおさいふの両方を家に置き忘れたときには、教えてくれる。Fitbitに急(せ)かされて、あせって家を出たときなんか、便利だね。WooletはほかのWooletオーナーにAPBシグナルを送って、位置の報告を求めることもできる。たとえば、人混みの中で自分のWooletをなくしたときは、ほかのWooletオーナーが信号を拾って、その位置を連絡してくれるだろう。

たかがおさいふに、やりすぎだ、と誰もが感じるだろうが、今の人生ではスマホの次に札入れがだいじだから、きっと需要はある。Tileのときもそうだった(ビデオ)が、問題は機能の信頼性/安定性と、119ドルという価格だ。でもまだ、さいふをなくしたときのための競合製品が一つもないから、比較もできないけどね。

このプロダクトはすでにクラウドファンディングの目標額に達しており、5月には発売される。首を長ぁくして待つ必要はないね。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa