導入企業数1万社を突破したInstaVR、AWS元マーケティング本部長の小島氏がCMOに

ウェブ上で手軽にVRアプリを作成できるツールInstaVRを提供するスタートアップのInstaVRは1月19日、アマゾンでマーケティング本部長を務めていた小島英揮氏が1月からCMO(最高マーケティング責任者)として参画したことを明らかにした。同氏はInstaVR のユーザーコミュニティの構築や、テキサス州オースティンで開催される SXSW2017 内でのInstaVRのキックオフイベントを中心にマーケティング業務全般を担当するという。

小島氏はAWSの1人目の社員であり、世界最大のクラウドコミュニティ「JAWS-UG(ジョーズユージー。 Japan Amazon Web Service User Group の略))を創り上げてきた。多くの人を巻き込みながら熱量のあるコミュニティを形成し、事業の成長につなげていく手法を手がけてきた人物だ。

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InstaVRのCMOに就任した小島英揮氏

2016年9 月にAWSを退社した後もコミュニティ・マーケティングの勉強会を主催しており、その資料をInstaVR代表取締役社長の芳賀氏が発見。gumi 代表取締役で同社のシード投資家でもある國光宏尚氏の紹介で直接話をし、議論を深めていった。

元々クラウドの次にチャレンジしたい分野としてVRには関心を持っていた小島氏。最近のイチオシ書籍だという「〈インターネット〉の次に来るもの 未来を決める12の法則」(ケヴィン・リー著)の中で、VRがこらからやってくる不可避な流れとして紹介されているが、小島氏自身もそのように感じていたそうだ。

芳賀氏と議論を深めていく中でその市場とツールの可能性に魅せられ、「7年前のクラウドを同じく、VRという言葉はみんな知っているが、その良さを”自分ごと”にできていない人が多いというのも、自分のクラウド市場立ち上げでの経験を活かせると思った」(小島氏)ことが参画を決めた理由になったという。

InstaVRは2016年8月にグリーベンチャーズ、Colopl VR Fundを割当先とした2億円の資金を調達。当時は1800社ほどであった導入企業の数は2017年1月で1万を突破している。海外売上比率は90%に上り、今後も接客的に海外展開を目指すとしている。

「現状、VR自体が黎明期ですので、自社製品の認知に限定せずに、幅広くVRそのものの認知を広げ、適用事例を増やす活動を行って頂きたいと考えています。小島さんがAWSで『一部の人が使うクラウドの世界をAWSで民主化した』ように『まだ一部の人に閉じこもってしまっている VR の世界を民主化する』活動を期待しています」と芳賀氏が話すように、今後も「だれでも簡単に当たり前にVRが使える世の中を実現し、ありとあらゆる人がありとあらゆる体験ができる世界」の構築を目指し、事業を推進していく。

Facebook「今後10年でVR業界へ30億ドル投資する」

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Facebook CEOのMark Zuckerbergは、バーチャルリアリティは未来のコンピューティング・プラットフォームであり、同社はそのマーケットを手中に入れることができると考えている。ただ、このテクノロジーが大衆技術となるまでには、まだ5年から10年の歳月を要するとも認めている。

今日、記者たちはFacebookが抱くバーチャルリアリティへの野望のリアルな姿を耳にするめったにない機会に恵まれた。同社が2014年3月に買収したOculusにまつわる、20億ドル規模の訴訟についてFacebook側の言い分を証言した場でのことだ。

今回の騒動は、元ZeniMaxで現在はOculus CTOのJohn Carmackが、ZeniMaxに無断で同社のVR技術に関する情報を利用したとしてZeniMaxがOculusを提訴したことがきっかけ。

New York Timesが伝えたところによれば、Zackerbergは法廷で、Facebookは今後10年間でVR分野に30億ドルを投資し、何百万人ものユーザーを獲得するつもりだと語ったとされる。

Zuckerberg率いるFacebookは、これまでにもVR分野へ巨額の投資を行っている。Zuckerbergの証言によれば、FacebookがOculusを買収するとき、当時OculusのCEOだったBrendan Iribeは買収金額として40億ドルを提示したそうだ。結局、両社は20億ドルの買収金額で合意に達したが、その金額に加えて7億ドルのリテンションボーナスと、業績が一定まで達した場合には追加で3億ドルをOculusに支払うことも条件に加えられたという。

これらの数字は、バーチャルリアリティ業界をなんとか手中に収めようとするZuckerbergの強い意志を表している。彼が資金を投下するのはイノベーションのためだ。賠償金を支払うことは避けたいところだろう。

[原文]

(翻訳: 木村 拓哉 /Website /Facebook /Twitter

筋電義手を手がけたexiii、VR空間上のモノを“触れる”外骨格型デバイス「EXOS」を発表

exiii 共同創業者でCEOの山浦博志氏(左)、共同創業者でCCOの小西哲哉氏(右)

exiii 共同創業者でCEOの山浦博志氏(左)、共同創業者でCCOの小西哲哉氏(右)

3Dプリンタを使用して、低価格(本来100万〜150万円程度はかかるところ、数万円で実現する)で作成できる筋電義手「handiii」、そしてその後継機でオープンソース化されている「HACKberry」を提供するexiii。同社が次に取り組んだのはVR空間での触覚を提供するプロダクトだ。同社は1月18日、触覚提示デバイス「EXOS(エクソス)」を発表した。

EXOSは外骨格型(手の外側を覆うかたち)の触覚提示デバイスだ。デバイスには角度センサーを備えたモーターを4つ内蔵しており、このモーターによってデバイスを使ったユーザーの指に対して反力を与えることで、実際に物に触れたような感触を再現できる。

僕もこのEXOSのデモを昨日体験してきたばかり。デモ環境ではHTC Viveと組み合わせて利用する環境だった(ViveのコントローラーをEXOSに付けることで、センシングの部分はViveに任せているという環境だ)のだが、VR環境に用意されたオブジェクトにゆっくり手を触れると、そのオブジェクトに触れた感覚が伝わってきた。固定されたオブジェクトを無理に押そうとすると、手に強い抵抗がかかって、それ以上押し込むことが難しく感じる。さらにおきあがりこぼしのようなオブジェクトを動かしては止め、止めては動かし……なんてことも体験できた。デモ環境では立方体や円柱状の単純なオブジェクトを触るだけだったので、今後どういったオブジェクトの触覚を体感できるかというのは未知数ではあるけれども、それでも「VR×触感」という領域に新たな可能性を感じることができた。

exiiiではVRを用いたゲームやロボットの遠隔操作、手を動かすリハビリテーションなどに利用したい考えで、今後は広くパートナーを募りたいとしている。本体の価格は非公開。今後提供する形式により決めていくとしている(当面はC向けでなく、開発者やパートナー向けの提供を検討している)。

同社は2014年設立のIoTスタートアップだ。筋電義手のプロジェクトをオープンソース化した際、共同創業者でCEOだった近藤玄大氏が同プロジェクトに注力するためexiiiを退社。同じく共同創業者であった山浦博志氏がCEOに就任したのは2016年11月のこと。EXOSは新体制での第1弾プロダクトとなる。

EXOSのデザインモック

EXOSのデザインモック

「もともと大学生の頃に外骨格を使ったリハビリの装置を研究していたので、新しいプロダクトではその知見を何かに生かせないか考えた。2016年はVRが盛り上がり、私もいろいろと体験したが、コントローラーがモノ(VRスペース上のオブジェクト)を突き抜けてしまう現象がある。これを手持ちの技術で解決できないかと考えたのがEXOS開発のきっかけ」(山浦氏)

EXOS開発には筋電義手のノウハウも大いに役立った。「人間の手には20以上の関節がある。だがそれを全て外骨格で再現すると、(複雑すぎて)動かないプロダクトになってしまう。どうやって手の動きを簡略化するかは、義手の知見があったからこそ実現できた」(山浦氏)。外骨格の機構は特許も取得している。なおデザインはhandiii、HACKberry同様に共同創業者でCCOの小西哲哉氏が担当した。

筋電義手「handiii」

筋電義手「handiii」

海外を見ると、オランダでVR用グローブ「Manus VR」なども発表されているが、山浦氏は「振動によって没入感を得られるプロダクトは他にもあるが、モーター制御で『押し戻される感覚』までを得られるかというとまた別の話。触覚は没入感を提供するだけでなく、精密作業を行うためにも必要だと思う」(山浦氏)としている。

 

テクノロジーに「感動」を加える ― 電通ベンチャーズがアミューズメントツール開発の米Two Bit Circusに出資

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家庭用ロボットのJibo、コオロギから抽出したタンパク質を使用した健康食品のExoなど、新しい事業領域にチャレンジするスタートアップを中心に投資する電通ベンチャーズ。今年9月にVRスポーツのLiveLikeへ、12月にはVRエンターテイメントのSurviousへ出資するなど、同社はここ最近「エンターテイメント」領域への出資を進めているようにも感じる。

本日電通ベンチャーズが出資することを発表したTwo Bit Circusも、エンターテイメント分野のスタートアップだ。

電通傘下のコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)ファンドである電通ベンチャーズは2017年1月18日、アミューズメントツール開発の米Two Bit Circusに出資することを発表した。金額は非公開。今回の調達ラウンドには電通ベンチャーズのほか、JAZZ Ventures Partners、Foundry Group、Techstars Ventures、Intel Capital、Georgian Pineが参加している。

Two Bit Circusが表舞台に現れたのは、2013年5月にKickstarterでエンターテイメント・イベント「STEAM Carnival」の運営資金を募ったときだった。STEAM Carnivalはその後、10万ドルの目標数字を達成している。

Science、Technology、Engineering、Mathematicsの頭文字をとった「STEM」という言葉がある。彼らのイベント名にある「STEAM」は、それにArtの頭文字を加えた言葉だ。その後STEAM Carnivalは2014年10月にロサンゼルスで開催され、1万3000人を動員している。

心を揺さぶるプロダクト

Two Bit Circusが得意としているのは、最新技術にアートやエンターテイメントの要素を加えたプロダクトの開発だ。これまで同社は、イベントなどで展示されるプロダクトの受託開発を主に手がけていた。下の動画は、Verizonと共同で開発したアメリカンフットボールの世界を体感できるVRギアだ。

電通ベンチャーズのPedro Ao氏は、心を揺さぶるプロダクトの開発力こそ同社がTwo Bit Circusへの投資に踏み切った理由だと語る。「技術が普及するためには、それがただ生まれるだけでは不十分。そのためには消費者の感情に訴えかけることが必要になる。Two Bit Circusはそこが上手い。彼らには、新しい技術を消費者ウケするものに変える力がある」。

Two Bit Circusの事業領域は電通ベンチャーズがフォーカスする投資分野でもある。電通ベンチャーズは2016年9月、VRでスポーツ観戦ができるLiveLikeに出資。その3ヶ月後の2016年12月にはVRゲーム開発のSurviosに出資している。

Two Bit Circusは必ずしもVRだけにフォーカスした企業ではないが、VRをはじめ新技術を利用したエンターテイメントという共通点はある。「電通ベンチャーズがフォーカスする領域の1つがニューメディアだ。特に、VRは電通がもつ力が活かしやすい領域だと思っている」とPedro氏は話す。

Two Bit Circusのビジネスは新しいフェーズに突入

今回の資金調達を経て、Two Bit Circusのビジネスは新しいフェーズに突入する。

これまで、彼らのメインビジネスは企業からの受託開発だった。しかし、STEAM Carnivalなどでプロダクト開発の経験を積んだ彼らは、今後自社のプロダクト開発に力を入れていくという。Arduinoを搭載した紙でつくられたロボット「Oomiyu」のほか、「大人も子供も楽しめるテクノロジー・アトラクション」を楽しめる自社のテーマパークを建設する予定だという。そのテーマパークは新しいプロダクトをテストする場にもなっていくようだ。

電通ベンチャーズがTwo Bit Circusへの出資に加わったことで、将来的にアジア地域へのビジネス拡大も可能性がありそうだ。実際、電通ベンチャーズやKDDIがJiboに資本参加したあと、Jiboは東アジア地域への拡大を本格化している。それについてPedro氏は、「当面はアメリカ市場にフォーカスしていく予定だが、電通のリソースを利用することで将来的にはアジア地域への拡大もありうるだろう」と話す。Two Bit Circus側も、以前からアジア地域には興味を示していたようだ。

どれだけ業界から注目される新技術でも、ビジネスとして成り立つには、その技術を消費者の心に届くプロダクトへと落としこむことが不可欠だ。業界で注目されるVRにしても、今後どれだけ消費者を振り向かせるコンテンツを生み出せるかどうかが普及への鍵なのかもしれない。電通ベンチャーズがTwo Bit Circusに期待するのはその役割だ。

VR・AR市場の今後の動き

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【編集部注】執筆者のTim Merelは、Eyetouch RealityおよびDigi-Capitalのファウンダー兼CEO。

私たちが2年前に言った「VR・AR市場は今後どちらも成長していくが、AR市場の方が成長に時間がかかり規模も大きくなるだろう」という当時は画期的だった考え方も、今ではすっかり受け入れられた。しかし両市場が本格始動してから12ヶ月が経ち、大手テック企業の戦略も見えてきたことで、私たちのVR・AR市場の成長に関する見方もかなり変わってきた。

私たちの新たな予測は、モバイルARが主な原動力となりAR・VRの市場規模が2021年中に1080億ドル(下振れして940億、上振れして1220億ドル)に達するというものだ。なお、そのうち830億ドルという大半のシェアをARが握り、VRの市場規模は250億ドルにとどまると考えている。

昨年の勝ち組・負け組

少し暗い話からスタートしよう。Facebook(Oculus Rift)とHEC(Vive)は、昨年出荷の遅れオーダーのキャンセルが発生し苦しいスタートを切った。またOculusのTouchコントローラーはRiftにバンドルされず、結局199ドルで別売りされることになった(つまりPCを含まないフルシステムの価格は798ドルでHTC Viveと同じ水準だ)。Samsungは、Galaxy Note 7対応デバイスとして開発されたGear VRで新規参入を試みたが、その野望の一部は文字通り煙となって消えてしまった。Magic Leapも14億ドルを調達したが、その技術についてはさまざまな憶測が飛び交っていた。

幸いなことにNintendo、The Pokémon Company、Nianticは自分たちでも予想していなかったほどの大成功をおさめることができた。Pokémon GOは最初の3ヶ月だけで6億ドルの売上を記録し、一年を通してみても2016年のVRゲームソフト市場全体の売上を上回るほどの大ヒットだった。Pokémon GOの成功にはさまざまな固有の要因が絡んでいるものの、これが大手テック企業のモバイルAR戦略に大きな影響を与えることとなった。

またSonyのPlayStation VRのローンチとともに、昨年の勝ち組となったのがGoogleだ。同社はDaydream Viewと名づけられたモバイルVRセッドセット・コントローラー、そして初となるTango対応のスマートフォンを発表した。さらにSnapがSpectaclesをローンチすると、(同製品は本当の意味ではAR製品ではないとはいえ)AR市場に勢いがつき、再びちょっと間抜けな近未来風メガネが人々の注目を集めた(今回は”Glassholes”の話もでていない)。

全てが出揃って、全てが変わった

VR・AR市場の数字は、今後同市場が描く軌道に比べればそこまで重要なことではない。昨年はじめに私たちは、VR・AR市場の売上額が合計で44億ドル(VRで38億、ARで6億)に達すると見込んでいたが、実際のVR市場の売上は27億ドルだった。しかしPokémon GOの予想外のヒットのおかげで、AR市場の売上が12億ドルに膨れ上がり、VR・AR市場全体の売上は39億ドルに達した(我々は11%ほど楽観的に考えていたということになる)。

それよりも重要なのは、過去12ヶ月の間に同市場の今後の方向性が根本から変わったということだ。

同じようで違う

GoogleがCardboard時代を経てDaydream Viewをリリースしたように、モバイルVRの分野では引き続き”Explorer”(無料〜100ドルのデバイスを購入する人)がユーザーベースの中心となるだろう。一方で昨年Samsungが苦しんでいたように、市場自体は当初思い描いていたような速度では成長できていない。2016年中にVRデバイスが思ったより普及しなかったことで、プラットフォームがスケールするのに必要なネットワーク効果が弱まり、全体としては当初よりも6〜12ヶ月ほど成長が遅れる可能性がある。モバイルVRの市場規模自体は今後大きくなっていくが、そこに到達するまでには思っていたよりも時間がかかりそうだ。

モバイルVRの市場規模自体は今後大きくなっていくが、そこに到達するまでには思っていたよりも時間がかかりそうだ。

SonyのPlayStation VRや近日中に発売予定のWindows 10 VRヘッドセットは、消費者向けの価格帯とパフォーマンスで、”Enthusiast”(400ドル未満のデバイスを購入する人)のニーズに応えるプロダクトとして今後VRの成長を支えていくだろう。特にWindows 10 VRは、インサイド・アウト方式の(HoloLensから引き継いだ)トラッキング機能を備えており、価格も299ドルに抑えられているということからゲームチャンジャーになる可能性がある。さらにユーザーはVRのためにPCを買い換える必要もないため、Windows 10 VRは本当に消費者向けのプロダクトだといえる。

FacebookとHTCのプロダクトは高価で、プラットフォームのシステム要件も厳しいため、SonyやMicrosoftによって、ボリュームの少ない”Specialist”市場(プラットフォームを含むシステムの合計価格が1500ドル未満)へと追いやられてしまう危険性がある。このニッチな市場は金持ちで溢れているが、一般大衆へプロダクトを普及させたいとするならば価格面で再考が必要になる。

名ばかりのAR

Pokémon GOの成功をうけ、AppleのTim Cookは同社が「ARに夢中になっていて、長期的にも(中略)AR市場への投資を続けたいと考えています。(中略)ARは大きな市場になる可能性を秘めています」と話していた。GoogleのSundar Pichai、FacebookのMark ZuckerbergMicrosoftのSatya Nadellaも口を揃えて早期AR市場の勝者はPokémon GOだと認めている。

しかしARが大衆市場を攻略するには5つの大きな課題をクリアしなければならない。

  • ヒーローデバイス(Apple製かどうかに関わらず、Apple製品のような品質のデバイスを指す)
  • 丸1日もつバッテリー
  • モバイルデータ通信
  • アプリのエコシステム
  • 通信会社によるデバイス代負担

ヒーローデバイスとはどのような見た目でいつ頃登場するのか、ということにばかり目が向けられているが、そのほかにも特に難しい課題が2つほど上記のリストには含まれている。

まずバッテリー技術に大きなブレイクスルーが起きないと、高度なARソフトを動かせる軽量スマートグラスは、モバイルバッテリーや交換用バッテリー無しに1日中稼働できない(これはエンタープライズ向けプロダクトとしては問題にならないが、消費者には嫌がられる)。これは大きな問題だ。さらに、デバイスがある程度普及する前に、新しいプラットフォーム向けのアプリ開発に注力するというのは、ディベロッパーのエコシステムにとって大きなリスクとなる。これは新しいプラットフォームがいつも直面しなければならない、卵が先か鶏が先かという問題だ。

それではApple、Google、Facebook、Microsoftといった巨大テック企業、そして大きな成長が見込めるARスマートグラス関連のスタートアップはどうすればよいのか?

本当のAR

モバイルARは前述の5つの課題を比較的短期間で解決し、大衆に浸透していくだろう。Mark Zuckerbergも同じ考えのようで「スマートグラスのように顔に装着するものではなく、スマートフォンこそが消費者向けARプラットフォームの主流になり、さまざまなAR機能が広く利用されるようになるでしょう」と語っていた。

スマートフォンは、1日中もつバッテリー、モバイル通信、アプリのエコシステム、通信会社によるデバイス代負担という、5つある課題のうち4つを既にクリアしている。さらに恐らく読者の多くは、この記事をヒーローデバイス(iPhone、Samsungや他社製のAndroidスマートフォン)で読んでいるころだろう。フルARデバイスになる上で、現状のヒーローデバイスに欠けているのは、センサーとソフトウェアくらいだ。

Pokémon GOからはモバイルARの本当の可能性を垣間見ることができる(業界の中にいる人はPokémon GOがARだと認めていないが)。そしてGoogleがLenovoと共同でローンチしたTango対応のスマートフォンが、本当のモバイルARに向けた第一歩となった。ヒーローデバイスとしての雰囲気はそこまで感じられないが、少なくとも成長スピードが弱まっているスマートフォン市場に再びイノベーションと成長を呼び起こす上でAppleやSamsungといった企業が利用できるテック業界の方向性を、このプロダクトからは感じ取ることができる。

そしてここで、買い替えサイクルというモバイルARの秘密兵器が顔を見せる。

買ったあとは無料

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VR・AR対応機器の数(単位:百万台) 出典:Digi-Capital

先進国のモバイル市場はほぼ飽和状態にあり、特に必要でもないのに定期的にデバイスを買い替えている消費者の存在に支えられている。なぜか理由はわからないが、みんな定期的にデバイスを買い替えているのだ。しかしこの買い替えサイクルも、2年間から3年間へと少しずつ伸びており、AppleやSamsungのような企業の頭を悩ませている。

10年間近く予想を上回り続けたiPhoneの販売台数・売上も昨年下落した。SamsungのKim Gae-younは以前「市場が停滞しても、何か大きな失敗をしないかぎり最終利益は確保できるでしょう」と話していたが、これは同社がGalaxy Note 7を投入する前の話だ。スマートフォン市場は既に成熟しており、再び成長するためにイノベーションを必要としているのだ。

モバイルARの分野において、Appleは主要テック企業の中で最も優位に立っている。

上記のような背景を考えると、AppleがMetaioを買収したのも偶然ではない。現在Apple社内で密かにプロジェクトに取り組んでいるMetaioのチームについては、業界内でさまざまな憶測が飛び交っている。同様にSamsungのSung-Hoon Hongも、同社の「視覚化エンジン」を利用することで、「触れられそうな」くらい「本当にリアルな」ホログラムをつくりだすことができるほか、ARはVRよりも「ずっとうまみのあるビジネス」になり得ると話していた。またQualcommのSeshu Madhavapeddyは、同社のフラッグシッププロセッサーによって、場所をとらずバッテリー効率が大幅に上がったスマートフォンベースのARが実現できると話す。

AppleとSamsungはモバイルARに関する具体的な計画を発表していないが、私たちは両社がAR対応スマートフォンを2018年(上振れで2017年、下振れで2019年)中にローンチするのではないかと考えている。その他の大手スマートフォンメーカーも同じようなスピードで開発を進めていくだろう。2017年中にARスマートフォンがローンチされる可能性もある一方で、もしもiPhone 7sとGalaxy S8が通常のスマートフォンとして今年発売されれば、恐らく来年iPhone 8とGalaxy S9の登場とともに大衆向けモバイルARは黎明期を迎えることになる。

スマートフォンを利用したモバイルAR戦略の良いところは、消費者が何も新しいことをする必要がないという点だ。いつものようにiPhoneやSamsung製のデバイスを買い換えるだけで良い。全てうまくいけば、ARスマートフォンはモバイル市場を蘇らせる原動力となる。新たな視点で世界を見ることができる魔法の窓を手に入れられるのに、従来のスマートフォンを購入したいと思う人はいないだろう。

待ちに待ったスマートグラス

しかし私たちが待ち望んでいる”本当の”ARスマートグラスはいつ誕生するのだろうか?

とにかくスマートグラスが欲しいという人は、ODGMetagが今年中に発売を予定しているプロダクトを購入できるが、この分野で前述の5つの課題全てが解決されるのは2019年以降になるだろう。そのため大手スマートグラス企業は、モバイルバッテリーいらずのスマートグラスでスマートフォンを完全に代替し、アプリのエコシステムが整うまでは、エンタープライズ市場(合計システムコストが1500ドル以上)や”Specialist”市場(1500ドル未満)にとどまることになると考えられる。つまりスタンドアローンのスマートグラスは、消費者がどうせ購入するであろうスマートフォンとは別物の贅沢品として、向こう数年のうちに富裕層向けの市場を築いていく可能性があるのだ。そして一般大衆への普及に向けた転換期は、スマートフォンの売上をスマートグラスが直接奪いはじめるころに訪れるだろう。

AppleやSamsungなどのスマートフォンメーカーも、モバイルARの延長としてスマートグラスの分野に少し遅れて(Robert Scobleの情報が間違っているとすると)参入するかもしれない。もしかしたらスマートウォッチのように、スマートフォンの(今回はかっこよくてディスラプティブな)周辺機器としてローンチされる可能性もある。GoogleやFacebook、Snap、中国のBAT(Baidu、Alibaba、Tencent)も今後この分野で大きな役割を担っていくことが期待される。

結局どうなるVR・AR?

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VR・ARの市場規模(単位:10億ドル) 出典:Digi-Capital

市場は今後さまざまな方向へ進んでいく可能性もあるが、大手企業の戦略について考えてみよう。今後戦略が変わることもありえるので、私たちはそのときの状況を見て、新たな情報を発信していく予定だ。

Oculusを20億ドルで買収し、追加で少なくとも5億ドルの投資を行って以降、FacebookはVR・AR業界で最大の投資家となった。さらに同社は、OculusをPCとモバイル部門に切り分けそれぞれのプラットフォームを発表しており、ここからFacebookの今後の動きを読み取ることができる。OculusのPC向けVR部門は、値段の高さもあり”Specialist”と”Enthusiast”市場にフォーカスし続け、Facebookのようなサイズの(何億から何十億というユーザー数を誇る)ビジネスにはならないだろう。またFacebookは、OculusのPC向けVR部門をハイエンドなテストの場として手元に残し、モバイルVR・ARビジネスをサポートするような役割を与えることができるほか、同部門を(Googleから独立したNianticのように)スピンアウトさせたり、ほかの事業と統合(ハイエンドPC向けVR市場をまとめあげるような存在に)したり、完全に売却したりする可能性もある。

OculusのモバイルVR部門は、SamsungのGear VRアプリストアを運営し続け、Gear VRのイノベーションを加速させる原動力となるような立場にいる。CEOのMark ZuckerbergがモバイルARへの熱意を名言しているFacebookは、スマートフォンメーカーではないため、AR市場でも本来のソフトウェア企業として力を発揮していく可能性がある一方で、Snapの後を追うような最近の動きをみると、Facebook版”Spectacles“が登場してもおかしくない。

ハードウェア、ソフトウェア、アプリストア、ディベロッパー、小売店舗という、Appleが持つエンドツーエンドのエコシステムを考慮すると、同社はモバイルARの分野において、主要テック企業の中で最も優位に立っている。ARに強い感心を示しているTim Cookのもと、Appleの動きは謎に包まれているが、同社に必要なのは、追加のセンサー、Metaioのソフト、そして真剣な思いくらいだ。

前述の通り、私たちはAppleが来年中(上振れで2017年、下振れで2019年)にARスマートフォンをリリースすると予測している。iPhoneユーザーはいずれにしろ新製品を買うことが予想されるので、AR対応iPhone購入にあたって発生する追加コストはゼロだ。Appleはアプリやディベロッパーのエコシステムの成長にも力を入れているため、長期的に見たAR分野での同社の動きとしては、iPhoneの周辺機器としてスマートグラスをリリースするというのが必然的なステップだろう。しかしAppleがスマートフォンの代替製品として、スタンドアローンのスマートグラスをローンチするという大胆な戦略をとるとはまだ思えない。繰り返しになるが、これはRobert Scobleの情報が間違っているという仮定の上に成り立っており、そうでなければ今年中にApple製のスマートグラスが登場する可能性もある。

Galaxy Note 7の事件があったとはいえ、Samsungは今後もモバイルVRの分野の主要プレイヤーとして活動を続ける可能性が高い。しかしFacebookがGear VRのアプリストアを運営しているため、SamsungがモバイルVRエコスステム全体を自社で整備していくとは考えづらい。モバイルARについては、ハードウェア企業としてのルーツに回帰し、アプリやソフト面ではパートナー企業に頼りながら、Appleと同じようなタイミングで新製品をローンチする可能性がある。また長期的には、Appleのようにスマートフォンの周辺機器としてARスマートグラスをリリースすると考えるのが妥当だ。

MicrosoftのSatya Nadellaは、高スペック・高価格を理由にHoloLensのAR・MRをエンタープライズ市場に向けて売り出そうとしているため、HoloLensがコンシューマー市場に登場するまでにはしばらく時間がかかるだろう。そのため、HoloLens上でMinecraftをプレイできるとしても、あくまでそれは職場の”研究”の一環としてしか実現しない。一方でインサイド・アウト方式のトラッキング機能を搭載したMicrosoftのWindows 10 VRは、低価格で強力なシステムも不要なため、PC・コンソール向けVR市場のゲームチェンジャーとなるだろう。さらにこれまで通り、HP、Dell、Lenovo、Acer、Asusといった企業が同社のハード面を支える。

またコンソール向けVRビジネスの拡大に向けて、Xbox One ScorpioにWindows VRヘッドセットがバンドルされる可能性が高い。ここまで製品が充実しているにも関わらず、Minecraft(人気ゲームだがプラットフォームではない)を除くと、Microsoftは特にモバイルVR・AR関連の取り組みは行っていない。明確な戦略が発表されない限り、Satya Nadella下のMicrosoftは、Steve Ballmer時代のMicrosoftがスマートフォンの商機を逃したように、モバイルVR・ARへのプラットフォーム移行のチャンスを逃してしまう危険性がある。

Google Glassの失態後、GoogleはVR・ARの分野において、いかにもGoogleらしい動きをとっている。つまり全ての分野をカバーしているのだ。VRの”Explorer”向けに低リスクでVRを試せるCardboardを販売している一方、同社のDaydream Viewは(Google製かどうかに関わらず)モバイルVR界を引っ張っていくようなプロダクトになる可能性を持っている。またTangoでの取り組み(自社製・パートナー企業製どちらも)によって、Googleは間もなく起きるであろうモバイルAR革命の最前線にいる。

しかし今後、モバイルVR・AR市場でApple対Googleという構造が出来上がり、最終的にはiOS対Androidと同じような状況になる可能性もある。つまり、高い利益率を誇るエンドツーエンドのモバイルARエコシステムを持つAppleと、コアとなる検索広告・Google Playの収益拡大を目的としたオープンで巨大なエコシステムを持つGoogleが対決することになる可能性があるということだ。消費者にとっては、どちらが勝利しても良い結果が待っている。またTangoの技術を使って、VR用にTangoとDaydreamを統合したシステムができるのではないかという噂もあるが、その実現には密閉型の現状のDaydream Viewに物理的な改変を加える必要がでてくるだろう。一方Google Glass 2について何か判断するにはまだ早過ぎる。

コンソール・PC向けVR市場では、SonyがPSVRで同社のコアとなるゲームからの売上を伸ばしていくだろう。一方HTCのCher Wangは、一般消費者がHTC Viveにアクセスしやすくなるように、価格面で新たな施策を打ち出すかもしれない。さらに同社はFacebookのように、PCとモバイル両方の市場を狙ってモバイルVRの分野に参入していく可能性もあるが、この分野でスケールするにはHTCのコアとなるスマートフォン市場でのシェアを伸ばさなければならない。さらに、今年中のローンチが予定されている一体型VRヘッドセットプロジェクトAlloyで、Intelも”Specialist”市場を震撼させようとしている。

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VR・ARの長期的なビジネスモデル 出典:Digi-Capital

最近盛り上がってきている(Snapを含む)VR・ARスタートアップの話はどうなっているんだと考えている人もいるだろうが、その点に関しては次の記事で。いずれにしろVR・AR市場はここから右肩上がりで成長していく。

2017年のはじまりはじまり。

原文へ

(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

実家に帰った気分になれる「バーチャン・リアリティ」は、未来の食事のあり方なのかもしれない

自分の作った食事や買ってきたご飯を狭いワンルームで細々と食べる。一人暮らしで、一番寂しいのは食事の時間ではないだろうか。田舎の大家族とみんなでわいわいしながら美味しく食事したいと思う日もある。今回、南あわじ市がふるさと納税のプローモーションの一環としてリリースした「バーチャン・リアリティ」は、まさにそんな体験が味わえるVR動画だ。

バーチャン・リアリティ」ではその名が示す通り、おばあちゃんが登場し、自慢の手料理をふるまってくれる。ただ、このVR体験を最大限楽しむためには、動画と同じ料理を食べながら、VRを見るのが一番だ。南あわじ市は料理のレシピを公開していて、ふるさと納税をした人にご当地の新鮮な食材を届けている。その食材で動画と同じ料理を作り、VRを楽しむことができるのだ。南あわじ市はこのVRで田舎暮らしの魅力を伝え、ふるさと納税者に訴求することを目指している。

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食事を一人で食べる「孤食」は、栄養バランスが偏りがちになり、楽しくもなく、心身ともに悪影響のある問題でもある。VRは孤食問題を解決するのに効果的と名古屋大学大学院の情報科学研究科博士、中田龍三郎氏はいう。中田氏は今回のプレスリリースに以下のようにコメントを寄せている。

「一人で食事をする時に鏡を見ながら食べると、よりおいしく感じることが実験で確かめられました。実際に家族や友人と食事をしていなくても、“誰かと一緒に食べている”と感じることで疑似的な共食によっておいしさが増すと思われます。バーチャルリアリティによる体験でも、鏡の場合と同じ効果を得られると考えられます」。

 

ただ、実際やってみようとすると視野が半分以上ふさがる上、簡易型のVRビューアーだと片手も使えない。VR動画を見るとおばあちゃんが話しかけてくれて確かにほのぼのするが、VR見ながらの食事は今のところちょっと難しそうだ。

ちなみに、海外でもインターネットを介して食事を共有する体験がにわかに注目を集めている。ゲームストリーミングサービスTwitchでは、ユーザーが自分の食事の様子を配信する「ソーシャル・イーティング」の専用カテゴリーがある。これは韓国発祥の文化で、配信するユーザーも視聴するユーザーもお互い食事をしながら、チャットしたりしてコミュニケーションを楽しんでいるのだとTwitchは説明している。

そう考えると、VRで遠隔の人と食事する未来が来るのもそう遠くないのかもしれない。

CyberPowerPCからVR対応PCが499ドルで発売、Oculus Rift同梱なら1100ドルだ

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高価なゲーム用PCを作っているCyberPowerPCが、AMDのRadeon RX 470を搭載した仮想現実対応PCを、Best BuyやAmazonから499ドルで発売した。VR対応PCとしては新しい安値だが、Oculus Riftを同梱した1099.98ドルの構成もある。二つを別々に買っても、これぐらいにはなる。

VR同梱製品の価格破壊はまだ起きていないが、一流メーカーのVRヘッドセット込みのVR対応機が1000ドルを切るのも、もうすぐだろう。このマシンのプロセッサーはAMD FX 4350クワッドコア、そしてRadeon RX 470はVRの描画を無理なく動かすための専用メモリとして4GBのGDDR5 RAMを使う。システムのRAMは8GB、ハードディスクは1TBと大きいから、いろんなVRタイトルを載せられるだろう。

ぼく自身もCyberPowerPCのこれよりやや高仕様のマシンでOculus RiftやHTC Viveを使っているが、これまでのところ、どのタイトルでも問題ないから、今回のはVRゲームの入門ないし中級機として最適かもしれない。PS4ならゲーム機本体が349ドル、ヘッドセットが399ドルだが、VR体験のクォリティー、とくにグラフィクスの性能は、Oculus+PCが上だ。

Oculus Rift同梱機はBest Buyで買えるが、本格的なVRゲーム体験のためにはTouchコントローラーも持つべきだろう。そのためにさらに199ドルが出て行くけど、とにかくミドルクラスの上の方の人たちにとっては、VR専用PC環境がわりと買いやすいお値段になった、とは言えるだろう。まだまだ小さな一歩にすぎないが。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

新技術を育てるのはやはりポルノ?!

Andrew Nicholls demonstrates the latest version of a View-Master, a collaboration between Mattel and Google, at the Mattel showroom at the North American International Toy Fair, Saturday, Feb. 14, 2015, in New York. The new version of the classic toy uses Google's smartphone-based virtual reality solution, Cardboard. (AP Photo/Mark Lennihan)

大人向けの娯楽が、新しいテクノロジーの牽引役を果たした例は数えきれないほどだ。ISPについてもそうだったし、グラフィックカードの発展にも寄与している。バーチャルリアリティの分野でも、アダルトコンテンツこそがもっとも有力なユースケースとなるだろうと考える人は多い。重くて扱いにくいヘッドセットも、ポルノの力で広がり得るというわけだ。

その可能性を示すかのように、全世界でトップ50に入るアクセス数を誇るPornhubが、いくつかのデータを公開した。

たとえば昨年、PornhubサイトにおけるVRコンテンツの検索数は3800万にものぼるのだとのこと。ちなみにサイト内には1800本のVRコンテンツが用意されている。

ところで、Pornhubのレポートによれば、VRポルノはアメリカ国内よりも他の地域でより人気があるようだ。PornhubでポルノVRを検索した件数の多い国トップ10は以下の通りだ。

  1. 中国
  2. タイ
  3. 香港
  4. フィリピン
  5. ノルウェイ
  6. フィンランド
  7. ブラジル
  8. ベトナム
  9. エジプト
  10. チリ

現在のところ、Pornhubが対応を急いでいるのはCardboardだ。高性能というわけではないが、多くの人が利用している。VRを試してみたいと考える人にとても人気のデバイスだ。Pornhub自身も、プロモーションの一環として1万台のCardboardデバイスを配布したりもしていた。

ブラウザ上でVRを実現して、とくにモバイル環境で没入感を提供するWebVRは今後ますます普及していくのだろう。ただし、頭の動きに応じて視点を変更するというようなことは、少なくとも現在のところはできない。そのため、現在のVRポルノは、ステレオ立体視を提供したり、あるいは専用アプリケーションにダウンロードして楽しむものとなっている。

しかしWebVRが標準としての地位を確固たるものとしていけば、より高品質なVRポルノが登場してくるに違いない。

Pornhubだけでなく、他にも多くのアダルトコンテンツ・サイトがVRコンテンツの充実を目指している。ユースケース的に狙い目であるのと同時に、GoogleやFacebookなどの巨人たちが手を出しにくい分野であり、十分な商機があると考える人が多いのだろう。

2016年は、VR元年ともいえる年だった。当然に、2017年にかける期待も大きいものとなっている。アダルトエンターテインメント界は、さらなる発展を目指して動き出すこととなるのだろう。

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(翻訳:Maeda, H

FOVEがついに視線追跡VRヘッドセット「FOVE 0」の出荷を開始

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FOVEはラスベガスで開催されているCESで、視線追跡VRヘッドマウントディスプレイ「FOVE 0」の発送を開始すると発表した。FOVEが2015年5月に実施したKickstarterのクラウドファンディングにおける当初の出荷時期は2016年3月だったが、その後パーツ調達の問題に直面し、発送を延期していた。それから8ヶ月近く経って、ようやく出荷の準備が整ったようだ。また、FOVEは今回出荷の発表と同時にリラクゼーションを促すVR体験「LUMEN」のコンテンツ追加とVRアナリティクスサービスcognitiveVRへの対応を発表した。

まずは数千台の「FOVE 0」を出荷するという。Kickstarterの更新情報を見てみると、工場からの出荷日は1月8日とある。

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出荷延期などの問題はあったものの、プロダクト開発は順調に進んでいたようだ。2016年11月にはヘッドセットの予約販売にこぎ着けた。価格は599USドルで、今から購入すると2月の発送予定とある。ただ、FOVEは現在、白と黒のヘッドセットを用意しているが、黒色は1月末までの限定販売で、以後白色のみに注力するという。

今回、FOVEは製品出荷の他にコンテンツについてもいくつか発表を行った。1つは、VRスタジオFramestoreが開発しているリラクゼーション体験「LUMEN」が利用できるようになる。LUMENは木々を見ることで育ち、花が咲き、色が変わる幻想的な世界観のVRアプリだ。LUMENは当初Time inc.のVRプラットフォーム「LIFE VR」のみで提供していたものだ。

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もう一つ、FOVEはVRに特化したアナリティクスサービスを提供するcognitiveVRに対応する。cognitiveVRを使用することで、VR上のユーザーの移動経路や視線のヒートマップなどを得ることができる。例えば、VRのコマースアプリであればユーザーが良く立ち寄る場所を特定したり、不動産の内覧するVRアプリであればユーザーが物件で気になっている箇所を特定したりすることができるだろう。

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2016年はOculus Rift、Playstation VRなど主要なVRヘッドセットが出揃い、ようやくそこにFOVEも並んだ。視線追跡はFOVEの特徴的な機能だが、VRヘッドセットに取り組む企業はどこも視線追跡技術の開発を急いでいるようだ。昨年12月、Oculusは視線追跡技術を開発するThe Eye Tribeを買収しているし、同様にGoogleも2016年10月にアイトラッキングのEyefluenceを買収した。GoogleはVRヘッドセットの開発に乗り出すとも発表している。今後数年でVR領域にどのような発展があるか目が離せない。

AsusのZenFone ARはGoogle DaydreamtとTangoの両方を搭載した世界初のスマートフォン

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リークが多くてサプライズをぶっ壊したが、CESのステージに立ったAsusは、GoogleのVRプラットホームDaydreamと、同じくGoogleの3D AR*プラットホームTangoの両方を世界で初めてサポートするスマートフォンZenFone ARを発表した。〔*: 3Dとは、奥行き(深度, depth, z軸方向)情報もあること。〕

このデバイスはQualcommの最新機Snapdragon 821プロセッサーを酷使し、つねに充実した仮想/拡張現実体験を提供するためにRAMを6GB(!!!)搭載している。ディスプレイは5.7インチSuper AMOLED、2560×1440の解像度だ。

同社のTriCam(三つのリヤカメラ)システムは23MPのカメラを誇り、モーションセンス(動きセンサー)と奥行き追跡機能を持つ。カメラのレイアウトは、Lenovo Phab2 Proなどに比べるとおとなしい。

Google Daydreamによるモバイル上の仮想現実はヘッドトラッキング(プレーヤー、ビューワーの頭の動きや方向を追尾)の遅延が少なくてインタフェイスが統一されている。Tangoは奥行き感知機能をスマートフォンに持ち込み、スマートフォン上に奥行き感を伴う拡張現実を実現する。

TangoとDaydreamがおもしろいと思われるのは; ヘッドセットを着けないモードでは、Tangoが三軸(x, y, z)の位置情報/位置追跡を提供すること。ただしGoogleが強調しているように、Tangoの機能をDaydreamの中で利用〜実現できるわけでなない。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

VR・ARの普及に向けたデモの重要性

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【編集部注】執筆者のTim Merelは、Eyetouch RealityDigi-Capitalのファウンダー兼CEO。

もしもこれまでにVRやARという言葉を耳にしたことがないとすれば、あなたが住む島にはWi-Fiが飛んでいないのだろう。一方で、VRやARのことを知っていても実物は見たことがない、という人はたくさんいる。つまりVRやARが一般に普及するためにはデモが欠かせないのだ。過去のデジタルプラットフォームは、いかに大衆の心を認知から行動へと動かしていったのだろうか。

AKQAのファウンダー兼会長であるTom Bedecarreは「新しいテクノロジーは似たような過程を経て一般に普及していきます。最初のお客さんになるイノベーターやアーリーアダプターをひきつけるのは比較的に簡単ですが、垣根を超えてアーリーマジョリティやそれ以外の消費者の心を掴むのは大変難しいことです」と単刀直入に話す。

360度動画でさえ、高品質のVR・ARアプリを使って初めて本当の驚きや喜びを体験することができることを考えると、VRやARが一般に普及するまでには大きな壁を超えなければいけないとわかる。AR・VRの全てを体験するためには、実際にスコープを装着しないといけないのだ。言い換えれば、「これこそが本当の立体映像だ、この野郎」といったところか。

それではVR・AR企業は、どのようにしてアーリーアダプター以降の消費者にプロダクトを体験させているのだろうか。

無料=なかなかの価格設定

New York Timesはこれまでに、100万個以上のGoogle Cardboardsを読者にプレゼントしてきた。マクドナルドは”Happy Goggles“と名付けられたセットで、VRヘッドセットに変形するボックスを配布し、コカコーラも複数本入りのパッケージで同じようなキャンペーンを行った。

紙箱からアップグレードしたものだと、SamsungはVR対応の携帯電話にGear VRヘッドセットを無料でバンドルした結果、「何百万人ものユーザーにGear VRを配布し、100万人以上の月間アクティブユーザー」を獲得したと同社の広報担当者は話す。さらにSamsungは店頭デモも積極的に行っており、「アメリカ国内で1万5000軒もの店舗」にデモ機を導入した。VerizonもPixelの先行予約者に対して、GoogleのDaydream View VRヘッドセットをプレゼントし、中国のOnePlusも携帯電話とセットで3万台ものVRヘッドセットをこれまでに配布してきた。

ハイエンドのパソコンやコンソールにVRヘッドセットが無料でバンドルされることはないだろうが、Microsoftが新たに発表したWindows 10用VRヘッドセットの登場で、ハイエンドVRシステムの価格は今後下がっていくことが予想される。

一にも二にも実体験

Sony PlayStation Magic Labのトップを務めるRichard Marksは、「ユーザーに実際にVRを試してもらうというのは極めて重要です。というのも、VRで得られる体験は、ほとんどの人がこれまでに他のメディアで経験したものとは比べ物にならないですからね。これまでに私たちは40万人以上を対象にデモを行い、体験した人には友人にも宣伝するようお願いしてきました。また、PSVRを購入した人全員に無料のデモディスクを配布しているほか、VRヘッドセットを持っている人もそうでない人も一緒に遊べるよう、非対称マルチプレイゲームも併せて配布しています」

HTCで部長を務めるPearly Chenも、Viveをユーザーに試してもらうことの重要性を強調している。「百聞は一見にしかずという言葉の通り、VRの素晴らしさを伝えるにあたって、実際に消費者にVRヘッドセットを装着させて、彼ら自身の目でVRを体験させるよりも良い方法はありません。HTCでは、2015年の半ばからVive World Tourと呼ばれるプロジェクトに取り組んでおり、世界の主要都市や大学、イベント、展示会などを巡りながら、製品を宣伝すると共に、VRの普及に向けた草の根活動を行い、消費者からのフィードバックを集めています」

「また、引き続き大手小売店とのパートナーシップを深めていき、アメリカ国内で言えばMicrosoftストアGameStop、MicroCenter、中国だとSuningやGuomei、インターネットカフェなどにデモステーションを設置していく予定です。さらに台北には、多くの人にVRを体験してもらえるようなエンターテイメントセンターとしてVive Landをオープンしました。」

一般大衆向けのコンテンツやアプリケーションをつくる際には、どうすれば多くの消費者にその存在を知らせ、トライアルの効果を行き渡らせることができるのだろうか?

HTCは自社のプロダクトを消費者に届けるだけでなく、もっと広い視野で業界を眺めている。「VRエコシステム全体の発展に寄与するため、1億ドル規模のファンドであるVive Xを利用し、VRに関する全ての人やモノのためになるようなビジョンを持った企業をサポートしています」

AR・VRを利用したサービスを提供する教育系スタートアップのzSpaceは、店頭でのトライアルに関してもっと積極的なアプローチをとっており、ユーザーが店舗を訪れるのではなく、店舗がユーザーのもとを訪ねる仕組みを構築した。彼らはデモ環境を整えたバスを複数台用意し、アメリカ中の学校を訪れているのだ。CEOのPaul Kellenbergerは「私たちはこの方法に効き目があるからやっているんです。このプロジェクトによって、教師や生徒は遠い距離を移動したり、試したこともないシステムを買ったりする必要がなくなります。さらに、私たちのプロダクトの協力的な側面もあり、学校を取り囲む人を含めた教育コミュニティ全体が、その効率性を感じてくれています。また、このプロモーション活動のリターンはとても大きく、規模の大きな学校からの注文の中には、バスツアーがきっかけとなったものもありました。つまり、潜在的なユーザーがいる場所を実際に訪問し、トライアルのプロセスを簡素化することで、利益に直接的な影響があることがわかったんです。これは私たちのビジネスが成長する上で、とても大きな要因となるでしょう」と話す。

ポケモンゲットだぜ!

これまでに市場に出ているARスマートグラス(Microsoft HoloLens、ODG、Metaなど)のほとんどは法人向けのため、現状の製品を消費者向けのトライアルで試すのは時期尚早だ。しかしPokémon GOのおかげで、(業界の中にいる人はPokémon GOがARだと認めていないものの)既に大衆はARの存在を知っているばかりか、実際に体験までしている。Apple CEOのTim CookやGoogle CEOのSundar Pichai、さらにFacebook CEOのMark ZuckerbergMicrosoft CEOのSatya Nadellaも口を揃えて早期AR市場の勝者はPokémon GOだと認めている。つまり、これまでにPokémon GOが一時は5000万人という恐ろしいほどの月間アクティブユーザー数を記録したかたわら、全世界の(何億人とは言わずとも)何千万人という消費者が、自分はARを試して気に入ったと感じているのだ。

大きな問題は、今後数年のうちにスマートグラスが消費者市場に参入する際に、Pokémon GOによって広まったARの認知を、”本当の”ARプロダクトがどう利用できるかということだ。願わくは(失敗に終わった)Google Glassや(好評だった)SnapのSpectacles両方から得た教訓が、次世代のプロダクトに反映されてほしいものだ。

Snapの戦略勝ち

SnapのSpectaclesへの臨み方は、素晴らしいマーケティング戦略に他ならない。Spectaclesは、Google Glassによって数年間に渡りダメージを与えられた消費者のARに対するイメージを、(Spectaclesは本当の意味でのARではないとしても)ほぼ一手に回復することに成功した。

Spectaclesは一般消費者向けのカッコいいガジェットであり、ディストピア的未来を象徴するものではない。また、数に限りはあるがエリート主義的ではなく、Spectaclesを入手するために何時間も車を運転して自動販売機のもとを訪れる覚悟がある人であれば、(選ばれた”Glassholes“だけでなく)誰でも手に入れることができる。機能にこだわらなければ、Spectaclesの130ドルという価格も競合製品に比べるとずっと低い。

お金をかけないマーケティングの成功やSpectaclesビデオがバイラルに広がった結果、Snapchatの1億5000万人を越えるデイリーアクティブユーザーは、Spectaclesを使って撮影されたビデオを通して(実物をまだ手にできていなくても)自分がSpectaclesを使っているような体験をすることができる。さらにアーリーアダプター(一部からは課金ベータテスターとも呼ばれている)から収集したデータを利用し、SnapはSpectaclesをハード・ソフト両面から改善し、フルローンチに向けて準備を勧めている。CEOのEvan Spiegelとは大した男だ。

Call me maybe

消費者向けのARプロダクトが成功する上で重要な要素が次の5つだ。ヒーローデバイス(Apple製かどうかに関わらず、Apple製品のような品質のデバイスを指す)、モバイルデータ通信、丸一日もつ電池、(初期のスマートフォン同様)アプリのエコシステム、そして通信会社によるデバイス代負担だ。通信会社が徴収するデータ使用料と、そこから捻出されるデバイス代が料金面での鍵となってくるが、実際に通信会社は消費者がVRを体験する上でどんなことができるのだろうか?

Verizon Venturesでディレクターを務めるEd Ruthは、ARプロダクトが消費者市場に参入する準備ができた段階で、通信会社は大きな役割を担うことになると考えている。「店頭でのトライアルを超えて、通信会社は全国の店舗網を利用し、最終的にはスマートフォンの普及と同じやり方でARプロダクトを消費者のもとに届けることができる可能性があります。この新たな市場から得られるデータ通信料が、モバイル通信の成長を再活性化していくことになるでしょう。特に360度動画だけで考えても、通常のビデオの4~5倍の通信量が消費されることになります」と彼は話す。

改めて強調したいコンテンツの重要性

Baobab StudiosのInvasionAsteroidsといったハイエンドVRコンテンツから、Eyetouch RealityのようなVR・AR機器向けの次世代ビジュアルメッセージサービスなど幅広い可能性がある中、一般大衆向けのコンテンツやアプリケーションをつくる際には、どうすれば多くの消費者にその存在を知らせ、トライアルの効果を行き渡らせることができるのだろうか?

Penrose StudiosでCEOを務めるEugene Chungは、業界全体の動向について「新しい芸術的な表現方法としてのVR・ARの発展というのは、これまで前例がありません。このような大きな転換が最近起きたのは、動画関連の技術が進化したときでした。誕生したばかりのハードウェアがまだ市場に浸透していないため、今の段階ではVR・ARの本領が発揮されていませんが、その状況もかなりの速さで変わっています。PlayStation VRやGoogle Daydreamの誕生で、消費者が手にしやすいVRの市場がこれまでにないほど成長しています。テクノロジーに詳しい人の大部分は既にVRを体験していますが、消費者の大多数はまだVRに触れられていません。一般消費者がVRを体験してその力を理解すれば、普及率も上がってくるでしょう」と語っている。

Sketchfab CEOのAlban Denoyelは「ユーザーが自分でVRコンテンツをつくれるようになれば、普及率は上がってくるでしょう。家族や休暇の様子をVR用に(360度もしくは3Dで)撮影すれば、きっとVRシステムを使ってそれを視聴したいと思うはずです。そのため、ユーザー・ジェネレイテッド・コンテンツがVR普及の鍵となるでしょう。ターゲット層へのアプローチに関しては、ソーシャルネットワークのように、既にターゲットがいる場所へコンテンツを届けることが大切になってきます。だからこそ、アプリを介すことなくクリエイターから消費者へ直接コンテンツが提供できるWebVRが重要視されているんです」と話す。

若者にフォーカス

一般消費者には、あなたの姪から祖母まで色んな人が含まれている。しかしFacebookやSnapchatなど最近のテック界での成功例を見ると、大衆にターゲットを移す前のローンチ時に、若者の支持を集めたサービスが多いことに気がつく。そのため、VR・AR界も一般消費者にアプローチする前に、Pokémon GOやSnapのSpectaclesのように、流行に敏感な若者にプロダクトを試させる必要があるのだ。古い言葉で言えば”Ditto(同じ、前例にならって)”ということだ。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

人体とテクノロジーの融合のこれまでとこれから

A man with a computer chip inside his head

【編集部注】執筆者のDaniel Waterhouseは、Balderton Capitalのジェネラル・パートナー。

”人間”と”機械”の距離が縮まりつつある。機械学習によって、仮想現実はより”リアル”に感じるようになり、これまで人間の脳でしか処理できないとされていたことも、AIがどんどん再現できるようになってきている。このような技術の力によって、テクノロジーはこれまでにないほど人間の体に近づいており、だんだんと奇妙な感じさえしてくる。

しかし、これからもっと奇妙なことが起きようとしている。

まずはこんな問いからスタートしてみよう。VRモードのMinecraftで教会の屋上の端っこに立っているのと、ノルウェイの山の絶壁に立っているのではどちらの方が怖いだろうか?私は両方を体験したが、Minecraftをプレイしているときの方が強いめまいを感じたのを覚えている。

私たちの脳は、進化を通して私たちが住む世界を理解し、種の保存を念頭に置いて数々の判断を下せるようになった。この仕組みのおかげで高さを恐れる感覚が養われていき、「高い場所の端には寄るな、落ちて死ぬかもしれないぞ」と感じられるようになったのだ。

実際のところ私たちが見ているものは、目を通して得た情報を脳が処理したものだ。つまり、私たちが見ているものは現実ではなく、私たちが進化の中で有用と考えるようになった現実の一部を脳が読み取ったものなのだ。そのため、私たちがどのように”見るプロセス”を”見ているもの”に変換していくのかが分かれば、VRが作り出す幻想を現実よりもリアルに感じられるようになる。その例が先ほどのMincraftとノルウェイの山の話だ。

VR内で教会の屋根の上に立つことが生死に関わるリスクだと人間が認識しないようになるには、かなりの時間がかかると予想されている。むしろ今後数年の間に、脳が特定のパターンで物事を認識するように仕向けるテクノロジーが発展していくだろう。

同時に、私たちの脳に関する理解も日を追うごとに深まっている。神経の可塑性に関する最近の研究の結果、脳の一部が損傷しても、トレーニングを通じて他の部分がその機能をカバーできることが分かっている。今後さらに脳の詳細が明らかになれば、そのうち人工的な刺激の処理方法をプログラムで調整し、今日のVRよりもリアルな体験ができるようになるかもしれない。

さらに新たな種類のスマートイヤホンや音声ソフトの登場で、聴覚を欺く方法も明らかになってきた。OculusはOculus Rift用のイヤホンを最近発表し、没入感の提供に力を注いでいる一方、以前H__rと名付けられていたアプリは、音声フィルタリングの技術を使ってノイズを心地良い音に変える機能を備えている。

VRが作り出す幻想を現実よりもリアルに感じられるようになるかもしれない。

自分たちのことを”人工嗅覚の専門家集団”と呼ぶThe eNose Companyは、人間の鼻の機能を再現できるテクノロジーの開発に成功した。彼らの技術は、肺のテスト機器警察犬の代わりとしての応用が検討されている。

このようにさまざまなテクノロジーが発展していく様子を見ていると、仮想世界と現実の境界が分からなくなるほどのフルVR装置(ヘッドセット、イヤホン、グローブ、さらには嗅覚や味覚の代わりになるセンサーのセット)がそのうち誕生しても不思議ではない。

それどころか、記憶に関連したシナプスの結合を強化する脳内物質を発生させる方法がみつかれば、現実ではできない体験をVR上でできるようになる可能性もある。トランセンデンスの世界やマイノリティ・リポートのVRポッドも、そう遠い話ではないのかもしれない。

このような技術が発達した結果、テクノロジーが私たちの体と密接に絡み合うようになってきた。しかし、テクノロジーと人体の相互作用は、VRの中だけで力を発揮するわけではない。機械上で脳の作用を再現しようとしているAIの技術がここに混ざりあうことで、テクノロジーと人体の融合はさらに面白くなっていく。

技術者は何十年にも渡り、脳の仕組みを利用してとても複雑な問題を解くことができるアルゴリズムを構築しようと努力してきた。そして、コアアルゴリズムの進化やコードのスマート化、さらにはコンピューターの機能が向上したことで、最近ではこの分野でも大きなブレイクスルーが起きている。

脳全体を再現した汎用AIまでの道のりはまだまだ遠く、実現までにどのくらいの時間がかかるかや、実際に汎用AIを作ることができるかどうかさえも現時点では分かっていない。そもそも、脳を再現した機械を作る前に、私たちは自分たちの脳のことを完全に理解しなければならない。

画像認識や言語学習など、脳のさまざまな機能を研究することで、脳でどのような処理が行われているかや人間の学習プロセスについて解明することができる。脳は新しい概念について学ぶとき、似たような例をたくさん確認必要があるのか、または自力で新たな概念を学ぶことができるのだろうか?言い換えれば、脳のアルゴリズムは教師あり(Supervised)なのか、それとも教師なし(Unsupervised)なのだろうか?

本当の意味で教師なし学習を行えるAIの開発にあたって、今後何年間も関係者が頭を悩ませることになるだろう。そして、関係者の中にはこの新たな分野を受け入れはじめた(=数多くの企業買収を行っている)大手テック企業も含まれている。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

PlayStationの新しいヘッドセットは1月12日発売、仮想サラウンドと3Dオーディオで従来機に大差をつける

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PlayStationの新しいBluetoothワイヤレスヘッドセット、両耳を覆うタイプのヘッドフォーンは、1月12日に159ドル99セントで発売される。この新しい缶はPlatinum Wireless Headset(プラチナワイヤレスヘッドセット)と呼ばれ、これまでの最高級機であるGoldよりさらに上、を意味しているようだ。

ゲーマーにとっては、どこがプラチナなのか? 7.1の仮想サラウンドサウンドを提供するが、それはすでにGoldにもある。しかしPlatinumはGoldの倍のお値段で、そうなった理由はPlayStation独自の3Dオーディオ技術を実装しているからだ。3Dサウンドは、とくにPlayStation VRのゲームで有意義だ。

PSVRはふつうのリアルサウンドでふつうのPS4のゲームもサポートする。最初はUncharted 3: A Thief’s End、そしてその後、MLB The Show 17などもだ。そこでPlatinumの3Dオーディオは、明らかに高級機としての違いを見せつける。下のビデオでUnchartedを開発したNaughty Dogが、3Dオーディオがあると何ができるかを説明している。

Platinumのヘッドセットは、素材もGoldより高級で、3.5mmのケーブルもあるからPSVRやVitaと互換性がある。アップグレードとして無理がない気がするし、マイクロフォンはノイズキャンセリングタイプだから、使用中に、どんなキザなことを言ってもサマになるだろう。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

Unityの新しいツールEditorVRではマウスとキーボードを使う2DのインタフェイスでVRゲームのデザインワークができる

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VRに大きく賭けているUnityは、仮想現実のゲームを開発する場合も同社のゲームエンジンを使うべき十分な理由がある、とデベロッパーを説得したい。そこで同社は今日(米国時間12/15)、ゲームデザイナーがVRでゲームを制作できるためのツールEditorVRの、プレビューをリリースした。

デベロッパーの日常の物理的ツールがキーボードとマウスであることは、当分変わりそうもないから、EditorVRもそれらの既成の方法でゲームのラフスケッチや細部の仕上げができるようになっている。

先月行われた同社のカンファレンスUniteで、Unityの主席デザイナーTimoni Westが、そのEditorの機能の一部を紹介した。それを、下のビデオで見てみよう。

EditorVRの目標は多様だが、そのひとつは、VRの外では本当はできないことができる、ということ。今現在の仮想現実の多くが、固定的な2Dのインタフェイスで3Dの世界を表現しようとしている。UnityはVRのそのような作り方を、もっと3Dっぽくする。デベロッパーが作り上げたスペースの中にショップをセットアップし、そこへツールバーからいろんなアイテムを投げ込んで、いろんなデザインを試行できる。

現時点でこのエディターは、仮想現実システムとしてOculus RiftとHTC Viveをサポートしている。Unityのチームが苦労したのは、コントローラの仕様がまったく異なるこれらのシステムに対して、標準的と言えるようなコントロールの集合を実装することだった。

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同社は、現状はあくまでもプレビューであり、バグもありえるので、つねに自分の仕事のバックアップを取ってから、このツールを使ってみてほしい、と言っている。Unityを利用しているデベロッパーは、ここでEditorVRのプレビューをダウンロードし、またそのドキュメンテーションを読むことができる。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

VR特化型インキュベーション施設「Future Tech Hub」が茅場町にオープン

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プレステVR、Oculus Rift、HTC VIVEなどのVRヘッドセットが出揃い、2016年はVR元年と呼ばれている。けれど、VRが本当にメインストリームになるには、コントローラーなどVRに関連したハードウェアの開発やユーザーが楽しめるコンテンツ、あるいは生活を便利にするソフトウェアの存在が不可欠だ。12月14日、ブレイクポイントはそのようなVRプロダクトに取り組むスタートアップを支援するインキュベーション施設「Future Tech Hub」の正式ローンチを発表した。

ブレイクポイントは起業支援型レンタルオフィスを都内で3箇所運営し、スタートアップの支援を行っている会社だ。今回、VRに特化したインキュベーション施設を立ち上げたのは、「日本からグローバルレベルのVRスタートアップを輩出するため」とブレイクポイント代表取締役、若山泰親氏は話す。

米国ではGoogleやFacebookなど、すでにトッププレイヤーがVRに参入し、中国でもVR関連の企業が多く立ち上がっているが日本は出遅れているのが現状と若山氏は説明する。VR市場は大きくなると考えている日本の大手企業も多いが、VR市場の全貌がまだ見えないために動けないでいるという。リスクが高い今の状況には、スタートアップが素早く立ち上がって、競う余地があると若山氏は言う。

Future Tech Hubはブレイクポイントのみで運営するのではなく、運営パートナーにソーシャルゲームのgumi、そしてgumiの子会社でVRスタートアップのインキュベーションプログラムを開催している「Tokyo VR Startups」を迎えている。また、テクニカルパートナーにはゲーミングPCを手がけるサードウェーブデジノス、VRヘッドセットを提供するHTC、クラウドコンピューティングサービスのAWSが参加している。

こうしたパートナーを迎えることで、Future Tech HubではVR開発に最適な設備を整えるだけでなく、入居者が最先端のVRの情報に触れられる場にしていくことができるという。また、スタートアップが事業運営で壁に突き当たった時に助けとなるコミュニティーの形成を行っていくと若山氏は話す。

「Future Tech Hub」は茅場町駅から5分ほどの場所に位置し、現在5社のスタートアップ入居している。今後1年で30社程度のVRに取り組む個人や法人の入居を予定しているという。

VRゲームのSurviosがMGM、電通ベンチャーズなどから5000万ドルを調達

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ハリウッドとVRの恋愛関係が続いている。

VRゲームのSurviosは現地時間13日、合計2回のラウンドを通して総額5000万ドルを調達したと発表した。2回のうち1回のラウンドでリード投資家を務めたMGMがその大部分を出資している。もう片方のラウンドにおけるリード投資家はLux Capitalだ。その他にも、Shasta Ventures、Danhua Capital、Shanda Holdings、Felicis Ventures、電通ベンチャーズも本ラウンドに参加している。

Surviosは今回のラウンドについて多くを語っていない。特にMGMの資本参加に関連する情報については口を閉ざしている。その中でSurviosは、このパートナーシップによって同社は「バーチャルリアリティのコンテンツ製作業界で主導権を得るという目標に、私たちを近づけてくれる」とコメントしている。本ラウンドにより、MGM CEOのGary Barberが同社の取締役に就任している。

2015年、MGMはインタラクティブな動画製作を手掛けるInterludeにも出資している。Interludeが製作する動画のエンディングは、ユーザーの行動によって変わるようになっている。

オンデマンドの動画サービスやストリーミングビデオが人気を集め、以前よりも映画館に行って映画を観るという人が少なくなった今、ハリウッド業界はバーチャルリアリティの出現をチャンスと捉えている。映画館ならではのプレミアムでアーケード型の映画鑑賞体験を復活させるためだ。

現在、ハイエンドのVRシステムは約1000ドル以上で販売されている。Surviosが発売するVRゲームの「Raw Data」はHTC Viveでプレイすることができるゲームだ。HTC Viveの販売価格は799ドルで、ハイエンドなゲームPC環境を必要とするシステムだ。コンシューマー向けヘッドセットの普及はアナリストの予想よりも遅れている。知名度の高いヘッドセットの販売価格は、まだ高いままだ。

Survios CEOのNathan Burbaは「ローケーション・ベースのエンターテイメントがもっと普及してほしいと思います」とTechCrunchとの取材の中で話す。「(ロケーション・ベースのエンターテイメントは)人々を媒体に誘い込むには欠かせない方法です。それが普及することで、私たちがリリースする作品の上に追加的な収益構造を築くことが可能になるのです」。

Surviosの「Raw Data」は、現存する様々なゲームタイトルの中でも、素晴らしい販売記録を最速で樹立したタイトルの1つだ。同タイトルはSteamストアのHTC Viveコーナーにリリースされてから1ヶ月あまりで100万ドル以上の収益をあげている。

今回調達した資金の用途は様々ある中で、同社はこの資金を利用してゲームタイトルの追加やゲームジャンルの拡充を目指すと話している。

[原文]

(翻訳: 木村 拓哉 /Website /Facebook /Twitter

モバイルブラウザでもVR、Android用ChromeベータがWebVR APIに対応

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Googleは今日のブログ投稿で、Android用Chromeの最新ベータ版がWebVR API対応になったと発表した。これによりユーザーはVRヘッドセットがあれば、Chrome経由でVRのオンラインコンテンツを楽しむことができるようになる。

これまでのウェブのVRコンテンツでは、ヘッドセットにスマホを装着して視聴した時、固定された視野のVRしか体験できなかった。これではVRの醍醐味がない。最新のアップデートにより、ウェブ開発者はモバイルVRデバイスやコントローラーの入出力、そしてVRと密接に関連するヘッドセットの位置や方向の情報を扱うことが可能になる。

APIやベータ版のアップデートはつまらないニュースと思うかもしれない。だが、これはVRコンテンツがウェブ上に広まるための門戸を開放し、クリエイターがYouTubeやFacebook以外でもVRコンテンツを提供できるようになることを意味する。GoogleのDaydream Viewモバイルヘッドセットなどのデバイスで体験できるコンテンツが格段に増えるだろう。

開発者は、人々が視聴するほとんどのVRコンテンツに対応する標準規格に期待を寄せていた。マルチプラットフォームの性質を持つWebVRは、そんな開発者を喜ばせるものだ。Googleは近い将来、 Chromeのアップデートでデスクトップ、そしてGoogleの低価格なCardboard VRプラットフォームでもWebVR対応を進めるという。

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(翻訳:Nozomi Okuma /Website

少ないデータ通信量でハイクオリティな360度ビデオストリーミングを可能にするVisbitが320万ドルを調達

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バーチャル・リアリティは多くの人々を巻き込む革命だ。PC部品の製造業者は、ハードウェアがもつスペックのリミットをもう一度引き上げなければならず、この革命は彼らをもう一度復興させるきっかけとなるだろう。また、ISPはユーザーがストレスなくVRコンテンツを楽しめるように、従来より高速のダウンロード速度を提供するという圧力がかけられるようになる。

それが実現するにはまだ時間がかかる。だが、今回紹介するVisbitはVR業界に”今”存在するギャップを埋め、VRコンテンツがユーザーのデータ通信量を使いきってしまうことがないように、速度の遅いインターネットでもハイクオリティな360度ビデオのストリーミングができるソリューションを生み出した。

カルフォルニア州にあるSunnyvaleを拠点とする同社は現地時間6日、Presence Capital、ZhenFund、Colopl Next、Amino Capital、Eversunny Limitedなどが参加したシードラウンドで320万ドルを調達したと発表した。本ラウンドにはアメリカと中国のVCが入り混じっており、これは同社がもつグローバルな野望の表れだ。

Visbitは今回調達した資金を利用して、現存する技術よりも大幅に少ないデータでハイクオリティな360度VRビデオのストリーミングを可能にするという彼らのプロダクトを、より早い段階で市場に送りだす構えだ。

同社のテクノロジーはFacebookの「ダイナミック・ストリーミング」技術に似ている。ダイナミック・ストリーミングとは、360度ビデオをストリーミングする際にユーザーが向いている方向だけを高解像度で描写するという技術だ。ユーザーが360度ビデオ内で視線を動かすと、Facebookは”ダイナミックに”ストリーミング映像の解像度を調整し、ユーザーが向いている方向の映像だけを最大の解像度で描写するのだ。これにより、4Kビデオのストリーミングに対応していないインターネット環境でもハイクオリティな映像体験を楽しむことができる。

ダイナミック・ストリーミングが機能するのはFacebookのプラットフォームだけだ。その一方でVisbitは、「Visbit View-Optimized Streaming(VVOS)」と呼ばれる同プロダクトのライセンスを360度ビデオのコンテンツ製作者に販売する予定だ。そうすることで、コンテンツの製作者は任意のプラットフォームでこの技術を利用できるようになる。現在のところ、同プロダクトはモバイル・プラットフォーム上の4Kビデオや8Kビデオのストリーミングにフォーカスしている。Gear VRなどのプラットフォームがその例だ。

共同創業者兼CEOのChangyin(CY)Zhouは、以前にはGoogle XとMicrosoft Researchでコンピュータービジョンとビデオ・プロセッシング技術に携わっていた。

4Kの360度ビデオをストレスなくストリーミングするために通常必要とされるインターネット速度と比べると、VVOSを利用した場合に必要なインターネット速度は、その半分だ。

つい先日、VisbitはVRコンテンツ企業やスタジオ向けにクローズドなプライベート・ベータ版を公開しており、今後このベータプログラムへの参加企業を増やしていく予定だ。

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(翻訳: 木村 拓哉 /Website /Facebook /Twitter

Amazon AWSのクラウドコンピューティングサービスEC2にFPGAインスタンスがお目見え、ビデオや機械学習ではGPUより強力

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AmazonのクラウドコンピューティングサービスAWSが今日、FPGA(field-programmable gate array)を使用する新しいインスタンスタイプ F1を発表した。FPGAはその名のとおり、ユーザーが現場でプログラミングできるゲートアレイで、アプリケーションの目的に合った特殊な構成もできる。そのため、場合によっては、従来のCPU/GPUの組み合わせを上回る高速が期待できる。

これらの新しいインスタンスは、AWSのUS Eastリージョンでは今日からプレビューで可利用になり、一般供用は年末頃からとなる。料金はまだ発表されていない。

まだそれほど広く普及しているわけではないが、最近のFPGAは価格も手頃になり、プログラミングも容易になった。そろそろ、もっと多くのサービスで使われるようになりそうだ。今回のようにクラウドからFPGAを提供することになると、多くのデベロッパーによる実験的な利用も拡大するだろう。

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“つねに、いろんなものを自分で試してみて、それから一般ユーザーに提供している”、とAWSのCEO Andy Jassyは述べている。

新しいF1インスタンスは、HDや4Kのビデオ処理やイメージング、および機械学習で、GPUに代わって使われることになりそうだ。たとえばMicrosoftは、同社のAIサービスのバックエンドをすべてFPGAで構成している。一方Googleは、自家製専用チップという、高価な路線を選んでいる。FPGAは途中でプログラムを書き換えられるから、アプリケーション内でコンテキストの切り替えが容易にできる。たとえばある時点で未加工の画像を処理していたが、その次にはFPGAをディープラーニング向けに再構成して、その画像を数ミリ秒で分析する、といったことができる。

AWSと共にこのF1インスタンスをテストした企業のひとつNGCodecは、VR/AR処理のためのRealityCodecコードをこれらの新しいインスタンスに移行したが、移行はわずか4週間ほどで完了した。理想としては、これまで手元のデバイスで駆動することが当然だったVR/ARのヘッドセットの、駆動と複雑なビデオ処理を、クラウドからできるようになるかもしれない。NGCodecのファウンダーOliver Gunasekaraによると、コーデックに使ったケースでは、FPGAがGPUよりも優勢だった。エンコーディングには大量の意思決定過程があり、GPUはそれらをCPUにやらせる場合が多いからだ。またこの種のシナリオでは、電力効率もFPGAの方が良い。

Amazonは、Xilinxのチップを使っている。最後に残った、独立系の大手FPGAメーカーだ。新しいインスタンスのスペックは、次のとおり:

  • Xilinx UltraScale+ VU9P, 16nmプロセスで製造。
  • 64 GiBのECCで保護されたメモリ, 28ビット幅のバス上(4つのDDR4チャネル)。
  • CPUへのインタフェイスはそれ専用のPCIe x 16。
  • 論理成分数は約250万。
  • 約6800のDSP(Digital Signal Processing)エンジン。
  • デバッグ用のVirtual JTAGインタフェイス。

しかしFPGAのプログラミングは今でも難しいし、Amazonがそれを容易にするツールを出す気配はない。でも、開発キットはあるだろうし、デベロッパーがこれらの新しいインスタンスを使い始めるために利用できるマシンイメージ(Amazon Machine Image)も提供されるだろう。

NGCodecのGunasekaraによると、Xilinxも、CやC++のような共通言語でFPGAをプログラミングできるためのツールを、多少提供している。同社は、F1インスタンスのためのデコーダーを、それらのツールを使って設計したようだ。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

Androidスマートフォンでお手軽に360度ビデオ/写真を撮影〜ストリーミングできるInsta360 Air

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360度カメラははまだ物珍しさが先に立つが、お値段も、まともな製品なら300ドル前後とお高い。しかし今日(米国時間11/28)Indiegogoに登場したInsta360 Airは、従来製品よりもコストパフォーマンスが良いのではないか。スマートフォンに簡単に接続でき、ライブストリーミングもできて、予約価格が99ドル、一般市販価格が119ドルだ。

Indiegogoのキャンペーンの中には積極的に推せないものも少なからずあるが、Insta360というブランドとその親会社Shenzhen Arashi Visionはハードウェアに関して実績がある。たとえばスマートフォン用の良質なVRカメラも作っている。今あるiPhone用のInsta360 Nanoとほぼ同じ光学系を使用し、ぼくの個人的な体験から言えば、なかなか画質の良い写真やビデオを撮ってくれる。撮像部は二つの魚眼レンズを使用、そしてその二つの画像を内蔵のソフトウェアにより“縫い合わせて”いる。

Insta360によると、AirはNanoと基本的に同じ光学的品質を持ちつつ、お値段はNanoよりも約100ドル安い。Nanoはバッテリーがあるので、デバイスから電源をもらわなくても使えるが、Airは違う。でもスマホと一緒に使う人がほとんどだろうから、それはあまり問題にならないだろう。しかもスマホだけでなくノートブックなどのコンピューターの上でも使えるし、その場合は長時間のライブ360度ストリーミングができる。

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解像度は、スマートフォンの基本仕様にもよるが、基本的には写真が3K、ビデオが2Kだ。ビデオはソフトウェアが安定化を行うので、手持ちで撮影しストリーミングしても、視聴者が吐き気を催すことはない。接続はmicroUSBまたはType Cだから、ほとんどのデバイスで使えるだろう。

Insta360 Airで捉えたコンテンツは、ソーシャルメディアで共有したり、VRヘッドセットへエキスポートできる。360度コンテンツをちょっとやってみたいが、あまり巨額を投資したくない、という人はこの製品がぴったりだ。製品は、クラウドファンディングの支援者には2017年の3月に発送される、と同社は言っている。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))