Headspace HealthがAIを活用したメンタルヘルス・ウェルネス企業Sayanaを買収

Headspace Health(ヘッドスペース・ヘルス)は、AIを活用したメンタルヘルスとウェルネスの企業であるSayana(サヤナ)を非公開の金額で買収した。Headspace Healthは、サンフランシスコに拠点を置く同社を買収することで、ユーザーにパーソナライズされたセルフケアを提供する能力を拡大するとしている。今回の買収は、HeadspaceとGinger(ジンジャー)が2021年合併し、評価額30億ドル(約3440億円)のHeadspace Healthが設立されたことによるものだ。この合併により、Gingerのセラピーとコーチングサービス、Headspaceのマインドフルネスと瞑想のサービスが一緒になった。

2018年に設立され、2020年にY Combinator(Yコンビネーター)の支援を受けたSayanaは、ユーザーに自分の気分を追跡するよう促すAIによるチャットベースのセッションを活用している。このアプリは、気分の傾向に基づいてユーザーの体験をパーソナライズし、セルフケアや呼吸法を提案してくれる。同社の睡眠アプリは、ユーザーの気分と睡眠パターンに基づいて安眠セッションを支援する。

Headspace HealthのRussel Glass(ラッセル・グラス)CEOはTechCrunchの取材に対し、Headspace Healthがその中核機能をHeadspaceとGingerの体験に統合する間、Sayanaのアプリは一定期間稼働し続けることになると語った。統合が完了したら、同社はSayanaを別の体験として切り離し、ユーザーをHeadspace Healthに移行させる予定だ。

「Sayanaはユニークで、メンバー主導の体験を作り出しました。私たちがやろうとしていることの将来を考えると、それは、人がメンタルヘルスのどの状態にあるかにかかわらず、連続するケア全体を完全にサポートできる世界というHeadspace Healthのビジョンに最高にフィットします」と、グラス氏は述べた。「私たちがパンデミックの間に見たことの1つは、いかに多くの人々がサポートを必要とし続けているかということです。私たちは、メンタルヘルスの連続体の一部を自動化し、ニーズを持つ人々にパーソナライズされたセルフケアコンテンツを提供できるようにする必要があり、この買収は非常にエキサイティングです」。

Headspace Healthは、AIとデータサイエンスに裏打ちされた1つのプラットフォームから、予防から臨床ケアに至るまで、メンタルヘルスの手助けを提供する統合的な体験の創造に注力している。同社は、Sayanaを加えることで、ユーザーのチェックインベースのヘルプやサービスを提供し、体験をパーソナライズする機能を進化させる予定だ。

画像クレジット:Headspace Health

グラス氏は、HeadspaceとGingerはすでにAIを活用して、行動医学コーチ、セラピスト、精神科医のチームをサポートし、ユーザーとの質の高い対話、サービスの包括的な追跡、ケアプロバイダー間の緊密な連携を実現していると述べている。また、堅牢なチャットボット体験を通じて、完全に自動化された方法でユーザーのニーズを理解するSayanaの機能を追加することで、体験を進化させ、よりパーソナライズされた効果的なケアを提供できると説明している。

買収の一環として、Sayanaの創業者兼CEOのSergey Fayfer(セルゲイ・フェイファー)氏はHeadspace Healthに入社し、社内でプロダクトリーダーとしての役割を担っている。

フェイファー氏は「創業以来、Sayanaは、ポケットに入る、誰もが利用しやすいセルフケアを提供することを使命としてきました。私たちの技術、エンジニアリング、デザインの専門知識を結集し、高品質で安価なメンタルヘルスケアを世界中に普及させるというHeadspace Healthの取り組みを支援できることをうれしく思っています」と声明で語った。

将来について、グラス氏は、Headspace Healthは、メンタルヘルスのケアのニーズの高まりに対応するために、拡大を続ける計画であると述べている。同社の目標は、ケアにかかるコストを可能な限り削減することで、最もアクセスしやすく、包括的なプラットフォームにすることだ。Headspace Healthは、ケアの質をできるだけ高く保ちつつ、ケアにかかるコストを確実に削減できるよう、イノベーションを続けていくと説明した。同氏は、そのためには、非有機的な成長戦略と有機的な成長戦略の両方を考えるという点で、同社は積極的であることが必要だと指摘した。

「私たちは、今後も雇用者の動向を注視していくつもりです。新しい医療保険制度やプロバイダーとの提携を発表し続け、今後数カ月のうちにいくつも発表する予定です」とグラス氏は述べている。「私たちは、拡大する分野として、引き続き青少年に焦点を当てます。これからも革新的な取り組みを続けていきます。研究開発に多くの費用を費やしていますし、Sayanaのようなプラットフォームを追加する機会を見て、買収を続けていくつもりです」。

画像クレジット:Headspace Health

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(文:Aisha Malik、翻訳:Akihito Mizukoshi)

ヘルスケアテックの仏Doctolibが暗号化スタートアップTankerを買収

フランスのスタートアップDoctolib(ドクトリブ)は、米国時間1月11日にTanker(タンカー)の買収手続きを完了する見込みだ(当局への提出書類による)。Doctolibはフランスのユニコーンで、医者や医療従事者の管理業務を支援する「サービスとしてのソフトウェア」を開発している。具体的には、医者と患者を引き合わせる予約プラットフォームとして機能し、ヨーロッパで30万の医療専門家が有償で利用し、6000万人の患者がDocolibを利用している。

Tankerは、医療テック企業がユーザーデータを安全に管理するのを支援するスタートアップだ。同社はプロトコルを開発するとともに、ウェブアプリやモバイルアプリ、デスクトップアプリに統合するためのクライアントサイド開発キットを提供している。

アプリにTankerを統合すると、患者と医療従事者の間で共有されるメッセージやファイルがエンド・ツー・エンドで暗号化される。Tankerも、Tankerの顧客もファイルやメッセージを解読することは不可能で、それはプライベート暗号キーをアクセスできないからだ。つまり、送り主か受け手でない限り、データを解読することはできない。

医療業界に焦点を当てているTankerは、Doctolibの他に、医療保険スタートアップのAlan(アラン)や遠隔医療のスタートアップQare(ケア)の名前が同社ウェブサイトの顧客リストに載っている。2020年6月にDoctolibは、Tankerとの提携によって、エンド・ツー・エンド暗号化を導入したことを発表した。

ある情報源が、DoctolibとTankerとの取引の詳細がかかれた2022年1月3日の当局提出資料を送ってきた。2021年12月22日に提出された前回の資料も買収に言及している。いずれの書類もPappers(パッパー)で見ることができる。

「DoctolibはTankerという会社の株式を買い取る計画です」と弁護士が書簡に書いている。「この取引は2021年12月9日に署名された合意書に基づいて実行され、Tankerの株式資本の100%がDoctolibに移管されます」。

直近の提出書類では2022年1月11日が取引完了日となっていて、それは本日にあたる。別の情報源は、買収が現在進行中だと私に伝えた。TechCrunchはDoctolibに連絡を取ったが、本件については「ノーコメント」という返答だった。

法定書類によると、DoctolibはTankerを現金および株取引によって買収し、Tankerの価値を2800万〜3400万ドル(約32億3000万~39億2000万円)としている。

企業価値の謎

昨日私は、Doctolibの最近の指標と今後の製品リリースに関する記者会見について書いた。興味深いのは、Doctolibの共同ファウンダー・CEOであるStanislas Niox-Chateau(スタニスラス・ニオックス=シャトー)氏が、同社は「過去数年、調達ラウンドについて発表していません。毎年、毎四半期、投資家のみなさんは、当社の長期計画に基づいて、追加あるいは初めて投資しています」と語ったことだ。

関連記事:フランス、ドイツ、イタリアの30万人もの医師や医療従事者に使用されている仏Doctolibのツール群

遡って2019年、同社は企業価値が11億3000万ドル(約1302億9000億円)に達したと発表した。Doctolibが調達ラウンドについて話したのはそれが最後だった。

しかしそれは最新の調達ラウンドではない。例えばCharlie Perreau(シャーリー・ペロー)氏は、General Atlantic(ゼネラル・アトランティック)が2020年2月に6900万ドル(約79億5000万円)を同社に投資したことを指摘している。

同社の企業価値に関していうと、Tankerの買収に基づくとDoctolibの1株の価値は170.91ユーロだ。Doctolibの株数は約1800万株なので、Doctolibの企業価値は約30億ユーロ(約3932億2000万円)ということになる。

この評価額はDoctolibのユーザー基盤(30万人)とDoctolibの最低料金(月額129ユーロ[約1万6900円])を考えると低く感じる。おそらくDoctolibの株価は、Tankerの投資家への好意から、やや低くつけられているのだろう。おそらくDoctolibは、しばらく資金調達をせず、近々高い企業価値で調達しようとしているのだろう。今のところは謎のままだ。

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画像クレジット:Doctolib

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(文:Romain Dillet、翻訳:Nob Takahashi / facebook

IBMが排出量データ分析Enviziを買収、企業のサステナビリティ活動を支援

IBM(アイビーエム)は米国時間1月11日朝、オーストラリアのスタートアップEnvizi(エンビジ)を買収し、サプライチェーンの上下で環境への影響を測定するためのESG(環境、持続可能性、ガバナンス)製品パッケージに追加すると発表した。

両社は買収条件を公開しなかったが、IBMはEnvizi買収によって、顧客の環境面でのサステナビリティの取り組みを測定、管理、最適化するためのプラットフォームを手に入れた。つまり、2016年にWatson Healthを構築していたときと同じように、環境問題でデータ中心のアプローチをとっている。Watson Healthについては、同社が現在売却しようとしている、と報じられている。

企業は知見を推進するためのデータを必要としており、それがEnviziによって自社にもたらされるものだとIBM AIアプリケーションのゼネラルマネージャーであるKareem Yusuf(カリーム・ユースフ)氏は話す。

「Enviziのソフトウェアは、企業が事業活動全般にわたって排出データを分析・理解するための信頼できる唯一のソースを提供し、企業がより持続可能な事業とサプライチェーンを構築するのを支援するためのIBMの成長中のAI技術という武器を劇的に加速させます」とユースフ氏は声明で述べた。

EnviziのCEOで共同創業者のDavid Solsky(デイビッド・ソルスキー)氏は、今回の買収をIBMのグローバルプレゼンスを活用することで会社を拡大する方法と見ている。これは、はるかに大きな会社に飲み込まれる会社の典型的な主張だ。「今日という日は、1つの時代の終わりでもなければ、新しい時代の始まりでもありません。むしろ、前例のない速度で規模を拡大し、顧客がサステナビリティへのコミットメントに向けて前進するのをグローバルに支援することを可能にする構造への移行です」と、ソルスキー氏は買収を発表したブログ投稿に書いている。

IBMはEnviziを、IBM Environmental Intelligence Suite、IBM Maximo資産管理ソリューション、IBM Sterlingサプライチェーンソリューションを含む既存の製品パッケージに追加するAI駆動型ソフトウェアと見なしている。後者は、サプライチェーンに沿ったソーシングとトレーサビリティのためにIBMブロックチェーンを使用しており、安全性やトレーサビリティを向上させる可能性がある。

注目すべきは、同社がAIを活用したソリューションを追求し続けているにもかかわらず、今回は6年前のヘルスケア構想のように、ESGの取り組みにWatsonという名称を付けなかったことだ。おそらくIBMは、Watsonブランドが輝きを失ったと判断し、社内のすべてのAI駆動型ソリューションにその名称を付けることから脱却したのだろう。

同社は、2030年までに温室効果ガスの排出量を正味ゼロにすることを目指しているため、同じソフトウェアツールを社内で使用して、自社のサステナビリティの取り組みを推進するとしている。

画像クレジット:Bloomberg / Getty Images

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(文:Ron Miller、翻訳:Nariko Mizoguchi

Take-Twoがモバイルゲーム大手Zyngaを1.4兆円で買収、業界最大手の1社に

ゲーム界で巨大な統合が進行している。Take-Two Interactive(テイクツー・インタラクティブ)は米国時間1月10日、モバイルゲーム大手のZynga(ジンガ)の買収計画を発表した。1株あたり9.861ドル(約1135円)の取引で、3.50ドル(約403円)を現金で、、残り6.361ドル(約732円)をTake-Two普通株式で支払う。この取引でのZyngaの企業価値は127億ドル(約1兆4623億円)だ。

買収により、コンソールとPCゲーム(「Grand Theft Auto」などの代表的なタイトルを含む)のTake-Twoと、Zyngaが間違いなくその大部分を定義したジャンルであるモバイルゲーム(FarmVille、Empires & Puzzles[エンパイア&パズル: エンパズ]、Words with Friendsなどを手がけている)の巨大企業2社が合併することになる。

買収で(2021年9月30日までの)12カ月のプロフォーマ純利用額は61億ドル(約7024億円)となり、プラットフォームに関係なく全体で最大のゲーム会社の1つになるとTake-Twoは述べた。

取引は、株主および規制当局の承認を得て、2023年度第1四半期の完了が見込まれている。

Take-Twoの会長兼CEOであるStrauss Zelnick(ストラウス・ゼルニック)氏は「Zyngaとの変革的な取引を発表できることをうれしく思います。この取引により、当社のビジネスは大幅に多様化し、インタラクティブエンターテインメント業界で最も急速に成長しているモバイル分野で当社のリーダー的地位が確立されます」と声明文で述べた。「この戦略的統合により、当社の業界最高クラスのコンソールおよびPCフランチャイズと、イノベーションと創造性の豊かな歴史を持ち、市場をリードする多様なモバイルパブリッシングプラットフォームが一体となります。Zyngaはまた、非常に優秀で経験豊富なチームを抱えており、今後数カ月のうちに彼らをTake-Twoファミリーに迎え入れることを楽しみにしています。両社の補完的な事業を統合し、より大きな規模で運営することにより、買収完了後の最初の2年間で年1億ドル(約115億円)のコストシナジー、長期的には少なくとも年5億ドル(約575億円)の純利用額のチャンスなど、大きな価値を両社の株主に提供できると信じています」。

ZyngaのCEOであるFrank Gibeau(フランク・ギボー)氏は「Zyngaのモバイルと次世代プラットフォームにおける専門性、そしてTake-Twoの業界最高の能力と知的財産を組み合わせることで、ゲームを通じて世界をつなぐという我々のミッションをさらに推進し、ともに大きな成長とシナジーを達成することができます」と付け加えた。「2021年にZyngaの歴史の中でも最高のパフォーマンスを発揮し、力強い仕上がりを実現したチームの頑張りを誇りに思います。プレイヤーへの投資、クリエイティブな文化の増幅、株主へのより多くの価値の創出という当社のコミットメントを共有するTake-Twoというパートナーを見つけることができ、大変うれしく思っています。この変革を起こす取引で、より優れたゲームを創造し、より多くの人々にリーチし、ゲームの次の時代のリーダーとして大きな成長を遂げることができるよう、新たな旅を始めます」。

ゼルニック氏が合併会社を率い、ギボー氏とZyngaのパブリッシング担当社長Bernard Kim(バナード・キム)氏はより大きなモバイル事業(ZyngaとTake-Twoの既存のモバイル事業の統合を含む)を監督する。

他の多くの統合の動きと同様、今回の買収は相乗効果によるコスト削減を目的としている。Take-Twoは、買収により2年後には規模が大きくなった事業で年約1億ドルのコスト削減が可能になると述べた(まずは統合が行われる)。Take-Twoはすでに多くのモバイルゲームタイトルを有し、フランチャイズをモバイルに拡大してきたが、今回の買収によりこの分野での保有資産が大幅に増加することになる。

これは、Zyngaが長年にわたってどのように推移してきたかを考えると、重要なポイントだ。Zyngaは、上場時に株価が大きく上昇して以来、少しジェットコースターのような状態が続いており、2021年は株価が下落したため、買収のターゲットになっていた。

今回の動きは、ある種の時代の終わりを告げるものでもある。ちょうどサンフランシスコ市がシリコンバレーとは別のテックハブとして地位を確立しつつあった頃、サンフランシスコのSOMA地区を拠点とするスタートアップとして、Zyngaはモバイルゲームの機会をいち早く発見し、拡大させてきた。

当初は、Facebook(フェイスブック)のソーシャルグラフ経由でソーシャルゲームの巨大企業として大きな牽引力を持っていたが、それが迷惑でスパム的なものになると、Facebookがルールを変更し、Zyngaのオーディエンス供給を停止させた。より一般的には、モバイルゲーム市場は消費者の嗜好や利用状況がより不安定であることが分かっており、Zyngaの成功の多くは、人気が衰えたタイトルに代わる次の注目タイトルやフランチャイズを見つける(そして時には買収する)ことで成り立ってきた(最近の大きな買収の1つは、2020年のToon BlastとToy Blastですでに人気を確立していたトルコのPeak Gamesの18億ドル[約2070億円]での買収だ)。

Red Dead Redemption(レッド・デッド・リデンプション)、Midnight Club、NBA 2K、BioShock、Borderlands、Civilization(シヴィライゼーション)、Mafia、Kerbal Space Programを展開するTake-Twoとの統合により、新しいモバイルゲーム体験を構築するためのフランチャイズやIPの大規模ライブラリを手に入れることができる。同様に、ZyngaのIPは今後、さまざまなフォーマットやシーンで新たな牽引を得ることができるかもしれない。

興味深いのは、この大企業が市場全体との関わり方を考えるのに拡大したコンテンツIPを活用するかどうか、またはどのように活用するかだ。最近ではTwitch(ツイッチ)やDiscord(ディスコード)など、人々が集まってゲームについて議論したり、交流を深めたりするプラットフォーム上で、ゲームに関する多くのアクションが起きている。

ゲーム市場は、新型コロナウイルス感染症のパンデミックをきっかけに「勝ち組」の1つとして、ここ数年で大きな注目を集めてきた。モバイルゲーム業界全体の利用総額は2021年に1360億ドル(約15兆6556億円)で、現在8%で成長しているという数字をTake-Twoは引用した。そしてモバイルが同社の利用総額の半分を占めるようになる、と述べた。

画像クレジット:Zynga

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:Nariko Mizoguchi

ニューヨーク・タイムズがスポーツメディアThe Athleticを約637億円で買収

The New York Times Company(ザ・ニューヨーク・タイムズ・カンパニー)が、スポーツメディアのThe Athletic(ザ・アスレティック)を5億5千万ドル(約637億円)で買収することで合意したとThe Informationが報じている

数カ月間、憶測が飛び交っていたこの買収では、一時はThe AthleticのCEO、Alex Mather(アレックス・マザー)氏がAxios(アクシオス)に合併を持ちかけたが、実現には至らなかった。今回の買収で、The New York Timesは購読ビジネスを強化しようとしている。同社の購読者数は2021年に800万人を突破し、2025年までに購読者数を1000万人に増やすという目標を上回る勢いだ。

2016年に設立されたThe Athleticは、2021年11月時点の購読者が120万人で、購読費は年間約72ドル(約8300円)だ。しかし、The Athletic単体ではまだ黒字ではなく、2023年まで黒字を見込めていなかった。同社は600人のスタッフを抱え、2019年から2020年にかけて1億ドル(約115億円)近くを費やしたが、同時期の収益は約7300万ドル(約84億円)にとどまった。

The New York TimesによるThe Athleticの買収は、多くの媒体が統合を経験している最近のメディア業界の傾向と一致している。直近では、BuzzFeed(バズフィード)が上場前にComplex(コンプレックス)とHuffPost(ハフポスト)を買収した。しかし、メディア関係者はこうした潮流の変化に懐疑的だ。例えばBuzzFeedがHuffPostを買収した後、190人のHuffPost社員のうち47人を解雇し、HuffPostカナダ部門をすべて閉鎖してさらに23人が職を失った。パンデミック発生時、多くのメディア企業同様に、The New York TimesThe Athleticも従業員を解雇した。

パンデミックの前から、この業界では常に脅威となっていた突然の解雇や給与カットから身を守るために、組合契約を求めるメディア労働者が増えている。さらに過激なアプローチをとるジャーナリストもいる。2019年末に、Deadspin(デッドスピン)のスタッフ全員が経営陣への不満から同サイトを辞め、労働者が所有するメディア企業Defector(ディフェクター)を立ち上げた。Defectorは初年度に320万ドル(約3億7000万円)の収益を上げ、運営コストは300万ドル(約3億4000万円)だった。

The Athletic買収に比べるとはるかに小規模な取引だが、The New York Timesは2016年に製品レビューサイトのWirecutter(ワイヤーカッター)を3000万ドル(約34億円)で買収している。しかし、ここ数カ月、Wirecutterと親会社の間には大きな緊張があった。2年間にわたるスローペースの組合契約交渉の末、経営陣が感謝祭前に合意しなかったため、Wirecutterのスタッフはブラックフライデーとサイバーマンデーを含む5日間連続のストライキを実施した。その後、The New York Timesがストライキ中の給与を差し止めたことを受けて、Wirecutter組合は全米労働関係委員会に不当労働慣行の苦情を申し立てた。12月14日までに、The NewsGuild of New Yorkが代表を務める組合はThe New York Timesと合意に達し、賃上げと労働条件の改善を確保した。しかし、The New York Timesは、反組合的な行動に対する監視の目を今も向けられている。

買収のニュースが流れた後「やあ、@TheAthletic、私たちの友人@nyguildに会って欲しい」とWirecutter組合はツイートしている。

The Athleticの購読がどう変わるのか、買収によってスタッフがどのような影響を受けるのかについては、まだ言及がない。

画像クレジット:samchills / Flickr under a CC BY 2.0license.

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(文:Amanda Silberling、翻訳:Nariko Mizoguchi

グーグルがサイバーセキュリティSiemplifyを買収、Google CloudのChronicleの一部に

サイバーセキュリティ侵害の件数は高水準で推移しているため、法人ITにおける信用とビジネスの拡大を真剣に考える企業は、この問題に取り組むために投資を続ける必要がある。そのため、Google(グーグル)は、クラウドベースおよび法人向けセキュリティの事業を強化することで、新年をスタートさせようとしている。同社は米国時間1月4日、イスラエルに拠点を置くサイバーセキュリティのスタートアップSiemplify(シンプリファイ)を買収したことを明らかにした。Siemplifyは、企業向けのエンド・ツー・エンドのセキュリティ・サービス、一般にセキュリティ・オーケストレーション、自動化、対応(SOAR)サービスと呼ばれるものに特化している。

この買収は、イスラエルのメディアですでに報道され噂されていたが、今回、GoogleそしてSiemplifyのCEOで共同創業者のAmos Stern(アモス・スターン)氏がともに買収を認め、SiemplifyがGoogle Cloud Platformに、具体的にはそのChronicle業務に統合されることを明らかにした。

GoogleとSiemplifyは、買収価格についてのTechCrunchの質問には答えなかったが、この取引に近い情報筋は5億ドル(約580億円)だと明らかにした(この数字は、先の報道でも言及されている)。

Chronicleはもともと、Googleの古いムーンショット取り組みであるGoogle「X」とともに、法人向けセキュリティ企業として設立された。検索大手であるGoogleが、クラウド市場2強のMicrosoft(マイクロソフト)のAzureとAmazon(アマゾン)のAWSを猛追しようと、クラウドサービス事業を中心に機能やサービスを拡充して法人売上高の拡大を図る一環として、Chronicleは2019年にGoogle Cloud経由でGoogle本体に移行した

関連記事:エンタープライズセキュリティサービスのChronicleがGoogle Cloudに統合へ

Siemplifyは2019年5月に最後のラウンドを実施し、合計5800万ドル(約67億円)を調達した。投資家にはGeorgian、83North、Jump Capital、G20 Venturesの他、多数の個人も含まれていた。Siemplifyは現在、本社をニューヨークに置いているが、同社はイスラエルで創業し、現在も同国に研究開発部門を持っている。そのため、今回の買収はGoogleにとって初の米国外でのサイバー企業買収ということになる。

Googleの買収は、サイバーセキュリティの世界において重要な時期に行われた。全体像として、サイバーセキュリティ侵害が衰える兆しがないのは、悪意のあるハッカーがこれまで以上に巧妙な手口で仕掛け、そして組織や消費者がインフラや日常の活動をますますオンラインやクラウドに移行させているためにターゲットがますます魅力的なものになっていることに起因している。

Chronicleは、サイバーセキュリティの遠隔測定用プラットフォームとして構築された。具体的には、あらゆるデバイスやネットワーク上のデータの動きを追跡し、侵害を検知・阻止するためのてがかりを得る方法となる。SOARプラットフォームは、この活動の顧客インターフェース要素であり、セキュリティ運用の専門家が活動を管理・監視し、(自動または手動の)修復プロセスを開始し、将来同じことが起こらないようにするためにすべてを記録するのに使用される。Googleがより多くの顧客を獲得するためにサービスや自動化を追加していく中で、SOARの機能を増やすことは同社にとって論理的な次のステップだ。

「Siemplifyプラットフォームは、セキュリティチームがリスク管理を強化し、脅威に対処するためのコスト削減を可能にする直感的なワークベンチです。Siemplifyは、セキュリティオペレーションセンターのアナリストがエンド・ツー・エンドで業務を管理し、サイバー脅威に迅速かつ正確に対応し、アナリストとの対話を重ねることでより賢くなることを可能にします。この技術はまた、ケースロードの削減、アナリストの生産性の向上、ワークフロー全体の可視性の向上により、SOCのパフォーマンスを改善します」とGoogle Cloud SecurityのGMであるSunil Potti(スニル・ポッティ)氏は買収を発表したブログの中で書いている。「Siemplifyの機能をChronicleに統合するのは、企業のセキュリティ運用の近代化と自動化を支援できるようにするためです」。

画像クレジット:Beata Zawrzel/NurPhoto / Getty Images

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:Nariko Mizoguchi

コーディング学習プラットフォームCodecademyをSkillsoftが約600億円で買収、統合が進む教育テクノロジー分野

コーディング学習プラットフォームのCodecademy(コーデカデミー)は、Skillsoft(スキルソフト)に株式と現金を合わせて5億2500万ドル(約600億円)で買収され、教育テクノロジー分野における新たな統合の一例となった。

Codecademyの売却は、同社が4000万ドル(約45億7000万円)のシリーズD資金調達を実施し、一般消費者向けの製品展開をより企業顧客向けに提供するように方向転換してから約1年後に行われた。

当時のCEOで創業者のZach Sims(ザック・シムズ)氏は、この資金を企業買収やインドでの事業展開、そして軌道に乗り始めた企業顧客向け事業の拡大に使用すると述べていた。この日、シムズ氏は「何も変わっていない」と語っているが、しかし、Skillsoftと力を合わせることで「Codecademyを独立して運営するよりも、さらに急速に拡大させることができる」と気づいた。この会社は、数多くの他のオファーを断ったと、同氏は述べている。

「多くの教育企業の未来は、消費者と教育をミックスしたものであると、私は考えています。私たちは今回、消費者向けテクノロジー教育のリーダーと、企業向け教育のリーダーを一緒にすることで、新たなフルスタックのリーダーを誕生させることになります」と、シムズ氏は語る。「それは、他社が太刀打ちできないものです」。

シムズ氏は、Codecademyの最新の評価額については明かさなかった。現時点では、この買収による解雇は発生していない。

Skillsoftは数十年の歴史を持つテクノロジー企業で、企業や法人向けのソフトウェアと教育プログラムの構築でその名前が知られている。同社は2021年初めに、SPAC(特別買収目的会社)であるChurchill Capital(チャーチル・キャピタル)との合併を通じて株式を公開した。この上場は、教育関連企業としては異例だが、その前には波乱の時期があったのだ。Skillsoftは2020年6月に破産申請を行い、2カ月後には「迅速に」再編を行って破産から脱却した。

現在、SkillsoftはB2B教育分野の大企業だ。フォーチュン1000社の75%が同社製品の顧客であり、オンライン学習、トレーニング、人材管理など、幅広い分野で製品を提供している。一方、Codecademyは、この数年間ずっとキャッシュフローが黒字であると主張している。直近では、年間経常収益が5000万ドル(約57億2000万円)と報告されており、この数字は2018年から倍増している。

今回の売却は、強力なユーザーベースを成長させ、最終的にはその知名度を利用して企業との取引(およびより安定した顧客)に着地するという、消費者向けの教育テクノロジー企業によく見られる月並みな軌道をなぞるものだ。その先頭に立つのはUdemy(ユーデミー)とCoursera(コーセラ)で、最近ではMasterClass(マスタークラス)やOutschool(アウトスクール)などの会社もそれに加わっている。消費者向け教育ビジネスで最も人気の高いDuolingo(デュオリンゴ)も、パートナーシップや学校と連携して企業向け事業を展開している。

Codecademyの場合、学生や社員がよりインタラクティブな環境でコードの書き方を学ぶことを長年サポートしてきたが、企業向けへの移行はまったく議論の余地のないものだった。というのも、同社は同じサービスを、従業員のトレーニングや再教育に使いたいと考える企業に販売していたからだ。Codecademyは、サービス開始から1年間で600社の有料顧客を獲得したが、その半数は銀行やコンサルティング会社、中小企業などの非テクノロジー企業だった。

Skillsoftに合併されることで、Codecademyは親会社の持つB2B分野での存在感と能力を活用することができる。

「私たちは、個人で学習している人も、企業内で学習している人も、すべての人のキャリア全体をサポkillsoftートできる、真にエンド・ツー・エンドの技術学習プラットフォームを構築したいと考えています」と、シムズ氏はいう。両プラットフォームを合わせると、8500万人のユーザーが学んでいることになる。

Codecademyは、Skilsoftの買収攻勢の中で最も新しく、最も高価なものだ。同社は上場以来、エグゼクティブ・コーチング・プラットフォームのPluma(プルマ)と、ITおよびスキル開発プラットフォームのGlobal Knowledge(グローバル・ナレッジ)を買収している。

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(文:Natasha Mascarenhas、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

RPAソフトAutomation AnywhereがFortressIQを買収、プロセスディスカバリー分野に進出

ロボティック・プロセス・オートメーション(RPA)ソフトウェアで知られるAutomation Anywhere(オートメーション・エニィウェア)が、プラットフォームの拡大を計画している。同社は米国時間12月23日朝、プロセスディスカバリーのスタートアップ企業であるFortressIQ(フォートレスIQ)を買収する意向であると発表した。両社は買収金額を明らかにしていない。

FortressIQは、Automation Anywhereに不足していたプロセスディスカバリーのコンポーネントを提供することになる。これによって、AIを搭載したソフトウェアで自動的に内部プロセスをマッピングすることが可能になり、高額なコンサルタントが不要になる。

「Automation AnywhereとFortressIQは一緒になって、自動化の未来を再形成し、デジタルトランスフォーメーションのイニシアチブを追求するお客様の自動化、適応、加速の方法を変えていきます」と、Automation AnywhereのCEO兼共同創業者であるMihir Shukla(ミヒル・シュクラ)氏は、声明の中で述べている。

この発言には、幹部ならではの大げさな言葉が少なからず含まれているものの、この買収が同社の能力を拡大することは確かだ。PitchBook(ピッチブック)のデータによると、FortressIQは2017年の創業以来、4600万ドル(約52億6000万円)を調達しているという。TechCrunchでは、2018年に1200万ドル(約13億7000万円)を調達したシリーズAと、2020年の3000万ドル(約34億3000万円)を調達したシリーズBを記事にしてきた。

しかし、これに対して市場リーダーのCelonis(セレニス)は、Crunchbase(クランチベース)のデータによると、6月に110億ドル(約1兆2600億円)の評価額で10億ドル(1143億円)の大規模なシリーズBを実施するなど、これまで14億ドル(約1600億円)の投資を集めている。4月には大規模な組織内でそのサービスを販売するためにIBMと重要な契約を結んだ

FortressIQの創業者兼CEOであるPankaj Chowdhry(パンカジ・チャウドリー)氏は、シリーズBラウンドの際に、同社は自動化されたプロセスディスカバリーを支援するコンピュータービジョンを用いたソリューションに注力していると語っていた。

「私たちはプロセスディスカバリーの、主にプロセスを自動化する部分を支援するために、このようなクールなコンピュータビジョンを開発しています。しかし、私たちが見てきたのは、人々が当社のデータを活用して変革戦略を推進しているということであり、結局その中で自動化はかなり小さな要素になっています」と、チャウドリー氏は当時、語っていた。Automation Anywhereの一部として、自動化はより大きな役割を果たすことになるはずだ。

2021年は、RPA、ローコードのワークフローツール、プロセスマイニングが一体となって過剰なほど市場を活発化させており、確かにプロセスオートメーションは最近注目を集めている

RPA市場のリーダーであるUIPath(UIパス)は、4月に株式を公開して大きな反響を呼び、最終的な非公開評価額は350億ドル(約4兆円)に達したが、その後は株価が冷え込んでいる

それでもなお、IT調査会社のGartner(ガートナー)は、UIPath、Blue Prism(ブルー・プリズム)、Automation Anywhereの3社をRPA市場のリーダーと見なしている。今回の買収はAutomation Anywhereにとって、業界に遅れを取らないようにそのプラットフォームと同社の自動化能力を拡大するためのものだ。

画像クレジット:Nataliia Nesterenko / Getty Images

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(文:Ron Miller、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

企業向けソフトSageが小売管理プラットフォームの英Brightpearlを買収

企業向けソフトウェア大手のSage(セージ)は、英国ブリストルを拠点にクラウド小売管理プラットフォームを手がけるスタートアップ企業のBrightpearl(ブライトパール)の残りの株式を、3億4000万ドル(約389億円)で買収する。Brightpearlは、小売業の顧客にSaaSベースのオペレーティングシステムを提供することで、リアルタイムのビジネスインサイトを可能にする会社だ。

Sageは、英国のシリーズA投資家であるMMC Ventures(MMCベンチャーズ)が2014年に支援したBrightpearlの17%を以前から保有していた。このスタートアップ企業はこれまで、2018年に1500万ドル(約17億円)、2016年に1100万ドル(約12億6000万円)を調達している。

Sageがまだ所有していなかったBrightpearlの83%の対価は、2億2600万ポンド(約347億円)と見られ、Sageは既存の現金および利用可能な流動資産からその資金を調達することになる。

BrightpearlのCEOであるDerek O’Carroll(デレク・オキャロル)氏は次のように述べている。「2つのチームが一緒になることで、Brightpearlの小売業界における強みと、Sageの規模、ブランド、財務の専門知識を結びつけることができます」。

Sageは声明の中で、2021年12月期のBrightpearlの年間売上高は2000万ポンド(約30億円)と、前年比で約50%の成長が見込まれ、営業利益は損益分岐点レベルに達すると述べている。

今回の買収は、米国のHart-Scott-Rodino Act(ハート・スコット・ロディノ法)に基づく規制当局の許可を得られれば、2022年1月に完了する予定だ。

Sageの最高経営責任者であるSteve Hare(スティーブ・ヘア)氏は、次のようにコメントしている。「Sageの目的は、すべての人が成功できるように障害を取り除くことです。SageとBrightpearlが一緒になれば、小売業者や卸売業者を阻む障壁を取り除き、システムを合理化して成長に集中できるようになります。Brightpearlの経営陣や従業員をSageに迎えることができてうれしく思います。また、戦略的優先事項をともに実行し、加速的な成長を実現することを楽しみにしています」。

元共同創業者のAndrew Mulvenna(アンドリュー・ムルベンナ)氏は、LinkedIn(リンクトイン)に次のように書いている。「14年前、Chris Tanner(クリス・タナー)氏と私が、すべての小規模小売業者がデータとワークフローをデジタル化し、オムニチャネル・リテールを導入して、明日のサクセスストーリーの1つになることを支援するというビジョンのもとに事業を起ち上げたときに始まった章が、すばらしい形で幕を閉じます。私たちのCEOであるデレク・オキャロル氏とそのチームは並外れた存在であり、他にも言及しきれないほど多くの人たちが関わっています。現在の成功には、彼らの功績も大きく寄与しています」。

画像クレジット:Brightpearl Team

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(文:Mike Butcher、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

韓国SK HynixがインテルのNAND事業買収で中国の認可を取得

韓国のチップメーカーSK Hynix(SKハイニックス)は米国時間12月22日、Intel(インテル)のNANDとSSD(ソリッドステートドライブ)事業を90億ドル(約1兆円)で買収することについて、中国の反トラスト当局から合併許可を得たと発表し、8つの管轄区域での規制認可確保完了への最終ハードルをクリアした。

2020年10月、この米チップ大手とSK Hynixは買収契約に合意した。その後、SK Hynixは韓国、米国、EU、台湾、ブラジル、英国、シンガポールの監督官庁から認可を得た。

SK Hynixは声明で次のように述べている。「SK Hynixは、国家市場監督管理総局による本取引の合併認可を心から歓迎し、感謝します。SK Hynixは、残された合併後の統合プロセスを継続することにより、NANDフラッシュメモリとSSD事業の競争力を高めていきたいと思っています」。と述べている。

SK Hynixの最大の買収案件である今回の買収は、SK HynixがNAND SSD事業を拡大し、市場リーダーのSamsung(サムスン電子)との差を縮めるのに役立つと思われる。一方、IntelはOptaneメモリ事業を継続して保持し、より高度な技術に投資していくと2020年発表した。同社はNAND部門を売却し、5Gネットワークインフラ、人工知能、エッジコンピューティングなどの技術開発を倍増させる計画だ。

SK Hynixの広報担当者は、2021年末までに最初の70億ドル(約7990億円)を支払い、2025年3月までに残りの20億ドル(約2200億円)を支払うと確認した。この取引が完了すると、この韓国のチップメーカーはIntelのNAND SSD、NANDのコンポーネント、ウエハー事業(NAND関連の知的財産と従業員を含む)、および大連のNANDメモリ製造施設を引き継ぐことになる。

米中間の緊張の中で、SK Hynixがこの取引について中国の許可を得られないのではないかという懸念があった。SK Hynixは、この取引が3カ国すべてにとって「相互に有益と考えられる」ため、大幅な遅延なしに適切なタイミングで承認されたと述べている。

中国の国家市場監督管理総局は、同日に発表した声明の中で、承認はしたが、5年間続くいくつかの条件付きでもあると述べた。

その条件とは、SK HynixがPCIeとSATAのエンタープライズクラスのソリッドステートハードディスク製品の生産量を拡大し、製品を公正、合理的、無差別的な価格で供給することであると発表している。また、SK Hynixは中国の顧客にSK HynixまたはSK Hynixが支配する会社から製品を独占的に購入するよう強制してはならないとしている。

画像クレジット:Igor Golovniov/SOPA Images/LightRocket / Getty Images

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(文:Kate Park、翻訳:Akihito Mizukoshi)

TikTokのライバルTrillerがSeaChange Internationalと合併、上場へ

短編動画アプリのTriller(トリラー)が、ビデオデック企業のSeaChange International(シーチェンジ・インターナショナル)と逆さ合併して上場する予定だと、両社は米国時間12月22日に発表した。合併後の企業価値は約50億ドル(約5700億円)となる。両社の取締役会は合併案を承認している。規制当局と株主の承認を経て、2022年第1四半期に取引が成立する見通しだ。

TikTok(ティックトック)と同様、Trillerではユーザーが音楽に合わせて短編の動画を作成・共有する。ロサンゼルスを拠点とする同社は2015年にサービスを開始し、アプリのダウンロード数は2億5000万回を超えた。Trillerは、Justin Bieber、Marshmello、The Weeknd、Alicia Keys、Cardi B、Eminem、Post Malone、Kevin Hartなど多くの著名なユーザーを魅了した。Charli D’AmelioやNoah BeckといったTikTokの人気ユーザーとも契約を結んでいる。Donald Trump(ドナルド・トランプ)元米大統領も利用していたが、1月以降はプラットフォームに新たな動画を投稿していない。

合併完了後、SeaChangeはTrillerVerz Corpに社名を変更する。マサチューセッツ州アクトンを拠点とする同社は、クラウドおよびオンプレミスの動画配信プラットフォームを強化する動画配信ソフトウェアソリューションのサプライヤーを自称している。合併後の会社は、Trillerの親会社のCEO、Mahi de Silva(マヒ・デ・シルバ)氏が率いる。また、SeaChangeの社長兼CEO、Peter Aquino(ピーター・アキノ)氏がTrillerVerzのチームに加わる。

「TrillerVerzは、デジタル世界におけるコンテンツ、クリエイター、コマース、文化の接点に位置するブランドとして、若者文化の代弁者になりつつあると信じています」とデ・シルバ氏は声明で述べた。「私たちの戦略は、魅力的で広がりやすいコンテンツを配信し、クリエイターが収益化するための世界最大の舞台を、文化を高める体験とともに構築し続けることです。SeaChangeと合併することにより、ケーブル、衛星、OTTメディアへのリーチを広げ、当社の広告・マーケティング能力を強化できると考えています」。

TrillerVerzは、コンテンツ、クリエイター、コマースのためのAI搭載ソーシャルメディアプラットフォームとして先頭を走っていると両社は述べた。TrillerVerzは、世界中に進出し、クリエイターエコノミーと新しい技術に関わる新たな成長機会への投資により、収益源を拡げる計画だ。

「TrillerVerzとの経営統合は、クリエイティブの未来に投資する非常に大きな機会を意味します」とSeaChangeのアキノ氏は声明で述べた。「TrillerVerzの比類ないソーシャルメディアリーチ、Z世代のエンゲージメント、コンテンツ・コマース・クリエイターの分野にまたがるグローバルなマルチプラットフォームの存在を意味深く拡大する機会、そしてeコマース、アドテック、NFT、メタバースの最前線にいることが、大きな価値を生み出す可能性のある魅力的な投資だと考えています」。

Trillerと親会社が過去1年間、ソーシャルビデオプラットフォームを拡大するなかで、この合併のニュースがやってきた。Trillerは11月、企業間プレミアムインフルエンサーのイベントや体験に焦点を当てるThuzioを買収した

Trillerは2021年4月、消費財、金融サービス、自動車、通信、政治、デジタルメディアなどのブランドと連携する、AIベースの顧客エンゲージメントプラットフォームであるAmplify.AIを買収。同月、ライブイベントとペイパービューの格闘技ストリーミングプラットフォームであるFITE TVも買収している。3月には、Swizz BeatsとTimbalandが設立したライブ音楽ストリーミングプラットフォームのVerzuzを買収した。

画像クレジット:Sheldon Cooper /SOPA Images/LightRocket / Getty Images

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(文:Aisha Malik、翻訳:Nariko Mizoguchi

ノーコードプラットフォームAirtableがWalrus.aiの創業チームスカウト、「ソフトウェア開発をもっと簡単なものにしたい』

米国時間12月21日、Airtableは2021年の早い時期にWalrus.aiを秘かに買収していたことを発表した。

しかしながら、「買収」は少々言い過ぎかもしれない。しかし少なくとも、Walrus.aiのホームページが数カ月前からなくなり、Airtableが私に、同サービスの技術を使うつもりはないと述べていることは事実だ。「人刈り(Acqui-hire)」という表現のほうが適切かもしれないが、AirtableのCPOであるPeter Deng(ペーター・デング)氏も、Walrusの共同創業者であるScott White(スコット・ホワイト)氏も、そうは言わない。

「結局のところ、私たち以前からやりたかったことに合ってるという言い方になるでしょう。Airtableは、もっと大きな規模でやりたいと思っていたことの自然な進化というか、そのビジョンを満たす機会なのです。そのため私たちがずっとやってきたことの進化でもあり、それの次の段階だともいえます。すばらしいチャンスです」とホワイト氏はいう。

ホワイト氏と共同創業者のJake Marsh(ジェイク・マーシュ)氏とAkshay Nathan(アクシャイ・ネイサン)氏がAirtableに参加し、ホワイト氏はAirtableでソリューション担当のプロダクトリードになる。ネイサン氏は同社のエンタープライズ部門のエンジニアリングマネージャー、マーシュ氏はソフトウェアエンジニアだ。つまり、共同創業者だけがAirtableに加わる。Walrus.aiは以前、HomebrewやFelicis Ventures、Leadout Capitalなどから400万ドル(約4億5000万円)のシード資金を調達している。

両社によると、彼らの全体的なビジョンは極めて整合している。Walrusのチームは、ユーザーがテストを普通の英語で書くことによって、エンド・ツー・エンドのソフトウェアの試験を容易にする。一方Airtableは、ユーザーを全員、アプリケーションの開発者にする。

デング氏に買収のいきさつについて尋ねると、次のように答えた。「ソフトウェアの創造を民主化すること、つまりソフトウェアの開発をもっと簡単にしたい、すべてはそこから始まっています。スコットとWalrusのチームに紹介されたとき、私たちが同じビジョンを共有していることがすぐにわかりました。Walrusのビジョンは、高品質なソフトウェアの構築をデベロッパーにとって容易にすることでした。実際に話し合ってみると、『ソフトウェアの開発を、誰にとっても簡単なものにしたいんだ』といったやりとりで、お互い話は通じました。両社の共同創業者たちのDNAに直接触れる部分があり、また両社がやってきたことも、お互いの話の内容も、これから両社が一緒に仕事をするのは極めて自然、といえるものです」。

Airtableでデング氏とホワイト氏は話し合い、Walrusのチームはその最初のビジョンをさらに広げていき、そのスキルを生かして新しいプロダクトも作る、というところに落ち着いた。ホワイト氏がいうように、Airtableは、ユーザーに非常に複雑なことを簡単にさせて、そのプロセスを容易かつシームレスにしている。そしてそれと同時に、今のAirtableの最速成長部門はエンタープライズであるため、同社のサービスは非常に複雑なワークフローの管理にも利用されている。

「私たちの仕事は、この2つの側面から考えています。そして、私たちの中核的な能力とインフラが、こうした大規模な企業との取引に対応できるようにすることです」と、ホワイト氏は現在Airtableで行っている仕事について述べる。ホワイト氏もデング氏も、Walrusチームが現在取り組んでいることについて、具体的には何も語らず、デング氏は、「エンドユーザーの問題を非常にエレガントな方法で解決するための多くのイニシアチブを含む、大きなことに一緒に取り組んでます」という。

画像クレジット:Airtable

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:Hiroshi Iwatani)

住宅ローン貸付のRocket CompaniesがTruebillを約1450億円で買収、なぜこの取引は高くなかったのだろうか?

Rocket Companies(ロケット・カンパニーズ)は米国時間12月20日朝、Truebill(トゥルービル)を現金12億7500万ドル(約1450億円)で買収すると発表した。

Rocket CompaniesはRocket Mortgageという製品でよく知られている。一方のTruebillは消費者向けのアプリで、消費者のサブスクリプションの管理、貯蓄の自動化、予算編成をサポートする。今回の買収額は、Truebillの株主にとって有利なものになる。PitchBookのデータによると、Truebillの最終的な非公開評価額は、前回のラウンド後に5億3000万ドル(約600億円)だった。同ラウンドの4500万ドル(約50億円)の投資は2021年初めに行われた

関連記事:サブスクリプション管理や自動貯金に加え資産・負債の一元管理も目指す「Truebill」

つまり、Truebillの最終投資家にとっては2倍以上、初期の支援者にとってはさらに大きなリターンとなるわけだ。悪い話ではない。

さあ、倍率を推測してみよう!

Truebillが13億ドル弱で販売されるということで、このスタートアップの年間経常収益(ARR)の見積もりを出すために必要な情報を持っていることになる。大雑把に、年間売上高はどの程度になるだろう?

もしあなたが5000万ドル(約57億円)前後と予想したなら、私たちの予想と同じだ。テック会社のバリュエーションは、最近の下降傾向にもかかわらず高く、フィンテックの会社もホットだ。なので、20ドル台半ばの倍率は妥当な推測に思える。

しかし、そうではない。Rocketは次のように述べている。

この新事業は、Rocket Companiesの毎月の売上も安定させることになります。現在、住宅ローン貸付事業に顧客から支払われる毎月の支払いは、年率換算で13億ドル(約1480億円)のサービス収入を生み出しています。Rocket Companiesは、250万人の顧客を抱え、業界最高の91%の顧客維持率を誇っています。Truebillは、年間1億ドル(約114億円)の経常収益を上げる勢いです。この数字は一貫して増加しており、2021年の売上は2020年の2倍以上となる見込みです。

熱い。驚きだ。

Truebillは、我々が予想した約2倍のARRで2021年を締めくくることになる。そしてさらに、同社は毎年2倍の規模に成長している。大きな収益と速い成長。これは、まさしく企業が株式公開前に打ち出したいプロフィールだ。にもかかわらず、Truebillは株式公開する代わりに、現在のARRの13倍以下で売却している。この数字は、時間が経つにつれて圧縮され、2022年には一桁になる。ただし、新年度にTruebillが成長を維持することができればの話だが。

正直言って、かなり割安感がある。

この取引がすべて現金であることは、Rocketが一種の割引を得たかもしれないことを意味する。株式は現金よりも安く、Truebillはおそらく取引が、例えば50%の株式であれば、もう1億ドルをなんとか獲得できたかもしれない。ただし、我々が話している数字は非常におおまかなものだ。

それでも、この取引はある種の朗報であり、また前兆でもある。100%成長、ARR9桁近いフィンテック企業が、なぜかろうじてユニコーン並みの金額で売れたのか?前述の通り、この価格はTruebillの出資者にとってはかなり甘い年末の流動性を意味するが、他のフィンテック企業にとっては、年末に歓迎されない無料招待券を受けただけで、この数字は強気とは言い難い。正直なところ、少しソフトな印象を受ける。

おそらく、Nubankのやや低調なIPOの影響があるのだろう。あるいは、ここ数四半期で見られた、ソフトウェア業界の倍率の全般的な下降傾向の影響かもしれない。または、Truebillの内部に何かまずいものがあるのかもしれない。おそらく、同社は我々が予想するよりもはるかに大きな販売およびマーケティング費用を持っており、Rocketと融合することで顧客獲得コストを下げ、同社の経済状態を改善することができるのかもしれない。

いずれにせよ、RocketがTruebillを含む最初の四半期を報告する際に、より多くのデータを得ることができるはずだ。この買収は2021年中に完了する見込みだ。

画像クレジット:Bryce Durbin / TechCrunch

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(文:Alex Wilhelm、翻訳:Nariko Mizoguchi

EU、マイクロソフトの音声認識技術企業Nuance買収を無条件で承認

欧州連合(EU)の競争当局は、Microsoft(マイクロソフト)が2021年初めに発表した音声認識(文字起こし)技術企業Nurance(ニュアンス)の197億ドル(約2兆2500億円)での買収を全面的に承認した。

EUは12月21日、買収実行にともなうEUでの競争上の懸念はないと結論づけ、条件を付さずに承認したと発表した

この買収は、11月16日に欧州委員会の規制当局に通知された。

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MicrosoftのNuance買収がEUの承認を得た一方で、英国の競争・市場庁は予備調査を開始したばかりだ。まだ精査が続く地域もあるということだ。

EU側では、欧州委員会の調査は、音声認識ソフトウェア市場におけるNuanceとMicrosoftの水平方向の重複を調査し、両社がまったく異なる製品(エンドユーザー向け既製ソフトと、アプリに音声認識技術を追加したい開発者向けのAPI)を提供していると判断した。

また、2社の統合後も、他のプレイヤーとの「強い」競争に引き続き直面することになるとも判断した。

EUは、MicrosoftのクラウドコンピューティングサービスとNuanceのヘルスケア向け下流音声認識ソフトとの垂直的な関連性にも注目したが、この分野で競合する音声認識サービスプロバイダーは、クラウドコンピューティングをMicrosoftに依存していないことがわかった。

また、欧州委員会によれば、この種の音声認識サービスプロバイダーは、クラウドコンピューティングの主要ユーザーでもないという。

同委員会の調査では、Nuanceのソフト(Windows版のみ)とMicrosoftの数多くの製品との複合的な関連性も検討されたが、統合後の企業は、(医療)音声認識ソフト、法人向け通信サービス、CRMソフト、生産性ソフト、PCオペレーティングシステムの市場において競合企業を排除する能力やインセンティブを持たないとの見解に至った。

そして、ここでもまたEUは、統合後の企業が依然として強い競争に直面することになると判断した。

おそらく最も興味深いのは、欧州委員会がNuanceのソフトによって書き起こされたデータの利用について調査したことだ。興味深い理由は、医療データの機密性が非常に高いからだ。Microsoftはアドテク分野では巨大プレイヤーではないが、同分野で事業を拡大する野心を持つ。ちょうど米国時間12月21日、同社はデジタル広告事業を強化するため、AT&Tからアドテク企業のXandr(旧AppNexus)を買収すると発表した

さらに、すでに大規模なデジタルマーケティング事業を展開している巨大テック企業のOracle(オラクル)が、電子カルテシステムを提供するCerner(サーナー)の買収を発表し、同社のヘルスケア分野への壮大な構想を示すことになった。

もちろん、アドテク企業が健康データを手中に収めるという見通しは、プライバシーに関して多くの人々を不安にさせる

しかし、MicrosoftによるNuance買収のデータ面に関する評価は、既存の「契約上の制約」とEU地域のデータ保護規制のおかげで、問題なしとされた。

その分析は主に競争の観点からなされたが、EUの反トラスト法評価で(さらに)データ保護に焦点が当たったことは注目に値する。(先例として、EUがGoogleのアドテクを現在も精査している件がある。欧州委員会は2020年、GoogleのFitbit買収を承認したが、プライバシー擁護派から多くの批判を受けた。このケースでは、承認にあたり、GoogleがFitbitの健康データを広告に利用することを制限するという条件を付した)。

「欧州委員会は、Nuanceが自身のサービスを提供するためにのみ健康データを使用することができると結論付けました」とEUはMicrosoftのNuance買収承認に関するプレスリリースに書いている。「データを他社が利用することはありませんし、契約上の制約やデータ保護法の関係で他の目的には使用できません」。

EUの反トラスト部門はまた、Nuanceのデータへのアクセスは、Microsoftに、競合する医療ソフトプロバイダーを締め出すことができるような優位性を与えることはないと結論付けた。「重要な音声認識情報は、Nuanceの断片的な音声データとは異なり、複数のソースからのデータを組み合わせた電子カルテシステムなどのサードパーティアプリケーションに通常格納されています」。

以上からだけでも、電子カルテシステムのプロバイダーであるCernerのOracleによる買収に関しては疑問が生じる。すなわち、EUの競争規制当局が、ハイテクヘルスケア分野の大型ディールを検討するようになれば、より厳しい質問をぶつけてくる可能性があるのではないかということだ。

ただし、Cernerは2020年欧州のポートフォリオの一部を売却しており、同地域の顧客が比較的少ないため、EUの懸念の範囲は縮小または限定されるかもしれない。

画像クレジット:Kena Betancur/VIEWpress/Corbis / Getty Images

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Nariko Mizoguchi

Oracleが電子医療記録会社Cernerを約3.2兆円で買収、ヘルスケアに進出

ホリデーウィークはニュースが少ないなんて誰が言っているんだ?Oracle(オラクル)は、年末の記事執筆に疲れたテック系ジャーナリストのために、米国時間12月20日、いくつかのビッグニュースを提供してくれた。この大手データベース企業は、電子医療記録会社のCernerを、総額283億ドル(約3兆2000億円)で買収すると発表した。

「OracleとCernerは本日、OracleがCernerを1株あたり95ドル(約1万800円)、株式総額にして約283億ドルをすべて現金で支払い、買収することで合意に至ったと、共同で発表しました」と、同社はプレスリリースで述べている。

今回の買収により、Oracleは成長市場であるヘルスケア分野に大きく進出することになる。Synergy Research(シナジー・リサーチ)によれば、Oracleが最近起ち上げたクラウドインフラストラクチャ事業は一桁台に低迷しているというが、Cerner買収はこの事業の強化にもつながるはずだ。

Constellation Research(コンステレーション・リサーチ)のアナリストであるHolger Mueller(ホルガー・ミューラー)氏は、買収を繰り返してきたOracleの歴史の中でも、今回は最大の買収になると述べている。

「Oracleにとって、これは賢明な行動です。同社のテクノロジーをヘルスケア分野にさらに深く浸透させ、現在と、そして特に将来の、多くの作業負荷をOracle Cloud(オラクル・クラウド)にもたらすことになります。Oracleが、最大かつ最速で成長している垂直型産業を買収するということは、いうまでもありません」と、ミューラー氏は筆者に語った。

この成長の可能性を、OraclのSafra Catz(サフラ・カッツ)CEOが見逃すはずはない。「当社がその事業を世界の多くの国に拡大していく中で、Cernerは今後何年にもわたって巨大な追加収益成長エンジンとなるでしょう。これはNetSuit(ネットスイート)を買収したときに採用した成長戦略とまったく同じです。違いは、Cernerの収益機会がさらに大きいということです」と、カッツ氏は声明で述べている。

だが、カッツ氏が国際的な事業拡大について語っている間に、Microsoft(マイクロソフト)が2021年4月、Nuance Communications(ニュアンス・コミュニケーションズ )を197億ドル(約2兆2000億円)で買収すると発表し、ヘルスケア分野で同様の取り組みを行っていたことにも注目しておくべきだろう。しかし、この買収は英国の規制当局からの逆風に直面している。年が明けて今回の買収が進むにつれ、同じ様に規制当局の監視にぶつかることになるかどうかは、興味深いところだ。

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Cerner側では、10月に社長兼CEOに就任したばかりのDavid Feinberg(デヴィッド・フェインバーグ)氏が、これを株主にとっての好機と見て掴まえることにした。もちろん、同氏はこの買収を、他の多くのCEOと同じように、独立した会社としては不可能な方法で市場を拡大するための手段と捉えている。

「Oracleのインダストリービジネスユニットに参加することで、電子医療記録(EHR)の近代化、介護者の体験の改善、そしてより接続された高品質で効率的な患者ケアを実現するための、当社の活動を加速させる、これまでにない機会を私たちは得ることができます」と、フェインバーグ氏は声明で述べている。

米国時間12月20日朝、このニュースを受けてOracleの株価は2.68%下落し、一方、Cernerの株価は0.92%とわずかに上昇した。

現時点で今回の発表は、米国証券取引委員会への正式な申請を含む一連のステップの最初の段階に過ぎない。現在の規制環境の中、この買収が順調に進んで最終的に完了するかどうかは、まだわからない。

画像クレジット:Justin Sullivan

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(文:Ron Miller、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

【コラム】バイデン大統領は本当に技術独占を取り締まることができるだろうか?

ジョー・バイデン大統領は2021年7月、米国経済における「競争促進」の行政命令を出した。この命令の中で、大統領は特に大手テクノロジー企業に対して「現在、少数の有力なインターネットプラットフォームがその力を利用して、市場新規参入者を排除し、独占的利益を引き出し、自分たちの利益のために利用できる個人の秘密情報を収集している」と述べている。

米上院は11月、ハイテク企業の反競争的買収を規制する法案を提出した。米国ではこの20年間、重大な独占禁止法事案はなかったが、最近の勢いは、現政権が運用の透明化を望んでいることを示唆している。

これまでのところ、独占禁止法違反を適用するためには、ルールや市民の間に曖昧な領域があまりにも多かったが、アプローチへのいくつかの変更で、大衆の意見が、新しい政策、罰則、さらには起訴につながる可能性がある。

この1世紀の間に、独占禁止法はその効力を失い「消費者福祉」という曖昧な基準の下に、より大きな目標は放棄されてきた。1980年代に確立された独占禁止法適用の判断基準はすべて、疑惑の独占行為が消費者物価の上昇をもたらしたかどうかだけに還元されていた。

だが独占禁止法の運用を、こうした1つの経済的影響テストに帰すこの手法は、過度に単純化されていることが証明されている。独占禁止法に対するこの特異な消費者価格ベースのアプローチの擁護者たちは、現在の技術の価格低下が公正な競争が支配的であることの明白な証拠だと主張している。

技術独占の解体は容易ではないが、それは以下の3つのアプローチで実現できる。すなわち、反競争的なM&Aを阻止すること、政策を書き換えてデータを市場の力として位置付けること、そして市民が独占禁止政策に関心のある政治家を選ぶことができるようにこのトピックへの公共の関心を駆り立てることだ。

キラーM&A

非常に緩い金融政策が長期化し、株価が非常に高騰しているこの金融緩和の時代にあっては、将来の競争相手を高値で買い取ることが現在のビジネス戦略の一部となっている。

テクノロジーの世界には例がたくさんあるが、たとえばFacebook(フェイスブック)によるInstagram(インスタグラム)とWhatsApp(ワッツアップ)の買収は議論の余地のない例だ。過度の規制はイノベーションを殺すが、自由市場が公正で自由なままでいるためには規制が必要だ。

現行法では、9200万ドル(約104億4000万円)以上の取引は、ほとんど例外なく、審査のために米連邦取引委員会(FTC)と司法省(DOJ)に報告しなければならないと定められている。

バイデン命令の意図の1つが、M&Aに対する監視の強化であることを考えると、この先消費者は「競争を大幅に減少させる」取引を阻止するための法的措置を目にすることになるかもしれない。

提案された、特定の買収を阻止する法案は、これまでその濫用があったことを両陣営が認識している証拠だが、データの独占が反競争的だと広く考えられていない場合は特に、違反認定の基準は依然として高いままだ。FTCとDOJは、ビッグテックに対して独占禁止法を適用する能力を発揮できるようになる必要があるが、これは、今回の新しい法律でより適切に行うことができるだろう。

データ=お金=市場支配力

一部のテック大企業にとって、無料の製品を提供することは、その他の資産を蓄積するための秘密裏の戦略であることが判明している。特にその中には、無意識のうちに「無料」で使う顧客の個人情報が含まれていて、それらの資産は数十億ドル(数千億円)規模の莫大な利益をもたらしただけでなく、そうした資産の独占も行われている。検索エンジンマーケティングとソーシャルメディア広告はまさにこの方法で構築された。このようなデジタル資産は現在、他のすべての企業にマーケティング予算に対する税金として貸し出されている。これは市場支配力の明白な例である。

私たちはほとんどの産業で前例のない集中に出会っている。集中が高まっている産業の企業は、市場支配力をより容易に行使できるため、実際には投資を減らしてさえいるのだ。

しかし、少し天候が悪くなると、自分で規則を変える都合の良いときだけの友たちはチームをすぐに変えて、連邦準備制度がパンデミックの最中に市場を支えるために臆面もなく行った、複数の異常な市場介入を支持するだろう。

バイデンの大統領命令で歓迎されたのは、オンライン監視とユーザーのデータの蓄積に関する新しい規則を確立するようFTCに促したことだ。独占的なテクノロジーの巨人たちは、このゲームのルールをあまりにも長い間作り続けていて、騙されやすい議員たちの目を、笑えるような自己規制の誓いでくらましている。

データの大量収集と管理が市場支配力として適切に分類されるまで、正義の手段は消費者ではなくビッグテックの手に握られ続ける。この場合、新しい政策と法律は、国民の抗議の声が立法者を動かしたときのみ実現するだろう。

大衆意識の変化を

緩い独占禁止法の執行と緩い政策の影響を最も受けているのは、消費者と市民だ。個人情報が取り込まれたり、サービス料を払い過ぎることになったり、商品を選択できなかったりするという形で、独占は消費者の福祉を侵害する。しかし、消費者にできることはあるだろうか?

バイデンの大統領命令は、米国内の独占禁止法をめぐる世論の圧力の高まりを直接反映したものだ。同じことが新しい上院法案にも当てはまる。ますます民間企業たちは、選出された公務員が多くいる州裁判所で、独占に対して訴訟を起こすようになっている。

今はバカげているように聞こえるかもしれないが、独占禁止法は、政治家が挑戦しなければならない主要なトピックになる可能性がある。有意義な独占禁止政策改革は、政治団体によって選出された改革派によってもたらされる。そのため、独占禁止法の執行に対する意見に基づいて候補者を選出することは、現状を変えるために極めて重要である。

私たちは今、より強力な独占禁止法とプライバシー規制を必要としている。私たち市民のプライバシーと幸福が危機に瀕しているからだ。チャリティーのように、独占禁止法への取り組みは身近なところから始めなければならない(訳注「チャリティはまず身近なところから始めよ」という諺のもじり)。

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編集部注:著者のVijay Sundaram(ビジェイ・サンダラム)氏は、大手テクノロジー企業と競合しつつ、消費者のプライバシーをポリシーの最優先事項としているビジネスソフトウェア企業Zoho Corporation(ゾーホー・コーポレーション)の最高戦略責任者。

画像クレジット:Glowimages / Getty Images

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(文:Vijay Sundaram、翻訳:sako)

Spotifyがラジオ放送をオンデマンドオーディオ化するポッドキャスト技術のWhooshkaa買収

Spotify(スポティファイ)は、ポッドキャストのホスティング、管理、配信、プロモーション、マネタイズ、測定のためのオールインワンプラットフォームであるオーストラリアの会社のWhooshkaa(ウーシャカア)買収し、ポッドキャストへの投資を引き続き継続している。この買収は、Spotifyがポッドキャストテクノロジー市場において、2020年行ったホスティングおよび広告会社のMegaphone(メガフォン)の買収、そして最近ではポッドキャスト発見プラットフォームであるPodz(ポッズ)の買収に続くものだ。

また、現在はSpotify Greenroom(スポティファイ・グリーンルーム)という名のBetty Labs(ベティ・ラボ)のAnchorやライブトークショープラットフォームといったクリエイター向けツールや、Gimlet(ギムレット)、Parcast(パーキャスト)、The Ringer(リンガー)といったポッドキャストスタジオも買収している。

WhooshkaaによってSpotifyは、ラジオ放送局が既存の音声コンテンツをオンデマンドのポッドキャスト番組に簡単に変換できる専門技術という新しいツールを手に入れたことになる。Megaphoneはすでに、ポッドキャスター向けにホスティング、配信、レポート、マネタイズなどの一連のツールを提供しているが、Spotifyが最も関心を持ったのはこの部分だった。Spotifyは、この「ブロードキャスト・トゥ・ポッドキャスト」技術をメガフォンに直接統合するという。

Spotifyは、Wooshkaaのポーティング機能によって、より多くのサードパーティーコンテンツがSpotify Audience Networkに参入でき、広告パートナーへのリーチとインパクトを高めることができると考えている。Spotifyのこの部分のビジネスは、スケールアップしている。同社は2021年に広告収入10億ユーロ(約1280億円)のマイルストーンを通過し、Spotifyは第3四半期に過去最高の広告収入を計上した。

現在、Spotifyの広告主の5人に1人がSpotify Audience Networkを利用しており、加入したMegaphone Podcastのパブリッシャーでは、フィルレートが2桁増になったとSpotifyは述べている。

2016年に立ち上げられたWhooshkaaは、テキスト読み上げ、音声合成、コネクテッドホーム統合、ダイナミック広告挿入技術、エンタープライズグレードのプライベートポッドキャスティングツールなどの分野でもイノベーションを起こしたと、CEOのRob Loewenthal(ロブ・ロウェンサル)氏は同社ブログでの独自の発表で述べている。しかし、Spotifyが月間3億8100万人のリスナーを抱えているため、Whooshkaaはその技術をより多くの人々に提供することができるようになるのだ。

「私たちは、デジタルオーディオの世界的な成長の可能性は、まだほとんど手つかずであると信じています。これらの新しく加えられたツールやそれを支える革新的なチームを通じて、クリエイター、パブリッシャー、広告主がこの機会の価値を実感できるよう支援するという当社のコミットメントを強化します。Whooshkaaとともに、我々はあらゆる種類のオーディオパブリッシャーのポッドキャストビジネスの成長を支援する取り組みを強化し、広告主が視聴者に到達するのを支援する我々の能力を拡大します」。と、Spotifyのコンテンツ&広告ビジネス最高責任者のDawn Ostroff(ドーン・オストロフ)氏は、この取引に関する声明で述べている。

Spotifyは、取引条件の共有を拒否し、Whooshkaaの既存の顧客のための移行計画についてはまだコメントできなかった。この取引の一環として、合計12名がSpotifyに入社する予定だが、彼らは引き続きオーストラリアに拠点を置く予定だ。

画像クレジット:Bryce Durbin

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(文:Sarah Perez、翻訳:Akihito Mizukoshi)

欧州で急速に拡大、電動キックボード大手の独TierがWind Mobilityのイタリア子会社を買収

ドイツ・ベルリン拠点のeスクーター(電動キックボード)会社でヨーロッパ全域で急速に拡大しているTier(ティア)は、Wind Mobility(ウィンド・モビリティ)のイタリア子会社、Vento Mobility(ベント・モビリティ)を買収した。

Tierは2021年11月、ドイツの自転車シェアリングプラットフォームNextbikeを買収したばかりであり、サービスの多様化を図り、マイクロモビリティ帝国の足場をさらに固めようとしている。創業以来Tierは製品戦略、デザイン、経営、エンジニアリング、試験、品質管理、教育、サポート、スタッフ支援などのデジタルサービスを提供するMakery(メーカリー)や、バッテリー交換のスタートアップ、Pushme(プッシュミー)も買収している。

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一方、Windの側を見ると、最近イスラエルの事業をロシアのテック大手Yandex(ヤンデックス)に売却しており、避けられない業界統合にWindが徐々に屈服していると見ることもできる。同社はこれまでに計7200万ドル(約81億8000万円)を調達しており、最後の調達ラウンドは2019年のシリーズAだった。ちなみに、Tierは10月にシリーズDラウンドの一部として2億ドル(約227億4000万円)を調達し、調達総額を6億4700万ドル(約735億8000万円)とした。

Windは今後の戦略に関するTechCrunchの追加質問に答えなかった。

米国時間12月14日、Tierの最初の電動キックボードがバリとパレルモで利用できるようになり、今後数日数週間のうちにイタリアの他の都市も続く予定だ。Tierはすでに18カ国165都市で運用中で、同社の電動キックボードは組み込みヘルメット、ハンドルバーとリアウィングの方向指示器、大型前輪ホイールとトリプル・ブレーキなどを備えている。

Windはイタリアの11都市で4500台の電動キックボードを展開していた。Tierによると、同社はWindの車両を置き換えるのではなく、自社の電動キックボードを投入するつもりだと語ったが、既存の車両をどうするかについての質問には答えなかった。Tierは、Windの現地スタッフを引き継ぐことは明言した。

画像クレジット:Tier Mobility

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Nob Takahashi / facebook

ナイキが話題のNFTスタジオ「RTFKT」買収、先に開催されたTC Tokyo 2021にも登壇

Nike(ナイキ)は、さらに暗号コレクターグッズの世界に踏み込み、NFTスタジオであるRTFKT(アーティファクトと発音する)を買収することを発表した。

今回の買収発表は、同スタジオにとって非常にタイムリーだ。RTFKTは現在、ここ1カ月で最も話題になったNFTプロジェクトの1つ、アーティストの村上隆氏とのコラボレーションによる「CloneX(クローンX)」アバターを手がけている。CryptoSlamによるとこのプロジェクトでは、3週間前に行われた最初のドロップ以来、すでに6500万ドル(約73億8000万円)近い取引が行われているという。

買収の条件は明らかにされていない。このスタートアップは、2021年5月にAndreessen Horowitz(アンドリーセン・ホロウィッツ、a16z)が主導して800万ドル(約9億1000万円)のシードラウンドを実施し、評価額は3330万ドル(約37億8000万円)とされていた。

RTFKTの共同設立者であるBenoit Pagotto(ブノワ・パゴット)氏は、声明でこう述べた。「これは、RTFKTブランドを構築するためのユニークな機会であり、私たちが愛するコミュニティを構築するために、Nikeの根本にある強さと専門知識の恩恵を受けられることを嬉しく思います」。

12月初め、Adidas(アディダス)は、NFTプロジェクト「Bored Ape Yacht Club(BAYC)」とのパートナーシップを発表した。

RTFKTは、独自のNFTドロップを開発するだけでなく、他の暗号クリエイターと協力して、CryptoPunksやBored Apeなどの他のNFTプロジェクトのイメージを利用した物理的な靴などのアイテムをデザインしていた。

画像クレジット:RTFKT

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(文:Lucas Matney、翻訳:Aya Nakazato)

英独禁監視当局がマイクロソフトのNuance買収を調査中

2021年初めに発表された、Microsoft(マイクロソフト)による197億ドル(約2兆2380億円)での音声テキスト化企業Nuance Communicationsの買収は、英国の活発な反トラスト監視当局の注意を引いてきた。そして当局は12月13日、提案されている取引に懸念すべき理由があるかどうかを評価するために第1段階の調査を行っていると発表した

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競争市場局(CMA)が第1段階の調査を開始するかどうかの決定は追って行われる予定だ。

現在のところ、規制当局がこの決定を下すまでの期間は示されていないが、CMAが利害関係者にコメントを求める協議期間は2022年1月10日までとなっている。

買収案に対する独占禁止法上の監視は何カ月にもわたることがあり、少なくとも取引完了に大きな遅れをきたす可能性がある。

CMAはこの件に関する声明の中で「取引が実行された場合、2002年企業法の合併規定に基づく関連する合併状況の創出につながるかどうか、またその可能性があるかどうかを検討しており、もしそうであれば、その状況の創出が英国の商品またはサービスの市場における競争の実質的な低下につながることが予想されるかどうかを検討している」と述べている。

Microsoftは、4月にNuance買収を発表した際に、ヘルスケア分野でのプレゼンスを強化するために音声テキスト化企業を買収すると述べていた。ヘルスケア分野では、Nuanceが多くの臨床医支援製品を開発している(遠隔診療の記録のためのテック、臨床文書作成のための音声認識ツール、AIを活用した放射線診断レポートなど)。

反トラスト規制当局は、今回の買収計画をさらに精査する必要があると判断した場合、第1段階の調査を開始する。その後、まだ懸念すべき理由があると判断した場合、より詳細な第2段階の調査を開始する可能性がある。

また、いずれかの段階で、懸念される競争上の問題がないと判断し、買収を許可することもあり得る。

逆に、懸念がある場合には、買収を実行する前に救済措置が必要と判断したり、買収停止を命じたりする可能性もある。

Nuance買収計画に対するCMAの予備調査について、Microsoftにコメントを求めている。

Amazon(アマゾン)、Apple(アップル)、Google(グーグル)、Microsoft、さらにはFacebook(フェイスブック)などのテック大手は何年もの間、健康状態の追跡やモニタリングなどを行うツールの開発に関心を示してきたが、デリケートな分野への進出は、重要分野のデジタル化が進む中で、企業の支配力や市場力をさらに強めることになるのではないかという懸念がある。

一方、英国では、プラットフォームの力を考慮して国内の競争法を再編成しているところで、「競争促進」の体制を導入し、大企業の市場支配力から中小のイノベーターを保護したいとしている。

競争監視委員会は、CMA内部に設置される新しい部署Digital Markets Unitにハイテク企業を監督する権限を与える法案に先立ち、M&A活動やその他の主要な動き(Googleの戦略的な「プライバシーサンドボックス」計画など)を引き続き監視している。

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最近では、CMAはMeta(元Facebook)に対し、アニメーションGIFプラットフォームGiphyの買収を取り消すよう命令した。これは、これまでハイテク大手のM&Aに異議が唱えられることがほとんどなかったことを考えると、競争監視において注目すべき出来事だ。CMAは、プラットフォームの力と野心に挑戦する最前線にいることを強調している(命令によって面倒な取引破棄が必要な場合もある)。

画像クレジット:Jeenah Moon/Bloomberg via Getty Images / Getty Images

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Nariko Mizoguchi