不振のEVスタートアップLordstown MotorsからGMが撤退

General Motors(GM、ゼネラル・モーターズ)は、電気自動車のスタートアップ、Lordstown Motors(ローズタウン・モーターズ)の持ち株を売却した。同社は初の製品となる電動ピックアップトラック、Endurance(エンデュランス)の生産に向けて苦闘を続けている。Detroit Free Press(デトロイト・フリー・プレス)が伝えた。

GMが所有していた750万株の普通株式は、総株数の5%以下であり、当初の価値は7500万ドル(約87億円)だった。同社はこの持ち株を2021年第4四半期に、期間非公開の売却禁止期間経過後に売却した。

このニュースは、Lordstownが第4四半期決算で、損失が8120万ドル(約93億円)、1株当り0.42ドル(約49円)に拡大したことを公表した後にやってきた。米国時間2月28日の決算会見で同スタートアップは、Enduranceトラックの2023年までの生産、販売計画がわずか3000台で、うち500台を2022年中に販売する予定であることを発表した。それも、同社が追加資金を調達できた場合の話だ。同日Lordstownは、トラックを500台作るためにはさらに2億5000万ドル(約288億円)必要であることを投資家に伝えた。

追加の金の無心はそれだけでもよい兆候ではないが、さらに問題なのは更新されたガイダンスが、2020年10月のLordstownのSPACによる上場に向けて前経営陣が投資家に約束した3万2000台という数字よりはるかに少ないことだ。

LotdstownのGMとの関係は2018年にさかのぼり、当時GMは、同社のローズタウン工場を閉鎖するつもりであると言い、ドナルド・トランプ前大統領はそれに反対していた。その後GMは、工場を不振だったEV企業、Workhorse(ワークホース)に売却した(ちなみにこの会社も現在不調に悩まされており、Q4決算では1株当り1.13ドルの損失だった)。

Workhorseのファウンダーで前CEOのSteve Burns(スティーブ・バーンズ)氏は、この旧GM工場で電動トラックを作るべく、Lordstown Motorsを立ち上げ、GMは750万ドルを投資した。Lordstownはこの工場に約2億4000万ドル(約277億円)を投じたが、離陸させることはできなかった。

生産問題の最中に経営陣の重要人物を失うなど幾多のドラマを経た後、Lordstownは2023年を迎えるための現金が足りないことを打ち明け、2021年9月に同工場をiPhone製造のFoxconn(フォックスコン)に2億3000万ドル(約265億円)で売却した。しかしその契約はまだ完了しておらず、Lordstown経営陣は28日、売買契約が予定どおりには進捗していことを発表し、これまた間違いなく投資家を不快にさせる発表となった。

画像クレジット:MEGAN JELINGER / AFP / Getty Images

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Nob Takahashi / facebook

iPS細胞による免疫細胞臨床応用に向けた研究を進める京都大学発サイアスが21.3億円調達、研究開発体制拡充・米国展開へ

iPS細胞由来の免疫細胞の臨床応用に向けた研究を進めるサイアスは2月28日、シリーズBラウンドとして、第三者割当増資による総額21億3000万円の資金調達を実施したと発表した。引受先は、新規投資家のEight Roads Ventures Japan、F-Prime Capital Partners、既存投資家のD3 LLC。調達した資金により、研究開発体制を大幅に拡充し、次世代の免疫細胞療法の開発を加速する。またEight RoadsとF-Primeの協力の下、本格的な米国展開の準備を開始する。

サイアスは、京都大学iPS細胞研究所(CiRA)の金子新教授の研究成果を基に、iPS細胞由来の免疫細胞(T細胞やNK細胞等)の臨床応用に向けた研究開発を進める京都大学発のスタートアップ。

他家iPS細胞を原料として、固形がんをターゲットにT細胞受容体(TCR)を遺伝子導入するiPS細胞由来T細胞製品や、固形がんをターゲットとするキメラ抗原受容体(CAR)遺伝子を導入したiPS細胞由来NK細胞製品など、各種免疫細胞治療の研究開発を行っている。また、この分化技術から製造される再生免疫細胞は、様々なTCRやCARを搭載しており、多様ながん種に対する治療法の開発を行えるプラットフォームとなりえるという。そのため、所望するターゲットを狙ったTCRやCARを搭載した免疫細胞製品を様々なパートナーと共同開発することも可能としている。

京都大学iPS細胞研究所を起源とするサイアスの免疫細胞分化方法は世界有数の技術としており、これを基に世界最先端の遺伝子・細胞療法市場、巨大な資本市場、さらに優秀な人材へのアクセスが可能なアメリカに踏み出すことで、グローバル企業への進化を目指す。

コンテンツクリエイターに無料の音楽を提供する英国のUppbeatが約7億円を調達

英国を拠点とする音楽プラットフォームのUppbeatは、コンテンツクリエイターがYouTubeやTwitch、TikTokなどのプラットフォームで公開する動画に使用できる無料で高品質の音楽を簡単に見つけられるサービスを構築し、現在50万人以上のユーザーが利用している。同社はビジネスを成長させるためにシリーズAで460万ポンド(約7億500万円)を調達したと発表した。

Uppbeatを構築したのは、英国を拠点とする音楽ライセンス企業のMusic Vineを共同で創業したLewis Foster(ルイス・フォスター)氏とMatt Russell(マット・ラッセル)氏だ。2人は、自分たちの専門性を活かしてクリエイターの間で高まっている無料の音楽リソースのニーズに応えるチャンスがあると考えた。現在、1億人以上がソーシャルプラットフォームでコンテンツを共有しているが、無料でありながら高品質の音楽の選択肢は多くないと2人は確信していた。

Uppbeatは2021年1月にサービスを開始し、費用のかかる音楽ライセンスプラットフォーム、あるいはYouTubeのオーディオライブラリやクリエイティブ・コモンズの音楽といった無料の音楽に代わる選択肢を提供することで、クリエイターが作るコンテンツで使われる音楽の著作権に関する頭痛の種を取り除いている。

Uppbeatはフリーミアムのモデルを活用して、クリエイターがアカウントを作成するとサイトのカタログの約50%にアクセスでき、1カ月に10件ダウンロードできるようにしている。プレミアムのサブスクリプション(月額6.99ドル、約800円)ではすべてにアクセスし、無制限にダウンロードできる(3年間と永続のサブスクリプションも用意されている)。

2021年9月にはサイトを拡張して、音楽だけでなく「ミームスタイル」のコンテンツに適した効果音とクリップのライブラリも提供している。

画像クレジット:Uppbeat

曲にはライセンスのない使用への対抗策としてフィンガープリントが必要であるため、Uppbeatの音楽を使う際に著作権の主張が発生することもある。しかしおよそ5分以内でシステムが必要なクレジットを確認してから主張を自動で処理する。無料ユーザーはYouTubeの動画の説明にクレジットを追加して著作権の主張をクリアすればよい。YouTubeを利用するプレミアムユーザーは自分のチャンネルをホワイトリストに登録して自動で著作権の主張から保護することができる。

このシステムはYouTube限定ではない。音楽と効果音はストリーマー、ポッドキャスター、ブロガー、その他のソーシャルメディアクリエイターが利用する、ほぼすべてのプラットフォームで動作する。

一方、Uppbeatのアーティストは音楽の所有権をすべて保持し、レベニューシェアベースで報酬を受け取る。

Uppbeatによれば、毎月7万5000人以上の新規ユーザーを獲得し、サイトへのトラフィックは月間100万セッションを超えるという。リテンションは高く直帰率は10%未満の低さであると、同社はTechCrunchに対して語った。セッションタイムの平均は5分以上だという。

Uppbeatのカタログはサービス開始時の1000曲から3000曲以上へと増えている。2500種類の効果音とクリップも追加された。同社は、年間収益ランレートは71万8000ドル(約8300万円)で、Music Vine全体としてはおよそ240万ドル(約2億7600万円)と発表している。

同社は、シリーズAの投資家は戦略的支援者でありこの分野のリーダーで、当人が公表を望まないため発表できないと述べた。

今回の資金調達により、Uppbeatは同社の音楽をYouTubeで公開してブランドのプレゼンスをさらに高め、オンラインのコミュニティとこれまで以上に直接関わっていくとしている。バックエンド全体を見直して、パーソナライズ機能を備えたスマートなユーザーインターフェイスの構築も予定している。

さらにクリエイター向け新機能を公開する計画もある。例えばクリエイターが独自のプレイリストを作成して共有する機能が挙げられる。これによりUppbeatのアーティストの露出が増え、クリエイターの収益化につながる可能性もある。すでに同社はユーチューバーと連携し、厳選された「パートナーのプレイリスト」を公開してユーチューバーが自分のチャンネルでよく使う音楽を紹介している。

従業員も現在の9人から増員し、新しいオフィスに移る予定だ。

共同創業者でCEOのフォスター氏は次のように述べた。「Uppbeatの公開以来、クリエイターコミュニティの反応はまさにすばらしいものです。クリエイターの積極性とフィードバックによりこのプラットフォームは現在の地位を得ることができました。Uppbeatがエキサイティングな新しい展開を始めるにあたり多額の投資を受けられたのはクリエイターのみなさんのおかげです。今回の調達はUppbeatが目指す成長戦略の資金となるゲームチェンジャーであるだけでなく、クリエイターコミュニティにとってエキサイティングな出来事であり誰もが自由に創作活動ができるようにするという我々の道のりにおける大きなマイルストーンです」。

画像クレジット:Uppbeat

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(文:Sarah Perez、翻訳:Kaori Koyama)

Reddit、誤報の「大量」発生を理由にr/Russiaを隔離

ロシアのウクライナ侵攻をめぐる誤報に主要なソーシャルプラットフォームが対処する中、Redditは独自の対策を行っている。

米国時間3月1日、Redditはサブレディットr/Russiaを隔離リストに追加し、このコミュニティが検索結果に表示されるのを制限し、警告メッセージを表示させるようにした。この中間的な措置は、Redditが最も悪名高い有害コミュニティの1つであるr/The_Donaldを抑制するためにとった措置と同様のもので、最終的にこのサブレディットは全面禁止になった。

現在、r/Russiaを訪れると「このコミュニティには、信頼できる情報源によってサポートされていない情報が大量に含まれています」という警告ページが表示される。Redditユーザーは警告をクリックすることでr/Russiaを訪問することができるが、メッセージはページの上部に表示されたままだ。

サブレディットr/RussiaPoliticsも隔離リストに追加され、同じ扱いになっている。r/Russiaに対する措置を最初に報じたのはMashableで、検疫される直前には26万5000人のメンバーがいたという。

r/Russiaが隔離される前日には、モデレーターがピン留めしたポストに「denazification(非ナチ化)」というタグを付け、炎上ポストの最後にはウクライナ国旗が付けられた。ピン留めされたポストの中には、ウクライナ政府が犠牲者数を意図的に多く発表している、人間の盾を使っている、交渉を拒否しているといった虚偽の非難があった。

Redditによると、隔離状態にするのは、その気がないのにうっかり見てしまう、適切なコンテキストを欠いた状態でサブレディットのコンテンツを見るというケースを防ぐためだという。そのコミュニティに、すでに参加している人はアクセスできるが、それ以外のリーチを制限するという考えだ。

r/Russiaは、ウクライナ侵攻に関するロシア寄りの誤報をばらまいて検疫されたようだが、モデレーターの中にもRedditのルールに反する者がいた。Redditによると、同社は「不誠実な行為で、あるモデレーターを排除した」という。そして他のモデレーターたちにも「同社のポリシーを思い出して」もらった。問題のモデレーターが一体何をしたのかは公表されていない。

「私たちの明確なポリシーは、モデレーターとユーザーはこのプラットフォーム上の会話やコミュニティを操作したり妨害しようとしてはならないということです」とRedditの広報担当者は説明する。

画像クレジット:TechCrunch

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(文:Taylor Hatmaker、翻訳:Hiroshi Iwatani)

【3月3日】掲載記事アクセスランキング・トップ5―1位はContiランサムウェアグループの内部チャットログ流出

【3月3日】掲載記事アクセスランキング・トップ5―1位はContiランサムウェアグループの内部チャットログ流出

掲載記事のうち、3月3日午前7時現在集計で最もアクセスのあった記事5本を紹介。

第1位:ロシアのウクライナ侵攻支持を宣言したContiランサムウェアグループの内部チャットがネットに流出


ランサムウェアグループContiのチャットログのキャッシュが、ロシアのウクライナ侵攻を支持するグループに異議を唱えると主張している内部関係者らによって、オンライン上に流出した。情報は、マルウェアのサンプルやデータを収集するマルウェア研究グループであるVX-Undergroundに共有された。

第2位:グーグル、ウクライナでGoogleマップのリアルタイム交通状況ツールを無効に


Alphabetは米国時間2月28日、取材に対し、ウクライナでGoogleマップのライブ交通状況ツールの一部を無効にしたことを明らかにした。Reutersが報じたこのニュースは、同国がロシア軍からの攻撃に直面している中で、同社が地元当局と協議した後に発表された。

第3位:NVIDIA、ランサムウェア攻撃で機密データが流出


NVIDIAは、先週のサイバー攻撃でハッカーが従業員の認証情報や会社の専有情報などの機密データを同社のネットワークから盗み出し、現在「オンラインでリークしている」ことを確認した。広報担当者が米国時間3月1日、TechCrunchに語った。

第4位:ウクライナ侵攻のなか、ロシア政府がアップル・Metaなど米ハイテク大手に検閲圧力を強化


ロシアのウクライナ侵攻が続くなか、ロシア政府がアップルやGoogle、Twitterなどハイテク大手に現地オフィスを開設するよう義務づける法律を遵守するよう迫り、検閲キャンペーンを強化していると報じられています。

第5位:ウクライナ侵攻に対する経済制裁により、ロシア国内でApple PayやGoogle Payなどが利用停止


ロシアのウクライナ侵攻を受けて、米国政府およびEUはロシアの大手銀行5行に対して外国為替取引の制限を含む経済制裁を実施しました。その結果、現地の主要銀行口座と紐付けられたApple PayやGoogle Payなどのデジタルウォレットがロシア国内で利用停止となったと伝えられています。

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ウクライナへの暗号資産による寄付金、政府基金の使われ方

ロシアによるウクライナ侵攻を受け、ウクライナの公式Twitterアカウントは寄付を募るべく、ここ数日、暗号資産ウォレットのアドレスを共有している。筆者が以前書いたように、ウクライナのデジタル変革省の広報担当者が「これらのアカウントは国が所有するもの」と確認したように、共有しているウォレットアドレスで受け取った寄付はウクライナ政府が管理している可能性が高いようだ。

関連記事:暗号資産の寄付、ウクライナはどう活用するか

しかし、これらの暗号資産による寄付の目的は何なのか、その資金で何を購入するのか。ブロックチェーンの性質上、ある時点までは暗号資産取引を追うのは簡単だ。ブロックチェーンエクスプローラーに公開アドレスを入力すれば、入出金取引のリストを見ることができる。

例えば、Ethereum(イーサリアム)のブロックチェーンでは、ほとんどの送金はキエフに拠点を置く暗号資産取引所のKuna(クーナ)に向かっている。

「Kuna.ioはウクライナの資金調達を技術面でサポートしています」とKunaの広報担当者は2月28日に電子メールで筆者に述べた。「すべての資金は安全で、要請に応じて政府に送られています」。

しかし、一度資金が取引所にアップロードされると、追跡が難しくなる。そこで、筆者はKunaの創業者Michael Chobanian(マイケル・チョバニアン)氏にいくつか質問した。チョバニアン氏は、暗号資産寄付のセットアップにおけるKunaの役割と、ウクライナ政府の動機について詳しく教えてくれた。

同氏は、寄付に関する情報を共有するためにこのほどTwitterアカウントを作成したことを認めた。「その通り、私のアカウントです。最近作りました。Twitterは主に英語のコミュニティなので、ここではTwitterはあまり人気ではありません。しかし世界に発信しなければならないので、アカウントを作りました」と語った。

キエフ時間3月2日午後12時に、同氏は2枚のスクリーンショットを公開した。「ウクライナの暗号資産基金」(Twitterで@Ukraineが共有したウォレットアドレスだ)には3100万ドル(約35億8000万円)超が集まり、別の基金には1700万ドル(約19億6000万円)ほどが寄せられている。

「私たちは2つの基金を持っています。まず、自分たちの基金を立ち上げ、それがうまくいっているのを政府が見ました。そしてデジタル変革省から、政府基金を立ち上げるのを手伝って欲しいと打診がありました。そこで、政府基金も作ったのです」とチョバニアン氏は語った。

それぞれのファンドのアドレスは異なるチャネルで共有されている。「現在、私たちは2つの基金を持っています。Twitterにあるのが政府基金で、Telegram(テレグラム)や他のソーシャルメディアにあるのがKuna基金です」と付け加えた。

ウクライナの軍事費の資金源

チョバニアン氏が「政府基金」と呼ぶものは、現在もKunaが管理している。しかし、同氏によると、Kunaは政府の代理で動いており、暗号資産アセットについては発言権がない。

「私たちは技術のプロバイダーです。基本的には、これらの基金の暗号資産銀行として機能しています。私たちは資金を集め、その資金がクリーンであることを確認します。その後、支払いや通貨の要件に応じて、変換するか、直接支払うかします」と同氏は語った。

「この基金は、軍隊のためのものです。変革省の助けを借りて、大部分が軍によって運営されています。そして、輸入される特殊品にお金が使われています。それらの特殊品は軍や特殊部隊に直接送られます。具体的には何を買っているのでしょうか。明らかな理由で、言えません。政府が実際に何を買ったかを公表するかどうかはわかりません。明らかに秘密だからです」と同氏は述べた。

Telegramやその他のソーシャルネットワークで共有されているKunaのもう1つの基金は、目的が少し異なる。「私の基金では、ドローンを買い、ガソリンを買い、人々に食事を提供し、キエフやハリコフといった最も危険な場所から人々を避難させるための輸送費などに使っています」とチョバニアン氏は説明した。「私たちは正規軍にも供給していますし、政府から銃を受け取って戦っている普通の人々にも供給しています」と付け加えた。

暗号資産での物資購入

興味深いことに、暗号資産はインターネットを通じて資金を調達するためだけに使われているわけではない。Kunaは、これらの暗号資産をすべて不換通貨に変換してはいない。

「どこにいくら支払うのか、暗号資産を受け取って喜ぶ人がいるかを理解するまで、暗号資産のままにしています。支払いの90%は暗号資産のみで行っています」とチョバニアン氏は述べた。

しかし、誰かが不換通貨で支払われる必要がある場合、Kunaは暗号資産を換えて銀行口座に送金することができる。「我々は暗号資産、ユーロ、そしてドルで支払っており、資金のニーズを満たすために必要なあらゆる種類の取引を行っています」と話した。

画像クレジット:Sergey Bobok / AFP / Getty Images

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(文:Romain Dillet、翻訳:Nariko Mizoguchi

Netflixが「ストレンジャー・シングス」や「ウォーキング・デッド」のゲームを開発するフィンランドのNext Gamesを約83億円で買収

ロシアによるウクライナへのいわれのない侵攻を受け、フィンランドがNATOへの加盟を検討する中、フィンランドではまた新たなM&Aが進行している。米国時間3月2日、Netflix(ネットフィリックス)がフィンランドでモバイルゲームを開発するNext Games(ネクスト・ゲームス)を、総額6500万ユーロ(約83億円)で買収することを発表した。Next Gamesはヘルシンキの市場に上場しており、今回の買収は1株あたり2.10ユーロ(約268.1円)で全額現金による株式購入として行われる。この取引はまだ完結していないが、Next Gamesの取締役会はすでにこの取引を承認して株主に推奨しており、2022年第2四半期に完了する予定だ。

今回の契約は、ビデオカタログの補完としてゲームコンテンツを充実させたいNeflixの大きな戦略の一環であり、Next Gamesはまさにうってつけの相手なのだ。モバイル向け無料ゲームを提供するNext Gamesは「ストレンジャー・シングス」や「ウォーキング・デッド」など、Netflixの人気作品に関連するタイトルをすでに開発しているため、両社の絆はすでに強い。今回の契約により、その絆がさらに強まり、Next GamesのIP、人材、アプリ内課金の既存ビジネスがとりこまれるために、Netflixのマージンは、単にブランドのライセンス出しているとき以上に改善されることになる。

Netflixのゲーム担当副社長であるMichael Verdu(マイケル・バードゥ)氏は「Next Gamesは、経験豊富な経営陣と、エンターテインメントフランチャイズに基づくモバイルゲームの優れた実績、そして確かな運営能力を備えています」と声明で語っている。「Next Gamesが戦略的地域と重要な人材市場の中で中核スタジオとしてNetflixに加わり、社内のゲームスタジオの能力を拡大できることをうれしく思っています。ゲーム事業はまだ始まったばかりですが、Next Gamesとともに、世界中の会員のみなさまに喜んでいただけるワールドクラスゲームのポートフォリオを構築していけると確信しています」。

Next Gamesの従業員数は2021年末で120名、直近の年次決算では2020年の売上高は2720万ユーロ(約34億8000万円)となっている。この年の売上の約95%は、ゲーム内(アプリ内)課金によるものだった。今回の買収で、既存のタイトルをさらに充実させ、Netflixのカタログを充実させるための投資を行うことができる。

2013年にNext Gamesを設立し、CEOを務めるTeemu Huuhtanen(ティーム・ホーフタネン)氏は、フィンランドの幅広いゲームエコシステムで育った人間であり、長年にわたってゲームの新境地を開拓する上で大きな役割を担ってきた。Next Gamesの直前には、Angry Birds(アングリーバード)のパブリッシャーであるRovio(ロビオ)の重役を務めていた(当時はまだRovioがアプリストアの中で圧倒的な存在感を示していた頃だ)。その前に彼は約10年間Sulake(スレイク)にいた。約10年をSulakeで過ごし、Habbo Hotel(ハボホテル)(現在はHabbo[ハボ]と呼ばれ、その間に多くの論争を乗り越えた)を開発してオンライン仮想世界の先駆者となった。

ホーフタネン氏は声明で「私たちは、世界で最も愛されているフランチャイズをベースにした、真の、長期的なインタラクティブエンターテインメントを創造し、グローバルエンターテインメントビジネスのパートナーとなるというビジョンの実現に、変わらない焦点を当ててきました」という。「世界最大のストリーミングサービスであるNetflixと手を組むことで、世界中の人々が楽しめるインタラクティブな体験を創造するという当社の戦略を論理的かつ刺激的に継続する機会が得られます。Netflixとの緊密なコラボレーションによる『ストレンジャー・シングス:パズル・テイルズ』は、私たちがともに強力なパートナーシップを築くことができることを証明しています。これは、あらゆる面でスタジオをレベルアップさせ、ともに使命を果たしていくためのまたとない機会です」。

CrunchBaseのデータによると、Netflixは、その規模の割にこれまでわずか5回しか買収を行っていない。Next Gamesは、その中ではゲームに特化した最初の企業だが、その他に買収したものは、視覚効果スタジオ、若年層向けインタラクティブコンテンツメーカー2社、アニメコミックパブリッシャー、Roald Dahlの遺産であり、同社のM&A戦略には、常にゲームの側面があったことは間違いないと思われる。

また、ディズニーのような企業が、自社のストリーミングビデオ・プラットフォームの品揃えを充実させるために、主要なビデオコンテンツを引き上げてNetflixの足を引っ張り続けることができる時代にあっては、これはNetflixが自らのプログラムを充実させる一手段となっている。Next Gamesのような企業の買収は、自社専用の作品を制作または購入し、それをベースに複数の媒体や体験に展開する大きなフランチャイズを構築する戦略を明確にするものだ。

画像クレジット:TechCrunch

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:sako)

Mac版OneDrive同期アプリがついにAppleシリコンにネイティブ対応、一般公開開始

Mac版OneDrive同期アプリがついにAppleシリコンにネイティブ対応、一般公開開始

Microsoft

マイクロソフトは昨年末、macOS版クラウドストレージOneDrive同期アプリがM1 Mac向けにパブリックプレビューとして利用可能になったと発表していました。それから約3ヶ月を経て、ついにM1、M1 ProおよびM1 MaxといったAppleシリコン(アップル独自開発プロセッサ)上でネイティブ動作する一般公開版がリリースしたと明らかにされています。

説明では、Appleシリコン用のOneDrive同期アプリが「GA(Generally Available)」版として利用できるようになったとのこと。MS的に「GA」とは、ベータテスター以外の誰でも利用できる一般公開版のこと。具体的にはバージョン22.022であり、最新版がインストールされているかどうかはアプリの環境設定で確認できます。

MSいわく、ネイティブ対応版は「OneDriveがAppleシリコンのパフォーマンス向上をフルに活用できる」とのことです。これまでも非ネイティブ対応版、すなわちインテル製チップ向けアプリもAppleシリコンMac上で動かせましたが、あくまでRosetta2経由であり、電力やRAM消費が最適化されていませんでした。

一般にM1ほかAppleシリコンは「消費電力が控えめのわりに高パフォーマンス」の傾向があることが好評です。ネイティブ対応したOneDriveアプリ最新版では、その恩恵が十分に受けられることになりそうです。

最初のM1チップ搭載Macが2020年末に登場してから、はや1年以上も経ちました。OneDriveアプリのネイティブ対応はようやくの感もありますが、他のクラウドストレージアプリも対応が遅れぎみです。Googleドライブの正式対応も昨年10月のことであり、Dropboxも今年はじめにベータテストを始めたものの、まだ一般公開には至っていません。

ともあれ各社クラウドストレージアプリのネイティブ対応が進めば、Appleシリコン搭載のMacBook各種が内蔵バッテリーだけで稼働できる時間も長くなるはず。今月のイベントで登場すると噂の「M2」搭載13インチMacBook Proは現行モデルよりバッテリー持ちが良くなるとの予想もあり、出先での作業がいっそうはかどるかもしれません。

(Source:Microsoft OneDrive Blog。Via 9to5MacEngadget日本版より転載)

Satellite Vuが熱画像撮影のための衛星コンステレーション打ち上げに向けて約24億円調達

2100万ドル(約24億円)の新たな資金を得たSatellite Vu(サテライト・ヴュー)は、2023年に最初の7基の衛星によるコンステレーションを打ち上げ、計画通り地球の熱監視を開始することがほぼ決定している。Lockheed Martin(ロッキード・マーチン)とIn-Q-Tel(イン・キュー・テル)が投資家に加わっていることからもわかるように、同社による軌道上からの暑さと寒さの監視は、重大な経済的洞察と、さらにそれ以外の種類の洞察にもつながる可能性がある。

Satellite Vuは、急速に進化している地球観測画像の製品群に興味深い機能を追加する。例えばPlanet(プラネット)のような可視光や、ICEYE(アイスアイ)のようなレーダーによる3D構造に焦点を当てたプロダクトが多いが、Satellite Vuは熱画像を収集し、幅広い産業に応用することを目指している。

創業者兼CEOのAnthony Baker(アンソニー・ベイカー)氏が、2021年のシードラウンドの際に説明したように、熱画像を見れば、建物に人が住んでいるか、都市のどの部分に交通量が多いか、工場の熱や冷却水が漏れているか、地下水が消失しているか増加しているかなどを知ることができるのだ。

関連記事:産業や気候変動モニタリングで重要な赤外線と熱放射を観測する衛星画像のSatellite Vuが5.4億円調達、2022年に衛星打ち上げへ

「私たちの技術は、建物の熱的フットプリントを監視し、経済活動の洞察と効率を導き出すことができます。また、水路の廃棄物汚染を発見したり、災害救助を支援するためにも役立ちます」と、ベイカー氏はTechCrunchにメールで語った。

英国を拠点とする同社はこれまで、製品の需要を検証するために、高高度飛行で撮影した写真と、独自の画像処理ハードウェアを使って、敷地や都市全体をスキャンしてきた。この実証飛行が非常に好評であることが証明されたため、同社は実際に衛星が打ち上げられるまで定期的な運用を計画している。

衛星の打ち上げは2023年の初頭になる予定だ。同社はSpaceX(スペースエックス)と契約し、この打ち上げ会社のライドシェア機で、最初の衛星コンステレーションとなる7基の衛星を軌道へ運ぶ。Satellite Vuの「秘伝のタレ」である光学技術は、大気圏内飛行の時代からアップグレードされ、より鮮明な昼間の画像を提供できるようになっている。衛星自体もより機動力が増しており、1パスあたりより多くのショットを撮影できるようになった。

Satellite Vuの画像処理衛星のイメージ画像(画像クレジット:Satellite Vu)

この技術が諜報活動や防衛に応用できることは明らかだ。しかし、1ピクセルあたり約3.5メートルという解像力では、衛星に1人ひとりの人間を見る分ける能力はないと、ベイカー氏は断言する。もちろん、自動車や人の集団など、人間がいることを示す大きな特徴は見えるかもしれないが、これは戦術的に有用なものではない(比較のために挙げると、他社の衛星熱画像の解像度は1ピクセルあたり100メートル程度である)。

そうは言っても、これが商業的に価値ある情報源であることは明らかだ。同社がA2ラウンドと称する投資機会に、ロッキードとIn-Q-Telが誘い込まれたことからもそれはわかる。

「このラウンドは1500万ポンド(約23億円)で完全にコミットされていました」と、10月にベイカー氏は書いている。「しかし、ロッキード・マーチン、In-Q-Tel、Contrarian(コントラリアン)はもう少し時間を必要としていたので、このラウンドに参加させたかったのです。経営陣と現在の投資家は、シリーズBでコンステレーションに資金を供給する強力なシンジケートを持つことの重要性を理解し、これらの新しい参加者を高く評価しました」。

もちろん、複数の衛星を使うコンステレーションのコストは些細なものではないが、Satellite Vuは用心深く動いて、すべての正しいボックスにチェックマークを入れているようだ。

防衛用途と、気候変動や公害の追跡や対策に役立つ可能性を組み合わせることは、現時点において、このビジネスで得られる成功に最も近いと思われる。

画像クレジット:Satellite Vu

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

MITスピンオフ企業OPT Industriesが3Dプリントによる鼻腔用綿棒の生産拡大に向けて約17億円を調達

OPT Industries(オプト・インダストリー)という社名を耳にしたことがあるならば(ない人がほとんどだと思うが)、それはこのMITのスピンオフ企業が、新しい鼻腔用綿棒を3Dプリントで作ったからだろう。例年ならあまり話題にならないような種類のものだが、昨今の世界的な新型コロナウイルス感染流行によって大きな注目を浴びたのだ。

この「InstaSwab(インスタスワブ)」は、髪の毛の幅にも満たない極細のポリマー繊維で構成された複雑な幾何学模様の構造が、デザイン界でも注目されている。

OPTの3Dプリントシステムは、開発に7年の月日がかかっているが、このタイミングで「細菌サンプルの溶出に最大20倍の効果がある」という綿棒が誕生したことは、確かに幸運だった。もちろん、このようなデバイスの必要性は新型コロナウイルスより前からあり、コロナ禍が(幸いにも)過ぎ去った後も確実に残るだろう。

画像クレジット:OPT Industries

アーリーステージのスタートアップが、大規模な資金調達を始める時に、まさに夢見るような報道のされ方であったことは間違いない。同社は米国時間3月1日、1500万ドル(約17億円)のシリーズA資金を調達し、再び注目を浴びることになった。このラウンドはNorthpond Ventures(ノースポンド・ベンチャーズ)が主導し、既存投資家のCrosslink Capital(クロスリンク・キャピタル)と、MITと提携しているE14 Fund(E14ファンド)が参加した。

InstaSwapは当面、この会社にとって不可欠な製品であり続けるだろうから、同社はこの綿棒の代替製品の生産拡大を計画している。今回の資金調達と同時に、OPTはLumiraDx(ルミラ・ダイアグノスティクス)が、InstaSwapを承認済み綿棒のリストに加えたことを認めた。3Dプリント製品がこの栄誉に浴するのはこれが初めてだ。

「先進的な製造企業として、私たちはマクロスケールの課題を解決するマイクロスケールの技術を構築することに価値を見出しています」と、創業者兼CEOのJifei Ou(欧冀飞、オウ・ジーフェイ)氏は述べている。「OPTは顧客と協力して、ヘルスケア、自動車、化粧品、消費財、その他の業界向けの斬新なメタマテリアルと製品の設計・製造に取り組んでいます。私たちはこの新たな資金を使って、InstaSwabの需要に対応し、製品開発を促進して、事業を拡大させ、チームを成長させるつもりです」。

画像クレジット:OPT Industries

その点から見れば、この綿棒はコンセプトの証明を超えたものであることは間違いない。しかし、これはOPTのアディティブ・マニュファクチャリング(付加製造・積層造形)を支える基盤技術の出発点のようなものでもある。同社の「RAMP 3D」と呼ばれる3Dプリンターは、エッジからエッジまでロール状にプリントするため、従来の方法よりもはるかに速い規模で高解像度のプリントを作成することができる。また、24時間プリント可能であるため、アディティブ・マニュファクチャリングの長年の目標であるサプライチェーン問題の対処において、極めて重要な役割を果たすことができると、同社は確信している。しかし、従来は規模を大きくすることに問題があった。

そこでOPTは、2021年後半に、InstaSwabの需要拡大に対応するため、最初の本社があるベッドフォードに近いマサチューセッツ州メドフォードに、1万4000平方フィート(約1300平方メートル)の製造施設を新設した。

画像クレジット:OPT Industries

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(文:Brian Heater、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

フォードが大規模な構造改革でEVと内燃機関のユニットを分割

Ford(フォード)は米国時間3月2日、電気自動車と内燃機関(ICE)自動車の異なる課題と機会により集中するため、大幅な組織再編を行うと発表した。この2つのユニットは、Fordの既存の企業傘下で運営され、現時点では、以前から噂されていたようなユニットのスピンアウトは行われない。2つの部門はFord Blue(フォード・ブルー)とFord Model e(フォード・モデルe)と呼ばれている。Ford Blueは、Mustang(マスタング)、F-150、Bronco(ブロンコ)などの既存および将来のICE車両を統括し、Ford Model eは、コネクティビティと電気自動車に焦点を当てる。

FordのチーフEVデジタルシステムオフィサー、Ford Model eのDoug Field(ダグ・フィールド)氏は「これは我々のビジネスのやり方の近代化における本当に大きな変化となります」と、述べた。

この変化のもと、同社は収益性の予測と営業利益率を引き上げた。Fordは、この構造改革もあり、2030年までに世界販売に占めるEVの割合が、従来のガイダンスの40%から50%になると見込んでいる。また、営業利益率は8%から2026年には10%に上昇する見込みだ。

Fordによると、この新体制は、118年の歴史を持つミシガン州の自動車メーカーに、スタートアップのスピードと、大量生産企業の深い専門性を持たせることを目的としている。

モデルeビジネスユニットは、フォードの膨大なエンジニアリングおよび製造資源を利用しながら、より迅速に電気自動車を開発・生産することを目的としている。また、Ford Pro(フォード・プロ)、Ford Blue(フォード・ブルー)、Lincin(リンカーン)を含むFordファミリーのすべての部位を対象としたコネクテッド・サービスを開発することも任務の1つだ。

Fordは、Ford Model eが発展していく間、Ford Blueが会社を支えるとみている。

「Ford Blueは、Fordの未来に資金を提供するFordの収益エンジンになります」と、チーフ・トランスフォーメーション&クオリティ・オフィサーのStuart Rowley(スチュアート・ロゥリー)氏は述べている。

Ford Blueは、2つの新しいユニットのうち、おそらくより興味深いものだろう。その存在は、Fordが化石燃料部門からできるだけ多くの収益性を引き出そうとしていることを示している。それには、それなりの理由がある。現在、Fordはどの自動車メーカーよりもダイナミックで人気のあるラインナップを揃えている。Ford Broncoは大ヒット商品であり、超低価格のFord Marverick(フォード・マーベリック)ピックアップは売り切れが続出するほどのヒット商品である。同様に、アメリカで最も歴史のある2つの車名、MustangとF-150は、市場セグメントのリーダーであり、競合他社にその座を明け渡す気配はない。

FordのCEOであるJim Farley(ジム・ファーレイ)氏は、Fordが内燃機関を諦めていないことを明らかにした。「そのことを強調したいです」と、ファーレイ氏は語った。「我々は内燃機関に投資するつもりです」。

このニュースにより、Fordの株価は下落し、プレマーケットの動きで5%近くも下落した。同社の株価は、1月に記録的な高値を付けて以来、下落していたが、それでも過去52週間で33%上昇している。

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(文:Matt Burns、翻訳:Yuta Kaminishi)

バイデン大統領がソーシャルメディアのメンタルヘルスへの影響について訴え、一般教書演説で

ホワイトハウスは、バイデン大統領による初の一般教書演説に先立ち、米国におけるメンタルヘルスの危機に取り組む計画を発表し、特にソーシャルメディアが子どもや10代の若者に与える影響について強調した。この問題は、一部の議員の間で重要視されている。特に、内部告発者のFrances Haugen(フランシス・ホーゲン)氏がFacebook(フェイスブック、現在はMeta)に不利な内部文書を大量にリークした後はそうだ。内部文書には、10代の若者への悪影響を同社が認識している証拠も含まれていた。

ホワイトハウスによると、バイデン大統領は議会に対し、プライバシー保護の強化、子どもへのターゲット広告の禁止、テック企業による子どもの個人情報収集の停止を要請する。

一般的に、一般教書演説でテック企業が重要な役割を果たすことはない。バイデン大統領が米国3月1日夜、ロシアのウクライナ侵攻に関するより差し迫った危機を考慮し、言及さえしない可能性もある。とはいえ、大統領はソーシャルメディアのプラットフォームに対し、若いユーザーの安全を守るよう呼びかけている。ファーストレディのJill Biden(ジル・バイデン)博士がホーゲン氏を特別ゲストとしてこのイベントに招待したことは、ソーシャルメディア幹部に対する5回にわたる上院公聴会のきっかけとなったホーゲン氏の主張に、大統領が注目していることを示している。

「大統領は、子どものデータとプライバシーの保護をはるかに強化すべきと考えているだけでなく、プラットフォームやその他の双方向デジタルサービス提供者は、製品やサービスの設計において、利益や収益よりも、子どもや若者の健康、安全、幸福を優先させ確保すべきだと考えています」。ホワイトハウスのブリーフィングには、こう書かれている。

この文言は、ホーゲン氏が議会に登場した際に使っていた言い回しを彷彿とさせる。同氏は「60 Minutes」のインタビュー以来、元社員としての立場から、Facebookは安全性よりも利益を優先していると繰り返してきた。

大統領はまた、ソーシャルメディアが私たちにどのような害を及ぼすのか、およびその害に対処するためにどのような臨床的・社会的介入が可能かについての研究に、少なくとも500万ドル(5億7500万円)を投資する計画の概要を示した。また、米保健福祉省は「ソーシャルメディアとメンタルウェルネスに関する全米センター」を立ち上げ、10代のソーシャルメディア利用がもたらす影響について一般市民に啓蒙していく予定だ。

バイデン大統領はまた、子どもたちを対象とした過剰なターゲット広告やデータ収集を禁止するよう議会に要求する見通しだ。2000年に施行された児童オンラインプライバシー保護法(COPPA)は、13歳未満のユーザーの追跡やターゲティングを制限することを目的としているが、プラットフォームがユーザーの年齢を認識していることが証明されない限り、この法律を適用することはできない。つまり、子どもが「はい、私は13歳です」というボックスをクリックするだけで、子ども向けではないコンテンツにアクセスできてしまうため、COPPAは簡単に適用できないことが多い。

すでに一部の議員は、COPPAをより効果的なものにするためにアップデートを試みている。Ed Markey(エド・マーキー)上院議員(民主党、マサチューセッツ州)とBill Cassidy(ビル・キャシディ)上院議員(共和党、ルイジアナ州)は2021年、インターネット企業が13〜15歳のユーザーの個人データを本人の同意なく収集することを違法とする法案を提出した。この法案はまた「消去ボタン」を設け、ユーザー(またはその親)が、企業が収集した自らに関するデータを手動で消去できるようにするものだ。

「消去ボタン」のコンセプトは、Richard Blumenthal(リチャード・ブルメンタール)上院議員(民主党、コネチカット州)とMarsha Blackburn(マーシャ・ブラックバーン)上院議員(共和党、テネシー州)が最近提出した「Kids Online Safety Act(KOSA)」にも登場する。2021年10月には、YouTube(ユーチューブ)、TikTok(ティクトック)、Snap(スナップ)の代表者が上院の公聴会で、親が自分の子どもや10代の若者のオンラインデータを消去できるようにすべきだという意見に同意した。

ホワイトハウスのブリーフィングでは、アルゴリズムが選ぶコンテンツが、特に若い有色人種の女性の間で、メンタルヘルスに悪影響を与える可能性があることも取り上げている。

「『黒人の女の子』、『アジア人の女の子』、『ラテン系の女の子』と検索すると、ロールモデルやおもちゃ、アクティビティではなく、ポルノなどの有害なコンテンツが並ぶことがあまりにも多い。プラットフォームは、子どもたちが何が可能かを理解し、アクセスする機会に方向性を与えます」と報告書は述べている。「私たちは、プラットフォームやその他のアルゴリズムによって強化されたシステムが、差別的に子どもたちを標的にすることがないようにしなければなりません」。

ここ数年、ホワイトハウスがこのブリーフィングで説明したような問題を解決することを目指す法案がいくつか議会を通過したが、ほとんどは可決されるに至っていない。法案が成立するほどの勢いになっても、意図したことが達成されないこともある。トランプ前大統領は2018年「オンライン性的人身売買対策法(FOSTA)」に署名し、法制化した。その名の通り、人身売買を抑制するための法律だったが、かえって合意の上で働くセックスワーカーにとって、より危険な状況を作り出しただけだった。

バイデン大統領は、研究に500万ドル(約5億7500万円)を投じ、ソーシャルメディアとメンタルウェルネスに関する全米センターを設立したが、ソーシャルメディアとメンタルヘルスに関するコメントは、長年にわたって議会で議論されてきたことを繰り返したに過ぎない。しかし、これらのメッセージから、大統領が少なくとも、米国人のオンラインでの生活にいくらか注意を払っていることがわかる。

バイデン大統領は一般教書演説で、ソーシャルメディアの巨人に関する計画を示唆した。

「パンデミック以前にも、子どもたちは苦労していました。いじめ、暴力、トラウマ、そしてソーシャルメディアの害。今夜ここにいるフランシス・ホーゲン氏が示したように、我々はソーシャルメディアプラットフォームが利益のために子どもたちに対して行っている国家的な試みに対して責任を負わせなければならないのです。今こそ、プライバシー保護を強化し、子どもへのターゲット広告を禁止し、テック企業に子どもの個人情報収集をやめるよう要求するときです」。

また、ホーゲン氏は演説後、バイデン大統領の発言についてコメントした。

「バイデン大統領が一般教書演説でこの問題を提起し、これにより我々がソーシャルメディアが子どもたちの精神衛生に与えている真実の暴露を続け、この恐ろしい現実を変えるためにすべての関係者に力を与えられることに感謝しています」とホーゲン氏は報道機関にメールで送った声明で述べた。声明はTwitter(ツイッター)にも投稿された。「FacebookとInstagram(インスタグラム)は、私たちを中毒にし、また子どもと私たち自身の最悪の事態を増幅させるために設計された欠陥商品です。彼らは私たちの子どものメンタルヘルスを犠牲にして利益をあげているのです」。

【更新】3月2日米国東部時間午前9時20分、バイデン大統領とフランシス・ホーゲン氏の言葉を盛り込んだ。

画像クレジット:Al Drago/Bloomberg via Getty Images / Getty Images

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(文:Amanda Silberling、翻訳:Nariko Mizoguchi

グーグルがPlayストアからロシア国営メディアアプリを削除、EU禁止措置が迫るなか

Reuters(ロイター)によると、Google(グーグル)はApple(アップル)に続き、同社のPlayモバイルアプリストアからRT(旧ロシア・トゥデイ)とSputnik(スプートニク)のアプリを削除した。

クレムリンとつながりのあるこれら2つのメディアは、ロシアのウクライナ侵攻を受け、欧州連合(EU)で制裁を受けていた。

ロシア国営メディアのアプリに対するPlayストア禁止措置がEUに限定されたものかどうかは、すぐには明らかでない。両社に対する禁止措置は、本日(米国時間3月2日)から施行される予定だ。

Googleはこれ以前に、ウクライナ政府の要請により、同国ではRT Newsアプリを禁止していた。

【更新】グーグルの広報担当者は、今回のブロックは「ヨーロッパ」に限定されているとしている。

声明の中で、Googleは次のように述べた。

我々がこれまでに説明していた、レコメンデーションを減らし、収益化を一時停止し、ロシア国営メディアのリーチを制限する取り組みと一貫して、ロシアのニュースチャンネルRTとSputnikのモバイルアプリは、ヨーロッパ全域のPlayストアで利用できなくなりました。当社のチームは迅速な行動を取るために、24時間体制で状況を監視し続けます。

Googleは、EU加盟国および英国、ウクライナ、アイスランド、リヒテンシュタイン、ノルウェー、スイスで、これらのアプリがブロックされていることを確認した。

Apptopiaのデータによると、Android版のRT Newsアプリはこれまでに全世界で750万回インストールされており、iOS版の250万インストールよりもはるかにフットプリントが大きい。Android版のSputnik Newsアプリは全世界で289万ダウンロードと、これもiOS版のインストール数96万を上回る数字である。

関連記事:アップル、ロシア国営メディアアプリを世界のApp Storeで入手不可能に

先に報じたように、EUによるRTとSputnikの法的禁止は、オンラインプラットフォームを含む全配信経路を対象とするものだ。そして、RT、Sputnikおよびその子会社に対して、プラットフォーム大手が行動を起こすための厳しい期限を設定している。

EU加盟国の中には、3月初めにドイツ語版RTの放送を禁止したドイツのように、自国内でロシア国営メディアを一足先に禁止しているところもあるが、汎EU制裁の導入により、まもなく地域全体でより広範な包括的禁止が行われることになる。

EUの制裁措置の発効に先立ち、米国時間3月1日、GoogleはRTとSputnikのYouTubeチャンネルをブロックすることを発表した。

ただし、その措置においては、同社は全世界で両社のアカウントを停止するのではなく、法的制裁が適用されるEU域内でそれらYouTubeチャンネルへのアクセスをジオブロックしているのみだ。

そのため、Googleはロシアのプロパガンダを部分的にしかブロックしていないという批判にさらされている。

また、Googleは他のプラットフォームと比較して、ウクライナ危機への対応がやや遅かったように見受けられる。

Appleは1日、ロシア以外のすべての市場において、iOSのApp StoreからRTとSputnik Newsアプリを削除することを確認した。

一方、Microsoft(マイクロソフト)もすでにWindowsアプリストアからRTを排除し、同社の検索エンジンBing(ビング)で両ニュースソースをランキングから外したという一連の措置を2月28日に発表している。

他のテック企業もウクライナ侵攻を受け、必死にロシア国営メディアに対する規制を打ち出そうとしている。Twitter(ツイッター)は今週初め、ロシア政府系メディアのコンテンツへのリンクを含むツイートにフラグを立て、コンテンツ自体の可視性を下げるラベリングポリシーを拡大した。

Twitterは、欧州の指導者たちから、アカウント自体をブロックしていないことに対する批判を受けていた。しかし同社は1日、Reutersに対し、EUの制裁措置が発効した際にはそれに従うと述べ、次のように付け加えた。「欧州連合の制裁によりおそらく、EU加盟国において特定のコンテンツを表示制限することが法的に要求されることになるでしょう」。

今週初めに発表されたさらなる限定的措置として、Facebook(フェイスブック)は、TikTok(ティックトック)と同様に、EU域内でRTとSputnikをジオブロックしていると発表した。

先週木曜日に始まったロシアのウクライナ侵攻以来、欧州の政治指導者と欧州委員会の議員たちは、欧州委員長が日曜日にロシアの「有毒なメディアマシン」と表現したものに対処するため、主流のテックプラットフォームに対して高レベルの圧力をかけており、同委員長はそれをRTとSputnikに対する「未曾有の」制裁とも表現している。

欧州委員会の評価では、クレムリンとつながりのある2つのメディアは、プーチンの戦争マシンの重要な戦略的要素であるとされている。

【編集部注】この記事は、Googleからのコメントを追加して更新された。

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Den Nakano)

スマートウォッチ「Fitbit Ionic」がリコール、バッテリー加熱による火傷報告を受けて

Fitbitは米国時間3月2日朝、スマートウォッチ「Ionic」のバッテリーが過熱し、火傷する可能性があるという報告を受け、米消費者製品安全委員会(CPSC)にリコール実施を届け出たと発表した。

CPSCは同日の報告書で、米国内で少なくとも115人、海外では59人が同スマートウォッチのバッテリーの過熱を報告したと説明している。ここには、火傷の報告が計118件含まれており、そのうち第3度火傷の報告が2件、第2度火傷の報告が4件だ。

CPSCは「消費者はリコール届けがあったIonicスマートウォッチの使用を直ちに中止し、Fitbitに連絡してデバイスを返却するための送料前払い梱包材を受け取ってください」と書いている。

リコールの対象となるのは、モデル番号FB503のIonicデバイスで、米国内で100万台、海外で69万3000台にのぼる。Fitbitは商品代金299ドル(約3万5000円)を返金する(さらに、買い替えを希望する場合は、今後購入するデバイスを割引する)。

Google傘下のFitbitは「慎重を期して」リコールを届け出たと話している。Fitbitの声明全文は以下の通りだ。

顧客の安全は常にFitbitの最優先事項であり、慎重を期して、スマートウォッチFitbit Ionicの自主回収を実施します。当社はFitbit Ionicスマートウォッチのバッテリーが過熱し、火傷の危険があるという非常に限られた数の負傷報告を受けました。CPSCの発表にある負傷報告数は販売台数の0.01%未満です。これらの事故は非常にまれであり、今回の自主回収による他のFitbitスマートウォッチやトラッカーへの影響はありません。

画像クレジット:Brian Heater

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(文:Brian Heater、翻訳:Nariko Mizoguchi

アップルが日本時間3月9日午前3時から製品発表イベント開催

太平洋時間3月8日午前10時(日本時間3月9日午前3時)に開催されるApple(アップル)の次のビッグイベントの招待状が配られた。Apple Parkから中継されるオンラインイベントとなる予定だ。誰でもAppleのウェブサイトで視聴することができる。

招待状には、ネオンカラーをしたトンネルの入り口のようなAppleのロゴが描かれている。「Peek performance」と書かれていて、Appleは2022年、発表するハードウェアをたくさん準備しているという噂がある。

Appleが3月8日にイベントを開催する予定だとBloomberg(ブルームバーグ)が最初に報じた。ウクライナで悲惨な事件が起きているが、それでも同社はオンラインイベントを進めたいようだ。

同社はこのイベントで、5G接続対応のリフレッシュされたiPhone SE、全体的にスペックが向上したiPad Airアップデート版、Appleシリコンを搭載した新しいMacモデルなどを発表する可能性がある。

同社は、インテル製CPUを自社製チップに置き換えるため、Macの全ラインナップを刷新している。エントリーレベルの新MacBook Pro、よりパワフルなMac Mini、デザインを一新したMacBook Air、あるいはMac ProやiMac Proの新モデルなど、新しいコンピュータに関してはさまざまな可能性がある。しかし、一度にすべてのMac新モデルを発表するつもりはないようで、詳細はもう数日待たなければならない。

TechCrunchはこのイベントをカバーする。乞うご期待。

画像クレジット:Apple

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(文:Romain Dillet、翻訳:Nariko Mizoguchi

無花粉スギの苗をDNA抽出により選別し大量生産するマニュアル公開、DNA鑑定と組織培養で花粉症対策に貢献

無花粉スギの苗をDNA抽出により選別し大量生産するマニュアルを公開、DNA鑑定と組織培養で花粉症対策に貢献

森林研究・整備機構森林総合研究所新潟大学新潟県森林研究所ベルディによる研究グループは2月28日、無花粉スギの判別と量産法を確立し、マニュアルとして公開したと発表した。無花粉スギの苗を大量生産する技術をわかりやすく解説したもので、スギ花粉症の根本的な解決策に貢献するという。

日本国民の38.8%が悩まされているスギ花粉症の対策として、林業分野では花粉飛散量の多いスギを伐採し、少花粉スギや無花粉スギに植え替える試みが行われているが、無花粉スギの苗木の供給量には限界がある。無花粉スギの品種が少ないこと、そして、交配によって作られる苗の約半数は花粉を生産する正常なスギになるため、そこから無花粉スギを選別しなければならない。現在は、2〜3年育てた苗に植物ホルモンを散布して雄花を強制的に咲かせ、花粉の有無を確認して無花粉スギを選び出している。大量に無花粉スギの苗を生産するには、もっと効率的な方法が必要だ。

そこで研究グループは、成熟前の球果(松かさ、松ぼっくり)を使う方法を考えた。まずは、球果から未熟な種子を取り出して、未分化細胞の塊(カルス)に培養する。カルスには普通のスギと無花粉スギが1対1で含まれているため、DNA抽出試薬を使って遺伝子を取り出し、無花粉スギの特徴を持つものだけを培地に移して培養すると、不定胚という細胞が分化した組織に変化する。不定胚は、種と同じように発芽し、苗に成長する。こうして、無花粉スギの苗だけを作ることができるのだが、1gのカルスから1000本以上の苗を作ることが可能だという。また不定胚は冷蔵保存ができ、2年間は発芽能力を保つため、需要の変化に応じた工場での大量生産が可能になる。

(A)増殖したカルス、(B)無花粉スギの不定胚、(C)発芽した不定胚、(D)苗の育成

この研究で開発されたDNA鑑定法は、無花粉スギの原因となる遺伝子「MS1」の変異を直接検出している。この遺伝子を持つスギは日本全国に分布しているため、天然林や在来品種からも無花粉スギの変異を持つ個体を見つけ出すことが可能とのことだ。スギは環境への順応性が高く成長も早いため、林業だけでなく、都市の緑化用にも無花粉スギを活用できると、研究グループは期待している。

マニュアル
タイトル『スギの雄性不稔遺伝子MS1判別マニュアル』
著者:森林総合研究所樹木分子遺伝研究領域(編)
掲載誌:中長期計画成果番号:第5期中長期計画9(森林環境-3)(2022年2月)
ISBN:978-4-909941-28-2

タイトル『組織培養による無花粉スギ苗の増殖マニュアル』
著者:森林総合研究所樹木分子遺伝研究領域(編)
掲載誌:中長期計画成果番号:第5期中長期計画10(森林環境-4)(2022年2月)
ISBN:978-4-909941-29-9

東北大学と東芝、半分のレアアース量でネオジムボンド磁石と同等の磁力を持つサマリウム鉄系等方性ボンド磁石を開発

東北大学と東芝、半分のレアアース量でネオジムボンド磁石と同等の磁力を持つサマリウム鉄系等方性ボンド磁石を開発

東北大学(杉本諭教授)と東芝の研究グループは2月24日、電気自動車などに使用する小型モーター向けとして、高性能で安価に生産が可能な等方性ボンド磁石を開発したと発表した。レアアースの使用量はネオジムボンド磁石の約半分でありながら、性能は同等。耐熱性はネオジムボンド磁石よりも高い。

等方性とは、全方位に磁力が均一な磁石のこと。ボンド磁石とは、磁石粉末を樹脂やゴムに混ぜて成形した磁石のことをいう。そのため等方性ボンド磁石は、着磁方向が自由に選べ、形状の自由度や寸法精度が高く、製造工程が簡略で生産性が高いといった特徴を持つ。研究グループが開発した磁石も、これらの利点を備えている。

日本の総消費電力の過半数は、モーターが占めているといわれている(産総研「次世代自動車向け高効率モーター用磁性材料技術開発」)。一般にモーターの効率は、磁石の性能が上がれば高くなる。その要になるのがレアアースを使用した強力な磁石だ。現在、そのレアアースとして使われているのはネオジムが圧倒的に多いのだが、それは特定国からの輸入依存度が高く、資源リスクが心配されている。そこで研究グループは、ネオジムを採掘する際の副産物であり、余剰資源となっているサマリウムに着目し、ネオジムへの依存度を減らす研究に取り組んだ。

研究グループが開発したサマリウムを使った等方性ボンド磁石の製造方法は、サマリウムと鉄に、適正な量のコバルト、ニオブ、ホウ素を加えた合金を溶解した後、急冷凝固させ、適切な熱処理を行うことで「高鉄濃度な化合物結晶の境目にニオブとホウ素を濃縮させる」というものだ。これにより、従来のネオジム合金に含まれるネオジムの量が13原子%なのに対して、このサマリウム鉄系合金に含まれるサマリウムは6原子%と、レアアースの量は約半分となった。永久磁石の単位体積あたりの磁気エネルギーを示す磁束密度と磁界の積の最大値、最大エネルギー積は、摂氏20度で98kJ/m3と、ネオジムボンド磁石と同等だった。永久磁石の強度を示す残留磁束密度も摂氏20度で0.82テスラと、これもネオジムボンド磁石と同等だった。さらに、摂氏1度あたりの残留磁束密度の低下率は0.06%とネオジムボンド磁石の半分で、高い耐熱性が示された。

東北大学と東芝、半分のレアアース量でネオジムボンド磁石と同等の磁力を持つサマリウム鉄系等方性ボンド磁石を開発

東北大学と東芝、半分のレアアース量でネオジムボンド磁石と同等の磁力を持つサマリウム鉄系等方性ボンド磁石を開発

余剰資源として今後も増え続けるであろうサマリウムを利用することに加え、使用するレアアースの量を半分にできるこの技術は、「資源リスクの低減と各種モーターのサプライチェーンの強靭化に貢献します」と研究グループは話す。今後は、磁石メーカーと連携し、量産化を見据えた低コストで安定した生産技術の開発を進め、さらなる性能向上を目指すとしている。また同磁石を各種モーター製品に適用していくためのモーター設計の最適化についても検討する予定。

東北大学と東芝、半分のレアアース量でネオジムボンド磁石と同等の磁力を持つサマリウム鉄系等方性ボンド磁石を開発

東北大学と東芝、半分のレアアース量でネオジムボンド磁石と同等の磁力を持つサマリウム鉄系等方性ボンド磁石を開発

東北大学(杉本諭教授)と東芝の研究グループは2月24日、電気自動車などに使用する小型モーター向けとして、高性能で安価に生産が可能な等方性ボンド磁石を開発したと発表した。レアアースの使用量はネオジムボンド磁石の約半分でありながら、性能は同等。耐熱性はネオジムボンド磁石よりも高い。

等方性とは、全方位に磁力が均一な磁石のこと。ボンド磁石とは、磁石粉末を樹脂やゴムに混ぜて成形した磁石のことをいう。そのため等方性ボンド磁石は、着磁方向が自由に選べ、形状の自由度や寸法精度が高く、製造工程が簡略で生産性が高いといった特徴を持つ。研究グループが開発した磁石も、これらの利点を備えている。

日本の総消費電力の過半数は、モーターが占めているといわれている(産総研「次世代自動車向け高効率モーター用磁性材料技術開発」)。一般にモーターの効率は、磁石の性能が上がれば高くなる。その要になるのがレアアースを使用した強力な磁石だ。現在、そのレアアースとして使われているのはネオジムが圧倒的に多いのだが、それは特定国からの輸入依存度が高く、資源リスクが心配されている。そこで研究グループは、ネオジムを採掘する際の副産物であり、余剰資源となっているサマリウムに着目し、ネオジムへの依存度を減らす研究に取り組んだ。

研究グループが開発したサマリウムを使った等方性ボンド磁石の製造方法は、サマリウムと鉄に、適正な量のコバルト、ニオブ、ホウ素を加えた合金を溶解した後、急冷凝固させ、適切な熱処理を行うことで「高鉄濃度な化合物結晶の境目にニオブとホウ素を濃縮させる」というものだ。これにより、従来のネオジム合金に含まれるネオジムの量が13原子%なのに対して、このサマリウム鉄系合金に含まれるサマリウムは6原子%と、レアアースの量は約半分となった。永久磁石の単位体積あたりの磁気エネルギーを示す磁束密度と磁界の積の最大値、最大エネルギー積は、摂氏20度で98kJ/m3と、ネオジムボンド磁石と同等だった。永久磁石の強度を示す残留磁束密度も摂氏20度で0.82テスラと、これもネオジムボンド磁石と同等だった。さらに、摂氏1度あたりの残留磁束密度の低下率は0.06%とネオジムボンド磁石の半分で、高い耐熱性が示された。

東北大学と東芝、半分のレアアース量でネオジムボンド磁石と同等の磁力を持つサマリウム鉄系等方性ボンド磁石を開発

東北大学と東芝、半分のレアアース量でネオジムボンド磁石と同等の磁力を持つサマリウム鉄系等方性ボンド磁石を開発

余剰資源として今後も増え続けるであろうサマリウムを利用することに加え、使用するレアアースの量を半分にできるこの技術は、「資源リスクの低減と各種モーターのサプライチェーンの強靭化に貢献します」と研究グループは話す。今後は、磁石メーカーと連携し、量産化を見据えた低コストで安定した生産技術の開発を進め、さらなる性能向上を目指すとしている。また同磁石を各種モーター製品に適用していくためのモーター設計の最適化についても検討する予定。

NASAがSpaceXの商業乗員輸送契約を延長、3ミッション追加で約1036億円

NASAは米国時間3月1日、国際宇宙ステーション(ISS)への乗員輸送サービスを、SpaceX(スペースエックス)にCrew-7、Crew-8、Crew-9ミッションとして正式に追加発注したことを発表した。これによって、SpaceXが受注した商業乗員輸送能力(CCtCap)契約の総額は34億9000万2904ドル(約4018億円)となる。

当初の26億ドル(約3000億円)の契約は、Space Shuttle(スペースシャトル)の退役に伴い2011年に終了した米国の乗員輸送能力を開発するために、2014年にSpaceXが獲得したものだ。この民間宇宙航空会社は、2020年以降、Crew Dragon(クルードラゴン)宇宙船とFalcon 9(ファルコン9)ロケットで、ISSへ向けてCrew-1からCrew-3(+有人試験飛行1回)まで、3回の乗員輸送ミッションを行い、打ち上げを成功させている。

修正前の契約では、SpaceXは2022年にCrew-4とCrew-5、2023年にCrew-6と、さらに3つのISSへの飛行ミッションを受注していた。NASAの声明によると、今回の延長契約は「固定価格、無期限納入/無期限数量」であるとのこと。SpaceXの契約期間は2028年3月31日までとなり、成長中の打ち上げ・宇宙事業会社にとってはうれしい定期収入となった。

NASAの宇宙オペレーション本部副長官を務めるKathy Lueders(キャシー・リーダース)氏は、2021年12月に発表されたSpaceXの契約修正を意向する通知の中で「宇宙ステーションにおける米国の存在感を維持するために必要になったときにすぐに準備が整うように、ステーションへの追加フライトの確保を今すぐ始めておくことが重要です」と述べている。「米国の有人打ち上げ能力は、私たちが軌道上における安全な運用を継続し、地球低軌道で経済を構築するために不可欠です」。

NASAはこの通知の中で、SpaceXが現在ISSに乗員を輸送するために認定されている唯一の米国企業であることを認めた。Boeing(ボーイング)も、2014年にNASAから6回のミッションで総額42億ドル(約4800億円)のCCtCap契約企業として選定されたが、同社のStarliner(スターライナー)宇宙船はまだ人を乗せずに行う無人の試験段階だ。2022年5月に予定されている次のテスト飛行では、Atlas V(アトラスV)ロケットで打ち上げられ、ISSとランデブーする計画になっている。

最終的にNASAは、SpaceXとボーイングの商業乗員輸送プログラムを連携させ、ISSに宇宙飛行士を送り込むことを考えている。スペースシャトルの退役からSpaceXの商業乗員輸送プログラム認定までの間、NASAはステーションへの乗員輸送をロシアの国営宇宙機関であるRoscosmos(ロスコスモス)だけに依存してきた。NASAの監察総監室(OIG)による2019年の報告書によると、NASAは2006年から2020年の間に、RoscosmosのSoyuz(ソユーズ)打ち上げシステムに、1席あたり平均5540万ドル(約63億8000万円)を支払っている。このコストは年々上昇し、2020年には1席あたり8600万ドル(約99億円)になっていたという。同じOIGの報告書では、SpaceXの1席あたりの平均コストは5500万ドル(約63億3000万円)、ボーイングでは9000万ドル(103億6000万円)になると推定されている。

画像クレジット:NASA

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(文:Stefanie Waldek、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

アップル、ウクライナ侵攻にともないロシアでの製品販売を中止

Apple(アップル)は米国時間3月1日、先に隣国ウクライナに侵攻したロシアで同社製品の販売を停止すると発表した。このニュースの前日にAppleはSputnikとRT NewsをApp Storeから排除し、またロシアでのApple Payのサービスの一部を無効にしている。本日のニュースでは、Googleに倣ってAppleの「マップ」の一部の機能を無効にしたことも判明した。

アップルの広報は次のようなコメントをくれた。

私たちは、ロシアのウクライナ侵攻を深く憂慮し、暴力の結果、苦しんでいるすべての人々とともにあります。私たちは、人道的活動を支援し、進行中の難民危機に援助を提供し、この地域にいる私たちのチームを支援するためにできる限りのことを行っています。

今回の侵攻を受け、さまざまな行動をとりました。ロシアでの製品販売をすべて停止しました。先週、私たちは同国の販売チャネルへの輸出をすべて停止しました。Apple Payやその他のサービスも制限されています。RT NewsとSputnik Newsは、ロシア国外のApp Storeからのダウンロードができなくなっています。そして、ウクライナ国民の安全と予防措置として、ウクライナの「マップ」で交通情報とライブインシデントの両方を無効化しています。

私たちは引き続き状況を評価し、行っている措置について関連政府と連絡を取り合っています。私たちは、平和を求める世界中のすべての人々とともに行動します。

先週、ウクライナの副首相Mykhailo Fedorov(ミハイロ・フョードロフ)氏が、AppleのTim Cook(ティム・クック)CEOに公開書簡を記した。「私はあなたにお願いします。そして、あなたがそれを聞くだけでなく、ウクライナ、ヨーロッパそして最終的には、流血の独裁主義の侵略から民主主義の世界全体を保護するために可能なすべてのことを行うことを確信しています。App Storeへのアクセスを含めて、Appleのサービスと製品をロシア連邦に供給することをやめることも含めて」とデジタル変革大臣も務めるフョードロフ氏は述べている。

本日のニュースは世界最大の企業の最大の一歩であり、その他の指導的テクノロジー企業と並んでアップルもついに非難の言葉を発した。

今日のニュースは、世界最大の企業の1つであるAppleが、他のリーダー的なテック企業ととも、ここ数週間のロシアの行動に対して非難してきたことを示すものだ。

画像クレジット:Sean Gallup/Getty Images

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(文:Brian Heater、翻訳:Hiroshi Iwatani)