折りたたみ電動バイクのシェアリングサービスShaeroが3億円調達、2022年夏に200ステーション開設を目指す

折りたたみ電動バイクのシェアリングサービスShaeroが3億円調達、2022年夏に200ステーション開設を目指す

折りたたみ電動バイクのシェアリングサービス「Shaero」(シェアロ。Android版iOS版)を運営するシェアード・モビリティ・ネットワークスは2月21日、第三者割当増資による総額3億円の資金調達を実施したと発表した。引受先は国内投資家。累計調達額は6億円となった。調達した資金により、2022年夏に200ステーション、2023年夏には600ステーション開設を目指す。

今後は、東京を中心とした関東エリアで拡大するとともに、地方都市へのシェアロの展開や、より幅広い年齢層の方が乗れる小型EVによるシェアリングサービスの開発を行っていく予定という。

Shaeroは、2021年9月にサービスを開始。2022年2月16日時点で、東京23区を中心に65ステーション設置が完了している。利用したい際には、専用アプリをダウンロードし、まずは無料の会員登録を行う(利用には原動機付自転車の運転免許証が必要)。アプリから貸出可能なバイクのある最寄りのステーションを検索してその場で予約、あとは15分以内に乗りに行けばいい。返却は、目的地周辺の返却可能なステーションを予約して、バイクを戻せば完了。起動の方法や折りたたみ方法、充電方法などの細かい手順は、アプリを見ながらワンステップずつ確認できる。

2019年7月設立のシェアード・モビリティ・ネットワークスは、環境負荷の少ない電動⾞両(EV)を⽤いて、都市部を中⼼にシェアリングサービスのネットワークを構築することで、都市部のラストワンマイルの移動⼿段として新しい選択肢を提供することを⽬的としているという。都市部の混雑する移動の緩和に加え、将来的には地方での生活の足となるような新たな交通手段として利用してもらえるよう考えているそうだ。移動手段を変化させることで、個々のライフスタイルをより自由に、環境的にもより持続可能な暮らしを実現させるとしている。

中国当局がフードデリバリー会社に手数料の引き下げを指導

2016年から2020年の間に、中国でオンラインで食事を注文した人の数は4億人に倍増した。このブームの背景には、同国のフードデリバリー競合各社が、顧客や企業に対して気前よく補助金を配ったということもある。Meituan(メイトゥアン、美団)とEle.me(ウーラマ、餓了麼)の2社が市場を支配するようになると、彼らは加盟店の手数料を引き上げ始めた。しかし、新たな規制の変更は、彼らの利益モデルを阻害しようとしている。

中国当局のグループは現地時間2月18日、飲食業の運営コストを下げるために、フードデリバリープラットフォームはレストランに請求するサービス料をさらに引き下げるべきだという発表を行った。このニュースを受け、Meituanの株価は金曜日に15%以上下落し、250億ドル(約2兆9000億円)以上の市場価値が失われた。MeituanのライバルであるEle.meを運営するAlibaba(アリババ)の株価は約4%下落した。

この提案は、中国の国家計画機関である国家発展改革委員会が「苦境にあるサービス産業の回復を支援する」ことを目的とした指導だ。この新規制は、長期的にはインターネットの巨人たちの利益を先細りさせる可能性が高い。Meituanの2021年7月から9月期の収益において、手数料が占める割合は60%にも達している。同社は、ホテルなど他の業種からも手数料を徴収しているが、フードデリバリーは依然として最大の収益源だ。また、フードデリバリーは、Alibabaが2018年にEle.meを買収した後、同社の主要事業の1つにもなっているが、この巨大企業にとって最大の収益エンジンは、依然として電子商取引である。

中国のフードデリバリープラットフォーム各社は、収益性を低下させる可能性がある別の変化に関しても、対処を迫られている。2020年に注目を浴びた記事では、中国の何百万人ものフードデリバリー労働者を危険にさらす高ストレス環境が明るみに出た。効率を最適化するアルゴリズムは、人間の能力や道路の事故などを十分に考慮していないため、配達員はしばしば仕事を遂行するために信号を無視して走っている。

中国当局は、フードデリバリープラットフォームに対し、従業員の安全性を向上させるよう命じた。MeituanとAlibabaは、配達員のライダーに音声コマンド機能を備えたコネクテッドヘルメットの提供を開始し、配達員がスクーターで道路を駆け抜ける際に、携帯電話をチェックする必要がないようにした。配達時間の制限も緩和した。MeituanとEle.meの課題は、労働者の福利厚生と事業の収益性をいかに両立させるかということだ。

Meituanはすでに手作業への依存度を減らすことに取り組んでいる。最近ではフードデリバリー用のドローンを公開し、中国のいくつかの都市で小規模な試験を行っている。とはいえ、この飛行体はまだ製品化の初期段階であり、中国では低空飛行のドローンに対する規制がまだ具体化していない。また、ドローンによるフードデリバリーの経済的な実現性も未知数だ。

しかし、少なくとも自動化は、Meituanのような労働集約型のオンデマンドサービスを提供する企業にとって、より安全でコストを削減する未来を実際に試すための1つの方法である。

画像クレジット:Meituan Dianping

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(文:Rita Liao、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

ウガンダのバイクタクシー「SafeBoda」はスーパーアプリ化でパンデミック不況からの回復に賭ける

2020年初めに2万5000台のオートバイを擁していたSafeBoda(セーフボダ)は、ピーク時にウガンダとナイジェリアでオートバイ後部座席の乗客数千人を運んでいた。しかし新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックの到来とともにすべてが消え去った。在宅勤務推進などの感染対策はビジネスの不調を意味し、さらに都市封鎖や外出禁止令、公共交通機関の停止などが追い打ちをかけて、バイクタクシービジネスを苦境に追い込んだ。

この停滞はSafeBodaに悪影響を及ぼしたが、同時にこのスタートアップが、シングルサービスプロバイダーから統合マルチサービスおよびデジタル決済テクノロジープラットフォームへと戦略転換するきっかけを与えた。

同スタートアップは2017年に、Ricky Rapa Thomson(リッキー・ラパ・トムソン)、Alastair Sussock(アラステア・サソック)、Maxime Dieudonne(マクシム・デュードン)氏の3人が設立した。最近、ウガンダ中央銀行から決済ライセンスを取得してフィンテック分野で公式デビューを飾り、過去2年間に導入してきたた新サービスのリストに追加した。

「当社がこの分野に参入したとき、人々がタクシー以上のものを必要としていることに気づきました。アプリを利用する人たちは、もっと何かできるはずだと私たちに言い続けました。ユーザーの話を聞き、フィードバックを真剣に受け止め、調査を行った結果、タクシー以外にいくつかのサービスを提供することが可能になりました。そしてそれは、今後のビジネスの持続可能性に役立っています」とSafeBodaの共同ファウンダーであるトムソン氏はTechCrunchに語った。

画像クレジット:SafeBoda

SafeBodaの新しいウォレットを使って、ユーザーは相互に手数料無しで送金できる(telcosなどの同業者では手数料が必要)。これはタクシードライバーがキャッシュレス支払いを受けられることを意味している(アフリカ大陸ではカード支払いの普及は非常に遅れている)。さらにユーザーは、このウォレットを提携業者への支払いにも使える他、ウガンダの首都カンパラに点在する200以上の代理店で現金を引き出せる(要手数料)。SafeBodaウォレットの定期預金では年率10%の利息も得られる。

ある意味で、このウォレットはこの国の金融包摂(金融の機会平等化)に貢献している。ほとんどが銀行口座をもっていないバイクタクシーのドライバーたちが、報酬履歴をつくることによって、融資の際の信用力を高めることができる。これは新サービス導入の足固めにもなる。

「バイクタクシーのドライバーたちは実際収入を得ていますが、融資をはじめとする金融サービスを利用することもできていません。そして私たちは、機会平等を進めるためには、適切なパートナーを得るだけでなく、ユーザーの履歴を知る必要もあることがわかりました。当社のプラットフォームを使うことによって、ドライバーの報酬履歴を作ることが可能になり、これが大きな変革を起こそうとしています」。

トムソン氏によると、同社は近い将来一連の新サービスを提供する予定で、サービスの再評価と改善を繰り返す戦略に沿って、顧客が切望している利便性を拡大していく計画だ。新規市場への参入を目指すSafeBadaは、国境を超えたユーザーを対象にして新製品を作っている、と同氏は語った。

「アフリカ全土で利用できるグローバルな製品を作っています。SafeBodaは、ウガンダだけでなく、もっと多くの人たちよりよいサービスを提供することで、アフリカの誰もがクリック1つでサービスを利用できるようにすることが目標です。当社のドライバーたちの生活が改善されるようにすることはもちろんです」。

SafeBodaは、最近Googleによる5000万ドル(約57億円)のアフリカ投資ファンドの支援を受けた最初の会社となり、ユーザーベース(100万ダウンロード以上)を活用して、新規ビジネスの成長と競合他社の引き離しをはかっている。他の出資者には、Allianz X、Unbound、Go-Ventures、およびインドネシアでマルチサービス・スーパー・アプリを運用するGojekがいる。

SafeBodaが最近始めた事業の1つ、eコマースプラットフォームは、2020年4月にスタートし、所属ドライバーを配達のラストマイルに活用している。eコマース事業は、同社の小荷物および食品配達サービスに追加されたもので、ロックダウンでオートバイ・タクシーの利用が落ち込む中、ドライバーに仕事を与え、実質的に事業を継続させるためだった。同時に、同スタートアップのスーパーアプリへの道の始まりとなった。

画像クレジット:SafeBoda

ユーザーに提供する価値の選択肢を増やすことでSafeBodaは、Uber(ウーバー)やBolt(ボルト)といった資金豊富なライドシェアリング会社や、Jumia(ジュミア)などのEコマース・プラットフォームと対等に戦う準備を整えている。

2週間前、ウガンダのYoweri Museveni(ヨウェリ・ムセベニ)大統領は、2020年以来続いていたバイクタクシー(boda boda、ボダボダ)の禁止を解除し、SafeBoda、Uber、Boltによるライドシェア・サービス再開への道を開いた。

「当社はアフリカ最大のバイクタクシーによるライドシェアリング会社です。これまでさまざまな競争を経験し、大企業が私たちの市場に参入してきてからも、市場のリーダーを続けています。これからも成長を続け、強い競争力を維持していきます」とトムソン氏は語った。

新型コロナパンデミックがモビリティ産業に与える影響は、ウガンダ輸送業界に限らない。世界中の輸送サービスが、移動制限と都市封鎖によるひどい影響を受け、航空会社、タクシー会社など輸送産業のいくつかの会社が倒産に追いやられた。しかし、徐々に業界は息を吹き返し、全世界のライドシェアリング業界は、次の7年間に2倍以上成長して980億ドル(約11兆3000億円)に達し、年平均成長率10%が期待される、とこのレポートは伝えている。

画像クレジット:SafeBoda

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(文:Annie Njanja、翻訳:Nob Takahashi / facebook

中高生対象の全国プログラミング共通テスト「P共通テスト」表彰式開催、試験結果サマリー・アンケート結果も公開

受験者の9.2%はプロレベルに匹敵、全国の中高生対象プログラミング共通テスト「P共通テスト」表彰式―試験結果サマリー公開

バンタンが運営する「バンタンテックフォードアカデミー」は2月19日、中高校・高専生を対象としたプログラミングの全国共通テスト「中高プログラミング共通テスト」(P共通テスト)成績優秀者の表彰式を開催した。同時に、成績結果サマリーと上位優秀者を対象としたアンケートの結果も公開している。

バンタンは、1965年創立のスクール運営事業を展開する企業。「世界で一番、社会に近いスクールを創る」をビジョンに、ファッション、グラフィックデザイン、映画映像、ゲーム、アニメ、フードコーディネーターなど幅広く学校を運営しており、そのうちのIT専門学校がバンタンテックフォードアカデミーだ。

2020年から小学校でプログラミングが必修科目となり、子どもたちの将来なりたい職業の上位にプログラマーが入るなど、この分野の人気は高まっているものの、2030年にはIT人材が全国で79万人不足するともいわれている。そこでバンタンテックフォードアカデミーは「IT業界の課題解決の一助となるべく」、第1回「P共通テスト」を1月22日に実施した。

「将来の夢は?」という問いについて、75%が「エンジニアの仕事がしたい」と回答(上位優秀者へのアンケート結果より)

「将来の夢は?」という問いについて、上位優秀者の75%が「エンジニアの仕事がしたい」と回答(上位優秀者へのアンケート結果より)

テスト問題は、初学者レベルのDランク、新学習指導要綱レベルのCランク、標準のエンジニアレベルのBランク、現役エンジニアの上級レベルであるAランク、現役エンジニアでも時間内に回答するのは難しいとされるSランク、さらにその上のSSランクが設けられ、あえてテスト時間の1時間30分では終わらない内容にした。正答率は、Dランクが62.1%なのに対し、Aランクは6.8%、Sランクは3.4%、SSランクは1.1%と難しさを示しているが、SランクとSSランクの両方に正答する上位者もいて、そのレベルの高さが伺える。高校生部門で全国1位となったのは、児玉大樹さん。「特に終盤の問題には苦戦しましたが、それでもなんとか解くことができてよかったです」と語っている。

P共通テスト ランク別問題モデルイメージ

  • Sランク問題:現役エンジニアでも回答に時間がかかる(2問)
  • Aランク問題:現役エンジニアでも上位レベル
  • Bランク問題:標準のエンジニアレベル
  • Cランク問題:新学習指導要綱レベル
  • Dランク問題:初学者レベル
上位者はSSランク問題、Sランク問題ともに正答(総勢約100名が受検した試験結果まとめより)

上位者はSSランク問題、Sランク問題ともに正答(総勢約100名が受検した試験結果まとめより)

Aランク以下の問題においては、Aランク・Bランクが正答率10%未満となり、新学習指導要綱レベルのCランクは約14%という結果に(総勢約100名が受検した試験結果まとめより)

Aランク以下の問題においては、Aランク・Bランクが正答率10%未満となり、新学習指導要綱レベルのCランクは約14%という結果に(総勢約100名が受検した試験結果まとめより)

成績上位の優秀者を対象としたアンケートでは、将来エンジニアになりたいと答えた人は75%あった。また成績優秀者は、その7割以上が1日2時間以上プログラミングをしており、5割が3年以上の経験を持っていた。これらの結果から、複数年にわたりプログラミングを学習している中高生が8割を超え、エンジニア志望の割合も高いことから、新学習指導要綱が始まれば、さらにエンジニアを目指す中高生が増える可能性があるとバンタンでは見ている。

プログラミングの学習時間については、2時間以上:37.5%、3時間以上:25.0%、5時間以上:12.5%という結果が得られた。上位優秀者の7割以上は、1日に2時間以上プログラミングに触れている(上位優秀者へのアンケート結果より)

プログラミングの学習時間については、2時間以上:37.5%、3時間以上:25.0%、5時間以上:12.5%という結果が得られた。上位優秀者の7割以上は、1日に2時間以上プログラミングに触れている(上位優秀者へのアンケート結果より)

学習期間については、1年以上が「37.5%」、3年以上は「50.0%」という結果に。すでに複数年学習者が8割を超えており、プログラミングが若年層に浸透していることがわかった(上位優秀者へのアンケート結果より)

学習期間については、1年以上が「37.5%」、3年以上は「50.0%」という結果に。すでに複数年学習者が8割を超えており、プログラミングが若年層に浸透していることがわかった(上位優秀者へのアンケート結果より)

なお、このテストでは、ITエンジニア向け国内最大の転職・就職・学習プラットフォーム「paiza」(パイザ)が使用された。

「水路を民主化」したいNavierの水中翼レジャーボートは約3480万円

正直、ボートが実際いくら程度するのかをググったほど見当もつかなかったのだが、30万ドル(約3480万円)もする製品でレクリエーションを「民主化」しようなどと宣伝しているのを見ると、ギロチンを磨きたくなるのは筆者だけだろうか。ロベスピエール的な冗談はさておき、Navier(ナビエール)には一目置いてしまった。同社の次世代ボートはかなりかっこいい。ハイドロフォイル(水中翼)によって水面を軽やかに移動することができ、大型のバッテリーパックと電気モーターを搭載しているため、電動船としては最長クラスの航続距離を誇っている。同社によると航続距離は75海里で、これは約690 ハロン(86マイル/139 km)に相当する。

同社は、Global Founders Capital(グローバル・ファウンダーズ・キャピタル)と、Comcast Ventures(コムキャスト・ベンチャーズ)の元MDであるDaniel Gulati(ダニエル・グラティ)氏が運営する新しいファンドTreble(トレブル)の共同主導により、720万ドル(約8億3000万円)のシード資金調達を完了したとを発表。今回の資金調達には、Next View Ventures(ネクストビュー・ベンチャーズ)、Liquid2 Ventures(リキッド2ベンチャーズ)、Soma Capital(ソーマ・キャピタル)、Precursor Ventures(プレカーサー・ベンチャーズ)に加え、複数のエンジェルも参加している。

「2020年にスタートして以来、船舶のランニングコストを90%削減した新タイプの水上船を作ることを目標として掲げています」。Navierの共同創業者兼CEOであるSampriti Bhattacharyya(サムプリティ・バッタカリヤ)博士は説明する。「水中翼の電動化、高度な複合材、インテリジェントなソフトウェアを組み合わせることで、船舶のランニングコストを桁違いに削減できると考えています。これによりまったく新しいスケーラブルな輸送システムや、これまで不可能だった水上輸送システムが可能になります。世界の46%が沿岸部の都市に住んでいるわけですから、かなり大きな潜在市場があると考えています」。

「民主化」の意味を尋ねてみると、それはボートの購入をという意味ではなく、運用コストに関してだと回答した同社。従来の化石燃料で動くボートはクルマの15倍近い運用コストがかかるため、それがボートが移動手段として普及しない原因だと同社は話している。燃料と労働力という2つの主要要因がコストを上げている原因であると言い、そのため電動水中翼船技術による燃料費の削減と、ボートの自律化による人件費の削減を実現しようとしているのである。

同社が最初に市場に投入する予定の製品は、レクリエーションボート市場に向けた「Navier 27」(通称N27)だ。

めちゃくちゃかっこよくないか?(画像クレジット:Navier)

「レクリエーショナルボートは、釣りやウォータースポーツ、友人とのクルージングなど、非常に幅広いアクティビティに活用してもらえます。つまり、ボートを使用して水上で楽しむあらゆるアクティビティのためです」。CTOのReo Baird(レオ・ベアード)氏は、私がボートの知識をまったく持っていないことを考慮して馬鹿丁寧に説明してくれた。レクリエーション用のボートというのは同社にとっては第一歩に過ぎず、将来的にはその効率性を生かして浮動式のロボタクシーを作りたいと考えている。「我々は高効率な水上船のプラットフォームを構築しているのです。このプラットフォームを利用して水上のロボタクシーとして機能させることが長期的な目標です。そのためには、燃料費や人件費などのコストを削減する必要があります」。

「コスト、スピード、利便性で勝負できるボートを作ることができれば、まったく新しい交通手段を切り開くことができます」とバッタカリヤ氏は説明する。「例えばサンフランシスコのベイエリアを考えてみてください。現在、10のターミナルと5つのルートがありますが、より小さなマリーナに行くことができるボートを作れば、ターミナルの数は10から65に増えるでしょう。すると一気に2000ものルートが使えるようになり、これですべてが解決します。イーストベイのリッチモンドからサンフランシスコまで、クルマで1時間ではなく、海を渡って15分で行けるようになるのです」。

効率化は3つの要素によって実現される。主な節約源は水中翼技術によるもので、船がスピードに乗っているときは船体が水から浮き上がり、小さな翼でクルージングしているような状態になる。これによりモーターが水を押し出す必要がなくなり、抵抗が減って効率が上がるという仕組みである。この技術は1950年代頃から旅客船に搭載されていたもので、紛れもなくクールな技術ではあるのだが、トレーラーに積むのが難しく、また浅い海には向いていない上に水中翼の効果を得るためにはかなりの速度で移動しなければならないため、レクリエーションボート向けにはあまり一般的でない技術なのである。

「発進時の正確な最低速度は公表していませんが、時速15〜18マイル(24〜29km)の範囲内です」とベアード氏は話している。

CTOのレオ・ベアード氏とCEOのサムプリティ・バッタカリヤ博士(画像クレジット:Navier)

その他にも、主に軽量の複合素材を使用することで効率性を上げている(フォイリング中にボートを水面から持ち上げるのが容易になる)。また、抵抗と重量をさらに減らすためのスマートなデザインも効率性に貢献している。

「弊社にはすばらしいチームがあります。MIT(マサチューセッツ工科大学)出身者が何人もいますし、弊社の主任造船技師のPaul Bieker(ポール・ビーカー)は、Larry Ellison(ラリー・エリソン)がアメリカズカップで優勝したときの船を担当した人物です」。バッタカリヤ氏は同社が伝説的な造船関係者と協力してN27を設計していると説明する。「Navierは単にアップグレードされた電気製品ではなく、私たちはこれまでのボートのあり方を根本的に見直しているのです。ハイドロフォイルが波の上をフォイルするので船酔いも起きませんし、圧倒的に優れた乗り心地を実現します」。

同社によると、約1カ月半前に予約を開始して以来、最初の15隻がすぐに完売したとのことだ。このクールなボートに興味を持つさまざまな顧客層から現在も数百件の問い合わせを受けているという。しかし、現在はメイン州の造船所で試作品を制作中で、最初の消費者向けの船は2023年頃に生産ラインから出荷される予定とされているため、手に入れるにはまだしばらくかかりそうだ。同社は米国での製造を計画している。

Navierは、ボートビルダーのLyman-Morse(ライマン・モース)と提携し、このNavier 27の生産を実現している。同モデルの最初の2隻の船体は、現在メイン州の施設で建設中だ。2024年までに400台以上の生産を計画しており、Navierのウェブサイトではその年のボートを予約するためのウェイティングリストに登録することが可能だ。

フランス人ネタを繰り返したい訳ではないが、ちなみに同社名は水中翼船の製造を可能にするための重要な数学である「ナビエ・ストークス方程式」を考え出したコンビの一方、Claude-Louis Navier(アンリ・ナビエ)に由来しているという。

画像クレジット:Navier

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(文:Haje Jan Kamps、翻訳:Dragonfly)

水素の力で家庭の暖房を脱炭素化するModern Electronが約34.7億円を調達

地球上のエネルギーの多くが熱を生み出すために使われているが、実際はそれだけでなく、莫大な量のエネルギーが無駄に使われ、またCO2などの副産物が大気中に放出されている。こういった状況を変えるため、家庭やビル内で排出量を回収してクリーンな水素を生成するという新たなシステムを開発したのがModern Electron(モダンエレクトロン)だ。今回同社はシリーズBで3000万ドル(約34億7000万円)を調達しており、この資金を使ってその名を世に広める計画である。

住宅やマンション、オフィスなどの暖房には天然ガスを使うのが一般的だ。ガスを燃やすと、熱、二酸化炭素、水が発生するというとてもシンプルなプロセスで、熱はそのまま使用され、その他のものは捨てられていくという仕組みである。

しかし、Modern Electronの共同創業者兼CEOであるTony Pan(トニー・パン)によると、これはとても便利な方法ではあるものの、理想的ではない(確かに石油や石炭に比べればはるかにましなのだが)。

「熱を得るためだけに燃料を燃やすというのは、物理学的に見ても非常に無駄が多いシステムです。天然ガスや石炭、バイオ燃料を発電所で燃やすとしたら、まず電気を作るはずです。電気は熱の約4倍の価値があるからです。しかしなぜそうしないかというと、発電所の技術を商業施設や住宅のレベルまで縮小することができないからです。この損失は100年前から知られていました。熱と電気を生み出すことができれば、それは世紀の発明と言えるでしょう」。

2つの新しい技術を組み合わせることで、パン氏はその世紀の発明を実現したいと考えている。

1つ目の技術は熱電変換器と呼ばれるもので、シアトル地区を拠点とするModern Electronが初めに取り組んだものである。ソーダ缶ほどの大きさで、火炉で発生した熱を電気に変える、コンパクトかつ効率的な変換器だという。

もう1つは、デビューを目前に現在もまだ開発中の「Modern Electron Reserve(モダンエレクトロンリザーブ)」と呼ばれるもので、大部分がCH4(メタン)である天然ガスを、燃やすのではなく固体の炭素(黒鉛)と水素ガスに還元するというものだ。ガスが炉に送られて燃やされると熱とエネルギーに変換され、その後黒鉛は回収されて廃棄または再利用されるという仕組みである。

画像クレジット:Modern Electron

私もそうだったのだが、ここに複数の変換やプロセスを導入すると、熱力学的にシステム全体の効率に重大な影響を及ぼすのではないかと疑う読者もいるかもしれない。

「もちろんコストがかからないという訳ではありません」とパン氏。「CO2を大気中に放出しないために、その発熱反応(ガスを燃やすこと)を起こさせません。しかし、それを熱と電力に使えば、電力は熱よりも価値が高いため経済的には互角になります。つまり、余分なコストを補助することができるのです」。

実際、ユーザーにとってガスの使用量が増えることはない。通常なら他の形で家から出ていたエネルギーがシステムに残り、電力需要を簡単にカバーできるのである。

この反応で生成される炭素については、ちょっとした発想の転換が必要だ。現在の暖房システムは魔法のようなもので、スイッチを入れれば家が暖まり、請求書が届く。ところがModern Electronの技術を搭載したシステムを使っていると、毎日1〜2kgの黒鉛(純粋な炭素の粉)が出てくることになる(約1リットル、ちりとり1杯分)。

黒鉛の山。そう、あなたの炉からこれが毎日放出されるのである(画像クレジット:Modern Electron)

こんなものを捨てなきゃいけないのは気持ち悪い、とお思いだろうか。しかし実際、すでに我々は毎日これを大気中に放出しているのである。パン氏はこれを「空の巨大なゴミ捨て場」と呼ぶが、我々は最初からずっと、この炭素を空気中に捨てていたのである。同社の開発により、自分の二酸化炭素排出量をより簡単に見ることができるようになったというだけだ(ただしこぼさないように注意が必要)。

この純粋な炭素の粉は鉛筆の削りカスのようなもので、いわゆる毒性はない。固形物のため、たとえどこかのゴミ捨て場に置かれていたとしても、数百年、数千年の間炭素を有効に封じ込めることが可能だ。さらに、オフィスや病院のように多くの熱を使う施設では、十分な量の炭素固形物が生産されるため、回収に便利な場所に置いてそれを利用できる産業に売ることもできるようになるだろう。

Modern Electronは暖房と電気システム全体を置き換えようとしているわけではない。例えば熱をほとんど必要としない夏場の民家では、それに応じて発電量も少なくなるとパン氏は指摘する(送電網の柔軟性を確保するために電気システムを多少変更する必要があるが、全面的な変更ではないという)。

画像クレジット:Modern Electron

使用する熱の脱炭素化というのが同社の目的であり、一から構築するのではなく既存のHVAC(冷暖房空調設備)業者と統合したいと同社は考えている。熱電変換器は容積を増やすことなくすぐに取り付けられ、ガスから水素への変換器も他の小型機器のサイズ感と何ら変わらない。家庭だけでなく、ガスを大量に消費するほどの規模でありながらも大規模な産業インフラやBloom(ブルーム)のような燃料電池技術を利用するほどではない建物にも脱炭素化の大きなチャンスがあるとパン氏は話している。例えば熱需要の高い中規模の産業や、蒸気生産業もそれに該当するだろう。

EUでは新たにできる炉やボイラーに対する水素対応が義務付けられることとなったため、タイミングは良い(古い炉も比較的簡単に変換できる)。しかし、天然ガスからの切り替えに必要な規模の水素経済が世界的に実現する兆しは未だない。その場で変換作業ができ、損失はほとんどなくメリットも大きいため、この技術が無数の建物に熱を送るための新たなデフォルトになる日がいつか来るかもしれない。スタートアップとしては出だしも好調で、だからこそ同社は継続的な投資を得ることができたのだろう。

3000万ドルのBラウンドでは、Google X(グーグルエックス)の元責任者であるTom Chi(トム・チー)氏が共同設立したファンドのAt One Ventures(アットワン・ベンチャーズ)をはじめ、Extantia(エクスタンティア)、Starlight Ventures(スターライト・ベンチャーズ)、Valo Ventures(ヴァロ・ベンチャーズ)、Irongrey(アイロングレイ)、Wieland Group(ウィーランド・グループ)などが新たに参加している。また、以前からの投資家であるBill Gates(ビル・ゲイツ)氏(財団ではなく個人)とMetaPlanet(メタプラネット)も投資を継続・拡大している。

今回の資金は製品開発の継続の他、大手HVAC企業とのパイロットテストに使われる予定で、来年には運用が開始されているはずだとパン氏は話している。また、特にシアトル地域では人材を募集していると同氏は付け加えている。

もしModern Electronの技術が主流になり、石油や石炭からの脱却が進めば、天然ガスがよりクリーンで実行可能な(そしてすでに世界的に大きな存在感を示している)太陽光や風力などの再生可能エネルギーの補完物になる日が来るのかもしれない。

画像クレジット:Modern Electron

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Dragonfly)

英国政府、ポルノサイトの年齢確認の復活なるか?

英国政府は、インターネットプラットフォームのコンテンツに関する包括的な規則を定めた次期法案に、ポルノサイトの年齢制限の設置義務を新たに追加することを発表した。これは、子どもがポルノにアクセスしたり、偶然見つけたりすることを防ぐために、アダルトサイトに「年齢認証技術」の使用を義務付けるという政府の長年の目標の復活である。

デジタル・メディア・文化・スポーツ省(DCMS)は「セーファー・インターネット・デー」に合わせてこの発表を行い、子どもの保護に関する大衆的なレトリックを強化している。

DCMSによると、未成年者のアクセスを防ぐためのポルノサイトに対する法的義務は、ポルノサイトをOnline Safety Bill(オンライン安全法案)の対象にすることで実現されるという。オンライン安全法案は、2021年5月に政府が制定した、でに非常に広範な法案を、さらに拡大するものである。

この法案は当初、ユーザーが作成したコンテンツに付随するさまざまな「害悪」に焦点を当てていた。しかし、児童安全の活動家は、実際のポルノを提案された法的義務の対象外とすれば制度全体が弱体化すると警告し、政府もその点を認めたようだ。

Chris Philp(クリス・フィルプ)デジタル大臣は声明の中で次のように述べる。「子どもはあまりにも簡単にオンラインでポルノにアクセスできます。保護者が『子どもはオンラインで見てはいけないものを見ないように保護されている』という安心感をもてるようにしなければなりません」。

「私たちは現在、オンライン安全法案を強化し、すべてのポルノサイトに適用して、子どもたちにとってインターネットをもっと安全な場所にするという目的を達成しようとしています」。

DCMSによると、今回の法案には、ポルノサイトはどのような年齢認証技術を使用して、利用者が18歳以上であることを「確実に」確認する必要があるかは明記されていないという。

DCMSは「成人側が、安全な年齢認証技術を使用してクレジットカードを所持していることや18歳以上であることを証明したり、第三者サービスに政府のデータと照らし合わせて年齢を確認することなどが考えられる」と提案している。

「新しい法的義務をどのように遵守するかを決める責任は企業自身にあります。Ofcom(英国放送通信庁)は、ユーザーデータの処理を最小限に抑えることができる、幅広い年齢認証技術の利用を企業に推奨する可能性があります」と政府は延べ、次のように続ける。「 この法案は、特定のソリューションの使用は義務付けていません。イノベーションと、将来のより効果的なテクノロジーの開発と利用を可能にする柔軟性が不可欠だからです」。

児童安全の活動家は、オンライン安全法案のさらなる拡大を求めているが、市民の自由権やデジタル権(個人がデジタルコンテンツにアクセスする権利)を訴える活動家たちは、個人の権利や自由に対するリスクを引き続き警告し、あらゆる種類のインターネットコンテンツを規制するという大規模な計画の実現性にも疑問を投げかけている。彼らによると、この法案は、オンライン上の表現を萎縮させる恐れがあると同時に、英国でのデジタルビジネスの障壁にもなりかねないという。

後者についてはともかく、現在検討されているように、ポルノサイトへの年齢確認の義務化や、何らかの形で年齢確認を行い責任を軽減するようプラットフォームに働きかける「注意義務」制度などを盛り込んだ法案が実際に成立すれば、少なくとも年齢認証業界は大きな収益を上げることになりそうだ。

プライバシーや市民的自由に関する批判に対応するために、DCMSのプレスリリースでは、ポルノサイトが導入を義務付けられる年齢認証技術は「完全な身元確認は必要としない」としている。

また、ユーザーが身分証明書などを使って年齢を証明する必要がある「かもしれない」としながらも、企業が導入するソリューションでは「年齢確認の目的とは無関係のデータを処理または保存してはならない」と規定している。

(DCMSのプレスリリースは)「現在利用可能なソリューションには、携帯電話会社が保有する情報とユーザーの年齢を照合する方法、クレジットカードを使って照合する方法、パスポートデータなど政府が保有するデータを含むデータベースを使って照合する方法などがある」として「使用する年齢認証技術は、安全かつ効果的で、プライバシーを保護するものでなければならない」と強調する。

DCMSは、年齢認証技術を「使用または構築」する企業は、英国のデータ保護規制を遵守する必要があり、さもなければ英国個人情報保護監督機関(ICO)から強制措置を受ける可能性があると指摘する。

しかし、政府が同時に国内のデータ保護体制の簡易化を検討していることは注目に値する。DCMSは、人々のプライバシーを低下させることで、デジタルビジネスの「革新」を促進するかもしれないと示唆しているが、より明白な影響、すなわち、商業的なデータマイニングを野放しにした場合、個人のデータ侵害や誤用のリスクは大幅に拡大し、セキュリティ違反やスキャンダルのパイプラインを並べることで、デジタルサービスに対する国民の不信感を確実に高めることになる、という点を考慮していない。

DCMSは、英国の既存の個人情報保護法は、年齢・身元確認の義務化などにともなうポルノユーザーやインターネットユーザーの不正な追跡を防ぐことができると主張しているが、ICOがアドテックによるインターネットユーザーの不正な追跡をまったく阻止できなかったことを考えると、DCMSの主張も批判的に検討する必要がある。ICOが方針を180度転換し、英国のポルノユーザーが私的に楽しむ権利を強固に守るために、注意が大好きで企業に優しい規制当局がポルノサイトの年齢確認基準を積極的に尋問することを想像すると、控えめに言っても相当の不信の停止(批判を一時停止し、非現実なものを受け入れること)が必要がある。

しかし、政府のプレスリリースにはこのような詳細は書かれていない。むしろDCMSは、提案されているオンライントラッキングの拡大を「オンラインでの年齢確認は、オンラインギャンブルや年齢制限のある販売など、他のオンライン分野ではますます一般的になっている」として単に常態化しようとしている。

その上で「業界と協力して、企業が年齢認証技術を利用する際に従うべき強固な基準を策定し、Ofcomもオンラインの安全体制を監督する際にそれを利用できることを期待している」と述べる (つまり「産業界が年齢認証技術をどのように利用するかについては、我々が産業界と協力して考えるから、ユーザーが心配する必要はない」というのが政府の方針なのだ。えーっと……)。

英国政府は以前、ポルノサイトに年齢確認を義務付けようとしたことがある。しかし、年齢確認を義務化することは技術的にも規制的にも困難であり、また、アダルトサイトの利用者全員に本人確認を求めることはプライバシーの観点からも問題があるとの批判を受け、2019年にこの計画をひっそりと取り下げざるを得なかった。それにもかかわらず、政府は、このコンセプトを、すでに準備中のオンライン上の有害性に対するより包括的なアプローチに組み込めるように取り組むとしている。

このような「ポルノブロック」の波乱に満ちた過去や、拡大し続けるオンライン安全法案の範囲と野放図な表現の制限をめぐる現在の論争にもかかわらず、DCMSは法案の見直しを提案するのではなく、さらに項目を追加してインターネットコンテンツの規制を倍増しようとしている。

2月5日、DCMSの国務長官であるNadine Dorries(ナディン・ドリーズ)は、メディアのインタビューに応じ、犯罪コンテンツに新たに追加された項目について言及した。それにはオンラインでの麻薬や武器の取引、密入国、リベンジポルノ、詐欺、自殺の助長、売春を扇動・管理して利益を得ることなどが含まれ、取り締まりを強化するために法案の文言に追加されるという。

同氏は、オンラインやデジタルデバイスを使用したDV(ドメスティックバイオレンス)や強姦・殺害の脅迫に対処するために、新たな刑罰を法案に追加することも発表した。

この追加により、対象となるプラットフォームでは、積極的に識別して削除することが求められるコンテンツの種類が大幅に拡大される(単にユーザーからの問題コンテンツの報告に対応するだけには留まらない)。

つまり、これまでプラットフォームが何十年にもわたって享受してきた法的責任体制が大きく変わることになり、プラットフォームの運営やコスト、オンライン上の言論に大きな影響を与えることになる。

DCMSは2月4日に発表したプレスリリースで、次のように示唆している。「優先度の高い犯罪に積極的に取り組むために、企業は自社サービスの特徴、機能、アルゴリズムが、これらの犯罪への遭遇を防止し、これらのコンテンツの利用時間を最小限に抑えるように設計されていることを確認する必要があります」「これは、自動または人力によるコンテンツの修正、違法な検索ワードの禁止、疑わしいユーザーの検出、利用を禁止されたユーザーが新しいアカウントを作成できないようにするための効果的なシステムの導入などで実現可能です」。

法案で提案されている、この高度に規制されたコンテンツモデレーション体制(コンテンツをチェック・評価して不適切なものを除外する体制)を実施するために手段には、規制に準拠していないプラットフォームに対して最大で全世界の年間売上高の10%という大規模な金銭的罰則が含まれている。また、テロリズムや児童の性的搾取、自殺の助長や詐欺などの増え続ける害悪から人々を守ることができないアルゴリズムやプロセスが発見された場合、上級管理職に対しては懲役刑が科せられる可能性もある。

この法案には、英国の新しいインターネットコンテンツ規制機関であるOfcomにサイトをブロックする権限を与え、英国内でアクセスできないようにすることも含まれている(ということは、これは年齢認証技術を促進するだけではなく、VPNサービスの急成長も後押しすることになるはずだ)。

規制により創出されるかもしれないニッチなビジネスチャンスとしては、政府はエンド・ツー・エンドの暗号化サービスに組み込むことができる技術の開発を奨励しようとしている、という点が挙げられる。この技術では、監視を回避するために強固に暗号化されたコンテンツでも児童の性的虐待に関する情報をスキャンできるようにすることで、法律が適用されるようになる(ただし、ある種の違法なコンテンツをスキャンできるようになれば、他の犯罪や単に有害なコンテンツをチェックする機能を追加しようとする政治的圧力に抵抗するのは難しくなるだろう)。

1つの法律(実際には多くの二次的な法律も存在する)で非常に多くの複雑で微妙な問題を解決しようとすることは、本来ならば政治的な自殺行為であるはずだ。しかし、終わりの見えないコンテンツスキャンダルのおかげでハイテク企業を無責任な利益追求者として描くことが容易になった今、政府はこの法律に過度に単純化した「児童保護」という要素を付け加え、長く待たされたFacebook(フェイスブック)などを「調教」することに対する大衆的な支持を得られる理想的な状況を作り出したのである。

この法案の「ありとあらゆるものを詰め込んだ」性質と曖昧な定義が相まって、結果を予測することは非常に困難になった。連動する要件すべてが実際に何を意味するのかについての明確な指針の欠落は、この提案を推し進める閣僚にさらなる援護射撃となっている。

今回の追加提案の前にオンライン安全法案を精査した2つの議会委員会は、多くの懸念を表明しており、最近では、DCMS委員会が「この提案は言論の保護と有害性への取り組みに欠ける」と警告している

12月には、別の議会委員会が、ビッグテックによる自主規制の時代に終止符を打つという政府の広範な目的を支持しながらも、一連の変更を要求した。

政府は、児童保護活動家から寄せられたポルノサイトへのアクセスに関する広範な懸念とともに、これらの意見を最新の追加法案に反映させたとしている。

画像クレジット:Harshil Shah / Flickr under a CC BY-ND 2.0 license.

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Dragonfly)

【2月21日】掲載記事アクセスランキング・トップ5―1位は朝型・夜型人間の平日活動量に差はナシ、2位メタ新スキャンダル

【2月21日】掲載記事アクセスランキング・トップ5―1位は朝型・夜型人間の平日活動量に差はナシ、2位はメタの新スキャンダル

掲載記事のうち、2月21日午前7時現在集計で最もアクセスのあった記事5本を紹介。

第1位:朝型人間も夜型人間も平日の活動量に差がなく、社会的要因が影響しているという世界初の研究

島根大学、京都医療センター臨床研究センター、金沢大学の研究グループは、遺伝子で決まる朝型と夜型の人の活動量が、平日においては差がないことを明らかにした。これまで夜型生活者は活動量が相対的に低いとされてきたが、差が表れるのは土曜日のみで、遺伝的要因と社会的要因が大きく関わっていることが世界で初めて示された。

第2位:メタ、グローバルコミュニティ開発責任者が未成年者との性交渉ビデオに撮影され辞任

Metaは、グローバルコミュニティ開発マネージャーを務めていたジェレン・A・マイルズ氏が、小児性愛者を捕まえる目的で素人が行ったおとり捜査に登場する様子を撮影した動画がYouTubeで拡散され、その後Redditなどにも転載されたことを受けて、現在は同社と雇用関係にないことをTechCrunchに確認した。

第3位:フォルクスワーゲンがファーウェイの自動運転部門を買収する方向で交渉中との報道

自動運転の分野で、2つの大企業の「結婚」が見られるかもしれない。VolkswagenがHuaweiの自動運転部門を数十億ユーロ(数千億円)で買収するためにHuaweiと交渉していると、ドイツの月刊ビジネス誌Manager Magazinが2月17日に報じた。

第4位:AIが核融合を操る力を獲得した。でも大丈夫、これは朗報だ

とある研究グループが、核融合研究に使用される高出力のプラズマ流を磁気的に扱う方法をAIに教えた……おっと、慌てないで欲しい。慌てて手にした電磁パルス砲やドライバーはしまい込んでも大丈夫だ。これは間違いなく良い成果で、来るべきロボカリプスで人類に対して使用される恐ろしい武器ではない。

第5位:「YouTubeの将来を語るうえでメタバースに触れないわけにはいきません」YouTubeがメタバース参入検討、Web3も示唆

YouTubeは2月18日、日本版YouTube公式ブログのエントリー「2022年の展望:コミュニティ、コラボレーション、コマース」を公開した。「クリエイター向け」「視聴者向け」「パートナー向け」に2022年の展望を掲載しており、また2022年も新たなサービスやツールのリリースを予定していることを紹介。Web3、メタバースについても触れている。

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ARCFOX ALPHA S POWERED BY HUAWEI
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時価27万円以上の北米版「クロノトリガー」も―スーファミやメガドラ用ゲーム未開封数百本が倉庫から28年ぶりに発掘

時価27万円以上の北米版「クロノトリガー」も―未開封スーファミやメガドラ用ゲーム数百本が倉庫から28年ぶりに発掘

あるゲーム販売業者の倉庫から80年代~90年代の任天堂およびセガ製ハードウェア用のゲームを何百本も手つかずで発見され、時価にして数万ドル(数百万円)もの価値が見積もられると報じられています。

このコレクションは、米ネブラスカ州を拠点とするGameRoom社の倉庫から見つかったものです。スーパーファミコンやSega CD(日本のメガCDに相当)、Genesis(メガドライブ)やセガサターン、3DOなどのゲームが工場出荷状態で封印されていたそうです。これらは1994年に地元の店舗が閉鎖された後に保管されており、いままで忘れられていた模様です。

公開された動画のなかでスタッフは「あまり価値のないNBAやMadden(「Madden NFL」シリーズ)がたくさんあるけど、信じられないほどレアなゲームが数箱あって、それを補って余りあるよ」と冗談めかして述べています。

その中でも飛び抜けて高額と思われるのは、スーファミ用の『クロノトリガー』です。レトロゲーム価格情報サイト「Pirce Charting」によれば2400ドル(約27万6000円)以上の価値があるとのことです。

ほかスーファミ用の『T.M.N.T タートルズインタイム』は1400ドル(約16万円)以上、『ファイナルファンタジーIII」は1200ドル(約13万8000円)以上、「サンセットライダーズ」は750ドル(約8万6000円)以上と伝えられています。もっとも、いずれも北米版であり、日本とはレア度が違うかもしれません(たとえば『クロノトリガー』は使用済みでも600ドル以上の価値があるとのこと)。

ほかスーファミの『アラジン』やメガドライブの『Contra Hard Corps(日本名は『魂斗羅ザ・ハードコア』)、スーファミの『Musya(豪槍神雷伝説 武者)』等もそれぞれ数百ドルの価値が見積もられています。Gameroom社はすべての保存と記録が終わるまで詳細を発表しないとしていますが、おそらく数万ドルの価値があると推測されています。

あくまで上記のゲーム価格は概算にすぎず、その道のプロが本格的に鑑定すれば、価値はさらに数倍に跳ね上がる可能性もあります。以前も超レアな『スーパーマリオブラザーズ』が約7300万円で落札されたこともありましたが、今後の続報を待ちたいところです。

(Source:IGN(US)。Via Nintendo LifeEngadget日本版より転載)

部屋探しプラットフォーム「カナリー」がYahoo!不動産と業務提携拡大、賃貸物件情報約50万件をカナリーに掲載へ

お部屋探しプラットフォーム「カナリー」がYahoo!不動産と業務提携拡大、賃貸物件情報約50万件をカナリーに掲載へ

不動産仲介業者の業務をデジタル化する業務効率化ソリューションと、部屋探しプラットフォーム「カナリー」(CANARY。Android版iOS版)を開発・運営するBluAgeは2月21日、ヤフー提供の不動産・住宅情報サイト「Yahoo!不動産」との業務提携を拡大し、賃貸物件情報掲載における連携を開始したと発表した。

ヤフーとBluAgeは、売買物件情報掲載における業務提携を2020年7月より開始しており、「Yahoo!不動産」取り扱いの売買物件情報約30万件がカナリーにすでに掲載されている。今回の業務提携拡大により、約50万件の賃貸物件情報がカナリーに掲載されることになり、ユーザーの利便性が向上するとしている。

カナリーは、賃貸および売買物件を探すお部屋探しプラットフォーム。アプリの新規ダウンロード数は月10万件、累計ダウンロード数は100万件を達成しているという(2021年10月時点)。

従来のお部屋探しにおいては、消費者がウェブサイトや広告を通じて複数店舗へ直接来店しているが、昨今では、スマートフォンの普及やコロナ禍により、来店することなくモバイルアプリを通じて物件を探す消費者が増えている。また、カナリーは透明性・利便性の高さを重視し、いわゆる「おとり物件」を含む募集終了物件や重複した情報を大きく削減。ユーザーは正確かつ最新の情報を基に部屋探しを行えるという。

Windows 11でAndroidアプリを動かせる最小要件が公開―第8世代Core i3・Ryzen 3000以上、8GBメモリー以上

Windows 11でAndroidアプリを動かせる最小要件が公開―第8世代Core i3・Ryzen 3000以上、8GBメモリー以上

Microsoft

米マイクロソフトは今週、Windows 11の最新アップデートを配信し、米国にてAndroidアプリサポートをプレビュー版として一般提供を開始しました。それに続いて、Androidアプリを動かせるWindows 11 PCの最小要件が公式に明らかにされました。

本機能はAmazon Appstoreを通じて、Windows 11ユーザーがAndroidアプリダウンロードや利用できるようにするもの。2022年2月現在ではKindleやAudibleのほか、ロードモバイルやKhan Academy Kidsなど約1000本のアプリが提供されています。とはいえ、Windows 11が動くすべてのPCでAndroidアプリ動作がサポートされるわけではありません。

そこでMSは新たなサポートページを公開し、Androidアプリを使うため必要なPCの最小要件を以下の通り詳しく説明しています。

  • RAM(メモリー):8GB(最小) 16 GB(推奨)
  • ストレージ:ソリッド・ステート・ドライブ(SSD)
  • プロセッサ:Intel Core i3 第8世代(最小)以上、AMD Ryzen 3000(最小)以上
  • Qualcomm Snapdragon 8c(最小)以上
  • プロセッサアーキテクチャ:x64またはARM64
  • 仮想マシンプラットフォーム:この設定を有効にする必要あり。詳しくはこちら

これらは過去3年のうちに10~15万円程度のPCを購入していれば、さほど厳しい条件とは思われません。

注意すべき点があるとすれば、インテルとAMDプロセッサでの「どれだけ古くても許容されるか」という違いでしょう。インテル製の場合は第8世代Core i、つまり5年前(2017年)の製品がサポートされているのに対して、AMD製は3年前(2019年)のRyzen 3000で線引きされています。

もっともRAMは8GB、ストレージはSSDであればいいという緩さであり、排除されるユーザーはあまり多くはなさそうです。あとはプレビュー版であれ、速やかに日本向けの一般提供を望みたいところです。

(Source:Microsoft。Via WindowsLatest9to5GoogleEngadget日本版より転載)

インドのフィンテックCRED、アマゾン出資のSmallcaseへの投資を検討

インドのフィンテック企業CRED(クレド)は、ベンガルールに本社を置くスタートアップSmallcase(スモールケース)への出資を交渉中だと、この件に詳しい3人の情報筋が語った。Tiger GlobalとAlpha Wave Globalが支援する同社は、顧客への資産商品を拡大しようとしている。

CREDが提案したSmallcaseへの投資は、同社を3億〜4億ドル(約345億〜460億円)で評価していると、情報筋は述べた。投資規模は不明だ。協議が進行中かつ初期段階であり、また非公開であるため、情報筋は匿名を求めた。

CREDはコメントを却下した。Smallcaseの創業者はコメントの要請にすぐには応じなかった。

Smallcaseは、新世代の投資家がインドの株式市場に参加するのを支援するプラットフォームを運営している。

同社は300万人以上のユーザーにサービスを提供していて、株式や上場投資信託の100以上のポートフォリオや、独立系投資マネージャー、証券会社、資産プラットフォームへのアクセスを提供する、ライセンスを持った社内専門家チームにユーザーをつないでいる。

Amazon、Sequoia Capital India、Blume Ventures、Arkam Venturesを既存投資家に持つSmallcaseは、KiteやUpstoxなど多くの株式仲介サービスと連携している。

Smallcaseへの投資により、CREDは資産管理製品を拡充することができる。Kunal Shah(クナル・シャー)氏が設立した同社は、3つの主要サービスを展開している。ユーザーの金銭感覚の改善を促すため、クレジットカードの請求を期限内に支払うと、ユーザーにリワードを与える。また、家賃や教育費、その他さまざまな請求書の支払いや追跡もサポートしている。

3つ目のサービスは、資産管理だ。CREDは2021年、Mintというピア・ツー・ピアの貸付サービスを開始し、インフレに負けない投資機会を顧客に提供している。

今回の取引が実現すれば、CREDがここ数四半期に行った一連の投資の中で最新のものとなる。直近の資金調達ラウンドで40億ドル(約4600億円)と評価された同社は2021年、B2B債権のスタートアップCredAvenue(クレドアベニュー)に出資し、企業の経費管理プラットフォームを運営するHappay(ハッペイ)を買収した。

画像クレジット:TechCrunch

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(文:Manish Singh、翻訳:Nariko Mizoguchi

印タタ・グループが導入準備中の「スーパーアプリ」に問題あり、内部関係者が告白

インドのコングロマリットであるTata Group(タタ・グループ)は、早ければ2022年3月にも「スーパーアプリ」の発表を計画している。これは、同社が確立したサービスや最近買収した消費者向けサービスの多くを、初めて1つの大規模なアプリとして統合することによって、Jio Platforms(ジオ・プラットフォームズ)やAmazon(アマゾン)などの企業に対抗しようというものだ。

Tataは当初、この「TataNeu(タタ・ニュー)」と名付けられたスーパーアプリを、2021年のうちに消費者向けに導入する予定で、数四半期前から同社の従業員を対象にテストを行っていた。2022年4月に開催されるIPLクリケットトーナメントでは、TataNeuのプロモーションのために大規模なマーケティング活動の展開が計画されている。

ただ、1つだけ問題がある。

本件に詳しい2人の関係者とTechCrunchに提供された資料によると、発表が遅れているにもかかわらず、TataNeuは決して現代的に見えるものではないようで、同社の幹部はどうすればこのスーパーアプリに消費者を惹き付けることができるか、いまだに悩んでいるという。

このアプリには、Tata Digital(タタ・デジタル)が2021年過半数の株式を取得したオンライン食料品店のBigBasket(ビッグバスケット)や、小売チェーンのCroma(クロマ)、エンターテインメントサービスのTata Play(タタ・プレイ)、富裕層向けオンライン通販サイトのTataCLiQ(タタクリク)、AirAsia(エアアジア)のフライトチケット、Taj(タージ)ホテルを運営するIHCL、タタ・グループとの合弁事業でインドに進出しているStarbucks(スターバックス)のフード&ビジネスなど、さまざまなサービスが含まれている。

さらにTataNeuは、個人間の送金、ブロードバンド、電気、水道、衛星テレビの料金の支払い、ローンなどの機能も提供する(支払い機能があることは興味深い。Tataは、インドで広く採用されているUPIに対抗できる、同国の新しい決済インフラの構築と活用を支援するためのNUEライセンスに入札している主要企業の1つでもある)。

しかし、このアプリは滑稽なほどバグが多く、恐ろしく遅くて、統合機能はさまざまなTataのサービスをアプリ内のブラウザを介して指し示すだけであり、しかも携帯電話なのに時々デスクトップ表示になることもあるという。

画像クレジット:TechCrunch

Tataが従業員を対象にしてテストしているこのアプリは、消費者向けに提供する予定のものと同じであり、大幅な改善には取り組んでいないと、この件に詳しい人物は語っている。

顧客へのインセンティブに、Tataは「NeuCoin(ニューコイン)」を報酬として提供することを計画している。1NeuCoinは1インドルピー(約1.54円)に相当する。同社は最終的に、BigBasketや1mg、その他のサービスが提供している異なる特典を段階的に廃止し、すべてのサービスでNeuCoinを統一的に使用するつもりだ。

この報酬は、幅広いカテゴリーで展開する自社サービスの「コネクティング・レイヤー」を構築しようとしているTata Groupにとって、大きな焦点の1つだ。これが成功すれば、155年の歴史を持つこの巨大企業グループは、国内最大のロイヤリティプログラムを構築することができる。

「TataNeuは、Tataの複数のブランドを結びつける統合プラットフォームで、これまでにないものです。スーパーアプリとして設計されたTataNeuは、食料品、電子機器、金融ソリューション、航空券、休暇旅行など、あらゆるものを提供します。TataNeuに掲載されている各ブランドは、NeuCoinという共通の特典でつながっています。NeuCoinは、オンラインでも実店舗でもすべてのブランドで獲得でき、同様に使用することができます」と、Tataは述べている。

しかし、Tataの現在の計画によると、顧客はBigBasketやその他のTataのサービスで直接買い物をすればNeuCoinsを蓄積することができ、そのためにTataNeuアプリを使用する必要はない。また、インドで数億人の消費者を相手に事業を行っているTataは、スターバックスをはじめ、所有権や提携関係が限定的な一部のブランドにも、新しいロイヤルティプログラムへの参加を全面的にあるいは部分的に認めさせようとして苦心していると、この件に詳しい人物は語っている。

Tataの消費者向けデジタルサービスには、多くの成果がかかっている。同社は2023年3月期のGMV(流通総額)で100億ドル(約1兆1500億円)を目標にしていると、インドのニュース・分析出版物であるCapTable(キャップ・テーブル)は2022年2月初めに報じた

2年前に同じインドのReliance Industries(リライアンス・インダストリーズ)が、デジタル・小売事業のためにMeta(メタ)やGoogle(グーグル)など多くの著名な投資家から270億ドル(約3兆1000億円)以上の資金を調達したように、Tata Groupもスーパーアプリのために資金調達を行っている。だが、関係者によると、主要な2つの投資家がすでに投資を見送る意向を示しているとのことだ。

Tata Digitalの広報担当者は今のところ、コメントの求めに応じていない。

画像クレジット:Dhiraj Singh / Bloomberg / Getty Images

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(文:Manish Singh、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

Cruiseとウォルマート、自動運転車による配送の試験地域拡大を計画中

GM(ゼネラルモーターズ)の子会社で自動運転車の開発を手がけるCruise(クルーズ)は、アリゾナ州でWalmart(ウォルマート)と共同で行っている自動運転配送の実証実験を拡大する計画を持っていることを、同社の政府関係担当シニアマネージャーが最近行われた州議会議員との公開ミーティングで明らかにした。

Cruiseは現在、カリフォルニア州における商用ロボットタクシーの試験的運用と、最終的にはサービス開始に向けて、力を入れているところだ。しかし、一方で同社は、ウォルマートとの限定的な実証実験プログラムの一環として、アリゾナ州で電気自動車「Chevrolet Bolt(シボレー・ボルト)」の自動運転車を数台運用している。

現在、この自動運転配送の実証実験は、スコッツデール近郊のソルトリバー・ピマ・マリコパ・インディアン・コミュニティの敷地内にあるウォルマートの1店舗のみで行われており、これらの自動運転走行車には、すべて安全のために人間のオペレーターが乗車している。Cruiseのシニア・ガバメント・マネージャーを務めるCarter Stern(カーター・スターン)氏は、今月初めに開催されたアリゾナ州上院交通委員会で、同社が2022年内に最大で8カ所のウォルマート店舗に拡大することを計画していると語った。

画像クレジット:Walmart

「まずはアリゾナで引き続き成長を見届けた後、国内の他の地域にも拡大していきます」と、スターン氏は、プログラム拡大の意思を語った。Cruiseはアリゾナ州で100人以上の従業員を雇用しており、その中には同社の自動運転車をグローバルで監視するチームも含まれている。このグループが増員されることになる見込みだが、スターン氏は、いつ、どのくらい雇用を拡大するかという数字やスケジュールについては、明らかにしなかった。

スターン氏が提供したこのコメントからは、Cruiseのアリゾナ州における活動と、今のところ同社の唯一の収入源であるウォルマートとの試験運用契約について、貴重な洞察を得ることができる。

Cruiseはサンフランシスコで自動運転車の運用を展開しているものの、カリフォルニア州公益事業委員会から適切な許可を得られていないため、今のところ同州で送迎サービス(あるいは配送でも)の料金を請求することはできない。なお、Cruiseは現在、San Francisco Marin Food Bank(サンフランシスコ・マリン・フード・バンク)とSF New Deal(SFニューディール)と提携し、無料の配送サービスを提供している。同社はTechCrunchに、これまでに11万3000件の配達を完了したと述べている。

Cruiseは、人間のドライバーが運転しない車両の運行と課金に必要な許可のほぼすべてを取得している。同社はカリフォルニア州自動車局から「運転手付き」および「運転手なし」の自動運転車を試験・展開するために必要な3つの許可を取得しており、そのうちの1つは一般人を乗せることができるものだ。同社はカリフォルニア州公益事業委員会に、乗車料金を請求するための許可も申請しているのだが、まだその許可は受けていない。

今月初め、Cruiseはサンフランシスコで無人ロボットタクシーのサービスを一般公開した。今のところ、このサービスは無料で、一般からの予約申込みをCruiseのウェブサイトを通して受け付けている。同社は以前、一般の申込者がサービスを利用する前に秘密保持契約に署名する必要はないと述べている。

Cruiseの無人運転サービスは、当初は午後11時から午前5時まで利用可能となっている。Cruiseはシボレー・ボルトの自動運転車をサンフランシスコの至る所でテストしているが、無人運転の乗車サービスは、ヘイト・アシュベリー、リッチモンド地区、チャイナタウン、パシフィック・ハイツ地区内の特定の地域や道路に限定されている。

画像クレジット:Walmart

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

水素燃料電池車によるオフロードレース「Extreme H」、2024年より開催予定

2024年には、水素燃料電池自動車を使ったオフロードレースシリーズが始まる見込みだ。この「Extreme H(エクストリームH)」と呼ばれるシリーズは、2021年初開催された電気自動車によるオフロードモータースポーツ「Extreme E(エクストリームE)」の姉妹大会となる。これら2つのシリーズは、同じ場所で、同じ日に、同じフォーマットでレースを開催することになる。シリーズの創設者兼CEOで、Formula E(フォーミュラE)の創設者でもあるAlejandro Agag(アレハンドロ・アガグ)氏によると、主催者は水素の統合に関して、合同レースと完全移行という2つの選択肢を検討しているという。

Extreme Hの競技用車両の開発は現在進行中で、計画では2023年初頭までにプロトタイプが完成することになっている。この車両には、Extreme Eで使用されているものと同じパワートレインとシャシーが使用される予定だが、主な違いは、中心となる動力源が、バッテリーではなく水素燃料電池になることだ。

Extreme Hの主催者によると、この燃料電池には水と太陽光発電で電気分解して作られるグリーン水素が使用されるとのこと。Extreme Eでも同様のプロセスでバッテリーを充電し、レース開催場所のパドックでは、バッテリーとグリーン水素を組み合わせて電力を供給している。

編集部注:本記事の初出はEngadget。執筆者Kris HoltはEngadgetの寄稿ライター。

画像クレジット:Extreme H

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(文:Kris Holt、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

製品ピボットのタイミング、2つの決算報告の話

スタートアップとマーケットの週刊ニュースレター、The TechCrunch Exchangeへようこそ。

みなさんこんにちは。米国は(米国時間)2月21日はお休み(大統領の日、ワシントン誕生日)なので、長い週末だ。おそらく読者がこれを読んでいるときには、私は(願わくば)ソファで3匹の犬と一緒に昼寝をしていることだろう。

しかし!まず最初に!やるべきことはたくさんあるが、先週の初めに行われたあるスタートアップのピボットと、そう、お金についても少しお話しよう。

Jukesのピボット

eスポーツの世界は、かなり細分化されている。さまざまなゲーム、フォーラム、トーナメントシリーズ、プラットフォーム、チャットアプリ、ウェブサイトの上に構築されているので、お気に入りのゲームでさえ、一体何が起こっているのかを理解するのには大変な労力を必要とする。そこでJuked.gg(ジュークド)は、2020年になってeスポーツに関するニュースをひとまとめに管理するハブの構築に着手した。

初期の同社はある程度の成功を収め、私達も記事にしたように、2021年初頭には100万ドル超え(1億円強)の調達ラウンドを実施した。しかし、共同創業者のBen Goldhaber(ベン・ゴールドへーバー)氏によれば、同氏がグラフで「右肩上がり」と表現したような急速な成長時期もあったものの、2021年にはアクティブユーザー数が頭打ちになった。

何が起きたのだろう?「FishStix」というゲーマータグも持つゴールドへーバー氏によれば、Jukedはeスポーツファンの上位1%にはリーチできていたものの、それ以上広がることはできなかったのだという。そこで、この新しい会社はスマートなやり方として、ユーザーに自社のサービスの感想を尋ねた。それらの会話を通して、ユーザーが、コミュニティの「毒性」、スパム、感情的な会話などのeスポーツ特有の問題を提起してくれたのだとゴールドへーバー氏は語っている。

そこでJukedは、少し軸足を変えて、ユーザーが事実上求めていたソーシャルネットワークを構築することにした。すなわちeスポーツファンにとって「毒性」が少なくもっと安心できる場所である。

この製品は、約750人のユーザーによるクローズド・アルファ版としてのテストを経た後、米国時間2月12日に一般公開された。

AppAnnie(現在はData.aiとなっているようだ)の情報によると、このサービスは今週米国のiOSユーザーの間で、ソーシャル・ネットワーキングのカテゴリー限定ではあるがチャート入りを果たした。2、3カ月後にまた、ダウンロードがどのように進んだかを確認してみたいと思う。

このサービスがどのようにして大規模にコミュニティの「毒性」対策を行うのかなどへの大きな疑問は残る(サインアップのためには、かなり強い条件に同意しなければならなかった)。Jukedは将来的にはAIをアシスタントに使った人間によるモデレーションを行うことを意図しており、ユーザーには電話番号の登録を求めている。すべて良いアイデアではあるが、同社は大規模な検証は行っていない。

私はeスポーツのファンなので、Jukedが取り組んできたことは理解している。しかし、私は必ずしも市場に新しいソーシャルネットワークを求めているわけではない。このスタートアップの市場での戦略が、どのようにしてより多くのポイントを獲得できるかを見いくことにしたい(そしておそらく資金調達だ。エクイティクラウドファンディングのラウンドから1年経っているので、同社が今後の四半期でもっと多くの資金を調達しようとしたとしても、驚くようなことではない)。

2つの決算報告

今週は、ハイテク企業の決算報告が相次いで行われた。いつものように市場に目を向け、スタートアップ企業の今後を占うヒントを探してきた。

私たちの仕事のほとんどはここにまとめてある。今日のテクノロジー企業にとって今後の業績予想がいかに重要であるかを掘り下げている。投資家にとっては、将来の見通しに比べて、過去の実績は全然重要ではないようだ。そのため、Amplitude(アンプリテュード)が公開市場の投資家から非難を受けたことには、注意をひかれた。同じような批判を受けた会社はMeta(メタ)も含めて他にもあったので、私たちが最近上場したAmplitudeを非難しているのだとは思わないで欲しい(同社は2021年直接上場を行っている)。

しかし、Appian(アピアン)の業績発表は、また別の側面を見せた。ローコードオートメーション企業のAppianは、他のハイテク企業よりも静かに公開市場に登場してきた。それは決して悪い話ではない。同社のCEOであるMatt Calkins(マット・カルキンス)氏は、先週の決算説明会で私にそう語った。

それはなぜか?それはイノベーションとは何かというカルキンス氏の定義に帰結するが、イノベーションとは単に何かを作ることではない。TechCrunchに語ったところによると、彼の会社は長らくエンジニアリング主導の組織であったが、それだけではクールなものを作るのには不十分だという。新しい機能を市場に出して売り、使ってもらわなければ、実際にはイノベーションを起こしていないのだ。イノベーションとは、製品ではなく体験であるとカルキンス氏はいう。イノベーションの最終的な成果は、新しい機能に対する顧客からの証言であると彼は付け加えた。すなわち誰かが新しいものは本当に良いものだという言葉を残したときだ。そのためには、人々が試せるように、その存在を知らしめる必要があるのだ。

私は彼の視点が好きだ。これは、ブロックチェーンの世界におけるいわゆるイノベーションの多くが、本当のイノベーションではなく仮説の集合を生み出しているとしか思えない理由を説明するのに役立つ。確かに、現在市場に出ている難解なWeb3製品の中には、実際に影響力を持つものもあるだろうが、ほとんどのものは、役に立つツールというよりは単にコーディングのトリックだ。

終わる前にもう少しだけ。米国の企業が感じている人材不足は、単に雇用コストを上昇させるだけではなく、Appianのような企業の後押しもしている。同社は、従業員がやりたがらないので、さらに多くの仕事の自動化をしたいという企業からの要望を受けている。そして、不幸な社員たちは追い出されるというわけだ。

こうして、Appianの成長は少し前から加速している。また、決算発表では株価は下落せず、上昇した。話を元に戻すと、これは現在、企業が時価総額を拡大するためにクリアしなければならないハードルだ。数四半期前とは比較にならないほど厳しい市場となっている。そのため、個人的にはIPOの線はまだしばらくは使えないと考えている。

ではまた。

画像クレジット:Nigel Sussman

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(文:Alex Wilhelm、翻訳:sako)

Kubernetes利用システムのリソース支出を視覚化し管理とインサイトを与えるKubecost

ウェッブ・ブラウン氏とアジェイ・トリパシー氏(画像クレジット:Kubecost)

2021年はKubernetesの採用が爆発的に増え、このクラウドネイティブツールを今では560万ほどのデベロッパーが使っている。前年に比べ67%の増加だ。

Kubernetesはオープンソースのコンテナプロジェクトで、アプリケーションを自動化しモニターし実行するために2014年にGoogleが作ったシステムだ。

Kubernetesはクラウドネイティブのデベロッパーが最も多く使っているツールの1つで、企業が大きくなると扱いが難しくなることもあるが、しかしKubecostはそんな成長痛の一部を、Kubernetesの大きな支出をモニターし、管理し、最適化するオープンソースのツールで軽減しようとする。

同社は2019年に2人の元Google社員、Webb Brown(ウェッブ・ブラウン)氏とAjay Tripathy(アジェイ・トリパシー)氏が創業した。どちらもGoogleのインフラストラクチャーやGoogle Cloudのための、インフラストラクチャモニタリングの仕事をしていた。

「インフラモニターの分野には、コンテナへの本格的な移行に要する費用とパフォーマンスと信頼性をめぐって問題があった。それらのチームは優遇されていたが、支出の可視性は完全に犠牲にされていた。それを数百万人ぶんの給与に例えると、どれだけの額がどの部やどのチームに行くのか分からない、という状態だった」とブラウン氏はいう。

Brown氏の説明では、そういう可視性がなければ、ダウンストリームに起きることも往々にして無駄と見なされる。彼が実際に見た例では、チームが80%も過大支出をしていて、しかもプロダクトの正しいコストを誰も知らなかった。

チームに支出の安全ネットがあって、今後のショックを和らげられるために、Kubecostはリアルタイムの費用可視性と、Kubernetes関連の何百万ドル(何億円)ものクラウド費用を継続的にモニターして軽減するために必要な、インサイトを提供する。

同社のコアプロダクトはオープンソースで、チームが自由に使える。ブラウン氏がいうのだから真実だろう。またエンタープライズ向けの商用プロダクトもあり、その機能は数分でインストールできて、セールスに持ち込まなくても試用や現用ができる。

顧客は情報をKubecostと共有しなくてもよいが、その代わりにその技術はオープンソースの情報を使い、それを顧客の環境に持ち込み、それをクラウドやオンプレミスのデータセンターに統合する。

そこから、情報はリアルタイムで集められて、企業がリソースに支出しているすべての領域と、費用の高騰やその理由を示すインサイトが提供される。それからKubecostは、費用を削減する方法のインサイトを提供し、アラートを送ったり、今後の長期的管理を可能にするポリシーを設定する。

画像クレジット:Kubecost

Kubecostはすでに2000社以上と仕事をしており、そのうち、エンタープライズ級は100社ほどとなる。それは2021年の1年間で3倍になり、エンゲージメントの数は5倍になった。同社が現在管理しているKubernetesの支出は総額20億ドル(約2300億円)ほどに達する。同社の年間経常収益は、前年比で3倍だ。ブラウン氏はKubecostの評価額を明らかにしないが、2021年の5倍だという。

同社を採用する企業がこれまでのペースで増えていくという想定で、同社は2500万ドル(約28億7000万円)のシリーズAを調達した。これをリードしたのはCoatue Management、そしてシード投資家からの参加としてFirst Round CapitalとAfore Capitalの名がある。Coatueのパートナー、David Cahn(デビッド・カーン)氏がKubecostの取締役会に加わる。

この新たな資金は全社的な雇用増に充てられる。Kubecostのルーツはオープンソースだが、ブラウン氏の計画では、そのコミュニティへの相当な投資により、機能をもっと増やしたいという。また、そのエコシステムのその他のプロダクトの統合や、インサイトと最適化の開発も進めたいとのこと。

さらに、Kubecostの管理を他に任せたい顧客企業やチームのために、その付加価値バージョンである「Hosted Kubecost」も開始する。

「全体的にいえるのは、これまではクラウドからコンテナへの本質的で重要な変革の波があり、それはデータセンターからクラウドへの変化よりも大きな変化だと私は認識しています。だからそれは、これからも続くだろう」とブラウン氏はいう。「Kubernetesは今や、モダンなエンタープライズのテクノロジースタックの心臓部です。私たちの計画は、そこに深入りすることによって移行を興し、すべてのアプリケーションをそこから動かせるような高スケールのプロダクトに到達したい」。

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(文:Christine Hall、翻訳:Hiroshi Iwatani)

さようならSamsung Galaxy Note、そのエッセンスは新Galaxy S22 Ultraの中に

正直に告白すると、Samsung(サムスン)が初代Noteを発表したとき、筆者は懐疑的だった。国際コンシューマ・エレクトロニクス展(IFA)のメッセ・ベルリンの群衆の中でそう思ったのは、私1人ではなかったはずだ。5.3インチのディスプレイは、平均的なスクリーンが3.5インチ強であった年には想像を絶する大きさだった。スタイラスは、痕跡器官のように携帯電話に備わっていた。それは、集合的に(そして楽しく)進化してきたPalm Pilot時代からの、奇妙で不必要な遺物のようなものだった。

Samsungは、昔のものと似たような反発を受けた直近のデバイスに関して、そのような懐疑論を正しく指摘している。折りたたみ式ディスプレイのような新しいイノベーションに直面したとき、筆者はこのことについてよく考える。新しいイノベーションが失敗することに賭けることに時間を費やしていたら、かなりの実績があることになる。これは、つきものであり、我々が身を置くこの奇妙な業界の性質でもある。革新的であればあるほど、失敗する可能性は高くなる。

しかし、Noteはあらゆる合理的な指標からみて成功だった。発売から9カ月で1000万台を販売したとSamsungは発表した。初代iPhoneの登場から4年半、すでに閉塞感を漂わせ始めていたカテゴリーに、新しいアイデアを注入する一助となった。Samsungは、Blackberry後の世界でモバイルファーストのバーチャルオフィスというアイデアを取り入れる新しい方法を模索していて、そしておそらく最も重要なことは、ファブレット時代の到来を告げたことだ。2014年には、4.7インチのiPhone 6が登場し、3.5インチや4インチを理想的なスクリーンサイズとして称賛する時代は終焉を迎えたとApple(アップル)でさえ認めざるを得なくなった。

もちろん、Noteのイノベーションの全てが、すごく斬新だったわけではない。発売後、スタイラスに勢いがあると感じられた時期もあった。モバイルのフォームファクタでは、入力デバイスは不当に悪者扱いされていたのかもしれない。多くのメーカーがスタイラスを試したが、最終的にはタブレット用に特別に設計された大型のペンシルの方がはるかに大きな成功を収めた。

しかし、トレンドがどうであろうと、Noteは最後までS-Penを使い続けた。S-Penは、SamsungがNoteとGalaxy Sとの間の境界線を曖昧にし続ける中で、真の差別化要因だった。そして、皮肉にも、スマートフォンのS-Penは、ブランドとしてGalaxy Noteよりも正式に長生きした。ブランド名に関して移り気な傾向があるSamsungのような企業にとって、10年というのは家電ブランドとしてはなかなかの長寿命だ。同社が低価格の旗艦ブランドで取った動きを見るといい。

分析会社によると、終わりに向かうにつれ、売上は停滞し始め、さらに減少しさえした。しかし、その点についてはNoteだけではなかった。高級スマートフォン市場全体が、パンデミック以前から停滞していた。人々が単純にそれほど早くアップグレードする市場ではなかった。高級スマートフォンはより高価になり、また、もう数年使用するのに十分なものだった。一方、Galaxy Sシリーズの製品は大きくなり続け、2021年にはS-Penが追加された。

大退職時代の中で多くがそうであったように、Noteも再編成のために1年休みを取った。2022年になる頃に、Samsungは折りたたみ式の製品ラインアップをフラッグシップにすると宣言し、これもNoteが戻ってこないことを示す証拠のひとつとなった。SamsungがGalaxy Ultra 22にS-Penスロットを組み込むと、Noteの魂はその体を離れ、マーケティング資料で時々言及されるブランドの限界領域を漂うようになった。発売前に筆者がSamsungの担当者と交わした会話で、彼らはS-Penによるメモ取りなどの機能に関して、より抽象的な「Note体験」に言及する権利を留保していると付け加えた。筆者は発表の際に意見を言ったが、ここで繰り返して言ってもいいだろう。NoteブランドはGalaxy Sよりも強い。 あるいは、少なくとも瞬時に認識できる。Samsungは、Galaxy S22 Noteとしてであっても、Noteブランドを維持すべきだ。

筆者は、発売の数週間前に、このデバイスを少し触る機会があった。この記事にたくさんの写真があるのはそのためだ。 基本的には、正式なレビューに先立ち、製品の写真を撮ったり、少しいじったりする時間だ。当然ながら、私はGalaxy S22 Ultraの方に直行した。デバイスを手に取った瞬間に思ったのは、この端末は名前は違うがまさに「Galaxy Note 22」そのものだということだ。見た目もNote、動作もNote、音もNoteだ。

だから、もしあなたが黒一色の服を着て、ギャラクシーノート型のキャンドルを灯していたとしても、落ち着いていられる。まるでNoteが恐ろしい殺人事件を目撃し、政府の保護を受けなければならなくなったようなものだと考えてほしい。あるいは、Galaxy Sと結婚して、その名字を名乗るようになったのだと。わからない。どちらでも良いと思う方を。

しかし、興味深い(そしてあまり議論されていない)のは、この新デバイスがS22の上位機種を事実上崩壊させるということだ。新しい携帯電話を買うとき、もしあなたが付属品を重視するタイプの人なら、S-Penは付属品の中に入っている。それは、全てが最上位というSamsungの長年のアプローチの論理的な拡張だ.

S22とS22 Plus、S22 PlusとS22 Ultraは200ドル(約2万3000円)の差があるが、前者の2つは後者の2つよりも共通するDNAを持っている。実際、ディスプレイとバッテリーの大きさが、この2つの大きな違いだ。S22 PlusとUltraの場合にもそれは当てはまり、最上位機種はさらに高解像度のメーンカメラと追加の望遠、より多くのメモリとストレージオプション(それぞれ8GB〜、128GB〜というのは同じ)、100倍のスペースズーム(もう1つは30倍)、前述のSペンとそのすべての付属物を手に入れることができる。

以下は、1200ドル(約13万8000円)のGalaxy S22 Ultraの基本スペックだ。

  •  501ppiの6.8インチディスプレイ
  •  背面カメラ4基:108MP(ワイド)、12MP(ウルトラワイド)、10MP(ペリスコープ望遠)、10MP(望遠)、100倍スペースズーム、10倍光学ズーム
  • 5000mAhバッテリー
  • 8GB〜12GB RAM、128GB〜1TBストレージ
  • 4K動画撮影
  • Snapdragon 8 Gen 1 (市場による)
  • ディスプレイ内指紋リーダー

最後の3点は、全体的に同じだ。しかし、例えば、6.6インチのスクリーンと4500mAhのバッテリーではなく、6.8インチと5000mAhを望むなら、めでたいことに、S-Penも手に入れることができる。裏を返せば、当然ながら、少なくとも1200ドルを払わなければ、そのNoteの機能は手に入らないということだ。Samsungは、超高級機種とそれ以外のGalaxy Sシリーズの境界線として、S-Pen機能を維持する計画であることをはっきりとさせた。

非常に高価なスマートフォンの壮大な計画の中で、このいずれかが最終のプロダクトだとは思わないが、同社が他の製品に長年にわたるプロダクトラインを統合する際に、少なくとも少しの摩擦があったに違いない。正直に言えば、突然S22のベースモデルが6種類も登場したら、「複雑すぎる」と同社を批判するかもしれない。

Samsungはここでいくつかの決断を迫られ、S-Penを超プレミアムな機能にする方向へ向かった。そのため、S-Penの200~400ドル(約2万3000〜4万6000円)する価値が好きかどうか、急きょ自問自答することになる人もいるだろう。

もちろん筆者は、他人のためにその質問に答えることはできない。筆者は長い間、S-Penは興味深く、時には非常に便利な機能だと感じてきた。過去10年間のS-Penの進化は、より使いやすくなったソフトウェアのアップグレードと、この製品の最も面白い機能をいかに新鮮に保つかという企業努力のように感じられる追加機能の組み合わせだった。パワーポイントのスライドを高度化するためにスタイラスを使うことは非常に便利なのだろうか?そうでもない。格好いいか? そうかもしれない。

本当に便利なのは、「テキストに変換」のような改良点だ。自身の乱暴で読みにくい筆跡にいかによく対応するか、筆者は一貫して感銘を受けてきた。筆者の字はペンと紙でも十分ひどいのに、光沢のあるスクリーン上でスタイラスを使うとなれば尚更だ。しかしソフトウェアはほぼ常に筆者が伝えようとしていることを見抜いてくれる。私の筆跡が思ったほど悪くないのか(ひどい)、それともソフトウェアが非常に優れているかだ(こちらが正しい)。

Samsungは過去10年間、S-Penの約束を見事に果たしてきた。しかし、最初のNoteが登場したときでさえ、多くのユーザーはすでにタッチスクリーンで上手にタイピングできるように訓練されていた。多くの人にとって、Noteは、現在Samsungのユーザーがハイエンドな6.6インチと6.8インチの間で選択している大画面携帯電話の世界への入り口だった。Galaxy Sラインを向上させようとSamsungは効果的にNoteを再利用した。

しかし、私たちに残されたものは、10年以上にわたるスマートフォン戦争から生まれた素晴らしい(おそらく、詰め込みすぎではあるが)成果である。S22 Ultraは、その重量にもかかわらず、驚くほど滑らかな躯体を維持している。実は、初代Galaxy Noteはあり得ないほど大きいとみられ、多くの点でそれが当てはまった。2011年当時、あれだけの画面をサポートするには、もっと多くの携帯電話が必要だった。しかし、エッジトゥエッジディスプレイのような画期的な技術により、より大きなスクリーンを小さな端末で実現することができた。

間違いなくS22 Ultraは、6.43 x 3.07 x 0.35インチ(163.3×77.9×8.9ミリ)という巨大なタンクだ。平均的な体格の成人男性で、平均的な大きさの手を持つ筆者は、8オンス(226グラム)のデバイスが扱いにくいと感じる瞬間があった。これは、大きな端末を手に入れるために支払う代償だ。そして、Samsungはきっと嬉しそうにこう言うだろう。もしスクリーンが大きすぎるなら、いくつか折りたたみ式のものがあるので、喜んで売ろう、と。

  1. Ultra

  2. Ultra2

  3. Ultra3

  4. Ultra4

  5. Ultra5

  6. Ultra6

  7. Ultra7

  8. Ultra8

  9. Ultra9

  10. Ultra10

  11. Ultra11

  12. Ultra12

  13. Ultra13

  14. Ultra14

  15. Ultra15

  16. Ultra16

  17. Ultra17

  18. Ultra18

 

カメラも高品質だ。季節外れの暖かな2月の朝、筆者は嬉々として端末を持って近所を回った。S22は、2022年の携帯電話端末で撮影できる写真のなかでも最高レベルのものを撮ることができる。ナイトショットは、ここ数世代で目覚ましい進歩を遂げた。Samsungにとって、この点での最も重要な競争相手は最新のPixelだ。この端末で、Googleはついにハードウェアも重要であることを認めた。

ナイトショットは、Ultraと低スペックのS22モデルの最大の違いを感じる部分の1つだ。つまり、これらの改善は、1〜2世代で徐々に浸透する可能性があることを意味する。スペースズームも100倍という驚異的な倍率だが、その分、忠実度は劇的に低下する。この機能が目新しさをはるかに超えたとは筆者には思えなかった。108MPセンサーで撮影した画素を合成して、より多くの光を取り込むノナバイニングのような機能の方が、日常的に使うにははるかに有意義だ。

赤ちゃんのころのブライアン。修復済みのもの。

また、先に追加されたPhoto Remaster(写真修復)やObject Eraser(オブジェクト抹消)など、Samsungはソフトウェア面でも改良を続けている。オートフレームは複数の被写体の撮影を改善し、改良されたポートレートモードは深度マップを活用し、ボケ効果を生かしたより精密なカットアウトができるようになった。ウサギの撮影では驚くほどうまくいく、と喜んでお伝えしよう。ディスプレイは、端末の長年の課題だった屋外での視認性を向上させ、特に前述の朝の写真撮影の際には、その威力を発揮した。5000mAhの大容量バッテリーは、26時間という長時間使用にも耐えた。

S22 Ultraはとても良い携帯電話だ。本当に疑問の余地はなかった。S22 Ultraは、Galaxyの両ラインのベストを組み合わせたとは言えないが、両ラインの論理的な中心点に位置している。SとNoteは、過去数世代にわたって、ゆっくりと互いに姿を変えてきた。しかし、より大きな疑問は、この製品が高級スマートフォンの運命について何を語っているのか、ということだ。

このカテゴリーはここ数年、その輝きを失いつつある。Samsungがフォールダブルの登場によって復活させたいと考えているのは、興奮だ。しかし、最も楽観的に予測するにしても、フォールダブルが話題を独占するのは、まだまだ先の話だ。

一方で、Samsungは、あらゆる付属品を真にプレミアムな価格帯のデバイスに詰め込むという、得意とすることを続けていくだろう。しかし、S-Penが決定的な要素でない限り、大多数のユーザーはGalaxy S22の低価格帯端末に満足するはずだ。

現在も抱えているが、多くの嵐を乗り越えてきた愛されるブランドにとって、Noteがこのように静かに後景に流れていくのを見るのは奇妙だ。しかし、Noteは間違いなく太陽の下で輝いたときがあり、たとえSamsungが次の作戦のためにNoteのブランドをなくしても、そのイノベーションはスマートフォン分野への広範な影響の中で生き続けるだろう。

画像クレジット: Brian Heater

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(文:Brian Heater、翻訳:Nariko Mizoguchi

Snapchatが「家に着いた?」のかわりになるリアルタイムの位置情報共有機能を導入

Snapchat(スナップチャット)は米国時間2月18日、バディシステムのような新機能を展開し、ユーザーが15分というような少しの間、または数時間、リアルタイムの位置情報を友達と共有できるようにすると発表した。このグローバルな新機能は、ユーザーが社会生活を再開したり、キャンパスに戻ったり、再び旅行を始めたりする際に、友達を見守ることを目的としている。夜、友達が安全に帰宅したかどうかを確認するなど、日常的に使用することができる。

ユーザーがリアルタイムの位置情報を共有できるのは、個々の友達に限られる。Snapchatによると、安全上の理由から、ユーザーがリアルタイムの位置情報の詳細をSnapchatのすべての友達に送信するオプションはないとのこと。また、位置情報を共有するには、双方がSnapchat上でお互いを友達として受け入れる必要があるとしている。ユーザーがこの機能をオンにすると、「このツールは親しい友達や家族との間でのみ使用することをおすすめします」という注意書きが表示される。

2017年から同アプリは、ユーザーがSnapchatを利用する際に、Snap Mapで自分の位置情報を友達と共有できるオプションを提供している。現在、毎月2億5千万人のユーザーがMap機能を利用して友達とつながっている。同社によると、この新しいリアルタイム機能は、Snap Mapを友達とどのように使っているかというユーザーからのフィードバックに基づいて構築されたという。米国のSnapchatユーザーの78%が「Snap Mapで位置情報を共有することにためらいはない」「他の人とのつながりを保つための安全な方法だと思うから共有する」と答えていることを紹介している。

この新機能は、大学キャンパスでの性的暴行問題に取り組む全米の非営利団体「It’s On Us」との幅広いパートナーシップの一環としてリリースされる。また、この新機能に加えて、バイスタンダー(傍観者)の意識向上に焦点を当てた新しいPSAを公開する。

この新機能は17日、Snapchatが2月23日からユーザーネームを変更できるようになると発表した翌日に発表された。ユーザーネームの変更は、友達リスト、Snapコード、Snapchatスコア、メモリなど、ユーザーのアカウント内容には影響しない。また、すでに使用されているユーザーネームを選択することはできず、ユーザーネームの変更は1年に1度までに限られている。

画像クレジット:Snap

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(文:Aisha Malik、翻訳:Aya Nakazato)

3Dプリントで「弾力性とエネルギー効率の高い住宅」を建てるICONが213億円調達、評価額は約2300億円に近づく

3Dプリントで家を作るICON(アイコン)は、Tiger Global Managementがリードするラウンドで1億8500万ドル(約213億円)を追加調達した。TechCrunchの独占情報だ。

この資金調達は、2021年8月に発表されたICONの2億700万ドル(約238億円)のシリーズBの延長線上にあるという。

オースチンに拠点を置く同社は、今回の資金調達について認めたものの、バリュエーションなどの詳細についてはコメントを拒否した。しかし、取引に詳しい匿名の情報筋はTechCrunchに対し、同社の評価額は「今や20億ドル(約2300億円)に近づいて」おり、一部の既存投資家も追加で資金を投入したと語った。

広報担当者は電子メールでこ「私たちは、世界クラスの投資家、役員、あらゆるレベルの組織と引き続き提携する機会をとてもうれしく思っています」と述べている。

これまでの投資家には、Norwest Venture Partners、8VC、Bjarke Ingels Group(BIG)、BOND、Citi Crosstimbers、Ensemble、Fifth Wall、LENx、Moderne Ventures、Oakhouse Partnersなどが含まれている。これらの投資家のうち、どこが今回の延長ラウンドに参加したかは明らかではない。今回の資金調達で、ICONは総額4億5100万ドル(約519億円)を株式で調達したことになる。

ICONは2017年末に創業。2018年3月のSXSW(サウス・バイ・サウスウエスト、毎年3月にオースティンで行なわれる大規模イベント)期間中に、米国で初めて許可された3Dプリントの家を発売した。350平方フィート(32.5平方メートル)の家のプリントには(25%の速度で)約48時間かかった。ICONがあえてコンクリートを素材に選んだのは、共同創業者でCEOのJason Ballard(ジェイソン・バラード)氏がいうように「地球上で最も弾力性のある素材の1つ」だからだ。

同社は前回の資金調達時、米国とメキシコの全域で、3Dプリントによる住宅や建造物を20数軒引き渡したと発表した。その半数以上は、ホームレスや慢性的な貧困状態にある人々のための住宅だ。例えば2020年、ICONは非営利団体のパートナーであるNew Storyとともに、メキシコで3Dプリントによる住宅を納入した。また、テキサス州オースティンでは、非営利団体Mobile Loaves & Fishesと共同で、長期にわたりホームレスとなっている人々のための住宅を完成させた。

2021年初頭には、テキサス州オースティンのデベロッパー3Strandsのために、米国初の3Dプリント住宅を販売し、住宅市場の主流に躍り出た。

そして2021年10月、ICONは、米国最大の住宅メーカーの1つであるLennarとの提携を発表した。Lennarは投資家として、ベンチャー部門を通じてスタートアップのLENxに投資している。両社が「これまでで最大の3Dプリント住宅のコミュニティ」と表現する100軒の住宅を建設する計画で、2022年中に着工する予定だ。ICONのロボット工学、ソフトウェア、高度な材料が用いられる。

ICONは、その3Dプリント技術により、従来の建築方法よりも早く、廃棄物も少なく、設計の自由度が高い「弾力性とエネルギー効率の高い住宅」を実現できると宣伝している。米国では多くの都市で深刻な住宅不足に陥っている。手頃な価格の住宅、特にオースティンのように住宅価格の中央値が過去1年間で46%も上昇したような市場では、その必要性がこれまで以上に顕著になっている。

今週初め、Homeboundは、Khosla VenturesがリードするシリーズC資金調達ラウンドで7500万ドル(約86億円)を調達し、その技術で住宅在庫不足に対処する独自の取り組みに着手したことを発表した。

画像クレジット:ICON

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(文:Mary Ann Azevedo、翻訳:Nariko Mizoguchi