連邦政府はSpaceXがNASAの月着陸船建造を受注したことに対するBlue OriginとDyneticsの異議を退ける

Blue Origin(ブルーオリジン)とDynetics(ダイネティクス)は、NASAがアルテミス計画で使用する有人着陸システムの建造をSpaceXにのみ委託するという決定を下したことに対し、いまだ強く抗議を続けている。この決定に対する抗議は 先日却下されたが、Blue Originが公然と疑問を呈した米国政府説明責任局の主張は誰でも読むことができる。ここでは選定からはずれた企業の訴えから、項目ごとの主要な主張内容を紹介する。

関連記事
NASAがアポロ計画以来となる有人月面着陸システムの開発にSpaceXを指名
米会計検査院が月着陸船開発契約をめぐるBlue Originの抗議を却下
NASAがSpaceX、Blue Origin、Dyneticsの3社を月面着陸船の開発に指名

(2020年は長い年だったので)よく覚えていない人のために説明すると、もともとNASAは、2024年に有人月着陸プロジェクトに向けた月面着陸船の構想・提案を得るため、 上記の3社を選んで早期の資金援助を行っていた。さらに次の段階では、可能であれば2社の案を選んで進めるとしていた。しかし、委託先が決まる時期が来ると、SpaceXのみが契約を獲得した。

DyneticsとBlue Originは、この決定に個別に抗議したが、その理由は共通している。1つ目に、NASAは約束通り2社を選定すべきであり、それをしないことはリスクをともない、反競争的でもあるということ。2つ目に、確保できる予算が少ないことがわかった時点で、選定の条件を調整すべきだったということ。3つ目に、NASAが提案を公正に評価せず、さまざまな点でSpaceXに偏った評価をし、他の2社には不利な評価をしたということだ。

米国会計検査院(GAO)は、これらの懸念をすべて報告書の中で解消している。 それにより、Blue Originの「NASAの権限は限定されているため、抗議に適切に対処できない」という後に続く異議は、負け惜しみのように聞こえることとなっている。

1社に決定

画像クレジット:SpaceX

2社ではなく1社と契約することについては、白黒はっきりとした答えが出ている。今回の提案依頼では、そもそも資金が十分にあることが前提である旨が何度も明言されていた。NASAは2社と契約を結ぶことを好み、望み、見込んでさえいたかもしれないが「最大2社」または「1社以上」と契約を結ぶということははっきりしていた。実際、もし1社だけが要件を満たしていて、他の2社はそれを満たしていなかったとしたらどうだろう。NASAは不適当な候補者に資金を投入する義務があるだろうか。答えは「ノー」だ。そして、それが多かれ少なかれ実際に起こったことだ。

報告書からの引用

提案依頼の段階で複数社との契約を締結する意図があった場合でも、提案を評価した結果、1社との契約のみを締結すべきと判断された場合、必ずしもそうする必要はないと認識しています。例えば、NASAの意図にかかわらず、契約を締結するうえで利用可能な資金を超えることはできません。

GAOの説明によると、NASAの意思決定プロセスでは技術的アプローチを最も重視し、次に費用、そしてマネジメント(組織、スケジュールなど)を重視したという。各社の提案はこれらの基準ごとに個別に評価され、最終的な結果が比較された。以下に各社への評価の重要項目をまとめた。

画像クレジット:GAO / NASA

再び報告書からの引用

技術的アプローチという要素は、総見積額よりも重要であり、総見積額はマネジメント的アプローチという要素よりも重要です。総合すると、費用的要素よりも非費用的要素の重要度の比重が高いと言えます。

抗議者の主張に反し、仮に比較分析が必要であったとしても、SpaceXの提案は3つの評価基準のそれぞれにおいて最高の評価を受けており、費用も最も低くなっています。

NASAの予算が確定したとき、HLSプログラムへの予算は想定より少なく、NASAは厳しい選択を迫られた。幸い、(最も重要な要素である)技術面で他社と同等かそれ以上で、組織的にも他社よりかなり優れており、費用面においても非常に合理的な提案があった。SpaceXとの契約は明確な選択だった。

そうはいっても、NASAは十分な資金を獲得できなかった。それでもBlue Originは、何とかして成功させるために自分たちが協力をするのは当然だと主張した。同社は、NASAが直接交渉に来ていたら、おそらくSpaceXよりも良い提案をできたかもしれない、とほのめかした(ジェフ・ベゾス氏が後に20億ドル(約2200億円)の値引きを大胆にも提案したことは、同社に多少の余裕があったことを示している)。

関連記事:月着陸船開発を失注したベゾス氏がNASAに約2208億円の「インセンティブ」を打診

しかし、NASAはすでに別の結論を出していたことをGAOが確認している。

NASAは、2021年度の資金不足を埋め合わせるため、提示されている約[削除済み]ドルの目標達成報奨金(または提示されている総額29億4100万ドル(約3240億円)の約[削除済み]パーセント)の支払いを2021年度ではなく、後年に繰り延べするようSpaceXと交渉することは「乗り越えられない」ことではないという結論に達しました。これに対し、SSAの判断では、Blue Origin(59億9500万ドル[約6590億円])とDynetics(90億8200万ドル[約9990億円])が、それぞれの技術的・マネジメント的アプローチを大きく修正することなく、著しく高い提案額を大幅に引き下げることは不可能であるということです。

削除された部分に関わらず、ここでの問題点を理解するのは難しいことではない。SpaceXは、30億ドル(約3300億円)に達した時点ですでに厳しい状態になるであろう財政上の問題に対処するため、数億ドル(数百億円)程度の削減を考えることができ、それを合理的にとらえることさえできた。一方でBlue OriginとDyneticsは、同じように財政上の大きな助けとなるよう、コストを半分以上削減するということは考えられなかった。

当時、NASAの選考グループは次のように説明していた。

SpaceXとの契約締結を考慮すると、残りの利用可能な資金は非常に少ないため、私の意見では、NASAはBlue Originが任務の内容に対して提案した額を、同社との契約締結が可能になる数字まで下げるよう合理的に要求することはできません。

Blue Originは、予算によって選考プロセスが制限される可能性があることを、NASAは事前に告げるべきだったと訴えた。しかしGAOは、連邦予算は秘密にはされていないということを指摘し、さらに同社らが契約締結時まで問題提起を先送りしていたことについても明快に指摘している。このような訴えが真摯に受け止められるためには、時宜を得る必要があるとし、さらにNASAがそれを事前に告げていたとしても、そのことで結果が変わっていたという可能性を示唆するものは何もないとしている。

また、抗議文では提供者を1社のみに絞ることは「反競争的であり、過度にリスクをともなう」と指摘しているが、本当にそうであるかという問題もある。GAOは「これらの重要な政策的問題については、開かれた議論をさらに進める価値があるかもしれない」と認めているが、そもそもNASAには2つ以上のプロジェクトを行う資金がなかったため、こういった訴えは無意味である。有権者として、また宇宙開発に潤沢な予算を投入すべきであると主張する者として、NASAがあと60億ドル(約6600億円)多く予算を得られなかったのは残念だと言えるかもしれない。だからといって、得られた資金を可能な限り最高の目的のために使うというNASAの決定が間違っていたわけではない。

宇宙では叫びは誰にも届かない

画像クレジット:Joe Raedle / Getty Images

Blue OriginとDyneticsは、この選考プロセスがSpaceXに有利に進められ、さまざまな企業の強みと弱点が公平に評価されていないと主張している。しかし、GAOはこのような訴えを甘んじて受け入れる。

1つの例として、Blue Originは提案依頼の際、着陸船が暗闇でも着陸できることは特に求められていなかったと主張している。しかし、まず第1にそれは求められているいうこと、そして第2に宇宙は暗いということだ。その点を考慮した設計でないと、宇宙では苦労することになる。

もう1つの例では、Blue OriginとSpaceXが提案した通信システムはどちらも特定の要件を満たしていないと指摘されたが、Blue Originのシステムについては「重要な弱点」とされ、SpaceXは「弱点」としか指摘されなかった。それこそが優遇措置の証拠であると2社は指摘している。

しかしGAOはそうではないという。「評価の記録をざっと見直しただけでも、それぞれの提案における重要な相違点がはっきりと示されており、NASAが与えた異なる評価結果はその相違点に裏付けられています」ということだ。この例では、Blue Originの通信リンクのうち4つが要求通りに機能せず、5つ目も確実ではない。SpaceXの方でうまく機能しなかったのは2つだけだ。このような大きな差は、抗議している2社それぞれの異議内容の中にも示されている。

実際、報告書には次のように書かれている。

私たちは、契約担当者が提示したBlue OriginまたはSpaceXの提案に関する分析結果に対し、Blue Originが反論していないことに留意します。Blue Originは当初、同社の提案に対する評価に異議を唱えていましたが、NASAの報告書を受け取った後、同意の上、その異議申し立てを撤回しました。

Blue Originが不満に思っているのは、設計上の選択の多くは明示的に要求されていないにもかかわらず、SpaceXがクルーの安全性、健康、快適性を重視した設計をしたことで、追加ポイントを得たということだ。GAOは、NASAがこうしたSpaceXの設計をプラスのポイントとみなすことは専門機関としての裁量権の範囲内であるとし、このような事例において「なぜ裁量権が必要なのかを示す代表的な例」と呼んでいる。それにしても、競合相手の着陸船が 素晴らしすぎるという理由で異議を唱えているのであれば、優先事項を考え直した方がいいかもしれない。

画像クレジット:Blue Origin

報告書は、仮にいくつかの決定に対する異議が認められたとしても、結果は変わらなかっただろうとしている。

SpaceXに対する総合評価は以下の通りである。

  • 技術面:重要な強み3、強み10、弱点6、重要な弱点1
  • マネジメント面:重要な強み2、強み3、弱点2

一方、Blue Originに対する総合評価は以下の通りである。

  • 技術面:強み13、弱点14、重要な弱点2
  • マネジメント面:重要な強み1、強み2、弱点6

重要な要素のほとんどすべてにおいて完敗であると気づかされるのは決して好ましいことではないが、今回は事実それが要因だったようだ。ちなみに、Dyneticsの訴えに関しても同じ運命をたどっているが、もう少し手厳しい扱いを受けている。

NASAの評価に対するDyneticsの異議の一部がわずかに認められる可能性を考慮しても、NASAの評価はほぼ妥当であり、非費用的要素に基づいた同社の相対的な競争力には大きな変化はないだろう、と報告書には記載されています。

異議は却下された。

Blue OriginとDyneticsの欠点について極めて率直に書いたが、両社が負けを認め、NASAが両社を蹴落とそうとしているわけではないことを受け入れていれば、必要のないことだった。両社は公正な評価を受けて敗れた。今は野心的で可能性に満ちた企業でなく、まるで泣き言をいう負け組のようだ。

関連記事
NASAがISSで月基地建設用3Dプリンターの実証機をテスト、微小重力・月の土で必要な強度が出るか確認
微小重力の宇宙での製造業スタートアップVardaがRocket Labと宇宙船3機の購入契約締結
SpaceXが初の買収、衛星ネット接続のSwarm Technologiesを全額出資子会社に

カテゴリー:宇宙
タグ:Blue OriginSpaceXNASADyneticsアメリカアルテミス計画宇宙船米国会計検査院(GAO)

画像クレジット:NASA

原文へ

(文:Devin Coldewey、翻訳:Dragonfly)

【コラム】次世代グローバル決済を生み出すAfterpayとSquareの融合

編集部注:本稿の著者Dana Stalder(ダナ・スタルダー)氏は、Matrix Partnersのパートナー。PayPalの元コマーシャルチーフ(製品、販売、マーケティング)で、現在Matrix Partnersでフィンテック投資をリードし、消費者市場やエンタープライズソフトウェアにも投資している。

ーーー

フィンテックにとって米国時間8月1日は重要な日となった。AfterPayがSquareと合併することに合意した。この合意により、近年最も高い評価を受けている2つの金融テクノロジー企業が1つの企業になる道を歩み始める。

AfterpayとSquareは、世界で最も重要な支払いネットワークの1つを構築するポテンシャルを有している。Squareは大規模なマーチャント決済ネットワークを確立しており、またCash Appを介して、成長著しい消費者向け決済サービスを提供している。しかし、歴史的にみてこの2つの事業は統合されていない。SquareとAfterpayは、これらすべてのサービスを1つの統合されたエクスペリエンスにまとめることができる。

関連記事:Squareが3.19兆円で「今買って、後で支払う」後払いサービス大手Afterpayを買収

AfterpayとCash Appはそれぞれ数千万人の消費者を抱えており、SquareのセラーエコシステムとAfterpayのマーチャントネットワークは、いずれも年間数百億の決済ボリュームを記録している。オフラインレジとオンライン決済フローから、数タップで送金まで、SquareとAfterpayは次世代の経済的エンパワーメントの全容を物語ることになるだろう。

Afterpayの唯一の機関投資家として、私たちがどのようにしてここに至ったのか、そしてこの合併が消費者金融と決済業界の将来にとって何を意味するのかについて、いくつかの視点を共有したいと思う。

フィンテックにおける重大なイノベーション

世界の決済業界は、今後数十年間の勝者と敗者を決定する重大なイノベーションのサイクルを、5年から10年ごとに経験している。最近の大きな変化はNFCベースのモバイル決済へのシフトで、これについては2015年に寄稿しているが、主要なモバイルOSベンダー(VISA、マスターカードなど)はネットワークと消費者のニーズを巧みに橋渡しして、グローバルな決済スタックにおける地位を確固たるものにした。

AfterPayは、最新の決定的なイノベーションサイクルを引き起こした。シドニーのリビングルームでミレニアル世代のNick Molnar(ニック・モルナー)氏が構想したAfterpayには、ミレニアル世代はクレジットが好きではない、という重要な洞察がある。

ミレニアル世代は、2008年の世界的な住宅ローン危機の中で成人となった。彼らは若い頃、友人や家族が住宅ローンを積みすぎて家を失うのを目の当たりにしており、銀行に対する信頼はすでに薄れていた。また学生ローンもかつてない水準に達した。それゆえ、ミレニアル世代(そしてそのすぐ後に続くZ世代)がクレジットカードよりもデビットカードを強く好むのも不思議ではない。

しかし、パラダイムシフトを認識することと、それに対して何かを行うことは別物だ。ニック・モルナー氏とAnthony Eisen(アンソニー・アイゼン)氏は行動を起こし、最終的にそのコアプロダクトで歴史上最も急成長した決済スタートアップの1つを構築した。「Buy Now, Pay Later(BNPL、今買って後で支払う)」そして無利息のサービスだ。

Afterpayのプロダクトはシンプルだ。カートに100ドル(約1万1000円)分が入っていて、Afterpayでの支払いを選択した場合、銀行カード(通常はデビットカード)に対して2週間ごとに4回に分けて25ドル(約2730円)が請求される。無利息で、リボルビング債務もなく、適時支払いにかかる手数料もない。ミレニアル世代の消費者にとっては、高い金利やリボルビング債務といったクレジットカードの欠点を気にすることなく、デビットカードを使ってクレジットカードの第1のメリット(後で支払いができること)を享受できることを意味するものとなった。

良い面ばかりで、悪い面はない。誰が抗えるだろうか?ミレニアル世代を主な成長セグメントとしていた初期のマーチャントは、公正な取引を獲得した。Afterpayへの支払い処理にわずかな手数料を支払うだけで、かなり高い平均注文価値(AOV)と購入へのコンバージョンが得られる。これはwin-winの提案であり、多くの実績を得て、新しい決済ネットワークが生まれた。

画像クレジット:Matrix Partners

真似することが最もすばらしいお世辞となる

Afterpayは2016年から2017年にかけてはオーストラリア以外ではあまり知られていなかったが、2018年に米国に進出してビジネスを立ち上げ、2年目にして1億ドル(約110億円)の純収益を上げたことで注目を集めた。

Klarnaは米国でのプロダクト市場の適合性に苦慮していたが、Afterpayを模倣すべく事業を転換した。またAffirmは、従来からのクレジット事業を主な事業としており、売上の大部分を消費者利益から得ていたが、独自のBNPLオファリングに着目して導入した。その後PayPalが「Pay in 4」の提供を開始し、つい数週間前にはAppleがこの分野に参入するというニュースが報じられた。

Afterpayは世界的な現象を生み出し、今では業界のメインストリームプレイヤーに支持されるカテゴリーとなっている。このカテゴリーは今後10年間で世界の小売決済のかなりのシェアを獲得する軌道に乗っている。

Afterpayは、他とは一線を画している。同社は事実上あらゆる指標において常にBNPLのリーダーであるとともに、顧客のニーズに忠実であり続けることで、その地位を確立してきた。同社はミレニアル世代やZ世代の消費者をよく理解している。それはAfterpayユーザーとして人々が体験する、同社の声、トーン、ライフスタイルブランドに顕著に表れており、マーチャントネットワークにおいて戦略的に構築され続けている。それはまた、負債商品を旋回するユーザーに対して、Afterpayはクロスセルを意図していないという単純な事実からも明らかだ。

最も重要な点は、こうした消費者に対する理解の姿勢が、競合他社と比較した使用状況の測定基準に反映されていることにある。これは人々が愛着を持ち、利用し、信頼を寄せるようになったプロダクトであり、かつては得られなかった、伝統的な消費者信用を上回る良質で公正な条件を備えている。

Afterpay2021年度上半期業績発表

SquareとAfterpayの融合は完璧な調和

筆者はこれまで15年以上にわたって決済会社を手がけてきた。初期にはPayPalの黎明期を経験し、より直近ではMatrix Partnersのベンチャー投資家として活動している。しかしこれほどまでに、消費者やマーチャントに並外れた価値をもたらすポテンシャルを秘めた組み合わせは見たことがない。eBayとPayPalよりもはるかに優れている。

明確なプロダクトとネットワークの補完性を超えて、筆者とパートナーにとって最もエキサイティングな点は、価値と文化の整合にある。すべての人に向けられたより多くの機会があり、経済的なハードルが少ない未来のビジョンを、SquareとAfterpayは共有している。彼らがともにその未来に向かって前進する中で、筆者はこの組み合わせが勝者となることを確信している。SquareとAfterpayの融合により、世界の次世代決済プロバイダーが誕生するだろう。

関連記事
名刺の復活、株式公開はなぜ良いことなのか、BNPLはどこにでもある
年間ユニークユーザー数1580万人の後払い決済サービス「NP後払い」をテレビ通販「ショップチャンネル」が導入
アップルがApple Payに後払い決済機能を導入か

カテゴリー:フィンテック
タグ:AfterpaySquare合併決済サービスBNPLオーストラリアアメリカミレニアルコラム

画像クレジット:charles taylor / Getty Images

原文へ

(文:Dana Stalder、翻訳:Dragonfly)

WeedmapsのiPhoneアプリで大麻購入が可能に

Apple(アップル)のApp Storeガイドライン緩和によって、Weedmaps(ウィードマップ)ユーザーは人気アプリの中でカナビス(大麻)を購入できるようになった。これは、Weedmapsのユーザーがカナビスを一覧、選択、購入し、受取りあるいは配達までをアプリ内で行えるという意味だ。これまでユーザーは、地元小売店を探してメニューを見ることしかできなかった。それはApple(アップル)および地方、国のガイドラインのためだった。

アップデートされたアプリはすでに公開中だ。

関連記事:アップルが詐欺撲滅を目指してApp Storeガイドラインを改訂

この変更は、Appleが一部のカナビスアプリのためにApp Storeの規制を緩和した結果だ。新しいガイドラインの下では、ライセンスを受けたカナビス販売業者はライセンスを受けた薬局と同じ制限を(Appleから)受けるため、Weedmapsのようにライセンスを受けたカナビス業者を掲載しているアプリは販売サービスの提供が可能になる、という意味だ。

「当社のiOSアプリから購入できる機能は、当社の顧客とビジネスパートナー双方にとっての利便を改善する画期的な出来事です」とWM Technology, Inc.の最高技術責任者であるJustin Dean(ジャスティン・ディーン)氏はいう。「Appleのような会社が業界のリーダーたちと強力して私たちの業界のイノベーションを進めるソリューションを見つけてくれたことに感謝します。カナビスに対するポリシーや姿勢が目覚ましい成長を約束する形で変化していることに勇気づけられるとともに、当社プラットフォームを通じて小売店にカナビスを注文するもっと簡単な方法を提供できることを期待しています」。

Weedmapsはこの市場で独特の位置にいる。カナビス・アプリの第1人者として、すでに全米を通じて利用されている。競合するデリバリーサービスのEaze(イーズ)などと異なり、Weedmapsは配達に関与していない。ライセンスを受けたディスペンサリー(販売薬局)が商品とサービスのリストを載せるためのプラットフォームを提供しているだけだ。

新しいApp Store規則の下では、Weedmapsのようなアプリはユーザーがカナビスの販売が合法である限定地域内でのみ注文できるように制限しなければならない。これは、カナビス販売が違法な場所に住んでいるユーザーは、合法地域内のディスペンサリーから購入できないことを意味している。

以前のApple App Storeポリシーは以下のとおりだ。

たばこや電子タバコ(関連製品を含む)、違法な薬物、過度のアルコールの摂取を助長するAppは、App Storeでは許可されません。未成年者にこれらの摂取を促すAppは却下されます。また、規制薬物の販売(許認可を受けた薬局を除く)、およびたばこの販売を幇助することは認められません。

米国時間6月7日に改定されたポリシーは以下のとおり、変更部分を強調してある。

たばこや電子タバコ(関連製品を含む)、違法な薬物、過度のアルコールの摂取を助長するAppは、App Storeでは許可されません。未成年者にこれらの摂取を促すAppは却下されます。また、規制薬物の販売(許認可を受けた薬局、または許認可済みかその他の合法的な大麻ディスペンサリーによる販売を除く)、およびたばこの販売を幇助することは認められません。

規制の多い分野(バンキングや金融サービス、ヘルスケア、ギャンブル、合法大麻の使用、航空旅行など)でのサービスを提供するApp、機密性の高いユーザー情報を必要とするAppは、個人のデベロッパではなく、そうしたサービスを提供する法人によって提出される必要があります。大麻の合法的な販売を促進するためのAppは、それが合法とみなされる法的管轄地域でのみ利用できるよう、地域制限を設定する必要があります

カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ
タグ:Weedmaps大麻AppleiOSApp Storeアメリカ

画像クレジット:Weedmaps

原文へ

(文:Matt Burns、翻訳:Nob Takahashi / facebook

アマゾンがマーケットプレイスで販売された欠陥製品にも自社で補償を行うと発表

Amazon(アマゾン)は米国時間8月10日、Amazonマーケットプレイスを通じて第三者から販売された欠陥商品の問題に対処するため「A-to-Z保証」として知られる返品ポリシーを大幅に変更することを発表した。これまでは、Amazonマーケットプレイスで販売された欠陥商品が原因で、物的損害や人的被害が発生した場合、アマゾンは購入者に、販売者に対して申し立てを行うように指示してきた。しかし、今回よりアマゾンは、1000ドル(約11万円)以下の賠償要求であれば、販売者が費用を負担することなく、アマゾンが直接購入者に補償額を支払うと述べている。1000ドルという金額は、マーケットプレイスで販売される商品の80%以上をカバーするという。

また、1000ドルを超える場合でも、アマゾンが有効であると認める賠償要求に対して、販売者が補償を拒否したり、反応しない時には、アマゾンが1000ドル以上の補償に踏み切ることもあるとしている。

アマゾンはこれまで長年にわたり、Amazonマーケットプレイスで販売された製品に対する責任を回避しようとしてきた。アマゾンは、これらの取引を仲介するプラットフォームに過ぎず、欠陥製品による損害賠償が発生した場合に責任を負う当事者ではないというのが、同社の主張だった。長年、多くの米国の裁判所これを認めてきたが、中には認めない裁判所もあり、問題を複雑にしてきた。最近では、カリフォルニア州の上訴裁判所が、アマゾンのウェブサイトで販売されたた第三者の製品によって消費者が損害を被った場合、アマゾンが訴えられる可能性があるとの判決を下した。この訴訟は、2015年に母親が息子のために購入したホバーボードに欠陥があり、顧客の手に火傷を負わせ、火事を引き起こしたというものだった。

アマゾンのマーケットプレイスは成長するにつれて、不良品や消費者からの苦情をどのように処理するかということがますます問題になっている。調査会社のMarketplace Pulse(マーケットプレイス・パルス)の推計によると、現在、アマゾンのマーケットプレイスには630万人の出品者がいて、そのうち150万人が活発な取引を行っているという。

この状況は最近ヤマ場を迎えることになった。米国消費者製品安全委員会(CPSC)が2021年7月に、アマゾンを訴えたのだ。この委員会は、Amazon.com(アマゾン・ドット・コム)で販売されている潜在的に危険な製品を回収する責任を、アマゾンに負わせることを目指している。訴状で名指しされた製品には「警報が鳴らない欠陥のある一酸化炭素検知器2万4000台、子どもが火傷をする危険性のある可燃性繊維の安全基準に違反した多数の子ども用寝巻き衣類、消費者を電撃や感電から守るために必要な浸漬保護装置を付けずに販売された約40万台のヘアドライヤー」が含まれていると、連邦政府機関である同委員会は述べている。

訴訟の一環として、CPSCはアマゾンがFBA(フルフィルメント by Amazon)プログラムを利用してこれらの製品を販売していることを挙げ、アマゾンも介入し返金に応じるよう求めた。CPSCは、アマゾンが自社倉庫に商品を保管し、在庫を持ち、仕分けして出荷することで、手数料を得ていることを指摘。また、これらの商品を購入する消費者は、アマゾンから購入していると「当然ながら信じる」可能性があると主張している(この件に関するアマゾンの声明は、こちらで読むことができる)。

そして今回、アマゾンはマーケットプレイスを通じて販売された不良品に関する消費者からのクレームに、対応すると発表した。購入者はこれまでのように販売者に連絡を取るのではなく、アマゾンカスタマーサービスを通じてクレーム処理を開始できるようになる。

アマゾンは9月1日より、購入者からのクレーム情報を受け付け、販売者に通知してクレームに対応できるようにする。販売者が対応しない場合は、アマゾンが介入して自らの費用で顧客の問題に対処し、その一方で販売者への追及を別途行う。また、アマゾンが有効と判断したクレームを販売者が拒否した場合、アマゾンは顧客に補償を行う。

アマゾンでは、既存の不正検知システムを用いるとともに、外部の独立した保険金詐欺の専門家と協力して、顧客からの賠償請求の妥当性を分析するという。この第一段階の販売者保護機能が提供されることで、販売者は「根拠のない、軽薄な、または乱暴なクレーム」に対処しなくて済むと、アマゾンは説明している。また、Amazon Insurance Accelerator(アマゾン・インシュアランス・アクセラレータ)という新しいサービスも導入し、販売者に製造物責任保険を、選ばれた信頼できるプロバイダーから提供できるようにする。

アマゾンは、この新しい方針が、自社のマーケットプレイス事業の運営方法に影響を与える可能性のある新たな規制を回避するために役立つと考えているようだ。今回の発表において、アマゾンは「お客様を守るために、当社の法的義務や他のマーケットプレイスサービスプロバイダーが現在行っているレベルをはるかに超えた取り組みを行っています」と述べているが、これは明らかに、さらなる規制を牽制するためのメッセージである。

アマゾンによると、この変更はまず米国で実施されるという。

関連記事
アマゾンが1600億円以上を投じた米国の航空貨物ハブが運用を開始
アマゾンに自分の掌紋を提供すると約1100円分のクレジットがもらえる
アマゾンはデベロッパー向けツールと機能のリリースでAlexaの復活を狙う

カテゴリー:ネットサービス
タグ:Amazoneコマースマーケットプレイス訴訟アメリカ

画像クレジット:Adrian Hancu / Getty Images

原文へ

(文:Sarah Perez、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

アマゾンが1600億円以上を投じた米国の航空貨物ハブが運用を開始

米国時間8月11日、Amazonが15億ドル(約1657億5000万円)を投じた航空貨物ハブがノーザンケンタッキーで開業した。40拠点のネットワークを結び、スピードと利便性の向上が求められる配送のあらゆる面をコントロールしようとする取り組みだ。

シンシナティ・ノーザンケンタッキー国際空港にあるAmazon Air Hubは、同社の米国における貨物ネットワークの中心となる。このハブは4年以上にわたる計画と建設を経て開業した。Amazonは、米国のハブは最終的には1日12便を運航し、毎週数百万の荷物を取り扱う予定だと述べた。

このハブには、600エーカー(約2.4平方キロメートル)の敷地に80万平方フィート(約7万4000平方メートル)の仕分け用ビルがあり、敷地には他に7棟のビル、新しい駐機場、立体駐車場もある。

Amazonは、最終的に2000人以上をここで雇用するとしている。エアハブではロボティクステクノロジー、特に荷物の移動や仕分けをするロボットアームや建物内で荷物を運ぶモバイルドライブユニットも活用される。

Amazon Airは2016年にスタートし、40カ所以上のネットワークに成長した。2020年にAmazon Airはドイツのライプツィヒ・ハレ空港でヨーロッパのエアハブの運用を開始した。この施設の広さは21万50000平方フィート(約2万平方メートル)で、Amazonブランドのボーイング737-800型機が2機運航している。

Amazon Airはテキサス、プエルトリコ、フロリダに地域のエアハブも設けており、2021年中にカリフォルニア州のサンバーナーディーノ国際空港とシンシナティ・ノーザンケンタッキー国際空港にも拡大する計画だ。

関連記事
アマゾンがヨーロッパ初となるAmazon Airの地域ハブをドイツに開設
アマゾンに自分の掌紋を提供すると約1100円分のクレジットがもらえる
アマゾンはデベロッパー向けツールと機能のリリースでAlexaの復活を狙う

カテゴリー:ネットサービス
タグ:Amazonアメリカ物流

画像クレジット:Amazon

原文へ

(文:Kirsten Korosec、翻訳:Kaori Koyama)

Starship Technologiesのフードデリバリーロボットをさらに米国の4大学が採用

自動運転によるデリバリーサービスStarship Technologiesが、これまでの20のキャンパスに加え、2021年秋よりさらに4つのカレッジのキャンパスにデリバリーサービスを開始する、と発表した。

このエストニア生まれの企業の、6輪でゼロエミッションの小さなデリバリーロボットの恩恵に今秋からあずかるのは、イリノイ大学シカゴ校(UIC)とケンタッキー大学(UK)、ネバダ大学リノ校(UNR)、そしてエンブリー・リドル航空大学フロリダ州デイトナビーチ校だ。

関連記事:自動運転ロボのStarship Technologiesが17.7億円調達、今夏までに100の大学で事業展開へ

この発表と同じ、米国時間8月10日に、同じく歩道デリバリーロボットのKiwibotが、ホスピタリティ大手Sodexoと提携して、カレッジのキャンパスにフードデリバリーを提供することになった。Kiwibotは主に大学の食堂や店舗から食べ物を配達するのに対し、Starshipは、キャンパスに店を出しているStarbucks(スターバックス)やPanda Express、Panera Breadなどと提携するようだ。しかしやり方は違っても結果は同じだ。デリバリー企業は学期や学年に対応するが、Deltaなどは行事など特定期間への対応を増やしている。このことは、StarshipやKiwibotタイプにとって良い点も悪い点もあるだろう。一方では「新型コロナのために学生は寮などに閉じこもり、他人を避けるようになる」が、他方「学校が閉鎖して暇なロボットが大量に増える」かもしれない。

UNRで学生たちの住生活や食生活の世話を担当しているDean Kennedy(ディーン・ケネディ)氏は、次のように声明している。「誰もがキャンパスに戻ってリアルのクラスを受けたいと願っているため、私たちにもその願いにしっかりと応える義務があります。ロボットには、いくつかの利点があります。ソーシャルディスタンスを維持しやすく、便利であり、学生たちも歓迎しています。しかも大学のキャンパスとイノベーションは、以前から相性がよい関係です」。

今秋さらに4つの大学を弊社のサービスに加えます。また既存の車隊には増車を行います。イリノイ大学シカゴ校(UIC)、ケンタッキー大学(UK)、ネバダ大学リノ校(UNR)、そしてエンブリー・リドル航空大学フロリダ州デイトナビーチ校が、Starshipの自動運転デリバリーの持続可能でエコフレンドリーな利便性を体験できるようになります。

UICでは25台、UNRとエンブリー・リドルでは20台のロボットが、Starshipの既存の1000台を超えるデリバリーロボットに加わることになる。同社によると、2014年に創業して以来今日までに150万回以上の配送サービスを完了している。これまでに調達した資金総額は1億200万ドル(約112億9000万円)、これには最近の1700万ドル(約18億8000万円)のラウンドも含まれる。

関連記事:自動運転ロボのStarship Technologiesが17.7億円調達、今夏までに100の大学で事業展開へ

StarshipのCEOであるAlastair Westgarth(アラステア・ウェストガース)氏は、次のように声明している。「大学というコミュニティの一員として信頼され溶け込めるために、私たちは身を粉にして働いてきました。これからも、これまでと同じく、新しい学期が始まるたびに新しい仲間を増やしていきたいと思います。今秋については、すでに発表したとおりです。学生はロボットが好きだし、学校もこのサービスに感謝しています。これらの学校の学生たちにお会いするのが楽しみであり、一緒に手伝っていただける学生さんには、実物のロボットやAIと一緒に仕事をする機会を楽しんでいただきたいと思います」。

学生と教員はStarship Food Deliveryアプリをダウンロードして食事を選び、届け場所にピンを刺す。ロボットが今どこまで来てるかわかるし、圏外に出るときは警報が鳴り、ロボットが到着したら、アプリでアンロックする。Starshipによると、同社は、チームへの参加と自律テクノロジーに関心のある学生を訓練して、今後雇用するつもりだという。

カテゴリー:ロボティクス
タグ:Starship Technologiesフードデリバリーアメリカ

画像クレジット:Starship Technologies

原文へ

(文:Rebecca Bellan、翻訳:Hiroshi Iwatani)

新型コロナワクチン誤情報の投稿でツイッターが米共和党員のアカウントを一時停止

Twitter(ツイッター)は米国時間8月10日、ジョージア州の共和党員Marjorie Taylor Greene(マージョリー・テイラー・グリーン)氏がワクチンは新型コロナウイルス(COVID-19)の拡大を抑制しないと主張するツイートを投稿したことを受け、同氏のアカウントを一時停止した。

グリーン氏は「これらのワクチンは失敗であり、ウイルスの拡散を抑制しない。マスク着用もそうだ」と、科学者らに反論し、FDA(米食品医薬品局)にワクチン承認を拒否するよう求める内容をツイートした。グリーン氏のツイートは同氏のフィードに残ったままだが、Twitterの誤情報警告も一緒に掲載されており、警告の中でユーザーにCDC(米疾病対策予防センター)の情報を案内している。

TwitterはTechCrunchに、グリーン氏のツイートは「(社の)新型コロナに関するミスリーディング情報規則に則ってラベルが貼られ」、プラットフォーム規則を「繰り返し破った」ために同氏のアカウントは7日間閲覧のみのモードとなる、と話した。グリーン氏は2021年7月、ウイルスは65歳以下の健康な人にはほぼ害を及ぼさないと誤った主張を展開したために12時間の一時停止処分となった

Twitterの現在の新型コロナ関連誤情報に関する違反回数に基づくシステムにおいて、今回の新たな一時停止は同氏に対する4回目の措置となる。グリーン氏はTwitterで繰り返し規則を破っていて、同氏のアカウントが復活後に5回目の違反を犯した場合は永久追放となる危機に瀕している。

新型コロナ感染の症状悪化を大幅にそして効果的に抑制したり、感染を予防することがわかっている3種のワクチンが接種できるにもかかわらず、米国の新型コロナ新規感染の件数は増えている。フロリダ州は1日あたりの新規感染者数の最多を更新し続けていて、ワクチン接種が始まる前の2020年の新規感染者数を上回っている。

極めて感染力の強いデルタ変異種のケースが増えているにもかかわらず、オンライン上の誤情報が引き続きワクチン接種に対して米国人を消極的にさせる主要因となっている。ワクチン接種率が最下位の州の1つであるアラバマでは、住民が新たな変異種に対していかに脆弱であるかを認識するにつれて誤情報の件数は増加傾向にあり、ワクチンを接種していない人に痛ましい被害を及ぼしている。

関連記事
Twitterが新型コロナワクチン誤情報への注意を喚起するラベルを導入、まずは英語でのツイートが対象
米上院議員がFacebookに研究者のアカウントを停止させた理由の説明を求める
ツイッターがAP通信、ロイターと提携して誤情報の拡散防止を強化
EUが大手テック企業の「新型コロナ偽情報対応は不十分」と指摘

カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ
タグ:Twitter新型コロナウイルスワクチンアメリカ誤情報陰謀論

画像クレジット:Bloomberg / Contributor / Getty Images

原文へ

(文:Taylor Hatmaker、翻訳:Nariko Mizoguchi

【コラム】カナダ人は穏やかながらも積極的に米国のバイオテクノロジー人材をリクルートしている

本稿の著者はMichael May(マイケル・メイ)氏とJayson Myers(ジェイソン・マイヤーズ)氏。マイケル・メイ氏はCentre for Commercialization of Regenerative Medicineの社長兼CEO。ジェイソン・マイヤーズ氏はNext Generation Manufacturing CanadaのCEO。

ーーー

米国のトランプ大統領の任期中、カナダはSTEM(科学、技術、工学、数学)分野の労働者を自国に呼び寄せようと注力し、大きなニュースになった。トランプ氏は退任したが、カナダは隣国から人材をリクルートすることをやめてはいない。そして、この人材確保の戦いで最もホットな前線の1つがバイオテクノロジーだ。

関連記事:米テック企業のモラルが損なわれている今、カナダは正しい価値観の中でテックを構築するのに最適の場所だ

何世代にもわたり、カナダのエンジニアやプログラマー、研究者たちにとってシリコンバレーの給与水準と天候は魅力的なものだった。しかし、トランプ大統領による移民排斥の発言、政策、ビザ規制が行われた4年間は、カナダのテクノロジー企業や政府に競争上の優位性をもたらした。

2016年のトランプ大統領就任後、カナダ連邦政府は移民の受け入れを促進するプログラムを立ち上げ、トロントやモントリオール、バンクーバーといった都市のテクノロジーエコシステムを後押しした。カナダのテクノロジー界のリーダーたちは、より多くの労働者を同国に呼び込むキャンペーン乗り出した。ケベックでは、移民排斥的な空気が高いことで知られる同州政府に業界が働きかけ、新規移住者を14%増やすことに成功している。

パンデミックによるシリコンバレーからの大規模な流出により、多数の国外移住カナダ人が故郷に押し寄せている。米国のH-1 Bプログラム(特定のスキルを備えた外国人労働者のためのビザプログラム)に応募するカナダ人の数は劇的に減少しており、10年にわたる傾向に拍車をかけている。

新型コロナウイルス(COVID-19)の影響を抑え、新しい経済への移行を促進する政府支出は、カナダ国民に広く支持されている。

それでも、カナダのテクノロジー界や政治界のリーダーたちは依然として、先進的な製造、クリーンテクノロジー、バイオテクノロジーといった主要セクターの人材のインバウンドフローについて懸念している。彼らは、米国の長年の優位性を切り崩すためにあらゆる手段を講じている。

その活動の大半はバイオテクノロジー分野におけるものだ。新型コロナウイルス感染症はワクチン製造能力の不足を露呈させたが、カナダには優れた大学のエコシステムと最先端の研究を行う数千のベンチャー企業が主導する、活気に満ちたバイオテクノロジーおよび生命科学の研究セクターが存在する。これらの企業の多くは、パンデミックに端を発するバイオテクノロジーへの投資ブームに乗じて、2020年には記録的な額のベンチャー資金を調達している。

しかし、この財源流入は資金調達の展望を変えたものの、多くのカナダ企業はなおも規模の拡大を模索している。カナダのテクノロジーエコシステムは人材に満ちているが、伝統的には、これらの企業がグローバルな強豪企業に成長するために必要な、十分な数の上級人材を育成、採用、保持していない。

科学者のみならず、ビジネスリーダーも必要とされている。トロント地域のハブやベンチャー企業を対象とした最近の調査によると、生物医学工学、再生医療、その他の関連企業は、米国産業界のより良い賃金と機会に引き寄せられる上級幹部、最高経営責任者、科学専門家といった人材の大幅な不足に苦しんでいる。

我々双方の組織も属するカナダのイノベーション経済協議会(IEC)の最近のサミットでは、産業界のリーダーたちが、世界的な規制問題やビジネス開発における未充足の仕事、さらには最高医療責任者について議論を交わした。これらは、学問的な訓練と職場での進歩的なリーダーシップの任務の両方から培われた、技術的およびビジネス的な洞察力を必要とするハイブリッドな役割を担っている。

カナダの大学、ハブ、ベンチャーキャピタル企業は、専門の研修機関やプログラムを設立することでこのニーズに対応している。また、規模拡大を目指すカナダ企業は、新たに調達した資金を使って米国内外で大量の人材を採用することでこのギャップを埋めようとしており、パートナーシップを構築し、未開発の人材プールを精査しつつ、リモートワークや柔軟な勤務時間を提供している。

このような背景の中、カナダの連邦政府は2年ぶりに予算を執行した。これは、同国がこれまでに展開した中で最も積極的なテクノロジー支出計画の1つであり、世界市場が同国の伝統的なエネルギー輸出や天然資源、工業製品から離れつつある中で、連邦政府が先進産業の育成とSTEM分野の雇用創出に真剣に取り組んでいることを物語っている。予算には、大学研究パートナーシップ、雇用奨励金、助成金、インキュベーターやハブへの支援が含まれている。重要なのは、ライフサイエンス分野の人材パイプラインを構築するための22億ドル(約2400億円)のコミットメントがあることだ。

新型コロナの影響を抑え、新しい経済への移行を促進する政府支出は、カナダ国民に広く支持されている。4月初旬に行われたIECとCampaign Researchによる世論調査では、中等後のSTEM教育への投資に対して3対1の支持が示され、バイオテクノロジーを含む先進的な製造業への政府投資に対しても同様に強い支持が見られた。10倍の広さの隣国と競争するには、まさに必要とされることである。

カナダの研究者や大手製薬企業のCEOの米国流出がすぐになくなるとは言い難い。しかし、投資資金の流入、テクノロジーエコシステムの急成長、自律的な人材エコシステムの構築、採用、維持に向けた協調的な政策努力などにより、カナダは業界が望むような存在になりつつある。

言い換えれば、米国は、自国のバイオテクノロジーの人材がカナダに積極的に惹きつけられようとしていることに留意すべきであろう。

関連記事
安定した大手を離れづらいシニアエンジニアとどうしても来て欲しいスタートアップをマッチングするCommit
カナダのOMGはニュースレターモデルでローカルニュース存続の危機を救う
テスラがカナダ企業の特許を使い安価で環境に優しい新バッテリーを開発中

カテゴリー:バイオテック
タグ:コラムカナダバイオテックアメリカ人材採用

画像クレジット:Ivan-balvan / Getty Images

原文へ

(文:Michael May、Jayson Myers、翻訳:Dragonfly)

バイデン政権の大規模インフラ法案の「悲惨な」修正提案を暗号資産コミュニティが非難

バイデン政権が発表した超党派のインフラ整備計画は、共和党と民主党の間に、まれに見る協力関係を生んだが、暗号資産(仮想通貨)の規制に関して政権が提案した修正がこの法案の障害となっている。

政権は、インフラ整備計画のうち280億ドル(約3兆800億円)を、これまで規制が緩かったデジタル通貨の税務コンプライアンスを強化することで捻出しようとしている。橋や道路の再建を目的とした法案に暗号資産が登場したのはそのためだ。

特に「デジタル資産移転を実行するサービスに責任を持ち、当該サービスを定期的に提供する者」をブローカーと認定し税務報告義務を課すとしている点が、同法案の大きな批判の的となっている。

この定義は、伝統的な金融の分野ではそのまま当てはまるかもしれない。だが、暗号資産の開発者や企業、さらにはデジタル通貨を採掘する人までもが、ユーザーの情報を集めて報告する義務が生ずる可能性がある。非中央集権的な金融システムでは設計上不可能なことだ。

そして今、この重要な歳出パッケージに加えられた新たな修正が、問題をさらに悪化させる恐れがある

意図しない結果

Square(スクエア)、Coinbase(コインベース)、Ribbit Capital(リビットキャピタル)などの関係者は、法案の内容に関する共同書簡の中で「金融監視」と、暗号資産の採掘者や開発者に対する意図せざる影響について警告した。また、電子フロンティア財団Fight for the Futureというプライバシーを重視するデジタル著作権団体もこの法案を非難した。

暗号資産業界からの反発を受け、有力上院議員2人が、新しい報告ルールを明確にするための修正提案を行った。財務委員会のRon Wyden(ロン・ワイデン)委員長(民主党、オレゴン州)は、同じく財務委員会のPat Toomey(パット・トゥーミー)委員長(共和党、ペンシルバニア州)とともに、法案に反対し、法案の文言に対する修正を提案した。

修正案では新たな報告対象が「ブロックチェーン技術やウォレットを開発する個人を含まない」と定め、この問題に関する法案の曖昧さを解消している。

「ブローカーの定義を明確にすることで、採掘者、ネットワークバリデーター、その他のサービスプロバイダーなどの非金融仲介者(その多くは米内国歳入庁に様式1099を提出するために必要な個人識別情報を持っていない)が、超党派のインフラパッケージで規定された報告義務の対象とならないことを保証します」とトゥーミー氏は述べた。

ワイオミング州選出のCynthia Lummis(シンシア・ランミス)上院議員も、トゥーミー氏とワイデン氏の修正案を支持し、Jared Polis(ジャレッド・ポリス)コロラド州知事も支持を表明した。

勝者と敗者の選択

ドラマはここで終わらない。法案の交渉は続いており、週末には法案がまとまる可能性があるなか、2人の上院議員が競合する修正案を提案したものの、暗号資産コミュニティの支持を得ていない。

Rob Portman(ロブ・ポートマン)上院議員(共和党、オハイオ州)とマーク・ワーナー上院議員(民主党、バージニア州)の修正案は、エネルギーを大量消費する「プルーフ・オブ・ワーク」システムに参加する従来の暗号資産採掘者は新たな財務報告義務が免除される一方「プルーフ・オブ・ステーク」システムを採用する採掘者にはこのルールを適用するというものだ。ポートマン氏は財務省と協力し、インフラ法案の暗号資産に関する部分を作成した。

プルーフ・オブ・ステークシステムは、複雑化する数学の問題を解決するコンピューティングハードウェアへの投資(および電気代)を必要とせず、参加者が特定のプロジェクトの金銭的持ち分を保有し、暗号資産の一部を抱え込み、新しいコインを生成するというものだ。

プルーフ・オブ・ステークは、気候変動に配慮した魅力的な代替案として浮上しており、プルーフ・オブ・ワークのマイニングに必要な重いコンピューティングと膨大なエネルギーを削減できる。そのため、今回の改正でプルーフ・オブ・ワークのマイニングが特別に免除されることになったのは不可解だ。

Cardano(カルダノ)のような人気の高いデジタル通貨の中には、すでにプルーフ・オブ・ステークで開発されたものがある。規模第2位の暗号資産であるEthereum(イーサリアム)は、システムの規模拡大と手数料削減のために、プルーフ・オブ・ワーク方式からプルーフ・オブ・ステーク方式への移行を進めている。ビットコインは、プルーフ・オブ・ワークに頼る最も注目すべきデジタル通貨だ。

ワーナー・ポートマン修正案は「妥協案」とうたわれているが、ワイデン・トゥーミー修正案と現行法案の中間に位置するものではない。多くの暗号資産擁護者が自分たちの活動の存亡をおびやかす新たな危機とみなす問題を招くだけだ。

Square(スクエア)の創業者であり、ビットコインを支持するJack Dorsey(ジャック・ドーシー)氏をはじめとする著名な暗号資産コミュニティのメンバーらは、ワイデン・ランミス・トゥーミー修正案を支持する一方で、第2案は見当違いで有害だと非難している。

暗号資産のシンクタンクであるCoincenter(コインセンター)のエグゼクティブディレクターは、ワーナー・ポートマン修正案を「悲惨だ」と表現した。CoinbaseのCEOであるBrian Armstrong(ブライアン・アームストロング)氏もその言葉を繰り返した。「マーク・ワーナー氏は11時間が経った時点で、暗号資産の基礎技術をどれにするか、どれにしないかを決める修正案を提案しました」とアームストロング氏はツイートした。「どの種類の暗号資産が政府の規制に耐えられるかを上院が決めることになるかもしれません」。

残念ながら、暗号資産コミュニティ、そしてプルーフ・オブ・ステーク・モデルの約束された将来に対し、ホワイトハウスはワーナー・ポートマン修正案を支持しているようだが「11時間の交渉」が続けば変わる可能性もある。

関連記事
NFT特化ブロックチェーン「パレット」開発のハッシュポートが前澤友作氏より4.8億円調達、同氏と共に新サービス提供予定
インドが中央銀行によるデジタル通貨の段階的導入を検討中
イーロン・マスク氏がテスラはビットコインが環境に優しくなれば受け入れを再開する「可能性が高い」と発言

カテゴリー:ブロックチェーン
タグ:暗号資産アメリカ

画像クレジット:Kosamtu /

原文へ

(文:Taylor Hatmaker、翻訳:Nariko Mizoguchi

ByteDanceのライバルKuaishouが物議を醸した同社の米国向けアプリ「Zynn」を提供終了へ

ByteDance(バイトダンス)のライバルと目されている中国のKuaishou Technology(クアイショウ、北京快手科技有限公司)は、2021年8月末に物議を醸しているショートビデオアプリ「Zynn(ジン)の提供を終了すると中国時間8月4日に発表した。このアプリは米国内でのみ利用可能だった。

2021年7月、月間アクティブユーザー数が10億人に達したと発表した同社は、2020年5月にサービスを開始して以来、論争の的となっていた同アプリを停止する理由については説明していない。

2021年に行われた調査で、Zynnは米国iOS App Storeでのランキングを表面的に向上させるために、ユーザーに謝礼を支払って動画を視聴させていたことが判明した。また、TikTok(ティックトック)のクローンであるこのアプリは、他のアプリから盗用した動画が氾濫していることが報道され、Google Playストアからも削除された。その後、同様の苦情を受けてAppleのApp Storeからも削除されている。

Kuaishouの広報担当者は声明の中で、今回のZynnのサービス停止の決定が他の市場のユーザーに影響を与えることはないと述べている。Kuaishouは、南米(Kwaiアプリとして)や南アジア地域(Snack Videoとして)など、他の多くの市場で同様のアプリを運営している。

2021年初めに香港でのIPOで54億ドル(約5917億円)を調達した同社は「国際市場における当社の戦略に変更はありません」と述べている。

モバイルデータ分析会社App Annieによると、Zynnアプリは米国でユーザーを引きつけることができず、2020年8月には約300万人だった月間アクティブユーザー数(MAU)が、2021年6月にはわずか20万人にまで減少していた(データは業界幹部がTechCrunchと共有したもの)。

関連記事
TikTokの好敵手Kuaishouが全世界でMAU10億人突破、東京オリンピックの放映権獲得
中国版TikTokのライバル動画アプリKuaishouが上場初日に194%急騰、時価総額19兆円超に
中国版TikTokのライバル「Kuaishou」はオンラインバザールとしても人気

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:KuaishouアプリByteDanceTikTokアメリカ

画像クレジット:Yan Cong / Bloomberg / Getty Images

原文へ

(文:Manish Singh、翻訳:Aya Nakazato)

労働組合形成を支援するUnit、従業員の組織化を模索

従業員を取り巻く環境は1年前とは大きく変化した。テクノロジーという点では、リモートが職場の在り方を変えている。説明責任の拡大やリモートでの新人研修、ソーシャルディスタンスを確保するための何らかの手当など、雇用者は無数の決定を行っている。

ある初期段階(アーリーステージ)のスタートアップは、その決定権の一部を従業員に返すべきだ、と考えている。ニューヨークに拠点を置くUnit(ユニット)は、今日のメインストリームテクノロジーの中で、おそらく最もつかみどころがなく、議論を呼ぶトピックであろう「労働組合」に取り組んでいる。

組合員が非組合員よりもはるかに高い賃金と充実した福利厚生を得ていることは、多くの研究によって明らかになっている。その一方で、組合による収益への影響や、自主性を持った従業員により管理が制限されてしまうことを理由に、組合に反対する企業も多い。

Unitは、従業員が簡単にバーチャルな労働組合を組織し、管理できるようにして、従業員を雇用主から守ることを目的としている。Unit自体は労働組合ではなく、ソフトウェアと人材を組み合わせて、従業員組織による組合の設立、組合員の募集、管理を支援する。

清掃員の起業家精神

「ウォール街を占拠せよ」運動が起こったのは、Unitの創業者かつCEOのJames White(ジェームズ・ホワイト)氏が大学院生の時だった。ホワイト氏は、MIT(マサチューセッツ工科大学)やハーバード大学で働く清掃員がSEIU(Service Employees International Union、サービス従業員国際労働組合)に加盟するのをサポートしていた。サービス従業員国際労働組合はサービス業全体から約200万人が加盟する組合である。

「昼間はMITの生体計測研究室で医療用注射器の研究をして、夜や週末は学生を組織して、給料や労働条件の改善を求める清掃員を支援していました」とホワイト氏は話す。「(ボランティアによる組織化は)手作業で非効率なものでしたが、2、3年かけていくつかのことを勝ち取ることができました」。

その後10年間、ホワイト氏は医療機器関連の会社で働きながら日雇いの仕事の調査を続ける。ビジネスとセールスのノウハウを身につけたところで同氏は退職し、自分のビジネスを始めたが、労働組合のことは考え続けていた。

ホワイト氏は次のように話す。「テクノロジーを駆使した組織化は常に頭の中にあり、最も興味を魅かれたのと同時に最もインパクトのあるものでした。私は所得格差や個人の権利の拡大という側面で世界を変えたいと考えていたのです」。

組合がすぐに利用できるソリューション

Unitは、確実な組合設立プロセスのために、教育から始まる一連のサービスを提供している。具体的には、職場をバーチャルに組合化する方法を段階的に説明し、ウェブサイトで無料公開している。

Unitは組合を結成しようと決断した従業員のプロセスを支援する。従業員はウェブサイトにアクセスして資格調査を受け、同僚を組織化プラットフォームに招待する。興味を持った従業員が書類にサインすると、組織内に小さな集団が形成されていく。

同時並行で、Unitが全国労使関係委員会などの全国組合や地域組合に働きかける際に必要な、法的な自動化プロセスの処理を始める。同社は、従業員に代わって嘆願書を提出するボストンの法律事務所と連携している。

「今までに組織化アプリケーションで得られた最も良いフィードバックは、『全国組合の労働者オーガナイザーやボランティアに連絡するのではなく、Unitを選んだのは、最速な方法だと思ったから』というものです」とホワイト氏はいう。

労働組合が承認された後は、Unitが労働相談窓口の役割を担う。Unitはデジタルサービスと人的サービスを組み合わせて、組合運営の「ターンキー(すぐに利用できる)ソリューション」を実現している。

Unitは、従業員に代わって、アンケートや調査の実施、コンセンサスツールの提供、憲章の草案とレビューのプロセス(組合のガバナンス)の監督を行う。また、交渉の調査、契約書の作成と見直し、報酬、戦略的分析などのネゴシエーションも支援する。それ以外にも、Unitは新規組合員の教育やストライキの計画などの継続的な組織化や、契約の維持にも力を入れている。競合他社のUnionWare(ユニオンウェア)は組合員の管理を行うが、Unitはフルサービスの提供を目指している。

「多くの作業を自動化して作業時間を大幅に短縮することを計画しています。ソフトウェアを使って投票したり更新情報を入手したり、新しい役員を指名したり、小さな組合の中で立候補したり、すべてソフトウェアでできるようにします」とホワイト氏。いうなれば、組合員のためのShopify(ショッピファイ)だ。

従業員は組合が承認されてから組合費を支払うことになるが、同様にUnitは結成プロセスが完了してから課金する。同社によると、全国組合の組合費は賃金の1.5%で、年収4万ドル(約440万円)の従業員は月に約50ドル(約5500円)を支払う。Unitは従業員の月収の0.8%を徴収する。

「No Strings Attached(無条件)」のビジネスモデルでは、いったん組合が承認されれば、Unitは顧客の90%を失う可能性がある、とホワイト氏は話す。同社は現在、Unitのソフトウェアで組合の時間とリソースを節約、というプロモーションで全国規模の組合との提携を進め、Unitのネットワークを経由して同社が承認した組合が加盟するたびに報酬を得られるようにしようとしている。

同社は特に中小企業の組合結成を支援し、ソフトウェア開発会社、デジタルメディア企業、ファストフード店、メンタルヘルス企業などを顧客に持つ。

「解決すべきは技術的な問題ではない」

サービス従業員国際労働組合で20年間、労働組合のオーガナイザーを務めたArianna Jimenez(アリアナ・ヒメネス)氏は、組合結成プロセスが簡単過ぎると、労働者に誤った希望を与える、と注意を促す。同氏の経験では、交渉プロセスは組合結成の中でも最も難しい部分で、6カ月~10年もかかるという。

「カードに署名して法律上は組合員になったとしても、それだけでは労働者の生活を物理的に向上させることはできません」とヒメネス氏。「変化をもたらすには、労働者が法律で保護された法的手続きを踏んで、雇用主との契約を正式に変更し、福利厚生、医療保険、年金の増額などを勝ち取る必要があります」。

Unitや全国の労働組合が交渉プロセスを支援する一方、雇用主主導の弾圧や恐怖政治によって、従業員が雇用の不安を感じ、組合結成に反対票を投じることも少なくない。例えば2021年初め、Amazon(アマゾン)は従業員に圧力をかけて組織化活動に反対票を投じるよう反組合キャンペーンを実施した。その結果、Amazonは組合結成運動を阻止し、同社の27年の歴史の中で最大の組合結成運動は失敗に終わった。

関連記事:アマゾンが労働組合結成をめぐる投票で勝利確定、RWDSUは結果に異議

ヒメネス氏は、組合結成が完全なターンキーソリューションになるとは考えていない。なぜなら「組合の有無が労働者に与える変化を測るのは法的な基準値ではない。(組合結成による変化は)力を奪われ、権利を奪われたと感じている人たちが、力を感じるようになるという、無形の変化」であるからだ。

ヒメネス氏は、Unit の規模拡大は、米国労働法を書き換えることを意味すると話す。

「私たちが解決しなければならないのは技術的な問題ではなく、価値観の問題です」。

「考えたくない問題」を孕むベンチャー

規模を拡大するためにはベンチャーキャピタルに頼らざるを得ないだろう、とホワイト氏はいう。2020年7月、Unitは、Bloomberg Beta(ブルームバーグベータ)、Draper Associates(ドレーパーアソシエイツ)、Schlaf Angel Fund(シュラフエンジェルファンド)、Haystack(ヘイスタック)、E14(イーフォーティーン)、Gutter Capital(ガターキャピタル)などの投資家から、140万ドル(約1億5000万円)の資金調達を完了した。

そして、ホワイト氏によれば、ここにUnitとの緊張関係の核心があるという。規模を拡大するためには、VCの出資を募る必要があるが、その資産を当てにするということは、(労働者を守るという同社の)直観と相いれないことだからだ。

Unitの投資家が投資している企業において、労働組合設立を支援する例を考えてみるといい。利益相反ではないか。あるいは投資家の資本政策に影響が出ないように、投資先の労働組合設立に力を入れないよう、Unitに圧力をかけることができるのではないか。

2020年、カリフォルニア州の有権者は「Proposition(プロポジション) 22」に賛成を投じた。この法案はUber(ウーバー)、Lyft(リフト)、DoorDash(ドアダッシュ)、Instacart(インスタカート)、Postmates(ポストメイツ)による、ギグワーカーには従業員と同じ労働権を与えず、個人事業主という分類を継続させるという主張を支持する。このムーブメントは、世界中の労働者団体の取り組みに打撃を与えるとともに、VCの支援を受けた企業は、労働者の福利厚生や保護への幅広い活動に反対する動機となり得ることを思い出させるものだった。

関連記事:「ギグワーカーは個人事業主」の是非を問うカリフォルニア州住民投票で賛成多数

ホワイト氏は、スピードと規模の点でVCからの支援が最適だったとしながらも、これらの問題点を認め、特に創業チームが会社の過半数を維持できない場合、投資家が後のラウンドで影響力を行使する可能性について懸念している。同氏は、Unitをできるだけ長期間、VC資金なし、あるいは限られたVC資金で運営することで、そのような懸念が現実になるのを完全に回避するか、先送りしたいと考えている。

Draper Associatesの投資家であるSiri Srinivas(シリ・スリニバス)は、Unitは、規制のある複雑なプロセスに、より優れたツールを構築しているサービスであると考えている。言い換えれば、政治的な要素を排除した、理にかなったSaaS(サービスとしてのソフトウェア)ツールということだ。

「端的にいうなら、私たちはVCとして、人々が求めるテクノロジーに投資しています。私たちはチームとして、タバコなどの特定の製品に投資しないことを強く求めていますが、これは世界にとってマイナスにしかならないと考えているからです。Unitについては、規制業界でソフトウェア製品を開発している他の企業に投資することとそれほど変わらないと考えています。Unitは労働者の公平性を実現し、ユーザーに多くの価値をもたらすことができるので、目的は一致しています」とスリニバス氏は話す。

ホワイト氏は、職場の再構築に対する一般的な関心が高まることで、Unitの案件が増え、収益の確保につながることを期待している。

「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)がこれほどのインパクトを持ち、労働と安全に関する会話にさらに火をつけることになるとは予想できませんでした。国レベルでこのような問題に直面し、みんなが打撃を受けた今だからこそ、人々は同じ方向に向かって考えることができると思います」。

関連記事
ピッツバーグのグーグル請負社員65名が労組結成で請負会社と合意
アマゾンの物流労働者の組合結成に向けてチームスターズが積極的な支援を計画
グーグルとアルファベットの従業員が労働組合結成を模索中

カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ
タグ:Unit労働組合アメリカ

画像クレジット:Bryce Durbin

原文へ

(文:Natasha Mascarenhas、翻訳:Dragonfly)

メッセージ機能を含むPayPalの新しい「スーパーアプリ」が立ち上げ準備完了

PayPal(ペイパル)が自らを「スーパーアプリ」に変身させる計画が、立ち上げに向け動き出した。

PayPalのCEOであるDan Schulman(ダン・シュルマン)氏が、今週行われた第2四半期の決算説明会で投資家に向けて語ったところによると、同社の新しい消費者向けデジタルウォレットアプリの初期バージョンの「コードは完成」しており、同社はゆっくりと立ち上げに向け準備を整えているとのことだ。今後数カ月の間に、同社は米国内でのサービスを十分に強化し、四半期ごとに新しい決済サービス、金融サービス、コマース、ショッピングツールを提供していく予定だ。

これは、PayPalを、中国のWeChat(ウィーチャット)やAlipay(アリペイ)、インドのPaytm(ペイティーエム)の米国版にしようとするプロダクトの方向性の転換だ。こうしたアプリと同じように、PayPalはモバイル決済だけでなく、多くの消費者サービスをワンストップで提供することを目指している。

PayPalは過去の四半期で上記の新機能には、高機能な口座振替、小切手現金化、予算管理ツール、請求書払い、暗号資産サポート、サブスクリプション管理、今買って後で支払う機能などが含まれる可能性があると述べていた。また、2019年に40億ドル(約4400億円)を投じて買収したHoney(ハニー)のモバイルショッピングツールにより、商取引機能を統合するとも述べている。

これまでPayPalは、Honeyを単独のアプリケーション、ウェブサイト、ブラウザの拡張機能として運営してきたが、スーパーアプリには、取引検索や価格追跡など多くの機能を組み込む可能性があるという。

シュルマン氏は米国時間7月28日の決算説明会で、スーパーアプリには他にもいくつかの機能、すなわち、高利回りの預金、口座振替資金への早期アクセス、ピアツーピア決済以外のメッセージング機能(アプリのユーザーインターフェースにより家族や友人と直接チャットできること)などが含まれることを明らかにした。

PayPalは、これまでメッセージ機能を搭載する計画を発表していなかったが、今思えば、人々がチャットとピアツーピア決済を組み合わせることが多いという点で、この機能は理に適っている。例えばユーザーは、アプリから自動でリクエストを送るのではなく、自分で送りたいと思うかもしれない。また、お金を受け取った後に「ありがとう」などの感謝の言葉を伝えたい場合もある。現在、このような会話は、決済アプリの外で、iMessageなどのプラットフォーム上で行われている。だが、これは変わる可能性がある。

「これにより、プラットフォーム上で多くのエンゲージメントが得られるようになると考えています」とシュルマン氏は話す。「メッセージをやり取りするために、プラットフォームを離れる必要はありません」。

PayPalは、ユーザーのエンゲージメントが高まることで、アクティブなアカウント1件あたりの平均収益が向上すると見込む。

また、シュルマン氏は「暗号資産関連の機能追加」についても示唆したが、詳細は不明だ。PayPalは今月初め、米国内の適格なPayPal顧客を対象に、暗号資産の購入限度額を2万ドル(約220万円)から10万ドル(約1100万円)に引き上げた(年間購入限度額なし)。また、同社は2021年、消費者が暗号資産を使って何百万ものオンラインビジネスで決済することを可能にした。この場合、まず暗号資産を現金に換え、次に米ドルで決済する。

アプリのコードは完成しているが、シュルマン氏は今後もプロダクトエクスペリエンスを試行錯誤していく予定だと語り、初期バージョンが「すべてではない」と述べた。つまり、四半期ごとに着実にリリースし、新機能を追加していく予定だ。

ただし、初期の新機能としては、高利回りの貯金、ユーザーエクスペリエンスを向上させた請求書払い、請求先やアグリゲーターの増加、口座振替の早期利用、予算管理ツール、新しい双方向メッセージング機能などがあると話した。

すべての新機能をスーパーアプリに統合するため、PayPalはユーザーインターフェースの大幅な見直しを行う。

「明らかに、ユーザーエクスペリエンスは再設計されつつあります」とシュルマン氏は話す。「リワードとショッピングを追加します。また、クラウドソーシングや慈善団体への寄付など、寄付に関する機能も充実しています。さらに、今すぐ購入して後払いする機能も完全に統合されます。前回数えたところでは、スーパーアプリに搭載される予定の新機能は25個ほどになりました」。

また、デジタルウォレットアプリは、エンドユーザーに合わせてパーソナライズされるため、同じアプリは2つとない。これは、人工知能と機械学習の両方の機能を利用して実行され「各顧客の体験と機会を向上させる」とシュルマンは述べている。

PayPalの業績は、第2四半期の売上高については、ウォール街が予想した62億7000万ドル(約6900億円)に対して62億4000万ドル(約6860億円)となり、1株当たり利益は予想1.12ドル(約123円)に対して1.15ドル(約127円)となった。また、顧客からの総支払額も、アナリストが予想していた2952億ドル(約32兆4700億円)に対し、40%増の3110億ドル(約34兆2100億円)となった。しかし、eBayが独自のマネージドペイメントサービスに移行したことが影響し、第3四半期の見通しを下方修正したことから、同社の株価は下落した

なお、PayPalの新規アクティブアカウントは第3四半期に1140万件の純増となり、アクティブアカウント総数は4億300万件に達した。

関連記事
PayPalが仮想通貨の対応やHoneyの統合など2021年のデジタルウォレット計画の詳細を公
PayPalが暗号資産でオンライン精算できる新機能を導入、まずは米国で

カテゴリー:フィンテック
タグ:PayPalスーパーアプリアプリアメリカ決算発表

画像クレジット:Photo by Thomas Trutschel/Photothek / Getty Images (Image has been modified)

原文へ

(文:Sarah Perez、翻訳:Nariko Mizoguchi

フェイスブックもグーグルと同様に職場復帰する従業員にワクチン接種を義務付け

Google(グーグル)のSundar Pichai(サンダー・ピチャイ)CEOは、米国時間7月28日、同社が従業員に対し、現場で仕事に復帰する前にワクチン接種を義務付けることを発表した

このことは、GoogleおよびAlphabet(アルファベット)のスタッフに送られた手紙に書かれており、新型コロナウイルスのデルタ変異型が世界的に流行し続けていることから、同社が在宅勤務ポリシーを10月18日まで延長することにも言及している。

また、Facebook(フェイスブック)のVPであるLori Goler(ローリー・ゴーラー)氏は、TechCrunchへ送られたメッセージの中で、このソーシャルメディアの巨大企業が同様のポリシーを採用していることを認めた。

「オフィスの再開にともない、米国内のすべてのキャンパスに出勤する人には、全員にワクチン接種をお願いする予定です」と、ゴーラー氏は書いている。「このポリシーをどのように実行するかは、地域の状況や規制によって異なります。医療上の理由やその他の理由で予防接種を受けられない人々にはプロセスを用意し、状況の進展に応じてそれ以外の地域でアプローチを評価していく予定です。当社は引き続き専門家と協力して、すべての人の健康と安全を優先したオフィス復帰計画を立てていきます」。

この声明と同様の同様の文言で、ピチャイ氏が書いた長文の手紙にも「医療上またはその他の保護された理由で」という例外を分けている。Facebookでは当初、9月に半数、10月までに全員の職場復帰が計画されていたが、ゴーラー氏のコメントには、この復帰時期の変更については示されていない。

先週、同社の広報担当者は、The Wall Street Journal(ウォール・ストリート・ジャーナル)紙に「専門家のガイドラインでは、デルタ変異を含む新型コロナウイルスの変異種の予防にはワクチンが非常に有効であるとされています。オフィス再開までのスケジュールに変更はありません」とコメントしている。

両社の声明とも、地域や州の規制、医学的または個人的な懸念、そしておそらくは地域によって大きく異なるワクチンへのアクセスなどに基づき、会社の方針にある程度の幅を持たせている。

また、Amazon(アマゾン)もTechCrunchの問い合わせに対し「アマゾンの従業員や契約社員には、新型コロナウイルスワクチンが入手可能になり次第、ワクチンを接種することを強く勧めます」と回答している。

同社の現在のガイドラインでは、オフィスに戻るためにワクチン接種が必要というわけではないようだが、ワクチンを接種していない従業員にはマスクの着用が義務付けられている。ワクチン接種を完了したことが証明されている人は、顔を覆うことは任意となっている。

関連記事:グーグルが米社員に新型コロナワクチン接種を義務付け、オフィス勤務再開は延期

カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ
タグ:Facebook新型コロナウイルスオフィスリモートワーク新型コロナウイルスワクチンアメリカGoogleAlphabetAmazon

画像クレジット:Kim Kulish / Getty Images

原文へ

(文:Brian Heater、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

グーグルが米社員に新型コロナワクチン接種を義務付け、オフィス勤務再開は延期

リモートワーク向けのツールを作り出したテック企業にとっても、オフィスでの業務再開は大きなチャレンジだ。Google(グーグル)のような企業は、2020年3月にいち早く在宅勤務を推奨したのちにオフィスを閉鎖し、自宅から仕事するよう求めた。(世界の大半とともに)バランスを取ることをともなった日々だったが、同社は2020年5月に一部の従業員向けにオフィス勤務再開計画の作成を開始した。

デルタ株や他の新型コロナウイルス変異株が予定していた正常復帰を脅かす中で、AlphabetのCEOであるSundar Pichai (サンダー・ピチャイ)氏は同社のニューノーマルについて明らかな見解を示した。Google Keywordブログにも掲載された従業員に宛てたレターの中で、ピチャイ氏はGoogleの社屋で働く従業員はワクチンを接種する必要がある、と述べている。

「数週間内に米国でこの規則を導入し、今後数カ月で他の地域にも拡大します」とピチャイ氏は述べた。「導入は地域の状況と規則によって異なり、ワクチンがその地域で広く利用できるようになるまでは規則は適用されません」。

問題を複雑にしているのは2番目のポイントだ。デルタ株の流行により同社の在宅勤務は10月18日まで延長された一方で、その日以降ワクチンを接種していない従業員がどうなるのかについてはまだ完全に明らかではない(新型コロナによるさらなる在宅勤務措置の延長はないと仮定して)。ワクチンを接種していない人はGoogleのオフィスやリモートで働くことができないかもしれない。

しかしピチャイ氏のレターは「健康上の理由、その他考慮すべき理由」があるワクチン未接種者向けの特例に言及している。Googleはそうした特例を何に適用するのかについて明確にしていない。

「特異な状況にある人のために、2021年末まで自宅から働くことを申し込める、拡大した一時的な労働オプションを間もなく共有します」とピチャイ氏は書いている。「また、育児や介護をしている人のためにExpanded Carer’s Leave(育児・介護者の一時休職)を年末まで延長します」。

Apple(アップル)などの他のテック大企業もまた、新型コロナ感染の高まりを受けて規制が導入される中で、オフィスに戻る計画を後ろ倒しにし、小売店舗でのマスク着用を義務付けた。Facebook(フェイスブック)を含む他の企業は元々決めていた秋再開の計画を維持している。

「専門家のガイドラインには、デルタ株を含む新型コロナ変異株の予防にワクチンが極めて効果的であると書かれています」とソーシャルメディア大企業Facebookの広報担当はつい最近ウォールストリートジャーナル紙に述べた。「オフィスを再開するという我々のタイムラインに変更はありません」。

関連記事
Dropboxが作ったポストコロナの新たな仕事環境「Dropbox Studios」
ニューススタンドのコンセプトを取り入れた職場用アメニティでオフィス勤務に戻るモチベーションを高めるNew Stand
【コラム】上司は「オフィスのほうがセキュリティ的に安全」と言うがそれは従業員を職場に戻す理由にならない

カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ
タグ:Googleリモートワーク新型コロナウイルスワクチンオフィスアメリカ

画像クレジット:Sundry Photography / Getty Images

原文へ

(文:Brian Heater、翻訳:Nariko Mizoguchi

米議会襲撃の暴徒に「顔を使って」ノートPCのロック解除を裁判所が命令、生体認証に黙秘権使えず

ワシントンD.C.の連邦判事は、米国連邦議会議事堂で2021年1月6日に起きた暴動に参加した罪に問われている男性に対し、彼のノートパソコンに反政府暴動未遂の罪を明らかにするビデオ映像が入っている可能性が高いと検察側が主張したため、「顔により」ノートパソコンのロックを解除するよう命じた。

Guy Reffitt(ガイ・リフィット)容疑者は、暴動に参加してから3週間後の2021年1月下旬に逮捕され、以来、刑務所に収監されている。彼は、国会議事堂敷地内への銃器の持ち込みや司法妨害罪など、5つの連邦容疑に対して無罪を主張している。WindowsノートPCはFBIが押収した複数のデバイスのうちの1つで、パスワードで保護されていたが、レフィット容疑者の顔を使ってロックを解除できたと捜査当局は述べている。

検察によると、このノートパソコンには、暴動の一部を記録するために使用したとされるレフィット容疑者のヘルメット装着型カメラの映像が数GB単位で入っていたことが、科学捜査の結果から判明したという。検察側は、パソコンのロックを解除するために、レフィット容疑者がパソコンの前に座ることを強要できるかどうか裁判所に尋ねていた。

レフィット容疑者の弁護士は、依頼人はパスワードを「覚えていない」と裁判所に伝えていたが、裁判所は検察を支持し、容疑者の生体認証を強要する申し立てを認めた。レフィット容疑者の弁護士は、裁判所の命令を最初に報じたCNNに対し、ノートパソコンのロックが解除されたことを明らかにした。

政府は、憲法修正第5条の抜け穴を利用したことになる。憲法修正第5条は、米国内の誰にでも黙秘権を認めており、パスワードなど、自己負罪となるおそれがある情報を提供しない権利もそれに含まれている。しかし、一部の裁判所は、これらの保護はパスワードの代わりに使用できる人の身体的属性、例えば顔面スキャンや指紋などには及ばないと判断している。

レフィット容疑者の起訴状では、FBIはそのように述べており、コンピュータの前に座ることで同氏にコンピュータのロックを解除することを強要しても、「被告人の自己負罪に対する憲法修正第5条の権利には抵触しない」と主張している。

全米各地の裁判所は、修正第5条の解釈と、それが個人のバイオメトリクスの強制使用に適用されるかどうかについて、まだ意見が分かれている。米国最高裁がこの問題をすぐに取り上げることはないだろう。最高裁は、この問題を裁定するための請願をここ2年の間に2度却下しており、その結果、適用は各州の判断に委ねられている。

関連記事
顔認証の使用禁止措置や論争にもかかわらず同スタートアップには巨額の資金が注がれている
メイン州も危険なバイアスのかかった監視技術、顔認識導入を拒絶する自治体に
ニューヨーク市で生体情報プライバシー法が発効、データの販売・共有を禁止

カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ
タグ:ワシントンD.C.顔認証アメリカノートパソコン生体認証

画像クレジット:U.S. Courts / supplied

原文へ

(文:Zack Whittaker、翻訳:Aya Nakazato)

セキュリティバグが見つかったZoomの米政府機関使用許可発行に用いられた資料の提供を要求するも、GSAは拒否

上院議員がGSA(一般調達局)に対し、連邦政府機関向けZoomの使用認可プロセスのためにZoomが提出した資料をレビュー目的で要求したが、GSAはこれを拒否した。

この拒否は、2021年5月に民主党上院議員であるRon Wyden(ロン・ワイデン)氏からGSAに寄せられた書簡に対し発せられたものである。この書簡でワイデン氏は、GSAが連邦政府機関でのZoom使用を認可した数週間後にアプリ内で重大なセキュリティの脆弱性が見つかったことへの懸念を表明している。

ワイデン氏はバグの発見により「FedRAMPの監査の質に対する重大な懸念」が高まったと述べた。

Zoomは2019年4月に、GSAが運営するプログラムであるFedRAMPより承認を受けて、政府内での使用が許可された。FedRAMPは、クラウドサービスが最も一般的な脅威からサービスを保護・強化するために設けられた一連のセキュリティ要件を満たしていることを保証するプログラムである。この認可がなければ、連邦政府機関はクラウド製品またはテクノロジーを使用することができない。

認可を受けた1カ月後、セキュリティ研究者が欠陥を見つけた。これはウェブカメラを許可なくリモートでオンにできるため悪用される可能性があるという問題で、 ZoomはMacアプリへパッチを施すことを余儀なくされた。ユーザーがZoomをアンイストールした後でさえ、その脆弱性の影響を受けることが判明したため、Appleは対応のため介入せざるをえなかった。パンデミックが広がりロックダウンが始まるとZoomの人気は急激に高まったが、同様に調査も盛んに行われた。Zoomは長い間エンド・ツー・エンドの暗号化が施されていると主張してきたが、それは真実ではないことを発見した報告者による技術的分析も公表された。

関連記事
アップルがビデオ会議システムZoomの隠しサーバーを削除するアップデートを静かにプッシュ配信
Zoomユーザーがリモートワークで前年比354%と急増、売上は前年比169%

ワイデン氏はGSAに対し、Zoomが認可を得た後にセキュリティバグが見つかったことを「非常に問題がある」と述べた書簡を送った。その書簡の中で、ワイデン上院議員は、なぜ、どのようにZoomがGSAの認可を得たかを理解するために、ZoomがFedRAMP認可の一環として提出した「セキュリティパッケージ」として知られる資料を開示するよう要求した。

GSAはワイデン氏が2020年7月に最初に要求を行った際、氏が委員長ではないという理由で拒否した。新たに発足したバイデン政権下で上院財政委員会委員長に任命されたワイデン氏は、再度Zoomのセキュリティパッケージを要求した。

しかし、ワイデン氏のオフィスに2021年B6月末に送られた新たな書簡の中で、GSAはセキュリティ上の懸念を挙げ、2度目の拒否を行った。

「ご要望のセキュリティパッケージには機密性の高い専有情報や、Zoomによる政府向け製品に関する他の機密情報が含まれています。この情報を保護することは、そのサービスとそれがホストする政府データの保全に不可欠であり、討議の結果、GSAはZoomのセキュリティパッケージを開示することは、重大なセキュリティリスクを引き起こすと判断いたしました」とGSAからの書簡には書かれていた。

GSAからのこの書簡について、ワイデン氏はTechCrunchに対し、他にも欠陥のあるソフトウェアが政府内での使用許可を得ているのではないかと懸念していると述べた。

「GSAによるFedRAMPプログラムの意図、つまり複数の連邦政府機関が同じソフトウェアのセキュリティを確認する必要がないように官僚的形式主義を排除する、という考えは大変納得のいくものです。しかし、その場合その審査を行う機関が徹底的な仕事をすることが非常に重要です。私は政府によるZoom審査において重大なサイバーセキュリティ上の欠陥が見過ごされ、これが最終的にセキュリティリ研究者によって発見され公にされたという点に懸念を覚えます。GSAがZoomの監査資料を国会に提供するのを拒否したことは、GSAが連邦政府のために認可した他のソフトウェア製品のセキュリティに疑問を投げかけるものです」とワイデン氏は述べた。

我々は、FedRAMPプロセスについて直接知識を持っている政府職員や、その認可プロセスを経験した企業に話を聞いたが、彼らによると、FedRAMPは包括的ではあるものの、連邦政府のセキュリティ要件を満たすために企業が実施すべきことを完全に網羅するものではないとのことである。

そのプロセスには限界があり、改革が必要だと述べた人々もいた。FedRAMPの仕組みを知っているある人物は、認可プロセスは製品のソースコードを精査するものではなく、ベストプラクティスやコンプライアンス要件を満たしているかのチェックリストに似たものだと述べた。その人物によると、そのプロセスの多くはベンダーを信頼することに依存しており「自己申告システム」に近いとのことである。別の人物は、FedRAMPプロセスではすべてのバグを捉えきれないと述べた。これは、先にバイデン大統領がFedRAMPプロセスの刷新と向上を目指して取った措置によっても明らかである。

我々が話を聞いた人々の多くは、ZoomのFedRAMPセキュリティパッケージの機密性を理由にワイデン氏の要求が拒否されたことに驚いていなかった。

彼らによると、この認可プロセスを通過しようとする企業は、自社製品のセキュリティに関する機密性の高い技術情報を提出しなければならず、仮にその情報が外部に漏れた場合は、ほぼ確実に当該企業は損害を被る、とのことであった。セキュリティ上の脆弱性がどこにあるかがわかってしまうと、サイバー犯罪者に情報を与えることになりかねないのである。企業がFedRAMP監査に先だち何百万ドル(何百億円)もの大金を投じて自社製品のセキュリティを強化することはよくあることだが、彼らは自社の企業秘密が外部に漏れかねないと判断した場合は、あえてリスクを冒して認可プロセスへ参加しないだろう、とのことであった。

ワイデン氏の要求をなぜ拒否したのかとGSAから尋ねられた際、Zoomの米国政府関連事業を統括するLauren Belive(ローレン・ビリーブ)氏は、セキュリティパッケージを上院に引き渡すことは、FedRAMPプロセスに企業が寄せる特別な「信頼と信用」を損なう危険な前例を作ってしまうからだ、と述べた。

GSAはFedRAMPセキュリティパッケージへのアクセスを厳密に管理している。この情報へアクセスするには、連邦政府または軍のメールアドレスが必要であるが、実はこれは上院議員も所持している。しかし、GSAがワイデン氏の要求を拒否した理由は未だ明確ではなく、GSAの広報担当者に尋ねてみたが、国会議員が企業のFedRAMPセキュリティパッケージを取得する方法については説明がなかった。

GSAの広報担当者、Christina Wilkes(クリスティーナ・ウィルケス)氏は「GSAは国会との関係を重視しており、ワイデン上院議員および管轄委員会と引き続き協力してGSAのプログラムや運用に関する適切な情報を提供していきます」と述べ、さらに次のようにも付け加えた。

GSAは民間セクターのパートナーと緊密に連携し、FedRAMPを通しクラウドサービスのセキュリティを認可する標準化されたアプローチを提供して参ります。ZoomのFedRAMPセキュリティパッケージおよび関係資料はZoomが政府に提供している製品に関連するセキュリティ措置の詳細情報を含んでいます。セキュリティに関する機密情報や企業秘密に関するGSAのスタンスは、権限を有する議会委員会の公式の書面による要求がない限り、定められた情報配布または情報公開の管理手順に従って、資料の提出を差し控えるということで一貫しております。

GSAはどの議会委員会が権限を持っているのか、あるいは、ワイデン氏の上院財政委員会議長という役職が十分な資格を満たすものであるのかには言及しておらず、またワイデン氏によるFedRAMPプロセスの有効性に関する問題提起に回答するつもりであるかについても言及していない。

Zoomの広報担当者、Kelsey Knight(ケルシー・ナイト)氏は、 Zoomのようなクラウド企業は「GSAに対し、FedRAMP認可プロセスの一環として、認可の決定にのみ使用されるという理解のもとに専有情報や機密情報を提出しています。Zoomは、ZoomのFedRAMPセキュリティパッケージが認可の目的を超えて外部に開示されるべきではないと信じておりますが、国会議員の方々や他の関係者の方々と政府機関向けZoomのセキュリティについてお話しすることを歓迎するものです」と述べた。

Zoomは「製品の継続的向上のためにセキュリティ強化に取り組み」、年次更新の一環として2020年および2021年にもFedRAMP認可を受けたと述べた。同社はZoomアプリがFedRAMPプロセスの中でどの程度の監査を受けたかについては、回答を拒否した。

現在20を超す政府機関がZoomを使用しており、これには国防総省、国土安全保障省、米国税関国境警備局、大統領行政府などが含まれる。

カテゴリー:セキュリティ
タグ:アメリカGSAZoomビデオ会議FedRAMP

画像クレジット:Olivier Doiliery / Getty Images

原文へ

(文:Zack Whittaker、翻訳:Dragonfly)

米民主党、反ワクチンの陰謀論を後押しするSNSの保護を停止する法案提出

2人の民主党上院議員が米国7月22日に提出した法案は、ソーシャル・メディア・プラットフォームが反ワクチンの陰謀論やその他の種類の健康に関わる誤まった情報を後押しするなら、プラットフォームが頼りにしている責任の盾を取り上げてしまおうというものだ。

Amy Klobuchar(エイミー・クロブチャー)上院議員(民主党、ミネソタ州)とBen Ray Luján(ベン・レイ・ルハン)上院議員(民主党、ニューメキシコ州)が提出した「Health Misinformation Act(健康誤情報法)」は、通信品位法(Communications Decency Act)第230条に新たな除外規定を設け、アルゴリズムによって宣伝された健康に関する誤った情報や陰謀に対してプラットフォームが責任を負うようにする。プラットフォームは第230条により、ユーザーが作成し、プラットフォームがホストする膨大な量のコンテンツに対する法的責任から守られている。

「あまりにも長い間、オンラインプラットフォームは米国人の健康を守るために十分な努力をしてきませんでした」とクロブチャー氏は話す。「こうした企業は世界でも有数の大金持ちであり、致命的なワクチンの誤情報が広がるのを防ぐためにもっと努力しなければなりません」

この法案では、第230条の文言を具体的に変更し、「インタラクティブ・コンピューター・サービスにより作成または展開された健康に関する誤った情報」がアルゴリズムによって増幅された場合には、責任保護を取り消すとしている。この例外案は、新型コロナウイルスの出現のように、国家的な公衆衛生上の危機が宣言された場合にのみ発動し、平時は適用されない。この法案では、健康誤情報の定義を保健福祉省(HHS)の長官に委ねることになっている。

法案には「テクノロジープラットフォームに組み込まれている機能が誤情報や偽情報の拡散を助長している。ソーシャルメディアのプラットフォームでは、個人がコンテンツをシェアして『いいね!』やコメントなどにより肯定的なシグナルを得るインセンティブが働く。正確であることよりも参加することが報われる」とある。

この法案では「偽情報の12人」にも言及している。このレポートによると、反ワクチン活動家のRobert F. Kennedy Jr.(ロバート・F・ケネディ・ジュニア)氏やその他の陰謀論者を含むたった12人が、反ワクチンの偽情報エコシステムの大部分を説明している。リストに載った人物の多くは、Twitter(ツイッター)やFacebook(フェイスブック)などのソーシャルメディアで依然として自らのメッセージを公然と発信している。

第230条を擁護する人々は、この法律に新たな例外を設けることは危険だと考えている。同条は、YelpやRedditからこの記事の下にあるコメント欄に至る全てを可能にしている現代のインターネットの根幹をなす部分であり、予期せぬ二次的な影響が生じる可能性があることから、この法律はそのままにしておくべきだと主張している。

しかし、民主党、共和党を問わず、議会の一部の議員は、大手ソーシャルメディア企業を規制するために、同条を貴重な手段だと考えている。ホワイトハウスは、司法省やFTC(米連邦取引委員会)を通じて肥大化したハイテク企業に影響を与える独自の方法を検討しているが、バイデン氏のオフィスは今週初め、大統領も同条を「検討している」と述べた。しかし、トランプ元大統領も気づいたように、同条を弱体化させることは議会だけが成し遂げられる仕事であり、それさえもまだ望み薄だ。

最近、新型コロナの誤情報への対応をめぐってバイデン大統領と議論を戦わせたFacebookは、民主党の新法案について曖昧ながらも協力的な姿勢を示した。Facebookの公共政策担当副社長のKevin Martin(ケビン・マーティン)氏は、「健康関連の誤情報に関する困難かつ緊急な問題をはっきりさせることは有益であり、議会や業界と協力して改革のための選択肢を検討することを楽しみにしています」と述べた。

民主党の新法案は、第230条の改正案としてはかなり的を絞っているが、超党派の支持は得られそうにない。共和党は、大企業の責任保護の一部撤廃に関心があるものの、一般的には、プラットフォームが削除するコンテンツの数が少なすぎるのではなく、多すぎるという見解だ。また、共和党は自らが新型コロナワクチンに関する誤った情報を流す可能性が高く、ワクチン接種を党派的な問題に仕立て上げている。この法案が通るかどうかはともかく、驚くべき数の米国人がワクチンを接種するつもりがないことは明らかだ。より感染力の強い変異種が増え、寒い季節が近づいているにもかかわらず。

「ワクチン未接種者の間で新型コロナの感染者数が増加するにつれ、ソーシャルメディア上でワクチンにまつわる誤った情報が増えています」とルハン氏は第230条の変更案について述べた。「命が危険にさらされているのです」。

カテゴリー:
タグ:

画像クレジット:ADEK MICA/AFP / Getty Images

[原文へ]

(文:Taylor Hatmaker、翻訳:Nariko Mizoguchi

Rivianがコロラド州に続きテネシー州の56の州立公園にEVチャージャーを設置

Rivian(リビアン)の電気自動車(EV)充電ステーションがまたも州立公園に導入される。同社は「ウェイポイント」と呼ばれるチャージャーをテネシー州の56の州立公園に設置すると明らかにした。同社は4カ月前にコロラド州との同様の提携を発表したばかりだ。

同社にとって、レベル2ACチャージャー1万基超のネットワークを2023年末までに構築するというのが計画の次のステップだ。州立公園やその他あちこちでのチャージャー設置はRivianのブランド戦略にとって鍵を握る要素だ。同社は自らを、Rivianの車を所有しているかどうかにかかわらずアウトドア派にとってエコフレンドリーな車メーカーとして位置付けようとしている。ウェイポイントチャージャーは一般開放され、J1772プラグ搭載のすべてのEVが利用できる。

テネシー州環境保全局との提携の一環として、Rivianは無料でチャージャーをデザイン・設置し、サービスやメンテナンス、アップグレードにかかる費用を10年間負担する。また、たとえば電気サービスパネルやトランスフォーマーの改良など、チャージャー設置に関係する必要なユーティリティアップグレードの費用ももつ、と同社は話した。

画像クレジット:Rivian

Rivianは早ければ秋にもチャージャーの設置を開始できそうだ。レベル2チャージャーは最大11.5キロワットで給電できる。これはR1TピックアップトラックとR1S SUVであれば、1時間つなぐと25マイル(約40キロ)の走行が可能になる。高速道路や交通量の多い道路沿いにあるチャージャーだと、バッテリー充電のために何時間も待つというのは理想的ではないが、公園であればドライバーは「日帰り旅行や宿泊キャンプを楽しむ間に走行可能距離を伸ばすことができる」と同社は話す。

差し当たり充電は無料で利用できるが、将来のコストは州が電気代をどのようにまかなうかによると同社は指摘した。

Rivianウェイポイントは、同社の顧客専用の3500超のDC急速チャージャーを設置するという計画のAdventure Networkとは別物だ。DC急速チャージャーは20分の充電で140マイル(約225キロ)の走行を可能にする。

Rivianの創業者、RJ Scaringe(RJ・スカリンジ)氏は辺鄙なところを含む充電ネットワークを構築するという願望をオープンにしてきた。これは便利な場所、そしてハイエンドな場所にもあるSuperchargerネットワークを所有するTeslaのような企業とは大きな違いだ。

「州間高速道路ではないところにRivian充電ロケーションを設置する機会に興奮しています。こうした充電ロケーションは、充電インフラのために通常EVを招いたり歓迎したりしない場所にあなたを誘ったり、あなたが訪れることができるようにします」とスカリンジ氏はTechCrunchのKirsten Korosec記者との広範にわたるインタビューで話した。「関心に基づいてルートを選べるという、キュレートされたドライブをどのようにクリエイトできるかについて、我々はかなりの時間をかけて検討してきました。旅の途中で1、2マイル、あるいは5マイルのハイキングのために車を停めたいのなら、あなたが取りたいルートがあり、その横に充電ロケーションがあります」。

関連記事
新興EV企業のRivianが2023年末までに全米に1万基以上の充電器を設置すると発表
EVメーカーRivianが独自の充電ネットワークをアクティブなレジャースポットにも展開する理由

カテゴリー:モビリティ
タグ:Rivian充電ステーション電気自動車アメリカ

画像クレジット:Rivian

原文へ

(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Nariko Mizoguchi

バイデン大統領はグーグル批判者を司法省の反トラスト部門のリーダーに起用

バイデン政権は米国時間7月20日に、強力なテクノロジー企業に政府が手綱を付ける手段の第3弾として、これまで巨大テクノロジー企業を熱心に批判してきたテクノロジー評論家であるJonathan Kanter(ジョナサン・カンター)氏が司法省の反トラスト部門を率いることを提案した。

カンター氏は弁護士として、Googleに対する反トラスト訴訟でYelpのような小企業を代表してきた長年の実績がある。現在の彼は自分の法律事務所を持ち、その専門分野は、国や州による反トラストの執行において原告を代弁することだ。

ホワイトハウスのプレスリリースでは、「その経歴を通じてカンター氏は一貫して、強力で有意義な反トラストの執行と競争政策の推進努力における指導的代弁者でありエキスパートだった」と述べている。革新派はこの指名を祝っているが、バイデン政権の新たな反トラスト鷹派たちの一部は、両方の政党から支持されている。

司法省の反トラスト局のトップにジョナサン・カンター氏が指名されたことは、労働者と消費者にとってすばらしいニュースです。彼は合併企業が市場で力を持ち競争力を強化することをチェックする戦いでリーダーであり続けました。

司法省はすでに、Googleに対する大規模な反トラスト訴訟を遂行している。その訴訟はトランプ氏時代の司法省が起こしたものだが、同社を、その検索および検索広告のビジネスにおける「不法に維持されている独占」で告訴している。指名が認められたらカンター氏は、Googleに対する司法省の大きな訴訟の舵取りを担うことになる。

2016年のThe New York Timeの署名入り論説でカンター氏は、Googleは悪名高くも反競争的な「行動規範書」に依存してその市場支配を維持していると論じている。カンター氏は、無料で広告に支えられたプロダクトをリリースして、結果的に市場の一角において「差別的で排他的な慣行」により競争を制限してきたGoogleの長い歴史を指摘している。

カンター氏は、バイデン政権下で強力な規制者の役割に上り詰めた高名なビッグテック批判者の、最も新しい登場者にすぎない。2021年6月月、バイデン大統領は熱烈なAmazon批判者であるLina Khan(リナ・カーン)氏をFTCの委員長に指名して承認を得た。3月にはバイデン大統領は、もう1人のビッグテック批判者であるコロンビア大学の法学教授Tim Wu(ティム・ウー)氏を、National Economic Council(国家経済会議)のテクノロジーと競争政策の専門補佐として指名した。

これらのどれを見ても、バイデンのホワイトハウスが国とビッグテックとの大きな戦いに臨んでいることを示している。一方、議会は一連のビッグテック法を準備しているが、しかしホワイトハウスは、立法改革の代わり、あるいはそれと一緒に、FTCやDOJを介して独自の規制を揮えるのだ。

MSNBCの最新のコメントでホワイトハウスは、通信品位法の230条も「再検討」している、と認めた。それは、プラットフォームをユーザー生成コンテンツの責任から免除する強力な法律の、ごく一部だ。

関連記事:アマゾンがFTCの新委員長と独占禁止強硬派のリナ・カーン氏の辞任を求める嘆願書を提出

カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ
タグ:ジョー・バイデン独占禁止法米司法省アメリカ

画像クレジット:Photographer:Al Drago/Bloomberg via Getty Images /Getty Images

原文へ

(文:Taylor Hatmaker、翻訳:Hiroshi Iwatani)

米国がExchangeサーバーのハッキングとランサムウェア攻撃で中国を非難、政府系ハッカー4人を起訴

バイデン政権とその同盟国は、2021年初めに行われたMicrosoft Exchangeサーバーへの大規模不正侵入について、中国を正式に非難した。その際はこのハッキングが広範な破壊につながる可能性があるという懸念が高まったため、FBIが介入することになった。

関連記事:中国の国家ハッカーがExchange Serverの脆弱性をゼロデイ攻撃、マイクロソフトが警告

この大規模なハッキングキャンペーンは、Microsoft Exchangeメールサーバーのそれまで発見されていなかった4つの脆弱性を狙ったもので、これらの脆弱性を利用したハッカーたち(Microsoftはすでに、中国政府の支援を受けるハッカーグループHafnium[ハフニウム]の仕業としている)は、米国内の何万もの組織からメールボックスやアドレス帳を盗み出した。

Microsoft(マイクロソフト)はこの脆弱性を修正するパッチをリリースしたが、ハッカーたちが残したバックドアコードを削除することはできなかった。このためFBIは、米国内にバックドアが塞がれないまま残っていた数百台のExchangeサーバーを実質的にハッキングしてバックドアコードを除去するという、これまでにない裁判所命令を得た。世界各国のコンピュータセキュリティインシデント対応チームも同様の対応を行い、同じように攻撃を受けた自国の組織に通知しようとした。

関連記事
FBIがハッキングされたMicrosoft Exchangeサーバーのバックドアを塞ぐ作戦を実行
米国の中小起業や地方自治体にも中国ハッカーによるゼロデイ攻撃の被害

バイデン政権は米国時間7月19日に発表した声明の中で、この攻撃は中国国家安全省の支援を受けたハッカーによって実行されたものであり、その結果「主に民間企業の被害者に多額の回復コスト」が発生したと述べた。

「我々は、今回の事件と中華人民共和国の広範な悪意のあるサイバー活動の両方について、中国政府の高官に懸念を伝え、中華人民共和国の行動がサイバースペースのセキュリティ、信頼性、安定性を脅かすものであることを明確にしました」と声明には記されている。

米国家安全保障局(NSA)は、ネットワーク防御者が潜在的な侵入経路を特定できるよう、攻撃の詳細を公開した

英国やNATO加盟国を含む複数の同盟国も、バイデン政権の調査結果を支持した。英国政府は声明の中で、ハッキングの「広範なパターン」の責任は北京にあるとしている。中国政府は、国家によるハッキング行為を繰り返し否定している。

また、バイデン政権は、中国国家安全省が犯罪者であるハッカーと契約し、ランサムウェア攻撃のような無認可の業務を「個人的な利益のために」行っていると非難した。米国政府は、中国政府に支援されたハッカーが、ハッキングされた企業に対して数百万ドル(数億円)の身代金を要求したことを認識していると述べている。2020年、米司法省は世界的なハッキングキャンペーンに関与した2人の中国人スパイを起訴したが、検察当局はハッカーらが個人的な利益のために活動していると非難していた。

関連記事
米国が新型コロナ研究など狙った中国人ハッカー2人を起訴
独立記念日を狙うKaseyaのハッキング、ランサムウェアで何百もの企業に被害

米国は、ランサムウェアギャングがロシア国内で活動するためのセーフハーバーを提供することをやめるようクレムリンに公式に働きかけているが、これまで北京がランサムウェア攻撃を仕かけた、またはそれに関与していると非難したことはなかった。

19日の声明では、「ハッカーを雇って犯罪行為を行う中国の姿勢は、知的財産や専有情報の損失、身代金の支払い、被害軽減のための努力などを通じて、政府や企業、重要インフラ事業者に何十億ドル(何千億円)もの損害を与えています」と述べている。

また、この声明では、中国の支援を受けたハッカーたちが、恐喝やクリプトジャッキング(コンピュータのコンピューティングリソースを利用して、金銭的利益を得るために暗号通貨を採掘するコードをコンピュータに実行させる方法)に従事していたとも述べている。

司法省はさらに、中国国家安全省に所属する4人のハッカーを新たに起訴すると発表した。これらのハッカーは米国、ノルウェー、スイス、英国に拠点を置く被害者を標的に、知的財産やエボラ出血熱、HIV / エイズ、MERSなどの感染症に関する研究を、フロント企業を使って隠蔽しながら盗み出す活動に従事していたと米国の検察当局は指摘している。

「中国のハッキングキャンペーンは、医療、バイオメディカル研究、航空、防衛など様々な分野で十数カ国を対象に行われており、その幅広さと期間の長さは、いかなる国や産業も安全ではないことを我々に気づかせます。今日の国際的な非難は、世界が公正なルールを求めており、各国が盗難ではなく技術革新に投資することを望んでいることを示しています」とLisa Monaco(リサ・モナコ)副検事総長は述べた。

カテゴリー:セキュリティ
タグ:Microsoft ExchangeMicrosoftハッキングランサムウェアアメリカ中国米国家安全保障局

画像クレジット:Getty Images

原文へ

(文:Zack Whittaker、翻訳:Aya Nakazato)