ルーマニアは東ヨーロッパのシリコンバレーである

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編集部注:本稿を執筆したBryan Martinは、8×8の取締役兼CTOだ。

ルーマニアは長らくの間、テック企業の問い合わせセンター、ソフトフェア開発、そして研究開発のアウトソース先として重要な拠点であった。今、ルーマニアは独自の起業家カルチャーを育みつつある。

オンライン上のデータベースであるRomanian Startupsでは、国内のスタートアップを300社を掲載している。一年前の掲載数は約250社だった。このセクターにおけるインキュベーター、エンジェル投資家、ファウンダーも増えており、合計するとその数は600ほどになる。

ルーマニアのテック企業のスタートアップシーンはまだ芽が出たばかりではあるが、成長している。そして登場したばかりの、あるいはこれから登場するいくつかの企業は、ゲームチェンジャーとなりうる素質を持っている。ルーマニアにエンジニア・チームをもつVector Watchは、30日間充電不要のバッテリーを備えたスマートウォッチを開発した。Axosuitsは障がい者向けの安価な外骨格を開発したロボティクス分野のスタートアップだ。

ルーマニアにおけるテック系スタートアップ文化が小規模なのは当然だ。

また、大規模なテック企業もルーマニアが生んだ企業たちに目を光らせている。2014年、Facebookは2人のルーマニア人によって創立されたLiveRailというテック系スタートアップを買収した。2013年には、ブカレストに拠点をもつ、eコマースの各種機能を提供するAvangateがサンフランシスコのFrancisco Partnersに買収された。2012年には、ルーマニアの起業家が創立した、バンクーバー発のSummifyをTwitterが買収。そして2015年には、豊富なエンジニア人材と最先端のクオリティ管理ソフトウェアをもつQuality Software Corporationを我われが買収した。

マーケット調査のThomson Reutersのデータによると、過去3年間においてルーマニアのテック企業とテレコム企業が合計16社買収された。13社のルーマニア籍のメディア、エンターテイメント企業も同様だ。

魅力に溢れる人材

ルーマニアでのアウトソーシングは今でも魅力的だ。IntelやOracleを含む企業たちは、ルーマニアに店舗やコールセンター、ソフトウェア開発拠点、サポートサービス拠点を設置している。

彼らはルーマニアが持つチカラに惹きつけられ、同様にそれはルーマニア独自のテック業界の発展に寄与するだろう。それは以下のものだ:

人材:労働市場の調査会社であるBrainspottingのレポートによると、人口が2000万人ほどのルーマニアにおいて、ITスペシャリストの資格をもつ人数は9万5000人にのぼり、世界ランキングのトップ10入りを果たしている。その半数がソフトフェア開発者だ。そして、ルーマニアのITプロフェッショナルの約9割が英語を使いこなす。ルーマニアのAssociation of SoftwareとIT Servicesは、IT分野の国内労働人口が2020年までに3倍になると予測している。

教育へのフォーカス:ルーマニアの大学はIEEE Design Competitionの上位3校に2001年から毎年ランクインしている。さらにBrainspottingの2014年度版のレポートによると、国際情報オリンピックと数学オリンピックのルーマニア人メダリストの数はロシアと中国に次ぐ第3位で、ヨーロッパの国々の中では最も多い。

経済トレンド:世界銀行によると、過去20年間ルーマニアは常にEU諸国の中でも最も高い経済成長率をもち、パフォーマンスも高い国の一つである。インターネット速度のランキングでも高い順位を保ち続けている。若者に起業家スキルを教育する非営利団体のJunior Achivement Romaniaは、高等学校でアントレプレナーシップを教える授業が一般化しているという。

テクノロジーにフォーカスする

ルーマニアにおけるテック系スタートアップ文化が小規模なのは当然だ。

これまでの共産主義体制によって民間企業は軽蔑され、禁止されてきた。民間企業が出現したのは、ほんの20年ほど前にルーマニアが民主化を果たしてからのことだ。それ以降、その他の周辺国と同じように、ルーマニアの再建は外国からの投資に重度に依存してきた。同時にルーマニア政府はテクノロジー分野にも注力した。

ルーマニアが真のテクノロジー・ハブとなるまでには超えるべきハードルが多く存在するのも確かだ。

2001年以降、ルーマニアはIT分野の労働者に対し、雇用者への貢献度に応じた非課税政策を実施している。この政策は新しい労働者のIT分野への流入を加速している。ルーマニアはヨーロッパの最貧国の1つなのだが、昨年のRed Herringのレポートによると、ルーマニアでのIT分野における給与は平均より3倍(またはそれ以上)高いことがしばしばであるという。

ルーマニアがIT分野に強みをもつのは、この国の過去も関係しているとRed Herringは述べている。ソビエト連邦の経済の階層化計画において、ルーマニアはITコンピューターの製造を任された東ヨーロッパ圏の国であると位置づけられていた。

「それによって私たちは有利なスタートを切ることができました」。ルーマニア人のテック起業家であり投資家でもあるRadu GeorgescuはRed Herringの記事の中でこう語った。Georgescuが率いるGeCADはRAV Antivirusを開発し、2003年にマイクロソフトによって買収された。この出来事は、ルーマニアのテクノロジー・セクターが持つポテンシャルの開花を説明するために語られることが多い。

健全な競争

Brainspottingによると、現在ではルーマニア国内においてIT企業の半数以上が首都ブカレストに拠点を構えているという。Oracle、Intel、IBM、Adobeなどの企業の拠点もそうだ。しかし、ルーマニア第2の都市クルジュにも注目が集まっている。growthbusiness.co.ukの新しい記事のヘッドラインは、「ヨーロッパのシリコンバレーなのか?」と問いかける。Brainspottingは、クルジュにおけるIT人材に対する需要は供給を超過していると述べた。

クルジュが企業の需要を活用して、街の発展につなげることを考えていることは確かだ。

Cluj Innovation Cityは、この都市とその周辺地域における主要なプロジェクトだ。このプロジェクトの目的は、地方自治体、大学、そしてビジネス・コミュニティを連携させ、テック・セクターの発展を促すことだ。これは、スタンフォード大学、テック企業のパイオニアたち、そしてVCコミュニティによって10年前にシリコンバレーで組織的に発生した協同プロジェクトによく似ている。

多くの人々が指摘するように、ルーマニアが真のテクノロジー・ハブとなるまでには超えるべきハードルが多く存在するのも確かだ。資本へのアクセスは限られている。リスクテイクを良しとする文化はまだ始まったばかりだ。政府は官僚的で、スタートアップを支援する法律は不足している。しかし、すべての変革はどこかで始まらなければならない。私たちが見るかぎりでは、ルーマニアはその一歩を踏み出している。

[原文]

(翻訳: 木村 拓哉/ Website/ Twitter

スマホ向けゲームメディア運営のAppBroadCast、KDDIグループのmediba傘下に

右からmediba執行役員の小野村嘉人氏、AppBroadCast代表取締役社長の小原聖誉氏、AppBroadCast執行役員の中村啓次郎氏

右からmediba執行役員の小野村嘉人氏、AppBroadCast代表取締役社長の小原聖誉氏、AppBroadCast執行役員の中村啓次郎氏

KDDI子会社で広告事業を中心に展開するmedibaは4月8日、スマートフォンゲーム向けメディア「ゲームギフト」を展開するAppBroadCastの株式を取得。連結子会社化したことを明らかにした。株式の取得数や割合については非公開だが、関係者によるとバリュエーション(評価額)は十数億円になるという。

AppBroadCastは2013年1月の設立。当初はAndroid向けのアプリとしてゲームギフトを展開していた。ゲームギフトはアプリストアで人気のゲームのアイテムの提供のほか、ゲームのニュースや攻略記事、レビューといったコンテンツを配信。現在ではベータテストサービス「サキプレ」、事前予約サービス「ハヤトク」、ゲーム会社公認のコミュニティ「ファンページ」といったサービスも提供している。Androidアプリは410万ダウンロード、これに加えてiOS向けのウェブサービスも提供している。

同社はスマホゲームのユーザーの消費者行動について「PIPAS」というキーワードを掲げている。それぞれP=Pre、I=Install、P=Play、A=Action、S=Sleepの頭文字を取っているのだが、事前予約からユーザーが休眠するまでの行動にあわせて、それぞれ最適なマーケティングソリューションを提供してきた。

実はAppBroadCastとKDDIグループ、両者は以前からは様々なかたちで関わりを持っていたのだそうだ。AppBroadCastは2014年1月にKDDIとグローバル・ブレインが手掛けるベンチャーファンド「KDDI Open Innovation Fund」などを引受先とした資金調達を実施。これと前後してKDDIと業務提携も行っている。また現:Supershipが手がけるモバイルポータル「Syn.」のアライアンスにも参画している。KDDIとの業務提携においては、medibaとも頻繁にやりとりをしている関係性があった。

KDDIグループではすでに定額制のコンテンツサービス「auスマートパス」上でゲームコーナーの「auゲーム」を展開している。auスマートパスのユーザー数は現在1300万人以上。このauユーザー向けに限定したゲーム関連サービス、そしてゲームギフトで培ってきた広くモバイルユーザー向けのゲームサービス、いわば「内」と「外」向けのゲームメディアについて、medibaとAppBroadCastが一体的な運営を進めていく。

「もともとフィーチャーフォンの時代から、広告やポータルに関わってきた。だが今は『メディア』と『広告』を分けるのではなく、一体にしてコミュニケーションやビジネスを考えていく必要がある。また、ユーザーのスマートフォンリテラシーは上がってきている。さまざまなメディアやサービスが出てきている中で、ただ単純に広告を売るだけでは先行きが見えてしまう。ただバナーを出すのではいけない。メディアとして、コンテンツして魅力がないと広告も成り立たない」

今回の子会社化の背景についてこう語ったのは、mediba執行役員の小野村嘉人氏。KDDIグループでのメディア系スタートアップの買収についても、「大きい構想としては(可能性は)ある」(小野村氏)とした。

両者による新事業や具体的な施策についてはこれから発表されることになる。その方向性については「ユーザーが継続してプレイするゲームはせいぜい4タイトル程度。そうなるとゲームの継続率が大事になってくる。それは顧客満足度に繋がる話で、これからの(ゲームメーカーの)課題はそこにある。そうであれば、顧客満足度向上のための手段をmedibaのノウハウもあわせて提供していく」(ゲームギフト代表取締役社長の小原聖誉氏)

将来的にはアジアを中心にしたゲームギフトの海外展開なども想定されるという。「我々はゲーム会社を応援したいという気持ちで起業した。今までアイテムのギフトやベータテストなどをやってきている。国によってゲームマーケターの課題は違う。そこに合わせて提供できるモノはあるはず」(小原氏)

Sendersは、メールに送信者の関連情報を追加するサービス

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【本稿の執筆者はStefan Etienne 】
Eメール追跡システムの出現は、様々な騒動を起こしており、概して薄気味悪いものだ。ニューヨーク拠点のスタートアップ、One More Companyは、これに正面から立ち向かうTrackbusterというサービスを立ち上げたが、このたび新しいサービスに興味を持った。意味のあるコンテキスト情報を加えて「メールを強化」することだ。

SendersはGoogle OAuthを使用し、公開個人情報(Instagram、Facebook)からはデータを取得していないので安全だと言っている。

Sendersと呼ばれるこのEメールサービスは、メールの中に連絡先カードのようなものを作り、ソーシャルネットワーク、略歴、写真、勤務先住所、その他の関連情報を載せる。こうしてメール内で個人を検索することが簡単になる。Sendersは公開されている情報の殆どをユーザーに代って集め、カタログ化する ― すべてメールの中で。

初めてSendersを試した時に、私の企業メールアドレスが表示されているところを下に貼った。

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カード内に個人情報が安易に含められることを懸念する人のために、目立たなくする方法が用意されている。Sendersが表示する情報はユーザーが編集できる。私の場合は、意味のある情報を追加すると共にいくつか誤りを修正した ― 例えばTwitterアカウントはサイトではなく私個人のものにした。カード内の詳細情報をほぼゼロにすることもできる。

Sendersは現在公開ベータテスト中で、登録を受け付けているので、興味のある人はこれが日々のメールに役立つかどうか試すことができる。

[原文へ]

(翻訳:Nob Takahashi / facebook

Onlabが創業期向けに新たな育成プログラム、まる2日で事業成長を学ぶ「BootStrap」

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明日4月5日はOpen Network Lab(Onlab)が手がける「Seed Accelerator Program」のデモデイが開催される。Seed Accelerator Programは2010年にスタートした、国内では老舗のアクセラレーションプログラムだ。

今回で第12期を迎えるこのプログラムでは、採択された創業期のスタートアップに対して、3カ月間のメンタリングや資金提供を実施。その集大成として投資家やスタートアップ関係者などを前にプレゼンテーションを行うデモデイを行っている。これまで電動モビリティのWHILLや米国で福利厚生サービスを提供するAnyPerkをはじめとして合計64社のスタートアップを輩出してきた。そのうち40%のスタートアップが次のシリーズの資金調達に成功。全体の15%のスタートアップは10億円以上のバリュエーション(評価額)がついているという。

そんな実績を持つOnlabが、新たなプログラム「Open Network Lab Bootstrap(Onlab Bootstrap)」を5月27日〜28日の2日間、東京にて開催することを明らかにした。4月5日より特設サイトにて参加者を募集している。また反響を見て今後は東京のほか、地方での提供を進める。

Onlab Bootstrapは、「資金調達をする前のプロダクトをどのように作り・見せるといいのかを徹底的に学ぶ」ということをテーマにしたプログラム。Onlabと比較して事業成熟度や資金ニーズの低い、より創業期に近いスタートアップを対象にしたもの。通常3カ月続くOnlabのメンタリングでも特に重要な、事業のブラッシュアップに関わるポイントを2日に圧縮して伝えていくという。

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Onlabを担当するDGインキュベーションの松田崇義氏によると、Onlab Bootstrapでは(1)仮説とソリューション、それぞれについて深掘りしてすることで、プロダクトのニーズを検討する「アイデア検証」、(2)ユーザーのニーズを聞き具体的にどういったアウトプットをもらうべきか、何をもとにサービスの継続、ピボットを検討すべきかを学ぶ「ユーザーヒアリング」、(3)サービス(MVP:Minimum Viable Product)を作る上で考えるべき3つのこと、(4)プレゼンテーションのノウハウを中心とした「プロダクトの上手な見せ方」——の4点にフォーカスし、OnlabのメンバーやOnlab卒業企業の代表などがメンタリングを行うという。

DGインキュベ−ション マネージング・ディレクターの林口哲也氏は、新プログラム提供の背景について、アクセラレーターの増加やOnlabの東京外での認知拡大の2点で説明してくれた。Onlabのスタートした2010年と異なり、インキュベーション・アクセラレーションのプログラムは増えてきた。特に事業会社がオープンイノベーションの目的でプログラムを実施ししたり、エンジェル投資家がシードラウンドの資金調達やメンタリングを行うという機会が増えてきた。そのため、より若いステージのスタートアップに対しても提供できるメンタリングの仕組みが必要だと考えたようだ。また一方で、東京以外の地域(名古屋・大阪・福岡など)でのOnlabの認知度はまだまだ低く、プログラムの内容が見えにくいという課題も見えてきたことから、2日間集中・各地域で展開可能なプログラムになっているという。

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バイクリメンツが新ビットコイン取引所——今夏にはビットコイン決済可能なデビットカードも提供

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bitFlyercoincheckなどをはじめとして国内でもビットコイン取引所が増えてきたが、最後発となるビットコイン取引所が誕生した。バイクリメンツは3月31日、ビットコイン取引所の「Lemuria」を公開した。

Lemuriaは、セキュリティ面で評価されているビットコインウォレットのBitGoを採用したビットコイン取引所だ。最短10分で取引開始可能で、取引は100円から。メールアドレスの登録のみでビットコイン建ての入金と売買ができる。

ビットコインといえばどうしても投機目的での取引が多く、一部ではFXのユーザー層などを取り込む動きもあるようだ。Lemuriaが目指すのはビットコインを使った経済圏を拡大することだという。

具体的には、海外のプレーヤーと提携して、ビットコインを取引所にデポジットしておけば、VISAデビットカード加盟店(国内約270万店舗)でそのまま決済可能なプラスチックカード「Lemuriaデビットカード」を7月にも提供する予定。また各取引所に預けているビットコインをそのまま利用できるペイメントプロセッサー「Lemuria Payment」も今夏提供する予定だ。さらにビットコインで購入すれば割引になるようなクーポンをはじめ、ビットコインを使った各種のサービスを検討中だという。国内ではビットコインを利用できる店舗はまだまだ少ない。デビットカードなどを提供することで、まずはその利用の窓口を広げようというのが同社の考えだ。

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バイクリメンツは2015年12月の設立。資本金は非公開だが数百万円。創業メンバーのほか、上野武史氏らエンジェル投資家数名および同社の顧問弁護士法人が株主となっている。

創業メンバーで代表取締役の柴田倫宏氏はSI系ソフトハウスからグリーを経たのち、電通のグループ企業でスマホアプリの開発を手がけた人物。その一方で個人でビットコイン取引所を試験的に運用するなどしてきた。また同じく操業メンバーで取締役の山村賢太郎氏はサミーネットワークからアドウェイズを経て、現在はブロックチェーンなどの情報を配信する「THE COINTELEGRAPH」日本版の編集長を務める。また、アドバイザーとして、大手ビットコインウォレットサービスのCOINBASEやビットコイン取引所のKRAKENでビジネス開発などを務めたJames MacWhyte氏が参画する。

Y Combinatorデモデイ登壇120社を全部まるっとご紹介(Day1前編)

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「伝統的なソフトウェア分野に属さないスタートアップが、これまでよりかなり多いことに気が付くことでしょう」。Y CombinatorのWinter 2016 Demo Day (訳注:3月22日、23日の2日間)の開催に際し、会長のSam Altmanはこう話した。かつてのYCは、誰からも必要とされないソーシャルアプリや、マーケットプレイスのアプリばかりを支援していると考えられていた。しかし、現在ではシリコンバレー随一のアクセラレーターとなったYCの投資先は多岐にわたり、数多くのハードウェア、エンジニアリング、代替エネルギー分野のスタートアップに投資している。

訳注:これはシリコンバレーで随一のアクセラレーターとして知られるY Combinatorが年に2度行うデモデイを紹介する記事の翻訳記事です。Day1、Day2でそれぞれ約60社のスタートアップ企業が登壇していて、以下の4本の翻訳記事で30社ずつ紹介しています。この記事はDay1の前編です。関連記事は以下の通りです。

元インテルCEOであり、皆に愛されるビジネスメンターでもあった故Andy Grove氏と、その日の朝にブリュッセルで起きたテロ攻撃の犠牲者に捧げる黙とうと共に、Demo Dayが開幕した。

Demo Dayの会場が、ここまで満員になるとは誰もが予想をしていなかったのだろう。イスの数が足りず、世界中からやってきた億万長者たちは床に座り、次から次へと表れては自社スタッフを自慢げに紹介するスタートアップたちに目を凝らしていた。そのほとんどが、初登場だった。

Y Combinator President Sam Altman

Y Combinator代表 サム・アルトマン

今回の最大のテーマは収益性だ。過去に登場したスタートアップは、成長性を強調する一方で、収益性を軽視する傾向があった。「小さく振りかぶりすぎではないか」、「再投資を十分にしていないのではないか」と思われるのを避けるためだ。しかし経済が調整局面を迎え、事業成功のために際限のない継続投資を必要とせず、より早く持続可能状態にシフトできるスタートアップが求められるようになった。そのため今日登場したスタートアップの多くは、「すでに収益性を兼ね備えている」、もしくは「数カ月以内には収益を出せる状態になる」と主張していた。「事業拡大のために、資金に頼る必要がないマーケットだ」と話すものもいた。

それでも、即座に投資に踏み切ったアグレッシブなVCがいたことをうけて、Altmanはスタートアップへの投資は例年にもまして「よりホットだった」と語る。彼によれば、スタートアップへの投資の冷え込みを予測したYCは昨年、スタートアップに対して「調達額は抑えて、より早く収益を出せる状態にするように」と言っていたという。しかし、現状ではその理念は全スタートアップに「まだ浸透していない」が、次のDemo Dayまでにはそうしたいと彼は考える。また、自動運転技術のCruiseが10億ドルで買収されたことが、投資家の「ハードテック」に対する関心を高めているとも語った。

今日、全部で63社のスタートアップが産声をあげた。ただし、そのうち3社は事前に「オフレコで」との要望があった。(彼らがメディアに取り上げられるには、少しばかり時期尚早だということだ。いつものように、私たちはこの要望を尊重した)

皆さんにお伝えできる、全60社のスタートアップを紹介しよう。

Nurx – バースコントロールの「Uber」

避妊ピルを手に入れるのは、時には難しい。クルマなどの病院に行く手段を持ち、それについて心地よく相談できる環境が必要となる。しかしNurxを使えば、あなたは避妊ピルを選ぶだけだ。あとは医者が書いた処方箋が、自宅まで直接届くのを待てばいい。

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MagicBus – すべての人にGoogle Shuttlesを
郊外から都市部への通勤は苦痛だ。MagicBusは、「安さ」と「速さ」の両方でトップになろうとしている。MagicBusには最大14人まで乗車可能で、道中いくつかの地点で停車する。同社によれば、都市部と郊外をむすぶ交通のマーケットは1兆ドルの規模だという。同社の前月比の成長率は50%で、ユーザーの48%がサービスを毎日利用しているとMagicBusは語る。MagicBusに関するTechCrunchの記事はここで読める。

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Paystack – アフリカ企業のための、オンライン決済システム
1億8000万の人口をもつナイジェリアでは、インターネットが十分に普及しているにもかかわらず、国内で行われる決済のほとんどがオフラインだ。Paystackはナイジェリアのビジネスに対し、Webサイトとモバイルアプリ上に構築できる決済システムを提供する。このシステムはクレジットカード、デビットカード、振替、モバイルマネーに対応している。導入にかかる時間は3週間ではなく、たったの30分。支払いのプロセスも、7ステップから2ステップに減らすことができる。国内カードの決済であれば、一回につき50セントに加えて、決済代金の1.9%がPaystackに支払われる。海外カードであれば、50セントと決済代金の3.9%だ。アフリカ企業がオンライン決済を導入することを容易にし、彼らが次世代の顧客をつかんで繁栄するための後押しをするのだ。

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Tovala – 「パッケージ済み料理」の定期配達サービス付きスマートオーブン
Tovalaは、ボタンを押すだけで「完璧な仕上がり」の料理を作ってくれるスマートオーブンだ。ハイテク対応の料理をオーブンに入れると、自動で温度やタイミングを計って調理してくれる。Tovalaには「パッケージ済み料理」の定期配達プランもあり、オーブンに入れるだけで出来上がる料理を自宅まで届けてくれる。Tovalaは、すでにKickstarterで24万ドルの資金を集めている。

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Redspread – 共同開発ソフトウェア

システム障害などのダウンタイムは、企業にとって相当なコストとなる。数字で表せば、約265億ドルの収益のロスになる。結局のところ、ダウンタイムの原因はたいていヒューマンエラーによるものだ。そこで、共同開発環境を構築できるRedspreadの出番となる。Redspreadは3週間前にサービス開始した。

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Gecko Robotics – ロボットによる安全点検

アメリカ国内の発電施設では、設備の安全点検に年間150億ドルもの資金を費やしている。その危険な点検作業には7日間かかり、毎日100万ドルの機会損失を出してしまう。そこでGecko Roboticsは、壁をのぼることができ、危険な仕事を素早くかつローコストでこなすことができる独自の点検ロボットを開発した。このロボット使えば、5万ドルから10万ドル程度のコストで、通常であれば7日間かかる安全点検をたった1日で終わらせることができる。より多くのデータが集められるし、人間の命を危険にさらすこともない。Geckoは今年中にも黒字化し、類似する業界への拡大を目指す。点検中に作業員が命を落としてしまう悲劇を減らしたいという強い信念が、このスタートアップを突き動かしている。

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Kisan Network – インドの農家のためのマーケットプレイス

Kisan Networkは、インドの農家とバイヤー組織を直接つなぐオンライン上のマーケットプレイスだ。運営チームは、このマーケットは2000億ドルの規模だと話す。例えば、インドのジャガイモ農家が収穫物の詳細をアップロードすると、ポテトチップスのメーカーはその情報をもとに、農家からポテトを直接買い取るという具合だ。

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Outschool – 在宅教師のためのマーケットプレイス

何かを学習する方法には、とてもさまざまな方法がある。課外授業であればなおさらだ。Outschoolは、自宅で子供たちに解剖学や宇宙、写真などについてのクラスやフィールドトリップを提供する、「在宅教師」のためのマーケットプレイスだ。Outschoolによると、月間で1万4000ドルの授業料に相当する取引を成立させる見込みだ。(アップデート: 現時点でのOutschoolの月間セールスの数字を明らかにした。前回は曖昧な回答だった。)

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Cover – 写真を撮って、保険をかける

保険の契約はとても面倒だ。だが、Coverで保険を掛けるために必要なのは、対象物となる車、家、ペット、宝石、スピードボート、競走馬などの写真だけだ。現状では、Coverの見込み客は外部の保険会社に紹介され、Coverは紹介料として月に19万ドルを受け取っている。だがCoverは、保険販売のライセンスを取得し、直接ユーザーに保険を販売することを計画している。そうすればアメリカ国内で年間220億ドルとも言われる保険販売手数料のマーケットを取り込むことができる。Coverはモバイルでの保険販売よって、便利さを重視した新しい世代の顧客を集めることができるかもしれない。

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Rappi – コロンビアでの食料品デリバリー

RappiはラテンアメリカでInstacartとPostmatesを組み合わせたような存在になろうとしている。同社は、顧客から配達料金として一回につき70セントを受け取り、配達員には約2ドルの時給を支払う。ラテンアメリカ出身のRappi創業者によると、この料金設定はラテンアメリカ地域においては、太っ腹でかつ競争力のある値段設定だという。

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Toymail – キッズ向けの携帯電話

米国では10歳以下の子どもの95%が携帯電話を持っていない。しかし両親は、子ども達との連絡を絶やしたくないと考えている。親たちはただ、子どもが携帯で遊びすぎたり、見知らぬ人と接触したりすることを恐れているだけだ。だからこそ、1000万ドルを売り上げた「逃げる目覚まし時計」を発売したToymailは、ぬいぐるみに見立てた携帯電話を開発したのだ。子どもはこの携帯電話を使って、同じくToymailの携帯電話をもつ両親や家族、友達にボイスメッセージを送信することができる。ハードウェアの販売だけでも30億ドルのビジネスになり得るが、専用のアプリストアでゲームや物語、教育用アプリなどを販売することを計画している。すでに、アマゾンがそのディベロッパーとして名乗りをあげている。Toymailのおかげで、あなたは安心してお子さんに携帯電話を買ってあげることができるかもしれない。Toymailに関するTechCrunchの記事はここで読める。

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Chatfuel – チャットボットのプラットフォーム

フォロワーやファンと有意義な方法でつながることは、企業にとって永遠の課題だ。顧客との接点を築きたいと望む企業は、Chatfuelのネイティブインターフェイスを使って、顧客との会話を円滑にするボットを作り出すことができる。すでに13万以上のボットが同社のプラットフォーム上で作られている。TechCrunchやForbesといった出版社はChatfuelでボットを作りだし、どんなメッセージングアプリにも配置することができる。Chatfuelはこれまでに、100万以上のアクティブユーザーを獲得したとみられている。Chatfuelに関するTechCrunchの記事はここで読める。

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Varden Labs – 大学などのキャンパスを走る、自動運転シャトル
Varden Labsが開発したのは、大学や企業の本社などのキャンパス内を走る(大きなゴルフカートのような見た目の)自動運転シャトルだ。現在、6つの大学キャンパスで有料の実地試験が行われている。シャトルの運用料金は年間で5万ドルだ。3人の創業者たちは、エンジニアリングを専攻していたウォータールー大学で出会った。

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Stitch – 医師のためのSlack

メッセージング・プラットフォームは、今やほとんどの業界で使われている。Stitchは医者や看護師、ソーシャルワーカー、薬剤師などに向けた、ヘルスケア業界のメッセージング・プラットフォームだ。Stichは、医療保険の相互運用性と説明責任に関する法律であるHIPPAを遵守しており、電子カルテを統合させて利用する。同社はすでに400以上の機関と契約しており、前月比の成長率は40%だ。老人ホームやリハビリ施設、薬局、外来治療施設などに特化していることが、その高い成長率の秘訣だと語る。同社は、Stitchのエンゲージ率はとても高く、ユーザーの利用時間は1日あたり8時間で、20通のメッセージが送信されていると主張している。Stitchに関するTechCrunchの記事はここで読める。

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Focal Systems – スマート・ショッピングカート

Focal Systemsは、iBeaconsより14倍正確で、20倍安いと言われる屋内測位システムを開発した。カメラ付き携帯電話と測位システムを従来のカートに取り付けることで、その位置を特定することが可能だ。装着された携帯電話は店内のナビゲーション機能をもち、買い物客が広告品の前を通ると同時に、その製品のターゲット広告を表示する。Focal Systemが行ったデモンストレーションでは、同サービスによって店舗の月間売り上げを10万ドル増やせることを示した。同社は導入店舗から2500ドルと広告収入の半分を受け取る。すでに食料品ストアのSafewayとの契約の準備が整っており、年間6600万ドルの収益を期待できるという。かつて、従来型の店舗を歩くのは息がつまる思いだった。屋内測位と観測システムを導入することによって、それはもっと簡単になり、店舗にとってはさらなる儲けをもたらすだろう。

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STILT – アメリカ国外からの学生と就労者のためのローン

教育を受け、合法的にアメリカに移住したSTILTの創業者は、あることを身をもって体験した。移民たちは、アメリカ国内でのクレジットヒストリーが足りず、ローンを組むのが困難なのだ。STILTはそのような移民への融資に特化している。これまでに43万1000ドルの融資実績があり、そのうち6万ドルは回収済みだ。これまで債務不履行となった事例はない。

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PetCube – ペット用のDropcam

ペットに夢中な人たちは、最愛のペットを家に独りおいて外出した時には、そわそわしてたまらない。ペットが独りぼっちで平気かどうか気になるのだ。PetCubeは、199ドルのペットオーナー向けホームカメラを過去15カ月で合計2万ユニット販売し、250万ドルの売り上げを記録した。このカメラはNordstrom、Best Buy、Brookstoneなどで販売され、同社の収益の半分以上は小売店から得られている。PetCubeは、年内に会員サービスを開始し、カメラとワイアレスで接続する「おやつ」のディスペンサーも販売する予定だ。PetCubeに関するTechCrunchの記事はここで読める。

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Goodybag – オフィス向けの簡単なケータリングサービス

Goodybagは、オフィスへの食事の宅配をシンプルにしてくれる。この市場は米国で300億ドルの規模をもつ。しかし、同社のビジネスは、マージン率の低いオンデマンドのデリバリーではなく、単にオーダリングをより円滑にするビジネスだ。一度のオーダーにつき、10%の手数料を徴収する。550万ドルの年間収益のランレートでは、60万ドルの利益が残る計算だ。同社はすでにオースティン市場で利益を上げており、新しい地域にも進出することで今後6カ月の内に損益分岐点に到達することも可能だ。95%の顧客維持率と、平均して350ドルの注文を受けるショッピングカートにより(これは同様のオーダーサービスの顧客単価の10倍だ)、食事のオーダリング市場で、実際に利益を上げることができることを確信した。

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StyleBee – オンデマンドの美容師
StyleBeeはヘアセットやメイクアップ、そして男性のヘアカットをオンデマンドで提供する。ユーザーは提供してほしいサービスを選び、自分がどこにいるかを伝える。そうすれば、腕の立つスタイリストが、あなたがいる場所まで来てくれる。60%のStyleBeeユーザーは、月に一回のペースでサービスを利用している。過去12カ月のランレートは、サンフランシスコ単体で100万ドルを達成し、利益率は一度のサービス提供につき約35%だ。StyleBeeに関するTechCrunchの記事はここで読める。

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Airmada – 自動化されたドローンの地上基地

自動化されたドローンの地上基地は、費用のかかる人間オペレーターの代替案として開発された。Airmadaの地上施設は、ドローンの収容、充電、そしてさまざまなミッションのためにドローンを発進させる機能を持つ。その基地の初配備はパナマ運河で実施された。たった300ドルで、港から船まで小包を輸送するサービスのためだ。


Revl – 安定化されたアクション・カメラ
GoProのビジネスは年々よくなっているとはいい難い。ごくわずかな人しか、新しいGoProを買う必要性を感じないからだ。だが、Revlはカメラを「安定化」させることによって、アクションカメラの難題に挑んだのだ。物理的な面と、デジタルな面の両方においてカメラを安定化し、これまでにない程にスムーズな映像の撮影を可能にした。Revlには自動的に映像を編集するソフトも搭載されているため、ベストな瞬間をシェアするためにパソコンの前に座り、退屈なマニュアルの映像編集ソフトと格闘する必要もない。100億ドル規模のアクションカメラ市場は、毎年22%のスピードで成長している。だが、Revlはアクションカメラを撮影や編集が下手な初心者でも利用しやすいものに変えるだろう。RevlはIndiegogoで支援を募集中で、過去4日間で7万ドルの支援を集めることに成功した。Revlに関するTechCrunchの記事はここで読める。

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Poppy – オンデマンドのベビーシッター
PoppyはSMSだけで完結する、オンデマンドのベビーシッター提供サービスだ。今月、彼らは約500のベビーシッターのアポインメントを取り付けた。口コミが同サービスの成長の原動力となっていて、その成長率は毎月約50%のペースだ。シアトルエリアでは、40人のベテランシッターを利用可能だ。

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UnnyWorld– モバイル版のLeague Of Legends
デスクトップで動く、マルチプレイヤー対戦ゲームのLeague Of Legendsは2700万人のデイリーアクティブユーザーを持ち、年間10億ドルの収益を稼ぎ出している。UnnyWorldは、似たようなゲームをモバイルでも楽しめるようにしたかった。このゲームは5分ほどの短いセッションで構成されていて、移動中のわずかな時間でもプレイ可能だ。ユーザーはキーボードの代わりに、指の動きで魔法を唱えたり、他のプレイヤーと協力して攻撃を仕掛けたりすることができる。5年間苦楽を共にした12人のチームが製作したこのゲームは、すでに540万回のダウンロード回数を記録している。現在のベータ版では、ユーザーの平均プレイ時間は1日あたり30分だ。グローバル配信は9月を予定している。人気ゲームを「コピーした」と言われれば聞こえの良いものではないが、League Of Legendsのプレイ体験をモバイルでも提供することは儲かる話になりそうだ。

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Trac – 陸上競技チームのためのシンプルなタイム計測システム
各地で行われる陸上競技の開催のために費やされる費用は、合計すると数十億ドルにもなり、そのうち20億ドルがタイムの計測のために費やされる。Tracはそこに目を付けた。プロと同じくらい正確な計測システムを低いコストで、ありとあらゆるレースに導入したいと考えたのだ。Tracは選手の靴に取り付ける特殊なチップと、ゴール地点に置く計測デバイスを提供する。

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WorldCover – 発展途上国での穀物保険
世界各地にいる5億人の農民たちは、天候の気まぐれによって収入が左右されてしまう。雨が降らなければ作物は育たず、収入を得られない。WorldCoverは、発展途上国の農民に穀物保険を提供する。衛星をつかって降雨量を計測し、そのデータを基に保険料を自動的に支払うシステムだ。

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SOUNDBOKS – 充電式でパワフルな屋外スピーカー
屋外パーティを開くためには、高価な設備と、それを設置するための時間や知識が必要だ。だが、SOUNDBOKSのスーツケースの形をしたポータブルスピーカーがあれば、それだけで大勢の人をダンスさせることができる。故障とは無縁の丈夫なスピーカーで、60時間もつバッテリーは取り替えも可能だ。直近の20日間で、SOUNDBOKSはクラウドファンディングを通じてスピーカーを販売し、60万ドル売り上げ、利益率は55%だった。製品は4月に発送される。同社はJamboxサイズの小さなスピーカーと、数千人の規模にも対応できるエレメンタル系の超大型スピーカーもリリースする予定だ。Sonosは同様の問題にワイアレスのインドア・スピーカーという形でアプローチし、数十億ドルのビジネスに成長した。オフラインで友達と集まりたいというニーズを背景に、アウトドア音楽市場は年間39%のスピードで成長している。SOUNDBOKSが前評判に応えて、あちこちで音楽を響き渡らせることができれば、実体験重視のカルチャーへのシフトに後押しされて、ビジネスを成功に導くだろう。

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MailTime – モバイルで軽快に動作するEメールクライアント
Eメールは使いにくいったらありゃしない。MailTimeは、そんなEメールにメッセージングアプリのシンプルさを取り入れることで、Eメールをもう少しましな物にしようとしている。MailTimeでは、Eメールをスレッド形式ではなく、チャットアプリのような会話形式で表示する。MailTimeはこれまでに10万のデイリーアクティブユーザーを獲得しており、中国の独立系Eメールアプリの中ではトップを走る。加えて同社は、2億人のユーザーを抱える中国1位のメッセンジャーアプリとの経営統合の準備を進めている。MailTimeに関するTechCrunchの記事はここで読める。

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Restocks – ファッションオタクのためのプッシュ通知アプリ
Restocksは、「スーパーコンシューマ」に流行ブランド(Supreme, Yeezyなど)のセール情報を通知するアプリだ。ユーザーがRestocksにお気に入りのブランドを教えておけば、RestocksがWebサイトをまわってセール情報を集めてくれる。利用料金は年間25ドルだ。

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Castle.io – 行動ベースのセキュリティ
パスワードは簡単に盗まれるが、ハッカーやボットがユーザーの行動を複製することは難しい。CastleはクライアントのWebサイトやアプリからユーザーの行動パターンを抽出し、その行動パターンとマッチしないアクセスを遮断する。例えば、Eコマースサイトではユーザーはショッピングカートに商品を追加する前に、いくつか商品を見てまわるだろう。しかし、ハッカーは即座に多数の商品をショッピングカートに追加し、チェックアウトしようとする。このようなアクセスをCastleは遮断する。Castleには現在150件の導入実績があり、現状で40万人のユーザー数は、毎週35%のペースで伸びている。プロテクトするユーザー人数が増えれば、Castleはより賢くなり、ユーザーによる理にかなった行動と、ハッカーの大雑把な行動を見分ける精度が上がる。

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Acre Designs – 安価でモダンなゼロエネルギーの家
「家」という分野でのイノベーションは、あまり生まれてこなかった。Acre Designsは、家自体がエネルギーを作り出す、容易に建設が可能な「ゼロエネルギーハウス」を作ることによって、その見方を変えようとしている。昨年、Arcre Designsは2つのプロトタイプを製造し、6つの家に設置することで、290万ドルの手付金を確保した。Acre Designsはキットを25万ドルで販売し、その利益率は12%だ。そして建築業者はその家を40万ドルで販売できる。Acre Designsに関するTechCrunchの記事はここで読める。

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訳注:これはシリコンバレーで随一のアクセラレーターとして知られるY Combinatorが年に2度行うデモデイを紹介する記事の翻訳記事です。Day1、Day2でそれぞれ約60社のスタートアップ企業が登壇していて、以下の4本の翻訳記事で30社ずつ紹介しています。この記事はDay1の前編です。関連記事は以下の通りです。

原文
(翻訳:Takuya Kimura)

楽天とUTECが千葉大発のドローンスタートアップに出資、5月にもゴルフ場で実証実験

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Amazonが「空飛ぶ配達ドローン」の実現に向けて動いているようだが、国内でも楽天がスタートアップと組んで実証実験を開始する。実験のパートナーとなるのは、千葉大学発のドローンスタートアップである自律制御システム研究所(ACSL)だ。同社は3月28日、東京大学エッジキャピタル(UTEC)および楽天から総額7億2000万円の資金調達を実施したことを明らかにした。

ACSLは2013年11月の設立。千葉大学・野波健蔵研究室で1998年から行われている還元自立型ドローンの技術をベースに、産業利用可能な純国産ドローンの開発進めている。

両者は5月から千葉県御宿町のゴルフ場で実証実験を行う予定。ゴルフ場の利用者に対して,飲み物やゴルフボールなどを届けるサービスを提供するとしている。

またこれとは別に、楽天は千葉市が4月から国家戦略特区で実施する配達ドローン関連の実証実験にも参加する予定。この実験には楽天やACSLヤマト運輸なども参加する予定。

メッセージングサービスを超え、スマートポータルを目指す——LINE出澤CEO

LINE代表取締役CEOの出澤剛氏

LINEは3月24日、今後の戦略などを発表するプライベートカンファレンス「LINE CONFERENCE TOKYO 2016」を千葉県・幕張にて開催。誕生から5年を目前にしたコミュニケーションアプリ「LINE」を軸にした同社の今後の戦略について語った。

LINEのMAU(月間アクティブユーザー)は全世界で2億1500万人、日本、タイ、台湾、インドネシアの主要4カ国では1億4770万人に成長した。すでにメッセージにとどまらず、LINE GAME、LINE LIVE、LINE MUSICをはじめとしたエンターテインメント領域や、LINE PayやLINE TAXI、LINE NEWSをはじめとしたライフ領域のプラットフォームとしての取る組みも進められている。

カンファレンスではまず、LINE代表取締役CEOの出澤剛氏が登壇。これまでのサービスを振り返った上で、次の5年を見据えた新ミッションを「CLOSING THE DISTANCE」とすると語った。

出澤氏はLINEによって人と人、さらに人と情報、サービス、ビジネスとの距離を縮め、生活を豊かにしていきたいと語る。その実現のため、LINEは「メッセージングサービス」を超え、様々なサービスとと繋がる入り口、「スマートポータル」を目指す。
このスマートいう言葉には「賢い」という意味、そして「スマートフォン」という意味があるいう。

「PCからスマートフォンへの変化は単なるデバイスの変化ではない。1人1台、24時間持ち歩く非常にパーソナルなデバイス。検索ではなくコミュニケーション起点でユーザーが活動する。複雑でなくシンプルなサービスが求められる。言い換えると『コミュニケーション中心、人間中心』に設計し直される必要がある。我々はスマホ時代に合った最高のポータルをやっていく」(出澤氏)

カンファレンスは現在も開催中。追って発表をレポートしていく予定だ。

Throttleは、面倒なメールを1日分まとめてダイジェストにしてくれる

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満杯の受信箱より悪い唯一の物は何か? 読みたくないスパムっぽいニュースレターで一杯の受信箱だ。

Throttleは、それを解決するプラグインで、ユーザーが何かを購入したり、ニュースレターに登録した時に独自のメールアドレスを生成する。

そして、そのアドレスに送られてきたメールは、1日分のダイジェストにまとめて送られてくる。Throttleは、このメールを同社ウェブサイトでも読めるようにしていて、数十種類のカテゴリーに効率よく分類されている。

このサービスは、メールを送ってくる相手の会社毎に個別メールアドレスを生成するので、どこの会社があなたのメールアドレスを売ったかがすぐわかる。そして、もし個別アドレスのどれかがスパムに使われていることがわかった時は、Throttleがアクセスを遮断し、ワンクリックでその個別アドレスを停止できる。

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マーケターの中には、購読者がThrottleを使うことは自社にとっても有益だと考える人もいるというのは興味深い。実質的に配信率100%が保証され、コンテンツが実際に読まれる可能性がずっと高くなるからだ。

サービスが開始したのは1月だが、今日(米国時間3/22)から誰でも使えるようになった。さらに同社は月額3.99ドルのProバージョンの提供を開始し、複数メールアカウントのダイジェスト、ダイジェストを待ちたくない時のための即時転送、およびカスタムドメインの利用を可能にしている。

Throttleのブラウザー拡張機能は、現在Safari、ChromeおよびOpera版が用意されており、Firefox版は開発中とのこと。同社によるとモバイルアプリも開発中で、Proバージョン契約者には一般公開前にベータ版を提供する予定だ。

[原文へ]

(翻訳:Nob Takahashi / facebook

宿泊予約サイト「relux」、3年で会員数27万人に——社外取締役に元ミクシィ朝倉氏を招聘

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一流の旅館やホテルに特化した会員制の宿泊予約サイト「relux」。自社のネットワークを生かして宿泊施設と直接交渉を行うことで、最低価格保証・独自特典付きの専用宿泊プランを用意。さらに宿泊費の5%をポイントでキャッシュバックするこのサービスが3月に3周年を迎えた。

僕もプライベートで利用したことがあるが、サービスは極めてシンプル。トップページにあるのは小さな検索窓が中心(サイト下部には特集などもある)。旅行に行きたいエリアとチェックイン・チェックアウトの日付、人数を入力すれば、予約可能なホテルが一覧表示される。もちろん詳細検索やホテルごとの空室検索も可能だ。

サービスを提供するLoco Partnersは3月18日にインフォグラフィックスを公開。この3年の歩みについて紹介している。会員数は3年で27万人を突破。属性では30〜40代が中心となっている。宿泊施設は定番観光地の多い近畿エリアや、温泉地の集まる首都圏・東海エリアを中心にして800軒を紹介している。

公開されたインフォグラフィックスの一部

公開されたインフォグラフィックスの一部

また同社は3月22日付けで、社外取締役として、ミクシィ元代表取締役の朝倉祐介氏を招聘したことを明らかにした。Loco Partners代表取締役の篠塚孝哉氏は「(朝倉氏が)マッキンゼーやミクシィで培った全社経営戦略のフォローや、コーポレートガバナンス強化、またグローバル戦略へのコネクションやフォローが主たる目的」としている。

reluxが今後狙うのは、増え続けるインバウンド需要への対応だ。すでに訪日旅行売上比率は10%近くまでに増えているということで(国内の売上も前年比約4倍と成長しているが、それにも増して増えているそうだ)、同社としても投資を強化している領域だという。「社内のメンバーの半数近くは第二外国語が話せるスタッフなどで揃えており、体制は万全。引き続き『国内 to 国内』の領域が主軸事業ではあるが、訪日旅行は大きなチャンスだと考えている」(篠塚氏)

音楽ストリーミングのSoundCloudがSony Musicと契約―サブスクリプション導入へ大きな弾み

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今日(米国時間3/18)、音楽ストリーミングのスタートアップ、SoundCloudはSony Musicとの契約が成立したことを発表した。 この情報は今週初めに流れていたが、これで正式な確認が取れたことになる。SoundCloudによれば、この契約によって加入者はSony Music Entertainmentレーベルのアーティストの楽曲を自由に聞くことができるようになり、将来、売上を増やすのに効果があるとしている。

SoundCloudはすでにメジャーレーベルを含む他のレコード会社と同様の契約を結んでいる。今年6月にはインディーのアーティスト2万が登録している,Merlinと契約し、またUniversal Music Groupとも今年契約を結ぶことに成功した。Warner Musicとはいち早く、2014年に契約している。しかし世界最大のレーベルであるSonyを加えることができたのは大きな成果だろう。SonyはSpotify、Pandoraなどライバルのサービスとはすでに契約しているが、SoundCloudとはまだだった。

SoundCloudは今日のブログ記事で「1億1000万曲を持つSony Music Entertainmentがレパートリーに加わったことで、SoundCloudはさらに大きく成長し、多様化した」と説明している。 【略】

今回の契約に先立ち、SoundCloudはプラットフォームを利用するアーティストのためのツールの開発に大いに力を注いでいた。SoundCloud Pulseアプリは、アーティストが楽曲などを簡単に公開し、ファンと交流すると同時にSoundCloud上での自分たちの活動を詳しくモニターできるアプリだ。

Sonyの追加でSoundCloudは3大メジャーレーベルと1800万のアーティストを擁するサービスとして音楽ストリーミングのメインストリームでライバルと競争する準備が整った。

SoundCloudは今年中にサブスクリプションモデルをスタートさせると述べているが、ビジネスモデルの展開にも弾みがついたはずだ。

Music Business WorldwideThe Vergeなどのメディアは正式発表に先立ち、火曜日にSonyとの契約を報じていた。 それらの記事によると、SonyはSoundCloudの株式を入手し、次回の資金調達に参加する権利を与えられたという。当面SoundCloudはコメントを避けている。

[原文へ]

(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

ソフトバンク、Drivemodeやリノベるなど国内外8社と新事業の実証実験

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ソフトバンクが2015年7月からスタートした「SoftBank Innovation Program」。4GやWi-Fiといった通信インフラ、法人43万社・端末契約数4441万台を持つソフトバンクのリソースを使って、スタートアップをはじめとした企業と革新的な事業を生み出すというプログラムだが、その一次選考の結果が3月18日に発表された。

国内外173件の応募から採択されたのは8社。今後8社はソフトバンクと協力し、3テーマ(当初スマートホーム、コネクテッド・ビークル、デジタルマーケティング、ヘルスケアの4テーマで募集していたが、ヘルスケア以外の3テーマが採択された)・5案件でテストマーケティングを実施していく。

スマートホームの領域では、中古マンション売買やリノベーション事業を手がけるリノベる、シンガポールに拠点を置くIT家具ベンチャーKAMARQ HOLDINGS、スマートロックや錠前ソリューションを提供するアッサアブロイジャパンの3社が「スマートホーム×リノベーション」のテストマーケティングを行うほか、IoT向けのリアルタイムデータ解析プラットフォームを提供するMoBagelによるOA機器・家電の故障予測のテストが予定されている。

コネクテッド・ビークルの領域では、都市交通の移動データのリアルタイム解析エンジンを開発する米Urban Engines、コネクテッド・カー向けアプリを開発する米Drivemodeがテストマーケティングを実施。デジタルマーケティングの領域ではマレーシアのBuzzElementマイクロストラテジー・ジャパンによる商業施設におけるO2O・決済のテストマーケティングが予定されている。

3ミニッツが動画中心のECサイトを4月にローンチ、インスタグラマーと連携した商品も

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InstagramやYouTube向けの動画プロダクションや動画メディア「MINE」の運営を行う3ミニッツが今度はファッションECに参入する。同社は4月28日にファッション動画コマースアプリ「GINI」を4月28日より提供する。

GINIの特徴は「動画」。これまでの3ミニッツのノウハウをもとにしてファッションアイテムを動画で紹介。そこからコマースへと誘導する。同社によると動画で商品購入できるスキームについての特許も出願中だという。年内約100ブランドが参加予定。また、同社がネットワークを持つインスタグラマーなどとコラボレーションしたオリジナル商品の企画も進める予定で、「他のECサイトでは手に入らないアイテムが並ぶのがポイント」(3ミニッツ代表取締役社長CEOの宮地洋州氏)なのだそう。

動画も自社で制作する。「スタイリング動画を手軽に制作できるフォーマットを用意しているので負担はそこまでない。既に動画メディア『MINE』でもノウハウが貯まってきている」(宮地氏)

ところで3ミニッツは設立(2014年9月)から間もなく動画プロダクションを行っているのだけれど、そのトレンドはすでに変化があるという。当初YouTubeへのニーズが高かったが、この1年でInstagramへのクライアントニーズが急増しているという。「Instagramの盛り上がりに合わせて、Instagram発のインフルエンサーがどんどん登場している」(宮地氏)。先日記事で紹介したGENKINGのような存在が増えているのだそう。3ミニッツはインスタグラマー事業と動画制作事業、動画メディア事業で月額受注売上高(2016年1月)1億円を超えたという。

女性特化フリマアプリ「Fril」のFablic、バイク特化新フリマアプリ「RIDE」をリリース

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女性向けファッションからスタートし、2015年7月からは男性向けにもサービスを展開するフリマアプリ「Fril」を提供するFablicが次の領域に選んだのは「バイク」だった。同社は3月16日にバイク専門フリマアプリ「RIDE(ライド)」をリリースした。App StoreGoogle Playより無料でダウンロードできる。

RIDEは位置情報をもとに、近くで出品しているバイクを検索。実物を見た上で購入ができるという。出品もバイクのタイプやメーカー、車種などの質問に答えて画像を添付するだけの簡単な設計だという。

現在はプレオープン期間として、手数料無料でサービスを提供している。エスクローサービスは用意せず、金銭は個人間で直接やりとりするかたちだ。ただしバイクだとやっかいなのが、売買にまつわる公的な手続き。RIDEでは、アプリ上で成約完了時から必要な書類や準備などを説明。配車手続きや名義変更などの支援を行う。

ではなぜFablicがこのタイミングで「バイク特化のフリマ」を始めたのか? RIDE事業部の事業責任者の山本圭樹氏は次のように説明してくれた。

「(女性特化でスタートしたFrilを先行しているからと言って)あまり次は男性か、女性かと意識してサービスを提供した訳ではない。ただし、FrilはもともとSNS上でファッションアイテムを売買している人達に目を付けて提供したサービス。同じように、フリマアプリが激戦の時代でも、いまだにSNS上で売買されている商品の1つがバイクだった」—前述の手続きの面倒さもあって、既存のCtoCコマースでは取り扱いづらかった領域でもあるという。

また同社にはFrilの近況も聞いている。アプリは現在500万ダウンロードを突破。2016年はプロモーションもさらに強化し、年内1000万ダウンロードを目指すとしている。また売上については非公開ながら「右肩上がり」(同社)で、すでに単月黒字化しているとのこと。

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クラシファイドサービス「メルカリ アッテ」、招待制を廃止して本格稼働

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先月突然App Storeに現れて僕らを驚かせたCraigslistライクなクラシファイドサービス(売ります・買います掲示板のような三行広告が並ぶサービスだ)「メルカリ アッテ」がいよいよ本格的にサービスを展開する。メルカリは3月17日にメルカリ アッテのサービスの招待制を廃止。誰もが利用できるように仕様を変更した。

メルカリ アッテは無料で利用できるクラシファイドサービス。アプリ(現在iOS版のみ。Android版も今後提供予定)をダウンロードし、メールアドレスとユーザー名を設定すれば、すぐにサービスを利用できる。インターフェースはメルカリに似ており、写真と商品、価格の一覧がフィードとして流れ、気に入ったアイテムに「いいね(ハートマーク)」を付けたり、コメントをつけたり、購入ならぬ「応募」をすることができる。投稿のカテゴリは「あげます・売ります」「ください・買います」「貸して・教えて・助けて」「貸します・教えます・助けます」「仲間募集・イベント」「求人」「賃貸・ルームシェア」の7つ。

特徴的なのは出品するユーザーの所在エリアがざっくりと表示されること。アッテでは手渡しでの商品の譲渡・売買を推奨しているためにこのような仕様になっているようだ。出品されるアイテムも「徒歩圏内」「自転車圏内」「バス圏内」という範囲で検索できるようになっている。

このサービス、App Store上ではメルカリのアカウントで配信されているが、2015年9月に立ち上がった同社の100%子会社であるソウゾウが開発・運営を行っている。ソウゾウ代表取締役である松本龍祐氏は、コミュニティファクトリーの創業者で同社をヤフーに売却した後に同社のモバイル部門に注力。その後、新規事業を立ち上げるためメルカリに参画した人物だ。

ソウゾウ代表取締役社長の松本龍祐氏

ソウゾウ代表取締役社長の松本龍祐氏

「メルカリの“次”を何にするかという難題をもらった」——メルカリ参画当時を振り返って松本氏はこう語る。

会社としてはCtoCやシェアリングエコノミーという文化にはこだわりたい。そう考える中で「TaskRabbit」を代表とするようなサービスCtoCを考えたが、メルカリも特化型ではなく「全方位」のサービスだ。そこで幅広いカテゴリをカバーする「アッテ」の原型が生まれた。

ドリコムが提供する「Clip」の記事でも書いたけれども、この領域はまだWeb1.0…どころか下手すると0.5の世界。そこで米国でも打倒Craigslistを掲げるサービスは続々登場しているそうだ。松本氏率いるソウゾウでは、「チャット形式のUI」でやりとりできるサービスとしてクラシファイドサービスの再構築を目指すとしている。

アッテの提供に先立ち、メルカリとソウゾウでは共通IDを開発。すでにメルカリのIDを持っていれば、アドレス登録だけでログインできるようにした。今後メルカリからの送客などでユーザー数の拡大を狙う。

メルカリからの送客と聞くと、ユーザーを食い合うのではないかという疑問も生まれる。松本氏は「社内でそんな議論はあった」としつつ、「だが市場は大きいので、取れるならば取っていくほうが早いと考えた。後は仕様的に近所(遠くても「バス圏内」だ)の出品しか見えないようにしている。競合するとしたら、『港区内の住人同士の売ります・買います』というものくらい」と考えているそうだ。

また、基本は「会って、手渡し」という世界観を目指しており、決済システムを用意する予定は直近ではないようだ。そうなると、売ります・買いますという相手の信頼性が気になるところだが、「メルカリでの評価情報を始めとして、信頼性をグループでどう作っていくかは課題。カスタマーサポートもメルカリチームと連携してやっていく.CtoCは信頼できるかが大事だと考えている」(松本氏)としている。

マネタイズについては当面は検討せず、まずはサービスの拡大に努める。「数百万ダウンロードを実現しないとプラットフォームにはならないので、まずは拡大に注力する。将来的には掲載順位課金などもできると思うが、アクティブなサービスになってから。メルカリも数百万ユーザーになってからマネタイズを始めた。遅くはない」(松本氏)

ウェブ接客のKARTEが新機能、来訪者とのチャットやLINEを一元管理可能に

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プレイドが提供するウェブ接客プラットフォーム「KARTE(カルテ)」。サービス開始から1年が過ぎ、その利用実態に関するインフォグラフィックスも発表したばかりだが、大型の機能追加を実施した。同社は3月17日、KARTE上で新機能「KARTE TALK」の提供を開始した。エンタープライズプラン(上位プランだ)導入企業からオプション(月額固定費+メッセージ回数による従量課金)として段階的に提供するとしている。

KARTEは「ウェブ接客プラットフォーム」とうたうように、導入サイトの来訪者をリアルタイムに解析。その属性に合わせてクーポンを発行したり、ポップアップメッセージを表示したりするという“接客”を実現するプラットフォームだ。

前述のインフォグラフィックスによると、2016年2月末の時点の導入企業数は845社。これまでに解析した累計ユニークユーザー数は4億UU、月間の接客回数は2000万回、計測した解析売り上げ金額は150億円という規模に成長したという。ファッションやバッグのECを中心に広い分野で導入が進む。「接客効果はCVR(コンバージョン率)で30〜40%向上し、ROI(費用対効果)で2000〜3000%くらいになるケースもある」(プレイド代表取締役社⻑の倉橋健太氏)

KARTEのインフォグラフィックス(一部抜粋)

KARTEのインフォグラフィックス(一部抜粋)

プレイド代表取締役社⻑の倉橋健太氏

プレイド代表取締役社⻑の倉橋健太氏

そんなKARTEに追加されたKARTE TALKは、リアルタイムなコミュニケーション機能だ。前述のとおり、これまでポップアップメッセージのみだったコミュニケーション機能を拡充。LINE(2015年5月よりCLINE by KARTEとして提供)、ウェブサイト上のチャット、SMS、メール、Facebook通知、ブラウザ通知、スマホ通知をKARTE上でコントロールできるようになるというもの。

それぞれの機能はプラグイン形式で提供され、KARTE導入企業は自社のニーズに合わせて機能を組み合わせて利用できる。管理画面のタイムラインは導入プラグインを一元管理できるため、ツールを問わずにリアルタイムな接客が可能になる。

「KARTE TALKはKARTEのリリース前から想定していた機能群の1つ。コミュニケーションは分散しつつある。そんなコミュニケーションを単品で考えるのではなく、一元的に管理すべきだと考えた」と倉橋氏は語る。また「導入企業のニーズも拾えてきたので、2016年には機能面のリリースを積極的に進めたい」としている。

任せっきりじゃない個人資産運用を、「Folio」がシード資金で3億円を調達

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今年1月から招待制サービスを開始した「ウェルスナビ」や、2月に本サービスを開始した「THEO」などロボアドバイザーの市場が日本でも立ち上がり始めているが、こうしたロボアドバイザーとちょっと異なるアングルから個人の資産運用の課題を解決しようというスタートアップが「Folio」(フォリオ)だ。2015年12月創業のFolioは現在、年内のサービス開始へ向けて準備中で、本日DCMベンチャーズとDraper Nexusに対して総額3億円の第三者割当増資を実施したことを発表した。Folioは現在8人のスタッフがいてファイナンス系が3人、デザイナーが1人、エンジニアが4人。

社名が暗示するように、Folioはポートフォリオを選ぶことなどにフォーカスしたサービスを開発中だ。ロボアドバイザーは、ユーザーごとに異なるリスク許容度や収入、人生設計などを考慮に入れた国際分散投資を自動化してくれるサービスで、使い始めにポートフォリオを決めれば、後は10年とか20年という単位で長期運用をすることになる。一方、Folio創業者でCEOの甲斐真一郎氏は、そうした長期運用も1つの選択肢だとしながらも、もう少し個々人が資産運用に踏み込めるようなプラットフォームサービスを構築中で、自分たちはロボアドバイザーとは少し業種が異なると話す。

Folioではポートフォリオを「探す」ことも

実際、開発中のサービスをぼくは見せてもらったのだけど、Folioは「さがす」「まかせる」の2つに大きく分類されている。「任せる」というのがロボアドバイザーの部分。Folio上にはほかにもグリーンテックやドローン関連銘柄を集めたテーマ別ポートフォリオがあり、これをユーザーの専門性や趣味嗜好などからオススメしてくれるそうだ。ドローンの例なら凸版印刷、住友精密工業といったように関連事業に取り組む銘柄数十種が含まれていて、自分で銘柄の取捨選択もできるし、簡単に分散投資ができるそうだ。

中長期のトレンドに紐づくポートフォリオだけでなく、「アノマリー系」と呼ぶイベントに対応するようなポートフォリオもある。

Folioの甲斐CEOはゴールドマン・サックスやバークレイズで金利トレーディング、アルゴリズムトレーディングなどを経験してきた経緯がある。その甲斐CEOの問題意識は、証券会社と個人投資家の金融リテラシーのギャップを埋めること。「ロボアドバイザーは1つのツールでしかありません。投資を任せる以外にも選択肢はあるはず」という考えだそうだ。

「任せることだけでは国民の金融リテラシーは上がらないと思っています。われわれが問題だと思っているのは、投資プラットフォームと国民の間に大きなギャップがあることです」

「今のオンライン証券だと3500以上の銘柄、5000本以上の信託があって、自由に選んでくださいという風になっていますよね。でも、なかなか選べません。投資教育もしっかりしていません。投資プラットフォームと国民の金融リテラシー、この2つのギャップを埋めていきたいと思っています」。

情報過多の時代にPERやPBR、テクニカル分析など、あまり詳細な情報をプラットフォーム上で見えるようにすると、ユーザーが戸惑うとの考えから、定量的な判断はあえて消すなどの工夫もしているという。

スマホクーポンでオムニチャネル戦略を支援するグランドデザイン、トランスコスモスから5.4億円を調達

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グランドデザインは3月14日、トランスコスモスおよび創業者を割当先とした第三者割当を実施。総額約5億4000万円の資金調達を実施した。同社は2015年6月にもアイスタイル、アドウェイズ、トランスコスモス、ベクトル、リアルワールド、みずほキャピタルから約2億3000万円の資金を調達している。

同社が手がけるのはスマートフォンオムニチャネルプラットフォーム「Gotcha!mall(ガッチャモール)」。クーポンを軸にした来店支援向けのスマートフォンアプリだ。カプセルトイをスマートフォン上に再現し、アプリ上でカプセルトイのハンドルを回すとクーポンや景品などを発行。スポンサー企業の店舗へ誘導できる。位置情報と連動して近隣店舗のクーポン発行なども可能だ。企業への課金は「(CPP=Cost Per Purchase)」つまり来店ではなく、実際の購買による課金をおこなう。

クーポンと聞くと正直「ありがち」な集客手法にも思えるが、リアルな折り込み広告(市場規模で6000億円あるそうだ)をスマートフォンの世界に置き換えようとしたこれまでのソリューションでは、どうしてもバラマキ型の施策になりがちだったのだという。

スマートフォンでクーポンと言えば、凸版印刷の電子チラシ「Shufoo!」、LINEの「LINE@」や公式アカウントから配信するクーポンなどがあるが、これらは地域やファンなど、ある程度の属性を限定して配信できるものの、詳細な属性をもとにして特定セグメントにだけクーポンを配信するということは難しかった。ざっくり言えばテレビなどマス広告の延長線上の機能が中心だ。大してGotcha!mallではユーザーの属性やこれまでの利用履歴(POSデータとも連携可能)、位置情報などをもとに、セグメント化されたユーザーにクーポンを配信するとグランドデザイン代表取締役社長の小川和也氏は説明する。

Gotcha!mallは2014年10月にベータ版をローンチ。これまで100万人以上のユーザーが利用してきた。3月からはスマホブラウザ版を提供。4月にはアプリ版(iOS/Android対応)の全面リニューアルを実施する。リニューアルにともないローソン、カメラのキタムラ、ココカラファインなどがクーポンを提供する。「Gotcha!mallはレジ通過数の多い業態に強い。コンビニ、GMS、ドラッグストアはまず網羅していく」(小川氏)

また今回の資金調達をもとに、トランスコスモスとも組んでアジア全域で事業拡大を拡大するほか、最適なクーポンの配信に向けた人工知能(AI)の開発を進める。「各国へのインバウンドのニーズなども取り込み、アジアの国々で相互に利用できるようにしていきたい。アジア圏最大のスマホオムニチャネルプラットフォームを目指す」(小川氏)

Showcase Gigが三井住友カードと資本業務提携、渋谷にはカフェも開設

「THE LOCAL」

モバイル決済やオムニチャネル領域のサービス提供するShowcase Gigは3月8日、三井住友カードとの資本業務提携を発表した。両社は今後、モバイル決済ソリューションやO2Oなどの領域で協業を進める。またこれとあわせて本日3月10日、Showcase Gigのソリューションを導入したカフェを東京・渋谷にオープンした。資本提携による調達額・出資比率は非公開。ただし億単位の資金を調達したとみられる。

2社は3月より実店舗向けセルフオーダーシステム 「O:der by Self(オーダー バイ セルフ)」を共同で提供するほか、Showcase Gigがこれまで提供して来たモバイルウォレットサービス「O:der(オーダー)」に関する包括的な協業を進めているという。

O:derは、導入店舗のユーザーがアプリ上で事前に商品を注文・決済し、受取時間に店舗でQRコードを見せるだけで商品を受け取ることができるという、事前注文・事前決済を実現するセルフオーダーシステムだ。スタンプカード機能なども提供している。

O:der by SelfではO:derアプリからの事前注文・決済に加えて、O:der導入店舗に専用のセルフ注文・決済端末を設置する。これによって、O:derのアプリをインストールしていない来店者であっても、注文とクレジットカード決済を自身で完結できるという。

このO:der by Self導入の第1弾として、Good CoffeeとShowcase Gigは本日、キャッシュレス/デジタル コーヒースタンド「THE LOCAL」を東京・青山にオープンしている。

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アプリ解析・マーケティングツール「Repro」運営元が3億円の資金調達で米国進出へ

Repro代表取締役の平田祐介氏

Repro代表取締役の平田祐介氏

モバイルアプリ向けのアナリティクス・マーケティングツール「Repro(リプロ)」を提供しているReproは3月7日、ジャフコ、VOYAGE VENTURESおよび個人投資家などを引受先とした総額3億円の第三者割当増資を実施したことをあきらかにした。アプリ開発に向けた人材獲得を進めるほか、米国進出に向けてテストマーケティングなどを進める。

TechCrunchでも何度かご紹介しているRepro。2015年4月の正式版リリース時点では、スマートフォンアプリ上でタップされた位置や離脱した画面などの行動を動画で取得する「モバイルアプリ解析サービス」の色が強かったサービスだったが、最近ではアプリの解析にとどまらず、プッシュ通知やアプリ内メッセージの送信といったマーケティング向けの機能を充実させている。

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「アプリの数字を読み取り、解析までできる人は少ない。社内向けのレポートを作成するためにアナリティクスツールを使っても、数字からアプリの改善までを実現するのは難しい。であればそれを支援できるようにと思った」(Repro代表取締役の平田祐介氏)

現在のReproであれば、アナリティクスとマーケティング向けの機能を組み合わせることで——例えばファネル分析でユーザーの離脱率が高い画面を特定し、そこで離脱したユーザーを抽出してプッシュ通知を送り、アプリの再利用を促すというようなことを実現できる。

サービスは現在、18カ国・1400アプリで利用されている。特にEC関連のアプリでの導入が進んでいるという。同社は2015年9月に招待制イベント「B Dash Camp」内のピッチコンテストで優勝したが、そういった露出を契機にして引き合いが大幅に増えたという。

導入の9割以上は国内のアプリだが、「海外でもMixpanelAppboyといった競合製品から乗り換えてくれるユーザーも出てきた。アナリティクスデータを活用しながらマーケティングができるツールとして、いよいよ世界で戦える準備ができたと思っている」(平田氏)。Reproの開発と並行してアプリ向けのコンサルティング事業も展開。業績も順調に積み上げており、今夏にも単月黒字化できる状態にあるという。また今後はReproをMA(マーケティングオートメーション)向けのツールと定義して機能追加を進めるとしている。

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