東南アジアの多通貨ネオバンクYouTripが約34億円調達、法人カードも発行

多通貨取引のコスト削減と効率化に特化した、シンガポールを拠点とするオンライン銀行のYouTrip(ユートリップ)は現地時間11月30日、シリーズAで3000万ドル(約34億円)を調達したと発表した。

同社創業者でCEOのCaecilia Chu(カエシリア・チュー)氏によると、今回のラウンドは、アジアの著名なファミリーオフィスがリードしたもので、このファミリーオフィスは匿名を希望しているが、前ラウンドにも参加している。

今回のシリーズAにより、YouTripの資金調達総額は6000万ドル(約67億円)を超えた。同社によると、これまでに全世界で8億ドル(約902億円)超のカード利用を処理し、取引数は約2000万件、アプリのダウンロードは150万回を超えている。

チュー氏はTechCrunchに対し、YouTripが資金調達に踏み切ったのは「変曲点」に達しているからだと述べた。

「東南アジアがパンデミックから脱却し、シンガポールがワクチン接種率で先頭に立っていることから、消費者の間では、旅行に対する大きな需要の高まりと、消費者心理の回復が見られました。eコマースへの支出は確実に増加しており、旅行に関しては、シンガポールのワクチン接種済みトラベルレーンが始まって以来、1日の取引額が少なくとも2〜3倍に増加しています」。

YouTripはこうした追い風を楽観視しているが、旅行の回復については現実的なアプローチをとっている。中期的には、個人消費と、YouBizと呼ばれる複数通貨対応の法人カードを含む新しいB2Bビジネスに最も期待しているとチューは述べた。

YouTrip共同創業者でCEOのカエシリア・チュー氏

2022年、YouTripは地理的拡大にも注力する計画だ。現在、シンガポールとタイで事業を展開している同社は、フィリピンとマレーシアに進出するためにVisa(ビザ)と提携した。さらにチュー氏は、インドネシアとベトナムでのサービス開始に向けて、パートナーと話し合いを進めていると付け加えた。

TechCrunchが2019年にYouTripを取り上げたとき、コアな顧客層の1つは海外旅行者だった。そして新型コロナに見舞われ、同社は非常に迅速に適応しなければならなかった。

YouTrip Perksのような新機能を追加し、LazadaやShopeeといった業者と協力して最大15%のキャッシュバックを提供するパートナーシップチームを立ち上げた。「パンデミックの間、人々はオンラインで多くのものを購入していただけでなく、健康への意識も高まっていたため、スポーツ用品や健康補助食品の購入が増えました」とチュー氏は話す。「私たちは、ユーザーにとって最も関連性の高い業者をターゲットにして提携を促進してきました」。

同社によると、現在、取引額はパンデミック前のレベルに戻っている。YouTripは、消費者の支出や旅行の増加にともない、さらなる牽引力を期待しており、2022年初めに消費者向けアプリのブランドイメージを一新し、新たな決済機能を導入する予定だ。

また、法人向けカードであるYouBizも2022年初めに導入する予定だ。チュー氏は、同社がB2B分野に参入した理由の1つとして、フィンテックサービスを導入する中小企業が増えていることを挙げる。

「私たちは、パンデミックに強い企業になることがどれほど重要かを知っています」と同氏は付け加えた。「国境がいつ再開されるかと毎日ニュースを読むのはやめようと心に誓いました。私たちは、新しい旅行対策に関わらず乗り越え、成功させ続けます」。

同社はまた、中小企業におけるパラダイムシフトを目の当たりにした。

「彼らはフィンテック商品や新しい銀行商品に対して、よりオープンマインドになっています」とチュー氏は指摘する。「当社に関連して言えば、在宅勤務やハイブリッドモデルの普及により、企業の分散化が進んでいます。給与支払い、ベンダーへの支払い、さらには売上の受け取りや消費者への請求までもが世界中に広がっており、外貨のニーズは確実に高まっています。ですので、この市場に参入するには最適な時期だと感じています」。

YouBizの提供が始まれば、YouTripは、AspireSpenmoVolopayなど、法人カードを提供したり、中小企業分野に焦点を当てたりしているVCが支援する東南アジアのフィンテック企業数社の仲間入りをすることになる。しかしチュー氏は、中小企業向けのサービスは消費者向けのサービスに比べて巨大であるだけでなく「サービスが十分に行き届いていないため、大きなチャンスがある」と話す。

特にYouTripは、従業員数1人から1000人までの企業にフォーカスする計画だ。このセグメントを選んだ理由は、YouBizが従来の銀行口座の代わりになるものではないからだ。YouBizは、中小企業の外貨取引にかかる費用を削減することを主な付加価値としている。また、出張の再開を見据えて、経費管理ツールの導入も予定している。

「中小企業の部門では、1人勝ちにはならないと感じています。しかし、競争の話に戻ると、私たちはこの分野に注意深く参入しています。当社には、際立った2つの優位点があります。1つは、テックインフラとライセンスインフラをエンド・ツー・エンドで所有している唯一のネオバンクであることです」。

YouTripは「消費者向け決済サービスではマージンが非常に小さいため、最高のコストと価値を提供するためには、製品のロードマップを含めて、バリューチェーンを完全にコントロールできるレベルまで最適化する必要がある」として、自社の技術スタックに多くの投資を行った。

YouTripの2つ目の強みは、すでに強いブランド認知があることだ。「ビジネスオーナーと話をしていると、多くの人が自分の買い物のためにすでにYouTripを利用しています」とチュー氏はいう。この実績は、YouTripが中小企業に売り込む際に役立っており、チュー氏によれば、B2Bサービス開始に向けてすでに1000件の申し込みがあるという。

画像クレジット:YouTrip

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(文:Catherine Shu、翻訳:Nariko Mizoguchi

銀行口座を持たないインドネシアの労働者向けサービスGajiGesaが約7.4億円調達、給料日前に給料を引き出せるEWAに注力

GajiGesaの給料日アクセス機能のユーザーフロー

インドネシアの労働者向けサービスに特化したフィンテック企業であるGajiGesa(ガジゲサ)は、プレシリーズAで660万ドル(約7億4500万円)の資金を調達したことを発表した。このラウンドは、MassMutual Ventures(マスミューチュアル・ベンチャーズ)がリードし、January Capital(ジャニュアリー・キャピタル)、欧州のEWA(給与サイクルの終了前に未払い賃金の一部を利用することができる金融サービス)会社のWagestream(ウェイジストリーム)(EWAはGajiGesaの主要機能)、Bunda Group(ブンダ・グループ)、Smile Group(スマイル・グループ)、Oliver Jung(オリバー・ジョン)氏、Patrick Walujo(パトリック・ワルジョ)氏を含むNorthstar Group(ノーススター・グループ)のパートナー、Nipun Mehra(ニップン・メーラ)氏(UlaのCEO)、Noah Pepper(ノア・ペッパー)氏(StripeのAPAC責任者)が参加した。戻ってきた投資家には、defy.vc(ディファイ.vc)、Quest Ventures(クエスト・ベンチャーズ)、GK Plug and Play(GK プラグ&プレイ)、Next Billion Ventures(ネクスト・ビリオン・ベンチャーズ)などがある。

GajiGesaの詳細については、250万ドル(約2億8200万円)のシードラウンドを実施した2月のTechCrunchによる同社のプロフィールを確認して欲しい。

アグラワル氏とマリノフスカ氏は、プレスリリースの中で、GajiGesaのチームは過去6カ月間で2倍の50人以上になったと述べている。このスタートアップは、今回の資金調達を、製品開発、インドネシアでの事業拡大、東南アジアの新市場への参入に充てる予定だ。

同社は、銀行口座を持たない労働者を対象としており、毎月の給料を待たずにすぐに給料を引き出すことができる「アーンド・ウェッジ・アクセス(EWA)」に注力している。

GajiGesaは現在、工場、プランテーション、製造業、小売業、レストラン、病院、テック企業など、さまざまな分野の120社以上の企業と取引している。同社は、顧客企業を対象とした調査によると、従業員の80%以上がEWA機能を利用したことで非正規の貸金業者の利用をやめるようになり、40%が請求書の支払いやデータリチャージなど、同社プラットフォーム上の他の金融サービスを利用しているとしている。

同社は「GajiTim(ガジティム)」と呼ばれる雇用者向けアプリを提供しており、これは東南アジアで「最初で最大の統合型従業員管理ソリューション」であると主張している。つまり、雇用主は、パートタイムやフルタイムの従業員、ギグワーカーなど、幅広い労働力の管理業務を行うことができるということだ。同社によると、GajiTimには現在20万人以上のユーザーがいるという。

今回の投資について、MassMutual VenturesのマネージングディレクターであるAnvesh Ramineni(アンヴェシュ・ラミネニ)氏は「(GajiGesaの)統合プラットフォームは、顧客中心の製品設計と世界クラスの技術インフラを組み合わせたもので、慢性的にサービスが行き届いていない市場に力を与え、東南アジアの何百万人もの人々の経済的回復力を高めるために、独自の地位を確立しています」と述べている。

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(文:Catherine Shu、翻訳:Akihito Mizukoshi)

決済テックBoltが同業Tipserを買収、「リモートチェックアウト」を開始

デジタルコンテンツを発見した時点で何かを購入するという機能は存在するが、決済テクノロジー企業のBolt(ボルト)は、それを「ワンクリック」で処理する機会を得た。同社は米国時間11月29日、初となる買収でスウェーデン拠点のTipser(ティスパー)を買収したことを発表した。Tipserはあらゆるデジタル端末でのダイレクト決済を可能にするテクノロジー企業だ。

サンフランシスコを拠点とするBoltは、10月に3億300万ドル(約345億円)のシリーズD資金を調達したばかりで、これまでの累計調達額は6億ドル(約682億円)に達している。Boltの創業者でCEOのRyan Breslow(ライアン・ブレスロウ)氏は今回の買収について「しばらく前から計画していた」とTechCrunchに語った。

Tipserの技術は、オンライン出版物、モバイルマーケットプレイス、価格比較サイト、ソーシャルメディアプラットフォームや検索エンジンなどのサイトから、消費者がネイティブに商品を購入することを可能にする。同社は、共同創業者でCEOのMarcus Jacobsson(マーカス・ヤコブソン)氏が率いており、2012年にAxel Wolrath(アクセル・ウォルラス)氏、Jonas Sjöstedt(ヨナス・ショステッド)氏とともに会社を立ち上げた。

実は、BoltがTipserと話を始めた当初、同社は売れる状況ではなく、次の投資ラウンドに向けて動いていた(約16億円を調達)が、結果的に2社はより深い話をすることになり、文化的融合がよりうまくいくことがわかった、とブレスロウ氏は話した。

「我々は、TipserがBoltにとってどれほど大きな意味を持つかを知りました。Tipserは10年間にわたって組み込み型コマースの技術を洗練させており、唯一の強力なプレイヤーでした。我々が苦手とする分野で、彼らは我々よりも強かったのです。彼らをチームに迎え入れることは非常に戦略的です」と付け加えた。

正確な取引額は公表されていないが、ブレスロウ氏はTechCrunchに対し、全株式でのこの買収は「2億ドル(約228億円)弱」であったことを明らかにした。Tipserの全チームはそのまま残り、Boltは100人の増員となる。また、最近発表されたヨーロッパへの進出にともない、TipserがあるスウェーデンはBoltのヨーロッパ本社としても機能することになる。

Boltは、今回の買収に加えて、買い物客が発見したその場で商品を購入できるツール、リモートチェックアウトを立ち上げる。ピュー研究所によると、買い物客の84%がレビューを見るソーシャルメディアで何かを見た後、別のウェブサイトに行って購入している。

この新しいツールは、Boltが1年以上前から社内で開発していたもので、同じく商品を発見してアプリから直接決済できるツールであるInstagram Checkoutにヒントを得たとブレスローは話す。

「トラッキングやクッキーが廃止されたことで、小売業者がコンバージョンを追跡できるよう、ネイティブ決済の必要性が出てくるかもしれません。消費者にとっては、何度もクリックする必要がない方がいいですから」と付け加えた。

Boltのリモート決済の特徴は、ワンクリックでの直接決済、Boltのショッパーネットワークとのエンゲージメント、そして業者が複数のチャネルで注文を受けながらコンバージョン率を高め、訪問者との直接的な関係を築くことができることだ。また、匿名の訪問者をログインしたアカウントホルダーに変え、オンサイトでトラフィックを収益化することができる。

メディア出版社であるBDG(旧Bustle Digital Group)の社長兼CROであるJason Wagenheim(ジェイソン・ヴァーゲンハイム)氏は、出版社やクリエイターが自分のサイトに来たトラフィックを収益化できるという機能に特に興味を示した。BDGは、Bustle、EliteDaily、Fatherlyなどのブランドを展開している。

1月に米国の出版社としては初めてTipserと契約し、4月にはBDGの13サイトのうち2サイトで運用を開始したヴァーゲンハイム氏は、今回の合併を傍観者のように見ていたとインタビューで語った。

「今回の買収で最も気に入っているのは、何百もの業者を当社のプラットフォームに乗せることを加速できることです。これは、コンテンツとコマースの融合です」。

ソーシャルメディア、そしてBoltやTipserのような企業が登場する以前は、雑誌のページから直接買い物をするにはQRコードを利用していたが、人々が思っていたようには普及しなかった、とヴァーゲンハイム氏はいう。

他の出版社もQRコードを取り込もうとしたが、Goopはそれができた数少ない出版社の1つだったという。今では、これらの新しい技術により、出版社やクリエイターは、アッパーファネルとロワーファネルの間のギャップを埋めることができ、ワンクリックで買い物ができるコマースにより、認知度を高めることができる。

同氏はTipserとのBDGのプロジェクトはまだベータ版と考えているが、来年にはBDGのすべてのサイトにこの技術を導入する計画だ。BDGでは、すでに2500万回以上のセッションが行われており、1回のセッションで平均10個の商品を見ていると話す。これは、プロセスが機能していることを示している、と同氏は指摘する。人々はプロダクトに時間を費やし、そしてカートにプロダクトを入れる。

「エディターが記事を書くための業者が数百社に増え、ワンクリックでの取引が可能になりました。これは画期的なことです」と付け加えた。

画像クレジット:Tipser

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(文:Christine Hall、翻訳:Nariko Mizoguchi

中南米の女性にデジタル口座を提供するチャレンジャーバンクJefaが2.2億円調達

フィテックスタートアップのJefa(ヘファ)は、中南米とカリブ諸国に住む女性向けに特別にデザインされた商品を構築するため、200万ドル(約2億2000万円)のシード資金を調達した。同社は11万5000人の女性をウェイティングリストに呼び込むことに成功し、2020年のTechCrunchのStartup Battlefieldにも参加した

Jefaの投資家には、The Venture Collective、DST Global、Foundation Capital、Amador Holdings、The Fund、FINCA Ventures、Rarebreed VC、Siesta Ventures、Springbank Collective、Bridge Partners、Hustle Fund、Foundation Capital、Latitude、J20などが含まれる。また、Daniel Bilbao(ダニエル・ビルバオ)氏、JP Duque(J・P・デュケ)氏、Ricardo Shaefar(リカルド・シェーファー)氏、Jean-Paul Orillac(ジャン-ポール・オリラック)氏、Allan Arguello(アラン・アルゲロ)氏など、複数のビジネスエンジェル投資家もラウンドに参加した。

今回の創業ラウンドに加えて、JefaはVisa(ビザ)と契約を結んだ。複数年の戦略的パートナーシップだ。JefaはVisaのリソースや製品を活用して決済製品などを作ることができるようになる。

「Visaは女性を力づけることを信じています」と、Visa中南米・カリブ地域のフィンテック・パートナーシップ担当シニアディレクターのSonia Michaca(ソニア・ミチャカ)氏は声明で述べた。「金融とデジタルインクルージョンは経済を変革します。毎日の家計支出の大半を管理する女性は、この変革の中核を担うべき存在ですが、従来の銀行では女性はサービスを十分に受けられていません。中南米・カリブ地域の女性主導のプラットフォームであり、この地域の女性の金融ニーズに明確に応えているJefaと提携できることをうれしく思います」。

Jefaのチームは、銀行があまりにも長い間、女性を軽視してきたと考えている。そもそもチャレンジャーバンクでさえ、ほとんどが男性顧客向けに設計されている。女性がチャレンジャーバンクで口座を開設できないというわけではない。しかし、女性にとって不親切な要件もある。

Jefa創業者でCEOのEmma Smith(エマ・スミス)氏は、TechCrunch Disruptに参加した際、ラテンアメリカで現在銀行口座を持っていない人の多くが女性である理由をいくつか挙げた。例えば、最低残高要件は、統計的に男性よりも収入が少ない女性にとってハードルとなっている。

Jefaが事業を開始すると、モバイルアプリから無料で銀行口座を開設できるようになる。銀行の支店に行く必要はない。数日後には、Visaデビットカードが送られてくる。サービスには貯金機能や報酬プログラムも組み込まれる。

Jefaはまずメキシコで製品を展開し、次にコロンビアと中米に広げる予定だ。一元的な銀行サービスからの脱却を試みるチャレンジャーバンクはJefaが初めてではない。例えば、子ども向け銀行(GreenlightStep)、気候変動に焦点を当てた顧客向けの銀行(Aspiration)など、専門性を持つ銀行を作ろうとしているスタートアップがいくつかある。そして今、Jefaが女性に特化した銀行を作っている。

画像クレジット:Jefa

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(文:Romain Dillet、翻訳:Nariko Mizoguchi

Antがグループ収益の約4割占めていた小口融資事業にメス、中国の「分割」命令から約1年

2020年12月、中国政府はAnt Group(アント・グループ)に対し、史上最大の新規株式公開となる可能性があったIPOを中止した後、その事業を「是正」するためのガイドラインを示した。その中で規制当局は、Antにクレジット事業の見直しなどを求め、金融機関を監督するのと同じ一連の規制を受けるようにした。言い換えれば、Antはもはや「テック」企業と称して自由奔放に活動できないということだ。

関連記事:中国政府がジャック・マー氏のフィンテック帝国Ant Groupの「修正」計画を発表

それから約1年後、Alibaba(アリババ)系列のフィンテック企業である同社は、人気の高い消費者向けクレジット商品の再編をほぼ終えたことを示した。

2020年に提出された同社の目論見書によると、クレジットローン商品は2020年6月までの6カ月間でAntの収益の40%近くを占めていた。2つの主要商品は、仮想クレジットカードのように機能する、消費者の日常的な支出のために2014年に発売された「Huabei(花唄、ホワベイ)」と、その1年後、より大規模な消費トランザクションのためのクレジット商品として導入された「Jiebei(借唄、ジエベイ)」だ。

旧モデルでは、Antがオリジネートしたローンを、第三者である銀行などの金融機関が引き受けるという形をとっていた。同社の目論見書によると、2020年6月時点で、プラットフォームを通じて組成されたAntのクレジット残高の約98%は、パートナーの金融機関が引き受けるか証券化されている。

Jiebeiは2つのブランドに分割されたと、今週初めに複数のユーザーが報告している。Antの主力金融サービスアプリであるAlipay(アリペイ)では、サードパーティの銀行が提供するクレジットラインは「Xinyong Dai(信用贷=クレジットローン)」と呼ばれている。一方、規制当局の要請を受けて設立されたAntの消費者金融会社が提供するクレジットラインは、「Jiebei」ブランドのままである。

Huabeiも同様に再編を開始し、どのローンが銀行から独立して提供され、どのローンがAntの消費者金融会社から提供されているかをユーザーに示すようになった。Huabeiは、日常的な「少額」取引に焦点を当てていくと、Weibo(微博、ウェイボー)への投稿で述べている

「ブランドの差別化に伴い、クレジットローンサービスを申し込むユーザーは、ブランドの混同を避けるために、クレジットプロバイダーに関するより多くの情報を得ることができます」とも。

Huabeiはまた、中国人民銀行(中央銀行)が監督するデータベースに消費者の信用情報を提出していることにも言及している。同社は9月に消費者信用会社を設立した後、このルーチンを開始した。消費者信用会社は銀行と同様に、中央銀行に信用評価データを報告する必要がある。

画像クレジット:Ant Group

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(文:Rita Liao、翻訳:Aya Nakazato)

補助金・助成金DXのStayway、補助金・地域金融機関・VCから総額7500万円のハイブリッド型資金調達

補助金・助成金DXのStayway、補助金・地域金融機関・VCから総額7500万円のハイブリッド型資金調達

Stayway(ステイウェイ)は11月25日、地銀と信金向けの補助金・助成金対応DXツール「補助金クラウド」の支援モデルケースとして、事業再構築補助金採択に基づく地域金融機関(神奈川県)からの融資、日本政策金融公庫の新型コロナ対策資本性劣後ローンによる7000万円、ベンチャーキャピタル(VC)の出資による500万円の資金調達を実施したことを発表した。累計調達額は1億5000万円となった。調達した資金は、補助金クラウドの開発と機能強化、事業開発、エンジニア・カスタマーサクセスの人材採用にあてられる。

日本政策金融公庫の新型コロナ対策資本性劣後ローンは、コロナ禍の影響を受けている中小企業・小規模事業者の財務体質強化のために資本性資金を供給することで、資金調達を円滑化することを目的とした制度。ほかの債務より返済順位が後で、融資審査では資本とみなされるため、地方銀行・信用金庫が融資しやすいことが特徴とされている。中小企業やスタートアップにとっては、無担保・無保証かつ5年超返済不要といった中長期的視点で成長事業を構築するのに適したスキームで、コロナ禍の長期化により同ローンのニーズが拡大している。

なお、日本政策金融公庫の公表情報(日本政策金融公庫×民間金融機関連携の取り組みHP)によると、Stayway本社のある東京・南関東での資本性ローン実行件数は25件となっている。

補助金・助成金DXのStayway、補助金・地域金融機関・VCから総額7500万円のハイブリッド型資金調達

11月にクローズドβ版の提供をスタートした補助金クラウドは、法人営業のためのクラウド型補助金・助成金獲得支援サービス。地域金融機関で属人的になっている補助金等案内業務の自動化、外注により不透明になっている補助金等申請支援業務の可視化、つなぎ融資・協調融資のスピード感を向上といった補助金・助成金対応業務のDXにより、地域金融機関などの戦略的・効率的な業務プロセスの構築を可能にする。補助金・助成金DXのStayway、補助金・地域金融機関・VCから総額7500万円のハイブリッド型資金調達

補助金クラウドの正式版リリースは2022年度を予定。地域金融機関に対する支援を通じ、中小企業やスタートアップに株式以外の資金調達の手段を提供する。今回の引受先となった日本政策金融公庫との連携を深めて資本性ローンの獲得支援を拡充し、これまでアナログな手法で管理され分散していた補助金の情報や融資手法をデジタル化することで、より短時間で補助金の情報を収集し、申請・融資支援につなげたいという。補助金・助成金DXのStayway、補助金・地域金融機関・VCから総額7500万円のハイブリッド型資金調達

Slopeが「グローバルB2B決済のStripe」を目指し、初めての資金調達

Alice Deng(アリス・デン)氏とLawrence Murata(ローレンス・ムラタ)氏は、人工知能企業で働いていたときに、それぞれ自身のファミリービジネスからヒントを得て、Slope(スロープ)を創業した。同社は「今買って後で払う(BNPL)」サービスを企業が簡単に提供できるようにする。

「世界的なパンデミックの前、サプライヤーは請求書の日付から30日以内に支払うという条件を延長したりしていましたが、その程度では中小企業にとって信用を築くのは難しいのです」とムラタ氏はTechCrunchに話した。

「世界的な大流行により、企業間決済のオンライン化が加速しました。私たちは、支払いをオンライン化し、企業の資金調達を容易にすることで企業に力を与えたいと考えました」とムラタ氏は語った。

企業は数秒で承認を得ると、分割払いを提示することができる。顧客は支払いの際、自分に合った支払い方法を選べる。Slopeは、融資、引受、債権回収を担当し、製品やサービスが提供されたときに企業に支払う。

Slopeの仕組み。画像クレジット:Slope

デン氏とムラタ氏はY Combinatorで2回創業しており、直近では2021年のサマーコホートに参加した。参加したときは今の会社ではなかったが、方向転換して現在のSlopeのビジネスモデルを作り、8月に立ち上げた。

すでに同社は、過去30日間で取扱高が15倍になるなど、驚異的なペースで成長している。この3カ月間で、米国、カナダ、メキシコ、インド、シンガポールの販売業者の顧客を獲得した。近々、中国、ブラジル、ヨーロッパの販売業者がウェイティングリストに加わる予定だ。

同社は11月22日、Global Founders Capitalのほか、Dropbox、DoorDash、Opendoor、Plaid、PlanGrid、Mercury、Pilotの創業者らからシードで800万ドル(約9億円)を調達したと発表した。今回の資金調達の目的は、Slopeのチームを拡大し、顧客中心の体験を実現するためのインフラを構築し、ウェイティングリストの販売業者にサービス提供を開始することだ。

世界のB2B決済市場は、2020年には8700億ドル(約99兆円)だったのが、2028年には1兆9000億ドル(約217兆円)に達すると予測されている。同時に、127兆ドル(1京4500兆円)の決済フローがB2B決済によるものだと推定され、これも2028年までに200兆ドル(2京2800兆円)に増加すると予想されている。

「我々のビジョンは、グローバルB2BのStripe(ストライプ)になることです」とデン氏は話す。「B2Bで勝利するためには、AffirmやAfterpayのようなB2Cプレーヤーが取り組む必要がなかった、グローバルなクロスボーダー取引のインフラと中核となる技術を構築する必要があります」

また、デン氏とムラタ氏は何百もの中小企業にBNPLの必要性を聞き取り調査し、Slopeが製品を開発する前から既に契約を結ぶ結果となったが、これは市場に大きなニーズがあることを証明するものだとデン氏は指摘する。

Global Founders CapitalのパートナーDon Stalter(ドン・スタルター)氏はSlopeの成長について、「最初から印象的で、今のステージとチームの規模からして、私たちがこれまでに見てきた世界的な急成長企業の1つです」と語る。

企業はこれまで事業融資を銀行に頼ってきたが、それは「ジャンキーなプロセス」だった。テクノロジーを駆使し、そのプロセスを5倍の速さで改善できる企業は大きなディスラプターになり、100倍にできれば革命を起こすことができる、とスタルター氏は付け加えた。

その大きなB2B決済市場を狙い、ビジネスの可能性を広げる人工知能と新しいテクノロジーで攻めることで、デン氏とローレンス氏にはそれができるとスタルター氏は確信している。

画像クレジット:Slope

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(文:Christine Hall、翻訳:Nariko Mizoguchi

BNPLの成功を高騰する医療費に、金利なしの「先に治療・後払い」フィンテックPayZen

米国でヘルスケアのコストは増加の一途をたどっており、患者が自己負担しなければならない割合もそれにともない増加している。2019年のギャラップ調査によると、米国の3世帯に1世帯近くが、費用を理由に治療を遅らせたことがあるという。

ヘルスケアフィンテックのスタートアップであるPayZen(ペイゼン)は、AIを活用して患者の医療費債務を引き受け、患者が治療を受けて長期的に分割払いできるようにするソリューションを展開するため、シリーズAラウンドで1500万ドル(約17億1000万円)を調達した。

今回のラウンドはSignalFireがリードし、新規でLink Ventures7WireVentures、さらに既存投資家のViola VenturesとPicus Capitalが参加した。同社は、2021年初頭にシード資金として500万ドル(約5億7000万円)を調達しており、今回のシリーズAにより累計資金調達額は2000万ドル(約22億8000万円)に達した。

PayZenの「先に治療・後払い」ソリューションはすべての患者が利用でき、患者は手数料や金利なしで、治療費を時間をかけ分割払いすることができる。このプラットフォームの基盤となる人工知能(AI)技術により、病院は患者のデータを活用して、管理コストを抑えながら各患者に特化した支払いプランを決定することができる。

PayZenは、2019年にフィンテックのベテランであるAriel Rosenthal(アリエル・ローゼンタール)氏、およびItzik Cohen(イッツィク・コーエン)氏、Tobias Mezge(トビアス・メズガー)氏の3人によって設立された。現在PayZenのCEOを務めるコーエン氏は、消費者債務のフィンテック、Beyond FinanceでCEOを務めていた。

コーエン氏は、TechCrunchのインタビューで、患者の自己負担額は過去10年間で2倍になったが、今後10年間でさらに2倍になると予測されると語った。

「(創業チームは)フィンテック業界出身だったため、例えば、『先買い・後払い(BNPL)』を導入したeコマースでは、イノベーションと信用の拡大を受け、人々がより高額な商品を購入できるようになったのを見てきました。そこで、患者からの請求業務をますます多く担うようになっている医療機関も、苦労しているのではないかと考えました。それでは彼らも悪い状況に追いやられてしまいます」とコーエン氏はいう。

PayZenのプランを利用する患者には金利がかからないため、医療機関はこれらのコストを自分たちの帳簿に残すことができる。コーエン氏は、患者とその経済状況に合ったプランを優先的に提供することで、査定プロセスを逆転させ、支払いの遵守率を高めたと述べている。

フィラデルフィアを拠点とするGeisinger Hospital(ガイジンガー病院)では、PayZenの導入後、支払いの回収率が23%向上したという。コーエン氏は、米国のほとんどの主要な医療機関の平均営業利益率は1%と非常に低く、業界は人材不足に悩まされていると付け加えた。

「市場の状況が少しでも変化すれば、率直に言って、彼らは損失を被ることになるでしょう。彼らは今、この時間を利用して最適化を図り、多くのプロセスを自動化する技術に投資しています」とコーエン氏は語った。

設立からまだ1年も経っていないこのスタートアップは、2022年1月に大幅な製品の拡張を発表する予定だ。

ニーズの増加に対応するため、PayZenは現在35人のチームを2022年末までに約100人の従業員に成長させる予定だという。

画像クレジット:PayZen

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(文:Anita Ramaswamy、翻訳:Aya Nakazato)

零細企業にハードウェア不要のカード決済を提供するNomodが3.8億円を調達

新興国の零細企業は、いくつかの理由でデジタル決済の利用にいまだに苦労している。1つには、そうした企業の多くはその規模ゆえに、世界のさまざまな決済システムから除外されていることがある。また、プロバイダーからハードウェアを調達するには費用がかかることも挙げられる。

英国を拠点とするフィンテックNomodは、追加のハードウェアなしに携帯電話でカード決済を受け付けるプラットフォームを提供することで、これらの零細事業者がカード端末を回避できるようにしている。同社は5000万ドル(約57億円)の評価額で340万ドル(約3億8000万円)のシード資金を調達した。

創業者でCEOのOmar Kassim(オマール・カシム)氏がTechCrunchに語ったところによると、加盟事業者ベースを獲得し、金融オペレーティングシステムを構築するのに、決済は同社のフライホイールとして機能する。

加盟事業者に対して、口座、カード、地域の決済ネットワーク、融資へのアクセスを提供するというのが同社の計画だ。この一連のサービスは、サウジアラビア、アラブ首長国連邦、バングラデシュなど、Nomodが大きな加盟事業者基盤の構築を目指している主要市場では不可欠だ。

例えば、サウジアラビアでは、法人100万社超のうち銀行融資を受けられるのはわずか3%だ。アラブ首長国連邦では、ビジネス用の銀行口座を開設するのに半年近くかかる。また、バングラデシュでは、中小企業にとってカードPOSのハードウェアは非常に高価だ。

Nomodを使えば、加盟事業者は携帯電話にNomodをダウンロードして、対面での支払いや顧客からの支払いリンクを処理することができ、決済問題に対処できる。

顧客はVisa、Mastercard、American Express、Union Payなどのさまざまなカードを利用できる他、NFCやQRコードによる非接触型の決済も可能だ。また、加盟事業者は135種類以上の通貨で課金することができる。

「加盟事業者はいま、Nomodをインストールして3、4分でサインアップし、決済リンクを使った対面およびオンラインでの決済の処理を始めることができます」と、カシム氏はTechCrunchに語った。

オマール・カシム氏(NomodのCEO)

Nomodは、MENA(中東・北アフリカ地域)およびGCC(湾岸協力会議)地域の加盟事業者の獲得にフォーカスしてきたが、カシム氏によると、このプラットフォームはグローバル展開しており、欧州、米国、オーストラリア、アジアの40カ国以上からサインアップできるようになっている。

同社はナイジェリアと南アフリカの加盟事業者とテストを行っていて、近い将来、両市場でのサービス開始を見込んでいる、とカシム氏は話す。

「カードの受け入れはかなり均質な行為である、というのが当社の考えです。オーストラリア、インド、あるいはどこでやろうが、場所はあまり関係がありません。我々は、多くの市場で並行して行うことができると考えており、現在44カ国の加盟事業者が当社のプラットフォームを利用できるようになっています」。

今のところ、米国、英国、アラブ首長国連邦の加盟事業者はそれぞれの国の通貨(ドル、ポンド、ディルハム)で決済することができる。

しかし、南アフリカのように通貨の変動がある市場では、Nomodは多少のFXコストを適用している。カシム氏によると、このような市場で大幅に受け入れられれば、Nomodは加盟事業者のためにプラットフォームを最適化し、現地通貨での決済を開始するという。

YCの経歴によると、Nomodは自らを「Square(スクエア)からハードウェアを除いたもの」と表現しているが、2010年にStripe(ストライプ)がサービスを開始して以来、決済がどのように進化してきたかを考えると、この名前は示唆に富んでいるとカシム氏は確信している。

同氏によると、950億ドル(約10兆円)規模の企業が新たに立ち上げるとしたら、ハードウェアは必要ない。しかし、同氏の考えは、ほとんどの企業がウォレットやトークンを使ってフィンテック取引を行っているアラブ首長国連邦のような新興市場での決済の仕組みに基づいている。Nomodは、対面での決済を受け付けるStripeのリストにあるパートナーの1社だ。

「一部のプラットフォームでは、オンライン取引の約60~70%がApple Payによるものとなっています。最近では、消費者が積極的にデバイスにトークンを付けて決済していることも明らかになっています」。

Nomodの前に、カシム氏はeコマースのマーケットプレイスプラットフォームJadoPadoを運営し、中東・北アフリカ地域でAmazon(アマゾン)と競合するNoon(ヌーン)に売却した。

その後、いくつかのコンサルティング業務に携わり、フィンテックとネオバンクの波が英国を襲ったことに注目して、2018年にサイドプロジェクトとしてNomodを立ち上げた。それは、Stripeのアカウントを持っている人なら誰でも、対面での支払いができるシンプルなアプリだった。

このアプリを運営することで、カシム氏は将来の決済のあり方について2つの大まかなアイデアを得た。1つ目は、消費者向けのフィンテックでは、プラスチックカードがデジタルトークンやネイティブウォレットに取って代わられること。また、加盟事業者を対象としたフィンテックでは、従来のハードウェアからソフトウェア主導のソリューションへと移行するということだ。

「世界を見渡しても、決済のための有力なモバイルソフトウェアソリューションは現在ありません。だからこそ、支払いの受付のためのWhatsAppやTelegramのようなもの、あるいは決済リンクやサブスクリプションのようなものでの対面ソリューションを構築することにチャンスがあると感じています」。

2021年3月に正式にサービスを開始して以来、Nomodは約4500の加盟事業者を獲得した。同社によると、その総処理額は11.5倍に増え、ランレートは年700万ドル(約8億円)になっている。

Y Combinatorの夏季クラスを卒業したばかりのNomodは、Global Founders Capitalがリードした投資を獲得した。このラウンドにはKingsway Capital、Goodwater CapitalなどのVCや、DST Globalのパートナーを含むシリコンバレーや世界のエンジェル投資家たちが参加した。

画像クレジット:Nomod

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(文:Tage Kene-Okafor、翻訳:Nariko Mizoguchi

フリーランサーや零細企業向けネオバンク「Oxygen」が約570億円超の評価額でのシリーズB調達に向けて交渉中

フリーランサーや零細企業にデジタルバンキングサービスを提供しているスタートアップ「Oxygen」が、5億ドル(約570億円)以上の評価額での新規ラウンドの調達に向けて交渉中であることを、2人の情報筋が語ってくれた。

サンフランシスコに本社を置く同社は、約7000万ドル(約79億7000万円)の資金調達に向けて交渉を進めているとのこと。ロンドンを拠点とするTribe VenturesがOxygenのシリーズBラウンドを主導する交渉を行っていると、詳細は非公開のため匿名を希望している情報筋は付け加えた。

米国やその他の地域の銀行は昔から、従来的な定職と安定した定期収入がない個人へのサービス提供を拒否してきた。

以前Amazon(アマゾン)で働いていたHussein Ahmed(フセイン・アーメッド)氏は、他のスタートアップをサポートするフリーランスコンサルタントとして仕事をするようになってから、自らこの問題に直面した。2020年のポッドキャストで同氏は「その時に、当社が今サービスを提供しようとしている市場セグメントに行き当たったのです」と語った。アーメッド氏はWeWorkで仕事をしていたとき「写真家から不動産ブローカー、会計士まで、周りの人たちは皆、同じ問題に直面している」ことに気づいた。

アーメッド氏がOxygenを立ち上げたのはその時期だった。このスタートアップは、一般消費者や小企業向けに、月額料金ゼロの口座を提供している。これらの口座は、FDICによって保証されており、最低残高なしで運用でき、Visaデビットカードが付いている。

Y Combinator(Yコンビネータ)やRuna Capitalなどが出資している同社は、これまでに60万人以上の顧客を獲得している。

Oxygenは今回の資金調達の交渉についてコメントを控えたが、アーメッド氏は広報担当者を通じて、同スタートアップは「2021年に大規模な成長を遂げ、2021年は収益を10倍に伸ばした」と述べている。「将来の計画に最適な資金調達方法について継続的に話し合っており、可能なときにコメントする予です」とのこと。

画像クレジット:Oxygen

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(文:Manish Singh、翻訳:Aya Nakazato)

Flexbaseが建設業界初のクレジットカードを発表、最大60日間の無利子融資

Flexbase(フレックスベース)は、最大60日間の無利子融資を提供する、創業者らによると業界初のクレジットカードを発表し、建設業の資金調達の常識を覆している。

Flexbaseは、建設業者や建設業界向けの自動決済ツールを開発している会社で、中小企業を対象にするためにZaid Rahman(ザイド・ラーマン)氏とHadi Solh(ハディ・スルフ)氏によって設立された。

ラーマン氏とスルフ氏は建設業を営む家庭で育ち、食卓で資金繰りの悩みを聞かされていた。ドバイで建設会社を経営していたラーマン氏の父親は、数百万ドル(数億円)の請求書を顧客が支払ってくれなかったとき、心臓発作を起こした。ラーマン氏とスルフ氏は、企業が資金に容易にアクセスしてキャッシュフローの問題を回避できるよう、Flexbaseを設立した。

「ほとんどの建設会社は、破産するか、あと一歩のところまで来ています」とラーマン氏は話す。「その理由の1つは、ほとんどの顧客が期日通りに支払うことを好まないからです。銀行が建設会社を嫌うのも理由の1つです。これは、そのようなキャッシュフローの問題があるためであり、建設会社は短期的な資金を得ることがなかなかできません。建設会社の倒産が多いのもそのためです」。

Flexbase Cardは、建設会社であればどの会社でも申し込むことができ、ヒューストンで先行してサービスを開始している。しかし共同創業者によると、Flexbase Cardと他のFlexbaseツールを併用することで、会社の財務データをより深く理解することができ、より大きな額の融資を受けることができるようになるという。

60日間の融資は、支払いを受けるまでに通常100日以上かかる業界にとって「ゲームチェンジャー」だとスルフ氏はいう。その理由の1つは、一般的な請求書が1〜2ページであるのに対し、建設業の請求書は50〜100ページにも及ぶことがあり、その中には州や郡のコンプライアンスに関する書類も含まれている。1枚でも欠けていると、請求書全体が却下されてしまうこともある、とラーマン氏は話す。

Flexbaseは経費管理を自動化することで、売掛金と買掛金の間の時間を短縮し、支払いまでの時間を50日短くすることができる。

「資金面で建設会社を他の企業と同じように評価することはできませんが、引き受けを行うことで、当社は建設会社がビジネスを成長させるのに十分な信用を提供しています」とラーマン氏は付け加える。「我々は、建設会社がプロジェクトの種類や顧客基盤を拡大するために、2分で十分な信用を提供しています」。

画像クレジット:PM Images / Getty Images

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(文:Christine Hall、翻訳:Nariko Mizoguchi

マネーツリーがオルタナティブデータ活用促進の新事業「データリサーチ部門」、匿名化した消費者の金融行動データ提供

個人向け資産管理サービス「Moneytree」(Android版iOS版)運営のマネーツリーは11月10日、グローバル金融業界から注目の高まるオルタナティブデータの活用を事業化する「データリサーチ部門」の新設を発表。統計データ化された消費者の金融行動データの一部をオルタナティブデータとして外部へ提供することで、金融市場、経済活動における金融データの新たな活用方法の普及を推進する。

多様なデータ収集の基盤整備が進む中、新たなデータ活用・分析の糸口となるオルタナティブデータが注目を集めていることを背景に、マネーツリーは非個人情報として扱える統計データをオルタナティブデータとして提供。資産管理サービス「Moneytree」「Moneytree ID」に紐づくデータを、個人が特定されないよう匿名化処理を施し照合性をなくし、データプライバシーを守った状態で提供する。

マネーツリーは、オルタナティブデータと公的データの掛け合わせにより消費者行動をデータ分析することで、市場調査、事業会社などにおける新規事業の立案、投資調査、学術研究、公共政策の策定に貢献したいという。また、国内でのオルタナティブデータに対する責任ある活用の推進に向け、11月10日をもって「一般社団法人オルタナティブデータ推進協議会」に正式加盟したことも発表した。

データリサーチ部門の新設にあたって、今後はオルタナティブデータの活用推進と事業との相乗効果に注目し、ユーザーのプライバシー保護を重視しつつ金融データエコシステムのさらなる拡張、顧客体験(UX)向上への貢献と高度化、将来的な新規ビジネス創出の活性化を目指したいという。

現在、オルタナティブデータは投資判断をより適切に実行するためのデータセットの1つと認識されており、今後はより広範囲での活用の可能性が期待されているという。すでに、POSデータや購買データ、人工衛星で取得した画像データの解析において、既存の公的な統計データを越えた新たなデータの利活用も進行している。

あるスタートアップが消費者向けトレーディングのブームを変える

スタートアップとマーケットの週刊ニュースレター「The TechCrunch Exchange」へようこそ。

みなさん、お元気でお過ごしだろうか。今回は取り上げる話題が山のようにある。消費者向けフィンテック市場における魅力的なスタートアップのラウンドに関するメモ、AppianのCEOであるMatt Calkins(マット・カルキンス)氏と決算説明会に行ったインタビューによるローコードの世界に関するメモ、そしてIPOたち、Kidas(キダス)のベンチャーキャピタルラウンド、ビルの「公開」、NFTなどをすばやく紹介していく。では始めよう!

あるスタートアップが消費者向けトレーディングのブームを変える

Robinhood(ロビンフッド)は、投資やトレーディングに対する消費者の関心の波に乗り、株式を公開するまでに至った。最近では、いくつかの失敗があったものの、同社は株式の購入だけでなく、より魅惑的なオプション取引に対する市場の関心の高さも証明している。

今回話題にしたいのは後者だ。シカゴにゆかりのある分散型スタートアップOptions AI(オプションズAI)が、410万ドル(約4億6000万円)のシードラウンドを実施した。私はこの会社の創業メンバーを知っていたので、会社についでも以前から知っていたものの、これまであまり書く機会がなかった。

だがAkuna Capital、Miami International Holdings、Optiver Principal Strategic Investmentsの3社のリードインベスターなどから資金を調達したいま、取り上げる時期にきたといえるだろう。

基本的にオプションは複雑であり、トレーディングに臨む多くの人々は、手をつけようとする時に。良い選択をするためのツールや洗練された技術を持ち合わせていない。私の意見を疑うなら、トレーディングをやっている友人にオプション戦略について聞いてみると良いだろう。きっと複雑さが理解できるやりとりになる筈だ。

Options AIは、トレーダーが執行する前に対象のトレードをよく確認して、マルチレッグオプションなどを扱う際により良い選択ができるようなツールを開発した。これは非常に優れたツールで、以前からオプション取引の仕組みや価格付けについて漠然としか理解していなかった私にとっては、しっかり理解を深めるのに役立った。

しかし、Options AIが私の興味を引いた理由は、チャートが優れているということだけではない。もう1つの理由は、トレードに課金することだ。このスタートアップは、トレードコストを一律5ドル(約567円)としているため、Robinhood(ロビンフッド)やWebull(ウィブル)などが近年追求してきた無料トレーディングの流れに逆らって泳いでいることになる。

現在、Options AIは株式オプションを扱っているが、The Exchangeには、そのうち暗号資産や先物オプションを追加するかもしれないと語っている。同社は現在の状況を、これまで開発しテストしてきた場所から頭を出した状態だと述べ、初期の人気とユーザーデータから何かを掴んだと考えている。もちろん、新しい投資家たちもそう思っているだろう。

さらに話を進める前に、オプションに関するデータを。大手消費者向けトレーディングプラットフォームが、なぜオプション取引に興味を持つのだろうか?なぜなら、めちゃくちゃ儲かるからだ。例えばオプショントレーディングのおかげで、Robinhoodは2021年第3四半期に6400万ドル(72億6000万円)の収益をあげた。一方株式トレーディングの収益は5000万ドル(56億7000万円)だった。これはビッグビジネスなのだ。

また、一律手数料とPFOF(ペイメント・フォー・オーダーフロー)の収入があることで、Option AIは十分な数の人々を集めることさえできれば、かなり魅力的な市場ポジションを得ることができる。スタートアップのターゲットユーザーは誰だろう?トレードを始めてはみたものの、もう少し専門的なツールが欲しいという人に向いていると思う。そしてRobinhoodの数字は、そのようなユーザーが相当数存在する可能性を示している。

Option AIのトレーディングの成長データを得たときに続報をお知らせする。

SaaSの価格設定を揺るがす

これまでTechCrunchは、SaaSの価格設定の議論を、サブスクリプションとオンデマンドまたは使用量ベースの価格設定レンズを通して検討してきた。現在、多くのスタートアップ企業が、(オンデマンドの価格設定がより理にかなった)APIとして誕生しているため、このレンズは市場の進化を見る上で良い視点になっている。また、市場にはSaaS疲れも見られる。

そんな中、Appian(アピアン)は少し変わったことをしている。先週、同社のCEOであるMatt Calkins(マット・カルキンス)氏を決算説明会の後でつかまえて、ローコード市場、プロセスオートメーション、プロセスマイニングについての話を中心に聞いてみた。Appianは、顧客が自動化すべき点をプロセスから抽出し、必要に応じて設計や自動化を行うことができるソフトウェアセットを提供している企業だが、私たちはその内容はもちろん、価格についても話し合った。

Appianは、利用無制限の価格設定を用意している。これは、使用量に上限のないSaaSのようなものだ。SaaSはアカウントやアプリケーションごとに価格が設定されることが多いのだが、カルキンスらはSaaSとオンデマンドの良いところをミックスしたような試みをしている。もっと簡単に言えば、1年分のサービスを定額制にして利用制限を設けないことで、顧客にAppianのサービスをたくさん使ってもらい、そのプラットフォームにどっぷりとハマってもらおうとしているのだ。

カルキンス氏は、公開企業のCEOとしては不自然なほど「無制限プランは、一部のお客様にとって非常にお得なプランになるかもしれません」と明言した。カルキンス氏は、価格設定に「イノベーション」を起こしたいと口にする。彼は、利用無制限の価格設定モデルを提供することで、顧客がAppianの技術を使って多くのものを作り、他の価格設定メカニズムで支払うよりも少ない金額で済ませる可能性があるものの、それは顧客にAppianの技術を全面的に使ってもらうためのコストに過ぎないと強調した。

上手く行けば、Appianは利益率の高い高収益を生み出すことができる長期顧客を持つことになるだろう。悪い取引ではない。

IPOまとめ

  • HashiCorp(ハシコープ)が上場を申請したので、その数字を調べてみた。結果はこちらで
  • 消費者直販のAllBirds(オールバーズ)は、IPOの価格を予定レンジよりも高く設定し、取引開始時にはさらにポイントを上昇させた。価格情報はこちら、財務情報はこちら
  • NerdWallet(ナードウォレット)は、IPOの価格を中程度に設定したが、その後高値で取引された。その後、少しずつ価格は下がったが、それでも見事なデビューを果たしている。金融関連の報道はこちらこちら。(そして、元TechCrunchのFelicia Shivakumar[フェリシア・シバクマール]氏にもエールを送りたい。彼女はかつて、私がTCのためのビデオショーを立ち上げる際に手伝ってくれた。非常に優れた人間であると同時に、現在はNerdWalletで働いている!)。
  • Nubank(ヌーバンク)が株式公開を申請したことで、その経営の数字の一端が明らかになった
  • Bird(バード)のSPAC取引が完了したが、初日は ベストではなかった
  • そして最後に、Backblaze(バックブレイズ)は自社のIPOに向けて最初の価格設定を行った。これは、同社の手堅い収益規模を考えると魅力的なことだと思う。

その他のこと

  • 先週私の目に飛び込んできたKidas(キダス)は、親と協力して子どもたちがオンラインゲーム環境で安全に過ごせるようサポートするスタートアップだ。これまでの控えめな資金調達に加えて、今回200万ドル(約2億2700万円円)を調達した。同社はThe Exchangeに対して「親御さんにとっては、他の方法では得られない新しい情報が得られ、それによって好きなものを介してお子さんたちとより良い関係を築くことができます」と語っている。
  • 私は権力者が配下の者のデジタル活動の制約を強めるようなことは、決して良いことだとは思わない。しかし、ゲームの世界ではコミュニケーション手段が急速に多様化しているため、保護者は何らかの監視を必要とするだろう。
  • 注目すべきは、そのツールがゲームプレイを妨げないことだ、つまりアンチチートソフトウェアを反応させないということである。これは本当に本当に重要なことだ。
  • 会社の詳細はまた別の機会に紹介するが、本拠地はフィラデルフィアで、私はそこに惹かれた。
  • ビルが「公開」された:私たちのIPOのセクションとは関係しないが、私が動向を薄くトラッキングしているLEX Capital Markets(レックス・キャピタル・マーケット)というスタートアップが、1つのビルを債権化して公開した。この会社は、実にすてきなモデルを提供している。覗いてみる価値があるだろう。
  • そして最後に、最近のNFT(非代替性トークン)報告の延長だが、、Mythical(ミシカル)がNFTを取り入れたゲームのために1億5000万ドル(約170億円)を調達したところだ。NFTの風はそこに向かっているのかもしれない。

画像クレジット:Nigel Sussman

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(文:Alex Wilhelm、翻訳:sako)

ナイジェリアが中国の足跡を追ってデジタル通貨を試験的に導入

中央銀行は世界中で通貨の流通と供給を統制しているが、暗号資産の驚異的な増加により、その権威、統制、権力が脅かされている。

そのため世界各国の中央銀行は現在、独自のデジタル通貨を生み出している。現地の活動や暗号資産への関心(米国に次いで2番目に大きな暗号取引市場)に支えられたアフリカ大陸の革新的な動きとして、ナイジェリアが2021年10月下旬、そのリストに名を連ねた。

ナイジェリアの中央銀行は過去3年間の開発段階を経て、現在アフリカ初のデジタル通貨の試験運用を行っているところだ。

これまでに中国、スウェーデン、韓国など14カ国が独自の中央銀行デジタル通貨(CBDC:Central Bank Digital Currency)の試験段階に入っており、合計81カ国がその他の段階でCBDCを模索中である。

バハマ、グレナダ、セントクリストファー・ネイビス、アンティグア・バーブーダ、セントルシアの5カ国のみが正式にローンチしている。

eNaira(eナイラ)と呼ばれるこのデジタル通貨は、ナイジェリア中央銀行(CBN:Central Bank of Nigeria)が支援・発行する。ほとんどの政府と同様、ナイジェリアがデジタル通貨を導入する理由は、物理的な現金よりもコスト効率が高く、銀行口座を持たない人々の金銭へのアクセスを容易にし、違法行為をある程度制限できることにある。

しかし、中央銀行が発行するデジタル通貨には利点がある一方で、市民に対する監督を行ってきた、あるいは監督を試みてきた実績のある政府によってそれがどのように利用されるのかという懸念が存在する。

eNairaについてこれまでにわかっていること

この試験的なローンチに向けて、CBNは8月、デジタル通貨の開発と展開のための事業者としてバルバドスを拠点とするBitt Inc.(ビット・インク)を選定した。

同社は、東カリブ海諸国通貨同盟(ECCU:Eastern Caribbean Currency Union)に協力し、デジタル通貨DCash(Dキャッシュ)の設計とローンチを支援してきた実績を持つ。DCashは独自のCBDCを完全にローンチした5カ国のうちの4カ国、アンティグア・バーブーダ、グレナダ、セントクリストファー・ネイビス、セントルシアで使用されている。

9月27日、CBNはeNairaのウェブサイトを立ち上げ、ナイジェリア人がどのように同国のデジタル通貨にアクセスし、利用できるかについて必要な情報を提供した。

ナイジェリア人は最初にeNairaモバイルアプリをApple StoreかPlay Storeでダウンロードする必要がある。サイト上のQRコードをスキャンしてサービスにアクセスすることも可能だ。

ユーザー登録後、お金の保管や送受信を行うためのSpeed Walletと呼ばれるウォレットを登録・作成する。プラットフォーム上では、銀行口座を持つ、あるいは持たない、さまざまなIDレベルのユーザーに対応するために、複数層のウォレットが用意されている。

ウェブサイトには、eNairaの4つの主要機能が掲載されている。顧客がeNairaウォレットからお金を移動できる統一決済システム、ユーザーが残高や取引履歴を確認できる銀行口座管理機能、QRコードを読み取って店頭で支払いができる非接触型決済サービス、そしてユーザー同士がリンクされた銀行口座やカードを介して送金を行うP2P決済だ。

暗号資産がCBDCに移行

ビットコインのような暗号資産は、従来のグローバルな銀行システムの枠を超えて生み出されたにもかかわらず、お金のデジタルな未来についてのポテンシャルを際立たせている。そしてその普及率の急激な上昇は、お金の将来を決定づけることにおいて、伝統的な機関との衝突につながっている。

暗号資産に対する議論は、一般的には詐欺やボラティリティに関する懸念に焦点が当てられてきた。それでも、エルサルバドルのような一部の国では、ビットコインを法定通貨として使うことをやめていない。ビットコインや暗号資産を自国の銀行や金融システムへの脅威と考える他の国々にとって、CBDCは、法定通貨以外のものへの関心の高まりに直接代わるものとして機能する。

Blockchain Nigeria User Group(ブロックチェーン・ナイジェリア・ユーザー・グループ)の創設者でコーディネーターを務めるChimezie Chuta(チメジー・チュタ)氏は、TechCrunchの取材に対して次のように述べている。「CBDCの概念は、中央銀行にとって不可欠なものとなっています。お金は人々を統制するためのツールです。ビットコインやイーサリアムのような非公開で発行された暗号資産の流入は、世界中の中央銀行の権威に対する直接的な挑戦であり、中央銀行は主要な統制ツールが損なわれるのを許容することはできないと考えています。CBDCは、弱いながらもその対抗策として浮上してきたのです」。

暗号資産はかなり独立性がある一方、デジタル通貨は紙の通貨と同じ価値を有している。ナイジェリアの場合、eNairaはナイラに連動しており、ナイラと同様に米ドルに対して変動する。

CBDCと暗号資産のもう1つの重要な違いは、前者が規制と統制にさらされていることにある。これは中国とナイジェリアの政府の核心にある共通のテーマだ。

2014年以降、中国は中央銀行である中国人民銀行(PBOC:People’s Bank of China)が支援する国家デジタル通貨(デジタル人民元)の開発に取り組んできた。その前年に、中国政府は銀行や決済企業がビットコインなどの暗号資産関連サービスを提供することを禁止している。

2017年には、中国はマイニング、イニシャル・コイン・オファリング(ICO:Initial Coin Offering)、および暗号資産取引プラットフォームが法定通貨を暗号資産に変換することを禁止した。

しかしこの禁止にもかかわらず、ビットコインや他の暗号資産はそれ以降もこのアジアの国で大きな牽引力を得てきた。そのため、2021年5月には、フィンテック企業が暗号化プラットフォームに口座開設、登録、取引、清算、決済に関するサービスを提供することを禁止する、より厳格な法律を制定した。

これまで中国は、地元の暗号資産プラットフォームのみをターゲットにしており、個人がオフショア取引所で暗号資産を保有することは禁止していなかった。

しかし2021年9月、中国政府が暗号資産取引(マイニングを含む)に関するすべての取引を違法であると宣言したことで状況は変わった。同政府はまた、Binance(バイナンス)のような海外の暗号資産取引所が中国本土の人々にサービスを提供することも違法であるとしている。

「中国は過去に何度も暗号資産にまつわる『禁止』措置を取ってきましたので、驚くに値しませんが、今回は曖昧さがありません」とPwCの暗号資産リーダー、Henri Arslanian(ヘンリ・アルスラニアン)氏はツイートした。「中国では、あらゆる種類の暗号資産取引と暗号資産関連サービスが禁止されています。議論の余地はありません。グレーの領域は存在しません」。

一部のアナリストは、中国によるこれらの禁止や制限は、2022年にこのアジアの国が完全にデジタル人民元をリリースすることを目的としていると述べているが、その見方は妥当であろう。WeChat(ウィーチャット)とAlipay(アリペイ)が5回に4回のデジタル決済を行っているこの国で、流通している現金の一部を置き換えるためにデジタル人民元をローンチしたと中国政府は主張している。

暗号資産に対するさらなる取り締まりや監督の可能性

PBOCは政府の支援を受けて、上海、成都、北京で2020年4月から試験運用が開始されたデジタル人民元により、オンライン決済の市場シェアをAlipayとWeChatによる複占から取り戻そうとしているのかもしれない。

eNairaと同様に、ユーザーは中央銀行が開発・管理するモバイルアプリをダウンロードすることによってのみ、デジタル人民元にアクセスできる。これまでのところ、700万以上の個人のデジタルウォレットと100万以上の企業のウォレットがデジタル人民元を使用している。Business Insider(ビジネスインサイダー)によると、これらのトライアルから合計53億ドル(約6050億円)の取引が行われたという。

ナイジェリアは暗号資産マイニングの国ではないものの、国民は暗号資産のヘビーユーザーだ。Paxful(パックスフル)によると、多くのナイジェリア人がナイラの下落から自身の貯蓄を守るために暗号資産を利用しており、この西アフリカの国はビットコイン取引で米国に次ぐ2位に位置している。

Chainalysis(チェイナリシス)のデータに基づくと、ナイジェリア人は5月に24億ドル(約2700億円)相当の追跡可能な暗号資産を取引している。2月にナイジェリア政府がCBN経由で暗号資産取引の禁止やそのような取引への銀行の参加を制限し、暗号資産を使用するナイジェリア人の口座を閉鎖するよう銀行に命じたことを考えると、これは驚くべき数字である。

そして、中国と同様に、ナイジェリアのその後の行動は自国のデジタル通貨を試験導入する方向に傾いた。しかし中国とは異なり、ナイジェリアは現金中心の社会だ。バハマのような小国がデジタル通貨を導入した主な理由(金融包摂性の改善の可能性を含む)の1つがここにある。こうした目的に照らしてみると、ナイジェリアでのデジタル通貨の導入は紙面上では理に適っている。

しかし、それが暗号資産を使用したい人々へのインセンティブを減らすための政府の策略であることを理解する人がいる一方で、多くのナイジェリア人はその有用性に疑問を抱いている。だが、懸念すべき微妙な要素は他にもある。同国における暗号資産活動の監督や全面的な取り締まりに対するものだ。

典型的には、政府は金融取引を監視し、疑わしい、あるいは異常な金銭活動に関する情報を収集するために、金融インテリジェンスユニットを使用する。しかし、CBDCは事態を1段階引き上げるかもしれない。

複数の出版物が、中国政府はデジタル人民元を使って国民に対する監督を進める可能性があるとほのめかしている。中央銀行であるPBOCの説明では、デジタル人民元サービスを運営している機関は「非同期伝送によって中央銀行に取引データを適時に提出」することが期待され、それにより中央銀行は「データを追跡し、マネーロンダリングと犯罪の取り締まり」ができるようになるとされている。

CBNも同様の目的を持っており、eNairaは「各eNairaの追跡可能な固有ID」により詐欺行為やマネーロンダリングを最小化する、と以前に述べている。

「銀行や通信会社はすでに検証プロセスを通じて必要な情報を持っています」とチュタ氏はいう。「しかし、CBDCは監視と監督を強化するでしょう。なぜなら、デジタル環境で実際にお金の流れを追跡することができ、配備している台帳上で各ユーザーの取引に対するフォレンジック分析を行えるからです」。

6月に現地メディアが報じたところでは、ナイジェリアはインターネットファイアウォールを構築するために中国と協議中のようだ。同報道によると、中国の「グレート・ファイアウォール」は政府のオンライン検閲と監督の中枢になっているという。ナイジェリアにはこうした監督用のファイアーウォールを構築するリソースがないが、eNairaは規模こそ小さいものの、同じ目的のために設計されたのではないかと考える向きもある。

「CBDCは追跡可能であり、政府が不当な監督を行うことを決定した場合に有用になると思います」と匿名を希望する暗号資産ユーザーはTechCrunchに語った。

また、中国のケースと同様に、eNairaの採用が計画通りに進まない場合や、政府がeNairaを国内で取引される唯一のデジタル通貨として強制する場合には、暗号資産の取り締まりがさらに強化される可能性がある。

その典型的な例が、中国の新たな命令により、世界最大の暗号取引所であるHuobi(フォビ)とBinanceの2カ所でユーザーの新規登録が停止されたことだ。Huobiは年末までに現在のアカウントを廃止することを明らかにしている。

ナイジェリア政府がこのような権限を行使できるかどうかは定かではない。それでも、ナイジェリア人に対するサービス提供や雇用をオフショア暗号プラットフォームから禁止し、成功した場合、ピア・ツー・ピアの活動(ナイジェリアで暗号資産を繁栄させてきた)は深刻な打撃を受けるだろう。

「政府は概して、暗号資産に脅威を与えています。現実世界の権力をつ人がいるような状況では、暗号資産の取引で投獄される可能性があります」とナイジェリアの暗号資産交換プラットフォームで成長リードを務める人物は述べている。「政府が本当に自国内での暗号資産の使用を禁止することを決定した場合、暗号資産は抑圧され、ある時点でそれを使用する価値がなくなる恐れがあります」。

しかし現時点では、ナイジェリアと同国の頂点にある銀行は、eNairaに対して高潔な意図を持っているようだ。CBNのGodwin Emefiele(ゴッドウィン・エメフィーレ)総裁は、eNairaはより安価で迅速な送金流入と国境を越えた貿易の増加につながると述べている。

送金に関しては、eNairaは国外にいるナイジェリア人が故郷に送金するためのより良い代替手段を提供すると思われ、長期的にはナイジェリアへの送金が増加傾向にあり、2020年は170億ドル(約1兆9400億円)に達している。

中国の銀行がナイジェリアでの業務を拡大しているとのニュースが2021年9月に広まったが、この事実は、両国間のクロスボーダー貿易の有効性に対する極めて重要な要素を示しているのかもしれない。中国はナイジェリアの最大の貿易相手国で、両国間の2021年の貿易額は200億ドル(約2兆2800億円)を超え、2020年の192億ドル(約2兆1900億円)から増加している。3年前、両国はより良い貿易を目指して通貨スワップ協定を試みたが、何も具体化しなかった。しかしチュタ氏は、両国のデジタル通貨は完全な代替物として機能できると主張する。

「両国にとって有益な相互運用性があると思います。ナイジェリアから中国に送金したい場合、少なくとも4つの異なる手続きを踏まなければなりません。それには3、4日かかります」とチュタ氏。「ですが、中国とナイジェリアのCBDCが相互運用することを想定してみましょう。中国のサプライヤーに送金したい場合、アプリ上の簡単な操作でeNairaを中国人民元に交換してサプライヤーに送信すれば、サプライヤーは従来の送金機関で通常行う手続きに比べてごくわずかな時間で支払いを受けることができます」。

ナイジェリアの中央銀行は、eNairaは「支払い効率、歳入と税徴収、そして対象を絞った社会的介入」の改善にもつながるだろうと述べている。

ナイジェリアの頂点に立つ銀行は、これらすべてを達成できるだろうか?パイロットモードでも完全にローンチされたモードでも、大規模な成功を収めた国はまだ存在しないため、断言するには時期尚早である。eNairaはポートハーコート、アブジャ、カノ、ラゴスの4都市で段階的に展開される予定だ。しかし、政府主導の同様の取り組みが過去にどのように行われてきたかを考えると、本格的な展開が実現する見込みはほんのわずかしかない。

画像クレジット:Bryce Durbin/TechCrunch

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(文:Tage Kene-Okafor、翻訳:Dragonfly)

グーグルがCMEグループの10年におよぶGoogle Cloudへの移行の契約に約1137億円投資

米国時間11月4日、Google Cloudが、世界最大のデリバティブ取引所CME Groupとの大きな契約を発表し、今後10年間をかけて、CMEの先物取引とオプションのマーケットをクラウドへ移すことになった。Googleは契約金の額を発表していない。

Google Cloudの戦略的産業担当副社長であるPhilip Moyer(フィリップ・モイヤー)氏によると、これは顧客がワークロードをクラウドへ移してGoogleがそれを助けるという、一般的な契約ではない。「むしろこれは、GoogleとCMEによるデモンストレーションであり、金融サービス産業における最も困難な部分をクラウドへ移行させることに、我々が真剣にコミットしていることを示すものです」とモイヤー氏はいう。

モイヤー氏によると、本契約が難しい点は、CMEのような企業にもなるとセキュリティとレイテンシーと冗長性、リカバリーの要求がとても厳しいことだ。両社は契約の構成や費用条件を明言していないが、計画ではそれを複数のフェーズで実装していくという。最初は、レイテンシーの要求がもっとも低い容易なワークロード、その次がデータ分析のツールとなる。

「この2番目のフェーズでは、本当のイノベーションに注力しなければなりません。データとその分析をよりリアルタイムにし、新しいプロダクトを作り、マーケットをもっと効率的にしなければなりません」とフィリップ・モイヤー氏はいう。一方、最後のフェーズでは、ワークロードのレイテンシーに最も敏感な部分をクラウドへ移す。

モイヤー氏にとってもこれは巨大な契約であり、10年間ですべてがうまくいけば、CMEのような金融サービス企業の業態を変えてしまう。「まさしく段階的なアプローチです。世界最大で、扱う内容も世界で最も多様な取引所を、クラウドへ移すのですから。そしてその間、Googleとしてはグローバルなネットワークと強度と、AIやML、データ技術、グローバルなアクセシビリティなどをフルに活かして、CMEの強さとアクセス性を全世界レベルで強化するつもりです」とモイヤー氏は語る。

契約が大規模であることに加えて、10億ドル(約1137億円)という投資額の構成も問題になる。モイヤー氏によると、リスクはCME自身も負うことになる。投資には、無議決権株式も含まれる。Googleから取締役が出ることはなく、投資の使い方を決めるのはあくまでもCMEの現取締役会だ。モイヤー氏によるとこの投資は、Googleが関係の長期的な成功に対するものでもある。

「お話したいことの1つとして、その関係が従来的なベンダー関係ではないことがあります。従来の、RFPやRFIをもらって成約という関係ではなく、私たち自身も、ゴールラインを超えるために必要なエンジニアリングにコミットすることになります。しかもそれは、数年後にスタートする話ではありません。今日から始まることであり、3つのフェーズのすべてを成し遂げる道のりなのです」とモイヤー氏はいう。

未知数も多いが、巨大な事業になるだろうし、成功すればより広大な金融サービス市場がGoogle Cloudに対して開くことになる。Googleはこの事業の一環として大規模なクラウドサービスを動かしているアドバンテージがある。その専門技術を活かして他の大規模クラウドサービスを顧客にできれば、クラウドサービスにおけるGoogle Cloudのマーケットシェアの針が、もっと目立つ大きさで動くだろう。

2021年の第3四半期ではGoogleのマーケットシェアは10%、売上は45億ドル(約5116億円)だった。Synergy Researchによると、マーケットリーダーのAWSは売上が160億ドル(約1兆8185億円)超、マーケットシェアは33%だった。同じく第3四半期で市場全体の規模は450億ドル(約5兆1147億円)だった。

関連記事:グーグルがハイブリッドクラウドに全力、エッジ・オンプレミスのマネージドソリューション新ポートフォリオを発表

画像クレジット:Michael Short/Bloomberg/Getty Images

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(文:Ron Miller、翻訳:Hiroshi Iwatani)

世界中からの移民の人たちが金融サービスを利用できるよう支援するZolveが約45.5億調達

米国の移民が金融サービスを利用できるようにすることを目的としたネオバンキングのスタートアップ企業であるZolve(ゾルブ)は、サービスの展開を開始するにあたり、新たな資金調達ラウンドで4000万ドル(約45億5000万円)を調達したことを米国時間10月27日に発表した。

関連記事:母国の信用履歴利用を可能にする銀行取引プラットフォームZolveが15.8億円調達

DST Global(DSTグローバル)のパートナーが、ベンガルールに本社を置くこのスタートアップのシリーズA資金調達ラウンドを主導した。今回のラウンドでは、Tiger Global(タイガー・グローバル)、Alkeon Capital(アルケオン・キャピタル)、Lightspeed Venture Partners(ライトスピード・ベンチャー・パートナーズ)、Accel(アクセル)といった既存の投資家に加え、設立10カ月の同社を2億1000万ドル(約238億9600万円)と評価し、過去最高の5500万ドル(約62億5800万円)を調達した。


毎年、何万人もの学生や社会人が、高等教育を受けるため、あるいは仕事のために、インドから米国へと旅立っている。新しい国で数カ月過ごした後でも、現地の銀行からクレジットカードを発行してもらうのに苦労したり、その他のさまざまな金融サービスを利用するために割高な料金を支払わなければならなかったりする。

インドで注目されている起業家で、前職のスタートアップをライドハイリングの大手Ola(オラ)に売却したRaghunandan G(ラグナンダン・G)氏は、2021年の初めにインド人のためにこの問題を解決しようと決心した。

Zolveは2021年9月、2000人の顧客(それと、7万人を超えるウェイティングリストがある)にクレジットカードを提供したが、すぐに2つの気づきがあったとTechCrunchのインタビューで述べている。

それは、顧客がZolveのサービスを幅広く利用し、期限内に支払いを済ませているだけでなく、オーストラリア、英国、カナダ、ドイツなど他国から移住してきた人々の需要も有機的に取り込んでいたことだという。

「私たちの基本的な価値提案は、クレジットカードです。クレジットカードの他に、現地の銀行口座とデビットカードがあります。私たちは、お客様が自分の銀行口座にお金を預けることを想定していませんでした。入金されるとしても、数百ドル(数万円)、数千ドル(数十万円)程度だろうと考えていました。しかし、実際には何万ドル(数百万円)ものお金を預けて、この口座をメインの銀行口座として使っている人がいるのです。現在、私たちは200万ドル(約2億2000万円)の預金があります」と同氏は語ってくれた。

Zolveは、このような初期段階での人気を受けて、2022年早々には複数の国からの移民の人たちにサービスを拡大する予定だ。

Zolveは現在、米国とインドの銀行と提携し、保険料や保証金を支払うことなく、消費者がシームレスに金融商品を利用できるようにしている。Zolveがリスクを引き受けることで、海外の銀行がZolveの顧客にサービスを提供できるようになった。

Zolveは、インドの銀行と協力することで、個人を明確にし、保険責務を請け負うことができた。Zolveは現在、このモデルを他の国の顧客にも適用することを計画している。

ラグナンダン氏によると、Zolveは幸運にも希望する投資家を見つけ、参加してもらうができたという。DST Globalのパートナーの多くは移民であり、新たに加わった3人の投資家も、同じような分野で活動するいくつかのスタートアップ企業を支援してきたことを教えてくれた。

「お客様のニーズに合った公正な金融商品へのアクセスは、人々の生活に直接的かつ意味のある影響を与えます。Zolveに投資し、米国やその他の市場で世界水準の金融サービス商品や体験を移民の人たちに提供するというラグナンダン氏のビジョンを支援できることを大変うれしく思います」。と、LightspeedのパートナーであるBejul Somaia(ベジュール・ソマイア)氏は語っている。

「Zolveは、特に顧客の獲得と利用において急速に成長していますが、これはチームの実行力とZolveがターゲットとする顧客層の大きなニーズを反映したものです。今後の展開に期待するとともに、Zolveの将来の成功を確信しています」と述べている。

また、Zolveは積極的にチームを拡大する予定であると述べている。同社の従業員数は、2021年の初めにはわずか5名だった。その後、100人に増え、現在はいくつかの役割を担う150人の採用を検討している。

画像クレジット:Getty Images

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(文:Manish Singh、翻訳:Akihito Mizukoshi)

モバイルウォレットでの支払いを「クレジットカードと同じくらい簡単に」、Citconが34億円調達

モバイルウォレットによる決済を提供するCitcon(シトコン)は、Norwest Venture PartnersとCota Capitalが共同でリードしたシリーズCラウンドで、3000万ドル(約34億円)の調達を完了した。

この資金調達には、Sierra VenturesとSonae IMも参加した。サンノゼを拠点とするCitconの、2015年の創業以来の調達額は約5000万ドル(約57億円)となった。

Citconのミッションは単純明快で、創業者でCEOのChuck Huang(チャック・フアン)氏によると、事業者が「現在の伝統的なクレジットカードによる支払処理と同じような簡単さ」で、モバイルウォレットや代替通貨による支払いを受けられるようにすることだ。

Citconの創業前、フアン氏はVisa(ビザ)のリードシステムアーキテクトとして4年間勤務し、モバイルペイメントゲートウェイやカードに基づく特典交換プラットフォームなど、複数の製品のシステムアーキテクチャーの設計・開発を担当していた。

Citconは、消費者と事業者の双方にとって「より使いやすく、より安全で、より安心な」非接触型のショッピングおよび支払い体験を、モバイルペイメントが提供するという前提のもとに立ち上げた。それは、新型コロナウイルスの大流行により非接触型決済が急増する前のことだった。

明らかに、Citconは正しいことをしていると言える。2021年が終わろうとしている今、同社の年換算決済額は約10億ドル(約1140億円)で、前年比300%以上の伸びを示している。フアン氏によると、収益も同じ割合で増加している。

Citconの決済技術は、東芝、Oracle、Cegid、Shopify、SAPなどのPOSシステムや電子商取引システムと統合されており、複数の企業が導入している。また、L’Oréal、Tumi、Texas Instruments、Macy’s、Panda Expressなど、3万社以上の事業者のサイトや拠点に導入されている。

Citconは、Apple PayやGoogle Payにはないものを提供しているとフアン氏はいう。

「当社はソフトウェアベースなので、Apple PayやGoogle Payとは異なり、ウォレットに連携させる銀行カードやクレジットカードは必要ありません」と同氏は説明する。「我々は、モバイルと代替決済手段(APM)の両方に対応する統一されたAPIを持っています」。

従来の決済インフラは、モバイルウォレットを受け入れるように設計されていなかったため、事業者は多くの実装に対応しなければならなかった、とフアン氏は話す。Citconは事業者のために単一のAPIへ統合するため、事業者は世界100種類以上のモバイルウォレットを受け入れることができる。

フアン氏によると、ソフトウェアベースのウォレットによる決済のトレンドは、ここ2〜3年の間に世界中で加速した。Citconはその流れに乗ろうとしている。

「中国はほとんど現金を使わない社会で、人々はこの種のウォレットを多用しています。世界中でも勢いを増しています」とフアン氏はTechCrunchに語った。例えば、米国ではPayPal(ペイパル)の子会社であるVenmo(ベンモ)と提携し、ユーザーにCitconのソフトウェアウォレットを提供している。また、Klarna(クラーナ)と提携し「今買って、後で払う」ウォレットを用意した。

Citconは今後、新たな資本を活用し、現在100人の従業員を増やし、グローバルに事業を拡大していく予定だ。同社は、すでに米国、カナダ、ヨーロッパ、アジアに拠点がある。「急速な」海外展開を目指しており、特にラテンアメリカとアジア太平洋市場に注目している。

Norwest Venture PartnersのパートナーであるPriti Youssef Choksi(プリティ・ユセフ・チョクシ)氏は、Citconのリーダーシップチームに最初にひかれたと話す。同氏は、フアン氏と社長兼COOのWei Jang(ウェイ・ジャン)氏を、決済の世界における「思想的リーダー」と評した。2人はともに中国出身で、米国内でモバイルウォレットがどのように発展していくかについて、国際的な視点をもたらすことができると指摘する。

「これは重要なことです。なぜなら、米国と海外の両方で、モバイルペイメントを中心にいくつかの重要なテーマが収束しつつあるからです」と同氏はメールに書いた。1つには、モバイルウォレットがクレジットカードを抜いて世界で最も広く使われる決済手段となっていることがある。モバイルウォレットの利用者数は、2020年の28億人から2025年には48億人になると見込まれている。

「米国では、新しいウォレット(暗号資産、今買って後で支払うプラットフォーム、ネオバンクウォレットなど)が若い消費者の間で人気を集めていることや、パンデミックの影響で消費者や事業者が非接触型の決済に向かっていることから、急速にシェアを拡大しています」とチョクシ氏は付け加えた。

また、同氏は、ウォレットや事業を展開する国を巡るコンプライアンス上の課題を解決してきた同社の能力にも感心している。

「これは、米国および世界中で、決済フローが規制当局の監視下にあることを考えると、特に重要なことです」と同氏は語る。

Cota CapitalのパートナーであるBen Malka(ベン・マルカ)氏は、Citconが世界と米国の両方で代案入札型の利用動向を注視していると話す。

「まだ初期段階にあると考えていますが、さまざまな種類の決済を可能にする非常に大きな市場機会があると思います。我々は、チャックと彼のチームに感銘を受けました。彼らは決済業界での深い経験と、グローバルな決済企業を構築するための適切な洞察力を持っています」。

画像クレジット:Citcon founder and CEO Chuck Huang

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(文:Mary Ann Azevedo、翻訳:Nariko Mizoguchi

PayPal、Pinterest買収を検討か

あっと驚く買収劇だが、Bloombergの報道によると、PayPalはソーシャルメディア企業Pinterestの買収を検討しているという。

同記事によると、カリフォルニア州サンノゼに本社のあるPayPalは、買収の可能性をめぐって最近Pinterestに接近している。

匿名の情報筋によると、その場合PayPalは1株あたり70ドルを払い、Pinterestの評価額は約390億ドル(約4兆4464億円)になる。

この記事についてPinterestはコメントを拒否している。またPayPalは、本稿の締切までにコメントの要求に応じなかった。

このニュースを受けてPinterestの株価は約12%上昇し、10月20日の正午には62ドルを超える水準で取引された。これは、52週間高値の89.90ドルを下回っている。

噂されている買収価格は、Pinterestの現在の時価総額400億ドル(約4兆5600億円)に匹敵するものだ。一方、PayPalの時価総額は3080億ドル(約35兆1120億円)となっている。

2021年9月、PayPalは日本でのビジネスを強化するために日本のBNPL(Buy Now, Pay Later)サービスプラットフォームPaidyを、主に現金で約27億ドル(約3080億円)で買収することを発表した。2019年11月には、PayPalは安価な販売サイトを探す探すブラウザのアドオンやモバイルアプリケーションを開発するHoney Science Corporationを40億ドル(約4560億円)で買収する計画を発表している。

Pinterestを買収するというPayPalの計画は、想像以上に理に適っている。

ここ1年半ほどの間に、Pinterestはeコマースプラットフォームへの展開に力を入れ、いくつかの新機能を発表している。2020年4月、同社はプラットフォーム上での新たなショッピング方法を導入し、Pinterestユーザーは、検索やのボード上に新たに追加された「ショップ」タブから、在庫のある商品を閲覧できるようになっている。また、ビジュアル検索を改善し、ピンからより多くの商品をショッピングできるようにしている。

2021年10月初め、Pinterestは、広告主やブランドがサイト上のユーザーに自社製品を宣伝するための新機能を導入すると発表した。これは、Pinterestのプラットフォーム上でのオンラインショッピングや広告の拡大を目的とした最新の取り組みとなる。

米国時間10月14日、Pinterestは共同創業者のEvan Sharp(エヴァン・シャープ)氏が同社の常勤役員の座を離れることを発表した。彼は同社のデザインとクリエイティブの最高責任者だったが、Jony Ive(ジョナサン・アイブ)氏とともに彼の新しいクリエイティブ集団であるLoveFromに移籍している。Pinterestに関してはシャープ氏は同社の顧問として、会社の戦略やプロダクト、デザイン、ブランド、企業文化などの面に注力していく。Pinterestの取締役の座には留まる。

画像クレジット:TechCrunch

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(文:Mary Ann Azevedo、翻訳:Hiroshi Iwatani)

デジタル証券の第二取引市場を目指す投資プラットフォームRepublicが171億円超を追加調達

スタートアップの世界では、デジタル資産が米国証券取引委員会にとって、いつ有価証券と見なされるか否かについて、山ほど不満が募っている。

多くの人々が規制の暗雲を感じる分野で、創業5年のニューヨーク拠点の投資プラットフォームであるRepublic (リパブリック)が機会を伺っている。多くの企業が特定のデジタル資産と距離を置くべきかどうか悩んでいる中、Republic(CEOのKendrick Ngyueyn[ケンドリック・グエン]氏はGoodwin Procterでの証券訴訟が最初の仕事だった)は「compliant tokenization(規則に準拠したトークン化)」とグエン氏が呼ぶものの第1人者になることを創業時から目指してきた。

そして今同社は、すでに構築したデジタル「証券」の購入と再販のためのコンプライアンスを重視したマーケットプレイスを拡大する大きな野望をほのめかしている。

関連記事:厳選されたスタートアップ投資機会を提供するRepublicのCEOケンドリック・グエン氏のTC Tokyo2021登壇決定

グエン氏は先週TechCrunchとの電話で「米国内の主要な取引所でデジタル証券トークンを扱っているところはありません」と語った。つまり、製品やサービスに利用できるユーティリティトークンではなく、その価値が不動産のような外部の取引可能な資産に連動しているトークンのことだ。

扱わない理由の1つは、SECが、Ripple Labs(リップル・ラブズ)が開発した暗号資産であるXRPを、(通貨ではなく)Coinbaseなどの取引所が販売していない「証券」とみなしていることを極めて明確に示したからだ。

グエン氏は、Republicは「有能で良いカスタマーサービスを提供し、米国で証券とデジタル証券の第二の活発な市場を可能にする」取引所があれば「今すぐ提携する」意志があると語った。しかし、そんな取引所は存在しないため「あと1年ソリューションが見つからなければ、Republicはデジタル証券の二次的取引所に投資するか関連会社を通じて直接設立するつもりだ」と語った。

これはRepublicが運営している中で最も野心的なサービスであり、100万人以上のユーザーを集め、大規模な資金調達も行っている。

本日、米国時間10月20日、同社は1億5000万ドル(約171億円)のシリーズBラウンドをValor Equity Partnersのリードで完了したことを発表した。これは2021年3月に発表したGalaxy Interactive、Motley Fool Ventures、HOF Capital、Tribe Capital、およびCoinFundらが参加した3600万ドル(約41億円)のシリーズAラウンドに続くものだ(なお、これらの既存投資家は今回も参加し、Pillar VC、Brevan Howard、Golden Tree、およびAtreidesが新たに加わった)。

現在Republicの従業員は200名で、最新ラウンドの前に、新株発行で5000万ドル(約57億円)以上を、トークンの販売で2000万ドル(約23億円)以上を調達している。

会社はさまざまな調整に忙しく動いている。Republicはすでにいくつかの事業部門からなっており、10ドル(約1140円)から始められる人気の個人投資プラットフォームや、10億ドル(約1141億円)近い資産を管理し、認定投資家をふるいにかけてスタートアップに紹介する民間資本部門から、技術、財務、流通、およびトークン化サービスを提供するブロックチェーンコンサルタント部門まである。

さらにRepubliには、現在スタートアップや暗号資産プロジェクトに資金を配分するクローズドエンド型投資ファンドが2件ある他、Republic Realm(リパブリック・レルム)の名前で運用しているメタバース(仮想空間)とNFT(非代替性トークン)に特化したデジタル投資部門もある。

Republicがどうやってすべてをコントロールしているのかを聞かれたグエン氏は「異なるプラットフォームがあるとは考えていません」として、関心事や預金残高に関わらずあらゆる人にサービスを提供できる会社と考えていると語った。「もし億万長者がRepublicにやっきてきて、100ドル投資するのに時間を使うより10万ドルを配分したいというなら、我々はその機会を提供します。もしあなたが20歳で、20ドルをビデオゲームか不動産か女性起業家に投資したいなら、そのための機会もあります」。

目指しているのは「全人口」の要求に応えることだと彼は述べ、Republicなら培った技術力を駆使して成功できると強く思っている。そこにはある基本理念がある。それは「DeFiとNFTを含めほとんどのトークンは証券である」というRepublicの強い信念だ。その結果「私たちはRepublicのやっていることのすべて、触れるものすべてをなんらかの証券として扱い、米国証券法の既存の枠組みに適合させています」と彼は言った。

他の投資プラットフォームがSECに抵抗したいのならもちろんそれは彼らの権利です。Republicとしては「自分たちの仕事をするために新しいルールや規制を求めません。私たちのやり方は既存の法律、強固な法的根拠に基づいています」。

画像クレジット:Kendrick Nguyen / Republic

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(文:Connie Loizos、翻訳:Nob Takahashi / facebook

イオンの電子マネーWAONがiPhoneとApple Watchで利用可能に、全国86万カ所以上の店舗でタッチ決済OK

イオンの電子マネーWAONがiPhoneとApple Watchで利用可能に、全国86万カ所以上の店舗でタッチ決済2021年10月21日(本日)、イオンの電子マネーWAONが Apple Pay で使えるようになりました。全国約86万か所以上の店舗で、iPhone や Apple Watch を用いたタッチ決済ができます。

対応機種と動作環境は下記の通り。

  • iPhone: iPhone 8以降、iOS 15以降
  • Apple Watch: シリーズ3以降、WatchOS 8以降

新規発行手数料や年会費は無料ですが、Walletアプリから新規発行をする場合、1000円以上のクレジットチャージが必要です。新規発行手順の流れは、まずWalletアプリで「+ボタン」をタップし、「電子マネー」からWAONを選択。つづいて金額を選び「追加」をタップします。利用規約に同意した後、WAONアプリをダウンロードします。

「WAONカード」「G.G WAON」「ゆうゆうワオン」を所有している場合、iPhoneに読み込ませて使うことも可能です。

ちなみに、Walletアプリで新規発行後、WAONアプリで会員登録を行うと、「会員登録限定!いつでもポイント2倍」の特典の対象となります。ただし、Walletアプリで新規発行または電子マネーWAON会員未登録のWAONを読み取り設定した場合は特典付与の対象外となります。

チャージ方法は、WAONアプリ、現金、ポイントから選べます。なお、WAONアプリでオートチャージを設定すれば、残高が少なくなった場合に、指定のイオンカードから自動チャージされます。

  1. イオンの電子マネーWAONがiPhoneとApple Watchで利用可能に、全国86万カ所以上の店舗でタッチ決済

 

このほか、応募先着10万人に500ポイントを進呈するキャンペーンが始まります。具体的な条件は、「Apple Pay の WAON 番号」を新規発行するか、カードを読み込んだ後、キャンペーン期間中(10月21日〜11月4日)にWAONの公式サイトにて応募し、合計1万円以上のチャージを行うこと。

  1. イオンの電子マネーWAONがiPhoneとApple Watchで利用可能に、全国86万カ所以上の店舗でタッチ決済

(Source:WAONEngadget日本版より転載)