人工知能が企業のセールス業務に利用される例が増えている

Asian woman over microchip circuits

2016年は人工知能(AI)が非常に注目された年だった。人工知能の開発は何十年も前からはじまっていたが、パワフルなコンピューターを安価で利用できるようになったことと、アクセスできるデータの量が飛躍的に伸びたことで、今年になってやっと人工知能の時代が訪れたようだ。

AIによるビジネスの効率化が最初に始まったのは企業のセールス業務だった。毎日のように繰り返される営業ワークフローをAIによって効率化させようという試みだ。考えてみれば、企業の収入を直接的に左右するこの分野でAIの応用がはじまったのは、当然の成り行きだったと言えるだろう。AIがビジネスに与える影響を調査する、Constellation ResearchアナリストのAlan Lepofskyは、ベンダーたちがこの動向に注目しているのは確かだと話す。

彼によれば、人間は情報オーバーロードに苦しめられているという。私たちがより多くのデータを集めるにつれて、そのデータがもつ意味を理解するために私たちはコンピューターの処理能力に頼らざるを得なくなる。「AIが情報をフィルタリングしたり、タスクを自動化することで、その負担を軽減してくれることが期待されます」とLepofskyは話す。

AIはスタートアップ・コミュニティにも多大な影響を与えている。TechCrunchでも今週、AIによる営業アシスタントを開発するConversicaが3400万ドルを調達したことを報じたばかりだ。このAIアシスタントには自然言語処理(NLP)、推論エンジン、自然言語生成などの技術が使われている ― なかなか洗練されたテクノロジーだ。このAIが見込み客との初期コンタクトを自動化し、その後に人間の営業員に引き継ぐという仕組みだ。

一方、CRM業界のベテランが創業したTactは、営業員のスケジューリング管理などにAIを活用するスタートアップだ。同社もまた、今月初めに1500万ドルを調達したことを発表している。営業員が「CRMの奴隷」になってしまうことを防ぎ、AIを活用して彼らにロジカルで効率的な営業法を提供するというアイデアだ。

これらのスタートアップは、営業という分野のなかにある様々な側面をAIによって効率化させようとしている一方で、SalesforceOracleBaseなどといったCRM業界の巨人たちは単に顧客情報を記録するためのツールではなく、それに内蔵された「知性」によって営業活動を強化するというCRMツールを開発している。

従来型のCRMは顧客と営業員とのやり取りを記録するためのツールだったが、AIによってそれ以上のことが可能になったと話すのは、Bluewolfでカスタマー・エクスペリエンス部門のSVPを務めるVenessa Thompsonだ(BluewolfはSalesforceと提携するコンサルティング企業である)。

「AIはカスタマー・インタラクションがもつ力を引き出し、新たなデータが追加されるたびにツールはより賢くなります」と彼女は語る。

プラットフォームがもつ力を有効活用することで、営業員は顧客と接する時間を増やし、契約を獲得することだけに集中することができる。「営業員がどこに時間を費やすべきか、そして次に何をすべきかを予測するためには ― 彼らに適切なデータを、適切なときに与える必要があります。営業員はあらゆるソースからデータを取得する必要があり、彼らがそのデータを利用して意思決定をするためにはコグニティブなプラットフォームが必要なのです」と彼女は説明する。

AIをカスタマーサービスの分野に適用する企業も増えている。ボットを利用した初期コンタクトの自動化などがその例である。シンプルなタスクはボットにまかせ、より複雑なタスクは人間のオペレーターが対応するというアイデアだ。今週、SalesforceはLiveMessageをリリースした。これは、同社のService Cloudプラットフォームにメッセージング・アプリを組み込み、人間のオペレーターとボットの力を組み合わせるためのツールだ。

AIを営業やカスタマーサービス分野に適用する動きは、AIによるビジネス効率化の初期事例にすぎないだろう。コンピューターによって従業員の能力を拡張することが主流になりつつある今、今後数年間のうちにAIがさまざまなビジネス分野に適用される事例が増えていくことだろう。

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(翻訳: 木村 拓哉 /Website /Facebook /Twitter

どこでも使えるボットが必要だ

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【編集部注】著者のTom Hadfieldは、Khosla Ventures、Eniac Ventures、そしてY Combinatorの支援を受けているボットクロス配信サービスMessage.ioのCEOである。

2016年、ボットはしばしば大きな話題になった。それらは商業の未来や顧客サービスの革命として様々な賞賛を受けてきた。Webや携帯電話がかつてそうしたように、メッセージング・インターフェースは、私たちが周りの世界と対話する方法を変えて行くのかもしれない。

しかし、そうなるためには、ボットのコミュニティは、Webおよび携帯電話業界の黎明期を悩ませた、インターオペラビリティ(相互運用性)とクロスプラットフォーム標準という、共通の課題に真正面から取り組まなければならない。

私たちは任意のウェブサイトをどんなブラウザでも見ることができることを当然だと思っているし、電話会社に関係なく友人にSMSメッセージを送ることができる。でもそれはかつては当たり前のことではなかったし、それほど昔の話でもない。20年前、Netscapeユーザーが「Internet Explorer用に最適化」のアイコンによってブロックされることは日常茶飯事だった。

同様に、Verizonの顧客とAT&Tの顧客はそれぞれのキャリアの中の友人だけにメッセージを送ることができて、キャリアをまたいでメッセージを送ることができなかった時代もあった。テレビ番組American Idolでさえ、メッセージによる視聴者投票のために2つの番号を表示する必要があったのだ、1つはVerizon向け、そしてもう1つはAT&T向け。

20年が過ぎて、こうした「壁に囲まれた庭園」(当初CompuServeやAOLなどを指して表現するために使われたフレーズ)は、歴史書の中に書かれたものだと思いたくなる。

だが、そうではない。

2016年の今日、あなたがドミノピザとコミュニケーションできるのは、Facebookメッセンジャーを使うときだけだ。H&MとチャットするためにはKikを使わなければならない。Troopsを使えるのはSlackだけで、HipChatではだめ。壁に囲まれた庭園が舞い戻ったのだ。

「Facebookボット」または「Slackアプリ」といった概念は、ウェブサイトが「Internet Explorer用に最適化」または「Netscape用に最適化」されているといった以上の意味はない。

なぜこれが問題なのだろう?HipChat、Flowdock、あるいはMicrosoft Teamsなどのエンタープライズメッセージングプラットフォームの数千万人のユーザーたちは、Slackの豊富なサードパーティエコシステム統合を活用することができないのだ。同様に、大勢の企業ボットの開発者たちが、Cisco SparkあるいはSalesforce Chatter上の新しい顧客を獲得したいならば、ボットを再構築する必要がある。消費者の世界でも事情は同じだ。

ここで「1度のビルドで、どこにでもデプロイ」を願う開発者たちには、楽観的になって良い理由がある。壁に囲まれた庭園の中で、互いを繋ぐ門がAPIの形で現れ始めているからだ。 SlackとMicrosoftが支援するBotnessのような業界団体が、共通規格を議論するワーキンググループを始めている。その結果、プラットフォーム間のAPIとUIの差異が収束し始めている。SameroomやSlacklineといった企業は、これらのAPIを接続してより統一的なメッセージングシステムを構築し始めている。

希望の持てる話をしよう:人類の歴史を振り返ってみると、生き残った通信技術(郵便、電話、電子メール、ウェブなど)は皆相互運用性を指向していた。ボット/メッセージングがまったく異なると考える理由はない。

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(翻訳:Sako)

SisenseのSlack, Skype, Facebook Messenger, Telegram用ボットはBIへのアクセスを非技術系一般社員にまで日常化・民主化する

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複数のデータソースを結びつけてそれらを単一のダッシュボード上に要約するSisenseは、データとの対話性を広げる技術に積極的に挑戦する。この前はAmazon Echoとの統合を発表し、ユーザーがAlexaにデータをリクエストできるようにした。

そして今日は、ボットの統合。対象がEchoからメッセージングアプリに変わった。今日のリリースがサポートしているのは、Slack, Skype, Facebook Messenger, Telegramという、定番中の定番だ。

SisenseのCEO Amir Oradによると、“最初にこの4つをパートナーとして選んだのは、企業ユーザーがとても多くて、ほとんどの企業が使っているからだ。いずれもAPIがあるから、これらのメッセージングシステムにSisenseのような外部システムがアクセスできる。このようなオープンなプラットホームこそが、企業経営の未来であり、コラボレーションの原動力だ”、という。

ユーザーは、質問をしたり、単純なリストから選択をしたりする。Slackの統合では、誰かが営業データのチャートをシェアしたら、ユーザーは“See Widget”(ウィジェットを見る)や“See Dashboard”(ダッシュボードを見る)選べる。ウィジェットを選んだら、アナリシスのウィジェットがチャートのインサイト(insight, データの奥深い意味)を提供するだろう。

Sisense Slack bot.

写真提供t: Sisense

ボットのメリットは、ソフトウェアビジネスのワークフローにインテリジェンスを持ち込むだけではない。巧みな設計のボットの真の長所は、ソフトウェアそのものの複雑性を隠してくれることだ。

“セルフサービスタイプのサービスと、データの視覚化技術によって、非技術系のユーザーでもデータを日常的に使いこなせるようになった。うちのようなビジネスインテリジェンス(BI)・ボットは、そういうセルフサービスの上で、日常の仕事環境にデータのインサイト(データの洞察的意味)を直接提供する。〔宿主であるSlackなどの上で日常的にBIを提供する。〕

いちいち、何かをクリックしたり、セレクトしたり、ときにはコピー&ペーストしたり、という、ここ30年間のソフトウェアとの対話方式と違って、対話的操作がより会話に近いものになる。ボットは、自然言語によるソフトウェアとの対話に似た感覚を与え、うまく行けばソフトウェアの隠れた価値を浮かび上がらせる。直接、非技術系のユーザーに対して。

一見ギミックのようだが、実は、Sisenseなどが提供するデータを、顧客企業内のできるだけ多くの人びとに届ける、クリエイティブな方法だ。このようなツールは、データへのアクセスを大幅に民主化し、しかもデータのエキスパートの手を煩わせずに、情報への広範なアクセスを(スタッフだけでなく)ラインのビジネスユーザーにも与える。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

誰でも簡単にチャットボットを作れるOctane AIにGeneral Catalystが150万ドルを投資

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ボットが熱い。Facebookが今春のF8でチャットボットを持ち込んだことをきっかけに、今では、企業のカスタマーサービスのページ、eコマース、エンタテイメントなどなど、犬も歩けばボットに当たるご時世になった。

でも、有能なデベロッパーを抱えてない個人や零細企業は、どうやってボットを作ればよいのか?

そこで、Octane AIが登場。それは、メディア界の名士Ben Parrと、起業マニアのMatt Schlicht、そしてOmegleのファウンダーLeif K-Brooksが作ったスタートアップだ。彼らは、人気の高いFacebookグループデジタルマガジンで、ボット界の名士にもなった。

WixやWeeblyは万人向けのWebサイトデザインツールだが、Octane AIはそれらのチャットボット版だ。まるで幼児用お絵かきページのように、簡単にボットを作れる。私にもできた。簡単な挨拶をするだけの、ボットだけどね。

Evernoteの協同ファウンダーでGeneral CatalystのパートナーPhil Libinが、なんでOctaneに150万ドルも投資するのか、説明してくれた。彼の説では、“ボットはテクノロジーと対話するためのとっても自然な方法だ”。しかもOctaneは、ファウンダーたちのまわりに、すでにコミュニティができていることにも、感心した。

50 CentやAerosmithなど、すでに強力な顧客もいるOctaneは、今はFacebookに力を入れつつ、今後はSMSやiMessage、Slack、一般のWebサイトにも手を広げていきたい、と言っている。

“これは大企業だけでなく、誰にも必要なものだと思う”、とSchlichtは語る。

ボットは単なるギミック…手先の小細工…ではない、と信ずるParrは曰く、“時間を節約できるからね、実際に。そして、タイム・イズ・マネーだよ。あらゆる企業が、使って得をするツールだな”。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

MessengerボットがPayPalの支払い機能に対応、取引履歴の確認もできる

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PayPalはFacebookとの関係性を深めているようだ。Messengerには様々な機能があるが、今回新たにPayPalの決済手段が加わった。増え続けるMessengerのオンライン商店のチャットボットを介してユーザーが何か購入する時、PayPalの支払いサービスを利用することができるようになる。この提携の一環として、PayPalのアカウントとFacebook、およびMessengerとの連携が簡単になる。また、アメリカのMessengerユーザーは、PayPal上での取引に関する通知などを受け取る機能も実装する。

PayPalとMessengerとの機能連携は少し前に発表していた内容だ

FacebookはMessengerでの決済機能を少数の開発者とベータ検証を行っていて、年末まで決済機能を広く展開する予定と伝えていた。カスタマーは以前からFacebookやMessengerに登録した支払い情報を使って決済することができたので、PayPalだけがMessengerでの唯一の決済手段ということではない。

また、FacebookはPayPalとPayPalが所有するBraintreeに限らずStripe、Visa、MasterCard、American Expressとも機能連携を進めていると伝える。

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それでも、Messengerとの連携はPayPalにとって重要な一歩だ。Messengerの圧倒的なユーザーベースに露出することにはメリットがある。PayPalは世界で1億9200万人のユーザーがいるという。一方、Messengerは今年の初めに10億ユーザーを達成したとし、アメリカのモバイルユーザーのおよそ40%がFacebookのメッセージプラットフォームに登録していると報告している。

だが、ひとまずPayPalとMessengerの機能連携はアメリカ市場にフォーカスするようだ。PayPalはアメリカのユーザーに対してのみMessengerの支払いオプションを展開する。PayPalでの取引履歴とレシートにMessengerからアクセスできるのもアメリカのユーザーのみだ。

しかし、今後それも変えていく予定でいる。PayPalはアメリカから機能連携を「始める」と伝えた。海外展開における具体的なスケジュールについてはコメントを差し控えたが、PayPalは現在「いつ、どのように」他の国にも展開するか検討していると話す。

Messengerとの機能連携は、今日からアメリカで展開を始めるとPayPalは伝える。

Facebookはしばらく前から決済手段の実装に取り組んでいた。2015年の春にはMessengerのユーザーが自分のVisaやMasterCardの決済情報をチャットアプリに登録し、友人間でのピアツーピアー決済ができる機能を実装した。これは、Snapchatの決済手段、Squareが持つピアツーピアーの決済手段(Square Cash)、Google Wallet、そしてPayPalと彼らが持つVenmoアプリに対抗するための機能だ。

今回の提携で、Facebookは競合との差を埋めているように見えるが、同社は以前決済ビジネスを構築することに興味はないと話してる。

FacebookとPayPalは過去にも、決済機能の取り組みで提携してきた。最近、MessengerはUberとの機能連携を行い、Facebookのメッセージアプリからタクシーを配車することができるようになった。ここでは、PayPalが所有するBraintreeが決済を担っている。

また、企業もFacebook広告を購入したり、Facebookページの「ショップ」セクションで商品を直接販売したりするのにPayPalを使っている。また、Facebookが所有するOculusのサイトの決済方法もPayPalでの支払いに対応している。

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(翻訳:Nozomi Okuma /Website

Duolingoに外国語学習を手助けするチャットボットが登場

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チャットボットのブームであるようだが、実際に役立つものが少ないと感じている人も多いようだ。しかし言語学習の際に利用できれば、それはきっと便利なのではないだろうか。学習した内容を、コンテキストの中で使ってみることができれば、身につく度合いも変わってくることだろう。とくにオンラインで学習している場合、習ったことを試してみる相手が周りにいないケースが多いだろう。そういうケースに対処しようと、DuolingoはAIを活用したチャットボットをアプリケーションに導入することにしたのだ。

2016-10-05_1648今のところ、チャットボットが対応しているのはフランス語、スペイン語、およびドイツ語についてのみだ。またiPhone版アプリケーションのみの対応となっている。ボットはクラウド上に存在するので、利用にあたってはインターネットに接続している必要もある。

ボットとの会話を魅力的なものとするため、Duolingoは複数のキャラクターを用意してもいる。たとえばシェフのRobert、ドライバーのRenée、およびオフィスワーカーのAdaなどのボットが存在する。それぞれに、こちらからの会話に対して異なるリアクションをとるようになっている(過ちの正し方もそれぞれに異なる)。いろいろなキャラクターを用意することで、現実世界に近い状況を提示しようという意図もあるのだろう。

なお、チャットボットが会話時のバリエーションを認めているのもうれしいところだ。言語学習のアプリケーションでは、これができないものが多い。たとえば挨拶の仕方などは何通りもある。しかし決まった表現しか許さない学習ソフトウェアが多いのだ。さらにはどのように答えてよいのかまったくわからない場合には、ボタンクリックでヒントを示してもくれるようになっている。

「外国語を学ぶ際の大きな目標のひとつは、会話をすることだと思います」とDuolingoのCEO兼共同ファウンダーのLuis von Ahnは述べている。「ボキャブラリーや読解力のトレーニングはこれまでのDuolingoアプリケーションでも行うことができました。しかし学んだことをいきなり現実世界で試すというのはいろいろと難しいものでしょう。そういうときに、わたしたちのチャットボットが便利にかつ有効に機能すると思うのです」。

今のところはテキストベースのやり取りしかできない。しかし音声対話も行えるようにしたいと考えているそうだ。

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(翻訳:Maeda, H

Wikipediaの上ではボットたちが毎日のように喧嘩している

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ボットはWikipediaの便利なツールだ: 彼らは編集結果をアンドゥーする破壊行為を見つけ、リンクを加え、人間のご主人様が命じた面倒な仕事をこなす。でも、彼らのような自動化されたヘルパーたちですら、争いに巻き込まれ、同じ記事の上でお互いに、書いたり消したりを繰り返す。中には、長年続いている抗争もある。

それは必ずしも、本格的な戦争ではない。むしろ、家庭で繰り広げられる、エアコンの温度設定をめぐる争いに似ている。誰かが70度(華氏)にセットする。次の日にルームメートが71度にセット。翌日70に戻す。また71にされる。その繰り返しだ。必ずしも緊急の問題ではないが、オックスフォード大学のアラン・チューリング研究所(Alan Turing Institute)の研究者たちによると、それでも研究に値する。彼らは、単純なボットでも予想外の対話的行為に及ぶことがある、という。

彼らは10年間にわたる編集履歴を調べ、ボットがやることは、いろんな点で人間がやることとは違う、ということに気づいた。

ボットたちは機能が単純だから、自分がやってることの意味を知らない。2体のボットが長年にわたって、同じ箇所のアンドゥー/リドゥーを繰り返していることもある。その記事はいつまでも更新されず、ボットが互いに相手がやったことをキャンセルしているだけだ。人間の場合は、ミッション意識があるので、互いに相手を消し合うことはなく、一人の人間が他人の仕事の数百箇所を変えても、何も言われないこともある。

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English Wikipedia is by far the largest, and has the most total, but Portuguese bots reverted more often.

ボットが互いに相手の編集結果を消す/元に戻す行為は、国によって激しさが違う。10年間で、ドイツのボットは比較的礼儀正しく、お互い消し合う行為は、ボット1体につき平均約32回だった(1年平均3.2回)。逆に激しいのがポルトガル、ボット1体あたり188回やりあっている。それが何を意味するか、その解釈は読者にお任せしよう。

結局のところ、このような些細な小競り合いは、重大な結果には行き着かない。しかし研究者たちによると、それは、Wikipediaがとても注意深くコントロールされている環境だからだ。でも、少人数のお行儀の良い、公認のボットでも、抗争はつねにあり、それらは往々にして複雑、そして変化が激しい。野放しの環境では、もっとひどいだろう。研究者たちは、これは人工知能の分野の人たちにも参考になるはずだ、と述べている:

互いの相違を管理でき、不毛な抗争を避け、社会的かつ道徳的に許せるやり方で仕事ができる協力的ボットを設計するためには、何がどうやって、ボット間の対話的行為〔抗争など〕の契機になるのかを理解することが、きわめて重要である。

研究報告書“Even Good Bots Fight”(善良なボットでもファイトする)は、Arxivで無料で入手できる

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

営業を支援するデータアナリティクスSlackボットでブレークしそうなTroopsが$7Mを調達

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今の世界は営業(セールス、売ること)で成り立っている。ぼくの(そして同僚たちの)のまわりでは、ほぼ毎日、CRMがすべてを支配している。多忙な営業役員の人生を少し便利にするための融資やプロジェクトやアプリケーションが、そこらにあふれている。

そしてここでご紹介する最近登場したピンチヒッターは、大規模なCRMの最新のトレンドや、そのほかの“超ホットな”最新ビジネスツールが交差する場所にいる。

まだ知る人の少ないTroopsのプラットホームとボットは、無料で利用できる。同社のボットによるサービスは、Salesforceを統合して営業チームの情報ワークを助け、それらをSalesforceの難解なシステムに入力できるようにする。

それは、フロントエンドではSalesforceとGoogle AppsとSlackの統合、そしてバックエンドは同社自慢のデータ処理とアナリティクスの集まりだ。

投資家たちはすでに同社に、700万ドルをつぎ込んでいる。そのラウンドをリードした新しい投資家Felicis Venturesが、そのうちの300万ドルをコミットした。そのほかの新規投資家として、Aspect Ventures, Slack Fund, Susa Ventures, Flight.VCらがおり、これまでの投資家First Round Capital, Nextview Ventures, Chicago Ventures, Great Oaks Capital, Founder Collective, Vast Venturesらも参加した。

Troopsは営業のためのボットベースのサービスを、最初はSalesforce用として開始したが、ファウンダーのブログポストによると、今後はもっといろんなサービスにも対応していく、という。

今回得られた資金は、新製品開発とそのほかの新しい技術的な企画に充てられる。また、今後何千ものユーザーにサービス提供できるために、バックエンドの充実を図る。

“ぼくもVCをやるまでは、かばんを抱えて営業をしていた”、とFirst RoundのパートナーChris Fralicは語る。彼から見ると、Troopsの実力はすごい。“営業記録のシステムとしてはSalesforceと同じぐらい重要だ。それは、誰もが避けて通りがちな部分だけど”。

FralicがTroopsと付き合い始めたころは、同社は独自のメッセージングアプリやメールクライアントを作っていた。しかし、“彼らはすぐに、Slackの人気と将来性に気づいて、Slackのボット専門へと舵をきった”、とFralicは言う。

TroopsのSlackボットの最大の成功要因は、Fralicによると、見込み客に電話をするタイミングとその電話の内容(話題)を教えてくれる機能だ。その機能をSlackに統合したことが、より使いやすいサービスにつながっている。

“Troopsの特長は、AIをボット化したことにある。それがとても便利だから、今、人びとが集まり始めている”、とFralicは語る。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

自然言語によるチャットボット技術を提供するAngel.aiをAmazonが買収

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昨日(米国時間9/19)はGoogleが、会話によるインタフェイスを提供するAPI.aiを買収したが、チャットボット方面の人材を求めている大手テク企業はGoogleだけではなさそうだ。本誌TechCrunchが得た情報によると、Angel.ai(元GoButler)が、少なくともその一部が、Amazonに買収された。

そのeコマース巨大企業によると、同社は確かにAngel.aiの協同ファウンダーでCEOのNavid Hadzaadを社員として迎えた。スポークスパーソンは曰く、“NavidがAmazonで仕事を始めたことを確認する。その初日は昨日(米国時間9/19)だった。現時点ではこれ以外に共有すべき情報はない”。

LinkedInで確認するとHadzaadの新しい職務は: “Head of New Bot Products at Amazon”だ。Amazonにおけるボット製品担当、と明記されている。Angel.aiの社員も数名Amazonに入り、またAngel.aiの技術やデータも買収の対象になったようだ。

Angel.aiは2015年の7月に、シリーズAで8百万ドルを調達しているが、今回の買収が投資家に大きなリターンをもたらすことはなさそうだ。そのラウンドをリードしたのはGeneral Catalyst Partners、これにLakestar, Rocket InternetのGlobal Founders Capital, Slow Ventures, BoxGroup, Ashton KutcherとGuy OsearyのSound Ventures, そしてCherry Venturesが参加した。

GoButlerはユーザーが何でもリクエストできる仮想アシスタントをローンチしたが、その後何度か方向性を変えて、今のAngel.aiの形…自然言語技術をサードパーティデベロッパーに提供…に落ち着いた。

Angel.aiのCEO Hadzaadがかつて言った“会話型コマース”を、Amazonも指向しているようだから、そのためのチャットボット技術者が欲しかったのだ、と思われる。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

「ボット倫理」が問題になるのはこれから

The meeting of the toy of the robot of the tinplat

【編集部注】著者のAmir ShevatはSlackの開発者リレーションの責任者。

ボットは私たちの生活の一部になってきている。朝目覚めると、私はAlexaにブラジルのサンバを再生するように伝え、Amyにミーティングのセットアップを任せ、Slackで現在の状況とレポートを知る。ボットビルダーたちと同様にユーザーたちも、ボットが私たちの生活の不可欠な一部であることを理解し始めている。しかし、これらの新しいハイテク友人たちを支配するルールは何だろう?

所有権

人びとが訊ねるべきでありながら、結局訊ねることのない1つの大きな質問は、「このボットは私をサーブしているのか?あるいはサービスプロバイダーをサーブしているのか?」というものだ。言い換えれば、「このボットは私の関心を中心に振る舞っているのか、それとも他の誰かの関心が中心にあるのか?」ということだ。食品注文ボットは高価だったり/低品質だったりするアイテムを推薦してくるのか、あるいは最適価格の高品質食品をお勧めしているのか?人事部(HR) ボットは私をサーブしているのか、それとも会社なのか?保険ボットは保険金請求を行おうとする私を手助けしてくれるのか、それともそれを妨害しようとしているのか?

知的財産権の問題も存在している:ボットによって作られた、あなたの写真をコラージュに仕立てた作品/写真は、誰が所有しているのか?あなたのショッピングの嗜好を所有しているのは誰なのか?

パーソナルアシスタントボットはユーザーの立場でヒントを出し、一方業者代理ボットに話しかければ、業者の立場でヒントが出されてくる。ユーザーとサービスプロバイダの違いは常に明らかとは言えず、またしばしば想定もされなければ、考えられることもない。GmailやFacebook上の写真を考えてみよう ‐ 誰がそのデータを所有しているのか?同じ質問は私たちボットにも向けられる。

私の所有権に対する立場は – 私はユーザーによる所有権に意味がある場合もあれば、サービスプロバイダーが所有権を明確に主張できる場合もあると考えている。

鍵となるのは、誰が何を所有していて、どれが利用者の選択によって提供されているサービスなのかが、明確で透明であることだ。

プライバシー

所有権がどうであるかに関わらず、プライバシーの問題が存在する。あるボットは、情報を他のボットや人間の監督者と共有することができるのか?情報は匿名化されるべきか?ユーザーは忘れられる権利を持っているのか?基本的に、ユーザー/ボット間に機密保持契約はあるのか?

プライバシーに対する私の立場は ‐ 特に断りのない限り、ボットは暗黙的にあなた個人のプライベートな情報を機密として扱うように委託されたものと考える(Chris Messinaは、法執行機関の行為や緊急避難の際には幾つかの例外があることを指摘してくれた)。透明性も同様に鍵となる。Slackにボットを投入する際には、私たちは開発者に対してプライバシーポリシーを作成し、公表することを要求している。

一般的に ボットビルダーは、ユーザ情報を可能な限りプライベートな状態に維持する必要がある。

広告のためのデータの使用

これは、プライバシーと所有権のサブセットであり、かつ議論の対象として非常に重要なトピックである。ボットビルダーたちは、今もまだボットを収益化する方法を模索しているならばボットは広告を配信することはできるのだろうか?広告を最適化するために、直接またはAPIを介して、ボットはあなたの提供したデータを使用することはできるのだろうか?

広告に対する私の立場は – 私は、ユーザーに利益をもたらす強烈で明示的な目的がないかぎり、ボットは広告を表示すべきではないと考えている。例えB2Cプラットフォームに限ったとしても。私は ボットが、新しいトラッキングピクセルになるところを見たくない。ボットは、明示的にそうするように指示されない限り、何かをクリックして購入するようにユーザーを促すべきではない。

罵倒と共感

このトピックは、おそらく独立した記事を必要とするだろう。ボットの会話特性のために、彼らははるかに罵倒の対象になりやすい。Botnessと呼ばれるボットビルダーの集会では、ほとんどのボット開発者が、人びとはあらゆる種類の罵倒を試みると報告している。ボットを呪う言葉を投げつけるとことから実際にボットに被害を与えるところまで。

これは重いトピックであり、双方向の課題である。

ボットは罵倒対象なのか?

ボットは他の物体と同じようなものなのか?彼らは、現代社会の新たな「サンドバッグ」なのだろうか?ボットは人間にとって呪いと罵倒の対象なのだろうか?

ボットの罵倒に対する私の立場は ‐ 「罵倒できる」ことと「罵倒する」こと、私は両者に微妙な違いを観る。少なくともAIが個性と感情を手に入れるまでは、あなたは本当の意味でボットを罵倒することは「できない」。 ボットは気にもせず、あなたの呪いの言葉も、ユーザーが入力しがちな他のちんぷんかんぷんな文言と一緒にフィルタリングされるだけだ。一方私は社会として、私たちはボットを罵倒してはならないと思っている。ボットを罵倒することで、人間は他人に対しても罵倒を行い易くなると考えている。これは明らかに困ったことだ。

人間はサービスを共感をもって扱うべきだ – 一般的に、共感を失うことは、人間にとって悪い傾向なのだ。開発者は如何なる罵倒の言葉も、無視するか、丁寧に包まれた反応で対応する必要がある。

ボットが人間を罵倒する必要があるのか?

ボットは人間にスパムを送ったり嫌がらせをすることはできるのか?ボットは人間に害を与えることはできるのか?あるいは口答えをしたり?ボットは呪いの言葉を投げ返す必要があるのか?ソフトウェアは、自分自身を守るための権利を持っているのか?

攻撃的なボットに対する私の立場は – 私はすでにボットは人間に害を与えるべきではないことを物語る事実について書いている;そこには、スパム、ハラスメント、その他の色々な形の痛みが含まれている。私はボットもAIも同じように、こうしたタイプの攻撃を正当化できる理由はないと考えている(セキュリティに関する議論はまた別にある)。また、私は正面からユーザーに答えようとすることが、人間の攻撃性を和らげる最も効果的な方法だとも思っていない;単純に「そのリクエストは処理できません」と返したり、人間の罵倒を単に無視したりすることの方が、より効果的なUXとなるだろう。

一般的に、私は会話インタフェース内の共感が、ボットのデザインと、よくあるベストプラクティスの柱の一つであるべきだと思っている。

ジェンダーと多様性

ボット女性のボットまたは男性のボットであるべきだろうか?人種的に多様なボットを持つ必要があるだろうか?宗教的に多様なボット持つ必要は?

ジェンダーと多様性に関する私の立場は – 私は、開発者は多様性についてとても真剣に考えるべきだと思っている。ボットは性別を持つべきではないと思うボット開発者もいる – これは英語圏の国では上手くいくかもしれないが、その他の多くの言語圏では上手くいかない。すべてのものが性別を持っている言語が沢山存在している – 物体や人物を性別に言及することなく参照することができないのだ。だから、英語ボットは「it」で良いかもしれないが、多くの国ではそうではない。

会話UIは人間に向かい合うことを想定しているので、ユーザーは性別スペクトル上のどこかにボットを位置づけようとする (他の多様性の属性も同様だ)。

開発者は何をすべきか?私は、もし可能なら、開発者はユーザーにボットの性別(およびその他の多様性の属性)を選択できるようにすべきだと思う。その例の1つが、x.aiのAmy/Andrewボット構成だ。

人間-ボット/ボット-人間のなりすまし

私が話している相手は、ボットなのか、それとも人間なのか?このボットは、人間のように行動しようとしているのか?ユーザーは、人間またはソフトウェアに話しかけているという事実について、知っているまたは気にすべきなのだろうか?

「人間なりすまし」に対する私の立場は – エンドユーザーにとって、人間に対して話しているのか、それともボットに対して話しているのかの区分がとても重要である主要なユースケースが、健康から金融まで沢山存在していると思っている。

一般的には、透明性がベストプラクティスだと考える。そして人間は(一般的なガイダンスとして)ボットのふりをするべきではない(その逆に関しても同じである)。

透明性と共感が、すべての問題への解決策

以上に挙げた課題のほとんどは、今日業界では対応が行われていない。もちろん悪い意図からそうなっているわけではなく、単に意識の欠如によるものだ。共感性と透明性を念頭に、開発者がこれらの問題に対処すれば、楽しく倫理的な体験をユーザーに提供することができるだろう。

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(翻訳:Sako)

FEATURED IMAGE: YAGI STUDIO/GETTY IMAGES

AIが人に代わって資産運用を行う時代

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【編集部注】執筆者のNathan RichardsonはTradeItのファウンダー兼CEO

これから5年後のAIに対する私たちの考え方は、2008年時点でのアプリに対する考え方と近いものになるだろう。そして、その頃には2016年がAIの石器時代のように映ることになる。

アプリは全く新しい消費者行動を生み出し、特にフィンテックの分野ではモバイルバンキングやシェアドペイメントを利用したサービスが誕生した。しかし、残念ながらアプリ経済はピークを迎えようとしているようで、アプリのマネタイズには各社が苦戦を強いられている。

アプリはそのうち過去のテクノロジー となり、AI時代の到来を告げることになるだろう。今日のボットは単なるアプリの代替品か目新しいおもちゃの域を出ず、まだロボットに話しかけているような気分がする。しかし、最終的にボットは今のアプリよりもスマートになり、まだ現実になっていないような全く新しい方法でアプリが解決できない問題を否が応でも解決することになる。

すこし未来に目を向けてみると、例えばボットやAIは消費者の当座預金口座を使ってお金を生み出すことができるようになる。

口座の中に余っている現金には、機会損失が発生しているということに気づいているだろうか?さらにその価値は毎日インフレで目減りしているのだ。逆に利益を生み出すためには、最小限の現金を当座預金口座に預け、残りを投資に回すという手がある。しかし、予期しない支出が発生すると突然残高が減ってしまうため、銀行の手数料やクレジットカードの金利で投資益が相殺されてしまわないよう、口座にはある程度余裕をもっておかなければならない。

私たちはAIの力を使って資産を増やしつつ不安を減らすことができるようになるのだ。

こう考えると勝ち目がないように見える。キャピタルゲインを見逃すか、口座残高とリンボーダンスをするしか選択肢がないのだ。しかし、将来的にはAIがこの葛藤を過去のものにしてしまうだろう。

AIが進歩していくうちに、消費者自身よりも彼らの支出に詳しいロボット会計士が誕生するだろう。ロボット会計士はユーザーの購買履歴を解析し、当座・普通預金口座、投資用口座、クレジットカード口座の間で現金を絶え間なく移動させる。そうすることで、当座預金口座の残高を、手数料をとられる恐れがないくらい十分、かつ投資益を逃すほどではない”スイート・スポット”に常に保つことができるのだ。

現状スイート・スポットをみつけるのには時間がかかる上、消費者の不安を誘発しやすい。しかし、そのうちロボット会計士は、いつユーザーが散財するかや、いつ車を修理する必要があるか、どの時期に電気代が上昇するかなどを感知することができるようになる。さらには、最低預金残高を下回って銀行へ口座維持費を支払ってでも、クレジットカード口座にお金を残しておいた方が良いといった判断までできるようになるだろう。

手数料の低減や収益の最適化というのはAIがなくとも実現できるが、そこまで上手くは機能しないだろう。AIは、過去の消費傾向やさまざまな金融機関の手数料のほか、数えきれないほどの情報をもとに複雑な判断を下すことができる。ロボットが計画をたてるからユーザーは何もしなくて良い、ということこそロボット会計士が便利だと感じる上での重要なポイントなのだ。

ロボット会計士は全ての情報を考慮し、ユーザーの投資益を最大化しながら、全体の手数料を最小化するようになる。つまり、私たちはAIの力を使って資産を増やしつつ不安を減らすことができるようになるのだ。これは、アメリカ市民の60%がリタイア時の貯蓄目標を達成できそうにないと心配していることを考えると、素晴らしい偉業だといえる。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

ボット製作プラットフォームのDexterが230万ドルのシード資金を調達 リード投資家は楽天ベンチャーズ

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チャットボット構築プラットフォームを展開するDexterがシードラウンドで230万ドルの資金を調達したことを発表した。同社はbetaworks出身のスタートアップだ。本ラウンドのリード投資は楽天ベンチャーズで、Social Startsとbetaworksもラウンドに参加した。

Decterのプラットフォームでは、手間のかかるインフラストラクチャーを構築することなしに統合ベースのアプリを製作することが可能だ。「ブロック」を組み合わせていくことで、EメールやSlack、Facebookメッセンジャーなどと統合されたアプリを簡単に開発することができ、天気やスポーツの試合の結果を知らせてくれるチャットボットなどを製作することが可能だ。

例えば、広告マーケティングのSS+KはDexterを利用してFBメッセンジャーで動作する「チャットボット版のドナルド・トランプ」を製作した。ユーザーがボットに質問をすると、実際にトランプ氏が発した言葉を引用して質問に答えるという仕組みだ。このボットはBFF Trumpと呼ばれている。

他にも面白い例として、Fatherly.comが開発した「おやじギャグボット」などがある。

オープン・プラットフォームのDexterでは、他のディベロッパーが開発したモジュールを利用することが可能だ。独自のモジュールを一から製作することもできる一方で、既存のモジュールを利用してアプリを構築することもできるのだ。

Dexterは約一年前に開催されたbetaworks主催の「Hacker-In-Residence」で正式にローンチした。

それ以降、プラットフォームを利用して送られたメッセージの数は100万通以上にものぼる。

創業者兼CEOのDaniel Ilkovichは、Dexterのビジネスにおける最大の挑戦はSlackやFacebookメッセンジャーなど、既存のメッセージング・プラットフォームが進化するスピードに遅れずに変化し続けることであり、それと同時に、ディベロッパー以外の人でもアプリの開発に参加できるようなツールを提供していくことだと話す。

Dexterの詳しい機能については、同社の公式ページをチェックしてほしい。

[原文]

(翻訳: 木村 拓哉 /Website /Twitter /Facebook

Skypeに新たなボットが導入されるもまだまだ改善の余地あり

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昨日(米国時間8月3日)のWindows 10に統合されたSkypeの新バージョン発表に続き、Microsoftは本日「Skypeボット」で利用できるボットコレクションの拡大に関する発表を行った。Skypeボットは、自動のチャットアシスタントで、今年のはじめにプレビュー版が一部地域で公開されていた。新たなボットの中には、旅行の手配や、チケット検索、他のアプリやサービスの情報を表示できるもののほか、エンターテイメント機能を備えたものまである。

今年の春の発表を見逃した人のために説明すると、Microsoftは毎年行われているBUILDカンファレンスで、初めてSkypeボットとボットプラットフォームのデモを行ったのだ。デモの中では、宿泊施設の予約や、カレンダーへの情報追加、タイピング時間を節約するための予測入力などのタスクをこなすことができるバーチャルアシスタントと、Skypeユーザーがどのように交流できるかというのが披露されていた。

しかし、当初ローンチされたボットは、検索エンジンから情報を引っ張ってくるBing関連のものや、ウェブサイトの要約、画像検索機能を持ったものなど、とてもシンプルなボットばかりで、もちろん便利ではあるが、ものすごく欲しくなるようなものではなかった。

本日のボットコレクションの拡大によって、ユーザーに課されたタスクの一部を本当に肩代わりすることができるようなボットの登場に一歩近づいたこととなる。

例えば、Skyscannerボットは、個人・グループ航空券を検索したり、価格・経路に関する情報を表示したりすることができる。さらには、航空券の予約をするためのリンクも生成可能だ。

実は、Skyscannerはこれまでにも「ボット風」のサービスを開発していた。Skyscannerは、AmazonのAlexa用の音声検索ツールを開発した最初の会社であり、最近ではSkypeのライバルであるFacebook Messenger用にフライト情報検索ボットを開発していたことを忘れてはいけない。

別の旅行関連ボットがHipmunkから発表されており、これはフライト情報の他にも、価格帯や旅行のテーマ、「旅行に伴う苦しみ」の許容度(待ち合わせ時間の短い旅程を組んだり、飛行時間の短いフライトをみつけることで、ユーザーの苦しみを最小化するというのが、Hipmunkの宣伝文句だ)など、ユーザーの好みに応じてホテルやその他の旅行情報を提供してくれる。

このアプリはよくできていて、複数あるフライトオプションの詳細を確認するためにスワイプしていったり、金額のアラートを設定したりと様々な機能を利用することができる。さらに、ユーザーが聞かなくても、フライト情報を検索するとオススメホテルの情報が表示される(これに関しては便利だと感じる人と邪魔だと感じる人がいるだろう)。さらに、質問(『都市Xと都市Yの間を移動するのに良い時間帯』や『ニューヨークから行ける海辺の旅行地』など)に応じて表示される最後のパネルをクリックすると、他の旅行情報やアドバイスを確認することができる。

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その他の新しいボットの中には、イベントやコンサートのチケットを検索できるStubHubボットや、他のアプリやサービスの情報をSkypeのチャット上に表示することができるIFTTTボットなどがある。IFTTTボットは、ニュースアラートや、ソーシャルメディア上でのメンションに関する通知、他サービスの通知の表示、天気予報の引用、メールの受信通知など、気になる事項をいくつでもIFTTTの「レシピ」に登録することで、さまざまな用途に使うことができる。

最後に紹介する新たなボットが、エンターテイメント用のボットSpockだ。ご想像の通り、このボットを使えば、USSエンタープライズの副司令官とバルカン人について話すことができる(このボットで生産性は向上しないが、たまには仕事に飽きてしまうこともあるだろう)。

旅行やチケット検索ボットは、以前発表された汎用Bingボットよりは便利であるものの、大きな意味でのボットの展望を叶えるにはまだ少し力不足だ。

理想的な旅行ボットであれば、クリック可能なリンクを表示する代わりに、フライト候補を提案して、ユーザーが選択肢を絞るサポートをした上で、最終的には実際にユーザーの代わりに航空券の予約をしてくれるだろう。さらにはカレンダーに自動でフライト情報を追加し、予め設定されたコンタクト先(上司や配偶者など)にEメールを送ってくれる機能も備えていなければならない。

チケット検索ボットであれば、(ニューヨークとロサンゼルスから選べといった)大都市の会場を提案するのではなく、ユーザーの住んでいる場所をまず聞くべきだ。さらには、ランダムに近くのイベント情報を表示するのではなく、どのようなイベントにユーザーが行きたいのかをまず質問し、野球の試合を見たいのか、コンサートへ行きたいのかなどの具体的な好みを把握することも必要だろう。

私たちはまだそこにはたどり着いておらず、それが理由で今日のボットは「面白いが持っていなきゃいけないわけではない」という域を出られないでいる。結局のところ、現在のボットでは、ユーザーが自分でウェブサイトを訪れて必要な情報を検索する方が早く、ものによっては自分でやるよりもずっと遅かったり、フラストレーションが溜まるものもある。

なお、この記事で紹介したボット以外にも、ゲームや占いができるボットのほか、自動バーチャルアシスタントのAva Zoomや、画像解析機能を備えたCaptionBot
、Foursquareのボットや、スケジュール管理が行えるFreeBusyなど、最近Skypeがディレクトリに追加したボットは他にもある。

Microsoftは、現在同社のプラットフォーム上に3万人以上のボット開発者がいると語り、この新しい分野への興味を示している。

新しく発表されたボットの数々は、Andoird、Windows、iOS、Macそしてウェブ版のSkypeボットのディレクトリ上に既に登録されている。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

ローンチ5年で10億ユーザー、Facebookメッセンジャーの過去と未来

How Facebook Messenger clawed its way to 1 billion users   TechCrunch

Facebookがメッセンジャーのダウンロードを強制させるという賭けに成功した。その反動にかかわらず、20ヶ月の間にメッセンジャーはユーザー数を倍にし、開始から5年でユーザー数は10億人に到達した。メッセンジャーはFacebookや、Facebookが買収したWhatsApp、GoogleのYoutubeなどで構成される10億ユーザークラブに参加した。

メッセンジャーアプリは他にも印象的な記録を残してきた。毎月170億枚の写真が送信され、ユーザーと企業の間で10億メッセージのやりとりがなされている。また、毎日3億8000万のスタンプと2200万のGIFが送信されている。そしてVoIP電話全体の内10%はメッセンジャー経由とのことだ。メッセンジャーが新しく開設したチャットボットのプラットフォームには現在1万8000チャットボットが存在し、2万3000のデベロッパーがFacebookのWit.ai ボットエンジンに登録してきた。

ユーザー数10億人という節目となる記録はFacebookが企業、デベロッパーのメッセンジャーのプラットフォームへの関心を引くことを容易にする。メッセンジャーの普及が進むことは次のようなことを意味する。新たにメッセンジャーを利用し始めた他のユーザーの存在が、未だにSMSやメッセンジャーの競合サービスを使っている人にメッセンジャーをより便利なアプリだと思わせるのだ。

Facebookのようなネットワーク効果を持っている企業は他に類を見ない。

Facebook Messenger Team

David Marcus氏とマーク・ザッカーバーグ氏がロゴをかたどったメッセンジャチームの万歳をリードしている

メッセンジャーは元Googleの社員が起ち上げたチャットアプリBelugaを元に名前だけ変えて始めたものだ。FacebookはBelugaを2011年の3月に買収している。「10億人ものユーザーを獲得するなんて想像もできませんでした。しかし、それを実現したいとは思っていました。それが私たちのビジョンでした。世界中の人々をそのようにつなげたかったのです」Beluga共同創業者のLucy Zhang氏はそう語る。

「みんなが飛び上がってこのことを祝うと思っていますよね」Facebookの現在のメッセンジャーの責任者David Marcus氏はそう語る。「しかし、サービスをユーザーに提供すること、正しいものを作ること、問題なく運用すること、人々の日々の生活を支援することなど一層の責任が発生します」。

すべての人がメッセンジャーのユーザー数10億人突破のお祝いに参加できるようにしている。風船の絵文字をFacebook上で送ると画面上でユーザー数10億人突破を祝うライトアップを見ることができる。

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ユーザー数10億人への道のり

Zhang氏とMarcus氏は、派手な機能、利用のしやすさ、地味だがパフォーマンスの向上につながることまでの全てに継続的なイテレーション(分析、設計、開発、テストのサイクルを回すこと)を行ったことがメッセンジャーの発展につながったと語る。以下に時系列でメッセンジャーのこれまでの変遷を紹介する。

Beluga

Belugaは「グループ」ではなく「ポッド」を持っていた

Belugaは「グループ」ではなく「ポッド」を持っていた

2010年、グループチャットが人気を獲得し始めていたが、SMSはひどい有様だった。同年に開催されたTechCrunch Disruptのハッカソンで生まれたGroupMeは勢い良く成長した。しかし、GroupMeはネイティブアプリではなくコストの高いSMSに依拠していた。

2010年の7月、Belugaはデータ通信のチャットに焦点を当てて設立され12月までに大きく成長した。「友達のそばにいたいという私たち自身の希望、要望から生まれました」とZhang氏は語る。その時、Facebookチャットはどちらかというと非同期のメッセージサービスで、Facebookアプリの中に埋もれていたために快適さに欠けていた。Facebookはメッセージに特化したアプリをリリースする機会を得るためにBelugaを2011年の3月に買収した。

 メッセンジャーのファースト・バージョン

「メッセンジャーのファースト・バージョンをリリースするのに3、4ヶ月を費やしました」とZhang氏は回想する。その当時、メッセンジャーのチームメンバーはZhang氏、共同創業者のJonathan Perlow氏(現Facebook社員)、Ben Davenport氏、そしてエンジニア1名、プロダクトマネージャー1名、デザイナー1名だった。

メッセンジャーは2011年の8月にサービスの提供を開始した。デスクトップ、モバイルなどの異なるプラットフォームでメッセージを送受信することができるものだった。写真と位置情報の共有以外の今でもメッセンジャーにあるいくつかの機能を備えていた。その1年後には既読機能を実装し、まるで顔を合わせて話しをしているかのようなチャットへと変化した。

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左がメッセンジャーファースト・バージョン、右が現在のメッセンジャーのデザイン

Facebook本体のアプリから分離した初めてのアプリとして、メッセンジャーアプリは1つの重要な機能に特化したシンプルなモバイルプロダクトの価値を証明した。

使いやすくなったメッセンジャー

Facebookはメッセンジャー普及のために戦略を練ってきた。ユーザーがやりたいコミュニケーションができるようにフレキシブルさを追加してきた。2012年から2013年までの間に、メッセンジャーを利用するのにFacebookアカウントを必要とする条件を撤廃し始めた。Facebook友達でない場合、電話番号を利用してSMS経由で連絡を取ることができるようにした。VoIP電話をコミュニケーションツールとして当たり前のものとするための賭けに打って出た。メッセンジャーのデザインは本元のFacebookとは異なり、操作スピード、シンプルさを追求するためより洗練されたものとなった。

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メッセンジャーはデザインの一新でアイデンティティーを得た

アプリダウンロードの強制

How Facebook Messenger clawed its way to 1 billion users 2TechCrunchメッセンジャーのサービス提供開始から3年間の成長は停滞していた。しかし2014年4月、Facebookがユーザー数2億人到達を発表する少し前、同社の高圧的な告知によりコミュニティーがざわついた。その告知とはFacebookアプリからチャット機能をなくし、代わりに強制的にメッセンジャーをダウンロードさせるというものだった。この強制の言い分としてはメッセンジャーアプリによって、ユーザー間でのやり取りがより早くなり、メッセージを見逃すことも少なくなるということだった。

ユーザーは腹を立てている。Facebookがスマホのホームスクリーンを占有しようとしているとしてFacebookを責めた。ユーザーは1つのアプリでも十分快適だったのに、なぜFacebookのアプリを2つも利用しなければならないのだろうか?メッセンジャーの平均的なレビューは星1つとなったがAppストアでダウンロード数がトップにもなった。

Facebookは膨らみすぎたアプリからメッセンジャーを解放することで、新たにメッセンジャーにたくさんの機能を追加することができるようになった。そして結果的に、ユーザーもついてきたのだ。ユーザーはメッセンジャーを頻繁に使うようになった。もしメッセンジャーがFacebookアプリに埋め込まれたままだったとしたら、メッセンジャーを開く手間にストレスを感じるほどにだ。2014年の11月までにユーザー数は5億人に到達した。

スピードの必要性

さほど関心を集めなかったが、2014年の末にFacebookはメッセンジャーの大幅な技術的改良を実施した。数十億のメッセージがやりとりされる規模においては、ミリ秒の短縮はメッセージの送受信に大きな差を生み出す。私がここで説明する言葉より表現豊かに、メッセンジャーチームはユーザー間の送受信における遅延を減らすためのパフォーマンス、安定性に対して多くの時間を費やしたとMarcus氏は語った。Marcus氏はPayPalの会長を務めた人物で、Paypalを退任後に初めて取り組んだのがメッセンジャーのプロジェクトだった。

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ユーザーが送信したメッセージがどのような状況にあるのか分かりやすくするため、メッセンジャーはメッセージの横に小さなサークル(円のマーク)を設置した。サークルが空白の表示は送信中であること、空白にチェックマークが表示されれば送信完了、サークルに色とチェックマークが付けば相手に届いたこと、サークルにプロフィール写真が表示されると相手がメッセージを読んだことを示す。繰り返すが、これは小さなことかもしれないが、これによりSMSで発生していたようなコミュニケーションにおける曖昧さを排除することができた。それは2014年初めにFacebookがWhatsAppを買収した後からMessengerにとって問題となっていたことだった。

アプリとビデオ

2015年はメッセンジャーが単なるチャット以上の存在になった年だ。SMSを時代遅れなものとし、現代風のメッセンジャーを通してユーザーの生活を支えるように改良がなされた。ビデオがいたるところで盛り上がりを見せ始めていたが、ビデオチャットはFaceTime、GoogleHangoutsのような限られたプラットフォームのみだったところで、メッセンジャーはビデオチャットを開始した。Marcus氏はビデオチャットを実装したことがメッセンジャーが電話に代わる多機能なコミュニケーションツールになるきっかけになったとしている。

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メッセンジャーのプロダクト責任者Stan Chaudonovsky氏がビデオチャットを実演

FacebookはVenmo風の個人間で送金ができる機能をメッセンジャーに追加した。そしてF8デベロッパー・カンファレンスにおいてメッセンジャー・プラットフォームについて明らかにした。そのプラットフォームでは、Giphyのようなコンテンツを共有することを始め、最終的にUberの車を呼んだり航空会社のカスタマーサービスを受けることができるようになった。2016年内には、チャットボットのデベロッパーやニュースメディアもメッセンジャーに参加するだろう。また、Facebookはたらい回しにされ苛々させられる電話のカスタマーサービスの代わりにメッセンジャーを使うことを法人に提案している。

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メッセンジャー・プラットフォーム

 

有用であることが先、おもちゃではない

ユーザーがチャットボットに慣れ始めているところだが、世界中のユーザーがメッセンジャーを利用できるようにすることに再び焦点を当てている。「全ての人が電話を持っているように思いがちですが、世界のすべての国には当てはまらないのです」とMarcus氏は語る。

Marcus氏は、最近のメッセンジャーの成長の理由についてアカウントの切り替え機能を実装し始めたことを挙げる。一家で1台の電話を共有しているような発展途上国の家族全員が自分のアカウントでメッセンジャーを使うことができる。

メッセンジャーは電話番号の代わりとなるため、メッセージリクエストを実装した。これはユーザーが誰にでもメッセージを送ることを可能にし、知らない人からのメッセージはフィルタリングして別の受信箱へと選り分ける門番のようなものだ。新しくなったメッセンジャーではユーザ名、短縮URL、QRコードでよりシンプルにユーザー同士がお互いに見つけることができるようになった。
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メッセンジャーのこれらの特徴は、誰かと連絡するために任意の連絡先情報を必要とすることから、幅広く使われている名前だけでコミュニケーションができる世界への抜本的な転換を示す。良くも悪くも電話番号を聞くというような気まずい質問をする必要がなくなる一方、受信者は話したくない人をブロックすることも容易になる。

失速するSMSをついに葬り去ることに期待して、先日FacebookはAndroidユーザーがメッセンジャー上でSMSの送受信をできるようにした。今月7月にはFacebookはさらに高度なセキュリティが必要な送受信のためにエンドツーエンドの暗号化機能「秘密の会話」を実装した。

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メッセンジャーの未来

これらの着実な発展で、Facebookメッセンジャーは競合である他のモバイルメッセージアプリよりも一歩抜きん出ている。KakaoTalkは5000万人ユーザー、Kikは1億7500万人ユーザー、LINEは2億1800万人ユーザーだ。今のところ、メッセンジャーの最大の競合は、メッセンジャーが営業できない中国拠点の7億6000万人ユーザーを持つWeChatだ。そしてメッセージを送るためというよりは話題を共有したり、写真を送ることで人気のあるアプリ1日1億5000万人の利用ユーザーを持つSnapchatだ。

WhatsAppがいる中国を除く地域では、Facebookのメッセンジャーはチャット市場の覇権争いで優位に立つだろう(打たれ強いSMSを除く)。Marcus氏は以下の様に結論付ける。もともとのテキストメッセージのスタンダードを打ち壊すには、メッセンジャーを徹底的に普及させなければならない。ユーザーの友達が1人でもメッセンジャーを利用していないだけで、ユーザーをiMessageやAndroidのメールに引き戻してしまうからだ。

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Sheryl Sandberg氏とDavid Marcus氏

「1つのプラットフォームに話したい人がほとんどいる場合、電話番号は必要なくなります。名前で彼らを見つけることができるし、さらに多くのものを送ることができて、ビデオ電話も可能です」。Marcus氏は自信を持って、「メッセンジャーはこの世界にとって重要なコミュニケーションツールになりつつあると信じています」と言う。

 

現在、メッセンジャーが必要としていることに関して、Marcus氏は「一番必要なのは時間です。メッセンジャーに対して多くの人が持つイメージを変えなければならないのです。多くの人は、電話番号を持っていないFacebookの友達にメッセージを送る手段と考えています。10億人を超えるユーザーの考え方を変えるために多くのことをしなければならないのです。しかし徐々にですが、その方向に進みつつあります」と語った。

これまでの人類の歴史で、無料でここまで活発に多くの人がつながったことはない。10億人が名前とインターネットアクセスのほか何も必要なく、簡単にコミュニケーションを取ることができるのだ。歴史的に「恐怖」というのは分離や未知から発生する副産物であった。しかしメッセンジャーによって私たちはより簡単にお互いを知ることができるようになるのだ。

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原文

(翻訳:Shinya Morimoto)

 

会話型インターフェイスが未来のエンタープライズアプリケーションを牽引する

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【編集部注】著者のひとりであるNir Eyal氏は、書籍Hooked: How to Build Habit-Forming Products並びにプロダクトの心理学に関するブログの著者。もうひとりの著者であるLakshmi Mani氏は、Tradecraft.社のプロダクトデザイナーである 。

今後数年間のうちには、会話がソフトウェアに新たな命を吹き込むだろう – 特に夥しい数の知識労働者が毎日渋々使っている退屈なエンタープライズツールに。私たちがメッセージングに対して既に馴染みがあるため、会話型ユーザインタフェース(CUIs)はうまくいくだろう。最も技術的に複雑な会話さえ、会話として示されるとSMSを受信するような感覚で捉えることができる。

旧来のやり方のソフトウェアに比べて、会話型ユーザインタフェースは3つの利点を持っていて、私たちはこうした経験が広く伝わることにより、世間にある数え切れないオンラインサービスに刺激を与え、その再設計を促すだろうと考えている。会話型インターフェイスの可能性について説明するために、私たちはGoogle Analytics(もっとも広く使われていてかつ嫌われてもいるエンタープライズソフトウェアのひとつ)が会話型ではどのような見かけになるかの思考実験を行ってみた。

結局それは一体何のためにあるのか?

再設計に飛び込む前に、いくつかの基本的な問題を考慮しておくことが重要だ。エンタープライズソフトウェアとは何のためにあるのか?そしてユーザーのためにどのような仕事をするのか?

基本的には、エンタープライズソフトウェアとは、ユーザーが以下のような質問に対する答えを1つ以上見つけることを助けてくれるものである:

  • 重要なのは何か?(関連情報の抽出)
  • 次に何をすべきか?(意思決定を支援)
  • どのようにすればいいのか?(アクションをガイド)

まあこんなところだろう!全てのエンタープライズ・ソフトウェアがこの3つすべてを行うわけではないが、少なくともどれか1つは行う筈だ。Google Analyticsの場合には、ソフトウェアは1番目の質問に答えるために、情報を引き出すことに注力している。一方意思決定に支援に関しては軽く、そして次のアクションに対しては(ユーザーがGoogleアドを買うことを助けてくれること以外は)あまり助けにはならない。

興味深いことに、会話型インターフェイスは、私たちが今日使っているソフトウェアツールよりも上記の3つの質問のすべてに、より上手く答えてくれるのだ。

重要なのは何か?(関連情報の抽出)

現在のソフトウェアに見られるドロップダウンメニューやテーブル、関数やボタンなどを使って操作を行う代わりに、未来の会話型インターフェイスは、平易な言葉(英語)を使ってメッセージをやり取りすることが可能になる。会話型インターフェースを介して質問するだけで、ユーザーは探している関連情報を手にすることができる。

しかし利用者が自分の欲しいものを知らない場合にはどうなるのだろう?データの中に潜む貴重な洞察に関してはどうか?

Google Analyticsのような旧来のインターフェースを備えた現在のソフトウェアの場合には、アラートが画面の右上に現れて、(良くて)ユーザーを煩わせ、(悪ければ)無視される結果になる。Google Analyticsを開くと、データが満載の威圧的なチャートやグラフが目に飛び込んでくるが、そこから得られる洞察は少ない。これは一体何を意味しているのだろうか?ユーザーは危機的状況にあるのか?それとも全ては正常なのか?

今日の多くのエンタープライズソフトウェアと同様に、Google Analyticsにはチャートやグラフが氾濫している。

今日の多くのエンタープライズソフトウェアと同様に、Google Analyticsにはチャートやグラフが氾濫している。

こうしたものの代わりに会話型インタフェースを使用することで、Google Analyticsは、重要な情報が無視されず、よりわかりやすいものになるだろう。たとえば、下に示したモックアップでは、ユーザーに異変を通知している。ユーザのウェブサイトへの訪問者数にスパイク(急激な上昇)があったのだ。これはGoogle Analyticsのダッシュボードに表示されているものと同じ情報だが、ユーザーにはとても異なる効果をもたらす。

会話型インターフェイスは、ダッシュボードと同じ情報を提示することが可能だが、はるかに強力な効果を持つ。

会話型インターフェイスは、ダッシュボードと同じ情報を提示することが可能だが、はるかに強力な効果を持つ。

現在のダッシュボードは、データを送り出した後はユーザーが残りをやってくれるものと期待している。しかし、将来の会話型インターフェイスはまず洞察を提示し、必要ならばそれをデータで裏付けるのだ。ここではGoogle Analyticsの新しい顔であるChristinaが、会話を進めるためにユーザーを質問で促す様子に着目して欲しい。Christinaはボット、もしくは人間とボットのハイブリッドの可能性があるが、目的が達成される限りユーザーには関係がない。

次に何をすべきか?(意思決定を支援)

友人2人でコーヒーを飲んでいるときに、そのうちの1人がさらなる会話へ向けて、もう1人の関心事を推し量ろうと、適当な話題を振ることがある。おそらくは、子供達の最近の様子を尋ねたり、ビジネスの調子や、少しばかりの噂話。私たちは話す価値のあるものを見つけるために関心のアタリをつけるのだ。もし相手が何か他のことについて話をしたいと思っている場合に、頑固に一つだけの話題にこだわるのは、失礼というものだ。しかしそれは、現代のソフトウェアのやり方そのものなのだ。そいつは私たちの関心のない話題でこちらをうんざりさせ続ける。なぜなら、良い友人と違って、それは学ぶということをしないからなのだ。

しかし会話型インターフェイスは、普通のダッシュボードができないことをすることができる。それは傾聴し学習するのだ。提示された情報の離散的な断片に対するユーザの反応に注目することによって、ソフトウェアは、洞察が価値のあるものであったかどうかを記憶する。もしユーザーが提示した情報についての会話を継続した場合、システムはその重要性を学習し、将来似たような状況が起きたときには懸念を伝えてくる。しかし、もしソフトウェアが何も言ってこないならば、そいつは素晴らしい、アプリケーションにはとっては通知の節約であり、ユーザーの貴重な1日にとっては割り込みが1つ少なくなるということだ。

伝統的なダッシュボードとは異なり、会話型インターフェイスは、より適切な情報を提示することで多く使われるようになり更に洗練されていく。その結果より強力な意思決定支援ツールになるのだ。この概念は「stored value(蓄積価値)」と呼ばれ、習慣性のあるプロダクト(habit-forming products)を構築するための鍵なのである(Hook Modelを参照のこと )。

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また、会話型インターフェイスは全員の体験を向上させるために、他のユーザーからも学ぶこともできる。例えば、ChristinaがRedditからのトラフィックスパイクが来ていると指摘するとき、彼女は単に事実を提示しているだけでなく、考慮すべき選択肢も同時に提示する。インテリジェントな選択肢を提供するため、Googleは他のユーザーの振る舞いを利用して、次のステップの最高の選択肢を提示することができる筈である。

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この例では、アシスタントはRedditを効率的に利用する方法を学習するためのリソースを提案している、そこで行なわれている会話への参加を促し(ここまでが1番目の会話)、また当サイトにとどまるユーザーの数を増やすために、サイトの高い直帰率(バウンスレート)を改善する提案も行っている(2番目の会話で提案しても良いかを聞き、3番目の会話で実際の提案を行っている)。

ユーザーが、次に何をすべきかを知ることを手助けすることには、大変な価値がある。次の行うべきアクションが容易であればあるほど、ユーザーがそれを行う可能性は高くなる。会話型インターフェースは次の最善手を容易に提示する、これによってユーザーが次に何をすべきかを探したり悩んだりする時間を節約することが可能になる。ユーザーとの過去の会話や他のユーザーのアクションからの情報を組み合わせることで、新しいインターフェースは「次に何をすべきか?」の問いに答えるためのよりよい意思決定支援ツールを提供する。

どのようにすればいいのか?(アクションをガイド)

さて、ソフトウェアは重要なものをピックアップし、ユーザーが判断すべきオプションも提示した。いよいよ、ユーザーの行いたいアクションを助ける番だ。残念なことに、実際に現在のソフトウェアでタスクを完成させようとすると、異なる画面やサイト上のソリューションのごった煮を上手にナビゲートしていく必要がある。会話型インターフェイスにはこうした煩わしさをすべて取り除ける可能性がある。

例えば、上の例題では、ユーザーがChristinaにサイトの高い直帰率改善に対する助言を求めると、彼女はRedditからの訪問者を歓迎するカスタムランディングページを作成することを提案している。そのようなページをセットアップすることは、経験者にとっては子供騙しのようなものだが、初心者にとっては価値を上回る苦労となるかもしれない。

ありがたいことに、会話型インターフェイスは、様々な方法を使って背後で仕事を終わらせてしまうことが可能だ。アシスタントは、アップグレードされたサービスを提供し、社内の専門知識を招集したり外部のベンダーを組み込むことができる。ユーザーが新しいソフトウェアの使い方に慣れることを待つ代わりに、アシスタントは既にやり方を知っている人やボットに仕事を任せるのだ。重要な点は、ユーザーが使い方を自分でなんとかマスターする(多くの人がやりたがらない)ことを要求する現在のエンタープライズソフトウェアと違い、会話型アシスタントは最も困難の少ないパスを見つけることによって仕事を完成させることができるということだ。

ここでも、会話型インターフェイスは、サイトに変更が行われるたびに価値を蓄積していく。各ページが構築あるいは試行されるたびに、Google Analyticsはサイトオーナーの目標とこれまでの結果を更に学習する。そのことによって改善の提案が容易になり、やがて自身も必要不可欠なサービスとなっていくのである。

ダッシュボードに永遠の別れを!

様々な職場調査によれば、私たちは1日のうち20から30パーセントを情報の検索に費やしていることが明らかになった。扱いにくいエンタープライズソフトウェアを突き回す時間と労力が少しでも減るだけでも、全体としては無視できないほどの配当がもたらされることだろう。

すべてのユースケースに対して理想的だとは言わないが、会話型インターフェイスには、現状のエンタープライズソフトウェアを上回る利便性がある。基本的に、重要なのは何か?次に何をすべきか?どのようにすればいいのか?という問いかけに答えようとするいずれの場合でも、より優れた働きをしてくれるのだ。

こうした、よりユーザーフレンドリーなインターフェースを採用することで、将来のソフトウェアには、企業に蔓延するダッシュボード疲れを癒すチャンスが与えられる。また単に新しいツールを習得する時間がない人にとって利用可能な、ソリューションの提供を約束するものだ。

エンタープライズソフトウェアの未来は、複雑なダッシュボードと退屈なビッグデータの塊ではない。仕事を楽しくする良くデザインされたインターフェイスこそが来るべきものである。ソフトウェアは良い友人のようでなければならない – 求めよ、さらば与えられん。

このエッセイの初期の版を読んでくれたAriel JalaliShane MacAmir ShevatそしてMatthew Wooに感謝する。

[ 原文へ ]
(翻訳:Sako)

ボットで満ちた未来における人間の役割

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しかし、ボットが究極の利便性を提供するこのような近未来の世界でも、人間の助けはまだ必要とされるのだろうか?

FacebookのCEOマーク・ザッカーバーグは、最新のF8カンファレンスで、将来の商取引きにおけるボットの位置付けに関して大胆な発表を行った。(無料ダイヤル)1-800-Flowersを例として使い、将来販売プロセスにボットチャットが統合されることにより、顧客が実際に1-800-Flowersをダイヤルして人間に話をする必要はなくなると主張したのだ。理論的には、ボットのサポートをチャットで使用することにより、売り手と買い手のやり取りを簡単に済ませ、消費者をセールスに引き寄せることが可能になる。顧客は電話でのやり取りよりもチャットの方をはるかに好む、というザッカーバーグの主張は正しいかもしれないが、とはいえその好みがロボットとのチャットであるという結論に飛びつく必要はないだろう。

これまでもずっとそうであったように、人間とのやり取りこそが、高品質の顧客体験には不可欠だからだ。Facebookもこの考えを支援していて、チャットの最中にボットから人間への切り替えの支援を行ういくつもの会社と提携している。FacebookのCOO、シェリル・サンドバーグは「…単純に言って、私たちはボットが販売プロセスで人間を置き換えることができることを、実際に想像させ得るような技術を持っていないのです」と公の場で述べている。

では、ボットが支配する未来における人間の役割とは何だろう?

カスタマーサービスに電話をするたびに自動応答の声(IVR)を聞かされて感じたフラストレーションを覚えているだろうか?ボットチャットはこれと同じ立ち位置だ。そしてもし毎回ボットが失敗したらどうなるかを想像して欲しい、結局実際の生きている顧客サービス担当者と話すことになる − 振り出しに戻る、というわけだ。

私たちはこの先、ボット技術の指数関数的な広がりを目にすることになる。しかし顧客との良い関係を保つための人的資本の確保は避けられず必須である。

人工知能が長い道のりを歩んできたことは間違いないが、そこで達成された進歩にもかかわらず、チューリングテストをあらゆる点で満足するボットの実現からは程遠い。ボットは、人間との会話のかなりの部分を扱うことができるものの、間違いなく混乱したり失敗する場合がある(特にあるトピック/領域から別のものに切り替える場合に)。こうした状況では、取引を完了させるために、ボットから人間への引き継ぎが行われる。

現在話題が盛り上がっているものの、ボットは新しいものではない。AOL Instant Messengerが大流行した1990年代後半に、私はSmarterChildとチャットしたことを覚えている。SmarterChildの中核は本質的には初期バージョンのボットだった。学校や生活、そしてスポーツについて、まるで実際の友達と行うようなチャットを行うことができた。SmarterChildは(ほとんどの時間)素晴らしい仕事を果たして、とても洗練されているように見えていた。しかし、公平のために述べれば、チャットの大半は12歳の子供達の側が主導していたのだ。

なので、現在本当に問うべきは、ボットは真に未来を形作るものなのか、あるいは私たちが幼かった頃にあったものと同様の誇大宣伝に終わるものなのかである。

この問いに答えるためには、ボットの背後にある技術を理解することが重要だ。過去20年間で私たちはコンピュータ技術とソフトウェア開発に驚くべき進化と進歩を見てきたが、ボット技術は基本的には2つのカテゴリに分類される、シンプルなロジックツリー(SLT)に基づくものと、自然言語処理(NLP)または機械学習(ML)に依存しているものだ。

SLTに基づくボットは、情報を収集し利用者へと戻すために、旧来のロジックツリーを利用している。例えば、保険ボットは理想的なプランを決定するために、あなたにいくつかの質問を投げかける。もしあなたの答えが、ボットが予想していたものと一致した場合には、そこで得られる経験は引っかかりのないシームレスなものになるだろう。しかし、もしあなたの答が、ボットデータベースの中にあらかじめ予想され保存されているものと異なるものだった場合には、おそらくそこで行き詰まりになってしまうことだろう。もし運が良ければ、用件を完了させるために、その先は人間へと引き継がれることになるだろう。しかし、もしそうでなければボット地獄へ落ちて終わりだ。現在ほとんどのボット技術がSLTに依存している。

NLPとMLボットの場合には、特定の質問に対する直接の回答を必要とするのではなく、利用者からの入力に含まれるキーワードやフレーズをピックアップして、より話し上手な者のように振る舞うことが意図されている。理論的には、このボットカテゴリは良い選択肢のように聞こえる。このタイプのボットの例としては、AppleのSiriとAmazonのAlexaが挙げられる。

天気について答えたり冗談を言うような単純な仕事をSiriとAlexaはうまくこなしているが、複雑や機能や長い命令に対応するためには、まだ長い道のりを歩まなければならない。

相手をしているボットがSLTであろうとNLPであろうと、最後は実際の人間と話をする必要性がある状況に落ち着く可能性は高い。SLTのボットは多くの場合、私たちが現在の技術から期待するような複雑さを備えていない。一方、NLPまたはMLボットに必要な技術に関しても完全に利用することはできていない。

実際の人間による対応の価値は、とても重要なものとなり得る。

幸いなことに、顧客は実際の人間とのやりとりの効率性を好んでいる。最近は、長くてフォーマルな会話スタイルからは離れる傾向にあるものの、顧客はサービスに対する同様の品質をチャット(それが人間でもボットでも)にも求めているのだ。実際、アメリカン・エキスプレスによる最近の研究では顧客の78%が、低品質なサービス体験のおかげで、取引を諦めたり望み通りの買い物をできていなかったりしている。同じ研究はまた、実在の人物に話すことができなかったとき、顧客の67パーセントがフラストレーションから電話を切っていることを示している。それらのほとんどの場合、顧客はボットとの会話に耐えることを強いられていた。

日々の取引に私たちがボット技術を採用しようとする場合、おそらく業界には2段階の移行過程を見ることになるだろう。最初の段階は、ボットが扱えないものを全て実際の人間へと引き継ぐ、とても人間対話重視のものである。貧弱な顧客体験の危険性は、トップブランドにとっては単純に受け入れがたいものである。よってボットが扱えなくなった時に引き継がれる顧客コールセンターを充実させることは現実的な解である。

そして次の段階として、いつかはMLならびにNLPがボットをより知的にして、失敗率を極小にする時が訪れることは確実だと思われる。そうなったときに、取引の大部分がボットチャネルを通して行われると考えることは夢物語ではない。ボットチャネルが単独で成り立つのだろうか、そうではなくそれらが既存のチャネル状況に統合されるのだろうか?もしそれらが単独で成立するならば、他のチャネルには何が起きるのだろう?

優先される顧客対応がブランドのウェブサイトを離れ、Facebookメッセンジャーなどのボットチャネルに流れていくシナリオでは、規模に対する疑問も出されている。たとえボットの失敗率が低かったとしても、人間による対応は増えることが予想される、なぜなら取引量そのものの膨大な増加が予想されるからだ。

私たちはこの先、ボット技術の指数関数的な広がりを目にすることになる。しかし顧客との良い関係を保つための人的資本の確保は避けられず必須である。顧客の生涯価値と製品のマージンに応じて、実際の人間による対応の価値は、とても重要なものとなり得る。

より自動化された未来のための備えとして、私たちは物事を進める際の人間の役割について忘れないことが肝心だ。そして「スターウォーズ/新たなる希望」でR2-D2が偉大であったことと同様に、私たちはそのボットの中に人間がいたことを忘れてはならない。

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(翻訳:Sako)

Slackが200万ドルをSlack Fund経由で14社のSlackbotスタートアップへ投資、アプリ数は600に到達

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Slackは、同僚間でのチャットや、ファイル共有、仕事を邪魔するためのGIFの送り合いなどに使われ人気を博している。この度Slackは、もっと広い意味での生産性向上プラットフォームに成るべく、幾つかの大きな施策を行った。今現在、Slack上には600ものアプリが存在し、簡単で短いコードを使うだけで、他サービスのコンテンツをSlack上で他のユーザーに共有することができる。そして今、Slackはプラットフォーム戦略の別の部分を拡大しようとしている。

本日(米国時間7月19日)Slackは、これまでに合計197万ドルを14社のスタートアップに投資したと発表した。最近投資が行われた11社についても明らかとなり、全てがボット関連サービスを提供するスタートアップだった。投資資金は、2015年12月にはじめて発表された8000万ドル規模の投資ビークルSlack Fund経由でまかなわれた。Slackは、Slack Fundでトップレベルのベンチャーキャピタル数社と組み、アーリーステージ投資の一部として、将来有望なスタートアップへの投資を行っている。

今回名前が明かされたスタートアップは、AbacusAutomatBirdlyButter.aiCandor, Inc.GrowbotKonsusLatticeMyra LabsSudoそしてWade & Wendyだ。11社のこれまでの合計資金調達額は約3000万ドルにおよぶ。

7ヶ月ほど前に、SlackがSlack Fundのローンチと共に投資先として発表した3社(Awesome.aiBeginHowdy)を加え、同社はこれまでに14社のスタートアップに対して投資を行ってきたこととなる。

小さなプログラムでできているボットは、人間同士の交流をAIと機械学習で代替し、人の代わりに何かをしたり、必要な情報を素早く入手したりといったことができる。そして急速に高まるポッド人気というのは、これまでもしばらく追い続けてきたトピックだ。

今では何100社ものスタートアップがボットを開発しており、その中には既存のアプリ向けのものもあれば、スタンドアローンのボットアプリとしてそれ自体を利用することができるものもある。General Catalystのようなベンチャーキャピタルは、ボット開発を行う見込みあるスタートアップ探しに必死になっており、実際にGeneral Catalystは、Slackの投資先と同じ3社(Butter.ai、Growbot、Begin)に対してその資金を投じている。

300万人のデイリーアクティブユーザーと93万人の課金ユーザーを擁するSlackにとって、Slackbotと呼ばれるこれらのサービスへ投資やサポートを行うのには、いくつかの明確な理由がある。

第一に、もともと開発者用(Slackの開発者は、Slack誕生前にGlitchやその他メッセージサービスを利用していた)のコミュニケーションツールとして使われていたサービスを生み出した企業として、開発者との良好な関係を保ち、彼らを熱心なユーザーと同じように扱う目的がある。

次に、Slackがスタートアップに投資やサポートを行うことで、Slack専用につくられたもっと面白いサービスをみつけることができる。その結果、Slack自体が課金ユーザーにとってもっと便利で魅力的なサービスとなるのだ。同社によれば、Slackの有料サービスを利用しているチームの90%が、「活発に」Slack上のアプリを利用している。

「Slackのようなエコシステムは共有の精神から成り立っています。プラットフォームとしてのSlackの影響力は、本質的にそして必然的に、私たちのパートナーや開発者の成功に結びついているのです」とSlack自身もつづっている

投資にあたって何社のスタートアップがSlackにプレゼンを行ったかということに関しての回答は得られなかったが、今後も投資活動は続けていくとのこと。

以下が、Slack自身による各アプリの概要説明だ。
Abacusは、インテリジェントな経費報告書作成ソフトで、レポート作成と承認をSlack上で行うことができる。

Automatを使えば、誰でもチューリング・テストに合格するようなボットを簡単につくることができる。現在プライベートベータ板が公開中。

Birdlyは、SlackとSalesforceを接続し、誰でもあるアカウントに関する必要な情報にアクセスすることができる。

Butter.aiは、会社に蓄積された情報へのアクセスを簡単にするパーソナルアシスタントボットで、プライベートベータ板が公開されている。

Candor, Inc.は、完全に率直なフィードバックをもとに、スタッフ間の関係性向上を目指している。CandorのSlackアプリは現時点では一般公開されていない。

Growbotは、良い仕事をしたチームメイトを褒めたり、励ましたりするのに使える便利なボットだ。

Konsusを使えば、Slackを通していつでも必要に応じてフリーランサーに仕事を頼むことができる。

Latticeは、目標設定機能や週ごとのOKR(Objectives and Key Results=目標と主な成果)報告機能、さらにはフィードバック機能を備えた、Slackチーム内で利用できるボットだ。

Myra Labsを使えば、そのまま使える機械学習モジュールを備えたAPIを利用して素晴らしいボットを作ることができる。現在プライベートベータ板が公開中。

Sudoは、営業スタッフをデータのマニュアル入力から解放するCRM(顧客管理システム)管理ボットだ。現在プライベートベータ板が公開中。

Wade & Wendyは、2種類のインテリジェントな人材採用アシスタントだ。Wadeは、キャリアコンサルタントとして仕事探しを手伝ってくれ、Wendyは採用チームの候補者探しをサポートする。Wade & Wendyはまだ公開されていないが、ウェイティングリストに加わることができる。

以前の投資先

Awesome.aiは、チームが歩調を合わせたり、要点をまとめたり、何が重要か検討したりするのをサポートする。

Beginは、ユーザーの集中力と効率性を向上させるサポートをして、全ての業務を掌握する手助けをする。

Howdyは、共通のタスクを自動化することでチームをサポートする、フレンドリーで訓練可能なボットだ。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

Slackボットを多用したときの‘ノイズ的メッセージ’を解消するPersonal Workbot、これもSlackボットだけど

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ボットという小さなコードの集まりは、たしかに便利な場合もあるし、Slackの場合は、ボットのおかげで単純なコミュニケーションツールがエンタープライズアプリケーションを集中管理するダッシュボードになってしまう。でも、日常いろんなボットを使っていると、メッセージングが多くなりすぎて、逆に仕事の邪魔になることもある。

このようなメッセージの混沌を管理するために、Workatoは今日(米国時間6/23)、Personal Workbotというツールをリリースした。それは、その人の仕事に関係のあるメッセージだけを、ダイレクトメッセージで配布する。

Slackは基本的に、チームがコミュニケーションするためのツールだが、チーム全体のアップデートをすべて各人が受け取っていると、メッセージングが仕事の効率を損なう巨大な時間泥棒になってしまうので、中にはボットを完全にオフにしてSlackを使っている人もいる。

最近Workatoに加わったテク業界のベテランBhaskar Royは、こう言う: “どれが重要なメッセージか、選り分けるのに時間がかかって、個人の生産性がガタ落ちになってしまうんだよ”。

Workatoも今年の1月に、Workbotという名前のSlackボットをローンチした。それはSlackをエンタープライズアプリケーションのためのコントロールセンターにしてしまうソフトウェアで、いろんなアプリケーションを使い分けながら仕事をしなければならない企業ユーザーにとって、便利なボットだった。これまでは、顧客のデータを見るためにSalesforceへ行き、サービスの記録を見るためにZendesk、経理のデータならQuickbooks、等々だったのが、 Workatoはそれらの情報をすべて、ひとつのチャネルへ運んでくれるのだ。

2000社近い企業がWorkbotを使うようになったころ、いろんなフィードバックが舞い込んできた。たしかにWorkatoはアプリケーションの統合という問題を解決し、多くのアプリケーションをSlackのチャネルに‘一本化’して、従来のようなメールの洪水をなくしてくれるのだが、別の問題も作り出してしまった。すべてのアプリケーションをワンチャネルにまとめてしまうと、今度はメッセージの洪水に悩まされるのだ。

そこで今度のボットPersonal Workbotは、一人一人に関係のあるメッセージを、グループのチャネルから分離して配布する。しかも仕事に関連する重要な情報は、サマリの形で提供する。たとえば、まだ対応してない重要なサポートの問題や、顧客の契約更新などだ。それらは毎朝、デファクトの‘トゥドゥリスト(to-do list)’のような形で配布される。

Workato personal workbot delivering a list of important info.

写真クレジット: Workato

そのためにPersonal Workbotが提供しているデフォルトのスクリプトが気に入らなければ、ユーザーがスクリプトを書くこともできる(recipesと呼ばれるスクリプト言語を使う)。その役割は、SlackのアドミンやITの人たちに押し付けてもよいだろう。

Workatoが発見したのは、アプリケーションの切り替えという問題を解決しようとすると、その背後にあるほかのいろんな問題が見えてくることだ。今日リリースしたソフトウェアは、それらの一つに答えるもので、Slackで受け取るメッセージを一人一人のユーザーがコントロールできるような、状態を作り出す。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

メディア向けボット開発運用ツール「BOT TREE for MEDIA」が正式ローンチ

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ボットレースが熱を帯びつつあるようだ。ここ数週間内で立て続けにボットのリリースが相次ぎ、TechCrunch JapanでもWantedlyの求人検索ができるMessenger用ボットスケジュール調整ができるSubotのSlack用ボットなどを紹介してきた。今回登場したのは、ウェブコンテンツを保有するメディア向けのボット開発運用ツール「BOT TREE for MEDIA」だ。本日、ZEALS(ジールズ)は5月中旬からベータ公開していた「BOT TREE for MEDIA」を正式ローンチした。このサービスの狙いについてZEALSの代表取締役CEOである清水正大氏に話を聞いた。

「BOT TREE for MEDIA」の特徴は、エンジニアでなくともチャットボットの運用を簡単に行えることだ。例えばLINEで記事を配信したいメディアは、LINE BOT APIを自社のサーバーに実装する。次に「BOT TREE for MEDIA」でアカウントを作成し、APIをつなぎこむと「BOT TREE for MEDIA」のダッシュボードからチャットボットのデータを管理できるようになる。

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初めてボットを使うユーザーには、いくつか質問をすることができる。「BOT TREE for MEDIA」を導入しているウェブメディア「ビール女子」のボットでは、ユーザー名、性別、好きなビールメーカー、結婚しているかどうかを聞いている。各メディアの特性に合わせて質問を変えることが可能だ。

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「ビール女子」での導入事例

 

取得したユーザーデーターは「ユーザー情報管理」から確認することができる。「記事コンテンツ管理画面」では、記事タイトル、URLといった基本情報を設定し、その記事に関連するキーワードをいくつか設定する。ユーザーからボットに「こういった記事が読みたい」といったクエリがあった時、ボットはそのクエリに近い記事を判別してユーザーに提示する。また、このボットにはZEALSが開発するコミュニケーションエンジン「AI TREE」を搭載しているため、ユーザーと軽い雑談をすることもできる。メディア側が雑談機能を利用するために特別に何かする必要はない。ボットはLINE、Facebook Messanger、Slack、Skypeなどのチャットアプリ、そしてEメールでも構築可能だ。

「BOT TREE for MEDIA」では「チャットボット版のWordPress」を目指していると清水氏は話す。チャットボットに興味を持っている企業は多いが、実際にボットで何ができるか分からないという声をよく聞くと清水氏は説明する。ZEALSはウェブコンテンツを保有するメディア向けに、コンテンツを届ける新しいチャネルとしてチャットボットを活用することを提案したいと話す。「BOT TREE for MEDIA」はそのために特化したサービスだという。

ZEALSは以前よりコミュニケーションエンジンの開発を進めてきた経験を通して、機械学習を鍛えるためには相当なデータ量が必要であることを知ったと清水氏は言う。各メディアがそれぞれデータを集めて機械学習を構築したいと思っても、そのために十分な量のデータを集めるのは難しいかもしれない。「BOT TREE for MEDIA」ではユーザーがボットを利用するほど、どの属性のユーザーに対してどのコンテンツが配信され、どういった評価が起きたかというデータを蓄積することができる。あらゆるメディアから集まるデータを解析していくことで、ゆくゆくは「BOT TREE for MEDIA」のクライアントの抱える各ユーザーに自動で最適なコンテンツが配信できるように開発を進めたい考えだ。

2014年4月に創業したZEALSは、DMM.make ROBOTSのPalmiやVstoneのSO-TAなどを中心にロボットアプリ開発を手がけてきた。2015年1月には金額は非公開だが、ウィルグループから資金調達を行っている。次の資金調達に向けてすでに動き出しているという話だ。今回の「BOT TREE for MEDIA」は5月中旬からベータ版を提供していて、これまでに100社ほどが事前登録を行ったという。しばらくは無料で提供し、市場環境やクライアントの動向を見ながら将来的にはAPIコール数やエンドユーザーの数に応じた従量課金などを検討したいという。

Conversableは消費者と企業の関係を深めるチャットボット…ただ買うだでけでなくアレルギーの質問なども

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[筆者: John Mannes]
商業者と消費者の関係を強化する会話のためのチャットボットConversableが今日(米国時間6/7)、鶏の手羽先料理専門のレストランチェーンWingstopとのパートナーシップを発表した。これでユーザーは、Facebook MessengerやTwitterなどのアプリの中から、注文をしたり、アレルゲンについて問い合わせたり、最寄りのお店を尋ねたりできる。

デベロッパーにAPIを提供する方式ではなく、Conversableは同社自身のプラットホームでFortune 500社に力を与えようとする。そのプラットホームは、ほとんどどんなアプリケーションにもアドオンできる。最初のユーザー企業がWingstopだが、同社は、人びとの買い物や、航空券の購入、企業との対話などを変えていきたい、と言っている。

協同ファウンダーのBen LammとAndrew Buseyは、前にも二度、一緒に仕事をしたことがある。まずテクノロジースタジオChaotic Moonで成功し、次にゲームデザインのスタジオTeam Chaosを作った二人は、その後、自動化チャットボットで企業/商品/お店(広義に“ブランド”)へのアクセス性を向上させる、というアイデアに魅力を感じた。

“このアイデアが気に入ったのは、それによって企業の新しい会話ツリーが時間とともにどんどん増えていくことだ。モバイルアプリの構築に年月と巨費を投じなくても、ますますいろんなことに応答できるようになる”、とConversableのCEO Ben Lammは語る。“自分の消費者体験からも言えるが、消費者のブランド体験がますます良くなり、これまでできなかったことも、できるようになる”、とConversableが提供するユーザー体験を彼は褒めそやす。

200万ドルのシード資金は、15人のチームを養うのに当面は十分だ。今は、Fortune 500社の国内企業を、顧客としてつかまえようとしている。チャットソリューションの課金方式は定額の会費制だが、カスタム化のための専門サービスも提供できる。

私たちの多くが、応答性が悪くてお粗末な、劣悪なチャットボットを使わされてきた。Conversableは、バックエンドシステムの統合を強化することによって、この罠にはまることを避けようとしている。このチャットボットは、ユーザー体験とブランドエンゲージメントの改良を、機械学習やAIを使わずに実現することを、マーケティングの核にしている。

“機械学習やAIに関心はあるけど、でもブランドが求めるのは、質問や応答の個々のノードにおけるコンテキストの理解なんだ。企業はそれらの分析によって事業を強化し、人びとが何を求めているのかを理解できるようになりたい、と願っているのだ”、とLammは付言した。

今、このテキサス出身の企業が志向しているのは、Amazon Echoのような、大きな将来性がありそうなプラットホームとの深い統合だ。これからは、便利に自動化された会話友だちに、本格的なテキサス・バーベキューを注文できるようになるんだね。

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))