フォードの電気自動車F-150 Lightningは、停電時には家庭に電力を供給

ピックアップトラックのパワーは、トルクや馬力、牽引力や運搬力だけではない。米国時間5月19日に発表されたFord(フォード)の最新電気自動車「F-150 Lightning」は、停電時に顧客の家屋にエネルギーを供給できるシステムを搭載し、トラックのパワーに新たな意味を与えようとしている。

このような電気自動車ならではのメリットを消費者に伝えようとしているのは、フォードだけではない。Lucid Motors(ルーシッド・モーターズ)などの企業も、この機能をアピールしている。

2月にテキサス州で発生した大規模な停電では、数日間にわたって450万戸以上の家庭や企業で電力供給が停止し、結果として151人が命を落とすことになった。F-150 Lightningに搭載されている「Ford Intelligent Backup Power(フォード・インテリジェント・バックアップ・パワー)」は、車載バッテリーをフル充電した状態から最大3日間、家庭に9.6kWの電力を供給することができる。

フォードの電動車戦略を率いるRyan O’Gorman(ライアン・オゴーマン)氏は、実車公開に先立つビデオブリーフィングで、「F-150 Lightningのプラグが接続されていれば、停電時にIntelligent Backup Powerが自動的に作動し、家庭の電力を供給します」と語った。「電力が回復すると、トラックは自動的にバッテリーの充電に戻ります」。

太陽光発電、蓄電池、エネルギーサービスを提供するSunrun(サンラン)はフォードと提携し、オーナーの自宅に80アンペアのFord Charge Station Pro(フォード・チャージ・ステーション・プロ)と呼ばれる充電器と家庭用統合システムの設置を支援する。F-150 Lightningのエクステンデッド・レンジ・バッテリー仕様に標準で付くこれらの設備が、Intelligent Backup Powerシステムを介し、充電時には車載バッテリーに電力を供給し、停電時は逆に車載バッテリーの電力を家庭に供給する。Sunrunは、顧客に自宅用の太陽光発電と蓄電システムを設置するオプションも提供する。

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家から離れた場所で過ごしたい人は、F-150ハイブリッドの7.2kWから9.6kWへパワーアップした「Pro Power Onboard(プロ・パワー・オンボード)」を使えば、野外でもスピーカーやテレビから電動ダートバイク、丸ノコ、ジャックハンマーまで、あらゆるものに電力を供給することができる。このピックアップトラックは、荷台、車内、フランク(フロントのトランク)に、全部で11個のコンセントが装備されている。

Pro Power Onboardシステムはバッテリーの電力をインテリジェントに分配する。ドライバーが作業現場で電動工具を使っている時に、車載バッテリーの残量が3分の1以下になると、ドライバーのスマートフォンに通知が送られるので、そのまま作業を続けるか、それとも帰りの運転のためにバッテリーを節約するかを判断できる。

ただ、ドライバーは最寄りの充電スタンドまでの距離をあまり気にする必要はない。バッテリー残量で走行可能な距離が、最寄りの充電スタンドまでの距離に近づくと、Pro Power Onboardは自動的にオフになる。Intelligent Backup PowerやPro Power Onboardで消費したバッテリーの電力に関する情報は、フォードの専用アプリと車載インフォテインメント・スクリーンに表示される。

フォードの広報担当者によると、将来的には夜間の電気料金が安い時間帯に電気自動車のバッテリーを充電しておき、電力消費がピークになる電気料金が高い時間帯には車載バッテリーから家庭に電力を供給することで、電気代を節約できるようにすることも目指しているという。

「F-150 Lightningは、自動車のパワーという概念を再定義します」と、オゴーマン氏は語った。

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

企業の航空部門といった小規模の航空機運用を支えるPortsideがパンデミックが終息に向かう中好調

企業の航空部門やチャーター便、政府所有の航空機、分割所有機などの運用にともなうバックエンドを管理するPortsideは米国時間5月20日、Tiger Global Managementがリードするラウンドで1700万ドル(約18億5000万円)を調達したことを発表した。このラウンドには、これまでの投資家であるI2BF Global VenturesとSOMA Capitalも参加した。

2018年に創業したPortsideは、企業が利用する航空会社や企業の航空部門などが、フライトの運用とメンテナンスや、乗務員とスタッフのスケジューリング、彼らの経費管理、財務データの作成といったバックエンド的部分を代行してもらい運用を効率化できる。同社は航空部門を運用するために必要な日常事務のすべてを1社で代行するが、それはまた、航空部門や分割所有機の管理会社などが現在利用していると思われるスケジューリングや会計経理、経費管理などのツールをすべて統合している

画像クレジット:Portside

新型コロナウイルスのパンデミックで、ほとんどあらゆる形式の民間航空事業が早くから休業したが、市場は今急速に回復している。Portsideによると、2020年には売上が300%近く増加し、新たに各国の50ほどの航空機運用企業がその顧客ベースに加わった。

Portsideの共同創業者でCEOのAlek Vernitsky(アレク・ヴェルニツキー)氏によると、「今回導入された新たな資本は、プロダクトのイノベーションと、大企業の顧客との関係の強化、そして弊社のグローバルなエンジニアリングと顧客成功チームの成長に投じられます。新旧両様の投資家からの強力な支援を感謝したい。彼らは一丸となって、弊社の経営方針と、グローバルな企業向け航空事業の、クラウドベースのデジタル化に集中したアプローチに対する確信を示しました」。

Portsideは、この市場で1人ではない。たとえばFl3xxのような企業が企業の航空部門に同様のソリューションを提供しており、また市場のローエンドではFlight Circleのようなツールが、一般的な航空クラブや航空機の共同所有に向けて同様の機能のサブセットを提供している。

Tiger Global ManagementのパートナーであるJohn Curtius(ジョン・クルティウス)氏は、声明で次のように述べている。「Portsideは創業以来急速に成長し、企業航空のためのクラウドベースのソリューションにおける議論の余地のないリーダーになるというビジョンの実現に向けて、その第2段階に入りつつあります。私たちが見るかぎり、Portsideはこの業界の未来を表しており、今後長年にわたって大きな価値を作り出し続けると思われる企業のパートナーであることは、大きな喜びです」。

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:Hiroshi Iwatani)

フォードと韓国SK Innovationが米国でのEVバッテリー量産に向け合弁会社BlueOvalSKを発表

Ford Motor Company(フォード・モーター・カンパニー)と韓国・ソウルに本社を置くSK Innovation(SKイノベーション)は米国時間5月20日、電気自動車用のバッテリーを米国内で製造する合弁法人を設立する了解覚書(MOU)を締結したと発表した。この合弁会社はBlueOvalSK(ブルーオーバルSK)と呼ばれ、2020年代半ばから年間約60GWhを生産する予定。今回のMOUは、Fordが電池生産能力を垂直的に発展させようとしている最新の兆候だ。

Fordの最高製品プラットフォームおよびオペレーション責任者であるHau Thai-Tang(ハウ・タイ・タン)氏は、20日に次のように述べた。「当初はMustang Mach-E(マスタング・マッハE)だけだったので、電池を供給元から購入するのが最も効率的だと考えていましたが、普及率が上がっていき、アーリーアダプタからアーリーマジョリティへと移行していくにつれて、このレベルの投資を正当化するのに十分な(生産)量を確保できるようになり、このパートナーシップを追求することになりました」。

FordのLisa Drake(リサ・ドレイク)COOは、20日に記者団に対し、所有構造は今後検討されていくと述べた。60GWhの生産能力は、おそらく2つの製造拠点にまたがることになると思われるが、北米の工場の場所を含め、両社はまだその計画を決定していないとドレイク氏は付け加えた。60GWhは、およそ60万台のEVを製造するのに十分なバッテリ容量に相当すると、タイ・タン氏は述べた。

Fordはここ数カ月、バッテリセルを大規模に製造する垂直統合型の能力を構築するために前進してきた。2021年4月、ミシガン州ディアボーンに本社を置く同社は、ミシガン州にバッテリー技術開発センターを開設することを発表した。また、BMWと共同で、ソリッドステート式バッテリ(全固体電池)開発企業であるSolid Power(ソリッドパワー)の1億3000万ドル(約141億5000万円)のシリーズBラウンドをリードした。

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しかしFordはこれまで、電池の自社生産にはあまり積極的ではなかった。タイ・タン氏は「当社の製品計画は大きく変わりました」と述べている。

このニュースは、フォードが同社の象徴的な車であり、米国で最も売れているトラックのEVバージョンとなる「F-150 Lightning(F-150 ライトニング)」を発表してから24時間も経っていないタイミングで届いた。ライトニングは、フォードが過去1年間にデビューさせた3台のEVのうちの1台で、2025年までに220億ドル(約2兆4000億円)をEVに投資するという同社の計画の礎となるものだ。

SK Innovationは、すでにジョージア州で26億ドル(約2830億円)を投じて2カ所のEV用バッテリー工場を建設中だ。そのうち1工場はすでにバッテリーを生産しており、もう1つの工場は2023年に操業を開始する予定。また、フォルクスワーゲン社を顧客として、テネシー州にも別の工場を建設中だ。FordとSK Innovationの関係は長年にわたっており、前者は2018年にSK Innovationをライトニングのバッテリーサプライヤーに選定していた。

最近では、ライバル企業であるLG Energy Solution(LGエナジーソリューション)との企業秘密に関する紛争をめぐり、2021年4月に18億ドル(約1960億円)の和解が成立した。これは、SK Innovationがジョージア州での事業を停止することになりかねなかった2年間の紛争の末の和解だ。

韓国の2つのコングロマリットは、それぞれの自動車メーカーパートナーとともに、米国のバッテリー製造に数十億ドルを投資している。LG Energyは、GMとの合弁会社であるUltium Cells LLCのもと、オハイオ州とテネシー州に製造施設を建設している。

「スケールが意味を成すようになりました」とドレイク氏はいう。「動き出すには絶好のタイミングです」。

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Aya Nakazato)

台湾Gogoroが中国でのバッテリー交換ネットワーク構築で大手二輪メーカー2社と提携

インド最大の二輪メーカーとの提携を発表してから1カ月もたたずして、Gogoro(ゴゴロ)は新たにグローバル展開計画における大きな一歩を踏み出す。今回のマーケットは中国だ。交換可能なスマートバッテリーを含め、Gogoroのテクノロジーが中国最大のバイクメーカーの1社、Dachangjiang Group (DCJ)と電動二輪トップ企業の1社、Yadeaが製造するスクーターに使用される。DCJとYadeaはそれぞれのブランドの新しい二輪車を開発する合弁会社に5000万ドル(約55億円)を出資する。製造する二輪はバッテリー、ドライブトレイン、コントローラー、他の部品を含めGogoro Networkを活用する。

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「AT&Tを作るのにDCJとYadeaがタグを組むようなものだと考えてください」とGogoroの共同創業者でCEOのHorace Luke(ホレイス・ルーク)氏はTechCrunchに語った。「Gogoroは2社の二輪を動かすテクノロジーになります。当社がEricssonだと考えてください」。

2021年4月にGogoroとHero MotoCorpは、インドでバッテリー交換ネットワークを構築し、電動二輪車を製造するための戦略的提携を発表した。Gogoroのインドと中国における新しい取引は、2015年に最初のGogoro Smartscooterを立ち上げて以来、同社が取ってきたグローバル戦略で最大のものだ。

Gogoroの特徴的なテクノロジーである交換可能なバッテリーは、歩道に設置できるほど十分小さい充電ステーションでライダーが新しいものに交換することができる。Gogoroが拠点を置く台北市では交換ステーションは見慣れた光景で、通常は店先、あるいはガソリンスタンドや駐車場の横に設置されている。Gogoroのバッテリーは交換可能であるため、それらバッテリーを使う電動二輪を充電するために駐輪させる必要はない。これは「走行距離の懸念」、充電が必要になる前にどれくらい走行できるか、という消費者の心配を解決する。最大の課題はGogoro Networkで動く二輪のライダーに利便性を提供できるよう、十分な交換ステーションを設置することだ。

DCJとYadeaの合弁会社は試験を行う杭州でまず事業展開し、2022年に他の都市にも拡大する。車両の発売と価格については2021年後半に発表される。

中国政府は2020年に、発売される新車両は2035年までに化石燃料ではなく「新しいエネルギー」を使用しなければならないという新規則を導入した。DCJとYadeaは合計で中国の都市の半数以上の358都市、4万7000もの小売業者をカバーしている。これは、合弁会社がひとたび杭州外に事業を拡大すれば、急速に成長することができることを意味する、とルーク氏は話した。

Gogoroは自らを他の電動モビリティ企業のためのターンキーソリューションと位置づけ、自社ブランドは充電インフラと評判を獲得するための方法だったとしている。台湾では、Gogoroの電動二輪が月間売り上げの4分の1近くを占めていて、交換可能バッテリーはSuzuki Taiwan、Yamaha、Aeonといった他のメーカーにライセンス提供される前に最初にGogoro Smartscooterで使用された。

「プラットフォームがうまくいくことを証明するための回り道のようなものでした」とルーク氏は話した。「我々は自前の車両や小売チェーンを構築しなければならず、いま顧客40万人とステーション2000カ所をサポートしています。その証明となったケースによりこうした大手パートナーとの協業が可能となりました。ですので、大手企業が当社にデータを求めたとき、ユニットエコノミクス、耐性、ステーション、どう機能するかを示すことができました。何年もかかりましたが、最大の方法で可能にする準備をしていました」。

DCJは年間約200万台の二輪を出荷していて、合弁会社で初めて電動二輪を製造する。「DCJは電動へ移行するテクノロジーを探していて、電動二輪へのトランジッションを始めるのに当社のプラットフォームが最適であると証明するために我々は2年近く協議してきました」とルーク氏は述べた。

Yadeaは2020年に1000万台超の電動二輪を販売したが、リチウムイオンバッテリーの代替を求めていた、と同氏は付け加えた。Aimaとともに、Yadeaは中国で最も知られている安価な電動二輪ブランドの1つで、その一方でNiuがプレミアムマーケットを独占している。

Gogoroは2011年の創業以来、4億8000万ドル(約524億円)を調達した。投資家にはHTC、Temasek Holdings、そして元米副大統領のAl Gore(アル・ゴア)氏によって共同設立されたグリーンテック投資会社Generation Investment Management (GIM)が含まれる。

発表資料でGIM会長のゴア氏は「Gogoroの中国におけるYadea、DCJとの提携は、すでに展開されているインドでのHero MotoCorpとの協業の上に構築されました。今回の提携は世界の二輪リーダーがスマートバッテリー交換でアジアにおける持続可能性の革命に火を付けるという明確なサインを発信するものです」。

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タグ:Gogoroバッテリー中国電動バイク

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(文:Catherine Shu、翻訳:Nariko Mizoguchi

電気航空エコシステムの構築に向けBeta TechnologiesがシリーズAで約405億円調達

電動航空機のスタートアップBeta Technologies(ベータテクノロジーズ)は米国時間5月18日、Amazon(アマゾン)のClimate Pledge Fundからも投資を受け、3億6800万ドル(約405億円)のシリーズAラウンドをクローズした。新しい資本は同社が2021年発表した資金調達として2回目だ。同社は3月にも1億4300万ドル(約160億円)の資本を私募により調達した。

この資金調達ラウンドはFidelity Management&Research Companyがリードし、AmazonのClimate Pledge Fundも金額非公開で加わった。Climate Pledge Fundは持続可能な技術の開発を進めるために2019年9月に設立された20億ドル(約2200億円)のファンドだ。電気自動車メーカーのRivian、バッテリーリサイクルのRedwood Materials、水素燃料電池航空機のZeroAviaにも投資している。

CNBCによると、同社のバリュエーションは現在14億ドル(約1540億円)。10億ドルを超えるバリュエーションを達成した電気垂直離着陸機(eVTOL)の小さな輪に加わった。

Beta Technologiesは、10億ドル(約1100億円)を超えるバリュエーションを達成した開発業者のJoby AviationやArcher Aviationとは違う。エアタクシーに力を入れているわけではなく、防衛への応用、貨物配送、医療物流を対象とし、米国北東部で急速充電システムのネットワークを構築している。航空機デビューとなったALIA-250cは、そうしたさまざまな分野のソリューションに対応できるよう開発された。6人、またはパイロットと1500ポンド(約680kg)を運ぶことができる。

バーモントを拠点とする同社は、上記すべての業界ですでに大きな提携を達成した。その中には、人間への移植のために人工臓器を輸送するUnited Therapeuticsとの提携や、10機のALIA購入と140機の購入オプションをもたらしたUPSとの提携、そして米空軍との提携がある。

しかし、同社は旅客輸送を完全に無視しているわけではない。2021年4月、2024年に5機を納入するBlade Urban AirMobilityとの提携を発表した。

Beta Technologiesは、米空軍から耐空性の認証を得た最初の会社だ。同社は2021年6月に空軍と契約を結び、ワシントンD.C.とオハイオ州スプリングフィールドにある同社の航空機とフライトシミュレーターへのアクセスを許可する予定だ。ただし、さらに連邦航空局からの認証を取得する必要がある。

同社は18日のニュースリリースで、この資金は、ALIAの電気推進システムと制御装置の改良、製造に関連した領域の強化、バーモント州のバーリントン国際空港における利用面積の拡大などに使うと述べた。

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タグ:Beta Technologies資金調達eVTOL

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Nariko Mizoguchi

スマホが自動車のキーになるAndroid 12の新機能をグーグルが発表

Google(グーグル)は、BMWをはじめとする自動車メーカーと協力して、Androidスマートフォンから車両の施錠 / 解錠やエンジン始動ができるデジタルキーを開発中であることを、米国時間5月18日に行われた開発者向けイベント「Google I/O」で発表した。

このデジタルカーキーは、同社のモバイルOSの最新版であるAndroid 12で採用される数多くの新機能の1つ。Android & Google Playのプロダクト・マネジメント担当バイス・プレジデントであるSameer Samat(サミア・サマット)氏によると、デジタルカーキーは2021年後半に一部のPixel(ピクセル)およびSamsung Galaxy(サムスン・ギャラクシー)のスマートフォンで利用可能になるという。対応する車両は、BMWを含む2022年モデルの新型車と一部の2021年モデルとのことだが、具体的な車名やBMW以外のメーカー名はまだ明らかにされていない(発表で例として提示された画像は、BMWが2021年内に発売する新型電気自動車「i4」だった)。

このデジタルカーキーには、UWB(Ultra Wideband、超広帯域無線)と呼ばれる無線通信技術が使われている。これは、センサーが信号の方向を知ることができる、小さなレーダーのようなものだ。この技術によって携帯電話に内蔵されたアンテナは、UWB送信機を備えた物体の位置を特定し、識別することができる。UWB技術を利用するため、Androidユーザーは携帯電話を取り出さなくても、車両の施錠 / 解錠が可能になる。

画像クレジット:Google

NFC(近距離無線通信)技術を搭載した車種を所有するユーザーは、携帯電話をクルマのドアにかざすことでロックを解除できるようになる。通常はクルマのドアハンドル内に搭載されているNFCリーダーが、ユーザーの携帯電話と通信を行う仕組みだ。Googleによると、ユーザーはクルマの貸し借りをする場合にも、友人や家族とクルマのキーを安全かつ遠隔で共有することが可能になるとのこと。

Googleが今回の発表を行う前に、Apple(アップル)も2020年、iPhoneやApple Watchに同様のデジタルカーキー機能を追加すると発表している。iOS 14で導入されたこの機能は、NFCを介して動作する仕組みで、2021年モデルのBMW 5シリーズで初めて利用可能になった。

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最近では、独自にアプリを開発する自動車メーカーも増えており、それらを使えばユーザーはスマートフォンからリモートロック / アンロックなど、特定の機能を制御することもできるようになっている。GoogleやAppleの側から見た大きなメリットは、モバイルOSにデジタルキー機能を統合することで、ユーザーがアプリをダウンロードする必要がないということだ。

その意図は、面倒な体験を減らすことにある。そしてさらに、これをシームレスにしようという動きもある。Apple、Google、Samsung、そしてBMW、GM、Honda(ホンダ)、Hyundai(ヒュンダイ)、Volkswagen(フォルクスワーゲン)といった自動車メーカーが加盟するCar Connectivity Consortium(カー・コネクティビティ・コンソーシアム)は、メーカーの枠を超えて容易にスマートフォンを自動車のキーとして使用できるデジタルキーの標準規格を策定するために、数年を費やしてきた。

デジタルカーキーの開発は、スマートフォンが消費者の生活の中心になることを目指すGoogleの活動の一環だ。そしてその目標は、自動車抜きには達成できない。

「最近では、携帯電話を購入する際には、電話機のみならず、テレビ、ノートパソコン、自動車、スマートウォッチやフィットネストラッカーなどのウェアラブルなど、連携が求められる機器のエコシステム全体を購入することになります」と、Googleのエンジニアリング担当バイス・プレジデントを務めるErik Kay(エリック・ケイ)氏は、今回のイベントにおける発表にともなうブログ記事の中で書いている。「北米では現在、1人あたり平均約8台のコネクテッド・デバイスを所有しており、2022年にはこれが13台に増えると予測されています」。

Googleは、ユーザーがワンタップするだけでデバイスをBluetoothを介してペアリングできる「Fast Pair(ファストペア)」機能を、自動車を含む他の製品にも拡大すると言っている。

ケイ氏によると、現在までに消費者は3600万回を超える「Fast Pair」を利用して、Sony(ソニー)、Microsoft(マイクロソフト)、JBL、Philips(フィリップス)、Google、その他多くの人気ブランドを含むBluetooth機器とAndroidスマートフォンを接続しているという。

このFast Pair機能は、今後数カ月のうちに、Beats(ビーツ)のヘッドホンやBMW、Ford(フォード)の自動車など、さらに多くのデバイスに導入される予定だと、サマット氏はGoogle I/Oで語った。

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

Lucid Motorsが上場を控えWaymoやIntelなどから幹部を引き抜き

Lucid Motors(ルシード・モーターズ)は、公開企業となる準備を進める中、WaymoやIntel、Xperiなどから人材を引き抜き、経営陣とテクニカル面を主導するチームを増強している。Lucid Motorsは米国時間5月5日、Waymoで働いていたSherry House(シェリー・ハウス)氏が最高財務責任者に就任すると明らかにした。

ハウス氏はWaymoで4年過ごし、直近では財務部長およびIR(投資家向け広報活動)責任者を務めていた。Waymoの前は、Visteon Corporationで経営企画担当副社長を、Deloitte Corporate Financeでテクノロジー・メディア・通信担当マネージングディレクターを歴任した。

Lucid Motorsはまた、以前AppleとIntelで役職に就いていたMargaret Burgraff(マーガレット・バーグラフ)氏をソフトウェア検証担当副社長に、Sanjay Chandra(サンジェイ・チャンドラ)氏をIT担当副社長に、Jeff Curry(ジェフ・カリー)氏を販促担当副社長に指名した。バーグラフ氏は直近ではIntelでグローバルデベロッパーリレーションズ担当副社長を務め、エンジニアリングと世界の独立ソフトウェアベンダーがIntelのプロダクトと協業できるようにするのが仕事だった。同氏はまた、主にテックスタートアップを支援するグローバルベンチャーキャピタルとプライベートエクイティの会社Continuous Venturesでパートナーも務めた。

チャンドラ氏は、Lucid Motorsに加わるために情報担当最高責任者とクラウド運用責任者を務めていたTiVo / Xperiを退職した。同氏はPayPal、Virgin Mobile、Workdayでも働いた経験がある。カリー氏の前職はJaguarブランドでの最高マーケティング責任者同等の役職で、FerrariとAudiにも従事した。同氏はSiriusXMでの副社長クラス役職を含め、自動車業界以外でのマーケティングのキャリアも持つ。そしてブランド戦略コンサル会社Mere Mortalsの創業パートナーでもある。

Lucid Motorsの新規採用は、特別買収目的会社Churchill Capital IV Corpとの合併完了が数週間後に迫る中でのものだ。完了すればLucid Motorsは正式に上場企業となる。サウジアラビアの政府系ファンドが引き続き最大株主となる合併会社の取引株式価値は117億5000万ドル(約1兆2800億円)となる見込みだ。私募増資取引では1株15ドル(約1600円)と設定され、見積もり株式価値は240億ドル(約2兆6200億円)となる。Churchillからの出資と現金で、計約44億ドル(約4800億円)がLucidに入る。

上場によってLucidは、同社初の電気自動車となるラグジュアリーなLucid Airの生産を開始するのに必要な資金を手にする。同社は元々、生産と納車を今春開始する予定だったが、2021年後半にずらした。Lucid Airはまず北米にお目見えし、2022年に欧州、そして2023年に中国でも展開する。

Lucidはまた、2種類目の車両となるGravityという高パフォーマンスでラグジュアリーなSUVを2023年に北米マーケットに投入する。車両はアリゾナ州カサグランデに新設した工場で生産される。7億ドル(約760億円)をかけた同工場建設の第1段階は2020年完了し、生産能力は年3万台だ。最終的に同社はもう3段階かけて工場を拡張し、生産能力を年36万5000台とする計画だ。

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タグ:Lucid Motors新規上場SPAC

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Nariko Mizoguchi

配車サービス用のEV生産に向けUberとArrivalが提携

組立ラインを廃止し、高度に自動化されたマイクロファクトリーを選んだ電気自動車メーカーのArrival(アライバル)がUber(ウーバー)と提携し、ライドシェアのドライバー向けEVを作ろうとしている。

Arrivalは年末までにクルマの最終的なデザインを明らかにし、2023年第3四半期に生産を開始する予定だ。Uberのドライバーらを設計プロセスに関与させ、ニーズに合わせた車両の製造を目指す。

Uberは2020年、ロンドンで2025年まで、北米と欧州で2030年まで、プラットフォーム全体では2040年までに完全な電気モビリティプラットフォームになると約束し、それを実現しようとしている。最近立ち上げた「Uber Green」で、乗客には追加費用なしでEVを選ぶ機会を、ドライバーにはサービス手数料軽減の機会を提供する。より多くのドライバーにEVを提供する8億ドル(約870億円)の計画の一環だ。

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2021年末までにEVドライバーの数を倍増するという目標を達成するために、Uberはドライバーの新車購入や借り入れを支援し、ドライバーへのインセンティブを厚くする。Arrivalの車両は、EVへの切り替えを希望するUberのドライバーへ推奨される車の1つとなるかもしれない。特に同社が2018年に始めたClean Air Plan(クリーンエアプラン)の「EVアシスタンス」の対象となるロンドンのドライバーに推奨される可能性がある。Uberの広報担当者は、Arrivalの車がどのような形で利用可能になるかについて明言を避けた。2020年9月、Uberは同様の取引でGeneral Motors(ゼネラルモーターズ)と提携し、米国とカナダのドライバーに2020年シボレーボルトを割引価格で提供した。

「Uberは、ロンドンのすべてのドライバーが2025年までにEVにアップグレードできるよう支援すると約束しました。クリーンエアプランのおかげで、この野心的な目標を達成するために1億3500万ポンド(約180億円)以上が調達されました」とUberの北欧および東欧地域ゼネラルマネージャーのJamie Heywood(ジェイミー・ヘイウッド)氏は声明で述べた。「私たちが現在注力しているのは、ドライバーに対しこの資金でのEVへのアップグレードを奨励することであり、Arrivalとの提携はこの目標の達成に役立ちます」。

Arrivalの拠点であるロンドンは、輸送システム全体を2050年までにゼロエミッションにすることを目指している。2025年からロンドンと町の中心部にゼロエミッションゾーンを設け、2040年までにロンドンの中心部の周辺に、2050年までにロンドン全体に拡大する。Uberのドライバーがロンドンの最もホットな地域で働きたいならEVに変えるしかない。

Uberとの提携によりArrivalは乗用の電気自動車の開発に初めて参入することになる。Arrivalは商用販売ではなく商業車分野に重点を置いているため、既存の車両モデルはバンとバスとなっている。すでにUPSから1万台の専用車を受注している。

Arrivalは商用電気自動車の設計・製造の方法を変えたいと考えている。同社独自のバッテリーやその他の部品を社内で設計し、従来の製造工場よりもはるかに小さい複数のマイクロファクトリーで車両を製造することにより、車両をより速く、安く、はるかに少ない環境コストで製造するとArrivalは述べている。

同社の株式は2021年3月から公開市場で取引されている。従来の遅いIPOルートではなく、SPACであるCIIGと合併し、SPACルートにより公開市場に参入する多くのEV企業の1つとなった

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タグ:UberArrival電気自動車

画像クレジット:Arrival

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Nariko Mizoguchi

テスラがカナダ企業の特許を使い安価で環境に優しい新バッテリーを開発中

Elon Musk(イーロン・マスク)氏は2020年9月にTesla(テスラ)のBattery Dayのステージに立ったとき、リチウムイオンバッテリーの価格を半分にすると約束し、ニッケル金属電極を作る際の汚れた、そして複雑な過程を最初から作り直すことで価格を抑制できると主張した。

「溝を掘って、溝を埋め、そしてまた溝を掘ってと、とてつもなく複雑です」と同氏はイベントで述べた。「それで我々は全体のバリューチェーンに目をやり、どうやってこれを可能な限りシンプルにできるのか、と言いました」。

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最もシンプルなルートにはカナダの小さなバッテリースタートアップ、あるいは少なくとも同社の特許出願が含まれているようだ。

公開記録によると、Battery Dayの2週間前、Teslaはトロント近くに拠点を置く小さな会社Springpower International(スプリングパワー・インターナショナル)から数多くの特許出願を計3ドル(約330円)で購入した。

それらの特許出願の1つは、Teslaの上級副社長Drew Baglino(ドリュー・バッリーノ)氏がBattery Dayにカリフォルニア州フリーモントにある同社工場に設けられたステージで描写したものに似ている、イノベーティブなプロセスの詳細をつづっている。特許出願の購入は、特許そのものが最終的に2021年1月認められたとき、特許にはSpringpowerの記載はなく、Teslaに発行されたことを意味する。

電気自動車バッテリー向けの電極製造は従来、かなりの量の汚染水を生み出す。電極材料1トンを製造するのに、アンモニアや金属粒子、有毒な化学物質を含む4000ガロンもの汚染水が出る。Springpowerのプロセスは費用のかかる水処理を排除し、賢くも薬液を再循環させる

バッリーノ氏のプレゼンテーションでも、水を再利用し、排水を作らない手法が述べられた。事業費の75%以上の抑制に加え、同氏は次のように述べた。「当社はまた、同じプロセスをリサイクルされた電気自動車とグリッドストレージバッテリーから出る金属粉の消費に持ってくることができます」。

TeslaはSpringpowerの知的財産以上のものを獲得したようだ。Battery Dayの1週間前に、Springpower Internationalのウェブサイトは1つのホールディングページに変わった。それから数カ月して、何人かのSpringpowerの研究者は彼らのLinkdInプロフィールを変えた。それからするに彼らは現在、Teslaで働いているようだ

Springpower InternationalのCEOであるMichael Wang(マイケル・ワン)氏はコメントの求めに応じず、同社の電話交換台へのコールにも応答がなかった。同氏のLinkedInのページには現在、Teslaのスタッフ(バッリーノ氏含む)からの何十ものアップデートが表示されている。

電話で連絡をとったSpringpower Internationalの上級役員はTeslaによる買収を認めも否定もしなかったが、TechCrunchにTeslaの広報チームを案内した(Teslaは広報担当者を置いておらず、同社に送ったメールに返事はなかった)。

Springpower Internationalは、部分的には中国のバッテリー会社Highpower Internationalによって、Springpowerの子会社の研究部門として2010年3月に深圳で創業された。しかしHighpowerは6カ月もせずして、Springpower Internationalのテクノロジーが商業化から程遠いと判断して10万ドル(約1090万円)の投資を取り消してSpringpower Internationalと手を切った。

カナダ政府が出資したプログラムの「客員起業家」であるJames Sbrolla(ジェームズ・スブローラ)氏が、創業されて間もなかったSpringpower Internationalを指導するために介入した。同氏は同社が少額の補助金を、そして最終的に2018年に340万カナダドル(約3億円)の持続可能テクノロジー賞を獲得するのを手伝った。しかし同氏は2020年後半以降、Springpower Internationalの誰とも連絡をとっていないとTechCrunchに語った。

スブローラ氏は同社が買収されたかもしれないと聞いても驚かなかった。

「スマートな人たちのグループです。それについて疑う余地はありません」と同氏は話した。「Springpowerのもののようなテクノロジーは環境への負荷の削減で大きなメリットがあります。そして大企業を引きつけることでずっと早く、そしてより簡単にスケール拡大できます」。

ありそうなことだが、Springpower InternationalがTeslaによって買収されたのなら、2019年に同じように密かに買収された別のカナダのバッテリー会社Hibarを含む12社ほどの企業の仲間入りをしたことになる。

マスク氏はリチウムイオンバッテリーの専門的な部分に関しては長らく国境の北に目を向けてきた。2015年にTeslaはカナダ・ノバスコシア州にあるダルハウジー大学の主任バッテリー研究者で教授のJeff Dahn(ジェフ・ダーン)氏と5年間の独占的パートナーシップを結んだ。ダーン氏の名は同社の数多くのバッテリー特許に掲載されており、2021年1月に同社はダーン氏とのパートナーシップをさらに5年間更新した。

マスク氏は自社バッテリー生産を実現し、現在のサプライヤー(パナソニック、LG化学、 CATL)への依存を小さくしようと取り組んでいる。「いま当社はこのプロセスを手にしていて、独自の電極の設備を北米に建てようとしています」とバッリーノ氏はBattery Dayで述べた。

マスク氏はTeslaの新しいバッテリーテクノロジーの複合的なメリットによって2万5000ドル(約270万円)の車両が実現するかもしれない、と付け加えたが、あまりに多くをすぐには期待しないよう警告した。「こうしたアドバンテージを実現させ始めるのにおそらく1年から18カ月、完全に実現するのに3年ほどかかるでしょう」。

おそらくそれまでにSpringpower Internationalの役割はもう少し明らかになるだろう。

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(文:Mark Harris、翻訳:Nariko Mizoguchi

フォードとBMWが全固体電池のSolid Powerに142.2億円を投入

BMWグループならびにFord Motor Company(フォード・モーター・カンパニー)向けの、20アンペア時(Ah)の全固体電池セルを両手に持つSolid Power(ソリッド・パワー)の製造エンジニア。この全固体電池セルはコロラドにあるSolid Powerの試作ラインで製造された。

固体電池(SSB)システムは、長い間、電池技術の次のブレークスルーだと考えられてきたもので、複数のスタートアップが最初の製品化を競い合っている。自動車メーカーたちが、この技術に対するトップ投資家群の一角を占めている。各社とも電気自動車(EV)をより安全に、より速く、そして航続距離を拡大するための突破口を求めている。

そんな中、Ford Motor CompanyとBMWグループが、電池テクノロジー企業Solid Powerへ資金を投入した。

コロラド州ルイスビルを本社とする、SSB開発のSolid Powerは、米国時間5月3日に、その最新のラウンドとなる1億3000万ドル(約142億2000万円)のシリーズBが、FordとBMWによって主導されたと発表した。このことは、その2社がSSBが将来の輸送を支えるものだと考えていることを示している。今回の投資で、FordとBMWは対等な株式所有者となり、両社代表者はSolid Power の取締役会に参加する。

また今回のラウンドで、Solid Powerは米国エネルギー省のアルゴンヌ国立研究所からスピンアウトしたベンチャーキャピタルのVolta Energy Technologies(ボルタエナジー・テクノロジーズ)からも追加投資を受けた。

固体電池という名前は電解溶液を使わないことに由来している(Mark Harris記者が年頭のExtra Crunch記事で説明している)。通常の電解溶液は、可燃性で過熱の危険があるため、一般的にSSBは比較的安全だと考えられている。ライバルである電解溶液を使うリチウムイオン電池と比べたときのSSBの真の価値は、そのエネルギー密度だ。Solid Powerは、同社の電池は、既存の充電式電池に比べて50~100%エネルギー密度を向上させるとできるという。理論的には、よりエネルギー密度の高い電池を搭載した電気自動車は、1回の充電でより長い距離を移動することができる。

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この最新の投資ラウンドは、Solid Powerが自社史上最大のアンペア時間(Ah)出力を持つ電池セルを生産するために、製造力を強化するのに役立つ。FordならびにBMWとの個別の共同開発契約に基いて、同社は2022年以降、テストよ車両統合のために100Ahのセルの納入を開始する予定だ。

これまで同社は、2Ahと20Ahの出力を持つセルを製造してきた。Solid Powerはその声明の中で、2020年後半にFordとBMWによって、2Ahバッテリーセル「数百個」が検証されたと語っている。一方、同社は現在、標準リチウムイオン用の機器を使い、20Ahの固体電池をパイロットベースで生産している。

Solid Powerの広報担当者Will McKenna(ウィル・マッケナ)氏はTechCrunchに対して、9×20センチ22層で構成されてる20Ahパイロットセルとは対照的に、100Ahセルは、より大きな底面積とさらに多くの層を持つことになると語った(「レイヤー」とはカソードの数を指していると、マッケナ氏は説明した。20 Ahセルの中には22枚のカソードと22枚のアノードがあり、それぞれの間に全固体電解質セパレータが挟まれていて、すべてが単一のセルの中ににまとめられている)。

Solid Powerの製造法とは異なり、従来のリチウムイオン電池では、製造プロセスで電解質の充填と循環を行う必要がある。Solid Power によると、一般的なGWh規模のリチウムイオン製造施設における設備投資の5%から30%が、そうした追加工程に投入されている。

Solid Powerが自動車メーカーからの投資を受けたのは、今回が初めてではない。2018年に行われた2000万ドル(約21億9000万円)のシリーズAでは、BMWやFordの他、Samsung(サムスン)、Hyundai(ヒュンダイ)、Volta(ボルタ)などからの資本金を集めた。同社は、OEMたちの注目を集めている新しい企業群の1つなのだ。他の注目すべき例としては、Volkswagen(フォルクスワーゲン)が支援するQuantumscape(クアンタムスケープ)とGeneral Motors(ゼネラルモーターズ)によるSESへの資金投入がある。

Fordは自身でも先進的な電池技術を研究していて、1億8500万ドル(約202億円)で電池R&Dラボを開設する予定であることを先週発表している

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画像クレジット:Solid Power

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:sako)

ボルボとダイムラーが長距離トラック向け水素燃料電池生産で提携

ライバル同士であるVolvo AB(ボルボAB)とDaimler Truck(ダイムラートラック)が長距離トラック向けの水素燃料電池の生産でタッグを組む。共同生産は開発コストを下げて生産量を押し上げる、と両社は話している。Cellcentric(セルセントリック)という合弁会社は、2025年までに水素燃料電池の「ギガファクトリー」レベルの大規模生産を欧州で行うことを目指す。

両社は合弁会社を通じて燃料電池生産でチームを組むが、トラック生産の他の部分は別のままだ。今後建設されるギガファクトリーの立地場所は来年発表される。工場の生産能力についても明らかにしなかった。

Volvo ABとDaimler Trucksは「ギガファクトリー」という野心剥き出しの言葉を使ったが(工場の大規模な生産能力を表現する、Teslaによって普及した言葉だ)、幹部は目標にいくつかの注意事項を加えた。欧州の水素経済は、欧州連合が充電ステーションや他のインフラのコストをさらに削減したりインフラに投資したりすることにつながる政策的枠組みをつくるかどうかに少なからず左右される、と幹部は記者会見で述べた。言い換えると、水素に投資しようとしているDaimlerやVolvoのようなメーカーは「鶏と卵、どちらが先か」的な問題に直面している。燃料電池の生産をアップするのは、充電ステーション、水素を輸送するパイプライン、そして生産するための再生可能エネルギーリソースを含む水素ネットワークの構築と並行して進められた場合のみ理にかなう。

「長期的に、これは他の全てと同様、ビジネス主導の取り組みでなければなりません」とVolvoのCTO、Lars Stenqvist(ラース・ステンクヴィスト)氏はTechCrunchに語った。「しかしまず第1段階では、政治家からのサポートがなければなりません」

他の欧州トラックメーカーと共に2社は、欧州中に水素充電ステーションを2025年までに約300カ所、2030年までに約1000カ所展開することを求めている。

2社は炭素税や二酸化炭素ニュートラルテクノロジーに対するインセンティブ、あるいはエミッション取引システムのような政策が、化石燃料に対してコスト競争力を持てるようにするのに役立つかもしれない、と示唆した。大型トラックは水素需要においてはわずか10%を占めるにすぎず、残りは製鋼業や化学工業のような産業によって使用される、とも同氏は指摘した。これは、他の分野も水素支持の政策を推進することが大いにありえることを意味する。

新しい合弁会社にとって最大の課題の1つは、水素を電気に変える際の非効率性の低減だ。「それは車両のエネルギー効率を改善するための、トラックにおけるエンジニアリングの中核です」と同氏は話した。「我々の産業のエンジニアのDNAに常にあったものです。エネルギー効率は電動化の世界ではさらに重要になるでしょう」。費用対効果の良いディーゼル代替にするために、水素のコストは1キロあたり3〜4ドルの範囲に収まる必要がある、と同氏は推定した。

Volvoはまたバッテリー電動テクノロジーにも投資していて、再生可能なバイオ燃料で動く内燃エンジン(ICE)を潜在的ユースケースとみていると話した。同氏は、将来においてICEを有望視しているとこのほど語ったBosch(ボッシュ)の役員に賛成している。「私はまた、長期的には内燃エンジンにも可能性があると信じていて、内燃エンジンが終わりを迎える、あるいはなくなる日がくるとは思いません」と述べた。

「政治サイドからテクノロジーを禁止するのは完全に間違いだと私は思います。政治家は禁止すべきではなく、テクノロジーを承認すべきでもありません。彼らは方向性を示し、何を成し遂げたいかについて語るべきです。その後、テクニカルなソリューションを考え出すのは我々エンジニア次第です」。

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Nariko Mizoguchi

中国Xpengが展開するLiDARを利用した自律運転EV

Elon Musk(イーロン・マスク)の、LiDAR(Light Detection and Ranging、光による検出と測距)に依存する企業は「破滅する」という発言は有名で、実際Tesla(テスラ)は、自動運転機能は視覚認識で成り立つという信念の元、レーダーを撤去しようともしている。しかし、中国のXpeng(シャオペン、小鵬汽車)は異なる考えのようだ。

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2014年に設立されたXpengは、中国で最も有名な電気自動車のスタートアップ企業の1つで、設立からわずか6年で上場を果たしている。同社はTeslaと同様、自動化を自社戦略の重要な課題と考えているが、Teslaとは異なり、レーダー、カメラ、Alibaba(アリババ)が提供する高精度地図、自社開発のローカリゼーションシステムの他、さらに最近ではLiDARを組み合わせて道路状況を検知、予測している。

Xpengの自律走行研究開発センターを統括するXinzhou Wu(ウー・シンヂョウ、吳新宙)氏は、TechCrunchのインタビューに応じ「LiDARは、子どもやペットなどの小さな動く障害物や、運転中の誰もが恐れる他の歩行者やバイクに対しても正確に距離を測定し、走行可能な空間を3Dで提供してくれます」と話す。

「LiDARに加えて、位置や速度を示す通常のレーダー、基本的なセマンティック(意味的)な情報を大量に持つカメラがあります」とウー氏。

Xpengは、2021年下半期に納車を開始する量産型EVモデルP5にLiDARを搭載する。この車はファミリーセダンで、Alibabaのマップに掲載された中国の高速道路や一部の都市の道路を、ドライバーが設定したナビに基づいて走行することができるようになる。LiDARを搭載していない旧モデルでは、すでに高速道路での運転アシストが可能だ。

「Navigation Guided Pilot(NGP)」というこのシステムは、TeslaのNavigate On Autopilotをベンチマークとしているとウー氏は話す。例えば車線変更、ランプへの進入、退出、追い越しの他、中国の複雑な道路状況ではよく観られる突然の割り込みに対する操作などを、すべて自動的に行うことができる。

「都市部は高速道路に比べて非常に複雑ですが、LiDARと精密な知覚能力があれば、基本的に3層の冗長性を持ったセンシングが可能になります」。

ADAS(先進運転支援システム)であるNGPでは、ドライバーはハンドルから手を離さず、いつでも車両をコントロールできる状態である必要がある(中国の法律では、ドライバーが路上でハンドルから手を離すことは認められていない)。Xpengの野望は、2~4年後にドライバーを排除すること、すなわちレベル4の自律性に到達することだが、実際の導入は規制次第とのことだ。

「しかしそれについてはあまり心配していません。中国政府はテクノロジーの規制に関して、実は最も柔軟だと思っています」とウー氏は話す。

LiDAR陣営

マスク氏がLiDARを嫌うのは、レーザーを使ったリモートセンシング手法のコストが高いことにある。ウー氏によると、初期の段階ではロボタクシーの上で回転するLiDARユニットに10万ドル(約1090万円)ものコストがかかっていたという。

「今では、少なくとも2桁は低くなっています」と話すウー氏。ウー氏は米Qualcomm(クアルコム)に13年在籍した後、2018年末にXpengに入社し、同社の電気自動車の自動化に取り組んでいる。現在は、Xpengの中核である、500人のスタッフを擁する自律走行研究開発チームを率いており、このチームの人数は2021年末までに倍増するという。

LiDARを搭載した新型セダンについては「次は、エコノミークラスをターゲットにしています。価格的にはミッドレンジと言えるでしょう」とウー氏は話す。

Xpengの車両に搭載されるLiDARセンサーは、深圳に本社を置くドローン大手のDJI(ディー・ジェイ・アイ)の関連会社であるLivox(ライボックス)が提供する。Livoxはより手頃な価格のLiDARが売りで、Xpengの本社かクルマで約1.5時間の広州を拠点とする。

関連記事:テスラの中国ライバルXpengがDJI系列LivoxのLiDARセンサーを採用へ

LiDARを採用しているのはXpengだけではない。Xpengのライバルで、より高価格帯の市場をターゲットにしている中国のNIO(ニーオ)は、2021年1月にLiDARを搭載したクルマを発表したが、このモデルの生産開始は2022年になる予定である。最近では、中国の国有自動車メーカーBAIC(北汽集団)の新しいEVブランドであるARCFOX(アークフォックス、極狐)が、Huawei(ファーウェイ)のLiDARを搭載した電気自動車を発売すると発表した。

マスク氏は最近、Teslaがカメラと機械学習による純粋なビジョンに近づくにつれ、製品からレーダーを完全に撤去するかもしれないと示唆している。マスク氏はTeslaの古いソースコードのコピーをXpengが持っていると主張しており、Xpengに好意的な感情を抱いていない。

2019年、Teslaは同社のエンジニアであったCao Guangzhi(ツァォ・グゥァンヂー、曹廣志)氏に対し、企業秘密を盗んでXpengに持ち込んだとする訴訟を起こした。Xpengは不正行為を繰り返し否定している。ツァォ氏は現在、Xpengに在籍していない。

供給の課題

Livoxは、ドローンメーカーであるDJIに「育てられた」独立した事業体であると主張しているが、ある関係者の話では、Livoxは別会社という位置づけの「DJI内のチーム」にすぎないという。DJIとの距離を主張する意図は、DJIが米国政府のエンティティリストに登録されているためだ。Huaweiを含む多数の中国ハイテク企業の主要サプライヤーがエンティティリストにより排除されている。

さらにXpengは、NVIDIA(エヌビディア)のXavierシステムオンチップ・コンピューティングプラットフォームや、Bosch(ボッシュ)のiBoosterブレーキシステムなどの重要部品を使用している。世界的に見ても、半導体の供給不足は続いており、自動車の幹部たちはチップにさらに依存するようになる自動運転車の将来のシナリオに悩み始めている。

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Xpengはサプライチェーンのリスクを十分に認識しているようだ。「第一に、安全性は非常に重要です。安全性の課題は国家間の緊張よりも重要です。新型コロナウイルス感染症に影響を受けているサプライヤーもありますし、複数の供給路を検討しておくことは、私たちが非常に重要視している戦略の1つです」とウー氏は話す。

ロボタクシーの攻勢

Xpengは、Pony.ai(ポニーアイ)や広州のWeRide(ウィーライド)など、中国で急増している自律走行ソリューション企業と手を組むこともできた。しかし、Xpengは彼らの競争相手となり、自社で自動化に取り組み、人工知能のスタートアップ企業を打ち負かすことを誓ったのだ。

EVメーカーとロボタクシーのスタートアップ企業の関係について、ウー氏は「自動車用の大規模なコンピューティングが手頃な価格で利用できるようになり、LiDARの価格が急速に低下している現在、この2つの陣営に大差はありません」。

「(ロボットタクシー会社は)量産車の開発を急ぐ必要があります。2年後にはすでに量産可能な技術になり、ロボタクシー企業の価値は今よりもずっと低くなってしまうと思います」とウー氏は続ける。

「私たちは、自動車産業に求められる安全性と検査の基準を満たす技術の量産方法を知っています。これは、生き残りを左右する非常に高いハードルです」。

Xpengにはカメラのみに頼る計画はない。LiDARのような自動車技術の選択肢がより安価で豊富になってきた今、なぜそれを利用せずにカメラのみにこだわる必要があるのか、とウー氏は問いかける。

「私たちは、マスク氏とTeslaに敬意を払い、彼らの成功を願っています。しかし、(Xpengの創業者である)Xiaopeng(何小鵬)の有名なスピーチにあるように、私たちは中国で、そして願わくば他の国でも、さまざまな技術で競争していきます」。

5Gは、クラウドコンピューティングやキャビンインテリジェンスと一体になって、Xpengの完全自動化の実現を加速させることになると思われるが、ウー氏は5Gの利用法についてはあまり詳しく語らなかった。無人運転が可能になり、ドライバーがハンドルから手が離すことができるようになれば、Xpengは車に搭載される「多くのエキサイティングな機能」を探求するだろう。すでにノルウェーで電気SUVを販売しているXpengは、さらなるグローバル展開を目指している。

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画像クレジット:Xpeng

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(文:Rita Liao、翻訳:Dragonfly)

上海モーターショーで注目を集めていたEVたち

2021年で19回目を迎えた上海モーターショーでは、電気自動車やハイテク自動車が数多く出展された。中国、欧州、米国の自動車メーカーが集い、SAIC(上海汽車)、General Motors(ゼネラルモーターズ)、Liuzhou Wuling Motors(柳州五菱汽車)のジョイントベンチャーによる低価格志向の​​Wuling Hong Guang(五菱宏光)Miniから、高級車のMercedes(メルセデス)EQSまで、あらゆる価格帯の最新製品が披露されている。

一部の自動車メーカーは、規制当局が許可しさえすれば自律走行を実現できることを示唆する表現を用いて、ドライバー支援システムの機能をアピールした。ただし明確にしておくと、これらのシステムは自律的ではない。他の自動車メーカーはこの主張には触れなかったが、自社の車のソフトウェア機能を公表。この動きはTesla(テスラ)の人気が高まって以来続いているものだ。

このショーで我々の目を引いたものを本記事で紹介しよう。TechCrunchのRita Liaoによる中国の自動車に関する記事もお見逃しなく。Teslaが中国において自社の電気自動車の品質に関する苦情が広がる中、中国の消費者に合わせた車両の開発に取り組んでいることを伝えている。

関連記事:批判が高まる中、テスラが中国向けの新車両を検討中

Audi(アウディ)

Audiは2021年、中国のパートナー企業であるFAW(第一汽車) やSAICとともにスポットライトを浴びた。3社は、Audi A6 e-tronコンセプトカー、Audi Q5Lのアップデート、Audi A7L、まだベールに包まれているSUVスタディAudi concept Shanghai(コンセプトShanghai)など4つのワールドプレミアを発表している。

Audi Q5L SUVは、FAW-VW(FAW-フォルクスワーゲン)ジョイントベンチャーの長春工場で引き続き製造される。一方、2021年内に生産開始予定のAudi A7Lリムジンは、SAIC Audi(SAICアウディ)ジョイントベンチャーが製造。中国市場向け上海製モデルとなるAudi A7Lには、適応型エアサスペンション、後輪ステアリング、四輪駆動などの機能が搭載される。

A6 etron

展示のAudi A6 e-tron(画像クレジット:Wu Kai/VCG via Getty Images)

A6 etronコンセプトは、馴染みのあるA6とは趣を異にする。このオール電気自動車はAudiの「プレミアムプラットフォームエレクトリック(PPE)」で構築されており、同プラットフォームは2022年後半に始まる同社のCおよびBセグメント生産車の基盤アーキテクチャになる予定だ。

Audi A6 e-tronコンセプトはA6と同じ要素も共有する。広いクーペルーフアーチと短いオーバーハングを備えたスポーツバックとして設計され、22インチ(約56cm)の大径ホイールがその外観を仕上げている。A6 e-tronコンセプトは、合計350kWの出力と590ポンドフィート(約973Nm)のトルクを発揮する2つの電気モーターを装備。その充電アーキテクチャはPorsche Taycan(ポルシェ・タイカン)と同じ800ボルトを提供し、WLTP基準で434マイル(約700km)の航続距離を実現する。

BYD

Warren Buffet(ウォーレン・バフェット)氏が出資するBYD(比亜迪)は、Teslaと高いセールスを競い合い「Han(漢)」シリーズの販売台数は2020年の発売以来着実に増加している。

BYD Han

展示のBYD Hanの車両(画像クレジット:VCG/VCG via Getty Images)

BYDのHanフラッグシップシリーズには、電気自動車3台とハイブリッド車1台が含まれている。中国の漢王朝にちなんで名付けられた高級電気セダンシリーズは、2020年販売を開始した。BYDの長距離EVは約375マイル(約600km)走行可能で、同社によると、その「ブレード」バッテリーパックは従来型のバッテリーパックよりも安全性が高いという。

Geely Holdings Inc.(吉利控股集団)

中国の自動車コングロマリットである同社は2021年の上海モーターショー会場のかなりの部分を占め、最新のものを含む複数のブランドを展示。Polestar(ポールスター、極星)、Volvo Cars(ボルボ・カー)、Lynk&Co(リンク・アンド・コー、領克)、Geometry(几何)、そして新しいZeekr(極氪)ブランドがEVを出展している。

Geometry Pro

2021年上海モーターショーで発表された几何A-Pro(画像クレジット:Geometry/Geely Holdings)

Geelyのマスマーケットブランドは、そのGeometry A車両の新しい拡張バージョンを発表した。「Geometry A Pro」と呼ばれる同モデルは、150kWのバッテリーを搭載し、1回の充電で600km(372マイル)走行できる。同ブランドは2019年にローンチし、これまでに3モデルを展開。AモデルとCモデルが中国市場で販売されている。グローバルパートナーの選定に向けて、Geometry Cの輸出を年内に開始する計画だ。

Lynk & Co. 05

画像クレジット:Geely holdings/Lynk & Co.

同社はLync&Co.05のプラグインハイブリッド型の最新版を発表した他、年内に公開される電動パワートレイン搭載のLync&Co.製品で採用するScalable Product Architecture(スケーラブル・プロダクト・アーキテクチャ、SPA)も初めて披露した。

Polestar 1 Special Edition

2021年上海モーターショーでのPolestarのラインナップ(画像クレジット:Polestar/Geely Holdings)

Geelyが所有するVolvoのEVパフォーマンスブランドの展示では、ハイブリッド電気自動車Polestar 1とオール電気自動車Polestar 2の他、マットゴールドの2021年スペシャルエディションが注目を集めた。同車両がオール電気ではなくハイブリッドであることは確かだが、この特別バージョンは特筆に値する。

同スペシャルエディションは、カーボンファイバー強化ポリマー製の軽量ボディ、純正トルクベクタリング機能を備えたツインリア電気モーターに加え、曙ブレーキや調節可能なオーリンズダンパーなどの高性能コンポーネントを搭載。パワートレインは619HP、738ポンドフィート(約1000Nm)を引き出し、WLTP基準による純電気航続距離は60マイル(97km)。特注のマットゴールドカラーがエクステリアとブレーキキャリパーに施され、ブラックホイールを装着する。

Volvo XC40 Recharge

Volvo XC40の車両、2021年4月20日の上海モーターショーで公開(画像クレジット:Hector RETAMAL / AFP via Getty)

このスウェーデンのブランドは、2030年以降の新車販売をすべて純粋なバッテリー式電気モデルにする計画で、同社初のオール電気自動車XC40 Rechargeを本ショーに出展。同社の次のEVはC40になることを発表している。

Zeekr 001

Zeekrは2021年上海モーターショーで同ブランド初モデルの電気自動車を発表(画像クレジット:Zeekr/Geely Holdings)

Zeekrは同ブランドのフラッグシップであり、初モデルとなるEV、Zeekr 001を披露した。ブランド名Zeekrは、Generation Z(ジェネレーションZ)のZと「geek(マニアックな技術や知識を有することを表す)」を組み合わせたもので、ソフトウェアを前面に押し出すことを意図している。

Zeekrによると、同ブランドの車はオンラインや中国各地のエクスペリエンスセンターでも販売され、最終的には欧州や北米にも拡大する計画だという。Zeekr 001にはデュアルモーターが搭載されており、4つの車輪すべてに動力を供給。566ポンドフィート(約767Nm)のトルクを提供し、0mphから60mphまでの加速は4秒未満。1回の充電による航続距離の推定値は700 km(434マイル) を超えるとしている。

Zeekrブランドは今後5年間で5車種を市場に投入する計画で、そのすべてがGeely Holdingsの純電気SEAアーキテクチャをベースに開発される。

Mercedes(メルセデス)

このドイツの自動車メーカーは、上海モーターショーでEQBとEQSをはじめとする数車種を披露。いずれも同社の成長中のEQブランドの一部である。

EQB

メルセデス・ベンツの新しいEQB(画像クレジット:Mercedes-Benz)

同社は今回のショーで、コンパクトなマスマーケット向けのオール電気SUVを発表した。内装を中心にGLBを思わせる同車種は、2021年中国で発売される予定だ。欧州向けのグローバルモデルをハンガリーで生産し、2022年には米国で発売を開始する。

内燃エンジンGLBのスタイルを受け継いでいるのは一目瞭然だが、EQBのエクステリアの差別化要素として、前後に配される連続したライトストリップなど、電気EQブランドで共通するデザインが採用されている。アルミホイールは最大20インチ。グレードによってはローズゴールドやブルーの装飾トリムが施される。メルセデスは、パワートレインや航続距離、価格の詳細についてはまだ明らかにしていない。

EQS

Mercedes EQS 580 4MATIC(画像クレジット:Mercedes-Benz)

メルセデス・ベンツは上海モーターショーに先立って、自社ブランドEQのワールドプレミアを開催した。EQSは、電気だけで動く高級セダンとしては初めて、同社の新ブランドEQとして発売される。米国市場に最初に導入されるモデルは、329HPのEQS 450+と516HPのEQS 580 4MATIC。これは中国市場にとっても重要な車両となるだろう。

Sクラスのオール電気版となるこのモデルには、テクノロジーが詰め込まれている。例えば、車には350個のセンサーが搭載されており、距離、速度、加速度、照明条件、降水量、気温、座席の利用状況、ドライバーの目の動き、同乗者の会話などを記録する。TechCrunchはEQSを試す機会も得た。その時の印象はこちらの記事で紹介している。

関連記事:【レビュー】2022年のメルセデス・ベンツEQSはラグジュアリーEVの未来に賭ける、ただし賭金は高い

NIO(上海蔚来汽車)

Nioは、1月に発表されたET7の詳細を明らかにした。同社はまた、合計100カ所の自社ブランドの電力交換ステーションと、500カ所の充電ステーションおよび1万を超える充電設備を含むその他のインフラを中国の8つの省で展開すると発表した。

Nio ET7電動セダン、2021年4月19日月曜日の2021年上海モーターショーにて(画像クレジット:Qilai Shen/Bloomberg via Getty Images)

Nio ET7

ET7はNioの電気自動車のフラッグシップセダンだ。同社はこの車のインテリアを正式に発表した。インテリアにはストームグレー、サンドブラウン、エーデルワイスホワイトの3色のアースカラーがあしらわれている。同社は、既存のクラウドホワイト、スターグレー、ディープ・ブラック、サザンスターに加えて、サンライズ・ベージュ、ルミナス・オレンジ、アークティック・グリーンなど、可能性のあるエクステリアカラーについても若干の情報を提供した。

ET7の150kWhバッテリーは、中国のNEDCテストプロトコルにおいて621マイル(999km)という桁外れの航続距離を実現している。NEDCのテストは楽観的な推定値を出すことで知られており、欧州のWLTPテストに比べてはるかに少ない可能性は高いだろう。

Nioはまた「高速道路、都市、駐車場、バッテリー交換などのシナリオで、リラックスできる安全なポイント・ツー・ポイントの自動運転体験を段階的に提供する」と主張する、自動運転技術NIO Autonomous Driving(NAD)についても強調した。その表現は、この技術が野心的なもので、依然としてドライバー支援システムのカテゴリー下に属することを示唆している。加えて、中国の規制では、ドライバーがハンドルを握った状態で常にコントロールできることが求められている。

Nioは今後数カ月以内にET7の生産を開始し、2022年第1四半期に発売する予定だ。

SAIC-GM(上汽通用)

SAIC−GM−Wuling Automobile(上汽通用五菱汽車股份有限公司)は、SAICとGeneral Motors、そしてLiuzhou Wuling Motorsのジョイントベンチャーで、5000ドル(約54万円)を下回る低価格帯のHong Guang Mini EVを発表した。

Hong Guang Mini EV

Wuling Hong Guang Mini電気自動車、SAIC-GM-Wuling Automobile製(画像クレジット:Zhe Ji/Getty Images)

本稿のメイン写真にも採用されているWuling Hong Guang Mini EVは、2021年中国で最も人気を集めたEVの1つで、2月だけで5万7000台以上が販売され、価格は4230ドル(約46万円)となっている。このフェザー級EVは、最高効率かつ少ない構成部品で生産される。広西チワン族自治区の麗水工場では毎分1台の新車が生産されており、1台が完成するまでわずか4時間ほどだ。最も基本的なモデルは、AからBへのユーティリティ用に開発されたもので、インテリアもフード下もシンプルで機能的な車両に仕上がっている。

この愛らしいMiniの滑らかな走りは時速62マイルを超えることはなく、1回の充電による航続距離は約75〜110マイル(121~177km)で、市街を短時間移動するのに最適だ。5600ドル(約60万円)のモデルへのアップグレードにはエアコンとパワーウィンドウが含まれており、これはHVAC換気システムとシンプルなラジオを備えた標準モデルの簡素な性質を示している。

Toyota(トヨタ)

この日本の自動車メーカーは、2025年までにToyota bZブランド7車種を含む15車種のオール電気自動車を全世界で発売することを発表、新しいbZブランドは上海モーターショーでデビューした。

Toyota bZ46

Toyota bZ4X、2021年4月20日の第19回上海モーターショーで展示(画像クレジット:Hector RETAMAL / AFP via Getty Images)

Toyota bZ4Xは技術的には単なるコンセプトに過ぎないが、その重要性は無視できない。上海モーターショーで発表されたこのコンセプトカーは、トヨタの新しいオール電気自動車ラインアップの幕開けとなる。

トヨタの新しいbZブランド(beyond Zeroの略)は、サイズやデザインの多様なバリエーションで使用できる専用の基盤プラットフォームを備える。同社によると、このような幅広い選択肢を単独で用意するのは難しいため、さまざまな分野の専門知識を持つパートナーと共同でシリーズを開発しているという。トヨタはスバルにbZ4Xの開発を依頼し、BYD、ダイハツ、スズキもbZシリーズのパートナーだ。

トヨタはbZ4Xを日本と中国で生産する計画で、2022年半ばまでに世界中で販売を開始したいとしている。

Volkswagen(フォルクスワーゲン)

このドイツの自動車メーカーは、上海モーターショーを通じてIDブランドにおける3台目の電気自動車を発表した。この製品は中国市場向けに特別に設計されている。

VW ID 6

Volkswagenは2021年上海モーターショーで全電動式のID.6 CROZZとID.6 Xを初公開(画像クレジット:Volkswagen)

VW ID.6には、中国北部で製造されるID.6 CROZZと南部で製造されるID.6 Xの2つのバージョンが用意されている。ID.6はVWの最もゆとりのあるIDブランドモデルで、最大7名まで乗車可能だ。この車両は4つの特徴的な構成要素を持ち、航続距離は最大588 km(中国NEDC)となっている。

Xpeng(小鵬)

Xpengは上海モーターショーで3台目の車両を発表したが、その1台はLiDAR(ライダー)を使って高度なドライバー支援システムの能力を高めることを目指すものだ。

Xpeng P5

XPengのP5電気自動車、2021上海モーターショーにて(画像クレジット:Qilai Shen/Bloomberg via Getty Images)

Xpeng P 5はこの中国の自動車メーカーにとって3台目の車種だが、LiDARセンサーを内蔵して生産されるのは初めてだ。同社によると、セダンの前部の両側に組み込まれた2つのセンサーは、天候や暗闇に関係なく、歩行者、他の車、自転車、スクーターなどを検知して識別することができる。

Xpengの会長兼CEOのHe Xiaopeng(何小鵬)氏は、P5は同社史上最も先進的で技術的に野心的なモデルだと語った。

LiDARセンサーとソフトウェアを組み合わせることで、高度なドライバー支援システムを実現し、完全自動化に向けて前進させるという。センサーとソフトウェアシステムは堅牢だが、車両は自動運転ではない。TechCrunchのLiaoが報じているように、XpengのNavigation Guided Pilot(NGP) システムはTeslaのNavigate On Autopilotをベンチマークとしており、自動的な車線変更、ランプの出入り、他の車両の追い越し、そして中国の複雑な道路状況でよく見られる、別の車の急なカットインを操作することができる。しかし、ドライバーはハンドルを握ったままでいなければならない。2〜4年後にレベル4の自律走行を実現するという目標を掲げているが、現実的な推進は規制にかかっている。

カテゴリー:モビリティ
タグ:電気自動車中国上海

画像クレジット:Zhe Ji/Getty Images / Getty Images

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(文:Kirsten Korosec、Rebecca Bellan、翻訳:Dragonfly)

水素燃料電池飛行機へのZeroAviaの野望は技術的な課題が残るが大志は今なお空のように高い

2020年9月、ZeroAvia(ゼロアビア)の6人乗り航空機が英国クランフィールド空港から離陸して8分間の飛行を終えた時、同社は、商用サイズの航空機で史上初の水素燃料電池飛行を行うという「非常に大きな偉業」を成し遂げたと断言した。

この航空機はPiper Malibu(パイパーマリブ)プロペラ機を改造して作られており、同社によると、水素を燃料とする航空機の中では世界最大のものである。「水素燃料電池を使用して飛行する実験的な航空機はいくつかあったが、この機体の大きさからすると、完全にゼロエミッションの航空機に有償旅客を乗せる時代が目前に迫っている」と、ゼロアビアのCEOであるVal Miftakhov(ヴァル・ミフタコフ)氏は付け加えた。

しかし、水素を燃料としているといっても、実際にはどのような状況なのだろうか。乗客の搭乗はどの程度現実味を帯びているのだろうか。

ミフタコフ氏は飛行直後の記者会見で「今回の構成では、動力をすべて水素から供給しているわけではなく、バッテリーと水素燃料電池を組み合わせている。しかし、水素だけで飛行することも可能な組み合わせ方だ」と述べた。

ミフタコフ氏のコメントはすべてを物語っているわけではない。TechCrunchの調査では、今回の画期的なフライトに必要な動力の大半がバッテリーから供給されたこと、そしてゼロアビアの長距離飛行や新しい航空機で今後もバッテリーが大きな役割を果たすことがわかった。また、マリブは技術的には辛うじて旅客機と言えるかもしれないが、大型の水素タンクやその他の機器を収容するために、5つの座席のうち4席を撤去しなければならなかったのも事実だ。

ゼロアビアは、ピックアップトラックでの航空機部品のテストから始めたが、4年も経たないうちに英国政府の支援を得るまでになり、Jeff Bezos(ジェフ・ベゾス)氏やBill Gates(ビル・ゲイツ)氏、そして先週にはBritish Airways(ブリティッシュエアウェイズ)などからも投資を呼び込んだ。現在の問題は、ゼロアビアが主張している軌道を進み続け、本当に航空業界を変革できるかどうかだ。

離陸

航空機が排出する炭素の量は、現在、人類の炭素排出量の2.5%を占めているが、2050年までには地球のカーボンバジェット(炭素予算)の4分の1にまで拡大する可能性がある。バイオ燃料は、その生産によって木や食用作物が消費し尽くされる可能性があり、バッテリーは重すぎるため短距離飛行にしか使用できない。それに対し、水素は太陽光や風力を使用して生成でき、大きな動力を生み出すことができる。

燃料電池は水素と空気中の酸素を効率的に反応させて結合させるもので、生成されるのは電気、熱、水だけである。ただし、既存の航空機に燃料電池をすぐに搭載できるかというと、話はそう単純ではない。燃料電池は重くて複雑であり、水素には大型の貯蔵庫が必要だ。このようにスタートアップが解決しなければならない技術的な課題は多い。

ロシア生まれのミフタコフ氏は、1997年に物理学博士号の取得を目指して勉強するために渡米した。いくつかの会社を設立して、Google(グーグル)で勤務した後、2012年に、BMW 3シリーズ用の電気変換キットを製造するeMotorWerks(EMW、eモーターワークス)を設立した。

しかし2013年、BMWは同社の商標を侵害しているとしてEMWを非難した。ミフタコフ氏はEMWのロゴとマーケティング資料を変更すること、そしてBMWとの提携を示唆しないことに同意した。ミフタコフ氏はまた、BMWオーナーからの需要が落ち込んでいることにも気づいていた。

EMWはその後、充電器とスマートエネルギー管理プラットフォームの提供にビジネスの軸を移した。この新しい方向性はうまくいき、2017年にはイタリアのエネルギー会社Enel(エネル)がEMWを推定1億5000万ドル(約162億円)で買収した。しかしミフタコフ氏はここでも法的問題に直面した。

EMWのVPであるGeorge Betak(ジョージ・ベタック)氏はミフタコフ氏に対して2件の民事訴訟を起こし、ミフタコフ氏が特許からベタック氏の名前を除外したり、報酬を渡さなかったり、さらにベタック氏が自分の知的財産権をEMWに譲渡したように見せかけるために文書を偽造したりした、などと主張した。後にベタック氏は請求を一部取り下げ、2020年夏にこの訴訟は穏便な和解に至った。

2017年にEMWを売却してから数週間後、ミフタコフ氏は「ゼロエミッション航空」という目標を掲げ、カリフォルニア州サンカルロスでゼロアビアを法人化した。ミフタコフ氏は、既存の航空機の電気化への関心がBMWのドライバーよりも高い航空業界に期待していた。

第1段階:バッテリー

ゼロアビアが初めて公の場に登場したのは、2018年10月、サンノゼの南西80キロメートルにあるホリスター空港だった。ミフタコフ氏は、1969年型エルカミーノの荷台にプロペラ、電気モーター、バッテリーを据え付け、電気を動力として75ノット(時速140キロメートル)まで加速させた。

12月にゼロアビアは6人乗りのプロペラ機であるPiper PA-46 Matrix(パイパーPA-64マトリックス)を購入した。このプロペラ機は後に英国で使用することになる航空機と非常によく似ている。ミフタコフ氏のチームは、モーターと約75キロワット時のリチウムイオンバッテリーをこれに搭載した。このバッテリーは、テスラのエントリーレベルのモデルYとほぼ同じ性能である。

2019年2月、FAAがゼロアビアに実験的耐空証明書を発行した2日後、電気だけを動力とするパイパーが初飛行に成功した。また、4月中旬には最高速度と最大出力で飛行していた。これで水素にアップグレードする準備は整った。

輸入記録によると、3月にゼロアビアは炭素繊維製水素タンクをドイツから取り寄せている。マトリックスの左翼にタンクを搭載した写真が1枚存在するが、ゼロアビアは飛行している動画を公開したことがない。何か不具合が起こっていたのだ。

ゼロアビアのR&Dディレクターが、パイパーオーナー向けのフォーラムに次のようなメッセージを投稿したのは7月のことだ。「大事に扱ってきたマトリックスの翼が破損しました。損傷が激しく、交換しなければなりません。すぐにでも部品取り用に販売される『適切な航空機』をご存知の方はいませんか」。

ミフタコフ氏は、今までこの損傷について明言してこなかったが、今回、ゼロアビアが航空機に手を加えている最中にこの損傷が発生したことを認めた。この損傷の後、その航空機は飛行しておらず、ゼロアビアはシリコンバレーにおけるスタートアップとしての活動を終えようとしていた。

英国に移る

ミフタコフ氏は、ゼロアビアの米国での飛行テストを中断し、英国に目を向けた。英国のBoris Johnson(ボリス・ジョンソン)首相が「新たなグリーン産業革命」に期待しているからだ。

2019年9月、英国政府が支援する企業であるAerospace Technology Institute(航空宇宙技術研究所)(ATI)は、ゼロアビアが主導するプロジェクト「HyFlyer(ハイフライヤー)」に268万ポンド(約4億100万円)を出資した。ミフタコフ氏は、水素燃料電池を搭載し、飛行可能距離が450キロメートルを超えるパイパーを1年以内に完成させると約束した。出資金は、燃料電池メーカーのIntelligent Energy(インテリジェントエナジー)および水素燃料供給技術を提供するEuropean Marine Energy Centre(EMEC、ヨーロッパ海洋エネルギーセンター)との間で分配されることになっていた。

当時EMECの水素マネージャーだったRichard Ainsworth(リチャード・エインズワース)氏は「ゼロアビアは、電動パワートレインを航空機に組み込むというコンセプトをすでに実現しており、電力はバッテリーではなく水素で供給したいと考えていた。それがハイフライヤープロジェクトの中核となる目的だった」と述べている。

ATIのCEOであるGary Elliott(ゲイリー・エリオット)氏はTechCrunchに対し、ATIにとって「本当に重要」だったのは、ゼロアビアがバッテリーシステムではなく燃料電池を採用していたことだと述べ「成功の可能性を最大限に高めるには、投資を広く印象づける必要がある」と語った。

ゼロアビアはクランフィールドを拠点とし、2020年2月に、損傷したマトリックスと似た6人乗りのPiper Malibu(パイパーマリブ)を購入した。同社は6月までにマリブにバッテリーを取り付けて飛行したが、政府は安心材料をさらに求めていた。TechCrunchが情報公開請求によって入手したメールに対し、ある政府関係者は「ATIの懸念を確認し、それに対して我々ができることを検討したいと考えている」と書いた。

インテリジェントエナジーのCTOであるChris Dudfield(クリス・ダッドフィールド)氏はTechCrunchに対し、ハイフライヤープログラムは順調に進んでいるが、同社の大型燃料電池が飛行機に搭載されるのは何年も先のことであり、同氏はゼロアビアの飛行機を見たことさえもないと語った。

ゼロアビアは、インテリジェントエナジーとの提携により、英国政府から資金を確保しやすくなったが、マリブの動力の確保は進まず、燃料電池の供給会社を早急に見つける必要があった。

第2段階:燃料電池

ゼロアビアは8月、政府関係者に「現在、水素燃料による初の飛行に向けて準備を進めている」と文書で伝え、国務長官を招待した。

ミフタコフ氏によると、ゼロアビアのデモ飛行では、航空機としては過去最大となる250キロワットの水素燃料電池パワートレインが使用された。これはパイパーが通常使用している内燃機関と匹敵する出力であり、飛行において出力を最も必要とする段階(離陸)においても十分な余力が残る数値である。

ゼロアビアは燃料電池の供給会社を明かしておらず、250キロワットのうちどの程度が燃料電池から供給されたのかも詳しく説明していない。

しかし、デモ飛行の翌日、PowerCell(パワーセル)というスウェーデンの企業が、プレスリリースで、同社のMS-100燃料電池が「パワートレインに不可欠な部品」だったことを発表した。

MS-100の最大出力はわずか100キロワットであり、残りの150キロワットの供給源は不明である。つまり、離陸に必要な電力の大部分は、パイパーのバッテリーから供給されたとしか考えられない。

ミフタコフ氏は、TechCrunchのインタビューにおいて、9月のフライトではパイパーが燃料電池だけで離陸できなかったことを認めた。同氏によると、飛行機のバッテリーはデモ飛行中ずっと使用されていた可能性が高く「航空機に予備的な余力」を供給した。

燃料電池車でも、バッテリーを使用して、出力変化を安定させたり一時的に出力を高めたりするものは多い。しかし、いくつかのメーカーは、動力源について高い透明性を持たせている。飛行機に関していうと、離陸時にバッテリーを利用する上での問題点の1つは、離陸時に使用したバッテリーを着陸まで積載し続けなければならないことだ。

Universal Hydrogen(ユニバーサルハイドロジェン)は、別の航空機向けに2000キロワットの燃料電池パワートレインを共同開発している企業である。同社のCEO、Paul Eremenko(ポール・エレメンコ)氏は「水素燃料電池航空機の基本的な課題は重量だ。バッテリーはフルスロットル時のみに使用されるものであり、これをいかに小さくするかが軽量化の鍵になる」と述べている。

2月、ゼロアビアのVPであるSergey Kiselev(セルゲイ・キセレフ)氏は、バッテリーを完全になくすことが同社の目標だと語った。また、Royal Aeronautical Society(王立航空協会)に対し「離陸時の余力を確保するためにバッテリーを利用することは可能だ。しかし、航空機に複数の種類の駆動力や動力貯蔵システムを使用するとなると、認証の取得が著しく困難になるだろう」と話した。

今回、ゼロアビアは、出力の大部分をバッテリーから供給することで、投資家や英国政府から注目を集めたデモ飛行を成功させることができた。しかし、これにより、有償顧客を乗せた初飛行が遅くなる可能性がある。

排熱の問題

熱を排出する装置がなければ、燃料電池は通常、過熱を防ぐために空冷または水冷の複雑なシステムが必要になる。

「これこそが鍵となる知的財産であり、単に燃料電池とモーターを購入して接続するだけではうまくいかない理由なのです」とエレメンコ氏はいう。

ケルンにあるGerman Aerospace Center(ドイツ航空宇宙センター)では、2012年から水素燃料電池航空機を飛ばしている。特注設計された現在の航空機HY4は、4人の乗客を載せて最大で720キロメートル飛行できる。65キロワットの燃料電池には、冷却用の通風を確保するために、空気力学的に最適化された大きな流路を利用した水冷システムが搭載されている(写真を参照)。

画像クレジット:DLR

100キロワットの同様のシステムでは、通常、HY4のものより長く、3割ほど大きい冷却用インテークが必要になるが、ゼロアビアのパイパーマリブには追加の冷却用インテークがまったくない。

「離陸時の対気速度や巡航速度に対して、開口部が小さすぎるように見えます」というのは、ゼロアビアと共通する取引企業があることを理由に匿名でコメントを述べた航空燃料電池エンジニアである。

「熱交換器の配置や設定を試す必要はありましたが、熱を処理するために航空機の形状を再設計する必要はありませんでした」とミフタコフ氏は反論した。また同氏は、飛行中に燃料電池は85〜100キロワットの出力を供給していたと主張した。

ゼロアビアは、TechCrunchのインタビューに答えた後、パイパーの燃料電池が地上試験中に最大70キロワットの出力を供給している様子を示すビデオを公開した。地上試験中の70キロワットは、飛行中であればさらに高出力になる。

もちろん長距離飛行での実証は必要だが、ゼロアビアは、他のエンジニアを何年も悩ませてきた排熱問題を解決したのかもしれない。

次の飛行機:規模と性能の拡大

9月には、Robert Courts(ロバート・コート)航空大臣がクランフィールドでデモ飛行を見学し、飛行後に「ここ数十年間の航空業界で最も歴史的な瞬間の1つであり、ゼロアビアの大きな成果だ」と語った。タイム誌は、2020年の最大の発明の1つとしてゼロアビアの技術を挙げた。

ハイフライヤーの長距離飛行はまだこれからだというのに、12月、英国政府はハイフライヤー2を発表した。これは1230万ポンド(約18億4000万円)のプロジェクトであり、ゼロアビアが大型の航空機に600キロワットの水素電気パワートレインを提供するというものだ。ゼロアビアは、19人乗りの飛行機を2023年に商業化することで合意している(現在は2024年に変更されている)。

同日、ゼロアビアは2130万ドル(約23億円)のシリーズAの投資家陣営を発表した。これには、Bill Gates(ビル・ゲイツ)氏のBreakthrough Ventures Fund(ブレイクスルーベンチャーズファンド)、Jeff Bezos(ジェフ・ベゾス)氏のAmazon Climate Pledge Fund(アマゾン気候誓約基金)、Ecosystem Integrity Fund(エコシステムインテグリティファンド)、Horizon Ventures(ホライゾンベンチャーズ)、Shell Ventures(シェルベンチャーズ)、Summa Equity(スマエクイティ)が参加している。3月下旬には、これらの投資家からさらに2340万ドル(約25億3000万円)の資金を調達することを発表した。これにはAmazonは参加していないが、英国航空が参加している。

ミフタコフ氏によると、マリブはこれまで約10回のテスト飛行を終えているが、新型コロナウイルス感染症のため、英国での長距離飛行は2021年後半に延期されたという。また、ハイフライヤー2については、当初はバッテリーと燃料電池を半分ずつ使用する予定だが「認定取得可能な最終飛行形態では、600キロワットすべてを燃料電池でまかなう」とのことだ。

19人乗りの航空機から始まり、2026年には50人乗り、2030年には100人乗りと、約束した航空機を完成させることが、ゼロアビアにとって厳しい挑戦となることは間違いない。

水素燃料電池トラックの公開デモを誇張し、株価の暴落やSECによる調査を招いたスタートアップであるNikola(ニコラ)のせいで、水素燃料電池にはいまだに胡散臭いイメージがある。ゼロアビアのような野心的なスタートアップにとって最良の選択肢は、投資家や、持続可能な空の旅の可能性に期待している人たちの期待を弱めることになっても、現在の技術と今後の課題について透明性を高めることだ。

ポール・エレメンコ氏は「ゼロアビアの成功を切に願っている。我々のビジネスモデルは非常に相補的であり、力を合わせれば、水素航空機を実現するためのバリューチェーンを築くことができると考えている」と述べている。

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タグ:ZeroAvia飛行機水素バッテリーゼロエミッションイギリス炭素燃料電池

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(文:Mark Harris、翻訳:Dragonfly)

Limeがニューヨーク市に電動モペッド100台導入、デブラシオ市長による7月1日の完全解禁宣言を受けて

ニューヨーク市の電動スクーターシェアリング事業の入札を、最初の企業として勝ち取ってから数週間後、マイクロモビリティー大手のLime(ライム)は、ニューヨークの街に電動モペッドを導入する。ニューヨーク市で複数の形態のマイクロモビリティーシェアリングを展開するのは、Limeが初となる。

米国時間4月30日、Limeはブルックリン区の路上に100台の電動モペッドを展開する。今後数週間で、対象地域はクイーンズ区とマンハッタン区の南区域に広げる予定だ。ニューヨーク市は、自動車の排気ガスによる大気汚染と温暖化に悩まされてきた。2050年までにカーボンニュートラルを実現したいならば、同市は電動マイクロモビリティーをもっと快く受け入れる必要がある。

Limeの直接の競合相手は、ニューヨーク市でLimeの他に唯一電動モペッドのシェアリング事業を展開しているRevel(レベル)だ。Revelは先日、全電気自動車による配車サービスの開始を発表したばかりだ。Limeが最初に運用を開始する地域は、ウィリアムズバーグからグリーンポイント、さらにブルックリンハイツにかけてのブルックリン区北部のほぼ全域というRevelの対象地域と、だいたい重なっている。だが、Limeの広報担当者によれば、Limeは南西部のフラットランズまで対象地区を広げるという。

2021年4月初め、LimeはワシントンD.C.とパリでも電動モペッド事業を開始している。どちらの地区でも、Limeが力を入れているのがライダーと他の道路利用者の安全だ。そのための機能として同社は、AIによるヘルメット検知、免許証確認、活性テストを導入している。活性テストとは、指示に従っていくつかの表情を見せ、ライダーが本物の生きた人間であることを証明するためのもので、他人の顔写真で誤魔化すことを防ぐ。Limeの広報担当者は、この活性テストは免許証の人物とライダーの照合にも使われると話している。

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さらにLimeは、米モーターサイクル安全財団の監修で構築したライダー教育カリキュラムの受講をライダーに義務づけている。サービスは自賠責保険でカバーされ、ライダーが運転中に人や器物に損害を与えた場合の金銭的な補償がなされる。ただし、ライダー自身の怪我や器物の損害は対象外となる。

ライバルのRevelは、こうした安全対策の導入を苦い教訓から学んでいる。2020年夏、ヘルメットを装着しないライダーの死亡事故や通報が相次いだことを受け、同社は電動モペッドのシェアリングを数週間停止し、市当局の不安を払拭するための安全対策を練った。現在Revelでは、利用者にヘルメットを着用した自撮り画像を要求している。また初めて利用する人はみな、乗車前に、安全訓練クイズ21問に答え、教則動画を見ることが義務づけられている。Revelのアプリには、コミュニティ通報ツールも組み込まれていて、悪質なライダーを見かけた人は、誰もが通報できるようにもなっている。

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ライダーの安全を守るためのLimeとReveの取り組みは、ニューヨーク市交通局(DOT)に指示されたものではない。DOTによる電動スクーターの承認には長い時間を要したが、電動モペッドには市の規制がない。

「私たちはDOTと協力して作業を進め、私たちの取り組みを逐一報告し、質問に答え、あらゆる問題点に対処しています」とLimeの広報担当者はTechCrunchに話した。

Limeは今後、Pell Grant(大学生向けの米連邦政府による給付型奨学金)の受給者、休職中の人、各種助成を受けている人の料金を割り引き、さらにパンデミックの影響を強く受けた最前線で働く人、教師、非営利団体の職員、アーティスト、接待業の人たちは無料にするLime Aid(ライムエイド)プログラムを実施する予定だ。

より多くのニューヨーク市民がワクチン接種を受けて、街の活動が元どおりに解禁されたとき(7月1日に完全解禁という計画が発表されたばかりだ)、Limeはマイクロモビリティ提供者の主導的地位を確立したいと考えている。彼らにとって、パンデミック後の夏は、この上ない好機だ。

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カテゴリー:モビリティ
タグ:Limeニューヨーク電動モペッドマイクロモビリティ

画像クレジット:Lime

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:金井哲夫)

【レビュー】GMの最先端技術を戦略的な価格で実現したシボレー・ボルトEUV、「スーパークルーズ」追加でテスラModel Yと互角に

2022年型Chevrolet Bolt EUV(シボレー・ボルトEUV)は、Chevrolet Bolt EV(シボレー・ボルトEV)よりもわずかに長くて大きく見えるが、その少し角ばった車体には数多くの最先端技術が手の届く価格で詰め込まれている。シボレー・ボルトEUVと、オプションで追加できる先進運転支援システム(ADAS)の発表により、GM(ゼネラルモーターズ)はADASと電気自動車を大衆の手が届く価格で提供する自動車メーカーになる。

今回発表された改良型「ボルトEV」と新型「ボルトEUV」(EUV:SUV型電気自動車)は、GMが声高に宣言してきた「今後4年間で30車種の電気自動車を発表する」という目標の一環である。筆者は、GMの先進運転支援システムSuper Cruise(スーパークルーズ)を搭載したボルトEUVのプロトタイプ車両に2回試乗する機会を得た。

ボルトEVとボルトEUVは基本的に似ている部分もあるが、互いにまったく異なるモデルである。ボルトEUVの方が車体が大きめで、スーパークルーズなど、利用できる機能がボルトEVよりも多い。ちなみにスーパークルーズとは、認可されている道路区間でハンズフリー運転を可能にする先進運転支援システムだ。ただし、このシステムは標準装備ではないため、2200ドル(約24万円)の追加料金を支払ってアップグレードする必要がある。ちなみに2022年型ボルトEVはスーパークルーズには対応していない。

ボルトEUVの基本概要

ボルトEUVには288セル、65キロワット時(kWh)のバッテリーパックが搭載されている。最高出力は200馬力(hp)、最大トルクは360ニュートンメートル(Nm)だ。メーカー推定航続距離は満充電時250マイル(約402キロメートル)で、急速充電(DC充電器で30分充電)すればさらに95マイル(約152キロメートル)走れる。

住宅用の電源(240V)を使った場合、100%充電できるまで約7~8時間かかる。ほとんどのボルトEUVオーナーは住宅用電源で充電するとシボレーは想定している。そのようなオーナーをサポートするために、シボレーは家庭用のEV充電器設置サービスを提供するQmerit(キューメリット)と提携し、ボルトEVまたはボルトEUVの新車を購入またはリースする顧客に、通常であれば2000ドル(約22万円)かかる家庭用EV充電器の設置サービスを無料で提供することを決めた。これはかなりのインセンティブになると思う。

GMがHmmer EV(ハマーEV)やCadillac Lyric(キャデラック・リリック)をはじめとするEVに搭載すると発表した新しいUltimum(アルティウム)バッテリーは、ボルトEUVには採用されていない。ボルトEUVの車台は2021年型ボルトEVと同じく「BEV2」と呼ばれる電動プラットフォームだ。前述したように、スーパークルーズは標準装備ではないため、追加したい場合はオプション料金を支払う必要がある。

スーパークルーズは、2017年に導入されて以来、2018年にはCT6、2021年にはCT5と、キャデラックのモデルにのみ搭載されてきた。有料アップグレードが必要ではあるが、ボルトEUVはGMがラグジュアリー車以外でスーパークルーズを導入した初のモデルである。

ボルトEUVのベース価格は3万3995ドル(約370万円)で、現在ディーラーに並んでいる2021型ボルトEVより2500ドル(約27万円)安い。2022年型ボルトEVも3万1995ドル(約348万円)で、2021年型ボルトEVより4500ドル(約49万円)安い。シボレーの広報部によると「誰でも手が届く価格でEVを提供する」ことを目指しているとのことだ。もちろん、7500ドル(約82万円)の連邦税控除の対象となっていた前身モデル各種と価格面で整合させる目的もあるのだろう。この連邦税控除は各自動車メーカーの米国内納入台数が20万台に達すると廃止されるのだが、GMはその上限台数をすでに超えているからだ。

初期限定モデルLaunch Edition(ローンチ・エディション)のメーカー希望価格は、オプションでスーパークルーズを追加でき、照明付き充電ポートとスペシャルバッジが付いて、4万3495ドル(約474万円)だ。この記事の執筆時点でローンチ・エディションの予約枠はすでに完売しているが、LTトリムまたはプレミアトリムであればまだ予約可能だ。しかし、2200ドル(約24万円)の有料アップグレードでスーパークルーズを追加できるのは、ベース価格3万8495ドル(約419万円)のプレミアトリムのみである。ちなみに、ここで紹介した価格はどれも州または地方自治体によるEV対象の税控除や割引を考慮する前のものだ。

対照的に、Tesla(テスラ)のModel Y(モデルY)の中で最もお買い得なロングレンジモデルでも、インセンティブを考慮する前のベース価格は4万1990ドル(約457万円)だ。テスラの「Full-Self Driving(完全セルフ運転)」機能(実際はセルフ運転ではなく運転支援システムなのだが)を追加するには、さらに1万ドル(約109万円)かかる。

スーパークルーズの使用感

スーパークルーズはすばらしいシステムなのだが、実用面ではまだエラーが多い。スーパークルーズとは、米国各地の認可された道路区間(合計すると約32万キロメートル以上)で、ハンドルから手を、ペダルから足を離して自動運転することを可能にするシステムである。

筆者が2回目に試乗したとき、ボルトEUVのエンジニアリング、開発、検証、テスト、製造を統括するチーフエンジニアのJeremy Short(ジェレミー・ショート)氏は次のように語ってくれた。「渋滞や衝突事故をゼロにする可能性を持つ完全自動運転の技術は開発しがいがある。自動運転は今後10年が本当に楽しみな分野だ。スーパークルーズが今実現している機能を本当に開発できるなんて、5年前には想像もしていなかったはずだよ」。

とはいえ、スーパークルーズには改善の余地があるため、GMは今後も開発を継続していく予定であり、それはボルトEUV用のスーパークルーズも同じだ。筆者がボルトEUVの1回目の試乗でマリーナ・デル・レイからバーバンクへ行き、ラッシュアワーのロサンゼルスに戻ってきた際、スーパークルーズは「少し調子が悪い」感じがした。ハイウェイの広い車線の中で大きく蛇行することが多く、時速30マイル(約50キロメートル)以下になると、交通量が非常に多い認可道路の1つである405号線で、まるで車線を見失ってしまったかのように隣の車線に寄ってしまい、手動運転に切り替わったことが何度もあった。

2022年型シボレー・ボルトEUV(画像クレジット:GM)

それから数週間後、2回目のプロトタイプ試乗でカーソンから出発して50マイル(約80キロメートル)ほど走行したときは、スーパークルーズはかなり安定して作動した。しかし、筆者も、別のプロトタイプ車両で筆者の後ろを走っていたショート氏も、時速10マイル(約16キロメートル)以下になるとボルトEUVのスーパークルーズがおかしな動作をすることに気づいた。前を走っているクルマが減速すると、ボルトEUVも適宜減速するのだが、その後にクルマが流れ始めて加速すると、まるで車線を見失ってしまったかのように車線から逸れてしまい、そのうちに、手動運転に切り替えるための警告音が鳴ってスーパークルーズがオフに切り替わるのだ。

試乗を終えたショート氏も「低速時に蛇行しましたね、私も気づきました」と言っていた。そして、蛇行せずに走行することをスーパークルーズのシステムに教え込むために、もっとエンジニアを呼んで、同じ車両で同じ道路を走らせないとだめだな、なんてジョークを飛ばしていた。同氏によると、低速走行時には、カリフォルニア州の車道でよく見かける奇妙なコンクリート路面加工をAIが車線区分線だと誤認識し、それがスーパークルーズに影響する可能性があるとのことだ。「これは、軌跡がわかる曳光弾のようなものです。インプットされるデータが多いほど、車両はより正確にデータに沿って動こうとします」と同氏は述べる。

スーパークルーズは、すでにキャデラックCT5やCT6などのモデルに広く搭載されているとはいえ、継続的に学習し更新されていくシステムだ、とショート氏は語る。車の重量、可能速度域、寸法、ステアリング、ブレーキ、センサーまでの距離やその機能は、モデルによって異なる。そのため、スーパークルーズを新しいモデルに採用する際は、その都度センサー、ソフトウェア、データ処理機能に手を加えて更新することが必要だ。例えば、2022年型Cadillac Escalade(キャデラック・エスカレード)に搭載されたスーパークルーズには自動的に車線を変更する機能が含まれている。しかし、2022年型ボルトEUVには対応するセンサーが搭載されておらず、自動的に車線変更する機能は備わっていない。

ショート氏は次のように説明する。「スーパークルーズの詳細はモデルによって異なるため、処理するデータや提供する機能も異なります。ボルトEUVに搭載されたスーパークルーズは、エスカレードに搭載されるスーパークルーズと同じタイミングで開発されましたが、この2つのモデルはステアリングもブレーキもまったく異なるため、それぞれのスーパークルーズもやはり異なってきます」。

スーパークルーズは、先進的なレベル2の自動運転システムとして認定されている。ドライバーは依然として油断せずに周囲の状況に注意を払う必要があるが、スーパークルーズが利用可能な道路では、ハンドルから手を離したり、ペダルから足を離したりできる。ハンドルに搭載されたセンサーがドライバーの視線を追跡し(夜間や色の濃いサングラス着用時にも追跡できる)、ドライバーが映画を観たり、居眠りしたり、スマホを見たりしていないか、きちんと前方に注意を払っているかどうかを監視する。スーパークルーズの起動中でも、前方の道路からあまり大きく外れた場所を見ることはできない。例えば、時速65マイル(約105キロメートル)で走行している場合、10.2インチのインフォテイメント画面に手を伸ばしてラジオのチャンネルを変えることくらいはできるのだが、それでも、視線が数秒以上逸れただけで警告音が鳴る。

ショート氏は筆者からの質問に答えて次のように説明してくれた。「ロサンゼルスからラスベガスまで長距離ドライブをする場合、ドライバーはまるで『前列シートに座っている同乗者』になったように感じると思います。ドライバーも同乗者も道路状況に注意を払い、危険がないかどうか前方を見ることでしょう。私もスーパークルーズを使ってこの区間を走ってみましたが、同乗していた友人と同じ程度の疲労しか感じませんでした。つまり、ドライバーとしてずっと運転するときほど疲れなかったのです」。

その他の機能

通常はまる1週間かけて試乗して余すところなくレビューするのだが、今回の2022年型ボルトEUVではそれがかなわなかった。とはいえ、このクルマが持つ特徴の一部をレビューする時間は取ることができた。

シボレーの車載インフォテイメントとナビゲーションをつかさどるシステムを動かすのは、GMのInfotainment 3ソフトウェアだ。このシステムの音声制御には自然言語処理が実装されているため、筆者は最寄りの充電ステーションを音声制御ですばやく検索できた。

ただし難点があった。音声で検索すると同システムに複数の充電ステーションが表示されたのだが、どのステーションが利用可能か、営業時間中なのか、営業時間外なのか、GMが提携している充電サービス企業EvGoのネットワークに加盟しているかどうか、といった情報は表示されなかったのだ。さらに、スーパークルーズの使用中は検索結果の表示ページを移動できない。なぜなら、ドライバーの視線が前方の道路から逸れると、モニタリングシステムがそれを検知するからだ。

EvGoの充電ステーションを見つけるにはmyChevroletアプリを使う必要があり、見つかった充電ステーションまでの道順を車載ナビゲーションシステムに送信しなければならない。運転中は一部の機能がロックされて使えなくなる。また、ショート氏が指摘するように、myChevroletアプリのページを移動することもできなくなる。

ボルトEUVが市場に出てしばらく時間が経った頃にこの問題がどのような展開を見せているのか、楽しみに待ちたいと思う。そうは言っても、テスラの充電ステーションほどシームレスな体験は難しそうだ。

総評として、2022年型シボレー・ボルトEUVは、現在利用できる自動運転支援テクノロジーの中で最先端の機能を電気自動車に搭載し、それを入手しやすい価格で提供しているモデルだと思う。1回4時間のプロトタイプ試乗を2回体験してみて、コンパクトでありながら広い車内スペースが確保されているボルトEUVは、パワーの面でもテクノロジーの面でも、テスラのモデルY、ボルボのXC40リチャージ、フォードのマッハE、フォルクスワーゲンのID.4などと互角に渡り合えるモデルだと感じた。

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画像クレジット:GM

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(文:Abigail Bassett、翻訳:Dragonfly)

自動運転シャトルバスの仏EasyMileが72.5億円を調達

レベル5の完全な自動運転車が公道を走るのはまだ先のことかも知れないが、その一方で、限定された閉鎖的なキャンパス向けの、特定の用途の自動運転車やシャトルを製造している企業たちは、商用運行への道を歩んでおり、そのための資金を調達していると語っている。この度、乗客や貨物を運ぶシャトルバスを製造している、フランスのトゥールーズのスタートアップEasyMile(イージーマイル)が、シリーズBで5500万ユーロ(約72億5000万円)を調達した。

今回の資金調達は、今週初めにFCC(連邦通信委員会)の元議長Ajit Pai(アジート・パイ)氏を新たなパートナーに任命したSearchlight Capital Partnersが主導し、McWinとNextStage AMが参加している。また、これまでの出資者である鉄道業界大手のAlstom(アルストム)、Bpifrance(仏公共投資銀行)、自動車大手のContinental(コンチネンタル)も参加した。Searchlight Capital Partnersは、他にGet Your Guide(ゲット・ユア・ガイド)やUnivision(ユニビジョン)にも出資している。

EasyMileは自社を、自動運転シャトルの世界的リーダーであるといい、世界市場の60%で同社の車両が使用されていると主張している。同社の車両は、世界30カ国、300カ所以上で80万kmを走破したという。しかし、その一方でEasyMileは、その市場の小ささと新しさを示すように、同社は全世界で180台の車両しか配備していないのだと語る(興味深いことに、競合大手ののNavya(ナビヤ)もフランスに本社を置いている)。

EasyMileはこの資金を、閉ざされたキャンパス環境での商用展開を推進し、事業を拡大するために利用すると述べている。また、公共交通機関に自社の車両や技術を導入するという長期的な戦略にも引き続き投資していくが、より身近なユースケースに焦点を当ててきたことが、成長や新たな投資を呼び込むことにつながったと考えているとのことだ。

EasyMileの創業者でCEOであるGilbert Gagnaire(ジルベール・ガニエール)氏は声明の中でこう語る「私たちは、現実的なタイムフレームの中で提供できるものに集中し、今すぐにでも対応可能なニッチ市場のリーダーたちと提携してきました。「EasyMileの初期の投資家の方々全員に、今回のラウンドにも参加していただけたことは、当社の拡大計画に対する強い信頼の証です。そしてSearchlight、McWin 、NextStageをお迎えし、彼らの専門知識のおかげで当社の成長が加速することを大変うれしく思っています」。

EasyMileは評価額を公表しておらず、募集枠を超えたと同社が形容するラウンドで、これまでに調達した金額も公表していない。現在、同社に問い合わせ中だが、詳細が分かり次第、この記事を更新する。

EasyMileの車両には、人を運ぶシャトルバスのEZ10(イージー10)や、自動運転で荷物を運ぶ牽引式のトレーラーシステムTractEasy(トラクトイージー)などがあり、これまでに航空貨物の地上輸送のTLDで使われた他に、現在はPeugeot(プジョー)、Chrysler(クライスラー)、Fiat(フィアット)グループのStellantis(ステランティス)と共同で、EasyMileの技術を使った自動運転車の開発を進めていいる。

同社は挫折も経験している。2020年、EasyMileが事故を起こした後、NHTSA(米国運輸省道路交通安全局)は同社が乗客を乗せてサービスを行うことを禁止した(乗客なしでの運行は禁止されていない)。この件に関する最新の状況については、同社に問い合わせている。

その点では、新しい投資家が規制上の問題にどのような影響を与えるのかが注目される。

Searchlight CapitalのパートナーであるRalf Ackermann(ラルフ・アッカーマン)氏は「EasyMileの成長にとって重要な節目であるタイミングで投資をできることを、大変うれしく思っています」と述べている。「彼らの持つ、堅牢で品質を重視したアプローチと業界をリードする技術を見て、この会社が商業的に拡大できる十分な立場にあると確信しました。その発展の道のりに参加できることが喜びです」。

自動運転分野での再編や、場合によっては縮小も見られる時期に行われたという点で、この資金調達は興味深いものだ。今週Lyft(リフト)がLevel 5(レベル5)部門をトヨタのWoven Planet(ウーブン・プラネット)に5億5千万ドル(約597億2000万円)で売却したばかりだ。EasyMileは、閉環境のシャトルを中心とした特定の市場に焦点を当て続けてきたことが、さらに多くの変化や障害が起こることが予想される未発達の市場ので、事業を進め、より多くの支持と注目を集めることができたとのだ考えている。

Benoit Perrin(ブノワ・ペラン)GMは声明の中で「今回の資本注入は、EasyMileの戦略の正しさを立証するもので、技術開発の最終仕上げとスケールアップ戦略を可能にしてくれるものです。私たちは技術を産業レベルにまで引き上げ、実際の商業サービスを提供します」と述べている。

関連記事:トヨタのウーブン・プラネットが配車サービスLyftの自動運転部門を約600億円で買収

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画像クレジット:EasyMile

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:sako)

「街の電動化」を目指すRevelが50台のテスラ車で全電動配車サービスを開始予定

Revel(レベル)は2018年、ニューヨーク市ブルックリン区でドックレス方式による電動モペットのシェアサービスを開始した。後にそれは、クイーンズ区、マンハッタン区、ブロンクス区、さらに米国内の他の都市にも拡大された。2021年になり、同社はニューヨーク市内で電動自転車の月間サブスクリプションサービスを立ち上げ、同時にブルックリン区のベッドフォード・スタイベサント地区に電動車両用充電ハブを建設する計画を発表した。そして今、Revelは全電動、全Tesla(テスラ)の配車サービスをマンハッタン区に展開しようとしている。

かつては、方向性が定まらず、いろいろな形態の交通手段に場当たり的に手を出しているように思えたRevelだが、ニューヨーク市を手始めに、各都市に独自の電動化インフラを展開するという、計算された戦略がようやく見えてきた。これは、創設者でCEOのFrank Reig(フランク・レイグ)氏が当初から力強く宣言していたことだった。

「創設初日から、我々のミッションは街の電動化でした」とレイグ氏はTechCrunchに語った。「そのために私たちは、都市で必要とされる電動交通手段を提供し、その実現に必要となる電動車両インフラの構築を行ってきました」。

50台のRevelブランドのTesla Model Yを使って2021年5月末に開始を予定している新配車サービスは「都市内の移動をことごとく電動化する」という目標への次なるステップとしては、ごく自然な流れだとレイグ氏は話す。利用者は、電動モペットの予約に使うアプリで、そのまま配車サービスも受けられる。同社によれば、開始当初はマンハッタン42番街より南の地区で展開され、第1フェーズの需要とデータを見ながら、次第に対象地区を広げていくという。

Revelの配車サービスの立ち上げは、3年前に電動モペットのシェアサービスを開始したときと似たアプローチをとっている。共同創設者のPaul Suhey(ポール・スーイ)氏の話によれば、それはまずは小さい地域から始めて、街全体をカバーするという最終目標に向けて徐々に広げてゆくというものだ。

同社はまだ、ニューヨーク市タクシー・リムジン委員会に認可事業者の申請を出しているところだ。Revelは第一の認可は得たものの、正式な許可証を取得するまでには、まだいくつかの手続きが残されている。

「正式な許可証が交付されて準備万端整うのを待たずに、この段階で計画を公表した理由に、ドライバーの募集があります」とスーイ氏はTechCrunchに話した。「ドライバーを雇い入れるには、まず情報を広めなければなりません。私たちは今の時点で、ドライバーを雇って確保しておきたいのです」。

Revelの対顧客相場は、Uber(ウーバー)やLyft(リフト)と同等になる予定だとレイグ氏は話すが、ドライバーはギグワーカーに頼ることはせず、全員を雇用するという。

「同じ料金で、私たちは完全な電動化を実現し、同時にニューヨーカーを雇用することで、ぎりぎりの生活費でやっているニューヨーク市民に保険リスクと資産減価償却のすべてを押し付けるようなことはしません」とレイグ氏。

給料で支払うかたちは、Revelの利他主義によるものだけではない。ドライバーを雇用することが、TeslaにRevel向け仕様の車両を製造させる大きな条件になるため、理に適っているのだ。Revel向けModel Yは「Revelブルー」で塗装され、室内の温度や音楽をコントロールできる客席用のタッチスクリーンが装備される。助手席は新型コロナの社会的距離ガイドラインに従うためと、後席の乗客が脚を伸ばせるように取り外される。

だが、もっと重要なこととして、カリフォルニア州のProposition 22(住民立法案22号)の問題がある。Uber、Lyft、Postmates(ポストメイツ)といった企業は2億ドル(約217億円)のキャンペーンを展開してカリフォルニア市民に賛成の投票を呼びかけた。この法案とは、アプリベースの企業は労働者を福利厚生が受けられる従業員として扱わなくてよいとするものだ。法案は通過した。しかしレイグ氏には、その金があれば、幻滅したドライバーが抜けた欠員を埋めるために常に人材募集し続ける必要はなくなり、堅実な働き手を惹きつけ確保できたはずだとの持論を掲げている。

「車両に関して言えば、それが安全対策にもなります」とレイグ氏。「私たちが車両を保有しているため、加速、速度、ブレーキングなど、車の詳細な情報を常に把握できるのです。私たちが雇用し訓練したドライバーには、各シフトの終わりに安全スコアが示されるので、運転技術を磨くことができます。さらに、保険費用と保険責任を減らすことにもつながります」。

Revelは、街の電動化を進めつつ、そのビジネスモデルをその先の展開の足場にしようと考えている。配車サービスの提供は、新しい事業の構築という意味に留まらない。これは同社の充電事業の創設を加速する意味も持つ。Revelは、電気自動車のニワトリとタマゴの問題を解決して、独占的な電動化事業を確立を目指している。ニワトリとタマゴとはつまり、電気自動車の潜在的購入者は充電スタンドが拡充されたなら買いたいと考えている一方で、充電スタンドの展開を計画する企業は、電気自動車がもっと売れたなら建設できると考えているという問題だ。

「私たちが企業として行っているのは、都市における電気自動車の導入推進と、利用できる電動交通手段の拡大に尽きます」とスーイ氏。「それが電気自動車、電動自転車、電動モペットであれ、いろいろな形での利用を人々は願っています。私たちは、都市の電動化を、もっと幅広いものとして考えているのです」。

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タグ:RevelTesla配車サービスProposition 22電気自動車ギグワーカー

画像クレジット:Revel

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:金井哲夫)

GMが電気自動車推進で充電ネットワーク7社と提携、アプリでチャージャー案内も

GM(ゼネラルモーターズ)は米国時間4月28日、公共のチャージャーの検索や電気使用料の支払いなどを含む、電気自動車(EV)充電に関するあらゆる側面に対処しようと、4部構成計画を明らかにした。2025年までに発売する予定のEV30種に顧客を引きつける方法を模索している中でのものだ。

Ultium Charge 360と呼ばれるプラン(同社が今後展開するEVに活用されるプラットフォームとバッテリーにちなんだ名称だ)は家庭や道路でのEV充電のアクセス、支払い、顧客サービスをカバーすることを目的としている。プランの一部は今後18カ月以内に提供が始まる、と同社のEV責任者Travis Hester(トラビス・へスター)氏は述べた。同社はサードパーティの充電ネットワークプロバイダーであるBlink Charging、ChargePoint、EV Connect、EVgo、FLO、Greenlots、SemaConnectの7社と提携を結んだ。EVドライバーはGM車両ブランドのモバイルアプリを使って、チャージャーの場所やチャージャーが現在使われているかどうかなど、米国とカナダで展開されている計6万基のチャージャーのリアルタイム情報をチェックできる。こうした機能はGMがChevrolet、Cadillac、GMC車両の所有者向けに作った既存アプリに組み込まれる。

初となるGMとEVgoの充電サイトは現在、ワシントン州、カリフォルニア州、フロリダ州で利用できる。サイトは最大350キロワット出力で、1つのサイトにつき平均4台のチャージャーが設置されている。GMとEVgoは2021年末までに急速充電500基を設置する計画で、順調に進んでいる。

プランは単にいくつのサードパーティネットワークとGMが提携したかではない、とへスター氏は指摘した(ただし、発表されたパートナーのリストにElectrify Americaがなかったのは留意すべきだろう)。

「充電インフラが当社の顧客にとっていかに重要か、そしてEV浸透においてどのように大きな役割を果たすかを当社は理解しています。そして経験あるEVオーナーはこれが単にネットワークの数の問題以上に複雑であることを知っています」とへスター氏はメディア向けの説明会で述べた。

例えばGMアプリはどのようにステーションを探すのかについての情報をルートとともに示し、充電料金の支払いについての情報も提供する、とへスター氏は述べた。GMはモバイルアプリのアップデートを継続する。また、家庭での充電向けに充電アクセサリーや設置サービスも提供する計画だ。そして2022 Bolt EUVまたはBolt EVを購入・リースした顧客向けに、Qmeritとの提携のもと、レベル2の充電能力の標準設置をカバーすると明らかにした。

Plug and Charge能力など、発表で欠けていたものもいくらかあった。Plug and ChargeはEVのドライバーがステーションに乗りつけ、充電プロセスを開始したりその代金を払うためにアプリを立ち上げることなしに、プラグを差し込んで車を充電できるテクノロジーだ。アプリを立ち上げずに車両は充電インフラと交信することができ、決済はその充電プロセスに統合される。GMでEVインフラ建築の主任を務めるAlex Keros(アレックス・ケロス)氏は、Plug and Chargeについて何も発表しなかったが「シームレスなエクスペリエンスが顧客エクスペリエンスの重要な部分となる」ことをGMは認識している、と述べた。

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画像クレジット:GM

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Nariko Mizoguchi

街中でETCが使える「ETCX」始動、駐車場やドライブスルーなどでクルマに乗ったままキャッシュレス決済

街中でETCが使える「ETCX」始動、駐車場やドライブスルーなどでクルマに乗ったままキャッシュレス決済ETCを高速道路の料金所だけでなく、街中のドライブスルーや駐車場、ガソリンスタンド、EV充電スタンドでの支払いに利用できる「ETCX」の会員登録受付が本日(4月28日)より始まりました。

「ETCX」は、現在利用しているETCカードおよび車載機を使って、ETCXのロゴマークが掲示してある加盟店で、自動車に乗ったまま代金などを支払えるサービスです。クレジットカード番号とETC番号をETCXに登録するだけで利用できます。

なお、加盟店側の導入コスト削減のためにアンテナ性能は通常のETCよりも落としてあり、支払い時には一旦停止する必要があります。

クレジットカード番号とETCカード番号をETCXに登録すれば利用できる

クレジットカード番号とETCカード番号をETCXに登録すれば利用できる

公表されている加盟店は現段階で2つのみ。新名神高速道路の鈴鹿PA(上り線)に併設のドライブスルー型店舗「ピットストップSUZUKA」で4月29日から利用できるほか、7月以降に静岡県の伊豆修善寺道路の料金所施設も対応します。なお、実証実験段階ではケンタッキーの一部店舗でもドライブスルーに導入していました。

一方で、ガソリンスタンドや駐車場での導入準備を進めているといい、ETCソリューションズの中村英彦社長は『今後3年以内に100か所以上で利用可能にしたい』との目標を掲げます。

この『3年間で100か所』という目標はかなり控え目に思えますが、全く新しいソリューションである点や、加盟店になるためにはアンテナ工事をする必要があるなど、店舗側が導入するハードルは決して低くはないとのこと。とはいえ、多数の利用者を抱えるETCサービスとの親和性が高いことから、長期的には日本全国への加盟店の拡大に自信を示します。

今後の展望については、一般道においても道路の混雑状況に応じて動的に課金する「ロードプライシング」との相性が良いと説明するほか、現在ETCを導入していない有料道路においても、簡易的なETCとして利用できると説明します。

余談ですが、ETCXサービスの提供主体は、ソニーペイメントサービス・メイテツコム・沖電気工業の3社が共同で設立した「ETCソシューリョンズ」となり、高速道路会社が提供する既存のETCとは異なります。ETCXは既存のETCシステムを流用する形でサービスを展開します。

(Source:ETCXEngadget日本版より転載)

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タグ:ETCX(用語)モビリティキャッシュレス決済(用語)日本(国・地域)