Elemental PathのAI恐竜おもちゃ、予約開始――ステモサウルスで子供たちがSTEMを体験

Elemental Pathが最初の人工知能おもちゃ、CogniToyをデビューさせたのは2016年のTechCrunchがCES 2016の一環で開催したStartup Battlefieldだった。このときKickstarterで予約を行ったCogiToyは恐竜のおもちゃでIBM Watsonを利用し話しかけられた言葉を認識する能力があった。

今回開発されたのは新しい世代の恐竜ロボットで、その名もSTEMosaur(ステモサウルス)という。デザインはlementalの最初のロボットに似ているが、サイズが小さく、半透明なグリーンで子どもたちが組み立ててプログラミングも行うようになっている。

もうひとつ重要な変更点は、ステモサウルスはWatsonではなくElementalの独自のAIソフトを利用することだ。

ファウンダーのDonald Coolidgeはわれわれのインタビューに答えて、「Watsonはエンタープライズ業務、ことに製薬会社の業務に適したソフトで、もともと子供向けではない。マーケットにできるだけ速くプロダクトを出すためにWatsonは大いに役立ったが、第一世代のロボットを通じて十分にデータも集まったので、これをベースに独自の子供向けソフトを開発した」と説明した。

新しいステモサウルスはIndiegogoで予約受け付け中だが、 Coolidgeは「途中で立ち消えになったり、出荷されるまでに3年も待つようなプロジェクトではい」と請け合った。ロボットはすでに製造中であり、今年のクリスマスには十分に間に合うという。

Coolidgeの前回の恐竜おもちゃは大好評で、当初のKickstarterのキャンペーンで予定した数の5倍も売れた。これによりCoolidgeは新製品開発のための資金400万ドルを得たという。またAmazonを含むいくつかの販売チャンネルも確保した。

Elementalでは前回同様のヒットを期待しているようだが、そうなる可能性は十分にある。Indiegogoはキャンペーン締め切りまで15日あるが、すでに当初の目標の2万5000ドルの2倍以上の予約を集めている。

今度のクリスマスのプレゼントにグリーンの恐竜おもちゃを考えている向きに注意しておくと、このロボットの対象年齢は7歳以上だ。またIndiegogoでは119ドルで基本ユニットが入手できる。その後の小売価格は139ドルとなる。

〔日本版〕STEMはScience, Technology, Engineering and Mathematicsの頭文字でアメリカにおける科学技術教育の強化を図ろうとしてアメリカ国立科学財団が21世紀初頭に造語したとされる。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

トヨタ、人工知能で人を理解する「Concept-愛i」シリーズを拡大 3タイプを東京モーターショーに出展

トヨタは、自動運転技術を搭載した電動パーソナルモビリティのコンセプトカー「Concept-愛i(コンセプト・アイ)」シリーズを拡大する。今年1月にラスベガスで開催されたCESで初公開した同名の4輪モデルに加え、ユニバーサルな小型モビリティ「Concept-愛i RIDE」と、セグウェイ風の歩行空間向け3輪電動スクーター「Concept-愛i WALK」を新たに追加し、10月25日に開幕する東京モーターショー(一般公開は28日から)に出展すると発表した。この3台は、クルマがドライバーの感情や好みを理解できるように人工知能技術を搭載し、人とクルマがパートナーの関係になることを目指すという。

トヨタによれば、Concept-愛iシリーズは、人を理解する「Learn」技術をベースに、自動運転技術による「安全・安心」(Protect)と、エージェント技術によって移動の楽しさを充実させる「新しいFun to Drive」(Inspire)を提供するという。例えば、表情や声色、位置情報、さらにはSNS発信までも手掛かりにしてドライバーを理解し、多少遠回りになってもドライバーにとってより楽しいと思われるルートを提案する。また、五感全てを読み取れるので、ドライバーのまぶたが落ちてきたら注意したり、イライラ感を察知したらシートをリズミカルに伸縮したり、憂うつそうな時はドライバーの好きな曲を流したりする。さらに、ドライバーが危険な状態や高ストレス状態に陥った際には、運転機能を完全に引き継ぐことも可能だという。

こうした触れ込みに対し、気持ち悪いと感じる人もいるだろう。

トヨタはConcept-愛iでクルマを「機械を超えたパートナー」にすることを目指すと述べている。なお、ディープラーニングの人工知能システムに投資している自動車メーカーは、決してトヨタだけではない。

各車のスペックも紹介しておくと、Concept-愛iは電動パワートレインを搭載し、航続距離は約300km。カーシェアリング・サービスでの活用を想定した2シーターのConcept-愛i RIDEは、車いす利用者の乗降や車いすの積み下ろしを支援するガルウィングドアと電動スライド式シートを備える。ステアリング・ホイールやアクセル・ペダル、ブレーキ・ペダルの代わりにジョイスティックを採用し、航続距離は約100~150km程度。3輪のConcept-愛i WALKは、ステア操舵機能、小さな回転半径を特徴とし、航続距離は約10~20kmとなっている。

トヨタは2020年頃、Concept-愛iの一部の技術を搭載した車両で、日本における公道実証実験を開始する予定だ。

AutoBlog 日本版からの転載。

Adobeは人間の創造性と知性を強化するために人工知能を使う

約1年前、AdobeはSenseiという名前のAIプラットフォームを発表した。他の企業とは異なり、Adobeは一般的な人工知能プラットフォームの構築には興味がないことを明言している。その代わりに、顧客の創造性を高めることに焦点を当てたプラットフォームを構築したいと考えているのだ。今週開催されているMaxカンファレンスで、Adobeはこれが何を意味するのかについてより多くの洞察を提供し、同時にSenseiをその主要ツールに統合するやり方についての、沢山のプロトタイプを示した。

「私たちは業界の他の企業が開発しているような汎用AIプラットフォームを構築しているわけではありません。もちろん彼らがそのようなものを構築していることは素晴らしいことですが」と、AdobeのCTOであるAbhay Parasn​​isは、本日(10月18日)の基調講演の後の記者会見で述べている。「私たちは創造的なプロフェッショナルたちが、画像、写真、ビデオ、デザイン、そしてイラストレーションに対して、どのように取り組んでいるかを、とても深く理解しています。私たちは、これらの非常に特殊なドメインについて何十年も学んできました、その価値の多くが私たちのAIに反映されているのです。Photoshopの最高のアーティストの1人が創作に時間を費やすとき、彼らがやることは何なのか、そしておそらくもっと重要なことは、彼らは何をしないのか?ということです。私たちはそれらを、最新のディープラーニング技術と組み合わせることで、アルゴリズムが創造的プロフェッショナルたちの真のパートナーになれるように努力を重ねています」。

これは、AdobeがAIの知恵を、今後どのように使用するかについての、中核をなす信条だ。

実際には、これは様々な形態で実現される。例えばSenseiが自動的にタグ付けした画像の検索を可能にすることから、特定のタスクを声で行えるようにすることなども含まれる。

本日の基調講演では、Adobeはこうした未来のシナリオのいくつかを披露した。例えば、映画のポスターのために撮影された、何百枚ものポートレート画像を持っているとしよう。素晴らしいレイアウトが決まったが、今必要になったのは、被写体が右を見ている写真だ。Adobe LabのDavid Nueschelerがデモで見せたように、Senseiを使えばそうした必要な写真が見つけられるようになるだろう。なぜならSenseiは全てのイメージに詳細なタグを付けることができるからだ。そして、このアイデアをさらに進めて、Nueschelerは被写体が見ている方向で画像をソートしてみせた(左向きから右向きの順で)。

Nueschelerはまた、デザイナーがSenseiに与えたスケッチにタグが付けられて、自動的にストックイメージの中からタグに一致するイメージが検索され、ある映画ポスターに辿り着くまでのデモも行った。それ自身印象的なデモなのだが、Senseiはまた、デザイン上の全ての意思決定も同時に追跡している(Adobeはその記録をCreative Graphと呼んでいる)。その記録を使うことによって(最終プロダクトには影響を与えることなしに)、時間を遡って、異なる意思決定が最終的な結果にどのような影響を与えるのかを見比べることができるようにする。またおまけとして、Nueschelerは、Senseiが画像の背景を自動的に判断して削除できることを示したが、これには日頃イメージのマスキングに苦労している聴衆から、本日発表された他のどのAIツールにも負けないほどの歓声が寄せられた。

この日Adobeがずっと強調し続けていたのは、彼らが注力しているものは機械を創造的にするためものではなく、人間の創造性と知性を増強するためのものだということである。このメッセージは、Microsoftなどが語っている内容と非常によく似ているが、Adobeが創造的なプロフェッショナルだけを対象としていることは明らかだ。

Adobeはまた、こうしたことを正しく行なうことの重要性も認識している。Parasn​​isはSenseiを「世代を超える賭け」と呼び、本日の基調講演の中でAIと機械学習を「次の10年の最も破壊的なパラダイムシフト」みなしていることを強調した。

Adobeは、創造的な世界でこれを実現するために、間違いなく多くのことを行なう事になる。AIは、結局のところ、沢山のデータがあるときだけ上手く働くものだ。そして創造がどのように行われるかについて、Adobeより多くのデータを持っている者はいない。

Adobeが将来的には、Senseiプラットフォームの沢山の機能を、外部の開発者たちに開放する予定であることは指摘しておく価値があるだろう。本日その方向への第一歩が示された。Senseiを使って画像の中のフォントをTypekitライブラリの中のフォントとマッチさせる機能を、サードパーティの開発者に開放したのだ。時間が経つにつれて、さらに多くの機能が開放されることになるだろう。

しかし、今のところ、AdobeはそのAI機能を、クラウドならびにデスクトップの中の、コアサービスやアプリケーションに組み込むことに集中しているようだ。

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(翻訳:sako)

Allen Institute for AIの科学文献インデクサーSemantic Scholarにバイオメディカルの論文数千万点が加わる

科学の文献を自然言語処理などのAIの技法を使ってインデクシングするプロジェクトSemantic Scholarが、これまでのコンピューター科学に加えて、バイオメディカル(biomedical, 生物医学)の研究文献数千万点を新たに加えた。これで、この、この有益なツールがカバーする分野がさらに増えたことになる。

Allen Institute for AI*が作ったSemantic Scholarは、これらのペーパーの全文をスキャンし、そのトピックや図表、キーワード(薬品名、臓器名など)などでそれらの関連付けを行う。〔*: Allen Institute for AI, Microsoftの協同ファウンダーPaul Allenが2013年に立ち上げ。〕

今日では大量の文献が毎日のように発表されていて、その蓄積量がますます膨大になりつつある。それらを適切にレビューすることは、一人の研究者だけでなく、チームでも不可能だ。6年前のペーパーにたまたま、ノルエピネフリンの製造過程における副産物の微弱な医薬効果が書かれているが、それがメインの発見ではなく、あるいは別の分野のジャーナルに載っていた、という場合、今の研究者はそれをどうやったら見つけることができるのか?

これら何百万ものペーパーを取り込んで、細かいことでも研究者が見つけられるようにするのがSemantic Scholarの目的だが、最近までそのシステムはコンピューター科学の文献に限定されていた。今回、いくつかのバイオメディカルの研究分野が加わったので、そこになたのペーパーもあるか、確認してみよう!

このWebツールの今回のアップデートにはUIの改良が含まれ、利用者の関心に即したトピックやタグが見つけやすくなり、また、各分野の最新の研究動向も分かるようになった。それによりたとえば、ユーザーが知らなかった新しい薬やテクニックが浮上してくることもありえる。

このツールは誰でも利用できるが、もちろん誰にとっても便利とは言えない。風邪薬を探していたり、あるいはあなたが古生物学者だったら、ここはあまり役に立たない。でも、今後対象分野が徐々に増えていくと、それも変わるかもしれない。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

ポルノサイトが人工知能でビデオをタグづけ――PornHubのシステムは出演者、場面を認識する

新しいテクノロジーを採用するのが速いのはポルノビジネスだという説がある。PornHub〔閲覧注意〕はこれが必ずしも伝説ではないことを示そうとしている。このサイトではこれまでは人力でビデオの分類、タグづけを行っていた。しかし毎日8000万の訪問者がある巨大サイトにアップされるビデオを手作業でタグづけするのは大変な作業だ。

そこで分類、タグづけのための人員を増やす代わりにPornHubではロボットを採用することにした。

PHubの副社長、Corey Priceは「われわれはファンに対してビデオやモデルに関する情報を迅速、正確に提供することによってユーザー体験を改良し、エンゲージメントをアップさせることを目指している」と語った。,そのためにはプラットフォームを最新のテクノロジーを用いて常にアップデートしていかねばならない。「サイトがナビゲーションしやすくなればユーザーがサイトに戻ってくる可能性が高くなる」という。

PHubが採用したコンピューター・ビジョン・システムは各シーンに登場する出演者を識別できるだけでなく、シーンの…なんというか、属性を認識することができる。このシステムの能力をTechCrunchのような真面目なサイトで具体的に説明するのは困難だが、ともあれシステムはリアルタイムでパフォーマーをタグづけし、パフォーマンスの種類も分類できるという。上のデモではモデルの名前が表示されている。下の画像では斜め横からでも人物を認識し、パフォーマンスの種類を分類している。

「現在われわれは50万本のフィーチャービデオでこのシステムを使っている。これにはユーザーがアップロードしたビデオも含まれる。2018年の初めまでには全ライブラリーをスキャンする予定だ。近くこのシステムはさらに多様な場面を正確に認識し、適切にタグ付けできるようになる」とPrice。

顔認識はかなり以前に開発されたテクノロジーで、現在はモバイル・アプリでも用いられているが、PHubのシステムが「ビデオをスキャンして場面を適切なカテゴリーに分類する」というのは一歩進んだ利用法だ。さて実際にどの程度正確なのだろう?

「非常に正確だ」とPriceは断言した。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

ソニー、人工知能を搭載したAibo復活へ――Amazon Echo風AIロボット犬になる?

エレクトロニクスの巨人は引退したプロダクトを復活させて新たな仕事をさせる。Nikkei Asian Reviewなどの報道によれば、ソニーは愛され、惜しまれていたロボット犬の開発を再開するという。新しいAiboは時代に合わせて人工知能アシスタントを搭載することになる見込みだ。

スマートAiboはソニーの消費者向けスマート製品の最初の一つとなる。ソニーはAIプロダクト市場でAmazon、Google、Appleなどの先行組に追いつく努力を本格化させるようだ。

ソニーの人工知能搭載ロボットがAibo製品になるかどうかは発表されていないが、Aiboは時代に大きく先駆け、広く知られたブランドだ。しかし7年間の歴史でメインストリームの消費者製品となることはなかった。

Aiboが再開されるという噂ははるか以前にも出ていたが実現はしなかった。しかしその後10年もたち、Aiboブランドはノスタルジーの中からフルに復活することになる。

ソニーはロボット・テクノロジーを主として産業用分野で追求していたが、今回の動きは消費者向けロボット製品に戻ってくることを意味する。また消費者向け製品で再び大ヒットを狙うのだろう。Amazon Echoや Google Homeの急成長を見れば、スマート・アシスタント製品が有望分野であることはあまりにも明らかだ。

情報によれば新しいプロダクトはAiboのハードにAmazon Echoのようなスマート・ホーム機器の能力を組み込んだものになるようだ。本物の犬のように歩き回って家の中を監視し、音声でコントロールできるという。

過去のソニーのスマート・アシスタントに関する取り組みは中途半端なものだった。ソニーはAssistantと名付けたスマート機能を開発しXperia Ear Bluetoothなどのウェアラブル製品に 組み込んだものの欠点が多く、今年の1月のIFAでデモされたHome Podのライバルを目指す製品などでAlexaやGoogle Assistantと連係していた。

今回の報道によれば、Aibo風のロボット犬はソニー独自のAIを搭載することになり、サードパーティーも機能を追加できるという。このAIがAssistantの改良版になるのか、まったく新しいプロダクトとなるのかは不明だ。いずれにせよソニーは人工知能分野でGoogleやAmazonにキャッチアップすべく大規模な研究を開始しているという。

われわれはソニーにコメントを求めている。

画像: Getty Images

〔日本版〕先月、ソニーは傘下のベンチャーキャピタル、Sony Innovation Fundを通じてロボティクスのスタートアップ、Acutronic Roboticsに出資している。TechCrunch記事によれば、ソニーはロボット事業にAcutronicのプラットフォームを採用するという。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

AIが王様を収穫したりオレンジを解錠しないためには常識の装備が必要だ

ぼくがあなたにリンゴを手渡したら、あなたは自分の経験から、それが運転できるものではない、とわかるだろう。そして、それが採れた木で織物を織れないことや、その種(たね)でテニスはできないことも、わかるだろう。人間なら、それがナンセンスだと分かるが、でもAIには、現実世界で何年も過ごしたという優位性がない。だから、何で何ができる・できないという知識もない。彼らに常識を持たせることも、できないのだろうか。

ブリガムヤング大学の研究者たちは、現実世界と対話する未来のアンドロイドやAI製品が、身の回りのいろんなものが、それぞれ何であり、何をするものかわかっているようにしたい、と考えた。

その研究のペーパーを書いた研究者の一人Ben Murdochは、ニュースリリースの中でこう述べている: “機械学習の研究者がロボットや人工知能のエージェントを、乱雑な環境に放置したら、ありとあらゆるクレージーなことをするだろう。いろんな物に対する、それで何ができるのか、という常識が完全に欠けているので、ロボットはテーブルを食べようとして何千時間も努力するだろう”。

そんな極端な例が頻繁に起きるわけではないけれども、話の主旨はそういうことだ。必要なものは、いろんな物と、それらと結びついている一般的なアクション〔ボール→投げる〕や属性〔レモン→黄色い〕を列挙したデータベースだ。それがあればロボットは、ダンベルが持ち上げる物であり、押す物ではないこと、重くて軽くないことを知るだろう。ロボットにそれを持ってくることや動かすことを命じたら、そのデータベースを参照して自分の行動を決める。

そんなデータベースや、少なくともプロトタイプを作るためには、まず手作業でデータを集めて整理しなければならない。…実際にそれをやると、途方もない時間がかかるだろう。そこで研究者たちは英語版のWikipediaのコーパスをコンピューターに食べさせ、何百万もの語彙をそれらのコンテキスト(文脈)と共に咀嚼(そしゃく)させた。そうすると簡単な数学的処理とクェリによって、リンゴは一般的に噛むものであり、椅子は座るものであり、木は登ったり揺すったりするものである、とわかるようになる。

AIがこれらのオブジェクトを対話的に操作しなければならないときには、これが上出来のカンニングペーパーになる。また、誰かがそれに対して/関してやってることや、話してることを、理解できるようになる。研究者たちはこのシステムを、テキストだけの短いアドベンチャーゲームで試してみた。カンニングペーパーあり、の方が、断然好成績だった。

常識は、最初に取り組むべき課題だ。ロボットを作るたびに、いろんなオブジェクトについて、して良いことといけないことを毎回教えるなんて、たいへんだからね。

チームはこの研究をInternational Joint Conference on Artificial Intelligenceで発表した。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

GoogleのAIのトップは曰く、人工知能という言葉自体が間違っている、誇大宣伝を生む温床だ

Googleエンジニアリング部門のSVP John Giannandreaが、TechCrunch Disrupt SFで、人工知能に関する優れた談話を語った。とくに彼は、人びとは汎用の人工知能に対して心配しすぎだ、と考えている。

数年前にGiannandreaは、人工知能を4歳の子どもにたとえた。しかし今日はその説を改め、もっとひどい、と言う。“4歳児ほどの汎用的能力*もない”、と彼は述べる。〔*: 汎用的, general purpose, 知識を一般化してさまざまな目的や状況に対応/応用できる能力。〕

“今はAIに関して大量の誇大報道がある。多くの人が、汎用AIの勃興をめぐって、いわれのない不安を抱えている”、とGiannandreaは語る。“機械学習や人工知能はきわめて重要であり、産業に革命をもたらすだろう。Googleは検索エンジンのような、そのための建設工具を作って、生産性を高めようとしている”。

本誌TechCrunchのモデレーターFrederic Lardinoisは、さらに突っ込んで、AIアポカリプスを心配しているか、とGiannandreaに尋ねた。

彼は答えた: “AIアポカリプスに関しては、まったく心配していない。例によってそれは誇大宣伝とお手軽コメントの常套句であり、そんなものを専門に作ってる人たちがいるのだよ”。残念だったね、Elon Muskさん!。

AIアポカリプスに関しては、まったく心配していない

— John Giannandrea

また、強力な機械学習応用製品を作れるのが、Googleのような巨大テクノロジー企業だけであることも、不安や心配を招いている。Googleのような企業はデータの巨大な集積を独占し、独自のプロセッサーまで作り、数十億もの消費者に到達できる能力を持っている。

しかしGiannandreaによると、Googleは人工知能のコミュニティとの開かれた会話を維持する必要がある。データセットに関しては、Googleは機会均等化に努めている。“実際には、人びとが考えるほどの膨大なデータは要らないのだ。それに、オープンな大型データセットもたくさんある”、とGiannandreaは述べる。“われわれも、ビデオや画像のデータセットを公開しているし、他社も同じことをしている”。

そしてGoogleの社内でも、大学等の研究者と会社の技術者たちが一緒に仕事をしている。“われわれ技術者は、そういう研究者たちや製品開発の専門家たちと密接な関係を維持している”、とGiannandreaは語る。

さらに同社は、偏りをできるかぎり避けるために、同社のAIプロダクトのアーキテクチャを外部と共有していく必要がある。“機械学習の動作や結果が公平公正であることのために、われわれは大量の時間を投じている”、とGiannandreaは述べる。“データに偏りがあったら、偏りのあるシステムが作られてしまう。Google内部でも、また研究者との協働においても、機械学習の公平公正さと、データの偏りを防ぐことには多大な努力を投じている”。

そして彼によると、そもそも人工知能という用語が、正しい言葉ではないかもしれない。Giannandreaによると、人工知能という言葉にはあまり意味がない。“できれば、人工知能という言葉は使いたくないね。ビッグデータも、そんな言葉のひとつだ。漠然としすぎているし、明確な定義もない。まだ、マシンインテリジェンスの方がましだな”。

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GoogleのBrain TeamのAI研究者たちは毎日何をしているのか

GoogleのBrain Teamの連中は、毎日何をしてるだろうか。あなたと同じように、メールチェックに大量の時間を取られているかな。最近のRedditのAMA(Ask Me Anything, 何でも訊(き)いて)で、GoogleのAI研究者11名が、毎日彼らがやってることを述べている。メールはここでも多いが、学術論文を斜め読みするとか、同僚とブレーンストーミングをする、といった高尚な話題もある。

GoogleのBrain Teamは、同社で人工知能を研究している研究グループのひとつだ。グループのリーダーはGoogleのシニアフェローJeff Dean、彼はMapReduceの中心人物の一人だが、ほかにもいろんな実績がある。

Deanの一日の時間は、メールを送る、技術文書に注記する、研究者たちとのミーティング、コードをレビュー、コードを書く、講演やその準備などに費消される。チームのリーダーだから、Brain Teamを売り込む仕事も重要だ。

チームのだれもが例外なく大量の時間を費やすのが、自分の研究やチームの共同研究に関連するペーパーをarXiv読むことだ。チームの研修生Sara Hookerは、朝食、ときには昼食や夕食で、同僚とおしゃべりし、同じ問題でも研究者によって視点や取り組み方が違うことを知るのが、とても好きだそうだ。そして今の最先端の話題に後れないためにも。

これまで自分たちが考えてもみなかったようなAIのアプリケーション体験することも、彼らは好きなようだ。Hookerはその例として、宇宙探検を挙げる。

自分の出身大学の仕事を兼務している者も、何人かいる。NIPS(Neural Information Processing Systems)など、業界の重要なカンファレンスの企画運営に関わっている人もいる。

そして彼らは、自分で手を汚すことが好きだ。それは主に、hugeでmassiveでgiganticでcosmicでcolossalなGPUクラスター上で、徹夜も厭わず大きな実験をすることだ。Jasmine Hsuのように、コンピューターではなくロボットを使えるラッキーな研究者もいる。彼女はソフトウェアのボットではなくリアルなボットの上で、シミュレーションやモデルのテストなどをやって、研究中のアイデアのプロトタイピングをしている。一日中デスクに張り付いていることが好きな人は、あまりいない。

そこの研究者たちが考えることだけに費やしている時間で、ぼくたちならいくつかのことを学ぶことができるだろう。Daniel TarlowとNicolas Le Rouxは二人とも研究者で科学者だが、主な仕事は今やってるプロジェクトの舵取りや、今後のプライオリティの計画だ。彼らは毎日、それに集中している。

〔参考記事: 同グループ前年のAMA

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

GMとCruiseが初の「量産型」自動運転車を発表

Cruise Automation(昨年GMが買収)の創業者でCEOのKyle Vogtは、同社とそのオーナーであるGMにとってとても大きな発表を行った。発表の内容は彼らが自動運転車の量産体制が整ったというものだ。完全自動車両に必要な全てが搭載済で、あとはソフトウェアと規制問題がクリアされるだけだという。

「今日私たちは、量産可能な自動運転車のプロダクションデザインを発表します」とVogtは語った。「さらに重要なことに、これらの車両は運転手なしで走行することが可能なのです」。

つまり、すべての必要な部品は揃っていて、あとは「ソフトウェアの準備が整ったら」(とVogtは付け加えたが)、ドライバなしに路上を安全に運転することができるということだ。

GMのAutonomous Technology and Vehicle Execution担当副社長であるDoug Parksは、これまでVoltとBolt EVの設計に携わってきたと説明した。これが最終的に自動運転機能に結びつくものだと彼らは認識している。全てが「Kyleがいま発表した、初の量産型自動運転車を提供にむけて進行しています」。

「オリオンの組み立てセンターで製造することができるように、デザインに変更が加えられました」とParksは説明した。このためには部品調達のためにサプライヤーと協力したが、それは第2世代のテスト車両を使って成し遂げられたものだと語った。

この最新車両は量産可能なデザインになっている、とParksは述べた。つまり、自律システム全体に「完全な冗長性」が備わっているため、機械的にも準備が整っていて、センサとソフトウェアの観点からは「障害時にも機能し安全」ということになる。

この車両は、Chevrolet Boltを使用した第3世代Cruiseの自動運転プラットフォームに基づいている。彼らが以前Boltテスト車両を生産すると発表していた同社のミシガン州オリオンで生産されることになる。

この発表は、路上走行可能な自動運転車が明日にでも消費者の手に入るということを意味しているわけではない。Parkによればその前に「まだやるべきことはたくさんある」ということだ。

Vogtは自動運転技術における安全性に対する彼らの目標はどれ位向上して来たかについて語り、規模なしには何事もなし得ないと語った。数百台程度の車を路上に送り出すだけでは大きな利便性を達成することはできない。

「ハイテク企業にとって特にやりがいのある重要な挑戦は、車の製造です」と彼は言う。「そしてそれを量産することです」。

改造車両は製作が難しく、彼曰く「壊れ続ける」ために、継続的に修理して道路に戻すのは難しい。この発表が意味するのは、この車が年間何十万台も生産ラインから生み出されることが可能になったということだ。そしてその車両は現在出荷されているBolt EVにとても似ているものの、Vogtによれば内部では部品の40%が新しいものになっていて、そのほとんどが部品とシステムの冗長性に焦点を当てたものだ。

50台の車両が既にGMによって製造されていて、この先生産量が増加すると見込まれている。Vogtによれば、完全自動運転車を可能にするソフトウェアの展開の時期は設定されていないが、個人所有の車両ではなく、商用車両群に対する導入を目指しているということだ。

現在実際に生産されているこれらの新しい車両配備に関しては、Vogtによれば、今後数週間でサンフランシスコのCruise従業員に提供されるオンデマンド配車サービス”Cruise Anywhere”に統合され始める。

Vogtは、これはわずか14ヶ月で用意された第3世代のCruise自動運転車両であり、テスト目的だとしても、開発速度は驚異的だと指摘した。彼はまた、GMとCruiseが発表したものと、他の自動車メーカーやハイテク企業がCESのようなイベントに持ち込む一回限りのデモンストレーション車との違いを明らかにするという機会を得ることができた。

続報待ち

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(翻訳:Sako)

B向け人工知能業界をまとめたカオスマップ(2017年下期版)が公開

AI専門メディアの「AINOW」は9月5日、B向けに人工知能関連ビジネスを展開する企業をまとめたカオスマップを公開した。

このカオスマップに掲載されている企業は190社。なかでも「解析系」の領域には最も多くの企業が分類されていて、その数は60社となる。

マップ上では総合開発の領域が一番大きいように見えるけど、中身をみると結構幅広い企業が掲載されているから、アンケートでいうところの「その他」に似た分類という印象。それでも、トヨタから105億円という巨額の資金調達を実施したPreferred Networksなど、有力なAIスタートアップもここに含まれている。

このカオスマップを公開したAINOWは、「今まで大規模で扱うことが難しいとされていたビッグデータを可視化・分析をすることで新たなビジネスに繋げることができ、各企業がビッグデータの活用に注目」しており、その影響から解析系に分類される企業が増えたのではないかとしている。

TeslaのElon Muskが国家間のAI競争が第三次世界大戦を招くと警告

Elon Muskは、労働の日(米国時間9/4)を不吉な予言で祝った。この多産なテクノロジスト起業家によると、人工知能の技術の世界最強を目指す国家間の競争は、第三次世界大戦のような状況を招く、という。

Muskはその思いを月曜日(米国時間9/4)にツイートしたが、それは北朝鮮の自称水素爆弾の実験が契機だったようだ。その後のツイートで、そのことを明かしている。

[中国やロシアなど大国によるAIの優位性をめぐる国家レベルの競争が第三次世界大戦を起こすだろう。]

Muskによれば、これからは、ロシアや中国などコンピューター科学に強い国々のすべてがAIの覇権を目指して競争する。それは、The Vergeに載った、AIにおける世界のリーダーが全世界のリーダーになる、という説に対するロシアのリーダー、ウラジミール・プーチンのコメントをめぐる記事への、彼の答でもある。

AIを開発している国自身が意図的意識的に第三次世界大戦を開始する、という意味ではない。Muskが言いたいのは、テクノロジーの軍拡競争の中で開発されたAIのどれかが、自分が世界のリーダーになるためにはそれが最良の道であると判断して、実際に攻撃を開始することもありえる、という意味だ。

OpenAIの創始者でもある彼は、さらに続けて、AIの軍拡競争がもたらす脅威に比べると、核戦争の危険性は低い、と主張する。人間リーダーが実際に核を発射する可能性は、文明の存続に対する懸念のリストの中ではずっと下の方にある、と彼は言うのだ。

Muskによると、AI技術の各国家による追究がもたらす最大の危険性は、それらが超法規的でありうることだ。そのため従来のように、国のイノベーションは民間企業のイノベーションを後追いするという従来の傾向に逆らって、独自の研究開発路線を突っ走ることもありえる。〔原爆がそうであったように。〕

[政府が企業の最先端のAI技術を独占的に入手することもありえる。]

Muskは前にもAIの危険性について語り、それを“生存の危機”と呼んだ。彼がOpenAIやNeuralinkを創設したのも、そのためだ。前者は人工知能の開発を正しい監査のもとに公開的に行っていこう、という主旨の団体。そして後者は、人間の脳とAIを結びつけることによって、AIが人間を無視して独走しないようにすることを目指す。

彼の危機感は技術に対する誤解に基づいている、と批判され、AIの専門家たちの一部は、彼には技術がわかっていない、とまで言った。Muskは、それらの批判に折れて自説を撤回してはいない。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

AIスタートアップのAppierがソフトバンク、Line、Naverなどから3300万ドル資金調達

Appierの共同創業者兼CEOのChih-Han Yu(写真中央)と社員たち

AI(人工知能)を活用してマーケティングの意思決定を支援する台湾のスタートアップ企業Appierは、シリーズCにおいて名だたるアジアの投資家勢から3300万ドルを調達したことを本日(米国時間8/30)発表した。投資を行ったのは、ソフトバンクグループ、LINE、Naver、EDBI(シンガポール経済開発庁の法人投資部門)、そして香港に本拠を置く金融サービス企業AMTDグループ。

これにより、今までAppierが調達した資金の総額は8200万ドルになった。前回のラウンドを率いた主な投資家は、Sequoia CapitalやPavilion Capitalなど。Appierの共同創業者兼CEOのChih-Han Yuは、シリーズCで調達した資金を、シンガポールを含む台湾以外の国のエンジニアリング、および研究開発チームの成長に投じると述べている。

Appierは他の地域への展開を検討する前に、アジアにおける影響力を高めていく意向だ。

「我々はアジアのインターネット企業に焦点を置いており、今回のラウンドの出資者の皆さまに、アジア全体に展開するための多大なパートナーシップを頂いたと考える」。Yuはそう述べた。

ソフトバンクグループとLINE株式会社はいずれも日本に本社を置き、Naverは韓国最大のインターネット企業の1つだ。日本と韓国の両国は、北アジアにおけるAppierの最大の市場。(930億ドルのSoftBank Vison Fundは現在、前代未聞の投資規模として注目を浴びているが、Appierに対する出資はソフトバンクグループが行った)。EDBIは、もう1つの重要な市場である東南アジアを代表する企業であり、AMTDは香港への架け橋だ。

2012年にAppierが設立された当時、同社はクロススクリーン・マーケティングに焦点を当てており、それは他の製品を展開する下地として役に立ったとYuは語る。Appierは現在2つのメイン製品を持つ。1つはCrossX Programmatic Platformと呼ばれる製品。企業がデジタルマーケティングのキャンペーンにAIを活用できるよう制作されたものだ。2つ目はAxion。企業が顧客の行動を理解し、予測するのを支援するデータインテリジェンスプラットフォームだ。クロススクリーンマーケティングの基盤があるため、Appierはその予測の基礎となる強力なユーザーデータのグラフを持っているとYuは言う。

「マーケティングは企業と関わるうえで最初の出発点となり、そしてまた多くの素晴らしいパートナーと出会うことができた。ここ何年にもわたり我々は、多数の問題解決や、ユーザーに関するより深い洞察と分析、ユーザーの行動予測に対するより良い理解などを行うため、多くの企業がAIを活用したいと思う強いニーズを見てきた」とYuは述べる。

例えばある化粧品会社は、Appierのソフトウェアを使用して、小売店の売上やアプリなどといった様々な部門や情報源から来るデータを同期する。CrossXは顧客のエンゲージメント率をどのように高めるかを考え出すのを支援し、Axionはどういった顧客がリピーターになるのか、いつ製品を再び購入する可能性が高いのかなどといった、顧客層に関するさらに詳細な洞察を提供する。

Appierが現在ビジネス共にしている企業は3つのカテゴリーに分類できる。1つは消費者ブランド、2つ目は既に多くのユーザーデータを持っており、予測の精度を高めたいeコマース企業、3つ目は020サービスや、ゲーム内の行動におけるユーザーのエンゲージメントのパターンの理解を深めたいモバイルコマースやゲーム開発会社だ。

ソフトバンクグループ株式会社の執行役員兼事業副統括の田中錬は、事前に準備された声明の中で以下のように述べた。

「ビッグデータやIoTなどの革新的なテクノロジーと組み合わせることにより、AIは産業革命以上のインパクトを世界に与えようとしている。AIは既に我々の生活の多くの場面で役立っており、企業においても大きな役割を果たしていくものと考えている。Appierの法人向けAIというアプローチはユニークであり、ソフトバンクはAppierのパートナーとして、新しい画期的なAIソリューションの構築を楽しみにしている」。

 

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(翻訳:Keitaro Imoto / Twitter / Facebook

AmazontとMicrosoft、AlexaとCortanaの会話で合意――両社の人工知能アシスタントの互換性増大へ

有力IT企業は音声アシスタントに力を入れているものの、近い将来自分たちの人工知能が一人勝ちして事実上の標準になるとまでは思っていないようだ。

今日(米国時間8/30)、MicrosoftのCEO、サティヤ・ナデラとAmazonのCEO、ジェフ・ベゾスはこの分野での提携を発表した

実現は年内となるもようだが、ユーザーはAmazonのAlexa音声アシスタントにMicrosoftのCortana音声アシスタントを呼び出して作業をさせるよう命じることができるようになる(その逆も可能)。

以下は両CEOの声明。

Microsoftのサティヤ・ナデラ: あらゆる状況、あらゆるデバイスを通じてユーザーがCortanaを利用できるようにすることにわれわれは高い優先順位を与えている。Office 365との統合を含めたCortanaの知識がAlexaから利用できるようになるのはこの目標に向かっての大きな前進だ。

Amazonのジェフ・ベゾス: 世界は巨大で多様な場所だ。そこでインテリジェント・アシスタントの勝者も一つではないはず。それぞれの人工知能は独自の知識と得意とする能力を持つことになるだろう。有力な人工知能が相互に連携できるようになることはユーザー体験を豊かなものとし、有用性をいっそう増すだろう。われわれのEchoがCortanaに容易にアクセスができるようになるというのは素晴らしいニュースだ。

また声明ではユーザーが両社の人工知能の相互運用性を得られることがウィン-ウィンの提携である所以も説明されている。【略】

ここで強調されているのは(人工知能が別の人工知能を呼び出して会話するというのはややこっけいな印象だが)CortanaとAlexaの得意分野が大きく異なるという点だ。Cortanaはビジネスユーザーを主たるターゲットとするとする生産性ツールであり、Alexaは消費者を対象とするeコマースとエンタテインメントのツールだ。

こういう状況で両社が縄張り意識を強く持つことには大きな戦略的な意義が見いだせず、逆に提携することによって強みを相互に補完できる可能性があることになる。

New York Timesの記事でベゾスは「将来、ユーザーはさまざまなAIをそれぞれの得意分野に合わせて使うようになるだろう」と予測している。いわばハイキングに行きたいならそういうことに詳しい友達に相談するし、レストランを選ぶならまた別の友達に尋ねるようなものだ。ベゾスは「ユーザーができるかぎり多数のAIを利用できるようにしたい」と述べている。

ベゾスはまたAlexaがAppleのSiriやGoogle AIとも会話できるようになる可能性も考えている。ただしまだ具体的な交渉はないという。

ただしAppleとGoogleが人工知能分野でなんらかの互換性を実現する契約に調印する可能性はゼロだ。両社はiOSとAndroidというモバイルのエコシステムを2分する巨大プラットフォームを運営しており、Amazon、Microsofグループとは全く異なる戦略と優先順位を持っている。われわれは忘れがちになるが、AmazonとMicrosoftはモバイル・プラットフォーム競争に挑んだものの脱落した過去がある。

簡単にいえば、モバイル・プラットフォームで有力な地位を築けなかったのであれば、人工知能の相互運用性を拡大することでモバイル・アプリの有用性を高めることが両社にとって得策となる、ということだろう。

画像:Justin Sullivan/Getty Images

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+


【以上】

YC 2017年夏学期デモデー1日目、50チーム一挙紹介

Y Combinatorの第25回のデモデーがスタートした。2017年夏のYCクラスには124社が参加している。YCでは毎年2回、夏と冬のクラスの卒業イベントが行われるが、今年の夏学期は12年6ヶ月の歴史の中でも参加チームの数が最大となった。内容はバイオテックからAIまで最近のテクノロジーのトレンドを反映したものとなっている。

YCのパートナー、Michael Seibelはイベントの冒頭の挨拶で「われわれはシリコンバレーにおけるダイバーシティーを前進させることに全力を挙げている と述べた。今回のクラスではファウンダーの12%が女性で9.5%がアフリカ系ないしラテン系(latinx *)だった。

こうしたパーセンテージはかなりの期間にわたって安定しているものの、YCは世界各地からスタートアップを受け入れている点で賞賛されるべきだろう。ひとつにYCのStartup Schoolがオンラインであるため国際的にスケール可能だという点がある。 今回は28%のスタートアップがアメリカ国外発だった。

Pykaは個人用自動飛行機をデモ。Y Combinatorのデモデーはカリフォルニア州マウンテンビューのコンピューター歴史博物館で開催された。

これまでのYC卒業生にはAirbnb、Dropbox、Stripeなどの著名企業に加えて、最近ではTwitch、Instacart、Coinbaseなどが含まれる。シリコンバレー内外からマウンテンビューに集まった投資家はどんなスタートアップが登場するか大きな期待を寄せている。

デモデーは2日にわたって開催されるが、以下は1日目に登場した50社だ。〔スタートアップのデモ内容についてはTechCrunchが注目するトップ7チームを訳出。他はチーム原文参照〕


Zendar – 悪天候下でも自動運転を可能にする高精細度レーダー

Zendarは自動運転車向けの高精細度レーダーを開発している。現在の自動運転車は車両が置かれた状況を認識するにあたってLidarと通常のレーダーに頼っている。レーザーを用いたLidarは精度が高いが悪天候下では能力が大きく低下する。レーダーは悪天候でも能力が落ちないが精度が悪い。Zendarは悪天候下でも高い精度で環境を認識できる機械視覚テクノロジーを開発している。これによりあらゆる天候下で実用可能な自動運転の実現が目的だ。Zendarによれば、向こう3年間で1000万台の自動運転車が製造されるという。Zenderは自社のテクノロジーができるだけ多くの市販車に採用されることを期待している。

Image via Sombre Lidar

Meetingbird – 企業チーム内におけるスケジュールの調整と最適化

TechCrunch記事.

Thematic – レビュー、調査記事のテキストを分析しテーマに対する評価を認識する

PullRequest – コード・レビューのマーケットプレイス

PullRequestは企業とコードレビューができるフリーのプログラマーを仲介するマーケットプレイスだ。プログラマーは企業で作成されたコードに問題点がないか調べ、副業とすることができる。PullRequestではAmazon、Facebook、Dropboxなどトップクラスのテクノロジー企業で働いた経験があるプログラマーをリクルートしている。優秀なプログラマーを揃えたことで、PullRequestには450社からの関心が集まっている。実際にサービスを利用するのはこのうちの一部ではあるが、
PullRequestはすでに通年換算で13万6000ドルの売上を得ている。同チームがターゲットしている市場ではスタートアップとFortune
500クラスの大企業を合計して400億ドル相当のコードレビューが行われている。PullRequestのビジネスの秘密はレビューを迅速、正確に実行するためのシステムの自動化にあるという。

Helium Healthcare – アフリカにおける医療記録の電子化

Darmiyan– アルツハイマー症を最大発病前15年で早期予測

Roofr – 衛星画像を利用した屋根の吹き替えの費用見積もり

CashFree – インドにおける支払い自動化

Skyways – 垂直離着陸できる大型輸送用ドローン

Mystro – Uber、Lyftなどのドライバーの業務を効率化し利益の増大を助ける

TechCrunch記事.

10 By 10 – 人材リクルートのためのマーケットプレイス

Honeydue – カップルのためのフィナンシャル・プランニング

TechCrunch記事

D-ID – 顔認識からプライバシーを守るテクノロジー

Life Bot – 誰でも簡単に使える音声対応アプリ

TechCrunch記事

Modular Science – ロボット農業

イーロン・マスクは人工知能に反対らしいが、Modular Scienceではロボットが野菜を栽培できるようにしたいようだ。このスタートアップではカリフォルニア州ペチュラで実際に野外テストを実施中だ。向こう半年以内に独自の農業ロボットを用いて野菜生育のプロセスの99%をロボット化するのが目標だという。
Modular Scienceでは1エーカー(4046平方メートル)あたり2000ドルの料金を考えている。同社によればこれは現在農家1「が労働者に支払っている賃金の半額だという。

Audm – オーディオコンテンツのサブスクリプション

TechCrunch記事

GameLynx – 次世代のモバイルeSport

Gopher – An app platform atop email

メールが好きな人間はいないが、われわれの多くは毎朝メールを開いている。Gopherではメールをベースにした自動化が簡単に実行できるプラットフォームを提供する。たとえば着信したメールの内容をSalesforceや会議の日程調整アプリに転送したりできるようになる。着信メールに対してフォローアップを返信する同チームの最初のメール拡張機能は1万3000の月間ユーザーを獲得している。また300人のデベロッパーがこのプラットフォームを利用するために登録している。いちいちメールを開き、別のアプリに送って処理するというわずらわしいことをする代わりにGopherでは必要な作業すべてをメールの着信トレイ内で済ませることができるようにする。


70 Million Jobs – 犯罪記録保持者の就職を助けるサービス

May Mobility – 都市部における自動運転交通機関

TechCrunch記事

Flock – Wi近隣の安全を守るワイヤレス・セキュリティー・システム

Indivio – ビデオ広告のA/Bテスト・システム

Relationship Hero – 人間関係の悩みを専門家が解決

ShiftDoc – ヘルスケア専門家向けマーケットプレイス

Dropleaf – インディー・ビデオゲームのためのNetflix的サービス

Sunu – 視覚障がい者のためのソナー式ブレスレット

Wildfire – 大学当局の承認を受けたキャンパス掲示板

OncoBox – 後期がん患者のための抗がん剤治療の決定を助ける

VergeSense – 建物、施設の管理をAIで効率化

Pyka – 個人用自動飛行機

Pykaは「一人乗り自動操縦飛行機」で空飛ぶ自動車の夢を実現しようとしている。同社はすでに重量180kgで30m以下で離着陸できる自動飛行機を製作している。規制当局により有人飛行が許可されるまでには膨大なテストが必要なのでPykaではニュージーランドに空中播種ビジネスのための会社を設立している。この会社では毎時600ドルの料金を得つつ有人飛行が許可されるために必要な飛行時間を蓄積中だ。ただし空中播種自体もアメリカで15億ドルの規模であり決して小さいビジネスではない。ZeeやGoogle Waymoなどに先駆け、Pykaは個人向け自動飛行のパイオニアとしての地位確立を狙っている。

Fastpad – インドにおける求人プラットフォーム

Gustav – 小人数の企業のための人材サービス

Forever Labs – 個人の幹細胞を利用した老化防止テクノロジー

Forever Labsでは老化に基づく疾患が生じた際、治療のために利用できるようユーザーの幹細胞を冷凍保存して将来に備えるシステムを開発している。幹細胞はネズミにおける実験では寿命を平均16%延ばす効果が認められている。しかし老化に伴って幹細胞の有効性は減少する。Forever
Labsでは現在20人の医師がこの治療を提供しているが、来年までにアメリカ全土の主要都市にサービスを拡大したい意向だ。同社によれば、幹細胞銀行は560億ドルの市場があるという。

TechCrunch記事

Ubiq – エンタープライズの遠隔会議のための画面共有システム

Airthium – 水素圧縮によるエネルギー蓄積システム

UpCodes – ビル建設におけるコンプライアンスを助けるサービス

TechCrunch記事

Cambridge Cancer Genomics – l血液検査による抗がん剤治療のモニター

HelpWear – 医療器具認定レベルのウェアラブル心臓モニター

Net30 – 建設作業員への支払いの迅速化

TechCrunch記事

Guggy – テキストメッセージをユーモラスなGIFに変換

Escher Reality – 拡張現実のデータ処理バックエンド

現実世界をARテクノロジーによって拡張するためには、正確なデータが必要だ。Escher Realityはユーザーのスマートフォン・カメラのビデオ・データを処理し、現実世界の中に位置づけることによりデベロッパーがARを作成することを助ける。Facebook、Appleも独自のARプラットフォームを開発しているが、EscherチームではiOSとAndroidを通じてデベロッパーがARアプリを開発できるようにする。すでに600人デベロッパーが待機リストに登録しており、ゲームスタジオその他の企業10社からも問い合わせを受けているという。また大ヒットしたロボットが登場する映画、『パシフィック・リム』のARアプリに利用する契約も結ばれている。Escher RealityがデバイスやOS独立にARを提供できるプラットフォームとなるなら多くのデベロッパー、ユーザーにとってAR世界への好都合な入口となるだろう。

TechCrunch記事

Carrot Fertility – 企業保険加入者の不妊治療を助ける

Feather – ミレニアル世代向けスタイリッシュ家具のレンタル

TechCrunch記事

Prism IO – 消費者のサービス離脱を防ぐ

PayFazz – インドネシアにおける銀行を経由しな支払いサービス

TechCrunch記事

Sixty– オンデマンドのウェブアプリ・サポート・プラットフォーム

Totemic Labs – 高齢者向け安全サポートシステム

Peergrade – 教師に生徒のフィードバックを伝え評価作業を助ける

Kestrel Materials – 温度に反応して特性を変える繊維

SMB Rate – スモールビジネスの信用格付けによりローンを得やすくするサービス

〔日本版〕* latinx スペイン語では名詞に性があるためは男性、女性双方に用いられるlatinxという新語が作られている(まだ利用者はさほど多くない)。なお、 1日目にデモした50社のうち、内容紹介を訳出した7社は次の記事と同じ。Check out TechCrunch’s picks for the top 7 startups from YC Demo Day 1

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

BlizzardとDeepMindがStarCraft IIをAI研究室として開放

StarCraft IIはここのところAlphabetのDeepMind AI研究のターゲットとなっていた。英国のAI企業(DeepMind)は、昨年からBlizzardのこのSF戦略ゲームに参加し、ゲームに基づいたオープンなAI研究環境を構築する計画を発表していた。この環境を用いて、誰もが世界のトップStarCraftプレイヤーに打ち勝つことのできるような、仮想エージェントの構築に参入することができるようにするためだ。そして今回、DeepMindとBlizzardは、その扉を環境に対して開いた。機械学習API、大規模なゲームリプレイデータセット、DeepMindのためのオープンソースのツールセットなどの新しいツールが提供される。

今回のStarCraft II APIのBlizzard側の新しいリリースには、クラウドの中で実行できるように作られたLinuxのパッケージだけではなく、WindowsとMacへのサポートも含まれている。それにはオフラインでのAI同士の対戦サポートも含まれ、さらにエージェントを教育するために匿名化された実際の人間によるゲームのリプレイデータも含まれている。これはまずは6万5000の完全なマッチデータから始まり、次の数週間のうちには50万以上になる予定だ。

StarCraft IIは基本的にAIの研究にとって非常に有用な環境だ、なぜなら、ゲームは複雑で多様であり、個別のマッチの勝利のために複数の道筋があるからだ。プレイヤーはまた、資源の管理や生成だけでなく、軍隊への指揮、守りを固める構造物の配備など、さまざまなことを同時に行う必要がある。さらに、ゲームボードに関するすべての情報がすぐに利用できるわけではない、つまりプレイヤーは敵の行動について仮定と予想を行わなければならないということだ。

それは実際に大規模なタスクだ、そこでDeepMindとBlizzardは、異なるサブタスクを「管理可能なチャンク」に分解する「ミニゲーム」も含めている。その中には特定のユニットの構築、リソースの収集、地図を用いた移動などを教えてくれるティーチングエージェントも含まれている。こうしてゲームを区分化することで、試合全体をマスターする複雑なエージェントを最終的に組み合わせる前に、個々の研究者たちからの技法を比較検証し詳細化してみることが可能になる。

ここでの目標は、StarCraft IIをどんな人間よりも上手くプレイできるAIを作り出すことだ。これはDeepMindが古の物理ボードゲーム囲碁に対して、AlphaGoソフトウェアで行なったことと同じ目標だ。DeepMindはこのことを通じて既存の研究を前進させたいと考えている、それゆえに大きなリサーチコミュニティへのアピールと、今回のようなツールのオープン化を行なったのだ。

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(翻訳:Sako)

AI対AIやAI対人間を“戦わせる”ことでイノベーションを喚起するNIPSカンファレンスのコンテスト

ちょっとした競争心が、イノベーションのきっかけになることがある。そこでNeural Information Processing Systems(NIPS)カンファレンスは、競争するAIシステムを今年のテーマにした。そして、人が歩くときの筋肉の動きを模倣するシステム、雑学クイズ・チャンピオン、画像の微妙な操作など、さまざまなテーマで競い合うことになった。

NIPSの今年のこの新しい企画には23種の‘競争するAI’がテーマとして提案され、最終的に5つに絞られた。カンファレンスが行われるのは12月の初めだが、どれも、片手間で簡単に作れるようなシステムではないので、戦いは今からすでに始まっている。どのテーマもすでに、応募作は相当多い。

コンテストは一つ々々が独立していて、スポンサーが付いたり、賞金が出るものもある。

走ることの学習: これはたぶん、視覚的にいちばんおもしろいコンテストだろう。このシステムは人間が歩く動作をするときの、脳による筋肉と骨のコントロールを模倣する。生理学と物理学のシミュレーションだが、滑る床や階段、弱い筋肉、といった障害も設定されている。目標は歩き方を知っているAIを作るだけでなく、脳性麻痺の人に手術をした場合、歩き方にどんな影響が現れるか、といった問題意識もある。コンテストの詳細はスタンフォード大学のニュースリリースにあり、リーダーボードのGIF画像がなかなかおもしろい。AmazonがAWSのクレジット3万ドルぶんを賞金として提供している。

NNの敵対的攻撃と防御(Adversarial Attacks and Defenses): 私たちはすでに、画像を認識するニューラルネットワークをあちこちで見ている。それらは人間の顔や、猫、風景などを認識する。それらは、あらゆる種類の低レベルデータに対する独特のロジックで動くから、その判断を騙して、まったく違うものに認識させてしまうことも可能だ。もちろん、画像そのものを別のものに変えたりはしない。このコンテストは、NNを騙す悪役と、それに対する防御を作品として募集する。〔訳注: この項については、Google検索やWikipediaなどで、Generative Adversarial Net, GANを勉強すると、理解できると思います。〕

人と会話できるAI: このコンテストの目標は、できるかぎり人間のように振る舞えるAIを作ることだ。ボットと人間が対面して、両者に、最新のニュースやWikipediaの記事などを読ませ、それについてなるべく長く会話をする。応募作品に制限はないが、最優秀のボットが12月のNIPSに出場する。優勝賞金は1万ドルだ。チャットボットの進化に前から関心のあるFacebookが、“プラチナスポンサー”になり、本誌TechCrunch DisruptのStartup Battlefieldに出たMaluubaが、“シルバーパートナー”になる。それらの意味は、よく分からないけど。

人間対コンピューターのQ&A: このコンテストの応募者は、小型のWatsonを作る。そのWatsonは、Jeopardyで人間を負かしたときのバージョンぐらいの実力が必要だ。システムは一回に一つずつ、クイズのような質問を与えられ(例: ローマ帝国の第四代の皇帝は誰か?)、人間よりも早く、少ない語数で…もちろん正解を…答えたらポイントをもらう。NIPSで、人間とコンピューターの決戦を見ることになるだろう。“エキシビションマッチで人間チームと対戦するときのシステムの組み合わせは、出場者(システムの作者)が決めてよい”そうだ。

遺伝子突然変異の臨床的応用性のある分類法: 癌の悪性腫瘍を生じさせている遺伝子と、それらの腫瘍を破壊する遺伝子が分かったら、癌の拡大を防げるかもしれない。でもそれは、専門家たちによる、難しくて時間のかかる研究開発過程だ。しかし、もしも、何千もの遺伝子突然変異に関するそれら専門家たちの注記注釈にアクセスできたら、ニューラルネットワークを使った機械学習に出番があるかもしれない。すくなくとも、今後の研究対象を絞り込むぐらいは、できるのではないか。優勝賞金1万ドルは、Memorial Sloan Kettering Cancer Centerが提供する。すでに、685の応募作が寄せられている!

コンテストの結果が分かるのは12月だが、作品の応募だけでなく、議論に加わることは今からでもできる。参加は、自由だ。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

ネットマーケティングのHubSpotがAIによる営業トークの効果アップを目指してKemviを買収

マーケティング・テクノロジー*のHubSpotが、人工知能と機械学習で営業を支援するKemviを買収した。〔*: たとえばソーシャルメディアへのパブリシティ活動を代行する。〕

数か月前にKemviが立ち上げたDeepGraphは、一般公開されているデータから営業のベストタイミングを見つけるデータ分析ツールだ。売り込み先の企業の、業務の変化とか、何かの記事の発表、などのタイミングに合わせて、売り込みを仕掛ける。また、今後起きることを見越して、先取り的に営業を展開することもできる。

KemviのファウンダーでCEOのVedant Misraはこう説明する: “インターネット上の膨大な量のテキスト情報から、業界や世界の最新の動向を取り出し、営業やマーケティングの能力を高めることが、うちの仕事だ”。

そしてHubSpotの側としては、同社の戦略担当常務Brad Coffeyによると、同社はそのプラットホームへのAIの導入を志向していた。彼曰く、AIや機械学習は今安易に使われているバズワードだが、Kemviは営業の人たちの現実的なニーズに対応しているので、魅力を感じた。

“重要なのは、顧客に具体的な価値を提供することだ”、とCoffeyは語る。“彼らにはそれがある。顧客が事業の成長のために必要としている情報、彼らのお客さんの心をつかむ情報、そういう情報をマーケティング部門や営業に提供できる。機械学習やAIは情報を精選するために利用するのであり、単に勉強のために導入するのではない”。

Kemviのチームは、Misraを含めて二名だ。彼らがHubSpotに入って、その技術をHubSpotのプラットホームに統合する。同時にそれと併せて、既存のKemvi/DeepGraphの顧客に対する移行プランもある。“彼らも、HubSpotとの合体を喜んでくれるだろう”、とMisraは語る。

この買収の財務的条件は公表されていない。Kemviは過去に、 Seabed VC, Neotribe Ventures, Kepha Partnersなどから100万ドルを調達している。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

Qualcommのモバイルチップ化したディープラーニングフレームワークが完全にオープン化

モバイルのチップメーカーQualcommは、あらゆる種類のデバイスの上でディープラーニングを利用するソフトウェアの開発ができるようにしたい。同社がそのSnapdragonシリーズのモバイルプロセッサー用にNeural Processing Engine(NPE)を作ったのも、そのためだ。そのNPEのソフトウェア開発キットを、誰もがQualcomm Developer Networkから入手できるようになった。これはそのSDKの最初の一般公開リリースで、スマートフォンや車載プラットホームなど、さまざまなデバイスの上で行うAIコンピューティングの、大きなそして多様な可能性を開くものだ。

このフレームワークの目的は、SnapchatやFacebookなどがモバイルのカメラアプリでやっているような画像のスタイル変換〔eg.“ゴッホふう”〕や各種のフィルタなどのUXの実装を簡単に可能にし、ユーザーの写真に対するもっと精度の高いアプリケーションを作れるようにすること。また、シーン検出や顔認識、オブジェクトの追跡や回避、自然言語処理といった各種のファンクションをディープラーニングのアルゴリズムによって高性能にすることも、目的に含まれる。要するに、これまでは強力なクラウドサーバーや先進的なプロセスにお願いしていたようなタスクを、デバイス上でローカルにできるようにしたいのだ。

NPEの初期的アクセスを獲得したデベロッパーの中にはFacebookもおり、同社はすでに画像やライブビデオ上のARの性能を、QualcommのSnapdragon SoC上のAdreno GPUを使って従来の5倍にすることに成功している。

NPEはTensorflowやCaffe2など一般的によく使われている一連のディープラーニングフレームワークをサポートし、Snapdragon 600/800シリーズのプロセッサープラットホームで使用できる。

今後ますます多くのテクノロジー企業がAIベースの計算機能をリモートサーバーからローカルなプラットホームへ移して、信頼性を高めるとともにネットワーク関連の面倒な要件から逃れようとするだろう。そうなるとこれはQualcommにとって巨大な財産になり、モバイルの次に優勢になるテクノロジーのトレンドが何であれ、それに乗り遅れるおそれはなくなるだろう。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

成功する営業の鍵は“正しい見込み客”を見つけること、それを助けるNodeが$10.8Mを調達

営業の最初の仕事は、誰に(どこに)売り込むかを決めることだ。しかしこの最初の段階で選択を誤り、時間を無駄にすることが多い。

その無駄をなくそうとするのが、Nodeだ。このスタートアップは、人工知能を使って見込み客を見つける。これまでの2年半お忍びモードだった同社が今日、1080万ドルの資金調達を発表して表舞台に出てきた。この投資ラウンドを仕切ったのはAvalon Ventures、これにMark Cuban, NEA, Canaan Partnersらが参加した。

Cubanは本誌にこう言った: “セールスインテリジェンスに変革をもたらす、すばらしい企業だよ。これからの営業は、狩猟採取の原始時代を卒業する。営業は立派な知識労働になる”。

サンフランシスコにオフィスを置くNodeのファウンダーでCEO Falon Fatemiによると、長年Googleにいたので、検索のアルゴリズムをビジネスに生かすやり方がよく分かった。彼女の言うには、Nodeのプラットホームは“検索ボックスのない検索エンジン”だ。すなわちそれは、“モノやコトではなく、ヒトを見つけるインテリジェンス”だ。

そして彼女によると、Nodeの仕事は、営業のために、見込み客としての確度の高い、“人や企業、アプローチの正しいタイミング、ときには最初の段階の適切なセールストークまでも、見つけてあげること”、だ。

今はもっぱら営業をお助けすることがNodeの仕事だが、長期的には、雇用、求職、そしてデートのお相手選びにまで、同社の“ヒトに関するインテリジェンス”技術を応用していきたい、とFatemiは語る。

今、営業支援サービスへの投資は、投資家たちのあいだでブームだ。営業は、テクノロジーの有効な応用分野として、現状は南極大陸なみに広大な未開の大地だからだ。そこには、大きな市場機会が眠っている。この分野で今とくに活発な投資家は、Salesforce Venture, Box Group, 500 Startupsなどだ。

Nodeはすでに、シード資金として500万ドルあまりを獲得している。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))