海外旅行で現地在住の日本人が旅先案内をしてくれる「TABITICKET」がローンチ

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2009年に初めて使って以来、ぼくはAirbnbが大好きで仕事の出張ですらAirbnbを使うようにしている。最大の理由は地元の人たちと話すのが楽しいし、お出かけ情報についてもガイドブックなんかよりも圧倒的に良いからだ。

ただ、Airbnbは多くの場合英語が共通言語となるので、ちょっとハードルが高く感じる人がいるかもしれない。2015年1月に創業したスタートアップ企業のカラフルシーが昨日ローンチしたばかりの「TABITICKET」なら日本語でオッケーだ。TABITICKETは日本人旅行者(ゲスト)と旅先を案内してくれる現地在住の日本人(ホスト)をつなぐ旅行体験のマッチングサービスだ。

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サイト上には世界各国に住むホストが、グルメ、スポーツ、音楽など、その人ならではの職業や趣味を活かしたオリジナルツアーをチケットとして販売している。ツアーを提供するのは、日本人の現地移住者、ワーキングホリデーや留学で海外に住んでいる人、駐在員の奥さん(あるいはダンナ)など、現地の情報をよく知る一般人となる。

サイトを見てみると、シェフやサーファー、カメラマンなど、海外で人生を謳歌していそうなプロフェッショナルも目につく。リストされているツアーは以下の様な感じ:

・現役ランナーがホノルルマラソンの攻略法伝授♪下見をしながら一緒に走ろう!(ホノルル/8000 円)
・パリの料理研究家とマルシェで買物&フランス家庭料理レッスン♪(パリ/1万4000円)
・旅と自然を愛する元CAと香港でハイキング(香港/3000円)
・プロカメランがハワイを最高に綺麗に撮る秘伝のコツ伝授!(ホノルル/1万8750円)
・現地に嫁いだ日本人妻とカジャンで庶民の暮らし体験(カジャン/4250円)
・ニューヨーカーが行くオシャレなレストラン・カフェ巡り(ニューヨーク/5000円)
・公認ガイドが案内する北欧建築デザイン視察ツアー(コペンハーゲン/5万5000円)
・観光だけじゃもったいない!9日間のオリジナルホームステイ(サンディエゴ/21万5000円)
・イスタンブールでアパート滞在^アジアサイドでディナー(イスタンブール/1万6000円)
・レトロ着物と古民家の女子旅 ◆旬の鰹料理◆(千葉勝浦/1万円)

現在はハワイやオーストラリア、フランスなど世界17都市、77ツアー(体験)が登録されていて、今後1年間で50都市、777ツアーまでの拡大を目指すそう。

旅行関連スタートアップとしては、類似のサービスを提供する「Meetrip」があったが2013年に売却済み。サービスはスケールしなかったと聞いている。観光庁のデータによれば日本人海外旅行者数は過去20年ほど横ばい。オリンピックへ向けたインバウンド観光客の増加が予想されているのに比べて、アウトバウンドは分が悪い。少子化や円安も向かい風だ。実は以前TechCrunch Japanで開催したシェアリングエコノミー関連のイベントに来場してくれたこともあるカラフルシーの坂巻渚CEOは、TechCrunch Japanに対して以下のようにメールで回答してくれた。

「数ある類似スタートアップや大手との差別化を考えた上でも、私たちは特に、プロフェッショナルな職業や熱い思いを持った、特別感のあるホスト(体験)を積極的に集めることと、日本人にとって使いやすい(日本人に特化した)シェアリングサービスにしていくことを軸すると決めました。また今後、日本国内の体験も揃えていくことで、世界情勢にも影響を受けやすいアウトバウンド事業のリスクを緩和したいと考えています」

「今後、魅力的なホストを集めるためにも、実際に私たちが現地に足を運べたらと思っています。今回のオープンに際しても先月ハワイに行き、写真家やヨガインストラクター、人気ブロガーの方など魅力的な日本人の方々にお会いし、体験を提供してもらっています」

グランドデザインが2億3000万円の資金調達—店舗送客支援の「ガチャアプリ」を提供

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ショッピングモールアプリ「Gotcha!mall(ガッチャモール)」を運営するグランドデザインは6月25日、アイスタイル、アドウェイズ、トランスコスモス、ベクトル、リアルワールド、みずほキャピタルから、第三者割当増資および株式譲渡により総額約2億3000万円の資金調達を実施した。トランスコスモスとはASEAN進出に向けた業務提携も締結している。

ちょっとややこしいのでグランドデザインの設立の経緯を先に紹介しておこう。同社は2014年11月にグランドデザイン&カンパニーから新設分割して設立した会社だ。グランドデザイン&カンパニー自体は2004年7月の創業で、これまでデジタルマーケティング支援を手がけてきた。

そんな同社を2014年10月にオークファンが買収。Gotcha!mall事業を切り出す形でグランドデザインを立ち上げるに至った。グランドデザインのファウンダーはグランドデザイン&カンパニーの創業者でグランドデザイン代表取締役社長の小川和也氏。そのほか役員数人とオークファンが出資している。

Gotcha!mallは、カプセルトイ(小型自動販売機、ガチャガチャやガシャポンなんて名称で商標登録されている販売機だ)の世界観を、スマートフォン上に再現したデジタルモールアプリ。企業は同サービス内に専用筐体を出店し、ゲーミフィケーションを活用したプロモーションや販促活動ができる。例えば電子カプセルトイでクーポンや景品などを発行し、企業の店舗誘導するということができる。位置情報と連動することで、近隣店舗のクーポンを発行するといった機能も備える。

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アプリのダウンロード数は約100万件。アクティブユーザー数は非公開ながら「非常に高い数字」(小川氏)だという。すでにドン・キホーテやサンリオ、高島屋など約20社が出店している。独自にDMPを構築しており、性別や年齢と言ったユーザー属性、プレイ回数や来店回数、利用時間や場所の観点を加味した各種データを蓄積・解析することで、ユーザーと出店企業の最適なマッチングを図るという。「『カプセルトイで当てた』という能動系なアクションがあるため、コンバージョン率も高い」(小川氏)とのことで、バラマキ型のクーポンと比較して3〜20倍のコンバージョン率を実現しているという。

同社では今回の調達を契機に、Gotcha!mallユーザーの獲得、運営体制の強化、新機能追加に伴うシステム開発などを進める。

トランスコスモスと業務提携では、Gotcha!mallのASEANにおける独占販売権をトランスコスモスへ提供する。今秋をめどにアジア展開を開始し、初年度5カ国300万ユーザーの獲得を目指す。

食材流通スタートアップのプラネット・テーブル、食に特化したQ&Aサービスを公開

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東京・渋谷にあるスタートアップのプラネット・テーブル。ウェブを使った食の流通プラットフォームを開発するこの会社のオフィスには、業務用の冷蔵庫が並んでいる。

「食の物流と情報を可視化したプラットフォームを作りたい」——プラネット・テーブル代表取締役の菊池紳氏はそう語る。菊池氏は外資系金融機関やコンサル、投資ファンド等を経て、独立。農林水産省のファンド「農林漁業成長産業化支援機構」の立ち上げにも関わった人物。2014年5月にプラネット・テーブルを設立し、2015年3月にはGenuine Startupsおよび個人投資家から3500万円の資金を調達している。

肉や野菜に特化した取引プラットフォームを展開

プラネット・テーブルが最初に取り組んだのは、食材・情報取引プラットフォーム「SEND(センド)」だ。SENDは、生産者と飲食店舗間での直接取引をを実現するプラットフォームだ。ただ取引をする「市場」の機能を持つだけでなく、配送や倉庫での保管も自前で行っているのが特徴だ。冒頭に書いたオフィス内の業務用冷蔵庫もその一部。現在東京近郊の約40の生産者と50の店舗が試験的にサービスを利用しているという。

ちなみにSENDはFAXやメール、電話で注文を受け付ける、というところからサービスをスタート。現在はレスポンシブデザインのウェブサービスを開発しており、間もなく正式にサービスインする予定。今後は大阪をはじめとした大都市圏や海外でのサービス提供も視野に入れている。

菊池氏は「人口が増えている一方で、食料の生産環境は減っている。もっと作るということも大事だが、一方ではものすごく捨てているという現状もある」と、食料需給のミスマッチについて語る。これを解決するために、ITを使って鮮度の高い情報(消費者のニーズ)を取得し、生産者がそれに合わせて食料を作れる環境を作っていきたいのだという。同社が「食材取引プラットフォーム」ではなく、「食材・情報取引プラットフォーム」とうたう理由はここにある。

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話を聞いて八面六臂の鮮魚流通のプラットフォームを思い浮かべたのだが、SENDは肉と野菜に特化したサービスとなっており、鮮魚は取り扱わないだという。

Q&Aサービスで食べ物への理解を広げる

そんな同社がSENDの次に提供するのが、食をテーマにしたAndroid向けQ&Aアプリの「FoodQ」だ。

FoodQは食べ物に関する質問を投稿、回答できるQ&Aサービス。回答者には食のスペシャリストが数十人参加するということなので、高度な質問にも回答が期待できるという。サービスは匿名で利用可能で、将来的には質問や回答の検索機能、ポイントによるインセンティブなども導入する予定している。

Q&Aサービスと言えばYahoo!知恵袋やOKWaveといった巨人がいる領域。だが菊池氏は「『例えば有機野菜ってすべて安全なのか』『東京で人気のトマトは何か』という質問と、専門家による回答が集約されている場所はない。肝心なのは(専門的な質問に)『答えられる』ということだと思っている」と強みを語る。「まずは気軽に使ってもらって、それで食べ物への理解を広げていきたい」(菊池氏)

今夏には、FoodQの内容をベースにしたメディアも立ち上げる予定だ。「メディアはコミュニケーションツール。マーケティングコストという程度で認識している」との話だったが、SENDのサービス拡張にあわせて、食のECを展開するといったことも検討しているという。

わてらも投資やりまっせ―、関西の朝日放送が12億円のファンドを設立

abcdreamANN系列で関西有力放送局の朝日放送(ABC)が100%子会社となる「ABCドリームベンチャーズ」を7月10日に設立し、総額12億円のファンドの運用を開始する。大阪では先日、大阪市や阪急電鉄、みずほ銀行などが出資する48億円規模のファンドとして「ハックベンチャーズ」が立ち上がったばかりだが、地方有力企業によるCVCはまだ珍しい。同業としては、すでにフジテレビが2013年3月に15億円規模でFUJI STARTUP VENTURESを、TBSが2013年9月に18億円規模でCVCを開始させている。日本テレビもCVCこそ立ち上げていないものの、スタートアップコミュニティ運営のcrewwなどのスタートアップへ出資をしている。

CVC設立に動いたのは、もともと「探偵ナイトスクープ」や「新婚さんいらっしゃい」といったヒット番組を手がけ、現場で番組作りをやってきたプロデューサーの栗田正和氏(朝日放送株式会社ビジネス戦略局ビジネス戦略部長)らで、すでに昨年6月には新規事業創出を目的に、ビジネス戦略部を社内で立ち上げていた。投資領域は放送やコンテンツといったメディア事業でシナジーのあるスタートアップを第一に考えているという。

「朝日放送は全国にコンテンツを配信しているとはいえ、関西ベース。地元での信頼はあります。地元で視聴者とともに育ててもらってきた。だから関西に対して貢献ができればいいなと考えています。企業も頭脳も東京に流出するという流れがあるなかで、関西の中でもエコシステムができないかなと。そういう旗振り役になれないか、という気持ちもあります」(栗田氏)

開局64年、関西ローカルで2190万人、970万世帯にリーチする朝日放送は、番組自社制作比率が34%と、5大在京キー局をのぞくと比較的高く、コンテンツ制作能力が高い。財務面でも近年増収増益を続けていて2013年の連結売上高は814億円、経常利益が60億円と優良企業だ。ただ、モデルハウスやショールームといった一部の住宅関連事業をのぞくと売上のほとんどがCM収入で、若者のテレビ離れや広告出稿先としてテレビの地盤沈下(といっても直近5年は微増)に危機感を持っていることも背景にあるという。

「スマホやタブレット普及で視聴形態が変わってきています。動画配信や見逃し視聴と、定時放送だけに頼れなくなってきています。ファンドを通じて革新的な新規事業を生み出したい。シナジー分野であるメディアやコンテンツ、エンタメなどだけでなく、関西で強い、医療や教育、IoT、ロボティクスなどでも出資を考えています」

6月17日にフジテレビが初めて自社制作コンテンツの最初の出し先をNetflixとすると発表して関係者を驚かせた。これまでテレビ番組はキー局や、朝日放送のような準キー局がコンテンツを作って地方局に配信してきた。地方局は番組を買い、地元でCMスポンサーを募る営業をすることで成り立っていた。そうした日本の放送ネットワークの秩序が外圧で変わったことを示す象徴的な発表だったからだ。財力もコンテンツ制作力もある関西の準キー局がCVCを設立するというのは、こうした環境変化を捉えての面もある。

せやけど投資やれる人なんて、いますのん?

ところで、CVCや大学発ベンチャーなどでつきまとうのは目利き力や経営での支援能力が投資する側にあるのかという疑問だ。可能性を見つけ出し、ハンズオンでスタートアップ企業をエグジットさせるだけの腕が一般の事業会社の社員にあるのだろうか? 外部から経験のある人材を引っ張ってくるのかという問いに栗田氏はノーと答えた。

「いえ、最初は自分たちでやっていきます。先日ハッカソンをやりましたが、ピッチやイベントを通じて人脈ネットワークを広げつつ、目利き力を上げていきたいと考えています。いずれは専門知識をもったコンサルタントやVCとも協力していきます」

当面はABCドリームベンチャーズがリードインベスターとなるようなことは難しく、ほかのVCと協力していく考えという。今日が外部への初めての発表日で、現時点で投資検討の俎上(そじょう)に載っているスタートアップ企業などもないという。

「CVCなので事業シナジー最優先。その先に金銭的リターンを考えていきます。それは後から付いてくるものと考えています」

栗田氏は探偵ナイトスクープのプロデューサーを5年ほど務めた経験があり、テレビ局には企画力、構成力、人間を見る力があると話す。関西ローカル局制作で人気の番組は、視聴者参加型のモノが多く、これはネットのUGC型コンテンツとも似た面があるし、その制作プロセスは、起業家の人間性を見るのと似た面があるという。

「投資先を探すのは視聴者参加番組の制作と似てる面があるなと思っています。ナイトスクープだと、調査の依頼者を応募者から選ぶわけですが、「それホンマに調査できるんか?」とか、実現可能なのかとか、まずそういう目でみます。ひとりよがりだとアカンのですね。それからテレビなので、最終的にむっちゃええ顔して泣いてくれるかとか、泣きながら頑張ってくれそうかとか、そういうのも見るんです。アタック25なんかでも、そうです。ただ単にクイズが得意かどうかだけじゃなくて、どういう表情をするのかを見ています。関西の放送局なので、おもろい素人を見つけて出すというのがアイデンティティとして流れてるんですね。すごく人を見てるんです。起業家を見る時も、実現可能性や市場性、人的魅力といいますが、根っこは一緒かなと思うんです。邪道やとは思うんですけど、せっかく放送局がやるんやから、そういうことをやっていきたいです」

日本は評価が甘め? Braintreeのグローバルなハッカソンで審査員をやって感じた厳しさ

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PayPalの子会社であるBraintreeが世界規模のハッカソン「BattleHack 2015」の東京予選を6月14日、15日に開催した。ぼくは審査員を務めさせていただいたのだけど、その審査過程で軽いカルチャーショックを受けた。評価が厳しく、歯に衣着せぬ感じ。ダメなものは本当にダメとしか言わないのだ。これは今までぼくが参加した国内のハッカソンとだいぶ違う。Braintreeのハッカソンそのものの紹介と合わせて、そのことを少し書いてみたい。ちなみにぼくはTechCrunch Japan編集長という肩書きと、ときどきコードを書くテック系ジャーナリストということで、いろんなハッカソンに審査員として呼ばれることが多い。

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世界14都市、優勝賞金1230万円のグローバルなハッカソン

BattleHackがどういうハッカソンか紹介しよう。BattleHackは世界14都市で週末の2日間(実際の作業は24時間)を使って予選的なハッカソンを行い、各地で優勝したチームがシリコンバレーに集まって決戦を行い、優勝チームに10万ドル(約1230万円)が贈呈されるという大がかりなイベントだ。決勝戦にはeBayのCEOが参加したり、PayPalからメンターがついたりするなど、かなり手厚い待遇だ。

ここ数年、ぼくの周囲ではPayPal決済のAPIのつなぎ込みで泣いている開発者をたくさん見かけるようになった。ドキュメントが分厚い、そもそも上手く動かない、意味が分からないという声を良く聞くのだ。反対に、Stripeのような新しいモバイル決済サービスのAPIの使いやすさの話を聞くようになっている。使いやすいAPIという面で遅れを取っていたPayPalが、2013年9月に8億ドルのキャッシュという巨額で買収したシカゴのスタートアップ企業がBraintreeだ。Braintreeは決済ゲートウェイで、PayPalだけでなく、Apple PayやAndroid Pay、Bitcoinも使える。現在、AirbnbやGitHub、OpenTable、Uber、TaskRabbitなどがBraintreeを使っている

BattleHackというハッカソンはBraintreeのマーケティングの一貫だ。Uberの採用事例のように国際展開でモバイル決済を必要とするニーズには適しているということを、スタートアップ企業で決済を実装することになるハッカーたちに触って理解してもらいたいということだ。国境を超えるたびに決済回りの実装を継ぎ接ぎするよりも、1つのゲートウェイで済むならそれがいいでしょうというのがBraintreeが提供する価値だそうだ。

優勝は余分な部分を自動カットする動画編集アプリ「talk’n’pick」

Battle Hack Tokyo 2015で優勝したのは「talk’n’pick」という動画編集アプリ。動画を撮影すると、動画ファイル全体で音声レベルを解析し、声がある部分(会話しているところ)だけを残して残りをカットしてくれる自動動画編集アプリだ。AWSのクラウド上でキューを使って動画の解析と編集をやるなど、24時間で作ったと思えないクオリティだし、デモを見ても、すでにかなり実用的にみえた。無駄な無音部分を削除するというのは一部のYouTuberがすでに実践してるテクニックに近いし、市場ニーズもあるのではないかと思う。

聞けば、このプロダクトを作ったチームメンバーの4人のうち2人は、すでにスタートアップをやっていてプロダクトを準備中。IPAの未踏プロジェクト出身者でもある。1人はニュース記事から自動で動画を生成するというプロジェクトに取り組んでいたこともあるというから、「プロの仕業」という感じでもあった。イベント後のインタビューでは、今回作成したプロダクトは実際にリリースまで持って行きたいと話していた。

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BattleHack Tokyoで2位に選ばれたのは「SNSHOT」というイベント向けのオンサイトプリンタだ。結婚式やパーティー、イベントなどに設置するのを想定したもので、プロトタイプとしては厚紙で作ったケースにiPadを入れただけのものだったが、会場で撮影した写真にロゴやスタンプを入れた上で、その場でプリントアウトしてくれる。写真はTwitterやInstagramで共有したものでよくて、EstimoteによるiBeaconを使ってユーザーは自分の写真を受け取れる仕組み。こちらのチームも、実は創業準備中のスタートアップ予備軍だった。

3位に選ばれたのは、「Cheers」。Chrome拡張として実装されていて、GitHub上のプロジェクトに「寄付ボタン」を設置することができる。バグ修正や機能実装のリクエストごとに寄付することができ、早く直してほしいバグがあるなどした場合に、それを望む人がパッチのコミッターに対して対価を支払うことができる。これまでであれば善意とか遠回りなインセンティブで結びついていた利用者と開発の間で、対価を直接流すことでオープンソースのエコシステムが変わる可能性がある。報酬が逆説的に内発的動機付けを低下させる「アンダーマイニング効果」は心理学では古くから知られていて、こうした明示的な報酬との結び付けがエコシステムにマイナスの影響を及ぼすことはないのか? というのは気になるけれど、とても興味深い提案だと思う。ちなみに、ぼくは15年ほど前にフリーソフトウェア活動家でFree Software Foundation代表のリチャード・M・ストールマンにインタビューしたことがあるのだけど、その時に彼が口にしていたのは、まさにこの開発モデルだった。

日本はアイデアに対する評価が甘め?

ハッカソンの審査員には、ぼくのほかに、Braintreeシニアディレクターでハッカーのジョン・ルン氏、BEENOSの投資家 前田ヒロ氏、Asakusa.rb創設者でRuby on Railsコミッターの松田明氏の3人がいた。

審査は各チーム10点満点で、アイデアの新規性、市場性、実装レベルで評価した。それで驚いたのは、ぼくと松田氏という日本育ちが付ける点数が中央の5点に寄りがちだったのに対して、ジョンと前田氏の評価は1点が少なくなかったということだ。「狙いが全く分からなかった」「動いてなかったよね」「誰が使うのか理解不能」「そもそも仮定が成立してない」「ほぼ同じものが2年前からあるのに調査不足すぎる」というような評価だ。

ちなみに前田氏は日本育ちだがインターナショナルスクールで英語で教育を受けているので、英語のほうが日本語よりも得意という投資家だ。投資先も最近は完全にグローバルになっている。

ぼくの評価は最低でも3点、多くは5点から7点の間としていた。いちばん良いのが8点だった。5点というのは「すでに確立したジャンルで何も新味はないけど、いちおう何かが動いていた」「新規性はないが日本では市場はあるかも」とか、そういうものも含まれる。

ぼくは審査員としての自分のガラパゴスっぷりを痛感してしまった。つまり、日本市場で日本のハッカーたちが作っているという前提でプロダクトを「甘く」見ていて、日本市場で可能性があるかどうかを考えていたのだ。

すでに海外に類似スタートアップやプロダクトがあっても、日本ではこれからという市場もある。だから、ぼくとジョンで評価が大きく違ってくることがあった。でも、Braintreeのハッカソンは14都市から勝ち残ったチームがシリコンバレーで決戦に臨むので、日本市場なんて関係がない。日本市場でしか通用しないプロダクトを作る、そういう目線のチームを日本から代表としても良いのかと言えば答えはノーなのだった。

これは、ふだん日本の起業家と会っていても同じことを感じている。「これって、アメリカのxとyに似てますね」とか「abc市場だとグローバルにはxとyがありますよね」という話をすると、キョトンとする起業家が少なくない。別に海外のスタートアップやプロダクトに超詳しくなくても良いとは思うが、自分が作っているプロダクトの競合や、技術・市場動向を知らないというのではガラパゴスそのものだ。

アイデアの新規性に対する要求が日本では低いのではないか? 日本という個別市場に依存しない普遍的なアイデアで勝負することを、ハナから諦めているところがあるのではないか?

確かに新しいことが価値とは限らない。まだ日本市場になければコピーキャットと言われようが、やる価値はある。そもそも、すでに海外のどこかで証明されたビジネスモデルやプロダクトで、まだそれに相当するものが日本に存在しないのであれば、それを提供することも大事だ。成功する起業家が増えることが重要なのだとしたら、やれ「1000億円企業を作れ」だとか、「ゴー・グローバルだ!」と言い過ぎるのもいかがなものか、むしろやるべきことは起業のハードルを下げて小さな成功事例をたくさん増やすことではないかとの意見も良く耳にする。ぼくも同感だ。ただ、そのことで必死に新しい何かを考えるという基礎体力やメンタリティーが削がれているという面がないだろうか。ハッカソンで多くのチームやプロダクトを見てきて、そんなことを考えている。

TechCrunch Disrupt San Franciscoのハッカソンも過去2回ほど現場で見ていて、ハッカソンにバカげたアイデアや意味不明のプロジェクトが入るのは普通のことだとは思っている。お祭りだから、それもいい。ただ、それに対して10点満点中1点だとハッキリと言うことは、審査の公平性という意味でも、もともと市場は厳しいものなのだからスタート地点だって本音で「これって誰か使う人いるの?」「これ、もうあるよね」と言うのは大切なことなのじゃないだろうか。と、審査員としての我が身のガラパゴス感を反省したのだった。内向きに褒め合うぬるい文化では、結局大きく勝てるチームもスタートアップも出てこないだろうと思う。もう1つ言うと、プロダクトの評価と、それを作った人の評価を切り分けて考えるということをしたほうがいいのじゃないかということも思ったりしている。

「学習ノートのGitHubを目指す」——ノートまとめアプリ「Clear」開発のアルクテラスが1億3000万円の資金調達

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アルクテラスは6月24日、電通デジタルホールディングス(DDH)のほか、スターティア(同社コーポレートベンチャーキャピタルの投資1号案件になる)、韓国のベンチャーキャピタルであるBon Angelsなどから合計1億3000万円の資金調達を実施した。

アルクテラスは2010年10月の設立。代表取締役社長の新井豪一郎氏は、新卒でNTTに入社。その後MBAを取得し、コンサルティングファームに3年間勤務、その後はコンサル時代から接点のあった星野リゾートに移り、スキーリゾート事業の責任者として同社子会社の代表を務めた。「もともと教育関連の事業で起業したいという思いがあった。コンサルティングファームで星野リゾートの星野(佳路)社長に知り合ってその話をしたところ、『起業に足りないのは経営者としての経験』だと言われ、星野リゾートのスキーリゾート開発に携わることになった。その後かねてからの思いもあり、アルクテラスを立ち上げた」(新井氏)

もともとEdtech関連の事業での起業を考えていたという新井氏。自身が小学校で「落ちこぼれ」だったという経験から「ITの力を使って1人1人に合わせた教育をすれば、本来のポテンシャルを引き出せると思っていた」とのことで、まずは個人の能力に最適化した教育を行う「アダプティブラーニング」を実現するツールの開発を進めた。

アダプティブラーニング向けのツールを開発

その結果誕生したのが、学習スタイル診断ツール「カイズ」だ。カイズでは、学生が100あまりのアンケートに回答すると、その学習スタイルを「視覚的に全体像を情報で把握させる」「言語的な情報で1つずつを把握させる」「パターンにあてはめて記憶させていく」という3つに分類。さらにそれぞれに最適な学習コンテンツを提供するのだという。

対象となるのは小学校高学年から中学3年生まで。現在販売代理店を通して個人指導塾に展開しており、6000人の生徒のデータがたまっているという(すでに事業単体では黒字化しているそうだ)。またこのカイズの仕組みを実証する場として、塾の経営も行っている。

学習ノートのGitHubを目指す

今回の調達で開発を進めるのは、学習ノートのまとめサービス「Clear」。ユーザー(中学生〜大学生を対象にしている)は、自分が授業で使ったノートの写真を撮影し、教科やそのテーマなどをつけて投稿・共有できるというもの。投稿内容は中学生、高校生、大学生で分かれており、科目事の表示が可能。投稿日時順、閲覧数順、お気に入りのノートにつけられる「いいね」の数でのソートができるほか、キーワードでの検索が可能。基本は今気になっているテーマを検索して、それに該当するノートを閲覧するという使い方をすることになる。ちなみに今の一番人気は高校生の数学および英語だそう。

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2013年12月にベータ版サービスを立ち上げ、2014年4月にサービスを正式公開。ユーザーは約55万人とのこと。ただしこれは一度でも起動したユーザーの数字で、アクティブユーザー数は聞くことができなかった。現在集まっているノートは3万5000冊に上る。

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機能については紹介したが、正直なところ現段階では「手書きノートを撮影して共有しただけ」なアプリだ。ではこのサービスが1億円以上の資金を調達できた理由はどういうところにあるのだろうか。新井氏はClearの将来像について「勉強ノートのGitHubやSlideShareを作る」と語る。つまり巨大な学習ノートのデータベースをCGMで作るのだという。

今後はノートに対してはOCRをかけてすべてテキスト化を行う。これで全文検索に対応するほか、そのノートが何について書かれているのかを分析して(ノートなので図形や絵文字なども入るが、周辺の認識できた文字列から内容を判断していくそうだ)データベース化。冒頭にあったカイズの仕組みと組み合わせて、アダプティブラーニングでより個人に最適化されたコンテンツを提供していくのだそうだ。「ノートは同じ教科書、授業を使っていても書き方が違う。1つのテーマに対して複数のアプローチがある。それを個人に最適化して見せていく。同じレベルの学生のノートで勉強するほうが(個人に最適化されていない教材より)はるかに役に立つ」(新井氏)。生徒にはいろんなタイプがいるし、最適な勉強の仕方はさまざま。だからこそまず様々なノートを集めて、そこからそれぞれの生徒に最適なものを提示すればいいということだ。

今後は広告や教材の販売などのコマースでマネタイズを進める。また4月にはタイでもサービスをローンチしており、今後はアジア圏を中心に海外展開も進める。

「会社設立 freee」は全自動で会社設立に必要な書類をすべて出力できる無料ツール

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会社設立の手続きは想像以上に時間がかかるものである。

例えば、会社のルールをまとめた定款をはじめとする各種書類。ネットや本を見ながら苦労して作っても、不備があれば役所に突き返される。各種書類に同じ情報を何度も記載するのも面倒。そんな非効率な起業環境を改善するツールが「会社設立 freee(フリー)」だ。わずか5分で会社設立に必要な書類が出力できることをうたう。クラウド会計ソフトのfreeeが本日、無料で公開した。

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案内通りに入力するだけで、会社設立に必要な各種書類を自動で作成。一度の入力で、必要な書類や手続きに情報を再利用するので、同じ情報を何度も入力する手間もない。

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役所ごとに提出すべき書類や捺印箇所を手続きの段階ごとに指示。各役所に持っていく持ち物リストも教えてくれるので、役所で再提出を命じられる憂き目を避けられそうだ。

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データはすべてクラウド上に保存するので、PCだけでなくスマートフォンやタブレットからも利用できる。freeeの佐々木大輔社長は、「スマホでの表示に完全対応しているので、スタバでも5分で必要な書類が作れる」と使い勝手の良さをアピールする。

そのほかに有料のオプション機能として、すでに入力した情報を転記してジャパンネット銀行の口座を開設したり、ハンコヤドットコムで会社実印を注文することが可能。官報に掲載すると1回約6万円かかる公告を年間1000円で利用できる「freee 電子公告」なども提供する。

スマホにも最適化している

スマホにも最適化している

設立したての企業を囲い込む「ゆりかご戦略」

専門知識がない人にとって、会社設立の手続きは本やネットで調べて自力でやるか、行政書士などの専門家に依頼するケースが多い。freeeが会社設立経験者500人を対象に実施した調査によれば、会社設立手続きに要した期間は平均24.2日、費用は平均11万2000円と、多くの時間とコストがかかっていた。

世界銀行が昨年10月に発表した年次報告書「Doing Business 2015」によれば、“起業環境の良さ”で日本は世界83位。この数字は「手続き数」「かかる日数」「コスト 」「最低限必要な資本金」をもとに算出したものだが、会社設立 freeeを使えば「かかる日数」と「コスト」が改善し、現在の順位を45位にまで押し上げられると、佐々木氏は言う。

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「実は僕が起業した時も、法務省のサイトを見ながら定款を作って、行政書士にチェックしてもらっていました。それでも役所に提出する書類が足りなかったり、押印を忘れて受理されず、法務局を何往復かしたことも……。会社設立 freeeは起業環境を圧倒的に改善できる。日本の開業率を現状の5%から10%にできると思っています。」

会社設立 freeeを無償提供するのは、本業のクラウド会計ソフト「freee」を利用してもらうためだ。設立手続きが完了すると、自動でfreeeのアカウントが作成されるので、希望に応じて設立当初からクラウド会計ソフトを導入できる。freeeを導入しているのは、創業間もない事業者が多いというデータもあることから、いわば「ゆりかご」状態の企業を囲い込もういうことなのだろう。

グロースハック支援ツール提供のシロク、今度はディープリンクサービスを開始

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URL経由で、ウェブやアプリのトップ画面ではなく、特定のページやコンテンツに直接アクセスできる「ディープリンク」。最近ではスマートフォンでブラウザからアプリ、アプリから別のアプリに遷移することも多いが、その遷移の際にアプリのトップ画面が表示されるのではなく、直接目的のコンテンツが表示されたというような経験はないだろうか? あれもディープリンクによるものだ。通常のリンクよりダイレクトにユーザーの求めるコンテンツを提供することができるため、アプリの価値向上に有効だ。

以前TechCrunchでも紹介したフクロウラボの「Circuit」のようなプロダクトも登場し、国産アプリでも徐々に導入が進みつつあるディープリンクだが、サイバーエージェントの連結子会社であるシロクもその領域に参入した。同社は6月23日、「国内で最も多機能なディープリンクサービス」をうたう新サービス、「Growth Link」の提供を開始した。

Growth Linkは、ウェブサイトやアプリ上でのディープリンクを手軽に設定できるツールだ。通常ディープリンクに対応するには、OSをはじめとしたさまざまな環境に合わせた設定が必要になるが、Growth Linkでは、アプリにSDKを組み込み、リンク先の設定をするだけでだけ対応可能だという。

シロクではグロースハック系のツールを「Growthbeat」という1つのSDKにまとめて展開しており、これまでに同SDKで利用できるGrowth Push(プッシュ通知配信ASP)、Growth Message(アプリ内ポップアップツール)、Growth Analytics(解析ツール)の3つのツールを提供しているが、Growth Linkはその4つ目のツールとなる。

競合製品と比較してユニークだとうたう機能は、アプリインストール前のユーザーに対する施策だ。通常、ユーザーが当該アプリを未インストールの状態でそのアプリに遷移するディープリンクにアクセスした場合、アプリストアに誘導することしかできない(ダウンロード後にアプリを起動するとトップ画面が表示される)。だがGrowth Linkではアプリストア経由後もディープリンクを保持するため、アプリストアをアプリをインストールして初回起動した際に、意図したディープリンク先を表示できるという。これによって、アプリ未インストールユーザーの継続率を向上することができるという(詳細は割愛するが、ブラウザのcookieを利用してこれを実現しているそうだ)。

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またA/Bテストにも対応しており、1つのURLから複数のアプリ内リンクを作成し、ユーザーをランダムに飛ばすことが出来る。その後のユーザーアクションを記録することでどのリンクが最も有効か計測可能だ。

さらに、同社の他ツールと連携させることで更に踏み込んだ訴求が可能と訴える。例えばGrowth Linkで作成したディープリンクを活用して、グルメサイトからのユーザー、旅行サイトからのユーザーといったようにユーザーをセグメント化。そしてGrowth Pushのセグメント機能を使い、セグメントごとに異なる内容のプッシュ通知を配信する、といった応用が考えられる。

Growthbeatは現在6500アプリに導入されているが、シロク代表取締役の飯塚勇太氏は2015年中に1万アプリへの導入を目指すとしている。今後はGrowthbeatのプラットフォーム展開も視野に入れており、自社で機能追加するだけでなく、サードパーティが開発した機能をGrowthbeatに取り込む事も検討している。

数百万円の支払い節約もザラ、「モゲチェック」は日本初の住宅ローン借り換えアプリ

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アマゾンで中古書籍を購入するとき、300円か400円で迷うことがある。どの店から買うべきか比較していると1分くらいはかかる。比較すべきは書籍の状態や納期、これまでの書店に対する評価などだ。

支出に慎重になるのは良いことだけど、何をどこで買うかという比較検討にかける時間は、経済合理性から言えば支払う金額に比例していていいはずだ。安いものはカンで選び、10万円、100万円、1000万円とかける時間を増やすべき。もし100円の違いに1分をかける価値があるのなら、100万円の違いを生む買い物なら10000分、つまり1カ月間フルタイムで働く時間くらいをかけても良いはずだ。

現在住宅ローンを抱えている人の多くは、慎重に選んで借り換えをすれば、今後の支払総額が数百万円くらい変わってくることを薄っすら知っていながら、何もしていないのではないだろうか? このところ歴史的な超低金利ということを知りながら、住宅ローンは計算も事務手続きも面倒だからと、つい後回し。そんな人が多いようだ。

6月22日にAndroid版アプリがローンチした住宅ローン借り換えアプリ「モゲチェック」(iOS版は近日公開)は、まさにそういう人のためのローン比較アプリだ。ありそうでなかったこのアプリを使えば、全国120行1000本以上の住宅ローンをランキングして、どこの銀行に借り換えるといくら安くなるかが一目で分かる。

アプリを起動したら、まず現在利用している借り入れ金融機関名を入力する。続いて借り入れの年月、当初借入額、金利タイプを入れると、以下の画面のように借り換えメリット額一覧が表示される。ランキング表示をすれば、金利タイプ別(変動金利、5年固定、10年固定、全期間固定)に各行の住宅ローンが一覧されて、最も安い銀行が表示される。以下のサンプル画面では楽天銀行やイオン銀行などが上位に入っているが、これは店舗型に比べてネット型は販管費が安いぶん、ローンの条件も有利だからだ。

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変動金利を選ぶ場合、将来の金利をある程度予測して、その結果がどう総支払額に影響するのかシミュレーションする必要があるが、それができるのがモゲチェックの「アナリシス」という機能。例えば、いま金利が2%上がると仮定すると600万円の差が出るとか、中期的に4%ぐらい上がると考えるのであれば全期間固定でローンを組むのが有利ということが分かる。

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モゲチェックをリリースしたFinTechスタートアップ、MFS創業者の中山田明氏によれば、現在、住宅ローンを組んでいるのは全国約800万世帯と見積もられていて、そのうち借り換えで100万円以上安くできる「メリット潜在層」は400〜500万世帯あるという(情報開示:これを書いているTechCrunch Japan西村とMFS中山田氏は子を介した数年来の友人)。400万世帯で100万円の差額だとしたら、これは総額4兆円に相当する。「本当は借り換えには大きなメリットがあるのに、実際に借り換えをしている人は少ない。現状だと借り換える人たちは1年間で20万世帯ぐらいしかない。気付いてるけどめんどくさいんですよね。金利1.5%だから得するんだろうなとまでは考えるものの、アクションに繋がっていない」(中山田氏)

なぜ今までこのようなアプリがなかったのだろうか? 比較自体はネット上にそうしたサービスがあるのでは? という疑問が湧く。

photo03「確かにに住宅ローン比較サイトはありますが、これは人気ランキングといったよく分からない基準でランキングされたもので、それを使ってもどこの銀行に借換えすれば一番得するのかという答えは出ません。住宅ローンは事務手数料があったり、優遇幅が変更されたり、色々なパターンがあるので、それらを全て加味して比較するには総返済額で比較するしかありません。それを簡単な情報入力でやってくれるのがモゲチェックです」(中山田氏)。

住宅ローンというのは、ほかの一般的な借り入れとは性質が違っていて、期限前弁済にペナルティーが存在しない。貸した側からすれば、今後10年とかで払ってもらえるはずだった利息分なしに繰り上げて返済されると困るわけだが、住宅ローンは借り手が有利にできている。いつでもペナルティーなしに返済ができる「コール・オプション」が貸付条件に権利として付帯する。「これは歴史的にずっとそうなっていること。このオプションは権利なのに、多くの人が行使できていないのが現状」(中山田氏)なのだそうだ。

住宅ローンは比較がとてもむずかしい。通信キャリアの複雑怪奇な通信プランのマトリクスが可愛く見えるほど分かりづらい。例えば、全期間固定金利であれば、単純にWebサイトに掲載されている各行の金利を比較すれば済むように思える。しかし実際には「優遇幅」という割引率設定が銀行ごとに異なっているため、実質金利を計算するには優遇幅も勘案する必要がある。また、初期事務手数料がローンごとに大きく異なる上に、その料金も「29万円」のように絶対額だったり、借入額に対して0.76%と比率だったりと一定しない。さらに、変動金利と固定金利の折衷プランとして「固定特約」と呼ばれるタイプの住宅ローンを利用するのも一般的だが、変動→固定切替時の条件変化を勘案した複数行の比較シミュレーションとなると、さらにむずかしい。自分が検討すべき銀行数だけで言っても5〜10本はある住宅ローンについて、これらを比較検討するのは「プロの自分でもExcelでやりたくない作業」(中山田氏)なのだそう。だから全国120の銀行から毎月変わる住宅ローンの金利などの条件をサーバー上で最新状態にしつつ、アプリで一発比較できるようにするというのは、これまで誰もやっていなかったことなのだという。

中山田氏が何故そんなことをやるかといえば、それは氏が過去にSBIモーゲージと楽天モーゲージでCFOを務めた経歴がある住宅ローンの専門家で、借り手側の立場に立ったサービスがないことを解決したいと思ったからという。

銀行と借り手を繋ぐプラットフォームに

さて、モゲチェックは借り手側のメリットを打ち出しているが、ここに銀行側を引き込むことでマーケットプレイスのようなプラットフォームを作るというのがMFSの狙いだ。

ユーザーは名前など個人情報を入れる必要はないが、年収や就業形態を入力しておくことで、審査基準に合致する住宅ローンを持つ銀行からピンポイントでメッセージが届くようになる。ユーザーは明示的に「説明を受ける」というボタンを押して、時間端や曜日、電話番号を入れておくことで、詳しい説明の電話をもらうことができる。つまり、銀行はモゲチェック利用者に対してダイレクトマーケティングができる。

実際にモゲチェックを使ってMFSの提携銀行から借り換えを行うと、ユーザーは5000円のお祝い金を受け取る。そしてMFSには提携銀行からフィーが入る仕組みだ。

住宅ローンの借り換えは人それぞれ残高も金利も違うので、マーケティングメッセージが不特定多数向けとならざるを得なかったが、モゲチェックのように具体的な条件が比較できれば銀行側からダイレクトな提案が可能になる。こう書くと銀行側にメリットを与える構造に思う人もいるかもしれないが、モゲチェックが普及して利益を得ることになるのは、どちらかと言えば借り手側だ。有利な条件で借り換えができるし、もし借り換えメリットがないことが分かれば現在すでに効率的なローンを組んでるということで安心すればいい。情報の非対称性や事務処理の面倒さをベールにして、4兆円規模の本来不要な利息を銀行に払わされ続けていることに借り手側は気づくべきなのだ。

モゲチェックのサービスモデルは、1度借り換えの妥当性をチェックしたら、それで終わりなのかと思ったのだけど、金利変動による借り換え計画のための「モニター」としても機能する。毎月プッシュ通知で来るので、株の指値注文のように「張る」ことができる。例えば、100万円以上借換メリットが出るようになったら借り換えよう、という意思決定ができるのだ。また、今後、大幅に金利が上昇することがあれば、変動金利から固定金利に借り換えて金銭に余裕のある人が安心感のために「毎月の支払いが2、3万円上がってでも出血を止める」というようなシナリオもあり得て、その場合にもモゲチェックは有効なモニターツールになるだろうという。政府や日銀がいうようにインフレ率が2%となれば、金利が4、5%にならないと銀行に預金が集まらなくなる。すると、住宅ローンの金利をそれ以上に上げないと銀行は逆ざやになる。そういうシナリオを想定した金利ヘッジができていない住宅ローン利用者も多い、というのが中山田氏の見立てで、数百万円得をするというのと逆に、今後は「つらい局面での利用も出てくる」と見ているそうだ。

MFSは現在まで自己資金でシステム開発をしていて、金融系VCや事業会社と資金調達の話も進めている。会社帰りに利用しやすいターミナル駅に有人店舗を置くようなことも考えていて、手続きや銀行との交渉の肩代わりすることで多くの人に最適なローンへの借り換えを促すアイデアも検討しているそう。

日本でeスポーツは流行らない? ならばモバイル賞金付きゲームで世界を狙う「ワンダーリーグ」

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欧米で流行するe-Sports(eスポーツ)が、日本で独自の発展を見せるかもしれない。

eスポーツとは、複数のプレイヤーで対戦するビデオゲームを競技として楽しむジャンルを総称したものだ。人気ゲームになると世界大会が開催され、テレビやウェブで中継されることもある。TechCrunchでもお伝えしたが、昨年7月に行われた「Dota 2」の世界大会は賞金総額が11億円に上り話題となった。

海外ではPCメーカーや飲料メーカーがスポンサーするほどの盛況ぶりだが、日本はそれほどの熱量はない。主な競技種目である、PCゲームの人口が少ないためだ。ならば、日本が強いスマートフォンを舞台に盛り上げようとしているのが、「世界初のモバイルeスポーツ」をうたうワンダーリーグだ。本日、iPhoneとAndroidアプリを正式リリースした。

1位と100位のランキング獲得者に毎日賞金

アプリ上では日替わりでカジュアルゲームのスコアを競い合い、毎日1位と100位のランキング獲得者が賞金5000円を入手できる。欧米で人気のPCゲームをモバイルで再現するのではなく、スマホが普及した日本ならではの、スキマ時間の暇つぶし感覚で楽しめる脳トレやパズルゲームを揃えているのが特徴だ。

プレイ回数は1日5回まで。友達招待やSNS投稿をすれば、無料で追加プレイができる。それでも足りなければ、課金で追加プレイが可能。この課金と広告費がワンダーリーグの収益となる。

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賞金の元手は広告費だ。といっても、ワンダーリーグが得る広告費ではなく、支払う広告費を抑えて賞金に回している。

同社の北村勝利社長によれば、開発費が数億円かかるようなモバイルゲームの多くは、アプリのダウンロードと引き換えにAmazonギフト券などの報酬を与える、いわゆる「ブースト」に多大な金額を投じていると指摘。「そういった広告費をユーザーに還元すれば、自ずと人気が出る」と見ている。

超定番ゲームを次々と招致

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「糸通し」は2005年の公開以降、「究極の暇つぶし」というキャッチフレーズとともに数多くのシリーズを展開している

ワンダーリーグは有名ゲームを招致する興行主のようなポジションだ。

まずは累計1500万ダウンロードの「糸通し」や、累計700万ダウンロードの「Touch the Numbers」といった定番ゲームを3カ月にわたって配信。期間中にトータルでトップスコアを獲得したユーザーには、ゲーム開発会社が10万円を進呈する賞金イベントも併催する。

近日中にパックマンを配信することも決まっている。ちなみにパックマンは、バンダイ・ナムコの人気タイトル17作品を日本のクリエイターに開放し、二次創作を許可する「カタログIPオープン化プロジェクト」の一環。ワンダーランドは二次創作者として採用されたかたちだ。

ゲーム会社に対してはライセンス料を支払うか、レベニューシェア契約を結ぶ。ゲームはいずれもワンダーリーグ向けにカスタマイズして組み込む「インゲーム方式」を採用していて、ユーザーは1つのアプリで、複数のゲームを日替わりで楽しめる。ゲーム会社としては、過去にヒットしたタイトルで収益を得られるメリットがある。

カジュアルゲームに国境はない、2020年に世界大会を

運営元のワンダーリーグは昨年6月に設立。今年2月にはアドウェイズ、サイバーエージェント・ベンチャーズ、B Dash Venturesの3社から1億円の資金を調達している。

今年50歳を迎える北村勝利社長は過去に、モバイルコンテンツ事業のアイフリークやゲーム事業のバタフライなどでイグジットを経験した起業家だ。2012年8月まで社長を務めたバタフライでは、パチンコ・パチスロ店舗の実機をシミュレーションできるアプリ「モバ7」を手がけ、700万ダウンロードのヒットを飛ばした。「パチンコ・パチスロ人口の3人に1人が利用するほどの人気だった」。

ワンダーリーグの北村勝利社長

ワンダーリーグの北村勝利社長

なぜ、カジュアルゲームで起業したのか。北村氏はバタフライの社長退任後、世界で勝負できる事業を探していて出会ったのがeスポーツだったと振り返る。「実際に業界研究してみると、モバイル分野では誰もやっていない。我々はスタートアップで資金力がないのでカジュアルゲームで勝負するしかないが、独自のイベントを絡めれば新たな市場を作れると思ったので、やるしかないなと」。

年内には、海外で人気のカジュアルゲームを揃えた英語版もリリースする。日本と同様のタイトルに加え、海外でヒットしたゲームの開発企業とも交渉していく。賞金は海外送金手数料を抑えるために、PayPalとBitCoinのどちらかで送金する。「カジュアルゲームに国境はないので十分に勝機はある」と北村氏。2020年にはワンダーリーグの世界大会を開催したいと展望を語っている。

ビジネスSNS「Wantedly」がオープン化、自社サイトで潜在転職者にリーチ

ウォンテッドリーの仲暁子社長
クックパッドの採用ページに「話を聞きに行きたい」を設置した画面

クックパッドの採用ページに「話を聞きに行きたい」を設置した画面

日本経済新聞から約1億円の資金調達を発表したウォンテッドリーが、ビジネスSNS「Wantedly」のプラットフォームをオープン化する。第一弾としてAPIを公開し、外部サイトに「話を聞きに行きたい」ボタンを設置できるようにする。まずはサイバーエージェント、クックパッド、ヤフー、ディー・エヌ・エー(DeNA)の4社が導入し、年内をめどにすべての企業に開放する予定。

話を聞きに行きたいボタンは、求職者がWantedlyで気になった企業にエントリーするための機能。エントリーしたからといっても必ず連絡が来るわけではなく、企業側が気になった求職者にのみ招待メールが届く仕組み。一般的な転職サイトは求職者が毎回プロフィールや経歴を企業ごとに入力していたが、それが不要な分、気軽に応募できるというわけだ。

「話を聞きに行きたい」ボタンをクリックするだけでエントリーが完了する気軽さが特徴だ

「話を聞きに行きたい」ボタンをクリックするだけでエントリーが完了する気軽さが特徴だ

外部の企業は今後、JavaScriptを一行ホームページに挿入するだけで、話を聞きに行きたいボタンを自社サイトに導入できるようになる。採用担当側としては、従来の応募フローには乗って来なかった潜在転職者であったり、採用フローが面倒で離脱してしまったような転職者とも出会えるのがメリットだと、ウォンテッドリーの仲暁子社長は話す。

「イケてるエンジニアって、会社に遊びに来ているうちに選考に進んだりすることが多いじゃないですか。『話を聞きに行きたい』もそういった世界観。今回導入した企業からは、Wantedlyのボタンがあるからこそコンバージョンするケースがありそうと評価してもらっています。」(仲氏)

ウォンテッドリーの仲暁子社長

ウォンテッドリーの仲暁子社長

オープン化戦略の第一弾としてはこのほか、企業が社内の活動や告知をWantedlyに投稿する会社フィード機能を自社サイトに導入できる「会社フィードボックス」を公開した。会社フィードは昨年7月にリリースし、1000社が利用している。求職者としてはWantedlyの募集要項だけでは伝わりにくい会社の様子がわかり、企業としては社内の雰囲気を潜在候補者に対してカジュアルにアピールできるようになる。

Wantedlyは2011年2月に公開し、累計で1万社が登録。ウェブ業界を中心に、毎月約60万人がサイトを訪問している。4月には、名前や社名を入力するだけでWantedlyユーザーが検索できる「Sync」をリリースするなど、ビジネスSNSとしての側面を強化中だ。日経新聞との提携は詳細が明かされていないが、両社のIDを連携させればウェブ業界以外のユーザーにもリーチできるかもしれない。仲氏は「働くすべての人のインフラを目指す。そのためには、働く人が読んでいる日経は私達の強力な助っ人になる」と話している。

会社フィードボックスではWantedlyの募集要項だけでは伝わりにくい会社の様子をアピールできる

会社フィードボックスではWantedlyの募集要項だけでは伝わりにくい会社の様子をアピールできる

スタートアップ支援プログラムで沿線と活性化ねらう東急電鉄、その期待と不安

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東京急行電鉄(東急電鉄)がIMJ インベストメントパートナーズ(IMJ IP)とともにスタートアップ向けのアクセラレーションプログラム「東急アクセラレートプログラム(TAP)」を開始する。プログラムを開始するという内容は6月1日に発表されていたが、6月18日に東京・渋谷のヒカリエで開催されたキックオフイベントにてその詳細が発表された。

東急電鉄のリソースを使ったテストマーケが可能に

プログラムでは、設立から約5年以内のアーリーステージのスタートアップを対象に、東急電鉄沿線でのビジネス展開に向けた支援をする。今回は「交通」「不動産」「生活サービス」の3領域のBtoCおよびBtoBtoCモデルのサービスやプロダクトを募集する。

応募は7月1日から8月28日までオンラインで行う。その中から30社程度を選抜して9月末から10月にかけて面談を実施し、10社程度まで候補を絞る。その約10社に対して東急電鉄社員らとのディスカッションなどを行う3週間のブラッシュアップ期間を設け、11月11日に最終審査会を実施。ここで最優秀賞、優秀賞の2社を決める予定だ。なお最優秀賞には109万円(「とうきゅう」とかけている)、優秀賞には42万8000円(同じく「しぶや」とかけている)の賞金が与えられる。

最優秀賞、優秀賞に選ばれた2社は、東急のリソースを使ってサービスやプロダクトのテストマーケティングを2015年12月から2016年3月まで実施できる。具体的には東急の車両内の中吊りや駅貼りのプロモーション協力、駅や商業施設の貸し出し、法人紹介による営業協力といった内容だ。テストマーケティングの結果をもとに、今後の継続的な連携を検討する。なお審査で重視するのは新規性や独創性、東急との親和性、収益性など。

スタートアップとの協業で沿線の新規ビジネスを生み出す

東急電鉄 都市創造本部 開発事業部 事業計画部 課長補佐でTAP運営統括の加藤由将氏が説明したところによると、東急がこれまで大企業間のオープンイノベーションを通じて新しいワークスタイルやライフスタイルを発信。持続的に成長する街を創るとして、企業や大学と「クリエイティブシティコンソーシアム」を立ち上げ、東京・二子玉川で2010年から実証実験を続けてきたという。

今後その取り組みを二子玉川と渋谷、自由が丘を結んだエリア(同社は「プラチナトライアングル」と呼んでいる。人口82万人、消費支出推計1.2兆円のエリアだ)に拡大するが、「変化の多いマーケットでの新規事業にはリーンスタートアップの事業開発手法が適しているが、大企業では組織規模や構造上の理由もあって導入が難しい」(加藤氏)と説明。そこでスタートアップとの共創の道を模索した結果スタートしたのがこのプログラムだ。

渋谷周辺と言えば、数多くのスタートアップがオフィスを構えるだけでなく、ベンチャーキャピタルやコワーキングスペースも多いエリア。しかし加藤氏は「ベンチャーを支援環境は充実しているが、0から1のアイデアを形にするところに集中している。(1から100の成長という意味で)苗に水を与える人たちは少ない」と説明。今回のプログラムでその「1から100」の支援をしたいとアピールした。

スタートアップは「下請け」か

加藤氏は「特定エリアを持つコングロマリット企業が取り組むプログラムは日本初。海外でも他にないのではないか」と語る。確かに僕も今まで聞いたことはなかった。

だが僕は少し説明に違和感を感じた。ミーティングの最後にあった懇親会で話した複数人の参加者も同じような感想だったようで、彼らの言葉をそのまま用いると「東急沿線の新規ビジネスを作るための下請けとしてスタートアップを募集しているみたい」というような印象を持ってしまったのだ。

もちろん企業が行うプログラムなのだから本業とのシナジーを求めるのは当然のことだ。でも今回のキックオフイベント「自分たちがやりたいこと」の説明に寄りすぎて、どんなスタートアップを求めているのか、自分たちにどこまで熱意があるのかといった内容がイマイチよく理解できなかった。イベントでの質疑の様子も以下にまとめておく。

Q:東急のユーザーに関するデータをプログラムで提供することはあるのか
A:テストマーケティングが決まった際にNDAを結んでもらって提供する

Q:求められる新規性とはどういったものか
A:他の沿線にあっても東急沿線にないもの。もしくは他の沿線にもないもの。例えばドローンでも、タクシーでも

Q:学生による参加は可能か
A:歓迎する。ただしアーリーステージを対象にしており、プロトタイプが必要

Q:そもそもなぜ2社しか支援しないのか
A:プログラム自体が初めてで、回らなくなった場合ベンチャーに致命的な迷惑をかけることになりかねない。来年再来年とやっていきたいのでまずはこの規模でやる

Q:テストマーケティングのために追加開発が必要な場合の資金を提供するのか
A:サービス開発にお金を出すのは寄付になるためできない。現状のままで応募するか、融資や出資を受けて開発して欲しい

Q:募集するアーリーステージの定義について
A:業種業態によって変わるが、プロトタイプを持っているということ

Q:プログラム参加者への出資はあるのか
A:今回のプログラムの主目的は沿線に新しいサービスを提供すること。出資は当初からは考えていない。まずは業務提携し、今後関係を増したいというのであれば

僕もこれまでいくつか企業によるアクセラレーションプログラムの話を聞いてきたけれど、どちらかというと企業側は「やれる範囲でやることはやるので、どんどん飛び込んできて欲しい」というメッセージを積極的に出している印象が強かった。KDDI 代表取締役社長の田中孝司氏は「プログラムは赤字でも、志の高いエンジニアを応援したい」なんて言っていたし、NTTドコモ・ベンチャーズでも副社長の秋元信行氏が「われわれを使い倒せる起業家と出会いたい」なんて言っていた。

また今回東急電鉄と組んでプログラムを運営するIMJ IPは、親会社であるカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)とともにアクセラレーションプログラム「T-Venture Program」を展開している。このプログラムでも10社以上のスタートアップが採択され、出資やサービス連携について具体的な話が進んでいるという事例も聞いている。そういう事例を見ると、もっと思いを語ってくれてもいいんじゃないだろうかと感じたのだ。

「できない」となることはない、要望をぶつけて欲しい

不安なことも書いたが、渋谷や自由が丘、二子玉川エリアの鉄道や施設を利用できるチャンスがあるというのはスタートアップにとっては非常に魅力的な話だと思うし、加藤氏のチームがここ1年ほどスタートアップ関連イベントに参加して、積極的に環境を理解しようと活動していたのも知っている。実際、このチームのメンバーはTechCrunchのイベントにも参加してくれており、「東急電鉄がスタートアップと組んでどういうことをしたい」という話をいろいろ聞いたことがある。

またイベントの進行を務めたIMJ IP 日本支店長&インキュベーションマネージャーの岡洋氏も「第三者的に言うと、こういうプログラムは一緒に作り上げる気概が大事。(条件について)こう書いているからといって『できない』となることはないと思っている。皆さんの熱意があって、それが東急電鉄とやれば伸びるのであればやらない理由はない。資金面など要望を言って頂ければ我々でジャッジするので、どんどん思いをぶつけてほしい」と語っていた。興味がある人はまず、7月1日以降にエントリーしてみてはいかがだろうか。

マネーフォワードがチュート徳井起用のテレビCM、非IT層に家計簿アプリ訴求

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ゲーム、ニュース、フリマ……スタートアップがテレビCMを放映するのは珍しくなくなったが、今度は家計簿アプリだ。「マネーフォワード」がお笑い芸人の徳井義実さんを起用したテレビCMを開始する。6月20日から大阪と名古屋限定で先行スタートし、非IT層のユーザー獲得を図る。

テレビCMでは「マネーフォワードする人」として徳井さんが登場。入出金情報を自動入力する点、レシートを撮影するだけで読み取れる点、家計簿を入力するだけで節約できる点など、非ITの利用者を意識したメッセージを発信する。歌に乗せて利用シーンや特徴を紹介するパターンもあり、合計で8パターンのCMを用意した。

マネーフォワードの辻庸介社長は昨年12月に15億円の資金調達を発表した際、テレビCMについては「砂に水を撒く感じになりそう」と否定的な見方を示していた。このタイミングでテレビCMに乗り出したのは、「どんなジャンルでもアプリは1つか2つしか残らないので、今が加速する時だと判断した」と理由を語る。

家計簿アプリとしては、広告費を使わずに400万ダウンロードを突破した「Zaim」のほか、280万ダウンロードの「おカネレコ」、入出金情報の自動入力やレシートの読み取りに対応する「Dr.Wallet」などがある。マネーフォワードのユーザー数は200万人。都心に暮らすIT系企業に勤務しているユーザーが中心だが、テレビCMでは主婦をはじめとする非IT層にリーチし、数十万ユーザーを獲得したいという。

「お金は万人にとっての課題なのに、管理している人が少なすぎるんですよね。お金について考える文化を作って、将来的には検索をググるって言うように、お金の管理のことを『マネフォする』って言われるようになれば。」

マネーフォワードの辻庸介社長

マネーフォワードの辻庸介社長

マネーフォワードは複数の口座情報を一括管理し、入出金情報を自動で入力してくれる家計簿・資産管理サービス。銀行や証券、クレジットカードなどのサイトにログインするIDとパスワードを登録するだけで、自動的に入出金情報を入力。入出金情報は「食費」「日用品」「交通費」といった項目に自動で分類してくれる。

6月にはiPhone版とAndroid版のアプリをリニューアルし、スマホのカメラでレシートを撮影するだけで、商品名や店舗名、金額を自動で読み込む機能を無償で公開。これまでは月額500円のプレミアム会員のみが利用できた機能を、無料ユーザーにも開放した。

マネーフォワードは法人向けにクラウド会計サービス「MFクラウド会計」を提供している。月額料金は個人事業主は800円、法人が1800円で、2月には3万5000ユーザーに到達したことを明かしている。辻氏によれば、家計簿アプリとクラウド会計サービスは同等の収益が出ているといい、今後も双方の事業に注力していくそうだ。

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「競合はセルカ棒」カップルのデートに同行撮影する「ラブグラフ」が口コミでじわり拡大

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「カップルのデート写真、撮ります」――昨年1月に個人の趣味で始まったカップルフォトサイト「Lovegraph(ラブグラフ)」が、10〜20代を中心にじわりと伸びている。カメラマンがカップルのデートに同行して撮影するサービス。プリクラや自撮りでは難しい、自然な表情が撮影できることが人気で、月間の撮影件数は100組以上、カップル写真を掲載するサイトは月間30万PVに上る。

友人カップルのデート写真投稿→「私達も撮ってほしい」

ラブグラフを立ち上げたのは、カメラマン志望だった現役大学生の駒下純兵さん。もともとは写真の練習を兼ねて友人カップルのデートに同行し、無料で撮影した作品をサイトに掲載していた。カップルがInstagramやTwitterに撮影されたデート写真を投稿すると、「私達も撮ってほしい」と口コミが拡散。撮影依頼が50件を超えると、一人では対応しきれなくなった。

大阪在住の駒下さんは当初、カップルから交通費だけをもらって、東京、山梨、福岡など全国に足を運んでいた。しかし、撮影依頼が増えるにつれ「遠方だと交通費がカップルの負担になる」と思い、現地にいる知り合いのカメラマンに撮影を依頼。その後も撮影依頼は順調に増え、今年2月に事業化に踏み切った。

現在はサイト経由で撮影依頼を受け、担当のカメラマンがカップルに返信。撮影場所を決め、デート中の自然な表情を撮影している。最も人気が高いのは、カメラマンが厳選した写真12枚をもらえるプランで、料金は撮影費が1万円、カメラマンに払う交通費が1500円。写真をイラストにしたり、動画を撮影するプランもある。

9割以上のカップルが写真掲載を承諾

サイト上には、掲載に承諾したカップルのデート写真が並ぶ。興味深いのは、9割以上のカップルが承諾していること。10代カップルがこぞってMixChannelにキス動画を投稿していることを考えると不思議ではないかもしれないが、見方を変えると、写真の満足度が高いから掲載を許可しているとも言えそうだ。最近では家族の写真も増え、毎日1組ペースで掲載している。

口コミで伸びるラブグラフに、アーティストも注目し始めた。中高生に人気のシンガーソングライター・MACOさんは、新曲のプロモーションでコラボを4月に展開。Twitterでハッシュタグ「#MACO_Lovegraph」とともに写真をツイートしたカップルの中から2組を選び、新曲をBGMにした動画をYouTubeに公開した。

6月18日には、Crystal Kayの3年ぶりとなるシングル「君がいたから」とコラボした動画を公開。家族愛をテーマにした同曲にあわせて、ラブグラフの映像スタッフが脚本を制作した。

カメラマンは全国各地で約120人が在籍する。その多くは週末限定で撮影するセミプロで、報酬は撮影費の50%。志望者には作品のポートフォリオを提出してもらい、面接を経て採用している。「毎月50人ほどの応募があって、採用者は5人程度」(駒下さん)となかなか厳しい審査があるようだ。6月には全国で写真教室を開く「PHaT PHOTO」と提携し、ラブグラフのカメラマン養成講座も始めた。

ラブグラフは駒下さんほか取締役が3名、エンジニア、デザイナー、インターンの計6名。いくつかのVCから投資の提案もあったが、当面は自己資金で運営していく。「撮影収入だけでなく、写真素材をレンタルする事業の需要も伸びています。ある程度のマネタイズはできているので、いまは投資を受けるよりも、シナジーのある企業と組んで事業を大きくしていきたいです」(駒下さん)。

自撮りカップルを見るたびに歯がゆさ

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駒下純兵さん

駒下さんは関西大学4年の現役大学生。ラブグラフを事業化する前はカメラマンを志望していて、ミスコンや美男美女大学生スナップサイト 「美学生図鑑」で撮影の腕を磨いていた。ラブグラフもその一環として始めたものだ。

カメラマンとしてのキャリアに未練はないのかと聞くと、駒下さんは「ミスコンのカメラマンをやっていて、ある程度は名前も知れたんですが達成感がなくて。もともとカメラ始めたのは、他人に喜んでもらいたかったから。僕が撮らなくてもラブグラフが大きくなれば喜んでもらえる」と話す。

出張撮影サービスとしては、ミクシィ子会社のノハナが家族の記念日を想定した有料プランを出していたり、スマートフォンからフォトウェディングを申し込む「ファマリー」などがある。カップルの出張撮影サービスではビッグプレイヤーがいないが、駒下さんは「競合はセルカ棒なんです」と言う。

「セルカ棒で自撮りしてるカップルを見るたびに、『うわー、絶対ラブグラフのほうがいいのに』って思います。僕らが作りたいのは、カップルがちゃんと写真を撮る文化。プリクラかセルカ棒でやっていることを、ラブグラフでやってほしいんです。」

スキルのマーケットプレイス「ストリートアカデミー」、法人向けの教育サービスに進出

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社員向けに研修やトレーニングを提供している企業も多いが、成果のほどはいかがだろう。一方的な押し付けではモチベーションが保たれないし、そもそも社内でじっくり座って受講する時間がないという場合もある。そんな中、社員教育に新風を吹き込むサービスがストリートアカデミーから登場した。

ストリートアカデミーでは、スキルを持つ個人(または法人)が、スキルをもとにした講座を販売できるマーケットプレイス「ストリートアカデミー」を2012年8月より運営している。現在プログラミング講座やヨガ教室などが提供されており、その講師数は2000人。ユーザー数は3万8000人以上となっている。

これまでCtoCのサービスを提供していたが、法人ユーザーが受講しやすいよう機能を追加したのが6月18日にリリースした「ストアカ for Biz」だ。

ストアカ for Bizでは、Excelやロジカルシンキング、スピーチ、英会話から、ウェブデザイン、プログラミングなど、2500件以上の講座を受講できる。企業の管理者が社員に受けさせたい講座をレコメンドしたり、業務と無関係な講座(ストリートアカデミーには、手品やバック転なんかの講座もある)を受講しないようフィルタリングしたりできるほか、社員の受講状況をモニタリングできる管理機能を搭載する。

初期費用や月額費は無料、受講料をポイントパック(5万円/10万円/15万円)で購入するだけの料金体系となっている。今後は割安な定額制プランの導入も検討しているという。

ストリートアカデミーでスキルを売っている講師のうち8割は個人で、前述の通りCtoCのモデルとなっている。だが、当初想定した以上に会社員がビジネス向けの講座を受けるというケースが多く、「会社で導入して部署の活性化に利用したい」といった声もあったことからストアカ for Bizを企画した。「企業における需要に気付かせてくれたのはユーザーだった」(ストリートアカデミー代表取締役社長の藤本崇氏)

また藤本氏は「強制的になりがちな社内研修に対し、社外で、よりカジュアルな学びを提供できるので、スキル向上に活用してもらいたい」と期待を込める。レクリエーション的な講座も多いため、社内の交流イベントとしてチームボンディング(組織のチームワークを高めること)にも有効ではないかと語る。

直近では動画学習サービスの「schoo」なども新人研修向けのコンテンツを提供しているように、ネットのインフラを活かしたオンライン学習が人気を博している。しかし藤本氏は「場の重要性」を説く。「講師とのやりとりはオンラインでも再現できるが、他の生徒から得られる気付きや刺激は大きい。『出会う』ことにニーズがあると感じている」(藤本氏)。ちなみにストリートアカデミーでは、このサービスに先駆けて、2014年10月に講師の社内派遣サービス「オフィスク」も提供している。

NECやガイアックスといった上場企業のほか、ラクスルやLiB、ietty、ベストティーチャーなどのスタートアップが導入を決定しており、まず直近で100社への導入を目指すとしている。7月にはスマートフォン向けアプリも提供する予定で、年間売上1億円を目指す。

高級ホテル予約のrelux、海外の旅行代理店に予約を開放——訪日客の取り込みを加速

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僕たちのオフィスは東京・秋葉原のほど近くにあるのだけれど、秋葉原でここ半年ほどものすごい勢いで増えているモノがある。それは中国人を中心とした海外からの旅行者だ。2014年に1300万人を超えた訪日外国人数は、2015年には1500万人を超えるとも言われている。中国の富裕層を中心に、日本で家電やブランド品を大量に購入する「爆買い」ツアーが開催されるということも少なくないそうだ。

宿泊予約サイト「relux(リラックス)」を手がけるLoco Partnersが、そんな訪日旅行者をターゲットにしたサービスを強化する。同社は6月16日、中国および台湾の旅行代理店向けに訪日旅行予約のBtoBサービス「relux グローバルプラットフォーム」の提供を開始した。

reluxではこれまで、提携する日本国内の高級ホテルや高級旅館の情報を収集。最低価格保証やオリジナルサービスを付与して、サイト上で旅行者に対して直接販売してきた。

今回開始したrelux グローバルプラットフォームは、その情報を海外の旅行代理店などにリアルタイムに提供するというもの。アカウントを発行された旅行代理店は、専用のウェブサイトを経由して、reluxの持つホテル・旅館情報をリアルタイムで閲覧し、事前決済での予約ができる。

サービスの利用は無料。旅行代理店は決済額の4.0〜5.0%の手数料を取得できる。代理店は、中国語圏で数多く利用されているQQやWeChatといったコミュニケーションツールでreluxのスタッフに相談することも可能だという。

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reluxで予約できるのは通常高級ホテル・旅館が中心で、価格帯も1泊5万円以上というものも少なくない。だが今後増加するであろう訪日旅行者を見越して、1万円台から宿泊できるホテルなども提供できるよう準備中とのこと。

アカウントの発行対象になるのは、国外の旅行代理店。対応言語は中国語(繁体字・簡体字)、英語。今回の発表にあわせて、13の旅行代理店がパートナーとして参加する。Loco Partners今後もアジア圏を中心に代理店を拡大していく見込み。

利用は正午から翌朝5時限定、“今夜の飲み仲間”を探す「JOIN US」

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gram30は6月16日、マッチングサービス「JOIN US」を正式リリースした。App Storeから無料でダウンロードできる。

サービス提供は正午から翌朝5時まで

JOIN USは「今夜の飲み仲間を探す」というコンセプトのマッチングサービスだ。ユーザーがサービスを利用できるのは正午から翌日5時まで。利用にはアプリを立ち上げてFacebookアカウントでログインした後、今夜どこで、何人で飲むかを登録すればいい。

そうするとユーザーの周囲10km圏内で飲んでいる、もしくは飲む予定のユーザー(ユーザー個人、もしくはユーザーとその友人のグループ)を最大8グループ紹介してくれるので、あとはチャットでやりとりし、気に入れば、そのまま飲みに行くというわけだ。

サービスが利用できるのは現在東京23区内のみ。マッチングのロジックは今後もチューニングするということだが、正午から17時には10km圏内かつログイン時間が近い人が優先され、それ以降は近距離の人が優先されるロジックなのだそう。これによって、「会社の昼休みにJOIN USを立ち上げたユーザーが、同じ会社のユーザーとマッチングする」なんてことを防ぐのだという。ちなみにチャットのログなどは翌朝5時にはすべて消える。またFacebookの友人とマッチングしない機能などもそなえる。

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利用前に通過率30%の審査を実施

先ほどFacebookログインすれば、とは言ったが、サービスを初めて利用する際には、審査に通過する必要がある。審査は男女5人ずつの「飲み会好きのアンバサダー」が実施。審査項目は非公開だが、Facebookのプロフィールやアクティビティをもとに信頼できる人物かを調査。ベータテストでの通過率は30%前後となかなか厳しいが、この審査で不正利用を防ぐと説明する。

サービスを手がけるgram30は、越境CtoCコマースの「BUYMA」を手がけるエニグモの創業メンバーが中心になって2013年4月に設立された。エニグモ元代表取締役共同CEOの田中禎人氏もそのメンバーだ。

異性とのマッチングよりコミュニティを重視

先日も同じようなコンセプトのサービスがローンチした記事を見た? そうそう、TechCrunchではLip Inc.の「5pm」について2週間ほど前に紹介したばかりだ。JOIN USを手がけるgram30代表取締役の内田洋輔氏もその類似性自体は否定しないが、「マッチングサービスの市場は伸びているが、まずは『ユーザーが楽しいコミュニティを見つけられる』ということをやっていきたい」とコンセプトを説明する。

実は僕は2014年秋にこのJOIN USのデモを見せてもらっている。その時は今と比較して「異性とのマッチング」という点を打ち出していたサービスだった。デモとあわせて聞いた説明のメモには「友達にバレない、カジュアルな出会い系」なんて言葉も残っているのだけれど、正式リリースにあたり大幅にその方向性を変更している。

gram30では2014年12月から600人程度のユーザーでテストを開始したが、「実際にユーザーが求めていたのは、異性との出会いではなく、出会いから恋愛に発展するかもしれない『きっかけ』だった」(内田氏)のだという。「(出会い系の色が強くて)人に紹介できないようなサービスを作っても意味がない。まずは何も考えずに楽しく飲みに行って欲しい」(内田氏)

サービスはすべて無料で利用可能。今後は有料のオプション機能を提供したり、飲食店向けの集客ツールなどを提供したりしてマネタイズを図るとしている。9月以降にはシンガポールを中心に、東南アジアへの進出も検討する。

オンライン英語スクールのベストティーチャーがベネッセと提携、GTEC CBT対策コースを提供

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英語が苦手な日本人は多い。中学と高校の6年間で英語を履修しているにも関わらず、2013年度のTOEFL国別ランキングでは日本はアジア31カ国中26位だ。中でもスピーキングのスコアはアジア最下位であり、座学型カリキュラムの弊害と言えるだろう。インターネットの普及でグローバル言語としての英語が存在力を強める中、この英語力の低さは由々しき問題である。

文部科学省もこの点は認識しており、2020年の大学入試センター試験廃止に伴い英語試験もこれまでのリーディング、リスニング中心(2技能)のものから、英検やTOEFLなどの民間による試験を活用し、スピーキング、ライティングを含めた4技能評価を導入するとしている。

ベストティーチャーの提供する「ベストティーチャー」はそんな4技能を総合的に学ぶためのオンライン英語スクールだ。自分が話したいことを英文で書き、それをオンラインで講師が添削、正しい英文を読むことができる。さらに講師の録音する英文を聞いた上で、Skypeで実際に講師と会話をする。そんなベストティーチャーが6月15日、オンラインスクールで初めてとなる「GTEC CBT対策コース」を開講した。

GTEC CBTというのはベネッセコーポレーションが2014年8月より提供している4技能対応英語試験の名称。年間約73万人が受検する「GTEC for STUDENTS」をベースにしており、すでに多くの大学で入試に活用されている実績がある。2021年にはセンター試験が廃止されるなど大学入試改革が行われる。その際には4技能試験の重要性が増していくと考えられるが、ベストティーチャーはいち早くその流れに乗った形だ。

ベネッセ公認の対策コースとなっており、公式問題集に掲載されている問題を元に、トレーニングを受けたネイティブの講師から学ぶことができる。料金は月額1万6200円で、ベストティーチャーの通常コース(月額9800円)に加え、GTEC CBT対策用のカリキュラムを受講できる。

ベストティーチャー代表取締役社長の宮地俊充氏は、入試の改革に伴い勉強方法にも改革が必要な時代だと訴える。「親の世代には無かった方法でありコストをかける事に抵抗があるかも知れないが、『オンラインで話すのは当然』という世の中にしたい」(宮地氏)

なお、同社は英語4技能試験の対策情報サイト、4skillsもリリースしている。GTEC CBTのみならずIELTSやTEAP、TOEIC SWなど英語能力判定テストの情報を掲載する。

ニュースキュレーションのGunosyが上方修正、純利益は27倍に

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4月に東証マザーズ市場に上場したGunosy。同社は6月12日、大幅な業績の上方修正を発表した。

4月時点の業績予想は売上高30億400万円、営業利益5100万円、経常利益500万円、純利益500万円。今回の発表では売上高は31億6500万円、営業利益1億9100万円、経常利益1億5300万円、純利益1億3600万円となっている。経常利益は当初予想の約31倍、純利益も当初予想の約27倍となっている。

ダウンロード数は977万件に

発表によると、Gunosyの手がけるニュースキュレーションアプリ「グノシー」の1ダウンロードあたりの獲得費用が想定より好調に推移した結果、国内累計ダウンロード数は2015年5月期末の時点で977万件(当初比53万件増)となった。またこのダウンロード数の増加にともなってアクティブユーザーも増加。その結果Google Adsの売上高が当初予想を上回ったという。費用面では第4四半期の広告宣伝費を4800万円増額した19億6800万円とした一方、販管費等を当初比2500万円削減している。

上場間もなく下方修正を発表したgumiと合わせて「大きいG(Gunosy)、小さいg(gumi)」と揶揄して業績を不安視する声もあったが、同社の業績は好調のようだ。6月には動画広告の新商品も開始する。余談だがgumiもその後上方修正を発表。6月12日に発表された2015年4月期決算では、売上高275億3400万円、営業利益4億1600万円、経常利益2億3400万円、純利益1億9100万円という決算を発表している。

FacebookやAppleも参入するニュースキュレーション

業績が好調だとは書いたが、Gunosyをはじめとしたニュースキューレーション系サービス全体の環境は今後変化していく可能性は高いと思っている。

先日Facebookがパブリッシャーのオリジナルコンテンツを投稿できる「Instant Articles」を発表したばかりだし、AppleもiOS9で純正のニュースキュレーションアプリ「News」を提供するとしている。国内でのサービス提供については未定ということだが、また——使い古された言葉だが——「黒船」がやってくる可能性は大きい。

オンライン学習サービスのスクーがクラウドワークスと提携、「人材x教育」で地方創生に臨む

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人は誰しもキャリアアップしたいと願うものだろう。キャリアアップを実現するために学び、スキルを身に付け、自分の価値を高めていく。企業に勤めていればトレーニングも提供されるものだが、クラウドワーカーにとっては先行投資でありそのハードルは低くない。だがそれが無料で受講できるとしたらどうだろうか。

インターネットの動画配信を利用したオンライン学習サービス「schoo WEB-campus(スクー)」を運営するスクーは6月12日、クラウドソーシングサービス「クラウドワークス」を運営するクラウドワークスとの提携を発表した。提携第1弾のプロジェクトとして、クラウドワークスに所属するすべてのワーカーに対し、無料で特別カリキュラムを提供するという。

提供されるカリキュラムはデザイナー向けとライター向けの2種類。schooは通常、リアルタイムでの受講(視聴)は無料だが、録画での受講は有料となっている。だがクラウドワークスの会員であれば録画受講も無料になる。

スクー代表取締役の森健志郎氏は、今回の提携を「人材と教育の統合の第一歩」と話す。短期的にはクラウドワークスが抱える65万人もの利用者を取り込めるメリットがあるが、中長期的には利用者の学習データと就労データを結び付け、よりビジネスに直結するカリキュラムを提供することが狙いだ。今後はスクーのカリキュラムを一定時間受講したらクラウドワークスのサイトでバッジを表示するなど、ワーカーのスキルを担保する仕組みも作っていきたいという。

クラウドワークスにとってもメリットは大きい。同社では地方在住のワーカーが多い点を挙げ(約9割が東京都外)、オンライン学習によるスキルの底上げを目指す。また、ワーカーとして登録したものの仕事の実績がないうちは簡単に受注できない現実があるとし、スクーの受講履歴バッジでキャリアを担保し、これを解消したいと話す。

両社が共通して語っていたのが「地方創生」への思いだ。都市部への人口一極集中で都市消滅の問題が叫ばれる中、いつでもどこでも働けるクラウドソーシングは問題解決の糸口となる可能性がある。とはいえ、器を用意しただけでは足りず、仕事を受注できるレベルにまで教育する事が欠かせない。スクーのトレーニングでワーカーのスキルを上げ、将来的には国内だけでなく、海外からの案件も受注出来るレベルにまで育てたいと意気込む。

なおクラウドワークスは6月11日にサイバーエージェントを割当先とする約5億円の第三者割当増資などで合計約30億円の資金を調達すると発表している。今後は今回のような業務提携に加え、M&Aや資本提携などを加速させるとしている。