キャッシュが6000億ドルあったら、それで何をするのか?…大企業は戦略的投資/買収の機会をうかがう

[筆者: Eric Kim, Chi-Hua Chien]

編集者注記: Eric KimとChi-Hua Chienは、Goodwater Capitalの協同ファウンダ。ここは、消費者向けのテクノロジで世界を変えようとする起業家を支援する、起業初期段階のVC企業だ。

一般消費者を対象とするインターネットスタートアップは、資金調達や評価額において長年のブームを経験してきたが、インターネットの巨人たちによる戦略的投資や買収という最近のトレンドはやや風向きが違う。

GoogleのリードによるMagic Leapへの5億4200万ドルのラウンドや、TencentのKoudaiへの3億5000万ドルの投資、AlibabaのTangoへの2億1500万ドルの投資など、このような投資は、後期段階の消費者スタートアップの、資金調達に関する考え方を変えた。何が、このようなおびただしい数の戦略的投資に彼らを駆り立てているのか? それは、単純に、キャッシュだ。

キャッシュ10億ドルクラブ

キャッシュバランス(キャッシュ+短期投資+長期投資)が10億ドルを超える消費者インターネット企業を下表のように列挙してみると、意外なことが分かる。

  • この、キャッシュ10億ドルクラブのメンバー企業27社で、バランスシートのキャッシュの総額は2680億ドルになる。
  • 半分以上(14社)がアジアの企業で、キャッシュ総額の約1/3(930億ドル)を占め、残る13社の合衆国企業が1750億ドルを占める。
  • インターネット企業ではないがこのところますます消費者インターネットに熱心なAppleとMicrosoftとSamsungをこの表に加えると3370億ドルのキャッシュが新たに加わる。

27社の消費者インターネット企業と3社のOS/デバイスメーカー(Apple、Microsoft、Samsung)を合わせて、およそ6050億ドルの戦力が、サイドラインに並んで機会を伺っている。この巨額なバランスシートは、2015年から2016年にかけて、消費者インターネットへのきわめて活発な投資やM&Aを、激しく競い合うだろう。

しかし忘れてならないのは、キャッシュとその国籍だ。合衆国の消費者インターネット企業のキャッシュバランスの67%は、海外の子会社が保有している。AppleとMicrosoftを加えると72%になる。つまり、合衆国企業の300億ドルあまりのキャッシュは、簡単に合衆国国内の投資や買収に動員することができない。

だとするとオファーはアジアから?

一方、太平洋の向こうのアジアのテク企業は、合衆国の成長企業に積極的に投資している。AlibabaのLyftへの2億5000万ドルのラウンドや、TencentからSnapchatへの6000万ドルの支援に見られるように。

最近の初期段階投資、Rakuten/PocketMathやTencent/AltspaceVRの例に見られるのは、アジアの戦略的投資家たちが、リスクの多い合衆国企業に対して積極的であることだ。全地球規模のテク企業の勢力地図は今大きく変わりつつあるから、ここに挙げた例はこれからの大きな動向の氷山の一角にすぎない。キャッシュバランスを詳細に分析してみると、アジアのインターネット企業による合衆国企業への戦略的投資は総額が1730億ドル、これに対して合衆国企業からは1220億ドルにとどまる。

なお、ここで注目すべきは、一部の合衆国企業が社債の巧妙な発行によって自社の海外資金にうまくアクセスしている(AppleとeBayの税金戦略を比較せよ)のに対し、アジアの企業には合衆国への投資に関して、あくまでも自己のサイズという制約があることだ。とはいえ、合衆国のスタートアップは今後、アジアからの戦略的投資に関してより熟知した方がよいだろう。その一部はすでに、シリコンバレーにオフィスを構えている。(以上の分析はAppleとMicrosoftとSamsungを含んでいる)。

分析した30社は多くがイノベーションの活発な企業だが、しかしそれと同時に、イノベーションの芽を外から買うことにも熱心だった(Google + NestFacebook + WhatsAppApple + BeatsRakuten + ViberYahoo + TumblrTencent + Riot GamesBaidu + 91 Wireless)など。

急速に成長する消費者向けのWebやモバイル企業を抱えている起業家は、独立を維持したいという欲求と、新たな技術や顧客を今すぐ欲しいという需要のある市場の現実を、両天秤にかける必要がある。次の大きな戦略的買収の機会が、アジアからやってきてもおかしくない時代なのだから。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))


Uber、12億ドルの新たな資金調達を発表―会社評価額400億ドル

新しい自動車交通システムのスタートアップ、Uberは先ほど、12億ドルの資金を新たに調達したことを 発表した。われわれが別途Uberに取材したところでは、今回の資金調達ラウンドでの会社評価額は400億ドルだったという。

現在まだUberは参加した投資家の名前を挙げていないが、噂に上っているのはSequoia、TPG、Fidelity Investments、Wellington Management、Kleiner Perkins Caufield & Byers、 Menlo Venturesなどだ。

さらに驚くべきことに、資金調達はこの12億ドルで終わりではないという。CEOのTravis Kalanickはブログ記事で、「戦略的投資のためにさらに資金調達の枠がある」と述べている。そのような「戦略的投資家」がどこから来るのかといえば東方だろう。「今回資金調達によって、Uberはアジア太平洋地域に相当額の投資が可能となった」とKalanickは書いている。

われわれはしばらく前からUberの資金調達ラウンドと400億ドルの会社評価額の噂を聞いていた。同時に最近Uberは幹部の不用意な発言とユーザーのプライバシーを軽視したビジネス慣行によって集中砲火を浴びる事態となった。

感謝祭直前にBuzzFeedがワンツーパンチを繰り出した。一つは上級副社長の一人(依然Uberに雇用されている)が、同社に批判的なジャーリストの「都合の悪い過去を暴いてやったらいい」と発言した問題で、もう一つはGod View(神の目)と称されるリアルタイムで全ユーザーの利用状況を見られるシステムがビジネス上正当化できないような目的で利用されていたという問題だ。Kalanickはこの問題についてもブログ記事で触れ「問題を正していく」と約束した。

Uberはこれまでも積極的にアジア進出を進めてきた。特にここ数ヶ月は既存ライバルからシェアを奪うために巨額の投資を行いサービスの拡大、料金の引き下げを行っている。GrabTaxiを始めライバルも 資金調達を急いている。 GrabTaxiは昨日(米国時間12/3)、2億5000万ドルの資金調達を発表、インドのOlaも2億1000万ドルを調達した。どちらのラウンドに対しても日本のSoftbankが参加していることが注目される。

Kalanickは「1年前、Uberは21カ国の60都市をカバーしていた。現在は50カ国、250都市だ。われわれは12ヶ月で6倍に成長した」と書いている。しかも成長の速度は加速しているようだ。

今回のラウンドでUberの資金調達総額は27億ドルに達した。投資家のリストは次のようにたいへんに長いものになっている。 Menlo VenturesGoogle VenturesKleiner Perkins Caufield & ByersSummit PartnersBlackRockWellington ManagementBenchmarkTPG Growth, Troy CarterJeff BezosCrunchFundGoldman Sachs等々。

さらに取材中だ。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+


低価格のスマート補聴器メーカー、iHearが日本のブラザー他からシリーズCで500万ドル調達

iHear Medicalはユーザーが自分でカスタマイズ可能な低価格補聴器を開発しているメーカーだが、シリーズCのラウンドで500万ドルの資金を調達したことを明らかにした。このラウンドは上海を本拠としててメディカル機器を中心に投資しているLighthouse Capitalがリードし、日本の大手メーカー、ブラザー工業とアメリカのAmeritas Holding Companyも参加している。

2009年に創立されたiHear Medicalが調達した資金は合計780万ドルとなった。

TechCrunchはこの3月にiHearがIndiegogoで補聴器のクラウドファンディング・キャンペーンを開始したときに紹介している。このキャンペーンではユーザーの状態に合せて調整できるiHearのオンライン診断サービスが受けられる補聴器が199ドルから入手できた。

iHearのファウンダー、Adnan Shennibによれば、iHearは来月にFDAの認可を得られる見通しで、Indiegogoで予約された分の出荷準備は整っているという。Series Cの資金により、2015年の第2四半期までに生産販と販売チャンネルの拡大を拡大する計画だ。これにはiHear自身によるオンライン・ストアの開設も含まれる。またAmeritas保険がパートナーとなり加入者への販売も行われる。その後2016年にはiHearはアジア市場に参入するという。

iHearの目標の一つは、4000万人と言われる聴覚機能に問題を抱えるアメリカ人に手頃な価格で補聴器を提供することだ。アメリカでは聴覚障害のある成人の75%から80%が保険でカバーされないため補聴器をもてないでいるという。iHearは特にこのような層をターゲットにするという。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+


TBSがアイリッジと資本業務提携――O2O領域で新事業も検討中


東京放送ホールディングス(TBS)グループでベンチャー投資を手がけるTBSイノベーション・パートナーズ(TBS-IP)が11月11日、O2Oソリューションを手がけるアイリッジとの資本業務提携を発表した。

出資額は非公開だが、数千万円程度と見られる。アイリッジは2008年の設立で、これまでに代表取締役社長の小田健太郎氏の古巣であるNTTデータのほか、KDDIやデジタルガレージ、みずほキャピタルパートナーズ、三菱UFJキャピタルなどから資金を調達している。金額的にも今回の調達は、業務面でのシナジーを重視したものと考えて間違いない。

TBS-IPは、5月にソーシャルメディアを中心としたビッグデータの分析事業を手がけるデータセクションとの資本業務提携を発表している。この発表の際、テレビとソーシャルメディアの解析結果を組み合わせてどのように事業にするかが重要ということを聞いたのだけれども、今回もそれと同じような取り組みらしい。アイリッジが持つO2O向けソリューション「popinfo」とテレビやイベント運営などの関連事業を連携することで、互いの価値が向上するような取り組みをしていきたいのだそうだ。

例えば日本テレビは、ソーシャル視聴サービス「JoinTV」を使って「O2O2O(On Air to Online to Offline:テレビ番組やCMからネットに、さらにネットから実店舗などに誘導する仕組み)」なる、テレビだからこそできる新しいマーケティングの手法があるとアピールしてきた。これと同様…かは分からないけれども、TBSも提携先の持つソーシャルメディアのデータやO2Oソリューションを組み合わせることで、新たなマーケティングやビジネスモデルの模索を進めるという。

アイリッジのpopinfoは、位置情報や時間、ユーザー属性と連動してスマートフォンにプッシュ通知を行うソリューション。同社ではこれを軸に、O2O施策の企画からアプリ開発、運営までをワンストップで手がけてきた。これまでの導入事例はジーユーや東急電鉄など大手クライアントはじめとして250アプリ、合計1500万ユーザー(アプリごとのユーザー累計)が利用しているという。

すでに具体的な新事業がアイリッジ側から提案されており、実現に向けて調整を進めている段階だそう。とはいえテレビ局は免許の必要な事業ということもあって、大企業の中でも提携などには慎重な体質があることは確か。「たとえシステム的にオーバーになろうが、ベストエフォートではなく『ミスがない』という事業を行いたいという声はある」(TBS-IPの片岡正光氏)のだそう。だが片岡氏は「そこで外部の新しいプレーヤーと組むからこそイノベーションは起こる。すでにデータセクションについても複数のプロジェクトを社内で進めているが、アイリッジともそういった事例をうまく活かしていきたい」と今後の展開について語った。


日経、Evernoteに2000万ドルを出資してサービス提携へ

Evernoteは、日本のメディアコングロマリットであり、「日本経済新聞」や英文の「Nikkei Asian Review」などを発行する日経から2000万ドルの資金を調達したとアナウンスした。また日経はEvernoteが先月発表したContextに対応する情報を提供していくことにもなるようだ。

Contextというのは、Evernoteに登録した情報に関連する情報を外部サービスから引っ張ってきて表示する機能だ。英語以外でEvernote Contextに対応するのは日経が最初となる。ちなみにこのContext昨日はEvernote PremiumおよびEvernote Businessを利用している利用者に対し、2015年初頭より提供される予定となっている。

Evernote Contextにより、Evernoteはコンテンツ発見機能を持つようになる。これはTwitterやFacebookも同様に狙う分野であり、端的にいえばアプリケーション内で過ごす時間を増加させようとするものだ。ちなみにEvernoteのCEOであるLibinは、数年以内のIPOも考えていると述べている。

Evernoteの海外利用者の多くが日本人であるという点も、今回の出資話に繋がったのだろう。2013年4月に日本で行われた新経済サミットでもPhil Libinは「利用者の20%および売上の30%が日本からのものです。日本での広がりは、私たちにとってとても大事なものです。100年企業をつくりたいということをずっと言ってきていますが、これも老舗企業の多い日本を見ての発想でした。日本は長いスパンで物事を考えることに慣れているようで、そうした考えとシリコンバレー文化の良い所を組み合わせて成長していきたいと考えているのです」というようなことを述べていた。

Evernote Contextで日経からのフィードを活用できるようになるのは、Contextの日本語化が完了した時点となる。MacおよびiOSでまず実装され、それからAndroidおよびWindowsに展開される予定となっている。

訳注:日経も自社記事にてアナウンスを行なっている(「エバーノートと日経が提携 電子版記事を自動配信」)。

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(翻訳:Maeda, H


ベンチャーキャピタル、IoT(モノのインターネット)に狙いを定める―過去1年で投資3億ドルに急増

編集部: この記事の筆者、Christine MageeはCrunchBaseのアナリスト

日本発のパーソナル・モビリティ、Whillからワイヤレス充電のuBeamまで、家庭や自動車やオフィスにイノベーションを起こそうとするIoT〔Internet of Things=モノのインターネット〕のスタートアップが何百万ドル単位の資金調達に成功する例が相次いでいる。Kickstarterなどのクラウンドファンディング・プラットフォームではスピーカーやバッテリー充電器にもなるスマート・クーラーボックスとかカスタマイズできるスマートウォッチなどがヒットを飛ばしている。

それにとどまらず、最近ベンチャーキャピタルもホームオートメーションやホームセキュリティーの分野への投資を急増させている。GoogleのNest買収SamsungのSmartThings買収といった大型買収に刺激されて、この分野へのベンチャーキャピタリストの関心がかつてなく高まっている。

過去1年でベンチャーキャピタルは97回のラウンドで3億ドルをIoTスタートアップに投資した。しかも案件の半数は最近の四半期に実施されている。四半期での シードラウンドの件数は過去最高を記録している。

この件数急増の一因はIoTを対象としたアクセラレーターの整備によるものだ。R/GA、TechstarsのニューヨークのIoTアクセラレーター、Microsoft Venturesがシアトルに開設したホーム・オートメーション・アクセラレーター、 グローバルなアクセラレーターのHAXLR8Rなどがその目立つ例だ。ベンチャー投資家がIoTスタートアップの動向を注視していることはシードラウンドだけでなくSeries Aラウンドの数も新記録だったことでも推測できる。

Galvanize VenturesのNick Wymanは「この分野への投資を決断したもっとも大きな理由はIoTこそ将来だというコンセンサスが出てきたことだ。ビッグデータの取得と利用、スマート・ホーム、ホーム・セキュリティー、いずれもIoTテクノロジーが中心的な役割を果たすことになる」と説明する。

先週、GalvanizeはIoTスタートアップのKeen Homeへの投資ラウンドを実施した。これには損保のAmerican Family Insuranceやコミュニケーション企業のComporiumが戦略的投資家として参加している。Keenの最初の製品はスマート換気システムで、家の所有者は部屋ごとに換気をコントロールすることで室温を快適に保ちながら省エネを実現できる。「われわれは今後新しく現れてくる市場に投資している」とWymanは言う。Galvanizeは室内ガーデニングのスタートアップ、Grove Labsや家庭でビールを醸造するキットを開発したBrewBotにも投資している。

Keen Home自体はパズルの小さなピースかもしれないが、家のスマート化というその全体像は巨大だ。個別システムが多数登場すると、それらを協調させるハブの存在が強く求められるようになる。

BoxGroupDavid Tischは現在の状況を「Apple (Homekit)にせよ、 (Nest)、(SmartThings)、GE (Wink)にせよ、こうしたホームオートメーション・プラットフォームが最終的にどのような形を取るのか、まだ見えていない。今のところIoTエコシステムはまったく不透明な状況だ」と考えている。

Tischは去る7月のSamsungの買収に先立って、SmartThingsの1500万ドルのラウンドに参加していた。しかしそれ以後はホームオートメーションの分野で大きな投資の決断をしていない。先行きへの不透明感が、件数は多いものの大型投資案件が比較的少ないという傾向を招いているようだ。IoT分野での大勢が決まるまではあまり大きなリスクを取りたくないというのが投資家の心理なのだろう。ただGoogleなりAppleなりによってホームオートメーションのハブの事実上の標準が成立すれば、投資家には朗報だが、一部の消費者は、そういった巨大プロットフォームにもっとも重要なプライバシー情報をコントロールされたくないと反発するかもしれない。

HAXアクセラレータから巣立ったForm Devicesはそういった懸念に答える形で、 「ソフト・セキュリティー」を提唱している。これは従来のセキュリティーがカメラやセンセーといったデバイスに依存する「ハード・セキュリティー」だったのと対照的なアプローチだ。今週、 Kickstarterでプロジェクトを公開しているが、このシステムは24時間常時セキュリティー情報を記録するのではなく、ソフトウェアによって「何らかの異変」が感知されたときのみ、情報の記録を開始する。ユーザーは大量のプライバシー情報が外部のシステムに蓄積されてしまうことに対する不安を覚えずにすむわけだ。

「いずれにせよ、IoTの進展によって収集されるデータの量は飛躍的に増加する。それにともなってこのデータを効果的に処理、分析することから大きなチャンスが生まれ、ビジネスのあり方に革新が起きる。家庭、自動車、オフィスからIoTが始まろうとしている。その影響はドミノ倒しのようにあらゆる分野に急速に広がっていくだろう。インパクトは巨大だ」とR/GAのConnected DevicesプログラムのJenny Fieldingは予想する。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+


お部屋”探され”サイト運営のietty、YJキャピタルとインキュベイトファンドから約2億円の資金調達

不動産ポータルサイト「ietty」を運営するiettyが、YJキャピタルとインキュベイトキャンプから総額約2億円の資金調達を実施した。また今回の調達にあわせて、YJキャピタル代表取締役の小澤隆生氏とインキュベイトファンド代表パートナーの和田圭祐氏が社外取締役に就任している。同社はインキュベイトファンドのインキュベーションプログラムでの最優秀賞獲得を契機にサービスをスタートした。2013年10月にはアイ・マーキュリーキャピタルから約5000万円の資金調達を行っている。

iettyは“お部屋探されサイト”をうたう不動産ポータルサイトだ。賃貸物件を探すユーザーがFacebookアカウントでログインし、引っ越しの希望条件を入力すると、その条件に合わせてiettyのパートナーである不動産業者がユーザーに物件を提案してくれるというもの。ユーザーはサイト上のチャットでやりとりしながら物件を探して、内覧の予約や業者への来店の調整ができる。

これまでの不動産ポータルサイトではユーザーが自ら物件を探す必要があったが、iettyでは不動産業者が提案をしてくれる。まさに「お部屋探し」でなく「お部屋探され」なのだ。またietty代表取締役社長の小川泰平氏いわく、業者が自ら物件を紹介してくれるということで、釣り物件——すなわち好条件なためにユーザーの集客に使われるが、実際には存在しない、もしくは契約が埋まっているような物件——が存在しない。今すぐ内覧できる物件だけを紹介してもらえるというメリットがある。現在会員登録は月次1000人ペースで増加。1人が4〜5人ほどの業者から物件の紹介を受けており、20〜30%が実際に来店するという。

また最近では、5月にリリースした法人向けサービス「ietty Biz」が好調だそうだ。このietty Bizは、法人の福利厚生サービスとして提供しているもので、サービスを導入する法人の従業員であれば、ietty経由で部屋を契約した際に仲介手数料の半額保証(0.5ヶ月分以下)をしてくれるというもの。

法人には費用が一切発生しないことに加えて、iettyがサービスを展開する東京都内には、「オフィスから2駅以内に住む場合に家賃を補助する」といったルールを持つ、比較的若いIT企業が多いことから非常にウケがいいそうだ。福利厚生サービスの一環として法人に提案するため、導入時には総務担当者などを通じて一度に数百人〜数千人の従業員に情報が共有されることもあってか成約率も高い。現在このサービスは約40社が導入している。手数料半額保証ということで1件あたりの売上は落ちるが、広告出稿などもせずに良質な見込み客が獲得できているということか。

こういった状況もあって、iettyでは2015年はじめにも黒字化が見えている。「レバレッジの効く事業でもないので泥臭いことをやってきたが、既存事業についてはこのまま突っ走っていけばいい様な状況が見えてきた」(小川氏)。そして更なる飛躍に向けて、今回の資金調達をふまえて新機能の開発を進めるという。その詳細については取材では明らかにされなかったが、2015年初にもサイトリニューアルし、新機能もお披露目される予定だ。加えて、政令指定都市を中心に、サービスエリアを拡大するとしている。

なおiettyは2013年11月に開催した「TechCrunch Tokyo 2013」内で行われたスタートアップ向けのプレゼンコンテスト「スタートアップバトル」にも登壇してくれた。TechCrunch Tokyoは2014年も開催予定なので、同社のような元気なスタートアップとの出会いに興味がある方は是非とも遊びに来て欲しい。


スペースマーケット、CAVとみずほキャピタルから約1億円の資金を調達

TechCrunchでもローンチ時からご紹介しているスペースマーケット。最近ではInfinity Venture Pertnersが主催するIVS(Infinity Ventures Summit)のLaunchpadで準優勝、B Dash Venturesが主催するB Dash Campのピッチアリーナで優勝、サイバーエージェント・ベンチャーズ主催のRising Expo 2014でも優勝。さらには僕も運営を少しだけお手伝いしているSkyland VenturesとトーマツベンチャーサポートのイベントであるStartup Pressでも、ジャーナリストの田原総一郎氏が最優秀プレゼンとして選出するなど、国内で開催されるスタートアップのプレゼンコンテストを席巻している。

そんなスペースマーケットが、10月14日サイバーエージェント・ベンチャーズとみずほキャピタルを割当先とした総額約1億円の第三者割当増資を実施したことを明らかにした。今回の資金調達をもとに経営基盤の強化を図るとともに、サービスの本格展開に向けて採用を強化していくという。

スペースマーケットでは現在800のスペースを取り扱っているそうだ。最近では東京・新宿のスタジオアルタ、東京都の猿島(同社いわく「初の“島”物件」とのこと)、帆船なども利用できるようになっている。現在もインターン、社員含めて積極的な営業で利用スペースの拡大を進めている。

またシナジーのある事業者と提携を進めているという。一例だが、会社のミーティングのためにスペースを借りたのであれば弁当やケータリングが必要になるが、これをスペースとあわせて予約できるようなサービスを目指すのだそうだ。スペースマーケットではすでに複数社と提携に向けて話をしているとのことで、年内にもサービスが始まる予定だ。


eBay、PayPalの分社化を決定―「物言う株主」カール・アイカーンの持論通りに

eBayとPayPalは道を分つことになった。PayPalはeBayの傘下から抜けだして、独自の上場企業となる。eBay, Inc.とその取締役会による戦略的見直しの結果としてこの決定が行われた。これにより両社のビジネスが一層速く成長するようになることが期待されている。

このPayPalのスピンオフは、監督官庁の承認が得られば、2015年の第2四半期に完了する見込みだ。両社とも分離後は新しい CEOが任命される。 eBayではマーケットプレイス担当プレジデントのDevin Wenig、PayPalではプレジデントのDan SchulmanがそれぞれCEOとなる予定だ。

eBayの分社は「もの言う投資家」のカール・アイカーンを始め、多くの株主が期待し、あるいは要求していたものだ。eBayがPayPalを買収したのはeコマースの支払手段の効率化を期待してのことだったが、PayPalがモバイル支払の分野に進出して成功を収め、Braintreeを買収してOne Touchシステムを手に入れるなどしてからは、PayPalの将来戦略はeコマースを離れ、むしろ個人向けの総合支払いサービスに向かうようになった。

eBayはモバイル経由で年間200億ドルの売上を得ており、今日の同社の発表によれば、PayPalの急成長によって大きく支えられてきたという。一方、PayPalはeBayから分離することによって、AlibabaのようなeBayの強力なライバルとも提携できるようになり、成長の加速が期待されるという。

〔日本版〕Wall Street Journalの記事はTechCrunch記事とはややニュアンスが異なる。これによれば、Carl IcaanはeBayにとってPayPalが「お荷物」であり、分社化することによってeBayの会社価値が増大すると主張していたという。eBayのCEO、John Donahoeはこれまで何年にもわたってIcahnの主張に反対してきた。それがここに来て180度の方向転換となったのは、AppleがApple Payで、AlibabaがAlipayでオンライン支払いサービスに参入し、この分野の競争が急速に激化する兆候を見せたため、Icahnの方針に同意せざるを得なくなったということのようだ。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+


クラウド会計「freee」、シンガポールの投資会社とリクルートから6.3億円調達

クラウド会計ソフトのfreeeは25日、第三者割当増資を実施し、総額6億3000万円を調達することを明らかにした。引受先はシンガポール政府が所有する投資会社Temasek傘下のPavilion Capitalとリクルート投資子会社の2社。freeeはシードラウンドから数えて4度目の増資。これまでに合計17億5000万円を調達したことになる。

シンガポールの投資会社を選んだ理由

過去の資金調達ではシリコンバレーに拠点を置くDCMから出資を受けていたfreeeだが、なぜシンガポールの投資会社なのか? この点についてfreee代表取締役の佐々木大輔は、次のように説明する。

「すでにSaaSのビジネスモデルに親しみがあるため話が早く、サービス展開の建設的な話もできる。投資サイズも大きい。将来的な海外展開を考えるとアジアが主戦場になるので、アジアに強い知見を持つ投資家がベストという結論になった。」

シンガポールは、GoogleやFacebookがアジアのヘッドクォーターを構えるなど、アジアの中心地としての意味合いもある。freeeはこの地にアンテナを張ることで、ビジネス上に大きなメリットがあると見ているようだ。

freee代表取締役の佐々木大輔

リクルートとはプロダクトと営業面で協業

リクルートとは既に、リクルートライフスタイルが提供するPOSレジアプリ「Airレジ」に入力した売上実績を、freeeに自動的に会計データとして取り込むなどの連携を実施。今回の出資に伴い、リクルートグループ横断でプロダクトや営業面での積極的な協業も検討する。

あわせて同日、クラウド会計ソフトのfreeeに経費精算機能を追加した。freeeを導入する会社の従業員はどこからでも経費精算の申請ができ、会計ソフトへの仕訳もシームレスに登録できる。経費精算はiPhoneアプリからのレシート写真登録にも対応している。

調達した資金では、中小企業を中心とする法人向けの開発・サポート体制を強化する。5月にベータ版としてリリースした「クラウド給与計算ソフトfreee」もまもなく本格的に事業化する。


Tokyo Otaku Modeがクールジャパンファンドから資金調達–金額は3年間で最大15億円

今朝はフリマアプリ「Fril」を手がけるFablicの資金調達が発表されたばかりだが、またまた大規模な資金調達の話が舞い込んできた。

日本のポップカルチャーの世界発信や海外向けのECを手がけるTokyo Otaku Mode(TOM)は9月25日、海外需要開拓支援機構(クールジャパン機構:クール・ジャパン支援施策にむけて設立された官民出資の法人)を引受先とする第三者割当増資を実施したと発表した。クールジャパン機構では今後3年間で最大15億円の投資枠を設定している。

TOMは、日本のアニメやマンガ、その関連グッズなどのポップカルチャーを紹介するFacebookページとしてサービスをスタート。Facebookページの「いいね!」数は現在1600万件超。2012年にはCGMサイト「Tokyo Otaku Mode」を立ち上げたほか、2013年夏には海外向けECサイト本格オープンした「Tokyo Otaku Mode Premium Shop」を本格オープン。ポップカルチャーの関連グッズのほか、クリエイターとのコラボレーション商品などを展開している。ウェアラブルなおもちゃ「Moff」の海外向けの販売なども行っている。これまで商品を発送したのは85カ国以上だという。

同社では今回の調達をもとに、EC事業の拡大に注力する。エンジニアを中心に採用を進めてモバイルを中心にした開発力を強化。さらに物流拠点を設置するほか、プロモーションを強化するという。


フリマアプリFril運営のFablicがクックパッド、コロプラ、ジャフコから10億円調達–まもなくテレビCMも

フリマアプリ「Fril(フリル)」を手がけるFablicは9月25日、クックパッド、コロプラ、ジャフコを割当先とした第三者割当増資を実施したことを明らかにした。出資比率やバリュエーションは開示していないが、関係者などの話を総合すると、金額的には3社がおおよそ3分の1ずつ出資しており、バリュエーションは100億円程度になるという。

Frilは2012年7月にサービスを開始したフリマアプリ。ユーザーを女性に限定しているのが特徴で、ファッションアイテムやハンドメイドの小物などが個人間で売買されている。現在のダウンロード数は200万件弱。ユーザーは都市部に住む10代後半から20代の女性が中心となっている。売買される商品の平均単価は2000〜3000円程度だという。月間の物流総額(実際に売買されている金額)は7月時点で5億円と発表されていたが、現在は「5億〜10億円のあいだ」(Fablic代表取締役社長の堀井翔太氏)だそうだ。

割当先に事業会社が2社いるが、この理由について堀井氏は、「特にクックパッドなどはユーザー属性も近いためシナジーもある。だがそれ以上にいい応援をしてくれる人、熱い思いを持った経営陣が居るから」と説明する。

フリマアプリのプレーヤーを見てみると、メルカリの手がける「メルカリ」が500万ダウンロードを達成。これまでの資金調達ではグローバル・ブレイン、グロービス・キャピタル・パートナーズ、伊藤忠テクノロジーベンチャーズ(ITV)、GMOベンチャーパートナーズ、ユナイテッド、イーストベンチャーズなど、ベンチャーキャピタルを中心に広く資本を受け入れて“応援団”を作っている状況だ。またテレビCMを展開して大きくユーザー数を伸ばした。

こういった状況を踏まえて、堀井氏は「今はプロダクトを磨くだけでなく空中戦(マーケティングなど周辺領域での勝負)になっている。いかに周囲が応援してくれるかが重要。そんな中で『燃料はどんどん投下するから戦え』と言われることも増えたが、それとは違ったアドバイスをもらえる会社に出資してもらっている。優秀な経営者に気軽に相談できるし、IRやマーケティングにも強いチームがいる」と語る。

今後Frilは、CtoCをビジネスの中心にしつつ、BtoCの事業も強化する。8月からは「公式ショップ」という形でアパレルブランドが出店し、商品を販売できる仕組みを開始している。「現在は検証もかねてサービスを始めたところ。将来的には会員への課金や広告など、マネタイズの方法はあると思っている」(堀井氏)

前述のメルカリやLINEの手がけるLINE MALL、さらにはヤフオク!まで、(広義で)競合が多いスマホ向けのフリマ市場。Frilでは、今後も女性に特化したサービスを展開していく。「彼ら(競合)はオールジャンル、オールカテゴリ。そこはポジショニングを分けて差別化していきたい。お金(手数料のこと。ちなみにメルカリはこれまで手数料無料でサービスを展開してきたが、10月からFrilと同様に商品価格の10%の手数料を取得する)がかかっても使ってもらえるのはそこがあるから。これからも独自の世界を作っていきたい」(堀井氏)。サービスを支える約30人のカスタマーサポートは全員がFrilのユーザーで、きめ細かい対応を実施。さらにはバックグラウンドでのスパム検知、本人確認の仕組みにも注力しているという。

Fablicでは2015年度の物流総額200億円を直近の目標とする。また将来的には海外展開も検討しているようだが、「やるのであれば台湾などアジア圏。法律や物流の違いもあって翻訳だけして展開できるとは思っていない。場所によって戦略やアプリそのもののチューニングが必要だと思う」(堀井氏)とのことだった。


これまでになかったのが不思議―150万ドルを調達したEnvoyはiPadの来客入館管理アプリ

会社を訪問するとロビーの受付で来客簿に記入して担当者を呼んでもらう。このプロセスにイノベーションが必要だとは誰も思いつかなかった―Envoyの登場までは。

Googleで4年、Twitterで3年、インフラのエンジニアとして働いた後でLarry Gadeaは昨年11月にEnvoyを創業した。これはiPadベースの来客入館管理システムだ。Twitterを辞めた後、Gadeaは他のテクノロジー企業に勤める友人を頻繁に訪問するうちにこのアイディアを得たのだという。

Airbnbに行くと古臭いクリップボードに名前を書くようになっていたが、GoogleとAppleには自前の入館管理システムがあった。「GoogleとAppleはさすがだな」とGadeaは感心した。「しかし待てよ。どうしてAirbnbには専用システムがないのだ? それにAppleとGoogleがわざわざ人手を割いて本業とは関係ないシステムを開発したということは、入館管理というのはよほど重要な業務なのだろう」とGadeaは気づいたという。

そこでGadeaは4人の仲間(Teng Siong Ong,、Ben Angel,、Kamal MahyuddinWells Riley)を集めて来客管理システムの開発にとりかかった。最初のアプリは昨年App Storeに登録され、19.99ドルの売り切り方式で販売された。今回EnvoyはビジネスモデルをSaaSに改め、一建物当たり99ドルのベーシック・コース、249ドルのプレミミアム・コース、 499ドルのエンタープライズ・コースが用意された。本日からサービスが一般公開され、受付が開始されている。

べーシック・コースは、NDA(秘密保持契約)への署名、入館証の印刷、来客の顔写真入りでSMSとメールによる面会相手への通知、などの機能が用意されており、来客人数無制限だ。

もちろん、タブレットにはSign In for iPadやReception for iPadなどの来訪者管理アプリが存在する。しかしGadeaは「そういうアプリもあるが、入館管理専門に真剣に取り組んでいるのはわれわれだけだ」と自信を見せる。

現在、来客管理アプリではHID GlobalのEasyLobbyが有力だが、Envoyはロビー受付のハードウェアにiPadを用い、洗練されたUIを提供することで対抗していく考えだ。

GadeaはEnvoyをCRMとビッグデータ収集の分野にも拡張していく野心を抱いている。これにはシード資金を投資したのがMarc Benioffであることも影響しているかもしれない。EnvoyはBenioffに加えてAdam D’AngeloJeremy StoppelmanRazmig HovaghimianYishan WongHarj TaggarAlexis OhanianGarry TanBlake Krikorianemil Shah、 Tobi Lutke、Yun-Fang JuanBobby GoodlatteKent LiuTammy NamJavier Olivan、Ali Rosenthalから総額150万ドルのシード資金を調達している。

Gadeaは「受付担当者がいない、あるいは人数10人以下の会社は当面ターゲットにならない。また病院やクリニックの受付はHIPAA(医療保険の相互運用性と説明責任に関する法律)に準拠する必要があるため、今後の課題となる」と述べた。

Envoyには現在250社の有料顧客があり、黒字化間近だという。顧客には200人の社員を擁する産業用大容量送風ファンのメーカー、Big Ass Fansも含まれている。サービスのローンチ当初はこのBig Ass Fansが最大のユーザーだったという。現在、Envoyのユーザー企業のうち30%はハイテク関連以外だ。「われわれのユーザーには石油精製、教会、金融機関、学校、工場、倉庫、なんでもありだ」Gadeaは自慢する。

「入館管理のようなサイドプロジェクトにリソースを割いて内製するよりもEnvoyのようなこの分野専門に真剣に取り組んでいる会社のシステムを利用するほうが得策と考えた」とBoxのシステムエンジニアのJohn Allenはいう。BoxもEnvoyのファンだ。.

テクノロジー系企業では他にLyft、Pixar、Jawbone、Yelp、PalantirがEnvoyを利用している。そしてとうとうAirbnbもユーザーに加わった。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+


半導体投資の回復

[筆者: Ilgiz Akhmetshin]

編集者注記: Ilgiz AkhmetshinはSKTA Innopartnersで事業開発とマーケティングを担当している。IlgizはITと情報システムの分野で、さまざまな経験を積み重ねてきた。

これまでの数年間、半導体への投資は低迷していた。SGAの調査によると、2010年の北米、ヨーロッパ、およびイスラエルでは、半導体企業へのシリーズAの投資はわずか5件、出口はわずか10件だった。それまで半導体企業に投資してきたVCも、スケーラビリティが大きくて出口までの期間が短く、失敗のコストが低いソフトウェアのスタートアップに軸足を移してきた。

しかしながら、半導体投資は2013年に底を打ち、徐々に回復に向かっていると私は思う。CrunchBaseなど一般に公開されている取り引きデータを見ても、最近の投資トレンドには明るい材料がいくつか見つかる。

VCの集団脱走

資本費用の高騰

半導体スタートアップがVCにとって魅力薄になった理由はいくつかある。第一の理由は、コンセプトの段階から概念実証の段階へ進むために必要な資本の大きさだ。半導体製品は通常、試作品を設計してコンセプトをテストするまでに最大18か月/100万ドルを要し、最初のサンプルチップができあがるまでにさらに200万ドルを要する。

半導体スタートアップを起業するために必要とされる資本の額はVCたちに、緩和努力のありえない大きなリスクをもたらす。半導体開発はソフトウェアと違って、フェイルファスト(fail fast, 早い失敗, 失敗が早めにわかること)の機会がないからだ。この投資構造のゆえに、ベンチャーキャピタリストは半導体スタートアップを避けようとする。

買収による整理統合

半導体がVCにとって魅力がなくなった第二の理由は、半導体業界における大規模な整理統合だ。ほんの数社の巨大企業が残り、買収能力のあるそのほかの企業(出口機会)や、またスタートアップがスケールしていけるための大きな顧客は、もうほとんど残っていない。

たとえば、今の業界の最大の問題のひとつは、10ナノメートル未満の加工技術に必要な安価で信頼性の高いEUVがないことだ。優秀なソリューションを抱えたスタートアップが数社あり、それぞれが製品を市場に出すまでに200〜300万ドルを必要としていた。ところが、彼らにスケールアップの機会、出口の機会を与えうる顧客はASML一社しかなく、しかも同社はすでにCymerに投資していた。このような状況があるため、スタートアップが資金を調達することはきわめて難しいのだ。

また、設計ツールの費用も高い。メーカーはCadenceSynopsys、わずか2社だ。彼らは小さなスタートアップに対して一人一年あたり50000〜75000ドルのライセンス料を課金する。これによってスタートアップのバーンレート(資本燃焼率)が大きく上昇する。

販売サイクルが長い

販売サイクルが長いことも、半導体スタートアップが投資家にとって魅力薄である理由の一つだ。あるスタートアップが、あらゆる問題を解決克服して最良のチップを作ったとしよう。そのチップは、最終設計の完成から市場で一般的に入手可能になるまで、平均3年を要する。かつて優れた製品を作ったCalxedaは、この長い坂の途中で息切れ(資金切れ)し、落伍した。半導体スタートアップは市場からの需要の牽引力を早めに得ることができないため、投資家も初期の投資(育成的投資)をためらうのだ。

半導体スタートアップへの投資が戻ってきた

上で挙げたようなさまざまな問題があるにもかかわらず、半導体企業への投資は徐々に回復している。2014年の最初の6か月のデータを見ると、2013年に比べ、投資ラウンドの回数は30回から35回に増加し、投資を受けたスタートアップは27社から31社に増加した。

この程度の増加は統計的に意味がないかもしれないが、しかし真の変化はその細部にある。

2012年の前半における32回の投資ラウンドのうち、新しい企業への投資はわずかに2件だった。そのほかの投資は、すでに投資をされている企業への追加的ラウンドだ。2013年の前半も同じ傾向で、スタートアップへの投資はわずかに3件だった。ところが今年は、1月から6月までで、新しい半導体スタートアップへの投資が20件近くに達した。

またLPたちも半導体企業とコア技術への関心を新たにしているようだ。Walden Internationalは最近、半導体向けのファンドとして1億ドルを確保した。噂では、某ファウンドリ企業が、スタートアップインキュベータ/アクセラレータ事業の立ち上げを検討している、といわれる。

過去数年間、資本集約型のスタートアップにとって、投資の欠如が致命的な問題だった。しかしながら、投資家たちはこの分野に戻りつつあるようだ。このトレンドが今後も続き、コアテクノロジにおけるイノベーションに火をつけ、新世代のIoTデバイスを可能にし、業界を大きく変貌させるアプリケーションが作り出されることを、期待してやまない。


資料:

  1. CrunchBase Data Export
  2. GSA Capital Lite Working Group Update

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))


Amazon、Googleを退けてゲーム・ストリーミングのTwitchを買収―金額は10億ドル以上


Twitchの共同ファウンダー、Emmett Shear(左)とKevin Lin(右)

アップデート: TwitchはAmazonによる買収を確認した。ただし金額を明らかにすることは避けた。

アップデート2:AmazonもTwitch買収の報道を確認し、買収金額は9億7000万ドルのキャッシュと発表した。Amazonの最近の四半期決算では現金及び現金等価物は50億6000万ドルだったから、今回の買収でその約2割を使ったことになる。

さる5月にGoogleはTwitchを10億ドルで買収することが確実視されていた。それを土壇場でAmazonがひっくり返すことに成功したとは驚きだ。

Googleが まだ非常に若いメディア企業を欲しがった理由は明白だ。Twitchは若い男性層への浸透で他の追随を許さない急成長を続けているからだ。 GoogleがYouTubeに加えて、このユーザー層も広告主に提供したがることは理解しやすい。

それに対してAmazonがTwitchを狙ったことはやや意外だった。Amazonも有料のプライム・サービス向けにコンテンツの充実を急いでいる。しかしTwitchは広告を収入源とする完全無料のサービスで、Googleの方がビジネスモデル上の相性がよいはずだった。むろんAmazonもコンテンツの充実によって大いに益するところはあるだろうが、相乗効果としては疑問が残るところだ。

Twitchはライフログビデオのパイオニア、Justin.tvからのスピンオフだったが、ファウンダーたちはTwitchに専念するために最近Justin.tvを閉鎖した

これまでTwitchはBessemer Venture Partners、Alsop Louie Partners、WestSummit Capital、Take-Two Interactive Software、Draper Associates、Thrive Capitalから3500万ドルを調達している。

Twitchの共同ファウンダー、Emmett Shearは来月サンフランシスコで開催されるTechCrunch Disrupt参加予定だ。そのときにさらに詳しい話が聞けるものと期待している。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+


縁の下の力持ちでいい–DeNA原田氏が描くベンチャー投資戦略

ソーシャルゲームのプラットフォーマーとして君臨していたディー・エヌ・エー(DeNA)。2013年3月期までは好調な売上を達成した同社だが、直近の決算発表ではゲーム事業の売上減が続いている。だがそれを甘んじて受け入れる同社ではない。急ピッチでゲームの次の柱となる事業を模索している。8月6日の決算でも、新事業や投資についての説明があった。

同社では遺伝子検査の「MYCODE」や電子コミックの「マンガボックス」、動画ストリーミングの「SHOWROOM」といった事業を展開。また一方では、事業シナジーを狙ったベンチャー投資にも積極的な姿勢を見せている。2014年1月には社内に戦略投資推進室を設置。その動きをさらに加速させている。

DeNAのコーポレートサイトで開示しているのはゲーム動画共有プラットフォームを手がける米Kamcordやカップル向けアプリ「Between」を開発する韓国VCNCだけだが、クラウドソーシングサービス「Any+Times」のエニタイムズ、中高生向けIT教育のライフイズテック、駐車場の持ち主と一時利用者のマッチングサービス「あきっぱ」を手がけるギャラクシーエージェンシー、鮮魚流通サービス「八面六臂」の八面六臂、バイラルメディア「CuRAZY」のLAUGH TECHなどさまざまなスタートアップに出資しているのが分かる。

同社の投資事業について、元ミクシィ取締役であり現在DeNA戦略投資推進室 室長を務める原田明典氏に聞いた。

–改めてDeNAの投資スタンスを教えて下さい。

原田氏(以下敬省略):戦略投資なので、事業シナジーがベースになります。ですがDeNAもある意味ではまだまだベンチャー。次のコアとなる新事業を作り続けています。

そのため、戦略投資といってもゲーム事業とのシナジーだけを考えてやるわけではありません。ヘルスケアやマンガなどの領域でも投資をやっていきます。基本的には「ネットかつコンシューマー向けのモノ全部」です。マイナー投資をやる場合もあれば、マジョリティーを取る場合もあります。ケースバイケースです。

立ち上げをサポートするような投資もやりますし、ユーザー規模がある程度大きくなって、DeNAでサポートできることが見えてきたものにも投資します。VCNCやKamcordのように、すでに比較的ユーザーも多くなっているサービスのビジネスをどう成長させるかということも支援しています。

DeNAでは自社でもさまざまな分野の新事業を手がけています。そこ(新事業の方針)に乗っ取ったサービスであればM&Aもあり得ると思っています。ただし、M&Aに関しては、戦略投資推進室を設置した1月からの実績は今のところありません。

–投資する事業領域についてはどうお考えですか。

原田:内部的にはいろいろと(目標を)持っているのですが、詳細は社外に公表していません。大きくはプラットフォームやコミュニケーション、リアル産業変革という領域になります。

こう言ってしまうと「何でもアリ」というように聞こえてしまうかも知れませんが、モバイルやスマートフォンの登場によってチェンジするもの、FacebookやTwitterなどソーシャルメディアの普及後だからこそ成立するバリューに投資したいと考えています。

例えばPinterestやInstagramといった画像SNSはまだ日本ではそこまで普及していません。ここで海外で流行しているのと同様のサービスを持ってきてもはやりません。スマートフォンがはやっていないときにメッセージングサービスを持ってきても成功は難しい。環境の変化を見て、今から旬になるものを考えています。それで今の旬が何かというのは今は話せないのですが。

–ポートフォリオは一部しか公開していません。これまでの投資件数や投資額について教えて下さい。

原田:契約、入金前の段階の会社も含めて国内外で20〜30社というところです。ほぼ毎週ペースで投資の意思決定を実施しています。投資先が公開せず、DeNAの業績への影響が軽微なものについては、ステルスで(発表せずに)投資しています。前述の通り規模感はいろいろあるので、小さい金額であれば数カ月のデューデリジェンスをして……というのではなく、素早く関係構築するようにしています。投資額はアーリーステージで1000万円程度からです。大きい案件になると当然交渉もありますので、今後に期待頂ければと思います。

ベンチャー投資で重要なのは起業家のマインドです。我々は事業とチームの相性がよければ投資したいと思いますが、一方で投資を受ける側がファイナンスについてどう考えているかというとさまざまなケースがあります。投資についても今日明日で考え方が変わることがあります。なので先方の状況に合わせていかに対応できるか、柔軟さを維持できるようにしています。M&Aも同じです。ジャンルによってはスタートアップとしてやるより、(M&Aして)マスプロモーションやマーケティングで勝負する方がいいこともあります。

最近はスタートアップがマスに出て勝負するまでのリードタイムが短くなっている傾向にありますし、そういうところでバトンタッチ先を探している場合もあります。DeNAには社内のリソースもありますし、グロースステージの支援をするのは得意です。

–投資先がVCではなくDeNAに資金を求める理由をどうお考えですか。

原田:海外のプレーヤーは分かりやすいですね。彼らは日本やアジアに参入したいというニーズがあります。先日もKamcordは国内でゲームデベロッパー向けに勉強会を開催しましたが、資料1つとっても(自分たちだけで)日本向けに作るのは難しい。またBetweenのVCNCも国内のマーケットを分からないところがありました。例えばデザイン1つとっても、韓国は「かわいい系」でシリコンバレーは「クール系」が主流。日本はその中間といった国ごとのトーンがあります。そこでUIやデザインのトーンをチューニングするお手伝いなどもしています。

自社の新事業であるマンガボックスやMYCODEは、初期投資も大きく、スタートアップとは違う戦い方をしています。同様にこれまでプロダクトで勝負してきて、(マーケティングなどで)ぐっとスケールするときにお声がけ頂けると我々も支援しやすいと思っています。

一方で「これから起業する」という方もいます。そういう場合、インキュベイトファンドや川田さん(DeNA創業者の川田尚吾氏でエンジェル投資家)などのインキュベーターを紹介して、共同で投資することが多いです。例えばですが、創業期のオフィスを選ぶ場合であっても、「渋谷駅から南東50mくらい、築30年の物件の坪単価」といった具体的な情報を彼らは理解してています。

キャリアなんかもグロースステージの支援をすると言っていますが、私もキャリアに居た経験から(筆者注:原田氏はNTTの出身だ)すると、ネットベンチャーに対してキャリアができることは限られてきています。2005年頃にはもう公式サイトからのリンク、i-modeの規制緩和といったことしかできなくなっていました。あとはいかに料金を下げるかでしょうか。キャリアが手伝えることは世界的に減ってきています。なので、こういう(DeNAのような)クラスのネット企業が支援すれば、かつてのキャリアのように貢献できることがあるのではないでしょうか。

また、どれだけ「縁の下(の力持ち)」になるかがポイントになると思っています。DeNAが投資することがマイナスにならないように考えて、あまり前に出ないようにしています。例ですが、(ジャニーズ事務所の創業者である)ジャニー喜多川さんなどはメディアには出ず、徹底してタレントを輝かせていますよね。私も表に出てパフォーマンスをするのは違うと思っていますし、得意ではありません。

タレントプロダクションの話をしたので続けますが、実はプロダクションに学ぶことはいろいろあります。例えば楽曲提供1つとっても「このチームだからこのプロダクトだった」ということをよく考えていますよね。Snapchatだってスタンフォードの学生がやっていなければここまではやらなかったのではないでしょうか。私が「週末起業で作りました」といって提供していたら、「サラリーマンのチャットなんて使いたくない」となっていたかも知れません。どういうタレントがどういう事業をやるかを考えるのは重要ですよね。

–DeNAではどういう起業家やチームを求めているのでしょうか。

原田:人と事業との組み合わせで投資をします。日本にない事業、フロンティアタイプの事業であれば、右脳的なセンスというか直感的なセンスが必要で、エグゼキューション(実行、実現)力はその次です。

一方でそこそこ市場が見えていて、フォロワー戦略でも勝てる、実行力勝負をするという場合、エグゼキューション力が大事になります。そうなるとリードしている人と事業の相性、事業のフェーズというところを見ます。

例えばGunosyの木村さん(木村新司氏)やFablicの堀井さん(堀井翔太氏)、笠原さん(ミクシィ創業者の笠原健治氏)などもそうですし、DeNAの投資先で言うとVCNCのジェウク(パク・ジェウク氏)は学習力と実行力があります。プロダクトファーストではありますが、カカオトークなど競合サービスからもよく学習しています。このあとはマーケティング勝負です。スタートアップにはプロダクト勝負でいけるフェーズと、(競合が追いついてきて)プロダクト勝負ではなくマーケティング勝負になるフェーズがあります。ここで彼らがギアチェンジできれば、チームとして面白くなるでしょう。

–投資している地域について教えて下さい。

原田:(日本のほかは)ベイエリアが中心になります。USでの投資には、リサーチの目的もあります。単純にグロースしている会社をM&Aすると1、2ビリオンドルになるので、“ヘビー級の勝負”をするのはこれからですね。

米国を担当するのは、元カカクコムの安田(安田幹広氏)です。実は守安(DeNA代表取締役社長の守安功氏)と安田と私の元COOトリオで投資事業をやっています(筆者注:守安氏はDeNA、安田氏はカカクコム、原田氏はミクシィでそれぞれCOOを務めていた時期があった)。投資対象としては、自分たちで作れない、かなわないというようなサービスを見ています。安田はコマースが得意ですし、ソーシャルであれば僕、ゲームだと守安というように分担しています。

–投資は別として、原田さんが一番興味を持っているテーマを教えて下さい。

原田:シェア、シェアリングエコノミーです。地球の資源は有限で、それをなるべく共有化するものが一番興味あります。

コミュニケーションサービスをやっている中でシェアという概念に出会いました。ITよりもっとリアルな——既存の産業の中で——共有によって変わっていくものごとに興味を持っています。

最近ではIoTというテーマもよく挙がりますが、私は(世の中と)少し考えが違っていて、「いかにモノを最小化にとどめるか」ということこそがIoTなのだと思っています。専用機を増やすのではなくて、「これだけ最低限あればいいよね」というものを提供するということです。

IoTのバックボーンにIoL(Internet of Legacy)という考えがあると思っています。レガシー産業の専用機なんかもう必要ないのではないでしょうか。例えば駐車場で(発券したり、車をロックするような)専用機は必要ありません。投資先のあきっぱのようなサービスがあればいいでしょう。リクルートやSquareが手がけるレジサービスもPOSや専用機を必要としません。彼らはハードウェアをミニマイズしています。


スマートニュースがグリー、Atomico、ミクシィなどから約36億円の資金調達

ニュースリーダーアプリ「SmartNews」を手がけるスマートニュースは8月8日、グリー、外資系ベンチャーキャピタルのAtomicoをリードインベスターとした総額約36億円の資金調達を実施したことを明らかにした。出資比率などは非公開。引受先はグリーとAtomicoのほか、ミクシィ、グロービス・キャピタル・パートナーズ、エンジェル投資家のWilliam Lohse氏(米Ziff-Davis Publishing元President)、川田尚吾氏(ディー・エヌ・エー共同創業者)、その他となっている。

ニュースリーダーアプリと言えば、「Gunosy」を提供するグノシーが、直近(3月、6月)にKDDIなどから合計24億円の資金調達を実施したことを明らかにしており、テレビCMを含めた大々的なマーケティングを展開。テレビCMによると、現在450万ダウンロードを突破しているという。またグライダーアソシエイツの「Antenna」もテレビCMや交通広告を展開している。それ以外にも、LINEの「LINE NEWS」やユーザベースの「NewsPicks」、JX通信社の「Vingow」などさまざまなサービスが提供されており、その覇権争いも激化している。

スマートニュースも7月末に400万ダウンロードという実績を発表しており、8月からはテレビCMを展開している。広告代理店関係者から6月に「資金調達すればすぐにもテレビCMを作成することになるだろう」といった話を聞いていたし、7月には複数の関係者から「すでに一部の資金が着金して、テレビCMの制作に入った」という噂も聞くことがあった。スマートニュースはバリュエーション(評価額)を公開していないが、200億円超のバリュエーションで資金調達を進めていたとの噂もある。

AtomicoはSkype創業者であるニクラス・ゼンストロームが手がけるベンチャーキャピタル。日本拠点では、元Skype日本代表の岩田真一氏が投資や投資先のビジネスマッチングなどを手がけている。ソフトバンクとガンホー・オンライン・エンターテイメントによるフィンランドのゲーム開発会社Supercellの買収のアレンジなども手がけている。この出資をきっかけに世界進出を進める。またグリーとはゲーム等の事業で、ミクシィとはネイティブ広告ネットワーク分野での業務提携を行うとしている。かつては国産SNSの競合とも言われたグリーとミクシィが1社に出資するのは、芸者東京エンターテインメント以来となるはずだ。

なお、スマートニュース創業メンバーであり、取締役を務めていた鈴木健氏が6月18日付けで共同代表に就任している。TechCrunchではこのあと鈴木氏らスマートニュースのメンバーに取材をする予定だ。


クラウドワークスがリクルートを割当先とした第三者割当増資–理由は資金ニーズより事業シナジー

クラウドソーシングサービス「クラウドワークス」を運営するクラウドワークスは8月8日、リクルートホールディングスの投資子会社である合同会社RSPファンド5号を割当先とする第三者割当増資を実施した。金額は非公開だが、数千万円程度と見られる。

同社はこれまでサイバーエージェント、電通といった事業会社のほか、ベンチャーキャピタルなどから約14億円を調達している。今回の調達は資金ニーズありきの資金調達というよりは、事業シナジーを狙ったもののようだ。

クラウドワークスは2014年7月までに会員登録数19万8000人。累計約3万6000社が発注。登録された仕事の予算総額は142億5000万円を突破。月間契約額も増加しているという。

クラウドワークス代表取締役社長の吉田浩一郎氏によると、今回の増資を契機にリクルートグループ全体でのクラウドワークスの利用を促していくという。あわせて、クラウドソーシングを活用したリクルートグループの新規事業も検討する予定だ。

ところでリクルートグループと言えば、2013年にオーストラリアのクラウドソーシングサービス「Freelancer.com」のM&Aに関する話題があった。今回の資金調達をきっかけにクラウドワークスがリクルートへのバイアウトを狙っているか吉田氏に尋ねたところ、「原則はIPOを目指す。ただし、リクルートとのシナジーを考えると、資本提携の比率を増やすといった選択肢は考えられる。だが100%のM&Aについては現段階ではあり得ない」ということだった。


カード決済のSquareが出前サービスのCaviarを9000万ドル前後で買収

今日(米国時間8/4)、Squareはフード・デリバリー・サービスのCaviarを買収したことを確認した。以前から両社が交渉中であるという情報が流れていた。

われわれは先月、SquareがCaviarを1億ドルで買収交渉中という記事を掲載した。Re/CodeNew York Timesも今週、買収が実現するだろうと報じたが、買収価格は株式で9000万ドルだとしている。

TechCruchはSquareとCaviarに問い合わせを行ったが両社とも「契約の詳細については発表できない」と回答してきた。

Caviarは最近増えているオンラインで食事を配達してもらえるサービスのスタートアップの一つだ。 多くの出前サービスがすでに出前を行っているレストランを対象としているのに対し、Caviarは独自の配達ネットワークを用意して、まだ出前を行っていないレストランを対象としているのが特色だ。今回の買収で、Caviarは今年に入ってSquareが開始した食事の注文サービス、Square Orderと連携し、これに出前機能を追加することになるだろう。

Square Orderは料理を持ち帰り用に注文するアプリだ。Squareでは当然ながら注文と配達のギャップを埋める方策を探していたはずで、独自の配達インフラを持つCaviarは格好の相手だった。

Caviarはこの4月に1300万ドルの資金調達ラウンドを実施したばかりだから、大いにスピーディーなエグジットとなった。最近、ベンチャーキャピタルはフード・デリバリーに多大の投資を行っていることが注目される。

この数ヶ月でMuncheryが2800万ドル、Postmatesが1600万ドルSpoonRocketSprigがそれぞれ1000万ドルの資金を集めており、フード・デリバリー業界の競争は激しさを増している。Caviarがいち早くSquareの傘下に入ることを選んだのは賢明かもしれない。

[原文へ]

(翻訳:滑川海彦 Facebook Google+


中高生向けIT教育のライフイズテックが3.1億円を調達–リクルートやDeNA、キッザニアとの協業も

中高生向けのプログラミングキャンプ「Life is Tech!」を展開するライフイズテックが8月4日、総額約3.1億円の資金調達を実施したことをあきらかにした。引受先はジャフコやEast Ventures、Mistletoe(孫泰蔵氏の投資会社)といったベンチャーキャピタルや個人投資家のほか、キッザニアを運営するKCJ GROUPやディー・エヌ・エー、リクルートホールディングスといった事業会社が名を連ねる。

Life is Tech!は、春休みや夏休みの3〜8日間を利用した短期集中型の「キャンプ」、1年間毎週通学して学ぶ「スクール」、インターネットを通して学ぶ「オンライン」の3つの形態で、スマートフォンアプリの開発や動画制作などを学ぶプログラムを運営している。これまでの5000人の中高生がプログラムに参加しており、今夏のプログラムにも約1300人が参加する予定。ちなみに参加者の約8割がパソコンやスマートフォンをほとんど触ったことがない初心者なのだそう。また全体の約4割がリピートして再びプログラムに参加するという。そしてさらに驚くのは、すでにここから2人の学生起業家が生まれているということだ(もちろん実績としてはこれからだけれども)。

同社はこれまでにサイバーエージェントから出資を受けており、小学生向けプログラミング教育事業を展開するジョイントベンチャーのCA Tech Kids社も2013年5月に共同で設立している。

日本のIT教育を全部やっていきたい

ライフイズテック代表取締役社長の水野雄介氏

これまでもLife is Tech!や受託でのプログラミング教育イベントの運営などを展開してきたライフイズテックだが、代表取締役社長の水野雄介氏は、「Life is Techだけでなく、日本のIT教育を全部やっていきたいと思った」と調達の意図について語る。同社が今回の調達で重視したのは協業。そのため、引受先にはVCに加えて複数の事業会社の名が連なる。KCJ GROUPとは、中高生向けのアントレプレナーシップ教育プログラムを展開する予定であるほか、DeNAやリクルートでもそれぞれ新事業について検討中だという。

協業に加えて、オンライン教育の強化やグローバル展開(すでにシンガポールで一度Life is Tech!を開催しているそうで、10月には現地法人を設立する)、学習管理システムの開発および販売なども進める。また、「Life is Tech! Stars」と題して、プログラム卒業生の起業家やAO入試合格者などを紹介しているのだが、将来的には卒業生への投資を含めた支援を検討しているという。「ITの世界でヒーローを生み出す仕組みを作りたい」(水野氏)。「IT教育全部」と聞くと最初はちょっと大げさとも思ったのだけれど、すでに東南アジアではすでにプログラム開催の打診を複数受けていたり、ニーズは明確に感じているそうだ。

ちなみに水野氏、慶応義塾大学大学院在学中に、2年間高校の物理非常勤講師を勤めたのち、人材コンサルティングに務めていた経験を持つ。学校教育から抜け出して、自身で教育のあり方を模索する中でLife is Tech!のプログラムにたどり着いたそうだ。

スタッフ育成、紹介も事業の柱に

実は今回の取材は、Life is Techのプログラムが開催されていた東京大学の中で行っている。そのため水野氏に話を聞く前に、プログラムの様子を見ていたのだけれど、これが非常に活気があるものだった。ある中学1年生の男の子は、前回「席替え」のためのくじ引きアプリを作っていたそうだが、現在はサーバサイドと連携した、ノートや写真の共有アプリを作っていた。もちろん今すぐこのアプリがヒットするかどうかは別の話だが、ここまで手がけられるものかと驚かされた。

また、プログラムでは4〜5人の中学生に対して1人の大学生がスタッフとして付いて指導を行っていたのだけれど、すでにこのスタッフの競争率は3倍(年間100人ほど採用するとのこと)になっているのだそうだ。そしてスタッフに採用されると60時間の研修を受ける必要があるとのことで、クオリティ管理には徹底している。そのためスタッフの学生に興味を持つ企業も多く、新卒としてスタッフの大学生を企業に紹介するといったケースもあるという。