酵素ベースの独自技術でプラスチック汚染の終結を目指す豪Samsara Eco

世界中で使用されるプラスチックの量は、2040年までに倍増すると予想されている。そのほとんどが廃棄される際には埋立地に送られ、リサイクルされるのはわずか13%に過ぎない。CIEL(国際環境法センター)によると、プラスチックの生産と焼却は、2050年まで毎年2.8ギガトンの二酸化炭素を発生させる可能性があるという。

世界的なプラスチック汚染をなくすために、オーストラリアの環境技術スタートアップ企業であるSamsara Eco(サムサラ・エコ)は、プラスチック(ポリマー)を分解して、その分子構成要素(モノマー)に分解する酵素ベースの技術を開発した。この技術を活用すれば、再び(何度も)新品のプラスチックに作り直したり、より価値のある商品にアップサイクルすることが可能になるとSamsara Ecoの創業者でCEOのPaul Riley(ポール・ライリー)氏は語る。

Samsaraの技術によって、プラスチックはもはや化石燃料や植物(どちらも環境に大きな影響を与える)から作られる必要はなくなり、埋立地や海に行き着くこともなくなると、ライリー氏はいう。

「この研究の動機となったのは、環境、特に炭素排出とプラスチック廃棄物に関する懸念と、我々の酵素工学に対する愛着です。これを製造技術に適用することで、地球規模の問題を解決し、システムを変え、真の循環経済を生み出すことができます」と、ライリー氏はインタビューで語っている。

今回、600万ドル(約7億3000万円)の資金を調達したSamsaraは、2022年末に最初のリサイクル工場を建設し、2023年に本格的な生産を開始する予定だ。

同社の投資家には、Clean Energy Finance Corporation(クリーン・エナジー・ファイナンス・コーポレーション)や、シドニーに拠点を置くスーパーマーケット大手Woolworths(ウールワース)のベンチャーキャピタルファンドで以前から出資していたW23、そしてMain Sequence(メイン・シーケンス)が含まれる。

「このプロセスでプラスチック1トンをリサイクルするごとに、推定3トンの二酸化炭素排出量が削減されることになります」と、ライリー氏は語っている。

酵素を使ってプラスチックを分解する企業は他にも世界中にあるが、Samsaraは異なるプロセスと酵素を使っていると主張する。ライリー氏の説明によると、他のほとんどの酵素プロセスは12時間以上かかるのに対し、同社は1時間でプラスチックの完全な解重合を行うことができるという。

「現在のリサイクルの方法は、単純に非効率的で、私たちが現在直面しているプラスチック汚染の危機に対応するには不十分です」と、ライリー氏は声明で述べている。「新しいプラスチックを作るために化石燃料を採掘したり、実際にリサイクルされるのは9%だけという現在のリサイクル方法に頼るのではなく、私たちはすでに存在するプラスチックを、無限にリサイクルすることができるのです」。

他の代替リサイクルソリューションとは異なり、Samsaraのプロセスは室温で行われ、真にカーボンニュートラルで、持続可能な方法で運用されていると、ライリー氏は同社の声明で述べている。

ライリー氏がTechCrunchに語ったところによると、Samsaraはさらなる資金調達も視野に入れており、年間2万トンの廃棄プラスチックをリサイクルする最初の商業規模の生産を行うために、2022年後半にはオーストラリアや海外の投資家から約5000万ドル(約6億1000万円)の資金を調達することを目指しているという。

Samsaraの潜在的な顧客は、小売業者、FMCG(Fast-Moving Consumer、日用消費財)ブランド、リサイクル業者など、基本的にプラスチックに関わるすべての人であると、ライリー氏は述べている。

同社はWoolworthsグループと提携しており、Samsaraが最初にリサイクルする5000トンの再生プラスチックを、Woolworthsは自社ブランド商品のパッケージに使用すると約束し、2022年末までにその在庫を確保することを目指している。さらにSamsaraは、Tennis Australia(テニス・オーストラリア)とも提携し、全豪オープンで使用されたペットボトル5000本をリサイクルすることになっている。

2021年に設立されたこのスタートアップ企業は、科学者やエンジニア、そしてキャンベラにあるオーストラリア国立大学の研究者を中心に、13人のチームで構成されている。

「私たちの長期的なビジョンは、当社の技術力を拡張して、ポリエステルやナイロンでできた衣服のような他の石油由来のプラスチック製品を無限にリサイクルし、二度と化石燃料を使用して新しいプラスチックを作らないようにすることです」とライリー氏は語る。

画像クレジット:Samsara Eco

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(文:Kate Park、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

ハイパースペクトルイメージングで鉱石を現場で見分けるPlotlogicが約21.8億円調達

鉱業は今ある産業の中で最古の産業に属するが、需要の増大とともにハイテク化が進んでいる。Plotlogicは、ハイパースペクトルイメージングと呼ばれる、実験室や人工衛星でよく使われている技術を使って、重要だが古めかしい仕事に新しいデータ層と自動化をもたらす。

ハイパースペクトルイメージングは、基本的に可視域外の光を捉える写真で、人間の目には同じように見える物質を識別できる。他のほとんどのものと同様、「自然」が最初に到達した。鳥や昆虫は、私たちが見ることのできない波長を見ることができ、それが彼らの世界全体の見方を変える。

ハイパースペクトルはは結局、分光分析の一種で、放射線を物体に当てて、その反射や吸収を見るものだ。皮膚、セメント、レアアースなど、あらゆる物質にはそれぞれ固有のスペクトルがある。Plotlogicが目指しているのは、明らかに後者のカテゴリーだ。

2018年にオーストラリアのブリスベーンで創業したPlotlogicは、多重スペクトル+LiDAR画像という組み合わせで、山積みになった大量の鉱山の砕石から「リチウムが少々ある、銀も少しある、硫黄もややある」などという(これらが同じ砕石の山にあることは、実際にはないだろうが)。

もちろん、鉱山ではこんな分析を以前から何らかの方法で行っているはずだ。そうでなければ、精錬場へ行くトラックと廃棄場へ行くトラックを見分けられない。しかしそのような分析は通常、ラボにサンプルを送って、そこでスペクトル分析を行ってもらう方法だ。しかしPlotlogicは、この重要な分析を現場で行い、効率化する。

鉱石サンプルをスキャンする定置型OreSenseと、そのサンプルの分析例(画像クレジット:Plotlogic)

CEOで創業者のAndrew Job(アンドリュー・ジョブ)氏によると「分析を採掘工程と一体化して、現場のスタッフがリアルタイムの情報でやる気になることが、本当のイノベーション」という。

同社がこのOreSenseと呼ばれるマシンを開発したのは2019年で、それ以降、現場で何度も使われ、主な鉱山企業からのフィードバックも得た。可動方式と据え付け型の両方で使うことができ、スキャンを採掘現場でも、あるいはどこかに砕石を集めてからでもできる。踏み板を使うバージョンは、人が安全に行けない場所にも行ける。

そのシステムは鉱業の既存の工程と合うように設計されているため、鉱石の掘り出し方を従来のものから変える必要はない。ジョブ氏によると、変更が必要な場合は効率アップで正当化されるという。

Plotlogicの創設者でCEOであるアンドリュー・ジョブ氏(画像クレジット:Sarah Keayes/The Photo Pitch)

「経済的なメリット、環境維持のメリット、安全性のメリットの3つがあると考えています」とジョブ氏はいう。「より多くの鉱石を処理し、廃棄物を減らすことができるため、より収益性が高くなります。より正確に、より多くの岩石をその場に残し、燃料や温室効果ガスを廃棄物の移動に費やさないようにすることができるのです。そして、それは鉱山での人間の被曝時間も減らします」。

肺が黒くなる鉱山での病は過去のものかもしれないが、それでも鉱業は今なお、基本的に困難で危険な仕事だ。重機の側にいたり、閉鎖空間内にいたり、粉塵が充満した空間にいることは少ない方が良い。信頼性の高い情報豊富な画像が得られれば、鉱業の自動化も近くなるとジョブ氏はいう。

1800万ドル(約21億8000万円)のシリーズAは、Innovation EndeavorsがリードしBHP VenturesとTouchdown Venturesが参加した。どちらも、大手鉱業グループのベンチャー部門だ。さらに、DCVCとBaidu VenturesとGrids Venturesも参加。資金は、商用展開の拡張と国際化努力の開始に充てられるという。

画像クレジット:Plotlogic

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Hiroshi Iwatani)

AlphabetのドローンサービスWingが配達件数20万件を達成、豪スーパーマーケットColesとの提携を発表

Alphabet(アルファベット)のドローンサービスWing(ウイング)は米国時間3月1日、新しいマイルストーンとなる商業配送件数20万回を達成したと発表した。この数字は、試験飛行を除いたものであり、10万回を達成してから半年後の達成となる。オーストラリアが、テストおよび商用展開の主要市場であり、2022年1〜2月の配達回数は3万回となった。

関連記事:ドローン配達のWingがサービス開始から2年で10万回の配達を達成、豪パイロットサービスで

さらに細かくいうなら、1日に1000回以上、25秒に1回の割合で配達が行われたことになるとWingはいう。この大きな節目の数字は、オーストラリアの大手スーパーマーケットチェーンであるColes(コールス)との業務提携発表とともにやってきた。この契約により、Wingはオーストラリアの首都キャンベラで、食品からヘルスケア製品、トイレタリー製品に至る250種類の商品を配達することになる。

その他にも、KFCやRoll’d(ロールド)のベトナム料理、Friendly Grocer(フレンドリーグローサー)の新型コロナウイルス(COVID-19)迅速検査、St. John Ambulance QLD(聖ジョン・アンビュランスQLD)の応急処置キットなどが最近宅配サービスに加わった。大きな数字はともかく、都市部でのドローン配送の有効性には疑問符がついたままだ。多くのサービスは、未来のラストワンマイル配送の手段として、地上型ロボットに一段と積極的に注目している。

このテクノロジーは田舎や到達しにくい場所にとっては意味がある。しかし、Wing自身は、そのアプローチは都市生活にも適しているのだと主張する。

Google(グーグル)は米国時間3月1日のブログ記事の中で「ドローンによる配達を日常生活に取り入れることは、単なる利便性の追加にはとどまりません」と述べている。「交通渋滞や事故、温室効果ガスの排出量を削減すると同時に、企業の売り上げを伸ばし、忙しい日々の生活に余裕を取り戻すこともお約束します。そんな未来を覗きたいなら、オーストラリアをご覧ください」。

一方、Amazonの競合サービスであるPrime Air(プライム・エア)は、パンデミック中にレイオフを余儀なくされ、この配送方法の実行可能性に疑問を残している。

画像クレジット:Wing

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(文:Brian Heater、翻訳:sako)

Dovetail、顧客調査に特化したソフトウェア事業の拡大に向けて71.6億円調達

オーストラリアの顧客調査ソフトウェア企業であるDovetail(ダブテイル)は、Accel(アクセル)が主導する6300万ドル(約71億6000万円)のシリーズAラウンドを完了したと発表した。これにより、同社は総額7000万ドル(約80億円)強の資金を調達したことになり、同社が「7億ドル(約797億円)以上」とする評価額に新たな資金を加えたことになる。

この数字からもわかるように、これは一般的なシリーズAではなく、Accelによる、いわばレイターステージ(後期段階)の投資である。Accelはこれまでも、資金調達額が少なく、自己資金で運営していたテクノロジー企業が成長して大きな収益を上げるまで、大規模な投資を行ってきた

通常のシリーズAとは異なる今回のDovetailのラウンドについて、ここでは同社の初期の歴史と、同社が作っているものから説明する。

ゼロからの起業であったDovetail

TechCrunchは、Dovetailの共同創業者でCEOであるBenjamin Humphrey(ベンジャミン・ハンフリー)氏に、今回の増資について、会社の創業当初にさかのぼって話を聞いた。ニュージーランド出身のハンフリー氏は、ベイエリアのテクノロジー企業で勤務した後、オーストラリアのAtlassian(アトラシアン)に入社して数年間在籍。その後、ベンチャーキャピタルに頼らずにDovetailを共同創業した同氏は、Buffer(バッファ)やBasecamp(ベースキャンプ)といった有名なテクノロジー企業のように、自己資金で会社を成長させていくことを計画したという。

ニッチに聞こえるかもしれない顧客調査市場向けのソフトウェア開発だが、Dovetailは創業当初から十分な支持を得て、チームを6人に拡大し、年間約50万ドル(約7000万円)の売上を自力で達成するまでに成長した。その時点でベンチャー投資家からのアプローチがあり、2019年に約500万豪ドル(約4億円)というごく小さなラウンドを完了した、と同氏は話す。

そのラウンドに参加したFelicis Ventures(フェリシスベンチャーズ)は、2020年末に向けてさらに資本を投入したいと考えていたという。ハンフリー氏によれば、資金は十分だったので、市場でのポジションを示すために1億ドル(約114億円)を超える評価額で1回目のシードラウンドを完了した(教訓:資金調達に関しては、利益を上げて成長していることが真に「おいしい」スタートアップである)。

現在もこの調子である。新しい投資家であるAccelのRich Wong(リッチ・ウォン)氏とArun Mathew(アルン・マシュー)氏によると、DovetailはAccelが投資する機会を得るまで、調達した資金総額の半分しか使っていなかったという。

市場に「ソフトウェア企業は資金を消費せずに成長できる」という傾向はない。つまり、Dovetailが作っているものを買いたいという顧客がすでに存在したということである。

Dovetailが販売しているもの

前述のAccelの2人は、Dovetailが構築しているものを「顧客調査のための記録システム」という新しいカテゴリーで表現する。

ハンフリー氏はもっと平凡な言葉で、自社の製品を「リサーチャーのための生産性向上ツール」と称し、エンジニアにはGitHubがあり、デザイナーにはFigmaがあるが、顧客のリサーチャーには独自のソフトウェアが必要だと指摘する。同氏はさらに、シリコンバレーやもっと規模の大きいスタートアップ企業は、R&Dの「開発」部分のツール開発には力を入れてきたが「研究」部分はそうではなかった、と付け加えた。

Dovetailの製品は、NPS(ネットプロモータースコア)調査、音声、動画、テキストの回答からユーザーのフィードバックデータを収集し、それをチームでタグ付けして機械で分析し、組織全体で共有することができるソフトウェアである。ハンフリー氏によると、顧客に関する組織的な知識を蓄積し、より迅速な意思決定を行えるようにするための企業向けのリレーショナルデータベースを構築することが目標だ。

例えば、プロダクトマネージャー(PM)が会社を辞めると、彼らと同時にかなりの量の知識がなくなってしまう。新しいPMは知識がないので、仕事を回すために会社中を質問して回らなければならない。Dovetailの製品を使えば、調査から得たデータや知識を永続的に保存して利用することができる。

成長

筆者はDovetailの活動について学んでいる最中なので、同社が顧客調査ソフトウェア市場を開拓していく中で、より多くのことが達成されることを期待している。現段階でいえることは、Dovetailは雑草のように成長しているということだろうか。ハンフリー氏によると、同社は2021年、収益と顧客数を3倍にしたという。すべてセルフサービスで、数カ月前に初めてアカウントエグゼクティブを採用した企業が、である。まさしく製品が主導する成長だ。

製品主導の成長とは、実際のサービスや商品が顧客を引き寄せるという考え方で、本質的にはプロダクトマーケットフィット(PMF、顧客を満足させることのできる製品が適切な市場で受け入れられている状態)の概念を再構築したものである(あるいはPMFの本来の意味をさらに純粋にしたものかもしれない)。いずれにしても、投資家によれば、Dovetailはまだ創業からそれほど時間が経っていないにもかかわらず、2022年も前年と同じ成長率を達成するか、少なくともそれに近くなるという。同社はすでにユニコーンに近い存在なのだ。

ハンフリー氏自らが、今後数カ月間に新たな資本のニュースを教えてくれることはないだろう。2022年の後半に同社の成長について彼を質問攻めにしようと思う。

画像クレジット:Vladyslav Bobuskyi / Getty Images

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(文:Alex Wilhelm、翻訳:Dragonfly)

その企業にとって価値の高いユーザーフローをノーコードで作れる豪Upflowyが約4.6億円調達

新型コロナウイスルによるパンデミックが消費者の行動と購入パターンに影響を与え、この不確実性の時代にはデータドリブンな意思決定が、プロダクトやサービスがユーザーにとって本当に利益になるために重要になってきた。UpflowのCEOであるGuillaume Ang(ギヨーム・アン)氏によると、その上でオンラインのトランザクションを行えるSaaSプロダクトの需要が激増しているという。

Upflowyには、企業が価値の高いユーザーフローを作り出すためのツールがある、と同社は考えている。このオーストラリアのスタートアップは、最近400万ドル(約4億6000万円)を調達したばかりで、ドラッグ&ドロップでA/Bテストができるツールや、企業は利用に際してコーディングを一切行わなくていいウェブやモバイル上の個人化ツールを提供ししている。上記最新の投資はCounterpart Venturesがリードし、これまでの投資家であるTidalやGlobal Founders Capital、Black Nova、およびAntlerが参加した。

ウェブサイトやアプリ上で売上に結びつくサインアップを獲得するためには相当な時間と費用を要し、そのために多くの企業が苦労している、とアン氏は語る。起業家やマーケター、そして特にスタートアップがコンバージョン率とユーザーフローを上げるために、アン氏と2人の共同創業者Matthew Browne(マシュー・ブラウン)氏とAlexandre Girard(アレクサンドル・ジラール)氏は2020年にUpflowyを創業した。同社によると、これまでの企業は、開発チームや技術者チームに頼んでプロダクトを改良することに追われ、マーケティングに力を入れることがお留守になっていたという。

Upflowyの創業者。左からCTOのアレクサンドル・ジラール氏、CIOのマシュー・ブラウン氏、CEOのギヨーム・アン氏。

新たな資金の大部分は、予測的個人化など、主にデータサイエンス方面の能力拡大や新機能の開発に充てたいとのこと。さらにまた、人員を増やし、フルタイムの社員を30人以上にしたいという。

「エンゲージメントの貧しいフォームがコンバージョン率を60%も下げ、広告費の大きな無駄遣いになってることに気がつけば、そこから上昇が始まる。それが、最初のステップです。ユーザーの見込み客としての選別をもっと効果的に行っていけば、勧める製品や個人化もより適切になり、見込み客が購入客になります(コンバージョンする)。Upflowのデータ視覚化とA/Bテストを利用すれば、客離れのような行動がどこで起こるのか明確に把握することができ、その後の実験や最適化もより効果的になります」とアン氏は語る。

アン氏によると、現在のUpflowのユーザーは数百社で、ファッションのブランドやスポーツチームなど消費者対象だけでなくB2BやSaaS、ヘルスケア方面の企業もいる。過去数週間で毎週、ユーザー数が増え、アクティベーション率が40%増加し、月間ユーザー数は倍増している。

「オーストラリアのテクノロジー業界は世界のイノベーションを動かしている」とアン氏は声明で語っている。「私たちもすでに、活動もテストも世界レベルで行いプラットフォームの有効性を確信しています。見込み客が企業で最初に行うことはサインアップのフオーですが、私たちは初めて、そのフローを作りやすく、そしてライブにすることができました。そのためには情報の流れを改善し、見込み客があらゆるルートをスマートに動き回れるようにしています」。

パンデミックのおかげでUpflowは、最初からリモート企業としてスタートすることができた。初期の2020年には、リモートファーストの企業はまだ珍しいコンセプトだったが、それでも世界中から人材が集まった。2022年は米国に進出して、そこでのプレゼンスを大きくしたいとアン氏はいう。

Upflowyに投資しているAPAC OptimizelyのsoマネージングディレクターであるDan Ross(ダン・ロス)氏は次のように語る。「Upflowは、ほとんどすべての企業が直面している問題を解決しました。完全なサインアップフローを迅速に作って、何回もテストしながら改良していけるツールは他にはありません。しかも、他のプラットフォームへデータを供給して、ビジターを顧客にコンバートする過程を見ることもできます」。

また、Counterpart VenturesのゼネラルパートナーPatrick Eggen(パトリック・エゲン)氏は、声明で次のように述べている。「現代の企業は、データ収集と顧客体験の間にある摩擦を取り除くシンプルなノーコードのソリューションを必要としています。技術者がウェブ体験を作り出す、テストも改良もできない雑なソリューションが市場に多い中で、Upflowyはこの市場の見方を変えて、消費者が求めるウェブ体験をチームが作れるようにしています」。

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(文:Kate Park、翻訳:Hiroshi Iwatani)

デジタルデザインプラットフォームCanvaがより良いデータストーリーテリングを目指し英Flourishを買収

Canva(キャンバ)はオーストラリア時間2月2日、ロンドンに拠点を置くデータビジュアライゼーションのスタートアップFlourishの買収を完了したと発表した。買収の金銭的条件は公表されていない。

今回の買収は、ビジュアルコミュニケーション企業であるCanvaの月間アクティブユーザー数(MAU)が7500万人を超え、過去12カ月間で3000万人以上増加した中でのことだ。

Duncan Clark(ダンカン・クラーク)氏とRobin Houston(ロビン・ヒューストン)氏が2016年に設立したFlourishは、BBC、Sky(スカイ)、Deloitte(デロイト)、Moody’s(ムーディーズ)などの企業が、データポイントを消化しやすいチャート、グラフ、ビジュアルに変えることができるよう、データビジュアライゼーションツールを提供している。Crunchbaseによると、80万人以上の顧客をCanvaの傘下に引き入れることになる同社は、これまでベンチャーキャピタルで約100万ドル(約1億1500万円)を調達している。

Canvaの共同創業者兼COOであるCliff Obrecht(クリフ・オブレヒト)氏はTechCrunchに対し、Flourishの44名の従業員全員がCanvaに加わることになると述べている。

シドニーを拠点とするCanvaは2013年に設立され、これまでに5億7000万ドル(約656億8000万円)以上のベンチャーキャピタル資金を調達してきた。最近では、2021年9月に2億ドル(約230億5000万円)のベンチャーラウンドを実施し、その際の同社の評価額は400億ドル(約4兆6105億円)とされた。今回の買収は、ベンチャーラウンドでの資金調達の一部ではない。オブレヒト氏によると、Flourishとの交渉は資金調達の前から始まっていたとのこと。

同社の共同創業者兼CEOであるMelanie Perkins(メラニー・パーキンス)氏は2021年9月のTechCrunch Disrupt 2021で、同社の買収戦略についてこう語った。「世の中には、いくつかの異なるタイプの企業があるような気がします。喜びをもたらすことに本当に集中している人たちと、ヒエラルキーや構造、そういったものを重視する人たちです。純粋に価値を提供することに集中している人は、実に重要です」。

来月中には製品が統合され、あらゆるデータソースを接続して、リッチで魅力的なビジュアルに変換する新機能が追加される。これには、スプレッドシートからテンプレートを選んでダイナミックチャートを作成できるようにしてほしいというような、顧客からの要望も含まれているとオブレヒト氏は述べている。

Flourishの買収は、KaleidoやSmartmockupsなど、2021年に行われた他の2社の買収に続くものだ。Canvaのキャッシュフローはプラスだが、オブレヒト氏は直近の増資について「人材、製品、M&Aを通じて成長するための『軍資金』を持つことは重要です」と語った。

「我々は、Canvaの中核となるデータストーリーテリングというビジネスコミュニケーションの重要な部分を担う企業を買収しています」と彼は続けた。「Canvaはこの点を最重要視し、データストーリーテリングを民主化するFlourishの買収を加速させ、当社のビジュアルストーリーテリングと組み合わせることで、真の相乗効果を得ることができました」。

関連記事:デジタルデザインのCanvaが静止画・動画から背景を消すKaleidoを買収

画像クレジット:Canva

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(文:Christine Hall、翻訳:Aya Nakazato)

豪Fertilisが体外受精胚培養の自動化に向け約2億円調達

Fertilis共同創業者のジェレミー・トンプソン教授(画像クレジット:Fertilis)

体外受精(IVF)を患者と臨床医にとってよりストレスの少ないものに、そしてIVFをより成功させようと世界の多くの企業が取り組んでいるが、アデレード拠点のスタートアップFertilis(ファーティリス)はその輪に加わった最新の企業だ。

創業2年のFertilisは、超小型医療機器を使って細胞培養を自動化する技術で投資家から支持を取り付けた。香港の大物Li Ka-shing(李嘉誠)氏のベンチャーキャピタルで、Facebook(フェイスブック)やSpotify(スポティファイ)の初期投資家でもあるHorizons Venturesはこのほど、Fertilisの275万豪ドル(約2億円)のシードラウンドをリードした。他の投資家は明らかにされていない。

英国の国民保健サービスによると、2019年に出産に至った体外受精治療の割合は、35歳以下の女性でわずか32%だった。患者の年齢や精子・卵子の質といった要因が、成功率に影響を与える可能性がある。

胚の選別の改善に取り組むスタートアップが相次いでいる。例えば、TechCrunchが取り上げたイスラエル拠点のEmbryonics(エンブリオニックス)がある。生殖生物学者のJeremy Thompson(ジェレミー・トンプソン)氏と連続起業家のMartin Gauvin(マーティン・ゴービン)氏が創業したFertilisは、胚の培養という別の角度からこの問題に取り組んでいる。

体外受精のクリニックは「非常に忙しい場所」であり、専門家は「やらなければならないことすべてについて訓練を受けている」とトンプソン氏はTechCrunchのインタビューで語った。標準的な体外受精のプロセスでは、胚の発育に合わせてシャーレの中で細胞をさまざまな環境に移し替えていく。しかし、採卵からシャーレをラボに運び、胚を生殖器官に入れるまで「うまくいかないことがいろいろある」と同氏は指摘した。

「胚が臨床医に取り出されるたびに、環境は悪影響を受けるのです」とトンプソン氏はいう。「患者の希望や夢は文字通り、臨床医の一挙手一投足にあります」。

Fertilisのソリューションは、特許取得済みの3Dプリントのクレードルに各胚を入れることで、体外受精のプロセスを標準化し、自動化することだ。髪の毛ほどの幅のこの装置により「より人体に近い環境」で細胞を培養することができる、とトンプソン氏はいう。このクレードルはシャーレの上に置かれるため、臨床医は胚を直接扱う必要がない。

生殖技術に関する規制という点で、同社はユニークな立場にある。人間ではなく細胞に作用する医療機器を製造しているため、直面する規制は「一部の国ではもっと簡単なもの」だとゴービン氏は話す。同社は現在、FDA(米食品医薬品局)の承認を申請中だ。

Fertilisが調達した新しい資金は、継続的な科学的開発を支える。2022年後半には、カリフォルニア州の不妊治療クリニックと共同で臨床試験を開始する予定だ。また、欧州やアジアのパートナーとも話を進めており、今後数カ月以内に契約を締結する見込みだ。2023年までには、最初の市販製品を発売することを目指している。

技術的には、Fertilisの粒子サイズの装置は、他の種類の細胞の培養にも使用することができる。受精はスタート地点にすぎない。

「Fertilisの技術は、診断や治療から特定の細胞培養製品の製造に至るまで、幅広いヘルスケア用途に変革的な影響を与えると確信しています」と、Horizons Venturesのオーストラリアを拠点とする投資家Chris Liu(クリス・リュウ)氏は述べた。

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(文:Rita Liao、翻訳:Nariko Mizoguchi

メルボルンのEdtechスタートアップViviが約22億円調達、100万教室達成に向け海外展開を加速

オーストラリアのEdtechスタートアップVivi(ヴィヴィ)は、教育インベスターのQuad Partners(クアッド・パートナーズ)から2000万ドル(約22億円)を調達した。この資金は、プラットフォームの改善、運営インフラのアップグレード、米国、ヨーロッパ、アジアでの営業・マーケティングチームの増員などに充てられる予定だ。

Viviは2020年、ニューヨークのRiverside Acceleration Capital(リバーサイド・アクセラレーション・キャピトル)とオーストラリアの投資家シンジケートから430万ドル(約4億8800万円)を調達しており、今回の資金調達により5年間で総額2430万ドル(約27億5700万円)を達成することになる。

今回の新たな投資により、同スタートアップは、1対1コンピューティングを利用する教育者の割合が最も高い米国を中心に、世界各地への海外展開を加速させることができる。

1対1コンピューティングとは、学校や大学などの教育機関において、在籍するすべての生徒が電子機器を使用してインターネットやデジタル教材、デジタル教科書にアクセスできるようにすることを指す。

Viviを利用することで、講師は動画や問題集などの教材を生徒に見せ、生徒は自分の端末でその内容に注釈をつけることができる。その他にも、デジタルサイネージ、緊急放送、形成的評価、学生の健康状態のチェックなど、さまざまな機能を備えている。

ワイヤレスプレゼンテーションとスクリーンミラーリング技術を世界中の4万以上の教室に提供しており、今後5年間で100万の学習スペースに到達することを計画しているViviにとって米国は豊かな市場だ。

「Viviは、非常にユニークな方法で海外に需要を生み出し、そのほとんどが口コミによるものです。Viviは、ポイントソリューションから包括的な学生参加型プラットフォームへと進化し、信じられないほど定着することが証明されています」と、Viviの創業者で執行会長のLior Rauchberger(ライオ・ラウフベルガー)博士は言った。

「私たちの次の大きな目標は、できるだけ早く100万教室に導入することであり、Quadとの提携はそれを確実に加速させるでしょう」。

特に米国は、14000近い学区、130000以上の幼稚園から高校まで、そして5000以上の大学からなる市場を提供しており、Viviにとって引き続き魅力的な市場だ。

さらに、新型コロナウイルスの大流行の結果として、米国では教育に投入される連邦政府の資金が空前のものとなり、ノートパソコンやタブレット、携帯電話を持つ生徒の数が増加している。これは、ハイブリッド学習が全米で存在感を高めていることに起因している。

「現在、私たちは特に米国において、大きな追い風を活用するために迅速に動いています。学校におけるテクノロジーイネーブルメントへの注目が急速に高まり、1対1の生徒用デバイスの比率が過去最高となり、スクリーンミラーリングの指導上および管理上の利点に対する認識が高まっている中、Viviをより多くの生徒、教育者、管理者の手にすばやく届けることができることに興奮しています」と、Viviの最高経営責任者であるNatalie Mactier(ナタリー・マクティエ)氏は同社の拡大計画について述べている。

Viviは、生徒が自分の画面をクラスや小グループで即座に共有し、すぐにフィードバックできるシンプルで直感的な授業参画として、2016年に発売された。しかし、スタートアップの登場は2013年にさかのぼり、オーストラリアの起業家であるラウフベルガー博士が、クライアントのためにワイヤレスプレゼンテーションソリューションを探したことがきっかけだった。

あらゆるデバイスに対応するコストパフォーマンスの高い製品が見つからず、イノベーションに着手し、3年後、ラウフベルガー博士とスタートアップの専門家Simon Holland(サイモン・ホランド)氏、Papercloud Ventures(ペーパークラウド・ヴェンチャーズ)の技術指導者Tomas Spacek(トーマス・スペースク)氏とのパートナーシップでViviは誕生した。

現在、Viviはオーストラリア、ヨーロッパ、中東、東南アジア、アメリカ大陸の12カ国で展開されている。

2020年から2025年にかけて世界のEdtech市場は1123億ドル(約12兆7500億円)増加し、そのうち46%は北米で生まれると予想されているため、ViviはAirtame(エアタイム)、Eupheus(エフェウス)、Coorpacademy(クーパカデミー)、Droplr(ドロップラー)といった競合と国際展開で競い合っている。

画像クレジット:Miles Wilson / Vivi

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(文:Annie Njanja、翻訳:Yuta Kaminishi)

シドニーのQ-CTRLは量子センシングを活用した「サービスとしてのデータ」市場を目指す

Q-CTRLは、量子制御エンジニアリングソリューションを提供するシドニーのスタートアップ企業だ。同社はオーストラリア時間11月30日、Airbus Ventures(エアバス・ベンチャーズ)が主導するシリーズBラウンドで、2500万ドル(約28億円)の資金を調達したことを発表した。このラウンドには、Ridgeline Partners(リッジライン・パートナーズ)、Main Sequence Ventures(メイン・シーケンス・ベンチャーズ)、Horizons Ventures(ホライズンズ・ベンチャーズ)、Square Peg Capital(スクエア・ペグ・キャピタル)、Sierra Ventures(シエラ・ベンチャーズ)、DCVC、Sequoia Capital China(セコイア・キャピタル・チャイナ)、In-Q-Tel(インキューテル)も参加した。

Q-CTRLの創業者兼CEOであるMichael Biercuk(マイケル・ビアキュック)氏は、この資金調達がスタッフの雇用を支援し、量子センシングを活用した新しいデータ・アズ・ア・サービス(サービスとしてのデータ)市場を実現すると述べている。同社はまた、量子コンピューティングのための量子制御や、加速度、重力、磁場を計測する量子センシングの開発にも引き続き投資していく。同社はこれまでに、総額6000万豪ドル(約49億円)以上の資金を調達している。

「Q-CTRLのビジョンは常に、量子技術のあらゆる応用を可能にすることです。今回の新たな資金調達は、宇宙、防衛、商業の分野に真の価値を提供するという当社のミッションを実現するために不可欠なものです」とビアキュック氏は述べている。

Q-CTRLは、この分野で最も差し迫った課題であるハードウェアのエラーや不安定性に対処し、量子コンピューティングのパフォーマンスを向上させるインフラストラクチャソフトウェアを提供していると、ビアキュック氏はTechCrunchに語った。

今回のシリーズB資金調達は、Q-CTRLが最近行った主要な技術および製品開発の発表に続いて実施されたものだ。それらの中には、量子論理ゲートとして知られるQ-CTRLのコア技術を用いて、実際の量子コンピューター上で実行される量子アルゴリズムのパフォーマンスを2680%向上させる技術デモが含まれている。

同社はまた、Fleet Space Technologies(フリート・スペース・テクノロジーズ)を中心としたオーストラリア企業のコンソーシアムと共同で、宇宙に適した量子センサーや、地球と月や火星の探査技術を開発している。その量子センサーの顧客には、Advanced Navigation(アドバンスド・ナビゲーション)、オーストラリア国防総省、空軍研究所、オーストラリア宇宙庁などが含まれる。

「このチームのすばらしい量子制御ソフトウェア群は、量子産業全体が急速に加速している今、速さと機敏さを可能にします」と、東京に本拠を置くAirbus Venturesのパートナー、Lewis Pinault(ルイス・ピノー)氏は述べている。「Q-CTRLは、月面開発、地理空間情報、地球観測など、先進的なアプリケーションやソリューションの幅を広げています。これらはすべて、現在我々が直面している加速的な惑星システムの危機に対処するための世界的な取り組みにおいて、ますます重要になっているものです。私たちが特に期待しているのはそこです」。

ビアキュック氏によれば、Q-CTRLの2020-2021年度の収益は前年比3倍となり、2020年後半に開始したばかりの新しい量子センサー事業の売上と予約で900万ドル(約1億円)以上を計上したとのこと。

多くの企業がそうであるように、新型コロナウイルスの影響で成長が大幅に停止したため、予定していた海外での販売・マーケティング活動に大きな損失が発生したと、ビアキュック氏は述べている。にもかかわらず、同社のチームは2020年1月以降、約20人から60人に増えたという。

ビアキュック氏は、同社が量子制御の専門家による大規模なチームを運営しており、30人以上の博士レベルの研究者が、量子コンピューティングと量子センシングの研究と製品開発を推進していると付け加えた。

Q-CTRLは最近、誰でも量子コンピューティングを学ぶことができるインタラクティブでアクセスしやすいオンライン学習プラットフォーム「Black Opal(ブラック・オパール)」を起ち上げた。ビアキュック氏によると、これは10日間の販売目標を2日半で突破したという。

Q-CTRLは2017年に、ビアキュック氏が量子物理学および量子技術の教授として勤務するシドニー大学からスピンオフした。

マイケル・ビアキュック氏(画像クレジット:Jessica Hromas)

現在はシドニーとロサンゼルスにオフィスを構えているが、年内にはベルリンにもオフィスを開設し、最初の従業員を雇用する予定だと、ビアキュック氏は述べている。

Boston Consulting Group(ボストン・コンサルティング・グループ)の報告書によると、量子コンピューティング産業は、2040年までに年間評価額で8500億ドル(約9兆6000億円)以上になると推定されている。BCC Research(BCCリサーチ)の報告では、世界の量子センサー市場は、2019年の1億6100万ドル(約182億円)から、2024年には2億9990万ドル(約338億5000万円)に増加すると予測している。

画像クレジット:Q-CTRL

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(文:Kate Park、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

プジョーやフィアットを傘下に持つStellantisがEV電池材料確保のためリチウム供給契約を締結

Fiat Chrysler Automobiles(フィアット・クライスラー・オートモービルズ)とフランスの自動車メーカーGroupe PSA(グループPSA)が折半出資で合併して誕生したグローバル企業Stellantis(ステランティス)は、リチウム生産者と拘束力のある契約を締結した。今回の合意は、EVの需要が高まる中、自動車メーカーとサプライヤーの間で相次ぎ行われている取引の1つだ。

Vulcan Energy Resourcesは、ドイツのアッパーラインヴァレー(上部ライン渓谷)にあるブラインプロジェクトからバッテリーグレードの水酸化リチウムを生産する。一般的に、リチウムは岩石を採掘して生産されるか、塩水鉱床から抽出される。どちらも環境面で問題があるが、Vulcanのサイトでは、再生可能な地熱エネルギーを利用してリチウムを抽出する。

また、このプロジェクトでは、使用済みのブラインを閉ループサイクルで再注入するため、生産滓のような残留物は発生しない。ドイツのプロジェクトは、南米などで行われている他のブラインプロジェクトに比べ水や土地の使用量が少ないため、二酸化炭素排出量が少なく、運用コストも低く抑えられる可能性があると、ドイツ・オーストラリアを拠点とする同社はウェブサイトで述べている。

この5年間の供給契約に基づき、Vulcanは2026年からドイツで抽出したリチウムをStellantisに送ることになる。契約期間中、Vulcanは8万1千トンから9万9千トンの水酸化リチウムを自動車メーカーに供給する。両社はこの取引の財務条件を明らかにしていないが、抽出サイトでの商業運転の開始と製品の適格性の両方を条件としている。

今回の契約は、Stellantisが7月に発表した、今後4年間で300億ユーロ(355億ドル、約3兆8480億円)をEVと新しいソフトウェアに充てる徹底的な電動化戦略の一環だ。同社は2025年までに130GWh、2030年までに北米と欧州の5つの工場で約260GWhのバッテリーを製造することを目標としている。

関連記事:多国籍自動車会社ステランティスが2025年までに約3.9兆円を電気自動車に投資

これは、世界の自動車メーカー各社が、EVバッテリーの主要鉱物であるリチウムのような有限の原材料を確保しようとしていることを示す最新の兆候だ。General Motors(GM、ゼネラルモーターズ)はカリフォルニア州のリチウム抽出プロジェクトに同様の投資を行っており、Tesla(テスラ)はニッケルなどの鉱物について独自の供給契約を結んでいる

一方、Renault(ルノー)は先週、欧州産リチウムを最大3万2千トン供給する契約をVulcanと締結した。

画像クレジット:Stellantis

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Aya Nakazato)

地球のデジタルツインを開発する豪Blackshark.aiが約22億円を調達、MSのFlight Simulatorにも採用

オーストリアのスタートアップであるBlackshark.ai(ブラックシャーク・エーアイ)は、「Microsoft Flight Simulator」に搭載されている「デジタル地球」を開発した企業だ。同社は、地球のレプリカ技術の開発と拡張のために2000万ドル(約22億円)を調達した。地球の「デジタルツイン」の潜在的な用途は多様で、同社はGoogle(グーグル)のようなマッピング大手より先行している。

2020年の「Flight Simulator」では(100%ではないにしても)完全に横断可能で、驚くほど正確な地球を世界に見せてくれた。TechCrunchは「技術的な驚異」と表現し、それがどうやって作られたのか後に詳細を報じた。

Blackshark.aiは、ゲームスタジオBongfish(ボンフィッシュ)からスピンアウトした会社で、創業者でCEOのMichael Putz(マイケル・プッツ)氏によると、世界構築技術をゲーム環境以外にも応用することを目指している。Blackshark.aiの技術の基本は、機械学習とちょっとした賢い推測、そして大量のコンピューティングパワーを使って、広く利用可能な2D画像を正確な3Dに変えることだ。

基本的にBlackshark.aiのシステムは、最適ではない照明や不完全な画像であっても、さまざまな建物が上からどのように見えるかをしっかりと理解する。Blackshark.aiが構築した機械学習システムは、近隣の環境(住宅地と商業地)、屋根の種類(傾斜した屋根と平らな屋根)、空調設備の有無などの要素を考慮して、不完全な輪郭を推定する。これらすべての情報をもとに、建物のもっともらしい3D再現を行う。

難しいのは、一度だけではなく、定期的に何億回も繰り返して、地球上のすべての建物の最新の3D表現を作成することだ。プッツ氏は次のように説明する。「その作業のためのコンピューティングパワーをすべて購入できたとしても、それを動かすためのバックエンドを構築するのは大変なことです。これは私たちが直面した現実的な問題でした」。

プッツ氏らの解決策は、AIを搭載したサービスによく必要とされるように、最適化だった。同氏によると、地球上のすべての建物の3Dモデルを計算するプロセスは、もともと約1カ月の時間を要していたが、今では約3日で済むようになり、約300倍の加速を実現している。

人工衛星からの新しい画像をもとに定期的に更新できるこのような機能は、Blackshark.aiのビジネス提案にとって非常に重要だとプッツ氏は説明した。GoogleやApple(アップル)の地図に見られるような3D地図データの多くは写真測量をベースにしている。これは、複数の航空写真を組み合わせて、目のように視差データを比較して大きさや奥行きを判断する航空写真で、写真が撮影された時点ではすばらしいデータとなる。

2年前ではなく先週のシカゴのある一角の様子を3Dマップで表現したい、そしてそのレベルの最新情報をできるだけ多くの地球上の人々に提供したい、と考えた場合、現在では衛星画像しか選択肢がない。しかし、そのためには前述の2Dから3Dへの変換が必要になる。

パッツ氏は、Blackshark.aiの3DマップとGoogleやAppleの3Dマップは、表面的には似ているが、実際には競合するものではないと指摘する。リアルな「キャンバス」を提供するという点では同じだが、その意図は大きく異なる。

「Googleマップは、ローカルビジネスのためのキャンバスです。同社とそのユーザーの両方にとって重要なのは、場所、レビュー、道順などです」とパッツ氏は話す。「私たちは、たとえば気候変動のユースケースである洪水についてシアトルの3Dデータを提供していますが、水の物理学や流体シミュレーションを専門とする人たちは、現実世界をキャンバスとして描くことができます。私たちの目標は、検索可能な地球の表面になることです」。

画像クレジット:Blackshark.ai

サンディエゴのとある地区で利用できる平らな屋上の総面積はどれくらいか? 4000平方メートルのスペースが空いている地方空港は? 山火事のリスクがあるエリアは、更新された風モデルとどのように重なっているか? このように、活用法を思いつくのは難しいことではない。

「これは、考えれば考えるほどユースケースが出てくるアイデアの1つです」とプッツ氏は話す。「政府機関、災害救助、スマートシティ、自動車や飛行機などの自律型産業などで応用できます。これらの産業はすべて人工的な環境を必要とします。単に『これをやりたい』ということではなく、必要とされていることでした。そして、この2D-3Dは巨大な問題を解決する唯一の方法なのです」。

今回の2000万ドルのラウンドは、M12(Microsoftのベンチャーファンド)とPoint72 Venturesがリードした。プッツ氏は、アドバイザーとしておなじみの顔ぶれが参加したことに感激した。Google Earthの共同創業者であるBrian McClendon(ブライアン・マクレンドン)氏、Airbus(エアバス)の元CEOであるDirk Hoke(ダーク・ホーク)氏、Y Combinator(Yコンビネーター)の元COOで現在はApplied Intuition(アプライド・インチュイション)のCEOであるQasar Younis(カサール・ユーニス)氏らだ(これらの人々は助言をしているのであって、取締役会に参加しているわけではない)。

事業の拡張はプロダクトを作り上げるというより、市場投入のことだ。もちろん、エンジニアや研究者を増やすことは必要だが「賢いスタートアップ」から「3D合成地球の世界的プロバイダー」になることを急がなければ、他の賢いスタートアップに美味しいところを持っていかれるかもしれない。そこで、営業とサポートのチーム、そして「ハイパースケーリング・コンパニオンの残りの部分」も編成する、とプッツ氏は話した。

同氏が挙げた明白なユースケースの他に、想像できるかと思うが、メタバースアプリケーションの可能性もある。ただし、これはでたらめではなくアイデアだ。ゲームから旅行ガイドまで、おもしろいAR/VR/その他のアプリケーションが、最近レンダリングされた地球のバージョンをベースに、仮想体験をしたいと思えばそれが可能になる。それだけでなく、地球以外の世界も同じ方法で生成することができるため、もしあなたが地球のレイアウトを崩して新しい惑星を作りたいと思ったら(誰がそれを非難できるだろう)、今週中にはそうすることができる。すばらしいことではないか?

新しい資金が使われるようになれば、地球の表面で行われている複雑なマーケットやプロセスの新世代のより詳細なシミュレーションに「Powered by Blackshark.ai」などと表示されるようになるだろう。

画像クレジット:Blackshark.ai

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Nariko Mizoguchi

デジタル法廷・調停プラットフォームのImmediationが、米国や欧州への事業拡大を目指す

新型コロナウイルスの影響を受け、法曹界では主にビデオ会議と電子メールを組み合わせたリモートワークでの対処を余儀なくされた。メルボルンで設立されたImmediation(イメディエーション)という会社は、デジタル法廷と調停ツールを用いた専用ソリューションを提供しており、オーストラリアの連邦裁判所やニュージーランドの政府機関で採用されている。今回、360万豪ドル(約3億500万円)の資金を調達した同社は、米国や欧州市場に向けて事業の拡大を図っている。投資家には、Thorney Investment Group(ソーニー・インベストメント・グループ)や、同社の創業者で会長のAlex Waislitz(アレックス・ワイスリッツ)氏などが名を連ねている。

2017年に設立され、2019年にサービスを開始したImmediationのユーザーには、オーストラリアの連邦裁判所、ビクトリア州民事行政裁判所(VCAT)、ニュージーランドの法務省、Sport New Zealand(スポーツ・ニュージーランド)Domain Name Commission NZ(ドメインネーム・コミッションNZ)などの機関が含まれている。同スタートアップによると、過去12カ月の間に、収益は前年比6倍、ユーザー数は2000%と、急成長を遂げているという。Immediationは現在、5カ国に約40名の従業員と、100名以上の調停者や仲裁者を擁している。今回の資金調達により、Immediationの調達額は1000万豪ドル(約8億5000万円)に達した。

オーストラリアとニュージーランドに加えて、Immediationは東南アジアの市場にもユーザーを抱えている。今後12カ月間は、米国と欧州の市場での成長に注力する予定だ。

Immediationを調停プラットフォーム(現在は法律事務所、法廷、解決機関のサポートも行っている)として起ち上げる以前に、創業者でマネージングディレクターを務めるLaura Keily(ラウラ・ケイリー)氏は、20年間にわたって企業弁護士や法廷弁護士として働いていた。彼女がオンラインの調停プラットフォームを作ろうと思ったのは「人々が司法に有効にアクセスできず、締め出されているのを目の当たりにしたから」だという。「法制度は複雑で、時間と費用がかかります。古いルールやプロセスに支配される旧態依然としたシステムで、拡張性がなく、非効率的です」と、ケイリー氏はTechCrunchにメールで語っている。

Immediationのクライアントの多くは、同社のプラットフォームを利用する前には、調停センターや裁判所で対面式のミーティングを行うという以外の選択肢はなかった。Immediationがそのプラットフォームを公開したのは、新型コロナウイルスの感染流行が発生する数カ月前、2019年9月のことだった。

「新型コロナウイルスの発生はターニングポイントとなりました」と、ケイリー氏はいう。「各業界が一夜にしてオンラインへの移行を余儀なくされる中、私たちのチームは迅速に方向転換して、法律業界の急を要する懸念に対処し、シームレスなオンライン移行のための青写真を提供したのです」。

2020年の間に、Immediationのユーザー数は2200%も増加した。その中には、数百の法科大学院が参加する初のオンライン開催となったWillem C. Vis International Commercial Arbitration Moot(ウィレム.C 模擬国際商事仲裁大会)の5日間にわたる500人規模の審理も含まれる。

Immediation創業者でマネージングディレクターのラウラ・ケイリー氏

Immediationは、物理的な法廷、調停施設、弁護士事務所のクライアントフロア、紛争解決環境を再現するために、弁護士によって作られたとケイリー氏はいう。そのツールには、審理の記録、文書の共有と管理、契約書の共同作成と締結、手続き中の弁護士とクライアント間の機密通信、当事者ごとに設定される安全な個室などの機能が含まれている。司法書士や調停委員は、個室内の参加者を管理できるため、必要に応じて関係者を移動させたり、退出させたりすることができる。

弁護士とクライアントの間の機密性を維持することは不可欠だ。Immediationは、安全なチャットルームとパーティールームを構築しており「関係者以外は誰もそのメッセージを見ることも、パーティールームに入ることもできないように設計されているので、クライアントと弁護士のチームは、訴訟手続きが本格化しても、自分たちのチーム間で完全に機密なコミュニケーションをとることができます」と、ケイリー氏は語っている。

Immediationは今回、Auctus Investment Group(アクタス・インベストメント・グループ)およびTamara Credit Partners(タマラ・クレジット・パートナーズ)の会長であるChristine Christian(クリスティーン・クリスチャン)氏を新しい会長に、Rachael Neumann(レイチェル・ノイマン)氏とGreg Wildisen(ウィルディーセン)氏を取締役に任命したことも発表した。同社はまた、Afterpay(アフターペイ)の会長であるElena Rubin(エレナ・ルビン)氏と、Rampersand VC(ランパサンド)の設立パートナーであるJim Cassidy(ジム・キャシディ)氏を諮問委員会に加えた。

画像クレジット:ARMMY PICCA / Getty Images

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(文:Catherine Shu、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

Alphabet傘下のWingがショッピングセンターの屋上からドローンで配達する試験プログラムを開始

Alphabet(アルファベット)の子会社であるWing(ウイング)が、同社のドローンを使ってショッピングセンターの屋上から商品を飛ばす試験プログラムを開始した。実は同社最大の市場であるオーストラリアのローガン市で、このプログラムはすでに始まっている。Wingはオーストラリアの商業施設グループ、Vicinity Centres(ヴィシニティ・センターズ)と提携し、ローガン市のショッピングセンター「Grand Plaza(グランドプラザ)」で、この新しいビジネスモデルをテストしている。Wingのドローンは、発射台の真下にある店舗から、顧客に向けて直接注文された商品を飛ばしているのだ。

Wingは2年前からローガン市で事業を展開しているが、これまで企業は同社の配送施設に商品を配備する必要があった。参加企業が店舗を構えている場所から直接配達を行うのは、今回が初めてのことだ。8月中旬よりWingはGrand Plazaの屋上からドローンを飛ばし、同ショッピングセンター内の加盟店から寿司やタピオカティー、スムージーなどの商品を顧客に届けている。さらに現地時間10月6日には、市販の医薬品やパーソナルケア・美容製品の配達も開始した。

Grand Plazaでの運用開始から6週間で、Wingのドローンはすでにローガン市郊外のいくつかの地域へ2500件の配達を行っている。このAlphabet傘下の企業は、同ショッピングセンター内の提携加盟店に留まらず、配達エリアの拡大も計画している。

Wingのオーストラリアにおける政策・地域担当責任者を務めるJesse Suskin(ジェシー・サスキン)氏は、Grand Plazaでの試験運用が成功すれば「Vicinity Centresが運営する他の商業施設でも、同様のモデルを展開できる可能性がある」と述べている。

Grand Plazaでの試験運用が、より多くのVicinity Centresの店舗で屋上配達を行うことにつながるかどうかはまだわからないが、Wingがローガン市でかなりの成功を収めていることは確かだ。2021年に入ってから、同社は市内で5万回を超える配達を行っており、8月には総計10万回目の配達達成を祝ったところだ。

関連記事:ドローン配達のWingがサービス開始から2年で10万回の配達を達成、豪パイロットサービスで

編集部注:本記事の初出はEngadget。執筆者のMariella Moonは、Engadgetの編集委員。

画像クレジット:Wing

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(文:Mariella Moon、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

Investibleがアーリーステージの気候変動対策テックスタートアップを対象とした約80.6億円のファンドを設立

Canva(キャンバ)をはじめとするオーストラリアのトップスタートアップ企業への投資で知られる、シドニーを拠点とする「Investible(インベスタブル)」は、1億豪ドル(約80億5900万円)のClimate Tech Fund(気候変動対策技術ファンド)を調達することを発表した。Investibleがセクターに特化したファンドを立ち上げるのは今回が初めてだ。2021年初めにクローズした5000万豪ドル(約40億2800万円)のファンドを含む最初の2つのファンドは、いずれもセクターを問わないものだった。

また2021年8月、Investibleは、シドニー市と共同で、気候変動対策技術を持つスタートアップのための成長とイノベーションの拠点とする「Greenhouse(グリーンハウス)」を立ち上げると発表した。2022年のオープン時には、Investibleのポートフォリオに含まれていない気候変動対策企業を含め、スタートアップ、研究者、学者、企業を集める予定だ。

気候変動対策技術ファンドの代表であるTom Kline(トム・クライン)氏は「スタートアップ企業がスケールアップするのを支援します。具体的には、技術を向上させるための研究を行ったり、何を求めているかを理解するために大手企業を巻き込んだり、次の顧客を見つけたりすることになるでしょう」と述べている。

このファンドは、シードラウンドにも投資する、資本金の半分はフォローオン資金として確保する。また、主にオーストラリアの企業を支援するが、最大で30%を海外の企業に充てる予定だ。このファンドは、国連環境計画が気候変動や地球温暖化の抑制に最も重要としている6つの分野、すなわち、エネルギー、輸送、産業、建物・都市、食料・農業、森林・土地利用に焦点を当てている。

ファンドは、再生可能エネルギー運用会社New Energy Solar(ニュー・エナジー・ソーラー)の元最高経営責任者であるクライン氏と、2014年からテック企業に投資し、2019年からは気候変動対策のテックスタートアップに特化した投資を行っているPatrick Sieb(パトリック・シーブ)氏が主導する。

「年を追うごとに、私たちはこの空間でもっと何かをしなければならないことに気づき始めており、Investibleでは、年間1500~2000件の取引が行われていますが、そのうち気候に焦点を当てたものが増えています」と、クライン氏はTechCrunchに対し語り、セクターにとらわれず、気候に焦点を当てたファンドを立ち上げることを決めたことについて語った。

クライン氏は、気候変動に関心を持つ人が増え、それが消費者の選択を促し、企業に透明性を求めるようになってきていると付け加えた。また、より多くの政府が、達成に多大な技術と資本を必要とする目標を設定してきている。

Investibleの気候変動ファンドは、通常、150万豪ドル(約1億2000万円)程度からのシードラウンドに参加し、最大で30%、つまり50万豪ドル(約4000万円)程度を拠出する。追加投資は、最大で数百万ドル(数千億円)になる可能性がある。

このファンドは、Investibleのセクター不問ファンドと同じ投資プロセスを採用するが、気候変動に焦点を当てた基準を設けることになる。例えば、どれだけの排出量を削減できるか、設立チーム、機会の大きさ、技術の開発と収益化にかかる時間などが考慮される。

「科学者たちは何十年も前から気候変動について語っており、多くの議論がなされてきました。しかし、ようやく議論が終わり、これは人為的なものであり、この10年間で本当に行動を起こさなければならないということを人々が認める段階になったと思います」と、クライン氏は述べている。

画像クレジット:Mint Images / Getty Images

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(文:Catherine Shu、翻訳:Akihito Mizukoshi)

ブロックチェーンベースの暗号化でサイバー侵害のパンデミックを終わらせるTide Foundation

グローバルパンデミック、そしてグローバルパンデミックが加速させたデジタルトランスフォーメーションは企業の攻撃対象領域を急激に広げた。その結果、2021年上半期に公になっているものだけで約1800件もの情報漏洩があり、188億件の記録が流出している。中でも、消費者の名前や連絡先の詳細、財務記録などが漏れて深刻な被害が発生した大規模な漏洩事案には現在も続いているAccellionの件があり、100以上の企業や組織、政府機関に影響が及んだ。そして顧客4700万人の情報が漏れたT-Mobileの件もある。

関連記事:T-Mobileがハッキングで少なくとも4700万人の現・元顧客が影響を受けたと発表

シドニーを拠点とする5人のスタートアップで、今週TechCrunch Disrupt Startup Battlefieldで競っているTide Foundation(タイドファウンデーション)は「この手のものとしては初となる」暗号化プロトコルがいわゆる「サイバーブリーチパンデミック」を過去のものにできると主張する。サイバーブリーチパンデミックは、世界的な危機が襲う前に非営利団体が使っていた言葉だ。

しかしサイバー犯罪対策の取り組みは必ずしもTideの共同創業者であるMichael Loewy(マイケル・ローリー)氏とYuval Hertzog(ユヴァル・ヘルツォーク)氏のミッションだったわけではない。実際、Tideは前の事業である、企業と消費者をモノのインターネット(IoT)デバイスでつなげるのをサポートするZivaというマーケティングプラットフォームから生まれた。事業は急速に成長し、多くの有名な企業を顧客としてひきつけた。しかしZivaはほどなくしてKellogg’sのキャンペーンを設計しているときにプライバシーの問題に行き当たった。問題のキャンペーンは「Special K Fitness Challenge」で、ウェアラブルの情報を共有する参加者が走行距離に基づいて報酬を得るというものだった。

「我々は何万人ものアカウントを集めました。そして参加者自身が知っていること以上に、習慣や健康状態、栄養状態など参加者の暮らしのすべてを知りました」とTideでテクノロジー面を受け持つヘルツォーク氏は話した。「これは企業にとって宝箱でしたが、非常にセンシティブな情報を扱っているという事実から逃れられませんでした」。

Tideはこのデータを守る必要があると認識したが、要件を満たす既存のソリューションを見つけられなかった。ブロックチェーンベースの暗号化手法をTideが思いついたのはそのときだった。

「真に」ゼロトラストの認証法としては初のものだと同社が主張するプロトコルは、組織が顧客記録や財務情報などセンシティブな情報を暗号化するのに使うことができる。各記録にはそれぞれ暗号キーがあり、各キーは分散している監視者によって管理される。

「誰もきちんとしたゼロトラストのモデルを見つけていませんでした。トラストモデルでゼロの人はいないからです。完全にゼロトラストモデルを提供しているのは当社だけです」とローリー氏は話した。

Tideの創業者たち。左からドミニク・ヴァラドイド氏、マイケル・ローリー氏、ユヴァル・ヘルツォーク氏(画像クレジット:Tide Foundation)

同社によると、ハックするのは「事実上不可能」だ。キーはグループに分散し、誰も完全なキーへのアクセスや知識を持たず、当局も自力では無理だ。そのため、あなたのキーへの悪意あるアクセスはほぼ不可能になる。

「もし、ではなくあなたがハックするとき、世界中の20のロケーションで少なくともコンピューター20台にリソースを投資しなければなりません。実際にそうしたとしても、手に入るのはデータの断片です」とヘルツォーク氏は話し、Tideがテクノロジーをハッカーを防ぐものにしようと取り組んでいた一方で、同社は「グランパ・テスト」をパスできるものにすることにも注力した、と付け加えた。

「人間の世界とコンピューターの世界をつなげるのは非常に難しいものです。我々は人間のインタラクションに特に力を入れ、現存する最もシンプルなメカニズム、つまりユーザーネームとパスワードを通じてシステムを使い始める人のための方法を構築しました」とヘルツォーク氏は話した。「これは絶対的に完璧なものではありませんが、少なくとも我々にとってはパスワードを使えば何十億倍も攻撃するのが難しくなります。当社のテクノロジーはユーザーネームとパスワードのサポートから始まりますが、生体認証にも対応します」。

Tide Foundationはこれまでに主にエンジェル投資家から200万ドル(約2億2000万円)相当を調達し、創業5年の同社はサイバーセキュリティ業界における大手からの出資も獲得した。オーストラリア・ウロンゴンのコンピューティングとITの学校の特別名誉教授Willy Susilo(ウィリー・スシロ)氏、そしてMicrosoftの元ディレクター Peter Ostick(ピーター・オスティク)氏、M&C Saatchiの元グローバル会長Tom Dery(トム・デリー)氏がTideのアドバイザーを務めている。

サポートを十分に受けているTideはいま、マーケットに売り込もうとしている。パンデミック、それに続くサイバーセキュリティカオスの結果、需要はすでにある。

「パンデミックの前に当社はプライバシー保護の企業に話をしていました。反応はというと『もしハックされたら、我々はいい会社にいるということだ』というものでした」とヘルツォーク氏は語った。「新型コロナの後で会話は変わりました。教育界、ヘルスケア、法務、重要インフラなど、情報漏洩に接した全エリアから問い合わせを受けています」。

画像クレジット:Tide

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(文:Carly Page、翻訳:Nariko Mizoguchi

オーストラリアのTechnologyOneが英国の高等教育プラットフォームScientiaを約18.2億円で買収

オーストラリアのSaaS企業であるTechnologyOne(テクノロジー・ワン)は、英国の高等教育ソフトウェアプロバイダーであるScientia(サイエンティア)を現金1200万ポンド(約18億2000万円)で買収することに合意した。

TechnologyOneは、オーストラリアの高等教育機関の75%が同社のソフトウェアを使用していると主張しており、一方、Scientiaは英国で50%の市場シェアを主張している。

この買収には、600万ポンド(約9億13000万円)の初期払いとそれ以降の支払いが含まれている。

TechnologyOneの創業者であり、会長のAdrian Di Marco(アドリアン・ディ・マルコ)氏は「今回の買収は、当社にとって初めての国際的な買収であり、高等教育分野と英国市場への貢献に対する当社の深いコミットメントを示すものです。ScientiaのユニークなIPと市場をリードする能力は、とにかく使いやすい企業向けソフトウェアを提供するという当社のビジョンを支えています」と述べている。

スウィンバーン工科大学の学籍担当事務官兼学生管理・図書館サービス部長のMichelle Gillespie(ミッシェル・ギレスピー)氏は「学生が最も気にかけているのは、自分たちの時間割です。時間割を学生生活全体に完全に統合できることは非常に重要であり、スウィンバーン工科大学のようにTechnologyOneの学生管理システムを使用している大学にとってはとてもワクワクする一歩となります」とコメントしている。

画像クレジット:Getty Images

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(文:Mike Butcher、翻訳:Akihito Mizukoshi)

ドローン配達のWingがサービス開始から2年で10万回の配達を達成、豪パイロットサービスで

Alphabet(アルファベット)のドローン配達会社であるWing(ウイング)は、8月25日付のブログ記事で、同週末に10万件目の顧客への配達を達成する見込みであると発表した。このニュースが報じられたのは、同社がオーストラリアのブリスベン都市圏に位置する人口約30万人の都市ローガンでパイロットサービスを開始してから、間もなく2周年を迎える時期のことだ。

またそれは、Amazon(アマゾン)独自のドローン配達の取り組みが「内側で崩壊しつつある」とWiredが報じた数週間後のことでもある。Wingの広報責任者であるJonathan Bass(ジョナサン・バス)氏は、TechCrunchの取材に対し、このサービスが今後数カ月のうちに、さらに多くの市場に参入する予定であると語っている。

「私たちは、かなりの規模で拡大すると思います」と、バス氏はTechCrunchに語った。「今後6カ月以内に、オーストラリア、フィンランド、米国で新たにサービスを開始する予定です。この技術の能力はおそらく、今や規制当局の許可よりも先に進んでいます」。

画像クレジット:Wing

これまで行われた配達のうち、半分以上はこの8カ月間にローガンで完了したものだ。例えば、8月の第1週には4500件の配達が発注されており、これはWingの配送時間帯では30秒に1回の割合となる。

2020年1年間にWingのドローンがローガンで行った配達には以下のような品物が含まれている。

  • 1万杯のコーヒー
  • 1700個の子ども用スナックパック
  • 1200個のhot chooks(オーストラリアでローストチキンのこと)
  • 2700個のロール寿司
  • 1000食のパン

画像クレジット:Wing

Wingのドローンの航続距離は、バッテリー容量から6マイル(約10キロメートル)に制限される。つまり、移動時間はかなり短いため、ドローンの外部で品物が入ったパッケージを運んでいるにもかかわらず、食べ物が冷めたり温まってしまったりという問題はあまり起きない。制限されるのは主に重量で、最大3ポンド(約1.4kg)までの運搬が可能だという。卵のような非常に壊れやすいものでも問題なく運べると、同社は述べている。

ドローンは上空100〜150フィート(約30.5〜46メートル)で巡航し、目的地に到着すると約23フィート(約7メートル)の高さまで降下する。そこからロープで荷物を地上に降ろし、フックを外す。荷物を受け取るのに誰の手も必要としない。

画像クレジット:Wing

「テストと配達を合わせると、私たちは過去4〜5年の間に50万回近いフライトを行っています」と、バス氏はいう。「我々は徐々に密集した環境に移り、コミュニティに耳を傾けるようになりました」。これにはドローンの騒音レベルを下げるように求めるコミュニティからの意見も含まれる。

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(文:Brian Heater、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

台湾TiSpaceは初の同国産ロケット試験打ち上げを2021年中にオーストラリアで予定

オーストラリアの規制当局は、創設5年目のロケット打ち上げ会社であるTaiwan Innovative Space(晋陞太空科技、通称TiSpace)に、2021年後半にオーストラリア南部の新たに認可された施設で商業打ち上げを行うことを許可した。

TiSpaceは、オーストラリア南部のホエーラーズ・ウェイ軌道発射施設で、2段式弾道飛行ロケット「Hapith I(飛鼠一號)」の試験飛行を行う予定だ。この飛行では、ロケットの推進、誘導、テレメトリ、構造の各システムの検証を行うと、TiSpaceはニュースリリースで述べている。宇宙インフラ企業のSouthern Launch(サザン・ローンチ)が運営するこの発射施設は、3月にオーストラリアの産業省から認可を取得した。

このニュースは、他国に比べて遅れをとっているオーストラリアと台湾で急成長中の宇宙産業にとって、潜在的に重要な意味を持つ。オーストラリアは2018年に国の宇宙機関が設立されたばかりだが、それ以来、新たな宇宙経済への参入方法について国家的な関心が高まっている。新たに認可された発射施設では、まずは最大3件の弾道飛行ロケットの試験打ち上げキャンペーンを支援することになっている。その目的は、この地域で起こりうる環境への影響に関するデータを収集するためだ。

「今回の打ち上げ許可は、オーストラリアの商業打ち上げ能力を確立し、国際的な宇宙分野においてオーストラリアが何を提供できるかを示す重要な成果です」と、Christian Porter(クリスチャン・ポーター)産業・科学・技術大臣は声明で述べている。「宇宙は世界的に重要な成長市場であり、大規模な投資、新しい技術、さまざまな産業分野における雇用拡大を通じて、オーストラリアの経済的未来を支えることになるでしょう」。

台湾でも自国の宇宙産業は発展が遅れていたが、2021年5月に立法院が国内の宇宙開発を促進するための「太空発展法(宇宙開発法)」を可決したことで、大きな一歩を踏み出した。最近では1月にケープカナベラルからSpaceX(スペースX)のFalcon 9(ファルコン9)ロケットで運ばれたキューブサット「YUSAT」や「IDEASSat」など、いくつかの衛星を軌道に乗せているものの、国内からロケットや宇宙船を打ち上げたことはまだない。

Hapith Iは台湾初の国産ロケットであり、TiSpaceは同国初の商業宇宙打ち上げ会社である。当初は台湾の発射場からHapith Iの試験打ち上げを行う予定だったが、場所に関する法的問題から中止となった。打ち上げだけでなく、TiSpaceは国外でさらなる事業の展開を始める可能性さえある。オーストラリア向けに発行されたプレスリリースによると、同社は「ロケットシステム一式の製造」を現地で行うことも検討しているという。

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画像クレジット:Australian Space Agency

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

豪スタートアップFloodMappは洪水の流れを予測しようとしている

洪水は壊滅的な被害をもたらす。コミュニティをバラバラにし、近隣の人たちを離散させ、毎年何千人もが避難を余儀なくされ、復旧に何年もかかることがある。米国政府は、ここ数十年の洪水により1600億ドル(約17兆6000億円)相当の被害があり数百人が亡くなったと推計している。

地上のセンサーや上空の衛星を活用して、世界中で水がどこにあり、どこへ流れていくのかを示すリアルタイムのモデルがあるはずだと考える人もいるだろう。しかしほとんどない。代わりに、ビッグデータやビッグコンピューティングの可能性を考慮しない旧態依然としたモデルに頼っている。

オーストラリアのブリスベンを拠点とするスタートアップのFloodMappは、水文学(すいもんがく)や予測分析の古いアプローチをやめ、もっとモダンなアプローチで緊急対応責任者や市民に洪水がいつ発生するのか、何をすべきかを知らせたいと考えている。

共同創業者でCEOのJuliette Murphy(ジュリエット・マーフィー)氏は、水資源工学の分野に長年関わり、水が引き起こす大変な破壊の状況を直接見てきた。2011年に同氏は大規模な洪水の際に友人の自宅が水没するのを目撃した。「水が屋根を越えました」と同氏はいう。その2年後にカナダのカルガリーで、同氏は再び同じ状況を目にした。洪水と恐怖の中で、友人は避難するかどうか、どう避難するかを決めようとしていた。

こうした記憶と自身のキャリアから、マーフィー氏は災害担当責任者向けの良いツールを作るにはどうすればいいかを考えるようになった。2018年、同氏は共同創業者でCTOのRyan Prosser(ライアン・プロッサー)氏とともにFloodMappを創業し、130万オーストラリアドル(約1億300万円)とマッチング・グラント(同額補助金)を調達した。

FloodMappの前提はシンプルだ。現在、リアルタイムの洪水モデルを構築するツールはあるが、我々はそれを活用しないことを選んできた。水は重力に従って流れる。つまり、ある場所の地形がわかれば、水がどこへ流れるかを予測できる。難題は、2階微分方程式を高解像度で処理する費用がかさむことだった。

マーフィー氏とプロッサー氏は、何十年にもわたって水文学で一般的に用いられてきた従来の物理学的アプローチを避け、機械学習で幅広く利用される手法を活用して適切に計算し、完全にデータに基づくアプローチをとることにした。マーフィー氏は「これまでボトムアップだったことを、トップダウンでやっています。我々はスピードの壁をまさに打ち破りました」と語る。これが、同社のリアルタイム洪水モデルであるDASHの開発につながった。

ブリスベンの川の氾濫に関するFloodMappのモデリング(画像クレジット:FloodMapp)

ただし典型的なテック系スタートアップとは異なり、FloodMappは独立したプラットフォームになろうとはしていない。そうではなく、他のデータストリームと組み合わせることのできるデータレイヤーを提供してESRIのArcGISといった既存の地理情報システム(GIS)と相互運用し、緊急対応や復旧の担当者に状況を知らせる。顧客はFloodMappのデータレイヤーを利用するためにサブスクリプション費用を支払う。FloodMappはこれまでにオーストラリアのクイーンズランド消防救急サービスや、バージニア州のノーフォーク市およびバージニアビーチ市と連携している。

しかしFloodMappがゆくゆく注目して欲しいと考えているのは緊急サービスだけではない。電話や電力から銀行、実店舗のある小売チェーンなど物理的な資産を持つあらゆる企業がこのプロダクトの顧客になる可能性を秘めている。実は、FloodMappはSEC(米国証券取引委員会)が気候変動に関する財務情報の開示を義務づけることに注目しており、そうなれば新規の取引が大幅に増えるかもしれない。

FloodMappのチームは2人の創業者にエンジニアリングやセールスの人材が加わって拡大した(画像クレジット:FloodMapp)

マーフィー氏は「我々はまだ初期段階です」とし、同社は2021年の水害シーズンを乗り切り新規顧客をいくつか獲得して、2022年の早い段階でさらに資金を調達する見込みだと述べた。同氏は、FloodMappが最終的に「人々を助けるだけでなく、気候変動に直面するオーストラリアが変化しこれに対応するための助けとなる」ことを望んでいる。

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カテゴリー:EnviroTech
タグ:FloodMappオーストラリア自然災害気候変動

画像クレジット:Joe Raedle / Getty Images

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(文:Danny Crichton、翻訳:Kaori Koyama)

LG Energy Solutionが豪州企業とニッケルとコバルトの購入契約を締結、EV用バッテリー製造のため

韓国のLG Energy Solution(LGエナジーソリューション)は、豪州の鉱山会社と6年間にわたるコバルトとニッケルの購入契約を締結し、電気自動車用バッテリーの製造に必要な主要鉱物の安定供給を確保した。

LG Chem(LG化学)の子会社であるLG Energyは、2024年末からAustralian Mines Limited(オーストラリアン・マインズ・リミテッド)から7万1000ドライメトリックトンのニッケルと7000ドライメトリックトンのコバルトを購入する。これは、1回の充電で310マイル(約500キロメートル)以上の走行距離を持つ130万台のEV用のバッテリーを作るのに十分な原材料だ。

LGエナジーソリューションのCEOであるJong-hyun Kim(ジョンヒョン・キム)氏は「近年、世界中で電気自動車の需要が高まる中、重要な原材料を確保し、責任あるバッテリーサプライチェーンを構築することは、業界内での支配力を高めるための重要な要素となっています」と述べた。

この材料は、Australian Minesがクイーンズランド州で15億豪ドル(約1200億円)を投じて開発中のスコーニプロジェクトから調達する。このプロジェクトでは、ろ過した尾鉱を保管するために「ドライスタッキング方式」を採用している。鉱石を地域の水源に投棄したり、地下の採石場に埋めたりするのではなく、ドライスタッキングによって廃棄物から水分を取り除き、砂状の物質にして管理施設で安全に保管する。

LG Energyは声明で「ドライスタッキング法は、建設費や維持費などがかかるため、従来の方法に比べてコストは高いものの、環境に優しい原料採取方法だと考えられています」と述べた。

本契約の唯一の条件は、Australian Minesが2022年6月末までに本プロジェクトの建設資金を確保することだ。融資が確保された場合、この契約は同サイトの予想生産量のすべてを占めることになる。

なお、両社は相互の合意により、契約をさらに5年間延長するオプションを有している。

LG Energyは、世界最大級のバッテリーおよびバッテリー材料メーカーであるLG Chemの子会社だ。同社は2021年7月にバッテリー事業、特に負極材、分離膜、正極バインダーの生産に6兆ウォン(約5570億円)を投じたと発表した。また、2021年夏の初めには、Queensland Pacific Metals(クイーンズランド・パシフィック・メタルズ)と、10年間にわたり年間7000トンのニッケルと700トンのコバルトを購入する契約を締結した。契約は120億ウォン(約11億円)の価値があるとされている。

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LG Chemは、Volkswagen(フォルクスワーゲン)、General Motors(ゼネラルモーターズ)、Tesla(テスラ)などを顧客としている。LG Chemは、世界のバッテリー市場が今後数年間で拡大し、2021年には39兆ウォン(3兆6200億円)、2026年には100兆ウォン(9兆2800億円)になると予想している。

原材料確保を目指すのは大手企業だけではない。Teslaはバッテリー原料を独自に確保するため、7月にコモディティ生産大手のBHPと西オーストラリア州の鉱山からニッケルを調達する契約を結んだ

また、LG ChemとGeneral Motorsとの合弁会社であるUltium Cells(アルティアム・セルズ)のように、OEMメーカーがバッテリーメーカーと提携してバッテリーを開発するケースもある。

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カテゴリー:モビリティ
タグ:LG Energy SolutionLG ChemコバルトニッケルオーストラリアバッテリーEV鉱山

画像クレジット:Fairphone / Flickr under a CC BY-SA 2.0license.

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Nariko Mizoguchi