手持ちのモノを売り支払いに充てられる決済プラットフォームTwigが約40.3億円調達、「グリーン」を謳うがそのサステナビリティにはほころびが見える

Z世代と若いミレニアル世代の消費者をターゲットとし、電子マネーアカウントで衣類や電子機器を売って即座に換金できるロンドン本拠のフィンテックTwig(トゥイグ)が3500万ドル(約40億3000万円)のシリーズAラウンドをクローズした。

今回のラウンドを率いたのは、フィンテック投資専門のFasanara Capital(ファサナラキャピタル)で、Twigによると、LVMH、Valentino(バレンチーノ)、Goldman Sachs(ゴールドマン・サックス)の現幹部や旧幹部など、他にも数多くの匿名の戦略投資家たちが参加したという。

Twigは2020年創業の新興スタートアップで2021年7月に英国でサービスを開始したばかりだが、英国内で急速に成長しており(Twigのアプリのダウンロード回数は月間10万回を超えており、iOSのApp Storeでファイナンス関連アプリの第6位にランキングされた)、すでに海外進出に向けて準備を開始している。

Twigは、シリーズAで獲得した資金で、米国(2022年第1四半期)およびEU(第2四半期。まずはイタリア、フランス、ドイツを予定)に進出すると目されている。また、Web3とデジタル収集品の流行に注目して製品の機能拡張も予定している。

現時点では、Twigのアカウントは英国内でのみ使用できる。創業者兼CEOのGeri Cupi(ゲリー・クピ)氏によると、現段階で約25万人のユーザーを確保しているという。

同氏によると、典型的なユーザーは大学を卒業したばかりの22歳の働く女性だ。こうした女性は、おそらくワードローブに着れなくなった衣類が山のようにあり、いつでも売りたいと考えているからだ。

Twigでは、他の金融機関のアカウントに送金すると1ユーロの手数料を請求されるが、Twigアカウント同士の送金では手数料はかからないため、口コミで広がり成長したことが初期段階での急成長を加速させたようだ。

また「your bank of things(モノの銀行)」というマーケティングスローガンを掲げているものの、Twigは実際には銀行ではないことも指摘しておく必要がある。Twigのアカウントは「電子マネーアカウント」だ。このため適用される規制に関して銀行とは大きな違いがある(例えばTwigのアカウントは英国の預金保証制度の対象にはならない)。

正式な銀行ではないため、Twigは新市場でいち早く成長することができる。銀行業務ライセンスを取得する必要がある場合に比べて、提供サービスに適用される規制が軽減されるからだ。クピ氏によると、現時点では性急に正式な銀行になるつもりはないという。

数十年前、インターネットおよびオープンバンキングを背景とするフィンテックブームなど存在しない時代の昔ながらの銀行は、バッグ、文房具、音楽などの無料のおまけをつけることで学校を出たばかりの新社会人に営業して口座を作ってもらっていた。最近のフィンテックスタートアップは、最も魅力的な機能セットを競って提供することで若い年齢層の顧客を捕まえようとしている。

ただし、お金を口座に入れてもらうことが依然として主たる目的であることは間違いない。

とは言え、TwigはB Corp認証を取得申請中だ。B Corp認証は社会的目的と環境への配慮、透明性、説明責任を重視していると認められる企業に与えられる。クピ氏によると、同社は、申請の最終段階にあり、現時点では保留状態だが、第一四半期には完全な認証を受けられる見込みであるといい、ユーザーにブランド品を捨てる代わりに売るよう勧めることでサステナビリティと経済循環性を実現していることを強くPRしている。

Twigのウェブサイトでも、環境への影響を抑えるためにカーボンオフセットの取り組みを行っており、その他のイニシアチブにも参加していることが掲載されている。

要するに、人類が気候災害を回避するには、世界レベルでのCO2排出量、つまりは全体的な消費の削減が必要となる。そこで疑問視されるのが「サステナビリティ」を再販売というコンセプトに無理矢理結びつける主張の信憑性だ。再販売には、すぐに査定してもらって現金が手に入るため、逆に消費量が増すリスクがあるからだ。

現在所有しているモノを売って現金が手に入るなら、一度購入したアイテムを手放さずに長く使う場合に比べて、消費者はお金をどんどん使って新しいモノを買うよう仕向けられる可能性がある。別の言い方をすれば、消費を削減してCO2排出量を削減するつもりなら、循環経済とモノの寿命をセットで考える必要があるということだ。再販売に必要な面倒な手続きが削減されることで消費者がモノを買わなくなるかどうかはわからない。逆にもっとモノを買うようになる可能性もある。

これがTwigの謳うサステナビリティにほころびが見える点の1つだ。

この難題をクピ氏にぶつけたところ、同氏は次のような議論(いくらか循環論法的ではあるが)を展開して巧妙に解決して見せた。「中古品の流動性を高めるというTwigの目的はサステナビリティの向上と消費量削減の推進を実現します。というのは、より多くの中古品が買えるようになるからです。その結果新しいモノに対する需要が減り、より多くのアイテムがこの(より活発な)中古品経済を介して循環するようになる。

「基本的に、当社のビジネスは、消費者が自分が持っている古いアイテムをお金に変えられるようにすることで、その古いアイテムに新しい命を与えるというものです。これによって、少なくとも中古市場の供給が増大します」と同氏はいう。「中古市場の需要はずっと増え続けています。当社が中古市場の供給側だけでやっていけるのは、現在、中古市場には供給の追加を求める大きなニーズがあるからです。消費者が手持ちの中古品を売ってお金を得たとしても、そのお金で別のモノを購入するとは限りません」。

「これは当社のユーザーの行動からわかることですが、Twigに送られてくる資金のうち約42%は新しい経験、つまり旅行や経験主導の活動に使われています。ですから、流動性が向上したからといって、必ずしもモノの消費が増大して環境に悪影響を与えるとは限りません。それがこれまでのユーザーの行動から分かっていることです」。

クピ氏はTwigのビジネスを非常にシンプルな次の宣伝文句に集約させている。「当社は資産をトークン化します」。

「Twigでは、例えばGucci Marmont(グッチ・マーモント)のハンドバッグをプラットフォーム上にアップロードします。そして、アップロードされた資産をトークン化して、その価格を提示します」と同氏は説明する。

「当社の目標はこの仕組を外部でも使えるようにすることです。そこで役に立つのが、ブロックチェーンです。当社は資産の流動性を向上させて、消費者が物理的なモノを売って仮想的なモノを入手し、その仮想的なモノを使って物理的なモノや体験を購入するという行為を簡単に行えるようにします」。

「基本的に、ユーザーが簡単に取引できるようにすることが目的です」。

クピ氏にはブロックチェーンと循環経済に関するバックグラウンドがある。例えば、2018年には、デニムのアップサイクルビジネスをLevi’s Albania(リーバイス・アルバニア)に売却している

Twigのホワイトペーパーによると、よく売れる物理的なモノとしては、Nike(ナイキ)、Gucci(グッチ)Chanel(シャネル)、Hermes(エルメス)、その他の高級品メーカーのブランド品などがあるという。このペーパーには「所有の未来の再定義」と「 循環型ライフスタイルで生活を送るためのパワーをZ世代に付与」という内容が記載されている。

クピ氏によると、Appleの電子機器も中古市場で高値がついているという。同氏は、購入対象中古品に、不要になった衣類だけでなく電子機器も追加したところ、それまで女性が9割以上だったTwigの利用者構成が、女性7割男性3割くらいに変化したと指摘する。

Twigは中古品の再販売に関する手続きを代行する。具体的には、中古品を即座に査定して、Twigがその中古品の購入を承諾するとすぐに現金が手に入るので何でも好きなものを買える(Twigでは極めて詳細な購入対象品リストを用意している)。

Twigまでの配送料は無料なので、Twigのサービスを利用することで、Vinted(ヴィンテッド)Depop(ディポップ)といった中古品マーケットプレイスにアイテムを自分で直接販売する場合に発生する面倒な手続きやリスクは基本的に排除される(ただし、自分で直接販売した場合よりも売値は低くなる)。

Twigの倉庫に到着したアイテムが品質チェックに引っかかると、ユーザーは返送料を請求される(そして、おそらく即金で支払われた代金も全額Twigに返金される)。アイテムが売れなかった場合は、アップサイクルとリサイクルが適切に行われているかどうかが確認され、どちらの方法でも対処できない場合は、慈善団体に寄付される。環境に悪いため、ごみ廃棄場送りにはしない。

クピ氏によると、Twigは現在成長重視フェーズであるため、再販ビジネスで大きな利益を出すことは考えていないという。

提示する買取価格は、動的に変化するさまざまな要因によって変わる。前述のホワイトペーパーによると、Twigは「市場ベースの価格設定アルゴリズム」を使用して、中古市場の100万点を超える商品を分析し「ブランド、アイテムのカテゴリー、市場セグメントに応じた適切な再販価格を提示している」という。

その前提の中核をなすのは、消費者にとっての総所有コストという概念を再販価値の変化に織り込むという考え方だ。これは購入パターンをシフトさせるパワーを秘めている可能性がある(例えば消費者は、環境的なダメージを与える低再販価値のファストファッションではなく、高級ファッションを選択してその価値を長期間に渡って楽しむ選択をするようになるかもしれない)。

Twigは銀行のような機能(Twigの口座を作るとTwigVisaデビットカードが発行され、国内および国際送金を行うことができる)と本業の中古品再販サービスを組み合わせたものというが、ターゲットであるZ世代と若いミレニアル世代向けの宣伝文句だ。こうした世代の若者たちは中古品市場の倹約性とサステナビリティの両方にますます強い関心を寄せている。

Twigがターゲットとする年齢層を見れば、同社のマーケティングが循環経済による環境への配慮に重きを置いている理由がわかる(「Twigは循環経済を簡単に実現し、サステナビリティの高いライフスタイルを選択できるようにします」とグラフィックを多用したレトロ風のウェブサイトは謳っている)。

特にZ世代はサステナビリティ世代と呼ばれ、この世代の若い消費者は「モノを所有することよりも使うことを優先する」とTwigのホワイトペーパーに書かれている。

こうしてみると、銀行の機能を、文字どおり経済的価値を保存する場所ではなく、再販価値の交換所および仲介者として捉え直すことが非常におもしろく見えてくる。消費者は、あらゆるモノを擬似通貨に変えて、所有したいモノややりたいことの支払いに充てることができる(ハイテクによるバーター取引の再発明と言ってもよいだろう)。

しかし、Twigのビジネスにブロックチェーンが深く組み込まれていることを考えると、同社の主張するサステナビリティには別のほころびが見えてくる。

Twigのテクノロジーは最初からブロックチェーンを基盤として構築されているが、同社のウェブサイトのユーザー対面型の説明からそのことに気づくのは難しい。TwigのシリーズAで公開されたプランでは、Z世代向けの環境配慮型マーケティングがまったくうまくいかない危険がある。というのは、PRでは、Twigを「世界初のWeb3対応グリーン・ペイメント・インフラストラクチャー」と称し、その立ち上げに、最近のWeb3ハイプをうまく利用しようとしているからだ。

この来たるべき機能により、ユーザーは、実世界の資産を「トークン化」して「数秒で取引可能にできる」と、リリースノートには書かれており、さらに次のように続く。「Twigを使用すると、デジタルアイテムと物理アイテムをマネタイズして新しい方法で取引できます。このアプローチにより、ユーザーはチェックアウトページで手持ちのアイテムを売って、暗号資産を購入したり、衣類や電子機器を売ってNFTを購入したりできます」。

暗号資産とNFTの取引が「グリーン」に行われることが本当に希望のあることなのかどうかはよく考えてみる必要がある。

結局、暗号資産に使われるエネルギーコストそれ自体、地球に壊滅的な悪影響を与える要因のように見えなくもない。

例えばケンブリッジ大学が2021年行った研究は、1つの暗号資産(ビットコインなど)だけで、アルゼンチン全体の年間エネルギー消費量を超えていることを示している。

2021年3月に実施された別の研究によると、ビットコインはノルウェーと同じ量のエネルギーを消費したとし、ビットコインのCO2排出量はまもなくロンドンの大都市圏全体で生成される排出量に匹敵するようになると予測している。

要するに、ブロックチェーンベースの暗号資産(もちろんトランザクションを承認するためにプルーフ・オブ・ワークを必要とするもの)の悪名高い非効率性は、サステナブルとは程遠いものに思えるということだ。

しかもブロックチェーンはもっとひどいエネルギーの浪費に関わっている。すなわち、NFT(代替不可能なトークン)の台頭である。NFTでは、ブロックチェーンの上にデジタル収集品を取引するレイヤーを追加することで、エネルギー集約的なトランザクションが必要となり、そうしたトランザクションが促進される。

(ファッションやステータスシンボルとしての)NFTをめぐる現在の騒動と そうしたデジタル資産の小売取引、およびエネルギーを燃やして収集品ピクセルをシフトさせることで非常に手っ取り早くお金を作り出すことができるという提案によって、このエネルギーの焚き火にさらなる燃料が注入されている。

2021年、あるデジタルアーティストの分析によって、1つの平均的なNFTは、EUに住んでいる1人の人間の1カ月分の電力消費量に相当するCO2を排出することが示された。以前と同様、ユーザーにトークン化とモノ(または、デジタル収集品)の取引で忙しくするように促す機能を、どのような形であれ「グリーン」に稼働させる方法を思いつくのは難しい。

しかし、クピ氏はこの反論にもひるまない。

第一に、Twigが基盤としているブロックチェーンインフラストラクチャーは他のブロックチェーンよりもエネルギー効率が高いと同氏はいう。

「ブロックチェーン自体はテクノロジーとして環境に悪いわけではありません。ブロックチェーンにはさまざまな応用事例があります」と同氏はいう。「当社の基盤となっているHyperledger Sawtooth(ハイパーレッヂャーソートゥース)というブロックチェーンは、他のソリューションに比べてエネルギー消費量が極めて小さいという特長があります」。

「つまり、当社はエネルギーを大量に消費するソリューションの使用を最小限に抑えたいと考えています」。

また、Twigは内部のエネルギー消費量を計算して、環境への影響を数量化しており、対抗策としてカーボンオフセットの取り組みも行っているという。

さらには、大気圏からCO2を排除するプロジェクトも支援している。

ただし、個々のプロジェクトがどの程度実行可能で信頼できるものかは、まったく別の問題だ。

Twigは自社のエネルギー消費を最小化し、CO2排出量をオフセットしようとしているかもしれないが、それより大きな環境への影響が、二次使用つまり、TwigのユーザーとサプライヤーがTwigを利用した結果として発生する消費、エネルギー使用、CO2排出量によって起こる可能性がある。

こうした関連のある間接的な影響(サステナビリティレポートの用語でScope 3排出量と呼ばれる)を計算することは、企業の直接的なエネルギー使用を内部的に監査するよりもはるかに難しい。とはいえ、Scope 3排出量は企業のCO2排出量の大きな部分を占める傾向があることも確かだ。このため、そうした間接的な取引、排出量、影響をなきものとして片付けてしまうことはできない。

Twigは、カーボンオフセットによって商品の配送にともなうCO2排出量を相殺するなど、明確な姿勢でScope 3排出量対策に取り組んでいる。また、B Corp認証を取得しようという野心も称賛に値する。

しかし、Twigによって拡大も縮小もするかもしれない消費者需要やトレンドに基づいて、最終的に発生するエネルギーコストを予測するのは非常に難しい。

ユーザーに暗号資産を購入し、NFT取引を始めるよう促すことによってエネルギーコストが発生することは間違いない。そして、たとえTwigが中古品の流動性を高めることで、消費者が新品を購入する需要が低下し、新製品の実質生産量を削減することができるとしても、このような大量のエネルギー消費にともなうコストによって環境へのプラスの影響が相殺されてしまう危険がある。

とはいえ、支払いに使用できるものがこのように根本的に見直されると(あらゆるモノで支払いができる。トークン化された価値の世界では、理論上、消費者は実際のお金を使う必要がない)、消費活動の大きなシフトにつながり、循環経済に実際に目立った変化をもたらすことができる。その結果、数十年に渡る資本主義を特徴づける使い捨て消費の悪循環から抜け出すことができる。

別の言い方をすれば、(認証をサポートすることで偽物に対抗できる)ブロックチェーンベースのトークン化と(分散台帳インフラストラクチャによって完全な所有履歴を把握することで実現される)安定度の高い査定のおかげで、モノの再販時の価値をもっと確実に予測できるなら、消費者は、持っているモノを丁寧に扱う気持ちになるかもしれない。モノの寿命が維持されれば高い売値がつくからだ。そうなれば、世界の産業はそもそも現在の半分だけモノを作れば足りるようになり、資源の枯渇によって地球が機能不全に陥る重圧から解放される。

これには確かに一理ある。

あらゆるモノを売って極めて簡単に支払いができるようにすることでお金の価値が重要視されなくなることは、価値、所有、富に対する考え方を修正するために必要な最初の一歩になるかもしれない。

クピ氏は次のように説明する。「現金を使う代わりに、自宅にある不要になったモノを使ってNFTを買うことができます。例えば使わなくなった古いiPhone(アイフォーン)を売ってNFTや暗号資産を買ったり、体験を買うことができます。ニューヨークまでの旅行費用に充てたり、次回の職業教育コースの支払いに充てたりできます。つまり、Twigの目的は、市場の流動性を高めることです。人々が使わなくなった資産を売ることでその資産に新たな第二の命を与えることなのです」。

「当社の信念は、財布にも地球にもやさしい結果をもたらすことです」。

Twigのビジョンは自身を支払いプラットフォームに変えることです。ユーザーや顧客の代わりに物理的なモノを支払い代金に変えるプラットフォームです。

「現時点では、Twigは単なるB2Cプラットフォームに過ぎませんが、ゆくゆくはB2B2Cプラットフォームにしたいと考えています。将来的には、さまざまなプロバイダーの決済ゲートウェイとして接続する予定です」とクピ氏はいい「いくつかの大手小売業者」とTwigのインフラストラクチャへの接続を許可する契約を結んでいると話した(小売業者の名前は明かしていない)。

「当社がやろうとしているのは、要するに、富の定義の再発明です」とクピ氏は付け加え、お金の概念が大きく様変わりしていると説明する。「自分が所有しているものがすべてお金として扱えるとなると、富の見方も変わってきます」。

「富とは、従来の定義では、家や車など、大きな資産の価値です。しかし、たとえばワードローブの価値は通常資産の一部とはみなされません。我々はこれを変えたいのです。すべてのモノに即時の流動性があれば、モノを現金とみなすことができます。現金だろうとGGマーモントのハンドバッグだろうと違いはないのです。ポンドで何かを買いたい場合、現金でもハンドバッグでも使えるのです」。

Twigが普及すれば、決済の未来は今よりずっとビジュアルで物質的なものになる可能性があります。例えばeコマース決済ウインドウに鋳造しておいたNFTをドラッグアンドドロップして中古のiPhoneを購入する。

あるいは、限定版のナイキのシューズを売って、ずっと楽しみにしていた都市滞在型の春休みを取る。

ダイヤモンドで覆われたすばらしい宝石を売って高級不動産を買うといった具合だ。

若い消費者たちはコモディティ化された価値交換可能なモノの世界をすでに違和感なく受け入れているようだが、年配の消費者たちはどうだろう。クピ氏は、ブーマー世代やX世代が大枚をはたいて買ったモノを手放して支払いに充てるという新しいやり方に納得できると考えているのだろうか。

サイン入りの初版本や貴重なビニールのレコードが将来の決済方法の一部に取り込まれることになるだろうか。

「正直、その答えは私にもわかりません」とクピ氏はいう。「現時点では、Twigに対するZ世代の反応は極めて良好です。また、英国のミレニアル世代、我々がターゲットとしている20代の若者たちの反応も上々です。英国外の市場に進出した際には状況は変わるかもしれません」。

画像クレジット:Twig

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Dragonfly)

東京都八王子市と町田市においてAI配車システムを用いた紙おむつの効率的回収事業が開始

白井グループは11月18日、凸版印刷が受託した東京都モデル事業「家庭用紙おむつの効果的回収と完結型リサイクル事業」に参画し、八王子市と町田市において紙おむつリサイクルの低炭素型回収コースをAI配車システムを用いて最適化すると発表した。

現在、家庭から廃棄される紙おむつは可燃ごみとして回収されている。これに対して同事業では、紙おむつの素材であるパルプとプラスチックを再生原料にリサイクルするため、従来の可燃ごみとは別の車両で回収し、再生工場まで運搬するという。八王子市と町田市は、同事業において紙おむつ回収のモデル地区をそれぞれ設定し、従来の可燃ごみと紙おむつを両市の委託企業が回収する。

白井グループは、両市において、紙おむつのみを選択的に回収した場合の最短ルートを、2014年から実用しているAI配車システムで計算。これらの結果を総合して、両市をまたぐ広域回収のシミュレーションを行うとともに、両市が各々全域に適用した場合の必要車両台数を試算する。

なお、白井グループのAI配車システムは、これまで約2000の排出事業者が回収依頼する可燃ごみ、不燃ごみ・資源物を、排出曜日ごとに異なる約150コースをAI配車システムで計算し、2014年から手作業に比べ10%以上の削減効果を出しているという。廃棄物ビジネスの革新を目指す白井グループが八王子市と町田市においてAI配車システムを用いた紙おむつの効率的回収事業を開始

一般に、全国の自治体では、リサイクル推進のため廃棄物を種類ごとに分別排出する取り組みが進められている。この実効性を高る方法としては「一括回収後に再度分別する」「種類ごとに車両を配車」の2つがあり、それぞれ実態としてはさらなる経済性の向上が重要になっているという。今回の取り組みのような「種類ごとに車両を配車」の分別回収ケースでは、最も経済的なコースで回収することで、追加の車両や重複ルートを省くことが可能となる。またこのため、移動に伴う二酸化炭素排出量を削減できるとしている。

白井グループは、1933年創業で家庭系廃棄物(東京都23区委託)と事業系廃棄物の両事業をカバーする数少ない企業。「都市の静脈インフラを再構築する」ことをミッションとして掲げ、ITやAIなどを積極的に活用し廃棄物ビジネスの革新を目指しているそうだ。具体的には、廃棄物処理を受け付ける情報プラットフォーム事業や、配車台数を削減するAI配車システムなどを事業化しており、今回は、社会として廃棄物量を削減するためのサーキュラーエコノミー事業にあたるという。

また廃棄物処理依頼の電子化、RFIDとブロックチェーンを用いたトレーサビリティ検証を進めており、それらの成果を統合して、2022年度からは静脈物流のさらなるDX化を加速するとしている。

個人向けセール&リースバック「CASHARi/カシャリ」のガレージバンクが1億円のプレシリーズA調達

個人向けセール&リースバック「CASHARi/カシャリ」のガレージバンクが1億円のプレシリーズA調達

個人向けのセール&リースバックサービス「CASHARi」(カシャリ。Android版iOS版)を開発・運営するガレージバンクは10月13日、プレシリーズAラウンドにおいて、第三者割当増資による1億円の資金調達を実施したと発表した。引受先は、既存投資家のW ventures、またマネックスベンチャーズ、山崎令二郎氏(起業家・エンジェル投資家)。累計資金調達額は約1億5000万円となった。調達した資金は運営体制の強化やCASHARのUX改善とサービス拡充にあてる予定。

CASHARiは、簡単な操作だけでファッションからデジタルまで幅広いアイテムの価値を査定し資金化すること、またその資金化したアイテムを使い続けることが可能なアプリ。一切の手続きがオンラインで完結するのも特徴。買取代金の受取りは、口座振込、口座登録不要のセブン銀行ATM受取を選択可能。サービス利用中はアイテムを手放す必要がなく、利用料を支払うことでアイテムを使い続けられる。リース期間は3カ月。リース終了後に残存価格を支払えば、ユーザーは売ったアイテムを再び買い戻すことができる。個人向けセール&リースバック「CASHARi/カシャリ」のガレージバンクが1億円のプレシリーズA調達

個人向けセール&リースバック「CASHARi/カシャリ」のガレージバンクが1億円のプレシリーズA調達

2020年にオープンβを開始し、2021年8月にはユーザー数が1万人を突破した。2021年7月には、好きなタイミングでいつでも解約できる「中途解約機能」をリリース。事前チャージ不要のコンビニ後払い型決済サービス「こんど払い byGMO」といった新機能も導入している。

2020年1月設立のガレージバンクは、「モノの価値を、みんなの力に」をミッションとするスタートアップ。モノの価値を公正に評価し、その価値を即座に資金化する仕組みを整えることで、サーキュラー・エコノミーの実現と、信用情報に頼らない新たな個人向けファイナンスの実現を目指している。

 

循環経済を重視してCO2排出量の削減を目指すBMW Neue Klasseのラインナップ

BMW Groupは、米国時間9月2日、走行車両の全世界の二酸化炭素排出量を2030年までに、2019年レベルから50%、車両の全ライフサイクルの二酸化炭素排出量を2019年レベルから40%削減するという目標に向けて尽力する意向を発表した。これらの目標は、持続可能性の高い車両ライフサイクルを達成する循環経済の原則を重視する計画も含め、同社のNeue Klasse(新しいクラス)と呼ばれる新ラインナップ(2025年までに発売予定)で明らかになる。

3月に発表されたBMWの「新しいクラス」と呼ばれる計画は、同社が1962年から1977年までに生産したセダンとクーペのラインナップ、つまりBMWのスポーツカーメーカーとしての地位を確固たるものにしたラインナップを根本的に見直すものだ。同社によると、この新しいラインナップの目玉は「一新されたITおよびソフトウェアアーキテクチャ、新世代の高性能電気ドライブトレインとバッテリー、車両の全ライフサイクルに渡って持続可能性を達成するまったく新しいアプローチ」だという。

「Neue Klasseは、CO2削減の取り組み姿勢を一段と明確にし、世界の平均気温上昇を1.5度に抑える目標を達成するための明確な進路に沿って進むという当社の決意を表明するものです」とBMW AGの取締役会長 Oliver Zipse(オリバー・ジプス)氏は今回の発表で述べた。「CO2削減の取り組みは法人の活動を判断する大きな要因となっています。地球温暖化対策では、自動車メーカー各社の自社製車両の全ライフサイクルにおけるCO2排出ガスの削減量が決め手となります。当社がCO2排出量の大幅な削減について透明性が高くかつ野心的な目標を設定している理由もそこにあります。実際の削減量はScience Based Targets(科学的根拠に基づく目標)イニシアチブによって評価され、効果的で測定可能な貢献度として示されます」。

BMWによると、同グループのCO2総排出量の70%は、車両の利用段階で発生したものだという。これは、BMWの販売車両の大半が未だにガソリン車であるという事実からすると納得がいく。2021年上半期のBMWの総販売台数に占める電気自動車またはプラグインハイブリッド車の割合は11.44%であった(2021年上半期収益報告書による)。同社は、2021年末までに、ハイブリッド車を含め100万台のプラグイン(コンセント充電型)車両を販売するという目標を表明している。第2四半期終了時点で、約85万台を売り上げているが、車両利用段階でのCO2排出量を半分にするという目標を達成するには、CO2排出量が低いかゼロの車両の販売量を大幅に増やす必要がある。同社にはすでにi3コンパクトEVシリーズを販売しており、2021年後半には、i4セダンとiX SUVという2つのロングレンジ(長航続距離)モデルが発売され、2022年にはさらに別のモデルも投入される予定だ。GMやボルボと違い、BMWはガソリン車を廃止する計画をまだ発表しておらず、最初から電気自動車として設計されたラインナップの販売も開始していない。

今回の発表は、BMWが、Volkswagen(フォルクスワーゲン)、Audi(アウディ)、Porsche(ポルシェ)など、ドイツの他の自動車メーカーとともに、1990以来、排出ガスカルテルに関与していたことを認めた2カ月後に行われた。これらのメーカーは、EUの排出ガス規制で法的に必要とされる基準を超えて有害なガス排出量を削減できるテクノロジーを持ちながら、共謀してそれを隠ぺいしていた。EUは4億4200万ドル(約486億円)の制裁金を課したが、BMWの第2四半期の収益が60億ドル(約6599億円)近くになることを考えると、軽いお仕置き程度に過ぎない。

関連記事:EUがBMWとVWに約1110億円の制裁金、90年代からの排ガスカルテルで

また、2021年8月に発表されたEUの「Fit for 55」エネルギーおよび気候パッケージでは、世界全体のCO2ガス排出量の目標削減量が、2030年までに40%から55%に上方修正された。これは、自動車メーカーが電気自動車への移行ペースを早める必要があることを意味し、BMWもその点は認識している。欧州委員会では他にも、CO2ガス排出量を2030年までに60%削減し、2035年までには100%カットするという提案事項も検討されているという。これは、その頃までには、ガソリン車を販売することがほぼ不可能になることを意味する。

BMWによるとNeue Klasseによって、電気自動車が市場に出る勢いがさらに加速されるという。同社は、今後10年で、完全電気自動車1000万台を販売することを目標にしている。具体的には、 BMW Group全体の販売台数の少なくとも半分を完全電気自動車にし、Miniブランドは2030年以降、完全電気自動車のみを販売することになる。BMWは、循環経済重視の一環として、Neue Klasse計画による再生材料の利用率向上と、再生材料市場を確立するためのより良い枠組みの促進も目指している。同社によると、再生材料の利用率を現在の30%から50%に高めることが目標だというが、具体的な時期までは明言していない。

BMWによると、例えばiXのバッテリー再生ニッケルの使用率はすでに50%に達しており、バッテリーの筐体での再生アルミニウムの使用率も最大30%になるという。目標はこれらの数字を上げていくことだという。また、BMWは、BASFおよびALBAグループとの提携プロジェクトで自動車の再生プラスチックの使用量を試験的に増やす試みも行っている。

BMWが称する総合リサイクリングシステムの一環として「ALBA Groupは BMW Group製の寿命末期車両を解析して、車両間でのプラスチックの再利用が可能かどうかを確認している」という。「第2段階として、BASFは分類前の廃棄物をケミカルリサイクル処理して熱分解油を取得できないかどうか調べています。こうして得られた熱分解油はプラスチック製の新製品に利用できます。将来的には、例えばドアの内張りパネルやその他の部品を廃棄車の計器パネルを利用して製造できる可能性があります」。

リサイクリングプロセスを簡素化するため、BMWは、車両の初期段階設計の考え方も取り入れている。材料は、製品寿命が終わったときに容易に分解 / 再利用できるように組み立てる必要がある。BMWでは、再利用可能な材料に戻すことができるように車内インテリアを単一の素材で製造することが多くなっているという。

「例えば車内の配線システムは、車両内のケーブルハーネスで鉄と銅を混在させないようにして、容易に取り外しできるようにする必要があります」と同社は述べている。「鉄と銅が混在していると、再生鉄での鉄の必須特性が失われるため、自動車業界の高い安全性要件を満たすことができなくなるからです」。

また、循環経済では、高品質の車両を使用する必要がある。そうすることで、パーツを容易にリサイクルまたは修理できるため、結果として全材料数が削減されるからだ。

今回の発表で、BMWは車両のライフサイクルについて透明性を高めることを約束している。同社は、他のほとんどの大手自動車メーカーと同様、ライフ・サイクル・アセスメント(生産から回収再利用までの過程で環境に対する影響度を評価する手法)を公開しているが、業界の標準があるわけではない。このため、異種の車両を比較することが難しい場合がある。車両の全ライフサイクルを把握することは、CO2排出量の削減目標を達成するのにますます重要になっている。バッテリーと車両を製造するために必要なすべての材料を取得するためにサプライチェーンおよび製造段階で発生する排出ガスについての調査結果がようやく明らかになってきているが、この調査により、EV化の動きがライフサイクル全体のCO2排出量を却って増やす可能性があることが明らかになるかもしれない。

「内包二酸化炭素の数値化は大変難しく、特にEVでは非常に複雑で不確実です」とManhattan InstituteのシニアフェローMark Mills(マーク・ミルズ)氏は最近のTechCrunchの記事に書いている。「EVは走行中には何も排出しないが、生涯総炭素排出量の約80%は、バッテリーを製造する際のエネルギーおよび自動車を動かすための電力を発電する際のエネルギーから発生している。残りは、車の非燃料部品の製造によるものである。従来型の自動車の場合は、生涯総炭素排出量の約80%が走行中に燃焼した燃料から直接発生する二酸化炭素で、残りは自動車の製造とガソリンの生産にかかる内包二酸化炭素から発生する」。

関連記事:【コラム】材料、電池、製造の炭素排出量を積み上げたEVの本当のカーボンコスト

画像クレジット:BMW Group

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Dragonfly)

月額料金で新品または再生品のSIMフリー端末をリースするスマホサブスサービスの英Raylo

英国を拠点とし、スマホサブスクリプションサービスを展開するスタートアップ企業Raylo(レイロ―)は、Octopus Ventures(オクトパスベンチャーズ)が主導するシリーズAラウンドで1150万ドル(約12億7000万円)を調達した。

今回の資金調達は、2020年の債務による資金調達に続くもので、2019年の創業以来、Rayloが調達した金額は株式発行と債務による調達を合計して4000万ドル(約44億円)になる。同社には、Macquarie Group(マッコーリーグループ)、Carphone Warehouse(カーフォンウェアハウス)のGuy Johnson(ガイ・ジョンソン)氏、Funding Circle(ファンディングサークル)の共同設立者なども投資を行っている。

調達した資金は「消費者がスマートフォンを所有するのではなく、月額料金を支払って新品または再生品のSIMフリーデバイスをリースする」サブスクリプションサービスの強化のために使用される。

Rayloによると、顧客数と売上高は前年同期比で10倍の伸びを示しており、今回の調達で、従業員の倍増やさらなる技術開発など、英国における成長の加速を計画しているという。将来的にはグローバルに展開することも示唆しているが、現時点では英国を軸に着実に成長したいという考えだ。

Rayloを通じた最新スマートフォンの購入では、契約終了時のハードウェアの所有権移転をともなわないので、ユーザーは希望小売価格よりも安い価格でスマートフォンを利用することができる。

環境への配慮はさることながら、数年前から10万円を超えているiPhoneの最上位機種のようなプレミアムスマホの価格を考えると、希望小売価格よりも安い価格というのはますます重要なポイントになるかもしれない。

さらに、スマートフォンに大金を支払える消費者はそれほど多くはないという事実もある。リースや返却という手段は、そのようなユーザーに高額なハイエンドモデルを利用する方法を提供する。

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一般的なRayloのサービスでは、ユーザーは12カ月または24カ月の契約期間終了後にデバイスを返却し、返却されたデバイスは2~3回リサイクルされて他のユーザーに利用される。

Rayloによれば、返却されたデバイスは同社のパートナーによってリサイクルされる。通信事業者による販売では、消費者は使用しなくなった古いデバイスを引き出しにしまい、デバイスが持つ潜在的な有用性を無駄にしてしまうのに対し、Rayloのサービスでは、デバイスを長く使うことで持続可能性を促進する循環型モデルを構築できるとしている。

使わなくなったデバイスを家族に譲ったり、売却や下取りに出したりする人も少なくないが、Rayloによれば、英国では約1億2500万台のスマートフォンが使われずに「冬眠」しているという。スマホユーザーの多くが、スマートフォンの第二の人生を気にしていないということだ。

Rayloは、1台の定額制リースを6~7年間で3人のユーザーに利用してもらえると考えている。これが実現すれば、英国でのスマートフォンの平均寿命(2.31年)は約2倍になる。

できるだけ長期間利用できるように、Rayloのすべてのスマートフォンにはケースと液晶保護フィルムが無料で提供される。

ユーザーは、リースされたスマートフォンを傷つけたり、高額な修理代や返却できなくなったりした際の料金をカバーできるように、保険に加入するかどうかを検討する必要がある。Rayloは、独自のデバイス保険をオプションとして販売しており、保険に加入すると月額料金は少し高くなる。

Rayloのサービスは通信事業者のサブスクリプションプランと競合するが、同社はリース方式の方が安いと主張する。契約終了の際、消費者はデバイスの所有権を持たない(すなわち、他の場所で売ったり下取りしてもらったりできる権利が付与されない)ので、当然といえば当然である。

契約終了時にデバイスを返却したくない(あるいは返却できない)場合、ユーザーはノンリターン(返却不可)料金を支払うが、この料金はスマートフォンの種類やリース期間によって異なる。例えばSmsungの「Galaxy S21 Ultra 5G」や「iPhone 12 Pro Max」(いずれも512GBモデル)を12カ月間使用した場合など、プレミアムモデルのノンリターン料金は600ポンド(約9万円)以上になることもある。

一方、契約終了後もアップグレードせずに同じデバイスを使い続けたい場合は、通常の月額料金を最長36カ月まで継続して支払うことが可能で、ノンリターン料金は1ポンド(約150円)になる。

Rayloのリースデバイスにはすべて24カ月間の保証が付いており、ユーザーによる破損や事故に起因しない故障については無償で修理を行い、修理ができない場合は代替機を提供するとしている。

今回のシリーズAラウンドについて、Octopus Venturesのアーリーステージフィンテック投資家であるTosin Agbabiaka(トーシン・アグバビアカ)氏は、声明の中で次のように述べる。「サブスクリプションエコノミーによって、商品やサービスへのアクセスは急速に変化しています。しかし、個人にとって最も価値のあるデバイスであるスマートフォンに関しては、消費者は所有権一体型のサービスの利用を余儀なくされています。ほとんどの人が買っては捨て、買っては捨てのサイクルに陥っていて、経済的にも環境的にも大きな負担となっています」。

「Rayloは、多くの消費者にプレミアムスマホを低価格のサブスクリプション料金で提供し、最新技術を利用できるようにすることでこの問題を解決します。一度使用された機器を再利用する同社のサービスは、この市場において消費者に支持される持続可能な選択肢となります。この市場には大きなチャンスがあります。私たちは、(Rayloの共同設立者の)Karl Gilbert(カール・ギルバート)氏、Richard Fulton(リチャード・フルトン)氏、Jinden Badesha(ジンデン・バデシャ)氏の3人には、スマートフォンの提供方法を進化させるビジョンと深い専門知識があると信じています」。

近年、ヨーロッパでは、多くの再生電子機器ビジネスが投資家の注目を集めており、欧州委員会でも「修理する権利」法の制定が検討されている。

この分野で最近行われた資金調達には、フランスの再生品市場スタートアップ「Back Market(バックマーケット)」の3億3500万ドル(約369億円)、ベルリンを拠点とする「Grover(グローバー)」の電子機器サブスクリプション事業に対する7,100万ドル(約79億円)、フィンランドを拠点とし、中古iPhoneの再生・販売を行う「Swappie(スワッピー)」の4,060万ドル(約45億円)などが挙げられる。

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Dragonfly)

世界中の環境テックベンチャー対象の助成プログラムを英Founders FactoryとスロバキアのG-Forceが展開

英国のテックアクセラレーターFounders Factory(ファウンダーズファクトリー)はFounders Factory Sustainability Seedプログラムの立ち上げで欧州の同業と力を合わせる。スロバキアのブラチスラヴァに拠点を置きつつ広範に活動しているG-Force​(GはGreenからとっている)との提携のもとに立ち上げたプログラムは気候テックのスタートアップへの投資と振興を目的としている。

プログラムは世界の温室効果ガス排出を削減し、循環型経済への移行を加速させ、持続可能な住宅供給や製造のソリューションを生み出し、また気候に優しいモビリティ、食糧生産、二酸化炭素・メタン回収・貯留に対応できるスタートアップの起業家に​投資する。

主にブラチスラヴァ以外で活動しているG-Forceとともに展開するこのプログラムは、遠隔と対面のサポートを織り交ぜた「ハイブリッド」方式で展開される。世界の環境テックベンチャーがプログラムに申し込んで参加できるように、との意図だ。

Sustainability SeedプログラムでFounders FactoryのパートナーとなるG-Forceは財務面で、Boris Zelený氏(ボリス・ゼレニー、AVASTに14億ドル[1540億円]で売却されたAVGを創業した人物だ)、Startup GrindのMarian Gazdik(マリアン・ガズディク)氏、そしてアーリーステージ投資家のPeter Külloi(ピーター・キューロイ)氏やMiklós Kóbor(ミクローシュ・コーボー)氏を含む多数の東欧の投資家によって支えられている。

プログラムに選ばれたスタートアップは最大15万ユーロ(約2000万円)のシード投資、Founders Factoryチームによる6カ月のサポート、潜在的な顧客やパートナー、法人、投資家への紹介を受けられる。

Founders FactoryのCEOであるHenry Lane Fox(ヘンリー・レーン・フォックス)氏は次のように述べた。「起業家が創造を得意とするディスラプトを促進することで、すべての人にとってより良い、そしてより持続可能な未来を形成することができます。G-Forceとの提携で、Founders Factory Sustainability Seedプログラムは世界にポジティブな影響を与えるベンチャーの育成とサポートを約束する主要プレシードプログラムになります」。

G-Forceの共同創業パートナーであるMarian Gazdik(マリアン・ガズディク)氏は「Founders Factory Sustainability Seedプログラムとの提携での我々の野望は、G-Forceを欧州の中心を拠点とする世界クラスの持続可能なイノベーションハブにすることです」と述べた。

アイデアを進展させて、レーン・フォックス氏は「これまでは1つの法人パートナーと組み合わせるのが当社のモデルでしたが、この特異なケースではエンジェル投資家のグループをまとめて紹介し、純粋な金融投資家との取引にすることができます。これは実際にこの特異な部門にうまく合うと考えています。我々はまた、そうした企業がプログラムを最大限活用できるよう、早い段階でより多くの資金を提供します」と筆者に語った。

ガズディク氏は、英国ではなく欧州を拠点とすることでEUの助成プログラムを利用することができる、とも付け加えた。

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画像クレジット:G-Force team

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(文:Mike Butcher、翻訳:Nariko Mizoguchi

トヨタ、BMW、ブリヂストンの迷い、環境に配慮したモビリティは必要だがそのコストは誰が払う?

国連が採択したSDGsや、ESG投資に注目が集まる中、自動車業界にも環境への配慮が求められるようになってきた。フロスト&サリバン主催「インテリジェントモビリティサミット2021 ゼロへのイノベーション」においても、今後のモビリティを考える上で「循環型経済」がテーマとして挙げられている。同サミットでは、トヨタ・ダイハツ・エンジニアリング&マニュファクチャリング上級副社長兼一般財団法人トヨタ・モビリティ基金アジア・パシフィック地区担当プログラムディレクターのPras Ganesh(プラス・ガネシュ)氏、BMW Groupサーキュラーイニシアチブ担当役員のIrene Feige(アイリーン・フェージュ)氏、ブリヂストンGサステナビリティ推進部門長の稲継明宏氏、フロスト&サリバンヴァイスプレジデントのVijayendra Rao(ヴィジャンドラ・ラオ)氏が対談。フロスト&サリバンでアジア太平洋地区モビリティ部門担当アソシエイト・パートナーを務めるVivek Vaidya(ヴィヴェック・ヴァイジャ)氏をモデレーターとなり、循環型経済の重要性や実現可能性について語った。

本記事はフロスト&サリバン主催「インテリジェントモビリティサミット2021 ゼロへのイノベーション」中のセッションの一部講演を編集、再構成したものとなる

循環型経済は何から手をつけるべきか

対談はヴァイジャ氏の「循環型経済にはどんな意味があるか?」という問いから始まった。

ガネシュ氏は「循環型経済は、トヨタで30年以上テーマとなっています。二酸化炭素の削減には部分的なアプローチではなく、より大きな視点での全体的なアプローチが必要です」という。さらに同氏は、トヨタが持続可能な社会の実現に貢献するための新たなチャレンジ「トヨタ環境チャレンジ2050」を2015年に発表したことに触れ「循環型経済はトヨタにとっては新しいものではありません」と強調した。

では、循環型経済を実現するにあたり、何から着手すべきなのか。

稲継氏は「循環型経済はブリヂストンにとって、ビジネス機会だと捉えています。そこで重要になるのが資源の効率化です。当社のパートナーと協力し、必要なエコシステムを構築する必要があります」と話す。

一方、ガネシュ氏は車両寿命とリサイクルに注目すべきだと考える。車両寿命は地域ごとに差があり、アジアの車両寿命は10〜20年だという。同氏は「現状、使わなくなったクルマをリサイクルに出すよりも、売り払った方が所有者にとって得なことが多い。それでは循環が進まないので、政府のサポートを得ながら、リサイクルを促進したり、リサイクルしやすいように車体を分解しやすいデザインにしていくことが重要です」という。

フェージュ氏は、使用する材料を減少させるためのエコシステムの見直しの必要性を重要視している。同氏は「着手しやすいのは、金属の再利用です。もちろん、再利用品であれ、新品であれ、質が高くなければいけないのは大前提ですが、今後のクルマの生産では金属を再利用し、新品の金属を使用する際には、それを正当化するような仕組みが必要です」と語る。

リサイクルの壁

ヴァイジャ氏の次の質問は「循環型経済を考えた時、EV(電気自動車)はどういう意味を持つのか?」だった。

フェージュ氏は「持続可能性はEVによってもたらされます」と断言。車体やバッテリーの分解・再利用を視野に入れ、サプライチェーン全体を見直さなければいけないと見ている。

ガネシュ氏もリサイクルの重要性を認め「バッテリーのリサイクルモデルができ上がれば、クルマの価格を下げることに繋がります」と話す。しかし、同氏はリサイクルには壁もあると考える。例えば、アジアではほこりや湿度の関係で、バッテリーの再利用に限界がある。さらに、リサイクルに関わるテクノロジーはまだ発展途上で、変化が多い。生産からリサイクルまでのプロセスを最初から考えなければいけないという。

稲継氏は「ブリヂストンにとっては、クルマに関わるリサイクルというと、タイヤのリサイルを意味します。そしてタイヤリサイクルはビジネスだと捉えています。リサイクルとは、資源の循環ですので、やはりパートナーとの協力関係の構築と、エコシステムの見直しが鍵ですね」という。

循環型経済へのマイルストーン

ここまでで循環型経済に向けた課題が見えてきた。しかし、実現までのマイルストーンはどう設定していけば良いのか。

ガネシュ氏は先述の「トヨタ環境チャレンジ2050」を挙げ、トヨタは循環型経済の実現目標を2050年に定めていることに言及した。同時に、実現のために考えなければいけないことは多いとも語る。

同氏は「実現には戦略が不可欠です。例えば、カーボンニュートラルはどれくらいの規模でやるのか?トヨタだけでやるのか?政府と組むのか?何か他の組織と協力するのか?など考えなければいけません。トヨタには26カ国 / 地域に50の海外製造事業体があります。それぞれの国にはそれぞれの状況があります。つまり、カーボンニュートラルは一度やっておしまいではなく、それぞれの国でそれぞれの段階で進めなければいけません」と話す。

一方フェージュ氏は「カーボンニュートラルはBMWのゴールです」という。マイルストーンとしては、使用する金属の見直しや、市場の金属供給の精査がまず必要だという。

では、日本のモビリティにおけるカーボンニュートラルのマイルストーンはどうなのだろうか。

ガネシュ氏は、日本政府のサポートが強いことを指摘する。天然資源にそれほど恵まれていない日本では、循環型経済は喫緊の課題であるため、政府の支援も受けやすいという。

稲継氏は「日本の政府とコラボレーションするということは、規制のあり方を考えることでもあり、重要なことです」とガネシュ氏を補足した。

誰がコストを払うべきか

循環経済を実現するには、リサイクル技術の開発や、これまでと異なるプロセスを組み込むことでコストが発生する。ヴァイジャ氏は「こうしたコストや、コストによる自動車価格への影響はどうするべきなのでしょうか」と他の参加者に質問した。

稲継氏は「エコシステム全体でコストを分かち合う必要があると思います」と回答。

フェージュ氏は「素材の再利用で全体プロセスにかかるコストは下げられると思います。新品の素材でも再利用の素材でも、同じ質を担保することが課題となります」と答えた。

ガネシュ氏は「循環型経済のために自動車の価格が変動したら、その変動分を調整しないといけません。では誰が調整するのか?政府でしょうか?顧客でしょうか?自動車メーカーでしょうか?」と問題を提起。さらに、循環型経済は素材の再利用でコストが下がる可能性もあると指摘し「循環型経済で増加したコスト」と「循環型経済で下げられたコスト」のバランスがしばらく変化し続けるだろうと予測する。

さらに、同氏は発展途上国での循環型経済実現はより難しいであろうとも考える。そういった地域では、ロジスティクス用の車両を農業用に作り替えるなどして、1台のクルマに対し1回目の使い方、2回目の使い方、といったふうに複数回の用途を考えることが着手しやすいと指摘した。

「ただし、顧客がこういった車の使い方を望んでいるのか?お金を払いたいのか?というのも考えないといけません」とガネシュ氏は最後に付け加えた。

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カテゴリー:モビリティ
タグ:トヨタBMWブリヂストン循環型経済二酸化炭素リサイクル電気自動車

電動ユーティリティバイクUBCOは持続可能性に優れるサブスクモデルで世界展開と循環型経済分野のリードを目指す

電動ユーティリティーバイクのスタートアップ企業でニュージーランドを拠点とするUBCO(ウブコ)は、米国市場を中心としたグローバル展開と商用サブスクリプションサービス事業の規模拡大のために、1000万ドル(約11億円)の資金調達を行った。

UBCOの主力製品である「UBCO 2×2」は、ダートバイクのような外観でありながら、モペッドのように乗ることができる全輪駆動の電動バイクだ。農家が牧草地や農場を簡単に、安全に、すばやく移動するためのソリューションとして始まったUbco製品は、今では配達業務用途の法人顧客や、ギグエコノミーワーカー、シティライダーに使用される都市部向けバージョンを含むラインナップにまで拡大している。

2015年に創業してから、同社は2つのバージョンの電動ユーティリティバイクを製造してきた。オリジナルのオフロード車である「Work Bike(ワーク・バイク)」と、街乗り用に作られているがオフロードにも十分に対応できる新バージョンの「Adventure Bike(アドベンチャー・バイク)」だ。

UBCOは、Seven Peak Ventures(セブン・ピーク・ベンチャーズ)、Nuance Capital(ニュアンス・キャピタル)、TPK Holdings(TPKホールディングス)が主導するラウンドで新たな資金を獲得したことで、フードデリバリー、郵便サービス、ラストマイル物流など、既存の垂直市場の分野を拡大していきたいと考えている。同社はすでに、ニュージーランドとイギリスのDomino’s(ドミノ・ピザ)と提携している他、ニュージーランド・ポスト、国防軍、自然保護局、Pāmuなどの国内企業や、地元のレストランや店舗などを顧客としている。

同社共同設立者でCEOのTimothy Allan(ティモシー・アラン)氏は「当社はニュージーランドで強力なエンタープライズ市場を有しており、国際的にも強力な販売パイプラインを構築しています」と、TechCrunchに語っている。

現在、UBCOの収益の大半は一般消費者向けの直販が占めているが、同社は企業向け、特にサブスクリプションサービスを積極的に推進している。2×2は、車両と電源システム、クラウド接続、データ分析などを含むインテリジェントなプラットフォームとして構築されているため、サブスクリプションモデルは車両マネジメントシステムとの連携が可能だ。

同社はサブスクリプションによる年間経常収益の増加を推し進めることで、2020年に210万ドル(約2億3000万円)だった収益が、2021年末には840万ドル(約9億3000万円)にまで上昇すると見込んでいる。UBCOのサブスクリプションモデルは、配達用途などで複数台の車両を使用する企業向けに、1台1週間あたり75~85ニュージーランドドル(約5800〜6600円)で提供するというもので、2021年から2022年にかけて、ニュージーランド、オーストラリア、英国、欧州、米国で展開を予定している。同社の広報担当者によると、一般消費者も今後2、3カ月以内にサブスクリプションを利用できるようになるという。

アラン氏は、EV業界の未来はサブスクリプションにあると考えている。それは、収益性が高いだけでなく、環境面でも持続可能性に優れるからだ。このビジネスモデルを拡大することで、同社は循環型経済の分野をリードしていきたいと考えている。

UBCOでは、サブスクリプションモデルで運用される車両の寿命は、販売される車両の4倍になると予測しており、内燃エンジン車と比較すると二酸化炭素の排出量を80%削減できるとしている。

「サブスクリプションとは、当社で車両を所有し、そのライフサイクルを管理することを意味します」と、アラン氏はいう。「例えば、製造されてから最初は、ピザの配達で6万キロメートル、あるいは農地で3万キロメートルといった過酷な状況に使用します。そしてその後、車両をもっと低強度の用途に転用させます。さらにその後は、バッテリーを取り出して、太陽光発電の蓄電池などの用途に利用することができます」。

耐用寿命後の問題を解決することは、個人としても職業上でも困難であり、誰も正しい方法を完全には理解していないため、創造の余地があるとアラン氏は考えている。彼はリサイクルを容易にするために、車両のエンジニアリングにはボトムアップのアプローチを取っていると語る。

「例えば、バッテリーを設計するときに、難燃性の発泡体を入れるのはやめた方がいい。寿命が尽きたときに元に戻せないからです」と、アラン氏はいう。「つまり、正しいラベルを貼ることから始まり、意図を持ってエンジニアリングを行い、そのような製造上のことも想定して設計し、さらに会社の事業や商業システムが、そのコンセプトをサポートする必要があります。現在、私たちは経済性と動機が一致しており、ニュージーランドのプロダクトスチュワードシップ法にも適合しているので、優位な立場にあります」。

実務で使用される車両を使って循環型経済を実現しようとするのは、単に環境のために正しいことをするというだけではない。アラン氏はこれが最終的にはビジネス上の賢明な決断であり、それが顧客を惹きつけ、法人顧客に競争力を与えるものになると考えている。

「当社の顧客はその一翼を担うことになります」と、アラン氏は語る。「私達がそれを可能にするためには、顧客が快適に利用できるようにサブスクリプションと車両の寿命を設計しなければなりません。ほとんどの人は正しいことをしたいと思っています。私たちは、論理的に経済に適合し、大規模に行うことができ、全体的に管理できるシステムを提供することができるのです」。

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カテゴリー:モビリティ
タグ:UBCOサブスクリプション電動バイク循環型経済ニュージーランド持続可能性

画像クレジット:UBCO

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

世界最大級の消費財・食品メーカーたちが持続可能サプライチェーンアクセラレーターに参加

世界最大級の消費財・食品メーカーたちが、ビールのBudweiser(バドワイザー)の親会社であるAnheuser-Busch InBev(AB InBev、アンハイザー・ブッシュ・インベブ)が運営する投資プログラムへの参加を決定した。この投資プログラムは、サプライチェーンの持続可能性を追求するアーリーステージの企業を支援するためのものだ。

アースデイ(4月22日)にタイミングを合わせて行われた今回の発表は、企業や消費者が、リサイクルプログラムがプラスチック廃棄物に関連する問題に適切に対処できておらず、そして現在の気候緊急事態に影響を与えている消費者の行動や工業製品の生産と流通に関わる幅広い問題に直面している中で行われた。

この「100+ Accelerator」という名のAB InBevのプログラムは、ウォーター・スチュワードシップ、循環型経済、持続可能な農業、気候変動対策における、サプライチェーンの課題を解決することを目的として、2018年に開始された。これらの課題は、AB InBevの新しいパートナーであるColgate-Palmolive(コルゲート・パルモリーブ)、Coca-Cola(コカ・コーラ)、Unilever(ユニリーバ)たちも熟知している。

声明によれば、アクセラレーターと投資プログラムの開始以来、AB Inbevは16カ国で36社を支援してきた。支援されるスタートアップ企業たちは、その後2億ドル(約216億3000万円)以上を調達している。

このアクセラレータープログラムは、パイロットプログラムへのファンド組成を行ったり、アーリーステージの企業たちが世界のトップコンシューマーブランドの経営陣と相談できる機会を提供したりしている。

プログラム開始以来、AB InBevはスタートアップたちと協力して、リターナブルパッケージプログラムの試験運用、コロンビアの醸造所での水とエネルギーの使用量を削減するための新しい洗浄技術の導入、アフリカと南米の小規模農場への保険の提供、ブラジルでの廃棄物の回収強化、中国での電気自動車用バッテリーのリサイクル、醸造過程で発生する穀物の廃棄物をアップサイクルして、栄養価の高い新たな食材の創出などを行ってきた。

外部の投資家や規制当局からの圧力が強まる中、企業は自社の各プロセスをより持続可能なものにするための方法に注目し始めている。

長い間懸案だった、このような大手企業同士の共同イニシアチブは、ビジネスから環境に対する影響の削減に大きく貢献できる可能性はあるが、その結果は、これらの企業が小さなパイロットプログラムを超えて、ソリューションを実際に展開していく、コミットメントの深さとスピードにかかっている。

直近のアクセラレータープログラム申込期限は2021年5月31日だ。

カテゴリー:EnviroTech
タグ:Anheuser-Busch InBevサプライチェーン持続可能性循環型経済

画像クレジット:NOEL CELIS/AFP via Getty Images

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(文:Jonathan Shieber、翻訳:sako)

パソコンやスマホ、スクーターなどの電子機器サブスク事業成長に向けて独Groverが約79億円調達

商品を自分で所有するのではなく、一時的に利用するために少額の支払いをするという循環型経済のコンセプトを取り入れたスタートアップ企業Grover(グローバー)が、ヨーロッパにおける事業、さらにその先を見据えた規模拡大のために6000万ユーロ(約79億円)の資金調達を行った。同社はベルリンを拠点とし、パソコンやスマートフォン、ゲーム機やスクーターなどの電子機器を一定の料金で貸し出すサブスクリプションモデルを展開している。

調達の内訳は、株式で4500万ユーロ(約59億円)、ベンチャー融資で1500万ユーロ(約20億円)である。

Groverの登録者数は2020年9月時点で10万人。現在は15万人で、2021年中に3倍の45万人の登録を目指すとしている。市場拡大を目的に資金を活用し、ドイツやオーストリア、オランダ(すでに事業は稼働中)における事業成長や、スペインや米国におけるローンチも予定されていて、さらに健康やフィットネスデバイス、消費者向けロボットやスマート家電などの製品も新たに取り扱っていく。

また、そのレンタルサービスにおけるイノベーションに投資していく計画もある。2020年のコロナ禍によって多くの人が金銭面の余裕がなくなり、この先どのような機器が必要になるかなど、将来のことを計画することが難しくなったことで、多くの人が消費を少なくして自身や他の人が持つものを有効活用することに関心を持ち始めた。

「消費者は製品購入時に、使いやすさや柔軟性、長く使えるかどうか、という点を評価するようになりました。テクノロジーが実現する生産性や娯楽、大切な人とつながる機能などを考える際に特に顕著です」とGroverのCEOであるMichael Cassau(マイケル・カサウ)は話す。「新たな調達資金により、私たちは世界中のより多くの人々にこうした可能性を届けられるようになりました。これにより弊社にご登録頂いているみなさまに比類ない顧客体験を提供し、人々や事業がテクノロジーを使ってその恩恵を享受できるさらに革新的な方法を提供できるようになります。投資家のみなさまからの心強いサポートによって、当社のサービスがみなさまにお届けする大切な価値のみならず、Groverの大いなる成長可能性も確かなものとなりました。私たちはまだ、1兆ユーロ(約130兆円)のグローバル市場の入り口にいるに過ぎません」。

JMS Capital-Everglen(JMSキャピタルエバーグレン)はシリーズBの株式ラウンドを主導し、Viola Fintech(ビオラフィンテック)やAssurant Growth(アシュアレントグロース)、既存の投資元であるcoparion(コパリオン)、Augmentum Fintech(アグメンタルフィンテック)、Circularity Capital(サキュラリティキャピタル)、Seedcamp(シードキャンプ)、Samsung Next(サムスンネクスト)といった企業が参加、また名前が明かされていない企業創業者やエンジェル投資家もヨーロッパや北米などから参加。Kreos Capital(クレオスキャピタル)が融資を行った。

Samsungは戦略的投資家だ。Goverとともに2020年12月にサブスクリプションサービスをローンチしているが、同社のS21シリーズが選択可能なモデルとなっており、それ以外にもTab S7やGalaxy Aモデル、またプランによってはウェアラブルデバイスやスマートホームデバイス、テレビ、ノートブックなども利用できる。ドイツで開始されたSamsung Powered by Groverというサービスは、今回の投資の一部を利用して他の市場に展開していく計画もある。

この資金は、Groverが2.5倍(150%)の成長をした年の翌年に得られる。最も直近の年次レポートによれば2020年の9月の時点で10万人ものアクティブユーザーが存在し、同時期に1万8000台のスマートフォン、6,000ものAirPods、1300もの電子スクーターをレンタルしているとされている。また、最も直近の事業年度で、純収入は約4300万ドル(約47億円)、経常収益は年間7100万ドル(約77億円)で、EBITDAベースで黒字に転じている。

パンデミックの直前に250万ユーロ(約3億円)の融資を受け、2018年に4400万ドル(約48億円)をシリーズA調達、2019年には4800万ドル(約52億円)を株式と負債を合わせたプレシリーズBで調達した。評価額は開示されていない。

同社のサービスは、サブスクリプション経済モデルを中心とするサービスを形成するスタートアップ企業の広いカテゴリーに属する。サブスクリプション経済モデルは、クルマなどの資本を多く必要とするカテゴリーを扱うが、より手頃でインターネットで完結する音楽や動画配信といった消費可能商品も対象としている。

実際、物理的なDVDを届け、見終わったら次の映画を観るために返却してもらうというサブスクリプションモデルから始まったNetflixの歴史をなぞらえ、Groverは「ガジェットのNetflix」と呼ばれている。

クルマや映画と同じく、サブスクリプションでガジェットを所有することについては議論の余地がある。消費者は、手にするものが高額になればなるほど、購買余力に対して多くの割合を占めるようになればなるほど、自分のものとして所有するためにお金を出すことについて消極的になると考えられる。ガジェットの価値は消費者が購入した直後から下がっていくのだから尚更だ。

一方、現在では多くの消費者がサブスクリプションに登録し、普段利用しているサービスに電子的に支払いを行っている。Amazon PrimeやSpotifyと同様に、Groverを含め、物理的なものを扱うその他のサブスクリプションは、簡単にサービスを受けられるというモデルを物理的な商品に適用しようとしている。

小売業者にとっては、消費者に製品を提供する別の選択肢が生まれることになる。直接購入だけでなく、クレジットや後払いなどのオプションを提供することによって契約を成立させることが可能となる。ショッピングカートに入れたまま放置されたり、オンラインの競合他社に競り負けたりすることも現実ではよく見られるので、少しでも収益を上げることができればそれは勝利である。そして、商品のメンテナンスをGroverのようなサードパーティに任せ、ガジェットを実際に所有したいとする顧客に対しての割増金を設定したり、ビジネスの安全性を充分に高めたりすることができれば、直接販売よりもずっと利益率が高くなる可能性もある。

中古商品を使うことに懸念する人もいるが、状況は変わりつつある。消費者が自分の持っているものを再販売することを手助けすることで大きな成長を遂げた企業が数多く存在する。このトレンドの影には、購入者が支出を抑えたいと考える(そして販売者は多少なりとも支払いを受けることができる)ようになったことがあるが、すでに経済の中で用いられたものを使うことで、環境負荷を減らしたいと考える人が増えたことも関連している。ヨーロッパだけでも、4月第1週にはブライトンに拠点を置くMPBが約7000万ドル(約76億円)を中古カメラ設備マーケットプレイスのために調達した。その他最近の取引としては、中古マーケットプレイスであるスペインのWallapop(ワラポップ)が1億9100万ドル(約208億円)を調達し、衣料系に特化したVestiaire Collective(バスティエールコレクティブ)が2億1600万ドル(約235億円)を調達している

ここで興味深いのは、時流なのか、Groverがガジェットのサブスクリプションモデルに風穴を開けたからなのか、同社はこれまで紆余曲折のあった分野で躍進を遂げているように見えることだ。

米国のLumoid(ルモイド)も、ガジェットのレンタルに注目しており、大手小売業のBest Buy(ベストバイ)との契約を結び注目されながらも、サービスを行うのに必要な資金の調達に失敗し、最終的には閉業した。この市場に挑戦しているのはGroverだけではない。たとえばTryatec(トライアテック)Wonder(ワンダー)なども、スタートアップからの技術の挑戦に注目しているようである。

大きな問題は、Groverがそのレンタル、サブスクリプションモデルの市場をこれから見つけられるかどうかではなく、サプライチェーン管理、商品の発送と受け取り、必要に応じた調整や修復、それらにおける強力な顧客サービスを維持できるかどうかの経済性を解消できているかということだ。これまでに何度も見られていたように、あるレベルにおいて良いアイデアと考えられても、実際に実行するとなると非常に難しいということは珍しくない。

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:Dragonfly)

「eBayとネオバンクの融合」したフィンテックDiemが約6億円調達、Fasanara Capitalがリード

英国・ロンドンに拠点を置くフィンテックスタートアップのDiemが、Fasanara Capitalとエンジェル投資家であるOutrun Venturesの創業者となるChris Adelsbach(クリス・アデルスバッハ)氏がリードするシードラウンドで、550万ドル(約6億円)を調達した。その他の投資家には、Farfetchの初期投資家であるAndrea Molteni(アンドレア・モルテニ)氏、ファッションテック企業のPlatformEの共同会長であるBen Demiri(ベン・デミリ)氏、ブランドの創始者であるNicholas Kirkwood(ニコラス・カークウッド)氏が含まれる。

Diemはデビットカードで、アプリを使えばすぐに現金にアクセスでき、従来の銀行サービス(デビットカード、国内および海外への銀行送金)が利用できるだけでなく、消費者が商品を処分して最終的に再販することもできる。これはいわゆるサーキュラーエコノミー(循環型経済)につながるもので、エコの観点からも魅力的だ。過去15年間に廃棄された商品の価値は69億ドル(約7500億円)ともいわれている。

その仕組みは次のようなものだ。例えば古い服や携帯電話、本、バッグなどのアイテムをアプリ読み込むと、アプリはその品物の価値を提示する。そしてそれを受け入れるとアカウントに現金が入り、そのアイテムを購入するための環境が整い、再販される。アイテムを捨てて埋立地に加えるのではなく、現金に代えるというインセンティブが働くのだ。「eBayとネオバンクの融合」と考えればいい。

Geri Cupi(ジェリ・キューピ)氏は声明の中で「Diemのミッションは消費者が今まで知らなかった富に価値を見出し、それを開放し、楽しめるようにすることです。これらは循環型経済を促進し、私たちの重要なバリュー・プロポジション(価値提案)である持続可能性へのコミットメントをサポートしながら行われます。Diemは、資本主義と持続可能性の共存を可能にします」と述べた。

Fasanara Capitalのリードインベスター兼CEOのFrancesco Filia(フランチェスコ・フィリア)氏は次のように述べている。「FasanaraはDiemとキューピ氏とのパートナーシップを発表することに興奮しています。【略】(この会社は)循環型経済の原則を原動力とする新世代のフィンテックであり、その成長をサポートすることを楽しみにしています」。

カテゴリー:フィンテック
タグ:Diem資金調達循環型経済サステナビリティ

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(文:Mike Butcher、翻訳:塚本直樹 / Twitter