まだ誰も知らないデジタル治療の効果をElektra Labsのツールが教えてくれる

どの調査を信頼するかにもよるが、ウェアラブル健康管理端末とデジタルヘルスの市場価値は、今後6年間で300億ドル(約3兆3000億円)から900億ドル(約9兆9000億円)の範囲にまで高まるとされている。市場規模を示す数値が定まらないのであれば、投入される数百億ドルの背後にある製品の正当性や効率性を測る方法を考えるべきだろう。

Elektra Labs(エレクトラ・ラブス)の共同創設者Andy Coravos(アンディー・コラボース)氏は、そう考えた。歯科医と専業看護師を両親に持つコラボース氏は、長年、医療について考えてきた。株式非公開企業に勤めたり、コンサルティング業を行った後、コーディングのブートキャンプに参加し、世間に復帰してからデジタル治療の企業であるAkili Interactive(アキリ・インタラクティブ)のインターンシップで修行を積んだ。

コラボース氏は、ずっと医療分野で働きたいと思ってきたのだが、ひとつだけ問題があった。彼女はこう話す。「血がまったくダメなんです」デジタル治療を選んだ理由が納得できる。Akili Interactiveでの経験から、彼女は米国食品医薬品局の駐在起業家のポジションを得た。それが、およそ2年後のElektra Labs設立につながった。

現在、同社は、消費者向け健康市場に溢れている生体情報モニター技術のカタログ化を目指してAtlas(アトラス)を立ち上げようとしている。

そうした生体情報モニター技術と、その上に構築されたアプリケーション層は、消費者の健康に多大な影響をもたらすものでありながら、それぞれの有用性、つまりそのツールが何に使えるかという提案がどれほど本当なのかを総合的に測れる場所がない。AtlasとElektra Labsは、その状況を変える。

食品医薬品局は、Apple Watchの心房細動検知アルゴリズムや、アクチグラフの生活活動モニターといったソフトウェア駆動による製品の認可を加速させている。ロシュファイザーノバルティスなどの大手製薬会社は、デジタルバイオマーカーを収集して臨床試験の向上に役立てようと、そうした技術への投資を続けている。

コネクテッドテクノロジーはよりよい医療を実現するが、テクノロジーにはどうしてもリスクが伴う。とくに、データの正確性や、誤ったデータセットを使用したことで生じる偏向の問題を考えると、まだ解決しなければならない見落とし箇所が数多くあることがわかる。そして消費者と製薬会社は、その業界に関するデータを簡単にアクセスできる形で提供してくれる場所が必要になる。

「テクノロジーへの膨大な投資とセットになった食品医薬品局のデジタル医療製品の認可拡大により、臨床試験でも日常の治療でも、コネクテッドツールの導入が加速されました。しかし、そこに反論がないわけではありません」とコラボース氏は声明の中で述べている。「食品医薬品局デジタルヘルス部門に駐在起業家として務めていた間に、私の中で明らかになったのは、創薬が評価、準備、医薬品成分の調剤を行っているように、私たちの医療システムにも、評価、準備、コネクテッド・テクノロジーの成分の調合を行うためのインフラが必要だということでした」。

Elektra Labsでは、治療法の評価は行うが準備と調合は行わないため、創薬とぴったり重ねることはできない。しかし、アトラスが、患者数が多く、最も費用のかかる慢性疾患(糖尿病など)の治療法となる画期的な薬の登場に期待を寄せるデジタル治療業界の最初の柱になることは明らかだ。

画像提供:Andrea Coravos/Elektra Labs

コラボース氏とそのチームは、デジタル医療で必要となるすべてのデータが一箇所で手に入る場所を求めている製薬会社や医療関係者に向けたAtlasツールキットを構築する際に、300名以上の専門家の意見を聞いている。薬のラベルや栄養素のラベルのように、Atlasは、使いやすさ、有効性、実用性、セキュリティー、データガバナンスのラベルを製品ごとに発行する。

今年の初めにクオーツに掲載された記事でコラボース氏は、Elektra Labsを売り込むとともに、芽生えたばかりのデジタル治療業界のためにモニターするデータのタイプについて述べている。また、情報源を一箇所にすることで報告しやすくするという、デジタル治療に伴う好ましくない出来事への対処能力、製品の機能に関する消費者向けの基本的な説明、デジタル製品ごとに特定のユーザーにどれだけ有効かを調べた結果に基づく、デジタル治療を受けるべき人の審査、デジタル治療の原点と開発の歴史、製品に伴う潜在的リスクのデータベース、製品のセキュリティーとプライバシー保護機能の記録などについても語っている。

市場規模の予測が示すとおり、問題点が縮小することはない。先日の、GoogleによるFitbit(フィットビット)の買収提案や、より多くの患者のデータ収集とデジタル化を目的とした米大手医療機関アセンションとのプロジェクト・ナイチンゲールでの提携の報道からは、テクノロジーと医療の交差点が、ハイテク企業にとっては巨大な好機になっていることが見て取れる。

関連記事:Fitbit買収でグーグルは医療への野心を復活させた(未訳)


「Googleはさらに投資します。Appleはさらに投資します。それらのデバイスは次々と食品医薬品局の認可を得て、単なる健康管理ツールではなく、医療ツールとなるのです」と、医療と健康への潜在的なメリットを宣伝するように、デジタルデバイスの爆発的増加についてコラボース氏は話した。

Elektra Labsは、名前は明かしていないが、ある製薬会社と共同で、デジタル治療環境の図式化と、臨床試験でのパートナーとしてふさわしい、またはデジアル市場で買収目標となる企業の特定をすでに進めている。「食品医薬品局もそうしたデジタル・テクノロジーについて考えていますが、そこには大変なギャップがあります」とコラボース氏。そしてギャップこそ、Elektra Labsは埋めようとしているものだ。

その中心になるものとして同社は、現代のセンサー技術でトラッキング可能なデジタルバイオマーカーのカタログを開発している。それは、その測定結果を、どの製品がどれだけ効率的に提供するかを示すものだ。同社はまた、さまざまなデジタル製品の有効性に関する、同業者が審査し発行した研究論文や、あらゆる臨床試験データに目を光らせている。

コラボース氏と彼女のデジタル製薬の未来の夢を支えているのは、Maverick Ventures(マーベリック・ベンチャーズ)、Arkitekt Ventures(アーキテクト・ベンチャーズ)、Boost VC(ブースト・ブイシー)、Founder Collective(ファウンダー・コレクティブ)、Lux Capital(ラックス・キャピタル)、SV Angel(エスブイ・エンジェル)、Village Global(ビレッジ・グローバル)の各ベンチャー投資会社だ。

エンジェル投資会社の他にも、PillPack(ピルパック)、Flatiron Health(フラットアイアン・ヘルス)、National Vision(ナショナル・ビジョン)、Shippo(シッポ)、Revel(レベル)、 Verge Genomics(バージ・ジェノミクス)といった企業の創設者や最高幹部のベンチャー投資家が、コラボース氏のこの最新のベンチャーに290万ドル(約3億1500万円)を投じている。

「Elektra Labsが構築しようとしているものの、タイミングは正しいように見えます」と、ラックス・キャピタルの投資家Brandon Reeves(ブランドン・リーブズ)氏は話していた。彼は、同社の最初の機関投資家の一人だ。「私たちは、携帯電話での個人データ利用の周囲に時代精神を見てきました。そして今、公共の場で、私たちのもっともセンシティブなデータ(健康)の話がされるようになりました」

もし妥当性の検証がアトラス・プラットフォームの主要理念ならば、セキュリティーは同社のデジタル治療審査におけるもうひとつの重点だ。実際、コラボース氏は、その2つは協調関係にあると信じている。プライバシーの問題は、インターネット全体に広まっている。同じ問題が、人の最も慎重に扱われるべき情報、つまり個人の医療記録をモニターするインターネットに接続されたデバイスでも、加速度的に増加するとコラボース氏は見ている。

ワイヤードに掲載された記事の中で、コラボース氏は以下のように述べていた。

今の医療システムには、血液やゲノムデータといった患者の生体試料を守る強力な保護体制がありますが、私たちのデジタル試料はどうでしょう? 私たちの顔、歩き方、話し方、行動パターンを認識できるデジタルツールによる生体観察が増加すれば、データの権利やガバナンスが非常に重要になります。サービス規約にサインをしてもらい、一度だけユーザーの同意を得るという方法では不十分です。製品自体にインフォームドコンセントを埋め込むといった、また時とともにユーザーの考えが変わったときに対応できるような、より高度な社会契約が必要になります。

この業界には、しっかりとした倫理的基盤を築かなければなりません。それがあって、モニターツールや観察ツールはメインストリームになれます。患者主体の医療を提供するという有名な誓約であるヒポクラテスの誓いにならい、数多くのセキュリティー研究者が、コネクテッド医療機器のための誓いの新バージョンを起草しました。

有効な規制を設け、商業活動を増加させ、強力なガバナンスを持つことで、ソフトウェア駆動の医療製品は医療の提供方法に変革をもたらします。この調子でいけば、私たちが考えているよりももっと早く、アプリとアルゴリズムが医師を支援し、医薬品を補完する、あるいは置き換えることになるでしょう。

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(翻訳:金井哲夫)

Formlabsが歯科専用の3Dプリンターを発売

今年のCESで3DプリンターのメーカーであるFormlabsに、同社のプリンターを使って、これまでよりも早く安価に義歯を作る初期の実験について話を聞いた。

それから数カ月後、同社はそのコンセプトに深入りしていた。彼らは歯科専用の3Dプリンターを発売し、「Formlabs Dental」という新しい事業部門を立ち上げ、歯科医療に最適の素材を得るためにレジンのサプライヤーを買収した。

重要なのは同社のプリンターが、光造形法(Stereolithography、SLA)を使ってる点。これに対して、3Dプリントという言葉を聞いて誰もが思い浮かべるのが熱溶解積層法(Fused Deposition Modeling、FDM)だ。光造形法はその名のとおり、光、ここでは紫外線レーザーを精密に照射して、ネバネバしていたレジンを目的の形に硬化する。これに対してFDMプリンターは、固形の素材を熱で溶かし、それをグルーガンのようなノズルから押し出して積層して目的の形を作る。SLAは精度が高く、FDMは安くてしかもさまざまな色や性質の素材を使える。

Formlabsはその歯科専用のプリンターをForm 3bと呼んでいる。それは、同社がこの春発売したForm 3の特殊バージョンだ。ただし製造コストは一般的なForm 3よりも約1000ドル高い。でもそのソフトウェアは歯科医療のワークフローに即しており、また教育訓練やサポート、そして修理に代わる新品交換に応ずるためのサービス体系「Dental Service Plan」がついてくる。歯科医は仕事を休めないので、故障時には修理ではなく新品交換で応ずる。3bはまた、歯科用レジンに向けて最適化されているが、それについて同社は詳しく語らなかった。

レジンと言えば、同社は2012年の創業以来レジンのメインのサプライヤーだったSpectraを買収した。買収の条件を同社は公表していないが、買収を機に同社は医療規格のレジンを得るために数百万ドルかけてクリーンルームを作り、FDAにも登録できた。Spectraの既存の顧客は、継続して同社のレジンを購入できる。

同社の新しい事業部門「Formlabs Dental」は、歯科用の新素材の開発と、プリンターを既存の歯科医のワークフローにぴったり合った製品にするための改良にフォーカスする。同社によると、現状ではForm 3bで、クラウン、ブリッジ、透明リテーナー、インプラント施療時の施術ガイド(サージカルガイド)、カスタムマウスガード(オクルーザルスプリント)、そして義歯をプリントできる。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

UCLAがゼロ・エミッション全電動の「手術器具消毒・修理車」を導入

自動車業界で電化されているのは消費者向け車両だけではない。商用車や特殊用途車両の中にもEVの有力候補がたくさんある。医療業界もそのひとつだ。モーターホームメーカーのWinnebago(ウィネベーゴ)が開発したUCLA(カリフォルニア大学バークレー校)の移動実験室もそのひとつだ。ゼロ・エミッション、全電動の車両がUCLAの2つのキャンパスを行き来して、医療スタッフのために手術器具を回収し消毒・修理を行う。

そもそもなぜ必要なのか?通常使用済みの手術器具は外部業者に委託して処理サービスを受けるが、専門の施設を利用するため年間コストは膨大になる。UCLAメディカルセンターの推計によると、Winnebago製のEV実験室を使うことによって、年間で最大75万ドル(約8100万円)を節約できるという。

この移動実験室は約8時間操業可能で、これには2カ所の病院キャンパスの往復時間も含まれている。一回の充電で85~125マイル(135~200km)の走行が可能。この車両は、通常の施設の実験室と「同レベルの性能、生産性、コンプライアンス」を実現しているとWinnebagoは表明している。

年間運用コストの節約以外にも、UCLAは実験車両の購入に補助金を受けている。ハイブリッド・ゼロエミッショントラック・バスバウチャーインセンティブ(HVIP)もそのひとつだ。そうしたプログラムは金銭的インセンティブを与えることで初期投入コストを減らして電気自動車の採用を促進する。こうして長期コストだけでなく初期費用も少なくてすむことから、医療などの分野がEVに目を向ける新たな理由になる。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

マイクロソフトがインドでAIによる子宮頸がん診断の迅速化を支援

インドで子宮頸がんにより死亡する女性の割合は他国より高い。予防可能な病気だが、インドでは毎年約6万7000人の女性が死亡している。世界全体の死亡数26万人の25%以上を占める。

効果的な検査による早期発見によって死亡率は下げられるものの、当面の課題は発症を検出する検査に耐え難いほど時間がかかることだ。細胞病理医が採用する既存の検査方法では時間がかかる。その上国内に細胞病理医がほとんど存在しない。AIでもっと迅速に検査できないのか?

インドで病理学および放射線学の診断サービスを提供する最大のチェーンであるSRL Diagnosticsでは、早くからこの状況を注視していた。昨年、Microsoft(マイクロソフト)がSRL Diagnosticsと提携して、病理学向けAIネットワークを共同で構築し、細胞病理医と組織病理医の負担を軽減した。

SRL Diagnosticsには、毎年10万を超えるPAP検査(細胞を顕微鏡で調べる検査)の検体が送られてくる。検体の約98%は正常で、残りの2%のみが詳細な検査などを必要とする。「細胞病理医が2%の異常な検体をいち早く見つける方法を探していた」とSRL Diagnosticsの新企画・ナレッジマネジメント担当技術責任者であるArnab Roy(アーナブ・ロイ)博士は説明する。

SRL Diagnosticsの細胞病理医が、デジタルスキャンしたホールスライドイメージング(WSI、病理標本全体のデジタル画像)を観察し、注目点などのマークをつけて、同社の子宮頸がん画像検出APIの教師データとして使う。WSIには約300〜400個の細胞が含まれる。

ホールスライドイメージングのデジタルスキャン画像。AIモデルの教師データとして使う

主観性をどう扱うかという問題がある。「異なる細胞病理医がそれぞれ独自の方法で塗抹標本の異なる部分を検査しても、全体として診断結果が同じになることがある。これが診断過程全体に関わる主観的要素で、細部病理医の経験によって変わる」とロイ博士は説明した。

SRL Diagnosticsのチームと連携しているMicrosoft Azureグローバルエンジニアリングの主任応用研究者であるManish Gupta(マニシュ・グプタ)氏によれば、構想中のAIアルゴリズムは、誰もが着目する領域を識別し、「その領域を評価した結果、コンセンサスを形成できる」ものだと述べた。

複数の研究室の細胞病理医が、子宮頸部塗抹標本の数千枚をタイル状に分割した画像にアノテーション(機械学習アルゴリズムに学習させるため、対象の色や形などの属性にタグをつけて教師データを作成すること)行った結果、各サンプル画像に同じタグがつく場合もあれば、異なるタグがつく場合もあった。

「アノテーションが一致しない画像、つまり3人のチームメンバーの見方が割れた画像は、最終分析のため上席の細胞病理医に送られた」とマイクロソフトはブログに投稿している。

両社は今週、協働の結果が出始めたことを明らかにした。SRL Diagnosticsは、子宮頸がん画像検出APIの内部プレビューを開始した。Microsoft Azure上で動く子宮頸がん画像検出APIは、液体ベースの細胞診スライド画像を短時間でスクリーニングして早いステージの子宮頸がんを検出し、病理医の診断に役立つ情報を提供することができる。

AIモデルは塗抹標本の正常・異常を正確に区別できるようになっており、3〜6か月間の予定で現在検証中だ。「子宮頸部細胞病理学の7つの小分類に塗抹標本のスライドを分類することもできる」と両社はブログ記事に書いている。

内部プレビューの間、匿名化した50万以上のデジタルタイル画像を使用する。内部検証に続いて、APIは病院や診断センターなどの子宮頸がん診断機関で評価される予定だ。

「現在、細胞病理医が見直さなければならない領域は、液体ベースの細胞診では20程度まで減っている。細胞病理医が陽性症例を検証することで、初期スクリーニングプロセスの速度と効率が向上する」

「我々のAPIによって細胞病理学分野の生産性が約4倍高まるとみている。将来、AIを使って病理標本作製の自動化が進めば、細胞病理医は従来8時間かかったいた仕事を2時間でこなすことができる」とロイ博士は述べた。

SRL Diagnosticsとマイクロソフトが組むコンソーシアムは、腎臓病の診断や口腔がん、膵がん、肝臓がんなどの病理分野でのAPI利用を期待していると述べた。民間企業や政府との提携による顧客の拡大や、組織病理医が少ない遠隔地での利用も目指している。

今週の発表は、インドでマイクロソフトが進めている研究活動の最新例だ。世界で2番目に人口の多い同国は、米国の多くのテクノロジー企業にとって実験場となっている。この地域で新しい製品やサービスを開発し課題を解決できれば、世界展開も視野に入ってくる。

マイクロソフトは先週、自社のAIプロジェクトがインドにおける運転免許取得試験の改善に貢献していることを発表した。 同社は、過去2年間にインド市場でさまざまなツールを発表してきた。農家が収穫量を増やすツールの開発や、回避可能な失明を防ぐための病院との協業などだ。また昨年、同社はアポロ病院と提携して、インドにおける心臓病のリスクを予測するAIベースのAPIを作成した。

さらに昨年、同社はクリケットの伝説的プレーヤーであるAnil Kumble(アニル・カンブル)氏と協力して、若者のバッティング技術を分析する追跡装置を開発した。保険会社ICICI Lombardとの提携では、AIで顧客からの修理の請求を処理したり、失効した保険を更新するシステムを開発している。

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(翻訳:Mizoguchi)

Eclipse Foodsの純植物性アイスクリームがニューヨークとサンフランシスコの高級店に登場

植物性の代替食品が今ホットだ。食べ物の中で最もクールと言われるものにさえ、そのホットなやつは侵入してきた。それはアイスクリームだ。

植物性の乳製品を作るEclipse Foods(エクリプス・フーズ)が、若者に人気の高級アイスクリームブランドであるHumphry Slocombe(ハンフリー・スロコム)やOddfellows(オッドフェローズ)と契約して、その製品を原料に使ってもらえることになった。

これまであった植物性の乳製品は味や舌触りまで真似ていなかったが、Eclipse Foodsによると彼らの製品は動物の乳と区別がつかない。しかも、アレルギーを起こさない原料を使用している。

米国時間11月9日から、ニューヨークとサンフランシスコのお店の棚には、植物から作ったOddFellowsHumphry Slocombeの職人芸的アイスクリームがある。

Eclipse Foodsは350万ドルの資金を、Redditの共同創業者であるAlexis Ohanian(アレクシス・オファニアン)氏と、彼の投資会社であるInitialized Capital、Gmailを作ったPaul Buchheit(ポール・ブックハイト)氏、そしてDaiya Foodsの元会長であるEric Patel(エリック・パテル)氏らから調達した。

オファニアン氏は声明で「また植物性食品に投資できてうれしい。創業者のAylon(エイロン)とThomas(トーマス)は食品科学のエキスパートだから文句なしだ。アイスクリームの品質は本物の乳製品で作ったものと区別できないし、今後もっともっと良くなるだろう。植物性食品のニーズは今高まっているし、このように値段が高くなくて、持続可能な作り方をされてて、そしてもちろんおいしい製品はそのニーズにぴったり合う」と語っている。

競合他社に比べるとEclipse Foodsの手法は単純明快だ。遺伝子を組み換えた原料は使っていない。植物性挽きの分野では、Impossible FoodsよりもBeyond Meatに似ている。

Eclipse FoodsのCEOであるAylon Steinhar(エイロン・スタインハート)氏は「同社は高価なバイオテクノロジーを使ってここまで来たわけではない。使ってるものは、植物と、機能性植物蛋白質に関するわれわれの専門知識と、複数の植物の単純な組み合わせ方だ」と語る。

創業者のスタインハート氏は、植物による食品革命を志す非営利団体のGood Food Instituteの専門科学者だった。相棒のThomas Bowman(トーマス・ボウマン)氏は、植物性食品の先輩企業JUSTの製品開発部長だった。Eclipse Foodsは高名なアクセラレーターであるY Combinatorから今年の3月にローンチした。

関連記事:Launching from YC, Eclipse Foods casts a long shadow over the $336 billion dairy industry(YC卒のEclipse Foodsが3360億ドルの酪農乳業界に挑む、未訳)

スタインハート氏によると「原料はコーンやキャッサバなど安いものばかりなので、今後の規模拡大にもあまり資本はいらない」とのこと。

現在同社が歩んでいるロードマップは、最初Pat Brown(パット・ブラウン)氏のImpossible Foodsで作られ、その後同じく植物性の蛋白質による代替食品を追究する数十社ものスタートアップによって複製されたものだ。それは、今回のアイスクリームの例が示すように、有名なシェフや職人芸的なブランドをパートナーとして、彼らの比較的高く売られている製品の仲間入りをすること。マクドナルドやバーガーキングのソフトクリームコーンや、ウェンディーズのあのおいしいフォレスティの路線ではない。

シンプルなバニラアイスクリームではなく、Eclipse Foodsの植物性アイスクリーム原液はOddFellowsではミソチェリーやオリーブオイル・プラムアイスクリームに使われ、Humphry Slocombeではスパイシーなメキシカン・ホットチョコレートに使われる。

同社の今後の計画では、Beyond MeatやImpossible Foodsのバーガーを売ってるような店舗でも売っていくつもりだ。ボウマン氏は「バーガーキングのどの店にもImpossible Whopperがあって、Carl’s Jr.のどの店にもBeyond Famous Starがあるような時代になったら、どのレストランでも純植物性のアイスクリームを扱うだろう。アレルゲンがないし、遺伝子組み換え作物を使ってないし、粘着剤も弾性剤も安定剤も何も使っていない」と語る。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

ビデオによるオンデマンド獣医サービスのFirstVetが世界市場を目指す

ペットの飼い主にオンデマンドのビデオで各地の獣医によるコンサルテーションを提供するスウェーデンのFirstVetが、シリーズBのラウンドで1850万ユーロ(約22億4000万円)の資金調達を完了した。

このラウンドをリードしたのは、カナダの年金基金であるOmersのベンチャー部門のOmers Venturesで、同社は最近、ヨーロッパのテクノロジースタートアップに投資するための3億ユーロ(約36兆円)のファンドを立ち上げたばかりだ。FirstVetのシリーズAを支援したCreandumもこのラウンドに参加し、同社の調達総額は2450万ユーロ(約30億円)に達した。

FirstVetによると、今回の資金でサービスのグローバル展開が可能になる。今後狙っている市場は米国とドイツとフランスだ。また製品開発も継続し、ペットの飼い主と獣医双方の体験を改善する新しい機能を導入していく。それには今後の自動化ツールと、それらの動物病院の既存のシステムとの統合が含まれる。

ストックホルムで2016年に創業したFirstVetは、登録獣医によるオンデマンドのビデオコンサルテーションにより、ペットケアへのアクセスを広げることを望んでいる。同社が現在操業している市場は、英国、ノルウェー、デンマーク、フィンランド、そして母国スウェーデンの5つだ。登録ユーザーの合計は20万人を超えている。登録獣医は150名いるが、その数はコンスタントに増え続けている。

FirstVetのCEOで共同創業者のDavid Prien(デビッド・プリーン)氏は、2018年6月のTechCrunchで「私たちは既存の動物病院を補完するものであり、それらに代わるものではない。飼い主からの質問でいちばん多いのは、胃腸関連や傷、そして皮膚/毛/耳関連だ。私たちのメインの目的は、飼い主にとって自然な最初の接触点であることだ」と語っていた

市場への経路としてFirstVetは各国の計20社あまりの大手保険会社をパートナーにしている。例えば英国のBought By Manyは、ペット保険加入者へのおまけとしてFirstVetのサービスを提供している。

Omers Venturesのトップで新たにFirstVetの取締役会に加わったHenry Gladwyn(ヘンリー・グラッドウィン)氏は 「Omers Venturesはテクノロジーの世界のとびきり優秀な起業家やチームに投資し、彼らのパートナーになっている。そのような私たちにとってFirstVetは、完全にフィットしている。スタートアップがその中で操業している業界のエコシステム全体に本物の価値を提供している例は極めて稀だが、FirstVetはペットの飼い主にとって急速に他に代わるもののないサービスになりつつある。また同社は、獣医師や動物病院や保険企業にとって信頼できるパートナーだ。FirstVetには、オンデマンドのビデオによる獣医予約のグローバルなリーダーになるという意欲がある。弊社がその目標達成を支援できる立場にいることは、まことに喜ばしい」と述べている。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

脳内チップでオピオイド依存と闘う米国初の臨床試験が始まる

オピオイド(医療用合成麻酔薬の一種)依存は米国が直面する深刻な健康問題であり、効果的といえる緩和方法は見つかっていない。しかし、ウェストバージニア大学ロックフェラー神経科学研究所(RNI)とウェストバージニア大学医学校(WVU)の研究者らは、他の有効な治療方法がない症例において、脳内埋込み技術を使ってオピオイド依存を抑制する方法の臨床試験を開始する。

RNIとWVUによる神経外科チームは「脳深部刺激」(DBS)装置と呼ばれるチップを、最初の被験者である33歳男性の脳に埋め込むことに成功した。DBS装置は小さな電極の集まりからなり、脳内の依存や自己制御行動に関連があるとされる部分に接続される。

DBSは、理論的には、関連する刺激を送り込むことで依存症状を抑制するとともに、患者の欲求をリアルタイムで監視することによって、治療抵抗性オピオイド依存症で起きていることを研究するための貴重なデータを提供する。

オピオイド依存は、2017年にウェストバージニア州で10万人中49.6人の死亡原因だったとWVUは指摘する。これは、オピオイド関連死の比率として米国で最大の数値だ。ほかに侵襲性の低い治療方法もあり、Codaというスタートアップが開発している慢性患者の鎮痛に用いられる代替オピオイドもその1つだ。しかし、既存の患者、特に他の有効な治療方法がないオピオイド依存患者の大半は、DBSのような最先端医療が唯一の手段になるかもしれない。

今回のRNIの臨床試験は4名の患者が対象で、いずれもさまざまな治療プログラムを受けた後も依存症が続いている。研究チームは、てんかんや強迫性障害など他の疾患のFDA(食品医薬品局)承認済み療法で、脳深部刺激に関わった豊富な経験を持っている。

脳内埋め込みは最後の手段に違いないが、もしこの臨床試験で有効な結果が見られれば、他の手段が枯渇した最も深刻な症例にとって新たな選択肢になる可能性がある。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

フェムテックのInneが妊娠・避妊のためのホルモン追跡プロダクトを来年展開

ドイツ・ベルリン拠点のスタートアップであるInneがいきなり登場し、800万ユーロ(約10億円)のシリーズAを発表した。そして、2020年第1四半期に提供開始が予定されている、妊娠や避妊のための購読ベースのホルモン追跡プロダクトを少し明らかにした。

シリーズAはBlossom Capitalがリードし、Inneを初期から支援しているMonkfish Equity、そして多くのエンジェル投資家も参加した。エンジェル投資家にはTransferWiseの共同創業者Taavet Hinrikus(
ターヴェット・ヒンリクス)氏、DSTでマネージングパートナーを務めるTom Stafford(トム・スタッフォード)氏、Trivagoの共同創業者であるRolf Schromgens(ロルフ・スクロゲンス)氏が含まれる。

女性の健康アプリは近年テクノロジーがフル活用され、フェムテックというカテゴリーが確立された。月経や月経周期を追跡するClueFloのようなさまざまなアプリがある。一部のアプリは、女性が妊娠しやすい、あるいは妊娠しにくい日を予想する。こうしたアプリは、女性が自然な方法での避妊をしていたり、あるいは切実に妊娠を望んでいる場合に、体のシグナルを追跡するデジタルツールを提供してサポートする。

Natural Cyclesのような他のアプリはさらに一歩踏み込んで、自らのアプローチを「デジタル避妊」とブランド化している。追加の情報(通常は毎日の体温測定)から得られるサイクルデータに学習アルゴリズムを適用していて、これは従来の家族計画に比べてより洗練されていると主張する。しかし、若い女性をターゲットにした、押しが強くミースリードですらあるマーケティング戦略をめぐっては議論もある。

多くの女性がNatural Cyclesのメソッドを利用しながら妊娠した、との訴えを受け、Natural Cyclesのホームマーケットであるスウェーデンで医療機器を許認可する当局は数カ月にわたって調査を行った。その結果、避妊できなかった率はNatural Cyclesが小さく表示していた注意書きから外れるものではなかったが、Natural Cyclesは失敗するリスクを明記することに同意した。

問題なのは「デジタル避妊」という言葉が、簡単で手軽にできると意味しえること。便利なアプリという形で利用でき、往々にして誘惑するようなソーシャルメディアでの広告で広まっている。しかし現実として、ユーザーにとってはまったく楽なものではない。なぜなら、ユーザーたちはリスクすべてを実際に負っているからだ。

こうしたプロダクトをうまく生かすには、ユーザーたちは着実に行うようかなり専念する必要があり、約束された成功率をものにしようと鍵を握る項目に細心の注意を払わなければならない。

自然避妊はInneがうたっているものであり、ホルモン剤とは無縁の避妊という魅力的な約束をしている。ウェブサイトで同社はプロダクトのことを「革新的な自己認識のツール」と表現し、「体に負荷をかける避妊メソッドから守る」と主張している。妊娠しやすい(またはしにくい)期間を追跡するのに体温を活用しないというところにひねりがある。妊娠のしやすさ(しにくさ)を測る方法としてホルモン追跡にフォーカスしている。

Inneは、ホルモンレベルを測定するのに唾液を使ったテスト、そして診断デバイス(上の写真のもの)を開発した。このデバイスでは、自宅で行う使い捨てのテストからデータを抽出し、ワイヤレスでアプリに送信することができる。

創業者のEirini Rapti(エイリニ・ラプティ)氏は、プロダクトは小さく、ポケットに入れられるほどポータブルだとして「ミニラボ」と表現する。同氏のチームは2017年から研究・開発を行っている。スタートアップを立ち上げたことを声高に言うよりも、生化学に正面から取り組むことにフォーカスしてきた(Inneは本ラウンドの前にシード調達しているが、額は公表していない)。

現時点で、Inneは医療機器としての欧州の認証を取得している。しかしこれはまだ正式には発表されていない。

最初のプロダクトである大人の女性向けの自然避妊は、28〜40才の女性に最も適しているとされている。すなわちパートナーと定期的に関係を持つ年代だ。このプロダクトは来年、スカンジナビアでなど欧州のいくつかのマーケットで展開が始まるが、ユーザーのフィードバックに基づいて試行錯誤するため初めのうちはベータ版となる。

「Inneは基本的に3つのパートで構成される」とラプティ氏は語る。「ハードウェアは小さなリーダーを備えている。前に空いている部分があり、私たちはここをリトルマウス(小さな口)と呼んでいる。これを見るといつも笑ってしまう。このリーダーでホルモン濃度を測定する。これとは別に、唾液を使ったテストがある。30秒口の中に入れて唾液を集める。これをリーダーの中に入れるだけ」。

「テストをどこで行うかで違ってくるが、リーダーはBluetoothまたはWi-Fiでスマホとつながる。データを読み、それをスマホに送る。ユーザーはスマホでいくつかのことができる。まず最初に、ホルモンデータを見ることができる。そして月経周期の中でのホルモンがいかに変動するかをチェックできる。つまり、ホルモンが増えたり減ったりするのを目にする。これは排卵や女性の健康全体を示すものだ。我々は黄体ホルモンを測定するが、黄体ホルモンはあなたの体の内側の多くのことを教えてくれる。そうしたものをどのように追跡し、そしてそれが意味するところの理解の仕方について我々が案内する」。

避妊したい人と同様に、妊娠しやすい日を追跡する要素は当然、妊娠を望む人にも使えるものだ。

「このプロダクトはトラッカーではない。我々はあなたのデータを集めて、翌月にどのように感じるべきかを伝えようとしているのではない。ホルモンを追跡できるようにし、そしてこれがあなたの体の中で起こっている基本的な変化だと伝えるようデザインされている。なぜならそうした変化は、あなたが何かしらを感じるのだから。だから、そうした変化を感じるか、あるいは感じないか。もし感じないのだとしたら、それは何を意味するのか。あるいは変化を感じるのなら、何を意味するのか」。

「Inneではあなたのホルモンベースラインを構築する。なので、あなたがホルモンの測定を始めるとあなたのベースラインを示し、ベースラインから外れたものを見つける。それが何を意味するのか」。

もちろん、妊娠のしやすさ(しにくさ)を予測するためのメソッドとして、唾液を使ったホルモンのテストがどのくらい正確なのか、という点が鍵を握る。これについて、ラプティ氏はプロダクトの精度についてのデータを共有するのはまだ早い、と話す。しかし、数週間のうちにCEマーク(EUの基準適合マーク)認証の一環として実施したさまざまな研究についての詳細を公開する、としている。

「数週間で、軸となるデータが明らかになる」と同氏は話す。ホルモン測定がどのようになっているのかという点に関しては「生化学反応とそれを読むことの組み合わせ」とのこと。テストそのものは純粋に化学だが、ホルモン測定を解釈するためのアルゴリズムが適用される。その際はユーザーの月経周期の長さや年齢、テストを行なった時間帯といった要素も加味される。

妊娠しやすい(しにくい)時期を予測するためのベースラインとしてこのプロダクトが頼りにしている生化学のホルモンテストは、スティックに尿をかけて妊娠しているかどうかを検査するスタンダードな妊娠判定テストと同じような原理に基づいている。「我々は妊娠のしやすさに関係するホルモンに特にフォーカスしている」とラプティ氏は語る。

「我々のデバイスは医療機器だ。欧州のCE認証を取得し、その取得のためにはあらゆる種類の立証や評価の研究をしなければならない。彼らは間もなく認証を発表する。詳しくは語れないが、認証を取得するためにしなければならなかった検証研究やパフォーマンスの評価研究などはすべて完了した」。

社内でアプローチを開発して実証した一方で、テストを最適化するために多くの外部の診断企業と協業した。「ここで使われているサイエンスは極めてシンプルだ」とラプティ氏は言う。「ホルモンは特定の動きをする。分泌量が少ない状態から多い状態になり、また少なくなる。ユーザーがしたいのは傾向を把握すること。そして我々が構築しているのは、個人それぞれのカーブ曲線。バリューという点においてはスタート時とゴール時では異なるかもしれない。しかし、サイクル全般にわたっては同じだ」。

「アウトサイダーとして生化学のような分野に足を踏み入れると、将来できるかもしれない、信じられないようなことについて多くの学術機関が教えてくれる。本当にたくさんのことについて」とラプティ氏は付け加えた。「ただ、私が思うに、他社と差別化を図れているのは、製造可能性を常に持っていることだ。『ホルモンを測定する方法はたくさんある』とあなたは言うかもしれないが、開発には10年かかり、ましてやそれなりの規模で生産するとなるとさらに時間がかかる。なので、私にとってそうしたことを効率的に行え、そして低コストでの生産を可能にするテクノロジーを見つけることが重要だった。だからすべてを新たに作っているわけではない」。

Inneはユーザーが測定する時間帯を管理することでテストプロセスにおける変動性をコントロールしている(しかしそれは明らかにきっちりとした管理下にあるわけではない。たとえアプリ内でユーザーにリマインダーが送れてもだ)。テストごとにどれくらいの唾液を抽出するのか、サンプルのどれくらいの量をテストするのか。「そうしたことはすべて機械的に処理されるので、ユーザーが行うことはない」という。

「ホルモンの素晴らしいところは睡眠不足の影響を受けないこと。そしてベッドから出ても影響を受けない。これこそが、ホルモンを測定することに決めた理由だ」と付け加えた。このアイデアそのものは、ラプティ氏が自然な避妊をしながらもっといい方法はないかと考えていた中で思いついた。ちなみに彼女自身は、医学あるいはライフサイエンスのトレーニングを受けていない。

「会社を始めたとき、私は(避妊のために)体温を測定する方法を利用していた。そして、ベッドで体温測定しなければならず、そうしなければ測定そのものが無効になってしまうというのはおかしいと考えた」。

しかし、ホルモン測定へのマイナスの影響を避けるために、Inneユーザーが守らなければならない別の種の決まりごとがある。まず最初に、毎回同じ時間帯にテストをしなければならない。朝でも夜でも構わない。しかし一度時間帯を選んだら、それを継続する必要がある。

また、少なくとも1回の月経周期の間、毎日テストしなければならない。加えて、テストしなければならない日がひと月のうち何日かある。

そしてユーザーはテストの前30分は飲食を避ける必要がある。この飲食制限にはオーラルセックスも含まれるとラプティ氏は言う。「なぜならこれもまた測定に影響を及ぼすから」。

「いくつかの特徴がある。プロダクトの使い方はかなり簡単だ。しかしこれは、避妊や体のことを考えたくない女性のためのものではない。そうした人にはIUD(子宮内避妊器具)が最適のソリューションだと思う。そうすると考える必要がないのだから。Inneはホルモン剤を服用したり体内に装置を入れたりしたくない女性のためのものだ。というのも、そうした女性たちはすでに痛い思いを経験したり、ホルモン剤を服用せずに自然に避妊することに関心を持っているからだ」。

現時点で、Inneはピルのようなすでに確立された避妊メソッドと比較する研究は行っていない。少なくともユーザーは、妊娠するリスクについてピルを使用しながら他の避妊メソッドに挑戦したりテストしたりして比較することはできない。

ラプティ氏は新たに調達した資金で今後さらに臨床研究を行うと話す。しかしこうした研究は、プロダクトの効果を示すテストからさらなる識見を引き出すことによりフォーカスされる。

Inneはまた、将来の米国マーケット参入に向けて、FDA認証取得の作業にも着手した。自然避妊や妊娠しやすい期間の追跡を超えて、Inneはホルモン追跡の幅広い活用を検討している。例えば、ホルモンレベルの長期追跡に基づいて閉経についての情報を女性に提供することなどだ。あるいは、Inneがさらに研究を進めたいと考えているエリアである、子宮内膜症のような症状の管理サポートだ。

意図するところは、バイナリ(編集部注:2つの要素から成るの意)の反対だ、とラプティ氏は語る。多機能なツールを女性に提供して、幅広い個人のニーズや目的のために体の中で起きている変化に注意を向けて理解するようサポートする。

「女性の体はバイナリという考え方を変えたい。我々の体はバイナリではなく、体は1カ月を通して変化する。だから今月は避妊したいけれど、翌月は妊娠したいということがあるかもしれない。これを実行するには体のことをよく知っていなければならないが、その体はいずれの場合でも同じものだ」と同氏は話す。

シリーズAに関して、Blossom CapitalのパートナーのLouise Samet(ルイーズ・サメット)氏は声明文で次のように述べた。「Inneは、女性があらゆる年代において体をより深く理解することを可能にする科学的な有効性と使用しやすさを兼ね備えている。最も感銘を受けたのは、科学的な有効性を有しつつデザインと使いやすさにおいて詳細に至るまでフォーカスしていること、そして世界中の女性に影響を与えたいという野心を持っていることだ」。

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(翻訳:Mizoguchi)

調剤薬局向けクラウド「Musubi」開発のカケハシが26億円調達、伊藤忠やアフラックが株主に加わる

カケハシは10月31日、シリーズBラウンドで第三者割当増資による26億円の資金調達を発表した。引き受け先は既存株主のDNX Venturesやグロービス・キャピタル・パートナーズのほか、新たに伊藤忠商事、電通ベンチャーズ、アフラック・イノベーション・パートナーズ、みずほキャピタルが加わった。今回の資金調達により累計調達額は約37億円となる。そのほか既存の引き受け先は以下のとおり。

  • STRIVE
  • 伊藤忠テクノロジーベンチャーズ
  • 千葉道場2号投資事業有限責任組合
  • Coral Capital(旧500 Startups Japan)
  • SMBCベンチャーキャピタル

カケハシは、調剤薬局向けのクラウドシステム「Musubi」を開発している2016年3月設立のスタートアップ。患者の疾患や年齢、性別、アレルギー、生活習慣、検査値などのデータを基に最適化した服薬指導をサポートする。季節に応じた対応や、過去の処方や薬歴などを参照した指導内容の提示も可能だ。データを入力していくことで各種情報が蓄積され、より高い精度で患者に最適な服薬指導やアドバイスを自動提案してくれる。

Musubiはタブレットを使用するサービスで、服薬指導中に患者と薬剤師が一緒に画面を見ながら、話した内容をタップするだけで薬歴の下書きを自動生成できるのも特徴だ。調剤薬局といえば、医師から出された処方箋を手渡して薬をもらうだけの場所になりがち。通常は「(処方された薬を)ジェネリック医薬品に切り替えますか」「お薬手帳を持っていますか?」ぐらいの会話しか発生しない。

こういった環境にMusubiを導入することで「かかりつけ薬局」としての存在感が増すという。患者にとっては、診察を受ける医療機関はさまざまでも、薬を受け取る調剤薬局を1つに決めておくことで薬歴が集約されるので、調剤薬局で市販薬を購入する際の服薬指導やアドバイスの精度も増すはずだ。小児科や皮膚科などは平日でも混み合っていることが多く待ち時間が長い。深刻な症状を除けば、調剤薬局に相談して解決というケースも増えるだろう。

カケハシによると、今回調達した資金のうちの大半は、Musubi事業の拡大と新規事業の創出に必要な人材に投資するとのこと。同社は2019年2月に大阪に拠点を開設するなど首都圏以外での事業展開を進めている最中だ。

GoogleがヘルスウェアラブルFitbitの買収を交渉中か?

Googleの親会社であるAlphabetは、ウェアラブルデバイス大手の上場企業のFitbitと買収交渉を進めているとReuters(ロイター)が報じた。

報道によれば、交渉は現在も進行中でありすべて白紙に戻る可能性もあるという。しかしFitbit買収が実現すればウェアラブル市場におけるGoogleの立場が大きく強化されるのは間違いない。スマートウォッチ向けWear OSなどをリリースしてきたものの、Googleはこの分野で苦戦している。

GoogleのWear OSはあくまでスマートウォッチ市場向けであり、サードパーティやGoogle自身のGoogle Fitアプリによるヘルスモニター機能を内蔵しているものの、スマートウォッチはかなり高価なデバイスとなる。フィットネストラッキングに特化した専用の(かつ安い)デバイスには大きな市場がある。一方、Fitbitは非Wear OSのVersaシリーズでスマートウォッチ市場にも参入している。

Googleは今やPixelシリーズのスマートフォン、Google Hubなどのスマートホームデバイスをプロダクトに加えており、FitbitをGoogleグループ化できればこうしたハードウェア戦略が強化されるのはもちろんだ。2018年にGoogleはHTCのデザイン部門のかなりの部分の買収を完了させている。Googleは今のところ独自のスマートウォッチをリリースしていないが、Pixelシリーズのスマートウォッチを開発中だという噂をこのところよく聞く。

買収交渉の情報が流れるととFitbitの株価は一瞬で30%近くアップした。 2015年に上場した直後に48ドルの高値をつけたものの続落、2017年以降は6ドル前後となり、今年8月には3ドルの安値をつけていた。買収の報道を受けて現在は5.20ドルとなっている(日本時間10月29日朝時点では5.64ドル)。

画像:Getty Images

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

約11万円で犬の幹細胞バンクを提供するペット系スタートアップGallant

ロサンゼルス拠点のスタートアップであるGallant(ギャラント)が、1100万ドル(約12億円)の資金を得て、犬の再生医療に扉を開く。同社はDogVacayの創業者兼CEOであるAaron Hirschhorn(アーロン・ハーシュホーン)氏が創業した。自分のペットが病気で衰弱する中、再生医療と幹細胞療法の存在を知ったのがきっかけだった。

ハーシュホーン氏は声明で「私自身、10年以上にわたる慢性の腰痛に苦んだ経験がある。再生医療で体調を整えるまで、大好きな活動をすることができなかった。同じ頃、家の犬のロッキーが関節炎に苦しみ歩けなかった。ペットの治療回復にはもっと良い方法が必要だと思った。それがGallantを始めるきっかけだ。再生医療の力により、ペットをより幸せで健康に保つことを使命としている」と述べた。

ハーシュホーン氏とともに経営に参画するのは、Mincus BiosciencesとSciStemという2つのライフサイエンス企業で豊富な経験を積んだシリアルアントレプレナーのLinda Black(リンダ・ブラック)氏。2社は再生医療の開発に注力している。臍帯血バンクであるCalifornia CryobankのCEOであるRichard Jennings(リチャード・ジェニングス)氏と、Trupanionの創業者兼CEOであるDarryl Rawlings(ダリル・ローリングス)氏が同社の取締役会に加わった。

ハーシュホーン氏はペットビジネスをよく知っている。同氏はDogVacayがRoverと合併する前に、同社を1億ドル(約110億円)以上の売上規模に成長させた。

その経験が投資家からの投資を呼び込んだ。Maveron、Bold Capital Partners、Bling Capital、Science Inc.などの投資家が現金で1100万ドル(約12億円)を投資した。Gallantはこの資金調達によりCook-Regentecの獣医ビジネスを買収した。同ビジネスは動物薬の知的財産、幹細胞バンク事業、生殖組織由来の細胞治療製品のパイプラインなどを保有する。

犬の幹細胞をその生涯にわたり約1000ドル(約11万円)で幹細胞バンクに預けることの利点は何だろうか?Gallantによると、買収した事業の獣医師が、すでに何百もの猫や犬を動物自身の幹細胞で治療している。これまで変形性関節症、アトピー性皮膚炎、断裂靭帯、慢性ドライアイなどの病気の犬を治療した。各治療法は初期の臨床試験で効果的であることが実証されており、幹細胞療法は科学的研究の最先端にある。

Gallantでペットの飼い主は、定期的な避妊または去勢手術の際にペットの幹細胞採取を選択できる。ハーシュホーン氏によれば、毎日約100万匹の犬と猫が処置を受けているため、潜在的な顧客が不足することはない。獣医が手術で得た組織を、Gallantが収集して動物の幹細胞を格納する特別な容器に入れる。

手術中に採取した幹細胞を収集することにより、若く健康な幹細胞を確保できるという。Gallantのテクノロジーによる幹細胞療法は安くない。細胞の採取に395ドル(約4万3000円)、ペットの生涯にわたる保管にさらに595ドル(約6万5000円)かかる。希望すれば年間95ドル(約1万円)で遺伝物質の保管も可能だ。なお、Gallantによればサービス立ち上げを記念して期間限定で細胞採取料金を​​免除するとのこと。ぺットの遺伝物質に基づく治療は300ドル(約3万3000円)だ。

Gallantの最高科学責任者であるブラック博士は声明で「犬の衰弱性関節炎の臨床試験で、細胞療法がいかに犬の命に影響を与えることができるか目の当たりにした。これからも犬のクオリティオブライフを劇的に改善する治療法の開発に全力を尽くす」と述べた。

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(翻訳:Mizoguchi)

動物と飼い主と獣医師にとって快適な動物病院を目指すModern Animal

ペットと飼い主と獣医師の三者を平等に幸福にしたいと願うスタートアップであるModern Animal(モダン・アニマル)が、1350万ドル(約14億6700万円)のシード資金を獲得して来年初めに、米国ロサンゼルスに最初の開院を目指す。シードラウンドをリードしたのはFounders Fundで、Upfront VenturesやSusa Venturesなどが参加した。

創業者のSteven Eidelman(スティーブン・エデルマン)氏は、前に犬の運動量を測るスタートアップWhistle(ホイッスル)を創業し、のちにそれをPetcare(ペットケア)に売却した。Modern Animalは、次世代の動物病院を目指している。ペットのためのOne Medicalと考えてもいいかもしれない。獣医師は全員がフルタイムの正社員で、同社の株を保有する。

エデルマン氏はTechCrunchに対して「One Medicalと似ているといえば、うちもテクノロジーとデザインの両面でケアのあり方を抜本的に変えようとしている。One Medicalとの共通点は多い」と語る。

Modern Animalを率いるのは獣医学博士のChristie Long(クリスティ・ロング)氏で、前はペットショップ大手のPetcoの獣医学部長だった人だ。Modern Animalは年額100ドルの会費制で、すべての検査が無料、ネット利用も含め1日24時間週7日のケア、アプリからの処方リクエストとデリバリー、などのサービスを提供する。そのほかの診療サービスは有料だ。

エデルマン氏は「弊社の目標は市場に合わせることなので、高額なペットケアサービスは提供しない。最良のケアをもっとも効率のいいシステムで提供したい。長期的な低コストを支えるのは、そのような効率性だ」と説明する。

Modern Animalの最初の診療所は歯科と外科もあるが、入院サービスはない。同氏による「緊急治療室のようなものはないし、そのための専門医もいない。高度なケアが必要な動物には、救急医や専門医を紹介する」とのこと。

同社は、今後の5年間で米国に50カ所の開院を目指している。どの院も環境への配慮を重視し、例えばフロントで電話の呼び出し音がけたたましく鳴ったりしない。犬と猫を同じ場所に居させない。犬は平気でも猫アレルギーの人とか、その逆もいるからだ。また動物たちの間にも、さまざまな相性がある。

「動物のための安全で快適な環境を作りたい。それに動物病院では、本当に優れたケアは人間へのケアも含む」とエデルマン氏は主張する。

画像クレジット: TechCrunch/MRD

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

Amazonがヘルスケアサービス用API開発のスタートアップを買収

Amazon(アマゾン)が、オンラインのヘルスケアサービス用APIを開発しているスタートアップのHealth Navigator(ヘルス・ナビゲーター)を買収した。この買収について最初に報じたCNBCによれば、Health NavigatorはAmazonの従業員向けに試験的に運用されているヘルスケアサービスプログラム、Amazon Careの一部となる。

Amazon corporate office building in Sunnyvale, California(画像:Lisa Werner / Getty Images)

Amazonがヘルスケア系のスタートアップを買収するのは、これが2社目だ。1社目はオンライン薬局のPillPackで、2018年に10億ドル(約1080億円)をわずかに下回る金額で買収した。PillPackのサービスもAmazon Careに統合され、リモートで治療計画を相談し処方箋を配送している。

Health Navigatorのプラットフォームは、オンラインのヘルスケアサービスや遠隔医療、メディカルコールセンターに統合し、患者とのやり取りのプロセスを標準化することを目指して作られた。このプラットフォームには、健康に関する訴えや推奨される治療を記録するための自然言語処理ベースのツールが含まれ、APIでアプリに統合する。

Health Navigatorは2014年に医師のDavid Thompson(デビッド・トンプソン)氏が創業した。同社はこの買収について正式に発表していないが、CNBCによればHealth Navigatorは顧客に対し今後は契約を更新しないことを伝えているという。

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(翻訳:Kaori Koyama)

Googleが通知スパムを受信箱に放り込むアプリなど複数の実験アプリを公開

Google(グーグル)は昨年のデベロッパーカンファレンスであるGoogle I/OでAndroid用のデジタルウェルビーイングツールを発表したが、その後さらに機能の拡張に努めて子供のいる家族のためのFocusモードやペアレンタルコントロールの改良などを導入した。そして、今回また新しいことをやろうとしている。今回のは「実験的な」アプリの集まりと呼ばれ、ユーザーが自分のデバイスの使われ方をよく知り、そのスクリーンタイムを減らすことが目的だ。

それらのアプリはDigital Wellbeing Experimentsと呼ばれる新たなプラットホームに属し、これまでの標準的なスクリーンタイムのコントロールとは大きく異なっている。「すべてオープンソースのプロジェクトで、型にはまらない考え方をユーザーに促す」となっているが必須のツールとはいえない。

それらの実験の1つであるUnlock Clockは、スマートフォンをアンロックする頻度を数える。

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そしてWe Flipは、友だちのグループや家族などの全員をテクノロジーから切り離し、しかし誰かが自分のスマートフォンをアンロックすると全員のその状態が終わる。スクリーンタイムが、家族の対戦スポーツになるみたいだ。

一方Desert IslandMorphは、アプリを軸にしてスクリーンタイムの減少を目指す。Desert Islandは本当に必要なアプリだけで1日を過ごすようにし、Morphは1日の各時間に合ったアプリだけを使えるようにする。

Screen Shot 2019 10 23 at 6.29.32 PM

そんなアイデアは何年も前からAndroid用のランチャーのCoverEverythingMeAviateなどにもあった。それらの場合は、どの時間にユーザーが何をしているかによって、ホーム画面の構成やウィジェットが変わった。しかしそれでもスマートフォンの状態をニーズに合わせて個人化するという考え方は、あまり普及しなかった。「同じことがiOSではできないから」だったかもしれない。Apple(アップル)は、ユーザーによるカスタマイズをかなり制限している。

Post Boxはかなり面白い。それは通知を特定の時間になるまで消さずに保持する。

通知スパムは、スマートフォンのユーザーになることがうっとおしい最大の理由のひとつだ。あまりにもひどいので、アップルもグーグルもOSのレベルでユーザーが再通知をコントロールできるようにした。

今年の早い時期にアップルのCEOであるTim Cook(ティム・クック)氏は「自分のiPhoneの通知機能を無効にした」とさえ言った。iPhoneにはそんな奇跡のようなこともできるという自慢だったが、実際にはアップルの通知システムの設計に欠陥がある。デベロッパーは、しつこくて無意味な割り込みを繰り返し何度でもかけられるようなアプリを平気で作れてしまうのだ。

通知を唐突で無礼な割り込みからメールの受信箱(Post Box)のようなものに変えてしまうPost Boxアプリの実験はもっと前からあってもいいような機能だが、それがあるとスマホのアプリが今ほど増加しなかったかもしれない。そして今回の発表の中では最も奇抜な実験がPaper Phoneアプリだ。

このアプリは、その日の重要な情報や、必要なときすぐ見つけたいコンタクト、地図、会議のスケジュール、仕事の締め切り、天気予報などなどをプリンターでプリントして小冊子にしてくれる。

paper phone

つまりスマートフォンのスクリーンタイムがゼロ、スマホにまったく触らないで、重要な情報にアクセスできる。スマホ以前の世代にとっては過去へのタイムトラベルみたいだし、スマホ依存症の世代には、ちょっとした自由時間をプレゼントする。

このDigital Wellbeing Experimentsプラットホームは誰でも作品を提供できる。テクノロジーに過度に依存しない生活のための知恵や工夫をどんどん投稿しよう。

グーグルは「これらの実験がデベロッパーやデザイナーを啓発して、テクノロジーを構築するときにはデジタルのウェルビーイングが頭の中で常に最優先されるようにしたい。このプラットホームに参加する人が増えれば増えるほど、みんなにとってもっといいテクノロジーを誰もが作れるようになるだろう」とコメントしている。

その気になった人は、ガイドブック「Hack Pack」とオープンソースのコードをこの実験のウェブサイトからダウンロードできる。また、実験アプリはAndroidのみでGoogle Play Storeからダウンロードできる。

この実験はグーグルの既存のプロダクトの改良というより、お楽しみの要素が強いが、グーグルにはほかにも、スクリーンタイムとウェルビーイングの仕組みがある。それらは、Android本体のウェルビーイング機能や、YouTubeの「休憩」のおすすめ、そのほかのスクリーンタイムコントロール、Google アシスタントの息抜きルーチン、自動リプライや後で送るのGmail機能、Google Family Link(ファミリー リンク)などだ。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

月額16.8万円からのパーソナルドクター「Wellness」のベータ版提供開始、3500万円の資金調達も

パーソナルドクターサービス「Wellness」(ウェルネス)を運営するウェルネスは10月23日、同サービスのベータ版の提供開始を発表した。同時に、インキュベイトファンドと佐竹義智氏、中島聡氏、藤岡大祐氏、複数の医師を含む個人投資家を引受先とした約3500万円の第三者割当増資の実施も明らかにした。

Wellnessは、身体や心の課題・リスクと向き合い、ヘルスリテラシーを高めて効率的に予防ケアを行うためのパーソナルドクターサービス。健康理解度や課題を踏まえて専用のカリキュラムを考案してくれるほか、日々のオンラインコーチング、週1回のホテルのラウンジや自宅での対面レクチャーなどが受けられる。カリキュラム(プラン)は、月額16万8000円のベーシック、月額29万8000円のスタンダード、月額42万8000円のプレミアムの3種類が用意されている。それぞれレクチャーを受けられる期間と回数が異なっており、ベーシックは約1カ月間でレクチャー計4回、スタンダードでは約2カ月間でレクチャー計8回、プレミアムは約3カ月間でレクチャー計12回となっている。

同サービスは、創業者である中田航太郎氏が自らが医師として働いていたときに感じた患者との意識のズレを解消することを目指して開発されたそうだ。患者の中には、人間ドックの活用法がよくわからず、年齢や生活習慣に応じて適切な検査を受けてない人が多く、その検査結果を正確に読み解くことも難しいという現状があった。Wellnessでは、そういった患者に対して今後の健康を改善するための知識を提供する。具体的には、太っていると自覚している人には人間が太ってしまうメカニズムを解説しつつ、生活習慣に合わせて食事のタイミングや内容を提案してくれる。さらに肥満がリスクになる病気や、体重だけではなく血圧やコレストロールにも配慮した食事についてもレクチャーとコーチングを実施する。

同社では現在、有料カリキュラムを利用する前の無料カウンセリングを実施中だ。医師が専門的な立場かヒアリングして「健康上のリスクや課題」「健康のために知っておくべきこと」の2点をチェック後、専用のカリキュラムを提案してくれる。

がんと闘うドリームチームを結成したArsenalBioがシードマネー約92億円を調達

ArsenalBio(アーセナルバイオ)の物語はSean Parker(ショーン・パーカー)氏のがん免疫療法研究所から始まった。2016年に設立された同研究所は各分野の一流のがん研究者が協力や交流をする場となった。正式な会議や非公式な場など、さまざまな機会に最新の知見について情報交換している。

きっかけは非公式な場だった。集まったのは、ブロード研究所の病理学教授で研究者でもあるBradley Bernstein(ブラッドリー・バーンスタイン)博士、メルク研究所腫瘍発見学担当副社長のW. Nicholas Haining(W.ニコラス・ヘイニング)氏、カリフォルニア大学サンフランシスコ校免疫学准教授のAlexander Mason(アレクサンダー・メイソン)博士、ペンシルベニア大学システム免疫学教授のE. John Wherry(E.ジョン・ウェリー)氏。彼らはがんの診断と治療の最新技術や、がんを治す可能性のある細胞療法を推進する技術について話し始めた。

パーカー氏は次のように提案した。個々の研究者が自身の技術をスピンアウトして会社を設立し、それぞれの会社が個別にイノベーションを起こして固形腫瘍の細胞療法を確立するのは効率的ではない。治療法の発見と開発に向けて力をあわせて研究し、成果を蓄積すべきだ。

Westlake Village BioPartners(ウェストレイク・ヴィレッジ・バイオパートナーズ)の創業者であり、自身もArsenalBioへ投資しているBeth Seidenberg(ベス・サイデンベルグ)氏は「これは学者の力を結集するという力技だ。通常、学者は個々に会社を作る。その力を合わせ、さらに経営のドリームチームも結成した」と述べた。

実際、経営チームはプロジェクトを支える研究者と同様に印象的だ。Kleiner Perkinsの設立パートナーであるBrooke Byers(ブルック・バイヤーズ)氏はKen Drazan(ケン・ドラザン)博士をArsenalBioのコンサルタントとして送り込んだ。現在同社のCEOであるドラザン博士は、がんの研究・診断のスタートアップであるGrailの前社長であり、多くのヘルスケアスタートアップおよび大企業の経営幹部や創業者の役割を果たしてきた。

ArsenalBioのCEOであるケン・ドラザン氏

ドラザン氏を確保した後、会社はすぐに残りの経営チームメンバーも採用した。Genentechのプリンシパルサイエンティストで適応腫瘍および細胞療法を担当したJane Grogan(ジェーン・グローガン)氏、Janssen Oncology(ヤンセン・オンコロジー)の免疫腫瘍学および細胞療法担当の副社長だったMichael Kalos(マイケル・カロス)氏、10x Genomicsでバイオロジー(生物学)担当副社長だったTarjei Mikkelsen(タルジェイ・ミケルセン)氏だ。

ArsenalBioは当初、投資家からシードマネーを調達する受け皿会社として2018年に設立された。その後、技術チームと経営チームを加えた。

強力な経営陣とサイエンティストの下、ArsenalBioは8500万ドル(約92億円)を集めた。投資家には、Westlake Village、PICI、Kleiner Perkins、University of California San Francisco Foundation Investment Company、Euclidean Capital、Osage University Partnersが名を連ねる。

ArsenalBioの構想はT細胞療法の効果を上げて広範囲のがんと戦えるようにするというものだ。T細胞療法は特定のがんに対してすでに驚くべき効果を上げているが、致命的な症状に至る固形腫瘍に対しては効いていない。

肉腫、がん腫、リンパ腫などの固形腫瘍と闘うには、医師がまず腫瘍の周囲に、次に腫瘍が広がる組織にT細胞を送り込む方法を考えなければならない。複数のバイオマーカーを使う必要があるが、まだ発見されていないバイオマーカーが多い。

「がん微小環境で細胞に働いてもらう必要がある」とサイデンベルグ氏は言う。

T細胞は人体が感染症や病気と闘うために備えた仕組みだ。がんは免疫細胞に対し、自分は攻撃対象ではなく無視すべきものであるというシグナルを送り自然免疫反応を回避する。

「我々の目標は細胞をプログラムすることだ。がんからの指示を無視するようT細胞に命令するため、追加の指示をT細胞に送り、がんからのシグナルを無視させる」とドラザン氏は説明する。

ArsenalBioは最初のプロダクトの戦略を練っている、とドラザン氏は述べた。だが、同社は異なる2種類のテクノロジーを世に出す予定だ。1つ目は特定のがんを治療する医薬品そのもの。2つ目は遺伝子のシーケンス(塩基配列)解析で、T細胞の正常な機能を妨げるがんからのシグナルを打ち消したり書き換えが可能なシーケンスを特定する。

ドラザン氏は、解析したシーケンスをGitHubのプログラムと比較し、他の研究者、臨床医、企業が独自の治療法を開発するために利用できるようにした。

「ArsenalBioのテクノロジーによって、膨大な長さのコードを書き直してT細胞に劇的に新しい機能を持たせ、がんや広範にわたる疾患をより効果的に殺すことができる」とPICIの創設者兼会長でありArsenalBioのディレクターを務めるパーカー氏は声明で述べた。「PICIの調査員の尽力によって生まれたArsenalBioを目にして報われたと感じている。テクノロジーの基盤となるサイエンスの部分について、彼らが研究センター、病院、大学と協力した。ArsenalBioの存在自体が、協力に重きを置き患者第一を貫くことによって、ベンチからベッドサイドに至るまでの治療をどれだけ迅速かつ優れたものにすることができるかを示している」。

画像クレジット:BSIP / Universal Images Group / Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi)

電子タバコのJUULがフルーツ味やクリーム味のポッドの販売を一時中止

JUULはフレーバー付きの電子タバコ(マンゴー、クリーム、フルーツ、キュウリ)の米国での販売を中止し、米国食品医薬品局の審査を待つ。同社は米国時間10月18日、たばことミント、メントール味のフレーバーのみを米国内で販売すると発表した。

JUULのCEOであるK.C.Crosshwaite(K.C.クロスウェイト)氏は声明で、「私たちは社会の信頼を得て、未成年者による使用を撲滅するために規制当局、政治家、株主と協力し、さらに成人喫煙者に別の選択肢を提供することで、電子タバコのカテゴリーをリセットしなければならない」と述べた。

今回の販売停止は、JUULがサンフランシスコのProposition Cへの積極的な支持を止め、米国での広告キャンペーンを中止し、フレーバーガイダンスの草案に関してFDAへのロビー活動を中止した後に決定された。

しかし、これはJUULがこれらのフレーバーの販売を将来も諦めるという意味ではない。同社は、フレーバー付き電子タバコの使用を支持する科学的証拠の発見や、未成年者による使用を撲滅するためのより厳格なルールの策定に、引き続き取り組むと述べている。なお、JUULは今でも米国外で全てのフレーバーを販売している。

今週には、子どもを亡くした両親がJUULを相手取って訴訟を起こした。この訴訟は、JUULが直面している訴訟のうちの1つにすぎない。

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(翻訳:塚本直樹 Twitter

希少疾患の治療法をAIで探るHealxが約61億円を調達

AIを使って希少疾患の新しい治療法を探るスタートアップであるHealx(ヒーレックス)が、シリーズB投資で5600万ドル(約61億円)を調達した。

このラウンドを率いたのは英国ロンドンに拠点を置くベンチャー投資企業Atomico(アトミコ)だ。そこに、 Intel Capital(インテル・キャピタル)、グローバル・ブレイン、btov Partners(ビートゥーヴィー・パートナーズ)が加わった。さらに、 前回投資を行ったBalderton Capital(バルダートン・キャピタル)、Amadeus Capital Partners(アマデウス・キャピタル・パートナーズ)、Jonathan Milner(ジョナサン・ミルナー)氏も参加している。

Healxは、今回調達した資金で同社内に治療法パイプラインを開発し、国際的なRare Treatment Accelerator(希少疾患治療アクセラレーター)プログラムを立ち上げたいと話している。このプログラムは、患者グループと手を組み希少疾患のための創薬の効率化を図るものだ。

さらに、新しい治療法を発見し「24カ月以内に」臨床試験に持ち込む体制を整えることも目指す。現状からすると驚くほどの短期間だ。しかも、希少疾患の多くは、治療法開発の目を向けられることすらない。

「世界には、7000種類の希少疾患があり、4億人が罹患しています(半数は子ども)。その95%には、いまだに認証された治療法がありません」とHealxの共同創設者でCEOのTim Guilliams(ティム・ギリアムズ)氏はTechCrunchに語った。

「新薬の発見と臨床開発の従来モデルでは、費用、スケジュール、有効性の面での負担が膨大です。通常、新薬を市場に送り出すまでには、20〜30億ドルの費用、12〜14年の開発期間、95%の失敗率を負うことになります」。

特に患者数の少ない疾患では、現状のモデルは使えないとギリアムズ氏は言う。新薬の発見と開発にかかるコストが大き過ぎるため、薬の売り上げでは単純に投資の元が取れないからだ。そこでAIを使って既存の医薬品の別の使い道を探るという「抜本的な方向転換」が必要になる。

「認証された医薬品に注目し、AIの能力をうまく使うことで、希少疾患のための治療薬の発見プロセスを、高速で高効率なものにできました」と彼は主張する。「それ以来、私たちは、2025年までに100種類の希少疾患の治療法を臨床試験に持ち込むことを使命にしています」。

もちろん、AI技術を創薬に応用しているのはHealxだけではない。また、AIの使用はそれほどの大冒険でもない。例えば、BenevolentAI(ベネボレント・エーアイ)は数多くの大ニュースで世間を驚かせているが、直近では、評価額の引き下げを行ったと報道された。しかしギリアムズ氏は、Healxのアプローチが、Recursion Pharmaceuticals(リカージョン・ファーマスーティカルズ)や Insilico Medicine(インシリコ・メディシン)といった同業他社とは異なっていると話している。

「私たちの目標とアプローチはまったく違います。私たちは希少な遺伝性疾患に特化していて、世界的な希少疾患の生医学のナレッジグラフを所有しています。さらに私たちは、新しい分子を開発するのではなく、すでに認証されている医薬品の価値を最大限に高めているのです」。

加えてギリアムズ氏は、Healxの技術はデータ駆動型であり「仮説に依存しない」ため、従来型の標的を定めた創薬とは大きく異なるとも話している。「私たちは医薬品の組み合わせを予測し、大変な短期間で臨床に持ち込むことができます。そして私たちは、戦略的パートナーであり疾患の専門家でもある患者グループと密着して作業を進めます」と彼は言い足した。

Healxの共同創設者で、バイアグラの発明者の一人でもあるDavid Brown(デイビッド・ブラウン)博士が、いくつもの医薬品を発明し市場に送り出した人物であることも付け加えておくべきだろう。彼の医薬品は、400億ドル(約4兆3500億円)以上もの利益をもたらした。「そのやり方を私たちは知っています」とギリアムズ氏。

Healxは、その革新的なモデルの正当性をFRAXA Research Foundation(フラクサ研究財団)で立証したと主張している。脆弱X症候群は自閉症の大きな原因のひとつとされる遺伝子異常だが、その治療法で認証されたものはまだひとつもないとのことだ。その状況を、HealxとFRAXAが変えられるかも知れない。まもなく、複数の治療法を組み合わせた臨床試験が開始される。その他の希少疾患の治療法の臨床試験も、2020年後半にはスタートする。

Atomicoのアイリーナ・ハイバス氏

私は、AtomicoのプリンシパルであるIrina Haivas(アイリーナ・ハイバス)氏にも話を聞いた。投資の決め手となったHealxの魅力と、こうした企業を支援する際のリスクについて、Atomicoを代表して話してもらった。創薬とはわらの山から針を探し出すようなものであり、さらにその発見を製品化にまで持っていかなければならない。言い換えれば、未知の要素が非常に多く、市場に送り出すまでに大変な時間がかかるということだ。

「Atomicoを支援すると決めた理由のひとつは、まさに、うまくいけばHealxは希少疾患に苦しむ4億の人たちの人生を劇的に改善できると信じ、その大胆で長期間におよぶ賭けに物怖じしないところでした」と彼女は話してくれた。

「もちろん、そのような野心的な賭けには、ある程度のリスクが伴います。しかし同社の場合、その“途方もない探し物”問題を、これまでのように人が行うよりも、AIでうまく解決できることを示す兆候が、初期のあらゆるサインの中に見られたのです。もちろん、最終的にそれが証明されるのは、治療法が製品化されたときですが」

そうは言いつつ、彼女はHealxのようなスタートアップは、企業の新しいカテゴリーを創出するとも警告している。なぜなら、それは従来型の技術でも、従来型のバイオ製薬でもないからだ。

「投資家の観点からすると、別の枠組みが必要になるでしょう。それに慣れるまでに時間がかかる投資家もいるかもしれません」と元外科医の投資家である彼女は言っていた。

著者:Steve O’Hear

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(翻訳:金井哲夫)

編み物の世界の新製品に繊維産業のハイテクが使われたRed HeartのHeat Wave

私も含めて、編み棒を持った者が初めて使う毛糸は安くてすぐに使えるRed Heartだろう。そこからの売り込みメールを私の受信箱に見つけたときは、ちょっと驚いた。編み物用の毛糸をTechCrunchで私が取り上げることはまずない。でもこのブランドは最近、Heat Waveと呼ばれる新しい毛糸シリーズを発表したばかりそれは同社独自の技術で、日光に当ると熱を発するアクリル製の毛糸だ。

Gloves Woman

Red Heartの古くからあるSuper Saverと同じく、Heat Waveも100%アクリルだが、陽に当てると曇の日でも最大で7度ぐらい温かくなる。私は編み物をSuper Saverで覚えたが、使い残しの糸は今でも大事に保存している。Red Heartが送ってきたHeat Waveのサンプルを開けてみると、毛糸の感触はSuper Saverと区別できないほどなので、これまたびっくりした。Heat Waveの糸玉を晴れた日に外に出してみると、同社の言うとおり、同じ色のSuper Saverや純毛の毛糸よりも温かい。

Red Heartで製品開発を指揮しているAmy Olsen(エイミー・オルセン)氏によると、名前は言えないがあるサプライヤーとの共同開発で、芯に発熱性のある微細なアクリル繊維を開発した。それは繊維の構造の一部なので、スプレーなどとは違って洗っても発熱性は消えない。その繊維はジョージア州アルバニーにあるRed Heartの紡績工場でアランウェイトの毛糸に紡がれる。

実際に商業製品に使われている発熱素材は、ユニクロのヒートテックのようにほかにもあるが、その多くは体が発生する熱を保持することで発熱させる。Red HeartのHeat Waveは太陽のエネルギーを吸収するので、アウトドアで温かさが増す。一方、そのほかのアクリル製品と同じく、家の中に入ると元の温度に戻る。

編み物にハマっているテクノロジー記者としての私は、この2つがつながるとき心がワクワクする。例えば、研究者が編んで作った生地をソフトロボットに使っている。またジョージア工科大学の数学者で物理学者の編み物の好きなElisabetta Matsumoto(エリザベッタ・マツモト)氏は、自分が編んで作ったさまざまな生地の性質を予測できるAIのモデルを、5年のプロジェクトとして研究している。また、機械編みの方面では、MITの研究者が編み物やデザインの経験のない人が自分の衣類を作れるAIソフトウェアを開発した

Red HeartのHeat Waveは、新しい繊維産業技術が手編み用毛糸のメインのセールスポイントになっているという希少な例だ。これを機に、STEMと繊維工芸の接点にもっと多くの人たちが興味を持ってくれるといいね。オルセン氏によると、Heat WaveはRed Heartの通常製品になり、色数も増やす予定だそうだ。

[原文へ]

(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

ライフサイエンス企業Verilyが遺伝子テストのColorと提携

遺伝子テストのColor Genomics(カラー・ゲノミクス)がヘルスケアデータ分析サービスのVerily Life Sciences(ベリーリー・ライフ・サイエンス)と提携し、遺伝子テスト結果のデータはVerilyが運営するBaseline Health Studyの参加者に提供される。VerilyはGoogle(グーグル)の親会社であるAlphabet(アルファベット)のグループに属する商用ライフサイエンス企業だ。両社はこの提携により、各社の製品・サービスの実用度が上がることを期待している。

遺伝子分析は、かかりやすい疾病や先祖に関する情報を教えてくれるなど一般の想像力を強くかき立てるテクノロジーだが、医療の現場で診断に役立てることができるほどの正確さを欠いている場合が多い。またテスト結果が複雑であるため受診者が内容を正しく解釈するのも難しかった。

今回の提携でProject Baseline Healthの参加メンバーは、Colorによる医師の監督による遺伝子テストにアクセスできるだけでなく、Colorが認定した遺伝子専門家の薬剤師、カウンセラーから遺伝子テストの結果について説明を受けられる。これにより、メンバーはガンや心臓疾患などの重大な疾病に関するリスク、薬剤に対する感受性、副作用の可能性などについて正しい知識を得ることができる。

Colorとの提携で同社の遺伝子情報テストが利用可能になったことで、VerilyはBaselineサービスの魅力を高め、メンバーを広く集めるために役立つはずだ。Verilyは現在米国居住者を対象にサービスを提供しているが、世界の人々のヘルスケア情報を広く集め、最新のデータサイエンスによって分析した結果を提供することを目的としている。

Baselineのメンバーは、オンラインで自宅からColorの遺伝子テストを受けられる。具体的には、自宅でサンプルを採取し、Colorに送付すれば数週間でテスト結果が得られるのだ。さらに電話でカウンセリングを受けることもできる。

Colorが提供するカウンセリングは、Baselineプロジェクトのメンバーが遺伝子検査の結果を正しく解釈するために大いに役立つものとVerilyでは期待している。また遺伝子テスト結果はBaselineを共同運営する大学などの研究機関でも利用される。

画像:TEK IMAGE/SCIENCE PHOTO LIBRARY / Getty Images

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(翻訳:滑川海彦@Facebook