クリーン電力サービスの「アスエネ」がAI活用の温室効果ガス排出量管理SaaS「アスゼロ」を正式リリース

クリーン電力サービスの「アスエネ」がAI活用の温室効果ガス排出量管理SaaS「アスゼロ」を正式リリース

クリーン電力サービス「アスエネ」を提供する気候変動テック領域スタートアップ「アスエネ」は8月26日、AIなどのテクノロジーを活用したSaaSプラットフォーム型温室効果ガス排出量クラウド「アスゼロ」の正式リリースを発表した。脱炭素を目指す企業や自治体に向けた、温室効果ガス排出量およびカーボンフットプリントの算定・報告・削減・カーボンオフセットなどの一括管理と、業務自動化による工数削減が低コストで行えるというサービスだ。

「アスゼロ」には次の3つの特徴がある。

  • スキャンするだけ自動でCO2見える化:企業や自治体などにおいて、自社だけでなく、サプライチェーン全体の温室効果ガス(GHG)排出量のデータ回収と算出を自動化。請求書やレシートをアップロードするだけで自動入力とGHG排出量をAIが自動算定
  • 分析・報告まるごと自動化:GHG排出量の分析をAIが自動支援。CDP、SBT、省エネ法などへの報告を代行・自動化。分析作業もAIを活用し自動化する
  • CO2削減もまとめておまかせ:GHG排出原因に応じて、再エネ100%電力提供、省エネなど最適な手法を提案。地産地消型クリーン電力、オンサイト・オフサイト両方対応のコーポレートPPA、クレジットオフセット、省エネソリューションなど最適なCO2削減手法を提案する

今後は、AIやブロックチェーンなどの最先端テクノロジーを活用し、脱炭素化への取り組みの自動化、非改ざん性の高い証明力の徹底や、ICP(社内炭素価格)機能の導入などを目指すという。またグローバル展開も視野に入れている。

アスエネでは、「再エネ100%、CO2排出量ゼロでコストも10%削減できる地産地消型クリーン電力」という電力サービス「アスエネ」を展開しており、アスゼロでは、このサービスの利用も提案に組み込まれている。

地球温暖化がいよいよ「赤信号」、国連IPCCが報告書で警告

国連の科学報告書は、人間の活動が前代未聞の速さで気候を変えていると結論づけた。執筆者らは報告書で「人類にとって非常事態」と表現した。

国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の結論は容赦なく、率直だ。「人間の影響で大気、海洋、陸地の温暖化が進んだことは明白だ」としている。

世界の政府によって支持されている科学者の集まりであるIPCCは、今後10年で猛烈な熱波や干ばつ、洪水、鍵を握る温度の限界超えがますます増えると警告している。

これは「想定よりもずいぶん早く、おそらく2034年半ばに世界の気温が1.5度上昇する」ことを意味する、と報告書にはある。

IPCCは、1.5度の気温上昇で熱波がより過酷になり、かつ頻発すると指摘する。

報告書の著者の1人である英国レディング大学のEd Hawkins(エド・ホーキンズ)教授は「これは事実の陳述書であり、疑う余地はありません。人類が地球を温めているというのは明白であり、議論する余地がない事実です」と述べた。

しかし科学者たちは、世界が迅速に対応して温室効果ガスの排出を大幅に抑制すれば気温上昇を一定に保つことができるかもしれず、大惨事は回避できる、と話す。

そして科学者たちは、世界の二酸化炭素排出量が2030年までに抑制され、21世紀半ばまでにネットゼロに到達することに望みを抱いている。

今回の報告書は2013年以来の大幅な見直しであり、グラスゴーでのCOP26気候サミット開催まで3カ月もない中で発表された。

IPCC報告書の主要ポイント

  • 二酸化炭素排出量が今後数年で削減されなければあらゆるシナリオで2040年までに気温が1.5度上昇する
  • 気温上昇を1.5度に抑えるには、二酸化炭素排出量の「緊急で迅速、かつ大規模な削減」が必要で、対応が遅ければ気温上昇幅が2度になり、地球全体の生物が苦しむ
  • 人間の影響が1990年代からの世界的な氷河の後退と北極海の氷の減少の主な要因となっている「可能性が非常に高い」(90%)
  • 1950年代以降、熱波が頻発し、また強烈なものになっている一方で、寒波の頻度は少なく、程度も緩やかになっている。
  • 多くの国で「火災が発生するような気候」となる可能性が高い
  • 90%超の地域で干ばつが増えている
  • 2011〜2020年の世界の表面温度は1850〜1900年に比べて1.09度高かった
  • 過去5年は1850年以降最も暑かった
  • 近年の海面上昇率は1901〜1971年に比べて3倍近くになった
  • 2100年までの約2メートルの海面上昇、2150年までの5メートルの海面上昇は除外できず、沿岸エリアに居住する何百万人という人を脅かす
  • 100年に1度起こっていた海面の極端な現象が少なくとも毎年起こることが見込まれる

報告書にある二酸化炭素排出量に応じたあらゆるシナリオにおいて、二酸化炭素排出が大幅に抑制さればければ削減目標は今世紀に達成されない。

科学者たちが提案する解決策には、クリーンテクノロジーの使用、二酸化炭素回収・貯留、植林などが含まれる。

別の共同著者である英国リーズ大学のPiers Forster(ピアーズ・フォスター)教授は次のように書いた。「もし我々がネットゼロを達成することができれば、うまくいけばこれ以上気温は上昇しないでしょう。そして仮に温室効果ガスのネットゼロを達成できれば、ゆくゆくは気温上昇をいくらか戻して気温を幾分下げることができるでしょう」。

IPCC報告書は、1850年以降、人間によって2兆4000億トンもの二酸化炭素が排出され、66%の可能性で気温上昇を1.5度に抑えるための二酸化炭素の排出許容量は4000億トンしかないと指摘した。

これは地球がカーボン「予算」の86%をすでに使い果たしたことを意味する。

さらに、気候変動の影響を免れる人はいない。

「カナダやドイツ、日本、米国のような裕福で安全な国の市民が急速に悪化している気候の有り余る最悪の事態を乗り切ることができるとはもはや仮定できません」と自然保護団体The Nature Conservancyの首席科学者Katharine Hayhoe(キャサリン・ヘイホー)教授は話す。「我々は同じボートに乗っていて、我々皆が生きているうちに影響を受ける問題に直面しているのは明らかです」。

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カテゴリー:EnviroTech
タグ:地球温暖化二酸化炭素二酸化炭素排出量国連気候変動

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(文:Mike Butcher、翻訳:Nariko Mizoguchi

コロナ禍でモビリティも変化、いま押さえておくべき5つのトレンドとは?

人の移動を支えるモビリティは、日々変化している。移動のあり方、移動のニーズも変わってきた。Frost & Sullivan(フロスト&サリバン)でアジア太平洋地区モビリティ部門担当アソシエイト・パートナーを務めるVivek Vaidya(ヴィヴェック・ヴァイジャ)氏は「コロナ禍はモビリティトレンドを変化させました」と語る。

ヴァイジャ氏が明かす、5つのモビリティトレンドとは何か。本記事はフロスト&サリバン主催『インテリジェントモビリティサミット2021 ゼロへのイノベーション』中のセッションの一部講演を編集、再構成したものとなる。

「三密回避」で広がった「脱通勤」のライフスタイル

ヴァイジャ氏が最初に挙げる最初のトレンドは「脱都市化」だ。新型コロナウイルスが広まってからというもの、三密回避のために多くの人が「家で働く」ライフスタイルを始めた。企業のマインドセットも変わり、ワークライフバランスの定義も変わった。

同時に、在宅ワークを可能にするツールの活用が進み、働くためのオフィスは必須ではなくなったため、オフィスの縮小やシェアオフィスの活用も進んでいる。生活エリアとして都市部ではなく、郊外を選ぶ人も出てきている。

通勤が必要なくなると、移動の目的が変わり、移動の形にも影響する。また、公共交通機関の需要も変わる。

ヴァイジャ氏は「通勤が減ると、公共交通機関で運ばれる人数が減ります。そのため、シェアードモビリティなど、需要に合わせて運用できるソリューションの必要性が高まります。さらに、より細かな目的に即したモビリティの需要が高まり、自転車やバイクなど、規模の小さな移動手段の需要も出てきます」と語る。

モビリティの競争が変革される

2つ目のトレンドは「新しい価値創造モデル」だ。

現在、モビリティ周辺の競争のありようは変化しており、ティア1企業は現状より広い役割を果たそうとしている。スタートアップの競争も激化している。さらに、製品の差別化要素はクルマ自体のパワーから、コネクティビティと自動運転へと変化しているという。

ヴァイジャ氏は「モビリティにおける競争の中心は製品そのものではなく、サービスやソリューションに移り変わっています」と指摘する。

また、テクノロジーのライフサイクルはどんどん短くなりながら、そのコストは上がってきている。研究に対するリソースの重要性は増し、自動車メーカーにとって規模の経済の重要性は増すばかりだが、同時に成功の不確実性は高まっている。

「この状況を打開するには、競合企業の協力が不可欠です。コネクティビティと自動運転はバリューチェーンとテクノロジーの中で進化していますが、競合企業同士が手を組むことで、さらに成長しようとしているのです」とヴァイジャ氏。

「新しい価値創造モデル」は、こうした競合企業同士の協力関係の構築から生まれているという。多様なバリューチェーンが集結し、企業の垣根を越えたコラボが活発化している。

モビリティもサブスクリプションモデルへ

3つ目のトレンドは「ビジネスモデルの改革」だ。

これまでの自動車産業では、クルマを販売した自動車メーカーの利益、自動車メーカーに部品を販売したティア1企業の利益というように、バリューチェーンの1つ1つがそれぞれで利益を出していた。しかし、この形に問題が生じてきている。

ヴァイジャ氏は「まず、バリューチェーンの利益が圧力にさらされています。サービスや部品に対する利益が縮小。さらに在宅ワークが増え、通勤が減ったことなどの影響で、これまでの自動車を徐々に買い替え、車種のグレードを上げていくような消費スタイルが変化しつつあります。それにともない自動車メーカーはビジネスモデルを変革する必要があるのです」と問題を指摘する。

では、どのように変革していけば良いのか。ヴァイジャ氏は「サブスクリプション型サービスの導入が鍵です」という。

実際、自動車メーカーはAndroidベースのOSや独自OSを導入してハードウェア、ソフトウェア、アプリケーションのシームレスな統合を果たそうとしている。こうした統合ができれば、自動車メーカーは顧客と長期間、直接的な関係を持つことができる、

ヴァイジャ氏は「例えば、顧客がクルマを買って、そこに駐車アプリがインストールされており、そのアプリに対してサブスクリプション料金が発生するといったモデルが可能です」という。

では自動車メーカーとティア1企業は何をすべきなのか。サブスクリプション型モビリティビジネスの鍵はコネクテッドカーとサービスだ。自動車メーカーはコネクテッドカーに焦点を当て、コネクテッドカーの普及率上昇に務める必要がある。

「コネクティビティのための装置や関連するコストは、コストではなく投資と捉えるべきです。これがあれば自動車メーカーもティア1企業も顧客とつながり続けることができ、マネタイズの機会を持ち続けられます」とヴァイジャ氏。

このような装置から得られたデータを活用し、適切なアプリケーションを提供することで、自動車メーカーとティア1企業はアプリケーションをインストールした車両から継続的なキャッシュを手にすることができる。

ヴァイジャ氏は「こうした方法で既存のビジネスモデルのリスクを回避し、キャッシュフローを改善することができます」と話す。

「自動車産業」のマインドセットから「モビリティ」のマインドセットに

4つ目のトレンドは「カスタマーインターフェイスの再構築」だ。

現在、自動車メーカーはカスタマーインターフェイスをコントロールできる立場にいる。そのため、自動車メーカーは自社のブランドの特徴などを意のままに世に送り出すことができる。しかし、EV(電気自動車)が広まることで新しいプレイヤーが市場に登場し、伝統的な自動車メーカーに挑むようになってきた。さらに、シェアードモビリティやMaaS関連企業がカスタマーインターフェイスの主導権を握ろうとしている。その上、顧客がこれまで「運転すること」で得てきたブランド体験を、自動運転車がなくそうしている。

ヴァイジャ氏は「この状況に対応するには、まず『自動車産業』のマインドセットから『モビリティ』のマインドセットに切り替えることが必要です。これはつまり、製品中心の考えから、サービス中心の考えに移行することです。スタートアップとコラボレーションし、新しいバリュープロポジションに投資し、技術と自動運転を受け入れて独自のサービスを提供することで、サブスクリプション型のビジネスに変化することができるでしょう」と対応方法を提示した。

あらゆる『ゼロ』が唯一の未来

5つ目のトレンドは「ゼロカーボンフットプリント」だ。これを推進しているのはスマートシティだ。「自動車メーカーはこれを無視することはできない」とヴァイジャ氏はいう。再生可能エネルギーへの投資額は上昇し、持続可能性は無視できないテーマだからだ。

「ICE(内燃エンジン車)も2040年くらいまでには使われなくなるでしょう。あらゆる『ゼロ』が唯一の未来です。カーボンフットプリントもゼロ。事故もゼロ。死者もゼロ。100%でリサイクルのゴミもゼロ。欠陥ゼロ。リコールゼロ。100%ESGに則る。企業は倫理を問われているのです。紹介した5つのトレンドを見直し、『何が問われているのか』『何をみられているのか』を考えながら、今後のモビリティを前進させてください」とヴァイジャ氏は語った。

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カテゴリー:モビリティ
タグ:新型コロナウイルス電気自動車自動運転サブスクリプションカーボンフットプリント二酸化炭素ESGコネクテッドカー

BMW i Venturesが持続可能な技術への投資を目的とした約336億円の新ファンドを発表

BMWグループのベンチャーキャピタル部門であるBMW i Venturesは、輸送、製造、サプライチェーンをより持続可能にする技術への投資を促進するため、新たに3億ドル(約336億円)のファンドを設立するとを発表した。

このファンドは、従来のコーポレートベンチャーキャピタルとしては運営されておらず、ドイツの自動車メーカーであるBMWの全面的な支援を受けながら、BMWから独立して活動している。2016年のシリコンバレー移転時に発表した1つ前の5億ユーロ(約660億円)のファンドは、新規投資の期間が終了した。今後、新規投資はファンドIIから行われる。

ファンドIでは、自律走行車やデジタル車両技術、カスタマーエクスペリエンス、先進的な生産に重点を置いていた。例えば、先週、BMW i Venturesからの投資を発表した自律走行トラックのKodiak Robotics(コディアック・ロボティクス)は、このファンドの投資先だった。ファンドIIでは、自動車のコア技術に特化して投資するのではなく、自動車の設計、製造、製造に至るすべての分野で、持続可能性とゼロエミッションをさらに重視していく。

「持続可能なサプライチェーンは、我々が今、本当に関心を寄せていることの1つです」と、BMW i VenturesのマネージングパートナーであるMarcus Behrendt(マーカス・ベーレント)氏はTechCrunchに話した。「BMWは二酸化炭素排出量を大幅に削減したいと発表しました。そのため、自動車からの排出だけでなく、自動車の製造や開発の際に発生する排出も含めて、あらゆる形態の二酸化炭素排出を視野に検討しています」。

BMW i Venturesは、2019年末にこうした持続可能な投資に足を踏み入れ始め、スマートな電気モーターシステムを開発しているTurntide Technologies、固体電池技術のSolid Power、金属産業の脱炭素化を目指すBoston Metalに投資した。ベーレント氏によれば、最近の投資はファンドIIがもたらすものを示唆している。新ファンドの最初の投資先は、英国の中古車販売会社であるMotorwayだ。

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「我々には今、2つの目標があります。第1は財務的な目標で、これは我々の最も重要な原動力です」と、BMW i VenturesのマネージングパートナーであるKasper Sage(カスパー・セイジ)氏はTechCrunchに語った。「世の中のコーポレートベンチャーキャピタルには、投資収益率を気にせず、投資にともなう事業上の取引から利益を得ようとするところもありますが、それは実際には投資先のビジネスを傷つける可能性があります。我々の目標は、その会社をできる限り成功させることです」。

第2の目標は「母艦」であるミュンヘンのBMWグループに戦略的価値を提供することだ。主にアーリーステージの企業に投資することで、早期に市場のシグナルをつかみ、それをBMWに伝えることができる。

「場合によっては、こういう新しい技術が存在し、あなたにも関係のあることかもしれないということを認識してもらうだけです」とセイジ氏はいう。「例えば、当社はLimeに投資しましたが、これはマイクロモビリティであり、自動車との接点はありません。しかし、これは人々がAからBへ移動する方法に関する未来の一部であることを理解することが重要です」。

ベーレント氏とセージ氏はいずれも、BMW i Venturesは投資先を買収する意図はなく、将来的にBMWや他の業界と協力できる可能性の高い企業を見つけるために最前線に立っていたいと話した。

セイジ氏によると、同社はこれまでに12社のイグジットを行い、加えて現時点で6社の上場企業と、最近S-1を申請し、間もなく上場する予定の1社に投資しているという。

「投資をするのに会社の賛同は必要ありません」とベーレント氏はいう。「デューデリジェンスのためにエンジニアに相談したり、他のスタートアップとつながりを持ったりしています。我々は両方の良いところを組み合わせようとしています。つまり、当社はファイナンシャルVCのように行動し、取締役会に席を確保し、ラウンドをリードし、迅速な決断を下すことができます。また、当社は組織内のあらゆるコネクションを企業に提供しています」。

BMW i Venturesが投資するスタートアップ企業は、BMWのエンジニアや社員とのネットワークを築くことができ、また、自動車のエコシステムがどのように機能するかをレガシー企業から学ぶことができるというメリットがある。ベーレント氏によると、Solid Powerのように技術の確立がさらに4、5年先になる企業の場合、BMWの事業部門との間に、そうした企業の成長を支援する強い協力関係があるという。

「これはWin-Winの状況です」とベーレント氏は話す。「当社は彼らを紹介し、会社に連れて行きます。彼らは適切なエンジニアと話をすることになります。契約を獲得できるという保証はありませんが、一緒に仕事をして、模索して、サポートを得て、もしかしたらすばやい解決策で助けてくれるかもしれません」。

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カテゴリー:VC / エンジェル
タグ:BMW持続可能性二酸化炭素排出量二酸化炭素投資ファンド

画像クレジット:MW i Ventures

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Nariko Mizoguchi

「カーボンKPI」でウェブサイトのカーボンフットプリントを測定するRyte

Ryteの創業者チーム

故郷であるこの惑星に我々が及ぼす影響についての意識が高まり、あらゆることに対してCO2の影響が測定されるようになっている。例えば、つい最近までストリーミングのNetflixが測定可能な影響を環境に与えているとは誰も思わなかっただろう。しかしインターネットの相当な部分をウェブサイトやストリーミングサービスが占めると考えると、何らかの影響はあるはずだ。

その影響を測定する方法を確立した新しいサービスが登場し、スケールするための資金を調達した。

RyteはWebsite User Experience Platformを構築する資金として、非公開だった2021年前半のラウンドで850万ユーロ(約11億2000万円)を調達した。このラウンドはミュンヘンのBayern KapitalとロンドンのOctopus Investmentsが主導した。

Ryteは「Ryte Website Carbon KPI」を発表した。同社は、これにより2023年までに全ウェブサイトの5%をカーボンニュートラルにできるとしている。

Ryteは、データサイエンティストや環境の専門家と協力してウェブサイトが二酸化炭素に関して及ぼしている影響を正確に測定できる機能を開発したと説明している。カーボントランジションのシンクタンクであるThe Shift Projectによると、我々のガジェット、インターネット、そしてこれらを支えるシステムのカーボンフットプリントは、世界の温室効果ガス排出量のおよそ3.7%を占めるという。しかもこの数値は、特にコロナ禍以降のデジタル化社会の影響で急速に上昇しつつある。

Ryteにはデータサイエンティストで気候科学と地球温暖化に関する博士号を持つKatharina Meraner(カタリナ・メラナー)氏が関わっている。またClimatePartnerの協力も得てこの新しいサービスを開始する。

RyteのCEOであるAndy Bruckschloegl(アンディ・ブラックシュルグル)氏は次のように述べている。「現在、アクティブなウェブサイトは1億8900万あります。我々はアクティブなウェブサイトの5%、950万サイトが、我々のプラットフォームと強力なパートナー、ソーシャルメディアの活動などを通じて2023年末までに排出ガス実質ゼロになることを目指しています。残された時間は刻々と減っていきますが、ウェブサイトをカーボンニュートラルにすることは他の産業やプロセスに比べればずっと簡単です」。

Ryteはニカラグアのサンホセで実施されている緑化プロジェクトにも協力しており、Ryteの顧客は気候証明書を購入することにより排出ガスをオフセットすることができる。

Ryteによれば、独自のアルゴリズムを用いてウェブサイト全体のコード、ページサイズの平均、チャネルごとの月間トラフィックを測定し、そのサイトのCO2を計算するという。

似たようなサービスは確かにあるが、他のサービスはアドホックでプラットフォームと結びついていない。Googleを検索すればWebsitecarbonEcosistantなどのサイト、そして学術論文が簡単に見つかる。しかし筆者が知る限りでは、これらのスタートアップはこうしたサービスをプラットフォームに組み込んでいるわけではない。

ClimatePartnerの共同CEOであるTristan A. Foerster(トリスタン・A・フォステル)氏は「Ryteとの協力は、情報テクノロジーが気候変動にどう貢献するかについての認知度を高め、同時に今後を変えるツールを提供することになるでしょう。業界をリードするRyteの二酸化炭素計算機能によって、多くのウェブサイトの運営者が自分たちのカーボンフットプリントを理解し、やむを得ない排出ガスをオフセットすれば、結果として包括的な気候変動対策における戦略の基盤となるでしょう」とコメントした。

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カテゴリー:EnviroTech
タグ:Ryte資金調達二酸化炭素カーボンフットプリント

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(文:Mike Butcher、翻訳:Kaori Koyama)

さくらインターネットが石狩データセンターの主要電力をLNG発電に変更、年間CO2排出量の約24%にあたる約4800トン削減

さくらインターネットが石狩データセンターの主要電力をLNG発電に変更、年間CO2排出量の約24%にあたる約4800トンを削減

クラウドコンピューティングサービスのさくらインターネットは6月21日、北海道石狩市・石狩データセンターの電力調達先について、LNG(液化天然ガス)火力発電を主体とする電力会社に6月より変更したと発表した。これにより、石狩データセンターの二酸化炭素(CO2)年間排出量を約4800トン削減できるという。

サーバー室面積5000平方m2以上、ラック単位の電力供給量が6kVA(キロボルトアンペア)以上の大規模データセンター、いわゆる「ハイパースケールデータセンター」は、IDC Japanが2021年5月に発表した調査報告によると、2021年から2025年までの日本国内での平均成長率は、床面積ベースで28.8%になると予測されている。またハイパースケールデータセンターは消費電力も大きく、「電力キャパシティベース」での年間平均成長率は面積ベースよりも高い37.2%と見積もられている。そのため、ハイパースケールデータセンターにはサステナブルな対応が求められている。

さくらインターネットの石狩データセンターは、2011年の開所以来、北海道の冷涼な気候を活かした外気による冷却や排熱利用など、サステナビリティーに積極的に取り組んできた。その影響で、都市型データセンターと比較して約6割まで電力量を削減しているという。今回、LNG火力発電に切り替えることで、二酸化炭素排出量は、従来の24%にあたる4800トンが削減可能となる。「『やりたいこと』を『できる』に変える」との企業理念の下、今後もサステナブルなデータセンター運営を通じて社会のDXを支えてゆくと、同社は話している。

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カテゴリー:EnviroTech
タグ:SDGs(用語)さくらインターネット(企業・サービス)持続可能性 / サステナビリティ(用語)電力 / 電力網(用語)データセンター(用語)二酸化炭素排出量 / カーボンフットプリント(用語)日本(国・地域)

太陽光を凝縮し1000度以上の状態を生み出すHeliogen、水素の無炭素生成にも応用

太陽の光は偉大なるエネルギー源だが、卵が焼けるほど熱いことは滅多にないし、鋼鉄を溶かすなんて、なおさら難しい。そこでHeliogenは、ハイテクを駆使する凝縮ソーラー技術で、そんな状態を変えようとしている。同社はこのほど1億ドル(約111億円)ほどの資金を調達して、温度が摂氏1000度に達する太陽炉を作り、協力企業の鉱山や精錬所でテストしようとしている。

TechCrunchは2019年の同社のデビュー時にHeliogenを取り上げたことがあり、その記事の細部は、今でも同社における技術の中核部だ。たくさんの鏡の集合をコンピュータービジョンの技術を使って細やかにコントロールすることで、それらは太陽光を反射、凝集して摂氏1000度以上の温度になる。これまで存在したソーラーコンセントレーターの2倍近い能力だ。創業者のBill Gross(ビル・グロス)氏は当時「殺人光線のようなものだ」と説明した。

この温度であれば、鉱業や精錬業など、いろいろな用途で化石燃料やその他のレガシーシステムに代わることができる。Heliogenのコンセントレーターを使うと、日中は太陽光を利用し、夜だけ別の熱源を使えばよい。燃料費を節約できるだけでなく、グリーンな未来に近づく。

この2つのゴールがあるため現在、電力や都市ガスなどの公共事業や大手鉱業企業、製鉄企業などが同社の投資家になっている。HeliogenはPrime Movers Labのリードで2500万ドル(約27億7000万円)のA-2を調達したが、もうすぐもっと大きな8300万ドル(約91億8000万円)の、彼らの用語でいう「橋を延長するラウンド」が控えている。それには鉱山業のArcelorMittalやEdison International、Ocgrow Ventures、A.T. Gekkoなどが参加する。

資金は、Heliogenが「Sunlight Refinery(太陽光の精錬)」と呼ぶ技術開発の継続と、実用規模での現場稼働展開に使われる。同社は「設計とコストの改良を常時行い、効率アップと費用低減を図っている」と声明で述べている。

パイロットサイトの1つが、近くカリフォルニア州ボロンに作られる。そこにはRio Tintoのホウ砂採掘場があり、正規工程の一環としてHeliogenが使われると2021年3月の合意書にある。もう1つのArcelorMittalとの合意書では「いくつかの同社製鉄工場でHeliogenの製品のポテンシャルを評価する」となっている。それらの場所は、米国、MENA(中東北アフリカ)、アジア太平洋地区が計画されている。

鉱業や精錬所以外では、この技術は炭素排出量ゼロで水素を生成することにも利用できる。次世代の燃料供給のための実際に機能する水素インフラストラクチャーの構築に向けて、大きな一歩になるだろう。というのも、現在の水素技術では化石燃料への依存をゼロにできないからだ。それに、無料かつ無炭素で得られる高熱は、その他の産業の工程にとっても有利だろう。

「我々は最も炭素集約度の高い人間活動に取り組むプロジェクトを増やし、地球上のすべての人のためにエネルギーの価格と排出量を下げるという目標に向けて取り組むための資源を与えられています」と、グロス氏はラウンドを発表するリリースで述べた。「私たちの使命を追求し、ポスト炭素経済の実現を可能にする世界的な技術を提供することを可能にしてくれた投資家に感謝します」。

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カテゴリー:EnviroTech
タグ:Heliogen太陽光水素炭素排出量資金調達

画像クレジット:Heliogen

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Hiroshi Iwatani)

牧場経営者のCO2排出量削減を支援、家畜用の新しい環境アセスメントサービス

持続可能な畜産 / 農業において、測定作業は、食糧システムを炭素排出源から炭素吸収源へと転換するプロセスの、最初のそして時には最も困難なステップだ。

そこで、農業を中心とした食糧システムに科学的に注力するDSMと、持続可能性のためのデータ分析を行うコンサルティング会社Blonk(ブロンク)が共同開発したのがSustell(サステル)だ。これは、牧場主が自らの農場経営の持続可能性を理解し、改善するための、ソフトウェアと実践的なサービスを組み合わせたものだ。

持続可能で再生可能な農業の定義は統一されていいないが、通常、土壌中の炭素をより多く回収するための土地管理方法の工夫、より環境に優しい家畜飼料の使用、トラクターなどの農機具による化石燃料使用量の削減など、さまざまな変更が行われる。目標は、温室効果ガスの約14.5%にあたる、畜産業から排出される7.1ギガトンのCO2を削減することだ。

DSMのサステナビリティ&ビジネスソリューション担当副社長のDavid Nickell(デビッド・ニッケル)氏は「動物生産の状況を個々の農場レベルまで正確に把握することが強く求められています」という。「もちろん個々の農場の状況は極めて異なっています。そして、実際の農場のデータを使用して、その農場の正確な姿を把握できるシステムが必要なのです」。

このシステムは気候変動、資源利用、水不足、流出、オゾン層破壊など、19種類のカテゴリーについて、対象の農場の活動が環境に与える影響を分析する。農家は飼料の成分や使用量、糞尿の管理方法、動物の死亡率、電力システムなどのインフラ、輸送ロジスティックス、ガス浄化装置や余熱循環システムなどの緩和技術などの、日々のオペレーションに関するデータを提供するが、場合によってはそれらはソフトウェアにパッケージングされる。

そして、Blonkの環境フットプリント技術は農場のライフサイクルアセスメントを作成する。これは、家畜の飼育開始から農場のゲートを出るまでの環境影響を分析するものである。DSMとBlonkは、鶏、豚、乳製品や卵の生産など、ほとんどの陸上の農場家畜用にSustellモジュールを作成しており、今後は牛や水産養殖にも拡大していく予定だ。

Blonk Consultants(ブロンク・コンサルタンツ)ならびにBlonk Sustainability Tools(ブロンク・サステナビリティ・ツールス)のCEOであるHans Blonk(ハンス・ブロンク)氏は「本当に重要なのは、これまで開発されてきた方法論や基準の流れの上に乗せることができたことです」と語る。

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Blonkは、国連食糧農業機関や欧州委員会などの農業環境基準を1つにまとめ、そのソフトウェアが有用で実用的な洞察を得るために必要な、基礎データの膨大なライブラリを作成した。

「現在のお客さまは、ご自身が何をしているのかを理解したいと思っていらっしゃいます」とニッケル氏はいう。「ご自身のベースライン(フットプリント)を理解し、それをランク付けしたいと考えていらっしゃるのです。何が良くて、何が良くないのかを理解なさりたいということです。お客さまは、国や業界のベンチマークなど、他のベンチマークと比較して自分たちがどのような評価を受けているのかを知りたがっていらっしゃいます」。

Sustellソフトウェアによって農場の排出量が明らかになると、農家は改善すべき点を特定し、DSMは排出量を削減する方法の実施を支援します。これにより、顧客にエンド・ツー・エンドのサービスを提供し、地球に良い影響を与えることができるのだ。

「実践的な介入によって、変化を起こすことができます」とニッケル氏はいう。「私たちは、家畜製品生産のフットプリントを削減する技術に投資してきました。サービスの内容は測定であり、それを変化を生み出すソリューションと結びつけることです。これこそが、この切実な変化を実現するための完全なソリューションなのです」。

しかし、Sustellがその変化を生み出すためには、広く採用され、競合他社との間で学びを共有する必要がある。現在のDSMや、ある意味では資本主義のシステムは、それに対応できるようには作られていない。

ニッケル氏によれば、DSMはまず、Sustellを大手総合畜産会社に持ち込むことに焦点を当てている。これは、革新的な新しい環境技術が、資金や資源のある大手農業コングロマリットや協同組合に採用されて、小規模な家族経営の農場は取り残されてしまうという普遍的な課題となる。しかし、ニッケル氏は、Sustellを小規模な農場にも対応できるようにしたいと考えている。

2つ目の問題は、データの共有だ。ニッケル氏は、Sustellがデータのプライバシーや所有権に関する規則を遵守することを明確に述べているが(これは通常良いことだ)、実際、本当に意味のある環境変化を起こすためには、透明性が重要だ。競合他社同士は、その排出量削減のための最良の方法を、皆が採用して地球を救うために共有する必要があるが、多くの企業はデータを強く囲い込んでいる。

「データ共有は、時間の経過とともに進んでいくと思います」とニッケル氏はいう。「まだその段階には達していないのです。おそらく、より多くのお客様がフットプリントとその報告についての透明性を高められることで、そうしたレベルになるのかもしれません」。

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(文:Jesse Klein、翻訳:sako)

ブラウザの拡張機能で商品購入時のカーボンオフセットを提案するEcoCartが約3.3億円調達

EcoCart(エコカート)は、提携するオンラインショップで消費者が商品を購入する際に、排出される二酸化炭素を相殺する方法を無料で提案する(ブラウザの拡張機能を使用して!)会社だ。同社はBase10 Partners(ベーステン・パートナーズ)から300万ドル(約3億2800万円)の資金を調達した。

店舗のウェブサイトを運営する企業は、標準的なアフィリエイトのマーケティングモデルに基づいてEcoCartに手数料を支払い、同社はその収益の一部を消費者の二酸化炭素排出量のオフセットのために使う。

EcoCartと直接パートナーシップを結んでいる企業や、受動的なアフィリエイトマーケティングサービスを通して同社と提携している企業は、約1万社に上る。共同設立者のPeter Twome(ピーター・トゥオミー)氏とDane Baker(デーン・ベイカー)氏によると、EcoCartは企業向けの炭素計算ツールやオフセットサービスも提供しているという。

サンフランシスコを拠点とするこのスタートアップは、ClimeCo(クライムコ)やBlueSource(ブルーソース)などのサービスを利用して、企業が融資可能なオフセットプロジェクトを調達・集約している。

サンディエゴ大学で出会った2人の共同創業者は、以前にToyroom(トイルーム)というスタートアップを起ち上げ、不必要な消費を減らすためにアウトドア用品を顧客に貸し出すという事業を行っていた。

「私たち自身がこの問題に直面しています。持続可能性という理念を維持することは、非常に難しいと我々は認識しました」と、ベイカー氏は述べている。

EcoCartは、ブラウザの拡張機能を利用する仕組みによって、Cloverly(クローバーリー)のような他のオフセットサービスとは一線を画している。その一方で、企業向けサービスでは、購入にともなう二酸化炭素をオフセットするオプションがチェックアウトフローに直接組み込まれる機能などを提供している。

EcoCartは、2020年6月にB to B(企業間)統合を開始し、現在では500社のベンダーが顧客となっている。これまでに、消費者の約4分の1が購入した商品を会計する際にオフセットすることを選択しており、その結果、約2500万ポンド(約1万1340トン)の二酸化炭素を削減することができたという。

同社を支援する投資家には、PopSugar(ポップシュガー)の共同創業者であるBrian Sugar(ブライアン・シュガー)氏が運営するアーリーステージの企業を対象としたベンチャーファンドのBase10 Partners(ベーステン・パートナーズ)をはじめ、Privy(プリヴィ)の創業者であるBen Jabbawy(ベン・ジャバウィ)氏、Klaviyo(クラビヨ)のグローバルパートナーシップ担当VPであるRich Gardner(リッチ・ガードナー)氏、Chubbie(チャビー)の共同創業者であるKyle Hency(カイル・ヘンシー)氏、Blue Bottle Coffee(ブルーボトルコーヒー)会長であるBryan Meehan(ブライアン・ミーハン)氏、BarkBox(バークボックス)の共同創業者であるCarly Strife(カーリー・ストライフ)氏などのエンジェル投資家が含まれる。

オンラインショッピングというと環境に悪いイメージがあるが、2020年Nature(ネイチャー)誌に掲載されたある研究によると、実際には実店舗での買い物より環境に優しくなる場合もあるという。

消費者によるオフセットは、善行ではあるものの、企業が実際に温室効果ガスの排出を抑制し、事業を脱炭素化することに比べると、同等の効果を得ることはできない。実際のところ、消費者のカーボンフットプリントや、地球汚染に対する消費者の個人的な責任という概念は、石油・ガス会社や消費財メーカーに頼まれて、広告会社の幹部が商品を売り込むために考え出したものだ。

しかし、何もしないよりは良いし、環境のために必要なプロジェクトの資金調達に役立つことは確かだ。

EcoCartは、数カ月かけてオンライン注文のカーボンフットプリントを計算する独自のアルゴリズムを開発したという。電子商取引用プラグインとブラウザ拡張機能のいずれも、商品への材料投入量、配送距離、パッケージの重量など、各注文の特徴を利用して、その注文から発生する二酸化炭素排出量を推定しているという。

「EcoCartは、ブランドが顧客と対話しながら、環境への影響を大規模に管理・対処する方法を再構築するものであると、我々は確信しています」と、Base10 PartnersのプリンシパルであるChris Zeoli(クリス・ゼオリ)氏は述べている。「EcoCartは、何十年にもわたって続いてきた有害な気候変動を元に戻すために役立つソリューションです。Base10は、EcoCartの創設者たちが、カーボンニュートラルなショッピングを、小売、マイクロモビリティ、フードデリバリーなどの業界で新しいチェックアウトの基準にしていくための活動に、パートナーとして協力できることを誇りに思います」。¥

カテゴリー:EnviroTech
タグ:EcoCartカーボンフットプリントカーボンオフセット資金調達ブラウザー機能拡張B2Bネットショッピング

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(文:Jonathan Shieber、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

全日空や三井物産が支援する再生可能ジェット燃料のLanzaJetにShellも出資

アルコールをジェット燃料に変えるプロセスの商業化を図っているLanzaJet(ランザジェット)には全日空、Suncor Energy、三井物産、British Airwaysなどが戦略投資家として出資している。その投資家リストにエネルギー大手Shell(シェル)も加わった。

LanzaTechからのスピンオフで、最初のクリーンテックブームの最後の生き残り企業の1社である未上場企業LanzaJetは、法人から段階的に出資を受けるアプローチを取っている。これにより、LanzaJetが生産施設を拡大するにつれ、投資家は追加でLanzaJetに出資することができる。

Shellの出資の取引条件、出資後のLanzaJetの評価額は明らかにされなかった。

LanzaJetは、航空業界がネットゼロエミッションを達成するのをサポートできると主張する。パリ協定で設定された温室効果ガス削減目標を世界が達成するのを支えるための長い道のりだ。

「LanzaJetのテクノロジーは、ATJプロセスを使ったSAF(持続可能な航空燃料)生産に向けた新しいエキサイティングな道を切り開いていて、航空部門の差し迫ったSAF需要を解決します。これは、我々が力を合わせた時に業界が機敏に動いてより多くのSAFを供給できることを意味します」とShell Aviationl社長のAnna Mascolo(アンナ・マスコロ)氏は声明で述べた。「需要と供給の両方を推進するための適切な政策メカニズムと規制に関して業界、政府、社会が協業するこで、航空業界はネットゼロエミッションを達成できます。LanzaJetと戦略が一致するのはすばらしいことです」。

関連記事:再生可能ジェット燃料LanzaJetが英国航空と提携、年間7500トン供給へ

LanzaJetは現在、アルコールをジェット燃料に変える施設をジョージア州ソパートンに建設中だ。完成すると、持続可能な合成ジェット燃料のための初の商業規模プラントとなり、年間1000万ガロンを生産できる。

燃料はエタノールを使って作られる。エタノールはShellが詳しいものであり、供給する用意も整っている。ブラジルの合弁企業Raízenを通じてShellはバイオエタノールを10年以上生産してきた。

LanzaJetは、二酸化炭素の排出を抑制する方法で飛行機を飛ばすために、持続可能燃料を従来の化石ジェット燃料に混ぜることを想定している。生産する燃料の約90%が航空燃料で、残り10%は再生可能ディーゼルだと同社は話した。

LanzaJetのSAFは化石ジェット燃料に最大50%混ぜることがASTM(米試験材料協会)に認められていて、エンジンや航空機、インフラに変更を加える必要のないドロップイン燃料だ。加えて、LanzaJetのSAFは従来の化石ジェット燃料と比べ、ライフサイクルベースで温室効果ガスの排出を70%超削減する。エタノールの汎用性、そして低炭素でゴミを材料とし、食品や餌をソースとしないこと、またエタノールが世界どこでも入手できることと併せ、LanzaJetのテクノロジーはSAFの永続的な解決策となっている。

カテゴリー:EnviroTech
タグ:LanzaJet投資全日空三井物産Shell二酸化炭素二酸化炭素排出量

画像クレジット:Bryce Durbin/TechCrunch

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(文:Jonathan Shieber、翻訳:Nariko Mizoguchi

ブラジルのフードデリバリーiFoodが2025年までにカーボンニュートラルを目指す取り組みを発表

ブラジルを拠点とするラテンアメリカのフードデリバリー企業「iFood」は、消費者が企業に持続可能性への注力を求める中、同社の環境への影響を軽減するための一連の取り組みを発表した。

このプログラムは主に2つの要素から成り立っている。1つはプラスチック汚染と廃棄物に焦点を当て、もう1つは2025年までに事業活動においてカーボンニュートラルになることを目指すものだ。

廃棄物削減の取り組みの中でも最も意欲的で資金を要するのは、サンパウロにおける半自動リサイクル施設の開発だろう。

「当社は、ブラジルにおけるサプライチェーン全体をプラスチックフリー包装に変革したいと考えています。生産からマーケティング、物流まで、国全体のサプライチェーンをコントロールすることで、すでに存在しているものの生産量や需要が規模に達していない産業に対して、より競争力のある価格で包装を提供することができます」と、iFoodのCPO(チーフ・ピープル・オフィサー)&チーフ・サステナビリティ・オフィサーであるGustavo Vitti(グスタボ・ヴィッティ)氏は述べている。

同社は他にも、顧客がフードデリバリーを依頼する際に、プラスチック製の使い捨て食器を辞退することができるアプリ内オプションを設けた。

「これらの取り組みは、頼まれもしないのに送られてきて、結局使われずにゴミ箱に入ってしまうことが多いプラスチック製品の消費量削減に貢献します」とヴィッティ氏は語る。「最初に行ったテストでは90%の消費者がこのオプションを利用したため、何万本ものプラスチック製カトラリーが削減されました。これは家庭でのゴミの量を減らしたいという消費者の希望を表しています」とも。

排出量の面では、GHG inventory(greenhouse gas inventory、温室効果ガスインベントリ)を開発した炭素市場のテクノロジー企業であるMoss.Earthと協力し、環境保全や森林再生プロジェクトに結びついたクレジットを購入することで、同社の排出量をオフセットするという。

また、ブラジルで電動バイクを提供しているTembiciと協力して、同社の配送車両を内燃エンジンのモペットやスクーターから移行していく予定だ。

「相殺するだけでは十分でないことはわかっています。二酸化炭素排出量を削減するためには、革新的な方法を考える必要があります。2020年10月、当社はTembiciと提携して宅配業者専用に開発された、手頃な価格で電動自転車をレンタルできるプロジェクト『iFood Pedal』を立ち上げました」とヴィッティ氏は語る。「現在2000人以上の配達人が登録しており、サンパウロとリオデジャネイロで1000台の電動自転車を共有していますが、これには利用に加えて我々が考えていた教育的な側面もあります。定着状況が良好であることから、このプロジェクトを徐々に拡大し、他の都市でも実施して、クリーンな配送の割合を増やしていく計画です」。

ブラジルの電動バイクメーカーであるVoltz MotorsもiFoodと提携している。iFoodはVoltzから30台の電動バイクを注文し、一部の配送パートナーが現在それらを使用している。同社は、今後1年間で1万台以上の電動バイクを導入することを目指しているという。

iFoodは、水の再利用、再生可能エネルギーの導入、オサスコ本社の屋上緑化などの社内向けの取り組みと合わせて、ブラジル国内および国際市場の環境を改善するための持続可能性目標を達成したいと考えている。

「まだまだ道のりは長いですが、重要なパートナーたちとこの一連のイニシアチブに加え、現在開発中の他の取り組みを進めることで、プラスチックの発生や環境に与える二酸化炭素排出量を削減できると信じています。ブラジルの家庭生活における当社の関わりと存在は、地球に対するこれらの環境コミットメントの重要性をさらに高めています」とヴィッティ氏は述べた。

カテゴリー:シェアリングエコノミー
タグ:iFoodフードデリバリーブラジル持続可能性二酸化炭素排出量電動バイクカーボンニュートラル

画像クレジット:Alfribeiro / Getty Images

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(文:Jonathan Shieber、翻訳:Aya Nakazato)

デジタルバンキングソリューションプロバイダーのMenigaが12.9億円の追加調達、銀行の持続可能性などへの対応も支援

大手銀行にデジタルバンキング技術を提供するロンドンのフィンテックMenigaは、1000万ユーロ(約12億9000万円)の追加資金調達を完了した。

このラウンドをリードしたのはVelocity CapitalとFrumtak Venturesだ。またIndustrifonden、英国政府のFuture Fund、既存顧客のUniCredit、Swedbank、Groupe BPCE、Íslandsbankiも参加した

Menigaによると、調達した資金は研究開発への継続的な投資、特に炭素支出に関するグリーンバンキング商品のさらなる開発に使われる。また、営業チームとサービスチームを強化にも充てられる。

ロンドンに本社を置き、レイキャビク、ストックホルム、ワルシャワ、シンガポール、バルセロナにオフィスを構えているMenigaのデジタルバンキングソリューションは、銀行(およびその他のフィンテック企業)が個人金融データを使用して、オンラインおよびモバイルサービスを革新することを支援する。

同社のさまざまな製品には、銀行のレガシー技術インフラと最新のAPIとの間のギャップを埋めるソフトウェアレイヤーが含まれており、消費者に優しいデジタルバンキング体験の構築を容易にする。この製品群はデータアグリゲーション技術、個人および企業の財務管理ソリューション、キャッシュバック報酬、取引ベースのカーボンインサイトを網羅している。

MenigaがTechCrunchに語ったところによると、過去1年間で同社のデジタルバンキング製品とサービスに対する需要は大幅に増加したという。これにより、同フィンテック企業は17カ国で合計18のデジタルバンキングソリューションをローンチした。

画像クレジット:Meniga

このような需要に応えるために、銀行は持続可能性や気候変動への対応に関心を持つ世代の顧客を惹きつけ、維持する必要がある。そこで登場したのが、Menigaのグリーンバンキングソリューションだ。Carbon Insightと名づけられたこのソリューションは個人の金融データを活用して、モバイルバンキングを利用する顧客が二酸化炭素排出量を追跡し、理論的には削減することができる。

具体的には、ユーザーは一定期間の二酸化炭素排出量の推定値を追跡できる(特定の支出カテゴリーに分類可能) 。個々の取引の推定二酸化炭素排出量を追跡したり、自分の全体的な二酸化炭素排出量や支出カテゴリーの二酸化炭素排出量を他のユーザーと比較したりすることもできる。

Inslandsbankiは2021年2月、MenigaのCarbon Insightソリューションを自社のデジタルバンキングサービスに実装した最初の北欧の銀行となった。

カテゴリー:フィンテック
タグ:Meniga二酸化炭素排出量資金調達

画像クレジット:Meniga

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(文:Steve O’Hear、翻訳:塚本直樹 / Twitter

ロサンゼルスが気候変動対策でカーボンアカウンティングを導入

ロサンゼルス市は2021年3月初め、同市のカーボンフットプリント(二酸化炭素排出量)を把握する新たなソフトウェアとモニタリングのテクノロジーを展開するために、実行可能性調査の準備をさまざまな部門に課した最新の都市となった。

議員Paul Koretz(ポール・コレッツ)氏が主導したロサンゼルスの市議会イニシアチブは、カリフォルニア州の動きに続くものだ。同州は州内で事業展開する年間売上高が10億ドル(約1089億円)を超える全事業所に温室効果ガスの排出量を公開し、排出を減らすための科学ベースの目標を設定することを義務付けた。

カリフォルニア州はグローバル気候変動の破壊的な影響を実感している唯一の州ではないが、原因に取り組もうという試みにおいては最も積極的だ。その試みが電力供給から化石燃料を排除するかなりの努力なのか、気候変動への影響に対して事業所に責任を持たせる提案なのかはさておき、カリフォルニア州は気候変動の影響を和らげ、温室効果ガスの生産を反転させることができる新たなテクノロジーやサービスの受け入れを促進しているという点でリーダーだ。

ロサンゼルスは今回の取り組みで、そうした勢いに乗りたいと考えており、積極的にカーボンアカウンティング(事業活動における二酸化炭素の排出量や削減量を計算すること)でサポートを得られるテック企業を探している。

これは、CarbonChainPersefoniClimateViewSINAI Technologiesといった企業にとってはいい取り組みだ。これらの企業はカーボンアカウンティングとマネジメントをサポートするプロダクトを展開している。

これは、10億ドル規模の予算を持つ一部の大都市が、市民を脅かす気候変動にどれくらい関与しているかをこれまで以上にコントロールするのに必要なツールにその対価を支払うことを示している。

ロサンゼルスでは市議会が、同市のカーボンフットプリントの正確な把握を提供するテクノロジーの開発または購入の実行可能性を報告するよう、ロサンゼルス衛生局と主任立法分析官にタスクを課した。

「ロサンゼルス市は照明から市庁舎、施設、街灯の維持、道路の舗装、輸送車両の展開、送水、再生処理施設の運営に至るまで数多くのサービスを提供しています。これらはすべて環境負荷をともないます」と議員のコレッツ氏は2021年3月初めの声明で述べている。「もし我々が二酸化炭素削減の目標に真剣に取り組み、ロサンゼルス国際空港やロサンゼルス港の周辺の問題に直面しているコミュニティの暮らしに真の違いをもたらしたいのなら、より良い、そしてより一貫性があり、さらに透明性のある二酸化炭素排出のアカウンティングが必要です」。

ロサンゼルスは気候変動と気候に優しい政策を政治的な議論の中心に持ってこようと着実に取り組んできた。約2年前の2019年7月にロサンゼルスは気候非常事態の部署を設け、Eric Garcetti(エリック・ガーセッティ)市長は市民団体の指導者と市長室、市議会の活動を調整するために気候非常事態動員事務所を立ち上げた

説明責任の計画に予算は配分されなかったが、市議会の計画に詳しい人は2021〜2022年の予算から配分が始まると予想している。

ロサンゼルスは過去にカーボンフットプリントの解決を試みたが、それは成功しなかった。過去の排出量データを使って調査が行われ「スコープ3」排出量は含まなかった。スコープ3は市の事業向けのサービスプロバイダーが出している温室効果ガスに関連している。

ロサンゼルス市は気候変動への助長についての説明責任とメトリクスを提供する能力の改善に目を向けていて、ニューヨーク市が設定した基準を参考にするのも悪くない。ブルームバーグ政権下では、カーボンアカウンティングと復元性のある対策が最優先事項になった。ニューヨーク市が気候や天候関連の災害にかなりさらされていることをハリケーン「サンディ」が明白にした前のことだ。

2012年のハリケーン「サンディ」ではカリブ諸国からカナダにいたるまでの8カ国で700億ドル(約7兆6248億円)の被害をもたらし、233人が亡くなった。

この大災害によってニューヨーク市は気候変動対策に一段と積極的に取り組むと固く決心した。同市は市の事業から出る排出量のしっかりとしたアカウンティングプログラムを持っており、既存の環境、輸送、産業から排出される温室効果ガスを削減するために市全域に政策を適用して前に進めている。

「データは決定の原動力となり、データなしではゼロエミッションの未来に向けた道を描くことはできません」と議員のJoe Buscaino(ジョー・ブスカイノ)氏は述べた。「今日の世代のリーダーたちは引き続き緊急性を持って気候変動に取り組み、ロサンゼルスのために設定した目標に対して責任を持たなければなりません。そしてこの動きはそうした取り組みへと導きます」。

カテゴリー:EnviroTech
タグ:ロサンゼルス気候変動カーボンフットプリント

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(文:Jonathan Shieber、翻訳:Nariko Mizoguchi

炭素排出量・ESG管理のB2BプラットフォームのドイツPlan Aが約3.3億円調達

ベルリンを拠点とするB2BのSaaSスタートアップ企業のPlan A(プランA)が、300万ドル(約3億2600万円)の資金調達を行った。同社は企業が環境フットプリントを測定、監視、削減、報告してESG評価を向上させるプラットフォームを提供している。フランスのVCであるDemeter(デメーター)がドイツのVCであるCoparion(コパリオン)とともに主導したこのラウンドには、ソフトバンクが戦略的投資家として参加した。今回の資金は、Plan Aの欧州における企業顧客向け炭素排出量・ESG管理ソフトウェアの強化と、国際的な事業拡大のために使用される。

炭素排出量管理ソリューションの市場規模は、今後5年間で100億ドル(約1兆900億円)から260億ドル(約2兆800億円)になるとの試算もある。米国のグリーンディールと新たに制定された「EUタクソノミー(持続可能な経済活動に関するEU統一の分類)」は、企業に炭素排出量を管理するように圧力をかけ、Plan Aのようなプラットフォームに対する評価を引き上げることにつながった。英国の Emitwise(エミットワイズ)は340万ドル(約3億7000万円)を調達しており、Watershed(ウォーターシェド)のような企業もある。しかし、Plan Aによれば、同社のプラットフォームは、企業の炭素排出量を継続的に自動化して監視するため、競合他社よりも包括的だという。

2017年に設立されたPlan Aは、Société Générale(ソシエテ・ジェネラル)、GANNI(ガニー)、AlbionVC(アルビオンVC)、BMW Foundation(BMWファウンデーション)、BCG Digital Ventures(BCGデジタル・ベンチャーズ)、サッカークラブのWerder Bremen(ヴェルダー・ブレーメン)などの顧客を獲得することに成功した。

Plan Aの共同設立者でCEOを務めるLubomila Jordanova(ルボミラ・ジョーダノヴァ)氏は次のように述べている。「Plan Aのテクノロジーは企業を変革し、持続可能性を競争上の優位性に変えることを可能にしました。私たちは、クラス最高の技術の開発に何年も取り組んできましたが、今回の投資により、世界中の企業のニーズに合わせた炭素・ESG管理プラットフォームをさらに仕立てることが可能になります」。

DemeterのパートナーであるOlivier Bordelanne(オリビエ・ボルドランヌ)氏は次のように述べている。「企業の持続可能性指標や気候リスク度に関して、データを基にした洞察を提供するB2Bモニタリングサービスやプラットフォームに対する需要は高い。私たちが最近調査したカーボンフットプリント測定を提供する多くの企業の中で、Plan Aとそのチームは、企業がカーボンフットプリントを計算し、監視し、最小化やオフセット行動を通じて削減するのを支援するワンストップショップとして自らを位置づけることで、際立っていました」。

CoparionのパートナーであるAlexander Lüttge(アレクサンダー・リュットゲ)氏は次のように述べている。「Plan Aは、カーボンフットプリントの透明性を高め、最小化やオフセットするための、統合が容易で使いやすいSaaSソリューションを企業に提供しています。我々の見解では、彼らのソリューションは、排出量データ収集を自動化する最も汎用性の高い製品であるだけでなく、排出量とコスト構造の透明性を創出し、事業プロセスを自動的に最適化させ、企業にとって大きな付加価値をもたらします」。

ジョーダノヴァ氏によると、競合他社はカーボンフットプリントを単発で計算し、オフセットを支援した後、それ以上の作業を支援することなくオフセットのための証明書を発行する傾向があるという。「私たちはこれらのサービスをすべて提供していますが、企業が継続的にカーボンフットプリントを削減し、サステナビリティを実施する方法を学ぶこともできるようにしています」と、彼女は筆者に話してくれた。

Plan Aは、新たな環境規制から恩恵を受けられる立場にある。米国の新政権とEUは指針を大きく転換し、排出量の報告についてより多くの透明性を求めている。オランダでは90以上の銀行が、二酸化炭素排出量の透明性を高めるための協定に署名した。一方で、化石燃料から得られる資金は、ESG投資に転用されている。しかし、当然のことながら、その資金を得ようとする企業は、排出量を証明する必要がある。そこでPlan Aの出番となるわけだ。

カテゴリー:EnviroTech
タグ:Plan A資金調達ESGカーボンフットプリント

画像クレジット:Plan A

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(文:Mike Butcher、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

個人投資家が社会や環境への影響に基づいて金融投資アプリTickrが約3.6億円調達

英国の消費者が社会や環境への影響に基づいて金融投資することができるアプリTickrは、インパクトのあるスタートアップに特化したVCであるAda Venturesが主導した資金調達ラウンドにて250万ポンド(約3億6000万円)を獲得した。調達した資金は製品開発、ユーザーベースの拡大、最終的にはTickrを英国の拠点から他のヨーロッパ諸国へと拡大するために使われる。

同プラットフォームでは投資だけでなく、顧客はインパクトを重視した影響の比較とパートナーシップを通じて現金を使い、サブスクリプションを通じて二酸化炭素排出量を相殺することができる。主なビジネスモデルは、顧客1人当たり1ポンドp/m、資産が3000ポンド(約43万4000円)を超える場合は0.30%の手数料を支払うことだ。またカーボンオフセットなどの追加商品は、選択したレイヤーに応じた追加サブスクリプションとして課金される。

同スタートアップによると英国では10万ユーザーに近づき、そのうち90%が「これまで投資をしたことがない」ミレニアル世代のユーザーであり、これらのユーザーは平均して毎月250ポンド(約3万6000円)を投資しているという。

アプリ「Tickr」

これは取引を目的としたアプリではなく、インパクトのある企業のポートフォリオに投資しながら富を築くことを目的としている。競合他社にはMoneyBoxがあるが、Tickrは「インパクト企業だけに100%焦点を当てている」としている。ヨーロッパの人々の大半は市場への投資を行わないため、この製品にとって良い機会となるだろう。

創業者のTom McGillycuddy(トム・マクギリーカディ)氏とMatt Latham(マット・レイサム)氏は8年間投資運用の仕事に関わってきたが、専門用語や高額な手数料、環境問題などへの無関心さに幻滅したという。

テキストインタビューで、マクギリーカディ氏は次のように語っている。「私たちは、人々が行っていた投資の根本的な影響について考慮していないことに気づきました。ウィガンとリバプール出身の私たちは家族の中で初めてこの世界に触れましたが、それが正しいとは思えませんでした」。2人はインパクト投資の分野に進出し、2018年にTickrをローンチした。

カテゴリー:EnviroTech
タグ:Tickr二酸化炭素排出量

画像クレジット:Tickr

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(文:Mike Butcher、翻訳:塚本直樹 / Twitter

中国が企業間の炭素排出量取引制度の運用開始、気候変動にポジティブな影響の可能性

中国は現地時間2月1日、全国規模の炭素取引マーケットを立ち上げた。このマーケットが効果的に機能すれば、2021年における温室効果ガスを削減するための最も大きな取り組みになるかもしれない

中国は世界最大の温室効果ガス排出国で、世界の排出量に占める中国の割合は右肩上がりだ。

中国政府は環境への影響を抑えようと取り組んでおり、炭素取引システムのような政策は新テクノロジーの浸透、国内スタートアップや世界中のテック企業の商品やサービスに対する需要増を呼び起こすかもしれない。

米国では一部で、そして欧州では広範に導入されている炭素市場は産業からの炭素排出に価格をつけ、大気から同量の温室効果ガスを取り除くプロジェクトに投資することでそうした炭素排出を相殺するよう企業に促す。

これは2015年のパリ協定の重要な構成要素であるが、議論も呼んでいる。というのも、Carbon Markets Watchの政策担当官Gilles Dufrasne(ジレス・デュフラン)氏が2020年にタイム誌に語ったように、十分に実行され効果的に管理されなければ排出企業の「大きな抜け穴」になり得るからだ。

これは中国には特に当てはまる。中国では腐敗が繰り返されており同国は長い間、環境政策と経済成長の管理を犠牲にしてきた。こうしたことは中国だけではないが、他のどの国(米国を除く)よりも大規模な制度の運用が決定された。

政策の有効性はまた、中国共産党の官僚主義内に存在するヒエラルキーの影響を受ける。ChinaDialogueが指摘したように、中国国家発展改革委員会(NDRC)よりも弱い法的権限を持つ生態環境省によって政策は出された。NDRCは中国全土のマクロ経済政策と同国の主要経済イニシアチブの監督を行っている主要政府機関だ。

世界の温室効果ガスの28%を占めるという最大の排出国である中国ほど、大規模な排出取引マーケットを導入した国は他にない。

全国人民代表大会(NPC)の閉会式で演説する習近平国家主席、2018年3月、中国・北京(画像クレジット:Lintao Zhang/Getty Images)

中国はまず2011年に深セン、上海、北京、広東、天津、湖北、重慶、福建で排出ガス取引システムのテストを開始した。絶対的な排出上限値よりも炭素集約度(GDPユニットあたりの排出)に基づいた排出の上限を設けたシステムを使って政府は電力部門や他の産業でこうしたパイロットの展開を開始した。

2018年の構造改革後に、NDRCの後援の元に起草された計画は生態環境部に投げ渡された。排出上限・取引プログラムの移譲は、ちょうど米国がDonald Trump(ドナルド・トランプ)政権下で気候規制やイニシアチブを捨ててパリ協定から脱退する最中でのものだった。

中国の排出スキームは当初2020年に取引シミュレーションで開始するはずだったが、新型コロナウイルスパンデミックで妨げられ、2021年2月1日の実行まで半年後ろ倒しになった。

差し当たって排出取引は中国の電力産業と約2000の発電所施設をカバーしている。ChinaDialogueによると、これだけで中国の総排出量の30%を占め、今後取引システムはセメントや鉄鋼、アルミニウム、化学、石油・ガスといった重工業にもおよぶ。

当面、政府は無料の排出枠を割り当て、「状況に応じて適切な時期に」オークション枠を開始する。

そうした表現、それから炭素価格が利益と貸し出しリスクにもたらし得る効果について注意喚起している国有企業や金融サービス企業が提起した懸念は、中国政府がまだ産業成長にともなう環境的コストよりも経済的利益を重視していることを示している。

ChinaDialogueが引用したマーケット参加者の調査では、二酸化炭素1トンあたりの価格は41元(約670円)から始まり、2025年には66元(約1070円)に上昇すると予想されている。中国における二酸化炭素の価格は2030年までに77元(約1250円)になると見込まれている。

一方、経済学者Joseph Stiglitz(ジョセフ・スティグリッツ)氏とNicholas Stern(ニコラス・スターン)氏が提唱した炭素価格にかかるコミッションが2017年にできた。両氏はマーケットと価格が行動に影響を与えるとすれば、二酸化炭素は2020年までに40〜80ドル(約4200〜8400円)、2030年までに50〜100ドル(約5200〜1万400円)のレンジになる必要があるとの考えを示した。

そうした価格をつけている国はない。しかし欧州連合はかなり近く、その結果、温室効果ガスを最も削減している。

それでも中国政府の計画には、検証済みの企業レベルの排出量についての公開報告要件が含まれている。そして、もし政府が実際の価格をつけることを決めた場合、マーケットの存在は炭素排出を追跡するための技術を開発しているモニター・管理機器のスタートアップにとって大きな恩恵となり得る。

ChinaDialogueのアナリストは以下のように記している。

カーボンプライシング(炭素の排出量に価格づけを行うこと)の最も困難な部分は往々にして開始時にあります。中国政府が国家の排出量取引制度(ETS)で目標を高く設定すると決めることは可能です。メカニズムが今、動き出し、習国家主席の気候分野における野心による勢いと政治的意思が衰えなければ、加速するかもしれません。数年のうちに、これは上限の低下、多くの部門のカバー、透明性のあるデータ提供、効果的な政府間の調整につながるかもしれません。ETSを縄張りへの脅威としてではなく、政策目標のために大きなコベネフィットをともなう方策としてとらえる必要があるエネルギー・産業当局においては特にそうです。

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画像クレジット:大杨 / Flickr under a CC BY 2.0 license.

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(文:Jonathan Shiber、翻訳:Nariko Mizoguchi)

リモートワークは環境に優しいがそのためのテクノロジーにも炭素コストがある

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によるリモートワークへの大幅なシフトによって、自動車その他の二酸化炭素排出量は大幅に減少したが、また別のコストがかかっている。最新の研究によると、自宅勤務を可能にするためのネット接続やデータインフラストラクチャーは一時的な炭素コスト引き上げを起こしている。そしてそれは、カメラをオフにするいい訳になる。

パデュー大学、イェール大学、およびMIT(マサチューセッツ工科大学)の研究者が、インターネットインフラストラクチャーの炭素、土地、および水のコスト分析を試みた。

「持続可能なデジタル世界を構築するためには、インターネットの環境負荷を慎重に評価し、その増大に最も影響を与える個人あるいは集団の取るべき行動を見定める必要がある」と彼らの論文の導入部に書かれている。

単一の指標を使うのは短絡的すぎると彼は指摘する。炭素排出量は有効な指標だが、電力源や水のコスト(データセンターの冷却・運用に必要)に加え、製品を作るために必要な理論的「用地費」を追跡することも重要だ。もしこれが少々根拠に欠けると感じたなら、それは一連の推計がそうだからだ。

「この種の計算を地球規模で行うためには、数多くの仮定が必要であり、必要なデータの多くが欠けています」と筆頭研究者であるイェール大学のKaveh Madani(カーヴェ・マダニ)氏はTechCrunch宛のメールで述べた。「それでもこれは良い出発点であり、手に入るデータを使ってできることにベストを尽くすだけです」(マダニ氏は、統計的や科学的な厳密さの欠如よりも、業界の透明性の欠如の方が、研究の精度を妨害していると指摘した)。

研究結果の一例を挙げると、1時間のHDビデオストリーミングは最大440gの二酸化炭素を排出する。YouTubeの排出は最大1000g、Zoomやビデオ会議では160gなどビデオ品質によって異なる。一方、現代の自動車はガソリン1ガロン当たり8887g(1リットル当たり2347g)排出している、とEPA(米国環境保護庁)はいっている。職場まで20マイル(32 km)通勤する代わりに、ビデオミーティングを1時間行っているなら、間違いなくグリーンであり、1桁か2桁は違う。

画像クレジット:Madani et al

ただし、在宅勤務へのシフトやデジタル消費が悪いことだといっている人はいない。「もちろん、バーチャル会議はオフィスにクルマで行くよりも環境に良いけれど、もっと良い方法があるはずです」とマダニ氏はいう。

問題は、わずかな環境コストでビットを動かすことだけではないことだ。たしかにそのデータはファイバーを通じて送られるだけたが、それは巨大なデータセンターや通信インフラ、そしてもちろん無駄なデバイス買い替えの永遠のサイクルのおかげでもある。ただし最後の1つはこの論文の推計には含まれていない。

使うもののコストを知らなければ、情報に基づく使い方はできないと研究者らは警告する。
「バンキングシステムはペーパーレスによる環境への好影響を訴えるが、カメラをオフにしたりストリーミングの解像度を下げることの有益性は誰も教えてくれない。つまり、ユーザーの了解を得ることなく、各プラットフォームは私たちの環境負荷を増やしているのです」とマダニ氏はパデュー大学のニュースリリースで語った。。

顔が見える必要のない通話でカメラをオフにすることによる炭素排出量の削減は、わずかではあるが些細ではない。同様に、ストリーミングの品質をHDからSDに落とすことで、通信に関わるエネルギーを約90%節約できる(もちろんテレビやスピーカーの使用電力は変わらない)。

悲観的情報を読み続けるあの「ドゥームスクローリング」の習慣はすでに問題になっているが、親指のフリック1つずつが、間接的にどこかのデータセンターに熱い不気味な気体を排出させ、空調費用をわずかに上昇させていることを思うと、いっそう問題だ。ソーシャルメディア一般はHDストリーミングほどのデータを消費していないが、TikTokをはじめとするビデオ中心ネットワークの普及は、すぐに追いつくことを意味している。

マダニ氏は、彼らの研究に関する誤解を招く記事はともかく、この研究はカメラをオフにするなどといった簡単な治療薬を処方するものではないと説明する。もちろんそうすることは可能だしするべきだが、我々が見るべきは体系的変化であり個人ではない、と同氏はいう。何百何千万人の人々がそれぞれカメラをオフにしたりストリーミング品質を4Kから720pに下げる可能性を考えてみてほしい。ほんのわずかだろう。

その一方で、もしこれらのサービスのコストが明確になれば(マダニ氏らが取り組み始めているように)、対象となる企業にインフラ側の変化を求める圧力がかかり、アルゴリズムを改善することで、5000万人がかすかな不快を受け入れる意識的決断をする以上のエネルギーが節約されるだろう。

「消費者には、今起きていることをもっとよく知る権利があります。彼らは自分のコンピューターでEnterボタンを押したとき何が起きるかを知りません。知らない人たちが行動を変えることは期待できません」とマダニ氏はいう。「政策決定者は立ち上がってこの分野の問題を提起し、規制を検討し、透明化の改善を強制し、公害税を課し、インセンティブ機構を作るべきです。将来もう1つの維持不可能で制御不能なセクターを見たくなければ」。

デジタルへの転換は、驚くべき効率を生み出し多くの無駄を削減あるいは排除してきたが、その過程で新たな問題を生み出した。進歩とはそういうものだ。新たな問題が古い問題より好ましいことを願うばかりだ。

この研究は学術雑誌、Resources, Conservation and Recyclingに掲載されている。

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タグ:リモートワーク二酸化炭素排出量

画像クレジット:Olivier Doiliery / Getty Images

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

SilviaTerraはカーボンオフセットの恩恵を世界中すべての土地所有者にもたらしたい

カーボンオフセット企業であるSilviaTerra(シルビア・テラ)の共同創業者であるZack Parisa(ザック・パリサ)氏とMax Nova(マックス・ノバ)氏は過去10年間、収益を生み出すカーボンオフセットへのアクセスを民主化する方法に取り組んできた。

森林クレジットがビジネスとして活況を呈している。ビジネスの脱炭素化に取り組む複数の世界最大級の企業による数十億ドル(数千億円)のコミットメントが背景にある。2人の創業者が10年間の人生を捧げ築き上げてきたテクノロジーは価値を増す一方だ。

すでに利益を計上している同社が外部から440万ドル(約4億6000万円)を調達したのはそうした理由による。資金調達はUnion Square VenturesVersion One Venturesがリードした。Salesforce(セールスフォース)の創業者であり、One Trillion Trees Initiativeを推し進めるMarc Benioff(マーク・ベニオフ)氏も参加した。

「気候危機に対処するための鍵は、いわゆる炭素循環のバランスを変えることです。私たちは現在、毎年約5ギガトンの炭素を大気中に追加しています。大気中の炭素は温室効果ガスとなり、宇宙に放射されずに留まるエネルギーが増え、地球が熱くなります」と、Union Square VenturesのマネージングパートナーであるAlbert Wenger(アルベルト・ウェンガー)氏はブログ記事に書いている。「減らす方法はたくさんあります。今後数週間でさまざまなアプローチについて説明します(二酸化炭素の直接回収や海のケルプの成長など)。私たちがよく理解している方法で、すぐに行動できる対象の1つは森林です。今日の世界の森林は、大気から年間1ギガトンを少し超えるCO2を吸収し、バイオマスに変えています。既存の森林の伐採や焼却(大規模な山火事の防止を含む)を止め、より多くの新しい樹木を植え始める必要があります。そうすれば、森林の潜在力は年間約4〜5ギガトンになります(ある推定では9ギガトンにもなります)」

2人の創業者にとって、新しく得た資金はパリサ氏が育ったアラバマ州北部の森で始まった長い旅の最新のステップだ。

ミシシッピ州立大学で森林科学を学んだ後、パリサ氏はイェール大学の大学院に通い、ケンタッキー州ルイビル出身のコンピューターサイエンスの学生であるマックス・ノバ氏と出会い、パリサ氏と一緒に後にSilviaTerraとなる会社を創業した。

SilviaTerraの共同創業者であるマックス・ノバ氏とザック・パリサ氏(画像クレジット:SilviaTerra)

2人は衛星画像とフィールド測定を組み合わせて、1エーカー(約4047平方キロメートル)ごとに森の木の大きさと種類を特定する方法を開発した。

最初のステップは米国内のすべての森林の地図を作成することだったが、2人の最終的な目標は、炭素市場を木材産業と対等な立場に置く方法を見つけることだった。地主は現金を得るために、木を切る代わりに森林を維持することがどれだけの価値になるかを知ることができるようになった。同社が指摘するように、森林の管理は以前は木材収穫の経済性が推進力となっており、米国では毎年100億ドル(約1兆400億円)以上が費やされていた。

SilviaTerraの創業者らは炭素市場も同じくらい大きくなる可能性があると考えていたが、ほとんどの土地所有者にとってアクセスが困難だ。カーボンオフセットプロジェクトを成立させるには20万ドル(約2100万円)もの費用がかかる可能性がある。これはパリサ氏自身の家族のような土地所有者が関わる小規模なオフセットプロジェクトやアラバマ州で彼らが所有する40エーカー(約16万1874平方キロメートル)の森の価値を上回っている。

パリサ氏とノバ氏は、小規模土地所有者が炭素市場から利益を得るには、より良い方法が必要だと考えた。

炭素経済を生み出すには、米国内のすべての木を記録する単一のソースが必要だった。SilviaTerraにはそうした地図を作成する技術があったが、地図を作成するための計算能力、機械学習の能力とリソースが不足していた。

そこで、Microsoft(マイクロソフト)のAI for Earthプログラムが登場した。

SilviaTierraはAI for Earthと協力して最初の製品であるBasemapを作成した。この製品はテラバイトの衛星画像を処理して、米国の森林地帯の1エーカーごとに木の大きさと種類を特定する。同社はまた米国森林局と協業し、そのデータにアクセスした。このデータは米国の森林資産の全体像作成に利用された。

Basemapのデータを使用して、同社は自然資本取引所と呼ばれるものを立ち上げた。このプログラムは、地域の森林に関してSilviaTerraが持つ比類のない情報へのアクセスと、そうした森林が現在どのようにプロジェクトに使用されているかについての情報を利用する。各プロジェクトは、もしオフセットマネーが入ってこなければ森に覆われていなかったであろう土地を示している。

現在、多くの森林プロジェクトは、そもそも森林に覆われることがなかったであろう土地を利用した合法的なオフセットとして購入者に提供されている。二酸化炭素排出量のオフセットとして、そうしたプロジェクトは実際には無意味で役に立たないものになっている。

「そこは血まみれです」と、業界における不正オフセットの問題の規模についてノバ氏はいう。「私たちは既存の森林炭素プロジェクトを再パッケージ化したり、需要側を既存のプロジェクトと結び付けようとしたりはしていません。テクノロジーの力で森林カーボンオフセットの新しい供給を解き放ちます」。

最初の自然資本取引所プロジェクトは、実際には2019年にマイクロソフトが始め、資金も提供した。その中で、20人のペンシルベニア州西部の土地所有者がプログラムを通じて森林炭素クレジットを生み出した。プログラムはオフセットが40エーカーの土地所有者にとって機能しうることを示した。

SilviaTerraのカーボンオフセットパイロットプログラムに関与する地主はマイクロソフトから支払いを受けた(画像クレジット:SilviaTerra)

「私たちは、すべての土地所有者の年間経済計画サイクルに参加しようとしているだけです」とノバ氏は述べた。「木材経済学にはあらゆる分野があります。そして私たちは次の質問に答える手伝いをしています。炭素の価格と木材の価格を踏まえると、計画されている木材の収穫を減らすことは理に適っているだろうか」。

2人の創業者は最終的に、森林の潜在的なカーボンオフセット値に関するデータを作成することで、土地全体の価値に対して支払える方法を見つけたと信じている。

炭素市場だけではない。SilviaTerraが作成したツールは、山火事の軽減にも使える。「私たちは適切なデータと適切なツールを持ち合わせて、適切なタイミングで適切な場所にいます」とノバ氏は述べる。「データをこれらすべての意思決定と経済性に結び付けるということです」。

SilviaTerra取引所の立ち上げにより、大規模な購入者はカーボンオフセットのために十分に調べられた情報源を得る。それはある意味でWrenようなスタートアップによって行われている仕事にとっては、企業として当然の帰結だ。WrenはUnion Square Venturesの別の投資先であり、消費者の日々の二酸化炭素排出量をオフセットすることに特化している。同様の森林オフセットを大規模に提供しようとしているPachama、3Degrees IncSouth Poleなどの企業の競争相手でもある。

バイデン政権下でカーボンバンクを設立するための議論が進行中であることから、オフセット企業にはさらに多くの機会があるとSilviaTerraの創業者らは述べた。米農務省が運営する既存のCommodity Credit Corp.を通じて設立されたカーボンバンクは、米国全土の農家と土地所有者に林業と農業のカーボンオフセットプロジェクトの費用を支払う。

「こうしたシステムには私たちが今利用している以上の価値があることを誰もが知っています」とパリサ氏はいう。「そのメリットを私たちが切り取って市場に送りだすものと同じレベルに置くまでは【略】価値は上がっていきます【略】絶対にそれは意思決定に影響を及ぼし、キャッシュで回収できます。これは必要とされているものを作るための米国沿岸部から米国中部への送金ポンプです」。

カテゴリー:EnviroTech
タグ:SilviaTerraカーボンオフセット資金調達二酸化炭素排出量

画像クレジット:Roine Magnusson/DigitalVision

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(翻訳:Mizoguchi

ビル・ゲイツ氏が支援するBoston Metalが金属産業の脱炭素化を目指し51.6億円調達

地球規模の気候変動に寄与する炭素排出量の約8%を鉄鋼生産が占めていいる。それは現代経済の根幹に位置する産業の1つであり、脱炭素化から最も程遠いものの1つだ。

世界中の国々が環境への影響を減らし、より持続可能な生産方法を採用しようと競争する中で、金属ビジネスから炭素を除去する方法を見つけることは、その努力に対する最も重要な貢献の1つとなるだろう。

この問題に対処するために新技術を開発しているスタートアップの1つが、Boston Metal(ボストンメタル)だ。Bill Gates(ビル・ゲイツ)が出資するBreakthrough Energy Venturesファンドが支援してきたこの新会社は、米国証券取引委員会(SEC)への提出書類によれば、事業拡大のための約6000万ドル(約51億9000万円)の資金調達ラウンドのうち、約5000万ドル(約51億6000万円)を調達したところだ。

コンサルティング会社McKinsey & Co.(マッキンゼー・アンド・カンパニー)が引用した調査によれば、世界の鉄鋼業界は環境への影響を削減できなければ、潜在的な価値の約14%が損なわれる可能性があるという。

2019年には2000万ドル(約20億6000万円)を調達したBoston Metalは、溶融酸化物電気分解(MOE、molten oxide electrolysis)と呼ばれるプロセスを利用して合金鋼を作り、最終的にはエミッションフリーの鉄鋼を生産する。同社CEOのTadeu Carneiro(タドゥ・カルネイロ)氏によれば、実際の資金調達は今から2年前の2018年12月に行われたのだという。

その最後の調達から月日は流れ、Boston Metalは当時の8人体制から今では50人近くの規模へと成長した。マサチューセッツ州ウォバーンに拠点を置く同社は、合金鋼を生産する3つのパイロットラインを1カ月以上継続的に稼働させることができている。

鉄鋼生産プログラムが最終的な目標であることに変わりないものの、同社は合金生産プログラムの商業化に向けて急速に進んでいる。カルネイロ氏によれば、従来のインフラやサンクコストに依存していないからだという。

Boston Metalの技術は、紀元前1200年の鉄器時代の幕開け以来、大きく変わっていない業界の技術を根源的に再考するものだと、カルネイロ氏は語る。

最終的には、技術開発者として鉄鋼を生産する鉄鋼メーカーやエンジニアリング会社にその技術をライセンスし、部品を販売することが目標だ。

Boston Metalにとって、製品ロードマップの次のステップは明確だ。同社は、2022年末までにウォバーンで準工業的小規模ラインを稼働させ、2024年か2025年までには最初の実証プラントを稼働させたいと考えている。「その時点になれば、私たちはこの技術を商業化することができるようになるでしょう」とカルネイロ氏は述べている。

同社のこれまでの投資家の顔ぶれは、Breakthrough Energy Ventures、Prelude Ventures、MITが支援する「ハードテック」投資会社のThe Engineなどだ。彼らは全員、投資会社Devonshire Investorsとともに、最新の現金注入に投資するために戻ってきた。Piva Capitalや別の匿名投資家とともに、金融サービス大手Fidelityが今回の投資を主導したが、Devonshire InvestorsはそのFidelityの親会社であるFMRと提携している。

SECへの提出書類によれば、今回の投資の結果、Shyam Kamadolli(シャム・カマドリ)氏が同社の取締役会の席に就くことになるという。

MOEは、金属を酸化物のままの状態で取り出し、溶融金属製品へと転換する手法だ。MITのDonald Sadoway(ドナルド・サドウェイ)教授の研究に基づいて、マサチューセッツ工科大学で発明された手法を使うBoston Metalは、特定の原料や製品に合わせた溶融酸化物を製造している。電子を利用してスープを溶かし、対象の酸化物を選択的に還元するのだ。精製された金属は容器の底部に溜まり、高炉技術から適応されたプロセスを使用して容器に穴を開けて取り出される。穴は塞がれ、その後処理が続行される。

同社によれば、この技術の利点の1つは、そのスケーラビリティにあるという。生産者はより多くの合金を作る必要性に応じて、生産能力を高めることができる。

同社の最高経営責任者(CEO)であるカルネイロ氏は、2019年に行った2000万ドル(約20億6000万円)の資金調達の際に「溶融酸化物電気分解は、幅広い金属や合金を生産できるプラットフォーム技術ですが、当社の最初の産業展開は、当社の最終目標である鉄鋼への道筋である合金鉄をターゲットにします」との声明を出している(Business Wire記事)。「鋼鉄は現代社会の必需品であるとともに、これからもそうあり続けるでしょう。しかし現在、鋼鉄の生産によって2ギガトン以上のCO2が生産されています。何千年も前から、鉄鋼を製造するためには同じ基本的な方法が使われてきましたが、Moston Metalは石炭を電子に置き換えることでそのパラダイムを打ち破ります」。

テック業界における最高の著名人であるビル・ゲイツ氏自身も、金属事業の脱炭素化の重要性を強調している。

ゲイツ氏は自身のブログであるGatesNotesの中で「Boston Metalは石炭の代わりに電気を使って、同じように安くて強い鉄鋼を作る方法を開発しています」と書いている。一方ゲイツ氏は「もちろん、クリーンな電力を使ったとしても、電化は排出量の削減を助けることができるだけです。それがゼロカーボンの電気(GatesNotes投稿)を手に入れることが重要であるもう1つの理由なのです」という注意も喚起している。

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タグ:Boston MetalBill Gates二酸化炭素排出量資金調達

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(翻訳:sako)