株価連動型ポイントサービスのSTOCK POINT、クレディセゾンとの提携を発表

株価連動型ポイントサービス「ストックポイント」を提供するSTOCK POINTは3月13日、クレディセゾンとの提携を発表した。これにより、クレディセゾンが提供する「ポイント運用サービス」において、上場企業の株価に連動してポイント数が増減する「株式コース」を新たに提供開始する。サービスリリースは2018年5月下旬を予定している。

ストックポイントは、企業の株価に所持ポイント数が連動するポイントサービス。同社が12月に開始した「ポイント運用プログラム」では、サイバーエージェントの「ドットマネー」が取り扱う60種類以上のポイントを自分の好きな企業のストックポイントに交換することができる。

現在、同サービスが取り扱うのは全12銘柄の上場企業の株式、およびETF(上場投資信託)だ。その中には、みずほフィナンシャルグループやソフトバンクグループなど、日頃から良く目にする企業も含まれる。

株価が上がって所持ポイント数が増えれば、そのストックポイントをドットマネーを経てnanacoポイントなどのお買い物ポイントに再度交換することも可能だ。また、ストックポイントを貯めたり運用したりして、所持ポイント数が企業の1株あたりの株価まで達すれば、それを実際の株式に変換することもできる(ただし、SBI証券、みずほ証券で取引口座を保有している必要がある)。

ストックポイントは2017年12月に正式リリース。同サービスのアプリのダウンロード数は現時点で1万件に達している。すでにポイントを株式に変換したユーザーもいるという。

一方、クレディセゾンのポイント運用サービスは2016年12月より提供開始されている。これは同社が提供する「永久不滅ポイント」を通して資産運用を疑似体験できるサービスで、特定の投資信託の運用状況に応じてポイント数が増減するというものだ。サービス開始から約1年が経過した現在、ユーザー数は10万人を超えるという。

今回の提携により、これまでの投資信託の運用状況に応じてポイントが増減するサービスに加え、STOCK POINTが手がけてきた上場企業の株価と連動するポイント運用サービスが提供されるようになる。

研究者の挑戦をサポートへ、実験機器のシェアサービス「Co-LABO MAKER」がβ版リリース

新たな技術を生み出すためには欠かせない「研究」には、高額な研究設備や専門知識がつきものだ。ただ予算の問題などがネックとなり、本当にやりたい研究に時間を費やせない研究者も少なくない。

その一方で、大学や企業には有効活用されていない機器やリソースが眠っているのもまた事実。そんな問題の解決を目指して開発されたのが、研究リソースのシェアサービス「Co-LABO MAKER(コラボメーカー)」だ。

提供元のCo-LABO MAKERは3月13日、同サービスのβ版をリリース。合わせてプライマルキャピタルと日本政策金融公庫から総額3000万円を調達したことを明らかにした。

Co-LABO MAKERは利用したい実験機器や技術の検索、マッチング、実験、決済という一連のプロセスを提供することを目的としたサービス。β版では実験機器のシェアリングに絞り、ライフサイエンス分野から材料工学分野まで幅広い領域の実験機器を貸し借りできるようにする。

専門知識がない分野など、懸念点がある場合はCo-LABO MAKERコーディネーターに相談することも可能。研究者は通常よりも安価に実験機器を利用することができ、提供者側も稼働していない実験機器の有効活用や外部との交流、共同研究など研究ネットワークの拡大も見込める。

Co-LABO MAKERで代表取締役CEOを務める古谷優貴氏は大学時代に2つの研究室を経験。そこから総合化学メーカーで半導体関連の研究開発をした後、大学院と大学発ベンチャーに所属するなど長く研究の現場に身を置いてきた人物だ。

自身が多くの機器や技術、研究者がそのポテンシャルを持て余している現場、一方で「実験機器を購入する資金がなく、希望する実験ができない」研究者がいる現状を見て、Co-LABO MAKERを立ち上げたという。

同社では今回の資金調達により、本格的なサービス展開に向けて探索機能やコミュニケーション機能を中心にサービス強化に取り組む方針。まずはライフサイエンス分野のラインナップ拡充に注力するという。

将来的には実験機器のシェアリングサービスを起点に、他の研究リソースのシェアリングや実験を一から企画するトータルコーディネートサービス、遊休設備の流通など、研究開発と事業化に貢献できるサービスを展開していく計画だという。

ファンと資金を同時に獲得、お店の“会員権”取引所「SPOTSALE」が正式リリース

会員権を発行することで、店舗が資金や新たなファンを獲得できる「SPOTSALE(スポットセール)」。開発元で大分県発のスタートアップ、イジゲンは3月13日、同サービスを正式にリリースした。

サービスの概要については2018年1月にイジゲンが資金調達を実施した際にも紹介しているが、SPOTSALEは飲食店や美容室などの店舗と顧客をつなぐ会員権の取引所だ。リリース時点では以下の3つの機能を提供する。

  • 店舗が会員券の発行を行い、期間限定で公募販売をする
  • 一般公開された会員券はユーザー同士で売買できる
  • 会員券を所有するユーザーは発行店舗で優待を受けられる

イジゲン代表取締役CEOの鶴岡英明氏に前回取材した際「購入型のクラウドファンディングに(会員権を売買できるC2Cの)二次市場がくっついてるようなプラットフォーム」という話があった。

店舗にとっては会員権の発行(SPOTSALEに上場する)を通じて資金と顧客を同時に獲得できるのが最大の特徴。一方の会員にとっては優待を受けられるだけでなく、サービス内で会員権を売買できる点が従来のクラウドファンディングとの大きな違いだ。

正式リリースにあたって店舗情報が公開。会員権の価格や優待内容も閲覧した上で、公募に申し込めるようになった。

同社によると現時点で登録ユーザー数は約3000人、2018年3月までに会員券の発行を希望する店舗は飲食系や美容系を中心に約70店舗(初期上場店舗は10店舗で、60店舗が審査中とのこと)。総調達金額は約1.4億円を予定しているという。

今後は地域や特定の分野に貢献したユーザーによる会員券推薦機能や、評価の高い店舗の段階的な追加公募、日本以外へのサービス展開等も予定する。「SPT(会員権の購入に利用するポイント)は将来的に仮想通貨になることも視野に入れ、流通も可能にしたSPOTSALE経済圏の構築を目指していく」(鶴岡氏)

保険セールス向けSaaSの「hokan」が6000万円調達、保険証券を見える化

保険セールス向けのSaaSサービス「hokan」を開発するhokanは3月13日、500 Startups japanBEENEXTMIDベンチャーキャピタルを引受先とした第三者割当増資を実施した。調達金額は6000万円だ。

「保険証券ってどこにある?」と聞かれたとき、すぐに答えられる人はどれくらいいるのだろうか。保険証券とは、保険契約の内容や給付金の支払い条件などが明記された契約書だ。ただ、これは大切な書類ではあるが頻繁にチェックする類いのものではないので、どこに保管してあるか分からないという人も多いだろう。

hokanのメイン機能は、この保険証券の見える化だ。保険営業員が顧客の保険証券の画像をアップロードすることで、書面をオンラインで確認できるようになるほか、保証内容や解約払戻金の額をグラフで表示する。

保険証券を見える化し、グラフやデータをもとにした営業活動を行えるようにするのがhokanの役割だ。hokanによれば、同社が200人を対象に行ったオンラインアンケート調査で、保険を契約する人の90%は自分の保証内容を正確に把握できておらず、全体の40%は保険証券がどこに保管されているか把握していないことが分かったという。

また、hokan代表取締役の小坂直之氏は、「オンライン化することで、(保険証券を)すべてデータとして扱えるようになる。営業員に対して、同じ補償内容でもより安くなる保険をレコメンドしたり、契約日から1年などの節目で訪問すべき顧客をレコメンドするなどを行う」と今後の目標について語る。将来的には、hokanにCRMなどの営業支援機能を追加することで営業員向けSaaSサービスとしての利便性を強化していくようだ。

また、hokanは年内にも一般消費者向けに「家計簿アプリの保険版」をリリースする予定だ。これは、ユーザー自身が保険の補償内容や、解約払戻金の金額などをスマホで確認するためのアプリだという。ただ、正直このアプリのマネタイズは難しいのかもしれない。

給料は毎月支払われるし、それに合わせて貯金額は増えていく。だから、例えば家計簿アプリの「マネーフォワード」を頻繁に開くというユーザー行動は理解できる。僕も自己満足のために3日に1度くらいはアプリを開いている。でも、その一方で、保険の保障内容や解約払戻金の金額を確認したいと思うのは1年に1度あるかないか。それだけC向けの保険管理アプリを普及させるのは苦労しそうだ。

それに対し小坂氏は、「C向けの保険管理アプリとしてのマネタイズは考えていない」としたうえで、将来的にはこのC向けアプリに保険募集人とメッセージのやり取りができる機能を追加し、保険内容をいつでも確認できるだけでなく、保険に関する相談ができる窓口として同アプリを位置づけていくと話す。

hokanは4月1日に営業員向けサービスのベータ版を公開し、その後7月1日に正式版をリリースする予定だ。価格はまだ未定だが、月額5000円に加えて、保険証券のアップロード数に応じた従量課金方式を採用する予定だという。

代表取締役の小坂氏は元々保険の営業マンだった。その後、複数の保険会社の商品を取り扱う保険代理店を開業した。その経験から、「未だに保険は保険営業員から加入する人も多い。そのため、営業員が活用できるインフラを作っていくことこそが、日本における金融流通の革新に寄与できる」と考え、2017年にhokanを創業した。

写真前列の左より、hokan COOの尾花政篤氏、CEOの小坂直之氏、CTOの横塚出氏。ちなみに、hokanは尾花氏と小坂氏の両者がともに”代表取締役社長”と名乗るちょっと変わった体制だ。

人材採用のOpen API構想を掲げるHERPにスタートアップの経営者ら8名がパートナーとして参画

HERP」は複数の求人媒体と自動連動する採用管理システムを軸とした、AIリクルーティングプラットフォームだ。2017年12月に発表された同サービスは、既存の求人媒体と情報を連携して応募を自動で登録し、一括管理できる仕組み。採用担当が行う事務作業の多くを自動化し、戦略的な採用活動に注力できるよう支援することを目的に開発されている。

同サービスを開発するHERPは3月12日、スタートアップの経営や採用戦略に携わる8名がパートナーとして加わり、経営に参画すると発表した。HERP PARTNERとして迎えられたのは、以下の8名。このうちエウレカ共同創業者の赤坂氏と西川氏は、HERPに合計数千万円規模の出資を行っている。

  • 赤坂優氏(エウレカ 共同創業者/エンジェル投資家)
  • 石黒卓弥氏(メルカリ 採用担当)
  • 小澤政生氏(サイバーエージェント採用担当)
  • 河合総一郎氏(ReBoost 代表取締役社長)
  • 桑田友紀氏(サイバーエージェント 採用担当)
  • 小泉文明氏(メルカリ 取締役社長兼COO)
  • 高野秀俊氏(キープレイヤーズ 代表)
  • 西川順氏(エウレカ共同創業者/エンジェル投資家)

HERPは2017年3月創業。代表取締役CEOの庄田一郎氏は、リクルートで新卒エンジニア採用などを担当したあと、採用広報担当としてエウレカに入社。エウレカでは「Couples」の事業担当者も務めていた。

庄田氏は「採用、HRの業界構造は60年ぐらい変わっていない。企業は工数をかけてエージェントや媒体に情報を提供し、採用が決まったらお金を払う。これでは情報は、エージェントや媒体に偏る。また求職者にとっても、企業選びはエージェントの持ってくる情報に限定された状況だ」と言う。

この状況を変えたい、と考えられたのが同社の掲げる「Open Recruiting API構想」だ。これは利用企業が持つ求人データ、応募する候補者データを、API経由で採用媒体やエージェントと適切にやり取りする、というもの。「金融業界ではマネーフォワードが『Open Bank API』を提唱してきた。その後、銀行が更新系APIの提供を始めたが、これは時代の流れ。採用業界でも同じことをやりたい」と庄田氏は語る。

「今後、採用にまつわる情報は複雑化していく。働き方改革で副業が広がり、新卒採用、終身雇用といった制度もなくなっていくだろう。また外国人の雇用も増えていくはずだ。そうなると、人事にかかるコストは膨らんでいく。これを見据えて、データのオープン化への対応を準備していく」(庄田氏)

庄田氏は「これまで変化のなかった採用業界で、既存の媒体がこれを推進するのは難しいだろう。だから僕らが進めたい」と話す。「デジタル業界、ウェブ系企業では、データのオープン化にも理解があるところが多い。今回は、スタートアップ、ベンチャー企業のHRの権威や経営者の方に、この思想に共感し、参画してもらった。今後も、Open Recruiting API構想に協力するパートナーは増やしていきたい」(庄田氏)

庄田氏はまた「直近では採用事務を自動化することを目指す。そのためには、まだまだツールが必要」として、その開発を進めていきたい、と話している。「採用担当者は、媒体の管理画面から手入力で候補者の情報をExcelに入力することも多い。それでは正確な候補者データを担保できない。まずは、正確なデータを企業が入手できるようにしたい」(庄田氏)

手入力やコピーペーストの登録による弊害はほかにもある。応募してきた候補者リストが、企業にデータとして集約されないケースだ。「人事担当者が媒体の管理画面上で確認し、その場で不採用メールを送る、ということはよくある。この場合Excelに転記されないので、面接フローに乗った人だけしか、管理できない。粒度のそろったデータにならないので、採用分析にも支障がある」(庄田氏)

また、パフォーマンスや早期離職の分析など、入社後にも採用時のデータは活用できる。「入口でデータを持っていなければ、そういった活用にはつながらない。HERPは媒体と自動連携することで、企業が手間をかけずにデータを入手できる機能を提供する」と庄田氏は説明する。

さらに将来的には、より深い分析も可能になるだろう、と庄田氏は述べている。「応募者側で言えば、レジュメと自分の情報を登録すれば、希望する企業の合格率が分かる、といったことも考えられる。企業側も、例えば1000万円をかけて財務担当を採用したい、となったときに、媒体ごとにいくらかければよいのか、AIを使って費用を最適化することもできるだろう」(庄田氏)

庄田氏は「広告で人材を獲得するときの効果測定は、マーケティングと一緒」と話す。「1人あたりいくらかかったのか、その後の効果はどうなのか。データがなければ分析、確認はできない」(庄田氏)

昨年12月にサービスの発表と同時に公開されたHERPのティザーサイトでは、ベータ版ユーザーの登録を募集している。庄田氏によると、これまでの3カ月で約400社の登録があったそうだ。「プロモーションを行わずにこの数字だったので、手応えはある」と庄田氏は言う。「ウェブサービスなどの企業のほか、大企業からの登録もあった。意外だったのは、弁護士事務所などの士業からの申し込みも結構あったことだ」(庄田氏)

HERPは現在、クローズドベータの形で数社に公開され、試用が始まっているとのこと。登録企業全体に公開されるのは、今春の予定だ。

ソーシャルレンディング投資家の約7割が毎月使うインフラ「クラウドポート」が3.1億円を調達

「世の中的には仮想通貨の盛り上がりがすごく、その影に追いやられてしまった部分はあるが、ソーシャルレンディング市場も着実に伸びてきている」——そう話すのはクラウドポート代表取締役の藤田雄一郎氏だ。

クラウドポートでは年々拡大するソーシャルレンディング業界に特化した比較サイト「クラウドポート」を2017年2月から提供。そして本日B Dash VenturesAGキャピタルみずほキャピタルなどを引受先とした第三者割当増資により、総額3.1億円を調達したことを明らかにした。

2017年の市場規模は1316億円、前年から約2.5倍に拡大

冒頭の藤田氏の話にもあるように、最近は毎日のようにビットコインを中心とする仮想通貨の話題がメディアで取り上げられるほど、ここ1年ほどでその知名度は一気に上昇した。ただその裏側では着実に新たな資産運用の仕組みが広がってきている。

たとえば資産運用を自動化する「ロボアドザイザー」。直近では2018年1月にテーマ型投資のFOLIOがLINEやゴールドマン・サックスから70億円を調達。2月にはウェルスナビが未来創生ファンドらを引受先とした第三者割当増資と融資を合わせて45億円を集めた。「THEO」を提供するお金のデザインも累計で数十億円を調達していて、Fintech界隈でも特に大型の調達が続く市場となっている。

そして同じく拡大傾向にあるのが、お金を必要とする人や企業と、投資をしたい一般投資家をマッチングする「ソーシャルレンディング」だ。

かつてはデフォルト(貸し倒れ)率の高さが問題視されることもあったが、近年はそのような状況も改善され、サービス提供者の数も20社を突破。藤田氏によると2017年の市場規模は前年の533億円から約2.5倍拡大し、1316億円まで膨らんでいるという。

ソーシャルレンディングは「銀行が融資しづらい」領域へ新しい資金を投じる仕組みとして期待を集めていて、近年は古民家再生や再生可能エネルギー発電施設の開発などの目的で利用が増加。不動産情報サイト「LIFULL HOME’S」を提供するLIFULLなど参入を表明している大手企業も複数あり、今後も市場の拡大が見込まれている。

分散投資の支援に向けて3つの軸でサービスを提供

そんなソーシャルレンディング事業者の動向をわかりやすく整理したサイトとして始まったのがクラウドポートだ。事業者の横断比較サイト(現時点で23社掲載)と専門ニュースサイト「クラウドポートニュース」に加え、2017年10月にポートフォリオ管理ツール「マイ投資レポート」の提供を開始。

利用者数も増加傾向にあり、現在国内でアクティブなソーシャルレンディング投資家のうち約7割が毎月利用するサービスになっているという(各事業者へのヒアリングや同社でのユーザーアンケート、および公開データを元に同社で推定したもの)。

「ソーシャルレンディングは複数の事業者やファンドへ分散投資をしている人が多く、事業者だけで20社以上もあるとなると比較検討が大変。そのため玄人の人を中心に比較サイトや資産管理ツールを定期的に活用いただいている。一方でクラウドポートニュースを中心に、初心者の方にも使ってもらえることが増えてきた。(リリースから約1年で)少しずつソーシャルレンディングのインフラ的な存在になれているという実感はある」(藤田氏)

クラウドポート利用者の平均保有口座数は6つ。現在投資中のファンド数についても約40%のユーザーは11ファンド以上だというから、確かに投資状況を一覧できるツールや比較サイトのニーズは高そうだ。

クラウドポートでは今回調達した資金をもとに組織基盤を強化。サービスの改善を図るとともに、新サービスのリリースも予定しているという。

「ソーシャルレンディングはミドルリスクミドルリターン。株式やFXほど難しくなく安定的に運用できるのが特徴だ。もともと忙しいサラリーマンや主婦でも始められるような、新たな資産運用の選択肢が必要だと思い(クラウドポートを)始めた。とはいえ絶対に損失が発生しないとは言えないし、ファンドや事業者を分散することも大切。そのための負担や手間を減らし『投資家が分散投資をしやすくするための環境』を整備していきたい」(藤田氏)

写真左からクラウドポート代表取締役の藤田雄一郎氏、共同創業者の柴田陽氏。藤田氏はソーシャルレンディングサービス「クラウドバンク」の立ち上げに携わった人物。一方の柴田氏は「スマポ」など複数サービスの立ち上げ、売却経験のある連続起業家だ。

 

「DELISH KITCHEN」提供のエブリーがKDDIと資本業務提携、30億円調達でライブコマース提供へ

レシピ動画メディア「DELISH KITCHEN」などを提供するエブリーは3月12日、KDDIと資本業務提携を締結したことを発表。同日、第三者割当増資により発行する株式をKDDIが約30億円で取得し、今後エブリーがKDDIの持分法適用関連会社となる予定だ。両社は2018年7月を目途に共同でライブコマース事業を提供していく。

エブリーは2015年9月の創業。これまでに、2016年6月に約6.6億円、2017年3月に約27億円、2017年12月に約20.6億円を調達している。

エブリーではDELISH KITCHENに加え、女性向けライフスタイル動画メディア「KALOS」、ママ&ファミリー動画メディア「MAMADAYS」、ニュース動画メディア「TIMELINE」の4サービスを、FacebookやInstagram、YouTubeなどのプラットフォームを通じた分散型メディアとして提供。月間延べ4400万人以上に配信しているという。

今回の資本業務提携により、エブリーとKDDIは、ライブ配信動画の出演者にリアルタイムで質問やコメントをしながら買い物ができる、ライブコマース事業を提供していく。ライブコマースはKDDIグループが運営するショッピングモール「Wowma!」などにも展開する予定だ。

また、エブリーが持つ動画コンテンツとKDDIグループが持つユーザー基盤をはじめとしたアセットとの連携により、EC事業の企画・開発を進めるなど、国内EC事業の強化に両社で取り組んでいくという。

広がる“即時買取”モデル、ジラフがMacBook特化の「パソダッシュ」をGoogleフォーム上で公開

2018年に入って「○○(ジャンル名)の即時買取サービス」を紹介する機会が少しずつ増えてきた。

たとえばジラフが提供する「スママDASH」はスマホ端末を対象としたもの、ウリドキネットが提供する「PICOL(ピコル)」はゲームや書籍、DVDなどメディア系商材を対象としたものだ。即時買取の先駆けとも言える「CASH(キャッシュ)」がリリースされたのは2017年6月。当時大きな話題となったこの画期的なユーザー体験も、徐々に浸透してきたように思う。

本日ジラフが新たにリリースしたのもジャンル特化型の即時買取サービス「パソダッシュ」。対象となるのはMacBookだ。

パソダッシュはジラフが運営する買取比較サイト「ヒカカク!」内で利用できる即時買取サービス。 査定申込をした後は与信審査などの手続きがなく買取金額を確認、売却が可能。MacBook内に残ったデータも無料で削除するという。

1日の総買取金額は100万円で、取引1回あたりの上限金額は3万円。申込は1台ずつとなる。液晶割れなど故障している商品でも買取の対象となるのも特徴だ(同社ではジャンク品を修理して再販するスキームがある)。

ヒカカク!の収益化を進める

冒頭でも触れたとおり、ジラフはすでにスマホ端末の即時買取サービス、スママDASHを提供している。同サービスの状況については「月間で数百台ペースの買取数となっていて(CASHなどのように)爆発的な勢いでは無いにしても比較的順調」(ジラフ代表取締役の麻生輝明氏)だという。

麻生氏によると特に画面割れなどのジャンク品の買取が進んでいるそう。MacBookは「スママDASHで勘所は掴んだジャンク買取を実現でき、スママDASHとユーザーを共有しやすいカテゴリーでもある」(麻生氏)ため、スマホ端末の次に取り掛かるジャンルとして選んだそうだ。

また再販売時の値崩れが起こりにくく買取市場の中でも単価が大きい部類であり、即時買取で通常の買取価格が下がる中でも比較的値付けしやすい点も相性が良かったという。

同社の今後の方向性について麻生氏に聞いてみたところ、”ヒカカクの収益化”がひとつの鍵となるようだ。

「ヒカカクで収益化をもっと進められるカテゴリーにおいて、即時買取サービスでユーザーの合計コンバージョンレートを高めていく、機会損失を埋めていくような戦略を考えている。(ヒカカクは)月間で150万人以上に利用されているので、ここで送客スキーム以外に即時買取で他カテゴリーも取りこぼしを減らしていきたい」(麻生氏)

パソダッシュに関しては、まずは初月1000万円の買取を目指していく方針だ。

ちなみに申込ページを見てもらうと分かるように、同サービスは現状Googleフォームで公開されている。これは一時的なものだというが、スピード感を重視してリリースした結果だそう。利用者が見込めれば今後はスママDASH同様、独自サイトでサービスを提供する方針だという。

パソダッシュの開発メンバー。同サービスは企画から100時間でのリリースなのだそう

 

freeeが「民泊を始めたい人」をサポートする新サービス、事前届出開始の3月15日に公開へ

クラウド会計ソフトなど複数事業を展開するfreeeは3月12日、⺠泊事業を始めたい人向けの新サービス「⺠泊開業 freee」を発表した。民泊事業の事前届出が開始する3月15日より、同サービスを提供する予定だ(サービスサイトも同日公開)。

「6月15日の民泊新法(住宅宿泊事業法)施行」は2018年上半期において、多くの人が注目するトピックのひとつだろう(スタートアップの動向に関心があるTechCrunch読者であればなおさら)。

TechCrunch Japanでも「SUUMO」を運営するリクルート住まいカンパニーがAirbnbと提携して民泊事業を展開することを1月に紹介したが、すでに多くのプレイヤーが参入を発表している。

国内の大手IT企業では楽天がLIFULLとタッグを組んで、民泊事業会社の楽天LIFULL STAYを設立。ヤフー傘下の一休は2016年から11月から「一休.comバケーションレンタル」を運営している。スタートアップも「Relux」提供元のLoco Partnersが「Vacation Home」を、「スペースマーケット」提供元のスペースマーケットが「スペースマーケットSTAY」を通じて民泊事業を本格化する。

そのほかJALも「STAY JAPAN」を運営する百戦錬磨と資本・業務提携をして民泊領域に参入する動きが見られるなど、この盛り上がりは今後も続いていきそうだ。

2月末には観光庁が民泊制度のポータルサイトを開設。6月の新法施行に先駆けて、まずは3月15日から住宅宿泊事業の事前届出が開始する。これを機に民泊の間口が広がり、多くの法人・個人が民泊ビジネスを始めることも予想される。

ただし民泊新法によって民泊を始めやすくはなるものの、ポータルサイトの説明を見る限り届出に必要な手続きにはある程度の手間がかかるだろう。この届出手続きを中心に、個人事業主の開業手続きや民泊サイトへのホスト登録までを一気通貫でサポートしようというのが、冒頭で紹介した⺠泊開業 freeeだ。

ポータルサイトで紹介されている、届出の際に必要な添付書類(個人の場合)

届出手続き、開業手続き、ホスト登録を一気通貫でサポート

民泊開業freeeの主な機能は「住宅宿泊事業(民泊)の届出手続きサポート」「個人事業主としての開業手続き書類の作成」「⺠泊予約サイトSTAY JAPANへのホスト登録」の3つだ。

民泊の届出手続きのサポートについては同サービス上で必要書類が確認できるほか、行政が提供する「⺠泊制度運営システム」へのリンクを設置。リンク先から書類を作成する流れになる。そのためリリース時点では、ものすごく使い勝手がいいとまでは言えないかもしれない。

ただ担当者によると「今後は民泊開業freee上で必要書類の作成機能を提供することも検討していく」とのことで、この機能が実装されるとより使いやすくなりそうだ。

個人事業主としての開業手続き書類の作成は、以前から提供している「開業freee」を民泊用に少しカスタマイズした形で提供。簡単に質問に答えれば、開業届や青色申告承認申請書など各種書類を自動で作成できる仕様になっている。

またfreeeではサービスリリースにあたって百戦錬磨との業務提携を締結。STAY JAPANへのホスト登録をサポートする(登録ページへのリンクを設置、リンク先でホスト登録をする)。

民泊に興味はあるけれど、何をやったらいいか全くわからないという人も一定数はいるはず。そのようなユーザーにとって、民泊開業freeeは順番に沿って作業を進めると最低限やっておくべきことが一通り完結するため、便利なサービスといえるだろう。

必要書類の作成が同サービス上だけでは完結できない点や、民泊サービスのホスト登録がSTAY JAPANのみの対応となっている点などについては、今後さらに良くなる余地もありそうだ。

JapanTaxiとフリークアウトが進める“新世代タクシー広告”「Tokyo Prime」が全国展開、決済機能付き新端末も

2018年に入ってから、国内タクシー業界の競争が激化している。

日本交通の子会社で、国内ではトップシェアを誇るタクシー配車アプリ「全国タクシー」運営元のJapanTaxiが2月にトヨタから75億円未来創生ファンドから10.5億円の資金調達を実施。タクシー向けのコネクティッド端末や配車支援システムの共同開発など、今後のチャレンジを明らかにした。

競合他社も黙ってはいない。中国を中心に配車アプリを展開する滴滴出行(DiDi)はソフトバンクとの協業を発表。Uberも第一交通と提携の協議を進めているし、ソニーがタクシー会社6社と組んでAIを使った配車サービスに取り組むことも明らかになった。

ユーザーにとってみれば、健全な競争によって少しでも日本のタクシーが使いやすくなることを期待したいところであろう。

利便性という観点では、配車だけではなく車内の設備やサービスも含めた「乗車中の体験」も重要だ。この「タクシーの乗車体験の向上」というチャレンジに、タブレット端末と広告という観点から取り組んでいる企業がある。JapanTaxiとフリークアウト・ホールディングスの合弁会社として2016年に設立されたIRISだ。

同社が展開するのはタクシー搭載のデジタルサイネージ「Tokyo Prime」。これまで都心を走る日本交通のタクシー4500台に端末を設置、動画広告を配信してきたが、2018年6月より日本交通以外の車両も対象に全国展開を開始する。

2020年までに5万台のネットワークを目指す

IRISが手がけるTokyo Primeについては、会社設立時にTechCrunch Japanでも詳しく紹介している。従来は「コンプレックス商材」が多かったタクシー広告。その概念を変え、都心でタクシーを利用する高所得者層をターゲットにした「プレミアム動画広告」を2016年にスタートした。

同社取締役COOの飽浦尚氏によると、立ち上げ当時は従来のイメージもあって顧客の開拓に苦労したそう。流れが変わったのは、トヨタが父の日キャンペーン(「Loving Eyes – Toyota Safety Sense」はSNSでも話題となった)の広告を出向したタイミングだ。これをきっかけに大手企業からの引き合いも増加。2017年9月以降は満稿状態が続き、10~12月の販売額は前年比で14.4倍に成長しているという。

「最初は(車内の広告について)邪魔くさいだけでは?という意見も周りからはあった。ただ実際にやってみると反響が大きく、ユーザーにもきちんと見てもらえるという手応えを感じている」(飽浦氏)

すでに述べたように、IRISでは6月から「日本交通のタクシー」「都内」という枠を超えて、Tokyo Primeの全国展開を始める。3月9日の時点で7都道府県、約1.5万台のタクシーへ端末の導入予定があり、2020年末までに合計5万台のネットワークを目指すという。

飽浦氏の話では、全国展開を通じて実現できることが大きく2つあるそうだ。1つは広告の観点で、(広告主にとって)リーチできる層が全国に広がるということ。もう1つは(ユーザーにとって)地方のタクシーの利便性向上だ。

Tokyo Primeでは主にナショナルクライアントの利用を見込んでいるため、全国規模で商品展開をしたい広告主にとってはより魅力的な広告商材になりえる。これはシンプルな話かもしれない。

一方で、地方のタクシーがより使いやすくなるという点についてはどういうことか。「(IRISの端末を導入することで)広告を流すだけではなく、アプリを通じた決済にも対応できる。決済端末として期待してもらっている側面も強い」(飽浦氏)

同社の端末を導入すると全国タクシーアプリ内の「JapanTaxi Wallet」機能だけでなく、スマホ決済サービス「Origami Pay」や「Alipay」からQRコードを用いてスムーズに代金を支払えるようになる。

開発中の新端末スクリーンの右側がカードリーダー

地方のタクシーに乗った際に、クレジットカードで支払いができなくて焦った経験のある人もいるかもしれない。対応できた方がいいことはわかっていても、決済端末の価格や決済手数料がネックとなって、地方にはカード決済を導入していないタクシー会社も多いという。

IRISの場合は端末の初期費用を抑えることに加えて、広告収益の一部をタクシー会社に分配(レベニューシェア)している点が特徴。まだ先の話にはなるかもしれないが、今後広告収益が増えれば「その収益で(端末導入費や決済手数料といった)コストを相殺できるようになるところまで目指したい」(飽浦氏)そうだ。

なお端末に関しては、これまで外部(レノボ)から調達していたものの、今後はオリジナルの新端末に変更。全国に展開していく予定だという。新端末はスクリーンの横にカードリーダーを搭載。クレジットカード決済やICカード決済にも対応する。また同時に、バッテリーを排除して車両から給電する。実はタクシーの車内というのは意外とハードな環境だ。毎日20時間ほど振動し、季節によっては温度上昇も大きい。これに耐えられる設計になっているという。

「決済機と戦うつもりはなく、新しい乗車体験を提供して、タクシーの全国の利用を変えていきたい。タクシー会社はこれまで決済費も通信費も手数料も、すべて『支払う側』だったが、広告での収入も得ることができる。さらに決済も、乗務員はタブレットで作業を見ているだけでいい。実は乗務員の高齢化は課題。日本交通では新卒を採用しているが、東京以外では厳しいところもある。機械に慣れていない乗務員が(新しい決済手段を)覚えるのも課題になっている」(IRIS代表取締役社長であり、JapanTaxiの取締役CMOでもある金高恩氏)

タクシー広告をデジタル広告に近づける

IRISでは全国展開に加えて、新たに2つの取り組みを始める。1つ目はGoogleが提供する「DoubleClick Bid Manager」から動画広告の買付をできるようにすること。つまり屋外・交通領域のタクシー広告をデジタル広告のようにオンライン上で買付、効果検証できるようにすることだ。

従来の屋外・交通広告では「表示回数やリーチ人数、購入人数などをログベースで計測できない」「データを活用した広告の出しわけや絞り込みができない」といった点が課題となってきた。

「たとえばFB広告と比べてどちらが良かったのかなど、デジタル広告と横並びで比較することができなかった。つまりROIがわかりづらく『(タクシー広告は)結局効果があったのか?』と言われる部分があった。(今回の取り組みにより)段階的にではあるが、デジタル広告のいいところを屋外広告にも取り入れられるようになる」(飽浦氏)

大手ブランドが最初の広告主としてすでに掲載を開始していて、今後本格的に拡大していく方針だ。

日経電子版の記事配信も

またもう1つの取り組みとして、4月2日よりTokyo Prime内で「日本経済新聞電子版」の新着記事をリアルタイムに近い状態で配信する。これは「タクシーの乗車体験を向上させたい」という同社の目的を考えると、もっともわかりやすい取り組みかもしれない。

現在Tokyo Primeではのべリーチ人数が月間で300万人を超えるが、その半数以上は都内勤務のビジネスパーソン。日経新聞を普段チェックしている人も多いだろうから相性はいいはずだ。

日経電子版がデジタル・サイネージに記事を提供するのは本件が初めてとのこと。Tokyo Prime内で配信される日経電子版の新着記事への広告掲載も4月2日週より開始するという。

全国展開、オンライン上での広告買付と効果測定、日経電子版記事の提供——。これらの取り組みを通じてIRISが目指すのは「タクシーの乗車体験を全国規模で変えていく」(金氏)こと。

加えて、日本語、英語、中国語、韓国語の4言語への対応や、音声、パネルタップ操作による翻訳通訳機能なども予定中。こちらは都内を拠点にする日本交通のタクシー100〜200台でテストを行うという。

「タクシー業界としてもこれまで乗車体験の向上にはずっと取り組んできたが、もっと改善できる部分もある。毎回の決済を楽にしたり役に立つコンテンツを届けたり、タブレットは(ユーザーの)乗車体験を良くすることに活用できる。普段からタクシーを利用する国内のユーザーだけでなく、これから増えるインバウンドのユーザーにもいい体験を提供できるように取り組んでいきたい」(金氏)

NEM保有者への補償は来週めど――2回目の業務改善命令を受けたコインチェックが会見

580億円相当のNEMが流出した事件で金融庁から業務改善命令を受けていたコインチェック。同社は3月8日16時より、「これまでの経緯及び今後の対応」を説明するとして記者会見を開いた。

会見に先駆けてコインチェックは同日午前11時、今回のNEM流出事件に関連し、金融庁から2度目の業務改善命令を受けたことも明らかにしている。そのプレスリリースによれば、コインチェックは金融庁に対し、3月22日までに業務改善計画を書面で提出するとともに、業務改善計画の実施完了までのあいだ、1ヶ月ごとの進捗・実施状況を翌月10日までに書面で報告するとしている。

コインチェックは流出事件が発覚したあと、自社および外部のセキュリティ会社5社による調査を実施した。同社は記者会見の中で発生原因の調査結果を明らかにした。以下はその概要だ。

今回の流出事件を起こした外部の攻撃者は、コインチェック従業員の端末にマルウェアを感染させ、外部ネットワークから当該従業員の端末経由で同社のネットワークに不正にアクセス。攻撃者は、遠隔操作ツールにより同社のNEMのサーバー上で通信傍受を行いNEMの秘密鍵を窃取したという。その秘密鍵を利用した不正送金を防げなかったのは、コインチェックがNEMをホットウォレットで管理していたのが原因だ。

コインチェック取締役の大塚雄介氏によれば、同社はセキュリティ強化策の一環として、以下を実施したという。

  • ネットワークの再構築:外部ネットワークから社内ネットワークへの接続に対する入口対策の強化および、社内から外部への接続に対する出口対策の強化。
  • サーバーの再設計及び再構築:各サーバー間の通信のアクセス制限の強化、システム及びサーバーの構成の見直しを実施
  • 端末のセキュリティ強化:業務に使用する端末を新規購入し、既存端末を入れ替え
  • セキュリティ監視:社内のモニタリング強化など
  • 仮想通貨の入出金等の安全性の検証:コールドウォレットへの対応など、安全に入出金などが行える技術的な検証を進める。

また、同社はこれらの技術的なセキュリティ対応に加えて、以下のシステムリスク管理態勢の強化を図る。

  • システムセキュリティ責任者の選定と専門組織の設置
  • システムリスク委員会を設置
  • 内部監査態勢の強化
  • その他経営体制の強化

これらの対応をとったうえで、同社は「一時停止中のサービスの再開に向けて全力を挙げて取り組むとともに、金融庁への仮想通貨交換業者の登録に向けた取り組みも継続し、事業を継続する」と述べている。

また、注目されていたNEM保有者への保障については、来週中をめどに実施することを明らかにした。補償総額を算出するNEMと日本円のレートは、先日同社が発表していた1 NEM = 88.549円となる。

当初、コインチェックは保証対象のNEM総数を5億2300万XEMとしていたが、同社は本日の会見でその総数が5億2630万10XEMとなることを発表。これに先ほどのレートをかけ合わせると、補償総額は約466億円となる。

現在、コインチェックの記者会見では質疑応答が進行中だ。詳細はのちほどアップデートしてお伝えする。

受付業務から負担の大きい“内線電話”をなくすiPadシステム「RECEPTIONIST」、提供元が1.2億円を調達

iPad無人受付システム「RECEPTIONIST(レセプショニスト)」を提供するディライテッドは3月7日、大和企業投資ツネイシキャピタルパートナーズなどを引受先とする第三者割当増資により、総額約1.2億円を調達したことを明らかにした。

同社では2017年5月にも大和企業投資やツネイシキャピタルパートナーズ、個人投資家から数千万円規模と見られる資金調達を実施している。

RECEPTIONISTは来客受付でよくある「内線電話」を、iPadシステムとビジネスチャットによって置き換えるサービスだ。これにより従来かかっていた負担を削減するとともに、来客情報の可視化や蓄積もサポートする。

訪問客は企業のエントランスにてiPadアプリ上で訪問先を選択。すると担当者のビジネスチャットツール(Slackやチャットワークなど)に直接通知がいく仕組みになっている。担当者が席を外していても来客に気づけるため対応がスピーディーになるだけでなく、電話応対をする社員の負担もなくなることが特徴だ。

サービスの正式リリースは2017年の1月。トレタCTOの増井雄一郎氏らがTechCrunch Tokyo 2015のハッカソンで開発したiPad受付アプリ「→Kitayon(キタヨン)」を譲り受け、追加開発を経て公開したものであることは以前紹介した通りだ。

リリースから約1年が経過した現在では社員数が500名を超える企業や、インターネット業界以外の企業の利用も進んでいて、総受付回数は20万回を突破している(同社の過去の発表によると2018年1月時点では、渋谷区の企業だけで113社が導入しているようだ)。

ディライテッドでは今回の調達に伴い、エンジニアや営業、カスタマーサクセス部門の人員体制を強化するほか、新機能開発・他社サービス連携にも力を入れていくという。

なお同社はTechCrunch Tokyo 2017スタートアップバトルに参加。東急電鉄賞を獲得している。

ヤフーがシェアサイクル領域に参入、子会社を通じて「HELLO CYCLING」提供元に資本参加

ヤフーは3月8日、子会社を通じてシェアサイクルプラットフォーム「HELLO CYCLING」を提供するOpenStreetに資本参加し、シェアサイクル事業に参入することを明らかにした。

今回OpenStreetに出資をするのは、ヤフーの子会社で新規事業開拓を行うZコーポレーション。出資完了は4月上旬の予定で、株式の過半数を取得する方針だという(Zコーポレーションの代表取締役を務めるのは、6月にヤフーの代表取締役社長を退任する予定の宮坂学氏)。

OpenStreetはソフトバンクの新規事業提案制度である「ソフトバンクイノベンチャー」を通じて発足し、SBイノベンチャーから出資を受ける形で2016年11月に設立(SBイノベンチャーの子会社)。短距離交通インフラの構築をミッションに、事業者や自治体を対象にしたシェアサイクルプラットフォーム「HELLO CYCLING」を提供している。

事業者や自治体はGPSと通信機能を搭載したスマートロックと、専用の操作パネルを自転車に取り付けることでHELLO CYCLINGを活用したシェアサイクルサービスを始めることが可能。独自のブランド名でサービス展開できることも特徴だ。

現時点で栃木、埼玉、東京、神奈川、静岡、愛知、兵庫、香川などにおける約40地区で展開、約1000台の自転車が配備されているという。また新たにアパマン(APAMAN)グループによる導入も決定していて、2018年5月から「ecobike」のブランド名で福岡にてサービスを開始する。

今後は月間約4100万アクティブユーザーの「Yahoo! JAPAN ID」、約3900万口座を持つ「Yahoo!ウォレット」のほか「Yahoo! MAP」や「Yahoo!カーナビ」、「Yahoo!乗換案内」など、ヤフーの各サービスとの連携や顧客基盤の活用に取り組み、HELLO CYCLINGの事業拡大を目指すという。

シェアサイクルは昨年から日本国内でも急速に盛り上がっている領域。直近では2月27日にメルカリが「メルチャリ」を福岡にてリリースしている。

医師と患者を繋ぐSNS「メディカルケアステーション」運営がKDDIなどから約10億円を調達、医療IoTなど推進

eng-logo-2015病院や薬局・介護施設などで勤務する医療従事者と、患者やその家族をつなぐSNS「メディカルケアステーション」を運営する日本エンブレースは3月7日、KDDIを引受先とする第三者割当増資を実施しました。

「メディカルケアステーション」は、病院やクリニック、介護施設や薬局などの医療・介護従事者と、患者やその家族が、スマートフォンやPC上で簡単にコミュニケーションできるSNSです。医療関係者だけのタイムライン、および医療関係者と患者・家族を交えたタイムラインを作成可能で、テキストや画像の情報共有により、在宅医療や介護の現場におけるダイレクトな多職種連携を実現するといいます。

KDDIは今回の出資により、日本エンブレースと資本業務提携。医療・介護現場のIT化支援を目的に、下記3つの取り組みを推進するといいます。

・MCSを利用する医療従事者の拡大
・MCSの活用シーンの拡大
・医療介護ITプラットフォームの創出・連携

日本エンブレース代表取締役CEOの伊藤学氏は、今回の資本業務提携について「地域包括ケア、遠隔医療、医療エビデンス、医療AI、医療IoTをテーマに(中略)新たな社会インフラを構築してまいります」とコメントしています。

Engadget 日本版からの転載。

編集部注 : 日本エンブレースの発表によると、今回のラウンドではKDDIに加えて産業革新機構、ニッセイ・キャピタル、SMBCベンチャーキャピタルからも資金調達を実施。調達総額は約10億円になるという。

金融庁が仮想通貨交換業者7社に行政処分、FSHOとビットステーションには業務停止命令

流出やシステム不具合などの騒動が続く仮想通貨取引所だが、金融庁が3月8日、仮想通貨交換業者7社に対しての行政処分を発表した。

今回行政処分を受けたのは、コインチェック、テックビューロ、GMOコイン、FSHO、ビットステーション、バイクリメンツ、ミスターエクスチェンジの7社(発表順)。FSHOとビットステーションの2社には業務停止命令が、2社を含む全社に業務改善命令がそれぞれ出されている。コインチェックについては、1月のNEM流出に続き、二度目の処分がなされたことになる。

金融庁ではあわせて、「仮想通貨交換業等に関する研究会」の設置を発表。仮想通貨交換業等の諸問題についての制度的な対応を検討するべく、学識経験者や金融実務家、業界団体、関係省庁をオブザーバーにして話し合いを進めるとしている。

「能力は誤差」スタートアップが見るべき人の資質、妥協しない採用とは——TC School #12

TechCrunch Japanでは2017年3月から4回にわたり、イベント「TechCrunch School」でHR Techサービスのトレンドや働き方、人材戦略といった人材領域をテーマとした講演やパネルディスカッションを展開してきた(過去のイベント一覧)。HR Techシリーズ第4弾として2017年12月7日に開催された「TechCrunch School #12 HR Tech最前線(4) presented by エン・ジャパン」では「スタートアップ採用のリアル」をテーマに、キーノート講演とパネルディスカッションが行われた。この記事では、パネルディスカッションの模様をお届けする(キーノート講演のレポートはこちら)。

パネルディスカッションの登壇者はプレイド代表取締役の倉橋健太氏、dely代表取締役の堀江裕介氏、ジラフ代表取締役の麻生輝明氏、エン・ジャパン執行役員の寺田輝之氏の4人。創業者、あるいはHRサービスの提供者の立場から、それぞれが体験した「スタートアップ採用のリアル」について話を聞いた。モデレーターはTechCrunch Japan副編集長の岩本有平が務めた。

始めに各社から、自己紹介も兼ねて事業の内容や現在の体制について簡単に説明してもらった。

まずは倉橋氏が2011年に設立したプレイドの紹介から。プレイドは従業員数約70人。ユーザーを「知る・合わせる」をコンセプトに、ウェブサイトの訪問者のリアルタイムな解析とアクションを可能にするカスタマーアナリティクスサービス「KARTE」を提供している。倉橋氏は楽天に2005年に入社、2011年まで約7年間在籍し、Webディレクション、マーケティングなどさまざまな領域を担当してきた。その倉橋氏が独立し、KARTEをリリースしたのはなぜか。

プレイド代表取締役 倉橋健太氏

ウェブサイトでは、ユーザーがいて、何らかのプロダクトやサービスを提供した結果、パフォーマンスが生まれる。倉橋氏は「残念ながら、インターネットのビジネスでは、ユーザーはトラフィック、サービスはサイトと捉えられていて、パフォーマンスから考える傾向が強い。この方法では『いかに高転換なサイトに人をたくさん流し込むか』ということだけ重視され、いろいろなところで疲弊してきているし、運営していても面白くない、ということになる」と述べる。

「昨日新規ユーザーが100人来た、と言っても、その100人は誰なのか。そういうことをしっかり可視化しながら、プロダクトやユーザー体験を良くしていきましょう、ということで、KARTEを提供している」(倉橋氏)

人の可視化が重要、と話す倉橋氏は、イベントの前の週にリリースしたKARTEの新サービス「K∀RT3 GARDEN(カルテガーデン)」を動画で紹介。これまでは、平面の管理画面で人を可視化していたところを、オンラインに来ているユーザーの行動をリアルタイムにVR空間で描画する試みだ(TechCrunch Japanの記事でも詳しく紹介している)。

カルテガーデンでは、人が商品を「手に取って」見ているところや売場を歩き回っている様子を、VRで見ることができる。「データを数字として見ることが多くの人は苦手なので、難しい。それを“人”として見ると、身近に感じて一気に簡単になる。(分かりにくい)データや数字はマーケティングから退けていきたいとの思いから、事業をやっている」と倉橋氏は話す。

続いて堀江氏から、delyの設立から今までの歩みについて紹介してもらった。堀江氏がdelyを立ち上げたのは2014年。2014年から2016年までは、現在とは違うサービスを提供していたがうまくいかず、2016年にピボットして、レシピ動画の「kurashiru」を作った。

dely代表取締役 堀江裕介氏

delyの従業員数は、現在130人ぐらい。うち社員は内定者を含めて60人だ。「昨年は十数人だったので、一気に増えた」と堀江氏は言う。「直近の四半期では50人採用した。このスピードで採用していると、相当失敗もしている。いい採用だけでなく、悪い採用もしているし、どういう採用チャネルがあるのか、どういった採用ハック方法があるのか、いろいろ試しているので、今日は参考にしてもらえると思う」(堀江氏)

正社員の採用チャネルは「基本的にリファラルとWantedlyで、7割近くを占める」そうだ。今のところまだ、エージェントと媒体を利用した採用は、それぞれ約10%で「社員の満足度が高いときには、やっぱりリファラルでの採用がガンガン効く」と堀江氏は話している。「Wantedlyの運用も、今は人事担当を1人つけて、がんばっている。あと、SNS経由については、僕が毎日どんどん発信しているので、これがかなり効いているかな、と思っている」(堀江氏)

ジラフ代表取締役 麻生輝明氏

次に紹介があったのは、ジラフの麻生氏だ。ジラフは2014年の創業。麻生氏が大学在学中に、買取価格の比較サイト「ヒカカク!」を始めたのが創業事業だ。その後、別のサービスもリリースしているが、会社として大きく人を増やし、組織も拡大するきっかけとなったのは、2017年3月にポケラボを売却したシリアルアントレプレナー・佐々木俊介氏が参画し、同時にポケラボのリードエンジニアだった岡本浩治氏がCTOとして参画したことだ、と麻生氏は言う。

「そこからビジネス側、開発側で人を一気に拡大し、だいたい8カ月ぐらいで2.5倍ぐらいの規模になった」と麻生氏は話している。現在は従業員全体で60人ぐらい、社員が30人ぐらいだという。

直近では、2017年10月に「スマホのマーケット」をリリース11月には資金調達も行ったジラフ。資金調達については「組織面が強化されていることも評価された」と麻生氏は言う。今後、スマホ即金買取サービスの「スママDASH」の公開も予定しているとのことだった(イベント後の12月21日、ジラフはTwitter経由の匿名質問サービス「Peing(ペイング)質問箱」を買収、さらに2018年1月15日にはスママDASHをリリースしている)。

エン・ジャパン執行役員 寺田輝之氏

エン・ジャパンの寺田氏は今回、スタートアップへ人材サービスを提供する側としての登壇だが、寺田氏自身もエン・ジャパンがスタートアップだった頃に入社している。現在はエン・ジャパンの執行役員を務める寺田氏の持論は「スタートアップは、成功するまではプロダクトづくりに専念しろ」というもの。自身がかつて直面した採用の課題に対して、先回りして解決できれば、ということで提供しているのが、クラウド採用ツールの「engage(エンゲージ)」だ。

engageでは「採用からエンゲージメントを意識してほしい」ということで、基本的に無料でサービスを提供。2016年8月のローンチから1年3カ月で5万7000社に導入され、「HRアワード 2017」では優秀賞も受賞した。

engageで提供する主要サービスのひとつが、スマホ対応の採用HP作成。寺田氏は「媒体やWantedlyで企業からの採用メッセージを発信することは絶対やった方がいい。その上で、メッセージを見た人は必ず企業のホームページも見に来る。これはエージェントを使っても一緒。そこで、事業内容やサービス内容に加えて、採用のページも充実させておくことで、面談や面接で会う前の魅力付けをすることが必要だ」と採用HPを用意することの意義について説明する。

「採用ページを個別に用意するのは結構コストがかかる。だったら僕たちの方で作ってしまって、ばらまいてしまおうと。さらに『エンジニアやデザイナーはプロダクトに集中すべき』という考えから、応募者管理のためのCMSや、ノンエンジニアがページを更新できるような機能も入れている」(寺田氏)

また、エン転職会員や提携するindeedなどを対象にした、採用のマーケティング支援もengageで実施。さらに性格・価値観テストと知的能力が測定できる「タレントアナリティクス」も月に3人分まで無料で提供している。

「スタートアップ採用あるあるとして、候補者のスキルは分かるが、カルチャーフィット、その人たちがどういう性格や価値観を持っているのかが、なかなか分からない、というのがある。特に創業初期の段階で、それが合わない人たちを入れてしまうと、結構苦労する。だから、カルチャーフィットの部分もしっかり見ていこう、というのがタレントアナリティクスのサービスだ」(寺田氏)

もうひとつ、寺田氏が紹介したサービスが、退職予測をアラートする「HR OnBoard」。入社して何年も経てば退職理由もいろいろ出てくるものだが、入社後1年以内に退職する人については傾向があると寺田氏は言う。エン・ジャパンでは3000社以上の企業の状況を分析した結果をもとに、「HR OnBoard」をリリースした。

「多いのは『思っていたのと違う』というギャップ、直属の上司とのリレーションのズレ、そして業務量が多すぎる、または少なすぎるというズレ。これらをずっと分析して『このタイミングで社員からこういう回答が出るときは、退職の危険性が非常に高い』『こういう回答なら大丈夫』というパターンを出し、ビッグデータからアルゴリズムを作って提供している」(寺田氏)

何もないところから日常的にコミュニケーションを取って、採用した人が退職しないようにフォローするのはなかなか難しいものだが、アラートが出て「このまま行けば辞められてしまう」となれば、一生懸命止めることができる。そのためのツールとして用意した、と寺田氏は説明する。

「私自身の経験も含めて、スタートアップでこれから起こりうるトラブルは絶対あるはず。そこに先回りできるツールを提供していく。さらにこうしたツールはこれまで、結構なコストを投入しなければ導入できなかったが、SaaSとして提供することで民主化した。ミスマッチのない、エンゲージメントの高い対応が実現できるように、ということで提供しているので、良ければ使ってみてほしい」(寺田氏)

「最初の5人」採用はやはり知人・リファラルが中心

各社紹介の後、話題は「創業して最初の5人はどうやって集めたか」へ移った。

ジラフの麻生氏が1人目の社員を入れたのは、創業1年ぐらいのタイミング。それまでは全業務の統括をひとりでやっていたという。「No.2が欲しい、ということで探していたが、そこにハードルがあった。COOを務められるNo.2人材は、起業しようという気力がある人でなければいけない。けれども、そういう気力のある人は、代表をやりたいわけで、ちょうど良い感じの人がなかなか見つからなかった。結果的に、VCから紹介してもらった人と会ったところ、その日に入社を決めてくれた」(麻生氏)

次に入社したのはエンジニア2人で、1人は業務委託で手伝ってくれていたメガベンチャー出身者。もう1人は「4月1日に会ったら、東大を卒業したところだけど就職が決まっていない、というちょっと変わった子で、その日のうちに採用を決めた」のだそうだ。

その後、現在は執行役員 兼 営業部長を務める人を採用。「彼は大手商社の出身で転職してきてくれたのだが、元々、大学時代にインターンが同じだったのが縁。最初の5人については、いずれも紹介や縁で入社してもらっている」(麻生氏)

delyの堀江氏は、サービスをピボットして実質2回の創業を経験しているが、1回目のサービスがうまくいかなかった際には、20人ぐらい一気に辞めたという。「唯一残っている最初からのメンバーは、現CTOの大竹(大竹雅登氏。TechCrunch Tokyo 2017でCTOオブ・ザ・イヤーにも選ばれた)。自分は『プライベートの友だちは絶対に誘わない』と決めていた。またエンジニアの友人もいないので、Facebookのプロフィールに『エンジニア』と書いてある人に片っ端から連絡を取った。100人ぐらいに声をかけたのだが、一番最初に引っかかってしまった(笑)のが彼だ」(堀江氏)

その後、第2創業期のメンバー集めでは「一度チームが崩壊してしまったので、チームメイキングができる人間が欲しいと考えた」という堀江氏。「大学時代に一度、VCのピッチの場で会った人が、起業をやめて大手消費財メーカーに就職したと聞いていた。彼に久しぶりに連絡をしたところ、話して3日後に辞表を出して、2分の1の給料で入社してくれることになった」と次のメンバー入社のいきさつを話してくれた。

「彼も大竹も一度起業を目指した起業家で、その後のメンバーも10人ぐらいまでは元起業家。タフなメンバーが今でも活躍している」と言う堀江氏に、元起業家を口説くときの方法を聞いた。「『自分で事業をやるより、俺とやった方が勉強できるだろう?』という謎の雰囲気を出す(笑)。本当は何も教えることなどなくて、自分が教えてもらってばかりですが」(堀江氏)

プレイドの倉橋氏は、ビジネスマンを7年弱経験してからの起業だ。楽天を辞め、初めはコンシューマー向けのアプリ提供やECコンサルを行っていた。最初のメンバーは役員4人。すべて知人、リファラルでの採用だった。

「取りあえずやりたいことをやるために会社を作ったが、会社ってそんなにうまくいくわけがない。他の仕事を持ちながら4人が集まったということもあり、サービスをローンチした後、初動は良かったが、なかなか伸ばすことができなかった」(倉橋氏)

そのため1年目に一度切り替えよう、ということでメンバーもリセット。同じ会社を器として使いながら、今のCTOと楽天時代の同期の紹介で知り合い、現在に至っているという。

「だから僕も2回創業があって、1年目はウォーミングアップだったと捉えている。その後、役員以外の社員が入りはじめてから20人弱ぐらいまでは、全員リファラル採用を行ってきた」(倉橋氏)

「スキル」よりは「学習能力」「フィットネス」を重視

では「最初の5人」のフェーズを終え、そこから拡大していくときに、各社はどういう基準・指標で人を採用していったのだろうか。

従業員70人、うち社員として60人を抱えるプレイドの倉橋氏は、社員の採用チャネルについて「まだリファラルが半分強。残りの半分のうちの半分がWantedly経由で、もう半分がエージェント」と概観を説明。「つまり信頼できる人を確実に誘っていく、ということをやってきた。社会人経験があることから、人を介して人につながる、ということはやりやすかった」と話している。

倉橋氏は「役割ごとの人数を(採用)計画に落とし込むということは、これまでほとんどやってきていない」と言う。「僕らの事業はまだまだ、これから立ち上がるフェーズだと思っている。だから人材を(初めから)見極めて採るという市場感ではなく、いい人をできる限り採る、それだけでやってきた。エンジニアかビジネスか、ぐらいの区分はあるが(細かい)役割を決めて採用するということは、いまだにほとんどしていない」(倉橋氏)

人材のフィット感を確かめる方法として「全員にアルバイトか契約社員で入社してもらい、3カ月見る」ということもやってきた、という倉橋氏。「中には9カ月ぐらいアルバイトしてから社員になった人もいる。そこで妥協しなかったことが、今の(企業)文化構築につながったと考えている」とのことだ。

採用基準については倉橋氏はこう語る。「新しい価値観を提供していくときに、一番重要なのは学習だ。個々人として、組織として、またプロダクトとして学習していく、という中では個人の役割なんて簡単に変わる。だから変化への許容度が高い人をいかに採るか、ということを優先してきている」(倉橋氏)

人の良し悪しの判断については「社内でも、CTOなどと話しているのは『能力は誤差だ』ということ」と言う倉橋氏。「そもそも新しいことをやっているのだから、その人の経験が100%ダイレクトに生きる、なんていうことは、まずない。経験や成功体験を疑える人にまず来て欲しい、というのが前提だ。だから『人間として好きかどうか、人間性が信頼できるか、真面目か』といったところを見ているのと、自分の言葉として事業に共感してくれているかどうか、能力よりも『一緒にやりたいかどうか』といった“人”っぽいところを基準に見ている」(倉橋氏)

採用チャネルの3割がリファラル、というdelyの堀江氏は「採用の基準は超簡単」と面白い視点を紹介してくれた。「会ったときに『この人とサシで飲みに行く約束をした1時間前に、イヤにならないか』ということを見ている。カルチャーフィットする人なら、気軽に飲みに誘える。定性的ではあるけれども、採用してからの感覚ともだいたい合っている」と堀江氏は言う。

「能力に関して言うと、見てはいるが、入社してから半年も経てば、そのジャンルに対する知見などは周りと変わらなくなってくる。だから過去の経験よりは、学習意欲の高さや学習スピードの速さを重視している」(堀江氏)

ここで寺田氏が「Googleでは『エアポートテスト』、つまり採用基準として『次に乗る飛行機が飛ばなくなり、空港の近くのホテルで泊まらなければならなくなったときに、一緒に泊まって会話ができるか』というテストを、科学的に行っている」と紹介。堀江氏に「イヤになるかならないか」を判断するときには、何を見ているのか尋ねた。

堀江氏は「うさんくさくない人かどうか」が基準だと話す。「前年比1500%達成!といった経歴を書く人がいるが、そもそも前年の運用期間が少ない、とか、話を盛っちゃう人はうさんくさいので、飲みに行きたくなくなる。自分の失敗や弱みまで含めて語れるような人は、僕はいいな、と思っている。カルチャーフィットというのは、ある意味、自分の彼女に対して『性格も良くて料理もできて、謙虚で』といった全部の条件を求めているようなものだけど、別に『会社に合わせろ』ということではなくて、何か間違ったときに素直に認められるような能力というのを、僕らは見ている」(堀江氏)

ジラフの麻生氏は、スタートアップとしての「採用のフェーズが変わってきた」という実感があるようだ。「創業から1年半ぐらいまでは、精神論的だが(基準が)『頑張れる人』みたいな感じだった。起業家プラス5〜6人、というときには、その温度感を一緒に持ってやれる人かどうか、というところを見ていた」と言う麻生氏。

「そこから規模が大きくなるにつれて、不器用な人というか『必殺技は持っているんだけど、今いる会社では上司から好かれない』とか、ちょっと変わった人が入ってくるようになってきた。ジラフではそういう人が多いので、みんなお互いに認めあっている、という環境になってきた」(麻生氏)

フェーズが変わったタイミング、きっかけについては「資金調達をして、大きめのオフィスに移転して、人をどんどん採用していくという中で、業務を回すために『頑張れない人』、定時に来て定時で普通に帰る、という人を入れていく時期は来る。今はそういう時期だな、と思っている」と麻生氏は言う。

また、倉橋氏や堀江氏と共通する点として「ポテンシャルがある人、過去の経験にとらわれず、会社が求めていることの説明を素直に受け止めてもらえて、うまくいかなくてもすぐに違う挑戦ができる、試行錯誤できる人を採用するようにしている」と麻生氏は言い、「そういう人は若い人に多い。今は20代の人を採用させてもらっている」と話している。

「ただ、20代は能力差が結構あって。すごく優秀な人を1人採るのと『普通に仕事ができます』という人を2人採るのでは、優秀な人を1人採った方がいい。そういう人は他の人も連れてこられるし、正の循環が回るというイメージがある。そこの質をどう担保するのか、ということも同時に意識はしている」(麻生氏)

リファラル採用、それぞれの「巻き込み方」「口説き方」

続いては、リファラル採用について。それぞれ、知り合いをどう巻き込むのか、成功している事例を各社に聞いた。

堀江氏は「自分事として考えること」が大切だという。「経営者は自分事として考えないことが多いけれど、もし自分が社員だったとして、この会社に本気で親友を誘えるか、と考えると、それは『この会社が好きかどうか』にかかっている。あとは、業績・社風的に信頼できるかどうか。僕らは、業績を上げることはもちろんだが、サービスの魅力を上げることなどで、まずは社員に好きになってもらうように頑張ることが大事」(堀江氏)

好きになってもらったその後は、社員の中で紹介を頑張った人を積極的に表彰し、Slackなど全社員の見えるところで称賛する文化を作ったことで、リファラル採用が加速した、と堀江氏は説明する。

「僕は学生起業家だったので、(自分の周りには)まだそれほど人材がいない。社員経由のリファラル採用のほうが最終的には増えてくると思う。また、1人の知り合いよりも100人の知り合いを探した方が圧倒的によいので、自分の紹介での採用もあるが、社員の紹介もかなりある」(堀江氏)

麻生氏は、基本的には自分がつかまえてきた人材が多い、と言う。「僕の場合は、採用したい人は2年かけて追いかける、ということをやっていた。3カ月おき、半年おきに飲みに行ったり、ごはんを食べたりして、定期的に会う。これはDeNA(創業者)の南場さんが『SHOWROOM』プロデューサーの前田さん(現在はSHOWROOM代表取締役社長の前田裕二氏)を採用するときに数年かかった、という話を聞いたのだが、それを真に受けてやっている感じだ」(麻生氏)

実際に2年かけて採用したエンジニアや、半年以上かけて口説いて入社した人事責任者が、現在ジラフでは働いているそうだ。

面談からどう踏み込ませるかについては、社員に会わせることが強い武器として機能している、と麻生氏は説明する。「うちは現場に自信があるので、口説いた上で『じゃあ、実際働く人に会いに来てみなよ』と来てもらい、社員に会わせるとだいたい一緒に働きたいと思ってもらえる」(麻生氏)

またジラフでは比較的早い段階で、CxO経験者を採用している。その手法について麻生氏はこう話している。「優秀な人ほどキャリアアップを真剣に考える。スタートアップに挑戦したいが、考えた結果、不安が大きくなることも。そういう方に対しては、今のキャリアから次のキャリアに進むときに『ステップアップしてるよね』という状態をちゃんと作るために、ポストや部署を用意する。その代わり、『そのポストで、これ以上の人は採れない』というギリギリの一番いい人を採用する、ということは毎回やっている。そこは妥協しているつもりはない」(麻生氏)

スタートアップでは「今後それよりいい人を採れなくなる」ということを恐れて、ポストを用意しない起業家も多いが、麻生氏は「僕はちゃんとポストを用意し、ストックオプションなども提示して、僕らの会社に普通なら来ないような人を取り込む、ということを連続的に繰り返している」と言う。

倉橋氏はリファラル採用について「仕組み化するのが難しい」と述べている。「社員が少ないときは一通り候補に当たり終わると、どうしよう、みたいな話になるので、あまり効率的な仕組みではない。ただ、僕らの場合は社員の平均年齢がだいたい30〜32歳ぐらい。そこで『日本酒を飲みまくる会』など、お酒の力を借りて、ガードが弱くなったところで仲良くなるようにしている(笑)。月に1〜2回、外の人を気軽に呼んでこられるような場を用意する、これだけはちょっとした仕組みとしてやっている」(倉橋氏)

もうひとつリファラルに効くテクニックとして、倉橋氏は「今のフェーズまでは、現実的な話を社内でもあまりしない、というのを貫いてきた」と言う。「夢のある話の方が、みんな楽しそうに話すので、外にも伝播しやすい。いざその話が外に伝わって新しい仲間が増えたときにも、はじめに夢で共感している場合、現実化するところでも人はなかなかぶれない。だから入社した後も安定しやすい」(倉橋氏)

こうして、とにかく夢を社内全員で語るようにしている、というプレイドで、倉橋氏が「ここまで来たか!」と思ったエピソードがあるそうだ。「採用候補者に『みんなものすごいレベルで夢を語りますね。これって事前に準備しているんですか?』と質問された。それほど、気持ち悪いぐらいに、それぞれの口から夢が出てくる。そういう会社って強くなれるんじゃないかな、と信じている部分はある」(倉橋氏)

ここで寺田氏から「メンバーと一緒に採用にチームとして取り組んで動き、ありがたかったこと、うれしかったことは?」と質問があった。

麻生氏は「僕の場合は学生起業ということもあり、中途採用のときに『スタートアップに転職するのはいいですよ』と僕の口から言うと、ポジショントーク感が強くなる。それを大手企業から転職してきた人に説明してもらうと、説得力が変わる、ということはある。また、口説きに行く、というやり方は一般の従業員では難しいケースが多いが、僕以外でもCFOなど、目的意識が強い人間が説得して『逃さず採りに行く』という採用ができる人がいるのは、すごく助かっている」と言う。

また倉橋氏は、人事採用の責任者から日々聞いていた苦しみとして「求人票を作れない」という話を紹介。「要は『こういうことができる人が欲しい』という求人を一切出してきていないわけで、エージェントも困るだろうし、人事採用担当もこのギャップを埋めるのは大変だったと思う。けれども、会社の成長も含めて、時間をかけながら、採用責任者がエージェントとコミュニケーションをしっかり取ってきてくれたおかげで、『変だけど、めっちゃいい会社があります』という感じで紹介してもらえるようになった。難しかった部分ではあるが、突破できると逆に強みになるのではないか、という気が最近ではしている」(倉橋氏)

採用失敗エピソード、やっておけば良かったことは?

この後は、会場からの質問で「一番の採用失敗エピソード」を各社に教えてもらった。

麻生氏は「経験者を採りたい時期に中途採用をしたが、あまり一緒に頑張ろう、という気持ちでやってもらえなかった事例があった」ことを紹介。「今では明確な採用失敗というのは起こらなくなってきた。社内で選考フローも作り始め、『こういう項目を見ましょう』というのも体系化されてきている。あとは、必ずどんな人でも僕が面接に1回は入るようにし、自分で見て『この人なら』という人だけを採るようにしている」(麻生氏)

堀江氏からは、採用の失敗ではないが初期メンバーとそれ以外のメンバーとのギャップについての悩みが打ち明けられた。「最初の10人がものすごくファイタータイプというか、タフな人間が多かった。となると後半に入ってくる100人目、120人目とかが、それを見てビックリしてしまう。そういうわけで、あらかじめ『めっちゃ働いている人もいれば、18時に帰ってる人もいるよ』とある程度、現実とのすりあわせが僕らにも必要なのかな、とは思っている」(堀江氏)

倉橋氏も失敗ではないが、やっておけば良かったこととして、採用すべき人材の順序・時期について述べた。「僕のようなビジネス系、マーケティングやディレクション系人材の採用は、スタートアップでも比較的困らないケースが多いと思う。だが、難しいのがエンジニアやデザイナーの採用。特に僕たちのようなB2Bのプロダクトの場合、デザイナーが一番難しい。うちはエンジニアについては初期から良い人材がいて助かっているけれども、デザイナーとして中核になる人間を、社員数5人10人のフェーズで1人でも採れていたら、立ち上がりはもう少し早かったのではないか、という気はする」(倉橋氏)

最後に、寺田氏からの「採用PRとして、こういうことを発信すべき、また注意すべきという点は?」との問いにも各社に答えてもらった。

堀江氏は、四半期に50人を採用したときの話として「僕自身が一番、社内だけでなく社外にも夢を語りまくっていた」と話す。「社長の思い、ビジョンを元々知った状態で面接に来てもらう、ということをとにかく心がけている。採用の確度も高まるし、社長自身が発信することは大事だ」(堀江氏)

麻生氏からは「僕らはストレッチして、優秀な人を採っていくようにしている。けれども優秀な人ほど、いろいろなことがすぐにできてしまい『褒められるのが当たり前』という環境になって、仕事が面白くなくなっていくことが多い」と“良い人材”を採用することに対しての注意点を述べた。

「僕らの環境では『いろいろなところで褒められてきた人たちが真剣にやらないといけない』という状況にするようにしている。30歳になろうという人たちが、真剣にキャッチアップしていく、という環境を作っていこうと思っているし、そこに挑戦的な気持ちで参加できる人に来て欲しい」(麻生氏)

倉橋氏は「採用広報、PRは正しく伝えることだと思う」と言う。「採用広報、PRを考え始めると、伝え方を間違えそうになるというか、自分たちらしくない伝え方や、いいところを探そうとして、そんなに大した話ではないのに外に出そうとしてしまうなど、自分たち自身が迷い始めることがいろいろある。でも、プロダクトも採用も、自分たちの努力以上のものは外には伝わらない。だから良く思われたいんだとしたら、本当に努力するしかないかな、と思っている」(倉橋氏)

ライフイズテックがディズニーと手を組んだ新教材を発表、販売価格は約12万円

中高生向けプログラミング教育事業を展開するライフイズテックは3月6日、ウォルト・ディズニー・ジャパンとライセンス契約を結び、ディズニーの世界を楽しみながらプログラミングを学べる「テクノロジア魔法学校」を開発したと発表した。同サービスのリリースは2018年4月21日を予定している。

2010年7月創業のライフイズテックはこれまで、春休みや夏休みを利用した3〜8日間のプログラミング教育キャンプ「Life is Tech!」や、オンラインでプログラミングを学べるSNS「MOZER(マザー)」の開発などを手がけてきた。2014年8月にはリクルートなどから総額3億1000万円を調達したほか、プロサッカー選手の本田圭佑氏は自身の投資先1号として同社を選んでいる。そのライフイズテックが次にリリースするのが、ディズニーとのコラボ教材だ。

テクノロジア魔法学校と名付けられた本教材では、魔法学校を舞台にしたオリジナルメインストーリーと、「アナと雪の女王」や「アラジン」など13のディズニー作品をテーマにしたレッスンでプログラミングを学習できる。

言語はJavaScript、HTML、CSS、Processing、Shaderなどに対応していて、メディアアート、ゲーム制作、Webデザインなどのカテゴリーを総合的に学ぶことが可能だ。合計100時間分の学習コンテンツが用意されていて、週1回2時間の学習で約1年間学ぶことができる設計となっている。

ライフイズテックは本教材を公式サイトで販売するほか、150店舗以上の家電量販店に展開する予定。販売価格は12万8000円だ。

テクノロジア魔法学校の販売価格を月あたりで計算すると、約1万円になる。ライフイズテックがもともと2018年春頃までに正式版リリースを目指していたMOZERは、「1コース月額1500円から」という価格での提供が想定されていたので、かなり“攻めた“価格設定と言えるのかもしれない(もちろんライセンス料を考慮する必要はあるが)。

2020年に必修化されることが決まり、ここ数年で世間からの注目が急速に高まりつつあるプログラミング教育。この分野に対し、教育熱心な親世代は果たしてどれだけの支出を許容するのだろうか。

専門のメンターがつくプログラミング学習サービスのなかには、10万円単位の授業料が発生するサービスもある。例えば、プログラミングブートキャンプ「TechAcademy」の料金は4週間で約13万円だ(社会人の場合)。

その一方で、人間のメンターなどはつけず、完全なオンライン教材という形に特化したサービスのなかには月額数千円ほどの価格帯で提供するものもある。テクノロジア魔法学校はこのタイプのオンライン学習サービスとして分類できるだろう。今回の場合は「ディズニーとのコラボ」というバリューを上乗せした、高価格帯のオンライン教育サービスがどれだけ受け入れられるのだろうか。テクノロジア魔法学校の売れ行きの動向は、ライフイズテックと同じくオンライン教材を提供する競合他社からの注目も集まりそうだ。

建設プロジェクトSaaS「ANDPAD」開発のオクトが4億円を資金調達、経営プラットフォームへの進化目指す

ANDPAD」は、工程表や写真・図面資料など、建設現場で必要な情報をクラウド上で一括管理することができる建設・建築現場のプロジェクト管理ソフトウェアだ。職人や現場監督など、建設現場で働く人が使いやすいようスマートフォンアプリも提供されていて、現場での利用が広がっている。

そのANDPADを運営する建設サービスのスタートアップ、オクトは3月6日、Draper Nexus VenturesSalesforce VenturesBEENEXT、および個人投資家を引受先とした総額約4億円の第三者割当増資を実施したことを明らかにした。資金調達に合わせて、Draper Nexus Venturesのマネージングディレクター、倉林陽氏が社外取締役に就任する。

オクトは2012年9月、代表取締役社長である稲田武夫氏が前職のリクルート在席時に設立した。2016年11月には個人投資家数名から数千万円規模の資金調達を実施している。

創業当初はリフォーム会社選びのポータルサイト「みんなのリフォーム」を立ち上げて運営してきたオクト。ユーザー企業であるリフォーム施工会社から「現場の工程管理ができるサービスがほしい」という声が多く寄せられ、開発したのが「ReformPad」、ANDPADの前身となるサービスだ。

2015年9月にサービスを開始したReformPadは、リフォームの施工管理に特化していた。その後サービスを新築や商業施設など、さまざまな建設現場に対応するよう機能拡張を行い、2016年3月にANDPADとしてリリース。その時にスマホアプリの提供も始めている。

2017年1月のTechCrunchの取材では、ANDPADの導入社数は350社という話だったが、それから1年後の2018年1月時点では800社を超え、現場管理アプリのシェアNo.1となっているという。稲田氏によれば、この社数は「契約・登録ベースでの数字」だとのこと。「GitHubやBacklogなどのプロジェクト管理ツールと同じで、ANDPADは契約企業が取引先にアカウントを発行すれば他社でも使える。だから利用企業数でいうと10倍の8000社ぐらいになっているはずだ」(稲田氏)

今回の調達により稲田氏は「営業やマーケティングの強化のほか、プロダクト開発によりさらにANDPADを進化させたい」と話す。「施工管理アプリとして認知が広まった今、『現場を管理したい』というニーズに加えて、経営者層から『経営指標を見える化したい』との声が増えている。経営者向けダッシュボードを提供するなど、建設業界の経営プラットフォームとなるようプロダクト強化を図る」(稲田氏)

これは建設業向けにERPシステムを提供したい、ということだが、この分野には大手システム会社をはじめ、既存プレーヤーがひしめいている。それらのサービスと比べたときのANDPADの強みは何だろうか。稲田氏に聞いてみた。

稲田氏はこう説明する。「建設業界は、元請け企業から各種施工を行う取引先へ仕事が委託される多重構造となっている。経営分析を行う基幹システムは元請け企業が利用するもの。しかし既存システムでは、セキュリティに関する不安や取引先企業のIT対応の遅れなどが理由で、取引先も含む複数社でコラボレーションして経営数値を把握できるものはなかった」

例えば予算1000万円の工事があって、800万円が原価として想定されていたとする。複数の取引先のどこにいくらで発注したのか、また各社が担当する施工が終わって最終的にいくらが請求されるのか、従来のシステムではこれらの数字を途中で把握することは困難だった。

「ANDPADは既存ERPと必ずしも競合するものではなく、連携できるのが強みだ」と稲田氏は言う。「ANDPADなら、現場の職人までIDを持っているし、受発注もリアルタイムに把握できる。ERPシステムでコラボ機能がないものでも、ANDPADと連携すれば、指標もリアルタイム化できる。ERPとANDPADは共存・補完できるシステムだと考えている」(稲田氏)

今回株主となった3社のVCは海外に拠点を持ち、SaaSベンチャーにも詳しい。稲田氏は3社について「建設業界の働き方を変え、労働環境も変えるのが我々の目的。ただ、米国でIndustry Cloudと呼ばれているような業界特化型のクラウドサービスを提供するスタートアップは、日本では先行事例があまりない。だからその部分に詳しい投資家を選んだ」と言い、「SaaS三銃士ともいうべき3社に知見をもらいながら、成長を図りたい」と述べている。

オクトでは、ANDPADを早期に1万社へ導入することを目指す。「ANDPADは法人向けサービスではあるが、現場で毎日アクティブに使われているアプリでもある。1日に登録される写真は2万枚にも及ぶ。ユーザーが求めるサービスを今後も提供して、建設業界という巨大市場を担っていきたい」(稲田氏)

写真左から、オクト取締役兼CTO 金近望氏、代表取締役社長 稲田武夫氏、Draper Nexus Venturesマネージングディレクター 倉林陽氏

【3月6日 10:32】倉林陽氏の肩書きに誤りがありました。お詫びして訂正いたします。

個人間送金アプリ「Kyash」が実店舗での決済対応を見込み、UIをリニューアル

個人間送金アプリ「Kyash」を提供するKyashは3月5日、決済もまとめて行えるウォレットアプリとしての機能強化を目指してアプリのUIリニューアルを行い、公開した。新UIでは、初期画面にチャージや買い物、送金、請求の各機能がまとめられた。

Kyashは個人間で送金や請求が無料でできるアプリとして、2017年4月にiOS版が公開された(Android版は同年7月にリリース)。アプリを介して受け取ったお金は、アプリ内のバーチャルなクレジットカード「Kyash Visaカード」に貯めることが可能。また、クレジットカードおよびコンビニや銀行ATM、オンラインバンキング経由で、Kyash Visaカードへのチャージができる。

カードに貯まったお金は、国内外のVisaが使えるネットショップで決済に利用できるほか、モバイルSuicaにチャージしてコンビニや交通機関などで使用できる。ただし、現時点ではモバイルSuicaを使う以外に、実店舗での買い物に利用することはできない。

同社では「今春以降、実店舗での支払いへの対応を予定している」と述べており、「今回のUIリニューアルは、買い物もまとめてKyashアプリで完結するウォレットアプリとしての進化を目指したもの」としている。チャージ方法についても、現在の手段以外に、仮想通貨や各種ポイントなどからのチャージを可能にすべく、多様化を検討しているという。

個人間送金に使えるアプリとしては、LINEの「LINE Pay」やヤフーの「Yahoo! ウォレット」、割り勘での利用を想定したAnyPayの「Paymo」などがあるが、このうちLINE PayとPaymoではQRコード・バーコードを利用した、実店舗での決済が既に可能となっている。

5万件の画像タグ手打ちからファッションAI開発へ——ニューロープが5000万円を資金調達

2014年設立のニューロープは、ファッションに特化した人工知能によるサービスを展開する、ファッション×AIのスタートアップだ。同社は3月5日、Reality Accelerator大和企業投資、都築国際育英財団を引受先とした第三者割当増資等により、約5000万円を調達したことを明らかにした。

写真右から大和企業投資 仙石翔氏、Reality Accelerator 郡裕一氏、ニューロープ代表取締役 酒井聡氏とニューロープのメンバー

ニューロープは創業後、モデルやインスタグラマー約300人と提携して、コーディネートスナップを紹介するメディア「#CBK(カブキ)」をリリースした。“モデル着用アイテムに似たアイテムが買えるメディア”という点では、2017年10月にスタートトゥデイの傘下に入ったVASILYが提供する「SNAP by IQON」(2017年3月公開)と同様だが、カブキでは当初、写真に付けるアイテムタグを、なんと全て人力で入力していたそうだ。タグ付けしたリアルなスナップのデータは5万件にも及ぶという。

その後、登録されたデータを元にして、2015年10月からディープラーニングを活用したAI開発に着手。2017年4月、ファッションに特化した人工知能をリリースした。

ファッションとAIとは実は相性がよいらしく、スタートアップによるプロダクトもいろいろ出ている。先述したSNAP by IQONもインスタグラマーのコーディネートに似たアイテムを、ディープラーニングによる画像解析で探し出して購入できるサービスだし、SENSY(旧カラフル・ボード)も人工知能がスタイリングを提案するアプリやサービスを提供している。

こうした競合サービスが多い状況について、ニューロープ代表取締役の酒井聡氏は「僕たちは2014年にガチでデータを集めるところから始めて、1年半の開発期間を経てAIをリリースした。そこは自信を持っている」と話している。

ニューロープが開発した人工知能は、機能で大きく2種類に分けられる。ひとつはファッションスナップを自動解析する「#CBK scnnr(カブキスキャナー)」。一般向けには、LINEにスナップを送信すると解析結果を教えてくれる「ファッションおじさん」として公開されている。

もうひとつはコーディネート提案AIだ。ファッションアイテムに対して、コーデすると合うアイテムを数秒で提案してくれる。カブキスキャナーの画像解析機能と併用すれば、着合わせをリコメンドすることもできる。こちらも、LINEにスナップを投稿するとコーディネートを提案してくれる「人工知能ショップ店員Mika」が公開されている。

ニューロープではこれらの人工知能をAPIとして提供し、事業を展開している。ファッションECのマガシークには、画像検索レコメンド機能を提供。マガシークのアプリで画像データを読み込むと、販売アイテムの中から写真に近いものを検索できる。オークションサービスのモバオクが運営するウェブマガジン「M/Mag」(スマートフォン版のみ)でも、掲載記事のコーデからモバオクに出品されている類似アイテムを買うことが可能になっている。

またSTYLICTIONが運営するファッションメディア「itSnapマガジン」にもAIを提供。掲載記事のスナップを解析してタグ付けを行い、複数のコマースサイトの類似アイテムをまとめて表示し、アイテムが購入されるとメディアにフィーが入る仕組みとなっている。

このほかにも「百貨店などのデジタルサイネージの前で衣装合わせをすると、コーディネート提案が表示されるといった使い方や、SNS上にある『#コーデ』タグがついた画像を分析することで、トレンド予測を行う、というような事業も検討している」と酒井氏は話している。

AIを導入する企業が増え、ニューロープのサービスも引き合いが多くなっていると酒井氏は言う。今回の調達資金の使途について、酒井氏は「API提供だけではなく、企業からの要望にも対応しているので、アプリケーションの開発にどうしてもエンジニアのリソースが取られがち。エンジニア採用にも投資し、既存AIの強化や新規AI開発など、AI自体の強化開発を進めたい」と述べていた。