3Dプリントメガネ製造のFitzがヘルスケアワーカーにカスタム保護メガネを提供

多くのスタートアップが、新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大や影響を抑制すべく取り組んでいるヘルスケアワーカーをサポートしようと、個人用防護具(PPE)やその他の必需品を求める声に応じている。そのうちの1社が消費者直結型3DプリントメガネブランドのFitz(フィッツ)だ。できる限りの保護を必要とする最前線で働くヘルスケアワーカーのための度入りレンズの保護メガネを作るのに、同社のカスタムフィットメガネ技術を活用している。

Fitz Protectは、FitzがiOSアプリ用に作り出したカスタムメードのための手法で作られている。この手法は、Appleが最近のiPhoneや全iPad Proモデルに搭載している深度センサー付きFace IDカメラによって可能になった。アプリではバーチャルのお試しができ、フィット感をミリ単位で調整できる。Protectはメガネの1種で、あらゆる度数に対応する。しかし、目の周辺から液体が入ることがないよう、カバーとガード機能を強化した安全メガネとなっている。

ヘルスケアのスタッフは、感染を拡大させる新型コロナ患者の咳やくしゃみ、飛沫を飛ばすようなその他の行為から顔や口、鼻、目を保護するために出来る限りのことをしている。それらの策は、1枚の透明なプラスティックシートを搭載しているフェイスシールドと、口と鼻を守るN95マスク(入手できないときはそれに代わるもの)が一般的だ。

FitzのCEO、Gabriel Schlumberger(ガブリエル・シュルンベルジュ)氏は電子メールで、Fitz Protectのデザインは、処方レンズ搭載の保護メガネを探していたニューヨークやロサンゼルス、テキサスの医療現場で働く医師や看護師によるものだと説明した。

「医師の60%超がメガネを使用している。そして現在のガイドラインではコンタクトレンズの使用中止を推奨している」とシュルンベルジュ氏は話した。しかもFitz Protectはさらに保護レイヤーを加えるフェイスシールドと併用することもできる、と付け加えた。

「メガネを使用する人から、普通のメガネでは特に眉の上などのカバー範囲が十分でない、と聞いた。ボール紙の切り抜きを加えている人もいた」と同氏は述べた。「もっといいものを作るために当社が持っているシステムを活用した」

Fitzのモデルは価格面でも貢献している。というのも、従来のメガネに比べてかなり競争力のある設定になっているからだ。Fitzのメガネはフレーム、レンズ、送料込みで通常たったの95ドル(約1万円)で販売されている。また、年間185ドル(約2万円)で無制限にフレームを変えられるメンバーシッププランも提供されている。医師、看護師、その他の病院スタッフ向けのFitz Protectの費用は免除している。そして同社は、現在1つあたり100ドル(約1万1000円)ほどかかる製造コストを賄うため寄付を募っている。ただし、シュルンベルジュ氏によると、この製造コストはプロセスの改善でもう少し抑えることができるという。

最初の週にすでに3000人超のヘルスケアワーカーから申し込みがあり、他にも需要が出てきた場合に応えられるよう同社は準備しているという。

“新型コロナウイルス

[原文へ]

(翻訳:Mizoguchi

Relativity Spaceは3Dプリントとクラウドベースのソフトウェアで新型コロナの嵐をやり過ごす

他のどの業界とも同様に宇宙関連の若いスタートアップや企業でも、新型コロナウイルス危機の煽りを受けてレイオフが相次いでいる。しかし、Relativity Space(レラティビティー・スペース)は、なんとかレイオフを回避できた。それどころか、世界的パンデミックにも負けず、新規に従業員を雇用している。RelativityのCEOで創設者のTim Ellis(ティム・エリス)氏は、大型3Dプリントと、クラウドベースのツールとテクノロジーの導入にフォーカスしたことが、会社を苦境に追い込まなかった大きな要因だと話している。

Relativityが間もなく完成させるロケットは、エンジンから胴体、さらにはその中間にあるものまで、ほとんどが3Dプリント部品で構成されるため、基本的にほぼ途切れることなくプロトタイプの製造を進めることができた。Relativityは、航空宇宙と防衛に携わる企業の例に漏れず、必要不可欠な事業と認知されているのだが、相当早い時期から新型コロナウイルスの潜在的な危険性に対処し、従業員の健康と安全を確保すべく手を打ってきたとエリス氏は言う。米国でこの病気が問題視され始めた3月9日、公式な規制や自宅待機の要請が出される以前に、Relativityでは早くも従業員に自宅勤務を勧めていた。

「それができたのは、一部には私たちの自動プリント技術のおかげです。工場にはごくごくわずかな人間しかいませんが、それでもプリンターを動かし続けることができます」とエリス氏はインタビューで話してくれた。「現に今はたった1人で数台のプリンターを見ていますが、実際にプリントが行われています。文字通りワンマン運転です。その一方、この2週間ほどの間に、会社の業務の大半を自宅で処理できるようにしました」。

たった1人の現場担当者で工場全体を管理できる能力は、現在の状況において、競争上、非常に大きな強みであり、同時に従業員の健康と安全を大切に守る方策でもある。エリス氏によると、同社はすでに複数の地域で業務を行っているという。ケープ・カナベラルとフロリダに加えて、ミシシッピ州のジョン・C・ステニス宇宙センターとロサンゼルス本社だ。Relativityではまた、米国内の離れた場所からも数名の従業員がテレワークしている。同社は早くから、全員が一箇所に集まらなくてもデザインや開発が行えるように体制を整えていたのだ。

「私たちはワークフローを円滑にするために、独自のソフトウェアツールを開発しました。それが大変に優れています」とエリス氏。「しかも、ITAR(国際武器取引規制)と複数の暗号プロトコルに準拠しつつクラウドに深く対応した企業ということだけでも、本当に有利なのです」。

自社開発のソフトウェアとクラウドベースのツールに集中したことに加え、エリス氏は、一番新しい資金調達ラウンド 、 2019年10月にクローズした1億4000万ドル(約152億円) のタイミングも、新型コロナウイルス危機への備えに貢献したと考えている。Relativityはレイオフを回避し、新たな求人も開始しただけではない。パートタイムも含め、全従業員に給与を全額支給し続けている。これはすべて、今思えば先を見通したビジネスモデルのおかげなのだが、現在の国際的ビジネス状況におけるこの目覚ましい優位性は、実際のところ単に幸運の賜物だとエリス氏は言う。それでもこれまでのRelativityの回復力は、一部には新型コロナウイルスのパンデミックに起因する大きな永続的変化の現れだと彼は信じている。

「それによって本当に変わるもの【中略】は、国際的なサプライチェーンへのアプローチです」と彼は言う。「もっと多くのものを米国内で生産して、サプライチェーンの過度なグローバル化への依存を減らそうという圧力が高まると思います。私たちがずっと3Dプリンターを使ってきたのは、そのためでもあります。それは、ごくわずかな作業員で、今のような状況下でもロケットの第1段が作れてしまう自動化のテクノロジーというだけではありません。サプライチェーンに関して言えば、限られた数の供給業者と、いくつもの製造方法からなる簡素なサプライチェーンを持つことで、供給業者やサプライチェーンの停止による大打撃を大幅に減らせるのです」。

新型コロナウイルス危機が、2021年に最初の3Dプリントロケットを飛ばすという予定を含めた打ち上げスケジュール全体に、どこまで影響を与えるかはまるで予測できないが、テレワークと社会的隔離指示に難なく添える製造ラインで多くの業務がこなせるとエリス氏は期待している。ジョン・C・ステニス宇宙センターのエンジン試験場といった提携施設が閉鎖されれば、確かに打撃にはなる。だがRelativityの回復力は、この危機的状況が去ったあかつきには、あらゆる種類の製造業の模範となるだろう。

新型コロナウイルス 関連アップデート

[原文へ]

(翻訳:金井哲夫)

1台の人工呼吸器を4人で同時に使える3Dプリント可能な器具をFDAを認可

米国の病院では人工呼吸器の不足が目の前に迫り、すでに危機的状態となっているが、症状が重篤化し入院が必要な新型コロナウイルス(COVID-19)患者が増加すれば、さらに深刻な事態となる。だからこそ、新たにFDA(米食品医薬品局)から非常用として認可を受けたこのシンプルな器具(ソースコードが無料公開されており病院で3Dプリントできる)が、最前線で対応している人たちの負担を最小限に抑える鍵となるかも知れない。

Prisma Health(プリズマ・ヘルス)のVESper(ベスパー)は、信じられないほどシンプルな3口のコネクターだ。これで1台の人工呼吸器を最大4人までの患者が同時に使えるようになる。この器具は、現在のISO規格に準拠した人工呼吸器本体とチューブに適合する。ウイルスやバクテリアが他の患者に感染しないよう、フィルター装置も接続できる。

VESperは2つ1組で使用する。人工呼吸器の吸気側にひとつ、呼気側にひとつを装着する。またこれをつなげることで、最大で4人の患者の治療が可能になる。ただしすべての患者の酸素供給量、酸素濃度、空気圧などすべての設定要素が同じで同じ臨床治療を行う場合に限られる。

この器具は、緊急治療室勤務のSarah Farris(サラ・ファリス)医師によって考案された。夫でソフトウェア・エンジニアのRyan Farris(ライアン・ファリス)氏は、彼女からこのアイデアを聞くと、最初のプロトタイプをデザインして3Dプリントした。Prisma Healthは、求めに応じてVESperのプリント仕様書を提供しているが、FDAが使用を認めた緊急時に限って使うよう注意していただきたい。つまりこれは、あくまで最後の手段として作られたものなのだ。FDAが定めた基準に適合する人工呼吸器がすべて塞がっていたり、患者の命をつなぐための器具や代替手段がない施設などでの使用に限定される。

FDAの緊急時使用許可(EUA)を受けたこれらの器具は、プロトタイプであること、そして実際に使ってみた結果を報告することが条件であることを十分に理解しておく必要がある。そうしたデータが、その有効性の検証に役立ち、安全と有効性のためのさらなる開発や改善に供されるのだ。

現地で3Dプリントするためのデータを提供するだけでなく、Prisma Healthでは3Dプリンターが使えない医療施設にプリントしたもの送るための資金の募集も行っている。南カリフォルニアの医療系基金Sargent Foundation(サージェント・ファウンデーション)がいちばんに寄付をしてくれたが、Prisma Healthは、研究の継続と新しい器具の開発のためのさらなる寄付を求めている

新型コロナウイルス 関連アップデート

[原文へ]

(翻訳:金井哲夫)

3DプリントステーキのNovameatが新たな資金調達

肉市場で代替タンパクの開発を推進するスペインのスタートアップNovameat(ノバミート)が、大手フードテック投資会社のNew Crop Capitalから新しい資金を得て、その動きを加速する。

生物医学工学の専門家であるGiuseppe Scionti(ジュゼッペ・シオンティ)氏によって創業されたNovameatの技術は、これまでカタロニア工科大学、ロンドン大学、チャーマーズ大学、そしてミラノ工科大学でバイオエンジニアリングの助教授を務めたシオンティ氏の10年に及ぶ研究に基いている。

同社は、世界初の3Dプリントされた植物ベースのビーフステーキの生産で、2018年に有名になった。今回New Crop Capitalからの新しい資金を使って、鶏むね肉などの繊維質の質感を持つ、ステーキのような肉の開発を加速するための、さらなるプラットフォーム開発を行う予定だ。

同社は、ビーフステーキ、鶏むね肉、魚の切り身といった、繊維質の肉の質感、外観、栄養、感覚特性を模倣するための、新しい基本技術を開発したところだ。

シオンティ氏は、このテクノロジーを、植物ベースで実験室で開発されてきた、これまでの代替タンパク質開発の次のステップと位置付けている。多くのクリーンミートや植物ベースの食品会社が、本物と同様の味と質感を持つ品質の挽き肉代替品を市場に出すことに成功してきたが、ステーキや切り出された筋肉を複製することは難しいことが証明されている。

Novameatにはその問題を解決できる可能性がある。

Screen Shot 2016-08-25 at 1.53.58 PM

「私は生物医学および獣医学用途のバイオプリンティング技術を通じて、動物組織の再生について研究して来ましたが、その中で肉の質感を実現するために様々な植物ベースのタンパク質の3Dマトリックスの構造を、バイオハックする方法を発見したのです」とシオンティ氏は発表の中で述べている。

Novameatの技術の中核は、企業がステーキを作るための必要な種類の繊維組織を作成できるようにする、カスタマイズされたプリンターだ。「私たちは、そうした企業とのライセンス契約に基づいて、機器や機械を提供します」とシオンティ氏は語る。「植物ベースの食肉メーカーが、ステーキの食感と味を作り出す手段にアクセスできるのです」。

従来の成型技術では、Beyond MeatやImpossible Foodsからの材料を用いてステーキをプリントすることはできなかったが、Novameatの創業者は同社の技術を使えばそれが可能になると主張している。

この技術は、拡大しつつある肉代替品市場で、最も経験豊かな投資家の1つであると思われるNew Crop Capitalの注意を引きつけることができる位に有望なものだった。このベンチャーファームが扱うポートフォリオには、Memphis Meat、Beyond Meat、Kite Hill、Geltor、Good Dot、Aleph Farms、Supermeat、Mosa Meat、New Wave、そしてZero Eggなどが含まれている。

「私たちは、グローバルな食糧サプライチェーンが壊れていると考えいます、そしてこれらの課題の1つである、動物性タンパク質の解決に注力しています」と、New Crop CapitalのDan Altschuler Malek(ダン・アルツシュラー・マレク)氏は語る。「消費者のみなさんによる動物タンパク製品の消費を削減し、みなさんが払いたいと思える価格の商品へのシフトを起こすチャンスがあると思っています」。

マレク氏は、肉代替製品の作成時間を短縮するNovameatがコストの削減に役立つと考えている。

シオンティ氏によると、同社のマイクロ成型技術を使えば、企業は時間がかかりコストが増大する可能性のある培養期間をとることなく、3次元構造を手に入れることができるということだ。「Novameatのバイオプリンティング基盤技術は、柔軟で調整可能な植物ベース肉の生産手段を提供します。また、さまざまな食材からさまざまな質感を一片の肉の中に形成するユーティリティを提供します」と彼は言う。

Good Food Instituteの科学技術ディレクターであるDavid Welch(デビッド・ウェルチ)氏は声明の中で以下のように述べている。

「植物タンパクを使って肉の質感を生成するために、現在業界で主に使われている手段は、高低水分押出成型機によるものです。この押出成型がうまくいく応用もありますが、全てのタイプの動物肉を模倣する手段としては理想的なものではないとも思っています。このとき、Novameatのような代替技術は、植物ベースの食肉メーカーに、あらゆる種類の肉や魚介類を模倣するための幅広いツールを提供してくれるのです」。

[原文へ]

(翻訳:sako)

3Dプリント臓器の商用化まであと数歩

生きた細胞を使った血管組織のプリントに成功したことで、3Dプリント組織の開発が加速され、最終的には、わずかな細胞のサンプルから臓器が作れる可能性が見えてきた。

先月末、Prellis Biologicsは、870万ドル(約9億1800万円)の資金調達と、3Dプリントによる臓器の製造に向けた複数の目覚ましい進展を発表した。数多くの大学の研究をベースにしたこの取り組みを、同社は「ボリュメトリック・バイオ」と呼んでいるが、今年の初めには独自の大きな進歩を公表している。

Prellisの新たな成功は、血管組織構造体を研究機関に販売する商用化までのタイムラインをスピードアップさせるものだ。そしてそれは、血管付きの植皮、インシュリンを生成する細胞、人工透析を必要とする患者本人の組織から作った血管シャントへの展望も開けたと、Prellisの共同創設者でCEOのメラニー・マシュー(Melanie Matheu)氏はインタビューの中で話していた。

患者本人の細胞から作る血管シャントは、その方法を成功に導く可能性を高めるとマシューは言う。「そのシャントが失敗すれば、選択肢の幅が限定されてしまいます。胸にポートを付けるしかありません」。Prellisが提案する治療法は、人々の生活の質を高め腎臓移植を待つ人たちの時間を延長できるとマシューは話す。

数カ月前、ライス大学のJordan Miller(ジョーダン・ミラー)氏とワシントン大学のKelly Stevens(ケリー・スティーブンス)氏の2人のバイオエンジニアは、ワシントン大学、ローワン大学、デザイン会社のNevbous Systemの協力を得て、人の肺の機能を模倣する気嚢のモデルを公開した。このモデルは、周囲の血管に酸素を送ることができ、人体に備わってる身体経路を模倣する血管ネットワークを構築できる。

「置換が可能な、実際に機能する組織を作る上での最大の障害は、密集した組織に栄養素を届ける複雑な血管をプリントする技術がないことでした」と、ライス大学のBrown工学研究科准教授のミラーは、声明の中で述べていた。「さらに、私たちの臓器には、実際に独立した血管ネットワークが存在します。肺の気道と血管、肝臓の胆管と血管などがそうです。こうした組織に深く入り込んだネットワークは、物理的にも生化学的にも絡み合い、その構造自体が組織の機能と密接に関わり合っています。我々のモデルは、直接的な完全な方法で多血管化に挑戦できる初のバイオプリント技術です」。

ミラーは、ボリュメトリック・バイオと呼ばれる研究の商用化を目的としたスタートアップを立ち上げた。研究者たちは、オープンソースのライセンスで発見結果を自由に利用できるが、バイオプリンターや素材、試薬などを販売することでこの技術の商用化も目指している。

ミラーのチームが開発している技術は、液体の特定の部分だけが硬化し、残りの部分は流してしまえるよう、光に反応する光反応化学物質を使用している。問題は、こうした化学物質は多くが発がん性であることだ。そこでミラーたちは、伝統的な光反応化学物質に代わるものを、意外なところで発見した。スーパーマーケットだ。

彼らは食品用の着色料が使えると推測し、ミラーはスーパーマーケットへ出かけ、クッキーなどによく使われる着色料を購入したと、Scientific Americanの記事に書かれていた。

「私たちは喜んで奇声を上げました。そのアイデアが気絶するほどシンプルだったからです。それはすぐさま、劇的に複雑な構造体の製作を可能にしてくれました」と彼は記事の中で述べている。

Prellisは、独自の大きな一歩を踏み出した。今回の発見とともに同社は、同社製の血管の足場(スキャッフォールド)を使って、実験動物への腫瘍の移植に成功したことを発表した。この試験がターゲットとする市場は、新しい治療法の効果を人の治験の前に動物実験で実証する創薬だ。

生きた細胞とヒドロゲルを組み合わせたプリントによる構造体は、動物の細胞増殖の足場(スキャッフォールド)を提供するように作られている。スタンフォード大学と共同で進めてきた研究で、Prellisは、わずか20万個の細胞を使って、動物に完全に腫瘍を移植できるようになった。同社によると、通常の腫瘍移植で必要になる細胞の数よりもずっと少ないとのことだ。

同社はこうも強調している。8週間で、彼らは透明な構造体の中に最大50ミクロンの分岐した血管を発見したのだが、これは、その動物の血管系が、その循環器系にスキャッフォールドを受け入れたことを意味するという。

Prellisは実際に、彼らの3Dプリント生物学の研究結果である血管のスキャッフォールドを、研究者向けに製作して販売すると宣伝している。カリフォルニア大学サンフランシスコ校、ジョンズ・ホプキンズ大学、カリフォルニア大学アーバイン校、Memorial Sloan Ketteringがんセンターを含む大学や製薬会社では、標準化された組織の構造体を使った試験方法を研究している(治験には重要なものだ)。

創薬への応用だけでも数十億ドル単位の市場になると、マシューは言う。しかし、同社が最終的に目指しているのは、完全に移植可能な3Dプリントによる臓器だ。まずは腎臓から始める。今年末までには、大型動物を使った移植実験を予定している。

「これまでも今後も一環して私の目標は、人のドナーから臓器を調達した場合とコストを同等にすることです」とマシューは言う。

マシューは、より多くの仕事を熟す必要がある将来を見越して、薬物療法と臓器開発に適した細胞が入手できるサプライチェーンを目指している。

そのため現在の新製品のロードマップは、血管のスキャッフォールドに始まり、血管付きの植皮、インシュリンを生成できる細胞、そして人工透析患者のための血管のシャントへと連続している。

「再生医療は、この数十年感で大きく進歩してきました。しかし、完全な臓器を作るためには、血管系のような、もっと高次元の構造体を構築する必要があります」と、Khosla Venturesの社長アレックス・モーガン博士(Alex Morgan)は声明の中で述べている。「Prellisの光学技術は、そのような大きな組織の塊に必要なスキャッフォールドを提供してくれます。今回の投資で私たちは、最終的には実際に機能する肺葉や、さらには腎臓の生産への取り組みを支援しています。それは、世界中の膨大な需要に応えるものです」

関連記事:移植可能な臓器を3Dプリントできる日は意外に早く来る(未訳)

[原文へ]
(翻訳:金井哲夫)

軌道上で巨大3Dプリント宇宙船部品を製作するArchinautがNASAから79億円強の資金調達

かさばる部品を宇宙に打ち上げるのではなく、その場で3Dプリントしてしまうことを目指すプロジェクトが、その技術を実証するために、NASAから7370万ドル(79億円強)の契約を獲得した。これまで数年に渡って開発が続けられてきたMade In Space(メイドインスペース)社のArchinaut(建築宇宙飛行士的な意味の造語)は、早ければ2022年には打ち上げが予定されている。

私たちの現在の問題は次のようなものだ。もし60フィート(18m強)の太陽電池アレイを装備した宇宙船が欲しいとするならば、そのアレイを装着するための60フィート長の構造物を用意しなければならない。そのような構造物はリボンのようにくるくる巻き付けておくわけにはいかない。しかし、60フィートの支柱、あるいは2本の30フィートの支柱、なんなら10本に分割した支柱群でも良いが、打ち上げる宇宙船に僅かな格納スペースしかないときに、それらをどのようにしまっておけば良いのだろう?たとえ1方向だけでも大きなものを宇宙に持っていこうとするとすると、問題は急速に複雑なものとなる。

Archinautの解決策はシンプルだ。ただその長い部品のための材料を宇宙に持っていって、その場で3Dプリントしてしまえば良いのではないだろうか?材料をコンパクトに保つ手段として、レンガ状に固めておくやり方以上に効率的なものはない。

当然のことながらこれは、単純な棒や柱のプリントだけにとどまるものではない。ソーラー帆などに使える大きな素材シート、他の部品を装着できる入り組んだ構造物。ひとかたまりのものとして一度に宇宙に打ち上げるには大きすぎるものはたくさん存在している。だがそうしたものはもし必要ならば小さなものから作り上げることができる。以下の写真に示された黒い支柱は、中央の部品から離れた位置に機器を装着するために作られた部品だ:

optimast3Made in SpaceはすでにNASAと契約を終え、国際宇宙ステーション(International Space Station)に搭載されている部品の3Dプリントを実証してみせた。同社はまた、宇宙環境とほぼ同等の人工の真空中で部品をプリントできることも示した。

実証の使命を担うArchinaut Oneは、早くとも2022年の初頭以降にRocket Lab Electronの打ち上げロケットに搭載されて宇宙に向かう予定だ。安定軌道に到達したあと、最終的には32フィート(約10m)の長さになる1対の支柱を押し出して成形する。これらの支柱に取り付けられるのは、同時に展開される柔軟な太陽電池アレイの予定で、支柱の堅固な構造にそって取り付けられる。その作業が完成したら、ロボットアームはそれらを所定の位置に固定し、他の管理作業へと移行する。

そうした作業イメージを以下の動画で見ることができる(残念ながら特にエキサイティングではないが)。

完成すると、この長さ32フィートの太陽電池アレイのペアは、理論的には、そのサイズの宇宙船が通常取り込むことのできる電力の、5倍の電力を生成することができる。宇宙船はほとんど例外なく電力不足に悩むシステムなので、より多くの電力を使えたり、軌道上で十分に受光できない場合に備えて電力を保存できることは、もちろん大歓迎されるだろう。

別のプリントでは、ロボットアームが部品を並べ替え、コネクターに差し込んで、まるでコンセプトアートのような複雑な構造を作るようなタスクをこなすこともできる。とはいえ、こうしたすべてのことが実際に行われるのはまだ先の話だ、現在の実証機が焦点を当てているミッションは、最初の支柱と太陽電池アレイに関するものである。もちろんチームはこの作業の中で他のミッションを達成するために必要なさまざまな学びも重ねることだろう。

当然のことながら宇宙空間での製造は、月面およびその周辺でしっかりとした存在感を確立することを計画している国にとっては大きな関心事だ。25万マイル(約40万km)の距離を配送するよりも、必要な場所で製造を行う方が遥かに簡単だからだ。Archinautや宇宙プリンティングに関わるMade In Spaceの他のプロジェクトに関しての情報は、同社のブログで追いかけることができる。

画像クレジット: Made in Space

[原文へ]

(翻訳:sako)

ニューバランスが新しいスニーカーに3Dプリント部品を採用

3Dプリントがプロトタイピングから製品製造への移行を行う過程で、スニーカーというのは極めて効果的な手段だった。特にCarbon(カーボン)は、アディダスとの提携で、少量のFuturecraft 4Dシューズのプリントアウトを始め、ここ数年でかなり規模を拡大して成功を収めている。

そして2017年に発表されたニューバランスとFormlabs(フォームラブ)のコラボが、ついに2種類の新しいスニーカーを生み出した。しかもアディダスのものよりもかなり安価に。今回登場した靴は、3Dプリンティングの提唱者たちによってずっと支持されてきた、極端なカスタマイズの約束を果たしているわけではない。しかしそれらは、3Dプリント技術のユニークな特性を、リーズナブルな価格で大衆的なマーケットに供給しようとするものだ。

Image of New Balance team with Formlabs 3D printers

今回のコラボレーションの中心はTripleCellシリーズで、堅固なクッションサポートを備えながら、標準的な射出成形よりもやや(10%)軽いかかとを作ることができた。このかかと部分はFormlabs独自のRebound Resin(弾性レジン)を使ったラティス(格子)構造でプリントされている。同社によれば、これは従来の熱可塑性樹脂と同じくらい耐久性があるということだ。

FormlabsのCPOであるデビッド・ラカトス(David Lakatos)氏は技術について以下のように語っている

3Dプリントは企業が製造にアプローチする際の手段を変革しています。今回の発表で、ニューバランス社は(消費者の近くで製造を行う)ローカライズ製造の先駆けとなります。プロトタイピングと製品製造の両方で、金型への依存を排除し、直接プリントすることで、チームの開発と生産のサイクルが数ヶ月から数時間にシフトします。私たちはデザインサイクルが消費者の気まぐれで回っていく世界に向かっています。その最前線にニューバランス社と共に立つことができることに興奮しています。

990 Sportはすでに、ニューバランスのサイトで185ドルで入手可能だ。スニーカーの前方にTripleCellを使用するFuel Cell Echoは、9月に175ドルで発売される。990は米国製で、エコーも米国内で組み立てられる。

[原文へ]

(翻訳:sako)

SmileDirectClubが3Dプリンタで1日5万個の歯列矯正モールドを製作する計画を明らかに

医療業界は工業用3Dプリンタの成長の源として最も有望な分野と長く考えられてきた。ひとりひとりに合わせるにはスキャンとプリントで正確に測定して対応する必要があるのだから、もっともなことだ。ことに歯科は、その推進に重要な役割を果たしている。倉庫のようなスペースいっぱいにプリンタを設置して、透明で取りはずし可能なマウスピース(アライナー)で歯列を矯正するインビザラインを手がけるとなれば、なおさらだ。

米国時間5月21日、デトロイトで開催されたRapid 2019カンファレンスで、SmileDirectClubはHPの工業用Multi Jet Fusionシステムに巨額の投資をしていることを発表した。49台のプリンタを使用するシステムは米国最大で、歯列矯正のモールドを24時間体制で大量に製作するという。

システムが完成して稼働すれば、1日に最大5万個のモールドを製作できる予定だ。計画通りなら、1年に1800万個以上を製作できる。HPによれば、SmileDirectの3Dプリンタ製造のおよそ99%をHPが担当しているという。今回の発表で、このテクノロジーへの投資は事実上2倍になっている。

このテクノロジーに興味を持つ人にとっては注目すべきスペースだ。長年にわたる実験と高い成果を経て、歯列矯正は3Dプリント技術の大規模で現実的な用途となっている。

[原文へ]

(翻訳:Kaori Koyama)

3Dプリントされた顔でスマートフォンをアンロックできる——警察も

3Dプリンターは実にさまざまなものを作れる。義肢角膜から拳銃——さらにはオリンピック規格のリュージュまで。

人間の頭の実寸模型だって3Dプリントできる——そしてそれはハリウッドのためだけではない。ForebsのThomas Brewster記者は、自分自身の頭の3Dプリントモデルを発注し、いくつかのスマートフォンの顔認証システムのテストを行った——Android 4台とiPhone 1台。

Androidユーザーには悪い知らせだ。iPhone Xだけが自らをアタックから守った。

信頼できるパスコードの時代は終わったようだ。1日に何十回もスマホをアンロックするたびに暗証番号を入力するのは面倒で不便だからだ。メーカーはもっと便利なアンロック方法を次々と考えだす。Googleの最近機種Pixel 3は顔認識を回避したが、多くのAndroid機が——人気のSamsung機も——人間の顔による生体認証を採用している。Appleは最新シリーズで事実上指紋認証のTouch IDを廃止して顔認証のFace IDに置き換えた。

しかし、たかが3Dプリント模型で携帯電話が騙され秘密を明け渡してしまうのは問題だ。ハッカーたちにとっても仕事が楽になるが、そもそも彼らに守るべきルールはない。しかし、ルールのある警察やFBIはどうだろう?

生体認証——指紋や顔——が憲法修正第5条(黙秘権)で守られていないことは周知の事実だ。つまり、警察はパスワードを教えるよう強要することはできないが、端末に指を押し付けさせたり、顔を向けさせたりすることはできる。そして警察はそのことを知っている——実際あなたが想像している以上にそれは起きている

警察が3Dプリントで体を複製して端末をこじ開けることも防ぐ方法はほとんどない。

「法的には指紋を使って端末をアンロックすることと変わりはない」とUSCグールドロースクールのOrin Kerr教授がメールで言った。「政府はなんとかして生体認証のアンロック情報を手に入れる必要がある。指紋であれ、顔の形であれ」

生体データを得るために「令状は必ずしも必要ない」が、そのデータを使って端末をアンロックするためには必要だ、と彼は言う。

Project On Government Oversight[政府監視プロジェクト]の上級弁護士Jake Laperruqueは、それは実施可能ではあるが警察が携帯電話データをアクセスする実用的あるいは経済的な方法ではない。

「実際の人間は連れてこられないが、3Dプリントモデルなら使えるという状況はあるのかもしれない」と彼は言う。「誰でも——警察であれ犯罪者であれ——人の顔を向けさせて端末に侵入できるシステムはセキュリティー上深刻な問題があると私は考える」

FBIだけでも数千台の端末を保管している——暗号化端末の数を水増し報告していたことを認めた後でもこれだけある。監視社会が進み、強力な高解像度カメラ顔認識ソフトウェアが作られるにつれ、日常生活のなかで警察がわれわれの生体認証データを入手することは益々容易になっていく。

「パスワードの死」を喜んでいる人たちは、考え直した方がいいかもしれない。あなたのデータの安全を法律上守ってくれる唯一の存在なのだから。

[原文へ]

(翻訳:Nob Takahashi / facebook

AIと3Dプリントを使って写真の絵画を再現できるようになった

MITのコンピューターサイエンス・人工知能ラボの研究者が、写真から絵画を再現するシステムをつくりだした。この技術を使うと、博物館やアート好きの人が、お気に入りの絵画の写真を撮って絵の具のような仕上がりのコピーをプリントできる。

RePaintと呼ばれるこのプロジェクトでは、それぞれの絵画とまったく同じ色を再現するために機械学習を活用していて、階調表現を使って何千もの色を出力できるハイエンドな3Dプリンターでプリントする。

研究者はエドガー・ドガやサルバドール・ダリの残された作品をとらえる、より良い方法を見つけた。彼らは開発した“色トーニング”という特殊な技術を使った。この色トーニングでは、3Dプリンターと、まるでキットカットバーの中にあるチョコレートとワッフルのような薄いレイヤーの中に入った10種類の透明インクが使用される。そして研究者たちはこの方法に、“階調”という何十年もの歴史がある手法を組み合わせた。これにより、連続階調というより、かなりたくさんの小さなインクのドットでイメージがつくられる。こうした技術により色のニュアンスをとらえることができる、と研究チームは話している。

「もしあなたが絵画の色をギャラリーで目にしたもののように再現したら、家では異なる色に見えるかもしれない」と研究者のChangil Kimは語る。「我々のシステムはどんな照明状況でもうまくいき、これまでの試みよりずっと素晴らしい色の再現能力を備えている」

残念なことに、プリントできる大きさはせいぜい名刺サイズ。また、このシステムではマットな仕上がりや複雑な表面テクスチャにまだ対応できていない。しかし研究チームはアルゴリズムと3D出力技術の改善に取り組んでいて、最終的にはポーカーで遊んでいる犬の絵を3Dプラスティックに再現することができるようになるかもしれない。

[原文へ]

(翻訳:Mizoguchi)

3Dプリンターがプラスチックでなく濡れた紙パルプを使ったら楽しいアートができる

紙弾(かみつぶて)を撃って遊ぶ子どもたちのように、デザイナーのBeer Holthuisも、いたずらをするための最良の素材は濡れた紙だ、と考えた。彼の3Dプリンター、RepRapの粗末なクローンは、文字通り紙パルプの長い紐(ひも)を吐き出して、プラスチックよりも持続可能性のある3Dオブジェクトを作る。

3DPrint.comの記事によると、Holthuisは、大量の廃棄物で汚染を増大させない素材を探していた。そして彼は、すりつぶした紙に到達した。濡れた紙を押し出すと、パルプの太い飾り紐のようなものができて、それを重ねると装飾的なオブジェクトを作ることができた。

“そうやってプリントしたオブジェクトのデザインは、この技術の可能性と美しさを示すものだ”、とHolthuisは語る。“触感がいいし、紐の太さやプリントのスピードを変えていろんな形を作れる。しかも、意外と強度があって、長持ちする”。

おもしろいのは、彼は天然バインダーを使って層をくっつけているので、完全にリサイクル可能であることだ。紙をマシンに放り込んで、自動的にパルプを作らせたら、リサイクルの過程も自動化されるだろう。でも、このお話の最良の部分は、作品がまるで、高度な知性を持った蜂のコロニーが他の集団と交易するために作った物のように見えることだ。そう思うと、楽しいよね。

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

3Dプリントした部品などの表面を安全に平滑化するZortraxのApoller平滑システム

ZortraxApollerは、同社がSmart Vapor Smoothing(電脳気化平滑)と呼ぶデバイスで、3Dプリントされたオブジェクトの表面を溶剤を使ってなめらかにする。その結果、製品は射出成形で作った品物のようになり、FDMプリンティングに必ずある細いラインがなくなる。

そのシステムは電子レンジのようなボックスの中で複数のパーツを一度に処理できる。そのボックスの中で、霧状にした溶剤でパーツを覆い、溶剤にその仕事をさせる。終わったら、残った霧状溶剤を回収室に吸い取る。溶剤が少しでも残っているとボックスのドアが開(あ)かないので、人間が大量のアセトンを吸い込むおそれがない。デスクトップで使うデバイスであり、クリスマスパーティーをやってるオフィスの空気中に溶剤の雲が生ずる危険性もあるので、このことは重要な配慮だ。

同社の説明より: “霧状溶剤で平滑化したものは、射出成形で作ったパーツのように見える。使ったフィラメントによって、表面はつやがあったり、マットだったりする。二段階濃縮により、300ミリリットルの溶剤で複数回のプリント結果を平滑化できる。そのため、場合によっては、典型的なFDMプリンター4台の一週間ぶんの出力を一日で自動的に平滑化でき、しかも質的劣化はない”。

FDMプリントは構造的にちゃちっぽく見えることが多いから、この平滑化は一種の化粧処理であり、たぶん理論的には、3Dプリントしたパーツからモールド(型)を作ることができるだろう。実際には、アセトンで平滑化したパーツは、つやつやして外見が良いから、これから射出整形やフライス盤などで作る最終製品の姿を正しく理解できるだろう。

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

3Dプリントで作られた銃を見るとそれを作ったプリンターを特定できる

ニューヨーク州立大学バッファロー校の研究者たちが、3Dプリンターに指紋があることを見つけた。設計のわずかな違いで、プリント物がプリントされたプリンターを同定できるのだ。未来の捜査官は、3Dプリントされたオブジェクトのレヤー(プラスチックの層)を調べて、それをプリントした3Dプリンターを特定できる。

研究のペーパーの主筆Wenyao Xuはこう言う: “3Dプリントはいろんなすばらしい使い方があるけど、贋作者にとって夢のような道具でもある。しかしもっと心配なのは、ピストルやライフルなどの小火器を、許可のない人も含め、誰でも持てるようになることだ”。

研究者たちが見つけたのは、プラスチックの層にある小さな皺(しわ)で、プリンターの機種や使用されたフィラメント、ノズルのサイズなどが分かることだ。マシンの細部のちょっとした偏りや癖によって、不完全なパターンがプリントされるのだ。彼らはその技術を、PrinTrackerと呼んでいる。

“人の指紋のように、これらのパターンはユニークで再現性がある。その結果、パターンを調べることによってその特定の3Dプリンターにたどり着くことができる”、と研究者たちは書いている

この方法は主に、MakerbotのようなFDMプリンターに有効だ。それらは、フィラメントの長いスプールを使ってプラスチックの層をビルドプレートに落としていく。

しかし銃の3Dプリントに使われるプリンターは複雑で高価な機種が多いので、個々の層の変異が少なく、使われたプリンターの同定が難しいこともある。でも、そんな銃でも、一部の単純な部品には見て分かる変異がある。

Xuは曰く、“3Dプリンターの各機種は、どれも同じであるように作られるが、製造工程でわずかな違いが生じ、それにより、プリントされるどのオブジェクトにも、ユニークで不可避で変更不可能なパターンが生ずる”。

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

ジレット、Formlabsと提携してカミソリのハンドルを3Dプリント

3Dプリンティングの製造利用は再三話題にはなるものの、本格的な応用例はほとんどない。GilletteとMIT出身のスタートアップ、Formlabsの提携から生まれたプロジェクトが、そんな興味深い未来のい可能性を垣間見せる。

たしかに、カミソリのハンドルのカスタマイズというのは目新しさ以上の何物でもないかもしれない。Invisalignの歯列矯正、人口装具、さらにはスニーカーと比べても革新的とは言えないが、もしスケーラブルになれば、多くの人の日々の生活の一部をなす製品に新たなレベルのカスタム化を加えられる可能性がある。

今のところGilletteの3Dプリントカミソリハンドルプログラムは、シェービングの巨人が個数限定で行っているパイロットプログラムにすぎない。価格は材質に応じて19ドルから45ドルまで。ユーザーはRazor Makerサイトを使って自分だけの特徴あるバージョンを作ることができる。ハンドルはGilletteのボストン本社にあるFormalbsの装置でプリントされる。

[原文へ]

(翻訳:Nob Takahashi / facebook

テキサス州当局に引き渡された3Dプリントで銃を作るCody Wilsonが保釈で出所

先週、Hatreon(ヘイトスピーチ・サイトのためのクラウドファンディング)の作者で、3Dプリント銃の普及活動家Cody Wilsonは、未成年者に対する性的暴行で告発されていたが、台北に逃亡して数日間逮捕を免れていた。しかし金曜日(米国時間9/21)に当局はWilsonの所在を突き止め、テキサス州に送還させた。Harris Countyの拘置所に勾留されたWilsonは、その後15万ドルの保釈金で保釈された。

[Cody Wilsonが台湾に逃亡](未訳)

Wilsonは金曜日に、アメリカの連邦保安官と台北警察、およびアメリカ国務省の協力により逮捕された。彼の嫌疑は、8月22日の事件において、彼がSugarDaddyMeet.comで見つけた16歳の少女に性的暴行を加え、North Austinのホテルにおける性行為で500ドルを彼女に払った、というものだ。

嫌疑は防犯カメラの映像にWilson自身と彼の会社の番号の車が写っていたことで確証された。告発者のカウンセラーは、その16歳の少女の話を聴き、彼女がWilsonを同定し、その性的暴行とされる行為を説明したため、告発に踏み切った。

Wilsonはオースチンに住み、国防関連企業Defense Distributedを保有し経営している。同社は、“アメリカの銃兵の役に立つ”研究開発を行っている、とされる。彼は、当局が逮捕のために彼を探している、という垂れこみ情報により台湾に逃亡した、とされる。

テキサス州西部地区担当の連邦保安官Susan Pamerleauは、こう語る: “台北市当局と、台湾当局、そしてアメリカの州と連邦の献身的かつ国際的共同努力により、逃亡犯を法の下(もと)に確保できた”。

一方、Wilsonの弁護士Samy Khalilは、地元メディアへの声明で、“Codyがテキサスに戻り、われわれが彼のために仕事ができるようになったことは、喜ばしい。クライアントを代表する者として、彼の弁護の準備をしたい”、と述べている。

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

Adidasのスニーカーのサプライチェーンが3Dプリントで劇的に変わりオンデマンド化へ

AdidasのFuturecraft 4Dはクールなルックスのスニーカーだが、この靴の背後にあるストーリーはさらに一層おもしろい。このスポーツウェアメーカーは、工業用3Dプリント技術のCarbonとパートナーして、新種のスニーカーを設計している。

Futurecraft 4Dの背後には、今やそれほど新しくはない技術、3Dプリントがある。アメリカやヨーロッパなど、サービス産業が支配する国々に工場が戻ってくる、そんな産業革命を唱える企業は多いが、AdidasとCarbonのパートナーシップは、その突飛な夢を現実にする。

Carbonの協同ファウンダーでCEOのJoseph DeSimoneは、こう説明する: “ここにあるものは要するに、ハードウェアとソフトウェアと化学の統合であり、それらが一体となってデジタルモデルを作り、それを部品など最終製品の特性〔硬度など〕を持つ素材できわめて高速にプリントする”。


Carbonのプロセスを、クラウドベースのソフトウェアツールが支える。初歩的なCADを使用し、機械的な特性を定義すれば、目の前でそれが製造される。

Futurecraft 4Dは今、生産量が少ないのでなかなか買えない。でもAdidasのCMO Eric Liedtkeは、品不足は数年後には解消する、と言う。

“今の私たちは、イノベーションの坂道の途中にいる。今後はさらに速くなり、いろんな素材を使えるようになるだろう。理想は、オンデマンドで製造しプリントすることだ。今はまだアジアで作っている製品が多くて、それらを船や飛行機に乗せて五番街まで運んでるんだ”。

倉庫に在庫のないAdidasを想像できる。“ニュージャージーに小さな流通センターを置くのではなくて、ニュージャージーに小さな工場があればよいのだ”、とLiedtkeは語る。この製造工程では、部分的にコーンなどから作るバイオプラスチックを使えるだろう。

そして、靴をオンデマンドで買えるようになると、デザインだけでなく、スポーツの種類や体質体調に合わせることも可能になる。

“脚への衝撃とか、ランナーの脚や体の動き、どこにインパクトゾーンがあるか、など靴の設計の科学化にこれまでの10年か20年を要している。今後はそれらの科学と技術をデータ化する必要がある。その基盤ができてやっと、クリエイティブに支配権を譲れる”、とLiedtkeは語る。

Carbonは、Adidasとの協働以外にも、歯科市場やレジンの研究開発など多くの分野で活躍している。“世界で初めての、FDA承認の、3Dプリントで作られた義歯もある”、とDeSimoneは述べている。

靴のような単純な製品が、研究、開発、工学、デザインという多様なプロセスの集積であることは、とてもおもしろい。

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

台湾のXYZPrinting、フルカラー3Dプリンターをリリース――999ドルで予約受け付け中

台湾に本拠を置くXYZPrintingはとうとう手軽にカラー3Dプリンティングができる道を開いたかもしれない。最新のプロダクト、da Vinci Color Miniは定価1599ドルでフルカラーの3Dプリンティングができる。CMYの3色カラーインクをカートリッジで装備し、プリント時に射出されるフィラメントを15000万色に染色できる。

この3Dカラープリンターは現在Indiegogoで999ドルで予約受付中だ。

プリントできるオブジェクトのサイズは13センチ立法だ。素材はPLA(ポリ乳酸)と PETG(ポリエチレンテレフタレート)のフィラメントを用いることができる。PLAフィラメントについては小型のインクジェットで染色してカラフルなプロダクトを作れる。

XYZprintingの,CEO、Simon Shenは「ついにフルカラーでデスクトップ3Dプリンティングができるようになった。消費者が手頃か価格で購入し、簡単に操作できるプロダクトだ。カラー3Dプリンターとしては現在の市価より3万ドルも安い。以前は産業用機械でしか利用できなかったテクノロジーをこうして一般消費者向け製品に使ったのは本当に革命的だ」と述べた。

この3Dプリンターは家庭や学校での利用を念頭に置いている。しかもIndiegogoの1000ドル以下というのは価格としてスイートスポットだ。プリント精度にはまだ多少問があるが、もう少し精度が高い単色3Dプリンターの値段でフルカラー出力ができる3Dプリンターが手に入るというのは魅力だ。


原文へ


滑川海彦@Facebook Google+

この3Dプリントされたキャンプ用コンロは、とても効率が良く風にも強い

私はキャンプが大好きだ。だがテントから起き出して来たのにまだコーヒーができていないあの瞬間は大嫌いだ。沸かないポットから目を離すわけにもいかず、テントを開けたら暖かい空気が逃げてしまって意味がないので単に寝に戻るわけにもいかない。ああまったく!だがスイス人たちがお湯をより速く沸かす素晴らしい方法を発見してくれた。この素敵なコンロが今すぐ欲しい。

PeakBoilコンロを生み出したチューリッヒ工科大学のデザイン学生たちは、明らかに私と同じ問題を抱えていたに違いない。そして彼らは実際に悪天候の中でキャンプを行っているので、通常のガスバーナーの弱い火を吹き飛ばす風にも対処しなければならない。

デザインを改良しようとする彼らの試みの要点は、コンロのパイプを容器の中に通して底からではなく、内側から加熱を行うという、議論も多い手段を採用したことだ。このやり方は水を加熱するためには他の多くの状況で使われているものの、私がキャンプコンロでそれを見たのは初めてだ。

ガスノズルを注意深く配置し、ヒートパイプの壁に波の模様を加えることで、PeakBoilは「炎とジャグ(水差し)の接触面積を増加させます」と、チューリッヒ工科大学のニュースリリースの中で、博士課程の学生でありプロジェクトリーダーのJulian Ferchowは説明している。

「これに加えて、壁をとても薄くしたことで、ジャグの中にある物質への熱伝導が理想的なものになりました」と彼の仲間のPatrick Beutlerが付け加えた。

煙突の中に炎を閉じ込めることで風の影響を最低限に抑えるため、炎が消えないように余計なガスを使うこともなくなる。

このデザインは、選択的なレーザー溶融と焼結プロセスを使用して作成された。このプロセスでは、3Dプリンターが熱せられたプラスチックを置いていくように、溶融した金属粉がパターンに沿って置かれていく。これは付加製造(additive manufacturing)の1手法であり、Ferchowの説明によれば「非常に大きなデザインの自由度を金属成形に対して与えてくれました、例えば、今回ガスバーナーの内側に実現したような筒の薄い壁はこれまでは実現不可能でした」ということだ。

もちろん、このデザインはお湯を沸かすことだけのために利用可能だ(こいつの上でフライパンを振りたくはないだろう)、だがこれは多くのキャンパーが既にその目的専用のコンロを持っているような一般的な特定の利用状況なのだ。

チームはデザインをさらに改善し、市場に出すための業界パートナーを探している。MSR、GSI、REI(いずれもキャンプ用品メーカー) …君たちには期待したい。君たちなら私の朝を耐えられるものにできるだろう。

[原文へ]
(翻訳:sako)

光造形3DプリンターのFormlabsが新たな資金調達ラウンドでユニコーンの仲間入り

光の力で樹脂を硬化するユニークな3Dプリンターで脚光を浴びたFormlabsが、ユニコーンになった。マサチューセッツに本社を置く同社はこのほど、1500万ドルの新たな資金調達を行った。これにより同社の調達総額は1億ドルになり、またハードウェアスタートアップにしては珍しく、評価額が10億ドルを超えた。その最新の資金調達は4月の3000万ドルの後続投資で、New Enterprise Associatesがリードした。

3Dプリンティング業界の現状から見ると、このマイルストーンは二重の意味で印象深い。3Dプリントは、最初に長年の誇大な期待があり、そしてバブルがはじけ、競争が激化した。しかし2012年にほそぼそとKickstarterで生まれたFormlabsは、デスクトップサイズの業務用3Dプリンターで最初から明確な差別化を図った。

その技術はたちまち、ハードウェアのプロトタイプを作っている連中に歓迎された。彼らは以前から、MakerBotなどでおなじみのプラスチック沈積型3Dプリンターよりも精細な3Dプリント技術を求めていた。近年同社は、デスクトップの製造技術をさらに強化し、同社の既存の技術と共に、製造業のための3Dプリントという、需要のきわめて多い世界に売り込みをかけている。

今回の資金調達と並行してFormlabsは、GEの元CEO Jeff Immeltを取締役会に迎えた。

Immeltはプレスリリースでこう述べている: “同社の重要な成熟期にFormlabsで仕事ができることは、きわめて喜ばしい。チームはこれまで傑出した進歩を示し、デスクトップ3Dプリンターの中では最良の製品を作り、エンジニアリングやヘルスケア、製造業などきわめて多様な業界で成功を収めている。同社は2011年の創業以来、競合他社を大きく抜き去り、3Dプリンティングにおけるリーダーになっている。今後さらに多くの業界から採用が増え、技術も前進していく中で、私は同社の次のフェーズを支援していきたい”。

Formlabsは現在、北米、ヨーロッパ、およびアジアに500名の社員を抱えている。

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

「合法」となった3Dプリント銃の設計図配布が、21州からの集団訴訟を受けた

銃器構成部品をプリントするために使用される3Dモデルの合法化が行われた直後、21の州が連邦政府に対して、その決定が危険であるだけでなく、多くの理由で違法であるという集団訴訟を行った。しかしこの訴訟の効果は、いわゆるストライサンド効果によって裏目に出る可能性があり、この議論の的である技術をさらに確固たるものにしてしまうかもしれない。

7月の初め、米国連邦政府が、銃火器部品の3Dモデルを配布していたCody Wilsonと彼の会社を相手取って行っていた訴訟を、取り下げたというニュースが流れた。銃の製造と販売方法に対しは依然として制限があるものの、3Dデータを含み部品をプリントできるようにするファイルそのものは、そうした制限の下には置かれないと決定されたようだ。

これは、より厳しい銃規制法を支持する人たちにとっては不愉快なニュースだった。明らかに21州の州司法長官たちはそのグループに属しているようだ。ワシントン州の司法長官であるBob Fergusonは、この特定のデータ形式を合法化する連邦判断を、阻止する訴訟を指揮すると発表した。

「これらのダウンロード可能な銃は登録されず、金属探知機を使っても検出が非常に難しく、年齢、精神的健康状態、または犯罪歴に関係なく誰でも入手できるものです。もしトランプ政権が私たちに安全を保証しないならば、私たち自身がそれを行ないます」と彼は本日(米国時間7月30日)発表したプレスリリースで語った

彼らは、政権は国防総省がその決定に署名する必要があり、議会はその30日前に通知を受ける必要があると主張している。この決定は(召喚および諮問の記録が残されておらず)「恣意的で気紛れに」行われたものであり、従って行政手続き法に照らして違法なものである。

また権利章典修正第10条は、州に対して銃器を規制する権利を与えている。したがって訴訟人たちは連邦判断はその権利を奪うものであるから違憲であると主張している。

こうした主張はみな、もっともなものであるが、 3Dプリント銃のデータが持つとされている危険性は誇張され過ぎており、またその配布に対して政府や、州もしくは連邦が行える規制能力も過大に評価されている。もしこの訴訟に勝てたとしても、3Dプリント銃に対してはほとんど、あるいは全く影響はないだろう。

大勢の州司法長官たちから、マイケル・ポンペオ国務長官とジェフ・セッションズ司法長官へ送られた手紙には「銃火器のデザインをインターネット上で配布することを禁止することで、公共の安全と国家のセキュリティが守られている現状は、維持されるべきです」とある。

だが極端に激しい議論と繊細な政治的な話題に陥る危険性があるが(この記事には万一のために「Opinion」タグを添えている)、現状はそのようなものではない。もし効果的な銃規制が目標であるならば、追求すべきより重要なステップがあると言わざるを得ない。既存の規制には多くの抜け穴がある、例えばガンショーでは未登録の銃器が売られているし、少し手を加えれば銃を完成させることのできる「8割完成部品」の売買は全く合法なのだ。

さらには、何かをインターネットから取り除こうとする試みは、すでに何度も何度も見られているように、失敗に終わっている。あまりにも頻繁に観察される現象なので、ストライサンド効果というニックネームがついているほどだ。違法コンテンツを入手する手段は数多くあり、それぞれ有効なものだ。おそらく自分用の銃をプリントすることに関心のある人間は、VPNやトレントサイトを使用することをためらわないだろう。それどころか、インターネットから何かを取り除こうとする協調的な努力は、その対象をネット上に残し続け、当局の悩みのタネとなる。忘却という機能はインターネットのDNAには存在しないのだ。

3Dモデルを違法にすることで検察官や捜査官がもっと忙しくなることは間違いないが、世界の悪党どもは別にこの訴訟の行末をハラハラしながら見守ってはいない。犯罪者、テロリスト、異国の敵などは、そもそも未登録の銃を入手したり作製したりするためにそのようなデータは必要としていないし、違法行為と認定したところで少なくともその行為を抑止することはできない。

今回の訴訟によって、Wilsonとその支援者たちの行動を縛り破産に追い込むことは可能だろう。だがその勝利はさほどのものではなく、誰の安全性も高めることがないことは確かだ。残念ながら、解き放たれた悪魔はもう箱に戻せないのだ。

[原文へ]
(翻訳:sako)