Amazonの第二本社撤回でNYCは何かを失ったのか

意地悪で押しの強いニューヨーカーたちに付き合うよりも、第二本社計画を撤回することをAmazonは選んだ。そして事の推移を見守っていた人たちは、ニューヨーク市(そして地元の政治家)は抵抗したから損をしているとほのめかしている。

彼らは間違っている。

ニューヨーク市の現在の失業者率は4.3%で、国平均の3.9%より高いが、それでもおかしい数字ではない。Amazonの2万5000もの雇用(高給の仕事だ)を生み出すという約束は、この失業率の数字を少なくするかもしれない。しかしそうした創出される職にニューヨークやクイーンズの住民が就けるというはっきりとした保証はない。そうした職が、他の地域からやってくるAmazon社員に流れるかもしれないことを示す動きもある。

Amazonが第二本社をニューヨークに置くということが発表される前からAmazon社員はクイーンズ地区の不動産を購入し始めていた。

ニューヨークにオフィスタワーを建設するためにAmazon(世界で最も時価総額の大きな企業の一つだ)に何十億ドルもの税制上の優遇措置を与えないなんてニューヨーカーは馬鹿だ、という反応は、この国が市民の利益より企業の利益を優先していることの表れだ。

商業をAmazonに引き渡すことなしにニューヨークが地元経済を浮揚させるためにできることはある。クイーンズにオフィスを構えるためのインセンティブはニューヨークにすでにあるのだ。

さらに重要なことに、クイーンズの住人はAmazonがやってくることで周辺が様変わりするのではないかというもっともな懸念を抱いていた。

地元の政治家が誇張しない、というわけではない。ニューヨークの政治は汚職、収賄、ゆすり、おかしな駆け引き(私は交渉の場にはいなかった)と全く無関係ではない。しかし、どちらの側にも“過ちがあった”とは言えるだろう。

長期的にはAmazonはニューヨークの経済に恩恵をもたらしていただろう。そしてAmazonの幹部は地元住民の懸念に耳を傾け、成功例となっていたかもしれない。

というのも、Amazonがニューヨークの経済にとって有益になる確固とした理由があるからだ。第二本社をニューヨークに置くというニュースが発表されたあと、Noah SmithはBloombergに以下のように書いている。

Amazonはロングアイランドシティに設けるオフィスの資産税を払うだろう。また、法人税も払う。これは利益に基づいてではなく、資本ベースでだ。従業員、特に高給取りの従業員はニューヨーク市に個人の所得税も払う。もちろんそうした税金のいくらかは、市がAmazonに約束したインセンティブと相殺される。インセンティブは最大20億ドルで、Amazonが何人雇うか、いくつ建物を建設するかによって変わる。そうしたインセンティブは、企業の投資をひきつけるのには役に立たない。しかし長期的には、ニューヨーク市が第二本社から得る税収はおそらくコストをかなり上回るものとなるだろう。

しかも、ここには、周辺のビジネスや不動産価値へのAmazon効果は含まれていない。他のテクノロジー企業はAmazonがいるためにクイーンズに移ってきたがるだろう。従業員はラテからMRIに至るまであらゆるものを購入するのにお金を使う。第二本社が地元に及ぼす経済効果は年間170億ドルとの予測もある。その数字を半分に割ったとしても、そして推測が楽観的だったとしてもクイーンズの経済効果は最初の費用をすぐに取り返すだろう。これは、たとえば悪のささやきがあったウィスコンシン州のFoxconn工場とはまったく異なる(編集部注:Foxconnはトランプ大統領との話し合いの結果、工場計画を復活させた)。

そうした恩恵は本当だろう。しかし、雇用や支出が地元経済、住宅、交通、そして新住民の需要のある行政サービスに及ぼす影響を考えたとき、ニューヨークのような市にとってその恩恵がどれだけのものになるのか、を測るのは難しい。

シアトルやサンフランシスコが直面している住宅危機はまさしく、テクノロジー企業が急激に成長するとき(そこに富が伴うとき)どうあって欲しいのか行政が注意しなければならないことを示すものだ。

いずれにせよ、米国の都市はテック企業により急激に様変わりしている。テクノロジーが国の経済をデジタルを持てるものと持たざるものに二分したように、テクノロジー企業は持てる都市と持たざる都市を作り出している。

ブルッキングス研究所のMark MuroとRobert MaximはUS NewsとWorld Reportで下記のように指摘している。

学者は、熟練労働者への偏見もあり、テックが都市のヒエラルキーを変えるかもしれないと何年も疑いの目を向けてきた。10年以上前、研究者のPaul Beaudry、Mark Doms、Ethan G. Lewisは、パーソナルコンピューターを最も初期に素早く導入した都市では、相対的賃金が最も早く増加するとの考えを示した。いまや、我々が行なった調査も含め、デジタルテクノロジーが都市経済の成長に大きく貢献し、デジタルテクノロジーの大きなインパクトによりボストンやサンフランシスコのようなスーパースター都市が他都市を大きく引き離しているというさらなる証拠がある。

プリンストンのエコノミストElisa Giannoneは最近、1980年からの都市における賃金の変化をまとめて発表した。そこには、熟練したテック労働者とテック産業集合化の面で恩恵が増大したことが反映されている。同様に、ブルッキングスの研究でもかなりデジタル化された都市、往々にして沿岸のテックハブである数少ない都市はさらにデジタルになり、成長や収入でも抜きん出ていることがわかった。我々が“全てのデジタル化”と呼ぶものは、アメリカの経済情勢の不均一をさらに悪化させている。

ナッシュビルにオペレーション・センターを設けるというAmazonの判断は地元にはるかにポジティブな結果をもたらす、と評価するのは簡単だ。

しかしアメリカの都市をミスコンテストのようなスタイルで競争させ、都市が数十億ドル企業をなだめるのに懸命になるのは、実に不快だ。

地元コミュニティの怒りをかうことなく都市でいかに発展するかという例としては、Googleがいかにニューヨークで発展しているかが良い参考例になる。Googleはニューヨークに1万4000もの雇用をさらに生み出そうとしていて、ウェストサイドのキャンパス拡張に10億ドルを投じることも約束した。

見たところ、Googleはニューヨークの、あるいは他都市からやってくる人材争奪で存在感を増している。それは、ニューヨークが戦略上重要だからだ。Amazonのニューヨーク本社を撤回するという決定はそうした人材へのアクセスを失うだけでなく、他のテック企業がニューヨークに進出する機会を逸することになり、またはローカル企業にとっては優勢を維持することを意味する。

なので、ニューヨークの地元テックコミュニティがクイーンズに次のAmazonをつくることで2万5000もの雇用を提供し、それを達成するためにコミュニティとうまくやっていくことを祈るばかりだ。

最近、デモクラシーは神を金に取って変えた宗教のようだ。Amazonの追い帰しは、ニューヨークが少なくとも市民の責任を方程式のどこかに盛り込んだことを表している。

イメージクレジット: David Ryder / Getty Images

原文へ 翻訳:Mizoguchi)

Amazonは過去を見て未来を作る

この20年間で、スマート家電は夢から日常へと進化した。家電量販店Best Buyの中を歩けば、わずか数分でセットアップできる製品が並んでいる。素晴らしいことだ。おまけに簡単に使えるのも嬉しい。大手からも小さなメーカーからも、照明やドアの鍵やスクリーンが発売されている。しかし、そこに問題がある。規格が統一されていないことだ。そんな中で、自社で販売する製品を統合して消費者や量販店に提供するというAmazonの方法は、解決策になり得る。

もちろん、どのスマート家電も役に立つのだが、いっしょにしたときにうまく協調してくれない。スマートホームは、スイッチを入れれば電灯が点くといった具合に簡単なものでなければいけない。AmazonはメッシュWi-FiのスタートアップEeroを買収したことが、それを物語っている。2つ3つより多くのスマート家電からなるスマートホームを形成するのは、至難の業だ。うまく使えなくなる要因がいくつもあり、スマートホームがトランプタワーのように頼りなく感じられてくる。

平均的な消費者にとってベストなものは、Amazonにとってもベストだ。スマートホームをできる限り簡単で便利なものにするには、それを提供する企業は、どの入口からでも同じ感覚で使えるように環境を整えることが大切だ。これはAppleがスマートフォンで実施している方法であり、Appleは、長年、もっとも簡単でもっとも安全なスマートフォンの使用環境を提供してきた。

理屈からすると、Amazonは、Amazon EchoにEeroルーターを同梱させるとか、Echo製品にメッシュネットワークを組み込むことを考えるだろう。いずれにせよAmazonは、Fire TVとEcho製品がAmazonのコンテンツ配信サービスを安定的に利用できるようにするだろう。それが、Amazonがスマートホームで儲ける形だからだ。

Devinが素晴らしい記事を書いて説明しているが、メッシュネットワークは、すべての部屋に入り込もうとしたAmazon自身が生み出した問題の解決策となる。本格的なスマートホームにWi-Fiは不可欠だが、Wi-Fi以外のネットワークもあれこれ存在する。スマートホームとは複雑なものだ。その始まりは20年以上前まで遡る。

無線ネットワークがまだ一般に普及していなかったころ、マニアや金持ちが立てた家では、エレクトロニクスを利用するために他の方法に頼らざるを得なかった。今でも、そのころのプロトコルの新しいバージョンを使っている製品は現役だ。Z-WaveやZigBeeといった通信方式を使えば、ホームセキュリティー・システムに無線監視カメラを接続したり、通常ならネットワークとは無関係なコーヒーメーカーや電灯などを操作できるようになった。

後に登場した無線通信規格は、Z-WaveやZigBeeと競合することになった。2000年代の初めにInsteonが現れ、無線電波と電灯線網を利用した冗長なネットワークを提供した。2014年には、Samsungの協力を得たNest、Qualcomm、ARM、その他の企業がThreadネットワーク規格を導入し、現代的な冗長性と高度な安全性をもたらした。それだけではない。Bluetooth 5、Wi-Fi HaLow、そして見渡せる範囲で使える赤外線信号を使った製品もある。

こうした競合する通信方式によってグループが分かれるため、それらに属する製品を同時に使ってスマートホームを形成し、ひとつのデバイスですべてを操作することは困難になる。スマートホーム製品の初期段階である現在は、さまざまな製品の統一的なコントロールを可能にするために自社製品の使用を促すという形をAmazonとGoogleが作り上げている。

Appleはそれを実行し、なんとか成功した。HomeKitフレームワークでは、iOS機器を家の中央コントロールポイントとして使うようになっている。電灯を点けたければ、iOSに表示されるボタンをクリックするか、今ならHomePodに話しかけるだけでいい。宣伝のとおりに機能してくれるが、対応する製品はAppleの認証を受けなければならず、そのため使える製品の数はAmazon Echo対応のものよりも少ない。

一方、GoogleとAmazonは両手を大きく広げてスマートホームに入ってきた。あらゆる製品に対応する姿勢を見せた。

それが功を奏した。この2年間でスマート家電メーカーは、自社製品がGoogle AssistantやAmazon Alexaに対応することで大きく前進できた。先月開催されたCESでは、便器がAlexaに対応したと発表されてジョークのネタにもなったぐらいだ。

スマートトイレには恐れ入るが、これらネットワークに接続される製品のすべてが、それぞれにセットアップを必要とする。すべての電灯、暖房の温度調節器、トイレも、初めてのユーザーがスマートフォンのアプリを操作して快適に使うことを要求している。ネットワークの設定がどうなっているのか、トラブルが起きたときに何をググればいいのかをユーザーが心得ているものと想定されている。なぜなら、トラブルはかならず起きるからだ。

AmazonのAlexaアプリは助けてくれない。ひとつのアプリは、音声通話、スキルの設定、遠隔操作、Alexaへのアクセスなど、さまざまな機能がに支えられている。ひとつのアカウントにいくつものEchoを登録してしまうと、もう仕事が多すぎて手に負えなくなってしまう。

何かを変えなければ。

スマートホームが新しいデモグラフィックに売り込みをかけようとするなら、難しいものは取り除かなければならず、集中コントロールが最重要となる。ITに詳しくない人でも、音声コントロールハブをいくつか買ってきて、照明をつないで、暖房の温度調節器をつないで、それらすべてをひとつのアプリで操作するよう設定できなければならない。個々の製品のネットワーク方式が異なっていてもだ。

Amazonはすでに、異なるスマートホーム用無線プロトコルに対応するという大きな一歩を踏み出している。2017年、AmazonはEcho Plusを発表した。このバージョンのEchoスピーカーは、ZifBee(ZigBee用Philips Hue LEDライトシリーズ)に対応している。さらに2018年、AmazonはEcho Plusをアップグレードし、温度センサーを搭載して、インターネットがダウンしてもオフラインでスマートホーム・ネットワークを使ってスマート家電をコントロールできるようにした。

Amazonは、スマートホーム関連企業のポートフォリオを膨らませている。自社製のEcho製品に加えて、ビデオモニター付きドアベルのメーカーRing、無線ビデオカメラ・システムのメーカーBlink、そして最近では屋外用照明のメーカーMr.Beamsを買収している。これにEeroが加わり、AmazonによるWi-Fi環境を買い手に提案できるようになった。残るは、これらのデバイスの使用環境の統一だ。

どの企業でも、スマートホームで競争に勝ちたいと思えば、消費者の絶対的な信頼を得る必要がある。Amazonは、今のところ、ユーザーのプライバシーに関する問題を起こした回数がもっとも少なく、内容も比較的軽いもので済んでいる。Amazonが音声データを行政当局に渡していたことを、複数の記事が伝えた。またAmazonが所有するビデオモニター付きドアベルのメーカーの製品が近所を監視して個人の特定や差別につながるのではないかと問題を提起した記事もあった。

Amazonは、そうした中傷記事で評判を落とすことはないだろうが、製品の不良により高収益をもたらすサービスが提供できなくなることには耐えられまい。

スマートホームの世界を占領しようと戦いを続けているのはAmazonだけではない。Google、Samsung、そしてAppleは、この成長を続ける市場を真剣に見据えている。彼らは、Amazonがパイをすべて食べてしまう事態を許さないだろう。家電大手も、消費者に人気の製品を持つスマートホーム製品のメーカーの引き抜きを続けてゆくだろう。Arlo、ecobee、Belkin、Wyze Labs、sevenhugs、Brilliantのような企業を買収しようと目を光らせているのだ。これらの企業は、彼らが目指す分野で最高の製品を作っている。大手家電メーカーがこれまでに買収した企業の隙間を埋めることで、完全に統一された使用環境を消費者に提供しようと目論んでいる。

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(翻訳者:金井哲夫)

AWSがハードウェアレベルのコントロールを必要とする顧客のためにベアメタルインスタンスを提供

Infrastructure as a Service(IaaS, サービスとしてのインフラストラクチャ)といえばそれは通常、マルチテナントの環境に存在する仮想マシンを、お金を払って利用することだ。つまりそれは、一定の共有リソースを使用する。多くの企業にとってはそれでも十分だが、もっと独自のコントロールをしたければ、他のユーザーに共有されない、全体を自社でコントロールできるハードウェアリソース一式が収まっている、シングルテナントのシステムを選ぶだろう。このやり方のことを、業界用語で“ベアメタル”と呼ぶ。そして今日AWSは、新たに5種類のベアメタルインスタンスを発表した。

このようなサービスはひとつの物理サーバーをユーザーが独占し、プロセッサーやストレージなどのリソースを自分でコントロールすることになるので、料金は高くなる。でもこれは一連のプロダクトの一部であり、すべてのクラウドベンダーが提供している。ユーザーは、ふつうの仮想マシンを使って、ハードウェアのコントロールほとんどなしを選んでもよいし、あるいはベアメタルを選んでハードウェアを細かくコントロールしてもよい。どちらにするかは、クラウドに載せるワークロードの性質や目的による。

この新しいインスタンスを発表するブログ記事でAWSは、具体的なユースケースを述べている: “ベアメタルインスタンスでEC2の顧客は、詳細なパフォーマンス分析ツールを利用するアプリケーションや、ベアメタルのインフラストラクチャへの直接アクセスを必要とする特殊なワークロード、仮想環境ではサポートされないレガシーのワークロード、そしてライセンス制限のあるティア1のビジネスクリティカルなアプリケーションを動かすことができる”。

5種類のベアメタルインスタンスはそれぞれm5.metal、m5d.metal、r5.metal、r5d.metal、およびz1d.metalと呼ばれ(憶えやすい名前だねAmazonさん〔皮肉!〕)、さまざまなリソースを提供する:

チャート提供: Amazon

これらの新しいプロダクトは今日(米国時間2/14)から、ユーザーの要求に応じて、オンデマンドインスタンス、リザーブドインスタンス、またはスポットインスタンスとして提供される。

関連記事: WTF is cloud computing?…クラウドコンピューティング入門(未訳)

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

Amazon Goの初の米国外店舗はロンドンになるかも

Reutersが取り上げたThe Grocerの報道によると、Amazonはロンドン中心部に小売スペースを確保した。Amazonはまだ米国外でAmazon Goを展開していないことから、このスペース確保は意味深長だ。

いま、米国内にAmazon Goは10店舗ある。4店舗がシアトルに、もう4店舗がシカゴ、そして残り2店舗がサンフランシスコだ。このパターンから察するに、Amazonはあまりにも少ないボリュームでの展開の仕方はしたくないらしい。進出都市を決めたら、複数のAmazon Goを展開する。同じことがロンドンでも起きるか、見てみよう。

Amazon Goは通常のグローサリーストアとは少し異なる。店舗に入るときはAmazonアプリを立ち上げ、スマホに表示されたQRコードをスキャンする。すると、店内で欲しい商品を選んでそのまま店を出ることができる。

AmazonはAmazon Goにたくさんのカメラやセンサーを設置し、客が何を購入するのかいつでもわかるようにしている。少し気味が悪いように聞こえるかもしれないが、これにより客は時間を節約できる。欧州のプライバシー監査当局がAmazon Goのコンセプトを許可するかどうかは興味深いところだ。

他の報道によると、Amazonは米国内の空港での小売スペース確保にも乗り出しているということだ。Amazonは人通りの多いところで自社のテクノロジーを示すために小型のレジなしGoストアを空港に開店させることができるかもしれない。

Amazonが次に何をするかは予測がつかない。Amazon GoストアはAmazonのブランドを促進し、わずかながらの収入を生み出すための手段にすぎないのだろうか。それとも、大きなゴールを目指しているのだろうか。一方でAmazonはWhole Foodsも所有していて、米国中にあるWhole Foodsにはまだレジが置かれている。

原文へ 翻訳:Mizoguchi)

ニューヨークの政治家たちは第二本社が来なくなってもAmazonを批判

最初の進出計画のときと同じように、Amazonがニューヨーク市のクイーンズ区に第二本社を作らないという今日のニュースは、好悪さまざまな反応の洪水に見舞われた。企業誘致に賛成な人びとや不動産業界は、荷物をたたんで出て行くというリテール巨人の決定を非難している。本誌にも今日(米国時間2/14)の午後いっぱい、いろんな立場に人たちからの反応が押し寄せたようだ。

一方地元の政治家たちは、そのニュースをむしろAmazon自身の足元に突っ返しているようだ。

本誌TechCrunchに提供された声明でニューヨーク市長のBill de Blasioは、Amazonの変節について、いかにもニューヨークらしい辛辣な感想を述べている:

“ニューヨークでそれをやるには、よほどの覚悟が必要だ。われわれはAmazonに、世界でもっとも偉大な都市における良き隣人となり、事業を行なう機会を与えた。しかしAmazonは、コミュニティと協働する代わりに、その機会を投げ捨てた。われわれには世界最良の人材がいて、毎日のように、より強力で万人にとってより公平な経済を育てている。Amazonがその価値を認識できないなら、そのコンペティターが認識するだろう”。

もちろん、de BlasioはAmazonの最初の決定のキーマンだった。市長は、Amazonに対する税の巨額な優遇措置などを取り決めた‘密室の協議’を多方面から批判された。わずか三日前には彼は、その計画を“ミッションクリティカル”と呼んだ

市長の現在の立場はどうやら、本来の彼らしくないもののようだ。

一方Corey Johnson議長は、最初から反対派の先頭に立っていた。彼はAmazonの代表者たちが呼ばれた市議会の会議で、税の優遇措置や都市インフラ、そして同社が長年、社員の組合結成に反対していることを問題視した。

彼の声明はこう述べている: “私が一緒に仕事をしたいと願う企業は、ニューヨーカーたちと積極的に関わりを持ち、世界で最良のビジネスの町であるニューヨーク市が抱えるさまざまな課題に、共に取り組んでいける企業だ。私はこれが、ハゲタカ資本主義とわれわれの血税の最良の使い方に関する、会話の始まりになることを希望する。そう、私ならヘリパッドではなく大量輸送公共交通機関を選んだだろう”。

当然ながら、ニューヨーク市のDSA勢力たちも、やはり祝賀ムードだ。彼らの声明に曰く: “Amazonの進出は、労働者階級のクイーンズ区の住民とニューヨーカーたちを資本主義が抑圧するやり方の、ひとつの例にすぎない。何百万人ものニューヨーカーたちが未だに、基本居住権すら認められず、家賃の値上げや退去命令、追い立てなどの脅威におびえている”。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

Amazon、ニューヨーク市の第2本社建設を断念

Amazonは第2本社の一つをニューヨーク市内に建設することを断念すると発表した。クイーンズ区のロングアイランドシティーの第2本社計画がキャンセルされた原因は地元の住民、議員からの強い反発によるものだ。Amazonが長年反労働組合的な姿勢を取ってきたこと、また自治体のAmazonに対する税制優遇措置などが反対の理由として挙げられていた。

TechCrunchはAmazonから「候補地選定を再開する考えはない」とする長文の声明を受け取った。Amazonはバージニア州アーリントンの第2本社、またテネシー州ナッシュビルでの大型フルフィルメントセンターの建設計画を推進する。

こちらがAmazonの声明の全文だ。

慎重に考慮を重ねた結果、クイーンズ区ロングアイランドシティーにAmazonの第2本社を建設する計画を進めることを中止すると決定した。 Amazonが新本社建設にコミットするためには州政府、地方地自治体との長期にわたる良好な協力関係を築かねばならない。これには首長、議員による積極的な支持を必要とする。世論調査によれば、ニューヨーク市民の70%がAmazonの計画とそれにともなう投資を支持している。しかしながら州や自治体の多数の政治家がわれわれの進出に反対し、ロングアイランドシティーの建設プロジェクトを前進させるために必要な良好な関係を構築するつもりがないことを明らかにしていた。

このような結論となったことを遺憾に思っている。われわれはニューヨークを愛しており、そのダイナミズム、市民、文化は比類ないものと考えている。ことにロングアイランドシティーではスモールビジネスのオーナーや住民など、希望に溢れ、前向きに思考する多くのコミュニティー・リーダーと知り合うことができた。現在ブルックリン、マンハッタン、スタテンアイランドでは5000人以上がAmazonで働いており、われわれはこのチームをさらに拡大していくよう務める。

クオモ・ニューヨーク州知事、デブラシオ・ニューヨーク市長、またそのスタッフは第2本社を招致するために献身的かつ熱意に溢れる努力を払ってきた。われわれはこうした支援に深く感謝する。ニューヨークの市民を代表してクオモ知事、デブラシオ市長はAmazonの投資と職の創出を支援するために全力を挙げてきた。われわれはこうした努力に適するような感謝の言葉を知らない。【略】

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第2本社として選定された他の地区を異なり、クイーンズの場合はAmazonの計画発表と同時に地元からの反発が起きていた。反発の原因の一つはすでに不人気なビル・デブラシオ市長とAmazonの密室取引がある。ニューヨーク市のインフラは限界に近く、住宅事情も逼迫していた。さらに第2本社建設予定地が学校や公園、低所得者向け住宅と小規模な商業区域のための再開発用地だったことも助けにならなかった。

Amazonの代表者は市議会で繰り返し激しい攻撃を浴びた。「ニューヨークは組合の町だ」というスローガンを掲げる議員もいた。先週、Amazonはロングアイランドシティーの計画をキャンセルするかもしれないと報じられたが、その時点ではTechcrunchに対して「撤退の考えはない」と述べていた

しかもわずか2日前にはデブラシオ市長はミッション・クリティカルな計画だと述べていた。残念ながらこの「ミッション」は空中分解したようだ。

画像:Andrew Lichtenstein/Corbis / Getty Images

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滑川海彦@Facebook Google+

ニューヨーク市長Bill de BlasioがAmazonの第二本社誘致は“ミッションクリティカル”と主張

ニューヨーク市の市長Bill de Blasioが今日(米国時間2/11)の州議会のヒアリングで、Amazonがクイーンズ区ロングアイランドシティに第二本社を建設することは“ミッションクリティカル”だ、と述べた。De Blasioのこの発言の数日前には、住民と地元政治家たちがAmazonにこの計画を考え直すよう促した、と報道された。Amazonは、これにより25000以上の雇用が作り出される、と主張している。

NY1によると、De Blasioは議会に、ニューヨーク市はAmazonが作り出す雇用と税収を必要としている、と述べた。しかし市と州の民主党議員の多くは、この計画に断固として反対している。とくに問題となるのが、総額で最大28億ドルになると言われる税の優遇措置だ。

The Washington Post(AmazonのCEO Jeff Bezosがオーナー)の先週金曜日の報道によると、Amazonは第二本社のニューヨーク市支部の計画を再検討しているという。同社はまだロングアイランドシティに第二本社用のオフィススペースをリースも購入もしていないし、ニューヨーク州の最終承認が得られるのは2020年以降だから、今なら引き返すのも容易だ。これに対し、第二本社のそのほかの支部が置かれるバージニアでは先週、Amazonに対する最大7億5000万ドルの助成金が、州議会により承認された

Amazonは同社のニューヨーク市における計画の今後について公式の声明を出していないが、再検討しているという報道は、住宅問題や都市インフラへの影響を心配している住民から歓迎されている。

事態をさらに複雑にしているのが、州上院議員Michael Gianarisの存在だ。ロングアイランドシティを含むクイーンズ区選出の彼は、Amazonの第二本社計画について、きわめて否定的だった。その彼は、計画の承認に関わるニューヨーク州公共機関管理委員会のメンバーだ。彼は、市や州の補助金は交通、学校、公営住宅など地域の事業に費消されるべき、と主張している

州議会に対して計画を擁護したDe Blasioは、“Amazonが得る助成金の大半は法に規定のある慣行的な優遇措置だ”、と述べている。

画像クレジット: Bloomberg

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

Amazonが家庭用メッシュルーターのEeroを買収してEcho製品拡販のベースに

Amazonが、同社のスマートホーム製品系列を大きく拡大しようとしている。同社は今日、ベイエリアの家庭用メッシュルーターのスタートアップEeroを買収する意図を発表した。それは、Alexaをコネクテッドホームの主要機能に育てようとしている同社にとって、相性ぴったりの製品だ。

創業5年目を迎えるEeroにとっても有意義だ。同社は家庭用メッシュルーターの分野に早くから参入し、高名な投資家たちからの支援も受けたが、苦戦していた。昨年は同社のワークフォースのほぼ1/5、30名の社員をレイオフした

Amazonはなんと言ってもお金持ちだし、昨年はAlexaをHuaweiやNetgearのルーターに接続するデモをしていたから、このカテゴリーに目をつけていたのだ。そしてそれも合理的な判断だ。家庭内ネットワークの圏域を拡大するメッシュルーターがあれば、Echo Dotsなどのデバイスを、家のどの部屋にも置ける設計にできるだろう。

Amazonは近年、RingやBlinkなど、いくつかの著名なホームオートメーションスタートアップを拾い上げて、家庭内のAlexaを軸とする独自のスマートホームエコシステムを育てようとしている。多くの場合Amazonはスタートアップのブランドをそのまま維持するから、それはEeroにとって嬉しい徴候だ。ただしRingに関しては、そうならなかったけど。

AmazonのSVP Dave Limpがプレスリリースで述べている: “Eeroのチームにはとても感銘を受けている。彼らは、コネクテッドデバイスをつなげばすぐにそれが使えるようなWi-Fiのソリューションを、非常に早い時期に発明した。私たちもそのビジョンを共有して、スマートホームの体験をより容易にし、顧客のためのイノベーションにこれからも引き続きコミットしていきたい”。

買収はまだ、お役所の承認を待つ段階で、価額等の詳細は公表されていない。

関連記事(未訳)

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

Amazonはニューヨークの第二本社を考えなおしているかもしれない

第二本社をニューヨークに開くというAmazonの決定は、最初から異論が多かった。同社はおよそ25000の雇用創出を掲げていたが、市民や地元の行政は、暗黙で約束されている税の優遇措置や住宅問題、老朽化している同市のインフラストラクチャに及ぶ過負荷、などを心配していた。

予想外の摩擦に出会ったAmazonは、クイーンズ区ロングアイランドシティ地区という立地を再検討したらしい。そのニュースは、Bezosが保有するWashington Post紙に載っている。

同紙が紹介している、匿名氏も含む“近い筋”からの意見は、“ニューヨークの政治家たちが歓迎していないプロジェクトをあえて導入する価値があるのか? しかもバージニアやナシュビルなら、大歓迎じゃないか”、というものだ。

しかし何か月もかけた候補地探しで、各地の地元行政が次々と対応に失敗してきたのを見ているAmazonに、これ以上遅らせる気はない。そして確かにニューヨーク市も、上層部の秘密会議等ではAmazonにレッドカーペットを提供してきたのだ。市議会や、Alexandria Ocasio-Cortezのような著名な進歩的政治家たちが反対したにもかかわらず。

Amazonは、バージニアでは円滑に話が進んだが、ニューヨークにおける地元雇用をめぐっては行政が計画を調査し、有権者からのフィードバックを待ったりしたので、進捗が遅れた。

アップデート: Amazonはこんなコメントをくれた: “私たちは、新しい地域社会…小企業のオーナーや教育者、コミュニティのリーダーなど…との融和に努めている。地元雇用のパイプラインの構築に関しても、ワークフォースの教育訓練や、ニューヨーク市の何千もの生徒たちのコンピューターサイエンスのクラスに出資するなど、私たちが良き隣人であることを示す努力を重ねている”。

〔ニューヨークの雇用育成努力:〕
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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

ハイテク企業は健康管理の方法を変えられるか?

[著者:Cyrus Radfar]
V1 Worldwideの創設パートナー。

2018年9月の時点で、2012年からアメリカのハイテク企業上位10社が医療関係企業の買収に費やした総額は47億ドル(約5170億円)にのぼった。これらの企業による医療関係企業の買収件数は年々増加している。これは、アメリカのハイテク企業が医療への関心を高めている証しであることに違いはないが、ここにいくつもの疑問がわく。彼らの目的はなんなのか、また、医療業界はどんな帰路に立たされるのだろうか。

もうひとつ、なぜ医療がアメリカのハイテク大手企業の最新のターゲットになったのだろうか。表面上、この2つは気の合う仲間には見えない。片方は機敏で腰が軽いが、もう片方は鈍重で思いに耽るタイプだ。片方は未来に恋い焦がれ、もう片方は過去と共に生きようと必死になっている。

にも関わらず、これが事実だ。近年は、Apple、IBM、Microsoft、Samsung、Uberが医療に浮気し、データを収集する健康アプリ医療患者がタクシー配車のデジタルサービスを受けられる機器などを出している。なかでも、このところ医療分野に深く入り込もうとしているのがAmazonとAlphabetの2社だ。この2つの企業は、とくに健康保険を視野に入れているようだ。

Alphabet、Amazon、AppleのA

CB Insightsによれば、現在、アメリカで医療分野にもっとも多く投資しているハイテク企業はAlphabetだ。Alphabetの子会社Verilyは、テクノロジーで健康への理解を深めることに専念している。これもまたAlphabetが買収したDeepMindは人工知能(AI)によるソリューションを提供しているが、AlphabetはそのAIを活用し、データ生成、データ検出、生活習慣の改善で病気と闘う方法を探っている。Alphabetはまた、Oscar、Clover、Collective Hearlthといった、どれも健康保険分野に波風を立たせようという企業に相当額の投資を行っている。

一方、Amazonは、昨年の夏、インターネット薬局のスタートアップPillPackを買収するという、医療分野への大きな動きを見せて周囲を驚かせた。そして2018年10月には、音声アシスタントAlexaが風邪を感知する機能の特許申請を行った。さらにAmazonは、Heraという内部プロジェクトに取り組んでいる。これは、電子カルテ(EMR)のデータを使い、誤診を修正するというものだ。さらに昨年の1月、Amazonは、従業員の健康管理計画でBerkshireとJP Morganと提携したことを発表した。片方の目では一般市場への拡大を見据えつつ、企業の従業員を実験台にして健康保険の研究をしようという戦略が見え隠れしている。

Appleも黙って見ているわけではない。同社は2016年からAetnaと共同で、個々の顧客に合わせた運動と健康上の助言を提供し、健康的な生活習慣の実践を促す活動を行っている。

これら3つの企業は医療分野に大きな一歩を踏み出しているが、とくに、AlphabetとAmazonにとっては、医療保険が長期戦略の柱になりそうだ。

ハイテク大手は濠を超えられるか

アメリカの医療と健康保険の市場をハイテク産業が拡大したのは、今回が初めてではない。医療業界は、長い間、座ったアヒルのように何もせず自滅を待つ存在だと見なされてきた。それは事実であり、意外な話ではない。アナログシステム、複雑な縦割り組織、時代遅れの技術。デジタル改革の筆頭候補であり、その受け入れ準備ができている分野だと誰もが思う。最新のデジタル技術は、この時代遅れながら収益性の高い産業を合理化し、効率化し、利用者中心の形に変革できる。

それが、2013年、Health Heroの共同創設者でRock Healthの顧問を務めるGeoffrey Clappによって創設された、モバイル医療サービスを提供するBetterの設立の狙いでもあった。このスタートアップは、開業初日から投資や、過剰な問題をひとつの単純な方法で解決するという途方もない作業に翻弄された。そして設立からわずか2年後、Betterは敗北を認めることになった。

「私たちは、膝間接手術や脳卒中といった、あらゆる病状、あらゆる解剖学的状況に対処するコンシェルジュ・サービスを提供しつつ、包括支払い制度やその他の多岐にわたる支払い制度への対応を行なっていました」とClappは、2016年にBetterを振り返り話している。「人は製品を気に入ってくれるかも知れませんが、どんな問題にも対応して欲しいと望むのです。私たちはよく自分たちに言い聞かせていました。これはバーティカル市場なのだと」

健康保険は、アメリカの他の医療産業分野と同じく頑固であり、参入の手前ですでに巨額の資金を必要とするため、スタートアップには魅力の薄い分野だ。

規模、資本、アイデアに関わらず
医療産業への参入はハイテク企業にとって
容易なものではない

ここ数年のケーススタディーで興味深いのは、Oscar健康保険だ(ちなみに昨年、Alphabetから3億7500万ドル(約413億円)の投資を受けた)。Oscarは、2012年、テクノロジーと顧客体験からの洞察を活かして健康保険を簡素化するという条件のもとで設立され、健康保険業界を撹乱したことでスタートアップの鑑のように見られてきた。しかし、その道のりは決して平坦ではなく、巨額の投資を受けながらも、未来は混沌としている。

同社は、個人向け医療の市場で奮闘し、事業に必要な医師や病院とのネットワーク作りにも力を入れた。設立から7年目の2018年に初めて黒字の四半期を記録したが、そこに至るまでには資金の大量出血を経験している。2016年には2億ドル(約220億円)の損失もあった。もしOscarが、アメリカの健康保険に変革をもたらしたスタートアップの成功物語だとしたら、それは、この事業がどれだけ過酷な戦いであるかを知らしめる厳格な指標ともなる。

もちろん、AmazonとAlphabetは、健康保険という長期計画において損失を心配する必要はない。それでも、数々の規制や現実主義を乗り越えなければならず、こればかりは単に資金をつぎ込めば解決できるというものではない。企業規模や資金によって、自動的に信頼を獲得できるわけでもない。それは「思っていたほど広範なインパクトを与えられなかった」として2017年にGoogle Healthのサービスを打ち切ったGoogleが経験したことだ。

AlphabetやAmazonといった企業は、自身の失敗、仲間の失敗、Betterなどのスタートアップの失敗から学んでいるようだ。Alphabetは、今回は頭から飛び込むことは控え、特定の疾病に的を絞った。病院と提携し、AIに関する膨大なノウハウを武器に大勢のアメリカ人が抱える問題に立ち向かっている。Amazonは、Berkshire、Hathaway、JP Morganと提携し、ミクロのスケールで問題点を綿密に調べながら、引っかき回すべき市場を時間をかけて研究している。

成長するか死ぬか

もしアメリカの健康保険業界が本当に征服困難であるなら、ひとつの疑問が浮かぶ。ハイテク企業はどうして再挑戦しないのだろうか。答えは簡単。利益だ。

アメリカの健康保険業界の、2017年の健康保険と生命保険の純保険料は5949億ドル(約65兆4000億円)だった。これはAmazonの2017年の利益である1780億ドル(約19億6000万円)の3倍を上回る額であり、Alphabetの1110億ドル(約12億2000万円)の何倍にもなる額だ。

まだある。

年間の事業収益が1000億ドルを超えると、有意義な成長につながる新しい道を探すのが大変に困難になる。これは、AlphabetやAmazonのような企業には厄介な問題だ。彼らには、成長と規模の拡大が生命線だからだ。それが鈍れば、エコシステムから脱落すると見込んで、ハゲタカどもが頭の上を舞い始める。そしてそれが株価に響く。

近年、ハイテク大手企業は、他分野のバーティカル市場への拡大を成功させて、こうしたリスクを回避してきた。食品宅配サービス音声アシスタント自律運転車両など、ハイテク産業は帝国拡大の機会を求めて、新鮮なバーティカル市場を探し続けている。医療業界は、単に次なる征服目標にすぎないのだ。

行く手を阻む障害物

規模、資本、アイデアに関わらず、医療産業への参入は、どんなに気をつけたところで、ハイテク企業にとって容易なものではない。業界をかき回すことには慣れている彼らにしても、医療と健康保険はまったく別の生き物だ。

まず、規制の壁がある。薬を販売したり流通させるためには、複雑で費用のかさむいくつもの輪をくぐり抜けなければならない。そこでは米食品医療局や米麻薬取締局といった規制当局が目を光らせている。

これらの企業は膨大な独自のデータを
どのように活用するのかという疑問が
常につきまとう

そして、データとプライバシーの問題がある。ハイテク大手企業は、業界に長年居座っている既存企業にテクノロジーで勝ることができると信じているが、テクノロジーを活用しようとすれば、これまた厳しい個人情報保護のための規制に守られたデータへのアクセスが必要となる。とりわけ、健康保険に参入しようとする者には、乗り越えなければならない最大の障壁だ。

そしてそれらの上に、健康保険に参入したいと考えるハイテク企業が通らなければならない州ごとの保険規制制度がある。保険規制に関しては概して寛大だとされているユタ州で通用するものが、もっとも厳しいとされるカリフォルニア州では通用しない。

プライバシー、データ、国民皆保険

健康保険業界の主力選手となるための新規事業に挑むには、反対に打って出られる勇敢な人物が必要だ。成功しようと思えば、すべての人が喜ぶのとは違う道を行く必要もある。

まずは、これらの企業は膨大な独自のデータをどのように活用するのかという疑問符が常につきまとう。ハイテク企業はこの数年、自分たちのデータで金儲けをしていることを嫌った一般ユーザーの離反に揺さぶられてきた。しかし、そのデータが、その人の保険料の計算に使われるとしたらどうだろう。たとえば、健康的な食品を買っていたり、スポーツジムの会員になっていたり、日常的に運動をしていることを追跡するデバイスがあり、その人が健康的な生活を送っているとデータが証明してくれたなら、保険料が下がる可能性がある。

反対に、あまり体を動かさない人が不健康な食品や製品を買ったことがわかれば、保険料が徐々に上がるということも考えられる。

ジョージア工科大学Scheller College of Businessに在籍するプライバシー専門家であり、ホワイトハウスではクリントン大統領のもとで医療保険の相互運用性と説明責任に関する法律のプライバシーに関するルールを取りまとめたPeter Swireは、そこに危機感を覚えるという。「私の知る限りでは、AmazonのウェブサイトはAmazonが取得した利用者の情報を、提携する健康保険会社に提供できるとなっています」とSwireはViceのインタビューに応えて話している。「言い換えれば、データが医療機関の外へ流れ、健康保険会社で利用されることを阻むルールの存在を私は知らないということです」

接線:ハイテク企業が押すのは単一支払者制度かユニバーサルヘルスケアか?

ちょっと一息入れて、アルミ箔の帽子をかぶらせていただく。

つい先日の2017年、AetnaのCEO、Mark Bertoliniは単一支払者制度についてオープンに議論したいと話した。「単一支払者。国として議論しておくべきだったと思う」

単一支払者制度、いわゆる「メディケア・フォー・オール」(すべての人に医療を:国民皆保険)は、どちらもワシントンの進歩的な民主党の考え方だ。イギリスやカナダなどの国をモデルにした単一支払者制度の実現を目指す人たちは、すでに、医薬品業界と保険業界が送り込んだ強力なロビイスト団体に対抗している。ゲームの理論から言えば、世界で最も裕福な企業をロビイスト団体の味方につければ、アメリカでのユニバーサルヘルスケア(国民皆保険)の実現を遠くに追いやることができる。

これは、ハイテク企業が独自の保険方式を作り始める未来を思うときに、常に私につきまとう大きな「もしも」のシナリオだ。彼らは、政府の介入で民間の保険が奪われてしまうことを決して好まない。

さて、ここでアルミ箔の帽子を脱いで、陰謀めいた話から現実的な話に戻ろう。

現状よりはマシ

もちろん、AmazonやGoogleなど、健康保険への参入に興味を示す企業が、利用者に不利益をもたらよう、あるいはユニバーサルヘルスケアに反対するロビイスト団体のためにデータを使う可能性を示す証拠はない。実際、それらの業者が唯一わかっていることがあるとすれば、それはできるだけ多くの人を喜ばせることの重要性だ。彼らは、おもに個人的な体験から、ネガティブな評判の影響力の大きさを知っている。それは特定の製品やサービスに止まらず、事業全体にもダメージを与える。悪辣な金儲けに走れば、健康保険業界をかき回す可能性は、手を付ける前に、ことごとく失われる。

ハイテク企業は、それぞれのソリューションに特製ソースで臨んでくるだろう。

Amazonは、高度な効率性を武器にするだろう。無駄のない驚くほど高速な物流で製品を提供する。GoogleとAlphabetの子会社は、AIと予測的アプローチで挑んでくるだろう。そこでは、すべての人に、それぞれの分野の専門家に支えられた健康アシスタントが着く。Aiphabetのマシンやキオスクに立ち寄れば、簡単な健康診断ができる。Appleは、洗練された小売の経験を持ち、顧客の支配を好むことから、管理医療機構Kaiser Permanenteのようなバーティカルな方式を作り出すかも知れない。どの企業も、高品質な利便性を追求するはずだ。それらは実質的に、異なるタイプの消費者を対象にすることになる。

彼らが手の内を見せて、健康保険業界の既存企業と真っ向対決するようになれば、制度の対象となるすべての人たちのために、既存企業に置き換わる善意の企業という立ち位置で戦うことになる。それは結果的に、より良く、より安価で効率的なものを生み出す。2017年のMckinseyの調査によると、アメリカ人が求めているものを提供している保険会社は非常に少ないという。具体的には、保険料に見合った利便性、より統合された技術、健康増進のためのツールだ。

技術者が秀でることのできる分野がある。レベルの高いカスタマーケア、サービスの向上とコストの削減、これらを最新テクノロジーを取り込むことで実現する。それを健康保険に活かせれば、テクノロジーの約束を短期間に果たすことができるだろう。それは、時代遅れの業界を引っかき回すことだ。

ハイテク大手企業にとって、成長は血と同じ。そして、引っかき回す準備が整った健康分野のバーティカル市場は、奇遇にも、我々が生きてゆくために欠かせないものでもある。この戦いは見ものになる。Uberが荒っぽいスタートを切ったときのように、はたしてハイテク企業は規制を飛び越えて、議会を動かし、消費者の要求に応えさせることができるだろうか。

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(訳者:金井哲夫)

Amazonの2018年の買収は総額16.5億ドル、そのトップはPillPackとRing

このほどAmazonがSECに提出した10-Kファイル(年次報告書)は、同社が昨年行った昨年で最大の二つのM&Aのお値段を明かしている。それによると同社は、Ringにキャッシュで約8億3900万ドルを払い、PillPackに7億5300万ドル、そのほかの買収の合計で5700万ドルを払っている。

GeekWireが、そのファイルを最初に見つけて記事にした。

Amazonは昨年の早い時期に、同社のスマートホーム事業を支えるためにRingを買っている。それは2017年のBlinkの買収の直後だ。当時Ringの買収価額は、10億ドル以上とも報じられている。一方PillPackの買収は昨年の夏に行われ、“10億ドル弱”と報じられた。

今回のSEC提出書類では、買収価額は“取得された正味のキャッシュ”、とされている。つまりその取引の時点において買収された企業が帳簿に記載していた現金と負債を勘案した金額だ。報じられた額(10億前後)より低いのは、そのためである。

Amazonは2018年に行ったそのほかの買収の個別の価額を明かしていないが、買収の目的について次のように言っている: “Amazonが顧客により効果的に奉仕できるための技術とノウハウの入手”。でもそれらの一部はばれており、たとえばインドのTapzoの買収や、サイバーセキュリティ企業Sqrrlの買収は、いずれも4000万ドルと報じられている。

2018年の総額16億5000万ドルは、Amazonでは二番目に買収額が大きかった年だ。最大はその前の2017年、Whole Foodsを130億ドルあまりで買った年だ。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

Amazonのただでさえ透明でない透明性レポートがいっそう不透明になった

木曜日(米国時間1/31)Amazonは半年毎のレポートを公開し、政府から受けたデータ要求の回数について詳細を報告した。

数字そのものに見るべきところはなく、昨年後期は昨年前期と比べて急上昇も急落もなかった。期間中の召喚状、捜査令状、およびその他の裁判所命令の数は1736件で、前回の報告よりわずかに少なかった。Amazonは未だにEchoのデータに対する政府の要求について答えていないが、同社のAmazon Web Servicesのコンテンツについては報告があり、前回の253件から175件へと減少している。

しかし、これまでのレポートと比べて目立って欠けているのが、同社のサービスからデータを削除する要求の回数だ。

2018年前半のレポートで小売りとクラウドの巨人は、さまざまな要求に混じって、「ユーザーコンテンツやアカウントの削除」を要求する裁判所命令を受け取るかもしれないと書いていた。かつてAmazonは要求を「個別に」報告していた。

今はそれがなくなった。言論や表現の自由がかつてないほど重要になっている今、もうそれはない。ゼロすらない。

われわればAmazonに連絡をとり、なぜ削除要求を除外したのか尋ねたが、理由は一切返ってこなかった。

Amazonは長年、透明性レポートとは愛憎半ばする関係にある。その秘密主義はよく知られていて、ある時など記者に「これはオフレコで、ノーコメント」と言った。話す必要がなければ話したがらない会社だ。エドワード・スノーデンの暴露発言以降、それまで政府のデータ要求について公表してこなかった多くの企業がすぐに始めた。Amazonは監視スキャンダルの影響を直接受けてはいないが、とりあえず提出せず(しなくても平気だったので)、しかし後に屈服し、大手IT企業として透明性レポートを提出した最後の会社になった。

その時でさえAmazonのやり方はお粗末だった。

ほかの透明性レポートと異なり、Amazonのはたったの2ページで、ほとんどの部分が召喚から捜査令状、裁判所命令までそれぞれのタイプの要求に対して何をするかの説明に費やされている。図表なし、国別内訳なし、発表もなし。まるでAmazonは誰にも気づいてほしくないかのようだ。

それは何年も変わっていない。他社の多くがレポート内容を拡大する中(Appleはアカウント削除を報告し、FacebookMicrosoftTwitterGoogle始め多くの会社もあとに続いた)、Amazonのレポートだけはいつまでも変わらない。

そして、Amazonにそれが可能だったとい以外に正当な理由もなく、レポートはいっそうスリムになっている。

スマート家電が見聞きした情報を政府に開示するかどうかメーカーに聞いてみた

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

Amazon、Q4決算で予測越えもQ1ガイダンスは低め

Amazonはすばらしいホリデーシーズンを過ごした。本日(米国時間1/31)オンライン小売の巨人はQ4決算を発表した。売上724億ドルは昨年同期の604.5億ドルを越え、アナリスト予測の719.2億ドルも上回った。

著しく裕福な人物Jeff Bezosは、Alexaの記録的ホリデーシーズンが、強固な四半期を生み出した要因だと分析した。

「ホリデーシーズンのAlexaは非常に忙しかった。Echo DotはAmazonの全世界、全製品を通じて最も売れた商品であり、顧客はEchoファミリーのデバイスを昨年より数百万台多く購入した」とBezosが決算会見で言った。「Alexaに関わっているリサーチサイエンティストの数はこの一年で2倍以上に増え、チームの懸命な働きの結果は明白だ」

Amazon Web Service(AWS)も重要な役割を果たし、22億ドルの巨額な営業利益を上げた。AWSの売上74.3億ドルはアナリスト予測の72.9億ドルを越え、前年同期の51.1億ドルを大きく上回った。

すばらしい数字だが、 CNBCが指摘しているように、四半期の売上成長19.7%は2015年以来最低だった。ウォール街の反応は、Amazonが2019年Q1のガイダンスを下げたことでいっそう弱まった。Amazonは来る四半期の売上を560~600億ドルと予測しており、アナリスト予測の609.9億ドルを下回った。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

Amazon、Q4決算で予測越えもQ1ガイダンスは低め

Amazonはすばらしいホリデーシーズンを過ごした。本日(米国時間1/31)オンライン小売の巨人はQ4決算を発表した。売上724億ドルは昨年同期の604.5億ドルを越え、アナリスト予測の719.2億ドルも上回った。

著しく裕福な人物Jeff Bezosは、Alexaの記録的ホリデーシーズンが、強固な四半期を生み出した要因だと分析した。

「ホリデーシーズンのAlexaは非常に忙しかった。Echo DotはAmazonの全世界、全製品を通じて最も売れた商品であり、顧客はEchoファミリーのデバイスを昨年より数百万台多く購入した」とBezosが決算会見で言った。「Alexaに関わっているリサーチサイエンティストの数はこの一年で2倍以上に増え、チームの懸命な働きの結果は明白だ」

Amazon Web Service(AWS)も重要な役割を果たし、22億ドルの巨額な営業利益を上げた。AWSの売上74.3億ドルはアナリスト予測の72.9億ドルを越え、前年同期の51.1億ドルを大きく上回った。

すばらしい数字だが、 CNBCが指摘しているように、四半期の売上成長19.7%は2015年以来最低だった。ウォール街の反応は、Amazonが2019年Q1のガイダンスを下げたことでいっそう弱まった。Amazonは来る四半期の売上を560~600億ドルと予測しており、アナリスト予測の609.9億ドルを下回った。

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Amazonがニューヨークの大学とパートナーしてクラウドコンピューティングの技術者を育成

昨日(きのう)(米国時間1/29)、ニューヨークのハイスクールにコンピューターサイエンスのクラスを開設するための出資を発表したばかりのAmazonが、今朝(米国時間1/30)は第二の教育プランとして、ニューヨークの市立と州立の大学を対象とする教育事業を発表した。ニューヨークのクイーンズ区に第二本社を置くことになったAmazonは、将来そこで働く技術者たちも当地区に自力で確保したいのだ。

Amazonが構想している大学対象事業では、LaGuardia Community College(LAGCC)とCity University of New York(CUNY)、およびState University of New York(SUNY, 州立大)の3学で、学生のためのクラウドコンピューティング技術者資格認定事業を展開する。目標は、学生たちがAmazonやそのほかの企業で、初歩的な技術職を担当できるようになることだ。

この事業は今秋始まり、3学合計で数万名の学生を対象とする。またLAGCCは1校以上のハイスクールとパートナーして、15単位時間の認定課程を並行展開する。

ハイスクールの課程がAmazon Future Engineer事業から出資されるのに対して、この大学向け資格認定事業はAmazonのAWS Educate事業が対応する。このEducate事業はをすでに1500あまりの教育機関が利用して、AWSの実習を伴うクラウドコンピューティングの教育訓練を行っている。そのスキルの資格認定は、Amazonやそのほかの企業への求職で利用できる。

この事業には教師向けのカリキュラム開発ワークショップとAWSの教育訓練が含まれ、また学生にはプロジェクトの宿題を実行するためにAWS Promotional Credits(AWS無料利用)が提供される。

また求職部が設けられるので、学生たちはそこに履歴書をアップロードしたり、求人告知をもらったり、企業の求人担当と会話したり、クラウドコンピューティングの求人やインターン募集をAmazonやそのほかのテクノロジー企業で検索したりできる。

クラウドコンピューティングは高給のIT職だ、とAmazonは言っているが、この事業はもちろん慈善事業ではない。これもまたハイスクールののコンピューターサイエンス教育支援と同じく、ニューヨークの新本社をはじめ、同社の事業拡大に伴う人材確保が目的だ。それと共に、地元企業のクラウドコンピューティング人材の確保にも貢献する。ニューヨーク州労働局の予測では、人材需要は2024年に今の17%増加する。

Amazonの労働力開発担当VP Ardine Williamsがこの事業に関する声明文で述べている: “ニューヨークにおける弊社のプレゼンスが拡大を続けている中で、コミュニティと協働してスキル開発の機会増大に貢献できることは、きわめて喜ばしい。ニューヨークは人材が豊富であり、私たちとしては多様なバックグラウンドを持つニューヨーカーたちの心を確実に捉えたい。弊社は現在、当地区で25000名を雇用している。今回のLAGCC、CUNY、およびSUNYとのコラボレーションにより、より多くの学生たちが、Amazonなど多くのテクノロジー系人材を求めている企業で確実に働けるようにしたい。これは、弊社のニューヨークにおける労働力開発努力の第一歩である。今後のさまざまな事業企画により、ニューヨーカーたちがご当地に居ながらにして新たなスキルを求める機会を手にし、より高給な職を得られるよう、努力していきたい”。

画像クレジット: Ron Miller

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

ニューヨークの130のハイスクールがAmazonの出資でコンピューターサイエンスのクラスを導入

【抄訳】
Amazonが新本社のひとつをニューヨーク市クイーンズ区ロングアイランドシティーに置く、と決めてから、その後同社は、ニューヨークの130あまりのハイスクールにコンピューターサイエンスのクラスを開設するための出資をする、と発表した。具体的には、Amazonはニューヨーク市の5つの区すべてに、コンピューターサイエンスの入門クラスとアドバンスト・プレイスメント(AP)クラスを設けるための出資をするが、とくに新本社のお膝元であるクイーンズ区では30あまりの学校を対象にする。

そのコースはAmazon Future Engineer事業がサポートする。この事業の目標は1年に1000万以上の子どもにコンピューターサイエンスを教え、また、アメリカの低所得地域のハイスクール2000校の恵まれない子どもたち10万名あまりに、コンピューターサイエンスの学習資金を提供することだ。そしてさらに、1年に100名の生徒に4年間1万ドルの奨学金とAmazonにおけるインターンシップを提供する。

Amazonによると、ニューヨーク地区の学校への出資は、入門課程と個人指導と教師のための専門教育を対象とする。生徒たちには計画性のあるデジタルカリキュラムを提供し、また教師も生徒も共に、ライブの–リアルタイムの–オンラインサポートを受けられる。

参加生徒の全員がAWS Educateに無料で入会し、プログラミングの実習などではAWS Cloudのコンピューティングパワーを無料で利用できる。

Amazonがニューヨーク市での教育事業に力を入れるのはもちろん、新本社のある地域で将来の人材を育てたいからだが、Amazonの“HQ2”(第二本社)計画に立候補して落選した地域は、そのことだけでなく将来の科学技術教育でも割りを食うことになる。

また全国的に、科学技術教育で後れを取り、教育資金もままならない地域はたくさんあるが、今回AmazonがFuture Engineer事業の対象地域として選んだニューヨーク市などは、むしろ–Amazonからの施しがなくても–科学技術教育の機会に恵まれている場所である。

【中略】

Amazonによると、Amazonが提供するコースを各高校のカリキュラムに組み込む作業は、カリキュラムプロバイダーEdhesiveが行なう。それらのクラスが組み込まれる学校のリストは、ここにある

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B2B決済の大手Tradeshift曰く西欧は没落アジアと中国が世界をリードする

世界最大のB2B決済とサプライチェーンロジスティクスのプラットホームのひとつである企業のCEOによると、イギリスは今、企業間取引の量の大きな激しい減少を経験しつつある。

スイスのダボスで行われている世界経済フォーラムで、TradeshiftのCEOで協同ファウンダーのChristian Lanngは、本誌のインタビューに応じてこう語った: “すでに数字に表れている。昨年12月には、イギリスにおける購買注文が大きく減少した。とくに小売が激しい。でも、どの分野でもだ。製造業も、小売も、物流も”。

Tradeshiftは、サプライチェーンの決済とマーケットプレースとアプリケーションを提供するクラウドプラットホームで、ヨーロッパのテクノロジー系ユニコーンのひとつであり、これまでに4億3200万ドルあまりの資金を調達している。

Lanngによると、Tradeshiftはイギリスの某大手製造業企業と取引があるが、そこは生産ラインに供給する在庫の量が常時“一時間ぶん”しかない。彼は、その企業の名前を挙げなかった。

Brexit(イギリスのEU離脱)のサプライチェーンへの影響については、彼曰く: “一台のトラックの通関手続きに10分かかるとすると、解決不能の交通渋滞が生ずる。税関通過まで1週間はかかるだろう。工場は止まってしまう”。

“政治の問題ではない。今起きようとしているのは、きわめて技術的な問題だ。この事実を理解しない人が多い。抽象的な議論をするのはいいが、実際に起きるのはこういうことなんだ”。

“海峡をまたぐサプライチェーンの実際と現実を、人びとは忘れている。仕事の現実を知っている者の声を、真剣に聞こうとしない。Brexitがまるで、サーカスが来る来ないのような話題になっている”。

Tradeshiftが最近、クラウド上の企業向けインテグレーションサービスBablewayを買収した件についてLanngは、両社の合体によって“1兆ドル以上の決済を扱うようになる”、と言う。決済の量だけでも、それはPayPalの2倍、Amazonの3倍になる。“世界経済のB2BとB2Cの部分の大きなシェアを、両社が扱うことになるだろう”。

でも、一部の人たちが予言している世界経済の減速は訪れるのだろうか? “われわれの見方はかなり単純だ。テクノロジーの分野では、ヘルスケアも、再生可能エネルギーも、電気自動車も、AIも金融サービスも、すべて中国の動きが激しい。2025年ごろには、Made in Chinaが世界のトップになるだろう”。

“西欧は、世界のリーダーシップを失いつつある。電動車でも再生可能エネルギーでも、われわれは出遅れている。中国の技術はヒッピーと馬鹿にされていたが、今それは世界の未来だ。中国に対して、関税という武器は通用しない。うちはむしろ、アジアに倍賭けしている。テクノロジー重視の国なら、どの国でも重要だからね”。

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AWSがモバイルのイントラネットに容易にアクセスできるサービスWorkLinkをローンチ

会社がVPNやモバイルデバイスの管理サービスを使っているときには、イントラネットや社内のWebアプリケーションへのアクセスが、とても面倒なことになる。そこでAWSは今日(米国時間1/23)、Amazon WorkLinkという新しいプロダクトをローンチした。そのアクセスがずっと容易になる、と約束している。

AWSが完全な管理を提供するサービスWorkLinkは、ユーザー一人あたり月額5ドルで、社員に内部的サイトへのワンクリックアクセスを提供する。そのアクセスはITアドミンがコントロールでき、サイトはAWS上になくてもよい。

WorkLinkをスマートフォンにインストールしたら、社員は自分の好きなブラウザーを使って社内のWebサイトにアクセスできる。そのほかのソリューションは、あまり出来の良くないプロプライエタリなブラウザーの使用を強制されるものが多い。WorkLinkは仕事を開始し、目的サイトを安全にリクエストして…そしてここが賢いところだが…WorkLinkの安全なコンテナがサイトを対話的なベクターグラフィックに換えてスマートフォンへ送り返す。スマートフォン上には何も保存されずキャッシュもされない。またデバイス上の個人のアクティビティをWorkLinkが知ることもない。会社のデータも残らないから、スマートフォンをなくしたり盗まれたりしても、それらをリモートで消す必要もない。

ITはVPNを使ってAWSのVirtual Private Cloudからオンプレミスのサーバーに接続したり、またはAWSのDirect Connectを使ってVPNをバイパスすることもできる。このサービスは、OktaやPing IdentityなどSAML 2.0対応のアイデンティティサービスと一緒に使える(今企業で使われているアイデンティティサービスのほとんどがSAML 2.0だ)。完全なマネージドサービスなので、スケーリングやアップデートはバックグラウンドで行われる。

AWSの生産性アプリケーション担当VP Peter Hillはこう語る: “社員たちが内部的なコンテンツに容易かつ安全にアクセスできない、と不満を述べる顧客がとても多い。つまり彼らの社員は、時間を浪費したり、彼らの生産性を高めるコンテンツへのアクセスを最初からあきらめたりしている。AmazonのWorkLinkを使えば、会社のファイヤーウォールの外にいる人たちでもそんなコンテンツを利用でき、生産性を高めることができる。しかもそれはITの管理者やセキュリティのチームにとって使いやすいし、また社員たちも進んで使いたくなるだろう”。

WorkLinkはAndroidとiOSで使える‘予定’だが、現状はiOS(12より上)のみだ。しかもブラウザーはSafariのみで、数週間後にChromeがサポートされる。そして供用地域はヨーロッパと北アメリカのみで、その他の地域は今年の後半になる。

今のところ、クラウドでAWSの宿敵であるGoogleとMicrosoftには、WorkLink相当のサービスがない。GoogleはVPNに代わるものとしてCloud Identity-Aware Proxyを、BeyondCorpセキュリティ事業の一環として提供しているが、それはかなり目的が違う。一方Microsoftは、もっと従来的なモバイルデバイス管理ソリューションを提供している

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

Amazonが自社製配達ロボットをテスト中

Amazonが配達ロボットを採用するのはもちろん時間の問題だった。世間の注目は倉庫の物流管理に集まっていたが、同社には何年も前からロボティクス部門がある。そして今日(米国時間1/23)、Scoutのベールが剥がされた。

この6輪ロボットは、すでに世界中の歩道をテスト走行しているいくつかの配達ロボットとよく似ている。しかし、これはAmazonの社内で開発されたようだ。同社の発表によると、大きさはビーチ用のクーラーボックス程度で、人が歩くくらいの速さで走行する。

ボットのパイロットテストは、ワシントン州シアトルのあるキング郡に隣接するスノホミッシュ郡で行われる。同社としては、ふだん静かな近隣を巡回する小さな青いロボットに住民が困惑する前に告知したかったことは間違いない。さらにはしゃれた音楽の入った広告まで作って怖がる必要がないことを人々に訴えている。

パイロットプログラムは6台のScoutでスタートする。ロボットは無人で目的地に到着するように作られているが、これらの初期モデルにはAmazon社員が同行してすべてが計画通りに進むことを確認する。AmazonがScoutをもっと広く展開することになれば、いずれはUPS、FedEx、USPSなどの運送会社の「ラストワンマイル」を補完することができるかもしれない。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

Echo Wall Clockの販売が接続性の問題で一時中止に

Amazon昨年末にEcho Wall Clockを発売したが、それから1ヵ月も経たないうちに予定が狂っている。The Vergeによれば、多くの顧客が接続性の問題を報告したために、Amazonは30ドルのAlexa搭載スマートクロックの販売を一時停止した。

時計はまだAmazonのリストに載っているが、米国時間火曜日の時点で、それは「現在利用購入できません」となっている。

「私たちは、何人かのお客さまが接続性の問題を抱えていることを認識しています。私たちはこの問題に取り組み、Echo Wall Clockを数週間のうちに再び出荷可能にできるように鋭意努力しています」とAmazonは声明の中でThe Vergeに対して述べている。

この時計は既存のAlexaユーザー向けの製品で、タイマー、カウントダウンまたはアラームを設定することが可能だ。また時計は自動的にサマータイムの調整が行われる。それは、機能やデザインのどの角度から見ても、極めてベーシックなものだが、Amazonの拡大する家電製品推しへの興味深い追加商品だ。こうした動きには、ホームスピーカーやShowのスクリーンなどや、Alexa電子レンジあまり感心できない)や、歌う魚(まあこれはどうでも…)なども含まれている。

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(翻訳:sako)