イスラエル拠点のMedigateは医療機器の安全性確保と資産管理に取り組む

イスラエルを拠点とするスタートアップのMedigate(メディアゲート)は、病院内のヘルスケア機器の安全性確保と資産管理に取り組んでおり、同社のセキュリティソフトウェアのサービスとサポートにおいて、ヘルスケアテクノロジー分野の大手企業のCerner(サーナー)と提携した。

この合意では、顧客がMedigateと契約すればCernerのサイバーセキュリティチームからサポートが受けられ、現地のデバイスの在庫管理がサポートされる。Cernerはまた、医療機関がセキュリティ関連の攻撃を受けた際に、それを制限するための修復サービスも提供する。

Medigateの最高経営責任者のJonathan Langer(ジョナサン・ランガー)氏は声明で「IDCによれば2025年までにこの分野のIoTデバイスは約416億台になると予測されている。医療機関が自社のネットワークで何が起きているかをより明確に把握し、管理できるようにすることは非常に重要だ。これには、医療機器やIoTデバイスが含まれる」と述べた。「Cernerは過去40年間、医療業界において人々とシステムを結び付けてきた。これらが連携することで、何千ものヘルスケアシステムが高いレベルのコントロールを確立し維持し、データや継続的な運用、そして最終的には患者の治療を保護できるようになる」

ますますネットワーク化されるヘルスケアテクノロジーに伴うセキュリティリスクは、セキュリティ分野の専門家にとってますます関心の高い分野であり、ヘルスケア分野におけるベンチャー投資家や大企業の間でも、同様に関心の高い分野である。

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(翻訳:塚本直樹 Twitter

スマート家電メーカーは見聞きした情報を政府に開示するのか?

1年前、TechCrunchは名の通ったスマートホーム機器のメーカーに対して、ユーザーの個人データを政府に提供するか否かを質問した。その結果はさまざまだった。Amazon(アマゾン)、Facebook(フェイスブック)、Google/Nest(グーグル/ネスト)のビッグ3はみな、政府がユーザーの個人データを求めてきたときの対処法を透明性報告書で公表した。Apple(アップル)は収集したデータは匿名化されるので報告書は必要ないと話していた。残りのメーカーは、政府からの個人データ提出の要求への対応を公表しなかった。

あれから1年が経過し、スマートホーム市場は急成長したが、その残りのメーカーの対応に関する情報公開は、ほとんど、あるいはまったく進展していない。中には以前より悪くなったケースもある。スマートホーム機器に限らず、インターネットに接続できる機器は便利で、どこでも売られているが、それらは私たち自身や私たちの家庭の情報を大量に収集している。スマートロックは、いつ人が家に入ったかを知っている。

スマートドアホンは訪問者の顔をキャプチャーする。スマートTVは、どんなテレビ番組を見たかを知っている。一部のスマートスピーカーは、私たちが何に興味を持っているかを知っている。使われていない間は、スマートホーム機器の多くはデータを集め、メーカーに転送している(なかには、無線ネットワークの情報のような、こちらが思いも寄らない要素のデータ点を収集するものもある)。製品や私たちの家をよりスマートにするためというのが表向きの理由だ。

そのデータはメーカーによってクラウドに保存されるため、警察や政府の役人が犯罪捜査のためにそのデータを提供せよと要求できる。しかし、収集したデータの量が膨大になると、企業の、データの提出要求に関する透明性が低下する。私たちに届くのは事例報告だけだが、その数は非常に多い。警察はAmazon Echoのデータを入手して殺人事件を解決。Fitbitがデータを提出したことにより男を殺人罪で起訴。Samsung(サムスン)は児童虐待画像を見ていた性犯罪者の逮捕に協力。Nestは監視映像を提出してギャングのメンバーの逮捕に協力。そしてAmazon傘下のRingの最近の事例報告では、スマートホーム機器メーカーと警察との密接な関係が露わになった。

各メーカーの回答は次のとおりだ。スマートロックとスマートドアホンのメーカーであるAugustは、去年とまったく同じ声明を返してきた。「現在は透明性報告書を作成していませんが、外国諜報活動偵察法(FISA)に基づくユーザーコンテンツまたは非コンテンツの提供を求める国家安全保障書簡(訳注:FBIからの令状を必要としない情報提供命令書)も命令も受け取たことがありません」というものだ。しかし、Augustの広報担当者Stephanie Ng(ステファニー・エン)氏は、裁判所の召喚状、捜査令状、裁判所命令などの国家安全保障関係以外の要求を同社がどれほど受け取ったかは明らかにしていない。法的な要求があった場合には「あらゆる法律」に準拠するとだけ話している。

ロボット掃除機のRoomba(ルンバ)のメーカーであるiRobotは、去年と同じく、政府からのデータ提出要求は「受け取っていない」と答えた。「現在iRobotでは、透明性報告書を発表する予定はない」が「政府から顧客データの提出を要求された場合」には報告書の公表を検討するとのことだ。

Netgearのスマートホーム部門から2018年に独立したArloは、コメントの求めに応じなかった。今でもスマートホーム技術を所有しているNetgearは「透明性報告書の一般公開はしない」と話している。

Amazonの子会社であるRingは、警察との協力関係が国会議員たちの怒りを買い、ユーザーのプライバシーを守る能力に疑問を持たれているが、去年、時期は明言しないものの、将来的に透明性報告書を公開するつもりだと話していた。今年、Ringの広報担当者Yassi Shahmiri(ヤッシ・シャミリ)氏はコメントを出さず、その後繰り返し送った電子メールへの返信も止まってしまった。

Honeywellの広報担当者Megan McGovern(ミーガン・マクガバン)氏はコメントせず、元Honeywellのスマートホーム部門で1年前に独立したResideoに私たちの質問を投げたが、ResideoのBruce Anderson(ブルース・アンダーソン)氏もコメントしなかった。

また、スマートホーム機器やインターネットに接続できるテレビや家電のメーカーであるサムスンも、昨年とまったく変わらず、コメントの依頼に応答しなかった。

全体として、これらの企業の反応はほぼ去年どおりの回答だった。さらに昨年、「2018年末」の透明化報告書の公開を約束していたスマートスイッチとセンサーのメーカーのEcobeeは、約束を果たさないままだ。理由を尋ね再三コメントを求めたが、Ecobeeの広報担当者Kristen Johnson(クリステン・ジョンソン)氏は応答しなかった。

入手可能な範囲で最も信頼できる情報から判断するに、August、iRobot、Ringそしてその他のスマートホーム機器メーカーは、貴重な個人データが政府に差し出される可能性を秘めたまま、全世界に数億人のユーザーや顧客を擁しているが、ユーザーも顧客も、それに関して一切説明を受けていない。

透明性報告書は完全ではないかも知れない。透明度が他より低いものもある。しかし、メディアで叩かれたり、監視国家への協力を要求された後であっても、大企業がその情報を開示したなら、小さな企業も言い逃れができなくなる。

今年は、ライバルよりもややマシな企業がいくつかあった。しかし、プライバシーに関心の高い人間なら(誰もが高くあるべきなのだが)これでは満足できない。

関連記事:スマートテレビのセキュリティーについてFBIが警告

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(翻訳:金井哲夫)

Disrupt BerlinでのStartup Battlefieldファイナリスト5社が決定

現地時間12月11日、ドイツ・ベルリンで開催されたDisrupt Berlinのステージに14社のスタートアップが立ち、ライブのデモと彼らの起源とビジネスモデルに関するプレゼンテーションを行い、業界のエキスパートである審査員たちの質問に答えた。そこからTechCrunchは、審査員たちの意見も参考に、5社のファイナリストを選んだ。彼らの製品は、生産性ツールから大気汚染に至るまで実にさまざまだ。

これらのファイナリストたちは明日12月12日の決勝のステージで、新たな審査員を前に再びプレゼンを行う。その実況はTechCrunchのウェブサイトでも見られる。そして優勝チームは5000ドルの賞金と、由緒あるDisrupt Cupを1年間管理する権利を勝ち取る。以下が、そのファイナリストだ。

Gmelius


Gmeliusは、Gmailの中に作業スペースを作り、チームが次々と新しいソフトウェアを導入するのではなく、既存のさまざまなツールで仕事ができるようにする。GmeliusはGmailの作業スペースに、受信トレイの共有やヘルプデスク、アカウント管理、オートメーションツールなどさまざまな機能を加える。関連記事はこちら

Hawa Dawa

Hawa Dawaは、衛星や大気質監視ステーションなどからのデータを組み合わせて大気汚染のヒートマップを作り、そのマップをAPIのサブスクリプションとして都市や企業に売る。データの利用はハードウェアを特定しないが、同社は大気質センサーを装備していない企業や都市のために、独自のIoTセンサーを作って提供している。関連記事はこちら

Inovat

Inovatは、旅行者に対する付加価値税の還付手続きを容易にする。アプリとOCRと機械学習を併用してレシートを解釈し、取られすぎの税金を計算して、正しい形式の申告書類をオンラインで、または税関に直接提出する。関連記事はこちら

Scaled Robotics

Scaled Roboticsのロボットは、建築現場の3D進捗マップを数分で作る。精度は高く、梁の1〜2cmのずれでも見つける。現場監督はそのマップを見て細部の状況をチェックできる。現場に残された残骸が多すぎるという検知もできる。関連記事はこちら

Stable

Stableが提供するソリューションは自動車保険並にシンプルだ。同社は世界中の農家を、価格変動から護る。このスタートアップを利用して、小さなスムージーショップからコカコーラのような大企業に至るまで、何千種類もの農産物や包装資材、エネルギー製品などに保険を付けることができる。関連記事はこちら

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

電力消費モニタリングデバイス「Nature Remo E」シリーズの予約受付開始、発売は12月17日から

スマートリモコンのNature Remoシリーズを開発・販売しているNatureは12月10日、同社の新製品である「Nature Remo E」と「Nature Remo E Lite」の先行予約受付を開始した。同社は2014年12月設立の

税別価格と発売日はそれぞれ、2万9800円で12月17日発売、1万4800円で2020年3月予定。先行予約特別価格として、Remo Eは5000円引きの税別2万4800円、Remo E Liteは2000円引きの1万2800円で予約できる。

Remo Eシリーズを使えば、電源コンセントに接続した各種家電の総電力量をリアルタイムに把握できる

Remo Eシリーズは、家庭の電源コンセントに接続することで各種家電の電力消費量をスマートフォンアプリで確認できる電力管理機器。スマートメーターが設置されており、Bルートでの通信が可能な家庭などで利用できる。

Remo Eでは、発電量や蓄電量もモニタリングできる。グラフの黄色が太陽光発電の発電量、黄緑色が家庭用蓄電池の蓄電量

スマートメーターはここ数年の新築マンションや一軒家では最初から備わっているほか、2024年度をメドに電力会社各社が既存の電力メーターとの交換を順次進めている。また、大手電力会社以外と電気を契約しているユーザーにはおなじみの電力計だろう。

Bルート通信とは、Nature Remo Eとスマートメーターが直接通信して電力量などのデータをリアルタイムに取得するために必要な通信網。スマートメーターには最初からこの通信網が備わっているが、各地域の電力会社へ郵送で申請しないと利用できないので注意。

これまで家庭内で使う電力を機器ごとに個別に確認するには、スマートメーターとBルート通信が可能なHEMSと呼ばれる規格に対応した家電を取りそろえる必要があったが、対応家電は少なく価格も高価だった。 政府は2030年までにすべての住居にHEMSを設置することを目指しているものの、現状ではあまり普及していない。しかしNature Remo Eシリーズを導入すれば、HEMS対応機器以外の家電、つまり電源コンセントに接続して使う家電の総電力量の変化を確認できる。

スマートリモコン「Nature Remo」の操作画面。Nature Remo Fと一緒に使えば、家電の操作から消費電力量までをスマホやタブレットで一元管理できる

なお、Remo E Liteは各種家電の電力量のみをモニタリングできる製品だが、Remo Eはそのほか、太陽光発電の発電量、家庭用蓄電池の電力量もチェックできる。

日本国内では、太陽光の固定買い取り制度(FIT)の保証期間が2019年11月から終了する家庭で出始め、2019年内だけで59万件という調査結果もあるそうだ。保証期間が過ぎると、買い取り単価は10円程度に下がり「電気を売って節約する」ことは難しくなる。一方で、太陽光発電にかかるコストは10年に10分の1ほど下落しており、一般家庭でも導入しやすくなっている。

Nature代表の塩出晴海氏

同社代表の塩出晴海氏によると、現在のRemo Eは電力量や発電量、蓄電量を確認できる機器だが、今後はRemo Eを活用してP2Pでの電力売買が可能になる未来を目指したいと語る。Remo Eでは家庭内ので電力の消費量と発電量などがわかるので、すでに個人間で電力売買できる環境は整っているが「問題は送電コスト」と同氏。「現在の送電コストは一律料金のためにP2P売買で利益を得るのは難しいが、送電の料金帯系が距離など勘案したものになり、隣家や近隣に安価に送電できるようになれば市場が活性化する」と期待を寄せる。

Nature社としては、関係各省などを巻き込んで、個人での電力売買のルール作りを目指す方針だ。さらに同社は、家庭向けソーラーパネルの販売を手掛けるハンファQセルズジャパンと連携して、自然エネルギーの普及も進めていく。

IoTプラットフォームの「Ockam」が5.3億円超を調達、セキュリティーとスケーラビリティーを強化

Ockamは設立2年になるベイエリア拠点のスタートアップで、IoTデバイスのデベロッパーが「信頼できるアーキテクチャー」を構築するためのツールを開発している。このほどシード資金として490万ドル(5億3700万円)を調達した。出資したのは、Core Ventures、Okta Ventres、SGH Capital、およびFuture Ventures。

このIoT開発向けサーバーレス・プラットフォームを作っているのは共同創業者のCEOのMatthew Gregory(マシュー・グレゴリー)氏とCTOのMrinal Wadhwa(ムリナル・ワドワ)氏は、ともに特筆すべき経歴をもっている。

2017年秋にOckamを設立する前、グレゴリー氏はMicrosoft(マイクロソフト)の「Intrapreneur」(社内起業家)として、Azureのオープンソースソフトウェアとコンテナサービスへの転換を手掛けた。さらに同氏はSalesforce(セールスフォース)でプロダクトマネジャーを数年間務めたほか、ヨットレースのアメリカズカップの参加チームであるStars & Stripesのエンジニアリング責任者として、センサーのカスタムシステム、分析ソフトシェア、ワイヤレス通信ツールなどを開発してレーシングチームの状況判断に役立てた。

一方のワドワ氏は、非上場のIoT企業であるFybrのCTOとして、遠隔地での意思決定に役立つリアルタイムデータ分析に携わった。

Ockamが約束していることの1つは、同社の技術を使い、IoTシステムのデベロッパーがスケーラブルでセキュリティーの高いつながったシステムを開発できるようにすることだ。そのために、暗号化キーを使い、デバイスや人やサービスなどさまざまな対象物に認証情報を割り当てる。

Ockamと同じく、デベロッパーが独自のプラットフォームを作らずに自分たちのサービスを使うようになることを願っている会社はたくさんある。例えば、Ockamと似たIoTデバイス向けプラットフォームを開発しているサンフランシスコ拠点で設立7年のParticleは、最近4000万ドル(約44億円)の調達ラウンドを完了し、調達資金総額を8100万ドル(約88億8500万円)とした。

Ockamのシード資金調達は2つの部分に分かれていて、320万ドルのラウンドは5月に完了しており、170万ドルは最近Future Venturesから追加投入された。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

Eco-Porkの養豚自働化プロジェクトが始動、豚肉の生産性や資源の効率性を改善

Eco-Porkは「いい肉の日」である11月29日、豚肉の生産性や資源の効率性を改善する「養豚自働化プロジェクト」を推進するために、田中衡機工業所とリバネスの2社と業務提携することを発表した。両社とも7月にEco-Porkの株主となって同社を支援してきたが、今回のその支援内容がより具体的なかたちとして明らかになった。

関連記事:クラウド養豚システムのEco-Porkがユーグレナやリバネス、田中衡機工業所と提携

養豚自働化プロジェクトは、各種IoT機器を利用して養豚場で収集した豚育成データを基に、育成の条件や環境などをAIが自動で最適な状態に管理・制御し、豚肉の生産性や資源の効率性を改善するというもの。すでに国際特許に出願しており、今後実証実験を進めていくという。Eco-Porkでは、このプロジェクトを推進することで、豚肉の生産量を日本平均比からの50%向上を目指す。

このプロジェクトでは、Eco-Porkが自社保有する80万頭ぶんの豚の生育データと田中衡機工業所が持つ日量約2万頭ぶんの豚の体重・肉量データを使い、リバネスの持つ知見を生かして養豚に最適化したAIを開発していく。また、Eco-Porkでは、同社開発の養豚経営支援サービス「Porker」を通じて、田中衡機工業所の畜産用の体重計を使っているユーザに体重や肉量の把握を容易にするソリューションを提供する。さらに、田中衡機工業所が開発を進めているAI画像認識技術を用いたデジタル体重計の開発にも協力する。

Eco-Porkは、世界人口の増加と新興国の経済成長、それによる中間所得層の拡大により、2025年~2030年に到来すとといわれているタンパク質危機を回避するため、養豚事業の効率化を目指して2017年11月29日(いい肉の日)に設立されたスタートアップ。一人あたりの肉や魚の消費量が増加し続ける一方で、飼料の高騰によって年を追うごとに養豚事業のコストも上昇しており、その上昇ぶんは段階的に価格にも転嫁されていく。

同社によると、養豚事業で作られた豚肉は年間15億頭ぶんが消費されており、現在では米や小麦を超えて農業分野では最も規模が大きい事業だそうだ。養豚事業では、2年後の2021年には需要と供給のバランスが崩れて一人当たり分配量が減少に転じ、末端価格は約40%も高まってしまうという予想もあるとのこと。

そこで同社は2018年9月に養豚事業の生産性を高めるため、モバイル養豚経営支援システムとしてPorkerをリリース。Porkerでは、養豚場で発生するさまざまなデータをスマートフォンなどのモバイル端末を使って現場で入力することで、繁殖や肥育の状況把握から経営分析までを可能にする。2019年3月現在で全国20農家、母豚規模では3万5000頭ぶんの農場で稼働している。

養豚は数十頭をまとめて飼育する群管理が基本だが、その中の1頭が飼育中に病気になったり、体調が悪くなったりすると群全体に悪影響を及ぼして、結果的に出荷基準を満たす体重に生育するまでに時間がかかったり、出荷頭数が減少するという問題が発生する。Porkerでは、豚の飼育状況を可視化・蓄積することでこれらの問題を早期発見して、個体の隔離や治療などを行えるのだ。

Eco-Porkは今回のプロジェクトを統括し、新たな養豚モデルを開発・提供していくことで、世界の養豚業の生産性・資源効率性の改善も目指していく。

デバイス側で学習・予測が完結できるエッジAI開発のエイシングが3億円を調達

エイシング代表取締役CEO 出澤純一氏

エッジデバイス組み込み型のAIアルゴリズム「ディープ・バイナリー・ツリー(以下DBT)」を提供するエイシングは11月20日、約3億円の資金調達を実施したことを明らかにした。第三者割当増資の引受先は三井住友海上キャピタル株式会社が運営するMSIVC2018V投資事業有限責任組合。2016年12月設立のエイシングは、2017年にも約2億円を調達しており、今回の調達により、累計調達金額は約5億円となる。

エイシングが開発・提供するDBTは、産業用ロボットやスマートフォン、コンピュータを搭載したクルマなどのエッジデバイスに組み込んで利用する「エッジAI」だ。画像認識などで知られる従来のディープラーニングをはじめとしたAIは、容量が大きく、クラウド側で情報処理が行われることが多い。これに対し、エッジAIは導入機器側にエンベッドして情報処理を実行し、学習と予測を完結して行う。このため、クラウドサーバーとエッジの通信による遅延が回避でき、高速なデータ処理が可能だ。

特に産業ロボット、自動運転車など、エッジデバイス上でのリアルタイムかつ高精度な制御が求められる領域では、エッジAI実装へのニーズが高まっているという。こうした背景を踏まえ、エイシングではエッジ側でリアルタイムに自律学習・予測が可能な独自のAIアルゴリズムDBTを開発・提供している。

DBTの特徴は高精度、軽量でオンライン学習ができる点だ。現在、エイシングではマイクロ秒単位での高速動作が特徴の「DBT-HT(High Speed)」と、精度を向上させた高精度型の「DBT-HQ(High Quality)」の2種をリリース。速度重視、精度重視とユーザーニーズに応じて、ソリューションを提供している。

エイシング代表取締役CEOの出澤純一氏によれば「既存アルゴリズムのDBTに加えて、新しいアルゴリズムの発明も行っており、エッジ側で逐次的にリアルタイムで学習して予測制御を行うエッジAI技術『AI in Real-time(AiiR)』として、プロダクト群を展開していく」とのこと。

エイシングでは、一時は金融工学への応用なども検討していたが、現在は、強みである機械工学の領域での開発に集中している、と出澤氏。オムロンやデンソー、JR東日本といった大手企業ともPoC実施、共同開発を進めているそうだ。技術レベルの向上により、セキュアで、データ的に軽量な実装も実現してきているという。

実証実験済みのユースケースでは、トンネルなどの掘削に使われるシールドマシンの制御において、熟練工の指示に代えて、リアルタイムでのフィードバックと予測制御をエッジAIが行うことで、掘削効率と精度の向上を図っている例や、プログラムに記述しきるのは難しいクレーンの制御を、ディープラーニングによる画像解析との組み合わせにより、エッジ側でリアルタイムに学習しながら動作に反映することで実現する、といった例などがある。

また現状ではシミュレーター上での再現だが、クルマのスリップを事前予測して、制御側にアラートするという例もあるそうだ。従来のセンシングではスリップをしてからいかに早く戻れるか、という制御を行っているのだが、エイシングのエッジAIはスリップをする状況を事前に学習させておくことで、「このままの速度、ハンドル操作では何ミリ秒後に滑る」という情報を制御側に教えて、スリップを回避することができるという。

クルマの制御ではタイヤの摩耗や気温、路面温度などの環境が大きく影響するが、全てをセンシングするわけにはいかず、条件ごとの制御をやり切るのが難しいという事情もある。そこをエイシングのエッジAIでは、センシングが簡単な加速度センサーと車速計、ステアリングの角度だけを参照して学習することができ、さらに積載量、人数による変化も追加で学習して補正し続けることも可能だという。

出澤氏はさらに「工場の機械などで、経年劣化による変化を反映して制御することや、モーターなど製品の微妙な個体差を補正すること、スマートウォッチなどのウェアラブル端末で生体情報の個人差を補正するといった、リアルタイムで学習しながら補正して出力をする、個体差補正についてはエイシングのエッジAIしかできない部分だ」と述べている。

今回の調達資金により、エイシングではDBTをはじめとするエッジAI技術、AiiRの研究開発の強化と、顧客のシステムへの実装までを技術的にカバーする体制づくりを図る。

出澤氏は「顧客からのヒアリングを重視することで、課題・ゴールを明確にしてPoCを実施してきた。現在はパートナーとしての共同開発まで進んでいるところ。今後、この技術のライセンス提供を目指している」と話しており、既に数社へのライセンス提供は見込めそうだという。また、中長期的には、DBT以外のプロダクトも含めたデバイス側AIの市場獲得を図っているとのことで、「3〜5年のタームでグローバルにも展開していき、工業製品AIのデファクトスタンダードを目指したい」と語っている。

ハッキングコンテスト優勝者はAmazon Echo Showを攻撃して650万円超の褒賞金を獲得

今年のPwn2Ownハッキングコンテストでは、これまですでに高度なハッキングテクニックをいくつも開拓してきた二人のセキュリティ研究家が優勝した。それらの中には、Amazon Echoに対する攻撃もある。

Amat Cama(アマト・カマ)氏とRichard Zhu(リチャード・チュー)氏の2人から成るTeam Fluoroacetateは、Alexa対応のスマートディスプレーであるAmazon Echo Show 5の最新機種に対する整数オーバフロー攻撃で、6万ドル(約650万円)のバグ褒賞金を獲得した。

Pwn2Ownコンテストを主催したTrend MicroのZero Day InitiativeのディレクターであるBrian Gorenc(ブライアン・ゴレンク)氏によると「彼らは、そのデバイスがGoogleのオープンソースブラウザーであるChromiumの古いバージョンを使っていることを見つけた。それは、開発のある時点でフォークされたコードだった。しかしそのバグにより、悪質なWi-Fiホットスポットに接続するとデバイスを完全にコントロールすることができた」と語っている。

研究者たちは彼らのエクスプロイト(コンピュータやスマートフォンのOSの脆弱性を悪用して攻撃を仕掛けるプログラム)を、外部の妨害を防ぐために高周波遮断容器の中でテストした。「コンテストの間に侵害されたIoTデバイスの多くに、このパッチのバグがあった」と。ゴレンク氏。

Amat Cama(左)とRichard Zhu(右)の2人がTeam Fluoroacetate(画像提供: ZDI)

整数オーバーフローバグは、整数演算が数を作ろうとしたとき十分な大きさのメモリーがないと起きる。その数は、割り当てられたメモリーの外へオーバーフローする。そして、デバイスのセキュリティが壊される。

問い合わせに対してAmazonは「この研究を調査中であり、調査の結果に基づいて、弊社のデバイスを保護するための適切な処置を取る」と言った。それがどんな処置でいつ行われるのかについては、無言だった。

コンテストには、Echo以外にもインターネットに接続されるデバイスがいろいろ登場した。この前コンテストの主催者は、Facebook Portalをハックする機会があるだろうと述べた。それは、そのソーシャルメディア大手が提供するビデオ通話が可能なスマートディスプレイだ。しかし今回、Portalを攻撃したハッカーはいなかった。

関連記事:Security flaws in a popular smart home hub let hackers unlock front doors(人気のスマートホームハブはハッカーがドアの鍵を開けられる、未訳)

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

Microsoft AzureがFarmBeatsのプレビュー版を公開し農業テックに参入

Microsoft(マイクロソフト)がフロリダ州オーランドで開催中のイベント「Ignite」で、同社はこれまで主に研究目的だったプロジェクトのAzure FarmBeatsを、パブリックプレビューとしてAzure Marketplaceで米国時間11月4日から公開すると発表した。FarmBeatsは、IoTセンサー、データ分析、機械学習を組み合わせた同社のプロジェクトだ。

GROSSDERSCHAU, GERMANY – AUGUST 14: In this aerial view a combine harvests summer wheat at a cooperative farm on August 14, 2015 near Grossderschau, Germany. The German Farmers’ Association (Deutscher Bauernverband) is due to announce annual grain harvest results this week. Some farmers have reported a disappointing harvest due to the dry weather in recent months. (Photo by Sean Gallup/Getty Images)

この日の発表でマイクロソフトは「FarmBeatsの目的は、農家が自分の農場のデータとデータドリブンの洞察によって理解を深め直感を強化するものだ」と説明した。FarmBeatsは、センサー、衛星、ドローン、気象観測などさまざまなソースからデータを集め、AIと機械学習によって農家にアクション可能なインテリジェンスを提供することを目指している。

さらにFarmBeatsは、ここで収集され、評価されるデータを利用するアプリを作る開発者のためのプラットフォーム的なものになることも狙っている。

マイクロソフトは開発プロセスに関し、次のように説明している。衛星画像は活用するが、それで農場のすべてのデータを捉えられるわけではない。現場に設置されたセンサーなどのデータが必要で、さまざまな種類のデータをまとめて分析する必要がある。また農場ではインターネットの接続環境が十分でないことも多いため、FarmBeatsはテレビの空いている周波数帯域を利用して接続するマイクロソフトの取り組みを初めて利用するチームになった。そしてもちろん、データの収集にはAzure IoT Edgeを活用する。

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(翻訳:Kaori Koyama)

小型人工衛星ネットワークを利用するIoTシステム向けSDKをKeplerが公開

トロントのKepler Communications(ケプラー・コミュニケーションズ)は、通信サービスを提供するための靴箱サイズの人工衛星を開発し、その実際の打ち上げ配備もしている。同社はこのほど、最初のSDKを作って関心あるデベロッパーの登録を待っている。同社の衛星を商用利用する顧客はこのデベロッパーキットを使ってKeplerが来年から提供するナローバンドのIoT接続を利用でき、それが実際に有料で提供される来年からは同社のパートナーにもなる。

SDKをこのように早期に公開するのは、Keplerが提供するIoT接続を関心のある企業に試用しテストしてもらうためだ。Keplerのサービスの供用範囲はグローバルなので、IoTのオペレーターは単一のネットワークで比較的安くシステムを構築運用でき、輸送用コンテナの追跡とか鉄道のネットワーク、家畜や穀物などの積荷の追跡をグローバルに行うことができる。

Keplerによると、同社のIoTネットワークはこの目的のために特製された重量10kg以下のナノサテライトの集合で構成されてる。実際の打ち上げは来年以降になるが、消費者向けHDビデオストリーミングなどのように広帯域を必要としない業種に狙いを定めている。そういう業種にとっては、カバー範囲が広くてリモートアクセスの多い、しかも安定性の良い堅牢なネットワークが鍵だ。

軌道上に衛星の星座と呼ばれる複数の人工衛星を配置して提供するIoT接続は、最近ますます関心が高まり投資の対象にもなっている。そして大企業はそれらを利用してモニタリングや積荷などの追跡を現代化しようとしている。例えば、Swarmは同じ目的の150個の小型衛星の打ち上げをFCCに許可された

2015年創業のKeplerは、これまでに2000万ドルあまりを調達し、2つの小型衛星を昨年11月と今年の1月に打ち上げている。同社の発表によると、来年半ばにはISKとGK Launch Servicesとの契約でさらに二つをソユーズロケットで打ち上げる予定だ。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

IoTセキュリティのスタートアップ「Particle」が約43億2000万円を調達

IoTデバイス向けプラットフォームのParticle(パーティクル)が、最新のシリーズCで4000万ドル(約43億2000万円)を調達した。

Smart city and connection lines. Internet concept of global business in Sydney, Australia(Getty Images)

このラウンドを主導したのはQualcomm VenturesとEnergy Impact Partnersで、これまでに投資していたRoot Ventures、Bonfire Ventures、Industry Ventures、Spark Capital、Green D Ventures、Counterpart Ventures、SOSVも支援した。このラウンドまでの累計で、Particleは8100万ドル(約87億5000万円)を調達した。

サンフランシスコを拠点とするスタートアップのParticleは、顧客が自社のソフトウェアインフラに多大な投資をすることなくIoTデバイスを市場に出すためのバックエンドを提供する。暗号化とセキュリティ、データの自律性とスケーラビリティを実現し、IoTデバイスのためのオールインワンのソリューションを目指すプラットフォームだ。

つまり古いやり方をしている企業が、センサーや監視用のデバイスを揃え、機械の準備を整えたら、Particleのインフラで監視することができる。

Particle最高経営責任者のZach Supalla(ザック・スパラ)氏は、これが一般的な使われ方と見ているという。同氏は「我々の顧客としては、雨水の管理、工業設備、配送、あるいはコンプレッサーやポンプ、バルブの監視といった古くからある企業が増えている。さまざまな企業があるが、共通する特徴はミッションクリティカルな機械の監視と制御が必要ということであり、こうした機械、乗り物、デバイスを21世紀型にすることが我々のミッションだと考えている」と語る。

Particleは、企業向けプラットフォームの売上が前年比150%と「急速に成長」していることから今回の資金調達をしたという。同社には現在100人のスタッフがいて、農業、自動車関連、スマートシティなどの業種にわたり85社の顧客をサポートしている。

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(翻訳:Kaori Koyama)

テクノロジーと科学でトイレの悩みを洗い流すShine Bathroom

スマートホームの世界が掲げる現在進行形のテーマは、普通の製品やシステムをつながったものにするガジェットやツールの開発だ。テクノロジーを追加してその利用法を改善してやれば、本来的にはまだまだ使えるものを大量に破棄せずに済む。

最新の動きは、Shine Bathroom(シャイン・バスルーム)というサンタバーバラのスマートホーム系スタートアップが、その最初の製品の製造と流通のためのシード投資として75万ドル(約8100万円)を調達したことだ。今あるトイレに取り付けるだけでスマートトイレに変身させてくれるアクセサリーだ。汚い仕事だが、誰かがやらなければならない。

Shine Bathroomの当面の目標は、従来の生態系に優しくないトイレの掃除方法を流し去ること。そして、配管に問題があれば水道修理屋さんを呼ばずに直す手伝いをすることだ。

長期的な展望は、テクノロジーと科学を応用してトイレ全体を再構築し、天然資源の負担を減らすことにある。それを、消費者である私たちが望むかたちで使えるようにするために、この新製品を市場に投入してテストを行う。

「トイレは、基本的な衛生を保つための場所から、1日の始まりの準備をする場所へと変化しています」と話すのはShine Bathroomの創設者でCEOのChris Herbert(クリス・ハーバート)氏。「健康とセルフケアは、ますます自宅で行うようになります。そこに大きなチャンスがあります」。

Shine Bathroomへの最初の投資は、同じ南カリフォルニアの2つのベンチャー投資会社からもの。同社と同じサンタバーバラのEntrada Ventures(エントラーダ・ベンチャーズ)と、シリコンバレー以外のスタートアップの支援に特化したロサンゼルスのファンドであるMucker Capital(マッカー・キャピタル)だ。マッカー・キャピタルの現在のポートフォリオには、Naritiv、Everipedia、Next Truckingが含まれている。

最初の製品Shine Bathroom Assistant(シャイン・バスルーム・アシスタント)は、Indiegogoで販売されている。価格は99ドルからで出荷開始は2020年2月の予定。

これはハードウェア系起業家にふさわしい挑戦だ。私たちの現代の生活にトイレはなくてはならない存在だが愛されていない。それに、ずっと長い間イノベーションに縁がなかった。

ハーバート氏は、何年も昔からトイレのイノベーションに魅了されてきたと私に話してくれた(そこはフロイトも口を挟みたいところだろうが)。それは、彼が高校2年生のときに日本を旅行たとき、TOTOなどの企業が、空想的なすべて洗ってくれる(そして歌って踊る)トイレでこの分野にイノベーションをもたらしている様子を見て衝撃を受けた経験にさかのぼる。

「私たちは自問自答しました。どうしたらトイレがよりよい場所になるか」と彼は話す。「答はソフトウェアの中にあると考えました。そんな論文を読めば、チャンスはたくさん見つけられると」。

Amazon Echoやその他のスマートスピーカーと同等のサイズのShine Bathroomのトイレ用アタッチメントは電池で駆動し、水タンクや便器の中に設置するセンサーとノズル、トイレのタンクにつながる水道管に設置する加速度計を備えた3つめのセンサーの3つの部分で構成されている。水タンクには水道水を入れておく(手動で給水が必要)。

水は特殊なフィルターを通ることで電気分解され(水に電流を加える)、トイレを流すごとにスプレーされる。これで洗浄と脱臭が行われる。Shine Bathroomによると、このスプレー技術は、既存の脱臭スプレーの5倍のパワーがあり、漂白剤と同程度の効き目があるという。しかし、便器の陶器を痛めることがない。仕事を終えたあとの水は生理食塩水に変換される(誤解のないよう言っておくが、洗剤の類は一切使わない)。

洗浄機能に加えて、スマートフォンで対応してくれるAIのトイレアシスタントのSam(サム)がいる。サムは本体やセンサーとつながっていて、起こりがちなトイレのトラブルを検出できる。たとえば、何百リットルも水を無駄にこぼしてしまう水漏れの場合は、振動の変化を測り、異常があれば無料の修理キットを注文し、自分で修理できるように準備してくれる。

サムをAlexaに接続すれば、トイレの掃除、タンクの水量の確認、さらに将来的にはもっと多くの作業を命令できるようにもなる。

振動をモニターする方法は、ハーバート氏と一部のスタッフの過去の起業家人生にルーツがあることで知られている。

ハーバート氏は、賢くない製品をスマートにするアイデアに基づくTile(タイル)に似た製品を開発したTrackR(トラッカール)の2人の共同創業者のひとりだ。TrackRのベーシックな製品は、鍵や財布やカバンなどに貼り付け、失くしたときにその場所を知らせてくれるBluetooth内蔵の小さな紛失防止タグだ。

Shine Bathroomの長期的な目標は、IoT分野とセンサーを取り付けて振動や音をモニターすること。その状態を確認する、賢くないものをスマートにする分野にまで広がっている。TrackRでは実現できなかったコンセプトに、Shine Bathroomが新たな命を吹き込んだわけだ。

一方、TrackRはいいアイデアは世の中に刺激を与えるが、それだけでは十分じゃないという教訓をもたらした。

スタートアップ企業のTrackRは当時、Amazon、Revolution、NTT、Foundry Groupなどといった企業から7000万ドル(約76億円)を超える資金を調達した。だが結局、その基本のコンセプトは汎用的すぎた(紛失防止タグはアマゾンで安く大量に売られている)。独立系企業の間では市場のリーダーとして頭角を現したのがTileだ(製品を進化させるためには独立という立場が好都合だった)。しかしそれは、それが本当に収益性のあるビジネスなのか、プラットフォーム企業が乗り出してきて思わぬ方法でビジネスをひっくり返す可能性はないのかが判明する以前の話だった。

最終的に、ハーバート氏を含むTrackRのスタッフは追い出され、新しい幹部がやって来てブランドもAdero(アデロ)に変更された。現在、その幹部連中も会社を去り、CEOのNate Kelly(ネイト・ケリー)氏以外の面々はGlowforge(グロウフォージ)に逃亡してしまった。Aderoには何度も接触を試みたが返答がない。だが、我々の知るところによると、まだ息はあるようだ(今後の記事に注目いただきたい)。

「まだ何かあるようですが、何かをしてくれることを期待しています」とハーバート氏は古巣のスタートアップについて感想を語った。

一方、彼とTrackRル出身の数人の同僚たちは、その関心を新たな光り輝くチャレンジに向けている。それは、投資家たちも入りたがる大きなトイレの中の便器の上に乗っかっている。

「トイレを1日のよりよい始まりのための準備の場所にするという、Shine Bathroomのビジョンには感銘を受けました。トイレには、見過ごされてきた好機がたくさんあることを知りました」と、エントラーダ・ベンチャーズのTaylor Tyng(テイラー・ティン)氏は話していた。

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(翻訳:金井哲夫)

AWS Nitroの競合技術を有するPensandoが脱ステルス

元Cisco(シスコ)の技術者たちが創業したエッジコンピューティングのスタートアップであるPensando(ペンサンド)がシリーズCで1億4500万ドル(約157億7000万円)を調達し、ステルス状態を終えた。同社のソフトウェアとハードウェアはデータセンターにおけるクラウドコンピューティングサーバーの柔軟性を拡大し、Amazon Web ServicesのNitroと競合する技術と位置づけられる。

今回のラウンドはHewlett Packard EnterpriseとLightspeed Venture Partnersがリードし、これによりPensandoの調達総額は2億7800万ドル(約303億円)になる。HPEのCTOであるMark Potter(マーク・ポッター)氏とLightspeed VentureのパートナーであるBarry Eggers(バリー・エッガース)氏が、Pensandoの取締役会に加わる。同社の会長は元CiscoのCEO John Chambers(ジョン・チェンバース)氏で、彼はJC2 Venturesを介してPensandoの投資者の一人でもある。

Pensandoは2017年に、Mario Mazzola(マリオ・マッゾラ)氏、Prem Jain(プレム・ジャイン)氏、Luca Cafiero(ルカ・カフィエロ)氏、およびSoni Jiandani(ソニ・ジャンダニ)氏によって創業された。この技術者チームはCiscoの重要な技術開発のいくつかを先頭に立って推進した人々であり、その前にはInsieme Networksなど4つのスタートアップを創業して、それらはいずれもCiscoが買収している。

ロイターのインタビューで、前にCiscoの執行副社長だったPensandoのCFOを務めるRandy Pond(ランディ・ポンド)氏は、CiscoがPensandoの買収に関心があるかは明らかでないが、「現時点でうちはIPOを志向している。でもお金に関しては常にほかの可能性もある」と述べた。

同社によると、そのエッジコンピューティングプラットホームのパフォーマンスは生産性とスケールで比較するとAWS Nitroの5倍から9倍だ。Pensandoは、エッジコンピューティングのためのデータセンターインフラストラクチャを5Gからのデータや人工知能、そして物のインターネット(IoT)アプリケーションに対し最適化して用意する。ステルスの間に同社は、HPE、Goldman Sachs、NetApp、Equinixなどの顧客を獲得した。

プレス向けの声明でポッター氏は「現在のような変化が激しく、超稠密に接続された世界では、以前にも増して柔軟性と選択肢の幅の大きい操業環境を企業は必要とする。HPEとPensando Systemsとの関係が拡大しているのは、エンタープライズとクラウドの理解を互いに共有しているからだ。我々はPensandoへの投資とソリューションレベルのパートナーシップを誇らしく感じており、顧客のニーズを前もって把握したソリューションを今後とも推進していきたい」と語っている。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

ARMv8-M向けにカスタムインストラクション機能を導入

米国時間10月8日、米国サンノゼで開催された今年のTechConイベントでArmCustom Instructions(カスタムインストラクション、カスタム命令)を発表した。ARMv8-Mアーキテクチャの組み込みCPU用の新機能で、顧客は組み込みシステムやIoTのアプリケーションなどで、特定のユースケースに最適化できる独自のカスタムインストラクションを書けるという機能だ。

The logo of British technology company ‘arm’ is pictured at the Mobile World Congress (MWC) in Barcelona on February 28, 2019. – Phone makers will focus on foldable screens and the introduction of blazing fast 5G wireless networks at the world’s biggest mobile fair as they try to reverse a decline in sales of smartphones. (Photo by Pau Barrena / AFP) (Photo credit should read PAU BARRENA/AFP/Getty Images)

本日の発表に先立ってARMの自動車とIoT事業担当シニアディレクターであるThomas Ensergueix(トーマス・エンセルグエイ)氏は「開発を支援する方法はすでにあるが、それはCPUの心臓にまで達するような深いものではない。今回弊社が顧客に提供しようとしているのは、独自のインストラクションをプログラムでき定義できる自由度であり、そしてそれらをCPU自身が実行できることだ」とコメントした。

彼は、最適化のためのオプションがARMには常にあったことを指摘する。それは専用バスでGPUに直結するためのメモリマッピングのアーキテクチャに始まり、現在のニューラルプロセッサーユニットに連なる。これによりCPUとアクセラレータ(GPU)が並列に動くが、データの通り道となるバスがボトルネックになる。顧客はCPUに直接接続されているコプロセッサー(浮動小数点演算プロセッサ)を使うことができるものの、本日の発表ではARMの顧客は独自のアルゴリズムにより、それらをCPU上で直接動かせる。これによりレイテンシーは下がるが、メモリマップド(GPUなどの外部チップとデータをやり取り)する手法とは異なり並列では動かせない。

arm instructions

ARMの主張では、この機能によって顧客のワークロードを低コスト低リスクで効率化でき、CPUの既存機能に対する妨害が何もない。しかも顧客は、すでに慣れ親しんでいる既存のスタンダードなツールをそのまま使える。

custom assembler当面、カスタムインストラクションを実装できるのはArm Cortex-M33 CPUのみで、2020年の前半から可利用になる。しかし将来は、すべてのCortex-Mプロセッサーがデフォルトで利用できる。顧客に新たな費用やライセンス料は発生しない。

エンセルグエイ氏が指摘するのは、今後インターネットに接続されたデバイスがますます増えるとともに、ARMの顧客は自分が使うプロセッサーを独自のユースケースに合わせて最適化したくなるということだ。そして、そんなときカスタムインストラクションを作れれば、デバイスの電池寿命を延ばすことなどが可能になるだろう。

ARMはすでに、カスタムインストラクションでIAR SystemsやNXP、Silicon Labs、STMicroelectronics(STマイクロエレクトロニクス)などをパートナーにしている。

NXPのマイクロコントローラー担当上級副社長兼ジェネラルマネージャーであるGeoff Lees(ジェフ・リーズ)氏は「当社のようなシリコンサプライヤーは、ARMのカスタムインストラクションがあれば顧客により高度なアプリケーション固有の命令(インストラクション)の最適化を提供して、これからの時代の組み込みアプリケーションのパフォーマンスや電力消費、コードサイズの安定などの面を改善してもらえる。しかも、これらすべての改善がCortex-Mの幅広いエコシステムの中でできるので、顧客の既存のソフトウェア投資の効果が最大化される」と語る。

なお、組み込み関連のもうひとつのニュースとしてARMは本日、Mbed OSのガバナンスモデルのセットアップを発表した。この組み込みデバイス用のオープンソースのオペレーティングシステムは、ARM Cortex-Mチップで動く。Mbed OSそのものは常にオープンソースだが、Mbed OS Partner GovernanceモデルではARMのMbedシリコンパートナーたちが、毎月のProduct Working Groupのミーティングなどで、OSの開発について注文をつけられる。Analog Devices(アナログ・デバイセズ)やCypress(サイプレス)、Nuvoton(ヌヴォトン)、NXP、Renesas(ルネサス)、Realtek(リアルテック)、Samsung(サムスン)、そしてu-bloxなどがすでにこのグループに参加している。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

マイクロソフトのナデラCEOが「コンピューティングの未来はエッジにある」と講演

Microsoft(マイクロソフト)のCEOであるサティヤ・ナデラ氏は、ワシントンで開催されたカンファレンス「Microsoft Government Laders Summit」で講演し、Azureクラウドを「世界のコンピューター」だとしたものの、「エッジコンピューティングこそ未来だ」と述べた。

Amazon(アマゾン)やGoogle(グーグル)などクラウドコンピューティングを主力業務とするライバルは「Windowsを持つマイクロソフトのポジショントークだ」と反論するかもしれないが、多くの企業はクラウドに完全に移行してはいない。

ナデラ氏は「コンピューティングはまずローカルで実行され、抽出されたデータがAIや機械学習のような強力な能力を必要とする処理のためにクラウドに送られる」からだとその意味を説明した。情報はクラウドに出て行く前にローカルに入ってこなければならない、ということだ。

実際、ナデラ氏が指摘するように、コンピューティングの将来は「ローカルかクラウドか」というように二分できるものではない。エッジコンピューティングとクラウドコンピューティングは相互に補完する関係にある。ナデラ氏は「新しいコンピューティングのパラダイムはインテリジェントクラウドとインテリジェントエッジによって動かされる」という。

ナデラ氏はこう述べている。

エッジ・コンピューティングのコンピューティング全般に与える影響を真に理解するめには2030年までにインターネットには500億のデバイスが接続されることになると予測したレポートを吟味する必要がある。これは驚くべき数字だ。現在我々のWindowsマシンは10億台ほどある。スマートフォンが数十億台あるだろう。これが2030年には500億台になっているだろうというのだ。

この調査が予測する500億台の大半はIoT(Internet of Things)デバイスだろう。こうしたデバイスが莫大なデータを生み出す。こうしたデータの奔流を処理するためには従来とは全く異なる方法を考え出さねばならないだろう。ナデラ氏は「エッジデバイスは我々の身の回りのあらゆる場所に存在することになるため、あらゆるビジネスプロセスにおけるコンピューティングについての考え方を大きく改める必要がある」という。ナデラCEOは「ユースケースが(聴衆の多くが関わっている)公共部門であるか民間ビジネスであるかどうかにかかわらず、データの生成が爆発的に増加するにつれて、人工知能による処理が必須となる」という。

ナデラ氏はこれによって人工知能の新たなユースケースが出現するだろうとして次のように述べた。

もちろん、豊富なコンピューティングリソースが利用できるなら、データとAIを組み合わせた新しい処理アセットを構築するできる。これは単一のアプリケーション、単一のエクスペリエンスであってはならず、既存のAIに頼ったものであってもいけない。つまり、大量のデータを処理してそこからAIを構築する能力が必要とされる。

ユーザーがこのような処理にAzureやWindowsなどMicrosoftのプロダクトを使ってくれるならナデラ氏は大いにハッピーだろう。エッジツールであれば、IoTからのデータをローカルに集約するData Box Edgeが2018にリリースされている。実際、マイクロソフトのプロダクトをするかどうかに関わらず、ナデラ氏の見通しは正しいものと思われる。

コンピューティングがエッジにシフトするにつれ、ベンダー企業が提供するテクノロジーやサービスがいかに広範囲であれ、ユーザーが単一のベンダーに縛られることは少なくなるだろう。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

サブスクのIoT家庭用浄水器を提供するスタートアップ

特に米国では、水道水の水質に関する問題が多く、多くの人がボトル入りの水を飲むようになっている。しかしこれには使い捨てプラスチックに伴う環境破壊の問題がある。

ヨーロッパのスタートアップのMitteは、この問題の解決策は水道から直接、水を濾過することだと考えている。同社はシードラウンドで1060万ドル(約11億4000万円)を調達した。ただ、まだ製造は開始していない。これに対し、米国を拠点とするスタートアップが新たなソリューションを提案した。

oolleeは、低額な月額料金で濾過した飲料水を無制限に利用できる製品だ。プレシードファンドでMission GateやColumbus Holdingsなどの投資家から100万ドル(約1億800万円)を調達した。

一般的な濾過フィルタの場合、利用者はフィルタのメンテナンスを忘れ、水質が悪化してしまう。そこでoolleeでは、メンテナンスとカートリッジ交換の費用を月額料金に含めることにした。毎月の利用料金は29ドル(約3100円)で、1日100円程度だ。

oolleeは逆浸透法で水を濾過する。水が半透膜を通過する際に混入物質が残り、清潔な飲料水がタンクに溜まる仕組みだ。通常、逆浸透法のフィルタの取り付けとメンテナンスはコストがかかり、家庭用としては扱いが難しい。

oolleeのCEOで共同創業者のUmit Khiarollaev氏は次のように語っている。「デバイスをWi-Fiに接続すると、お客様は利用状況をモニタできる。アプリからフィルタ部品の交換時期が通知され、新しいフィルタの注文は1回タップするだけだ。水質、量、温度なども確認できる。oolleeは水を4段階で濾過し、最後に必須ミネラルを再導入する」。

oolleeの競合には、大手飲料水メーカーやスマートフィルタのメーカー、さらにネスレやアルハンブラなどの宅配サービス、浄水器を扱う中国テック大手のシャオミなどが挙げられる。

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(翻訳:Kaori Koyama)

屋内外のあらゆる物を低帯域長距離無線で結ぶAmazon Sidewalkプロトコル

シアトルで行われた例年のハードウェアイベントでAmazon(アマゾン)は米国時間9月25日、低帯域で長距離の新しいワイヤレスプロトコルとしてSidewalkを発表した。家の中や外のすべてのIoTデバイスを接続することが、その狙いだ。

アマゾンの主張では、BluetoothやWi-Fiは到達距離が十分でない。一方5Gは電力消費が大きくしかも複雑すぎる。

同社のデバイス部のトップを務めるDave Limp(デイヴ・リンプ)氏は「そこで私たちはSidewalkというものを考えたのです。それは帯域幅の低い新しいネットワークであり、既存の900MHzスペクトルの、自由に使えるOTAを使用します。それは、物をリアルタイムで追跡するのに適していると考えています。しかしもっと重要なのは、シンプルで安価で使いやすいさまざまなデバイスを長距離でコントロールできることです」とコメントしている。

技術の説明としてはちょっと漠然としているが、アマゾンが言いたいのは基地局とデバイスの位置関係次第では1マイル(1.6km)先のデバイスでも接続できることだ・

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Amazonはすでに700台のテストデバイスをロサンゼルスの世帯に配ってアクセスポイントをテストしている。アクセスポイントがたくさんあれば、かなり広い領域をカバーできるだろう。

Amazonはこのプロトコルを一般公開すると言っているので、そのほかのデバイスメーカーも自分のデバイスをこのネットワークに加えられる。

Sidewalkを利用する最初の製品は何だろう?それは犬の迷子札だ。犬が一定距離を超えたらアラートが来るので行方不明になる迷い犬が相当減るだろう。Ring Fetchと呼ばれるこの迷子札は、来年発売される。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

小売業界のデータドリブンな意思決定を支援、店舗分析サービス開発のFlow Solutionsが1.5億円を調達

小売業界向けのデータ活用ソリューションを展開するFlow Solutionsは9月26日、複数の投資家を引受先とした第三者割当増資により総額1.5億円を調達したことを明らかにした。投資家リストは以下の通りだ。

  • DNX Ventures
  • アコード・ベンチャーズ
  • 博報堂 DY ベンチャーズ
  • 楽天キャピタル
  • Darwin Venture

Flow Solutionsは小売店舗が“データドリブンな意思決定”を行うのに必要となる基盤を開発するスタートアップだ。主要プロダクトの「InSight」ではカメラなどのIoT端末を通じて取得した来店客数や顧客属性、POSや店内の導線、レジ待ちなど店舗内の各種データを中心に、天気やスタッフのシフトなど付随する情報を含む様々なデータを統合し、ダッシュボード上で可視化する。

店舗の売上に直結する主要な指標をリアルタイムで常に把握できるのはもちろん、様々な角度からデータを収集することで従来は実現できていなかった観点からの深い店舗分析が可能。それにとどまらず客数や店内の混雑を予測した上で現場のスタッフに次のアクションを提案する機能を備えるほか、スタッフのデータ活用をサポートするeラーニングシステムなども提供している。

これまでFlow Solutionsのソリューションは59ブランド、800以上の店舗が導入。たとえば商品棚ごとのパフォーマンス分析を実施した上で店内の商品陳列が変更されるなど、同社のサービスを活用した実店舗での改善事例も多数生まれているという。

なおInSightに関しては店舗ごとの月額サブスクリプションモデル、IoTセンサーなどのハードウェアについても同様にHaaS(Hardware–as–a–Service)モデルの月額制だ。

Flow Solutionsによるとカナダや米国、欧州などではすでに7割程度の小売店で来店者分析や転換率の計測などデータに基づいた店舗分析が実施されているそう。一方で日本ではPOSに集積したデータ分析が主流になっていて、購買に至らなかった人に関するデータなど網羅的な店内データの収集や分析が進んでおらず、店員の勘や経験に依存している店舗も未だに多いようだ。

「顧客データの必要性を感じ、いち早く分析システムを導入した小売業者でも、データがバラバラであったり、顧客を洞察するまでに及んでおらず、従来は経験と勘に基づいた意思決定をせざるを得ない状況にあります。顧客のニーズが多様化し進化するのを感じながらも、今なお、ほとんどの小売業者が、顧客の好みや行動に対する推測、直感に基づいて意思決定を行っています」(代表取締役CEOのチャド・スチュワート氏)

上述した通りInSightではPOSや人員配置、キャンペーンなどこれまで散らばっていた各種データととももに、IoTセンサーから取得できる店内の行動情報を統合・分析し誰でも使えるようにするのが特徴。「店長からCEOまで、組織内のすべての人が、簡単に多数のデータソースを表示・実行できることも、お客様がFlowを選んでくださっている理由の1つ」だという。

今後はポイントサービスの分析機能やエクスポート機能の追加や、AIを用いた予測機能の拡充など引き続きプロダクトのアップデートに力を入れる計画。今回調達した資金を活用して組織体制を強化しながら、さらなる事業拡大を目指す。

「『小売データを実用的なものにする』という私たちの使命を一貫し、小売のデジタル化を強化するため、今後数か月に渡り素晴らしい新機能を提供していく所存です。予想よりも早くなりましたが、日本以外の小売業者やパートナーから注目が集まり始めています。 そして、日本の小売業者においても国外での成長機会を求めているため、言語や文化を超え管理できる『データ駆動型ツール』を使用し成長をサポートする態勢を整えていきたいと思っています」(スチュワート氏)

データストレージのCloudianがエッジデータ分析特化の新事業を日本で立ち上げ

企業の大量のデータを保存して管理するサービスCloudian(クラウディアン)は米国時間9月17日、大きなデータセットのエッジ分析にフォーカスする新たな事業部門であるEdgematrix(エッジマトリックス)のローンチを発表した。EdgematrixはCloudianが株式の多くを持つ子会社で、最初はEdgematrixの本社が置かれた日本でサービスを開始する(Coudianの本拠地はカリフォルニア州サンマテオ)。

同社は900万ドルのシリーズAを、NTTドコモ、清水建設、日本郵政キャピタルなどの戦略的投資家およびCloudianの共同創業者でCEOのMichael Tso(マイケル・ツォ)氏と取締役のJonathan Epstein(ジョナサン・エプスタイン)氏らから調達した。資金は製品開発とそのデプロイメント、および営業マーケティングに充当される。

Cloudian自身は、昨年の9400万ドルのシリーズEを含めて計1億7400万ドルを調達している。同社の製品は、企業が数百TBものデータをオンプレミスで保存できるHyperstoreプラットホームおよび、データ分析や機械学習のソフトウェアなどだ。Edgematrixも大規模なデータセットの保存にはHyperstoreを利用し、独自のAIソフトウェアとハードウェアによりネットワークの「エッジ」におけるデータ処理を行う。エッジは、センサーのようなIoTデバイスからのデータが実際に集まる場所に近い。

同社のソリューションは、リアルタイム分析が必要な状況に向いている。たとえば、高速道路上の車のメーカーや車種や年式などを検出して、ドライバーに向けて表示される広告の最適なターゲティングがリアルタイムでできるだろう。

ツォ氏によると、Edgematrixが生まれたのは、Cloudianの共同創業者で社長の太田洋氏と彼のチームが、顧客のデータの処理や分析をより効率化する技術の研究開発に取り組んだ経験からだ。

ツォ氏は「最近では、IoTのデータをはじめとして、ますます多くのデータがエッジで作られ、しかもリアルタイムのデータ分析や意思決定をエッジの近くで行いたいというニーズが拡大している。データをどこかへ運んでからでは、通信費用やレイテンシーがどうしても発生する。最初はCloudianのチームが小さなAIソフトウェアによるソリューションを開発して成功し、同社のトップレベルの顧客たちの注目を集めた。そこでわれわれは、その成功を核として戦略的投資家たちによる子会社を作るのがベストだ、と決断した」と語る。

Edgematrixを日本で立ち上げるのは、AIシステムへの支出が今後どこよりも大きく伸びると期待されるからだ。IDCによると、その予想成長率は2018年から2023年までの5年間で45.3%にもなる。

ツォ氏は「日本はAI技術のアーリーアダプターとしてトップを走ってきた。政府と民間部門の両方が、AIを生産性向上に欠かせないと見ている。Edgematrixは、少なくとも次の1年間は日本市場に注力し、結果が良好なら北米とヨーロッパに拡張したい」とコメントした。

画像クレジット: Hiroshi Watanabe/Getty Images

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

エッジコンピューティングによる家庭用防犯カメラのSimShineが約8億6000万円の資金を調達

深圳に拠点を置くコンピュータビジョンのスタートアップのSimShineは、エッジコンピューティングを使ってデータをデバイス上に保持するホームセキュリティカメラのSimCamに向け、プレシリーズAの資金調達で800万ドル(約8億6000万円)を調達した。資金調達はCheetah Mobileが主導し、SkycheeやSkyview Fund、Oak Pacific Investmentが参加した。

今年、SimShineはKickstarterのクラウドファンディングキャンペーンで31万95ドル(約3300万円)を集めた。同社は製品開発と雇用のために、プレシリーズAラウンドを利用する。

SimShineのチームは、コンピュータビジョンとエッジコンピューティングソフトウェアの開発から始まり、SimCamをローンチする前に企業クライアントと5年間仕事をしてきた。

共同創業者でチーフマーケティングオフィサーのJoe Pham(ジョー・ファム)氏によると、同社はエッジコンピューティングを利用したスマートホーム製品をさらにリリースし、最終的には多数のデバイスを接続するIoTプラットフォームの構築を目標にしている。現在、SimCamはAmazonのAlexaとGoogle アシスタントが利用でき、またApple Homekitのサポートも準備中だ。

ファム氏によると、エッジコンピューティングは顔認証データを含むデータをデバイス上に保持することで、ユーザーのプライバシーを保護し、また処理がデバイス上で実行されるため(カメラはWi-Fiに接続され、ユーザーはスマートフォンで監視動画を見ることができる)、レイテンシや誤警報も低減できるという。また、多くのクラウドベースのホームセキュリティカメラで必要なサブスクリプションプランに加入する必要がなく、さらにSimCamはクラウドサーバーをメンテナンスする必要がないため、デバイスの価格を下げることができる。

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(翻訳:塚本直樹 Twitter