ファッションデザインと制作の合理化を目指すCalaの新しいモバイルアプリ

ニューヨークを拠点とするCala(カラ)は、ファッションデザインと制作のための新しいCalaモバイルアプリのローンチを発表した。企業やインフルエンサーにデジタルファッションデザインのインターフェースを提供する同社は、新しいアプリは製品制作とサプライチェーン管理のプロセスを合理化するために設計されたものだという。

2016年に立ち上げられたCalaは、コラボレーション、デザイン、製造などを可能にしながら、ファッションブランドや小売業者に、ファッションデザインとサプライチェーンのプロセスの各ステップを助けるオールインワンプラットフォームを提供することを目指している。Calaのパートナーネットワークには13カ国60以上の工場が含まれており、顧客はニーズにあうメーカーと繋がることができる。

Cala の CEO で共同設立者のAndrew Wyatt(アンドリュー・ワイアット)氏は TechCrunch のインタビューで、ファッション業界の製品作成プロセスはスケッチから始まることが多いが、このステップ以降は、開発と生産に関わるすべてがモバイルで行われると語っている。同社は、開発・生産プロセスをより迅速かつ容易にすることを目的として、新しいアプリをリリースするとのことだ。Calaの新しいアプリでは、ユーザーがデザインやコレクションを見たり作成したりできる他、デザインのインスピレーションをアップロードして文脈に応じたコメントを追加できるツールも含まれている。また、コメント、写真、ファイルの添付により、チーム間でアプリを通じてコミュニケーションをとることができる。また、アプリには通知センターがあり、重要な情報のみを表示し、ユーザーに多数の通知を浴びせないように設計されている。

「このアプリのターゲット層は、ファッションブランドで働く人たちです」と、ワイアット氏は語った。「年間10万ドル(約1148万円)以上の商品を扱っているブランドにフォーカスしています。私たちは、3-5人のチームでも、50人のチームでも、サプライチェーンをより効果的に運営する手助けができます」。

この新しいアプリケーションは、Apple App Storeでダウンロードできる。ワイアット氏は、Cala のモバイルウェブユーザーの80%以上がAppleデバイスを使用していると指摘し、それが iOSの発売を優先させた理由であると述べた。同社は、Androidでもこのアプリを提供する予定だが、現時点では、そのスケジュールは未定であると述べている。

画像クレジット:Cala

米国時間3月1日の発表の中で、Calaはデザインプロセスに3Dプロトタイピング機能を追加することも明らかにした。この新機能により、ユーザーはデザインの3D画像をリクエストすることで、フィット感や素材感をリアルに確認することができるようになる。Calaによると、この機能はサンプルを注文するよりも時間的に効率的な代替案として機能し、またデザインの最終決定にも役立つという。

「世界は間違いなく、3Dデザインとオンデマンド生産の世界に向かっており、我々はその最前線に立つことができると思っています」と、ワイアット氏は語った。「また、私たちには、物理的な製品を購入すると、metaverse(メタバース)で使用できるデジタルツインが手に入るという明確な未来が見えています。これが、私たちが3Dデザインを学んでいるもう1つの理由です。現在、3Dデザインは時間の節約になり、ブランドが開発面でより持続可能なものになるのに役立っています」。

Calaは、発売当初、オンデマンドのカスタムフィット3Dボディスキャンシステムで市場への進出を果たした。ワイアット氏によると、それ以来、Calaはファッションブランドの中核的なサプライチェーンパートナーであることに重点を置くようになり、ここ数年、小規模なファッションブランドやインフルエンサーと協力して、テクノロジーを使って物理的な製品を作り、顧客に販売するプロセスを合理化するソリューションを作り始めた。

Calaの直近の資金調達ラウンドは2020年7月で、Maersk Growth(マースク・グロース)とReal Ventures(リアル・ベンチャーズ)の共同主導で300万ドル(約3億4400万円)のシードラウンド拡張を実施した。同社は2018年にReal Venturesが主導する最初のシードを行った。この2つのラウンドにより、同社の資金調達総額は700万ドル(約8億400万円)に達した。

画像クレジット:Cala

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(文:Aisha Malik、翻訳:Yuta Kaminishi)

テラヘルツ波で人間も「透視」する画像センサー

赤外線とマイクロ波の間には、現在の電子機器や光学機器では扱うことができない目に見えない電磁波領域が広がっていいる。その領域であるテラヘルツ波がすごい点は、X線によく似ていることだ。テラヘルツ波を使えば、ある種の固体物質を透視することができるが、X線過剰照射時のような「あれあれ、死んじゃった」という副作用はない。Ruonan Han(ルオナン・ハン)准教授が率いるMITのテラヘルツ統合エレクトロニクスグループの研究者たちは、この領域を利用しようとしている。MITの研究室では、電子的に操縦可能なテラヘルツアンテナアレイが開発されたばかりだ。

このトランプサイズのテクノロジーを使うことで、研究者たちはその領域への扉を開けようとしている。この技術により、より高速な通信や、霧や埃の多い環境でも視野を確保できるシステムが実現できるかもしれない。研究者たちはこれを「リフレクトアレイ」と呼んでいて、コンピュータで反射方向を制御できる鏡のように動作すると説明している。

このリフレクトアレイは、1万本近いアンテナを小さなデバイスに集約し、テラヘルツのエネルギービームを微小領域に精密に集めることが可能だ。可動部がないため、正確かつ迅速に制御することができる。この装置が生成する画像は、LiDAR(ライダー)装置に匹敵するものだが、雨、霧、雪を透過することができる。研究者は、この種の商用デバイスで軍用レベルの解像度を実現できる初めてのソリューションだとしている。

「アンテナアレイは、各アンテナに与える時間遅延を変えるだけで、エネルギーを集める方向を変えることができ、しかも完全に電子化されているので、非常に興味深い存在なのです」と、最近MITの電気工学・コンピュータ科学科(EECS)で博士号を取得したNathan Monroe(ネイサン・モンロー)氏は語っている。「つまりモーターでぐるぐる回る空港の大きなレーダーアンテナの代わりとなるわけです。このアンテナアレイでも同じことができるのですが、コンピュータの中でビット少し変えるだけなので、可動部品は必要ないのです」。

イメージ検知装置として使用する場合には、照射角度1度のビームがセンサー前のシーンの各点上をジグザグに移動し、3次元の奥行きのある画像を作成する。他のテラヘルツアレイは、1枚の画像を作るのに何時間もあるいは何日もかかるのだが、この製品はリアルタイムに動作する。これまでは、1万本のアンテナを同時に制御するために十分なビットを計算 / 通信すると、リフレクトアレイの性能が大幅に低下していた。そこで研究者たちは、アンテナアレイをコンピューターチップに直接組み込むことで、これを回避した。フェーズシフターは、トランジスタがわずかに2個という非常にシンプルなもので、このためチップ上の約99%のスペースをメモリとして確保することができた。その結果、個々のアンテナは異なる位相のライブラリを保存することができる。さらに、2トランジスタのフェーズシフターは消費電力を半減させ、別電源が不要になるというメリットもある。

「この研究以前は、テラヘルツ技術と半導体チップ技術を組み合わせてビームフォーミングが行われることはありませんでした」とハン氏はいう。「今回の研究によって、独自の回路技術により、非常にコンパクトでありながら効率的な回路をチップ上に実現し、そこでの波の挙動を効果的に制御することができるようになったのです。集積回路技術を活用することで、過去にはまったく存在しなかった素子内メモリやデジタル動作が可能になりました」。

「このリフレクトアレイは、高速に動作し非常にコンパクトなので、自動運転車のための画像認識に有用です。特に、テラヘルツ波は悪天候でも見通すことができますので」とモンロー氏はいう。

モンロー氏と彼のチームは、とあるスタートアップを通じてこの技術を市場にライセンスしようとしているが、このデバイスは軽量で可動部品がないため、自律ドローンに適しているかもしれないと示唆している。さらにこの技術は、数分ではなく数秒で動作する非侵襲型のボディスキャナーを実現することで、セキュリティの現場にも応用できる可能性がある。

以下は、システムの仕組みを紹介した動画だ。

画像クレジット:MIT

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(文:Haje Jan Kamps、翻訳:sako)

Waymoがサンフランシスコでロボットタクシー乗車料金の徴収を開始

Alphabet(アルファベット)の自動運転部門であるWaymo(ウェイモ)は、カリフォルニア州公益事業委員会から、サンフランシスコで自律走行車によるライドヘイリングに乗車した人に料金を課すことを認める許可を得た。ただし、許可の規定に従い、人間のセーフティオペレーターが立ち会う必要がある。

このカリフォルニア州公益事業委員会(CPC)からの許可取得は、同社がサンフランシスコで自律走行車を商用化するための最終ステップの1つだ。2021年9月、カリフォルニア州自動車局はWaymoに同市での運転者同席許可証を与え、それにより同社は自社の自律走行車が提供するサービスの対価を受け取ることができるようになった。

この許可は、Waymoが特別にロボットタクシーサービスに料金を課すことを許可するものではなかったが、同社は自律配送から収益を得ることができた。11月、同社はスーパーマーケットチェーンのAlbertsons(アルバートソン)と提携し、サンフランシスコで一部の顧客に食料品を配達している。

Waymoは2021年8月から、サンフランシスコで十分に精査された個人のグループである「Trusted Tester」プログラムのメンバーに無賃乗車を提供している。これは、乗車体験に関する詳細なフィードバックを提供してもらい、同社のサービスに関する学びを手助けするものだ。同社によると、テスターは秘密保持契約書にサインしてプログラムに参加し、ウェイティングリストは数万人に上るという。

今後数週間のうちに、WaymoのSFサービスエリア内であれば24時間365日どこでも有償で乗車できるよう、同社はこのプログラムを発展させる予定だ。

Waymoの広報担当者であるNick Smith(ニック・スミス)氏はTechCrunchに「我々は完全自律走行体験を一般に展開するための道筋を、段階的なアプローチで進めています」と語っている。「それは、私たちがアリゾナで取ったアプローチで、これは 私たちの安全への焦点に深く基づいています。そしてそれは、私たちが今後運営するどの都市でも取るであろうアプローチです。まず、自律走行モードで自律走行スペシャリストがハンドル操作を管理する状態で開始し、選ばれたテスターに、料金を徴収開始する前に無料で乗車を公開します。最終的には、ライダーのみのモード(他に誰も乗っていない状態)での運行に移行します。アリゾナでは、何千人ものライダーがライダーのみのモードで何万回もの移動をこなした実績があり、この方法はサービス運営に関する学びを得るのに役立っています」と語る。

同社は、同社の自律走行型Jaguar I-PACEを何台保有しているのかは共有していないが、最新のCPUC四半期報告書では、Waymoは報告期間中のある時点でライダーによる移動に利用できる車両を約100台保有していたことが判明した。

同社のライドヘイリングサービスであるWaymo Oneは、アリゾナ州フェニックスですでにドライバーレスサービスとして提供されており、このサービスがどの程度のコストになるかの指標となるはずだ。最近のCNBCのレポートによると、5mil(約8km)を14分かけて走った場合、結局1分あたり約1ドル(約115円)のコストがかかったという。Uberの平均的な乗車時間は1分あたり約0.40ドル(約46円)である。

「価格設定は合理的で、サンフランシスコの他のサービスと競争力のあるものになる予定ですが、現時点で共有できる具体的な内容はありません」とスミス氏は語る。

Waymoが有料乗車に完全移行したら、サンフランシスコのTrusted Testerの無料乗車を停止すると、スミス氏は述べた。

同市におけるWaymoの最大の競合であるCruise(クルーズ)は、Waymoがドライブレスの許可を得たのと同じ日にカリフォルニア州陸運局からドライブレスの展開許可を得ており、2月初旬から一般市民に対して人間のセーフティ・オペレーターを介さない無料乗車を提供している。Cruiseは、それらの乗り物を有料化するためのCPUCの許可をまだ待っているところだ。Waymoは、DMVにドライバーレス許可証を申請したかどうかについてコメントするのを避けた。

関連記事:Cruise、サンフランシスコの公道で自動運転タクシーの一般乗車開始へ

画像クレジット:Waymo

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Akihito Mizukoshi)

Netflixのオープンソースツール「Conductor」の開発者たちがその運用・管理を支援する「Orkes」を発表

Netflix(ネットフリックス)は「Conductor(コンダクター)」というツールを開発・アウトソースすることで、マイクロサービスを取り巻く状況を一変させることに貢献した。このツールは当初、自社の大規模なマルチチャネルでオンデマンドのビデオ・トラフィック(およびそれに対応する複雑なコードベース)をグローバルに扱うために作られたものだったが、後にTesla(テスラ)やAmerican Express(アメリカン・エクスプレス)、GitHub(ギットハブ)、Deutsche Telekom(ドイツテレコム)、VMware(VMウェア)をはじめとする約150社もの大規模な組織などが、自社のサービスを管理するために採用するようになった。そして現在、Conductorを開発したチームは、Conductorをベースにしたツールのクラウドホスティング版である「Orkes(オーケス「オーケストレーション」の短縮形)」を発表し、同時にこのミッションを推進して、オープンソースのConductorコミュニティの継続的成長をサポートするために、930万ドル(約1億700万円)の資金調達を実施した。

このラウンドは、Battery Ventures(バッテリー・ベンチャーズ)とVertex Ventures(バーテックス・ベンチャーズ)が共同で主導し、Mahendra Ramsinghani(マヘンドラ・ラムシンガニ)氏とや Gokul Rajaram(ゴクル・ラジャラム)氏などのエンジェル投資家や、Amazon(アマゾン)やFacebook(フェースブック)を含むさまざまなテック系企業の名前を明かしていない幹部が参加している。

Orkesは、CEOのJeu George(ジョー・ジョージ)氏、共同CTOのViren Baraiya(ヴィレン・バライヤ)氏 とBoney Sekh(ボニー・セク)氏、CPOのDilip Lukose(ディリップ・ルコセ)氏が共同で設立した会社だ。最初の3人は、NetflixでConductorを一緒に作ったが、その後は別々の道を歩んでいた。ジョージ氏はUber(ウーバー)でシニアエンジニアとして働き、バライヤ氏はGoogle(グーグル)でFirebase(ファイアベース)のエンジニアリングを率い、セク氏はRobinhood(ロビンフッド)で決済の責任者を務めていた。2021年、この3人が再結集し、Microsoft Azure(マイクロソフト・アジュール)の卒業生で、ジョージ氏と一緒に働いていたルコス氏も加わり、Orkesを起ち上げた。

Conductorに戻って、その上に乗るツール群を構築した理由は、ジョージ氏がいうように、非常に明確な市場のシグナルがあったからだ。

「私たちはConductorを汎用エンジンとして構築し、多くの企業がこれを使い始めると予想しました。現在、この分野は変曲点にあり、組織はマイクロサービス・アーキテクチャに移行しています」と、ジョージ氏はインタビューに答えている。「しかし、より広い今のアイデアは、その運用を支援し、その上における規模の管理を支援することです」。組織はしばしばハイブリッドクラウド環境で、複数のコーディング言語にわたって作業するため、Orkesのアイデアは管理を支援するための「すぐに使える」一連のツールを提供することだと、同氏は付け加えた。

実際、Orkesが登場する前にHacker News(ハッカー・ニュース)で行われたConductorの長所と短所に関する議論では、一部の環境における実装の難しさが強調され、それを解決する機会も指摘されている。

「企業がマイクロサービスを構築するとき、彼らは選択した言語で構築するわけですが、概して複数の言語を使用することがあります」とジョージ氏は述べ、一般的には少なくとも3つの言語が使用され、時にはそれ以上の場合もあると語った。「ConductorとOrkesのユニークな点は、まったく言語に依存しないことです」。

クラウドサービスに注力したクローズド・アルファ版が好評を得ているため、今回調達した資金は、引き続きOrkesのエンジニアリング・チームと市場参入戦略チームの増強に使用される予定だ。

Orkesの台頭は、オープンソースツールの最近よくあるルートを浮き彫りにする。開発者やエンジニアは、既存の組織で、あるいはプロジェクトとして、自らの実体験に基づく非常に直接的なニーズを解決するための、画期的なツールを構築することに多大な力を注ぐ。そして、それをどのように運用するべきかという開発者の倫理観から、これらのツールを長期的にサポートする幅広いコミュニティを構築するために、オープンソース化するのだ。

同じ開発者が、オープンソース版を使いやすく実装するためのリソースや人材を持たない多くの組織でもより簡単に使えるようにするために、結局は開発に舞い戻り、最も明白で有用なカスタマイズを行うこともよくある。

もちろん、誰でもオープンソースツールの商用版を作ることはできる(非常に成熟した技術では、その上に競合する商用製品が作られることもある)が、そのようなスタートアップ企業の創設者は、概して最初にオープンソースツールの構築をてがけた人物と同じであることが多い。彼らは誰よりも時間と力を注ぎ込んでいて、誰よりもそのツールの可能性と落とし穴を知っている。

そして、投資家も同じ理由からそのような企業を支持したがるものだ。同じテーマに沿った最近の例では、Great Expectations(グレート・エクスペクテーションズ)の開発者たちによるSuperconductive(スーパーコンダクティブ)が、先ごろ4000万ドル(約46億円)を調達した。

Conductorの場合、このオープンソースツールには熟した既存ユーザーがいて、それはOrkesにとって当然ながら顧客となる。しかし、このスタートアップの台頭は、新たな見込みのあるユーザー層への扉も開くことになる、あるいはそう考えることができる。

「Conductorの普及曲線は、私が見た中で最も速いものの1つです。そして、オリジナルの開発チームによる商品化をサポートできることは、私たちにとってすばらしい機会です」と、Battery Venturesのジェネラル・パートナーであるDharmesh Thakker(ダルメシュ・サッカー)氏は声明の中で述べている。「Orkesには、この活気あるコミュニティに、企業レベルのサポートとクラウドサービスを提供するための最適なチームが揃っています」。VertexのパートナーであるSandeep Bhadra(サンディープ・バドラー)氏は、このラウンドで同社の取締役会にも加わっている。

画像クレジット:woodleywonderworks Flickr under a CC BY 2.0 license.

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

AlphabetのドローンサービスWingが配達件数20万件を達成、豪スーパーマーケットColesとの提携を発表

Alphabet(アルファベット)のドローンサービスWing(ウイング)は米国時間3月1日、新しいマイルストーンとなる商業配送件数20万回を達成したと発表した。この数字は、試験飛行を除いたものであり、10万回を達成してから半年後の達成となる。オーストラリアが、テストおよび商用展開の主要市場であり、2022年1〜2月の配達回数は3万回となった。

関連記事:ドローン配達のWingがサービス開始から2年で10万回の配達を達成、豪パイロットサービスで

さらに細かくいうなら、1日に1000回以上、25秒に1回の割合で配達が行われたことになるとWingはいう。この大きな節目の数字は、オーストラリアの大手スーパーマーケットチェーンであるColes(コールス)との業務提携発表とともにやってきた。この契約により、Wingはオーストラリアの首都キャンベラで、食品からヘルスケア製品、トイレタリー製品に至る250種類の商品を配達することになる。

その他にも、KFCやRoll’d(ロールド)のベトナム料理、Friendly Grocer(フレンドリーグローサー)の新型コロナウイルス(COVID-19)迅速検査、St. John Ambulance QLD(聖ジョン・アンビュランスQLD)の応急処置キットなどが最近宅配サービスに加わった。大きな数字はともかく、都市部でのドローン配送の有効性には疑問符がついたままだ。多くのサービスは、未来のラストワンマイル配送の手段として、地上型ロボットに一段と積極的に注目している。

このテクノロジーは田舎や到達しにくい場所にとっては意味がある。しかし、Wing自身は、そのアプローチは都市生活にも適しているのだと主張する。

Google(グーグル)は米国時間3月1日のブログ記事の中で「ドローンによる配達を日常生活に取り入れることは、単なる利便性の追加にはとどまりません」と述べている。「交通渋滞や事故、温室効果ガスの排出量を削減すると同時に、企業の売り上げを伸ばし、忙しい日々の生活に余裕を取り戻すこともお約束します。そんな未来を覗きたいなら、オーストラリアをご覧ください」。

一方、Amazonの競合サービスであるPrime Air(プライム・エア)は、パンデミック中にレイオフを余儀なくされ、この配送方法の実行可能性に疑問を残している。

画像クレジット:Wing

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(文:Brian Heater、翻訳:sako)

オープンワールドドライブゲームForza Horizon 5がゲーム内での手話表示機能を追加、米国流と英国流を選択可能

オープンワールドドライブゲームForza Horizon 5がゲーム内での手話表示機能を追加、米国流と英国流を選択可能

Playground Games / Microsoft

Xbox / PCの人気オープンワールドドライブゲーム『Forza Horizon 5』が3月1日のアップデートにより手話表示に対応しました。手話は国ごとに違いがありますが、開発元のPlayground Gamesは、米国手話(ASL)と英国手話(BSL)の2種類をこのゲームでサポートしたと発表しています。

この機能は昨秋に導入に向けた取り組みが進行中であることが発表されていました。手話はゲーム内の会話シーンなどでピクチャーインピクチャー表示され、プレイヤーは表示位置やサイズを調整可能になっています。またゲームの邪魔にならないよう、手話者の背景の色も調整が可能です。

『Forza Horizon 5』もほかの多くのゲームと同様に字幕表示をサポートしており、それがあれば手話なんかいらないのでは、とも思えるところですが、熟練の手話通訳者などは口調や感情、雰囲気などを含めて伝えることができるため理解がしやすく、普段から手話を主体にコミュニケーションする人はむしろ手話のほうが理解がしやすいのだそうです。

今回のアップデートではそれ以外にも、フォトモードやリバリーエディター、ノンプレイヤー車によるトラフィックの動きといった機能のバグ修正が含まれるとのこと。新マシンが5台追加され、新しいフェスティバルプレイリスト(バトルパス的なチャレンジリスト)も追加されています。ただし、ライバルとPRスタントのリーダーボード(順位表)の表示が誤っている件はすぐに解決できるものではなく、引き続き対策に取り組むとしています。

(Source:Forza HorizonEngadget日本版より転載)

Rocket Labのロケット「Neutron」、製造から着陸までを米バージニア州ワロップス島で

Rocket Lab(ロケットラボ)は、同社のロケット製造・発射施設の拡張について最新の状況を発表した。ニュージーランドと米国にある既存の発射場には、引き続き同社の小型ロケット「Electron(エレクトロン)」を配備する。一方、バージニア州では、将来打ち上げる、はるかに大型のロケット「Neutron(ニュートロン)」を格納する新しい施設を建設する予定だ。

Nettronを製造する新しい施設は、NASAのワロップス飛行施設の中にある。施設の28エーカー(約11万3300平方メートル)の敷地には、約25万平方フィート(約2万3000平方メートル)の屋内空間がある。これは大きなスペースだが、当然ロケットも大きい。同社は多数のロケットを製造する予定だ。

ロケットの組み立てだけでなく、それを構成する特殊な炭素複合材もここで製造される。炭素複合材のロールは、いわば「温めたオーブン」から取り出してすぐ、Neutronの周囲23フィート(約7メートル)の胴体を包むことになる。

「ロケット全体をこの施設で製造することを意図しています」とRocket LabのCEOで創業者のPeter Beck(ピーター・ベック)氏は、米国時間2月28日のメディアブリーフィングで述べた。「ステージの直径は非常に大きい。私たちはその意思決定を本当に早く行いました。ワロップスとカリフォルニアの間にある一番大きい橋で直径を測るというようなことはしたくなかったのです」。

ベック氏は、Neutronの仕様が最初に公開された12月に、この大口径の利点を語った。

再利用を前提にゼロから設計されたロケットであるNeutronは、ペイロードを運んだ後にワロップスに戻り、生まれた場所と同じ施設で改修される。打ち上げと軌道上運用センターを含むオールインワンの複合施設は、この地域に何百もの仕事を提供し、宇宙産業におけるワロップスの長年の重要性をさらに強固なものにするはずだ。

バージニア州はワロップスNASAの施設の拡張と改善のために約4500万ドル(約52億円)の資金を計上済みだが、まだ議会で審議中だと、バージニア商業宇宙飛行局の代表Ted Mercer(テッド・マーサー)氏(米空軍少将、退役)は電話で述べた。

「もし議会で承認されれば、1500万ドル(約17億円)は施設の建設に、3000万ドル(約35億円)は新しい発射台の建設に充てられます」とマーサー氏は述べ、発射台はNeutron専用ではなく、多目的であることに言及した。

当然、早く建設すればそれだけ早く試せるため、ベック氏は「我々はすぐにでもにこの地で着工することを望んでいます」と述べた。

画像クレジット:Rocket Lab

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Nariko Mizoguchi

Instagram、ダイレクトメッセージ暗号化機能をウクライナとロシアで提供

Meta(旧Facebook)はウクライナ紛争への対応として、国営メディアの制限や事実確認に関する取り組みの強化などを行っているが、そうした一連の措置の一環として、ウクライナとロシアの両国のですべての成人が、Instagram(インスタグラム)で暗号化された1対1のチャットを利用できるようにすると発表した。

関連記事:フェイスブックとInstagramがロシア国営メディアの情報拡散を抑制、紛争地域のIGユーザーに暗号化DM提供へ

Instagramのユーザーには、ダイレクトメッセージの受信箱の上部に表示される通知でこのオプションが警告され、選択すれば暗号化された会話に切り替えられることが案内される予定だ。

Messenger(メッセンジャー)やWhatsApp(ワッツアップ)など、他のMeta傘下のアプリでは、すでにエンド・ツー・エンドの暗号化を提供している。WhatsAppでは、それがデフォルトになっている。ただし、デフォルトのエンド・ツー・エンド暗号化がMessengerに完全搭載されるのは2023年のいつかだが、同社は長年にわたり、Messengerのテキストチャットのエンド・ツー・エンド暗号化を有効にするオプションを提供してきた。また、1月にはMessengerでエンド・ツー・エンドの暗号化されたグループチャットと通話を完全導入している。

同社は、ウクライナとロシアの両方で安全機能を利用できるようにすることにした、と説明した。そのオプションがなければ、戦争に反対を表明しているロシアの活動家が危険にさらされる可能性を示唆した。

「著名なロシアのクリエイターやインフルエンサー、活動家やミュージシャンは情報にアクセスし、侵攻反対を発言するためにFacebookやInstagramを使っています」と最近副社長から昇格したMetaのグローバル問題担当社長Nick Clegg(ニック・クレッグ)氏は述べた。同氏は「彼らもそうし続けられるようにしたいのです。そしてロシアの人々も引き続きゼレンスキー大統領やウクライナの人々の声を聞き続けることができるようにしたいのです」と付け加えた。

危機的状況が続く中でロシア政府がMetaのサービスへのアクセスを制限し、それでも同社はここ数日、他にもいくつかの変更を加えている。

エンドユーザーにとって、今回の変更は暗号化されたInstagramのDMに限られたものではない。同社はまた、ウクライナとロシアのユーザー向けに、Facebookのプロフィールをロックしたり、友人リストの閲覧・検索機能を削除するなどの安全機能の提供を開始したと、クレッグ氏は指摘した。「プロフィールのロック」機能は、インドの女性のための安全オプションとして2020年に初めて導入された。これは、Facebookユーザーが友達になっていない人の投稿や写真を閲覧できないようにし、そのユーザーのプロフィール写真やカバー写真もズームインしたりダウンロードしたりすることを制限するものだ。

画像クレジット:Stockcam / Getty Images

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(文:Sarah Perez、翻訳:Nariko Mizoguchi

ロシアのIT企業で働く約3万人が反戦の請願書に署名

専門職に従事するロシアの人々のウクライナ戦争反対の強い思いを示唆するように、2月24日の侵攻以来、ロシアのIT業界では、軍事侵略行為に抗議し平和を求める公開書簡が回覧され、自称ITワーカーから約3万筆の署名が集まった。

請願書のタイトルは「ウクライナ領土での軍事作戦に反対するロシアIT業界の代表からの公開書簡」だ。

名前と肩書きのリスト(一部の人は勤務先も明記)には、起業家、プロダクトマネージャー、顧客体験責任者、分析専門家、バックエンド開発者、プロダクトデザイナー、マーケティングスペシャリスト、デベロップエンジニア、iOSエンジニア、ゲーム開発者、システムアナリスト、IT採用担当者など、IT専門家が多数名を連ねている。

嘆願書のホストとして使用されているGoogleドキュメントは652ページにも及ぶ。

ロシア語で書かれた公開書簡の全文は、以下の通りだ(機械翻訳での訳)。

我々ロシアのIT産業の従業員は、ロシアの軍隊が開始したウクライナ領土での軍事行動に断固として反対する。

我々は、戦争勃発につながるあらゆる武力行使を不当とみなし、必然的に双方の人的犠牲をともなう可能性のある決定の中止を求める。我々の国は、常に互いに緊密な関係にある。そして今日、我々はウクライナの同僚、友人、親戚のことを心配している。今、ウクライナの街で起きていることを我々は懸念し、道徳的に胸塞がれる思いだ。

我々の仕事では、最高の製品、最高のサービスを作り、ロシアのITソリューションが誇れるよう誠実にすべてを行う。我々の国が戦争ではなく、平和と進歩に結びつくことを望む。

人間の利益となる技術の進歩や開発は、戦争、人々の命や健康への脅威がある状況では不可能であり、協力、視点の多様性、情報交換、オープンな対話がある状況でのみ可能だ。

国の指導者が我々の訴えに注意を払い、この状況を平和的に解決する方法を見つけ、人的被害を防ぐことを求める。

署名者として記載されているすべての名前が本物であるかどうかを確認することはできないが、この請願はNatalia Lukyanchikova(ナタリア・ルキャンチコワ)という女性によって始められたことをTechCrunchは確認し、自身は「IT専門家」だとルキャンチコワ氏は語っている。

同氏は、この書簡の最初の署名者でもあり、署名では求人サイトhh.ruの食品アナリストと称している。

TechCrunchがルキャンチコワ氏に電子メールで問い合わせたところ、同氏は先週、自身のFacebookページでこの平和の嘆願書を公開し、他のITワーカーにも署名と、この活動をメディアに取り上げてもらえるよう働きかけを呼びかけたと説明した。

また、TechCrunchは別のロシア人ITワーカーにも話を聞いたところ、彼らも請願書に署名し、勤務先のCEOを含むテック企業の関係者も多数署名したとのことだ。しかしこの人物は報復のリスクがあるために、行動への注意を集めることを回避すべく匿名を希望した。

ルキャンチコワ氏は、署名活動を開始するための最初のFacebook投稿で、次のように書いている(ロシア語からの翻訳)。「以下は、ITコミュニティからの公開書簡の文面です。これがうまくいくかどうかはわかりませんが、集団行動は時に役立ちます。これはまた、人々が自分たちは1人ではないことを理解する助けにもなります。今のところ、これは私が知る限り禁止されていない唯一の法的措置です。最初のコメントにあるリンクから署名できます」。

その後、Facebookページへの投稿では、署名の数が増えるにつれて、数日間の経過を追っている様子も見られた。

この署名活動は、ロシアによるウクライナ侵攻が進むにつれ、ロシアのIT業界の間で急速に盛り上がり、2月26日までに1万筆以上、2月27日には2万筆を超え、3万筆近くに達する前に署名活動が締め切られた。

この署名活動が影響を与える可能性があるかどうか尋ねると、ルキャンチコワ氏はこう語った。「私たちの声が届き、平和が取り戻されると信じたい」。

ロシア国内の一部のメディアは、この反戦の書簡について報じている。

例えば、テック系メディアvc.ruは現地時間2月26日にこれを取り上げ、その際、署名者は約1300人で、ロシアのテック大手YandexやVKontakteの従業員をはじめ、多くの異なる企業の従業員が含まれていると報じた。

また、教師、科学者、医師などロシア国内の他業界の代表者からも同様の反戦の書簡が出されていることも取り上げている。ただ、IT業界の書簡が最も多くの署名を集めたようだ。

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Nariko Mizoguchi

YouTube、欧州でロシア政府系メディアRTとスプートニクのチャンネルをジオブロッキング

Google(グーグル)は、ロシアの戦争プロパガンダを封じるよう欧州地域議員からの圧力を受け、YouTubeが欧州でロシア政府系メディアのRT(旧ロシア・トゥデイ)とSputnik(スプートニク)をジオブロックすると発表した。

米国時間3月1日、ジオブロッキングを発表したツイートで、Googleの欧州ポリシーチームは「ウクライナで進行中の戦争のため、RTとSputnikに結びついているYouTubeチャンネルを欧州全域でブロックします。直ちに有効となります」と書いている。

我々は欧州委員会にYouTubeの発表に対するコメントを求めている。

TechCrunchが先に報じたように、EUは昨夜、RT、Sputnikおよびその子会社に対する禁止措置が、オンラインプラットフォームを含むすべての全配信経路を対象とすることを確認した。

欧州委員会のThierry Breton(ティエリー・ブルトン)委員(域内市場担当)は現地時間2月28日、GoogleおよびYouTubeのCEOとビデオ通話を行い、両社の取り組みを強化するよう求めていた。

YouTubeは、ロシア政府系メディア2社による何千ものビデオをホストしており、昨日触れたように、RTチャンネルのマーケティングは「YouTubeで最も視聴されているニュースネットワーク」であると謳っている。

今、RTのYouTubeチャンネルを閲覧しようとする欧州の人々は「このチャンネルはお住まいの国では視聴できません」というメッセージに遭遇する。

スクリーンショット:Natasha Lomas/TechCrunch

28日には、Facebook(フェイスブック)、Microsoft(マイクロソフト)、TikTok(ティックトック)、Twitter(ツイッター)が似たような制限を発表した。

しかし、Googleはその対応を検討するのに他社よりも少し時間がかかった。テック巨人は、この遅れについて説明をしていない。

今朝、ジオブロッキングを発表したツイートの中で、Googleはこうも警告している。「完全なシステム立ち上げには時間がかかります。当社のチームは迅速な行動を取るために、24時間体制で状況を監視し続けます」。

つまり同社は、クレムリンとつながりのあるチャンネルの一部のコンテンツは、システムの「立ち上げ」に伴い、短期的には引き続きアクセス可能であり続けることが予想される、と示唆しているようだ。

YouTubeはRTとSputnikのアカウントを禁止したり停止したりするのではなく、ジオブロックをかけるだけなので、ロシアのプロパガンダはもちろん欧州の外では広がり続け、ロシア国内でもまだ利用できる。

だが、このような妥協策を選んだのはGoogleだけではない。

Facebookの親会社であるMeta(メタ)とTikTokも、ロシア政府系メディアのアカウントを完全に停止または禁止するのではなく、ジオブロックすることを選択した。

TwitterとMicrosoftも、それぞれのプラットフォームのニュアンスの違いを反映して、微妙に異なる方法を取った。両社は国家の支援を受けたRTとSputnikのコンテンツの可視性を減らす措置を取ると述べ、実質的にそれらメディアのリーチの自由度を制限している。

Twitterは28日さらに、ラベル表示ポリシーを拡大し、ロシア国家関連メディアへのリンクがあるツイートには通知を追加し、ユーザーに「stay informed(情報に注意 / 情報源を知りましょうという意)」と警告している。

後者がソーシャル(またはブロードキャスト)ネットワークというよりも情報ネットワーク寄りであることを考えると、ラベリングとコンテキストを加えることは適切な対応と思われる。ただし、EUがこれからRTとSputnikを禁止することで、ウェブプラットフォーム各社がさらなる対応を迫られるかはまだわからない。

画像クレジット:Chris Ratcliffe/Bloomberg via Getty Images

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Den Nakano)

NVIDIA、ランサムウェア攻撃で機密データが流出

NVIDIA(エヌビディア)は、先週のサイバー攻撃でハッカーが従業員の認証情報や会社の専有情報などの機密データを同社のネットワークから盗み出し、現在「オンラインでリークしている」ことを確認した。広報担当者が米国時間3月1日、TechCrunchに語った。

NVIDIAは、2月4日に初めて明らかになったこの攻撃で、どのようなデータが盗まれたのかについては言及を避けた。しかし「Lapsus$」と呼ばれるランサムウェアの集団がTelegramチャンネルでこの攻撃を実行したことを明らかにし「機密性の高いデータ」や独自のソースコードなど1テラバイトの情報を盗んだと主張している。同グループの投稿によると、これにはNVIDIAのハッシュレートリミッターのソースコードが含まれていて、同社のRTX 30シリーズグラフィックカードのEthereum(イーサリアム)採掘性能を低下させるという。

Lapsus$は比較的知られていないが、2021年12月にブラジルの保健省を攻撃し、市民のワクチン接種情報など50テラバイトのデータを盗み、初めてランサムウェアのシーンに登場した。以来、ポルトガルのメディアグループImpresaや南米の通信事業者ClaroとEmbratelをターゲットにしてきた。

Emsisoft(エムシソフト)の脅威アナリストBrett Callow(ブレット・キャロウ)氏はTechCrunchに「Lapsus$が南米を拠点としていると考える研究者もいますが、それを示す証拠がどれほど確かなものかはわかりません。今のところ、彼らはやや素人っぽいように見えるので、関与した人物が経験豊富なサイバー犯罪者ではない可能性があります」と語った。

NVIDIAは、この攻撃の犯人と思われる人物についても言及を避けたが、2月23日に悪意のある侵入に気づいたといい、これを受けて同社は法執行機関に通知し、サイバーセキュリティの専門家を雇って攻撃に対応することになった。

この侵入はロシアのウクライナ侵攻の前日に発生したため、ロシアが支援するハッカーと関係があるのではないかとの憶測もあったが、NVIDIAは「ロシア・ウクライナ間の紛争と関係があるという証拠はない」と付け加えた。

同社は現在、盗まれ、その後流出した情報の分析に取り組んでいるが「この事件によって、当社の事業や顧客へのサービス提供能力に支障が生じることは予想していない」と述べている。先週の報道では、このサイバー攻撃により、同社のメールシステムや開発者用ツールが2日間オフラインになったとされていた。

NVIDIAの広報担当者は「セキュリティは、NVIDIAが非常に真剣に取り組んでいる継続的なプロセスであり、我々は日々、コードと製品の保護と品質に投資しています」とも述べた。

画像クレジット:Akos Stiller / Bloomberg / Getty Images

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(文:Carly Page、翻訳:Nariko Mizoguchi

フェイスブックとInstagramがロシア国営メディアの情報拡散を抑制、紛争地域のIGユーザーに暗号化DM提供へ

Meta(メタ)は米国時間3月1日、同社のプラットフォームにおいて、ロシア政府によって作成されたコンテンツの拡散を制限していることを明らかにした。同社は、ロシア政府とつながりのあるFacebook(フェイスブック)ページやInstagram(インスタグラム)アカウントが共有するコンテンツのアルゴリズムによる拡散を抑制し、これらの情報源へのリンクを含む投稿をランクダウンさせる予定だ。

Metaのセキュリティポリシー責任者であるNathaniel Gleicher(ナサニエル・グライチャー)氏は、Twitter(ツイッター)の投稿で、同社は「今後数日間」、ロシア政府とつながりのある情報源にリンクするコンテンツに新しいラベルを付け始め、ユーザーがそれらのサイトをクリックしたりリンクを共有したりする前に、より多くのコンテキストを提供すると付け加えた。同社はまた、今回の侵攻を受け、ウクライナとロシアのInstagramユーザーが暗号化されたDMを利用できるようにするとも発表した。

米国時間2月28日、MetaはウクライナとEUにおいて、ロシア政府系メディアの代表的なアカウントであるSputnik(スプートニク)とRT(旧ロシア・トゥデイ)へのアクセスを制限した。Metaのグローバル・アフェアーズ担当社長であるNick Clegg(ニック・クレッグ)氏(元英国副首相)は、同社が政府からアカウント制限の要請を受け、事態の「例外的な性質」を理由にこれを実現したと述べた。

ウクライナ侵攻をめぐる、ロシア政府のプロパガンダのリーチを制限するMetaの動きは、28日にTwitterが実施した同様の措置に続くもの。この新たな制限は、先週ロシア政府が、Facebookがロシア政府関連アカウントからのコンテンツに警告ラベルとファクトチェックを追加した後、同国内のFacebookへのアクセスを「部分的に制限する」と表明した後のことでもある。

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画像クレジット:Bryce Durbin / TechCrunch

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(文:Taylor Hatmaker、翻訳:Den Nakano)

習慣化アプリ「みんチャレ」のエーテンラボが3.7億円調達、健保向け事業開発・営業・カスタマーサクセスの人材採用注力

三日坊主を乗り越えるための習慣化アプリ「みんチャレ」(Android版iOS版)を開発・運営するエーテンラボは2月28日、プレシリーズAおよびシリーズAラウンドにおいて、3億7000万円の資金調達を実施したと発表した。引受先は、ファストトラックイニシアティブ、みずほキャピタルなど。調達した資金は、人材採用にあてる。みんチャレに新機能を実装するエンジニアや、特に健保向け事業を展開するための事業開発、営業、カスタマーサクセスの強化に注力するという。

みんチャレは、勉強・ダイエット・運動・糖尿病改善といった同じ目標を持つ匿名の5人でチームを作り、チャットを介して報告とはげまし合うことで、楽しく習慣化に取り組めるというピアサポートアプリ。ピアサポートとは、同じ課題を抱える者同士がお互いに支援するといった意味。2022年2月現在の累計利用者数は100万人という。

習慣化アプリ「みんチャレ」のエーテンラボが3.7億円調達、健保向け事業開発・営業・カスタマーサクセスの人材採用注力

また今後エーテンラボは、健康保険組合の保健事業や企業の健康経営、自治体の健康支援事業向けとして、個人の参加者が生活習慣の改善を「始める」行動変容プログラム「みんチャレHealthcare」も提供する。「保健事業に参加する」「生活習慣の改善を続ける」という2つの行動変容にコミットし、ウィズコロナに対応した、オンラインでピアサポートが行える保健事業を提供するとしている。

エーテンラボは、2017年にソニーの新規事業創出プログラムから独立したスタートアップ。「テクノロジーでみんなを幸せにする」をミッションとし、ユーザーが習慣化の成功体験を糧に自ら積極的に行動して幸せになる社会を目指している。

習慣化アプリ「みんチャレ」のエーテンラボが3.7億円調達、健保向け事業開発・営業・カスタマーサクセスの人材採用注力

インフルエンサーマーケ支援のトリドリが12億円のシリーズB調達、人材採用・プロダクト開発・プロモーションを強化

各種インフルエンサーマーケティング事業を展開するトリドリ(toridori)は2月28日、シリーズBラウンドとして第三者割当増資による総額12億円の資金調達を実施したと発表した。引受先は、リードベンチャーのGlobal Catalyst Partners Japan、既存投資家の三菱UFJキャピタル、セレス、イノベーションエンジン、新規投資家のXTech Ventures、スリーエスキャピタル、ファーストアドバイザーズ、HIRAC FUND(マネーフォワードベンチャーパートナーズ)。シリーズAラウンドおよびこれまでの借入金も含め、累計調達額は24億円を突破した。

調達した資金により、インフルエンサーと企業を繋ぐマーケティングプラットフォーム「toridori marketing」(トリドリマーケティング)と「toridori base」(トリドリベース)(Android版iOS版)の成長を加速させる。より使いやすいサービスへと進化させるための人材採用、プロダクト開発、戦略的プロモーションにあてる予定。

企業用サービスtoridori marketingと、インフルエンサー専用案件管理アプリtoridori baseは、中小企業・個人事業主などの事業者に対してインフルエンサーを活用したマーケティング支援を行うサービス。企業がmarketing上でPR案件依頼募集を行うと、商品を紹介したい全国のインフルエンサーがbaseアプリを利用し立候補する形式で、どこのエリアの企業でも利用しやすいとしている。利用料金は月額制で、登録インフルエンサーは約2万5000人。現在はPR実績が15万件を超えるという。

2016年6月設立のトリドリは、「『個の時代』の、担い手に。」をミッションとして、インフルエンサーマーケティングに特化した各種サービスを提供している。toridori marketingとtoridori baseのほか、インフルエンサー成果報酬型広告「toridori ad」、YouTubeコンサルティング「toridori studio」といった事業を展開し、インフルエンサーの個性を最大化し企業プロモーションに活用するサービスを提供している。

光電変換効率が高い有機薄膜太陽電池の発電の仕組みは「下り坂」だった―京都大学が発電機構を解明

光電変換効率が高い有機薄膜太陽電池の発電の仕組みは「下り坂」だった―京都大学が発電機構を解明

左図:従来型の有機薄膜太陽電池では、十分な「オフセット」(=電子の動きを速くするドーピングのようなもの)がないとエネルギー準位の峠を越えられず効率よく発電できない。右図:最新型の有機薄膜太陽電池ではエネルギー準位の勾配ができるため、オフセットがなくても坂道を下るだけで効率よく発電できる

京都大学大学院工学研究科の研究グループは2月24日、プラスチック太陽電池とも呼ばれる有機薄膜太陽電池(OSC。Organic Solar Cell。OPVとも)の発電メカニズムを明らかにしたと発表した。P型半導体に半導体ポリマー、n型半導体に非フラーレン型電子アクセプターを用いたOSCは、「坂を下る」ように効率的に発電ができるという。

軽量、柔軟で、大量生産に向き、室内光でも光電変換効率が高いOSCは、次世代太陽電池として注目されている。特に、これまでn型半導体に使われてきたフラーレン誘導体の替わりに非フラーレン型電子アクセプター(NFA。Non-Fullerene Acceptor)を使うことで、OSCの課題となっていた高い「オフセット」(エネルギー準位差)の問題が解決し、さらなる高効率が実現した。研究グループでは、半導体ポリマーに「PM6」という有機化合物を、NFAには「Y6」という有機化合物を用いて研究を行った。これらは、オフセットが低くとも発電効率がよいことから、現在もっともよく研究されている材料だ。しかし、その発電メカニズムはよくわかっていなかった。OSCを実用化するためには、その解明が欠かせない。

OSCでは、半導体ポリマーとNFAのエネルギー準位(エネルギーレベル)の差によって光電変換が行われる。従来の方式では、効率のよい光電変換を行うには、0.3eV(電子ボルト)の電圧をかける必要があった。これがオフセットだ。光電変換効率を高めるには、太陽電池の最大電圧を高める必要がある。そのためにはオフセットを小さくしなければならない。しかし、オフセットを小さくすると効率的な発電が行われない。そこが大きな問題だった。ちなみに、PM6とY6を組み合わせたOSCでは、オフセットは0.1eVで済む。光電変換効率が高い有機薄膜太陽電池の発電の仕組みは「下り坂」だった―京都大学が発電機構を解明

研究グループは、PM6とY6のブレンド膜で電子と正孔が形成する界面電荷移動状態(電子と正孔が拘束された状態)を観察した。電子と正孔が拘束から解かれて自由電荷になること(電荷解離)で、光電流として回収され、光電変換が行われるようになるのだが、電荷解離までの時間を測定したところ、10ピコ秒だった。フラーレン誘導体を用いたOSCでは0.1ピコ秒ほどであり、その反応が速いことが高効率な発電につながると考えられている。そのため、非常に長い時間がかかるPM6とY6の組み合わせでは、発電のメカニズムが異なることがわかった。

その秘密は結晶化にあった。n型半導体のY6は時間とともに非晶状態から結晶状態へと変化する。n型半導体とp型半導体の相分離界面付近では材料の結晶化が低下していることが知られている。Y6の基底状態(エネルギー値がもっとも低い状態)を調べたところ、そのスペクトルの変化から、時間とともに電荷がより結晶性の高い領域に移動していることがわかった。非晶状態のY6よりも結晶状態のY6のほうがエネルギー準位が「深く」、電子は結晶相へ移動することで安定化されるためだという。結晶性が低い相分離界面で発生した電荷は、よりエネルギー的に安定した結晶性の高い領域を求めて移動することで電荷解離されていた。つまり、「界面から遠く離れるほどY6の結晶性が向上し、それに伴いエネルギー準位が連続的に安定化することで、電荷が坂道を転がるように界面から遠ざかっていく」という。

この研究成果を活かすことで、「無限に存在する有機半導体」からOSCの材料として有望なものを効率的にスクリーニングでき、さらなる効率向上が期待されるとのことだ。

ファーウェイが手書きメモも可能な電子書籍リーダー「MatePad Paper」を発表、約6万4000円

最初の電子書籍端末が発売されてから20年近く経つものの、このカテゴリーが活況を呈しているとは決して言えない。楽天Koboのような企業が最善の努力を続け、Barnes & Noble(バーンズ・アンド・ノーブル)のハードウェアなどが残ってはいるものの、この10年以上の間、Amazon(アマゾン)のKindle(キンドル)が市場を支配し続けている。

今週のMWC(モバイル・ワールド・コングレス)では、窮するハードウェアメーカーのHuawei(ファーウェイ)が「MatePad Paper(メイトパッド・ペーパー)」という新製品を発表し、この市場への参入を表明した。10.3インチのEインクディスプレイを採用し、同社の筆記具「M-Pencil(Mペンシル)」で手書きメモを取る機能を備えたこの製品は、最終的にreMarkable(リマークブル)の製品が最も比較対象となる可能性がある。

同社の最新機種「reMarkable 2」をレビューしたDevin Coldewey(デヴィン・コールドウェイ)氏は、この製品が「ニッチを貫いている」と書いた(これはKindleシリーズ以外の電子インク製品のテーマでもある)。Huaweiは「ちょっとだけ、なんにでもなれる」を目指したデバイスで押し通すことを望んでいる。その中核は、Huawei Books(ファーウェイ・ブックス)電子書籍ストアにある約200万のタイトルの他、PDFを含むさまざまなファイル形式を閲覧できる巨大なリーダーだ。

関連記事:あらゆる面で初代を上回りニッチを貫くE Inkタブレット「reMarkable 2」

このデバイスは、Huawei独自のHarmonyOS(ハーモニーOS)を搭載している(これはAndroidを使えなくなった後の同社が、MWCで発表するテーマの1つだ)。しかし、そのことが、MatePad Paperをより電子インクタブレットに似た物にしている。現時点では、Huaweiは依然としてサードパーティ製アプリの利用が制限されているため、そのようなアプリは見当たらない。しかし、メールやノート、イベントなどのウィジェットは用意されている。

10.3インチの大画面は、ウィンドウを2つに分割でき、一方のウィンドウで本を読みながら、もう一方のウィンドウにM-Pencilでメモを書く(遅延は26ミリ秒)ことができる。ソフトウェア面におけるもう1つの特長は、Huaweiのノートパソコン「MateBook(メイトブック)」との間でファイルをすばやく行き来させられることだ。翻訳機能も搭載されている。

音声記録用のマイクとオーディオブック用のスピーカーが内蔵されていることも、このタブレットの命題を後援する特長だ。セキュリティのための指紋認証リーダーを搭載し、3625mAhのバッテリーは90分の充電で6日間の読書が可能な急速充電に対応している。

だが、これらすべての機能が色褪せる欠点は、この製品が499ユーロ(約6万4000円)と、電子書籍リーダーよりもハイエンドタブレットに近い価格で販売されていることだ。現在進行中の地政学的な問題により、この製品がいつか米国で正式に発売されると想像することは難しい。それでも、この製品は今週のMWCで最も興味深い消費者向け発表の1つである……と言えば、製品そのものよりもこの展示会について語ることになるかもしれない。

画像クレジット:Huawei

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(文:Brian Heater、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

パナソニック、テスラのEV向け大容量電池を2024年3月までに和歌山で量産開始

Panasonic(パナソニック)は、2024年3月までにTesla(テスラ)の電気自動車向けとなる大容量バッテリーの量産開始を目指している。同社は和歌山工場に同バッテリーの生産設備を建設中で、そこに2つの生産ラインを増設し、構造的な改良を施す計画だ。

この現在も開発が続いている「4680」と呼ばれる新型リチウムイオン電池は、現行の電池の約2倍の大きさで、エネルギー容量は5倍になる見込みだ。1台の車両に必要な電池の本数が減る(これはコスト削減につながり、EVの価格を下げる可能性がある)一方で、一度の充電で走行可能な航続距離を15%以上伸ばすことができるという。

今回のパナソニックの発表は、来年にもこの電池の製造が始まる可能性を示唆した以前の報道と一致する。同社はその生産設備に約800億円を投資すると言われていた。テスラからの要請を受けて、この電池の開発に着手したものの、他の自動車メーカーに4680電池を販売する可能性もある。

編集部注:本稿の初出はEngadget。執筆者Kris HoltはEngadgetの寄稿ライター。

画像クレジット:Getty Images under a Sjoerd van der Wal license.

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(文:Kris Holt、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

半導体製造大手の台湾TSMC、インテル、AMDがロシアへの半導体販売を停止―ウクライナ侵攻をめぐる制裁として実施

半導体製造大手の台湾TSMC、インテル、AMDがロシアへの半導体販売を停止―ウクライナ侵攻をめぐる制裁として実施

Eason Lam / Reuters

ウクライナ侵攻をめぐる米バイデン政権の制裁実施を受けて、半導体製造大手のTSMCとインテルおよびAMDの3社がロシアへの販売を停止したと報じられています。

すでにApple PayやGoogle Payといった米国拠点のデジタルウォレットは、現地の主要銀行口座と紐付けられているものに関しては機能を停止しています。今回の措置は、米国の対ロシア制裁が半導体メーカー、とりわけTSMCにまで広げられたかっこうです。

米The Washington Postによると、TSMCはロシアへの直接販売と、ロシアに製品を供給しているサードパーティへの販売を両方とも停止したとのことです。TSMCが制裁条件を完全に遵守するために調査している間、販売を止めたとの匿名情報筋の話も伝えられています。

またTSMC公式にも「発表された新しい輸出管理規則を遵守することに全力で取り組んでいる」との声明が出されています。

TSMCはiPhone用のAシリーズチップやiPad/Mac用のMシリーズチップ製造で知られています。その一方でロシアで設計され、ロシア軍や治安機関で使われている ELBRUSブランドのチップも製造しているため、その販売停止はとても重要といえます。

TSMCのほか、インテルやAMDなどもロシアに半導体の販売を停止しているとのことです。SIA(米国半導体協会/インテルやAMDも参加)はWashington Post紙に「ウクライナで展開されている深く憂慮すべき出来事を受けて」すべての会員が規則を「完全に遵守することを約束する」と述べています。

またSIA会長のジョン・ニューファー氏は「ロシアへの新ルール(輸出管理規則)の影響は大きいかもしれない」ものの「ロシアは半導体の重要な直接消費者ではなく、世界のチップ購入の0.1%未満にすぎない」とも指摘しています。半導体製造メーカーにとっては大した痛手にならない一方で、ロシア軍の動きや兵站を制約するものとして、しっかりと守られることになりそうです。

(Source:The Washington Post。Via AppleInsiderEngadget日本版より転載)

InstagramがスタンドアローンのIGTVアプリを3月中旬にアプリストアから削除

Instagram(インスタグラム)は米国時間2月28日、IGTVのスタンドアローンアプリについてサポートを終了すると発表した。Instagramの親会社であるMeta(メタ)はTechCrunchに対し、3月中旬にアプリストアからIGTVが削除されることを認めた。Instagramはブログ記事で、この変更は動画の発見と作成をできるだけシンプルにするための取り組みの1つであると説明している。Instagramによれば、同社はこれから動画をすべてInstagram本体のアプリに統合することに集中し、今後数カ月間かけて本体アプリの動画機能をシンプルにし、向上させるという。

2021年10月にInstagramはIGTVのブランディングを廃止し、IGTVの長尺動画とInstagramのフィードの動画を「Instagram動画」という新しいフォーマットに一本化した。その時点でInstagramは、IGTVアプリは廃止せずリブランドすると述べていた。

米国時間2月28日に同社は、リールに集中するためインストリーム動画広告(旧IGTV広告)のサポートを終了することも発表した。同社は、インストリーム動画広告で精力的に収益化しているクリエイターには、最近の収益に基づいて一時的に毎月臨時金が支払われるとしている。これはクリエイターの収益化に関して言えば後退のように思えるが、同社はユーザーが収益を得る方法をさらに増やすべく模索していることを明らかにした。2022年中にはInstagramの新たな広告機能のテストを開始し、この機能によりリールに表示される広告から収益を得られるようにする予定だという。この新しい収益化のオプションは、クリエイターが毎月収益化するチャンスであるリールのボーナスプログラムに追加されるものだ。

同日の発表の中でInstagramは、TikTokの競合である短尺動画のリールに注力する考えを再び述べた。同社は、リールは引き続きアプリのエンゲージメント向上に最も大きく貢献するもので、今後も投資を続けていく計画であるとしている。

ブログ記事で同社は「動画は、人々がInstagramを利用する大きな動機の1つです。クリエイターのみなさんが動画を自己表現や他のクリエイターとのコラボに、そしてフォロワーとのつながり構築に活用していることをうれしく思います。リールは今後も成長し、Instagramの重要な機能であり続けることから、私たちはこのフォーマットによりいっそう注力する考えです」と述べた。

IGTVはスタンドアローンのプロダクトとしてはすでに人気を失っていたことから、アプリの終了が決定した。2020年初めにInstagramは、トラクションが少ないためInstagramのホームページからオレンジ色のIGTVボタンを削除していた。以前にTechCrunchがSensor Towerの調査を引用して報じた通り、10億人以上いるInstagramユーザーのうちスタンドアローンのIGTVアプリをダウンロードしたのはせいぜい700万人だった。

画像クレジット:Bryce Durbin/TechCrunch

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(文:Aisha Malik、翻訳:Kaori Koyama)

ロシア侵攻でウクライナ市民は暗号化メッセンジャー、オフライン地図、ツイッターを積極利用

ウクライナの人々はロシアによる侵攻を受けて、オフラインで使える地図アプリや暗号化されている通信アプリに目を向けている。侵攻により、数百万の人々が家を離れ、抗戦するか近隣諸国に逃れている。アプリストア分析企業Apptopiaのデータによると、ここ数日、ウクライナの人々はTwitterやストリーミングラジオアプリなど、最新のニュースや情報を入手できるさまざまなコミュニケーションアプリやオフライン地図などをダウンロードしている。

現在、同国のiOS App Storeでは、プライベートメッセンジャーのSignal、メッセージングアプリのTelegram、Twitter、オフラインメッセンジャーのZelloやBridgefyがトップ5にランクインしている。その他トップ10にはWhatsApp、そしてオフライン地図アプリのMaps.Meが入っている。Maps.MeはGoogle Mapsよりも6つ上にランクインしていて、Google Mapsは現在、リアルタイムの交通状況(セキュリティリスクとされる情報)の提供を停止している。そしてSpaceXのStarlinkアプリが入っていて、Elon Musk(イーロン・マスク)氏が衛星インターネットサービスが現在ウクライナで利用できるようになっていると発表してから39ランクアップした(もちろん、このサービスが必要とされる場所で実際にどの程度利用可能であるかは、今後のアプリの順位に反映されるかもしれない)。

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メッセージングアプリの上位に入っているものの中で、より多く採用されたアプリがいくつかある。

2022年2月24日のロシアの侵攻開始から2月27日までの間、Telegramの新規インストール数はApp StoreとGoogle Play合計で5万4200回とトップで、1月の同時期から25%増加した。一方、オフラインメッセージングアプリのBridgefyは、新規インストール数の増加率が最も高く、1月同時期にわずか591回だったダウンロードが、ここ数日で2万8550回と、前月比で4730.8%増という大幅な伸びを記録した。

同じくトランシーバーアプリのZelloは、1月24~27日のダウンロード1万2540回から、2月24~27日は2万4990回へと99.3%増加した。Signalの増加率は20.6%と控えめだが、1月の同期間のインストールは3万9780回、ここ数日では4万7990回とかなり強力な採用を誇っている。

もちろん、セキュリティに関しては、すべてのメッセージングアプリが同じように作られているわけではない。

Signalは最も安全なアプリで、エンド・ツー・エンドの暗号化を提供し、アカウント作成日以降のデータは収集されない。一方、Telegramはデフォルトではエンド・ツー・エンドの暗号化を提供していないが、ユーザーが暗号化された「秘密のチャット」機能を手動で有効にすることができる。ただし、TelegramはSignalの創業者Moxie Marlinspike(モクシー・マーリンスパイク)氏から、主張するほど安全ではないとの批判を受けており、その主張は長年にわたり他のセキュリティ研究者や暗号技術者などによっても支持されている

マーリンスパイク氏は最近Twitterで、Telegramが安全でないことをウクライナの人々に再び注意喚起し、Telegramはデフォルトで、誰もがこれまでに送受信したすべてのメッセージのプレーンテキストのコピーを持つクラウドデータベースになっているとツイートしている。

トランシーバーアプリのZelloは、1対1およびグループでの会話をエンド・ツー・エンドで暗号化しているとされているが、同社が2020年にセキュリティ侵害に直面していたことは注目に値する。Bluetoothとメッシュネットワークのルーティングに依存する人気の抗議アプリBridgefyも、過去数年にわたり数々のセキュリティ問題に直面してきた。このアプリは香港、インド、イラン、レバノン、ジンバブエ、米国での抗議活動の際に利用者が急増したが、2020年には深刻な脆弱性が見つかり、「プライバシー災害」と呼ばれることになった。

その後、エンド・ツー・エンドの暗号化のサポートを展開したものの、2021年にアプリを分析した暗号技術者は、それらの修正が不十分であることを発見した

メッセンジャー以外のアプリで、ここ数日ウクライナで急増しているのは、ストリーミングラジオとTwitterのアプリだ。

通常、TwitterはiOSのNewsカテゴリで1位だが、総合順位は90位から130位程度に落ち着いている。しかし、2月27日時点で、ウクライナのiOS App Store総合チャートでは前日から2ランクアップして4位、Google Playでは15ランクアップして28位となった。2月27日にTwitterはiOSとAndroidで約7000回ダウンロードされ、これは1日のダウンロード数としては過去最多だ。

画像クレジット:Apptopia ウクライナのアプリストア 2022年2月27日

ストリーミングラジオアプリのRadios UkraineとSimple RadioはApp Storeでも順位を上げ、現在それぞれ19位と21位につけている(Facebookが20位で、その間に入っている)。

Google Playのウクライナのトップチャートは、少し様子が違う。

Signal、Bridgefy、Telegram、Zelloもトップ5に入っているが、エンド・ツー・エンドの暗号化を提供するAndroid専用のピア・ツー・ピアメッセンジャーBriarもランクインしている。オフライン地図アプリのMaps.Meは11位、Two Wayとシンプルな名前の別の双方向トランシーバーアプリは15位で、WhatsAppがそれに続く。

ウクライナのGoogle Playストア、2022年2月27日(画像クレジット:Apptopia)

両アプリストアとも、多くのゲームがトップチャートにランクインしている。家族が急場しのぎの防空壕に隠れたり、安全な場所まで長距離移動する間に、子どもたちを楽しませるためにダウンロードされたようだ。

世界の他の場所では、ロシア・ウクライナ戦争が他のアプリをチャート上位に押し上げている、とApptopiaは指摘する。

米国では、ニュースアプリのCNNとFox Newsがここ数日で急上昇し、ワシントンポストでは、国家間の緊張が高まる中、2月19日の侵攻に先立って1日のインストール数が過去最高(1万5000回)を記録した。

画像クレジット:Apptopia 米国ユーザーのニュースアプリダウンロード数

そして今、ロシアがニュースやソーシャルメディアへのアクセスを遮断したことで、VPNアプリの需要が高まっている。Apptopiaの調べによると、ロシアが国内でFacebookやTwitterなどのソーシャルメディアアプリへのアクセスを制限し始めた後、VPNアプリのトップ5は1日のダウンロード数が大幅に増加し、ユーザーは通常よりも1日に数万回多くVPNアプリをダウンロードした。しかし、ロシアの人々は、VPNが必ずしもセキュリティに優れているわけではないことに注意する必要がある。VPNプロバイダーは、インターネットトラフィックをISP(インターネットサービスプロバイダー)以外の誰かにルーティングするだけなので、セキュリティは、VPNプロバイダーをどれだけ信頼できるかに左右される。

急増するVPNアプリのダウンロード(画像クレジット:Apptopia)

画像クレジット:Anna Fedorenko / Getty Images

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(文:Sarah Perez、翻訳:Nariko Mizoguchi