チームの目標達成を支援するOKR管理サービス「Resily」が5000万円を調達

クラウドOKR管理サービス「Resily」を運営するResilyは2月13日、DNX Ventures(旧 Draper Nexus Ventures)より5000万円の資金調達を実施したことを明らかにした。

近年チーム内の目標管理手法のひとつとして、OKR(Objectives and Key Results)が注目を集めている。この手法は元インテルCEOのアンディ・グローブ氏が提唱したもの。グーグルやメルカリを始め、それこそTechCrunchで紹介しているようなテック系の企業を中心に国内外で広く採用されている(ちなみにGoogleが運営する「Google re:Work」ではOKRに関するナレッジがかなり具体的に公開されている)。

OKRではまずO(Objectives / 簡単には達成できない高いレベルの目標)とそれを達成するための鍵となるKR(Key Results / 定量的な成果指標)を設定。出来上がったOKRは組織全体に共有して、お互いの状況をいつでも把握できるようにしておくこと、そして月に1回など比較的短いスパンでレビューすることがポイントだ。

チーム内でOKRを活用する場合、通常はまずチーム(会社や部署など)のOKRを設定し、各メンバーはそれに基づく形で個々の目標と成果指標を決める。そうすることで組織全体で同じ方向を向いてプロジェクトを進めることにも繋がる。

今回紹介するResilyは「マップ」「コミュニケーションボード」「タイムライン」という3つの機能を軸に、チーム内でのOKRの管理とそれにまつわるコミュニケーションをスムーズにするサービスだ。

全体のOKRをマップビューで一覧できる「マップ機能」は、中期と短期の目標の整合性を確認したり、それぞれの進捗度をパッと把握したりする際に便利な機能。単にOKRが階層状に並んでいるだけでなく、問題のある箇所や達成の自信がない箇所については赤や黄色で色付けされるため、一目で気づくことができる。

マップが高いところからチーム内のOKRの全体像を捉えるための機能であるとすれば、反対に「ミーティングボード機能」は1つ1つのOKRに関する細かい粒度のコミュニケーションを集約するための機能だと言えるだろう。

上述した通りOKRは設定したら終わりではなく、頻繁に振り返ることで初めて効果が出る。そのためには定期的に各目標に関連するアクションや気づきなどの情報を蓄積しておくことが重要だ。ミーティングボードはまさに各OKRごとの“掲示板”の役割を担い、この場所に来れば各メンバーの最新の進捗や課題、考えなどを一通り把握できる。

もし部下を持つような立場であれば、自身の進捗だけでなく部下の進捗も頻繁に確認したくなるだろう。そんなマネージャー層向けの機能が自分の成果に関連するメンバーの動向をチェックできる「タイムライン機能」だ。

ここでは各メンバーの最新動向に加え、KRの変更履歴なども見ることができる。部下がどんな課題を抱えているのか、何に悩んでいるのかをスピーディーに把握する際にも活用できるだろう。

Resilyのアイデアは、創業者の堀江真弘氏が前職のSansanでプロダクトマネージャーとして働いていた際に感じた課題をきっかけに生まれたもの。チームを横断して一緒に仕事をする際に、それぞれのチームが「何を優先事項に掲げているのか」「どんな目標を設定しているのか」を把握するのに時間がかかって大変だった経験から、その状況を改善する事業を始めるべく2017年8月にResilyを創業している。

会社を立ち上げて半年ほどはOKRのコンサルティングなどを通じて、色々な企業が目標管理をする上でどのような課題を感じているのかを探った。結果的には「お互いの目標を一箇所で把握でき、適切な意思決定をするのに十分な量の情報が集約された情報基盤」の必要性を感じ、2018年の8月にResilyをローンチした。

OKRに対応した目標管理ツールとしては以前紹介している「HRBrain」などもあるが、堀江氏いわくResilyは「コミュニケーションツールに分類されるもの」であり、人事評価などに重きを置いた他のソリューションとは方向性が異なるという。

Resilyは現在Sansanやパソナの関連会社、大手新聞社や消費財メーカーなど約50社で導入済み。今後はセールスフォースなど外部ツールとの連携なども強化しながら、プロダクトの拡充を進める計画だ。

ワンクリックで勤務シフトを自動作成する「Shiftmation」運営が8000万円の資金調達

勤務シフト作成自動化サービス「Shiftmation」運営のアクシバースは2月13日、Archetype Ventures、Draper Nexus Venturesおよび個人投資家を引受先とするCE型新株予約権の発行により、 総額で8000万円の資金調達を実施したと発表。同社は調達した資金をもとに開発ならびにマーケティングを強化する。

Shiftmationは毎月のシフト作成を自動化するサービス。人工知能が試行錯誤を繰り返すことで最適な解を求めようとする技術を応用し、複雑な条件を満たすシフトを自動生成する。クラウド型のサービスなので、パソコンからもスマホからも利用できる。

スタッフの希望シフトはスマホから簡単に提出でき、シフトが集計されたらスケジュール生成ボタンを押す。すると複数のシフトが提案されるので、ベストなものを選ぶ。するとそのシフトはスタッフ用のカレンダーに表示される。

アクシバースいわく、複数の勤務形態に加え、様々な役割の方の出勤条件を考慮して自動作成できるため、医療機関や介護施設などの専門職の出勤バランスをとることが必要な業態で特に便利だという。

Shiftmationは「複雑なシフトの作成には、管理職の方が数日から数週間をかけるケースもあり、貴重な時間が費やされている」「シフト作成のノウハウが属人化して、異動・退職時にシフト作成の質が下がり、スタッフにとって働きづらい環境になってしまう」といった課題を解決するために開発されたソフト。初期費用は無料、月額600円からシフト自動作成の対象ユーザー数に応じた料金で利用できる。

2018年6月のβ版リリース以降、500を超えるシフトがShiftmationで自動生成され、シフト希望提出リマインド機能、複数事業所統括ダッシュボード機能、タイムカード機能(β版)などの新機能が追加されてきた。

同社は今後の展開として、これまで通りに“シフト作成の時間を短縮する”だけでなく、“シフト作成者が考慮できていなかったような要素を自動判別して提案する”ことで、より働きやすいシフトを短時間で作成できるように開発を進めていく、とコメントしていた。

原因不明の難病診断、研究者を支援したいとの想いから生まれたクラウド購買システム「reprua」

研究業界に特化したクラウド購買システム「reprua(リプルア)」を提供するInner Resourceは2月13日、DNX Ventures(旧 Draper Nexus Ventures)、Archetype Ventures、ANRI、リバネス、バイオインパクトから8000万円を調達したと発表した。

研究分野の購買は活動のために欠かせない要素だが、その実態はとてもアナログだ。下の写真は、ある大学が購買用につけている紙のノート。研究器具を扱う商社に電話やメールで問い合わせ、どんな機材をいくつ、誰から、いつ買ったのかを紙に記録している。ほとんどの場合、これらの購買業務は研究者自身が行うといい、本来の研究以外の業務に多くの時間が割かれてしまっているのが現状だ。

そこで、Inner ResourceはシンプルなUIで誰もが簡単に使えるクラウド型購買システム「reprua」を開発した。研究に必要なビーカーなどの器具や顕微鏡などの機材、薬品などを揃えることができ、購買業務から購買後の管理業務までを一括して提供。これにより研究者はこれまでのアナログな購買活動から開放され、支出・予算管理もよりクリアになる。

repruaは研究機材を扱う商社やメーカーにとってもメリットがあるサービスだ。これまで電話やメールで来ていた問い合わせをクラウドベースで管理できるほか、同サービスには受注者と発注者をつなぐメッセージング機能も備わっているため、Web上の営業促進ツールとして活用することもできる。

Inner Resources代表取締役の松本剛弥氏によれば、研究業界の購買市場は年間4兆円の巨大市場。VC投資の熱も高まるなか、他の業種に比べてハイリスクとされるバイオベンチャーにも資金が集まりつつあることもrepruaにとっては追い風だ。サービスのリリースは約5ヶ月前の2018年9月だが、すでに民間企業30社、80の研究機関がrepruaを導入済み。1つの研究機関あたり月間400万円ほどの発注があるほか、数千万円規模の機械受注もあるという。

Inner Resourceは研究機関に対してrepruaを無料で提供する一方、受注する商社・メーカー側から数%の手数料を受け取る。しかし、今年の3月をめどに在庫管理機能、毒劇物・危険物の管理機能などを月額数万円の料金で有料開放していく予定だという。

Inner Resourceは2017年6月の創業だ。家族の1人が難病にかかり、原因不明・解決策不明と宣告されたことから「研究者を広く支援したい」という想いを抱いた松本氏。起業以前は研究機材の専門商社で働いていたが、そこで現状の購買システムが持つ大きな課題を感じ、同社を立ち上げた。

Inner Resources2018年1月にANRIからシード資金を調達しており、今回を含む累計調達金額は約1億円となった。同社はその資金を足がかりに、これまで関東を中心としていた営業活動を日本全国に広げ、アジア各国をターゲットとした海外進出も目指していくという。

Inner Resources代表取締役の松本剛弥氏

仕事依頼サイト「Zehitomo」が目指すのは“サービスのEC化”、AI活用の自動集客機能

カメラマンやパーソナルトレーナーなどの「プロ」と彼らに仕事を依頼したいユーザーとをつなぐマッチングサイトの「Zehitomo(ゼヒトモ)」を運営するZehitomoは2月13日、AIを利用した自動マッチング機能「スピードマッチ」をリリースした。

Zehitomoは、結婚式の写真を撮ってもらいたい、英語を教えてもらいたい、家を改装したい時など、ユーザーがそれぞれの仕事を直接依頼する“プロ”を検索できるサービスだ。依頼を受けたプロはユーザーに対して見積書を送り、その依頼に「応募」することが可能。ユーザーは送られた見積書を比較して、最終的にどのプロに仕事を依頼するのかを決めるという流れだ。

報酬の〇%が手数料という仲介手数料型のクラウドソーシングなどとは違い、Zehitomoでは依頼への応募ごとに課金するというビジネスモデルを採用している。プロ側は1回の応募につき平均500円ほどの費用がかかるが、依頼主であるユーザーは無料でZehitomoを利用できるという仕組み。Zehitomoが扱う仕事の単価は平均5万円程度だ。

しかし、Zehitomo代表取締役のジョーダン・フィッシャー氏は、「Zehitomoにはお金を払って応募するプロがいて、それがクオリティーフィルターになっている。だが、それが同時にボトルネックにもなっていた」と今回の新サービス導入の背景について話す。

新サービスのスピードマッチでは、ユーザーからの依頼に対してプロが手動で応募をする代わりに、AIが自動で依頼への応募を行う。プロがスピードマッチを利用するにはまず、受けたい仕事の種類、働ける場所、時間、応募時に提示する見積額とメッセージなどを事前に設定する。あとは、独自のアルゴリズムで計算した「エンゲージメント可能性」が高い依頼に対してAIがプロの代わりに応募をするというシステムだ。AIが応募を行うたびに、これまで通り500円ほどの料金が発生するが、ユーザーはあらかじめ「月1万円まで」などと支払う応募料の上限を設定できる。

「依頼をしたにもかかわらず、プロからの応募が来なかったり、応募がかかるまでに時間がかかるのは悪いユーザー体験。一方でプロも、本業が忙しくZehitomoでの集客まで手が回らないという問題があった。スピードマッチではそれを解決したい」(フィッシャー氏)

また、Zehitomoは応募時に料金が発生しないスピードマッチの無料版も用意。有料版に比べてマッチングの優先度は下がるが、それでも依頼の数に対してプロの数が足りない地方などではマッチングが成立し、無料で自動集客をすることも可能になる。

「これまでZehitomoを頻繁に利用していたのは、ハングリー精神のある(お金を払い、自分で集客をする)プロたち。でも、AIによる集客の自動化によって、そういった人ではなくても使えるプラットフォームにしたい。また、自動化をさらに追求することで、最終的には、オンラインショッピングでモノを買うように、ワンクリックでサービスを受けられる世界を作りたい」(フィッシャー氏)

Zehitomoは2016年8月のサービスリリース。これまでに15万のプロ登録(1人のプロが複数カテゴリーに登録していても1カウント)があり、月間1万件のユーザーからの仕事依頼があるという。2017年7月には1億5000万円を調達。続いて2018年6月には4億円を調達している。

Zehitomo代表取締役のジョーダン・フィッシャー氏

欧州の研究者団体がFacebookに政治広告の透明性を調査できるAPIを要求

Facebookは、そのプラットフォーム上で政治広告がどのように拡散し増幅してゆくかを調査可能にするAPIを、誠実な研究者に提供するよう求められている。

Mozillaが率いる欧州の学者、技術者、人権団体、デジタル権団体の連合は、5月に行われる欧州議会選挙の前に、政治的な宣伝の拡散と増幅の様子がわかるようFacebookにその透明性の拡大を要求する公開書簡に署名した。

我々は、この公開書簡に対するFacebookの反応を探った。

Facebookは、それ以前に、欧州において独自の「選挙セキュリティー」基準を設けることを発表していた。具体的には、政治広告の承認を行い透明性を持たせるというものだ。

元欧州議会議員でありイギリスの副首相を務めたこともあるFacebookの新しい国際広報担当責任者Nick Cleggは、翻訳された政治ニュースが同社のプラットフォーム上でどのように配信されるかを人間の目で監視するオペレーションセンターを、来月にもEUに複数ある中のアイルランドの首都ダブリンにあるセンターに立ち上げ、運営を開始すると先月発表した。

しかし、公開書簡に署名した人々は、Facebookが盛んにPRする政治広告の透明性に関する基準は甘すぎると主張している。

さらに彼らは、Facebookがとってきたいくつかの手順が、同社が断言する政治広告の透明性を外部から監視しようとする取り組みを拒んでいると指摘している。

先月、ガーディアン紙は、Facebookが同社のプラットフォームに加えた変更により、政治広告の透明性を外部から監視できるよう求める団体WhoTargetsMeの、同プラットフォームでの政治広告を監視し追跡する行動が制限されたと伝えた。

イギリスを本拠地とするその団体は、公開書簡に署名した30を超える団体の中のひとつだが、彼らが言うところの「貴社のプラットフォームでの宣伝の透明性を高めるためのツールを構築しようとする誠実な研究者への嫌がらせ」を止めるよう訴えている。

署名した団体には、Center for Democracy and Technology、Open Data Institute、国境なき記者団も含まれている。

「Facebookユーザーに用意された広告を透明化するツールへのアクセスを制限することは、透明性を低下させ、政治広告の分析に役立つツールをインストールするというユーザーの選択を奪い、貴社プラットフォーム上でのデータの評価を目指す誠実な研究者を支配下に置くことである」と彼らは書いている。

「貴社がこうしたサードパーティー製ツールの代わりに提供しているものは、単純なキーワード検索機能であり、それではレベルの浅いデータにしかアクセスできず、有意義な透明性をもたらすことはできない」

この書簡は、Facebookに対して「高度な調査と、EUのFacebookユーザーに向けられた政治広告の分析ツールの開発を可能にする、実用的でオープンな広告アーカイブAPI」を公開するよう求めている。そしてその期限を、欧州議会議員選挙の前に外部の技術者が透明性ツールを開発する時間が得られるよう、4月1日までと定めた。

書簡の署名者らはまた、政治広告が「他の広告と明確に区別」できるようにすること、さらに「広告主の身元やEU加盟国全体で同プラットフォームに支払われた金額など、鍵となるターゲティング・クライテリア(設定)」を添えることをFacebookに求めた。

昨年、イギリスの政策立案者たちは、ネット上のデマが民主主義にどれほどの影響を与えるかを調査し、政治広告のターゲティング・クライテリアに関する情報として何をユーザーに提供しているのかを教えるようFacebookに圧力をかけた。また、政治広告を完全に拒否できる手段をなぜユーザーに与えないのか問いただした。FacebookのCTO、Mike Schroepferは、明確な答を出せず(あるいは出そうとせず)、代わりにFacebookが提供すると決めたデータのほんの一部を繰り返すことで質問をかわす作戦に出た。

1年近く経過した今でも、欧州市場の大半のFacebookユーザーは、政治的透明性の初歩的な段階すら与えられていない状況だ。同社は自社の規定を採用し続け、対応はマイペースだ。困ったことに、「透明性」の定義(つまり、ユーザーにどこまで提示するか)も自分で決めている。

Facebookは、昨年の秋、イギリスにおける政治広告に関して、「広告料の支払者」の提示機能を加え、広告はアーカイブに7年間保管されることを発表するなど(非常に簡単に回避できることを示されて検証方法を見直すはめになったが)、独自の透明化対策の一部を適用し始めた。

今年の初めには、Facebookは、アイルランドでの中絶を巡る国民投票の間、一時的に海外団体が出資する広告の掲載停止も行っている。

しかし、地方選挙など、その他の欧州での選挙では、表示された政治広告に関して、または誰が広告料を支払っているのかといった情報がユーザーに示さないまま、Facebookは広告の掲載を続けていた。

EUの高官は、この問題を注視していた。先月末、欧州委員会は、先月発表された政治的偽情報に対する自主規制の実施に署名したプラットフォームや広告代理店からの進捗状況を知らせる月間報告の第一号を12月に発表した。

欧州委員会によれば、とくにFacebookには、消費者エンパワーメントのためのツールをどのように展開するか、さらに、どのようにしてEU全域のファクトチェッカーや調査コミュニティーとの協働を強化してゆくかについて「さらなる明確性」を求めた。とくにジュリアン・キング委員は、外部の研究者へのデータアクセス権の提供をしなかった企業としてFacebookを名指ししている。

本日(米国時間2月12日)送られた学者や研究者からの公開書簡は、Facebookの最初の消極的な対応に対する欧州委員会の評価を援護するものであり、翌月の月次評価に向けて力を添えるものとなる。

欧州委員会は、プラットフォームが政治的偽情報の問題に自主的に取り組む努力を拡大できないのであれば、法制化の可能性もあると警告を出し続けている。

プラットフォームに自主規制を迫ることには、もちろん批判的な人もいる。彼らは、それを行っても、強大な力を持ちすぎたというプラットフォームの根本的な問題には、そもそも対処できないと指摘している……。

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この書簡は左派でリバタリアニズムがどう働いているかを示している。Zuckerbergに彼の力を合法化する民主主義を守れと求めている。それは彼が決めることではない。

Facebookに関する事実(本文は英語)

[原文へ]
(翻訳者:金井哲夫)

自動運転車が加速する知的財産保護の改革

1900年代初頭の社会は、馬車から自動車への移行に苦心していた。今日ではおかしなことに思えるかもしれないが、「通行の優先権」や速度制限、交通標識や信号などの概念がなかった時代があったのだ。こうした規則は、車が馬車に出合ったとき、馬を驚かせて暴走させたり、辛うじて「道路」と呼べるような砂利道をお互いに逸れて、馬の助けを借りなければ抜け出せなくなるような事態を避けるために、考え出されなければならなかった。

100年ほど早送りしてみよう。Quo Vadisはラテン語で「汝はいずこへ」という意味。これは、現代の自動車によって可能になった、どこにでも自由に行ける生活様式を表すのにふさわしいフレーズだろう。行きたいときに、行きたいところへ、行きたい人といっしょに行ける。フォレストガンプに触発された田舎道のドライブに、化石燃料車で出かけたり、深夜に軽く空腹を満たすために、EVで町中を流す。まったくモバイルな社会になったものだ。

しかし、注意散漫だったり、運転が下手なドライバーで溢れた通りや高速道路は、「オートピア」を「ディスオートピア」に変えてしまった。人工知能によって可能になるはずの、すばらしい自動運転車の世界を想像してみよう。自分で運転することなく、運転によるすべての恩恵が受けられるのだ。車は、自分の行き先に自分自身で完璧にガイドし、渋滞を緩和し、交通量を増加させ、道路の利用率を最適化する。さらにすばらしいのは、あなたがラテをすすりながらTEDトークを観てリラックスしていても、車は勝手に目的地に向かってくれる。

いや、そうじゃない。現在の技術水準では、さまざまな運転状況に対して、せいぜい高いパーセンテージで対応できる、というくらいであって、例外なく、というわけにはいかない。きわどい状況など、5〜10パーセントのケースでは、まだ人間の介入が必要となる。たとえば、道路にできた穴を緊急に補修している作業員に出くわしたとき、どうしたらよいのかわからない、といったケースは、まだかわいいものだろう。もっとマキャヴェリズム的な例を挙げれば、全方向が一時停止の交差点で、停止中の自動運転車に、人間が運転する車が90度の方向から向かってきた場合が考えられる。AI自動車は乗員を危険にさらさない、ということを知っていて、人間の運転者は前後の車との車間距離を保ったまま徐行して近づき、うまくAI車の動きを止めさせて、人間が運転する車の列がゆっくり途切れることなく永久に通り続ける、ということも、ラッシュアワーには起こり得る。

いずれの場合でも、人間(あるいは遠隔の操縦者)なら簡単に運転を引き継ぎ、交通整理の手信号に従うか、人間の運転する車を牽制することで、交差点を通過できるだろう。しかし、高速道路上で人間による介入が必要になった場合はどうだろう。たとえば、先に通ったトラックが落とした土砂が、車線を区切る白線を覆い隠してしまったら? 自動運転車は、コンクリートの壁に向かってハンドルを切り始めてしまうかもしれない。その場合、人間の運転者が、即座に運転を代わることが唯一の望みとなる。もしその頼りの人間がビデオを見ていたとしたら、顔を上げたときには、金属やガラスの破片の嵐の中、すべてが暗転することに…

大きな懸念は、現在の特許関連の法律ではAIシステムを保護するのに不十分であるということ

人工知能、というのは人間のように思考することを暗示する魅惑的な言葉だ。よくある映画のキャラクタのように、まるで人間のように話し、やりとりすることができるものと思われがちだ。しかしAIは、もう少し正確に言えば「機械学習」のこと。今日の機械学習は、世界と対話し、矯正のための入力を受け取ることによって、人間の知性を再現しようとしている。子供を褒めたり叱ったりすることによって、良いことと悪い事の区別を教えるのとほとんど同じように、今日のAIの機械学習は、似たような二者択一の矯正によるものとなっている。掲示されている30ではなく、35mphで走行すれば、それが誤った行動であるというフィードバックがあり、それを処理することで、AIはMapleストリートを30mphを超える速度で走ってはいけない、ということを「知る」。また、今はラッシュアワーだから、Mapleは西向きの一方通行になり、西に進む場合には全3車線のどこを通ってもいいということを知ることもできる。

何千ではないにしても、すでに何百というテスト車両が、人間が運転する車やトラックと道路を共有している。そうして何百万マイルも走行することで、経験豊かなドライバーと同じような、少なくともそれにできるだけ近い知識が得られるように学習する。そうすれば、道路工事の交通整理に従ったり、車間を詰めて運転するドライバーに対処したりできるほどの信頼を勝ち取ることができる。特許に記載されている技術の場合、新規参入者が追いつくことが可能だ(もちろん、特許使用料を払うか、その特許を回避する設計ができればの話だが)。今日の機械学習には時間と経験が避けられない。それとも、それをバイパスすることができるのだろうか?

大きな懸念は、現在の特許関連の法律では、AIシステムを保護するのに不十分であるということたとえば、機械学習のトレーニングセットや、プログラマが書いたソースコードの特定の表現など、データの編集結果を、特許で保護することはできない。さらに、機械学習プロセスと、その基礎となるアルゴリズムの反復的で漸進的な進化を考えると、特許の認可に必要とされるほど正確かつ細密に、AIシステムの手法と機能を記述すること自体、困難なものになり得る。

そして、誰による発明か、ということも問題になる。AIの自己学習プロセスが意味するのは、発明の主体がAI自身によって自律的に開発される可能性があるということ。もし、その結果に特許性があるとしても、HALを発明者として挙げるべきなのだろうか? これは法律だけでは解決できない領域であり、議会による決議を必要とする問題だろう。現実的な問題もある。この分野は急速に進化しているので、出願から取得までの手続きに何年もかかる特許では、最終的に認可されたとしても、それが有効となる前に無用のものとなったり、時代遅れになったりしかねないということだ。

こうした懸念もあるので、ほとんどの自動運転車(およびAI)の開発者は、知的財産を保護するために企業秘密保護法に頼っている。しかし、これはこの分野に新たに参入しようとする企業にとって、重大な技術的ハードルとなっている。もし、AI開発者が自らの技術を特許化していれば、必要となる情報は公開されていることになるが、そうでなければ、競合他社は基本的にゼロから始める必要がある。これは非常に不利な状況だ。もし市場に参入する競合が少なければ、消費者の選択肢もそれだけ少なくなるのは間違いない。

企業秘密保護に頼る開発には、数え切れないほどの難点がある。中でも深刻なのは、競合他社が熟練した従業員を引き抜き、学習済のデータも不正に入手しようとすることだ。それによって何百万マイルも必要な学習プロセスをバイパスすることができる。保護を徹底し、このような不正行為にも対処できるようにするためには、企業秘密を厳重に管理しておく必要がある。その結果、「知る必要がある」人だけが限定的に情報を扱えるような、厄介なセキュリティ対策が不可欠となる。

こうした状況は、馬が車を引いていた時代からの移行を容易にするために、道路、標識、信号機などの規則を開発しなければならなかったことを思い起こさせる。それと同じように、現在の知的財産保護の概念は、自動走行車への移行を可能にするための新たなコンセプトの創出までは必要ないとしても、少なくとも進化させる必要があるだろう。もう少し見守ってみよう。そして魅力的なドライブに備えて、シートベルトの着用をお忘れなく。

画像クレジット:mato181Shutterstock

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

音声アシスタントの使用、2023年までに3倍超になるとの予測

英国拠点の調査会社Juniper Researchの予測では、音声アシスタントの使用が今後数年で3倍に増えそうだ。デジタル音声アシスタントの使用は2018年末時点で25億台だったが、2023年までには80億台に増えることが見込まれている。

そうしたアシスタントのほとんどは、GoogleアシスタントやSiriがAndroidやiOSのユーザーに提供しているスマホで使用される。

Googleは実際、同社の音声アシスタントが先月時点でデバイス10億台で使用可能になっている、と発表している。この数字にはAndroid統合が貢献している。一方、主にEchoのようなスマートスピーカーで活用されているAmazonのAlexaは1億台超に達している。

しかしながらJuniperは、今後数年間で最も成長する音声アシスタント活用のカテゴリーはスマートスピーカーではなくスマートTVになると予想している。

Juniperは、スマートTVの音声アシスタントは今後5年間で121.3%成長し、その一方でスマートスピーカーは41.3%の成長にとどまると予測する。ウェアラブルも大きな役割を果たし、40.2%の成長を見込んでいる。

スマートスピーカー分野においてはAlexaがすでにリーダー的存在だが、今後は自前の製品を展開する中国メーカーの攻勢を受けることが予想される、とレポートは指摘している。

なお、レポートでは、スマートスピーカーはコマースで使われていないとする考えに意義を唱えている。その代わり、音声コマースは実質的に成長し、2023年までに年間800億ドル超の規模になると推測している。ただし、ここには意外な要素が含まれている。

この“音声コマース”の数字には送金や、従来の買い物体験での音声コマース使用に伴うデジタル商品の購入が含まれている。さらに、800億ドルの大部分を実際の行動を伴う購入が占めるようになるとは予想していない。

「デジタルアシスタントが真にシームレスなクロスプラットフォーム体験を提供できるようになるまでは、音声コマースの大半はデジタル購入になると我々は考えている」とレポートをまとめたJames Moarは発表文で述べている。「コネクテッドTVとスマートディスプレイは、スマートスピーカーにはないビジュアルコンテキストを提供することができ、音声コマースには欠かせないものだ」。

また、デジタルアシスタントの浸透が世界のモバイルアプリマーケットにネガティブな影響を及ぼすとJuniperが考えているのは記すに値するだろう。特にJuniperは、マルチプラットフォームアシスタントに対する消費者のニーズが増大するにつれ、独立したデベロッパーが開発したスマホやタブレット向けのスタンドアローンアプリは減少する、と指摘している。これは、今日我々がアプリを使うときの単純なインターラクションの多くが音声アシスタントに取って代わられることが見込まれるためだ。その代わり、音声アシスタントを使うようになるとスクリーンタイムが減ることになる。

加えて、他のプラットフォームでの音声アシスタントではそうではないが、スマートスピーカーでの音声アシスタントはユーザーの毎日のルーティンの一部になるという初期兆候も見られる。この傾向は、将来、音声だけのインターラクションの需要増加につながるだろう、とJuniperはみている。

原文へ 翻訳:Mizoguchi)

定額で複数のシェアハウスに住める「ADDress」がエンジェル投資家らから資金調達

定額で全国複数の拠点に住めるコリピング(co-living)サービス「ADDress」を提供するアドレスは2月13日、エンジェル投資家を中心とした20名以上を引受先とする第三者割当増資を実施したことを明らかにした。資金調達額は非公開だが、総額数千万円規模となるようだ。

12月20日に発表されたADDressは、定額で全国複数の登録拠点にどこでも住み放題になる、サブスクリプション型の住居シェアサービスだ。空き家や別送など、使われていない物件を活用してコストを抑えながら、快適に利用できるようにリノベーション。シェアハウスと同様に、リビングなどの共有スペースのほかに個室が用意され、アメニティや家具、共有スペースの清掃などもコミコミで、月額4万円から利用できる予定だ。

ADDressでは会員同士の交流や地域との交流の機会も提供し、移住ではなく、短期的な観光でもなく、さまざまな地域と都心部とが人口をシェアリングする多拠点居住のサービスを低価格で提供していくという。

2019年4月のサービス第1弾開始に向け、12月20日の発表と同時にサービスを利用したい会員を募集したところ、2カ月弱で30名の募集に対し、1000名以上の応募が殺到したというADDress。第1弾物件は東京都心から1〜2時間圏の5物件から始める予定だったが、こちらも拡大して展開し、提携先も含めて全国に10カ所以上の拠点を用意することとなった。

ADDressでは今後も引き続き、会員希望者や遊休資産を活用したい不動産オーナー、拠点運営希望者を募集していくという。また企業や自治体との提携による拠点拡大や、クラウドファンディングの活用、第1号社員としてリノベーションディレクターの採用も計画しているようだ。

アドレスでは設立時に、同社代表取締役社長の佐別当隆志氏が所属するガイアックスと「東京R不動産」を運営するR不動産、プロダクトブランド「ONFAdd」(オンファッド)などを提供するニューピースの各社と複数のエンジェル投資家からの出資を受けている。

今回新たに株主として加わった投資家のうち、公開されている人物は以下のとおりだ。

  • 磯野 謙(自然電力 代表取締役)
  • 遠藤 健治(ピクスタ 取締役)
  • 太田 直樹氏(NEW STORIES 代表、前総務省大臣補佐官)
  • 荻原 国啓(ゼロトゥワン 代表取締役社長)
  • 小林 俊仁(ukka 代表取締役)
  • 佐宗 邦威(BIOTOPE 代表取締役)
  • 佐藤 純一(カヤック 執行役員 / そろそろ 取締役)
  • 白木 夏子(Co Inc. 代表)
  • 高橋 大就(東の食の会 事務局代表 / オイシックスドット大地 海外事業担当執行役員)
  • 遠山 正道(スマイルズ 代表)
  • 長谷川 敦弥(LITALICO 代表取締役社長)
  • 林 篤志(COMMONS CEO)
  • 藤井宏一郎(マカイラ 代表取締役)
  • 日比谷 尚武(PR Table co-founder/at Will Work 理事)
  • 村岡 浩司(一平ホールディング代表取締役社長)
  • 松本 龍祐(メルペイ取締役CPO / メルカリ執行役員)
  • 山口 義宏(インサイトフォース 代表取締役)
  • 吉井 秀三(フリーランス)

日本のコリビングサービス、サブスクリプション型住居サービスの動きは、最近になって活発になっている。長崎発のKabuK Styleが提供する「HafH(ハフ)」はクラウドファンディングのMAKUAKEプロジェクトで支援者300人以上、目標金額の5倍を超える1000万円以上を集め、2019年1月には長崎市に初の拠点をオープン。提携により、国内外7カ所の拠点を今春にもオープンし、今後も拡大していくとしている。

コーディング不要でスプレッドシートから簡単にモバイルアプリを作れるGlide

Y Combinatorの2019冬季クラスを受けているGlideのファウンダーたちは、一般企業がモバイルアプリを作ることの難しさを痛感している。そこで彼らは、そのプロセスをスプレッドシートから始めて、そのコンテンツを自動的に、すっきりしたモバイルアプリに変える方法を考えた。

GlideのCEOで協同ファウンダーのDavid Siegelは、他の協同ファウンダーJason Smith、Mark Probst、Antonio Garcia Apreaらと共にXamarinにいた。そこは、Microsoftが2016年に5億ドルで買収したクロスプラットホームなモバイル開発企業だ。彼らはそこで、一般企業がモバイルアプリを作るときに直面するさまざまな困難をとても具体的に見てきた。Microsoftに2年いた4人のファウンダーは、その問題を解決するスタートアップを作ろうと決心した。

Siegelはこう語る: “今では世界最大の企業でさえ、モバイル戦略を持とうと必死だ。そしてしかも、彼らにとっては、モバイルアプリの開発がきわめて困難で高価についている。スマートフォンがデビューして10年になるが、未だに何一つ進歩していない”。

彼らはまず、‘コードを書かなくてもよい’と称するノーコードツールを100種類近くも調べあげた。どれにも、満足できなかった。そこで次に彼らは、古臭いスプレッドシートに目をつけた。それは、今でも多くの人たちが情報の追跡に使っているビジネスツールだ。スプレッドシートをモバイルアプリビルダーのベースにすることを決めた彼らは、まずGoogle Sheetsから始めた。

Siegelは曰く、“スプレッドシートはこれまででもっとも成功したプログラミングモデルだと言われているし、そしてスマートフォンはこれまででもっとも成功したコンピューターだ。だからGlideを始めるにあたって考えたのは、これらの二つの力を組み合わせることができたら、何かとても価値あるものを作れるのではないか、ということだった。それによって個人も企業も、毎日Xamarinの顧客たちが作ってるようなアプリを、もっと早く作れるのではないか”。

そこで彼らは、Glideを開発した。ユーザーが情報をGoogle Sheetのスプレッドシートに加えると、Glideがそのコンテンツからすぐにアプリを作る。コーディングは要らない。“洗練されたデータドリブンのアプリを容易に組み立てられて、ユーザーはそれをカスタマイズでき、徐々に進歩していくWebアプリとしてシェアできる。それは、アプリをダウンロードしなくてもブラウザーにロードできるし、Glideのアプリをネイティブアプリとしてアプリストアにパブリッシュできる”、とSiegelは説明する。しかも、アプリとスプレッドシートの間には双方向の接続があるので、情報をどちらかに加えると他方もアップデートされる。

ファウンダーたちは、元XamarinのCEOで現在はGitHubのCEO Nat Friedmanと相談して、Y Combinatorの受講を決めた。彼やそのほかのアドバイザーたちは、会社を初めて作るファウンダーが指導を受ける場所としてはYCがベスト、と推薦した。YCの広大なネットワークも利用できる。

そこでSiegelらが学んだ最大のことは、顧客たちの間に入り込んで彼らの仕事の現場から学ぶことだ。ツールを作ることにのめり込んでしまってはいけない。それは、スタートアップにとって罠になる。そこでGlideも、自分たちのツールを使ってYCの同級企業たちのためのモバイルアプリをいくつも作った。

Glideは今日(米国時間2/12)すでの操業しており、人びとは自分のスプレッドシートのデータを使ってアプリを作れる。テンプレートも豊富に用意されているので、そこからスタートしてもよい。試用のための無料アカウントも作れる。

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プログラマー起業家支援に特化したMIRAISEファンド、元スカイプジャパン代表の岩田氏が立ち上げ

MIRAISE(ミレイズ)は2月13日、プログラマー起業家に投資するファンド「MIRAISE1号投資事業有限責任組合を組成したことを発表した。

同社は、元スカイプジャパン代表取締役で欧州の独立系ベンチャーキャピタルであるATOMICOのパートナーを務める岩田真一氏が設立。プログラマー出身の岩田氏が、プログラマーとしてはもちろん、起業家、投資家としての経験、人脈を生かして、テクノロジー起業家への資金面、ビジネス面、人材面、グローバル展開についてサポートしていくとのこと。

MIRAISEの岩田真一氏

シリコンバレーなどで起業するスタートアップは、優れたプログラマーやエンジニアが創業者、もしくは創業メンバーにいることが多い。一方、日本では起業家=エンジニアのケースがまだまだ少なく、プログラマー起業家やソフトウェアのコア技術に特化するファンドの必要性を感じていたという。

岩田氏は、P2P技術を利用してサーバー不要のグループウェアなどを開発していたスタートアップ、アリエル・ネットワークの創業メンバーであり、その後に入社したスカイプでは初期メンバーとして日本代表を務めた経験がある。そして直近の7年は、投資家としてスタートアップエコシステムに関わってきた。

現時点でのファンド出資者は、東京理科大学インベストメント・マネジメント、P2Pの送金サービスなどを提供しているTransferWise社の共同創業者であるTaavet Hinrikus(ターヴェット・ヒンリクス)氏を含む国内外の個人投資家。ファンドの規模は非公開だが、2019年内に10億円程度を目指すとのこと。

メンター陣には、坂本孝治氏(TBM取締役/COO)、Zach Tan氏(PROWLER.io、元Infocomm)、三島 健氏(JTB Web販売部戦略統括部長、元Expedia北アジアCEO)、松村映子氏(連続起業家)、首藤一幸氏(東京工業大学准教授)、海野弘成氏(Incrementsファウンダー/CEO)、尾下順治氏(AXEL MARK CEO)、佐々木康弘氏(Takramディレクター/ビジネスデザイナー)が名を連ねる。

ファンドの投資先としては現時点で、Pegaraといまチカの国内2社と、エストニアのAIスタートアップの計3社が決まっている。

Pegaraは、AI(機械学習・深層学習)の計算に使うGPUクラウドサービス「GPU EATER」を提供しているスタートアップ。GPU EATERは、初期料金が無料で秒単位の従量課金制サービスとなっており、AWSのGPUインスタントコストを最大80%削減できるという。

いまチカは、「いま近くのいいお店を探す、集めるアプリ」を提供しているスタートアップ。現在地もしくは指定した地域の近くにある、レストランやカフェはもちろん、病院や駐車場なども検索できる。該当地域で開催されるイベントや利用できるクーポンの情報までをまとめて調べられるのが特徴だ。また店舗向けには、QRコードを利用した電子スタンプなどのサービスを提供している。

米DARPA、傷負戦士のためにスマート包帯を研究中

戦場ほど迅速で効果的な医療が重要な現場はない。DARPA(米国国防高等研究事業局)は、インテリジェント包帯を始めとする患者の要求を予測して自動的に処置するシステムを使って状況を改善しようと考えている。

通常の切り傷や擦り傷は、ちょっと保護してやるだけで、あとは人間の驚異的な免疫システムが引き受けてくれる。しかし兵士ははるかに深い傷を負うだけでなくその複雑な環境は治癒の妨げになるだけでなく予期せぬ結果を呼ぶ。

DARPAの組織再生のための生体電子工学プログラム(BETR)は、新たな治療方法と装置を開発し、「創傷の状況を細かくに追跡し、治癒過程をリアルタイムで刺激することにより組織の修復と再生を最適化する」。

「創傷は生体現象であり、細胞と組織が連携して修復を試みるにつれ条件が急速に変化する」とBETRのプログラム・マネジャー、Paul SheehanがDARPAのニュースリリースに書いた。「理想的な治療は、創傷状態の変化を感知して治療介入することで正確かつ迅速な治癒を促すことだ。たとえば、免疫反応の調節、創傷が必要とする細胞型の動員、治癒を早める幹細胞の分化などへの介入が考えられる」

どんな治療が行われるかは想像に難くない。スマートウォッチはいくつもの生体信号を監視する機能を持ち、すでにユーザーに不整脈などの警告を与えている。スマート包帯は、光学的、生化学的、生体電子的、機械的を問わず得られる信号は何でも使って患者を監視し、適切な治療を推奨し、あるいは自動的に調節する。

簡単な例を挙げると、特定の化学的信号によって創傷がある種のバクテリアに感染していること包帯が検知したとする。システムは処方を待つことなく適切な抗生物質を適切な分量投与し必要な時点で中止する。あるいは、スマート包帯がせん断応力を検知したあと心拍の上昇を検知すると、患者が移動されて痛みを感じていることがわかる。そこで鎮痛剤を投与する。もちろん、これらの情報はすべて介護者に引き継がれる。

このシステムにはある程度人工知能が必要だが、適用範囲はごく限られている。しかし生体信号にノイズが多いときには機械学習が強力なツールとなってデータ識別に活躍するだろう。

BETRは4年間のプログラムでDARPAはその間にこの分野にイノベーションを起こし、治療結果を著しく改善する「クローズドループの適応システム」を作りたいと考えている。このほかにも、戦闘中に重傷を負った多くの兵士が必要とする人工装具のオッセオインテグレーション手術に対応したシステムも求められている。

こうしたテクノロジーが普及することを期待したいが、慌ててはいけない。これはまだ大部分が理論上の話だ。しかし、さまざまな要素がつながって十分間に合うことも考えられる。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

Ubisoft、AIバグ発見ツール、Clever-Commitの開発でMozillaと提携

今日(米国時間2/12)、カナダの有力ゲーム・デベロッパー、UbisoftはClever-Commitの開発に関してMozillaと提携したことを発表した。

このツールはAIを利用したスマート・アシスタントで、ユーザーが新しいコードをコミットする際に過去のバグやリグレッションテストのデータからバグの可能性がある部分を発見して警告する。Ubisoftはこのツールをすでに社内で利用している。MozillaはFirefoxをアップデートする際にClever-Commitをバグの発見に役立てるとしている。

Mozillaといえばオープンソースと考える読者も多いだろうが、Clever-Commitはオープンソースではない。Ubisoftの広報担当者は私の取材に対して、「その点が検討されたのは事実だが、今のところClever-Commitがオープンソース化される予定はない」と答えた。 なるほどMozillaは各種の有料ツールを使ってオープンソースソフトウェアを開発している。しかしオープンソースではないツールを開発するのをMozillaが助けるというやや奇異に感じられる(ともあれClever-Commitはまだベータ段階で一般公開はされていない)。

去年、UbisoftはこのツールをCommit-Assistantという名前でデモした。Mozillaは「Ubisoftと協力し、われわれはRust、C++、JavaScriptによるプログラミング、 C++コードの解析、バグ・トラッキングに関するノウハウを提供していく」と述べた。 Mozillaはこのツールをまずコード・レビューの段階で利用し、有効性が確認できれば他の段階にも利用を広げていくといいう。Mozillaではアップデートの配信の前にClever-Commitを利用することで5つのバグのうち3ないし4を発見できるものと期待している。

今日、MozillaにおけるFirefoxのリリース担当マネージャー、Sylvestre Ledruは、 「われわれは6週間から8週間ごとにFirefoxのコードのアップデートを行っている。良好なユーザー体験を確保するためにFirefoxの開発チームはコードを書きテストを行う際にClever-Commitを利用することで公開に先立ってバグのないクリーンな状態を確保することができると期待している。当面まず完成したコードのレビューのプロセスで利用を始めるが、有用であればさらに他のプロセスの自動化にも利用していく」と述べている。

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滑川海彦@Facebook Google+

アバター×ゲーム実況で世界へ挑むミラティブが35億円を調達

ミラティブ代表取締役の赤川隼一氏

「アバターとゲーム実況の融合に強い手応えを感じている。今回の資金調達は国内において圧倒的なポジションを確立するとともに、グローバル展開に向けた礎を作っていくためのものだ」

スマホ画面共有型のライブ配信プラットフォーム「Mirrativ(ミラティブ)」を手がけるミラティブの取材は、代表取締役の赤川隼一氏のそんな力強い言葉でスタートした。

同社は2月13日、JAFCO、グローバル・ブレイン、YJキャピタル、グロービス・キャピタル・パートナーズ、伊藤忠テクノロジーベンチャーズ、ANRIを引受先とする第三者割当増資により31億円を調達したことを明らかにしている(2月12日契約完了時点の金額であり、当ラウンドでのクローズ予定調達金額は35億円)。

Mirrativはもともと赤川氏が前職のディー・エヌ・エー(DeNA)に在籍していた2015年8月に、同社の新規事業としてスタートしたサービスだ。2018年2月に実質的にはMBOに近い形で新たに会社を設立し、事業を承継。同年4月にはグロービス・キャピタル・パートナーズや複数のベンチャーキャピタル、個人投資家から10億円以上の資金調達を実施した旨を明かしていた。

当時は個人投資家の名前は公開されていなかったが、佐藤裕介氏や古川健介氏、中川綾太郎氏らから出資を受けているという。

ミラティブでは今回調達した資金を用いてマーケティングの強化や「エモモ」を中心としたアバターに関する機能の研究開発、新規事業の推進、グローバル展開などに取り組む計画。2月15日からは初となるテレビCMも実施する。

ビジネスモデルを証明するための1年

赤川氏いわく、ミラティブにとって前回の資金調達からの約1年間は「ビジネスモデルを検証するための1年」だった。

「前回調達時点でユーザーが増えるモデルになっているのはある程度見えていた。一方でゲーム実況は本当にマネタイズできるのか、ビジネスとして成立しうるのか、そんなダウトが色々あったのも事実だ。1年を通して内部的な要因と外部的な要因の両方からクリアになってきた」(赤川氏)

外部的な要因としては、中国のゲーム実況サービス「Huya(虎牙)」が2018年5月にニューヨーク証券取引所に上場。ライブストリーミングの先進国とも言える中国でもゲーム実況領域だけが伸び続けているなど、市場が明確に存在することを実感できたという。

ミラティブ内部の変化としてはMirrativとエモモが順調に伸びた。スマホの画面を共有することで手軽にゲーム実況ができるMirrativにおいて、KPIとして重視している配信者の数が100万人を突破。全体のユーザーが増えてもなお配信者の比率は20%以上を保っている。

2017年9月にiOS端末からの配信に対応したことで配信者数が一気に拡大。2018年の秋からはプロモーションにも力を入れることで継続的に配信者の数を増やしてきた。

そしてMirrativユーザーをよりエンパワーするためのアイテムとして“上手くハマった”のが8月にリリースしたアバター機能のエモモだ。スマホ1台だけでVTuberのように配信・ゲーム実況ができる同機能を活用し、すでに数十万人がアバターを身につけてライブ配信を実施済みだという。

現在存在するVTuberの数は約7000人(ユーザーローカルでは12月にVTuberが6000人を突破したという調査データを公開している)ほどと言われていることも考慮すると、単純な比較はできないながらエモモの数字はかなりのインパクトがあると言えそうだ。

赤川氏としては、特に「結果的にエモモとMirrativが自然な形で融合したこと」に大きな手応えを得たという。

「もともと顔出し文化がなかったMirrativにアバター文化が上手く乗っかり、自分でもびっくりするぐらいに何の反発もなくユーザーに受け入れられた。昨年3Dアバターアプリの『ZEPETO』が流行った動きなどを見ていても、バーチャル化やアバターの流れがきている。ミラティブとしてはこの流れを汲み取りながら“いかに爆発させるのか”、2019年はさらに仕掛けていきたい」(赤川氏)

このアバターを活用した事業に加えて、秋にはついにライブ配信者が収益化できる仕組みとしてギフト機能も公開している。

「これまでのミラティブは、配信者がお金を稼ぐ仕組みはないのにただ面白いからという理由でコミュニティが盛り上がって、日本で1番スマホゲームの配信者が集まる場所になった。そこにモチベーションをアドオンする収益化の仕組みが加わったのが去年の11月。かつてYoutubeではアドセンスの仕組みが入ったことで『動画でマネタイズして、食べていけるぞ』となり、ヒカキンなどの個性的なYoutuberが続々と出てきた。今のミラティブはまさにそんなフェーズだ。収益化以降の成長カーブが加速していることにも手応えを感じている」(赤川氏)

アバターの世界観をさらに拡張し、国内外でさらなる成長へ

ミラティブの経営陣と投資家陣

今回の資金調達は直近1年の流れをさらに加速させるためのもの。まずは3つの方面に投資をしていくという。

1つ目がミラティブの成長を支える組織体制の強化。つい先日には元Gunosy取締役CFOの伊藤光茂氏が同社にジョインしているが、今後も経験豊富なメンバーの参画が決まっているようだ。同社では現在22人の人員体制を2019年中には100人規模まで拡張させていく予定だという。

2つ目の投資ポイントは冒頭でも触れたCMだ。「1番の競合は中国勢だと思っている。昨年TikTokが一気に拡大した例もあるので、まずは国内マーケットで圧倒的に突き抜けるところまで行きたい」(赤川氏)という。

そして3つ目はグローバル展開だ。これについては「本気でグローバル展開をやるなら今回の調達額でも足りない」というのが赤川氏の見解で、今のフェーズでは色々な国で今後展開することを見越した土壌作りを始める。最初の足がかりとしてはすでにMirrativが存在し、若い年代のネットリテラシーも高い韓国での展開を計画しているという。

合わせて土台となるプロダクトについても継続的に新たなアップデートを加えていく予定。そのひとつとして、現在はまだ開発段階であるが以前から話にあった「ボイスチェンジャー」機能にも着手済みだ。

僕も開発中のものを少しだけ見せてもらったのだけど、スマホから見た目だけでなく声までも気軽に変えられるのは、思った以上にインパクトがあった。目の前にいる赤川氏が実演してくれた様子は少しシュールだったけど、画面越しの配信だけを見ていると声が変わるだけで相手の印象も全く違うものになる。

「ミラティブとしてやりたいのは、人類の可能性を解放すること。たとえば才能がある人が容姿の問題で活躍できないような状況があるのであれば、アバターやボイスチェンジャーを通じてその人の可能性を解放したい。まだニッチではあるが、アバターだけの現段階でもすでに数十万人が配信をしている。そこにボイスチェンジャーが加わればより障壁が下がり『スマホ上での人格の仮想化』も加速すると考えている。この領域は偶然にも日本から出てきたものであり、グローバルで勝てるチャンスも十分あるので今後さらに力を入れていきたい」(赤川氏)

“日本未発売”のオーガニック商品が買える「ナチュラカート」運営が2.6億円を調達

世界中の質の高いナチュラル&オーガニック商品を、日本にいながら“日本語”で、“日本の決済手段”を使って購入できるマーケットプレイス——cartが運営する「ナチュラカート」を簡単に紹介するとそんなところだろうか。

近年日本でも健康面や安心面に気を使う消費者を中心に、オーガニック商品が注目を集めている。ただcart代表取締役の橋本雅治氏いわく、日本は関連商品の流通量が非常に少ない「オーガニック後進国」だ。

予防医療の発達などの影響もあり良質な商品が豊富に出回っている欧米やオセアニアに比べ、日本では様々な規制なども影響して購入できる商品の数が限られているそう。そんな状況を変えるために橋本氏は2016年にcartを創業し、ナチュラカートを立ち上げた。

そのcartは2月13日、SMBC ベンチャーキャピタル、りそなキャピタル、三菱UFJキャピタル、アライドアーキテクツ、BEENOSを引受先とする第三者割当増資により総額約2.6億円を調達したことを明らかにした。

今回調達した資金を活用して開発面やデザイン面を中心に組織体制を強化するほか、プロダクトの改善やマイクロインフルエンサーと連携した集客モデルの構築などを目指す方針。cartは2016年11月にもジャフコなどから3億円を調達していて、累計の調達額は約5.6億円になる。

海外で注目浴びる“日本未発売”のオーガニック商品を掲載

ナチュラカートは海外在住の個人や国内外のメーカーが出品するさまざまなナチュラル&オーガニック商品を購入できるプラットフォームだ。C2CとB2Cを組み合わせたハイブリッドモデルを採用していて、商品の出品者は大きく個人のバイヤーとメーカーの2タイプに分かれる。

C2CのモデルはファッションECの「BUYMA(バイマ)」を知っている人にはわかりやすい。海外にいるバイヤーが自分の気に入った商品を出品し、購入者から注文が入ったものを実際に買い付けて配送する。買い物代行にも近い仕組みで、ナチュラカートは双方を仲介する役割を担う。

一方のB2Cはブランドと消費者を繋ぐシンプルなマーケットプレイス。現在はオーガニック食品やコスメ、ナチュラルサプリなどを扱う国内外のメーカー約150社が出店している。橋本氏によると海外メーカーについてはほとんどが日本に進出していない企業なのだそう。「規制や流通面の複雑さなどが障壁になって、進出したくてもできなかった」メーカーが日本へ参入する際の選択肢として、ナチュラカートを選んでいるのだという。

サイト全体では約2000ブランド、3万点以上の商品を掲載。幅広いジャンルを扱っていて日本では未発売の商品も多い。マヌカハニーやハーブトニック、オーガニック粉ミルクなど海外で人気を集める商品を、現地に行かずともネットを介して気軽に購入できるのが特徴だ。

創業者はイデアインターナショナルを立ち上げた連続起業家

cart創業者の橋本氏はインテリア雑貨などを扱うイデアインターナショナルの創業者でもあり、2014年まで同社の代表取締役を勤めていた人物。上場も経験している、いわゆる連続起業家(シリアルアントレプレナー)だ。

イデアインターナショナル代表時には自社でオーガニックのコスメブランドを立ち上げたりもしていたが、「今に至るまでいろいろな参入障壁があり、なかなか日本国内に良質な商品が流通していかなかった」(橋本氏)ことを課題に感じ、cartを設立した。

創業時からcartに関わっているエグゼクティブ・アドバイザーの田中禎人氏は、上述したBUYMAを運営するエニグモの共同創業者。田中氏もオーガニック商品の流通面における日本と海外のギャップに目をつけ、BUYMAと同じようなモデルでこの問題を解決できたら面白いと考えていたのだという。

結果的にはB2Cモデルに知見がある橋本氏と一緒に、両者の得意領域を組み合わせるような形でスタート。ナチュラカートがC2CとB2Cの両方を取り入れているのはそんな背景があるからだ。

そのようにして始まった同サービスはもう少しでローンチから丸3年を迎える。その間にも「マーケットは間違いなく拡大している」というのが橋本氏の見解。たとえばイオンが食品やコスメの領域を中心にオーガニックのブランドを立ち上げたり、フランスのオーガニック専門スーパーであるビオセボンに出資したニュースなどは話題に上った。

オーガニックブランドを扱うアメリカ発のECサイト「iHerb(アイハーブ)」などの地名度も若い世代を中心に高まってきてはいるが、まだまだ海外の良質な商品が十分に流通しているとは言えない。cartでは今後もその土壌作りを継続していく計画だ。

今後はウェルネス視点を融合、将来はD2Cの展開も

cartのメンバー。前列左から2番目が代表取締役CEOの橋本雅治氏、後列左から2番目がCOOの越智幸三氏

今回の資金調達はまさにナチュラカートを一層拡大させるためのもの。調達した資金を活用して組織体制の強化やプロダクトの改善を測るほか、調達先のBEENOSとは越境ECノウハウの提供や海外の倉庫機能と連携した物流⾯での効率化など、事業上の連携も見据える。

合わせてこれまで着手していなかった新しい取り組みも計画中だ。ひとつは従来のナチュラカートで中心となっていたナチュラル&オーガニックジャンルに、ウェルネスの要素を取り入れること。cartでCOOを務める越智幸三氏は「近年オーガニック商品を求める消費者のニーズが変わってきている」ことがこの背景にあるという。

「家族や自分自身の健康を考えて、体に良い商品を使いたい。そんな健康志向でオーガニック商品を買う人たちが増えていて、(オーガニック商品を)ファッションで買う時代ではなくなってきている」(越智氏)

その要望に応える形で、ナチュラカートではより医療や科学的な視点から商品を選別する取り組みを考えている。具体的には「たとえばこの商品には水溶性食物繊維がどのくらい含まれていて、それにはどのような作用がある」など専門家の正しい解説を加えることで、各ユーザーが本当に欲しい商品を見つけやすい仕組みを目指す。

「医者やアスリートなど、エキスパートと連携することでユーザーにとってより価値のあるサイトにしていきたい。今まではユーザーの顕在化したニーズに依存していた側面が強かったが、何かぼんやりとした悩みがあった時に訪れても適切な解決策が見つかる場所を目指す」(越智氏)

この点については共同創業者の湯本優氏が医師/医学博士で、なおかつスポーツ医科学トレーニングやフィットネスの専門家であるため、湯本氏の知見やネットワークも活用できそうだ。

またもうひとつ、さらに将来的な構想としては「日本にない良質なものを取り扱うだけでなく、そもそも世にないものを作るというアプローチ」も検討していくという。いわゆる「D2C」的なアプローチだ。

もともとcartのメンバーはものづくり系のバックグラウンドを持つメンバーが多い。橋本氏はもちろん、COOの越智氏もユニリーバや西友でリアルな商品の企画や製造、販売に携わってきた。そこにナチュラカートで蓄積された販売データと、原料メーカーなどとのネットワークを合わせることで、cartオリジナルの商品を作ることも橋本氏の頭の中にはあるようだ。

「ナチュラカートはリサーチの場にもなる。どんな商品が人気なのか、どんな商品が求められているのか。その要望に十分に応えるものがないのであれば、自分たちで作ってしまってもいい。まだ会社として具体的な話が決まっているわけではないが、自分としては世の中にないものを作るチャレンジもしたい」(橋本氏)

モニタリングとアナリティクスのDatadogがAIによるWebアプリケーションテストのMadumbo を買収

モニタリングとアナリティクスの人気プラットホームDatadogが今日(米国時間2/12)、AIを利用してアプリケーションのテスティングを行なうMadumboを買収したことを発表した。

DatadogのCEO Olivier Pomelは次のように述べている: “MadumboのチームがDatadogに加わることは、とても喜ばしい。彼らが作った高度なAIプラットホームは、Webアプリケーションの異状を素早く見つけることができる。彼らの中核的技術がわれわれのプラットホームを強化し、われわれの顧客に、さらに多くのデジタル体験のモニタリングを可能にするものと信ずる”。

パリで生まれたMadumboは、Station Fで孵化し、2017年にローンチした。同社を利用するとユーザーは自分のWebアプリケーションを、コードをいっさい書かずにテストできる。デベロッパーはMadumboのテストレコーダーを使って、サイトと対話しながらテストでき。メールやパスワード、データなどのテストもオンザフライで行える。Madumboのシステムはユーザーのサイトをウォッチし、その後加えられた変更も、確実にチェックする。このボットはJavaScriptのエラーや警告もウォッチし、その利用をデプロイスクリプトの中へ統合できる。

そのチームはDatadogのパリのオフィスに参加し、新製品の開発も行なう。その発表は、今年後半だそうだ。Madumboのプラットホームは、今後の数か月内で撤去される。

MadumboのCEO Gabriel-James Safarは次のように述べている: “Datadogに加わってMadumboのAIによるテスト技術を同社のプラットホームへ持ち込むことは、すばらしい機会だ。われわれは長年、Datadogとそのリーダーシップを賞賛してきた。Datadogのそのほかのプロダクトと密接に統合することにより、われわれの既存の技術のスコープを拡張できることを、心から期待している”。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

米国成人の16%がスマートウォッチを持っている

NPDの最新記事によると、ここ米国ではスマートウォッチが好調な売れ行きを続けている。このカテゴリーは全体的に下降気味のウェアラブル分野の中で唯一明るい材料であり、今回発表されたデータはさまざまな層で広く受け入れられていることを示している。12月時点の米国成人のスマートウォッチ所有率は16%で、一年前の12%から伸びている。

成長を支えているのはやはり若年層で、18~34歳のスマートウォッチ保有率は23%に上る。もちろんAppleを始めとする各メーカーは高齢世代での売上増を狙っていて、昨年登場した心電計などの本格的医療健康機能に期待を寄せている。

市場をリードしているのは依然としてApple、Samsung、Fitbitの3社で、昨年11月時点で全売上50億ドルのうち88%を占めた。しかし、Fossil、Garminらもある程度の市場シェアを獲得している。もちろんGoogleもこの分野での躍進を目指してFossil IPを最近買収した。Wear OSの伸びはほぼ横ばいだが、2019年に噂のPixel Watchが登場すればそれも変わるかもしれない。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

アルゴリズムの判断と人による評価。SEOの成功において必要なものはどちらか?

Googleの検索結果の順位付けは、基本的にはアルゴリズムによって全て行われます。しかし、直接的ではありませんが、品質評価者による評価結果も、アルゴリズムの更新に影響を与えている(参考にされている)とも言われています。もちろん、ユーザーへ価値のあるコンテンツを提供することが最重要であることは間違いないのですが、SEO担当者として、我々はアルゴリズムと評価者による評価のどちらを重視すべきなのでしょうか?このような疑問に対する考えの一助として、今回の記事をお読みいただければと思います。– SEO Japan

過去数年における、Googleの品質と権威性の捉え方の変更は、今後のSEOの流れを大きく変更させるものである。Googleはアルゴリズムの改善を継続しながら、”品質評価者”への依存も強めている。

自動生成のコンテンツや手っ取り早いハック的な古い手法は、長期的で安定的なSEOの成功を約束するものではなくなっている。

”新鮮なコンテンツ”の名のもとに、ブログ記事を矢継ぎ早に作成するなどの手法は過去のものとなった。また、オンライン上で手に入る情報を(しかも、引用しているという告知なしに)再利用しただけのコンテンツに、効果的で安定的な結果を期待するという戦略は成り立たなくなっている。

こうした状況の中で成功するために、SEO担当者は、Googleがコンテンツに対する品質と権威性のルールを変更したという事実を学ばなければならない。また、自身のWebサイトが、ターゲットとする領域において権威があるとみなされるために必要なタスクも学ばなければならない。

Path Interavtiv社のSEOディレクターであるリリー・レイ氏は、権威性に関するGoogleのアップデートが、彼女のクライアントのサイトに対してどのような影響を与えたかについて、数ヶ月に及ぶ調査を行った。「1月30日にサンノゼで開催されるSMX Westにて、レイ氏は上記の調査結果に加え、この新しい時代を生き抜くためのアドバイスも共有してくれる」

私はリリー氏にインタビューを行い、我々が注力すべき領域はなにか?また、アルゴリズムの判断が前提であるものの、人による評価の介入も認められる昨今の状況において、SEOの成功をおさめるために必要になるものはなにか?などの質問を投げてみた。

過去数年間で、Webサイトが評価され、順位づけされる方法において、一番変化があったものはなにか?

2018年は、GoogleがWebページとドメインの品質と信頼性を分析する方法を大きく変更させた年であった。以前は、よく知られたランキング要素(タイトルタグや内部リンクの修正)を調整することで、SEOの成果は十分に認められていた。たとえ、そのWebサイトが特定の領域において権威とみなされていなくても、だ。

このような簡易的な内部最適化の手法は、もはや検索結果の最高順位を約束するものではなくなっている。特に、品質や信頼性が重視される領域においては。Googleは、コンテンツの作成者を含め、Webサイト自身の評判や信頼性を重視している。また、ページスピードやモバイル・ファースト・インデックスに関わる変更からも、ユーザー体験に大きな比重を置いていることがうかがえる。

アルゴリズムの変更により大きくトラフィックを落としたクライアントに対し、あなたはどのような対策をとるか?

クライアントのWebサイトがアルゴリズムの変更による影響を受けた場合、品質と信頼性に関わる、Webサイト内外の要因を調査する。影響を受けたページはどこか、サイト全体が影響を受けているのか、を確認するのだ。もちろん、E-A-T (expertise:専門性、authoritativeness:権威性、trustworthiness:信頼性)に課題はあるか、サイト全体の権威性が疑われているのか、なども確認する。また、影響を受けたページと、競合サイトのページとの比較も詳細に行う。情報量、引用数、ページ構成などが、検索クエリに対する答えとして十分であるのかを確認するのだ。

次に、“Site:”を使用し、自身のサイトの自然検索結果における状況を調査する。内容が薄い、重複している、品質が低い、などのコンテンツが多くインデックスされていれば、これらを統合したり削除したりすることで、大きな改善が見込めるためだ。また、(これはGoogleも推奨していることだが)コンテンツ作成者やWebサイト自体の評判も確認する。解決すべき、Webサイトの信頼に影響を与える外的要因が存在することもあるのだ。

Googleの品質評価ガイドラインは、どの程度参考にするべきか?

我々のSEOチームは2018年度版の品質評価ガイドラインのコピーを書棚においている。アルゴリズムの変更の影響を受けたWebサイトを分析する際や、Googleが定義しているコンテンツの”高品質”を再確認する際など、すぐに閲覧できるようにするためだ。もちろん、このガイドラインに書かれている内容の多くが、そのまま現状のランキング要素ではないことは、十分に理解している。それらは、Googleが検索アルゴリズムにいずれ組み込むことを目指している、長期的なマーケティング戦略であると、我々は認識している。

さらに、ここ数ヶ月のアルゴリズムの改良は著しく、人間が行うようにWebサイトの品質の分析が行われており、我々はそうした痕跡を十分に確認することができている。また、多くのSEO担当者にとっては明らかであることだが、現行のガイドラインの内容は、過去のSEOの手法が通用しなくなっていることを指し示している。つまり、キーワードの詰め込みや自動生成、新しいコンテンツの作成のみを目的とした品質の低いブログ記事の大量生産などは、将来に渡って良い結果を生み出す安定的な手段ではなくなっているのだ。

人工知能と機械学習は、ランキングアルゴリズムにどの程度の影響を与えているのか?

私は、過去数ヶ月のアルゴリズムの更新は、Googleが急速に進めている機械学習の進歩に依るものであると考えている。Googleのベン・ゴメス氏は品質評価ガイドラインを”我々が、検索アルゴリズムを向かわせたい場所”と述べている。また、ゴメス氏は、「品質において(少なくとも今のところは)人間が最良の判断を下すことができるし、それは今後も続くだろう」としながらも、「アルゴリズムが人間の判断のレベルに追いつくためにするべきことはまだ残っている」とも述べている。

機械学習はこのプロセスを、過去の例に無いほど急速に、また、安定的に進めることができる。しかし、検索結果の順位が大きく変動するたび(過去6ヶ月においては各アルゴリズムの更新後に急激に順位を上昇・下降させたサイトがあった)、それらは、アルゴリズムが何らかの指標を見落としており、まだ改良すべき点があることを指し示しているのだと思う。

今年になって起こる大きな変化は、どのようのものになるのか?

Webサイト自体、また、コンテンツの作成者の評判が注視されるのだと思う。特にYMYL(Your Money Or Your Life*)においては顕著であり、平凡なコンテンツや専門性に欠けたコンテンツが上位に表示されることは難しくなるだろう。2019年は、上位表示を叶えるために、これまで以上に時間と努力が必要になってくる。短期的なハックはもはや安定的な成功を約束するものではないからである。

※金融や医療など、誤った情報を与えてしまうことで、ユーザーの人生に大きな影響を与えかねない領域

検索結果における露出拡大に注力している個人や企業は、自身のオンライン上での評判に気を配るべきだ。そして、信用や信頼に影響のある施策は、なんだって行うべきだと思う。これには、顧客の意見を聞いたり、多くのプラットフォームで発せられている意見に対する対応などの施策も含まれている。もちろん、圧倒的なコールトゥアクションや広告を提供するという話ではない。なにか問題があったときに顧客が簡単に連絡をとれる機会を増やしたり、彼らからのフィードバックをオペレーションに反映させるなどといった施策だ。

これらを達成するまでには困難がつきまとうだろう。デジタルブランドは、長期的な自然検索結果における露出を確保するために、全精力をもって取り組まなければならない。人間による評価が重要であることは変わりないが、検索エンジンは人間が評価をするプロセスに急速に近づきつつあるのだ。

「上記以上にも、リリー氏やその他のエキスパートからアルゴリズム変更への対応についてのアドバイスをもらいたいならば、2019年1月30日-31日にサンノゼで開催される、SMX Westに、ぜひ、ご参加いただきたい。


この記事は、Search Engine Landに掲載された「Machine vs. man: What really matters for SEO success」を翻訳した内容です。


記事中にもありますが、Googleがユーザーを重視している以上、人間による評価も重視されているはずです。アルゴリズムによる判断は、もちろん人間が下す評価と必ずしもイコールではありませんが、SEOに携わっていると、その精度は急速に高まっていることを実感することもあります。直接的なランキング要素ではありませんが、Googleが目指している方向性にキャッチアップするためにも、品質評価ガイドラインは定期的に読み直すべきでしょう。

独自デバイス活用し「尿検査で高精度のがん診断」実現へ、日本発のIcariaが資金調達

Icariaのメンバー。左から岸田和真氏、市川裕樹氏、代表取締役CEOの小野瀬隆一氏、共同創業者で技術顧問も務める安井隆雄氏

1年間で約37万人ーー。2017年にがんが原因で死亡した日本人の数だ(厚生労働省が発表している平成29年(2017)人口動態統計月報年計(概数)の概況より)。がんは日本人の死因の第1位であり、同年には実に全死亡者の約3.6人に1人がこの病気によって亡くなった。

がんは発見が遅れることが生存率の低下にも繋がるため、いかに早い段階で発見できるかが重要。近年はテクノロジーを活用して従来とは異なるアプローチから「がんの早期発見」を実現しようとしている、バイオテック系の企業が国内外で登場している。

今回紹介するIcariaもその1社。同社は尿検査を通じて早期のがん診断を目指す、日本発のスタートアップだ。独自のデバイスを用いて尿から「miRNA(マイクロRNA)」と呼ばれる物質を抽出。miRNAはがん患者と非がん患者で発現しているものが異なるため、得られたmiRNAを網羅的に解析することで対象者が肺がんにかかっていないかどうかを診断できる仕組みを開発中だ。

そのIcariaは2月13日、ベンチャーキャピタルのANRIとJST(国立研究開発法人科学技術振興機構)を引受先とした第三者割当増資にNEDOからの助成金を合わせ、総額で数億円前半の資金調達を実施したことを明らかにした。

ナノワイヤ×尿中miRNA×機械学習で高精度な肺がん検査実現へ

Icariaが開発するがん診断サービスの仕組みを理解する上では「ナノワイヤ」「尿中miRNA」「機械学習」という3つのキーワードを押さえておく必要がある。

ストレートに表現すると「ナノワイヤを活用した独自デバイスによって、尿中miRNAを効率よく抽出し、がん患者特有のmiRNAプロファイルを機械学習で網羅的に分析する」仕組みなのだそう。とはいえ、これでは流石に書いてる僕自身でさえよくわからないので少し補足していきたい。

まず軸になるのが遺伝子発現をコントロールする役割を担うmiRNAという物質だ。近年このmiRNAの異常が、がんを始めとした様々な疾患に関係することがわかり、研究者たちの間でも注目されているのだという。実際Icariaでもがんの診断時にこのmiRNAをバイオマーカー(指標)としている。

ただ同社代表取締役CEOの小野瀬隆一氏によると、人間のマイクロRNAは2000種類以上も見つかっているとされているように種類が豊富で多機能なのだそう。そのため1つのmiRNAを分析して「がんかどうか」を判断するのは難しく、個人差もあって高精度の検査は実現できない。

それならば「より多くのmiRNAを集めて網羅的に解析してしまおう」というのがIcariaのコンセプト。同社のコアテクノロジーもまさにこのmiRNAを高効率で抽出できる酸化亜鉛ナノワイヤデバイスにある。

より正確には、まずナノワイヤデバイスを通じて尿中に含まれるエクソソームという小胞体を捕捉。このエクソソームはmiRNAを内包しているので、そこからmiRNAを取り出すような流れだ

このデバイスは、共同創業者で技術顧問も務める安井隆雄氏(名古屋大学大学院工学研究科の准教授も務める)の研究をベースとしたものだ。使っている素材自体は特殊なものではないが、ナノワイヤを“生やす”(生成する)工程に特徴があるそう。特殊な生やし方をすることで、捕捉できるmiRNAの数も大きく変わるという。

実際のところ、従来の方法では尿から検出できるmiRNA数は約200〜300種類。一方のIcariaのデバイスならその数は数倍の約1300種類だ。Icariaのサービスではそのように検出されたmiRNAをプロファイル化し機械学習によって解析することで、診断結果を算出する。

同社では肺がん患者と健常者それぞれ数百個の尿検体から肺がん診断アルゴリズムを生成。もちろんまだ数は限られているものの、小野瀬氏の話では今の所かなり高い“正答率”を叩き出しているようだ。特に肺がん患者の半分近くはステージI、Ⅱに該当し「現時点では、従来難しかった肺がんの早期発見が高い精度でできている」(小野瀬氏)という。

国内外で注目浴びる「リキッドバイオプシー」

バイオテックやヘルステック界隈に関心がある人は「リキッドバイオプシー」という言葉をご存知だろう。日本語では「液体生検」などと訳されていたりもするが、従来の生検方法ではなく血液や尿などの体液を用いてがんなどの疫病を診断するテクノロジーのことだ。

この領域ではビルゲイツやジェフベゾスらからこれまでに10億ドル以上も調達しているGRAILが特に有名。血液検査を通じてcfDNA(セルフリーDNA)を解析することでがんの早期発見の実現を目指す同社には、日本の電通ベンチャーズも出資している。

そのほか海外ではソフトバンク・ビジョン・ファンドなどが出資するGuardant Health、国内ではディー・エヌ・エーとPreferred Networksの合弁企業であるPFDeNA、広島大学発スタートアップのミルテルなどがある。

それぞれアプローチは異なるが、リキッドバイオプシーが注目されている理由として「早期発見が可能になりうること」に加えて「診断を受ける患者側の負担が少ないこと」もあげられる。少量の血液や尿を採取するだけで正確にがんの診断ができるのであれば、それに越したことはない。

もちろんこれらのテクノロジーが今以上に普及していくためには、大前提として高い診断精度が求められる。小野瀬氏も「リキッドバイオプシーにおいてはバイオマーカーを正確に、高効率で抽出することが不可欠。機械学習が発達しても、正確なデータが取得できないと診断は難しい」と話す。

Icariaは独自のデバイスを通じて「競合より多くのmiRNAを抽出、解析できる仕組み」を構築することで、精度面においても優位に立つことが目標。現在もデバイスの性能検証やコストダウンも見据えた改良に取り組んでいる。

ゆくゆくは1回の尿検査で多様ながん種を発見できるサービス目指す

Icariaは代表の小野瀬氏が三菱商事を経て2018年5月に立ち上げたスタートアップ。当初は「セカンドオピニオンを遠隔で取得できるような事業」を考えていたそうだが、今回株主となったANRIを通じてがんの課題を解決する大学のシーズ(安井氏が研究していた技術)の話を聞き、最終的には意気投合して現在の事業モデルに決めた。

創業からはまだ9ヶ月ほどで現在はPoC(概念実証)前の研究開発フェーズ。今後はデバイスだけでなくアルゴリズムの精度検証や、まだまだ未知数なmiRNAの生物学的な妥当性検証などに力を入れる計画だ。

プロダクトのローンチは2020年頃の予定。最初はリスクチェックという立て付けで、人間ドッグなどの検査シーンに診断サービスを提供していきたいという。

「最初は肺がんからスタートするが、ここできちんと精度を証明できれば他がん種や糖尿病など他疾患の検査へ横展開もできる。同じように、がんになる前の状態から“がんを予測する”超早期の発見など縦方向へ深化させていくことにも取り組みたい。ゆくゆくは簡単な検査を1回受けるだけで、様々ながん種を発見できるサービスの実現を目指す」(小野瀬氏)

ルーターの再発明を狙うAmazonの野心

Amazonがメッシュルーター企業のEeroを買収した。これは急速に進化するスマートホーム市場における、様々な手札を入手できる賢い動きだ。すべてのルーターがEchoではいけない理由はないだろう、同様にすべてのEchoがルーターではいけない理由もない。この2つを統合することによって、厳しい競争に向けての、強力な相乗効果と大きな影響力を得ることができる。

Amazonが、そのデバイスを家庭の各部屋に置くことを狙っていることは、誰でも知っている。もちろん玄関先にも。同社はコネクテッドカメラのBlinkや玄関チャイムRingといった会社を買収した。そしてもちろんその流れの中で、コネクテッドACプラグから電子レンジに至る無数の新しいデバイスを発表してきた。

これらすべての機器は相互に、そしてインターネットとも、無線で接続している。でも何を経由して?おそらくはソファの裏に置かれた、7桁のモデル番号と実用本位の外見を持つ、NetgearやLinksysのルーターを介してだろう。この隣接領域は、次の拡大のための明確なターゲットだ。

しかしAmazonは、何年も前にBasicガジェットとしてこの領域に参入することができた筈だ。なぜそうしなかったのだろうか?なぜならAmazonは、その製品が現在市場にあるものを遥かに凌ぐものでなければならことを知っていたからだ。単に信号が強いとか、作りが丈夫だというだけでなく、全く新しいカテゴリの商品へと生まれ変わらせることが必要だと考えていたのだ。

ルーターはいまだに「装置」のまま取り残されている家庭用デバイスの1つだ。現在ルーターを、基本的なワイヤレス接続以外の目的で使用する人はほとんどいない。情報ビットはケーブルを通って行き来し、目に見えないまま自動的に、適切なデバイスに中継される。カスタマイズや改良について考える余地はほとんどないデバイスなのだ。

Appleは、高価で最終的には生産中止となったAirport(日本ではAirMac)製品で、この領域に早い段階で参入した。この製品には、たとえば簡単なバックアップといった付加的な目的が与えられていた。さらに机の下ではなく上に置いても良いデザインも施されていたのだ。しかし、目立たないワイヤレスルーターが、「装置」の状態を脱して進歩を始めたのはごく最近のことだ。それを実現したのはEeroのような会社だが、それを現実的にしたのはAmazonなのだ。

需要を生み出し、そして供給する

多くの家庭で、1台のWi-Fiルーターでは不十分であることが明らかになった。2階のベッドルームと車庫の作業場所に適切な信号を送るためには、2もしくは3台のルーターが必要なのだ。

ほんの数年前までは、ワイヤレス接続を必要とするデバイスがはるかに少なかったために、こうした必要はなかった。しかし今では、もし信号が玄関先に届かなければ、スマートロックは郵便配達人の映像を送ることができないし、もし車庫に届かなければ客人のためにガレージドアを開けることができない。そしてもし2階に届かなければ子供たちはテレビを視るのに階下に降りて来なければならない ―― そんなことには耐えられない。

信号を中継する複数デバイスのメッシュシステムは自然な解決策であり、他の状況では長年使用されてきているものだ。Eeroは、Sonosのように、高級品ではあるものの、消費者向けの製品を生み出した最初のメーカーだった。

ほどなくGoogleも、OnHubとその周辺機器を使ってこの分野に参入したが、どちらの会社もこの分野でまだ本当に成功しているようには見えない。身の回りでメッシュルータシステムを使用している人を何人知っているだろうか?とても少ないだろう。賭けても良いが、普通のルーターの売上に比べたら無いようなものである。

メッシネットワーキングが必要となるような状況と複雑さに対して、現実の市場がまだ十分に成熟していなかったことが明らかになった。だがAmazonがこの状況を解決することになるだろう。なぜならそのメッシュルーターが、Echo、Echo Dot、あるいはEcho Showといったものになるからだ。これら全てのデバイスは既に家庭内の複数の部屋に置かれていて、次のアップデートではメッシュプロトコルの一種を搭載する可能性は高い。

高品質のルーターには、その機能を果たすための特徴とハードウェアが備わっていることが求められるため、将来どのように機能するのかを正確に予測することは困難である。これらの機能をEcho製品に追加することは、簡単なことではない。しかしEcho Hubやそれに似た、ケーブルモデムに直結し、通常のルーター機能を果たしつつ、魅力的な多目的Alexaガジェットとして振る舞うデバイスの出現は大いに期待できるはずだ(さすがにケーブルモデムの機能を果たすことにはならないだろう)。

それだけでも既に、通常の気難しいルーターからの大きなステップアップだ。しかし、Amazonにとってのお楽しみはまだ始まったばかりなのだ。

プラットフォームプレイ

Appleは、そのエコシステムの中で強力な相乗効果を生み出している、その中でも最強なのがiMessageだ。これこそが私が現在iPhoneを使っている唯一の理由なのだ。もしAndroidにiMessageが搭載されたら、私は明日にでも切り替えてしまうだろう。だがそんなことは起こりそうもない。だから私はiPhoneのままだ。一方Googleは、検索と広告(可能な限り避けたいものだ)に強みを持っている。他にも色々ある。

Amazonはもちろんオンライン小売の首根っこを押さえているが、Alexaプラットフォームを搭載したいメーカーには、事実上オープンに提供するという賢明なステップを踏み出していることを思えば、同社がAmazonによって満たされたスマートホームを実現したいと渇望していることは明らかである。世界中からゴミのようなAlexa搭載機器が押し寄せてくることになったが、中には優れたものもある。だがとにかくそれらは、デバイスを出荷しているのだ。

さて、この先どんなデバイスでも、今後出荷されるEcho-Eeroハイブリッド機器と共に機能することになるだろう。いずれにせよ、そのハイブリッド機器は、ある意味で完全に普通のルーターとして機能することだろう。しかしAmazonは、そのインターフェイスの上に、特にAlexaや他のAmazonデバイス向けの、別のレイヤーを追加するはずだ。インターフェイスがいかにシンプルになるか、スマートホームデバイスをいかに簡単に接続し設定することができるようになるかを想像して欲しい ―― もちろんAmazonで購入した機器に限られた話ではあるが。

もちろん、非Alexa赤ちゃんカメラは動作はするだろう、だがApple iMessageの青と緑のメッセージバブルの巧みな違いのように(iMessageの中では、緑で表示されているのはSMS/MMSメッセージ、青で表示されているのはAppleのiMessageプロトコルでやり取りされていることを意味する)、きちんと動作はするものの、あるデバイス上で何かが欠けていることが、明確に示されることになるだろう。たぶんAmazonカメラからの明るいカスタムアイコンやライブビューの代わりに、灰色の一般的なデバイス画像が表示されたりすることになるのだ。特にAmazonが補助金付きの価格で競争相手を阻もうとしているときには、そうしたささいなことが消費者の気持ちを動かすのだ。

これはネットワークの拡張にも当てはまることに注意して欲しい。その他のAmazonデバイス(Dotやその仲間)がハブと上手く協働して機能するだけでなく、範囲拡張装置としても働き、ファイル転送や、インターフォン、ビデオ放映などの他のタスクを実行するだろう。Amazonが家庭内にプライベートイントラネットを出現させるのだ。

スマートデバイスの豊富なデータ相互作用は、すぐに重要な情報チャネルになるだろう。どのくらいの電力が使用されているのか?家には、いつ何人の人間が居るのか?どんなポッドキャストが、いつ、そして誰によって聴かれているのか?そのUPS配達が、実際に玄関先に来たのはいつか?Amazonはこのようなデータをすでに豊富に手に入れているが、メッシュネットワークを構築することで、さらに広いアクセスが可能になり、実質的に様々なルールを設定することが可能になる。これは、サービスや広告を提供したり、ユーザーのニーズを率先して満たすための、非常に大きなインターフェイス領域である。

のぞき見は容易ではない(そして賢明でもない)

一言触れておいた方が良いことは、Amazonがユーザーが利用中のルーターのインターネットトラフィックの中を、のぞき見る可能性についてである。これについては良い知らせと悪い知らせがある。

良いニュースは、それは技術的に非常に難しいだけでなく、そのレベルでのぞき見をすることは全く賢明ではないということだ。まず第一に、ルータを通過する重要なトラフィックは暗号化される。とにかく、それはAmazonにとってそれほど得があるものではない。あなたに関する重要なデータは、あなたがAmazonとやり取りしたことによって生成されている:閲覧したアイテム、閲覧した番組、などなど。ランダムにブラウジングデータを横取りしても、ほとんど利益がなく、厄介なことにしかならない。

買収が発表された直後に、Eeroはこの質問に直接簡潔に答えている。

おそらく最終的には収益化のための様々な努力はすることだろう。だがそれは取るに足らないことである。

次に悪いニュースだ。Amazonにトラフィックを見せたくないだろうか?残念だ!いまやインターネット(サービス)の大部分はAWS上で動作しているのだ!もしAmazonが本当にその気になったら、おそらくそれはあらゆる種類の悪いことをすることができるだろう。だがそれも、馬鹿げた自己破壊行為だろう。

自由競争の世界

次に起こるのは軍拡競争だ。まあAmazonはすでに勝っているかもしれないのだが。Googleは挑戦したが、一度痛い目にあったせいで二度目は臆病になっているのかもしれない。スマートホーム
におけるプレゼンスもそれほど大きくはない。それほど多くの収益が期待できないので、Appleはルーターの勝負からは降りてしまった。もし誰かがAppleのHomepod(酷い名前だ)をAmazonのルーターで利用しても気にしないということだ。

HuaweiとNetgearはすでにAlexa搭載ルーターを製造しているが、Amazonができるような高度な統合レベルを提供することはできない。Amazonが自社ブランドのデバイス用に、まだ多くの興味深い機能を隠していることは間違いない。

ルーター市場に参入している、Linksys、TP-Link、Asus、その他のOEMたちは、これをまずは、おもちゃのようなものだと無視するだろう。とはいえ彼らはその仕様と実用性を研究して価格と性能で上回り、Amazonがあまり勢力を伸ばせないようにしていくだろう…それが将来的に成長しないことを願いながら。

面白い競争がみられるかもしれない場所は、プライバシーの観点を気にする方向だろう。広告を有利に進めるためにプライバシーが侵害されるかもしれないという恐れは拭い切れない(Amazonが、そのようなやり方でデバイスを使用することはほとんどないと信じてはいるものの)。そして、とにかく堅牢な広告ブロックなどの機能が他にも考えられる、たとえば、Mozillaがバックアップするオープンソースのルーターであれば、そのようなものになるかもしれない。

しかし、先進的ではあるが経営的に楽ではないスタートアップを買収することによって、市場で先行しようとする可能性は高い。Amazonは他社が解析をしている間にも、素早く参入し拡大することができるだろう。

在庫がある間はEerosの特売を期待しよう、そしてEchoブランドの新しい一連のメッシュデバイスが登場する。後方互換性があり、セットアップが圧倒的に簡単で、そしてなにより競争的な価格で。今こそ時は満ち、そして変革の場所は居間である。Amazonの攻め手は激しく、単なる装置としてのルーターを終わらせる動きとなるだろう。

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(翻訳:sako)

コードレビュー支援SaaSのSiderが資金調達、エンタープライズ版の提供も

ソフトウェアエンジニア向けのコードレビュー支援サービス「Sider」を運営するSiderは2月13日、オプトベンチャーズを引受先とする第三者割当増資を実施したことを明らかにした。調達額は非公開だが、関係者の話を総合すると数億円規模の調達ではないかとみられる。

Siderでは資金調達と合わせて、GitHub Enterpriseに対応したオンプレミス版のSider Enterpriseを正式リリースしたことも発表。調達した資金も活用しながら大手企業への普及を目指していく。

同社は2012年にアクトキャットという社名でスタート。プロダクトも以前は「SideCI」という名称だったけれど、現在はどちらもSiderに変更している。今回の資金調達はSBIインベストメントなどから2.1億円を調達した2017年4月以来のもの。前回までの累計調達額は約2億8600万円だ。

「カスタムルール」を通じてチーム内の暗黙知を共有

Siderはコードレビューを自動化するサービス。コーディング規約違反がないか、セキュリティーやパフォーマンスの観点で問題のある書き方をしていないかなどをチェックする。標準的な規約やベストプラクティスだけでなく、「カスタムルール」機能を通じて“自分たち独自のルール”に基づいたレビューもできるのが特徴だ。

Siderによると、実にソフトウェア開発者の業務の15%以上をこの「コードレビュー」が占めているそう(Siderの利用企業に対するインタビュー結果の平均値)。このプロセスを自動化することで、業務時間の削減やソフトウェアの品質向上をサポートするのがSiderの役割だ。

現在はRubyやPHP、Java、Python、Swift、Goなどの言語に対応。Siderが開発したツールも含めて20以上の解析ツールをカバーする。現在数百社に導入されていて、企業規模はスタートアップから上場企業までさまざま。日本を中心にアメリカやイギリス、インドなど数十ヶ国にユーザーがいる。

Sider代表取締役の角幸一郎氏によると、以前までは「コードレビューの自動化」を特徴として打ち出していたが、今はそれに加えて「チーム内やプロジェクト内で暗黙知となっているナレッジを共有できるサービス」であることを訴求しているようだ。

「特定の誰かは知っているけれど、他のメンバーは知らない知識やルールをSiderに蓄積することで共有できる。それらの情報はソースコードを読めば全てがわかるようなものでもなく、社内のWikiにも書かれていなかったり、書かれていたとしても情報量が多くて埋もれてしまっていたりする」(角氏)

この“暗黙知の共有”をサポートするのが、独自のルールをSiderに取り込めるカスタムルール機能だ。

たとえば障害が起きてしまった時のコードをSiderに組み込んでおけば、次回以降は自動で検知され、再発を防ぐことができる。新しいメンバーが効率よくチーム内のルールを把握することにも役立つし、重大なミスを事前に防ぐためのチェックリスト的な役割にも使える。

角氏の話では、携わるメンバーが多い大規模なプロジェクトや、定期的にメンバーの入れ替わりがあるような組織では特に効果的ではないかとのこと。実際のところ、大手企業の担当者とも話をする機会が増えてくる中で、チーム内での情報共有に関する課題とその解決手段に対するニーズが見えてきたのだという。

エンタープライズ版もスタート、大手企業への導入加速へ

大手企業のニーズへの対応という観点では、オンプレ版のSider Enterpriseを正式にスタートする。これまでも正式にアナウンスはしていなかったものの取り組み自体は着手していたそうで、KDDIやDMM.comなどがすでに導入済みだ。

今回の資金調達を経て、プロダクトの改善や販売活動の拡大を進める計画。エンタープライズ版のリリースを機に、これまではリーチできなかったような大企業への展開にも力を入れる。

またチーム内でのナレッジの暗黙知化や属人化は「グローバルで共通する課題」(角氏)でもある。コードレビューを自動化できるツールとしては「Codacy」や「Code Climate」などがあるが、カスタムツールを軸にコードレビューの領域にフォーカスした支援ツールとして、引き続きグローバルでの普及を目指す方針だ。