EVへの関心は電動ボートにも波及、Arcが約34.5億円調達

Arcはまだ創業1年にも満たないが、この電動ボートのスタートアップはVCのAndreessen Horowitzやエンターテインメント業界の大物たちからの投資を惹き寄せ、初期のTesla(テスラ)の役員で同社の初期の製造部門を率いた人物がリードする3000万ドル(約34億5000万円)の投資ラウンドを実らせた。

今回の3000万ドルのシリーズAはGreg Reichow(グレッグ・ライチョウ)氏がリードしたが、彼は元Teslaの役員で現在はEclipse Venturesのパートナーだ。今回は、これまでの投資家であるAndreessen HorowitzやChris Sacca(クリス・サッカ)氏のLowercarbon Capital、そしてRamtin Naimi(ラムティン・ナイミ)氏のAbstract Venturesらも参加した。同社は米国時間11月23日の発表で、ライチョウ氏が取締役会に加わることを発表した。これまでのArcの調達総額は3700万ドル(約42億5000万円)だが、それにはWill Smith(ウィル・スミス)氏のDreamers VCやKevin Durant(ケビン・デュラント)氏とRich Kleiman(リッチ・クレイマン)氏のThirty Five Ventures、そしてSean “Diddy” Combs(ショーン・コムズ)氏のCombs Enterprisesなどからの初期の投資も含まれている。

この若い企業に資本と強力な支援者が殺到していることは、電動化への関心が2つの車輪、4つの車輪を持つ乗り物を超えて広がっていることを反映している。後者は巨額の私募資金と驚異的な額の公開市場資金で溢れかえっているが、今週初めにGMは、電動ボート企業のPure Watercraftの株式の25%を取得したことを発表している。

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もちろん、30万ドルの限定版ボートを皮切りに、水上のあらゆるものを電動化するというArcの特殊なビジネスに対する高い評価となる。

CEOのMitch Lee(ミッチ・リー)氏と元SpaceXの技術者であるRyan Cook(ライアン・クック)氏が共同で創業したArcは、さまざまな価格帯と用途の電動船を開発していく計画だ。同社は最初、専用の船体と同じく専用のバッテリーパックの設計と開発に注力した。最初のボートArc Oneは、24フィート(約7m32cm)のアルミニウム製で475馬力、1回の充電で3〜5時間駆動する。このArc Oneは、最大で25隻の限定生産の予定となっている。

その後、2種類の高価なボートを数十隻作り、未来に向けて拡大していく計画だ。ただし短期的にはArc Oneに集中すると同社はいう。

画像クレジット:Arc

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Hiroshi Iwatani)

大手がメタバースに夢中になる中、ARを食料品店での現実的な活用を構築する英Dent Realityが約3.9億円調達

AppleやFacebookが「メタバース」の未来に巨額の資金を投じる一方で、近年はARに勝機を見出そうとしているスタートアップに関するベンチャーの動きは明らかに低下している。Magic Leapなどの大型案件への投資で消耗した多くのVCはAR技術の短期的な成果についてテック大手にはチャンスが大いに残されていると見ているが、小規模のスタートアップも投資家にアピールするような参入の道を見つけようとしている。

ロンドンに拠点を置くDent RealityはARテクノロジーとハイパーローカルなマッピングの力を示す小規模なエクスペリエンスに特化し、まずは食料品店のような場所から取り組みを始めている。食料品店では、同社のARプラットフォームを利用して店内通路の詳しいレイアウトを買い物客に示し、店舗のデータベースと統合して特定の商品が置かれている棚のデータも提供する。AR機能を使うユーザーはスマートフォンをかざして目的の商品への経路を表示できる。

CEOのAndrew Hart(アンドリュー・ハート)氏は、オンラインの買い物客に対してパーソナライズをするツールが有益さを増しているため、小売店はオンラインのツールセットを実店舗の買い物客のエクスペリエンスに活かす方法に広く関心を持っていると語る。Dent Realityは食料品店で商品を見つけることに特化したプラットフォームではないが、同氏によれば食料品店は商品の密度が高いため技術のストレステストをするには理想的な場所だという。

同氏はTechCrunchに対し「我々が解決したい課題に対して最も難しい場所として食料品店を選びました」と述べた。

投資家はDent Realityの取り組みにチャンスがあると見ている。同社はPi Labsが主導するシードラウンドで340万ドル(約3億9000万円)を調達した。このラウンドにはSugar Capitalと7Percent Venturesも参加した。

Appleが開発者向けARプラットフォームのARKitをリリースしてからの数年間、ハート氏は自分が作った未来のAR技術のデモの多くをTwitterで紹介してきた。Dent Realityは未来へ向けたそうしたユースケースのいくつかを現在の開発者向けテックプラットフォームにしようとする取り組みだ。スマートフォンはARを利用するには完璧なデバイスではないが、同社は消費者に3Dインターフェイスの体験と操作を提供している。ハート氏は、3Dインターフェイスの利用の中心となるのは今後到来するARメガネだろうと考えている。

画像クレジット:Dent Reality

同氏は「一般にインターフェースは平らなスマートフォンの画面に制限されています。ARには平面のインターフェースでは実現できない、多くの可能性があります」と語る。

Dent Realityは今後、大規模なオフィスビルから病院、大学のキャンパスなどあらゆる場所で、ハイパーローカルなマップデータとAR、同社独自のアプローチによって、建物に新たなハードウェアインフラを導入することなく、公共のWi-Fiデータとスマートフォンのセンサーからユーザーの居場所を特定する取り組みを進めたい考えだ。

画像クレジット:Dent Reality

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(文:Lucas Matney、翻訳:Kaori Koyama)

東京大学がヒトiPS未分化細胞培養における世界最高レベルの超高密度化に成功、細胞あたりの培養コストを8分の1に低減

iPS細胞で犬をはじめ動物再生医療に取り組む、日本大学・慶應義塾大学発「Vetanic」が総額1.5億円を調達

東京大学大学院工学系研究科は11月22日、未分化(特定の機能を持つ細胞に分化する前)の状態でiPS細胞を超高密度に培養する独自のシステムを開発し、培養コストを1/8に低減できたことを発表した。増殖因子(増殖を促すタンパク質)の量を変えずに8倍の増殖を可能にしたということで、その密度は1mlあたり細胞3200万個と、世界最高となった。

東京大学大学院工学系研究科の酒井康行教授らからなる研究グループは、カネカ、日産化学との共同で、ヒトiPS細胞の未分化増殖のコストを1/8に低減する小規模培養システムを開発した。透析膜で仕切られた上下2つの空間を持ち、その上部で細胞を培養する。そこに増殖因子を溜めておくが、栄養素や老廃物は下部と行き来できる。ここに多糖を添加することで、増殖を従来の8倍に高密度化できた。

再生医療で大いに期待されているiPS細胞だが、増殖因子の高い価格が、その未分化細胞の大量増殖のネックになっている。増殖因子を低分子化合物に置き換える研究も進んでいるが、コストを下げるまでに至っていない。透析膜を使った培養工学的手法も研究されているものの、増殖密度が低かったり、コストの削減は実現されていなかった。

同研究グループのシステムは、高価な増殖因子をフルに使える構造になっている。さらに、実験の結果、iPS細胞から「自己組織化能の現れ」として、iPS細胞自らが分泌する増殖因子「Nordal」の濃度が培養につれて増加するという現象が認められた。これが大量の細胞培養につながったと考えられている。

東京大学がヒトiPS未分化細胞培養における世界最高レベルの超高密度化に成功、細胞あたりの培養コストを8分の1に低減

今回のシステムは細胞培養部の容量が約2mlと小さいため、スケールアップが必要だと研究グループは考えているが、増殖密度が8倍になったことで、システムのサイズは1/10程度に小型化することが可能となる。今後はより高密度化を進め、さらに、未分化細胞の増殖に比べて数十倍のコストがかかる臓器細胞への分化誘導にこの方式が有効に働くかの検討を行うとしている。すでに、未発表ながら、肝臓や膵島分化の第一段階(内胚葉分化)で、増殖因子の使用量を1/8程度に低減させることに成功しているとのことだ。

ボルボが車内ARを見据え光学オーバーレイのスタートアップSpectralicsに約2.3億円を投資

長らく安全の代名詞とも言われてきた自動車メーカーVolvo Cars(ボルボ・カーズ)は、ベンチャーキャピタル投資部門のVolvo Cars Tech Fund(ボルボ・カーズ・テック・ファンド)を通じて、自動車のフロントガラスやウインドウに組み込んでドライバーや乗客に画像を提供する技術を開発している光学・イメージングのスタートアップに投資したことを発表した。

Volvo Cars Tech Fundは、光学機器・イメージングの開発企業であるSpectralicsに200万ドル(約2億3000万円)を投資した。この資金は、自動車の安全性とユーザーエクスペリエンスの向上に貢献する光学フィルムの開発を加速させるために使用されるという。この投資は大きなものではないかもしれないが、Volvoとの関係は、特にその技術が量産車に採用されれば、実りあるものになるだろう。

Spectralicsが開発しているシースルー光学オーバーレイは「多層薄膜コンバイナー」とも呼ばれ、自動車のフロントガラスやウインドウに組み込むことができる。Spectralicsによると、これによってより広い視野が確保され、極めて重要なのは、それとともに安全なAR(拡張現実)オーバーレイに必要な距離感が得られるという。

車外では、スマートグラス、光学システム、その他のヘッドアップディスプレイなどにも利用できる可能性がある。これは、ARやVR(仮想現実)が、ゲームや消費財の域を超えて、自動車の中に入りつつあることを示す最新の兆候だ。これは間違いなく、自動車メーカーが新車を馬力ではなく、ユーザー体験や提供する技術で差別化するという幅広いシフトの一環だ。

Spectralicsの創設者であるRanBar Yosef(ランバー・ヨーゼフ)氏、Eran Falk(エラン・フォーク)氏、Yuval Kashtar(ユバル・カシュタル)氏、Yuval Keinan(ユヴァル・ケイナン)氏(画像クレジット:Tal Givoni for Spectralis)

自動車内のAR / VRの導入には数々のボトルネックが存在したが、自動車メーカー各社は、車内アプリケーション用にこの技術を開発している企業への投資でリードしていると、Abigail Bassett(アビゲイル・バセット)氏がTechCrunch+で指摘していた

VolvoのSpectralicsに対する投資が十分なシグナルでなかったとすれば、広報担当者はTechCrunchに、スウェーデンの自動車大手である同社がこの技術を自社の車に採用することを検討していると認めた。Volvo Cars Tech Fundの責任者、Lee Ma(リー・マー)氏は声明でこう述べている。「Spectralicsは当社のポートフォリオにフィットしており、彼らの技術は次世代のディスプレイやカメラの標準となる可能性があると信じています」。

Spectralicsは、スウェーデンのイェーテボリにあるアクセラレーター、MobilityXlabの卒業生であり、テルアビブにあるスタートアップと自動車業界の投資家をつなぐモビリティハブ、Drive-TLVにも参加している。Volvoのスタートアップ投資部門は2017年から両イニシアチブに参加しており、最近では、事故検知センサーを開発するMDGoや、車両検査技術開発企業のUVEyeなど、他のイスラエルのスタートアップにも投資している。

画像クレジット:Volvo Cars

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Dragonfly)

NASAのリアル「アルマゲドン」ミッション、小惑星軌道変更「DART」が11月24日13時すぎに打ち上げ

NASA(米国航空宇宙局)にとって、ここ数年で最も刺激的で風変わりなミッションであるDouble Asteroid Redirection Test(DART、二重小惑星方向転換試験)は、地球から数百万km離れたところからやってくる巨大隕石に衝突し方向転換させるべく米国時間11月23日夜(日本時間11月24日13時すぎ)に打ち上げられる。飛行の様子はライブで見ることができるが、実際に大衝突が起きるまでにはしばらく時間がかかる。

関連記事:NASAが「アルマゲドン」のような小惑星軌道変更ミッションの打ち上げを11月23日に予定

DARTは、宇宙を旅する生物にとって、飛来する小惑星の経路を意図的に変える初めての試みだ。心配はいらない、今回のケースは我らの貴重な惑星に危害を加えるものではく、将来そんな危機が訪れた時に必要となる介入の理想的な実験台だ。

「惑星防衛組織はこの問題に、実際、数十年にわたって取り組んできました」とNASAのThomas Zurbuchen(トーマス・ザブーケン)科学局長が説明した。「一連のツールを合体させるときがきました。このミッションはあらゆる利害関係者にとってますます重要になっています。本プログラムへの支持が高まったのはわずかこの5年間に過ぎません。そして、標的はその5年以上前から存在しています。地上から成功を見届けることができるこの完璧な機会について人々は語り合っています。追加調査は必要ありません」。

問題の小惑星は、太陽系を新婚カップルのように旅する二重小惑星の小さい方だ。大きい方の小惑星Didymos(ディディモス)は直径約780mで惑星キラーというわけではないが、近所に落ちてほしくないことに変わりはない。そしてディディモスを周回しているのが今回の標的、Dimorphos(ディモルフォス)で、長辺170mほどのピーナツ型をしている。ちょうど自由の女神がボルダリングするくらいの大きさだ。

DARTがやろうとしているのは、ディモルフォスがディディモスの向こう側から回ってきたその時を狙って飛んで行き、できる限り強く衝突することだ。宇宙船は質量約550 kg で、新しいイオンエンジンが秒速約6.6kmという目から涙が出るような(宇宙船に目があって空気があったとすれば)速度で飛ぶことを考えると、相当に強い衝突だ(衝撃の大きさを計算するのは専門家にまかせておく)。

ディモルフォスの軌道が衝突後にどう変わるかを表す模式図(画像クレジット:NASA/JHUAPL)

ディモルフォスが爆発して当たり一面に破片を飛ばすようなことはない。むしろその正反対で、影響はほとんど目に見えない。しかし、衝撃はディディモスを周回する軌道周期にわずかな影響を与え、速度を落とし、強力な望遠鏡で観察できる程度に周期を拡大する。この変化を観察することによって、科学者らは対象物の質量を知り、重い物体に別の物体を衝突させるこの精緻な技術がどれほど効果的だったかを知ることができる。

ロケットに搭載される前の防護壁の中にいるDART(画像クレジット:NASA/Johns Hopkins APL/Ed Whitman)

それがわかれば、将来たとえば2倍の大きさの小惑星が衝突コースに現れたとき、何が必要になるかを情報に基づいて判断することができる。「この」大きさの力を「この」角度で「この」時間と距離(できる限り遠く、とメンバーの1人が私にいった)から加えることで、地球に衝突しないために必要なだけ惑星の方向を変えられる。DARTはこうした惑星防衛技術の基盤となるだろう。できれば必要にならないことを願うが、石油掘削員を集めて土壇場で小惑星を爆発させるよりも、準備を整えておいたほうがいいことには誰も異論はない。これは、TechCrunchの貴重な年長読者を掴んでおくための「アルマゲドン」への言及だ。

「私たちが今回本当にやりたいのは、迫りくる脅威のサイズに応じてインパクター(衝突体)のサイズを決める方法を知ることです。高い精度をもった衝突体モデルが必要なのです」とザブーケン氏は言った。1回のミッションでは足りないかもしれないし、次の衝突ミッションの計画はまだないが「別のタイプの小惑星に向けた追跡試験が計画されることは容易に想像できます」と同氏は語った。

衝突は比較的小さいかもしれないが、それでもワクワクする。そのために、NASAは衝突前にDARTから分離されるキューブサット、LICACube(リシアキューブ)を送り込んで近くから観察し、宇宙の山にアタックするところのデータと大衆受けするビデオを記録する。それは一陣の埃か瓦礫かソーラーパネルの破片のようなものかもしれないが、見るまでわからない。小惑星には何かが暮らしているかもしれない。もしそうであっても、1094万kmの彼方のことなので差し迫った危険はない。いずれにせよ、小惑星に宇宙船をぶつけるところをカメラに収め「ない」ことなど想像できない。

「これはリスクも衝撃も大きい探査です」とザブーケンしがキューブサットについて言った。キューブサットは衝突の瞬間を綿密に監視するための理想的な位置に置かれる。「これがなくても成功を確認することはできますが、あの映画を見たいんですよ、そりゃあ」。

DARTはSpaceX(スペースエックス)のFalcon 9(ファルコン・ナイン)ロケットを使って、米国太平洋標準時11月23日午後10時20分(日本時間11月24日13時20分)頃からの打ち上げ予定で、ヴァンデンバーグ空軍基地の天候は最新予報で90%良好だ。打ち上げ後、宇宙船がディモルフォスと破壊ランデブーを行うまでには1年近くかかる。衝突は2022年9月末に起こる見込みだが、正確な時間はさまざまな要因が確定するまでわからない。

打ち上げ前中継はNASA Liveで1日中行われるが、直前準備とカウントダウンは午後7時(日本時間24日正午)頃が見どころだ。こちらのリンクから見ることができる。

画像クレジット:NASA/JHUAPL

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Nob Takahashi / facebook

高度な数学力と3次元CADの開発力で建設DXを推進するArentが総額約19億円のシリーズC調達

高度な数学力と3次元CADの開発力で建設DXを推進するArentは11月24日、シリーズCラウンドにおいて、12億円の第三者割当増資、約7億円の融資による合計約19億円の資金調達を発表した。引受先は、リード投資家のSBIインベストメント、またFUSO-SBI Innovation Fund(フソウとSBIインベストメントによるCVCファンド)、東日本銀行地域企業活性化ファンド(東日本銀行とフューチャーベンチャーキャピタルによるファンド)、ザシードキャピタル。借入先はみずほ銀行およびりそな銀行などの金融機関。累計調達額は約29億円になった。事業シナジーを見込む企業を対象にしたエクステンションラウンドも予定しているという。

調達した資金は、エンジニアやPMの採用強化および「BIM/CIMの自動設計SaaS」「配管の自動設計・積算SaaS」などのプロダクトの開発にあてる予定。なおBIM/CIM(Building / Construction Information Modeling, Management)とは、調査・計画・設計段階から3次元モデルを導入し、施工、維持管理でも3次元モデルを連携・発展させて事業全体にわたる関係者間の情報共有を容易にし、一連の建設生産・管理システムの効率化・高度化を実現すること。

2012年7月設立のArentでは、「高難度のDXに挑み、巨大産業のグローバルイノベーションに貢献する」をミッションに、高度な数学力と開発力を有するエンジニアが、日本の企業が持つ世界トップレベルの技術やネットワークを見極め、業務改善にとどまらず、新規事業を創造する企画力と実行力で新しいサービスやプロダクトの開発・社会実装を推進。千代田化工建設との大規模JV設立など、「熟練技術者の暗黙知のモデル化による設計の自動化・最適化」を実現している。高度な数学力と3次元CADの開発力で建設DXを推進するArentが総額約19億円のシリーズC調達

Rocket Labは2022年にヘリコプターでElectronロケットブースターの空中キャッチを目指す

Rocket Labが3回目のブースター回収に成功したことを受けて、CEOのPeter Beck(ピーター・ベック)氏は、次のステップとして、2022年前半にヘリコプターを使ってブースターを空中でキャッチすることを目指していると語った。

Rocket Labは先に、地理空間画像衛星「BlackSky」2基を低地球軌道に運んだあとで洋上に着水したElectron打ち上げ機の第1段を回収した。そのミッションの間、同社はヘリコプターを着水領域の近くに配置したが、その目的は偵察だけだった。一貫して、同社の再利用化計画の究極の目標はブースターを空中でキャッチすることであり、それが今や近づいている。

ベック氏は米国時間11月23日の記者との電話会見で現在からそれまでの間に行われる主な作業は、ヘリコプターの準備だと述べている。空中キャッチに使われる航空機は、先の打ち上げ時に存在したものよりもかなり重く、積載量もかなり多いものになる(第1段の重量は約980kg)。

「また、非常に忙しいスケジュールの中で、フライトのスケジュールを組むことも重要な仕事のひとつです。最優先事項は、常にお客様を時間どおりにお届けすることです。それが次の課題ですが、2022年前半、もしくは可能な限り早くフライトを実現したいと考えています」。

同社は、現在から空中回収を試みるまでの間に、いくつかの商業飛行を計画しているが、これらは回収を目的としないミッションだ。Rocket Labにとって次の大きな学習のチャンスとなるのは、ブースターをキャッチして濡れていない状態で工場に戻すことができたときだとベック氏は付け加えた。

2022年に向けて、ベック氏はRocket Labにとって忙しい年になると予想している。その理由の1つは、ニュージーランドで新型コロナウイルスの規制が続いているため、2021年の同社打ち上げ回数が制限されていたからだ。来年の打ち上げ数については言及していないが、2022年はこれまでで最も忙しい年になるだろうという。

画像クレジット:Rocket Lab

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hiroshi Iwatani)

OSSクラウド可視化サービスの商用化を進めるAutoCloudが約4.6億円を調達

AutoCloud(オートクラウド)は、米国時間11月22日、400万ドル(約4億5900万円)のシードラウンドを発表した。Animo Ventures(アニモ・ベンチャーズ)がリードし、Uncorrelated Ventures(アンコリレイテッド・ベンチャーズ)B Capital Group(Bキャピタル・グループ)Moxxie Ventures(モクシー・ベンチャーズ)が参加している。

AutoCloudは、CloudGraph(クラウドグラフ)オープンソースプロジェクトの商用版だ。オープンソース(OSS)と商用のハイブリッドな組み合わせは、市場を攻めるスタートアップの手法としてますます人気が高まっている。Hashicorp(ハシコープ)は最近、そのOSSコアの強みを部分的に活かして上場した。Jina.ai(ジーナアイ)は、ニューラル検索への商業的かつオープンソースのアプローチで3000万ドル(約34億4600万円)の資金調達を発表したが、これはさらにアーリーステージでの例である。

CloudGraphは、AWSやAzure(アズール)などの複数のクラウド事業者から利用データを取り込み、標準化し、GraphQL(「State of Javascript 2020」レポートによると、この技術自体が利用され、好意的な評価を受けている)を使ってクエリを可能にするOSSツールだ。

AutoCloudはCloudGraphの上に位置し、自動化されたデータ取り込み、セキュリティコンプライアンス、クラウドリソースのビジュアライゼーションを提供する。同社の共同設立者兼CEOであるTyson Kunovsky(タイソン・クノフスキー)氏は、TechCrunchに対し、同社の目標はHashicorpなどが行ってきたように、大規模なクラウドプラットフォームが苦手としている作業を回収し、その経験を改善することにあると述べている。

AutoCloudの創業チーム(画像クレジット:AutoCloud)

成功する可能性のあるすべてのOSSプロジェクトと同様に、その目標は、有用なものをオープンコードとして市場に提供し、一般に利用可能なものの上に商業ビジネスを構築することだ。AutoCloudの場合、それはSaaSモデルであり、トラッキングされた資産の数に応じて価格が設定されるようになっている。

同スタートアップは初期の段階にあるため、収益成長率や純ドル保持率など、従来の牽引力を示す指標がない。クノフスキー氏がTechCrunchに語ったところによると、彼の会社は主にCloudGraph自体に注力してきたが、OSSサービスの何百人ものユーザーがプロジェクトの「Readme」を通じてAutoCloudを見つけ、そのウェイティングリストに登録しているという。

AutoCloudは2021年末までに有料製品を発売する予定で、もうあと数週間だ。そのため、次に同社と話をするときには、収益の伸びや関連する指標について説くことができるだろう。

シカゴを拠点とするAutoCloudは、アルゼンチンやチリなど複数の地域にチームを置いているという点で、今日の一般的なスタートアップであるということは特筆すべきだ。

クノフスキー氏は、この会社に大きな情熱を持っている。AutoCloudは、クラウドのコマンドラインから、GUI(グラフィカル・ユーザー・インターフェース)に変換したいと考えていると同氏は説明してくれた。それは簡単なことではない。

AutoCloudがマルチクラウドに対応していることを考えると、Amazon(アマゾン)やMicrosoft(マイクロソフト)、Google(グーグル)のクラウドチームが直接市場に参入する可能性は低いと思われる。しかし、他のクラウド事業者がそのうちに参入してくるかもしれない。その時には、CloudGraphプロジェクトが単独でどれだけ強くなっているかが、AutoCloudがより多くの既存のテック企業に対抗できるかできないかの重要な決め手となるだろう。

いずれにしても、AutoCloudのラウンドをあなたのOSSスコアカードに加えてみて欲しい。次の四半期か2四半期に必然的に資金再調達をするときには、さらに追加して欲しい。

画像クレジット:AutoCloud

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(文:Alex Wilhelm、翻訳:Akihito Mizukoshi)

さまざまな保険を1つのアプリで簡単に管理、契約変更できる仏インシュアテックLeocareが大型資金調達を実施

フランスの保険会社Leocare(レオケア)は、Eight Roads(エイト・ロード)を中心としたシリーズBの資金調達を行った。全体で1億1600万ドル(約133億1300万円)を調達したことになる。このラウンドは、エクイティとデットのラウンドで、つまりこの金額の一部はキャッシュ・フォー・エクイティの取引で、残りはクレジットラインということになる。

同社は、シリーズAの調達から1年も経たないうちに、現地時間11月23日のシリーズBの調達を行っている。また、Felix Capital(フェリックス・キャピタル)、Ventech(ベンテック)、Daphni(ダフニ)などの既存の投資家は、今回のシリーズBでさらに資金を投入している。

Leocareは、顧客が必要とするすべての保険を1つの屋根の下で提供したいと考えている。このスタートアップ企業は、家、クルマ、バイク、スマートフォンに保険を提供しており、消費者がモバイルアプリを使って新しい保険商品に加入したいと考えていると踏んでいる。なぜなら、その方が便利だし、新しい機能が増えるからだ。

関連記事:モバイルアプリで保険を管理できる仏LeoCareが約19億円を調達

例えば、同社は「TakeCare」という新機能を開発中だ。共同創業者でCEOのChristophe Dandois (クリストフ・ダンドワ)氏は「これはWaze(ウェイズ)のようなもので、危険度の高い地域に入ったときに教えてくれるものです」と話してくれた。

しかし、TakeCareはスピード違反取り締まり区間を警告するものではない。その代わりに、Leocareアプリは、その地域でよく交通事故に遭う人がいるかどうかを教えてくれる。同社はこの機能のために、交通安全のオープンデータを活用している。同様に、もし隣人が週末に自分のクルマを使いたい場合、数回のタップで2人目のドライバーを追加し、月曜日には削除することができる。

また同社は、意味のあるところで、データを利用して価格を調整している。例えば、Leocareでは、ユーザーがどのチャンネルを利用して登録したかを追跡したり、ユーザーが使用しているスマートフォンのモデルを調べたり、セッションの時間をチェックしたりしている。つまり、動的な価格設定が可能なのだ。

また、保険に加入したいときも、やはりモバイルアプリを使えばいい。電話で連絡することもできるが、ほとんどの顧客がすでにアプリのほうを利用している。

長期的なビジョンは非常に明確で、Leocareは、私たちが所有するすべてのモノと、定期的に行うすべての事をカバーする単一の契約を作りたいと考えているのだ。利用者が必要なときにいつでも保険のオプションを微調整できるようにするべきだ。同社は、自転車保険のような商品も追加したいと考えている。旅行保険のような単発の保険商品でない限り、基本的にはすべてLeocareでカバーできるかもしれない。

また、多くの人たちが同じものに二重にお金を払ってしまっているため、すべてを集約することそのものに意味がある。例えば、家の保険は通常、盗難に備えるものだ。自宅での盗難はLeocareの家財保険でカバーされているので、自転車保険では家の外での盗難をカバーできるわけだ。

同社は現在、複数の保険会社と提携する総代理店として活動しており、保険商品を自社ブランドで販売している。

「今回の資金調達では、同じモデルを踏襲しつつ、独自のリスクキャリアを使用する機能を追加する予定です」とダンドワ氏は述べている。保険商品によっては、Leocareが最初から最後まで保険商品を管理することになるかもしれない。

新しい保険商品に加えて、同社は新しい市場にも進出したいと考えており、まずはスペインなどの南ヨーロッパに進出したいと考えている。現在、Leocareのアクティブな顧客数は6万5000人で、2022年は1億ユーロ(約129億円)の収益を目指している。

画像クレジット:Leocare

画像クレジット:Leocare

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(文:Romain Dillet、翻訳:Akihito Mizukoshi)

ブルーオリジン、初の親子を含む乗客6人の宇宙飛行を12月9日に設定

Blue Origin(ブルーオリジン)は、次の有人宇宙飛行を発表した。米国時間12月9日に6人を乗せて実施する。同社が再使用可能なロケットNew Shepardとカプセルに最大定員となる乗客6人を乗せて飛行するのは今回が初めてだ。搭乗するのは、「Good Morning America(グッドモーニング・アメリカ)」の共同司会者であるMichael Strahan(マイケル・ストレイハン)氏、ロケットの名前の由来であるAlan Shepard(アラン・シェパード)氏の娘Laura Shepard Churchley(ローラ・シェパード・チャーチリー)氏、Voyager SpaceのCEOであるDylan Taylor(ディラン・テイラー)氏、Dick Holdingsの業務執行社員Evan Dick(エバン・ディック)氏、そして父子であるLane Bess(レイン・ベス)氏とCameron Bess(キャメロン・ベス)氏だ。

Blue Originは、有人宇宙飛行ミッションで歴史的な「初」体験を好む傾向にあるが、今回は親子が一緒に宇宙に行くのは初となる。Bess Venturesのプリンシパルで創業者のレイン・ベス氏と、コンテンツクリエイターでソフトウェア開発者であるキャメロン・ベス氏がともに搭乗する。

上段左から右へ、レイン・ベス氏、 キャメロン・ベス氏、エバン・ディック氏。下段左から右へ、ディラン・テイラー氏、ローラ・シェパード・チャーチリー氏、マイケル・ストレイハン氏

今回の有人宇宙飛行は、Blue Originにとって3回目であり、また2021年3回目のものでもある。New Shepardはこれまでに、各回とも4人が乗り込んだ有人宇宙飛行を2回実施した。最初の打ち上げにはBlue OriginとAmazonの創業者であるJeff Bezos(ジェフ・ベゾス)氏も搭乗し、10月にはWilliam Shatner(ウィリアム・シャトナー)氏をはじめ、Blue OriginのAudrey Powers(オードリー・パワーズ)氏、DCVCのパートナーであるChris Boshuizen(クリス・ボシュイゼン)氏、Medidata共同創業者であるGlen de Vries(グレン・デ・ヴリーズ)氏を宇宙に送った。デ・ヴリーズ氏は宇宙飛行の数週間後に飛行機事故で悲劇的に亡くなった。

Blue Originがこうしたペースで打ち上げを行っていることは、特に搭乗券が高価なことを考えると、ものすごいことだ。6人の搭乗となったことで、Blue Originはおそらく利益率を向上させ、その結果、この後に続く人たちにはもう少し手頃価格の座席が提供されるかもしれないが、それでも非常に贅沢なものであることは間違いない。

Blue OriginのNew Shepardは、乗客を宇宙の端まで連れて行き、準軌道上の滞在となるが、数分間の無重力状態と比類のない地球の眺めを提供する。その後、カプセルはパラシュートで減速して西テキサスの砂漠に着陸する。

画像クレジット:Blue Origin

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(文:Darrell Etherington、翻訳:Nariko Mizoguchi

リドリー・スコット監督が実写TVシリーズ版「ブレードランナー」制作を公表、全10話を予定

リドリー・スコット監督が実写TVシリーズ版「ブレードランナー」制作を公表、全10話を予定

Warner Bros.

リドリー・スコット監督が、SF作品『ブレードランナー』の実写TVシリーズの制作に取り組んでいることを明かしました。すでにパイロットのあらすじを書き上げており、シリーズは全10話になるだろうとのこと。

1982年に公開された映画『ブレードランナー』は劇場での興行的には失敗作に分類されるものの、そのサイバーパンクな世界観などがカルト的な人気を得て再評価され、いまやSF映画の代表作のひとつとされています。2017年には続編となる『ブレードランナー2049』が公開され、今月にはCrunchyrollとAdult Swimで神山健治氏と荒牧伸志氏が共同監督としてタッグを組み制作されたCGアニメ作品『ブレードランナー:ブラックロータス』が配信・放送を開始しています。

リドリー・スコット監督が述べた実写TVシリーズはまだ制作のごく初期段階であるため、キャストなどについてはまだ情報がありません。また脚本や監督を誰が担当するのか、シリーズの時間軸的にどの時点を舞台とするのかなども明かされませんでした。ただ、現在作品の権利を持つアルコン・エンターテインメントは『ブレードランナー』のシリーズ全体で時間軸的な整合性を保つため、作品のつながりをきちんと管理する方針を打ち出しています。そのため、実写TVシリーズも『ブラックロータス』と同様、ほかと被らない時代を舞台としつつ、互いの作品に絡む要素も登場するようになると思われます。

ちなみにスコット監督は現在『エイリアン』のTVスピンオフ作品に関してもパイロットを執筆中で、こちらも8~10話ほどの構成になるとされています。

(Source:VarietyEngadget日本版より転載)

「動物なし」のモッツァレラチーズの商品化を進めるNew Cultureが約28億円を獲得

Allied Market Research(アライド・マーケット・リサーチ)によると、チェダーやモッツァレラの販売に牽引され、米国のチーズ市場だけでも2019年には343億ドル(約3兆9300万円)、2027年には455億ドル(約5兆2200万円)に達し、年平均成長率は5.25%になると予測されている。

それに比べて、ヴィーガンチーズの業界は小さく、同社の調査によると、2019年の市場規模は約12億ドル(約1370億円)、2027年には44億ドル(約5050億円)に達すると予測されている。

しかし、このような大きなギャップにもかかわらず、シンジケートの投資家たちの「牛がいない牛のチーズ」を販売するNew Culture(ニュー・カルチャー)への、シリーズAでの2500万ドル(約28億6900万円)の資金投入は止まらなかった。それどころか、投資家たちは、ベイエリアを拠点とする設立3年目のこのスタートアップ企業が、動物を使用しないモッツァレラを通じて、市場を大きく成長させることができると考えている。投資家のSteve Jurvetson(スティーブ・ジュルベッソン)氏によれば、味も香りも伸び方もミルクチーズのようであり、彼が「これまでのところ、非常に不愉快だ」と表現したほとんどのヴィーガンチーズとは一線を画す。

ジュルベッソン氏によると、不足している成分は牛乳のカゼインタンパク質で、これまでは牛乳からしか摂取できなかったという。一方、New Cultureでは、精密な発酵プロセスにより、カゼインタンパク質を大量に生産しているという。VegNewsの記事に説明されているように、New Cultureは、巨大な発酵タンクを使って、糖液を与えた後に目的のタンパク質(αカゼイン、κカゼイン、βカゼイン)を効果的に発生させるよう微生物にDNA配列を注入しているそうだ。

その後、カゼインを回収し、水、植物性油脂、ビタミン、ミネラルなどと混ぜ合わせてモッツァレラを作る。

コレステロールや乳糖が含まれていないため、より健康的な製品ができあがる。また、環境にも優しい。実際、乳製品を使ったチーズを1oz(28.35g)生産するのに必要な水の量は56gal(約211L)といわれている。(土地の使用量もはるかに少なくて済む)。

なお、New Cultureのモッツァレラは近所の食料品店では販売されていない。まだいまのところは。計画では、まず2022年から全国のピザ屋にこのチーズを卸すことになっている。

ニュージーランド出身で、遺伝学と微生物学を学び、以前は教育関連のレビューサイトを立ち上げて販売していたNew Cultureの共同設立者兼CEOのMatt Gibson(マット・ギブソン)氏は、最終的には、ヨーグルトやアイスクリーム、さらには牛乳も作ることができるだろうと述べている。しかし、当面はモッツァレラが中心であることを強調した。

New Cultureのラウンドは、Ahren Innovation Capital(アーレン・イノベーション・キャピタル)とCPT Capital(CPTキャピタル)がリードした。また、ADM Ventures(ADMベンチャーズ)、Be8 Ventures(ビーエイト・ベンチャーズ)、S2G Ventures(S2Gベンチャーズ)、Marinya Capital(マリンヤ・キャピタル)、そしてジュルベッソン氏とパートナーのMaryanna Saenko(マリアンナ・サエンコ)が運営するFuture Ventures(フューチャー・ベンチャーズ)が新たに参加した。

今回の資金調達には、SOSVのIndieBioプログラム、Bee Partners(ビー・パートナーズ)、Mayfield(メイフィールド)、Bluestein Ventures(ブルースタイン・ベンチャーズ)、Kraft Heinz(クラフト・ハインツ)のコーポレートベンチャー部門であるEvolv Ventures(エボルブ・ベンチャーズ)など、以前からの支援者も参加している。

画像クレジット:New Culture

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(文:Connie Loizos、翻訳:Akihito Mizukoshi)

クリエイター主導のマーケットプレイス「LTK」が約345億円調達、130人以上のインフルエンサーが億万長者に

LTKを立ち上げた2011年当時、「インフルエンサーマーケティング」や「クリエイターエコノミー」といった言葉はまだ一般的ではなかったが、ファッションブロガーのAmber Venz Box(アンバー・ヴェンツ・ボックス)氏は、今日のインターネットパーソナリティが直面しているのと同じような、無給で記事を書き、写真を撮り、動画を編集し、フォロワーを増やすことを、どうやって仕事にするかという苦悩に直面していた。

アンバー・ヴェンズ・ボックス氏がLTKを立ち上げたのは、自分が薦めた商品を読者が購入した場合に手数料を得る方法を模索していたときだった。それから10年経った現在、このブロガーから転身した彼女の企業は、20億ドル(約2303億円)規模に成長している。以前は。RewardStyleやLIKEtoKNOW.itという名前だったLTKは、ソーシャルメディアのインフルエンサーが自分のショッパブルなポストを、ウェブとアプリの両方で中央のマーケットプレイスに掲載できるようにする。また、ブランドはこのプラットフォームを利用して、今後のマーケティングキャンペーンのためのクリエイターパートナーとつながることができる。LTKは、Softbank Vision Fundから3億ドル(約345億円)を調達し、この評価額に達した。

LTKは、Instagramで年間30億ドル(約3454億円)以上を消費するクリエイター、ブランド、買い物客を対象としている。LTKのインターフェイスは、Instagram Shopを彷彿とさせるもので、クリエイターがお気に入りの商品を選んで投稿し、それをスクロールして共有する。LTKは、Instagramのeコマースへの転身を先取りしていた。LTKは、長年にわたって利益を上げてきたが、今回の資金調達により、テキサス州を拠点とする同社を国際的に成長させるために、組織全体での採用を計画している。現在、LTKには350名の国際的なスタッフがおり、5000の小売業者と100万以上のブランドと取引をしている。

この投資にともなってLTKの取締役会に加わることになるSoftBank Investment Advisersの投資ディレクターであるAngela Du(アンジェラ・デュ)氏は次のように述べている。「LTKは、人々が自分の趣味や情熱で生計を立てられるようにすることで、起業の概念を再構築する手助けをしていると信じています。LTKの革新的なマーケティングプラットフォームは、これらのクリエイターがソーシャルユニバース上でパーソナルブランドを構築し、フォロワーと長期的かつ真正な関係を築くことを可能にします」。

LTKの成功と成長は、自分がフォローしている人からのオススメで買い物をしたいという消費者の関心が高まっていることを改めて示している。ヴェンツ・ボックス氏がForbesに語ったところによると、130人以上のインフルエンサーがLTKを通じ、自らの力で億万長者になったという。女性を中心としたこれらのクリエイターは、売上の10〜25%を得ることができる。プラットフォームに参加しているブランドや小売業者は、独自に手数料率を設定している。ブランドはクリエイターが販売を促進することで売上を得て、クリエイターはそれに加えてコミッションを得る。LTKはこれらの売上から取引手数料を得ています。

画像クレジット:LTK

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(文:Amanda Silberling、翻訳:Hiroshi Iwatani)

Spotify、ネットフリックスの関連サントラ音楽やポッドキャストを集めた「Netflix Hub」を開始

Netflix(ネットフリックス)のお気に入りの番組のサウンドトラックを探している?拡大されたNetflixとSpotify(スポティファイ)のパートナーシップのおかげで、より簡単に探すことができるようになった。Netflixは米国時間11月23日、アプリ上で、人気番組や映画の公式サウンドトラック、プレイリスト、ポッドキャストを見つけることができる「Netflix Hub(ネットフリックスハブ)」を導入した。

Netflix Hubでは「ストレンジャー・シングス 未知の世界」「ペーパー・ハウス」「ナルコス:メキシコ編」「アウターバンクス」「イカゲーム」「チック、チック…ブーン!」「ブリジャートン家」「カウボーイビバップ」「ヴァージンリバー」「マイ・ブロック」などのサウンドトラックやプレイリストを提供している。

また「Okay, Now Listen」「Netflix Is A Daily Joke」「10/10 Would Recommend」「You Can’t Make This Up」などのNetflixに関連したポッドキャストや「The Crown:The Official Podcast」「Behind the Scenes:Shadow and Bone」などの人気番組を掘り下げたものがある。

他にも、Jay-Zが主導したサウンドトラック制作の舞台裏をファンに提供するNetflixの西部劇「ザ・ハーダー・ゼイ・フォール:報復の荒野」の拡張版アルバムなども、音楽やファンの新しい体験の一部となる。また「ペーパー・ハウス」パート5ボリューム2のコンテンツ・デスティネーションや、BuzzFeedのクイズのような、自分が「ペーパー・ハウス」のキャラクターの誰になるかを当てるゲームができるキャラクターマッチング経験などもある。

画像クレジット:Spotify/Netflix

このHubは、SpotifyとNetflixの既存のパートナーシップの上に成り立っているとSpotifyはTechCrunchに語った。両社はこれまでに多くの公式プレイリストで協力してきた。

Netflixは、Spotifyのアプリでハブを持つためのアクセス権を購入していない。つまり、これは広告商品ではなく、お金のやり取りもない。そのかわり、両社は、重なり合うファン層のために協力することに可能性を感じているのだ。

Spotifyのアプリにテーマ別の「ハブ」を導入する大手企業は、Netflixだけではない。最近では、SpotifyとPeleton(ペロトン)が同様の提携を発表し、Pelotonのインストラクターによるプレイリストを掲載した「Curated by Peloton(キュレイティッド・バイ・ペロトン)」ワークアウトハブを導入した。また、アプリ以外では、2021年初めにSpotifyは、アーティストのGIFを使ってユーザーに音楽を紹介するため、GIPHY(ギフィー)と提携した。

Netflixのコンテンツの一部をSpotify専用にすることは、Netflixにとって意味のあることかもしれない。というのも、音楽やポッドキャストを提供しているもう1つの大企業Apple(Apple MusicおよびApple Podcasts)は、Apple TV+ストリーミングサービスでNetflixの競合相手となっているからだ。Spotifyは、少なくとも現時点では、Netflixの中核市場に進出していないため、パートナーとして適していると言える。

Spotifyは、今後数カ月のうちに、より多くの専用コンテンツをNetflix Hubに展開する予定だという。

Netflix Hubは、米国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、英国、アイルランド、インドのフリーおよびプレミアムのすべてのユーザーが利用できる。

画像クレジット:Spotify/Netflix

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(文:Sarah Perez、翻訳:Yuta Kaminishi)

Polestarが次世代EVセダン「プリセプト」改め「Polestar 5」は2024年に市場投入と発表

コンセプトカーから量産プロジェクトになった「Polestar Precept(ポールスター・プリセプト)」セダンの名前が変わり、正式な発売日が決まった。Volvo Car Group(ボルボ・カー・グループ)からスピンアウトしたEVパフォーマンスブランドであるPolestar(ポールスター)は、シャークノーズを持つこのセダンを「Polestar 5(ポールスター5)」と名付け、2024年に生産を開始すると発表した。

Polestarが2020年初頭に初めてPreceptを公開したときは、この新会社の方向性を示すための印象的な提案ではあったが、単なるコンセプトカーに過ぎなかった。同社はその年の9月には、Preceptを量産化すると発表した。当時、Polestarは「2025年までに」という曖昧な表現を使い、その時期を明らかにしなかった。

それ以来Polestarは、デザイン、開発、そして生産プロセスの内側を垣間見ることができるいくつかのYouTubeビデオを含め、Preceptセダンのティーザーといくつかの詳細を発表してきた。ポールスターの最新のビデオは、エクステリアデザインのインスピレーションに焦点を当てている。

今回のビデオでは、4分近くの時間の大半を、PreceptのエクステリアデザインマネージャーであるNahum Escobedo(ナハム・エスコベド)氏と過ごす。シャープなエクステリアラインは何からインスピレーションを受けたのか?少なくとも部分的には「サメと飛行機です」とエスコベド氏は語る。

画像クレジット:Polestar(スクリーンショット)

「このプロジェクトでは、非常にエレガントでありながら、スピード感のあるものを求めていました。私にとって、サメはそうしたフィーリングを持つものでした」と彼はビデオの中で語った。

Polestar 5のドラマチックなリアエンドには、長い一筋のエアロブレードライトが見られる。これも初期のデザイン上の特徴で、生産バージョンでも採用されているようだ。

画像クレジット:Polestar(スクリーンショット)

Polestarはこの新しいビデオの中で、バッテリーの航続距離やパワートレインなどのスペックを一切公開しなかった。しかし、2022年に生産開始が予定されている電動SUV「Polestar 3(ポールスター3)」に続くモデルであることはわかっている。

Polestarの最初の量産車は、プラグインハイブリッドのグランドツアラー「Polestar 1(ポールスター1)」だった。その後、2020年にはオール電化のセダン「Polestar 2(ポールスター2)」が登場した。(同社が数字による命名法を続けると仮定して)Polestar 4が何であるかはまだわかっていない。

かつてPreceptと呼ばれたEV、Polestar 5についての最新情報は、同社が2021年に行った2つの大きな事業拡大と財務上の動きに続くものだ。Polestarは9月下旬に、Gores Guggenheim Inc.(ゴアズ・グッゲンハイム)とのSPAC合併により上場することで合意し、合併後の会社の評価額は約200億ドル(約2兆3000億円)となる見込みと発表した。合併が完了すると、統合後の会社はPolestar Automotive Holding UK Limitedという新しい公開企業が保有することになる。この会社は「PSNY」というティッカーシンボルでNASDAQに上場する予定だ。

6月には、同社はPolestar 3を米国で生産することを発表した。ポールスター3は、サウスカロライナ州リッジビルにあるVolvo Cars(ボルボ・カーズ)との共同工場で組み立てられる。Polestar 3の生産は、2022年にグローバルで開始される予定だ。

関連記事:ボルボの高級EVブランドPolestarが初のフル電動SUV「Polestar 3」を米国で生産へ

画像クレジット:Kirsten Korosec

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Dragonfly)

イタリアがアマゾンとアップルに約264億円の制裁金、Beats製品の再販で

Amazon(アマゾン)とApple(アップル)は、AmazonのイタリアのeコマースマーケットプレイスでのAppleおよび(アップル所有の)Beats製品の再販に関する調査の結果、イタリアの反トラスト当局から総額約2億3000万ドル(約264億円)の制裁金を科せられた。

当局によると、両社は共謀し、AmazonイタリアのマーケットプレイスでAppleおよびBeatsの製品を購入する消費者が受けられる割引の水準が低下した疑いがあるとのことだ。

また、再販業者に対する制限を廃止するよう両社に命じた。

AGCM(イタリア競争・市場保護委員会)は現地時間11月23日、制裁措置を発表し、調査の結果、Amazon.itにおけるBeats製品の一部の「正当な」再販業者を阻止するために、2社間で制限協定があったことが判明したと述べた。

制裁金の内訳は、Amazonが1億3450万ユーロ(約174億円)、Appleが6870万ユーロ(約89億円)となっている。

問題の協定は、2018年10月に2社間で締結された。

AGCMのプレスリリースによると、この協定には、AppleおよびBeatsの製品の公式および非公式の再販業者がAmazon.itを使用することを禁止する多くの契約条項が含まれていることがわかった。Amazon.itでのAppleおよびBeatsの製品の販売をAmazonと、当局が「個別に差別的な方法で選ばれた」とするいくつかの再販業者に限定するという制限があり、これは欧州連合の機能に関する条約第101条に違反する。

「調査の結果、小売業者の数に純粋に量的な制限を設け、Amazonと差別的な方法で選ばれた特定の小売業者のみがAmazon.it上で販売できるようにする意図があることが判明した」と当局はリリースに記している(TechCrunchはイタリア語をGoogle翻訳で翻訳した)。

「この協定条件は、小売業者が地理的に差別されているため、国境を越えた販売も制限している。協定の制限は、サードパーティがAmazon.itで提供する割引の水準に影響を与え、その割引の度合いを縮小させた」。

当局は、Amazonのローカルマーケットプレイスが、同国における家電製品購入の少なくとも70%を占めており、そのうち「少なくとも40%は、Amazonを仲介プラットフォームとして利用している小売業者だ」と指摘している。

「それゆえ、競争ルールの適用は、特に今日の状況において、商業活動をする上でますます重要な場所としてマーケットプレイスを利用するすべての小売業者にとって、競争を制限する差別的行為を避け、公平な競争条件を確保することが不可欠だと思われる」と付け加えている。

「こうした観点から、当局の決定は、EU司法裁判所の判決に沿って、競争規則に適合するためには、販売システムは差別的ではなく、すべての潜在的な再販業者に等しく適用される質的基準に基づく必要性を認めている」。

さらにイタリア当局は、Amazon・Apple間の協定に関する調査を踏まえ、ドイツとスペインの競争当局が同様の手続きを開始したことを指摘している。

スペインのComisión National de los Mercados y la Competencia(国家公正競争市場委員会)は今夏、AmazonとAppleに対する懲戒手続きの可能性を発表し、独自の調査を開始した(調査完了までに最大18カ月かかるとされている)。

一方、2018年には、ドイツのBundeskartellamt(連邦カルテル庁)が、Amazonのマーケットプレイス販売者からの苦情を受けて、同社に対する不正行為の手続きを開始した。Amazonが販売者向けの一般取引条件を修正し、競争上の懸念を軽減するための追加変更を約束したことで、翌年、2019年には手続きを終了した。

直近では、デジタルプラットフォームに関するドイツの競争法が大幅に改正されたことを受けて、連邦カルテル庁が両社の市場支配力の審査手続きを開始した。同法では、両企業が「市場間競争にとって極めて重要である」ことが確認された場合、連邦カルテル庁は、市場濫用のリスクを抑制するために、AmazonとAppleがドイツ国内で事業を行う際に積極的に条件を課す事前措置を適用することができる。

今回のAGCMの決定について、AmazonとAppleにコメントを求めた。

本稿執筆時点ではAppleからの回答はなかったが、Amazonは控訴することを明らかにし、広報担当者は以下の声明を発表した。

「当社は、イタリア競争当局(ICA)の決定に強く反対しており、控訴する予定です。提案された罰金は不釣り合いで不当なものです。

当社のビジネスモデルは販売者の成功に依存しているため、販売者を当社のストアから排除することでAmazonが利益を得ているというICAの指摘は受け入れられません。協定の結果、イタリアの顧客は当社のストアでAppleおよびBeatsの最新の製品を見つけることができ、より良い価格、そしてより迅速な配送をともなう、2倍以上に増えたカタログの恩恵を受けています」

また、Amazonは、Appleとの協定は消費者にとって有益だと主張し、マーケットプレイスで購入できるApple製品の量が増えたことや、一部のApple製品に割引が適用された個別の事例を紹介した。

Amazonは、同社のマーケットプレイスが世界の小売市場の1%にも満たず、イタリアを含む同社が事業を展開しているすべての国に、より規模の大きい小売業者が存在すると述べ、いかなる市場支配も否定しようとしている。また、企業はApple製品を販売するために、オンラインと店頭の両方で複数のチャネルを持っていると主張している。

Amazonのマーケットプレイスにおける売上の約60%はサードパーティの販売者が占めており、その中にはAmazonで販売しているイタリアの中小企業約1万8000社も含まれる、とも付け加えた。

画像クレジット:Brian Heater

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Nariko Mizoguchi

中国のAI・顔認識大手SenseTimeが香港でのIPOを準備中

中国最大級のAIソリューションプロバイダーであるSenseTime(商湯科技開発有限公司、センスタイム)は、IPOに向けて一歩前進した。メディアの報道によると、SenseTimeは香港証券取引所に上場するための規制当局の承認を受けた

2014年に設立されたSenseTimeは、Megvii、CloudWalk、Yituと並んで中国の「四大AIドラゴン」と総称されている。2010年代後半、SenseTimeのアルゴリズムは、現場のデータを実用的な洞察力に変えることを望む企業や政府から多くの需要があった。同社のAIモデルを組み込んだカメラは、24時間体制で街を監視している。ショッピングモールでは、同社のセンシングソリューションを利用して、施設内の混雑状況を追跡・予測している。

SenseTimeのライバル企業3社は、いずれも中国本土か香港での株式売却を検討している。Megviiは、香港証券取引所への申請が失効した後、中国のNASDAQ式証券取引所、STAR Board(科創板)への上場を準備している。

関連記事:中国最大級の顔認証ユニコーンMegviiが上海でのIPOを準備中

中国のデータリッチなテック企業が海外で上場する道は狭まっている。北京は、機密データを持つ企業が中国国外で上場することを難しくしており、欧米の規制当局は、大量監視を助ける可能性のある顔認証企業に対し慎重な姿勢をとっている。

しかしここ数年、中国のAI新進企業は世界中の投資家から求められていた。2018年だけで、SenseTimeは20億ドル(約2300億円)以上の投資を集めた。これまでに同社は、12回のラウンドを通じて52億ドル(約5982億円)という驚異的な額の資金を調達している。最大の外部株主には、SoftBank Vision Fund(SVF、ソフトバンク・ビジョン・ファンド)とAlibaba(アリババ)のTaobao(淘宝、タオバオ)が含まれている。ロイター通信によると、SenseTimeは香港での株式公開にあたり、最大20億ドル(約2300億円)の資金調達を計画しているという。

目論見書によると、SenseTimeは資本の大部分を研究開発に費やしており、2018年から2020年の間に50億元(7億8000万ドル、約897億円)以上の費用がかかっている。同社は過去4年間、純損失を計上しており、その主な原因は「優先株式の公正価値損失」である。その純損失は2021年の上半期に37億元(約666億円)に達した。6月時点での赤字総額は230億元(約4139億円)に迫る。

同業他社と同様に、SenseTimeは「スマートシティ」プロジェクトを収益化の柱としており、6月までの半年間の総売上高16億5000万元(約297億円)のうち、47.6%を占めている(2020年同期は27%)。同社の目論見書によると、SenseTimeのソフトウェアプラットフォームを利用している都市の数は、6月までに119に達した。

商業施設や賃貸マンションなど、企業のニーズに合わせた「Smart Business」ラインは、2021年上半期の収益の約40%を占めた。同社は残りの収益を、IoTデバイスに供給する「Smart Life」部門と、知覚知能を自律走行ソリューションに適用する「Smart Auto」から得ている。

画像クレジット:Gilles Sabrie/Bloomberg via Getty Images

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(文:Rita Liao、翻訳:Aya Nakazato)

アップルがiOSのデジタルIDカード機能リリースを2022年に延期

Apple(アップル)は、IDを同社のWalletアプリに保存できるようにする機能のリリースを延期した。MacRumorsが発見したiOS 15の公式サイトの更新で、Appleはその機能が2022年初めに登場する、としている。同社は以前、2021年後半の提供開始を計画していた。

Appleはこの機能を2021年のWWDCで初めて発表した。その際、同社はこのツールを使えば、クレジットカードやデビットカードと同じように、運転免許証や州のIDカードをApple Walletに追加できるようになると述べていた。この機能をサポートする最初の場所は、米国の一部の空港の運輸保安局(TSA)のチェックポイントだ。

そうした場所では、iPhoneまたはApple Watchを使ってTSAにIDを提示することができるようになる。その際は、IDリーダーでデバイスをタップしてIDを提示し、iPhoneやApple WatchをTSA職員に渡す必要はない。

Appleは9月に、まずアリゾナ州とジョージア州で、その後コネチカット州、アイオワ州、ケンタッキー州、メリーランド州、オクラホマ州、ユタ州の計8州でこの機能を展開することを発表した。TSAチェックポイント以外では、後に小売店や催し会場で使用できるようになる見込みだとAppleは述べている。

2022年初めという以外に、同社はこの機能の具体的なリリース日を明らかにしていない。はっきりしているのは、この機能がiOS 15.2には搭載されないということだ。このアップデートは現在ベータテスト中で、デジタルIDの保存には対応していない。

編集部注:本稿の初出はEngadget。執筆者のIgor BonifacicはEngadgetの寄稿者。

画像クレジット:Apple / supplied

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(文:Igor Bonifacic、翻訳:Nariko Mizoguchi

アップルがiPhoneの脆弱性を悪用するスパイウェア「Pegasus」のNSO Groupを提訴

Apple(アップル)は、国家レベルのスパイウェア「Pegasus」のメーカーであるNSO Group(エヌエスオー・グループ)がAppleの製品やサービスを使用できないようにするための恒久的差し止め命令を求め、このスパイウェアメーカーを相手取って訴訟を起こした。

Appleは声明の中で「さらなる悪用とユーザー被害を防ぐため」に差し止め命令を求めている、としている。

イスラエルに拠点を置くNSO Groupは、顧客である政府がターゲットとするデバイスにある個人データ、写真、メッセージ、正確な位置情報などにほぼ完全にアクセスできるスパイウェアPegasusを開発している。このスパイウェアは、以前は知られていなかったiPhoneソフトウェアの脆弱性を悪用して動作する。ジャーナリスト、活動家、人権擁護者などの対象者の多くは、テキストメッセージで悪意のあるリンクを受け取っていたが、Pegasusはつい最近、ユーザーの操作を一切必要とせずにiPhoneを静かにハッキングすることができるようになった。

関連記事:自分のスマホがNSOのPegasusスパイウェアにやられたか知りたい人はこのツールを使おう

バーレーン、サウジアラビア、ルワンダ、アラブ首長国連邦、メキシコなど、いくつかの権威主義的な政府がPegasusを使用していることが知られているが、NSOは機密保持契約を理由に、数十の顧客名を公表したり認めたりすることを繰り返し拒否してきた。

米国時間11月23日に起こされたAppleの訴訟は、NSOがiPhoneソフトウェアの脆弱性を発見し、それを利用してターゲットをハッキングすることをはるかに困難にすることを目的としている。

2021年初め、Citizen Lab(シチズン・ラボ)の研究者は、NSO GroupがiPhoneソフトウェアに組み込まれた新しい保護機能を回避できる新規のエクスプロイトを開発した証拠を発見した。BlastDoorとして知られるこの保護機能は、デバイスを危険にさらすのに使われるかもしれない悪意あるペイロードをフィルタリングすることで、NSOスタイルの攻撃を防ごうとAppleが設計したものだ。いわゆるゼロクリック脆弱性は、被害者がリンクをクリックしなくても感染することからこのように呼ばれているが、AppleのBlastDoorの保護機能を回避できるため、Citizen Labは「ForcedEntry」と命名した。この脆弱性は、iPhoneだけでなくすべてのAppleデバイスに影響することが判明したため、Appleは9月にパッチを配布した

関連記事
iPhoneのセキュリティ対策もすり抜けるスパイウェア「Pegasus」のNSOによる新たなゼロクリック攻撃
アップルがiPhone、Macなど全端末でセキュリティアップデート、政府機関も利用するというNSOのゼロデイ脆弱性を修正

Appleによると、NSOはスパイウェアの配信にApple独自のサービスを利用しているとのことだ。Appleは、恒久的差し止め命令を求めることで、NSOが自社のサービスを利用して、顧客である政府機関がターゲットとしている人々に対して攻撃を仕掛けることを禁止したいと考えている。

「Appleは、最も複雑なサイバー攻撃からもユーザーを守るために常に努力しています。自由な社会において、世界をより良い場所にしようとしている人々に対して、国家が支援する強力なスパイウェアを武器にすることは容認できない、という明確なメッセージを伝えるために、本日このような措置を取りました」とAppleのセキュリティチーフであるIvan Krstić(イヴァン・クルスティチ)氏は述べた。「当社の脅威インテリジェンスとエンジニアリングのチームは、24時間体制で新たな脅威を分析し、脆弱性に迅速にパッチを当て、ソフトウェアとシリコンにおいて業界最先端の新たな保護機能を開発しています。Appleは世界で最も洗練されたセキュリティエンジニアリング業務を行っており、今後もNSO Groupのような悪質な国家支援企業からユーザーを守るために、たゆまぬ努力を続けていきます」。

Appleは、ForcedEntryエクスプロイトの標的となった既知の被害者に通知しており、国家が支援するスパイウェアの標的となったことが判明した被害者にも通知していると述べた。

NSO Groupのメディア担当電子メールアドレスに送ったメールは届かなかった。

画像クレジット:Amir Levy / Getty Images

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(文:Zack Whittaker、翻訳:Nariko Mizoguchi

家族向けロケーターサービスのLife360がTileを227億円で買収

Apple(アップル)のAirTag(エアタグ)と競合する遺失物追跡サービスのTile(タイル)が、家族向けコミュニケーションサービスのLife360に買収される。買収額は2億500万ドル(約227億円)。Tileのブランドは継続し、現CEOのCJ Prober(シージェイ・プローバー)氏が引き続き率いる。同社によると、現在のところTileチームの変更は予定しておらず、プローバー氏はLife360の取締役会にも加わる。

Life360にとって、今回の買収は最近のハードウェア買収としては2件目となる。同社は今年初め、位置情報機器メーカーのJiobit(ジオビット)を3700万ドル(約43億円)で買収した。その際、目標は、Life360アプリが動くスマートフォンを持つ人以外、つまり、小さな子どもや特別なニーズを持つ子ども、ペットなどにも、家族の追跡機能を拡大することだと述べた。

しかし、Tileの場合は、家族を追跡するだけでなく、家族が最も大切にする「人、ペット、モノ」を見つけるための幅広いソリューションとして事業を拡大する可能性を視野に入れている。同社は、統合プラットフォームを提供するサービスを構想している。そのプラットフォームでユーザーは、連絡を取り合うために家族を追跡するだけでなく、Tileの位置情報検索機能を利用して、財布、鍵、リモコンなどのモノも追跡できる。

またTileは、ワイヤレスイヤホンからノートパソコン、犬の首輪まで、50種類以上のサードパーティ製デバイスと提携している。これらは買収の価値を高めるものだ。そして同社は「Tile Finding Network」という巨大なネットワークを運営している。Tileの所有者がTileのモバイルアプリを立ち上げると、Bluetoothの範囲外にあるモノの位置を特定できるというものだ。同社は、これまでに4000万個以上のデバイスを販売し、42万5000人超の有料顧客を抱えているが、アクティブユーザーの総数は公表していない。

Life360は、同社の3300万人のスマートフォンユーザーが加わることで、TileのFinding Networkのリーチが10倍になると見込む。

Life360の共同創業者でCEOのChris Hulls(クリス・ハルス)氏は声明で「今回の買収は、安全性と位置情報サービスの世界的なプラットフォームになるというLife360のビジョン達成に向けた重要な一歩となります。TileをLife360ファミリーに迎え入れることができ、大変嬉しく思っています」と述べた。

このニュースに先立ち、Tileは9月に4000万ドル(約46億円)の負債による資金調達を発表した。これについてプローバー氏は、「負債は株主に希薄化をもたらさないため」理にかなっており、「『負債と株式』の混合は良いことだ」と述べていた。だが、Apple AirTagの立ち上げ以来、Tileの将来が脅かされていたことは間違いない。Tileは独占禁止法の問題でAppleを断固として批判しており、Appleがビジネスに与える影響について議員らの前で証言したこともあった。

Tileは最近、競争力維持を期待して、製品ラインを刷新した。その中には、AirTagのライバルとなる超広帯域無線の製品も含まれている

Life360とTileの共通点は、プラットフォームにとらわれないアプローチであり、iOSとAndroidの両方のデバイスに対応していることだ。Androidに対応していることが、国際的な事業拡大に役立つ可能性がある。Androidは世界中の多くの市場を支配している。

Life360は、今回の買収により、Tileを販売する2万7000以上の小売店や、Tileの技術が組み込まれている100万台以上のサードパーティ製デバイスのユーザーにアクセスできるようになる。また、両社はプレミアムサービスを提供しており、Life360は有料会員数を45%増の約160万人に拡大する見込みだ。将来的には、両社のサービスを統合し、より多くの無料ユーザーが有料会員になることを期待しているようだ。

Life360は、2019年からオーストラリア証券取引所に上場しており、以前には2022年に米国での二重上場の可能性を計画していると発表していた。今回の買収により、その目標に向け、勢いがつくとLife360は述べている。

今回の買収では、Credit SuisseとCode AdvisorsがLife360の共同財務アドバイザーを務めた。また、DLA PiperとOrrick、Herrington & Sutcliffe LLPがLife360の法務アドバイザーを務めた。Tile側は、Jefferies LLCが独占的に財務アドバイザーを、Fenwick and West LLPが法務アドバイザーを務めた。

「Tile、当社の顧客、そして従業員にとって素晴らしい日です」とプローバー氏は声明で述べた。 「今回の買収は、ミッションや価値観を共有する2つの素晴らしいチームを結びつけるだけでなく、安心・安全のための世界有数のソリューションを共同で開発する道を開くものです。これは、私たちの旅における次のステップであり、引き続き素晴らしいチームを率い、Life360の取締役会に参加できることに、これ以上の喜びはありません」。

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(文:Sarah Perez、翻訳:Nariko Mizoguchi