リモートワークに副業もOK、時間と場所に縛られないIT求人サイト「パラフト」

優秀な人材を獲得するためにオフィス環境を充実させるネット大手が増えている。ランチ無料のカフェテリアは当たり前、最近では美容室マンガ喫茶図書館マッサージルーム、そしてなぜかバスケットコート付きのオフィスまである。とはいえ、こうした手厚い福利厚生で勝負できる企業はごくわずか。特に資金力がないスタートアップにとって、どうすれば優秀な人材を獲得できるかというのは大きな課題だ。

その1つの解となり得るかもしれないのが、多様なワークスタイルを許容する企業の求人情報を扱う転職・求人メディア「Paraft(パラフト)」だ。パラフトでは、副業やリモートワーク、早期帰社など柔軟な働き方が可能な正社員の求人情報のみを掲載する。高額な給与を支払うのが難しい企業でも、働く「時間」と「場所」を譲歩することで、優秀な人材を獲得できる可能性もありそうだ。

現在、ウェブページ上で求人掲載企業、求職者の事前エントリーを受け付けており、来年1月末にβ版として20社前後の掲載でスタートする。現状では家計簿アプリ「Dr.Wallet」のBearTailオンライン学習塾「アオイゼミ」の葵、クラウド型マニュアル作成ツール「Teachme」のスタディストといったITベンチャー企業がエンジニアやマーケター、セールスの人材を募集する予定だ。

パラフトを運営するリライドは、得意なプログラミング言語やスキル、希望報酬をサイト上に登録したエンジニアと企業をマッチングする「PROsheet(プロシート)」を手がけるシェアゼロの子会社。プロシートでは業務委託契約としてエンジニアを企業に紹介していたが、パラフトではあくまで正社員雇用が前提となっている。サービス名はパラダイムワークシフトの略称。従来の求人掲載情報に「働き方の選択」という角度から求職活動を支援したいという。

場所や時間を問わない働き方としてはクラウドソーシングに注目が集まっているが、リライドの中川亮社長は「高報酬な案件は少なく、プロフェッショナルな人は動かない」と指摘する。優秀な人材の中には「家庭の事情で残業ができない」や「副業もしたい」といった理由で転職できない人もいるが、実際にサイボウズでは多様なワークスタイルを認めることで離職率が28%から4%に下がった事例もある。中川氏は「一部の企業では柔軟な働き方が浸透しているが、こうした求人情報を集めることで優秀な人材の流動化を加速させたい」と意気込んでいる。


海外チケットを手軽に購入可能に、二次流通のチケットストリートがStubHubとサービス開始

音楽ライブやスポーツ観戦など、興行チケットの二次流通サービス「チケットストリート」を運営するチケットストリート。2014年8月にeBay子会社のStubHubとグリーベンチャーズから合計約3億円の資金調達を実施していたが、その際に発表されたStubHubとのサービス連携が始まる。同社は12月10日より、チケットストリート内で海外興行チケットを購入できる二次流通サービス「チケットストリート・海外チケット powered by StubHub!(チケットストリート・海外チケット)」を開始する。

チケットストリート・海外チケットでは、StubHubが取り扱う二次流通チケットのうち、日本から購入可能な全米およびイギリスの5万イベント・10万枚以上のチケットが対象。対応するのは電子チケットのみで、購入後数分でダウンロード可能になるという。一方で紙チケットには対応していない(そもそも国際郵便ではチケットを送れないそうだ)。価格は日本円で本国で購入するのと同価格、決済はクレジットカードに対応する。「日本のチケットを購入するのと同じように簡単に購入できる」(チケットストリート代表取締役会長の西山圭氏)

チケット購入の際は、その座席からの眺望やチケット価格をサイト上で比較できるStubHubの機能「3Dシートマップ」も導入する。こちらは現在海外チケットにのみ提供されている機能だが、今後は国内のスタジアムなどでも利用できるようになる予定だ。

では実際に米国の興行チケットを欲しがる日本人なんてそれほど多いのだろうか? 西山氏に聞いたところ「英語版のStubHubでチケットを購入している日本のユーザーも実はかなり多い。2013年には約1万枚のチケットが売れている」とのことだった。またクロスボーダーで購入されるチケットは、平均価格が他のチケットと比較して大幅に高いのも特徴だ。例えばワールドシリーズで1枚1000ドル、スーパーボウルで1枚3000ドル程度になるという。そんなプレミアチケットこそ、ファンは国をまたいででも手に入れて、現地に見に行きたいのだ。

興行チケットの売上拡大施策は「北風と太陽」

チケットストリートにはもともと別の運営者がいたが、2011年10月にアサップネットワークが買収。アサップネットワークの創業者である西山氏と、同社のスタッフだった現・チケットストリート代表取締役社長の山本翔氏がチケットストリート株式会社を立ち上げてサービスを運営してきた。

西山氏に聞いたところ、チケットストリート社としての初月売上は176万円。これが現在数十倍の売上に成長しているそうだ。「もともと(興行チケットの)マーケットプレイス自体には伸びしろがあると思っていて興味を持っていた。一方でアサップネットワークスでは山本とともにコンテンツ屋をやっていて、『ゲーム以外の日本型コンテンツビジネスはこれ以上伸びない』という共通認識があった。それでコマース、マーケットプレイスをやろうとなった。この市場は大手企業であるほど既存ビジネスとコンフリクトするので、ベンチャー以外は参入できない」(西山氏)

西山氏は成長の背景に「興行市場全体の成長」があると説明する。2013年で約5000億円とも言われる興行市場は現在年率20%程度で拡大中。それにともなってチケットストリートのような二次流通の市場も伸びているのだそうだ。

例えば音楽興行だけを見てみると、2011年に1600億円だった市場は2013年には2300億円にまで成長。かつては6000億円もあった音楽ソフト市場(2013年で2900億円)をまもなく逆転するとも言われている。

この流れを受けて、興行主側もこれまでの「二次流通を制限することで売上を守る」という考えから、「二次流通を認めることで売上を伸ばす」という考えに変わってきているのだそうだ。

西山氏は「まさに北風と太陽」と語るが、日本の興行主はこれまで、本人確認や転売をさせないような仕組みを導入するなど、チケットを購入者にとって不便になるような施策をとってきた。その結果、一般の人々はチケットを買いづらくなり、売上でも苦戦するという悪循環が起こっていた。これに対して、米国など海外では、二次流通を公認のものとし、チケットの抽選についても公平にすることで、チケットの拡販につとめた。二次流通を公認にすることでそのコミッションなども取れるようになるし、チケット獲得のチャンスが公平になることで、結果的に市場も拡大すると判断したのだ。実はすでにワン・ダイレクションなど複数の海外アーティストがチケットの二次流通を公式に認めるという動きもある。

アウトバウンド、インバウンドの需要を取り込み拡大へ

チケットストリートでは今後、海外チケットの国内販売にとどまらず旅行や保険など、各種のアウトバウンド需要を取り込んでサービスを検討していくという。またインバウンド需要の取り込みも狙い、多言語サービスの提供も予定している。

ちなみに西山氏に同社のイグジット戦略を聞いてみたのだけれど、「決めていない」とのことだった。「大事なのは二次流通市場の社会的確立。オークションと同じように扱われるのであればニッチだ。社会的な地位と信頼性の確立を目指したい。同時に二次流通が興行ビジネスのエコシステムに組み込まれる必要がある」(西山氏)。社会的な信頼を考えればIPOも視野に入れるべきだが、エコシステムに組み込まれるということを考えれば、買収も選択肢の1つになるとのことだった。

ではチケットストリートに出資するeBayが買収するということはありえるのだろうか? 西山氏は「あくまで個人的な考え」と前置きした上で、「30億ドルの買収資金があると言っている会社が本気でやるつもりなら、(8月の)ファイナンスのタイミングで買収してもおかしくはない。だが(eBayが)自ら進出するよりも、ローカルのナレッジを尊重したほうが勝算があると考えたのではないか」と語った。確かにeBayはこれまで日本進出に挑戦したが撤退しているし、日本以外の地域でも参入に苦戦したとも聞く。イグジットについては今後の話ではあるが、同社ではまず2年以内をめどに年間流通総額50億円を目指すとしている。


都市がスタートアップだらけになっていく様子がZillabyteとCartoDBの地図で分かる

サンフランシスコは今やスタートアップだらけだ、と誰もが言うけど、Zillabyteはそれを視覚化することに挑戦した。

Zillabyte自身も実はサンフランシスコのスタートアップだ。この夏ローンチした同社は、データ分析アプリケーションを作るデベロッパのためのツールを提供している。

同社の最近っぽいブログ記事でソフトウェアエンジニアのNikhil Karnikが、本誌のCrunchBaseのAPIから得られる企業データをZillabyteの技術で分析整理すると、VCが投資している企業が、どの都市のどの街路にあって、資金の調達総額はなんぼか、ということが分かる、と言っている。そして彼はそのデータを、CartoDBを使って、スタートアップの所在が時系列的に増殖する地図を作った。

この記事には、彼が作ったサンフランシスコとニューヨークのスタートアップマップを埋め込んだ。彼のブログ記事にはオースチンとパロアルトも載っており、制作過程が詳しく書かれている。興味のある方はここへどうぞ。

ぼくは、ベイエリアだけだったらどうなるか知りたかったのでKarnikに頼んでみたら、親切な彼はさっさと作ってくれた。それほど新しい発見のある地図ではないけど、サンフランシスコとニューヨークでVCの投資が急増したのがここ数年である、ということは分かる。それは元のデータからでも分かると思うが、こうやって地図上に視覚化すると、けっこう楽しめる。

それにCrunchBaseの連中はみな優秀だけど、データは100%正確ではない。この地図がカバーしている最初の数年は、もっとまばらだったんじゃないかなぁ。

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))


ヤフー、ミクシィ、グリーはどうやって構造改革を実現? 当事者が振り返る

PC時代の王者からスマホに舵を切ったヤフー、老舗SNSからゲームで再生を果たしたミクシィ、約1割の従業員を削減してネイティブゲームに注力するグリー――。こうしたネット企業はどのように構造変革を実現したのか。12月3日に京都で開催された「IVS Fall Kyoto 2014」でヤフー執行役員の小澤隆生氏、グリー取締役の山岸広太郎氏、ミクシィ前社長で現在はジョッキンゼー代表取締役の朝倉祐介氏らが「当事者」としての体験談を語った。

構造改革の「助っ人」には賞味期限がある

楽天からヤフーへと渡り歩いた小澤氏は、構造改革を成功させるには「トップダウン」が欠かせないと語る。「例えば孫さん。ソフトバンクはもともとソフトウェアの卸売や出版業の会社。ピボットどころかトラベリングですよ」と言い、強烈なトップダウンで変革を進めていくべきと話した。

ヤフーが新体制で宮坂学氏を社長に据えたように、人事制度を変えることも秘訣だという。「気持ちをいくら伝えてもそうそう変わらない。明日から変えるという時に人事を変えるのはロジカル。『自分じゃできない』という時は後継者を自分で指名して変わるのは有効」。

2006年にオリコンのデジタル化を進めるために招へいされた、ボストンコンサルティンググループの平井陽一朗氏は、「助っ人」には賞味期限があると語る。「私のように途中から入った人間は、3カ月くらいで期待された結果が出ないと『おつかれさん』となってしまう。すばやく勝つことが求められている」。

「当時のオリコンでうまくいったのは、着メロに数十人くらい貼り付けていたのを切った。最初に思い切ったことをやると、いなくなってほしくない社員も辞めたりするが、雨降って地が固まる。結果が出るとドライブがかかり、みんなゴキゲンになって連鎖反応が起きてくる。」

ボストンコンサルティンググループの平井陽一朗氏

社内外のアナウンスの難しさ

構造改革はポジティブな面で語られることが多いが、当然ながら「痛み」が伴う局面もある。ヤフーで構造改革に立ち会った小澤氏が頭を悩ませたのは、「PC時代の王者であっても今後は安泰ではない」という意識を、社内外をどのように話すべきかということだった。

「上場企業なので、真正面から『危ない』と話をすると『おいヤフー大丈夫か?』と心配されてしまう。その一方で、従業員には危機感を持ってもらいたい。なぜ構造改革をしなければならないのか。このまま行っても失敗しないかもしれないけれど、今の立ち位置はまずいと。」

ヤフーの小澤隆生氏

この発言には、事業再生の請負人としてミクシィ社長に就任した朝倉氏も強く同意する。「社内には厳しいことを言うが、あんまり外で『再生』と言ったりすると『ミクシィは死んでるのか』と思われてしまう。成長する目線があることを示しつつ、社内にはがんばってやろうと呼びかけるのが大事」。

ミクシィの事業再生が実際どうだったかと聞かれた朝倉氏は、「SNSで大成功してしまったがゆえに方針転換が極めて厳しかった」と振り返った。「戦略はシンプルで、既存事業の採算性をいかに改善するか。新しい事業をどう生み出すか。そのための施策を考え、社名変更すらも考えた」。

ジョッキンゼーの朝倉祐介氏

「古参」からの反発はどうする?

構造改革は、売上や利益が下がってから行うのでは遅すぎる。それでは経営陣はいつ決断すべきなのか。先回りして構造改革のタイミングを図ることが求められるが、これが難しいと小澤氏は語る。「自分たちの事業はうまくいってると思いたいもの。でも、一寸先は闇ですからね」。

実際に構造改革に踏み切ると、時として社内で反発が起こる。それが「古参」の社員だったりすることもあるが、こういったケースではどのように対応すべきか。VOYAGE GROUP社長の宇佐美進典氏は、マクロな動きが見えない人とは、いかに危機感を共有するかが重要だと話す。

「自分が感じるマクロな変化を言語化して共有するべき。現状の前提条件が伝われば、反対者も『じゃあしょうがない』となる。社内で説明する前には、ネガティブなオーラを出す社内のキーマンを先に押さえることも大事。『ネガティブなオーラを出さないでね』と握った上で、全社集会で発表した。」

VOYAGE GROUPの宇佐美進典氏

メディアで叩かれても耐える強さ

ここまでは各社の「成功体験」が語られたが、「あの時こうしていれば」という後悔はなかったのか?

2005年12月にサイバーエージェント(CA)の取締役に就任した経験を持つ宇佐美氏は、同社の組織作りを参考にすべきだったと振り返る。「僕らは事業戦略ばかり考えていたが、CAが力を入れていたのは、いかに良い人材を採用して事業を任せるかということ。熱い組織を作るのはもっと最初からやっていればよかった」。

グリーは事業急成長を背景に2011年以降、グローバルプラットフォームとネイティブアプリシフトに取り組むも失敗。同時にコンプガチャ問題が同時にコンプガチャ問題が起こって業績が悪化した。2013年には従業員の約1割を削減するなど事業再編し、現在は再びネイティブゲームに注力している。山岸氏は当時を振り返って「組織のストレス耐性を作るのが大事」と話す。

「まず、外から言われることに強くなること。メディアで叩かれると社員が傷ついてダメだと思ったりするが、自分たちがやっていることに誇りを持つ強さが必要。もう1つは、人の出入りに強くなること。ほとんどの人が辞めない会社から、多くの人が辞める会社になって僕らも傷ついたが、志やその時にやることに合わなければ、去る人を前向きに送り出せる風土を作らなければ、変革には耐えられない。」

グリーの山岸広太郎氏


Athos ― 運動時の筋肉の使い方を数値化してチェックできる安価なウェアラブルが登場

しばらくワークアウトを続けていると、服の締め付け具合で、左足の筋肉ばかりを使っているらしいと気づくことがある。この気づきを、ブルートゥース対応ウェアラブルによって行おうとするのがAthosだ。

Athosはシリコンバレーのスタートアップで、ワークアウトを「スマート」にすることを狙っている。ウェアラブルから収集される情報を分析してワークアウトの効率を高め、あるいは怪我を未然に防ぐといったことを可能にしようとするものだ。

Athosのトレーナー兼マーケティングディレクターのJake Waxenbergがプロトタイプを提供してくれたので、実際の機能を試してみることができた。試してみた様子とプロダクトの紹介を下のビデオにまとめてあるのでぜひご覧頂きたい。

ブルートゥース経由で情報をやり取りするコアデバイスの価格が199ドルで、パンツおよびシャツがそれぞれ99ドルであるとのこと。男性用と女性用があり、通常のワークアウトウェアの下に着ることもできる。洗濯機で洗えて、鍵や現金を入れておくためのポケットも備えている。一般販売は2015年の初期を予定しているとのことだ。

原文へ

(翻訳:Maeda, H


Infinity Ventures Summitのプレゼンバトル、登壇13社を紹介

京都にて12月3日から4日にかけて開催中の招待制イベント「インフィニティ・ベンチャーズ・サミット 2014 Fall Kyoto(IVS)。同イベント2日目の朝8時45分からは、毎回恒例となっているプレゼンバトル「Launch Pad」が開催中だ。

これまでクラウドワークス、スマートエデュケーション、freee、WHILLなどが優勝してきたLaunch Padだが、今回登壇するのは以下の13社。なお、Ustreamおよびスクーでもその様子は生中継される予定だ。

baton「マッチ

「高校生向け対戦型問題集」をうたうこのサービスは、大学入試問題集に出てくるような問題を対戦型のクイズとして楽しむことができる。

ザワット「スマオク

スマホアプリで利用できるオークションサービス。これまで24時間以内の入札に対応していたが、アプリをアップデートし、入札時間5分限定の「フラッシュオークション」にリニューアルしている。

ギャラクシーエージェンシー「akippa(あきっぱ)

駐車場などの空きスペース、空き時間がある人と駐車したい人をマッチングするパーキングシェアサービス。プレゼンでは、人に車を貸して、空きスペースを探してもらう「akippa+」も発表された。

落し物ドットコム「MAMORIO

Bluetooth LEを使った追跡用タグ。スマホと一定の距離が開くとアラートが鳴って置き忘れを未然に防ぐ。バッテリー交換なしで1年利用が可能。自転車が盗難にあった場合などに利用できる機能として、ユーザーが相互にタグをトラッキングする「クラウドトラッキング」を備える。

ビズグラウンド「Bizer(バイザー)

弁護士や会計士などさまざまな士業への相談サービスを提供していたBizer。今後はバックオフィス業務をサポートするクラウドサービスを提供していく。

Socket「flipdesk

スマートフォンECサイト向けの販促・接客ツール。ユーザー属性をリアルタイムに解析して、ダイレクトメッセージの送信やクーポンの発行ができる。年商100億円規模の起業でCVR5.6bai ,客単価15%アップという実績がある。

プレイド「KARTE

こちらもECサイト向け(flipdeskとは異なりPCにも対応する)の販促・接客ツールだ。ECサイトへの来客をリアルタイムに解析。ユーザーに合わせて商品のレコメンドやクーポン発行などができる。現在はクローズドベータ版として25社に限定して提供中。

オープンロジ「オープンロジ

CtoCコマースや小中規模ECサイトなどをターゲットにした物流アウトソーシングサービス。通常大規模ECサイトでないと利用しにくい物流サービスだが、同社があらかじめ物流業者と契約することで、少ない商品でも定額(サイズによる)、かつすぐに利用できるようになる。

フクロウラボ「Circuit(サーキット)

スマートフォンウェブからアプリにスムーズに遷移するための「ディープリンク」。その設定を容易できるグロースツール。シームレスなアプリ間移動を実現する。

ミニマル・テクノロジーズ「WOVN.io(ウォーブン・ドット・アイオー)

ウェブサイトに1行のスクリプトを足すだけで、ウェブサイトの多言語化を実現するサービス。翻訳は機械翻訳、人力翻訳に対応。リリース4ヶ月で登録ドメイン数は3000件、6万ページ。海外ユーザーが6割となっている。

セカイラボ・ピーティイー・リミテッド「セカイラボ

世界中のエンジニアチームに仕事を発注できるサービス。中国やベトナムなどのエンジニアチームに対して、日本語で大規模な開発を依頼できる。

YOYO Holdings Pte. Ltd.「PopSlide

新興国向けモバイルインターネット無料化サービス。スマホのロック画面に広告を表示し、それにスライドしてアクセスしたり、動画を閲覧したりすることでポイントを提供する。ポイントはロード(プリペイドの通信料金)と交換できる。

ファームノート「Farmnote(ファームノート)

酪農・肉牛向けのスマートフォンアプリ。タブレットやスマホを使って、リアルタイムに個体管理が可能。

以上が登壇する13社となる。11月に開催したTechCrunch Tokyo 2014の「スタートアップバトル」でも登壇してくれた企業がいくつかあるが、Launch Padは来場者、審査員とも経営者が中心のイベント。またプレゼンの内容も変わってくるかもしれない。個人的に応援しているスタートアップもあるのだけれど、ひとまずは各社のプレゼンを楽しみにしたい。


ペアプロの有無まで紹介するITエンジニア特化の人材サービス「Forkwell Jobs」運営のgroovesが2.2億円調達

TechCrunchで2年半前に紹介したエンジニア向けのソーシャルサービス「Forkwell」を手がけるgrooves(当時はforkwell事業のために新会社garbsを設立していたが、合併)が総額2億2000万円の資金調達を実施したことを明らかにした。既存株主の日本ベンチャーキャピタルと三井住友海上キャピタルからの第三者割当増資に加え、一部は日本政策金融公庫の資本性ローンでの調達となっている。

最近では10億円前後をエクイティで調達するスタートアップも多いが、grooves代表取締役の池見幸浩氏は、「株式を希薄化しても問題ないという起業家もいるが、僕はデット(融資などの他人資本)で資金を獲得できるならそれがいいと思っている」と語っている。実際今回の調達は日本政策金融公庫の本店(3000万円超、3億円以内の案件を担当)が担当しているとのことで、億単位でデットファイナンスを実施していると見て間違いなさそうだ。

さて前述のforkwellは登録ユーザー1万人で、109万人いると言われている日本のエンジニアの1%も取れていないのでまだまだこれからというところだが、これと連携するエンジニア採用支援サービスの「Forkwell Jobs」、中小規模の人材エージェントをクラウド化(同社は「クラウド化」と呼んでいるが、「ネットワーク化」のほうが分かりやすいかもしれない)して、最適な人材の採用を効率化する中途採用支援サービスの「クラウドエージェント」が好調だそうだ。今回の調達では、各種サービス開発に向けた人材確保などを進める。

前者のForkwell Jobsは、例えばペアプログラミングをするしないといった「コード品質への取り組み」や「使用するバージョン管理ツール」「使用するプロジェクト管理ツール」などなど、その会社の開発環境をこと細かに紹介するエンジニア特化の採用支援サービス。採用する側にもエンジニアとしての高いレベルが求められることもあって、「人材募集案件の4割はお断りしている状況」(池見氏)なのだそうだ。後者は特にエンジニアに特化しているわけではないが、複数のエージェントから最適な人材を一括で探すことができるため、ユーザーのニーズは高い。金額に関しては非公開ということだったのだけれども、すでにかなりの売上を達成して事業の黒字化を達成しているそうだ。


これは、みんなが思っているドローン配達とは少し違う

ホリデーシーズンを目前に控え、サンフランシスコのスタートアップ、Doormanがマスコミで多くの注目を集めている。宅配業者の都合のよい時ではなく、あなたが家に居る時に荷物を届けることによって、Doormanはドアの外に置かれたあなたの大切なプレゼントが盗まれる心配を減らそうとしている。

実は、Doormanに関するABCニュースで私のインタビューが使われた ― とりたててこの業界に詳しいからではなく、〈私が〉カメラの前でだらだら話したがったからだが。しかし、番組は彼らの新サービス、Doorman Bladeについてあまり言及できていなかった。

以前本誌は、AmazonやGoogleがいくら喧伝しようとも、都市部でのドローン配達サービスが現実になる日は当分来ないだろうと書いた。上のビデオの通り、Doormanはそんなビッグプレーヤーたちを出し抜いた ― 最新技術を使ってではなく、ただ配達員の頭にプロペラを付け、それをドローンと呼ぶことによって。

ばかばかしいスタンドプレーだと思うかもしれないが、それは、たぶん実に正しい。しかし、サンクスギビングということで、私は本当のニュースを伝えるより、笑わせることを選んだ。

少し真面目な話をすると、現在Doormanはサンフランシスコでのみ利用できる(似たサービスのParcelがニューヨークでスタートした)。そうそう、Doormanチームは、来週Androidアプリが公開されること、即時配達や返品サービス等の機能を追加する予定であることを、みんなに伝えて欲しいと言っていた。

[原文へ]

(翻訳:Nob Takahashi / facebook


利用者は18歳未満が7割――音楽コラボアプリ「nana」がユーザー参加型動画などリアル施策を強化

先週開催したイベント「TechCrunch Tokyo 2014」では、「10代がハマるサービス」をテーマにしたセッションがあった。そのセッションに登壇してくれたモイ、uuum、葵といったスタートアップのほかにも、10代の“濃い”コミュニティが形成されているサービスは存在する。

そんなサービスの1つが、nana musicの提供する音楽コミュニティアプリ「nana」だ。同社は11月26日よりユーザー参加型の音楽番組「nanaキャス」の配信を開始した。

nanaはユーザーがスマホで録音した音声や演奏に、他のユーザーが更に音声や演奏を重ねて音楽コラボレーションを実現するスマートフォンアプリだ。例えば1人のユーザーがある楽曲のギター演奏を録音してアップすれば、それを聞いた他のユーザーがピアノ、ドラムといった演奏や、歌声と重ねてコラボレーションした音楽をアップロードしていくことができる。

ユーザーの7割が18歳以下

2012年11月にサービスを正式リリースしたが、現在の累計ダウンロード数は60万件以上。これまでの累計楽曲投稿数は300万曲、現在では毎日1万曲以上の楽曲が投稿されているという。年齢別にユーザーの割合を見ると18歳以下が約70%で、1人あたりの月間平均滞在時間は5時間、しかも上位5%のユーザーに限定すると64時間という数字になるのだそうだ。

MAUなどは公開されていないため、実際の規模についてはなんとも言えないところがあるが(歌や演奏ということで投稿のハードルも高そうだし)、10代を中心とした密なコミュニティが形成されていることは間違いない。nana music代表取締役社長の文原明臣氏いわく、「(アニメやゲームソング、ボーカロイド楽曲などのカバーを指す)『歌ってみた』をやりたくても、実はPCを持っていないという10代は少なくない。そんな人たちでもスマートフォンがあれば投稿できることもあって利用されているようだ」とのこと。

サービス内でのコミュニケーションも活発で、1つの投稿に対して200件以上のコメントが付くような投稿者もいるという。

ちなみにユーザーの海外比率も決して小さくない。日本のユーザーは全体の65%となっており、米国、タイがそれぞれ全体の6%、さらにベトナムやロシア、トルコなどにユーザーがいる。世界各国、数十人でコラボレーションした「We are the world」なども投稿されている。

番組配信たリアルイベントでユーザーの目標を作る

nanaキャスではそんなnanaのユーザーが登場し、カバー曲の演奏や、オリジナル楽曲の製作といったコラボレーションをリアルな場で行う。配信は月1〜2回、モイの「ツイキャス」、YouTubeの「YouTube Live」で視聴できる。11月26日に第0回となる試験配信を実施。第1回の配信は12月21日午後5時からを予定している。

また、これまで2回開催したオフラインミーティング「nanaフェス」を2015年夏に開催する。第1回は100人、第2回は200人規模での開催となったが、第3回は2000人規模のイベントを目指すそうだ(すでに会場も決まっているらしい)。さらに2016年夏には武道館を貸し切り、1万人規模のイベントを開催したいと語る。

なぜnanaはリアルイベントにこだわるのか? 文原氏はこのサービスで「音楽仲間に出会えて居心地いいコミュニティ」を実現したいとする一方、現状はユーザーのゴール、目標となるステージが存在していないと考えているそうだ。そこで、ユーザー同士がリアルな場所でセッションできる――しかもほかのユーザーも見る番組や、武道館のような大きな舞台で――という「目標」を作ってあげたいのだと説明する。

冒頭にあったTechCrunch Tokyoのセッションに登壇してくれたモイのツイキャス、uuumがマネジメントするYouTuberなどはすでにネットサービスの枠を超えて活躍する人々を排出しているが(もっと遡るとニコニコ動画からだってそうだ)、nanaからもネット発のアーティストが生まれるのかもしれない。

マネタイズは2015年以降に

このサービスが10代を中心にした濃いコミュニティを作っているという話は分かったのだけれど、気になるのはマネタイズだ。nanaはこれまで企業とのコラボレーション企画なども実施しているが、文原氏は黒字化を達成していないと説明する。今後同社ではプレミアム会員向けの課金、ギフトサービス、タイアップ広告を展開するという。

まずスマホアプリを12月4日にリニューアルする予定だが、ここにプレミアム会員向けの機能を導入する。これと並行してタイアップ広告を2015年から展開するという。例えば音楽アーティストの公式提供楽曲を使ってのコンテストなどを行うといったことを検討しているそうだ。ギフトサービスについては詳細や提供時期は明らかにされなかった。


ドローン市場の先駆者Parrot、ブレイクのきっかけは音声処理だった


スタートアップ業界に関する日本最大のイベント「TechCrunch Tokyo 2014」では、多数のプログラムが開催された。テックトレンドのセッションの中で注目されたのが、無人飛行デバイス、いわゆるドローンについての講演。

現在注目の市場であるドローンは本誌でも連日記事が登場しているが、今回は開催前の予告記事でも紹介されたように、ドローン市場の先駆者であり、代表的メーカーであるParrotから、JPAC地域担当バイス・プレジデント兼マネージング・ディレクターのクリス・ロバーツ(Chris Roberts)氏が登壇。これまで日本ではあまり知られていなかった、同社がドローンに参入した意外なきっかけやドローンの可能性に関して語った。

音声処理から出発し、Bluetooth機器、そしてドローンへ

Chris氏はまず、同社の沿革とともに、なぜドローンを手がけたのかを紹介。パリに本社を構えるParrotは、もともと音声を中心としたデジタル信号処理を手がけるメーカーとして出発。90年代前半にBluetooth製品を手がけたことで、音声処理とも関わりが深いオーディオやマルチメディア系の製品、そして自動車関連機器に手を広げる。

とくに自動車関連機器では、同社が得意とする音声処理とBluetoothを活かしたハンズフリー技術を使った機器で支持を得て、多くのOEM先を獲得した。

現在Parrotの事業は大きく分けて3ライン(上図参照)となっており、1つがこの自動車関連機器という。残りの2ラインは、コンシューマー用のBluetooth接続オーディオ機器や、スマートフォン用ヘッドセットが1つ。これを同社は「Connected Objects」と表現している。

ここでChris氏は、Connected Objects分野での最新製品として、ノイズキャンセリング搭載Bluetoothヘッドフォン「Zik 2.0」と、Wireless Plant Monitorとジャンル名の付いた新製品「Flower Power」を紹介。後者は植物の脇に刺し、太陽光量や外気温、肥料濃度、土の湿度をモニターできる。つまり園芸に関連した機器となるわけだが、これは同社にとっても新ジャンルであり、大きく期待していると紹介した。

「ドローンはBluetoothで何が繋がるか、という発想から生まれた」

そして最後の1ラインがドローンとなる。ここでまずは「なぜドローンをビジネスとして手がけようと思ったか?」という点から紹介。「弊社のビジネスにおいて、ドローンは他のジャンルとの繋がりがないのでは? と言われるが、実はテクノロジーでは繋がっている」とChris氏は語る。とくに大きなトピックはBluetoothレシーバーの小型化。つまり同社にとってドローンはBluetoothで繋がる機器としての位置づけがあったという。「Bluetoothでどんなものが繋がるか、インスピレーションした結果だ」。

続けてそうした取り組みを証明するかのように、2005年に社内で開発していたというBluetooth接続のカメラ搭載ラジコンカー、プロジェクト名「BTT」(Bluetooth Toyの略)の試作機を紹介。Chris氏は当時、Parrot創業者のHenri Seydoux氏に「これは車だが、いつか飛ばしてみせる」と紹介されたという。つまり、当時からドローンの構想はできており、テクノロジーが整うのを待っていたということだ。

本格的な開発は2006年に決定したが、当時は社内でも、非常にクレイジーな計画と思われたとChris氏。実は当時の視点では、本体よりもむしろ手頃なコントロールデバイスがないほうが問題だったという。Bluetooth接続機器はヘッドセットやフィーチャーフォンが主流だったためだ。「しかし、2007年にiPhoneが登場し、続いてiOSアプリの開発が可能になった。突然イネーブラーとなりうる技術が登場した」。

ここから3年間の紆余曲折があったが、同社は2010年に初代「AR.Drone」を発売。開発にあたっては、安定した飛行で有利なクアッドコプター形状としながらも、さらに安定性を重視。「14歳の女性でも安定して飛ばせることを目標に、私たちのDSP技術をドローンの姿勢制御に応用した。OSにはLinuxを用いており、ファームウェアと合わせた機体制御には我々ならではのノウハウが多数盛り込まれている」と紹介した。

ここで実際に壇上で、現行製品であるAR.Drone 2.0をデモ飛行。機体自体を垂直方向に数回転させるアクロバット飛行テクニック「Flip」を含めて所狭しと壇上を飛行させ、実際の安定性を印象づけた。

プロ用ドローンの市場は順調に拡大

続けて、AR.Droneより小型となるクアッドコプタータイプの新製品「Rolling Spider」と、ジャンプ可能な走行型ドローン「Jumping Sumo」、さらに年末発売予定となるAR.Droneの第3世代「BEBOP Drone」を紹介。

前者2モデルはすでに発売しているが、BEBOPは未発売の製品。180度という超広角撮影が可能で、かつ3軸の角度制御が可能、さらにブレ補正も強力になったカメラをはじめ、Wi-Fiによる接続とオプションの専用コントローラーやVRヘッドセットへの対応などを「従来機に比べても大きく進化している。私たち自身も楽しみにしている製品」とアピールした。

続いて、プロ用ドローンの市場について紹介。農業分野や鉱山調査をはじめとする広大な土地状態の目視検査や、3Dマッピングによる地図データ製作といった精密測量用途での需要が増している点を強調した。

同社が買収したプロ用ドローンメーカー、Senseflyの次世代製品「eXom」についても紹介。eXomは高度な超音波センサーを備えたことで精密な障害物測定が可能となり、狭い箇所や複雑な地形下での飛行安定性が向上。さらにカメラの画質も向上しているという。

最後にChris氏は「時間が数分ありますので、BEBOP Droneのデモ飛行をお見せしましょう。日本では初めてです」と発言し、試作機のフライトを披露して観客を再び沸かせ、セッションはクローズ。「ハイテクとは楽しめるものでなければならない」(Chris氏)というParrotの姿勢が強く打ち出されたセッションとなった。


「資金はすべて米国にぶっこむ。日本には残さない」–メルカリとスマニュー、海外でどう戦うか

これまで多くのスタートアップが海外展開に挑戦してきたものの、そのほとんどは失敗に終わっている。しかし今年はスマートニュース米App Storeで1位を獲得するなど明るいニュースもあった。

先日のイベント「TechCrunch Tokyo 2014」では、そのスマートニュースに加え、日本で600万ダウンロードを超えたフリマアプリ「メルカリ」、すでに海外ユーザーを多く抱える対戦脳トレアプリ「BrainWars」からキーパーソンを集め、「世界で勝負できるプロダクトの作り方とは?」と題しディスカッションした。

モデレーターを務めたのはTechCrunch Japan編集部の増田覚。冒頭で、「そろそろメジャーリーグで日本人選手の先駆けとなった野茂英雄のような存在が、日本のスタートアップ業界にも必要なのではないか?」と問いかけた。果たして、この3社が野茂となるだろうか。まずはそれぞれの海外展開の現状について整理しよう。

米国で10月リリース、いきなり1位になったスマニュー

スマートニュースについて紹介したのは、共同創業者で代表取締役を務める鈴木健氏。同アプリは2年前にリリースされた。機械学習と人工知能でネット上の情報を集めてきて、快適に読んでもらおうというアプリだ。

リリースから25カ月で500万ダウンロードを突破した。UIに多少の変更を加えて10月に米国でリリース。米国のAppStoreのニュース部門では見事1位を獲得した。多くのメディアに取り上げられ、レビューも好評とのことだ。

メルカリ、来年は欧州市場も

メルカリはスマホから簡単に出品・購入ができるフリマアプリで、去年の7月にリリース。取締役の小泉文明氏によれば、ダウンロード数は600万を突破し、月間数十億の売買が発生しているという。出品数は1日10万品目に上る。テレビCMも効果が出ているそうだ。

今年3月に14.5億円を調達してサンフランシスコにオフィスを開設した。米国では今年9月にアプリをローンチ。カテゴリでひと桁台の順位につけているという。「来年はヨーロッパにも進出したい」と小泉氏は語る。

BrainWarsは驚異の海外比率95%!

トランスリミットは1月に設立したばかり。1つ目の製品が「BrainWars」という対戦型脳トレゲームアプリだ。友達と対戦しながら頭を使うゲーム遊ぶと、自分の得意・不得意分野が分析される。現在、16種類のゲームが用意されており、アップデートごとに2〜3のゲームが追加される。米App Storeのゲーム部門で1位を獲得し、アプリは700万ダウンロードを突破している。友人間のクチコミで伸びており、ここまで広告費を一切払ったことがないそうだ。

もう1つの特徴は海外比率の大きさだ。国内のユーザーはわずか4.6%にすぎない。残りの95.4%が海外からのアクセスで、米国と中国が多いものの、「その他」が22.7%とかなり細分化されている。合計150カ国以上で使われているという。代表取締役の高場大樹氏は「ゲームをしていると普通に外国人とあたる。言葉の壁がなく遊べる。同じ脳トレをやっているので頭脳のオリンピックみたいになる」と語った。

海外展開に向けてUIは変更「日本向けはごちゃっとしている」

リリース時から海外を意識し、すでに海外ユーザーが多いBrainWarsは別として、スマートニュースとメルカリは米国に進出する際に、何らかのUIを調整した模様だ。「グローバルに通用するのはどんなUIなのか」というお題に対して、それぞれ興味深い答えが帰ってきた。

スマートニュースの鈴木氏は、「もともと海外を意識しており、普遍性のあるアプリに仕立てていた」と言う。ただし、言語やUIは日本向けに作っていた。例えば日本人向けに少々ごちゃっとしたデザインにしていたが、米国でユーザビリティテストした結果、変更する必要性に気づいたそうだ。「米Flipboardのデザイナーがアドバイザーになってくれて、どういうデザインにしたらいいか議論してリリースした。まずまずUSのユーザーにとっても使いやすいと評判のものに仕上がった」と振り返った。

メルカリの小泉氏もほぼ同じようなことを語った。「UIについては初期のメルカリはすごくごてごてしていて、日本ぽく、東アジアっぽかった。それが日本にウケていたけど、9月に米国でローンチするにあたって、ちょっとださいと感じた。かなり大胆に米国に適応させ、日本を無視したデザインにした」という。すでに日本版も米国版と同じUIになっている。日本人ユーザーが離れていかないか心配だが、「普段、TwitterとかFacebookとかInstagramとか米国製アプリが日本で使われているので付いてこれると思っている」とのことだ。

小泉氏はさらに、「実はGoogleやAppleがアドバイスしてくれる。ここは直した方がいいよって。それを参考にした」とも打ち明けた。意外と細やかなサポートがあるようだ。

米国は世界への近道、初めに押さえないと勝てない

そもそも、なんで最初に米国なのだろうか。アジアという選択肢はないのか? それに対する小泉氏の答えは以下のようなものだ。

「メルカリはC to Cのプラットフォームなので、1社しか独占できない。必ず“Winner takes all”になる。英語圏で他社にシェアを取られたら、そこで終わり。もう勝てない。だから米国に行った。SonyやHONDAも米国で認識されてグローバル企業になった。ヤフオクとeBayを見ても、米国の方が数倍規模が大きい。日本を捨ててでも米国を取るべき。英語圏をとったら世界で勝てる、逆にそこを取れないと厳しい」。

一方で鈴木氏は個人的に米国に行きたかったそうだ。「向こうに行くとテンションが上がる(笑)」と嬉しそうに話す。「十何年か前に行ったときは感激した。いつか米国市場に挑戦したいと思っていた。でも気持ちだけでは会社を動かせない。グローバルに進出するときに米国を通るのは、難しいけど近道。ニュース分野では基本的に世界中の人が米国のニュースを見ている。米国のパブリッシャーとユーザーに愛されるものを作ろうと、会社で説明して、幸運にもうまくいった」。

それぞれ根本の動機は違うものの、世界で勝つには米国市場を押さえなければいけない、という意見は一致している。

ゲームの最高ランクを「神」にしたら大問題に

日米でユーザーの反応に違いはあるのか。BrainWarsの場合は興味深い差異が見られたという。2人で対戦する前と後にスタンプでコミュニケーションをとれるようになっているが、その使い方に違いがある。

「日本人は負けた時、涙マークとかのスタンプだけど、欧米人はグッジョブ!みたいなスタンプを送る。日本は対戦前に笑顔マークを使うが、米国の人はハートマークとか」と高場氏は説明した。

また同氏が、海外展開を試みて初めて直面した意外な問題点もあった。「ゲームの中に『グレード』という称号がある。ヒヨコ、うさぎ、亀とランクが上がっていく。そして最後は神。日本人はAKBに神セブンと名づけたり、神技という言葉があったり、『すごい』っという意味で使う。そうしたらヨーロッパのユーザーから『神への冒涜だ!』と叱られて即刻、取り下げた(笑) 世界の事情をちゃんと知らないといけない。何もかも準備するのは難しいので、問題が起きたらすぐ対処できるようにしている」(高場氏)

米国でオフラインモードはいる? いらない?

小泉氏は基本的に、初期の日本人ユーザーの動きと違いはないと分析した。ただし、ひとつ変わっていたのが「招待インセンティブ」への態度だという。友だちを招待したら◯◯ポイントをプレゼントするというものだが、米国人はこれが思いのほか好きなのだとか。「普通にTwitterとかFacebookとかで紹介してくれる。ユーザー獲得のところは良い意味で驚きが多かった」と振り返る。

鈴木氏も「思ったより反応が良かった」とポジティブな感想を持っている。「米国は車社会だからオフラインモードとかいらないのでは? それよりラジオみたいな音声読み上げじゃないの? とかいろいろ言われていた。でもやっぱり米国はネット回線の環境が悪いのでオフラインモードは受け入れられた」と語る。

ニュースをめぐる環境に違いがあるとすれば、米国の方が「ニュースソースに対するブランド感が強い」ということだそうだ。「だから米国はニュースアグリゲーションよりもCNNなどのパブリッシャーの方が強い。しかしパブリッシャーは日本よりも寛容。米国ではFlipBoardがすでに切り拓いていた。僕らはパブリッシャーフレンドリーなサービスで、スマートモードで発生する収益はすべてメディアに渡す。『まじで?すごいな!』となった」(鈴木氏)

「でも日本ではリリース当初、怒られていましたよね」と増田記者が突っ込むと、鈴木氏も認めた。「2年前にアプリを出した時、僕と浜本だけで、まともにパブリッシャーと話ができていなかった。そこで元アイティメディアの会長・藤村さんに入ってもらって、スマートニュースについて説明してもらって、どんどんいい関係を作っていけた」

海外展開の際は「最初の1人をどう選ぶか」が大事

組織の話になってきた。海外展開に向けて、各社とも組織づくりで意識したことはあったのだろうか。

小泉氏は「最初の1人をどう選ぶか」にかなりこだわったという。「時間はかかるが、最初の数人を間違わないで選ぶこと。いきなり100人とかとるわけじゃない。1人目が重要。それによって次の人も決まる。メルカリは米国でかなり知名度がある人にアドバイザーになってもらった。人づてで会ってもらい、プロダクトを見せると、『クールだ。ぜひ一緒にやりたい』と言ってもらった。いま20人以上にまでなった」

ちなみに現在メルカリの米国オフィスを率いるのは取締役の石塚亮氏。中学時代から米国に留学し、大学卒業後そのままRockYouというソーシャルアプリ会社をシリコンバレーで創業した経験を持つ。創業者の山田進太郎氏が、米国進出を見据えて誘った人物だ。その彼が半ば片道切符で米国を開拓しているという。

「銀河系軍団」を目指すスマニュー、空中分解しないための工夫

スマートニュースはチーム作りのロールモデルが2つあると、鈴木氏は言う。1つはGoogle。そこはなんとなく想像できるが、もう1つはスペインリーグのサッカーチーム「FCバルセロナ」だそうだ。どういうことだろうか?

「僕らのチームつくりのテーマは“日本代表から世界選抜へ”。世界で戦うにあたっては世界選抜が必要で、世界トップの人材を集めたい。あらゆる分野でそういう人材を入れたい。米国は現在サンフランシスコが4人、ニューヨークが2人だが、もっと拡張してグローバルのヘッドクオーターを米国に作る」(鈴木氏)。

“米国における藤村氏”も見つかったという。要はパブリッシャーとの交渉役である。「春に出張したときにRich Jaroslovskyさんと会った。彼はもともとウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)で政治記者だった。レーガン大統領とともに来日して昭和天皇に会ったこともある。WSJのマルチメディアの立ち上げにも関わった。そんな彼が米スマートニュースでパブリッシャー担当となっている」と胸を張った。

「でも、銀河系軍団は失敗しがちじゃないですか?」という問いに対して、鈴木氏は自信を持って答えた。「採用を決めたら、日本に2週間くらい滞在してもらう。すごく仲良くなる。あと面接のフローも僕らは相当長い。しっかりとコミュニケーションを取っているので、離職率はいまのところゼロ%です」

スマートニュースの知名度は米国ではまだ低い。なぜ採れるのか? と不思議に思えてくるが、鈴木氏によれば、「米国人は知名度だけで選ばない。プロダクトとビジョンとチームにどれだけ惹かれるか」だそうだ。プロダクトに惚れさせれば、意外な大物を一本釣りできる可能性もあるらしい。

一方でトランスリミットは他の2社とは違い、海外拠点を作らない方針だ。高場氏は「アプリデベロッパーとして世界展開するので、日本1カ国を拠点として多国籍のチームを作りたい。米国で拠点を作らないのかと聞かれるが、まだ日本に7人のチーム。いま米国に作って、管理工数を取られ、マネージメントとかでスピードが落ちるより、日本で地盤を作って海外にはマーケティング機能を置く方がいい」と語る。

アングリーバードなどは1つの国で作ったものをマーケティングで世界に広げた好例だという。「不可能ではないと思ってやっている」と高場氏。

米国は大きなチャンス、「すべてをぶっこむ」

最後の質問は「ぶっちゃけ海外にどれだけ使いました?」というもの。

小泉氏の答えはとても明確だ。「(10月に)調達した24億円は基本的に米国版を立ち上げるための資金。日本でもCMとかでお金は使っていますけど、基本的にはすべて米国にぶっこもうと思っています。日本に残す必要はない。米国を制することができなければメルカリはもう無理だという気持ちで、全部使う」と話した。

12月以降にようやく収益が上がりはじめるスマートニュースも、それらの投下先はグローバル市場だという。鈴木氏は「世界人口の半分がスマホを使う。新聞読む人は減っていき、『初めてニュースを読むのはスマホ』という人が数十億人規模で生まれる。そこに全力で挑戦して、世界中の人たちに使ってもらえるサービスを作りたい」と展望を語った。


予算ゼロでNewsPicksを開発! TC Tokyo 2014で「CTOオブ・ザ・イヤー」が決定

「予算ゼロで新プロダクトを開発」「エンジニアのハイブリッド化で売上倍増」「本番環境をフルスクラッチで整備」――。こんな無理難題とも思えるようなミッションを解決したスタートアップのCTOたちが、11月18日に開催したTechCrunch Tokyo 2014の「TechCrunch Tokyo CTO Night powered by AWS」で、最もイケてるCTOを決める「CTOオブ・ザ・イヤー」の称号を競い合った。審査基準は「技術によるビジネスへの貢献度」。全9社(9人)のCTOが登壇してピッチを行い、「CTOオブ・ザ・イヤー」に選ばれたのは、株式会社ユーザーベース(SPEEDA/NewsPicks)の竹内秀行さんだった。

 

スタートアップ9社のCTOが登壇

登壇したCTOは、来年さらに飛躍が期待される9社9名で、以下の通りだ。

  • Beatrobo, Inc.(PlugAir) 竹井英行CTO
  • freee株式会社(freee) 横路隆CTO
  • Tokyo Otaku Mode Inc.(Tokyo Otaku Mode) 関根雅史CTO
  • ヴァズ株式会社(SnapDish) 清田史和CTO
  • 株式会社オモロキ(ボケて) 和田裕介CTO
  • 株式会社Moff(Moff Band) 米坂元宏CTO
  • 株式会社ユーザベース(SPEEDANewsPicks) 竹内秀行CTO
  • 株式会社エウレカ(pairs) 石橋準也CTO
  • 株式会社DoBoken(ZenClerk) 磯部有司CTO

登壇した9名のCTOを審査するのは、豊富な知見を持つ6名の審査員でありCTO。真剣に、時に笑いながら登壇者のプレゼンに耳を傾けていた。

  • グリー 藤本真樹CTO
  • クックパッド 舘野祐一CTO
  • ビズリーチ 竹内真CTO
  • はてな 田中慎司CTO
  • サイバーエージェント 佐藤真人CTO
  • アマゾンデータサービスジャパン 技術本部長 玉川憲氏

 

多様性のない組織は進化が止まる。CTOの仕事におけるテーマは「多様性の創出」

ユーザーベースの竹内秀行CTOは「とあるCTOのスタートアップ切り込み隊長日誌」と題したプレゼンを披露。

同社は、2009年1月にローンチした企業・業界分析プラットフォーム「SPEEDA」と、2013年7月にローンチした経済ニュース「NewsPicks」の2サービスを展開している。特にSPEEDAは全世界100万社超、550業界のデータを管理・提供しており、CTOが解決しなければならない技術的課題は大きい。

もちろん、サービスの技術的改善、エンジニアのスキル向上、健全な組織を作るための施策も検討・実行しなければならない。竹内CTOはそれを「ビジネスにおける多様性、技術における多様性、チームにおける多様性」の3つの多様性で表現した。

「多様性」を生み出すためにどのようなアプローチをしたのか。

技術面ではSPEEDAのシステムを再構築してMySQLベースからElasticsearchに乗り換えた。その結果パフォーマンスが大幅に向上、フィールド数10万を超えるデータベースにおいて複雑な条件でも100ms以下で検索完了、集計は1〜2秒で完了する変化を実現した。企業・M&A情報を複雑な条件でも素早く抽出できるようになったことで情報の提供先企業が増え、会社がビジネスとして取れる「選択肢」も広がった。新サービスに向ける余力が生まれたのである。

新サービスに向ける余力が生まれた同社。ある日、竹内CTOは代表取締役梅田優祐氏に呼ばれて「気軽に専門家の意見が聞けるサービスを作りたい」というオーダーを与えられた。「予算はゼロ」と言われて竹内CTOは絶句したそうだ。それが最近キュレーション系メディアとして存在感をましているNewsPicksの始まりだったと当時を振り返る。

開発に着手したのは2013年2月からローンチした7月までの5カ月間、彼は一人でAPI設計構築・バックエンド設計構築などサーバサイド全般を担当。その半年後に別のエンジニアが入社して業務を引き継ぎ、同時にチームにおける多様性も達成した。

スタートアップは時にシングルサービス・シングルプロダクトからなる多様性のなさで競合との戦いに疲弊することもある。逆に自分たちのキャパを超えてサービスやビジネスの拡張・複数化を進めて多様性で失敗することもある。そのどちらにも属さない多様性を追求できる可能性を感じるプレゼンとなった。

 

ハイブリットエンジニアで月間売上倍増

以降は特に印象に残ったCTO達を紹介していこう。

まずは株式会社エウレカの石橋準也CTOだ。マッチングサービス「pairs」やアプリ探しサービス「Pickie」などを運営する同社だが、大きく分けて3つの問題を抱えていたと語る。急激な成長を遂げたスタートアップの成長痛とも言える「社内のリソース不足」、担当業務に専属意識を持ちすぎるため、社内連携不足となるがゆえの「バグの頻発」、そして「責任感の欠如」だ。

それを解決したのが「全エンジニアのハイブリッド化」だった。

石橋CTOが定義するハイブリッドエンジニアとは、サーバサイド、ウェブ・フロントエンド、ネイティブ・フロントエンドの3側面を全て担当できるエンジニアのこと。通常のインターネットサービスは、データベースやネットワーク回りなどのサーバサイド、ウェブUIを含むユーザーの目に見える部分のウェブ・フロントエンドなどそれぞれでエンジニアが専属担当する。

同社の場合、従来はサーバサイド、iOS、Androidの3分野で専属エンジニアが業務を行っていたが、それを一貫して担当できるエンジニアを育てるという取り組みである。

石橋CTOは自身が「非ハイブリッドエンジニアだった」と語る。iOSとAndroidに関する知識がなかったため、ゴールデンウィークの時間を使って1カ月ほどで知識を習得した。その後、ノウハウを得た石橋CTOはエンジニア合宿を実施。エンジニアに普段担当していない分野をアサインし、分からないことを教えあう形式を採用した。現在では所属エンジニアの半数がハイブリッド化している。

ハイブリッド化の成果リソース不足の解消、生産性の向上、バグチケットの起票率2分の1、問い合わせの数2分の1、新規施策の実行3.5倍など明確に現れた。

また、生産性も向上した。1つの機能をリリースしようとすると分業担当制の場合、その担当者が多忙で対応できないとその段階で開発が止まってしまう。だが、分業せずハイブリッドエンジニアが一貫して担当すれば他者に影響を受けることがない。もちろん全てを担当するエンジニアには業務効率の向上が必須だが、その姿を見た他の社員は自然と刺激も受け、今後も良い業務環境が続くだろう。

 

本番環境をフルスクラッチで整備。急激なトラフィック増に対応して成長した「全員ダブルワーク」体制の力

「事故からはじまるスケールチャンス」と興味深いタイトルのプレゼンを披露したのは、株式会社オモロキの和田祐介CTO。今やバズるネタ元には高確率でbokete(ボケて)の存在が見えるまでに成長した、ユーザー投稿型サイトである。お題となる1枚画にユーザーが好きなコメントを付けていくスタイルを採用したシンプルなサービスだ。

順風満帆に見える同社だが、サービス開始当初の2008年9月から4年間ヒットに恵まれずに細々と運営されていた。しかし、2012年5月突然サーバからのアラートが発生。蓋をあけると事故ではなく、平穏運営の間に蓄積されていた投稿コンテンツがまとめられ、そのまとめが人気を呼んだことによる急激なトラフィック増だった。

対応に追われる和田CTO。4年前にリリースしたサービスは細かなメンテナンスを施してはいたが、2012年段階の最新技術は取り入れておらず、同時に提供しているアプリが本番環境でしか動かないという致命的な問題も抱えていた。

そこで、システムをフルスクラッチで再構築することを決意した。これは本番稼働しているサービスの仕組みをイチから作り直すわけだから、大きな決断である。失敗したり作業が遅れれば、サービスは停止・遅延するなどの問題が発生する可能性がある。だが、無事にシステムへの移行を成功させ、順調にアクセス数は増加していった。

すると次はマネタイズ必要性が出てきた。オモロキは創立当初、和田CTOと代表の鎌田武俊氏の2名体制であり、お互い本業を抱えたいわゆるダブルワークのプロジェクトだった。そこで仲間探しをするのと同時に、不得手なことを外部のパートナーに委ねるという戦略を採用したのである。

現在も同社代表の鎌田氏は熱海在住だし、和田CTOは父の和田正則さんと2人と立ち上げた株式会社ワディットの代表取締役でもある。集まったメンバーは社員ではなく役員で、全員が本業を持つダブルワーカーだ。定期的に熱海の同社オフィスに集合して外の経験を活かし、オモロキの仕事をする形式を取っている。

質疑応答で「CTOとしてオモロキでしたいことは何か?」と聞かれた和田CTO。「メンバー全員でビジョンを共有している、アフリカのタンザニアでbokete(ボケて)を展開するというような世界展開を実現したい」と語り、まとめとした。

CTOオブ・ザ・イヤーの意味とスタートアップにおけるCTOの存在

CTO Nightは日頃の成果をたたえ合うことが目的であり、優劣を付ける場ではない。自社のため、仲間のため、そしてユーザーのために考え実行してきた業務を共有し、先輩CTOからのコメントを受けて、新しいヒントが得られる場となったようだ。


IoT実現環境の有望株? Seed Labがディベロッパーキットをリリース

数カ月前、Seed Labsからなかなか面白そうなInternet of Things(IoT)実現ツールが発表された。未だ開発段階であるが、ライトのバルブ、電気ポット、あるいはトースターなど、さまざまなデバイスに組み込んで利用することを意図して開発されたローパワーのBluetoothチップだ。面倒な初期設定操作をできる限り省いているのも特徴だ。チップを組み込んだ電化製品を買ってくれば、ただちにスマートフォンと連携し、家庭内IoTネットワークを構築することになるのだ。

発表からしばらくは表立った動きがなかったが、ついに開発キットが公開されるはこびとなった。トースターや電球など、さまざまなものをスマートフォンから簡単に操作できるようになるのだ。開発キットはこちらでプレオーダーを受け付け中だ。

Seedのプラットフォームでは、WeMoのようにデバイスのペアリングに手間取ることもないし、またSparkのように細かい設定をする必要もない。スマートフォン側にSeedアプリケーションをインストールしておけば、直ちに連携して利用可能となる。またパブリックモードとプライベートモードが用意されていて、無用なアクセスを防ぐ機能もついている。チップを搭載した電化製品をグループ化して一括管理したり、あるいは設定を記憶させておくこともできる。状況に応じて好みの照明をワンタッチで作り出すこともできるのだ。

冒頭にも記したように、このSeedプラットフォームは開発段階にあるものだ。しかしプロダクトの説明を聞いたり、あるいは実際に動作する様子を確認したりする中で、来たるべきIoT環境の中で、なかなか有力なプレイヤーであるように思える。Rafal Hanの率いるSeedチームによると、数年のうちにはモノとのコミュニケーションを実現するプロダクトを生み出すべく、アプライアンスパートナーとの作業を続けているところなのだそうだ。

原文へ

(翻訳:Maeda, H


ウチは出会い系ではありません――デートアプリTinderの美人役員が語る

スタートアップに関する日本最大規模のイベント「TechCrunch Tokyo 2014」。初日となる11月18日の「ファイヤサイド・チャット」に登壇したのはオンラインデートアプリ「Tinder」を開発するベンチャー、TinderのVice PresidentであるRosette Pambakian氏だ。

自らを「出会い系サービスではなく社会的なつながりを作り出すサービス」とし、現在世界各国に3000万ユーザーを抱えるTinder。モデレーターを務めるTechCrunch Senior EditorのRyan Lawler氏が、サービス利用のコツからその世界観、さらには未来像までを聞いた。

異性ウケを狙うなら「趣味を楽しんでいる写真」がベスト

2012年にアメリカで誕生したTinder。アプリとFacebookアカウントとを連携するだけでサービスの登録は完了する。あとは位置情報を利用して現在地付近にいる異性とマッチングし、メッセージなどを通じて仲良くなれば、デートにつなげることができるサービスだ。

サービスの仕組みやユーザーインターフェースはユニークで、アプリに表示された異性を「いいな」と感じた場合は右にスワイプし、「残念ながらパスしたい」と感じた場合は左にスワイプするというもの。スワイプする度に他の異性が次々に表示され、ゲーム感覚で好みの異性を探すことができる。

プロフィールに写真を複数枚登録している人が大半だが、トップに表示される写真が勝負の分かれ目になる。これほど写真が重要視されるサービスはない。「異性とのマッチング率が高い写真に共通するのは、その人の個性や性格が一目で伝わりやすいもの。たとえばサーフィンやロッククライミング、ヨガなど、趣味を楽しんでいる最中の写真は好感を持たれやすい」とRosette氏は話す。

とはいえ「外見がすべて」というわけでもない。Facebookアカウントの情報をもとに、相手との共通の友人や趣味なども表示されるため、共通項にピンと来た相手から気に入られる可能性もある。ただし「両思い」にならないと、アプリ上で連絡を取り合うことはできない。

これについてRosette氏は「近年FacebookやTwitterなどのSNSは普及したが、Tinderのようなデートアプリはこれまでほとんどなかった。既存のSNSでは知らないユーザー同士、お互いに興味があっても、つながりを持つことは難しく、デートアプリの存在意義を感じていた」と振り返り、さらにこう続けた。

「ハラスメントが起きるのは避けたかった。となると、気に入った相手同士でチャットをするほうが、男女ともに安心して快適に使うことができる」(Rosette氏)

リアルと同じく、女性のほうが好みがうるさい

しかし、Ryan氏は「そもそも知らない相手同士が個人的に会うことに抵抗を感じないのか?」と根本的な疑問を口にする。これに対しRosette氏は、わかりやすい例を挙げて説明した。

「たとえばコーヒーショップでくつろいでいるとき、知らない人から突然声をかけられると『怖い』と感じる人が多いはず。Tinderではスワイプしながら気に入った相手を選び、まずはチャットから始めて、気軽に出会えるのが特徴。リアルの場でのように、いきなり声をかけて拒絶される恐怖感もなく、多くのユーザーがライトな社交を楽しんでいる」

続いて「男性と女性それぞれの使い方で、顕著な違いはあるのか?」と尋ねたRyan氏に対し、Rosette氏から興味深い回答が飛び出した。

「現実社会と同じく女性ユーザーのほうが好みがうるさいと感じる(笑)。男性ユーザーに比べると左にスワイプしてパスする率が驚くほど高いほか、閲覧時間が長い。1日の平均利用時間は男女あわせて77分との結果が出ているが、セッションごとに集計すると女性は約8分半、男性は約7分半となった。またマッチングした人のうち、60%がチャットに発展しているが、女性からメッセージを送るケースは少なく、男性から送ることが大半だ」とRosette氏。ネットを通じた出会いとはいえ、リアルでの出会いや恋愛シーンを重なる部分は少なくないことがわかる。

では実際に、どのような目的で、どのように使われているケースが多いのか。もちろんデートアプリと銘打っているように、恋人探しに使う人が大半だろうが、他の使い方もあるのだろうか。

「短期または長期的な関係に発展する出会いを求めるユーザーもいるが、社会的な出会いを求めて使っているユーザーが多い。たとえば出張先でビジネス目的で使う人、旅先で友達を見つけるのに使う人も少なくない」とRosette氏。Tinderユーザーがいる国で使えば、何らかの出会いにつなげることができるのだ。

自分のニーズに合った使い方を楽しんで

さまざまな形での出会いを提供するTinder。しかしRyan氏は「(ネガティブな意味での)『出会い系』ではないと説明しても、今の説明を聞くと、捉え方によっては出会い系として見られることもありそうだ」と指摘する。

これに対しRosette氏は、「私たち自身は“つながりを生み出す”ためにTinderを運営しているが、どう使うかはユーザー次第で、私たちからどう使うべきかは伝えていない。長期的な関係性になるパートナーや恋人探しをするもよし、友達を探すもよし、ビジネス上のつながりを構築するもよし。とにかく、まずはつながってみては、とだけお伝えしている」と分別を持った大人が、自己責任で使うことを強調する。

現在Tinderでは毎日約4000万ものマッチングが見られ、Rosette氏の元にはユーザーからの感謝の声が数多く寄せられているという。「人生が変わった」「友達ができた」「出会った相手と結婚した」など報告内容はさまざまで、結婚式に招かれることもあると話す。

今後の展開については、「2015年にはインドやインドネシア、トルコなどをはじめとする新たな国への進出を目指している。日本のようにスマホ市場が伸びている国々を狙っている」とサービス拡大のため、引き続き海外展開に注力すると宣言した。

さらに、11月6日にリリースされたばかりの有料版「Tinder Plus」にも注力すると語った。「ユーザーからリクエストの多かった機能を搭載したのがTinder Plusだ。たとえば『undo』機能では一度パスしてしまった相手を、必要であれば再度見られるようにしている。もうひとつの目玉『パスポート』機能を使うと、現在地以外のロケーションにいる人とも出会える。たとえば東京から出張でロサンゼルスに行く場合、東京にいる間にロサンゼルスの人をチェックし、出会いにつなげることができる」(Rosette氏)

多種多様なニーズの出会いを楽しめるTinder。大人のライトな社交場、といったところだろうか。日本でも確実にユーザーが増えているが、デートアプリ文化を創る主要アプリとなるか――今後の展開に注目したい。


TechCrunch Tokyo 2014、スタートアップバトルでプレゼンを競うのはこの12社だ

いよいよ明日11月18日から11月19日にかけて東京・渋谷ヒカリエで開催する「TechCrunch Tokyo 2014」。これまで各セッションの内容や見どころのまとめという形で紹介してきているが、1つ大事なことをお伝えし忘れていた。そう、メインイベントの1つ「スタートアップバトル」の登壇者だ。

スタートアップバトルは創業3年以内のスタートアップに限定したプレゼンバトルだ。今年は昨年より30社ほど多い113社が応募してくれたが、その中から事前審査で選ばれた12社が自慢のプロダクトについて5分間のプレゼンを行う。ちなみに2012年は電動パーソナルモビリティを手がけるWHILLが、2013年は「Ring」を手がけるログバーがそれぞれ優勝を果たしている。今回本戦に勝ち進んだスタートアップをざっと紹介していこう。

mikan

mikanが提供するのは「圧倒的に一番速く覚えられる」を標榜する英単語アプリ。TinderライクなUIで英単語を知っている、知らないに分け、知らない単語に何度も接触することで、ベータテストでは1日1000単語という記憶スピードを実現したという。

AgiC

AgICは家庭用プリンタと伝導性のインクを組み合わせることで、電子回路の高速な試作を実現するプロダクト。IoT、メイカーズムーブメントなんて言われているが、実は電子回路に関しては、革新的な試作というものはなかったそうだ。AgiICでは、自社プロダクトを利用することで、通常1週間ほどかかっていた電子回路の試作を2〜3分に短縮するという。

STANDING OVATION

同社が提供するソーシャルクローゼットアプリ「XZ」は、自分の手持ちのファッションアイテムを登録し、自分が登録したアイテムやほかのユーザーが登録したアイテムを組み合わせて、コーディネートを作成できるアプリだ。将来的にはこのアイテムをもとにCtoCやBtoCのコマースにつなげていく予定。

フォトシンス

フォトシンスが手がけるのはスマートロック「akerun」。ドアの内側にこのakerunを取り付ければスマートフォンを使ってドアの開閉が可能になる。購入者以外のスマートフォンにも開錠権限を与えられるため、ハウスキーピングやしスペースの入場管理などでの活用が見込まれる。

ミニマル・テクノロジーズ

ウェブサイトに1行のスクリプトを埋めるだけで他言語化を実現できるサービス「WOVN.io」を提供。テキストの機械翻訳のような手軽さを感じてしまいがちだが、サイトの他言語化というのは実は翻訳にとどまらない大変な作業。WOVN.ioはそれを非常に手軽にしてくれる。

baton

batonが提供するのは、対戦型の学習アプリ「クイズマッチ」。入試に出るような問題をクイズ化し、全国のユーザーがクイズ形式で対戦できるというもの。現在は日本史に限定して約2000問を配信中。利用は無料となっている。

ビズグラウンド

同社のサービス「Bizer」はもともとスモールビジネス向けの士業や専門家への相談サービスだった。だがそれはあくまでサービスの一部。実はバックオフィスの業務支援サービスを開発していた。例えば新たに社員が入った時に何をするべきかというタスク管理や文書の作成などをサポート。専任者なしでのバックオフィス業務を実現してくれる。

FiNC

FiNCはスマホアプリを活用したダイエット家庭教師サービス。クラウドソーシングで集めた管理栄養士がユーザーのアップした食事に対する評価をしてくれるほか、専門家によるトレーニングの指導、遺伝子検査やアンケートをもとにしたオリジナルのサプリメントなどを提供する。

スペースマーケット

スペースマーケットは、あらゆるスペースをネット上で貸し借りできる、いわばビジネス版の「Airbnb」だ。ベンチャー企業の会議室から、お寺や野球場、帆船、はてはお化け屋敷まで、あらゆるスペースを借りることができる。

ベントー・ドット・ジェーピー

bento.jpは、スマホアプリを2タップするだけでお弁当を注文できるファストデリバリーサービス。メニューは日替わり、価格はデリバリー費用込みで500円。もちろんエリアは限定されるが、最短1分、平均10分でオフィスまでお弁当を届けてくれる。

yTuber.tv

「yTuber.tv」はYouTubeの様々なコンテンツをキュレーションして、テレビのチャンネルのようにカテゴリ分けした、いわばYouTubeの「ラテ欄」を作っている。そして同じコンテンツを視聴しているユーザー同士でメッセージのやりとりが出来るサービスだ。

オープンロジ

「物流をもっと簡単・シンプルに」をコンセプトにした中小事業者・個人向けの物流アウトソーシングサービス。物流会社と連携することで、本来手続きがかかり複雑な料金体系を持つサービスを簡素化した。代表の伊藤秀嗣氏は富士山マガジンサービスの物流システムの構築から約10年間事業に携わった後に起業した。

以上が今年登壇する12社となる。昨年僕は観客席から見ていたわけだけれども、今年は事前のプレゼンから見させてもらっている。どこもプレゼンのレベルが高く、またジャンルもC向け、B向けのウェブサービスからIoTまで幅広いので、正直優勝の予測がつかない。栄光を勝ち取るのははたしてどのスタートアップになるのか。

なお、このセッション様子は当日Ustreamでも公開する予定だ。さらにバトルの直前には、昨年優勝したログバーの吉田卓郎氏も登壇の予定。一般販売までの経緯を語ってもらうほか、デモも披露してくれるという。


「読書」を「ソーシャル化」する新たな電子書籍リーダーのGlose

スマートフォンやタブレット、あるいはノートPCなどでも利用できる電子書籍リーダーのGloseをご存知だろうか。これまでの電子書籍リーダー(Kindleなど)にソーシャル要素を加えたものだ。書籍の内容を友だちや、他のGlose利用者と話し合ったり、あるいは簡単にメモを共有したりすることもできる。友だちの書いた注釈メモなどを眺めて、その本を読む前からいったいどのような内容なのかを理解することもできる。ある本に興味を持った人たちを、ソーシャルに繋ぐサービスを展開しようとしているわけだ。

それに加えて、電子書籍ストアとしてのサービスも展開している。サービス開始時点で、Penguin Random House、HarperCollins、HachetteおよびMacmillanなど、5大出版社中の4社などの、30万冊を扱っている。価格はKindleストアやiBookストアと同程度だ。他の電子書籍販売サービスと同様に、一度購入すれば対応しているさまざまなデバイスで本を読むことができる。

最初に登録すると、Gloseはいくつかの本をレコメンドしてくるようになっている。レコメンドされた本には、より多くの注釈などが登録されていて、サービスの機能をよりわかりやすく楽しめるようになっている。

当方ではBen HorowitzのThe Hard Things About Hard Thingsを試してみた。ベータサービス段階で多くの人がこの本を読み、そしてたくさんのメモを残している。興味深いメモも多く、ぜひとも続きを読んでみたいという気持ちになった。どうやらGloseはノンフィクションとの親和性が高いようにも感じる。このTha Hard Things About Hard Thingsの場合、テック業界で働いていて、本書の内容を実際に体験した人の話なども掲載されていた。

「本を読むときはメモを手元において、後で暗唱したい言葉などを抜き書きしていたものでした」と共同ファウンダー兼CEOのNicolas Princenが電話インタビューに応えて言っていた。「そして、そのノートはなくしてしまったのです」だそうだ。

そんなことがあってPrincenは、デジタルツールを探し始めた。もちろんEvernoteなども試してみたそうだが、どうにもしっくりくるものが見つけられなかったそうだ。そのような中、共同ファウンダー兼CTOであるJulien Chaumondと共に、複数の人で同じ本を読みながら意見をやりとりするようなプラットフォームを作ろうと考えたのだそうだ。

もちろん、全く新しいサービスであるというわけでもない。たとえば本を読む人に向けたソーシャルサービスとしてはGoodreadsが有名だ。しかし、たとえばこのGoodreadはモバイルでは使いにくいし、またインタラクティブなサービスとは言えない。言うならばIMDbの書籍版といった感じで、本を読む前ないし読んだ後に参考にするようなページだと言えよう。本を読みながら利用するといったサービスではないわけだ。

現在のところ、電子書籍の楽しみ方は、従来の印刷された本を読むのとさほど変わらない状況にある。インタラクティブなコンテンツやサウンドトラックなどを求めているわけではないので、従来と変わらないというのが悪いわけでもないだろう。しかしGloseはそこに「違い」をもたらすサービスであると言えるかもしれない。紙の本を読むのと同じようなスタイルで読書しつつ、同時に他の読者からの情報などを同時に咀嚼していくことができるわけだ。

アプリケーションは現在iOS用がリリースされていて、Android版も間もなく登場予定なのだそうだ。アプリケーションを起動するとプロフィールページが開かれ、そこには最近ハイライトした部分や、メモなどが表示される。また、他の人がコメントしていたり、お気に入り登録していれば、やはりこのページに表示されるようになっている。画面下にタブが用意されていて、タブを切り替えることで本棚を確認したり、電子書籍ストアを見て回ったり、さらには友だちのハイライト内容などを見ることができる(訳注:ハイライトのフィードは友だちからのものと、全員からのものを見ることができ、同じアプリケーションを使う友だちが少ない状態でも十分楽しむことができそうです)。

本を読んでいくための機能は、とくに充実しているというわけでもないようだ。フォントの変更もできないし、フォントサイズも2種類しか選べない。他の機能といえば、背景を白くするか黒くするか程度のものだ。テキストの横に、ハイライト数やコメント数を示す数字が表示されるようになっている。

数字をつけているのは、大量のメモなどを電子書籍の中に表示して、本文を読みにくくすることを防ぐためだろう。それでも邪魔に感じるようであれば、表示される数字を友だちからだけのものに制限したり、あるいは自分自身のものだけにすることもできる。このようなフィルタリングができる点で、Kindleなどとは違っているわけだ。

「他の電子書籍リーダーでは、ハイライト動作が難しく感じることも気になりました」とPrincenは言っている。「私たちが最初に実現したのは、ワンタップでのハイライト機能です。テキストをセンテンスないし短いパラグラフ毎に区切って、ハイライトする範囲を確認しているのです」。

最初はあまり良い方式に思えないかもしれない。するつもりがないところをハイライトしてしまうことも多い。画面を触るたびにハイライトされてしまうのもうるさく感じてしまう。しかし、操作になれてくると、このワンタップ式のハイライトがとても便利に思えてくる。ハイライトするのが簡単なあまり、少しでも気になったところを簡単にハイライトしておくようにもなる。Instagramの写真をお気に入りに登録するのと同じくらいの意識でハイライトしておくようになるのだ。

「ワンタップでのハイライト機能を搭載してから、利用率が3倍ないし4倍となったのです」とChaumondは言っている。「よりインタラクティブに使ってもらえるようになったおかげで、アプリケーション内で過ごす時間が大いに伸びたのです」とのこと。

ハイライトした部分は、すべてプロフィールページに表示される。すなわち、自分のためのノートとしても活用できるわけだ。自分用とソーシャルでの活用という、双方のいいとこ取りを狙ったアプリケーションだと言えよう。

本文にメモをつけようと思った場合、メモはテキスト、写真、およびビデオでも付けることができる。投稿したメモについては、他の利用者がプラス評価したり、あるいはマイナス評価したりすることもできるようになっている。メモを閲覧する立場からすると、人気の高いメモを簡単に見つけることができるわけだ。

ちなみに、最近はOysterやScribdのように「読み放題」オプションを提供するところも多いが、Gloseはそうしたメニューを提供していない。書籍の販売に関してはトラディショナルなモデルを採用しているわけだ。すなわち、GloseはOysterやScribdとは違うところを目指しているということなのだろう。販売スタイルについてはAmazonと直接競合するようなところで勝負しようとしているとも言える。

Gloseの提供するコミュニティ機能のために、他の電子書籍リーダーの利用者が移ってくるような事態になるのかどうかは今後を見守りたい。とりあえず、大手出版社ときちんと繋がっているところが、新たな機能を試みていることを評価しておきたい。新たな読書体験を見出そうと努力しているアプリケーションが、新たなコミュニティを築くことを期待していたいと思う。

原文へ

(翻訳:Maeda, H


TechCrunch Tokyoで若手独立系ベンチャーキャピタリスト2人にスタートアップの「今」を聞く

新聞やビジネス誌でも「ベンチャーブームの再来」なんて文字が踊るようになって久しい。たしかに数年前に始まったインキュベーションプログラムは成熟度が増して、そこから優秀なスタートアップが生まれつつある。10月末に開催されたのIncubate Campなども、僕は行けなかったのだけれども審査員やメディアからはサービスやプレゼンのレベルの高さについて聞くことも少なくなかった。またIPO市場を見ても、最近話題となった弁護士ドットコムとクラウドワークスのマザーズ上場を始めとして活況を呈している。もちろん上場までの期間を考えると、直近に創業した会社ばかりというわけでもないのだけれど。

佐俣アンリ氏

だが果たしてこれはブーム、つまり一過性のものなのだろうか。僕はそう思っていないし、そうならないためにできることはやっていきたいと思っている。僕たちがまず出来るのは、新しいプロダクト、サービスを生み出す人たちを取材して正しく伝えることだし、ベンチャー、スタートアップという東京の渋谷や六本木周辺を中心にしたコミュニティの”業界ごと”を“世の中ごと”にすることなんじゃないか。TechCrunchの編集部にジョインなんて記事で華々しくデビューしてしまった(させてもらった)者としてそう考えている。

僕が一過性だと思わない理由はスタートアップを取り巻くエコシステムの拡大だ。ベンチャーキャピタルやエンジェル投資家、インキュベーター、士業、監査法人、さらには大企業の新規事業担当者など、スタートアップを取り巻く環境はここ数年で大きくなり、正直取材をするだけでもひと苦労になっている。もちろん少なくないプレーヤーが失敗してはいるのだけれど、全体としてはより大きなものに成長している。投資額だってそれに合わせて大きくなっている。CrunchBaseにある地域ごとの投資マップ(こちらは2014年10月分)を見ても毎月の投資額がそれなりに大きいことが分かるし、CB Insightsの記事によると、東京での資金調達額も過去2年(2012年11月〜2013年10月と2013年11月〜2014年10月)を比較して約2割増だそうだ。

木下慶彦氏

さて、11月18日〜19日に開催するTechCrunch Tokyo 2014では、そのエコシステムの中から若手の独立系ベンチャーキャピタルにスポットを当てて、スタートアップを取り巻く環境について聞いてみたいと思う。11月18日夕方のセッション「独立系ベンチャーキャピタリストが語る投資の今とこれから」には、ANRI General Partnerの佐俣アンリ氏、Skyland Ventures 代表パートナーの木下慶彦氏に登壇頂く予定だ。2人はそれぞれ20代にして自らの手でベンチャーキャピタルを立ち上げ、投資を行ってきた。

ANRIは前述のクラウドワークスのほか、DeNAが買収したペロリなど、すでに投資先のイグジットの実績があるし、Skyland Venturesも投資先の八面六臂が7月にリクルートなどから4.5億円の調達。トランスリミットは対戦型脳トレアプリ「BrainWars」が現在世界500万ダウンロードを達成し、さらにLINEなどから3億円を調達。それぞれサービスの拡大を進めているところだ。

このセッションではそんな2人に、どうして自らベンチャーキャピタルを立ち上げるという選択肢を選んだのか、今どういった視点で投資を行っているのか、さらにはスタートアップを取り巻く環境の今とこれからについて聞いてみたいと思っている。開催まで間もないが是非とも2人の話を聞きにきて欲しい。

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TC Tokyoにメルカリ、スマニュー、BrainWarsが登場! 世界で勝負できるプロダクトの作り方とは?

photo by
Steve Cadman


左からトランスリミット高場大樹さん、メルカリ小泉文明さん、スマートニュース鈴木健さん

600万ダウンロードを超えたフリマアプリ「メルカリ」、500万ダウンロードに達したニュースアプリ「スマートニュース」やリアルタイム対戦型脳トレアプリ「BrainWars」――。3つのプロダクトに共通している点がある。いずれも海外市場を戦いの舞台としていることだ。これらのプロダクトを手がける3社が、「TechCrunch Tokyo 2014」2日目の11月19日に登場することが決まったので、お知らせしたい。

これまで、いくつものスタートアップが海外展開に挑戦してきたものの、そのほとんどは失敗に終わっている。そんな中、TechCrunchでも伝えたように、スマートニュースは10月にリリースした英語版が米App Storeのニュースカテゴリーの1位を獲得。米メディア界に豊富な人脈を持つメンバーを次々に採用するなど、人材面でも海外展開を加速していることが伺える。

BrainWarsはリアルタイムでのオンライン対戦が可能な脳トレゲームアプリ。友人や世界中のユーザーとリアルタイムのマッチングを行い、各種脳トレゲームの対戦スコアを競い合える。公開から5カ月で500万ダウンロードを突破し、海外ユーザー比率はなんと95%。米App Storeのゲームカテゴリで1位を獲得している。

BrainWarsを手がけるトランスリミット代表取締役の高場大樹さんは、創業当初のインタビューで「脳トレは非言語コミュニケーション。どこの国の人でも共通の土台で戦える。年齢も子どもから大人までカバーできるので提供範囲も広い」と語っていたが、その狙い通りに海外展開が進んでいるようだ。

10月にはLINEの投資ファンドなどから総額3億円を調達。LINE執行役員の舛田淳さんが「世界のポテンシャルをもっとも感じさせてくれるスタートアップ」と評価するように、海外市場を狙える数少ない日本のプロダクトの1つと言えそうだ。

国内のフリマアプリ市場で存在感を示すメルカリは、今年3月にサンフランシスコに子会社を設立。9月に米国でのサービスを開始した。メルカリ代表取締役社長の山田進太郎さんは、「何から何まで日本と事情が違う」と驚きつつも、1日の出品数が数千件に上るなど、順調な滑り出しを見せている。立て続けに実施した大型資金調達を受け、米国でのマーケティングを本格化していくそうだ。

TechCrunch Tokyo 2014では、スマートニュース代表取締役の鈴木健さん、トランスリミット代表取締役の高場大樹さん、メルカリ取締役の小泉文明さんにご登壇いただき、世界市場で戦えるスタートアップに必要なものは何なのか、といった話を伺う予定だ。

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イーロン・マスク、「SpaceXがインターネット接続用低価格小型衛星を開発」という報道を確認


テスラ・モーターズのCEO、イーロン・マスクのもう一つのスタートアップであるSpaceXは手頃な料金による宇宙旅行の実現を目指している。今日(米国時間11/11)、マスクはTwitterでSpaceXが「大量に打ち上げられてネットワークを組んで機能する進歩したマイクロ衛星」の開発に取り組んでいることを明らかにした。正式発表は2、3ヶ月先になるという。このマイクロ衛星は「超低価格のインターネット接続を提供するために用いられる」ということだ。

マスクのツイートは数日前にWall Street Journalが掲載した記事〔有料会員向け〕に対するコメントだ。WSJはこの記事で、SpaceXは世界のいたるところにインターネット接続をもたらすことができる小型低価格の衛星を開発中だとしていた。

記事は「マスクは元Google Inc幹部でWorldVu衛星を開発中のGreg Wylerと協力している」と報じている。またこの小型衛星は1基110kg程度で、SpaceXはこれを700個ほど打ち上げる計画だという。この重量は現在の最小の通信衛星のさらに半分程度だ。700基という数は、現在最大の通信衛星ネットワークであるIridiumの10倍にも上る。ただしマスクは「WSJの記事には重大な間違いがいくつもある」ともツイートしている。ただし、どこが間違いなのかは明かしていない。

〔日本版〕WorldVu衛星ネットワークは当初、Googleの関与が噂されていた。Greg Wylerは2007年に創立されたO3b衛星ネットワーク・システムの共同ファウンダーで、2013年には最初の4基の衛星の打ち上げに成功している。Googleが最大の出資者となり、Wylerらはこれを機にGoogleに入社した。しかしその年のうちにWylerらO3b出身者はGoogleを離れてWorldVuに移籍した。GoogleとWorldVuの関係は明らかではない。一方Googleは今年6月に画像衛星のスタートアップ、Skyboxを買収している。

[原文へ]

(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+


自己消滅メッセージに、アニメーション機能を追加して世に問うBoop

Snapchatの登場によって広まった、自己消滅型のメッセージアプリケーションはいろいろなものが登場してきている。バリエーションもそろそろ尽きるだろうと思われる中、インターネットでの「忘れられる権利」との絡みもあり、まだまだ新しいものが登場してくるようだ。

たとえば少し前にはTapkastの記事を掲載した。これは誕生当時のTwitterが目的としていたように、友人たちにステータスアップデートのメッセージを送ることを目的としたものだ。ステータスアップデートは所定の時間が過ぎれば消えてしまう。

そして今回紹介するのはBoopだ。自己消滅アプリケーションに、ちょっと面白い仕組みを組み込んだものだと言えるのではないだろうか。iOS版Android版があるのだが、メッセージがアニメーション形式で表示されるのだ。文章を表示する際、1語ずつ画面に表示されるのだ(絵文字にも対応)。1語ずつ表示するという仕組みも、さらにスクリーンキャプチャがしにくいといった側面も、ともに「自己消滅型」っぽさをアピールする仕掛けだと言えるのではなかろうか。

(訳注:日本語の場合、スペースで区切ると区切り毎にメッセージが表示されるようになります。そしてこのワンワード毎に表示するスタイルは、なかなか面白くも感じます)

「自己消滅型メッセージサービスにはいろいろな魅力があって、まだまだ利用者にアピールできるところがあると考えているのです」と、Boopの共同クリエーターであるDave Ganlyは言っている。「シンプルな使い方でありながら、これまでにはない特徴を備えたプライベートなメッセージングアプリケーションを生み出したかったのです。コミュニケーションに新たな面白さを投入できたのではないかと思うのです」。

確かに、Boopは遊び心を感じさせてくれる。

ちなみに、筆者はこのBoopを通じてGanlyにインタビューをしてみた。画面上を文字がどんどん流れていってしまい、全部を覚えておくなどということはとてもできなかった。しかし後で気づいたのだが、実はアニメーション速度はセットできるらしい。将来的には電話番号と利用者名をリンクして、スマートフォンに保存しているアドレス帳に基づいた友達設定などもできるようにするつもりであるようだ。

「テキスト版スナップチャットというイメージでとらえてもらって間違いはないかと思います。スナップチャットが本家とも言うべき存在ですが、Boopもオリジナルな機能を付け加えています」とGanlyは述べている。「自己消滅型という面では同じ機能を持つわけですが、アニメーションを導入して、若者に一層フォーカスしたスタンスをアピールしているのです」。

(Update:同様の機能を持つものにHumbugがあるようだ)

Boopは無料アプリケーションで、とくに収益の仕組みなどが寝られているわけではない。Ganlyにとっても、「面白そうなことの実験」をしてみようとしたレベルのものであはあるようだ。しかし開発母体は十分な体力を備えているようではある(以前にも実験的アプリケーションとして、ミームジェネレーターのYarrlyをリリースしたりもしている。

Boopにどれほどの注目が集まるものなのかどうかについてはまだわからない。しかしAPIも準備中であり、ベータ段階に近いレベルにあるとのことだ。APIを実装することで、天気をBoopしたり、Apple StoreでのiPhoneの在庫状況チェックなどにも使えるようになるだろう。「当初より絵文字には対応しています。これに加えてステッカーなどのスポンサード・ブープなども使えるように準備しているのです」とのことだった。

原文へ

(翻訳:Maeda, H