自転車シェアリングのパイオニアMobikeが国際事業をすべて閉鎖し中国に退却

自転車共有に関する状況が変化する顕著な兆候の中、かつては何十億ドルもの投資を引き寄せたホットなスタートアップであるMobikeは、すべての国際事業を閉鎖して、中国に焦点を絞りつつある。

米国時間3月8日に、Mobikeはアジア太平洋地域の業務を担うチームをレイオフした。その中には、シンガポール、マレーシア、タイ、インド、そしてオーストラリアにまたがる15人以上の正社員、それよりずっと多くの契約社員、そして代理店のスタッフが含まれている。この状況を良く知る5人がTechCrunchに語ったところによると、当事者にも事業後退の理由は告げられることなく、会社はその地域でのビジネスを「縮小」することにしたという。

今回のレイオフは、国際拠点を閉鎖するというMobikeの最終的な目標に向けた重要なステップだ。というのも、アジア太平洋地域は、Mobikeの中国以外のビジネスの主要な部分を占めているからだ。さらなる人員削減が、アジア以外、おそらくヨーロッパや米国を含む地域でも差し迫っているという話が、2つの情報源からもたらされている。最終的にMobikeは、元来の中国でのみ事業を続けることになるだろう。そもそも、国際的に見ても、それがビジネス全体の大部分を占めている。

こうした戦略の変化は、この中国の自転車共有会社が、これまでの1年に経験した悪戦苦闘を集約したものだろう。それでもMobikeは、同類の会社の中では最も成功した方だと言われている。11カ月前に、中国の大手配送会社Meituanに27億ドルで最終的に買収されるまでの間に、Tencent、Foxconn、Hillhouse Capital、Warburg Pincusといった投資家から、9億ドル以上を調達していた。2017年には、自転車共有がホットな話題になっていたからだ。しかし結局のところ、競争は激しく、財務的にも苦しかったので、Mobikeは持続可能なビジネスモデルを見つけることができなかったのだ。

写真ソース:Mobike

従業員たちは、Mobikeの見通しは明るく、給与にも問題はなく、その他の財政的な懸念も見当たらない、という印象を持っていたので、金曜日の通告には困惑している。特にシンガポールでは、自転車共有用アプリが大人気で、この都市国家の環境改善に役立つものとして、政府とも密接に協力してた。

「私はショックを受けています。私から見れば、ビジネスは順調でした」と、情報源の一人はTechCrunchに語った。「しかし、1つの国でうまくいっているからといって、その地域全体が生き残るというわけでもないのです。Mobikeは、海外の地域の損益について多くの分析を行い、黒字に転じる方法はないという結論に達したのです」。

ほんの1年前まで展望は明るかった。中国で、近隣サービスのワンストップアプリを展開するMeituanがMobikeを買収したとき、それは、その若いスタートアップにとって大成功だと広く認められた。というのも、中国の同業のOfoは、独立した企業としてやっていくための折り重なるような財政的圧力に苦しんでいたからだ。Ofoは、昨年から、その国際業務を段階的に縮小し始めていて、近々破産の準備をしていると伝えられていた。

それから間もなく、Meituanはモビリティの分野で抑制を示し始めた。香港に上場するこの会社は、コスト削減の一環として、食料品の配達とホテル予約に集中し、ドックレスの貸自転車と配車業務の拡大は休止すると発表した。この自転車部門は、Hellobikeとの激化する競争にさらされていた。それはAlibabaが、中国の2輪車業界に殴り込みをかけるための会社だ。

こうした困難にもかかわらず、Mobikeのアジア太平洋地域の従業員は、海外事業は芽を出すものと信じていた、とTechCruchに語った。彼らは、ここ数ヶ月の間、会社の業務を効率化する仕事を任され、「大きなコスト削減と進歩」を達成していたからだ。

写真ソース:Mobike

そうした当事者は、じっくり考える時間も与えられず、会社の「一方的な」決定に対して、「取り乱し」て「混乱」した状態にある。それらのスタッフは、交渉の機会を与えられておらず、そのほとんどは4月中旬までに職を離れることになると、TechCrunchは把握している。そして、限られた数の「キーとなる」従業員が、その「減少」処理の完了まで留まることになる。退職に際しての手当は、解雇の日付によって異なるものの、契約が定める30日よりも前に通知が到着しているため、何の補償も受けられない社員もいる。

この地域のビジネスを閉鎖するというMeituanの決定は、この会社にとってリスクの高い動きと考えられる。Mobikeの中国外の市場として最大のシンガポールでは、この自転車共有会社が実際に撤退する前に、政府に退却の計画書を提出する必要がある。金曜日の時点でMobikeは、シンガポール陸運局にレイオフ計画を知らせていない、ということが2つの情報源から明らかになっている。ただし、すでに撤退の可能性については、運輸取締当局と協議していたとのことだ。Mobikeは、陸運局に公式に通知するまでは、従業員に人員削減について口外しないように指示した。

Meituanは、このことについてのコメントを拒否した。同社は月曜日に収益を報告する予定となっているので、その時点で状況がより明らかになるかもしれない。

画像クレジット:Facebook中のMobike

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

中国では2020年までに農村地でもキャッシュレスが浸透

中国では、かなり遠くの小さな村の住人も日々の細々とした支払いをスマホで済ませられるようになるかもしれない。中国政府は今月、2020年末までに農村部のどこででもモバイル支払いができるようにする、と発表した。

この計画は、中国のトップ5の規制団体(中央銀行、銀行・保険規制委員会、証券監督管理委員会、財務省、農業農村部)が共同で発行したガイドライン(リンク先は中国語)に基づくもので、農村部の住人がオンラインの金融サービスにアクセスしやすくするためのものだ。

肥料を購入するためのローンからデベロッパーへの土地リースまで、農村部の暮らしをデジタル化するというのが理想で、これにより中国は小さな町や田舎の経済を活性化できるかもしれない。田舎に住む何億もの人が夢や稼げる仕事を求めて都市部に流れ込んできているが、2017年時点では中国全国の人口の42%が農村部に暮らしている。デジタル決済は大都市ではすでに一般的になっているが、地方においては成長余地はまだだいぶ残っている。中央銀行が発表したレポートによると、中国全土では2017年に成人の76.9%がデジタル支払いを利用した。しかし農村部に限ってみると66.5%だった。

デジタル支払いを進める取り組みは、中国のその年の優先課題を概説するナンバー・ワン・ドキュメント(リンク先は中国語)に基づいている。過去16年間、中国はこの文書では農村部の経済を優先に扱ってきて、デジタルの取り込みは主要目標の一つであり続けている。より具体的にいうと、政府は地方行政にインターネットの浸透、公共サービスのデジタル化、農村部の産品の大都市の消費者への販売を強化してほしいと考えている。

そうした方針は民間企業に大きな機会をもたらしている。テック界の重鎮AlibabaとJD.comはすでに数年前に大都市以外にも目を向け始めた。両社とも地方の行政とロジスティスティックネットワーク構築で協力するとともに、農家が物品を売買できるオンラインチャネルをセットアップした。

特にAlibabaは、農村部の小売販売業者にマーチャンダイジングやマーケティング、サプライチェーンツールを提供するHuitongdaに投資した。Alibabaは過去3年で最も低い成長率の売上となったにもかかわらず、農村部でユーザー数を著しく増やしている。同様に、JDへの中国第3、4の都市からの注文は、北京や杭州のような第1、2の都市からのものよりも20%早く成長している、と同社は2017年に述べている。

他の小売業者も、農村部や中小の町でのサービスに初期に参入した。AlibabaとJDのすぐ後ろにつけている新興のeコマーススタートアップPinduoduoは、安い製品を売ることで未発展の地域で先行者利益を得た。TikTokの中国バージョンDouyinをライバルとしている、Tencentが支援するビデオアプリKuaishouでは農家が田舎暮らしを披露し、ライブストリーミングで生産物を販売することができるとあって、密かに人気を博している。

イメージクレジット: TechCrunch

原文へ 翻訳:Mizoguchi)

世界初のスマートハイウエイが中国に建設されるであろう理由

[著者:Hugh Harsono]
元金融アナリストであり現在はアメリカ陸軍士官。

中国は、急速な成長によって、既存のインフラに新技術を統合させるという意味において、世界でもっとも高度な柔軟性を持つ国となりつつある。機関や組織が比較的新しいため、中国では現在の、または将来実現する可能性のある技術を容易に受け入れることができるのだ。自律走行車両とそのための基準が現実化し始め、その技術を支えるためのインフラを、どのようにしたら適切に整備できるのかが考えられるようになった。そこに中国の成功のチャンスがある。変化に強いメカニズムを持ち、こうした新技術を大規模に組み入れる能力があるからだ。そこで、全世界の未来のインフラ計画の基準となるスマートハイウエイやスマート道路が確立されるのだ。

スマートハイウエイとは何か? なぜそれが必要なのか?

「スマートハイウエイ」という言葉の定義は定まっていないが、一般的には、交通用に使われている現在の道路に新しい技術を組み込むものと理解されている。たとえば、統合される技術の一部を挙げるなら、ソーラーパネルから電力を得る機能や、自律走行車両、センサー、構造物保全のための監視システムだ。スマートハイウエイは、各国々における輸送システムの屋台骨としてひとつの機能を提供しているハイウエイを、電力供給、安全のための機能、ドライバーと交通行政の双方に重要なデータを提供するといった付加価値をもたらすインフラに進化させる可能性がある。

Teslaの「オートパイロット」モードで事故を起こし人が亡くなった事件や、Uberの自律走行車両の試験運転中に歩行者を死なせてしまった事件があったが、スマートハイウエイなら安全性を高めるメカニズムを備えられる。自律走行車両とスマートハイウエイのセンサーとソフトウエアが組み合わされたなら、問題を特定して対策することができるはずだ。リアルタイムでフィードバックを送り、安全機能が働いて事故を予防する。少なくとも、ドライバーの怪我を軽減させることが可能だ。ドライバーに単純なコマンドを出すといった程度のことではない。それではヒューマンエラーを誘発しかねない恐れが残る。スマートハイウエイなら、スマートな車両と、センサーや路上に設備された技術を結びつけることで、ドライバーが運転困難な状況に陥った場合でも、完全に安全に対処するさまざまな手段を講じることが可能になる。

自律走行車が世界中に登場しだすと
スマートハイウエイの構想が世界中に広がった

自律走行車が世界中に登場しだすと、スマートハイウエイの構想が世界中に広がった。それに加えて、世界の電力消費量は拡大しており、2040年には電力需要は25パーセント以上高まると予想されている。同時に、化石燃料の消費量は減少し、再生可能エネルギー源の需要が高まる。その点、スマートハイウエイなら、地球上に張り巡らされた長大な道路を無駄なく利用できる。その広大な土地を二重に活用すれば、道路設備だけでなく、周辺の街や都市や、発電所にまでも電力を供給できる可能性がある。スマートハイウエイは持続可能なエネルギーの成長の機会を代表するものだ。重要な設備に電力を供給するだけでなく、その上を走る電気自動車の充電も可能になるだろう。

スマートハイウエイから集められたデータは、都市計画のための統計データとして大いに役立つ。交通の効率化や車両による環境汚染の低減などに寄与するだろう。スマートハイウエイがもたらす恩恵の一例として、車線の合流や高速道路の出入り口といった特異な場所における車の流れのリアルタイム分析が考えられる。それは、交通のボトルネックにおいて車両の停時間をできる限り短縮する、道路を最適化の研究に役立つ。

自律走行車両やその他のスマート技術が登場し、そうしたイノベーションを十分に統合して活用しようと思えば、スマートハイウエイが必然であることは単純な理屈だ。これは人の命を救うツールであり、ドライバーや歩行者の安全を守り、クリーンエネルギーの消費を増やし、持続可能性を高めるものだ。さらに、都市計画、道路計画、交通計画にも貢献する。

スマートハイウエイに使える製品は存在するのか?

スマートハイウエイの部材開発の試みは、数多く行われている。とくに、ソーラー道路やスマート交通インフラに特化した技術研究が多い。その多くは、良い結果と悪い結果の両方を生み出しており、さまざまな問題に直面している。その問題の代表は、実質的な発電効率とコストだ。

2014年10月、オランダはSolaRoad実験プロジェクトを立ち上げ、70メートルの自転車専用道路を建設した。このプロジェクトでは、最初の年で1万キロワット毎時に近い驚くべき発電量を記録した。そこからいくつものプロジェクトが派生し、2019年には交通量の多い道路での実験も予定されている。しかし、このプロジェクトはあくまでもソーラー道路に的を絞ったものであり、周辺地域に再生可能エネルギーを供給するといった、総合的なソーラーハイウエイを目指すものではない。

2016年9月、アイダホ州に本社を置くSolar Roadwaysは、アイダホ州サンディーポイントに14平方メートル近い道路を建設した。ところが、同社から米運輸省への報告書によると、「発電した電力の3分の1が、埋め込まれたLEDの点灯に使われた」とのことだった。これは発電効率に多大な影響を与え、6カ月間の発電量はわずか52.39キロワット毎時という結果を招いた。これがアメリカ国内の他のソーラー道路計画に波紋を広げ、ミズーリ州は、2017年にコンウェイ近くで予定していた計画を中止した。Solar Roadwaysが訴えていた「数々の複雑な行政手続の問題」も原因している。このプロジェクトは、エネルギー生産という点において、コストが高く発電効率は比較的低いという印象を多くの人たちに植え付けてしまった。

2016年12月、Hannah Solarとジョージア州交通省の出資によるWattwayを利用した50平方メートルのソーラーロードを建設し、The Rayが設立された。The Rayは、ジョージア州トループ郡を通る州間高速道路85号線の30キロメートルにのぼる部分をスマートハイウエイ化した。そこには電気自動車の充電ステーション、タイヤの安全確認ステーション、そしてもちろんソーラーロードを備えられ、現在もっとも充実したスマートハイウエイになっている。

さらに、2016年12月、フランスは、Colasというフランスの企業と合同で、およそ1キロメートルのソーラー道路をオープンした。しかし残念ながら、期待に応えることはできなかった。当初の見積もりでは1日あたり1万7963キロワット毎時の電力を生むはずだったのだが、実際には409キロワット毎時しか発電できなかったのだ。この建設と維持のためにフランス政府は数百万ユーロを費やしており、すでにソーラーパネルの5パーセントが破損して交換が必要な状態になっているという。

このように、世界中で行われているスマートハイウエイの試みには、限定的な成功しか収められないものもある。費用、官僚的な行政手続き、実質発電量、持続可能性など、こうしたプロジェクトの成功と失敗を分ける要素は、数多く存在する。

なぜ中国なのか:
インフラ建設の実績、施工の早さ、安定した製造能力

先進国に仲間入りしたい発展途上国である中国ならではの事情により、スマート技術には多大なる導入の好機が与えられている。「モバイル第一」の考え方が、デスクトップ型パソコンを持たない何億もの人々のインターネット利用を推進している中国は、新技術をいち早く、比較的効率的に実用化する能力を示している。そのため、本格的なスマートハイウエイを世界でもっとも早く建設できる国が中国である可能性は非常に高い。しかも中国は、独自のインフラ環境を持ち、新技術の導入に関しては行政手続が比較的柔軟であり、製造とサプライチェーンの基盤が強固で洗練されている。

中国東部の山東省にPavenergyQilu Transportationが建設し、2017年12月にオープンしたソーラー道路は、5875平方メートルという規模で、現在、世界でもっとも長い。今回の場合、中国の道路は固いコンクリート舗装なので、薄いソーラーセルを敷き詰めるのに都合がよかった。アスファルト舗装を採用しているアメリカのハイウエイと異なる点だ。この中国特有のインフラ環境は、ソーラー技術の比較的容易な施工を可能にしている。

さらに中国人は、昔から道路建設に長け、経験も豊富だ。中国国内の長大なハイウエイ網のみならず、中南米アフリカでも数多くの道路建設を行なっている。そこに、インフラ建設の仕事が早いという評判も加わる。57階建の高層ビルを19日間で建てた建設会社の記録もあれば、わずか9時間で鉄道の駅を作ったという記録もある。こうした他に類を見ないインフラ建設技術を考えると、世界初の本格的スマートハイウエイを建設するには、中国が理想的な場所と言える。

スマートハイウエイの建設においては
中国の製造業の力も成功の鍵となる

新技術の導入とイノベーションに関しては比較的柔軟な中国の行政手続も、中国が世界で初めてのスマートハイウエイを作る議論を後押しするだろう。中国では、モバイル第一の考え方が根付いている。2017年のモバイル端末によるインターネットの契約数は11億件だった(同時期のアメリカの契約件数のほぼ2倍)。中国人消費者は、コンピューターでよりも、携帯電話で買い物をすることが多いのも事実だ。中国政府も、モバイル第一技術のインフラ整備に積極的な役割を果たしている

ドローンの場合も、中国の民間航空局は、ドローン使用に関する明確なガイドラインと規制内容を2016年に発表している。西欧諸国のドローン利用に関するルールがまったく統一されていないのと対照的だ。国、州、郡、市などに独自のルールがあり、混乱するばかりか矛盾することすらある。この2つの事例から、いかにして中国が、新技術を国中に急速に普及させているかがわかる。しかも中国政府には、先を読み、新技術をいち早く取り入れる力がある。

スマートハイウエイの建設においては、中国の製造業の力も成功の鍵となる。その強力な製造能力は、一般向けの製品からiPhoneのような高級品の組み立て、そして今や、安価で発電効率の高いソーラーパネルの開発にいたるまで、数多くの成功を招いてきた。中国のサプライチェーンも驚くほど洗練されている。中国の工場は、製品の最初の部品を、わずか数キロ離れた工場から取り寄せたり、毎日数百万単位のパケケージを出荷したりと、最初から最後までが最適化されている。この圧倒的な効率化により、スマートハイウエイの鍵となる部品は中国の主要産業に成長した。現在、すべてのソーラーパネルのおよそ70パーセントが中国製だ。

さらに、中国はソーラー発電量でも世界をリードしている。2018年の最初の月だけで、新規のソーラー発電能力として34.5ギガワットが追加された。これは2017年の中国全体のソーラー発電量の53パーセントにあたり、2016年の全世界のソーラー発電量の50パーセントを上回る数値だ。中国でのソーラーパネルの大量生産能力は、中国のソーラー道路の大きな支えになっており、地方で素早く生産されたソーラーパネルが即座に地元の道路に、やがてはスマートハイウエイに設置できる形を作っている。群を抜く製造能力と発達したサプライチェーンを持つ中国こそ、世界初の本格的スマートハイウエイの建設場所になる可能性が高い。

しかし中国は、世界初のスマートハイウエイ建設のもっとも可能性が高いというだけではない。独特なインフラ環境、新技術をいち早く導入できる仕組み、世界に君臨する製造力とサプライチェーンを有するという、環境的にも最高の条件を整えている。

結論

自律走行車両の登場によりスマートハイウエイの構想が世界に広がり、より安全で効率的なドライブ環境を整備するためのセンサー、ソーラーパネル、ソフトウエアなど、あらゆる技術が投入されるようになった。ドバイでは、新技術の開発と既存のスマート技術を現在の交通システムに統合する計画を発表した。中国は、世界初ではないが、世界初のなかのひとつとして、浙江省の東部に161キロメートルのスマート道路を建設する計画を発表した。センサーと「車両のインターネット」とソーラーパネルを活用して、自律走行トラックのための安全機能を整えるという。

中国では、スマートハイウエイの主要部材であるソーラーパネルのイノベーションも進行しており、有機薄膜太陽電池で変換効率17.3パーセントを記録している。そのようなわけで、世界初の本格的スマートハイウエイは、スマート技術と既存の交通インフラをフルに統合する道を先導する形で、中国に建設されると結論づけることができる。

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(翻訳:金井哲夫)

WeChatやAlipayとも肩を並べる、中国の無名Wi-Fiスタートアップについて

無料Wi-Fiを提供するこのアプリには、世界中に8億人の月間アクティブユーザーがいる

利用者を無料でWi-Fiホットスポットに接続するあるサービスが、中国で最も人気のあるアプリのひとつになった。TencentのWeChatメッセンジャーや、Alibabaのデジタルウォレット関連のAlipayとランキングで肩を並べる順位だ。アプリ追跡サービスApp Annieのレポートによれば、WiFi Master Keyが2018年には、月間アクティブユーザー数で中国で5番目、世界では9番目にランクインしている。この順位は2017年でも同様であった。

アプリアニー中国2018

レポート:The State of Mobile 2019, App Annie

wifi.comといううらやましいドメインを所有している、その名が相応しいWiFi Master Keyは、上海に拠点を置く、あまり知られていないスタートアップLinkSureの製品である。このアプリを利用すれば、最も近いWi-Fiスポットにパスワード不要で接続することができる。さらにこのアプリは、ユーザーをロックインするために、過去の視聴習慣に基いて、ニュースやビデオのコンテンツを推奨する機能をもつ。これはByteDanceによるアルゴリズム駆動のJinri Toutiaoニュースアプリの機能に似ている。

中国の多くの消費者向けサービスと同様に、このアプリも無料で使用することができ、広告を通じて通信を収益化する。同社は中国内で7億人、そして世界にはそれ以外に1億人のMAUを持っていると主張している。比較のために挙げるなら、WeChatとAlipayはそれぞれ、世界中に約10億のMAUを抱えている。

このインターネット接続サービスのおかげで、2015年にLinkSureは、親会社の評価額10億ドルの下で、シリーズAラウンド5200万ドルを調達している。これは同社が設立されてからわずか2年後のことである。創業者のChen Danianは中国のインターネット黎明期からよく知られた人物だが、LinkSureはそれ以来さらなる資金調達を発表しておらず、比較的控えめな姿勢を保っている。Chen Danianは、兄弟であるChen Tianqiaoと共に、Tencentが台頭する前には中国最大オペレーターだったShanda Gamesを設立した人物だ。

11月には、ChenはLinkSureのCOOを辞任し、後任としてShandaの幹部だったWang Jingyingがその地位に就いた。女性が中国のハイテク産業でこうした華やかなCEOの地位に就任するのは珍しい。

パスワードを共有する

他人のネットワークを無料で利用するというアイデアはひとを不安にさせる(あまりにも話がうますぎると思わせるからだ)。だが現実はより微妙である。WiFi Master Keyはそのサイト上で、パスワードのデータベースを保存していると説明している(なお、それらのパスワードは暗号化されて利用者からは隠されている)。だが、そもそもそれはどのようにしてそうしたパスワードを集めているのだろうか?つまりそれはこういうことだ。誰かがログインのためにあるパスワードを入力するたびに、このインターネット接続アプリはその情報をクラウドに転送するのだ。もし誰かが、例えばコーヒーショップの店員から教えてもらったWi-Fiパスワードを入力すると、そのデータは保存され、その後そのカフェでアプリを利用する他の利用者たちによって共有されることになる。

無線LANマスターキー

接続を提供すること以外に、WiFi Master Keyはユーザーをロックインするために、ニュース、電子書籍、ビデオコンテンツも提供している。スクリーンショット:TechCrunch

こうした内部動作は、アプリに自分自身をWi-Fi「共有」サービスであると自称することを許し、遠隔ハッキングを行うものとは距離を置かせている。だがそれでも、そのデータ利用はユーザーのプライバシーに対する懸念を引き起こしている。昨年4月には、中国の国営テレビ局が、アプリが「パスワードを盗んでいる」とこきおろす25分の番組を放映した。これは、セキュリティ対策が不十分なすべてのWi-Fiクラウドソーシングサービスに対する、国家のサイバーセキュリティ監視機関による業界全体への一斉取締が行われた直後のことだった。

LinkSureは国による報告書を否定し、データを収集する前に常にユーザーの同意を求めていると語った。実際の生活で、あらゆる種類のアプリの長い使用条件を読んでいる人はほとんどいないことだろう、そしてデジタル技術に精通していなければ、アプリが本当はどのように動作するかを把握することはできないかもしれない。議論になっている主な点は、ユーザーがうっかり自宅のWi-Fiをパブリックなものにしてしまい、他人がデータを大量に使うアプリから、偶然そのネットワークにアクセスしてしまう場合である。WiFi Master Keyは、こうしたセキュリティ対策に関する電子メールでの問い合わせには回答していない。

クラウドソースWi-Fiを誰でも使えるようにすることとは別に、LinkSureは魅力的なデータブランを伴うSIMカードを、2つの主要キャリアと提携して提供している。このため同社は、大手通信企業と提携して利用者に安価もしくは無制限のデータ通信を提供することで、利用者を自社アプリの中に囲い込もうとしている、他のTencent、Alibaba、Baiduといった大手テック企業たちと、競合関係にある。

一方LinkSureは、SpaceXOneWebのように、宇宙から自分自身のインターネット接続を提供することを狙っている。この計画は、現在は地球上のネットワークではカバーされていない地域に住み、もうすぐオンラインの世界にやって来ようとしている、数十億人の僻地ユーザーをターゲットにしている。LinkSureは、2026年までに世界中で無料の衛星ネットワークを提供することを目指していることを発表した。最初の272個の人工衛星たちは今年後半に打ち上げられる予定である。

政府支援によるレポートによれば、中国国内でインターネットアクセスを行うひとの数は昨年6月に{0]8億200万人に達したが、それでもおよそ6億人がまだ未接続のままである。昨年は3000万人が初めてオンラインになったが、その数字には徐々にAliPayやWeChatが日常生活に入り込んできた増加する高齢者の層が含まれている。

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(翻訳:sako)

中国当局、世界初の遺伝子操作ベビーを違法と認定

中国政府は、世界初の遺伝子操作ベビーの誕生に成功したと主張して科学界を震撼させたHe Jiankui(賀建奎)の研究を、「個人的名声と利益」を求めた違法行為であると宣言した。捜査当局はHeの発表後の11月から開始した調査の予備段階を完了し、同研究者の法律違反を「厳重に」罰する方針であると発表した。月曜日(米国時間1/21)に中国の公式報道機関、Xinhua(新華社通信)が報じた

Heは深圳の南方科技大学で、遺伝子操作技術CRISPRを研究するチームを率いて、2016年中頃からガンなどの病気治療を試みてきた。本件をきっかけに地元および海外の投資家らが支援する同教授自身のバイオ技術スタートアップも大きく注目された。

捜査の結果Heは、倫理承認を捏造し、2017年3月から2018年11月の期間に臨床試験に協力するカップル8組を募集したことが明らかになった。実験の結果妊娠が2例、うち1例では双子が誕生し、もう1例の胎児はまだ生まれていない。5組のカップルは受精に至らず、1組は実験から離脱した。

Heのプロジェクトは世界中の科学者の間で激しく非難された。CRISPRは現在でも危険なほど非倫理的であり、重大な遺伝子損傷を起こす可能性がある。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

Doogeeのスマホは暗視カメラにもなる――タフなモジュラー式でKickstarterに登場

Doogeeは中国のメーカーだが、製品には面白いアイディアが豊富だ。S90はニッチなメインストリームを狙うスマートフォンではないかもしれないが、(もともと控えめだった)ゴールの何倍にもなる金額をKickstarterでプレッジすることに成功している。

モジュラー式というアイディアはMotorolaのMoto Zシリーズがパイオニアだろう。外付けモジュールはピンコネクターで本体の裏側に取り付けることができる。多彩なモジュールが用意されており、機能を大きく拡大する。

モジュールの大半はゲームパッドやバッテリーのように馴染みのある機能だが、たとえばバッテリー・モジュールは5,000mAhと大型だ。しかも屋外使用を前提にした頑丈なモデルだけに、それに特化したモジュールも用意されている。ナイトビジョン・カメラやウォーキートーキーもリストアップされている。セルラー網がカバーしていない地域でもウォーキートーキーを装備したS90同士ではコミュニケーションが可能だ。上のビデオでモジュールの取り付けや操作の様子を見ることができる。

Doogeeでは2月中の出荷を目指している。

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滑川海彦@Facebook Google+

Appleのだんだん怪しくなる国際取り引き

新興市場や中国でのトラブルからは遠く離れた場所で、Appleは、本当にコアな支持者層であるべき人たちの怒りを集めている。それは、数年前からTim Cookが一般向けの講演で表明してきた、プライバシーを尊重する姿勢に必然的に賛同する人たちだ。彼らは、Cookは偽善者だと責めている。

この人たちは、この問題さえなければヨーロッパの忠実なるiPhoneユーザーなのだが、Appleは彼らに十分なプライバシーを提供していない。

こうしたユーザーたちは、iPhoneの中核的要素の選択の幅を求めている。たとえば、iOSのSafariのように、デフォルトに設定できる検索エンジンの種類だ(現在Appleでは、Google、Yahoo、Bing、DuckDuckGoの4つの選択肢を提供しているが、すべてアメリカ製の検索エンジンだ。広告テクノロジーの巨人Googleはデフォルトに設定されている)。

また、Appleが主張するプライバシーを重視したデザイン哲学を覆すようなデフォルト設定にも、非難が集まっている。そのひとつがiOSの位置情報サービスの設定だ。ひと度これを有効にすると、関連するサブメニューの項目も知らぬ間に有効になる。これには、位置ベースのAppleの広告も含まれている。そこに記されている同意の内容は、事前の情報に基づく同意のときとは、まったく違うものになっている……

https://platform.twitter.com/widgets.js

私的にはAppleはリーダーなのだが、検索エンジンでAppleが選択したiOS SafariをiOSユーザーが無効にできない理由を知りたい。
「このデバイスで位置情報サービスを有効にすると、Appleとそのパートナー、ライセンシーがあなたの位置情報および位置検索のクエリーを、位置ベースまたは交通状況ベースの製品およびサービスの提供と改善のための転送、収集、維持管理、処理、使用することに同意したものとみなされます」

すべての人を同時に満足させることはできないと言うが、飽和状態のスマートフォン市場で生まれた新しい「常識」は、アプローチの再構成を迫る新たなプレッシャーになっている。

今後は、収益の増加とユーザーのつなぎとめに努力することが、ステップアップの唯一の手段となるのは明らかだ。そのため、行きつ戻りつのサービス提供が今後の成長には欠かせないこのハイテク最大手企業にとって、こうした問題さえなければ忠実なユーザーたちを満足させ、(決定的なこととして)彼らに自分たちの意見が届いていると感じさせ、自分たちが大切にされているという感覚を持たせることが、ますます重要になる。

(少くとも、Appleから奇跡のようなハードウエア……それはまだ誰も知らないが、スマートフォン級の需要を再燃させる何か……の登場は、中期的な時間の枠内では考えられない。スマートフォンの汎用性と機能性が大変に高いからだ。ゆえに、Appleの最大の成功が、今や最大の障害にもなっている)

スマートフォンの買い替え頻度が低下している今、自然の成り行きとして、サービスによる収益増加というプレッシャーがCookにかかってくる。言い換えればそれは、Apple本社が周囲に言いふらしている中核的な原則に関するプレッシャーでもある。

しかし、その原則なくしては、Appleが人々の注目を集める高級ブランドとしての魅力は消えてしまう。そうなれば間違いなく破滅だ。

コントロールの変化

主流の一般ユーザーが使いやすいようにiOSの一部のコントロールを制限していたことが、Appleの成功を長期的に支えてきたのは事実だ。しかし、iOSが次第に複雑化し、すべてが自分の支配下になければ気が済まない人たちが離れてしまったのも事実だ。

たとえばキーボードなど、これまで固定されていた要素がオープンになり、タイピング方法を自分で決めたいユーザーのために、サードパーティー製キーボードがインストールできるようになった。

こうした変化は、好きな検索エンジンをデフォルトに設定できないという制限を浮き彫りにし、Appleは、ユーザーエクスペリエンスの観点から正当性を訴えることが、次第に困難になってきた。

しかし、ビジネスの観点からすれば、Googleに検索エンジンのデフォルトという特別待遇を与えることで、Appleは巨額の利益を得ている。それは大変な額だと伝えられている。2018年は90億ドル(約9707億円)とも言われているが、確認は取れていない。当然のことながら、どちらの側からも取り引きの条件を公表する気はないようだ。

Appleの問題は、Googleから間接的な利益を得る代償として、Appleが擁護すると断言したユーザーのプライバシーが損なわれるところにある。広告の王者であるGoogleは、Appleに金を払うことでiOSユーザーの検索ワードをデフォルトで吸い上げる。これでは言っていることと違う。

プライバシーは、信頼あるAppleブランドの中核をなすものであるはずだ。

Cook自身も、一般に向けて強い口調で「データ工業団地」を非難してきた。しかし、間接的ではあっても、時として利益のためにユーザーのデータを売り渡しているという不都合な話には触れていない。

2017年、AppleはSiriのウェブ検索を、BingからGoogleに切り替えた。ユーザーのプライバシー保護に関してどんなうまい言葉を使ったとしても、西側のインターネットで最大のデータ商人との取り引き関係に依存していることに変わりはない。

これだけで、偽善者と呼ばれるには十分だ。

もちろんAppleは、トラッキングをしない検索エンジンを使いたい人のために、DuckDuckGo(DDG)も選択できるようにしている。これは2014年のiOS 8からの対応だ。

成長途中の、しかしまだ非常にニッチな製品を、主流の一般消費者向け製品に採り入れることは、Appleが自らの言葉を守り、プライバシーの保護を一番に思っている一例とも言える。

3大データ商人とも言うべきハイテク最大手企業の中にDDGスタートアップが現れたことで、事情に詳しいiOSユーザーは、それ以来Googleに中指を立てることが可能になった。つまりAppleは、プライバシーに敏感なユーザーに製品を買い続けてもらう状態を維持できたのだ(Appleの事業方針を完全に受け入れたわけではないが)。

しかし、そんなAppleの妥協的なポジションも、次第に危うくなっているように見える。

熾烈な値下げ競争を繰り広げ、データ商人のおかげで初期投資費用がずっと低く、それでも機能的にはほぼ同等のAndroidスマートフォンが台頭してきたこの時代に、Appleがブランドの差別化の大きな柱にプライバシー保護を据えようと思わなければ、その地位を守るのは難しい。

さらに、Appleの最上級iPhoneの価格が1000ドルを超えるという問題も見過ごすことはできない。デフォルトで自分のデータを売り渡すことがないとしても、1000ドル以上という価格は非常に高く感じられるが、他社製品との差額によって得られるものには、ピカピカのガラス筐体以上の価値があってしかるべきだ。しかし、実際のiPhoneは、そんな電話機ではない。デフォルトでは違う。

Appleは、プライバシーにもっとも敏感なiPhoneユーザーは、Google色の強いAndroidスマートフォンには手を出さず、選択肢が少なくてもiOS機器を選ばざるを得ない、事実上の専属市場だと思っているのかも知れない。たしかにそうだが、そんなiPhoneユーザーにAppleがより多くの高額なサービスを提供すれば、この飽和状態のスマートフォン市場で買い替えによる収益が上げられるかといえば、その保証はない。

最高の上客をそんなことで怒らせてしまえば、熱心に製品を買ってくれるユーザーは、控えめに言っても、目先のことしか見ない気の短い人たちばかりになってしまう。

しかし、Googleが検索市場を支配してる中で、Googleをデフォルトの検索エンジンから外せば、Appleの事業の存在意味を持つ主要なユーザー層の大半に楯突くことになる。

この理屈からすれば、ほとんどのインターネットユーザーはGoogleの検索エンジンをデフォルトとして使っているため、Googleをデフォルトの位置から動かすことはできなくなる。

実際、Cookは、昨年末、HBOが配信するニュース番組AXIOSのインタビューで、その取り決めの継続について聞かれたとき、はっきりとこう答えている。「彼らの検索エンジンは最高だよ」

彼はまた、近年、プライバシー保護のためのさまざまな機能をAppleのソフトウエアに組み込んでいると主張した。プライベートブラウズやスマートなトラッキング防止機能だが、それらはデータ商人に対抗するものだと彼は話している。

とは言え、それは血に飢えた吸血鬼を家に招き入れてから、家のまわりにニンニクのかけらを2つ3つばら撒くようなものだ。Cook自身も、その取り決めは「完璧」ではないとすでに認めている。

明らかに矛盾がある。しかし、Appleの儲けを考えば、これに限って言えば大した矛盾ではない。

このとこから、Appleの目は四半期のバランスシートと、ますます重要性を持つサービス関連の商品に向けられていることが想像できる。Appleが主張しているような長期的な視野ではなく、この完璧でないが儲かる取り決めを継続する姿勢だ。今週、株主に向けて発表されたCookの挨拶状には、こう書かれていた。「私たちは長期にわたりAppleを運営しており、逆境の折りには必ずそれを好機ととらえ、私たちが持つ柔軟性、適応性、創造性の文化を活かして、そこからよりよい結果を生み出すよう、自らの方針の再検討を行ってきました」

もし、Googleの検索製品が最高のものであり、Appleがデータ工業団地を非難することでプライバシーのモラル基準を高く保ちたいと望むなら、主流派ユーザーのためのサービスを今のままの取り引きで継続しつつ、Googleからの数十億ドルの資金を、人をプロファイリングする広告テクノロジーの巨大企業がもっとも嫌うプライバシー保護法の維持と強化のために奮闘している消費者やデジタル人権団体に寄付するという手がある。

しかし、株主はこの薬を好まないかも知れない。

投資家の口に合うのは、Appleが検索エンジンの選択肢を増やすことで活動の場を広げ、プライバシー保護に力を入れた、Googleに取って代わる検索エンジンを迎え入れるという策だろう。

またこの選択を、無数のユーザーに難しい駆け引きを持ちかけるようにデザインすることもできる。たとえば、デバイスの設定時に、インターネットでの検索をデフォルトでプライベートにするか、それともGoogleを使うかを積極的に尋ねるのだ。

それを実行したとき、想像を超える数のユーザーが検索エンジンのデフォルトにGoogleを選ばなくなることが想像できる。

たとえば、トラッキングを行わない検索エンジンであるDDGは、この数年間、着実に成長し、昨年の秋には一日に3000万件の検索を記録した。前年比で最大50パーセントの伸びだ。

AppleとGoogleの協定は守秘義務契約のもとに交わされていることを考えると(こうした協定では当然のことで、DDGもAppleとの取り決めの内容を詳しく話すことはできないと言っている)、Googleの条件の中に、iOSユーザーが選択できる検索エンジンの数に制限があるかどうかも不明だ。

しかし、少くともGoogleはAppleに金を払うことで、iOSユーザーがデフォルトに指定できるライバルのリストに制限を加えさせている可能性はある(最近になってGoogleは、反競争契約によりAndroid OEM製品での、検索エンジンを含むGoogle製品に代わる製品の利用機能に制限を課したとして、ヨーロッパでお仕置きを受けている。だから、検索エンジンに関してGoogleには前科があるのだ)。

同様に、Googleが中国で検索エンジンを再開するとしたら(本当に行うかどうかはっきり言わないのだが)、GoogleはAppleにデフォルトの座を渡すように要請してくるだろう。

しかし、それを押しのけるだけの強い理由がAppleにはある。中国市場ではGoogleは小魚も同然なのだ(現在Appleは、中国のiOSユーザーのために、現地の大手検索エンジンBaiduをデフォルトにしている)。

したがって、iOSを取り巻く現在の検索エンジンの構図は、Cookが望んでいるものよりも、少しぼやけている。

地元の好み

中国のケースは面白い。その市場でのApple成長の奮闘の様子を見ると、高級ブランドとしてのプライバシー保護の方向性とは、まったく別の方角を向いている。

中国では、なんでもありのスイス・アーミーナイフ的なWeChatプラットフォームのおかげで、物事はとても便利にできている。明らかにこれが消費者の方向性を決めている。そしてそれは今、中国市場でのAppleの事業の逆風にもなっている。

同時に、中国のユーザーはインターネット上でなんかしらのプラバシーがあるという考えは、国家による検閲があり、それが日常化しているその市場では、実質的にあり得ない。

それでもAppleは中国でビジネスを展開していて、さらなる偽善のためのコストとの釣り合いをとっている。

今週、改定された目標では、Appleの事業展開にとって重要な中国と新興市場にスポットを当てただけだった。原則に基づく行動は、どうも無理そうだ。

成長目覚ましい新興市場を重視することで、Appleは、公表している原則に反する方向に強く出ざるを得なくなる。プライバシーとは、どんだけ高価なのだろう?

はっきり言えるのは、飽和状態のスマートフォン市場で成長を遂ようとすれば、誰だって狡猾に立ち回らなければならない。とくにAppleは、未知の駆け引きや落とし穴に遭遇するリスクを負う。

株主に向けた挨拶状から推測れば、中国での交渉にはまったく新しいアプローチが必要になるとCookは考えているようだ。

こうした新しい「常識」により、飽和状態にあり単調なスマートフォン市場で差別化をはかるひとつの方法として、さらなる現地化が重要になる。

「すべての人にフィットするひとつの規格」というAppleの古い哲学は、今や一部のユーザーには時代遅れな考えとなり、多極化する前線においては足手まといで危険ですらある。ソフトウエアの「イノベーション」とプライバシーの原則を守るという主義に徹したいなら別だが。

検索エンジンの選択の幅を恣意的に制限していることが、ひとつのことを示している。なぜ、iOSはユーザーに自由に選ばせてくれないのか?

もしかして、Googleからの巨額の資金がそれを阻んでいるのか?

フランスのiPhoneユーザーの場合は、また複雑だ。フランスでは、使用できるキーボードアプリの数が非常に多い。有名どころのものから、チマチマした表面的に装飾されたものや、ネオンのように光るLEDキーボードスキンに、絵文字やGIFに取り憑かれたようなものまである。しかし、フランスで開発されたプライバシー保護を謳う検索エンジンQwantを、iPhoneのネイティブのブラウザーで使おうとすると、何かを検索するたびにQwantのウェブページに移動しなければならないという不便を強いられる。

Google検索は、おそらく世界(中国を除く)の平均的iOSユーザーにとって最善のものだろう。しかし、個人に特化した、個人を中心とした技術が発達し始めている現在、消費者の要求はこれまでよりも多くなり、個人が好きなものを自由に選ぶことに意義を挟むことは大変に難しくなっている。

ヨーロッパでは、改定された一般データ保護規則(GDPR)も警戒しなければならない。そのために、今日主流の広告テクノロジーのビジネスモデルは、さらに再構築が必要になるだろう。

この件に関してQwantは、トラッキングをさせない検索エンジンのライバルであるDDGでも、アメリカのCLOUD法に基づきAWSクラウドサービスを使ってユーザーの検索ワードを政府が検閲を行ったとき、どう対処できるのかと疑問を呈している(2年前、この件に関してGithubの討論スレッドでは、DDGの創設者がサーバーは世界中にあると話していた。彼は「ヨーロッパにいる人は、ヨーロッパのサーバーに接続されます」と言っている。DDGは個人データを一切収集しないので、CLOUD法に基づいてAWSからデータを抽出しようとしても、限られたものしか出てこないと繰り返し訴えていた)。

QwantがSafari iOSリストへの検索エンジンの掲載を求めたときの反応を聞くと、(間接的ながら)返ってきた反応をQwantは我々に話してくれた。「私たちはAppleにとって、あまりにもヨーロッパ的すぎるとのことです」(Appleは、iOSユーザーの検索エンジンの選択の自由に関してコメントをしていない)。

「もっとアメリカンになるように努力しなければなりません」と、クパチーノのApple本社から立ち上る狼煙の意味を解釈して、Qwantの共同創設者でCEOのEric Leandriは話していた。

「Appleが、ユーザーに同じエクスペリエンスを届けたいと考えていることは理解できます……。しかし、今もし私がAppleの人間だったら、ユーザーのプライバシーを守るという点においては、私には従いたい信念があります。まずは、ヨーロッパを、個人データに関する考え方が異なる人々の市場だと捉えることから始めるのです」と彼は話す。

「Appleはこれまで数多くの努力をしてきました。たとえば、アプリケーション同士でのデータのやり取りを、非常に厳格な反トラッキング指針に従って禁止してきました。またAppleは、クッキーやトラッキングの防止を確実にし、iOSではそれらを非常に困難にするという努力も重ねてきました。そして、最後にAppleに残った問題が、Google検索です」

「なのでAppleには、ひとつですべてを満足させるという方針とは別の考え方として、私たちの提案を見て欲しいのです。なぜなら、もはや私たちは、ひとつですべてを満足させられるとは思っていないからです」

Qwantもまた、この市場に関する小さな逆境を好機として、よりよいAppleが生まれることを期待している。

[原文へ]

(翻訳:金井哲夫)

Huaweiの新年ツイートはiPhoneからだった――最悪のタイミングで大ミス

われれが予想したとおり 、発信元OSを表示するTwitterの新機能はiOS対Android戦争を再燃させただけでなく、両陣営のブランドにもダメージを与えた。

LGが後援する韓国の人気バンドがiPhoneから、Apple MusicのスタッフがAndoroidからツイートしたことが暴露された後、Huaweiが最新の被害者となった。大晦日の夜の新年を祝うメッセージがiPhoneからツイートされていたことがわかった。

その後削除されたHuaweiのツイートにはクライアントがTwitter for iPhoneと表示されており、iPhoneから発信された動かぬ証拠となった。その後同じメッセージがTwitter Media Studioという別のクライアントから改めてアップされている。こちらは手強いライバルのスマートフォンをサポートしていない。しかしHuaweiのブランド・イメージが傷ついたことは間違いない。.

インターネットの定石どおり、大勢がミスに気づき、スクリーンショットが保存され、画像付きで矛盾を指摘するツイートが相次いだ。ことに中国のSNS、微博(Weibo)にはこのミスを揶揄する投稿が溢れた

huawei

失態に気づいたHuaweiではツイートを差し替えると同時に、Reutersによれば、責任者を処分したという。

Reutersが入手したメモによれば、この失敗の責任者2名が 5000元(730ドル)の制裁金を課された。2名のうち1名はHuaweiのデジタル・マーケティング・ディレクターで、向こう1年間の昇給停止処分も受けた。われわれは給与の正確が内訳を知らないので730ドルの罰金というのがどの程度の処罰なのかわからない。iPhoneの値段より安いのではないかと思うが、痛いことは痛いだろう。Huaweiの上級副社長、Chen Lifangは「ブランドに打撃を与えた」と述べたが、皮肉なことに、Huaweiが直接犯したミスではなかった。

Reutersによれば、外注先のエラーだった。

Huaweiのメモによれば、同社がSNS投稿処理を外注していた代理店、SapientでVPNに障害が起き、デスクトップ・パソコンが使えなかったため、新年が始まる真夜中に間に合わせるためにiPhoneを使ったのだという。

中国政府の規制強化により、Appleは中国のApp StoreからVPNアプリをほぼ全面的に排除している。つまり、皮肉なことに、中国国内からTwitterにアクセスするならiPhoneよりAndroidを使ったほうが楽だったはずだ。ところがSapientは中国政府の監視網、グレート・ファイアウォールを潜り抜けようとしてわざわざ香港製のSIMを入手した。これが上述の失態の直接の原因だという。

メーカーがライバルの製品を使って失敗するというのはよくある笑い話だが、今回の事件はHuaweiにとって最悪のタイミングで起きた。

創業者の娘であるCFOはカナダで逮捕されて保釈中だが、アメリカから引き渡し要請が出ている。容疑となっている金融詐欺は有罪なら最高30年の刑だ。しかも本業のビジネス自体が強い逆風にさらされている。

一般にはHuaweiはスマートフォン・メーカーとして知られており、IDCによれば、2018年第3四半期に世界で2位、14.6%のシェアを獲得している。しかし事業の最大の柱はテレコム機器だ。ところが安全保障上のリスクを理由としてこの事業の将来に不透明さが増している。.ファイブ・アイズと呼ばれるオーストラリア、カナダ、ニュージーランド、イギリス、アメリカ、5ヵ国情報機関のトップはZTEとHuaweiのテレコム機器を禁止することで合意した。この動きには日本のような同盟国も加わると報じられている。

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滑川海彦@Facebook Google+

Appleの売上減少で米株式市場急落

Appleの悪いニュース海外および国内市場の成長鈍化によって、木曜日(米国時間1/3)の株価はあらゆる主要市場で急落した。

投資家たちはAppleだけで750億ドルの価値を失った。株価の下落はほとんどがAppleのニュースによるもので、NASDAQが3%、202.44ポイント、Dow Jones工業平均は2.8%、660.02ポイント下がった。

Appleは昨日午後取引を一時停止し、来季の利益予測を下方修正した

昨日遅くにAppleが発表した中国での売上急落のために予想利益が数十億ドル減少するというニュースは大量の売りを呼び、年末の取引で得た上昇(近年で最大の1日の株価値上がり)を消し去った。

Appleの中国での苦難にはさまざまな要因が考えられる、とD.A. Davidsonの上級アナリストTom Foreteは言う。中国経済の弱体化、中国消費者の愛国心の過熱、あるいは国内メーカーの優れた選択肢など、すべてが要因になりうる。

売上の伸び悩みは中国だけではないとForteは指摘する。インド、ロシア、ブラジル、およびトルコでも新型iPhoneモデルの売上は鈍化しているという

投資家の懸念はAppleの弱さだけではない。12月の中国の製造は成長から縮小へと転じており、現地のアナリストらは少なくとも今年前半は苦しみが続くと予想している。

「今年前半にはさらに減速が悪化すると予想している。その後都市不動産市場の規制撤廃を中心した本腰を入れたせいぶの緩和・刺激策が実施され、今年後半には安定あるいは小規模な反発もあるかもしれない」と香港Nomuraのチーフ中国エコノミストTing Luが、Financial Timesに掲載されたレポートで語った。

米国の製造業も、The Institute for Supply Management[ISM:サプライマネジメント協会]の発行した工業指標によると好調とはいえない。同協会のインデックスは最近2年間で最低を記録した。

「あらゆる部分で不確定要素が多く、ビジネスは停滞している」とISMの製造調査委員会のTimothy Fiore委員長がBloombergに言った。「どこを見ても何をとっても混沌状態だ。ビジネスは混沌の中ではやっていけない。これはそれらの問題のいくつかを解決する必要があるという警告だ」

インデックスはまだ米国産業の深刻な縮小を示す閾値より上にあるが、製造業調査における前月から5.2ポイントの下落は、10年前の金融危機と2001年9月11日の同時多発テロ後の不況以来最悪の数字だ。

[原文へ]

(翻訳:Nob Takahashi / facebook

Apple株価引き続き下落、90日で38%――主因は米中貿易戦争

Appleの株価は一晩で9%以上ダウンした。実際、同社の株価は昨年の10月以来、トータルで38%も下落している。昨日(米国時間1/2)、Appleが収入の低下を警告する異例のガイダンス修正を発表する際、.株式売買は一時中断された。iPhoneをアップグレードする需要が失速したことが同社の収入、ひいては株価に大きな影響を与えたものとみられる。

10月3日の株価は232.07ドルだった。その後市場は乱調で全体として下落傾向だ。Appple株もここ数ヶ月ダウンを続け10月の高値と比べて87ドルも値下がりしている。

 

昨日の午後、Appleはガイダンスの下方修正による混乱を避けるため株式売買を一時停止したが、このときの株価は157.92ドルだった。今朝、この記事の執筆時点の株価は8.19%ダウンの144.981ドルだ。.

D.A. Davidsonのシニア・アナリスト、Tom Forteは昨日のガイダンス修正について、「Appleの経営は盤石と思われていた。なるほどiPhoneの売上台数は軟化していたが、これほど深刻だったことには驚かされた」と述べた。

Forteは昨日の発表でいちばん重要だったのはAppleが売上の20%を得ていた中国市場の問題だと考えている。長期化が予想される米中貿易戦争は売上に大きな影響を与えるだろう。貿易戦争は中国経済を全体として減速させるし、愛国心の高まりからiPhoneに代えて中国製スマートフォンを買う動きも起きるはずだ。

しかもすでにApple自身がインド、ロシア、ブラジル、トルコなど中国を除く市場でもiPhone売上が低下することを予想していた。しかしForteはやはり中国市場の問題がいちばん大きいと考えている。

Forteは「iPhoneのパフォーマンスが低下している一方、他のプロダクトは19%も成長していることは将来に向けて明るいニュースだ」という。しかもAppleの資金は潤沢であり、株式買い戻しのために1000億ドルを用意している。「株式買い戻しプログラムもあるし、決算は好調でキャッシュフローも巨額だ。つまり市場で投資家が株を買わないのならApple自身が買えばよい」とForteは説明した。

Canaccord Genuityの今朝発表してレポートでアナリストは、「昨日のガイダンス修正にもかかわらず、Appleのファンダメンタルズは良好であり、引き続きわれわれはApple株式についてBUY格付けを維持する」としている。

Forteは「ただし米中貿易戦争の将来は大きな疑問符だ。他のプロダクトの販売は好調であるものの、貿易戦争の状況が流動的である間は収入予想を上方修正することはないだろう」とみている。

〔日本版〕日本時間1月4日7:40AMにおけるApple株式は上の記事からさらに2ドルダウンして142.50ドル(時間外取引)。前日からほぼ10%のダウンとなっている。

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滑川海彦@Facebook Google+

新年からの新規制で滴滴出行に逆風――パートタイム・ドライバー排除で中国のギグ経済終焉へ

ここ数年、中国では何百万人ものドライバーがライドヘイリング(タクシー的配車サービス)に参加している。滴滴出行などの共有経済企業に登録する大きな理由は勤務時間の柔軟性だ。生活費の高い中国の大都市で車を持つにはこうしたギグ(不定期、パートタイム労働)からの収入が重要だ。また、たとえ毎月のローンに苦しめられていても、自家用車を持つことは中国ではステータスシンボルとなっている。

こうしたドライバーの大半は滴滴出行(Didi Chuxing)に登録している。コンサルティング企業のBain & Companyの2017年の資料によれば、中国のライドヘイリング・ドライバーの90%はパートタイムだ。これは2017年10月に滴滴出行は「ドライバーの半数は1日あたり稼働時間が2時間以下」と発表したことによってもも裏付けられる。

滴滴出行はこのレポートで同社を「中国の共有経済の金字塔」と自賛した。当時、中国政府は経済成長を加速するために共有経済を強く後押ししていた。シェエリング・エコノミーは交通機関だけにとどまらず、高齢者の介護サービスなど多くの分野を幅広カバーするもので、2017年だけでも7640ドルの売上があったと中国国家情報センターのシェエリング・エコノミー・リサーチ・センターは報告している。

しかし急速に成長を開始した中国のライドヘイリング・サービスには新年から急ブレーキがかかる。1月1日から施行される新規則はドライバーがパートタイムで参加することを非常に困難にするからだ。

ノーモア・ギグ・エコノミー

具体的に見ていくと、1月1日から中国のライドヘイリング・アプリはドライバーに「二重免許」の取得を義務付ける。つまりドライバーと使用する自動車の両方に免許が必要になる。自治体によって要求される免許の内容には多少の違いが出てきそうだが、乗客の輸送にあたる運転者にこれまでよりはるかに厳しく資格が求められることには変わりない。

ライドヘイリング・ドライバーの免許を得るには運転しようとする自治体の戸口(hukou)登録が必要だ。この居住許可がなければ合法的に職業につくことができない。大都市のライドヘイリング・ドライバーの多くは地方からの流入者で戸口を持っていないいない。つまり免許から自動的に排除されてしまう。

一方、自動車の営業免許を得るには、商用車でなければならない。つまり保険料、整備費用がかさむことになる。また自動車は8年で廃用となる。.

didi chuxing

1月1日以降、中国のライドヘイリング車は免許(赤丸で囲まれた部分に貼られている)が必須となる。写真:TechCrunch

新しい法律の下でもドライバーは契約による自営業者として運転できるが、パートタイム労働を排除する方向なのは間違いない。深センの滴滴出行のドライバーはTechCrunchの取材に対して「滴滴出行に参加するために自家用車を商用車として登録しようというドライバーはいない。金がかかりすぎるからだ。パートタイムではもう仕事にならない」と述べた。

滴滴出行の難題

中国の急成長市場の例に漏れず、ライドヘイリングも当初、政府の規制が比較的ゆるいものだったことが幸いした。.最初の業界規制は政府がUberなどのサービスを公式に認可した2016年に制定された(Uberは後に現地の有力ライバル、滴滴出行に買収された)。しかしその後中国当局はライドヘイリングへの規制次第に厳しくしていった。特に昨年、滴滴出行のドライバーが乗客の女性を殺害した事件をきっかけとして運転者の資格審査は厳格化の方向に動いた。

ただし新しい法律は運転者とライドヘイリング車両の数を制限する結果となる。中国城市等級制によるいわゆる2級都市である南京だけでも滴滴出行は規約違反の車両を16万台を排除する必要があったと現地メディアは報じている。しかし多数の車両が一掃されれば乗客の待ち時間は必然的に長くなる。また 評価額560億ドルの巨人の側でもドライバーの安定確保に新しい方策を考えねばならない。

滴滴出行は急成長を維持するためにドライバーに対しても乗客に対しても寛大な条件を提示してきた。そのため赤字額は 2018年上期だけで 5.85億ドルという天文学的数字だと報じられた。つまりドライバーの確保にあたってさらにキャッシュを注ぎ込む余裕はないということだ。労働力を確保するために滴滴はドライバーの訓練プログラムを開始するなどの手を打っている。またライドヘイリングに参加するハードルを下げるため、ドライバーが免許取得済の自動車をレンタルする道を開いた。12月から滴滴のスマートフォン・アプリを開くと「あなたが運転するなら私たちが車を用意します」というキャッチフレーズが表示されるようになった。

また当局の規制強化以外にも、フォルクスワーゲンのパートナーであるSAIC MotorBMW、また現地自動車メーカーもライドヘイリングに参入しており、滴滴にはライバルが増加している。

TechCrunchの取材に対し、「滴滴出行はライドヘイリングという文化を根付かせた。しかし情勢の変化にすばやく対応しなければ何十億元もの投資は無駄な終わり、利益を生まない危険性がある」と自動車レンタル・スタートップのファウンダー、Dong
Fengは述べた。

〔日本版〕「ライドヘイリング」はライドシェアリング一般と区別して特にタクシー的な配車サービスを指す用語。ただし日本では区別せず用いられることがある。Dong
Fengは中国の自動車メーカー、東風汽車集団の「東風」と同音だが関連は不明。

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新たに承認された80タイトルにTencentは含まれず――中国政府、ゲーム認可再開

中国政府は3月に停止していたゲームの認可を再開したが、最初のグループにはTencentのタイトルが含まれていなかった。

中国政府当局はこの土曜日、9か月ぶりにゲーム認可の凍結を解除し、新たに80タイトルを承認したとReutersが最初に報じた。しかし認可されたゲームには中国最大のゲーム企業であるTencent Holdings製作になるタイトルが1本も含まれていなかった。

TechCrunchがデベロッパーに取材したところでは、当局は通常、申請が提出された順で承認を決定するという。中国の21st Century Business Herald〔21財経〕によれば、現在少なくとも7000タイトルが承認待ちとなっており、うち3000は2019年に承認を受けられる見込みだ。とすれば第一陣に含まれる可能性は非常に低いことになる。中国の2大ゲーム企業、TencentとNetEaseのタイトルが含まれていないことに不思議はないのかもしれない。

中国政府高官は12月21日に.厳重な統制下に徐々にゲーム認可を再開する方針を発表した。「承認待ちのタイトル数が非常に多いが、担当者はできる限り迅速に処理を進める」という。ゲームに承認が得られなければ企業は合法的に料金を得ることができない。承認の凍結は世界最大のゲーム市場に大打撃を与えていた。北京に本拠を置く調査企業のGPCおよび中国の公式ゲーム団体、CNGの発表によれば 2018年上半期の対前年比成長率は5.4%で、過去10年で最低を記録した。

Tencentは中国でもっとも普及しているチャット・サービス、WeChatの運営者としてよく知られている。しかし同社の収入の主要な部分はゲームから来ている。そのゲーム収入が打撃を受けたわけだが、過半数株主であるActivision、Grinding Gears Games、Riot and Supercellなどのゲーム企業のビジネスは好調だ。2012年にTencentは世界的大ヒットを記録しているFortniteの運営者、Epic Gamesの株式40%を取得している。またTencentはトゥームレイダー・シリーズで知られるSquare Enixなどのゲーム企業と中国における配信契約を結んでいる。

しかし新しいゲーム・タイトルへの承認の凍結はTencentの収益に悪影響を与えた。これにより第3四半期にゲームの売上が4%ダウンしたという報道が多数出ている。.当初Tencentは課金ゲーム15タイトルが承認待ちだと述べていた。コンシューマー向けゲーム・ビジネスでの逆風に対処するため、Tencentは10月に全社的な機構改革を実施した。これはクラウドのようなエンタープライズ向けサービスやマップ事業にこれまで以上に注力するものだ。ファウンダー、CEOのPony Ma(馬化騰)は「この機構改革はTencenctを次の20年に備えさせるものだ」と述べている。

中国政府は2018年に入って違法、不道徳、低品質、社会的悪影響があるゲームを禁ずる方針を固めた。これには子供に中毒性が高かったり視力低下を引き起こしたりする懸念のあるゲームも含まれる。 ゲーム・スタジオは規模の大小を問わず、新しいゲームにこの方針を反映させる方策を取られねばならない。Tencentは当局を納得させるために独自の規制をゲームに導入している。これに年齢認証の強化や一日当たりプレイ時間に上限を設けるなど若年者の保護の方策が含まれる。

Update:今日(米国時間12/30 10:00 am,)、この記事の中国のゲーム産業とTencentについて内容を補った。

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滑川海彦@Facebook Google+

Lightspeed 、3.6億ドルの中国ファンド組成中――同社として4回目かつ最大規模

今日(米国時間12/17)、アメリカのSEC(証券取引委員会)に提出された書類によれば、シリコンバレーの有力ベンチャーキャピタル、Lightspeed Venture Partnersの中国ファンドで上海を本拠とするLightspeed China Partnersが目標額3億6000万ドルのファンドを組成中だ。これはLightspeed Chinaにとって4回目のフラグシップ・ファンドとなる。

目標額が達成できれば、今回のファンドはLightspeed Chinaの過去最大のファンドになる。PitchBookの記事によれば、Lightspeed Chinaが組成したこれまでのファンドは、最初が2013年の1億6800万ドルで、直近が2億6000万ドルだった。

Lightspeed Chinaの責任者はJames Mi〔宓群〕(写真)で、評価額数十億ドルの中国企業多数に投資してきた。以前はGoogleの事業開発部門の責任者としてBaiduへの投資を指揮した。Miは2008年にLightspeedに加わり、2011年に中国事業を立ち上げている。ベテラン投資家のHenry Han〔韓彦〕もLightspeed Chinaの共同創業パートナーとしてSECへの書類の共同提出者となっている。

Lightspeed Chinaはeコマースの新星、Pingduoduo〔拼多多〕や金融検索エンジンのRong360〔融360〕の投資家でもある。両社は中国を代表するユニコーン企業であり、2017年にはアメリカで上場を果たしている。Lightspeed Chinaはインターネット、モバイル、エンタープライズ・コンピューティングの分野でシード資金など早期段階のスタートアップへの投資に注力している。

今年に入って、Lightspeed Venture Partnersは新記録となる18億ドル規模の大型ファンドへの出資確約を取り付けている。今月エンタープライズ、コンシューマー向け投資チームに新たに5人のパートナーを迎え入れた。これには Slackのグロース部門の前責任者、Twitterのグローバル事業開発部門担当の前バイスプレジデントらが含まれる。

Lightspeedにコメントを求めているがまだ回答は得られていない。

〔日本版〕原文の”David Mi”は”James Mi”に訂正。

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滑川海彦@Facebook Google+

Nvidia、時価総額半減で厳しい局面に――暗号通貨、ライバル、中国、いずれも逆風

Nvidiaの株価は上場以来の最高値を付けた後、数週間後に最安値に転落した。

これほど短い期間に時価総額の半分近くを失うというのは容易ならざる事態だ。テクノロジー分野では瞬きするくらいのあいだに鉄壁とみえたビジネスが消え失せるという例の一つをNvidiaは実証した形だ。Nvidiaはチップ・メーカーとして確固たる地位を確立するためにビジネスのコアとなるプロダクトを拡大する長期計画を実行に移してきたが、ここに来て強烈な逆風に苦しめられている。

振り返ってみると、NvidiaはまずGPU(グラフィカル・プロセス・ユニット)の有力メーカーだった。Nvidiaの優秀なGPUはゲームからCADまでさまざまな並列処理に用いられた。プロダクトは機能、信頼性ともに高く、NvidiaがGPUマーケットで大きなシェアを得ることを助けた。

しかし高度ななグラフィカル・レンダリングを必要とするマーケットは比較的小さく、ここ数年Nvidiaは新しい応用分野の開発に熱心だった。この分野には人工知能、機械学習、自動走行車、暗号通貨などが含まれていた。これらはすべて強力な並列処理を必要とし、Nvidiaの得意とする分野だった。

この戦略はおおむね成功した。ここ数年、Nvidiaのチップは暗号通貨スタートアップでひっぱりだことなり、世界的なチップの供給不足を引き起こし、 コアなゲーマーの間に不満が高まったほどだった。

これはNvidiaの収入を大きく押し上げた。 2013年の8-10月の四半期の収入が10.5億ドルだったのに対し、2年後の同期は2015年は13.1億ドルと伸びはゆっくりしていた。これは成熟した市場のトップメーカーの場合珍しいことではない。しかしNvidiaが精力的に新応用分野の開拓を始めると成長は一気に加速した。今年の直近の四半期の収入は32億ドルと2013年の3倍になっている。これにともなって株価も急伸した。

ところがNvidiaの新分野への進出は多方面で障害に突き当たっている。中でも最悪の影響を与えたのがここ数ヶ月の暗号通貨価格のクラッシュだ。これによって暗号通貨市場そのものから火が消えた。打撃を受けたのはNvidiaだけではない。暗号通貨のマイニング処理に最適化したチップを製造していたBitmain暗号通貨バブルの破裂でいきなり失速している。今週、同社はイスラエル・オフィスの閉鎖を発表した。

Nvidiaの今年の収入を見ればこの問題の影響は明らかだ。今年、収入はこの3期続けて31億ドルから32億ドルであり、ほとんどフラットだった。一部ではこの状態はクリプト二日酔いと呼んでいるらしい。しかし暗号通貨はNvidiaが対処を求められている問題の一つに過ぎない。

高度な並列処理を必要とする次世代コンピューティング分野でNvidiaはスタートアップも大企業も含まれる強力なライバルの出現に悩まされている。ライバルには本来Nvidiaのユーザーと目される企業も入っている。たとえば、Facebookは独自の並列処理チップを開発中だと報じられたAppleは何年も前からそうしているし、Googleもこの分野に参入した。Amazonも精力的だ。Nvidiaにもちろんライバルと戦うノウハウがあるが、ライバル各社はそれぞれの応用分野を熟知しており、きめて優秀なアプリケーションを開発できる。このマーケットでトップを維持するには非常に激しい競争に勝ち抜かねばならない。

新分野におけるアプリケーションの開発競争に加えて、地政学的緊張の高まりもNvidiaに打撃となっている。2週間前にDan StrumpfとWenxin FanがWall Street Journalに書いているとおり、Nvidiaは米中貿易摩擦の高まりに直接影響を受けている。

…Nvidiaの昨年の収入、97億ドルのうち20%は中国からのものだった。 Nvidiaのチップは急成長中の中国のAI産業における各種プロダクト〔を始め〕各種のプロダクトに組み込まれて利用されている。

Nvidiaは両大国の緊張の高まりは…中国がアメリカ製品に対する依存度を下げるために独自チップの開発に力を入れる結果となり…Nvidiaの長期計画にとってマイナスの要素となると懸念している。

暗号、ライバル、中国。この三重苦がこの半月でNvidiaの時価総額の半分を失わせた理由だ。中国問題については次に述べる。

山積する中国問題

ハロン湾(ベトナム) 撮影:Andrea Schaffer/Flickr (Creative Commons)

South China Mornng Postによれば、アメリカを中心とするインターネット企業に現地法人の設立を要求する新しい法律をベトナムが制定したため、Googleが対応を検討しているという。Googleはベトナムの新法に対応すべく現地オフィスを開設しようとしていると報じられていた。同様の問題は中国でも起きるはずだ。

昨日、GoogleのCEO、スンダル・ピチャイが「当面中国に再参入する計画はない」と議会で証言したことは興味深い。ベトナムは、他の多くの国と同様、国家主権が個人情報にも及ぶことを明確にした法律を制定した。これによれば、ベトナムで得られたデータはベトナム国内に保存される必要がある。Googleの手は縛られることになる。中国は当面の悪役だが、ローカル・データへのアクセスを制限しようとする保護主義的動きは中国だけに限られたものではない。

報道によれば、日本の携帯大手3社がHuaweiとZTEの製品を、通信設備から排除する方針を固めたという。これにHuaweiの副会長の逮捕というニュースが続いた。これで日本のキャリヤの中国企業の製品の排除の方針はますます固まったはずだ。 Huaweiの排除はもともとFive Eyesと呼ばれる情報交換協定に加盟している英語圏5ヵ国(アメリカ、イギリス、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド)が決定したものだが、日本はこれに加入していない。日本がHuawei、ZTEを排除することになれば、他のアジア諸国にも波及する可能性が出てくる。そうなれば影響は大きい。

一方、Baidu(百度)は中国を代表する検索エンジンを提供する企業だが、中国政府の監査により、他の80以上の中国企業と共に企業情報を偽っていたことが判明している。 これはBaiduにとって極めて思わしくないニュースであり、 ここ数日、株価は最低水準に落ちた。過去52週の最高値は284.22ドルだったものが、今日の寄り付きは180.50ドルだった。

情報を求む

パートナーのArmanと私は引き続きシリコンバレーのビジネスを取材している。過去数日、投資家やサプライチェーン関係者に取材した結果を上にまとめた。ただしNvidiaの状況は氷山の一角に過ぎない。さらなる情報や分析があれば、danny@techcrunch.comにご連絡いただきたい。

このコラムの執筆にあたってはニューヨークのArman Tabatabaiが協力した。

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滑川海彦@Facebook Google+

常時素行調査の信頼のジレンマとファーウェイとソフトバンクのIPOの話

まず、スタートアップでの初めての素行調査、それからファーウェイの財務のトップの逮捕、ソフトバンクの新規株式公開(IPO)の応募開始、そしてTechCrunchのポッドキャストEquityの次の話の録音。これらすべては、2018年12月6日の木曜日の出来事だ。

TechCrunchでは、新しいコンテンツ形式を試すことにした。これは、その新しいスタイルの草稿になる。どうか、率直なご意見を賜りたい。気に入らない部分があれば、本記事の著者である私、Dannyに直接メールをいただきたい(danny@techcrunch.com)。

常時素行調査のジレンマ

私の同僚のJohn Biggsは、イスラエルに本拠地を置くスタートアップIntelligoシリーズA投資ラウンドについて取材をした。同社は、従業員が犯罪を犯したり、会社の規則を逸脱したときに、即座にわかるように常時素行調査を行うOngoing Monitoringを提供している。これまでは、人工知能と機械学習を使って素行調査を効率的に行うことに主眼を置いていたが、少し方向性が変わったようだ。

素行調査は巨大産業だ。サンフランシスコに本拠地を置くCheckrは、おそらくこの分野でもっとも名の知れたスタートアップだが、Crunchbaseによれば、Uberなどの企業が数千人の臨時職員を雇い入れることから、その必要に迫られて事前に1億4900万ドル(約168億円)の資金を調達した。Checkrは、今年の7月に、すべての従業員の問題行動を常時監視するためのContinuous Checkという製品を立ち上げている。

ここで、数週間前にOlivia CarvilleがBloombergに書いた記事を思い出して欲しい。従業員の経費を監視し、不正が疑われる者に警告を発する「アルゴリズム監査人」」が増えている現状を探った内容だ。

評判が傷つくことを恐れるアメリカの企業は、不正出資によって1年間に失われる経費の額は公表したがらない。しかし、4月に発表された不正検査士協会の報告では、分析の結果、2016年1月から2017年10月にかけて2700件の不正があり、損失額は70億ドル(約7890億円)にのぼるという。

しかしここで、ある疑問がわく。私たちは、犯罪と出資を常時監視されている。多くの企業は、ウェブのトラフィックと、電子メールやSlackやその他の通信を監視している。職場での私たちのあらゆる行動が覗かれ、「規範」に従うよう強制されている。

それでも、中国の社会信用システムには批判が集まっている。それだって、犯罪記録を監視して、財政的な不正がないかを見て、人々をそのスコアで評価するものではないか。いつになったら雇用主は、我々の「従業員としての善い行い」をスコア化して、Slackのプロフィールに載せてくれるようになるのか。

もちろん、どのスタートアップも企業も、素行調査をやりたがっているわけではない。だが避けることもできない。そこが難しいところだ。従業員の変化や不正を常に監視していることには、おそらく意味がある。もし、ボブが週末に人を殺していたら、月曜日の打ち合わせでボブに合うときには、そのことを知っておきたい。

しかし、常時監視が、従業員から求められるもうひとつのものを台無しにしてしまう恐れがあることを無視してはいけない。それは信用だ。職場での一挙手一投足を厳重に監視されるようになれば、従業員は、もし監視システムが職場の物を持ち逃げしても何も言わないなら、それは許されることだと勘違いするようになってしまう。監視がない場合は、信頼が頼りだ。監視の目に囲まれていたら、規範が行動の原則として刻み込まれる。規範にさえ違反しなければ、何をやってもいいと。

中国では、社会的信用がきわめて低いため、なんらかのスコア付けのメカニズムで代替することには合点がいく。しかし、スタートアップや技術系企業の場合は、信用という(監視されていなくても正しい行いをする)文化を築き上げることが成功の必須条件であると私は考える。だから、常時型サービスを契約する前に、私なら二度見をして、その潜在的な有害性を考える。

もし私がスタートアップの従業員だったら
中国出張はよく(よくよく)考える

 

写真:VCG/VCG Getty Imagesより

 

先週、トランプと習近平は、中国製品に対する関税の実施を延期することで合意し、月曜日にはアジアのタイムゾーンで中国(ハイテク)株が上昇傾向を見せた。私は、関税実施の延期は米中問題解決にはつながらず、そうする意味がわからないと記事に書いた

市場は中国経済のみならず、アメリカのリーダーシップについても判断を大きく誤っていると私は考える。

そして、とくにファーウェイとZTEの参入制限についてこう書いた。

これらの禁止措置が解かれることがあるのだろうか? アメリカの安全保障に関わる機関は、ファーウェイとZTEがアメリカ国内で機器を展開することを許さないだろう。それは、これまでと変わらない。率直に言って、この選択によって中国のすべての非関税障壁が取り除かれ、ファーウェイがアメリカに戻って来られたとしたら、アメリカの交渉係はそっぽを向く。

そのため、ファーウェイの財務のトップが、昨夜、アメリカの要請によりカナダで逮捕されたことは喜ばしい(彼女ではなく私にとって)。私の同僚、Kate Clarkはこう書いている。

世界最大の電気通信機器メーカーであり、世界第ニのスマートフォンメーカーでもあるファーウェイの最高財務責任者、孟晩舟(メン・ワンズー)は、The Globe and Mailが最初に報じたとおり、アメリカのイランに対する経済制裁に違反した疑いで、カナダのバンクーバーで逮捕された。

ファーウェイはこれが事実であることをTechCrunchに認め、ファーウェイの創設者、任正非(レン・ツェンフェイ)の娘でもある孟晩舟は、カナダへ向かう飛行機に乗り換えたニューヨークの東地区連邦裁判所から詳細不明の罪状で告発されたと話した。

トランプ政権が、関税以外に、どのような方法で貿易戦争を戦おうとしていたかが、これでわかった。中国でもっとも有名なハイテク企業を狙っただけでなく、ついでにその創設者の娘も捕まえるという、トランプ政権の強引な一手だ。

中国は、彼女の身柄の返還を求めている。

落とし所はここにある。中国は、劉昌明(リウ・チャンミン)のアメリカ国籍の2人の子どもたちの出国を拒み、父親が中国に戻って不正事件とされる問題で刑事司法手続きに従うまで、彼らを実質的な人質にしている。アメリカは、中国大手企業役員である有名な女性を拘束している。つまり報復だ。

2つの国を行き来するスタートアップの創設者や技術系企業の役員たちの、出国ビザや身柄引き渡しの心配をする必要は、私たちにはない。

ただ、これらの国を従業員が頻繁に往来している企業の渡航セキュリティー管理部門は、この話の展開に目を光らせておくべきだと私は強く思う。偶発的に「ちょっとした人質」にされる事件が多発し、二国間の仕事をずっと困難にする恐れが十分にあるからだ。

ざっとご紹介
ソフトバンクはIPOで多額の資金調達

KAZUHIRO NOGI/AFP/Getty Images

 

Bloomberg日向貴彦の記事よると、ソフトバンクは新規株式のブックビルディングですでに完売し、2兆6500万円という膨大な資金を手にしたと伝えた。正式な価格は月曜日に決定され、12月19日に公開される。これは、孫正義にとっては決定的にして重要な勝利だ。彼にとってこの電気通信部門のIPOは、山のような借金のリスクをいくぶんでもソフトバンクから取り除くために(さらに、ビジョン・ファンドなどを通じた彼のスタートアップの夢への投資を続けるためにも)必要な処置だった。

ソフトバンク・ビジョン・ファンドの計算その2

Armanと私は、ソフトバンクのビジョン・ファンドには、いったいいくらあるのか、その複雑な計算について話し合った。詳細は、Jason RowleyがCrunchbase Newsに書いている

今年、米証券取引委員会に提出されたフォームDが、今朝、公開され、SBVFは、2017年5月20日の初回クロージングから、総額およそ985億8000万ドル(約11兆1130億円)を14の投資家から調達していることがわかった。去年に提出された書類では、およそ931億5000万ドル(約10兆5010億円)だった。つまり、ビジョン・ファンドはこの1年間で、54億3000万ドル(約6120億円)増えており、リミテッド・パートナーとして新たに6つの投資家が加わっている。

私が昨日話したように、このファンドの規模は「この50億ドルがファイナルクロージングに加わったとすると、970億ドル、正確には967億ドル(約10兆9000万円)となる」。今一度見直してみると、50億ドルは実際にクロージングされたようなので、990億ドル、正確には986億ドル(約11兆1154億円)となる。

次はなんだ

私は今でも次世代の半導体に魅せられている。そこに意見がおありの方は、私まで連絡して欲しい。danny@techcrunch.com

記事の感想

明日ならゆっくり読めそうだ。

読書記録

現在、私が読んでいるもの(少くとも読もうとしているもの)。

次世代半導体に関する長大な記事のリスト。近日公開。

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(翻訳:金井哲夫)

Huaweiの孟晩舟CFO、逮捕容疑は詐欺――アメリカで有罪なら実刑30年の可能性

カナダのバンクーバーで12月1日に逮捕されたHuawei(華為)の孟晩舟(Meng Wanzhou)CFOに対する保釈審理が今日(米国時間12/7)開かれた。検察側はここでいくつか新しい主張を行った。

孟はHuaweiのファウンダー、 任正非(Ren Zhengfei)の娘だが、保釈審理をその場で取材したジャーナリストのツイートによれば、30年の実刑を言い渡される可能性がある。 アメリカ司法省は孟がHuaweiの秘密の子会社SkyComにアメリカの制裁措置に違反するイランとの取引を実行させた疑いを持っている。このとき、制裁を免れるためにアメリカの金融機関に虚偽の事実を告げたという。

アメリカ当局とHuaweiとの関係はオバマ政権の2016年当時から緊張を加え始め、近年の対中貿易戦争によって一層高まっていた。アメリカは以前からHuaweiと中国政府の極めて密接な関係を国家安全保障に対する脅威と見ていた。国家経済会議のラリー・クドロー委員長は今日のCNBCの番組に出演し、アメリカはHuaweiに対して以前から警告を繰り返していたと述べた。

対イラン経済制裁に関連してわれわれは(Huaweiに)いくども警告してきた … アメリカはイランに経済制裁を課している。イランはわれわれわの政策に反した行動を行っている。アメリカが制裁を課するのは当然だ。…ただしこの(逮捕)がトランプ大統領が決定した90日間の(対中制裁の)延期に影響を及ぼすとは思わない。

カナダ司法省は今日の審理で「カナダから逃亡するおそれがある」として保釈に反対した。孟CFOの弁護士は「彼女は裁判所の命令に違反して父親の顔に泥を塗るようなことはしない」と述べたとAPは報じている。

孟のアメリカへの引き渡しを認めるかどうかの審理は数週間から数ヶ月かかる可能性がある。アメリカ司法省はカナダの裁判所に対し60日以内に正式な引き渡しを申し立てる行う必要がある。

TechCrunch 孟の逮捕後、 TechCrunchの取材に対し、Huaweiは「当社はMs. Meng.がなんらかの違法行為に関与しているとは考えていない」と回答している。

CNBCによれば、中国政府外交部(外務省)は孟容疑者の釈放を強く要求しており、広報担当官は「関係者の本来的な人権を有効に保護するためのさらなる措置」が早急に必要だと述べた。

Huaweiは中国の深セン(Shenzhen)に本拠を置く世界最大のテレコム機器メーカーであり、スマートフォン・メーとしても2位だ。

Huaweiにコメントを求めているがまだ回答を得ていない。

画像:Bloomberg / Contributor

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滑川海彦@Facebook Google+

世界で初めての遺伝子を編集された赤ちゃん、深圳の病院は関わりを否定

世界初の遺伝子を編集された人間の赤ちゃんという中国生まれのニュースは、月曜日(米国時間11/26)にMIT Technology ReviewAssociated Press(AP通信社)がそのプロジェクトを報じて以降、大騒動になってしまった。とくに中国の外にいる人びとは、その先端的科学の倫理的含意を激しく疑問視した。それは、深圳の大学の中国人研究者Jiankui Heのプロジェクトだ。

この話には、もうひとつの側面がある。

AP通信によると、Heは深圳の病院Shenzhen HarMoniCare Women’s and Children’s Hospitalにそのプロジェクトの開始を承認された。MIT Technology Reviewの記事には、HarMoniCareの医療倫理委員会からHeの研究が承認されたことを述べている文書のリンクがある。

しかし本誌TechCrunchの取材に対してHarMoniCareのスポークスパーソンは、Heの遺伝子テストについては何も知らなかったし、病院は今広まっている文書の正当性を調査している、と言った。これに関し、今後新たな展開があればこの記事を更新したい。

病院のスポークスパーソンはHeのプロジェクトについてこう言った: “確実に言えることとして、遺伝子の編集は当医院で行われていない。赤ちゃんが生まれた場所も、当医院ではない”。

アメリカのライス大学とスタンフォード大学で学んだHeは、深圳のSouthern University of Science and Technology(南方科技大学)で研究チームを率い、MIT Technology Reviewによると、そのチームは遺伝子編集ツールCRISPRを使って、HIVや天然痘、およびコレラに結びついている遺伝子を排除することに取り組んだ。胎児の遺伝子を変えると、その変更は今後の世代にも伝わっていくので、倫理的に危険である。Heの向こう見ずな先走りは、近く香港で行われHeも出席するSecond International Summit on Human Genome Editing(人の遺伝子編集に関する第二回国際サミット)で議論される。

もうひとつ注目すべきは、HarMoniCareが福建省莆田(Putian)から広がった約8000の民間ヘルスケアプロバイダーの広大なネットワーク、莆田ネットワークに属していることだ。ヘルスケアのプロフェショナルのための中国のオンラインコミュニティDXY.cnが作ったリストでは、そうなっている。莆田の病院群はここ数年で中国全土に急速に拡大し、大学生の死亡事故があるまではほとんど政府の監督下になかった。2016年のその事故では21歳のWei Zexiが、莆田の病院でいかがわしい治療を受けたあと、癌で死亡した。またその事故は、中国最大の検索エンジンBaiduに対する激しい抗議を呼び起こした。Baidu上のオンライン広告の、大型広告主のひとつが、莆田の病院なのだ。

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

映画に見る中国のパラレルテクノロジー世界

映画”DETECTIVE CHINATOWN 2″(チャイナ・タウンの探偵2)から何を学ぶことができるだろう?実はかなり多くのことを学べるのだ。この映画は今年11位のヒット作で、例えば「ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー」や「クレイジー・リッチ!」よりもはるかに興行収入は上回っている。だがおそらく、今年10位のヒット作である「オペレーション・レッドシー」同様、その名前を耳にしたことはないだろう。これらの売上はすべて中国国内で生まれているものなのだ。

このスラップスティックがシャーロック・ホームズ的なものと組み合わされたコメディが、テクノロジーについて私たちに教えられるものは何だろう?私たちがその物語の根底の意味を読み解けば、多くのことを学ぶことができる。1つ目立っている点:最近の有名なアメリカ映画で、スマートフォンのアプリがこれほどプロットに織り込まれている映画はない。映画のキャラクターたちは一括りにされて、常に参照され、ひとつのスマートフォンアプリでまとめられている。投獄されたとき中国人探偵は、何よりも携帯電話を取り上げられたことを嘆く。そして、物語の初めに青い髪の女性ハッカーが「私とWeChat IDを交換してくれる?」と頼むことは、どうということはないエピソードのように思えるが、彼らのWeChatの会話は物語が進むにつれて、プロット上重要な位置を占めて行くことになる。

また西洋のテクノロジーが支配的になる中で、登場キャラクターたちがiMessage/FB Messenger/WhatsAppのいずれでもないチャットアプリを使うのを見ることには、少々違和感がある。インターネットの基本はTCP/IPレベルで世界的に広がっているかもしれないが、私たちは2つの異なったオンライン世界に生きているのだ。1つはFacebook / Google / Amazonの世界、そしてもう1つはTencent / Baidu / Alibabaの世界で、Appleだけがこの2つの世界にまたがって存在しているもののように見える。これは支払いの世界でも同様だ、私は今年初めに中国にいたのだが、マクドナルドを含め、多くの場所でVisaとMastercardがいかに役にたたないかを思い知らされた。西洋オリジンの支払い方法で唯一使えたのはApple Payだけだったのだ。

このことの理由を、グレートファイアウォール(金盾)に求めることは簡単だしある意味正しい(西洋には独自のファイアウォールはないが…。私がこれを書いているのはパリなのだが、現在住んでいるサンフランシスコのニュースを読もうとしたときに、トップの図で示されているような“451 Unavailable for Legal Reasons”(451 法的な理由でアクセスすることができない)という表示に出会った、おそらくこれはGDPRの影響なのだろう)。しかし、中国のアプリや中国のハードウェアは、長い時間をかけて、西洋の技術の模造品を乗り越えてきたのだ。いまや独自のものを作り、その品質もしばしば良いものだ。

それは目覚ましい発展だった。私は、2011年にエチオピアを旅行しているとき、泊まっているホテルのWi-Fiのハードウェアとソフトウェアがみな中国製であることに驚いた。そしてその7年後、ここパリでは、Huawei(華為)の最新スマートフォンを宣伝する6メートルの高さのキラキラ輝くポスターに頻繁に出会う。

中国の力が高まるにつれて、中国とアメリカはお互いを脅威とみなすようになっているようだ(もちろん、これは単なる映画に過ぎないが、多くの文化的前提を学ぶことができる。そして映画「オペレーション・レッドシー」(これは基本的に中国軍の胸踊らせる英雄譚と「ブラックホーク・ダウン」を組み合わせたものだ)は、中国海軍と米国海軍の気になる膠着状況の中で終わる)。そして確かに中国政府は、その悪名高い検閲制度以上の恐ろしいことをしている。たとえば、数百万人と推定されるイスラム教徒たちを、イスラム教徒であるという理由で拘禁するといったことだ。

しかし、純粋に技術的な観点から見ると、西洋のオンライン技術は、図らずも、巨大なものとなり、全く異なるアプリとサービスが開発され広がるようになっている。現段階では、中国のパラレル世界は主に中国の中に存在しているだけで、それ以外の世界にはあまり影響を与えていない。だがそれは、この「サンフランシスコ政治の中のWeChat」ストーリーが示すように、既に変化を始めている。中国が西洋にますます関わるようになるにつれて、私たちは彼らの技術が私たちの技術に興味深いやりかたで重なっていくところを目撃することになるだろう。興味深い時代を過ごせますように。いや本当に。

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(翻訳:sako)

SoftBankのDeepcoreと香港のZerothが提携――アジアのAIスタートアップの育成へ

アーリーステージのAIスタートアップを支援する2のプログラムが力をあわせることになった。AIの世界でも一人より二人のほうが心強いらしい。

有力デジタルメディアのAnimoca Brandsから投資を受けることに成功した香港のアクセラレータ、Zerothは、SoftBankグループのアクセラレータ、ファンドDeepcoreとリソースやディールの共有など密接な提携関係に入った。

DeepcoreはAI全般のスタートアップの支援、育成に力を入れている一方、ZerothAIと機械学習に特化したアジア初のアクセラレータだ。後者はAnimoca Brandsから300万ドルのベンチャー資金を調達しており、同時にZerothの運営会社の株式の67%を取得している。

一方、SoftBankは今年に入ってDeepcoreを設立し、AIスタートアップ支援事業に足場を築いた。DeepcoreはWeWorkと協力してコワーキング・スペース、インキュベータ、R&D施設を兼ねるKernel Hongoを運営している。 また投資部門としてDeepcore Tokyoを有している。

Zerothは2年前に設立され、3回のバッチですでに33社を育成している。参加スタートアップの株式を平均6%取得するビジネスモデルだ。卒業後サードパーティからの追加投資を受けるスタートアップもある。たとえば、Fano Labs(現在のAccosys)は香港最大の富豪と考えられている李嘉誠(Li Ka-Shing)のHorizons Venturesや日本のLaboratikから投資を受け入れている。

Zerothのファウンダー、CEOのTak Lo はTechCrunchに対して、「われわれのエコシステムが成長するのを見ることができて嬉しい。このエコシステムが目指すところは偉大な会社を築こうとするファウンダーによりよいチャンスを提供していくことだ」と述べている。

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滑川海彦@Facebook Google+

【以上】

中国人が熱狂するショートビデオにネットの巨人も気が気ではない

[著者:Rita Liao]

中国で地下鉄に乗ると、多くの人がスマホのTikTok(ティックトック)の動画に見入っている。

モバイルインターネット専門調査研究会社QuestMbileの調査によれば、中国人のインターネット利用時間のうち、TikTokなどの動画の視聴に占める割合は、2017年には5.2パーセントだったものが、現在は90パーセント近くまで跳ね上がっているという。

750億ドル(約8億5500万円)という世界最高の評価額を誇るスタートアップByteDanceが運営するTikTokのようなアプリは、これまでカメラに映ることを嫌がっていた人たちの間で人気を博した。動画編集の技術を持たない人でも簡単に操作でき、フィルターで映像をきれい加工できる。また、音楽を加えて作品を楽しくすることもできる。

Douyin(抖音)で動画を制作を楽しむ老夫婦 / 提供:Douyin ID @淘气陈奶奶

これには、近年のスマートフォンのデータ通信料の値下げや、スマートフォンの普及も手伝っている。中国政府の資料によれば、現在、中国には8億人のスマートフォン利用者がいる。CBNDataのデータベースによれば、インターネット利用者の中で、スマートフォンで動画のストリーミングを利用していた人は2013年には40パーセント以下だったが、2017年にはその割合は80パーセントに急上昇しているという

当初は若い人たち向けに開発されたショートビデオ・アプリだが、高齢者を含むあらゆる世代での人気が高まっている。中国の14億人の総人口のうちの3分の1以上の人たちが、毎月、活発にこれらのアプリを利用しており、50歳以上の人たちも、今では毎日50分もの時間をこのアプリに費やしてる。ちなみに、昨年は17分だった。

Tencentの不安

近年、中国では、Tencentのメッセージング・アプリWeChatのように、多くの注目を集めるモバイルアプリは少ない。WeChatは、買い物、タクシーの配車、ホテルの予約、その他の日常的な作業がワンストップで行えるサービスを提供するまでに発展している。

そこへショートビデオ・アプリが登場し、人々のスマートフォン利用時間が奪われるようになった。TikTokなどのアプリは、そもそもの目的が違うため、WeChatと直接競合するものではないが、本格的な動画の配信アプリに包囲されて、インスタントメッセージ・サービスの利用回数が減少していることをデータが示している。

今年、WeChatとその同類のアプリが、人々のインターネット利用時間で占めた割合は、前年比で3.6パーセント減少したとQuestMobileは報告している。

Tencentが、人気の陰りとByteDanceの台頭を心配するのは無理もない話だ。普段は低姿勢なTencentのCEO馬化騰(ポニー・マー)は、ByteDanceのCEO張一嗚(チャオ・インミン)に対し、盗作とWeChatでのTikTokのブロックに関して、珍しくネット上で喧嘩を売った。

十代の女性による、よくあるフィンガーダンスの動画 / 提供:Douyin ID @李雨霏2007

別のところで、Tencentは行動に出た。4月から、この巨大テック企業はTikTokに対抗するアプリをいくつも展開し始めた。しかし、今のところはまだ、世界に5億人のアクティブユーザーを抱える王者の数字に近づくことすらできていない。この中には、2017年後半にByteDanceが買収し、8月に合併したMusical.lyの総利用者数1億人は含まれていない。

だが、Tencentには代替策がある。同社は、TikTokの中国での最大のライバルKuaishou(快手)の株式を保有している。Kuaishouは、データ集計サービスJigunag(極光)によれば、9月には22.7パーセントの普及率を記録した。それでも、TikTokの33.8パーセントの前では小さな数字に見える。Jigunagの調査では、TikTokは、3分の1以上のモバイルデバイスにインストールされていることになるという。さらに、ByteDanceのHoushan(火山)、Xigua(西瓜)といった、その他のショートビデオ・アプリも、別のニッチ市場で健闘している。それぞれ、13.1パーセント、12.6パーセントという普及率だ。

Alibabaとの同盟は微妙

最近まで、ByteDanceは、中国のもうひとつのインターネットの巨人、Alibabaとうまくやって来たように見える。両社は、3月、TikTokが自社製アプリでの電子商取引にAlibabaのインターネット・マーケットプレイスTaoBaoを利用することを目的に提携した。認証されたTikTok利用者(大変に多いのだが)は、動画を自分のTaoBaoショップにリンクできる。金儲けを可能にするこのシステムで、TikTokは、より質の高い動画クリエイターを集めることができる。一方、Alibabaは、新種のソーシャルメディア・アプリからのトラフィックが得られ、WeChatにブロックされた電子商取引アプリの損失を補える。

だが、蜜月は続かないものだ。ByteDanceはAlibabaのテリトリーに急襲をかけた。ByteDanceは、電子商取引プラットフォームを導入し、長尺の動画ストリーミングの分野に進出してきたのだ。そこは、Alibaba、Tencent、BaiduのiQIYIが支配する領域だ。

ライフハックも人気だ。この男性は植木栽培のコツを伝授している / 提供:Douyin ID @速效三元化合肥

ByteDanceは独立を目指しているようだ。大半の中国のスタートアップとは違い、設立から6年目のByteDanceは、Baidu、Alibaba、Tencentの技術系大手トリオからの資金援助を受けていない。この3社はBATと呼ばれ、中国の一般消費者向け技術を独占してる。

ByteDanceの新分野への進出は、フィードに広告を掲載する以外の新しい収益チャンネルの獲得を急いでいるようにも見える。同社は、2018年の収入目標を72億ドル(約8200億円)に引き上げた。Bloombergによると、昨年の収益を25億ドル(約2850億円)上回る数字だ。

ホームとアウェイ

ブームとは裏腹に、中国のショートビデオ市場に対する規制の逆風が強まっている。この数カ月間、Kuaishou、ByteDanceの動画アプリ、その他の同様の企業やアプリは、違法または不適切とされるコンテンツを排除するとの理由で、当局から締め付けられている。

違反すればアプリストアは閉鎖され、Miaopai(秒拍)のように厳しい罰則を受ける。中国版TwitterのWeibo(微博)の支援を受けたMiaopaiだが、そのおかげでアプリのインストール件数は激減した。

Douyinは真面目な動画も流す。北京のテレビ局はDouyinにアカウントを持ち、動画を配信している / 提供:Douyin ID @BTV新闻

ByteDanceはまだ閉鎖にはなっていないが、そのAIを使った推薦アルゴリズムは攻撃の的になっている。同社自慢のアルゴリズムなのだが、メディアの監視機関は良い顔をしない。TikTokは、未成年の妊娠など「許容できない」動画を推薦することで注意を受けた。ByteDanceの人気のニュースサイト今日头条(今日のヘッドライン)も、1日1億2000万人の利用者に「失言」をして、同様の批判を受けた。

これを受けてByteDanceは、提供するアプリのAIによる推薦を監視する人材を、数千人単位で増員した。

ByteDanceは、TikTokを通じてそのテリトリーを中国の外にまで広げようとしている。今年、このショートムービー・アプリは、世界のアプリストアのランキングを上昇し、Musical.lyと一緒になってその速度を高めている。それに警戒しているのは、もはやTencentだけではない。FacebookTikTokのクローンを作っていることを、先日、TechCrunchがお伝えしたばかりだ。

[原文へ]
(翻訳:金井哲夫)