難聴ケアを身近なヘッドフォンやテレビで、Mimiが聴覚ウェルネスプラットフォームのボリュームを上げる

TechCrunch Battlefield NY 2014の最終選考に残ったMimi Hearing Technologiesは、シリーズBラウンドで2500万ドル(約28億5000万円)を調達し、聴覚の健康というミッションを世界中の耳に囁き続けている。同社は最近、Skullcandy(スカルキャンディー)、Cleer(クレール)、Beyerdynamic(ベイヤーダイナミック)との一連の注目すべきパートナーシップを発表し、MIG CapitalATHOSからの新たな資金注入により、さらに前進しようとしている。

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Mimiの創業者の1人で、同社の研究開発を率いるNick Clark(ニック・クラーク)氏は、しばらく前に私にこう語った。「聴覚障害だけでなく、より幅広いことに対応できるソフトウェアベースのソリューションの可能性は大いにあります。ユーザーの聴力の違いによって、より多くの人々に役立つ微妙なことを始められます」。

Mimiは、毎月約5万人が聴力検査をするのに使う、最も人気のある家庭用聴力検査アプリの1つだ。同社は、同じ技術をSDKとしてヘッドフォンメーカーに提供した。それにより、同アプリはユーザーの聴覚プロファイルを利用して、聴力に合わせてカスタマイズされた音声出力を実現できる。つまり、難聴と思われる部分を補うため、音量を上げなくてもよく聞こえるようにすることが可能なのだ。これにより、さらなる難聴を防ぐことができるという理論だ。

「例えばSkullcandyのヘッドフォンを購入し、アプリをダウンロードすると、そこで自分のプロフィールを作成することができます」と、Mimiの創設者兼CEOであるPhilipp Skribanowitz(フィリップ・スクリバノヴィッツ)氏は説明する。「このプロフィールは、他のパートナーとも互換性があり、他でも使うことができます。Philips(フィリップス)のテレビでのテストも開発しましたので、その場合ソファーに座ってテレビでテストできます」。

今回の資金は、同社の技術へのさらなる投資、特にヘッドフォンやテレビとの統合を通じた提供の拡大に充てられる。また、米国とアジアでの販売・マーケティング業務の拡大も強化する予定だ。

「シリーズBコンソーシアムの主要投資家であるMIG、ATHOS、Salviaは、2020年、NASDAQに上場しているドイツのバイオテック企業であり、Pfizer(ファイザー)と共同で最初の新型コロナウイルスワクチンを開発し、現在約700億ドル(約7兆9840億円)の評価を受けているBioNTech(バイオンテック)の設立投資家として国際的に注目されました」と、MimiのMoritz Bratzke(モーリッツ・ブラッツケ)CFOは指摘する。「彼らのMimiへの投資は、ドイツのベンチャーキャピタル環境の深さと幅だけでなく、Mimiのビジョンの重要性と多大な商業的可能性を示すもう1つの証といえます」。

画像クレジット:TechCrunch

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(文:Haje Jan Kamps、翻訳:Aya Nakazato)

山口大学が温泉の入浴効果をカピバラで証明!? 肌荒れ改善や保温、リラクゼーション効果を検証

山口大学が温泉の入浴効果をカピバラで証明!?肌荒れ効果や保温効果、リラクゼーション効果を検証

温泉入浴後前後のカピバラの表情・行動比較。Aはカピバラのくつろぎ状態(リラクゼーション効果)をスコア化したもの。目と耳の状態で評価。Bは目の評価。入浴後にリラクゼーション効果が増している。Cは耳の評価。入浴後にリラクゼーション効果が増す傾向にある

山口大学は12月14日、美肌の湯として1200年の歴史を誇る湯田温泉の効能を、カピバラを使った動物実験で初めて実証したと発表した。今回、科学的に解明された温泉の効果は、ヒトにも適用できるとのことで、健康の維持と増進、長寿社会への貢献が期待されるという。

本来、南米のアマゾン川流域に暮らすカピバラは高温多湿の環境を好むため、寒い日本では温泉浴をする愛らしい姿が知られているが、実際、冬季には乾燥による肌荒れが認められている。そこで、山口大学大学院共同獣医学研究科実験動物学の井中賢吾氏と担当教授の木村透氏は、「白狐が見つけた美肌の湯」とのいわれがある山口県の湯田温泉で、カピバラを使って皮膚への効果を調べた。同時に、保温とリラクゼーションといった温泉の効果とされながらも科学的裏付けの乏しかったものの検証も行っている。

その結果、入浴21日後にカピバラの肌荒れは正常な状態に回復した。皮膚性状を表す指標も、水分量が増加し、pHは弱アルカリ性に留まった。色素沈着を数値化するメラニン値は下がり、血行状態を示す紅斑値は上がり、「美肌効果を数値で捉えることができた」とのこと。

温泉入浴でもたらされるリラクゼーション効果は、カピバラの表情と行動でスコア化した。特にまぶたの状態と耳の位置から、リラックスする様子が見てとれた。

保温効果においては、入浴後30分間の頭・体幹・四肢末端の保温状態を調べた。冷えた3部位は入浴によって温まり、その後の計測時間中の体温の低下は抑えられた。これで、温泉は湯冷めしにくいという言い伝えも実証されたことになる。

山口大学が温泉の入浴効果をカピバラで証明!?肌荒れ効果や保温効果、リラクゼーション効果を検証

ここでわかった効果はヒトにも適用できるため、健康の維持増進に貢献できる可能性がある。また、解明された効果を活用した山口県湯田温泉地区の地域観光産業との連携や、健康増進計画への展開も期待されるとのことだ。

なお、謝辞に「地元の山口市内湯田温泉配給協同組合および湯田温泉旅館協同組合の協力並びに秋吉台サファリランドの支援に深く感謝する」と記されている。

英独禁監視当局がマイクロソフトのNuance買収を調査中

2021年初めに発表された、Microsoft(マイクロソフト)による197億ドル(約2兆2380億円)での音声テキスト化企業Nuance Communicationsの買収は、英国の活発な反トラスト監視当局の注意を引いてきた。そして当局は12月13日、提案されている取引に懸念すべき理由があるかどうかを評価するために第1段階の調査を行っていると発表した

関連記事:マイクロソフトが過去2番目規模で文字起こし大手Nuance Communications買収、ヘルスケア分野のクラウドを強化

競争市場局(CMA)が第1段階の調査を開始するかどうかの決定は追って行われる予定だ。

現在のところ、規制当局がこの決定を下すまでの期間は示されていないが、CMAが利害関係者にコメントを求める協議期間は2022年1月10日までとなっている。

買収案に対する独占禁止法上の監視は何カ月にもわたることがあり、少なくとも取引完了に大きな遅れをきたす可能性がある。

CMAはこの件に関する声明の中で「取引が実行された場合、2002年企業法の合併規定に基づく関連する合併状況の創出につながるかどうか、またその可能性があるかどうかを検討しており、もしそうであれば、その状況の創出が英国の商品またはサービスの市場における競争の実質的な低下につながることが予想されるかどうかを検討している」と述べている。

Microsoftは、4月にNuance買収を発表した際に、ヘルスケア分野でのプレゼンスを強化するために音声テキスト化企業を買収すると述べていた。ヘルスケア分野では、Nuanceが多くの臨床医支援製品を開発している(遠隔診療の記録のためのテック、臨床文書作成のための音声認識ツール、AIを活用した放射線診断レポートなど)。

反トラスト規制当局は、今回の買収計画をさらに精査する必要があると判断した場合、第1段階の調査を開始する。その後、まだ懸念すべき理由があると判断した場合、より詳細な第2段階の調査を開始する可能性がある。

また、いずれかの段階で、懸念される競争上の問題がないと判断し、買収を許可することもあり得る。

逆に、懸念がある場合には、買収を実行する前に救済措置が必要と判断したり、買収停止を命じたりする可能性もある。

Nuance買収計画に対するCMAの予備調査について、Microsoftにコメントを求めている。

Amazon(アマゾン)、Apple(アップル)、Google(グーグル)、Microsoft、さらにはFacebook(フェイスブック)などのテック大手は何年もの間、健康状態の追跡やモニタリングなどを行うツールの開発に関心を示してきたが、デリケートな分野への進出は、重要分野のデジタル化が進む中で、企業の支配力や市場力をさらに強めることになるのではないかという懸念がある。

一方、英国では、プラットフォームの力を考慮して国内の競争法を再編成しているところで、「競争促進」の体制を導入し、大企業の市場支配力から中小のイノベーターを保護したいとしている。

競争監視委員会は、CMA内部に設置される新しい部署Digital Markets Unitにハイテク企業を監督する権限を与える法案に先立ち、M&A活動やその他の主要な動き(Googleの戦略的な「プライバシーサンドボックス」計画など)を引き続き監視している。

関連記事:英国でテック大企業を監視する新部署「DMU」発足、デジタル分野の競争を促進

最近では、CMAはMeta(元Facebook)に対し、アニメーションGIFプラットフォームGiphyの買収を取り消すよう命令した。これは、これまでハイテク大手のM&Aに異議が唱えられることがほとんどなかったことを考えると、競争監視において注目すべき出来事だ。CMAは、プラットフォームの力と野心に挑戦する最前線にいることを強調している(命令によって面倒な取引破棄が必要な場合もある)。

画像クレジット:Jeenah Moon/Bloomberg via Getty Images / Getty Images

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Nariko Mizoguchi

慶応義塾大学、柔らかく伸縮性のある半導体デバイスで世界で初めて高周波数13.56MHz駆動に成功

慶応義塾大学、柔らかく伸縮性のある半導体デバイスで世界で初めて高周波数13.56MHz駆動に成功

慶應義塾大学は12月9日、柔らかく伸縮性のある半導体デバイスを、世界で初めて13.56MHzという高周波数で動作させることに成功したと発表した。伸縮性のある半導体デバイスはすでに発明されていたが、動作周波数は100Hz程度と低く実用化の壁になっていた。13.56MHzは交通系カードや携帯電話の無線充電などに使われる、とても重要な周波数だ。

慶應義塾大学理工学部電気情報工学科専任講師の松久直司博士と、スタンフォード大学化学工学科のポスドク研究員(研究当時)シミアオ・ニウ博士、ゼナン・バオ教授による研究グループは、薄いゴムのように肌に密着する柔らかい電子デバイスを使ったウェアラブル機器の実現につながる、柔軟で伸縮性のある半導体デバイスを開発した。これは、13.56MHzで駆動する伸縮性ダイオード。元の長さの1.5倍にまで引き伸ばしても、何度伸縮を繰り返しても、壊れることなく電気的特性が維持される。

開発の決め手になったのは「高周波駆動用に精密にチューニングされた様々な新しい伸縮性電子材料」だという。たとえば、割れやすい高分子半導体の化学構造の中に柔らかいシリコンゴムの化学構造を取り込んだり、導電性高分子材料や金属ナノ材料の一種である銀ナノワイヤなどの電子材料に伸縮性を付与し、電気特性が高周波動作の要件を満たすよう新しく設計した。

研究グループは、この伸縮性ダイオードを使ってセンサー・ディスプレイ・アンテナを備えた集積化したシステムを試作した。衣服に仕込まれたアンテナからワイヤレスで給電され、センサーの信号をリアルタイムでディスプレイ素子の色変化として表示する。こうしたデバイスは、肌に貼り付けても違和感なく使用できるため、長期間の生体情報の取得が可能となり、病気の早期発見などを行うヘルスケア分野のウェアラブルデバイスへの応用が期待されている。

慶応義塾大学、柔らかく伸縮性のある半導体デバイスで世界で初めて高周波数13.56MHz駆動に成功

男性のポルノ断ちもサポート、あらゆるデジタル依存症を克服するツールを英Remojoが開発

男性のセクシャルヘルスをテーマにしたスタートアップが数年前から活発な動きを見せている。初期のテックビジネスには、勃起不全などの健康問題を治療するための医薬品への(より簡単な)アクセスを提供することを目的とするものや(例えばRoman)、抜け毛を減らしたり性欲を高めたりすることを謳ったホルモン検査やオーダーメイドのビタミン剤を提供するものもあった(Manualなど)。時間の経過とともにより広範な遠隔医療が提供されるようになり(Ro)、そして最近では、男性のメンタルヘルスにも関心が向けられるようになった。

関連記事:包括的メンズヘルスケア「Manual」が米国と欧州の投資家から33.1億円のシリーズAを調達

この展開を長い間待ち望んでいた人も少なくないのではないだろうか。

ここ英国は今、起業活動におけるちょっとしたホットスポットとなっているようだ。例えば9月の記事では英国を拠点とするMojoのシードラウンドを紹介した。同社は男性の性的ウェルビーイングのためのサブスクリプションサービスを提供しており、勃起不全の解決策として錠剤ではなくセラピーを提案している。

また、男性専用ではないが、英国のPaired(ペアード)はアプリを通したカップルセラピーを提供している。

さて、今回はMojoと同じ年(2019年)に設立され、男性の性的幸福とセルフケアに対するホリスティックなアプローチを提供している英国拠点のサブスクリプションサービスをご紹介したい。似たような名前が付けられたRemojoは、性の健康に関する悩みを抱える男性をサポートするための技術ツールやアプリ内プログラムを提供しているが、まず同社が最初に着目したのは「ポルノの放棄」である。

Remojoのウェブサイトを見てみると、ポルノをやめることで時間の節約や注意力の向上を期待できるだけでなく、個人的な人間関係が改善され、さらには勃起不全などの健康問題が解決する可能性があるなどさまざまなメリットが説明されている。同社には急成長中の男性のセクシャル・ウェルビーイング分野と一致するところがかなりあるようだ。

価格の違い(RemojoのサブスクリプションプランはMojoよりも安い)を除けば、まず最初の違いはどう男性に関心を持たせるかというところである。

勃起不全に悩む男性よりもポルノを消費する男性の方が多いのは当然だろう。しかし、Remojoのターゲットは、ポルノを見ていて、かつポルノをやめたいと思っている男性だ。しかし単独創業者であるJack Jenkins(ジャック・ジェンキンス)氏は、このサブスクリプションサービスがポルノ依存症男性のためだけのものではないと強調している。

むしろ同氏によると、単純な自己啓発を目的とする人(自分の内側をよりコントロールできるようになりたいと感じている人)から、ポルノ消費の習慣が日々の生活(や人間関係)の妨げになっていると感じている人の他、宗教的信念を持っていて、たとえめったにポルノを使用しないとしてもポルノを使用することに恥じらいを感じており、求められる精神的基準に沿って生活できるようにするための助けを求めている人まで、さまざまな理由でポルノ消費をやめたいと思っている人に対応できるよう設計されているという。

ジェンキンス氏によると、Remojoの主要ユーザーには、キリスト教徒、イスラム教徒、ヒンズー教徒がおり、宗教的理想を実現するための支援を求めている人々が多い。彼らが置かれている環境では通常話すことがタブーとなっている問題について取り組むため、偏見のないサポートコミュニティを求めている場合もあるという。

Remojoによると、同社のサブスクリプションプログラム(1カ月4.99ドル、約580円。3カ月間または1年間のプランに申し込むとそれ以下になる)には毎月約5万人が登録しており、世界中(少なくともインターネットへのアクセスが容易な場所)からユーザーが集まっているというから、ポルノの消費が非常に普遍的な問題であるということがよくわかる。

現在、Remojoにとって最大の市場は米国、英国、ブラジル、インド。アプリ内のコンテンツは英語のため、英語圏の他の市場でも成長しているとジェンキンス氏は説明する。同社の典型的なユーザーは16~35歳の男性で「いつでもポルノにアクセスできる環境で育った」デジタルネイティブだといえる。

このような支持を受け、当然のことながら投資家も放ってはおかない。

ジェンキンス氏によると、同社は過去12カ月間に160万ポンド(約2億5000万円)のプレシード資金を、元Techstars Berlin(テックスターズ・ベルリン)のマネージングディレクターでAngel Invest(エンジェル・インべスト)CEOのJens Lapinski(ジェンズ・ラピンスキ)氏、同じくTechstars BerlinおよびAngel InvestのJag Singh(ジャグ・シン)氏をはじめとする多数の事業家エンジェルの他、銀行・金融業界のエンジェルや(匿名の)創業者などから調達したという。

ジェンキンス氏によると、同社は現在シリーズAの調達を進めており、500万ポンド(約7億7000万円)から600万ポンド(約9億2000万円)を目標に「1月までに」ラウンドを終える予定だという(おそらくシードをスキップして、Aに直行するだろうと同氏は話している)。

Remojoのウェブサイトには、ポルノをやめるための「90 day reboot」というものがあるが、これは同社で最も人気のある契約プランだという。

同社の技術が本当に有効ならば、3カ月ごとにユーザーが大きく入れ替わることになるだろう。しかしオンラインポルノには粘着性があり、簡単にアクセスできるため、再発の危険性が高く、ブロッカーツールが役立つ可能性が高いとジェンキンス氏は主張する。そのため男性にポルノをやめさせるというミッションが成功することによっておき得る、収入の激減を心配することはなさそうだ。

同社はより広範で継続的な、実用性と魅力を兼ね備えたコースもアプリ内で提供しており、ポルノの消費に関連している(あるいは悪影響を受けている)可能性のある男性の性的健康と幸福におけるさまざまな側面をサポートしている(ただし、やめたら改善が続くとは限らない)。

当初、自ら資金を調達して事業を立ち上げたジェンキンス氏。創成期にはユーザーがスマートフォン上でコンテンツをカスタムブロックして、ポルノソースへのアクセスを遮断できるMVPを発表した。

現在同ソフトウェアは、Android、iOS、Windows、macOSに対応しており、クロスデバイスで利用が可能だ。オンラインポルノへのアクセスに文字通りバリアを設ける単純なアダルトコンテンツブロッカーだけでなく、前述の行動変容コース、CBTテクニック、幅広いサポートコミュニティなど多くの機能が盛り込まれている。

今後はAIを用いてポルノコンテンツの識別を行い、ソフトウェアのブロック/フィルタリング機能を強化しようとジェンキンス氏は計画しており、コンピュータービジョンとオーディオを使用してポルノ視聴を進行中に検知し、ソフトウェアがリアルタイムに介入できるようなモデルの開発に取り組んでいる。

現在は、カスタムメイドのブロック機能とサポートリソースがミックスされたアプリになっている。

「いくつかの要素を組み合わせたハイブリッドになっています。習慣形成や習慣破壊に関する研究を行い、その分野で得られた知見や原理を利用しています。アプリ内コンテンツディレクターであるNoah Church(ノア・チャーチ)は、ポルノ依存症から抜け出すためのコーチングを7年間にわたって行ってきました。彼はYouTubeチャンネルを持っており、長年そこで講座やコーチングを行っています」とジェンキンス氏はTechCrunchに語っている。

「弊社のアプリの基礎構造の1つは『選択モデル』です。これは、英国のポルノ・セックス依存症研究の第1人者であるPaula Hall(ポーラ・ホール)博士が開発した回復モデルです」。

Remojoはプログラムから得られるユーザーの実用的な洞察、他のユーザーによる匿名のサポートコミュニティへのアクセス、ユーザーが進展を確認したり、コミットメントやアカウンタビリティを維持したりするためのツール(アカウンタビリティ・パートナーやインストールPINプロテクションなど)も行動変容のミックスに組み込んでいる。

ユーザーを完璧に「Reboot(再起動)」させてしまうことからこのプログラムは開始する。つまりポルノの消費を持続的に控える期間である(ここでRemojoのブロックツールとアカウンタビリティー機能が重要な役割を果たす)。マインドフルネス、運動、(ポルノとは無縁の)趣味への参加など、ポルノを放棄したことで空いた穴を埋めるための、代替習慣を身につけるための時間を確保させることがここでの狙いである。

ジェンキンス氏によると、マインドセットや思考パターンを変えること、そして男性の自己啓発が主な目的であるため、コースの内容には、習慣の変更、依存症の回復、性機能障害の克服(Mojoとの重複)などの関連分野が含まれているという。

今後は、デートに関してやパートナーとの関係・性生活の改善など、より幅広い分野をカバーするコースの他、特定の宗教的信条に合わせたアドバイスを提供するコースなども予定している。

「また、より困難な状況にある人には、心の穴を埋めるためにポルノのようなものを必要としないよう、より充実した生活を送れるようにするための支援をしています」。

ポルノ利用者の中には、利用に関連するより深い心理的問題を抱えている人もいるかもしれないが(幼少期の虐待など)、ポルノの消費自体には「便利な存在」だということ以上の深い意味はないのではないかとジェンキンス氏は主張している。つまり、消費を心理学的に分析することは必ずしも必要ではないという考えである。

そのため同アプリは人を判断することを避け、男性が自分の時間と注意力をコントロールできるようにサポートすることに重点を置いている。そしてそのついでに、注意を散漫させるポルノ業界を批判している。

「ポルノの使用は、必ずしも深い心理的問題によって引き起こされるものではありません。ただ非常に刺激的で、非常に強迫的な物質であり、人々の基本的な進化の欲求を利用して乗っ取ってしまうものなのです。そのため人々はただそこにあるから、そしてとても魅力的だからという理由で、純粋にポルノを見てしまうのです」と同氏は話す。

「これは世界中で共通した問題です。世界中の35歳以下の男性なら、宗教への信仰深さを問わずほとんどの人が直面しています。非常に大きな問題のため、すべてを一括りにすることはできません」と、オンラインポルノの魔力について説明する。「1日に3時間から7時間も見てしまうような深刻な依存症の人もいれば、イスラム教徒で月に1度しか見ないにもかかわらず、イスラム教では許容されていないため彼にとっては大問題です。それが自尊心に影響を与え、神との関係を絶ってしまうようなことさえあります」。

「非常に広い範囲にわたった問題であるため一般化するのはとても困難です。ユーザーの人生がいかに変化したかについて、さまざまな話やコメント、評価を聞くことが私やチームにとっての最大の喜びです」。

より広い観点から見てみると、オンラインでのポルノ視聴は、英国政府も10年以上前から関心を寄せている問題である。ネット上の不適切なコンテンツに簡単にアクセスできてしまうことで、子どもたちに悪影響が及ぶのではないかという懸念から、閣僚たちは現在大規模なオンライン安全法を施行している。

関連記事:英国が子どものためのオンライン安全法案の草案を発表

同様に、幼い頃から無限のポルノにさらされている男性は、後にさまざまな性的ウェルビーイングの問題を抱えることになると同社は考えている(月に5万人の男性がユーザーになるというのだから、あながち間違いではないのだろう)。

英国政府が以前、アダルトサイトへのアクセスに年齢認証を義務付けようとしたことがあったのだが、セキュリティやプライバシーへの懸念、年齢チェックを課したり規制したりすることの実現性をめぐる反発を受け、2019年に挫折した。

自分専用のポルノブロッカーとポルノ断ちのサポートコミュニティ(有料)によって男性が自らポルノをやめることができれば、話はずっと簡単だ。

ジェンキンス氏は自身がポルノをやめようと決心した際、アプリを使った支援ツールを思いついた。特にポルノへの依存があったわけではないが「より良い生活と自身を生きるための、より意識的な選択」として決意したのである。

辞めるためのサポートを探していた際、あるサブレディットで100万人以上のユーザーが同じようなサポートを求めていたことを知り、同氏はそこからこの問題の大きさとビジネスチャンスの可能性を感じ始めた。

「ポルノを完全に自分の生活から遮断するため、スマホやパソコンのコンテンツをブロックしたり、フィルタリングしたりできるガードレールのようなものを探したのですが、あまりいいものがありませんでした」と同氏は振り返る。「私は起業家精神があるため、この問題をもっと掘り下げようと思ったのです。同じようなことをしたいと思っている人や、このように感じている人は私だけではないはずだと思い、Reddit(レディット)でポルノ断ちやポルノ中毒について、あるいはポルノに関する問題や生活への影響について積極的に話している人たちにDMで連絡を取り始めました」。

「彼らにインタビューを始めたところ、Redditでどれだけ多くの人がこの話をしているかに驚かされました。約130万人もの人々が、ポルノをやめることに特化したサブレディットに参加しているのです。彼らはとても熱心に私に話をしてくれましたし、彼らがどれほど強く解決策を求めているのかを知りました」。

「最初のユーザーディスカバリーを行った後、すぐに(2019年12月に)作業を開始しました。私がこれまでに持っていたどんなに良いアイデアでも、これほどのレベルの同意を得られたことはありませんでした」。

「最初はブロッキングが目標でしたが、次第に人々が直面している問題を理解するようになりました。実際に人々の行動を変える手助けをするにはどうしたらいいのか、また習慣や中毒を断ち切るには、行動や考え方を変えるべきなのではないかということが理解できるようになりました。つまりブロッキングだけでは不十分なのです」。

勃起不全の治療をきっかけに、男性に対してより幅広い治療(ポルノ依存症のサポートを含む)を提供したいと考えているMojoと同様に、Remojoもまた、そのツールをより広範囲へと広げたいと考えている。ポルノ用に開発しているアプリベースのフレームワークを、オンラインギャンブルやソーシャルメディア、コンピュータゲームの依存症など「誰も本気で取り組んでいない、現代的な行動的デジタル依存症や強迫観念」にも適用できるようにしたいとジェンキンス氏は意気込んでいる。

「弊社のフレームワークを使って、ギャンブルや衝動的なゲームプレイをやめたり、ソーシャルメディアを減らしたりするための支援をしていきたいと思っています。これらは別々のブランドになりますが、同じ技術、同じフレームワークを使って人々をより良い習慣に導いたり、完全にそれらを断ったりすることができるでしょう。枠組みはまったく変えずアプリ内のコースを変えるだけです。アプリ内のコースを変更するだけで、その他のシステムに関しては、習慣や行動に変化をもたらしたり、デジタル依存症を克服したりするために何が有効かという点ではまったく同じです」。

つまりひょっとすると、Remojoはそのうち女性をターゲットとしたプロダクトを作る可能性もあるということだ。

(それにしても「ポルノをやめる」と「Facebookをやめる」が同列に語られるというのは、ソーシャルメディアに対する考え方がいかにネガティブなものになっているのかを物語っている)

同社のもう1つの開発計画には、独自のカスタムOSの開発がある。本質的にミニマルなOSで、自分の注意を引こうとするデジタル界のあれこれを、ユーザー自身がコントロールできるようにするためのものである。

「アンドロイドのスマホやデスクトップ機器向けにカスタムOSを構築したい」と語る同氏は、近日中に予定されているシリーズAの資金の一部を使ってその作業を開始し、最終的には「デジタルミニマリスト向けに、デジタルウェルネスコントロールをすべてOSに組み込んだ携帯電話を発売する」ことを目標としているという。しかしそれはまだ先の話になりそうだ。

シリーズAにより資金が潤沢になると予想される今後1年間の計画として、メッセージ性を高めていくことも重要だ。

ポルノ消費に関するより多くの人々の考え方を変えるために「世界的な会話を始めていきたい」とジェンキンス氏はいう。ポルノをやめるという考えが、お酒を飲まないとかタバコを吸わないという考え方と同じように「ありきたり」でごく普通なことになるように働きかけていきたいと同氏は考えている。

「まずシリーズAで実現したいのは、このテーマに対するタブーをなくすことです。お酒を飲まない、タバコを吸わない、肉を食べない、といったことと同じように、普通に広く受け入れられるようにしたいと考えています。このライフスタイルの選択を、メインストリームの話題や選択肢として受け入れられるようにするのです」。

画像クレジット:Remojo

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Dragonfly)

血糖値に基づきリアルタイムでその人だけの減量アドバイスをするSignos、シリーズAで約14.8億円調達

日常的に歩数を数えて心拍数を測り、週に1度体重計に乗って体にどのくらいの変化が起きているかを時折確認する、というのでは効果はあまり期待できない。質量を告げるガラスのオラクルの上に1日に何度か立ってみても、実際には体重は後を追う指標であり、何が起きそうかではなく、何が起きたかを示すものだ。主要な指標の1つとなるのが血糖値だが、減量スタートアップのSignos(シグノス)は、自分の代謝の違いに興味がある人がリアルタイムの血糖値モニタリングに登録したり、健康状態を維持するためのアラートに登録することに期待を寄せている。そして同社の1300万ドル(約14億8000万円)のシリーズAラウンドをリードするという観点から、GVも同様の考えを持っていることが伺える。

基本的な科学は次の通りである。オートミールを1杯食べると血糖値が急上昇する。散歩やランニングをすると血糖値が下がり、体重増加が抑えられる。筆者の体の反応は、異なる日、異なる時間に、異なる種類の食べ物を接種することでさまざまな影響を受けているかもしれないし、自分の体に関する予測不能のあらゆる要素や、自分が何を食べ、その日どうしているかによっても違ってくるかもしれない。重要な点は、筆者の体を例に挙げても意味がないということだ。あなたの場合は違ったものになるだろう。Signosは、継続的に測定することで、人々が各自の健康に必要なデータを手に入れることができると考えている。少なくとも情報を得ることができれば、体に何を入れるべきか、体重を落とすためにどのくらいの頻度で体を動かすかを選択できる。

同社は米国時間11月10日、総額1700万ドル(約19億4000万円)の資金を調達したことを明らかにした。これには1月にCourtside Ventures(コートサイド・ベンチャーズ)、1984 Ventures(1984ベンチャーズ)、Tau Ventures(タウ・ベンチャーズ)がリードした400万ドル(約4億6000万円)のシード資金も含まれる。現在のラウンドはシリーズAで、GVがリードし1300万ドルを調達している。

同社の創業者は、減量の課題にはかなり密接な個人的関係があると筆者に語り、始まりの経緯を概説してくれた。

「私はかなり太りすぎの、肥満気味の子どもとして育ち、10代の前半まではそういう状態でした。それからスポーツを始め、減量し、実質的にまともなアスリートに成長しました。最終的には大学にホッケーをしに行き、NHLでのプレーの誘いを2回受けるまでに至りました」とSignosのCEOであるSharam Fouladgar-Mercer(シャラム・フーラドガー=マーサー)氏は語る。トップレベルのスポーツを経験した後、同氏の体は再び変化し、体重も大幅に増加した。「数年前にはまたかなり太ってしまい、私は何か良いガイダンスはないかと探し求めるようになりました。標準的なアドバイスとして、成人男性の1日のエネルギー摂取量は2500キロカロリーとされていますが、4000~5000キロカロリーを摂取しながら体重を増やしたことのない友人を持つ人も多いでしょう。また、1500キロカロリーの摂取量で体重を減らせない人もいます。そして私の家族が糖尿病と診断されたときに、持続血糖モニタリング(CGM:Continuous Glucose Monitoring)のことを知りました。家族からその仕組みの説明を受けながら、CGMを使って代謝が実際に体重減少にどのように影響するのかを解明したいという思いを抱いたのです」。

手短にいうと、フーラドガー=マーサー氏は会社を設立し、構築に取りかかった。

「すべての人の体に特有の代謝ニーズを可視化しています。以前はカロリー削減やマクロ栄養素の計算、炭水化物の除去にこだわっていましたが、現在では、効果のないダイエットを効果的なプランに変えるために、人々と協働できるようになっています」とフーラドガー=マーサー氏は説明する。「数日から数週間のうちにプランを考案し、最適な体重管理と全体的な健康のために時間をかけて洗練させていくことができます。優秀なアスリートや入念なダイエッターは多くの場合、膨大な量の試行錯誤を重ねて結果を出しますが、それと同じ成果を短期間で実現できます」。

Signosのプラットフォームは、何を食べるか、いつ食べるか、どのようなエクササイズが減量に役立つかといった基本的な質問に対する、パーソナライズされた回答を出すのに役立つ。このシステムの心臓部には、Dexcom(デクスコム)のG6持続血糖モニタリングデバイスが組み込まれている。これは一般的に糖尿病患者に使用されているものだ。Dexcomは戦略的投資家として、Signosの最新の投資ラウンドにも参加している。

ユーザーの血液中のグルコース濃度を数分ごとに測定するハードウェアコンポーネントに加えて、SignosはAIを強化したアプリを開発し、持続的な体重減少を促すためのリアルタイムデータとレコメンデーションを提供する。Signos体験の最初に、ユーザーは自分が食べたものをログに記録し、Signosのプラットフォームが特定の食べ物に対する体の反応を学習できるようにする。一度調整されると、Signosはそのデータを使用して、各ユーザーに最適な食品や、いつ食事を摂るべきか、いつ運動をすれば血糖値が最適な減量範囲内に戻るかなど、個別の栄養アドバイスを提示する。

「このデバイスを10日間、フルタイムで装着します。シャワーを浴びたり、ランニングをしたり、睡眠をとったりしながら、測定を続けます。測定が終わるとビープ音が鳴り、取り外して新しいものと交換するときが来たことを知らせます」とフーラドガー=マーサー氏は説明し、デバイスの性質上、環境に優しい技術という面では、ここしばらく私たちが目にした中でベストな水準には達していないことを認めた。リサイクルも再利用もできない。「これは医療機器であり、廃棄する必要があります」。

持続血糖測定デバイスを装着するには、地元の薬局に立ち寄って、小さな電子吸血鬼を内臓に解き放つだけでは不十分だ。医師がデバイスを処方する必要がある。

「米国では、CGMを取得するために医師の処方箋が必要であり、そのオーダーに対応するために薬局も必要です。私たちはすべてのオペレーションを水面下で行っています。サイトを訪問してくだされば、私たちがプロセス全体をご案内します」とフーラドガー=マーサー氏は続ける。「それを終えると、適切な州で認可された薬局を経由して、あなたの元にすべてが入った箱が届きます。さらに、ダウンロード可能な当社のソフトウェアも必要です」。

このシステムの魔法は、ほぼリアルタイムのモニタリングとアラートシステムにある。夜寝る前にスマートフォンをチェックし、午後1時35分に血糖値が急上昇したことを知っても役に立たない。行動を起こす適切な時期は、血糖値が上昇しているときだと同社は主張する。

「長期にわたってこのようなフィードバックループを即時かつ継続的に行うことで、当社のメンバーが達成しようと試みる健康上の成果を実現することができるのです」とフーラドガー=マーサー氏は強調した。

同社によると、10万人以上の潜在顧客がこのプロダクトの利用開始を待っているという。今回の資金調達により、2022年のどこかの時点で、このプロダクトが全米で利用可能になる見込みである。

画像クレジット:画像クレジット:Signos

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(文:Haje Jan Kamps、翻訳:Dragonfly)

【レビュー】Withings ScanWatch、Apple Watchと正反対なスマート腕時計には乗り換えるべき価値がある

Apple Watchをリリースしたとき、Appleは「デジタルクラウン」や「コンプリケーション」がいかにすばらしいものか消費者に説いて大騒ぎしていた。しかし、我々のような時計愛好家には、あの騒動は理解し難いものだった。当然だが、時計にはそんなものはすべて付いているからだ。

当時、Appleは、コンピューティング企業として既存自社製品の犠牲になっていた。要するに、Appleが作っていたのはスマートウォッチなどではなく、手首に着けることができる小さなiPhoneだったのだ。それでもAppleは「いや、これは腕時計ですよ。絶対に」と言い張りみんなを必死に説得しようとしていたが。

Withings(ウィジングス)のHealth Mateアプリは格別だ。Withingsの健康関連プロダクツを複数使っているならなおさらだ。このアプリはGoogle FitおよびApple Health Kitと統合されているため、お好みのエコシステムにデータを移植できる。(画像クレジット:Haje Kamps for TechCrunch)

これと同じような状況をクルマの世界で見たことがある。多くの従来の自動車メーカーは困惑して、こう思っていた。「一体どうすればトラック1台分のバッテリーと電気ドライブトレインを1台の車に詰め込むことができるのだろう」と。しかし、一部のメーカー、とりわけテスラはこの難題をまったく違った方向から捉えた。テスラのアプローチはこうだ。「iPhoneはソフトウェアアップデートが利用可能になると自動的に更新される。それなら、iPhoneを中心に据えて、その周りに車を構築したらどうなるだろう」と。その結果、テスラが生まれた。テスラは、外観も使い勝手も他の車とは見事に異なっていた。テスラのインテリアと所有権を取るか、メルセデスの最新世代電気自動車を取るかを決める要因はさまざまだが、筆者の考えでは、製品の全般的な哲学およびデザインと機能に対するアプローチの問題だと思う。

それらすべての要因を考慮するとScanWatchに行き着く。Withingsは常に、Appleとは異なるアプローチを取ってきた。ScanWatchはミニマリズムの外観と操作性を備えているが、Appleが解決しようとしていたのと同じ問題を抱えていた。時計の外観と操作性を持ちながら、優れた実用性を備え、そしていく分のスマートな機能も備えた時計を作るにはどうすればよいだろう、と。Withingsは、この問題をあくまで時計メーカーのやり方で解決しようとした。Steel HRはその後に登場する製品を示唆していた。WithingsのScanWatchは、Steel HRを自然な形で、より野心的にステップアップさせたものだ。

Withings独自のデザイン哲学とは要するに次のようなことだ。つまり、ScanWatchを手持ちのスマートフォンで写真を撮るためのリモートコントロールとして使うことはできない。ScanWatchに話しかけたりメールを打つこともできない。ScanWatchでメールを読んだり音楽を聴いたり、音声メモを録音することもできない。こうした機能が重要なら、ScanWatchはあなたが求めている製品ではない。あなたが求めているのはスマート腕時計ではなく、超小型スーパーコンピューターだ。

全体的な品質の高さと細部へのこだわりが光るScanWatchは本当にすばらしい製品だ。小型コンピューターというよりむしろ高級腕時計に近い(画像クレジット:Haje Kamps for TechCrunch)

筆者は、Withingsの最上位機種のスマート腕時計をしばらく使ってみたが、この時計が備えているすべての機能に、そして何より、この時計から余分な機能が取り除かれていることに、何度もうれしい気分になった。筆者がApple Watchを着けるのを止めてしまったのは、デザインが嫌いだったし(味気ない黒の四角で、むしろスマートフォンに近い)、メッセージやツイートやメールの着信音がしょっちゅうブンブンと鳴ることに辟易していたからだ。もちろん、着信音をオフにすることはできるが、そうするとApple Watchを着けている意味がほとんどなくなってしまう。わざわざ毎日充電してまで着けたいとは思わなくなってしまった。

Withings ScanWatchの文字盤サイズには、38ミリと42ミリの2種類がある(画像クレジット:Withings)

WithingsのScanWatchはApple Watchとは正反対の時計だ。第一に、見た目がシンプルでミニマリズムだ。小さなPMOLEDディスプレイをオフにすると、多くの時計メーカーが作っているハイエンドの控えめなデザインの時計だと勘違いしても無理もない。ディスプレイはしゃれたRetinaディスプレイではないが、その代わり、電池は最大1カ月は持つ。腕時計らしさもよく出ている。思ったより重いが、それもある意味安心感を与えてくれる。着けていることが分かるし、上質の時計を着けるのに慣れるのも悪くない。

ScanWatchは、健康とウェルネス機能を重視した多くの極めて高度なテクノロジーを腕時計に取り込んでいる。これらの機能は、スマートフォンの機能ではなくフィットネストラッカー機能を拡張したものだ。

WithingsのScanWatchには、多数の医療用トラッカーが組み込まれている。EKG(心電図)機能はこのスマートウォッチとアプリの組み合わせで最も重要な部分だ(画像クレジット:Withings)

ScanWatchは欧州ではリリースされてしばらく経つ。米国でのリリースが遅れている理由を聞くと、このデバイスが競合他社製デバイスと大きく異なっているがよくわかる。ScanWatchを販売するにはFDAの認可が必要なのだ。Withingsによると、ScanWatch内蔵の心電図機能(EKG)は非常に高品質であるため、心房細動(afib)を検出できるという。心房細動は、最も一般的な不整脈で、脳卒中、心臓麻痺、その他の心臓疾患の主な原因でもある。

同社によると、この心電図データをユーザーに提供するには、処方箋が必要で、最初の心電図の出力を医療専門家に分析してもらう必要があるという。同じような心電図機能を備えたスマートウォッチを提供している他のメーカーがこの承認プロセスをどのようにして回避しているのかはよく分からない。Withingsがこの機能を根本的に異なる方法で実装しているのかもしれない。

心電図の承認プロセスは無料で受けることができる。継続的な心電図機能の利用を承認されるかどうかに関係なく、料金はかからない。しばらくの間、同社は処方箋と追加費用なしでユーザーが心電図機能をフルに使えるようにするための取り組みを進めている。おそらく、Apple、サムソンなどがFDAの承認を回避するために行ったことを真似するのだろう。

FDAの承認とはやり過ぎだと感じるかもしれない。そう感じたのはあなただけではない。WithingsはScanWatchのリリース前から守りの姿勢を取っており、心電図機能に関するFAQまで公開している

ここで、健康ファーストデバイスのブランドになろうとするWithingsの野心にスポットライトを当ててみよう。Withingsは、スマートスリープトラッカー血圧測定バンドスマート体温計体脂肪測定器具などを販売している。また、すべてのWithings製デバイスで稼働している優れたHealth Mateアプリは、体の健康のセントラルハブとして人目を惹き付ける。

ScanWatchには2つのサイズがある。これは38ミリ版で「筋トレやってる?」と聞かれるくらいひ弱な手首の筆者にはちょうどよい(画像クレジット:Haje Kamps for TechCrunch)

ScanWatchは着けているのを忘れてしまうようなおしゃれなデバイスだが、その中に、心拍数、血中酸素濃度の監視、心電図機能、歩幅 / トレーニング / アクティビティトラッカー、接続されたGPS、高度計、スリープトラッカー、スマート目覚ましアラームなどの機能がすべて詰め込まれている。これらの機能がすべて揃っているのは本当にすごい技術力だ。

筆者はテクノロジーレビューワなので、これらがすべてWithingsが謳っている機能を本当に実現しているのどうかを判断できるような医療専門知識は持ち合わせていない。何人かの医療専門家に聞いたところ、病院にあるような数千ドル(数十万円)の工業医療機器と同等と言えるほどの機能は提供していないということのようだ。正直、手首に着けられる300ドル(約3万4000円)程度の消費者向けアイテムで、そこまでの機能を提供していたら理屈に合わないだろう。

体型を気にしている健康フィットネス志向の人なら、この時計を選択して間違いないはだろう。手首装着型デバイスとしては信じられないほどの大きな進歩であり、若干低酸素状態で行き詰まり始めていたこの製品カテゴリーに、新鮮で酸素を豊富に含んだ血液を流し込んでくれる、そんな製品だ。

最後に余談を少し。筆者は、数年前eBayでApple Watchを売り払ってせいせいしていたのだが、このレビューのためにお借りしたScanWatchをWithingsに返却したらすぐに、自前でScanWatchを購入するつもりだ。最近たくさんのガジェットを疑いに満ちた目で見ている筆者だが、この時計は本当にすばらしいと思う。

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(文:Haje Jan Kamps、翻訳:Dragonfly)

BNPLの成功を高騰する医療費に、金利なしの「先に治療・後払い」フィンテックPayZen

米国でヘルスケアのコストは増加の一途をたどっており、患者が自己負担しなければならない割合もそれにともない増加している。2019年のギャラップ調査によると、米国の3世帯に1世帯近くが、費用を理由に治療を遅らせたことがあるという。

ヘルスケアフィンテックのスタートアップであるPayZen(ペイゼン)は、AIを活用して患者の医療費債務を引き受け、患者が治療を受けて長期的に分割払いできるようにするソリューションを展開するため、シリーズAラウンドで1500万ドル(約17億1000万円)を調達した。

今回のラウンドはSignalFireがリードし、新規でLink Ventures7WireVentures、さらに既存投資家のViola VenturesとPicus Capitalが参加した。同社は、2021年初頭にシード資金として500万ドル(約5億7000万円)を調達しており、今回のシリーズAにより累計資金調達額は2000万ドル(約22億8000万円)に達した。

PayZenの「先に治療・後払い」ソリューションはすべての患者が利用でき、患者は手数料や金利なしで、治療費を時間をかけ分割払いすることができる。このプラットフォームの基盤となる人工知能(AI)技術により、病院は患者のデータを活用して、管理コストを抑えながら各患者に特化した支払いプランを決定することができる。

PayZenは、2019年にフィンテックのベテランであるAriel Rosenthal(アリエル・ローゼンタール)氏、およびItzik Cohen(イッツィク・コーエン)氏、Tobias Mezge(トビアス・メズガー)氏の3人によって設立された。現在PayZenのCEOを務めるコーエン氏は、消費者債務のフィンテック、Beyond FinanceでCEOを務めていた。

コーエン氏は、TechCrunchのインタビューで、患者の自己負担額は過去10年間で2倍になったが、今後10年間でさらに2倍になると予測されると語った。

「(創業チームは)フィンテック業界出身だったため、例えば、『先買い・後払い(BNPL)』を導入したeコマースでは、イノベーションと信用の拡大を受け、人々がより高額な商品を購入できるようになったのを見てきました。そこで、患者からの請求業務をますます多く担うようになっている医療機関も、苦労しているのではないかと考えました。それでは彼らも悪い状況に追いやられてしまいます」とコーエン氏はいう。

PayZenのプランを利用する患者には金利がかからないため、医療機関はこれらのコストを自分たちの帳簿に残すことができる。コーエン氏は、患者とその経済状況に合ったプランを優先的に提供することで、査定プロセスを逆転させ、支払いの遵守率を高めたと述べている。

フィラデルフィアを拠点とするGeisinger Hospital(ガイジンガー病院)では、PayZenの導入後、支払いの回収率が23%向上したという。コーエン氏は、米国のほとんどの主要な医療機関の平均営業利益率は1%と非常に低く、業界は人材不足に悩まされていると付け加えた。

「市場の状況が少しでも変化すれば、率直に言って、彼らは損失を被ることになるでしょう。彼らは今、この時間を利用して最適化を図り、多くのプロセスを自動化する技術に投資しています」とコーエン氏は語った。

設立からまだ1年も経っていないこのスタートアップは、2022年1月に大幅な製品の拡張を発表する予定だ。

ニーズの増加に対応するため、PayZenは現在35人のチームを2022年末までに約100人の従業員に成長させる予定だという。

画像クレジット:PayZen

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(文:Anita Ramaswamy、翻訳:Aya Nakazato)

「曲面サウンド」で高齢者などの「聞こえ」をよくする「ミライスピーカー」が無医島での遠隔診断実証実験に参加

「曲面サウンド」で高齢者などの「聞こえ」をよくする「ミライスピーカー」が無医島での遠隔診断実証実験に参加

テレビなどの音声を聞こえやすい音に変換する「ミライスピーカー」を開発・製造・販売するサウンドファンは11月16日、無医島である山形県酒田市飛島での「高臨場感な診察を可能とした遠隔診断」の実証実験に「ミライスピーカー」が参加することを発表した。

山形大学学術研究院、日本海総合病院、NTT東日本山形支店は、山形県酒田市の無医島である飛島診療所と、酒田市の日本海総合病院松山診療所とをオンラインで結び、遠隔診断の実証実験を行う。これは、既存の遠隔診療システムを現在の技術に沿わせて更新することを目指ものだ。たとえば、患者の顔を白色有機EL照明で照らし、医師側は高画質の有機ELディスプレイで見ることで、自然に近い色合いで患者の顔色や症状が観察できるようにするといった内容が含まれている。この地域の患者は高齢者が多く、医師の声を聞こえやすくするために「ミライスピーカー・ホーム」が使われることになったということだ。

ミライスピーカーは、従来の円錐形の振動板を持つスピーカーと異なり、湾曲させた平板を振動させる。これにより、広く遠くまでハッキリとした音が届くようになる。早稲田大学の協力で行った音波の解析では、高音域において広範囲にしっかりと音が届けられる音場ができていることがわかった。「ミライスピーカー・ホーム」は、JALの空港カウンターでも採用されている。

東北大学、ISS日本実験棟「きぼう」に31日間滞在したネズミから宇宙で血圧や骨の厚みが変化する仕組みを解明

東北大学、ISS日本実験棟「きぼう」に31日間滞在したネズミから宇宙で血圧や骨の厚みが変化する仕組みを解明

東北大学は11月17日、国際宇宙ステーション(ISS)に1カ月滞在したマウスを解析し、宇宙旅行の際には、腎臓が中心となって血圧や骨の厚さなどを変化させることを発見した。また1カ月の宇宙旅行では血中の脂質が増え、腎臓で余った脂質の代謝や排泄に関わる遺伝子が活性化していることもわかった。

東北大学大学院医学系研究科の鈴木教郎准教授と山本雅之教授らの研究グループは、JAXA筑波大学と共同でこの実験を実施した。同グループは、ISS日本実験棟「きぼう」に31日間滞在した12匹のマウスの腎臓を解析したところ、血圧と骨量の調整に関わる遺伝子群の発現量が変化していることを突き止めた。また、血液中の脂質が増加していて、腎臓で脂質代謝に関係する遺伝子の発現が増加していることもわかった。

地上では、重力に逆らって姿勢を保ったり血液を体中に押し出す必要があるが、それらを必要としない微小重力環境では、体の基礎的なエネルギー消費量が低下する。これまで、宇宙では重力の変化により、血圧と骨の厚さに変化が起きることはわかっていたが、その仕組みは明らかになっていなかった。今回の研究で、そこに腎臓の遺伝子群が関わっていることが判明したわけだ。

この結果から、宇宙旅行の際には、腎臓の健康状態を確認したり、薬剤などで腎臓の機能を調整するなどの腎臓の管理が重要になるとことが示された。今回得られたデータは、東北メディカル・メガバンク機構とJAXAが共同で整備する公開データベースに登録され、世界中の研究者がアクセスできるようになっている。

RespiraのウェアラブルSylveeは肺の健康状態をモニター、COPDや肺機能低下を検知

この数年、身体のあらゆる側面を測定するウェアラブル製品が登場しているが、肺活量の測定はそれら他の側面よりも難解だ。Respira Labs(レスピラ・ラボ)が開発した「Sylvee」は、肺機能を継続的に測定するまったく新しいウェアラブルデバイスだ。COPD(慢性閉塞性肺疾患)や喘息患者をはじめ、一時的に肺機能が低下している人に最適だ。特に、肺機能に影響を与えるあのパンデミックが思い浮かびあがるだろう。

Sylveeは、胸郭の下部に装着する製品で、息を吹きかけなくても簡単に継続的に肺機能を評価できることを約束している。このパッチにはスピーカーとマイクが内蔵されており、音響的な共鳴の変化を測定する。同社によるとこれは、肺機能検査の基本である肺気量の変化をよく表しているとのことだ。

使われている技術は非常に巧妙だ。Sylveeは、スピーカーからノイズを発生させ、その発生した音をマイクで測定する。空洞があると音の質が変わるという理論で、ドラムセットのドラムヘッドを叩いた後に、綿や羊毛、液体を詰めて同じように叩いたときと同じだ。私は医者ではないが、肺の中には一般的に空気腔があるものと思われる。このウェアラブルは、収集したデータをもとに、肺の容積、容量、流量、そして空気の滞留を測定する。

「確立された科学では、低周波音を使って空気のとらえ込みを90%以上の精度で測定できることがわかっています。慢性閉塞性肺疾患患者と健常者では、音響共鳴スペクトルに明らかな違いがあります。慢性閉塞性肺疾患、新型コロナウイルス(COVID-19)、喘息の患者数は1億人を超え、高齢化も進んでいるため、肺機能を遠隔で正確にモニターし、問題を早期に発見して深刻な事態を回避することは、命を救うことにつながります。私たちの目標は、異常を早期に発見し、自宅での早期治療を可能にし、患者さんが自らの健康を管理できるようにすることです」。とRespira Labの創設者兼CEOであるMaria Artunduaga(マリア・アルトゥンドゥアガ)博士は説明してくれている。

Sylveeは、胸郭に装着して使用する。肺の健康状態を判断するために、音を出し、肺の共鳴をとらえる(画像クレジット:Respira Labs)

製品名のSylveeは、慢性閉塞性肺疾患を患い、発見できずに症状が悪化して亡くなったアルトゥンドゥアガ博士の祖母にちなんで名づけられている。

「このデバイスは、呼吸器系の患者が避けなければならない、急性の悪化の早期診断と管理を容易にしてくれます。私たちは、医師や患者に重要な情報を提供することで、より早い段階で治療法を切り替え、入院を防ぐことができます。これは私の祖母に起こったことです。彼女は慢性閉塞性肺疾患を患っていましたが、突然症状が悪化し、敢えなく亡くなってしまいました。私は、恐ろしくも、一般的なこの結果をきっかけに、医師としてのキャリアを捨て、このSylveeの開発に専念しました」とアルトゥンドゥアガ博士は述べている。

Respira Labsは、米国内外で500人以上の患者を対象とした大規模な試験を実施することで、空気のとらえ込み測定精度を90%にすることを目標としている。また、2022年後半には有名なジャーナルに論文を発表する予定だ。このデバイスは現在試作中で、今後18カ月以内にFDAの認可が下りる予定だ。

画像クレジット:Respira Labs

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(文:Haje Jan Kamps、翻訳:Akihito Mizukoshi)

約950兆円の50歳以上の市場をターゲットにするコミュニティをAARPが設立

高齢者を対象としたテクノロジーは、ヘルスケア、フィンテック、エンターテインメントなどの分野で、目新しいものではないが、スタートアップ企業、投資家、国際的な産業界リーダーからなる新しいコミュニティが、この年間8兆3000億ドル(約950兆円)と言われる市場に注目している。

AARPが起ち上げたAgeTech Collaborative(エイジテック・コラボレーティブ)は、T. Rowe Price(ティー・ロウ・プライス)、Walgreens(ウォルグリーン)、Cooley(クーリー)、QED Investors(QEDインベスターズ)などの組織を集め、スタートアップ企業の製品やツールをスケールアップして、それらをAARPの3800万人の会員の目に触れるようにしようという取り組みだ。

このコラボレーションには、Voiceitt(ボイスイット)、Rendever(レンデバー)、Trust & Will(トラスト&ウィル)、Mighty Health(マイティ・ヘルス)など、50社のスタートアップ企業が参加している。これらの企業は、製品を試用するための6つのテストベッドを利用できる他、10を超える投資家やベンチャーキャピタリスト、50歳以上のコミュニティに関わる大手企業やサービスプロバイダーとアイデアを交換することができる。

AARPでイノベーション・製品開発担当シニアバイスプレジデントを務めるAndy Miller(アンディ・ミラー)氏がTechCrunchに語った話によると、50歳以上の人々の消費力はすでに8兆3000億ドルに達しているが、30年後には3倍になると予想されるという。

ミラー氏は、自身が率いるアクセラレーターのAARP Innovation Labs(AARPイノベーション・ラボ)には、30社ほどの企業が集まったものの、AARPの会員にはアクセスを提供できなかったことが、このアイデアの発端になったと語っている。そこでAARPは、スタートアップ企業に規模拡大の道筋をつける方法を考え始めた。その中には、スタートアップ企業が試験的に製品を試す機会を見つけたり、製品を試してくれる企業と提携できるようにすることが含まれる。

また、AARPには、50歳以上の市場をターゲットにしたスタートアップ企業や他のアクセラレータプログラムについて、AARPの見解を聞きたいというベンチャーキャピタル企業からの問い合わせも受けているという。

「私たちは、このようなエコシステムを構築する必要性を強く感じていました」と、ミラー氏はいう。「この年代層では毎日1万人が65歳になり、ミレニアル世代の最高齢者はあと10年で50歳になります。経済的な誘引もありますが、しかし我々の取り組みによって人々がより幸せな年齢の重ね方をできるようにすることで、社会の利益にもなります。私たちは、AARPという究極のコネクターの力を、VCや企業、スタートアップに活用することができます。老いに打ち勝つことができるものがあるとすれば、それはAARPであるはずです。私たちは、すべての人に成功して欲しいと思っています」。

Aging 2.0をはじめとする他の組織もまた、エイジテック分野に参入し、次の最も優れたイノベーションを模索している。一方、スタートアップ企業はさまざまな製品やサービスのために資金調達を続けている。例えば、高齢者向けフィットネスプログラムをてがけるBold(ボールド)は、2021年初めに700万ドル(約8億円)を調達している。

新型コロナウイルスが世界的に大流行する以前には、高齢者向けのテクノロジーは「あればいいもの」だった。しかし今では「最高の人生を送るためには絶対的な必要なもの」となっていると、ミラー氏は付け加えた。QRコードをスキャンしてレストランのメニューを注文することから、医師との遠隔医療の予約まで、高齢者にとってテクノロジーに慣れ親しむことが必要になっている。

これら2つの分野に加えて、Voiceitt(ボイスイット)が取り組んでいるような、うなり声や音を認識して照明を点灯させる技術などの音声認識分野や、世代を超えたファイナンシャルプランニングなどのフィンテック(金融テクノロジー)分野でもイノベーションが起こると、ミラー氏は考えている。

フィンテックは、QED InvestorsのマネージングパートナーであるNigel Morris(ナイジェル・モリス)氏が注目している分野の1つでもある。

退職後の選択肢を理解し、子どもに貯金を渡すかどうかを考えたいというニーズや、60歳で退職したら海辺に隠居するのではなく、むしろギグ・エコノミーを活用したいというニーズもあると、モリス氏はいう。

QEDは、贈与管理のためのソフトウェアであるFreewill(フリーウィル)や、介護者の財務管理を支援するTrue Link(トゥルー・リンク)など、4社のエイジテック企業に投資している。

「いくつもの企業がこの問題を考えており、それは時宜にかなっています」と、モリス氏は続けた。「この層は伝統的に格好良いものとは見做されておらず、多くの投資家がこの層を理解していないため、これまで見過ごされてきました。そこにチャンスはたくさんあり、AARPがこのような活動を行うのはすばらしいことです。その創設メンバーになれることを、私たちは大変誇りに思います」。

画像クレジット:Getty Images

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(文:Christine Hall、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

アップルの取締役会にジョンソン・エンド・ジョンソンのCEOが参加

Apple(アップル)は、Johnson & Johnson(ジョンソン・エンド・ジョンソン)の会長兼CEOであるAlex Gorsky(アレックス・ゴルスキー)氏が同社の取締役会に加わったことを発表した。ゴルスキー氏は、2022年1月に予定されているJohnson & JohnsonのCEOとしての退任に先立ち、Appleの取締役に就任した。また、Appleがヘルステックにより注力している時期とも一致する。

Appleは、何年もの間iOSやWatchOSに健康に特化した機能を数多く投入するなど、健康とウェルネス分野への野望を公にしてきた。ゴルスキー氏をガバナンスチームの一員として起用したことは驚くべきことではない。

AppleのTim Cook(ティム・クック)CEOは、プレスリリースの中でこう述べた。「アレックス(・ゴルスキー)は、長年にわたりヘルスケア分野で先見性を発揮し、その卓越した洞察力、経験、テクノロジーへの情熱を、人々の生活を改善し、より健康的なコミュニティを構築するために注いできました。彼のリーダーシップと専門知識から、私たち全員が恩恵を受けることになるでしょう」。

ゴルスキー氏は、1988年にJohnson & Johnsonに入社し、2012年にCEOに就任した。Appleは、同氏は在任中イノベーションとテクノロジーを重要な優先事項とし、医薬品、医療機器、コンシューマーヘルス分野の未来を形作るための投資を行ってきたと述べている。

ゴルスキー氏はプレスリリースで、次のように述べている。「テクノロジーには人々の生活を向上させ、より健康的なコミュニティを生み出す可能性があるというAppleの信念を、ずっと共有してきました。Appleの取締役会に加わり、私たちの生活を助け、向上させるために絶えず革新を続けている価値主導の企業の一員となることを光栄に思います」。

画像クレジット:Steven Ferdman / Getty Images

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(文:Aisha Malik、翻訳:Aya Nakazato)

スイス大研究チームがヒトデの幼生から着想を得たマイクロロボットを超音波で動かすことに成功

マイクロロボットは、業界の多くの人々にとって長年の関心事だった。このようなテクノロジーは、最終的に多くのアプリケーションを提供できる可能性があり、その中にはヘルスケア分野における有用な機能も含まれる。例としてよく挙げられるのが、薬の薬物送達やマイクロサージャリーなどだ。

このテクノロジーで生じる最大の疑問は、移動性をどうやって確保するかだ。具体的にいうと、バッテリーやその他の技術を搭載せずに、どうやってロボットを動かすかということである。よく提案されるのは磁石を使う方法だが、スイス連邦工科大学チューリッヒ校のチームは、超音波を使ったまったく別の方法を研究している。

髪の毛の直径よりも小さいこのロボットは、 写真現像技術を応用して微細なパターンを生成するフォトリソグラフィーという技術によって作られた。その外部は、ヒトデの幼生を覆っている繊毛を人工的に模したもので覆われている。ヒトデの幼生は、この超微細な毛のような構造体が、周囲の水を叩いて小さな渦を作ることによって、水の中を移動する。つまり、この構造は、実質的に水を押し出すか引き込むか、そのどちらかを行うのだ。

研究チームによると、超音波を当てることでこの小さなロボットに同様の推進力を生み出し、直線的に泳がせることに成功したという。画像や動画の中でロボットの周りに見えるものは、プラスチック製のマイクロビーズを水に入れ、ロボットの周りでどのように円状に動くかを表したものだ。

薬物送達は、ここで最も広く議論されている応用法である。具体的には、胃の腫瘍などの部位にマイクロロボットを使って直接薬物を送達できるようにする。そうすれば、薬をより効率的に使用でき、潜在的な副作用も軽減できる。

「しかし、このビジョンを実現するためには、イメージングという大きな課題が残っています」と、同校は書いている。「小さな機械を適切な場所に誘導するには、鮮明な画像がリアルタイムで生成される必要があります。研究者たちは、超音波による医療用画像処理ですでに使用されているような造影剤を組み込むことで、マイクロロボットをもっと見えやすくすることを計画しています」。

画像クレジット:ETH Zurich

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(文:Brian Heater、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

東大COI開発の行動変容促進システム活用、日立システムズが特定健康保健指導を支援する「健康支援サービス(MIRAMED)」

東大COI開発の行動変容促進システム活用、日立システムズが特定健康保健指導を支援する「健康支援サービス(MIRAMED)」提供

日立システムズは11月1日、特定保健指導を受ける人たちに向けた業務支援サービス「健康支援サービス(MIRAMED)」(ミラメド)の提供開始を発表した。メタボリックシンドロームのリスクを図式化したり、日々の目標を示したり、専門家によるアドバイスや遠隔面談、チャットなどを提供することで、特定保健指導対象者の健康をサポートするサービスだ。

このサービスは、東京大学センター・オブ・イノベーション(COI)が開発した、AIを活用しメタボリックシンドロームのリスクや関連疾患のリスクを減らすための行動変容アプリ「MIRAMED」を通じて提供される。特徴としては、健康診断やアンケートの結果などから、生活習慣関連疾患のリスクを抱える人に、自分の体の状況を図式化などでわかりやすく伝えること、遠隔面談、チャット、ウェアラブルデバイスとの連携などで、指導担当者との情報共有ができること、簡便に濃厚な指導が受けられること、長期目標だけでなく日々のチャレンジも取り込めること、食事や運動に加え、飲酒、喫煙、睡眠、ストレスを毎日記録して1週間ごとの評価を受けられること、東京大学の専門家が科学的根拠のある内容を基に作成したアドバイスが受けられることなどがある。

自治体や健康保健組合など、健康指導を行う側にも、ユーザーの情報が把握しやすく円滑な指導が可能となり、遠隔面談やチャットなどで場所や時間を選ばず指導できることや、指導ポイントの自動集計などで、労力が削減できるといったメリットがある。

日立システムズでは、「医薬・ヘルスケア領域において、健診から治療支援、介護までのサイクルを包括した切れ目のないサービスの提供」を目指しており、これはその中の「未病分野」の取り組みにあたる。自治体、企業、健康保健組合が行う特定保健指導に着目した同社は、 Amazon Web Services(AWS)を利用し、クラウド基盤上で特定保健指導を支援するこのサービスの提供に至った。今後は、日本遠隔保健指導センターを運営し、機械学習による医療系データ解析などを行うLiDAT(ライダット)と連携し、「より先進的で高品質・高効率な特定保健指導の確立にも挑んでまいります」と話している。

糖尿病でも諦める必要はない、ヘルシーなアイスクリームを作るN!CK’Sがスナック文化革命のために約113億円調達

スウェーデンのフードテック企業「N!CK’S」は、ヘルシーなアイスクリームを1パイントずつ作ることで、世界に挑もうとしている。

同社は中央ヨーロッパ時間10月28日、シリーズCで1億ドル(約113億円)の資金を調達したと発表した。この資金は、甘味料と原材料を独自にブレンドすることでカロリーを抑え、砂糖を添加しない健康的なスナックやアイスクリーム製品の開発に活用される。

Kinnevik、Ambrosia、Temasekが共同でこのラウンドを主導し、Gullspangが参加した。今回の資金調達により、同社の累計調達額は1億6000万ドル(約182億円)に達したと、N!CK’Sの北米CEOであるCarlos Altschul(カルロス・アルトシュル)氏はTechCrunchに語っている。

N!CK’Sは、2017年に欧州で、創業者で研究開発責任者のNiclas Luthman(ニクラス・ルースマン)氏の母親が糖尿病と診断され、そしてルースマン氏自身が糖尿病予備軍と診断されたことから始まりました、とアルトシュル氏は語った。

「彼は、体に良いソリューションを提供するフードサイエンスがあまりないことを認識していました」と同氏は付け加えた。「彼は、食べ物を変えるのと、食生活を変えるのとでは、食べ物を変える方が簡単だと考えました」。

欧州では同社は、アイスクリーム、スナックバー、コンフェクショナリー製品を製造している。しかし、N!CK’Sは「文化を変えるためのプラットフォーム」であるスナックブランドだと、アルトシュル氏は語る。また、同社の研究開発に根ざしたイノベーションと素材が、競合他社との差別化につながっているという。

この2年間、同社は忙しい日々を過ごしてきた。2019年末、N!CK’Sはアイスクリームで米国に進出し、そのカテゴリーでは1店舗あたりのセールス速度でトップに立っている、と同氏は付け加えた。また、Perfect Day独自の動物由来成分を含まない乳たんぱく質と植物性代替脂肪を使用した、ヴィーガン乳製品ラインを発売した。

同社が2020年にスタートした直販(D2C)事業は、7月以降、D2Cアイスクリームデリバリー分野でトップの座を維持していると、アルトシュル氏は述べている。2021年、同社はケトプロテインバーのラインを立ち上げた。まずはD2CとAmazon(アマゾン)のチャネルで販売開始し、年末までに小売店に展開する予定だ。

2020年から2021年にかけて、N!CK’Sを取り扱う小売店は米国では4500店舗から6700店舗に拡大し、英国ではWHSmithとの提携により拡大した。

今回の資金調達によりN!CK’Sは、欧米での店舗数の倍増、人材の増員、マーケティング、新製品の発売に向けた研究開発への投資など、同社の目標を加速させていきたいと考えている。

Kinnevikの投資ディレクターであるMagnus Jakobson(マグナス・ヤコブソン)氏は、彼は数年前から食品分野への投資を行っており、現在起こっている持続可能性と健康という複数の追い風が需要を喚起し、川上でのブランド構築能力があるため、この業界は魅力的であると述べている。

同氏は今を「エキサイティングな時期」と考えており、特に最初は自力で実現したN!CK’Sのこれまでの牽引力は「印象的」であり、その戦略は現在、他の食品技術パートナーを引き付けている、という。

ヤコブソン氏はこう述べた。「人々の生活や食べ物の消費の仕方は変化しており、それが新しいブランドの構築を可能にしています。Oatly(オートリー)、Beyond(ビヨンドミート)、Impossible(インポッシブルフーズ)といった企業が業界をリードしてきましたが、今では技術面での躍進や、スタンドアロンブランドで消費者にアプローチする新しい方法が見られるようになりました。中でもN!CK’Sは非常にエキサイティングなもので、業界の黎明期にあっても期待されています」。

画像クレジット:Nick’s

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(文:Christine Hall、翻訳:Aya Nakazato)

ザッカーバーグ氏がフィットネス機器としての「Quest 2」を紹介、「Pelotonのようなものだ」

Facebookは「Oculus Quest 2」をゲーム機以上のものとして認識してもらいたいと考えている。

Mark Zuckerberg(マーク・ザッカーバーグ)CEOは、同社の開発者会議「Facebook Connect」で、Questを「Supernatural」や「FitXR」といったサードパーティ製アプリのフィットネスプラットフォームとして活用するための取り組みを紹介。さらにコネクテッドフィットネス機器として、Pelotonと直接比較もしている。

基調講演においてザッカーバーグ氏は「多くの方が、健康維持のためにQuestを利用していますが、まったく新しい方法でワークアウトすることができます。Pelotonのようですが、自転車の代わりにVRヘッドセットを用意するだけで、ボクシングのレッスンから剣術、さらにはダンスまで何でもできるのです」。

同社は、ハードウェアの分類をさらに進めており、2022年には、Quest 2ヘッドセットをカスタマイズして、エクササイズで使えるようにする「Active Pack」をリリースすると発表した。このパックは、コントローラーにグリップを追加し、ヘッドセットが汗で濡れてしまう問題を解決するフェイシャルパッドを備える。

近年、Facebookはヘッドセットを使ったフィットネスを推進しており「Quest 2」に活動量やカロリー消費量を測定するトラッキング機能を持つ「Oculus Move」というプロダクトを発表している。

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(文:Lucas Matney、翻訳:Katsuyuki Yasui)

バイオテックのスタートアップShiruが新規資金で植物由来原料の「発酵」を促進

タンパク質生化学者のJasmin Hume(ジャスミン・ヒューム)博士は、代替食料分野に取り組んでいる。テクノロジーを進化させることで、世界の食品産業が動物への依存を減らせる機会があると考えたからだ。


同氏は2019年にShiru(シル)を設立し、その会社では「精密発酵」プロセスを利用してし食品会社向けに植物由来原料を作り出している。その結果は味、食感、多用途性、量産した場合のコスト、いずれにおいても動物由来と同等だとヒューム氏はTechCrunchに語った。

「私が発見し、学んだのは、動物から得ている原料である卵のタンパク質や乳タンパク質が、食品ラベルのおかしな場所に現れているということでした」と彼女は語った。「例えば白い、ふわふわのパンには乳タンパク質が入っています。私たちは多くの食品部門を対象に、それらを持続可能で栄養のある原料に置き換えることが目標です。

食品原料市場と植物由来タンパク質市場は、いずれも安定した成長態勢にある。世界食品原料市場の規模は2022年に4000億ドル(約45兆4136億円)と予測されており、植物由来食品は2030年までに1620億ドル(約18兆3925億円)市場になると考えられている。

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現在、Shiruの商品カタログには、パッケージされた焼き菓子、ソース、バーガー、ヨーグルトなどさまざまな食料製品に添加できる無味無色の材料が6種類載っている。

ヒューム氏らが置き換えを狙っている食料の1つがメチルセルロースで、これは植物タンパク質ベース食品などに使用されているデンプンだ。

「メチルセルロースには植物由来のバーガーとソースにはない結合作用がありますが、ラベルには載せたくない成分です」とヒューム氏は付け加えた。「食品会社はメチルセルロースの問題を抱えていますが、誰も口にしません。この種の成分は置き換えを余儀なくされていて、私たちには置き換えるための原料があります」。

産業界からの需要を見越して、2022年の早くにこれらの原料を企業に提供するために、カリフォルニア州エメリービルのスタートアップは米国時間10月27日、1700万ドル(約19億3000万円)のシリーズAラウンドをS2G Venturesのリードで完了したことを発表した。

ラウンドには、既存出資者のLux Capital、CPT Capital、Y Combinator、およびEmles Venture Partner、新規出資者のThe W Fund、SALT、およびVeronorteが参加した。新たな資金を得て、Shiruのこれまでの総調達額は2000万ドルをわずかに超えた、とヒューム氏は語った。

投資の一環として、S2GのマネージングディレクターであるChuck Templeton(チャック・テンプルトン)氏がShiruの取締役会に加わった。S2Gは、健康食品と持続可能農業に焦点を当てた投資ファンドで、これまでに影響力があり、動物由来製品を置き換える製品をもつ会社に何度も投資してきた。

植物由来食品は進化中であり、新しいバージョンは常に良い味を目指しているが、まだ十分健康的ではない、と彼は言った。その点、Shiruの原料は「味がよい」だけでなく、置き換えようとする対象をしっかりと再現し、かつ健康的だとテンプルトン氏は付け加えた。

さらにテンプルトンは、同社はコスト構造と栄養成分、そして「顧客を喜ばせる」正しいラベリングを理解していると信じていると語った。

「あの会社は製品とタンパク質をすばやく発見し、多用途の原料を市場に提供する方法を知っています」と彼は付け加えた。「これによって彼らは、コスト構造の改善などを精査、継続していく機会を得られます。ヒューム氏のチームは、食品業界が制約を受けないように、そしてラベルと環境をきれいにする最高の原料を見つけられるようにしています」。

2022年までに材料を顧客に提供する計画を踏まえ、Shiruの成分を含む最初の商品が食料品店の並ぶのは、早ければ2023年だろうとヒューム氏は予想している。

同社はまずテクノロジーに集中して取り組み、それが検証されるとヒューム氏は、Shiruのスケーリングと基盤整備を次のフェーズに進めるために、次期ラウンドのベンチャーキャピタルを探し始めた。

彼女は新しい資金を、Shiruの22名の従業員を1年以内に2倍にし、科学、発酵、マーケティング、事業開発の人員を雇用するために使うつもりだ。また同社は、2022年にカリフォルニア州アラメダへ本社を移転し、生産規模の拡大を開始する。

「私たちがやるべき最大の仕事は、食品原料をたくさんつくることです」とヒューム氏はいう。「スケーリングへの挑戦には困難がともなうでしょうが、提携あるいは自社施設の建設によって発酵を工業規模で行うことを目指しています。そうすることで、食品会社がテストするために必要なサンプルを配れるところまで進むことができます。

画像クレジット:Getty Images under a metamorworks license.

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(文:Christine Hall、翻訳:Nob Takahashi / facebook

第3世代「Oura Ring」は健康状態トラッキングや生理予測など新機能満載のフィットネスリング、有料コンテンツ配信も

2017年初頭、Motiv(モチーブ)はウェアラブルなフィットネストラッカーの装着箇所が手首だけでないことを実証し、テクノロジー業界メディアの想像力を掻き立てた。しかし、同社は最終的に運動トラッキングだけでは飽き足らず、すぐにその技術を生体認証ツールなどへ拡大することに目を向けるようになった。その一方で、Oura(オーラ)は、健康という分野にまだまだ可能性を見出していた。


実際、新型コロナウイルス流行時には、組織が既成概念にとらわれないソリューションを探し求めていたため、Ouraは2020年に大きな成功を収めた。このスタートアップ企業は、そのさまざまな健康指標が、新型コロナウイルスやその他の健康状態の早期発見にいかに役立つかを証明し、NBA(全米バスケットボール協会)、WNBA(全米女子バスケットボール協会)、World Surf League(世界プロサーフィン連盟)、Red Bull Racing(レッドブル・レーシング)、Seattle Mariners(シアトル・マリナーズ)、UFC(アルティメット・ファイティング・チャンピオンシップ)、NASCAR(ナスカー)など、米国の大手スポーツ団体が喜んで採用した。

画像クレジット:Oura

これまでにOuraは「数十万個」のリングを販売してきたと記している。家電製品の世界では驚異的な数字というわけではないが、ハードウェアのスタートアップとしては、特にスマートウォッチやフィットネスバンドが氾濫している市場では、目覚ましい成長と言えるだろう。

Ouraの製品は、数多くのセンサーを1個のパッケージに詰め込むという特長で成功を収めており、これがワークアウトや睡眠などに関する質の高い洞察を提供する。同社の新しい第3世代のリングは、Ouraが自分たちの本業に力を入れていることを再認識させる製品に仕上がっている。もっとも、ほとんどのウェアラブルメーカーが健康とウェルネスに力を入れている今、もちろんそれは当然のことだろう。

第3世代Oura Ring(オーラ・リング)の最大の特徴は、24時間365日の健康状態トラッキング機能で、心拍数を常時モニタリングできることだ。体温モニターや睡眠トラッキングも改善された他、生理予測などの機能も備わる。これについては、同社は次のように述べている。

Ouraは、次の生理を30日前に正確に予測し、生理開始の6日前に警告するため、あなたは常に準備を整えておくことができます。Ouraはカレンダー方式だけに頼るのではなく、生理周期を通じて自然に変化する体温から、より総合的なアプローチで生理を予測します。多くのトラッキング法は、あなたの生理周期が毎月同じであることを前提としていますが、Ouraの生理予測は、あなたの生理周期の変化に合わせて予測を調整します。

今回のニュースでは、Ouraが、Apple(アップル)、Fitbit(フィットビット)、Samsung(サムスン)などのメーカーと同様に、ワークアウトのコンテンツにより深く踏み込んでいることもわかった。現在は「近日公開」となっているこのライブラリにはワークアウト、瞑想、睡眠、呼吸法などをテーマにした50以上の映像 / 音声セッションが用意されている。

画像クレジット:Oura

「当社ではこのライブラリを拡大し続ける予定です。ライブラリには、睡眠とカフェインなどの影響を理解するための教育的なコンテンツと、ガイド付きコンテンツの両方があります」と、同社CEOのHarpreet Rai(ハープリート・ライ)氏はTechCrunchに語った。「最初のうちは、瞑想や睡眠のための音が多いですが、我々はこのライブラリを大幅に増やしているところです。今後もどんどん増えていくでしょう。これはあなたの健康のためのワンストップショップになります」。

これらの動画は、より深い健康に関する洞察とともに、新たに開始される月額6ドル(約680円)のOura Membership(オーラ・メンバーシップ)サービスを通じて提供される。

「Peloton(ペロトン)、Tonal(トーナル)、Tempo(テンポ)、Hydro(ハイドロ)などのコネクテッドフィットネスは、ハードウェアとサブスクリプションの組み合わせになっています」と、ライ氏はいう。「ウェアラブルもそのような形になりつつあります。将来的には完全なサブスクリプションモデルに移行できると思うかと訊かれたら、収益を得る方法は色々とあるでしょうが、私はそれも可能だと思います。その方法を除外してはいません。しかし、より多くの消費者は、総所有コストの点からこの製品に惹かれていることも確かです」。

このOura Ringは、今後も新機能の追加が予定されており、2022年には血中酸素濃度を示すSpO2値の測定機能が搭載される予定だ。価格は300ドル(約3万4000円)で、現在予約注文を受け付け中。11月中旬に出荷開始となる。

画像クレジット:Oura

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(文:Brian Heater、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

運動習慣を形成する音声フィットネスアプリのBeatFitが2億円調達、健康経営領域での成長を加速

音声フィットネスアプリ「BeatFit」(Android版iOS版)を開発・運営するBeatFitは10月19日、第三者割当増資を実施しシリーズBラウンドとして約2億円の資金調達を2021年9月に完了したと発表した。引受先はリード投資家のインフォコム、共同投資家のツクイキャピタル、またVOYAGE VENTURES、そのほか個人投資家。

調達した資金は、エンジニアや法人向け人材の獲得費用にあて、プロダクト開発を促進させるとのこと。同時に、リード投資家であるインフォコムとの業務提携を締結し、健康経営領域での成長速度を加速させる。健康増進領域にとどまらず新規事業の開発も開始し、さらなる企業価値の向上を目指す予定。

BeatFitは、運動習慣を形成し運動不足を解消するための音声フィットネスアプリ。筋トレやウォーキング、ストレッチや睡眠など12ジャンル700以上のクラスが用意されている。運動に最適な音楽、また現役プロトレーナーの音声ガイドで構成されるオリジナルフィットネスコンテンツの配信を通じて、効果的な運動習慣作りをサポートするという。

「この世から不健康をなくす」というビジョンを掲げて2018年に設立されたBeatFitは、同名のアプリの開発・運営を主事業とする。健康という資産を楽しくスマートに管理できる仕組みを実現し、元気な社会の実現を目指している。2020年に開始した法人向け事業も順調に成長を遂げているとのこと。