Web3のデジタルIDスタートアップ、Unstoppable Domainsが約1211億円のユニコーン評価額で資金調達を交渉中

ブロックチェーンのネーミングシステムプロバイダーとして人気のUnstoppable Domainsが、10億ドル(約1211億円)の評価額で資金調達ラウンドを実施する交渉をまとめていると、この件に詳しい3人の関係者がTechCrunchに語った。

同スタートアップは、Draper Associates、Coinbase Ventures、Protocol Labs、Naval Ravikantを含む多くの新規および既存投資家と、新たな資金調達ラウンドで約6000万ドル(約72億6300万円)を調達すべく交渉していると、検討中かつ非公開であるため匿名を希望した情報筋は語った。

このラウンドはまだクローズしていないので条件が変わる可能性がある、と彼らは注意を促している。同社は米国時間3月22日にはコメントを控えた。

Unstoppable Domainsは、人々が暗号のためのユーザー名を作成し、分散型デジタルIDを構築するためのサービスを提供している。同社は、特定のTLDを持つドメインを5ドル(約605円)という低価格で販売しており、これまでに210万以上のドメインを登録する手助けをしてきたと、そのウェブサイトで述べている。提供する人気のTLDには、.crypto、.coin、.bitcoin、.x、.888、.nft、.daoなどがある。

Amazon(アマゾン)のAWS、Uber(ウーバー)、Slack(スラック)などの企業で働いたメンバーを含むUnstoppable Domainsは、分散化された各ドメイン名をEthereumブロックチェーン上のNFTとして鋳造し、オーナーにより広範なコントロールと所有権を与えている。

ドメイン名を持つことで、ユーザーは無意味に長いウォレットアドレスを友人や企業とわざわざ共有する煩わしさから解放される。

Unstoppable Domainsはまた、OpenSea(オープンシー)、Coinbase Wallet(コインベースウォレット)、Rainbow Wallet、Chainlink、Brave browser、ETHMailなど140以上のアプリケーションと統合されている。90以上のDAppsが、EthereumとPolygonのためのシングルサインオンサービスである同社の製品「Login with Unstoppable」をサポートしており、暗号コミュニティを苦しめる経験の1つに対処している。

投資家へのピッチデッキで、同スタートアップは「分散WebのCoinbase」を構築しようとしていると述べた。その幅広いサービスのおかげで現在では、ENS、Solana Bonfida、Tezos、Handshakeと競合している。

同社は24万人以上の顧客を集め、2021年は5300万ドル(約64億1800万円)の収益を計上したと、2人の情報筋が語っている。また、利益も出ているという。TechCrunchが入手したピッチデッキによると、同社は2022年、企業と提携して自社のTLDを立ち上げる予定だという。

画像クレジット:Unstoppable Domains

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(文:Manish Singh、翻訳:Den Nakano)

ロボットアームを使った高層ビル窓ガラス掃除のSkylineが7.9億円調達

自動化する意義がある仕事のリストで、筆者は窓掃除をかなり上位に入れたい。実際、この仕事は汚くて危険なものだ。そして驚くことに、危険手当がそれほど支払われない。何百フィートもの高さで空中にぶら下がるような仕事には、当然支払われるべきものだと思うのだが。

Skyline(スカイライン)は2021年に、高層ビルの側面にある手の届きにくい場所を清掃する(ファサードメンテナンスと呼ばれる)ロボットシステムOzmo(オズモ)を納入して話題になった。このシステムでは、Kukaの産業用ロボットアーム2本が吊り下げられたプラットフォームに据えられている。

清掃するガラスの位置を確認するのにLiDARを使い、作業中はガラスを割らないよう力センサーに頼っている。また、アルゴリズムが組み込まれているため、風が強い状況でも安定したロボットハンドを実現し、最適な清掃経路を1分間に数百回再計算することが可能だという。

ニューヨークを拠点とするSkylineは3月23日「プレシリーズA」と称するラウンドで650万ドル(約7億9000万円)の調達を発表した(正直なところ、こうした資金調達ラウンドのラベルは、これまで持っていた意味を失いつつある)。Skyline Standard Holdingsがこのラウンドをリードし、Skylineの資金調達総額は900万ドル(約10億9000万円)に達した。

「このラウンドと初のOzmo展開の成功は、我々の製品とサービスに対する需要が目に見えて投資家に伝わっているだけでなく、Skylineの前に大きなビジネスチャンスがあることを示しています」とCEOのMichael Brown(マイケル・ブラウン)氏は話した。「私たちのチームの信念は、投資家のみなさんのものと一致しています」。

確かに、ニューヨーク市だけでも数千万枚の窓ガラスが清掃を必要としており、そこにはチャンスがたっぷりある。

画像クレジット:Skyline Robotics

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(文:Brian Heater、翻訳:Nariko Mizoguchi

Nothing初のスマホは今夏発売予定、クラウドファンディングで追加資金調達へ

誰がなんと言おうと、Nothing(ナッシング)はティーザーをさらにもったいぶる方法を知っている。同ハードウェアスタートアップの弁明として、同社は米国時間3月23日朝に行われたイベントは「ロードマップ」の公開であるとし、具体的には、同社のラインアップに加わる別のデバイスに言及したが、その製品に関する情報はあまり提供しなかった。しかし同社は少なくとも、噂されていた2番目のハードウェア「Nothing Phone(1)」の発売予定を確認した。

我々は3月初め、Mobile World Congress(MWC)において、創業者のCarl Pei(カール・ペイ)氏が企業幹部たちとミーティングを行い、ワイヤレスイヤフォンのEar(1) と同様に透明感を強調したデザインを特徴とするバージョンのデバイスを披露していたことを紹介し、このデバイスの存在を確認した。

今回のオンラインイベントで同社は、製品にSnapdragonチップが搭載されることを含め、いくつかの詳細を発表した。Qualcomm(クアルコム)がNothingに出資していることを考えれば、驚くことではない。同じくペイ氏が設立したOnePlusに似て、このデバイスはAndroidを独自に改良したNothing OSを搭載し「Nothing製品や他の世界トップブランドの製品を簡単に接続、統合するオープンでシームレスなエコシステム上に構築される」という。

エコシステムは常にNothingの戦略の中核にあり、その統合がどのようなものなのか興味深いところだ。Apple(アップル)やSamsung(サムスン)などがモバイルを中心としたソーラーシステムを構想しているのと同じように、同社は携帯電話がそのシステムのハブとして機能することを思い描いているのは間違いないだろう。Nothingは4月、OSのプレビューを提供するつもりだという。

画像クレジット:Nothing

ソフトウェアは、OnePlusがOxygenOSで提供しようと取り組んできたもの、つまり、あまり多くの追加ソフトウェアを追加せずに、Androidに手を加える形に似ているようだ。外観的には、同社の「アナログ」デザイン言語を踏襲することになる。同社は、(Androidを土台にするとはいえ)ハードウェアとともにOSレイヤーを開発することで、Appleのような道を歩もうとしているのだ。同社のヘッドフォンはすぐに対応し、AirPodsやTesla(テスラ)などの自動車を含むサードパーティ製品のサポートに取り組んでいる最中だとペイ氏はいう。

Nothingは、携帯電話のOSアップデートを3年間、セキュリティアップデートを4年間提供することを約束している。

というわけで、同社はEar(1)が確立したパターンを踏襲し、今後数カ月のあいだ、次期スマホのより詳細な情報をチラ見せしていくことになるのだろう。

携帯電話のニュースとともに、同社は、わずか2週間前に実施された7000万ドル(約84億8000万円)のシリーズBに続いて、さらにクラウドファンディングで資金を調達することを発表した。同社が目指しているのは1000万ドル(約12億1000万円)で、VCが支援したラウンドと同じ評価額で募集される。現在、事前登録を受け付けており、4月5日に正式公開される予定だ。ファンに金銭的な利益を与えることで、コミュニティの関与を促進しようとするこの戦略は、これまで同社にとって成功を収めてきた。

このデバイスは、モバイル関連のスタートアップ企業にとって厳しい、しかし期待が集まる時期に登場することになる。初代iPhoneが発売されてから15年が経ち、携帯電話への関心は薄れている。パンデミック以前から売り上げは横ばい、低迷していたが、その後のサプライチェーンの制約やチップ不足とともに、この傾向はさらに悪化している。LGやHTCのようなかつての主要プレイヤーは、この業界から完全に撤退するか、劇的に規模を縮小している。

Nothingは、Essentialの失敗から生まれたプライバシー重視のOSOMを含む、新しいモバイルスタートアップ各社の小さなムーブメントに加わることになる。ちなみにペイ氏とNothingは、EssentialのIPを買収したが、同社は最終的にその名前を使って何もしていない。

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(文:Brian Heater、翻訳:Den Nakano)

日本のテラドローンがシリーズBで80億円調達、グローバル展開を加速

ドローン、電動垂直離着陸機、無人航空機などの航空機の利用が本格化する中、日本のスタートアップTerra Drone(テラドローン)は、空のトラフィックが見落とされないようにしたいと考えている。

テラドローンのCEOで創業者、そして電気自動車を開発するTerra Motors(テラモーターズ)のCEOも兼務している徳重徹氏は「空域はこれまで以上に混雑していきますが、今日のほとんどの企業はハードウェアの開発だけに注力しています。安全かつ効率的なドローンやアーバンエアモビリティ(UAM)の運用を可能にするグローバルな航空交通管理ソリューションに対する差し迫ったニーズがあり、テラドローンは空のデジタルインフラを構築する主要プレイヤーになることを目指しています」と述べた。

2016年に設立されたテラドローンは、ドローンのソフトウェア、ハードウェア、無人航空機システムのトラフィック管理ソリューションを手がけている。同社は3月23日に三井物産が主導した80億円のシリーズBラウンドを完了したと発表した。2021年2月にシリーズAで1440万ドル(約17億円)を調達してから約1年、今回のラウンドで調達総額は8300万ドル(約100億円)となった。

SBIインベストメント、東急不動産HD、九州電力送配電、西華産業、JOIN(海外交通・都市開発事業支援機構)、既存投資家のベンチャーラボインベストメントが今回のラウンドに参加した。

テラドローンのCOO、関鉄平氏はTechCrunchとのインタビューで、シリーズB資金を人員増強と欧州、米国、東南アジアへのグローバル展開に使うと述べた。また、これらの地域での企業買収にも使われるという。同社の評価額については明らかにしなかった。

テラドローンは2018年にオランダのドローン会社Terra Inspectioneeringを買収し、2016年にはベルギーのドローン会社Uniflyに投資している。

さらにテラドローンは調達した資金を、無人航空機システムの交通管理ソリューションを通じて、ドローンやエアタクシー運航のための目視外自律飛行技術の支援や、自社のUAMサービスの開発強化に充てるという。

シリーズB後の次の計画について尋ねられた関氏は、テラドローンは株式公開を検討しているという。また、IPOの前にさらに資金調達する可能性もあると付け加えた。

テラドローンはShell(シェル)、Chevron(シェブロン)、BP、ExxonMobil(エクソンモービル)、ConocoPhillips(コノコフィリップス)、Vopak(ボパック)、日本のインペックスといった石油・ガス会社、そしてBASFや関西電力といった化学会社を含む約500の顧客を抱える。テラドローンはまた、食品会社Bunge(バンジ)に検査サービスを、建設会社に調査サービスを提供していると関氏は語った。

注目すべきは、2022年2月に発表されたFortune Business Insightsのレポートによると、安全性と性能向上のために主にリグ点検に注力している石油・ガス業界は、陸上・海上パイプラインの監視に年間で約507億6000万ドル(約6兆1280億円)を投じていることだ。テラドローンは、構造物の腐食、コーティングの不具合、その他あらゆる構造物の損傷などの欠陥を特定することができると関氏は話す。世界のドローン監視市場は、2021年の1億4200万ドル(約171億円)から2028年には4億7650万ドル(約575億円)に成長すると予想されている。テラのIR資料によると、世界のUAM市場は2040年までに1兆5000億ドル(約181兆円)まで拡大すると予測されている。

テラドローンは、東京電力ホールディングス、日本航空、大手通信会社KDDI、INPEX、国土交通省など、多くの日本企業や政府とのプロジェクトに取り組んでいる。また、有人・無人の航空機の飛行管理調整で宇宙航空研究開発機構(JAXA)とも連携している。

テラドローンの無人交通管理

関氏は、テラドローンの重要な特化・差別化ポイントは、足場がなくてもドローンが超音波探傷器(あるいは超音波厚み測定器)を表面に押し当て、壁の厚みを測定できる特許技術だと明かした。

「Terra LiDAR(光検出・測距)やTerra LiDAR Cloudなどの測量グレードのハードウェアソフトウェアの販売による経常収益の拡大、(子会社の)Terra Inspectioneeringによるドローンを使った超音波厚み(UT)測定や非破壊検査(NDT)などの専門サービスの提供、そして海外事業の戦略的整理によって、成功のための態勢が整いました」と徳重氏は述べた。「我々は事業とイノベーションをより速く拡大することができます」。

テラドローンは英国のSky-Futures、CyberHawk、マレーシアのAerodyneなど、世界のドローン会社と競合している。AirMapや、ドローン用のUAVライダーシステムを開発するフランスのYellowScanも競合相手だと関氏は言及した。

テラドローンの従業員は60人で、子会社の従業員は全世界で約500人だ。

画像クレジット:Terra Drone

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(文:Kate Park、翻訳:Nariko Mizoguchi

スマートフォンで3Dスキャン&データ編集が行えるスマホアプリ「WIDAR」を手がけるWAGOが1.1億円のシード調達

3Dを活用するための技術開発・提供を行うWOGOは3月22日、シードラウンドとして、第三者割当増資による1億1000万円の資金調達を実施したと発表した。引受先は、Coral Capital。

また、スマートフォンで3Dスキャン&3D編集が行えるアプリ「WIDAR」(Android版iOS版)の正式版を3月5日にリリースしたことを明らかにした。

調達した資金により、同アプリの編集ツールの追加リリースを継続的に行う。また、コミュニティー機能を充実させ、3Dデータの蓄積とともに、これらデータが素材として活用されるようなコラボ制作の流れを作り出し、3Dコンテンツ作成のハードルを下げる。さらに、3Dデータの活用を促進し、メタバースにより多くのコンテンツを供給することを実現すべく、データの外部接続APIの開発と提供も図る。

WIDARは、スマートフォンのカメラ機能でスキャンした対象を3Dモデル化し、編集できるアプリ。3D編集機能は、初回リリースとして複数データ配置機能、背景変更機能と動画像出力機能をアプリ内に新規追加した。また、自身の作品を投稿できるコミュニティー画面を用意し、3Dデータが共有、再利用されていく土台を用意した。

現在、メタバース市場の成長と同時に、バーチャル空間のゲームも盛り上がっている。また、モバイルデバイスの高性能化が進み、個人がスマホで手軽に3Dコンテンツを作り出せる下地も整いつつある。

ただ、メタバース向けコンテンツ創出において利用されている「Blender」などの既存3D制作ツールは、プロ向けであることから、一般的なユーザーには難易度が高いという状況にある。

その中でWOGOは、2021年にはアプリのベータ版をリリース。3Dスキャンの実装をスマホに落とし込んだ。さらにWIDAR正式版では、3D編集機能を搭載。これにより、従来3D制作ツールでは数時間かかっていたゼロから形状を構築する作業が、WIDARでは3Dスキャンと編集の組み合わせにより10分程度に短縮させたという。

WOGOは、東京大学情報理工学系研究科所属のメンバーを中心として、2021年1年に設立されたスタートアップ。「3D制作の民主化」をビジョンとして掲げており、WIDARによって3Dコンテンツ作成のハードルを引き下げ、創出された3Dデータの活用を促進しメタバースへ多くのコンテンツ供給を目指している。

美容クリニック向けSaaS「medicalforce」を展開するメディカルフォースが1億円調達、サービス開発および採用を強化

美容クリニック向けSaaS「medicalforce」を提供するメディカルフォースは3月18日、プレシリーズAラウンドにて総額1億円の資金調達を実施したことを発表した。引受先はDNX Ventures、ANRI、個人投資家2名。調達した資金は、medicalforceの開発とチームの採用強化にあてる。また、シードラウンドおよびデットでのファイナンスを含めた累計調達額は約1億3000万円となった。

medicalforceは、美容クリニックの現場業務のデジタル化および経営支援を目指すサービス。予約、問診、カルテ、会計といった日常業務をすべて一元管理することが可能。「予約はGoogleカレンダーで、カルテは保険診療向け電子カルテ」など個別のシステムを使っている場合に発生する、情報がバラバラなためにダブルチェックの手間や集計が煩雑になるという課題を解決できる。また、予約・カルテ・会計の集約情報を基にLINEやメールでのメッセージ発信も行なえる。経営管理ダッシュボード、リマインド・ステップ配信などのCRM機能を搭載しており、経営面においても効率化を図れる。

美容クリニック向けSaaS「medicalforce」を展開するメディカルフォースが1億円調達、サービス開発および採用を強化

シェアリングIoT農園を展開するプランティオが1.3億円調達、大手町エリア・渋谷区・多摩田園都市エリアに農園設置

シェアリングIoT農園を展開するプランティオは3月22日、第三者割当増資による総額1億3000万円の資金調達を実施したと発表した。引受先はジェネシア・ベンチャーズ、大広、MS-Japan、iSGSインベストメントワークス、そのほか既存投資家。

調達した資金により、大手町エリア・渋谷区・多摩田園都市エリアにシェアリングIoT農園を設置するほか、年内には東京以外の主要都市にも随時設置し、行政・民間らと共創を行い、コレクティブ・インパクトを加速する。コレクティブ・インパクトとは、社会課題に対して、行政・企業・NPO・基金・市民などがセクターを越え、互いに強みやノウハウを持ち寄ると同時に働きかけを行い、課題解決や大規模な社会変革を目指すアプローチ(Channeling Change: Making Collective Impact Work)。

また、農業をDX化する次世代型アグリテインメントプラットフォーム「grow」において、農業的な活動がどれだけ環境に貢献しているかを可視化する機能を強化するという。既存農業と比較した場合のCO2削減量、生ゴミ削減量、ヒートアイランド現象にどの程度貢献できているのかなどを可視化する。

growとは、IoTセンサー「grow CONNECT」とスマートフォンアプリを組み合わせることで野菜栽培をナビゲーションするプラットフォーム。家庭のベランダやビルの屋上、マンションの屋内といった様々な場所で野菜栽培を可能にするという。

2015年6月設立のプランティオは、「持続可能な食と農をアグリテインメントな世界へ」をビジョンとして掲げるスタートアップ。育てる楽しさ、食べる喜び、人との関わり合いなどをICT×エンタテインメントの力でエンパワーメントすることを目指している。

Bored ApesのNFTスタートアップYuga Labs、約4836億円のモンスター評価額でシードラウンドを調達

NFTに懐疑的な人々が嫌いがちな数百万ドル(数億円)もする「サルのJPEG」メーカーYuga Labsは、Andreessen Horowitzから40億ドル(約4836億円)の評価額で4億5000万ドル(約544億円)の資金調達をしたと米国時間3月23日に発表した。

Bored Apes Yacht Clubを運営するこのマイアミのNFT企業は、これまで資金調達を行っていなかったが、以前からNFTブームの主要企業を支援しようとするVCからの注目を集めていた。このラウンドにはAnimoca Brands、LionTree、Sound Ventures、Thrive Capital、FTX、MoonPayなどの投資家も参加している。

Yuga Labsはその地位をますます強めている。2022年2月初め、同スタートアップはLarva Labsから人気のNFTプロジェクトCryptoPunksとMeebitsの資産を買収したことを発表した。また同社は、創業者と幹部が実質的な出資を行っているApeCoinを立ち上げたばかりでもある。このトークンは、取引初日に数十億ドルの時価総額を集めた。Yuga Labsは間もなく、この勢いを「Otherside」と呼ばれるメタバースの独自バージョンにつなげようとしており、他の多くのNFTプロジェクトのアバターも統合する予定だ。

関連記事:Bored ApesのNFTプロジェクトに公式の「ApeCoin」トークンができた

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(文:Lucas Matney、翻訳:Katsuyuki Yasui)

ハイパースペクトルイメージングで鉱石を現場で見分けるPlotlogicが約21.8億円調達

鉱業は今ある産業の中で最古の産業に属するが、需要の増大とともにハイテク化が進んでいる。Plotlogicは、ハイパースペクトルイメージングと呼ばれる、実験室や人工衛星でよく使われている技術を使って、重要だが古めかしい仕事に新しいデータ層と自動化をもたらす。

ハイパースペクトルイメージングは、基本的に可視域外の光を捉える写真で、人間の目には同じように見える物質を識別できる。他のほとんどのものと同様、「自然」が最初に到達した。鳥や昆虫は、私たちが見ることのできない波長を見ることができ、それが彼らの世界全体の見方を変える。

ハイパースペクトルはは結局、分光分析の一種で、放射線を物体に当てて、その反射や吸収を見るものだ。皮膚、セメント、レアアースなど、あらゆる物質にはそれぞれ固有のスペクトルがある。Plotlogicが目指しているのは、明らかに後者のカテゴリーだ。

2018年にオーストラリアのブリスベーンで創業したPlotlogicは、多重スペクトル+LiDAR画像という組み合わせで、山積みになった大量の鉱山の砕石から「リチウムが少々ある、銀も少しある、硫黄もややある」などという(これらが同じ砕石の山にあることは、実際にはないだろうが)。

もちろん、鉱山ではこんな分析を以前から何らかの方法で行っているはずだ。そうでなければ、精錬場へ行くトラックと廃棄場へ行くトラックを見分けられない。しかしそのような分析は通常、ラボにサンプルを送って、そこでスペクトル分析を行ってもらう方法だ。しかしPlotlogicは、この重要な分析を現場で行い、効率化する。

鉱石サンプルをスキャンする定置型OreSenseと、そのサンプルの分析例(画像クレジット:Plotlogic)

CEOで創業者のAndrew Job(アンドリュー・ジョブ)氏によると「分析を採掘工程と一体化して、現場のスタッフがリアルタイムの情報でやる気になることが、本当のイノベーション」という。

同社がこのOreSenseと呼ばれるマシンを開発したのは2019年で、それ以降、現場で何度も使われ、主な鉱山企業からのフィードバックも得た。可動方式と据え付け型の両方で使うことができ、スキャンを採掘現場でも、あるいはどこかに砕石を集めてからでもできる。踏み板を使うバージョンは、人が安全に行けない場所にも行ける。

そのシステムは鉱業の既存の工程と合うように設計されているため、鉱石の掘り出し方を従来のものから変える必要はない。ジョブ氏によると、変更が必要な場合は効率アップで正当化されるという。

Plotlogicの創設者でCEOであるアンドリュー・ジョブ氏(画像クレジット:Sarah Keayes/The Photo Pitch)

「経済的なメリット、環境維持のメリット、安全性のメリットの3つがあると考えています」とジョブ氏はいう。「より多くの鉱石を処理し、廃棄物を減らすことができるため、より収益性が高くなります。より正確に、より多くの岩石をその場に残し、燃料や温室効果ガスを廃棄物の移動に費やさないようにすることができるのです。そして、それは鉱山での人間の被曝時間も減らします」。

肺が黒くなる鉱山での病は過去のものかもしれないが、それでも鉱業は今なお、基本的に困難で危険な仕事だ。重機の側にいたり、閉鎖空間内にいたり、粉塵が充満した空間にいることは少ない方が良い。信頼性の高い情報豊富な画像が得られれば、鉱業の自動化も近くなるとジョブ氏はいう。

1800万ドル(約21億8000万円)のシリーズAは、Innovation EndeavorsがリードしBHP VenturesとTouchdown Venturesが参加した。どちらも、大手鉱業グループのベンチャー部門だ。さらに、DCVCとBaidu VenturesとGrids Venturesも参加。資金は、商用展開の拡張と国際化努力の開始に充てられるという。

画像クレジット:Plotlogic

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Hiroshi Iwatani)

産業向けドローンサービスを提供するTerraDorneが80億円のシリーズB調達、「空のプラットフォーム」運航管理技術開発

産業向けドローンサービスなどを提供し、空飛ぶクルマとドローンで「世界No.1」を目指すTerra Drone(テラドローン)は3月23日、シリーズBラウンドとして、総額80億円の資金調達を発表した。

引受先は、新規投資家の三井物産、SBIインベストメント、東急不動産HD、九州電力送配電、西華産業の5社、既存投資家のベンチャーラボインベストメント。また、国土交通省傘下の官民ファンドである海外交通・都市開発事業支援機構(JOIN)より、特別目的会社を通じ同社の関係会社Unifly N.V.(ユニフライ)への共同出資枠を確保。JOINにとって、エアモビリティ含む航空インフラ領域スタートアップへの初出資という。産業向けドローンサービスなど提供のTerraDorneが80億円のシリーズB調達、「空のプラットフォーム」運航管理技術開発産業向けドローンサービスなど提供のTerraDorneが80億円のシリーズB調達、「空のプラットフォーム」運航管理技術開発

2016年3月設立のTerra Droneは、東京本社含め全国に拠点を構え、海外においても欧州・東南アジアを中心に事業展開する産業用ドローンソリューションプロバイダーだ。「空から、世界を進化させる」をミッションに掲げ、世界各地域でドローンや空飛ぶクルマなどのエアモビリティにおけるハードウェア、ソフトウェア、サービスと、事業横断的な開発およびソリューションを提供。

またエアモビリティを用いて、石油ガス、化学、建設業界などにおける現場作業のデジタル化や、遠隔地・被災地における物流の効率化など多岐にわたる産業のDX化を進め、人力の限界である非効率・危険な作業の解消を進めている。

ドローンや空飛ぶクルマの社会実装において基盤となる、エアモビリティの運航管理分野では、世界で国家レベル含む導入数1位というUniflyの筆頭株主となり、世界8カ国にわたる「空の運航管理プラットフォーム」を構築。国内では、JAXAより一部技術移転を行い、ドローンや空飛ぶクルマの運航管理の実証実験を重ねているという。加えて、大阪府の公募に対し、三井物産、国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)、朝日航洋と共同で「エアモビリティ統合運航管理プラットフォーム事業」に事業採択されている。

エアモビリティの世界市場は、2040年には160兆円規模への成長が予測されている。日本国内でも、2022年度level4(ドローンによる有人地帯における目視外飛行)解禁を迎える予定だ。創業から4期目で黒字化し、CAGR87%(5年平均)、売上営業利益ベースで毎年増収増益と、堅調な事業成長を続ける同社。事業の次期フェーズとしては、多種多様なエアモビリティの安全性や効率性が不可欠となり、エアモビリティ同士の衝突回避や、住民保護のための交差点・ 信号機の役割を果たす「空のプラットフォーム」(空域および運航管理システム)の整備が急務と考える。今回の調達により、「空のプラットフォーム」運航管理技術の開発、各事業成長資金、同活動を実現するための採用活動への投資を行うという。

フランスの航空宇宙企業Gamaが太陽帆宇宙船開発のために約2.4億円を調達

地球の洋上で海風がヨットを推進するように、太陽放射が宇宙船を星から星まで推進する日が来るかもしれない。少なくとも、フランスのスタートアップ企業であるGama(ガマ)はそう期待している。

2020年にLouis de Gouyon Matignon(ルイ・ド・グヨン・マティニョン)氏、Thibaud Elziere(ティボー・エルジエール)氏、Andrew Nutter(アンドリュー・ナッター)氏が設立したこの航空宇宙企業は、宇宙船の推進手段として光を利用した低コストのソーラーセイル(太陽帆)を開発することを目標としている。同社はフランス公共投資銀行(BPI)、フランス宇宙庁(CNES)、エンジェル投資家から200万ドル(約2億4000万円)の資金を集め、10月にその技術を宇宙で実証することになっている。このミッションでは、SpaceX(スペースX)のFalcon 9(ファルコン9)ロケットでキューブサット(小型人工衛星)を打ち上げ、高度550キロメートルで73.3平方メートルのソーラーセイルを展開する予定だ。

「地上でも多くのことをテストできますが、このような大きさの展開テストは、宇宙の無重力の中でしかできません」と、ナッター氏はTechCrunchに語った(このソーラーセイルは1辺が10メートル近い大きさになるはずだ)。

ソーラーセイルは決して新しい発明ではない。1608年に天文学者Johannes Kepler(ヨハネス・ケプラー)が、天文学者仲間のGalileo Galilei(ガリレオ・ガリレイ)に宛てた手紙の中で、初めて理論化した。しかし、ソーラーセイルの展開に初めて成功したのは、2010年になってからのこと。日本の宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発した宇宙ヨット「IKAROS(イカロス)」がそれだ。同年、NASAが「NanoSail-D(ナノセイルD)」を打ち上げ、2019年には非営利宇宙支援団体のPlanetary Society(惑星協会)が「LightSail 2(ライトセイル2号)」の試験を成功させた。

現在はGama以外にも複数の組織が、新たなソーラーセイルミッションを開発している。NASAのAdvanced Composite Solar Sail System(ACS3、先進複合材料ソーラーセイルシステム)は、イリノイ州のNanoAvionics(ナノアビオニクス)が設計した宇宙機に800平方フィート(約74.3平方メートル)のソーラーセイルとして搭載される予定だ。

Breakthrough Initiatives(ブレイクスルー・イニシアチブ)のBreakthrough Starshot(ブレイクスルー・スターショット)プロジェクトでは、1億ドル(約120億円)の資金提供を受け、4.7光年の距離にあるケンタウルス座α星系に、小さなソーラーセイルを取り付けた超小型宇宙機群を送り込むことを計画している。

Gamaは、これら過去や現在のミッションと2つの点で異なっている。「第一に、Gamaのチームは反復と極めて迅速な展開に努め、多くのソーラーセイルを記録的な速さで打ち上げていく」と、ナッター氏はいう。「第二に、我々は衛星を静かに回転させ、その結果生じる遠心力を利用してセイルを花びら状に展開させます。これによって構造的な重量を軽減し、より大きな面積を展開することができます」。

最初の打ち上げに先立ち、同社はすでに2回目のミッションを構想している。それはより高い高度で展開し「セイルを操舵できることを実証して、従来の推進技術に代わる信頼性の高い低コストの技術を提供できることを示します」と、ナッター氏は語っている。

ソーラーセイルは、風を構成する空気分子ではなく、光子を推進力として利用することを除けば、従来の帆とほとんど同じように動作する。光子は質量を持たないが、宇宙空間を移動する時の勢いを、マイラーやポリアミドでできたソーラーセイルという反射面に伝えることで、宇宙船を推進させることができるという仕組みだ。その力はわずかなものだが、真空の宇宙空間ではすぐに累積する。時間はかかるものの、ソーラーセイルで宇宙船を光速の20%まで推進させることができる可能性がある。

そうすれば、宇宙船に積まなければならない推進剤が不要になり(あるいは、少なくとも量を減らすことができ)、その分の重量を他の用途に使えるようになる。また、ソーラーセイルを使えば、理論的には宇宙船を無限に推進させることができるので、宇宙船の飛行期間を延ばすこともできる。これは、長期の深宇宙ミッションに不可欠な技術であり、それがこの技術のさらなる開発に注目が集まる理由でもある。

画像クレジット:Gama

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(文:Stefanie Waldek、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

Preferred Roboticsが6億円調達、旭化成ホームズと家庭向け自律移動ロボ開発や三井住友銀行と自律移動ロボの決済機能開発

Preferred Roboticsが6億円調達、旭化成ホームズと家庭向け自律移動ロボ開発や三井住友銀行と自律移動ロボの決済機能開発

Preferred Robotics(プリファードロボティクス。PFRobotics)は3月22日、第三者割当増資による約6億円の資金調達を3月18日に実施したと発表した。引受先は、旭化成ホームズ三井住友銀行

調達した資金により、財務基盤の強化、優秀な人材の確保、ロボットの開発および製造のための投資を行う。

同時にPFRoboticsは、親会社Preferred Networks(PFN)と旭化成ホームズが実施した実証研究を引き継ぎ、今後PFRoboticsと旭化成ホームズで家庭向けの自律移動ロボットの共同開発を行う予定。また三井住友銀行とは、自律移動ロボットの決済機能や金融サービス提供機能などの共同開発を目指すとともに、同社のネットワークを活用して、顧客ニーズに基づく新たなロボットを多様な事業者などと共創する。

PFRoboticsは、PFNおよび協業企業との連携を強化し、共同開発および自社開発の自律移動ロボットの販売を年内に開始する計画という。

Preferred Roboticsは、PFN子会社として 2021年11月に設立。PFNと共に掲げるビジョン「すべての人にロボットを」の実現に向け、自律移動ロボットの研究開発を行っている。また同社は、PFNの機械学習・深層学習技術を応用し、様々な用途の自律移動ロボットの製造・販売を目指している。

パンデミック下で成長する多種多様なフェムテック企業、従業員への福利厚生としても注目が集まる

女性の健康とウェルネスを支える技術「フェムテック」。McKinsey & Companyによると、2021年のフェムテック領域の資金調達総額は、25億ドル(約2830億円)に到達し、過去最高を記録した。

The dawn of the FemTech revolutio Published by McKinsey & Company(2022/2/14)


女性の健康とウェルネスに特化したVCであるCoyote Venturesと、フェムテック領域の情報配信やスタートアップサポートを行うNPO団体であるFemtech Focusの予測によれば、フェムテック市場は2027年までに1兆1860億ドル(約138兆円)の市場規模にまで成長するという。

そんなフェムテック業界だが、その注目領域も変化している。Crunchbaseによると、過去5年間は妊娠と子育てがVCの資金調達の最大のシェアを占めていたが、2021年に最も投資を集めたのは、プライマリ・ケアや予防医療領域だった。不妊や更年期など、困った時に頼るフェムテックから、すべての女性が常に自分の健康を守るために必要不可欠な技術になりつつあることがわかる。

欧米での盛り上がりを受け、日本でも注目が集まる領域だが、今回は、パンデミック後も続くと予測されるフェムテック業界のトレンドと注目領域について解説する。

新型コロナの影響で広まった手軽にできる自宅検査・治療

パンデミックによって、病院に行きづらくなったことを受け、遠隔医療や自宅検査キットが注目を集めた。これまで当たり前に診察や検査のために病院に行っていた人々が、パンデミックによって自宅でもできるという便利さを経験した。安全に病院に行けるようになっても、人々がこの便利さを捨てるとは考えにくい。実際に、2021年のMcKinsey & Companyの調査によると、調査対象の消費者の約40%が、今後も遠隔医療を利用すると回答しており、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)以前の遠隔医療利用者の11%から上昇している。

膣内マイクロバイオーム検査キットEvvy

Evvyは、膣内のマイクロバイオームの状態を分析し、健康状態の把握とライフスタイル改善アドバイスなどを提供する。General Catalyst、Box Groupなどから500万ドル(約5億7000万円)を調達している。

筆者も2021年末実際に試してみた。下記のように、検査キットが送られてくる。採取は簡単で、インストラクションを見ながら3分程度で終わった。

画像クレジット:Evvy

箱には「The female body shouldn’t be a medical mystery(女性の身体は、医療で解明できないミステリーであるべきではない)」と記されており、現状研究段階ではあるものの、マイクロバイオーム分析を通して女性の不調を改善したいという気概が感じられた。

次に、オンラインで質問に回答する。生理サイクル、健康の悩み、感染症歴や今回の検査で知りたいことなどを回答する。10分ほどの割と長い質問票だった。


​​採取したサンプルを送付すると、2週間ほどで結果がメールで送られてくる。結果を解説してくれるマイクロバイオーム専門家とのビデオコールも追加コストなしでリクエストできる。ビデオコールでは、自分の悩みを伝え、結果を見ながら改善方法などを教えてくれた。結果を見てもどのように実生活に活用すれば良いのか、わかりにくかったので、マイクロバイオーム初心者の筆者からするとありがたかった。

ユーザーは、3カ月ごとの定期検査のサブスクリプションモデルと1回のみの検査キット購入が選べる。定期的に検査することで、自分の健康状態を見てみたかったので、筆者はサブスクリプションを選択した。

細菌性腟症などの感染症は、一度なると再発しやすい。実際、一部のユーザーは、膣内感染症の再発を防ぐためのヒントを求めてEvvyにたどり着く。また、早産、不妊の可能性や予防法をマイクロバイオームから知りたいというユーザーもいる。

筆者が最も注目しているのは、同社のビジョンだ。まだ研究段階のマイクロバイオームだが、同社は今後、膣内マイクロバイオームと不妊、子宮頸がん、早産などとの関連を調査し解明するというビジョンを持っている。マイクロバイオームから自分の身体の状態を把握するという未来がくるのかもしれない。

カップルの唾液から遺伝疾患リスクを解明する出生前唾液検査キット

画像クレジット:Orchid ウェブサイトより

Orchidは、パートナー両方の唾液サンプルを送付するだけで60億ものゲノムを解析し、子どもが遺伝性疾患を発症するリスクが高いかどうかを判定する唾液検査キットを提供している。2021年4月、シードラウンドで450万ドル(約5億3000万円)を調達。遺伝子キットを開発、販売する23 and Meの創業者も出資​​している。

対象となる遺伝性疾患は、乳がん・前立腺がん・心臓病・心房細動・脳卒中・1型糖尿病・2型糖尿病・炎症性腸疾患・統合失調症・アルツハイマー病の10種類。唾液を送ると、カップル向け、女性・男性の各パートナー向けの3種類のレポートが送付される。

子どもを作る前に、遺伝リスクを検査するというアプローチをとる同社。心配な結果が出たとしても、遺伝カウンセラーと、リスクを最小限に抑える方法などを相談できる。

2020年にシリーズDラウンドで1億2100万ドル(約143億円)の大型調達を発表したSema4も、出生前検査・遺伝性がん検査を手がける企業だ。同社は、2020年フェムテック領域の中で最大額を調達した企業だった。

テレヘルスユニコーンRoが買収、精子分析・保存キット

画像クレジット:Ro

フェムテックではないが、精子を自宅で採取し、分析結果を送ってくれるサービスを提供するDadiを紹介する。同社は、2022年3月にテレヘルスユニコーンのRoに買収されている。米国の国保健社会福祉省によると、不妊症の約3分の1は男性の不妊症に関連しているため、精液の分析と保存は重要な不妊治療サービスだ。自宅で精子を採取した後、採取キットと保存カプセルの両方が、温度変化や提携ラボへの輸送中の障害などから精子を保護・保存するように設計されている。サンプルの分析が完了すると、精子の数、濃度、運動性の評価を含む個人別の報告書が送付される。また、採取した精子は提携ラボで冷凍保存される。

Roは、コアビジネスである勃起不全治療テレヘルスプラットフォームから、テレヘルス全体へ事業拡大を進めるため、過去12カ月に3社(Workpath, Kit, Modern Fertility)を買収している。

成功の鍵は、丁寧なインストラクションと行動に落とし込める分析結果表示

ここまで自宅検査のスタートアップを解説してきた。筆者自身、自宅検査を複数試して感じたのは、自宅検査ビジネスをグロースさせる上で重要なのは「わかりやすい検査のインストラクション」と「ユーザーが行動に落とし込める分析結果を提示する」という点だ。家庭で正しく検査するためには、動画や簡単なイラストなどで、わかりやすいインストラクションが必要だ。

また、検査を受けて良かったと感じてもらうためには、明日からできる行動の変化を促す分析結果を提示することが重要だろう。自分の状態を把握するだけでは、一度きりの購入で終わってしまう。消費者は「xxのサプリを毎日飲む」「○○の栄養素を避ける」「有酸素運動を30分する」など改善のための方法を知りたいのだ。

この満足感が、安定的な収益を達成するためのサブスク顧客獲得に繋がる。現状、専門カウンセラーとのビデオコールを提供し、テスト結果を解説することでこの部分を補う企業が出てきている。専門家たちは、医学的・生物学的な専門知識がない一般消費者をガイドする役割を担っている。ここでの問題点は、スケールだ。ユーザー数が増えるごとに、専門家の数を増やさなければいけない状況では、スケールは難しい。技術を活用し、ある程度自動化をしながら満足度も担保するようなサービスが、今後伸びていくと考える。

人材獲得戦争時代、さらに重要視される企業の充実した福利厚生

米国では現在、労働者が大量に仕事を辞めている。この現象は、大規模離職を意味する「グレイト・レジグネーション(大退職時代)」と呼ばれ、メディアで頻繁に報道されている。​​Fortuneが2000人以上の米国人労働者を対象に行った調査によると、80%が新しい仕事に就くことを考える際に柔軟なスケジュールが重要であると回答している。また、約70%の労働者がリモートワークの選択肢を重要視している。優秀な人材プールを惹きつけるためには、働きやすい環境を作ることが必須だ。そのため、企業は、福利厚生にこれまで以上に投資している。

パンデミックで完全リモートを経験した労働者たちは、今後も働きやすさを求めている。この流れは、B to B to E(Employee)モデルと呼ばれるかたちで、企業向けに福利厚生としてのソリューションを提供するフェムテック企業にとって追い風となる。

働く親のための福利厚生プラットフォーム​​

画像クレジット:Cleoウェブサイトより

従業員は、Cleoを通して、育休からの復職時に悩みを相談できる専門家や、子どもの健康の専門家、助産師や産後うつ専門家などにアクセスできる。同社は、Pinterest、Uber、Upwork、Salesforceなどを含む、55カ国以上の100社を超える多様な企業に導入されている。​​実際、産休・育休後の復職率は、全米での平均が60%であるのに対し、Cleo会員は92%と改善している。

妊娠・出産のサポートから始まった同社のサービスだが、現在は、5歳から12歳の子どもを対象とするCleo Kids、ティーンエイジャーの子どもを対象とするCleo Teensにも拡大している。

多様なニーズに応える福利厚生の変化

画像クレジット:Carrot Fertilityウェブサイトより

これまで対面での不妊治療を中心に提供してきた福利厚生プロバイダーも、パンデミックを受け、そのサービス提供内容と方法をユーザーの求める形に変化させている。

企業の従業員向けに不妊治療を提供するCarrot Fertilityは、SlackやBox groupなど北米、アジア、ヨーロッパ、南米、中東の50カ国以上で、約200社の企業​​を顧客に抱える。これまで約135億円($115M)を調達している。同社は、パンデミックで通院を避けたい患者のニーズを受け、2020年8月に遠隔医療プラットフォームのCarrot at Homeを開始した。また、2021年12月には、自宅で排卵誘発ホルモンや関連バイオマーカーをモニタリングできる自宅検査キットの提供も開始している。2022年2月には、更年期障害向けのプランも追加した。

従業員それぞれのニーズが異なる点に注目し、福利厚生をパーソナライズできるプラットフォームも登場してきている。

画像クレジット:Nayyaウェブサイトより

2022年2月にシリーズCラウンドで5500万ドル(約64億円)を調達したNayyaは、企業の人事福利厚生システムに組み込んで、従業員のための福利厚生をパーソナライズするツールを提供している。

RPAを使って、従業員がプランをより良く選択し、節約する方法を見つけ、より良い支払いオプションを提供し、保険などの福利厚生を総合的にナビゲートできるようにしている。

画像クレジット:Forma

Formaは、​​裁量型福利厚生管理プラットフォームを提供している。同社も2022年2月、シリーズBラウンドで4000万ドル(約47億50000万円)を調達した。同社は、人事担当者が、従業員による福利厚生ベンダーの選定、払い戻し手続き、デジタルウォレットによるプラン利用をチェックできるようなシステムを構築している。

同社によると、企業の福利厚生は通常、企業が従業員に必要なものを決定するトップダウン・モデルで展開されており、これは雇用者と従業員の双方にとって非効率的だという。Formaの使命は、従業員ファーストの福利厚生プログラムを設計することによって、この関係を逆転させることだ。

Formaはプロバイダーと提携し、家族・人間関係、教育・キャリア、ウェルビーイング・ライフスタイル、基礎健康・保護、資産運用、仕事・パフォーマンスの6つの大きなカテゴリーで福利厚生を提供する。Formaの顧客は、社内の予算と戦略に基づいて、これらのカテゴリーから提供するものを選び、従業員に提供したい福利厚生プログラムを設計することができる。

Twitch、Stripe、Zoom、Lululemon、Palo Alto Networks、Squareなど、前年比330%の125社を顧客に抱えており、定着率は99%だという。この1年間で同社は収益を4倍に増やした。

優秀な人材を惹きつけ、繋ぎ止めるために、今後も企業の従業員への投資は、続いていくだろう。​​上記のパーソナライズ福利厚生が成功していることからも、従業員それぞれニーズが異なっており、企業がそのニーズに応えようとしている姿勢が感じられる。

編集部中:本稿の執筆者は大嶋紗季(Saki Oshima)。日本企業と海外スタートアップの新規事業創出を手がけるスクラムスタジオで、大企業とスタートアップのオープンイノベーションを支援するスタジオ事業部門に所属し、既存プログラムの運営や新規プログラムの立ち上げに従事する。各プログラムで培った日本企業とスタートアップをつなぐ経験を生かし、米国スタートアップ情報プラットフォームScrum Connect Onlineの立ち上げ、運営を担当する。欧米のフェムテックトレンドやサービスを日本語で配信。日本初のフェムテックコミュニティFemtech Community Japan創立メンバー。UCサンディエゴ大学院修了(MBA)。

 

中国のドライバーレス配達スタートアップWhale Dynamicが約3億円調達、米国市場を狙う

Nuro(ニューロ)に挑む中国の新進気鋭のスタートアップは米国の配達市場に照準を合わせており、その野望を前進させるためにシード資金を調達した。

Baidu(百度、バイドゥ)のベテラン社員David Chang(デイビッド・チャン)氏が設立した深センの自律配達スタートアップWhale Dynamic(ホエール・ダイナミック)は、約250万ドル(約3億円)のシードラウンドをクローズしたと発表した。中国の大手金融機関出身のベテランが運営する北京の投資会社Qianchuang Capitalがラウンドをリードし、不動産デベロッパーが出資する中国のファンドShangbang Huizhongが参加した。

2018年に設立されたWhale Dynamicは、ハンドルと運転席をなくすことを目的としたNuroのようなドライバーレスの配達バンを開発している。そして、配達ボットがBYD製であるNuroと同様、自動運転車の生産を中国のメーカーと契約しているが、契約が確定していないためメーカー名はまだ明かせない。

Baiduの知能運転グループでプロダクトマネージャーを務めたチャン氏は、Whale DynamicがNuroにわずかに勝るのはコスト面だと指摘する。Nuroは米国で部品を組み立てているが、Whale Dynamicは製造から組み立てまですべて中国で行っているため、価格面で優位に立つことができる。価格は1台約2万ドル(約240万円)だ。

今回の資金投入により、Whale Dynamicは現在30人の従業員からなるチームを拡大し、中国と米国での製品使用例を検討することが可能になる。Huawei(ファーウェイ)出身のエンジニアリングディレクター、Qi Wei(チー・ウェイ)氏をリーダーに、5月に中国のいくつかの都市で最初のプロトタイプ車のテスト走行を実施することを目指している。

中国ではWhale Dynamicは、Meituan(メイトゥアン)やJD.com(JDドットコム)などの小売テック大手との競争に直面しており、これらの企業は2021年、独自の商品専用配達車のテストを開始した。チャン氏は、車輪のついた箱を直接製造するのではなく、乗用車の研究開発とテストを行うという、より時間とコストのかかる方法をとる同社の技術は時の試練に耐えることができると考えている。

乗用車を使っているWhale Dynamicのテスト車両

チャン氏は、最終的には米国を拠点にして、速達サービスやスーパーマーケットをターゲットにしたいと考えている。「中国なら、もっと早く、低コストでテストができます」とチャン氏は中国からスタートした理由を説明する。

中国と米国の規制当局が、国家安全保障上のリスクがあるとしてハイテク企業への監視を強化しているため、2つの国にまたがる企業はより大きな規制に従うか、どちらかの国を選ばなければならなさそうだ。中国のソーシャルメディア大手Sina(新浪)の関連会社が出資するカリフォルニア州の自律型トラック運送会社TuSimple(トゥシンプル)は中国部門の売却を検討している、とロイター通信は報じた。

TuSimpleの車両のほとんどは米国で稼働しており、中国で動いている車両はわずかだ。しかし、米国の規制当局は同社の中国との関わりや中国支社のデータへのアクセスについて懸念を示しており、これがTuSimpleの中国部門を売却する決断につながったと報じられている。

Whale Dynamicではセキュリティ・コンプライアンスを最優先しているとチャン氏は話す。米国市場に参入する際には、AWSやGoogle Cloudといった米国のクラウドサービスを利用し、中国のチームはハードウェアの開発のみを担当する予定だ。LiDARはOster(オスター)とイスラエル拠点で米国にもオフィスを持つInnoviz(イノビズ)、チップはNVIDIA(エヌビディア)、Intel(インテル)と、主要サプライヤーも米国系だ。自社で車両を運用するNuroとは異なり、Whale Dynamicはすぐに使える車両とSaaSのみを提供し、運用部分は顧客に任せる予定であるため、同社が取得できる機密データの量は制限されるはずだ。

画像クレジット:Whale Dynamic’s delivery bot

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(文:Rita Liao、翻訳:Nariko Mizoguchi

RedisとKafkaのためのサーバーレスデータプラットフォーム構築のためにUpstashが約2.3億円のシード資金獲得

データ集約的なアプリケーションは、インフラストラクチャのセットアップが高く付き、時間もかかる。特にクラウドでは、実際には使わないリソースに料金を支払っていることもある。そしてそんなとき、サーバーレスのメリットが生きる。使っているリソースにだけ払えばよいし、寝ているリソースに払う必要はない。

アーリーステージのスタートアップであるUpstashは、リソースの消費量をベースとする料金モデルにより、データインテンシブなアプリケーション開発者のためのサーバーレスのデータプラットフォームを開発している。手始めに、人気の高いオープンソースプロジェクトであるRedisKafkaをサポートしている。

Upstashの創業者でCEOのEnes Akar(エネス・アカール)氏によると、クラウドにただデータベースのインフラストラクチャをセットアップするだけでは、実際にデータを自分のシステムから移送し始める前から、月額数百ドル(数万円)の費用が生じる。そうしたサービスのマネージドバージョンも存在するが、アカール氏がやりたいのは、運用時のもっと多くのオーバヘッドを抽象化してしまうことだ。

「私たちのシステムは何百ものRedisのデータベースやKafkaのクラスターを扱えますが、リクエストがないときは一銭も払わなくてよいものです」とアカール氏はいう。

サーバーレスは、サーバーがないという意味ではない。サーバーはあるが、開発者は自分の需要に合わせるためのプロビジョニングで悩む必要がない。サーバーレスのプロバイダーは、正確に必要な量だけリソースを供給する。少なくとも、そういう理論だ。

さらにUpstashは、データのメモリの要量とストレージの要量のバランスを取ることによっても費用を下げる。アカール氏によると「私たちのやり方では、データをメモリとディスクの両方におき、アクセスのないデータはメモリから外してディスクにおきます。私たちの料金に大きな柔軟性があるのは、そのような秘密のソースがあるためです」。

トルコに本社のある同社は2020年に創業し、2021年にプロダクトが登場した。すでに1万3000の顧客の開発者がプロダクトを使っている。1日に最大1万リクエストまでという無料版もあり、毎秒のリクエストが1000コミットを超えたらエンタープライズ料金になる有料版もある。

有料ユーザーはまだそれほど多くないが、中小のデベロッパーか、大きなエンタープライズか、どちらを主力にするかそろそろ決めたいとアカール氏はと考えている。後者であれば、従来からの営業で対応できる。いずれにしても、まだ検討中の段階だという。

現在、社員は7名で全員が技術者だが、年内に10名に増やしたいとのこと。2023年はその倍を考えている。現在は全員男だが、ダイバーシティが重要であることは認識している。「それは重要なことです。投資家は企業文化もみます。今の7名は残念ながら全員男です。今後はダイバーシティを意識しなければなりません」とアカール氏はいう。

同社は米国時間3月17日、190万ドル(約2億3000万円)のシードラウンドを発表した。投資家はMango Capital、AngelList、ScaleX Venturesそして個人の業界エンジェルたちとなる。

関連記事:Cockroach Labsがサーバーレス版SQLデータベースを発表

画像クレジット:Yuichiro Chino/Getty Images

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(文:Ron Miller、翻訳:Hiroshi Iwatani)

アパレル事業者向けクラウドを展開するpark&portがプレシリーズAファーストクローズとして8000万円調達

アパレル・ライフスタイル製品事業者へ向けた業務クラウド「PORTUS CLOUD」(ポルタスクラウド)を展開するpark&portは3月17日、プレシリーズAラウンドのファーストクローズとして、第三者割当増資による8000万円の資金調達を実施したと発表した。引受先は、新規投資家のHIRAC FUND(マネーフォワードベンチャーパートナーズ)、BDJキャピタル。調達した資金は、プロダクト開発および拡大に向けた人材採用にあてる。引き続きセカンドクローズへ向けて動き、必要資金を調達する予定。

PORTUS CLOUDでは、アパレル事業者の中心的業務が「商材」にひも付いていることに着目し、商材情報のデジタル化を起点とした業務効率化・フローのデジタル化を実現させたという。park&portによると、アパレル業界は、消費者の趣味嗜好が多様化していることを受け、今後小売企業はより細分化し、商材品種も増えると見ているそうだ。PORTUS CLOUDでは、そうした商材情報をデジタル化することで既存業務を効率化するとともに、リソースの最適が図れるとしている。さらにデジタル化した商材情報をアセットとした、新しいビジネスの可能性も切り開く。

park&portは、「自分のスキを手に取れる世界の実現」をパーパスに据え、「ファッションプロダクトの流通最適化」をミッションとして掲げるスタートアップ。アパレル業界出身の代表とITベンチャー出身の共同創業者により、2019年4月に設立された。PORTUS CLOUDの開発と運営を事業として展開している。

飲食店向けSaaS「delico」を手がけるフードテックキャピタルが1.4億円のシード調達、事業強化と加盟開発事業加速

飲食店向けSaaS「delico」(デリコ)をはじめ飲食店向けテック事業を展開するフードテックキャピタルは3月16日、シードラウンドとして合計1億4000万円の資金調達を実施したと発表した。引受先は、西山知義氏(ダイニングイノベーション創業者)など複数の投資家。調達した資金は、主力事業であるdelicoの開発や、加盟開発事業の成長にあてる。主にシステム開発と人材採用に充当するという。

delicoは、フードデリバリーサービスの注文一元管理サービス。コロナ禍もあって、飲食店から「各店舗の業態を増やしたい」「導入プラットフォームを増やしたい」というニーズが増えているものの、フードデリバリーごとに管理端末が必要となってしまう「タブレット地獄」や、現場・本部における管理が煩雑になるという課題により実行が難しくなっている。

delicoはその課題解決策を目指しており、1台のタブレットですべてのプラットフォームからオーダーを受注可能となる。同様に、1台の専用プリンターでオーダー伝票の印字を行え、配達スタッフへの受け渡しまでがスムーズに進められる。マネージャー機能により、一元管理された売上の可視化も可能となっており、スピード感のある業態改善などを実現する。飲食店向けSaaS「delico」を手がけるフードテックキャピタルが1.4億円のシード調達、事業強化と加盟開発事業加速

加盟開発事業は、同社がダイニングイノベーションと「七宝麻辣湯」(チーパオマーラータン)のフランチャイズ加盟開発を目的とする業務提携を行っていることから進めているもの。七宝⿇辣湯の加盟店候補先との相談窓口として、物件審査および出店に関わる事業計画の策定・加盟契約締結をサポートしている。

2020年12月設立のフードテックキャピタルは、「テクノロジーで食の未来をつくる」をミッションに掲げ、食業界のプロ、テクノロジーのプロ、ビジネスのプロが三位一体となって飲食業界を変革すべく事業を展開。テクノロジーとデザインを融合し、30年後の日本の食がより良いものになるために、食の未来を作るとしている。

ミツバチを飼わずに精密発酵と植物科学で本物のハチミツを生産するMeliBio

MeliBioは、9000年の歴史があるハチミツの生産方法を一変させようとしている。同社の生産方法はハチをいっさい使わず、精密発酵と植物科学を利用する。

ハチミツ企業の役員だったDarko Mandich(ダーコ・マンディッチ)氏と、科学者でアマチュアのシェフでもあるAaron Schaller(アーロン・シャラー)氏は、全世界で100億ドル(約1兆1878億円)のハチミツ市場にサステナビリティを導入することを狙って、2020年にサンフランシスコで同社を立ち上げた。マンディッチ氏によるとこれまでのハチミツ産業は「サプライチェーンと品質管理が破綻している、最も持続可能性を欠く農業分野」だ。

マンディッチ氏の説明によると、彼の着想はWiredの記事でハチを巣箱で飼うやり方は、これまで2万種のハチの野生在来種を断ち、ハチの集団の多様性(ダイバーシティ)を失わせてきたという指摘を読んだときに生まれた。

「食べ物を持続可能にし、もっと栄養豊富にし、ハチたちをはじめ愛すべき動物たちを犠牲にしないようにするために、食品産業を変えたい」とマンディッチ氏はいう。

ただしハチの分野ではすでにBeewiseのような企業が精密なロボットを使って巣箱を自動化したり、またハチの健康管理をするBeeHeroのような企業もある。

関連記事:IoTでミツバチの動きや健康状態をリアルタイムで追跡するBeeHeroの精密受粉プラットフォーム

イスラエルのBee-ioは、同社が特許を持つバイオ技術を用いるハチを使わないハチミツ生産方法を追究しているが、しかしマンディッチ氏によるとMeliBioは、ハチを使わずに本物のハチミツを生産する最初の企業だ。製品はニューヨークの4つのレストランでテストを行い好評だった。

MeliBioのハチのいないハチミツ生産方法は、二段階になっている。まず植物科学により、ハチがどのように植物にアクセスして、蜜をつくるために何を得ているのかを理解する。

第2段階では、分子の組成を改良して製品とその大量生産を可能にする。そこに登場するのが、精密発酵だ。この精密発酵が、目的を達成するために役に立つ有機物を特定することで、食べ物にかけるだけでなく、パンなどでオーブンで焼けるようにするなどいろいろな使い方ができるようにする。

同社はこのほど570万ドル(約6億8000万円)のシード資金を調達して、外食産業やB2Bアプリケーションへの市場拡大に努めている。マンディッチ氏によると、すでにMeliBioは30社と提携しており、製品の評価事業に参加しているという。

シードラウンドをリードしたのはAstanor Venturesで、これにSkyview CapitalやXRC Labs、Collaborative Fund、Midnight Venture Partners、Alumni Ventures、Big Idea VenturesそしてHack Venturesらが参加した。

MeliBioのチーム。左からMattie Ellis(マティー・エリス)氏、アーロン・シャラー氏、ダーコ・マンディッチ氏、Benjamin Masons(ベンジャミン・メイソン)氏(画像クレジット:MeliBio)

Astanor VenturesのパートナーであるChristina Ulardic(クリスティーナ・ウラルディック)氏は次のように述べている。「MelBioの、植物科学と精密発酵を結びつけて次世代の食品技術を開発していくアプローチはすばらしい。ハチミツの商業的な生産のサプライチェーンから負担を取り除き、授粉者のダイバーシティを回復することに、ダーコとアーロンは情熱を燃やしている。そんな彼らの最初の製品にはとても感動しました」。

新たな資金は研究開発の継続と、微生物を利用する発酵工程の規模拡大、そして4月に予定している製品の正式な立ち上げに使われる。またマンディッチ氏は、正社員を年内に現在の4名から10名に増やそうとしている。14名の契約社員は現状のままだ。

同社はまだ売上を計上していないが、マンディッチ氏は製品が発売され、大手食品企業やレストランなどとの契約が実現すれば状況も変わると信じている。

次にマンディッチ氏が構想しているのは、市場規模5000億ドル(約59兆3760億円)の原材料市場に進出して、同社の精密発酵技術で未来の市場のマーケットシェアを獲得することだ。

「私たちは科学とオルタナティブな方法を利用して野生在来種のハチの負担を減らしています。ハチミツの需要は伸びていますが、私たちの方法ならハチの生物多様性を保全することができます。米国の企業は世界中からハチミツを輸入していますが、その過程はますます複雑になっており、品質も保証されていません。本物のハチミツでないこともありえます。しかし国内生産ができればサプライチェーンを単純化でき、サプライヤーは国内だけなので、納品の遅れや品質の問題もありません。MeliBioはハチミツを1日3交替、365日の稼働で生産するため、市場の他の製品と価格でも十分競合できるでしょう」とマンディッチ氏はいう。

画像クレジット:MeliBio

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(文:Christine Hall、翻訳:Hiroshi Iwatani)

FigmaがUIデザインにもたらしたものを建築デザインで実現したいと考える「Arcol」

Arcolは、ブラウザ上で動作する設計・文書化ツールの構築の初期段階にある。

Paul O’Carroll(ポール・オキャロル)氏は、建築家である彼の父親が、建物の設計に使えるデジタルツールが不足していることに不満を抱いているのを見て、2021年1月に同社を立ち上げた。彼は、父親が鉛筆と紙を持って机に向かい、6カ月後に実現し始める建物をスケッチしているのを見て育った。

Arcolに入社する前、オキャロル氏はデジタルデザインスタジオで、大企業向けのデザインツールを作っていた。彼は、使われている技術が何十年も前のものであることを知り、Autodesk(オートデスク)のようなレガシーツールに挑戦したいと考えた。

「このような中で、建物の設計に使われるツールがいかにひどいものかを身をもって知り、建築家、エンジニア、請負業者のためにもっと良いツールがあるべきだと思ったのです」とオキャロル氏はTechCrunchに語った。「FigmaがUIデザインの分野で成し遂げたことを、建築デザインでやりたいのです」。

Arcolの創業ストーリーについては、オキャロル氏のブログでより詳しく知ることができる。同社は2Dスケッチを3Dモデルに変換するウェブベースのツールを開発中で、これにより、小さなビルから超高層ビルまで、クリエイティブでコラボレイティブなキャンバスを使って設計することが可能になる。

この製品は現在開発中で、2022年後半に発売される予定だ。オキャロル氏によると、ウェイティングリストは8000人を超えたところだという。彼は、この技術は構築が複雑で、製品は今後数カ月でクローズドアルファに入り、5月頃に20件の顧客を対象にプライベート展開される予定だと語った。年末までには、一般に公開する予定だという。

Arcolの創業者ポール・オキャロル氏(画像クレジット:Arcol)

この勢いを維持するため、同社はCowboy Ventures、FigmaのCEOであるDylan Field(ディラン・フィールド)氏、Figmaの企業開発・戦略責任者であるLauren Martin(ローレン・マーティン)氏、元MozillaのCEOでFigmaの取締役でもある投資家John Lilly(ジョン・リリー)氏、ProcoreのCEOであるToey Courtemanche(トワ・コートマンシュ)氏、元AutodeskのCEOであるAmar Hanspal(アマル・ハンスパール)氏、Not Boring Capitalの創業者でエンジェル投資家のPacky McCormick(パッキー・マコーミック)氏が支援する360万ドル(約4億2700万円)のシード資金を調達した。これにより同社は、2021年150万ドル(約1億7800万円)のプレシード資金を獲得したのを含め、累計500万ドル(約5億9300万円)強の資金を調達したことになる。

今回の資金調達は、経営陣の充実と現在5名のArcolの従業員の増員に充てられる予定だ。

オキャロル氏はこう述べている。「市場の不満がピークに達しているため、製品を迅速に構築する必要があります。建築家にとって実現されていなかったことであり、そのためにクリエイティブな側面が失われてしまいました。私たちは、魔法をよみがえらせたいのです」。

画像クレジット:

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(文:Christine Hall、翻訳:Den Nakano)

温室栽培の作物を見守るロボットを開発したIUNU(ユーノウ)が約28.4億円を調達

正直なところ、IUNU(「ユーノウ」と発音)という社名はわかりやすいとは言えない(さらに同社の「LUNA(ルナ)」と呼ばれるロボットの存在が問題を余計に混乱させている)。しかし、このアグリテック企業は堅実な事業に取り組んでおり、シリーズBラウンドで見事な信任を得たばかりだ。米国時間3月16日のニュースでは、シアトルに拠点を置く同社が、2400万ドル(約28億4000万円)の資金を獲得したことが明らかになった。このラウンドは、Lewis & Clark Ventures(ルイス&クラーク・ベンチャーズ)が主導し、S2G Ventures(S2Gベンチャーズ)、Ceres Partners(セレス・パートナーズ)、Astanor Ventures(アスタナー・ベンチャーズ)などが参加した。

IUNUがターゲットにしているのは温室の世界だ。同社のLUNAロボットシステムは、温室の屋根の上を移動し、コンピュータビジョンを使って作物をチェックする。このシステムが問題のある場所や収穫可能な場所を検出できるので、農家は農作物の上を歩いたりしゃがんだりする必要がない。これは農場の規模が大きくなると問題になり始めることだ。

これまで我々が見てきたこの種のシステムは、より大規模な自律型ロボットの一部として、より一般的な農場に展開されるケースが多かった。しかし、確かに温室はこのような技術にとって理に適っている。屋根の上に設置したレールの上を効果的に行き来することができるからだ。

IUNUによると、同社は現在、米国の温室栽培の葉物野菜生産者の4分の1と取引しているという。従業員は現在60名で、この半年間で1.5倍に増加した。今回調達した資金は、グローバルな事業の拡大や、新製品の研究開発を強化するために使われる予定だ。

「今回の投資ラウンドは、機関投資家の当社に対する信頼を反映したものです」と、Adam Greenberg(アダム・グリーンバーグ)CEOはリリースで述べている。「この1年で農作物栽培の自動化に関する話は加速しており、我々はその先頭を走っていることを誇りに思っています」。

この手の技術では常にデータが大きな役割を果たすが、IUNUは現在、既存の展開に基づく「業界最大の生産データセット」を持っていると主張する。このような大きな資産は、作物にとって大きな問題となる前に潜在的な問題を特定するアルゴリズムを作成するために重要だ。

2021年9月、同社は2015年のStartup Battlefield(スタートアップ・バトルフィールド)で優勝したAgrilyst(アグリリスト)、後に社名を変えてArtemis(アルテミス)となったアグリテックのスタートアップ企業を買収し、データ収集能力を強化した。

画像クレジット:IUNU

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(文:Brian Heater、翻訳:Hirokazu Kusakabe)