友人とのつながり・コミュニケーションを楽しみつつグループ購入できる「シェア買い」のカウシェが総額約8.1億円調達

友人とのつながり・コミュニケーションを楽しみつつグループ購入できる「シェア買い」のカウシェが総額約8.1億円調達

友人や家族などとコミュニケーションを楽しみながらグループ購入を行える「シェア買い」アプリ「KAUCHE」(カウシェ。Android版iOS版)を提供するカウシェは11月4日、第三者割当増資による総額約8億1000万円の資金調達を発表した。引受先は、リードインベスターのデライト・ベンチャーズ、SBIインベストメント、既存株主のANRI、グローバル・ブレイン、千葉道場ファンド。2020年11月発表の資金調達と合計した、これまでの総調達額は約10億円となった。調達した資金は、新規顧客獲得・既存顧客エンゲージメント向上のためのマーケティング強化、「カウシェ」のサービス開発のためのエンジニアや事業者開拓のための営業職など幅広い職種での採用強化にあてる予定。

KAUCHEは、ショッピングの醍醐味ともいえる「この商品、よくない?」「一緒に買おうよ!」といったコミュニケーションを、オンラインで実現するショッピングアプリ。商品を選び、割引価格での購入を決定後、その情報をSNSでシェア。その後友人や家族など、1人以上が同商品の購入を決めると「シェア買い」が成立し、定価から割引された価格で商品を手に入れられる(商品により割引率は異なる)。

またコロナ禍においてカウシェは、商品の売り先を失った事業者の販売拡大をサポートすべく、緊急事態宣言に合わせ、事業者への手数料を無料にするプロジェクトを実施。都心部だけではなく全国の事業者支援を見据えて、地方自治体と連携を行うなど、様々な取り組みを行ってきたという。その結果、「カウシェ」を利用する事業者数は、2020年9月のサービスリリース時と比べ、2021年10月には約8倍に拡大、また事業者ごとの平均売上も同比約4倍、流通取引総額(GMV)も約33倍へと伸長したそうだ。

AIアプリケーションのためのストリーミングデータベースを構築するActiveloopが約5.7億円調達

Y Combinatorの2018年夏季から巣立ったActiveloopは、メディアに特化した人工知能アプリケーションのために特別に設計されたデータベースを開発している。米国時間11月2日、同社は 468 CapitalとCM Venturesがリードする500万ドル(約5億7000万円)のシード投資を発表した。これにはTribe CapitalとShasta Ventures、およびテクノロジー業界のさまざまなエンジェルたちが参加した。

同社の創業者でCEOのDavit Buniatyan(ダビット・ブニアティヤン)氏によると、同社は彼がプリンストン大学で行っていた研究から生まれた。そのとき彼は、AIのユースケースのために特別に設計された、画像や動画など非定型データのストリーミングデータベースが必要だと感じていた。同社はこの度、商用プロダクトのアルファバージョンを立ち上げている。

「私たちのAIのためのデータベースは、具体的には、データを極めて効率的に保存し、これを機械学習のアプリケーションや、コンピュータービジョン、音声処理、NLP(自然言語処理)などのモデルの訓練へストリーミングするレイターです」とブニアティヤン氏は説明している。

実用面では、ビデオやオーディオなどのデータをマシンが理解できる数学的表現に変換するためのオープンソースのAPIだ。さらにそのAPIでデータの異なるバージョンを追跡でき、そして最終的にはそれを、Amazon S3のようなにリポジトリに保存できる。

データがストリーミングで入手できれが、データサイエンティストやデベロッパーはこれまでのようにすべてのデータを手元のノートパソコンにダウンロードする必要もなく、それをモデルが使うために送ることもできる。Netflixでムービーを自分のところへストリーミングするのと同じで、自分のローカルマシンには何もダウンロードしない。

Activeloopの画像データベース(画像クレジット:Activeloop)

彼によると、このオープンソースプロジェクトには55名のコントリビューターがいて、コミュニティのメンバーはおよそ700名いる。そのプログラムはこれまでに30万回ダウンロードされた。

彼がデータをストリーミングしようと思いついたのは、プリンストンの神経科学研究所で大量のデータを扱っていたときだ。彼は、ファイルでは大きすぎると悟った。それをダウンロードするのは非実用的であり、むしろストリーミングするやり方を思いついて、それがActiveloopのベースになった。

現在、社員は15名だが、5〜6名の高度な技術者を求めている。彼が同社を創るときには、人材のダイバーシティをできるかぎり心がけた。たとえばエンジニアリング担当の副社長は女性だ。最近ではエチオピア出身のエンジニアを雇用しようとしたが、彼は結局断った。ブニアティヤン氏によれば、有能な人材であれば性別や人種や国籍などはまったく関係ないし、気にもしないという。

「人の出自や生まれつきなどはどうでもいい。重要なのは、我が社のミッションに貢献してくれるかだけです。私はこの会社をインパクトのある企業に育てたいので、そのための人材が欲しいのです」。

APIはオープンソースだが、この度アルファをリリースした商用プロダクトは、ストリーミングデータへのSQLクエリなど、いろいろな機能が加わっている。それらはオープンソースプロダクトにはない。同社はまだ売上を計上していないが、2022年の第1四半期には商用バージョンをリリースしたい意向だ。

画像クレジット:Activeloop

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(文:Ron Miller、翻訳:Hiroshi Iwatani)

認知機能障害検出のソフトウェアを開発するBrainCheckが約11億円調達

世界的に高齢化が進むのにともない、脳の健康に関する研究が進んでいて、スタートアップがテクノロジーを活用して認知障害を軽減する方法を模索している。

ヒューストンとオースティンを拠点とするBrainCheck(ブレインチェック)は、認知障害の検知とケアを専門とする医師をサポートする認知ヘルスケアソフトウェアの開発を手がけている。同社はアルツハイマー病や関連する認知症に対する新しいデジタル治療法の研究開発と市場開拓のために、シリーズBで1000万ドル(約11億円)を調達した。

このラウンドは、Next Coast VenturesとS3 Venturesがリードし、Nueterra Capital、Tensility Ventures、True Wealth Venturesが参加した。さらに、UPMC EnterprisesとSelectQuoteが戦略的投資家として加わった。今回の資金調達により、2016年の300万ドル(約3億4000万円)のシードラウンド、2019年の800万ドル(約9億1000万円)のシリーズAを含め、BrainCheckがこれまでに調達した資金総額はおよそ2100万ドル(約23億9000万円)となる。

BrainCheckの技術は、患者と米国内の約1万2000人という限られた数の神経内科医との橋渡しをする。対面または遠隔(スマートフォン、タブレット、コンピューターを介して)で行う10〜15分のテストを通じて、認知機能障害を早期かつ正確に検出することができる。

検査結果に基づき、患者にはCognitive Quotient(CQ)スコアが割り当てられ、これをもとに数分以内にパーソナライズされた認知機能ケアプランが作成される。現在、400以上の神経科、プライマリーケア、老年医学の診療所がこの技術を使用していて、マウントサイナイの臨床医も新型コロナウイルス感染症による認知障害の追跡と管理に活用している。

BrainCheckの共同創業者でCEOのYael Katz(ヤエル・カッツ)博士は、パンデミックがヘルスケアのエコシステム全体のすべてを変えた、とTechCrunchに電子メールで語った。

同社は、シリーズAの2年後に新たな資金調達を行うことを常に考えていたが、世界的な大流行がその方針にどのような影響を与えるかを見極めるために一旦停止したとカッツ氏は話した。しかし、新型コロナが人々の医療に対する認識に光を当て、リモートケアに慣れてきたことで、継続する機会を見出した。

今回の資金調達により、同社はチームの拡大と研究開発への投資を継続することができる。同社はすでに、患者との関係を深めるためのいくつかの新しい取り組みを行っており、これらは間もなく市場に投入される予定だと同氏は付け加えた。

BrainCheckは2020年、前年比で3倍という収益増を達成したが、カッツ氏は2022年も同様の成長を見込んでいる。今回のシリーズBでは、2年前と同じように成長させることを目標としている。

「リモートワークへの移行やメンタルヘルスの重要性の高まり、予防医学への投資、高齢化社会への対応など、これらすべての要因が重なって、私たちが行っていることが重要であり、今後も重要であり続けることが証明されました。医師がBrainCheckのようなツールに投資して患者の治療の質を向上させることが、かつてなく重要になっています」と述べた。

画像クレジット:Jorg Greuel / Getty Images

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(文:Christine Hall、翻訳:Nariko Mizoguchi

手首に着けて音楽を奏でるウェアラブル「テルミン」のMicticが約2.8億円調達

中国Mooer Audioがエフェクト・ドラムマシン・ルーパー内蔵のエレキギターを開発中

スイスを拠点とするMicticが、何もないところをコンサートホールにする2個1組のウェアラブルデバイスを開発した。本体のないテルミンで、スマートなループステーションと接続されていると想像すれば、だいたい合っている。デモと説明文からすると、CESで長い1日を過ごした後にバーで感想をしゃべって、その後はも話を聞くこともなくなってしまうスタートアップのようだ。しかしMicticはギミックの域を超え、PTK Capitalが主導したシードラウンドで250万ドル(約2億8000万円)を調達した。さらに音楽界の大スターであるMoby(モービー)氏も資本政策に加わっている。

Micticのデバイスは2個1組のリストバンドで、動きを計測するセンサーが付属している。これをスマートフォンに接続すると、アプリの力を借りて音楽のスキルがまったくない初心者も演奏を存分に楽しむことができる。発売時には、さまざまなスタイルやジャンルにわたる15種類のサウンドやサウンドスケープがアプリに内蔵されている。

Micticの創業にはちょっと珍しい話がある。それは、バドミントンから始まった。創業者たちはテニスをしに行ったのだが雨でできなくなり、代わりに室内でできるバドミントンになったのだ。彼らは盛り上がらないゲームについて聴覚の楽しみという観点から話をした。そしてバドミントンのシャトルを打つ音の1つ1つを迫力のある爆発音などの効果音に変えるプロダクトをハックした。そこから彼らはサウンドスケープをさらに追加し、インターフェイスを変え、ついにフル装備の楽器を作り上げた。

あらかじめ用意されているサウンドスケープだけでなく、きちんとした楽器としてのプロダクトの可能性に創業者たちは心をかきたてられている。

同社CTOのMatthias Frey(マティアス・フライ)氏は次のように述べている。「Abletonと接続し、MicticをMIDIコントローラと同じように使うことができます。我々は、ユーザーにこのプロダクトの新しい使い方を見つけて欲しいと思っています。プラットフォームビジネスをまもなく拡大する計画もあります。プロダクトの販売を開始した後、次のステップの1つとしてユーザーがオリジナルのサウンドスケープを簡単に作れるようにします」。

資金を調達して同社はこれから成長し、市場でプロダクトをテストする。同社のメンバーは現在10人で、さらに増やしたいと考えている。

MicticのCEOであるMershad Javan(マーシャド・ジャワン)氏は「我々はしばらくブートストラップでやっていかなくてはならなかったのですが、その後、今回の資金調達ラウンドを実施しました。次のステップはプロダクトを少しでも早く市場に出すことです。我々はプロダクトに自信があり、ユーザーの使い方を知るのを楽しみにしています」と述べている。同氏は250万ドル(約2億8000万円)では夢をすべて叶えるには足りないことを認めた。「十分な金額ではありませんが、我々にとってはプロダクトをお客様に届け、できればそこから生産を増やしていくことが課題です。重要なデータとビジネスのインサイトを実際に得ることができれば、さらに成長し、おそらく次の資金調達ラウンドもすぐに実施できるでしょう」(同氏)

Micticはプレス用の資料でモービー氏が同社の資金政策に加わっていることを大きく取り上げ、コラボレーションやアドバイザーとしての可能性に期待している。ただしモービー氏は今回のラウンドでは大きな投資をしたわけではなく、250万ドル(約2億8000万円)の1割未満であることも同社は認めている。モービー氏はMicticに直接投資しているだけでなく、Micticのラウンドを主導したベンチャーファーム、PTK Capitalのリミテッド・パートナー(つまり投資家)でもある。

Micticはすでに予約注文を開始しており、奇妙で楽しい楽器が119ドル(約1万3000円)で手に入る。12月ごろには出荷を開始する見込みだ。

画像クレジット:Mictic

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(文:Haje Jan Kamps、翻訳:Kaori Koyama)

人材管理を自動化する中国のHRテックスタートアップMokaが約113億円を調達

人材管理をソフトウェアで容易にしたいと考えている、中国で6年目のスタートアップのMoka(モカ)は、米国時間11月2日、1億ドル(約113億円)のシリーズCラウンドを獲得したと発表した。

本スタートアップは、採用から既存の社員の維持まで、人材管理の全プロセスを自動化することを目指している。例えば、採用候補者からの面接後のフィードバックを自動的に収集し、その情報をデータベースに保存することができる。また、社員が履歴書に変更を加えると、新しい機会を検討していることを示唆する注意を雇用主側に知らせることができる。

今回の投資は、Tiger Global(タイガー・グローバル)が主導し、Blue Lake Capital(ブルー・レイク・キャピタル)、Hillhouse Capital(ヒルハウス・キャピタル)のアーリーステージ部門であるGL Ventures(GLベンチャーズ)、GSR Ventures(GSRベンチャーズ)、GGV Capital(GGVキャピタル)が参加した。

今回のラウンドは、MokaがシリーズBラウンドで4300万ドル(約48億8300万円)を調達してからちょうど1年後に行われた。同社は「ユニコーン」の地位を獲得したと述べているが、正確な評価額については公表していない。ゲームやショートビデオなどの消費者向けインターネットサービスが規制強化に直面する中、企業の生産性向上に貢献するスタートアップ企業への投資家の関心が高まっていることを反映しているのだろう。

Mokaは、Tencent(テンセント)、Xiaomi(シャオミ)、McDonald’s(マクドナルド)、Arm China(アーム・チャイナ)など、1500社以上の有料顧客を獲得しており、年間の継続率は110%を超えているという。スタンフォード大学の卒業生であるLi Guoxing(リー・グオクシン)CEOは、以前の講演で、Mokaの製品は中国のインターネット企業の間で特に人気があると主張していた。

画像クレジット:MokaのCEO、Li Guoxing

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(文:Rita Liao、翻訳:Akihito Mizukoshi)

OctoMLが機械学習のアクセラレーションプラットフォームのために巨額約96.5億円調達

OctoMLはシアトルのスタートアップで、企業の機械学習モデルの最適化と多様な実行環境による実用展開を助けている。米国時間11月1日、同社は、Tiger Global ManagemenがリードするシリーズCのラウンドで8500万ドル(約96億5000万円)を調達したことを発表した。これまでの投資家であるAdditionとMadrona Venture GroupおよびAmplify Partnersもこのラウンドに参加した。これで同社の調達総額は1億3200万ドル(約149億9000万円)となり、その中には2021年初めのシリーズBの2800万ドル(約31億8000万円)も含まれている。

同社の共同創業者はCEOのLuis Ceze(ルイス・セゼ)氏とCTOのTianqi Chen(ティアンキ・チェン)氏、CPOのJason Knight(ジェイソン・ナイト)氏、チーフアーキテクトのJared Roesch(ジャレッド・ローシュ)氏、そしてテクノロジーパートナーシップ担当副社長Thierry Moreau(ティエリー・モロー)氏らで、彼らは、オープンソースの機械学習コンパイラーフレームワークApache TVMの作者でもある。TVMは現在、AmazonやMicrosoft、Facebookなどが使っている。OctoMLは、TVMの、機械学習モデルを自動的に最適化し、ほとんどどんなハードウェアでも動くようにする能力をベースにしている。

セゼ氏によると、シリーズAを調達して以降のOctoMLは、QualcommやAMD、Armなど多くのハードウェアパートナーと契約を交わした。同社はまた最近、ビデオコンテンツのモデレーションの大規模な展開に関して、Microsoftと協働している。同社によると、ユーザーはGlobal 100社の企業が多く、たとえばトヨタは、同社のサービスを利用するようになってからMLモデルのパフォーマンスを2倍から10倍向上させている。

2021年初めのシリーズBのころの同社は、同社のSaaSプラットフォームのアーリーアダプターがわずかにいる程度だった。しかし本日の発表に先立ってセゼ氏は、そのサービスがまだ一般的な可用性に達していない、と述べた。それでも現在、OctoMLはともに仕事をする顧客の数が多くなり、そのプラットフォーム上で彼らが成功するよう注力に努めている。

セゼ氏によると、モデルが増殖しより高度になると、それらをクラウドで動かす費用も高くなる。そこで、そういうモデルを最適化できるシステムは直ちに、同社の顧客が達成しているようなコスト削減に向かうことになる。「コストだけでなく持続可能性の問題です。同じハードウェアの上で何かを従来の倍速で動かせるのなら、それは半分のエネルギーしか使わないということであり、スケールにインパクトを及ぼします」とセゼ氏はいう。また彼によると、大きなクラウドプロバイダーでもハイエンドなGPUのデプロイにはチップの不足も相まって容量的に限界があり、モデルを別のGPUや、あるいはCPUにさえ、移すこと、すなわちハードウェアの多様化に新たなアドバンテージがありうる。

セゼ氏によると、現時点では新たな資金調達の必要性はなかったが、現在順調ではあるものの万一に備えておくべきだと結論した。「新たなハードウェアの立ち上げやクラウドの能力拡張など、万一に備えておくべき部分はいくつもあります。これまでは『もっと速くしておけたし、そうすればこの仕事を取れたのに』の連続でした。ビジネスのチャンスはいつも目の前にあるが、それらに全部対応するためには、もっと速くスケールすべきだ」とセゼ氏は語る。

そういうチャンスをものにして新たな顧客を獲得するためには、今回の資金で迅速に技術と営業の両方を拡大する必要がある。また、パートナーのエコシステムも築いていきたい。

Tiger GlobalのパートナーであるJohn Curtius(ジョン・クルティウス)氏は次のように語る。「企業や組織が次世代のAIモデルとアプリケーションを構築するやり方に、OctoMLはとても深い変化を作り出そうとしている。ユーザーが依存しているすべてのハードウェアベンダーにわたって統一的なデプロイライフサイクルを実現しようとするOctMLのビジョンは、MLのデプロイのコスト効率を上げ、もっと多くの開発者がアクセスできるものにしていく。OptMLのLuisらの共同創業者チームがTigerのポートフォリオに来てくれたことは本当にすばらしいし、その成長の次の章では、私たちも重要な役を演じたい」。

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画像クレジット:Zhang Jingang/VCG / Getty Images

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:Hiroshi Iwatani)

営業特化の顧客データプラットフォーム「TranSales」を展開するスマスマが約6000万円調達

将来の見込顧客を予測し、精度の高い顧客情報を提供するプラットフォーム「TranSales」を展開するスマスマは11月1日、前回プレシードと合わせて約6000万円の資金調達を実施したことを発表した。引受先は、XTech Ventures、East Ventures、個人投資家の加松宏樹氏と漆畑慶将氏。調達した資金は、エンジニアの採用とデータ製造の体制強化にあてる。

TranSalesは、見込顧客や効率的な営業タイミングを予測できる、営業に特化した顧客データプラットフォーム。日本における営業活動では、新規顧客から見込顧客を作っていくフェーズにおいていまだにアナログ作業の膨大な工程がかかっている。このフェーズにTranSalesを利用すれば、ユーザーの保有する企業リストとスマスマ独自の顧客データベースを結合させ見込顧客を自動的に予測し、適切なタイミングでアプローチできるようになるという。より効果的なマーケティング・営業施策の立案と実行の手助けを行なえるとのこと。

2018年7月設立のスマスマは「営業成果が100件に1件から、10件に1件の世界」を目指し、営業現場の課題をテクノロジーで解決するスタートアップ。これまでに得た営業ノウハウとデータを活かして、「アナログ×デジタル」「人×AI」によって本質的な課題解決を行い営業を効率化することを目標としている。

KOLテクノロジーズが約1億円のプレシリーズA調達、サステナブルECサイトやインフルエンサーマッチング事業強化

KOLテクノロジーズが約1億円のプレシリーズA調達、サステナブルECサイトやインフルエンサーマッチング事業強化

サステナブルECサイト「サステナモール」およびインフルエンサーマッチングサービス「Beee」(ビー)を運営するKOLテクノロジーズは11月2日、シリーズAラウンドとして、第三者割当増資による総額約1億円の資金調達を発表した。引受先は新規投資家。これにより、シードラウンドと合わせ累計調達額は約2億円となった。

調達した資金は、「サステナモールとBeeeのサービス改善」「同2事業への加盟店舗とインフルエンサーを含む新規ユーザーの獲得、既存ユーザーのリピート醸成のためのマーケティング強化」にあてる予定。内部人材の採用強化も行なう。

サステナモールは、余剰在庫をリーズナブルな価格で販売するECサイト。捨てられていくモノは、誰かにとって価値のあるものになるという思いから衣類、雑貨、化粧品、ペット用品など幅広い商品を扱っている。単に販売するだけでなく、発信力のあるインフルエンサーがセレクトショップを作成し、良いと思った商品をフォロワーへ紹介できるサービスも提供している。今後は余剰在庫のほか、B級品やリユース品の販売、買うだけで選んだ団体に寄付できる「Kifu Movement」を実施予定。

Beeeは、花と花をつなぐミツバチのようにインフルエンサーと企業を結ぶパートナーとなるという考えから2021年8月にローンチしたプラットフォーム。在庫商品を持つ店のみならず、コロナ禍により集客に悩む飲食店や美容サロンなどへ「AIマッチングで理想のインフルエンサーに出会える」サービスを提供している。

モバイルアプリを直接スマホ上で作成できるiOSネイティブ製品デザインツール「Play」

モバイル環境向けのデザインを行う際、従来の方法では、開発者が1つのプログラムでデザインを行い、別のプログラムでプロトタイプを作成し、さらに別のツールでコラボレーションを行うというように、多くのやりとりが必要だった。

新しいスタートアップの「Play」は、自らを「スマートフォンから直接作成、イテレーション、コラボレーションすることを可能にする唯一のiOSネイティブ製品デザインツール」と位置づけている。従来のソフトウェアでは、同じようなことをするために回避策やハックを要求されると、同社の共同設立者で共同CEOのDan LaCivita(ダン・ラチヴィータ)氏は説明する。

「これは、携帯電話を主な入力デバイスとして使用する唯一のデザインツールです」と同氏はTechCrunchに語った。「スマホからデザイン、プロトタイプ、コラボレーションを行うことができ、プロダクトデザイナーが使用しているメディア上で作成中のデザインを体験する方法を提供する唯一のものです。基本的にコーディングをしなくても、Apple(アップル)のサンドボックスで遊ぶことができます」。

ユーザーは、ゼロから作成するか、Figmaなどのツールからデザインをインポートするかを選ぶことができ、ボタン、カード、ビデオプレーヤーなどの一般的なUIコンポーネントには「Play Library」を、完全に機能するページを素早くカスタマイズして作成するには「Page Layouts」を使用する。また、ライブマップ、AR(拡張現実)、カメラ機能など、iOSのネイティブ機能も利用できる。

ラチヴィータ氏は2019年に、Eric Eng(エリック・エン)氏、Joon Park(ジュン・パーク)氏、Michael Ferdman(マイケル・フェルドマン)氏と一緒に会社を立ち上げた。彼らは全員、前身のFirstbornというスタートアップで一緒に働き、ウェブサイトやモバイル製品を作っていた。

「私たちは、すべてのペインポイント(問題点)を身をもって経験しました」 とラチヴィータ氏はいう。「ジュン(・パーク)が『もっと良い方法があるはずだ』と言ったんです。我々は従来のグラフィックデザインソフトウェアをベースにして開発を続けているのだから、別のツールではなく、入力デバイスとして携帯電話のような別のアプローチが必要なんだ、と」。

PlayはApp Storeで公開されているが、現在はプライベートベータ版で、2万5000人以上がウェイティングリストに登録している。今後数カ月から来年にかけてユーザーを追加していく予定だ。今はフリーミアムモデルだが、2022年にはいくつか異なる価格帯を提供する予定とのこと。

米国時間11月1日、同社はFirst Round Capitalが主導し、Oceans Venturesを含む910万ドル(約10億4000万円)の資金調達を発表した。本ラウンドは、2021年初めと2020年のシードラウンドを組み合わせたものだ。

今回の資金調達は、チームの規模拡大と、2週間前に発表したPlay for iPadのような、顧客からの直接の要望による新製品の開発継続のために使用される。また、最近では、ユーザーが互いにコラボレーションするためのTeams機能も発表した。

創業者たちがFirst Round CapitalのTodd Jackson(トッド・ジャクソン)氏と最初に会ったとき、彼らは資金調達を考えていなかったが「意気投合して関係がうまくいった」とラチヴィータ氏はいう。ベンチャーキャピタリストとしてではなく、チームメイトとして協力してくれるパートナーを見つけたのだ。

ジャクソン氏は、Twitter(ツイッター)でPlayを見つけて興味を持ったという。同氏は、Dropbox(ドロップボックス)やFacebook(フェイスブック)で、同じようなユーザビリティの問題を抱えるデザイナーたちと仕事をしていた。

彼は、デスクトップでしか利用できないツールで長い時間を費やしデザインを構築したり、アニメーションを追加したりしていた友人らにPlayを送った。

「スマートフォンでここまでできるとは思いませんでした」と彼はいう。「1つのことをするのに、1つのデザインツールしかないというメンタルモデルで我々はものを考えがちです。よく、モバイル製品のアイデアの多くは、誰かと共有できないために日の目を見ないという話をします。Playがあれば、そのような状況に陥ることはありません」。

画像クレジット:Play

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(文:Christine Hall、翻訳:Aya Nakazato)

睡眠中の脳卒中を早期に警告するZeitのウェアラブル、実用化に向けシード約2.3億円調達

睡眠中の脳卒中を早期に警告するシステムを開発しているZeit Medicalは、Y Combinator(Yコンビネータ )のSummer 2021コホートを卒業した直後に、シードラウンドで200万ドル(約2億2800万円)を調達した。同社の研究によると、脳モニタリング用ヘッドバンドは、脳卒中の可能性を数時間前に警告することで命を救うことができると考えられており、今回の資金調達は、実用化に向けた推進力となる。

同社のデバイスは、軽量の脳波計(EEG)が内蔵されたソフトなヘッドバンドだ。スマートフォンのアプリと連動して、脳の活動を分析し、人間の専門家によって訓練された機械学習モデルを使って、差し迫った脳卒中の兆候を監視することができる。

共同創業者でCEO(そして現在はFerolynフェロー)のOrestis Vardoulis(オレスティス・バルドゥリス)氏は、使用状況の調査で、CPAPマシンを使用している人も含め、90%の夜にヘッドバンドを装着して、装着感や快適性に関する不満はほとんどなかったと述べている。脳卒中の影響を軽減するという目標を達成するためには、継続して使用することが重要であり、不快なヘッドバンドやかさばるヘッドバンドは確実に悪影響を及ぼす。

「当社は、製品を最終的に完成させ、今後の研究でテストできるようにすることに加えて、入院患者へのAIのさまざまな応用を試してきました。集中治療室の患者の多くは、綿密な虚血モニタリングを必要とします」とバルドゥリス氏は語る。本来であれば専門家や専用のシステムでなければ診断できないような様々な状態を、Zeitが作成したモデルで警告できる可能性がある。「くも膜下出血の患者を脳波でモニターしているいくつかの大規模な国立学術センターに、当社の技術が許容可能なアプリケーションであるかどうかを確認するためにアプローチしました」とも。

バルドゥリス氏によると、脳卒中患者のコミュニティはこの装置に非常に興味を持っており、我々の以前の記事でも、コメント欄にこの装置が自分にどれほど役に立つかを指摘する人がいたという。ZeitはFDA(米国食品医薬品局)の認可に向けて進んでおり、「Breakthrough designation(ブレイクスルー指定)」という一種のファストトラックを取得しているが、広く普及するまでにはまだ1〜2年かかるかもしれない。

これは、医療機器としては非常に短いリードタイムであり、投資家たちは明らかにこの製品がインパクトとROIの両方をもたらす機会であると考えた。

200万ドル(約2億2800万円)のラウンドは、SeedtoBとDigilifeが共同で主導し、Y Combinator、Gaingels、Northsouth Ventures、Tamar Capital、Axial、Citta Capital、そしてエンジェルのGreg Badros(グレッグ・バドロス)氏、Theodore Rekatsinas(テオドール・レカツィナス)氏をはじめとする医療関係者数名が参加した。

この資金はご想像のとおり、事業の継続と拡大、チームの構築、FDAの検討と承認に必要な研究のために使用される予定だ。運がよければZeitのデバイスは、早ければ2023年には、脳卒中のリスクを抱える人々に標準的に使われることになるだろう。

画像クレジット:Zeit

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Aya Nakazato)

Walden Catalystがディープテック系スタートアップに投資する約628億円のファンドを設立

Walden Catalystの創業者(左)リップ・ブー・タン氏と(右)ヨン・ソーン氏。

過去20年間、ディープテック(世界を変えるようなビジネスを構築するための科学技術関連のブレークスルー)からの資本の逃避が続いていると、Walden Catalyst(ウォールデン・カタリスト)は述べている。このベンチャーキャピタル(VC)は、データを「燃料」、AIを「エンジン」として、それらが人々の生活、仕事、遊び方を変革する能力を信じている。

Lip-Bu Tan(リップ・ブー・タン)氏とYoung Sohn(ヨン・ソーン)氏は、アーリーステージのディープテック企業、具体的にはビッグデータ、AI、半導体、クラウド、デジタルバイオロジーなどに投資するためにこのファンドを設立したと、Walden Catalystのマネージングパートナーであるソーン氏はTechCrunchに語っている。

サンフランシスコを拠点とするこのVCは、米国時間11月1日、申し込み過多となった5億5000万ドル(約628億円)のファンドのクロージングを発表した。同VCは、リミテッドパートナーの名前を公表していない。

半導体、クラウド、エレクトロニクス業界全体で実績のあるソーン氏とタン氏は、Zoom(ズーム)、Inphi(インフィ)、Berkeley Lights(バークレーライト)、Habana(ハバナ)、Nuvia(ヌビア)など、多くのテック企業に初期投資を行ってきた。

「Walden Catalystは、2021年初頭に設立された新しいファンドですが、Walden International(ウォールデン・インターナショナル)やSamsung Catalyst Fund(サムスン・カタリスト・ファンド)からの強力な遺伝子があります」。と語るのは、以前、Samsung Electronicsでコーポレート・プレジデント兼チーフ・ストラテジー・オフィサーの役職に就いていたソーン氏だ。タン氏は、Walden Internationalの創業者兼会長でもある。

Walden Catalystは、米国、欧州、イスラエルに焦点を当てている。これは、これらの3つの地域から、関心のあるディープテック分野で一貫したブレークスルーが見られるからだとヨン氏はいう。また、Walden Catalystのパートナーは、過去数十年にわたってディープテック産業に投資してきたことで、これらの国に深いネットワークを持っており、Waldenがトップの起業家を惹きつける画期的なアイデアを見つけるのに役立っているとヨン氏は付け加えた。

現在までに、Walden Catalystは、米国で3社、イスラエルで2社、EUで1社の計6社のディープテック関連のスタートアップ企業に投資している、とヨン氏は続けた。Walden Catalystのポートフォリオ企業には、Speedata(スピーダータ)、MindsDB(マインズDB)、AI21 Labs(AI21ラボ)の他、現在ステルスモードの他3社が含まれていると述べている。同社の最初のチケットサイズは、1ラウンドで数百万ドル(数億円)から2500万ドル(約28億5000万円)までとなっているとヨン氏は語った。

「データは絵を描きます。それは、情報を提供し、啓発するストーリーを語るものです。世界のデータ量は2年ごとに倍増し続けていますが、分析されているのは全データの約2%に過ぎず、意味のある洞察を集めるためにできることはたくさんあります。データの爆発的な増加を捉え、最終的に世界を変えるであろう、米国、欧州、イスラエルの次世代のディープテック起業家たちと協力できることに、私たちは興奮し、光栄に思います」。とソーン氏は述べている。

Shankar Chandran(シャンカール・チャンドラン)氏、Roni Hefetz(ロニ・ヘフェッツ)氏、Francis Ho(フランシス・ホー)氏、Andrew Kau(アンドリュー・カウ)氏の4人の追加パートナーによるチームは、ディープテック分野での投資やエグジットに関して数十年の経験を有している。

Walden Catalystは、事業運営と投資の経験を活かして、初期段階の起業家が次世代のビジネスを構築する際に、迅速なスケールアップとイノベーションを支援することを目指している。同社は、起業家こそが経済成長とイノベーションの中心であると考えている。

「私たちは、業界の次の波を担う夢想家たちと協力して、彼ら(起業家)がイノベーションを起こし、成長を加速するのを支援できることを楽しみにしています。起業家は我々の未来のエンジンであり、Walden Catalystはその旅を共有し、まだ到来していない多くの驚くべきブレイクスルーを支援するために設立されました」とタン氏は述べている。

Walden Catalyst は、国連の持続可能な開発目標に沿ったグローバルな課題に取り組む起業家を対象としたスタートアップコンテストであるエクストリーム・テック・チャレンジ(XTC)と密接な関係にある。Walden Catalystは、地球に意味のある影響を与えながら大規模なスケールに到達できる、次のすばらしい破壊的スタートアップ企業を見つけるというXTCのミッションを共有している。

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(文:Kate Park、翻訳:Akihito Mizukoshi)

インドの10分で食料品を届けるスタートアップ「Zepto」が創業半年で約68.5億円調達

学校の子どもたちのための通学用迎車アプリなど、数々のプロジェクトで協働し、新たなスタートアップを目指して2020年にスタンフォード大学を退学した19歳の2人の起業家が6000万ドル(約68億5300万円)を調達したと米国時間10月31日に発表した。過密で競争の激しいインドの食料品配送市場を改革する狙いだ。

Glade Brook Capital(グレード・ブルック・キャピタル)が、このスタートアップZepto(ゼプト)の最初の機関投資家向け資金調達ラウンドを主導したと、同社の創業者で最高経営責任者のAadit Palicha(アーディット・パリシャ)氏はTechCrunchのインタビューで語っている。このラウンドには、Nexus(ネクサス)とY Combinator(Yコンビネーター)の他、エンジェル投資家のLachy Groom(ラチー・グルーム)氏、Neeraj Arora(ニーラージ・アロラ)氏、Manik Gupta(マニック・グプタ)氏も参加しており、Zeptoの価値は2億2500万ドル(約256億9100万円)となっている。

今日までほとんどステルスモードで運営されてきたZeptoは、6カ月前にアプリを発表し、数カ月前から話題になっていた。ビジネスを説明するために数学用語を使った遊び心のある名前のこのスタートアップは、10分で食料品を配達するサービスを提供しており、多くの有力なライバル企業をスピード面で打ち負かしている。

この偉業を達成するために、Zeptoは事業を展開する都市(ムンバイ、ベンガルール、そして今週からはデリー)にダークストアを設置した。パリシャ氏によると、同社が設置したこれらのダークストアは、高速配送のために設計され、最適化されているとのことだ(Zeptoのアプローチは、在庫を通常の食料品店に依存している多くのインドのスタートアップとは異なる。これついて、同氏は他の市場を調査し、それらの会社を運営している事業者と話をしたと述べている)。

「私たちの現在の成長の仕方、そして現在の普及率と利用頻度を見ると、チャンスは本当に巨大です」と彼はいう。同社は、近々ハイデラバード、プネ、コルカタにも進出し、現在40店舗あるダークストアの数を2022年初頭までに100店舗以上に増やす予定だという。

Zeptoが運営するダークストア(画像クレジット:Zepto)

Zeptoを創設するアイデアは、2020年のパンデミックの際に、もう1人の創業者であるKaivalya Vohra(カイバリャ・ボーラ)氏と一緒にムンバイの自宅にこもっていた時に生まれたとパリシャ氏はいう。「私たちは、起業家やテック系スタートアップの世界に非常に深く触れていました。今、私たちはムンバイにいますが、独身の2人にとって最大の問題は食料品や必需品の確保でした」と述べている。

マハラシュトラ州では、他のインドの州と同様に、ウイルスの拡散を抑えるために封鎖措置がとられていたため、配達物が顧客のもとに届くまでに2~3日かかっていた。「非常に苛立ちを覚えました」と同氏はいう。

「世界最大級の規模を誇るインドの食料品宅配市場のオンライン状況が、重大な実行エラーに陥っていると感じたのです」と、企業名は伏せた上で付け加えた。

Zeptoは、Flipkart(フリップカート)、Uber(ウーバー)、Dream11(ドリーム11)、Pharmeasy(ファーミーシー)、Pepperfry(ペッパーフライ)の元幹部を含むチームを編成しており、SoftBank(ソフトバンク)が支援するSwiggy(スウィッギー)やGrofers(グローファーズ)、Google(グーグル)が支援するDunzo(ダンゾー)など、多くの支援を受けているスタートアップ企業と競合しており、その多くがここ数四半期で高速食料品配送分野に進出している。

「私たちは、このモデルを完成させるために、長い間、雑音を無視し、ひたすら頭を隠して活動してきました。そして、その努力が報われています。今日では、止めらないチーム、強固な製品インフラ、機関投資家の資金への深い繋がりのおかげで毎月200%の成長を続けています」とパリシャ氏は述べている。

Sanford C. Bernstein(サンフォード・C・バーンスタイン)のアナリストによると、2025年までに210億ドル(約2兆3900億円)の価値があると推定されている。「オンライン食料品販売の普及率は、現在の1%未満から2025年には3~5%に達すると予想されています。長期的な構造的要因としては、所得と豊かさの向上、低価格帯の消費、eコマースの普及(年率30%以上)、若い人口(25歳以下が50%以上)などが挙げられます。収入に占める食料品支出の割合は30%と依然として高い水準にあります」。と彼らは綴っている。

「既存の都市では、トラフィックが多く、コンバージョンとリテンションが増加しているため、より高い普及率を推進する余地が大きくあります。オンライン食料品販売の導入は、エンゲージメントレベルと注文量が加速しています。DAU(デイリー・アクティブ・ユーザー)は、他の多くの食料品販売アプリ上でも、ロックダウン中に強い伸びを示しました。ダウンロード数は最近増加しています。オンライン食料品販売には、24時間いつでも買い物ができ、幅広い単品管理の品揃え、即日・翌日配送という需要側の利点があります」。と述べている。

画像クレジット:Zepto

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(文:Manish Singh、翻訳:Akihito Mizukoshi)

スタンフォード大学エンジニアがミシュランシェフが作ったロボットレストラン、グレインボウルなどを提供

スタンフォード大学でエンジニアリングを専攻していたAlex Kolchinski(アレックス・コルチンスキー)氏、Alex Gruebele(アレックス・グルーベレ)氏、Max Perham(マックス・パーハム)氏の3人は、キャンパス内の食事の選択肢の少なさと高コストに対する不満で意見が一致した。

コルチンスキー氏はTechCrunchの取材に対し「補助金付きの食事プランでも、昼食は10ドル(約1140円)、夕食はそれ以上かかりました」と語った。「私は、昼食を2回食べるために、食堂で座って仕事をしていました。アレックス(グルーベレ)はChipotleに行って、そこで奨学金を使っていました」。

美味しい食事をより安い価格で提供するにはどうしたらいいかを考えているうちに、ロボット工学の博士号を取得していたコルチンスキー氏とグルーベレ氏は、食事の準備などの作業をロボットが手助けできるのではないかと考えるようになった。

コルチンスキー氏は「10ドルのブリトーボウルにかかる食費は3ドル(約340円)で、残りは人件費、諸経費、不動産などに使われていることがわかりました。もし私たちが自己完結型のレストランを作れば、本当においしい食べ物の価格を下げることができ、しかもそれが近くにあるのです」。

Mezliのボウルができ上がる過程のアニメーション(画像クレジット:Mezli)

3人は、ミシュランの星を獲得しているシェフ、Eric Minnich(エリック・ミニッヒ)氏の協力を仰ぎ、完全自律型のモジュール式レストランを建設する会社Mezli(メズリ)を立ち上げた。ミニッヒ氏はサンフランシスコのスペイン料理レストラン「The Commissary」の創業時の料理チームの一員で、エグゼクティブシェフでもある。会社設立の計画の大部分は2020年練られ、2021年1月にY Combinatorでスタートした。

Mezliが開発したロボットレストランのプロトタイプは、現在、サンマテオにある同社のKitchenTown店舗で稼働しており、顧客にサービスを提供している。マシーンは、10×20フィート(3×6メートル)のスペースを取り、自立型だ。手始めに、地中海スタイルのグレインボウル(穀物や豆、野菜などを使ったサラダ)、副菜、飲み物を提供している。

ボウルの価格は4.99ドル(約570円)からだ。客はレストランで直接注文することも、オンラインで注文してスマートロッカーで受け取ることもでき、あるいは配達してもらうこともできる。テスト店舗ではすでに有望な成果があがっており、ロボットレストランの料理を食べた客の44%がリピーターになっている、とコルチンスキー氏は話す。

同社は現在、2022年の一般提供に向けて、試作品の第3バージョンの開発を進めている。この勢いは、Metaplanet、ロボット工学者のPieter Abbeel(ピーター・アビール)氏、レストラン経営者のZaid Ayoub(ザイド・アユーブ)氏、Y Combinatorなどの投資家からの300万ドル(約3億4000万円)のシードラウンド資金によって支えられている。この新たな資金調達でMezliは人材、部品、食料、運営費をまかなうことができる。

会社の規模が大きくなれば、Mezliは何千ものモジュール式レストランを3Dプリントでき、従来のレストランが営業開始するまでにかかる時間と費用の何分の1かで展開できるようになる、とコルチンスキーは付け加えた。

また「私たちは、店舗を数カ所に増やした後、大量生産する予定です。大量生産により、他のレストランよりも早く1000店舗に到達すると見込んでいます」とも同氏は話した。

Mezliの出資者の1人であるピーター・アビール氏は、カリフォルニア大学バークレー校の教授であり、GradescopeとCovariantの創業チームに参加している起業家でもある。同氏は、創業チームのクラスメートからMezliのことを聞き、ぜひ関わりたいと考えた。

同氏は、健康的な食品をより手頃な価格で提供するという会社のビジョンにひかれた。また、自身、科学者として、ビジネスとエンジニアリングを駆使して、食べ物が人々の手に渡るまでや、食べ物の提供方法でのボトルネックを減らすという「第一原理」のアプローチにも好感を持った。

「これは、私の心に響くものでした。物理的なことは何でも思った以上に難しいものです。なので、第一原理で解決する方法を思いつかなければ、難しいのです。加えて、初日から料理が提供されたのは説得力があります」と同氏は述べた。

画像クレジット:Mezli

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(文:Christine Hall、翻訳:Nariko Mizoguchi

ワンクリックで暗号資産の空売りが可能な「Beta Finance」

あらゆる暗号資産(仮想通貨)の貸し借りと空売りをワンクリックで行うソリューションを開発した分散型金融プロトコルのBeta Finance(ベータファイナンス)は米国時間10月29日、プライベートおよびパブリックのローンチパッド投資ラウンドで575万ドル(約6億6000万円)を調達したと発表した。

プライベート投資ラウンドでは、Sequoia Capital India(セコイア・キャピタル・インディア)が主導し、ParaFi Capital(パラフィ・キャピタル)、DeFiance Capital(デファイアンス・キャピタル)、Spartan Group(スパルタン・グループ)、GSR、Delphi Digital(デルファイ・デジタル)、Multicoin Capital(マルチコイン・キャピタル)も参加した。

Allen Lee(アレン・リー)氏が設立したBeta Financeは、ユーザーがより簡単に暗号資産をショート(空売り)して価格変動に対抗できるようにし、またリスクヘッジのための別の手段を提供しようとするスタートアップだ。

既存のDeFi(分散型金融)プロトコルは、ごく限られた成熟した暗号資産の借り入れと空売りにしか対応しておらず、大多数のトークンはユーザーがアクセスできないようになっている。

Ethereum(イーサリアム)のブロックチェーン上に構築されているBeta Financeは、この非効率性を解消するために、より幅広い選択肢と機能性を提供する初のユーザーフレンドリーなプロトコルであると自らを称している。

そのワンクリックソリューションによって、技術的なノウハウを持たないトレーダーでも、あらゆるトークンのショートポジションを管理・更新することが可能になる。関連するすべてのトークンの情報がインターフェイス上で直接入手でき、それを判断材料とすることができる。

「ユーザーは、既存の金融市場で無視されている、最もボラティリティ(価格変動性)が高い資産の多くをショートすることができるため、ボラティリティを相殺してリスクをヘッジし、より健全なリターンを得ることができます」と、Beta Financeは述べている。

「空売りは、DeFiプロトコルに欠けていた金融インフラの重要な部分であると考えています」と、リー氏はTechCrunchによるインタビューで語った。「DeFiが伝統的な金融に取って代わるためには、空売りのようなツールを構築することが必要であると、私たちは確信しています」。

自社で発行した仮想コイン「BETA」がBinance(バイナンス)で取引されているBeta Financeは「カテゴリーを定義するプロトコルになる可能性を秘めている」と、Sequoia IndiaのプリンシパルであるPieter Kemps(ピーター・ケンプス)氏は声明で述べている。

Beta Financeによると、同プラットフォームの立ち上げから最初の1カ月の内に、1万人以上のユニークアドレスに対して、1万件以上の入金、1000件の借り入れ、500件のショートポジションを処理したとのこと。このプロトコルはロックされている総額の平均が1億9500万ドル(約223億円)を超えたと、同社では述べている。

「Betaは、ワンクリックショートの先駆者であることに加えて、プロトコルをローンチしてからわずか1週間後には、NFDトークンの空売りを可能にしてNFT(非代替性トークン)をショートした最初のプロトコルとなるなど、安全性を保ちながら多様な資産(ボラティリティの高いものを含む)に対応できる能力をすでに証明しています。DeFiエコシステムの今後において、Betaは重要なステークホルダーになることを、私たちは楽観視しています」と、ケンプス氏は述べている。

Beta Financeは、今回調達した資金を、製品提供の幅を広げ、より多くの人材を雇用するために活用すると、リー氏は述べている。

画像クレジット:Beta Finance

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(文:Manish Singh、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

10万人以上が利用、暮らしの悩みを70名以上の議員にワンタップで直接相談できるissues運営元が6500万円調達

暮らしの悩みを地元議員に直接相談できる「issues」の運営元が6500万円のシード調達、副業メンバーの積極採用を開始

暮らしの悩みを地元議員にワンタップで直接相談できるウェブサービス「issues ~くらしの悩みをみんなで解決~」を運営するissuesは11月1日、シードラウンドにおいて総額6500万円の資金調達を発表した。引受先は、mint、East Ventures、笠原健治氏(ミクシィ取締役)、堅田航平氏(Gojo&Company CFO)、土屋尚史氏(Goodpatch代表)、角田耕一氏(ヤプリCFO)、日比谷尚武氏(kipples代表)、古川健介氏(アル代表)、松岡剛志氏(レクター代表)、宮崎真理子氏(元フローレンス副代表理事)。調達した資金は、組織拡大、プロダクト改善、マーケティング強化、マネタイズ実績拡大などに活用される。

issues ~くらしの悩みをみんなで解決~は、住民ユーザーが個人の力では解決できない悩みを地元議員に直接相談することができ、議員ユーザーは地元住民のニーズの把握・課題解決の報告・支持拡大へとつなぐサービス。これまでに東京都内在住の20代から40代の無党派層を中心とする10万人以上に利用され、様々な政党(自民・公明・立憲・国民・維新・共産・無所属など)に所属する議員70名以上が登録、10以上の自治体で4つの政策の実現を後押しした実績を持つ。

今回の資金調達を機に、政策作りDXの推進のほか、フルリモートで業務に携わる副業メンバーの積極採用も開始する。デザイナー、エンジニア、マーケター、広報、政策アドバイザーなど幅広いポジションで人材を募集し、次回の資金調達ラウンド以降のフルタイム採用に向つなげたいという。
暮らしの悩みを地元議員にワンタップで直接相談できるissues運営元が6500万円のシード調達、副業メンバーの積極採用を開始

これまでの伝統的な政策作りにおいては、主に町内会・自治会・業界団体・労働組合といった中間組織が住民のニーズを吸い上げて政府に伝達し、実現した政策について周知する役割を担っていた。しかし2000年代ごろからライフスタイルの多様化が進み、都市部の20代から40代を中心に中間組織に属さない住民が増加。たとえば労働組合の組織率は、高度経済成長期には35%ほどで推移していたが現在では17.1%まで低下している(厚労省「労働組合基礎調査」2020年6月30日現在)。

このような背景を踏まえissuesは、中間組織が担う住民ニーズの吸い上げ・政策の周知機能を同社が補完・再構築することで、様々な社会課題を解決するインフラとなることを目指している。
暮らしの悩みを地元議員にワンタップで直接相談できるissues運営元が6500万円のシード調達、副業メンバーの積極採用を開始暮らしの悩みを地元議員にワンタップで直接相談できるissues運営元が6500万円のシード調達、副業メンバーの積極採用を開始

需要に対する工場の対応力向上のため金属加工の製造サプライチェーン見直すFractory

新型コロナウイルスのパンデミックで甚大な被害を受けた製造業界。しかし最近、その活気を取り戻す兆しがいくつか見えてきた。その1つは、変動する経済やウイルスの感染拡大など不安定な要素によって需要が上下するなか、需要に対する工場の対応力を高めるべく、新たに取り組みが進められている点だ。柔軟なカスタム製造で新たに頭角を現しつつあるスタートアップ企業のFractory(フラクトリー)は、2021年9月初旬、シリーズAで900万ドル(約9億8900万円)の資金調達をしたことを発表し、その傾向を改めて際立たせる結果となった。

この資金調達は、初期成長やポストプロダクション、ハイテクのスタートアップなどに注力する欧州の投資会社、OTB Ventures(OTBベンチャーズ)主導で進められた他、既存の投資会社であるTrind Ventures(トリンド・ベンチャーズ)Superhero Capital(スーパーヒーロー・キャピタル)United Angels VC(ユナイテッド・エンジェルズVC)Startup Wise Guys(スタートアップ・ワイズ・ガイズ)、そしてVerve Ventures(ヴェルヴェ・ベンチャーズ)もこの調達に参加した。

Fractoryはエストニアで設立され、現在は英国・マンチェスターを拠点とする会社だ。従来、国内の製造業向けの強力なハブとして存在し、顧客と緊密な協力体制を築いてきた。そのFractoryが、カスタムの金属加工品を必要とする顧客がより簡単にアップロードや発注ができるよう、そして工場側もそれらのリクエストに応じて新規の顧客や仕事を獲得できるように、プラットフォームを構築したのだ。

FractoryのシリーズAは、当社のテクノロジーを引き続き展開し、さらに多くのパートナーをエコシステムに取り込む目的で用いられる。

現在までに、Fractoryは2万4000人もの顧客を獲得し、何百もの製造業者や金属関連会社と連携してきた。合計すると、250万個以上もの金属部品の製造を支援してきたことになる。

ここで整理しておくと、Fractory自体は製造業者ではなく、同社にはそのプロセスに参入する計画もない。業種はエンタープライズ向けソフトウェアであり、製造(現在は金属加工)を担当できる会社向けにマーケットプレイスを提供し、金属加工品を必要とする会社とやり取りしている。インテリジェントなツールを活用して必要な加工品を特定し、該当の加工品を製造できる専門の製造業者にその潜在的な仕事を紹介するというわけだ。

Fractoryが解決しようとしている課題は、多くの業界のそれと同じである。さまざまな供給や需要が発生し、変動が多く、一般的に仕事の調達方法が非効率なケースだ。

Fractoryの創設者兼CEOのMartin Vares(マーティン・ヴァレス)氏は、筆者に対し、金属部品を必要とする企業は1つの工場を得意客にする傾向があるようだと話す。だが、これはつまり、その工場が仕事に対応できない場合は企業が自力で他の工場を探さないといけないということだ。時間がかかるうえ、費用も重なるプロセスとなる。

「製造業は非常に断片化した市場で、製品の製造方法も幅広くあるため、その2つの要素が複雑に絡まり合っているんです」ヴァレス氏は続ける。「昔は、何かをアウトソーシングするには何通ものメールを複数の工場に送る必要がありました。とはいえ、30社ものサプライヤーに個別に送ることは到底できません。そこで、ワンストップのショップを立ち上げたのです」。

一方で、工場はダウンタイムを最小化するため、仕事の工程を改善できないか常に模索している。工場としては、仕事がない時間帯に作業員を雇ったり、稼働していない機械のコストを払ったりする事態を避けたいのだ。

「アップタイムの平均キャパシティは50%ですね」とヴァレス氏は、Fractoryのプラットフォームにおける金属加工施設(さらには業界全般の施設)についてこのように述べている。「使用中の機械よりも、待機中の機械の方がずっと多いんです。そこで、余剰キャパシティの問題を何としても解決し、市場の機能性を高めて無駄を削減したいと考えています。工場の効率性を高めること、これが持続可能性にもつながるのです」。

Fractoryのアプローチは、顧客をプロセスに取り込むスタイルだ。現在、これらの顧客は一般的に建築業界をはじめ、造船、航空宇宙、自動車といった重機産業に多く存在し、これらの顧客に、必要な製品を規定したCADファイルをアップロードしてもらっている。これらのファイルは製造業者が集まるネットワークに送信され、そこで仕事の入札と引き受けが行われる。フリーランス向けマーケットプレイスの製造業版といったようなものだ。その後、これらの仕事のうちおよそ30%は完全に自動で進められ、残りの70%については、仕事の見積書や製造過程、配達などのアプローチに関してFractoryが関与する形で顧客にアドバイスを行っている。ヴァレス氏によると、今後はさらにテクノロジーを搭載し、自動化できる割合を増やしていくとのことだ。RPAへの投資を拡大するだけでなく、顧客の希望や最適な実行方法をより良く把握するためのコンピュータビジョンについても投資を拡大する。

現在、Fractoryのプラットフォームは、CNC加工などの仕事を含め、レーザー切断サービスや金属の曲げ加工のサービスについて発注の支援を行っている。次の目標は、産業向けの3D印刷に対応することだ。石細工やチップ製造など、他の素材についても検討を進める。

「製造業は、ある意味では最新化がいつまでたっても進まない業界ですが、それも驚くことではありません。設備が重く、コストも高いため「壊れるまで修理はするな(触らぬ神に祟りなし)」というモットーは通常この業界では通用しないからです。そのため、せめて従来からある設備をより効率的に運用しようと、よりインテリジェントなソフトウェアを構築している企業が、ある程度基盤を固めることができているのです。米国で生まれた大手企業のXometry(ゾメトリー)は、同じくカスタム部品を必要とする企業と製造業者の架け橋を築いた企業ですが、そのXometryは2021年初めに株式を公開し、今では時価総額が30億ドル(約3,292億円)以上にのぼっています。他にも、Hubs(ハブズ)(現在はProtolabsによって買収)やQimtek(キムテック)などが競合として存在します」。

Fractoryが売り込んでいるセールスポイントは、一般的に顧客の地域に根差した製造業者を重視することで、仕事における流通の側面を低減させ、炭素排出量を抑えられるよう取り組んでいる点だ。ただし、会社の成長に応じて当社がこのコミットメントに遵守しつづけるのかどうか、そうであればどのようにそれを実現するのかは今後に注目だ。

現在のところ、投資会社はFractoryのアプローチとその急速な成長を証拠に、これからも業界に影響を及ぼすだろうと見込んでいる。

「Fractoryは、他の製造環境では見られないエンタープライズ向けのソフトウェアプラットフォームを生み出しました。急速に顧客を獲得している事実から、Fractoryが製造サプライチェーンにもたらす価値は明らかに実証されています。これは、イノベーション対応できるエコシステムを自動化し、デジタル化するテクノロジーです」Marcin Hejka(マルチン・ヘイカ)氏は声明でこのように述べている。「私たちはすばらしい製品と才能あふれるソフトウェアエンジニアのみなさんに投資しました。彼らは、製品開発に全力を注ぎ、圧倒的なスピードで国際的に成長しつづけています」。

画像クレジット:Fractory

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:Dragonfly)

リモートワーク時代にふさわしい「バーチャルオフィス」を提案するLoungeの新アプリ

Loungeと呼ばれるスタートアップが、リモートワーク時代にふさわしいオフィスとはなにかをもう一度考え直そうと試みている。社員同士がまだ一度も実際に会ったことがない状態で(今後、顔を合せる機会が訪れない可能性もある)企業が企業文化や社員同士の関係を築くにあたり、Slack、Zoom、Teamsといったツールでは不足している要素があるからだ。こうした従来のツールでは、ユーザーの身元はメッセージボードやプロフィールに、写真や短い経歴で記されるだけであったが、Loungeの場合は、その人物のタイムゾーン、天気、場所、所属チーム、会社のイベントへの参加状況など、さまざまな情報が伝えられるようになっている。また、Loungeは社員同士がお互いを知り、個人的に交流を深められるよう、ドロップインオーディオチャット、フォトシェアリングのようなツールも提供している。

Loungeのアイデアは、共同創設者であるCEOのAlex Kwon(アレックス・クウォン)氏とCTOのJason Jardim(ジェイソン・ジャーディム)氏が構想したものだ。両氏はかつてともにLife360で働いていた。2人は、パンデミックの最中、リモートで働きながら、家族向けのタスク管理アプリを開発していた。結局そのプロジェクトは廃止されてしまったが、2人はこの時期にリモートワークとその落とし穴について多くのことを学んだのだ。

クウォン氏はかつて一度もリモートで働いたことがなかったが、実際に経験してみると人とのふれあいの部分で物足りながあることに気がついたという。

「Zoom通話で1日に1回話したり、Slackで1時間遅れでチャットするというやり方を、私はとても寂しいと感じました」と彼は説明する。

そういったオンラインでの会話には、同僚と実際に向き合って交わす会話から得られるきらきらした火花のようなものが欠けていた。そうした火花が新しいアイディアにつながったりすることも少なくない。こうした対面での共同作業こそ、多くの企業がパンデミックの有無に関わらず、スタッフをオフィスに呼び戻したいと望んでいる理由の1つなのだ。

しかし、クウォン氏は、対面でのふれあいだけがチームに仲間意識をもたらし企業文化を育てる唯一の方法ではないと信じている。

「人々はインターネットが普及して以来、オンラインで関係を『育んで』きました。彼らはWorld of Warcraftの中でオンラインで人と出会ったり結婚したりしています。そして、私の友人の多くもパートナーとなる相手をデートアプリで見つけています。それもこれも、始まりはオンラインです」。

友情や愛がオンラインで生まれるなら、仕事がらみの仲間意識だって育むことができる、というのがクウォン氏の考えだ。

画像クレジット:Lounge

両氏は、より繋がりを感じられる方法の模索を始めた。インスピレーションが湧いた時いつでも会話できるよう24時間年中無休のZoom通話を試したりもしたが、それはあまりに圧迫感もあり、子どもが邪魔をすることもしばしばだった。常にオーディオをオンにしていることも、同様の問題があった。このため、最終的には、お互いのプライバシーを尊重しながら、タップするだけでオーディオチャットですばやくつながることのできるシンプルなアプリが開発された。

このアプリが彼らがリモートワークで感じていた問題を解決することができたことを受け、彼らはタスク管理アプリを開発するスタートアップのアイデアを捨て、かわりにLoungeに取り組むことになった。

Loungeでは社員はチームやプロジェクト、さらには趣味や興味ごとにグループ分けされたバーチャルデスクで表示されている。こうすることで、誰がどんな作業をしているのかが簡単にわかる。このバーチャルデスクは、役割的には会社の組織図に似ているが、よりパーソナライズされた情報を伝えることができる。例えば、画像にある小さな窓で夜なのか昼なのか示しタイムゾーンを伝えたり、さらには天気までわかるようになっているのだ。また、社員のプロフィール写真や他のデータも見ることができる。

画像クレジット:Lounge

社員自身の個々のデスクに加え、Loungeには複数の社員からなる「ルーム」コンセプトが導入されている。トピックやプロジェクトのみに焦点を当てているSlackチャンネルとは異なり、ルームはどんな目的にも対応できるようデザインされており、従来のオフィスが提供していた物理的空間のバーチャルバージョン的役割を果たす。例えば、ユーザーは対話集会や、ホワイトボードセッションが開催されているルームに参加したり、会社のカフェテリアのような公共スペースで同僚とバーチャルに交流することもできる。

ルームには鍵をかけることもできるし、それを解除することもできる。プロジェクトに没頭中なら、訪問者に応答する必要はない。ルームに鍵をかければよいのである。その場合、訪問者は、Slackでするのと同様、チャットにプライベートなダイレクトメッセージを残すことができる。しかし、ルームがオープンの場合は、クリックして音声で同僚とその場でやりとりすることができる。これは、誰かの机まで歩いていって「やあ、元気?」と声をかける行為のバーチャルバージョンである。相手はあなたが挨拶するのを聞き、ミュートを解除して音声で会話する。

クウォン氏は「これをZoomとSlackを合わせたようなものだと考えてください」という。

画像クレジット:Lounge

またLoungeは、写真をシェアする機能もある。これはクウォン氏が以前立ち上げたスタートアップ、Oneminuteで得た着想で、人々が撮ったさまざまな写真をシェアすることのできる機能だ。写真をシェアするとしばらくはその写真がバーチャルデスクやアプリ内の他の場所に表示される。これにより周囲の人々に個人的に関心を持っていることや、飼い犬や週末に楽しんでいる趣味など、プライベートな事柄を伝えることができる。これは Slackチャンネルにすでに備わった機能だが、Loungeではこれを一歩進め、これらの共有された写真が1本にまとめられる仕組みになっている。これを新入社員が見てチームメートとの会話のいとぐちを見つけるのに利用することも可能だ。

Loungeは4月以来一部の顧客に対し非公開ベータ版サービスを行ってきたが、ウェイティングリストには何百もの顧客が登録している。現在のところ、同社がターゲットにしているのは社員が20名以下の比較的規模の小さなチームである。

Loungeは、Unusual Ventures、Hustle Fund、Translink、Unpopular Venturesやその他のエンジェル投資家から120万ドル(約1億3000万円)の資金を調達している。

   画像クレジット:Lounge

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(文:Sarah Perez、翻訳:Dragonfly)

電動ボートのスタートアップ企業Arcにウィル・スミスやケビン・デュラント、ショーン・コムズが出資

10カ月前に設立されたArc(アーク)は、30万ドル(約3400万円)の限定版ボートを皮切りに、水上のあらゆるものを電動化するという野望を抱くスタートアップ企業だ。同社はエンターテインメント業界の大スターたちから、注目と資金を集めている。2月にVC会社のAndreessen Horowitz(アンドリーセン・ホロウィッツ)が主導するシードラウンドを完了させたこのスタートアップは、Will Smith(ウィル・スミス)のDreamers VC(ドリーマーズVC)、Kevin Durant(ケビン・デュラント)とRich Kleiman(リッチ・クライマン)のThirty Five Ventures(サーティファイブ・ベンチャーズ)、Sean “Diddy” Combs(ショーン・”ディディ”・コムズ)の「Combs Enterprises(コムズ・エンタープライゼス)」など、複数の新しい投資家を迎え入れた。

共同創業者兼CEOのMitch Lee(ミッチ・リー)氏が戦略的なラウンドと表現するこの新たな投資により、Arcの資金調達額は700万ドル(約8億円)を超えた。同社のシードラウンドでは、Chris Sacca(クリス・サッカ)氏のLowercarbon Capital(ロアーカーボン・キャピタル)とRamtin Nami(ラムティン・ナミ)氏のAbstract Ventures(アブストラクト・ベンチャーズ)が出資した。

「これらの人々は、それぞれの分野で世界的に活躍しているだけでなく、ブランドの構築や製品のマーケティング、さらにはコミュニティの育成など、多くの経験をお持ちです」と、リー氏はTechCrunchによる最近のインタビューで語った。

要するに、コムズ、デュラント、スミスの3人は、Arcが目指す市場に影響を与える力を持っているということだ。しかし、リー氏によれば、最初に発売する30万ドルのボートが属するアッパーラグジュアリーセグメントは、Arcの最終目標ではないという。

リー氏は、SpaceX(スペースX)の元エンジニアであるRyan Cook(ライアン・クック)氏とともに、さまざまな価格帯やユースケースに向けた電動の水上の乗り物を開発・販売する計画を持ってArcを設立した。10人以上の従業員(その多くはSpaceXに長く勤務していた人たち)が働くこの会社は、まず船体から始めることにしたと、リー氏は説明する。

電動ボートは、より静かで、より速く、より信頼性が高く、メンテナンスコストも低いにもかかわらず、3つの課題のために普及していないとリー氏は語る。同氏によれば、これまでは、ボートに必要なバッテリーのサプライチェーン、適切な高電圧の電気システム、そして大きなバッテリーパックに必要な重量と容積を考慮して設計された船体が存在しなかったという。

リー氏は「私たちがこれに取り組んだとき、専用の船体と専用のバッテリーパックを用意するところから始めて、ゼロから作り上げても理に適ったレイアウトにしようと考えました」と語り、船体と高電圧電気システムの開発には、SpaceX出身の優秀なエンジニアたちが重要な役割を果たしたと述べた。

同社は現在「Arc One(アーク・ワン)」と呼ばれるボートのアルファ版プロトタイプを製作している。この24フィート(約7.3メートル)のアルミ製ボートは、475馬力の出力を発揮し、1回の充電で3〜5時間の走行が可能。Arc Oneの生産台数は25台以下になる予定だという。

リー氏によると、Arc Oneは美的に完成の域に達することよりも、船体、電気系統、バッテリーパックの設計に重点が置かれているという。しかし、このボートはちゃんと動く。最近、チームはこのボートで水上スキーをしたそうだ。Arc Oneの量産は来月から開始され、来年初めには最初の顧客に届けられる予定だ。

アークの計画では、今回の投資家から得た資金をもとに生産規模を拡大し、内燃機関のボートと競合できる価格のボートを開発することを目指している。つまり、Tesla(テスラ)が自動車でやっている戦略と同じだ。

「私たちはこのボートを大量に製造することは計画していませんが、これは市場における電動ボートのあり方を示すものとなり、私たちにとって新たな錨を降ろすものになります。まあ、これはしゃれのつもりですが」と、リー氏は語る。Arcはその後、2022年末までに大衆向けウォータースポーツ市場をターゲットにした新型ボートを発表し、販売を開始したいと考えている。次のボートの価格はまだ決まっていないが、内燃エンジンのボートに対抗するためには、15万ドル(約1700万円)から20万ドル(約2300万円)程度に抑えることが必要だろう。

次のボートを手がけるタイミングは、Arcが追加資金を調達する時期と金額によると、リー氏は語る。今のところ、同社はこの1号機のボートが将来の電動製品の需要を喚起することを期待している。

画像クレジット:Arc Boats

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

AIを使った超音波分析の拡大を目指すイスラエルのヘルステックDiAが約15億円調達

独自の光超音波3Dイメージング技術を手がけるLuxonusが約4.3億円調達、2022年に医療機器の開発・生産および薬事申請準備

イスラエルに拠点を置くAIヘルステック企業DiA Imaging Analysisは、深層学習と機械学習を利用して超音波スキャンの分析を自動化している。同社はこのほど、シリーズBのラウンドで1400万ドル(約15億3700万円)を調達した。

DiAの前回の資金調達から3年後に行われた今回の投資ラウンドには、新たにAlchimia Ventures、Downing Ventures、ICON Fund、Philips、XTX Venturesが参加し、既存投資家としてCE Ventures、Connecticut Innovations、Defta Partners、Mindset Ventures、Shmuel Cabilly(シュムール・カビリー)博士らが名を連ねている。同社のこれまでの総調達額は2500万ドル(約27億4500万円)に達している。

今回の資金調達により、DiAはプロダクト範囲の拡大を継続し、超音波ベンダー、PACS / ヘルスケアIT企業、リセラー、ディストリビューターとのパートナーシップの新規構築や拡充を進めるとともに、3つの地域市場でのプレゼンスを強化していく。

このヘルステック企業は、AIを利用したサポートソフトウェアを臨床医や医療従事者に販売し、超音波画像のキャプチャと分析を支援している。このプロセスを手動で行うには、人間の専門家がスキャンデータを視覚的に解釈する必要がある。DiAは、同社のAI技術を「今日行われている手動および視覚による推定プロセスから主観性を取り除く」ものだと強調している。

同社は、超音波画像を評価するAIを訓練して、重要な細部の特定や異常の検出を自動的に行えるようにしており、心臓にフォーカスしたものを含む、超音波分析に関連する各種の臨床要件を対象とした広範なプロダクトを提供している。心臓関連のプロダクトには、駆出率、右心室のサイズと機能などのアスペクトの測定と分析の他、冠動脈疾患の検出支援などを行うソフトウェアがある。

また、超音波データを利用して膀胱容積の測定を自動化するプロダクトもある。

DiAによると、同社のAIソフトウェアは、人間の目が境界を検出して動きを認識する方法を模倣しており「主観的」な人間の分析を超える進歩につながるもので、スピードと効率の向上も実現するという。

「当社のソフトウェアツールは、正しい画像の取得と超音波データの解釈の両方を必要とする臨床医を支援するツールです」とCEOで共同創業者のHila Goldman-Aslan(ハイラ・ゴールドマンアスラン)氏は語る。

DiAのAIベースの分析は、現在北米や欧州を含む約20の市場で利用されている(中国ではパートナーが自社のデバイスの一部として同社のソフトウェアの使用の承認を取得したと同社は述べている)。DiAは、チャネルパートナー(GE、Philips、コニカミノルタなど)と協力して市場開拓戦略を展開しており、チャネルパートナーは自社の超音波システムやPACSシステムに追加する形で同社のソフトウェアを提供している。

ゴールドマンアスラン氏によると、現段階で3000を超えるエンドユーザーが同社のソフトウェアへのアクセスを有している。

「当社の技術はベンダーニュートラルであり、クロスプラットフォームであることから、あらゆる超音波デバイスやヘルスケアITシステム上で動作します。そのため、デバイス企業およびヘルスケアIT / PACS企業の両方と10社以上のパートナーシップを結んでいます。当該分野には、このような機能、商業的牽引力、これほど多くのFDA・CE対応のAIベースソリューションを持つスタートアップは他にありません」と同氏は述べ、さらに次のように続けた。「現在までに、心臓や腹部領域のための7つのFDA・CE承認ソリューションがあり、さらに多くのソリューションが準備されています」。

AIのパフォーマンスは、当然ながら訓練されたデータセットと同等である。そして、ヘルスケア分野での有効性は特に重大な要素である。トレーニングデータに偏りがあると、トレーニングデータにあまり反映されていない患者群で疾患リスクを誤診したり過大評価したりする、欠陥のあるモデルにつながる可能性がある。

AIが超音波画像の重要な細部を突き止めるためにどのような訓練を受けているのかと聞かれて、ゴールドマンアスラン氏はTechCrunchに次のように答えている。「私たちは多くの医療施設を通じて何十万もの超音波画像にアクセスできますので、自動化された領域から別の領域にすばやく移動する能力があります」。

「各種のデバイスからのデータに加えて、異なる病理を持つ多様な集団データも収集しています」と同氏は付け加えた。

「『Garbage in Garbage out(ゴミからはゴミしか生まれない)』という言葉があります。重要なのは、ゴミを持ち込まないことです」と同氏はいう。「当社のデータセットは、数人の医師と技術者によってタグ付けされ、分類されています。それぞれが長年の経験を持つ専門家です」。

「また、誤って取り込まれた画像を拒否する強力な拒否システムもあります。このようにして、データがどのように取得されたかに関する主観的な問題を克服しています」。

注目すべき点は、DiAが取得したFDAの認可が市販前通知(510(k))のクラスII承認であることだ。ゴールドマンアスラン氏は、自社プロダクトの市販前承認(PMA)をFDAに申請していない(また申請する意思もない)ことを認めている。

510(k)ルートは、多様な種類の医療機器を米国市場に投入する承認を得るための手段として広く利用されている。しかし、それは軽薄な体制として批判されており、より厳格なPMAプロセスと同じレベルの精査を必要としないことは確かである。

より大きなポイントは、急速に発展しているAI技術の規制は、それらがどのように適用されているかという点で遅れをとっている傾向があるということだ。巨大な展望が確実に開かれているヘルスケア分野への進出が増えている一方、まことしやかなマーケティングの基準を満たすことに失敗した場合の深刻なリスクもある。つまり、デバイスメーカーが見込んだ展望と、そのツールが実際にどれだけの規制監督下に置かれているかということの間には、依然としてギャップのようなものが存在している。

例えば、欧州連合(EU)では、デバイスの健康、安全性、環境に関するいくつかの基準を定めているCE制度において、一部の医療デバイスはCE制度の下での適合性についての独立した評価が必要になるが、実際にはそれらが主張する基準を満たしているという独立した検証が行われることなく、単にメーカーが適合性の宣言を求められるだけの場合もある。しかし、AIのような新しい技術の安全性を規制する厳格な制度とは考えられていない。

そこでEUは、来るべきAI規制法案(Artificial Intelligence Act:AIA)の下で「高リスク」と見なされたAIのアプリケーションに特化して、適合性評価の層を追加することに取り組んでいる。

DiAのAIベースの超音波解析のようなヘルスケアのユースケースは、ほぼ確実にその分類に該当するため、AIAの下でいくつかの追加的な規制要件に直面することになる。しかし現時点では、この提案はEUの共同立法者によって議論されているところであり、AIのリスクの高いアプリケーションのための専用の規制制度は、この地域では何年も効力を発揮していない状態にある。

画像クレジット:DiA Imaging Analysis

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Dragonfly)

外国に高級別荘を共同所有する方法を提供するメキシコのKocomo

メキシコのカボ・サン・ルーカスのヴィラ・アキマリナ(画像クレジット:Kocomo)

別荘が欲しくない、などという人がいるだろうか?

そんな人はいないだろう。

Kocomoはメキシコシティーに拠点を置くスタートアップで、別荘を所有するという人々の夢を実現する手助けをしたいと望んでいる。そして、その目標を達成するために、株の発行と借り入れによって、それぞれ600万ドル(約6億6000万円)と5000万ドル(約55億1500万円)の資金調達を終えたところだ。

同社は国境をまたいだ形での高級別荘の共同所有を、従来のタイムシェアを超えた形で実現しようとしている。つまりコロンビア人、英国人、メキシコ人、米国人、パナマ人の血を引くKocomoの創設者は、人々が高級別荘の部分的権利を購入、所有、販売できる市場を形成することで、従来の別荘の所有権のあり方を覆したいと考えている。さらに簡単に言えば、Kocomoが目指すのは、世界中のより多くの人々が別荘を所有するという夢をかなえられるようにすることである。

同社は2021年設立され、5月から人目につかない形で動いてきた。そして、最近、ウェイティングリストから「選別」された顧客グループにサービス提供するために、ウェブサイトのベータ版を立ち上げた。

KocomoのCEO兼共同創設者であるMartin Schrimpff(マーティン・シュリンプフ)氏は「まずは、メキシコ、カリブ海、コスタリカで別荘を購入したいと考えている米国人とカナダ人に焦点を当てます。それから最終的にはヨーロッパでも同じことをする予定です」。と語った。

AllVPおよびVine Venturesは、Picus Capital、Fontes(QED、FJ Labs and Clocktower Technology Ventures)、およびStarwood Capital Groupの会長であるBarry Sternlicht(バリー・スターンリヒト)氏のファミリーオフィスであるJAWSの参加を含む株式による資金調達を共同で主導した。Architect Capitaは債務投資を行った。

興味深いのは、ラテンアメリカの4つのユニコーン企業の創設者である、LoftのMate Pencz(メイト・ペンツ)氏およびFlorian Hagenbuch(フロリアン・ハーゲンブッフ)氏、CornershopのOskar Hjertonsson (オスカー・ヘルトンソン)氏、KavakのCarlos Garcia(カルロス・ガルシア)氏、CreditasのSergio Furio(セルジオ・フリオ)氏が株式ラウンドに投資していることだ。

新型コロナウイルスのパンデミックで多くの人が彼らの生活と仕事へのスタンスを再考したのは疑いがない。

シュリンプフ氏の場合、友人や家族ともっと多くの時間を過ごすことが最優先事項となり、別荘を探すという計画を進めることになった。しかし、探し当てた選択肢を見て同氏は失望を感じた。

「1年に数週間しか使わない別荘を丸ごと購入し、しかもそれを自分で管理しなくてはならないのは、お金の無駄ですし、ストレスがかかり、時代遅れのやり方だと思いました」と同氏は述べる。「さらに、メキシコのビーチで私の予算内で購入できる素敵な別荘を見つけるのは不可能でした」。

Airbnbはクオリティに一貫性がなく、プロフェッショナルな管理に欠けると感じられたため、これを毎年借りるのもよい選択肢とは言えないと同氏は感じた。

そこで、この不満を現在の共同創設者と話し合ったところ、Kocomoのアイデアが生まれたというわけである。

左からKocomoの共同創設者Tom Baldwin(トム・ボールドウィン)氏、Martin Schrimpff(マーティン・シュリンプフ)、Graciela Arango(グラシエラ・アランゴ)氏、Brian Requarth(ブライアン・リカース)氏は写真にいない(画像クレジット:Kocomo)

同スタートアップのモデルは、米国に拠点を持つPacasoと呼ばれる初期ステージのプロップテックと似ている。

シュリンプフ氏の見解では、この2つのモデルの最大の違いは、Pacasoが所有者の住んでいるところからクルマで1、2時間で行ける別荘市場に注力している点である。

「Kocomoは、所有者の住んでいるところから、2、3時間のフライトが必要な国境をまたいだところにある別荘に力を入れています」とシュリンプフ氏は述べた。また同氏によると、Kocomoは国境をまたいだ取引を行っていることから、より複雑な問題に対処しているとのことである。

Pacasoとのもう1つの大きな違いは、Kocomo が所有者に「彼らの滞在権を貸し出す」オプションを提供している点である。

NetJetsが共同所有権方式で人々がプライベートな空の旅を楽しめるようにしているのと同じように、Kocomoは、別荘に共同所有モデルを適用しようとしている、と同氏は語った。

「私たちのプラットフォームを使用すると、複数の人が高級別荘を所有して楽しみ、煩わしい問題なしに、すべての費用を所有者間で分担することができます」。とCFOで共同創設者のボールドウィン氏は述べる。「私たちはこれを海外に家を所有する賢いやり方、と呼んでいます。一年のうち数週間滞在するために家を一軒買うのは苦労の割には得るものがないような感じがするかもしれませんが、借りるためにお金を払うのはもったいないですし、それは出費であって資産とは言えません」。

共同創設者でCPOのアランゴ氏は、Kocomoは別荘の取得と所有にともなうすべての法的および事務処理を管理すると述べた。例えば、Kocomoは別荘をLLCを通して購入し、適切な共同所有者を見つけて精査し、共同所有者間で公平に使用時間を分配し、将来に渡って別荘の管理と維持に必要なすべてのサービスを行う。それだけではなく、水道やガスなどのユーティリティー、造園、予防的保守さえも行うのだ。

画像クレジット:Kocomo

タイムシェアのコンセプトと異なる点の1つは、参加者がそこで過ごす権利を持っているというだけでなく、実際に不動産の一部を所有しているという点である。そのため、もしその資産価値が上がれば、所有者の投資価値も高まる。

同社には現在9人の社員がいるが、株式による資金の一部を用いて、特に、セールス、マーケティング、エンジニアリングの分野に重点を置いて従業員数を引き上げることを計画している。また当然プラットフォームを強化するためのテクノロジーへの投資も計画している。借り入れによる資金は、ロスカボス、プンタミタ、トゥルムなど国際線のある空港に近い、メキシコの「人気のある」地域の高級別荘を20軒ほど取得するのに使用される。

同社はその次に、コスタリカやカリブ海など、米国からの直行便がある他の地域にサービスを拡大することを計画している。また同社はスキー場、地中海のビーチエリア、パリ、ロンドン、マドリッド、ベルリンなどの文化の中心地に「大きな可能性」があると考えていて、将来的にはそういった地域へも進出したいと考えている。

またボールドウィン氏によると、Kocomoは同社のプラットフォームで不動産の所有権を購入する顧客に融資ができるよう、提携可能な金融機関を特定し、現在その提携関係を最終決定する話し合いが大詰めだとのことである。

「ステルスモードから抜け出した多くのスタートアップはセールスを0から高い数字へと急激に伸ばすことに力を入れるようですが、私たちがまず力点を置いているのは、Kocomoの共同所有者を0人から10人にすることです。当社はB2C企業ですが、チケットサイズは20万ドル(約2000万円)を超えているため、セールスサイクルはB2Bスタートアップに近いのです」。とシュリンプフ氏は述べた。

興味深いことに、Kocomoにまず関心を示しているのはほとんどが、技術コミュニティの人々である。これは驚くにはあたらない。Pacasoの場合も同様の傾向が見られた。

「これは私たちのモデルに適合するものです。彼らは職業柄時間の自由がきくことが多く、リモートで仕事をすることもできますし、また新しいモデルを試すということへの抵抗も少ないでしょう。このモデルが別荘の所有者になるための賢明な方法であると彼らが感じる場合は特にです」。とシュリンプフ氏。

AllVPのAntonia Rojas(アントニア・ロジャス)氏は、消費者が仕事や家族、自由な時間にどのような優先順位を付けるか、そのやり方はコロナ後の世界では大きく変わるのであり、Kocomoはそうした変化を利用した不動産所有権の「進化モデル」を実現するためにテクノロジーを活用していると述べた。

同社には優秀な人材が揃っていることも印象的だ。シュリンプフ氏は、現在Naspersが所有および管理しているグローバル決済ビジネスPayUを設立し、その後売却している。ボールドウィン氏は、過去8年間、メキシコとブラジルでベンチャーキャピタルおよびプライベートエクイティ投資家として過ごした元ゴールドマンサックスの銀行家である。アランゴ氏はハーバードビジネススクールを卒業し、シリコンバレーのIDEOで働いていた。共同創設者兼社外取締役のリカース氏は、不動産求人会社Vivarealを設立した経験を持つ。

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(文:Mary Ann Azevedo、翻訳:Dragonfly)