就農プラットフォーム「LEAP」、運営元がグリーVや寺田倉庫、三菱UFJから3億円を調達

2016年に200万人を割り込むなど、年々減り続けている国内の就農人口。この事態に歯止めをかけるべく、農林水産省が旗振り役となって青年等就農計画制度や青年就農給付金といった支援制度をつくり、若者の就農人口を増やそうとしている。だが農業を始めるハードルは高く、思うように若者の就農人口は伸びていない。

そんな課題に着目し、解決しようとするサービスがある。それが「LEAP」だ。同サービスを展開するseakは4月3日、グリーベンチャーズ寺田倉庫三菱UFJキャピタルを引受先とした第三者割当、日本政策金融公庫農林水産事業の「青年等就農資金」を活用し、総額約3億円の資金調達を実施したことを明らかにした。

同社は2016年9月1日に寺田倉庫、三菱UFJキャピタル、個人投資家らを引受先とした総額6000万円の資金調達を実施。今回が2度目の資金調達となる。今回調達した資金は、LEAPの栽培検証のさらなる体制拡充と、フランチャイズモデルを開始する為のシステムを含めたプラットフォームの機能改善・拡充に充てる予定だという。

新規就農者に生じる課題をワンストップで解決する

LEAPは農地の確保から販路の開拓に至るまで、農業に必要な機能を全て提供する垂直統合型の農業プラットフォーム。通常、就農を希望する人はまず最初に各自治体で2年間ほどの農業研修を受けなければならず、研修後も耕作放棄地しか紹介してもらえなかったり、施設や機材を購入するのに融資が下りなかったりと、クリアすべき課題が非常に多かった。

そんな課題をLEAPはワンストップで解決してくれる。例えば研修に関しては、運営元であるseak代表取締役の栗田紘氏が研修済み農家として神奈川県藤沢市の自治体に登録されており、この傘下で就農するLEAPでは研修を受ける必要がない。また、LEAPで押さえている農地を借りることができるほか、seakを担保にして施設や機材を融資してもらえる。ただし、ホームページを見る限り、栽培できる野菜は現在トマトとキュウリに限られているようだ。

昨今、クラウドやIoTを活用した「農業×IT」のサービスが主流となっているが、なぜ栗田氏はLEAPを立ち上げることにしたのだろうか? 栗田氏はこう語る。

「自分も最初は農業×ITのサービスを考えていました。ただ、クラウドやIoTを活用したサービスで効率化できるのは農業のほんの一部分。このままでは農業を始めるハードルは下がらないし、若い人は絶対にやりたいと思わない。だからこそ、農業を始めるにあたって生じる課題をワンストップで解決できるサービスを提供すれば、若い人の就農人口も増えると思ったんです」(栗田氏)

LEAPは2016年9月1日に一般公開。栗田氏によれば、この半年間で12人が新規就農者となり、野菜の出荷に至っているという。

美味しい野菜の栽培を、より簡単に

また、seakは今回の資金調達の発表に併せて、LEAPの機能の拡張も発表している。神奈川県藤沢市から法人としては初の認定新規就農者の認定を取得したほか、独自のビニールハウス供給体制を確立したことで、既存より43%安い価格(seakの調査結果)にて施設一式を提供してもらえる。

農業を始めるハードルを低くしても、良い野菜を栽培できなければ、途中で離脱していってしまうだろう。だからこそ、LEAPは準備の段階だけでなく、栽培から販売までのステップも徹底的にサポートする。

調達に伴い新たに最高開発責任者(CDO)が就任し栽培検証体制の強化を図るほか、農作業のやり方を予習・復習できるオンラインコンテンツを提供するほか、何か異変があった際に写真と一緒にLEAP栽培管理本部に相談できるチャットツール、リアルタイムにデータを取得出来るセンサーなどを実装した栽培管理システムを構築。栗田氏は「経験や勘に頼ることなく、誰もが一定の基準の野菜を作れるようになっている」と語る。

生産された野菜は「ゆる野菜」という独自ブランドのもと、百貨店地下にある都心の高級スーパーで販売。都心の高級スーパーへの販路を開拓することで農家は薄利多売にならずに済む。また、朝収穫した農産物を昼に店舗に直接出荷する配送の仕組みも構築されているので、消費者は新鮮で美味しい野菜を手にすることができる。

2018年度中にフランチャイズモデルを展開する予定

現在、神奈川県藤沢市に限定して展開されているLEAPだが、今後は2018年度中を目処にフランチャイズモデルの展開にも着手する。

「この半年間運営してみて、想像以上に全国から問い合わせをいただきました。就農人口をさらに増やしていけるよう、全国、アジアを視野に入れてフランチャイズモデルを展開していこうと思います」(栗田氏)

具体的には農地斡旋、資金融資、栽培、販売といった各ステップに手数料を設定することで、利益が得られる仕組みにしていく予定だそうだ。また栗田氏によれば、フランチャイズモデルの展開と同時期に、第一勧業信用組合と提携して開発した、農業を始める際の初期費用を工面するLEAP独自のローンメニュー「LEAPスタートローン T」の提供も予定しているという。

農業IoTのファームノートが産革、JA全農などから5億円調達

酪農・畜産農家向けに牛個体管理センサーの開発などを行うファームノートは3月27日、産業革新機構全国農業協同組合連合会農林中央金庫住友商事を引受先とする第三者割当増資を実施し、総額5億円を調達したと発表した

ファームノートはIoTのちからで農業改革を目指すスタートアップだ。同社は現在、リアルタイムに牛の活動情報を収集できる首輪型ウェアラブルデバイスの「Farmnote Color」、そして取得したデータを管理するクラウド牛群管理システムの「Farmnote」を提供している。

画像:ファームノートWebページより

「Farmnote Color」は牛の首に取り付けるIoTセンサー。これにより、牛の発育状況の変化や病気の兆候などを早期に発見することができる。また、事前に登録したスマートフォンなどのデバイスをFarmnote Colorに近づけることで個体の情報をすぐに調べることも可能だ。同社は取得した情報を人工知能を用いて解析。牛の最適な管理の方法をユーザーに提案している。

そして、Farmnote Colorなどが取得したデータを管理するのが「Farmnote」だ。このシステムでは、スマートフォンやタブレット端末から入力された生産データ、および個体センサーから取得した情報をクラウドに集約。グラフやレポートなどを通して牛の発育状況をリアルタイムに管理することができる。

Farmnoteは大きなアイコンで作業が選べるユーザーインターフェースを採用している。ITリテラシーの低い高齢の農業従事者でも同システムを簡単に使うことができるように工夫した結果だ。同社の売上成長率は過去3年で約30倍と急速な成長を遂げており、これまでに1600の農家がFarmnoteを導入し、約16万頭の牛が同システムにより管理されているという。

これまでもソラコムのSIMカードを利用したシステムを提供してきたファームノートが、比較的新しい通信規格のLoRaWANの導入を進めていることは以前TechCrunch Japanでも紹介した。従来のシステムでは牛舎ごとにゲートウェイを設置する必要があったが、LoRaWANを利用することでゲートウェイなしでも約2キロメートルの農場をカバーすることが可能となっている。

今回調達した資金を利用して、ファームノートは昨年設立した「Farmnote Lab」での研究開発を進める予定としている。さらに、農業生産データの自動収集プラットフォームの「Farmnote Connect」を酪農・畜産以外の農業分野へも拡大していくようだ。

ファームノートは2013年11月設立。同社は2015年8月に約2億円、その翌年の2016年には約3億円の資金調達を実施している。今回の資金調達を含めた累計調達金額は11億円となる。

食糧難解決のカギは農家への貸付―、ProducePayが7700万ドルを調達

Pablo Borquez Schwarzbeckは、家族が営む農場で行われていた作業を愛しながら育った。しかし自分は農家に向いていないと感じた彼は、結局ビジネススクールの道を進むことにした。その後ロサンゼルスでProducePayを立ち上げたSchwarzbeckは、現在彼の生まれ育ったコミュニティに恩返しをしようとしている。

この度ProducePayは、生鮮作物を育てる農家に資金を提供するため、出資と借入で合計7700万ドルを調達した。森林地用の10億ドル規模のファンドや穀物の証券化など、一部の生産物には種々の資金策が存在するが、果物や野菜を育てる農家は借入に苦しむことが多い。

そこで同社は、長期保存できない作物を育てている農家のための資金調達モデルを考案したのだ。

ProducePayのサービスは、SchwarzbeckなりのAgricultural 2050 Challengeに対する取り組みだ。2050年までに90億人に達すると言われている世界の人口を支えるため、農作物の生産力向上や農業手法の変革が必要になってくると予測されており、2014年に発足したFarm 2050イニシアティブに参加している企業Innovation EndeavorsFlextronicsのLab IX)を筆頭に、テクノロジーへの投資こそが農業の未来を支えることに繋がると考えている投資家もいる。

一方Schwarzbeckは、農作物の生産量を増やすためには、農家が資本を手に入れやすいような環境を作ることが重要だと主張し、「多くの人が気付いていないようですが、農作物の供給量を増やす上で1番の障害となっているのが、農業を始めたいと考えている人や、生産量を今よりも増やしたいと考えている人の手元にお金がわたっていないことなのです」と話す。

ProducePayは、農家から事前に決められた価格で作物を買い取り、市場でその作物を販売している。販売された作物に関し、ProducePayの収支がゼロであれば、農家は1セントもProducePayに払う必要はなく、もしも利益が発生すれば、ProducePayの手数料を差し引いた金額が農家に還元されるようになっている。

農家は同社のサービスを利用することで、事前に収益を確定できるため、生産量やオペレーションの向上に繋がるインフラに投資できるようになるとSchawarzbeckは説明する。

さらにProducePayは農作物を担保にとっているため、万が一の場合も、農家は農場を手放さなくてすむ。1980年代には多くの農家が担保にしていた農場を失って廃業し、これが農業の産業化を早めるきっかけになった

CoVentureは、ProducePayの革新的なアプローチに感銘を受け、シードラウンドでの投資に続き、今回のラウンドではリードインベスターを務めていた。具体的に彼らは、700万ドルの出資のうち約500万ドルをカバーし、7000万ドルの借入のアレンジも行った。なお、出資を決めた他の投資家には、既存株主のMenlo Ventures、Arena Ventures、Red Bear Angels、Social Leverageが含まれている。

「ProducePayは、例えるならば(SaaS)企業に金融機能がくっついたような会社です」とCoVentureのパートナーで、ProducePayの取締役も務めているAli Hamedは話す。「CoVentureは、南米の農家を筆頭に、従来の金融システムの中で困り果てていた人たちに対して資金策を提供したいと考えています」。

社会移動を実現するためには、資本へのアクセスが不可欠だ。ProducePayは農家に新たな資金源を提供することで、(生活を脅かすことなく)彼らの生活水準の向上に寄与している、とHamedはSchwarzbeckと同じように語っている。

「生鮮作物の栽培や収穫はとても労働集約的な仕事のため、事前に多額の資本が必要になります。そのため、天然資源や適性に恵まれた人であっても、農業を始めたいと思ったときや、既存の農場の収穫量を増やすためにインフラ投資を行いたいと思ったときに、資金不足で思うような動きがとれないということがよくあります」とSchwarzbeckはメールでの取材に答えた。

農家にとって、ProducePayのサービスは大きな意味を持っている。

「毎年自分や家族の生活をリスクに晒す代わりに、農家はProducePayのローンを利用することで、ビジネスの可能性を最大化できると同時に、来年まで生き残れるかどうかを心配せずにすみます」とHamedは話す。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

つねに一歩先を見ながらやっていける農業経営をデータ分析で支えるFarmLogsが早くもシリーズCで$22Mを調達

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収穫量の計算、利益予測、天候被害や害虫/疫病対策など、農家の経営のさまざまな側面を支えるミシガン州アンアーバーのFarmLogsが、立ち上げから4年で早くもシリーズCの資金調達ラウンドを迎え、2200万ドルを獲得した。ラウンドをリードしたのはNaspers Venturesで、同社の初期の投資家Drive Capital, Huron River Ventures, Hyde Park Venture Partners, SV Angel, それにY Combinatorの社長Sam Altmanのような個人も参加した。

FarmLogsのCEOで協同ファウンダーのJesse Vollmarによると、Y Combinatorのアクセラレータ事業を2012年に卒業した同社はその後、衛星画像およびデータの分析利用に重点投資をしてきた。それらの原始データをもとに予測モデルを開発し、農家の“計画的な”農業経営を助ける。

“今では全国各地の農地を年間を通して分析している。そして問題の兆候が見えたらそこを強調して農家に警報している。彼らは、地上にいるだけでは分からない初期的問題をチェックでき、対策を講じる。それができるのは、衛星画像を複数年にわたって分析している、われわれの積み重ね努力のおかげだ”、とVollmarは説明する。

最近の例では、近隣の農家がどこもバッタの被害に遭っているから、うちでもすでにどこかで発生しているかもしれない、被害がわずかながら始まっている場所を特定してくれ、という依頼が大規模農家からあった。これなどは、衛星画像が得意とする分野だ。もうひとつの例では、やはり大規模農家から、灌漑設備に故障が起きて過灌水や乾燥が生じている箇所を見つけてくれ、という依頼があった。そんな農地では、高価な肥料や農薬が無駄になってしまうのだ。

Vollmarは農家の子どもとして農村で育った。実家は、コーンを有機栽培していた。FarmLogsはこれまで主に、コーンや大豆のような条植作物の生産農家を対象にしてきた。それらはアメリカの農業生産の大きな部分を占める。Vollmarによると、農家が同社のモバイルアプリやWebサイトを好むのは、データサイエンスに基づくデータ駆動の農業経営のために、自分で大量のハイテク機器を導入せずにすむからだ。しかし今ではトラクターなど主な農業機械には必ずデータ収集機能があるから、それらJohn Deere, Holland, Case Corporationなどの農業機械メーカーが作った機器からFarmLogsは原始データを集め、それらのデータをあらゆる角度から分析する。

FarmLogsの正社員は今や約70名いるが、今度の資金でさらなる増員を図り、もっと多くの条植作物農家に同社の技術を知ってもらいたい。この投資の一環としてNaspers Venturesのアメリカにおける投資のトップMike Katzが、FarmLogsの取締役会に加わる。

同社の主な競合相手は、Monsanto傘下のClimate Corp.と、そのClimate FieldViewアプリケーションだ。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

テクノロジーは次の食糧不足を防ぐことができるのか?

Field of corn growing in Kentucky USA.

【編集部注】著者のBen Dicksonは、ソフトウェアエンジニアかつTechTalksの創業者である。

もし海軍解析センター(CNA)によるシミュレーションが正しいとすれば、人類は食糧不足が暴動や戦争を引き起こす恐ろしい未来に向かって踏み込みつつある。それは少し誇張されているのかもしれないが、この先の食糧不足の危機は深刻であり、連邦政府が資金を提供する研究開発センターのCNAは、将来の食糧生産は永久に不足するようになると考えている。

国連は2050年までに養う必要のある口が20から30億増えると推定している。そして気候変動が10年あたり2%の作物生産を損なうと見積もっていて、時間的に危機を回避できる見込みは悲観的なものである。一方、生活の都市化や都市に移動する人口の増加に伴い、農場での労働力不足が起こる

私たち人類が飢饉や食糧不足に向き合うのは初めてのことではない。私たちはこれまでの歴史を通してずっと戦い続けてきたのだ。これまでの時代では、肥料や機械化された農業などの発明が、私たちのニーズに対応するために、より多くの資源を活用し、より多くの食料を生産する方法を見つけるのを助けてきた。

しかし現在では、リソースがさらに希少化しているため、既存のものをより効率的に使用するためのブレークスルーが私たちには必要なのだ。

科学者たちによれば、その答は、デジタル技術による新しい時代の中に発見されるのかもしれない。既にさまざまな分野で価値が証明され、農業と食品生産を変え、成長する人口の消費ニーズを満たす可能性を秘めたそれらの技術の中に。望むらくは私たちがゴキブリを食べざるを得なくなる前に — あるいは更に悪く、お互いを食糧にする前に。

精密農業で点と点をつなぐ

伝統的な農業は、所定のスケジュールに基づき、植え付けや収穫などの特定の作業を実行することにより行われている。このモデルでは、損傷や廃棄に対処する最低限のコントロールを行っている。

しかし、近年の技術の進歩は、リアルタイムにデータを収集し、それぞれの場所で任意の時点で正確に何ができるかの洞察を得ることを可能にする「精密農業(precision farming)」の構築への長い道のりを歩んでいる。

IBMのグローバルサプライチェーンエキスパートであるPaul Changは「精密農業は食品産業をより効率的で、低コスト、そしてより持続可能なものに変えることができできます」と語っている。IoTプラットフォームを利用してさまざまなセンサデータを収集し、予測分析と統合することで、業界は生産を最大限に引き上げ、損失を最小限に抑え、持続可能な実践を続けるためのアクションが可能になるのです」。

技術のデジタル進歩は、農業をより生産的にして、作物をより安定化させることができます」と語るのはSAPのデジタル未来研究ディレクターのKai Goerlichだ。「センサーとリアルタイムの分析を、食料品の植え付け、栽培、収穫、輸送を最適化するために使用することができます」。

そのようなプラットフォームの1つが、農業従事者、農業メーカー、サプライヤーを結ぶ、SAPのDigital Farmingだ。「農場全体の重要なデータが、現在、単一のクラウドプラットフォームによって収集され、分析されていて、農業をより効率的かつ持続可能にしています」とGoerlichは語る。

「現在、大規模でローカルな農場では、IoTを活用して、土壌の水分や作物の成長と家畜の飼料レベルを検出したりするセンサーを遠隔監視したり、灌漑設備の遠隔管理と制御を行ったり、そして第3者情報と操業データの統合を行ったりすることが可能です」と語るのは IoTセンサーのメーカーであるSenetのビジネス開発担当副社長であるWill Yappだ。

私たち人類が飢饉や食糧不足に向き合うのは初めてのことではない

Yappは、これらの組み合わせが、経験的データを使用して運用計画と意思決定を改善する新しい方法を提供すると語っている。

Senetのセンサーは、LPWAN(Low Power, Wide Area Networks:低電力広域ネットワーク)上で動作し、広大な場所での導入および接続のコストを削減する。 「(LPWANセンサーは)農業生産の質、量、持続可能性、コスト効率を高めるために設計されたIoTアプリケーションをサポートするために、ローカルな農業および環境条件に関するデータを収集するのには理想的です」とYappは語る。

これらのセンサーによって生成されたデータは、必要でない場所へ水を撒くのではなく、土壌の水分が減少している場所に水を正確に撒くといった形で、精密農業を改善するために使用することが可能だ、とYappは説明している。「IoTで管理された給水システムによって、消費量を大幅に削減すると同時に収量を増やすことができるのです」と彼は言う。

IBMのChangは、新技術が精密農業のパワーを解放する手助けをするシナリオを提示している、例えばビデオキャプチャドローンと作物の現状を示すことができるクラウドベースの分析ソフトウェアの組み合わせで、農家が作物の成長曲線に影響のある行動をとる手助けをするといったことだ。

天気予報データの活用

天気予報を農業プロセスに統合できることも、精密農業の重要な要素だ。 「この先の気象状況を正確に監視することで、水が必要なときにのみ使用されるようにすることができます」とChang。

「すべての農作物の損失の90%は天候によるものです」とIBMのThe Weather Companyの農業責任者であるCarrie Gillespieが付け加えた。気候変動が世界中のさまざまな地域で農作物や農業に影響を及ぼし始めているため、これは特に重要である。「天気予報モデルを作物の植え付けと収穫作業に組みわせることによって、事前により良い決定を下すことができます」とGillespieは言う。

The Weather Companyは、クラウド中にある予測モデリングのための微気象データを活用することで、農家が農場でより効率的に利益を上げられるように支援を行う。

天気予報を農業プロセスに統合できることも、精密農業の重要な要素だ

天気と土壌データを正確に使用することで、灌漑の時期と方法、農薬や肥料の使用を減らしながら収量を増やす方法についての洞察が得られると、Gillespieは説明してる。

分析と機械学習技術の使用は、病気や害虫の予測を可能にし、耕作者が作物の喪失を防ぎ、化学物質の使用を調整するのに役立つ。

これらは、ケンタッキー州カディスのSeven Springs Farmでトウモロコシの収量を改善するために、トラクターメーカーのJohn Deereが運営するクラウドベースのソフトウェアシステムを使用して実践されている。 「この農場では、天気予報に基づいて肥料の購入を調整し、不良品を減らすためのアプリを使用しています」と、同社の戦略に携わっているSAPのGoerlichは述べている。 「また私たちは、安全に消費できる作物の収穫を増大させる天候予測アプリを導入する農業法人が増加していることも知っています」。

「『最先端の農業』は、農家がデータと予測分析を使って最善の意思決定を行うことができる『農業の科学』によって増強されるべきです」とCahngは語る。 「開発途上国の人々を含め世界の誰もが、最新技術へのアクセスを行うことができるので、最先端の農業技術が、モバイルデバイスを活用することで、個人が簡単に利用することができるようになりました」。

流通を改善し、サプライチェーンを最適化する

天気予報を農業のプロセスに統合することは、収穫と輸送に関する物流を改善するのにも役立つ。気象および土壌の分析によって、農場が収獲機械の重みに一番影響されないのはいつか、どの農場に働き手を送り込むべきかを予測し特定することができる。また特に、道路が未整備で豪雨によってトラックが泥で立ち往生するような国で、どの流通経路が雨やこの先の天候の影響を受けるのかを予測することを助けることができる。

「 流通時に多くの食品損傷が起きるので、食品を適切な温度で輸送し、必要以上に保管しないことが重要です」とGillespieは言う。

製品リコールも損傷や廃棄に寄与する。しかもそれは多発する。研究が示唆するように、多くの場合、リコールされた食品の最大50パーセント程度は汚染されていない、これによってコストが上昇し、多くの良い食品が無駄にされている。こうなる理由は、サプライチェーンに十分な可視性がないからだ。連邦規則では、企業はサプライチェーン全体を貫いて、トレーサビリティを個々のステップで確保するように規定しているが、チェーン内で非常に迅速に動く、食品や傷みやすい製品には十分ではない。

「リコールでは、汚染の発生源とその範囲の理解によって、汚染されていない製品が不必要に廃棄されることを防ぐことが大切です」と語るのは、トレーサビリティと持続可能性を通じて食品の安全性向上を支援するソフトウェア会社FoodLogiQのCEO、Dean Wiltseである。

リソースがさらに希少化しているため、既存のものをより効率的に使用するためのブレークスルーが私たちには必要なのだ

FoodLogiQは、伝統的な手作業とスプレッドシートによる管理ではなく、移動の各段階でデータを取り込んで保管し、顧客に製品をスキャンしてそのサプライチェーン上の履歴に素早くアクセスさせることを可能にするインターフェイスを提供して、サプライチェーン全体の可視性を向上することを狙っている。

「エンドツーエンドのトレーサビリティは、企業が効率を実現し、サプライチェーン全体の可視性を上げることを助け、製品リコール時の食品廃棄を最小限に抑えます」とWiltseは語る。「そしてエンドツーエンドのトレーサビリティは、発生の原因を特定し、サプライチェーンの各ステップを、農場、バッチ、コンテナのレベルまで正確に追跡するのに役立ちます」。

合理化されたサプライチェーン管理は、汚染されていない食品の廃棄を回避し、食品品質に影響を及ぼす可能性のある遅延を防止すると、Wiltseは信じている。

オンデマンド食品プリント

近い将来、私たちは食べ物をまったく違った形で作り出しているかもしれないと、3D食品プリントのスタートアップBeeHexのCMOであるJordan Frenchが語っている。 「3D印刷技術は、サプライチェーンにおける食料腐敗を大幅に削減し、消費者の欲求や必要に合わせてパーソナライズする能力を強化することで、食品市場全体の非効率性を排除する完璧な機会を提供します」と彼は言う。

食品プリントは贅沢で無駄な技術と見なされることが多いが、Frenchは費用と労働力を削減することのできる興味深いユースケースがあると説明する。 「未来を見つめてみれば、3Dプリント技術は、食品市場に対して、生産から消費に至るまでの直接的な橋渡しを提供するでしょう」と彼は語る。

例えば、果実は収穫後、最終的に食料品店に到着する前に、貯蔵ユニット、包装施設および長い流通経路を通って移動する。 「このプロセスは、製品を新鮮な状態に保つために膨大なエネルギーを費やしています」とフレンチは言う。「それにもかかわらず、フルーツと野菜の約16パーセントは夕食のテーブルに載せられる前に失われてしまうのです」。

革新的なサプライチェーンでは、果物は収穫直後に粉末状の微量栄養素に変換され、完全に水分を保ったままの果実に課された劣化のリスクを心配することなく、輸送を行うことができるようになる、とFrenchは説明する。

「ここから消費者は3Dプリンタを使用して、元の美味しいものへと再加工します — こうしてエネルギー消費も少なく、途中のロスも減らすことができるのです」と彼は結論付ける。

緑の惑星を支配しつつある変化は、今後数十年間に食糧の生産、流通、消費に新たな秩序をもたらすだろう。もし過去が何らかの参考になるのなら、新興技術は人類が過去のサイクルで行ったように食糧不足を克服することを助けるだろう。真の問題は、危機が発生するのを防ぐためにそれが間に合うかどうかなのだ。

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(翻訳:Sako)

写真提供: UNIVERSAL IMAGES GROUP/GETTY IMAGES

野菜の栽培に最適な土壌を整えるー、農業IoT「ゼロアグリ」が4億円を調達

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美味しい野菜を多く収穫しようと思うなら、気温や湿度、土壌環境を知り尽くし、毎日作物に最適な水と肥料が行き渡るように調整しなければならない。水や肥料は多すぎても、少なすぎても品質の良い野菜は実らず、最適なバランスを習得するには何十年もの経験が必要だ。農家の負担を減らすため、ルートレック・ネットワークスはIoTとアルゴリズムで最適な水分と肥料を自動で計算し、農場への供給を可能にするシステム「ゼロアグリ」を開発している。本日ルートレック・ネットワークスはグロービス・キャピタル・パートナーズ、エッジキャピタル、テックアクセルベンチャーズ、オイシックスより総額4億円の資金調達を実施したことを発表した。

「ゼロアグリ」は養液土耕栽培で用いることができる、かん水と施肥の自動化システムだ。養液土耕栽培とは、ビニールハウス内で地表か地面の中に点滴チューブを設置し、そこから必要な水と肥料を作物に与えて育てる方法を指す。

これまで農家は与える水と肥料の量を経験と勘に頼って決めていたとルートレック・ネットワークスの代表取締役、佐々木伸一氏は話す。「農家ではその日の温度や湿度、作物の育ち具合などを確かめ、与えるべき水や肥料の量を調整していました。彼らの体自体がセンサーになっているのです」。水やりの作業だけでも数時間かかるが、与える水の量を決めるために作物の状態を見て回ったり、外の気温や湿度を確かめる手間も多くかかっているという。

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ゼロアグリは、農地に設置する日射センサー、土壌センサー、温湿度センサー、そして農地に水と肥料を与える液肥タンクと連携している。ゼロアグリはセンサーのデータを元に自動で液肥タンクを制御するため、かん水と施肥作業を大幅に削減することができるという。タブレット端末でデータを確認し、そこから手動で水と肥料の量を調整することも可能だ。

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農業分野では就農人口が減少し、就農者の高齢化が進んでいると佐々木氏は話す。就農人口の平均年齢は67歳で、この人たちが引退してしまうと、彼らの持つ農業の経験や知見も失われてしまう。ゼロアグリは、農家が培っていた経験や勘を栽培アルゴリズムに反映することで、技術継承が途絶えることを防ぎたい考えだ。また、農業の経験が浅い人でもすぐに収益が上げられるよう栽培をサポートすることにもなると佐々木氏は話す。

佐々木氏は2005年にルートレック・ネットワークスを創業し、機器間の通信技術(M2M)を用いた燃料電池運用管理や車両運用管理システムなどを開発していた。農業が直面する様々な課題に対し、こうしたテクノロジーを活用できないかと考え、2010年から農業分野に参入した。

農業は特にICTの利活用に対して保守的と佐々木氏は言う。その一因について佐々木氏は「農業を営む人は経営者だからです。生産した作物が収入に直結します。堅いビジネスをしようと思うと、新しいものを取り入れづらくなります」と説明する。

当初手がけたサービスは農場に関するデータを可視化するものだったが、それだけでは農家には受け入れられなかったと佐々木氏は話す。取得したデータを示すだけでなく、それを活かして次のアクションに結びつけられるサービスでなければならないと感じたという。そのためには農学の知識が必要と考え、2011年から明治大学と栽培アルゴリズムの共同開発を始めた。ルートレック・ネットワークスは現在、明治大学黒川農場の実験ハウスでゼロアグリの開発を行っているという。

ゼロアグリの価格は基本システム120万円で運用費が年間12万円だ。これは農家が1年半から2年ほどで回収できる価格だそうだ。ゼロアグリはトマトやピーマン、キュウリ、ナスなどの果菜類を中心に21品目に対応している。

現在では50件以上の農家がゼロアグリを導入しているという。かん水作業の削減、使用する肥料や農薬の量の削減に加え、収穫量の増加、作物の品質の向上につながった実績が増えていると佐々木氏は話す。

今回調達した資金は「ゼロアグリ」のアルゴリズムのさらなる研究開発、そして営業力の強化に充てる計画だ。また、日本と気候が似ているアジア地域でも展開も進めていくと佐々木氏は話している。

世界を養うテクノロジー

Close-Up Of Wheat Growing On Field

【編集部注】著者のJoseph Byrum氏はSyngenta社のライフサイエンス – グローバルプロダクト開発・イノベーション・デリバリー部門のシニアR&Dエグゼクティブである。

今から20年後、あなたのテーブルの上に食べ物を載せるための最も重要なツールは、収穫機でも、コンバインでも、そしてトラクターでもない。それはソフトウェアたちだ。

現在農業は、完全にハイテク企業へ移行する過程にある。これは何世紀にも渡ってものごとが行われてきた方法に対する、遅れてきた革命なのだ。事実を見つめるならば、もし私たちが昔ながらの方法で農業やり続けるならば、2050年までには更に20億人の人びとが飢えることになる。

世界の人口増加が、農業生産性の急激な向上を、差し迫って求めている。生産性に対する、地道な進歩を待っていては、もう単に間に合わない。2050年の課題は、前例のないものである — 今日生きている全ての人を養った上に、1920年に生きていた全員を加えた人口を養うことと等価なのだ。

簡単に言えば、20世紀を通して私たちを導いてきた技術は、21世紀においては私たちを遠くまで導くことができない。そしてこのジレンマを解決するための、どのようなソリューションを手に入れるにせよ、土地と水は乏しい資源であり続け、環境の持続可能性が最優先事項であることも考慮に入れる必要がある。

幸いなことに、ハイテクガジェットが全国の農場に広がりつつあり、作物の生産性を押し上げている。自動運転車が米国のハイウェイ上で受け入れられることに手間取っている一方で、自動運転コンバインやトラクターは、米国の小麦並びにトウモロコシ畑では徐々にありふれた景色になりつつある。

Teslaは昨年自動運転装置を装備したModel Sモデルを5万台販売したが、John Deere社は既に20万台の自動運転トラクターを農場に投入している

ドローンや人工衛星が、農家に対して作物の健康状態に関する、これまでにはなかったオーバービューを与えている一方で、グラウンドレベルのセンサアレイは、土壌と気候に関するリアルタイムのデータを提供している。これらのシステムは、有害な昆虫や作物の生育を脅かすかもしれない他の問題の存在に対して、早期に警告を与える。

農業用ドローンとPrecisionHawks社のDataMapperを利用して作成された土壌マップ

農業用ドローンとPrecisionHawks社のDataMapperを利用して作成された土壌マップ

十分な情報を得ている農家は、問題が深刻になる前に解決へ向けて迅速に行動することが可能になる。例えば、窒素センサが、フィールドの一部における窒素の過剰を報告することもあれば、他の一部では不足を報告するかもしれない。これによって農家は、栄養が多すぎず、少なすぎず、必要な量だけ正確に供給される先進的な施肥システムを制御することができる。高い精度は無駄を省き、お金を節約し、そして環境のために良いのだ。

成長する植物は窒素を渇望し吸収するが、最新設備のない農家はしばしば「念のために」作物が必要とするものよりも多くの施肥を行いがちである。残念なことに、植物によって吸収されなかった余剰窒素は、地下水に浸透する傾向があり、それが多ければ魚に有害なものとなる。

したがって、これらのハイテクガジェットから得られる、効率と環境への潜在的な利点は途方もないものとなるが、それらははるかに複雑なパズルの一片を表しているのだ。

ガジェットが行うのは、前例のないレベルのモニタリングとデータ収集能力の解放である。しかし、21世紀の農業の中心となるものは、これらのデータの処理である。明日の農業のキラーアプリは情報による収穫だ。

成長という話題になると、農家は沢山の疑問に直面する。どのような作物を、いつ、どこに植えるべきなのか?どのくらいの水が必要とされるのか?どのくらいの肥料が必要とされるのか?水や肥料の量は、畑ごとに異なり、個々の畑の中でも異なる。その量も日によって、あるいは時間によっても変化する。このプロセスには、相互に関連する何千もの複雑な変数が関わっている。

ISRAEL – OCTOBER 03: 点滴灌漑  (写真:James L. Stanfield/National Geographic/Getty Images)Netiv Ha Asara, Near Qiryat Gat, Israel. (Photo by James L. Stanfield/National Geographic/Getty Images)

ISRAEL – OCTOBER 03: 点滴灌漑  (写真:James L. Stanfield/National Geographic/Getty Images)

複雑な数学が計算尺と黒板を用いることでしか行えなかった遠い昔には、私たちは訓練された推測以上に、最善の道筋を決定するための、複雑で増大する質問に答える計算能力は持っていなかった。

しかし今や計算能力は安価であり、全ての可能な選択肢とその潜在的な結果をモデル化することが可能になった。例えば、Google Mapを搭載したスマートフォンは、現在の交通状況に基いてA地点からB地点までの全ての経路を、最短あるいは最速の観点から評価することができる。

シミュレーションとモデリングはまた、作物栽培を行う際に迷子になることを防ぐ。最も基本的なレベルとして、作物は成長の様々な段階に応じてレベルが変化する、太陽光、水、そして栄養分を必要としている。これは単純な話に聞こえるが、大規模に行われる世界では、各因子を最適化すれば巨大な見返りが得られるのだ。

米国は毎年5000万エーカーの農地全体から、23億ブッシェル(1ブッシェルは米国では約35.2リットル)の小麦を収穫する。もし生産性が1パーセント伸びれば、毎年67万800トンの小麦粉が追加されることになる。

そしてデータ分析の能力をフルに利用すれば、1%よりもはるかに多い増産を行うことができる。

例え農場の地面に最初の種が蒔かれる前であっても、全国のそして世界中の成長の様々な条件のための遺伝的潜在能力を最大化を狙って、植物品種の育種を最適化するために、データ分析を利用することができる。カリフォルニア州の農家が干ばつに強い種を必要とするかもしれない一方で、中西部の農家は特定の植物病害に対してより強い抵抗性を有する種を欲しいかもしれない。

Prosperaの作物のモニタリングシステムは、農家が収穫量を向上させるための手助けをするために、コンピュータビジョンと人工知能を利用している。

Prosperaの作物のモニタリングシステムは、農家が収穫量を向上させるための手助けをするために、コンピュータビジョンと人工知能を利用している。

データ分析はまた個別の農家側でも役に立つ。例えば特定の農家のニーズと、その農家の畑の(昨年ではなく)今年予想される収穫条件の下で、最高の収量を期待できる種をマッチングする。

そしてその種を植えるタイミングになったときには、データ分析は作物の成長や土の条件、天候、そしてその他のキイファクターに関する大量の履歴データを処理し、個別の作物の条件が最大収量に向かって最適化されるようにする。収穫後には、データ分析は、配送物流や作物の販売を支援する。

情報による収穫は、種子の品種の育種から店舗の棚への食品の配置至るプロセスの各ステップを最適化する、完全なシステムとして考えられなければならない。目指すのは農業における意思決定を改善することだ、農家やそのサプライヤーから、農業機器メーカーまで、そして最終的には消費者たちの意思決定を。

食品製造プロセスの各段階において可能な最善の選択を行うことで、生産性が最大化され、より少ないリソースでより多くの食品を得るというゴールへ近付くことができる。これが、2050年に世界を養うために必要な作物の成長を達成するために、必要とされる努力のレベルだ。

これは、いかなる会社もしくは個人よりも大きな仕事である。既存の農業コミュニティさえ超えている課題なのだ。食品セキュリティは全ての人に影響する、そしてその問題解決が要求するのは、農業が次のレベルの生産性に到達するために必要な革新的なシステムを構築できる、数学とソフトウェア工学の世界からの才能の注入である。

これらのことが意味するのは、明日の最も偉大なテクノロジーの機会は、シリコンバレーではなく、(穀倉地帯である)中西部で見出すことができるということだ。

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(翻訳:Sako)

拡張現実と機械学習による農業革命

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【編集部注】著者のJeff Kavanaugh氏は、Infosys Consultingの、High-Tech & Manufacturingにおける、VP兼マネージングパートナーである

農業は、これまで人類が生み出したもっとも成熟した産業だ。文明の黎明期から、農業は洗練され、調整され、適応されてきた — しかし完成したことはなかった。私たちは社会として、常に農業の未来を心配している。今日では、私たちはハイテクセクターが提供する概念も適用している — デジタル、IoT、AIなどなど。では、なぜ私たちは心配しているのだろうか?

エコノミスト誌の技術四半期Q2報告では、世界の人口増加を養うために、農業はすぐに他の製造業のようになる必要があると宣言されている。サイエンティフィック・アメリカンの報告によれば、不確実な気候でも効率的に成長させるために、作物はより干ばつ耐性を上げる必要があり、またニューヨーク・タイムズ紙によれば、少ない水でより多く収穫する方法をすぐに学ぶ必要がある。

それらは皆正しい。もし農場が世界の人口を養い続ける場合には、変わり続け、不安定なこの星の気候から、独立しそして適応するやり方を進めなければならない。そのためには、実績があり最先端技術を用いた、スマートなアプリケーションが必要となる。そのインターフェイスは単純なものでなければならない。そしてもちろん、今日のスキルを基にした適用が行える必要がある。

幸いなことに、この将来のための基礎は現在探求されている最中だ 。例えば、垂直農法(農家が作物をコントロールされた環境の下で栽培から収穫までを行えるようにする技術だ、しばしば屋内で垂直な棚を用いる)は人気と可能性の両者で沸き立っている。実際にこの方法は、91%少ない水で20%速く、いくつかの作物を生育させることが示されてきた。干ばつや洪水に耐えることができる遺伝子組み換え種子は、ケニアで見られるような最も乾燥した条件下での収穫を可能にする。

もし農場が世界の人口を養い続ける場合には、変わり続け、不安定なこの星の気候から、独立しそして適応するやり方を進めなければならない

しかし、このような進歩を管理することは、屋内か野外かを問わず、それ自体が挑戦である。酸度と土壌の養分をモニタし、そしてそれぞれの植物のための最適な成長を促す水やりは、良くて当て推量であり、悪ければ後知恵である。しかし、ここでこそ新しいインタラクティブ技術が輝くのだ。少数のセンサーの組が、植物の生育状況を監視し、リモートサーバーへリアルタイムの更新を行う。人工知能の年下の従兄弟である機械学習は、この作物の生育状況を学習し、次に必要なものを予測することができる。そして、拡張現実(AR)を用いて日常のオブジェクトに有益な情報イメージをオーバーレイすることによって、農家や庭師たちによる作物の健康の監視と管理を可能にする。

Plant.IO*は、それをがどのように行えるかを示したシステムの1つだ:塩ビ管のキューブがセンサー、生育ライト、カメラ、その他のもののフレームを提供する。機械学習専用のリモートサーバが、生育と生育条件を分析し、この先の植物のニーズを予想する。AR対応のメガネセットは、使用場所を問わず、ユーザーに植物の画像または情報を提供する。もしAR装置が、Microsoft HoloLensように高機能である場合には、肥料、水の流れ、成長ライトなどを調整して、作物の面倒を見る手段を提供することもできる。

この方法論は、ゲーミフィケーションと対になったときに、作物管理の新しい簡潔な方法に自らを委ねることになる。AIとARは共に使われることによって、大人から青少年の誰にとっても、家庭や遠くから自分の庭園を監視し管理することを、シンプルで楽しいものにする。このアイデアがPlant.IOの心臓部である:農業シナリオに、楽しく、使えるソリューションを。そこではデジタル情報が物理的オブジェクトやフィールドに、コンテキストを失うことなくオーバーレイされる。

実際には、この種の管理システムは、庭園や農場を超えて拡張できる可能性がある。測定可能なデータが存在する環境であれば、どのようなシナリオでも潜在的にはAR/AIの応用から利益を得ることができる。例えば倉庫管理などの産業オペレーションは、有望なエリアだ。AIと赤外線カメラを組み合わせた、フィールドの健康を測定する農業は、また別の候補である。

ARとAIを正しく利用すれば、ユーザーは事実上世界中のどこからでも植物を監視し育てることができる。それがキッチンカウンターの上で植物を育てようとしているのか、あるいは次の収穫の準備をしているのかは問わない。もっと良いことは、こうした作業を植物の酸性度、栄養、水レベルその他の最新の情報に基きながら、環境に配慮した方法で行うことができるということだ。

最初の産業革命は、機械化農業による生産性向上で、私たちが農場から都市へと移動する手助けをした。今度の産業革命は機械学習とその他のデジタル「実装」が農業を更に先へと推し進める — そして世界を養うのだ。

*注記:Plant.IOはInfosysによって開発されたオープンソースのデジタル農業プロジェクトである

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(翻訳:Sako)

BrightFarmsが3010万ドルを調達、革新的な温室をアメリカ全土へ

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農業テックスタートアップのBrightFarmsは、シリーズCで3010万ドルを調達し、アメリカ中に同社のハイテク温室と新鮮な農作物を提供しようとしている。

同社は、スーパーの店頭に並ぶ果物や野菜を、海外から輸入したり遠隔地から輸送したりせずに、全て地産し、新鮮な状態で消費者に届けることを使命としている。

アメリカの太陽光電力事業者の戦略からヒントを得たBrightFarmsは、同社の温室を使って育てられたサラダ用野菜やトマトを、長期間に渡ってスーパーに定額で販売するサービスも提供している。

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BrightFarmsで育てられた農作物。

同社CEOのPaul Lightfootは、BrightFarmsが”農作物買い取り契約”をまとめてから、経済開発プログラムや、さまざまな銀行・投資会社などを通じて資金を調達し、新たな温室を建設していると説明する。

実際のところ、温室内で作物を育てはじめる前に、BrightFarmsの原価のほとんどが農作物の販売契約でカバーされている。

Catalyst Investorsがリードインベスターとなった今回のラウンドには、BrightFarmsにもともと投資していた、WP Global PartnersNGENが参加した。

Catalyst InvestorsのTyler Newtonは、BrightFarmsへの投資の理由について、その大半がビジネスモデルの革新性や、アメリカに存在する他の食物生産者を”上回る”同社の力だと話す。

消費者は、地元の企業から食料品を購入し、近隣に住む人たちの生活費をまかなっている仕事をサポートしたいと間違いなく考えている。アメリカ農務省の研究によれば、地産された食料品の売上額は、2014年に120億ドルを記録しており、この数字は2019年までに200億ドルに達すると予測されている。

A BrightFarms greenhouse that grows tomatoes and salad greens.

トマトとサラダ野菜が育てられているBrightFarmsの温室。

「これまで、天候に恵まれない時期は、地元で育てられた作物を買うというオプションがなかったため、その選択肢が生まれるだけでも素晴らしいことです。しかし、BrightFarmsで育てられたトマトやルッコラを、西部から輸送されてきた野菜と食べ比べてみると、明らかに味の面でも勝っていることがわかります。これこそ、スーパーが求めているものなのです」とNewtonは話す。

BrightFarmは、現時点でカリフォルニア州とアリゾナ州以外の、競争が緩やかで規模の大きいマーケットを狙っている。

農務省の最新のデータによれば、農業は毎年1兆7720億ドル(アメリカのGDPの約1%)もアメリカの経済に寄与している。

そして、アメリカで消費されるサラダ野菜の90%が、カリフォルニア州とアリゾナ州で生産され、そこから国中で販売されるか、国外に輸出されている。

そのほかの農業テックスタートアップとしては、AeroFarmsやFreightFarmsが挙げられる。彼らは、地産された新鮮で美味しい食べ物を求める都市部の消費者の需要に応えるべく、屋内で使えるコンテナ型の農場を製造している。

BrightFarms' CEO Paul Lightfoot.

BrightFarms CEOのPaul Lightfoot

しかしLightfootは、自然光を(当然)利用しているBrightFarmsの温室の方が、屋内農場に比べて、環境的に持続可能かつ費用対効果が高く、さらにコンテナ型や屋上に設置された農場よりもたくさんの収穫物を得ることができると考えている。

その理由について彼は、BrightFarmsの環境制御温室は、屋内農場に比べて、温度や光のコントロールに必要な電力の消費量が少ないと話す。なお、どちらのタイプも、例え精密なかんがいシステムが構築されているものを考慮しても、旧来の農場に比べるとずっと水の消費量は少ない。

現在までに、BrightFarmsは、大フィラデルフィア地域、ワシントンD.C.、シカゴの都市部に建てられた3つの温室を運営しており、それぞれに25名のフルタイム従業員を抱えている。

干ばつが長引けば、BrightFarmsもそのうち”サラダボール”・カリフォルニア州やその他の農業ハブへ進出し、旧来の水を大量に使用することの多い農場を代替することができるかもしれない、とLightfootは語る。

しかし、しばらくの間BrightFarmsは、新鮮な農作物に対する高い需要がありながらも、旧来の農場を運営できる程の耕作地や天候状況に恵まれていない都市部にフォーカスしていく予定だ。

これまでのBrightFarmsの顧客やパートナー企業には、Kroger、Ahold USA、Wegmans、ShopRiteなどのスーパーが名を連ねている。

Lightfootによれば、シリーズCで調達した資金は、新たな温室の建設に加え、品種の拡大にも利用される予定で、同社は近いうちにもパプリカやイチゴの栽培を開始しようとしている。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

農産流通基盤「SEND」運営のプラネット・テーブルが4億円の資金調達、“農業×FinTech”の挑戦も

プラネット・テーブルのメンバーら。中央が代表取締役の菊池紳氏

プラネット・テーブルのメンバーら。中央が代表取締役の菊池紳氏

農産流通プラットフォーム「SEND(センド)」などを運営するプラネット・テーブルは8月31日、SBIインベストメント、Genuine Startups、Mistletoeを引受先とした第三者割当増資により総額4億円の資金調達を実施したことをあきらかにした。評価額、出資比率等は非公開。同社はこれまでに2015年3月にGenuine Startupsと個人投資家から3500万円のシードマネーを調達。同年12月にサイバーエージェント・ベンチャーズ、セゾン・ベンチャーズなどから総額約1億円のシリーズAの調達を実施している。

プラネット・テーブルは2014年5月の設立。代表取締役の菊池紳氏は外資系金融機関、コンサル、投資ファンドなどを経験したのちに起業した。農林水産省のファンド「農林漁業成長産業化支援機構」の立ち上げにも携わった。

SENDの登録飲食店は1000件、生産者は3000件以上に

同社は2015年8月から農産流通プラットフォームのSENDの提供を開始した。SENDは農作物、肉類の生産者と飲食店の間での直接取引を実現するプラットフォームだ。飲食店はプラットフォームに登録した生産者が生産する食材などをオンラインで取引できる。特長となるのは、取引のためのオンラインでのプラットフォームだけでなく、食材保管用の拠点を自ら持ち検品から配送までも自前で行っている点だ。

サービス開始から1年で登録飲食店は1000件、登録生産者数は3000件を突破した。また8月には東京都・目黒区にこれまでの10倍(約200平方メートル)の物流拠点「GATE Meguro(ゲート メグロ)」を新設している。この拠点と後述の物流機能の強化により、これまでの東京都心部(渋谷、広尾、恵比寿、六本木など)から、西東京、川崎、横浜北まで配送エリアを拡大するとしている。

send

シェアリングやIoTを導入

今回の調達を受けて同社が進めているのは、いわゆる「シェアリング」モデルやIoTの導入による物流機能の強化、そして農業×FinTech領域への参入だ。

シェアリングに関しては、地域の生産者をネットワーク化し、トラックを共有して地域の集荷を行うモデルを導入するほか、中小配送業者の有休資産を活用したサービスの試験運用を行う。通常生鮮食品の配送は夜中が中心。それ以外の有休時間での配送を依頼できる配送業者をネットワーク化していく。

また、IoTスタートアップなどと組み、物流過程の滞留時間や温湿度変化といった物流ロス要因の可視化を進めるとしている。「物流ロスを減らし、物流によるモノの劣化を防ぐ。品質劣化の原因を追うと製造者の責任になりがちだが、物流の責任になることもある。それを可視化していく。売り手と買い手、どちらとも組んだプラットフォームでないとできない話だ」(菊池氏)。具体的な取り組みについては間もなく発表があるとしう。

今後は「Square Capital」ライクな生産者向け金融サービスも

先ほど「農業×FinTech」と書いたが、プラネットテーブルでは今後、生産者向けの決済やファイナンス支援サービスを手がける。菊池氏は、マーケットを改革するためには商流や物流だけでなく、お金の流れが変わらないといけないと語る。では農産取引においてのお金の流れを変えるというのはどういうことなのか。

生産者には、収穫期や出荷期においては人件費をはじめとした早期支払があったり、作付や生産拡大向けた資金需要があったりと、業界独自の資金ニーズがある。そこにたいしてプラネット・テーブルは金融機関と組み(実際、プラネット・テーブルでは複数の金融機関系VCからの支援を受けている)、独自の決済サービスを提供していくほか、、ファイナンスの支援をしていくのだという。

この話を聞いて思い出すのは、決済サービスのSquareが米国で提供している「Square Capital」というサービスだ。このサービスは、Squareを導入する小売店が事業拡大のための資金をSquareから借り受け、売上の一部から返済していくというプログラムだ。このプログラムをSquareが提供できるのは、小売店の売上や財務状況をビッグデータとして持ち、それを活用して独自の与信機能を持っているからに他ならない。

SENDは生産者と購入者、両方の情報を持っている。これを利用することでSquareと同じように生産者の財務状況を把握し、最適なファイナンス(の支援。自ら出資するのではなく、金融機関を繋ぐ予定)を行えると考えているようだ。「流通が見えるということは、お金の流れも見えるということ。(SENDも売買データから需給予測をしているので)売れることが分かっているのであれば、現物(生産物そのもの)で資金回収するというのでもいい」(菊池氏)

同社では今期中(2017年3月末まで)にもこれらの取り組みを進め、将来的にはプラットフォーム丸ごとをアジア地域にも展開したいと語る。また6月に発表していた生産者向けバックオフィスツールの「SEASONS!」については、当初7月頃の正式リリースを予定していたが、「ユーザーからのヒアリングを行って機能やUI/UXを改善しており、10月にもリリース予定」(菊池氏)としている。

農業の無駄を省くべくFarmers Business Networkが2000万ドルを調達

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Farmers Business Network(FBN)というスタートアップが新たに2000万ドルを調達し、農業に従事するプロ用のソーシャルネットワーク兼データ共有プラットフォームの拡大を目指している。

FBNの共同設立者兼製品担当ヴァイスプレジデントであるCharles Baronによれば、同社のプラットフォームを利用することで、農家の人たちは、地域集会や昔ながらのバーンレイジング(小屋の建設をサポートする近所の集まり)、その他の同業者の集まりにおいてオフラインで行われてきた、農業に関するノウハウの共有をオンライン上で行うことができる。

恐らくこのプラットフォームで最も重要なのが、業界用語で「インプット」と呼ばれる商品の価格情報共有・評価機能だ。インプットには、お金のかかる種子や肥料の他、元気な作物を育てるために土壌にまかれる化学品などが含まれている。

また、FBNのプラットフォームでは、天気や作物の発育、土壌の質や農地の水位を測定することができ、段々と使用例が増えているアグテック(農業テクノロジー)システムから生成されたデータをアップロード、保管、分析することができる。アグテックシステムには、ドローンや、衛生システム、モバイルアプリの他、地上にあるセンサーやカメラが含まれる。

農家や個人の農業コンサルタントは、インプットに対して実際に支払われた価格を知ることで、必要なものに余計なお金をかけることなく、さらには必要以上の量の購入・使用を防ぐことができる。

また、自分の作物に関するデータを分析し、他の人のデータと比較できるため、農家の人たちは市場で広まっている新たな手法や代替製品のうち、何が本当に機能するのかというのを判断することができる。

Baronによれば、農業界は製薬業界と同様に、ブランド名を冠した高価な製品が広く流通している一方、小さな「ノーブランド」の企業が製造する種子やその他のインプットも、高価な製品と同じくらいの効果を持っている。

しかし、種子や肥料を日頃から買っている農家には、近所の薬局のように、高い効能をもったジェネリック医薬品を使えば出費を抑えられるといったアドバイスしてくれる人がこれまでいなかったのだ。BaronはFBNのコミュニティがこの役割を担うことが出来ると言う。

食品や農業に特化したファンドのAcre Venture Partnersが、FBNのシリーズBラウンドを主導し、GV(元Google Ventures)Kleiner PerkinsDBL Partnersがここに加わった。この新たなラウンドで、これまでのFBNの資金調達総額は4400万ドルに達した。

近年、ベンチャー投資家は農業テクノロジーの分野にとても興味を持っており、食物の生産性向上を目指し、ここ2年で食品や農業にフォーカスしたファンドがいくつも新設された。さらには、もっと大きなテック企業全般への投資を行うファンドのポートフォリオを見ても、アグテック企業の存在感が増してきている。

FBN cofounder Charles Baron at the startup's Farmer 2 Farmer 2015 conference in Davenport, Iowa.

FBNの共同設立者Charles Baron。アイダホ州ダベンポートで行われたFarmer 2 Farmer 2015でのFBNのカンファレンスにて。

Campbell Soup Co.を唯一のリミテッド・パートナーに持つAcre VCでパートナーを務めるGareth Astenは、同VCがFBNに投資した理由についてこう語っている。

「農業界では、インプットの供給市場がある種の寡占状態にあります。そのため、農家の人たちが仕入の判断をするときや、サプライヤーとの交渉時に使えるような実際の価格データを提供することで、彼らの出費を抑え、利益を増やし、もっと効率的に作物を育てるためのサポートを行うことができます」

彼は、FBN Procurementと呼ばれる同社のサービスを高く評価している。このサービスでは、ユーザーが欲しい商品といくらなら購入したいかという情報を登録することができる。

その後、FBNが登録されたインプットの生産者のもとへ向かい、大量購入による割引やその他の大幅割引を利用して価格を固定し、商品を購入したユーザーは近くの倉庫にピックアップへ向かうか、自分の農場まで商品を発送してもらうことができる。

投資家は、FBNが調達した資金をスタッフの雇用や農家の間でのFBNの知名度向上、さらには同社のプラットフォームを違う品種の作物やインプットに展開させていくのに使うことを期待しているとAstenは語った。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

取引先開拓から入金管理まで、農家向けワンストップ・サービス「SEASONS!」がローンチ

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農家向けITサービスと聞くと、農作物を効率化に生産するために土壌の栄養や水分量を検知するIoT端末などを思い浮かべてしまう。けれども生産農家と言えども、ビジネスを行っているのであり、ビジネスには交渉や事務処理がつきものだ。プラネット・テーブルが今回新たにローンチしたサービス「SEASONS!(シーズンズ!)」は農家のそういった手間の効率化を図る。また、生産農家と購入者が直接出会えるプラットフォームという側面を併せ持ち、顧客開拓から交渉、受発注、入金確認まで行えるワンストップサービスを目指している。今回、プラネット・テーブルの代表取締役菊池紳氏に「SEASONS!」のコンセプトについて聞いた。

「SEASONS!」はプラネット・テーブルにとって3つ目のプロダクトとなる。2015年6月に食に関するQ&Aサービス「FoodQ」をリリースし、2015年8月からは生産農家が都内の飲食店や食品企業と直接取引できるプラットフォーム「SEND(センド)」を展開している。SENDではオペレーションと配送を担い、生産農家のこだわりの作物や市場にあまり出回らない食材を都内の飲食店に届けている。東京都心部でサービスを展開し、現在およそ580軒のレストランがSENDを利用しているという。2016年1月にはプラネット・テーブルは1億円の資金調達を実施し、サービス拡大を行うと発表していた。

SENDを展開する中で生産農家の抱える課題が分かってきたことが「SEASONS!」を開発するきっかけになったと菊池氏は話す。生産農家の仕事は農作物を育てるだけではない。生産農家は作付け前から取引先との交渉や受注のために動いていて、出荷時期になったら各取引先へと納品し、請求書を発行して、入金を確認する作業をこなさなくてはならない。そして、生産農家は大抵30件から50件ほど取引先を抱えているという。事務作業が多く発生し、それが生産農家の負担になっていると菊池氏は言う。

また、こういった事務処理は煩雑になりがちと菊池氏は言う。例えば、連絡には電話、ファックス、メールを使ったり、出荷スケジュールを管理するにはホワイドボード、手書きメモ、エクセルを使っていたりする。最近ではクラウドサービスが発達し、Facebook Messengerで連絡したり、決済にはそれに特化したクラウドサービスを利用している生産農家も多くなっていると菊池氏は言う。しかし、それでも各サービス間のデータ連携が簡単にできなかったり、作業が複雑で他の人に仕事を引き継いだりするのが難しいという問題があった。

プラネット・テーブルはそういった課題を解決するため、事務作業を効率化するプラットフォーム「SEASONS!」を開発した。エクセルとMessengerが使えるITリテラシーがあれば、「SEASONS!」も使うことができると菊池氏は話す。ただ、農家の後継ぎや脱サラして農業をしている人などは事務経験がある人も多く、ITリテラシーはそんなに問題にならないそうだ。feature

「SEASONS!」の特徴は、作業の効率化だけでなく「生産者と購入者の出会いの場」になることだ。生産者は、自分のプロフィールに何の食材をいつの時期に生産しているかといった情報を掲載する。それを見て購入者は発注や商談を申し込むことができる。事前に出荷スケジュールを提示していることで、作付け前から商談を行うことが可能となる。これは生産者と購入者の双方にとって利便性があると菊池氏は説明する。生産者は、作付け前から生産と出荷の計画が立てやすくなり、買い手が見つからないという心配を減らすことができる。購入者側にとっても、生産農家の出荷スケジュールをもとに複数の生産農家と取引することで、安定した仕入れが可能となる。例えば、1年を通じて安定してほうれん草を仕入れるためには、春に出荷する農家、夏に出荷する農家といった具合に時期別に生産農家と取引する必要がある。「SEASONS!」では各農家の出荷スケジュールを可視化し、生産者と購入者のマッチングを促進したい考えだ。

また、これまで生産農家にはどういった食材が市場で求められているかといった情報が入ってこなかったと菊池氏は言う。生産農家と購入者が直接つながることで、需要をヒアリングできるようになる。また、「SEASONS!」の掲示版機能では、購入者がこういった食材が欲しいというリクエストを出すことができ、生産者はそれを見て購入者に提案することもできる。このように需要が見えることで、生産農家はより需要に見合う食材を生産し、売上を伸ばすことにつなげることができるだろうと菊池氏は言う。

生産者と購入はどちらも無料で「SEASONS!」に登録でき、「SEASONS!」は取引毎に手数料を得るモデルで運営するという。本日ローンチした「SEASONS!」のα版は招待制で、関係者向けのリリースだ。7月1日から一般向けにベータ公開する予定だという。

土壌センサーのデータに基づいて庭や芝生の水やりを自動化するEdyn、多方面からシード資金を獲得

カリフォルニア州オークランドのEdynが、スマートガーデニングのための新製品を発売した。水道栓をインターネットに接続して、庭や芝生を自動的に潅水する、というデバイスだ。

そのEdyn Water Valveは、土壌センサーEdyn Garden Sensorと各地の天候情報を基に、土壌水分を調整する。ユーザーはその潅水システムの動作を、Edynのスマートフォンアプリで調節することもできる。

定価69ドルのEdyn Water Valveは、重さが8オンス足らず、太陽光発電を利用、Wi-Fi対応、庭の散水用ホースに取り付けられる。小さいので、キッチンのシンクや、窓際のプランターなどに対しても利用できる。

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EdynのCEOでファウンダーのJason Arumburu showedが、サンフランシスコの都市農業企業Farmscapeが支援しているSTEM Kitchen & Gardenで、その電脳水道栓のデモを見せてくれた。

Edynはシード資金をFenox Venture Capital, Idea Bulb Ventures, Morningside Group, Indicator ventures, Y Combinatorなどから獲得しており、Startup Battlefieldのファイナリストになったこともある。

潅水の自動化、という点では、Rachio Inc., Koubachi AG, iConservo Inc., それにドローン企業のParrotなどに競合製品がある。でも、競争の激しいテクノロジー系ガーデニング市場で、Edynはそこそこのファンを獲得しつつある。

製品はすでにHome Depot(ホームセンター大手)でも売ってるし、今後は一般小売店を販路として開拓したい、とArumburuは言っている。

Screen Shot 2016-05-18 at 8.00.05 AM

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

インドア農業にデータ分析と営農アドバイスを提供するAgrilystがシードで$1Mを調達

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Disrupt SF 2015のBattlefieldで優勝したAgrilystが今日(米国時間5/11)、インドア農業に同社が提供する分析サービスの育成のために100万ドルのシード資金を獲得したことを発表した。

ラウンドをリードしたのはBrooklyn Bridge Venturesで、これにMetamorphic Venturesやそのほかのエンジェル投資家とシードファンドが参加した。その中には、同じくBattlefieldでデビューし、のちにFacebookが買収したQuickFireの創業者たちもいる。

Agrilystの協同ファウンダーAllison Kopfによると、この投資ラウンドは投資希望者の数が予定より多すぎた。それだけの関心が集まった原因は、彼女によると、関心はあるけど彼らがよく知らない農業という分野と、従来からあるSaaSのビジネスモデルおよびデータ分析の両者が、組み合わさっているからだ。

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創業からほぼ1年になる同社は、現在の社員数が6名だ。昨年のDisrupt SFでデビューしたときには、やっとプロダクトのベータバージョンが完成した段階だった。

しかし今の同社はサービスの新しいバージョンを立ち上げるまでに成長し、その新サービスはとくに、野菜の生産向けに最適化されている。

またこのサービスには今ではワークフロー管理ツールや、在庫管理、作物の栄養管理と病疫や害虫管理の機能もある。今度のニューバージョンには、農業経営者が新規採用者を教育訓練するための機能もある。

ベータのときも今も、Agrilystはデータを利用してインドア農業の経営者に、営農管理の最適手法を勧奨する。今後は、作物をよりおいしくするための推奨事項も提供していきたい、という。

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Kopfによると、インドア農家の多くがまだセンサーを使っていない。使っている農家でも、そのデータは彼らのデスクトップにローカルにたまっていくだけで、オンラインへ行かない。でもAgrilystに任せれば、スプレッドシートのデータでも十分利用価値があるのだ。

しかし状況は徐々に変わりつつあり、Agrilystは今ではインドア農業でよく使われているセンサーシステムからのデータも利用している(CO2や土壌水分など)。でもまだ、データ入力の多くは手作業で行われている。しかしAgrilyst自身は、ハードウェア企業になるつもりはなく、むしろできるだけ多くのサードパーティ製センサーをサポートしていきたい、という。

Kopfによると、同社がローンチしたときは、マリファナ関連の企業だと思われたくなかったが、しかし蓋を開けてみると、今インドア農業で急速に成長しているのが、マリファナの栽培なのだ。そこで7月以降は、Agrilystはマリファナの栽培農家もサポートしていく。

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[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

遺伝子組み換え作物ではない遺伝子“編集”作物は農務省が規制しないので将来性あり

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遺伝子組み換え作物(GMO)は今、遺伝子編集という新しい技術のおかげで、変わろうとしている。

その最新の例は、CRISPR(クリスパー)を利用して遺伝子を編集した白いボタンマシュルームだ。‘編集’とはこの場合、生物のDNAのパーツを切って並べ替えることだ。

合衆国農務省によると、そのマシュルームは、別の、有害かもしれない、バクテリアのDNAを使っているGMO植物のような危険性がないと思われるので、規制の対象としない。

ペンシルヴェニア州立大学の植物病理学者Yinong Yang博士は、マシュルームのDNAを変えて、酸素に触れても褐変しないようにした。そのコード中の二つの文字を入れ替えただけで、キノコは褐変しにくくなった。

しかし昨年10月に初めて組み換え種を作ったときには、その、遺伝子を変えたマシュルームが農務省の認可を必要とするのではないか、とYang博士は危惧した。

農務省の動植物健康検査サービス(Animal and Plant Health Inspection Service, APHIS)は、アメリカの農業環境を問題のある植物から守る機関で、検査の対象には、バクテリアやウィルスからのドナーDNAを使って植物の病虫害耐性を強化した作物も含まれる。

しかしCRISPRには、従来のGMOにない抜け穴がある。Yang博士はマシュルームに他の生物のDNAをいっさい加えていない。むしろその小変化は、マシュルーム自身の遺伝子で起きている。

CRISPRはかなり新しい技術だが、バイオテクノロジーの分野に新しい生命(いのち)を与え、明らかに規制をめぐる疑問を喚起している。USDAは、自分のDNAを改変した作物を問題視するのだろうか?

過去5年間で30件の、何らかの形で遺伝子編集技術が関わった作物が登場したが、マシュルームはその一つにすぎない。しかしこれまでのところ、答はノーである。

APHISはペンシルヴェニア州立大学宛の4月13日付けの書簡で、マシュルームは確実に規制検討の対象外だ、と確認した。

USDAは次のように声明している: “APHISにはCRISPR/Cas9ホワイトボタンマシュルームが有害植物であると信ずべき理由がない。したがって、同様の質問状に対する前回の応答と同じく、APHISはCRISPR/Cas9により編集されたホワイトボタンマシュルームが、2015年10月30日の貴書簡に記述されているように、連邦規則集第340部により規制されるべきとは見なさない”。

Yang博士は今、彼のマシュルームの企業化の可能性を、思いめぐらしている。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

鉢植えの植物を死なせることのない自動コントロール植木鉢Parrot Pot

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多くの人が、Parrotドローンのメーカーだと思っているようだが、実はヘッドフォーンや社内の情報娯楽装置など、いろんなものを作っている。昨年のCESで同社は、植木鉢ロボットParrot Potを披露した。そのときはまだプロトタイプだったが、今年は第一四半期にいよいよ、この新製品を発売する。

小売価格99ドルのこの植木鉢は、潅水用の水を2リットルキープできる。それは多くの植物にとって、ほぼ1週間ぶんの量だが、“節水モード”に設定すれば、植物は3〜4週間生き延びることができる。

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植木鉢のコントロールはモバイルアプリから行う(アプリの名前はそのものずばり、’Flower Power’だ)。このアプリからおよそ8000種の植物のデータベースにアクセスして自分の植物を選び、植木鉢とBluetoothで接続する。アプリはいわば、あなたの植物のためのダッシュボードだ。

植木鉢が装備しているいろんなセンサーにより、土壌水分や温度、肥料残量、室温、明るさなどを測定する。これらのデータは15分おきに記録され、Parrotのサーバーに送られて分析される(もちろん事前にインターネットに接続のこと)。人間が長期間世話をしなくて土壌水分が涸渇気味になると、自動的に潅水する(上図)。

昨年のプロトタイプのときは、売価200ドルになっていたから、それに比べると100ドル弱は安い。鉢植えの植物をよく死なせてしまうタイプの人は、Potを買ってみる価値があるかもしれない。あるいは自作してもいいけど。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa)。

DJIが農地の害虫駆除専門のドローン機種を発売、消費者市場よりも大きな市場をねらう

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中国深圳のDJIといえば、消費者向けドローンの高級品で有名だが、しかし同社の最新モデルを見るとドローンメーカーたちの今後の競合は、一般消費者市場ではないところで戦われる、という気がしてくる。

ローターが8つあるドローンAgras MG-1は、より安全な農薬散布の方法を提供することがねらいだ。これまではヘリや小型飛行機、何らかの陸上車、あるいは化学薬品を背負った人間が手に噴霧器を持って散布していた。

DJIによるとこのドローンは、一時間で7から10エーカーの農地に散布できる。

Wall Street Journalの記事によると、Agras MG-1の価格は約15000ドルで、中国と韓国で発売され、その後ほかの国向けの予約販売を開始する。数か月前Accelから7500万ドルを調達したDJIは、さまざまな業界に専門的に取り組むドローンソフトウェアのデベロッパの、エコシステムを作る気だ。ライバルのYuneecとEHANGも、それぞれ6000万ドル4200万ドルという大きな資金を獲得して、商用ドローンの開発に注力しようとしている。

 

 

農家以外の人は、Agras MG-1にそれほど関心を持てないかもしれない。これまでドローンの商用利用といえば、航空写真(やビデオ)の撮影とか、eコマースのデリバリが主に話題になっていた。でも農業は、今後最大のドローン市場になると予想されている。

Association for Unmanned Vehicle Systems International(国際無人機協会, AUVSI)によると、将来的に農業用ドローンは商用ドローン市場の80%を占める。Agras MG-1のような殺虫剤を散布する機種は、ドローンの農業利用のひとつの例にすぎない。ほかにもたとえば、高解像度のカメラを搭載した機種は作物の生育状態をモニタし、病害や干ばつの兆候を早期に教えてくれるだろう。

ただし農業経営は今どこの国でも厳しいから、今後はドローンがもたらす利益を具体的にかつ数字を上げて、農家に訴求していく必要がある。Agras MG-1は確かに、農業労働者が化学物質にさらされる時間を減らしてくれるが、現在の農薬散布方式に比べると、農地の単位面積あたりの費用が高い。しかも、一回の飛行でカバーできる農地面積も小さい。

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壁にかける小さな棚で21種類の野菜やハーブを水耕栽培するEdn、iPhoneアプリがユーザを教育する

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父の家は農家だった。毎晩彼のキッチンテーブルに並ぶ食べ物は、実家の畑から運ばれてきた。私はそうやって郊外で育ち、今は都市に住んでいる。食べ物はもっぱら、近くのグロサリーストア(八百屋兼食料雑貨店)やレストランに依存している。未来の子どもたちの食べ物はインターネットから、びん詰のSoylentみたいな形でやってくるだろう。

デンヴァーでステルスしているスタートアップEdnは、そうなることを防ごうとしている。

Ednは壁にかける装置で(下図)、数種類の野菜の自動栽培を行う。ほかに必要なのは、iPhoneアプリと人間ユーザの愛とお世話だ。

21のスロットがあり、そこでさまざまな野菜やハーブを育てる。“十分な量の”植物を、同時に栽培できる。ユーザはEdnを電源につなぎ、種(たね)を播き、タンクに水を入れ、ときどき肥料を足す。

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“自動化はするけど教育を忘れているテクノロジ製品が多い”、とファウンダのRyan Woltzは言う。“Ednでは、植物が発芽すると何を見るべきかを教え、収穫時期も教える。だから、目の前でいろんなハーブや野菜を育てながら、それらについて学ぶことができる”。

Ednは壁掛け方式なので、カウンターやテーブルのスペースを占領しないし、だれでも(ニューヨークの狭いアパートに住んでいる私でも)自分の食べ物を育てられる。

Ednは目下開発途上だが、Woltzは私が見せてもらったプロトタイプを使って、タイムやコリアンダー(シャンツァイ、香菜)、ピーマン、ルッコラ、ローズマリー、そしてかぼちゃを作っていた。そしてデバイスは、照明の付いた三段の棚、といったところだ。

厳密に一つのスロットで一種類だけ育てるとすると、21種類を栽培でき、完全水耕だからユーザが日常やることは何もない。発売は来年半ばで、定価399ドルを予定している。Woltzは次の製品として、育苗器を考えている。

Ednは、本誌がデンヴァーで行ったTC Meetup + Pitch-off集会で二位になった。詳しくは、同社のWebサイトを見てみよう。

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近未来地球社会の最重要分野: アグテック(Agtec, 情報テクノロジによる農業生産性向上策)の、よちよち歩きの現状

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[筆者: Robyn Metcalfe](Dr. Robyn MetcalfeはFood + Cityの編集長で出版人。世界の食糧系に対する果敢な探求を行っている。)

ほぼ2世紀前にJethro Tullが、馬に曳かせた播種機を使って、作物の種子を一つずつ蒔き、それまでのばらまき方法を置換した。精密農業の初期の形とも言える彼の独創的なツールは収穫を劇的に増やし、農業の革命に導いた。

もう一人の初期の農業起業家Robert Bakewellは、1700年代の後期に同種交配法を完成させ、農家が、特別の性質を持った家畜だけを選んで、繁殖できるようになった。前世紀には、アメリカの生物学者Norman Borlaugが興した緑の革命(Green Revolution)により、種子、中でもとくに小麦の新品種が開発され、世界中の何百万もの人たちが十分な食べ物を得られるようになった。

TullやBakewellやBorlaug、それに彼らの同時代の多くの人たちが農業の生産性の向上に努力してきた。現代の農業の始まり以来、農家や起業家たちは、技術によって母なる自然の気まぐれや、食糧価格と政府の政策の変動に対応する方法を、探してきた。

そして、第二の千年紀に入った今では、最小の入力と管理費用、そして環境の尊重を伴いながら、生産性を上げる新しい方法の発見が課題だ。今の私たちはひとつの岐路に立たされており、しかも緊急の課題がある。農地と水の供給量は少ない。気候変動が作物の性質と収量に大きな影響を与えている。世界の食糧システムは2050年までに、そのころの予想人口90億人のための食べ物を作り出す能力を、持たなければならない。それはとうてい、ささやかな責任ではない。

世界の食糧システムは2050年までに、そのころの予想人口90億人のための食べ物を作り出す能力を、持たなければならない。

これらの問題を、どうやって解決するのか? 幸いにも私たちは、Jethro Tullの馬に曳かせる播種機以来、多くの進歩を成し遂げてきた。今日のイノベーションは明白にハイテクであり、農業に流入するベンチャー資本は大きく増えている。2014年の、アグテックへの投資は、23億6000万ドルと推計されている。同じ年のクリーンテックへの投資は20億ドル、フィンテック(金融テクノロジ)は21億ドルだった。

イノベーションの重要な領域のひとつが、労働の減少短縮と、トラクターなど農業機械の安全性および電脳性の向上だ。たとえば無人運転のトラクターは、それだけなら1940年からある。そのときイリノイ州の農夫Frank W. Andrewが、無人トラクターにアームをつけて“渦巻き耕作”(spiral farming)を発明したのだ。

より最近では、物のインターネット(IoT)が農業とくっついて、新しい知識とハードウェアを提供していく可能性がある。さしずめそれは、センサからビッグデータを集め、その処理と保存を担当するロボットやドローンだろう。それらが、農地の生産性をかつてなく上げる可能性もある。ロケットが安価になれば、農地の宇宙への拡大もありえる。

マサチューセッツ州WalthamのVC Polaris Venturesと、そのパートナーAmir Nashatは、微生物を利用して収量を上げるAgBiomeに入れ込んでいる。Nashatはマイクロバイオームに関心があるだけでなく、干ばつなどの異常気象を管理するシステムの開発にも注目している。

Nashatと協働しているアグテック起業家Tom Lauritaは、NewLeaf Symbioticsの社長でCEOだ。Lauritaは農業のイノベーションを、地面の上の空間や地下に見出そうとしている。たとえば地下では、植物性微生物を使って種子の生産性を上げるのだ。

農業の起業家は世界のあらゆる片隅から芽吹き始めている。

世界中の農家が利用するデータベースをオープンシステムとして作ろう、という動きもある。ユーザ農家とそんなデータベースを取り持つAgricultural Extension Service(農業拡張サービス)という大規模なサービスがあってもよい。たとえば、作柄や天候、消費者の選好、ロジスティクス、生産性データなどのビッグデータを分析して有益な情報を農家に提供するサービスは、すでに芽生えている。

つまり全体を一言で言えば、この新興の起業分野ではすでに、大量の試行が行われているのだ。農業の起業家は世界のあらゆる片隅から芽吹き始めている。動きが活発化しつつ増大しているのは頼もしいが、まだまだやるべきことは多い。今日のテクノロジが農業に与えるインパクトの、全貌をまだわれわれは見通していない。将来性の大きい初期段階の技術も、まだまだ市場の創出に苦労している。

あれやこれやで、まだ、賑やかだがアイドリング中のようなエンジン音しか聞こえないのは、アグテックの分野ではコラボレーションが未発達だからだ。たとえば農家とシェフたちを結びつけようとするスタートアップも、農家の生産性がボトルネックになっている。その現状では、多くのシェフを顧客として集めることができない。多くの農家のコミュニティを作る、などの努力が必要だ。

農家に対するコンサルティングを抜きにして、農業にビッグデータを持ち込もうとする起業家は、廃棄物やパッケージングの問題に対応していない。

アグテックがアイドリングから本番走行へ移行できるためには、個々のスタートアップやアイデアをそれ単独で見るのではなく、コラボレーション的なコミュニティの育成課題として見ることが重要だ。すでにその動きはある。シェフたちは農家と結びつき、農家は消費者と結びつき、ヘルスケアは食品科学と結びつく。しかし今何よりも重要なのは、科学者とエンジニアと農家と環境問題の活動家たちが、もっと密接な関係を築き、食糧システムの将来の生産目標を実現する方法を、それぞれの分野の知恵を寄せあって互いに触発し合い、考え、試行していくことだ。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa)。

地域農家農業と地域消費者をコミュニティで結びつけるFarmigo、好調なフードテック企業として創業6年、シリーズBで$16Mを調達

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地域農家の市場をディスラプトしようとする、創業6年目のFarmigoが、シリーズBで1600万ドルを調達した。

ファウンダでCEOのBenzi Ronenによると、同社は農家のためのソフトウェアデベロッパとしてスタートしたが、消費者が新鮮な農産物を入手できるマーケットプレースと、そのための地域の“食べ物コミュニティ”の育成に関心が移行した。地域の学校や企業も、そのコミュニティの核になりえる。Farmingoは2011年の本誌TechCrunch主催スタートアップコンペDisruptで、プロダクトの一つをローンチしている。

Ronenによると、このコミュニティスタイルのマーケットプレースは、従来の農家の市場に比べて生産者と消費者の両方にとって便利である。従来の市場構造では、地域の農作物を農家の近隣地域の人たちが買えないことが多い。遠くまで毎週買い物に行くのは、時間的にたいへんである。また、よくある、地域農業そのものをコミュニティがサポートする事業では、各週の限られた生産物を、消費者がむりやり買わされるパターンになることが多い。それに比べるとFarmingo方式は選択の幅が大きい、とRonenは主張する。

フードテックのスタートアップでは、InstacartやBlue Apronのように大きな成功例もあるが、でもRonenによると、農家と食卓を結びつける事業は歩みが遅い。たとえばGood EggsGrubMarketはともに、最近サンフランシスコの外での操業を中止した。彼らは、ビジネスモデルを再考するつもりだ。

問題は、農家から食卓へを謳う企業が、“サプライチェーンの全体を再発明しようとしていること–しかもそれはデジタルでなく物理的な作業だから、とても難しい”、とRonenは言う。〔しかも商品が長中期在庫不可能な生鮮食品で、供給量の限られたローカルブランド。〕

Farmigoのビジネスモデルがうまくいっているのは、食べ物コミュニティがイコール、流通システムでもあるからだ。これまでのように、スタートアップの企業自身が個々の顧客へ農産物の配送配達をしない。またFarmingoではテクノロジの力でその過程をより効率的にしている。

“うちは要するにエンドツーエンドのERPシステムであり、サプライチェーンのすべての要素をチェックしている”、とRonenは語る。“在庫(品物、量)も正確に分かるし、どんな注文があり、そのどれどれがパックされたかも分かる。ドライバーはソフトウェアを使ってそれらのデータを知り、どこで何を集荷すべきかを知る。過去6年のうちの仕事らしい仕事といえば、このソフトウェアを作ることだった”。

Farmigoの現在のサービス供用地域は、ニューヨーク(市)とニュージャージー州とカリフォルニア州北部だ。10月14日にはシアトル-タコマ地区が加わる。Ronen自身は2年前に、サンフランシスコからニューヨークへ引っ越した。同社のシステムから地域農産物を買っている世帯は15000あまりで、毎月2000ずつ増えている。

今回のラウンドは、Joe Lonsdale、Brian Koo、Jim Kimらによる投資企業Formation 8がリードし、これまでの投資家であるBenchmarkとSherbrooke Capitalが参加した。これでFarmigoの資金調達総額は、2600万ドルになった

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa