Google、Awareness APIをリリース―Androidアプリがユーザー環境に反応するようになる

2016-05-20-awarenessapi

スマートフォンがユーザーの位置、何をしているか、付近に何があるか、それに外の天気まで知っており、これらの情報を総合してユーザーの置かれた状況を把握して知的に反応できるとしたらどうだろう? 気味が悪いだろうか? すばらしく便利だろうか? われわれはすぐにどちらなのか実感することになりそうだ。

今週のGoogle I/Oデベロッパー・カンファレンスでGoogleはアプリのデベロッパー向けのツールを発表した。 このツールを利用するとデベロッパーは自分の置かれた環境を認識してそれに合わせて自らをカスタマイズするアプリケーションを開発することができるようになる。

たとえば、ユーザーがジョギングを始める時間に音楽ストリーミング・アプリを立ち上げると元気のいい曲がイアフォンに流れてくるというような仕組みだ。

またア薬局に寄って薬をピックアップするように促すリマインダー・アプリも登場するかもしれない。しかもこのリマインダーが流れるのは薬局の近くを通りかかり、かつ薬局がオープンしている時間帯に限られる。

デベロッパーこうした本当の意味でスマートな」アプリを開発できるようにするため、Googleは新しいAwareness API〔環境認識API〕を発表した。このツールはI/Oカンファレンス終了後まもなく利用可能になるはずだ。

実質的に、このAPIはこれまでも他のAPIを通じて可能であった多くの処理を統合するものだ。たとえばデバイスの位置情報にアクセスして置かれた場所を知り、またユーザーが車を運転していることを知るなどの処理だ。さらに付近のWiFiタワーやデバイスについての情報も収集できる。ユーザーがAndroid Wearを搭載したスマートウォッチをしていればその情報にもアクセスできるし、Chromecast(Google Cast)やGoogleが今回発表したAmazon Echoに対抗するスマート・スピーカー、 Google Homeとも会話する。

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この機能がアプリに応用された場合、どんなことが可能かについて、Googleは上で述べたような例に加えていくつもの利用法を提案している。

たとえば、目覚まし時計アプリがスマート化され、ユーザーが前夜ベッドに入った時間と当時予定されている最初のミーティングの時間を総合して起床に最適の時間を決めることができるようになるという。そして目を覚ますと大型テレビに接続されたChromecastが今日の天気を画面に出してくれるわけだ。

アシスタント・アプリはカレンダーから今日の予定を読み取り、自宅の位置と移動方法を総合し、Google Homeを通じて「そろそろ出かける時間です」と教えてくれる。

スマート・ヘルス・アプリをインストールしておけば、ジョギングを始めると同時に、ユーザーがモニター機能をオンにするのを忘れていても、自動的にモニターを始めてくれる。

ユーザーが自然の中にいればランチャー・アプリがカメラ・アプリをスクリーンのいちばん目立つ場所に大きく表示してくれる。ランチャーはユーザーがきれいな景色や生き物に囲まれていればたくさん写真を撮るだろうと予期するわけだ。しかも写真を撮れば活動の種類や天候をタグとして付加するというボーナスも付く。こうしたデータは写真のメタダータの一部となるので、、後で「晴れた日、ジョギング中、ネイチャー」というような条件で簡単に見つけ出すことができる。

こうした機能の一部を実現するアプリはこれまでも存在した。しかしそのためにデベロッパーには複数のAPIを使うという手数がかかった。しかもGoogleによると、常に複数のAPIを使うと、場合によっては、アプリが遅くなり、メモリー容量を食い、バッテリー駆動時間を減らすなどの望ましくない事態を招く可能性があったという

これは非常に腹立たしい副作用で、ユーザーはそうしたアプリをアンインストールしてしまうことになりかねない。

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新しいAwareness APIは単一のAPIでありながら、アプリが必要とする情報をすべて提供することが可能だ。それと同時にメモリーや電力の使用量などシステムの状態を最適に保つ手助けもしてくれる。これによってデバイスがクラッシュしたりバッテリーを使いきってしまうなどの現象を防ぐことができる。

Awareness APIは2つの異なる部分に分けられる。一組はアプリが現在の状況に対応できるようにする(Fence API)。もう一組はユーザーが置かれている現在の状況に関連する情報を求める(Snapshot API)。

Googleが披露した上述の例はそれぞれ興味深いが、オンライン不動産業のTruliaなどのパートナー企業が実際に示した例はどちらかというと地味なものが多かった。下の例でオープンハウスを実施している物件の近くを通りるとそれを教えてくれるというもの。

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ただしラテン音楽のストリーミング・アプリ、Superplayer Musicの例は楽しそうだ。このアプリはユーザーがどこで何をしているかに応じて適切な音楽を推薦しようとする。たとえばこれからジムでトレーニングを始めようとしているときと、車で長距離の運転をしなければならないときでは推薦される楽曲が異なる。

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ランチャー・アプリのNovaは環境を認識できるよう、全面的にアプリを書きなおしている。

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環境認識では過去にも似たような試みはあったが、Googleの例はAPI1を通じてアプリそのものに緊密に統合されるという点が理にかなっている。置かれた状況についていちいちユーザーに入力を求めるのではなく、カレンダーなどを通じて自動的に情報を収集することでわずらしさが大幅に軽減され、スマートさが増してている。近くのAndroidデバイスと協調し、その情報も利用したりコントロールしたりできるというのも強みになるだろう。

デベロッパーはこちらから初期利用に参加できる。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

Google、大幅に高速化したAndroid Studioをリリース

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Googleが、開発環境であるAndroid Studioの新版をアナウンスした。いろいろとアップデートが施されているが、とくにうれしいのは大幅なスピードアップがなされていることだろう。マウンテンビューで行われたデベロッパー・カンファレンスにてアナウンスされたものだ。

Googleのような企業にとって、開発環境を快適なものにしていくのは非常に大切なことだ。開発環境が整っていてこそ、Androidアプリケーションの開発者も増えるわけだ。優れたアプリケーションがAndroid版で先行してリリースされれば、アプリケーションストア同士の競争の中で優位に立つこともできる。そうなれば、iPhoneやiPadではなく、Androidを選ぶ人も増える可能性があるわけだ。ようするに、どちらの環境によりよいアプリケーションが存在するのかということが、とても大切なわけだ。

アップデートされた内容をみてみよう。

  • エミュレーターの速度が、Android Studio 2.1と比較して3倍になった。エミュレーターを使ってアプリケーションのチューニングを行なっていた人にとっては、速度面での不満が大きかった。そうした人にとって、まちがいなく朗報だ。
  • ビルド速度が高速化した。ビルドを行なっているときは、コードを書き加えたり、新機能を追加したりなどということはできないわけで、ほぼ無駄な時間となっていた。これが改善されたわけだ。
  • 「Test Recording」の機能が追加された。これは開発者がアプリケーションをチェックするのと同時に、自動的にテストレポートを生成してくれる機能だ。過去のバージョンで動作していたはずの部分がおかしくなったような場合、より迅速に原因を確認することができるようになる。
  • さまざまな機能追加を行った、新しいレイアウトデザイナーが搭載された。開発者が考える通りのエクスペリエンスを提供することが容易となる。
  • 当然ながら、Android Nをサポートしている。

新機能というよりも改善ポイントが多く、目新しさの面では物足りなく感じる人もいるかもしれない。しかしこうしたパフォーマンス改善などによってこそ、開発者たちがAndroid Studioを使い続けてくれることになるわけだ。ちなみに、現在Google Playに登録されているアプリケーションのうちの92%は、Android Studioで開発されているのだそうだ。

新しいAndroid Studioのベータ版は、本日から利用可能となっている。

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(翻訳:Maeda, H

Android Nの新プレビュー版はベータ版品質―アップデートはバックグラウンド、VRモードを標準搭載

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現在Google本社に隣接するショアライン・アンフィシアターで開催中のデベロッパー・カンファレンス、Google I/Oのキーノートで、予想どおりAndroid Nが発表された。この次世代Android OSはGoogleのモバイル・システムの要となる存在だ。

Android NでGoogleは従来のアップグレードのサイクルから大きく外れた。 GoogleはこれまでI/Oで次世代Androidの最初の発表を行ってきた。しかしAndroid Nのプレビュー版は数カ月前にリリースされている。またNはon-the-airでアップデートできる最初のプレビュー版となった。そうした経緯から、かつてない数のユーザーがテストに参加しているはずだ。

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今日(米国時間5/18)開幕したI/Oデベロッパー・カンファレンスで、GoogleはAndroid Nの3回目のプレビュー版を発表した。 同時にこれは「ほぼベータ版の品質」に達しているとGoogleが考えた最初のプレビュー版だ。前回のリリース同様、今回のプレビュー版もNexus 6,、9、5X、 6P、Nexus Player、 Pixel C、Android One (General Mobile 4G)に対応する。これらのデバイスを持っている場合、こちらから登録できる。

製品版のリリース日時はまだ明らかにされていないが、Googleによれば「今年の夏の後半」を予定しているという。

GoogleのAndroidのエンジニアリング担当副社長、Dave Burkeは私のインタビューに対して「Nはユーザーのメインのモバイル・デバイスに利用できるレベルに達していると考える」と語った。私の経験では、Googleの場合、最初のリリースでもかなり使い物になった。しかしBurkeは「たしかに多くのユーザーが初期ビルドにしては出来がいいと驚くが、それでも致命的なバグが残っており、われわれのチームはそれらを修正している」と語った。

そういう次第で、今回Googleの発表の多くはすでに知られている内容だろう。 たとえば、Android Nはマルチウィンドウをサポートしている(これによってPixel Cのようなタブレットが生産性ツールとして使い物になるはず)。またグラフィックスAPIが改良されている。高速なジャスト・イン・タイム方式のコンパイラーはパフォーマンスを大きくアップするはずだ。Burkeによれば、アプリのインストールは75%速くなり、サイズも大幅に小さくなるという。

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当然ながら、Googleは最初のプレビューに搭載予定の新機能のすべてを詰め込んできたわけではなかった。

たとえば、新しいAndroid Nには標準でVRモードが搭載されることが判明した。このモードはVRアプリが優先的にCPU、GPUにアクセスできるようにする。またVRヘッドセットを装着した場合に問題となるユーザーの頭の動きに対する画面表示のレイテンシーを最小限にとどめるソフトウェア技術もいくつか含まれている。Googleによれば、VRモードはCardboardヘッドセットにNexus 6Pを装着した状態でレイテンシーを100msから20msに短縮するという。これは没入感を大幅に改善するだろう。VRプラットフォームについてTechCrunchはこちらに詳しい記事を掲載している。

また今回GoogleはOSアップデートのプロセスを一新した。Androidデバイスはバックグラウンドで新OSをダウンロードし、インストールする。ユーザーがデバイスを再起動すると新OSに切り替わっているわけだ。Androidの更新が終わるのを何分も待つ代わりに、単に再起動をかけるだけよくなる。更新は見えない場所ですでに行われており、ユーザーの利用を中断しない。

このバックグラウンドでの更新はすでにChrome OSで実施されており、Burkeは「両チームはアップデートの改良で緊密に協力している」と語った。

この改良で、Androidデバイスはユーザーにアップデートがあったことを知らせ、新OSをインストールするよう促すのではなく、ユーザーがデバイスを再起動するのを待つように変更された。BurkeによればGoogleの調査でユーザーはほとんどは月に1度以上デバイスを再起動しており、Chrome OSの経験では数ヶ月で99%のアップデート率を達成できたという。

ユーザーが指紋認証その他の認証手段を利用している場合は、再起動後にOSが更新されている場合でもAndrodiはユーザーにいちいちパスワードの再入力は求めない。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

Google I/O: AndroidのInstant Appsはアプリとウェブページとのギャップを埋める新アプローチ

Park and Pay - Device with Meter

モバイルのネーティブ・アプリはいろいろな面でブラウザ・ベースのウェブページよりも優れたユーザー体験を提供できる。しかしユーザーがネーティブ・アプリを利用するためには検索などによってまずその存在を発見し、ダウンロードし、インストールするのを忘れないようにしなければならない。Googleはアプリとユーザーのこうした関係を根本的に見直そうとしている。

今日(米国時間5/18)、Google本社に隣接する野外劇場でスタートした I/O 2016デベロッパー・カンファレンスでGoogleはAndroidアプリを次世代に進化させる道筋を発表した。

Instant Appsはは反応の速いモバイルアプリとそれより遅いウェブアプリとのギャップを埋めるもので、たとえユーザーがモバイルアプリを事前にインストールしていない場合でも、URLをタップするだけでほとんど即座にアプリを起動できる。ただしInstant Appsの普及のペースはゆっくりしたものになりそうだ。

要するに従来の方式ではアプリをダウンロードしてからインストールするという手間がかかる。これには時間も食う。しかしInstant Appsを利用すれば、デベロッパーはアプリを小さなコンパートメントの実行可能ファイルに分割し、数秒でスタートするようにできる。

GoogleのAndroidのエンジニアリング担当副社長、Dave Burkeは私のインタビューに対して「Instant Appsはアプリの将来に対する考え方を全面的に改めるものだ」と語った。Instant Apps開発の動機は、処理が高速なネーティブアプリのユーザー体験をウェブサーフィンの便利さに近づけようとするものだった。Burkeは「ウェブページは短命だ。ユーザーはあるページを読んでしまえば、それきりで戻って来ないのが普通だ。ところが現在のネーティブ・アプリは大きすぎて使い勝手が悪い。ユーザーはごく一部の機能、たとえばそのページの情報しか必要としていないのに、アプリにはすべての機能が詰め込まれがちだ」と語った。

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GoogleのMichael SiliskiとFicus Kirkpatrickが私に説明したように、新しいアプリはブラウザでウェブページを開くのと同じ手軽さでモバイル・アプリを起動させようとするものだ。チームは新アプリのサイズについ調整を繰り返しているところだが、SiliskiとKirkpatrickはInstant Appsのダウンロードは4MB以内となることを期待している。

ユーザーの立場からみると、新しいアプリはこういうことになる。ある都市を初めて車で訪問し、地元の自治体が提供する有料のパーキングメーターを利用しようとしているとしよう。ユーザーはAndroidスマートフォンをパーキングメーターにかざす。すると内蔵のNFCチップが必要な情報を読み取る。ほとんど同時にInstant Appのパーキング・メーターアプリが起動する。ユーザーは自治体のパーキング・メーター・アプリを事前にインストールしておく必要がない(あるいは後でアンインストールする必要もない)。

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Googleのエンジニアの説明によれば、このアプリのポイントは使い勝手をできるかぎりスムーズにすることだ。そもそもスマートフォン自体にログインしているのだからユーザーはGoogle Walletによる支払いができる。またパーキングの利用を終えればユーザーはもうそのアプリを必要としない。「ネーティブ・アプリ化するのが適当なサービスも多い。しかし最初にアプリをインストールしなければならないというのはユーザー体験を大きく損ねている」とSiliskiは説明した。

現在、GoogleはBuzzFeedの協力を得て実験を行っている。Buzzfeed Videoアプリがそれだ。 またB&Hと提携してデベロッパーがこの新方式によるいわば「その場で起動する使い捨て」のアプリを有効に利用する例を示している。

デベロッパーがInstant Appsを開発するためにはそれなりの準備が必要だ。ただしKirkpatrickの説明によれば、これはゼロから新しいくアプリを書き直すようなものではなく、既存のアプリのアップグレード程度の作業量だという。ソースコードはそのまま利用できるし、デベロッパーによってはわずか1日でInstant Appを作れるだろうという(もちろん簡単なアプリの場合)。

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Instant Appsはセキュリティーが保証されたサンドボックス内で作動する。Instant AppsはAndroid Jelly Beanまで後方互換性がある。

BurkeはInstant Appsと現在注目を集めているボットを結びつけるアイディアも持っている。つまりボットのような複雑な処理をする場合でも、ユーザーに大きなアプリを事前にインストールさせる必要なしに、ウェブページを開くのと同じ使い勝手で利用できるようになるという。ただしBurkeは「ボットは言われているほど便利な存在ではない」と言う。必要な情報を得るまでの段取りが非常に面倒で、しかも大量に文章を入力しなければならない場合が多いからだ。それに引き換え、「Instant Appsならダウンロードやインストールといったネガティブな面をボットから取り除くことができる」という。

しかしデベロッパーの作業を介する必要があるため、ユーザーが大量のInstant Appsを見るようになるにはある程度の時間がかかるだろう。現在は限定されたベータ・テスターの協力を得ている段階で、Googleはデベロッパーからのフィードバックを広く求めるために今日の発表を行い、機能の一端を紹介した。Instant Appsのアプリが一般ユーザー向けに登場するのは今年の後半になるという。Googleでは引き続き来年もIntant Applsを利用するデベロッパーの拡大を見込んでいる。

動きの激しいモバイルの世界にあっていささかゆっくりしたペースのようだが、Googleではこの機能の利用に難しい側面があるとしている。「デベロッパー側の作業には相当の変更が予想される。われわれは新機能を正しく使ってもらいたい」とSiliskiは語った。

Googleはこれまでもネーティブ・アプリとウェブページの間のギャップを埋めようと努力してきた。たとえば、Google検索の結果にAndroidおよびiOSのネーティブ・アプリのコンテンツが含まれるようにしたし、アプリをインストールしていなくてもストリーミングが表示されるなどの努力をしている。 しかしInstant Appsは(ダウンロードしてインストールした後に初めて使い始めることができる」というネーティブ・アプリの限界を根本的に打ち破ろうとするものだ。

現在App Storeには膨大な数のアプリが登録され、ユーザーはすでにありったけのスペースをアプリに占領されており、新しいアプリのインストールには消極的になっている。2015年の調査によれば、一般ユーザーはスマートフォンに接する時間の85%をアプリに費やしているということだ。しかしそうしたサードパーティー製アプリのうち、日常的に繰り返し利用されているのはほんのわずかに過ぎない。

ユーザーの状況がこうしたものであるため、デベロッパーにとってはネーティブ・アプリをインストールしてもらうのがますます狭き門になりつつある。正しく利用できれば、Instant Appsはデベロッパーの直面する難問を解決する有力な手段となるだろう。

画像: Jeff Chiu/AP

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

Facebook Messengerへのチャットボット投入は成功するのだろうか?

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メッセージが送られてくると、そのすべてに応答していた。しかしそうした振る舞いも過去のものとなるのかもしれない。Messengerの受信通知があっても、それが友だちからなのか、ボットからなのかわからない時代になろうとしているからだ。チャイムがなっても、鳴らした相手が友だちなのかそれともボットからの新しい通知が来ただけなのか悩まなければいけなくなる。受信通知がまるで、ある種のチューリングテストのようにすら思えてしまう。

思い起こしてみると、これは「いつか来た道」なのではなかろうか。私たちが「電子メール」に注意を払わなくなったきっかけもこうしたことだったと思うのだ。初期は電子メールといえば仲間たちと重大な研究成果などのやり取りをするために使われていた。それがいつの間にかメールマガジン、レシート、あるいは数千ないし数百万人を対象に送られるにも関わらず、特定の個人に送られているかのように偽装する商用メールが多くなってしまったのだった。

Messenger上での会話はどうなっていくのだろう?

TechCrunch Chatbot

Messenger上にはボットによる「デイリー・ダイジェスト」が増えていく。

Facebookが、今になるまでボットの活用を待っていたのには理由があるように思う。ほんの1年前まで、Messengerを使う人は現在の半分程度に過ぎず、コミュニケーションツールとしての地位を獲得していなかったのだ。メッセージのやりとりにはさまざまなアプリケーションが用いられていて、その中でも一般的だったのはSMSだった。

いまやMessengerは10億人に利用されるプラットフォームとなり、新しいことに取り組む余裕も出てきたというわけだ。欧米におけるナンバーワンのモバイルメッセージングツールとなり、WhatsAppも中国などを除く世界中で広い人気を集めている。

Facebookは自社プラットフォームが世界中に広まったのを見て、人がメッセージのやり取りをしなくても金を稼ぎだす仕組みはないかと考え始めたのだ。Messangerのトップを務めるDavid Marcusは1ヶ月前、Messengerは「あらゆるコミュニケーションのハブとなり、さまざまなサービスやビジネスが提供される場所として発展していく可能性があるのです。そしてますます人を集めるプラットフォームとして拡大していくこととなるでしょう」と語っていた。

Facebookのプラン通りに進むこととなれば、カスタマーサービスや電子商取引に関わるさまざまなやり取りをMessenger上でやりとりするようになり、またニュースやマーケティングなどにも活用されるようになり、友人同士を結ぶプラットフォームという役割を超えていくことになるだろう。電話、メール、RSSフィーダー、さらにウェブの機能を統合したようなサービスを展開することになるかもしれない。

それらの機能は、実はMessenger上でこそ使い勝手が良いものになる可能性もある。

たとえば多くのカスタマーサービスなどでは、プッシュフォンのダイヤルによるメニュー選択を行わせている。メニューを選択できるようになるまでの待ち時間を含めて、これを不便と感じない人はいないだろう。Messengerを使えば、航空会社や商店とコンタクトするのがずっと容易になることだろう。さらに一定の業務については非同期(相手側は人間が対処する必要もない)で行えるようにもなる。また、レシートも複数のメールに小分けにして送られるのではなく、Messenger内のひとつのスレッドにまとめられることになって便利だ。AIと連動するようになり、使い勝手が向上すれば、今の時代からは想像もできない効率的なインタフェースが生まれてくることも必然とすら言えるかもしれない。

ただし危険な側面も。

しかしリスクも高いように思う。たとえば、ちょっとした空き時間にメールをチェックすると、目に入るのはスパムばかりということもある。Messenger上にスパムが進出してくれば、スパムがまるで友だちのようなふりをしてメッセージ受信通知を鳴らすことになるのだ。SMSマーケティングの対象となってしまった経験を持つ人は、そのうるささをご理解いただけることだろう。これまでのスパムメールのように「流す」だけでなく、直接に「コンタクト」してくる感じになるのだ。自分の時間を引っ掻き回されるリスクは十分に高いと言えよう。

Facebook Game span was ruining the News Feed. [Image via Thoughtpick]

Facebookのゲームスパムがニュースフィードを台無しにしたこともあった。[Image via Thoughtpick]

「いいね」をして、サービスやブランドなどと積極的に繋がる人もいる。しかしそれはあくまでもフィード上での交流だ。いきなり直接のメッセージが送られてくることもなかったし、また表示されるメッセージに何のアクションもしなければ、ランキングアルゴリズムのおかげでいつの間にかフィードに流れないようにもなったものだった。

しかし2010年を思い出してほしい。スパムがニュースフィードをめちゃくちゃにしてしまうと問題視されたことがあった。Zyngaなどが積極的にソーシャルゲームとしての機能を充実させ、そのために友だちのフィードを汚してしまうことに繋がったのだった。マーク・ザッカーバーグも、Facebook上でのエクスペリエンスを汚染しているもののひとつがゲームであると認めていた。そしてFacebookはFarmVilleなどに関わる投稿を激減させることにしたのだった。

こうした動きにより、ある意味で利用者の「世界」が狭まってしまうこととなった。ひとびとはゲームをしたり、その結果をFacebookに投稿することにためらいを感じるようになった。開発者側にとっても問題は重大で、これまで利用していたプラットフォームがりようできなくなった。ソーシャルゲームに注力していたZyngaなどは利用者数を大いに減らし、企業価値をも大きく低減させることとなってしまった。

Facebookはチャットボットを導入することで、Messenger上でも同種の失敗を繰り返そうとしているのではないだろうか。チャットボットといったん繋がりができてしまえば、利用者は毎日アラートをならされることになるのではないだろうか。

最初に登場してきたチャットボットたちが大失敗であったことも、Messengerサービス上へのボットの投入を妨げるものとはならないだろう。たとえばCNNのチャットボットは「U.S.」のニュースを教えてくれと言われると、見出しに「U.S.」の文字が含まれているものだけを通知した。Springのコマースロボットは、初期の価格設定よりも高いものを売りつけようと執拗だった。そしてPonchoだ。天気予報ネコのPonchoは、天気についてのごく簡単な質問すら理解してはくれなかった。

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天気予報ネコのPonchoに苛ついた人は大いにちながいない。

さらにFacebookはMessenger上でスポンサード・メッセージの実験も行なっている。Messengerで繋がったことがある利用者に対して、通知を送ることができる仕組みだ。Facebookはいまや1四半期に15億ドルもの利益をあげている。しかしそれだけに飽きたらず、Messengerを使った商機拡大を狙いつつ、実は大きなリスクを抱え込もうとしているようにも思える。

Facebookの動きは、Messenger上に膨大なノイズを流すことになりはしないか。ロボット発のノイズが増えることで、利用者が他のアプリケーションに乗り換えてしまったり、あるいは友だちからメッセージがきても放置してしまうようになることはあり得ることだと思う。

Facebookに対策はあるのだろうか?

こうした点について、F8の際にMarcusにも尋ねてみた。「防御のための究極の仕組みがあります。すなわちメンバーに送るメッセージの数や内容について制限することができるのです。メールの場合にはそうしたコントロールは不可能でしたから、Messengerがメールのようになるというのは言い過ぎではないかと思います」とのことだった。

もちろんそうだ。Facebookはスパマーの利用を停止させてしまうことができる。また利用者も特定の相手を簡単にブロックすることができる。しかしそうは言いつつも、Facebookは現在チャットボットをなんとか導入したいと積極的になっているところだ。たとえばビデオゲームのCall Of Dutyのボットなどにも注目を集めようとしている。チャットの世界で支配的な地位を築くためには、こうしたチャットボットの普及発展が欠かせないのだ。

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ビデオゲーム「Call Of Duty」に登場するキャラクターのMessenger用ボット

「私たちの方も十分に気を配っていることはご理解いただけると思います。メッセージが送られるたびに通知されることはありません。ただしスレッドは更新され、メッセージを送ったボットがリストの上位に表示されるようにはなります」。Facebookには、スパムやエンゲージメントレベルについて、ぜひとも注意深く解析するようにして欲しいものだ。スパムの可能性があればボットの動作を制限して欲しい。

あるいはこちらからコンタクトをとったボットであっても、定期的に送られてくるメッセージにこちらが数日にわたって反応していないことを検知すれば、ぜひとも通知をオフにして欲しいと思う。あるいはボットの動作を制限した方が良いケースもあるかもしれない。Facebook上でのフィードの内容は、こちらのアクションにより変化するようになっている。Messengerでもそうあるべきだと思うのだ。利用者の様子を詳細に分析できチャットボットを、開発者やブランドに提供するようにして欲しいと思う。そうなれば、サービスにボットを活用しようとする側で、より適切な運用スタイルを構築することができるようになるだろう。

Messengerにチャットボットが導入するにあたっては、十分に慎重でなければサービス自体の価値を低めてしまう可能性もある。

たとえば、ボットから送られたメッセージだからとMessengerのスレッドを放置するようになり、さらに通知もそのまま放置しておくようになるかもしれない。その次には「人」からなのか「ボット」からなのかの区別も面倒になり、そもそもMessengerを開かなくなるようなこともあり得る。そうなってしまえば時代はSMSに逆行してしまうというようなこともあろう。Messenger風の最新機能はないが、それだけにスパムに埋もれてしまうこともないという安心感が魅力になるわけだ。

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Facebookがこの問題をつぼみのうちに解決しなければ、利用者の関心を失わないためにボットの利用そのものをあきらめざるを得ないようなことになる可能性もあるだろう。

Marcusは「日常生活に訪れる通知などのインタラプションは、すべて重要なものごとに関わるものである必要があると考えています。Facebook利用者する人のすべてにその原則を間違いなく提供するというのは難しいことではあります。しかし手段がないわけではないと思うのです。それが可能であってこそ、チャットボットを含むトータルなサービスが提供できるようになるのだと考えています」。

Facebookの「コミュニケーション戦略」が成功するのかどうか、ここにかかっていると言っても良さそうだ。

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(翻訳:Maeda, H

Windows 10の新プレビュー版公開―Inkでアクティブ・ペンをサポート、スタート、Cortanaなどに多数の改良

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Windows 10のベータテスターには良い週末になりそうだ。今日(米国時間4/22)、MicrosoftはパソコンとモバイルのOSの最新デベロッパー・ビルドをリリースしたこのバージョンはWindows Inkが最初に実装された製品となる。 先月のBuild 2016デベロッパー・カンファレンスで発表されたWindows InkはInkはアクティブ・ペン(スマート・スタイラス)を自由に使えるようにする機能だ。

ユーザーはWindows 10を搭載したパソコンでスケッチブックやホワイトボードに図を書いたり、付箋にメモを書いたりできるようになる。またMicrosoftのEdgeブラウザを使えばページに自由に注釈を書き込めるという。地図その他でスタイラスが使えればたいへん便利だ。もちろんOfficeとも連動する。

このアップデートで、従来Surface Pro 4、Surface Bookでスタイラスを使っていたユーザーはスタイラスの新しいデフォールトであるWindows Ink Workspacにアクセスできる。 Microsoftによれば、これはタスクバーの通知エリアに表示されるという。ただしデバイスでアクティブをペアリングし、現に利用しているユーザーのみに通知される(タスクバー右クリックでマニュアルで追加も可能)。

ink-workspace

スタイラス用のWorkspaceは真っ白なキャンバスで、ユーザーは絵や図を描いたり、アイディアをメモしたりできる。直線を引くのに便利なデジタル定規も用意されている〔トップの写真参照〕。作成物は保存、共有ができる。

文書や画像などの共同作業で特に便利なのがスクリーン・スケッチ( Screen Sketch)機能だ。ユーザーはパソコン画面のスクリーンショットの上にスタイラスで自由に書き込みができる。ユーザーはスクリーンショットの必要な部分をトリミングし、注釈を書き込み、仕事の相手と共有できる。

sketch on files

今日発表されたビルドにはSticky Notes〔スティッキー・ノート〕というスタイラスで簡単に書き込みができるデジタル付箋紙機能も追加されている。カラーやサイズを自由にカスタマイズできるだけでなく、Microsoftによると、近くCortanaやBingと連動するようになるなど、さらに賢くなるという。

ユーザーがスティッキーに電話番号をメモするとそのままワンクリックで発信できるようになる。また書き込んだ内容がチェックリストやカレンダーの日程にもなる。出張の際に登場する飛行機のフライトナンバーをメモしておくと、Bingをチェックして変更があれば自動的にアップデートされるという。

sticky notes

スタイラスをサポートするWorkspaceにはGet Pen Apps〔ペン・アプリへ〕というリンクがあり、どのアプリがペンをサポートしているかが簡単にわかる。ちなみにBuildカンファレンスでのビッグニュースは、Microsoftが用意した2行をアプリのソースコードに追加するだけでどんなアプリでもペン対応になるという発表だった。

Windows Inkは新しいビルドの最大の目玉だが、唯一の新機能というわけではない。そのいくつかを次に紹介する。

他の新機能

スタートメニュー、Cortana、検索が改良された。 aアクション・センターや通知エリアにも変更がある。タスクバー、設定アプリ、ロックスクリーン、その他さまざまな部分がアップデートされている。目に見えない部分ではConnected Standby〔インターネット接続でのスタンバイ〕モードでのバッテリー駆動時間の延長がある。

スタート

いちばん目立つのはスタートメニューだろう。レイアウトを含めた外観が変更された。「よく使うアプリ(Most Used)」と「 すべてのアプリ」が統合され、単一のビューで見ることができるようになり、メニューのトップに移動して見やすくなった。Microsoftは「これによりスクロールやクリックの手数が減らせる」としている。

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「最近追加されたもの」は現在の1行から3行に増やされ、さらに拡張する手段も追加された。 電源、設定も変更を受けている。新しく設定したフォルダーはハンバーガーアイコンをクリックしなくてもスタートから直接アクセスできるようになった。【略】

Cortana

このビルドではMicrosoftのバーチャル・アシスタントのCortanaがロックスクリーンに移った。ユーザーはWindowsが起動されていればいつでもCortanaに(マイクがあれば音声で)、今日のスケジュールや天気などについて質問ができる。いちいちロックを解除する必要がない(ロックスクリーンの機能も改良されている。)。

cortana-lock-screen

【略】

cortana-notifications

さらに…

この他にもCortanaの通知やアクション・センターなどで外観やメニュー項目などに無数の改良が行われている 。詳細はMicrosoftのWindowsブログ参照。

これまでのプレビュー版同様、OSの新機能をできるだけ早くテストするためWindows Insiderプログラムに参加している数百万人のユーザーが今回のInsider Preview Build (14328)をダウンロードできる。ただし Microsoftは「開発中のOSにはさまざまなバグや荒削りな部分が多数残っている」と警告している。あくまでベータ版を使いこなせるユーザー向けだということを忘れてはならないだろう。バグのないバージョンをお望みなら、この夏発表される予定の安定版を待つほうがよい。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

Apple App Storeのデベロッパーサイトがオーバホール、デベロッパー教育のためのコンテンツを充実

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Appleが今日、同社のApp Store(アプリストア)のデベロッパーサイトのオーバホールを発表した。このサイトを今では1100万の登録デベロッパーが利用し、今やアプリの本数が150万以上にもなるApp Storeの成長を、これまで支えてきた。このデベロッパーサイトでは、デベロッパーとしてのビジネスの育て方や、ユーザーの参加性を高める方法などをガイドする記事やビデオを提供しているが、今回のオーバホールで新しいコンテンツが増える。たとえば、アプリストアでアプリを発見してもらいやすくする方法、とか、フリーミアムビジネスモデルのやり方、アプリのアップデートをユーザーエンゲージメントの機会として利用する、などのトピックが加わる。

今のApple App Storeは、デベロッパー間の競争が激しくて、自分のアプリに気づいてもらうことがますます難しくなっており、業界内部で”アプリ疲労“という言葉も生まれているぐらいだから、これら新しい記事やガイドの投入は良いタイミングだ。

Appleも明らかにこのような問題に気づいており、Bloombergの先週の記事が、同社はApp Storeのリニューアルの方法をひそかに検討している、アプリを検索の中でプロモートすることを有料制にするかもしれない、と報じている。検索結果と有料プロモーションとの混在は、Googleと同じやり方だ。

言うまでもなく、App Storeはこれまでの年月で大きな経済的実体に育ってきた。開店以来デベロッパーに支払った金額の合計は400億ドル、そしてApp Storeは合衆国で、190万の雇用に貢献している

しかし、App Storeのミドルクラスは縮退している、という説もある。

だから、Appleが今、デベロッパー教育用の新しいリソースを同社のデベロッパーサイトに供給して、そんな懸念に対応しようとしているのも当然だ。

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新しいサイトのコンテンツは、もっとそのものずばりのハウツーと、説明的な記事の、ミックスになる。たとえば”Discovery on the App Store”という記事は、同サイト上の編集の方針を説明するとともに、とくに、Appleが特定のアプリをフィーチャーする(大きく紹介的に扱う)ときのやり方を述べている。そしてそのほかの記事は、一定のフォーマットによるケーススタディだ。たとえば”Releasing App Updates”という記事では、SlackとSmuleとBuzzFeedにおける、アップデートロードマップのプランニング、既存のユーザーのエンゲージをリフレッシュし新しいユーザーも惹きつけるためのアップデートのやり方、などを解説している。

そのほかに、”Choosing a Business Model”, “User Acquisition Marketing with App Analytics”, “Choosing a Category”といったトピックもある。これらは、売上を得るための本格的なアプリビジネスのガイドだ。

新しいデベロッパーサイトには、デベロッパーが自分のアプリを、“これをフィーチャーすることを検討してください”、というお願いをつけて提出することができる。

“Developer Insights”と題する、ケーススタディのビデオ集もある。そこでは成功したデベロッパーが、自分の知識やそのほかの話題をシェアしている。

たとえばSeriouslyというデベロッパー企業は最初のゲーム”Best Fiends”が一日のダウンロード数150万を超え、最初の年でソーシャルメディアのフォロワー100万を獲得したが、ビデオではソーシャルメディアを利用してブランドとコミュニティを構築するやり方を述べている。

またEvernoteが登場するビデオは、生産性ソフトウェア(OAソフト)のローカライゼーションについて、アプリの日本語化を例に挙げて説明している。

今やiOS App Storeでは中国と日本が売上2位と3位の国だから、ローカライゼーションは言うまでもなく重要なトピックだ。

デベロッパーのための新しいリソースはすでに提供が始まっているが、今後はもっともっと増える予定だ。

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波乱のGoPro、アクションカメラと自動車、玩具、アプリとの連携プログラムを発表

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GoProは木曜日に新しい開発プログラムを静かに発表した。 これはGoProのアクションカメラを自動車その他のサードパーティー製品にできるだけ多く結びつけようという計画だ。このプログラムはサンフランシスコで開催されたプライベート・イベントで発表された。イベントではすでに実施されている提携の成果が多数発表された。

今年に入って発表されたPeriscopeとの連携などがGoProが目指す新たな戦略を示す典型だ。後付けアクセサリーとしてはSyncBac Proというビデオ同期のためのタイムコード生成ハードウェア(先月発表された最新アイテム)などが開発されている。

GoProではFisher-Priceの子供用おもちゃへのアクションカメラの組み込み、パラセールやスキーなどのプレイヤー向けの位置情報その他の重要データを記録するシステムなどを開発するという。BMWとトヨタとの提携は自動車関連のハード、ソフトにも力を入れるというサインだろう。

下のビデオではGoProが開発中のさまざまなアイテムが紹介されているが、私がいちばんクールだと思ったのは手袋をしたままGoProが操作できるジェスチャー・コントロールシステムだ。オートバイやエクストリーム・スポーツで必要とされるギアを装着した場合に非常に役立ちつはずだ。

このタイミングの計画の発表は、財務状況の悪化が公表され株価がジェットコースター状態になったことと関連があるだろう。GoProではユーザーと販路を拡大し、売上を増加させてGoProの輝き(と売上)を取り戻したいに違いない。アクションカメラは需要が一巡してしまえば後は買い替え需要しか見込めない。しかしGoProを毎年買い換えるユーザーはまずいない。新しいクールなアクセサリーとソフトウェアが新しいユーザーを呼び込み、さらに既存ユーザーには積極的にカメラを使ってもらい―できれば新機能を搭載した次世代モデルを買ってもらいたいということだろう。イベントではサードパーティーの製品のための“Works with GoPro”〔GoProと連携〕という規格とロゴも発表された。

works with gopro

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Windows、OS X、LinuxをカバーするMicrosoftのVisual Studio Codeエディタがついに1.0に

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今日(米国時間4/47Microsoftのクロスプラットフォーム戦略の中心となるデベロッパー向けテキスト・エディター、Visual Studio Code (VS Code)が、1年間のベータテストを終え、ついにバージョン1.0となった。Microsoftによれば毎月50万人以上のデベロッパーが現にこのエディタを利用しているという。

Microsoftが昨年のBuildデベロッパー・カンファレンスで、VS Codeを発表したのは驚きだった。Microsoftはそれまで OS XやLinuxをカバーするエディタなど一切出したことがなかったからだ。Visual Studioのブランドでとなると驚きは一層のものがあった。

ただしMicrosoftがリリースした当初、この製品は多くの重要な機能を欠いており、VS Codeエディタ自体はまだオープンソースではなかった。しかしその後Microsoftはこれらの欠点を修正した。

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エディタにとって必須のAPIも公開され、デベロッパーは現在エディタの機能を自由に拡張できるようになった。VS Codeのユーザー・コミュニティーは1000種類以上のエクステンションをすでに開発している(当然だが、ここでも大半のエクステンションは「ロングテール」に属する)。現在VS Codeは当初よりはるかに広い範囲の言語をカバーしている(当初のターゲットは主としてJavaScriptとTypeScriptだった)。各種の有用なエクステンションのおかげでVS Codeは今やNode.js、Go、C++、Python、PHPその他の言語でソフトを書くために利用できる。

昨年ベータ版を発表して数ヶ月後にVS Codeはオープンソース化され、ソースコードがGitHubから入手できるようになった。

今後の見通しについていえば、VS Codeチームは基本を重視した開発を続けるとしている。「パフォーマンス、安定性、アクセシビリティ、互換性がユーザーが最も重視するポイントであり、これはわれわれ自身の考えでもある」とMicrosoftは述べている。

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店舗や企業の配置をマップに正しく表示するPlaceKitのSocialRadarが国際展開へ

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オンライン地図はこの数年で驚くほど精度が改善された。しかし建物の中のショップや企業の位置となるとこころもとない場合が多い。Uberやタクシーのドライバーが目的のレストランの裏口の前で客を降ろそうとするのはそのためだ。

SocialRadarの新しいPlaceKitはビジネス向けにマップ上の正確な位置データをサポートするサービスだ。この情報はきわめて精密なので、レストランの入り口や会社の受付がどちら側にあるかもわかる。

こうしたことを口で言うのは簡単だが、実際にはどうだろうか? SocialRadarはデモサイトを用意して自社の地図データをGoogleマップと並べて表示した。なるほどひと目見ればどちらのデータがより正確かわかる。

SocialRadarのCEO、Michael Chasenは大成功を収めた教育テクノロジーの企業Blackboardの共同ファウンダーであり、1997年から2012年までCEOを務めた。当時Blackboardのエンジニアは位置情報ベースの一般向けアプリの開発を試みたが、すぐにビジネスの位置を示すデータとしては既存のロケーション・サービスの情報が根本的に不正確であると気づくことになった。そこでチームはこの問題を修正するツールを独自に開発した。その最初の成果がLocationKitというツールで、これは位置情報の管理を行うSDKだった。デベロッパーはAppleとGoogleのロケーション・マネージャーの代わりにこのツールをドロップインで利用できた。

デベロッパーがユーザーのビジネスの位置を正確に地図上に表示する際にLocationKitは大いに助けとなったが、新しい PlaceKitはビジネスの位置する周囲の環境までよく理解している。

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PlaceKitの位置情報データはオフィス・ブロックも正確に表示する

Googleマップはほとんど常に検索地点の周囲の「興味ある場所」をサイドバーに表示するが、レストランにはどちらの道から入ったらよいかについてはあいまいなことが多い。 SocialRadarのデータはこの点はるかに正確で、ユーザーはレストランやショップへのアクセス経路で迷うことがない。開発チームはこのデータベースをオフィスビルにも拡張している。他の地図はそのビルを所在地としている企業名を単にまとめて表示することがほとんどだが、SocialRadarはこうしたデータもきちんと整理している。

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上のオフィスブロックがGoogleマップではこういう表示になる

Chasenはこうした正確な位置情報の表示を可能にするテクノロジーについては多くを語ろうとしない。しかしチームは「われわれが開発した独自のアルゴリズムを利用して街路レベルの画像情報と人力による解析をうまく組み合わせる方法を発見した」という。私が理解したところによると、人力による解析作業のかなりの部分はMechanical Turkのアウトソーシングを利用しているようだ。ただしSocialRadarは開発したテクノロジーについていくつかの特許を申請している。

SocialRadarの新しい位置情報データベースはアメリカの大都市のほとんどをカバーしている。さらにChasenはフランスの首都、パリの位置情報を整理するためにこのツールをテストしているところを見せてくれた。SocialRadarではできるかぎり早い時期に位置情報サービスを外国に拡張する計画だ。その手始めはヨーロッパになるという。

現在SocialRadarはデータを大企業やモバイル広告代理店などにライセンスする計画だ。残念ながらすべてのデベロッパーが利用できるセルフサービス・タイプのプランではない。しかしChasenは将来はそうしたサービスも視野に入れていると語った。

SocialRadarのツールの有効性を目の当たりにして、大規模なサービスを提供するビジネスがこのテクノロジーを採用すれば効果的てあることは間違いなさそうだと感じたU(たとえばUberやLyft、モバイル広告ビジネスなど)。あるいはSocilaRadarをストレートに買収しようとする企業も現れるかもしれない。

画像: UNDER A CC BY 3.0 LICENSE

〔日本版〕デモサイトを開くとGoogleマップが表示される。画面上部のSocialRadar Placekit Mapsをクリックするとショップやビジネスが詳しく表示されたマップになる。Office Buildingと書かれた横の下向き三角のアイコンをクリックするとドロップダウン窓に入居しているショップやオフィスの一覧が表示される。

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Build 2016で驚きの発表―Microsoftはこの夏Windows 10でBashシェルをサポート

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Microsoftは今日(米国時間3/30)のBuild 2016カンファレンスで多くの重要な発表を行ったが、その中で驚きのニュースがあった。

GNUプロジェクトのBashシェル(Bash=Bourne Again SHell)がWindowsに移植される。このシェルは長年Linuxの各種ディストリビューションとOS Xの標準シェルだった。 一方Microsoftは独自のPowerShellをコマンドラインの標準シェルと位置づけてきた。

いちばん重要な点は、WindowsでBashが使えること以上に、これまでデベロッパーが書いてきた膨大な .sh BashスクリプトがWindowsでも作動するようになったことだ。同時にBashスクリプトをEmacsで編集できるという点も見逃せない。なおMicrosoftはこの発表に関連してWindows 10にLinuxサブシステムを導入すべく〔Ubuntuのデベロッパーである〕Canonicalと協力していることを発表した。

「バーチャル化やエミュレーションなしにフル機能のUbuntu環境がWindowsネーティブで利用できるようになることは、〔コンピューティングにとって〕伝統的にありえないとされてきた決定的な一歩だ。これによってWindowsにとってまったく未知の領域への扉が開かれる」とCanonicalのファウンダー、Mark Shuttleworthは今日発表された声明で述べた。「フリーソフトウェアを最大限の多数のオーディエンスに届けるというわれわれの当初からの目的にとっても、この進展は考えていないものだった。今やMicrosoftはUbuntu for Windowsにコミットしており、Canonicalはこれを歓迎する。Windowsのデベロッパーはこの驚くべき方法によりLinuxの世界を探検できる。われわれ自身も予期しなかった事態の進展によ、り広大な可能性が開けてきた」とShutleworthは付け加えた。

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今回のMicrosoftの動きは、Windows以外のプラットフォームもターゲットにするデベロッパーにとってWindowsをよりよいOSに改良するという効果がある。MicrosoftのCEOがサティア・ナデラに交代して以後、同社はWindowsだけでなく、それ以外のあらゆるプラットフォームとそのデベロッパーをターゲットする方向に一挙に舵を切った。

数年前ならMicrosoftがWindowsのライバルであるLinuxオペレーティング・システムと、たとえわずかでも関係を持つなどということは可能性する考えられなかった。しかし今やMicrosoftはLinuxをAzureでサポートしており、自社の独自テクノロジーを数多くオープンソース化している。また家宝ともいうべきSQLサーバーソフトをLinuxにポーティングする計画だという。

Bashはこの夏に予定されているWindows 10の1周年記念アップデート(Anniversary Update)でリリースされる。ただしWindows Insiderプレビュー版のユーザーはその前に入手できる。また将来の計画として、MicrosoftはBash以外のシェルもWindowsに移植する予定だとしている。

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StratumnはブロックチェーンのHerokuを目指す―通貨取引以外のアプリ開発にも大きなチャンス

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パリを本拠とPaaSのスタートアップStratumnに注目だ。このチームはブロックチェーン・アプリの開発に興味を持つデベロッパー向けにアプリを公開、共有できるプラットフォーム・サービスを開発中だ。

Stratumnを利用すれば、このプラットフォームにさまざまなアプリをアップロードして作動、共有させることができる。アプリはbitcoinのブロックチェーンと通信が可能だ。機能としてはHerokuによく似ている。ブロックチェーン開発者のためのHerokuといえるだろう。

Stratumnは最近、Otium Ventureとエンジェル投資家から67万ドル(60万ユーロ)を調達した。エンジェルには Ledger WalletのCEO、Eric Larchevêqueが含まれる。

本質的にいえば、bitcoinブロックチェーンというのは あらゆるトランザクションをタイムスタンプ付で安全、確実に記録する分散データベース・システムだ。非常に多数の開発者が暗号通貨とはほとんど関係ない分野でbitcoinのブロックチェーンを利用しようとしている。

たとえばStamperyはブロックチェーンのデータベース能力を利用して伝統的な公証人制度を変革しようとしている。このサービスではユーザーの権利、義務などに関わる重要事項について法的に有効な記録が提供される。ブロックチェーン・システムがこうした記録の正当性を保証する。

Stratumnはこうした現状を見て、さらに一歩先に踏み出そうとしている。Stratumnを利用すれば個々のアプリを苦労してゼロから作る必要はない。つまりデベロッパー側でブロックチェーンと通信するための面倒なプログラムを書く必要がなくなる。

この機能を実現するために、Stratumnが開発したのがオープン規格のChainscriptだ。簡単にいえば、Chainscriptはいくつかのデータを保持するJSONファイルを生成する。デベロッパーはStratumn.を通じてこのデータをブロックチェーン・システムに送る。Chainscriptを利用しているアプリはその後ブロックチェーンによるデータの認証を利用できる。

つまり前記のStamperyのようなデベロッパーは、Chainscriptを使ってStratumnプラットフォームの上に独自のアプリを構築できる。Stamperyが目的とする契約関係書類の公証も大きな分野だが、要するにStratumnは暗号通貨取引以外のブロックチェーン・アプリの開発全般にビジネス・チャンスを見出そうとしている。

現在利用されているブロックチェーンで最大のものは言うまでもなくbitcoinのブロックチェーンだ。しかし多くの研究機関や企業は他のブロックチェーンの可能性を探っている。Stratumnはスタートアップとしてもまだごく若い存在だが、もしbitcoin以外のどんなプロックチェーンにも対応できるプラットフォームを開発することに成功すれば、デベロッパーはブロックチェーン分散デーベースの公証能力を生かしたアプリを開発するにあたって大幅に労力を節約できるはずだ。これはブロックチェーンのユースケースとして非常に興味ある展開となるだろう。

画像: Jason Benjamin UNDER A Public Domain LICENSE

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

GoogleがAndroidゲームデベロッパーのための新しい機能/サービスを提供…ストリーミングAPI、10分間ゲーム試用広告など

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Googleが今日(米国時間3/14)、Game Developers Conferenceの例年行われるDeveloper Dayで、ゲームデベロッパーのための新しいサービスをいくつか発表した。それには、仮想グッズや仮想通貨を管理するツール、ゲームプレイの実況(ライブまたは録画)をYouTube上で簡単に共有できるためのVideo Recording API、モバイルの検索結果ページから直接、10分間ゲームを試せる新しい広告タイプ、などが含まれている。

Google Playの実績を物語るいろいろな数字の発表はなかったが、同社によるとゲームのインストール数はもうすぐ100万を突破、その年成長率は50%だそうだ。

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今日発表された新しい機能の中で、たぶんいちばん面白いのは、検索結果からゲームを試しプレイできる”Search Trial Run Ads”という広告タイプだろう。

数週間後にローンチするこの新しい広告は、ゲームを検索結果のページから直接ストリームできて、インストールしなくてもプレイできる。プレーヤーが”try now”ボタンを押すと、Googleのサーバーからユーザーのスマートフォンへゲームが送られてくる。そしてそのゲームを試用できる期間は10分間だ。10分をすぎたら、Google Playでそのゲームをインストールしろ、というメッセージが出る(もちろん有料ならお金を払う)。

Googleは、検索結果からのアプリの試用、という機能を、Hotel Tonightなどゲーム以外でも提供している。ただしもちろん、試用のためのアプリのストリーミングはゲームの方がずっと難しいから、当面、検索結果からのゲームの10分間の試用は、Wi-Fiユーザーのみに提供される。

今日のアップデートに含まれる新しい広告機能としては、ポートレートビデオ広告(縦長画面)と、過去30日以内に特定のゲームを30分以上プレイしたユーザーを対象とするターゲット広告がある(あるいはGoogle Play Gamesのゲームならなんでも)。そういうユーザーは新しいゲームに飛びつきやすい、という考えからだろう。これら二つの機能は、数週間後にローンチする。

インディーのデベロッパーのために、GoogleはGoogle Playに”Indie Corner”を作った。同社によるとそれは、“インディーのデベロッパーたちが作ったすばらしいゲームに光を当てるため”だ。デベロッパーが、そこに載りたいと申し込むと、まずGoogleが審査をする。もちろんそのゲームは、“す!ば!ら!し!い!”出来栄えでないといけません。

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ゲームプレイ実況ビデオを作るためのAPI、Video Recording APIも、おもしろそうだ。デベロッパーが自分のゲームでこのAPIを利用していると、プレーヤーは自分の今現在のプレイをそのままYouTubeへストリーミングできる(残念、Twitchではない!)。また、ゲームプレイを録画しておいて、あとからYouTube上で共有することもできる。このAPIが一般公開されるのは、“数か月後”だそうだ。

今日発表されたそのほかの新しい機能として、ゲームのニューバージョンをGoogle Playにアップロードしなくても、アプリ中のいくつかのパラメータをリアルタイムでアップデートできる、というものがある。また、デベロッパーが、自分のゲームの中でいちばん多くお金を使いそうな人や、すぐにドロップアウトしそうな人を予測できるサービスもある。

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Microsoft、HoloLensのデスクトップ・エミュレーターを今月末に公開―3000ドルも支払わずに開発が可能

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Microsoftのミックス・リアリティー〔AR/VR混合〕プラットフォーム、HoloLensアプリ開発には興味があるが、デベロッパー・キットを3000ドルで予約するのはためらっている読者も多いだろう。いかにも高価な投資だった。今日(米国時間3/25)、Microsoftは 「HoloLensのハードウェアを実際に所有していなくてもアプリが開発できるデスクトップ版のHoloLensエミュレーターが近く利用できるようになる」と発表した

このエミュレーターは、Microsoftの他のHoloLens向け開発ツールと同様、HoloLensハードの実機の第1回出荷が予定されている3月30日以前に入手可能になる。エミュレーターを利用すれば、デベロッパーは、シミュレーションされた部屋の中を歩きまわる、キーボード・コマンドを打つ、マウスやXboxコントローラーを試すなどができる。

エミュレーターには、標準でリビングと寝室という2タイプの部屋の家具配置を含めた空間地図が同梱される。 Hololensを所有しているデベロッパーは現実の部屋をHoloLensでスキャンして新たな空間地図を作成し、その中でエミュレーターを使うこともできる。

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エミュレーターは独自のHyper-Vバーチャル・マシンを備えており、アプリのVR開発に関する限り、アプリはエミュレーターを相手にしていることを気づかないという。

ホロ・アプリ開発の標準ツールはMicrosoftが最初に基本的なアプリ開発のデモを公開したときから変わっていない。アプリ開発にはVisual StudioとUnityが使えることが必要だ。HoloLensアプリの開発を助けるため、今日、Microsoftはビデオ・チュートリアルその他のドキュメントの提供していくと発表した

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Google PlayアプリストアのDeveloper Program Policy Centerが新装オープン、ルールをアップデート

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Googleが今日(米国時間3/1)、Developer Program Policy Center日本語)のルック&フィールを一新して、デベロッパーがガイドラインを見つけやすいように、読みやすいように、そして理解しやすいようにした。ページデザインにはGoogle自身のカラフルな”Material Design“を採用して、ポリシーをテーマ別にまとめている(”Restricted Content”(制限されているコンテンツ)、”Privacy and Security”(プライバシーとセキュリティ)など)。それだけでなく、ルールもアップデートされ、違反解決のためのポリシー施行に関する情報が拡大され、また、よくある違反に関しては実例や詳細な指針を視覚的に示している。

Google Playで許容されるアプリのタイプについては、GoogleはAppleほど制約的ではないが、でも長年のあいだに少しずつ、監視を強化している。昨年(2015年)は内部でひそかにアプリ検討チームを立ち上げ、アプリのポリシー違反などを調べるようになった。マルウェアなど、コンテンツの違反を、Googleは自動的にスキャンしている(性的なコンテンツや著作権の侵犯など)。

しかし、アプリのコンテンツや振る舞い、広告の使い方など、一連のガイドラインをGoogleはデベロッパーに前から伝えているにもかかわらず、依然として提出後に拒否されるアプリが跡を絶たない。

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Googleによれば、Developer Program Policy Centerのデザインを変えた目的は、ポリシーの伝え方を改善して、デベロッパーの無自覚なミス(うっかりミス)を防ぐことだ。

これまでのような、ポリシーの箇条書きに代えて、まず、各セクションがグリッド(格子)上のカラフルなカードに書かれている(上図)。こちらの方が、箇条書きの項目を読みながら探すより、探しているポリシーの分類分野(セクション)を見つけやすいだろう。デスクトップでも、あるいはモバイルのデバイスからでも。

そして、ひとつのトピックに飛び込むと、今度は具体的な指針が図解で説明されている。その下には、文章で詳しい説明がある。

“施行”のセクションを拡張

もうひとつの重要な変化は、ポリシーの施行のされ方を詳述するセクションが拡張された日本語)ことだ。それによりデベロッパーは、違反が生じた場合の解決方法を詳しく理解できる。

以前のこのセクションは、アプリの削除や格付け、ユーザーのコメントなどに関する、Googleの問い合わせ先のURLが、リンクとしてあるだけだった。また、深刻な違反や繰り返される違反はデベロッパーのアカウント閉鎖に至る、と厳しい文章もあった。

[ポリシーの範囲]
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今度のセクションはGoogleのポリシーを詳説し、低品質なユーザー体験を与えるアプリはGoogle Playでプロモーションの対象にならない、などと書かれている。また、ポリシー違反の管理と報告のところには、アプリの検証や控訴の手続き、アカウント閉鎖の理解など、さまざまなヘルプページへのリンク集がある。

このように、ポリシーの施行について詳しく説明することによってGoogleは、アプリの提出過程に関するデベロッパーの不安や心配を取り除こうとしている。これまでは、アプリがGoogle Playから追ん出されたとき、説明へのリンクが示されていても、デベロッパーには理由がよく分からないことが多かった。

そしてデベロッパーがヘルプや詳しい説明を求めると、そっけない定型文の返事が来るだけだった(AppleのiTunes App Storeでもそれは同じだ)。しかし今度の、ポリシーの施行に関する拡張セクションにより、アプリが拒絶されたときでもデベロッパーはその理由や過程について、十分な理解を得ることができる。

ポリシーの変更

Developer Program Policy Centerのルックスを新しくしたことに加えてGoogleは、いくつかのポリシーを、実際に行われていることに合わせてアップデートした。ポリシーを熟知している長年のデベロッパーでも、それらの変更は知っておいた方がよいだろう。

たとえば、Googleは広告のポリシーをアップデートして、デバイスの機能を損なうようなものなど、不適切な広告を禁じた。また、システムの電源管理機能をバイパスするアプリは、デバイスとネットワークの濫用にあたるとして制限した(たとえばDozeのような機能があるとするアプリを、Marshmallow以外の環境で使うこと)。

さらにGoogleは、ユーザーデータポリシーの一環として、ユーザーからコンタクト情報や電話のデータを集めるようなアプリは、プライバシーポリシーがアプリの要件として適用されることを明らかにした。

ほかにももっと変わったことはあると思うが、それをほじくりだすためには、アップデートされたポリシー全文を精読することが必要だ。

Policy Centerの変化はGoogle Playのユーザーに直接関係がある変化ではなく、あくまでもデベロッパー向けだが、全世界のデベロッパーに対してルールを明確かつ単純化することによってGoogleは、毎月10億のビジターが訪れるアプリストアのアプリケーションのクォリティーを上げようとしている。

新しいポリシーセンターはすでにローンチしており、変更に対するフィードバックが求められている

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

Microsoft、HoloLensのデベロッパー向け開発キット予約開始―実機を含めて価格は3000ドル、出荷は3月30日

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MicrosoftはHoloLensのデベロッパー向け開発キットの予約受付を開始する。今回の発表を機に、MicrosoftはHoloLens版Skypeと何本かのゲームソフトなどHoloLensの可能性をデモするアプリをいくつかリリースした。

開発キットはデベロッパーごとに1セットを注文できる。ただし当面は招待されたデベロッパーのみで、価格は3000ドル。アメリカとカナダのデベロッパーに製品が出荷されるのは3月30日からとなる。

またHoloLensについていくつか新たな情報が公開された。

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注意すべきなのは、今回はあくまでデベロッパー向けリリースで、消費者版の発表ではないという点だ。これまでMicrosoftはHoloLensアプリ開発に関心のあるデベロッパーと水面下でやり取りをしてきたが、いよいよ正式にデベロッパーを開発プログラムに招待する運びとなったようだ。最初に招待されるのは誰なのか、広報担当は詳しいことを明らかにしなかったが、デベロッパーは数回に分けてまとめて招待されるようだ。

まだHoloLensプログラムへの参加を申し込んでいない読者も今からでも遅くないので申し込んでみるとよい。今後のバッチで招待される可能性は十分にある。

さて大枚3000ドルをはたくと何が手に入るのか? HoloLensのデベロッパー・エディションのパッケージには、まずHoloLensの実機が含まれている。クリッカーと呼ばれるループに指を通してクリックするコントローラー、キャリングケース、ノーズパッド、オーバーヘッド・ストラップ、バッテリー充電器、それにマイクロファイバーの布も含まれる。HoloLensヘッドセットはコンピューターに接続されなくても独立で作動する。64GBのフラッシュメモリーと2GBのRAM(これは少々サイズが小さすぎるようだ)を内蔵する。ヘッドセットの重量は576gだという。

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Microsoftによれば、バッテリー駆動時間は2時間から3時間で待受時間は最長2週間だ。HoloLensは自然空冷なのでファンがうるさく回るということはない。Intel の32ビットCPUとMicrosoft独自のHPU(Holographic Processing Unit)ハードウェアを備える。

もちろんこれ以外に大量のセンセー、カメラが内蔵されている。HPUはHoloLensのセンサーが収集した情報を解析し、必要な映像をリアルタイムで生成する。

ディスプレイは16:9のHD2台で、230万画素の「ホログラフィック解像度」を備えるということだ。【略】

HoloLensのデモ・アプリとゲーム

MicrosoftのAlex Kipmanのブログ記事によれば、 HoloLensはUniversal Windows 10アプリであるという。つまりWindows 10で正常に作動する現代のアプリはすべてHoloLensでも表示される(ただしHoloLens固有の機能は利用できない)ということだ。

今回のリリースを機に、MicrosoftではHoloLensのデモのためにいくつかのアプリを発表した。当初からHoloLensのデモに使われてきたSkypeが含まれるのは当然とだが、今回HoloLensからSkypeを使うユーザーは自分の見ているものを普通のデスクトップ・パソコンを使っているユーザーとも共有できるようになった。

またいくつかのゲームも公開された。

FragmentsはAR/VRのミックス・リアリティーの犯罪ドラマ仕立てで、舞台は「居間」だ。Microsoftによるとユーザーはこの部屋を歩きまわり、ソファに腰掛け、チャットができるという。

もう一つのゲームはYoung Conkerというプラットフォームで、ユーザーは自分がいる場所をベースにユニークなゲームを作成できる。どちらのゲームもAsobo Studioが開発した。

これに加えてMicrosoftは近くRoboRaidというゲームもリリースする。ユーザーは(もう見当がついただろうが)自宅をロボットの襲撃から守る。またHoloStudio 3Dモデリング・ツールや世界の絶景を360度パノラマで体験できるHoloTourも公開されるという。夏には「誰でもユーモラスで感情移入ができる3Dビデオ」を作れるActiongramのリリースも予定されている。

残念ながらHoloLens版のMinecraftに関する新情報はない。

HoloLensは私が久々に興奮して期待しているMicrosoftの製品だ。これまでのところは非常によくできたデモというレベルだったが、いよいよデモの世界を出るようだ。HoleLensが現実の環境でどんな能力を発揮するのか楽しみだ。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

ソフトウェアの配布過程を自動化するJFrogが$50Mの巨額を調達して飛躍を目指す

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オープンソースのソフトウェア配布ツールを作っているJFrogが今日(米国時間1/20)、5000万ドルの資金調達を発表した。これまで同社は二回のラウンドで1050万ドルを調達していたが、それに比べると5000万は大きな跳躍だ。

投資家はScale Venture Partners, Sapphire Ventures, Battery Ventures, Vintage Investment Partners, Qumra Capital, 参加した既存の投資家はGemini Israel VenturesとVMwareだ。

JFrogは、二つのメインプロダクトの商用バージョンとエンタプライズバージョンを提供している。そのうちJFrog Bintrayはデベロッパによるソフトウェアの配布を自動化し、他のJFrog Artifactoryは配布前のソフトウェアのパッケージ管理を助ける。

CEOのShlomi Ben Haimは類似製品との差別化要因について、同社製品がプラットホームを特定しないことを挙げる。つまり、いろんなデベロッパツールと統合できる。2008年の創業以来、1050万ドルという控えめな額を調達してきたが、今回の大金は、急増している需要に対応するためだ。とくに、さまざまな統合化のリクエストが多くなっている。

JFrogの顧客リストには、Google, LinkedIn, Twitter, Cisco, VMware(同社の投資家), Netflix, MasterCardなど、そうそうたる名前が並んでいる。

たとえばGoogleは、Androidの配布にBintrayを利用している。

これらはどこも、ソフトウェアのアップデートをコンスタントにリリースしている企業で、JFrogはそのプロセスをバイナリのレベルである程度自動化する。GitHubのようにコードのレベルではない、とHaimは説明する。

8年経った今、社員は110名で、年内には200近くに膨らむだろう、という。企業を無理なく自然に成長させることは難しい場合もあるから、この新たに得られた資金で、プロダクトを改良するための戦略的買収も考えたい、とHaimは語る。

買収は、二つの問題を解決するだろう。同社に、これまでなかった能力を与えるとともに、人材も確保できる。

Haimが挙げる最大の競合相手は、専門的なサポートをを提供するMaven(Javaデベロッパ向け)や、DockerのRegistryツール(Dockerユーザ向け)だ。JFrogは、デベロッパが使用しているツールが何であれ、ソフトウェアの配布という目的に利用できる。

しかも今では、Haimも指摘するように、単一のデベロッパ環境でソフトウェアを開発している企業は、規模を問わず、どこにもない。複数の環境を横断するツールセットを提供することによってJFrogは、ソフトウェアの配布と管理の全プロセスをすっきり単純化しようとしている。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa)。

スタックの誤謬―大企業が新分野参入でいつも失敗する理由を考える

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多くの企業が新分野に挑戦する際に「スタックの誤謬」を犯し、その結果、劇的に失敗する。

伝統あるデータベース企業が「アプリ化なんか簡単だ」と思ったり、バーチャル・マシンの企業が「ビッグ・データなんかなんということもない」と思ったりするのがよい例だ。われわれはこういう考え方を「スタックの誤謬」と呼んでいる。

スタックの誤謬とは、企業がこれまで積み重ねてきたさまざまなレイヤーの上にもう一段レイヤーを重ねる〔スタックする〕ことを「ごく簡単だ」と思い込むことと定義できる。

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〔日本版注〕漫画フキダシ:心理学者「心理学などというのは社会学の応用分野にすぎない」、生物学者「心理学などというのは生物学の応用分野にすぎない」、化学者「生物学などというのは科学の応用分野にすぎない」、物理学者「結局すべての科学は物理学の応用分野にすぎない。一番偉い学問をやっていてよかった」、数学者「おお、なんだきみらはそこにいたのか。まるで見えなかったよ」

漫画のクレジット: XKCD

数学者は往々にして自然界は結局数学の方法で描写できると信じている。つまり、数学者に言わせれば「物理学なんて応用数学の一分野にすぎない」etcというわけだ。

「ただのアプリにすぎない」―スタックの誤謬

実はビジネスの世界でもわれわれは似たような幻想に陥っている。データベース企業は「SaaSアプリなんてデータベースの簡単な応用分野にすぎない」と思っている。こういう幻想は、データベース企業にSaaSアプリを作り、ライバルとの競争に勝ち抜き、新事業を成功させるのは簡単なことだという誤った安心感を与える。

歴史が教えるとおり、下位のテクノロジー要素を苦労して開発したのはそれらのテクノロジーのベンダー企業だったにもかかわらず、クラウドのIaaS分野を支配しているのはオンライン通販から出発したAmazonだ。個別要素技術の開発のパイオニアだったVMwareはAmazonにはるかに引き離され、トップをうかがうどころではない。AWSのサーバーはすべてVMWareが開発し、現にそのコア・コンピテンシーである仮想化テクノロジー上で作動している。にもかかわらずこの市場のかけ離れた1位はAWSだ。またOracleはCRMのSaaS分野でSalesforceに勝てない。Oracleとしては「Salesforceなど単なるデータベース・アプリのユーザーにすぎない」と思っているだろう。実際SalesforceはOracleのデータベース・ソフトウェアを使っている。

Appleはチップを設計し、プログラム言語を作るといった上流から世界の都市に展開されたショップまで、市場の垂直統合に大きな成功を収めてきた。にもかかわらずスタックの誤謬と無縁ではいられない。Appleは一見単純なアプリ―写真共有や地図―を作るのがいかに難しいかを発見しているところだ。

振り返ってみるとこうした例は数多い。 IBMはIBM PCの設計、製造に成功したがそのハードウェアのレイヤーの上にスタックすべきソフトウェアのレイヤーについては深く考えることがなく、結果としてMicrosoftにOS市場を明け渡すことになった。

1990年代にOracleのファウンダー、ラリー・エリソンはSAPがERPを売ってグロテスクなまでに巨大な利益を得ていることに気づいた。ERP(統合基幹業務パッケージ)は各種業務プロセスを自動化するソフトウェアだが、その実体はいくつかのテーブルとそれらを接続するワークフローだ。エリソンは数千万ドルを投じて市場参入を図ったが、結果はまだら模様だった。最後にOracleは顧客管理、人事管理などの優秀なシステムで知られるPeopleSoftとSiebelを買収してアプリ市場で地位を確立することに成功した。

大企業がスタックの誤謬の罠に陥り続ける理由は?

スタックの誤謬はある意味で人間性の本質に基づくものだ。われわれは自分が熟知している分野こそ価値があると考えたがる。読者が仮に巨大なデータベース企業でチップを設計しているとしよう。CEOがあなたに「われわれはIntelやSAPと競争できるだろうか?」と尋ねたとする。「私がチップを開発したのはRDBソフトを走らせるためでそれ以上のことは分かりません」と正直に答えるエンジニアはまずいないだろう。逆に、それまでに蓄積されたチップ設計のノウハウをもってすれば、その上にERPアプリを走らせるという新たなレイヤーを重ねるのは簡単だと考えるに違いない。ERPなどといっても所詮はテーブルとワークフローにすぎない。

成功を阻むボトルネックは、ツールの詳細を知らないことによるのではなく、顧客のニーズを理解できないところに存在する。データベースのエンジニアは顧客が必要とするサプライ・チェーンの管理についてほとんど何も知らず、企業がどんなソフトを必要としているか理解できない。もちろんそうした分野を知っている専門家を雇い入れることはできる。だがそれは〔その企業の〕コア・コンピテンシーを向上させることにはならない。

プロダクト・マネージメントというのはどういうものを作ればいいかを知るというアートだ

イノベーションというのはスタックを下に降りる方が〔既存の知識を利用できるので〕がはるかに容易だ。逆にスタックを上に重ねるのは驚くほど難しい。

エンジニアがスタックを下に降りる場合、自分自身がそうした基礎となるスタックのユーザーであり、何が必要なのかを体験から熟知している。たとえばAppleは次世代のコンピューター・チップに何が必要とされるかを正確に知っていた。Appleは当初からチップ設計の技術を持っていたわけではない。しかし重要なのは顧客ニーズであり、Appleはその部分をよく理解していた。テクニカルな能力が必要ならライセンスを買うことも専門家を採用することもできる。しかし市場のニーズを根底かから正確に把握する能力は金を出せば手に入るというものではない。

これがAppleが半導体の設計と製造で成功を収める一方、マップ・アプリでは失敗した理由だ。

Google、Facebook、WhatsApp

Googleが別の良い例を提供してくれる。Googleはメールと検索の分野で圧倒的な地位を築いており、われわれの興味、関心がどこに向いているかを正確に知っている。しかし、一見するとささいなことに思える「それを利用したアプリ」を作ることができない。つまりソーシャル・ネットワークづくりで失敗している。

これはスタックの誤謬のもっともはなばなしいサンプルかもしれない。既存のレイヤーの上に新たなレイヤーをスタックしていくことは可能だ。難しいのはどんな新しいレイヤーを重ねたらいいのかを知るのが難しいことだ。

プロダクト・マネージメントというのはどういうものを作ればいいかを知るというアートだ

スタックの誤謬という現象は、大企業が一見すると自明なテーマ、つまり熟知している分野なので少し手をのばすだけで十分につかみ取れそうなにテーマに挑んでは失敗する理由を理解するための重要なヒントになる。その答えはおそらく、何(what )をすべきかがどのように(how)すべきかより100倍も重要だという点にあると思われる。

画像: Andrey Kozachenko/Shutterstock

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

AWS、t2.nanoをリリース―EC2で最小、最安のインスタンス〔東京リージョン利用可能〕

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今年、ラスベガスで開催されたAmazonのデベロッパー向けカンファレンス、re:Inventで AWSは「近く、EC2コンピューティング・サービスで、極めて小型だが必要な際には急速に拡張可能なインスタンスの提供を開始する」と発表した。そのインスタンスがt2.nanoと名付けられて利用可能となった

AmazonのUSリージョンでこの「ナノ・インスタンス」を動かすには月額で4.75ドルしかかからない(つまり1時間あたり0.0065ドルだ)。もちろんEC2として最安のインスタンスとなっている。もし1年分の作動を確保するなら時間単価はさらに0.0045ドルに下がる。前金は必要ない。他のリージョンからの利用は若干高くなる〔東京リージョンは時間単価0.01ドル〕。

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このインスタンスには 512MiBのメモリが付属し、 1コアのバーチャルCPUは必要に応じてバースト可能だ。

Amazonでは「このインスタンスはアプリを開発中のデベロッパーやトラフィックの少ないウェブサイトのホスティングにもっとも適している。どんな目的にせよ、大量のメモリやCPUパワー長時間必要としないような作業なら何にでも使えるだろう」と述べている。Amazonのチーフ・エバンジェリスト、Jeff Barrはまた「教育やトレーニングの場でも多数のt2.nanoが利用されるだろう」と期待を述べた

新しいナノ・インスタンスは、 AWSの他のバーチャルCPUに比べて低い能力しかないが、CPU利用率が 5%以下のアイドル状態になるとAWSはユーザーにボーナスCPUクレジットを付与する。このクレジットは後でバースト・モードが必要になった場合に利用できる。

t2.nanoは 32bitまたは 64bitで動作する。Amazonはこのバーチャル・マシンでWindowsを作動させることを推薦はしておらず、その場合には
Server Core AMIを利用することになるだろう。もちろんWindowsの利用が禁止されているわけではない。

EC2ではこの種のバースト可能な小型インスタンスのシリーズを各種揃えている。これまで、micro、small、medium、 largeが提供されていたが、今回これにt2 instancesが加わったわけだ。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

立ち上げから3年余のAtlassian Marketplaceでサードパーティデベロッパが$120M以上を売り上げる

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Atlassianは株が上場されたけれど、この急成長中のデベロッパコラボレーションツール*の企業でお金を儲ける方法は、ほかにもある。同社によると、サードパーティデベロッパのためのマーケットプレースAtlassian Marketplaceは、今や売上が1億2000万ドルに達し、しかも売上が100万ドル以上に達するデベロッパ(主に企業)が15以上いる。〔*: コラボレーションツールとしてはデベロッパ以外の、一般社員等の利用も増えている(後述)。〕

しかも、“売上のペースが日に日に大きく増えている”そうだ。どうやらこのマーケットプレースは今では、自分が稼いだ慣性で強力に動いているようだ。2015年9月に売上1億ドルに達するまで3年を要しているが、追加の2000万ドルはわずか3か月で達成しているのだ。

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100万ドル以上を売り上げたデベロッパは、テスト管理プラットホームのZephyrやワークフロー管理のComala、リポートやチャートの作成を助けるEazyOne、情報共有サービスBrikitなどだ。スマートカレンダーのTempoのように、1000万ドル以上売ったデベロッパも数社いる。

Atlassian Marketplace上のデベロッパにはもちろん、ロングテールの部分も多く、彼らが売っているアプリケーションやアドオンは2000以上ある…売上に含まれない“無料”の提供物も多い。Atlassianの取り分は売上の25%だから、まあ、ふつうか。

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今ではデベロッパたちはAtlassian Connectを使って、自分のサービスへのインタフェイスをJIRAやConfluence、あるいはSlackのコンペティタHipChatなど、既存のツールの中に置ける。たとえばつい昨日(米国時間12/14)は、UberがHipChatの統合をローンチした。

“世界の最良のアプリケーションが、誰も使えない、記憶にも残らない、スラッシュコマンドに貶められる必要はもうない”、と語るAtlassianのスポークスパーソンは、ちょっとSlackにあてつけているようだ。Slackにも、Uberの統合があるのだが(ただし非公式)。

先週のIPOもAtlassian自身にとっては、ちょっとした一里塚にすぎない。IPOの前から、Atlassianのユーザは従来のデベロッパコミュニティを超えて、一般社員のチームや事業に広がっていた。しかもノンデベロッパのユーザは急増中であり、そのことが今では同社の、最大のセールスポイントだ。HipChatやJIRA、Confluenceなどのツールも、ノンデベロッパのチームが容易に利用できるし、同社が最近ローンチしたJIRA Coreにいたっては、JIRAからDevOpsツールを外したプロダクトだ。このトレンドに、Marketplaceはどう位置づいていくか…。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa)。