メルセデス・ベンツが買収したYASAの革新的な新型モーターはEV業界を変える

革新的な「axial-flux motor(アキシャルフラックス、軸方向磁束)」モーターを開発した英国の電気モータースタートアップ企業であるYASA(かつてはYokeless And Segmented Armature、ヨークレス・アンド・セグメンテッド・アーマチュアという名称だった)が、Mercedes-Benz(メルセデス・ベンツ)に買収されたのは2021年7月のことだった。この買収は、発表された情報が少なかったため、それほどマスコミの注目を集めたわけではなかった。しかし今後、YASAは注目する価値のある存在となるだろう。

2009年にオックスフォード大学からスピンアウトしたYASAは、メルセデス・ベンツの電気自動車専用プラットフォーム「AMG.EA」用の超高性能電気モーターを開発することになる。YASAは完全子会社として英国に留まり、メルセデス・ベンツの他、Ferrari(フェラーリ)などの既存顧客にもサービスを提供していく。また、YASAのブランド、従業員、施設、所在地もオックスフォードにそのまま残る。

YASAの軸方向磁束モーターは、その効率性、高出力密度、小型・軽量であることが、EV業界の関心を集めた。

対照的に、今日の市販EVでは「ラジアル」電気モーターを使った設計が一般的だ。テスラでさえラジアル型モーターを採用しているが、ラジアル型モーターは40年以上前のレガシー技術であり、技術革新の余地はほとんどない。

しかし、YASAのアキシャルフラックス型は、セグメントが非常に薄いため、それらを組み合わせて強力な単一のドライブユニットにすることができる。これによって、他の電気モーターに比べて重量は3分の1になり、より効率に優れ、出力密度はテスラの3倍にもなる。

YASAの創業者でCTO(最高技術責任者)を務めるTim Woolmer(ティム・ウールマー)氏は、電気モーターの設計にこのような新しいアプローチを考案した人物だ。TechCrunchは、同氏にインタビューして次の展開を探った。

TC:これまでの歩みを教えてください。

TW:私たちが12年前に始めた時の検討事項は「電気自動車を加速させよう」「電気自動車をより早く普及させるためにできることをしよう」というものでした。私たちは今、20年にわたる革命の10年目に入っています。10年後に販売される新車は、間違いなくすべて電気自動車になるでしょう。技術者にとって、革命の時代ほどエキサイティングなものはありません。なぜなら、そこで重要なのは技術革新のスピードだからです。私たちにとってエキサイティングなのは、革新を加速させることです。それこそがメルセデスとのパートナーシップで興味深いところです。

TC:あなたが考え出したモーターは、何が違っていたのですか?

TW:私が博士号を取得した当初は、白紙の状態から始めました。その時に考えたことは、10年後、15年後の電気自動車産業が必要とし、我々がそれに応えることができるものは何か、というものでした。それはより軽く、より効率的で、大量生産ができるものです。2000年代には、軸方向磁束モーターはあまり一般的ではありませんでしたが、軸方向磁束モーターの技術に新しい素材を使ったいくつかの小さな工夫を組み合わせることで、私はYASA(Yokeless And Segmented Armature)と呼ばれる新しい設計に辿り着いたのです。これは軸方向磁束型の軽量な配列を、さらに半分にまで軽量化したものです。これにはローターの直径が大きくなるという利点もあります。つまり、基本的にトルクは力×直径なので、直径が大きくなれば同じ力でもより大きなトルクを得ることができます。直径を2倍にすれば、同じ材料で2倍のトルクが得られるということです。これが軸方向磁束型の利点です。

TC:メルセデスによる買収は完了しましたが、次は何をするのですか?

TW:私たちは基本的に完全子会社です。メルセデスの産業化する組織力を活用していくつもりです。しかし、重要なことは、自動車業界で技術がどのように拡散していくのかを見ると、まずはフェラーリのような高級車から始まり、それから大衆車に降りてきて、そのあと大量生産されて拡がっていくということです。この分野において、メルセデスは産業化に関して世界的に進んでいる企業です。今回のパートナーシップの背景には、そのような考え方があります。

TC:ここから先は、他にどのようなことができるのでしょうか?

TW:私たちは、高出力、低密度、軽量なモーターで、スポーツ性能と高度な産業化を両立させることができます。それによって私たちは、あらゆることに対応できる類まれな立場にあります。

将来の計画については語ろうとしなかったものの、ウールマー氏が電気自動車と電気モーターの分野で注目すべき人物であることは確かだ。メルセデスによる買収後、YASAは下のようなビデオを発表した。

画像クレジット:Oxford Mail

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(文:Mike Butcher、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

電動セミトラックメーカーのNikolaがボッシュと水素燃料電池モジュールの製造で提携

苦境に陥っている電動トラック開発会社のNikola Corp.(ニコラ)は、Bosch(ボッシュ)と水素燃料電池モジュールに関する新たな契約を結んだ。このモジュールは、Nikolaが開発した水素を燃料とする2台のセミトラック、短距離用の「Nikola Tre(ニコラ・トレ)と長距離用スリーパー「Nikola Two(ニコラ・トゥー)」の動力源として使用される。

「今回の発表は、ボッシュとの数年にわたる協力関係の結果です」と、NikolaのMark Russell(マーク・ラッセル)CEOは声明の中で述べている。「現存する最良の選択肢を徹底的に分析した結果、ボッシュとこの戦略的な関係を結ぶことができたことを、私たちは誇りに思います」。

このニュースは、これまで必ずしも順調ではなかった両社の関係に明るい兆しをもたらすものだ。2019年にボッシュは、この水素トラックの新興企業に少なくとも1億ドル(約110億円)を投資したが、翌年には保有する株式を減らしている。ボッシュは2020年、Nikolaの欧州事業に燃料電池を供給することも発表している。

Nikolaは、今回の提携の金銭的条件や燃料電池システムの生産規模に関する詳細を明らかにしなかった。Nikolaはアリゾナ州クーリッジにある同社の施設で、ボッシュからライセンスを受けた水素燃料電池のパワーモジュールを組み立てる。ボッシュはNikolaに、燃料電池スタックや電動エアコンプレッサー、コントロールユニットなどのキーコンポーネントと併せて、完全に組み立て済みのパワーモジュールも供給すると、米国時間9月2日に発表された声明で同社は述べている。パワーモジュールの組み立てをサポートするために、Nikolaは2023年までにアリゾナ州の施設を5万平方フィート(約4650平方メートル)拡張し、最大で50人の従業員を新たに雇用すると述べている。また、このトラックメーカーは、フェニックス近郊にある本社のエンジニアリングおよびテスト施設の拡張も計画している。

Nikolaの広報担当者によると、この新しい契約は、燃料電池システムおよびコンポーネントに関する他社との関係に影響を与えるものではないとのこと。その中には、2020年11月に発表したGeneral Motors(ゼネラルモーターズ)のHydrotec「ハイドロテック」燃料電池システムに関する拘束力のないMOU(了解覚書)も含まれる。

Nikolaは2020年6月、特別買収目的会社であるVectoIQ Acquisition Corp.(ベクトIQ・アクイジション)との合併により上場を果たした。今月初め、同社は投資家に対し、年内に計画している電動セミトラックの生産台数の見通しを、50~100台から25~50台に減らすと発表したが、同社の幹部は、すでに5台のアルファ版と9台のベータ版を含む14台の試作車を製作したと述べている。

一方、Nikolaの元CEOで創業者のTrevor Milton(トレバー・ミルトン)氏は、証券詐欺と投資家を欺いた罪で裁かれるまで、同氏が所有するユタ州の牧場に居むことを刑事裁判所に約束している。

関連記事:Nikolaが電動セミトラックの納車見通しを下方修正、バラ色とはいえない予測は収益面でも続く
画像クレジット:Nikola Corp.

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

米交通安全局がテスラに運転支援システム「Autopilot」の詳細な情報提供を命じる

New York Times紙によると、米国運輸省道路交通安全局(NHTSA)はTesla(テスラ)に対し、同社の運転支援システム「Autopilot(オートパイロット)」の詳細データを10月22日までに提出しなければ、最大1億1500万ドル(約126億円)の罰金を科すと命じた。NHTSAは8月に、Autopilotを作動させたテスラ車が、駐車中のライトを点滅させた救急車両に衝突した事件を調査していることを発表している。同局は当初、2018年以降に合計17人の負傷者と1人の死亡者を出したこのような11件の事故を挙げていたが、先週の土曜日に12件目の事故が発生したばかりだ。

NHTSAは、この電気自動車メーカーに送った書簡の中で、同社の運転支援システムがどのように機能するのかについて、詳細な情報を提供するように指示した。Autopilotが作動している間、人間のドライバーが道路から目を離さないことをどうやってチェックしているのか、また、場所によってAutopilotの機能に制限が加えられるかどうかということを、NHTSAは知りたがっているのだ。連邦政府は長い間、テスラが人間のドライバーにハンドルから手を離させないようにする安全装置を備えていないと批判してきた。数カ月前、同社はようやく「Model 3(モデル3)」と「Model Y(モデルY)」のリアビューミラーの上に取り付けられたカメラを作動させ「Autopilot作動中のドライバーの不注意を検知して警告する」ようにした。Autopilotは高速道路での使用のみを想定しているものだが、ドライバーが一般道路でAutopilotを使用することを妨げるような仕組みは何もない。

NHTSAは、Autopilotの詳細なデータに加えて、テスラが米国で販売した車両の台数についても情報を求めている。さらに同社が関与したすべてのAutopilot関連の仲裁手続きや訴訟、Autopilotに関して顧客から受けたすべての苦情についても知りたいとしている。

編集部注:本記事の初出はEngadget。執筆者のMariella Moonは、Engadgetの編集委員。

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画像クレジット:Spencer Platt / Getty Images

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(文:Mariella Moon、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

スウェーデンのCakeが都市部向け電動モペッド「Makka」を発表

スウェーデンの電動バイクメーカー「Cake(ケイク)」が、最新モデル「Makka(マッカ)」を発表した。都市部での利便性を追求した超軽量の電動モペッドだ。価格は3500ドル(約38万5000円)からで、現在は米国と欧州で予約を受け付けている

Makkaは、フラッグシップモデルの高性能バイク「Kalk(カーク)」やユーティリティバイク「Ösa(オサ)」などのオフロードバイクで知られるCakeにとって、これまでの標準から一歩踏み出した製品だ。この第3のプラットフォームは、短距離の商業輸送や通勤など、シティライドに特化したCake初のモーターサイクルとなる。

「この新しい電動モペッドは、誰もが乗れる電動2輪車を作るというCakeの野心をさらに明確にするものであり、ゼロエミッションのライフスタイルに向けてインスピレーションを与えるというCakeのミッションに沿って、性能、耐久性、妥当性の限界を押し広げるものです」と、Cakeは声明で述べている。

Makkaの重量は55kg(バッテリー別)で、リアカーゴラックが標準装備されている。このラックには、マウントやサドルバッグ、チャイルドシート、さらには同乗者用シートなどを取り付けることができる。

カラーはホワイトとグレーの2色で、合法的に公道走行可能。米国では出力5馬力以下の原動機付自転車に分類され、自動車免許または二輪免許が必要となる。EUでは、モーターの速度が時速45kmを超えないため、L1e-bというカテゴリーに属し、自動車免許かモペッド(原付)免許を持っていれば公道を走ることができる。

  1. Makkawhitekidsseat

    Makka + チャイルドシート
  2. Makkabox

    Makka + 荷物収納ボックス
  3. MakkastudioALL-80

    取外し可能なバッテリー

Cakeの最新モペッドには2種類の仕様が用意されている。欧州のみで販売されるエントリーモデルの「Makka Range」は、最高速度が時速25キロメートルと低く、航続距離は60キロメートル。欧州と米国で販売される「Makka Flex」は3800ドル(約41万8000円)で、最高速度は時速45キロメートルに達するが、航続距離は50キロメートルとやや短くなる。

どちらのバイクもアルミニウム製ステップスルーフレームにフットボードを備え、14×3インチのオートバイ用タイヤ2本を装備する。Makkaシリーズにはタッチスクリーンディスプレイが搭載されており、バッテリー残量、走行速度、走行距離、ライドモード(航続距離を伸ばすモード1と、バランスのとれたモード2から選べる)、ブレーキモードの選択などの情報が表示される。

Makkaのドライブトレインの出力は3.6kW、バッテリー容量は1.5kWh。バッテリーを充電するには、バッテリーを車両に搭載したままプラグに差し込んでも可能だし、あるいはバッテリーを取り外して自宅で充電することもできる。バッテリーを80%まで充電するには2時間、100%まで充電するには3時間かかる。前後のブレーキともにハンドレバーを採用した電動二輪車用ブレーキシステムは、制動力を回生してバッテリーに蓄え、航続距離を伸ばすことができる。

オフロードバイクを都市部向けに転用することに有用性を見出しているメーカーは、Cakeだけではない。ニュージーランドの電動ユーティリティーバイクブランドであるUbco(ウブコ)は、Makkaに似た自社製モペッドの販売を米国にも拡大するために、最近1000万ドル(約11億円)の資金調達を実施した。Cakeの直近の資金調達は2019年のシリーズAで、1400万ドル(約15億4000万円)を調達している。

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画像クレジット:Cake

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

テスラのRoadsterの出荷は早くても2023年、イーロン・マスク氏がほのめかす

生産・出荷がずれ込んでいるTesla(テスラ)車両リストにRoadster(ロードスター)を加えよう。​​CEOのElon Musk(イーロン・マスク)氏は9月1日、パフォーマンスEVのRoadsterは、以前発表されていた2022年出荷に間に合わないだろうと述べた。「2021年はかなりクレイジーなサプライチェーン不足の年でした。ですので、もし17の新プロダクトの全てが出荷されなくても問題ではないでしょう」とRoadshow見つけたツイートの中で述べた。Roadsterは2023年に出荷されるはずだとマスク氏は付け加え、「おそらく2022年にドラマは展開されない」とも書き込んだ。

Teslaは次世代Roadsterを2017年に発表した。当時、同社は2020年にデビューさせる予定だった。その2020年は同社がスーパーカーについて大した情報を共有することなく過ぎ去った。そして2021年初めにマスク氏はRoadsterの生産が2022年に始まるかもしれないと述べた。Roadsterの生産が実際に始まるかは、大きな「もし」がつく。Tesla Semiの生産を遅らせている世界的なチップ不足は2023年まで続くことが予想されていて、マスク氏のツイートはさらにずれ込む可能性をほのめかしている。

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画像クレジット: Tesla

編集部注:この記事はEngadgetに掲載された。筆者Igor Bonifacic氏はEngadgetの寄稿者。

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(文:Igor Bonifacic、翻訳:Nariko Mizoguchi

空飛ぶクルマ「Mk-5」開発のテトラがアメリカで試験飛行のための許可証取得

空飛ぶクルマ・eVTOL「Mk-5」開発のテトラがアメリカで試験飛行のための許可証を取得

空飛ぶクルマ(垂直離着陸航空機・eVTOL)「Mk-5」の開発を進めるテトラ・エイビエーションは9月2日、米連邦航空局(FAA)より「Mk-5」の試験飛行用の飛行認可を受け、カリフォルニア州での無人飛行試験などを開始したことを発表した。

今回取得したのは、航空機の機体の安全性や環境保全のための技術的基準への適合を示す耐空証明のうち、試験飛行用の特別耐空証明証と、米国内の空域の飛行を許可する飛行許可証。カリフォルニア州のバイロン空港での飛行が認められた。これにより、日本でも、国土交通大臣の許可を都度受けることで、試験飛行ができるようになるとのこと。

テトラは今後、Mk-5の無人飛行試験を行い、有人飛行試験を行った後に、キットプレーンとして販売を開始する。アメリカでは飛行愛好家が飛行機をキットで購入し、自分で組み立てて飛行を楽しむ文化(ホームビルド機)があり、テトラはまずそうした愛好家にMk-5を販売し、そのフィードバックを受けて量産型の開発に入ることにしている。現在、Mk-5キットの先行予約を受け付けている。引き渡しは2022年末に開始予定。

Mk-5は個人向けのeVTOL機となるが、2025年の大阪万博では、2拠点間の移動サービスのための機体をリリースしたいとテトラは話している。

今後5年で1000万台、世界をリードするスマートeバイクを目指すVanMoofが約141億円調達

アムステルダム発の電動自転車スタートアップVanMoof(ヴァンムーフ)は米国時間9月1日、シリーズCラウンドで1億2800万ドル(約141億円)の資金を調達したと発表した。VanMoofは、一部の市場でかなり人気のあるeバイク(電動アシスト自転車)の設計・販売を行っている企業だ。同社は現在、イタレーションをより速いペースで行うことにより、世界をリードするeバイクブランドになることを目指している。

今ラウンドはアジアを拠点とするプライベートエクイティ企業Hillhouse Investmentがリードし、Booking.com(ブッキング・ドットコム)の元CEOであるGillian Tans(ジリアン・タンズ)氏も参加している。また、Norwest Venture Partners、Felix Capital、Balderton Capital 、TriplePoint Capitalなどの既存投資家も、さらに資金を投入した。

今回のシリーズCは、同社のシリーズBに比べて大きな飛躍を遂げている。2020年、VanMoofは4000万ドル(約44億円)のシリーズBを調達した。全体では、同社はこれまでに総額1億8200万ドル(約200億円)を調達したことになる。

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【レビュー】電動自転車VanMoof X3、ハイテクだが手頃な値段であらゆる人を信奉者にしてしまう

VanMoofのeバイクに馴染みのない方は、TechCrunchで最新のS3X3の両モデルを以前レビューしている。機能の上では、両者は同じだ。VanMoof X3は、より小さなフレームと小さなホイールを採用している。

VanMoofが一般的なeバイクメーカーと異なる点は、サプライチェーンから顧客体験まで、すべてをコントロールしようとしていることだ。VanMoofのeバイクは、主に街乗り用に設計されたプレミアムeバイクだ。最新モデルの価格は、2298ドル(日本では税込27万5000円)となっている。

同社のeバイクは、電動モーターと電動変速システムを組み合わせているのが特徴だ。4つのギアがあり、自分でギアチェンジをする必要はない。自転車に乗って、ペダルを漕ぐだけだ。

未来的な三角形のフレームが特徴的なS3とX3には、油圧式ブレーキ、ライト、そしていくつかのスマートバイク機能が搭載されている。S3とX3には、アラーム機能付きモーションディテクター、GPSチップ、スマホ接続機能などが搭載されている。

自転車の盗難を報告すると、GPSと携帯電話のチップが稼動し、VanMoofアプリで自転車を追跡することができる。また、Apple(アップル)の「探す(Find My)」アプリにも対応するようになった。

関連記事:アップルの「Find My(探す)」がサードパーティーの電動自転車とイヤフォンをサポート

VanMoofは、既製の部品だけに頼るのではなく、少数のサプライヤーと協力してカスタム部品を製造している。そうすることで、できるだけ多くの中間業者を排除し、コストを抑えられる。これは競合優位性にもつながる。

VanMoofのような企業を成長させるのは、資本集約的なビジネスだ。同社は、世界50都市に小売店とサービス拠点を開設している。もともと欧州でスタートした同社だが、現在は米国がVanMoofにとってもっとも急速に成長している市場となっている。

今回の資金調達により、VanMoofは現在の戦略をさらに強化する予定だ。研ぎ澄まされたデザインとより多くのカスタムパーツを備えた最新のバイクが期待できる。また、世界中に店舗やサービス拠点を増やしていく予定とのこと。そしてオンライン販売の拡大も予想される。

共同設立者兼CEOのTaco Carlier(タコ・カーリエ)氏は、声明でこう述べている。「(この資金調達により)今後5年間で、1000万人の人々に同社のeバイクに乗ってもらうことができます」。ちなみに今のところ、VanMoofのeバイクは15万人に利用されている。

今日の投資は、驚くべきことではない。新型コロナのパンデミックはヨーロッパの都市を変革する計画を加速させ、自動車よりも自転車を優先させる状況を作った。2020年、TechCrunchの同僚であるNatasha Lomas(ナターシャ・ロマス)と私は、パリ、バルセロナ、ロンドン、ミラノの4つの主要都市における主要な政策展開の包括的な概要を書いた。VanMoofは現在、こうした政策の変化の恩恵を受けている。

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(文:Romain Dillet、翻訳:Aya Nakazato)

ロシアYandexがYandex SDGなどのUberの持ち株を1102億円で買収、4事業を完全に所有

ロシアのインターネットおよび配車サービス大手のYandex(ヤンデックス)は、Uber(ウーバー)が保有するYandex Self-Driving Group(SDG、セルフドライビンググループ)の株式、およびUberが間接的に保有するYandex.Eats(ヤンデックスイーツ)、Yandex.Lavka(ヤンデックスラブカ)、Yandex.Delivery(ヤンデックスデリバリー)の株式を取得した。買収総額は10億ドル(約1102億円)で、Yandexが4つの事業を完全に所有することになる。

Yandex SDGとは、Yandexが2018年にYandex.Taxi(ヤンデックスタクシー)とUberのロシア事業を統合する形でUberと共同で設立した、配車サービスとフードデリバリーのジョイントベンチャー(JV)であるMLU B.V.から自動運転の技術をスピンアウトした企業だ。その当時、Uberは新会社MLU B.V.に36.6%の出資を行っていた。2020年SDGが分離独立したときには、Uberはその18.2%の株式を保有することになったが。この持ち分が今回Yandexに買われたということになる。またYandexは、Uberが保有していたYandexのフードデリバリーサービス、ラストマイル物流サービス、15分コンビニエンスストア配送サービスの、合わせて33.5%の持分を買い取った。

関連記事:ロシアYandexがUberとのJVから自動運転事業をスピンアウト、159億円を新会社に投資

2019年当時にYandexとUberは、モルガン・スタンレーが約77億ドル(約8484億円)の価値があると見積もっていたMLUのIPOを検討していると報じられていた。Yandexは、自動運転技術のことを「配車サービス、eコマース、フードテック事業を含むYandexのエコシステムとの相乗効果が高い技術です」と評価している。よってYandexが、その成長可能性のすべてをコントロールしたいと考えるのは自然な話だ。2021年の第2四半期に、EBITDA前5億900万ドル(約560億7000万円)の損失を計上したUberは、有利なエグジットを求め、より身近なところに優先順位を置き直そうとしているのかもしれない。

関連記事:Uberがドライバーへのインセンティブ支払いによる第2四半期の赤字からの業績回復を計画

Yandexの広報担当者は「今回の買収により、Yandexは自動運転技術に対する戦略的管理能力と柔軟性をさらに高めることができます」とTechCrunchに語っている。「このことは、YandexとYandex SDGの両者にさらなる成長の可能性をもたらし、株主のみなさまに新たな価値をご提供することができるでしょう」。

今回の買収は、MLU B.V.とYandex SDGの合弁会社の大規模な再編の一環であるということが、月曜日(米国時間8月30日)にUberがSECに提出した書類に記載されている。それらは2段階で行われる予定だ。第3四半期末までに完了する予定の第1段階では、Yandexは、新たに再編されて配車サービスやカーシェアリングなどのモビリティ事業に注力する予定のMLUの4.5%の株式を新たに取得することになる。これにより、YandexはMLUの合計71%を所有することになるが、そのうち2.8%は従業員の株式報奨制度のために確保されている。また、Uberが保有していたSDGの株式18.2%も第1段階で売却される予定だ。

そして年内に完了する予定の第2段階には、Yandex.Eats、Yandex.Lavka、Yandex.DeliveryのMLUからの分離と、それに続くこれらの事業に対するUberの持分の取得が含まれている。

Yandexは、Uberが保有するMLUの残りの持分を、合意された範囲内での増額が織り込まれたおよそ18億ドル(約1983億円)程度の、期限2年の米国型(期限内にいつでも行使可)コールオプションとして受けとることも決めている。この数字は、もし2023年に行使されれば20億ドル(約2203億円)にまで増加する。またYandexは、2030年8月まで、ロシアおよびその他の国でUberブランドを独占的に使用する。

Yandexは、ロシアおよびその他の一部の国におけるUberブランドの独占的使用権に関する現行ライセンスを、オプションの行使を前提に2030年8月まで延長する予定なのだ。Yandexの株価は、火曜日(米国時間8月31日)の市場終了時に5.16%上昇した。

関連記事:ロシアYandexの自動運転部門がGrubHubと提携、米国の大学キャンパスにロボット配達を展開

画像クレジット:Alexander RyuminTASS/Getty Images/Getty Images

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:sako)

独Dance、初期費用ゼロでeバイクが欲しい人向けに修理・メンテナンス込みサブスクサービスを開始

ドイツのスタートアップ企業Dance(ダンス)は、地元ベルリンでサブスクリプションサービスを開始する。月々79ユーロ(約1万260円)の定額料金で、ユーザーは自分専用のカスタムデザインeバイク(電動アシスト自転車)を借り、オンデマンドの修理・メンテナンスサービスを利用できる。

SoundCloud(サウンドクラウド)とJimdo(ジンドゥー)の元創業者たちによって設立されたこの会社は、サービス開始前に多額の資金調達に成功した。同社のシードラウンドはBlueYardがリードし、HV Capital(旧社名:HV Holtzbrinck Ventures)が1500万ユーロ(約19億5000万円)のシリーズAラウンド(当時の金額で1770万ドル)をリードした。

Danceがこれほど多くの資本を必要とした理由は、同社が独自のeバイクを社内で設計したからである。「Dance One」と名付けられたこの電動自転車は、アルミフレームを採用し、重量は約22kg。シングルスピードで、電動モーターの力で0〜25km/hの速度で走行できる。

一番いいところは、リチウムバッテリーを取り外して家の中で充電できる点だ(VanMoofのeバイクではできない)。これにより、自転車ごと階段を上る必要がない。アパートに住んでいる人にとってはありがたい機能だ。ユーザーは、目安として55km走行したあとはバッテリーを充電することになる(フル充電で約65kmの走行が可能)。

関連記事:【レビュー】電動自転車VanMoof X3、ハイテクだが手頃な値段であらゆる人を信奉者にしてしまう

画像クレジット:Dance

Dance Oneはカーボンベルトを採用しているため、メンテナンスがほぼ不要だという。自転車の前方にはスマートフォン用のマウントが組み込まれており、このタイプのマウント用に設計された一般的なケースに対応している。電動アシストのレベルは、ハンドルバーのボタンで操作できる。高アシスト、低アシスト、アシストなしの3種類のモードがある。

バイクの前後にはライトが装備されており、こちらもボタンで操作できる。ブレーキには油圧ディスクを採用している。オプションで、自転車の後ろにバスケットやサドルバッグを付けることもできる。

VanMoofやCowboyのような他の人気eバイクと同様に、Danceのeバイクもモバイルアプリからロック・アンロックが可能だ。同社では、GPSとBluetoothチップを自転車のフレームに組み込んでいる。もちろん、スマートロックに加えて従来のロックも使用するべきだが。

理論上は、街乗りに適したeバイクのように見える。ユーザーは月々79ユーロ(約1万260円)を支払うことで、自転車を利用できるようになる。契約期間のコミットメントや初期費用はない。夏の間だけ利用したい場合は、そうもできる。また、自転車にトラブルが発生した場合には、同社がメカニックを派遣して修理してくれる。

Danceは数百人のベータユーザーとともにサービスを試してきたが、現在は「数千台」の自転車が新規ユーザーのために用意されているという。今のところベルリンを中心に展開しているが、将来的にはドイツやヨーロッパの他の都市にも拡大していく予定だ。

Danceは、SwapfietsやパリのVéligoなど、ヨーロッパ各地にあるいくつかのサービスと競合していく。また、Lime(ライム)のようなオンデマンド型のシェアサイクルや、ヨーロッパの各都市が主導する官民一体のバイクシェアリングサービスとも間接的に競合することになる。もちろん、最終的には自分でeバイクを購入する人もいる。

それを考慮してもDanceは、魅力的な自転車とエンドユーザーにとっての柔軟性を備えた、よくできた製品だと思う。シームレスなエンド・ツー・エンドの体験を求めているユーザーを、このスタートアップは問題なく見つけられることだろう。

画像クレジット:Dance

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画像クレジット:Dance

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(文:Romain Dillet、翻訳:Aya Nakazato)

【レビュー】2022年新型トヨタGR 86はすべての愛好家を魅了するマストドライブの逸品

スポーツカー市場は排他的なクラブのように思えるかもしれない。非実用的な情熱にあふれる買い物をするのに十分なお金とガレージスペースを持つ人々の、専用クラブのようなものだ。

こうしたプレステージアイテムには大抵の場合、威圧的なパワー値と、同じように脅威的な価格が表示されており、どちらも暗黙的に購入希望者に挑戦をしかけてくる。乗りこなせるのか?手に入れる余裕があるのか?

Daft Punk風の「harder better faster stronger(よりハードに、より良く、より速く、より強く)」というスポーツカー業界のマントラは、参入するのに十分な財力がある人やサイドラインからの応援を楽しむ人にとってはすばらしいものだが、グラウンドフロアでアクションを起こそうとする人にとっては昨今、マツダのMiata(ロードスター)ではない、3万ドル(約330万円)を切るパフォーマンスに特化したクルマを見つけるのは難しいだろう。

「パフォーマンス」は高速で高馬力のマシンに限って言及するものだという過度な誤称は、まったくもって未熟なマシンや単にそれを必要としないマシンを追い払ってしまう。また会えたね、ロードスター。

初代トヨタGT 86(旧サイオンFR-S)の導入が重要な意味を持ち、その次の世代であるGR 86が期待を抱かせる理由はここにある。庶民に向けたパフォーマンス、すべての人のためのスポーツカーだ。

基本

GR 86は2+2クーペで、2.4リットルのフラットな4気筒ボクサーエンジン(水平対向エンジン)を搭載し、228馬力、184ポンドフィート(約250Nm)のトルクを生み出す。

この構成に馴染みのない方のために説明すると、従来的なV字直線よりも優れたバランスを実現するレイアウトだ。動力は6速トランスミッション、マニュアルまたはオートマチックを介して後輪に送られる。

フロントにマクファーソンストラット式、リアにマルチリンク式の独立懸架サスペンションを採用。トリムレベルに応じて、GR 86は17インチまたは18インチのホイールを備える。

トリムに関していえば、GR 86にはベースとプレミアムの2つのタイプがあり、プレミアムには前述の18インチホイール、ダックビルリアスポイラー、適応型フロントLEDヘッドランプ、ちょっとした視覚的アクセントに加えて、8ステレオスピーカーへのアップグレード(標準は6)が含まれる。

すべてのトリムとして、エンターテインメントと接続性を追求した8インチのタッチスクリーンディスプレイ、7つのエアバッグを備えた標準的な安全装置、そして安定性制御、期待されているアンチロックブレーキシステム、さらにブレーキアシストとブレーキ力配分で構成されたToyota Star safety systemが装備されている。

自動ギアボックスを搭載したGR 86には、衝突前ブレーキ、車線維持支援、アダプティブクルーズコントロールに対応する、アクティブセーフティシステムという付加的な利点も備わっている。

GR 86は、契約制のコネクテッドサービスを提供するアプリを通じて、エンジンの始動やドアのロック、クラクション鳴動などのリモート接続機能に加え、車両のヘルスレポートの提供や、クルマの基本的なペアレンタルコントロール(ジオフェンシング、スピード警告、さらには夜間外出禁止など)の設定も可能だ。

レースで培われたテクノロジー

GR 86のようなシンプルさを追求したスポーツカーには、テクノロジーを駆使したランボルギーニ・フラカンや、近縁のアウディR8のような高級な輝きはない。

こうしたクルマはゲーム用PCよりも多くのハードウェアを搭載しているのに対し、GR 86はコンピューターによる力量が少ない。「ピュアリストのスポーツカー」と銘打たれているこのクルマは確かに、活発なドライビングセッションとなるとアシストが足りない。

安定性はオフにすることができ、ドライブモードの「スポーツ」と「トラック」ではブレーキとスロットルへのインプットレスポンス性が高まる。これらのモードはまた、より積極的なエンジンマッピングに近い形で、自動ギアボックスの効果を向上する。

GR 86はこのように小型のパッケージのため、差をつけるテクノロジーを見出すには特定の領域における入念な精査が必要だ。トヨタによると、このクルマはレースで培ったテクノロジーを活かして開発され「GR」(トヨタのモータースポーツ部門GAZOO Racingの頭文字)というブランド名を冠しているという。

外部では、安定性に大きな違いをもたらすエアロダイナミックタッチが注目に値する。これは、車両の制御を補助するために空気を高速で流通させる機能的な通気口があるフロント部分から始まり、リアホイールウェルの上の成形品がバックエンドでこの作業を継続するよう形成されているリア部分に続いている。

構造的には、GR 86は前バージョンに比べてフレームの剛性を高め、前後の主要部分の補強を行うとともに、高強度鋼を採用している。

興味深いことに、このクルマは現行モデルよりも少し重くなっており、トランスミッションによって77ポンド(約35kg)から117ポンド(約53kg)程度増えている。アルミルーフやフェンダーなどの軽量化対策がこれを緩和しているものの、重量を減らすことよりも慎重に重量配分することに力が注がれた。

シートベルト装着

GR 86のハンドルを握るところから見ると、インテリアは抜本的な変更というよりもアップグレードであることがわかる。アナログゲージクラスターは姿を消し、ドライブモードによって変化する7インチTFTデジタルスクリーンが採用されている。

オートマチック仕様のGR 86sには、最適な使用のために可視情報をシフトする3つの独立したスクリーンがある。マニュアル車では2つになっている。

例えば「ノーマル」スクリーンでは1時間あたりの走行距離が表示され「トラック」スクリーンでは現在のギアが3色のRPMインジケータの上に表示される。これはトヨタを閉鎖的コースで走行させようとする人には有用だ。現在の速度と比較して「その瞬間に」知るべき重要な情報だからだ。この表示を拡大してインターフェイスに鮮明なオレンジ色の光を与えることで、データをひと目で確認できるようになっている。ドライバー周辺にも情報が届くだろう。

画像クレジット:Alex Kalogiannis

インフォテインメントスクリーンも若干アップグレードされている。視覚的にはより良く統合されている印象で、旧バージョンでその魅力を減じていたピアノブラックのプラスチック製ベゼルから解放されている。

インターフェイスはシンプルでラジオ、メディアソース、メンテナンスデータへのアクセス、ロードサイドアシスタンスへのコール、そして音楽ストリーミングサービスなどのインストール可能な他の統合アプリへのアクセスを可能にするアイコンがある。

アプリは好みに合わせて調整することができるが、全体的に見ると、真に機能するためには外部デバイスに依存している。このクルマがターゲットとしているハイパーコネクテッドオーディエンスに対して、トヨタはほとんどのユーザーがAndroid AutoとApple CarPlayを主として利用することを想定しているという感がある。

パフォーマンスのプレイグラウンド

GR 86でトラックに向かうと、捕獲された生き物を元の環境に戻すような気分を味わう。トヨタはこのGR 86とその先代モデルを試乗と連続比較のためにMonticello Motor Clubに持ち込み、全長4.1マイル(約6.6 km)のコースでクルマのパフォーマンスに挑む20周を設定した。GR 86はストリートカーではあるが、その性能を十分に発揮しながらワイルドに走ることができるトラック上に放たれた。

先代モデルのパワーは賛否両論を呼び、ファンはそのクルマの目的に合ったサイズだと感じていた一方、他の人たちはそれが不足していることに気づき、価値があると感じていたターボチャージャーをトヨタが最終的に取り付けることを期待した。

GT 86のボクサーエンジンの改良は目を見張るものがあり、両陣営を満足させるはずだ。

変位の増加やその他の機能強化は、実際にパワーをわずかに高めており、ターボを追加することなく、特にパワーの適用において、諸事をシンプルかつ均一に保持している。

さらに重要な点として、このパワーは回転バンドにおいて早期に有効になるため、GR 86はより迅速にスピードを上げることができる。比較すると、重量のあるGR 86の方が軽く感じられるのに対し、先代モデルは積み荷のレンガを引っ張っているように感じられる。

重量バランスとサスペンションの改良により、クルマの制御量が増大した。旧86の決定的な特徴の1つは、信じられないほど地面に埋め込まれているかのように感じられたことだ。

限界を超えてクルマを押し出すことは難しく、そのために新旧のドライバーたちは、自分たちの真下に何かが入り込む心配は無用の運転を促された。GR 86でも同じことがいえるが、俊敏性には若干の調整が必要だ。

画像クレジット:Alex Kalogiannis

お気に入りのビデオゲームをプレイしながら、コントローラーの設定を今までよりもずっと高くしていくような感じだ。GR 86は、ハンドルを握り、リバランスされたパワー出力と組み合わせることで、驚くほど満足感が得られる状態でコーナーを回ることができる。

ステアリングとスロットルは軽いタッチに反応するかもしれないが、ブレーキに関しては別だ。それ以外の点ではしなやかなGT 86は、大幅な減速や停止の際に重い足の踏力を必要とする。高速ブレーキだけでなく、通常のスピード調整の場合でも、ブレーキを踏むことは、見た目ほど軽くないドアを押し開けるのと同じような不確実さをもたらす。

異なるトランスミッション間において、それは最終的に、トラックまたはストリートのどちらかの好みに帰着する。

マニュアルの操作は少しゆるい感じがするが、滑らかで軽い。クルマのハンドリングと同じように、ギアボックス自体もパターン全体をすばやく動かすことができるように設計されている。それ以外の点では、マニュアルであることから、オートマチックとは対照的にドライバーはフルコントロールの状態にある。

一般的に、オートマチック車はカジュアルからスポーティーな運転に向いているが、それを超えて、使いこなすというより克服するシステムになりつつある。

「スポーツ」モードは、オートマチック式GR 86sのスロットルレスポンスとギアボックスの挙動を処理するものであり、その違いは実際の適用において顕著である。「ノーマル」で速く走ろうとすると、ペダル操作時に一気に加速するが、ギアボックスはドライバーが加速を最大にするように低い位置にとどまるのではなく、できるだけ早く高いギアに戻ろうとする。スポーツでも、しばらくはギアを入れたままだが、最終的には自らの役割を果たすようになる。運転している人のフラストレーションに大きく影響するだろう。

ストリートビート

ストリートで元気なドライブをするとき、GR 86の才能はその欠点をはるかに凌いでいく。

トランスミッションの挙動はオートマチック車ではまだ邪魔になっているが、バックロードのカーブの感覚はトラックの時とは異なり、その荒々しい加速感とハンドリングは、前方の道路がどのように見えても、ほぼ確実に良い時間を保証する。

楽しいセッションの合間に、トヨタは十分に要求に適っていることを実感した。3万ドル以下のクルマに期待される性能よりも優れているが「すごい」要素(「wow」 factor)はない。悪くいえば、そこそこの内部タッチポイントを備えた安価な通勤車のように感じられるが、決して耐えられないものではない。

オートマチックでは、アダプティブクルーズコントロールなどの運転支援機能を利用できる。アダプティブクルーズコントロールは、高度が変化したり、クルマの存在が検知されたときに、設定速度を維持すべく積極的に動作する。

車線逸脱警告などのその他の設定のほとんどは、このデジタルゲージクラスターの1つのセクションからアクセスできるメニューの中に隠され、その使い方は、特に移動中は扱いにくい。これが作動すると、検知は的外れで、時にははっきりと無視される。筆者の場合、意図的に車線を逸脱してみたところ、同じ道を戻ってくるときだけ過度に反応した。

ライバルたち

価格面では、GR 86は、当然ながらマツダのMX-5を除けば、他に対抗するスポーツカーは多くない。アクセスしやすさ、手頃な価格、動的な振る舞いは似ているが、その使命と姿勢はそれぞれ異なっている。

ミアータは、遊び心のあるドロップヘッドの表現力でドライバーに愛されている気前のいいロードスターだ。GR 86も同じように遊び心があるが、コミカルでもなければ威圧的でもなく、やや厳粛性が高い印象だ。

最終的にはユーザーの好みとユースケースによるだろう。筆者なら、沿岸部のドライブにはミアータを選び、一方でGR 86はトラック用の小型車といったところだろうか。

実際、GR 86は自らに対抗しているだけである。ある面では、それは外向的な自己よりも優れたものになろうと努力しているのであり、ほとんどのドライバーたちは、GR 86がそこで成功していることに同意するだろう。

別の面では機械式ツインのスバルBRZと真っ向から勝負している。トヨタとスバルが提携してこれを実現したのは有名な話だ。このクルマを際立たせているものには、外観やチューニングなどがあるが、それ以上のものはない。愛好家たちがどちらに惹かれるかを見るのは興味深い。

GR 86は、トヨタの現在のモータースポーツへの取り組みと、文化的に重要な意味を持つスポーツカーの遺産へのコミットメントを示す重要な車両である。これを疑問視する人は、同社の構造のトップに目を向けてみて欲しい。トヨタの豊田章男社長は、スポーツカーに熱中しているだけでなく、経験豊富なドライバーでもあり、GR 86の開発にも個人的に関わってきた。要するに、自分自身が満足しない限り車は前に進まず、個人的な投資の度合いは重要でないことには注がれないのだ。

GRというサブブランドへのエントリーポイントとして(スープラに加わり)、GR 86は、新規の、そして経験豊富な愛好家に、パフォーマンスドライブの旅へのすばらしいスターティングポイントを提供する。GR 86にはドライバーとして、全米モータースポーツ協会の1年間の会員資格が付属しており、そこではハイパフォーマンスのドライビングイベントが1つ用意されている。

この86はまた、スープラやGRの前身であるAE 86のようなクルマの改造やメンテナンスを行っているアフターマーケットのチューナーにとっても白紙の状態である。結局のところ、GR 86は路上やトラックにおいて最速あるいは最強のクルマではないかもしれないが、学習曲線と価格面の両方において、そのアクセシビリティが優れているといえるだろう。

編集部注:本稿の執筆者Alex Kalogiannis(アレックス・カロジアンニス)氏は自動車関連ライター、エディター、司会者。

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画像クレジット:Alex Kalogiannis

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(文:Alex Kalogiannis、翻訳:Dragonfly)

マスク氏の地下交通システム「Loop」は約束した無人ではなく運転手必須のテスラ「オートパイロット」を採用

正式公開から2週間足らず、The Boring Company(ザ・ボアリング・カンパニー)がラスベガスで運営するLoop(ループ)システムに初のセキュリティ侵害が発生した。

6月21日、Internationl Beauty Show(インターナショナル・ビューティー・ショウ)最終日の午前、地下を走行する同システムのTesla(テスラ)車団に「無許可車両」が侵入したことが、Loopの運営管理者とクラーク郡当局で交わされたメールでわかった。当該メールはTechCrunchが情報開示法に基づいて入手した。

一連のメールには、侵入事件以外にもLoopの運用に関する新たな詳細が記されていた。システムの非Teslaの電気自動車への驚くべき依存、Tesla車両に運転支援システムであるAutopilot(オートパイロット)の使用を許可する計画、および社内でテクノロジーが自律システムではないと位置づけられていることなど。

The Boring Company(TBC)はラスベガス市警察に侵入事件の捜査を依頼した。「無許可車両のドライバーは協力的で最終的にシステム外へと誘導された」とあるメールに書かれていた。

セキュリティ侵害による負傷や死亡はなかったが、TBCにとってなんとも不名誉な事件であることは間違いない。同社は5300万ドル(約58億2000万円)をかけた同システムのセキュリティと安全性をLVCC(ラスベガス・コンベンション・センター)に売り込んでいた。

TBCとLVCCの間で結ばれた経営合意によると、システムは「偶発的、悪意による、あるいはその他の無許可車両のトンネル内侵入を防ぐための物理的障壁」を備えることになっていた。システム進入路の防犯ゲート、地上駅を囲う数十基のコンクリート製車止めポールなどだ。

TBCもLVCCも、本事象に関する問い合わせに答えていない。TechCrunchはいずれかの回答が得られ次第本稿を更新する予定だ。

オートパイロットにチャンス到来

TechCrunchが入手したメール群は、スリルを求めた侵入者以上の情報を提供している。

そこにはTBCがLVCC Loopを走るTesla車の台数を62から70に増やし、Teslaのオートパイロットテクノロジーの使用を許可する計画の詳細が書かれている。これまでTBCは、全車両の運転支援テクノロジーを無効化し、人間ドライバーに操作させている。

新たな運用計画では、7つのアクティブセーフティ技術として、自動緊急ブレーキ、前方・側方衝突警報、障害物対応加速、死角監視、車線逸脱抑制、緊急車線逸脱警報、および2つの「フル・オートパイロット」技術である、車線中央維持と交通量感知型クルーズコントロールの仕様を要求している。

TBCがオートパイロット利用の必要性を説明するためにネバダ州クラーク郡の建築物・防火局に送ったレターをTechCrunchが他のメールとともに入手した。

TBCのプレジデントであるSteve Davis(スティーブ・デービス)氏は、当該機能を無効化することは「実績ある公道仕様技術」から「積極的に安全レイヤーを取り除く」ものであると書いた。デービス氏は「Tesla車でオートパイロットを作動させていたドライバーは、オートパイロットあるいは能動的安全機能を使用していなかったドライバーと比べて走行1マイルあたりの衝突が1/4以下だった」というTeslaの2021年第1四半期安全レポートの記述を引用した。「ここで明らかにされているように、Tesla車のこれらの機能を無効化することは事故の可能性を高めるものです」とデービス氏は書いた。

しかし、幹線道路交通安全局(NHTSA)は先週、いくつかの衝突事故を受けて同テクノロジーの正式な安全調査を開始した。

クラーク郡建築物・防火局責任者のJerry Stueve(ジェリー・スチューブ)氏はメールで次のように返信した。「我々はこの件を検討する予定ですが、『autodrive』(自動運転)という用語の定義とそれに何がともなうかをより明確にしていただければ、当部におけるこの要望の評価に役立つと思われます」。

「『オートパイロット』という用語がしはしば曖昧であり、車両とシナリオによって多くの異なる意味をなしうることに同意します」とデービス氏は返信した。(ここでデービス氏は上司であるElon Musk[イーロン・マスク]氏と意見を異にしているようで、マスク氏はオートパイロットの名前に対する批判に対して、誤解を与え「ばかげている」と反論している)。

「これらは『自律走行車』(autonomous)でも『自動運転車』(self-driving)でもありません」とデービス氏は続けた。「Teslaのオートパイロットと能動的安全機能を利用することで運転中の安全性に新たなレベルを加えることができますが、この機能を利用するためにはいつでもハンドルを取り戻せる十分注意深いドライバーが常に必要です」。

オートパイロットvs自律走行運転

TBCがLVCCに初めてLoopシステムを売り込んだ時の約束と矛盾することもあり、この区別は非常に重要だ。2019年、工事契約署名前に提出した地上利用申請書でTBCは次のように書いた。「Tesla Autonomous Electric Vehicles(AEVs、テスラ自律走行電動自動車)は高速、地下トンネルの乗客を3か所の地下駅まで運びます」。

2019年7月の計画書には「自律走行電動自動車の地下トンネルにおける活用は、既存の建造物や輸送システムに関わる妨害や対立を最小限にする独自の輸送ソリューションです」と書かれている。以来、同社は他の申請書類に同じような文言を使用しており、ラスベガス地域に数十の駅を設置する提案書も同様だ。

2021年1月、TechCrunchはLVCCとTBCの間で交わされた経営合意文書を入手し、そこにはこう書かれていた。「LVCCがPeople Mover Systemを購入した理由の1つはPeople Mover System車両の自律走行する能力にある【略】本契約書は、システムが有人運転を自律走行に切り替え、2021年12月31日までに、価格交渉を前提に、この変更を運用に織り込む意志があることを認識している」。

その期日はほぼ間違いなく守られない。2021年6月、スチューブ氏はデービス氏に次のように話した。「プロジェクトのはじめに話したように、自律走行運用の承認には、大がかりな監視、試験、検証が必要です。このプロセスには非常に多くの時間がかかります」。

それに答えてデービス氏は「私たちが自律走行あるいは自動運転の機能、運用を要求していないことを明らかにさせていただきたい」と述べている。

Loopの中の人間たち

問題は2つある。第1はTeslaのオートパイロットシステムが当面、ドライバーなしでは完全な動作ができないこと。第2は、おそらくもっと深刻で、Loopは国の標準が定める地下輸送システムの安全要求を満たすために、強くドライバーに依存していることだ。その種のシステムの乗客は、モノレールであれ電動車を使う地下的であれ、停電、火災、洪水などの非常時の安全が保証されなくてはならない。

TechCrunchがメールとともに入手したLVCC Loopの設計文書にはこう書かれている。「(我々の)訓練されたドライバーはシステムの安全面で重要な役割を果たします。緊急時にドライバーが乗客を適切に安全な場所に誘導する行動は、主要なリスク軽減措置です」。

TechCrunchが入手したいくつかの文書がこれを裏づけている。火災の際、ドライバーは「乗客の降車を補助し、歩ける乗客を最も近い出口に誘導する。ドライバーは口頭で指示を与える他乗客を身体的に補助すること場合もある」。ドライバーが乗客を率いて歩く場合「頻繁に振り返って全員がすぐ後に続いていることを確認する」。

ドライバーは、手に負えない問題がある乗客の判定と対応に責任を持ち、オートパイロット自体の動作状況の監視も行うとTBCはいう。「Loopにはドライバーが同乗し、能動的安全機能の使用を監督して必要に応じてブレーキや操舵を取って代わる人間が常に存在することを保証します」とデービス氏が6月に述べている。

TechCrunchが入手した数十件の文書と数百通のメールの中に、LVCC Loopの将来拡張の詳細や、TBCが完全自律走行に移行する方法や日程について書かれたものは1つもない。

Loopが米国土木学会の定める自律走行システムの安全原則に合致しているかについての質問に対して、TBCは次のように回答した。「自律走行運用に特有の基準はLVCC Loopには当てはまりません、なぜなら当システムは車両を操作するドライバーを有するからです」。

果たしてTBCがクラーク郡に伝えていることが、あるいはLVCCに伝えていることが、将来のLoopの運行にどれほど近いものなのかを知るには、時を待つしかない。

ちなみに、もしLoopの車両がまだドライバーレスではないのなら、LVCCはせめて全車両がTesla最新のモデルになると期待できるのか?おそらく違うだろう。

Loopのもう1つの要件は、米国障害者法(ADA)を遵守していることだ。クラーク郡担当者への7月のメールで、TBC幹部は、LVCC LoopのためにTesla以外のADA準拠電動車を購入する予定であることを明かした。

メールに具体的モデル名は書かれていなかったが、短距離用鉛酸蓄電池を備え、Tropos Motors(トロポス・モーターズ)の電動多目的車、Able(エーブル)と同じ仕様だ。この件に関してTroposもTBCも質問への回答はない。

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画像クレジット:Ethan Miller / Getty Images

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(文:Mark Harris、翻訳:Nob Takahashi / facebook

商用EVトータルサービスを目指すIdeanomics、今度は配送用EVメーカーVIA Motorsを約495億円で買収

ニューヨークを拠点とするフィンテック・電動モビリティ企業のIdeanomics(アイディアノミクス)は、商用EVメーカーのVIA Motorsを買収すると発表した(4億5000万ドル[約495億円]相当の全株式取得による)。

Ideanomicsは、電気自動車に移行するフリートオペレーターや交通機関向けに垂直統合型のサービスを構築することを目指して、2021年に入ってから積極的にモビリティ事業を買収している。今回のVIA Motorsの買収発表により、Ideanomicsの株価は市場開始時から6%上昇し、2.43ドル(約267円)となった。

2021年だけでもIdeanomicsは、電動パワートレイン部品と燃料電池エンジンのメーカーであるUS Hybrid、米国製の唯一の電動トラクターを製造するEVトラクターメーカーのSolectrac、ユタ州を拠点とするワイヤレス充電器メーカーのWave、権限およびエスクローサービスを提供するTimios Holdings Corp.などの買収を完了している。

VIA Motorsの買収は、Ideanomicsの歴史の中でも群を抜いて最大規模のものだ。VIA Motorsは、短距離および中距離配送用のEVバンおよびトラックの設計・製造を行っており、3つの車両モデルに「スケートボード」スタイルのモジュラー構造を採用している。

「今回の買収は、Ideanomicsにとって大きな変革のマイルストーンとなります」と、同社のAlfred Poor(アルフレッド・プア)CEOは米国時間8月30日に行われた投資家向け電話会議で述べた。この買収により「完全なOEM製造能力」を得ることになり、同社が出資し、充電するEVを製造することができるようになったと同氏は述べている。

この取引には、2026年までの車両納入を条件に、VIAの株主に最大1億8000万ドル(約198億円)のアーンアウト条項に基づく支払をもたらす可能性が含まれている。また、株主は合併後の会社の約25%を所有することになる。これとは別にIdeanomicsは、VIAの運営資金として5000万ドル(約55億円)のファイナンスノートを発行すると発表した。

Ideanomicsは現在、EVの調達から充電管理インフラの構築までをサポートしている。また、同社はフィンテック部門を通じて資金調達の他、充電サービス(charging-as-a-service)や車両サービス(vehicle-as-a-service)も提供しており、フリート企業の投資モデルを設備投資主導型から運用費主導型に切り替えることができるとしている。

プア氏は、最近の第2四半期の決算発表でこのように述べていた。「CapEx(設備投資)からOpEx(運用費)への移行は、新製品やインフラへの投資という明らかな参入障壁を取り除くことで、ゼロエミッションフリートの導入を加速させ、フリートオペレーターに大きな影響を与えると考えています」。

同社は、ユタ州に本社を置くVIAの2026年までの財務予測については明らかにしていないが、買収完了に先立ち規制当局に提出するIdeanomicsの委任状には、これらの数字が記載される予定であるとプア氏は付け加えた。

画像クレジット:Via Motors

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Aya Nakazato)

HAAS Alertが自動車衝突防止システム拡張のために5.5億円のシードラウンドを実施

リアルタイム自動車衝突回避システムを公道上の車両に提供するSaaS企業のHAAS Alert(ハーズアラート)が、500万ドル(約5億5000万円)のシード資金を調達した。同社はその資金を、販売やマーケティングの拡大、そして車対車間および車対インフラ間(V2X)技術の研究開発 / 提携を加速するために使用するという。

このラウンドは、R^2とBlu Venturesが主導し、TechNexus、Stacked Capital、Urban Us、Techstars、Ride Ventures、Gramercy Fundが参加した。

HAAS Alertは、携帯の電波を使うセンサーを利用して、車両周辺の環境から道路のハザードデータを取り込み、その予測技術によって車両システムを通じてドライバーにデジタルで警告を発する。HAAS Alertが独自に開発したデジタル警告システムSafety Cloud(セーフティクラウド)は、消防車、救急車、警察車両、レッカー車、建設車両、廃棄物処理車両、スクールバスなど、官民を問わずさまざまな車両に搭載されている。

HAAS Alertのコネクテッド・ビークル担当上級副社長のJeremy Agulnek(ジェレミー・アグルネク)氏は、TechCrunchの取材に対し「緊急対応要員、けん引業者、建設・作業現場の作業員、および類似の役割を果たす自治体職員の車両は、衝突による死傷率が極めて高いのです」という。「同時に彼らは、地域社会のバックボーンとなる存在であり、すべてのドライバーが毎日のように道路で出会う存在でもあるのです。これらの仕事の多くはもともと危険をともなうものですが、それでも衝突されることによる事故は、すべての死因の上位にランクされています」。

HAAS Alertは、先進的運転支援システム(ADAS)とV2Xを、課題に対するソリューションとして捉え、道路上で最もリスクの高い人たちからサービスを始めて、そこから発展させていくことを目指している。

「私たちにとって、この活動はコネクテッドビークルをエンターテインメントや一般的なコネクティビティのために使用するということではなく、特に安全性に注力するということなのです」とアグルネク氏は述べている。「こうした人びとをつなぎ、保護することで、すべてのドライバーとインフラ対してコネクテッドビークルの体験をすぐに提供することができ、コミュニティの安全性も高めることができるのです。私たちは、緊急応答者や道路作業者の安全性課題を解決することが、モビリティを次のステージに進めるための最も重要な要素だと考えています」。

現在、Safety Cloudは750以上の公共機関や民間企業の車両に搭載されており、合計で10億回以上の警報を送信している。

HAAS Alertは、V2X技術を活用して衝突のリスクを低減しようとするスタートアップの増加を象徴しており、資金調達はパズルの大きなピースとなるだろう。ソフトウェアの開発や保守にコストがかかるだけでなく、公共のインフラや車内にセンサーを設置するためのハードウェアや人的コストも安くはない。HAAS Alertは、2022年までにドライバー安全警報100億回を達成したいと考えているが、そのためには、自動車業界をもっと巻き込む必要がある。現在、同社は主に緊急 / 専門車両群を相手に仕事をしているが、同社のプラットフォームを利用する車両群が増えれば、より多くの一般自動車顧客を獲得することができ、その逆もまた成り立つだろうという。

「緊急 / 専門車両群や代理店経由のお客様には、Safety Cloud上で路上資産を有効活用するために納得していただける料金をお支払いいただき、一般自動車利用のお客様には、当社が提供する安全警告、ソフトウェア、その他のサービスに対するライセンス料をお支払いいただいています」とアグルネク氏はいう。

同社によれは、緊急車両が点滅信号を作動させた際に、接近してくるドライバーたちに自動的にデジタル警報を一斉に送ることができるハードウェア「HA-5トランスポンダ」を、全国の車両に積極的にインストールしている最中だという。これらの警報は、道路上や道路付近に緊急応答要員がいることを他の道路利用者たちに知らせ、ドライバーに減速や回避の時間を与える。

アグルネク氏によると、彼らのハードウェアのセットアップは迅速かつ簡単に行うことが可能で、ダウンタイムも最小限に抑えることができるものの、車両にすでにインストールされている配車システムやGPSやテレマティクスシステムを介して追加のハードウェアなしでSafety Cloudを統合するオプションも用意されているという。

「Safety Cloudの警報を車両に追加するために必要なのは、車両の既存のテレマティクス機能を介してデータを受信し、インフォテインメント画面や機器部分にドライバーへのアラートを表示するためのソフトウェアアップデートだけです」とアグルネク氏は説明する。「現在、ある自動車メーカーとのプロジェクトを進めていますが、彼らの車にアラート機能を実装するのに1週間もかかりませんでした」。

各種の計算は、クラウドまたはハードウェア内のエッジチップで行われる。つまり、警告ロジックは、HAAS Alertのクラウド、車両OEMのクラウド、車両搭載ユニット、またはハイブリッドのマルチロケーションアーキテクチャ上に配置することができる」とアグルネク氏はいう。

Safety Cloudには車両管理プラットフォームのSituational Awareness Dashboard(状況認識ダッシュボード)が標準提供されており、行政機関同士が管轄区域を超えた連携ができるように設計されている。またHAAS Alertは、特定の業界向けのアドオンも可能だ。例えば、R2R(レスポンダートゥーレスポンダー)は、車内に取り付けられたライトが、他のSafety Cloud搭載車がアクティブレスポンスモードで同じ交差点に近づいてきたときに、レスポンダー(緊急応答要員)に対して通知を送る機能だ。またFleetFusion(フリートフュージョン)は、Safety Cloudのリアルタイムデータを組織内のダッシュボード、サードパーティアプリケーション、交通管理センターに統合することができる。

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画像クレジット:HAAS Alert

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(文: Rebecca Bellan、翻訳:sako)

電動キックスクーターの安全性をモニターするSuperpedestrianが危険運転を検知・制御のためNavmatic買収

電動キックスクーターの運営会社Superpedestrian(スーパーペデストリアン)は、マイクロモビリティ運営会社による車両の位置特定と、その動きのリアルタイム補正を助けるスタートアップNavmatic(ナヴマティック)を買収した。

両社とも、2021年6月に成立した買収の詳細を明かしていない。取引の関係者によると、買収価格はNavmaticによる2020年6月の400万ドル(約4億4100万円)の設立資金調達の、最後の資金調達ラウンドとそう変わらない。

Navmaticの買収は、Superpedestrianにとって車両の安全システムを強化するために当該スタートアップのスーパーフュージョン技術を採用できることを意味する。新しいシステムはPedestrian Defense(ペデストリアン・ディフェンス)と呼ばれ、安全でない乗り方(一方通行の道路を逆走、無茶な進路変更、歩道の走行、急ブレーキの繰り返しなど)を検知する。また、スクーターを減速または停止させてリアルタイムで利用者に知らせるか、その行動を正す。利用者は利用終了時に、カスタマイズされた安全トレーニングに使用する安全評価を受け取る。上手な乗り方をしていれば割引を受けられるが、常習的に安全でない乗り方をする利用者はブラックリストに載ってしまう。

スクーター関連の事故が増える中、クルマが関与する交通事故の大半の場面で活躍するであろう新たなテクノロジー企業を紹介する。Spin(スピン)Voi(ヴォイ)は、同様に利用者を見張り、歩行者を守るためにさらなる技術手段を導入した。といっても、Navmaticのように位置特定ソフトウェアに注力したのではなく、コンピュータビジョンのスタートアップであるDrover AI(ドローヴァーAI)とLuna(ルナ)に目を向けた。非妨害性カメラを搭載したSpinとVoiの車両は、Superpedestrianのものとは違って、ある程度の精度を伴って歩行者を検知する。Superpedestrianの良さは、スクーターの細かい動きに関するデータを通じて利用者の行動を精確に理解するところだ。

「現在の課題はスクーターに関連する弱者、つまり歩行者、障害者、ベビーカーを押す人を守ることです」と、SuperpedestrianのCEOであるAssaf Biderman(アサフ・ビダーマン)氏はTechCrunchに語る。「そのため、非常に正確な位置、利用者の行動の特徴付け、コンテキストアウェアネスが必要です。利用者が他者の通行権を邪魔していないか?利用者がデータを正しくトレーニングすれば、カメラは必要ありません」。

ビダーマン氏は、SuperpedestrianがマイクロプロセッサとNavmaticのソフトウェアをLINKスクーターのオペレーティングシステム上で実行しており、Superpedestrianのすべてのマップがそこで機能していると話す。そのソフトウェアはグラウンドトゥルースで高精度なマップの視界を含め、さまざまなセンサーでトレーニングされている。乗車中、スクーターから取得されたデータを分析するリアルタイム計算がマイクロプロセッサのエッジで行われ、GPS生データ、多次元の慣性感知、車両の動力学を組み合わせて、車両の位置と動きを非常に精確に計算する。

「Navmaticのソフトウェアがあれば、位置検知が著しく向上し、スクーター運転者や小型車両のわずかな動きでさえすぐに分析できるようになります」とビダーマン氏は語る。「現在、その反応時間は0.7秒です」。

Superpedestrianのディベロップメント&パブリックアフェア部門ディレクター、Paul White(ポール・ホワイト)氏によると、車両の位置の正確性向上は局地的な条件に応じて70~90%である。

両社は、そのような精確な位置データを車両動作の制御機能と組み合わせると、視界に関する潜在的に安価で確実に拡張可能な優れた解決策となると話す。

「1台のスクーターに1000ドル(約11万円)や2000ドル(約22万円)のLiDARを搭載するわけにはいきませんよね?」とビダーマン氏はいう。「センサーフュージョンがあれば、夜に視界が悪くなったり、カメラが汚れたり、何度も故障したりするなどの制限や、反射や影の影響を受けるGPSの制限を克服できます。できるだけ多くのセンサーを組み合わせることで、それぞれの良いところを享受し、学習と改善を続けることができるのです」。

参考に、ドローバーAIとルナの技術により、スクーター運営会社はデータに基づき利用者の動きを制御することもできる。しかしこの能力はまだSpinとVoiがコンピュータビジョンを使用しているすべての都市で利用されているわけではない。Navmaticのチップはスクーターとオペレーティングシステムを共有しているが、例えばドローバーAIのものはスクーターのOSと直接通信する個別の車載IoTユニットで稼働する。この機能は現在サンタモニカでSpinにより試験的に利用されている。Voiは警報音を用いて歩道の歩行者に知らせるルナの技術をケンブリッジで試験利用したばかりだが、今度はスクーターを減速する方法を模索している。

Superpedestrianはオペレーティングシステムからハードウェアまでフルスタックを所有することにより、オフザシェルフのオペレーティングシステムを購入する他の運営会社と比べて優れた車両の制御性を誇る。

「当社の技術を他社のものと統合する上で、たくさんの課題がありました。他社はコード行を変える必要があるたびに、製造業者に連絡しなければならなかったのです。変更まで1週間もかかります」。NavmaticのCEOで共同設立者のBoaz Mamo(ボアズ・マモ)氏はTechCrunchに語る。

この買収へのSuperpedestrianのソフトウェアファーストのアプローチは、現在会社への投資者の1人であるEdison Partners(エディソン・パートナーズ)のパートナー、Dan Herscovici(ダニエル・エルスコビッチ)氏にとっても魅力的だった。

「スクーター企業による他の買収のほとんどは、市場シェアにとって遊びのようなものです」と彼はいう。「マイクロモビリティ企業が車両を強化するためにIPとテクノロジーに頼ることは滅多にありません」。

エルスコビッチ氏は、Superpedestrianが歩行者の安全と都市の法令遵守の問題を解決するため市場で多くのソリューションを吟味し、自らも技術を開発することを検討していたと話す。製品化までの時間と速く行動する必要性のバランスを取ると、都市の許可を失う恐怖が絶えず頭をよぎる。Navmaticの買収は正しい判断のように見えた。

「マイクロモビリティ分野については3つの大きな顧客層がいると考えています」とエルスコビッチ氏はいう。「まずは利用者。マイクロモビリティ企業は一番に利用者のことを考えますね。彼らをどうやって惹きつけ、乗り続けてもらうか?次に都市や自治体。最後に忘れられがちなのは利用者以外。道路を共有している人達です。業界は安全規則に基づいて利用者の行動を修正する道を模索していて、この買収はその力を解き放つと思います」。

マモ氏は、都市が利用者の移動方法や、優れたインフラ上の決断を下す方法について見識を得る可能性を、ペデストリアン・ディフェンスが切り開くことも指摘している。

ビダーマン氏は、Superpedestrianが2021年約5万台のスクーターを製造しており、12月からすべての新車に新しいテクノロジーを搭載すると述べた。2022年はアップグレードした車両を新規開拓する都市に展開し、同社がすでに営業活動を行う都市の旧モデルと入れ替え始める。

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Dragonfly)

トヨタの自動運転車「e-Palette」が横断歩道を横断しようとしたパラリンピック選手と接触事故、選手は負傷で欠場に

トヨタの自動運転車「e-Palette」が横断歩道を横断しようとしたパラリンピック選手と接触事故、選手は負傷で欠場に

Reuters

トヨタは、東京オリンピック / パラリンピック選手村で運行している自動運転車 e-Palette(イーパレット)が26日に起こした、パラリンピック選手との接触事故を受けて、選手村でのe-Palette運行をいったん取りやめました。豊田章男社長は運行再開について問われ「絶対に安全だといえる立場ではない」と、慎重な姿勢を示しています。

事故はe-Palletteが選手村内のT字交差点を右折しようとした際に発生しました。朝日新聞によれば、e-Palletteは横断歩道の前で一旦停止したあと「オペレーターが手動で発進した」直後に、車内のオペレーターから死角の位置にいたパラリンピック柔道代表の北薗新光選手に接触したとみられるのこと。視覚障害をもつ北薗選手は接触によって転倒し、頭などに全治2週間のけが。28日の試合も欠場することになってしまいました。

豊田社長は「パラリンピックの会場で、目が見えないことや耳が聞こえないことへの想像力を働かせられなかった」と事故原因について説明したとのこと。説明どおりなら事故の発生はオペレーターの判断ミスが原因で、責任もオペレーターにあるということになります。

またレベル4の自動運転と宣伝されていたはずの自動運転車が、交差点で一旦停止したあと手動で発進する必要があるというのは釈然としないところで、どういう運行状況、手順だったのかも非常に気になります(レベル4は、決められた条件下で全ての運転操作を自動化と定義されています)。

トヨタは、e-PaletteはEVでエンジン音がないため、接近を知らせるスピーカー音量を2倍に大きくするなどの対策を検討するとしています。なお、パラリンピック開催期間は9月5日までありますが、選手らはe-Paletteがなくても他の手段で選手村を移動できるため、特に困ることはない模様です。

トヨタの自動運転車「e-Palette」が横断歩道を横断しようとしたパラリンピック選手と接触事故、選手は負傷で欠場に

高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部・官民データ活用推進戦略会議「官民ITS構想・ロードマップ2020」より。JSAE(自動車技術会)によるJASO(日本自動車技術会規格)テクニカルペーパー「自動車用運転自動化システムのレベル分類及び定義」(2018年2月1日発行)を基にしたもの

(Source:朝日新聞DigitalReutersEngadget日本版より転載)

Waymoが自動運転用センサーLiDARの他社への販売を停止

CEOの交代からわずか1カ月、Waymo(ウェイモ)は正式にカスタムセンサーのサードパーティへの販売を停止する。これにより、Alphabet(アルファベット)傘下の自動運転企業Waymoは販売事業をわずか2年で終了することになる。Waymoはこの決定をロイターに認め、Waymo One配車サービスとWaymo Viaトラック配送部門でWaymo Driverテックを展開することに専念する、と付け加えた。

今回の動きは、長らくCEOを務めたJohn Krafcik(ジョン・クラフシック)氏の退社に続くものだ。クラフシック氏に代わって同社の役員、Tekedra Mawakana(テケドラ・マワカナ)氏とDmitri Dolgov(ディミトリ・ドルゴフ)氏が共同で舵取りを担うことになった。一部の人はクラフシック氏の意図的なアプローチは商業化を妨げていると考えていた。2021年8月初め、Waymo はシミュレーションで200億マイル(約322億キロメートル)、公道で2000万マイル(約3220万キロメートル)の走行というマイルストーンを達成した。数日前にはサンフランシスコで選ばれた客にロボタクシーの提供を開始した。

同社は2019年に、レーザー光のパルスで距離を測定する技術であるLiDARを自動運転車両ライバルを排除する企業への販売を開始した。当初は短距離センサー(Laser Bear Honeycombとして知られる)をロボティクス、セキュリティ、農業テクノロジー部門の企業に販売する計画だった。同社のウェブサイトにあるフォームにはドローンやマッピング、エンターテインメントといった産業も対象と記載されている。

Waymoの第5世代Driverテクノロジーは、車が日中問わず、そして雨や霧といった悪天候の中でも周囲360度を「見ることができる」よう、レーダー、ライダー、カメラなどのセンサーアレイを使っている。シミュレーションと実世界での運転テストは機械学習ベースのソフトウェアを使って分析される膨大なデータセットを集めるのに役立った。ロイターが引用した匿名の情報筋によると、Waymoは次世代LiDARで自社開発のテクノロジーと外部サプライヤーを使う意向だ。

編集部注:本記事の初出はEngadgetに。著者Saqib ShahはEngadgetの寄稿ライター。

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画像クレジット:Waymo

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(文:Saqib Shah、翻訳:Nariko Mizoguchi

EVメーカーのRivianが秘密裏にIPOを申請

Ford(フォード)やAmazon(アマゾン)など、多くの機関投資家および戦略投資家に支援されている新興EVメーカーのRivian(リヴィアン)が、米国証券取引委員会(SEC)に対し、秘密裏に上場申請の書類を提出した。

IPOの規模や株価幅は未定だ。簡潔な声明によると、IPOはSECが審査プロセスを完了した後に、市場やその他の状況に応じて実施される予定だという。

今回の秘密申請は、RivianがAmazonのClimate Pledge Fund、D1 Capital Partners、Ford Motor(フォード・モーター・カンパニー)、T. Rowe Price Associates Inc.がアドバイザーを務めるファンドおよび口座が主導する25億ドル(約2746億円)の私募式ラウンドをクローズしたと発表してから、2カ月も経っていない。このラウンドにはThird Point(サードポイント)、Fidelity Management and Research Company、Dragoneer Investment Group、Coatueも参加した。

同社は2021年7月のラウンド発表時には、ポストマネー評価額を公表しなかった。

現在7000人の従業員を擁するこのEVメーカーは、9月にピックアップトラック「R1T」の納入を控えている。R1Tとそれに続くSUVを生産するためには資本が必要だが、Rivianがそれを調達するのは難しいことではなかった。

Rivianはこれまでに約105億ドル(約1兆1532億円)を調達している。2021年1月には、既存の投資家であるT. Rowe Price Associates Inc.、Fidelity Management and Research Company、AmazonのClimate Pledge Fund、Cootue、D1 Capital Partnersから26億5000万ドル(約2910億円)を調達した。このラウンドには新規投資家も参加し、Rivianの評価額は276億ドル(約3兆円)に達したと、同ラウンドに詳しい情報筋が当時TechCrunchに語っていた。

このニュースは進行中のため、新情報が入り次第引き続きお伝えする。

【更新】このニュースを最初に報じたBloombergによると、Rivianは約800億ドル(約8兆7862億円)の評価額を求めており、感謝祭(11月末)前後のIPOを視野に入れているとのこと。TechCrunchは現時点でこの報道を独自に確認していない。

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画像クレジット:Rivian

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Aya Nakazato)

テスラのiPhone用アプリが久々の大規模アップデート、機能やデザイン面に多くの改良

Tesla(テスラ)が、iOS向けスマートフォン用アプリのメジャーアップデートを配信開始した。これによって新たな操作が可能になった他、管理機能の改善や、クールなビジュアル面の更新などが行われている。また、このバージョン4.0では、iPhoneのホーム画面に表示するウィジェットのサイズを2種類から選択できるようになった。「Tesla Software Updates(テスラ・ソフトウェア・アップデート)」の説明によると、どちらを選んでも、車名、バッテリー残量、位置情報(または充電施設情報)、ロック状態、車両の画像、情報の最終更新時刻という同じ情報が表示されるようだ。テスラは以前「Today」という機能拡張をiOS向けに提供していたが、今回新たに導入されたウィジェットほど総合的な機能はなかった。

操作面では、車両の起動を待たずに、アプリを開いたらすぐにコマンドを送信できるようになった。また、スマートフォンがクルマのキーになる「Phone Key(フォンキー)」の機能も拡張され、基本的に複数のテスラ車のロック解除に対応した。

ビジュアル面の更新ですぐに気づくのは、車両の3Dレンダリングが新しくなったことだ。充電時の状態を示す画面や、車両各部のコントロールパネル、空調設定の表示にも、新しいアニメーションが追加されている。デザイン的な改善としては「充電」セクションが廃止され、車両が充電プラグにつながれている時に、その情報を表示するようになった。また、アプリ内でスーパーチャージャーの充電履歴を確認できるようにもなっている。速度制限、車両を駐車場の係員に預ける際に制限を加える「バレーモード」、周辺の不審な行為を監視する「セントリーモード」などの設定は、新たに設けられた「セキュリティ」というカテゴリーに移されており、そこではBluetooth、フォンキー、位置情報サービスの使い方のヒントも見ることができる。

要するに今回のアップデートは、テスラのiOSアプリでは久しぶりに大がかりなものとなっている。最近のテスラは、7月にVirtual Power Plant(バーチャルパワープラント)を導入した以外では、主にバグフィックスや改善に注力してきた。

編集部注:本稿の初出はEngadget。著者Saqib Shahは、Engadgetの寄稿ライター。

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画像クレジット:Tesla

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(文:Saqib Shah、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

ポルシェがオンラインマーケットプレイスに米国内の新車在庫を登録

Porsche Cars North America(PCNA、北米ポルシェ)は、米国内の全商品をオンラインマーケットプレイスに追加した。消費者の要望と業界のデジタルコマースへのシフトに対応する動きだ。

2020年5月に同社のオンラインマーケットプレイスであるPorsche Finder(ポルシェ・ファインダー)が公開された時、顧客はこのツールを使って中古車と認定中古車しか検索できなかった。同プラットフォームでは消費者が、車両モデル、年式、価格、パッケージ、カラーなどで検索できるが、このほど米国内193のディーラーの新車在庫がすべて登録された。

システムを開発したのは子会社のPorsche Digital(ポルシェ・デジタル)とPCNAで、ユーザーが下取り価格の見積りをとったり、Porsche Financial Services(ポルシャ・フィナンシャル・サービス)が提供するリースとローンを比較する支払い計算機などの機能もある。

顧客が製品を検索できるオンラインプラットフォームは新しいものではない。顧客の買い物志向がオンラインにシフト(新型コロナウイルス感染症パンデミック中に加速したトレンド)するにつれ、デジタルプラットフォームは企業にとって不可欠なツールになった。

しかしポルシェのような伝統的自動車メーカーは、顧客からの要望とディーラーネットワークとのバランスを取る必要があった。Porscheには、Tesla(テスラ)や新規参入のLucid Group(ルシッド・グループ)、Rivian(リビアン)のような直販モデルがない。

「ディーラーネットワークは今も当社が行うことすべての中心にあります」とPCNAのプレジデント兼CEOであるKjell Gruner(クジェル・グリューナー)氏は最近のインタビューで語った。「ディーラーでは非常に人間的な対応を心がけています。相手の目を見て、ボディランゲージを読み取ります。そして、もちろん、私たちの製品は非常に物理的です」。

Porsche Finder Toolには、全193ディーラーが参加しているが、大勢の中にはデジタルコマースへのシフトに警戒的な人たちもいることをグリューナー氏は認めている。

「いつの世にも、人より革新的な人たちもいれば、慎重な人たちもいます」と彼は言った。「新型コロナは、人々がデジタルを受け入れ、これらのツールを自身のために役立てる意識を喚起しました」。

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Nob Takahashi / facebook

電動航空機用水素燃料電池システムの開発でHyPointとPiaseckiが提携

電動垂直離着陸機(eVTOL)で高い評価を得ている企業をざっと調べてみると、1つの共通点があることに気づく。それは、すべての企業がバッテリーを動力源とする航空機を開発しているということだ。しかし、リチウムイオン電池ではエネルギー密度に限界があると考え、代わりに水素燃料電池に目を向ける航空機会社も増えている。

そこで注目を浴びているのが、HyPoint(ハイポイント)という企業だ。創設2年目の同社は、ZeroAvia(ゼロアヴィア)をはじめとする多くのeVTOL企業と共同で、空冷式水素燃料電池システムを開発している。空冷式水素燃料電池は、従来の液冷式水素燃料電池と比べると、出力重量比が3倍になるという。そして今、この燃料電池開発会社は、Piasecki Aircraft Corporation(ピアセッキ・エアクラフト・コーポレーション)を新たにパートナー名簿に加えることになった。

両社の協力関係は、水素燃料電池システムの設計と認証に向けて、650万ドル(約7億1300万円)の多段階開発を共同で行うというものだ。この提携により、HyPoint社は、地上試験、デモフライト、認証プロセスのために、650キロワットの水素燃料電池システム5基を提供する。

その目標は、既存のリチウムイオン電池の4倍のエネルギー密度と、既存の水素燃料電池システムの2倍の比出力を持ち、タービン式回転翼機と比較して最大50%の運用コスト削減を実現するシステムを作り上げること。HyPointは3月にこの新技術の試作品を公開している。

画像クレジット:HyPoint

今回の提携により、Piasecki社にはこの技術が独占的にライセンス供与される。同社はこの技術を「PA-890」有人ヘリコプターに使用することを目指しており、これは市場で最初の水素を燃料とするヘリコプターになるという。ハイポイント社は、この燃料電池技術の独占的所有権を維持することになる。

両社は声明の中で、他のeVTOLメーカーにもこのシステムを提供していく考えがあると述べている。「Piasecki社は、Hypoint社とともに、他のeVTOLメーカーを支援する準備ができています」と、HyPointのAlex Ivanenko(アレックス・イワネンコ)CEOは、TechCrunchに語った。

この契約は実現可能性調査から始まったもので、そこでHyPointは、概念実証のために非常に小規模なプロトタイプを製作した。現在、同社は設計段階にあり、単体パワーモジュール(650キロワットのシステムは複数のパワーモジュールで構成される)の製造と、Piaseckiの航空機にシステムを統合するコンセプトに取り組んでいる。単体パワーモジュールは年内に準備が整い、2023年には最初の650キロワットシステムがPiaseckiに納入される予定となっている。商業的に利用可能な製品となるのは、2025年頃になる見込みだ。

画像クレジット:Piasecki Aircraft Corporation

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hirokazu Kusakabe)