中国の長時間労働にスタートアップが反撃

中国の労基法は1週間の労働時間は44時間とし、それ以上の労働には残業代を支払うことが定められている。しかし多くが法律を守っていない。そして活発なオンラインの利用が中国でにわかに急増しているテック部門における労働時間を長くしている。スタートアップの労働状況を改善するために社会のあちこちから人々が集まって声をあげているが、その一方で働くほどに成功につながる、という考えが染み込んでいる文化における障壁を指摘する人もいる。

3月下旬、匿名の活動家が996.ICUを立ち上げた。このドメインネームは中国人プログラマーの疲労困憊生活を意味している。最終的に集中治療室(ICU)送りになるリスクを伴いながら午前9時から午後9時まで、週6日働くというものだ。このサイトでははっきりとタダ働きの残業を禁じている労働法の詳細が案内されている。そしてややもったいぶって間をあけ、その下にスローガンがある。「Developers’ lives matter(デベロッパーの命も大切だ)」。

996.ICUというプロジェクトは、Microsoftが所有するコードツール共有サイトGitHubでもすぐにフォローされた。プログラマーが大勢集まって不満をさらけ出し、996労働を強いているとされる中国企業のリストを作った。そのリストには、eコマース大手のAlibaba、JD.com、Pinduoduoのほか、通信機器メーカーHuaweiや、ショートビデオアプリTikTokの親会社Bytedanceといった有名どころも名を連ねている。

TechCrunchへの電子メールによる回答で、JDは従業員に残業を強制していない、と主張した「JD.comはイニシアチブやハードワークに報いるという競争原理が働いている職場であり、これは我々の起業家というルーツに調和したものだ。我々は同じハングリー精神や価値観を共有するスタッフを求め、育成し、報いることで、そのルーツに戻りつつある」と広報は話した。

AlibabaはGitHubでの動きについてのコメントは拒否したが、創業者のJack Ma(ジャック・マー)氏は4月12日、996について自分の考えをWeiboで共有した。「どの企業も従業員に996で働くことを強制すべきではないし、強制もできない」とMaは書いている。「しかし若い人々は、幸福は勤勉からくるものだということを理解する必要がある。私は996を弁護はしないが、勤勉な労働者には敬意を表する!」。

Bytedance(バイトダンス)は、従業員が996で働いているかどうかについて、コメントはしなかった。また我々はHuawei(ファーウェイ)にもコメントを求めたが、この記事執筆時点で、返事は得られていない。

996.ICUは、世界で最大のソースコードのホストとうたっているGitHubで瞬く間に最も人気のプロジェクトになった。この抗議は明らかにテック大企業に向けられていて、中国のユーザーはその後すぐに、996を強いている企業が運営する多くのブラウザで996.ICUウェブページへのアクセスが制限された。

996ジレンマ

996のリストは、GitHubユーザーからの任意の情報提供で構成され、完全なものにはほど遠い。また、会社での平均労働時間をはっきりさせるのは難しく、部門によって規則が異なる数万もの従業員を抱える大企業では特にそうだ。例えば、他の部門の社員よりデベロッパーの労働時間が長いことは広く知られている。TechCrunchが聞いたところでは、とある組織のボスはしばしば、従業員との雇用契約に996を明記することなく、非現実的な業績評価指標を設定するなど、抜け道を開拓する方法を探している。

「我々の会社は996を強いることはないが、時に直属の上司の管理の不手際により、管理上の締め切りに間にあわせるために長時間労働を強いられることがある」と、ネットワーキングサイトで働く北京在住のエンジニアはTechCrunchに対し語った。このエンジニアは匿名で語った多くのソースの1人だ。なぜ匿名かというと、メディアに語ることを認可されていないからだ。

他の企業は、激務カルチャーを誇りにしていて、996についてより積極的に語る。Tencentがサポートし、Shopify(ショピファイ)に似ているeコマースソリューションのYouzan(ヨウザン)は明らかに996ワークスタイルをスタッフに求めている。このため従業員は1月に地元の労働当局に苦情を申し立て、当局はYouzanの調査を開始した、と言われている。

多くの企業がYouzanと同じく、長時間労働イコール成功とみている。そうした考え方はプログラマーや他の労働者に時間外労働を受け入れるよう駆り立てる。しかし燃え尽きてしまうのは従業員だけでなく、起業家たちはゼロから立ち上げた事業を成長させるためにさらに大きなプレッシャー下に置かれている。

「996をめぐる最近の論争は、中国のテック産業における熾烈な競争に光をあてることになった。生き残るためにスタートアップや大企業はかなりハードに働くより他はない。何人かの有名な起業家は1週間に100時間超も働いている」とアーリーステージファンドChina Growth Capitalの投資副部門社長Jake Xie氏はTechCrunchに話した。

「残業は多くのインターネット企業で常態化している。たくさん働かなければ、負けてしまう」と深セン拠点のモバイルゲーム開発スタートアップの創業者は語る。中国のモバイルゲーミング部門における競争は特に激しく、独創力が不足する中で成功への近道は、すでに知れ渡っている商品を打ち負かすことだ。それゆえに、スピードが命だ。

一方、中国で業績を重視する文化が起こっていて、これは社会の996への抵抗をないものにしてしまうかもしれない。こうした文化は、汗をかいてストレスを解消するためのスポーツジムやヨガスタジオに集うよう個人を駆り立てる。また、毎晩仕事に戻る前にグループで食事をとるのがそれぞれの社会生活にとって、特に子供を持たない人にとって不可欠なものになる。

「働くほどに学ぶことが多い、という考え方がある。一部の人はもっと働きたい、と考えていると思う。そうした人たちの割合は22〜30才で最も高い」とワークライフバランスに価値を置く、上海在住のテック企業幹部はTechCrunchに話した。「私のチームの何人かは、996の企業で働く彼らの友人ほどに速く成長することはできないと感じている、との考えを表した」。

「若い時に996のように働かなければ、いつ働くのか?」と54才のマー氏はWeiboへの投稿に書いている。「今日に至るまで私は996どころか、少なくとも12〜12で働いている。996を実行している人みんなが、偉業に近い価値あることをできるチャンスを手にしているわけではない。だから中国のBATが996で働けるというのはありがたいことだ」(BATは、中国のデジタル産業を牛耳っているBaidu、Alibaba、Tencentの頭文字をとった言葉で、米国のFANNGと同種のものだ)。

残業はもちろんテック産業だけに限ったものではない。中国の製造業分野においてはメディアや印刷業界もハードワークで知られている。隣国の日本ではサラリーマンの間で過労死という「残業による死」が多くあり、韓国企業もまた労働者に長時間労働を強いることで有名で、これは政府の介入につながった。

妨害にあっているにもかかわらず、996に反対する動きは中国国内で注目を集めた。流行りの話題「996ICUは大企業によって妨害されている」について2000近くの投稿があり、Weiboで630万もの閲覧があった。中国国営の放送局CCTVはインシデントを記録にまとめ、従業員に「実際に精神的、肉体的な重大な結果」を起こしている残業を非難した。中国外では、PythonのクリエイターであるGuido van Rossum氏が中国の996という働き方にちついてツイッターとフォーラム上で意識啓発した。

「中国の996プログラマーのために我々に何かできることはないだろうか」と彼はスレッドに書き込み、これは1万6700回閲覧された。

言葉だけの抗議で始まった996の抗議キャンペーンはすぐに実際の動きを伴うものになった。996.ICUプロジェクトに関与していないとする、上海拠点の弁護士Katt Gu氏とスタートアップの創業者Suji Yan氏は、反996ライセンスを進める。これは、オープンソースのソフトウェアを使うことで企業が中国国内やグローバルの労働法規に違反することがないようにするものだ。

しかし、一部の人はそうした制約がオープンソースの精神を傷つけるかもしれない、と注意喚起した。このオープンソースの精神とは、ソフトウェアは無料で提供され、学習、共有、クリエイターの作品を修正するできるよう、そのソースコードには誰でもアクセスできることを意味している。

「私は断固996に反対し、非難する。しかし同時にオープンソースプロジェクトに任意の箇条を加えたり、オープンソースプロジェクトを政治ゲームに使うことには賛成できない」とMITライセンスのもとにリリースされたオープンソースプロジェクトVueのクリエイターであるYou Yuxi氏は中国版TwitterのWeiboで語った(Guは彼女のプロジェクトには一切“政治的要素”は含まれていないとしている)。

その他には、さほど攻めのアプローチをとっていない企業もある。そうした称賛される企業は995.WLB GitHubプロジェクトを介して「午前9から午後5時まで、週5日勤務」という、より人間的なスケジュールを取り入れている。(WLBは「work life balance」の略)。この称讃企業のリストには、低成長で知られるが中国の自称ヒッピーに常に人気のある、本と映画のレビューサイトDoubanがある。従業員の職場外での生活を尊重するとうたっているコワーキングスペース提供のWeWorkもリスト入りしている。

996リストに挙がった多くの企業の多くは商業的には成功している一方で、長時間労働が成果を生む、という偏見を指摘する声もある。

「もし大企業で、996を強いていることが明らかになれば、問題はより注目される。YouzanとJDの例を考えるといい」と上海在住で企業向けソフトウェアスタートアップで働くデベロッパーはTechCrunchに話した。

「逆に言えば、996を強いていながら商業的に成功していない多くの企業は見過ごされている。企業の成長が996とリンクしているという十分な証拠はない。上司は労働時間ではなく、生産性に基づいてが部下の評価をすべきだ」。

また、他の人が提案するように、管理職の人はもっと働くことを部下に要求する代わりに、インセンティブを与えることに力点を置くべきだろう。

「(中国の)経済が失速しない限り、996を止めるのは難しい。これは個人の問題ではない。経済の問題だ。我々ができることといえば、人間的な配慮を提供し、労働者に労働時間を気にする代わりに「自由意志と情熱を持って働いているだろうか」と考えさせることだ」とChina Growth CapitalのXie氏は提唱した。

より洗練された労働時間になるまでにはまだ時間がかかるだろうが、専門家は労働者がよりいい待遇を求めることができる他のエリアを提案する。

「中国のほぼすべてのスタートアップは、特に創業まもないとき、すなわちシリーズAや、あるいはシリーズBのときすら社会保障や住宅の資金が不足しているようだ」と弁護士事務所Loeb & LoebのパートナーのBenjamin Qiu氏は説明する。

「996に比べると、従業員は規則に反していたり、経済的にダメージを与えているような件で強く法的手段に訴える。これは中国における公的な社会的信用や住宅資金要件が、シリコンバレーに比べて従業員にとってかなりの負荷になっていることを表している。しかしそれをもってしても、996文化の努力として理解されるかもしれない」。

私がインタビューした多くの人が匿名という条件で語った。それは彼らが属する企業が996を促進しているからというだけでなく、彼らの雇用主が996議論に巻き込まれたくないからでもある。ある企業の広報は「我々がワークライフバランスをサポートしていると人々に知らせる必要はない。行動で示す」と語った。

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(翻訳:Mizoguchi)

Googleの契約社員たちが賃上げと福利厚生を要求

Googleの契約社員は、内部では臨時社員(Temporary)、業者出向社員(Vendor)、契約社員(Contractors, 請負社員)、合わせてTVCと呼ばれている。彼らは、より良い、平等な扱いを求めている。それは、今よりも良い賃金と福利厚生、そして会社の情報へのアクセスの向上を意味している。GoogleのCEO Sundar Pichaiに宛てた書簡で彼らは、Googleは“仕事や生活に関係のある情報へのTVCたちのアクセスを、当たり前のように拒否している”、と主張している。

TVCたちによると、たとえば4月のYouTubeにおける銃撃事件でGoogleは、正社員にのみアップデートを送った。次の日の討議集会でも、彼らは除外された。

書簡は次のように主張している: “重要なコミュニケーションと公平な扱いからTVCを排除することは、会社に定着している人種差別、性差別、およびわれわれ等に対する差別的待遇のシステムの一環である。TVCは不条理にも軽視され、より少ない報酬や機会、職場におけるより少ない保護や尊敬がふさわしい者として扱われている。われわれは正社員とは違うバッジを着用し、それに基づいて恣意的で差別的な分離が強制されている。正社員と同じ仕事をするときですら、これらの仕事には一貫して生活給の提供が行われず、最低限の福利厚生もないことが多い”。

7月のBloombergの記事によると、Googleはその総スタッフの過半数がTVCである。彼らはさまざまな仕事を担当し、それらの中には、配膳、自動運転車のテスト、チームの管理なども含まれている。

TVCによるこの抗議活動の前にGoogleは、セクハラと暴行の申し立てに起因する社員の要求に応じて部分的な譲歩をしている。それによって多少の変更は為されたが、そのときの活動を組織した者たちの要求のすべてには対応していない。たとえばGoogleは、チーフ・ダイヴァーシティ・オフィサー(多様性最高責任者)をPichaiの直属にするという格上げには応じず、取締役会に社員代表を加えよという要求は無視した。

今Googleに問い合わせているので、情報が得られ次第この記事をアップデートしたい。

関連記事: Googleのストライキ主催者たちはCEOの対応に満足していない

画像クレジット: TechCrunch

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

ヨーロッパ各国のAmazonの倉庫労働者が‘われわれはロボットではない’と労働条件改善要求デモを展開

【抄訳】
ヨーロッパのいくつかの国でAmazonの倉庫労働者が、彼らの主張する、人間をロボットのように扱う非人間的な労働条件に抗議している。それは今年の一連の労働者運動の中で最新のものだ。

その最新の運動は、ブラックフライデーにタイミングを合わせている。それはネットショップの1年でいちばん忙しい日で、お店は多くの商品の値引き販売を派手に宣伝して、その日から始まるその年のショッピングシーズンを盛り上げようとする。

イギリスでは、この国の代表的な労働組合のひとつGMB(Androidアプリ)が、今日(米国時間11/23)の朝と午後にルージリーなど5箇所のAmazon倉庫で“数百名”が抗議に参加する、と言っている。

私がこの記事を書いている時点〔現地時間11/23昼ごろ〕では、同労組は動員数の詳細を提供していない。

AP電によると、抗議活動は今日、スペイン, フランス, そしてイタリアでも行われている。しかしこれらのストライキについて尋ねられたAmazonは、“弊社のヨーロッパのフルフィルメントネットワークは正常に稼働しており、顧客への配送業務に引き続き専心している。これに反するいかなる報道も、まったく間違いである”、と主張している。

デモは、団体交渉を受け入れるようAmazonに圧力をかけるだけでなく、同社のWebサイトのユーザーに、大量のディスカウント商品の包装と配送は通常より(労働量も含め)経費がかさむことを、理解してもらうねらいもあるようだ。

[われわれはロボットではない。尊厳と敬意をもって扱え。ここでメッセージをシェアしよう。]

スペインの新聞El Diaroによると、労働者たちの今日の抗議は、Amazonのこの国最大のロジスティクスセンター、マドリッドのサンフェルナンドで行われ、労働条件をめぐるスペインでのストライキはこれが四度目である。

マドリッドの抗議者たちは今朝、次のようにシュプレヒコールしたという: “われわれの権利のディスカウントはお断り”。

[労働者のいないサンフェルナンドは麻痺した。]

AP電によると、スペインの抗議グループのスポークスパーソンDouglas Harperは、90%の労働者がデモに参加したので、搬入口には2名しか残らなかった、と言った。これに対しAmazonは、“90%は真っ赤な嘘だ。サンフェルナンドのフルフィルメントセンターは顧客の注文を通常どおり処理した”、と反論している。

フランスの新聞も、同国内の倉庫労働者のストライキを報じた。Amazonのロジスティクス労働者を代表する組合は、全国的なストライキを呼びかけた。

イギリスではGMB UnionがAmazonに、Amazonが労働組合を認めるよう求めた。それを認めない今のやり方は、“ヴィクトリア朝時代の因襲的な労働慣行だ”、と非難した。

また同組合は、年間の救急車呼び出し回数や、 Health and Safety Executive〔≒労働基準局〕への傷病報告件数の数字を挙げて、Amazonの労働条件は非人間的、と糾弾している。イギリス政府は政府が取り持つ労使調停を示唆したが、Amazonはこれに答えていない。

【後略】

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

自閉症の人たちに彼らの適職である細かいデータ管理の仕事を提供するDaivergent

優れたスタートアップは通常、個人的な場所で生まれる。Byran DaiのDaivergentも、そうだ。

2017年12月に創業されたDaivergentは、同社の顧客である企業を自閉症スペクトラム障害の人びとに結びつけて、AIやMLにおけるデータ管理の仕事を手伝わせる。

Daiの弟のBrandonが、自閉症スペクトラム障害だ。Daiは、自分の弟などこの障害の人たちが、細部への高度な注意力を必要とする、ある種のとても複雑な仕事に向いていることを知っている。たとえばそれは、データ入力やデータの補正、製品の品質検査、データの検査、コンテンツの適正化、などの仕事だ。

誰もかれもがAIや機械学習のアルゴリズム使っている昨今では、データを組織化する(まとめる)ことが最優先事項だ。Daivergentは、同社がデータのスペシャリストたちの完璧なプールを作って、この分野のどんな仕事でも完了させることができる、と確信している。

Daivergentは、AHRCやAutism Speaksなど、さまざまな団体とパートナーして、人材を確保している。それらの人びとを篩(ふるい)にかけて、その種の仕事を最後までできる人たちを拾い上げる。そしてその人たちはDaivergentの契約職員になり、本格的な教育訓練を受け、そしていろんなプロジェクトで仕事を開始する。

同社によると、アメリカでは250万人の成人が自閉症で、Autism Speaksの報告書によると、大学教育を受けた自閉症者の失業率は85%だ。

Daivergentは、これらの人びとが労働力の一員になる方法を提供するだけでなく、団体や企業が海外の契約労働者を雇用しがちな部分で、あえてアメリカの労働者を採用する方法を提供している。

新しい仕事がDaivergentに入ってくると、同社はそのプロジェクトを小さなタスクに分割してそれらを同社の労働者に割り当てる。同社はまた、プロジェクトの全体的な複雑さを判断し、仕事の緊急性も考慮して、料金を決める。

Daivergentは小額なマージンを取り、残りを労働者に渡す。

現在Daivergentには、実動労働者が25名いて、顧客のための仕事を行っている。登録労働者は150名おり、彼らは今、資格や免許を取得する段階だ。そして候補者プールには、さらに400名の自閉症者がいる。

同社は最近、アクセラレーターERAを卒業した。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

英国のUberドライバー、賃金と労働条件の改善求めストライキへ

Uberドライバーの利益を守るための組合が、明日24時間のストライキを呼びかけている。

配車サービス大手Uberは、労働者としてこのプラットフォームを使って運転する人のことを快く思っていないかもしれないが、2016年、英国の労働裁判所は法的な問題に直面したのち、現・前ドライバーのグループを独立契約者として分類することに反対すると、裁定した;2017年Uberが労働裁判所に初めて控訴した時にも再びそのような裁定をしている。

しかしながらUberの控訴は続いている。

いわゆる“gig economy”プラットフォームで働いている個人を代表してキャンペーンを行う組合の一つ、独立系労組IWGBは今日、Uberドライバーによるストライキを発表した。

Uberドライバーは不当な非アクティベーション(労組は“事実上の解雇”と表現している)をなくすこと;1マイルあたり2英ポンドへの料金の増額(ロンドンでの最近のレートは1マイルあたり1.25英ポンド);ドライバーからUberに支払われる手数料の10%減額;そして労働裁判所の判断と“ドライバーの労働の権利の尊重、最低賃金の支払い、有給休暇を含む労働条件”の適用を求めている。

労組は、英国の法律ではUberドライバーは、Uberが主張する独立契約者としてではなく縁辺労働者と分類されるべきだと主張している。

そしてUberユーザーに対しストライキを尊重し、明日はアプリを使わないよう呼びかけている。

IWGBの個人ハイヤードライバー部門の委員長はJames Farrarで、彼は2016年にUberに対して労働裁判を起こした前Uberドライバーだ。

声明でのコメントで彼は「手取り給料の目減りや、労働者をいじめるマネジメントの増加を何年にもわたってみてきて、労働者はストライキを起こすことを余儀なくされた。我々は社会に、ストライキ中にアプリを使わないことでデジタルのピケラインを超えず、どうかドライバーをサポートして、とお願いしたい」としている。

24時間ストライキは10月9日の午後1時からロンドン、バーミンガム、ノッティンガムで行われる予定だ。

IWGBは、ストライキに参加するドライバーがストライキ開始時に3都市にあるUberのオフィスの外で抗議を行うと言っている。

これに対し、Uberの広報がTechCrunchに対し電子メールで送ってきた声明は以下の通りだ。

「我々は常に、ドライバーにとって可能な限り最も良い乗車体験となるよう、そしてアプリを使って運転時間を最大限活用できるよう改善を図っている。だからこそ我々は過去数カ月、いくつもの新機能を加えた。これには、疾病、怪我、妊娠、パタニティの保護が含まれる。先月の学術調査では、ロンドンのドライバーは1時間あたり11英ポンドを稼いでいて、これは全コストやUberのサービスチャージを引いた後の額だ。我々は引き続きドライバーの収入が増える策を模索する。もし、現在抱える問題について我々に訴えたいのなら、ドアはいつでも開かれている」。

Uberの広報はまた、疾病や怪我、妊娠、パタニティの支払いを含むドライバーに対してUberがヨーロッパ中で提供している無料保険の拡大を含め、労働裁判所の裁定後に英国で行なった数々の変更点を強調した。

そして、これまでに変更を加えた数も指摘している。その変更には有料の待ち時間やアプリ内でのチップ、年金や無料講習といったお得な商品の割引などが含まれる。

広報はまた、Uberが最近立ち上げたドライバーがリアルタイムに収入を把握できるアプリや、ドライバーの収入増をサポートするためのデータ分析へのアクセス、ドライバーと乗客のための24時間電話サポート(これは実際にはロンドン交通規定の必須要項だ)もアピールしている。

Uberは事業展開する全ての都市で、ドライバーのフィードバックに耳を傾け、いかに対応するかの体制を正式に整えた、と言っているーたとえそうでも、ストライキを回避できるほど十分ではなかった。

Uberが強調する変更点は、Uberドライバーの置かれた状況を改善するという意味では前向きな取り組みかもしれないが、英国の裁判所がドライバーは労働者と認定されるべきとの見解を示せば、Uberは欧州で事業を継続するためにかなりの額を払わなければならないことになるだろう。

Uberは以前、もし最大5万人となる英国のプラットフォームを使っている‘自営’Uberドライバーに労働者の権利を適用したら、事業費は何千万英ポンドとなるかもしれない、と言っている。

裁判所判断に対するUberの見解は10月30日、31日に示される。

イメージクレジット: Carl Court

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(翻訳:Mizoguchi)

Amazonの‘搾取’に対抗してWhole Foodsの社員たちが組合の結成に向かう

Whole Foods Marketの労働者の一部が、この今やAmazonがオーナーである企業の85000名あまりの全従業員のために、組合を作ろうとしている。

Whole Foodsの社員に宛てた書簡でそのグループ…Whole Foodsの全地域的委員会…は、Amazon傘下のWhole Foodsの“方向性に懸念がある”、としている。書簡は、全社員を対象とする15ドルの最低賃金、企業年金制度、有給の産休〜育児休暇、健康保険控除額の減額、などの要求も述べている。

曰く: “Amazonがチームメンバーの全面的な価値を認めることなく、北米の小売業界の業態の全体を作り変えようとすることは認められない。Amazon[とWhole Foods]の成功は、われわれの献身を搾取し、われわれの経済的安定性を損なうことによって、得られるべきではない”。

この食料品チェーンを1年前にAmazonが137億ドルで買収し、eコマースとオフラインの一般小売業界の両方に衝撃波が広がった。これまでの12か月でeコマースの巨人は、この食料品チェーンの500近い店舗にさまざまな変化を導入した。一部の店ではAmazon Echoが売られ、amazon.comの商品受け取りと返品受付を担当するAmazonロッカーも登場した。

[Whole FoodsのAmazon化、その1年](未訳)

書簡はJeff BezosとWhole FoodsのCEO John Mackeyを名指しして、“2019年以降もレイオフが続き、Amazonはわれわれの労働力を積極的に切り詰め、その後、新しいテクノロジーと労働モデルによって成長していく気だ”、と言っている。

Amazonの買収以降、数百名のWhole Foods社員がレイオフされ、Amazonはそれに代えて“Whole Foodsに効率的なデータドリブンの社風を吹き込んだ”、とThe Wall Street Journalは書いている。しかし買い物客は、この改革によって数百万ドルを節約したとされる。

本誌TechCrunchがもらったWhole Foodsの声明には、“チームメンバーの個人の権利は尊重する”、とある。

声明は曰く: “わが社のオープンドアポリシー (門戸開放主義)により、チームメンバーは自分たちの意見や疑問、および懸念を、チームリーダーに直接申告することが奨励されている。この直接性が、わが社の従業員のニーズを理解して対応し、オープンなコミュニケーションと権利の実現を促進する雰囲気を作りだすための、もっとも効率的な方法と信じている。わが社は他社に負けない賃金と福利厚生を提供しており、わが社のチームメンバーの成長と成功にコミットしている”。

Amazonもこれとほとんど同じ声明をくれたが、社員の待遇に懸念のある者は同社のフルフィルメントセンターを見学するよう、勧めている。

以下は、New Food Economyが取得した書簡の全文だ。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

シリコンバレーはいかにレイバー・デーを祝うべきか

25歳のエンジニアに、「あなたにとってレイバー・デーとは何か」と聞くとしよう。すると彼もしくは彼女は、こう答えるかもしれない。夏の休暇のあとにくるおまけの3日間。あるいは、ドローレス公園でバーベキューをする日。はたまた、学生生活を再び体験するために毎年恒例のタホ旅行をするための日。

いや、シンプルに、普段激務だからゆっくりする日、かもしれない。

スタートアップ業界の創設者や従業員は、週80時間労働を誇るくらい間違いなくよく働いている。エアコンの効いたコワーキングスペースに陣取って電話会議でディールを終わらせようとするさまは、レイバー・デーが最初に祝われた1880年代のひどい労働環境とはまるで違う。

ここシリコンバレーで働く人は、ひどい労働問題は自分とは関係ないと独りよがりな考え方でこの祝日をビールを飲んだりホットドッグを食べたりして得意げに祝うべきではない。その代わり、我々の職場や会社をどれだけ公平でダイバーシティに富み、包括的で、そして倫理的責任のあるものにできるかと考えるのに、この祝日を使うべきだろう。

血塗られた始まり

1882年9月5日、労働者1万人が、生活するに足る賃金を得るために1日12時間、週7日働かなければならない過酷な労働環境に抗議する目的で“モンスター・レイバー・フェスティバル”に集結した。“5歳、6歳という幼い子供ですら国の至るところの製粉所や工場、鉱山で骨折って働いていた。

この抗議の動きは、アメリカ鉄道労働組合が全国的なストライキを行って郵便を運ぶ列車も含む国の輸送インフラに混乱をもたらした1894年にクライマックスを迎えた。Grover Cleveland大統領はこれは連邦犯罪だと宣言し、ストライキ鎮圧のため連邦正規軍を派遣。その結果、30人死亡、けが人多数という労働史上最も血塗られた事件の一つとなった。

それから数カ月後、休まることのなかった労働者の傷を癒やし、安らぎを与えようと、レイバー・デーは国家の祝日に制定された(これは都合よくもCleveland大統領の再選をかけた選挙戦と同時に行われた)

戦いはまだ勝利を勝ち取っていない

今日のシリコンバレーでは、公正な労働条件や生活賃金にかかる戦いというのは、うたた寝や益の多い株式報酬といった現実から程遠いものだ。誰の話からしても、深刻な労働問題の数は大幅に改善をみせている。長時間労働が依然として懸案ではあるが、多くの人が自ら必要以上に働くことを選んでいると認めるだろう。我々の労働環境は完璧ではないが(たとえばスタンディングデスクは完璧に人間工学的ではないかもしれない)、それは命を脅かしたり健康を著しく損なうというものではない。また、平等賃金も懸案だが、スタートアップでの“失敗”後の最悪なシナリオが、テック大企業に入って6桁の給料をもらいながら中間管理職として働くことを意味するのなら、最低生活ができるだけの賃金を稼ぐというのは特に懸案ではない。

今日の職場における課題は墓場的でもなければ死を意味するようなものではない。だが、戦いはまだ終わっていないのだ。我々の職場環境は完璧には程遠い。企業と従業員の力関係は全く平等ではない。

テック業界では無数の問題を抱え、それらは変化を生み出すために従業員から始まる大衆的な動きを必要としている。以下に挙げる問題はいずれも、個別に記事を書けるくらいの複雑さや微妙な要素を抱えているが、なるべく手短にまとめてみた。

1. 平等な労働に対する平等な報酬ー男女間の賃金格差は、他の産業と比較してテック業界はましだが(テック業界では平均4%vs他の全産業平均は20%)、テクニカルな職務において女性の賃金の不一致は、テック業界での他の職務の2倍にのぼる。

2. ダイバーシティー調査ではダイバーシティは改善されているが、それでもテック専門職の76%は依然男性に独占されていて、テック企業で働く人に占める黒人・ヒスパニック系の割合はわずか5%だ。Atlassianによる最新の調査で特に注意したいのは、調査に回答した人の40%超が、自分が働く会社のダイバーシティ・プログラムは改善する必要はない、と感じていることだ。

3. 包括性ー包括的な職場というのは基本的な人権だが、ハラスメントや差別がまだ残っている。Women Who Techによる調査では、テック企業で働く女性の53%がハラスメントを経験したと報告している(多くは、性的なもの、攻撃的な脅し、セクハラ)。男性では16%だった。

4. 委託請負/契約社員ーAmazonのような企業の従業員が福利厚生や上昇する株の恩恵を享受している一方で、企業組織の外辺にいる倉庫で働く労働者の現実は辛いものだ。ジャーナリストJames Bloodworthが出した最新の本によると、英国にあるAmazonの倉庫で働く人は“遠く離れたところにあるトイレの代わりにボトルを使っている”。別の調査では、そうした労働者の55%がうつに苦しんでいて、80%が再びAmazonでは働きたくない、と言っている。類似するケースとしては、自殺や未成年の労働、職場での事故といった次々に出てくる一連の懸案問題にさらに賃金不平等も加わったFoxconnが再び非難を浴びている。Foxconnは世界最大の電気機械メーカーで、AmazonやApple、その他多くのテック企業の製品をつくっている。

5. 企業の社会的貢献と倫理ーシリコンバレーはバブルだが、そこでつくられたプロダクトはそうではない。FacebookとCambridge Analyticaの情報流出があったが、こうしたものは多くの人の生活に大きな影響を及ぼす。オートメーションやAI応用に伴う不確実さや不安は、世界における配置転換の可能性として現れている(Forresterによると、米国だけでも2025年までに2270万人が影響を受ける)。

このように、ここ半年の反シリコンバレーの感情は大きくはっきりと響き渡るべきメッセージを送っているーシリコンバレーで我々がつくるプロダクトや、ディスラプトした産業は、真剣に考慮されるべき労働者にとって本当に重要性を持っている。

より良い労働環境へ

こうした問題を解決するのに、シリコンバレーで働く人々は結束する必要がある。しかしながら、従来の労働組合がその手段とならないかもしれない理由はたくさんある。

まず初めに、単純に、テック企業と労働組合というのはソリが合わない。特に、米国で最も大きい組合の一つ、AFL-CIO(アメリカ労働総同盟・産業別組合会議)はシリコンバレーの自由な精神に距離を置いてきた。労働階級とテック産業のエリートの間に明らかにラインを引いている。AFL-CIOのプレジデントは、いかにテクノロジーが労働を変えたかについての最近のスピーチで「過去数年の出来事で、社会が取るべき選択肢はシリコンバレーの億万長者の自由なパラダイスではないことがはっきりした。人種差別的で、権威主義的だ」などと歯に衣着せずに語った。

しかしおそらく、シリコンバレーにおける結集した動きがどんなものになるのかということと、従来型の組合の動きがどんなものになるのかという違いなど大多数の人の興味を引くところではない。関心はいかに少数派を保護するかにある。1880年代、劣悪な労働条件や標準以下の給与はほとんどの人ー男性、女性、子供に影響を及ぼした。組合は多くの人にとって現状を変えるための手段だった。

しかし今日、平均的な25歳のエンジニア男性にとって、ダイバーシティや包括性を進めること、オフショアの従業員の不当な待遇について発言することは、給与や雇用マーケットにおける好ましさ、労働条件にまったく影響しない。彼は競争の激しい雇用マーケットでの貴重な“つて”としてへつらわれるという特権を謳歌するだろう。しかしオンデマンドサービス的に仕事を請け負う人はそうではないだろう。また、威圧的なボスを持つ女性もそうだろう。これこそが、我々が目を覚ますことがかつてなく大事な理由だ。彼らの味方やパートナーになるだけではなく、特権階級ではない同僚や、我々の会社やプロダクトを使う人々に影響を及ぼす要因を克服する者となるべきなのだ。

だから今度のレイバー・デーは、ビールやホットドッグを楽しみながらも、全ての人のためのより良い労働環境を勝ちとろうと戦い、血を流した人々のことに思いを馳せてほしい。そして火曜日、将来に向けてダイバースや包括性、そして倫理的責任のある会社にするための戦いをいかに継続できるかということに備えてほしい。

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(翻訳:Mizoguchi)

サンダース上院議員がAmazonの反論に反論、低賃金を国民の血税で補うのは不条理

来週、先の大統領選でかなりの人気を獲得したBernie Sanders上院議員が、政府の“企業優遇策”を利用して社員に低賃金を払っている大企業を規制する法案を提出する。この上院議員にとくに激しく叩かれているのが、AmazonとWalmartだ。そしてその議論は、最近の数日間でますます過熱してきた。

昨日(米国時間8/28)の本誌TechCrunchに載ったSanders上院議員のAmazon批判に対して今朝(米国時間8/29)は、AmazonがSandersを批判して、Amazonの倉庫の状態に対する彼の批判は“正しくないし人びとの誤解を招く”、と反論した。するとこのバーモント州出身の上院議員は、Amazonのフルフィルメントセンターの賃金は“不条理だ”、と反撃した。

彼は言う: “Amazonでは何千人もの社員が、賃金があまりにも少ないので、フードスタンプ(食料切符)とメディケイド(低所得者障害者向け医療費扶助)とパブリックハウジング(低所得者用公共住宅)に依存せざるをえない。The New Food Economyによるとその比率は、アリゾナでは3人に1人、ペンシルベニアとオハイオでは2400名だ。結論としては: わが国の納税者は、1550億ドルを保有しているBezos氏が所有する企業の社員を補助すべきではない。それは、不条理だ”。

昨日のインタビューでSandersは本誌TechCrunchに、同社が社員に関する情報をくれない、と述べた。すると同社は、上院議員は倉庫のツアーへの招待にまだ応じていない、と言い返した。

Sandersは曰く: “フルフィルメントセンターを訪ねる件に関しては、先月はウィスコンシンへ行って、ケノーシャのフルフィルメントセンターの訪問をリクエストした。残念ながらAmazonは、それに応じなかった。9月にはバージニア州チェスターのフルフィルメントセンターを訪ねて、詳細をAmazonと詰めたいと思っている。安全でない労働環境については、海軍の復員兵Seth Kingなど、労働者からの聴き取りもしている。少なくとも一人は、倉庫で死んだらしい”。

もちろん、Amazonのフルフィルメントセンターの状況を問題として取り上げたのは、Sandersが初めてではない。何年も前から、現在や過去の社員たちからの話が、あちこちに登場している。Sandersの批判の標的であるJeff Bezosは、最近の取材に対して、“わが社の労働環境にはとても満足しているし、わが社が払っている賃金にもきわめて満足している”、と答えている。

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サンダース上院議員、Amazon倉庫の労働環境を懸念

バーモント州選出のバーニー・サンダース上院議員は、準備中の法案を9月5日に明らかにするのを前に、Amazonの倉庫での労働環境についてさらなる情報を求めている。

収入の不平等は、2016年の大統領選におけるサンダースの目玉の主張だった。それは有権者に強く訴える人民主義的なメッセージで、必死の選挙戦が繰り広げられる中、憂慮していた進歩主義者や無党派層の間でダークホース候補だったサンダースを押し上げるものとなった。

選挙戦で先に進むには、そのメッセージではおそらく不十分だったものの、メッセージは議会におけるサンダースの中心的なミッションとして残り、世界最大の企業数社に狙いをつけている。ここ数カ月、サンダースの視野に入っているのはAmazonだ。

今日(米国時間8月29日)早く、サンダースはオンライン小売の大御所で働いている人向けにそこでの労働体験をシェアして欲しいと、リンクをツイートした。現在働いている人、あるいは以前働いていた人に、実名もしくは匿名で労働体験を語るように呼びかけている。要求の厳しい条件で働いている(いた)のか、労働者は公的な支援を必要としているのかを問うものだ。

今日の電話インタビューで、サンダースはTechCrunchに対しサンダース事務所としてはAmazonの倉庫の労働環境についてよく知っているが、9月5日に法案提出を控え、追加の情報を探している、と説明した。

「我々は、Amazon従業員の給与の中央値が約2万8000ドルであることを知っている」とサンダースは語った。「そして、Amazonで働く人のおおよそ半分が年に2万8000ドルももらっていない」。

なぜAmazonがサンダースの主要ターゲットとなったのかは実にわかりやすい。最近の証券取引所の記録によると、従業員の給料の中央値は2万8446ドルで、これはAmazonオーナーJeff Bezosが稼ぐ10秒あたりの額より少ない。

「アメリカ中のAmazon倉庫で働く労働者の多くが極めて少ない賃金で働いているという確証を持っている」とサンダースは説明する。「こうした情報を入手するのは難しい。Amazonは協力的ではない。我々がかき集めた情報では、お分かりの通り、アリゾナのAmazon労働者の3人に1人が公的な支援を受けている。メディケイドやフードスタンプ、公営住宅を利用している(編集部注:メディケイドは米国の低所得者向けの公的医療保険、フードスタンプも低所得者向けの食料品購入のための公的補助制度)。

サンダースは、Amazonがそうした問題を抱えていながら表面上何ら対処していないのが法に反するかどうかというのは認識していない。しかし、彼にとって、なぜ最も安い賃金で働くAmazonの従業員をサポートするために政府の助成金が使われないければならないのかを問いただすのに、そうした賃金格差は十分な理由となる。これこそが、提出する法案の目的だ。

単直に言えば、世界で最もリッチな人なら従業員にもっと払えるだろう、とサンダースは言いたいわけだ。

「この国の納税者は、1500億ドルもの資産を持つ男に助成金を支払うべきではない。彼の富は毎日2億6000万ドルも増えている」とサンダースは語る。「まったく馬鹿げた話だ。彼は従業員が最低限の生活ができる賃金を払うのに十分な金を持っている。彼は企業福利も必要としていない。我々の目的は、Bezosが従業員に対し生活できるだけの賃金を払うようにすることだ」。

こうした問題について、Amazonは悪評が立つほどに固く口を閉ざしているが、サンダースがキャンペーンを展開し始めて以来、ずっと劣勢に立たされている。法案については、Amazonは正式に提案されるまでおそらく直接コメントをしないだろうが、TechCrunchに対しては、この自ら招いた問題についてコメントしている。

「賃金や福利厚生を他の小売と比べてみてほしい」。Amazonの広報はTechCrunchにこう話した。「Amazonは昨年だけで13万もの雇用を創出したことを誇りに思う。こうした雇用は、他社に引けをとらない賃金や手厚い福利厚生を伴っている。米国の梱包センターでフルタイムで働く人の平均時間給は残業前で15ドル以上だ。これには給与、株式、ボーナスが含まれる。加えて、健康・眼科・歯科の各保険、退職金、産休・育児休暇といった充実の福利厚生を提供している。また、Career Choiceプログラムを通じ、需要のある職に就くためのスキルトレーニングも用意していて、こちらはこれまでに1万6000人の利用があった」。

さらにAmazonは、倉庫の労働環境について興味のある人は、“どうなっているのかを見るために”梱包センターの一つでできる見学を予約してはどうかと勧めている。

サンダース事務所の代理人はTechCrunchに、Amazonがサンダースを梱包センターの見学に招待していて、サンダースがその招きに応じるつもりであることを明らかにした。

SAN FERNANDO DE HENARES, SPAIN – 2018/07/16: General view of the Amazon warehouse in San Fernando de Henares.

もちろん、Amazonの従業員の扱いに対する懸念は今に始まったものではない。Mother Jones(編集部注:米国の労働活動家)はAmazonの倉庫で奴隷のように働くのがどんな体験だったのかを2012年に暴露している。2013年にはGawker(編集部注:ニューヨーク拠点のオンラインメディア)が、「非現実的な目標」「極めて短い休憩」「零下の室温」などの表現を用いて梱包センターでの様子を語る従業員の一連の電子メールを公開した。The Guardianが2014年に紹介した抗議者は、Amazonの倉庫で働くよりホームレスになった方がマシだ、としている。そして最近ではBusiness InsiderがAmazonの倉庫で働く人々が直面している“怖い話”を取り上げている。そこには、常時行われている監視、休憩がままならないこと、必要なときに設備を使うことさえできないことなどが含まれる。

Amazonは、そんな広報の悩みのタネとなるような攻撃にさらされ続けてきた。

先週、ツイッターで奇妙な現象が見られた。これまで取り上げてきたような労働環境ポイントを押さえつつ、倉庫で働くことを呼びかけるツイートだ。

「やあ!」。とあるツイートは陽気な出だしだ。「私はワシントン州のAmazon梱包センターで働いているが、我々の賃金や福利厚生はすごくいい。従来の小売店より30%ほど多い賃金が支払われているし、勤務初日から医療給付がフルに受けられる。労働環境はクリーンでゴミもなく、すごくいい。私のいる施設では、安全第一だ!」

Amazonが、自社の待遇を“とても競争力を持つ”ものにしているのは、おそらく倉庫で働く人の確保という大きな問題に対処するためだろう。Amazonは標的になりやすいが、ただしAmazonだけではない。サンダースも、Amazon以外へもネットを広げていると述べていて、DisneyやWalmartが視野に入っている。

6月、サンダースはアナハイムの教会で「90億ドルもの収益をあげ、CEOらに4億ドルも払い、そして30年も働く従業員を飢えさせるような企業がどう倫理的に防衛するのか聞きたい。どうしてこんなことがまかり通っているのか教えて欲しい」と群衆に訴えた。

その1カ月後、サンダースはツイッターで「DisneyのCEO、Bob Igerは4億ドル超ももらっているが、ディズニーランドで働いている人やホームレスが家族を養うためにフードスタンプに頼っているという事実についてどう思っているのだろうか」とBob Igerに直接挑んでいる。

しかしながら、今週初め、Disneyは従業員に最低15ドルの賃金を支払うことでWalt Disney World組合と合意した。

Disneyでは具体的な成果が見られる」とサンダースはTechCrunchに対しこう述べた。「もしJeff Bezosが“私は世界で一番の金持ちだ。従業員に生活賃金として少なくとも15ドルを払い、全従業員が安全と尊厳を持って暮らせるようにする”と言っていたら、Jeff Bezosはアメリカ社会において重大な役割を演じることができたと思う。私が状況を改善しよう」。

一方、AmazonとWalmartは、法案での主なターゲットとなっている。米国上院で民主党は野党であるため、Mark ZuckerbergのようにBezosが証言を求められる公聴会はなさそうだが、にもかかわらずサンダースは来週、法案を前に進めるべく取り組む考えだ。

「法案は極めてシンプルだ」とサンダースは説明する。「もし従業員数500人以上の大企業で、従業員がフードスタンプやメディケイド、公営住宅を利用しなくてはならないくらい低い賃金を払っているのなら、そうした補助のために政府が負担しているのと同額の税金を払わなければならない、というものだ。こうした公的補助プログラムの代金を支払うのは、中流階級の人々ではなくJeff BezosやWaltonファミリーといった、雇う側になる」。

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(翻訳:Mizoguchi)

アメリカの労働力をハイテク指向に変える全国的教育訓練事業にGoogleが10億ドルを投入

労働の形が全世界的なレベルで急速に変わりつつある。労働が技術の影響で大きく変わったのはもちろんこれが初めてではないが、しかし今回は、オートメーションやロボット、AIなどの成長によって、これまでなかったような空前のペースで、従来的な仕事がなくなりつつある。そしてGoogleはほぼ確実に、この変化を推進している力の一つだ。

この検索巨人は、これまでも折りに触れて、このネガティブなインパクトを抑えたいという願いを表明してきた。そして今回は、言葉だけでなく、そのために10億ドルという大金を拠出することになった。今日ペンシルヴェニア州ピッツバーグで行われたイベントで、CEOのSundar Pichaiが、Grow with Googleと名付けた事業を発表した。これにより同社は向こう5年間、アメリカの労働者を教育訓練して起業を助けている非営利団体に、総額10億ドルの援助を行う。

そのイベントの場所が持つ意味は、ピッツバーグのここ数十年の成長を見てきた人なら、誰にでも分かるだろう。かつて鋼鉄の町(Steel City)と呼ばれたこの都市は、壊滅の瀬戸際から経済を蘇らせた理想的な範例として、何度も言及されてきた。ピッツバーグの場合、その主な推進力はテクノロジーだった。当地の名門校カーネギーメロン大学の支援によりピッツバーグは、ラストベルト(Rust Belt)の不況に沈むさびれた都市から、アメリカ有数のテクノロジーハブへと生まれ変わった。今ではピッツバーグの工場跡地で、ロボット工学や自動運転技術など、最先端のイノベーションが成長している。

Pichaiは、この町が彼自身にとっても特別の意味がある、と語った。彼は曰く、“24年前アメリカに来たとき、最初に見た都市がここだった。インターネットが本格的に活況を呈するまでは、ずっとここにいた。でも当時からすでに、ここは変わり始めていた。ハイテクの雇用が、急増していた”。

Grow with Googleイニシアチブの一環として10億ドルは、個人を対象とするインキュベータ/アクセラレータGoodwillへ行く。Google.orgからの一つの団体への寄付額としては、これまでで最大だ。この資金によりGoodwillは、アメリカの労働力をハイテク指向へ改造するための教育訓練事業Goodwill Digital Career Acceleratorを立ち上げる。また一方でGrow with Googleは、全国ツアーにより、各地の図書館や地域団体が主催するキャリア育成事業を支援していく。この部分の目標規模としては、5年間で100万時間/人ぶんのボランティア社員を投入する。

Pichaiはスピーチで述べた: “Googleでは、私たちのミッションは、情報が少数者ではなくみんなの役に立つようにすることです。ここピッツバーグでは、Googleの同じ情報に、小学生の子どもがカーネギーメロン大学の教授と同じようにアクセスできます。つまりインターネットは強力なイコライザー(平等化装置)であり、新しいアイデアを人びとが前進する力に換えます”。

このオンライントレーニング事業の詳細は、Grow with Googleのハブにある。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

フリーのコンサルタント等のマーケットプレースExpert360が成長著しくオーストラリアからアメリカ/アジアに進出

フリーランスの労働者はアメリカの労働人口の1/3を占めるが、やがて40%近くになるという調査結果もある。そして確かに、さまざまな分野でギグエコノミー(gig economy)がとても大きくなっている。

そして、そのニーズに応えるマーケットプレースも成長が続いている。企業にフリーのコンサルタントや人材を紹介するマーケットプレースExpert360も、今回1000万ドルの資金調達を果たした。

同社はオーストラリア出身だが、市場の急成長にお尻を押されて、本誌主催のスタートアップ・コンペBattlefieldに出場するまでに成長した。

この投資をリードしたのは、オーストラリア最大のVCファンドAirTree Venturesだ。これでExpert360の総調達額は2100万ドルになり、アメリカとアジア太平洋地域への進出が可能になった。既存の投資家の中には、シンガポールのFrontier Venturesもいる。

Expert360のプラットホームは今やグローバルで、90か国あまりから15000名以上の独立系のコンサルタント等が登録している。同社は人材の“品質管理”に厳しく、応募者の内、実際に登録されるのは、6人中1人ぐらいの割合だ。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

仕事の未来へようこそ

Marty Linn, General Motors manager of advanced technology and principal engineer for robotics, shakes hands with Robonaut 2 (R2), a humanoid robot developed by GM and NASA during a nine-year collaboration that also led to development of the RoboGlove, an exo-muscular device that enhances strength and grip through leading-edge sensors, actuators and tendons that are comparable to the nerves, muscles and tendons in a human hand. GM is licensing the RoboGlove intellectual property to Bioservo Technologies AB, a Swedish medical technologies company that will combine RoboGlove with its owner patented SEM glove technology.

【編集部注】著者のBrooks RainwaterはNational League of Cities(全国都市同盟)のシティソリューションおよび応用研究センターのディレクター 。共著者のNicole DuPuisはNational League of Cities(全国都市同盟)のシティソリューションおよび応用研究センターのインフラ担当シニアアソシエイトである。

情報技術、ロボット工学、人工知能の進歩が急速に進展する中で、現在労働力の転換が起こり、それが続いている。既に私たちが気が付いているように、現在の傾向が労働力の変化を不可逆的に加速させるときに、答えられなければならない疑問は、利益を広く共有し困難を和らげるためには私たちは何をすればよいのだろうか、というものである。

都市はしばしば、新技術が大量採用される際のトレンドサイクルをリードする。私たちは、新技術による失業が、新技術による革新と同じくらい古い話題であることを知っている。しかしながら米国の都市は、テクノロジーの成熟がローカル経済の全て、全ての労働者、そして全ての職業に多大な影響を与える時代に突入しているのだ。

自動化は技術革新の繁栄を支え、ビジネスにコストダウンをもたらすが、既存の仕事も変えてしまう。過去数十年にわたり、労働力の要素はますます自動化されるようになってきている。

最近は、食品サービスから工場のフロア、その他に至るまで、沢山の例を見ることができる。例えばEatsa人間とのやりとりが全く不要の新しいファーストフードレストランだ。客はタブレットを経由して注文し、用意された食品を壁に設置されたガラス棚から受け取るのだ。

Amazonのフルフィルメント・ウェアハウスではRobo-Stowを採用している。大きな在庫を動かす6トンのロボットアームと、Kiva Systemsが製造した箱移動ロボットたちが働いている。Kivaの導入以来、何かを見つけて箱に詰め出荷するまでの平均時間は1時間半から15分に短縮された。Amazonはまたその新しい Amazon Robotics部門を通して、自動化されたドローンと人工知能に多大な投資を行っている。

こうした初期の例は、エキサイティングなものではあるが私たちが失うものが自動化される仕事以上のものであることも明らかにした。多くの場合、企業は効率性の恩恵を受ける一方で、多くの消費者が依然として必要としている個人的な人間関係を失う可能性があるのだ。この方程式の人的側面はあらゆる理由で大切なものである — 仕事の中で最も重要なものだ。

プロジェクトに協力し、若いビジネスマン。

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こうした中で、生計が危機に瀕している人びとがいる。過去20年間で、先進的なロボットが急速な技術の改善を受け、能力と可用性の両方が大きく変化している。学者たちは、2025年までに食品準備、ヘルスケア、商業清掃、そして老人介護の7から12パーセントのタスクがが商用ロボットによって実施可能になると予測している。

これが意味することは、高コストの都市化されたエリア ‐ ハイソで高給取りのホワイトカラーを既に引き付けている場所 ‐ における労働者階級が、更に追い詰められていくということである。それらの仕事の多くは自動化の煽りを受けやすく、私たちは多くの人たちが労働の場を離れ、都市の外に出ていくのを見送ることになるだろう。

労働者階級とサービス部門の仕事だけが、リスクに晒されているわけではない。人工知能と機械学習の進歩が「知識労働」の自動化をも可能にし始めているのだ。

進歩が現在のペースで進めば、2025年までに全世界で自動化ツールは、事務、顧客サービス、販売、教育、保健、科学技術、IT、財務、法律部門などに影響が及び、1億1000万から1億4000万人の人々の作業を行うことができるようになるだろう。

表面的な価値を見れば、これらの技術的進歩は非常に有意義であり、商業的相互作用に革命をもたらし、これまでとは異なる可能性を広げていく。

私たちにはまだ、オートメーション技術と人工知能が作り出す、新たな潜在的な仕事の種類はまだ分かっていない。それは技術を前にして想像を絶するものだ。しかし私たちは、訓練、教育を通じた準備と、究極的には柔軟性を奨励することが、私たちの都市での成功につながることを知っている。

人間とロボットが一緒に取り組んでいます。

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私たちNLC(全国都市同盟)のFuture of Work報告書は、労働力の大きな変化に直面したときに抱える課題と機会について検討している。どこで、いつ、特定のジョブが消滅するかを予測することは困難だが、2025年以降に私たちが目にする仕事は、現在のものとは随分違っているものだろう。

ある者にとってはメリットは素晴らしいものになるだろうが、システムレベルでは課題はとても大きなものになるだろう。テクノロジーは、労働者間の不平等を悪化させ、経済のほとんどの分野に何らかの影響を与える。

これらの潜在的な緊張と激動は都市に集中するだろう。技術的実現可能性だけに左右されるわけではなく、自動化の採用は、技術のコスト、交換される労働のタイプ、そして重要な点だが社会的に受け入れられるかどうかに依存している。

これらの技術が仕事や仕事全体に取って代わるようになるにつれて、反応は楽観的な受け入れから怒り、欲求不満、さらには政治的な激変にまで及ぶようになるだろう。

社会への利益がより均等に分散する可能性があるのか、あるいは最近の歴史的傾向に沿って、収入ピラミッドの最上部に集中していくのか。私たちが行う政策の選択は非常に重要だ。

ネガティブな反応は、賃金や雇用を失う人々の間でより局所的に起きる可能性がある。一方で、ポジティブな反応は、より低い価格とより大きな選択の恩恵を受ける消費者の間で、より広範に広がる可能性がある。

私たちが政策上の解決策を模索しているところで、幅広い議論が始まる必要がある。これらは、ポータブルベネフィット(フリーランスのための持ち歩ける福利厚生制度の概念)から、労働力の再訓練、ベーシックインカムなどに及ぶ可能性がある。明日の労働力のために構築される、こうした種類の拡張された社会基盤は、これまでの職を失った労働者だけではなく、新しい方法で働く人々を支援するために必要となる。

同時に、この拡大された観点は、成長のための積極的な環境を作り出すことができる。これらの選択肢に焦点を当てることで、これらの急激な変化にただ流されて対応するのではなく、むしろ崩壊に先回りをすることができるようになる。

社会への利益がより均等に分散する可能性があるのか、あるいは最近の歴史的傾向に沿って、収入ピラミッドの最上部に集中していくのか。私たちが行う政策の選択は非常に重要だ。都市の指導者たちは、積極的に、公平さを第一の目標とする、より包括的なコミュニティを創造しようとしている。したがって、私たちすべてが、目の前に未来を早急に構築するのを手助けする場は都市にある — そしてそれを真に導くことが、指導者の責務なのだ。

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(翻訳:Sako)

建設現場の健康環境をモニタするSmartSiteのハードウェアは一般市販のセンサーを使って低価格を実現

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Y Combinator出身のSmartSiteが、建設労働者の労働環境をモニタするハードウェアとクラウド上のソフトウェアのペアをリリースした。

癌や呼吸器障害、皮膚炎などは肌や粘膜が危険物質に触れることで起こり、また過度な騒音や振動も健康被害をもたらす。これらの劣悪な環境にさらされることは、とくに建設労働者において多い。

アメリカ労働省のデータによると、建設労働者の労災死は最近増加傾向にあり、2014年には874名を数えた。

そこでSmartSiteのシステムは、ノイズのレベルと、空気中の微粒子、および紫外線をモニタする。

協同ファウンダーのMichael AndreaとJames Batstoneによると、SmartSiteのモニタリングハードウェアは一般市販のセンサーを使っており、それらは、マイクロフォン、レーザーによる微粒子カウンター、そしてUVセンサーだ。

SmartSite's system monitors particulates, UV rays and more on construction sites.

SmartSiteのシステムは建設現場の微粒子と紫外線などをモニタする。

一方彼らのソフトウェアは、完全に独自製品だ。それにより建設チームは、現場の安全な場所と危険な場所を見分けることができる。

AndreaとBatstoneが建設労働者の健康と安全に関心を持ったのは、彼らがロンドンのRoyal College of Art(王立芸術大学院)のプロジェクトでプロダクトデザイナーおよびスマートシティの研究者として仕事をしていたときだ。

そのとき知ったのは、建設企業は大も小も、環境の有害無害を、各現場の過去の情報や経験に基づいて評価していることだった。

ときどきは正確な測定を行うが、そのための装備は高価であり、また測定には長時間を要した。

SmartSiteのねらいは、建設現場を毎日正確にモニタすることだ。しかも、現場作業の邪魔をすることなく。またそのための器具等は、持ち運びや設置が極力簡単でなければならない。いろいろ、複数のものを持ち込む方式は、もってのほかである。

Andreaは語る、“結局、どの企業も労働者のために正しいことをしたいと思ってはいるけど、しかし実際に疾病等を見つけて誠実に対応していたら時間と費用を要し、訴訟に持ち込まれることもある。だから、積極的なモニタリングを、さぼりがちになる”。

今某社とパイロット事業を進めているが、その社名は明かせないそうだ。

SmartSiteはY Combinatorの今の学期の‘生徒’で、すでにこのアクセラレータから若干の資金をもらっている。そのほかの資金調達計画や、過去の調達額に関しては、ノーコメント、だそうである。

画像提供: SmartSite Inc.

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

職場にもっと多様性を、まずは技術職から

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テクノロジー業界が性別、人種、民族や年齢において多様性を欠いているということは周知の事実だ。主要なテック業界の公開しているデータによると全従業員における女性の占める割合は25から45%でしかない。この格差は技術系の職種になるとさらに悪化する。Anita Borg Instituteの実施したTop Companies for Women Technologistsの調査によると、過去の5年間に渡り、技術系における女性の占める割合は 21%のまま全く動いていない

他の、人口構成比的に少数のグループに関しても結果は似たり寄ったりである。テクノロジー企業において、ヒスパニックの雇用は最高で11%であり、黒人に至ってはたったの2から8%だ。先ほど同様、技術職では、数値はさらに低下する。テック業界公表の雇用の多様性に関するデータによると、ヒスパニックでは2から8%、黒人では1から7%にもなる。

女性はテック業界においては、マーケティング、人事、会計や他の部門で多くの役割を果たしている。それ自体は良い傾向であるが、この業界の性格差を埋めるまでには至らない。なぜか。それはほとんどすべての企業において、最も雇用が増えているのが技術職だからだ。もし我々が今、女性が技術職を志向することに二の足を踏ませ続けるのであれば、この格差は今後どんどん開いて行くだろう。

2016年の今、全ての会社がテック企業だ

今日では、全ての会社がテクノロジー企業であり、全ての産業が生産性と革新性の向上をテクノロジーに依存している。金融機関、小売り業、メディアは技術者の採用を増やしており、多業種に渡って、非技術系の部門、例えばマーケティング、人事や会計などもどんどん専門の技術者への依存度を高めている。

テクノロジーのあらゆるビジネス領域への拡散はとどまる兆しを見せず、企業や機関の技術部門では、多様で才能あふれる人材をリクルートし、雇用、昇進させることが大変重要な意味を持つ。

また、単なる事実として、技術職は他のポジションに比べて、条件が良く給料が高い。より多くの女性および社会的に比率の低いグループの人々を技術職につけることが今ある格差を埋める上での鍵となる。

技術職における男女間の格差

なぜ技術系の従業員が特に重要なのだろうか。その点を説明するため、シリコンバレーにおいて著名なテック企業であるインテルに目を向けてみよう。インテルは今年度初旬に多様性とその受け入れに関する年次報告を公表した。

テルのアメリカ内の技術系従業員中で女性の占める割合はたったの20.1%だ。背景を説明するなら、インテルのアメリカにおける従業員のうち、何と86%が技術職である。

女性技術者をリクルートし、雇用、昇進させることは単に正しいだけでなく賢い選択だ。

インテルにおいては新規雇用の大半が技術職なので、同社はまず、技術職の均等雇用に取り組まねばならない。もしインテルの技術系従業員の男女比が同等であったなら、会社全体における性格差は今日存在しないだろう。

企業が特に技術職において雇用の多様化に取り組まない限り、組織全体に渡る男女の均等雇用などは夢物語に終わるだろう。

女性の昇進には過大な要求が立ちはだかる

女性はテクノロジーの分野で職を得るのが容易ではないが、昇進にはさらなる困難が待ち受ける。女性が上級職に昇進するためのハードルは男性の場合よりずっと高く設定されており、さらには女性は数学や科学が苦手だという考えが根強く浸透している。

その証拠に、Sequoia Capitalの投資家であるMichael Moritzのコメントを紹介しよう。この男性の意見では、もしテック業界にもっと才能のある女性がいるのであれば、そう言った人材はもう雇用されているだろうし、自分的には職場の多様性の確保だけを目的に採用基準を下げるつもりはない、ということだ。しかし、そのような採用基準とは一体なんだろうか。テックに職を求める女性はコンピュータ科学や工学の学位を持っているが、どうやらこの基準はこの男性には当てはまらないようだ。というのも、彼が持っているのは歴史の学位だったからだ。

この様な女性に対する一般的態度と、その結果テック業界で働く女性がいないことは大変嘆かわしいことだ。しかし、この様な問題があっても、女性のビジネスや社会における進出は目覚ましものがあり、その指導力は着実に高まっている。例えば、今年度のインテルのScience Talent Searchでは、最終選考に残った半分以上、さらには受賞者3人中2人が女性だった。

世界の知的資本の半分は女性であり、女性の参加により経済成長は飛躍的に増大することが可能だ。この事実を無視することは企業にとって損失だ。現代のようなペースの速い、過当競争下のグローバル市場で成功するには、企業は継続的に変革を続けなければならない。そして、多様性ほど変革を促進するものはない。女性の技術者をリクルートし、雇用、昇進させることは単に正しいだけでなく、賢明な選択なのだ。

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(翻訳:Tsubouchi)

韓国のホームクリーニングサービス「Miso」、Y Combinatorに参加

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韓国のホームクリーニングサービスのMisoはY Combinatorのサマークラスに受け入れられ、今後さらに野心的な成長目標を掲げる。同スタートアップの創業者は今週同キャピタルのアクセラレーター・プログラムに参加予定だ。

MisoはHaksu LeeとVictor Chingにより昨年ローンチされ、顧客はアプリとウェブサイトを通じて次の日の清掃を予約することができる。

Chingはソウルに拠点を置く食品配送のスタートアップであるYogiyoで商品部門の最高責任者を務めた。その後Yogiyoは2014年にDelivery Heroに買収された。ChingはYogiyoを去った後、食品配送で得たスキルを使って新しいことを始めようと考えた。

ChingとLeeによると、韓国のホームクリーニングの市場は50億ドルの規模で、韓国で共働きの家庭が増えているせいでその規模は成長し続けているという。同スタートアップは、プレシードの段階で50万ドルを調達したが、現在毎週10パーセントの歳入増を目標値に掲げている。

Misoは現在ソウルとその近郊都市の仁川、京畿道で利用可能であり、大体1万人の顧客がおり、そのうち700人は週に2回以上サービスを利用している。Misoには1000人の清掃員が登録されており約半数には月に2回以上の予約が入る。

Misoは、伝統的なクリーニング会社に変わるサービスとしてローンチした、ソウルを拠点にする幾つかのスタートアップの内の一つだが、その中には昨年シードラウンドで百万ドルを調達したWaHomeDaeri Jubuなどがある。

通常、清掃会社は会員に会費を求め、少なくとも1週間前以上に予約することを求めていた。また、清掃員はコールセンターまで報告することを義務付けていて、仕事が与えられるまで待つ必要があった。アプリのおかげで清掃員と顧客の両方にとって自由度が増した。

Misoはアプリのユーザーインターフェースとサービスの価格体系を可能な限り単純化することで、他のクリーニングのスタートアップとの差別化を図ろうとしている。同社は伝統的な複雑な料金体系に替わるものとして、現在たった二つのオプション、つまり4時間と8時間のセッション、しか提供していない。多くの既存の代理店においては複雑なアラカルトサービスが採用されており、しかもその料金は基本料金に上乗せして請求される。Misoの顧客も自分のニーズに合った作業を依頼することは出来るが、Misoの清掃員はできるだけ割り当てられた時間内でその要求に応えようとする。

「伝統的に、この業界では4時間と8時間のサービスが提供されてきたが、これまでは家の大きさによっては同じ時間でもより高い金額が請求されていました。私的には、それは納得できません。なぜなら、何れにしても4時間分のサービス料を払っているからです。価格体系の幾つかは、さながら小さいながらもエクセルのスプレッドシートのようです」とChingは言う。

「もし大量の洗濯をしたければ、違った価格表があり、冷蔵庫の清掃も然り。全ては追加料金なのです」Leeが付け加える。「既存の顧客にとってみれば大変煩わしい点であり、我々にとってみればまさにそこをシンプルにしたかったのです」

ビジネスの規模が大きくなるにつれ、Misoの創業者はもっと短い、2時間ほどのセッションを導入したいと考えている。これは小さいアパートに住んでいる人にアピールするだろう。また、当日予約も導入したい考えだ。他のオンデマンドのスタートアップ同様、Misoは成長計画と運営費を持続可能にすることのバランスをとりつつ、一方で契約清掃員が十分予約を貰いMisoのプラットフォームに残るよう取り計らわねばならない。ChingとLeeによると、清掃員は現在、Misoのコミッションを引いた後、大体韓国の最低賃金の60から100パーセントを稼いでいる。(現在、最低賃金は時給6030ウォンであり、それは5.18ドルに相当する。

清掃員はMisoを通じて仕事を受ける前に面接される。また、Uberの様に、同社の顧客は受けたサービスを満点を5つ星として評価する。清掃員の平均評価が高いほど、ますます仕事が舞い込んでくる。

「清掃員が十分仕事を得て、我々のプラットフォームに居ついてくれる、ということに関しては、我々は常に分析を欠かしません」とChingは言う。「その手法を完全にマスターしたとは言いませんが、どこまで行けば大丈夫で、また最初の1、2週間で清掃員がどれくらいのセッションをこなせば我々のサービスに居つくかという事に関しては、明らかにある種の臨界点があるのです」

「それこそが、テクノロジーが企業のイノベーションを手助けできる理由です」と、Leeが付け加えた。「我々は清掃員のスケジュールを予想し、とても効率的に仕事を割り当てることができます。そうすることが我々のプラットフォーム全体の役に立つのです」

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(翻訳:Tsubouchi)

消費者/労働者保護のオピニオンリーダーElizabeth Warrenが“いわゆるギグ・エコノミー”について語る

Cropped Approved CFF

Elizabeth Warren上院議員が、New America Foundationの今年の年次大会の木曜日(米国時間5/19)のスピーチで、Uber, TaskRabbit, Alfredなどの“いわゆるギグ・エコノミー(gig economy)”を構成している企業に関して、言葉を選びながら述べた。彼女は決してそれらの企業を否定する者ではないが、しかし企業と政治家の両方に対して、労働者指向の変化を促した: “いかなる労働者も、クラック*に落ちて這い上がれない状態になるべきではない”。〔*: クラック, cracks, 登山用語で深い岩の割れ目(救助が難しい)。〕

スピーチの中で上院議員は、産業を進歩させ新しい課題に挑戦していくテクノロジーの役割を称賛したが、まさにその直後に、彼女の本当に言いたかった言葉が続いた:

[真の問題はこうだ: イノベーションは生活の質を高め、新たな富を作り出す。しかし労働者がその富に与れるのは、そのための政策や方針〔政治と企業の〕があるときのみだ。]

“LyftやUberのような企業は、日々彼らの業績に貢献している労働者と同じ労働者たちが、その労働によって稼ぎだした富の、より大きな配分にアクセスしようとする努力に、しばしば抵抗してきた”、とスピーチの書き起こしにある。“彼らのビジネスモデルには、運転者の極端な低賃金に依存している側面がある”。

彼女の言う“低賃金”は、もちろん、他と比較した場合のことだ。Uberのドライバーは平均して1時間に15ドルから20ドルぐらい稼ぐが、ガソリン代や車の修理費などは自分持ちだ。良い商売、である場合もあるが、売上増など業績アップの余地はほとんどない。この問題がほかの方法で解決されるまで、客は彼らにチップを払わざるをえない

さらに彼らには、福利厚生も失業保険もない。だからその“雇用”は、真の雇用からほど遠いものに見えてくる。でもそれは、決して新しい問題ではない。Warrenはこう指摘する:

これらの問題のどれも、ギグ・エコノミーが発明したものではない。むしろ、ギグ・エコノミーは、弱い労働市場において生活を支えることのできない一部の労働者のための、一時しのぎになっている。ギグ労働の柔軟性や独立性、クリエティビティなどの美徳が派手に賞賛され、それは一定の条件下における一部の労働者には真実かもしれないが、しかし多くの労働者にとってギグ・エコノミーは、福利厚生が上位10%の労働者にしか提供されていない世界で何らかの経済的安定を得ようとする、徒労な努力の連鎖の、一歩であるにすぎない。

上院議員はこれに続けて、非正規雇用の仕事を二つとか三つ抱えて生きている大量の労働者を救うための、提案を述べている。いずれも、ギグ・エコノミーがもたらすとされるポジティブな効果やイノベーションを、大きく失うことはない、とされる施策だ。以下は、それらの提案の、ぼく自身(の無償労働!)による要約だ:

まず、正社員に提供されている“安全ネット”を、非正規〜臨時雇用者にも部分的に提供すること。

  • 臨時雇用、時給制労働者、パートタイマーなどすべての労働者が社会保障費を支払うこと。給与天引きをルールとし、雇用者がその事務を行う。
  • すべての労働者が自己を名義人とする高額医療費保険に加入すること。“すべての、とは、文字通りすべての労働者であり、障害者認定に至らない実質的障害者も含む。また、従来的な労働者災害補償の対象外の労働者も含む”。
  • すべての労働者に有給休暇があること。その具体的な条件等は今後の検討課題だが、全員に完全自由休日が与えられ、また家族の問題や医療にあてる休日も、リーズナブルな量、与えられること。
  • 医療や退職等に関わる福利厚生が、できるかぎり、複数の雇用者にまたがってポータブルであること。それに関し、被雇用者自身の事務負担等が極力少ないこと。

次は、労働法の改善と強化だ:

  • 労働の分類に錯誤や抜け穴があって、雇用者の無責任が許される状態がないこと。
  • 労働者の定義が単純明快であること。安全ネットの普遍化は、(区別が不要になるので)単純化を助ける。保険や福利厚生の要素で違いがあるのではなく、労働そのものの違いに焦点が当てられるべきである。
  • “すべての労働者に組織化の権利があること(例外なく)。正社員、パートタイム、一時雇用、ギグ労働者、契約社員、などなど、労働を提供する者全員が集団交渉の権利を持つべきであり、そのことは、労働条件をコントロールする者が誰であっても変わらない。またそれによる報復や差別から、労働者は保護されなければならない”。

スピーチの初めの方で彼女は、産業革命の初期にも、工場に対する規制がなく、労働者は死と隣り合わせの劣悪な条件と環境で働かされた、と述べた。そして、ちょっと気を利かせて、TaskRabbitのワーカーはこれまで、それほど苛酷な条件で働かされたことはないだろう、とも述べた。Warrenは、機は熟している、今こそ規制は、これらの新しい業態に適合するとともに、そこで働く労働者を保護するためにも、大幅に変わらなければならない、と語った。

“この国が100年前に行ったこととまさに同じように、今は労働者と企業との基本的な契約関係を再考すべきときである”、と彼女は語る。“新しい技術によってより大きな富が生まれているとき、その経済を支える労働者がその富を確実に共有できるために、私たちは何を為すべきか?”。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))