ブラウザだけでオンライン商談、楽天やDeNAが採用する「bellFace」が1.6億円調達

bellFace営業担当者側の画面

インサイドセールス用途に特化したウェブ会議システム「bellFace」

訪問を伴わない営業スタイル、インサイドセールスは、訪問営業で費やされる時間や旅費などのコストを削減しながら売上を上げる手法として、マーケティングオートメーションと並んで日本でも注目が集まっている。オンライン商談システム「bellFace」は、ブラウザさえあれば接続できる、インサイドセールス用途に特化したウェブ会議システムだ。

SkypeやGoogleハングアウトはビデオ会議を身近なものにしたが、ソフトウェアのインストールやアカウント登録が必要で、社内の打ち合わせには向いていても顧客への提案やサポートには向かない。bellFaceの場合、サービスを提供するベルフェイス社のページで発行される“接続ナンバー”を顧客と電話でやり取りするだけで、ブラウザ上で映像によるコミュニケーションや、クラウドに保存された資料を表示しながらの提案がすぐに始められる。動作環境はブラウザの種類、バージョンを問わず、プラグインも不要だ。

bellFaceで映像配信中の画面

技術的にはbellFaceで映像とともに音声を配信することも可能だが、顧客側にヘッドホンや会議室などの準備を強いる可能性と通信の安定性とを考慮して、あえて電話でのやり取りを推奨し、音声配信機能はオフにしているそうだ。利用料金は営業担当の利用者数1IDあたり月額9000円で、3IDから申し込める。

また9月16日には、映像配信、資料共有に加えて、営業担当者側に表示されている画面をウィンドウ単位で共有できる「画面共有機能」がbellFaceに追加された。これにより、クラウドにはまだ保存されていないPC内の資料をその場で表示させたり、検索結果やサイトなどの画面を顧客と一緒に確認したりすることができるようになった。

最前面のウィンドウを画面共有できる

実際に私もbellFaceのデモを体験したが、インターネットで検索ができるレベルの人なら誰でもすぐに接続できるため、顧客側としてはストレスが少ない。また共有された資料を顧客側からもページ操作でき、打ち合わせメモも互いに書き込み・確認できるので、リアルで来訪した営業担当と机の上の資料をめくって、指さし確認しながら商談しているような感覚で話ができる。

日本におけるインサイドセールス市場の広がりとbellFaceの今後の展開

ベルフェイス代表取締役の中島一明氏は「日本でも特にクラウド、ポータル、ネット広告など成果となる単価が上がりにくい分野では、インサイドセールスでクロージングまで完結する動きが広まっている」という。

bellFaceはサービスの本格提供から11カ月を経た現在、約200社で導入。導入先にはBtoBのIT/ウェブサービス営業が多く、リクルート、楽天トラベル、DeNAショッピングなどそうそうたる顔ぶれがそろう。初めはユーザー企業の顧客としてbellFaceによる営業を体験した企業が、自ら営業ツールとして導入を決めるケースや、bellFace自体の代理店として他社への紹介を進める企業も現れているという。

中島氏は「単なる訪問営業の補強ツールではなく、インバウンド対応からアップセル提案、フォロー営業や顧客サポートまで、あらゆる営業の段階で使えるシステムとして機能を練ってきた」と話す。「ユーザーの声は徹底して聞いている。導入先が困っていることは一つ一つ解決している」(中島氏)。

プロダクトのベースが固まり、顧客も増える中、ベルフェイスでは2016年8月、インキュベイトファンドほか数社から、総額1億6000万円の資金調達を完了している。この調達により、広告などによるマーケティングの強化と、さらなるサービス展開のための人員増を図る。

海外展開も視野に入れているのでは、と質問したところ、中島氏は「既にインサイドセールス市場ができあがっている地域への参入は魅力的だし、そのために国際特許の申請も済ませているので、将来的には……」と意欲を見せたが「ただし、直近では国内シェアをしっかり押さえ、収益基盤を整えてから攻めていきたい」とまずは着実な成長を目指すことを強調した。

NewsPicksとSPEEDAの運営元、ユーザベースが東証マザーズに上場承認

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ユーザベースは本日、東京証券取引所マザーズ市場への新規上場が承認されたことを発表した(証券コード:3966)。上場日は2016年10月21日の予定だ。

ユーザーベースが手がけるサービスは、経済情報に特化したニュースキュレーションサービス「NewsPicks」と企業・業界分析を行うビジネスパーソン向けオンライン情報プラットフォーム「SPEEDA」の2つだ。

NewsPicksはソーシャル機能のついたビジネスニュースの共有サイトで、専門家や友人をフォローできるのが特徴だ。2015年3月に新会社ニューズピックスを設立し、NewsPicksの事業を移管している。2016年4月末時点で同社が公開しているNewsPicksの登録ユーザー数は130万人で、その内プロフィール埋め、全ての機能を使用可能な本登録ユーザー数は50万人だ。

もう一方の「SPEEDA」は、ビジネスパーソン向けに世界180カ国370万社の企業情報や金融情報を提供するオンライン情報プラットフォームだ。導入企業は大手銀行を含め500社以上が利用しているという。

2008年4月に創業したユーザベースはこれまでに複数回、資金調達を実施している。2009年8月に、GMO Venture Partners、マネックス証券、リヴァンプ、ジャフコから3000万円の資金調達を実施し、2012年10月には、グロービス・キャピタル・パートナーズを筆頭にGMO VenturePartnersから2億円強を調達。さらに、2014年8月には伊藤忠テクノロジーベンチャーズをリード投資家として総額4.7億円を調達している。この資金調達にはYJキャピタル、講談社、グロービス・キャピタル・パートナーズ、SMBCベンチャーキャピタル、三菱UFJキャピタル、新生銀行、GMO VenturePartners、マネックスベンチャーズが参加した。

留学口コミメディアのスクールウィズがQ&Aサービスを公開、今後は相談内容に応じた学校紹介も

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留学口コミメディアを運営するスクールウィズは2016年9月15日、留学のQ&Aサービス「留学アンサーズ」アルファ版をリリースした。

スクールウィズは2013年に留学口コミメディア「School With」を開始。語学学校を探すための基本情報と口コミが閲覧できるプラットフォームを提供してきた。現在では8カ国、1113校の語学学校の情報掲載。3000人分以上の口コミ情報が掲載されており、MAU(月間アクティブユーザー)は11万人以上。サービスを利用して留学に行く人数は年間で1000人以上に上る。

一方、学校情報や口コミでは解決できない留学についての悩み、疑問をかかえるユーザーが多いとを感じていたことから、より幅の広い「留学関連の情報」を届けるために留学アンサーズをリリースしたという。

スクールウィズ代表取締役の太田英基氏は「創業当初からアイデアはあったが、開発リソースの問題もあり、着手できていなかった。 今年の春、開発の方向性や事業の展開を話し合っていたときに学校の情報、口コミの情報だけに限らず留学の情報を提供していきたいという話になり、留学アンサー開発の準備を開始した。7月からプランニング、8月から開発というスケジュールで進めてきた」と語る。

リリース当初は質問や回答の投稿およびその閲覧という最低限の機能のみが実装されている。投稿にはユーザー登録が必要だが、閲覧だけならユーザー登録の必要はない。またデータベース自体は留学口コミサイトSchool Withと同じものを使用する。

School Withは英語留学の情報に限られている一方で、留学アンサーは英語以外の語学留学の情報も投稿・閲覧できる点が特徴だ。利用料金は無料。今後はSchool Withとの連携を強化し、相談内容に応じた学校の紹介や、留学後のキャリア形成支援などのサービスを行う予定だ。展開次第ではメディアとしての収益化を検討しているという。

今後は多国籍展開を目指す

スクールウィズは今後、日本人向けのサービスにとどまらず、海外と海外を結ぶようなサービスを展開していく。

「弊社は世界を舞台にする人が当たり前になる、というビジョンを掲げており、基本的にはすべてのサービスがそのビジョンを実現するためのもの。ビジョンを実現させるためにも、今年はNihonGo!のような、多国籍なユーザーに対するサービス提供に注力していきたいと考えている」(太田氏)

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2016年8月には同社初の国外ユーザー向けサービスである、日本語学校の口コミサイト「NihonGo!」を開始。主力サービスであるSchool Withの他言語展開の前段として、このサービスの運営を通して国外展開のノウハウを蓄積する。他言語化、多国籍化を通じて、海外に対しての課題解決を行う。

現在スクールウィズの従業員は20人。開発、セールス&CS、マーケティング&事業開発の従業員がそれぞれ3分の1ずついる。今後は国内での留学文化を浸透させるためのPRスタッフ、団体・法人への留学研修を支援する法人営業、各プロダクトの開発を担うエンジニアを採用していく。

資産管理アプリMoneytree、iOS 10のメッセージで使えるiMessageアプリ「ワリカン」を早速ローンチ

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本日よりiOS 10の一般公開が始まった。スマホを持ち上げるとスリープが解除されたり、ホームスクリーンの小さなウィジェットからアプリ機能が使えたりと使い勝手が向上している。中でも大きく変わったのが、Apple純正のメッセージアプリだ。iOS 10のメッセージアプリでは、友人とやりとりしながら様々なiMessageアプリを使用できるようになる。日本でも早速、iOS 10の一般公開初日から使用できるiMessageアプリが登場した。本日、資産管理アプリのMoneytreeはiOS 10へのアップデート、そしてiMessageアプリ「ワリカン」の提供を開始したと発表した。その名の通り、友人とお会計を割り勘する時に使えるシンプルなアプリだ。

MoneytreeのiMessageアプリを説明する前に、改めてiOS 10のiMessageアプリについておさらいしたい。今年6月に開催された開発者カンファレンス「WWDC」で、Appleはメッセージアプリのアップデートを発表した。iOSに最初から搭載されているこのメッセージアプリは、iOS 10からスタンプや手書き文字を送受信したり、Apple Musicの楽曲などを簡単に共有したりすることができるようになる。

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iMessage最大のアップデートは、iPhoneにダウンロード済みのアプリと連動するインタラクティブなiMessageアプリが使用できるようになることだ。「iMessages App Store」が新設され、ユーザーは欲しいアプリをそこからダウンロードして使用できる。ただ、iMessageアプリは、iOSアプリのエクステンションという位置付けで、iMessageアプリを使用するには、iOSアプリをスマホにダウンロードしている必要がある。これは、Apple Watchでアプリを使用するにも、スマホに元のアプリをダウンロードしている必要があるのと同じ仕組みだ。

MoneytreeのiMessageアプリは、iOS 10のローンチ初日の今日から使用できるアプリの1つだ。MoneytreeのiOSアプリは、銀行口座や証券口座の残高を確認したり、クレジットカードの使用状況などを確認したりすることができ、iMessageアプリではワリカン機能を提供する。moneytree-immessage

「ワリカン」は、何名かで食事に行った時にそれぞれの会計金額を決めるためのシンプルなアプリだ。メッセージで、お会計金額を該当する人やグループに送付する。領収書を添付することも可能だ。メッセージを受け取ったユーザーは金額を確認し、もしその金額に不満があれば申し出たり、あるいは表示金額より多く払うことを提案することもできる。対面だと直接言いづらいお金のやりとりも、かわいらしいアプリのスタンプで伝えることが可能だ。支払いが完了した時には、支払い状況を変更することができる。

他のコミュニケーションアプリでこういった追加機能を提供することも可能ではあるが、iMessageアプリを選んだのはApple製品の安全性の高さが決め手とMoneytreeのChief of Marketingを務めるザック・タウブ氏は話す。iMessegeにはエンドツーエンドの暗号化が施され、プラットフォーム自体の安全性が高い。Apple製品はセキュリティー、プライバシー、透明性の高さに定評があり、お金のやりとりというセンシティブな情報を扱うMoneytreeでも安心してプロダクトを開発できるとタウブ氏は説明する。

また、Appleのセキュリティーやプライバシーへの取り組み方はMoneytreeとの理念にも通じるという。Moneytreeはサービス展開において、セキュリティーとプライバシーを重んじるスタンスを強調してきた。例えば、Moneytreeはアプリを提供する全てのプラットフォームで個人情報保護認証であるTRUSTeを取得してプライバシーの安全性を担保し、個人情報に基づくファイナンスマーケティングも一切行わないと明示している。Moneytreeは、今後モバイルでの電子決済といった金融サービスが充実するほど、ますます個人がどこに何の情報を提供するかをコントロールし、個人主導のデータの使い方が主流になると考えているという。その時、ユーザーはよりセキュリティーやプライバシーの安全性が高いプラットフォームやサービスを支持するようになるだろうとタウブ氏は説明する。

現段階でMoneytreeのiMessageアプリには、それぞれの個人が支払う額を決める基本的な機能しかない。しかし、人々がスマホアプリを使ってお金の話をすることに慣れれば、ゆくゆくは決済機能などを付け加えることも視野に入れているという。

Moneytreeが最終的に目指すのは「ソーシャルマネー」という新たなカテゴリーの確立とタウブ氏は言う。この「ソーシャルマネー」は個人が行うお金のやりとりを意味するそうだ。割り勘もその一種であり、例えば個人間でのお金の貸し借りや、広義には個人と会社間のお金のやりとりも含むと話す。今回のiMessageアプリは、その「ソーシャルマネー」領域に踏み込むための最初の一歩と位置付けている。

私もメッセージアプリを触ってみたが、手書きメッセージやGIFを見つけて送ったりするのは面白いし、専用アプリも役立ちそうではある。ただ、このワリカン機能を使うためには、食事や飲み会に集まった友人や同僚全員が、Apple端末で、iMessageを利用していて、さらにMoneytreeのiOSアプリをダウンロードしている必要がある。これは少しハードルが高いかもしれないと感じた。ただ、これはMoneytreeの問題というより、iMessage自体の普及率の問題でもあるだろう。Androidでは現状iMessageは利用できないし、日本では多くの人がFacebook MessengerやLINEを利用し、それらのプラットフォームには強力なネットワーク効果がある。プラットフォームのセキュリティーの高さやこれから魅力的なアプリが使えるようになれば、それは確かにユーザーを惹きつける理由になるかもしない。しかし、実際にそうなるかが分かるのはもう少し先のことのようだ。

資産運用の「お金のデザイン」が総額8.1億円を調達、サービス向上に加え業務提携によるビジネス拡大も

THEOサイト

ロボアドバイザーによる資産運用サービス「THEO(テオ)」を提供する「お金のデザイン」は9月13日、総額約8.1億円の第三者割当増資の実施を発表した。引受先はちばぎんキャピタル株式会社、静岡キャピタル株式会社、株式会社ふくおかテクノロジーパートナーズ、株式会社丸井グループ、株式会社ベネフィット・ワン、東京短資株式会社ほかの各社で、2013年8月の創業時からの累積調達額は今回を含めると25億円超となる。

2016年2月に一般向けにも公開されたTHEOは、独自アルゴリズムに基づいたロボアドバイザーが資産を自動的に運用してくれる、個人顧客を対象にした資産運用サービス。年齢や投資経験、リスクに対する考え方など、9つの質問に回答することで、世界の約6000のETFの中から約40種類のETFを組み合わせ、ユーザーの嗜好性に応じたポートフォリオが作成される。PCのほかスマホだけでも手続きが完結し、最小10万円、運用手数料1%(年率)でグローバル資産運用が始められる。

THEOが提案するポートフォリオとシミュレーション

お金のデザインによると、今回の資金調達は、強い顧客基盤を持つ金融機関や事業会社との資本業務提携によるビジネス推進が目的とのこと。新規調達によるTHEOのサービス向上、新規顧客層の開拓に加え、金融機関向けOEMモデルの開発強化や個人向け確定拠出年金(日本版401k)へのビジネス展開も進めるとしている。

今週の東京ゲームショーにMSIからHTC Vive利用のバックパックVR登場

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バックパック式のVR〔仮想現実〕キットというのは、しばらく前から手作りの奇妙なワンオフ・ガジェットの域をを脱し、小規模とはいえ消費者向け製品になりつつある(が、印象はやはり奇妙だ)。かなり有名な製品もいくつか作られた。大手メーカーとしてはHPと台湾の有力メーカー、MSIがこの種の製品のパイオニアだった。

数ヶ月後、去る6月のE3ゲーム・エクスポでVRへ向かう大きなトレンドに加わる形でAlienwareが後続を買って出た(バックパックだから背負って出たというべきか)。 ただしAienwaveがお披露目したハードウェアはまだプロトタイプの状態だった。

当初MSIが発表した製品も低解像度のコンセプトマシンに過ぎず、正直に言えば、そのままでは誰も感心しないような製品だった。

MSIは今週開催される東京ゲームショー2016に先立ってバックパックVRの改良版であるVR Oneを発表した。製品名も新しくなり、デザインも角ばったものに一新された。テザリングのために邪魔な接続ボックスが必要だったが、これは取り除かれている。

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面白いことにバックパック中のノートパソコンぽい部分はHTCのViveチームと協力して製作されたのだという。VRヘッドセットのレースではHTCはすでにMSIと密接に協力してきたからこれは意外ではない。

MSIによれば2個のバッテリーを装備して1.5時間の駆動時間を確保している。さらにホットスワップ・テクノロジーにより片方ずつバッテリーを交換することにより無制限に駆動時間を伸ばせる(バッテリーの残量警告灯が点滅して交換のタイミングを知らせる)。VR OneはGeForce GTX 1グラフィックボードを採用しており、HDMI、Mini Display、Thunderbolt3の各ポートを備える。9本のヒートパイプ、多数の通気口が設けられている。これはゲームパソコンを人体に密着して使用する際に予想されるオーバーヒートを防止する試みだ。

VR Oneの重量は2.2kgでさほどうるさくない冷却ファンを内蔵する。出荷時期、販売価格などの詳細はおって決定される。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

労務管理クラウド「SmartHR」に小規模企業向け0円プランが登場—大企業向け機能の強化で収益化図る

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KUFU(クフ)は9月12日、労務管理クラウド「SmartHR」に従業員5名以下の小規模企業を対象とした「¥0プラン」の提供を開始した。

SmartHRは労務関連の書類自動作成、オンラインでの役所への申請、人事情報、マイナンバーの収集・管理やWeb給与明細などの機能を備えたクラウド型の労務管理ソフトウェア。TechCrunch Japanが開催するイベント「TechCrunch Tokyo 2015」のスタートアップバトルで優勝を果たしたことでも話題になったこのサービスは、2015年11月のリリースから9カ月の2016年9月現在、1800社を超える企業が登録している。

その登録企業のうち、一定数を従業員が5名以下の小規模企業が占めるという。こうした企業では、労務管理や手続きを経営者が行うケースが多く、労務に関する書類作成の時間コストや、手続きに必要な情報を調べたり教わったりするコストが負担になりやすい。一方で従業員数が少ないうちは労務手続きが頻発するわけではないため、月額制のサービスを利用すると割高になる恐れがある。

「¥0プラン」はこうした小規模企業が、SmartHRの主要機能を無料で利用できるプランとなっている。無制限でサービスが利用できる15日間のトライアル期間終了後に制限される機能は、「メール&チャットサポート」、「書類の印刷代行機能」、「役所への電子申請機能」の3つで、役所への電子申請機能については将来的には解放を検討しているそうだ。

また従業員数1000名を超えるエンタープライズ企業の引き合いも増加する中、KUFUでは「権限管理のカスタマイズ」や「従業員データベース機能の強化」、「外国人雇用に必要な書類への対応」など、SmartHRの大企業向け機能の強化も進めることで、¥0プランのリリースとバランスを取り、収益化を図っていくという。

2016年9月12日現在の従業員数別プラン体系と料金(年間一括払い時の月額換算、税抜)は以下のとおり。

  • ¥0プラン(〜5名) 0円(一部機能制限あり)
  • MICROプラン(〜5名) 980円
  • SMALLプラン(〜15名) 3,980円
  • MIDIUMプラン(〜30名) 9,800円
  • LARGEプラン(〜50名) 19,800円
  • ENTERPRISEプラン(51名以上) 別途見積り

KUFUでは¥0プランの提供により「社会保険・雇用保険の手続きを後回しにせざるを得なかった小規模企業でも、本来行われるべき手続きが進むことを期待する。経営者は本業に、人事担当者は採用や制度づくりに集中でき、そこで働く従業員はよりよい環境で安心して働くことができる、という社会を実現していきたい」としている。

サッカー本田の投資1号は教育―、中高生向けプログラミング教育のライフイズテックが7億円を調達

中高生向けのプログラミング教育事業に取り組むライフイズテックが創業した2011年といえば「プログラミング」に対する世間の見方は今とは全然ちがうものだった。今でこそ小学校でのプログラミング必修化の流れがでてきているが、5年前は違った。「創業当時はIT業界にはプログラミング教育への理解はありましたが、教育業界ではプログラミングと言っても『オタクになっちゃうでしょ、やめなさい』という声が聞こえたりするくらいでした」。共同ファウンダーでCEOの水野雄介氏は、そう振り返る。

5年前といえばiPhoneが日本で売りだされて2年目。その後、スマホが広く普及して一般の人がアプリやネットサービスに触れる機会が増え、諸外国での教育改革が進んだことなどもあって、近年プログラミング教育への関心は高まっている。

そんな時代背景のなかライフイズテックは今日、伊藤忠テクノロジーベンチャーズジャフコ電通デジタル・ホールディングスベクトルMisletoeKSK Angel Fundなどから総額約7億円の資金調達をしたこと明らかにした。2012年にサイバーエージェントからシード投資として1000万円、その後2014年8月にシリーズAとして3.1億円を調達していて、累計調達額は約10億円となる。今回のラウンドに参加しているKSK Angel Fundはプロサッカー選手本田圭佑氏のファンドで、これが第1号の投資案件となる。

lifeistechtopスクール、キャンプ、オンラインの3つの形態

ライフイズテックには3つの形態がある。年間通して教室に通う「スクール」、春休みや夏休みに3~8日間の合宿スタイルでプログラミングを学ぶ「キャンプ」、それからブラウザでゲームを通してサイト作りやコーディングの基礎を学ぶ「オンライン」だ。

オンライン教育といえば大学がカリキュラムを広く公開する、いわゆる「MOOCs」(ムークス)がかつて話題になったが、当初期待されたほど世の中にインパクトを出せていない。ライフイズテック共同創業者の小森勇太COOは、次のように言う。「MOOCsはうまく続きません。もともとモチベーションの高い大人はできますが、中高生は無理。だからこそゲームなんです」。

ライフイズテックが6月に開始した「Mozer」(マザー)は、キャラクターがブラウザ上を動きまわってWebサイトの仕組みを教えつつ、実際にユーザーにHTMLを書き換えさせるゲーム仕立てのオンライン教材だ。ライフイズテックでMozerを作ったのは、元スクエア・エニックスCTOだった橋本善久CTO。秋には「進撃の巨人」とのコラボで、さらにゲーム色を高める。

スクールからオンラインへ重点をシフト

スクール、キャンプ、オンラインと3形態あるうち、今回の資金調達で加速させるのはオンライン教育だ。これには次のような背景がある。

ライフイズテックのスクールの月謝は1万8000円で、現在受講生は約500人。東京、横浜、名古屋、大阪、福岡で開講している。秋には秋葉原にもスクールを開講するなど拡大はしているものの、スケールさせるのは難しい。2014年夏に校舎の7割を閉鎖した代々木ゼミナールの生き残りの戦略転換が象徴的だが、塾ビジネスで不動産価格に見合う収益性で継続運営するのは簡単ではない。ライフイズテックの東京白金校は、本社オフィスの半分と兼用とすることで純粋な塾ビジネスとは違う不動産活用をしている。

現在の売上比率でいうと、スクールとキャンプがそれぞれ4割と6割。ひと夏だけで3500人程度が参加して、5日間のキャンプで1人当たり6万7000円のキャンプのほうが収益を上げやすいのだという。キャンプには延べ2万人が参加していて、リピーターも多い。ちなみにキャンプは全国15大学のキャンパスで開催していて、近隣の宿に泊まるケースと、近所から通うケースがある。成果発表には保護者も参加する。

水野CEOは「スクールはアップルストアのような位置付けにしていく」という。アップル全体の売上から言えば、アップルストアの売上が占める比率は微々たるものだ。しかし、ショーケースやユーザー接点として極めて重要な役割を果たしている。ライフイズテック東京白金校は交通量も人通りも比較的多い明治通りの古川橋交差点にあって、カラフルな彩りの窓を通して外から中の様子が見える。

スクールやキャンプよりもオンラインに力を入れていく背景には、地域格差・教育格差を埋めていきたいという水野CEOの考えもある。「キャンプでは地域格差を埋めづらい」ことからキャンプの楽しさをオンラインへ適用していくのだという。

女子比率4割、「楽しい」雰囲気作りのノウハウをネットに

ライフイズテックのキャンプは参加者の4割が女子だ。「女子中高生が来やすい雰囲気作り、コンテンツ、ブランディングには気を付けています」。最初にカラフルなTシャツを参加者に着せるようにして帰属意識を感じさせ、周囲の参加者の興味や人柄が分かってチームで制作物に取り込むときの心理的障壁を取り除かせるなど、「5年かけて作ってきたワークショップのノウハウには自信がある」(水野CEO)という。

ライフイズテックにやってくる子どもたちは、放っておいても一人でプログラミングを学ぶような子どもと限らない。むしろ、親に言われて最初は何となくやってくる子どもが多いそうだ。「ふらっと来ている子たちの熱量を上げていくノウハウというのがあります。パソコンを教えているというより、場所を用意して、創作したくなるような環境を提供しているんですね。地べたに座ったり、教室の後ろのほうで作業している子どもたちがいて、参加者全員が好きな時間を過ごしている。そんな理想の教室というのがあります。雰囲気が良いと作品のクオリティーが上がるんです。学びはモチベーション。それがすべてです。また参加したくなる楽しい体験であるかどうかが大切です」(小森COO)。

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オンライン教材のMozerは今のところ無償で学べるHTML講座という感じだが、作って学び合うSNSのようなものへ進化させていくという。プロジェクト管理ができて、進捗が互いに見えたりするようなものだそうだ。学び合うプログラミングのSNSといえば、MITメディアラボ発のビジュアルプログラミング言語Scratchが想起される。Scratchのサイトは「子どもたちのGitHub」といえるほどの発展と活況を見せている。そのまま適用できるとは考えづらいが、今後ライフイズテックがキャンプ運営の経験とノウハウを活かして、Mozerをどう発展させていくのか注目だ。

「デジタルなものづくりでもイチローみたいな世界で活躍するヒーローを産みたいんです。物が作れるってかっこいいよね、という文化。デジタルものづくりのヒーローが生まれてくると文化が変わってくると考えています」(水野CEO)

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ライフイズテック共同創業者でCEOの水野雄介氏(右)と、同COOの小森勇太氏(左)

ポケモンGO、売上5億ドル達成はゲーム史上最速―App Annieが詳細レポート発表

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ポケモンGOはデビュー以來数々の記録を達成してきた。たとえば、 最初の1週間で史上最多のダウンロードGoogle Playでの最速の5000万インストール などだ。このゲームがまた新記録を樹立した。ゲーム史上最速の売上5億ドル達成だ。

モバイル・アプリのアナリティクス企業、App Annieの最新レポートによれば、ポケモンGOはiOSとAndroidを通じ、世界で5億ドルの収入を上げた。またこのペースなら年末までに売上10億ドルを達成するという。

App Annieは「ポケモンGOはリリース後わずか60日でまた記録を作っった」と述べている。

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このニュースに先立って、昨日、NianticはAppleのiPhone 7発表イベントに登場し、デビュー以來世界で5億回ダウンロードされたと発表した。ポケモンGOのトレーナーが地球を歩きまわった距離が合計で46億キロになるという。ポケモンGOはApple Watchにも移植された。 Appleの別の発表によれば、App Storeは最後の2ヶ月だけで対前年比106%の急成長を遂げたというが、その原因の大きな部分はおそらくポケモンGOだ。

App Annieは8月上旬のレポートで、ポケモンGOは7月初めのデビュー以來、売上3億5000万ドルを確保したはずと述べている。

それから1月足らずで記録はさらに大きく伸びたことになる。

他の人気モバイルゲームの場合、5億ドルを売り上げるためにははるかに長い時間がかかっている。キャンディークラッシュは200日、クラッシュ・オブ・クランとパズル&ドラゴンズでは400日以上必要だった。

App Annieのレポートによれば、ポケモンGOの収入はアプリ内課金の売上だけではない。ポケモンGOは他のブランドのプロモーションを手助けするために提携契約を結び始めている。たとえば,ファーストフードチェーンのマクドナルドは日本で最初にポケモンGOと契約した。これによって日本のマクドナルドの3000近い店舗がポケストップ、ポケジムなどのスポットとなった。

今月に入って、Nianticは日本の大手モバイル・キャリヤ、SoftBankとの提携を発表し、3700箇所の店舗がポケモンGOの公式スポットになった。

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App AnnieによればポケモンGOのユーザー忠実度は衰えを見せていない。デビュー後30日間におけるユーザーの再帰率ではスクラブルに似たZyngaのソーシャル・ワードゲーム、Words with Friendsにやや遅れを取っているが、キャンディー・クラッシュやクラッシュ・オブ・クランより依然として上だ。

同レポートではさらに、「ポケモンGOが他のモバイル・アプリから時間を奪っている兆候はやはり見いだせない。おそらく非モバイル活動から一定の時間が奪われているのだろう」としている。

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画像:: Bryce Durbin

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

乾電池で動く家電製品をIoT化、「MaBeee」開発のノバルスが1.2億円を調達

乾電池に新しい価値を与える

最近多くのIoT端末が発売されているが、すでに家にあるスマートではない家電製品をIoT化できるのなら、わざわざ買い替えなくてすむし便利だと思う。ノバルスが開発する乾電池の形をした「MaBeee(マビー)」は、乾電池で動く電化製品にセットするだけで、正にそれを実現するIoT機器だ。ノバルスは本日、ニッセイ・キャピタル、みずほキャピタルから1.2億円を調達したことを発表した。今回の資金調達で、セールスマーケティングや開発のための人員強化を進めるとノバルス代表取締役、岡部顕宏氏はTechCrunch Japanの取材に答えた。

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MaBeeeは単3電池の形状のIoT機器で、使い方はとても簡単だ。Mabeeeに単4電池を装着して、単3電池に対応する機器にセットする。これだけで、MaBeeeを搭載した機器は、専用のスマホアプリから操作することが可能になる。例えば、おもちゃのプラレールの場合、普通はスイッチを入れたら電車は一定のスピードでレール上を走り続ける。けれど、その電池をMaBeeeにした場合、プラレールを走る電車のオンオフをスマホから操作したり、スマホ端末を傾けることで電車の走行スピードを変えたりすることができるようになる。

ホビーやエンターテイメント以外でも展開を目指す

MaBeeeは今のところ、ホビー製品やエンターテイメント領域を軸に展開しているが、乾電池で動く製品なら基本的に何にでも活用することができる。今後は他の分野への展開も考えていると岡部氏は話す。例えば、ホームセンターなどで販売されているホームセキュリテイー用のアラームには、通常スマホへの通信機能はない。そういったものにMaBeeeを入れると、アラームが起動した時にMaBeeeからスマホに通知を飛ばすことができるようになる。他にも、例えば子供達が制作した工作にMaBeeeを搭載し、IoT機器のプログラミングを学ぶ機会を提供するなど、教育分野での活用もできると岡部氏は話す。「乾電池は幅広い用途で使われています。将来的には家の中で使うおもちゃ、教育、セキュリティーなど、いわゆるスマートホームのようにMaBeeeのアプリやプラットフォーム上で、乾電池製品やそれ以外の製品がつながっている状態になることを目指しています」と岡部氏は話す。

ノバルスはシードファイナンスでICJ(インクルージョン・ジャパン)から資金調達を実施している(金額は非公開)。今回の資金調達ではニッセイ・キャピタルとみずほキャピタルが参加し、1.2億円を調達した。その資金でノバルスは、MaBeeeのソフトウェアとハードウェア開発、マーケティング、人材強化を進める予定だ。また、MaBeeeを他の分野で展開していくに辺り、他の製造メーカーとアライアンスを組んでMaBeeeの裾野を広げていきたいと岡部氏は言う。

岡部氏は前職はセイコーインスツルでハードウェア製品の開発に関わり、2015年4月にノバルスに立ち上げた。2015年11月にクラウドファンディングサイト「Makuake」で50万円を目標にキャンペーンを開始し、最終的には大幅に目標額を超える約640万円を集めることに成功した。そして2016年8月から、約140の家電量販店、玩具店、ホビー製品を扱う店舗などで販売するに至った。「大手企業にいると、新規カテゴリーの製品は出しずらいと感じることも多いと思います。けれど私自身もレールがない中で、1年前の自分には想像しえなかったところまで来ることができました。アイデアを引き出しにしまっておくのではなく、一歩踏み出せる人が増えれば、日本全国でもっと面白いものが増えると思います」と岡部氏は話す。

ちなみに、ノバルスは昨年11月にTechCrunch Japanが渋谷ヒカリエで開催したTechCrunch Tokyoのイベントに出展してくれている。「多くの方々にMaBeeeを知ってもらう良い機会となりました。テレビを含め、メディア露出やVCと知り合うきっかけにもなりました」と岡部氏から嬉しいコメントをいただいた。その時の様子がこちら。

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Google、26テラビット/秒の光ファイバーで日本と台湾を接続

FILE - This Oct. 20, 2015, file photo, shows a sign outside Google headquarters in Mountain View, Calif. Google unveils its vision for phones, cars, virtual reality and more during its annual conference for software developers, beginning Wednesday, May 18, 2016. (AP Photo/Marcio Jose Sanchez, File)

Googleのアジアにおけるインターネット接続一段とスピードアップした。昨年シンガポールと台湾でデータセンターの能力を新たに拡張したGoogleだが、今日(米国時間9/6)はアジアにおけるデータ接続に新たな海底光ケーブルを採用したことを発表した。これによりYouTubeの表示やクラウド・コンピューティングが速くなる。

このケーブルは台湾と日本のGoogleity施設を接続するもので、日本からはFASTERコンソーシアムが敷設したケーブルでアメリカと結ばれる。FASTERケーブルは地球最速の海底光ファイバーという恐るべき評価を得ていることで有名だ。

Googleによると日本-台湾ケーブルの速度は26テラビット/秒に上るという。

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Googleがアジアにおけるデータ通信の高速化に最大の努力を払っている第一の理由は人口だ。この地域では日々膨大な人々がインターネットの新たなユーザーとなっている。最近発表されたGoogleとシンガポールのTemasekの共同研究によれば、東南アジアだけで380万人が毎月新たにインターネットの利用に加わっているという。この数字にはインドその他のアジアの国は含まれていない。

「一般ユーザーはすぐにそれと気づかないだろうが、新ケーブルはこの地域のGoogleのプロダクトとサービスへのアクセスを高速化する。スピードばかりでなく、信頼性、一貫性も向上する。ケーブル敷設ルートは津波多発地帯を避けるよう戦略的に決定された。これにより天災による通信途絶の可能性は減少している」とGoogleはブログで述べている。

Googleは昨年だけでアジアにおける2箇所のデータセンターの建設費と人件費として10億ドル以上を計上している。当然ながら今後もさらに投資は継続するはずだ。

またGoogleは「アジアにおけるオンライン人口の増大は世界のどこよりもハイペースだ。われわれはアジアのインターネット・インフラの構築に全力を挙げてきた」と書いている。

画像: Marcio Jose Sanchez/AP

〔日本版〕上の画像でGoogleは26テラビット/秒という速度を説明し、「15秒ごとに台湾居住者の全員がセルフィー画像を日本の友人に送ることができる。1日あたりにすれば1380億枚のセルフィー送信能力だ」と説明している。

[原文へ]

(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

TechCrunch Tokyo 2016の学割チケット、好評につき新たに100枚追加しました

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TechCrunch Japanは11月17・18日、渋谷ヒカリエで日本最大級のスタートアップイベント「TechCrunch Tokyo 2016」を開催する。学生の参加もぜひ歓迎したいと思い、通常3万5000円(10月末までの前売りチケットは2万5000円)のところ、3000円の学割チケットを用意していた。当初100枚の限定販売だったが、おかげさまで販売開始から3週間ほどで完売に至った。たくさんの学生に関心を持ってもらえたようでとても嬉しい。ありがとう!

完売終了後も学割チケットに関する問い合わせが編集部に寄せられたこともあり、今回新たに100枚の学割チケットを追加販売したい。これ以降の追加販売は予定していないので、この分が売り切れたら、学割チケットはそこで販売終了となる。もし買い逃したと思っている人がいたら、この機会にぜひ早めに手に入れてほしい。

TechCrunch Tokyo 2016の会場で会えるのを楽しみにしている。

友人知人の転職を支援して報酬がもらえる「SCOUTER」約6100万円を調達—開発やマーケティングを強化

左からクルーズ代表取締役社長の小渕宏二氏、SCOUTER代表取締役社長の中嶋汰朗氏

左からクルーズ代表取締役社長の小渕宏二氏、SCOUTER代表取締役社長の中嶋汰朗氏

ソーシャルヘッドハンティング「SCOUTER」を運営するRENOは9月6日、プレシリーズAラウンドでクルーズ、イーストベンチャーズ、三菱UFJキャピタルを引受先とした総額約6100万円の第三者割当増資を実施。同時に社名をサービス名のSCOUTERに変更することを明らかにした。

2016年4月からサービスを開始したSCOUTERは、紹介者としてユーザー登録し審査を通過した「スカウター」が、知人・友人など身の回りの転職希望者を企業に紹介することを支援。無事採用が決まれば、紹介者が転職者の年収の5%(最低15万円から)を報酬として受け取れる、という人材紹介業界では異色のシステムを採用している。企業側は求人情報を無料で登録することができ、広告費をかけずに採用活動を行うことが可能だ。採用が成功した場合、SCOUTER社は転職者の年収の30%を上限とした手数料を受け取り、転職者にも紹介者と同額の祝い金が支払われる。

SCOUTER代表取締役の中嶋汰朗氏によれば、スカウターによる紹介の特徴は「転職を考えてはいるがまだ活動を始めておらず、人材紹介サイトにも未登録の潜在層」や「ヘッドハンターから声がかかり、口コミだけでも次の就職先を決められるような優秀な人材」が集まりやすいことだという。「役員クラスの転職者紹介で、1社目で双方合意して転職が決まった例もある。紹介された転職者が転職後にスカウター登録して知人を紹介するという連鎖反応も起きている」(中嶋氏)

サービス開始から4カ月が経過し、スカウターの数は400人を数え、サービス内に掲載されている求人数も累計1500件を超えた。

中嶋氏はサービス成長の要因について「職種や年収などの条件だけでなく、転職者の人柄を知るスカウターが本当に合う企業を選んで紹介できることだ。スカウターのレポートを見ると『子どもが生まれたので働き方を変えたい』『今の会社のここが合わないので転職を考えている』といった転職者のリアルなニーズが浮かび上がる。他のエージェントではなかなか言えないようなことも本音で話せるのでミスマッチも起こりにくく、人間的な魅力が伝えやすいのだろう」と話す。

SCOUTERでは、今回の調達により開発体制とマーケティング施策を強化。SCOUTERサービスを事業展開の主軸に据えるべく社名を変更し、一層の事業拡大を図る。

「世界最大級の人材紹介エージェントとして、紹介者数で5000名を超える規模のサービスを目指す」と中嶋氏。「そのためスカウターの手間を軽減すべく、簡単な紹介でも登録ができるようにしたい。また現在は職業紹介事業者としてサービスを提供する上で、スカウターには当社と雇用契約を結んでもらっているが、2016年内には雇用契約なしで人材紹介には当たらない活動ができるコースも用意する予定で、副業を禁止されているビジネスマンでも参加できる形にする。さらに新卒者向けのサービス展開も準備している」(中嶋氏)

キーワードは“決済”——フリマアプリ「フリル」が楽天傘下での成長を選んだワケ

Fablic代表取締役CEOの堀井翔太氏

Fablic代表取締役CEOの堀井翔太氏

フリマアプリ「フリル(FRIL)」を運営するFablic。同社の楽天による買収が9月5日、正式に発表された。楽天では8月末にFablicの発行済み全株式を取得。買収額は非公開だが、数十億円規模だと見られる。

楽天はすでにフリマアプリ「ラクマ」を展開しているが、それぞれサービスを補完しつつも、独立した運営を続ける。Fablicの創業者であり、代表取締役CEOの堀井翔太氏は今後も同社のトップとして指揮を執る。同社のこれからについて堀井氏に聞いた。

成長には大きな資本が必要

Fablicは2014年にクックパッド、コロプラ、ジャフコを引受先とした第三者割当増資を実施。アプリは500万ダウンロードを達成。10代から20代の女性を中心にサービスを拡大してきた。そんな中で発表された今回の楽天の買収。堀井氏は次のように語る。

「7月から次の資金調達を目指して動いている中で三木谷さん(楽天代表取締役会長兼社長 最高執行役員の三木谷浩史氏)と話した。(買収額は)正当な評価。2016年にあった買収の発表としてはかなりの金額ではないか。これからプロモーションなども含めてサービスを育てていく、資金調達的な側面も大きい」「サービスの成長は順調。だがそれ以上のところに引き上げるには大きな資本が必要だった」(堀井氏)

国内フリマ市場を見ると、後発サービスである「メルカリ」が月間流通総額100億円以上という数字を発表しており、事実上の独走状態が続いている。これに対して楽天では、若い女性に強いフリル、そして30〜40代男性や主婦層中心で、家電やガジェットなど高単価商品が多い(手数料無料であることが影響しているようだ)ラクマという2つの特化型のサービスをぶつけていく(日経新聞などの報道では2サービス合計での月間流通総額は30億円程度とのこと)。

すでにフリルの楽天ID対応や、楽天スーパーポイントを利用したキャンペーンの実施などが発表されているが、これに加えて、楽天の各種サービスからの送客なども検討中だという。また、テレビCMをはじめとしたマーケティングを実施するほか、フリルの手数料無料化も間もなく開始する。

楽天は海外事業を見直している状況だ。これまで積極的に海外に進出してきた同社だが、2016年に入ってシンガポールやインドネシアなどでのマーケットプレイス事業を終了。その他の地域でも一部の拠点を閉鎖した。一方でリソースをラクマに集中。3月には台湾でサービスを開始したほか今後の東南アジア展開も控える。ここに今後フリルが関わる可能性もある。米国での躍進が聞こえてくるメルカリをはた目に、アジア圏でのサービス拡大を狙っているようにも見える。(ただしCarousellShopeeといった現地のサービスが先行している)。

フリマアプリは「決済」に繋がる

堀江氏は今後の展開について、「日本で一番長い間フリマアプリをやっているからこそ思うが、フリマアプリは(機能的に)コモディティ化してきている。お金で殴り合うだけでなく(大量の資金を投下してマーケティングなどで競合と戦うという意味)、その次を作らないといけない」とも語る。ではその次とは何か?堀井氏と話す中で浮かび上がってきたキーワードは決済だ。

今、決済まわりのサービスが非常に活気づいている。例えばBASEがの「PAY.JP」を立ち上げ、コイニーが「coineyペイジ」、AnyPayが「AnyPay」といったスタートアップ発の決済サービスが多く登場しているし、LINEも「LINE Pay」をヤフーも「Yahoo!マネー」を提供している。

僕がこれらの決済サービスの話を聞いて思ったは、これらのサービスは「モノを買う」処理を自前で行うということだけを狙っているのではないということだ。当たり前のことながら決済をすれば売り手と買い手のお金が動くわけだが、今度はその動いたお金(=売上)を同じ決済プラットフォームで流通させる、要は「財布がなくても決済プラットフォームだけを使ってお金を電子的にやり取りする」ということを目指しているのではないか。

例えばBASE代表取締役の鶴岡裕太氏はPAY.JPでID決済を提供する際に「現金をリプレイスするプラットフォームを作る」と語っていたし、AnyPay代表取締役の木村新司氏は「デビットカードをリプレイスする」ということを語っていた。すでに中国ではAlipayやWeChat Paymentといったモバイル決済の利用が拡大している。日本では資金決済法の絡みもあってスタートアップが簡単にチャレンジできる領域ではないが、魅力的な市場があることは間違いない。Fablicも楽天と組んでこの領域にチャレンジするのではないか、ということだ。

堀井氏にそんな話をしたところ、具体的な回答こそ得られなかったものの次のように語ってくれた。「楽天はECの会社であると同時にFinTechの会社。資金移動業者であり、銀行も証券も持っている。ECはこの先、物流や決済と繋がっていく。そのとき(楽天は)強力な後ろ盾になってくれる」(堀井氏)

「スタートアップに一番優しい決済を」——手数料率を抑え審査も早い、PAY.JPの新プラン

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BASEは9月6日、オンライン決済サービス「PAY.JP」で、特定のベンチャーキャピタルおよび事業会社の紹介を受けたスタートアップのための優遇制度「PAY.JP Seed」を開始した。同時に、一般事業者向けに月額費用1万円で決済手数料を抑えた新プランの提供も開始する。

月額費用1万円で決済手数料2.59%〜に抑えた新プラン

まずは一般事業者向けの新プラン「PAY.JPプロプラン」を見ていこう。PAY.JPはウェブサービスやネットショップにクレジットカード決済機能を無料で簡単に導入できる開発者向けの決済サービス。反社会的勢力ではないこと、販売されているものが合法であることといった最小限の条件をチェックすることで、利用開始時の審査が最短即日で完了するのが特徴だ。

2015年9月のサービス開始から約1年、PAY.JPでは初期費用・月額費用無料、決済手数料はVISA、MasterCardが3.0%、JCB、AMEX、Diners Club、Discover Cardが3.6%の単一プランのみを提供してきた。

今回追加された新プランでは決済回数の多い事業者向けに、初期費用は無料のまま、月額費用1万円で、決済手数料をVISA、MasterCardで2.59%、JCB、AMEX、Diners Club、Discover Cardで3.3%に抑える。また、振込サイクルを月2回と早め、資金繰りもサポートする。

プロプランの追加について、BASE代表取締役の鶴岡裕太氏は「中長期的に見て、料率を上げて利益を確保することよりも、サービス利用のボリュームを増やし、ID決済の『PAY ID』やECサイトのプラットフォーム『BASE』も合わせた市場を大きくしていくことが重要と考えている。短期的なもうけよりスタートアップの支援を優先するのも同じ考えからだ」とする。

月額無料で手数料率も抑えたスタートアップ優遇制度、PAY.JP Seed

では、そのスタートアップ支援制度はどのような内容だろうか。PAY.JP Seedは、金融機関との交渉の手間や開発のための人員が割けず、また審査の壁の高さから決済サービス導入をためらうスタートアップ企業のために提供される。通常は与信や審査に時間がかかりがちな新しいビジネスモデルでも、BASEが提携するベンチャーキャピタルや事業会社の紹介があれば、同サービスを申し込める。9月6日現在の提携企業は、ANRI、East Ventures、Global Brain、さくらインターネット、Skyland Ventures、TLM、メルカリの各社となっている。

審査を簡便化することについて鶴岡氏は、「スタートアップの事業リスクは、トランザクションを見なければ分からない。最初の審査に時間をかけてその時点だけで判断して終わり、ではなく、我々は取引を常に確認し、実績を見て判断していく」とも話している。

月額費用は申込日から1年間は無料で、月額1万円のPAY.JPプロプランと同じ決済手数料でPAY.JPが利用可能。入金サイクルも月2回で、資金繰り面でもスタートアップを支援。導入時にはSlackによる技術サポートも行われる。

「日本では起業そのものよりも決済手段の導入フェイズ、特に審査期間の長さ・手数料率の高さ・技術サポートが得られないという3つの面でのハードルが高い。PAY.JP Seedで“スタートアップに一番優しいオンライン決済”を提供することで、最初に使ってもらえる決済として選択され、その後も利用し続けられる決済サービスでありたい」(鶴岡氏)。

現金、クレジットカードに限らない“新しいお金”の姿も模索

つい先日発表されたAnyPayの正式ローンチコイニーの新サービス提供とWeChat対応など、決済関連のサービスが盛り上がりを見せる中、BASEでは、スタートアップから中規模以上のマーチャントまで広くターゲットとして視野に入れているという。

6月にPAY IDを提供開始した際にも「質量を持った『現金』をリプレイスしうるプラットフォームを拡大する」と話していた鶴岡氏。今回の取材でも改めて、現金をなくせるプラットフォームに意欲を見せた上で「クレジットカードだけではない。オフラインも対象にした“新しいお金”のあり方を模索している。期待していてほしい」と話した。

SoftbankのARM買収完了―240億ポンド(3.3兆円)は英国最大のM&A

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今年のテクノロジー界で最大級―かつイギリス史上最大―の買収が確定した。今日(米国時間9/5)、SoftbankはARM Holdingsの買収手続きを完了したと発表した

ARMはSoftBankが7月に240億ポンド(現在のレートで320億ドル、当時は310億ドル)で買収する意向を示した半導体メーカーだ。この買収によりSoftBankはIoTの世界に向けて大きく飛躍することになる。ARMは9月6日付でロンドン証券取引所(LSE)での上場が廃止となる。SoftbankではARMを今後も独立企業として運営する意向を示している。

今回のニュースは、買収完了のために必要とされる規制当局による承認が得られ、最後の障害が取り払われた直後に発表された。ソフトバンクは買収を発表した声明で次のように述べていた。

「買収契約の条件に従い、SBG〔SoftBank Group〕は発行済、未発行を含めてすべてのARM株式(ただしSBGないしSBG子会社が取得済み株式を除く)を総額で約240億英ポンド(310億USドル、3.3兆日本円相当)のキャッシュで買収する。買収手続きの完了後、9月6日(グリニッチ標準時)をもってARMのロンドン証券取引所への上場は廃止され、公開企業ではなくなる」

Softbankはまた「この買収に伴う財務および営業への影響は手続きの完了を待って行う」とも述べていた。ARMとSoftBankの財務は今日から統合が開始される

これまでSoftBankはモバイル網および固定回線におけるインターネット接続サービスを消費者に提供してきた。しかしニュースが発表された当初からわれわれはARM買収がSoftbankがIoTテクノロジーにおいて飛躍していくための重要なピボット点になると報じてきた

SoftBankのファウンダー、CEO、孫正義は今年初め、それ以前に公表していた引退の意向を取り消したことでテクノロジー界を驚かせた。そしてARM買収が発表された。孫CEOによれば交渉開始から終了までわずか2週間だったという。この買収はある意味でSoftBankという会社が次の時代をどう生き抜いていくかを予め示すものといえるだろう。

この取引について一部では、Softbankは機を見るに敏だったと評している。 Brexit〔イギリスのEU離脱〕によってポンドの為替レートが低落した瞬間にARMをさらったというわけだ。この国民投票では過半数の有権者がイギリスがEUを離脱することに賛成した。これが経済に与えた影響は大きく、英ポンドの為替レートは大きく下がった。

しかし孫CEOはARM買収を発表したプレス・カンファレンスで「Brexitは私の決定に何の影響も与えていない。多くの人々がBrexitについて憂慮している。この国の経済に与える影響は良かれ悪しかれ複雑なのもとなるだろう。…しかし私の投資の決断はBrexitが原因ではない」と述べた。

なるほどSoftBankとARMが買収について交渉していた2週間にポンドの価値は16%下落したが、逆にARMの株価はほぼ同率でアップした。つまり差し引きゼロだった。また考慮すべき経済的要素は他にもあった。この買収に先立ってSoftbankはAlibaba株の一部を売却、同時にフィンランドの有力ゲーム・メーカーSupercellも売却した。SoftBankは90億ドル(1兆円)という巨額の資金を起債によって調達する計画を発表している。孫氏は「これは為替レートの変動に便乗してできることではない」と述べ「もっと早く買収したかったのだが、資金が手元に入ってくるのを待っていたのだ」とジョークを飛ばした

「私は遭難しかけている会社に投資することはない。私はパラダイム・シフトに投資する。…これは私の情熱であり、ビジョンだ」と孫氏は述べた。

事実、Softbankは常にパラダイム ・シフトのまっただ中にいた。孫氏は社員がたった16人だったYahooを通じて「パソコン・インターネット」に投資した。その後はモバイル化に巨額の投資を行った。SoftbankはSprintの買収を始めとして多数のモバイル関連企業を傘下におさめている。そして孫氏の信じるところでは、世界がIoTに向けてシフトしていくのは必然的な流れだという。

ARMはイギリスにおけるテクノロジー企業のサクセス・ストーリーの代表だった。スマートフォン時代の到来の波に乗ってARMのチップ・デザインはppleを始め、世界の有力モバイル・デバイス・メーカーが採用するところとなった。

ARMにとってスマートフォン・ビジネスは依然として重要な柱だ。先月も長年のライバルであるIntelがARMのテクノロジーのライセンスを受けてスマートフォンのプロセッサーを製造すると発表しているのは興味深い。Intelはこれによって自社のスマートフォン向けチップ・ビジネスを大きく加速できると信じている。

しかし将来にむけてさらに重要なのは数年前からARMがビジネスの本質を IoTにシフトさせている点だ。ARMは現在の稼ぎ頭であるモバイル事業がいつかは頭打ちになることを予期していた。

そしてARMの予期通りに事態は推移している。スマートフォンの販売台数の伸びは事実上ゼロになった。世界の多くの市場でスマートフォンの普及は飽和点に近づきつつあり、すでにスマートフォンを所有しているユーザーは簡単に新機種に買い替えなくなった。

なるほど現在でもいわゆる「つながった」デバイスは多数存在する。冷蔵庫や玄関のドアのカギといったダム・デバイスが続々とスマート化され、インターネットにつながるようになった。しかし真のIoT時代の到来はまだこれからだ。ARM(いまやSoftbankだが)はこのパラダイム・シフトをいち早く参入したことにより、同社がスマートフォンで収めたような成功をIoTでも収められると期待している。

Featured Image: a-image/Shutterstock

〔日本版〕原文冒頭のニュースリリースへのリンクは日本からは無効なので相当するウェブページに差し替えてある。

[原文へ]

(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

UI解析でWebサイト改善、USERDIVEがDraper Nexusらから4億円調達

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WebサイトのUI/UX解析ツール「USERDIVE」を提供するUNCOVER TRUTHは今日、Draper Nexus Venturesをリードインベスターとして、日本ベンチャーキャピタルサイバーエージェントアコード・ベンチャーズみずほキャピタルニッセイ・キャピタルを引受先とする総額4億円の第三者割当増資を実施したことを発表した。UNCOVER TRUTHは2013年4月の設立。もともと市場調査会社のクロス・マーケティングの子会社としてスタートしていたが、今回シリーズA資金調達で連結対象から外れたかたち。UNCOVER TRUTHの石川敬三CEOはTechCrunch Japanの取材に対し、デロイトや博報堂、電通、NRIなどのコンサル・広告代理店の大手がこぞってデジタルマーケティングの領域へ進出してきているなど「ここに来て日本でもマーケットがすごく動き始めている」と、資金調達の背景を説明する。

USERDIVEはGoogle アナリティクスやAdobe Analyticsなど「Web解析市場」を主戦場としている。これら巨人のツールとの違いは、ページの改善点が分かることだという。石川CEOは「Google アナリティクスでも、どのページが悪いのかは分かります。でも、ECサイトでページ内のカートのどこをどう改善すれば良くなるかは分かりません」と説明する。USERDIVEではユーザーのマウスの動きやタップした場所、スクロールした速さや止まった位置などを元にサイト内でのユーザー行動を可視化するツールを提供している。具体的には実際のユーザー行動を可視化する動画分析、マウスの動きを可視化するマウスヒートマップ、スクロール到達率を可視化するスクロールヒートマップ、ユーザー離脱の原因解析に役立つフォーム分析などがある。

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このヒートマップのデータをECサイトが持つ利用者属性や購買データと突き合わせることで、ページ改善のヒントが得られるという。例えば購入者と非購入者というフィルターでヒートマップを見比べるような使い方。「購入者だけに絞ってみてみると、その多くが商品スペックを見ていたと分かります。ところが商品スペックが現れるページ全体の75%に至る前に来訪者の半分が離脱していたりする。つまり商品スペックをページ全体の75%より上に持ってくるべきだと分かります」。これはUNCOVER TRUTH自身の例というが、導入企業事例を見るか見ないかで法人向けプロダクトの問い合わせ率は全然違ってくる、という気付きもあるそうだ。

多くの場合こうした解析ツールは「さあどうぞ」と世に出してもユーザー側が使いこなせず、具体的改善に繋がりにくい。結局のところツールを使いこなしてPDCAサイクルを回せる担当者がいるかどうかがカギだ。大手代理店はナショナルクライアントに対して、単に解析ツールのライセンス販売を行うだけでなく、アナリスト人員を組織化してビジネスとしている。これに対してUNCOVER TRUTHの石川CEOは「ツールのみで販売していく世界を作っていかないと、グローバル展開も含めてスピードがでない。機械学習を入れてオートメーション化していく」と今後の狙いを語る。ちょうどアドテク興隆によって広告表示がデータドリブンな自動化の世界になってきているのと同様に、UNCOVER TRUTHではWebサイト解析と改善でも自動化を進めていくという。

Web解析市場でGoogle アナリティクス プレミアムやAdobe Analyticsの国内利用企業数をUNCOVER TRUTHでは700社から1000社と推計している。その市場規模はネット広告1兆円の10%、年間1000億円のポテンシャルと見込む。これまで2013年の創業から3年間で、富士フイルムやベネッセコーポレーション、ニフティなど約300社にサービスを提供。ちなみに、UNCOVER TRUTHではネイティブアプリ向けの「USERDIVE for Apps」も提供しているが、ビジネスの主体はウェブ。モバイルでもWebView(アプリ埋め込みのブラウザ)を使ったサービスが断然多いのだそうだ。

“ソーシャル使い放題”のLINEモバイルがいよいよローンチ——本日より2万台限定で先行販売も

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3月に開催したプライベートカンファレンス。「LINE CONFERENCE TOKYO 2016」においてMVNO事業への参入を発表していたLINEだが、いよいよサービスが始まる。LINEは9月5日、「LINEモバイル」の詳細を発表した。正式ローンチは10月1日。これに先駆けて本日から2万台限定の先行販売を開始した。

LINEモバイルはLINEの子会社であるLINEモバイルを通じて提供されるMVNO事業。今回の発表では「LINEモバイル1.0」——つまり第1弾の取り組みであるとして——「LINEフリープラン」「コミュニケーションフリープラン」の2つの料金プランを発表した。各プランの概要は以下の通り。なおSIMカードのみでの販売に加えて、端末(8機種19バリエーション)とSIMカードとのセット販売も行う。本日9月5日午後2時より、LINEモバイルの公式サイトにて2万台限定の先行販売を開始している。

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  • LINEフリープラン
    月額500円(データ通信のみの金額。データ通信とSMSの場合月額620円、音声通話を加えると月額1200円)、LINEの通話およびトークが使い放題となるほか、1GBのデータ通信に対応する。
  • コミュニケーションフリープラン
    LINEに加えてTwitter、Facebookが使い放題となるプラン。データ通信とSMSの利用で月額1110円、音声通話を加えると月額1690円(いずれも3GBまでのデータ通信が可能)から。

いずれのプランでも0.5GBにつき500円からデータ通信容量の追加購入が可能。また、年齢認証やID検索に対応。支払いはLINE Payでも可能で、月額基本料の1%がLINEポイントとして付与される。LINE上の友人になっているLINEモバイルのユーザーに対してデータ容量を送りあうことも可能。フィルタリングサービスも無償で提供する。またLINE上にLINEモバイル公式アカウントを提供。トークを使ったデータ残量の問い合わせなども行う。

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ちなみにLINEモバイルではこのLINEやTwitter、Facebookの使い放題を「カウントフリー」と呼んでいるのだが、このカウントフリーの実現のために、LINEはNTTコミュニケーションと協力。IPやパケットの一部(テキスト、動画、画像等の内容は含まないとしている)をモニタリングすることになる。これについては、利用申込時に個別で同意を得るとしている。また今後は音楽ストリーミングサービスの使い放題プランなどを提供していく予定だ。

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クラウドソーシングでアニメ動画を制作するCrevo、実写映像にも対応——独自の管理ツールで差別化を図る

Crevo代表取締役の柴田憲佑氏

Crevo代表取締役の柴田憲佑氏

クラウド動画制作プラットフォームのCrevoは9月5日、実写映像制作サービスの提供を開始した。

Crevoは2014年3月にサービスを開始して以来、アニメーションに特化したクラウド動画制作プラットフォームを提供してきた。これまでに500社が利用。登録クリエイターは3000人以上にのぼる。

今後はこのプラットフォーム上で実写映像制作サービスを提供する。顧客の顔や現場の雰囲気を直接伝えることができるインタビュー動画や店舗紹介動画など、実写撮影が必要である映像制作の需要に応えるため、サービスプランの拡充、システムの改善を進める。

映像制作全般をシステムで効率化

Crevo(当時の社名はPurpleCow)の設立は2012年6月。は2014年3月に「動画制作に特化したクラウドソーシング」とうたってサービスを開始した。2015年2月には1億円の調達を実施し、サービス名にあわせるかたちで社名をCrevoに変更した。2015年8月にはクラウドでの動画制作支援システム「Crevo Basecamp」の提供を開始し、動画制作を依頼するクライアントと動画を制作するクリエイターの間で発生する作業の工数削減を促進してきた。アニメーション動画制作の効率化、工数削減にはすでに成功し、安価なパッケージプランの提供が可能となっている。

一方で、クライアントからの需要が高いと感じていた実写映像制作のパッケージ化も2015年秋頃より着手。パッケージプラン、動画制作支援システムの最適化を行い、今後はアニメーション動画、実写映像の二軸でクライアントの需要に応えていくことになる。

Crevo Basecamp上では声優オーディションも行うことができる

Crevo Basecamp上では声優オーディションも行うことができる

ディレクターの負担を激減

実写映像制作は通常、企画完成後、スタッフ集めや機材準備、撮影地の確保からキャスティングまで、すべてをディレクターが担当する。手配が完了した後、撮影を実施、映像の納品を完了する。Crevoの実写映像制作サービスでは、ディレクターが属人的に行う工程をツール上のシステムで解決し、効率化していくことを目指すという。

映像のフィードバックを画面を共有しながら行うことができる

映像のフィードバックを画面を共有しながら行うことができる

従来は試写会や対面でのコミュニケーションを通じて行うことが多かった制作中の映像へのフィードバックを、システムでオンライン化。さらに、ロケーション探しの工数、負担を減らすためにレンタルスペースを運営するYuinchuと事業提携を実施。Crevoでの実写映像制作時にはYuinchuが運営するレンタルスペースをディスカウント料金、特別な支払いサイクルで利用することができる。

「従来の実写映像制作では、スタッフィング(カメラマンなどのスタッフ集め)、ロケーション決め(撮影地の確保)、キャスティング(モデル、出演者確保)は、ディレクターが検索して確保する。もしくは知り合いを通じて見つけるなど、かなりアナログな方法で作業をしている部分が多いことが分かった。そのアナログな工程を効率化できればと思っている」(Crevo広報)

2016年秋には、ディレクターが担当することが多いストーリー構成もテンプレート化するなど、実写映像制作の工程もアニメーションと同様、効率化を図っていく予定だという。

少人数の制作チームでスケールを目指す

今後も動画制作事業を中心に事業を展開していく。だが一方で「普通の制作会社」にならないよう、動画制作支援システムの開発に力を入れてきたというCrevo。インターン、バイトを入れて25人いる従業員のうち、制作チームは半数以下。営業とエンジニアの採用は強化していく一方で、制作チームは業務効率化を進めることで、少人数体制のままでのスケールを目指していくという。

「企業から受けている映像制作案件は1年前に比べるとかなり増えているが、制作チームの人数はほとんど変わっていない。通常の映像制作会社の場合は従業員の大半が制作担当者。我々はインターネット企業としての立場を大切にして、働き方やツールでの効率化も大切にして、成長していきたいと考えている」(Crevo広報)

Rapyuta Roboticsが10億円を調達、警備や点検に使えるドローンを手始めにRobot-as-a-Serviceを目指す

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クラウドロボティクスの事業化を推進するRapyuta Roboticsが10億円のシリーズA資金調達を行った。リードインベスターはSBIインベストメントであり、社名は明らかにしていないが事業会社1社も参加する。同社は2015年1月に3.51億円のシードラウンド資金調達を実施しており(発表資料、調達先はCYBERDYNE、フジクリエイティブコーポレーション、ブイキューブ、それにSBIインベストメント)、今回と合わせ総額約13億円を集めたことになる。加えて、同社とチューリッヒ応用科学大学の応用情報技術研究所クラウド・コンピュータ研との共同事業に関して、スイス連邦政府が50万米ドルを支援する。

同社は2014年7月に設立。スイスのチューリッヒ工科大学からのスピンオフ企業である。東京に本社を置き、スイスのチューリッヒ、インドのバンガロールに開発拠点を持つ。27人の社員がいる。CEOのGajan Mohanarajah氏は日本の東京工業大学(東工大)で修士号、チューリッヒ工科大学で博士号を取得した。Rapyutaとは、チューリッヒ工科大学時代にCEOのGajan Mohanarajah氏が始めたクラウドロボティクスのプロジェクト名でもある(このサイトに当時の記録が残っている)。

また同社ではfreeeの財務本部長を務めていた松田海氏が最高財務責任者(CFO)として、また産業革新機構バイスプレジデントを務めていた山脇真波氏が事業開発部長として、ビジネス開拓と内部統制の強化にあたっている。

屋内警備に使えるドローンと独自の位置測定技術を開発

数々のロボットベンチャーが登場している中で、同社の事業の位置づけは独特だ。同社は自らの事業をフェーズ1とフェーズ2に分けて説明しているが、フェーズ1では、自社開発の自律型ドローン(「モーター以外は自社開発した」と説明する)とクラウド上のソフトウェアを組み合わせ、夜間のビル内警備や、共同溝内の調査のためにドローンを活用するビジネスを考えている。実際に、不動産会社や警備会社と商談が進んでいるという。

同社の独自技術として、照明条件が悪い夜間のビル警備や共同溝などでドローンを飛ばすための測距技術がある。屋内の要所に電波の発信器を設置し、ドローンとの間の電波の到達時間を測定することにより、15cm程度の精度で距離を測定する。ロボット研究では画像認識により位置を把握する試みが多いが、「画像処理だと環境、ライティング、壁の模様などが影響する。それに夜間の警備では使えない。電波はよりロバストな手法だ」と同社CEOのGajan Mohanarajah氏は説明する。

信頼できる位置測定の仕組みはロボティクスに欠かせないが、同社は独自にこの技術を開発したことになる。同社のデモビデオを見せてもらったのだが、倒立振り子を倒さないよう浮遊するドローンを高精度で制御するデモや、狭い屋内でドローンを自律的に飛行させるデモが繰り広げられていた。自律性、高精度、高耐久性、障害回避、これらを実用レベルまで高めたドローンを提供する。

クラウドロボティクスの考え方では、計算量が多い部分はクラウド上で処理し、ロボット本体はより安価、軽量になるようにする。特にドローンのようにペイロードの制約が厳しい機体では、処理能力が大きなコンピュータをペイロードとして搭載するよりもクラウドに処理を投げる方法のメリットが出てくる。

気になるのは、ロボット制御でリアルタイム性が必要となる領域と、クラウドとの通信による遅延(レイテンシ)の両立だ。目安として「1秒遅れても大丈夫な処理はクラウド。そうではないものはロボット本体に搭載する」(同氏)としている。「例えば障害回避は、万一ネットワークが切断されていたとしても機能する必要がある」(同氏)。

さらに進んだフェーズ2で同社が狙うのは、ロボットのためのPaaS、「Robot-as-a-Service」だ。同社のプラットフォーム上で手軽にロボット向けアプリケーションを開発できるようにし、複数のロボットベンダーと共同で事業を進める構想だ。いわば、ロボット業界のAmazon Web Servicesの地位を狙っているのだ。さらに同社のプラットフォームの中核部分はオープンソースソフトウェアとして公開する方針である。

「ロボットで難しいのは、いろいろな種類の専門家が必要になること。例えば顔認識が得意な人はロボットに貢献できるのに、現状ではそのためにロボットのハードウェアまで自分でやらないといけない」(Gajan Mohanarajah氏)。プラットフォームの整備により、いろいろな分野の専門家の知識を持ち寄って、ロボットをより賢くすることができるようになるというビジョンである。

ロボットは、お金が必要な分野だ。同社は工場を自分たちで持つ訳ではないが、資金の使い道は多い。今回調達した10億円の資金は、開発費、テスト、エンジニアチームに投資するとしている。例えばドローンなどハードウェアのテストの外注化を進めて「時間を買う」(同社CFOの松田海氏)ために使う。

ロボット産業が立ち上がるかどうか、大きな部分はロボットの「賢さ」にかかっている。そのためのプラットフォームを提供するのが同社のビジョンだ。ただし、同社はまずドローンのハードウェアから自社開発する必要があった。ロボット産業の難しさを改めて感じる。同社のビジョンがロボット産業の立ち上がりに寄与し、世界を変える日が来るかどうか──それは今回調達した10億円をどれだけ有効に使うのか、そして初期の顧客のニーズが同社のビジョンとうまく噛み合うかどうかにかかっているだろう。同社の今後に期待したい。