「生きた細胞の中」を覗ける超解像蛍光顕微鏡を活用する創薬プログラムEikon Therapeuticsが約598億円調達

Lux Capital(ラックス・キャピタル)のパートナーであるAdam Goulburn(アダム・ゴールバーン)氏は、Eikon Therapeutics(エイコン・セラピューティクス)が行った超顕微鏡による薬の開発を説明するピッチで、創業者のEric Betzig(エリック・ベッツィヒ)氏の「生きている生命を見ないで、どうしてそれを理解できるでしょうか?」というシンプルな問いかけに最初に感銘を受けた。

「それはとてもシンプルな言葉でしたが、私にとっては興味を掻き立てられるものでした」とゴールバーン氏はTechCrunchに語った。

細胞内の環境は絶え間なく動いている。タンパク質はねじれたり、回転したり、移動したりしている。しかしこの環境は、どのような顕微鏡下であっても、不可視であり続けてきた。

それは、科学者であるエリック・ベッツィヒ氏、Stefan W. Hell(シュテファン・W・ヘル)氏、William E. Moerner(ウィリアム・E・モーナー)氏の3氏が、生きた細胞の中の「ナノ領域を覗く」ことを可能にする技術を開発するまでの話である。この偉業によって、チームは2014年にノーベル化学賞を受賞した。具体的にいえば、ベッツィヒ氏は超解像蛍光顕微鏡を初めて開発した人物であり、この顕微鏡によって単一分子の動きの詳細な観察が可能になったのである。

生細胞内でのタンパク質の動き(画像クレジット:Eikon Therapeutics)

このイノベーションが、2019年の創業以来資金調達を続けてきたスタートアップの基盤となっている。ベッツィヒ氏が共同設立したEikon Therapeuticsは、超解像蛍光顕微鏡と、このような高性能顕微鏡によって収集されるデータ、そして新薬開発のためのその他数多くのツールの使用を計画しているバイオ医薬品企業である。

米国時間1月6日、同社は5億1780万ドル(約598億円)のシリーズBラウンドを発表した。これは2021年5月に発表された1億4800万ドル(約171億円)のシリーズAに続くものであり、これで同社の調達総額は6億6800万ドル(約771億円)を超えることになる。

シリーズBラウンドの新規投資家には、T. Rowe Price Associates(ティー・ロウ・プライス・アソシエイツ)の助言を受けたファンドとアカウント、Canada Pension Plan Investment Board(カナダ年金制度投資委員会、CPP Investments[CPPインベストメンツ])、EcoR1 Capital(エコアールワン・キャピタル)、UC Investments(UCインベストメンツ、Office of the Chief Investment Officer of the Regents of the University of California[カリフォルニア大学理事会最高投資責任者室])、Abu Dhabi Investment Authority(アブダビ投資庁、ADIA)の100%子会社、Stepstone Group(ステップストーン・グループ)、Soros Capital(ソロス・キャピタル)、Schroders Capital(シュローダー・キャピタル)、Harel Insurance(ハレル・インシュアランス)、General Catalyst(ジェネラル・カタリスト)、E15 VC(イーフィフティーンVC)、Hartford HealthCare Endowment(ハートフォード・ヘルスケア・エンダウメント)、AME Cloud Ventures(アメ・クラウド・ベンチャーズ)などが名を連ねている。

Column Group(コラム・グループ)、Foresite Capital(フォレサイト・キャピタル)、Innovation Endeavors(イノベーション・エンデバー)、Horizons Ventures(ホライゾン・ベンチャーズ)、Lux CapitalはいずれもシリーズAラウンドの投資家であり、シリーズBに再び参加する。

「多くの人がプロプライエタリ技術という言葉を盛んに使用していますが、私の見解では、Eikonが持っているものはまさにプロプライエタリです」とゴールバーン氏は語っている。「それが新しい生物学の発見において独自のアドバンテージをもたらす力を持つことを、私たちは確実に認識しています」。

超解像顕微鏡法が大きな生物学的ポテンシャルを秘めていることは疑う余地はないが、薬剤開発への応用はどのようになされるのであろうか。

これについての1つの考え方は、タンパク質が細胞内で大部分の働きをしていることを思い起こすことである。例えば、タンパク質はシグナルを送ったり、化学反応を行ったり、より小さな分子を全身に輸送したりするのに役立っている。私たちは薬を服用するとき、その多忙なワークフォースに別のコンポーネントを導入して、それが特定のターゲットに結合し、体内ですでに起きている事象(おそらく問題を引き起こしている)を変化させることを期待する。

超解像顕微鏡のようなツールを使えば、他の種類の実験によって何が起きるかを推測するのではなく、生きた細胞に薬が導入されたときに何が起きているかを正確に知ることができる。さらには、これまで見えなかった新たなターゲットが明らかになるかもしれない。

「このように超高解像度の、細胞の中を覗くことができる単一粒子追跡顕微鏡を私たちは有しています」とゴールバーン氏は説明する。「このツールを軸に、ウェルに何百万もの細胞を加え、さらに何百万ものウェルを追加し、そのウェルに何百万もの薬のような化合物を加えることを想定すれば、生きているという意味での大規模な創薬研究に向かうことが期待できるでしょう」。

その一方で、Eikonの目下のフォーカスは、自社の創薬プラットフォームの「工業化」に置かれている。この詳細なタンパク質データを新薬の製造や既存薬のより良い理解に役立てるための、プロセスやツールの開発を進めている。

このプロセスは、業界でも指折りの人物である、Merck Research Laboratories(メルク・リサーチ・ラボラトリーズ)の元プレジデントで2020年にMerckからの引退を発表したRoger Perlmutter(ロジャー・パールムッター)氏によって監督されている。だが今回の最新資金調達ラウンドで、同社はさらに6人の経営幹部レベルの人材を迎え入れた。

最高科学責任者にRecursion Pharmaceuticals(リカージョン・ファーマシューティカルズ)で生物学担当VPを務めていたDaniel Anderson(ダニエル・アンダーソン)氏、最高技術責任者にPacific Biosciences(パシフィック・バイオサイエンシズ)の元エンジニアリング担当VPであるRuss Berman(ラス・バーマン)氏が就任する。最高財務責任者にはVeracyte(ベラサイト)でコーポレートおよびビジネス開発担当VPを務めていたAlfred Fredddie Bowie, Jr.(アルフレッド・フレディ・ボウイ・ジュニア)氏、最高人事責任者兼エグゼクティブバイスプレジデントにはPliant Therapeutics(プライアント・セラピューティクス)の元最高人事責任者であるBarbara Howes (バーバラ・ハウズ)氏を迎える。最高情報責任者としてPACT Pharma(パクト・ファーマ)の元最高情報責任者であるAshish Kheterpal(アシシュ・ケターパル)氏、ゼネラルカウンセルおよび最高ビジネス責任者としてMerck Research Laboratoriesでシニアバイスプレジデント兼BD&Lヘッドを務めたBen Thorner(ベン・ソーナー)氏が加わる。

ゴールバーン氏は、Eikonの技術はすでに工業化の準備が整っているという見方を示している。T. Rowe Priceの投資アナリストであるJohn Hall(ジョン・ホール)氏もプレスリリースの中で、Eikonの研究がすでに「タンパク質の動的挙動に関する大量の定量的情報を生み出している」ことに言及している。

「私の見るところ、現時点で工業化されています」とゴールバーン氏。「私たちは24時間年中無休で薬剤スクリーニングを行うことを考えています。それは私の心の中にある未来のバイオファクトリーです」。

同社は4つの匿名ターゲットプログラムを推進しており、パートナーは非公表の1社となっているが、ゴールバーン氏は、これらのプログラムがどのように進行しているのか具体的には明らかにしなかった。

この最新の資金調達ラウンドで、同社は100人のチーム(理想的には2倍の規模を想定しているとゴールバーン氏は述べている)を成長させ、プラットフォームの開発を加速し、すでに動きを見せている創薬プログラムの進歩を目指していく。

画像クレジット:Eikon Therapeutics

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(文:Emma Betuel、翻訳:Dragonfly)

子ども向け健康ウェアラブルKiddoが約18.5億円調達、喘息・心臓病・自閉症・糖尿病といった慢性疾患にフォーカス

正式にはGood Parents Inc.(グッド・パートナーズ)として知られるKiddo(キドー)は、米国時間1月4日に1600万ドル(約18億5000万円)のシリーズAラウンドを発表した。ウェアラブル、ペアレンタルコーチング、テレヘルスの組み合わせを通じて、同社は慢性の健康障害を抱える子どもたちのケアの管理にしっかりと照準を定めている。

Kiddoは、子どもの健康のためのウェアラブルとソフトウェアの組み合わせの開発に、数年前から取り組んでいる。2016年に同社を設立したJaganath “CJ” Swamy(ジャガナス・“CJ”・スワミー)氏は当初、子どもたちが楽しく利用でき、親たちが健康状態をモニタリングできるような健康とウェルネス向けデバイスの開発に関心を持っていた。しかし同社は現在、慢性の健康障害の管理に全面的にフォーカスするように刷新されている。

スワミー氏がTechCrunchに語ったところによると、そのフォーカスは、同氏自身の経験から部分的に着想を得ているという。同氏がアーリーステージの投資家からの転換期にあるとき、息子の1人が喘息のような呼吸障害を抱えるようになった。

「息子に起きていることについて、日々管理と監視を行い、その情報を医師に伝えて治療手順の適切な修正につなげることに苦労していました」とスワミー氏はTechCrunchに語っている。「このような大変な課題を経験する中で、慢性疾患を持つ子どもたちを管理しなければならない親たちのために、こうした体験をより良いものにするにはどうすればよいかを考え始めました」。

その結果生まれたのが、2歳から15歳までの子どもを対象としたケアコーディネーションプラットフォームのKiddoである。子どもは専用のリストバンド(FitBitのようなもの)を受け取る。親がダウンロードするアプリは、そのウェアラブルからデータを収集して、その情報を子どもの主治医に伝える。同プラットフォームには、喘息、心臓病、自閉症、糖尿病の子どもをモニタリングするための特別な設計が施されている。

今回のラウンドは、Clearlake Capital(クリアレイク・キャピタル)の支援を受けるVive Collective(ヴァイヴ・コレクティブ)が主導した。これでKiddoの調達総額は2500万ドル(約28億9000万円)になる。その他の投資家には、Wavemaker 360(ウェーブメーカー360)、Wavemaker Asia Pacific(ウェーブメーカー・アジアパシフィック)、Mojo Partners(モジョ・パートナーズ)の他、Techstars(テックスターズ)と関連ファンドが名を連ねている。

概して、Kiddoは「遠隔患者モニタリング」のカテゴリーに分類される。患者が自宅でプライマリケア施設と同等の基本的なケアを受けられるように設計されている。

このウェアラブル端末は心拍数、温度、SpO2(血中酸素飽和度)、動作、発汗などの信号を送信する。一方、アプリはそのデータを、地域の大気環境(喘息患者にとって重要な指標)、天気、湿度などの他の指標と統合する。時間の経過に伴い、Kiddoはこれらの特質に基づいてそれぞれの子どもに対するプロファイルを生成していく。こうした指標が基準から大きく逸脱している場合、親は通知とともに、家庭での状況をコントロールするのに役立つヒントのリストを受信する。

例えば、子どもが喘息発作の切迫の徴候を示している場合、親は呼吸数と心拍数が規則的な範囲外であることを示唆する警告を受け取る。その後、アプリは状況を管理する方法について一般的な提案を行う。「『1時間ほど安静にさせる、冷たい水を飲ませるかエアコンの効いた環境に置く、医師のアドバイスに基づいてアルブテロールを服用させる』といったことです」とスワミー氏は説明する。

症状が続く場合は、親がこのアプリを使って医師の予約を取ることができる。

遠隔患者モニタリング自体のアイデアは新しいものではないが、近年そのアイデアに関する研究が数多く発表されている。例えば、学術誌「Telemedicine and e-Health」に掲載された2020年のあるシステマティックレビューでは、レビューされた272件の論文のうち43%が2015年から2018年の間に発表されていることが示された。これらの研究の約77%で、遠隔患者モニタリングが患者ケアに正のインパクトを与えている。

Kiddoは自社サービスの臨床的検証に投資しているが、スワミー氏によるとデータはまだ一般公開されていない(同氏はフォローアップメールで「データは機密であり、顧客と共有するためだけにある」と説明した)。一方で、学術機関やパートナー、民間団体の研究によって「Kiddoプラットフォームの多くの側面が実証」されていることに同氏は言及している。そのプロセスには、Children’s Hospital of Orange(オレンジ郡小児病院)のThompson Autism Center(トンプソン自閉症センター)で開発中の新たな研究が含まれる予定であるという。

同プラットフォームは、治療アドヒアランスを50%以上向上させ、不要な救急外来を「2倍」減少させることが自社独自のデータで示されているとスワミー氏はいう。ただし、このデータも公開されていない。

Kiddoは現在のところFDAからの承認は得られていないが、Class I(低リスク機器の分類クラス)の認定を目指している。

プレスリリースによると、同社はこれまでに7つの医療システム、福利厚生プロバイダー、財団と提携しており、その中にはUHC Optum(UHCオプタム)、PC Health(PCヘルス)、および「数カ所の小児病院」が含まれている(その他の提携先は明らかにされていない)。

重要な点として、同社はあくまでもB2Bプロバイダーとしての位置づけにあるとスワミー氏は語っている。直接消費者に販売する計画はなく、医療機関や医療システムとの提携に注力していく。

Kiddoの最新の資金調達ラウンドは、同社にとってユーザーに関する重大な1年を経て行われたものとなる。これまでのところ、同社は7万人の子どもたちと協力関係を築いており、今後数年間でその数を20万人に拡大する計画である。このトラクションは投資家の関心を引く要因の1つであるが、Kiddoに有利に働くトレンドはこれだけではない、とスワミー氏は指摘する。

遠隔患者モニタリングに好都合となり得る規制の動きもある。従来、遠隔モニタリング技術のためのCPTコード(償還コード)の数は限られていた。2018年以降、一部のコードが再目的化されており、医療提供者が患者の遠隔モニタリングに課金しやすくなるようなコードも追加されている。

そのトレンドは続いている。2022年、Centers for Medicare and Medicaid Services(メディケア・メディケイド・サービスセンター)は、遠隔患者モニタリングに適用される償還コードの範囲を拡大した。これにより、支払者はこれらのサービスをさらに多くの種類の遠隔患者モニタリングに請求できるようになった。

遠隔患者モニタリングの規制的展望はまだ流動的であるが、これらの規制はKiddoのような企業を支援する方向に進んでいる。スワミー氏によると、こうしたCPTコードの恩恵を受けて、Kiddoの技術は償還可能なものになっているという。「私たちが取り組んでいる医療システムには、財務的な成果があります」と同氏は付け加えた。

今回のラウンドを機に、Kiddoのセールスおよびプロダクト開発チームの規模を拡大したいとスワミー氏は考えている。同氏はまた、Kiddoが治療できる慢性疾患の種類を増やすという大望も抱いている。現時点で同社は、小児腫瘍学と整形外科に目を向けており、今後2年間でその方向に一層前進することを目指している。

画像クレジット:Kiddo

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(文:Emma Betuel、翻訳:Dragonfly)

資金調達でひとり勝ちを続けるアフリカのフィンテック事情

2021年、アフリカではかつてないほど多くの投資案件が成立し、同大陸のテックスタートアップは50億ドル(約5800億円)近くの調達を達成した。これは前年の投資額の2倍、5年前の調達額の9倍の額であり、ここ数年でスタートアップシーンがいかに変貌したかを露わにしている。

なかでもフィンテックが圧倒的で、アフリカのスタートアップが2021年実現した全投資額の3分の2にあたる30億ドル(約3500億円)近くを占めていることが、市場洞察会社Briter Bridges(ブライター・ブリッジズ)の報告書で明らかになっている。この金額はアフリカのフィンテックが2020年に調達した13億5000万ドル(約1566億円)の2倍以上、2019年の3倍の額である。

その中でも特に利益を得たのが、シリーズCで4億ドル(約464億円)を調達したOpay(オーペイ)、シリーズCラウンドで1億7000万ドル(約197億円)を調達したFlutterwave(フラターウェイブ)、シリーズBで1億8000万ドル(約209億円)を調達したTymeBank(タイムバンク)だ。Jumo(ジュモ)とMNT Halan(MNTハラン)は1億2000万ドル(約139億円)のラウンドを調達し、デジタル決済ゲートウェイのMFS Africa(MFSアフリカ)は1億ドル(約116億円)を獲得している。その他にもZepz(旧WorldRemit)がシリーズEで2億9200万ドル(約338億5000万円)を調達し、Chipper Cash(チッパーキャッシュ)が2億5000万ドル(約289億8000万円)、Tala(タラ)が1億4500万ドル(約168億円)、Wave(ウェーブ)が2億ドル(約231億8000万円)の資金を集めている。

また、アフリカのフィンテックに対する資金調達がここ数年増加傾向にあることから、携帯電話の利用やインターネットの普及が深まるにつれ、これらのスタートアップに注入される資本は増加する一方であると考えられている。

GSM Association(GSMアソシエーション)によると、アフリカ大陸における携帯電話加入者数は2025年までに4%増加し、大陸の総人口の半数にあたる6億1500万人に達すると予測されている。また、融資、デジタル決済、銀行、保険サービスの導入が進むことで、さらなる成長が見込まれている。

フィンテックに特化した投資銀行、Financial Technology Partners(ファイナンシャル・テクノロジー・パートナーズ)がアフリカについて過去に行ったレビューによると、アフリカ大陸では人口が急速に増加しており、経済が急激に成長中の上、金融サービスのエコシステムが未開発のため、フィンテックにとって非常に魅力的な市場になっているという。

「決済分野ではFlutterwave、Chipper、MFS Africa、Cellulant、Jumoといったスケールアップ企業が、Visa、Mastercard、Stripeといった世界的な大手プロバイダーと肩を並べて活躍し始めていますが、今後数年は(実際はもう始まっているのですが)融資からKYC、中小企業管理ソフトウェア、分散型金融まで、他のフィンテック分野でも動きが強まっていくことでしょう。また、エコシステムの成熟と統合が進むにつれ、M&Aの動きも活発化していきます」と、Briter BridgesのDario Giuliani(ダリオ・ジュリアーニ)氏はTechCrunchに対して話している。

過去数年のアフリカにおけるステージ別案件(画像クレジット:Briter Bridges)

デジタル / モバイル決済に特化したスタートアップがここ数年、最も多額の融資を受けており、次いで銀行 / 融資スタートアップ、インシュアテックのスタートアップが続いている。

最新のデータによると、アフリカのデジタル決済分野はフィンテック分野内の他のサブセクターと比較して、過去10年間で資金調達額と総取引量において著しい成長を遂げていることがわかっている。フィンテックの成長の背景には、携帯電話所有率の上昇、モバイルマネー技術やインターネットの普及があり、これらは時に制約の多すぎる従来の銀行インフラの回避を可能にしたのである。

モバイルマネーやデジタル決済の革新により、USSDやSTKコマンド、アプリ、NFC技術を使って、オンラインでもオフラインでも決済ができるようになった。

Financial Technology Partnersは次のように話している。「アフリカには銀行口座を持たない膨大な人口が存在しますが、中間層の増加、モバイルの普及率向上、通信インフラの改善により、フィンテックイノベーションとモバイル金融サービスを実現するためのユニークな環境が整いつつあります」。

新興のフィンテックサービスによって金融包摂が推進され、これまで銀行口座を持てなかった人々が口座を持てるようになり、送受金や決済など企業や個人にとっての最大のペインポイントが解決した。例えばWari(ワリ)、SureRemit(シュアレミット)、Paga(パガ)といった送金分野のスタートアップによって、海外からアフリカへの送金が簡単かつ安価に受け取れるようになったのである。

画像クレジット:Getty Images

成長機会

McKinsey(マッキンゼー)の調査によると、アフリカはラテンアメリカに次いで急成長中の、収益性の極めて高い決済&銀行市場とされており、つまりフィンテック分野は、この成長機会に目をつけた投資家らを今後も惹きつけ続けていくに違いない。

すでにモバイルマネー導入の世界的リーダーとなっているアフリカ大陸。2020年に行われたモバイルマネー取引の大部分をアフリカが占め、その年モバイルマネーの口座数は43%増加している。通信技術の進歩がもたらしたアクセスのしやすさこそが、同大陸におけるモバイルマネーの成功の秘訣だろう。

例えば、東アフリカ最大の通信事業者Safaricom(サファリコム)のモバイルマネーサービスM-Pesaは、送受金や公共料金の支払いにインターネット接続を必要とせず、加入者の電話番号を一種の銀行口座の代理として使用できるウォレットである。このサービスは、2021年3月期の売上高が7億4500万ドル(約863億円)に達し、音声通話を抜いて同社最高の稼ぎ頭になっている。

M-Pesaは地域全体(特にケニア)で、オンライン化されているあらゆる新サービスを支える役割を担ってきた。例えばSafaricomは2012年、モバイルベースの貯蓄・融資商品であるM-Shwariを発売して融資アプリ採用の基礎を築いたが、その後、シリコンバレーが支援するTalaやBranchなど多くの融資アプリが市場に登場した。これらの融資アプリは顧客のモバイルマネーの取引履歴を利用して借り手への即時融資額を決定し、その金額を顧客のモバイルマネーのウォレットに入金するというもので、現在人気を集めている。

こういった融資や銀行業のスタートアップは、信用度のない人々や、銀行取引履歴のデータがないために正式な金融機関から切り捨てられていた人々への信用供与を可能にした。

さらにここ数年はインシュアテックも盛んになっており、手頃な価格でマイクロペイメントを可能にし、気候変動によるものなどの増大し続けているリスクを補償する革新的な商品が誕生している。サハラ以南のアフリカでは(南アフリカを除いて)他の地域に比べて普及率が低いものの、インシュアテック関連の革新的な商品が保険商品の普及を促している。

投資の拡大が顕著となった2021年だが、資金の大部分は少数のスタートアップのみが獲得している。公開・未公開案件の両データを含むBriterの分析によると、700社以上のスタートアップが20億ドル(約232億円)近くを調達したのに対し、推定総額30億ドル(約348億円)がそれ以外の20社に渡ったことが明らかになっている。

画像クレジット:Busakorn Pongparnit / Getty Images

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(文:Annie Njanja、翻訳:Dragonfly)

バンクシーの作品を燃やしたBurnt FinanceがDeFi志向のNFTオークションサービスを開始

Burnt Finance(バーント・ファイナンス)は、実物のBanksy(バンクシー)の作品を燃やしてNFT(非代替性トークン)を作成し、それを「通常の」オープンなアート市場価格の2倍に相当する40万ドル(約4600万円)で販売するというスタントをやってのけた暗号資産スタートアップだ。

NFTのオークションはもっと改善できるという考えに基づき、同社は2021年、そのSolana(ソラナ)ブロックチェーン上に構築された分散型オークションプロトコルのために、300万ドル(約3億5000万円)の資金を調達した。このラウンドは、Multicoin(マルチコイン)とAlameda Research(アラメダ・リサーチ)が主導し、マルチチェーンネットワーク「Injective Protocol(インジェクティブ・プロトコル)」の中核的貢献者であるInjective Labs(インジェクティブ・ラボ)がインキュベートした。

現在はより本格的になっている。

Burnt Financeは今回、ブロックチェーンゲームや伝統的なゲームなどの幅広いポートフォリオを開発・販売しているAnimoca Brands(アニモカ・ブランズ)の主導でシリーズAラウンドを実施し、800万ドル(約9億2000万円)を調達した。

このラウンドには他にも、Multicoin Capital(マルチコイン・キャピタル)、Alameda Research、DeFiance(デファイアンス)、Valor Capital Group(ヴァロー・キャピタル・グループ)、Figment(フィグメント)、Spartan Capital(スパルタン・キャピタル)、Tribe Capital(トライブ・キャピタル)、Play Ventures(プレイ・ベンチャーズ)、HashKey(ハッシュキー)、Mechanism Capital(メカニズム・キャピタル)、DeFi Alliance(デファイ・アライアンス)、Terra(テラ)などが参加した。

これらの投資家の中でも、2017年からブロックチェーン分野に投資しているMulticoinは、おそらく最もよく知られている企業の1つだろう。同社はSolanaやNEAR(ニア)、そしてSignal(シグナル)のP2P決済に使われているMobileCoin(モバイルコイン)など、いくつかの重要なプロジェクトに投資してきた。

Burnt Financeは今回、独自のNFTマーケットプレイスを英語とオランダ語で立ち上げ、Buy Now(すぐ買う)オークションを提供し、NFTレンディング、ステーキングインセンティブをともなう流動性マイニング、細分化、GameFi(ゲームファイ)などのDeFi(分散型金融)機能を統合することで、NFTのハブとなることを目指している。

これにより、NFTへのパーミッションレス(自由参加型)なアクセスが可能となり、低い手数料と高速性を実現できると同社は主張しており、すでに「16万人のユーザー」が順番待ちリストに名前を連ねているという。

Burnt Financeによると、同社の「Spark(スパーク)」テストネットでは、7日間で1億ドル以上の取引量を処理したという。

同社では、Terraやその他のEVM互換のレイヤー1プロトコルを含む追加のブロックチェーンに拡大することも計画している。

Animoca Brandsの共同設立者であるYat Siu(ヤット・シウ)氏は、次のようにコメントしている。「パーミッションレスのエコシステムで資産を鋳造・取引することは、オープンなメタバースの経済的基盤にとって非常に重要です」。

DappRadar(ダップレーダー)によると、NFTの世界市場は2021年に約220億ドル(約2兆5000億円)に達したという。伝統的なオークションハウスであるChristie’s(クリスティーズ)やSotheby’s(サザビーズ)もNFTの分野に進出している。

Burnt Financeは開かれたドアを押している。NFTの売上は、2021年12月だけで4億ドル(約460億円)に達した

競合他社には、もちろんレベルはさまざまだが、OpenSea(オープンシー)、SuperRare(スーパーレア)、Rarible(ラリブル)、NiftyGateway(ニフティゲートウェイ)などがある。しかしながら、Burntは明らかにまだ非常に初期の段階ではあるものの、Solanaを使い、DeFiの領域を狙うことで、より大きなプレイヤーたちを追い越そうとしている。

画像クレジット:Burnt Banksy

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(文:Mike Butcher、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

地球低軌道で撮影されるハイパースペクトル画像を提供するWyvernが約5.2億円調達、2022年に同社初の打ち上げを予定

衛星画像技術の最先端を行くカナダのWyvernが、450万ドル(約5億2000万円)を調達した。そのうち225万ドル(約2億6000万円)はシードラウンドで、残る225万ドルはプレシードと政府投資の合計となる。同社はハイパースペクトルイメージング(可視光線を含むさまざまな波長において波長の違いを識別する能力で対象物の反射光を撮影し、可視化する技術)に特化して取り組んでいる。同社はまた、Y Combinatorの2022冬季に参加している。

TechCrunchは過去にも、インキュベーターCreative Destruction Lab(CDL)の2019年に行われた学会のようなデモデーに参加したときなど、同社を取り上げてきた。その後、同社は資金調達以外の面でも急速な成長を遂げ、社員は18名となり、航空宇宙業界のベテランで元Airbus(エアバス)のCTOだったChristine Tovee(クリスティン・トビー)氏を招いている。さらにWyvernは、2022年に同社初となる衛星の打ち上げを行う。

共同創業者でCEOのChristopher Robson(クリストファー・ロブソン)氏は次のように語る。「打ち上げは、私たちが楽しみにしている次の大きな事業です。これは私たちの最初の画像製品になります。これは超高解像度のハイパースペクトルを得るための最初のステップとなります。超高解像度のものはまだ数年先ですが、登場すれば、かなりすばらしいものになり、ゲームを変えるものになるでしょう」。

宇宙から捉えたハイパースペクトル画像へのアクセスを商用の顧客に提供できるようになれば、Wyvernの最初のターゲットである農業をはじめ、既存の産業の効率を大幅に上げるだけでなく、まったく新しい事業や産業にも実現の機会を提供する。ハイパースペクトル画像は、例えば捉えたシーンの化学的組成など、これまで隠れていた情報を詳細に提供することができる。

シードラウンドをリードしたMaC Venture Capitalは、ハイパースペクトルの広大なポテンシャルを認識しており、ロブソン氏によると、同VCとこの度新たにWyvernの取締役会に加わったAdrian Fenty(エイドリアン・フェンティ)氏は、若い同社に完璧にマッチしているという。

「最初の会議のときから、両社は波長が合っていました。またそれ以上に重要なことは、MaCにはすでに宇宙産業への投資経験があったことです。同社は、宇宙市場に対して極めて積極的です。彼らは非常に戦略レベルで考えるため、投資に臨む視点の中に顧客と投資家とパートナーからの見方が共存しています。またそれは、宇宙に限定されず、その他の私たちの顧客市場対しても同様です」とフェンティ氏はいう。

若い起業家とエンジニアと科学者たちのチームが創業したWyvernは、その戦略的な利点に加えて最近、トビー氏を招いた。ロブソン氏は、同社のその重要なリーダーシップチームチームメンバーの招聘について、次のように語った。

「クリスティン(・トビー)はかなり前から私たちの技術顧問団の1人です。また両者は、CDLのころからの強固な関係があります。それに、一緒に仕事をすることが楽しい。クリスティンと我々チームとの間には、お互いに対する深い尊敬があります。私たちとしては航空宇宙のベテランを役員が必要で、宇宙産業に対する私たちの理解を深めてもらいたかった。だから彼女が来たことは、戦略的な面でとてもすばらしいことです」。

Tovee氏はまた、ジェンダーのダイバーシティがおそろしく遅れている業界で、同社の2人目の女性上級管理職として迎えられる。2021年のTechCrunch主催セッションTC Sessions:Spaceに出てくれた、Wyvernの共同創業者でCOOのCallie Lissinna氏は、ダイバーシティは最初から同社のプライオリティであり、そのことは投資家や入社志望者たちとの会話でも良い効果を生んでいるという。

「投資家たちはほとんどみんな、宇宙産業で創業時から50 / 50のダイバーシティ、役員チームでは66%の女性上位を実現していることに言及しとてもユニークだといいます。そしてこのことは雇用や募集にも影響を与えています。学生たちは、私たちの創業チームや社内のダイバーシティがとても気に入った、といってくれます。だからこれは、人材獲得と投資調達の両方の面で、私たちの魅力になっているようです」とトビー氏はいう。

画像クレジット:Wyvern

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(文:Darrell Etherington、翻訳:Hiroshi Iwatani)

Animoca、Galaxy Interactive、Polygonが印ゲーム企業nCoreのWeb3推進を支援

nCore GamesはWeb3サービスの開始に向け、新たな資金調達ラウンドで1000万ドル(約11億5000万円)を調達したと同社のトップがインド時間1月17日に発表した。

暗号資産分野で著名な投資家であるAnimoca BrandsとGalaxy Interactiveの2社が、今回の資金調達を主導した。また、イーサリアムL2スケーリングソリューションで有名なPolygon(ポリゴン)とHyperedge Capitalもこのラウンドに参加した。

他にも、Google(グーグル)の元上級副社長であるAmitabh Singhal(アミターブ・シンガル)氏 、Polygonの共同創業者であるSandeep Nailwal(サンディープ・ネイルワル)氏、Dell(デル)のプログラム管理ディレクターKanwaljit Bombra(カンワルジット・ボンブラ)氏、Sohil Chand(ソヒル・チャンド)氏、Ashish Chand(アシシュ・チャンド)氏、映画監督のRam Madhvani(ラム・マドヴァニ)氏、Rakesh Kaul(ラケッシュ・コール)氏、Mannan Adenwala(マンナン・アデンワラ)氏、Sanjay Narang(サンジェイ・ナラン)氏、Taj Haslani(タジ・ハスラニ)氏、Playfishの共同創業者Kristian Segerstrale(クリスティアン・セガーストラーレ)氏、Sanjay Gondal(サンジェイ・ゴンダル)氏、Vedant Baali(ヴェーダン・バーリ)氏、Kartik Prabhakara(カーティク・プラバカラ)氏、Peter Leung(ピーター・レオン)氏、Yashraj Akashi(ヤシュラージ・アカシ)氏、Akshay Chaturvedi(アクシャイ・チャトルベディ)氏など、多くのエンジェル投資家がラウンドに参加した。

nCore Gamesは、Studio nCore、Dot9 Games、IceSpiceなど、複数のゲームスタジオを擁している。同社のポートフォリオには、数千万のダウンロードを記録したマルチプレイアクションゲーム「Fau-G」や「Pro Cricket Mobile」などがある。

nCore Gamesの共同創業者であるVishal Gondal(ヴィシャール・ゴンダル)氏は、TechCrunchのインタビューで同社は2021年中にさらに多くのゲームを立ち上げ、投資することを計画していると語った。

しかし今回の資金調達では、メタバースへの展開がより大きな焦点になるとのこと。nCore Gamesは独自のNFTやトークンの発行を検討しており、それらは今後数カ月以内に立ち上げる可能性があるという。

インドは、ダウンロード数で世界最大のモバイルゲーム市場の1つとして浮上している。ニューデリーで禁止される前の「PUBG Mobile」は、インドで5千万人以上の月間アクティブユーザー(MAU)を獲得していた。だがゲーム会社は、アプリ内課金の普及率の低さや広告収入の少なさから、このユーザー層を効率的に収益化するのに苦労している。

Galaxy InteractiveのゼネラルパートナーであるSam Englebardt(サム・エングルバルド)氏は「インドにおけるゲーミングの成長はすでに否定できないものであり、市場はさらに大きな飛躍を遂げようとしています」と述べている。

ゲーム業界のベテランで、前身のベンチャー企業をディズニーに売却した経験を持つゴンダル氏は、特に企業が収益を得るために広告に頼ることが多かった発展途上国の市場では、ゲーム経済に変化が起きているという。同氏は、アプリ内課金の収益が高くないインドと似た市場であるフィリピンでのAxie Infinityの人気を例に挙げた。

ゴンダル氏は、インド、インドネシア、フィリピンの類似点を挙げ、多くの市場でいくつかのカテゴリーに進出しているWeb3の製品が、インドのゲーミングでも人気を博すだろうと楽観視している。同氏は、Web3はすべてのステークホルダーに適切なインセンティブ構造を提供できる位置にあると考えている。

「現在、ゲームをプレイしているときには、コミュニティの一員になることが最大のメリットでした。これからはゲームをプレイしている間に、ゲームの価値を自分のものとして所有するチャンスがあるのです」。

IceSpiceの最高経営責任者であるTejraj Parab(テジラジ・パラブ)氏によると、nCore Gamesは、同社のすべてのタイトルとパートナー企業のゲームがコミュニティに提供するユニバーサルトークンを作ることを検討しているという。また、同社の技術を他のゲームデベロッパーが活用できるようにしたいと考えているとのこと。

Studio nCoreのDayanidhi MG(ダヤニディ・MG)CEOはこう述べている。 「当社は、グローバルリーダーや大きな成功を収めているファンド、企業、業界ベテランの方々と一緒に、新しいトレンドやテクノロジーを取り入れ、飛躍的な成長を遂げてnCoreを次のレベルに引き上げることに興奮しています」。

Web3は、インドでも普及し始めている。Tiger GlobalとSequoia Capital Indiaが支援するインドのスタートアップFaze(フェイズ)は、2021年、クリケットの世界的な統括団体であるICCと提携し、クリケットファン向けのNFTを立ち上げた。この件に詳しい2人の関係筋によると、同スタートアップは現在、Insight Partnersから新たな資金調達を行うための交渉を行っているという。ボリウッドの有名人も、企業と提携して独自のNFTを立ち上げている。

Animoca Brandsで共同創業者及び代表取締役会長を務めるYat Siu(ヤット・シウ)氏は、声明でこう述べている。「nCORE Gamesは、経験豊富なゲーム業界の専門家によって設立された会社であり、大規模な成長が見込まれるゲーム市場を有するインドにおいて、最も有望な投資先の1つです。nCORE Gamesは、ゲームにブロックチェーンとNFTを活用して、プレイヤーにデジタル財産権を提供するための適切なチームを持っており、グローバルなオープンメタバースに向けて、多くの製品を成功させることを期待しています」。

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(文:Manish Singh、翻訳:Aya Nakazato)

倉庫のストレージ密度を高めるロボットシステムExotecが約383億円を調達

フランスのスタートアップExotec(エグゾテック)は、Goldman Sachs(ゴールドマン・サックス)のGrowth Equity事業がリードするシリーズDラウンドで3億3500万ドル(約383億円)を調達した。これによりExotecの評価額は20億ドル(約2292億円)に達した。

Exotecは、通常の倉庫を部分的に自動化された物流プラットフォームに変えるための完全なエンド・ツー・エンド・ソリューションを販売している。人による作業の一部を代替するハードウェアとソフトウェアのソリューションだ。

83NorthとDell Technologies Capitalも資金調達ラウンドに参加した。Exotecのこれまでの投資家には、Bpifrance、Iris Capital、360 Capital Partners、Breegaが含まれる。BreegaやBpifranceのLarge Venture fund、Iris Capitalなどは2回目の投資となった。

画像クレジット:Exotec

Exotecシステムの主要コンポーネントは、Skypodsと呼ばれるものだ。この目立たないロボットは自律的に床を動き回る。目指している棚に近づくと、棚を登って容器を取り、それを持って降りてくることができる。地上数メートルの場所に商品を保管できるため、倉庫のストレージ密度を高めるのに特に有効だ。

その後、Skypodは人間のオペレーターが容器から正しい製品をピックアップできるよう、容器をピッキングステーションまで運ぶ。そしてロボットは棚に行き、容器を元のところに戻すことができる。

このシナリオでは、人間はもう倉庫内を歩き回る必要はない。ピッキング、パッキング、そして製品の入出庫の確認に集中することができる。新製品、新しい棚、新しいSkypodを追加する場合、Exotecは可能な限り柔軟に対応するよう心がけている。

新しいラックを追加したい場合、もう一度ゼロから始めることなくインフラを拡張することができる。同様に、ExotecではシステムにSkypodを追加することが可能だ。そして、商品の配送を受けるとExotecはここでもSkypodsを頼りにフルフィルメントセンターに商品を保管する。

SkypodsからSkypickersへ

標準化された容器システムにより、Exotecは1つの容器に複数の製品を収納することができる。その容器の中には18個の商品が入っているかもしれないが、顧客はおそらく全部ではなくその中の1個、2個、3個を求めている。Exotecは注文をまとめるために大きな容器の中の小さな容器を単純に空にすることができないのはそのためだ。

Exotecは、注文プロセスのもう1つのステップから人間を排除するために、新しいロボットを作った。Exotecの顧客はSkypickersを使って、在庫の容器から商品を自動的にピックアップし、出荷準備の整った容器に入れることができる。

動作は以下の動画で確認できる。

「現代における最も重大なサプライチェーンの崩壊を受け、イノベーションの余地しか残されていません」と、共同創業者でCEOのRomain Moulin(ロマン・ムーラン)氏は声明で述べた。「ロジスティクス分野全体に不確実性が満ちている中、最も一般的な課題の1つは継続的な労働力不足です。Exotecは新しい道を切り開きます。それは、人とロボットのエレガントなコラボレーションによって、耐久性のある、はるかに持続可能な方法で倉庫の生産性を実現することです」。

Exotecは、自社製品を人間に完全に取って代わることのできないサービスとして常に位置づけている。同社の倉庫は、人間とロボットの組み合わせで運営されている。しかし、Skypickersのおかげで同社は厳しい労働市場においてロジスティクスで優位性を持っている。

今回の資金調達で、同社は2025年までにエンジニア500人を雇用し、引き続き北米事業を推進する予定だ。最近、GapやGeodisなど北米地域の大口顧客8社と契約した。DecathlonもモントリオールのフルフィルメントセンターでExotecを使用している。

画像クレジット:Exotec

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(文:Romain Dillet、翻訳:Nariko Mizoguchi

科学的根拠に基づくADHDサポートアプリ「Inflow」がシードで約2.6億円を調達

注意欠陥・多動性障害(ADHD)の症状には、不安、慢性的な退屈、衝動性、集中力が続かない、怒りのコントロール、さらにはうつ病などがある。しかし、ADHDの患者は、評価を受けるための長い待機期間や、非常に高価な治療に直面することが多い。

2020年に設立されたあるスタートアップは、臨床医やコーチのチームの知識をアプリに注ぎ込み、ADHDの症状に対処するためのガイド付きプログラムを提供することで、この問題を解決しようとしている。そのために、Inflowは、ユーザーが認知行動療法(CBT)の対処ストラテジーを日常生活に導入できるようにすると主張している。

2020年、InflowはRhythm VCとエンジェル投資家から68万ドル(約7800万円)を調達した。同社は今回、ロンドンのHoxton Venturesが主導するラウンドでシード資金として230万ドル(約2億6400万円)を調達した。

Y Combinatorr(YC、Yコンビネータ)の21バッチ卒業生であるInflowは、米国を拠点とするRoute 66 Venturesの参加も得ている。

また、複数の著名なエンジェル投資家が同社を支援しており、その中には、依存症デジタルクリニック「Quit Genius」の共同創業者Yusuf Sherwani(ユスフ・シェルワニ)氏、Maroof Ahmed(マルーフ・アーメド)氏、Sarim Siddiqui(サリム・シディキ)氏や、法律サービスのチャットボット「DoNotPay」のCEOであるJoshua Browder(ジョシュア・ブラウダー)氏らが含まれている。

ただし、このアプリはまだ独立した臨床試験を経ていないことを指摘しておかなければならないが、同社によれば、それは年内に予定されているという。

同社の広報担当者は次のように述べている。「臨床試験の準備として、米国リッチモンド大学のLaura Knouse(ローラ・ノウス)博士と共同で、ユーザビリティとフィージビリティの研究を行いました。この研究では、事前と事後の症状と機能障害の評価を行い、Journal of Attention Disordersに投稿しました」。

Seb Isaacs(セブ・アイザックス)氏、元Babylon HealthのプロダクトマネージャーであるLevi Epstein(リーバイ・エプスタイン)氏、ADHDの専門家であるGeorge Sachs(ジョージ・サックス)博士によって2020年に設立されたInflowは、今回の資金調達によりチームを拡大し、追加ツールやサービスを展開していく。

InFlowのアプリ

Inflowは「SimpleMind Pro」「Brain Focus」「Focus@Will」などのアプリが存在するADHDアプリ市場の中で競合することになるが、実際のところ、ほとんどのアプリは、ADHDの当事者が使用できる可能性のある生産性向上アプリとして宣伝されているに過ぎない。

Inflowの仕組みは、ユーザーが毎日の短いエクササイズや課題をこなすことで健康的な習慣を身につけ、スキルを学び、ADHDに特化したマインドフルネス技術を実践し、自分の神経学的な差異を知り、ネガティブな思考をリフレーミングするというものだという。

Inflowは、毎月1万5千回以上ダウンロードされているとしている。

共同創業者のSeb Isaacs(セブ・アイザックス)氏はこう述べている。「私たちは、ADHDのケアプロセスを簡素化し、ケアが行き届いていない何百万人ものADHD患者にリーチできると確信していました。Inflowは、すでに多くの課題を抱えているメンタルヘルスシステムでは実現できない、即時かつ手頃な価格のオンデマンドサポートを提供することができます。ウェイティングリストや紹介の必要もなく、複雑な受け入れプロセスもありません」。

Hoxton VenturesのパートナーであるHussein Kanji(フセイン・カンジ)氏は次のように述べている。「ADHDを持つすべての人に成功して欲しいというミッションをInflowが果たすのを見守ることができて光栄です」。

画像クレジット:InFlow founders

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(文:Mike Butcher、翻訳:Aya Nakazato)

新型コロナで加速、小売商の決済インフラ管理を支援するオーケストレーションプラットフォーム「Gr4vy」

小売企業では決済処理やルーティングを自動化するために独自の「オーケストレーション」プラットフォームを構築することが多い。だが、それらの保守は複雑になりがちであるため、Spreedly(スプリードリィ)のような企業が求められるわけだ。2021年、米国で設立された新たなスタートアップ企業であるGr4vy(グレイヴィ)は、より迅速な方法でこれを実現すると主張している。

Gr4vyは、そのために2021年1110万ドル(約12億7000万円)のシリーズA資金調達を実施したが、米国時間1月13日、March Capital(マーチ・キャピタル)が主導するシリーズA拡張ラウンドで、さらに1500万ドル(約17億2000万円)を調達したことを発表。同社のシリーズAステージにおける資金調達総額は(過去のシード資金調達も含め)2720万ドル(約31億2000万円)に達した。これにより、同社の評価額は2倍の1億1500万ドル(約131億8000万円)になったとされている。

サンマテオに拠点を置く同社は、Nyca Partners(ナイカ・パートナーズ)、Activant Capital(アクティヴァント・キャピタル)、Plug and Play Ventures(プラグ・アンド・プレイ・ベンチャーズ)からも出資を受けている。

オーケストレーションプラットフォームとしては珍しく、Gr4vyのクラウドネイティブなペイメントオーケストレーションプラットフォーム(POP)は、クラウド上で小売商のインフラストラクチャを供給するインスタンスも提供している。Gr4vyは現在、GoCardless(ゴーカードレス)、Banked(バンクド)、Akoova(アクーヴァ)などの企業と提携している。

Gr4vyの創業者兼CEOであるJohn Lunn(ジョン・ラン)氏は、筆者に次のように語った。「新型コロナウイルス感染拡大は困難な状況をもたらしましたが、すべてがオンラインになったことで、大きなチャンスにもなりました。多くの企業や小売業者のシステムは、こんな状況に向けて準備が整っていなかったり、目的に適合していませんでした。それまでオンライン取引は全体の5%に過ぎず、それ以外はすべて店舗で処理していたのが、突然100%オンラインになったわけですから。新型コロナウイルスの影響で部分的にデジタル化が加速したことは、大きな利点になったと私は思います」。

コンサルティング会社のMcKinsey(マッキンゼー)では、2025年までに世界の決済収入は2兆5000億ドル(286兆5000億円)に達し、2024年までに電子商取引による小売売上は、全世界の小売売上の21.8%を占めるようになると予測している。

March CapitalのパートナーであるSolomon Hailu(ソロモン・ハイル)氏は次のように述べている。「現代のデジタル決済の方法は、かつてないほど多様化しており、その結果、小売商は圧倒されるように感じています。【略】このeコマース戦略が重要な時期に、クラウドネイティブで使いやすいオーケストレーションプラットフォームを提供することで、小売商が決済インフラを簡素化し、管理できるようにするジョンとGr4vyのチームとパートナーシップを組めることに、Marchは興奮しています」。

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(文:Mike Butcher、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

【コラム】女性ファウンダーにとって資金調達は悲劇的に困難である

「資金調達は女性ファウンダーにとって悲劇的に困難であり、黒人女性ファウンダーにとってはいっそう困難だ」。

これは大胆かつ、批判的でさえある発言だ。(私のような)スタートアップを率いる女性にとって2022年がどうなるかを思案する議論のなかで私が発した。

デベロッパーツール分野でごく稀な黒人女性CEOの1人として、私はテック業界で起きている大きくて集団的な社会問題についてコメントを求められることがよくある。荷が重いことではあるが、こうした問題を提起することの意義を認識し、できるかぎり発言している。しかし、断固とした答えを言いたい気持ちの一方で、私は多くの疑問を抱えている。

技術革新 < 社会的発展

テクノロジーの世界では、次のデジタル製品に関わり、業界レベルの製品を形作ることでって先行者利益を得ることを誰もが切望している。これは、資金調達を目指しているときには特に重要だ。そして、私たちはデベロッパーツール分野で目覚ましい転換をいくつか目撃してきたが、VC支援による資金調達の状況を踏まえると、私は時として、テクノロジーの成長と我々が真に必要としている社会的発展とをまぜこぜにするリスクに晒されていることが心配になる。

偉大な女性デベロッパーファウンダーは何人もいる。Jeli(ジェリ)のNora Jones(ノラ・ジョーンズ)氏、Thistle Technologies(シスル・テクノロジーズ)のWindow Snyder(ウィンドウ・スナイダー)氏、Launch Darkly(ランチ・ダークリー)のEdith Harbaugh(イディス・ハーボー)氏などの名前が挙がる。すばらしい女性エンジェルやVCもいる。この人たちは私が業界のリーダーと目している女性たちであり、資金を求め、あるいは与えることの障壁を乗り越えながら、自分たちの信念を貫いてきた人たちだ。

開発ツールの分野で名を成そうとする女性たちの努力にも関わらず、現実はといえば開発ツールの世界は圧倒的に白人男性が支配している。その性別と人種の基準に当てはまらない我々が注意を引くために必要なエネルギーと時間は、往々にして持続可能ではない。

女性が成功するために戦わねばならない今の状況を認識し、公平な場を作る必要があり、そのためにはいくつか厳しい質問を投げかける必要がある。

真剣に受け止められるための戦い

私たちは、自分たちと同じような外見の人たちから資金調達できるようになりたい、違いますか?しかしながら女性投資家の多くは、彼女たちが支援したい女性ファウンダーと同じくらい、真剣に受け止めてもらうために戦っている。もし私たちがみな同じ社会的制約に直面し、自分たちの正当性を証明するために戦っているなら、おそらくリスクに対して同じ嫌悪感を持っているだろう。

このことは、女性投資家が、特に女性ファウンダーへの投資において、小さなリスクを選び、その結果同等の男性投資家よりも扱えるファンドが少なくなる、という悪循環を呼ぶ。

リミテッドパートナーは女性VCをもっと支援すべきであり、ファンドは男性に与えるのと同じ柔軟性と自由度を女性にも与えるべきだ。女性VCたちがパートナーへと昇進し、意味のある小切手を手早く書けるようになるべきだ。

私自身、社会的な力を得た女性エンジェルやVCたちが力を合わせて女性ファウンダーを支援した目覚ましい結果を目の当たりにしてきた。彼女たちが作りだしたコミュニティや姉妹愛的な感覚には、業界を変える潜在力がある。これこそ、我々がしっかりと掴み拡大していく必要があるものだ。

根深い心理的障壁を乗り越えるための戦い

今日、女性はファウンダーとしてもVCとしても、資金調達ラウンドを進めるプロセスで積極性が低いという根強い思い込みがある。女性ファウンダーの私は、同等の男性ファウンダーの方が多額の資金を早く確定させる能力があると言われてきた。女性の方がリスクを嫌い、プロセスを進めるのが遅く、要求が少ない、という意味だ。

では、何が女性たちをためらわせているのか?答えはおそらく最も明白なものに違いない。私たちは実際、資金調達プロセスの中で却下されるリスクがより大きい。さらに私たちは、概してVCコミュニティとのつながりが少なく、そこにある「VCのルール」(何をして、何を言い、どう振る舞うか)は複雑で直感に反するものが多い。良いコードを書くための明確なガイドラインのようなわけにはいかない。

数字との戦い

たとえば出資者候補が1000人いて、自分たちようなテクノロジーを提供している会社に焦点を当てているのはそのうち10%だけだったとする。さらに、自分たちのいるステージに投資するのはそのうち2%だけで、そのうち自分たちと同じ哲学をもっているのは5%にすぎない。そして、実際に話ができるはそのうちの何パーセントかにすぎない。さて、そういう議論に踏み入ろうとして、最終的には人が人に売り込むのだということを踏まえると、物足りないことの多い交渉に照準を合わせなくてはならない。

あなたは次の10年、自分のビジネスをこの投資家に託すことになる。つまり、あなたはよい数字を残そうとする一方で、同時にVCの履歴や性格や考えも理解しようとしている。以前はどのようにお金を出していたのか?相手の過去のビジネスに共感しながら、自分たちのビジネスが投資に値することを説得できるのか……30分以内に?

では、女性はどうやって資金を勝ち取れるのか?

シンプルな答えはこうだ。自分たちだけではできない。プロフェッショナルな努力がみなそうであるように、資金探しは社会のネットワークの力を利用することが理想だ。女性は生まれながらにしてベンチャーキャピタルの世界で成功するために必要なものをすべて身につけている、といえるならこんなによいことはないが、女性にはは基本的ネットワークや性別、人種の広がり以上の仲間と支援が必要だと私は信じる。

利害関係者全員が女性のために戦うゲームに参加して、有色人種の女性たちが遭遇する困難に焦点を当てる必要がある。働く女性ファウンダーと女性投資家たちの潜在的危険を生き残りのマインドセットで認識し、彼女たちが資金獲得の議論に参加し、強い力で会社を売り込むために必要なコーチングとガイダンスを提供するべきだ。

簡単にいえば、資金調達の両側にいる女性たちの能力と可能性を無条件で信じる必要がある。

そして、世界中のファウンダーと投資家に向けた私の最後の質問はこうだ。

私たちの戦いに加わる気持ちはありますか?。

編集部注:本稿の執筆者Shanea Leven(シャネー・レブン)氏は、デベロッパーを支援し、開発チームによるコードベースの理解を高めるためのデベロッパープラットフォームCodeSee(コードシー)の共同ファウンダー兼CEO。

画像クレジット:wakr10 / Getty Images

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(文:Shanea Leven、翻訳:Nob Takahashi / facebook

中国のAIチップデザイン企業Moffett AIがシリーズAラウンドで「数十億円」を調達

中国では半導体技術の独立性を高めることが求められており、それにともない投資家たちはさまざまな種類のチップスタートアップを追い求めている。深圳のファブレスチップデザイン企業であるMoffett AIは、新たにシリーズAの出資を受けた。同社は正確な金額を公表せず「数千万ドル(数十億円)」とだけ述べている。

このラウンドは、CoStone CapitalGreater Bay Area Homeland Development Fundが主導した。後者のファンドは、中国が香港、マカオ、深圳、および広東省南部のいくつかの都市を統合する壮大なプロジェクトであるGBA(大湾区)経済圏のスタートアップを支援するために設立された金融ビークルだ。

シリーズAラウンドに参加した他の投資家には、Co-PowerGrand China Capital、深圳市政府が「次のHuawei(ファーウェイ)、Tencent(テンセント)、DJIを探し出す」ために設立した戦略的ファンドであるShenzhen Angel Fund of Funds(FOF)が含まれる。2020年3月に実施されたMoffettの前回のラウンドは、1億元(約1600万ドル、約18億円)でクローズされた。

自律走行車からビデオストリーミングのレコメンデーションまで、人工知能は私たちのデジタルライフに欠かせないものとなっている。AI機能の需要が急増しているため、コンピューティングパフォーマンスに負担がかかり、MoffettやFoxconnが出資するKneron(クネロン)のようなAIアクセラレーションを提供する企業が切望されるようになっている。

Moffettは、ニューラルネットワークモデルから冗長情報を取り除き、最終的に処理の高速化につなげるプロセスである「スパース化」と呼ばれる技術を用いて、同社のAIチップを差別化することを約束している。同スタートアップは新たな資金を、同社のスパース技術を利用するパートナーやクライアントの「エコシステム」の拡大と、TSMCが製造する最初のチップ「Antoum」の量産に充てる予定だ。

同社は、このチップのスパース率は32倍で、その処理能力は「国際的なフラグシップ製品」の5~10倍になると主張している。

Moffettは深圳に本社を置き、北京、上海、そして2018年に設立されたシリコンバレーのオフィスにも研究開発チームを置いている。このスタートアップは、カーネギーメロン大学のAI研究者や、Intel(インテル)、Qualcomm(クアルコム)、Marvel(マーベル)、Oracle(オラクル)などに所属していた半導体のベテランたちによって運営されている。

関連記事:AIチップメーカーのKneronが自動運転の推進に向けて約28.4億円調達

画像クレジット:Moffett AI

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(文:Rita Liao、翻訳:Aya Nakazato)

ペプチド医薬品開発を手がける宮崎大学発「ひむかAMファーマ」が総額6億円超のシリーズB調達、創薬開発を進展

ペプチド医薬品開発を手がける宮崎大学発「ひむかAMファーマ」が総額6億円超のシリーズB調達、創薬開発を進展

難病指定の潰瘍性大腸炎などに向けたペプチド(アミノ酸の結合体)医薬品を開発するひむかAMファーマは1月14日、シリーズBラウンドにおいて、第三者割当増資による追加資金調達をクローズしたことを発表した。シリーズBの調達総額は6億円を超えており、シリーズAラウンドからの累計調達額は12億円を突破した。シリーズBラウンド追加資金調達に参加した主な投資家は、Fiducia GrowthTech投資事業、ナントCVC2号投資事業(南都キャピタルパートナーズ、ベンチャーラボインベストメント)など。

調達した資金を用いて、開発品「HM201」のオーストラリアでのPhase1試験などの創薬開発を実施する。HM201の主成分は、ひむかAMの共同創業者である北村和雄氏(宮崎大学特別教授)が発見したペプチド「アドレノメデュリン」(AM)をベースに新規開発したもの

ひむかAMは、2017年2月に設立された宮﨑大学発のスタートアップ企業。多彩な生理活性を有するペプチドホルモン(アドレノメデュリン)をベースとした創薬開発を行っている。HM201は、炎症性腸疾患に対する新たな治療薬として開発が進めており、2021年12月からオーストラリアにおいて、現地子会社であるHimuka AM Australia Pty Ltd.においてPhase1試験を開始している。

サイバーセキュリティの最も重要な原因となっているヒューマンエラーに対処する独SoSafe

私たちがこの数年間で学んだように「ヒューマンエラー」を原因とするサイバーセキュリティの侵害は、企業にとって最も対策が難しいものである。調査によると、サイバー攻撃の約85%は人的要因に由来しているという。そのため、2021年790万ドル(約9億円)の資金を調達した英国のCybsafe(サイブセイフ)など、このような落ち度を解消するために設立されたスタートアップ企業が急増している。人間の行動への対応は、明らかにサイバー分野で最もホットな新しい領域の1つだ。

最近この分野で勢力を拡大しているのが、ケルンに本拠を置くSoSafe(ソーセイフ)だ。サイバーセキュリティの意識向上とテストを行うこのプラットフォームは今回、成長投資ファンドのHighland Europe(ハイランド・ヨーロッパ)が主導するシリーズBラウンドで、7300万ドル(約83億5000万円)の資金を調達した。

このラウンドには、既存投資家のActon Capital(アクトン・キャピタル)とGlobal Founders Capital(グローバル・ファウンダーズ・キャピタル)に加え、SAP Hybris(SAPハイブリス)の創業者でCelonis(セロニス)のアドバイザリーボードメンバーであるCarsten Thoma(カーステン・トーマ)氏、La Famiglia(ラ・ファミグリア)とAdjust(アジャスト)の創業者であるChristian Henschel(クリスチャン・ヘンシェル)氏が参加した。

SoSafeが競合するのは、2021年に上場したKnowbe4(ノウビフォー)や、これまでに5800万ドル(約66億円)を調達しているCofense(コフェンス)などのプラットフォームだ。

SoSafeによれば、同社はサイバーセキュリティにユーザー中心のアプローチを採り、行動科学から得られる洞察を利用してユーザーを正しく、より安全な方向に誘導し、ゲーム化された方法を用いてエンドユーザーにサイバー攻撃では何に注意すべきかを教えるという。

現在、SoSafeのプラットフォームはAldi(アウディ)、Ceconomy AG(セコノミ)、Taylor Wessing(テイラー・ウェッシン)、Vattenfall(ヴァッテンフォール)、Valtech(ヴァルテック)など、1500社以上の顧客に利用されている。

SoSafeの共同設立者でマネージングディレクターを務めるNiklas Hellemann(ニクラス・ヘレマン)博士は次のように述べている。「セキュリティ意識とヒューマンリスク管理において、既存のパラダイムに挑戦する当社のプラットフォームは、膨大な数の顧客に採用され、驚異的な成長を遂げています」。

今回のラウンドで主導投資家の役割を果たしたHighland Europeは、これまでMalwarebytes(マルウェアバイツ)、Cobalt(コバルト)、ActiveFence(アクティブフェンス)などのセキュリティ企業を支援してきた。

Highland EuropeのパートナーであるGajan Rajanathan(ガジャン・ラジャナサン)氏は、次のように述べている。「SoSafeの創業者たちは、信頼性の高いサイバーセキュリティ意識向上および試験プラットフォームを構築しました。これは行動分析とヒューマンリスクの点数化によって支えられ、サイバーセキュリティにおける最も重要な脅威領域、つまり人間によるセキュリティの穴を持続的に保護するものです。同社は、短期間で驚異的な勢いを経験し、主要なソフトウェアのスケールアップ企業の1つとして急速に注目を集めています」。

画像クレジット:SoSafe

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(文:Mike Butcher、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

ホームオートメーションプラットフォームSpaceCore提供のアクセルラボが7億円調達、人材採用・開発強化

ホームオートメーションプラットフォームSpaceCore提供のアクセルラボが7億円調達、人材採用・開発強化

ハウスメーカー・不動産事業者、居住者、物件オーナーのためのスマートライフプラットフォーム「SpaceCore」(スペース・コア)を運営するアクセルラボは1月15日、第三者割当増資により7億円を資金調達したことを発表した。引受先は、フューチャーデザインキャピタル。累計資金調達額は22億円となった。

SpaceCoreは、家電や住宅設備を専用アプリで操作できるプラットフォームサービス。給湯器やエアコン、照明などのオートメーション化や外出先からの遠隔操作が可能な「スマートホーム機能」、物件のオーナーと居住者のコミュニケーションが円滑に行なえる「リレーション機能」、家事代行やクリーニング、収納サービスなどを申し込める「生活サービス機能」を備えたクラウドサービスおよびアプリとして提供されている。2019年8月の提供開始以来、全国100社以上、約1万8000戸(2021年9月時点)に導入され、接続デバイス数は20種類を超えるという。

今後さらにパートナー企業との連携および開発を進めることが計画されているため、今回の資金調達に至った。調達した資金は、採用に係る人材費、SpaceCoreの開発費、サポート体制の拡充に係るオペレーション費に充当され、事業基盤および顧客基盤の拡大を目指す。

翌日配達のスタートアップVehoが144億円のシリーズAに続き企業価値1148億円の評価を受ける

翌日配達の技術を提供するスタートアップVehoは、配送のラストワンマイル(最後の1マイル)、つまり配送センターから注文客の自宅玄関までの荷物配達の問題解決を目指している。また、同社は顧客がいつ、どこへ、どのように荷物を配送してもらいたいか、そしてプロセス全体を通してリアルタイムのコミュニケーションにより配送に透明性を提供するという、ユニークな才能を利用してそれを実行したいと考えている。

ニューヨークに拠点を置くVehoの収益は2020年夏のシードラウンドの資金調達から40倍増加し、従業員数も15人から400人に増えたと、Vehoの共同設立者でCEOのItamar Zur(イタマー・ツア)氏はTechCrunchに語った。

同社はすでに米国の14の市場で事業活動を行っているが、2022年末には50市場に増やす計画である。チームを増員し、再配達対策プログラムを導入および拡大して、それに向けて技術開発に投資するために、同社はシリーズAの資金調達が1億2500万ドル(約144億円)に上り、企業価値が10億ドル(約1148億円)と評価されたことを発表した。

General Catalyst(ゼネラル・カタリスト)がラウンドを率いConstruct Capital (コンストラクト・キャピタル)、Rachel Holt(レイチェル・ホルト)、Bling Capital(ブリング・キャピタル)、Industry Ventures(インダストリー・ベンチャーズ)、Fontinalis Partners(フォンティナリス・パートナーズ)、Origin Ventures(オリジン・ベンチャーズ)が参加した。直近の資金調達ラウンドではVehoに対してこれまで合計1億3000万ドル(約149億円)が集まったとツア氏は述べた。

いったいなぜ、新興企業がそれほどの資本を事前に集めたのか疑問に思うかもしれない。しかしツア氏は、Vehoが「しっかりとしたプラットフォームであり、現時点で小さな事業ではない。急成長を維持したいと思っている」と回答した。

「最大のeコマース革命の最中にチャンスがあります。パンデミックを通して急成長した後もそれは終わりません」と付け加えた。「顧客体験は私達の目前で変化しています。スピードとコミュニケーション以外に、ブランドが提供したいのは可視性とデータです。より多くの資本を取り入れ驚異的なスピードで成長を続けるには完璧なタイミングだと考えています」。

もちろん、Amazon(アマゾン)はラストワンマイル市場の約50%を抱え込んでおり、ここでは、アマゾンがうまくやっているかは議論するまでもない。ツア氏もそれを否定しないが、7~10営業日かけるより早くサービスを提供したいと考えているeコマース企業の50%に、同種の配送サービスを提供する好機を見出している。

Vehoの技術は、有資格のドライバーパートナーがいることにより宅配の需要と一致するとともに、顧客が配達中でも実際の到着時間を知らせることができる。リアルタイムで配達スケジュールを変更したり、届け先を変更したり、個人的な配達指示を出すことも可能だ。

Vehoチーム(画像クレジット:Veho)

同社のアイデアはツア氏自身の経験から来ている。ビジネススクール在学中に食事配達のサブスクリプションに入ったが、初めて注文した品が届かなかった。ツア氏は配送会社に連絡を取った。そして40分待った後、電話はつながらなくなった。彼はサブスクリプションをキャンセルしたが、それは荷物の到着が遅れたり受け取れなかったりすることに我慢できない他の客と同じである。

「ますます競争的なeコマース分野において、多くの企業がアマゾンと同様のすばやい配達を求めているが、そうするほどの規模に欠けています」とツア氏はいう。「Vehoはそのようなブランドのために公平な条件を作っています。逃した最大の機会は、前もって包装されていることと、ブランドがよりロイヤルティを作り、顧客を長く引き止めてもっと頻繁に購買してもらえるような配達の、点と点をつなげることである」。

ラストワンマイルの問題解決だけに取り組むのはVehoだけではない。他にもそのアプローチのために資本調達をする企業が世界中にある。例えば、過去6カ月間でZoomo(ズーモ) Cargamos(カルガモス)Coco(ココ)Deliverr(デリバー)Bringg(ブリング)が新たなラウンドを発表した。Walmart(ウォルマート)も夏にWalmart GoLocalプログラムを導入し、リテーラーがリテール大手の配送網に入り込めるようにした。

ツア氏は、Vehoがデリバーなどの他社と競合しているとは見ていないが、国有の運送会社を競合と考えている。そのような国有企業の技術はeコマースのない「旧世界」のために設計されており、それがそのセクターが今後10年でいかに成長するかという展望とともに「完全にeコマース顧客のニーズに基づいて」創設されたVehoとの違いだ。

世界のラストワンマイル配送市場は2020年に約1080億ドル(約12兆3993万円)と評価され、今後4年で1469億6000万ドル(約16兆8720万円)増加する。テクノロジーおよび調査会社のTechnavio(テックナビオ)によると、北米がその成長の39%を占める。

購買におけるeコマースへの移行にともない、物流および宅配便セクターは競って需要に追いつこうとしている。彼らは2020年のホリデーシーズンにおける、ハルマゲドンならぬ「shipaggedon(シッパゲドン)」から、半導体の製造と出荷の遅延、入港まで、ここ数年で大きな挫折も味わっている。

Vehoは、顧客が戻ってきて注文してくれるような、顧客とeコマース企業間の信頼を促進する真にすばらしい配送体験を作り出したいと考えている。ツア氏はアパレルとアクセサリー、食品雑貨類の販売を行う顧客に言及し、従来の配送会社から箱を受け取っていた顧客と比べて、すでに顧客の再購入で20%の増加、顧客生涯価値で40%の増加、ネットプロモータースコアで8ポイントの増加がみられたことを付け加えた。

一方で、ゼネラルカタリストのKyle Doherty(カイル・ドハーティ)氏は、8000億ドル(約91兆8516万円)のeコマース市場を狙う多くの企業にとってチャンスがあると述べた。その半数が米国にあり、毎年全体で約1000億ドル(約11兆4815億円)ずつ成長することが予測される。

ツア氏と同じくドハーティ氏も、サンフランシスコの自宅で荷物を受け取る際に失望してきたが、そこでは荷物の盗難が起きているという。

「どうしようもなく感じますし、状況を管理できません」と彼は付け加えた。「我々は最前線でeコマースの使用と、ストレスを受けるサプライチェーンにおける劇的な加速を見てきました。コンピューター技術が物流業者に優れた体験をもたらすことができると信じてきました。私がイタマーさんに紹介されたとき、すぐにわかりました。彼も顧客体験について業者と消費者に共感している。それがよくわかりました」。

画像クレジット:Getty Images

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(文:Christine Hall、翻訳:Dragonfly)

オンラインチェックアウトテックのBoltが405億円調達、評価額100億ドル超えのデカコーンに

チェックアウトテクノロジー企業のBolt(ボルト)は、新たな資本を引き寄せ続けている。同社は現地時間1月14日にシリーズEラウンドで3億5500万ドル(約405億円)を調達したと発表し、同社に近い情報筋によると、評価額は110億ドル(約1兆2565億円)に達したという。

Boltのワンクリックチェックアウトの製品は、Amazon(アマゾン)が1997年以来採用していることで知られているのと同じ技術を企業に提供することを目的としている。と同時に、取引が本物であることや支払いを受け付けられることを保証する決済および詐欺防止サービスを組み込んでいる。さらに、買い物客は一度アカウントを作成すれば、そのクレデンシャルを何百ものBoltネットワークブランドのネットワークで使用することができる。

今回のラウンドは、シリーズDで3億9300万ドル(約448億円)という大規模な資金調達を行ったわずか3カ月後に行われた。シリーズEを含めると、Boltのこれまでの資金調達総額は10億ドル(約1142億円)近くになる。創業者でCEOのRyan Breslow(ライアン・ブレスロー)氏は、評価額はシリーズD時のほぼ2倍になった、とTechCrunchに語った。

Boltの調達総額が10億ドル近くまで増えたことについて、Boltは実際に数千億ドルの価値がある競合企業が存在する分野で事業を展開している、とブレスロー氏は説明した。ソースによると、Stripe(ストライプ)、Shopify(ショッピファイ)、Checkout.com(チェックアウト・ドットコム)のような企業と競合している。

「多くの資金を手にしたように見えるかもしれません。しかし、実際には違います。これは競争力を高めるための資金なのです」とブレスロー氏は付け加えた。「競合他社と肩を並べるだけでなく、もっと上を目指したいと思っています。この資金で優秀な人材を獲得し、戦略的な買収を行い、当社にとって重要な欧州への進出を実現することができます」。

国際展開という点では、2021年11月から乗り出した。Benefit CosmeticsとPrestaShopの両方と契約を締結し、そして初めて買収を行った(あらゆるデジタル画面でのダイレクトチェックアウトを可能にするスウェーデンの技術会社Tipserだ)。

ブレスロー氏は当時「TipserがBoltにとっていかに重要な存在になりうるか、我々は理解していました」と述べた。「彼らは10年前から組み込み型コマース技術を完成させており、唯一手ごわい存在でした。我々が苦手とする分野で、Tipserは当社を上回っていました。Tipserをチームに迎えたことは、非常に戦略的なことです」。

買収から2カ月、BoltのネイティブチェックアウトとショッパーエクスペリエンスにTipserの組み込みコマース技術を統合させる作業は続いており、すでにいくつかの大口顧客と契約しているとブレスロー氏は話す。

一方、シリーズEは、BlackRockが運用するファンドや口座がリードし、既存投資家のActivant CapitalとMoore Strategic Venturesに加え、新たにSchonfeld、Invus Opportunities、CreditEase、H.I.G. Growthが参加した。

Invus Opportunities のパートナーのBen Tsai(ベン・ サイ)氏は「eコマースを取り巻く状況はオンラインチェックアウト体験を改善する大きなチャンスを提供していて、小売業者は結果として顧客を失っていることに気づきつつあります」と電子メールで述べた。

「拡大するBoltの小売店ネットワークの中で、ワンクリックで簡単にチェックアウトできる恩恵を受けている数百万人もの買い物客のネットワークを同社は有しています」と同氏は付け加えた。「ライアンと野心的なBoltチームを支援し、Boltがディスラプトしている業界に大きなチャンスがあることをうれしく思います」。

Boltは2021年に加盟店あたりの流通取引総額を80%成長させ、アカウントは2020年比で180%増え、取引は前年比で200%成長した。また、今後18カ月で買い物客1億人がBoltのネットワークに参加する見込みだという。

最後に、企業が人間優先の職場文化を作ることを目的としたプレイブック「Conscious Culture」を2021年5月に発表した後、現在では80社近く、数百の顧客を抱えている。

Boltの従業員は550人を超え、200以上の都市でリモート勤務している。今回の資金調達により、人材採用、買収、国際展開に加えて、2022年中に多数の新製品を発表するという目標に向けた取り組みを加速させる。

構想にはソーシャルコマースのような分野への重要な投資が含まれており、ウェブサイト、チャットボット、店舗、ビデオストリーム、ゲームなど、あらゆるチャネルでネイティブの組み込み型コマースを実現できるようになる。これにより、Boltのチェックアウト機能があらゆるところに配置されることになるとブレスロー氏は予想している。また、Boltのネットワーク上で客がより効率的に買い物ができるよう、消費者向け製品の拡大にも資金が投入される予定だ。

将来的には、Boltが新製品を発売する際に「Amazonゴールドスタンダード」と呼ばれる購入体験を分解し、どんなビジネスでもワンクリックでチェックアウトできるだけでなく、シームレスな注文追跡、迅速な返品、迅速な配送、会員特典など、Amazonが早期に優位に立った技術をすべて利用できるようになるとブレスロー氏は見ている。

上場が近いか、という質問に対し、同氏は当面の目標でもなければ最終目標でもないと答えた。

「目標はただ1つ、史上最高の会社を作ることです」と付け加えた。

画像クレジット:Bolt

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(文:Christine Hall、翻訳:Nariko Mizoguchi

暗号資産でB2B決済の高速化、手数料の抑制も目指すPaysailが4.4億円調達

企業は、材料費から外注費に至る主要なコストの多くを、請求書に基づき支払っている。依然として大多数の企業は、国境を越える支払いの際、銀行振込やクレジットカードを基盤とするソリューションに依存している。完了するまでに通常2~5日かかる、この国境を越える支払いは、世界で130兆ドル(約1京5000兆円)の市場を形成している

法人向け決済のスタートアップであるPaysail(ペイセイル)が、シード資金を調達した。同社は、国境を越える決済のプロセスを5秒未満に短縮するツールを開発する。同社のソリューションはステーブルコインを活用している。ステーブルコインについて同社は「商品または法定通貨にペッグ(連動)し、価格が安定するよう設計された暗号資産」と説明している。

Paysailによると、請求書の支払いにステーブルコインを使うことで、第三者の仲介を排除し、企業の取引手数料を削減することもできるという。Paysailの共同創業者であるNicole Alonso(ニコル・アロンソ)氏はTechCrunchのインタビューに対し、従来の銀行インフラを前提として決済を効率化するこの分野の他のスタートアップは、速くて安い決済手段を提供する点で限界に達していると語った。仲介業者が課す手数料が原因であり、特に定期的に決済が発生しない国同士の間ではそうだという。

Paysailの共同創業者であるニコル・アロンソ氏とLiam Brennan-Burke(リアム・ブレナン・バーク)氏(画像クレジット:Paysail)

「例えば米国・カナダ間の決済を大幅に安く、早くする大きな進歩がありました。しかし、米国からアフリカの国々への送金はまだ本当に難しく、法外な手数料がかかることもあります」とアロンソ氏は話す。

国境を越える決済にBill.comのようなレガシーシステムを使う場合のコストには通常、仲介業者が請求する取引手数料と為替手数料が含まれる。これに対し、Paysailによる送金では、ブロックチェーン上で取引を検証するためにかかる「ガソリン代」だけがかかり、現在のところ1セントの10分の1以下だとアロンソ氏はいう。

Paysailは現在、米ドル価格に連動するCeloのCUSDステーブルコインを使用して決済を行うが、将来同社が成長していけば、各国の不換通貨を裏付けとする他のステーブルコインにも拡大する予定だ。また、事業の収益を上げるために0.9%程度の取引手数料を検討している。アロンソ氏は、取引手数料が各企業の取引量に応じた段階的な設定となる可能性があり、価格面で「非暗号資産の既存の競合他社を大幅に下回る」ことが理想だと述べた。

同社は米国1月13日、Uncork Capitalがリードし、Tribe Capital、Pear VC、Mischief Capitalが参加した、400万ドル(約4億4800万円)のシードラウンドを発表した。このラウンドには、Google Payの事業開発・戦略責任者であるNik Milanović(ニック・ミラノビッチ)氏と、Eburyの創業者でCEOのJuan Manuel Fernández Lobato(フアン・マヌエル・フェルナンデス・ロバト)氏もエンジェル投資家として参加した。

Paysailの現在のユーザーは「少数」の企業で構成され、そのほとんどはすでに暗号資産で取引しているか、この分野に精通していると、共同創業者であるLiam Brennan-Burke(リアム・ブレナン・バーク)氏はTechCrunchに語った。同社は、暗号資産を使用したことのない顧客にも拡大する前に、暗号資産の利用に慣れている顧客向けのソリューションを微調整したいと考えていると同氏は付け加えた。

アロンソ氏とブレナン・バーク氏は2021年、クレアモント・マッケナ大学の学生として出会い、その後Paysailを立ち上げた。現在、Paysailの正社員は彼らのみだ。今回の資金をもとに、フルタイムのエンジニアリングチーム、法律顧問、そして最終的には営業チームを雇用する計画だ。

Paysailは、既存の暗号資産ウォレットを持たないユーザーが、サードパーティのウォレットプロバイダを通じ、同社のプラットフォームで取引を開始できるような技術を構築している。同社がユーザーに代わってノンカストディアルウォレットを用意する。ブレナン・バーク氏によると、最終的にはこの機能をプラットフォームに導入したり新機能を追加したりして、ユーザーが、保有するステーブルコインからPaysailウォレット内で利回りが得られるようにすることを目指している。ナイジェリアのように、現地通貨の下落が大きなリスクとなる国では、企業は変動の少ない通貨にペッグされたステーブルコインで資産を保有し、好きなときに現地通貨に移すことを好むかもしれないと、同氏は付け加えた。

ブレナン・バーク氏は「このプラットフォームの最終的な目標は、暗号資産決済を、暗号資産の経験がない企業や個人にとって、本当に消化しやすく、また使いやすくし、比較的やさしいものにすることです」と語った。

画像クレジット:Olena Poliakevych / Getty Images

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(文:Anita Ramaswamy、翻訳:Nariko Mizoguchi

消費者ブランドの顧客データ有効利用を助けるDaasityが約17.1億円調達

Daasityの共同創業者Sean Corson(ショーン・コーソン)氏とDan LeBlanc(ダン・ルブラン)氏(画像クレジット:Charmaine Gray Photography)

eコマースの分析とデータ収集を行うDaasityは、消費者ブランドが顧客データをより賢く活用するためのアプローチを開発し続ける中で、シリーズAで1500万ドル(約17億1000万円)の資金を調達した。

この、出資者数が予定を超えたラウンドをリードしたのはVMG Catalystで、他にCove FundやExeter Capital、1855 Capital、Mooring Ventures、Okapi Venture Capital、そしてSerra Venturesらが参加した。これで同社の総調達額は2070万ドル(約23億6000万円)になる、とCEOのDan LeBlanc(ダン・ルブラン)氏はいう。

ブランドは同社の技術を利用して、Shopify、Amazon、Facebook、Klaviyoなどなどから自分に関連したデータを取り込んで分析し、その結果をマーケティングのチャネルに押し込み、これまでのパフォーマンスの履歴から得られる洞察に基づいて、消費者体験の最適化を図る。

ルブラン氏によると「消費者製品のブランドが現在ほど多いときは過去にありません。そのため競合は慢性的に激しくなっています。ブランドは、迅速で確実性の高い意思決定に導く正しいデータにアクセスすれば勝利できます。データの需要もかつてないほど高いため、私たちはデータのインフラストラクチャに投資して、ブランドが彼らの必要とするデータにアクセスできるようにしています」という。

Daasityは現在、ManscapedやVuori、Caraway Homeといった1600を超えるブランドを扱っており、2021年は経常収益が前年比で300%増え、従業員数は倍増した。

今回の資金で従業員数をさらに増やし、2022年末までに160%の増員になるという。また同社は、良好なデータアクセスとデータソース、および、分析結果により良い洞察を込められるための教育リソースのための技術開発にも投資している。今後は、より個人化された顧客データにも取り組む計画だ。

今後、同社はブランドがデータインフラストラクチャの各部位を自由に構成できるようにして、彼らのデータインフラストラクチャをモジュール状にしたいという。構成アイテムのピックアップは、メニューから料理を選ぶような簡便なやり方で、新しいデータソースやウェアハウジングのオプション、デジタルトランスフォーメーション、そして視覚化ツールなど、およそ35の新しい統合を加えていく。

VMG CatalystのパートナーであるBrooke Kiley(ブルック・カイリー)氏の声明文によると「同社が成長の次の段階に入っていくときに、ダンとDaasityのチームとのパートナーシップを継続できることはすばらしいことです。私たちは、データの有効利用がブランドにとって一貫して難しい、という状況を毎日のように見ていますが、そのニーズもかつてないほど大きくなっています。今日の競争の激しいeコマース環境では、データ利用の成功の鍵になっています。Daasityはデータをすべてのブランドにとってアクセス可能なものにし、彼らを行動に結びつくような洞察で強くして、彼らのマーケティングチャネルを必要不可欠な顧客データでより豊かにしています」という。

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(文:Christine Hall、翻訳:Hiroshi Iwatani)

シンガポールを拠点とするSesto Roboticsが6.5億円を調達して世界展開を目指す

シンガポールを拠点とする産業用ロボット企業Sesto(セスト)は、今週、TRIVE、WTI GmbH、SEEDS Capital(Enterprise SingaporeのVC部門)が参加した570万ドル(約6億5000万円)の資金調達を発表した。今回のラウンドは、2018年に実施された同規模の400万ドル(約4億6000万円)のシリーズAに続くものだ。

パンデミックの影響で自動化を目指す企業が増えたこともあり、産業用ロボットの分野で多くの企業がそうであるように、Sestoも前回のラウンド以降多忙な日々を送ってきた。2020年5月には、ここ数年で見られるようになったUV-C(紫外線)システムを先取りした消毒ロボットHealthGUARD(ヘルスガード)を発売した。

2020年8月には、AMR(自律型移動ロボット)のラインナップにMagnus(マグナス)を加えた。このシステムは、多くの自律型倉庫ロボットと同じように動作し、(現在はAmazon傘下の)Kiva(キバ)が開発したシステムによく似ている。また、モジュール化されているため、ロボットの上にさまざまな付属品を取り付けて機能を追加することができる、これは自律型アシスタントの一群を迅速に展開したい企業にとっては好都合だ。その中には、半導体製造に特化して設計された7軸ロボットアームSesto Prime(セスト・プライム)も含まれているが、この分野の製造業は間違いなく自動化の拡大に熱心に取り組んでいる。

2021年5月、Sestoはヨーロッパ、具体的にはオーストリア、ドイツ、スイスへ進出した。このことが、今回のEU拠点の企業からの投資意欲につながっているのだ。CEOのChor-Chen Ang(チョウチェン・アン)氏は今回のラウンドについて、GMDの調査を引用しながら次のように述べている「ヨーロッパにおける自律型移動ロボットの拡大に参入できることをうれしく思っています。ヨーロッパでは、現在の44億米ドルから今後4年間で年平均11.8%の成長率で拡大すると予測されています」。

今回の資金調達は、こうした国際的なパートナーシップの拡大、市場の拡大、さらには同社の提供する製品の開発や既存のロボットの汎用性の向上などに活用される予定だ。

画像クレジット:Sesto Robotics

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(文:Brian Heater、翻訳:sako)

友人グループみんなで36枚撮りのロールを撮影、24時間後に現像されるアプリ「Lapse」が12.6億円調達

ソーシャルメディアアプリでは、アルゴリズムによる広告表示、インフルエンサーを活用したソーシャルグラフ、際限なくスクロールするよう促すUXなどが執拗に行った結果、大手ソーシャルメディア企業のバイラル的な成功と大衆市場でのエンゲージメントにつながっている。しかし、この市場には依然として入り込むすき間が残されており、写真を撮影して自分が選んだ友人と共有できるアプリには、従来のソーシャル的な一連の機能を排除したものが登場している。そうしたアプリの1つLapse(ラプス)が、リリース早々に投資家たちの強い関心を呼び、このたび大規模なシードラウンドを発表した。

Lapseでは、ユーザーがグループを形成し、グループの存在場所に関係なくグループ間で協力して、36枚ショットの「ロール」に即興で(アドリブで)写真を撮る。写真は現像され、撮影開始後24時間でグループにのみ公開される。そのLapseがシードラウンドで1100万ドル(約12億6000万円)を調達した。

今回のLapse(会社名もアプリ名と同じ)のラウンドを率いたのはOctopus Ventures(オクトパスベンチャーズ)とGV(旧称Google Ventures)で、他にもSpeedinvest(スピードインベスト)や個人投資家たちが参加した。個人投資家の中には、初期のFacebookのデザイナーSoleio Cuervo(ソレイオ・クエルボ)氏もいる。クエルボ氏はソーシャルエンゲージメントという点では実績がある。彼はFacebookの「いいね」ボタンをデザインしたチームの一員だった。

今回のラウンドでLapseの総調達額は1240万ドル(約14億2300万円)に達する。これには、同社が創業前の9月にプレシードで調達した140万ドル(約1億6000万円)が含まれる。このプレシードはスピードインベストが率い、Claire Nooriala(クレア・ノーリアラ)氏(Snap Inc.ヨーロッパ・中東・アフリカ担当副社長)、Matt Robinson(マット・ロビンソン)氏(NestedとGoCardlessの創業者)、Ian Hogarth(イーアン・ホガース)氏も参加した。

9月の創業後、Lapseは1万人のベータテスターを獲得した。その後短期間で、Appleのダウンロード件数トップの座に躍り出て、15万人がキャンセル待ちの状態になっている。ほんの数カ月で大規模なシードラウンドを実施してそうそうたる投資家たちを集めることができたのは、15万人という大量のユーザーを獲得できたからだ。

画像クレジット:Ingrid

Lapseは、ソーシャルメディア特有の仕組みを一新しようとしているため、ユーザーや投資家の間で注目を集めている一連のアプリに属する。

Instagram(インスタグラム)、TikTok(ティックトック)などが数百万人のユーザーを獲得しているが、そうしたユーザーはアプリの常用者だ。その一方で、こうしたソーシャルメディア企業とその策略を警戒しているユーザー層(とその親たち)が確かに存在している。これらの企業は大量の有害なコンテンツを配信していることがわかっているが、その使い方(および悪用方法)をコントロールするのは極めて難しいため、解決策はこれらの企業を廃業させるしかないと信じている人たちもいる。

そこまで厳しい話でなくとも、こうした大衆市場向けのソーシャルメディアアプリを大いに楽しんでいる、あるいはビジネスに活用している人たちでさえ、執拗にエンゲージメントとエクポージャーを求めてくる彼らのやり方にうんざりしており「ソーシャル」を実現するもっとプライバシーに配慮した、あるいはインパクトの強い方法を求めている。

同じカテゴリーに属するアプリは他にもある。IRLは、創業者によると、互いにメディアを共有したり、知らない人が投稿したメディアを延々とスクロールしながら観る代わりに、ユーザーたちがもっと有意義なソーシャルインタラクションを生み出すという前提で創業された。

IRLは、現実のイベントを重視するよう設計されたものの、パンデミックが発生しダラダラと続く中、皮肉にもバーチャル(つまりIRLではない)イベントにも拡張することで何とかユーザーを確保してきた。2022年始めに10億ドルを超える評価額で大規模な資金調達ラウンドを実施したIRLは「Digital Nutrition」アプリを2021年12月初めに買収した。このアプリによって、よりエシカルを重視したレコメンデーションを開発できるようになるという。

Lapseに近いコンセプトのアプリとしてDispo(ディスポ)がある。Dispoも使い捨てカメラロールという方向性を認識しており、体験を重視するといいつつ単に何かを体験した写真を共有するだけという方向性からは距離を置いている。Dispoでは、撮影した写真は翌日にならないと見ることができない。

Dispoも2021年初めに資金調達を行った。しかし、口コミでどんどん広がる状態にまで推進した(Dispoの共同創業者は人気のユーチューバーDavid Dobrik[デビッド・ドブリック]氏)原動力が悪い方向に転じて(ドブリック氏のチームが性的暴行で告発された)、多くの人たちが後味の悪い思いをした(初期の投資家たちは手を引き利益を断念した上、ドブリック氏もこの件に関わったとして辞任に追い込まれた)。とはいえ、Dispoは流行りのソーシャルメディアトレンドから外れたわけではない。9月に同社は、写真をNFTとして販売することに対するユーザーの関心を判断するためのテストを始めた。

LapseはDan Silvertown(ダン・シルバートン)とBen Silvertown(ベン・シルバートン)の兄弟によって創業された。シルバートン兄弟はベトナムを一緒に旅行した際に、ネットから離れてゆっくり過ごすために全自動カメラを使った。この体験からインスピレーションを得た2人は、写真を撮影して友人たちと共有するという機能はそのままで、あまりやきもきせずにソーシャル投稿するというアイデアを再現するアプリを構築できないかと考えた。

Lapseは、撮影した写真をすぐには見れなくするという点ではDispoと同じだが、撮影した写真を本当に親しい仲間以外の誰とも共有しないという点が異なる。

(今は廃業してしまったが、初期のFacebookの社員David Morin[デビッド・モリン]氏が、Facebookによって撮影された広角ビューとバランスをとる方法として小グループ内で共有する方法を提供するために創業したPath[パス]は、非常に先見の明があったということになる。少し時代の先を行き過ぎてしまったのかもしれない)

Lapseはまだアーリーステージの初期なので、これから発展する余地が大いにある。Lapseにはカメラの背面からスチール写真を撮るためのレンズしか用意されていない。しかし、創業者によると、このレンズは多くの試行錯誤の末に生まれたものだという。

画像クレジット:Ingrid

「30人のプロの写真家と協力して当社独自の画像処理エージェントを開発しました」とベン氏はインタビューで語ってくれた。「しかし、これは、当社が20段階の処理と考えているアナログフィルムを再現する取り組みの第1段階に過ぎません」。

このフィルターの効果は、昔ながらの全自動カメラで撮影したスナップ写真の画質という説明が一番近いだろう。古風に聞こえるが、平均的なスマートフォンで実現されるようになった極めてパワフルなカメラ体験を意図的に制限して、それを即興的な味で置き換えるおもしろい方法だ。もちろん、たくさんの失敗作も生まれることになるが。

人はどこかへクルマで行く代わりに積極的に歩く選択をしたり、どこかで出来合いの料理を買う代わりに意図的に複雑な料理の多くの手順を体験するほうを選ぶことがある。Lapseはさしずめ、これのカメラ版といったところだろう。不便で面倒くさいと感じるかもしれないが、おかげで従来とは異なる結果が得られるかもしれない。

個人的には、Lapseフィルターを使うことによって予期せぬ、また管理が難しい副作用が生じることがあるものの、それは救いようのないものではなく、むしろおもしろいものだ。

例えば焦点を合わせられないためひどいピンぼけになることがあるし、前向きレンズがないため不正確なセルフィーしか撮れない(あるいは私は結局そうしたのだが、鏡に映った自分を撮るくらいしかできない)。ビデオ機能はないし、画像にいたずらする「フィルター」もない。スナップを撮る機能は驚くほど簡単だ。自分でも気づかないうちに写真を撮っている。撮り直しはできない。

筆者の息子アベルは3枚構成の写真を撮る方法を見つけてしまった。筆者もやってみようとしたがどうしても方法が分からなかった。

こうして撮影された写真は現像されてグループチャットに配信される。チャットでは超高速スライドショーが再生される。スピードを落としてもう少しじっくりと見ることもできる。もちろん、カメラロールの写真を保存して別の場所で共有するといった従来のソーシャルメディアと同じ仕かけも用意されている。

ダン氏によると、この機能は当初、Lapseのうわさを広めてもらうために用意したのだという。ティックトックは他のプラットフォームとビデオを簡単に共有できるようにすることでユーザーを引き寄せ成長したが、これを真似たものだ。まだ初期段階なので、この機能を維持するのか、最終的にオフにしてしまうのかはまだ決めていないという。

収益化に関する具体的な内容もまだ決まっていない。ただ、広告から収益を上げる方法は避けたいとしている。

「収益化についてはざっくりと考えてはいますが、具体的なことはまだです」とダン氏はいう。「ただ、おそらく広告ベースの収益モデルは使わないと思います。というのは、広告ベースのモデルは、可能なかぎり多くのユーザーに動機を与え、現在の画面を表示するために費やされる時間を最適化しますが、これは有害な行動が生じる原因の1つだからです。我々は量ではなく質を重視したいと考えています」。1つのアイデアとしてフリーミアムモデルがある。「あるレベルでユーザー向けにアプリを構築し、ユーザーが大変気に入って、追加機能に対して料金を支払うようにする方法です」。例えば共有された写真に表示される商標を消去する機能がある。現在、共有された写真のフレームにはLapseという商標が表示されるようになっている。

何より、Lapseは誇大広告なしでゆっくりと成長していくという考え方を受け入れているようだ。

Lapseはアクティブなユーザー数を公開していないが、キャンセル待ち15万人という数字は現在のLapseのアクティブな全ユーザー数ではないと思われる。GVのような投資家が支援しているということは、数字は良いという1つの証だ。複数の招待を受けることを許可されているユーザーがそのうちの1人から招待を受けるとキャンセル待ちリストをスキップできる。エンゲージメントはかなり高く、Lapseをダウンロードしたユーザーの15%がアプリを使い続けている、とベン氏は説明する。現在のところ、ユーザーの大半はZ世代の女性であり、ユーザーの実に79%が女性、71%が24歳以下である。現在のところ、ユーザーの約80%が米国居住者だ。

こうしたすべての数字は、アプリが成熟するにつれて変わってくるだろう。ソーシャルアプリに対するさまざまなアプローチの中から現実的な選択をするという流れの中で、そう願いたいものだ。

「Lapseは、ユーザーが従来の大手ソーシャルメディア企業との関係を根本的に考え直している時期に登場した次世代のプライベート型ソーシャルネットワークです」とオクトパスベンチャーズの投資マネージャーMatthew Chandler(マシュー・チャンドラー)氏は語った。「Lapseでは、ユーザーはもう製品ではなくなります。このメンタル面での劇的な変化により、ユーザーはプライベートなグループ内で自由にやり取りし、生活の中の今この瞬間を撮ることができます。また、Lapseの製品設計では、ユーザーは自分を特定の方法で演じるというプレッシャーから開放され、本当の自分であるように促されます。これは私達のコミュニケーション方法に重大な影響を与えます。ダン氏とベン氏は、画像ベースの記憶のための新しいプラットフォームの構築に取り組んでいます。当社は彼らとパートナー関係を結ぶことができたことに大きな期待を寄せています」。

画像クレジット:Lapse

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:Dragonfly)