ドイツの次期政権は石炭火力廃止を2030年に前倒し、連立政権樹立のための妥協に懸念も

ドイツは、最新の気候変動対策の一環として、従来の計画より8年早い2030年までに石炭の使用を廃止することを計画している。同年、ドイツでは電力の80%を再生可能エネルギーで賄うことを目標としている。BBCによると、ドイツ社会民主党のOlaf Scholz(オラフ・ショルツ)党首は、緑の党、自由民主党との3党連立政権の下で、前副首相がドイツを統治することになる協定の一部として、現地時間11月24日にこの計画を発表した。

9月26日に行われたドイツ総選挙では、緑の党が連邦議会で118議席を獲得し、過去最高の結果となった。ショルツ氏は、緑の党のリーダーであるAnnalena Baerbock(アンナレーナ・ベーアボック)氏を外務大臣に起用する見込みだ。さらに、緑の党の共同党首であるRobert Habeck(ロベルト・ハーベック)が副首相に就任し、国のエネルギー転換を監督する機会を得ると思われる。

注目すべきは、連立政権がより積極的な排出削減目標を設定しなかったことだ。同国は、2030年までに1990年比で65%の削減を目指すとしている。非営利団体Climate Action Trackerの試算によると、パリ協定で打ち出された摂氏1.5度の目標を達成するためには、ドイツは2020年代の終わりまでに、温室効果ガス排出量を少なくとも70%削減する必要があるという。

さらに、社会民主党との合意にあたり、緑の党は大きな妥協をした。Bloombergによると、石炭と再生可能エネルギーの間の移行を容易にするために、天然ガスを使用するとのこと。評論家たちは、連立政権はEVの導入を促進するためにもっと努力すべきだったと発言している。同国政府は、2030年までに1500万台のEVをドイツの道路で走らせるということしか計画していない。生物学者でNGOのCampact代表であるChristoph Bautz(クリストフ・バウツ)氏は、Clean Energy Wireに次のように述べている。「これは進歩のための連合には見えません。気候変動運動は、真の意味での気候変動政府にするために、連立政権に働きかけ続ける必要があります」。

編集部注:本稿の初出はEngadget。著者Igor Bonifacic(イゴール・ボニファシッチ)氏は、Engadgetの寄稿ライター。

画像クレジット:John W Banagan / Getty Images

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(文:Igor Bonifacic、翻訳:Aya Nakazato)

商用核融合エネルギーの実現に向けてHelion Energyが約2410億円を確保

クリーンエネルギー企業のHelion Energy(ヘリオン・エナジー)は、核融合によるゼロカーボン電力が豊富にある新時代の創造にコミットしている。同社は米国時間11月5日、5億ドル(約570億円)のシリーズEを完了し、さらに17億ドル(約1936億円)のコミットメントを特定のマイルストーンに結びつけたことを発表した。

このラウンドは、OpenAI(オープンAI)のCEOでY Combinator(Yコンビネーター)の元プレジデントSam Altman(サム・アルトマン)氏がリードした。既存の投資家としては、Facebook(フェイスブック)の共同創業者Dustin Moskovitz(ダスティン・モスコビッツ)氏、Peter Thiel(ピーター・ティール)氏のMithril Capital(ミスリル・キャピタル)、そして著名なサステナブルテック投資家であるCapricorn Investment Group(カプリコーン・インベストメント・グループ)などが名を連ねる。今回の資金調達には、Helionが主要な業績目標を達成するために必要な追加の17億ドルが含まれている。ラウンドリーダーのアルトマン氏は、2015年から投資家兼取締役会長として同社に関わってきた。

約60年前に制御された熱核融合反応が初めて達成されて以来、核融合エネルギーはクリーンエネルギー愛好家の熱い夢であり続けてきた。このテクノロジーは、ごくわずかなリスクで、稼働中の放射能量がはるかに少なく、放射性廃棄物が非常に微量であるという、現行世代の核分裂発電機に対するあらゆる利点を約束している。ただ、1つ難点がある。核融合プロセスはこれまでのところ、その反応を制御し続けるために消費するエネルギーよりも多くのエネルギーを生成することは難しいのが現状である。

Helionは企業として、科学実験としての核融合ではなく、より重要な問題に焦点を当ててきた。このテクノロジーは、商業規模で、そして工業規模で、電力を生成できるだろうかという問いである。

「熱やエネルギー、あるいはその他のことを論じている核融合領域のプロジェクトもありますが、Helionは発電に焦点を当てています。私たちは低コストで迅速にそれを取り出すことはできるのでしょうか。核融合による産業規模の電力を実現することは可能なのでしょうか」とHelionの共同創業者でCEOのDavid Kirtley(デビッド・カートリー)氏は問いかけるように話す。「私たちは輸送用コンテナほどの大きさで、産業規模の電力を供給できるシステムを構築しています。例えば、およそ50メガワットの電力です」。

重水素とヘリウム3は加熱後、磁石で加速され、圧縮されて誘導電流として捕捉される(アニメーションはHelion Energy提供)

2021年6月、Helionは民間の核融合企業として初めて、核融合プラズマを摂氏1億度まで加熱することを確認した結果を発表した。これは、核融合から商用電力への道を歩む上で重要なマイルストーンだ。その後すぐにHelionは、同社が「Polaris(ポラリス)」と呼ぶ第7世代の核融合発電機の製造プロセスの開始に向け、工場の建設に着手したことを明らかにした。

TechCrunchは、2014年の同社の150万ドル(約1億7000万円)というラウンドを知って驚いたことを記憶している。そのとき同社は、3年以内に核融合のネット発電を立ち上げ、稼働させることができると語っていた。それから7年が経過し、Helionはいくつかの問題に直面しながらも、その過程で焦点も見出したようだ。

「エネルギーの科学的マイルストーンにフォーカスするのではなく、より具体的に電力へ焦点を当てるために、方向性を少し変えることにしました。電力、そして電力の抽出という側面で、いくつかのテクノロジーを証明する必要があったのです。また、そうした技術的マイルストーンに到達するために必要な資金も必要でした」とカートリー氏は振り返る。「残念ながらそれには期待していたよりも少し時間がかかりました」。

人々にエネルギーを与えようと待機するHelionチーム(画像クレジット:Helion Energy)

投資ラウンドの一環として、サム・アルトマン氏は取締役会長からHelionの執行会長にステップアップし、同社の商業的方向性へのインプットを含む、より高度な活動を行うことになる。

「最初の資金調達ラウンドはMithril Capitalが主導し、Y Combinatorもその一部を占めていました。そこで私たちはサム(・アルトマン氏)に紹介されました。同氏はそれ以来、私たちの資金調達に関わってくれています。同氏は物理学を真に理解しているアンバサダーで、これは実にすばらしいことです。私たちは同氏が投資をリードすることに興味を持ってくれたことを本当にうれしく思っています。整合性が異なり、テクノロジーについてあまり深く理解していない外部の投資家を連れてくる必要はなかったのです」とカートリー氏は説明する。「同氏は成功を見て、その意味するところを理解してくれました。私たちは同氏を投資家としてだけではなく、より積極的な関与者として迎えることを楽しみにしています。これは私たちがタイムラインを加速できることを意味します。資金調達もその一部であり、テクノロジーもその一部です。最終的に私たちは培ってきたものを世界に送り出す必要があり、サムはそれを支援してくれるでしょう」。

「これまで目にした中で最も有望な核融合へのアプローチを行うHelionに投資できることをうれしく思います」とアルトマン氏は語る。「他の核融合の取り組みに費やされたものに比べてごくわずかな資金、そしてスタートアップの文化を持つこのチームには、ネット電力への明確な道筋があります。Helionが成功すれば、気候災害を回避し、人々の生活の質を向上させることができるでしょう」。

HelionのCEOは、最初の顧客はデータセンターになるのではないかと推測している。そこには他の潜在顧客に対するいくつかの優位性が存在する。データセンターは電力を大量に消費しており、多くの場合、バックアップ発電機を受け入れるための電力インフラストラクチャがすでに整備されている。また、人口密集地から少し離れている傾向がある。

「こうした施設はディーゼル発電機の予備電源を備えており、数メガワットの電力を供給します。これは、電力網の問題に対処するのに必要な時間だけデータセンターを稼働し続けるようにするものです」とカートリー氏は語りながらも、同社は単に予備のディーゼル発電機を置き換えるだけではなく、もっと野心的であることを示唆している。低コストで電力の可用性が高いということは、同社がデータセンター全体にデフォルト電源として電力供給を開始できることを意味する。「50メガワット規模であり、電力コストをキロワット時あたり1セントまで削減できることに大きな期待を寄せています。データセンターの動作を完全に変えることができ、気候変動への対応を本格的に始めることができます。私たちの焦点は、低コストでカーボンフリーの電力を作ることに置かれています」。

発電方法に物理的な制限があるため、同社の現世代の技術はTesla Powerwall(テスラ・パワーウォール)やソーラーパネルに取って代わることはできないだろう。発電機のサイズは輸送用コンテナとほぼ同じである。しかし、50メガワットの発電機は約4万世帯に電力を供給することができ、その電力量で、このテクノロジーは分散型電力網に非常に興味深いオポチュニティをもたらす可能性がある。

Helionの発電ソリューションにおける興味深いイノベーションの1つは、発電の中間段階として水と蒸気を使用しないことだ。

「キャリアの最初の頃、私は核融合の方法に注目し続けていました。そして、プラズマを含めて、すべてが電気的である美しいエネルギーがあるのだ、と確信しながら、それから何ができるだろうか、水を沸かして、古くて低効率な資本集約的プロセスを使うのだろうか、という思いがめぐりました」とカートリー氏は説明する。同社は水を使うのではなく、誘導エネルギーを使うことにした。「この時代を完全に乗り切ることができるだろうか、ガソリンエンジンを使わない代わりに最初からいきなり電気自動車を走らせるようなことができるだろうか。こうした問いへの取り組みに私たちは力を注いできました」。

同社は、2024年までに核融合炉の稼働に必要な量よりも多くの電力を発電できるようにすることを目指しており、現時点での目標は商業規模での発電であるとCEOは指摘している。

「当社の2024年のデータは、現時点では科学上の重要な証明ではありません。目標は、商業的に設置された発電を追求することにあります。巨大な市場が存在しており、これを一刻も早く世界に広めたいと考えています」とカートリー氏は最後に語っている。

「できる限り早く電力に到達するように注力することで、気候変動と二酸化炭素を排出しない発電について話す自然な会話の一部として、核融合を期待できるようになるでしょう。私たちはこの資金を確保できたことに大きな興奮を覚えています。そして調達してきた総合資金により、私たちはそこにたどり着くことができるはずです」。

画像クレジット:Helion Energy

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(文:Haje Jan Kamps、翻訳:Dragonfly)

家庭の電力利用をよりスマートにすることを使命とするSpan、新しいEV充電器Span Driveをリリース

エアコンや洗濯機、乾燥機などの電化製品が家庭で主役を務めた時代は終わった。最近は、EV(電気自動車)充電器、太陽光発電パネル、蓄電ソリューションなどにより、家庭の電力利用状況はますます複雑度を増している。Spanは、そうした状況にスマートさを組み込もうとしている会社の1つだ。同社がこのたびリリースしたSpan Driveは、さまざまなルールに基づいてEVをさらにパワフルな存在にするEV充電器だ。

米国の家庭はますます電化が進み、とりわけ最新の電化製品は古い設計の家では想定されていないような大量の電力を消費する。エアコン、ヒーター、ヒートポンプ、給湯器、洗濯機、乾燥機、電気コンロ、電気オーブン、EV充電器、蓄電装置などは、多大な電力を消費する可能性がある。それに加えて、ソーラーパネルを設置する家庭が増えたため、大量の電力が家庭に入ってくるようになった。こうした状況の中、米国家庭の電力状況は複雑度を増し、電力を大量消費するようになっているが、実際には、こうした電化製品をすべて同時に使用することはまずない。これは、最近の電子設計が直面している難題である。つまり、家庭に送電網から送電されてくる電力が最大100Aで、家庭にある電化製品の消費電力の合計が180Aであっても、実際にはそれらの電化製品をすべて同時に使用することはおそらくない。問題は、一時的に、すべての電化製品の電源を同時にオンにした場合、少なくともブレーカーが上がるまでは、電力会社にとって厳しい状況になるという点だ。

Spanはこうした問題を解消してくれる。Spanは5月に、家庭用スマートブレーカーパネルをリリースし、その数カ月前に2000万ドル(約22億8000万円)の資金調達ラウンドを発表した。同社はこのたび、500ドル(約5万7000円)のEV充電器Span Driveをリリースし、それに合わせて、3500ドル(約40万円)のブレーカーパネルは、今家庭で最大の電力を消費する装置である電気自動車向けにスマート性能が強化された。

「当社は、家庭でアンペアを100から200、200から400に上げる際のコストや時間をかけることなく、電化製品を追加し続けることができるようにしたいと考えています」とSpanのCEO Arch Rao(アーチ・ラオ)氏はいう。

「ブレーカーパネルをアップグレードするというより、家庭内の電化製品の使われ方を基本的に考え直して、電源管理を改善し、クリーンエネルギーと電化製品の統合を強化したいと考えています。従来のブレーカーパネルは安全装置としては大変優れていました。家庭に入ってきた電気はこのパネルを経由して家庭内の各装置と回路に分配されます。回路の動作状況が危険なレベルに達すると、回路は遮断されます。これがブレーカーの仕事であり、その仕組みは約100年間進歩していません。つまり、受動的な安全装置として機能しているのです」とラオ氏は説明する。「ブレーカーパネルが設置されている場所こそ、まさしくイノベーションが必要な場所です。ブレーカーパネルはグリッドと家庭内のすべての電化製品の交差点に位置しています。電化製品だけではなく、ソーラーシステム、電気自動車、蓄電システムなども、ブレーカーパネルに接続されています。当社が開発した新しいパネルは、グリッドと安全に遮断または再接続するための装置であるという点で、単なる安全装置としての機能よりもはるかに多くの仕事をします」。

グリッドとの接続とグリッドからの遮断は、グリッドに依存して生活している人たちにとって重要な点だ。家庭を、少なくとも電気的には、島に変えることができるというのが、将来的な観点から見たときのSpanのシステムの興味深い点の1つだ。また、Spanのパネルを使用すれば、停電時に従来よりも長く自力で電力を供給できる。蓄電ソリューションが設置されている家庭では、このパネルはよりスマートに動作する。停電を検出すると、不要な電気製品の電源が落とされる。例えばサーモスタットをオフにして、食品が腐らないように冷蔵庫や冷凍庫をできるだけ長く稼働させる。

Span Driveはしゃれたデザインの低価格EV充電器で、Span製パネルの機能を拡張する(画像クレジット:Span)

このシステムはアプリで制御できる。このアプリで家の電気の使い方に関する「ルール」を設定できる。例えば太陽光発電でまかなえるときだけエアコンを稼働するよう選択できる。48Aを電気自動車に接続して高速充電するよう選択する場合は、他の大量に電力を消費する電化製品の電源を落として、総電力消費量を100A以下に抑えるようにする。逆のケースもある。つまり、できるだけ高アンペアで高速充電しているときに、乾燥機、エアコンが同時に稼働し、電気オーブンと電気コンロで料理を始めると、Span Driveは充電に使用する電流を下げ、子どもたちが食事を済ませ、衣類がすっかり乾いてみんなでハグできるようになったら元に戻す。

あるいは、電気自動車の充電を太陽光発電でのみまかなうようSpan Driveをプログラムすることもできる。Tesla(テスラ)のオーナーは信号待ちから静かに発信させてフェラーリを抜き去りたいといつも考えているようだが、Span Driveのこの機能でそうしたオーナーの自己満足度は何倍にもなるに違いない。

もちろん、Spanのパネル自体から回路をオン / オフすることもできるが、このパネルは各回路に分配されている電力量を把握しているため、家電製品が増えてもより細かい制御が可能になる。これにはおそらくAmazon(アマゾン)のアイデアも一部入っているのだろう。アマゾンはSpanの最近の投資ラウンドに参加し、Alexaとの互換性を実現することも発表した。

ある意味、Spanは、従来家庭内でスマートさを欠いていた部分に多くのスマートな機能を組み込んだように感じる。電力はそのままではローテクだが、電化製品のスマート性が向上し、IoTの波が日常的に使う多くの電化製品にまで押し寄せる中、Spanは家庭全体に、マイクログリッドを構築しているように思われる。それは、孤立したゾーンであり、まだ誰も使い方を知らない強力な機能を備えている。SpanのCEOもその点を認識しており、同社は家庭の未来の争奪戦の真っ只中にいることに同意する。

「ブレーカーパネルには、他のどんな製品にもない永続性があります。今後30年は、現在と変わらず壁に設置されたままでしょう。もちろん、将来を見据えた設計についても考えています。現在当社が提供している機能は、競合他社が提供するどのような機能とも一線を画すものです。未来に重点を置くことで、現行のさまざまなソリューションを基本的な部分で凌駕していると思います」とラオ氏は話す。

画像クレジット:Span

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(文:Haje Jan Kamps、翻訳:Dragonfly)

今、対応を迫られている気候変動リスクとは何か?ジュピター・インテリジェンスCEOとキャシー松井氏がわかりやすく解説

Jupiter IntelligenceのCEOリッチ・ソーキン氏

気候変動リスクへの対応が迫られている。2022年4月には東京証券取引所が「プライム」「スタンダード」「グロース」の3市場に再編され、プライム市場に上場する企業は気候変動リスクを開示しなければならない。日本初のESG重視型グローバル・ベンチャー・キャピタル・ファンドであるMPower Partners Fund(エムパワー・パートナーズ。以下、MPower)でゼネラルパートナーを務めるキャシー松井氏は「投資家は投資先のリスクを評価して意思決定を行いますが、企業が気候変動リスクを開示しなければ『十分なリスク評価』は行えません」と話す。

気候変動リスクを予測・分析するプラットフォームを提供するJupiter Intelligence(ジュピター・インテリジェンス。以下、ジュピター)CEOのRich Sorkin(リッチ・ソーキン)氏と同氏が対談し、気候変動リスク対応の今後を語った。

「気候変動リスク」とは?

気候変動リスクはビジネスにおいてどう重要なのでしょうか?

ソーキン氏:エネルギーセクターを例に考えてみましょう。気温が下がり過ぎてしまうと、発電設備が停止してしまうことがあります。あまりに強い風が吹けば電線が吹き飛ばされてしまいます。水温が高すぎると、発電設備全般、特に原子力発電の冷却効率が下がります。洪水が起きればオペレーションが止まったり、送電が止まってしまいます。

米国では2021年2月「February Freeze」と呼ばれる現象が起き、テキサス州全域の送電網が2週間と3日にわたって停電しました。影響はメキシコにもおよび、一部サプライチェーンの停止も引き起こしました。こうした例は枚挙にいとまがありません。

MPower Partners Fundでゼネラル・パートナーを務めるキャシー松井氏

地球温暖化などによる気候変動は、エネルギー供給に影響します。さらに、どんなビジネスもどこかのプロセスで電力を使うので、無関係ではいられません。気候が工場や社屋、ロジスティクスに与える影響を考えれば、その重要性が極めて大きいことはご理解いただけるでしょう。

MPowerは9月中にジュピターに投資を行いました。ESGと気候変動リスクの関係をお教えください。

松井氏:少し前まで、ESGは「コンプライアンスの問題」とされていました。しかし今、企業の成長においてESGは避けては通れない課題です。世界的に規制が増加を見てもわかるように、環境への配慮が社会的に要請され始め、気候変動リスクの開示も求められています。

投資家は、投資先を決定する上で、企業のリスクを評価します。先ほどソーキンさんが話した通り、気候、天候がビジネスに与える影響は大きなものです。つまり投資家は、気候変動リスクの評価を抜きに十分なリスク評価はできないのです。企業が成長する上で、気候変動リスクを開示し、ESGにも配慮して投資家を惹きつけることは喫緊の課題なのです。企業、官公庁などの組織が気候変動リスクをより正確に把握し、リスクマネジメントすることの重要性は増すばかりです。

ジュピター・インテリジェンスのビジネス

ジュピターはどのようにしてスタートしたのでしょうか?

ソーキン氏:当社の創業は2017年ですが、ビジネスのアイデア自体は2016年頃からありました。気候変動の影響が大きくなり、2015年のパリ協定で設定した目標を各国が達成したとしても、状況の悪化は避けられないのだと、私は考えたのです。しかし、この事態が何を意味するのか、どうすればいいのか、明確な答えを持っている人はいませんでした。それにもかかわらず、企業、官公庁、NGOなどの意思決定者は行動を起こさなければならなかったのです。

そこで、気候変動による物理的な影響や、深刻化の進捗の具体的な割合、影響を受ける地域などをソフトウェアによってモデル化し、可視化しようと考えました。

創業から今までの間にコロナ禍があり、クライアント企業の状況も変わっていく中で、山も谷もありました。ですが、コロナが落ち着き始め、一度去ったクライアントが戻り、2021年には米国の国防総省とのコラボレーションが始まりました。また、もともと米国内の気候変動リスクの分析のために当社を活用していたクライアントが、ヨーロッパやアジア地域の会社資産の気候変動リスクの分析も任せてくださるなど、活躍の場を広げています。

松井氏:ジュピターは日本でも顧客を増やしています。2020年7月からはMS&ADインシュアランス グループ ホールディングスとMS&ADインターリスク総研と連携し「TCFD向け気候変動影響定量評価サービス」を提供しています。また、チューリッヒ保険やNASAなど、大きなクライアントを抱えています。MPowerは気候変動リスク分析ではジュピターがリーディングカンパニーだと考えて投資しています。

気候変動リスク分析とは

ジュピターはどのように「気候変動リスク分析」を提供しているのでしょうか?

ソーキン氏:当社では大きく分けて2種類サービスを提供しています。1つは、リスクに曝されている資産すべてをスキャンするサービスです。顧客層としては、1000万件の住宅ローンを保有する銀行や、世界中に工場を持つ製薬会社を想像してもらうとわかりやすいでしょう。このサービスでは、顧客は世界中に分散している自社の資産が気候変動によって受けるリスクを確認することができます。

もう1つのサービスは、資産の種類ごとにリスクを分析するサービスです。こちらはワクチン生産の施設や、発電所、軍の基地、ホテル、大きなオフィスビルなど「物理的な資産」を念頭に考えていただくとわかりやすいと思います。こうした物理的な資産は、特定の場所に存在し、その場所特有の気候変動リスクに曝されています。それを分析するのです。

ジュピターのサービスはどんな問題を解決するのでしょうか?

ソーキン氏:順を追って説明しましょう。誰かが何かを建てようとするとき、その建築物は想定されるリスクに耐えられるように設計されます。そのリスクは風だったり、洪水だったり、水を使う施設なら、水温だったりします。こうした想定リスクは、設計時点での「平均的な天候」を基に計算されています。

ここで、完成して10年経った発電について考えてみましょう。発電所の建設には時間がかかるので、完成の10年前くらいに計画が始まります。この発電所の計画時点で採用される想定リスクのデータは、過去10年ほどの平均データです。それを使って10年かけて発電所が建てられます。つまり、この発電所の完成時点における想定リスクは、20年前の想定リスクです。

リスクが変動しないのであれば、想定リスクのデータが古くても問題ありません。しかし、実際、20年もあればリスクも変動し、洪水のリスク、海面の上昇、風の状況などが変わります。さらに、この発電所はすでに10年使用されており、その間にリスクも刻々と変化しています。つまり、既存のやり方で想定リスクに対応しても、実際のリスクには対応できていないのです。

では、ジュピターはその問題をどう解決するのでしょうか?

ソーキン氏:私たちは今の気候、天候はもちろん、1年後、5年後、10年後と、それぞれのタイミングで気候と天候がどう変化していくのかを予測します。火災、風、水温などの予測データを活用することで、顧客はより洗練された設備を建設することができます。また、顧客がすでに保持している特定地域の施設や建物などの資産が将来的にどんなリスクに曝されているのかを知り、対策を練ることもできます。

企業に迫る「開示」の圧力

2022年4月には東京証券取引所が新しい3市場に再編され、プライム市場に上場する企業は気候変動リスクを開示しなければなりません。

松井氏:「気候や天候が企業にとって大きなリスクである」という認識は、世界的に急速に広がっています。金融庁も有価証券報告書による気候変動リスクの情報開示の義務化を検討しています。対象になるのは上場企業や非上場企業の一部など約4000社といわれています。

開示に関する規制が迅速に進んでいく一方、企業の情報開示のための体制が整っていないのもまた事実です。そのため、ジュピターのようなサービスを提供している企業が重要になってくるのです。

ソーキン氏:気候関連財務情報開示タスクフォース(Task Force on Climate-related Financial Disclosures, 以下、TCFD)の提言をきっかけに当社のサービスを検討する企業も多くあります。TCFD提言は、企業等がビジネスに影響する気候変動のリスクと機会を把握し、ガバナンス、戦略、指標と目標について開示することを推奨するものです。

気候変動リスクに関する情報を開示するということは、リスクを理解することです。リスクを理解したら、企業は手を打たずにはいられなくなります。そのため、TCFDは自社の気候変動リスクに向き合うとても良いきっかけになります。

松井氏:どの企業も、どの業種も、規模に関わりなく気候変動リスク対応を行わなければなりません。気候は刻一刻と変わっています。日本だけでも深刻な自然災害が次々に起こっています。気候変動リスクを把握できていなければ、資産、人、地域に対するリスクも把握できていないということです。私たちのような投資家やステークホルダーは、投資先企業の全体像を見なければなりません。こうした背景があるからこそ、日本政府もカーボンニュートラルを急いでいます。

測れないものは管理できません。気候変動リスクの対策をするなら、リスクを把握することから始めなければいけません。これはもう選択の問題ではなく、避けられないことなのです。

ジュピターが日本でしようとしていることがあればお教えください。

ソーキン氏:日本は当社にとって非常に重要な市場です。私たちには、パートナーや顧客とコミュニケーションをとる日本担当のカントリーマネージャーが必要です。銀行、保険、電力、パブリックセクターに強い人材を必要としています。なぜかというと、私たちは「日本でビジネスをする米国企業」ではなく「日本の企業」としてこの国でビジネスを行いたいからです。興味のある人はぜひ、挑戦してもらいたいですね。

本日はありがとうございました。

千葉大学が制御装置のいらないロボットアーム向け無線電力伝送システムを開発

千葉大学が制御装置のいらないロボットアーム向け無線電力伝送システムを開発

千葉大学は10月5日、ロボットアーム向けの無線電力伝送システムの開発に成功したことを発表した。負荷に関わりなく一定電圧を伝送できるため、特別な制御装置を必要とせず、システムを単純化できる可能性がある。

千葉大学大学院工学研究院の関屋大雄教授国際電気通信基礎技術研究所波動工学研究所、埼玉大学の大平昌敬准教授からなる研究チームは、ロボット用の2ホップ(中継器を2つ介する)、2出力の無線電力伝送システムを開発した。無線電力伝送は、コイルを介して無線で電力を供給し、電池を充電したり、モーターやセンサーを動かしたりするもの。基本原理は、スマートフォンのワイヤレス充電と同じだ。

ロボットの関節部分にこれを使用することで、電力線がねじれたり摩耗して断線するといった心配がなくなる。特に近年は、1つの送電装置から複数の機器に電力を供給できる多出力システムや、中継器(ホップ)を介して遠くまで電力を伝送できる多ホップシステムの研究が進んでいるが、そうしたシステムの運用には、負荷に応じて出力を調整するなどの制御が必要となり、その制御用の情報も無線でやりとりすることになるため、伝送遅延などの性能低下やシステムの複雑化が問題になっている。

そこで研究チームは、制御装置を使うことなく、モーターやセンサーの負荷の変動に対して常に一定の電力を供給する「負荷非依存動作」の設計論を構築した。この設計論は、低周波数から高周波帯域に適用できるため、高い汎用性を有するという。実際に、2ホップ2出力で、6.78MHz(免許なしで利用できる高周波帯域ながら電力伝送の設計が難しいとされるISM帯に属する)の無線電力伝送システムを設計し実験を行ったところ、負荷が変わっても一定の出力を保ち、高効率を維持できることが確認された。

この研究により、負荷変動に対して制御システムが不要になる可能性が示された。設計の簡素化とコストダウンが見込まれ、無線電力伝送システムの社会実装の加速が期待される。「あらゆる制御を不要とする制御レス無線電力伝送システム実現に向けた第一歩」だと研究チームは考えているという。

この研究は、総務省の委託研究「ミリ波帯におけるロボット等のワイヤフリー化に向けた無線制御技術の研究開発」により実施された。

アル・ゴアが英国のグリーンエネルギー技術スタートアップOctopus Energy Groupに約660億円を出資

Al Gore(アル・ゴア)元副大統領は、自身のGeneration Investment Management(ジェネレーション・インベストメント・マネジメント)を通じ、英国のエネルギー関連企業であるOctopus Energy Group(オクトパス・エナジー・グループ)に6億ドル(約660億円)の出資を行い、約13%の株式を取得した。この投資により、Octopusの評価額は約46億ドル(約5100億円)に達した。

Octopusは、再生可能エネルギー源からのエネルギーを競合他社よりもはるかに効率的にネットワーク上で迂回させることができると主張する「Kraken(クラーケン)」技術プラットフォームによって、エネルギー業界で有名になった。Octopusは現在、12カ国で1700万のエネルギー口座をこの方法で管理している。

Generationは、持続可能なビジネスを支援することを目的とした360億ドル(約3兆9970億円)規模のファンドマネジメント企業だ。Octopusは、Generationからの戦略的投資により、テキサス州を足掛かりに展開している米国市場へのさらなる参入を目指している。

今回のGenerationからの出資は、東京ガス、Origin Energy(オリジン・エネルギー)からの株式投資、スマートグリッド技術を専門とするUpside Energy(アップサイド・エネルギー)の買収に続くものだ。Octopusの小売事業は現在、英国、米国、ドイツ、スペイン、ニュージーランドで展開しており、Good Energy(グッド・エナジー)、Hanwha Corporation(ハンファ・コーポレーション)、Origin Energy(オリジン・エナジー)、Power(パワー)そしてE.ONとライセンス契約を結んでいる。

関連記事:AI活用エネルギースタートアップの英Octopusが東京ガスから208億円の投資を受けて評価額2000億円超え

また、Octopusは、ユーザーが電気自動車を充電する際にOctopus Energyの個人アカウントに充電できるよう、欧州に10万カ所の充電ポイントを持つ電気自動車のローミングネットワーク「Electric Juice(エレクトリック・ジュース)」を立ち上げている。また、Teslaと提携し、英国とドイツで「Tesla Power(テスラ・パワー)」を展開している。

Octopus Energyの創業者兼CEOであるGreg Jackson(グレッグ・ジャクソン)氏は、次のように述べた。「現在、英国のエネルギー市場は厳しい状況にありますが、化石燃料への依存をなくすためには、再生可能エネルギーや技術への投資が必要であることが浮き彫りになりました。そのため、世界をより良く変える持続可能な企業を支援するために設立されたGeneration Investment Managementとの契約を発表できることを嬉しく思います」。

「私たちは週に2回、300回のストレステストを行っています。テック企業である当社にとって、それは単なるアルゴリズムです。ライバル企業は、スプレッドシートを使ってやっています」。

Generation Investment Managementを代表して、長期株式戦略のパートナーであるTom Hodges(トム・ホッジス)氏は「Octopus Energyは、システムや気候変動に前向きな企業を支援するために長期的な投資を行うというGenerationのミッションに非常に適しています。世界は、パリ協定の目標を達成するために不可欠な、前例のないエネルギー転換の初期段階にあります。これは、環境と消費者にとってより良い方法で行うことができます」という。

Zoom経由のインタビューでジャクソン氏は、現在の世界的なエネルギー危機には2つの部分があると話してくれた。「1つは、エネルギーの卸売価格の危機です。世界のガス価格は去年だけで3倍、4倍になっています。そして、ガスの価格が高いだけでなく、電力の多くがガスからきているため、電力価格も上昇しています。これは、企業がどれだけ思惑売りと空買いをしてきたかを如実に表していると思います。つまり、現在、破綻している企業は、1年契約を販売していたのだが、6カ月分のエネルギーしか購入しておらず、残りはうまくいくよう祈っていただけの大企業なのです」。

Octopusは、「常に100%の防止策を行ってきました。私たちにとって、エネルギー小売は事業の1つに過ぎません。そして、グループ内には13の事業があります。私たちが常に目指してきたのは、優れたサービスを提供することと、リスク管理の行き届いたバックエンドを提供することでした。私たちは週に2回、ヘッジポジションに対して300回のストレステストを行っています。テック企業である当社にとって、それは単なるアルゴリズムです。ライバル企業は、それをしていないか、スプレッドシートでやっていて、うまくいっていません」。

「現実には、この危機は完全に化石燃料の危機です。もし、再生可能エネルギーを主要な供給源とし、ガスをバックアップとして使用していたら、このような状況にはなっていなかったでしょう」とジャクソン氏は付け加えた。

Octopusは、風力、太陽光、バイオマスなどの再生可能エネルギーのオーナーオペレーターで、35億ポンド(約5200億円)の発電資産を持ち、今後10年間でそれを10倍にする計画だという。

このGeneration案件は、3億ドル(約330億円)の即時投資と、2022年6月までに3億ドル(約330億円)の追加投資で構成されており、さらに一定の資金調達条件を満たす必要がある。

Octopusは、気候変動との戦いを政府レベルで行うため、ロンドンに独立した研究施設Centre for Net Zeroを設立し、さらに熱の脱炭素化に関する研究開発・トレーニングセンターに1000万ポンド(約15億円)を投資した。

画像クレジット:Octopus Energy Founders

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(文:Mike Butcher、翻訳:Yuta Kaminishi)

NTTドコモが電力事業に参入、再生可能エネルギーを積極活用の「ドコモでんき」を2022年3月開始

NTTドコモが電力事業に参入、太陽光・風力・地熱などの再生可能エネルギーを積極活用の「ドコモでんき」を2022年3月開始予定

NTTドコモが電力事業に参入します。2022年3月より新電力サービス「ドコモでんき」の提供を開始します。

「ドコモでんき」のサービス開始時点では、太陽光・風力・地熱などの再生可能エネルギーを積極活用した「ドコモでんき Green」、およびdポイントとの連携などにより割安に利用できる「ドコモでんき Basic」の2プランを提供します。NTTドコモが電力事業に参入、太陽光・風力・地熱などの再生可能エネルギーを積極活用の「ドコモでんき」を2022年3月開始予定

申込みはドコモショップおよび専用のウェブサイトで受け付けます。なお、サービスの詳細は2021年末までに公表予定。具体的な料金体系や、ドコモ契約とのセット割の有無は現時点では明かされていません。

また、同サービスはNTTアノードエナジーが小売電気事業者として電力の供給を担い、ドコモが取次事業者としてサービスを提供します。

NTTドコモは2030年までのカーボンニュートラル達成を目標にしていて、「ドコモでんき」の提供開始によって、社会全体のカーボンニュートラルにも貢献したいとコメントしています。

(Source:NTTドコモEngadget日本版より転載)

【コラム】レーザー主導の核融合は安全で安価なクリーンエネルギーへの道を開く

核融合発電を実現するという探求が最近飛躍的な前進を見せている。ローレンス・リバモア国立研究所にある国立点火施設(NIF)は、前例のない高い核融合収率の実験結果を発表した。単一のレーザーショットが1.3メガジュールの核融合収率エネルギーを放出する反応を開始させ、核燃焼の伝搬の痕跡を示した。

このマイルストーンに到達したことは、核融合が実際に発電の達成にいかに近づいているかを物語っている。この最新の研究結果は、進捗の急速なペース、特にレーザーが驚異的なスピードで進化していることを実証するものだ。

実際、レーザーは第二次世界大戦以降で最も影響力の強い技術的発明の1つである。機械加工、精密手術、消費者向け電子機器など、実に多様な用途で広く使用されているレーザーは、日常生活に欠かせないものとなっている。しかし、レーザーが正のエネルギー利得で制御された核融合を可能にするという、物理学のエキサイティングかつまったく新しい章の到来を告げていることはほとんど知られていない。

60年におよぶ技術革新の後、現在レーザーはクリーンで高密度、かつ効率的な燃料を開発する喫緊のプロセスをアシストしている。この燃料は、大規模な脱炭素化エネルギー生産を通して世界のエネルギー危機を解決するために必要とされている。レーザーパルスで達成できるピークパワーは、10年ごとに1000倍もの増加を示している。

物理学者たちは最近、1500テラワットの電力を生み出す核融合実験を行った。短時間で、全世界がその瞬間に消費するエネルギーの4〜5倍のエネルギーを生み出した。言い換えれば、私たちはすでに莫大な量の電力を生産できるのである。ただし、点火用レーザーを駆動するのに消費されるエネルギーをオフセットする、大量のエネルギーを生成する必要もある。

レーザーを超えて、ターゲット側でもかなりの進歩が起きている。最近のナノ構造ターゲットの使用は、より効率的なレーザーエネルギーの吸収と燃料点火を実現している。これが可能になったのは数年前のことだが、ここでも技術革新は急勾配を呈しており、年々大きな進展を遂げている。

このような進捗を目の前にして、商業的な核融合の実現を阻んでいるものは何なのかと不思議に思われるかもしれない。

2つの重大な課題が残存している。第1に、これらの要素を統合し、物理的および技術経済的な要件をすべて満たす統合プロセスを構築する必要がある。第2に、そのためには民間および公的機関からの持続可能なレベルの投資が必要である。概して、核融合の分野は痛ましいほどに資金が不足している。核融合の可能性を考えると、特に他のエネルギー技術との比較において、これは衝撃的である。

クリーンエネルギーへの投資は2020年に5000億ドル(約55兆円)を超える金額に達したものの、核融合研究開発への投資はそのほんの一部にすぎない。すでにこの分野で活躍している優秀な科学者は数え切れないほど存在するし、この分野への参入を希望している熱心な学生も大勢いる。もちろん、優れた政府の研究所もある。総じて、研究者と学生は制御核融合の力と可能性を信じている。私たちは、このビジョンを実現するために、彼らの仕事に対する財政的支援を確保すべきであろう。

私たちが今必要としているのは、目の前の機会の有効性を十分に発揮させる公共および民間投資の拡大である。このような投資にはより長い時間軸が存在するかもしれないが、最終的なインパクトは平行していない。今後10年間のうちに正味エネルギーの増加が手の届くところまでくると筆者は考えている。初期のプロトタイプに基づいた商用化は、非常に短期間で行われるだろう。

しかし、そうしたタイムラインは、資金および資源の利用可能性に大きく依存している。風力、太陽光などの代替エネルギー源にかなりの投資が行われているが、核融合を世界のエネルギー方程式の中に位置づけなければならない。これは、臨界的なブレークスルーの瞬間に向かう中で、特に顕著な真実である。

レーザー駆動の核融合が完成され商業化されることで、核融合が既存の理想的でないエネルギー源の多くに取って代わり、最適なエネルギー源となるポテンシャルが生まれる。核融合が正しく行われれば、クリーンで安全かつ安価なエネルギーが均等に供給されるのである。核融合発電所が最終的には、現在なお支配的な従来型発電所や関連する大規模エネルギーインフラのほとんどに置き換わると筆者は確信している。石炭やガスは不要となるであろう。

高収率と低コストをもたらす核融合プロセスの継続的な最適化により、現在の価格をはるかに下回るエネルギー生産が約束される。極限的には、これは無限のエネルギー源に相当する。無限のエネルギーが存在するなら、無限の可能性をも手に入れることができる。これで何が実現するだろうか?過去150年にわたって大気中に放出してきた二酸化炭素を取り除くことで、気候変動が逆転することは確かであると筆者は予見している。

核融合技術によって強化された未来では、水を脱塩するためにエネルギーを使うこともでき、乾燥地帯や砂漠地帯に多大なインパクトをもたらす無制限な水資源を作り出すことができる。総合的に見て、核融合は、破壊的で汚染されたエネルギー源や関連インフラに依存することなく、持続可能でクリーンな社会を維持し、より良い社会を可能にするものである。

SLAC国立加速器研究所、ローレンス・リバモア国立研究所および国立点火施設での長年にわたる献身的な研究を通じて、筆者は、最初の慣性閉じ込め核融合実験に立ち合い、その統制を担うという光栄に浴した。すばらしいものの種が植えられ、根付いていくのを目にした。人類のエンパワーメントと進歩に向けてレーザー技術の成果が収穫されることに、かつてないほどの興奮を覚えている。

同僚の科学者や学生たちが、核融合をタンジビリティの領域からリアリティの領域へと移行させることに取り組んでいるが、これにはある程度の信頼と支援が求められてくる。世界的な舞台において大いに必要とされ、より歓迎されるエネルギー代替品を提供することに対して、今日の小規模な投資は多大なインパクトを及ぼしかねない。

筆者は楽観主義と科学の側に賭けている。そして他の人々もそうする勇気を持ってくれることを願っている。

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画像クレジット:MickeyCZ / Getty Images

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(文:Siegfried Glenzer、翻訳:Dragonfly)

IBMが新型「Power E1080」サーバーを発表、エネルギー効率とパワーの劇的な向上を約束

強力なサーバーを稼働させる大規模なデータセンターでは、膨大な量の電力が使われていることを私たちは知っている。とりわけ気候変動が問題になっている今、電力消費量を削減できるのであれば、何であれ歓迎すべきことだ。その点においても注目されるのが、最新の「Power10」プロセッサーを搭載した新しい「IBM Power E1080」サーバーである。

IBMの主張によれば、競合する126台のサーバーで行っていた作業を、たった2台のE1080に集約することで、エネルギーコストを80%削減できるという(同社推定)。さらに同社は「この新サーバーは、主要なSAPアプリケーションのパフォーマンスを測定するSAPベンチマークにおいて、x86ベースの競合サーバーが使用するリソースの半分しか必要とせず、40%の差をつけて世界新記録を達成した」と述べている。

Moor Insight & Strategy(ムーア・インサイト・アンド・ストラテジー)社の創設者兼主席アナリストで、チップ業界に詳しいPatrick Moorhead(パトリック・ムーアヘッド)氏は、このシステムが達成できることについてのIBMの大胆な主張は、ハードウェア設計の観点から見て納得がいくと語っている。「SAP、Oracle(オラクル)、OpenShift(オープンシフト)のワークロードについての同社の主張は、同じ性能を得るために必要なソケットや物理プロセッサの数が単純に少なくて済むという点で、まずは納得できるものでした。これらの数値は、(将来的に)Sapphire Rapids(サファイアラピッズ)に置き換えられることになっているIntel(インテル)のCascade Lake(カスケードレイク)と比較したものです」と、同氏は述べている。

IBMのPower Systems Group(パワー・システムズ・グループ)でバイスプレジデント兼ビジネスライン・エクゼクティブを務めるSteve Sibley(スティーブ・シブリー氏)によれば、この新しいサーバー(およびそれを実行するPower10チップ)は、スピード、パワー、効率、セキュリティの組み合わせを求める顧客のために設計されているという。「ここで我々が提供する拡張性とパフォーマンスは、お客様の最も高い要求に迅速に対応して拡張でき、機敏性をさらに高めることが可能です」と、同氏は述べている。

顧客に用意された選択肢としては、E1080サーバーを買い取り、企業のデータセンターに設置することもできるし、あるいはIBMのクラウド(場合によっては他社のクラウドも)からサービスとしてサーバーアクセスを購入することもできる。または、サーバーをレンタルして自社のデータセンターに設置し、分単位で支払うことでコストを軽減することも可能だ。

「当社のシステムは、いわゆる購入のベースコストという観点からすると少々高価ですが、当社ではお客様が実際に(E1080サーバーを)サービスベースで購入し、分単位の粒度で料金を支払うこともできるようにしています」と、シブリー氏は語る。

さらに、Power10チップをベースに初めて発売されるこのサーバーは、内部でRed Hat(レッドハット)のソフトウェアが動作するように設計されており、このことはIBMが2018年に340億ドル(約3兆7000億円)で買収したRed Hatに新たな活躍の場を与えている。

関連記事:IBMが約3.7兆円でRed Hat買収を完了

「Red Hatのプラットフォームをこのプラットフォームに導入することは、RHEL(Red Hat Enterprise Linux、レッドハット・エンタプライズ・リナックス)オペレーティングシステム環境からだけでなく、OpenShift(オープンシフト、同社のコンテナプラットフォーム)からも、アプリケーションをモダナイズするための重要な手段となります。また、当社のRed Hat買収とそれを活用することのもう1つの重要な点は、Red HatのAnsible(アンシブル)プロジェクトや製品を活用して、当社のプラットフォームの管理と自動化を推進していくということです」と、シブリー氏は説明する。

2020年4月にIBMのCEOに就任したArvind Krishna(アービンド・クリシュナ)氏は、一部のコンピューティングがクラウド上に存在し、一部がオンプレミスに存在するハイブリッド・コンピューティングに会社の重点を移そうとしている。今後は多くの企業が何年もの間、同じ状況になるだろう。IBMは、Red Hatをハイブリッド環境のマネジメントプレーンとして活用し、さまざまなハードウェアおよびソフトウェアのツールやサービスを提供したいと考えている。

Red HatはIBMの傘下で独立した企業として活動を続けており、顧客にとって中立的な企業であり続けたいと考えているものの、ビッグブルーは可能な限りその提供物を活用し、自社のシステムを動かすために利用する方法を模索し続けている。E1080はそのための重要な手段を提供することになる。

IBMによると、新型サーバーの注文受付は直ちに開始されており、納品は2021年9月末より始まる見込みだという。

画像クレジット:IBM(Image has been modified)

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(文:Ron Miller、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

【コラム】材料、電池、製造の炭素排出量を積み上げたEVの本当のカーボンコスト

EVの未来を夢見る投資家や政治家は、EVこそが世界の二酸化炭素排出量を大幅に削減すると信じている。しかし、その夢は完全に不透明だ。

従来型の自動車からEVへの置き換えが進んでも、世界の二酸化炭素排出量削減の効果はあまり大きくない。それどころかかえって排出量を増加させてしまう可能性もある、とする研究結果は増え続けている。

問題となるのは、発電時の炭素排出量ではない。顧客がEVを受け取るまでに発生する、私たちが気がついていない炭素排出量、すなわちバッテリーの製造に必要なすべての材料を入手し、加工するという迷路のように複雑なサプライチェーンで発生する「エンボディド・カーボン(内包二酸化炭素、環境負荷の指標)」のことだ。

ハンバーガー、住宅、スマートフォン、バッテリーなどのすべての製品で、生産工程の上流に「隠された」内包二酸化炭素が存在する。マクロレベルの影響については、フランスの気候変動に関する高等評議会が2020年発表した研究結果を参照して欲しい。この分析では、フランスが国を挙げて炭素排出量の削減を達成したという主張は幻想であることがわかる。炭素排出量は実際には増加しており、輸入品の内包二酸化炭素を計算すると、報告されていた値よりも約70%高くなった。

内包二酸化炭素の数値化は大変難しく、特にEVでは非常に複雑で不確実である。EVは走行中には何も排出しないが、生涯総炭素排出量の約80%は「バッテリーを製造する際のエネルギー」および「自動車を動かすための電力を発電する際のエネルギー」から発生している。残りは、クルマの非燃料部品の製造によるものである。従来型の自動車の場合は、生涯総炭素排出量の約80%が走行中に燃焼した燃料から直接発生する二酸化炭素で、残りは自動車の製造とガソリンの生産にかかる内包二酸化炭素から発生する。

従来型の自動車の燃料サイクルは狭い範囲に限定され、ほとんどの特徴が十分に解明している。そのため、厳しい規制がなくてもほぼすべてが追跡可能で、仮定(推定)の部分は少ない。しかし、電気自動車の場合はそうではない。

例えば50の学術研究を調査したレビューによると、電気自動車のバッテリー1つを製造する際の内包二酸化炭素は、最低でも8トン、最高で20トンである。最近の技術的な分析では、約4〜14トンとするものもある。14トンや20トンといえば、効率の良い従来型の自動車が、生涯の走行でガソリンを燃やした際に発生する二酸化炭素とほぼ同じ量である。それに対し、今挙げたEVの数値は、自動車が顧客に届けられ、走り出す前の話である。

この不確実性の原因は、バッテリーのライフサイクルで使用されるエネルギーの量と種類の両方が持つ、固有かつ解決できないばらつきにある。いずれも地理的条件や処理方法に左右され、データが公開されていないことも多い。内包二酸化炭素の分析によれば、ガソリン1ガロン(約3.7リットル)に相当するエネルギーを貯蔵できる電池を製造するために、エネルギー換算値で2〜6バレル(1バレルは約159リットル)の石油が必要であることがわかっている。つまり、EV用バッテリーの内包二酸化炭素は、無数の仮定に基づく推定値であり、実際のところ、今現在のEVの「炭素換算単位あたりの走行距離」を測定したり、将来の数値を予測したりすることは誰にもできない。

政府のプログラムや気候変動対策ファンドへの資金は殺到している。2021年もBlackRock(ブラックロック)General Atlantic(ジェネラルアトランティック)、TPGの3社がそれぞれ40〜50億ドル(約4400~5500億円)規模のクリーンテックファンドの新設を発表するなど、2021年の投資額は2020年の記録を上回る。私たちは炭素排出量を削減するための万能薬と思われているEVなどの技術の内包二酸化炭素に対し、きっちりと検討する時期を逸してしまった。ここからは、この万能薬が期待通りの結果を出していないことをご紹介する。

鉱山のデータ

自動車の目標は、燃料システムが総重量に占める割合をできるだけ小さくして、乗客や貨物のためのスペースを確保することだ。リチウム電池は、ノーベル賞級の革新的な製品であるはずだが、機械を動かすパワーの指標である「エネルギー密度」は、いまだに1位のはるか後塵を拝し、2位に甘んじている。

リチウム系の電池が本来持つ重量エネルギー密度は、理論的には1キログラム(バッテリーセルではなく、化学物質のみの重量)あたり約700ワット時(Wh/kg)である。これは鉛蓄電池のエネルギー密度に比べれば約5倍だが、石油の1万2000Wh/kgに比べればごくわずかに過ぎない。

30kgのガソリンと同じ航続距離を得られるEVのバッテリーは500kgになる。この差はガソリンエンジンと電気モーターとの重量差によっては埋められない。なぜなら、電気モーターはガソリンエンジンよりも90kg程度しか軽くないからだ。

自動車メーカーは、EVのモーター以外の部分を鉄ではなくアルミニウムやカーボンファイバーを使用して軽量化することで、バッテリーの重量による損失の一部を相殺している。残念なことに、これらの素材は鉄と比較して内包二酸化炭素がそれぞれ300%、600%多い。EVの多くに使用されている500kgのアルミニウムによって、バッテリー以外の内包二酸化炭素が(多くの分析で無視されているが)6トン増加することになる。しかし、すべての要素の中で最も炭素排出量の計算が面倒なのは、バッテリー自体の製造に必要な要素である。

関連記事:【コラム】さらなる電化の普及にはまったく新しいバッテリー技術へのアプローチが必要だ

リチウム系の電池にはさまざまな元素の組み合わせがあり、安全性、密度、充電率、寿命など、バッテリーの複数の性能指標を妥協しながら選択される。バッテリーの化学物質自体が持つ内包二酸化炭素は、選択された元素によって600%もの差がある

広く普及しているニッケル・コバルト系電池の主成分を考えてみよう。一般的な500kgのEV用バッテリーには、約15kgのリチウム、約30kgのコバルト、約65kgのニッケル、約95kgのグラファイト、約45kgの銅が含まれている(残りは、スチール、アルミニウム、プラスチックの重さである)。

内包二酸化炭素の不確実性は、鉱石の品位、つまり鉱石の金属含有量から始まる。鉱石の品位は含まれる金属や鉱山、経年によって異なり、わずか0.1%から数%である。今わかっている平均値で計算すると、EV用のバッテリー1台分に必要な鉱石は次のようになる。1000トン以上のリチウムブライン(かん水)から15kgのリチウム、30トン以上の鉱石から約30kgのコバルト、5トン以上の鉱石から約65kgのニッケル、6トン以上の鉱石から約45kgの銅、約1トン以上の鉱石から約95kgのグラファイトである(なお、採掘にはエネルギーを大量に消費する重機を使用する)。

ボリビア・ウユニ塩原の南側ゾーンにある国有の新しいリチウム抽出施設の蒸発プールで、ブラインを積み込むトラックの航空写真。現地時間2019年7月10日(画像クレジット:PABLO COZZAGLIO / AFP via Getty Image)

さらに、そのトン数には、金属を含む鉱石に到達するまでに最初に掘らなければならない岩石物質の量(オーバーバーデン)を追加する必要がある。オーバーバーデンも、鉱石の種類や地質によって大きく異なるが、通常は1トンの鉱石を採掘するために約3〜7トンのオーバーバーデンを掘削する。これらの要素を総合すると、500kgのEV用バッテリー1台を作るためには、約250トンの岩石を掘削して、合計約50トンの鉱石を運搬し、さらに金属を分離するための加工を行う必要があることになる。

内包二酸化炭素は、鉱山の場所によっても影響を受ける。これは理論的には推定可能だが、将来的な数値は推測の域を出ない。遠隔地にある鉱山ではトラック輸送の距離も長くなり、ディーゼル発電機によるオフグリッド電力に頼らざるを得ない。現在、鉱物部門だけで世界の産業エネルギー使用量の約40%を占めている。また、全世界のバッテリーやバッテリー用化学物質の半分以上は、石炭火力発電の多いアジアで生産されている。欧米での工場建設が期待されてはいるとはいえ、いずれの調査も、鉱物のサプライチェーンは長期にわたってアジアが完全に支配すると予測している。

電力網とバッテリーの大きなばらつき

EVの炭素排出量の分析では、ほとんどのケースでバッテリーの内包二酸化炭素が考慮されている。しかし、この内包二酸化炭素は、異なる電力網でEVを使用した場合に生じるばらつきに対し、単純化のために単一の値を割り当てて計算されていることが多い。

国際クリーン輸送協議会(ICCT)が最近行った分析は非常に参考になる。ICCTは、バッテリーに固定の炭素負債を設定し、ヨーロッパのどこでEVを運転するかによってカーボンフットプリント(ライフサイクル全体を通して排出される温室効果ガスの排出量を二酸化炭素に換算した指標)がどのように変化するかに着目した。その結果、EVのライフサイクルにおける炭素排出量は、燃費の良い従来型の自動車と比較して、ノルウェーやフランスでは60%、英国では25%削減されるが、ドイツではほとんど削減できないことがわかった(ドイツの送電網における1kWhあたりの平均炭素排出量は、米国の送電網とほぼ同じである)。

この分析では、平均的な送電網の炭素排出量データを使用しているため、必ずしもバッテリー充電時の炭素排出量を表しているわけではない。充電に使用される実際の電力源は、平均値ではなく特定の時間によって決定される。水力発電と原子力発電が24時間稼働しているノルウェーやフランスでは、EV充電のタイミングによる変動は少ないが、それ以外の地域では、太陽光100%の時間や石炭100%の時間など、充電の時間帯や時期、場所によって大きく変動する可能性がある。一方、ガソリンの場合は、使用する場所と時間にこのような曖昧さはなく、全世界でいつでも同じである。

ドイツ・ボクスバーグにある亜炭火力発電所。ドイツ東部のルサティア地方とその経済基盤は、イェンシュヴァルデ、シュヴァルツェ・プンペ、ボクスベルクの石炭火力発電所に大きく依存している(画像クレジット:Florian Gaertner / Photothek via Getty Image)

ICCTが最近行った別の分析でも電力網の年平均値が使用され、従来型の自動車と比較した場合のEVのライフサイクルにおける炭素排出削減量は、インドでは25%、ヨーロッパでは70%となっている。しかし、欧州内での比較と同様に、バッテリー製造時の炭素排出量に、単一の低い値を仮置きしている。

国際エネルギー機関(IEA)は、現在のほとんどの鉱物生産は、炭素排出量の振れ幅の上限で行われていると報告している。そのため、バッテリーの内包二酸化炭素には単一の低い平均値を仮置きするのではなく、バッテリーごとに異なる内包二酸化炭素の影響を考慮しなればならない。ICCTの結果を内包二酸化炭素の現実に合わせて調整すると、EVのライフサイクルにおける排出削減量は、ノルウェーでは40%削減(調整前は60%)できるが、英国やオランダではほとんど削減できず、ドイツでは20%の増加となる。

現実世界での不確実性はこれだけではない。ICCTもその他の類似の分析でも、480kmの航続距離(従来型の自動車からEVへの置き換えを進めるために必要な距離)を実現できるバッテリーのサイズよりも、実際よりも30~60%小さいバッテリーで計算している。現在のハイエンドEVでは大型のバッテリーが一般的だ。バッテリーのサイズを2倍にすると、内包二酸化炭素も単純に2倍になり、多くのシナリオ(あるいはほとんどのシナリオ)で、EVのライフサイクルにおける炭素排出削減効果が大幅に損なわれるか、ゼロになる。

同様に問題なのは、将来の排出削減量を予測する際に、将来の充電サプライチェーンがEVが存在する地域に「存在する」明示的想定していることだ。ある分析は広く引用されているが、米国のEV用アルミニウムは国内の製錬所で製造され、電力は主に水力発電のダムで供給されると仮定している。理論的には可能かもしれないが、現実はそうではない。例えば米国のアルミニウム生産量は全世界の6%に過ぎない。製造プロセスがアジアにあると仮定すると、EV用アルミニウムのライフサイクルにおける排出量は計算上150%も高くなる。

EVの内包二酸化炭素算出の問題点は、石油が採掘、精製、消費される際の内包二酸化炭素の透明性に匹敵する報告メカニズムや基準が存在しないことだ。エグゼクティブサマリーやメディアの主張には反映されていないとしても、研究者は正確なデータを得るためには課題があることを知っている。技術資料の中には「リチウムイオン電池の使用が急速に増加している現状の、環境への影響を正しく評価するためには、リチウムイオンバッテリーセルの製造に必要なエネルギーをより深く理解することが重要である」というような注意書きが見られることがよくある。また、最近の研究論文には「残念ながら、その他のバッテリー原料の業界データはほとんどないため、ライフサイクル分析の研究者はデータギャップを埋めるために工学的な計算や近似値に頼らざるを得ない」という記載もあった。

全世界の鉱物のサプライチェーンを計算の対象にして、何千万台もの電気自動車の生産に対応させようとすると、この「データギャップ」が大きな壁となる。

量を増やす場合

最も重要なワイルドカードは、国際エネルギー機関(IEA)がいうところの「エネルギー転換鉱物」(ETM、風力や太陽光を電気に変換するために必要な鉱物)を必要量確保するために予想されるエネルギーコストの上昇である。

IEAは2021年5月、バッテリーや太陽電池、風力発電機の製造に必要なエネルギー転換鉱物の供給に関する課題について、重要な報告書を発表した。この報告書は、他の研究者が以前から指摘していたことを補強している。従来型の自動車と比較して、EVでは1台あたり約5倍のレアメタルを使用する。これに従い、IEAは、現在のEVの計画と風力発電や太陽光発電の計画を合算すると、一連の主要鉱物を生産するためには、全世界で鉱山生産量を300〜4000%増加させる必要があると結論づけている。

例えばEVは従来型の自動車に比べて銅の使用量が約300〜400%多いが、全世界の自動車総数に占めるEVの割合はまだ1%にも満たないため、世界中のサプライチェーンには今のところ影響が出ていない。EVを大規模に生産するようになると、電力網用のバッテリーや風力・太陽光発電機の計画と合わせた「クリーンエネルギー」分野は世界の銅消費量の半分以上を占めるようになるだろう(現在は約20%)。現在はごくわずかしか使用されていないニッケルとコバルトという関連し合う鉱物についても、クリーンエネルギーへの移行を進めることで、その分野の需要が全世界の需要のそれぞれ60%、70%を占めるようになると考えられている。

横浜港に到着し、駐車場に並べられたテスラ社の車両。2021年5月10日月曜日(画像クレジット:Toru Hanai/Bloomberg via Getty Images)

電気自動車の義務化が鉱業に及ぼす究極の需要規模を説明するために、5億台の電気自動車が普及した世界(それでも自動車全体の半分にも満たない)を考えてみよう。この世界では約3兆台のスマートフォンのバッテリーを製造できる量の鉱物資源を採掘する必要があり、これは、スマートフォンのバッテリーを2000年以上も採掘・生産してきたことに相当する。念のため確認しておくと、これだけのEVを導入しても、世界の石油使用量は15%程度しか削減されない。

全世界での驚異的な採掘量の拡大がもたらす環境、経済、地政学的な影響はさておき、世界銀行は「鉱物と資源の持続可能な開発のための新たな課題」について警告している。原材料の調達はEVのライフサイクルにおける二酸化炭素排出量のほぼ半分を占めるので、このような採掘量の増加は、将来の鉱物の二酸化炭素排出原単位(carbon intensity、炭素集約度ともいう)の予測に直接関係する。

IEAのレポートでも指摘されているように、エネルギー転換鉱物の問題は「二酸化炭素排出原単位が高い」だけでない。鉱石の品位が長年にわたって低下し続け、採掘量1kgあたりのエネルギー使用量が増加する傾向があるのだ。鉱物の需要が加速すれば、採掘者は必然的に低品位の鉱石を、より遠隔地で採掘することになる。たとえばIEAは、リチウムとニッケルをそれぞれ1kg生産する際の二酸化炭素排出量は300~600%増加すると予測している。

フランスの海外共同体ニューカレドニアのチオにあるニッケル鉱山(画像クレジット:DeAgostini / Getty Images)

銅の動向はこの課題をよく表している。1930年から1970年にかけて銅鉱石の品位は年々に低下していったが、採掘後の化学プロセスも進歩したため、1トンの銅を生産するためのエネルギー使用量は30%減少した。しかしこれは、最適化された化学プロセスが物理学的な限界に近づくまでの一時的なものだった。1970年以降も鉱石の品位は下がり続け、それに伴って銅1トンあたりのエネルギー使用量は増加し、2010年には1930年と同じレベルに戻ってしまった。近い将来、他の鉱物でも鉱石の品位が下がると、同じパターンをたどることになるだろう。

それにもかかわらず、IEAは他の機関と同様に、今現在の推定平均サプライチェーン二酸化炭素排出原単位を用いて「将来EVが増加することで二酸化炭素の排出量を削減できる」と主張している。しかし、IEA自身の報告書のデータは、エネルギー転換鉱物の内包二酸化炭素が増加することを示唆している。さらに、IEAは、太陽光発電所や風力発電所は天然ガスの発電所に比べて500〜700%多く鉱物を必要とすると指摘しているが、それらの発電所の建設が大幅に増加すると、鉱山サプライチェーンがさらに逼迫し、商品市場では価格が劇的に上昇することになる。

Wood Mackenzie(ウッドマッケンジー)の資源専門家は、EVのシェアが現在の1%未満から10%に近づくと、到底対応できないほどの資源需要が発生し「バッテリー技術の開発、テスト、商業化、製造、EVとそのサプライチェーンへの適用がこれまで以上に迅速に行われなければ、EV目標を達成し、ICE(内燃機関)を禁止することは不可能であり、現在のEV普及率予測に問題が生じる」と予測している。

政策を定めたところで、化学物質の開発・製造や鉱業など、すでに業界トップクラスのものを短期間で加速させる能力があるという証拠はない。リチウム電池の化学的原理が発見されてから、最初のTeslaセダンが発売されるまでに30年近くかかっているのだから。

炭素効率性を追求するバッテリーサプライチェーン

もちろん、EVサプライチェーンの炭素排出量の増加が世界を脅かす要因を改善する方法はある。それにはバッテリーの化学的性質の改善(1kWhの蓄電に必要な材料の削減)、化学プロセスの効率化、鉱山機械の電動化、リサイクルなどが挙げられ、いずれも「避けられない」あるいは「必要な」解決策とされることが多い。しかし、EVの急速な普及を想定した場合、これらはいずれも大きなインパクトがあるものではない。

よくありがちなニュースでは、何らかの「ブレークスルー」があったように報道されるが、EVの1kmあたりに必要な物理的材料を桁違いに変化させるような、商業的に実現可能な代替バッテリーの化学原理は見つかっていない。ほとんどの場合、化学組成を変えても重量が変わるだけだ。

例えばコバルトの使用量を減らすためにはニッケルの含有量を増やすのが一般的である。炭素やニッケルなどのエネルギー原子を使用せず、代わりに鉄などの(レアではない)エネルギー密度の低い元素を使用したバッテリー(リン酸鉄リチウムイオン電池など)は、エネルギー密度が低くなる。後者の場合、同じ航続距離を維持するためには、より大きく、より重いバッテリーが必要になる。いつかは組成的に優れた電池用の化学物質の組み合わせが発見されるだろうが、化学メカニズムを検証から産業用に安全にスケールアップするには何年もかかる。それ故に、現在、そして近い将来自動車に搭載されるバッテリーに使用される技術は、いつか理論的に可能になる技術ではなく、今現在実現している技術となる。

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また、鉱物の精製や変換に使用されるさまざまな化学的プロセスの効率化も期待されている。技術者が技術者である以上、改良は当然であり、デジタル時代にはさらに改良が進むかもしれない。しかし、研究されつくした物理化学の視点では、すでに物理学的限界に近い状態で精製や変換のプロセスが行われているので「ステップ関数(階段関数、階段を上がるように数値が増える関数)」的な変化は期待できない。つまり、リチウム電池は、プロセス(およびコスト)効率の急速な改善が見られる初期段階をとっくに過ぎて、少しずつしか改良されない段階に入っているのだ。

鉱山用トラックや機器の電動化についてはCaterpillar(キャタピラー)、Deere & Company(ディアアンドカンパニー)、Case(ケース)などがプロジェクトを進めており、量産機もいくつか販売されている。有望なデザインが登場しているユースケースもあるが、ほとんどのユースケースで重機に24時間365日の電力供給を行うにはバッテリーの性能が不足している。さらに、鉱山機械や産業機械の回転率は数十年単位であり、鉱山では、今後も多くの石油燃焼機材を長期間使用することになる。

リサイクルは新たな需要を軽減するためによく提案される手段だ。しかし、仮にすべてのバッテリーがリサイクルされたとしても、現在のEV推進策で提案されている(あるいは義務化されている)EVの増加予測から生じる膨大な需要の増加には到底対応できない。いずれにしても、バッテリーをはじめとする複雑な部品からレアメタルをリサイクルする際の有効性と経済性については、技術的な課題が未解決のまま残っている。いつかは自動化されたリサイクルが可能になるだろうと想像できるかもしれないが、現時点ではそのような解決策は存在しない。また現在も将来も、バッテリーの設計は統一されておらず、政策立案者やEV推進者が想定している期間内に設計の統一化を実現するための明確な道筋はない。

法規制の混乱とEVの排出権

ここまで見てきたとおり、EVの炭素排出量については非常に多くの仮定、推測、曖昧さがあるため、炭素排出量削減に関する主張は、詐欺とまではいかなくても、操作の対象となることが避けられない。必要なデータの多くは、技術的な不確実性、地理的要因の多様性と不透明性、多くのプロセスが公開されていない現状を考慮すると、通常の規制方法では収集できないと思われる。それでも、米国証券取引委員会(SEC)は、そのような開示要求を検討しているようだ。EVのエコシステムにおける不確実性は、欧州や米国の規制当局が法的拘束力のある「グリーン開示規則」を制定したり、二酸化炭素の排出量に関する「責任ある」ESG指標(企業を、環境[Environment]、社会[Society]、企業統治[Governance]の観点から評価した際の指標)を施行したりすれば、法的な大混乱につながる可能性がある。

自動車の石油使用量の削減に熱心な政策立案者に対しては、バッテリー化学や採掘の革命を待つまでもなく、技術者は目標を達成するためのより簡単で確実な方法を開発済みだ。燃料使用量を最大50%削減できる内燃機関はすでに存在している。より効率的なエンジンを積んだ自動車を購入するインセンティブを与え、その半分が燃費の良い自動車を購入するとしても、3億台のEVが供給されるよりも早く実現でき、安価である。そしてその検証は透明で、不確実性は存在しない。

編集部:本稿の執筆者Mark Mills(マーク・ミルズ)氏は「The Cloud Revolution」の著者。「The Cloud Revolution: How the Convergence of New Technologies Will Unleash the Next Economic Boom and a Roaring 2020s」を出版予定。マンハッタン研究所のシニアフェロー、ノースウェスタン大学マコーミック工学部のファカルティフェロー。

画像クレジット:Xu Congjun/VCG / Getty Images

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(文:Mark Mills、翻訳:Dragonfly)

Cruiseがカリフォルニアの農家から購入する太陽光発電を電気自動車や自動運転車の動力源に

General Motors(ゼネラルモーターズ)傘下で自動運転車を開発するCruise(クルーズ)は、カリフォルニア州セントラルバレーの農場から太陽光発電電力を調達する「Farm to Fleet」という新たな取り組みを始めた。San Francisco Chronicle紙が最初に報じたところによると、Cruiseは、Sundale Vineyards(サンデール・ヴィンヤーズ)とMoonlight Companies(ムーンライト・カンパニーズ)から再生可能エネルギー・クレジットを直接購入し、サンフランシスコで運行するすべての電気自動車の電力供給に活用しようとしている。

Cruiseは先日、サンフランシスコで人間のセーフティーオペレーターがいない試験車両で乗客を運ぶ認可を取得した。また、GM Financial(GMフィナンシャル)から50億ドル(約5500億円)の融資枠を受け、電気自動車や自動運転車など数百台のCruise Originを購入し、商用化に向けた動きを加速させている。今回のカリフォルニア州の農家との提携は、再生可能エネルギーの導入を進めるカリフォルニア州にとって有益であることは間違いないが、Cruiseは慈善事業を行っているわけではない。

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California Independent System Operator(カリフォルニア独立系統運用機関)はこの夏、電力需要が高まり、停電を起こす可能性のある熱波を想定し、米国西部の電力会社にメガワット単位での販売を呼びかけた。電力供給は、干ばつや停電、新しいエネルギー源の導入の遅れ、水力発電の減少などにより、すでに予想を下回っている。Cruiseが計画している大幅な台数の増加にカリフォルニア州の送電網が対応するには、送電網を強化するしかないようだ。しかし、Cruiseは、エネルギー源を確保するだけではなく、より高い目標を持っていることを明言している。

Cruiseの広報担当Ray Wert(レイ・ワート)氏はTechCrunchの取材に対し「私たちが都市やコミュニティのために正しいことをし、交通手段を根本的に変えていくことが目的です」と述べた。

環境保護団体「Nature Conservancy」の報告書によると、カリフォルニア州の農家は干ばつに悩まされており、農地を太陽光発電所に変えることにより気候変動の目標を達成できる可能性がある。だからこそCruiseは、セントラルバレーの農家に今アプローチすることに意味があると考えたのだ。

「Farm to Fleetは、都市部の交通機関の二酸化炭素排出量を急速に削減すると同時に、再生可能エネルギーに取り組むカリフォルニアの農家に新たな収入をもたらす手段です」とソーシャル・アフェアーズ&グローバル・インパクト担当副社長のRob Grant(ロブ・グラント)氏はブログで述べた。

Cruiseは、クリーンエネルギーのパートナーであるBTR Energy(BTRエナジー)を通じて、農家に対し合意した契約料金を支払っている。同社はコストを公表していないが、他の形態の再生可能エネルギー・クレジット(REC)を使用した場合と比べて、支払う金額は大きくも小さくもないとしている。RECは、再生可能エネルギー源が1メガワット時の電力を発電し、それを送電網に渡すと生成される。Cruiseによると、Sundaleは20万平方フィート(約1万9000平方メートル)の冷蔵倉庫に電力を供給するために、2メガワットの太陽電池容量を設置し、Moonlightは選別・保管施設に合計3.9メガワットの太陽電池アレイと2つのバッテリー貯蔵システムを設置しているという。これらの農場からクレジットを購入することで、Cruiseは電力使用量のうち特定の量が再生可能エネルギーで賄われていることを証明できる。RECは一意であり追跡できるため、どこから来たのか、どのようなエネルギーを使ったのか、どこに行ったのかが明確になる。Cruiseは、農場から購入するRECの数量について明らかにしていないが、同社のサンフランシスコの車を動かすのに十分な量だと述べている。

「太陽光発電の電力は同じ送電網を通っています。Cruiseは農場のソーラーパネルで発電された再生可能エネルギー・クレジットを購入しますが、最終的にそれはなくなります」とワート氏は話す。「カリフォルニア州大気資源局に四半期ごとに提出するデータにより、車両の充電に使用した電力量に相当する数のRECを償却しています」。

また、CruiseはBTRエナジーと協力し、アリゾナ州での事業に必要なRECの供給を確保している。同州での事業には、Walmart(ウォルマート)との配送試験も含まれる。

カリフォルニア州では低炭素燃料基準が定められており、輸送用燃料の炭素強度を低減し、より多くの低炭素代替燃料を提供することを目的としているため、完全に再生可能な電力を使用することはCruiseにとって有益だとワート氏はいう。同社はすべてのEV充電ポートを自社で所有・運営しているため、電力の炭素強度スコアとエネルギー供給量に応じてクレジットを生成することができる。Cruiseはこのクレジットを、二酸化炭素排出量の削減や法規制の遵守を求める他の企業に販売することができる。

Cruiseは、実用性だけでなく、業界の標準を確立し、再生可能エネルギーの需要を創出することで、より多くの人々や企業に再生可能エネルギーの創出を促すことを目指している。

グリッド分析を行うスタートアップであるKevala(ケバラ)のCEOのAram Shumavon(アラム・シュマボン)氏は、今回の提携について、Cruiseを賞賛すべきだと述べている。

「Cruiseが認めようとしているのは、同社が消費する電力に関する炭素強度であり、それを何らかの形で相殺しているということです」とシュマボン氏はTechCrunchに語った。「炭素会計にはスコープ3と呼ばれるカテゴリーがあり、サービス提供に必要なサプライチェーンが実際にどれだけの炭素を含んでいるのかを把握しようとするものです」。

シュマボン氏は、商業活動の炭素強度を定量化することで、企業はその説明責任を果たすことができ、供給者には自然エネルギーからの供給を求めることで、変化を促すことができると述べている。例えば、ある自動車メーカーは、アルミニウムを供給する会社に、石炭発電ではなく水力発電のある地域からのみ調達するよう依頼することができる。これにより、自動車メーカーの炭素強度を下げることができる。

「輸送部門は温室効果ガス排出量の40%以上を占めています。そのため、我々は2月に『クリーンマイル・チャレンジ』を発表し、自動運転業界の他の企業に、毎年何マイルを再生可能エネルギーで走行しているかを報告するよう呼びかけました」とワート氏は話す。「他の企業が我々に追随することを期待しています」。

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画像クレジット:Cruise

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Nariko Mizoguchi

テスラがテキサス州での電力販売を計画

8月中旬にテキサス州の電気規制当局に提出された申込書によると、Elon Musk(イーロン・マスク)氏のTesla(テスラ)は電気自動車、ソーラーパネル、蓄電バッテリー以外にも目を向けていて、いま顧客に直接給電したいと考えているようだ。この申し込みについてはEnergy Choice Mattersが最初に報じた。

2021年8月16日テキサス州の公共事業委員会に提出された申込書は、Teslaの子会社Tesla Energy Venturesのもとに、いわゆる「電力小売事業者」(REP)になるためのものだ。規制緩和されたテキサス州独自の電力マーケットでは、REPは通常、発電事業者から卸電力を購入し、顧客に販売する。現在、REP10社以上が公開市場で競合している。

Teslaはまた、同州でいくつかの実用規模バッテリーの申し込みも提出した。オースティン周辺に立地するギガファクトリー近くにある250メガワットバッテリーとヒューストン近くの100MWのプロジェクトだ。これらのプロジェクトは電力供給会社になるという取り組みとは関連がないが、全体として同社のエネルギー事業の野心的なロードマップを露わにしている。

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想像して欲しい。Teslaが顧客に電気を販売するだけではなく、ブローカー顧客がTeslaのPowerwallやソーラーパネル製品からの余剰エネルギーを電力網に販売できるかもしれないのだ。明らかに、あらゆる家庭を分散型発電所に変えるというマスク氏のビジョンを実現する1つの方法だ。

公共事業委員会へのこの最新の申し込みの6カ月前、前代未聞の大雪によってテキサス州の送電網の大半が何日間も停止し、何百万人という人が氷点下の数日間を電力なしで過ごすことを余儀なくされた。このウィンターストーム後にREP数社が事業をたたんだ。こうした企業は卸電力の価格をメガワットアワーあたり9000ドル(約99万円)にしていた(季節平均価格は約50ドル、約5500円だ)。

ボカチカにあるSpaceXの広大な施設を含め、多くの事業をカリフォルニアからテキサスに移したマスク氏は当時、Twitterでテキサス州の送電事業者を批判していた。

マスク氏は、テキサス電気信頼性評議会は「Rを獲得していない」と述べ、頭字語でR(Reliability、信頼性)に言及していた。

Tesla Energy Venturesは公共事業委員会に、同社のモバイルアプリやウェブサイトの活用を含め、販売促進するのにTeslaの既存のエネルギー部門を使うと伝えた。「具体的には、(Tesla Energy Venturesは)Tesla製品を所有している既存顧客をターゲットとし、モバイルアプリとTeslaウェブサイトを通じて顧客に小売を販促します」と申込書には書かれている。「TeslaモバイルアプリとTeslaウェブサイトに加えて、申込者の既存の『Tesla Energy Customer Support』組織は顧客獲得の取り組みにおいて顧客サポートとガイダンスを提供するよう訓練されます」。

Ana Stewart(アナ・スチュアート)氏がTesla Energy Venturesの社長となっている。スチュアート氏は2017年からTeslaで規制クレジット取引担当ディレクターを務めている。その前は同氏はTeslaが買収したSolarCity(ソーラーシティ)で働いていた。

申し込みの整理番号は52431だ。

画像クレジット:Darrell Etherington

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Nariko Mizoguchi

クリーン電力サービスの「アスエネ」がAI活用の温室効果ガス排出量管理SaaS「アスゼロ」を正式リリース

クリーン電力サービスの「アスエネ」がAI活用の温室効果ガス排出量管理SaaS「アスゼロ」を正式リリース

クリーン電力サービス「アスエネ」を提供する気候変動テック領域スタートアップ「アスエネ」は8月26日、AIなどのテクノロジーを活用したSaaSプラットフォーム型温室効果ガス排出量クラウド「アスゼロ」の正式リリースを発表した。脱炭素を目指す企業や自治体に向けた、温室効果ガス排出量およびカーボンフットプリントの算定・報告・削減・カーボンオフセットなどの一括管理と、業務自動化による工数削減が低コストで行えるというサービスだ。

「アスゼロ」には次の3つの特徴がある。

  • スキャンするだけ自動でCO2見える化:企業や自治体などにおいて、自社だけでなく、サプライチェーン全体の温室効果ガス(GHG)排出量のデータ回収と算出を自動化。請求書やレシートをアップロードするだけで自動入力とGHG排出量をAIが自動算定
  • 分析・報告まるごと自動化:GHG排出量の分析をAIが自動支援。CDP、SBT、省エネ法などへの報告を代行・自動化。分析作業もAIを活用し自動化する
  • CO2削減もまとめておまかせ:GHG排出原因に応じて、再エネ100%電力提供、省エネなど最適な手法を提案。地産地消型クリーン電力、オンサイト・オフサイト両方対応のコーポレートPPA、クレジットオフセット、省エネソリューションなど最適なCO2削減手法を提案する

今後は、AIやブロックチェーンなどの最先端テクノロジーを活用し、脱炭素化への取り組みの自動化、非改ざん性の高い証明力の徹底や、ICP(社内炭素価格)機能の導入などを目指すという。またグローバル展開も視野に入れている。

アスエネでは、「再エネ100%、CO2排出量ゼロでコストも10%削減できる地産地消型クリーン電力」という電力サービス「アスエネ」を展開しており、アスゼロでは、このサービスの利用も提案に組み込まれている。

IKEAがスウェーデンの家庭にクリーンエネルギーを販売へ

IKEA(イケア)はスマートライトを売るだけではない。対象となる国で間もなくそうしたライトに供給する電気も販売するようになる。Strömmaサブスクサービスを通じてクリーンエネルギーをスウェーデンの家庭に販売する計画を同社が明らかにした、とElectrekが報じている。顧客は料金を払うと認証された太陽光あるいは風力発電の電気が供給され、使用量はモバイルアプリで追跡できる。

家具大手のIKEAはクリーンエネルギーの販売を他国でも展開するとは言っていないが「すべてのIngka Groupマーケット」で2025年までに人々が再生可能エネルギーを使ったり発電したりできるようになることを望んでいた。

IKEAがエコフレンドリーな取り組みを行うのはこれが初めてではない。非LEDライトの販売を止め、間もなく再充電できないタイプのアルカリ電池の販売もやめる。さらにはスウェーデンの都市を持続可能なコミュニティに変えることも計画している。間違いなくこうした取り組みは同社のイメージ向上につながる。クリーンエネルギーソースとしてサービスを提供することで同チェーンの環境負荷についての懸念も解決できる。

かなり大きな動きだが、他の大手家具メーカーが今後追随したとしても驚きではない。単に、二酸化炭素排出を減らすことができる気持ちの良い努力というものではなく、余剰クリーンエネルギーの販売はコストを回収し、利益を押し上げるかもしれない。

編集部注:この投稿はEngadgetに掲載された。著者Jon FingasはEngadgetの寄稿ライター。

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靴箱サイズのモジュール式エネルギー貯蔵ブロックを開発するMGA Thermalが6.5億円調達
中国が「冷却水いらず」な実験用原子炉による9月実験開始を計画、2030年に商業用原子炉の建設を予定
テスラが高まるニッケル需要に備え鉱山大手BHPと供給契約を締結

カテゴリー:EnviroTech
タグ:IKEAスウェーデン電力再生可能エネルギー

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(文:Jon Fingas、翻訳:Nariko Mizoguchi

靴箱サイズのモジュール式エネルギー貯蔵ブロックを開発するMGA Thermalが6.5億円調達

MGA Thermalの共同創業者であるエリッヒ・キジ氏とアレクサンダー・ポスト氏

MGA Thermal(MGAサーマル)は、靴箱サイズの蓄熱ブロックで、電力会社の化石燃料から再生可能エネルギーへの移行を支援したいと考えている。同社によると、1000個のブロックを積み重ねると小型車ほどの大きさになり、27世帯の電力24時間分を蓄えられるという。これがあれば、太陽光発電や風力発電に適さない天候のときでも、電力会社は大量のエネルギーを蓄え、送電する準備が整えられる。また、ブロックがモジュール化されているため、石炭火力発電所などのインフラをグリッドスケールのエネルギー貯蔵へ転換することも容易になる。

MGA Thermalは現地時間8月2日、800万豪ドル(約6億4800万円)を調達したとを発表した。累計の資金調達額は900万豪ドル(約7億2900万円)となった。今回の資金調達を主導したのは、豪州の国立科学機関が設立したベンチャー企業のMain Sequenceで、最近2億5000万豪ドル(約203億円)のファンドを新たに立ち上げた。また、Alberts Impact Capital、ニュージーランドのClimate Venture Capital Fund、The Melt、CP Venturesの他、Chris Sang(クリス・サング)氏、Emlyn Scott(エムリン・スコット)氏、Glenn Butcher(グレン・ブッチャー)氏などのエンジェル投資家も参加した。

Erich Kisi(エリッヒ・キジ)氏とAlexander Post(アレクサンダー・ポスト)氏はニューカッスル大学で約10年間、混和性ギャップ合金(MGA)技術の研究開発に携わった後、豪州のニューカッスルを拠点とするMGA Thermalを2019年4月に創業した。MGA技術を平易に説明するよう求められたキジ氏は「おいしい」例え話をした。

MGA Thermalのブロックは「基本的には、熱すると溶ける金属粒子を不活性のマトリックス材に埋め込んだものです。ブロックは、電子レンジで加熱されたチョコチップ入りのマフィンのようなものだと思ってください。マフィンは、加熱したときに全体の形を保持するケーキ部分と溶けるチョコチップで構成されています」とTechCrunchに話した。

「チョコチップを溶かすエネルギーは蓄積され、マフィンを噛んだときに口の中をやけどさせることができるほどです。融解エネルギーは、単に何かを加熱するよりも強力であり、融解温度付近に集中しているため、エネルギーを一貫して放出することができます」。

MGA Thermal社のモジュール式エネルギー貯蔵ブロック(画像クレジット:MGA Thermal)

MGA Thermalのブロックに蓄えられたエネルギーにより水を加熱すれば、蒸気タービンや発電機を動かすことができる。ブロックはこのシナリオにおいて、水を汲み上げたり沸騰させたりするための内部チューブを備えていたり、熱交換器と連動する設計となっている。キジ氏によると、MGA Thermalのブロックを使えば、長い日照時間や強風のときに通常ならスイッチを切ってしまう再生可能エネルギーによる発電を、老朽化した火力発電所とともに継続することができるという。

他の熱エネルギーソリューションとしては、ブロック状や顆粒状の安価な固体材料を断熱容器の中で高温に加熱する方法がある。だが、こうした材料の多くは、熱エネルギーの移動が苦手で、温度制限があるとキジ氏はいう。つまり、熱エネルギーは放出されると温度が下がり、効果が薄れてしまうのだ。

熱エネルギーを貯蔵する別の方法としては、再生可能エネルギー源で加熱された溶融塩をホットタンクに貯蔵する方法がある。高温の塩は熱交換器に送られて蒸気となり、低温の塩は冷たいタンクに戻される。

「このシステムは、集光型太陽熱発電では広く使われていますが、それ以外の場所ではほとんど使われていませんでした」とキジ氏は語る。「その理由の多くは、ポンプやヒーターを配管するために巨額のインフラコストが必要になるため、また、塩の凍結防止に大量の電力を浪費するためです」。

MGA Thermalはニューサウスウェールズ州に製造工場を建設中であり、商業レベルのブロック生産を目指している。また、今後1年間でチームを倍に拡大し、毎月数十万個のブロックを生産できるようにする。また現在、スイスのE2S Power ASGや米国のPeregrine Turbine Technologiesなどの提携先と協力して、豪州、欧州、北米での技術展開を進めている。例えば、E2S Power AGは、MGA Thermalの技術を利用し、欧州で運転を終了したか、稼働中の石炭火力発電所を再利用する予定だ。

MGA Thermalの技術は、発電所の改造、オフグリッドストレージの構築、遠隔地のコミュニティや商業スペースへの電力供給など多くの産業用途があるが、消費者の化石燃料の消費を抑えることもできる。例えば、MGAのブロックは、各家庭の屋根にある太陽光パネルや小型風力発電機が発電した余剰エネルギーの貯蔵に使える。そのエネルギーは暖房に利用することができる。

「世界では30億人もの人々が燃料を燃やして家を暖めていると言われています」とキジ氏は話す。「特に寒冷地では、それが大量の二酸化炭素発生の原因となっています」。

Main SequenceのパートナーであるMartin Duursma(マーチン・デュールズマ)氏は声明で「私たちの新しいファンドが特に力を入れているのは、科学的な発見を実際に使える確かな技術に変え、気候変動の影響を逆転させる支援を行うことです。エリッヒ・キジ氏とアレクサンダー・ポスト氏の印象深い研究経歴、彼らの専門家チームと革新的技術が、グリッドスケールのエネルギー貯蔵への道を開き、世界中で再生可能エネルギーの未来の可能性を広げると考えています」。

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カテゴリー:EnviroTech
タグ:MGA Thermal資金調達再生可能エネルギー電力エネルギー

画像クレジット:MGA Thermal

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(文:Catherine Shu、翻訳:Nariko Mizoguchi

中国が「冷却水いらず」な実験用原子炉による9月実験開始を計画、2030年に商業用原子炉の建設を予定

中国が「冷却水いらず」な実験用原子炉による9月実験開始を計画、2030年に商業用原子炉の建設を予定

Thorium pellets. Pallava Bagla/Corbis via Getty Images

中国政府の科学者は、世界初をうたう、冷却のための水を必要としない実験用原子炉の計画を発表しました。来月にも原子炉は完成し、9月から最初の実験が開始される予定です。中国はこの実験炉での実験がうまくいくならば、早ければ2030年に最初の商業用原子炉を建設する予定。そしてその後は水が必要ない利点を活かして砂漠や平原地域にこの原子炉を置き、さらには「一帯一路」構想に参加する国にも最大30基を建設する予定だとしました。

中国人民政治協商会議(CPPCC)の常任委員、王守軍氏は、CPPCCのウェブサイトに掲載された報告書で「原子力での『進出』はすでに国家戦略であり、原子力の輸出は輸出貿易の最適化と、国内のハイエンドな製造能力を解放するのに役立つ」と述べています。

この構想の原子炉が大量の水を必要としないのは、燃料にウランではなく液体トリウムを使う溶融塩原子炉だからです。この原子炉ではトリウムを液体のフッ化物塩に溶かし込み、600℃以上の温度で原子炉に送り込みます。原子炉の中で高エネルギーの中性子が衝突することでトリウムがウラン233に変化し、核分裂の連鎖反応を開始します。こうしてトリウムと溶融塩の混合物が加熱され、それを2つめの炉室に贈ることで大きなエネルギーを抽出、発電に利用します。

溶融塩は空気に触れれば冷えて固まります。そのため、万が一漏洩があったとしても、核反応は自然におさまり、トリウムが外界に漏れ出ることもほとんどないとのこと。またトリウムはウランに比べて核兵器への転用が難しく、また安価で入手しやすいという点もメリットとされます。

この溶融塩原子炉の試作機を開発した上海応用物理研究所によれば、計画は中国が2060年までにカーボンニュートラルを実現するという目標の一環とのこと。2019年の米調査会社の報告によると、世界の炭素排出量の27%が中国が占めています。これは他の先進国全体を合計しても届かない数値であり、世界からの厳しい目が中国に向けられています。

溶融塩原子炉のアイデアは新しいものではなく、1946年に米空軍の前進組織が超音速ジェット機を開発するときに考えられました。しかし、その後の開発においては溶融塩のあまりの温度に配管が耐えられなかったり、トリウムの反応がウランに比べて弱いことから、結局ウランを添加しないと核分裂反応が持続させられないといった技術的なハードルを解決できず、研究は中止されました。

ちなみに、米国では6月に資産家のビル・ゲイツ氏とウォーレン・バフェット氏が出資する企業が「ナトリウム高速原子炉(SFR)」という新しい原子力発電方式の実証炉をワイオミング州の石炭火力発電所に建設することを発表しています。こちらは仕組み的には日本がかつて研究開発していた高速増殖炉「もんじゅ」の方式を発展させた方式のものとされます。

原子力発電というと、われわれ日本人はどうしても福島の原発事故や、広島・長崎の原爆投下を思い出し、放射能流出が心配になりがちです。化石燃料を使った発電から再エネへの積極的な転換を目指す大きな流れもあるなか、米中という大国が従来より安全とはいえ新たな原子力を開発し、これを推進するなら、その先の世界がどうなっていくのかは気になるところです。

(Source:LIve ScienceEngadget日本版より転載)

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電動スクールバス群を世界最大級のバーチャル発電所にするZūm、目標は最大1ギガワットを送電網に戻す

Zūmは学区と家族のために生徒輸送サービスを提供しているスタートアップだ。同社は、自社が運行してする電動スクールバスを使って、一番必要とされているとき、電力を送電網に戻す仕組みを考えている。

同社はエネルギー管理・配給ソフトウェアを提供しているAutoGrid(オートグリッド)と提携して、Zūmの電動スクールバス群団を世界最大級のバーチャル発電所に変えようとしている、と同社の声明に書かれている。Zūmの最終目標は、1ギガワットのエネルギーを送電網に戻す能力を備えることだと会社はいう。LED電球1億1000万個あるいは30万世帯に必要な電力量だ。しかしZūmはそれに必要なバス1万台のゴールにはまだ程遠い。現在同社の保有するバスのうち電動車はわずか10%で、これは供給不足のためだとCEO兼共同ファウンダーのRitu Narayan(リツ・ナラヤン)氏がTechCrunchに話した。

「スクールバスは最も最大の車輪つきバッテリーです」とナラヤン氏は言った。「興味深いのは、夜間や夏季といった電力需要のピーク時にはバスがあまり利用されていないことです。だから私たちの大きな目標は、昼間にバスを運行することだけではないのです」。

この提携の適用範囲は、スクールバス群の創造的な他目的利用にとどまらず、電気自動車産業全体に広がりつつある。EV(電気自動車)保有者が増える中、Zūmなどの会社はますます困窮してる送電網におけるギブ・アンド・テイクの必要性を認識している。今週、電動モペッドのスタートアップ、Revel(レベル)がGridRewards(グリッドリワーズ)との提携を発表した。GridRewardsはAutoGridと同様のサービスを提供するアプリで、電動モペッドの充電スケジュールを調整することで必要な時に送電網に電力を戻すことができる。

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電動スクールバスはこの種のエネルギー・シェアリングにかつてなく大きな機会を提供する。バイデン政権は電動スクールバスに250億ドル(約2兆7500億円)投資する計画を提案した。現在50万台以上の黄色いスクールバスが毎日2700万人以上の生徒たちを運んでいる。

両社は、Zūmが206台のスクールバスを運行するサンフランシスコと70台運行しているオークランド統一学区で提携事業を開始する、とナラヤン氏は言った。Zūmは全国に事業を展開する野望も持っている。すでにカリフォルニア州の複数の学区とシアトル、シカゴ、ダラスと交渉中で、次はワシントンDCを狙っている。

「通学輸送のEV化は、地域が大気の質や生徒と地域住民のための環境衛生を改善する上で極めて重要な役割を果たします」と同氏は声明で語った。

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カテゴリー:EnviroTech
タグ:Zūm電気自動車バス電力

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Nob Takahashi / facebook

ニューヨークの電力網に負担をかけずに電動モペッドの電力を供給するためにRevelはゲーム化したアプリを利用

Revel(レベル)が、ニューヨーク市の電力網に負担をかけずに3000台以上の電動モペットへの充電を行うために、エネルギー使用をゲーム化したアプリを利用する。

ブルックリンを拠点とするこのスタートアップにとって、電気は重要な要素だ。最近同社のサービスは、電動モペッドの共有だけでなく、電動バイクのサブスクリプション急速充電インフラ、さらには電気自動車(EV)の配車サービスにまで拡大している。Revelが運用コストを可能な限り低く抑えるためには、単なる電力の利用だけでなく、電力を利用するタイミングも管理することが不可欠だ。

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そこで、登場したのがLogical Buildings(ロジカル・ビルディング)だ。このソフトウェア会社は、利用者が毎月のエネルギー消費量を減らし、それによって、現金報酬を得ることができるアプリGridRewards(グリッドリワーズ)を開発した。このアプリの「仮想発電所」ソフトウェアは、Revelが保有する車両の充電スケジュールを動的に調整し、ニューヨーク市の電力網の弾力的運用をサポートするのに役立つと両社は述べている。

RevelのCOOで共同創業者のPaul Suhey(ポール・スヘイ)氏は「当社は電動モビリティ製品を拡大していく中で、電力網の負債ではなく資産となることを計画しています」と述べる。「私たちのEVインフラと充電オペレーションは、ニューヨーク市がよりクリーンな電力網に移行する際に大きな役割を果たすことができます」。

電気自動車の導入やマイクロモビリティの共有サービスが増加しているため、多くの業界関係者がバッテリーと電力網間でのエネルギーを転送を模索している。EVのバッテリー交換を行うAmple(アンプル)は、同社の交換ステーションを緊急時のバックアップ電源として利用できるとしている。また、フォードの新型ピックアップトラック「 F-150 Lighting」も、停電時に自宅の電力を供給することができる。

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Revelの場合、電力網の解放が即座に必要な場合には、迅速に充電ステーションからの負荷を軽減する「デマンドレスポンス」(需要反応)オペレーションのようなサービスを提供したいと考えている。これは同社が先にニューヨークで実施したような運用だ。6月28日の猛暑の中で、Revelは需要のピーク時を避けるために、車両群の充電スケジュールを調整したのだ。

Revelによれば、エネルギー需要が高い時には、発電所から単位電力あたり2倍の二酸化炭素と20倍の窒素酸化物が排出されるため、ピーク時の需要を避けることで、よりクリーンな電力網の構築にもつながるという。

Revelまた、完全EV配車サービス用にTesla(テスラ)も所有しているが、このサービスは、市でのハイヤー新規導入に上限が設けられたため、サービスの停止を余儀なくされている。しかし現時点では、同社がこの技術を適用するのは電子モペッドに限定されている。

Logical Buildingsの業務担当副社長であるDavid Klatt(デビッド・クラット)氏は「交通機関の電化が進む中、電気モビリティ会社は電力網の弾力性を高めるための充電スケジュールを立てることが重要です」という。「Revelは、ニューヨーク市の円滑な電化と脱炭素化に道を開く、インテリジェントな充電オペレーションのリーダーとなるために必要な措置を講じています」。

カテゴリー:モビリティ
タグ:ニューヨーク電力網電動モペッドRevel電気自動車充電ステーション

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:sako)

スマートリモコンのNatureが7.5億円調達し電気小売事業強化、クックパッド宇野雄氏がデザインアドバイザー就任

Natureが7.5億円の資金調達、クックパッドの宇野雄氏がデザインアドバイザーに就任

スマートリモコンと電気小売事業を組み合わせるなど「デジタル電力革命」を目指すNature(ネイチャー)は7月14日、第三者割当増資により7億5000万円の資金調達を完了したと発表した。引受先は、環境エネルギー投資と大和企業投資。さらに、クックパッドのデザイン戦略本部長でありUIデザイナーの宇野雄氏をアドバイザーに迎え入れた。

スマートリモコン「Nature Remo」シリーズを開発販売するNatureは、2021年3月に「Natureスマート電気」を立ち上げ電気小売事業に参入した。Natureスマート電気の契約者はNature Remoと連動させることで、電力需給ピーク時にエアコンの温度を自動調整して節電を行うことができる。

今回調達した資金は、電力小売事業拡販のための組織、販売体制、マーケティ ングの強化と、「次なる軸」とNatureが定める、家庭用太陽光発電、エコキュート、蓄電池、EVなどのエネルギーを一括管理して住宅のエネルギー自給自足を目指す「Behind The Meter」(ビハインド・ザ・メーター)事業の基盤構築に使われる。

クックパッドの宇野雄氏は、「はじめてのUIデザイン 」を執筆するなど、UI(ユーザーインターフェイス)デザインの第一人者として、「もっとテクノロジーと人間の生活をなめらかにつなげるはずだ」と日々考えているという。「『自然との共生をテクノロジーでドライブする』というミッ ションをもつNature社は非常に魅力的な存在であり、このミッションの実現をお手伝いできることが今か ら楽しみでなりません」と話している。

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タグ:スマートリモコン(用語)電力 / 電力網(用語)Nature(企業)Natureスマート電気(サービス)Nature Remo資金調達(用語)日本(国・地域)

電力小売「Natureスマート電気」が「テクノロジーでラクラク節電キャンペーン」で夏の電力不足解消を支援

電力小売「Natureスマート電気」が「テクノロジーでラクラク節電キャンペーン」で夏の電力不足解消を支援

Nature(ネイチャー)は7月13日、2021年夏に見込まれる電力不足の解消を目指し、「Natureスマート電気」契約者を対象とした「テクノロジーでラクラク節電キャンペーン」の開始を発表した。節電量に応じて特典がもらえるプログラムだ。

キャンペーン期間は7月13日から9月30日まで。「Natureスマート電気」の「フラットプラン」と「ハイブリッドプラン(夏季)」の契約者が対象。対象エリアは、7月13日からは東京電力エリアと関西電力エリア、8月2日からは北海道電力エリア、東北電力エリア、中部電力エリア、中国電力エリア、四国電力エリア、北陸電力エリア、九州電力エリアとなる。

キャンペーン期間中に「Natureスマート電気」の「マイページ」で申し込むと、Natureが予測した電力需給がひっ迫する時間帯が前日にメールで知らされる。その時間内に節電をするとポイントが貯まるという内容だ。節電量1kWh(キロワット時)につき10ポイント獲得となり、1ポイント1円換算でキャンペーン終了後にAmazonギフト券と交換できる。その他、特に頑張った人には協賛企業のIoT製品が賞品として贈られる。

協賛企業

Natureが展開する電気小売事業「Natureスマート電気」は、Natureのスマートリモコン「Nature Remo」と連動して、電力需給ひっ迫時に自動的にエアコンの温度を調節して節電を行う「Nature Smart Eco Mode」が特徴。現在、「Natureスマート電気」と契約すると、新規加入者特典として「Nature Remo 3」が無料でプレゼントされるキャンペーンも実施している(7月31日まで)。

「在宅時間の増加により消費電力量が増えている今、テクノロジーを活用しストレスなく節電に参加して、電力不足の解消にご協力いただけたら」とNatureでは話している。

「テクノロジーでラクラク節電キャンペーン」概要

  • キャンペーンページテクノロジーでラクラク節電キャンペーン
  • キャンペーン期間:2021月7月13日〜9月30日
  • 対象プラン:フラットプラン、ハイブリッドプラン(夏季)
  • 対象エリア(2021年7月13日~):東京電力エリア、関西電力エリア
  • 対象エリア(2021年8月2日〜):北海道電力エリア、東北電力エリア、中部電力エリア、中国電力エリア、四国電力エリア、北陸電力エリア、九州電力エリア
  • 参加方法:キャンペーン期間中に、Natureスマート電気のマイページから参加申し込みを行う
  • キャンペーン内容:Natureの基準で電力の需給がひっ迫する時間帯を予測し、前日中にメールで参加者へお知らせ。当該時間帯に電力の使用を抑制することで、節電ポイントが貯まる
  • 特典1「節電ポイント」:節電ポイントとして、節電量1kWhにつき10ポイントが貯まる。節電ポイントは、1ポイント=1円相当として本キャンペーン終了後にAmazonギフト券へ交換できる
  • 特典2「特別表彰」:参加者のうち、特に節電に貢献した方の中から抽選で、話題のIoT製品をプレゼント。「ガツガツ節電賞」「コツコツ節電賞」を用意しており、各賞ごとに基準を満たした参加者が対象となっている

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