百貨店のリプレイス狙うギフト特化型EC「TANP」が1.2億円を調達

ギフトEC「TANP」を運営するGraciaは10月22日、複数のVCや個人投資家らを引受先とする第三者割当増資により1.2億円を調達したことを明らかにした。

同社では調達した資金を活用してロジスティクスやマーケティングの強化を進め、プロダクトのさらなる成長を目指す計画。なお今回のラウンドに参加している投資家陣は以下の通りだ。

  • ANRI
  • マネックスベンチャーズ
  • ベンチャーユナイテッド
  • ドリームインキュベータ
  • SMBCベンチャーキャピタル
  • 中川綾太郎氏
  • 有川鴻哉氏
  • 河原﨑大宗氏
  • 坂本達夫氏

Graciaは2017年6月の創業。その直後にANRIとCandle代表取締役の金靖征氏から約1300万円を調達していて、今回はそれに続くシリーズAラウンドでの資金調達になるという。

特化型ECでオンライン上でも優れたギフト体験を

Graciaが手がけるTANPはギフトに特化したECサイトだ。

この領域に特化することで、誕生日や記念日、クリスマスなどの様々なシーンだけでなく、ギフトを渡したい相手の性別や年代に合わせてぴったりな商品を見つけやすい仕組みを設計。「何を贈ったらいいのかわからない」というユーザーの悩みをオンライン上で解決できる場所を目指している。

2017年9月のリリースから約1年が経った現在は約100社のメーカーとタッグを組み、取扱商品数は合計で860点を突破。Gracia代表取締役の斎藤拓泰氏の話では人気化粧品メーカーの「the body shop」や香水ブランド「JIMMY CHOO」など、知名度のあるメーカー・ブランドも徐々に増えてきているようだ。

特にクリスマスや母の日といったイベント時の利用が多いそうで、5月の母の日のピークには1日あたりの出荷数が800件を超えたという。

「特別なシーン用のギフトを買うとなると、多くの人が想起するのは百貨店。特に『何か特定なものを探している』というよりは『何かしら買いたい』というニーズに対して、オンライン上で応えられる場所がまだない。(ECというくくりでは)すでにビッグプレイヤーがいるが、自分たちはギフトに特化することで探すのが大変という悩みを解決しつつ、より優れたギフト体験を提供したいと考えている」(斎藤氏)

ギフト探しの悩みを解決するという点では、TANP上で細かい条件ごとに商品を探せるほか、LINE@を活用してチャットベースでの相談にも応じている。斎藤氏の話ではLINE@の登録者数は約6500人ほどだそう。記念日や特別なイベントに合わせて年に数回問い合わせをしてくるユーザーが多いようだ。

“良さそうな商品がオンライン上で見つかる”というのもTANPの特徴ではあるけれど、同サービスのウリはそれだけではない。斎藤氏によるとユーザーに評判がいい機能として「配送までのスピード」と「ラッピングなど独自のオプション」をあげる。

独自のロジスティクスを軸にギフトの商流を作る

TANPでは注文が入ってから最短で翌日届くような体制を構築している。シンプルながらこの点に関してはユーザーのニーズがかなりあるそうで「注文した商品が明日届くかどうか」といった問い合わせが多いという。

またラッピングなど独自のオプションも複数用意。ラッピングだけで約10種類ほどあり、それ以外にもブーケを同梱したり、段ボールの中を装飾したりといったことができる。7割くらいのユーザーが何かしらのオプションをつけていて、斎藤氏は「(ギフト探しの悩みを解決するだけでなく)配送期日やオプションといった要素を網羅していることがTANPの特徴」だと話す。

この点について課題意識を抱えているのは何もユーザー側だけではない。メーカー側もまた、同じようにギフトに関する悩みを持っているようだ。

「担当者の方と話していても、ギフトをやりたいという考えはある一方で、ギフト用のニーズに応えるためだけに自分たちでラッピングをしたり、(他の顧客よりも優先して)最短で届けるための仕組みを作ったりするのが難しいという声を聞く。双方の間に入って“ギフトの商流を作る”というのがTANPを通じてやりたいテーマだ」(斎藤氏)

このギフトの商流づくりのために、Graciaではロジスティクス周りの整備に力を入れてきた。自社で倉庫を保有し商品はそこから発送。その際に使う発送システムや在庫管理システムも独自で開発しているのだという。

特にギフトの場合は商品にさまざまなオプションがつくことが多いため「どの商品にどのオプションがつくか」を全部紐付ける必要がある。その作業に対応したシステムを自社で整えていることが、オペレーションを効率化しつつ、ユーザーのニーズに合わせたスピード感やオプションを実現できる要因にもなっているようだ。

ギフトを買う際に最初に想起してもらえるサービスへ

「ロジスティクスの強化」は今後のTANPの鍵を握るポイントであり、今回調達した資金もここに投資する計画。扱う商品の数を増やすべく倉庫を広げたり、ラッピングなどの質を改善することでサービスの拡大を目指していく。

また中長期的にはTANPに蓄積されるユーザーの購買データを活用することによって、ユーザーのギフト探しの悩みに対して適切な商品をレコメンドできるような仕組みも構築する予定だ。

Graciaのメンバー。写真前列中央が代表取締役の斎藤拓泰氏

Graciaは以前Candleで働いていた斎藤氏を含む3人の東大生によって設立されたスタートアップ。今後ECが伸びていく一方で、ギフトECの領域では「ファッションにおけるZOZOTOWN」のような巨大なプレイヤーがおらず、ユーザーの課題もあるためこの領域で事業を展開することを選んだ。

現在のユーザー層は20〜40代が中心。インターネットを普段そこまで利用していないようなユーザーも一定数いるが、そういった層のユーザーも含めて「オンライン上でギフトを買う体験」をさらに広げていくのが目標だ。

「(今回調達した資金も活用しながら)まずはギフトの領域をもっと掘り下げて、ギフト市場での第一想起の獲得を目指していきたい」(斎藤氏)

メッセージアプリだけで成功した高級品専門店Threadsが22億円の投資金を獲得

eコマースの市場と聞いてまず思い浮かべるのが、ウェブサイト上に作られた店舗やアプリだろう。しかし今、そのどちらも持たずに、また今後持つ予定もなく、多額の現金を集めて、商品の販売活動を行なっているスタートアップがある。彼らが使っているのは、その成長の原動力でもあるプラットフォーム、「メッセージアプリ」だ。

ロンドンを拠点とするThreadsは、おもに裕福なミレニアム世代の女性を対象にした、その人に合った高級ファッションを厳選して薦めるサービスに、2000万ドル(約22億円)の資金を調達した。彼らは、ウィーチャットワッツアプスナップチャットインスタグラム、アップルのアイメッセージといったサービスを主要な販売窓口として使い、AIではない、人間によるショッピング・アシスタントのチームに顧客対応をさせている。

「私たちは、とくに意識して、顧客のためのウェブサイトを作りませんでした。同様に、アプリも作りませんでした」とCEOのSophie Hillはインタビューに応えて話している。「Threadsの背景にあるのは、キュレーションと利便性です。顧客中心のビジネスなので、顧客が望む場所、そして顧客が望む方法で取り引きが行えるチャットで構成されています。チャットの使い方は、2010年当時から変わっているかも知れませんが」(2010年に同社は創設されている)「そこが私たちの企業努力の結果です。私たちとビジネスの両方にとって便利なように、私たちは新しい物を作るのではなく、チャットを使って顧客サービスを行う方法に磨きをかけたのです」

同社は、新しい資金を投入する予定だと言う。出資者は、ファッションとミレニアル世代に特化して投資を行うC Venturesと、Matchesfashionなどのファッション関連業者にも投資を行なっているHighland Europeだ。この資金を使って、同社はさらに多くのスタイリストとエンジニアを雇い、事業がよりスムーズに進行するよう技術を構築し、事業全体を拡大したいと考えている。また、すでにいる90名の社員に加えて、クリエイティブ系やその他のスタッフも増強することにしている。しかし、この投資以前でも、Threadsは目覚ましい成長を続けてきた。

顧客は100以上の国に広がり、その70パーセントは35歳以下。とくに成長が早い地域はアジアだ。Threadsによると、一人の顧客の一回の取り引き(買い物かごひとつ分)の額は、平均3000ドル(約33万円)と高額だ。高額な商品と、それを求める顧客とを結びつけるビジネスに成功したことで、デザイナーや、ディオール、フェンディ、ショパールの他、250の高級ブランドとのつながりを強め、ブランドを代表する目玉商品の提供を得られるようになった。商品が売れると、Threadsはそのメーカーから手数料を受け取る形になっている。

創設者でCEOのSophie HillがTopshopの親会社Arcadiaで、大学(社会学を専攻)を出てすぐに働き始めたとき、Threadsの構想が具体化した。

時は2010年。メッセージアプリはまだ登場せず、今私たちが毎日使っているような機能が生まれるずっと前、インスタグラムも「ストーリー」も存在していなかったころ、Hillは、彼女がターゲットになると期待した人たちの意見を聞いて回る作業を始めた。するとその人たちは、携帯電話のメッセージング・クライアントを使ったチャットに熱中していることがわかった。

ウエストは、比較的使いやすかったが、Hillは、ウィーチャットが間もなくもたらすであろうものを見通していた。その当時、ウィーチャットは、かなり進んだ中国製のアプリで、すでに彼女がターゲットとする人たちが使っていたこともあり、そこにビジネスの構築に必要なものが十分に備わっていると確信できた。

Threadsのコストベースは、eコマースのスタートアップとしては異例なほどの低予算だった。

サイトもアプリもないので、開発チームはThreadsの特徴でもある販売方法、つまり、その人に合わせたコンシェルジュ式のサービスの改善に注力することができた。それは、顧客のために、より効率的に商品を追跡する技術の構築(ある地点でこれが実質的なチャットボットの形になるかも知れないと、Hillは話している)と、Threadsの顧客のために、特別な商品を探し出す助けとなる、より高性能な検索エンジンの構築を意味する。

Threadsの資金の使い方で、一般的なeコマース企業と大きく違っている分野には、もうひとつ、顧客獲得がある。Hillによれば、マーケティングにかけられる予算がほどんどなかった(「マーケティングを引っ張ってくれる人もいなかった」とのこと)。その代わりに、Threadsは、ユーザー間の口コミで成長し、その後は、インスタグラムなどのソーシャルメディア・プラットフォームの独自のコンテンツを介して、顧客の興味を惹くようになった。

一方、Threadsが平均的なeコマース企業よりも、数段多くの予算をつぎ込んでいると思われる部分に、顧客と製品とを結びつける方法がある。

このチャットを基本とするショッピングサービスは、たとえチャットから始まった関係であったとしても五つ星クラスの上質な対応を期待する顧客のために、広い世界を忙しく飛び回ることが大切だとHillは話している。そのため、Threadsは、街から街へとデザイナーに足を運ばせて、顧客に現物を見せたり、相手がどこにいようとも商品を手渡しするというサービスに定評がある。さらに顧客が、買い物やその他の用事で街を訪れたときに、実際に実店舗のブティックを開いて待つという対応も行なっている。

「これは顧客の要望と、高級品をどのように買いたいかという望みを満たすものです」と彼女は話す。

そこには、基本的にユーザーに仕える人のグループによって成り立つビジネスか、それを行うために技術を開発したビジネスかの違いがある。正直、とてもアナログな感じを受ける。しかし、Hillとその投資家たちは、Threadsの未来にはスケーラビリティーがあると確信している。技術はあくまでも、その成長を支えるものに過ぎない(最初にこのスタートアップが形になるときの助けになったのと同じことだ)。

「ウェブサイトやアプリがないからと言って、直接販売の道がないわけではありません」とHillは言う。「私たちは、それぞれの顧客に合わせたエクスペリエンスを提供するために技術を使うのです。技術と人の応対とを組み合わせて使うことで、高級品業界での究極のサービスが生まれます。私たちはこれを、個人のエクスペリエンスをより豊かなものにするための補完財だと考えています」

「技術は急速に進歩しています。私たちは、AIと、それをどのように統合すべきかを研究しようと考えています」と彼女は言う。「AIの応対と人の応対の間の、どのあたりで顧客は満足するのかが、それによってわかります。顧客がどのように反応するかを見るのは、私たちの役目です」

人間的な触れ合いを大切するところから立ち上がり、そこに高級ブティック型の利益幅を混合させたこの事業だが、その根幹には大人気の技術(メッセージング)があり、さらにその効率を高める、より多くの技術を導入する余地もある。それが、投資家たちの注目を集める要となっている。

「Threadsの顧客となる人たちは、こういう取り引きを好むのです」と、Highland Europeの共同出資者Tony Zappalaは話している。「Threadsも、その顧客も、どちらもどんどん対話を深めています。今のウェブサイトでは、実現がとても難しいことです」

Hillは何も語っていないが、Threadsの次なる目標は、ファッションやジュエリー以外にも、商品のカテゴリーを増やすことにあるはずだ。現在、市場の両面で、顧客に対してより身近なサービスを提供するために、オフィスを増やす予定がある。まずは、ニューヨークと香港がそのリストの載っている。

 

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(翻訳:金井哲夫)

身体を3D計測するボディスキャンアプリ3DLOOKが100万ドルを調達

3Dボディスキャンシステムは、何年もの停滞と再起動を繰り返したあとに、大きな動きを見せた。Original StitchのBodygramに続いて、新たな3Dスキャナーである3DLOOKが、世界中の身体を測定するために、100万ドルの資金を手に競争に参入したのだ。

創業者である、Vadim Rogovskiy、Ivan Makeev、そしてAlex Arapovdは、スマートフォンだけで人体を測定できることがわかったときに3DLOOKの開発を決心した。他のソリューションでは必要な精度を実現できず、高価なハードウェアに依存してしまうことがわかったからだ。

「広告業界で6年以上の起業経験を積んだ頃、私は普通の商品ではない新しいものを作りたいと考えていました」とRogovskiyは語る。「そのころ成長を阻害するものを克服する仕事をしたいと思っていて、アパレル業界がeコマースにおける増大し続ける返品問題で苦しんでいることに気が付いたのです。3DLOOKの共同創業者たちは、2016年にSAIA(Scanning Artificial Intelligence for Apparel:アパレルのためのスキャンAI)を作成する前に、1年以上をR&Dと、新しいアプローチと様々な技術の組合せのテストに費やしました」。

これまでチームは40万ドルを調達し、そしてつい最近会社を成長させるために、シードラウンドで100万ドルを調達した。

またチームは「フィットプロファイル」を収集しており、このプロファイルを「地理的位置、年齢、そして性別グループ」に基づいて、提供することが可能だ。このことが意味するのは、3DLOOKが測定値に基いた正確なサイズを答えることが可能であること、そして衣服がどれくらい身体にフィットするかを教えてくれることができるということだ。既に彼らは2万件のプロファイルを持ち、8つの有料顧客ならびに5つの大企業のシステムと連携して作業を進めている。例えばLemonade FashionとKoviemがこのプラットフォームを使っている。

「3DLOOKは、カジュアルな写真を2枚撮影するだけで人体計測を可能にする技術を開発した最初の企業です、そしてオンラインアパレル販売市場をディスラプトする計画をもっています。ブランドや小規模店舗が、顧客の身体測定値を集めてオーダーメードの提案ができるように、デスクトップ用APIやモバイル用SDKを提供します」とRogovskiyは語る。「さらに、わが社は人間の身体測定値に関するデータベースを収集しています、これによってブランドは全てのボディタイプ向けにより良い服を作ることが可能になりますし、サイズ合わせと返品問題を解決できるのです。こうすることで、店舗が今以上のアパレルを売ることができるだけでなく、顧客も高品質のアパレルを手にすることができるのです」。

3Dスキャナーは長年にわたり改良に次ぐ改良を重ねて来ているが、企業たちがほんの数枚の写真だけで身体をスキャンできるということは興味深い。こうしたものは、好みに関する意見を述べることはできないが、注文する前に服のサイズがぴったりであることを保証してくれることは間違いない。

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(翻訳:sako)

米国eコマースにおけるAmazonのシェアが49%にー小売全体では5%を占める

独占禁止調査の脅しに関して、Amazonはすでにホワイトハウスの標的になっている。これは特定のものを標的にするトランプ流の猛攻なのだと言う人もいるが、このほどeMarketerの研究員が発表した数字は、火に油を注ぐことになるかもしれない。

eMarketerの数字によると、Amazonの米国内における2018年の小売売上高は2582億2000万ドルを超えそうだ。これは米国全体のオンライン小売売上の49.1%を占め、総小売売上の5%にあたる

Amazonはオンラインブックストアとして始まったが、グロサリーからファッションに至るまで、その幅をまだ拡大させつつあるサードパーティ業者による強力なMarketplaceネットワークと、Primeという人気のロイヤルティープログラムにより、今やあらゆるものを扱う巨大なeコマースとなっている。

人々がオンラインショッピングをする時、Amazonで買うのか、それともAmazon以外の業者(全てひっくるめて)で買うのかというその割合は転換点にかなり近づいている。eコマース売上高でAmazonの次にくるのがeBayだが、Amazonとはかなりの差がついていて、シェアは6.6%だ。そしてAppleが3.9%で3位にくる。実在店舗では世界最大の小売のWalmartは3.7%でAppleの後塵を拝している。

この図は、調査会社や政府機関、メディア、企業、そして幹部の新聞インタビュー、広告バイヤー、広告代理店などからの膨大な量のデータをもとに推測したもの、とeMarketerは説明している。この図で驚くべき点は、Amazonの販売規模ではなく、Amazonの販売ペースが落ちていないことだ。eコマース全体の売上の43%を占めた1年前に比べて売上は29.2%アップしている。

Amazonの成長の起爆剤は今のところMarketplaceだ。このプラットフォームではサードパーティ業者がそこで販売し(もし選択すれば)ロジスティックインフラも使ってAmazonの顧客に販売・配達できる。直近では販売の68%をMarketplaceが占めていて、額にすると1760億ドル。これに対し、Amazon直販は32%だ。今年末までにMarketplaceのシェアはAmazonの直販の倍以上となることが見込まれる(すでに倍に近い)。

他の多くのオンラインコマース事業がマーケットプレスモデルを追随するのは無理もない。このモデルでは、プラットフォームオペレーターにとって2通りの取引が必然的に発生する。それゆえに、直販しないことで減りそうなマージンは実は伸びるのだ。

「AmazonのMarketplaceが今後も伸びることはあらゆる数字が物語っている」とeMarketerの主任アナリストAndrew Lipsmanはレポートの中で述べている。「多くの人がAmazonで購入すればするほど、サードパーティ業者を惹きつける。サードパーティとの取引は利益が多いため、Amazonはプラットフォームを利用する業者にとってその利用プロセスが可能な限りシームレスなものになるように努めている」。

人気のカテゴリーに関していえば、家庭用電気機器とテクノロジー関係がプロダクトカテゴリーを牽引している。eMarketeは売上658億2000万ドルは総売上高の4分の1にあたると算出している。次にくるのがアパレルとアクセサリーで、売上は398億8000万ドルだ。そして3番目はヘルス・パーソナルケア・美容で、売上は160億ドル。4番目は食品・飲料で、こちらの売上はぐっと下がって47億5000万ドルだ。

こうした売上はすでに1年前に比べ38%超アップしている(下の表を参考)。しかしここで最も注目すべきは、Amazonが全カテゴリーの直販においていかに投資しているかということだろう。

テック分野では、数ある中でもKindleやFireタブレット、Fireテレビ、そして大ヒットとなっているAlexa搭載のEchoなどが挙げられる。アパレル分野ではプライベートレーベルを売り込んでいる。Amazonはつい先日、オンライン薬局のPillPackを10億ドルで買収することを発表したが、この買収はヘルス関連の商品・サービス戦略をより広汎なものにすると予想される。そして最後に、Whole Foodsの買収。食事キットの販売や実店舗という面で大きな役割を果たしている。このカテゴリーでは実店舗の存在感は大きいとeMarketer はみている。

「食品・飲料カテゴリーにおけるAmazonの戦略はいくつかの点では本の販売とさほど差はない」。eMarketerシニアアナリストのPatricia Orsiniはレポートでこう述べている。「しかしながらグロサリー部門のeコマースは難しい。ほとんどの人が実在店舗での食品の購入を好むため、このカテゴリーのオンライン売上は低い。Amazonの客はオンラインショッピングに慣れているので、この点はアドバンテージとなる。Whole Foodsの利用者についていうと、Amazonにとって実在店舗でグロサリーを購入する人をオンラインでの購入へと導く絶好のチャンスとなる」。

こうした投資は、全てのカテゴリーでアマゾンの直販を増やすだけでなく、人々が破格の値段の商品あるいは他のブランドのものがないかAmazonをみてみようか、という環境づくりに貢献する。

これまでのところ、Amazonが独占禁止の調査の対象となるとは考えにくい。というのも、eコマースはまだ小売全体の中では小さい存在だからだ(全小売の売上においてeコマースの売上は5%というのがその証拠だ)。“オムニコマース”業界においてAmazonはまだ弱小プレイヤーだ、とAmazonは主張するだろう。しかしながらeコマースだけをみたとき、Amazonの支配は明らかだ。

イメージクレジット: David Ryder/Stringer / Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi)

メアリ・ミーカー、恒例のインターネット・トレンドを発表――全スライドと重要ポイント要約

テクノロジー分野の最新の数字を漏れなく知っておきたいなら朗報だ。伝説のアナリスト、ベンチャー投資家、 メアリー・ミーカーがInternet Trendsの2018年版を発表した。記事末に294ページに及ぶスライド全体をエンベッドしてある。モバイルからeコマースまであらゆるジャンルがカバーされている。ここでは特に重要と思われる点を選んで要約してみた。

  • Internetの普及: 2018年には世界の人口の半数、約36億人がインターネットにアクセス可能になる。これをもたらした大きな要因は安価なAndroidスマートフォンとWifiだ。ただしインターネットの普及が飽和点に近づくにつれ、個々のサービスは新たなユーザーを獲得することが困難になるものと予想される。
  • モバイル利用状況:インターネット・ユーザー数の増加率が低下するとともにスマートフォンの出荷は頭打ちとなった。一方、モバイルの普及によりアメリカの成人がオンラインで過ごす時間は増えている。 2016年には1日あたり平均5.6時間だったものが、 2017年には5.9時間に増加した。
  • モバイル広告: 消費者がモバイルにシフトするスピードは速く、広告費はそれに追いついていない。モバイル利用時間に広告費が比例するためにはさらに70億ドルの支出が必要。各プラットフォームはコンテンツの選別を次第に強め、内容が安全と認められるページに出広する傾向にある。
  • 暗号化:オンラインの暗号通貨はブームを巻き起こしている。Coinbaseのユーザー数は2017年1月以来4倍に増えた。
  • 音声: 音声テクノロジーがいよいよブレークした。音声認識の精度が95%を超えた。また2017年にはAmazon Echoの販売台数累計も1000万台から3000万台に増加した。
  • 1日あたり利用状況: Facebookなどのサービスの売上は1日あたりユーザー数の増加に強く結びついている。つまりユーザーがそのサービスの利用を習慣化するかどうかが収益性のカギとなる。
  • テクノロジー投資: 上場、非上場企業ともテクノロジー投資は過去最高を記録している。上場企業におけるR&D投資プラス資本的支出のトップ6社はすべてテクノロジー企業だった。

写真はMorgan Stanleyのアナリスト当時のメアリー・ミーカー。サンフランシスコで 2010年11月16日に開催されたWeb 2.0 Summitで講演中のもの。現在ミーカーはベンチャーキャピタル、KPCBのパートナーで、今年も11月17日に講演の予定。タイトルは「コントロール・ポイント:ネットワーク経済をめぐる戦い」。撮影:Tony Avelar/Bloomberg/ Getty Images

  • eコマース対現実店舗:eコマースの成長は加速し、全リテール支出の13%を占めるまでになった。オンライン・ショッピングと商品の発送数は急増しており、ショッピング・アプリにはビッグチャンスとなっている。
  • Amazon:ますます多くの消費者が検索エンジンよりむしろAmazonで商品の検索を行うようになった。AmazonのCEO、ジェフ・ベゾスは依然としてFacebookやYouTubeで消費者の購買意欲をかきたてる努力を続けている。
  • サブスクリプション・サービス:契約者数は急増している。2017年には対前年比でNetflixは25%、New York Timesは43%、Spotifyは48%それぞれアップした。フリーミアム・モデルは有料契約へのコンバージョンを加速する効果がある。
  • 教育: 学資ローンの返済額が急上昇するにつれ、雇用者は企業が必要とする新しい能力を学ぶためYouTubeや各種のオンライン・コースを利用する傾向を強めている。
  • フリーランス化:雇用者は在宅勤務を含めて柔軟性の高い労働時間を強く求めるようになった。またインターネットを利用したフリーランス雇用は全雇用の3倍の伸び率を示している。2017年にオンデマンド労働は23%増加した。これはUber、Airbnb、Etsy、Upwork、Doordashなどのサービスの成長によるところが大きい。
  • 運輸交通:自動車の購入台数は減少傾向にあり、長く乗るようになった。交通関連への支出はUberなどライドシェア・サービスにシフトしている。2017年にはライドシェアへの支出は倍増している。
  • エンタープライズ: エンタープライズ向けサービスがより良いインターフェイスを得てコンシューマ・アプリ化している。DropboxとSlackが.このような急成長の代表的な例。
  •  

  • 中国: 中国のユーザーはアメリカと比較してプライバシーと交換に利便性を獲得することをためらわない傾向がある。 これは中国企業の競争力を高めており、インターネット企業のトップ20にますます多くの中国企業が加わる結果を生んでいる。またこれらの企業はAIに巨額の投資を行っている。
  • 中国のeコマース: Alibabaが商圏を中国の外に急拡大している。売上では依然Amazonがリード。
  • 移民:アメリカのトップ企業の56%は移民1世または2世によって創立されており、経済成長にとって決定的に重要な要因となっている。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

「見えない小売店」を目指すDarkstore

オンデマンドフルフィルメント(商品の受注決済在庫管理配送を全て手がけるサービス)スタートアップのDarkstoreが、T-Force Final Mileと提携し、さらに33の全国のマーケットを追加した。これによってDarkstoreが対象とするマーケットの総数は40となった、その中にはサンフランシスコ、ロサンゼルス、ポートランド、マイアミ、アトランタ、ボストン、リノ、そしてオースティンなどが含まれている。

T-Force Final Mileは、IKEA、Office Depot、そしてAmazonのための配送を行っているラストマイル配送会社だ。この提携のおかげで、Darkstoreは全国にあるT-Forceの40の倉庫をフルフィルメントセンターとして利用できるようになる。

Darkstoreは、顧客基盤を拡大するため、ショッピングカートの提供も発表した。これにより、各電子商取引ブランドは、コードを1行書くだけで、容易にオンデマンド配送を顧客に対して提供することができるようになる。

Darkstore’sのT-Forceとの提携と、ショッピングカートサービスの提供はDarkstoreの「見えない小売業者」になるという目標の一部を成すものだ。これはDarkstoreの創業者のLee Hnetinkaが先週私に語ったものだ。

Darkstoreは、貯蔵施設、モール、小売店の余剰倉庫を活用し、スマートフォンだけでフルフィルメントセンターとして機能させる。基本アイデアは、地元に倉庫のないブランドが、それをDarkstoreに保存しておき、当日出荷ができるようにするということだ。Darkstoreは在庫に対してはブランドに対して何も請求しないが、Darkstoreから出荷されるアイテムごとに価格の3%もしくは最低2ドル、そして最高20ドルまでを請求する。

実際の配送に関しては、DarkstoreはサンフランシスコのAxleHireやUberRUSHのような企業と提携している。他のマーケットでは、Darkstoreは、例えばDelivやブランドが使用したい他の地元の配送業者などのサービスを使用する。

Darkstoreの顧客一覧にはマットレススタートアップのTuft & Needle、プレミアムヘッドホンメーカーのMaster & Dynamic、衣料ブランドのWildfang、そしてソファスタートアップのBurrowなどが登録されている。

Darkstoreは昨年5月にローンチした。それ以来、Darkstoreは150万ドル以上の資金調達を行って来ている。4月にはPivo​​tNorthからの140万ドルの資金調達が続いた。Darkstoreの目標は今年末までに1億1000万ドル相当の製品の出荷を行なうことだ。Hnetinkaによれば、Darkstoreはその指標を「予想以上に早く達成している」。

平均してDarkstoreは1注文当たり16.50ドルの収益を挙げている。平均注文額は550.22ドルだ。昨年には、Darkstoreは毎月25%の収益と注文の伸びを見せていた。

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(翻訳:Sako)

Amazonがアパートなどに設置できる宅配ロッカー”Hub”の運営を開始

Amazonは、メディアコンテンツやクラウドサービスといった仮想的製品の取扱範囲をさらに広げているが、電子商取引とマーケットプレイス、そしてそれを支える巨大な物流機構に対しても、そのビジネスの日々の収益を守るために機能の追加を続けている。

本日(米国時間7月27日)Amazonは、Hubという新しいサービスを静かに発表した。これは集合住宅内に設置されるロッカーで、居住者たちが大きな荷物を自由な時間に受け取ることができるようにするものだ。このサービスの特徴は、Amazon自身やその提携相手以外からの荷物も、ここへ配達できるようにしているということだ。

「どんな送り手からでも、そしてどんな小売業者からでも、いつでも好きなときに荷物を受け取ることができます」。サイト上のプロモーションビデオの中ではAmazonやZappos(Amazonの子会社)から以外の荷物を受け取る様子も描かれている。

このHubサービスは、現在はAmazon Lockersと呼ばれている、これまでAmazonが数年に渡って運営を行ってきたサービスの上に構築されたものだ。Amazon Lockersは公共の場所や小売店などに設置される配送ロッカーで、Amazonからの荷物をより便利に受け取ることを可能にするサービスだ。

重要なのは、Lockersと今回のHubは、これまでAmazonが手を付けて来られなかった物流ならびに配送経路上の部分へ焦点を合わせる、Amazonの大きな野望を表しているということだ。すなわち配送のラストマイル(より正確にはラストフィート)区間への対応だ。

この野望は、これまでもAmazonの行ってきた新しいサービスの動機となっていた。例えばドローンで荷物を届けるPrimeAirの開発や、特定の市場向けの配送サービスである、フランスのColis Priveの買収などだ。

これらのすべての努力は、荷物が顧客のもとへどのように到着するかを、Amazonがよりコントロールできるようにする。そうすることで届けるためのコストを更にカットすることが可能になるかもしれない。これは沢山のアイテムの無料配送(と大量の特典)を与える、Amazon Primeのような会員制度の中で、より高い利益を得るためには特に重要なことだ。

Hubの発表に先立ち行われた、Amazonの四半期決算発表によれば、純利益は約6億5000万ドル減少し、1株当りの利益予想も1ドル以上も減少した。この理由の一部は投資金額の増大によるものだ。マージンの改善はいずれ行わなければならないことであり、今日のサービスの発表はそこへ向けてのAmazonからの微妙なサインなのかもしれない。

そして過小評価しないようにしたいのは、Hubのような努力が、Amazon自身を越えて与える大きなインバクトについてだ。AmazonがHubを自身の荷物だけでなく、誰からの荷物に対しても使えるようにすることで、AmazonはかつてのパートナーたちであるFedExやUPS、そしてDHLとの真正面からの競争に晒されることにもなる。

DHLは、既に居住者のためのロッカーシステム、Packstationを運営している。そして、こうした動きを行なっているのは1社だけではない。Amazonがこれまで強引に割り込んできた、多くの分野と同様に、同じ問題を解決しようとビジネスを進めてきたいくつかのスタートスタートアップが存在する。例えばPackage ConciergeLuxer Oneなどだ。Googleは競合相手になる可能性のあったBufferBoxを2012年に買収したが、その後事業は停止している。

Amazon Lockersの場合と同様に、Hubは、消費者、配送会社、そしてAmazon自身などにとっても大きな問題を解決する。普通の場合、通常のメールボックスには届かない大きなものを購入すると、様々なパターンが発生する。もしアパートにコンシェルジュがいない場合には、荷物は営業所に持ち帰られるか、隣人の厚意に頼って受け取って貰うか、いつでも開いているとは限らないビルの管理室に届けて貰う、といった対応を考えなければならない。

「AmazonのHubは、セルフサービス、信頼できるカスタマーサポートの組み合わせによって、頼れるパッケージ管理ソリューションを提供します」と、Amazonはそのプロモーション資料の中で述べている。

現時点では、AmazonのHubは個人居住者向けにデザインされていて、屋内屋外それぞれのバージョンがあり、デジタルキーパッドの入力によって開くことができる。自身の所有する建物へHubの設置を申請した場合、そのアパート、オフィス、もしくは家の持ち主であるか否かが尋ねられる。アパートの所有者であることを示さない限り、その先のページに進むことはできないようだ。しかし他のオプションを指定することで、違う種類の場所への設置は可能になるようだ。

Hubは「さまざまな建物に簡単にインストールできるモジュラーシステム」だと、説明されている。2つのサイズが用意されている。Starter Hubは幅約180センチで42のコンパートメント(小区画)に分けられている。そしてExpander Segmentは23のコンパートメントを追加する。「モジュールは、あなたの建物のニーズに適した容量を提供するために、相互にリンクされます」とAmazonは説明している。「コンパートメントのサイズとレイアウトはすべて事前に設定されているため、必要なコンパートメントの種類を考える必要はありません」。

価格などの詳細についてはAmazonに尋ねている、詳細が判明したら更新する予定だ。

Hacker News 経由)

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(翻訳:Sako)

現金でAmazonアカウント残高をチャージ ― 米国でAmazon Cashがリリース

Amazonは米国時間4月3日、Amazon Cashと呼ばれる新しいサービスを発表した。提携する小売店で専用のバーコードを見せることにより、現金でAmazon.comアカウント残高をチャージすることができる。1度で15〜500ドルをチャージすることが可能だ。

Amazon Cashは今日から米国全土の従来型小売店で利用できる。CVS Pharmacy、Speedway、Sheetz、Kum & Go、D&W Fresh Market、Family Fare Supermarkets、VG’s Groceryなどが提携店となっており、同社は今後もこのリストを増やしていく予定。

PayPalもこれと似たサービスを提供している。PayPal My Cash Cardと呼ばれるサービスで、現金でPayPalアカウントの残高をチャージすることができる。このサービスもGreen Dotが開発するバーコードを利用したものだ。

PayPalの例と同様、Amazon Cashはまだオンラインショッピングを利用したことがないユーザー層を取り込むための策だ ― 現金で給与を受け取る人、銀行口座やデビットカードを持たない人、クレジットカードを利用しない人たちなどだ。FDICによる2015年の調査によれば、消費者全体の27%がこの「キャッシュカスタマー」と呼ばれる人々だという。

たとえ彼らがオンラインショッピングに利用できるお金を持ち合わせていたとしても、実際に買い物をするのは簡単なことではなかった。これまでは現金でAmazonのギフトカードを買って残高をチャージするしかなかったのだ。

また、このサービスは気軽にAmazon.comアカウントへチャージしておきたいという人々にもウケるかもしれない。

Amazon Cashがもつアドバンテージの1つが「即時性」で、小売店のレジでチャージすると即座にAmazon.comアカウントに反映される。いくつかのプリペイドカードは手数料がかかるものもあるが、Amazon Cashでは不要だ。

しかし、小売店で「Amazon Cash」と書いてあるギフトカードが売っているわけではない。その代わり、ユーザーは「amazon.com/cash」というURLにWebやモバイルからアクセスするか、Amazonのモバイルアプリで「amazon cash」と検索して専用のバーコードを表示する必要がある。Amazon Cashは同社のギフトカード機能にうまく統合されているから、AmazonのWebページにある「Manage Gift Card」というリンクをクリックしてもバーコードを表示できる。

このバーコードは再利用されるため、iOSの「Wallet」アプリに追加したり、Android端末のホームスクリーン上にショートカットとして追加しておくことも可能だ。

このサービスを利用するためには、まずバーコードをレジ係に見せ、いくらチャージするのか伝える。レジ係はそのバーコードをスキャンし、ユーザーがその分の現金を支払うという流れだ(スマートフォンをもっていなければ、自宅でバーコードをプリントしておけばいい。スマホの画面が割れている場合もこの方法で)。

チャージは即座に反映され、Amazonに掲載されているどんな商品にも利用できる。チャージをすると、登録されたEメールアドレス、電話番号、またはスマホアプリに通知される仕組みだ。

Amazon Cashは本日よりアメリカ全土で利用可能だ。

[原文]

(翻訳:木村拓哉 /Website /Facebook /Twitter

Alipayが韓国のKakao Payに2億ドルを出資 ― 韓国のEコマース、モバイルペイメント市場に攻勢をかける

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AlibabaグループのAnt Financialが新たなM&Aを発表した。同社は、韓国のKakaoが展開するフィンテックプロジェクトに2億ドルを出資する。Kakaoは韓国でメッセージング業界で独占的な地位を確立しており、企業価値は50億ドルにものぼる。

AlipayやAlibabaのデジタルバンキング事業を運営するAnt Financialは、近日ローンチ予定のKakao Payに出資することを決めた。このディールにより、Ant FinancialはKakao Payを通して同社の金融サービスを韓国でも展開する。また、オンラインのペイメントサービスだけでなく、オフラインの金融サービスにもビジネスを拡大する構えだ。

Kakao Talkのユーザーは合計で4800万人。韓国では、95%のスマートフォンにKakao Talkがインストールされていると言われている。以前からKakao Talkにはモバイルペイメント機能は備わっていた。しかし先月、Kakaoの取締役会は同社の金融サービス部門の子会社化を決定。Kakao Payが誕生することとなった。Kakao Talkでは、店頭での支払機能、P2P送金機能、各種料金の支払機能、Webバンキング機能などが利用できる。また、今後はローンの借り入れ機能なども追加する予定だ。

Kakao Payが提供する各種機能は、これまでにAnt Financialが中国で提供し、成功してきた分野だ。そのため、このパートナーシップは両社に大きな戦略的価値を与えるものだと言えるだろう。Kakaoの成長を加速させることはもちろん、Alibabaにも大きなメリットがあるのだ。このパートナーシップにより、Alibabaは韓国のEコマース市場に攻勢をかけることが可能になるだけでなく、韓国を訪れる中国人観光客がAlipayを使いやすくなるというメリットもある。

Ant Financialは現在、30億ドルのデットファンディング・ラウンドを実施している最中だ。同社はこの資金を利用して他社への出資や買収を積極的に行っていくと話しているが、すでにその戦略は動き出している。Ant FinancialはアメリカのMoneyGramを8億8000万ドルで買収しただけでなく、最近ではタイのAscend Money、フィリピンのMynt、インドのPaytm、シンガポールのM-Daqなどに資本参加している。今回のKakao Payへの出資も含め、これらの動きはすべて戦略的な理由にもとづいたものだ。今後も同様の動きが見られることだろう。

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(翻訳: 木村 拓哉 /Website /Facebook /Twitter

Walmartがアウトドア用品大手のMoosejawを5100万ドルで買収

Female hiker looks out above fog bank, mtns

Walmartは現地時間15日、アウトドア用品大手のMoosejawを約5100万ドルで買収すると発表した。買収費用はすべて現金で賄われる。ミシガン州マディソンハイツに拠点を置くMoosejawは、オンラインで大きなプレゼンスをもつとともに、ミシガン州をはじめとするアメリカ中西部に10の実店舗をもつ。Walmartによれば、同社による他の買収先と同じく、Moosejawは今後も独立した経営を維持される。そして今後、両社が互いに補完し合うようなブランドを開発していくという。

Walmartは、先月もオンラインの靴販売店であるShoeBuyを買収している。さらに、それ以前の昨年夏には30億ドルのjet.comの買収もあった。今回から加わるMoosejawをはじめ、Walmartは傘下にいくつかの独立ブランドをもつ。jet.comが買収していたHayneedle.IncやSam’s Clubなどがその例だ。

Moosejawは先日、Internet Retailerが発表した「2017年に『ホットな』小売店100」にも選ばれている。しかし、Walmartが注目したのはMoosejawのビジネスカテゴリーと、同社の業界との関係性だ。それに加えて、Moosejawは若い顧客を引き込むためのソーシャルメディア戦略に長けているという点も挙げられる。

Moosejawの買収によりWalmartは、アパレルというオンラインショッピングで人気のカテゴリーに新たなエントリーポイントを獲得することとなった。Patagonia、the North Face、Marmot、Arc’Teryxなど400のブランドから発売される12万以上のSKUが新たにWalmartに加わることとなる。Moosejawは服やアクセサリーの他にも、登山、ハイキング、キャンプ、スノースポーツ、ヨガ、水泳、サイクリングなどに使われる装備品も取り扱っている。

comScoreの調査によれば、2015年にはじめて、服とアクセサリーがオンラインショッピング最大のカテゴリーとなった。そして、今後そのカテゴリー内の競争が激しくなっていく。

Amazon Fashionというアパレル専門ストアももつAmazonは、ファッションカテゴリーの拡大を急速に進めている最中だ。また同社は、いくつかのプライベートレーベルブランドを通してファッションアイテムの販売もしている。Amazonが独自ブランドのトレーニングウェア女性用下着の販売をはじめるという報道もあった。加えて、Amazonがイギリスで独自のファッションブランドを立ち上げるというニュースもある。

Robert Wolfe氏とDavid Jaffe氏が1992年に創業したMoosejawは、現在350人以上の従業員を抱えている。今回のディールは2月13日午後に締結。Moosejaw CEOのEoin Comerford氏および同社の役員は、今後Walmartの北米向けEコマースチームに加わることになる。Moosejawの従業員たちは今後もミシガン州を拠点に活動を続けるが、Comerford氏はScott Hilton氏が率いるWalmartのアウトドア用品チームの監督を務める予定だ。

Moosejawの実店舗も通常通り営業を続けていく。しかし、同社はその収益の大半をオンラインから得ている ― その割合は85%にものぼるそうだ。

「WalmartのEコマースチームに加わることができ、とてもワクワクしています。そして、彼らのアウトドア用品ビジネスを率いることができるチャンスを楽しみにしています」とComerford氏は話す。「MoosejawとWalmartの新しい関係により、ブランドパートナーのためにマーケットプレイスを運営するという私たちのビジネスはユニークなポジションを獲得することになります。ただし、これまでMoosejawで取り扱ってきたブランドをjet.comやWalmartで取り扱うかどうかは、各ブランドの裁量次第です」。

Jet.comと同じく、Moosejawは独立したコンシューマー向けブランドとして経営を続けていく。しかし、これらのブランドを統合することでWalmartは恩恵を受けてきた。Jet.comとWalmartは、それぞれがもつ倉庫やサプライチェーンを統合することで、今年1月から商品を2日以内に届ける手数料無料のサービスを開始することが可能になった。

Mossejawとのケースでは、同社がこれまでに培ってきたトップブランドとの良好な関係性を引き継ぐことができる。これは、Walmartがそれらのブランドの商品をWalmart.comやJet.com、そしてShoeBuyなどのストアで取り扱うための交渉力につながるだろう。

「バックエンドでは広範囲な統合が行なわれることになります」と、WalmartのスポークスパーソンであるRavi Jariwala氏は今回の買収が与える影響について説明する。「より大きくなるスケールを利用することで、配送コストやクレジットカード利用料、各種取引にかかるコストなどを圧縮することもそれに含まれます」と彼は加えた。

またJariwala氏は、Jet.com傘下であるHayneedleの独立性を維持したことは成功だったとした上で、Moosejawに関しても同様の方針だと語った。

「それが、私たちが再現しようとしているモデルです」と彼は話す。

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(翻訳: 木村 拓哉 /Website /Facebook /Twitter

オンラインショップ向けのパーソナライゼーション・ツールDynamic Yieldが2200万ドルを調達

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ショップのWebサイトなどを顧客別にパーソナライズすることができるツールのDynamic Yieldは現地時間20日、シリーズCで2200万ドルを調達したと発表した。

CEOのLiad Agmonによれば、彼がDynamic Yieldを2011年に立ち上げた理由は、既存のパーソナライゼーション・ツールは「さまざまな問題に対して個別のソリューションを提供する」ものが多かったからだという。

一方、Dynamic Yieldではあらゆる問題に対処できる総合ツールを提供している。このツールが提供する機能には、A/Bテスト、メッセージング、パーソナライズされた商品リコメンデーション、そして、モバイルアプリやモバイルWeb、Eメール、オンライン広告などから取得したデータによって「顧客情報を全方位から把握できる」機能などがある。

一見ささいに思えることであっても、それを顧客ごとにパーソナライズすることで収益を増加させることができるとAgmonは話す。彼が私に見せてくれた例では、Webサイトのヘッダー画像を顧客の性別にあわせて入れ替えるだけでショップの収益が増加したことが分かる ― 彼が言うように、「1回目のデートと同じで、第一印象が重要だ」ということだ。

Dynamic Yieldによれば、Eコマース、メディア、ゲーミング、旅行業界が同社の主要顧客だ。Under Armour、Rolling Stone、Sephora、CWなどが同社のツールを利用している。それらの顧客企業が抱えるユーザーは5億人を超すという。

本調達ラウンドを合わせ、同社がこれまでに調達した金額は合計で3600万ドル以上である。このラウンドでリード投資家を務めたのはVertexとClalTechだ。その他にも、新規投資家のBaidu、Global Founders Capital、そして既存投資家のBessemer Venture Partners、Marker LLP、Innovation Endevorsなども本ラウンドに参加している。また、Vertexに所属するAviad Arielと、ClalTechに所属するDaniel Shinarの2名がDynamic Yieldの取締役に就任する予定だ。

Baiduの資本参加は特筆すべき点だろう。これについてAgmonは、今回のラウンドによってBaiduとDynamic Yieldの関係がより一層深まったと話している ― 結局のところ、パーソナライズされたWeb体験を提供することでオンライン広告の効果がより高まるということだ。

「近年、Web、モバイル、そしてEメールのパーソナライゼーションはマーケッターにとって欠かせない武器となっています」。そう語るのは、Baidu USAのバイスプレジデント兼ジェネラル・マネージャーであるAlex Chengだ。「トラフィック獲得は重要である一方で、顧客は商品を購入する前にその商品のことを調べ、さまざまなインターフェイスを通してブランドとの交流を深めています。それゆえに、Webとモバイルにおけるシームレスで包括的なカスタマー・エクスペリエンスこそが、ビジネスのROIを左右する重要な要素となっているのです。私たちはDynamic Yieldが創りあげたテクノロジーに感銘を受けており、同社のプラットフォームはすべての広告主にメリットを与えるものだと信じています」。

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(翻訳: 木村 拓哉 /Website /Facebook /Twitter

Amazonがドローン宅配をイギリスで検証開始、13分で初配送を完了

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Amazonは本日イギリスで、個人へのドローン配送の小規模な検証を開始したと発表した。今のところ、Amazonと協力する2人のカスタマーしかドローン配送での注文はできない。けれど、ゆくゆくは対象となるカスタマーを数十人、その後はさらに数百人規模まで拡大する計画だという。イギリス、ケンブリッジにある初のPrime Air配送センターから数マイル内に住むカスタマーが対象となる。

最初の配送は12月7日に実施し、配送距離はそう遠くなかった。それでもPrime Airにとってこれは大きな一歩だ。Amazonが初めてこのプロジェクトを発表した時、ドローン配送は少し早めのエイプリルフールネタに見えた。配送センターで荷物がドローンに積み込まれ、ドローンはレールに乗って外に移動し、そこから離陸する。着陸を含め、飛行はすべて自動だ。30分内に配送を完了するのがPrime Airの目標だ。

このドローンが初めて配送した荷物はAmazon Fire TVとポップコーンの袋だった。カスタマーが注文してから商品が届くまでの時間は13分だった。ドローンは5ポンド(約2.3kg)までの荷物を運ぶことができるという。

現在、対象となっているカスタマーはどの曜日にでもPrime Airで注文ができるが、日中で、飛行できる天候に限るとAmazonは言う。

本日Amazonが投稿した動画を見る限り、カスタマーはドローンが認識して着陸できるマットを裏庭に設置する必要があるようだ。

この検証でAmazonが使用しているドローンは、以前発表したものと違う。従来のクワッドコプター型のドローンで、昨年Amazonが見せた固定翼とクワッドコプターのハイブリッド型ではない。Amazonが長期的に見て必要と考える機能が揃っていないのかもしれない。だが、クワッドコプターはすでに使用したことがあり、検証済みのデザインだ。Amazonは常に、いくつか異なる種類のドローンを試していると伝えてきた。

Prime Airは世界中の拠点でドローンの検証を行っている。Amazonは最近、オーストリアにラボを設立し、何十人ものコンピューターサイエンティストがドローンが周囲を検知して避けるコンピュータービジョンの技術を開発している。

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これまでPrime Airは、アメリカでサンクスギビングの時期に何かしら大きな発表を行ってきた。これは2013年から始まったことだ。AmazonはCBSの60 Minutesの番組で、ドローン配送をメインストリームに持っていくというアイデアを披露した。昨年、Prime Airは最新のハイブリッドモデルのドローンをトップギアやGround Tourの司会者、ジュレミー・クラークソンの力も借りて、披露した。ただ、今年のサンクスギビングの時期は静かだった(AmazonはGrand Tourのローンチに人々の注目を集めたかったからではないかと私は推測している)。

今回の検証は本当に小規模で、ベータテスターは片手で数えるほどしかいない。それでもAmazonがこのプロジェクトにいかに真剣に取り組んでいるかが分かる。数ヶ月後にはケンブリッジ周辺に住む多くの人たちがPrime Airで紅茶とビスケットを注文できるようになりそうだ。しかし、近いうちにアメリカで同様のサービスを始めることは難しいだろう。Amazonがイギリスでドローン配送を実施できるのは、7月に視野外でのドローン飛行の認可を得たからだ。認可を得るには、ドローンは多岐にわたる安全テストをクリアしなければならない。また、Amazonが現在検証を行っている郊外の環境から他の地域に拡張するにもまだしばらく時間がかかるだろう。都市部でのドローン配送は、郊外の家の大きな庭へと配送するより遥かに難しい。Amazonはその問題についても現在解決策を見つけ出そうとしているところだ。

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(翻訳:Nozomi Okuma /Website

ボタン1つで洗剤やキッチンペーパーを注文、Amazon Dash Buttonが日本上陸

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かさばるトイレットペーパーなどの消耗品、あるいは重たい水や洗剤が切れる度にスーパーや薬局まで行って買い足すのは家事の負担だ。だが、これからはボタン1つでいつでも日用品を注文できるようになる。品物を買い忘れる心配もない。Amazonは、ボタンで商品を注文できるIoT端末「Amazon Dash Button」を今日から日本でも販売を開始する。

Dash Buttonは物理的なボタンが付いた日用品を注文するためだけのIoT端末だ。Dash Buttonを使用するには、まずWiFiに接続し、iOSかAndroidのスマホアプリからボタンで発注したい商品を設定するだけでいい。あとは好きなところにボタンを設置して、シャンプーや洗剤が切れたらボタンを押すと品物が届く。

Dash Buttonは1回ボタンを押すと、その商品が届くまで重複して注文できない設定になっている。ボタンを誤って押してしまい、大量に商品が届くというような心配はなさそうだ(この設定は変更可能)。もちろん注文はアプリで内容を確認したり、キャンセルしたりすることもできる。

このサービスを利用するにはAmazonのプライム会員に登録している必要がある。ボタンの価格は各500円だが、ボタンを使った商品の初回購入時に500円の割引が適用されるので、本体価格は実質無料だ。今日からDash Buttonで注文できる商品はシャンプー、洗濯用洗剤、清涼飲料水など約40種類が揃っている。

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ちなみに、アメリカではAmazonはDash Buttonを2015年3月にローンチし、現在では100種以上の商品の取り扱いがある。1010dataのEcom Insights Panelが今年4月に発表したデータによると、最も売上がある個別ボタンはP&Gの洗濯用洗剤、P&Gのキッチンペーパー、Kimberly Clarkのトイレットペーパーだ。よく使うが、ブランドを変えることが少ない消耗品とDash Buttonとの相性が良いようだ。

AmazonはDash Buttonと共に、家電と連動し、自動で日用品を再注文するサービス「Amazon Dash Replenishment」サービスも本日ローンチした。Dash Replenishmentは、例えばプリンターであれば、トナーが減ったのを検知すると、自動でトナーを再注文するサービスだ。日本ではアイリスオーヤマ、エレコム、シャープ、船井電機、三菱レイヨン・クリンスイがDash Replenishmentと連携したサービスを開始する。

オンラインの100均ショップ「Hollar」が3000万ドルを調達

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100円均一ショップに似たモバイルアプリを運営するHollarがシリーズBで3000万ドルを調達したことを発表した。リード投資家を務めたのはKleiner Perkins Caufield & Byers(KPCB)で、他にも新規投資家のComcast VenturesとGreycroft Partners、そして既存投資家のLightspeed Venture Partners、Index Ventures、Forerunner Ventures、PritzkerGroupも本ラウンドに参加している。

これに際し、KPCBでGeneral Partnerを務めるEric FengがHollarの取締役会に加入する。

これまでにHollarは合計で4750万ドルの資金調達を完了している。シリーズAでは1200万ドル、シードラウンドでは550万ドルを調達しており、この間はわずか4ヶ月だ。

Hollarはとても興味深いビジネスに取り組んでいる。取り扱われている商品の値段は非常に安く、そのほとんどは2ドル程度の商品だ。創業後10ヶ月のあいだは5ドル以上の商品を取り扱っていなかったが、今後はホリデーシーズンに合わせて10ドル程度の商品も取り入れていく。これによって、より高いクオリティの玩具やギフトを取り揃えることができる。

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David Yeom

Hollarのバックグラウンドを説明すると、同社のアイデアはThe Honest Company CEOのBrian Leeが構想したモデルが元となっている。彼がHollarの共同創業者兼CEOであるDavid Yeom(当時はHonestのバイスプレジデント)と同社のコンセプトを練り上げ、このビジネスを開始するに至ったのだ。現在Leeは同社の取締役会のメンバーではあるが、日々の経営には関与していない。

Yeomによれば、当初はオンラインで100円均一ショップを運営するというアイデアを理解してくれる人はいなかったという。

「私たちが創業した当初は、みなが口を揃えて”2ドルの商品を売るビジネスで稼げるわけがない!”と言っていました」とYeomは笑いながら話す。しかし、そのように否定的な態度をとる人々は、100円均一ショップで買い物する人々の消費者行動を理解していなかった。1つの商品だけを買うために100円均一ショップに行く人はいない。その安い商品をカゴいっぱいに詰めて買い物をするのだ。

Hollarで買い物をするユーザーの消費者行動も同じだ。

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実際、Hollarの買い物かごに入れられる金額は1人あたり15ドルから30ドル程度となっており、この数字は従来型ショップの2倍以上にもなるとYeomは説明する。つまり、Hollarの顧客は1人あたり平均して10ドルの買い物をするということだ。

これこそが、同社が6ヶ月間で100万ドルを超える売上を達成し、毎月2桁の成長を成し遂げている理由なのだ。

ただし、Hollarでは10ドル以下の買い物をすることができないこと、また、25ドル以上の買い物でないと送料が発生することも平均注文価格の増加に寄与しているだろう。

HollarはWebとモバイルの合計で100万人以上のユーザーを獲得したと主張している。しかし、Sensor Towerによって集計されたデータによると、HollarのiOSアプリが米国内でダウンロードされた回数は19万2000回程度しかなかった。とは言うものの、同社はAndroidアプリも提供しているし、Webでも買い物をすることは可能だ。

しかし、本当に興味深いのは、広告チャネル以外からの顧客流入が全体の半数にものぼるという点だ。この数字は同社が口コミによって成長してきたことを表している。ついでに言っておくと、私はその事実を目の当たりにしたのだ。私の頼みで友人数名がHollarを試してみたとき、彼らは合計で20ドル以上の商品を買い物かごに詰め込んでいたのだ。

売上高と同じく、Hollarの利用者数も増加している。その大半はモバイルアプリからの利用だ。

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現在Hollarは1万種類以上の商品を取り扱っており、来月までには300点以上のHollarのプライベートブランド(PB)商品がラインナップに加えられる予定だ。それには家庭用品やキッチン用品、家電、アクセサリーなどが含まれており、なんとHollarブランドのスマートフォン用VRヘッドセットも発売するという。

YeomはPB商品から得られるマージンについて詳細を明かさなかったものの、外部製品に比べると「大幅に大きい」マージンが得られると話す。

従来型の100円均一ショップに似たHollarではあるが、実店舗を真似ていないところが1つある。食料品の取り扱いだ。この点についてYeomは、「私たちはその分野にあまり投資をしていません。軽くて、楽しいものを取り扱うというコンセプトに忠実でありたいと思っています」と話している。

Hollarが掲げる成長戦略は、PB商品と慎重に選ばれた取扱商品だけではない。その1つが、2017年の第1四半期にローンチを予定しているHollar独自のマーケットプレイスだ。これは、AmazonやeBayのように売り手が直接Hollarのユーザーに商品を販売できる仕組みだ。

「本当の意味でスケールしたいのであれば、これが本当に適切なアプローチなのだと思います」とYeomは語る。「Eコマースのビジネスでは在庫はすぐに無くなります。それを常に気にかけていなければなりません。マーケットプレイスは、より幅広い商品を顧客に提供するための方法の1つなのです」。

Hollarのマーケットプレイスに参加する売り手には厳しい審査を課すことで、商品のクオリティを維持する予定だと彼は話している。

「それには細心の注意を払い、売り手を厳しく審査するつもりです。(中略)顧客体験を第一に考えることを徹底していきたいと思っています」とYeomは説明する。売り手を評価したり、レビューを投稿するシステムも来年には導入し、顧客がフィードバックできる仕組みを取り入れていく。

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現在は150名のチームで運営されているHollarは、これまで別々の場所にあった倉庫とオフィスを統合するにあたってチームを増強していく予定だ。新しいオフィス兼倉庫の予定地は約1万7000平方メートルの面積を持ち、皮肉にも、元々99セントショップが所有していた建物だという。同社は米国東海岸にも倉庫を設置する予定だ。

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(翻訳:木村 拓哉 /Website /Facebook /Twitter

小規模ビジネス向け配送サービスのWeengsがLocalGlobeなどから270万ドルを調達

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小規模の小売店やオンラインショップ向けの配送サービスを展開するイギリスのWeengsが220万イギリスポンド(米ドル換算で約270万ドル)を調達した。同社のサービスを利用すれば手間のかかる商品の配送を一手に引き受けてくれる。ロンドンでサービスを展開する同社は、今回調達した資金を利用して他のヨーロッパ諸国への事業拡大を目指す。

今回のシードラウンドにはRobin KlevinとSaul Klevinが率いるLocalGlobe、Seedcamp、ドイツのCherry Ventureなどが参加している。その他にも、匿名のエンジェル投資家が数名と、ギリシャを拠点とするVCであるVentureFriendsも本ラウンドに参加した。2015年7月創業のWeengsは、これまでにエンジェル投資家などから1万7500イギリスポンド(約2万1300ドル)を調達している。

Eコマースの商品配送という点にフォーカスし、それにかかる手間と時間をできるだけ省くことを目指すWeengsは、スマートフォン・アプリを通じてパッケージングおよび配送サービスを提供している。アプリの利用はとてもシンプルで、商品の写真を撮り、配送先の住所を入力し、最後にピックアップを頼むだけでいい。

すると、1時間も経たないうちにWeengsの「エンジェル」たちが商品を受け取りにやってくる。「エンジェル投資家」と間違えそうな名前だが、投資家である彼らがこのように自分の手を汚すことなどないだろう。商品を受け取ったエンジェルは、Weengsが所有する商品管理用の倉庫にその商品を届け、そこで専門のスタッフが商品を梱包する。梱包に使われるのはカスタマイズされたパッケージだ。

パッケージ済みの商品は最終的にWeengsと提携するRoyal Mail、DHL、DPDなどの配送業者によって配送される。Weengsの利用料は1回のピックアップにつき5ポンド(約6ドル)で、それに配送料が加わる。

Weengsの共同創業者であるGreg Zontanosは、「小規模の小売店やオンラインショップが頭を抱える問題は商品のパッケージングと配送です。彼らには大企業のようにハイクオリティな配送サービスを展開できるだけのリソースや経験がなく、そのせいで商品の到着が遅れたり、梱包が不十分で商品が傷ついてしまったりといった問題が発生してしまいます。だからこそ、私たちは大規模な配送サービスを手ごろな料金で提供しているのです」と話す。

「まだ梱包されていない状態の商品をユーザーの店舗や自宅まで取りに行き、専門のスタッフが自社製のパッケージで商品を梱包し、信頼のおける配送業者が格安な料金で商品を配送します。これにより、当日配達が可能になるだけでなく、丁寧に梱包された商品を傷ひとつない状態で顧客に届けることができます。そしてユーザーは時間とお金を節約できるのです。また、Weengsは国際配送にも対応しており、カスタマイズされたパッケージングと配送サービスを低いコストで提供し、面倒な税関手続きを代行することで、ユーザーはより大きな市場にもアプローチができるようになるのです」。

Weengsの収益モデルは優れたものになる可能性がある。同社の収益となるのは配送する荷物の数に大きく左右される利用料金と配送料だけではない。大量発注によって価格が下がった配送コストと、実際にユーザーから受け取る配送料金との差額もWeengsが得るマージンとなるのだ。もちろん、このビジネスモデルを機能させるためには事業規模を拡大していくことが最も重要となるだろう。

そのため、Ebayで何度も商品を販売する人や、Trouvaに掲載されているようなブティック洋品店などがWeengsの典型的なユーザーだ。「このようなショップを運営しているのは1人か2人の個人であり、彼らが8時間以内などというように制限された時間のなかで、商品を梱包するパッケージを探したり、実際に梱包したり、パッケージに貼るラベルを購入したり、郵便局に並んだり、在庫を調整したりといった作業をこなすのは難しいのです。Weengsを使えば、彼に必要なのは写真を撮り、配送先の住所を入力し、ピックアップを要請するのに必要な時間だけなのです」とZontanosは語る。

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(翻訳: 木村 拓哉 /Website /Facebook /Twitter

返品代金の即日返還サービスReturnlyが320万ドルを調達

Shot of a young man delivering a box to a woman

オンラインで買った物を返品するという行為は、本質的に顧客の不満足を表すものだ。しかし一部の賢いショップオーナたちはある事を学んだ。それは、返品の要望に対して守りに入ってしまうのではなく、逆にその不満足さの表現を広い心で受け入れた方が良いのだということだ。なぜなら、スムーズに返品プロセスを完了させることができれば、その不幸な出来事のあとに顧客がリピーターになってくれる可能性が高いことが分かったからだ。

サンフランシスコ北部の街を拠点とするReturnlyは、返品にともなって顧客とショップとの間に張り詰める緊張の糸をほぐしてくれるスタートアップだ。創業者兼CEOのEduardo Vilarが目指すのは、データの力を駆使することで返品によって一度失った収入をもう一度ショップの元に戻すことなのだ。

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Returnly創業者のEduardo Vilar。サンフランシスコのミッション地区にて。

それを実現するため、Returnlyはショップと消費者との間に立ち、よりスムーズな返品プロセスを提供している。それは、商品を返品してから代金が返還されるまでの恐ろしい待ち時間を省略するというサービスだ。

先日、同社はシードラウンドにて320万ドルの調達に成功した。リード投資家はIndex Venturesが務め、他にもSV Angel、FJ Labs、Mundiventures、そしてエンジェル投資家のAriel Polerも出資に参加している。

Returnlyのサービスでは返品代金が同社から消費者へと前払いされ、その代金はまず、同じショップの商品の購入のみに利用できるオンライン・ウォレットに返還される。そして、ショップが返品された商品を受け取った後には、最終的に返品代金が消費者の銀行口座に振り込まれるという仕組みだ。このオンライン・ウォレットのことを、子犬のような目で「また当店でお買い物してください」と訴えるお金だと思っていただいても差し支えないだろう。

このようなシチュエーションでは様々な行動経済学の原理が働くことになる。だが、このサービスを利用すれば再購買の確率がぐんと上がることは言うまでもない。

また、VilarはGlassdoor出身のサイエンティストを数名雇い、ショップオーナーにA/Bテストを提供して前払いされた代金が再購入に使われる確率の違いを視覚化するということも行っている。

SV AngelのパートナーであるBrian Pokornyによれば、この有名なVCがReturnlyへの出資に踏み切ったのは、同社のサービスを利用するショップオーナーとの会話がきかっけだったと語っている。

ショップオーナーたちはReturnlyから実にざまざまな利点を得ている。Returnlyの収益は返金前の商品代金をもとに計算される手数料収入だ。この他にもサービスの導入時には初期料金も発生する。しかし、FanaticsCotopaxiなどの企業は、これらのコストを合わせたとしてもReturnlyは低いリスクかつ利点の多いサービスだと判断した。

Vilarは数学と保険数理学のバックグランドを持っており、この知識が同社の初期段階のビジネスを支えたという。将来的には、彼が創りあげた金融ビジネスは予測可能であるだけでなく、利益を生むものなのだと機関投資家に示したいとVilarは語る。

返還されたお金をすぐに他のショップで使うことができないことに苛立つ消費者もいることだろう。しかし、覚えておかねばならないのは、Returnlyのサービスがなければ最大で21日ものあいだ代金が返還されないこともあるということなのだ。

[原文]

(翻訳: 木村 拓哉 /Website /Facebook /Twitter

Alibaba、位置情報の測定や分析ツールを提供するPlaceIQに出資

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PlaceIQ は新たに大きな投資家を得た。中国のEコマース大手Alibabaだ。

両社は出資額について開示していない。これは戦略的な支援で、小規模な投資であり、PlaceIQが今年の初めに実施した、2500万ドルの調達ラウンド に付随する追加的な投資という。PlaceIQの共同ファウンダーでCEOのDuncan McCallは、これは大規模なパートナーシップの一環で、AlibabaはPlaceIQのテクノロジーを使用していくと話す。

「Alibabaの意図を代弁するつもりはありませんが、私が思うに、彼らは投資先というよりは、戦略パートナーを探していたのだと思います」とMcCallは言う。

PalceIQは位置情報とマーケターからの「ファースト・パーティー」データを組み合わせ、コンシュマーの行動の全体像を理解するための情報を提供する。例えば、誰かが車のディーラーを訪れたという情報だけでなく、その人が実際に車を購入しようとしているか、あるいはその人物がどういったテレビを視聴する傾向にあるかといった情報を組み合わせることができる。

AlibabaはPlaceIQのテクノロジーを多様な用途のために使用することができるMcCallは言う。例えば、マーケティング、商品レコメンド、より広範な意思決定のための情報提供などだ。

これはモバイル広告、さらには広告全般において位置情報がいかに有用なものになってきているかを示すことだと彼は考えている。「位置情報を売上やマーケティングに活用するというより、真にテクノロジーが意思決定を助けたり、ビジネスのインサイトを得ることにおいてそれが重要になってきているかを示しています」。

今後はPlaceIQはグローバルに展開することをMacCallは示唆し、そのためにこのようなパートナーシップモデルを継続すると話す。

「私たちのコアバリューはデータとテクノロジーにあります」と彼は言う。「新しい地域に進出を検討する時、その地域を牽引する企業を見つけ、共に展開できるようにしたいと思います」。

[原文へ]

(翻訳:Nozomi Okuma /Website

Amazonに対抗、Googleの宅配サービスがアメリカの75%の地域で利用可能に

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Googleは本日、自社の宅配ショッピングサービスGoogle Expressのサービス対象地域を拡大すると発表した。Google Expressは東海岸の広い地域で利用可能になった。オンラインの買い物客は、電化製品、洋服、医療用品、美容用品、インテリア、さらには乾物食品をウェブや専用のモバイルアプリから購入することができる。今回の拡張で、Google Expressは東側を中心とする12以上の州で利用できるようになり、7000万人にサービスを提供できるようになるとGoogleは伝える。

本日から、 Google Expressは下記の州で利用可能となる。
デラウェア州、マリーランド州、ニュージャージー州、ニューヨーク州、ペンシルベニア州、バージニア州、ウェストバージニア州、コネチカット州、マサチューセッツ州、メーン州、ニューハンプシャー州、ロードアイランド州、バーモント州だ。

この地域の買い物客は、コストコ、 Kohl’s、L’Occitane、PetSmart、Stop & Shop / Giant Food (地域による) Sur La Table、Ulta Beauty、Payless、 Adorama、Road Runner、Vitamin Shoppe、Whole Foods、TRU/BRU、Paragonなどの多様な小売店から商品を購入することが可能だ。

主要都市部の買い物客は、品物の同日配送を依頼することができる。郊外エリアや地方の場合、配送は翌日か2日後になる。

これにより、GoogleはAmazonと直接的に競合するようになるだろう。AmazonのPrime Nowサービスは、アメリカの主要都市においてすでに同日配送サービスを提供していて、Primeメンバーシップの会員なら誰でも、何百万とある対象商品の翌日配送を行っている。それは都市に住む人に限らない。

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一方Google Expressは、牛乳、果物、野菜といった生鮮食品や他の冷蔵、冷凍商品の配送を取り止めることにした。

サービス地域の拡大する前にGoogleは戦略を変更し、生鮮食品の配送サービスを停止することを決断した。Google ExpressはAmazonFreshやInstacart、Peapodとの競争は止め、スケールしやすい事業に注力することを選んだのだ。

また、多くの買い物客はまず最初にAmazonのサイトに向かうようになっている流れがある。Googleが対抗しようとしている潮流だ。最近のアンケート調査によると、アメリカのオンラインの買い物客の半数以上(55%)は、商品を探すのに最初からAmazonのサイトを使うことを示した。昨年より44%増加している。一方で、GoogleやYahooといった検索エンジンでの商品検索は減少している。Googleでは、ウェブの買い物客が自社サイトから検索を始める人が昨年の34%から28%に低下した。

Google Expressは、非会員の購入から得ている配送料4.99ドルと、定期購入者向けの年間95ドルのプランで収益を得ている。だいたいPrime会員の価格と同じくらいだ。買い物客は各店舗の最小購入額を超えて買い物する必要がある。通常15ドルだが、最大で35ドルの店もある。これ未満の買い物には追加料金がかかる。

Googleは各注文ごとの手数料も得ている。配送自体は、宅配事業者やデリバリーサービスが担う。

本日より、アメリカ本土の75%の地域でGoogle Expressが使用できるようになるとGoogleはTechCrunchに伝えた。

しかしこのサービス地域からは、どのくらいの人がGoogle Expressを知っていて、実際にそこで買い物をしているかは分からない。Googleは収益の詳細や処理した配送件数、他のサービスのトラクションやグロースを示す情報は公表していない。

[原文へ]

(翻訳:Nozomi Okuma /Website

Amazonのネット接続スピーカーEcho Dotが、50ドルになって帰ってきた

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すでにそれがやってくることは知っていた – Amazonが今週の初めにうっかり投稿したTweetのおかげで。しかし、ついに公式に発表された:Amazonのネット接続スピーカーEcho Dotが49.99ドルという低価格で戻ってきた。このAlexa(Amazonの自然言語UI)を搭載したデバイスは、より大きなAmazon Echoの中にあるものと、ほとんど同じ機能を提供する。Amazonの音声ベースアシスタントを通して、音楽を再生したり、ニュースを聞いたり、天気をチェックしたり、照明を点けたり、タイマーをセットしたり、アプリを使ったり、その他のことを行うことができる。

Echo Tapと一緒に今年3月に一度発表されたEcho Dotは、ネット接続スピーカーのEchoファミリーをより低価格で提供しようとするAmazonの最初の試みだった。

Dotが生まれた理由は、多くのAmazonの顧客が自分自身のスピーカーとEchoに接続したいと問い合わせをしてきたからである ‐ そうすれば、自宅のホームエンターテイメントシステムを声で制御できるようになるし、Alexaへの話しかけにも用いることができる。

このデバイスは、Bluetoothまたは3.5ミリ径のステレオプラグを介してあなたのエンターテイメントシステムに接続することができ、そして声を使ってAmazon Music、Prime Music、Pandora、Spotify、iHeartRadio、iTunesその他の音楽を再生することができる。

それに加えてDotの大きな利点は、複数のデバイスを買って家中に置いておき、Alexaが身近のデバイスから反応するようにできるということだ。これは子供が叫んだり、テレビが鳴り響いたりしているような、落ち着きのない騒々しい家では有利に働く。近くに複数のスピーカーを持つことで、Alexaはあなたの声を良く聞くことができるようになる。

この機能は新しいDotでは更に改善されている、より高速なスピーチプロセッサと、ESP(Echo空間知覚)と呼ばれる機能のおかげだ。ESPは、どのDotが1番あなたに近くて、あなたの声に反応すべきなのかを、デバイス自身が決定するために役立つ。Amazonは、ESPの性能はこの先も向上していくとアナウンスしている。それによって複数のEchoデバイスが同時に応答するという問題も解決していく筈だ。

それ以外の点では、Echo Dotは大きなEchoに似通っている。Echoと同様に7つのマイクアレイを内蔵し、Echoがサポートする全てのスマートホームデバイスをコントロールする。

以前の89.99ドルという価格では、Dotは悩まずに買えるといったものとは言えなかった。そして2つ以上の購入を考えた場合、予算を気にする買い手を躊躇わせるものがあった。

50ドルなら、価格の心配は少なくなる。

Amazonはまた、バルクで購入することを奨励するために、Dotの割引パックを用意している。あなたが6台のパックを購入した場合には、実質的に5台分の価格で1台を無料で手に入れることになる。一方、12台パックを購入した場合には、2台分が無料だ。

Dotはまた、あなたの家の装飾により良くマッチするように黒と白の2色が用意されている。デザインも新しく、よりコンパクトになったとAmazonは言っている。Echoにも同様に、新たに白が用意された。

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(翻訳:Sako)

韓国の美容品専門EコマースのMemeboxが6600万ドルを調達

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韓国の美容品を専門とするEコマース企業のMemeboxがシリーズCで6595万ドルを調達した。これにより、さらなるビジネス拡大を目指す。

このラウンドをリードしたのは新規投資家のFormation Groupで、既存投資家のGoodwater CapitalとPejman Mar Venturesも本ラウンドに参加した。2014年にY Combinatorから卒業したMemeboxは、これまでに合計で9500万ドルの資金調達を完了したことになる。同社は2015年3月にシリーズBで1750万ドルを調達している。

現CEOのDino Ha氏によって2012年に創業されたMemeboxの当初のビジネスモデルは、いくつかの美容品をパックにしたボックスを販売するというものだった。しかし、BirchBoxに代表される美容品の箱詰めビジネスに陰りが見えてきたと判断し、現在のコンシューマー直結型のEコマース・ビジネスに方向転換をすることとなった。

現在、同社は韓国、中国、アメリカの3ヵ国に拠点を構えており、その他の国々向けにもグローバル・サービスを展開している。サンフランシスコ、上海、ソウル、台北、香港、シンガーポールの6ヵ国にオフィスを構え、従業員は合計で250人だ。Memeboxによれば、美容品の箱詰め製品の売り上げが全体に占める割合は1~2%程度だという。

Memebox U.S.のプレジデント、Arnold HurとTechCrunchとのインタビューによれば、同社のトータルGMV(プラットフォーム上の取引額の合計)は年間で1億5000万ドルにものぼり、その年間成長率は280%だ。

K-POPや韓国ドラマの影響もあり、韓国の美容品に対する需要は爆発的に伸びている。しかも、それはアジアの国々に限ったことではない。

韓国はMemeboxの出身地であり、同社にとって最大のマーケットではある。しかし今では、米国市場と中国市場での売り上げの合計は韓国市場を上回るという。そして、その2つのマーケットは急速に成長中だ。グーグル出身のHurによれば、Memebox Chinaは年間1200%、Memebox U.S.では年間490%ものスピードで売上高を伸ばしているという。

Memeboxのグローバル成長の立役者であるHurは、「韓国市場は当社のハブ拠点としての役割を持ち続けるでしょう。しかし、当社はグローバルでの売上高を伸ばすことにも成功してきました」と話す。

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Memebox CEOのDino Ha (写真左) とHur (写真右)

自社ブランド製品

韓国の美容品を専門にするMemeboxは、現在1200点以上のプロダクトを展開し、それらの製品は同社のプラットフォームを通して米国と中国にも販売されている。しかし、Memeboxのビジネスが面白いのは、既存の美容品に存在する「ギャップ」を自社ブランド製品で埋めているという点だ。

Hurはこの取り組みについて、Netflixのオリジナル番組を例に説明してくれた。

「Netflixが政治ドラマとKevin Spacyの人気を理解しているのと同じことです。彼らはその2つの要素を組み合わせて素晴らしいドラマを製作しました。それと同様に、私たちはデータによって顧客のニーズを理解し、トレンドとギャップを見つけ出すことが可能なのです」と彼は話す。

自社ブランド製品の1つである純アロエのフェイスマスクは、コットン製の従来のフェイスマスクを補完する関係にある。さらに自社ブランドの価格は従来品の4分の1だ。そして、マーケットに製品を投入するまでのスピードも速い。Memeboxによれば、自社ブランド製品のコンセプトが決定してから販売までにかかる時間はたったの数カ月だという。これは、他社が18ヶ月から24ヶ月かける従来の製品開発期間を大幅に短縮することによって実現されている。顧客ニーズに関するデータを分析することで、レポート調査、トレンド調査、フォーカスグループによるニーズ調査などにかかる時間を短縮しているのだ。

この取り組みは同社の収益にも大きなインパクトを与えている。

4つの異なるブランド、450点のプロダクトを含む自社ブランド製品からの収益は、他社製品の販売から得る収益よりも高いとHurは話す。

「自社ブランド製品はEコマース・プラットフォームよりも高い収益をあげています。自社ブランド製品を販売し初めてからまだ1年あまりだという事を考えれば、この数字は驚くべきものです」と彼は話す。

しかし、Memeboxは製品開発にフォーカスしてはいるものの、プラットフォーム上で販売している製品と直接的に競合する気はないとHurは話す。実際に、同社は今年末までに2つの自社ブランドを販売開始すると同時に、有力な他社ブランドをプラットフォームに加えることを目指している。

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オンラインを超える

オンラインは顧客と企業をつなぐ大きな接点である。そして、Memeboxもまた、オンラインに関する素晴らしい数字を公表している。アプリのダウンロード数は400万件にのぼり、全体の8割の売り上げがモバイルから生まれているのだ。しかし、Memeboxはオフラインの取り組みにも注力し始めた。

先日、同社初となる従来型の店舗がソウルにオープンした。Hurによれば、この店舗が同社初のオフライン店舗となるが、今後も実際の店舗を展開していくかどうかはまだ未定だという。

「オフラインの店舗を構えることで、新しい顧客層との接点が持てるだけでなく、より多くのデータを集めることにもなります」と彼は話す。「例えば、異なるパッケージングや棚の構成に対する顧客の反応の違いなどです。オフラインは、完全な顧客満足を実現するための要素の一つなのです」。

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デジタル・ファッションブランド

Hurによれば、Memeboxを突き動かすイデオロギーとは、デジタル世界のL’Orealのような企業を創りあげるというものだ。

デジタルはMemeboxが積極的に取り入れてきた要素だ。同社がもつソーシャルメディアのフォロワーとは別に(同社によれば、Facebookページの動画視聴回数は7000万回を超える。この数字は、「L’Oreal、Benefit Cosmetics、H&Mの動画視聴回数を合計したものより多い」)、Memeboxは美容品を紹介するユーチューバーやブロガーと共同での製品開発にも取り組んでいる。その製品の紹介動画や紹介記事を見る人々の半分は18歳から24歳の女性達だ。通常のマーケティングではその年齢層にリーチするのは難しいとされており、そしてこの顧客層は同社のメインターゲット層でもある。

「CPR(Comsumer Product Revolution)という言葉があります。コマース業界に新しい風を吹き込むことを意味する言葉です。」とHurは語る。「新しいブランドがオンライン上で生まれており、特に美容業界では、それらのブランドは従来のものとは大きく異なります。(従来の美容品企業と比較した)私たちの強みとは、今の時代に適した企業とは、過去の企業とはどのように異なるのかという事を常に考えることなのです」。

Memeboxは進歩をつづけているが、まだ利益を出す段階には至っていない。

「来年度には黒字化することを目指しており、それに向けて着々と成果を出してきています」とHurは語る。

将来的にIPOを目指すのか、あるいは、先日Walmartが30億ドルでJet.comを買収し、UniliverがDollar Shave Clubを10億ドルで買収するなどの動きがあるなか、同社も他社との合併を目指すのかについてはHurはコメントを控えた。

ただし、Memeboxが注目企業だということは間違いない。

[原文]

(翻訳: 木村 拓哉 /Website /Twitter /Facebook