Redditアプリが刷新、コミュニティを見つけるための「発見」タブと新しいナビを追加

Reddit(レディット)は米国時間2月24日、モバイルアプリに2年以上ぶりの大きな変更を加え、パーソナライズされたレコメンデーションを提供する新しい「発見」タブと、ユーザーがすばやくアクセスしてサブスクを整理したり、プロフィール設定にアクセスしたりできる新しいコミュニティおよびプロフィールメニューを含む刷新されたナビゲーションシステムの提供を開始した。

同社は、興味を探求するためのより良い方法が欲しいというユーザーの声を聞き、発見タブの導入を決定したという。

Redditには現在、10万を超える活発なコミュニティが存在するが、その多くはまだ十分に知られていない、と同社は指摘している。

「当社がここで解決しようとしているのは、深く関わりたいと思うサブレディットやコミュニティを見つけるのが難しいという大きな問題です」と同社のProduct for Content and Communities担当ディレクターのJason Costa(ジェイソン・コスタ)氏は説明する。「Reddit検索やGoogle検索で何か出てくるかもしれませんが.……それには作業が必要なのです。なかなか難しいことです。我々はそれを認めます。ですので、あまり知られていないコミュニティの発見をしやすくするために、新しい表面領域を作りたかったのです」とコスタ氏は説明した。

新しい発見タブは、iOSとAndroid用のRedditモバイルアプリのホームボタンのすぐ右側にくる。このセクションには、サブレディット(コミュニティ)のレコメンデーションが視覚的に魅力的な縦型フィードで表示され、新規Redditユーザーの場合は人気度に基づき、既存ユーザーの場合はエンゲージメントパターンに基づいて表示される。

具体的にはRedditは、ユーザーのサブスクリプションや最も長い時間を過ごす場所などを考慮して、レコメンデーションを作成する。例えば、あなたが野球のサブレディットをたくさん購読していて、サッカーのサブレディットでも少し時間を過ごしている場合、アプリは他のスポーツコミュニティを勧めるかもしれない。新規ユーザーの場合、Redditはその人の興味についてもう少し情報を得るまで、人気のあるコミュニティを勧める。

しかし、Redditはレコメンデーションのために、年齢、位置情報、性別など、ユーザーの属性を活用することはない。

発見タブをスクロールすると、写真、GIF、ビデオが小さな四角いボックスに入っていて、それらが代表しているコミュニティの名前が重なっている。豊富なマルチメディアを使用するというこの選択は、テキストが多くなりがちなRedditアプリに、より「視覚、聴覚、動作」をもたらすことを意図していると、コスタ氏は話す。新機能では、タイルを長押しして「このコンテンツをもっと表示する」「このコンテンツを少なくする」「このコンテンツを隠す」といったオプションを選択することで、表示される候補を絞り込むことも可能だ。

新しいセクションの上部には、テクノロジー、動物、スポーツ、歴史、趣味などのハイレベルなカテゴリがあり、ユーザーは今持っている興味以外の分野を直接探索できる。

ただし、すべてのコミュニティが発見ページで紹介されるわけではない。

コミュニティのコンテンツタグの評価システムに基づいて、NSFW(ノット・セーフ・フォー・ワーク)なコミュニティは推奨されない、とコスタ氏はTechCrunchに語った。また、禁止されたり隔離されたりしているコミュニティは推奨しない。そのような広範なレコメンデーションに適さないかもしれない、というシグナルだ。

この決定により、Redditの物議を醸すコミュニティは、トランプ支持のコミュニティ「The Donald」や「r/donaldtrump」に以前出されたような禁止措置にたとえ至らなくても、さらなる支持を得ることができなくなる。

最終的にRedditは、この新しい発見タブによって、ユーザーが購読したいコミュニティをより多く見つけ、Redditアプリをより頻繁に起動し、より多くのコンテンツと関わるようになることを期待している。これは、ひいてはRedditの収益を押し上げることにつながるかもしれない。一部のユーザーを対象にこのところ行われていたテストでは、5人に1人が発見タブを使用した後に少なくとも1つの新しいコミュニティに参加したことをRedditは確認した。

Redditは、モバイルアプリ(iOS 55% 、Android 45%)またはモバイルウェブでサービスを利用する70%のユーザーに焦点を当てるため、この新しいタブは現時点ではウェブでは利用できない(デスクトップでRedditを利用するユーザーの割合は30%だ)。

このタブは、これまでナビゲーションバー下部にあったサブスクリプションタブを置き換えるもので、今回の追加によりRedditはナビゲーションも見直す必要があった。現在、サブスクリプションは左側の新しいコミュニティメニューに収納され、そこで分類やカスタマイズができるようになっている。このコミュニティの引き出しには、「モデレーティング・エントリー・ポイント」、サブスクのための「あなたのコミュニティ」、あなたがフォローするユーザーのための「フォロー」「r/all」エントリーポイントの4 つのセクションがある。

また、右側には、自分のプロフィールにアクセスし、カスタマイズすることができる「プロフィール引き出し」が新たに追加される。

新機能は、5400万人のデイリーアクティブユーザーを抱えるiOSとAndroidのグローバルユーザーに現在提供されている。

画像クレジット:Reddit

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(文:Sarah Perez、翻訳:Nariko Mizoguchi

AIチャットボット「りんな」を手がけるrinnaの対話エンジン搭載キャラがDMM GAMESで配信中の恋愛ゲームに登場

AIチャットボット「りんな」を手がけるrinnaの対話エンジン搭載キャラが恋愛ゲーム「プラスリンクス」に登場

AIチャットボット「りんな」を提供するrinnaは2月22日、EXNOA運営・DMM GAMES配信のリアルチャット恋愛ブラウザゲーム「プラスリンクス ~キミと繋がる想い~」において、rinnaが開発した対話エンジンを搭載したAIキャラクター「足繋逢」(あししげく あい)が実装されたと発表した。

プラスリンクス ~キミと繋がる想い~は、街で出会ったヒロイン達とチャットによる自由な会話を通して関係を深めるという恋愛ゲーム。今回追加の足繋逢もそのヒロインの1人となる。彼女は自分の声では話せず、AI登載犬型ロボット「真希奈」を介してコミュニケーションを取るというキャラクター。会話は基本的にAI任せにしており、本人ががんばることもあるとのこと。

rinnaによると、足繋逢は、プラスリンクスが培ったノウハウをAIが学習し生まれたものという。会話のベースは、rinnaが提供するSTC(Style Transfer Conversation)モデルにより即時応答する。STCモデルとは、大規模データから構築した事前学習済みのモデルに、キャラクターの性格や口調を反映した学習データを追加学習させたモデル。

このSTCモデルによる応答文の出力後、表情、記号、ボイス、スタンプなど応答文内容に最適な表現をClassifierモデルが出力する。Classifierモデルとは、ゲーム内のグラフィック表現の演出に関する法則性を学習させた分類モデルとなっている。今回の場合は、STCモデルによるテキストに応じて、AIキャラクターとしての最適な表現を出力する。表情の変化や各種演出は、キャラクターに合わせてカスタマイズ可能で、足繫 逢の性格を再現するのに最適なカスタマイズを実装しているそうだ。

STCモデルとClassifierモデルはRCP(Rinna Character Platform)上で連携しており、AIがプレイヤーの入力に対して即時応答するテキストチャットを可能にしている。これによりプレイヤーは、ゲーム内のキャラクターとリアルタイムでやり取りしているかのような体験を楽しめるという。

今後の展開として、現在rinnaが研究開発中の新しいAIモデルとの併用準備を進めているとのこと。この実装によって、より多彩なチャットのやり取りが可能になるという。単一のキャラクターとチャットを継続していくことで変化するAIモデルの開発も検討しているそうだ。

1日に必要な栄養素の3分の1を1食で摂れるBASE FOOD提供のベースフードが20億円調達、新商品開発を加速

1日に必要な栄養素の1/3を1食で摂取できる「BASE FOOD」を提供するベースフードは2月23日、第三者割当増資10億円と融資契約10億円による総額20億円の資金調達を実施をしたと発表した。引受先は、シニフィアンとみずほキャピタルが共同運営するTHE FUND。借入先は三菱UFJ銀行、商工組合中央金庫、りそな銀行、三井住友銀行。調達した資金は、既存商品のアップデートと新商品開発の加速、人材採用の強化にあてる。

BASE FOODは、1食で1日に必要な栄養素の1/3を摂取できる「完全栄養食」(栄養素等表示基準値に基づき、脂質・飽和脂肪酸・n-6系脂肪酸・炭水化物・ナトリウム・熱量を除いて、すべての栄養素で1日分の基準値の1/3以上を含む)。全粒粉や大豆、チアシードなど10種類以上の原材料を使用しつつ、栄養バランスとおいしさを独自の配合と製法により実現。たんぱく質や食物繊維、26種類のビタミン・ミネラルなど1日に必要な33種類の栄養素を1食で摂れるという。

2016年4月設立のベースフードは「主食をイノベーションし、健康をあたりまえに」をミッションに掲げるフードテック領域のスタートアップ。2017年に完全栄養パスタ「BASE PASTA」をサブスクリプションサービスとして販売開始し、現在では完全栄養パン「BASE BREAD」、完全栄養クッキー「BASE Cookies」とラインナップを蓋している。2021年11月末にはシリーズ累計販売食数1500万食を突破し、2022年2月の月額定期購入者数は10万人を超えている。

ACSL、リモート・補助者なし目視外飛行(Level3)を可能にするLTE対応産業用国産ドローンPF2-LTEを2022年春から提供

ACSL、リモート・補助者なし目視外飛行(Level3)を可能にするLTE対応産業用国産ドローンPF2-LTEを2022年春から提供

ACSL「PF2-LTE」。物流用キャッチャーを装着可能

産業用ドローンメーカーACSL(エーシーエスエル)は2月22日、LTE回線でテレメトリーやFPV(一人称視点)映像を伝送し、リモートで補助者なし目視外飛行(Level3)を可能にする国産ドローン「PF2-LTE」について、2022年春から提供を開始すると発表した。

数多くの企業と実証実験を重ねながら各分野の産業用ドローンを開発してきたACSLは、ドローンの制御を行うフライトコントローラーを自社開発し、山を越えるドローン配送やプラント内の点検など、目視できない場所をLTE回線を使ってリモートで飛行させるドローンの研究を重ねてきたが、このたびその成果となる「PF2-LTE」を販売開始することになった。また、ドローンを「スムーズに顧客に提供できる体制」も整えたという。

LTE回線を採用したこのモデルは次の特徴がある。まず、ドローンと基地局(GCS)との直接の通信が不要で、インターネットを通じて遠隔操縦が行える。補助者なしの目視外飛行が可能なため、操縦者は現地にいる必要がない。複数キャリアのLTEを電波環境に合わせて選択できる。LTEなので混線がなく、複数のドローンを同時に飛行させることができる、といった具合だ。

本体・サーバー・通信がセットになっているが、通信についてはNTTドコモ「LTE上空利用プラン」やDDI「スマートドローンツールズ」などキャリアと顧客間で契約する必要がある。また、販売は代理店を通して行われる。

LTE機器装着のイメージ

「PF2-LTE」のおもな仕様

  • 全長(プロペラ範囲):117mm
  • 高さ:65mm
  • 重量:7.07kg(バッテリー2本を含む)
  • 飛行速度:水平20m/s(GPS環境下)
  • 最大対気速度:20m/s
  • 最大飛行時間:29分(ペイロードなし)、15分(最大ペイロード)
  • ペイロード:2.75kg
  • 使用温度範囲:0~40度
  • 防塵防水:IP54(キャップ装着時)

東京都市大学、磁気ヘッドの誤差を減らしデータセンター用HDDを30%大容量化する技術を開発

HDDの磁気ヘッドは、ボイスコイルモーター(VCM)とピエゾ素子(PZT)を用いた2つのアクチュエーターによって制御される

HDDの磁気ヘッドは、ボイスコイルモーター(VCM)とピエゾ素子(PZT)を用いた2つのアクチュエーターによって制御される

東京都市大学は2月21日、インターネットのデータセンターで使われるHDDを、現行から30%大容量化する技術を開発したと発表した。ディスクにデータを読み書きする磁気ヘッドの位置決め精度を改善し、単位面積あたりの記録密度を向上させるという。

東京都市大学理工学部機械システム工学科の藪井将太准教授と、千葉工業大学工学部の熱海武憲教授らからなる研究グループは、磁気ヘッドの位置決め制御系に着目し、ディスク上の1bitあたりの物理サイズを小さくすることを目指した。HDDのディスクのサイズは規格化されているため、容量を増やすには記録密度を高めるしかない。ディスク上の1bitの記録サイズは、磁気ヘッドの位置決め精度によって決まる。そこで、磁気ヘッドを正確に制御する必要がある。

HDDの磁気ヘッドは、ボイスコイルモーター(VCM。Voice Coil Motor)とピエゾ素子(PZT)を用いた2つのアクチュエーターによって制御されるが、研究グループは、これらの制御性能を最大限に引き出すコントローラーを設計した。それにより、その位置決め精度は、現行の精度に比べて30%向上した。この技術を使えば、現行で18〜20TB(テラバイト)の記録容量を、25TB程度まで増大できる。

磁気ヘッドの位置誤差信号

現時点でのHDD容量とデータセンターの消費電力の関係

現時点でのHDD容量とデータセンターの消費電力の関係

身の回りのガジェットではHDDがSSDに急速に置き換わっているが、データセンターでは今後もしばらくHDDが使われてゆく見通しだ。だが、現在のデータセンターは膨大な電力を消費し、大量の熱を発するなど、環境への影響が問題視されている。そこでこの技術を導入すれば、データセンターのHDD稼働台数を減らして効率化し、消費電力を低減できるということだ。

貴金属や複雑なデバイス構造の必要なく磁気回転効果で磁性体からの起電力取り出しに成功、スピントロニクス応用に道

貴金属や複雑なデバイス構造の必要なく磁気回転効果で磁性体からの起電力取り出しに成功、音波を用いたスピントロニクス応用に道

音波の磁気回転効果に由来する、起電力発生メカニズムの模式図。強磁性体の磁気には弾性変形による磁気弾性効果が、また自由電子スピンには回転変形による磁気回転効果が働く。これら2つの効果が組み合わさることで、貴金属や複雑なデバイス構造を必要とせずに、磁気回転効果に由来する起電力が発生する

慶應義塾大学中国科学院大学は2月21日、磁石に音波を注入すると、磁気回転効果によって起電力が発生することを理論的に示した。貴金属や複雑なデバイスを必要としないため、これまで困難とされてきた磁気回転効果のスピントロニクスへの応用に道が拓かれるという。

「磁気回転効果」とは、ミクロな角運動量(回転の方向と大きさを表す量)である電子スピンが、力学的な回転運動(マクロな角運動量)と互いに変換可能であるという、物質の磁気と回転との関係を示す現象のこと。アインシュタインとドハースが実験により証明した、磁石の磁気量を変化させると磁石が回転し始める「アインシュタイン・ドハース効果」や、バーネットが発見した、磁石を回転させると磁気量が変化(アインシュタイン・ドハース効果とは逆)する「バーネット効果」で知られる。

物質を高速で回転させるほど磁気回転効果は大きくなるが、最先端技術で可能な毎秒1万回転程度でも、得られる効果は非常に小さく、スピントロニクス分野での応用は進んでいなかった。

しかし、慶応義塾大学能崎幸雄教授ら研究グループは近年、物質の表面を伝搬する音波「表面弾性波」を用いて結晶格子点を1秒間に10億回以上回転させ、磁気回転効果によるスピンの流れを生み出せることを実証。表面弾性波を非磁性金属の銅と強磁性体を複合した材料に注入して交流のスピン流を生み出し、隣接する強磁性体に作用させることによって磁気の波を起こすことに成功した。その後同グループは、白金を銅と強磁性体の複合材料へ接合させることで、磁気回転効果によって生み出された交流スピン流を起電力に変換させ、それを電気的に検出することに成功した。しかし、このスピン流を利用するには、白金などの貴金属や複雑なデバイスが必要となるため、スピントロニクスへの応用にはまだ制限があった。

そこで慶應義塾大学グローバルリサーチインスティテュートの船戸匠特任助教と、中国科学院大学カブリ理論科学研究所の松尾衛准教授による研究グループは、「強磁性金属の単膜というシンプルなデバイス構造において磁気回転効果に由来した起電力が発生する」ことを理論的に提案した。

強磁性金属へ表面弾性波を注入すると、強磁性体内の自由電子スピンには格子の回転変形に伴う磁気回転効果が働き、同時に、強磁性体の磁気には弾性変形に伴って向きが変化する効果(磁気弾性効果)が働いて磁気の波が励起され、自由電子スピンに作用することで起電力が生まれる。この2つの効果を組み合わせることで、貴金属や複雑なデバイスを用いずとも、磁気回転効果に由来する起電力が得られることを発見した。

この発見により、「音波さえ生み出すことができれば、他に制限を受けることなく幅広いスピンデバイスへ磁気回転効果を応用することが可能」になったとのこと。「ジュール熱を伴う電流に比べてエネルギー損失の少ない音波を用いているために磁気デバイスの高性能化・省電力化することができるだけでなく、貴金属を必要としないため安価なレアメタルフリー技術として大きく貢献できます」と研究グループは話している。

17歳のTikTokトップスター、チャーリー・ダミリオ氏の一家が自撮加工アプリFacetuneで知られるLightricksに投資

Charli D’Amelio(チャーリー・ダミリオ)氏は、TikTokで最もフォロワー数が多く最も稼いでいるクリエイターだ。この17歳のスーパースターとその家族は、短い動画から得られる短期間の富よりもさらに先を見ている。米国時間2月23日、ダミリオファミリーはLightricksとのパートナーシップを発表した。LightricksはFacetuneVideoleapといった写真やビデオ編集アプリのメーカーで、アプリのダウンロード数は合計で5億回を超えている。

チャーリーと、姉で同じくTikTokのスターであるDixie(ディクシー)、コネチカット州上院の共和党候補だった父のMarc(マーク)、元モデルの母Heidi(ハイディ)のダミリオファミリーは、Lightricksの株式を取得し戦略アドバイザーとして参画する。Lightricksはファミリーの投資額を明らかにしていないが、ファミリーからの投資は同社が最近調達したシリーズDの1億3000万ドル(約149億5000万円)とは別であると認めた。ファミリーは資金面の支援の他、The247というエディトリアル記事サービスに限定コンテンツを提供する。

Lightricksはダミリオファミリーとのパートナーシップの発表に加え、リンク・イン・バイオに関してLinktreeBeaconsSnipfeedなどのプラットフォームの競合となるLinkInBioのサービスも発表した。LightricksのLinkInBioの利用は無料で、クリエイターがソーシャルプロフィールやウェブサイトへのリンク、そして重要なポイントとしてStripeを利用した投げ銭機能を追加してカスタマイズできる。もっとも、ライバルのリンク・イン・バイオプラットフォームはもっと洗練された収益化手段を提供している。例えばSnipfeedには、購入者向けにパーソナライズした非同期のタロット占いのようなデジタルグッズの販売機能がある。しかしそのトレードオフとして、高機能なプラットフォームはサブスクリプションの課金や売上手数料の徴収などをする傾向がある。

Lightricksの共同創業者でCEOのZeev Farbman(ゼエブ・ファーブマン)氏は報道発表の中で「(ダミリオ)ファミリーはクリエイターエコノミーのトップランナーであり、世界中の前途有望なクリエイターに常に刺激を与えています。一家が開発プロセスのあらゆるステップに携わることとなり喜ばしく思います」と述べている。

Crunchbaseのデータによれば、ダミリオファミリーとしてのスタートアップへの投資はこれが初めてだ。ただしチャーリー・ダミリオ氏自身は2021年にティーン向けバンキングサービスのStepが1億ドル(約115億円)を調達したシリーズCに参加している。セレブがスタートアップへの投資を通じて資産を増やそうとするのはめずらしいことではない。俳優のAshton Kutcher(アシュトン・カッチャー)氏も、ミュージシャンのThe Chainsmokers(ザ・チェインスモーカーズ)も、女優のJessica Alba(ジェシカ・アルバ)氏もそうだ。しかしダミリオファミリーは、インフルエンサーから投資家へという新しいジャンルを体現している。

ダミリオファミリーはTechCrunchへのメールで「我々はスタートアップの分野に強い関心を持ち、起業家や新しい企業と出あうことを楽しみにしています。我々は今後数件の投資をして、すばらしいプロダクトやサービスを構築できると思われる企業を支援する予定です」と記した。

TikTokのクリエイターは、テニスプレイヤーのSerena Williams(セリーナ・ウィリアムズ)氏やハリウッド俳優のRyan Reynolds(ライアン・レイノルズ)氏といったスターのように長く輝き続けることはできないと不安に思っているかもしれない。両親のサポートのもと、チャーリーとディクシーの姉妹はアパレルのHollisterリングライトの会社、さらにはHuluのリアリティ番組までさまざまなベンチャービジネスを手がけて、すでに知名度を高めている。

しかしティーンの億万長者の苦闘(そう、多くの苦闘だ)を描いた物語でもあるNetflixの「Hype House」と同様に、この「ダミリオショー」は常にオンラインで注目されることによるメンタルヘルスへの負の影響に姉妹がどう対処するかの意味合いも強い。Lightricksとのパートナーシップは疑問のある選択のようにも思える。LightricksのフラッグシップアプリであるFacetuneはレタッチツールとして使われることが多く、身体イメージの問題の一因と考えられてきたからだ。ティーンのメンタルヘルスに対するソーシャルメディアの負の影響は最近大きな議論となっているが、Facetune以外にもLightricksのツールは簡単にビデオを編集するだけの目的でよく使われている。米国時間2月22日にチャーリー・ダミリオ氏はニキビ(ティーンにはごく普通のことだ!)がはっきり写った自撮りを投稿した。レタッチツールは今後も存在するし、本来は邪悪なものではないが、問題はどのように(そしていつ)我々がそれを使うかだ。

画像クレジット:Lightricks

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(文:Amanda Silberling、翻訳:Kaori Koyama)

ネット接続されたローイングマシンでホームフィットネスのゲーム化を目指すAviron

エクササイズ分野のゲーミフィケーション(ゲーム化)はもちろん新しいことではない。フィットネスブランド(さらにはスマートウォッチでも)にとっては事実上初めから不可欠な基本的要素だ。これにはもっともな理由がある。モチベーションと持続のために最適だからであり、Fitbit(フィットビット)であれゲームのBeat Saber(ビートセイバー)であれ同じことだ。

最大手のPeloton(ペロトン)がLanebreak(レーンブレーク)でゲーミング面を積極的に推している今、こうしたプログラムがホームフィットネスコンテンツの鍵となり、苦境に立つ同社が開拓にひと役買った標準的トレーナーコースを今後超えていくと考えることに無理はないだろう。

一方、Aviron(アビロン)は、話題になる前からゲームに取り組んできた。YC出身の同社は、ジム用トレーニングマシンからホームフィットネスへと、パンデミックの中で転換し、ゲーミングを体験の中心に据えた。実際、同社はトレーナーモデルを避け、ボート漕ぎゲームの競争を優先した。

画像クレジット:Aviron

このカナダ、トロント拠点のスタートアップをTechCrunchが最初に取り上げたのは2021年1月だった。その年の8月に同社は450万ドル(約5億円)のシードラウンドを発表、そして米国時間2月23日に1850万ドル(約21億円)のシリーズAを完了し、米国における地盤を拡大するとともにカナダでの小売展開を目指している。ラウンドをリードしたのはStripes(ストライプス)で、Global Founders Capital(グローバル・ファウンダーズ・キャピタル)とFormic Ventures(フォーニック・ベンチャーズ)が参加した。

今、ホームフィットネスのゲーム化への関心が高まっており、ローイングマシンも同様だが、後者についてはPelotonが取り組んでいるという噂がある。もちろん、同社の最近の苦闘ぶりを踏まえると、トレッドミルと自転車に加えてホームローイングマシンを商品ラインナップに加えるのが果たしていつなのか、そもそも実現するのか見当がつかない。

Avironには好調を裏付ける数字があり、有料サブスクライバー数は対前年比2700%となる。これ(と上記の資金調達)によって、従業員数を2名から36名へと増やすことができた。まだ小さい会社だが、新たに堅実な資金注入を得たことで、人員拡大も加速するだろう。雇用といえば、Avironはこの日の発表で、Nike(ナイキ) / Lululemon(ルルレモン) / Burton(バートン)出身のAmy Curry-Staschke(エイミー・カリー・スタシュケ)氏をCOOとして招き入れたことを発表した。

画像クレジット:Aviron

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(文:Brian Heater、翻訳:Nob Takahashi / facebook

テスラ取締役のキンバル・マスク氏、同社がビットコインを購入した際の環境影響について「無知だった」と発言

Tesla(テスラ)のCEOであるElon Musk(イーロン・マスク)氏の弟で、同社取締役のKimbal Musk(キンバル・マスク)氏は、イーサリアム会議のステージ上でのTechCrunchとのインタビューで、Teslaが2021年に暗号資産のBitcoinを15億ドル(約1725億円)分購入し、この通貨で同社の車両を購入できるようにする予定だと発表したとき、同社は環境への影響について「非常に無知だった」と述べた。

「Bitcoinに投資したとき、我々ちはとても無知でした。環境への影響も知らず、文字通り何も知らず、良い価値の貯蔵庫で、資産を分散させる良い方法のようだ、といった感じでした。もちろん、我々が環境に何をしているかを伝える100万通の、冗談ではなくおそらく100万通のメッセージを受け取るのにそれほど時間はかかりませんでした」と、キンバル・マスク氏は筆者に語った。「もちろん、Teslaは代替エネルギーの未来を創造する会社です。その決断をしたときには、本当に十分な情報がなかったのです」。

キンバル・マスク氏は、TeslaがBitcoinの購入を「必ずしも後悔していない」一方で、ブロックチェーン業界がより環境に優しいインフラに移行できることを望んでおり、自身の慈善団体Big Greenが、さほどエネルギー集約型ではないブロックチェーン上で動作する暗号資産ネイティブのDAOガバナンス構造を採用したことに言及した。

テスラ取締役のキンバル・マスク氏は、イーサリアム2022カンファレンスにおいて、TechCrunchのルーカス・マトニーとのインタビューで慈善活動の将来について議論した(画像クレジット:Jesse Morgan / ETH Denver)

「私は本当に暗号資産の環境への影響には同意しませんが、暗号資産がしていることが大好きです」とキンバル・マスク氏は壇上で語った。「ですので、我々は、環境に影響を与えることなく行う方法を考えなければなりません。それは、この環境への影響を持つという選択肢ではありません」。

Bitcoinを購入するというTeslaの2021年の決定により、暗号資産に大きな追い風が吹いた。しかしその数カ月後、同社がBitcoinをすぐに売却する予定はないが、車両購入の支払いでBitcoinを受け入れないと発表したことで、事態が逆転したのは有名な話だ。

イーロン・マスク氏は2021年5月のツイートの中で「暗号資産はさまざまな面で良いアイデアであり、将来性があると信じていますが、しかしそのために環境を犠牲にするわけにはいきません」と述べている。「TeslaはBitcoinを一切売却せず、マイニングがより持続可能なエネルギーに移行し次第、取引に使用する予定です」。

Bitcoinのマイニングのネットワークがどれだけ再生可能エネルギーに依存しているかについては、まだデータがかなり不足しているが、ネットワークのエネルギー使用がいかに大きいかは明らかだ。Digiconomistのエネルギートラッカーによる試算では、2021年5月のイーロン・マスク氏のツイート以来、Bitcoinの採掘作業の年換算エネルギーの二酸化炭素排出量はほぼ倍増している。同サイトの推定では、Bitcoinのネットワークは、クウェートが1年間に排出するのと同程度の炭素を大気中に排出している。

キンバル・マスク氏は2004年からTeslaの取締役を務めている。

画像クレジット:Kevin Jones / ETH Denver

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(文:Lucas Matney、翻訳:Nariko Mizoguchi

ツイッター、ロシアの軍事的脅威に関するオープンソース情報を共有するアカウントを復活

Twitterは、ロシアの軍事活動の詳細を共有している多くのアカウントを米国時間2月23日に誤って削除したことを公表した。

Bellingcat(ベリングキャット)の調査員Aric Toler(アリック・トーラー)氏が23日朝に、Twitterユーザー@667_mancerがオフラインになった後、これらの間違って停止されたアカウントへの注意を呼びかけた。最近、ウクライナによる攻撃というロシア政府の主張を否定したオープンソースインテリジェンス(OSINT)のアカウントも同時期に停止され、この地域から画像やその他のデータを共有するフランス語のアカウントも停止された。

過去8年間、ドンバスからのユーザー生成コンテンツで最良のアグリゲーターだった彼のアカウントが停止/ロックアウトされている。もしツイッターの誰かがこれを読んでいるなら、魔法の杖か何かを振って、彼を復帰させてほしい。

24時間の間に2回も締め出されたが、また戻ってきた。1度目は「破壊工作とガス攻撃の失敗」を否定する投稿で、2度目は「ウクライナのロシアへの攻撃」を否定する投稿で、だ。

大量報道の結果としてOSINTアカウントが立て続けに停止されたと主張するTwitterユーザーもいたが、同社は2月23日に過失を認める発言をしている。

「我々は、我々のポリシーに違反する新たなシナリオを積極的に監視してきた。そしてこの例において、我々は間違って多くのアカウントに強制措置を取った。我々は迅速にこれらの行動を検討、すでに積極的に影響を受けたアカウントの数にアクセスを復活させている」とTwitterはTechCrunchへの声明の中で説明している。

さらにTwitterは、アカウントが「組織的なボットキャンペーン」や「大量の報告」のために停止されたとする報道は正確ではないと付け加えた。同社のSite Integrityの責任者、Yoel Roth(ジョエル・ロス)氏はツイートで、同社の人間的なモデレーションチームが、「操作されたメディア」として知られる一般的で潜在的に危険なかたちの誤報であり、誤解を招くような変更された写真やビデオを積極的に検出して削除しようとした結果、今回のミスが発生したと説明している。

我々は詳細に調査しているが、大量報道は今回の要因ではない。

操作されたメディアに積極的に対処するための活動の一環として、少数のヒューマンエラーが発生したため、これらの不正な強制が発生してしまった。我々は問題を解決し、影響を受けた人々に直接連絡を取っている。

OSINTのアナリストやその他の誤情報調査員たちは、それらの嘘を暴く目的で、爆発したクルマやおかしな変造ナンバープレート、プーチンの時間表示のおかしい会議の写真といった偽造写真や動画などをよく共有している。ウクライナの状況を不正確に表現するロシアのプロパガンダの蔓延により、それらをやり取りする機会も増えている。

2010年代に登場したOSINTは、紛争の報道や誤情報のリアルタイムの暴露などのための重要なツールだ。このようなデータの収集は以前ならもっと高いレベルのリソースを必要としたが、ソーシャルメディアの急増と、簡単に衛星画像が手に入れられるようになったことで、オンラインのOSINTグループが、世界中で各国政府が行っているをリアルタイムで追えるようになった。

OSINTの仕事をしている著名な組織であるBellingcatは、ロシアの腐敗撲滅運動家Alexei Navalny(アレクセイ・ナワリヌイ)氏の暗殺未遂や、マレーシア航空第17便の攻撃など、あらゆる事件を調べてきた。

画像クレジット:Brendan Hoffman/Getty Images/Getty Images

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(文:Taylor Hatmaker、翻訳:Hiroshi Iwatani)

ドローンを使ったショーを手がける石川県拠点のドローンショーがエイチ・アイ・エスと全国自治体向け販売代理店契約

ドローンを使ったショーを手がける石川県拠点のドローンショーがエイチ・アイ・エスと全国自治体向け販売代理店契約

石川県金沢に拠点を置き、ドローンを使った企画・演出を手がけるドローンショーは2月22日、旅行業・ホテル事業のエイチ・アイ・エスと販売代理店契約を締結したことを発表した。今回の販売代理店契約の締結によって、各地の自治体・ホテル・旅館とのネットワークを持つエイチ・アイ・エスと連携し、今後は日本全国でのショーの展開を目指す。

ドローンショーは、LEDを搭載したドローンを複数上空に放ち、花や動物、企業ロゴなどを描画する演出を提供するスタートアップ企業。ショーで使用するドローンの機体開発やアニメーション制作、ファームウェア開発などを自社で手がけ、2020年8月には金沢港クルーズターミナルで、同年12月にはロッテアライリゾートでショーを実施している。また、衛星利用測位システム(GPS)を利用してドローンを操縦する屋外でのショーのみならず、GPSが効かない屋内でのショーも開発した。2021年7月には、「e-meese kanazawa 2021」において室内ドローンショーも開催している。

ドローンショーが開発したドローンショー用自作新機体「unika」。2022年夏までに240機を生産する予定。unikaという名称は、「唯一の」や「ひとつになる」といった意味を持つUni、同社の出発点である「金沢」(kanazawa)の頭2文字から採ったものという

ドローンショーが開発したドローンショー用自作新機体「unika」。2022年夏までに240機を生産する予定。unikaという名称は、「唯一の」や「ひとつになる」といった意味を持つUni、同社の出発点である「金沢」(kanazawa)の頭2文字から採ったものという

ドローンによるショーは、「カーボンニュートラル型の花火演出」という位置づけで、脱炭素化社会を目指す取り組みとしても期待されているそうだ。

 

気候分野への投資が加熱、2021年の取引は600件超で4.6兆円注入

2021年は、気候分野で活動するスタートアップにとってとんでもない年だった。グローバルで、約1400の投資家が気候変動に取り組む次世代企業に注目している。投資家は600件超の取引に400億ドル(約4兆6000億円)超を投じた。前年の2倍以上の資本が投下されたことになる。Climate Tech VCの新しいレポートによると、モビリティとエネルギーのスタートアップが一貫して最も多くの資金を調達していて、かなりの差で素晴らしい食品と水のテクノロジーが3番手であることが示されている。

筆者はこのほど、気候分野を専門とする14人の投資家に話を聞き、彼らのポートフォリオや業界全体でみられることについて新たな情報を得た。投資家らは資本の流入を歓迎し、これはバブルというより、この部門の適正規模であることを示唆している。

Closed Loop Partnersのストラテジックイニシアチブ&パートナーシップ担当シニアディレクターのGeorgia Sherwin(ジョージア・シャーウィン)氏は、業界全体で共有されている意見として「気候と循環型経済の分野に投資する中で、私たちは自分たちの仮説を証明し続け、この分野に新しい投資家が加わることに感激しています」と語った。「私たちは常に循環型経済と気候テック全般への投資を一層促進することを考えており、今年この分野に参加した新しい投資家を歓迎します」

成長の理由の一つは、上流資本が投資先をより意識するようになったことだ。リミテッド・パートナー(例えばベンチャーキャピタルファンドに投資する人たち)は、環境、社会、ガバナンス(ESG)の影響をより意識するようになり、その過程で地球にとって有利な方向へと局面を一変させている。2021  年前半には、RivianNorthvoltへの大規模な投資が行われるなどモビリティ分野で巨額のラウンドがあり、同年末にはHelionCommonwealthといった核融合エネルギー企業に数十億ドルの投資が行われ、エネルギーというパイが大きく膨らんだ。今年も核融合の分野では、さらに大きな動きがありそうだ。

2021年の気候関連技術への投資は400億ドルで、これは前年の2倍以上だ。グラフィック:Climate Tech VC

特に、2021年はアーリーステージの取引が急増し、全体の60%超を占めた。シードステージの取引は、投入された資金の2%未満だったが、取引数の約30%を占めた。これはいくつかのことを意味している。まず、2022年には、多くの企業が膨大な額の後期ステージ資本を調達する。定義によれば、これらは投資家にとって低リスクの取引となり、より大きな額を集め、この種の企業に対する意欲をさらにかき立てることになる。そして何より、この青い地球の存続を願う私たちにとって、気候変動ソリューションへの注目度が急上昇することを意味する。

今年、気候テックがどのように発展していくのか楽しみだ。今年最初の数週間だけでも、投資家たちが次々と新しい資金を調達し、巨額の投資を行い、また、私たちが直面している気候問題に対してあらゆる角度からアプローチする小さな企業が続々と誕生しているのを目にしている。

画像クレジット: Climate Tech VC under a license.

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(文:Haje Jan Kamps、翻訳:Nariko Mizoguchi

ザッカーバーグ氏、音声コマンドでバーチャルワールドを作るデモを披露

Meta(メタ、旧Facebook)は、音声コマンドだけでバーチャルワールドでモノをつくったり、持ち込んだりできるAIシステムのプロトタイプを披露した。同社は「Builder Bot(ビルダー・ボット)」と呼ばれるそのツールを、メタバースの中で新しい世界を作るAIの可能性を見せるための「実験的コンセプト」だと考えている。MetaのCEOであるMark Zuckerberg(マーク・ザッカーバーグ)氏は、米国時間2月23日に行われたイベント「Meta AI:Inside the Lab(メタ・エーアイ:インサイド・ザ・ラボ)」で、事前録画されたデモを通じてそのプロトタイプを紹介した。

動画内でザッカーバーグ氏は、バーチャルワールドのパーツを組み立てるプロセスを、実際にやりながら説明した。彼は「let’s go to a park(公園へ行こう)」というプロンプトから始めた。するとボットが、緑の草原と樹木のある公園の3D風景を作る。ザッカーバーグが「actually, let’s go to the beach(では、砂浜に行ってみよう)」というと、ボットは現在の風景を砂と水からなる新しい風景に置き換える。次に同氏は雲を追加したいと述べ、すべてAIが生成していると説明した。そしてザッカーバーグ氏は、ひつじ雲のほうがいい、と言って風景を変えた。これはボイスコマンドが具体的な指示を出せることを示すためだ。

 

彼が海の上の特定の場所を指して「あそこに島を作ろう」というとボットが島を作った。続いてザッカーバーグ氏は、木々とレジャーシートを追加するなどいくつかのコマンドを発した。さらにカモメとクジラの音も加えた。ある時彼は、水中翼船まで追加した(彼のお気に入りのホビーの1つで、流行語にもなった)。

ビデオ全体を通じて、Builder Botはボイスコマンドを使って3Dオブジェクトを作り、風景に配置しているように見えた。Metaはプロトタイプを発表したブログ投稿で、このツールは「メタバースの創造性を加速します」というが、技術の詳細は明らかにしていない。

画像クレジット:Meta

この技術が成功すれば、他のVRワールドやプラットフォームにも影響を与える可能性がある。例えばゲームプラットフォームのRoblox(ロブロックス)は、 最近音声機能のテストを開始し、独自の開発プラットフォームを提供している。いつかこうした会社が、Metaのプロトタイプで見られたようなテクノロジーを導入して、世界を創造する同じような体験を実現すればおもしろい。

しかし現段階は、Builder Botの作る世界は、外観も機能もかなりシンプルだ。また、コマンドを声に出してオブジェクトを呼び出すのは最初は楽しいかもしれないが、もっと複雑な3D環境を作る方法としてスケーラブルな方法とはいえない。どちらかといえば、子どもがバーチャルワールドを作る入門レベルの練習場所として楽しいかもしれない(しかし、残念ながらMetaはすでに、同社のバーチャル環境が子どもにとって安全な場所ではないかもしれないことを証明している)。

Metaによるこのプロトタイプの発表は、同社がメタバースに数十億ドル(数千億円)を投資している中の出来事だ。2022年2月初め、MetaはReality Labs(リアリティー・ラボ)部門の財務状況を初めて発表し、2021年100億ドル(約1兆1500億円)以上の赤字だったことを明かした。2022年も損失は増えるばかりと予測していると同社が述べているところを見ると、Metaにはメタバースを作るためにつぎ込む無限の資金があるようで、他の小さな会社より先に成功する時間は十分あるに違いない。同社のメタバースへの莫大な投資は、今後も我々はメタバースを宣伝するためのプロトタイプをたくさん見るであろうことも示唆している。

真の「メタバース」は未だに存在していないが、このバズワードはザッカーバーグ氏とMetaによってこの1年間数多く使われ、2021年の企業ブランド変更のきっかけにもなった。ザッカーバーグ氏は以前、メタバースについて投資家に次のように説明した。「デジタル空間で人々とともにいられるバーチャル環境です。それは見ているだけではなく自分がその中にいる、一種の具現化されたインターネットのようなものです」。

Metaは同日のイベントで他にもいくつか発表を行った。AIを利用したチャットボットAIシステムカードツール、および and a 万能音声翻訳機だ。この翻訳機は話し言葉が主のものを含むあらゆる言語の同時通訳を行うもので、既存の翻訳システムを超えるだろうと同社は言っている。Metaによると、世界人口の20%は、既存の翻訳ツールが対応していない言語を話しており、同社は新しい機械学習技術を駆使してこれを解決する計画だ。

画像クレジット:Meta

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(文:Aisha Malik、翻訳:Nob Takahashi / facebook

与信サービス構築基盤Credit as a Serviceを展開するCrezitが6.5億円調達、開発・経営チームの採用強化

与信サービス構築基盤Credit as a Serviceを展開するCrezitが6.5億円調達、開発・経営チームの採用強化

与信プラットフォーム「Credit as a Service」(CaaS)を手がけるCrezit Holdingsは2月24日、第三者割当増資による総額6億5000万円の資金調達を実施したと発表した。引受先は、デライト・ベンチャーズ、Spiral Capital、千葉道場ファンド。シードラウンドを含めた累計調達額は約9億2000万円となった。調達した資金は、採用・組織体制の強化、CaaSの開発にあてる予定。

Crezit Holdingsは「Optimize Credit, Unleash Potential. / 信用を最適化して、人の可能性を解き放つ。」をミッションに掲げ、2020年7月に設立したスタートアップ。消費者信用事業(貸金・割賦販売など)に参入したいあらゆる企業に対して、金融サービス構築に必要なシステム基盤やオペレーションを提供していくCaaSを開発・提供している。

一般に、与信サービスの立ち上げには膨大なリソースを必要とし、金銭的にも時間的にも多大なコストがかかかる。このため結果として、従来一部の大資本を持つ事業者以外による参入は、限定的な状況にあった。

テクノロジー企業が自社の顧客基盤に対して、ユーザーデータを活用した金融サービスを展開する流れが起こりつつある中で、同社は与信サービスに必要な様々な要素をソフトウェアとして提供することで、利用企業の早期の消費者信用事業の立ち上げを可能とするという。

サービスの利用企業と共に新しい金融サービスを共創していくことで、より多くの個人に対して適切な金融サービスが届く世界を実現するとしている。

LinkedInが独自のポッドキャストネットワークを開始

LinkedIn(リンクトイン)が、ポッドキャストの世界により深く踏み込もうとしている。同社はLinkedIn Newsチームによる自社制作の番組や、業界の著名人による番組を配信するポッドキャストネットワークを開始すると発表した。

当然のことながら、番組はプロフェッショナルな視聴者を対象としている。テクノロジーについての理解、メンタルヘルスの管理、採用プロセスの解説などの分野に焦点を当てるとのこと。LinkedInの共同創業者で会長のReid Hoffman(リード・ホフマン)氏は、個人的な起業家精神をテーマにしたポッドキャスト「The Start-Up of You(自分というスタートアップ)」の共同司会を務め、今春に配信を開始する予定だ。

同社は、LinkedIn Podcast Network(リンクトイン・ポッドキャストネットワーク)は、LinkedIn Newsが制作し、ホストのJessi Hempel(ジェシ・ヘンペル)氏が進化する仕事のあり方を掘り下げるポッドキャスト「Hello Monday」の成功をベースにした試験的な取り組みであるとしている。番組は広告付きで、最初のスポンサーはEngadgetの以前の親会社Verizon(ベライゾン)だ。

このポッドキャストネットワークは、ニュースレター、ライブイベント、ビデオ、投稿など、LinkedInの他の製品と連携しており、ホストと視聴者が番組以外でも会話を続けられるようになるという構想に基づいている。リスナーは、ホストをフォローしたり、ニュースレターを購読したりすれば、そこからLinkedIn上で直接ポッドキャストを聴くことができる。またこれらの番組は、Apple PodcastsやSpotify(スポティファイ)など他のポッドキャストプラットフォームでも配信される予定だ。

編集部注:本稿の初出はEngadget。著者Kris Holt(クリス・ホルト)氏は、Engadgetの寄稿ライター。

画像クレジット:mixetto / Getty Images

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(文:Kris Holt、翻訳:Den Nakano)

Backboneモバイルゲーミングコントローラーをセレブが約46億円のシリーズAで支援

パンデミックが起こる前、私は仕事でよく出張していた。私のスーツケースの持ち物リストは、長年かけて磨き抜かれ、ほぼ不変だった。Backbone(バックボーン)のiPhone用ゲームコントローラーは、近年そのリストに仲間入りを果たした数少ない新製品の1つだ。出先でも極めて優れたゲーム体験を提供してくれるこの製品は、スーツケースの中のスペースを少しそのために確保する価値がある。

この製品を気に入っているのは私だけではないようだ。同社は、The Weeknd(ザ・ウィークエンド)、Post Malone(ポスト・マローン)氏、Diddy(ディディ)といったビッグネームからの支援を受けて、4000万ドル(約46億円)のラウンドをクローズしたと発表した。

2018年当時、創業者のManeet Khaira(マニート・カイラ)氏はYouTubeでインターンとして働いていた。毎日、仕事から帰ってくると、友人たちと「Fortnite(フォートナイト)」をプレイしていたという。ほとんどの場合、彼らにとって唯一の共通デバイスだったスマホ上でのことだった。タッチスクリーンの操作感は荒いものだったが、そのおかげで一緒に遊ぶことができた。クラウドゲーミングがモバイル機器にもたらす可能性を示すデモを見た後、彼は「ゲーミングは、今後10年間でGoogle(グーグル)にとって唯一最大の機会になる」という内容のプレゼンテーションを書いた。カイラ氏は誰かに実際に読んでもらえることを祈りつつ、月曜日の朝それが、会社のVPたちに自動的に一斉送信されるスクリプトを書いた。彼が目を覚ました頃には、何千人もの人々がその文書を見ていたという。

そのうちの1人の副社長が、カイラ氏に自分の考えを直接チームにプレゼンして欲しいと持ちかけた。同氏は「その会話の中で、何かすごいものを作るチャンスがあるかもしれないと実感したのです」と語る。インターンシップは予定通り終了し、彼は真っ先にBackboneの構築に飛び込んでいった。

Backboneの目標は、これまでに発売した1つの(かなり優れた!)ペリフェラルに加えて、外出先でのゲーミングのためのオールインワンハブになることだ。Roku(ロク)がすべてのビデオサービスを1つの場所に集めることでビジネスを確立し、Sonos(ソノス)が音楽で同じことをしたように、Backboneはモバイルゲームでそうすることを目指している。デバイス上で実行されるゲーム、クラウド上で実行されるゲーム、自宅のゲーム機で実行され、リモートでストリーミングされるゲームなど、彼らにとってはすべてが同じで、ただハブになりたいだけなのだ。

この点を考慮して、Backboneのより高度な機能の多くは、オプションのプレミアムサブスクリプションサービスであるBackbone+に結び付けられている。これにより、より豊富な機能、高品質なゲームプレイの録画、Twitchストリーミングのサポートなどが追加される。Backbone+は、このプラットフォームの初期導入者には無料で提供されるが、新規ユーザーの場合、年間約50ドル(約5750円)となる。

画像クレジット:Backbone

人々は実際に、Backboneのハードウェアをどのような場面で使っているのだろうか?カイラ氏によると、リモートプレイ、つまり、仕事の合間やリビングルームのテレビを占有したくないときなどに、次世代ゲーム機からストリーミングされたものを携帯電話やタブレットでプレイするという用途でかなりのユーザーが利用しているとのこと。

また、よりカジュアルなプレイヤーにも支持され始めていると彼はいう。「人によっては、これが初めての専用ゲーム機かもしれません。自分のことを『コアゲーマー』とは思っていない、あるいはゲーマーだとも思っていないような人たちが、この製品を使ってくれています」。

今回のラウンドは、4000万ドル(約46億円)のシリーズAで、Index Venturesがリードした。また、Ashton Kutcher(アシュトン・カッチャー)氏(彼のファンドであるSound Ventures経由)、The Weeknd(ザ・ウィークエンド)、俳優のKevin Hart(ケヴィン・ハート)氏、Post Malone(ポスト・マローン)氏、Diddy(ディディ)、コメディエンヌのAmy Schumer(エイミー・シューマー)氏、Marshmello(マシュメロ)など、かなりワイルドな顔ぶれのセレブリティが支援している。テック業界では、Discord(ディスコード)の共同創業者であるJason Citron(ジェイソン・シトロン)氏、Rec Room(レックルーム)の共同創業者であるNick Fajt(ニック・ファジット)氏、SonosのCEOであるPatrick Spence(パトリック・スペンス)氏も出資しているとのこと。

画像クレジット:Backbone

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(文:Greg Kumparak、翻訳:Den Nakano)

アフリカのゲーム業界発展のために開発スタジオ10社が結集、「Pan Africa Gaming Group」発足

アフリカのゲーム開発スタジオ10社が、現在分散している同大陸のゲーム業界を一丸にするために、Pan Africa Gaming Group(PAGG)という1つの傘の下に結集した。この団体はそれに加え、 アフリカ大陸におけるゲーミングの普及促進と、開発者の人材育成をビジョンとして描いている。

この発表は、南アフリカのケープタウンで開催されている「Africa Games Week 2022」を背景に行われた。PAGGは、アフリカのゲーム業界を毎年2倍に成長させ「世界のゲーム業界で存在を示す」ことを目指すという。

この新しい団体に参加しているゲームスタジオは、南アフリカのSea Monster、セネガルのKayfo Games、カメルーンのKiro’o Games、ガーナのLeti Arts、チュニジアのDigital Mania、エチオピアのQene Games、ケニアのUsiku Games、タンザニアのKhanga Rue、ルワンダのDopeAppsMesseka Gamesなどで、今後、さらに多くのスタジオが参加する予定だ。現メンバーのタイトルを合わせると、50本以上のゲームを開発している。

PAGGは、メンバーが開発したゲームを、アフリカのゲームストアであるGaraや、アフロセントリックな創作活動のためのコンテンツハブであるAfroComixで販売する予定。これらのチャンネルでは、モバイルマネーやエアタイム課金など、現地に適した支払いオプションを可能にすることで、コンテンツの配信と収益化を実現する。また、ケニアのナイロビゲーム開発センターですでに始まっているトレーニングやインキュベーションを通じて、アフリカの次世代ゲーム開発者の数を増やすことも計画している。

Leti ArtsのCEOであるEyram Tawia(アイラム・タウィア)氏はこう述べている。「我々のコアバリューの1つは、単にゲームのコレクションを作ることではなく、アフリカの明日のゲーム業界をインキュベートすることです。アフリカにはすでにすばらしい才能を持った人材が豊富に存在するとともに、毎年Rubikaのようなトップレベルのゲーム開発スクールから卒業しています。しかし、アフリカではゲーム開発の仕事がないことから、卒業生の多くは海外のクライアントのためにリモートで仕事をしています。我々はそれを解決するつもりです」。

PAGGの創業者たちは、アフリカのゲーム産業を年で2倍に成長させたいと考えている(画像クレジット:PAGG)

同団体は、アメリカ大陸のトップゲーム起業家で構成される創業者評議会によって運営され、元Goldman Sachs(ゴールドマン・サックス)およびPWCのPeter Kihara(ピーター・キハラ)氏がグループファイナンシャルオフィサーを務め、BAFTA(英国映画テレビ芸術アカデミー)にノミネートされたディレクターであり、元英国Aardman Animation(アードマン・アニメーションズ)のゲームディレクターであるJake Manion(ジェイク・マニオン)氏がグループクリエイティブディレクターを務める。

各ゲームスタジオは自主性を保ちつつ、評議会が提起する議案や決議の議決に関与する。PAGGの広報担当者は、Qene Games(エチオピア)のCEOであるDawit Abraham(ダウィット・アブラハム)氏が務める。

アフリカのゲーム産業は、若者の関心の高まりや、より多くの人々がインターネットに接続するようになったことで、急激な成長が見込まれている。2021年のGSMAモバイルエコノミーレポートによると、サハラ以南のアフリカでは人口の約28%にあたる3億300万人がモバイルインターネットに接続しており、この数は2025年には4億7400万人にまで増加すると予想され、ゲーム業界にとってはさらに大きな市場となるだろう。

Games Industry Africaのレポートによると、アフリカで最もゲーマーの数が多いのは南アフリカで、2400万人(人口のほぼ半分)がゲームを楽しんでいる。その他の主な市場は、ガーナ、ナイジェリア、ケニア、エチオピアだ。2021年の年間ゲーム売上高は、南アフリカが最も多く2億9000万ドル(約333億円)、次いでナイジェリア(1億8500万ドル / 約213億円)、ガーナ(4200万ドル / 約48億円)、ケニア(3800万ドル / 約44億円)、エチオピア(3500万ドル / 約40億円)となっている。

画像クレジット:Leti Arts, a game company in Ghana

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(文:Annie Njanja、翻訳:Den Nakano)

Wildtypeは115億円の資金で細胞培養の「寿司用」サーモンを世に送り出せるか

サンフランシスコを拠点とし、創業6年になるWildtype(ワイルドタイプ)は、動物以外の細胞から培養したサーモンを開発している。その製品を一流レストランから食料品店まで広く普及させるため、シリーズBで1億ドル(約115億円)を調達した。

この計画が成功するかどうかはわからないが、L Catterton、Cargill、Leonardo DiCaprio(レオナルド・ディカプリオ)氏、Bezos Expeditions、Temasek、Robert Downey Jr.(ロバート・ダウニー・ジュニア)氏のFootPrint Coalitionといった新しい出資者が、何に期待を膨らませているのかは容易に察しがつく。

細胞培養シーフードの一般的な主張は、野生種の保護と乱獲対策になるというものだ。表向きは、天然魚や養殖魚に含まれていることがある水銀やマイクロプラスチックなどの汚染物質がないのに、天然魚と同じ栄養を摂取できるということになっている。

利点はまだある、とWildtypeの共同創業者であるJustin Kolbeck(ジャスティン・コルベック)氏とAryé Elfenbein(アーイエ・エルフェンバイン)氏は語る。同社は、ビール工場にあるような鉄製タンクでサケの細胞を培養し、植物由来の成分でできた足場と呼ばれる構造体に細胞を入れ、細胞が魚の切り身を形成するように誘導することで「寿司グレード」のサーモンを作る方法を見出した(同社はヒレや頭を育てているわけではなく、寿司屋で目にするようなサーモンの切り身を育てているだけだと創業者らはいう)。

それぞれビジネスコンサルタントと心臓専門医だった2人は、このサーモンの仕上がりに自信を持っている。2021年、タンクのすぐそばに試食室をオープンし、シェフらがサーモンを試食し、その生産について詳しく知ることができるようにした。

計画通りに進めば、試食したシェフは、やがてWildtypeのサーモンを他のメニューと一緒に扱うようになるだろう。食料品店も同様だ。

それは目前に迫っている。Wildtypeは2021年12月、全国1230の食料品店で寿司屋を経営するSnowfox(スノーフォックス)、65軒のファストカジュアルレストランを経営するPokéworks(ポケワークス)との販売契約を発表した。この契約は「同社の製造能力が必要な規模に達した時点で、消費者がWildtypeの養殖サーモンを体験する道を開く」と発表した。

同社はA地点からB地点へ移動しようとしているが、これが今のところ難しい。

まず、Wildtypeのサーモンを従来の寿司用サーモンと同じ価格、あるいはそれ以下の価格にする試みは依然進行中だとコルベック氏とエルフェンバイン氏はいう。

また、消費者が植物性の肉と同じような熱意をもって細胞培養のシーフードを受け入れるかどうかも未知数だ。赤身の肉を食べるとがんのリスクが高まることは広く知られているが、一方で、摂取した餌が原因で一部のサケにPCB(ポリ塩化ビフェニル)やダイオキシン、水銀が含まれていることを知る人は少ない。さらに、飼料に含まれる汚染物質に関する厳しいルールが設けられたため、魚の汚染物質濃度は下がっており、米連邦政府の基準では食べても安全な水準になっている。

おそらく最も注目すべきは、同社が2019年にFDA(米食品医薬品局)との協議プロセスに入った後、現在も承認を待っているということだ。承認が下りるまでは提携予定のレストランを通じて販売することができない(賠償責任保険については、肉や魚介類の生産者の間で一般的なものに加入しているという)。

それでも、同社が興味深い理由の1つは、最大の脅威となりうるImpossible Foods(インポッシブル・フーズ)が、細胞から育てたものではなく、植物由来のシーフードに取り組んでいるとしたものの、まだ何も発表していないことだ。

一方、同じ業界のより小規模なベンチャー企業は、他のシーフードに注力しているようだ。例えば、BlueNalu(ブルーナル)は、最初の培養シーフードアイテムとして培養マヒマヒを作ろうとしている。Gathered Foods(ギャザード・フーズ)は、植物由来のマグロを、シングルサーブですぐに食べられるレトルトパウチにしようと取り組んでいる。

Wildtypeの製品も迅速かつ効率的に使えると証明できるかもしれない。サーモンの可食部のみを培養するからだ(理論的には、従来シェフが魚をさばくのにかかっていた時間や無駄を省くことができる)。

さらに、同社のもう1つの主張はトレーサビリティだ。「あるものを注文したら、別のものが送られてくるということがよくあるシーフードの世界では、特に重要なことです」とエルフェンバイン氏はいう。

確かに、従業員35人のこの会社が規模を拡大し、同社のサーモンを適正価格で販売できるようになれば、その存在意義を理解するのはたやすい。

時が経てばわかる。同社は、規模を拡大するためにサーモンの成長を早めることはできないとしている。しかし、新しい拠点を開拓し、完全な自動生産システムを開発することは可能だ。

一方、細胞に与える栄養について、エルフェンバイン氏は「高級ゲータレード(スポーツドリンク)のようなもの」と表現し「食品製造用にカスタマイズされていないため、現在は高価」だと話す。同社は「細胞が生きるために必要な基本栄養素を供給するためだけに多額の投資を行っている」という。

将来それが安価になるかはわからないが、チームはいずれにしても、この挑戦に臆する様子はない。

「最終的には」とコルベック氏はいう。「とても手頃な価格で手に入れられる製品になります。最も栄養価の高い食品が最も高価であるという現状を覆したいのです」。最終目標は「鶏のもも肉よりも安い」寿司用サーモンで、それは「可能性という領域の中にある」と考えていると、同氏は付け加えた。

Wildtypeが最後に資金調達を行ったのは2019年末で、CRV、Maven Ventures、Spark Capital、Root Venturesから1250万ドル(約14億円)を調達するシリーズAラウンドを完了した。今回の資金調達により、累計調達額は1億2000万ドル(138億円)強に達した。

画像クレジット:Wildtype

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(文:Connie Loizos、翻訳:Nariko Mizoguchi

米著作権局、AIが生成したアート作品に対する著作権取得の申請を2019年に続き却下―「人間が作った作品」要件を満たさず

米著作権局、AIが生成したアート作品に対する著作権取得の申請を2019年に続き却下―「人間が作ったもの」要件を満たさず

Stephen Thaler/Creativity Machine

米著作権局(USCO)は、人工知能が生み出した芸術作品に対する著作権取得の申請を2019年につづいて再び却下しました。これは自らが開発した人工知能(AI)が生み出した”アート作品”に関して、各国での著作権取得を試みているImagination EnginesのCEO、スティーブン・タラー博士による最新の試みでしたが、USCOは前回と同様「著作権は人間によって作られた作品でなければ認められない」としています。

今回、タラー博士はAIによって作成された「A Recent Entrance to Paradise」と題した芸術作品の著作権取得を目指していました。今回の”アート作品”は「Creativity Machine」と呼ばれるAIによって生み出されたものですが、これをCreativity Machineの所有者に雇用されて生み出された作品として登録申請していました。また、2019年の裁定に対しても、「人間の著作物」という要件は憲法違反ではないかと主張しています。

しかし、USCOの見解としては「人間の心と創造的な表現の結びつき」が著作権の重要な要素であり、また過去の同種の裁判、たとえば猿がシャッターボタンを押して撮られた写真についての裁判でも「人間以外による表現物は著作権保護対象外」だとする判断が一貫して下されて来たとしました。

ただ、芸術作品ではないもののタラー博士による「AIの権利取得の試み」が認められた例も、いくつか存在します。博士は昨年、世界各国で「DABUS」と名付けられたAIによって考案されたいくつかの発明に関して特許出願を行いました。これに対し、米国特許商標庁、英国知的財産庁、欧州特許庁などはやはり発明者が人間でないことから出願を却下する判断を下していました。しかしオーストラリアでは、AIが考案した発明に関する特許申請においてAIを発明者と認めることができる可能性があると裁判所が判断し、南アフリカでは実際に特許も認められたことが伝えられました

とはいえ、なにかの製品の動作や仕組みを定義する発明とは異なり、芸術作品は創作者のユニークな発想や才能によって生み出されるものとの考え方が強く、やはり人間ではないものに著作権を与えることは難しそうです。

(Source:United States Copyright Office(PDF)。Via the VergeEngadget日本版より転載)

【2月24日】掲載記事アクセスランキング・トップ5―1位は日本版かわいい乳児顔の客観的な特徴

【2月24日】掲載記事アクセスランキング・トップ5―1位は日本版かわいい乳児顔の客観的な特徴、2位Androidスマホのスパイウェア削除方法

掲載記事のうち、2月24日午前7時現在集計で最もアクセスのあった記事5本を紹介。

第1位:日本人の赤ちゃんの顔の「かわいさ」には客観的な特徴があった―日本版かわいい乳児顔データセット公開


大阪大学大学院人間科学研究科教授の入戸野宏氏らによる研究グループは2月18日、日本人の乳児の顔の形状を分析し、その「かわいさ」には客観的な特徴が存在することを明らかにしたと発表した。日本人の赤ちゃんの顔をベースにした体系的な研究はこれが初めてとのこと。

第2位:あなたのAndroidスマホがすぐに修正される見込みがないストーカーウェアに感染している可能性


今日最も広く展開されている消費者向けスパイウェアの1つにセキュリティ上の脆弱性があり、約40万人の携帯電話データが危険にさらされており、その数は日々増え続けている。この脆弱性がすぐに修正される見込みはないため、このガイドでは、あなたのAndroidスマートフォンからこれらの特定のスパイウェアアプリを削除する方法を説明する。そうすることが安全だとあなたが思えばの話だ。

第3位:世界初の可動部のない自動運転用ソリッドステートLiDAR開発、見たいところを必要なだけ見る人間の目のような視覚システム実現

新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)、LiDAR(ライダー)システムの開発・製造・販売を行うSteraVisionは2月21日、世界で初めて、スキャナー(MultiPol)の可動部を一切なくし量産性を向上させたソリッドステートLiDARを開発したと発表した。光の干渉を利用した光コヒーレント技術を組み合わせることで、肉眼では見えない遠方や霧の先が見えるようになり、さらに自動運転車向け認識技術と連動させることで、「見たいところを必要なだけ見る」ことができる人間の目のような機能を持たせることが可能になった。

第4位:トランプ氏のTRUTH SocialがApp Storeに登場、しかし誰も利用できず


ドナルド・トランプ氏のメディアグループは米国時間2月21日、米国でiOSアプリ「TRUTH Social」をリリースしたが、公開されているツールを使って同アプリのAPIをスキャンしたところ、すでに登録自体を締め切っていることがわかった。

第5位:これがオーブ型の新ヘッドセット「PlayStation VR2」だ


SonyはCESで、近日発売予定のバーチャルリアリティヘッドセットについて簡単に言及した。これは、Sonyが例年この展示会で行っていることで、詳細についてはあまり説明せず、今後の製品についての耳よりな情報を提供する。そして、もし何かエキサイティングなものを隠し持っているのなら、それを少し見せればいいのだ。

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