営業担当者がその顧客のエキスパートになるための洞察を提供するDatabookが約57億円を調達

Databookの共同設立者でCEOのアナンド・シャー氏(画像クレジット:Databook)

2021年4月にシリーズAで1600万ドル(約18億円)を獲得した、AIを活用したコンサルティング型セールスインテリジェンス企業であるDatabook(データブック)が、今度はシリーズBで5000万ドル(約57億円)を獲得した。

パンデミック3年目でリモートワークが続く中、営業担当者の88%が「現在の経済状況では顧客のニーズを予測することが重要」と感じているとSalesforce(セールスフォース)は指摘する。しかし、営業担当者は、経営幹部へのセールスに必要な戦略的洞察、関連するビジネスユースケース、パーソナライズされたコンテンツが不足していることが多い。

そこでDatabookの出番だ。同社は、営業担当者が顧客の専門家になれるようなツールを、ボタンをクリックするだけという形で提供している。Databookの顧客基盤は現在、毎年3000億ドル(約34兆円)超の売上高を生み出しており、Salesforce、Microsoft(マイクロソフト)、Databricks(データブリックス)などのエンタープライズ企業がこの技術を利用して顧客の購買体験を向上させ、結果として収益獲得を増やしている。

「Databookのプラットフォームは、営業担当者のビジネスセンスを高め、アカウントの優先順位付けを支援し、営業活動全体を解決しようとするビジネス上の問題に正面から取り組むためのものにする強制機能です」と、Salesforceのエンタープライズセールス担当AVP、Frank Perkins(フランク・パーキンス)氏は文書で述べた。「Databookは、アカウントプランニングの方法と、担当者がアカウントに売り込むための準備に革命をもたらします。そして、これらすべてを一般的な営業担当者が完全にアクセスできる方法で行います。ゲームチェンジャーです」。

MicrosoftのベンチャーファンドM12はシリーズAをリードし、Bessemer Venture Partnersが主導する今回の応募者多数のシリーズBラウンドにも参加した。さらに、DFJ Growth、既存投資家であるThreshold Ventures、Salesforce Ventures、Haystackが参加している。

Databookの共同設立者でCEOのAnand Shah(アナンド・シャー)氏は、こんなに早く追加資金を調達するつもりはなかった、と電子メールを通じて語った。実際、同社は過去4年間で3倍の売上成長を見せており、その多くはマーケティング費用をほとんどかけずに得た需要だ。

「当社の財務内容は健全で、当社の規模とステージとしてはユニークで強固なものですが、イノベーションと新規顧客開拓のスピードを支えるべく採用を加速させるために、今すぐ追加資金を調達することにしました」とシャー氏は付け加えた。

同ラウンドの主導権を争う投資家が多数いたにもかかわらず、Databookが以前から知っているBessemerを選んだ理由について「優れた実績を持つナンバーワンのクラウドSaaS投資家」であり「当社の今後をかなり支援できる広範な投資およびポートフォリオ運用チームを抱えています」とシャー氏は述べた。

同氏は、今回の資金を3つの方法で活用する意向だ。1つ目は、製品、エンジニアリング、営業、マーケティング、カスタマーサクセスなど、事業の全部門での雇用だ。2つ目は、銀行、生命科学、小売、消費財などの新しい業界への進出だ。これらの業界はすべてデジタル化の影響を受けており、顧客関係管理への投資を行い、営業担当者が顧客について十分な情報を持ち、効果的に販売するために十分な時間が必要だと考えていると、同氏は指摘する。

Databookの顧客は、官民4万4000社のグローバルデータセットを活用している。このため、3つ目の資金活用分野として、欧州とアジア太平洋地域への事業拡大、営業およびマーケティングチームへの投資を行う。これは元アクセンチュアのPeter Zuyderduyn(ピーター・ザイダーダイン)氏を2021年に欧州地域のゼネラルマネージャーに任命したことを補完するものだ。

今回の資金調達は、同社にさまざまな変化が起きている中で行われた。シリーズAラウンドから評価額は5.5倍になり、従業員数も2倍に増えた。さらに、同社は2021年を売上高350%増で終え、第4四半期は複数の7桁の取引成立を受けてこれまでで最も好調な四半期となった、とシャー氏は述べた。

「これは、当社のビジネスと顧客基盤の急成長を直接証明するものです」と同氏は付け加えた。「当社の従業員の38%はこれまで過小評価されてきたコミュニティ出身者で、今後も採用を続けるなかで、多様性、公平性、包括性にいて高い水準を保つことを約束します」。

従業員の増加は役員レベルにも及んでいる。元Google社員のNeil Smith(ニール・スミス)氏が最高技術責任者に、Tamar Shor(タマール・ショア)氏がTreasure Dataを経て製品担当上級副社長に、そして元SalesforceのBruno Fonzi(ブルーノ・フォンジ)氏がエンジニアリング担当副社長に就任した。

一方、Databookはコンサルティング型セールスインテリジェンスのパイオニアであり「今、企業のB2Bセールスが優先している」この新しいカテゴリーのリーダーであり続けている、とシャー氏は話す。アカウントベースのテクノロジーやセールストレーニングに莫大な投資を行っているにもかかわらず、法人向けソフトウェアは依然として非効率で、収益の平均41%が営業とマーケティングのチームに費やされている。シャー氏は、Databookを使用する営業チームは、平均して3倍のパイプラインを達成し、2倍近くの案件を生み出し、サイクルタイムを1.5倍速くしていると推定している。

「企業は将来に向けて、企業におけるデジタル販売の役割を見直す必要があります」と同氏は話した。「顧客価値と信頼を生み出すには、市場開拓チームのメンバー全員が、特定のビジネス成果を解決する完全なソリューションで買い手と売り手を調整することで、戦略的なコンサルタントとして機能する必要があります」。

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(文:Christine Hall、翻訳:Nariko Mizoguchi

英歳入関税庁が2.2億円相当の脱税案件の捜査にともないNFTを押収、英法執行機関として初

英歳入関税庁が2.2億円相当の脱税案件の捜査にともないNFTを押収、英法執行機関として初

Dinendra Haria/SOPA Images/LightRocket via Getty Images

英国の歳入関税庁(HMRC)が、詐欺事件に関わる調査の一環としてNFT3つを押収したことを明らかにしました。当局によると、このNFTに関して140万ポンド(約2.2億円)以上の付加価値税(VAT)詐欺の疑いがあり、調査の一環としてのNFTおよび5000ポンド(約78万円)相当の暗号資産を押収したとのこと。英国の法執行機関がNFTを押収するのは今回が初めてとされます。

容疑者は偽造身分証明書、プリペイド電話、VPNなどを使い、250以上の偽装企業を通じた金品の売買に応じて徴収されるVATの額をごまかしていたとされ、脱税の疑いで逮捕されました。

調査はまだ進行中ですが、HMRCの経済犯罪担当副局長ニック・シャープ氏は、このNFTの「押収事例が暗号資産を脱税に利用すれば金を隠しおおせると思っている人たちへの警告になる」と述べ「われわれは常に新しい技術に対応し、犯罪者が資産を隠そうとする方法を研究把握している」としています。

NFTとは、デジタルアートワークやビデオゲームのキャラクターなどバーチャルなアイテムの所有権を追跡するために、ブロックチェーン技術を応用した非代替性トークンのことで、これが添付されたデジタルアートや、何らかのデータが本物かどうかを証明する鑑定書のようなものといえばわかりやすいかもしれません。

巨額の案件がいくつかニュースになり、その結果2021年には総額400億ドルを超えるNFTが販売、取り引きされたと伝えられています。しかしNFTには法的な規制や保護が整備されていない状況であり、たとえば自己売買(いわゆるウォッシュトレード)を繰り返すことによる価格つり上げから、まがい物、盗作品などを使った詐欺案件も急増しています。

NFT売買大手の米OpenSeaは、今回のNFTの押収について「犯罪者が暗号のしくみを隠れ蓑にできないことを示している」とし「執行機関がその取り引きを追跡して違法行為に使われたNFTと暗号資産を押収し犯罪者に利益を得させないようにできる」とコメントしています。

(Source:BBC NewsCNBCEngadget日本版より転載)

ANAとJoby Aviationが提携、日本でもエアタクシーサービスを開始へ

Joby Aviationは、日本の航空会社ANAと提携し、航空ライドシェアサービスを日本に提供する。トヨタ自動車も両社と提携し、エアタクシーと地上の交通機関を接続する方法を模索する予定だ。

Joby Aviationが日本で事業を開始する意向を明らかにしたのは、同社が韓国のSK Telecomと提携し同国で航空タクシーサービスを開始する計画を発表した1週間後のこととなる。JobyはSK Telecomのスピンオフ企業であるT Map Mobilityプラットフォームと協力して、エアタクシーをT Mapのサブスクリプションベースのmobility-as-a-serviceプラットフォームに統合する予定だ。

関連記事:韓国でJoby Aviationがエアタクシーサービス開始へ

両社は、Jobyの航空機の操縦開始時期、日本での商用サービス開始予定時期、ANAとJobyのどちらが運営するのか、顧客がどのように利用するのかなど、サービスの具体的な内容は明らかにしなかった。Joby Aviationの広報担当者は、Joby、ANA、トヨタの3社は現在、インフラ整備、パイロット養成、飛行運用、規制要件、一般の受け入れ、航空輸送をより大きな交通エコシステムに接続する方法などを検討しており、計画段階にあるという。

トヨタは、この未来のサービスにおけるパートナーであるだけでなく、JOBYの戦略的投資家でもある。トヨタは2020年にJobyの5億9000万ドル(約681億円)のシリーズCラウンドを主導し、同社と電動化技術や製造、品質、コスト管理に関する専門知識を共有しているとJoby Aviationの広報担当者は述べている。

「本日の発表は、日本における未来のエアタクシーサービスのあり方を定義するための第一歩です」と、広報担当者は語る。「両社は今後、ルートの候補も含めて、この画期的な新しい交通手段を確立するためのあらゆる側面で協力することになります」。

Jobyの航空機は、最大航続距離150マイル(約270km)、最高速度時速200マイル(約320km/h)だ。クルマで1時間かかる関西国際空港から大阪駅までの移動は、同社のサービスを使えば15分以内で行けると試算している。

電動垂直離着陸機(eVTOL)は4人乗りであり、少なくとも最初の用途では、商業サービスは限定的なものになるだろう。Jobyが現在のモデルを大量生産するか、より大きなeVTOLを作るまでは、エアタクシーが一般的になるのは数年先だろう。さらにeVTOLの製造に時間と費用が必要であるだけでなく、規制上の障害がある可能性のためだ。しかし、先に米運輸省の連邦航空局とG-1(第4段階)の認証基準を締結し、一歩前進した。これにより、同社は米国での適合性試験を開始し「実施段階」に入ることができるようになった。これは基本的にJobyは、航空機の複合材部品の設計と製造に承認を得たことを意味する。

日本における空のライドシェアの採用を加速させたい学者、研究者、航空会社、スタートアップ、公的機関が集まった「空の移動革命に向けた官民協議会」では、日本でのeVTOLの認証が検討されている(Joby Aviation、トヨタ、ANAはすべてこのグループのメンバーだ)。最終的な認定は、国土交通省航空局が行う予定だ。

画像クレジット:Joby Aviation

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Katsuyuki Yasui)

【2月15日】掲載記事アクセスランキング・トップ5―第1位はアダルト系SNSのOnlyFans、第2位は一部操業停止のキオクシア

【2月15日】掲載記事アクセスランキング・トップ5―第1位はアダルト系SNSのOnlyFans、第2位は一部操業停止でキオクシア

掲載記事のうち、2月15日午前6時現在集計で最もアクセスのあった記事5本を紹介。

第1位:アダルト系SNS「OnlyFans」が認証済みNFTをプロフィール画像にできる機能を提供


Twitterに続き、NFTプロフィール画像の波に乗るのは誰になるとあなたは考えていただろうか。アダルトコンテンツで成長したにも関わらず妙にイメージをクリーンアップしようとしている、NSFW(職場閲覧注意)クリエーター収益化プラットフォームであるOnlyFansと予想していたなら、大当たり!……。

第2位:キオクシアの三重県四日市工場と岩手県北上工場の一部操業停止により、SSD用チップが最大10%高騰する可能性


アップル製品向けにNANDフラッシュメモリを供給する主要サプライヤーの1つが生産工程の一部を停止したため、今後NANDフラッシュの価格が最大10%上昇するかもしれないとの予想が報じられています。今月10日、半導体メーカー大手のキオクシア(旧東芝)は四日市工場と北上工場で生産工程の一部を停止したと発表しました。3次元NAND型フラッシュメモリ「BiCS FLASH」の部材に不純物が混入していたとされており、少なくとも6.5EB(65億GB)分の製造が減少すると述べています。

第3位:Astra、フロリダからの初ロケット打ち上げに失敗


Astraは米国時間2月10日、フロリダ州の「スペースコースト」から初となるロケットの打ち上げを行った。これは当初、2月7日に予定されていたが、技術的な問題で中止されていた。二度目の試みとなった今回、ケープカナベラル宇宙軍基地のスペースローンチコンプレックス46から打ち上げられたロケットは、発射台を離れたものの、残念ながらペイロードは軌道に乗らなかった。

第4位:近い将来、すべてのブロックチェーン企業が暗号投機家になる

現在、テクノロジーの世界で徐々に勢いを増しているイノベーションの1つが、企業が創立後のより早い段階からベンチャーキャピタル活動(防御的なものも攻撃的なものも)を始めるようになっているということだ。OpenSeaは、その最新の例だ。

第5位:韓国のスタートアップAtommerce、約19.4億円の資金調達でメンタルヘルスサービスを拡大させる

モバイルアプリ「MiNDCAFE」を通じてユーザーがメンタルヘルス専門家とつながることを支援する韓国のスタートアップ、Atommerceは、2カ月で3倍の応募超過となった1670万ドル(約19億3600万円)のシリーズBで、メンタルヘルスのサービスを拡大する計画だ。

画像クレジット:Brands&People on Unsplash

動画により1対多のOJTを実現するマネジメント支援サービスClipLineがシリーズEセカンドクローズとして4.5億円調達

動画により1対多のOJTを実現するマネジメント支援サービスClipLineがシリーズEセカンドクローズとして4.5億円調達

動画で組織実行力を高めるマネジメント支援サービス「ClipLine」を提供するClipLineは2月15日、シリーズEラウンドセカンドクローズとして、第三者割当増資による総額4億5000万円の資金調達を実施したと発表した。引受先は、あいざわアセットマネジメント、DG Daiwa Ventures、SMBCベンチャーキャピタル、山口キャピタル。シリーズEラウンドとしては総額10億5000万円の資金調達を実施したことになる。また累計調達額は25億5000万円となった。引き続きエクステンションラウンドの実施を予定しているという。

調達した資金により、ClipLineの機能を拡張し、より経営に寄り添うサービスへ進化させる。特に現場マネジメントの柱となる「店長・ミドルマネジャー支援」機能の強化および導入促進に注力する。

・店舗運営に必要な情報をスコア化するダッシュボード機能の実装
・店長・ミドルマネジャーの利用シーンに即したマルチデバイスの開発
・その他の使途として、人材獲得による組織体制の強化に引き続き注力

ClipLineは、動画とクラウドで多店舗展開ビジネスの生産性を改善するサービス。OJTを1対1ではなく、1対多人数へ拡張し、24時間いつでもどこでも新人が1人でトレーニングできる環境を構築し、指導者の拘束時間を削減するという。また、マネジメントをリモート化し、ミドルマネージャーの負荷削減を通じた販売管理費の抑制や、暗黙知の形式知化による店舗間での理念体現・ノウハウ共有などの実績があるそうだ。

投資家はメタバースのキラーアプリを必死で探す、3DソーシャルネットワークアプリBUDが約17.3億円調達

投資家たちはメタバースの次なるキラーアプリを見つけようと必死だ。ユーザーが3Dのコンテンツをカスタマイズして他の人と交流できるアプリのBUDが米国時間2月13日、シリーズA+ラウンドで1500万ドル(約17億3100万円)を調達したと発表した

「どうぶつの森」を思わせるかわいらしいキャラクターが登場するBUDは2021年11月に公開されたばかりだ。調査会社のApp Annieによれば、アプリ公開から数週間で米国など数カ国においてAndroidのソーシャルアプリカテゴリーでトップ10に入ったが、その後は100位台に沈んでいる。

勢いは落ちたが、この新しいアプリに対する中国の積極的な投資家の動きは止まらなかった。「予定オーバー」であるシリーズA+ラウンドを主導したのはQiming Ventures Partnersで、Source Code Capital、GGV Capital、Sky9 Capitalも参加した。シリーズAの調達金額は明らかにされていない。新たに調達した資金は製品の研究開発と国際市場でのユーザー獲得に充てるとBUDは述べている。

SnapのエンジニアだったShawn Lin(ショーン・リン)氏とRisa Feng(リサ・フォン)氏が共同で2019年にBUDを創業し、従業員数100人の企業へと成長させてきた。2022年末までに従業員数を200人にし、グローバルの本社を暗号資産ハブとして台頭するシンガポールに開設することを目指している。

BUDのセールスポイントの1つは、テクニカルな知識がなくてもドラッグ&ドロップで簡単に3Dワールドをカスタマイズできることだ。この点が、人気のクリエイター向けメタバースアプリで韓国インターネット複合企業Naver傘下のZepetoとは異なる。中国では最近、Zheliという新しい3DアバターソーシャルプラットフォームがApp Storeの無料ソーシャルアプリカテゴリーでトップになった。

関連記事:韓国NAVER Zがメタバースクリエイター向けの約115億円ファンドを設立

BUDやRoblox、Zepetoなどはエンドユーザーがメタバースを体験できるアプリだが、メタバースを単なるバズワードではなく現実のものにするためのインフラを開発している起業家も多い。分散型決済システムを開発している人もいれば、クリエイター向けツールを作っている人もいる。後者の例としては、3Dグラフィックス開発者向け共同作業プラットフォームで最近シリーズAで5000万ドル(約57億7000万円)を調達したTachi Graphicsがある。

関連記事:500以上のモバイルアプリが「メタバース」というバズワードを使って新規ユーザーにアピール

画像クレジット:App Storeのスクリーンショット

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(文:Rita Liao、翻訳:Kaori Koyama)

アルファベット社内の黒人投資家グループ「Black Angel Group」が台頭

Black Angel Groupの設立メンバー。左からジャクソン・ジョージズ Jr.氏、キャンディス・モーガン氏、ジェイソン・スコット氏(画像クレジット:The Black Angel Group)

1年前、巨大企業であるAlphabet(アルファベット)の社内で、黒人のGoogler(グーグル社員)やAlphabet社員が、黒人歴史月間中にエンジェル投資に関する非公式なプログラムに招待された。これはスタートアップ企業への投資がどのように構成されているか、可能性のあるエグジットまでの一般的なタイムラインなどについて、興味のある人が学べるように社員が企画したものだ。

このアイデアは、暫定的なエンジェル投資スクールのようなもので、組織を作り上げるためのものではなかった。それは単に、講演者として参加したGVのゼネラルパートナーであるJessica Verrilli(ジェシカ・ヴェリリ)氏をはじめとする、知識豊富な社員の話を聞きたいと思っているスタッフのための機会だった。

「こんなアイデアがあるけど、一緒に投資しない?という感じでした」と、GVのパートナーであり、エクイティ、ダイバーシティ、インクルージョンに力を入れているCandice Morgan(キャンディス・モーガン)氏は語っている。

このアイデアを実現するために、2週間のうちに5人の参加者が集まった。それから、さらに多くの人が手を挙げて、どうしたら参加できるのかと尋ねるようになった。そして現在、このBlack Angel Group(ブラック・エンジェル・グループ)という組織には、Google(グーグル)、GV、CapitalG(キャピタルG)、YouTube(ユーチューブ)、Gradient Ventures(グラディエント・ベンチャーズ)など、Alphabet社内から35人の黒人リーダーやオペレーターが参加している。

また、元YouTubeのVPで、最近ではPinterest(ピンタレスト)のチーフコンテンツオフィサーに就任したMalik Ducard(マリク・デュカード)氏のような、会社の卒業生もこのグループに参加している。

彼らは強力な個人であり、さらに強力なグループでもある。そのメンバーたちは、プロダクトマネジメント、ソフトウェアマネジメント、ユーザーエクスペリエンス、ピープルオペレーションなど、全員のさまざまな専門知識を駆使して、興味深い案件に参入を始めたところだ。2021年は、Bowery Farming(バワリー・ファーミング)、Polar Signals(ポーラー・シグナルズ)、Matter(マター)、Career Karma(キャリア・カーマ)など、約10社に50万ドル(約5800万円)以上の投資を行った。

いずれの場合も、より小規模な委員会が案件を持ち込み、メンバーはそれぞれ自分自身で決定するように依頼される。これまでのところ、出資した企業の半数は黒人の創業者であり、中にはGoogleの元社員である黒人の創業者もいたが、彼らの目的は黒人の創業者を支援することではなく、元同僚が創業した企業を探すことでもない。そうではなく、シードからシリーズAまでの「エシカル(道徳的)」な企業に焦点を当てていると、CapitalGのグロースパートナーで、この集まりのメンバーであるJackson Georges Jr.(ジャクソン・ジョージズ・ジュニア)氏はいう。

「私たちはブラックエンジェル(黒人エンジェル投資家)です。そしてブラックエンジェルのネットワークは、多くのエンジェル投資家のネットワークよりも、概して多様性に富んでいます」と、ジョージズ Jr.氏は語る。しかし、その最も重要な目的は、メンバーに世代間資産をもたらすための最良の投資先を見つけ出すことである。

だからこそ、Black Angel Groupは、その注目度を高め、より多くの案件に力を注ぐ準備を整えているのだ。

この成長の一部は、ドルという形でもたらされる。2022年のBlack Angel Groupの投資額は、これまでの投資額の「倍」になると、モーガン氏は予想している。

また、その成長の一部は、新しいメンバーからももたらされる。Googleでスタートアップ開発者エコシステムの責任者を務めるJason Scott(ジェイソン・スコット)氏はこう説明する。「2021年のエンジェルプログラムへの参加が、多くのメンバーの基盤となりました。しかし今は、他にも興味を持った黒人のGooglerやAlphabetの社員が参加を申し込めるようなプロセスを立ち上げています」。

全員がミリオネアである必要はない。この集まりを可能な限り包括的なものにするために、メンバーたちは、まだ認定投資家ではないが認定投資家になるための道を歩んでいる人たちにも、取引の流れへの参加を勧めることを計画している。

それは純粋な利他主義ではない。ジョージズ Jr.氏によれば、案件の調達や投資についてもっと知りたいと思っている出世途中の社員やOBを積極的に教育することは、グループにとってもメリットがあるという。数と、そしてネットワークには力があるからだ。

確かに、黒人投資家の世界を広げることは必要だ。現在、黒人投資家はベンチャー企業のパートナーの4%以下、エンジェル投資家の1%に過ぎない。このような数字を見れば、地球上で最も強力な企業の1つで道を切り開こうとしている黒人エンジェル投資家のネットワークが拡大していることは、特に注目に値するだろう。

実際、このグループは、メンバーの経験の蓄積や、より多くの出資を望んでいること、また、スタートアップの創業者たちが、より多様な投資家を資本政策表に加えることに関心を示していることを考えると、今後より多くの案件に登場することが予想される。

モーガン氏はその一例として、パフォーマンス分析を行うスタートアップ企業のPolar Signalsを挙げ、同社のCEO兼創業者であるFrederic Branczyk(フレデリック・ブランズィック)氏は「よく考えて非常に多様性に富んだ資本政策表を用意していた」と述べている。

他の多くの創業者も「かなり明確になっている」という同氏は、これを「すばらしいことだ」と語っている。

「私たちの価値提案で重要な部分は、私たちと価値観が一致する創業者と一緒に仕事をすることです」と、モーガン氏は言及している。多様性を重視することは「そのような創業者について多くのシグナルを与えてくれる」という。

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(文:Connie Loizos、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

オンライン文房具市場をリードするためPapierは約57.7億円のシリーズCを獲得

テクノロジーを活用して非テックな製品を世に送り出しているスタートアップPapier(パピエ)は、オンラインで販売しているパーソナライズされたノート、手帳、カードなど、紙ベースの文房具に対する強い需要を受けて、事業拡大を続けるために資金調達を行った。このロンドンのスタートアップは、シリーズCで5000万ドル(約57億7000万円)を調達した。今回の資金は、米国への進出と、より多くの紙ベース製品やペン、その他デスク収納、ペンや鉛筆などの文房具、その他の書くことを支援するあらゆる物を含むデスク周りの消耗品などの製品の拡大を継続するために使用する予定だ、とPapierのCEO兼創業者のTaymoor Atighetchi(テイムール・アティゲッチ)氏は述べている。

「世界的な文房具ブランドを作ることが使命です」と彼はインタビューで語っている。「2000億ドル(約23兆円)規模の市場でありながら、強力なオンラインブランドは存在せず、他の業種に見られるようなカテゴリーを定義するようなものはありません。今回の資金調達は、その計画の重要な一部です。グローバルに、そして米国に、私たちを押し出してくれるのです」と述べている。また、Papierは現在のところ非公開を続けるものの「株式上場は絶対にこの先の旅の一部だと考えています」とも付け加えている。

パリのVCであるSingular(シンギュラー)がこのラウンドをリードし、その他にdmg ventures(ディーエムジー・ベンチャーズ)、Lansdowne Partners(ランズドーン・パートナーズ)、Kathaka(カサカ)が新たに出資し、Felix Capital(フェリックス・キャピタル)とBeringa(ベリンガ)が以前から出資している。このスタートアップは現在6500万ドル(約75億円)を調達しており、その評価額は公表していないが、過去2年間で収益は150%成長しているという。

このラウンドにおけるPapierの主要な投資家の1人が、世界有数の新聞社であるDaily Mail Group(デイリー・メール・グループ)のコーポレートベンチャー部門であるというのは興味深いことだ。出版業界など紙媒体の産業がどんどんデジタル化している今、Papierはある意味、アナログ製品の無名から脱却し、収益基盤全体をカニバライズしない興味深いルートを提示していると言えるだろう。

同スタートアップは、伝統的なものを現代の消費者の興味を引くような方法で倍増させることで、単純に成長する機会を見出したのである。つまり、カバーデザインは、InstagramやPinterestなどのサイトで目を引くモダンなグラフィックに寄せているということだ。V&A(ブイ・アンド・エー)、Mother of Pearl(マザー・オブ・パール)、Temperley London(テンパリー・ロンドン)、Rosie Assoulin(ロージー・アズーラン)、Headspace(ヘッドスペース)、Matilda Goad(マチルダ・ゴード)などの有名企業とのコラボレーションにより、購入者の名前とひと言でそのデザインをパーソナライズする方法を提供している。

そして、これらの製品は、若い消費者の間で生まれているある種の美学に対応していると、アティゲッチ氏は考えている。現代の私たちは、何でもできるアプリで埋め尽くされた海の中を泳いでいる。今日の話題は、NFTのような仮想オブジェクトに価値を与え「株」を購入することかもしれない。ミレニアル世代やそれより若い消費者は、デジタルネイティブであるがゆえに、これらをより敏感に感じているのかもしれない。

しかし、プロダクティビティや余暇の過ごし方、そして決定的なのはお金の使い方に関して、彼らは自分たちの生活の大部分を決めているスクリーンに代わるものを積極的に探しているようだ。テクノロジーを使って生産され、販売されるPapierの製品は、現代のデジタル世界に対する保護カバーのようなものでもあるのだ。

ノートの典型的な顧客は高齢者だと思われるかもしれないが、ミレニアル世代は現在Papierの最大の顧客層で、売上全体の53%を占めており、Z世代ユーザーは最も急速に成長しているセグメントであることがわかっている。

アティゲッチ氏によると、同社の成長計画の1つは、すでに販売している製品の市場での認知度を高めることだという。英国ではブランドの認知度は約30%、米国では15%だという。つまり「当社の存在を知らない文房具バイヤー」へのマーケティングに多くの投資を行うことになる。

この点で特に注力するのが米国で、同社は2022年の売上高の40%を占めると予測しており、2019年以降5倍に成長している。

同社は、製品のデジタル版を作る予定はない。書いたメモをアプリに変換するEvernoteのようなスタイルはとらない。しかし、アティゲッチ氏は、消費者がデジタル世界から離れるための方法を提供するという考えにある他のデジタルビジネスと連携したいと述べている。実際、この分野は中小企業だけでなく、iOSに新しいモードを組み込み、通知を最小限に抑え、1日の特定の時間帯にデバイスを使用する方法を合理化することによって、人々が画面から離れるのを助けているApple(アップル)のような大手プラットフォーム企業も推進している技術だ。

「Papierは、このアナログ革命の動きを拡大するものです」とアティゲッティ氏は言い、これはPapierだけではないとも指摘した。ただ他の市場をどう見るか次第だと。「Calm(カーム)もアナログ製品を販売しています。Sleepと呼ばれています」と語っている。

投資家はそのコンセプトと将来性を高く評価している。

「このブランドの魅力は、家庭と一体化したスタイルにあります」と、SingularのNahu Ghebremichael(ナフ・ゲブレミーチェル)氏はいう。「最近では、多くの人がホームオフィスで仕事をするようになりました。以前ほど、仕事と生活を切り離して考えることができなくなっています。Papierは、その両方の領域で何かできるかもしれません」と述べる。彼女はこのラウンドで役員に加わっている。

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:Akihito Mizukoshi)

スペースX、初の商業宇宙遊泳を年内に計画

SpaceX(スペースX)は、初の民間人のみによる宇宙飛行を開始するだけでなく、近い将来、本格的な民間宇宙プログラムの本拠地となる見込みだ。The Washington Postによると、Shift4(シフト4ペイメンツ)の創業者でInspiration4ミッションのリーダーを務めたJared Isaacman(ジャレッド・アイザックマン)氏は、SpaceXによる「最大3回」の有人飛行を含むPolaris Program(ポラリスプログラム)の構想を発表した。最初のフライトである「Polaris Dawn(ポラリスの夜明け)」は2022年の第4四半期に予定されており、初の商業宇宙遊泳が含まれるはずだ。この取り組みは理想的には、人間が乗った最初のStarship(スターシップ)の飛行で終わる。月旅行を期待していた方たちには申し訳ない。

Polaris Dawnチームは、史上最高の地球周回軌道を目指し、健康研究を行い、レーザーを使ったStarlink(スターリンク)通信のテストも実施する予定だ。アイザックマン氏はミッションコマンダーとして復帰し、Inspiration4のミッションディレクターで空軍経験者のScott Poteet(スコット・ポティート)氏がパイロットを務める。また、SpaceXのリードオペレーションエンジニアであるAnna Menon(アナ・メノン)氏とSarah Gillis(サラ・ギリス)氏の2名も搭乗する。メノン氏の役割は、昨今の民間宇宙飛行へのシフトを象徴している。彼女の夫であるAnil Menon(アニル・メノン)米空軍中佐はNASAの宇宙飛行士に選ばれているが、彼女はその配偶者よりも先に宇宙に到達する可能性が高いのだ。

このプログラムの実現は、SpaceXとパートナー企業がいくつかの問題を解決することにかかっている。SpaceXは宇宙遊泳に必要な宇宙服を開発中であり、アイザックマン氏のグループはクルーのうち何人が宇宙船の外に出るかをまだ決めていない。また、Starshipには不確定要素もある。十分なテストが行われ、多くの進歩を遂げているが、この次世代ロケットシステムの開発は必ずしも計画通りには進んでいない。Polaris Programは、比較的緩やかなスケジュールで、場合によってはいくつかの挫折を経験することになるだろう。

それにしても、これは民間宇宙飛行の常態化を意味する。Polaris Programは、億万長者が率いる民間宇宙飛行の最近の「慣習」を引き継ぐものだが(アイザックマン氏も例外ではない)、宇宙遊泳や新しい宇宙船のテストなど、これまで政府の宇宙飛行士だけが行っていたことが商業化されることも見込まれる(SpaceXのDemo-2は、NASAの宇宙飛行士が操縦した)。近い将来、民間宇宙飛行士が他の役割を果たすようになっても不思議ではない。

編集部注:本稿の初出はEngadget。著者Jon Fingas(ジョン・フィンガス)氏は、Engadgetの寄稿ライター。

画像クレジット:Polaris Program / John Kraus

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(文:Jon Fingas、翻訳:Aya Nakazato)

重量76g・動画視聴に特化のARグラス「Nreal Air」、ドコモとauから3月4日発売

重量76g・動画視聴に特化のARグラス「Nreal Air」、ドコモとauから3月4日発売

Nreal

メガネ型ディスプレイのNrealが、新モデル「Nreal Air」(エンリアル エアー)を3月4日にNTTドコモとKDDIから発売すると発表しました。メーカー希望小売価格は4万9800円ですが、ドコモでは3万9800円、auでも3万9799円で予約を受付中。なお、Nreal Airの一般販売は、日本が世界初になるとのことです。

Nreal Airは、2021年10月に発表されていたもの。動画の視聴に特化したARグラスで、見た目は通常のサングラスにかなり近い印象です。カメラ機能などを排し、シンプルな機能となったため、約76gと軽量になったのも特徴です。

映像は、ARグラス越しに4mで130インチ、6mで201インチに相当で表示されます。また、ツルの部分にスピーカーも搭載しており、「低音強調アルゴリズムとノイズキャンセリングにより、まるで仮想の専用 IMAXシアターにいるかのように、エンターテインメントの臨場感を高めます」と説明されています。

スタンドアロン型ではなく、スマートフォンとUSB Type-Cで接続して利用します。このため、利用するには、USB-Cポートを備え、Display Port(Alternate mode)に対応していることが条件となります。ただ、拡張性を高めるアクセサリとして、「Nreal Streaming Box」も発売され、これを利用すれば、Miracastに対応したスマートフォンならNreal Airを利用可能となります。

重量76g・動画視聴に特化のARグラス「Nreal Air」、ドコモとauから3月4日発売

Nreal

Nreal AirとNreal Streaming BoxをUSBで接続。スマートフォンはNreal Streaming Boxとワイヤレス(Miracast)で接続することで、スマートフォン上のコンテンツをNreal Airにミラーリングできます。

(Source:USB-IFNreal(PR Times)ドコモauEngadget日本版より転載)

テキサス州司法長官、フェイスブックの顔認識技術をめぐりMetaを提訴

テキサス州司法長官Ken Paxton(ケン・パクストン)氏は、Facebook(フェイスブック)の顔認識技術の使用をめぐってMeta(メタ)を提訴した。司法長官室が米国時間2月14日に発表した。このニュースはウォールストリート・ジャーナルが最初に報じたもので、この訴訟では数千億円規模の民事制裁金を求めていると指摘している。同訴訟では、現在は中止しているMetaによる顔認識技術の使用が、生体データに関する同州のプライバシー保護法に違反していると主張している。

訴訟を発表したプレスリリースでは、ユーザーがアップロードした写真や動画に含まれる数百万件の生体識別情報をFacebookが保存していたと主張している。パクストン氏は、Facebookがユーザーの個人情報を「自社の帝国を拡大し、棚ぼた的巨額利益を得るために」悪用したと述べている。

「Facebookはもはや、人々の安全と幸福を犠牲にして利益を上げる目的で、人々とその子どもたちを利用することはありません」とパクストン氏は声明で述べた。「これは、テック大企業の欺瞞に満ちた商習慣の新たな例であり、止めなければなりません。私はテキサス州民のプライバシーとセキュリティのために戦い続けます」。

Metaの広報担当者はTechCrunchに「これらの主張はメリットがなく、我々は強く異議を唱えます」と電子メールで述べた。

この訴訟では、Facebookがその商慣行を隠すことで人々を欺き、アプリを利用するテキサス州民はFacebookが写真や動画から生体情報を取得していることに気づかなかったと主張している。また、Facebookがユーザーの個人情報を他の事業者に開示し、その事業者がさらに情報を利用していることにユーザーは気づかなかったと、詳しい説明なしに主張している。

「Facebookは往々にして、収集した生体識別情報を適切な時間内に破棄しておらず、テキサス州民を幸福、安全、セキュリティに対する増大し続けるリスクにさらしています」と訴状には書かれている。「Facebookは自らの商業的利益のために、顔認識技術を訓練し改善すべく故意に生体情報を収集し、それによって、世界の隅々にまで届き、Facebookのサービスを意図的に避けている人さえも陥れる強力な人工知能装置を作っています」。

Metaは2021年11月、Facebook上の顔認識システムを停止し、今後は写真や動画でオプトインしたユーザーを自動的に識別しないようにすると発表した。また、このシステム停止の一環として、10億点超の個人の顔認識テンプレートを削除するとも明らかにした。しかし、テキサス州当局はMetaにこのデータを調査のために保存するよう要請し、これによりシステムの完全閉鎖は遅れる可能性が高い。

Metaが顔認識に関する慣行で訴訟に直面するのは今回が初めてではない。2021年3月にFacebookは、イリノイ州民を侵害的なプライバシー保護行為から守るために作られたイリノイ州法に違反したとして、6億5000万ドル(約750億円)を支払うよう命じられた。このバイオメトリクス情報プライバシー法(BIPA)は、近年テック企業の足元をすくう強力な州法だ。Facebookを相手取った裁判は2015年に初めて行われ、Facebookが本人の同意なしに顔認識を使って写真にタグ付けする行為は州法に違反すると主張した。

関連記事:フェイスブックがイリノイ州のプライバシー保護法をめぐる集団訴訟で約694億円支払う

判決を受け、カリフォルニア州にある連邦裁判所による最終和解判決のもと、160万人のイリノイ州民が少なくとも345ドル(約3万9000円)を受け取った。最終的な額は、裁判官が不十分と判断したため、Facebookが2020年に提案した5億5000万ドル(約635億円)を1億ドル(約115億円)上回った。Facebookは2019年に自動顔認識タグ付け機能を無効にし、代わりにオプトイン方式にし、イリノイ州の集団訴訟によって拡大したプライバシー批判のいくつかに対処した。

6億5000万ドルという和解金は、通常の企業であれば大きな影響を与えるのに十分な額だろう。しかしFacebookは、FTC(米連邦取引委員会)が2019年に同社のプライバシー問題を調査し、50億ドル(約5776億円)という記録的な罰金を課したときと同様に、これを受け流した。

今回のテキサス州の訴訟は、プライバシー法の普及がMetaの業務だけでなく、すべてのテック大企業の慣行に大きな影響を与える可能性があることを示している。過去数年、はっきりとした同意なしにユーザーの顔を顔認識システムの訓練に使用したのは法律違反としてMicrosoft(マイクロソフト)、Google(グーグル)、Amazon(アマゾン)を訴える訴訟が相次いでいる。

画像クレジット:Bryce Durbin / TechCrunch

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(文:Aisha Malik、翻訳:Nariko Mizoguchi

FBI、BlackByteランサムウェアが米国の重要インフラを狙っていると警告

米国連邦捜査局(FBI)とシークレットサービス(Secret Service)のアドバイザリーによると、BlackByteランサムウェアギャングが少なくとも3つの米国の重要インフラセクターを標的にし、カムバックを遂げたようだ。

BlackByteはRaaS(Ransomware as a Service、ランサムウェア・アズ・ア・サービス)事業者で、ランサムウェアのインフラを他者にリースし、身代金の収益の一定割合を得ることを目的としている。このギャングは、2021年7月にソフトウェアの脆弱性を悪用して世界中の企業の被害者をターゲットにして出現した。BlackByteは米国、欧州、オーストラリアの製造業、医療、建設業に対する攻撃をセキュリティ研究者が確認するなど、当初は一定の成功を収めた。しかし数カ月後に、サイバーセキュリティ企業のTrustwaveがBlackByteの被害者がファイルを無料で復元できる復号化ツールを公開したことで、ギャングは苦境に立たされた。このグループの単純な暗号化技術により、このランサムウェアがアマチュアの仕業であると考える人もいた。ランサムウェアは、AESでファイルを暗号化する際に、セッションごとに固有の鍵ではなく、同じ鍵をダウンロードして実行していた。

しかし、このような挫折にもかかわらず、BlackByteの活動は再び活発化しているようだ。FBIと米国シークレットサービス(USSS)は、米国時間2月11日に発行されたアラートの中で、同ランサムウェアが米国内外の複数の企業を危険にさらしており、その中には政府機関、金融サービス、食品・農業関連など、米国の重要インフラに対する「少なくとも」3つの攻撃が含まれていると警告している。

このアドバイザリーは、ネットワーク防御者がBlackByteの侵入を識別するためのセキュリティ侵害インジケータを提供するもので、ランサムウェアギャングがSan Francisco 49ers(サンフランシスコ・フォーティナイナーズ)のネットワークを暗号化したと主張する数日前に公開された。BlackByteは、13日に行われたスーパーボウルの前日に、盗まれたとする少数のファイルを流出させることで、攻撃を公表した。

Emsisoft(エムシソフト)のランサムウェア専門家で脅威アナリストであるBrett Callow(ブレット・キャロウ)氏は、TechCrunchに対し、BlackByteは最も活発なRaaS事業者ではないものの、過去数カ月の間に着実に被害者を増やしてきたと述べている。だが最近、米国政府がランサムウェア業者に対して行っている措置を受けて、BlackByteは慎重なアプローチを取っているのではないかという。

関連記事:ランサムウェアの潮目が変わった、米国当局が勝ち目のないと思われた戦いにわずかながら勝利を収めた

「FBIとUSSSのアドバイザリによると、BlackByteは政府を含む少なくとも3つの米国の重要インフラセクターへの攻撃に投入されています。興味深いことに、ギャングのリークサイトにはそのような組織は掲載されていません。これは、それらの組織が(身代金を)支払ったか、データが漏洩しなかったか、あるいはBlackByteが漏洩したデータを公開しないことを選択したことを示しているのかもしれません」と述べています。「REvilのメンバーが逮捕されて以来、ギャングはデータを公開することにより慎重になっているようで、特に米国の組織の場合はそうした傾向が見られます」。

このランサムウェアはREvilと同様に、ロシア語やCIS言語を使用しているシステムのデータを暗号化しないようにコーディングされているため、BlackByteがロシアを拠点としていることを示す兆候はあるものの、だからといって「ロシアやCISを拠点とする人物によって攻撃が行われたと考えるべきではない」とキャロウ氏は述べている。

また「ギャングに属する関係者は、RaaSを運営する人物らと同じ国にいるとは限りません」と同氏は付け加えた。「彼らは、米国を含むどこにでも存在し得ます」。

関連記事:米司法省がテック企業Kaseyaを攻撃したハッカーを起訴、別件の身代金6.9億円も押収

画像クレジット:Bryce Durbin / TechCrunch

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(文:Carly Page、翻訳:Aya Nakazato)

Operaが絵文字ベースのウェブアドレスを実現、絵文字入りURLを販売するYatと提携

ウェブブラウザのOpera(オペラ)は、絵文字だけのウェブアドレスを可能にすると、米国時間2月14日に発表した。Operaはこの新しいコラボレーションにより、インターネットに新しいレベルの創造性をもたらすとしている。この新機能は、絵文字入りのURLを販売し、Y.atドメインを所有するスタートアップYat(ヤット)との提携によって可能となった。Yatを通じて、1回購入すれば、同社があなた専用のY.atリンクを提供してくれる。

Operaは、絵文字を中心とした統合により、パーソナライズされた絵文字の文字列からYatが作成される際に生成される独自のドメインであるYatページの検索と誘導が容易になるとしている。この統合により、Opera上のYat絵文字のウェブアドレスは、従来のように「.y.at」をつける必要がなくなった。また、ウェブページに埋め込まれた絵文字は、対応するYatのページに自動的にリンクされるようになる。

「この提携は、インターネットの仕組みに大きなパラダイムシフトをもたらすものです」と、Operaのモバイル担当上級副社長であるJorgen Arnesen(ヨルゲン・アーネセン)氏は声明の中で述べた。「www(ワールドワイドウェブ)が一般に公開されてから約30年が経ちますが、ウェブリンクの分野ではそれほど大きな革新はなく、人々はいまだにURLに.comを含めています。Yatとの統合により、Operaのユーザーは、リンクに.comや単語を使わず、絵文字だけでウェブサイトを表示できるようになりました。これは、新しくて、簡単で、より楽しいことです」。

ユーザーは、Yatのページをカスタマイズしたり、ウェブ上の他の場所にリダイレクトすることができる。何人かの有名人は、Yatページを早くから採用している。例えば米国のDJであるSteve Aoki(スティーブ・アオキ)はYatページを使って自分のウェブサイトに人々を誘導し、ラッパーのLil Wayne(リル・ウェイン)のYatページは彼のレコードレーベルに案内している。Kesha(ケシャ)は、Twitter(ツイッター)のbioにYatのリンクを貼っている。

画像クレジット:Opera

もちろん、ユーザーは絵文字に対応した独自のドメイン名を購入し、Yatのリンクの代わりに使用することもできるが、Yatはこのプロセスを、時間やリソース、技術的な専門知識のない人たちにも迅速かつシンプルに行えるようにした。しかし、この便利さには代償がある。Yatの絵文字の文字数が少なければ少ないほど、高価になる。

Operaは、世界中の46億人のユーザーのうち90%以上が絵文字を使って自分を表現しており、Yatとの新しいパートナーシップは、人々にオンライン上での新しい存在感を示す方法を提供すると指摘している。また、この新しいパートナーシップにより、ユーザーはURLに英数字を入力する必要がなくなり、より充実した機能を利用できるようになると説明している。

「アーティスト、ミュージシャン、クリエイター、ビジネスオーナーあるいはフォロワーを増やしたい人など、Yatの絵文字を使って簡単にコミュニティとつながり、コンテンツを共有できるこの統合は非常に重要です」と、Yatの共同設立者兼CEOであるNaveen Jain(ナヴィーン・ジェイン)氏は述べた。

今回の発表は、Operaが先にWeb3「Crypto Browser」のベータ版を発表したことを受けてのものだ。それには、暗号資産ウォレットの内蔵、暗号資産/NFT取引所への容易なアクセス、分散型アプリ(dApps)のサポートなどの機能が含まれている。このブラウザの目標は、Web3のユーザー体験を簡素化することだ。

関連記事:Operaが暗号資産ウォレットやdAppsサポートを搭載したWeb3「クリプトブラウザ」ベータ版で提供開始

画像クレジット:Opera

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(文:Aisha Malik、翻訳:Yuta Kaminishi)

インドがGarenaのゲーム「 Free Fire」など新たに54の中国関連アプリを禁止

インドは、Tencent(テンセント)の「Xriver」、Garena(ガレナ)の「Free Fire」、NetEase(ネットイース)の「Onmyoji Arena」と「Astracraft」、さらに中国との関連が明らかな50のアプリを禁止した。過去1年半にわたって続いている国家安全保障を理由とした同様の禁止措置の最新の動きだ。

新たに禁止されたアプリの中には「Sweet Selfie HD」「Beauty Camera」「Viva Video Editor」「AppLock」「Dual Space Lite」などが含まれる。これらは、長期にわたる国境紛争をめぐってインドと中国の間で地政学的緊張が高まる中、インド政府が2020年半ばから禁止している中国関連の300以上のアプリの多くのクローンまたはリブランディングしたものだ。

この問題に詳しい人物によると、インドの電子工学・通信技術省は、2000年に制定されたIT法69a条に基づいてこの命令を出したという。

Google(グーグル)の広報担当者は声明の中で、この命令を認め、同社はこれに従っていると述べた。

「IT法第69A条に基づいて下された暫定命令を受け、確立されたプロセスに従って、影響を受ける開発者に通知し、インドのPlay Storeで利用可能なままになっているアプリへのアクセスを一時的にブロックしました」と、Googleの広報担当者は現地時間2月14日に述べた。

画像クレジット:Jakub Porzycki / NurPhoto via Getty Images

Garenaの「Free Fire – Illuminate」は、すでにインドのGoogle Play StoreとApple(アップル)のApp Storeから削除されたが、今回削除の対象となったものの中で最も人気のアプリのようだ。

分析会社App Annie(アップアニー)がTechCrunchに提供したデータによると、東南アジアの大手ゲーム会社Sea(シー)が所有するこのバトルロイヤルゲームの1月の全世界の月間アクティブユーザーは7500万人で、うち4000万人超がインドのユーザーだった。また、SeaはTencentを最大の投資家に数え、インドでソーシャルコマースShopeeのテストもひっそりと行っている。

禁止令のニュースは、インドのGarenaのチームにとって驚きだった。同社は、ゲームをさらに宣伝し、インドでより多くのユーザーや著名なゲーマーを引きつけるために、トーナメント組織との契約を獲得しようとしていたと、この問題に詳しい人物はTechCrunchに語った。Seaはこの展開についてすぐにコメントを出さなかった。

インドにおける一連のアプリ禁止は2020年6月下旬に始まった。世界第2位のインターネット市場であるインドは、国家安全保障上の懸念から「TikTok」、Alibaba(アリババ)の「UC Browser」、Tencentの「WeChat」など中国と関連する数十のアプリを禁止した

関連記事:インド政府がTikTokなど中国企業の59のアプリを禁止すると発表

インド政府は、こうした発表の中で中国について明確に言及したことはなく、2月14日の動きについても公式な声明は発表していない。インド政府はこれまでの禁止措置のほとんどで、アプリがユーザーのデータを収集、採掘、プロファイルする方法は、インドの国家安全保障と防衛にリスクをもたらす、と述べてきた。

過去1年半で、インド政府は人気タイトル「PUBG」を含む300以上の中国関連アプリを禁止してきた。「PUBG」がインドでGoogle Play StoreとAppleのAppStoreに何らかのかたちで復帰したことがわかっている唯一のアプリであることに変わりはない。

関連記事
大ヒットゲーム「PUBG Mobile」のインド復帰をまつわるさまざまな疑問インド政府がTikTokやUC Browserなど59の中国製アプリを引き続き禁止

他にもいくつかの企業やアプリ運営会社がインド政府の懸念に対応しようとしたが、インド政府は2021年初めに対応が不十分と判断し、決定を留保した

アプリのダウンロード数による市場規模、データ期間:2021年(画像・データクレジット:App Annie)

インドは、アプリのインストール数で世界的に見ても圧倒的に大きな市場だ。App Annieによると、2021年にインドは250億回以上のダウンロードを記録した。

米国の大手企業はもちろん、中国や韓国など他の国の企業も、次の大きな成長地域を求めて、過去10年間にインドに積極的に注力してきた。それに比べ、中国で事業を展開しているインド企業はほんの一握りにすぎない。

インドが「TikTok」の禁止令を撤回することを拒否した後「TikTok」の親会社ByteDance(バイトダンス)はインドの従業員の大部分を解雇し、TechCrunchが報じたように最近では同国でのEdtech事業を停止した

「TikTok」がインドで禁止されたことで、いくつかの地元のスタートアップが短編動画アプリを立ち上げて人気を集め、10億ドル(約1155億円)超の資金を調達した。しかしこれは「TikTok」が他のいくつかの海外市場に深く進出したため、ByteDanceの収益にはあまり影響がなかった。インドのソーシャルネットワーク「ShareChat」とオンデマンドストリーミングサービス「MX Player」は2月10日、同国の短編動画アプリを統合すると発表した。これは9億ドル(約1039億円)規模の取引だ。

画像クレジット:Getty Images

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(文:Manish Singh、翻訳:Nariko Mizoguchi

またカナダの募金サイトに不正アクセス、ハッカーがトラック運転手抗議デモへの寄付者の名前を漏洩

あるリークサイトは、募金サイトGiveSendGoがハッカーに狙われた後、オタワでのトラック運転手による抗議デモ「Freedom Convoy(フリーダムコンボイ)」への寄付者に関する情報のキャッシュを受け取ったという。

GiveSendGoのウェブサイトは現地時間2月14日、サイトが乗っ取られ、ハッカーによってコントロールされていると思われるページにリダイレクトされるようになり、その数時間後に「メンテナンス中」となって、もはや読み込めなくなったと明らかにした。リダイレクトされたページは、新型コロナウイルス感染症のワクチン接種の義務化に反対してカナダの首都を襲い、1週間以上にわたって交通と貿易に広範な混乱を引き起こしたトラック運転手たちを非難した。

このページには、Freedom Convoyに寄付をした人たちの「生の寄付データ」と称される数万件の記録を含むファイルへのリンクも含まれていた。

しばらくして、非営利のリークサイト「Distributed Denial of Secrets」が、GiveSendGoから30MBの寄付者情報を受け取ったと発表した。この中には、同サイトで行なわれた「すべてのキャンペーン」に対する寄付者の自称氏名、電子メールアドレス、郵便番号、IPアドレスが含まれていた。

Distributed Denial of Secretsは、極右グループに関する一連の流出データを保管していることで知られるサイトだが、このデータは研究者やジャーナリストにのみ提供されると述べた。

ジャーナリストのMikael Thalen(ミカエル・タレン)氏によると、今回の情報漏洩は、1000件以上の身分証明書類を保存しているAmazon(アマゾン)がホストするS3バケットをGiveSendGoがインターネットに公開したままにしていた、以前のセキュリティ過失とは別のものだ。タレン氏は2月13日夜に今回のデータ漏洩を最初に指摘した

関連記事:カナダのワクチン義務化に抗議するトラック運転手たちの寄付サイトから個人情報流出

GoFundMeがオタワで発生した暴力の警察報告を理由にクラウドソーシングキャンペーンを停止して数百万ドル(数億円)の寄付を凍結した後、マサチューセッツ州ボストンを拠点とするGiveSendGoは1月にFreedom Convoyの主要寄付サービスになっていた。週末には、カナダの裁判所がGiveSendGoが集めた資金へのアクセスを停止する命令を出したが、同社は命令に従わないと述べた。

抗議者らは2月初め、Freedom Convoのために800万ドル(約9億円)超を集めた。

GiveSendGoの共同設立者、Jacob Wells(ジェイコブ・ウェルズ)氏は、コメントの要請に応じなかった。

画像クレジット:Stephanie Keith / Bloomberg / Getty Images

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(文:Zack Whittaker、翻訳:Nariko Mizoguchi

GVA TECHがAI契約審査クラウドGVA assistの条文検索機能リニューアル、結果表示高速化・ファイル名での条文検索に対応

リーガルテックサービスの開発・運営を行うGVA TECHは2月9日、AI契約審査クラウド「GVA assist」(ジーヴァアシスト)において、条文検索機能の高速化やファイル名での条文検索が行えるようリニューアルしたことを発表した。契約審査において法務担当者が煩わしさを覚えていた作業を従来以上にスピーディに行え、審査業務全体の効率化に貢献できるとのこと。

GVA assistは、契約審査に関するノウハウを集約した「プレイブック」を基に契約書審査作業の補助するクラウドサービス。このプレイブックは、GVA TECH所属弁護士が作成・監修した200種類以上の「GVAプレイブック」と、ユーザー独自の契約審査ノウハウをまとめた「自社プレイブック」で構成されている。

これらプレイブックを通じたリスク把握・修正例・譲歩案などの活用をはじめ、条番号ずれ・表記揺れを一括修正する「形式チェック機能」、400種類以上の契約書ひな形をダウンロードできる「ドラフト機能」を利用可能。「○○社と締結した契約書の条文が欲しい」「△△のような参考条文がほしい」といった条文のキーワードを元にフリーワードで参考条文を探せる「条文検索機能」も採用している。契約書のドラフト作成からレビュー業務の効率化をアシストしてくれる。

ただ、従来の条文検索機能では「ファイル名に含まれている契約類型名や社名、案件番号で検索ができない」「検索結果が多く表示されすぎて該当の条文が見つけづらい」といった声が上がっていたという。今回のリニューアルでは、これら課題を解消した。

具体的なリニューアル内容

  • ファイル名に含まれている契約類型名や社名、案件番号も検索の対象に
  • 同じ内容の条文が複数表示されなくなり、欲しい条文が見つけやすくなった
  • 検索対象として、条文のみ検索・貯えた独自のノウハウを含めた検索を選択できる
  • 検索結果の表示速度が高速化(どのようなキーワードでもおよそ1秒以内)

2017年1月設立のGVA TECHは、法律とIT技術を組み合わせた事業を手がけるリーガルテック領域のスタートアップ。企業法務担当者や弁護士の支援のため、GVA assistはじめ「GVA法人登記」や「GVA登記簿取得」といったサービスを展開している。

スキンケア・コスメティックのD2Cブランドを展開するリバースラボが約2億円調達、新規商品を開発・既存商品改良

スキンケアD2C「sirobari」とコスメティックD2C「sirocos」を展開しているリバースラボは2月10日、第三者割当増資による総額約2億円の資金調達を実施したと発表した。引受先は、ダイヤモンドファンタジーおよび複数のエンジェル投資家。2019年11月設立以来初のエクイティファイナンスとなる。調達した資金は、新規商品の開発と既存商品の改良、プロモーション活動にあてる。

スキンケアやコスメティックといった化粧品の多くは、店頭などオフライン販売が主流となっている。これにより大資本による絞り込まれたラインナップの商品が安価に購入できるものの、ニッチな悩みやコンプレックスを解消するための商品は販売チャネルが限られ高価格帯になってしまうという。リバースラボは、「ニッチな悩みやコンプレックスに寄り添ったラインナップの構築」「機能性重視の商品開発」「ポジティブでスタイリッシュな商品パッケージの開発」「継続しやすい価格とサービスの提供」などにより、顧客の心理的・物理的なハードルを抑えたプラットフォームを提供し、共に解決できる企業を目指し、資金調達を実施したという。

2019年11月設立のリバースラボは、「ー戻ることは罪じゃないー RETURN TO INNOCENCE」をコンセプトに、スキンケア・コスメティックのD2Cブランドを運営するほか、他社D2Cブランドの立ち上げ支援コンサルティングを提供。sirobariは発売から1年半経過しており、累計販売数30万枚を超えるという。

日本酒ECの酒ストリートと菊の司酒造が共同開発した醸造アルコール添加工程を体験できる酒セット販売、エシカル・スピリッツCTOの山口氏監修

日本酒ECの酒ストリートと菊の司酒造が共同開発した醸造アルコール添加工程を体験できる酒セット販売、エシカル・スピリッツCTOの山口氏監修

日本酒ECサイトなどを展開する酒ストリートは2月12日、純米酒と焼酎を自分の手でブレンドして醸造アルコール添加の日本酒を作ることができる「すごい!!アル添(あるてん)」を数量限定で販売開始したと発表した。通信販売サイト酒ストリート公式オンラインストアで購入できる。直販価格は6480円(税込・送料込)。

同製品は、創業400年を超える老舗酒蔵・菊の司酒造と共同開発したも。ブレンドの監修は、ジン製造スタートアップ「エシカル・スピリッツ」CTOとして商品開発や蒸留などの技術責任者を務める蒸留家・山口歩夢氏が行っている。

「アル添」とは、「醸造アルコール添加またはアルコール添加の日本酒」の略称。醸造アルコールとは、サトウキビなどを原料とした糖蜜から作られた蒸留酒で、「大吟醸」「吟醸」「本醸造」といった酒の香りや味わいを深め、よりよい酒質を作るためにも使われている。酒ストリートによると、アル添のお酒は「品質が低い」「増量目的」といったネガティブなイメージが深く根付いているものの、現在国内で製造されている酒の約77%、また日本酒コンテスト「全国新酒鑑評会」では出品酒の約78%・入賞酒の約91%はアル添酒という(国税庁「清酒の製造状況等について(平成30酒造年度分)」、酒類総合研究所「平成30酒造年度 全国新酒鑑評会出品酒の分析について」より算出)。

今回発売のすごい!!アル添は、純米酒と焼酎を自分の手でブレンドし、酒に醸造アルコールを添加する工程を疑似的に体験できる商品。こだわりの日本酒と焼酎、それらをブレンドしたアル添のお酒を作ることで、おいしく楽しんでもらうために考案された。商品には計量ショットグラスとスポイトが付属。同梱のリーフレットには、山口歩夢氏によるブレンド解説とペアリングの提案、酒ストリートによるアル添の解説が掲載されており、手軽にアル添のブレンドを試すことができる。

日本酒ECの酒ストリートと菊の司酒造が共同開発した醸造アルコール添加工程を体験できる酒セット販売、エシカル・スピリッツCTOの山口氏監修

共同開発の菊の司酒造は、創業400年を超える岩手県盛岡市の老舗酒蔵。伝統的な製法と革新的な酒質を両立させる高い技術を持ち、国内外で多くの受賞歴を誇る。また同社はは日本酒だけでなく、自社で醸造・蒸留する焼酎「だだすこだん」を製造。その広範な知識と技術をもとにすごい!!アル添の共同開発に至った。

酒ストリートは、すごい!!アル添を通して日本酒の7割以上を占めるアル添酒のおいしさを多くの人に体験してもらいたいという。杜氏や蔵人の技術に触れ、アル添酒を身近に感じてもらうことで、アル添酒に対するイメージを変革したいという。

CO2回収へ一歩、アイスランド独自の火山地質は空気をろ過し二酸化炭素を貯留する技術に理想的な環境だ

私たちが吸っている空気は二酸化炭素問題を抱えている。だが、アイスランドのレイキャビク郊外にある、地熱活動の活発な台地のように広がるHellisheidi(ヘトリスヘイジ)では、新しい技術がそれを修復するための小さくも力強い一歩を踏み出している。

Climeworks(クライムワークス)が建設したOrca(オルカ)というプラントは、CO2を空気中から直接ろ過し、地中に永久に貯留する世界初の施設である。

Orcaの二酸化炭素回収デバイスは巨大なトランジスタラジオのようだ。氷に覆われた山頂から日の光が差し込む珍しい日でさえ激しい風が吹くアイスランドの風景に、これらのデバイスはぴったりとフィットしている。

同プラントは2021年9月に稼動を開始したばかりだが、同社の空気ストレーナー技術は直接空気回収として知られているもので、かなり前から環境保護活動家の間で論点になっていた。二酸化炭素を吸い上げることは、かつては最後の手段と考えられていたのだが、私たちは最後の手段がなくてはならない未来に向かって進んでいるようだ。

「直接空気回収と貯留の組み合わせは、パリ気候目標に準拠することを目指す上で、世界が膨大な規模で必要とするものになる可能性が非常に高いです」とClimeworksのCEOで共同創業者のJan Wurzbacher(ヤン・ヴュルツバッハー)氏は語る。

計算と魔法に基づく二酸化炭素除去

ヴュルツバッハー氏が言及していた「パリ」目標とは、2015年のパリ協定で定められた、気温上昇を摂氏2度(理想は摂氏1.5度)まで抑えるために温室効果ガスの排出量を制限する世界目標のことだ。この目標を達成するためには、2050年までに年間100億トンの二酸化炭素を大気中から除去する必要があると国連は推定している。この数字は、他の手段によって積極的な排出削減が達成されると仮定した場合の最良のシナリオである。十分な削減がなければ、二酸化炭素除去の必要性はさらに高まるだろう。

「それはかなりシンプルな気候計算です」と、ヴュルツバッハー氏はClimeworksが拠点を置くスイスのチューリッヒからのビデオ通話で説明した。「今世紀半ばまでに、他の対策がすべてうまくいくという想定の下で、100億トンのCO2を除去する必要があります。石炭火力発電所などを十分な速さで縮小することは困難であることから、最終的には200億トン削減する必要に迫られるかもしれません」。

直接空気回収技術は、過剰なCO2を除去するための多くの選択肢の1つである。植林などの自然な方法や、煙突などの排出源から直接CO2を回収する技術もある。CO2を発生源で回収するよりも、文字通り薄い空気からCO2を回収する方が困難でコストがかかるが、直接空気回収の利点は、個々の汚染源を見つけ出したり停止したりする必要がないことである。世界中で機能するソリューションだ。

「直接空気回収を行う場合、CO2のある場所に行く必要はありません。空気はどこにでもあるからです」とヴュルツバッハー氏は述べている。

Orcaプラントはコンテナサイズの8つのボックスで構成されており、Climeworksはこれをコレクターと呼んでいる。それぞれの箱の正面には大きなベネチアンブラインドのようなスラットが取り付けられている。背面には12個のファンがあり、ボックスを通して空気を引き込む役割を果たす。コレクター内では、CO2分子は特別に開発されたフィルター材料の表面に衝突し、そこでアミンと呼ばれる分子によって選択的に吸着される。

その接点は魔法のような瞬間だ。残りの空気はコレクターの反対側から出ていくが、二酸化炭素はアミンにしっかりと付着する。その瞬間、CO2は混沌とした大気の乱れから秩序だった人類の支配へと移行し、数千年にわたって制御され続ける可能性を秘めたものとなる。熱を加えると、アミンからCO2が放出され、近くの火山岩に送り込まれて、永続的な炭酸塩鉱物を形成する。

現在、Orcaで大量のCO2を除去するにはトン当たり600〜800ドル(約6万8000〜9万1000円)の費用がかかるが、これはほとんどの潜在的な支払者にとって法外な金額だ。初期の顧客は、Microsoft(マイクロソフト)やStripe(ストライプ)、Swiss Re(スイス・リー)、さらにはバンドColdplay(コールドプレイ、近く行われるワールドツアーからの排出量の一部を相殺するためにClimeworksを採用)など、高い料金を支払うことに前向きな企業や個人となっている。

Climeworksはこのコストを100〜200ドル(約1万1000〜2万3000円)に引き下げることを目指している。US Department of Energy recently(米国エネルギー省)は最近、技術的な二酸化炭素除去のコストをトン当たり100ドル以下にするという同様の目標を設定した。このような低価格帯であれば、直接空気回収は他の野心的な排出削減策と同等になる。

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この魔法の瞬間は、今のところ安くはないかもしれないが、少なくともうまく機能する。

「Orcaはゼロから1に進みました」とコロンビア大学のシニアリサーチフェローであるJulio Friedmann(フリオ・フリードマン)博士は述べている。「現時点で私たちは、必要に応じてOrcaをさらに製造できることを承知しています。コストが削減され、パフォーマンスが向上することなどが予想できますが、現在は1台の装置で年間4000トンのCO2を大気から回収しています」。

コストが高いことに加えて、OrcaはCO2の回収量が非常に少ないことが指摘されている。4000トンという量は、数十年以内に除去しなければならない100億トンに比べれば微々たるものである。現在の排出レベルでは、人類はOrcaの毎年の取り組みを3秒ごとに相殺していることになる。

しかし、大気中から二酸化炭素を除去する他の方法と比較して、この量を考慮することは有用かもしれない。1エーカー(約4000平方m)のセコイア林を育てることも約4000トンのCO2削減につながるが、1年をはるかに超える時間を要する上、限られた場所でしか実現できない。

フリードマン氏は、直接空気回収のエレベーターピッチを同じような言葉で表現している。「それは20万本の木の仕事を、1000倍のスペースにわたって行います」。

Greta Thunberg(グレタ・トゥーンベリ)氏のような活動家は、直接空気回収のような工学的解決策を「ほとんど実在しない技術」として退け、代わりに自然に基づく解決策を推奨しているが、両方の戦略を追求することは可能である。国連の推定が正しければ、余分な二酸化炭素を吸収するための複数の解決策の余地があるだろう。

「私たちがこれを必要とすることになれば、数十億トンものオーダーになるでしょう。私はそうなることを確信しています」とヴュルツバッハー氏は語っている。

小さいほうがいいこともある

Orcaの小さい規模に対する指摘も別の重要なポイントを見落としている。小さい規模で始めることは、独特の学習機会である。

他の技術と同様に、直接空気回収は反復によって改善され、時間の経過とともにより効率的かつ安価になる。ClimeworksのCO2コレクターはモジュール化されている。つまり、より多くのCO2を回収する方法は、コレクター自体を大きくするのではなく、その数を増やすことにある。モジュールプロダクトを使うことで、より大型の特注品に比べて安価かつ容易に繰り返し利用できる。

「当社が現在所有するプラントの何倍にもなる大型プラントや複合設備を建設する頃には、プラントが機能していること、そして私たちがいかに効果的に運用を続けているかを確信しているでしょう」と、Climeworksの技術責任者であるNathalie Casas(ナタリー・カサス)氏は語る。「これがモジュラー型アプローチの優れた点です」。

ヴュルツバッハー氏によると、より大きなプラントをすでに建設中だという。Orcaプラントの10倍の大きさになるため、コンテナサイズのコレクターは8台から80台に増え、年間4万トンのCO2回収することになる。

Orcaほどの規模のプラントを建設する利点は、コレクターの設計を8回繰り返すだけで済むことだ。

「80のコンテナを作ればまったく別のストーリーになります」とヴュルツバッハー氏。

Climeworksの中小規模のアプローチは、直接空気回収技術を商用化している別の大手企業Carbon Engineering(カーボン・エンジニアリング)とは対照的である。同社は50万トンのCO2を回収するプラントをテキサス州に建設中だが、同プラントは今世紀半ばに稼働する予定となっている。

「Climeworksは、一度に砲弾のように急速に進むのではなく、段階を踏みながらスイミングプールに入っていきます」と、二酸化炭素除去に特化した投資コンサルティング会社Carbon Direct(カーボン・ダイレクト)のチーフイノベーションオフィサーColin McCormick(コリン・マコーミック)氏は述べている。

これらのアプローチの一方または双方が、規模とコストの両面で二酸化炭素除去を達成できるかどうかはまだわからない。直接空気回収はまだ初期段階にあるが、持続可能な技術の重要な担い手の一部と類似性がある。太陽光発電(PV)パネルと風力タービンはどちらも数十年前に始まったばかりだが、今では巨大かつ成長中の産業となり、エネルギー移行の先陣を切っている。

ソーラーパネルは、理論的には可能だが商業的には証明されていないものを実現するために、新しい素材を使って作られていることから、ソーラーパネルとの比較は特に適切であろう。

マコーミック氏の説明によると、大気中の二酸化炭素を回収するのに必要なエネルギー量には最低限度があり、それはかなりのものであるが、ClimeworksとCarbon Engineeringはともにその最低値の約10倍のエネルギーを使用しているため、改善の余地は大きいという。

「効率は100%を大幅に下回っていますが、問題ありません」と同氏は続けた。「初期のソーラーパネルは効率が数パーセントでした」。

Climeworksが効率性の向上とコスト削減に向けて模索している方法は数多くある。中でも大きいのは、フィルター材を改良して、より多量のCO2回収と長寿命化を図ることである。同社はまた、モジュールユニットの建設コストを下げるために生産を合理化する方法も検討している。そして、CO2のパイプラインのような比較的固定されたコストがあり、それはプラントが大きくなるにつれて自然に減少していくことになる。

今後の技術的な課題は気が遠くなるほどのものかもしれないが、Climeworksのチームは動じない。実際、ヴュルツバッハー氏は、直接空気回収の現状は1970年代と1980年代の風力や太陽光よりもずっと有利であると考えている。

「太陽光発電や風力発電が始まった頃と比較してみると、それらはコスト削減に関連するより多くの要因に取り組む必要性を抱えていました」とヴュルツバッハー氏。「私たちが対処すべき要因がその10分の1程度であることは、実際のところ朗報と言えます」。

これらのコスト削減を実現するには、研究室やオフィスではなく、実際の環境でのみ可能な学習が必要となる。

「これはソフトウェアのスタートアップではありません」とヴュルツバッハー氏は続ける。「私たちは過酷な環境に鋼鉄とコンクリートを置いています。おそらく90%までしか予測できないような奇妙なことが起こりますが、予測できない残りの10%については学習していきますので、現場で何かを取り出すことは非常に重要です」。

Hellisheidi地熱発電所はレイキャビクの大部分と同様にOrcaにも熱とエネルギーを供給している

なぜアイスランドなのか

Orcaほど雄大なフィールドサイトを見つけるのは難しいだろう。このプラントは、草の茂った平原の端に位置し、くっきりとした白い雪で彩られた岩だらけの黒い山頂のすぐ下にある。しかしClimeworksのチームは、その風景のためにその場所にOrcaを建設することを選んだわけではない。Hellisheidiのサイトには、直接空気回収に不可欠な2つの要素がある。安価な再生可能エネルギーと、CO2を貯留する場所だ。これらの要素はいずれもアイスランド独自の火山地質の産物である。

Orcaはアイスランド最大の地熱エネルギー源の1つであるHellisheidi地熱発電所のすぐ隣に位置している。同発電所は地下1マイル(約1.6km)の深さから熱水を引いており、そこは火山性ホットスポットによって自然に暖められている。地熱プロセスは熱と電気を発生させ、どちらも直接空気回収のための重要なインプットとなる。

この電力を使って空気をコレクターに送り、その熱を利用して、フィルター材から回収されたCO2を放出する。この放出は、沸騰水の温度である摂氏100度前後で発生するものだ。

「まず第一に、地熱はとても優れています。24時間年中無休で熱と電気を供給しますので、私たちの活動に非常に適しています」とヴュルツバッハー氏は語っている。

それからCO2だ。Hellisheidiの下にある岩は多孔質の玄武岩で、100万年も経っておらず、地質学的にはかなり新しい。Carbfix(カーブフィックス)という企業が、この若い岩にCOを注入し、反応させて炭酸塩鉱物を生成する方法を考案した。

Carbfixは、地熱発電所を運営する自治体所有の電力会社Reykjavik Energy(レイキャビク・エナジー)の子会社である。同社は5年以上にわたり、地熱プロセスから排出される少量のCO2を貯留する技術を使用しており、OrcaからのCO2を貯留するインフラはすでに整っていた。

「これがOrcaがアイスランドに存在する大きな理由です」とマコーミック氏は語る。「地熱地帯からの廃熱とゼロカーボン電力を利用しています。すでに掘削済みの注入孔と、CO2を注入するための優れた地質構造を備えているため、この場所には必要なものがすべて揃っています」。

二酸化炭素の貯留は二酸化炭素除去の方程式の重要な構成要素である。多くの方法が存在するが、二酸化炭素はすぐに岩に変わるため、Carbfixの方法は特に有望だ。2年以内、あるいは数カ月以内に鉱化する可能性が高く、数千年にわたって固体状態を保つ。

「CO2はどこにも移動することはありません。基本的に、いったん地下に沈んだ後は、地下に留まり続けることがわかっています」と、Carbfixの研究・イノベーション責任者であるKari Helgason(カリ・ヘルガソン)氏は述べている。

このタイムフレームは、CO2が漏出しないことを確認するための不確定なモニタリングを必要とする、放棄された油井での貯留のような他の方法とは対照的である。

Carbfix方式のもう1つの利点は、コストをほとんど無視できることであり、特に二酸化炭素を回収するための高いコストと比較する場合に顕著である。

「純粋なCO2を受け入れる場合は、かなりコスト効率が高くなります」とヘルガソン氏。「Climeworksで行っていることは、途方もなく低コストです」。

幸いなことに、アイスランドは大部分が玄武岩で構成されているため、貯留のオポチュニティはほぼ無限に存在する。ヘルガソン氏は、玄武岩1立方キロメートルあたり1億トンのCO2を貯留できると見積もっている。

「ストレージ容量は膨大です」と同氏はいう。

この大容量ストレージが存在するのはアイスランドだけではない。Carbfixは、地質学的な二酸化炭素貯留のポテンシャルを持つ世界の地域をマッピングしたオンラインの地図帳を編集した。

HellisheidiとCarbfixはOrcaプラントで完璧な適合を果たしたが、Climeworksは今後のプロジェクトのために他の場所にもオープンである、とヴュルツバッハー氏は言及している。

「アイスランドの天候と風はそれほど完璧とは言えません」と同氏。「同じ気象条件で次の発電所を建設したいかどうか、私たちのコミッショニングチームに尋ねれば、彼らはむしろハワイやその他の火山岩が多い場所へ行くことを望むかもしれません」。

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二酸化炭素回収にはビレッジが必要

ClimeworksとCarbfixのパートナーシップは、二酸化炭素除去を成功させるために必要な共同イノベーションの一例である。同様の関係を活性化する試みとして、米国は複数の企業が協働してCO2を回収・貯留する4つの直接空気回収「ハブ」の建設に35億ドル(約3980億円)を割り当てた。この対策は、最近議会で可決されたインフラ法案の一部である。

「直接空気回収は、多くの異なるグループ間の連携として考えることが非常に重要です」と二酸化炭素除去に焦点を当てたシンクタンクCarbon180(カーボン180)の政策担当副局長Rory Jacobson(ローリー・ジェイコブソン)氏は述べている。

多くの場合、石油・ガス会社は直接空気回収プロジェクトの一部であり、通常は資金援助者の役割を担っている。Carbon Engineeringは、テキサス州でのプロジェクトでOccidental Petroleum(オクシデンタル・ペトロリアム)と提携しており、もう1つの直接空気回収会社Global Thermostat(グローバル・サーモスタット)は、米国での複数の小規模プロジェクトでExxon Mobil(エクソンモービル)と提携している。

二酸化炭素回収のスタートアップにとって、これらの大企業と協力するのは理に適っている。彼らは大きな小切手を振り出すことができ、地質学を深く理解しているからだ。しかし、このようなパートナーシップは二酸化炭素回収が継続的な汚染の煙幕であるという主張にも火をつけた。

「Orcaで真に期待できることは、プロジェクトに化石燃料が関与していない点です」とジェイコブソン氏は話す。

化石燃料産業の支援があろうとなかろうと、政府の気候政策の支援なしには、直接空気回収の規模拡大は限界に直面する可能性が高い。問題は、風力や太陽光で発電された電力のように、大気から二酸化炭素を除去する固有の市場がないことにある。直接空中回収には(これまでClimeworksを支えてきたような)自主的な購入、あるいは政府の奨励策や指針による資金提供が必要である。

「二酸化炭素除去の自主的市場は、私たちに数百万トン、おそらく1千万トン、あるいはそれ以上をもたらすでしょう」とヴュルツバッハー氏。「公共の機関は、数千万トンから数十億トンまで私たちを運んでいく必要があります」。

いくつかのインセンティブはすでに実施されている。米国には現在、二酸化炭素の回収と貯留にトン当たり50ドル(約5700円)を支払う45Qと呼ばれる政策があり、この支払いはBuild Back Better(よりよき再建)法案の下でトン当たり180ドル(約2万円)に拡大される。同法案は最近下院を通過したが、上院では保留されたままになっている。

しかし、政府が高い炭素税を課したり、あるいは産業界に急激な排出量の削減や除去を直ちに強制するような措置を講じるならば、直接空気回収の市場はかなり拡大するだろう。最近グラスゴーで開催された国連気候変動会議では、世界のリーダーたちはそのような大胆な行動を発表しなかった。それは国民の圧力と気候変動の影響の両方が強まるにつれて変わるかもしれない。いずれにしても、すぐには解消されそうにない兆候を示している。

今後、より強力な政策が実現すれば、今日よりもはるかに安価な直接空気回収技術を携えて、Climeworksの準備が整うことになるだろう。価格は依然として高めかもしれないが、何もしない場合の価格はさらに高くなる可能性がある。

Orcaプラントはレイキャビクからクルマで20分ほどのところにある

画像クレジット:Ben Soltoff

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(文:Ben Soltoff、翻訳:Dragonfly)

顕微鏡開発の歴史を塗り替える成果、原子分解能磁場フリー電子顕微鏡を利用し磁力の起源となる原子磁場の直接観察に成功

顕微鏡開発の歴史を塗り替える成果、原子分解能磁場フリー電子顕微鏡を利用し磁力の起源となる原子磁場の直接観察に成功

新開発の超高感度・高速分割型検出器。写真左:原子分解能磁場フリー電子顕微鏡の外観。写真中央:電子顕微鏡下部に装着した新型検出器。写真右:40個の検出領域に分割した検出面

東京大学と日本電子は2月10日、新開発の原子分解能磁場フリー電子顕微鏡により、世界で初めて、原子磁場の直接観察に成功したことを発表した。原子が持つ微小な磁場を直接観測できる技術は、磁石、鉄鋼、半導体デバイス、量子技術などの最先端マテリアル研究を大きく推進させるものであり、顕微鏡開発の歴史を塗り替える画期的な成果だとしている。

これは、科学技術振興機構(JST) 先端計測分析技術・機器開発プログラムのもとで行われている、東京大学大学院工学系研究科附属総合研究機構(柴田直哉教授)と日本電子(河野祐二氏)らによる共同研究。原子の周辺に発生している磁場は、磁石(磁力)の起源ともいわれているが、従来の電子顕微鏡では観測が不可能だった。従来方式の電子顕微鏡は、原子を直接観察できる分解能を有しているが、非常に強力なレンズ磁場の中に試料を入れる必要があるため、レンズの磁場と試料の磁場が強く相互作用し、構造が変化したり破壊されたりしてしまうためだ。影響を与えない程度に磁力を落とせば、分解能が低下して観察ができなくなる。

そこで、同研究グループは2019年、試料室を磁場のない環境に保つことができる、まったく新しい対物レンズを開発し、磁性体の原子観察を世界で初めて実現した。そして今回、超高感度、高速検出器を搭載した原子分解能磁場フリー電子顕微鏡を新しく開発し、鉄鉱石の一種であるヘマタイト(α-Fe2O3)結晶の中の鉄原子周囲の磁場観測を成功させた。

ヘマタイト結晶の磁場観察には、走査型透過電子顕微鏡法(STEM)と、原子分解能微分位相コントラスト法(DPC)が用いられた。まず、STEMで観察を行ったところ、鉄(Fe)原子位置が明るい輝点として観察できたが、磁気の作用を示す磁気モーメントの情報は得られなかった。次にDPCを用いたが、すべてのFe原子が同じコントラストを示し、磁気モーメントに対応する磁場は観察できなかった。だがこれは、原子核と電子雲との間に強い電場が存在しているためで、この電場による影響を差し引けば、磁場のみを取り出すことができる。そこで、特殊な画像処理を行った結果、Fe原子層ごとに互い違いに反平行にコントラストが変化する様子が観察できた。これは、磁気モーメントの並びを仮定したシミュレーションと一致した。つまりこれが、「反強磁性的なスピン配列に伴う原子磁場を直接観察できた」ことを意味するという。

顕微鏡開発の歴史を塗り替える成果、原子分解能磁場フリー電子顕微鏡を利用し磁力の起源となる原子磁場の直接観察に成功

ヘマタイト(α-Fe2O3)結晶の室温における原子構造像と磁場像。(a)STEM像、(b)DPC像、(c)DPC像を画像処理したもの、(d)像シミュレーション結果

今後は、「磁石、鉄鋼材料、磁気デバイス、磁気メモリー、磁性半導体、スピントロニクス、トポロジカル材料など、さまざまなマテリアルやデバイスの研究開発を先導する新計測手法となることが期待されます」とのこと。「今まで見えなかった原子の磁場観察という大きな一歩を記す成果です」と研究グループは話している。