近畿大学とインキュベントファンドが包括連携協定、起業やイノベーション創出・社会問題解決に挑戦できる人材養成を支援

近畿大学インキュベイトファンドは3月25日、起業やイノベーション創出、社会問題解決などに挑戦できる人材の養成や学術振興、世界ならびに地域社会の発展や産業振興への寄与を目的として、包括連携協定を締結したと発表した。

近畿大学は、起業家育成やアントレプレナーシップを持つ人材養成を目的として、大学院に新たな修士課程「実学社会起業イノベーション学位プログラム」の2023年4月設置を構想中という。今回の協定では、同プログラムを中心とするアントレプレナーシップの人材養成、大学発スタートアップ・エコシステムの形成と、それらの持続的発展に向けた組織的な連携強化を図る。これにより、大学院生を中心とするスタートアップを投資家目線の指導で直接的に支援するとともに、将来の有望企業の早期発掘を目指す。

具体的な取り組み内容は以下の通り。

  • 講師の紹介:起業家・若手実務家を招いたオムニバス講義など実施
  • 長期インターンシップ先の紹介:スタートアップ起業等での2カ月以上のインターンシップの実施
  • 大学院生のスポットメンターの紹介:文系・理系の教員および起業家の計3名による複数指導体制の構築
  • インキュベイトファンド主催プログラムへの参加:アクセラレータプログラム・ピッチコンテストへの学生の参加
  • 大学発ベンチャーの起業支援:ディープテックスタートアップのシード期支援

インキュベイトファンドは、創業前後のシードステージに特化したベンチャーキャピタル(VC)。2010年の創業以来、総額850億円以上の資金を運用し、関連ファンドを通じて、520社以上のスタートアップへの投資活動を行っている。投資分野は宇宙、医療、エンタメ、AI、ロボティクスなど多岐に渡り、「Zero to Impact」をモットーに、起業家とともに「Day Zero」から次世代産業の創造に取り組んでいる。より創業期に近い起業家との接点としてシードアクセラレーションプログラム「Incubate Camp」も運営。スタートアップの創業・飛躍の場として、またベンチャーキャピタリストのコアコミュニティの場として提供している。

ISA採用プログラミングスクール運営のLABOT、教育機関の「学費の出世払い」導入を支援するISAプロバイダー事業発表

ISA採用プログラミングスクール運営のLABOT、教育機関の「学費の出世払い」導入を支援する「ISAプロバイダー事業」発表ISA(Income Share Agreement・所得分配契約)を支払いモデルとして採用するプログラミングスクール「CODEGYM」(コードジム)などを運営するLABOT(ラボット)は3月25日、自社スクール以外の教育機関におけるISA導入を支援する「ISAのプラットフォーム構想」(ISAプロバイダー事業)を発表した。今後のコーポレート・ファイナンスを経て、中長期的な経営構想として金融分野への参入、アジア市場展開を行う。2022年度中に実証実験を行うにあたり、ISA参画に関心のある教育機関との連携を模索するという。

ISAは、教材や学習機材など一部の実費を除き、在学中に学費や入学金などの初期費用負担が発生しない代わりに、卒業後の年収に応じて支払金額を決定する支払いモデル。入学金や学費の前払いが一切ない代わりに、卒業後に希望する職種への就労が実現した後、一定期間(CODEGYMの場合は30カ月間)、月額給与の一定割合(CODEGYMの場合は10%)を支払う義務が発生する。このモデルは「出世払い」とも呼ばれ、所得による教育格差を是正する方法として、米国を中心に世界各地の教育機関やブートキャンプに採用されているという。

また、学習を始めた初期に挫折してしまったり、就職に成功しない場合には学費の支払い義務が発生しないほか、就職後でもISA規定が定める年収ラインを下回る期間、病気や怪我、介護、育児などの事情で給与を得られない期間がある場合、ISAにおける支払いは猶予され金利は発生しない。

一方ISAによる支払手段を教育機関が採用するには、法務(受講契約書や支払いに関する約款など)や会計、税務面での煩雑な手続きが必要になるほか、何よりスクールを卒業後、2年〜3年といった長期間にわたって学費の支払いを受けるため、提供企業・教育機関側としては財務キャッシュフローの問題が最も懸念される。これらのことから、ISAには非常に高い参入障壁があり、国内では、継続的に投資家の出資を受けて行われる法人でのISAの参入例は、LABOTを含め2例しか確認できていないという。

今回発表のISAプロバイダー事業では、日本およびアジア圏の教育機関に対し、ISAの運営ノウハウをSaaSとして提供するとともに、将来的にはISAの教育ファンド(現在構想中、順次必要なライセンス取得予定)を通じた資金繰りを支援する金融分野への参入を目指す。

またLABOTは、ISA産業の立ち上げを目指す業界団体の発足に向け、社内に準備委員会を設置。消費者保護を第一とする共通ガイドラインの策定、長期的な視点での関連省庁や政府両党との意見交換、法務・税務の観点の整理、海外動向のリサーチとケーススタディ、学術的研究などを行なう予定。さらに、ISA産業に関する媒体「ISA研究会マガジン」を開設。ISAの国内外情勢の最新ニュース、考察、事例研究、投資・スタートアップ動向などを情報発信している。LABOTは、今後はテクノロジー領域にかぎらず、様々な分野の教育機関でISAが選択できることで、より多くの人々が平等な教育機会を得られる社会の実現に貢献したいという。

LABOTは「人の可能性に投資する」をビジョンを掲げ、2019年7月に設立。ISAを採用したエンジニア養成スクールのCODEGYM、就職活動を控えた学生の新卒エンジニア就職を支援するCODEGYM Academyを運営しており、2021年度の春・秋に合わせて638名が入校している。

ノイズを排除し営業担当者が最も有望な見込み客に注力できるようにする支援ツールをScratchpadが発表

Scratchpad(スクラッチパッド)は、人気の高いCRM(顧客関係管理)アプリケーションであるSalesforce(セールスフォース)の上位レイヤーとして機能することによって、Salesforceに情報を簡単に入力できる方法を提供する製品として誕生した。しかし、同社の創業者たちは、Scratchpadが単なる営業支援ツールに留まるべきではないことを認識していた。同社は米国時間3月23日、Scratchpadを営業担当者の中心的なワークスペースにするために、インテリジェンスを活用して取引を成立させる可能性の高い見込み客を探し出すことができる新機能を発表した。

Scratchpadの共同設立者でCEOのPouyan Salehi(プーヤン・サレイ)氏によれば、同社は営業担当者とその働き方を観察することに、多くの時間を費やしてきたという。それによって、Salesforceに案件データを入力する方法を簡略化するというアイデアが生まれたわけだが、彼らの中には、営業担当者が日々経験している通知に関するノイズを軽減する方法を見出したいという思いが高まってきた。

画像クレジット:Scratchpad

「営業担当者の人々は、通知やアラートに追いかけられて、仕事の流れが乱れたり、途切れたりします。それが、なかなか仕事が進まない原因となっているのです」と、サレイ氏は説明する。そこで同社は、このようなノイズを排除し、営業担当者にとって最も重要な情報を表示する方法を検討し始めたという。通常、それは最も早く成約できる案件であり、そのためには、どこに最も力を入れるのが合理的なのか、次に何をすべきなのかを、はっきりさせるということだ。

「私たちは、営業のための最優先受信箱というコンセプトを思いつきました。つまり、重要な通知やアラートをすべて収納するコンテナです。そして、大きな差別化要因は、ユーザーにそれらの通知を与えるだけでなく、それに対して非常に迅速かつ簡単にアクションを起こす方法を提供することです」と、サレイ氏は語る。

営業担当者が見る通知は、カスタマイズが可能であり「Scratchpad通知ビルダー」と呼ばれるシンプルなワークフローエンジンで、通知を作成できる。サレイ氏はこれを、営業チームが自分たちの働き方に適ったワークフローを構築するための最初のステップと位置づけている。

同社は1月に3300万ドル(約40億7000万円)のシリーズB資金調達を発表している。今回の発表は、少なくともその資金の一部を投入し、同社が製品の機能を拡張して、よりプラットフォーム的な感覚を持たせようとしていることの表れだ。

画像クレジット:Westend61 / Getty Images

原文へ

(文:Ron Miller、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

東京理科大学、太陽光発電とEVの走行中ワイヤレス給電を組み合わせたシステムの実車実験に成功

東京理科大学、太陽光発電とEVの走行中ワイヤレス給電を組み合わせたシステムの実車実験に成功

東京理科大学は3月24日、太陽光発電と電気自動車(EV)の走行中ワイヤレス給電を組み合わせたシステムを開発し、世界で初めて実車を用いた実験を成功させたと発表した。EVの普及と太陽光発電の大量導入を後押しする技術に発展することが期待されるという。

2020年、EVの停車中のワイヤレス充電の国際規格(SAE J2954)が制定され、走行中ワイヤレス給電(DWPT。Dynamic wireless Power Transfer)はその次の技術として期待されている。現在のEVは、大量のバッテリーを搭載しているために価格が高く、充電に時間がかかることが普及の足かせになっているが、DWPTが実現すれば、バッテリーは小さくて済み、走行距離を飛躍的に延ばすことが可能となる。すでに、DWPTが経済的に成り立つという試算が出されていて、高速道路だけでなく一般道にも導入が可能だとされている。しかし、太陽光発電とDWPTを組み合わせる技術的な研究は、世界的にもまだ進んでいない。

そこで、東京理科大学理工学部電気電子情報工学科の居村岳広准教授を中心とする研究グループは、太陽光発電とDWPTを組み合わせる際に必要となる回路と制御方法を開発し、実際に実験用道路に給電装置を埋め込んだ実車実験を行った。研究グループは、カーボンニュートラルの実現を目指す観点から電力網に接続しないオフグリッドでの太陽光発電を用いたシステムと、オングリッドのシステムの両面から研究を行っているが、今回実車実験を行ったのは、オフグリッドを想定したシステムだ。

コイルと太陽光発電と実車

コイルと太陽光発電と実車

オフグリッドのシステムは、道路脇に設置した太陽光パネルによる直流電力送電路「DCバス」に接続することが想定されている。オングリッドならば常に一定の電力を供給できるのだが、オフグリッドの場合、発電状況やEVの走行台数の変化によってシステムにかかる電圧が変動する。そこで、太陽光発電の出力を最大化する最大電力点追従制御(MPPT。Maximum Power Point Tracking)とDWPTのそれぞれに想定される負荷変動の周期のずれを吸収する電気二重層キャパシター(EDLC。Electrical Double Layer Capacitor)を、発電部分と給電部分との間に挟んだ。さらに、ワイヤレス給電のために直流電圧を高周波の交流に変換するインバーターの出力電圧波形を位相シフト制御して電圧調整を行った。これにより、発電電圧を最大に保ちながら、供給電力を一定に保つことができた。

東京理科大学、太陽光発電とEVの走行中ワイヤレス給電を組み合わせたシステムの実車実験に成功―世界初の実車を用いたシステム開発

コイルと回路

研究グループは、屋内の基礎実験でこのシステムの動作が検証できたところで、キャンパス内にDWPT実験用道路を作り、実際のEVの床下に受電回路を取り付けて走行試験を行った。その結果、車のボディーやアスファルトの影響が心配されていたが、大きな影響はなく、屋内基礎実験と同様に動作が可能であることが示された。これにより、電気二重層キャパシターとインバーター出力の位相シフト制御を使うことで、オングリッドの場合と同じように供給電力を一定に保てることがわかった。

日本では、2050年には300GW(ギガワット)の太陽光発電施設の導入を目指している。そうなると、昼間の電力量は需要を上回り、余剰電力が生まれるようになる。DWPTは、停車中充電に比べて電力吸収量が10倍以上と多いため、太陽光発電の大量導入時の余剰電力消費先として親和性が高く、余剰電力の負荷平準化に貢献できる可能性もあるという。

今回は動作原理の実証のため電力は抑えて行ったが、今後は、埋設したコイルの大電力伝送実験、雨水や海水の有無による影響の評価などを通して、社会実装に向けた研究を進めるとしている。

アキュリスファーマが28億円のシリーズB調達、てんかん発作用経鼻投与スプレー製剤の臨床開発や上市に向けた諸活動推進

アキュリスファーマが28億円のシリーズB調達、てんかん発作に対する経鼻投与スプレー製剤の臨床開発や上市に向けた諸活動推進

神経・精神疾患領域における新薬の開発と商業化を推進するアキュリスファーマ(Aculys Pharma)は3月27日、シリーズBラウンドにおいて、総額28億円の資金調達を実施したと発表した。引受先は、新規投資家のJICベンチャー・グロース・インベストメンツ、三菱UFJキャピタル、Spiral Capital、既存投資家のVision Pacific LifeSciences Capital I, II (DE) LLC 1、HBM Healthcare Investments、Global Founders Capital、三井住友トラスト・インベストメント、ANRI。累計調達額は96億円となった。

調達した資金は、第2パイプラインであるてんかん発作に対する経鼻投与スプレー製剤(主成分ジアゼパム)の臨床開発や上市に向けた諸活動にあてる。

ジアゼパムは、注射剤などの剤形でてんかん発作時の治療薬として60年以上日本の医療現場で使用されているという。また、医療機関外においても患者や介護者などの医療関係者以外の方が坐剤として使用してきた薬剤となっているそうだ。経鼻投与スプレー製剤としては、2020年1月に米国において「6歳以上のてんかん患者における通常の発作パターンとは異なる間欠性の典型的な発作頻発(群発発作、急性群発発作)のエピソード」を効果・効能として米国Neurelisが米国食品医薬品局(FDA)の承認を得ているという。

アキュリスファーマは、同薬剤が貢献しうる患者に新しい治療手段を早く届けられるよう、日本国内での臨床試験を実施し、開発を進める。同時に、てんかん発作が患者とその家族の日常生活に及ぼす影響を軽減するための包括的な取り組みとして、急な発作時に迅速に治療薬にアクセスできるコミュニティ構築、AIやデジタルを活用した発作の予測システムなどに関する研究を外部パートナーと連携し、進める。また、てんかんに関して正しい理解が広まるよう、啓発活動への貢献にも取り組むという。

2021年1月設立のアキュリスファーマは、「Catalyst to Access」(革新的な医療への橋渡しを担う)を理念とする日本発のバイオ領域スタートアップ。神経・精神疾患領域において革新的な医療手段への橋渡し役となり、患者とその家族、医療関係者、社会により良い医療を届けるため、欧米諸国から革新的で優れた医薬品を導入し、開発・販売を担い、さらに疾患を取り巻く様々な課題に対するソリューションを提供するとしている。

高専10校が共同開発した人工衛星「KOSEN-1」で初の宇宙技術実証に成功、Raspberry Pi CM1を衛星の心臓部に採用

高専10校が共同開発した人工衛星「KOSEN-1」で初の宇宙技術実証に成功、Raspberry Pi CM1を衛星の心臓部に採用高知工業専門学校(高知高専)を中心とする10校の高専が開発した超小型人工衛星「KOSEN-1」が、市販のLinuxマイコンボード「Raspberry Pi Compute Module 1」(CM1)を衛星の制御に使うオンボードコンピューター(OBC)として常時運用するという宇宙技術実証に成功した。

KOSEN-1は、10センチ四方の立方体を2つ重ねた大きさで、重量は2.6kgという超小型人工衛星(2Uキューブサット。サイズ10×10×23cm)。以下に挙げる10校が共同で開発した、木星が放射する自然電波の観測のための最新技術の実証を目的とした木星電波観測技術実証衛星だ。2018年にJAXAの革新的衛星技術実証2号機の実証テーマに選定され、50名以上の高専生が参加して2年半をかけて開発。2021年11月、JAXAのイプシロンロケット5号機で打ち上げられた。

開発参加校

高知高専
群馬高専
徳山高専
岐阜高専
香川高専
米子高専
新居浜高専
明石高専
鹿児島高専
苫小牧高専

今回実証に成功したのは、超小型で省電力な市販のLinuxマイコンボード「Raspberry Pi Compute Module 1」(CM1)を衛星の心臓部となるOBCに使い、宇宙で運用するというもの。このOBCと連動したカメラによる地球の写真撮影にも成功した。

KOSEN-1から撮影された地球

CM1のプログラムには、プログラミング言語Pythonを利用しているという。そのCM1とPythonの組み合わせには、いくつもの利点がある。まずはCM1のOSがオープンソースソフトウェアのLinuxで、OS本体だけでなくソフトウェアなどの膨大なリソースが自由に使えること。CM1は安価な市販のマイコンボードなので、ハードウェアのシミュレーションが容易に行えること。さらに、やはりオープンソースのプログラミング言語Pythonを使うため、インターネットで共有しながらプログラム開発が行えること。これらにより、多くの高専生が参加する画期的な「分散型OBCソフト開発」が実現できた。

OBCに使用された「Raspberry Pi Compute Module 1」

今後KOSEN-1では、「デュアルリアクションホイールによる超高精度姿勢制御」と「木星電波観測用6.6m長ダイポールアンテナ展開技術」の実証を宇宙で行うことにしている。

【3月28日】掲載記事アクセスランキング・トップ5―1位はスマートリングOura Ring、2位はFitbit不整脈監視技術のFDA申請

【3月28日】掲載記事アクセスランキング・トップ5―1位はスマートリングOura Ring、2位はFitbitの不整脈監視技術のFDA申請

掲載記事のうち、3月28日午前7時現在集計で最もアクセスのあった記事5本を紹介。

第1位:スマートリング「Oura Ring」が累計販売数100万個を突破


ハードウェアの世界では我々は、大きくてきりのいい数字が大好きだ。どんなものでも100万個を達成するのはすごいことで、その100万個が399ドル(約4万8800円)のスマートリングならなおさらだ。

第2位:グーグルがFitbitの不整脈監視技術をFDAに認可申請、Apple Watchより高精度との研究結果


Googleが、ユーザーの心拍を監視する技術のデータを米食品医薬品局(FDA)に提出、審査申請したことを明らかにしました。Googleによれば、この心拍モニタリング技術のアルゴリズムはユーザーの心房細動を98%の確率で発見できるとのこと。

第3位:Spotify、言論弾圧を受けロシアでのサービスを停止へ


CNN、ABC、BBCなどの西側報道機関は、最大15年の禁固刑を科すことができるこの法律を受けて、ロシア国内での放送や事業を取りやめた。Spotifyは主に音楽ストリーミングプラットフォームだが、政治や時事問題を取り入れたポッドキャストへの投資をこのところ増やしており、その方向性はすでに多くの論争を巻き起こしている。

第4位:ヒョンデの新型ハイブリッド車に装備されたソーラールーフにはどれほど価値があるか?


「ソナタ・ハイブリッドのソーラーパネルは、正確には204Wの容量を持っています。つまり、日当たりの良い場所で太陽に照らされたパネルは200Whの電力を生み出します」と、ヒョンデはウェブサイトに書いている。200Wはゼロではないが、電気自動車の文脈では、200Wはそれほど印象的な数字ではない。

第5位:元TikTokコンテンツモデレーター2人が「精神的トラウマ」で提訴


TikTokのコンテンツレビュワー2人が、TikTokから不快な動画を削除するというひどい心痛をともなう作業に従事する中で、適切なサポートが受けられなかったとして同社を提訴した。NPRが最初に報じたこの訴訟は、米3月24日に連邦裁判所に起こされた。

画像クレジット:Brands&People on Unsplash
Engadget
TECHCRUNCH
HYUNDAI UNDER A LICENSE.
TOLGA AKMEN / CONTRIBUTOR / GETTY IMAGES

NFTやDeFiにとっても逆風?米国のステーブルコイン規制の最新情勢と論点整理

NFTやDeFiにとっても逆風?米国のステーブルコイン規制の最新情勢と論点整理

編集部注:この原稿は千野剛司氏による寄稿である。千野氏は、暗号資産交換業者(取引所)Kraken(クラーケン)の日本法人クラーケン・ジャパン(関東財務局長第00022号)の代表を務めている。Krakenは、米国において2011年に設立された老舗にあたり、Bitcoin(ビットコイン)を対象とした信用取引(レバレッジ取引)を提供した最初の取引所のひとつとしても知られる。

今や220兆円を超える市場に成長した暗号資産ですが、2022年、業界全体を揺るがしかねない問題として注目されているのが、ステーブルコインに関する規制です。ステーブルコインに対して厳しい規制がかけられれば、最近ブームとなっているNFT(ノン・ファンジブル・トークン)やDeFi(分散型金融)にとっても逆風になるという見方もあります。

本稿では、クラーケンの本社がある米国におけるステーブルコイン規制の最新情勢と論点の整理を行います。

そもそもステーブルコインとは?

ステーブルコインは、暗号資産エコシステムにおける潤滑油的な存在です。ビットコイン(Bitcoin)のような資産性はありませんが、機関投資家が暗号資産取引を行うときに入れる担保であったり、NFTやDeFiといった新たなサービスにおける決済や担保手段として使われています。

代表的なステーブルコインは、米ドルと連動するUSDT(テザー)とUSDC(USDコイン)です。ブロックチェーンデータ企業CoinMetricsによりますと、ステーブルコイン市場は1400億ドル(約21兆円)。そのうちUSDTとUSDCは90%近いシェアを持っています。

NFTやDeFiにとっても逆風?米国のステーブルコイン規制の最新情勢と論点整理

ステーブルコインの市場規模

「銀行並み」の規制

2021年から米国ではステーブルコインに対する規制の必要性を訴える声が多く聞かれるようになりました。例えば、米証券取引委員会(SEC)のゲンスラー委員長は、2021年9月、ステーブルコインについて「ポーカーのチップのようなもの」と独特の表現でリスクに警鐘を鳴らしました

そして2021年11月、大統領直下の金融市場ワーキンググループ(PWG)がステーブルコインに関するレポートを公開してから、規制をめぐって雲行きが怪しくなりました。PWGのレポートは、米議会議員に対してステーブルコインの発行体を「銀行のような機関」として規制する法律を通すように提案しました。その中で特に注目されているのが、保険加入金融機関(IDI)のみにステーブルコインの発行を許可するという部分です。

2022年2月、PWGレポートの主な執筆者である財務省の幹部が、上院の公聴会で、ステーブルコイン発行体に対する銀行並みの規制案に関して、柔軟に対応すべきであると発言し、これまでのスタンスから軟化したといわれていますが、詳細は明らかになっていません。

暗号資産業界の反応

2021年11月のPWGレポート公開後、米国の暗号資産関連の業界団体ブロックチェーン協会(Blockchain Association)は、すぐにPWGレポートの分析レポートを公表しました。同協会は、ステーブルコインの流動性の向上や担保となる資産の証明といった観点から規制を歓迎する一方、ステーブルコイン発行体を保険加入金融機関として規制することには明確に反対しました。理由として、数多くのステーブルコインがある中で特定のステーブルコインを規制面で優遇することになること、大手銀行などが競争上の優位性を持ってしまうことを挙げています。

「そのような規制はイノベーションを窒息させて、新しいステーブルコインプロジェクトが米国に来なくなり、現在のフィンテック企業に対する規制の流れと逆行することになるだろう」

この他、PWCによる規制案は「ステーブルコイン発行体に必要不可欠な活動をするすべてのエンティティ」も規制の対象としていますが、同協会は、この定義はあいまいであり、「マイナーやソフトウェア開発者」も含まれてしまうのではないかと懸念しています。

クラーケンは、ステーブルコイン規制の動向を注視しています。グローバル市場でUSDT、USDC、DAI、PAXGという4つの主要ステーブルコインを取り扱っており、ステーブルコインの暗号資産市場における役割の大切さを実感しています。ブロックチェーン協会同様に、「古いルール」を新しい市場に無理矢理導入するといったような拙速な対応はするべきではなく、まずはステーブルコインついて正しく理解することが先決と考えています。

また、米国以外で英国やEUでもステーブルコインの規制が検討されていますが、国ごとに異なるルールと基準が設けられる「つぎはぎの規制」を避けるため、国際的な協調関係の強化が重要になるとクラーケンは考えています。

2021年末から日本でもステーブルコインの発行体に対する規制について議論があり、2022年の通常国会に資金決済法改正案の提出を目指すと報じられ、2022年3月に入り実際に提出されました。ただ、米国をはじめ世界各国では規制当局と業界側の対話が続いている状態であり、日本でもステーブルコインの発行体や暗号資産交換業を含む様々なステークホルダーの意見を取り入れて議論を続ける必要があると考えています。

画像クレジット:Tezos on Unsplash
CoinMetrics

量子コンピューター向けアルゴリズム・ソフトウェア開発のQunaSysが12.4億円のシリーズB調達、海外事業展開を加速

量子コンピューター向けアルゴリズム・ソフトウェア開発を手がけるQunaSysが12.4億円のシリーズB調達、海外事業展開を加速

量子コンピューター向けアルゴリズム・ソフトウェア開発を手がけるQunaSysは3月28日、シリーズBラウンドとして、第三者割当増資による計12億4000万円の資金調達を実施したと発表した。引受先は、リードインベスターのJICベンチャー・グロース・インベストメンツ、またANRI、HPCシステムズ、Global Brain、科学技術振興機構(JST) 出資型新事業創出支援プログラム、新生企業投資、日本ゼオン、富士通ベンチャーズファンド、三菱UFJキャピタル。

また、HPCシステムズ、日本ゼオン、富士通の各社と、同資金調達に伴い資本業務提携に向けて合意したと明らかにした。

調達した資金により、日本での事業拡大に加えて、海外での事業展開を加速させる。これまでの実績を礎としつつ、調達資金を活用し、圧倒的に便利でパワフルな、量子コンピューター上での化学計算用ソフトウェアの開発・欧州拠点の開設などを進める。また、数年以内に到来するとされる量子コンピューターの実応用を見据えて、QunaSysの量子コンピューター向け量子計算クラウドサービス「Qamuy」の世界的なデファクト化を目指す。

モノグサの学習プラットフォームMonoxer、累計学習回数が10億回突破―先生が作成したオリジナル問題集も30万冊以上に

記憶定着のための学習プラットフォームMonoxer、累計学習回数が10億回突破―先生が作成したオリジナル問題集も30万冊以上に

モノグサは3月28日、記憶定着のための学習プラットフォーム「Monoxer」(モノグサ。Android版iOS版)の累計学習回数が10億回を突破したと発表した。また、Monoxer上で先生が作成したオリジナルのBook(問題集)の数は30万冊以上となっており、Monoxer上の小テストも5万問以上作成されたと明らかにした。

現在Monoxerは、学校や塾といった教育機関を中心に、全国3900以上の教室で導入済み。2021年3月末時点でのMonoxerの学習回数は約3億回だったため、直近1年間で3倍以上に増加したことになる。また、Monoxer上で先生が作成したオリジナルのBook(問題集)の数は30万冊以上となっており、学習されている内容も、小学校・中学校・高校における漢字や英語学習、社会や理科の暗記事項を中心として、医療系の専門知識や社会人の語学学習、業務で使う知識事項の定着などの分野へ拡がっているという。

モノグサのMonoxerは、あらゆる知識を確実かつ最小限の負荷で身に付けられるという「記憶のプラットフォーム」。ユーザーは、英単語・漢字・歴史・数式など、記憶したい知識をインポートすると、Monoxerが記憶定着のために最適な問題を生成。また、リアルタイムで生徒個別の学習内容を解析し、知識の定着度合いを可視化するという。さらにその情報を基に、出題する問題の難易度・頻度を生徒ごとに自動で最適化を行ってくれる。

米政府がロシアのカスペルスキーを「国家安全保障上の脅威」と認定、チャイナ・モバイルやチャイナ・テレコムも追加

米政府がロシアのカスペルスキーを「国家安全保障上の脅威」と認定、チャイナ・モバイルやチャイナ・テレコムも

Sergei Karpukhin / reuters

米連邦通信委員会(FCC)は25日、ロシアの情報セキュリティ企業Kaspersky Lab(カスペルスキー)を「国家安全保障上の脅威」に認定したことを発表しました。FCCによってロシア企業が「米国の国家安全保障に受け入れがたいリスクをもたらす」リストに加えられたのは、これが初めてのことです。

カスペルスキーは、China Mobile(中国移動通信)やChina Telecom(中国電信)とともに、25日付けでリストに追加されています。このほか、中国ZTEやHuaweiもリストに含まれており、全8社の名前が並んでいるかっこうです。

このリストで名指しされた企業の製品については、米国内の企業はFCCが運営するユニバーサルサービス基金(USF)を使って購入することが禁じられます。この基金は低所得者層や農村部、離島など採算が合わない地域でも、都市部と平等に通信サービスを受けられるようにする補助金であり、今回の措置が大手企業に与える影響の範囲は限定的と見られています。

FCCのBrendan Carr委員は「FCCは、我が国の通信ネットワークの安全確保に重要な役割を果たしており、対象リストを最新の状態に保つことは、そのために自由に使える重要な手段である」と表明。さらにカスペルスキーを含めた3社をリストに加えることを「スパイ行為やアメリカの国益を損ねようとする中国やロシアの国家支援団体による脅威から、我々のネットワークを守るのに役立つだろう」と説明しています。

この決定に対してカスペルスキーは、失望したとの声明を発表。「カスペルスキー製品の技術的評価に基づいておらず、政治的な理由によるものだ」との趣旨をコメントしています。

米国内でカスペルスキー製品に規制が課されたのは今回が初めてではなく、2017年末にも米トランプ政権が政府機関全体での使用を全面的に禁止する大統領命令を出しています。それを受けてカスペルスキーは評判を毀損し、営業を妨害されたとして米政府を相手に訴訟を起こしていました

また、今回の件に先立ちドイツの情報セキュリティ当局も、ロシアによるウクライナ侵攻が続くなか、カスペルスキー製品を使うことは「相当程度」のサイバーリスクがあるとして、利用を控えるよう警告していました。日本政府も同じような対応を取るのか、注視していきたいところです。米政府がロシアのカスペルスキーを「国家安全保障上の脅威」と認定、チャイナ・モバイルやチャイナ・テレコムも

(Source:FCCBleepingComputer。Via AppleInsiderEngadget日本版より転載)

Netflixが独立系モバイルゲーム開発会社Boss Fightを買収

Netflix(ネットフリックス)は、テキサス州の独立系ゲーム開発会社であるBoss Fight Entertainment(ボス・ファイト・エンターテインメント)を買収したことをブログ記事で発表した。買収の金銭的条件は明らかにされていない。Netflixにとってこれで3件目となるゲーム会社の買収は、このストリーミングサービス企業が推し進めているゲームへの取り組みの一環だ。

Boss Fightは、Zynga Dallas(ジンガ・ダラス)とEnsemble Studios(アンサンブル・スタジオ)の元従業員によって、2013年に設立された。Netflixは、同スタジオのジャンルを超えたゲーム構築の経験が、Netflixユーザーにますます多くのタイトルを提供していくために役立つと述べている。Boss Fightのチームはダラス、オースティン、シアトルにある現在のスタジオで活動を継続していく予定だ。

「Boss Fightの使命は、プレイヤーがプレイしたい場所で、シンプルで美しく、楽しいゲーム体験を提供することです」と、Boss Fight Entertainmentの創設者であるDavid Rippy(デヴィッド・リッピー)氏、Bill Jackson(ビル・ジャクソン)氏、Scott Winsett(スコット・ウィンセット)氏は、声明で述べている。「広告のないゲームを、定額サービスの一部として提供するというNetflixの取り組みは、我々のようなゲーム開発者が、収益化を気にすることなく、楽しいゲームプレイの創造に集中することを可能にします。このような早い段階でNetflixの一員となり、自分たちの好きなことを続けながら、Netflixにおけるゲームの未来を一緒に形作る手助けができることに、私たちはこれ以上ないほどワクワクしています」。

3月初め、Netflixはフィンランドのモバイルゲーム開発会社であるNext Games(ネクスト・ゲームス)を総額6500万ユーロ(約87億円)で買収すると発表した。この無料でプレイできるモバイルゲームのパブリッシャーは、すでに「Stranger Things(ストレンジャー・シングス)」や「The Walking Dead(ウォーキング・デッド)」など、Netflixの最大の人気作に関連するタイトルを開発している。この買収は、2022年第2四半期に完了する予定だ。

また、2021年9月には「Oxenfree(オクセンフリー)」のようなストーリー重視のタイトルで知られる独立系ゲーム開発会社のNight School Studio(ナイト・スクール・スタジオ)を、Netflixは買収している。この取引の金銭的条件は明らかにされていない。Night School社の幹部は、同スタジオが「Oxenfree II」をはじめとするNight Schoolのタイトルに、引き続き取り組んでいくと発言していた。

今回の買収は、Netflixの動画カタログを補完するためにゲームコンテンツを充実させるという大きな戦略の一環である。

「私たちはまだ、Netflixメンバーシップの一部としてすばらしいゲーム体験を構築している初期の段階にあります」と、Netflixのゲームスタジオ担当バイスプレジデントであるAmir Rahimi(アミール・ラヒミ)氏は、声明で述べている。「世界中の開発者とのパートナーシップや、優秀な人材の雇用、そして今回のような買収を通じて、私たちは楽しくて深い魅力のある多彩なオリジナルゲームを、広告なし、アプリ内課金なしで、世界中の数億人の会員に提供できる、世界クラスのゲームスタジオを構築したいと考えています」。

Netflixは、2021年末に「ストレンジャー・シングス」をテーマにしたタイトルやカジュアルゲームを含む初期ラインナップを発表して以来、ゲームサービスの拡充を図ってきた。

それ以降、Netflixは他にもいくつかのタイトルを展開してきた。「Arcanium:Rise of Akhan(アルカニアム:ライズ・オブ・アカン)」「Asphalt Xtreme(アスファルト・エクストリーム)」「Bowling Ballers(ボウリング・ボーラーズ)」「Card Blast(カード・ブラスト)」「Dominoes Café(ドミノ・カフェ)」「Dungeon Dwarves(ダンジョン・ドワーフ)」「Hextech Mayhem:A League of Legends Story(ヘクステック・メイヘム:リーグ・オブ・レジェンド ストーリー)」「Knittens(ニット&キャット)」「Krispee Street(クリスピー・ストリート)」「Shooting Hoops(シューティング・フープス)」「Teeter (Up)(ティーター)」「Wonderputt Forever(ワンダーパット・フォーエバー)」などだ。先週初めには「Shatter Remastered(シャッター・リマスター)」と「This Is A True Story(真実の物語)」という2つのゲームを追加し、ラインナップを拡充している。Netflixはまた「Into the Dead 2:Unleashed(イントゥ・ザ・デッド 2:アンリーシュド)」という初のFPS(ファーストパーソン・シューティング)タイトルも予告している

同社は第4四半期の決算説明会で投資家に対し、これら初期のゲームの提供開始は、消費者が新サービスに何を求めているかを、よりよく理解するための準備であると説明している。ゲームのパフォーマンスについては、まだ詳細を明らかにせず、各ゲームタイトルのデイリーアクティブユーザーとマンスリーアクティブユーザーの両方が「増加」していると述べるに留めた。また、Netflixは、将来的にさらに大規模なゲームIPのライセンスを取得することに前向きであることも示唆している。

画像クレジット:Krisztian Bocsi / Bloomberg / Getty Images

原文へ

(文:Aisha Malik、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

SpaceXとノースロップ・グラマンが2026年までISSへの商業補給サービスを行うことに

NASAがSpaceX(スペースX)に新たな注文を出した。

同局は米国時間3月23日、商業補給サービス2(CRS-2)契約に基づく補給ミッション6件を、SpaceXに追加発注したと発表した。

NASAは、ISS(国際宇宙ステーション)への補給サービスを請け負うもう1つの主要プロバイダーで、航空宇宙産業の主要企業であるNorthrop Grumman(ノースロップ・グラマン)にも、さらに6つのミッションを発注している。

NASAは2016年、SpaceXとノースロップの両社に、2024年までの商業補給契約を付与した。3番目に選ばれたサプライヤーはSierra Nevada Corporation(シエラ・ネヴァダ・コーポレーション)だ。CRS-2では、各サプライヤーに最低6回のミッションを保証し、さらにNASAが必要に応じて追加ミッションを発注するオプションが設けられている。3社が獲得した契約の潜在的最大値はそれぞれ140億ドル(約1兆7000億円)だが、NASAが支払う最終的な金額は発注数によって異なると、同局は述べていた。

今回の受注によって、CRS-2のミッションは、ノースロップが14ミッション、SpaceXが15ミッション、シエラ・ネヴァダが3ミッションとなり、合計32ミッションとなった。

現在までに、SpaceXはこのようなフライトにかなり慣れている。同社は以前のCRS契約であるCRS-1で、20の補給ミッションを完了させた。NASAの監察官によると、これらのミッションのためにSpaceXに支払われた総額は30億4000万ドル(約3700億円)で、1ミッションあたり約1億5200万ドル(約185億円)になるという。

SpaceXは、同社の「Dragon(ドラゴン)」宇宙貨物船と「Falcon 9(ファルコン9)」ロケットを使ってISSに物資を届けており、2012年にISSへの最初の補給ミッションを実施して以来、これを続けている。地球を出発した後、Dragon貨物船はISSとランデブーし、自律的にステーションにドッキングする。

SpaceXは、貨物船のDragonをベースにした有人宇宙船「Crew Dragon(クルー・ドラゴン)」を使って、ISSへの商業乗員輸送サービスも提供している。

画像クレジット:SpaceX

原文へ

(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

ユニコーンの投げ売りがそろそろ始まる?

スタートアップとマーケットの週刊ニュースレター、The TechCrunch Exchangeへようこそ。

今日はいろいろなことをお話しする。コーヒーを入れて、落ち着いて、一緒に楽しもう。

投げ売りか?

Amplitude(アンプリチュード)が直接上場し、取引を開始して、2021年第4四半期の決算を発表したときには壁にぶつかっていたことを覚えているだろうか?2022年初頭に資産価値を減じたのは、上場しているハイテク企業の中で同社だけではなかったが、その再評価の規模は際立っていた。現在、Instacart(インスタカート)が非公開市場で似たような事態に陥っている。

多くの非公開企業は、新入社員の入社意欲と既存社員の定着意欲を高めるために、株価の評価方法を見直すべきなのだろうか。おそらくは。GGVのJeff Richards(ジェフ・リチャーズ)氏は、金曜日(米国時間3月25日)に議論の種を投稿した

未上場企業の評価は上がるだけで、上下することはありえないと考えるのは不合理です。未上場期間が長い企業は、相関関係を正規化する必要があります……。

その通りだ。市場を避けては通れない。再度ベンチャーキャピタルから調達して再評価を目にするまでは、現実を先送りすることができる。もちろんだ。しかし、もし潤沢な資金を持つ後期ステージのユニコーンだったとしたら、新たな資金の調達なしに、どうやって市場価値を把握すればよいのだろうか?

もしInstacartがこのトレンドの始まりなら、スタートアップの評価額は、本当にもう一度、横ばいになる可能性がある。

新しい住処を見つけたTechnori

ささいなことだが、私はシカゴの学校に通っていたので、駆け出しジャーナリストの頃はシカゴのテック業界に出入りしていた。そのため、地域のイベントに出向き、現状を把握することに努めていた。私がJustyn Howard(ジャスティン・ハワード)氏と出会ったのは、現在は公開企業になったSprout Social(スプラウト・ソーシャル)がスタートアップだった頃で、街で開催されたUberのローンチディナーに参加したときだった(そこで初めてTechCrunchの記者に出会い、後に初の就職に協力してもらえた)。

当時はTechnori(テクノリ)というコミュニティ活動が立ち上がりつつある時期で、コミュニティの手によって地域の技術力をアピールするイベントが開催されていた。楽しかった。

その後、Technoriは、ポッドキャストやピッチイベントなどを擁する、一種のメディア業態へと進化し、エクイティクラウドファンディングによるスタートアップの資金調達を支援するようになった。CEOのScott Kitun(スコット・キトゥン)氏がそのポッドキャストに私を呼んでくれたことがきっかけとなって、再び交流が始まった。そして今、Technoriは、オンラインプラットフォームで資金調達を行うスタートアップを、審査・評価するサービスのKingsCrowd(キングスクラウド)に売却され、再び私たちの取材範囲に入った。Technoriがコミュニティ仲間の資金調達を支援するプラットフォームとして進化してきたことを考えると、今回の提携は合理的だと思う。

この取引は全額株式で行われたとキトゥン氏は語る。KingsCrowdもメディア戦略も持っているので、両社には少なからず重なる部分がある。

キトゥン氏はThe Exchangeとのインタビューで、TechnorとKingsCrowdの提携により、エクイティクラウドファンディングを希望するスタートアップの審査が、彼の直感ではなく、よりデータに基づいたものになるため、期待していると述べている。この2社がやがて資金調達の仕組みを通じてスタートアップ市場により多くの資金をを送り込むことができるかどうか、そして、そのうちのどれだけがシカゴに定着するかを見守る必要がある。

ちょっと視野を広げて、Public(パブリック)が最近Otis(オーティス)を買収したことを思い出して欲しい。プラットフォームに投資の多様性を追加するのがその狙いだ。TechnoriとKingsCrowdの取引も同様のものとみなすことができる。両社も新しい投資のための手段の1つを普通の人の手に渡したいと考えているからだ。

キトゥン氏は、別会社であるSongFinch(ソングフィンチ)の共同創業者でもあるので、彼の名前を聞くことがこれで最後にはならないだろう。

Expertsプログラムの変更

今週、私はTechCrunchでの役割が変わり、フルタイムのレポーターからTechCrunch+の編集長になった。The Exchangeのサイト投稿やニュースレターを長く読んでくださっている方は、ここ数年の私の仕事の多くが有料記事だったことをご存知だと思う。個人的な執筆を完全に止めるわけではないが、TechCrunch+のチームを積極的に拡大していく予定だ。まだ会員でない方は、ぜひご入会を(米国在住の方なら、申し込み時に優待コード『EICEXCHANGE』を入れていただくと25%オフとなる)。2022年はとんでもない年になりそうだ。

数年間実施してきた「Experts」プログラムの終了を含め、いくつかの変更を行う。このスタートアップ向けサービス企業を活動別に(たとえばSEOとか)データベース化する取り組みは、創業者を支援したいという私たちの志の一部だった。しかし今後は、単にベンダー候補のリストを作るよりも、市場のさまざまな事業者から知見を引き出すことに重点を置いた取り組みに進化させていくつもりだ。

とはいえ、こうすることで少しばかりブドウの木に実を残すことになる。そこで、Expertsの最後のエントリー業者に関するメモをここに記そう。Growthcurve(グロースカーブ)が、これまでの形式でご紹介する最後の企業だ。その旧来の形式の中で、人々が推薦を書き込んでくれた。ANNA Money(アンナ・マネー)のMariam Danielova(マリアム・ダニエロバ)氏は、Growthcurveについて「信頼性が高く、結果を重視し、データを重視する」と書いている。これは、グロースマーケティングチームに期待できるすべてだ。

TechCrunch+のこれまでの記事を整理し、古いインタビューファイルなどを読み返しながら学んだことは、SEOの重要性がまだまだ残っているということだ。私が以前解析したGrowthcurve創業者Mulenga Agley(ムレンガ・アグレー)氏のメモに書かれていたが、私たちが住む新しいiOS 14の世界では、これがもっと重要になるのだろうか?(現在の最新はiOS 15)もしそうなら、Google(グーグル)へのイジメだろう。

以上のような変化はあるものの、The ExchangeのAnna Heim(アンナ・ハイム)記者が、外部の専門家を起用したハウツー記事を担当することに変わりはない。ただ、2022年は少し違う様子となるだろう。過去に取り上げたみなさん、そしてリストの最後のエントリーとなったGrowthcurveに感謝する。

さあ未来へ!

画像クレジット:Nigel Sussman

原文へ

(文:Alex Wilhelm、翻訳:sako)

HubSpotがポッドキャスターを支援する新プログラムを発表

最近は買い手の注意を引くことが難しくなってきた。かつてはいくつか広告に費用を払い、ブログ記事をアップすればそれでよかったのだが、これらの経路が効果的でなくなるにつれ、SaaS企業は意図するオーディエンスに到達するために、より洗練された種類のメディア制作に目を向けるようになっている。

HubSpot(ハブスポット)は先週、クリエイターに資金とプラットフォームを提供し、制作されたポッドキャストをHubSpotのウェブサイト上で配信するというプログラムを発表した。クリエーターにより幅広い聴取者にリーチする方法を提供しつつ、より多様なコンテンツへのアクセスを持つ利点を活かしたいと、同社は考えている。

「飽和状態のポッドキャスト市場で突破口を開くことは、特にゼロから始めるクリエイターにとっては非常に難しくなります」と、HubSpotのマーケティング担当SVPであるKieran Flanagan(キーラン・フラナガン)氏は、このニュースを発表した記事の中で述べている。「このHubSpot Creators(ハブスポット・クリエイターズ)プログラムを通じて、私たちはコンテンツ分野のリーダーとしての当社の立場を活用し、何百万もの組織の成長を支援するという当社のミッションを共有する新進クリエイターの知名度を向上させることができます」。

クリエイターは、同社のプラットフォームを利用してより広いリーチが期待できることに加え、聴取者の増加に応じて毎月支払われる金額が増額される仕組みになっている。HubSpotは、シード、シリーズA、B、Cというベンチャー投資の概念に準えた4つの成長段階を設定した。また、このシステムを通じて、クリエイターはエディターやプロデューサーといった人的リソースへのアクセスも得ることができる。

CRM Essentials(CRMエッセンシャル)の創設者で主席アナリストのBrent Leary(ブレント・リアリー)氏は、このアプローチは実に賢明なやり方であると確信している。

「クリエイターを受け入れ、彼らがストーリーを語るための手助けをすることで、HubSpotはコンテンツのエコシステムを拡張できるだけでなく、より広いクリエイターのエコシステムの一部となることもできます。このアプローチにより、HubSpotは個人やコミュニティと重要な関係を築くことができ、自社のコンテンツ戦略を他のフォーマットやチャネルに展開することにつながります」と、リアリー氏はTechCrunchに語った。

HubSpotは、2006年にインバウンドマーケティングのプラットフォームとして誕生し、ブログを使って企業の製品やサービスに対する関心を高める働きをしてきた。コンテンツマーケティングの考え方は進化しているものの、フラナガン氏はLinkedIn(リンクトイン)に掲載した新プログラム発表の投稿の中で、当初のインバウンドマーケティングの考え方は依然として共鳴を呼び、製品主導による成長の進行とともに重要性が増してきていると書いている。

もう1つの大きな要素は、これらのコンテンツの周りに、ブランドにとって重要な人々、つまりコミュニティが形成されるということだ。コミュニティは、直接的に(これらの人々の何割かが顧客になる)、あるいは間接的に(少なくともより広い世界でコンテンツを共有してくれる)、関心をさらに高める方法を生み出すと、フラナガン氏は述べている。

同社は「Content is Profit」や「(Un)Sexy」といった名称の8つのポッドキャストからこのプログラムを開始する。これらのポッドキャストのテーマは、セールスおよびマーケティングプラットフォームとしてのHubSpotのミッションに何らかの形で関連しており、HubSpotが自社の製品やサービスへの関心を高めると期待するコンテンツを提供していく。

このようなプログラムを起ち上げているのは、HubSpotだけではないことも注目に値するだろう。LinkedInはクリエイター向けに似たようなアプローチを提供している。MailChimp(メールチンプ)も同様だ。しかし、これらのプラットフォームに便乗することは、クリエイターにとって聴取者を獲得するための最良の方法なのだろうか? トレードオフとなるものは何だろうか?

ある情報筋からTechCrunchに提供された非公開のクリエイター規約書によると、HubSpotはクリエイターに対し、どれだけダウンロードされたかという数字に関係なく、毎週ポッドキャストを作成するために最低月1000ドル(約12万円)を支払うとされている。これは新人ポッドキャスターにとって好条件だと思われる。独立系の番組がそれだけの収入を得られるようになるまでには、時間がかかることが多いからだ。この最下段の「シード」層に属するポッドキャスターには、1回限りのマーケティング投資として5000ドル(約60万円)も与えられる。

しかし、ポッドキャスターは、この手早い資金投入を利用するために、いくつかの権利を放棄しなければならない。HubSpotのパブリック・クリエイター・プログラム契約によると、このプログラムに参加することによって、クリエイターは番組に対する永久的なライセンス(番組の改変や派生物の作成を含む)をHubSpotに付与することになる。また、番組ホストがその義務を果たせていないとHubSpotが判断した場合、HubSpotはホストを交代させる権利も有している。

クリエイターが番組の所有者であることは変わらないものの、HubSpotの永久ライセンスは、この資金援助に付随する条件があることを明確に示している。

「HubSpotはクリエイターの権利を尊重し、クリエイターとHubSpotの間で公平なバランスが維持されると確信しています」と、HubSpotの広報担当者はTechCrunchに語った。「HubSpotは、このプログラムから良好な状態で離脱したクリエイターに対して、独占権の放棄も検討していく予定です」。

LinkedInも最近、同様のポッドキャストネットワークを起ち上げたが、そのクリエイター契約に関する詳細な情報を公表することは拒否した。LinkedInの担当者はTechCrunch に、ポッドキャストパートナーは「彼らのコンテンツに対する完全な所有権を保持する」と述べたが、ライセンス契約については詳しく語ろうとしなかった。

ますます多くのSaaS企業が独自のポッドキャストネットワークを起ち上げる中、ポッドキャスターは、クリエイティブコントロール(創作物のクリエイティブ面における最終決定権)の価値と、これらのプログラムが提供する資金を天秤にかけた難しい決断を迫られることになりそうだ。

画像クレジット:Anastasiia Krivenok / Getty Images

原文へ

(文:Ron Miller, Amanda Silberling、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

D2Cの注文処理サービスを代行する仏Bigblueが18.3億円調達

フランスのBigblueが、1500万ドル(約18億3000万円)のシリーズA資金調達ラウンドを実施した。同社は、D2C(Direct to Consumer)ブランド向けのオーダーフルフィルメントプラットフォームを運営している。これによりD2Cブランドは、Bigblueに物流に関するあらゆることをアウトソースすることができ、製品やマーケティングに集中できるようになる。

ラウンドはRuna Capitalがリードし、LPVが「セカンダリーリーインベスター」になった。既存の投資家であるSamaipataも、再び投資に参加している。

現在、同社はフランス、スペイン、英国3カ国で事業を展開しており、6万平方メートル以上の保管スペースを持つ5つの倉庫と提携している。顧客は、これらの倉庫に直接製品を発送し、Bigblueが保管・管理する。

Bigblueの顧客である企業や店に注文が入ると、商品はBigblueの配送ネットワークから客に送られる。同社が契約している配送業者は20社ほどで、ヨーロッパ全域に配達できる。グローバルな発送もできるが、の他の市場ではそれぞれの国でD2Cのためのフルフィルメントパートナーを見つけるのが賢明だろう。

Bigblueでは、パッケージをカスタマイズしたり、パッケージ内にチラシを入れたりして、エンドユーザーの体験をパーソナライズすることもできます。また、何か問題があった場合、顧客はブランドの返品ポータルで返品リクエストを提出するよう促される。返金だけでなく、ストアクレジットにも対応している。

共同創業者でCEOのTim Dumain(ティム・デュメイン)氏は声明で「新しい資金で、ユーザーであるマーチャントの増加に合わせて、私たちのサービスも拡大したい。社員を増やすとともに、会社をD2Cのフルフィルメント分野のリーダーになりたい」と言っている。

結果は実に単純だ。BigblueはAmazonのような体験を提供したいが、しかしそれをサードパーティのロジスティクスの業態でやろうというのだ。そこでBigblueはShopifyやWooCommerce、PrestaShop、Wixなどさまざまな販売チャンネルと、CdiscountやFnac、そして、そうAmazonのような多様なマーケットプレイスとの統合を進めている。

そうすることによって、さまざまなマーケットプレイスが無料で同日または翌日の配達を提供できるようになる。しかも、オンラインのマーケットプレイスの商品ページで自分が真っ先に選ばれるためには、その点が鍵になる。そしてまた顧客は、そのブランドの追跡メールを受け取る。

D2Cのロジスティクスサービスで同社が競合しているのは、CubynHiveHubooなどとなる。全体としてBigblueは、From FutureUnbottledWe Are Joliesなどの顧客を惹きつけることに成功している。同社の2022年の目標出荷数は400万だ。そのためには同社は今後1年間で社員を100名増員し、西ヨーロッパ全域に拡張しなければならない。

画像クレジット:Bigblue

原文へ

(文:Romain Dillet、翻訳:Hiroshi Iwatani)

サウジの石油化学工場と米の原発をハックしたロシア人スパイを起訴

合衆国司法省は4人のロシア政府被雇用者を、米国の原子力発電所やサウジの石油化学工場など、重要なインフラストラクチャを狙った数年間に及ぶハッキング作戦で起訴したことを発表した

最初の2021年6月の起訴は、ロシア国防省のプログラマーEvgeny Viktorovich Gladkikh氏(36)と二人の共犯者を、全世界のエネルギー施設の、工場の正常な稼働に欠かせない制御システムのハッキングを計画した、と告発している。Gladkikh氏は悪名高いTritonマルウェアの作者と疑われており、それは2017年のサウジアラビアの石油化学工場に対する攻撃で使われた。ハッカーたちはそのマルウェアを使って、工場の安全システムを不能にしようとした。それは、液漏れや爆発などの危険な状況を防ぐためのシステムだ。Tritonとロシアが初めて結び付けられたのは2018年の10月だ。

司法省によると、サウジの工場を爆破する計画に失敗したハッカーたちは、合衆国の同様に重要なインフラストラクチャを管理している企業のコンピューターをハックしようとした。

2021年8月付の第二の起訴は、Pavel Aleksandrovich Akulov氏とMikhail Mikhailovich Gavrilov氏、およびMarat Valeryevich Tyukov氏を訴えている。全員がロシアの連邦セキュリティビューローFSBの71330部隊のメンバーで、2012年から2017年にかけてエネルギー部門を狙った攻撃を数多く仕掛けている。このハッカーたちはセキュリティ研究者の間では「DragonFly」、「Energetic Bear」、「Crouching Yeti」などの名前で知られ、石油やガス、原子力発電、公益事業、送電企業など、国際的なエネルギーセクターに属する企業のコンピューターネットワークへのアクセスを試みた。

彼らの攻撃の最初のステージは2012年から2014年にかけて行われ、工場用の制御装置のメーカーやソフトウェア提供企業のネットワークを侵犯し、それからHavexマルウェアをソフトウェアアップデートの中に忍ばせた。これと、スピアフィッシングと水飲み場型攻撃を組み合わせた犯行により、ターゲットがよく訪れるWebサイトに感染し、マルウェアをインストールさせる。これまで、合衆国と海外を合わせて17000台以上のユニークなデバイスに感染した、とされている。

二度目の、「DragonFly 2.0」と呼ばれる段階は2014年から2017年にかけて行われ、合衆国およびグローバルの500社あまりの企業の3300名以上のユーザーが狙われた。その中には合衆国政府の原子力規制委員会(Nuclear Regulatory Commission)やWolf Creek原子力発電所も含まれている。

合衆国の副司法長官、Lisa Monaco氏は声明でこう述べている。「ロシアの国が支えているハッカーは合衆国と全世界両方の重要なインフラストラクチャにとって深刻で恒常的な脅威だ。本日の刑事訴追は過去の活動を反映するものであるが、それによって明らかになったのは、米国の企業が防御を強化して警戒を怠らないことの、喫緊かつ継続的な必要性だ」。

Mandiant(マンディアント)の諜報分析担当副社長John Hultquist氏によると、今回の起訴で垣間見えるようになったのは、ロシアの国が支えるハッキング行為における、FSBの役割だ。起訴はまた、こういう破壊的なサイバー攻撃を実行するロシアの侵入グループへの「警報射撃」でもある。「犯行は個人によるものなので、起訴は、これらのプログラムで仕事をしている者全員に、当分ロシアを出るなと告げている」、とHultquist氏は言っている。

しかしHultquist氏は、ハッカーたちはこれらのネットワークへのアクセスを維持するだろう、と警告する。「重要なのは、私たちが、破壊攻撃の現場を目撃していないことだ。将来の不測の事態に備えて、重要な機密情報をほじくり返しているだけだ。最近の事件に関する私たちの懸念は、それがまさに、私たちがずっと待っていた不測の事態かも知れないことだ」。

Dragosの上級索敵員Casey Brooks氏はTritonマルウェアの背後にいるグループを「Xenotime」と呼び、本誌の取材に対して「起訴がハッカーたちを思いとどまらせることはない」、と言っている。

「これらの犯行グループはリソースにも恵まれ、継続的で複雑な仕事を実行できる。今回の起訴でこれらのグループの一部の、侵入行為の詳細は分かるが、彼らの広がりはもっと大きい。たとえば、Xenotimeにとってこれは、彼らの活動全体のごく一部でしかないことを、私たちは知っている。重要なのは、これらのグループが今なお健在であり、訴状はこれら敵対集団の未来の犯行を抑止するために、ほとんど役に立たないと理解することだ」。

訴状が公表されたのはジョー・バイデン大統領が、ロシアのウクライナ侵攻に対して西側が制裁を科したため、対抗して合衆国企業に対するロシアのサイバー攻撃の可能性が増えていることを、警告してから三日後のことだ。また数日前に司法省は、ロシアの軍事諜報サービスGRUで仕事をしていた6名のハッカーを訴追した。そのハッカーグループはSandwormと呼ばれ、5年間の活発な犯行を告発された。それらの中には、2017年に世界中の数百の企業と病院を狙った破壊的なNotPetyaサイバー攻撃や、ウクライナの送電網を破壊したサイバー攻撃がある。

(文:Carly Page、翻訳:Hiroshi Iwatani)
画像クレジット: David McNew/Getty Images

[原文へ]

Spotify、新しいインターフェース「Car Mode」を一部ユーザーでテスト中

Spotify(スポティファイ)が新しいインターフェース「Car Mode」のテストを一部のユーザーで開始したことを、同社は米国時間3月25日、TechCrunchに認めた。このテストは、Spotifyが、運転中に再生コントロールと現在のトラックを表示する「Car View」と呼ばれる簡略化された車載用インターフェースを廃止することを発表してから数カ月後に行われた。当時、スポティファイは、車内でのリスニング体験を提供する新しい方法を模索しており、近々新しい機能を発表する予定だと述べていた。

「Spotifyは、ユーザーに最高のリスニング体験を提供できるよう常に努力しています」と、Spotifyの広報担当者はTechCrunchに語った。「我々は、一部のユーザーに新しいCar Modeをテストしていることを認めます。他のテストと同様に、より広範に変更をロールアウトする前に、我々は常にユーザーからのフィードバックを求めます」。

新しいインターフェイスは、9to5Googleによって最初に発見された。同サイトは、Android版のCar Modeのスクリーンショットを掲載した。Spotifyは、この新しいインターフェースがiOSユーザーにもテストされているかどうかについてはコメントしなかった。

スクリーンショットを見ると、Car Modeでは、音声操作で音楽をブラウズしたり、検索したりすることができることがわかる。Car Modeのトラックプレイヤー画面には、再生 / 一時停止、スキップ、シャッフル「いいね」ボタンなどのシンプルなコントロールが含まれている。また、マイクボタンもあり、Car Mode中にSpotifyのライブラリを検索することができる。また、音声操作で最近再生した音楽やポッドキャストにアクセスすることも可能だ。レイアウトはSpotifyの通常のインターフェースに似ているが、画面上に通常ある視覚的な煩雑さはあまりない。

画像クレジット:9to5Google

Spotifyはまだ新しいインターフェースをテスト中で、アクセスしたユーザーからのフィードバックを求めている。つまり、Car Modeの最終バージョンは、上で見たスクリーンショットとは異なるものになるかもしれない。

新しいCar Modeは、シームレスな車内リスニング体験を提供するためのSpotifyの取り組みの一部に過ぎない。2021年4月、同社は「Car Thing(カー・シング)」と呼ばれる初のハードウェア・デバイスを米国で限定発売することを正式に発表した。このデバイスは、Spotify Premiumの加入者と、Apple(アップル)のCarPlay(カープレイ)やAndroid Auto(アンドロイド・オート)のようにSpotifyに簡単にアクセスできるインフォテインメントシステムを内蔵していないクルマの所有者を対象としている。Spotifyは11月にCar Thingを89.99ドル(約1万円)で一般販売した。

Car Thingは、携帯電話のSpotifyモバイルアプリと接続し、携帯電話の携帯電話シグナル(または利用可能な場合はWi-Fi)を使用して、音楽やポッドキャストを車のサウンドシステムでストリーミングする。このデバイスは、USB、Bluetooth、AUXに対応している。このサービスにアクセスするには「Hey Spotify」と話しかけるか、タッチスクリーンをタップするか、ダイヤルを回すか、プレイヤー上部にある4つのプリセットボタンのいずれかを使用する。

また、SpotifyはGoogleアシスタントと連携し、運転中にハンズフリーで音楽やPodcastを聴くことができる。この機能はGoogleマップとも連携しているので、Spotifyを聴きながらナビゲーションを行うことも可能だ。そのためには、アカウントを連携して「ヘイグーグル、スポティファイを再生して」といえばいい。

画像クレジット:Getty Images

原文へ

(文:Aisha Malik、翻訳:Yuta Kaminishi)

リモートで働く新入社員向けのハードウェア選択・配布を支援するFirstbaseが約60億円調達

Firstbase(ファーストベース)は米国時間3月25日、Kleiner Perkins(クライナー・パーキンス)が主導するシリーズBラウンドの資金調達を発表した。TechCrunchが同社のシリーズAを取材したのは1年前、世の中のリモートワークシフトが本格化した頃だった。

現在、よりハイブリッドな世界で、大小の企業がオフィス内の社員と在宅勤務の社員のバランスをどのようにとるかを考えており、我々はFirstbaseがどのように将来計画を立てているかに興味があった。

このスタートアップは、遠隔地にいるスタッフの入社を支援し、必要なハードウェアを必要なときに受け取れるようにするための支援を行っている。パンデミック時に転職した人なら、テクノロジー製品を新入社員に届けるのは必ずしも簡単なプロセスではないことを知っているだろう。この問題は、オフィスと個人の物理的な距離が遠くなる程、より複雑になる。

前回話したときから、同社は機能の幅を広げている。Firstbaseは、現在も顧客の新入社員がハードウェアを選ぶのを手伝い、出荷や回収、管理を担当している。そして、その提供内容に融資が加わった。現在、Firstbaseは、顧客が通常料金で、新入社員のハードウェアや、家具など遠隔地にあるオフィス周辺機器の購入代金を支払うことができるようにしている。

ハイブリッド時代の成長

Firstbaseにとって重要なのは、部分的にオフィスに戻りつつある世の中にどう適合していくかということだ。2021年4月以降の16倍の収益成長、同様の期間での7倍の顧客増加など、最近の四半期でスタートアップ級の指標を掲げた後、市場はFirstbaseの遠隔従業員サービス製品を以前より歓迎しなくなるのだろうか。

創業者兼CEOのChris Herd(クリス・ハード)氏はTechCrunchに、ハイブリッドな労働力を持つ企業は、Firstbaseを、オフィス内の従業員だけでなく、自宅から働く従業員にもハードウェアを供給していると語った。TechCrunchは、平均的な企業がどこに向かっているのかをより良く把握するために、リモートファーストの企業とハイブリッドスタイルの企業の間の顧客分布について同社に尋ねた。ハード氏によると、Firstbaseの顧客構成はかなり均等であるが、ハイブリッド型と言われる企業の中には、依然としてリモートワークが大半を占めている企業もあるという。

仕事の未来はまだ流動的だ。

しかし、Firstbaseが構築しているものは、オフィスの世界にきちんと適合する可能性がある。このスタートアップは、米国、英国、ヨーロッパで倉庫を拡張することを計画している。この物理的なフットプリントによって、同社は従業員との間でのデバイスの流れを管理し、必要性から納品までのタイムラグを抑えることができる。世界的なチップ不足の中、重要なサプライチェーン業務を第三者に任せることは、より多くのオフィスなど現実世界での労働力を求める企業にとっても魅力的であることがわかる。

TechCrunchは、Firstbaseが現在の活動に加えて、モバイルデバイス管理(MDM)ビジネスに参入する計画があるかどうかに興味があった。Jamf(ジャムフ)のようなMDMは、現在公開されているが、デバイスの物理的な配送やケアに関わるよりも、デバイス上でより多くの仕事をする。ハード氏は、2年前、MDM機能の構築は検討事項であったと述べている。しかし、その間にFirstbaseは、顧客が既存のMDM製品やHRIS(人事情報システム)ソフトウェアシステムを置き換えるのではなく、それらのシステムにプラグインすることを望んでいることを知った、と彼はいう。

もしFirstbaseがMDMツールを持たない中小企業に十分な販売をすれば、やがて小規模な顧客向けにシンプルなものを構築できるかもしれない。

とはいえ、シリーズAやBステージのスタートアップ企業との取引を想定していた同社は、数百人、数千人の従業員を雇用する顧客へと成熟度を高めていると、ハード氏は述べている。これは、5桁の取引ではなく、6桁の取引を意味すると、彼は言った。非公開企業は通常、このような一般的な指標以上のものを共有しないが、このケースでは、会社の最近の成長率を説明するのに役立っている。

Firstbaseは、ソフトウェア、ハードウェア、金融技術を巧みに組み合わせた企業だ。そのため、粗利やその他の経済的な詳細を推測するのは困難だ。誰かがデッキをリークするか、あるいはできるだけ早く会社が公開され、我々がデータを覗き見ることができるようになることを願う。

画像クレジット:filmstudio / Getty Images

原文へ

(文:Alex Wilhelm、翻訳:Yuta Kaminishi)

知らない送信者からのメールに寄付を求めるGatedでメール削減

もしあなたが最近、電子メールの山に埋もれたことがないとしたら、電子メールのアカウントを持っていないか、マーケティング担当者がまだ気づいていない若い人かのどちらかだろう(彼らはいずれ気づく)。

このような状況を打開するため、ベイエリアを拠点とする設立10カ月のGated(ゲーテッド)というスタートアップが登場した。同社は、メールに圧倒されている人を助け、できれば社会全体に利益をもたらすようなアプローチをとる。もし見知らぬ送信者が、あなたの受信トレイにメールを送りたいなら、あなたが選んだ非営利団体に寄付をしなければならない、というのがその構想だ。まったく知らない人に、来月のイベントや、会社の売り込みや、機器のセールスをしたいなら構わない。でも、それにはコストがかかる。誰にリーチするかにもよるが、かなりのコストがかかるだろう。

Gatedは、エンジェル投資家で、直近では従業員エンゲージメントのスタートアップCultureAmp(カルチャーアンプ)で成長事業担当副社長を務めていたAndy Mowat(アンディ・モワッ卜)氏が創業した。Gatedは、Gmailアカウントにフォルダを作成すると機能する。モワッ卜氏によると、このソフトウェアは、メール所有者が以前にやり取りをした人の情報から「許可した送信者」のリストを自動的に作成する。見知らぬ送信者が接触してきた場合は、作成した別フォルダにメールが移され、メール受信者が選んだ慈善事業に寄付をした場合のみ受信箱に届くよう設定される。メール1通あたり2ドル(約244円)からで、その70%が非営利団体に支払われ、残りはGatedに流れる。同社のソフトウェアは無料だ。

当然のことながら、毎日何百もの売り込みのターゲットになるベンチャーキャピタリストらは、このアイデアを気に入っている。実際、Corazon Capitalがリードし、Precursor Ventures、Burst Capital、Tuesday Capital、その他のアーリーステージのファンドが参加したシードラウンドで330万ドル(約4億円)を調達したとGatedは発表した。

もちろん、このコンセプトは潜在的なユーザーの共感を得るかもしれないが(手を振って)、何よりもまずプライバシーの問題を含め、疑問も投げかけている。

それについてGatedは、同社がメッセージの中身を読むことはないという。「私たちが見ているのはメタデータ、『to』と『from』だけです」とモワット氏は話す。とはいえ、知らない人からの依頼が殺到している人は非常に多数にのぼるため、Gmailのフィルターでは不十分だ。その中には、自らのやり方で影響力を及ぼす人もいるはずで、Gatedが時間をかけて自身の連絡先をマッピングしていくことを好まない人もいるかもしれない。

もう1つの課題は、誰もがGmailを使っているわけではないことだ。Gmailは、これまでGatedのソフトウェアの使用を承認した唯一のプラットフォームだ(モワット氏によると、同社はMicrosoftと「次の審査」を進めているという。また、いくつかの電子メールプラットフォームが「過去に他のパートナーのせいで損害を受けた」ため「すべてのパートナーをセキュリティ審査の対象としている」とも指摘した)。

Gatedはまた、儲かるビジネスとしてスタートしていない。ほとんどのスタートアップがそうであるように、もちろん変わる可能性がある。モワット氏が語るように、Gatedが受け取る収益の大部分は、取引にかかる決済手数料に充てられることになりそうだ。モワット氏と彼の小さなチームは、Gatedがマイクロペイメントの仕組みをすでに考えており、クレジットカードの手数料に取って食われないようにと思っているが、まだそこまでには至っていない。

Gatedがどのように成長していくかについては、この記事のような紹介以外では、まず口コミ的要素に頼っているようだ。モワット氏によれば、2週間前の時点で、Gatedはまだ公開されていないにもかかわらず、すでに2500人のウェイティングリストを抱えていたというから、このアプローチは合理的なものだと思われる。

今後、GatedはB2B(法人向け)の製品も開発する予定だ。マーケティング担当者がGatedと協力して財源を確保し、営業チームが月に一定数のメールを送信できるようにするのだという。

ちなみに、気になる方にお伝えすると、Gatedを利用するメール受信者は、誰かが金を払ってGmailアカウントに侵入してきたとしても、メールに返信する義務はない。

モワット氏によれば、利用し始めたユーザーからの回答率は平均よりも高いという。「寄付の対象となったメールの40〜60%が返信されています。中には、自分の時間を大切にしてくれる人に感謝して、すべてのメールに返信するユーザーもいます」。「ただし」と同氏は付け加え「非常にまれにしか」返信しないユーザーもいるという。

また「寄付者」は、メール受信者の受信トレイに永遠に自由なアクセスが与えられるわけではないことも注目すべき点だ。「それについては微妙なところがあります」とモワッ卜氏は話す。しかし、基本的には、受信者がメールに返信すると、そのメール送信者はデフォルトで既知の送信者グループに分類される。ただ、その送信者をいつでもGatedフォルダに戻すことができ、また『ミュート』モードにすることもできる。

モワット氏はいう。「これは基本的に、『もうチャレンジメールを送らないで欲しい。私の受信トレイにも入れないでください』という意味です」。

画像クレジット:erhui1979 / Getty Images

原文へ

(文:Connie Loizos、翻訳:Nariko Mizoguchi