中国のトップスパイが豪に亡命、台湾大統領選や香港などに介入と中国は証言

中国情報機関の幹部職員とされる人物がオーストラリアに政治的庇護を求めている。この人物は事実であれば政治的に極めて重大な意味を持つ情報を携えており、これには中国、台湾その他の地域における秘密活動に関するものが含まれているという。この人物は中国が香港の自由化運動に対してサイバーテロ活動を行っていると主張している。

オーストラリアのメディアであるAgeによれば、 Wang “William” Liqiangこと王力強(ウィリアム・ワン)氏は 2020年の台湾大統領選挙に介入するため偽装の下で秘密活動を命じられた。王氏はこうした任務に反発して亡命を決め、中国政府の活動を国外から批判することにしたという。Ageによれば、王氏はSydney Morning Herald、60 Minutesその他のメディアに登場し、さらに広範囲な情報提供を行うという。

王氏は 香港に登録された中國創新投資有限公司(China Innovation Investment Limited)が香港の大学、政治組織、メディアに浸透するためのフロント企業として中国政府が設立したものだとして、その工作の内幕を詳細に説明したと伝えられる。

中国政府に批判的な書籍を販売していた呂波(Lee Bo)氏らが相次いで失踪した銅鑼灣書店事件は広い範囲から抗議を引き起こしていたが、王氏はこの誘拐に関しても個人的に関わっていたという。

王氏はまた中国政府を助けるサイバー集団が香港の自由活動家の個人情報を探り出し、ネットに晒すなどのテロ活動を助けたという。この中には2020の台湾大統領選に対する介入も含まれていた。

オーストラリアその他の地域での中国情報機関の活動も示唆されているものの、王氏に関する当初の記事では具体的に明らかにされていない。王氏は現在シドニーの秘密の場所におり、オーストラリア政府が正式に保護を与えるのを待っているという。

王氏にインタビューしたメディアによれば、今後さらに詳細な情報が明かされるという。

画像:Getty Images

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

アップルがカリフォルニアの住宅危機とホームレス問題対策の基金に約2700億円拠出

Apple(アップル)は11月4日朝、カリフォルニアの住宅供給危機の緩和に向け、25億ドル(約2700億円)という巨額資金を拠出することを発表しと。この中には、住宅を求めやすいものにするための投資基金と、初めて住宅を購入する人向けのローン補助基金への各10億ドル(約1085億円)、そしてアップルが所有する土地でのリーズナブル価格の住宅開発向けの3億ドル(約325億円)が含まれる。

残りの2億ドルは、ベイエリアでの低所得者向けの新たな住宅開発のサポートに当てられる。内訳はというと、まずHousing Trust Silicon Valleyなどと提携しているベイエリア住宅基金に1億5000万ドル(約163億円)。そして5000万ドル(約54億円)は弱者に向けられる。特にシリコンバレーエリアのホームレス問題を解決するのに役立てられる。

同社はまた、ホームレス化を予防するためにカリフォルニア北部、南部の両方で同様の取り組みを検討するとしている。

Gavin Newsom(ギャビン・ニューサム)知事、カリフォルニア州、そしてコミュニティベースで活動している機関との提携のもとで実施される今回の投資は2年かけて活用される見込みだが、それは利用できるプロジェクト次第でもある。アップルに戻ってくる資金は、向こう5年のプロジェクトに再投資される。

「カリフォルニアにおける住宅危機で家を追われる人が出ていることを受けての投資だ」とアップルは発表文で説明した。

「教師や消防士、救急隊員、サービス従業員といったコミュニティメンバーが、住み慣れたコミュニティを去るという苦渋の選択を迫られている。今年4月から6月にかけて、3万人近くがサンフランシスコを離れた。ベイエリアの住宅保有率は過去7年で最低の水準だ」と同社は話している。

住宅危機は一晩で起こったのではなく、今問題視されているテック企業の成長だけが原因というわけでもない。

他の複雑な問題と同じように、住宅危機はいくつかの要因がからんで起こっている。同地域の法律、ゾーン規則、高層ビル建築への反対、NIMBYの風潮(編集部注:Not In My Back Yard、自宅の裏庭に迷惑なものがきてほてしくないという意)、レンタルコントロールの市場への影響、住宅供給制限、その他にもたくさんある。しかしテック企業が大きな要因であり、金持ちのテックワーカーとその他の人の間に格差を起こし、住宅供給の成長を上回る急激な人口増につながった。

今日では、そのエリアの多くの住人が、職場のある町での生活費用を賄えず、より生活費が安い近隣の町から1時間かそれ以上かけて通勤している。

「世界にシリコンバレーの名が知れ渡る前、人々がポケットにテクノロジーを入れて持ち運べるようになる前、アップルはこの地域をホームと呼んでいた。シリコンバレーが人々にとって暮らしたり、家庭を持ったり、地域に貢献したりできる活気に満ちた場所のままであるようにするのは、重大な市民責任だ」とアップルのCEOであるTim Cook(ティム・クック)氏は声明文で述べた。

「入手可能な住宅というのは安定や尊厳、機会、プライドを意味する。これらが多くの人の手の届かないものになってしまうと、私たちが今後歩む道は持続不可能なものになる。故に、アップルはソリューションに寄与したい」。

住宅危機問題の解決を支援するテック大企業は同社が初めてではない。Facebookは先月、カリフォルニアなどでの住宅問題に取り組むために10億ドルを支援することを発表した。そしてGoogleも今年初め、ベイエリアの住宅危機の緩和を目的とする10億ドルの投資を明らかにした。そのほか、マイクロソフトはシアトルエリアにおける住宅基金に5億ドル(約540億円)を拠出した。

テック大企業が住宅問題の解決に踏み込むのは、自らに関わることだからだ。実際、テック大企業は高級取りのエンジニア以外の人も雇う必要があり、住宅問題はビジネスに影響する。テック企業がコミュニティにとって良き隣人でいられることを証明するためのかなりの規模の投資を歓迎する人もいる。

一方で、今後起こる問題を解決するための資金を賄うためにテック大企業にもっと税金を課すべきと言う人もいる。実際のところ、投資というかたちでの貸し出しではテック企業を一層儲けさせることになる。地元行政に及ぶかなりの影響力をこうしたテック企業に持たせることになる数百万ドル、数十億ドルのプログラムを受け入れるべきではない、という声もある。

しかしこの住宅危機はすでに対応不可能なものになっているかもしれず、もはやローカルレベルでは解決できない。

「入手しやすい住宅のための未曾有の経済協力、そしてこのイニシアティブの根底にあるイノベーティブな戦略は、アップルが住宅問題の解決を真剣にとらえていることの表れだ」とNニューソン知事は語った。「住宅所有者、住宅賃貸者の両方にとって住宅費用の高騰はカリフォルニア州の何百万という家庭にとって、生活の質に関わる懸念だ。この問題は住宅の建設でしか解決できない。アップルとの提携はカリフォルニア州の住宅建設をサポートするものとなる」。

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(翻訳:Mizoguchi)

Google関連会社のSidewalk Labsがトロントのスマートシティプロジェクトで前進

Googleの親会社であるAlphabet(アルファベット)の子会社のSidewalk Labs(サイドウォークラボ)が、トロントにあるウォーターフロントの1区画を網羅するスマートシティ開発の壮大なビジョンを提案してから2年間、プロジェクトは論争と批判に悩まされてきた。

世界で最も革新的なテクノロジー企業の子会社が、トロントのキーサイド地区の12エーカー(約4万9000平方m)でプロジェクトを進めている。持続可能性に配慮した設計と都市計画に組み込むテクノロジーの最先端の考え方を実証する場にするという。その同じテクノロジー企業が、検索およびマッピングテクノロジーによって、我々の生活をデジタル面(と物理的な面)からほぼ完全に掌握できる一企業によるパノプティコン(英国の哲学者ベンサムが考案した、中央の塔から全体を一望できる円形刑務所になぞらえている)の開発に重要な役割を果たしている。

トロントの市民が生活する人工的な環境に同社が何の制約もなくアクセスできてしまうのは行きすぎではないかと、トロントだけでなく世界中のプライバシー擁護団体の多くが考えている。

抗議の声があまりに大きくなってきたため、プロジェクトは困難な状況に陥っているようにもみえた。Sidewalk Labsによれば、ひるがえって同社の存在意義が問われかねない事態になりそうだった。トロントでの仕事は早くも同社の輝かしい成果になるはずだったからだ。テクノロジーを人工的な環境に統合することで住民に利益をもたらすことが実証できればば、それは大きな成果だ。

だがWaterfront Toronto(プロジェクトを監督する規制機関)がSidewalk Labsと契約を締結し、プロジェクトは前進することになった。契約によって同社の開発範囲を制限するとともに、トロントの国会議事堂に隣接する12エーカーの区画の建設で同社が各監督機関としっかり連携するよう担保した。

「Waterfront Torontoの理事会による本日の決定に勇気づけられた。Waterfront Torontoと重要な問題について歩調をあわせるに至ったことをうれしく思う。Waterfront Torontoおよび政府のパートナーとして革新的で誰も排除しない地域社会を築きたい」とSidewalk LabsのCEOであるDan Doctoroff(ダン・ドクトロフ)氏は声明で述べた。

同社は前進させるために重要な点で譲歩した。同社が6月に提出した当初計画では、入札対象の12エーカーを超えて開発範囲を拡大する用意があった。 土地のリードデベロッパーになることも狙っていた。ここに至ってSidewalk LabsはWaterfront Torontoのカウンターオファーに同意し、開発は市が当初「ベータサイト」に指定していた12エーカーに制限されることになった。

さらに同社がWaterfront Torontoに歩み寄り、Waterfront Torontoがデベロッパーを選ぶ公的調達プロセスを主導することにも同意した。最終的にはSidewalk Labsがインフラの設計と建設を主導することもなくなり、今後はWaterfront Torontoが進めることになった。

「トロントで2年間、2万1000人以上の住民と協力して計画を立ててきた。我々は次回の公開協議やその先の評価プロセス、また世界で最も革新的な地域社会の建設計画を続けられることを楽しみにしている。我々はここトロントで誰も排除しない地域社会を形にすべく取り組んでいる。通勤時間を短縮し、住宅をより手に入れやすい価格にし、新しい雇用を創出し、地球がより健康に暮らせる場所になるよう新しい基準を作ることができると考えている」。

Sidewalk Labsとトロント市の合意に含まれておらず出口が見えない問題の1つが、同社が集めるデータだ。同社は意図をもって新たなコミュニティを作る。その住民と訪問者のデータを同社は間違いなく収集することになるが、そのデータがどう扱われるのかについて合意できていない。

データのプライバシーがプロジェクトの最大の懸念の1つだった。同社はある時点で、キーサイドでのデータ収集を分析、承認する独立した諮問機関を置くことを提案した。だが同社と諮問機関のアドバイザーらが対立し、専門家の一人として関与していたAnn Cavoukian(アン・カブキアン)博士が仕事から離れることになった。カブキアン氏はどんな組織であれデータは収集する前に匿名化すべきだと考えていたが、Sidewalk Labsは第三者のためにそのような約束をする意思はなかった。

データ収集に懸念があっても、都市計画の実験にはメリットがある。テクノロジーの力で建設、発電、エネルギー効率、交通管理、電気通信などの効率性を改善すれば、他の開発でも使えるロードマップが作れるかもしれない。それはいいことだが、そういった進歩は個人のプライバシーをさらに損なってまで達成すべきものではない。

Sidewalk Labsがトロントにその針をしっかりと通すことができれば、テクノロジーで先を行くコミュニティのキルトを世界中で織り成すチャンスがいよいよ高まることになる。

画像クレジット:Sidewalk Labs

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(翻訳:Mizoguchi)

民主主義の大規模な破壊を恐れたインド政府がネットサービスを一部規制へ

インド政府は米国時間10月21日、情報仲介企業を規制する既存のルールを改定する計画であることを発表した。情報仲介企業(Intermediary、Intermediarries)とは、コンテンツの作成をユーザーに依存しているソーシャルメディアアプリケーションなどのことで「彼らは民主主義にとんでもない破壊をもたらしている」と政府は見ている。

最高裁判所に提出された法的文書で、エレクトロニクスと情報技術省(Ministry of Electronics and Information Technology)は「情報仲介企業を規制する規則を2020年1月15日までに起草する」と表明している。

さらにその文書の中で同省は「インターネットは民主的な政体に想像を絶する破壊をもたらす強力なツールとして勃興した」とコメントしている。そこで同省によれば、情報仲介企業を監視監督することによって「個人の権利や国の統一性、尊厳性、および安全性に対する現在ますます増加している脅威に対抗できる」としている。

インド政府は昨年後半に、法案協議に関するガイドラインの草案を発表した。それによると「提案されている規則は2011年の法律を改訂するもので、情報仲介企業として500万以上のユーザーがいるソーシャルメディアなどのサービスを対象とする」ことを明らかにした。

政府の職員によると、規則の今日的な改定が必要なときとは放置すれば偽の情報やインターネットのそのほかの悪用が継続的に氾濫すると思われる時代や社会状況を指す。

10月21日に提出された文書は、WhatsApp上のメッセージの発信源を明らかにするシステムを導入せよとするインド政府の要求に対するFacebookからの拒否への応答だ。WhatsAppはインドで人気最大のインスタントメッセージングプラットホームで、ユーザー数は4億人を超えている

インドではソーシャルメディアのユーザーがアカウントに、政府発行の12桁のバイオメトリックスIDであるAadhaar(アーダール)をリンクさせるべきだという意見もある。12億人がこのシステムに登録している。

Facebookの役員は「インド政府の要求である発信源の開示に応じたら、全世界のWhatsAppユーザーが享受しているエンドツーエンドの暗号化が無意味になる」と主張している。「暗号化をなくしたらユーザーの安全性とプライバシーが侵される」と彼らは主張する。最高裁判所は米国時間10月22日にFacebookの言いぶんを聴く予定だ。

インドのインターネット人口は近年増大し、業界の推計によると現在は6億人を超えている。安価なAndroidハンドセットと低料金のモバイルデータの増殖により、ますます多くのインド人がインターネットとソーシャルメディアプラットホームのユーザーになっている。

ある下級裁判所は最高裁判所に対して「テクノロジーは経済成長と社会開発に寄与する半面、ヘイトスピーチやフェイクニュース、公序紊乱、反国家的活動、名誉毀損的投稿、などなどの違法行為がインターネットとソーシャルメディアの上で急増している」と伝えた。

画像クレジット: HABIB NAQASH/AFP/Getty Images

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

米FCCがT-Mobile/Sprint合併を承認

米国時間10月16日、米国連邦通信委員会(FCC)はT-Mobile(Tモバイル)とSprint(スプリント)の合併について投票し3対2で正式に承認した。The Vergeによれば、承認が共和党3、反対が民主党2と政党の方針どおりに賛否が分かれた。

TechCrunchではFCCにコメントを求めている。

今年4月8日、T-MobileとSprintは260億ドル(約2兆8267億円)の大型合併で合意したが、当然ながら反トラスト法に違反するのではないかという議論を呼び起こした。当事者企業はAT&TとVerizon(TechCrunchの親会社)というモンスター企業と競争するうえで合併は必須だと主張した。かなりのやり取りの後、7月に入って合併は司法省の承認を受けた。FCCの承認を受けたことにより、残るハードルは他国籍の訴訟だが、両社とも合併手続き完了以前に解決することを約束している。

The Vergeの記事によれば、民主党側のJessica Rosenworcel(ジェシカ・ローゼンウォルセル)委員とGeoffrey Starks(ジェフリー・スタークス)委員は反対票、共和党側のAjit Pai(アジット・パイ)委員長、Brendan Carr(ブレンダン・カー)委員、Michael O’Rielly(マイケル、オリリー)委員は賛成票を投じたという。

民主党側のローゼンウォルセル委員はこの決定に反対票を投じたとして、次のような声明を発表している。

このような合併によりマーケットが寡占的になれば何が起きるか我々はよく知っている。航空業界でも荷物の料金はアップしシートは狭くなった。製薬業界では数少ない巨大企業が生命に関係する薬剤を高価なままにしている。携帯電話企業が例外であると考えるべき理由はない。T-MobileとSprintの合併は競争を阻害し、料金を高騰させ、品質を下げ、イノベーションを妨害すると考えるべき証拠が圧倒的だ。

画像:Getty Images

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

アルメニアとディアスポラ(民族離散)の効用

世界は小さな国たちにとっては厳しい。技術が未来だということは、誰でも知っている。しかし、米国、中国、EU、そしてインドと競合していくときに、その未来の分け前をどのように確保すれば良いのだろうか?

少ない人口、限られた資本、潜在的な頭脳流出という三重苦に直面する中で、成功した国際ビジネスの経験者たちが次々にスタートアップを設立したり投資を行うような、技術的富と技術教育の繁栄したエコシステムを構築するにはどうすればよいだろうか?私の祖国カナダのように裕福で成功した国でさえ、しばしばこれに苦労している。

そこで、例えば想像して欲しいのがアルメニアだ(私はいまそこでこの原稿を書いている)、以前ソビエト連邦の一部だったこの地域は、コーカサス山脈の中で、あまり友好的ではない隣人たちに囲まれた人口300万人の小国となった。私がここに来たのは、アルメニア政府が参加費用を負担するかたちで、世界中で開催されているような、無数の大きな技術会議のひとつ、World Congress of Information Technology(WCIT、世界情報技術会議)を主催しているためだ。この会議でアルメニア政府は国際的な注目を集め、アルメニアの技術産業への投資を引き出したいと願っている。

これは現実離れした構想に思えるかもしれない。アルメニアは自身を「旧ソビエト連邦のシリコンバレー」と自称していて、その技術産業は昨年の「 ベルベット革命 」で重要な役割を果たした。とはいえ、それはまだ世界の比較的目立たない片隅にある人口300万人の国である。しかし、アルメニアには魅力的な秘密兵器がある。ディアスポラ(民族離散。海外に散らばった民族)だ。

20世紀にその祖国を襲った困難な歴史のおかげで、今ではアルメニア本国よりも多くのアルメニア人が、世界中に分散して居住している。ロスアンジェルスの数十万人のコミュニティも有名だ。それは「世界で最大かつ最も洗練されたディアスポラの1つ」である。もちろんそこには文化的な変容も見られる。だが同時に、ロサンゼルスやモスクワに、遠く離れた友人や親戚のいないアルメニア人を見ることはほとんどないと確信している。

このとても大きく緩やかに編み上げられた、ディアスポラネットワークの効果は重要だ。それは、時には直接的に、そしてしばしば間接的に、米国のクライアント、ドイツの大学、そしてロシアのパートナーたちへとつながる。ベンチャーキャピタリストスタートアップインキュベーターとの国際的なつながりもある。そして頭脳流出だけでなく頭脳流入にもつながっているのだ。それは、アルメニアが単なる人口300万人の内陸国というだけではなく、無意識の戦略によって世界中に離散した1000万人の文化が息づいているということなのだ。これは、とてもとても強力な立場である。

テクノロジーが分散コミュニティ間の絆を短縮し強化するにつれて、それらは文化的、財政的、そして最終的には政治的にさらに成長するだろうと、私は以前論じている。(そしてもちろん、技術は多くの派生産業を可能にする。WCITのスポンサーの1つは、急成長している洗練されたクラウドファンディングマーケティング会社で、旧ソビエトブロックの伝統的な強さをもつものではない)。アルメニア人のディアスポラは、この理論を検証するための自然な実験と呼ぶことができる。

この自然な実験を通して、アルメニアのテクノロジー、観光、およびその他のディアスポラが強化する分野を、この秘密兵器が大きく推し進め続けるかどうかが検証される。もしそうなったなら(私はそうなると思っているが)、次はどの分散コミュニティがその後に続くのかを眺めるのは、特に興味深いことになるだろう。そしてそれらが特定の国民国家と連携していくのかどうかを。

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(翻訳:sako)

トランプ弾劾調査はテック業界規制の棚上げにつながるかも

米下院のNancy Pelosi(ナンシー・ペロシ)議長は米国時間9月24日、トランプ大統領に対する正式な弾劾調査を開始すると発表した。今後予想される政治騒動は直接的にはテック産業に関係しないが、テック産業に関するいくつかの国レベルでの取り組みにおいて深刻な影響はあり得る。

もちろん弾劾は、政府がすべき業務を停止することを意味するものではない。しかし、すでに山積しているホワイトハウス内のTo Doリストの中で弾劾は最優先となる。これにより、くすぶっているサウジアラビアにおける衝突、移民や移民税関捜査局絡みの問題、そのほかソーシャルメディア規制のような数えきれないほどの問題や法的課題は脇に置かれるということになりそうだ。

トランプ政権とテック産業の関係は複雑だ。多くの人が、トランプが当選したのはソーシャルメディアのおかげと考えている。そしてトランプはホワイトハウスの主な広報手段としてTwitterをかなり愛用してきた。しかしトランプはまた、彼自身または保守党に対する偏見に加担しているなどさまざまな理由でFacebookやGoogleといった企業に対する悪口を繰り返してきた。

例えばこの夏を見ると、7月にトランプは「Google、そして同社の中国との関係に関して安全保障上の懸念があるかもしれないし、ないかもしれない」と話した。その翌週、彼はGoogleが「ヒラリー・クリントンに関するネガティブな話を隠し、ドナルド・トランプに関するネガティブな話をばらまいた」と具体的に指摘し、Googleが「かなりの違法行動」をとったと語った。ほどなくして彼は、Googleが260万〜1600万の票を不正操作したと非難し「Googleは訴えられるべきだ」とツイートした。

これらは数ある例のほんのひと握りだ。こうした発言はそれぞれ、大統領がそのときに何に注意を向けていたのか、あるいは何を告げられたのかを即座に反映している(例えば、票の不正操作の指摘では、ツイートの数分前にFox Newsが報告書について報道していた)。その一方で、そうした発言が最終的に政策と呼ばれるアクションに結びつくのは半分ほどだ。

Googleの独占禁止違反疑いについての複数の州における調査はホワイトハウスがけしかけたものではないようだが、連邦取引委員会(FTC)と司法省の調査は政府上層部から何らかの形で刺激があったというのは大いにあり得る。

しかしトランプはまた、そのほかのところでは少なくとも概念上、テック大企業の肩を持ってきてもいる。例えば、プライバシーとユーザー保護の法律についてだ。イリノイなどの州は何年もの間、企業にとって重荷となっているかなり厳しい法律を運用してきた。カリフォルニア州でも同様の法が施行されることになり、テック業界はもう十分だとして連邦の干渉を声高に求めている。個人を特定できる情報を広告会社に売るなどの問題に関しては連邦の法律の方が州のものより寛大で、州の法律ではなく連邦の法律のほうが力を持つというロジックだ。連邦の法律はGDPRのように幅広く、そして厳密に適用されることはないとされている。

こうしたテック企業の取り締まりについては一部で動きがあるものの、ホワイトハウスはまだ検討中だ。噂されているものとしては、FCCにソーシャルメディアの規制を担当させるというものだ。弾劾調査が始まること、そして2020年の選挙にこれが影響することから、トランプ大統領の注意が別のところにいくとテック企業は密かに安堵しているに違いない。

テックは国家の論争や取り組みの中心にあり続ける。しかし弾劾調査により、こうした厄介だが必ずしも喫緊ではない問題は棚上げされることになるだろう。

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(翻訳:Mizoguchi)

開発ツール会社ChefのCEOが態度を急変、移民・関税執行局の契約を更新しないと発表

先週金曜日の920に、米国移民・関税執行局(ICE)との9万5000ドルの契約を遂行すると明言した開発ツール会社ChefのCEOであるBarry Crist(バリー・クリスト)氏は、 態度を急変させICEとの契約は更新しないと米国時間9月23日のブログ記事に書いた。

「社内で慎重に反省・検討した結果、ChefはICEおよびCBP(税関・国境警備局)との契約を来年の満了後に更新しないことを決定した。現在の契約下の責任は全うする」とクリスト氏はブログに書いた。

さらに同氏は、9月20日にTechCrunchに話した固い決意と思われた立場を撤回したことにもなる。「これは我々が長い時間をかけてきたことであり、社内には意見の違う人たちもいるが、私は会社のリーダーとして経営チームとともに、これまで仕事を続けてきた相手との契約と関係を尊重する決定を下した」と当時クリスト氏は話していた。

本日クリスト氏は、契約に対する社内の強い反対の気持ちが彼の決断につながったことを認めた。この契約は2015年にオバマ政権下で始まったもので、国土安全保障省(DHS)におけるプログラミング方法を近代化することが目的だった。しかし、後にICEによる家族の引き離しや国外退去政策が非難の的になると、契約の終了を求める声が内部から(後に外部からも)持ち上がった。「家族引き離しや拘束といった政策は(契約当初には)存在していなかった。私も個人的にはこれを含む関連する政策には反対だが、多くの社員の進言にもかかわらず、態度を改めなかった。そのことを深く謝罪する」とクリスト氏は書いた。

さらに同氏は、この契約で得た売上を、当該政策の被害を受けた人々を支援する組織に寄付する意思も表明した。これはSalesforceが取った対応に似ている。昨年同社では、税関・国境警備局(CBP)との契約に対して618人の社員が抗議した。Salesforceはそれを受け、被害を受けた家族を支援する組織に100万ドルを寄付した。

先週のツイートで契約が暴露されて以来、ソーシャルメディアでは抗議運動が始まり、プログラマーのSeth Vargo(セト・バーゴ)氏が契約に抗議してオープンソースコードの一部をリポジトリから削除する事態にまで発展した。Chef社は社内外の抗議行動や数多くの非難をよそに、この契約の締結をつよく主張していると見られていた。

バーゴ氏はTechCrunchのインタビューに答え、彼はこれを道徳的問題であると話した。「ChefCEOは公式にこのような回答をしているが、自分たちのソフトウェアがどのように何の目的で使われているかを判断し、自らの道徳的指針に沿って行動することは企業の責任だと私は考えている」と彼は言った。クリスト氏はこの視点に合わせて意見を変えたものと思われる。バーゴ氏はCクリスト氏の最新の行動についてはあえて触れなかった。

関連記事:Programmer who took down open source pieces over Chef ICE contract responds

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

才能あるテック系個人を支援するEntrepreneur Firstがトロントに進出

Entrepreneur First (EF)は、チームをまだ組んでいない、そしてアイデアを温めている個人を発掘してスタートアップを立ち上げるのをサポートする「才能インベンター」だ。英国・ロンドンに本社を置いているが、このたびカナダに進出すると発表した。

EFが北米マーケットに進出するのは初めてとなる。EFは現在、ロンドン、ベルリン、パリ、シンガポール、香港、バンガロールに拠点を構える。

EFは資金1億1500万ドル(約124億円)調達のクロージングを2020年2月に予定していて、その後カナダ・トロントでローンチする。

この資金調達が発表されたとき、EFは新たな資金をグローバル展開の継続にあてると話していた。特に、今後3年間でさまざまなプログラムに参加する個人2200人超をサポートできるようになるとした。

これにより、ベンチャーがサポートする300社超の企業が興されるはずとのことだ。この数字は、マッキンゼーで同僚だった Matt Clifford(マット・クリフォード)氏とAlice Bentinck(アリス・ベンティンク)氏が2011年にEFを設立して以来、サポートしてきたスタートアップの3倍だ。

往々にしてアクセラレータと誤って呼ばれるが、EFは「チーム結成前」「アイデア実行前」の個人をサポートするという手法をとっているため、他のスタートアッププログラムとは異なる。つまりEFのプログラムで参加者は通常、共同設立者や会社を見つけることになる。そうしてできるスタートアップはEFなしには日の目を浴びなかったものだ。

EFの手法は、イグジットや資金調達の面からして、これまでのところ新たなタイプのベンチャーモデルとなっている。だが、1つの都市とエコシステムで展開しているEFのスタッフを他都市に完全にもってくるということはできないため、いかに規模を拡大するかについては疑問が残る。あるVCが私に言った通り、「マットとアリスの代わりはいない」からだ。

だが、GreylockのパートナーでLinkedInの共同創設者であるReid Hoffman(リード・ホフマン)氏はEFの規模拡大を確信している。GreylockはEFに投資していて、ホフマン氏は「EFが20〜50都市に進出して、面白いテック企業を創出するのに不可欠の存在となるはずだ」とTechCrunchに以前語っていた。

クリフォード氏の声明は以下のとおりだ。「第3の大陸でプログラムを立ち上げることで、世界で最も野心的な個人に今置かれた場所で会社を立ち上げるためのツールを提供するという目標の達成に一歩近づいた。トロントは、資金、そして才能の面で北米で最も急速に成長しているテックエコシステムのひとつであり、トロントでの展開は我々にとって次世代の野心的な創業者の登場を促す素晴らしい機会となる」。

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(翻訳:Mizoguchi)

Googleが欧州でクリーンなデータセンターに約3600億円投資

Googleは9月20日、30億ユーロ(約3600億円)を投じて欧州でデータセンターを拡大すると発表した。データセンターが環境に優しいものになるとしている。

同社はEUで2007年からこれまで70億ドルを投資した。今回の発表で注目されるのは、単なるデータセンターではなくクリーンエネルギーで稼働する点だ。

新しい投資を発表したブログでCEOのSundar Pichai(サンダー・ピチャイ)氏は、同社がCO2を排出しないカーボンフリーのデータセンターに注力していることを明らかにした。ピチャイ氏は同日、フィンランドのAntti Rinne(アンティ・リン)首相と持続可能な経済開発について協議した。

30億ユーロのうち、6億ユーロ(約720億円)をフィンランドのハミナで投資する。ピチャイ氏はブログで「持続可能性とエネルギー効率の点ですべてのデータセンターのモデルとなる」とした。前日の9月19日には、米国、南米、欧州で合計1600MW(メガワット)となる18の新しい再生可能エネルギー購入についても発表している。

関連記事:Googleは新たに18の再生可能エネルギー関連の契約を発表

ブログでピチャイ氏は、欧州の新しいデータセンタープロジェクトが前日に発表した再生可能エネルギー購入とどう関わるか説明した。

欧州における10の再生可能エネルギープロジェクトの立ち上げにより、弊社が購入する電力のほぼ半分が欧州からになる。電力購入契約によって新たに、ベルギーの洋上風力プロジェクトから、デンマークの5つの太陽発電プロジェクト、スウェーデンの2つの風力発電プロジェクトまで、EUで10億ユーロ(約1200億円)以上のエネルギーインフラ建設が始まる。フィンランドでは2つの新しい風力発電プロジェクトに取り組み、国内の再生可能エネルギー容量を2倍以上に増やす。フィンランドで事業を拡大するのみならず、データセンターのほぼすべての電力消費量をフィンランドのカーボンフリー電力でまかなう。

同社は新しいスキルの習得支援にも投資する。データセンターなどが求める新しい職種で必要とされる高度な技術の習得を促す。同社は欧州でこれまで500万人に実践的なデジタルスキルトレーニングプログラムを無償で提供しており、最近ヘルシンキにもGoogleスキルハブを開設した。

同社がクリーンエネルギーに関して発表したのが地球温暖化ストライキデーだったのは偶然ではない。地球温暖化ストライキデーは、勉強や仕事の手を止めて世界中で企業やリーダーに行動を促そうという日だ。Googleは今回の一連の発表で応えようとしている。

画像クレジット:Fredrik Skold / Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi)

Googleは新たに18の再生可能エネルギー関連の契約を発表

Google(グーグル)は米国時間9月19日、これまでで最大となる再生可能エネルギー購入の契約パッケージを発表した。これは、合計で1600MW(メガワット)にも達するパッケージで、米国、チリ、ヨーロッパにおける18件の契約にまたがるもの。この結果、Googleの風力と太陽光発電を合わせた最新の購入量は、約5500MWに達する。また、同社が関わる再生可能エネルギープロジェクトの総数は52になる。Googleによれば、今回発表した新しいプロジェクトが、新しいエネルギーインフラへの約20億ドル(約2160億円)の投資を促進するという。

米国では、ノースカロライナ、サウスカロライナ、そしてテキサスにある太陽光発電所から、合計720MWを購入することを明らかにした。チリでは、現地のデータセンターに電力を供給するために、追加として125MWを購入する。Googleの広報は、その理由を明らかにしていないが、 ヨーロッパ地域での詳細は、まだ明らかにしていない。それについては、同社CEOであるSundar Pichai(サンダー・ピチャイ)氏も登壇するフィンランドのイベントで9月20日に発表する予定だとしている。

今回の発表でピチャイ氏が明らかにしたところによれば、これまでのGoogleの投資の多くは、風力発電に対するものだっという。それに対し、今回発表した米国内の投資は、ほとんどが太陽光発電となっている。その理由は、太陽光発電のコストが下がってきているからだという。チリでは、同社は初めて太陽光と風力のハイブリッド発電に投資した。「風が吹くのは、太陽が照っているときとは異なる時間帯となることが多いので、それらを組み合わせることで、チリのデータセンターの電力は、毎日の大部分、二酸化炭素を排出しない発電で賄うことができます」とピチャイ氏は書いている。

Googleの発表の背景には、すでにAmazonが、2030年までに100%再生可能エネルギーで事業を運営し、10万台の電動ワゴン車を購入すると宣言したこともある。

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

オープンソースの父・リチャード・ストールマンがMITとFree Software Foundationの役職を辞任

コンピューターサイエンティストでオープンソースソフトウェアの推進者であるRichard Stallman(リチャード・ストールマン)氏が、ある学部のメーリングリストへのメールで、Jeffrey Epstein(ジェフリー・エプスタイン)の性的人身売買の被害者の一人を「完全に自発的だった」と書いたため、MITのComputer Science and Artificial Intelligence Lab(CSAIL、コンピューター科学と人工知能研究所)の客員サイエンティストの役職を辞任したことが明らかになった。ストールマン氏はまた、彼が1985年に創設した非営利団体Free Software Foundationの理事長および理事の座からも退いた

先週に掲載されたニュースサイトDaily Beastの記事によると、ストールマン氏は過去15年間の個人的なブログの複数の記事で、児童ポルノの合法化と承諾年齢の廃止を求めていた。

MIT CSAILの辞任については、同じく彼の個人的ブログで「MITのコミュニティへ、私は今ただちにMITのCSAILにおける地位から辞任する。私がそうするのは、一連の誤解によるMITと私への圧力のためである」と書いている。

MITはこれまで、エプスタインとの関係を詮索されていた。The New Yorker誌の調査によると、彼はMITメディアラボへの750万ドル(約8.1億円)の寄付を保証していた。その額は、これまでの開示額よりもずっと多い。その結果、ラボの所長である伊藤穰一氏が先週辞任し、MITはメディアラボとエプスタインの関係の調査を命じた。エプスタインは性的人身売買の罪で連邦裁判所の審理を待つ間、独房で死亡していた。

MITの理事長Rafael Reif(ラファエル・ライフ)氏は予備的所見の一部として、調査を委託した法律事務所が発見したRafael Reif宛ての書簡でライフ氏が、2012年に彼の寄付を感謝していることを認めた。2012年といえば、エプスタインが18歳未満の少女を売春目的で周旋して有罪を認めてから4年後だ。ライフ氏は「この書簡に署名したのは2012年8月16日のようだ。それは私が理事長になってから約6週間後だ。自分には思い出せないが、確かに私の署名がある」とコメントしている。

ストールマン氏のメールを先週公開したのは、機械技師でMITの同級生Selam Jie Gano(セーラム・ジエ・ガノ)氏だ。そのスレッドの全体はその後Vice誌が公開した

MIT CSAILのメーリングリストに送ったメールでストールマン氏は、エプスタインの性的人身売買の被害者の一人で当時17歳のVirginia Giuffre(ヴァージニア・ジェフリー)氏が、MIT教授の故Marvin Minsky(マーヴィン・ミンスキー)のヴァージン諸島への旅行の間、彼とセックスするよう命じられた件について「彼女は自分自身を完全に自分の意思で彼に提供したようだ」と書いている。そして「非難インフレーションのさまざまな例から私は、非難の中で『性的暴行』という言葉を使うのは絶対的に間違いだと結論する」とも書いている。

ガノ氏はストールマン氏が、学部学生も参加しているCSAILのもうひとつのメーリングリストに送ったメールも公開した。そこでストールマン氏は「『レイプ』の定義に、それが起きた国や、 被害者が18歳だったか17歳だったかなどの、些細な詳細が含まれるのは道徳的に馬鹿げていると私は思います」と言っている。

画像クレジット: Pacific Press/Getty Images

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

MITメディアラボがスキャンダルで消滅したら我々は本当に困るのだろうか?

マサチューセッツ工科大学(MIT)出身の友人が「メディアラボは再建できるのかどうかわからない」と書いてきた。これは例のNew Yorkerに掲載された暴露記事を指している。この記事で自殺した富豪のジェフリー・エプスタイン氏とラボのディレクターである伊藤穰一氏が、それまで認めていた内容よりさらに密接な関係があったことが発覚した。伊藤氏はただちに辞任し、メディアラボを巡っては大揺れが続いている。

メディアラボはテクノロジー世界で長い間、奇妙な位置を占めてきた。 自身のパンフレットによれば「それぞれ無関係な分野と考えられてきた研究を非伝統的なやり方で大胆にミックスことにより学際的文化を積極的に追求し、さまざまな境界を超越していく」と述べている。最初期にはメディアラボは社会的不適合者の集まりと見られることもあった。メディアラボのモットーは「デモか死か」であり、なにか動くものを作ることに最大の重点が置かれていた。

もちろん「社会的不適合者の集まり」だという考え方はすぐに改められた。スーパーエリートの集まるプレステージの高い組織とみなされるようになった。カウンターカルチャーと貴族主義の最高の人材が奇妙な具合に入り交じっていた。予算も2009年の2500万ドルから2019年の7500万ドルへと3倍に増えた。インフレ調整済みドル平価で計算すると1986年の創立以来10億ドルが投じられたとみてよい。

メディアラボはアカデミズムの組織でありながら同時にビジネス志向でもあると主張していた。しかし次のような点を考えてみよう。

  1. 創立は1986年であり、ムーアの法則がフルに威力を発揮し始めた時期だ。テクノロジービジネスは指数関数的な急激な成長を始めた。
  2. テクノロジーで世界最高のアカデミズムと自他ともに認める大学に設置された。
  3. ベスト・アンド・ブライテストな人材をよりどり集めることができた。
  4. この30年で10億ドルの予算を使った。

こうした要素を考えればメディアラボは…正直に言おう。「はるかに大きな成果を挙げてもよかった」のではないか?

メディアラボが達成した成果は驚くほど乏しい。こちらはスピンオフ企業のリストだ。トリビアクイズをしてみよう。この33年間のメディアラボの歴史で買収、合併なしに自力で株式を上場したスピンオフ企業は何社あるだろうか? 私が調べたかぎりでは、たった1社だ。しかも成功したのかというと、その判断にはかなりの疑問符がつく。Art Technology Groupが実際にソフトウェアを発表し始めたのはスピンオフ後6年もたってからだった(当初はコンサルタント企業だった)。株式公開は最初のドットコム・バブル時代で、後にOracleに買収されている。

もちろん自力上場に至らなくてもよく知られた企業はBuzzFeedなど何社かある。ビデオゲームのHarmonix、後にUpworkになってから消滅したElanceはギグエコノミーのパイオニアと考えられないこともない。 Jana、Formlabsk、Otherlab、Echo Nestというのもあった。それぞれに優れた着目の会社だと思うが、個人的な知り合いが関係していたという場合を除けばメディアで評判を聞いた記憶がない。
OLPC(すべての子供にラップトップパソコンを)は10年前に評判になったが今は誰も覚えていない。メディアラボの決定的な成功はE Inkだったが、1996年のことだ。

もちろんそれぞれ「なかなか優れた業績」には違いない。しかしメディアラボに対する我々の期待と比較すると乏しい成果だ。ベル研でもXerox PARCでもないのは言うまでもないが、Y Combinatorでさえない。しかも私はシリコンバレーの大半の人間とくらべてYCには冷淡なほうだ。

オーケー、なるほどスピンオフ企業が成功したかどうかは適切な判断基準ではないかもしれない。問題はメディアラボそのものの業績だという議論はあり得る。ではメディアラボ自身によるトップ30の業績 (PDF)を検討してみよう。E Inkが23年前の話だというのはすでに書いたが、これを別にすれば、テクノロジー世界に決定的な影響を与えた事例は見当たらない。すべてニッチな発明だ。世界に与えた影響はどこにあったのか?

我々の期待が高すぎたのか?

メディアラボは地道な業績よりカッコよさと派手なシズル感ばかり狙っているという批判は以前から出ていたし、最近も出ている。この記事は「パーソナル・フード・コンピュータは農業に革命をもたらすという触れ込みだが、実態は煙と鏡(手品)だ」と評している。この記事は初代ディレクター、ニコラス・ネグロポンテ氏を皮肉ったパロディーで、1990年代に書かれたものだ。しかし実際に読んでみれば、メディアラボの問題が非常に根深いことに気づくだろう。

お仲間支配の金権政治が実態だったという元メディアラボの研究者の証言が当たっているのかもしれない。建前にとどまらず、本当に能力が高くイノベーティブな人々を出身やコネを無視して集めていたら事態は違っていたかもしれない。そうであるフリをしていた目標にもっと近い成果を挙げられたのではないだろうか。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

全米50の州と領域の司法長官がGoogleに対する反トラスト法違反の捜査で合意

米国の州、領域を代表する司法長官50人がGoogleに対する反トラスト法違反の捜査を進めることで合意した。

合衆国最高裁判所の正面玄関に参集した司法長官を代表してテキサス州のケン・パクストン司法長官が声明を発表し、「この捜査はGoogleの広告ビジネスにおける慣行がテーマだが、他の問題も含まれる可能性がある」と述べた。

Googlなどテクノロジー企業が巨大化し社会や経済ヘの影響力を強めるに従い、反競争的ビジネス慣行から、ユーザーのプライバシー侵害、セキュリティー上の欠陥、政治的偏向まであらゆる側面で当局の監視の目が厳しくなっている。

先週はニューヨーク州司法長官がFacebookに対する捜査を開始している。

ニューヨーク州司法長官のレティーシャ・ジェイムズ氏は今回の合意について声明で次のように述べた。

Googleは我々の生活のあらゆる面をコントロールするようになっており、同社はデジタル経済の中心に君臨している。しかしインターネットを検索するまでもなく、デジタル企業がいかに強大であれ、消費者の権利を冒してよいことにならないのは自明だ。これがニューヨーク州がGoogleに対する超党派の共同捜査に参加した理由だ。われわれは反競争的行為によってGoogleが現在の優越的な地位を獲得ないし維持しているのかどうかを調べる。Facebookに対する場合と同様、Googleに対する捜査において利用できるあらゆる手段をを用いて真実を明らかにしていく。

米国におけるデジタル企業に対する反トラスト法捜査の状況

連邦通信委員会はFacebook

連邦司法省はApple、Google、Amazon

司法省は巨大テクノロジー企業全般を捜査

州司法長官は共同でGoogleに対する捜査を行うと発表

この件について取材続行中。

画像:Justin Sullivan

【Japan編集部追記】ワシントン・ポストの記事によればGoogleに対する捜査開始に合意、署名したのは48州とプエルトリコ、ワシントン特別区の司法長官、合計50人だったという。カリフォルニア州とアラバマ州の司法長官は参加しなかった。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

オラクル控訴で米国防省1兆円規模のJEDIクラウド入札勝者発表は延期

賞金が100億ドル(約1兆580億円)の場合Oracle(オラクル)の執念深さは見上げたものだ。米国防省が計画しているJEDIクラウドの調達プロセスについて、1年以上にわたってOracleは考えられるかぎりの法的手段を使って抗議を続けてきた 。しかしそのつどプロセスに問題があることの立証に失敗している。先月もOracleの訴えを連邦裁判所は棄却したが、それで諦めるOracleではなかった。

Oracleは米国を代表するコンピューティングサービスの1つだが、自分たちの利益が不当に脅かされていると感じれば泣き寝入りする会社ではない。特に連邦政府の調達が100億ドル規模とあればなおさらだ。米国時間8月26日に発表された訴訟は連邦請求裁判所(Federal Claims Court)の上級裁判官、Eric Bruggink(エリック・ブルッギンク)判事の判決に対する控訴だ。今回、Oracleの主張は1社の総取りとなるようなJEDIの調達プロセスそのものが違法だとしている。

Oracleの主席法律顧問、Dorian Daley(ドリアン・ダレイ)弁護士は声明で次のように述べている。

JEDI入札訴訟において、連邦請求裁判所はJEDI調達プロセスが違法であると判断したにもかかわらず、Oracleが当事者適格性を欠いているという極めて技術的な理由により訴えを棄却した。連邦調達法は、特定の必須の要件を満たしていないかぎり、JEDIのような単一勝者による調達を特に禁止している。

裁判所は判決付属意見で国防省がJEDI調達においてこの必要要件を満たしていないことを明確に判断した。また意見は、調達プロセスに多くの重大な利益相反が存在することも認めている。こうした利益相反は法律に違反し、国民の信頼を損うものだ。前例を形成すべき重大な例として、我々はOracleに当事者適格がないという結論は、法解釈として誤っていると信じる。判決意見自身がいくつもの点でプロセスの違法性を認めており、我々は控訴せざるを得ない。

昨年12月にOracleは連邦政府に対し、100億ドルの訴訟を起こした。この訴えは主にAmazonの元社員であるDeap Ubhi(ディープ・アブヒ)氏の調達プロセスへの関与が利益相反だとするものだった。アブヒ氏は国防省のプロジェクトに参加する前にAmazonで働いており、国防省の調達プロセスのRFP(仕様要件)を起草する委員会で働き、その後Amazonに戻った。国防省はこの問題を2回調査したが、いずれも連邦法の利益相反であった証拠はないと結論した。

先月、裁判所は最終的に国防省の結論に同意し 、Oracleは利益相反ないし利益相反が調達に影響を与えた証拠を示すことができなかったと判断した。 ブルッギンク判事は次のように述べている。

当裁判所はまた次のように結論する。すなわち調達プロセスを検討した国防省職員の判断、「組織的な利益相反は存在せず、個別人物における利益相反は(存在したものの)調達プロセスを損なうような影響は与えず、また恣意的その他合理性を欠くなど法の求める要件に適合しない要素はなかった」という結論に同意する。このため原告の訴えを棄却する。

OracleはJEDI調達のRFP仕様書が公開される前からあらゆる方法で不平を鳴らしてきた。ワシントン・ポスト紙の記事によれば、 2018年4月にOracleのプレジデント、Safra Catz(サフラ・キャッツ)氏はトランプ大統領に会ってJEDI調達の不正を訴えたという。 キャッツ氏はこのプロセスはクラウド事業のマーケットリーダーであるAmazonに不当に有利となっていると主張した。AWSは2位の Microsoftの2倍以上のシェアを誇っている。

その後OracleはGAO(会計検査院)に対しても検査要請を行ったが、GAOはRFP作成プロセスに問題はなかったと結論した。この間国防省は一貫して利益相反を否定し、内部調査でも違法性の証拠は発見されなかったと結論している。

トランプ大統領は先月、マーク・T・エスパー国防長官に「調達プロセスが不当にAWSに有利だ」という主張を再度調べるよう命じた。その調査は現在続いている。国防省は4月にAmazonとMicrosoftの2社をファイナリストとして発表した。8月末までに勝者を指名するはずだったが、抗議、訴訟、調査が続いているためまだ決定できない状況だ。

問題が困難である理由のひとつは調達契約の性格そのものだ。国防省向けクラウドインフラの構築は、10年がかりとなる国家的大事業であり、勝者となったベンダー(ただし契約には他のベンダーを利用できるオプトアウト条項も多数存在する)は100億ドルを独占するだけでなく、連邦政府、州政府が関連するテクノロジー系公共事業の獲得においても極めて有利な立場となる。米国のすべてのテクノロジー企業がこの契約によだれを流したのは不思議ではないが、いまだに激しく抗議を続けているのはOracleだけだ。

JEDI調達の勝者は今月発表されることになっていたが、上述のように国防省の調査及び各種の訴訟が進行中であるため、勝者を発表ができるまでにはまだ時間がかかるだろう。

画像:Getty Images

【Japan編集部追記】GAO(Government Accountability Office)は「政府説明責任局」と直訳されることもあるが、機能は日本の会計検査院に当たる。日本の会計検査院が憲法上の独立行政機関であるのに対しGAOは議会付属機関であり、連邦支出に関して民間からの検査要求も受け付ける。連邦請求裁判所(Federal Claims Court)は連邦政府に対する民事訴訟を管轄する。連邦裁判官のうち65歳以上で有給退職した裁判官が復職して事件を担当する場合、Senior Judgeと呼ばれる。上級裁判官と訳されることが多いがむしろ「年長、高齢」の意味。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

GoogleがProject Euphoniaの包括的な音声認識を支えるAIの詳細を発表

アクセシビリティに向けた新たな取り組みの一環として、Googleは5月のGoogle I/OでProject Euphonia(プロジェクト・ユーホニア)を発表した。これは標準的ではない発声を行う人や、障害を持つ人の発話を理解する音声認識を開発しようとする試みである。同社は、この新しい機能を可能にしてくれるAIの一部を説明する投稿とその論文を公開した。

問題を理解することは簡単だ。筋萎縮性側索硬化症(ALS)などの変性疾患によって生じる運動障害を持つ人の話し声は、単純に既存の自然言語処理システムでは理解されないのだ。

その様子は、自らも発話に問題を抱えるGoogleリサーチサイエンティストのDimitri Kanevsky(ディミトリ・カネフスキー)氏が、Googleのプロダクトの1つと対話しようとする以下のビデオの中に見ることができる(最後には関連する仕事であるParrotronの助けを借りている)。

研究チームはこのプロジェクトを次のように説明している。「ASR(自動音声認識)システムは、ほとんどの場合、『典型的な』音声を使ってトレーニングされています。つまり、発話障害や強いアクセントを持っていたりする少数派のグループは、同じような利便性を受けることができません。現在の最先端のASRモデルは、ALSによって中程度の発話障害しか持たない話者に対して高い単語エラー率(WER:Word Error Rates)を示し、実質上ASRに依存する技術の利用が不可能になっています」。

少なくとも、一部をトレーニングセットのせいにしていることは注目に値する。これは人間を識別したり、それどころか単に人間がいるか否かを判別するような他の場合でも、AIを高いエラー率へと導く可能性のある、暗黙的なバイアスの1つなのだ。肌の黒い人たちのような主要なグループを含めなかったというミスも、 癖をもった発話を行う人たちを含めなかったというミスも、どちらもより包括的なソースデータを使うことで解決を図ることができる。

Googleの研究者たちにとって、それはALSを持つ人たちから何十時間にもわたる音声を収集することを意味していた。だが、ご想像のとおり各人はそれぞれの状態によって異なった影響を受けているために病気の影響に対応することは、例えば単なる一般的ではないアクセントに対応することとは同じプロセスではない。

関連記事:Google I/Oはアクセシビリティ強化に全力、聴覚障害者にも電車でYouTubeを見るにも便利

標準的な音声認識モデルをベースラインとして使用し、いくつかの実験的なやり方で微調整して、新しい音声を使ってトレーニングを行った。これだけでWERが大幅に減少し、オリジナルのモデルに対して比較的少ない変更で対処することができたのだ。これが意味することは、新しい音声に対して調整する際にも、あまり強力な計算パワーを必要としないということである。

研究者は、特定の音素(「e」や「f」のような個別の音)に対してモデルの混乱が続くときに、2種類のエラーがあることに気がついた。1つ目は、意図されていた音素が認識されないため、単語も認識されないという事実があるということ。そして2つ目は、モデルは話し手が意図した音素を推測する必要があり、2つ以上の単語がほぼ同じように聞こえる場合は間違った音素を選択する可能性があるということだ。

特に2番目のエラーは、インテリジェントに処理できるエラーだ。例えば話者が「I’m going back inside the house」(家の中に戻ります)と言った際に、システムがbackの「b」とhouseの「h」を認識できなかったとしても、それが「I’m going tack inside the mouse」(ネズミの中を鋲で留める)と言うつもりだったという可能性は低いだろう。AIシステムは、人間の言語およびあなた自身の声または話している文脈に対する知識を利用して、ギャップをインテリジェントに埋めることができる。

しかし、そのためにはまだまだ研究が必要だ。現時点におけるチームの成果については、来月オーストリアで開催されるInterspeechカンファレンスで発表される予定の「Personalizing ASR for Dysarthric and Accented Speech with Limited Data」(限られたデータのもとで行う、構音障害とアクセントの強い発話に向けた自動音声認識のパーソナライズ)という論文で読むことができる。

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(翻訳:sako)

Amazonの顔認識技術による監視網

ACLU(米国自由人権協会)は我々に、昨年「Amazonの従業員が、同社の顔認識技術を売り込みむために、ICE(米国移民・関税執行局)の担当者と会った」という情報を教えてくれた。Amazonの副社長Brad Huseman(ブラッド・ヒューズマン)氏は後に「政府は最高のテクノロジーを採用すべきだと考えている」と語っている。そして先月には、Amazonが全国の警察と(カメラ付きドアホンである)Ring製品を使った「永続的な監視ネットワーク」の作成で提携したことを、Motherboardが明らかにした

耳タコだろうが、言わせてほしい「一体どうした、Amazon?」と。

Amazonの株主技術系従業員倉庫従業員、そして顧客たちのいずれもが、(顔認識技術の)RekognitionをICEに対して売り込むことへ抗議の声を上げている。特に500人を超えるAmazonの技術系従業員が抗議書簡に署名している。だがAmazonの経営陣はいまのところ、彼らに対して誠意を持って対応して行くようには見えない。

その代わりにAmazonは「Facts on Facial Recognition with Artificial Intelligence(」(人工知能による顔認識の事実)ページで、彼らの技術で唯一問題となるのは偽陽性(本当は違うものを間違って認識してしまうこと)の可能性であると自分自身を擁護している。そして及び腰で中途半端に以下のような提案をしているのだ「公共の安全と法執行のシナリオの中で、Amazon Rekognitionのような技術は、一致の可能性のある対象を絞り込むためにのみ使用されるべきです。顔面認識ソフトウェアは自律的に使用されるべきではありません」。

だが技術的な懸念は、オーランドにおけるRekognitionのパイロットプログラムが中止されたことからも、現実的なものなのである。しかし私は、テック企業たちが、バグを修正したりその技術を意図通りに動作させたりすること以上の部分には、まるで責任を持っていないかのように振る舞う態度に、うんざりしているのだ。その意図そのものが問題であることもあるからだ。

「私は、新技術の悪い使い方に対して、社会が免疫反応を獲得すると考えていますが、そのためには時間がかかるでしょう」とJeff Bezos(ジェフ・ベゾス)氏は語っている。今のところそれが現実だ。しかし当然のことながら、社会が免疫反応を獲得していない当面の間、悪用については特に慎重になるべきだ。さらに大切なことは、世界で最も裕福な人物は、新しい技術に対する社会の反応をより良く導いていく際に、自分自身の重要な役割を放棄してはいけないということだ。

問うべきは、Rekognitionの技術的な問題が解決できるかどうかではない。真に問うべきは、社会のあらゆる場所に存在するパノプティコン型(監視されている側はどう監視されているかがわからず監視する側は全方向を監視できるタイプの監獄)監視を可能にするために、政府や法執行機関にRekognitionを販売することが、世界のどの社会にとっても良いことかどうかということなのだ。「現在合法であるならば、大丈夫な筈だ」とか「民主主義制度が私たちを害から守ってくれるから、技術痛の私が将来のことを心配する必要はない」と言う態度は、危険な知的怠惰なのである。

現実には、法律は新技術への対応が非常に遅く、私たちの制度はますます硬化して麻痺している。なにしろシリコンバレーは他の文脈であなたに語りかけるのにあまりにも熱心だからだ。私たちの「免疫反応」を彼らに頼ることは、意図的な過失となる。もちろん、火のような技術は良いことにも悪いことにも使用できる。しかし雨季に比べて危険性の高い季節には、私たちは火に対して遥かに注意深くならなければならない。そしてそれに応じてリスク評価を調整するのだ。テック企業たちが、彼らの生み出すリスクに対する責任を取りたがらないことは、単なる心配のレベルを超えている。

既に触れたように、テック企業に対する、唯一の本当の、少なくともリアルタイムのチェックは企業自身の従業員によって行われるものだ。そのため、AWSの従業員たちが会社のポリシーに反対するのを見ることは心強いことである、だがAmazonが誠意をもって彼らに対応することを拒否するのではないかということが心配される。世界は、ベゾス氏とAmazonが、自社の技術の危険性に関する重要な質問を避けながら、他の部門に手渡してしまうことよりも、ましな対応をしてくれることを期待している。

Facebookには別の危険な物語がつきまとう。今では信じられないかもしれないが、それほど遠くもない昔には、彼らは広く尊敬され、信頼され、愛されてさえいたのだ。AmazonやFacebookのような会社に対する反発は、最初は過激派からのちょっとした難癖のように見える。だが時に、その苦情の小石たちは合わさって、突然軽蔑の地滑りとなって襲いかかるのだ。そうしたテックラッシュ(テクノロジーに対する反発)が、これまでのヒーローを徹底した近代的悪役へと引きずり下ろしてしまう前に、Amazonが光を見出すことを願っておこう。

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(翻訳:sako)

ケンブリッジ・アナリティカ記事を書いた記者が訴訟費用を賄うために資金調達を開始

金を払って不法に入手した何百万ものFacebookプロフィールの使用を通じて、2016年の米大統領選挙や英国のブレグジット国民投票に影響を及ぼすためにCambridge Analytica(CA)がいかにトランプ陣営に使用されてきたか、というニュースについては何百万もの言葉で綴られてきた。最近の我々のレビューや、この事件のNetflixのドキュメンタリー分析だけではない。 FacebookのCEOであるMark Zuckerberg(マーク・ザッカーバーグ)氏が議会の前に引きずり出され、複数の調査が今も続いているほど、この論争は大きなものになった。

ドキュメンタリー映画、そして現在も継続中のニュースの主要人物はピューリッツァー賞にノミネートされたCarole Cadwalladr(キャロル・キャッドウォラダー)氏だ。彼女はフリーランスのGuardian(ガーディアン)紙のジャーナリストで、CA、トランプ、そしてブレグジットにつながる複雑に絡まった糸を最初に解きほぐした人物だ。

キャッドウォラダー氏は最近、TED Talkで高評価を得た講演を行った。この講演はかなり共有された。そして講演の中で彼女は、ブレグジット運動の展開者で出資者である事業家のAaron Banks(アーロン・バンクス)氏がロシア政府と持った一連の「密かな会談」について英国議会が発行した証拠を繰り返した。「Facebook’s role in Brexit and its threat to democracy」というタイトルの講演は200万回超視聴されている。

ブレグジットキャンペーンの資金調達、そしてNigel Farage(ナイジェル・ファラージ)氏、Donald Trump(ドナルド・トランプ)氏の2016年の大統領選キャンペーン、2016年の米国の選挙へのロシアの影響のつながりを取り上げたキャッドウォラダー氏の記事により、バンクス氏(トランプ氏と結びついている)は英国家犯罪対策庁(英国版FBI)犯罪調査の対象となった。

バンクス氏は、彼の財政的、政治的つながり、特にNetflixのドキュメンタリーに引用されているロシアの関係者との会合に関する記載は十分な証拠のない主張だとして、キャッドウォラダー氏に対し名誉毀損の手続きを始めた。さらにバンクス氏は、彼女の記事を掲載した出版元やバンクス氏の件についての講演を主催したTEDといった、法廷闘争を展開するリソースを持つところではなくキャッドウォラダー氏個人を訴えている。

この名誉毀損と戦う間、彼女のジャーナリズムをサポートするために、そして彼女の調査のリソースを増やすためにキャッドウォラダー氏はGoFundMeキャンペーンを立ち上げた。彼女はまた100万ポンドの名誉毀損の慰謝料に直面するかもしれない。

キャッドウォラダー氏の弁護団はこの訴訟が「完全にメリットなし」と自信を見せる一方で、同氏(社員ではないフリーランスの記者)は7桁の数字になるかもしれない訴訟のコストで破産する可能性がある。

報道の自由組織が「ジャーナリストを黙らせる」ための「法律の乱用」と指摘している動きの中で、同氏が何カ月も訴訟にかかりっきりになることになるかもしれないということを意味する。

「我々が報道したものは広範にわたる調査で、今回の訴訟に駆り立てたいくつかの深刻な犯罪調査のきっかけになったが、アーロン・バンク氏はTEDやGuardian、Observerを訴えていない」とキャッドウォラダー氏は声明文で述べている。

「その代わりアーロン・バンクスは私を脅し、苦しめるようと明らかに意図的に個人としての私をターゲットにすることを選んだ。大富豪がこのように法律を使うことができるというのは極めて憂慮すべきことだ。これは私への攻撃であるだけではない。ジャーナリズムへの攻撃だ」。

仲間のジャーナリストや報道の自由の運動者は、前外務大臣のJeremy Hunt(ジェレミー・ハント)氏へのオープンレターの中、でカドワルドラー氏へのサポートを呼びかけている。この手紙では、バンクス氏の主張を「市民参加に対する戦略的訴訟(SLAPP)」「公衆の関心事を追うジャーナリストを脅して黙らせる手段」と位置付けている。

バンクス氏の広報で、Leave.EUの広報担当でもあるAndy Wigmore(アンディー・ウィグモア)氏は、この訴訟はカドワルドラー氏がこじつけで真実ではない主張を続けるのを阻止するためのものだ、と話した。

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(翻訳:Mizoguchi)

ホームレスの人がテックを必要とする時代、図書館の役割が変わろうとしている

図書館の暖かさと静けさは、居住場所の確保に悩む人を引き寄せるものだった。しかしこの10年、こうした施設に、より多くの責任が覆いかぶさってきた。図書館が提供するデジタルリソースがこれまでになくホームレスの人たちにとって重要になっているが、図書館はこの新たな役割について用心深く展開してきた。

ほとんどの都市部居住者が知っている、ホームレスの状況が多くの都市で危機的になっているということをここで改めて述べる必要はないだろう。ホームレス問題の原因と解決策はかなり複雑だ。

しかし1980年代の精神病院の閉鎖が、病気のホームレスのかなりの増加につながったことは記すに値するだろう。その数は1990年代に退役軍人によって増え、そしてほとんどの首都圏でみられた急速な住宅地の高級化と生活費の増大でさらに増えた。

こうした背景には、情報時代の興隆がある。William Gibson(ウィリアム・ギブソン)が絶えず発してきたエピグラムでは、情報時代という未来は皆に平等には来なかった。産業が新たに作り直されたように、ホームレスの人々も体系的に、そもそも彼らを寛大に扱っていなかったシステムから排除された。

しかし悪いニュースばかりではなかった。スマートフォンや広く使われるようになったWi-Fiの導入で、コミュニケーションや情報収集、エンターテイメントが可能になった。ホームレスの人が携帯電話で何かタイプしているところを見かけると私は二度見していた。携帯電話は「ラグジュアリー」なもので、こうしたホームレスの人たちは窮乏を装っているのかもしれないと思ったのだが、すぐにこうしたデバイスが非常に困窮した状態にある人にとって不可欠なものである、という考えに至った。

行政サービスや関連する援助組織は、シェルターのアップデート、電話番号、求人情報のリソース、書類作業のような重要な情報をオンライン、そしてモバイルフレンドリーなフォーマットででも展開している。米国デジタルサービスのようなプログラムが近頃展開されているが、彼らが改修しているインフラは往々にして築何十年というものだ。いま改修作業の真っただ中にある。

図書館も同様に変わった。20世紀に主流だった本が中心のモデルは、デジタルリソースが実在の物体と同じくらい重要であるハイブリッドなものへと移行した。ホームレスの人が図書館に来る理由は、レジュメをまとめたり、単に寒さをしのぐためだったりとそれぞれだが、かなりの数のホームレスの人が訪れていて、急激に広まっているリソースを共有している。

コンピューターやインターネットアクセスと同じくらいシンプルに考えるといい。パソコンはずいぶん前に、あなたがその前に座って半時間ほど作業をする、という存在から卒業したが、それでもほとんどの図書館で展開されているインターネットアクセスがこのモデルだ。また公共のコンピューターを使っているホームレスの人にとって判断のソースとなる。redditをブラウズしたりYouTubeを観たりするためだけにそうしたリソースをどうやって独占できるだろう。彼らは職を探しているのではないだろうか。だとしたら割り当てられた45分になったからといってその場を離れなければならないのだろうか。

図書館はいつだって教育の源だ。しかし情報を蓄えている場所から、無料でオープンアクセスを提供する場所へとシフトしたことから、目に付く存在になった。どのように情報が使われ、誰がこうしたサービスを必要としているのかという要素が相まって、単に目的だけでなくアーキテクチャの変容も含まれている。人々が訪れる場所というより、人々が来て過ごすという場所になりつつある。

こうした変容はすべての図書館や支所で平等に起こっているわけではない。小さくて資金も十分ではない図書館はひょっとするとシェルターやバス停のような存在に近く、確たる目的を持って図書館を利用しようとしている人以上に、ホームレスの人の方を引き寄せているかもしれない。こうした施設はあらゆる人に短時間の避難場所を提供することを想定していて、多くの人、そして時に開館から閉館まで過ごすような人に対応するだけの設備やスタッフを有していない。

しかし一部の図書館はアクセスを提供する方法や危機的な状況に身を置く人たちと接触する方法について、より積極的な取り組みを展開している。

「インターネットとWi-Fiに接続できるというのはホームレスの人たちにとって極めて重要だ」と SPL CommunicationsのディレクターであるAndra Addison(アンドラ・アディソン)氏は話した。「多くのホームレスがコンピューターを買うお金がなく、携帯電話やデバイスのデータ料金を払えない。インターネットとWi-Fiを使えることは仕事を探したり、学校の宿題を終わらせたりするのに大切だ。私たちの図書館員はホームレスの人が寝泊まりしている場所を訪れてWi-Fiのホットスポットやその他のリソースを提供している」。

この図書館は1000台近くのポータブルWi-Fiデバイスを所有していて、プログラムがスタートした2015年以来、2万7000回貸し出した。仕事に関係する電子メールにタイミングよく返事できるかどうか、あるいは苦しいときに家族と連絡を取れれるかどうかでは大きな違いがある。

SPLとサンフランシスコ公立図書館はまた、他のソーシャルプログラムも開始した。ホームレス危機が悪化したとき図書館にかなりの負荷がかかり、サンフランシスコ公立図書館は場当たり的に対処するのではなく問題解決に向けて取り組みを始めた。

これは、教育を受けたホームレスの人がよく集まる図書館支所のソーシャルワーカーが、時としてホームレスの人を怖がらせることになるやり方で接するのではなく、いかに継続的にサポートを提供するかに取り組むというものだ。図書館というのは情報につながるパイプのようなものだ。すでに人々が職探しや宿題をしたりするのに活用されている。そしてホームレスや精神疾患を抱えた人が必要としている助けを直接求める手段となってはいけない理由はない。

この目標を達成するために、図書館は最近刑務所から出てきた人、退役軍人、ティーンエイジャー、中毒に苦しんでいる人などに専門的に対応しなければならなかった。

「図書館は年齢やバックグラウンド、収入レベルに関係なくすべての人を受け入れ、サービスを提供する。図書館はまた、サービスを十分に受けていない人、住む場所が不安定な人をサポートすることに特に力を入れている」とアディソン氏は話した。もしそれがミッションなのなら、そうなのだろう。今日のミッションが10、20、50年前と異なっているようなら、それは我々が首尾よくモデルを徐々に発展させていることを意味する。

コンピューター、スマートフォン、インターネットはこうした変化のコアな部分となる。その理由は、これらが近年使われているものだからというだけでなく、幸運な人と同様に不運な人にとってのアクセスを体系的に改善する可能性を持っているからだ。またそうした変化は、テックの発達がユートピアを築くと信じている人の目が永遠に上や外を向いているときは痛みを伴うものだ。

もし我々が真にテックにおいて包括的な環境を築こうとしているのなら、図書館だけが受け入れなければならない機関ではない。スタートアップやファンディング、そしてハードウェアメーカーでさえ、上層の人にアクセスするだけでなく、最下層を持ち上げるための責任を果たすことを考えるべきだ。

この記事は、ニュース機関が全米のホームレス問題の原因と解決法にフォーカスするという、年間を通じて展開されるSF Homelessness Projectの一環として書かれた。

イメージクレジット:Matt McClain/The Washington Post / Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi)

アップルが米国企業の太陽エネルギー利用を先導

Apple(アップル)は、テクノロジー企業が炭素排出量を相殺するために再生可能エネルギープロジェクトの開発を強化する中で、太陽エネルギー利用において先導している。これは、米国における主要な太陽光発電事業者を集計した最新のSolar Energy Industry Association(SEIA)による声明だ。

Appleは昨年、400MW(メガワット)の太陽光発電施設を設置し、米国のすべての企業をリードした。

SEIAで社長兼CEOを務めるAbigail Ross Hopper(アビゲイル・ロス・ホッパー)氏は、「経済的な意義から、トップ企業はクリーンで信頼性の高い太陽エネルギーへの投資を増やしている」と述べている。「企業が気候変動と戦い、雇用創出や地域経済の活性化のために太陽エネルギーを利用するようになれば、それへの投資はさらに重要なものとなるだろう」。

米企業の太陽光利用上位10社のうち、4社はハイテク企業だ。Amazon(アマゾン)はSEIAが発表した太陽光利用事業者にて2位にランクインした。データセンター企業のSwitchと検索大手のGoogle(グーグル)はそれぞれ5位と6位となった。

Amazonで持続可能エネルギー部門のディレクターを務めるKara Hurst(カラ・ハースト)氏は、「人為的な気候変動の原因を減らすために重要な役割を果たすことはAmazonにとって重要な責務だ」と述べている。「再生可能エネルギーへの大規模な投資は、地球規模での二酸化炭素排出に対処するための重要なステップだ。我々はこれらのプロジェクトへの投資を継続し、今年以降の追加投資も期待している」

太陽光発電の価格は下がり続けており、米国では太陽光発電の導入と規模が拡大している。


SEIAによれば、 過去3年での太陽光発電の導入量はこれまでで最も増大した。合計で7GW(ギガワット)の太陽光発電が商業施設に導入され、これは140万世帯ぶんの電力に相当する。

もちろん、企業が気候変動に真剣に取り組んでいることを示すには、これらの数字をさらに大きく増やす必要がある。また、再生可能エネルギー事業の導入を進めている企業の成功を認識することも重要だ。これらの強大な産業、技術(そして最終的にはすべての機関)の目標は、可能な限り完全な脱炭素化に近づくことである。

近年の排出量の多い消費習慣から脱するまで、世界は10年かかった。太陽光の利用は正しい方向への一歩だが、それはまだ一歩にすぎない。

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(翻訳:塚本直樹 Twitter