東芝の半導体事業売却、2兆円でBainと合意――コンソーシアムにはAppleも参加、WDは反発

東芝はパソコンやスマートフォンに大量に使われているNANDメモリーの供給者として世界第2位だ。東芝はその将来を決定する重要な要素である半導体チップ事業をめぐる長い物語が終わらせるために大きな一歩を踏み出した。東芝はチップ事業を2兆円(約180億ドル)で売却することでBain Capitalをリーダーとするコンソーシアムと正式に合意した(リンク先はPDF)。 このグループにはAppleも加わっている。

今月初め、東芝の取締役会はアメリカの有力投資ファンドKKR(Kohlberg Kravis Roberts)と日本の公的ファンド2社による買収提案を拒否し、Bainグループを売却先とする基本路線が決定されていた。 今回東芝の取締役会は正式に契約締結に合意した。

Toshibaは原子力関連事業を展開していたWestinghouse事業部が破産したことによる巨額の損失をカバーするため、TMC(Toshiba Memory Corporation 東芝メモリ株式会社)の売却先を熱心に探してきた。損失の穴埋めができない場合、来年、東芝は東京証券取引所への上場を廃止されるおそれがあったからだ。

今回の決定は単に東芝にとってばかりでなく、広くテクノロジー業界一般にとって大きな意味がある。AppleはライバルのSamsungが東芝を巡る問題から利益を得ることを恐れていた。Samsungは世界のシェア40%を占め、メモリーチップでは世界最大の企業となっている。AppleはSamsungの市場支配を許さないために巨額の資金を用意した。報道によればBainはAppleに70億ドルの出資を求めたという。

TMCの売却自体は早くも今年の1月には話題となっていた。しかしGoogle、Amazon、Foxconnなどの有名企業を含む多数の応札者が現れたため、決定にはかなりの時間がかかることとなった。

東芝はBain Capitalをリーダーとするコンソーシアム、PangeaにTMCを売却するが、TMCは東芝の子会社として事業運営を続けることとなる。PangeaコンソーシアムにはBainに加えて、日本の光学機器メーカーHoya、韓国系半導体メーカーのSK Hynix、アメリカからはApple、Kingston、Seagate、Dellがそれぞれ出資する。

東芝本体も3505億円(31億ドル)を再投資する。Bain Capitalが2120億円(18億ドル)、Hoyaが270億円(2億4000万ドル)、SK Hynixが3950億円(35億ドル)、アメリカ企業が合計で4155億円(37億ドル)をそれぞれ出資する。〔PDFによればコンソーシアムはこのほか6000億円を銀行等から借り入れる〕。

コンソーシアムは東芝とHoyaに50%を超える議決権を与えることで合意した。これは日本政府による規制をクリアするための対策だ。また韓国の半導体企業であるSK HynixはTMCの競争力に影響を与える各種知財へのアクセスをファイアウォールで遮断されることになる。

ただし、東芝とコンソーシアムの間で正式な合意がなされたものの、これで売却が決着したわけではない。

まず日本の独占禁止法、証券取引法に基づく承認を得る必要があるし、東芝とWD(Western Digital)の間では訴訟が続いている。

グループのSanDisk事業部を通じてTMCと提携関係にあったWDは、ライバルの半導体メーカーおよびクライアント企業がTMCを所有することはWDの「競争力に悪影響を及ぼす」としている。当初WDはTMC事業の売却に対する拒否権を要求した。後にKKRと組んでTMCの買収を提案したが、不成功に終わっている。東芝とWDはNANDメモリーを製造する3つ合弁事業の処理を巡って法的な争いを続けているが、コンソーシアム側では(法的決着が)「どうであろうと買収は続行される」としている。

東芝では2018年3月までに買収が完了することを望んでいる。これは日本では4月から新事業年度が始まるからだ。東芝としては東京証券取引所から上場廃止の処分を受ける可能性はできる限り排除したいということだろう。

画像: Wiennat Mongkulmann/Flickr UNDER A CC BY-SA 2.0 LICENSE (IMAGE HAS BEEN MODIFIED)

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

ゲイツ、ザック、ベゾスらがVillage Globalを支援――スタートアップ育成のシード・ファンドがスタート

Y Combinator出身のスタートアップ紹介サイト、Product Huntの社員1号、Erik Torenbergは有望なスタートアップを見つけて世界に紹介するだけでなく、自ら投資しようとしている。今日(米国時間9/26)、静かにスタートしたVillage Globalは、シード資金とプレ・シード資金を最初期段階のスタートアップに投資することを目的とするベンチャーファンドだ。

このファンドは起業家に資金を提供するだけでなく、起業家と世界的に有名なメンターとを結びつけようとしている。Facebookのマーク・ザッカーバーグ、Amazonのジェフ・ベゾス、LinkedInのリード・ホフマン、Googleのエリック・シュミット、Yahooのマリッサ・メイヤー、Microsoftのビル・ゲイツといったスーパースターがリミッテッド・パートナー(LP)として、またアドバイザーとしてVillage Globalに加わっている。

Village Globalのパッケージ、Erik Torenberg

SEC〔アメリカ証券取引委員会〕の規則によりベンチャーキャピタリストは資金調達中のファンドについて公に論ずることを禁じられているためTorenbergはわれわれの取材に答えることを控えた。Village Global自体はファンドの規模について明らかにしなかったものの、同社が規則に従って6月にSECへ提出した書類をTechCrunchが調べところによれば、調達目標とする金額は5000万ドルだ。ただし、資金調達が完了していないため、実際に集まった資金の総額はまだ分からない。

上に挙げた以外にも前ニューヨーク市長、マイク・ブルームバーグ、VMWareのファウンダー、ダイアン・グリーン、DisneyのCEO、ボブ・アイガーなど数多くの著名人がこのファンドに加わろうとしている。皆大富豪だから、目的は利益ではなさそうだ。Village Globalは事業を紹介するリリースで「こうしたイノベーターたちはスタートアップ・ゲームへの関心を失っていない。彼らは自らの企業運営の経験からさまざまな知恵を起業家に伝えたいと考えている。同時に次世代の起業家たちとの交流を通して新たな洞察を得ようとしている」と書いている。

実際、ここに名前を挙げたテクノロジー界の巨人たちがVillage Globalに信頼を置く理由は、TorenbergがProduct Huntを通じて「草の根」的に次世代の起業家を熟知しているからだろう。

ホフマンと共著でスタートアップの戦略の教科書、スタートアップ シリコンバレー流成功する自己実現の秘訣(日経BP)(The Startup of You)を書いた後、ホフマンの側近としてLinkedInに加わったベン・カスノーカがVillage Globalのチームに加わった。またパートナーには IACの事業開発担当幹部、500 StartupsのIR部門の責任者、Queensbridgeのパートナーを歴任したAdam Corey、Cheggの最高ビジネス責任者、Harvard Business Schoolの客員起業家、Anne Dwane、SuccessFactorsの前副社長でCanaanのパートナー、Ross Fubiniなどが含まれる。

最初期のスタートアップへの投資を目的とするため、Village Globalはさほど巨額の資金を集めたりAndreessen HorowitzやGV(以前のGoogle Ventures)のような大規模な組織なしに意味のある影響を与えることができる。人材獲得や組織のデザインの面でも負担が軽いはずだ。その代わり、Village Globalはテクノロジー界のスターをアドバイザーとして網羅しようとしている。 【略】

Village Globalでは一般のベンチャーキャピタルのように少数の中心的メンバーがすべての投資の決定を行うのではなく、幅広いスカウトのネットワークを通じて行おうとしている。この「スカウト・ネットワーク」のリーダーにはYouTubeのVRの責任者、Erin Teague、Quoraの副社長、Sarah Smith、Dropboxの社員1号、Aston Motes、Target、Hilton、 Verizon[TechCrunchの親会社]の取締役を務めるMel Healeyなどがいる。

Village Globalのビジネスモデルはスタートアップの起業は投資家にとって二極化―大成功を収めるかゼロになるかで、その中間が少ない―という現実を前提としている。Village Globalはスタートアップのスカウトに有利な条件を示しているが、これはいくつかの大成功ですべての投資の元を取ろうという戦略だろう。

上場や買収などにより現金化に成功し資産を築いたファウンダーなど富裕な個人が続々と初期段階のスタートアップへの投資に参入してくる現状なのでこの分野は今後激しい競争にさらされるはずだ。しかし幅広いネットワークとテクノロジー界のスターをメンターに擁することでVillage Globalから次のユニコーン〔企業価値10億ドル以上のスタートアップ〕が生まれるなら、健全なエコシステムを築くことができるだろう。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

SoftBank、評価額51億ドルでSlackに巨額投資 

Slackが新たなラウンドで大型の資金調達を実施した。評価額が50億ドル以上と伝えられる今回のラウンドをリードしたのは日本のSoftbankで、同社はこのところありとあらゆるテクノロジー企業に投資している。今回の投資も総額1000億ドルと伝えられるSoftBankの巨大なビジョン・ファンドからのようだ。

SoftBankは最近のシリコンバレーの大型投資案件の多くに参加しているが、今回はビジネス向けコミュニケーション・ツール、Slackの2億5000万ドルの資金調達ラウンドをリードした。このラウンドで、Slackは「人気があるといってもしょせんシリコンバレー周辺の現象」という通念を打ち破り、世界的なビジネス・アプリへの道を歩む可能性を示した。Slackはスタート当初は誰でも使えるシンプルさを売り物にしたチャット・サービスだったが、今や大企業のユーザーも多くなり、これに伴ってMicrosoftやAtlassianといったビジネス・ソフトの有力プレイヤーがひしめく競争の激しい市場に参入しつつある。

Slackが大型資金調達を実施するらしいという噂は以前から流れていた。われわれも今年の7月に同社は5億ドルのラウンドを計画しているという記事を掲載し、Amazonが90億ドルでSlackを買収する可能性も報じた。そうした背景からすると今回のラウンドはだいぶ規模が縮小されたことになる。

Slackは昨年アップデートを頻繁に繰り返しながらプロダクトを拡充させていった。この「コツコツやる」方式の改良は実を結びつつある。たしかにSlackの人気はシリコンバレーで非常に高いが、同社はニッチ・プロダクトという地位から脱却して成長を続け、ビジネスにおける共同作業の標準的なプラットフォームとなるべく努力をしている。今月、Slackは1日当たりユーザーが600万人、1年単位の課金額(annual recurring revenue)が2億ドルを超えたと発表した。当初のロケットスタートほどのスピードではないにしても、Slackの成長の勢いは相当のものだといえる。

昨年、MicrosoftはSlackの買収をかなり検討したもようだ。情報源によればこのときの会社評価額は80億ドルだったという。しかしMicrosoftは結局、傘下のSkypeを改善する方を選んだ。今月、MicrosoftはSkypeをアップデートして他組織のゲストも共有チャンネルに参加できるようにした。

Slackは買収ではなく資金調達ラウンドの実施を選び、Thrive Capitalから38億ドルの評価額で投資を得た。 つまりSlackにとって大型の資金調達ラウンドはこれが最初ではない。上で触れた噂のようにこのところSlackは熱い注目の的だったが、結局、噂よりは着実な評価額でのラウンドの実施となった。Slackに予想される次年度売上高と評価額の比は25倍程度だ。もちろん評価額には健全な成長が続くという前提とのれん代も含まれているはずだ。

Slackは今月に入って複数の組織のメンバーが参加できるチャンネルを開設した。開発に1年以上かかったものの、これは機能の自然な拡張であり、かつある種の口コミによっ企業ユーザーを拡大するという狙いも込められている。Slackは今後もさらに大企業の注目を集める機能を開発していくものと思われる。

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営業の最終過程を管理するサービスApttusが$55Mを調達、次はIPOか

Salesforce上の見積請求管理サービスApttus日本)は今やユニコーン企業だが、このほど5500万ドルの資金調達ラウンドを発表した。これは同社の、IPO前の最後のプライベート投資になるものと思われる。

CEOのKirk Krappeは上場についてまだ明言しないが、今日(米国時間9/13)のラウンドは今後の投資家の信任を獲得するだろう、と述べた。“バランスシート上に一定量の流動性が必要である、と判断した。企業が上場や買収に臨むときは、投資家たちがその企業の確実な流動性を求める。流動性は、企業を良い位置につける”、と彼は説明する。“弊社の成長は今でも大きいが、最後の手早いプライベートラウンドをやるのが賢明かつ慎重と言えるだろう”。

5500万ドルのラウンドをリードしたのは、インドのシステムインテグレーターWiproのプライベート投資部門Premjiだ。これまでの投資家Salesforce, K1, Iconiqも参加した。

今や13億ドル(2016/9現在)というユニコーン評価額の同社は、これで累計調達額が3億2900万ドルになる。最近では、投資家を国際的に求めることにも果敢だ。たとえばシリーズCの1億800万ドルには、Kuwait Investment Authorityが投資家として参加した。シリーズDの8800万ドルには、サウジアラビアからの投資も含まれる。

バックにSalesforceがいることは大きい。2015年の終わりには、SalesforceがApttusのライバルSteelBrickを買収して割りを食った形になったが、Apttusはその後Microsoft Dynamics用のバージョンを作るなどして独立を模索した。しかし今ではその傷もすべて癒え、今度のラウンドではSalesforceが投資家として戻ってきた。

Krappeによると、Steelbrickの買収によってSalesforceとの仲がこじれたわけではない、という。“彼らは小さなコンペティターを買ったけれども、弊社の同社との関係は一貫して良好であり、今でもうちの仕事の大半はSalesforceの上でやっている”、と彼は語る。

見積〜請求〜回収の全過程を管理するApttusのサービスは、営業過程の重要な部分を担う。営業が顧客企業との関係を築くと、その対話過程をSalesforceに記録するが、実際に最終的な売買契約の過程(本番の見積提出以降)に入ると、企業はApttusなどのソフトウェアを利用して、見積書の作成や、契約書の生成、そして最後の代金回収までの流れを管理していくことになる。〔quote-to-cash, 見積から現金までのサービス、と言う。〕

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ソフトバンク、滴滴らUberに大型投資へ――会社評価額は700億ドル前後

日本のソフトバンク、アメリカの投資グループ、Dragoneer、中国最大のライドシェア・グループ、Didi Chuxing(滴滴出行)はジョイント・ベンチャーを通じてついにUberへの投資を実施することになるという。

情報源がTechCrunchに語ったところによれば、Uberに対する株式公開買付けの実施は今月末を目標として準備が進められており、 これにはUberへの直接投資に加えて社員、初期投資家の株式の買い上げも含まれるという。

Uberに対する大型投資の提案が取締役会で検討されていることが最初に報じられたのは1月前のNew York Timesの記事だった。TechCrunchが得た情報によれば、この投資は実施される可能性が高いだけでなく、何千人にも上る社員の売却可能な持ち株を買い上げるという株式投資の歴史上、最大となる市場外取引を含むことになりそうだ。

BloombergはUberは$20億ドルから100億ドルに上る投資を受け入れることになるだろうと報じていた。TechCrunchの得た情報では、投資額はこの数字の上限近く、80億ドルから100億ドルになるもようだ。

投資プロジェクトをリードするのはDragoneer、Didi、ソフトバンクだ。ことにソフトバンクはビジョン・ファンドの1000億ドルの資金が利用できる。しかしGeneral Atlanticも参加することになるという情報を得ている。この投資を実施するために特別の組織(special purpose vehicle)が組成されているという。

Uberはこの問題に対するコメントを避けた。

今回の投資ラウンドはきわめて重要なものとなる。投資額そのものも巨大だが、非公開企業であるUberにとってこのラウンドの会社評価額は700億ドル前後になる見込みだからだ。最近のトラブルにより、Uberの企業文化について正式の調査が行われ、その結果、共同ファウンダー、CEOのトラビス・カラニックを含む多数の幹部がUberを離れることとなった。これによりUberの企業評価額は下がるだろうという観測がなされた。しかし現実には大幅にアップしたことになる。

また今回の投資が実現すれば、初期の投資家と多くの社員が持ち株を現金化するチャンスを得る。Uberは長年にわたってこうした持ち株の売却に制限を加えており、社員はストック・オプションなどの形で得た報酬を現金化することが困難だった

Uberのポリシーが厳しい批判を浴びるようになり、今年に入って同社は株式の買い戻しを実施した。情報によれば、Uberは先週、2度目の買い戻しを完了した。対象は持ち株を最大20%まで売却する権利を得ていた数百人の社員だという。

今回報じられた投資が実現すれば、保有株式の現金化(liquidity event)についてUberが受けていた圧力を緩和するのに大いに役立つだろう。新CEOのダラ・コスロシャヒはUber社員に対して「株式上場は18ヶ月から36ヶ月先」だと発言している。

2010年以来、90億ドルを投資してきた株式保有者はこの新たな大型投資の提案を喜ぶはずだ。株式の買い上げが実施されれば紙の上の価値に過ぎなかったものが現金化され、数多くの富豪が誕生するだろう。

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ソニー、Acutronic Roboticsに投資――同社のハードウェア・ロボットOSを採用へ

ソニーは傘下のベンチャーキャピタル、Sony Innovation Fundを通じてAcutronic RoboticsのシリーズAラウンドに参加した。またソニーはAcutronicのハードウェア・ロボットOS(H-ROS)をロボット事業部で採用するとしている。今回の投資はDARPAの投資に引き続いて行われた。Acutronicのプラットフォームはハード、ソフトを通じてロボット業界の標準となることを目標としている。

Acutronicは2016年に設立されたスタートアップでロボットを構成するハードウェアとソフトウェアを標準化し、目的に応じて組み合わせることによってさまざまな現場に適合する新たなロボット・システムを容易に開発できるようにする。同社では標準化された汎用部品を多数開発し、LINUXベースのソフトウェアと組み合わせることで業種、現場のニーズに合わせたロボット・システムを開発している。これらのプロダクトはアプリケーションに合わせて再利用可能であり、新しい目的に応じて再構成ができる。

AcutronicのシリーズAラウンドの規模、ソニーの投資額などは発表されていない。しかしソニーが自社のロボット事業部でAcutronicのプラットフォームを採用すること、またDARPAも出資していることなどから考えると、現在、細分化されているロボット関連市場を再編、統合することに対する関心は大きいものと考えられる。

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資金調達に良い季節はあるのか?――「夏は投資活動が停滞する」説を検証

【編集部注】執筆者のJason RowleyはベンチャーキャピタリストでCrunchbase Newsの記者。

いよいよ夏本番(英語で言うところのドッグ・デイズ)だ。夏と聞くと、ビーチや裏庭でのバーベキューを思い浮かべる人もたくさんいるだろうし、私たちのようにエアコンが効いた部屋で外の熱から逃げようとする人もいるだろう。

しかしスタートアップやベンチャーキャピタルの世界では、夏は少し違う意味合いを持つ。

この記事では、「夏に投資活動が停滞する」というについて検証したい。昨年も同様の記事を公開したが、今回は少しひねりを加え、ベンチャーキャピタリスト/ベンチャーキャピタル(VC)の投資活動の季節性だけでなく、VCにとっての投資家(リミテッド・パートナー=LPと呼ばれる人たち)の活動についても調査した。つまり、VCがいつ資金を調達し、いつその資金を企業に投資するのか、というのが今回のトピックだ。

資金調達を考えているファウンダーやVCのためにも、調査方法や結論に入る前に、まずは調査結果を以下に紹介する。

ファウンダーはいつでも資金調達できる

アメリカ国内のファウンダーは資金調達のタイミングを気にしなくてもよいので安心してほしい。少なくともここ数年の動向を考えると、夏に投資活動が停滞するとは言えないことがわかった。1年を通して見ると、月によって多少の上下はあるものの、資金調達ラウンドを開催する上で最適な月というのは存在しない(※脚注)。

つまり、常に資金を調達するにはいいタイミングということだ。

下のグラフは、過去6年間のアメリカ企業に対するVC投資を月別にプロットしたものだ。Y軸は全体に占める各月の割合を示しており、もしも各月の投資件数が同じであれば、全てのバーが8.33%(100%÷12か月)になる。

年のはじめと終わりには多少凹凸があるものの、全体としては6月辺りを頂点とする緩やかなアーチを描いている。この傾向は昨年の調査結果とも合致する。

しかし、一見綺麗にまとまっているように見えるこのグラフの裏で、実際のデータはかなりバラけていた。下のグラフには、平均をとる前の各年のデータを示している。

VCのファンドは年始に集まる傾向

スタートアップは1年を通して安定的に資金調達できることがわかったが、ベンチャーキャピタルの状況は異なる。VCがファンドのジェネラル・パートナー(=GP)として資金調達を行うタイミングには偏りが見られた。

彼らは『不思議の国のアリス』で言うところの「はじめから始めろ」という考えに従うかのごとく、第1四半期にファンドを設立する場合が多い。

下のグラフは、11年間におよぶアメリカのVCの資金調達活動をまとめたものだ。

グラフが示す通り、第1四半期にかなりの割合のファンドが設立されている。しかし、GPがLPから資金を調達するタイミングには季節性が見られる一方で、第2四半期以降に組成されるファンドの数もそれなりにあるのがわかる。

Crunchbaseの日付の扱い方に一部問題(後述の調査方法参照)があったため、一定数の企業は分析対象から外しているが、この調整はVCの資金調達について調べる上でかなり効果があった。というのも、VCは新しいファンドの情報を公にしないことが多く、さらに当局へ提出する資料も比較的簡単ものであることから、何月何日にファンドが設立されたという情報はなかなか手に入れるのが難しいのだ。多くの場合、設立年のみがわかっており、その際Crunchbaseではその年の1月1日が設立日として登録されてしまう(さらにクローズ日が別の日であっても、ファンドの申請書類上は設立日を1月1日とするVCがたくさん存在するという可能性もある)。

いずれにしろ、1月1日を設立日とする371ファンドと、各月の初日に設立されたとされる数百ファンドは対象から外されている。この調整は、VCの資金調達タイミングの分布へ統計的に有意な影響を及ぼすものではない。

季節性が存在する(あるいはしない)理由

上記の通り、VCの投資活動が夏に落ち着くという傾向は見受けられず、よく言われる”夏の停滞期”というのは存在しないことがわかった。確かに7月は若干投資件数が落ち込んでいるものの、全体を見ると8月以降も投資件数が落ち込んでいるわけではなく、7月の減少具合も他の月同士を比べたときの変化とそこまで大差ない。

しいていうならば、VCも一般的なアメリカ国民と同じように、家族の顔を見に帰省したり、サンクスギビングの残り物を消費したりするのに忙しいため、11月はスタートアップの資金調達件数が減る傾向にある。

しかし繰り返しになるが、その減少度合いも平均値(約8.33%)に比べてそこまで大きいとは言えず、投資件数は1年を通して比較的安定している。恐らくその理由は、少数の魅力的な案件をめぐる競争の激しさゆえに、VCは1年中活発的に投資先候補を探しており、季節性が出にくくなっているためだろう。

その一方で、VCの資金調達活動に見られる季節性の背景はよくわからない。多くのLPにとって、VCファンドはひとつのアセットクラスに過ぎず、ある投資家のポートフォリオに占めるベンチャー投資の割合は低いのが普通だ。政府系機関(大半が年金機構)や機関投資家(大学など)がLPの大多数を占めていることを考えると、投資時期などが規制によって定められているため、年初に投資活動が集中している可能性はある。しかしこれは憶測に過ぎないため、真相を究明するためにはもっと詳細な調査が必要だ。

最後に念のためもう一度言っておくと、少なくともアメリカを拠点とするスタートアップのファウンダーやVCは、1年のうちどのタイミングで資金調達を行うか気にする必要はない。ビジネス一般に関して言えば、タイミングはとても重要な要素であり、それは資金調達に関しても同じだ。ただ、ファウンダー(VCもある程度)は、誰かが勧める特定の日や迷信を信じなくてもよい。それよりもよっぼど大きな影響を及ぼす要素がある。

調査方法
全てのグラフは、Crunchbase上のアメリカに拠点を置く企業を対象とした、2011〜2016年の4万3600件におよぶVC投資のデータから構成されている。分野や企業の規模・ステージ、拠点による分類は行っていない。上述の通り、Crunchbaseのデータの扱い方を考慮し、発生日が各月の初日となっている案件は全て取り除いた。これにより、日にちが不明確なデータは対象から外されている。

※日付はCrunbaseの”Announced On”というデータを参照しているため、(投資ラウンドのクローズ日と発表日が異なることがあるように)実際の発生日に比べてデータ上の日付は後ろにズレている可能性がある。

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(翻訳:Atsushi Yukutake

Slackが評価額50億ドルで$250Mを調達中、ラウンドのリーダーはSoftBankほか

本誌TechCrunchが確認したところによると、エンタープライズメッセージングサービスのSlackが、50億ドルの評価額で2億5000万ドルの資金調達ラウンドを行っている。SoftBankおよびAccel Partnersのほか、既存の投資家たちも参加しているらしい。

2億5000万ドルという額を報じたのはBloombergで、ラウンドの協同リーダー(SoftBank, Accel Partners)の名を最初に挙げたのはAxiosだ。Recodeは先月、5億ドルのラウンドを報じていたが、その額が2億5000万ドルに落ち着いたのが、今回のラウンドのようだ。

これまで、買収の話いろいろあり、しかし某直接の情報筋は、どこでもその話は前進していない、と言っている。

でも投資家たちは確実に、Slackには強力なエグジットのポテンシャルがある、と信じている。これまでの、公表されている資金調達額は5億ドルを超えており、50億ドルの評価額は、一部の投資家たちが同社がそれを大きく上回る額で買収ないし上場される、と考えていることを意味している。

本誌TechCrunchでも、社内のコミュニケーションの多くにSlackを使っている。とくにその現代的なインタフェイスが、多くの人に好まれている。(それにGIF!!、Giphyの統合をすごく気に入っている人たちもいる。)

Slackはシリコンバレーで、ほとんどスーパーアイドルなみのファンを獲得している。でも今後の課題は、世界中の大企業が進んで採用する気になることだ。Slackは、メールよりも便利という売り込みで成功したが、しかし会社の外の人たちとのコミュニケーションのためのプラットホーム、とは言えない。

Yammerもかつて、同様の人気を獲得したが、Microsoftに買われてからは生彩をなくした。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

ソフトバンク、次は数十億ドル分のUber株取得を検討中との噂

東南アジアの配車サービスGrabへの20億ドルにおよぶDidiとの共同出資が発表されてから1日も経たないうちに、ソフトバンクは上記2社とライバル関係にあるUberに投資しようとしているとの噂が立っている。

Wall Street Journalの報道によれば、ソフトバンクは「数十億ドル分の株式」取得に向けて、Uberと連絡を交わしているとのこと。ちなみにUberはこれまで合計で120億ドルを調達しており、評価額は600億ドルにおよぶと報じられている。

Uberはコメントを控えており、ソフトバンクからの返答はまだない。

ソフトバンクがOla(インドにおけるUberのライバル)にも出資していることを考えると、いかなる形の投資であれ思い切った動きだと言えるが、全くの寝耳に水というわけでもない。Bloombergは今月に入って、Uberの将来に関する不安が広がる中、ソフトバンクが既存株主から同社の株式を購入しようとしていると報じていた。これは前CEOトラビス・カラニック、前シニアVPエミル・マイケルをはじめとする上層部の退陣や、元エンジニアのスーザン・ファウラーによる女性差別・セクハラ行為の暴露を発端とし、6月に結果が発表された元司法長官エリック・ホルダーによる調査などとも関係している。

WSJによれば、Uberは次のCEOが決まるまでは、いかなる財務活動(ここにはセカンダリーマーケットでの売買を越えた新規株式発行も含まれるかもしれない)も控える意向だとされているが、CEO選びにはある程度時間がかかりそうだ。

先日ソフトバンクは巨大ファンド「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」を発表し、5月に総額930ドルの初回出資を完了させたが、同ファンドがUberの投資に関わることはないようだ。というのも、ビジョン・ファンドはソフトバンクとの利益相反を背景に、配車サービス企業への出資を行わないと決めている。

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(翻訳:Atsushi Yukutake

Y Combinatorが10億ドルのファンドを調達している

Axiosの今朝の記事(米国時間7/21)によると、シリコンバレーのスタートアップアクセラレーターY Combinatorが最大10億ドル規模のVCファンドを調達している。同社は2年足らず前にも、最初の大規模ファンドとして、Y Combinator Continuityファンドと名付けたグロウスファンド(成長段階向けファンド)7億ドルを調達し、その担当者としてAli Rowghaniを迎えた

RowghaniはそれまでTwitterのCOOで、さらにその前はPixarのCFOだった。

今YCに確認を求めているところだが、最近の同社の投資のペースや、一般的にベンチャー投資家のファンド形成サイクルが短期化している傾向から見ると、同社の動きは意外ではない。

Axiosが着目するのは: YCはもはや、成長段階の投資を特別扱いして別立てにすることを、やめるつもりだ。今回の新たなファンドは、サイズや段階を問わずあらゆるスタートアップへの投資に充てられる、という。また、YCが後期段階の企業に投資するときは、対象をもはや、前のようにYC出身企業に限定しない。

Axiosの言う第三の変化は: YCの投資委員会の規模を、これまでの数年間に比べてやや小さくする。YCの社長Sam Altman, Rowghani, そしてContinuity FundのパートナーAnu Hariharan, そしてそのほかのパートナー代表、という4名構成になるようだ。それは、意思決定過程を迅速化するため、と言われている。

YCの有限投資家、すなわち機関投資家や資本をスタートアップに投じたいと考えている個人投資家には、Stanford University(スタンフォード大学), Willett Advisors, TrueBridge Capital Partnersなどが含まれる。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

AI分野以外では、企業は研究よりも開発に重点を置いている

もしAIの世界のニュースを追い続けてきていたならば、企業は純粋な研究から撤退するどころか、倍賭けしようとしているという誤った印象を受けているるかも知れない。しかし現場の事情はもっと複雑だ、ハイテク企業はR&Dのうち、D(開発)の部分により多くの資金を使い、変化をもたらす研究に関しては、資金に乏しい大学に依存している。

デューク大学Fuquaビジネススクールの、新しいデータ視覚化プロジェクトであるGolden Goose Project(金のガチョウプロジェクト)は、企業内そして広範な生態系の両方で、どのように研究が適用されているかを定量化するデータだけではなく、パテントと研究成果の統計も用いることで、このパラダイムシフトを強調しようとしている。

例えば、IBMの特許件数は継続的に増加しているが、従業員の名前を連ねた論文の数は1992年をピークに減少を続けている。

しかし、こうしたすべてのデータは企業内研究の減少を示しているものの、決して企業が革新的ではなくなって来ているということを示している訳ではない。そうではなく、研究の展開を促進するための新しいパイプラインが開かれているのだ。

スタートアップは、研究を商用化し、それを既存の企業へと持ち込むためのエンジンとしての役割がますます高まっている。総合的にみれば、スタートアップは研究そのものにはほとんど貢献していないが、新興技術を魅力的にするための大切な役割を果たしている。

残念なことに、革新を支える大学のバックボーンは、政治的関心事に包囲されているように見える。研究は連邦政府から大きな助成を受けている。ゲイツ財団やチャン・ザッカーバーグ・イニシアチブのような個人の慈善団体は、この空白を埋める手助けをしてくれるが、そうしたグループにもできることには限界がある。

影響が少ない幸運な研究分野は、人工知能だ。GoogleによるDeep Mindの5億ドルでの買収のような、研究グループの巨額買収は、内部的なAI研究をより多く行いたいという業界全体の要望を表している。この渇望は、企業の収益部門から、研究グループを可能な限り引き離して欲しいという研究者たちの希望を、企業に配慮させることを余儀なくしている。

「誰もがAIを扱う能力を持つ必要があります」と、研究を推進するデューク大学教授のAshish Aroraはインタビューで私に語った。「大学はAI研究者を十分に輩出していないので、企業は社内に投資しなければなりません」。

しかしこうした研究は、Facebook、Microsoft、Googleなどの企業がAIで大きな進歩を遂げるのを助けているが、企業革新に普遍的に適用できる公式ではない。経営者たちは、しばしば研究と開発の間に明確な線を引くために苦労しており、長い目で見れば独立した価値ある研究を貫くのは困難だ。

Golden Goose Projectの主な欠点の1つは、1980年から2006年の間に収集されたデータのみを考慮に入れていることだ。その時期、何千億ドルもの市場価値が創出されたが、現在への適用性は限定されている。

国立科学財団(NSF)は、このデータ視覚化プロジェクトを支援する上で重要な役割を果たした。Aroraは、助成金を用いて研究を継続し、できるだけ早く足りない年を埋めたいと語った。

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(翻訳:Sako)

メルカリがCtoCに特化した出資を加速、「メルカリファンド」を立ち上げ

7月2日に設立4周年を迎えたメルカリ。同社が発表したインフォグラフィックスによると、フリマアプリ「メルカリ」のダウンロード数は7500万件(日本5000万件:米国2500万件)まで拡大している。そんな同社がCtoC事業やその周辺事業を行う企業への出資を加速するため、7月4日に「メルカリファンド」の開始を発表した。

メルカリファンドはいわゆるコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)や子会社による投資ではなく、あくまでメルカリ本体でのプロジェクトを指している。

このプロジェクトでは、商材やサービスなど、特定の分野に特化したCtoC事業を行う企業や、マーケットプレイスの活性化を促進する事業を行う企業等を対象として投資を行う。メルカリはこれまでもネットショップ開設サービス「BASE」運営のBASEや家電・カメラ等のレンタルサービス「Rentio」運営のレンティオ、スマートフォンアプリ向け語学レッスンサービス「flamingo」運営のフラミンゴに出資している。このうちフラミンゴに関しては、メルカリファンドからの出資という扱いだという。

メルカリファンドの出資金額については特に上限を設定せず、個別案件ごとに検討するという。また出資する事業に関しては、メルカリやメルカリ アッテなどのサービスとの連携も検討する。メルカリは2月にフリマアプリ「スマオク」を手がけるザワットを買収しているが、「投資検討をする中で買収という選択肢をとることも視野に入れる」(メルカリ)としている。問い合わせはメールアドレス「mercari-fund@mercari.com」宛てとなっている。

目的はCtoCプラットフォームの拡大

ただメルカリが今回の取り組みで狙うのは、買収ありきというものではなく、あくまで特化型CtoCサービスや周辺サービスの支援によるCtoCプラットフォームの拡大だという。

この構造は、今やゲームの会社となったミクシィが、SNSの会社だった頃に取り組んだ「ミクシィファンド」に近いものを僕は感じる。ミクシィファンドもCVCではなくあくまでプロジェクトとして、ミクシィのSNSプラットフォーム向けにサービスを提供する事業者に出資し、プラットフォーム拡充を進めるというモノだった。実はこのミクシィファンドの立ち上げにも関わっているのが、当時ミクシィにいた、現・メルカリ取締役社長兼COOの小泉文明氏。そしてそのミクシィファンドの第1号案件がコミュニティファクトリー。同社は現在メルカリ アッテを提供しているソウゾウ代表取締役の松本龍祐氏が立ち上げたスタートアップだ。

7500万のユーザーを抱えるメルカリはいよいよプラットフォームとなった。であれば自分たちでCtoC領域の事業を展開するだけでなく、パートナーを募ってより大きなサービス群を立ち上げていく。その手段として、今回のメルカリファンドがあるというわけだ。

Cloudflareがデベロッパープラットホームとその開発努力を支える1億ドルのファンドを創設

Cloudflareが今日(米国時間6/27)、Cloudflare Appsと呼ばれるアプリケーション開発プラットホームを立ち上げ、またデベロッパーたちのアイデアの実現を助けるためのファンド(当初1億ドル)Cloudflare Developer Fundを発表した。

開発プラットホームは、そこでCloudflareのエコシステムを利用するアプリケーションの構築ができ、それらをCloudflare Appsストアに置いたり、またコーディング不要でWebページにマップやフォームなどの機能を容易に配置できる。

CEOで協同ファウンダーのMatthew Princeは、同社上に開発プラットホームがあることの意味をこう説明する: “今のCloudflareは600万を超える顧客のインターネットプロパティの前に座っている〔CDNや他のリバースプロキシサービスで〕。弊社は世界最大のネットワークを稼働させており、データセンターは世界中に115箇所ある。そのネットワークを毎日大量のトラフィックが通っているが、それらが通るときには、それをいろんな方法で変える/加工する方法と機会がデベロッパーにある”。

今回のデベロッパープラットホームは、Cloudflareが昨年12月にEagerという小さな企業を買収したことが契機だ。今日の発表はその買収の成果だ、とPrinceは説明する。

ひとつの例として、ライブのWebページにGoogleのマップを(コードを書かずに)挿入するやり方がある。Eagerの技術を使うとそれは、Cloudflare AppsストアでGoogle Mapツールをクリックするだけだ。そのあとドロップダウンリストからセレクトして、目的の場所へドロップダウンする。ささいなこと、と思えるかもしれないが、なにしろプロのプログラマーがいなくても、誰でも、地図をWebページに加えることができるのだ。その工程は、とても簡単で早い。

1億ドルのファンドの件は、Princeによると、Cloudflareのアイデアではなくて、投資家たちの提案だ。“彼らはとても熱心だった。NEA、Venrock、それにPelion Venture Partnersらは、人びとがCloudflareのプラットホームの構築と拡張に挑戦すれば、そのスケールとパワーを自分でも納得するだろう、そしてそれが、もうひとつのすごい企業を作る機会であることに気づく、と主張するのだ”、と彼は語る。彼らは、Cloudflareをベースとするアプリケーションを、Cloudflareの新たな分身のように感じている。

NEAのマネージングゼネラルパートナーでCloudflareの取締役でもあるScott Sandellも、同じ意見だ。“このDeveloper Fundでデベロッパーは、Cloudflareのネットワーク上で何千ものエンタープライズや何百万ものユーザーにアクセスできるだけでなく、デベロッパーがビジョンを実現できるための資本も提供されるのだ”、と彼は言う。

Cloudflareは2011年にアプリケーションストアを立ち上げ、約30のアプリケーションをサポートしたが、その後、企業の成長戦略の方が忙しくなって、立ち消えになった。Eagerの技術が使える今は、APIを提供する最初の試みよりもずっとデベロッパーフレンドリーだ。プロトタイプもきわめて迅速に作れる、とPrinceは語る。

Cloudflareは2010年9月のTechCrunch Disruptでデビューし、その後1億8000万ドルあまりを調達している。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

機械学習を利用して見込み客別にもっとも有効なピッチを営業に教えるHighspotが$15Mを調達

営業はいつも大量のノルマを抱えているが、でも最新のテクノロジーは、それらが従来よりももっと売れるようにしてくれる。

それともあなたは、うちのピッチ(売り込み)は完璧、と思っているかな? Highspotは、それは違う、と教えてくれる。まあそれが、Highspotのピッチだけど。

Highspotのソフトウェアは、見込み客とのさまざまなコミュニケーション、たとえばプレゼンテーションやケーススタディ、教育訓練ビデオなどを分析する。そして、それらの有効性を表すデータを提供する。

その分析結果が売上増に導くなら、それは多くの企業にとって大きな売上機会になる。そこでVCたちは、Highspotが今後ビッグビジネスになることに、さらにもう1500万ドル賭けている。

そのシリーズBのラウンドをリードしたのはShasta Venturesで、Salesforce VenturesとMadrona Venture Groupが参加した。シリーズAは、2014年の1000万ドルだった。

ShastaのマネージングディレクターDoug Pepperはこう語る: “Highspotは、営業を支援するソフトウェアの市場にAIや機械学習のパワーを持ち込んだ。彼らのプロダクトとチームと顧客評価技術は、長年営業を悩ませてきた問題を解決する。その問題とは、その見込み客に対して適切なコンテンツを適切なタイミングで提示して、営業努力をを成功に導くことだ”。ワンパターン、行き当りばったり、出たとこ勝負の営業は、古いし、効率も最悪だからね。

CEO Robert Wahbeの言い方はこうだ: “Highspotは、営業が頭の中につねに確実に(顧客・見込み客別に)適切な情報を持ち、顧客に提示する適切なコンテンツを確実に持ってる状態を作り出し、維持する”。同社の現在の有料顧客(月額会費制)は、中小企業と大企業合わせて100社ぐらいだ。

彼は、HighspotがCRMと競合する製品だとは見ていない。むしろ、CRMを“補完するプロダクトだ、と。とくに、顧客がSalesforceのプロダクトとHighspotを併用してくれることを、彼は期待している。

同社が拠を構えるシアトルについてWahbeは、“今は一種のブーム・タウンだね”、と言う。同市のスタートアップシーンは、今や“沸騰している”そうだ。

将来の買収については、彼は言葉を濁(にご)した。そして、“でも上場企業にはなりたいね”、これが彼の考える同社の将来像だ。

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ネット上の運転手付き物置サービスClutterが$64Mを調達、あのAtomicoも将来性を確信

ベンチャーの投資家たちがストレージ(storage)*に数千万ドルを注ぎこんでいる、と聞けば、それはクラウドストレージかフラッシュストレージのことだ、と思うだろう。しかしClutterについて語るときは、まったく違うストレージだ。〔*: storage, 保存, 保管〕

服や家具など、物理的な所有物を保管してくれるロサンゼルスのスタートアップClutterは、スタートアップの世界で著名な投資家たちから6400万ドルの資金を調達した。このシリーズCのラウンドはイギリスのAtomicoがリードし、Sequoia Capital, Google Ventures(GV), そしてFifth Wallが参加した。

Clutterはオンデマンドで品物を持って行ったり届けたりしてくれるが、すべてのコミュニケーションがネット上で行われる。いわば、物を保存/保管すること専門のネット上の便利屋さんだ。

しかもこの市場は大きいから、ご存知の方も多いと思うが、MakeSpace, Omni, Troveなど競合他社も多い。

SequoiaのパートナーOmar Hamouiはこう言う: “保管は大きな産業だが、これまではテクノロジーによって最適化ないし洗練されることがなかった”。彼は、まだまだ需要に対して供給、すなわちスタートアップの数や規模が足りない、と見ている。

よく見ると、誰の家にも大量の物がある。しかし自分で倉庫へ行って物を入れたり出したりするのは、かったるい。画面のボタンを押すだけで自分のスキーが来る方が、今の消費者好みだ。

しかも、保管するのも取り出すのもユーザー本人ではないから、便利な場所でなくても構わない。だから、高額な不動産投資は必要ない。

それでもClutterは、競合他社に比べるとユニットエコノミクス*が良い、と主張する。しかし具体的な数字は教えてもらえなかった。〔*: unit economics, 単位経済, そのビジネスの1扱い単位あたりの売上額、利益率(額)、LTV、CACなど。〕

Clutterの協同ファウンダーでCMOのAri Mirが、数字を挙げずに抽象的に言う: “個々の顧客から利益を上げているだけでなく、進出したどの都市でも粗利益が出ている”。しかし、売上額は数千万ドルあるが、事業全体としてはまだ黒字ではない。

今同社は、都市数を増やすことに注力している。目下稼働しているのは、ロサンゼルス、サンフランシスコ、ニューヨーク、ニュージャージー、シカゴ、シアトル、サンタバーバラ、サンディエゴ、そしてオレンジカウンティだ。また、海外進出もしたい。

Atomicoとのパートナーシップも、それが理由の一部だ。AtomicoのパートナーHiro Tamura(田村裕之)は、“Clutterがアメリカの国境を越えるつもりなら、大々的に支援する。同社のチームとビジネスについては、強い確信を持っている”、とベタぼれだ。

Clutterに関わっている人なら誰もが、Clutterなら350億ドルの上場企業Public Storageにチャレンジできる、と信じている。では、ClutterのIPOはどうか? Mirは即答する: “100%ありだ。この会社を売るつもりは、絶対にないからね”。

〔参考: Atomico関連記事。〕

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提出物管理のSubmittableが$5Mを調達、“機会のマーケットプレース”に将来性あり

9000あまりの企業が提出物を管理するために利用しているSubmittableが、シリーズAで500万ドルを調達した。

モンタナ州ミズーラのSubmittableが創業されたのは2010年で、最初は文学誌が送られてくる原稿を管理するためのサービスだった。協同ファウンダーでCEOのMichael FitzGeraldは曰く、“最初は、これ以上貧しい顧客はいない、と思われる顧客が相手だった。詩の雑誌さ”。

その後同社は対象を広げ、いろんな企業がデジタルコンテンツを管理できるようにした。それらの提出物は、履歴書や各種申込書/申請書、コンテストの応募作品など、さまざまだ。顧客の中には、TEDxやThe New Yorker、それにスタンフォード大学などもいる。

次のステップは、FitzGeraldが“機会のマーケットプレース”と呼んでいるものを作ることだ。その今の形では、Submittableのアルゴリズムにより、ライターやビデオ作家などに、彼らの作品をどこに提出すべきかをリコメンデーションする。

“前からずっと思っている、うちの核となる信念は、作品を作る能力と、それをパブリッシュしたり宣伝したりする能力はまったく違うものだ、ということ。後者はもっぱら、むさ苦しい仕事だからね”、とFitzGeraldは語る。“Submittableの目標は、その仕事をライターにとって簡単にし、クリエイターが機会を見つけられるようにすることだ”。

これにより、新しい収益機会も生まれる。FitzGeraldによると、Submittableのビジネスモデルは提出物管理ソフトを企業に売ることが軸だが、企業が何かを募集するための広告とか、ライターのための特別バージョンなどが、副収入源になる。

シリーズAはTrue Venturesからだが、モンタナでの投資はこれが初めてだそうだ。田舎でやってるとビビる投資家もいる、とFitzGeraldも認めるが、でも今回の投資が“氷が溶け始めるきっかけ”になればいい、と期待している。彼によるともともと同社は、資金を調達する必要性はなかった。すでに黒字だし、社員は40名近くいる。

一方True VenturesのPuneet Agarwalは投資を発表するプレスリリースで、“Submittableは新種のマーケットプレースSaaSとして将来性が大きい。非常に多様な業種業界を対象にして、ユーザーと企業の両方が利益を得られる”、と言っている。

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リフォーム仲介のHouzzが巨額$400Mを調達、コマース部門はディープラーニングとARをフル活用

住宅リフォームのHouzzは成長を続けており、再び大きな資金調達に臨もうとしている。同社によるとその金額は4億ドル、複数の報道が告げる評価額は40億ドルだ。

2009年に創業したHouzzはリフォーム仲介サービスのほか、必要な家具や設備を見つけるためのツールも提供している。ユーザーは世界中におり、その市場はアメリカ、イギリス、オーストラリア、フランス、ドイツ、ロシア、日本、イタリア、スペイン、スウェーデン、デンマーク、インドと幅広い。

同社の主な収益源は、各地元のリフォーム店や工事店などの紹介料(リスト掲載料)だが、同社のWebサイトやモバイルアプリからの、ディープラーニングやARを利用した直販にも熱心だ。

昨年の秋に導入したディープラーニングツールは、サイトに載ったユーザーの家の写真を分析して、そこに写っているのと同じような製品を同社のページから買うよう勧める(リコメンドする)。またモバイル上のAR機能で、新しい家具などと今のユーザーの家との相性をチェックできる。

最新の投資ラウンドは、Recodeの報道によるとIconiqがリードし、これまでにHouzzがSequoia, New Enterprise Associates, GGV Capitalなどから調達した2億ドルあまりに上乗せされる。

〔訳注: 写真はHouzzの協同ファウンダーでCEOのAdi Tatarko。このほか、最優秀アプリ賞インパクトの大きい女性ファウンダーなど、記事多し。〕

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Androidの始祖Andy Rubinの新会社Essentialは3億ドルを調達か…本番生産の資金として

Andy Rubinの新しいハードウェアスタートアップEssentialはこれまで、意外と騒がれなかった。Googleを突然去ったAndroidの創始者をめぐっては、憶測だけが渦巻いていた。

しかし、資金もこれまた、問題ではなかったようだ。Bloombergの報道によると、この生まれたばかりのスマートフォンメーカーは、研究開発から本番生産への移行のために3億ドルを確保したらしい。

同社のスポークスパーソンはコメントを拒否したが、Rubin自身はその資金調達の数日後にCodeカンファレンスのステージに立ち、“数億ドルの大金を調達した”、と聴衆に語った。そのときRubinは三本の指を立て、笑顔で繰り返した: “詳しくは言えないけど数億ドルだよ”。

それが本当なら、その、先月申請されたシリーズBによって同社は、ユニコーンまであと髪の毛数本という位置に達する。9億9300万ドルという評価額だ。非上場スタートアップの評価額を投資企業に提供しているEquidateが計算するとその額になる。同社によると、計算の根拠は一般公開されている申請書類だ。

昨年のEssentialはシリーズAで3000万ドルを獲得し、それによって会社の幼児期を支えた。そのときの投資家はRedpoint Venturesと、Rubin自身の投資企業Playground Globalだ。

それよりも前にRubinは、SoftBankグループに出資を打診した。その投資は、10億ドルの評価額で1億ドルになるはずだったが、結局実現しなかった。噂では同社がAppleに投資していることが、不発の原因だったという。iPhoneの成功から株主利益を得たい投資家が、その敵対機種の企業にも投資することは、ふつうありえない。Essentialのスマートホームハブ製品も、Appleの新製品、HomePodスピーカーと競合する。

投資家としては、TencentやFoxconnなどもEssentialの将来に賭けているが、問題は、二つの競争の激しい分野における、一般大衆の関心の獲得だ。EssentialのCOO Niccolo de Masiは本誌のインタビューで、同社が軌道に乗るまでの10年計画について語った: “ブランドの認知度、知名度、評価〜ロイヤリティを確立してからでないと、利益の話などできない。最初の仕事は、ブランドの構築だ”。

Rubinの名前はテクノロジー業界という狭い空間では騒がれるが、一般大衆は何も知らない。彼への期待投資が、今後どれだけ続くか、それも問題だ。

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企業のWebサイトのための“救急医派遣サービス”Loremが$1.1Mを調達、問題への即対応が自慢

中小企業がWebサイトを作りたければ、Squarespaceなどの使いやすいツールを利用できる。でも、でも稼働時運用時に技術的な問題にぶつかったら、どこを頼ればよいのか?

ニューヨークのLorem Technologiesは、そんな空隙を填(う)めようとする。CEOのSam Wilcoxon(上図右)によると、企業はサイトの構築とカスタマイズと問題修復のための、技術と知識がないだけでなく、そんなときに相談できて、助けてくれる人を見つける方法を知らない。

Loremでは、ユーザーが“instant help”ボタンを押してニーズを説明すれば、1分以内に、その問題に適したフリーのデベロッパーやデザイナーを紹介してくれる。企業はチャットや音声でその人たちと話をし、見積もりを取り、自分のサイトへの一時的なアクセスを与える。そのために使用するLoremのプラグインは、目下WordPressとSquarespaceのWebサイトをサポートしている。

WilcoxonによるとLoremは、小さくて早く済む仕事専門で、単価は5ドルから500ドルぐらい、多くは100ドルにもならない仕事ばかりだ。いちばん多い仕事は、Webサイトの壊れた部分の修理や、CSSやJavaScriptによるサイトのカスタマイズ、そのほかのサービス(Google AnalyticsやMailChimpなどなど)の統合などだ。なお、Loremという名前は、穴埋めテキストの“lorem ipsum”に由来している〔日本語〕。

同社の目標は、企業がWebサイトの開発やデザインでヘルプが必要なとき、必ず訪れるサービスになることだ。今現在で、ユーザーの42%が二度以上利用するそうだから、幸先の良いスタートと言える。

協同ファウンダーのCharlie Fogarty(上図左)によると、Loremはユーザーに紹介するフリーの技術者やデザイナーを全員、厳格に検査している。だめな人を紹介すると、Loremの評価を落とし、自殺行為に等しいから。

“いい人にいい仕事をしてもらうと、気分もいいからね”、と彼は語る。

一方フリーの人たちから見ると、営業のようなことをしなくても仕事にありつく、というメリットがある。仕事が発生すると、Loremからの連絡がWeb上ですぐに来る。

Loremは最近、アクセラレーターTechstars Bostonを卒業した。110万ドルのシード資金を、Flybridgeがリードし、Founder Collectiveとエンジェル投資家たち(Constant ContactのファウンダーRandy ParkerやWordPressプラグインW3 Total Cacheの作者Frederick Townesなど)が参加するラウンドで調達した。

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夢を追うことでVCは眠れる獅子を手に入れることになるかも

【編集部注】著者のJoanna GlasnerCrunchBaseの記者である。

最近多くのスタートアップたちが、私たちを眠らせる方法を探っている。これに反応して投資家たちは、勢い込んで高額小切手を書き込んでいる。

これを「大いなる眠り」(Big Sleep)と呼ぼう。何十年も、私たちから眠りを奪うテクノロジー(ストリーミングビデオ、ゲーム、ソーシャルネットワーク、24時間365日のショッピングなど)に投資を続けて来た果に、ベンチャーキャピタル業界は、私たちの目を閉じさせる手助けをすることに、相当量の資金を投入する方向へ舵を切ることを決めた。

そうでなければ、睡眠に焦点を当てたアプリや、セラピー、そしてモニタリングデバイスなどの膨大な数のベンチャーが生まれている理由を説明できないのではないだろうか?少なくとも2社がユニコーンの地位に達することが確実視されている、とてもホットなマットレス業界の例もある。

睡眠を巡る数字

Crunchbaseの資金調達データの分析によれば、睡眠に注力する企業たちがここ数年のうちに調達した資金は累計で7億ドルに上っている。昨年1年間だけでも、3億ドル近くの金額が調達されている(資金調達を行った睡眠スタートアップのリストはこちら)。

これは相当大きな数字だが、記録的なものかどうかは分かりにくい。睡眠は独立した投資カテゴリではないため、最近の資金調達アクティビティを他の期間と比較することは難しい。なにしろ「大いなる眠り」スタートアップのリストには、モバイルアプリ、製薬、医療機器、メディア、消費者向け製品などの様々な分野の企業が含まれているのだ。そして睡眠専門ファンドや、連続睡眠起業家たち(serial sleep entrepreneurs)は存在していない。

にも関わらず、最近は睡眠分野の企業に向けられた、とても大きな資金調達ラウンドが存在している。消費者向けプロダクトの分野での、最大の資金調達企業は、快適なマットレスを作りオンラインで売るCasperだ。この創立4年のニューヨークの会社は、後期ステージラウンドの投資をTargetから受ける決定をする前には、10億ドルでTargetに売却されるのではと囁かれていた。Casperはこのときのラウンドで約7000万ドルを調達している。(他のマットレスのスタートアップはここを参照)。

消費者は睡眠測定装置に興味を持っている

一方消費者向けデバイス側には、Sense睡眠追跡システムを開発したHelloがいて、これまでに4100万ドルを調達している。それは定量的睡眠と呼ぶことができる分野の会社の1つだ。定量的睡眠とはデバイスとアプリによって睡眠サイクルを詳細に分析し、より安らかな夜を過ごすための助言を与えてくれるものだ。

消費者向けのスタートアップにも注目が向きつつはあるものの、睡眠関連ベンチャーへの投資の大部分を獲得しているのはライフサイエンスや医療デバイス企業である。Crunchbaseのデータセット内で見つかる最も多額の資金調達を行った睡眠重視の非公開企業は、Inspire Medical Systemsだ。閉塞性睡眠時無呼吸症の治療のための埋め込みデバイスを開発している。このミネソタ州の企業は、ベンチャーファンドから1億1000万ドル以上を調達した。そこには11月に調達した3800万ドルも含まれている。その他のトップ資金調達企業には、不眠症治療デバイスのEbb Therapeutics(旧Cereve)、そして処方箋に基づく家庭用睡眠試験のプロバイダであるNovasomが含まれる。

もちろん投資家たちは、人々をリラックスさせるための暖かくてふんわりとした気持ちから、これらの企業を支援しているわけではない。利益を得ることが目的だ。

睡眠中心スタートアップへの投資は、世の中の睡眠不足の増加とその害に関する意識の高まりに伴ってやって来た。昨年、疾病対策予防センター(CDC)は、アメリカの成人の3分の1以上が普段十分な睡眠を取っていないとの調査結果を発表した。CDCは、睡眠が1日7時間未満であると、肥満、糖尿病、高血圧、心臓病、脳卒中、そして精神的苦痛のリスクが高まると付け加えている。

テクノロジーで休息を支援し、疲労に対処する

睡眠不足もまた大きな差し迫った問題だ。ワーカホリックの習慣が賞賛されるシリコンバレーでさえ、ほとんどの熱心な技術者たちは、睡眠不足が燃え尽きや判断ミスに繋がりかねないことは認めるだろう。この問題に対処するために、何かをしている者もいる。

インターネット起業家たちが、スタートアップで働くことで引き起こされる燃え尽き症候群に対する解決策を提案するのは、自己矛盾のように思えるかもしれない。しかし、より多くの連続起業家たちが、「安らぎの流行」に次々と飛び乗っているのは事実なのだ。著名なメディア起業家であるArianna Huffingtonが、昨年Thrive Globalの立ち上げによりこの分野へ参入したことは、広く報じられた。700万ドルの資金を調達したこのメディアプラットフォームが自ら掲げる使命は、「ストレスと燃え尽きの流行を終わらせる」といういうものだ。(このThriveに至る遥か昔、Huffingtonは技術者のために昼寝室を用意することを主張していた)。

Thriveに数年先行しているのがHeadspaceだ。4000万ドル近くを調達した瞑想と気付きのアプリだ。過去数年の間に資本調達を行った、いくつかの瞑想中心の スタートアップの1つだ。

もちろん投資家たちは、人々をリラックスさせるための暖かくてふんわりとした気持ちから、これらの企業を支援しているわけではない。利益を得ることが目的だ。彼らのほとんどはまだ利益を得ていないが、得ることができた者もいる。

長年トレンディなものを作り続けてきたAppleは、まさに今月、Bedditの買収によって睡眠分野へ進出した。Bedditは有名な睡眠追跡アプリとそれに接続されるデバイスのメーカーだ。買収価格は明らかにされていないが、Bedditがこれまでに調達した資金が400万ドル未満であり、Appleが670億ドルの現金をバランスシートに載せていることを考えると、この売却は、投資家たちにとって好ましいものだったと言っても間違いではないだろう。

マットレス事業に関しては、噂されたTargetによるCasperへのアプローチは、大口の買収者たちが新参者たちに価値を見出していることを示しているようだ。ユタ州を拠点とするマットレススタートアップPurpleは、年間セールスが1億5000万ドルを超えるまでに成長したと言われている。しかもベンチャー資金は受けていない。

しかし、最大の投資およびエグジットは、深刻な睡眠障害の治療を目指す企業に向けられることが多い。最近の市場予測によれば、不眠症のセラピーならびに治療薬の市場は、米国内だけで2021年までに42億ドルに達すると言われている。ちなみに昨年は34億ドルだった。

消費者向けのアプリやガジェットは、登場しては交代していくだろうが、本当に良い夜の睡眠を与えてくれる手助けをするセラピーやプロダクトには、継続的な需要があるだろう。

*この記事の原題は “Chasing dreams may be the next sleeper hit for venture capitalists” というものだが、sleeper という単語には「眠る人」という意味の他に「将来ヒットする」「時が来るまで正体を隠している」という意味もある。ということで、翻訳では「眠れる獅子(本来の実力を発揮していない)」という訳語をあてた。

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(翻訳:Sako)

FEATURED IMAGE: LI-ANNE DIAS