簡単にネット販売ストアを立ち上げて注文を受けられるツールを開発するCococart

2年前、起業家のDerek Low(デレク・ロウ)氏は、自身が所有するバリ島のホテルを失い、生活費を稼ぐために手作りのチーズケーキのネット販売を始めた。しかし、すぐに立ち上げて注文を受けることができる簡単なeコマースツールを見つけるのは、難しいことがわかった。

ロウ氏は、2億もの事業主が注文を取るために電話やWhatsApp(ワッツアップ)やInstagram(インスタグラム)などのメッセージングアプリに頼っており、注文の追跡が困難であることが、代金回収を難しくしていることに気づいた。また、プロフェッショナルなeコマースサイトは立ち上げに数週間かかり、新規ビジネスには高額な費用が必要になることも知った。

Cococart共同創業者兼CEOのデレク・ロウ氏(画像クレジット:Cococart)

ロウ氏はZhicong Lim(ジコン・リム)氏とパートナーを組み、シンガポールを拠点にCococart(ココカート)を設立した。同社のツールは、商品を販売する人が数分でオンラインストアを立ち上げることができ、コードもデザインもアプリのダウンロードも不要だ。このストアには、注文管理からモバイル決済ソリューションまで、あらゆる機能が搭載されている。販売者は、持続不可能な手数料を請求するアプリやマーケットプレイスを利用することなく、自分たちの販売を管理することができる、とロウ氏は付け加えた。

「率直に言って、受注管理は大変です」と、ロウ氏は語る。「ほとんどの地方事業者は、未だにWhatsAppで注文を受け、スプレッドシートを使って注文を管理しています。それでは事業を成長させるために使うべき多くの時間が吸い取られてしまいます。私たちは、地方起業家たちの新しい波の最前線にいます。キッチンで作った料理を販売するところからスタートし、今では業務用キッチンを備えた小売店を経営しているような当社の加盟店のストーリーから、私たちは日々インスピレーションを受けています。私たちのミッションは、地域の事業を変革し、ビジネスオーナーに情熱を追求する力を与えることです」。

Cococartの加盟店の多くは、まさにロウ氏と同じような人々だと、同氏はいう。新型コロナウイルス感染流行から生まれた新世代の個人事業主は、eコマースで急成長しているセグメントを代表する存在となっている。また、人々がオンラインで注文することに慣れたことも、ロウ氏はこの動きがなくならない要因と見ている。

「私のように、職を失った多くの人がネットで副業を始め、それが主な収入源になりました」と、ロウ氏は続けた。「このような起業家は、他人のために働くよりも、自分のビジネスを運営する方が収益性が高く、充実感が得られることに気づいたのです」。

Cococartは設立当初から収益性の高い会社であり、サービスの立ち上げ以来、90カ国で2万人以上の商店主が契約し、合計50万件以上の注文を受け、1500万ドル(約17億円)以上を稼ぎ出している。

例えば、同社のトップマーチャントの1つであるINDOCIN(インドシン)は、オンデマンドで職人によるインドネシア料理を提供している会社だ。ロウ氏の話によると、同社のオーナーが1年前にCococartで商売を始めた当時は、自宅のキッチンで手作りの料理を売っていたそうだ。現在では24人の従業員を雇用し、自分の店舗を経営している。

ロウ氏によると、2021年だけでCococartは契約店数を30倍、顧客数を46倍に伸ばしたという。同じ期間に、同社は創業者2人だけのチームから、12カ国にまたがる22人のチームに成長を遂げた。

この勢いを維持するため、CococartはForerunner Ventures(フォアランナー・ベンチャーズ)とSequoia(セコイア)から420万ドル(約4億8500万円)を調達した。他にも、Y Combinator(Yコンビネータ)、Uncommon Capital(アンコモン・キャピタル)、Soma Capital(ソマ・キャピタル)、Liquid 2 Ventures(リキッド・ツー・ベンチャーズ)、Fitbit(フィットビット)CEOのJames Park(ジェームズ・パーク)氏、Curated(キュレイテッド)CEOのEduardo Vivas(エデュアルド・ヴィヴァス)氏などの投資家が出資した。

ロウ氏は、この新たに調達した資金を使って、雇用と顧客獲得を継続していく意向だ。

「私たちはまだ始まったばかりです」と、同氏は続けた。「私たちの目標は、商取引の次世代を定義することです。事業を始めて運営していくには、配送からサプライチェーン、資金調達に至るまで、まだまだ私たちで解決したい課題が山積しています。私たちは目の前に大きな機会を見出しています。Cococartを世界中の2億の事業主に届けたいと思っています」。

画像クレジット:Cococart

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(文:Christine Hall、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

あらゆるアプリを「スーパーアプリ」に変えるAppboxoが約8億円を調達

ミニアプリとは、より大きなアプリの中で動作する軽量のプログラムのことで、ユーザーのエンゲージメントと収益の追加的な源泉として機能する。ミニアプリは、WeChat、Alibaba、Grabなどの「スーパーアプリ」によって普及した。しかし、すべての開発者がこれらのハイテク企業のリソースを持っているわけではない。シンガポールを拠点とするAppboxo(アプボクス)は、この競争の場を均等にしたいと考えている。このスタートアップのプラットフォームでは、ミニアプリを自分で作ったり、サードパーティの開発者向けマーケットプレイスであるAppboxo Showroomからミニアプリにアクセスしたりして、開発者は自分のアプリをスーパーアプリに変えることができるのだ。

GCash(ジーキャッシュ)、Paytm(ペイティーエム)、VodaPay(ボダペイ)などを顧客に持つAppboxoは、米国時間2月16日、RTP Global(RTPグローバル)が主導するシリーズA資金調達で700万ドル(約8億円)を調達したことを発表した。その他、最初の投資家であるAntler(アントラー)と500 Southeast Asia(500ソースイースト・アジア)に加え、SciFi VC(サイファイ・VC)、Gradient Ventures(グラディエント・ベンチャーズ)(GoogleのAIに特化したベンチャーファンド)、エンジェル投資家のHuey Lin(ヒュー・リン)氏とKayvon Deldar(ケイボン・デルダー)氏といった新しい支援者が参加した。

Appboxoは、2019年にCEOのKaniyet Rayev(カニエト・レイエフ)氏、CTOのNursultan Keneshbekov(ヌルスルタン・ケネシュベコフ)氏によって設立された。TechCrunchが最初に取り上げたのは2020年12月でシード資金を発表したときだった。現在、東南アジア、インド、南アフリカの10のスーパーアプリに採用され、400以上のミニアプリの統合をサポートしており、その大半はサードパーティの開発者によって構築されたものである。同社によると、統合されたユーザー数は5億人以上とのこと。

同社は、主に2つの製品を提供している。1つは、ミニアプリを構築・起動するためのSDKやAPIを備えたSaaSプラットフォーの「Miniapp」例えば、モバイルウォレットは、フードデリバリー、ショッピング、レストラン予約などのミニアプリを統合することができる。

2つ目は、約1年前に登場した「Shopboxo」で、企業はモバイルデバイスを通じてカスタマイズ可能なオンラインストアを30秒以内に立ち上げることができる。

Shopboxoで作成したミニアプリは、Appboxoを通じてスーパーアプリに統合することができる。レイエフ氏は、中小企業の幅広い加盟店ベースにリーチできることで「特にAppboxoの顧客はすでにeコマースを中心に同社のプラットフォームを使用しているため、2022年はミニアプリの数が数千に拡大する」と予想している。「金融系スーパーアプリは、新しい垂直方向への多様化を望んでおり、現在の状況では、eコマースが最も明白な機会であり、最も実行しやすいように見えます」と語る。

レイエフ氏は、AppBoxoの新たな資金調達は、Shopboxoをさらに発展させ、同時に加盟店エコシステムを拡大し、国際的なプレゼンスを構築するために使われるとTechCrunchに語っている。当初は、スーパーアプリが最も優勢なアジア太平洋地域に焦点を当てるが、ヨーロッパと米国にも進出したいという。

画像クレジット:AppBoxo

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(文:Catherine Shu、翻訳:Akihito Mizukoshi)

アジア太平洋地域のさまざまな文化に配慮したメンタルウェルネスプログラム「MindFi」

メンタルヘルスのスタートアップMindFiはアジア太平洋地域(APAC)全体で事業を展開しているが、それぞれの市場で「文化の違いに配慮した」ケアを提供したいと考えている。そのために、従業員の福利厚生として提供しているアプリのプログラムを、宗教、ジェンダーのステレオタイプ、人種、コミュニケーションスタイル、価値観などを考慮して現地プロバイダーと共同開発していると、共同設立者兼CEOのBjorn Lee(ビョルン・リー)氏はTechCrunchに語った。

現地時間2月14日、シンガポールを拠点とする同社は、200万ドル(約2億3000万円)のシードラウンドを調達したと発表した。このラウンドには、既存投資家のM Venture PartnersとGlobal Founders Capitalが参加した。エンジェル投資家には、Carousell(カルーセル)の共同創業者であるMarcus Tan(マーカス・タン)氏、CarroのCSOであるKenji Narushima(ケンジ・ナルシマ)氏、Spinの共同創業者であるDerrick Ko(デリック・コー)氏が含まれている。

MindFi(Mind Fitnessの略)は、Y Combinator(YC、Yコンビネータ)の2021年夏コホートに参加した。現在、シンガポール、香港、オーストラリアを含むアジア太平洋地域で事業を展開し、16言語でサービスを提供している。同社の法人顧客には、Visa、Willis Towers Watson、Patsnapなどがある。MindFiの製品は、15の市場で35社の雇用主のもと、合計10万人の従業員にサービスを提供している。

メンタルヘルス関連のスタートアップは、米国では特にパンデミックの間に多くの資金を獲得したが、アジアの多くの地域ではまだ初期段階にある。MindFiは、この状況を変えようとしているスタートアップ企業群の1つだ。最近資金調達に成功した企業には、Intellect(同じくY Combinatorの卒業生)やThoughtfullなどがある。

MindFiアプリには、自己管理型のメンタルウェルネスプログラム、コミュニティフォーラム、グループセラピー、AIによるコーチやセラピストとのマッチングシステムが含まれている。ユーザーのプロファイルには、MindFiのデータと、睡眠、心拍数、日々の活動などのフィットネスウェアラブルの情報が集約される。

リー氏はTechCrunchに対し、今回のシード資金は、AIエンジンの開発を加速し、ウェアラブルからの生理データとMindFiのメンタルヘルスデータの統合を進め、現地の専門家と協力して主要なAPAC市場でアプリ内プログラムを作成するために使用されると述べている。同氏は、APACでは米国や欧州に比べてライセンスを持ったメンタルヘルス専門家の数が比較的少ないとしながらも、ユーザーが安心してサポートを受けられるように、同社のプログラムが多様な文化的コンテクストに適合するようにすることが重要だと語る。

M VenturesのパートナーであるMayank Parekh(マヤンク・パレック)氏は声明の中で、次のように述べている。「メンタルヘルスは、ほとんどの国で伝統的に見過ごされてきましたが、成長著しいアジア地域ではなおさらです。私たちは、現在の市場には十分なサービスが提供されていないと感じており、創業者を第一に考える投資家として、重要な問題を解決するために相互に補完し合うスキルと洞察力を持つMindFiチームと協力できることをうれしく思っています」。

画像クレジット:MindFi

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(文:Catherine Shu、翻訳:Aya Nakazato)

中国生まれの音声ネットワーキングアプリ「Tiya」、国際的な事業展開を進めるべくシンガポールに本社を設立

TikTok(ティックトック)は、おそらく中国から生まれた最も成功したアプリであり、国際市場への印象的な進出を果たしている。しかし、中国で開発されたより小規模なエンターテインメントアプリにも、海外で事業を展開しているものが数多くある。

Tiya(ティヤ)もその1つだ。中国のポッドキャスティングプラットフォームであるLizhi(リーチ)から生まれたこのアプリは、音声ベースのリアルタイムなネットワーク体験を提供する。その名前に聞き覚えがあるかもしれない。そう、TiyaはよくClubhouse(クラブハウス)と比較されているのだ。そして、そのClubhouseが2021年流行したおかげで、2021年春にLizhiの株価は急上昇した。

しかし、Tiyaの背後にあるアイデアは、Clubhouseの隆盛(と没落)よりも先行していた。2019年にローンチしたこのアプリは、Clubhouseとはかなり違った人々を魅了しており、その多くは一緒にゲームをしながらチャットをするために利用している。2013年に設立された親会社のLizhiは、早くから音声コンテンツにインタラクティブな機能を取り入れ、リスナーがクリエイターにメッセージを送ったり、バーチャルギフトを購入したりできるようにした。バーチャルアイテムを販売するというビジネスモデルは、すぐに収益の柱となった

Tiyaはこの3年間、デビューした米国で着実に人気を博してきたが、さらに海外展開を進めようとしている。同社は現地時間2月7日、シンガポールの中央ビジネス地区に、Yahoo(ヤフー)やGoldman Sachs(ゴールドマン・サックス)などの大手企業と並び、1万平方フィート(約930平方メートル)の本社を設立したことを発表した。

このオフィスの開設にともない、早ければ2022年の第1四半期にはシンガポールで同アプリのダウンロードが可能になる予定だ。Tiyaは全世界で約2000万件のダウンロードを記録しているものの、そのうちアクティブユーザーがどれほどいるかは明らかにされていない。

中国のテック企業が、国際的な事業展開を進める中で、海外に拠点を置くことは自然な流れだ。例えば、TikTokは世界的に普及が進むにつれて、中国国外での運営体制を大幅に強化し始めた。TikTokは、ユーザーのデータをシンガポールに保存しているというが、これは西側の規制当局がデータセキュリティへの懸念を強めているためだ。中国の新しいデータセキュリティ法では、企業が海外にデータを移動する方法についても規制を厳しくしているため、企業にとっては国内外のデータを分離することが得策となる。

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Tiyaのシンガポール本社には、ビッグデータ、人事、ユーザーリサーチ、管理、運営などの機能を担当する部署が置かれ「技術プラットフォームと製品開発計画」を支援するチームになると、同社は今回の発表で述べている。同社は、2022年末までにこの都市国家で「完全に運用可能なチーム」を持つことを目指しており「最新バージョンのアプリを世界各地で順次展開する」計画を立てているという。採用活動の一環としては、南洋理工大学とパートナーシップを結び、新卒者を募集する。

Tiyaの会長であり、Lizhiの創業者でもあるMarco Laii(マルコ・ライ)氏は「Tiyaをシンガポールに導入し、世界に通用する才能を持った現地のチームと協力することで、我々はこの地域でより大きな成功を収めることができると確信しています」と語っている。

画像クレジット:The Tiya app. Photo:App Store

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(文:Rita Liao、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

シンガポールのXR企業Refractが約6.8億円調達、ゲーム指向の全身モーションキャプチャソリューション「AXIS」開発を強化

シンガポールを拠点とするXR(エクステンデッドリアリティ / クロスリアリティ)スタートアップのRefract(リフラクト)は米国時間1月25日、Sea Limited(シー・リミテッド)がリードするシリーズAラウンドで約850万シンガポールドル(約6億8300万円)の資金を調達したことを発表した。他にも海外のファミリーオフィスや個人投資家が参加している。

今回の資金は、ウェアラブルで、ゲーム指向の全身モーションキャプチャソリューションである「AXIS(アクシス)」の研究開発の強化に充てられる。同社はまた、2022年後半のAXISの商用化に向けてチームを拡大し、急速に成長するゲーマー、テクノロジーアダプター、コンテンツクリエイター、フィットネス愛好家の市場の要求に対応していく計画である。このシリーズAラウンドで、Refractの調達総額は900万ドル(約10億2500万円)となった。

2018年、Refractの共同創業者であるChong Geng Ng(チョン・ゲング・ウン)氏、Michael Chng(マイケル・チャン)氏、Eugene Koh(ユージーン・コー)氏の3氏は、ゲーミング関連のプロジェクトに取り組む中で、次の課題に直面した。ゲーミングと身体活動のギャップをいかに埋めるか?RefractのCEOであるチャン氏がTechCrunchに語ったところによると、同氏らはそのソリューションを、プレイヤーが自分の体をゲームのコントローラーとして使うということに見出した。3人の共同創業者は、ゲーミングや他の業界のアプリケーションにおける最先端の技術イノベーションについて関連する文書や記事を精査した後、その市場にギャップがあることを認識し、Refractを設立した。

「Refractの目標は、ARおよびXRゲームのキープレイヤーになることです。今回の資金調達により、このプロセスを加速することができます」とチャン氏は語っている。

画像クレジット:AXIS

この資金調達は、Kickstarter(キックスターター)でAXISのクラウドファンディングキャンペーンを成功させ、Deep Dive Studios(ディープ・ダイブ・スタジオ)の買収によってXRゲームパブリッシング部門を立ち上げた直後に発表された。

AXISは、Perception Neuron(パーセプション・ニューロン)やRokoko(ロココ)、Xsens(エックスセンス)のような全身モーショントラッキングシステムとは異なり、リアルタイムのゲーミングやエンターテインメント用途に適している。またAXISでは、ユーザーはゲーミング用に7から10ノードまで、またはより高精度なモーショントラッキング用に業界標準の17ノードまでを柔軟に使用できる。AXISにはベースステーションは必要ないが、ユーザーのコンピューター接続にWi-Fiが必要となる。

「AXISは完全に無接続かつワイヤレスで、外部のベースステーションやセットアップを必要としません。すべてがボディ上にあり、独自のインサイドアウトトラッキング機能を備えています。これはHTC Vive(エイチティーシー・バイブ)の類に見られる、システムのオクルージョンやスペース要件といった一般的な問題に対処するものです」とチャン氏はTechCrunchに語った。

Refractは、ウェアラブルのAXISに代表される同社のテクノロジーとゲームを通じて、没入型でエンゲージメントの高いXRやVRの体験を、成長を続ける29億人のゲーマーに継続的に提供していくことを見据えている。

Deep Dive Studiosによって、Refractはさらに没入的なタイトルを制作できるようになる。現在開発中の格闘ゲーム「FreeStriker(フリーストライカー)」のような、AXISのすべての顧客に無料で提供されるオファリングのリストを補完していく。

Refractのソフトウェアスイートは、OpenVR(オープンブイアール)、OpenXR(オープンエックスアール)、Unity(ユニティ)、Unreal Engine(アンリアル・エンジン)などのプラットフォーム、既存のVRシステムやアプリケーションと互換性があり、ゲーム開発者やコンテンツクリエイターのアクセシビリティを高めている。チャン氏によると、AXISはOculus Quest 2(オキュラスクエスト2)などの人気VRヘッドセットとも連携できるという。

Refractは、このセクターにおけるさらなる垂直統合と水平統合を進めている。

Refractはすでに、バーチャルスポーツプログラムの一環として、World Tekwondo(ワールドテコンドー)のような組織との戦略的関係を確保している。同連盟と協働し、近い将来、バーチャルテコンドーをメダル競技にすることを目指していく。World Tekwondoは、このスポーツをゲーム化し、新しい領域を創出することで、より幅広い、技術に精通したオーディエンスにリーチするというオポチュニティを見出した。そしてこのパートナーシップが生まれた、とチャン氏はTechCrunchに語っている。またRefractは、トルコのイスタンブールで開催予定の2022年Global Esports Games(グローバル・eスポーツ・ゲームズ)でAXISをフィーチャーすることも計画している。

画像クレジット:Refract

「AXISは、高忠実度モーショントラッキングテクノロジーとキャプチャテクノロジーをより幅広いオーディエンスに提供する上で、大きな前進を果たします。この分野でイノベーションを起こし、より没入感のあるゲーミング体験を提供します」とRefractのエグゼクティブディレクターであるチョン・ゲング・ウン氏は語っている。「私たちの投資は、Seaや他の投資家たちが私たちのビジョンと創造性を強く信じていること、そしてXRゲーミング市場の未開拓である大きなポテンシャルを反映するものです」。

「Refractのようなシンガポールの会社が、XRやVRの革新的なテクノロジーの開発を推進しているのを見るのは、とてもエキサイティングなことです」と、Seaのデジタルエンターテインメント部門であるGarena(ガレナ)で戦略的パートナーシップ担当バイスプレジデントを務めるJason Ng(ジェイソン・ウン)氏は述べている。「彼らの成長とシンガポールにおけるイノベーションエコシステム全体の発展をサポートできることを、私たちは大変うれしく思っています」。

「Seaや他の投資家たちは、Refractの才能と、AXISの持つ巨大なポテンシャルを認識してくれました。AXISのKickstarterキャンペーンにおける成功は、このビジョンを共有するゲーマーたちの献身的なコミュニティの存在を証明しています。2022年にAXISとFreeStrikerを彼らに提供できることを心待ちにしています」とチャン氏は語った。

画像クレジット:Refract

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(文:Kate Park、翻訳:Dragonfly)

海外への大学出願を支援するシンガポールのCialfoが約46億円を調達

大学への出願は高校生にとって、特に海外留学したい生徒にとって、とても難しい。シンガポールに拠点を置くEdTechのCialfoは、学校情報の収集、カウンセラーと生徒とのコミュニケーションツール、留学生が1つの出願フォームで多くのプログラムを見つけて出願できる「Direct Apply」を備えたプラットフォームで、出願を簡単にしようとしている。

Cialfoは米国時間1月26日、Square Pegと SEEK Investmentsが主導するシリーズBで4000万ドル(約46億円)を調達したと発表した。

このラウンドには、以前に投資していたSIG Global、DLF Ventures、January Capital、Lim Teck Leeも参加した。2021年2月に発表したシリーズAの1500万ドル(約17億2500万円)と合わせて、これまでの調達金額の合計は5500万ドル(約63億2500万円)となった。

Cialfoには現在、シンガポール、インド、米国、中国に170人以上の従業員がいて、世界中の約1000校の大学と提携している。提携大学にはインペリアル・カレッジ・ロンドン、シカゴ大学、スペインのIE大学などが含まれる。

2017年にRohan Pasari(ローハン・パサリ)氏、Stanley Chia(スタンリー・チア)氏、William Hund(ウィリアム・フント)氏がCiafloを創業した。創業チームはTechCrunch宛のメールで、パサリ氏自身が高校生だった頃の体験が創業につながったと述べた。同氏はインドで育ち、在籍していた高校にはキャリアカウンセラーがいなかった。そのため、生徒たちは大学の出願を自分でしなくてはならなかった。

パサリ氏はもともとは米国の4年制大学に進学したかったが、両親には高額な留学費用を工面する余裕がなかった。そこでシンガポールのいくつかの学校に出願し、南洋理工大学(NTU)の全額奨学金を受けた。同氏は在学中に妹や友人数人の大学出願手続きを手伝い、そこから創業のアイデアが心に芽生えた。

はじめはチア氏とともに教育コンサルティング会社を創業し、ピーク時にはおよそ200人の生徒を担当した。しかし両氏はテクノロジーを活用して事業をスケールアップしたかったため、2017年に教育コンサルティング会社を売却し、その資金でCialfoを創業した。

Cialfoの事業はB2Bで、学校にサブスクリプションを販売している。学校のカウンセラーが生徒をプラットフォームに招待し、保護者もこのプラットフォームを利用できる。

チームはTechCrunchに対し「我々のミッションは大学に進学しようとしている100万人の生徒のジャーニーを手助けすることです。これには3つの柱が必要だと考えています。情報へのアクセス、1人ひとりに合わせたサポート、資金です。この3つが一体となって、教育の民主化を実現できます」と述べた。

調達した資金はグローバルでのユーザーベースの拡大と機能の追加に使う予定で、買収の可能性も検討している。

画像クレジット:Moyo Studio / Getty Images

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(文:Catherine Shu、翻訳:Kaori Koyama)

HoloeyesとDental Prediction、5GネットワークとVR空間を利用した国際間遠隔医療カンファレンスの実証実験

Holoeyes、5GネットワークとVR空間を利用した国際間遠隔医療カンファレンスの実証実験を実施

医療用画像処理ソフトウェアなどを提供するHoloeyes(ホロアイズ)と歯科医療スタートアップDental Prediction(デンタル・プレディクション)は1月17日、Holoeyesが提供する医療用画像表示サービス(非医療機器)「Holoeyes XR」とオンライン遠隔共有カンファレンスサービス「Holoeyes VS」を活用し、日本とシンガポールの医師が参加する国際間遠隔カンファレンスの実証実験を実施した。5Gネットワークを活用したVR空間での国際間遠隔医療カンファレンスは、世界初の試みとなる。

この実証実験では、シンガポールの大手通信会社Singtel(シングテル)の実験施設「5G Garage」とNTTドコモの「ドコモ5GオープンラボYotsuya」を利用し、NTT DOCOMO ASIAの現地サポートを受けて、日本とシンガポールを5Gでつなぎ、遠隔カンファレンスを2回行った。

1回目は、HoloeyesのCOO兼CMOである帝京大学冲永総合研究所教授の杉本真樹氏による、シンガポールの消化器外科医2名に対する肝臓の腫瘍切除の模擬カンファレンス。もう1回は、Dental Predictionの歯科医、宇野澤元春氏とニューヨーク大学歯学部准教授の岡崎勝至氏が、シンガポールの日本人歯科医師に対するインプラント治療や歯内療法、歯科器具に関する説明を、歯列の3DモデルをVR空間で操作しながら行うというものだった。HoloeyesとDental Prediction、5GネットワークとVR空間を利用した国際間遠隔医療カンファレンスの実証実験

この実験について、シンガポールの消化器外科医の1人によると、ストレスなくカンファレンスの体験ができたという。「患者への説明、若い外科医の教育、手術計画など意志決定のためのツールとして使用できる」と話している。

シンガポールを拠点とするSesto Roboticsが6.5億円を調達して世界展開を目指す

シンガポールを拠点とする産業用ロボット企業Sesto(セスト)は、今週、TRIVE、WTI GmbH、SEEDS Capital(Enterprise SingaporeのVC部門)が参加した570万ドル(約6億5000万円)の資金調達を発表した。今回のラウンドは、2018年に実施された同規模の400万ドル(約4億6000万円)のシリーズAに続くものだ。

パンデミックの影響で自動化を目指す企業が増えたこともあり、産業用ロボットの分野で多くの企業がそうであるように、Sestoも前回のラウンド以降多忙な日々を送ってきた。2020年5月には、ここ数年で見られるようになったUV-C(紫外線)システムを先取りした消毒ロボットHealthGUARD(ヘルスガード)を発売した。

2020年8月には、AMR(自律型移動ロボット)のラインナップにMagnus(マグナス)を加えた。このシステムは、多くの自律型倉庫ロボットと同じように動作し、(現在はAmazon傘下の)Kiva(キバ)が開発したシステムによく似ている。また、モジュール化されているため、ロボットの上にさまざまな付属品を取り付けて機能を追加することができる、これは自律型アシスタントの一群を迅速に展開したい企業にとっては好都合だ。その中には、半導体製造に特化して設計された7軸ロボットアームSesto Prime(セスト・プライム)も含まれているが、この分野の製造業は間違いなく自動化の拡大に熱心に取り組んでいる。

2021年5月、Sestoはヨーロッパ、具体的にはオーストリア、ドイツ、スイスへ進出した。このことが、今回のEU拠点の企業からの投資意欲につながっているのだ。CEOのChor-Chen Ang(チョウチェン・アン)氏は今回のラウンドについて、GMDの調査を引用しながら次のように述べている「ヨーロッパにおける自律型移動ロボットの拡大に参入できることをうれしく思っています。ヨーロッパでは、現在の44億米ドルから今後4年間で年平均11.8%の成長率で拡大すると予測されています」。

今回の資金調達は、こうした国際的なパートナーシップの拡大、市場の拡大、さらには同社の提供する製品の開発や既存のロボットの汎用性の向上などに活用される予定だ。

画像クレジット:Sesto Robotics

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(文:Brian Heater、翻訳:sako)

クロスチェーンインフラを手がけるRouter ProtocolにCoinbase Venturesなどが出資

暗号資産の分散型取引所や、レイヤー1とレイヤー2のブロックチェーンソリューション間における通信を容易にするクロスチェーンインフラストラクチャを構築しているスタートアップ企業が、Coinbase Ventures(コインベース・ベンチャーズ)から支援を受けることになった。

シンガポールに本社を置くRouter Protocol(ルーター・プロトコル)は米国時間12月10日、戦略的資金調達ラウンドを実施し、Coinbase Ventures、Alameda Research(アルマダ・リサーチ)、Polygon(ポリゴン)、Woodstock(ウッドストック)、Wami Capital(ワミ・キャピタル)、QCP、De-Fi Capital(ディーファイ・キャピタル)、Maple Block(メープル・ブロック)、TeraSurge Capital(テラサージ・キャピタル)、Wintermute(ウインターミュート)、Shima Capital(シマ・キャピタル)、および複数の起業家から、410万ドル(約4億7000万円)を調達したと発表した。同社は2020年のシードラウンドでも、48万5000ドル(約5500万円)を調達している。

近年、同様の問題を解決しようとするレイヤー1ブロックチェーンネットワークが急増している。これらのレイヤー1プロジェクトが支持を集めると、好みのブロックチェーンの上にレイヤー2ソリューションを構築している開発者コミュニティを引き寄せることができる。

Router Protocolの創業者兼CEOであるRamani Ramachandran(ラマニ・ラマチャンドラン)氏は、TechCrunchによるインタビューに「ブロックチェーンは都市のようなもので、無限に拡張することができますが、接続インフラを構築しない限り、誰もそこに行こうとはしません」と語った。「このようなブロックチェーンが続々と登場してきましたが、しかしそれらの間には接続性がありません。それがRouter Protocolの発端になりました」。

2020年設立されたRouter Protocolは、これらのレイヤー1ブロックチェーンネットワークの多くが今後も運営され、さらに多くのブロックチェーンネットワークが参入してくると確信している。同社が提供するサービスは、開発者が流動資産をチェーン間でシームレスに移動させることを可能にする。「おそらく約50ほどのブロックチェーンが存在し、50の異なるコミュニティと独自のエネルギーを持っています」と、ラマチャンドラン氏は語る。

「レイヤー1のスケーリングソリューション、つまりこの世界のPolygon(ポリゴン)や、Aave(アーベ)やSolana(ソラナ)のような 『Ethereum(イーサリアム)キラー』、そしてTerra(テラ)やAlgorand(アルゴランド)のようなEVM以外のプレイヤーが、さまざまな観点から登場してくるでしょう。それに加えて、この分野には豊富な資本が存在しています。これらのプレイヤーはみな、莫大な軍資金を持っています。誰も10億ドル(約1135億円)以下の話はしていません。この戦いはすぐには終わらないでしょう」。

Router Protocolが提供するも1つのサービスはDfynで、これはPolygonの上に構築されたUniswap(ユニスワップ)やPancake Swap(パンケーキ・スワップ)のような分散型取引所だ。「Dfynと呼ばれるたくさんの空港ターミナルがあって、これらのDyfnネットワークを結ぶ航空路線があるようなものです。しかし、それらは他の空港にもつながっています。それが、このモデル全体の美しさです」。

ラマチャンドラン氏は、2022年にはクロスチェーンソリューションが普及すると予想しているという。「例えば、あなたがSolanaブロックチェーン上にいて、Ethereumを売りたいと思っているけれど、Binance Smart Chain(バイナンス・スマート・チェーン)の方がはるかに良い価格が見られるとします。Routeを利用すれば、ワンクリックでBinance Smart Chainの最高値を取得し、それをあなたのネイティブブロックチェーンであるSolanaに戻すことができるのです」と同氏はいう。

現在、Router Protocolで最も利用されているユースケースはトレーディングだが、ラマチャンドラン氏は、将来的にはさらに多くのアプリケーションが登場すると予想している。「境界を越えて会話ができるようになれば、トレードだけでなく、借りたり貸したり、クロスチェーンガバナンスを行うことができます。例えば、Sushi(スシ)には15のチェーンがあり、15の異なるコミュニティが存在します。これらのチェーンでコミュニティ投票を行うには、15の異なるスナップショットを行う必要があり、まるで悪夢のようです。それを我々が解決できるのです。あるチェーンから借りて、別のチェーンで貸すことができるのです」と、同氏は語った。

Router Protocolは、今回調達した資金を製品提供の規模拡大のために投入し、また複数のセキュリティ監査に投資することも計画しているという。

「ブロックチェーン同士を効果的に通信させることは、今後のDeFiにとっての聖杯であり、Router &Dfynのチームと協力し、この問題を解決する彼らのユニークなアプローチをサポートできることをうれしく思います」と、QCP Capitalの共同創業者であるDarius Sit(ダリウス・シット)氏は、声明の中で述べている。

「我々は、多目的かつアプリケーションに特化したいくつかのブロックチェーンにまたがる将来のWeb 3.0の活動を予想しています。RouterのXCLPは、チェーンをまたいだ流動資産の流れを可能にする重要なクロスチェーン・インフラストラクチャ・ソリューションとなるでしょう。我々は、この方向性に対するRouterチームの取り組みを支援し、サポートできることに喜びを感じています」。

画像クレジット:Router Protocol

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(文:Manish Singh、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

東南アジアの多通貨ネオバンクYouTripが約34億円調達、法人カードも発行

多通貨取引のコスト削減と効率化に特化した、シンガポールを拠点とするオンライン銀行のYouTrip(ユートリップ)は現地時間11月30日、シリーズAで3000万ドル(約34億円)を調達したと発表した。

同社創業者でCEOのCaecilia Chu(カエシリア・チュー)氏によると、今回のラウンドは、アジアの著名なファミリーオフィスがリードしたもので、このファミリーオフィスは匿名を希望しているが、前ラウンドにも参加している。

今回のシリーズAにより、YouTripの資金調達総額は6000万ドル(約67億円)を超えた。同社によると、これまでに全世界で8億ドル(約902億円)超のカード利用を処理し、取引数は約2000万件、アプリのダウンロードは150万回を超えている。

チュー氏はTechCrunchに対し、YouTripが資金調達に踏み切ったのは「変曲点」に達しているからだと述べた。

「東南アジアがパンデミックから脱却し、シンガポールがワクチン接種率で先頭に立っていることから、消費者の間では、旅行に対する大きな需要の高まりと、消費者心理の回復が見られました。eコマースへの支出は確実に増加しており、旅行に関しては、シンガポールのワクチン接種済みトラベルレーンが始まって以来、1日の取引額が少なくとも2〜3倍に増加しています」。

YouTripはこうした追い風を楽観視しているが、旅行の回復については現実的なアプローチをとっている。中期的には、個人消費と、YouBizと呼ばれる複数通貨対応の法人カードを含む新しいB2Bビジネスに最も期待しているとチューは述べた。

YouTrip共同創業者でCEOのカエシリア・チュー氏

2022年、YouTripは地理的拡大にも注力する計画だ。現在、シンガポールとタイで事業を展開している同社は、フィリピンとマレーシアに進出するためにVisa(ビザ)と提携した。さらにチュー氏は、インドネシアとベトナムでのサービス開始に向けて、パートナーと話し合いを進めていると付け加えた。

TechCrunchが2019年にYouTripを取り上げたとき、コアな顧客層の1つは海外旅行者だった。そして新型コロナに見舞われ、同社は非常に迅速に適応しなければならなかった。

YouTrip Perksのような新機能を追加し、LazadaやShopeeといった業者と協力して最大15%のキャッシュバックを提供するパートナーシップチームを立ち上げた。「パンデミックの間、人々はオンラインで多くのものを購入していただけでなく、健康への意識も高まっていたため、スポーツ用品や健康補助食品の購入が増えました」とチュー氏は話す。「私たちは、ユーザーにとって最も関連性の高い業者をターゲットにして提携を促進してきました」。

同社によると、現在、取引額はパンデミック前のレベルに戻っている。YouTripは、消費者の支出や旅行の増加にともない、さらなる牽引力を期待しており、2022年初めに消費者向けアプリのブランドイメージを一新し、新たな決済機能を導入する予定だ。

また、法人向けカードであるYouBizも2022年初めに導入する予定だ。チュー氏は、同社がB2B分野に参入した理由の1つとして、フィンテックサービスを導入する中小企業が増えていることを挙げる。

「私たちは、パンデミックに強い企業になることがどれほど重要かを知っています」と同氏は付け加えた。「国境がいつ再開されるかと毎日ニュースを読むのはやめようと心に誓いました。私たちは、新しい旅行対策に関わらず乗り越え、成功させ続けます」。

同社はまた、中小企業におけるパラダイムシフトを目の当たりにした。

「彼らはフィンテック商品や新しい銀行商品に対して、よりオープンマインドになっています」とチュー氏は指摘する。「当社に関連して言えば、在宅勤務やハイブリッドモデルの普及により、企業の分散化が進んでいます。給与支払い、ベンダーへの支払い、さらには売上の受け取りや消費者への請求までもが世界中に広がっており、外貨のニーズは確実に高まっています。ですので、この市場に参入するには最適な時期だと感じています」。

YouBizの提供が始まれば、YouTripは、AspireSpenmoVolopayなど、法人カードを提供したり、中小企業分野に焦点を当てたりしているVCが支援する東南アジアのフィンテック企業数社の仲間入りをすることになる。しかしチュー氏は、中小企業向けのサービスは消費者向けのサービスに比べて巨大であるだけでなく「サービスが十分に行き届いていないため、大きなチャンスがある」と話す。

特にYouTripは、従業員数1人から1000人までの企業にフォーカスする計画だ。このセグメントを選んだ理由は、YouBizが従来の銀行口座の代わりになるものではないからだ。YouBizは、中小企業の外貨取引にかかる費用を削減することを主な付加価値としている。また、出張の再開を見据えて、経費管理ツールの導入も予定している。

「中小企業の部門では、1人勝ちにはならないと感じています。しかし、競争の話に戻ると、私たちはこの分野に注意深く参入しています。当社には、際立った2つの優位点があります。1つは、テックインフラとライセンスインフラをエンド・ツー・エンドで所有している唯一のネオバンクであることです」。

YouTripは「消費者向け決済サービスではマージンが非常に小さいため、最高のコストと価値を提供するためには、製品のロードマップを含めて、バリューチェーンを完全にコントロールできるレベルまで最適化する必要がある」として、自社の技術スタックに多くの投資を行った。

YouTripの2つ目の強みは、すでに強いブランド認知があることだ。「ビジネスオーナーと話をしていると、多くの人が自分の買い物のためにすでにYouTripを利用しています」とチュー氏はいう。この実績は、YouTripが中小企業に売り込む際に役立っており、チュー氏によれば、B2Bサービス開始に向けてすでに1000件の申し込みがあるという。

画像クレジット:YouTrip

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(文:Catherine Shu、翻訳:Nariko Mizoguchi

シンガポールを拠点とするコワーキングスペースのデスク予約アプリ「Deskimo」がジャカルタに進出

コワーキングスペースを見つけて分単位で支払うオンデマンドアプリで、シンガポールを拠点とするDeskimoが現地時間11月17日、シードラウンドで300万ドル(約3億4200万円)を調達したと発表した。また、インドネシアのジャカルタでソフトローンチし、これまでのシンガポールと香港に加えて3つのマーケットでサービスを提供する。今回のラウンドにはY Combinator、Global Founders Capital、Pioneer Fund、Seed X、Starling Ventures、TSVCが参加した。DeskimoはY Combinatorの2021年夏学期に参加していた。

Rocket Internetのアジア責任者だったRaphael Cohen(ラファエル・コーエン)氏と、FoodpandaやHotelQuickly、GuestReadyの共同創業者であるChristian Mischler(クリスチャン・ミシュラー)氏が、2021年前半にDeskimoを創業した。Deskimoはアプリを消費者に直接提供するのではなく、ハイブリッド勤務を採用する企業と連携している。通常は在宅勤務をしているが集中するため、あるいは電話をするために家を離れたい従業員に対して、福利厚生としてアプリが提供される(ミシュラー氏によれば、Deskimoのユーザーはデスクを平均3時間利用するが、終日滞在するケースもあるという)。DeskimoはWeWork、The Hive、Executive Centre、Garage Societyなどのコワーキングスペースと提携し、コワーキングスペースの新たな収入源となっている。

ミシュラー氏はTechCrunch宛のメールで、交通渋滞が激しく、香港やシンガポールの都市と比べて不動産インフラがあまり充実していない都市をターゲットにするという方針から、ジャカルタに進出すると述べた。「インドネシアは東南アジア最大の市場で、ジャカルタはシンガポールの企業が最初に進出する都市の1つです。そのため当社の多くの顧客からDeskimoをジャカルタで利用できるようにして欲しいと要望がありました。そこで、東南アジアの他の大都市に先駆けてジャカルタを優先したのです」(ミシュラー氏)。

Deskimoはソフトローンチにあたり、ジャカルタで40カ所以上のワークスペースとすでに契約し、2021年末までにさらに10〜20カ所を追加する予定だ。サービスを展開するいずれの都市でも、同社はユーザーが自宅に近いデスクを見つけられるようにビジネス街の中心以外でもワークスペースを探している。例えば香港とシンガポールでは、Deskimoのスペースのおよそ3分の1は住宅地にある。ミシュラー氏によればジャカルタではスペースは市内全域に広がり、パートナーのワークスペースの約60%はビジネス街の中心以外にあるという。

同氏は「コロナ禍にともなう制限が続けばスペースはさらに混雑すると予測しています。そのため我々はDeskimoユーザー全員が近隣でスペースを利用できるようにオプションを増やしていきます」と補足した。

Deskimoはサービス開始からの3カ月間で、中心地にある会議室の予約などの新しいサービスもユーザーの需要に応えて追加してきた。現在の従量制料金モデルに加えて、固定料金のサブスクリプションも試行している。他に、アカウント所有者がゲストを同行できる機能、月末締めの請求だけでなくプリペイドのクレジットの利用、スペースに終日滞在したいユーザー向けの最大料金設定なども準備中だ。

画像クレジット:Deskimo

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(文:Catherine Shu、翻訳:Kaori Koyama)

インターネット分野への投資が停止した中国で新興技術分野を開拓するTemasek

インターネット産業に対する中国の徹底的な締め付けにより、ゲームやeコマースなど、かつて人気を博した分野への投資家や新興企業の情熱が冷え込んでいる。しかし、投資家たちは中国でペースを緩めてはいない。2010年代の消費者向けインターネットブームは、Tencent(テンセント)やAlibaba(アリババ)のような巨大企業を生み出した。デジタル化がより伝統的な分野にも広がるにつれ「テック」業界全体でも新たな巨人の誕生が見込まれる。

例えば、Temasek(テマセク)のRohit Sipahimalani (ロヒット・シパヒマラニ)氏は、中国の医療テック、バイオテック、ヘルスケア、サステナビリティなどの分野に「膨大な機会」があると考えていると、日経アジアのインタビューに答えている。これらは「政府の政策に引き続き沿っている」分野だ。

実際、Temasekは最近、これらの分野でいくつかの中国のスタートアップに出資した。眼科・検眼機器サプライヤーのVision X、mRNAベースのワクチン・医薬品を提供するAbogen Biosciences、手術用ロボットを開発するEdge Medical Robotics、自律走行技術を提供するMomentaなどだ。

3月31日時点で、中国はシンガポール政府系企業の最大の投資先であり、3810億シンガポールドル(約32兆円)のポートフォリオの27%を占めている。

一方、Temasekは規制の見直しの中でインターネット関連企業への資本投下を停止している。

シパヒマラニ氏はインタビューの中で「今後数カ月のうちに規制が明確になり、それによって勝者と敗者がはっきりすると思いますが、我々はおそらくこの分野の規制が明確になるまで、資本投入を控えるでしょう」と述べている。

中国のテック産業の発展を形作る統一的な法律はない。この1年間、中国はIT分野を対象とした数多くの新しい規制を導入してきた。例えば、個人情報保護法はユーザーのプライバシーを保護することを目的としており、インターネットサービスがデータを収集する方法、ひいては収益に影響を与える。独占禁止法は、インターネット企業の自由な成長を抑制し、この分野に新しい風を吹き込もうとするものだ。一方で、オンライン教育の取り締まりは、国の所得格差の拡大に対処するための試みであるとの見方が多い。

業界関係者や投資家にとっての課題は、これらの新しい法律を分析するだけでなく、次の法律がいつ導入されるかを予測することだ。

シパヒマラニ氏は「中国では、実行される方法が少し無骨かつ迅速で、そのため多くの衝撃を与えてきました」と話した。

画像クレジット:Andrew Brookes / Getty Images

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(文:Rita Liao、翻訳:Nariko Mizoguchi

法人設立、会計、税金、規制遵守など煩わしいバックオフィス管理を行うSleek、ビジネス構築に集中したい起業家向けサービス強化

Sleekの創業者ジュリアン・ラブリエール(右)とエイドリアン・バーゼル氏(左)(画像クレジット:Sleek)

起業家や中小企業は、カンパニーセクレタリー業務、簿記、銀行業務、税務、給与計算、雇用サービス、保険など、サイロ化された機能への対応に苦労することがよくある。

フランスの起業家Julien Labruyere(ジュリアン・ラブリエール)氏とAdrien Barthel(エイドリアン・バーゼル)氏は2017年にSleek(スリーク)を設立し、起業家がシンガポールと香港で事業を設立して運営するのを支援した。Sleekは法人設立、行政、会計、税金、ビザから規制遵守まで、すべてを処理するバックエンドのOSプラットフォームを構築した。

同社の使命は、Sleekによってバックオフィスの煩わしさをすべて取り除くことで、ビジネスの構築に集中したい起業家やビジネスオーナーにとって最適なプラットフォームになることだと、バーゼル氏は述べている。

Sleekは米国時間11月16日、White Star Capital(ホワイト・スター・キャピタル)とJungle Ventures(ジャングル・ベンチャーズ)がリードする1400万ドル(約15億9800万円)のシリーズAラウンドを獲得したことを発表した。これにより、Sleekの総調達額は2400万ドル(約27億3900万円)となった。

この資金は、技術および製品開発の強化、人員の増強、既存市場でのプレゼンスの拡大、オーストラリアや英国を含む新規市場への参入に使用される。

英国市場への参入にともない、Sleekは、英国の法人設立管理会社で、2005年の設立以来、45万社以上の法人を設立してきたLtd Companies(Ltdカンパニーズ)の買収を発表した。Sleekは、既存のLtd Companiesのサービスに同社のスタックを加え、英国の中小企業向けのオペレーティングシステムを構築する。

Sleekは設立以来、シンガポールだけでなく、香港、オーストラリア、英国、フィリピンにも拠点を拡大してきた。

同社は、パンデミック時に顧客ポートフォリオの規模を2倍にした。興味深いのは、Sleekの顧客は経済全体の混乱の影響をあまり受けていないようだ、とバーゼル氏はTechCrunchに語っている。また、2021年初めには1000万ドル(約11億4100万円)の年間経常収益を達成したとバーゼル氏は述べている。

5000社以上のポートフォリオを管理しているSleekは、2020年に140万件以上の簿記取引を処理し、約7億ドル(約799億円)の収益を計上した。

Sleekは最近、中小企業の銀行口座開設を簡素化したSleekビジネスアカウントを発表した。これにより、起業家や中小企業の経営者は、Sleekアプリを使ってわずか1日で預金口座を開設し、取引を開始することができ、口座開設前の煩わしい書類作成の必要性がなくなった。さらに、ユーザーはSleekのダッシュボード上で、他の会社の指標と一緒に口座の詳細を確認することができ、会計や簿記のための銀行照合を効率的に行うことができる。また、送金やカード発行に対応した製品のリリースも予定している。

「Sleekビジネスアカウントのリリースにより、起業家のためのオペレーティングシステム(OS)を構築するという当社の製品ビジョンに、大きな一歩を踏み出すことができました」とバーゼル氏は述べている。

また、経験豊富なCFO(最高財務責任者)がビジネスインテリジェンスツールを介してクライアントの会計データにアクセスし、クライアントへの提案や分析(予算編成、戦略、資金調達)を行うCFOサービスを試験的に開始した。

「テクノロジーが人間の超効率化を可能にする未来では、人間は手作業よりも顧客へのアドバイスに多くの時間を費やします。現在、当社のカンパニーセクレタリーは、従来の会社の4~5倍多くのクライアントにアドバイスを行っていますが、その機能の100%自動化を実現し、クライアントへのアドバイスのみに集中できるようにすることを目指しています」と、バーゼル氏はTechCrunchに語っている。

White Star Capitalの創業者兼マネージングパートナーであるEric Martineau-Fortin(エリック・マルティノー・フォーティン)氏は「我々は、Sleekの優れたパートナーとなり、我々のグローバルなカバーエリアを活用して、すべての中小企業が抱える根本的な問題を解決し、ヨーロッパやオーストラリアへの成長を加速できると信じています」と語っている。

「Sleekは、世界中の起業家や中小企業が抱えるバックオフィス管理という、まだ十分なサービスが提供されていない領域の課題に取り組んでいます。Sleekの地域を超えた成長と急速な拡大は、プラットフォームの導入が加速していることと、それがエコシステムにもたらす価値を証明しています」。とJungle VenturesのマネージングパートナーであるDavid Gowdey(デビッド・ゴウディ)氏は語っている。

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(文:Kate Park、翻訳:Akihito Mizukoshi)

Neuronがレンタル用電動スクーターに危険な乗り方を検知する機能を試験的に搭載

マイクロモビリティシェア大手Birdの日本展開に向け、国内プラットフォームパートナーのBRJが4億円調達

電動スクーター(電動キックスクーター)のシェアリング事業を展開するNeuron Mobility(ニューロン・モビリティ)は、同社のスクーター「N3」に新しいオペレーティングシステムと追加の車載センサーを搭載し、危険な乗り方や軽率な乗り方をすると検知して警告や修正を行うアップデートを施した。シンガポールに本拠を置く同社は、今後6カ月の間、オーストラリア、カナダ、英国で約1500台の改良を施したスクーターを試験的に運用する予定だ。

Neuronの新型スクーターは、高精度な位置情報技術と迅速なジオフェンス検知により、急激なハンドル操作、横滑り、縁石跳び、タンデム走行、歩道走行などの危険な行為を検知すると、過ちを正したり、警告したりする。新センサーとIoT(モノのインターネット)は、このスクーターがさまざまな言語で乗り手に話しかけ、自らの行動を正すように導くことを可能にした。走行後には乗り手の安全性を評価したり、安全に乗るための教育資料をメールで送信することもできる。極端な状況下では「サービスエリアを出ているので、戻らないと電源が切れます」というような音声メッセージを発したり、シンプルにスクーターを減速させて停止させることも可能になった。

長期的には、すべての運転者に個別の安全性評価が与えられるようになる予定だ。Neuronでは、この評価によって安全な乗り方を奨励し、危険な行為が多い特定の運転者は安全教育の対象とすることで、そのような行為の繰り返しが防げることを期待している。

「しかし、この技術レイヤーが現実の世界で、現実にユーザーの手に渡ることで、実際にどのような影響があるでしょうか?」と、 NeuronのCEOであるZachary Wang(ザカリー・ワン)氏は、TechCrunchに語った。「それが今回の試験の焦点です。何千台ものスクーターを調査し、多くの自治体と協力して、どこで線を引くべきかを、検討したいと考えています。都市のニーズに最も適した方法でこの技術を導入するためには、どのようにすればいいかを研究したいのです」。

このような種類の運転支援システムを導入している電動スクーター事業者は、Neuronだけではない。Bird(バード)は最近、位置情報を利用した歩道走行検知技術を、ミルウォーキーとサンディエゴで数百台のスクーターに搭載した。Superpedestrian(スーパーペデストリアン)は、夏にNavmatic(ナヴマティック)を買収し、同社の高精度測位ソフトウェアを導入することで、危険な運転行為を検知し、スクーターをリアルタイムで停止させることができるようになった。

Spin(スピン)、Voi(ヴォイ)、Helbiz(ヘルビズ)などの企業も、スクーター用の先進運転支援システム(ADAS)を試験的に導入しているが、これらのシステムでは、車両に取り付けられたカメラとその他のセンサーを使用して、乗り手の行動や駐輪に関して同じ様な判定を行う仕組みだ。

これらの企業と比べると、Neuronは確かに少し遅れているものの、この種の技術を公開している企業の中で、純粋に自社で開発しているのはNeuronだけだろう。Birdの位置情報は、スイスの企業でワイヤレス半導体や高精度の測位モジュールを製造しているu-blox(ユーボックス)との提携により実現したものだ。また、SpinとHelbizはDrover AI(ドローバーAI)と、VoiはLuna(ルナ)と提携し、各々のコンピュータビジョンモジュールを開発している。

Neuronでは、正確な位置情報を得るために、多数の衛星コンステレーションからの電波を利用して高精度な地理空間測位を行うマルチバンドの全球測位衛星システム(GNSS)を実装している。また、新たに搭載された加速度センサーと6軸ジャイロセンサーは、車両の走行速度、加速度の大きさ、旋回角度、傾斜の有無などを検出し、乗り手が危険な運転をしているかどうかを判断する。同時に測位ソフトウェアと連動して、より正確な位置情報を取得する。

迅速なジオフェンス検出では、これらのデータをクラウドではなくエッジコンピューティングを用いてローカルかつ迅速に処理することで、10cmレベルの精度を実現していると、Neuronは述べている。

「私たちはこの12カ月間、これらの技術をすべて束ねる作業に取り組んできました。1つの機能を実現するためには、多くのセンサーを追加する必要があり、情報をローカルに処理するためには、その前に位置を知ることができなければならないからです」と、ワン氏は語る。

Neuronの新技術の機能は、すべてのスクーターに同時に搭載されるが、すべての機能が同時にテストされるわけではない。例えば、オタワのような都市では、電動スクーターは車道か自転車専用車線しか走ることができないため、そこで重視されるのは歩道を検知する技術だ。一方でオーストラリアでは、電動スクーターも歩道を走ることが義務付けられており、Neuronの高精度な位置情報技術は、指定された駐車場に関連して試用されることになるという。

Neuronは現在、オーストラリア、カナダ、ニュージーランド、英国、韓国の23市場で事業を展開しているが、今回の試験的運用はカナダのオタワ、オーストラリアのブリスベンとダーウィン、英国のスラウで行われる予定だ。

画像クレジット:Neuron Mobility

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

透明性が高く持続可能なサプライチェーンを作るためにPortcastが約3.5億円調達

Portcastの創業者であるシャ・リンシャオ博士とニディ・グプタ氏(画像クレジット:Portcast)

多くの製造業者や運送業者にとって、物流管理は未だに手作業ばかりのプロセスである。電話やオンライン照会での出荷追跡に、エクセルのスプレッドシートへのデータ入力。自社を「次世代の物流運営システム」と称するPortcast(ポートキャスト)は、無数の情報源からデータを集め、リアルタイムで出荷物を追跡するだけでなく大きな天候の変化、潮流やパンデック関連の問題など何がその進行に影響を与えるか予測することにより、プロセスを効率化する。

同社は2021年9月上旬、Imperial Venture Fund(インペリアル・ベンチャー・ファンド)を通じたNewtown Partners(ニュートン・パートナーズ)率いるプレシリーズA 資金調達で320万ドル(約3億5000万円)を集めたと発表した。参加したのはWavemaker Partners(ウェーブメーカー・パートナーズ)、TMV、Innoport(イノポート)、SGInnovate(SGイノベート)。シンガポールに拠点を置くPortcastは、アジアとヨーロッパの顧客にサービスを提供し、調達資金の一部はさらなる市場への拡大に充てる。

共同創設者のNidhi Gupta(ニディ・グプタ)とLingxiao Xia(シャ・リンシャオ)博士は、シンガポールのEntrepreneur First(アントレプレナー・ファースト)で出会った。Portcastを立ち上げる前、最高経営責任者  のグプタ氏はDHLのアジア全域でリーダー職に就いてきた。その間に、彼女は物流部門の「非効率は実際にはこの分野において何かを作り出す機会である」ことに気づいた。機械学習の博士号を持ち、製品開発とクラウドコンピューティングの背景を有するシャ博士は「すばらしく補完的に合っていた」ことから、現在Portcastの最高技術責任者を務めている。

Portcastは、外洋貨物船を使用した世界の取引額の90%以上、航空貨物の35%を追跡し、3万本の通商路への需要を予測できるという。情報源は船の場所、進行速度と方向、向かっている港、風速、波高を示す衛星データなどの地理空間データなどがある。また、Portcastは経済様式(例えば、Brexit(ブレグジット)の英国中の港への影響、世界中のワクチン接種の開始により航空機や船の定員がどれくらい変わるか)、台風など気象事項、スエズ運河が航路をふさいだ時のような混乱にも目を向ける。

他には大規模な船会社や運送業者を含む顧客の独占的な取引データなどのデータ源がある。

「私達の挑戦は、いかにこのすべてのデータに同じ言語をしゃべらせるかです」。グプタ氏はTechCrunchに話した。「このデータはさまざまな頻度、詳細度で入ってくるため、いかにそれを組み合わせて機械がそれを理解、解釈し始めるようにするか」。

Portcastの主な解決策は、現在リアルタイムで輸送コンテナを追跡するIntelligent Container Visibility(インテリジェント・コンテナ・ビジビリティ)と、予約形態を追跡するForecasting and Demand Management(フォーキャスティング・アンド・デマンド・マネジメント)の2つである。Portcastはコンテナの追跡にIoTを利用しない。1つ1つに装置を取り付けると桁違いの費用がかかるからである。しかしハイブリッドな解決策のためにIoTプロバイダと連携している。例えば、追跡装置を1つのコンテナに設置し、その後そのデータを使用して残りの出荷物の管理に役立てているのである。

このスタートアップ企業の目標は、企業が運営効率を向上させるのに役立つ予測を行い、手作業のプロセスへの依存を減らすことである。「毎週何百個もの貨物が到着する物流業者がいます。そこでは毎日手作業でそれを確認しているのです。情報はエクセルシートに入力され、それに基づいて下流業務の計画を立てます」。と、グプタ氏はいう。

しかし新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミックは「緊急のデジタル化ニーズ」を生み出し「それはサプライチェーンを費用関数から時間通りに製品を入手することの中核へと形を変えました。そのため私達はいくつかの大規模な製造業者や運送業者と連携しています」。と、彼女は付け加えた。例えば、ヨーロッパのある食品および飲料会社は台北に輸送したが、通常は輸送に70日かかる。しかし到着まで3カ月以上もかかった。Portcastはさまざまな港や船を渡り歩く積荷を追跡し、顧客が遅延の原因を理解するのを助けた。

「中断が起きそうな時を予測するだけでなく、ピンポイントで、台風や積み替えが発生しそうだからX日遅れると伝えます。そうすればトラックや倉庫チームに何台のコンテナが到着するか知らせられるため力になれるのです」。と、グプタ氏はいう。「これにより港費、コンテナの延滞料金、手作業でさまざまな会社のウェブサイトを確認しサプライチェーンに何が起こったかを見つけ出そうとするのに要する時間を削減することができます」。

Portcastがサプライチェーンの可視性を正したい他の物流テックスタートアップ企業より勝る点は、船が通常複数の港を通り、熱帯暴風雨や台風などの気象事象を頻繁に回避しなければならないアジア太平洋地域で発売したことにある。シンガポールとマレーシア間(例えば)の航海を短くするためにPortcastが開発した技術は、アジアとヨーロッパ、またはアジアと米国などを結ぶ大陸間航路にも適用される。

「当社の技術は世界規模で、この市場の他のプレイヤーとの競争力を持ちます」。とグプタ氏は語った。「他に当社を差別化しているのは、製造業者とだけでなく、船会社、物流会社、貨物航空会社とも提携し、それによりネットワーク効果を作り出している点です。海上運送と航空運送で起きていることは非常に強い相乗効果があり、それを基に私達はその業界の型を理解することができ、当社のプラットフォームに移ってくる他社のためのレバレッジを生んでいる。

Portcastには予測型AIから処方型AIを含むよう移行する計画がある。現在、このプラットフォームは企業に遅延の原因を伝えることができているが、処方型AIは自動提案を行うこともできる。例えば、顧客にどの港が速いか、中断を回避するのに役立つ他の船や輸送方法、どうやって対応量を最適化するかを伝えることができる。

また、同社は年末までにOrder Visiblity(オーダー・ビジビリティ)を発売することも計画している。これは特定の品目を入れたコンテナを追跡する機能である。疲弊したサプライチェーンにより多くのさまざまな製品の消費者価格は上昇している。企業が特定のSKUをリアルタイムで追跡できるようにすることで、Portcastは物がもっと早く届くのを助けるだけでなく、各輸送で排出されるCO2量も可視化させることができる。

「カーボンオフセットやカーボントレードは、自分が実際にいくら支出しているか可視化できる場合にのみ生じます。そこに私達は関与することができます」とグプタ氏はいう。「例えば、早く到着すれば、船会社が船を減速させバンカー重油のような燃料費用を節約する機会となり、膨大な費用節約となるだけでなく、CO2排出量も削減することになります」。

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(文:Catherine Shu、翻訳:Dragonfly)

シンガポールのエドテックDoyobiは教師を通じて子供たちのSTEM教育に貢献

EdTechブームは主に学生を対象としているが、教師も学ぶ者の1人だ。シンガポールを拠点とするプロフェッショナル開発プラットフォーム「Doyobi(ドヨービ)」は、教育者がSTEM科目(科学・技術・工学・数学)を教えるための新しい魅力的な方法を提供したいと考えている。このスタートアップ企業は米国時間10月21日、Monk’s Hill Ventures(モンクス・ヒル・ベンチャーズ)が主導したプレシリーズAの資金調達で、280万ドル(約3億2000万円)を調達したことを発表した。

今回のラウンドには、Tres Monos Capital(トレス・モノス・キャピタル)、Novus Paradigm Capital(ノーヴァス・パラダイム・キャピタル)、XA Network(XAネットワーク)の他、Carousell(カルーセル)の最高経営責任者であるQuek Siu Rui(クエック・シウ・ルイ)氏、Glints(グリンツ)の共同設立者であるOswald Yeo(オズワルド・ヨー)氏とSeah Ying Cong(シーア・イン・コン)氏、Grab Financial Group(グラブ・ファイナンシャル・グループ)の代表であるReuben Lai(リューベン・ライ)氏などのエンジェル投資家が参加した。

Doyobiのプラットフォームには、教師向けのトレーニングや生徒のためのインタラクティブなコンテンツが含まれており、現在は東南アジア、中東、アフリカの10カ国以上で約2000人の教師に利用されている。その中でも特に大きな市場は、インドネシアとフィリピンの2カ国だ。Doyobiは、教育プラットフォームであるLeap Surabaya(リープ・スラバヤ)やCoder Academy(コーダー・アカデミー)の他、HighScope Indonesia(ハイスコープ・インドネシア)、Mutiara Harapan Islamic School(ムティアラ・ハラパン・イスラミック・スクール)、Stella Gracia School(ステラ・グラシア・スクール)などの私立学校と提携している。

Doyobiは2020年、STEMに特化した教育プログラム「Saturday Kids(サタデー・キッズ)」からスピンオフして設立された。共同創業者兼CEOのJohn Tan(ジョン・タン)氏は、8年間運営してきたSaturday Kidsでは、世界中にSTEMスキルを学ぶ必要のある子どもが何百万人もいるにもかかわらず、年間数千人の生徒にしかリーチできていなかったと、TechCrunchに語った。

「学校で教えられていることと、子どもたちが将来の仕事に備えるために必要なこととの間には、大きなギャップがあります。好奇心、想像力、共感力は、読み書きや計算のスキルと同様に重要です」と、タン氏は述べている。「教師は学習成果を形成する上で非常に大きな役割を果たしているのに、ほとんどのEdTechイノベーションは教室にいる教師を完全に対象から外してしまっています」。

多くの政府が、経済成長におけるSTEMスキルの重要性を理解しているにもかかわらず、カリキュラムにSTEMスキルを組み込むことに苦労していると、同氏は付け加えた。Doyobiは教師を通して生徒にリーチすることで、この問題を解決したいと考えている。

Doyobiは、ライブビデオレッスンなどの教師向け啓発トレーニングに加えて、教育者が子どもたちと一緒に使える独自の仮想学習環境を構築した。これには、新しいスキルの実社会への応用、インタラクティブメディアの使用、Scratch(スクラッチ)を使ったコーディングプロジェクトなどが含まれており、生徒が授業で学んだことを強化することができる。DoyobiはTeachers As Humans(人間としての教師)というオンラインコミュニティも運営しており、そこでは教育者がピアサポート(同じ立場にいる人同士の相互サポート)を受けられる。

Doyobiは今回調達した資金を使って、教育者向けのコースを増やしたり、生徒向けのビデオ、クイズ、プロジェクトなどの教材をさらに充実させていく予定だ。

画像クレジット:Karl Tapales / Getty Images

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(文:Catherine Shu、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

東南アジアでメンタルヘルス支援アプリを提供するThoughtFullが約1.2億円を獲得

新型コロナウイルス(COVID-19)が流行する以前から、うつ病や不安神経症は人々の健康に深刻な影響を与えていたが、パンデミックをきっかけに、メンタルヘルス関連のスタートアップ企業への関心(およびベンチャーキャピタル)が高まってきている。Calm(カーム)Headspace Health(ヘッドスペース・ヘルス)のようなメンタルヘルス関連のスタートアップ企業の多くは米国に拠点を置いているが、世界各地でもエモーショナル・ウェルネスに注目が集まっている。例えば、東南アジアでは、メンタルヘルスケアやサポートへのアクセスを向上させるスタートアップ企業が増えている。その1つであるThoughtFull(ソウトフル)は米国時間10月12日、110万ドル(約1億2400万円)のシード資金を調達したことを発表した。これまでに東南アジアのデジタルメンタルヘルススタートアップが調達したシードラウンドの中で最大級のものだという。

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2019年に設立されたThoughtFullのアプリ「ThoughtFullChat」は、ユーザーをメンタルヘルスの専門家につなげてコーチングセッションやセラピーを受けさせたり、セルフガイドのツールも用意している。「ThoughtFullCare Pro」と呼ばれる同スタートアップのメンタルヘルス専門家向けアプリは、オンライン診療の管理と拡大を可能にしてくれる。ThoughtFullChatは、App StoreGoogle Playでダウンロードできる他、保険会社や従業員の福利厚生プログラムを通じても入手可能だ。

今回のシードラウンドの投資家には、The Hive SEA(ザ・ハイブ・シー)、ボストンを拠点とするFlybridge(フライブリッジ)、Vulpes Investment Management(バルプス・インベストメント・マネジメント)の他、アジア太平洋地域のファミリーオフィスやエンジェル投資家が名を連ねている。

ThoughtFullを立ち上げる前、創業者兼CEOのJoan Low(ジョーン・ロー)氏は、香港のJ.P.Morgan(J.P.モルガン)での6年間を含み、投資銀行家だった。ロー氏はTechCrunchに電子メールで「私が住み、働き、学んできた米国やヨーロッパなどでは、デジタルメンタルヘルスのイノベーションが猛烈なスピードで起こっているのに比べ、東南アジアではメンタルヘルスケアにアクセスするのがいかに難しいかを認識し、金融機関を辞めなくてはいけないと感じました」と語ってくれた。

ThoughtFullの主な運営市場はシンガポールとマレーシアだが、現在は43カ国にユーザーがいる。2020年にサービスを開始した同社のアプリは、5つの言語に対応している。英語、バハサ・マレーシア、バハサ・インドネシア、北京語、広東語の5つの言語に加え、タミル語、タイ語、ベトナム語、タガログ語にも精通したコーチがいる。

ロー氏は、ThoughtFull社が各市場に合わせたサービスを提供するために、現地のヘルスケアシステムと密接に連携していると述べている。例えば、The Hive Southeast Asiaやマレーシア財務省の100%子会社であるPenna Capital(ペンナ・キャピタル)と提携し、パンデミックの影響で対面での相談を含むケアへのアクセスが困難になったマレーシアのメンタルヘルスのエコシステムをデジタル化する予定だ。

「ヘルスケアシステムは、さまざまなステークホルダー、構造、結果が絡み合っているため、本質的に複雑です。しかし、アジアのヘルスケアは、文化だけでなく、ケア提供から支払者や研究モデルに至るまで、システムが多様であるため、特に複雑なのです」とロー氏はいう。「そのため、参入障壁が高く、アジアのヘルスケアに大々的に参入する外資系企業が少ないのです」。

東南アジアでメンタルヘルスの専門家へのデジタルアクセスを提供するアプリには、最近ベンチャー資金を調達したIntellect(インテレクト)がある。ロー氏は、ThoughtFullが他のメンタルヘルス関連のスタートアップ企業と異なる点として、エンド・ツー・エンドのサービスに焦点を当て、ユーザーにパーソナライズされた予防と治療のオプションを提供し「より質の高いメンタルヘルスケアを提供するための完全に閉じたフィードバックループ」を構築することを挙げている。

ThoughtFullのシードラウンドは、ディープテック技術の開発や臨床研究を含む製品開発に使用される。

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画像クレジット:ThoughtFull

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(文:Catherine Shu、Akihito Mizukoshi)

乗組員の変更管理、海賊などの潜在的なリスクの予測などを提供する海事情報プラットフォーム「Greywing」が資金調達

シンガポールを拠点とするGreywing(グレイウイング)は、船舶運航会社をはじめとする海事産業の人々が重要な意思決定を行う際の役に立つために、2019年に設立された。同社が提供する製品には、乗組員の変更管理、海賊などの潜在的なリスクの予測報告、新型コロナウイルスの影響による渡航制限の更新などのツールが含まれている。

米国時間10月7日、Greywingは250万ドル(約2億8000万円)のシード資金調達と併せて、船舶運航会社が乗組員の交代によって生じる二酸化炭素排出量を監視するための新しいソリューションを発表した。参加した投資家は、Flexport(フレックスポート)、Transmedia Capital(トランスメディア・キャピタル)、Signal Ventures(シグナル・ベンチャーズ)、Motion Ventures(モーション・ベンチャーズ)、Rebel Ventures(レベル・ベンチャーズ)、Entrepreneur First(アントレプレナー・ファースト)そしてY Combinator(Yコンビネーター)など。GreywingはY Combinatorの2021年冬のバッチに参加していた。

今回よりGreywingの提供するプラットフォームは、船舶運航会社が乗組員の変更にともなう潜在的な二酸化炭素排出量を事前に見積もることができるようになった。

この炭素排出量計算ツールは、乗組員の現在地、母港、経路変更の可能性などのデータを取り込み、ウェイポイントが入力されると、乗組員が利用可能な定期航空便を調べ上げる。それらの航空便情報には、そのフライトで排出されるCO2の量が料金とともにリストアップされるので、船舶運航会社は運航コストに大きな影響を与えることなく、総排出量を削減できる航空便を手配することができる。

最高経営責任者(CEO)のNick Clarke(ニック・クラーク)氏は、世界のCO2排出量の3%が船舶によるものであり、そのうち約3分の1が「スコープ3」と呼ばれる、乗組員の交代など船舶の燃料消費以外の要因によるカーボンフットプリントであると、メールで説明している。多くの船舶運航会社は、道義上の理由から炭素排出量の削減に取り組んでいるが、国際海事機関が設定した2030年および2050年の脱炭素化目標に適応する必要にも迫られている。

Greywingは、この炭素排出量測定ツールを導入する3カ月前にも、船舶運航会社が乗組員の検査、検疫、その他の新型コロナウイルス関連規制を管理するための「Crew Change(クルー・チェンジ)」というツールを発表している。

Greywingは、クラーク氏と最高技術責任者のHrishi Olickel(ヒリシ・オリケル)氏が、シンガポールのEntrepreneurs Firstで出会い、2019年に設立した。オリケル氏がTechCrunchにメールで語った話によると、同氏のバックグラウンドはパラメトリック保険やロボット工学だったので、共同創業者候補をマッチングするこのプログラムに参加する前は「海事産業についてほとんど何も知らなかった」という。

Greywing創業者のNick Clarke氏とヒリシ・オリケル氏(画像クレジット:Greywing)

「私がGreywingのミッションに惹かれたのは、ニックと、海事産業がデジタル化の瀬戸際にある極めて重要な産業であり、私たちが変化をもたらすことができると気づいたからです」と、オリケル氏は語る。

Greywingは、船舶運航会社が航海の準備をする際に必要な作業量を減らすために構築された。このプラットフォームは、民間および公共のソースからデータを収集し、ユーザーフレンドリーで航行に適したレポートに変換する(このプラットフォームはモバイル向けに設計さている)。

「私たちのオペレーティングシステムが登場する以前は、これらの重要な詳細情報を別々のチャネルから入手し、電子メール、初歩的な船舶追跡システム、人事業務のERP(企業資源計画)、電話、あるいはExcelのスプレッドシートまで、多くの手段を利用して意思決定を行っていました」と、クラークは語る。「想像されるとおり、これらのデータポイントをすべて整理して、実用的なインテリジェンスに変えることは困難です」。特に、1つの間違った判断が、コストや環境への影響、乗組員の危険につながる場合はなおさら難しい。

Greywingの目的は「この業界で現在行われている無益な情報報告から、リアルタイムの意思決定、さらには予測的な警告へと移行させること」であり、そのために二酸化炭素排出量と乗組員交代を管理するツールを構築したと、オリケル氏は述べている。

Greywingは今回調達した資金によって、より多くの海事データソースを活用し、アルゴリズムの複雑さをさらに高めて、より自動化の進んだインテリジェントな船舶管理システムを開発することができる。

「今回の資金調達は、Greywingのソリューションを海運業界に普及させるために役立ち、それによって私たちは、他の方法では手がつけられない世界の二酸化炭素排出量の1%に取り組むことができます」と、クラークは語る。「私たちはすでに、世界の商業船隊の3.5%に相当する2000隻以上の船舶に当社のソリューションを導入することに取り組んでいます。これにより、23万トン以上の炭素を地球の大気から減らすことができます。これは、7隻の船舶を海から排除することに相当します」。

画像クレジット:Suriyapong Thongsawang / Getty Images

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(文:Catherine Shu、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

東南アジア6カ国でロジスティックを展開するNinja Vanが約642億円調達

シンガポール拠点のロジスティックスタートアップNinja Van(ニンジャバン)が、事業のインフラとテクノロジーシステムの成長を支えるべく、5億7800万ドル(約642億円)のシリーズEラウンドをクローズした。

同社の発表によると、投資家には中国のAlibaba Group、そして既存投資家であるDPDgroupのGeoPostFacebook共同創業者Eduardo Savering(エドゥアルド・サベリン)氏のB Capital Group、MonkのHill Ventures、ブルネイ政府系ファンドZamrudが含まれる。

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報道によると、早ければ2022年にも新規株式公開するNinja Vanのバリュエーションは、最新のラウンドにより10億ドル(約1111億円)を超えた。同社の広報担当はバリュエーションについてコメントしなかった。

シリーズEで、同社の累計調達額は9億7650万ドル(約1085億円)になったと広報担当はTechCrunchに語った。

今回のラウンドは、2020年4月に7億5000万ドル(約833億円)のバリュエーションで2億7900万ドル(約310億円)を調達したシリーズD、2018年1月に8700万ドル(約96億円)を調達したシリーズCに続くものだ。

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Ninja Vanは調達した資金を、東南アジアにおけるeコマースの機会を最適化するためのマイクロサプライチェーンソリューションを含む、オペレーションの強化に使う。

同社は1日あたり約200万個の小包を配達していて、150万もの荷主と受取人1億人を抱える、と主張する。

CEOのLai Chang Wen(ライ・チャン・ウェン)氏、CTOのShaun Chong(ショーン・チョン)氏、CPOのBoxian Tan(ボシアン・タン)氏が2014年に創業した同社はシンガポール、マレーシア、インドネシア、タイ、ベトナム、フィリピンで事業を展開している。現在スタッフ6万1000人超を雇用する。

「東南アジアのeコマースをの可能性、特にeコマースの成長を促進するテクノロジーがもたらしているロジスティックの力を強く信じています。この地域でのNinja Vanの広範なプレゼンスと極めてローカルな洞察でもって、Ninja Vanとの提携で東南アジア中のeコマースエコシステムの参加者にさらにサービスを提供できると確信しています」とAlibaba Groupの東南アジア投資責任者Kenny Ho(ケニー・ホー)氏は述べた。

画像クレジット:Ninja Van

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(文:Kate Park、翻訳:Nariko Mizoguchi

スマホでできるパーキンソン病などの神経変性疾患のデジタル治療を開発するNeuroglee

シンガポールに本拠を置くNeuroglee Therapeutics(ニューログリー・セラピューティクス)は、神経変性疾患患者のためのデジタル治療処方を開発しているスタートアップ企業だ。同社はシリーズAの資金調達ラウンドを実施し、1000万ドル(約11億円)を調達したと発表した。この資金は、バーチャルな神経学クリニックの設立や、Neurogleeのボストンへの移転をサポートするために使用される。今回の投資ラウンドはOpenspace Ventures(オープンスペース・ベンチャーズ)とEDBIが主導し、Mundipharma(ムンディファーマ)の前CEOであるRamen Singh(ラマン・シン)氏、Biofourmis(バイオフォーミス)の共同設立者であるKuldeep Singh Rajput(カルディープ・シン・ラジプート)氏とWendou Liu(ウェンドウ・リウ)氏、そして2020年Neurogleeの前ラウンドを主導した日本の製薬会社であるエーザイが参加した。

創業者兼CEOのAniket Singh Rajput(アニケ・シン・ラジュプット)氏は、同社がボストンへ移転する理由について、メールでTechCrunchに次のように語った。「ボストンは世界最大のデジタルヘルスハブの1つです。アルツハイマー病のような治療が困難な神経変性疾患に関連する軽度認知障害を治療するための最初のソリューションを開発することに専念している企業として、ボストンはそのための戦略的支援を私たちに提供してくれると信じています」。

Neurogleeは現在、Mayo Clinic(メイヨー・クリニック)と共同で、Neuroglee Connect(ニューログリー・コネクト)と呼ばれる新しいプラットフォームを開発している。これは、神経変性疾患の可能性がある軽度認知障害者を対象にメイヨー・クリニックが実施している10日間の対面式プログラム「HABIT(Health Action to Benefit Independence and Thinking、自立と思考のための健康行動)」をベースに、Neurogleeの技術でその規模を拡大し、患者や介護者が自宅で利用できるようにするものだ。Neuroglee Connectのユーザーは、24時間体制で対応するヘルスナビゲーターや、評価や干渉を行う臨床治療チームからも、サービスを受けられるようになる。

Neurogleeの製品パイプラインには、パーキンソン病や脳卒中のデジタル治療処方も含まれている。

Neurogleeは、2020年12月に前回の資金調達を発表して以来、アルツハイマー病向けのデジタル治療処方箋ソフトウェアである「NG-001」の製品開発に成功するなどのマイルストーンを達成してきた。現在はNG-001がFDA(連邦食品医薬品局)からBreakthrough Designation(画期的新薬指定)を獲得するための概念実証試験に着手したところだと、ラジュプット氏は語っている。

Neurogleeのアダプティブラーニング(適応学習)テクノロジーは、患者の認知機能、気分、行動に関連するバイオマーカーと機械学習を利用して、各患者にパーソナライズした治療プランを自動的に作成する。患者は自宅から、スマートフォンやタブレットを介してこのソフトウェアを利用できる。

「例えば、患者の指が動く速度、ゲームやタスクを完了するまでの時間、デバイスのカメラで確認した患者の顔の表情などに基づいて、タスクやゲームの数や種類が調整されます」と、ラジュプット氏は語る。「このソリューションには、患者の過去の映像を使ってポジティブな記憶や感情を呼び起こし、認知機能を向上させる回想療法も組み込まれています」。

画像クレジット:Neuroglee

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(文:Catherine Shu、翻訳:Hirokazu Kusakabe)