売れ残り食品の再販マーケットを提供するKarma、1200万ドルを調達

ストックホルムのスタートアップであるKarmaは、地元のレストランや食料品店に対し、売れ残り品を割引販売するためのマーケットプレイスを提供している。そのKarmaが、シリーズAにて1200万ドルの資金を調達した。

出資をリードしたのはスウェーデンの投資ファームであるKinnevikで、アメリカのベンチャーキャピタルであるBessemer Venture Partners、アプライアンス機器メーカーのElectrolux、および以前から出資を行なっていたe.venturesも参加している。今回の調達により、合計調達額は1800万ドルとなった。

Karmaは、Hjalmar Ståhlberg Nordegren、Ludvig Berling、Mattis LarssonおよびElsa Bernadotteらによって2015年末に設立された。そしてその翌年、レストランや小売店で売れ残った食品を、消費者に対して割引販売するためのマーケットプレイスを提供するアプリケーションをリリースした。

消費者として利用するには、iOSないしAndroid版アプリケーションで場所を登録するだけでいい。取り扱い店および取り扱い商品が表示されるようになる。欲しいものをみつけたらKarmaアプリケーションを利用して支払いを行い、閉店までに商品を受け取れば取り引きは完了だ。お気に入りの店舗を登録しておいて、そこで新たな商品が販売開始されると通知を受け取るようにすることもできる。

KarmaのCEOであるStåhlberg Nordegrenによれば、「生産された食品の3分の1は無駄になっています」とのこと。「レストランや小売店での売れ残りを販売できるようになれば、食品の無駄を大いに減らすことができるのです。私たちはアプリケーションを通じて直接に食品を購入して持ち帰ることができるようになるのです。売り手側の立場で考えれば、無駄を減らして売り上げを増やすことができます。また消費者側からすれば、おいしい食品をより安く購入することができるようになるわけです。そしてもちろんゴミを減らすことによって環境への負荷も減らすことができるわけです」。

地元であるスウェーデンでサービスを開始し、これまでに1500件以上のレストラン、小売店、ホテル、ベーカリーなどがKarmaを利用するようになっている。従来は廃棄されていた食品が販売されるようになり、これまでに35万人の利用者がKarma経由で商品を購入しているとのこと。Ruta Baga、Marcus Samuelsson’s Kitchen、およびTableなどの有名レストランや、Sodexo、Radisson、Scandic Hotelsなどの有名企業、および大手スーパー3社も、パートナーとしてKarmaを利用している。

2月からはイギリスでもサービスの提供を開始しており、すでにロンドンの400件以上のレストランがKarmaを利用しているとのこと。地元でよく知られるAubaine、Polpo、Caravan、K10、Taylor St Barista’s、Ned’s Noodle Bar、およびDetox Kitchenなどが名を連ねている。

Ståhlberg Nordegrenによれば、Karmaをよく利用するのは25歳から40歳までの、若いホワイトカラー層なのだとのこと。オフィス街で働き、帰りに夕食をピックアップして帰るというスタイルが目立つのだそうだ。もちろん学生や高齢者層の間でも、おいしい食品を割安で入手できるということで話題になっているようだ。

調達した資金は、スーパーマーケット向けのプロダクト開発およびヨーロッパを皮切りとする新市場の開拓のために利用する予定であるそうだ。従業員は、ストックホルムに35名の従業員を抱えているが、2020年中頃までには5ヵ国150名程度にまで拡大していくプランを持っているとのことだ。

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(翻訳:Maeda, H

生産性ソフトではなくビジネスプロセスのレベルで中小企業のデジタル化を助けるTeamleaderが$22Mを調達

中小企業のデジタル化を助けるSaaS Teamleaderがこのほど、シリーズCで2200万ドルを調達した。ラウンドをリードしたのはロンドンのKeen Venture Partners、これにPMVと、これまでの投資家Fortino CapitalとSage Capitalが参加した。

6か国に計1万近い顧客(主に中小企業)がいる、という、本社をベルギーに置くTeamleaderは、SaaSベースのプラットホームにより中小企業のビジネスプロセスのデジタル化を推進している。そのサービスには、CRMや営業支援、プロジェクト管理、時間管理、請求事務などが含まれる。

また最近立ち上げたTeamleader Marketplaceは、今後の同社の成長の核となる、と見なされている。これは顧客が、自分たちの好きな地元のSaaSツールをTeamleaderに統合できる、というサービスだ。これまですでに1000の統合をサポートし、とくにローカライゼーションに力を入れている。

Teamleaderの協同ファウンダーでCEOのJeroen De Witは語る: “ヨーロッパ全域のデベロッパーのための100万ドルのファンドまで作った。彼らに、Teamleaderの統合をやってもらいたいのだ。かなり思い切ったアイデアだが、うまくいっている”。

“このマーケットプレースのすごいところは、ヨーロッパ中のSaaS選手たちがわれわれの成長に乗っかれることだ。たとえばベルギーのCumul.ioは今、このマーケットプレースを通じてスペインに顧客を見つけている。それは完璧に、わが社のビジョンにも合うことだ”。

より広い視野で見ると、中小企業はそろそろデジタル化を恐れなくなっている。そしてどんどん、いろんなビジネスソフトウェアを利用するようになっている。“これらのツールは、お互いに寄り添って一つになり、統合化されたシステムとして機能する必要がある。そうでなければ、中小企業がそこから最大の価値を得ることができない”、と彼は言う。

今回得られた資金は、Teamleader Marketplaceに投じられるほかに、国際化のなお一層の成長とプロダクトロードマップの加速に充てられる。その中には、同社の言う“マルチローカルなアプローチ”が含まれる。そしてそのためには、Teamleaderのプロダクトを各国のニーズに合わせて微調整していく必要がある。そう、同社はまさに、ヨーロッパ的なスタートアップだ。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

欧州議会、著作権をめぐる改革案を否決ー議論続行へ

312対278で、欧州議会はデジタル著作権改革案をめぐる議論を続行させることを決めた。法令化するのに最短ルートをとるのではなく、今後さらなる議論や綿密な調査が行われることを意味する。

大議論を巻き起こした提案を改めるチャンスがあるというのは、重要な意味を持つ。

先月、欧州議会の法務委員会は著作権についての法案の最終文案を承認したがー最も議論を巻き起こしている2つの条項の承認も含むー“リンク税”、“検閲マシーン”に反対する人々は、欧州議会議員に議論を再度行うよう、そして法案を改めるよう最後まで運動を展開した。

著作権改革案では主に2つの条項が議論を起こしている。

・第11条ーGoogle newsのようなニュースアグリゲータービジネスモデルを標的にするために、報道コンテンツスニペットの著作隣接権をつくる。メディアは長い間、自分たちのコンテンツからニュースアグリゲーターが不正に益をあげていると主張してきた。

似たような著作権の法律がドイツとスペインで施行されている。スペインではライセンス取得がフレキシブルではなく、Google ニュースは見出しや批評、交通情報に至るまでスペイン語版全てを閉鎖した。

・第13条ーユーザーがアップロードするコンテンツを大量に扱うインターネットプラットフォームが、著作権違反に問われるようになる。これは、例えばYouTubeのようなプラットフォームは、ユーザーがコンテンツをアップロードした時点で事前にフィルターをかける必要に迫られる。もしアルゴリズムが著作権のある作品を使用しているのを見落とした場合は大変な事態となるかもしれない。

どちらかというと、第13条の方が議論の対象となる要素が強く、これについて改革案反対者は特に抗議している。しかしながら、この改革案はミュージシャンや音楽業界からは支持されている。彼らは、Youtubeはミュージックビデオ視聴に関してプラットフォーム上で法的に保護せず、本来より少ないロイヤリティしか払っていないと何年も訴えてきた。

反対キャンペーンでは、デジタル権利団体、スタートアップグループ、インターネット企画者、コンピューターサイエンティスト、研究者、ウェブ制作者らで構成する連合ーSir Tim Berners-Lee、Vint Cerf、Bruce Schneier、Jimmy Wales、そして先月のオープンレターに名を連ねたMitch Kaporも含むーは第13条が“インターネットを、シェアやイノベーションのためのオープンプラットフォームから、ユーザーを自動監視したりコントロールしたりするためのツールへと変えてしまう、その変化へ一歩を踏み出すものになる”と主張している。

欧州委員会は、オンライン百科事典は第13条適用外としていたにもかかわらず、今週、Wikipediaのいくつかの欧州言語版が改革案反対の姿勢を表すためにコンテンツを黒く表示した。

しかしながら、反対を唱える人々の主張は…

欧州議員に法案を改めることができるように投票するよう求めるオンライン請願には、投票までに85万超の署名が集まった。

投票の直前、欧州議員は改革案についての賛否の概要を聞いた。

賛成派の議員Axel Vossー先月改革案を可決した法務委員会の報告者ーは「インターネット上で欧州アーティストが搾取されている状態に終止符を打つのが狙いだ」と述べた。

「我々は、欧州で創造されたもので莫大な利益を得てきたGoogleやFacebookといったメジャーな米国のプラットフォームについて話をしている。我々はこうした行いをやめさせなければならない」。そして「アメリカ第一主義というのはデータや我々の偉大な作品の乱用だと言う人々がいる一方で、別の人々はこのインターネット資本主義をサポートするというのはまったく不可解だ。我々は欧州のクリエイターの側に立つべきであり、さもなければクリエイターたちは破産してしまうリスクがある」とも述べた。

「著作権違反を防止するのになぜ反対するのか。クリエイターたちが真っ当な報酬を得ることになぜ反対するのか。そして巨大なプラットフォームに、より責任を持ってもらうのになぜ反対するのか」「我々が向かってきている反対運動は、Googleや、欧州議員の子供たちの目に触れるFacebookによるものだ。このキャンペーンの全てが嘘に基づいている。ユーザー個人に適用される制限などはなく、全ての人がリンクを貼ったり、法的な確証を持ってコンテンツをアップロードしたりできる」と付け加えた。

これに対する改革案反対の主張を展開したのはー“幅広い、事実に基づく議論”と形容するのを許容するとしてー域内市場・消費者保護委員会の報告者、Catherine Stihler議員だ。この委員会は第13条に関してコンピテンシーを持つが、法務委員会の賛同を得られた「必要なバランスを欠いている」という文言にはStihlerの姿勢は考慮されていない。

「欧州のアーティストや文化的多様性を守るという共通するミッションのために我々全員が団結している。委員会では、価値観の違いについて意義ある進展をみながら、と同時に欧州のインターネットユーザー、中小企業、スタートアップを保護するという、幅広い和解に至った」と Stihlerは述べている。

「表現の自由への第13条の影響について本当に懸念されることは、国連の特別報告者David Kayeからワールドワイドウェブ発明者sir Tim Berners-Leeに向けて注意喚起された。法務委員会の権限に反対する100万人近くの署名が集まった請願を私は昨日受け取ったばかりだが、真の懸念は市民の声の中にある。私が思うに、この法律の背景には意見の一致というゴールがある。現段階では正しいものではなく、その提案された手法について大きな議論がまだ残る。幅広いサポートを得るために、我々は専門家や株主、市民に対し、必要な議論を提供する義務を負っている」。

今日の採決の結果は、賛成派、反対派どちらの著作権ロビイストたちにとって忙しい夏になることを意味している。改革案の改正や次の投票のチャンスがあり、欧州議会での投票は9月に行われる。

欧州消費者機関BEUCは、今日の採決結果を評価している。

Monique Go総裁は発表文の中で「大規模かつシステマティックなオンラインコンテンツのフィルタリングを防ぐ戦いを展開してきた中で、今日の採決は大きな決定だ。立法府の議論の方向性をすぐさま正す必要がある。インターネットは引き続き、消費者が自分の作品や意見、アイデアを自由にシェアできる場所であり続けるべきだ。欧州議員は、著しくバランスの欠いたレポートを改め、著作権がコンシューマーとクリエイターの両方にとって機能するものとなるようにするチャンスがある」。

全くハッピーでない人たち:著述家ソサエティや、作曲家と音楽出版社(Sacem)だ。Sacemの事務局長David El Sayeghは「逆行しているが、終わりではない」と表現した。

「Sacemは引き続き、クリエイターの権利が認識され、彼らの作品価値に対して相当の報酬が払われるように努力する」と彼は発表文で述べた。「我々は今日の採決結果で落胆することはなく、音楽業界の未来を保護する、正当な合意に至るという希望を持って、世界中のミュージシャンや音楽愛好家のサポートを駆り集め続けるつもりだ」。

「我々は、21世紀のデジタル環境の中に身を置くクリエイターの権利を十分認識するようなフレームワークを、欧州議会がゆくゆくはサポートするものと確信している」。

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(翻訳:Mizoguchi)

Wikipediaのスペイン語イタリア語ポーランド語ページがEU議会の著作権改定に抗議して黒塗りに

【抄訳】
Wikipediaのイタリア語とスペイン語のページが、著作権の改革に関するEU議会の明日(米国時間7/5)の票決に抗議するために一時的にアクセスを遮断している。

アップデート: ポーランド語のWikipediaも、この黒塗り抗議に参加した。

EU議会の法務委員会が先月決めた‘改革案’には、この抗議活動を惹起した問題箇所が二つある:

[第13条] 著作権物のユーザーが直接的に著作権侵犯者になるので、アップロードされるすべてのコンテンツを事前にフィルタしなければならず、表現の自由を損なう。

[第11条] ジャーナリストのコンテンツの断片(部分引用など)を利用するニューズアグリゲーターのようなビジネスモデルは、著作隣接権侵犯とされる。これは、‘リンク税’と揶揄されている。

EU(やその外)の多くの部分で、Wikipediaの訪問者たちは、EU議会の問題の法案に抗議してオープンなインターネットを守ろうとするバナーを目にする。抗議文は法案を‘検閲マシン’と呼び、‘Wikipediaのベースである価値観と文化とエコシステムを弱体化する’と主張している。

‘call your MEP’(議員に電話しよう)のリンクボタンをクリックすると、第13条反対運動のWebサイトsaveyourinternet.euへ飛び、自分の国の議員を検索したり、彼らに抗議のメールを送ったりできる。この運動は、EFF, Open Rights Group, Center for Democracy & Technologyなど、有力な人権市民権団体も支援している。

スペイン語のWikipediaの説明には、“この法案が承認されたら、ソーシャルネットワーク上でニュースを共有したり、検索エンジンからそれにアクセスすることが、とても難しくなり、Wikipediaも危険にさらされる”、とある。スペイン語Wikipediaは、7月5日の10時(UTC)から始まるEU議会の票決の間、黒いままにされる。

イタリア語のWikipediaは、昨日(米国時間7/3)、黒塗りになった。

なお、これらの抗議的表現は、各国のWikipediaコミュニティの意思によるものであり、Wikipedia全体の決定事項ではない。

【後略】

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

ヨーロッパとインドが共同でネットの中立性を擁護へ

ヨーロッパのBEREC(Body of European Regulators for Electronic Communications, 欧州電子通信規制者団体)とインドのTRAI(Telecom Regulatory Authority of India, インド通信業規制局)が昨日(米国時間6/15)共同会議を行い、オープンなインターネットを推進していくための共同声明に署名した

この短い文書は、ネットの中立性を保証するための規則集を記述している。それは、インターネットのトラフィックの平等な取り扱いや、ゼロレーティングの実践に関するケースバイケースの判断など、一部のベーシックなルールだ。

EUとインドは共にすでに、ネットの中立性を確保するための規制を実施している。しかし彼らは今回、その同じルール集合に関してさらに協力を深めたいようだ。ネットの中立性はつねに進化しているので、ルールも絶えずアップデートする必要がある。両者のコラボレーションが、ネットの中立性の統一に貢献するだろう。

共同声明よりもさらに重要なのは、その発表のタイミングだ。FCCは月曜日に、ネットの中立性を正式に廃止した。ヨーロッパやインドがアメリカで起きていることにいちいち対応する必要はないが、ネットの中立性だけは、自国でそれが無傷であることを、確保したいのだ。

FCCの決定がドミノ効果を惹き起こすリスクもある。ほかの国の通信企業も、規制当局にロビー活動を仕掛けて、ネットの中立性を終わらせようとするかもしれない。アメリカでやったんだから、俺らにもできるだろう!?

フランスの通信規制当局ARCEPのSébastien Soriano長官が数か月前に語ったところによると、そろそろ、別のやり方があることを実際に示すべきときだ。そのための最良の方法は、同じ原則を共有するいろんな国の規制当局が集まって、行動を興すことだ。EUとインドを合わせると世界の人口の大きなパーセンテージになるが、それだけの数が明らかにネットの中立性を擁護しているのだ。

そのほかの国もこの同盟に加わって、ネットの中立性がイノベーションと競争と最終消費者にとって重要であることを、証明していける。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

EUのデジタルシングルマーケットを離れるということーUKスタートアップへの影響は

EUのデジタルシングルマーケット(DSM)を去る。これはUKのスタートアップにとって何を意味するのだろう。実際のところ、誰にもわからない。だからこそ、来年のEU離脱にともなってDSMを去ることがUKのテックスタートアップにどのような影響を及ぼすのか、UKの3つのベンチャーキャピタルが主導して調査を行なっている。

3つのベンチャーキャピタルとは、LocalGlobeIndex VenturesAtomicoだ。あなたもこちらで短い調査に参加できる。

英国のテリザ・メイ首相は以前、英国が来年正式にEUを離脱するときDSMを去ることになるだろうと発表した。しかし、情報筋がTechCrunchに明らかにしたところによると、これは諮問にかけられていないのだという。

2015年5月に発表され、当時の英国政府に強力に支えられたこのDSMの狙いは、規則の壁をなくし、28カ国の‘デジタル’マーケットを1つにする、というものだった。予想では、これは年間4150億ユーロの経済効果があり、何百、何千もの雇用を生み出せる、とされた。

DSMは欧州委員会の優先すべき10の施策の1つで、下記にある3つの柱で構成されている。

1.デジタル商品・サービスへのアクセスを改善する

デジタル・シングル・マーケット戦略では、消費者や事業者が欧州全体でオンライン商品やオンラインサービスにスムースにアクセスできるよう模索する。例えば、eコマースの国境をなくし、消費者を保護しながらオンラインコンテンツへのアクセスを可能にする。

2.デジタルネットワークやサービスが成長する環境

デジタル・シングル・マーケットは、正しい規則のもとでハイスピードかつ安全、そして信頼できるインフラを整備し、これによりデジタルネットワークやサービスの環境を整えることを目的とする。懸念事項としては、サイバーセキュリティ、データ保護/eプライバシー、公正さ、オンラインプラットフォームの透明性が挙げられる。

3.成長の原動力としてデジタル

デジタル・シングル・マーケット戦略は欧州のデジタル経済の成長の可能性を最大化することを目的とする。ゆえに、今日のデジタル社会では必須となっているデジタルスキルを磨くなどして、全ての欧州市民がこの恩恵にあずかる。

ところで、Tech For UKは、英国のEU脱退を問う‘市民の投票’をサポートした、英国テック企業のリーダー100人超で構成される新たなグループだ。現在、新たなサポーターを募集している。

このグループは、Lastminute.comの共同設立者として知られるMartha Lane-Fox、P2Pファイナス先駆けのZopawp設立に関わった1人Giles Andrews、Tide銀行のCEO、George Bevisらテック業界で名を馳せるリーダーたちをメンバーとして有する。また、Episode 1 VenturesのパートナーであるSimon Murdochといった主要なベンチャーキャピタルやプライベートエクイティ投資家も含まれる。

Tech For UKは、欧州投資基金のような欧州LPファンドへのアクセスを失うこと、UKのテック企業を支えてきた優秀な人材がUKの入国管理の不透明さを嫌って流出すること、DSMへのアクセスを失うことはUKのテック産業にとって不利に働く、と主張している。

(宣言:私もTech For UKを支持している)

Image Credits: altamira83/iStock

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(翻訳:Mizoguchi)

GDPRの施行でアメリカのニュースサイト触法懸念でヨーロッパからの読者を敬遠

EUの新しいプライバシー法が施行された金曜日(米国時間5/25)には、アメリカの一部のニュースサイトがヨーロッパの読者にとって存在しなくなった。そのGeneral Data Protection Regulation(GDPR)と呼ばれる規則は、消費者の何らかの個人データを集めるインターネット企業が従うべき厳格な要件の集合を定めている。その影響はきわめて大きいので、アメリカのメディア企業Troncは、何かが違反と見なされることと、それがもたらす予期せざる結果を恐れて、ヨーロッパの読者をすべてブロックすることに決めた。

EUをブロックするTronc傘下のサイトは、Los Angeles Times, The Chicago Tribune, The New York Daily News, The Orlando Sentinel, The Baltimore Sunなど、地方の名門紙が多い。Lee Enterprises傘下の新聞、The St. Louis Post Dispatch, The Arizona Daily Starなども、ヨーロッパの読者をブロックした

[Tronc傘下の新聞はどれもGDPRに違反しているようだ、ヨーロッパからのトラフィックを遮断した]

ヨーロッパの人たちが読まなきゃ(当面)文句ないだろう、と考えたTroncと違って、アメリカの大手全国紙の多くは、Webサイトの問題箇所を削除改変したバージョンを提供したり、ユーザーデータの利用に関してオプトインを求めたりしている。NPRは、同サイトのプレーンテキスト・バージョンを読者にすすめて、喜ばれている。

[USA TodayのGDPR遵守バージョンは広告も自動再生ビデオもなく、すっきりしてとても良い]

多くの地方紙が、その多くがアメリカの市場に貢献しているEUのユーザーを遮断して良しとしているが、一部は、これを機にむしろ、国際的な読者を惹きつけて目立とうとしている。彼らは、のけ者にされたヨーロッパのユーザーに、遮断作戦を公然と批判するよう、すすめている。

彼らは、批判されて当然である。GDPRのプライバシー規則は2016年4月に採択されたから、企業がコンプライアンスを整備する時間は規則の施行まで2年もあったのだ。

GDPR入門記事(未訳)

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

ザッカーバーグはどうやら欧州で味方をつくれなかったようだ

欧州連合の議員との会合で、Facebook創設者のザッカーバーグはEU一般データ保護規則(GDPR)の“コントロール、透明性、責任”という原則に言及した。この新たな規制GDPRは25日金曜日に施行され、そこには、反した場合に科す罰則も盛り込まれている。FacebookはGDPRを遵守すると、とザッカーバーグは明言した。

しかしながら、今回の会合では透明性や責任というものはほとんど見られなかった。会合に出席した議員からかなり突っ込んだ質問が1時間にわたって出されたが、ザッカーバーグは黙って顔をひきつらせながそうした質問を聞いたのち、そこから答えやすいものばかりを選んだ。

議員からの質問は多岐にわたり、その多くはFacebookの企業倫理について深く掘り下げるようなものだった。情報の不正使用によるプライバシーの侵害の影響はどの程度あったのか、Facebookが会社分割を必要とする独占状態にあるかどうか、データの不正使用についてユーザーはどのように償われるべきか、といったものだ。

Facebookは本当にGDPRを遵守しようとしているだろうか、という質問が何回も投げかけられた(当然のことだが、データ保護を専門とする懐疑派の議員からだ)。Facebookはなぜ15億人にものぼる世界のユーザーのデータ操作ステータスを変更し、GDPRの効力が及ばないようにしたのか。ユーザー情報をもとにしたターゲット広告をやめることを必死に回避してきた同社だが、そうしたターゲット広告のシステムを人々が拒否できるプラットフォームを提供する用意があるのだろうか。

そもそも、なぜ欧州議会との会合を公にすることを拒んでいたのか。EUのプライバシー規則に反対するロビー活動に、なぜ何百万ドルもの金を費やしたのか。サービスを運営している国で税金を払うのか。フェイクアカウントを防止するためにどんな取り組みをしているのか。いじめを防ぐ取り組みはどうか。コンテンツを規制するのか、それともニュートラルなプラットフォームなのか。

矢継ぎ早に厳しい内容の質問がなされ、ザッカーバーグは集中砲火を浴びた格好だった。しかしいざ質問に答える段になると、それは応答の体をなしていなかった。自分が選んだテーマで話したいことだけを話し、しかもそれは事前に準備されたものだった。

ここに、なとびきりの皮肉がある。人々の個人情報は、あらゆるトラッキング技術やテクニックを介してFacebookに大量に流れている。

Cambridge Analyticaによるデータ不正使用スキャンダルの詳細が物語っているが、個人情報はFacebookから大量にリークされたのだ。そのほとんどがユーザーの知らないところで行われ、もちろん同意を伴うものでもなかった。

Facebookの運営の話しになると、同社はかなりの秘密主義を展開している。ほんのわずかな’ニュースフィード“を公開し、どんなデータをどういう目的で収集しているのか詳細は一切明らかにしない。

先月もザッカーバーグは米国議会との会合に臨んだが、そこでもやはり基本的な運営についての質問にまともに回答することを避けた。もし今回の会合で真の透明性や責任の所在が明らかになることを期待していた議員がいたとしたら、完全に失望しただろう。

Facebook ユーザーは、Facebookに自らアップロードしたデータは、ダウンロードできる。しかし、Facebookがあなたについて収集した全情報をダウンロードできるわけではない。

欧州議会の会派の代表らの関心はいまやFacebookのビジネスに集中しているようだ。そして、今回のザッカーバーグの黙り芝居を、Facebookに罰則を適用するためのさらなる証拠としてとらえる向きもある。

EUの規則はお飾りではない。GDPRの欧州外への影響と、有力なパブリックプロファイルはさらなる政治的な論争を展開しそうな勢いだ。

ザッカーバーグが欧州議会の声に耳を傾け、これまで同様のことを語ることで、CEOがブリュッセルでの会合に出た、という事実を作ることをFacebookが今回望んでいたのなら、これは大きな誤算だったようだ。

「まったくザッカーバーグの対応には失望させられた。議員からの詳細な質問に答えなかったことで、欧州の市民の信頼を取り戻すチャンスを失った。それどころか、出席議員に‘より強い規則と監督が必要’との印象を与えた」と、欧州自由連盟議員でGDPR報告者でもあるJan Philipp Albrechtは会合後、我々にこう語った。

Albrechtは会合で、FacebookはWhatsAppとデータの共有をどう行なっているのか、とただした。この問題はデータ保護当局の怒りをかっている。当局がFacebookに対し、そうしたデータフローを止めるよう促しているのにもかかわらず、Facebookはいまだにデータ共有を続けている。

また議員は、そうした2つのアプリ間でのデータ交換はしないことを約束するよう迫った。しかし、ザッカーバーグは頑として約束は口にしなかった。

欧州議会で人権委員会(Libe)の委員長を務めるClaude Moraesは会合後、極めて厳しいトーンではあったものの、そつのないコメントをしていた。

「データ漏えいの結果、Facebookの信用は地に落ちた。こうした状況を打開し、Facebookは欧州のデータ保護法を完全に遵守していると人々に納得してもらうためには、ザッカーバーグ氏とFacebookは真摯に努力しなければならない。’私たちはユーザーのプライバシー問題を真剣に考えている‘といった一般的なコメントだけでは不十分だ。Facebookはそれを行動で示さなければならない。差し当たり的なものであってはならない」と述べている。

「Cambridge Analyticaスキャンダルの件はすでに現在のデータ保護ルールに違反しており、間もなく施行されるGDPRにも反するものだ。この法律に従い、欧州データ保護当局はしかるべき対応をとることになるはずだ」とはっきり語ったのは英国議会の文化・メディア・スポーツ省の委員長Damian Collinsだ。

同委員会はこれまでに3度ザッカーバーグを召喚しているがいずれも実現していない。完全にザッカーバーグに拒絶され、容赦ない姿勢は当然だろう。ザッカーバーグの代理として英国議会で証言に立ったCTOが質問に対してあいまいにしか答えなかったことでもFacebookを非難している。

Collinsはまた「欧州議員からの極めて重要な質問について綿密に調べる機会を逸したのは残念だ。シャドープロファイルやWhatsAppとのデータ共有、政治広告を拒否できるかどうか、データ不正使用の実際の影響度合いはどうだったのか、といったことに関する質問は図々しくも回避された」と指摘した。「残念ながら今回とった質問形式ではザッカーバーグに質問の選り好みをさせる結果になり、各指摘についての回答はなかった」。

「出席議員の、今回の会合はまったく意味をなさなかったという明らかな不満をここに代弁する」とも付け加えた。“ユーザーが知りたいこと”を議会で明らかにするという点では、今回の会合は結局4回目の失敗に終わった。

今回の会合の最後の方では何人かの議員が明らかに激昂した様子で、これまで答えなかったことについて再度ザッカーバーグを質問攻めにした。

ザッカーバーグが話しを次に移そうとするタイミングで、1人の議員は「シャドープロファイル」と言葉を挟んだり、ザッカーバーグが鼻息荒く笑ったり時間を稼ぐためにあらかじめ用意したメモをみたりすると別の議員が「賠償」と叫んだりといった具合だった。

そうした後に、やや不満な態度をあらわにしたザッカーバーグが追求する議員の1人をみて、議員のシャドープロファイルについての質問に答えると言い(実際のところ、認識していなかったというのを理由に、ザッカーバーグはシャドープロファイルという言葉を使わない)、Facebookはセキュリティ目的でそうした情報を収集する必要があると持論を展開した。

議員の1人が、Facebookは非ユーザーの情報をセキュリティ以外の目的で使用することがあるのかと質問したのに対し、ザッカーバーグは明確に答えなかった(後付けしたセキュリティ目的というのは、隠そうとしていることを逆に明らかにするようなものだ)。

ザッカーバーグはまた、非ユーザーはどうやって“データの収集をやめさせる”ことができるのか、という再三の質問も無視した。

話すべきポイントについて隣にいる弁護士の方を向く前に(“他に話しておくべきことはあるだろうか”と尋ねた)、ザッカーバーグは「セキュリティという面で、私たちは人々を守ることは大変重要だと考えている」と素っ気なく述べた。

FacebookにとってCambridge Analyticaの件は、将来あるかもしれないデータ強盗を未然に防ぐのにどうやってプラットフォームを厳重に監視するかということをPRする材料となった。弁護士は、話がCambridge Analyticaに戻るのに不満を表したものの、すぐさまそうしたスキャンダルの危機PR術を行動に移した。

今回の会合ではっきりとしたのは、Facebook創業者のコントロール方法の好みだ。それは、彼が現在訓練中のものだ。

Facebookが欧州の議員と会うことについて同意するのに先立って決められた会合形式の制限により、議員に追及を許可しないというのは明らかにFacebookにとっては好都合なことだった。

ザッカーバーグはまた、それとなくほのめかしたり、時間になったようだと言ったりして何度も会合をたたもうとした。議員はこうしたザッカーバーグのたたみ掛けを無視したため、自分の言うことがすぐさま実行に移されなかったザッカーバーグはかなりの不快感を露わにしていた。

議員から出されたそれぞれの質問について、Facebookから書面による回答を受け入れるかどうかという、議会議長と議員との間で展開されたやり取りをザッカーバーグは見守り、その後に書面で回答することにAntonio Tajani議長とその場で合意することになった。

あらかじめCollinsが議員に警告していたように、Facebookは自らのビジネスのプロセスについての質問に対し、多くの言葉を語りながらその実は何も語っていないという回答方法を十分に練習している。その回答方法というのは、質問されていることの意図や目的を巧みに避けるというものだ。

ザッカーバーグが演じた会合でのショーで見られた自制というのは、明らかに欧州議員がソーシャルメディアに必要だと考えているようなガードレールではない。何人かの議員がザッカーバーグの顔から感じた自制は、効果的ではなかったようだ。

最初に質問した議員はザッカーバーグに謝罪が十分でないとせまった。他の議員は、15年悔恨し続けることになる、と指摘した。

Moraesは、Facebookは欧州の基本的価値観に対し“法的そして道義的責任”を果たす必要があると発言した。Libeの委員長であるMoraesはさらに「GDPRが施行されるEUにあなたは今いることを忘れてはならない。EUのデータ保護法を確認し、また電子上のプライバシーについて考え、EUのユーザーならびに何百万ものEU市民、非ユーザーのプライバシーを守るために、法的そして道義的責任を果たしてほしい」と述べた。

自制、もしくはザッカーバーグがいうところの次善の策であるFacebook流の規則は、欧州議員の規制の話に対し、米議会で述べた言葉で答えるというものだった。その言葉とはこうだ。「ここでの問いは、規制があるべきかどうかだと考えていない。何が正しい規制なのか、ということだと思う」。

「インターネットは人々の暮らしにおいてとても重要なものになりつつある。ある種の規則が重要であり、不可欠のものでもある。ここで重要なのは、この規制を正しいものにすることだ」と彼は続けた。「人々を守る規則体系を有すること、革新の余地があるようフレキシブルであること、今後さらに進化するAIのような新技術を妨げるようなものでないことを確認しておく必要がある」。

彼はスタートアップのことも引き合いに出した。’好ましくない規制‘は将来のザッカーバーグの登場を妨げるものになると言っているのだろう。

もちろん、ザッカーバーグは自身が所有するFacebookというプラットフォームが注意を十分にひく存在であり、我こそはというエントレプレナーがひしめく次世代の中でも飛び抜けた存在であることに言及していない。

ブリュッセルでの会合で、味方をつくったり人々に影響を与えたりする代わりに、彼は欠席するよりももっと失うものがあったようだ。Facebookに適用されるEUの規則を刷新するのを仕事とする人たちを怒らせ、遠ざけたのだ。

皮肉にも、ザッカーバーグが答えたいくつかの質問の一つに、Nigel Farageによるものがある。Facebookが“政治的に中立なプラットフォーム”なのか、1月にアルゴリズムに変更を加えた後、中道右派の発言を差別しているのではないか、といったものだ。Facebookはフェイクニュース監視を行う第三者のファクトチェッカーの名前を明らかにしていない。

つまり、米国の上院と議会でも明白だったが、フェイスブックはあらゆるところから集中砲火を浴びている。

実際のところ、Facebookはファクトチェックのパートナーシップについて情報を開示していない。しかし、ザッカーバーグが大した意味もない質問に限られた時間を費やしたのは、十分に意味するところがある。

Farageは、彼の持ち時間の3分の間に、「Facebookや他のソーシャルメディアの存在なしには、英国のEU離脱やトランプ政権、イタリアの選挙結果はあり得なかった」と述べた。

ザッカーバーグがこの発言についてコメントする時間がなかったのは、滑稽としか言いようがない。

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(翻訳:Mizoguchi)

フランス政府のすべての省庁がTelegramやWhatsAppなどの利用を禁じられ国営メッセージングアプリの使用を義務付け

フランス政府によると、一般的に人気のある暗号化メッセージングアプリTelegramやWhatsAppなどが政府職員間でも使われているが、それらには外国からの盗聴等のリスクがありうるため、今年の夏以降、フランス政府が独自に開発した暗号化メッセージングサービスに全員が移行する。

Reutersの記事によると、大臣たちには、外国製でしかもサーバーがフランス国内にない暗号化アプリが使われることに対して懸念がある。デジタル省のスポークスウーマンは、こう語る: “アメリカやロシアなど外国によって暗号化されるのではない暗号化メッセージングサービスを見つける必要がある。Facebookの例にも見られるように、侵害の危険性はつねにあるのだから、われわれ自身が主体的に選択や開発をする必要がある”。

TelegramのファウンダーPavel Durovはロシア人だが、今は外国に亡命している。そして彼のメッセージングアプリは、暗号鍵をロシア当局に渡さなかったために、彼の母国ではブロックされている

WhatsAppはTelegramと違って、そのプラットホームの全域にわたってエンドツーエンドで暗号化されている。しかも、尊敬されているオープンソースのSignal Protocolを使っているが、しかしWhatsApp自身はアメリカのテクノロジー大手Facebookがオーナーであり、開発もアメリカで行われている(Signalも開発はアメリカ)。

その親会社Facebookは現在、大々的なデータ誤用事件の渦中にあり、その事件では何千万ものFacebookユーザーの情報が、ユーザーがそれを知ることも同意することもないまま、問題の多い政治コンサルタントに渡された。

デジタル省のスポークスウーマンによると、フランス政府内の約20名の閣僚と一般公務員が、その新しいメッセージングアプリを試しており、夏までには政府内の全員の使用が義務化される。

最終的には全国民が利用できるようになる、と彼女は付け加えた。

Reutersによると、スポークスウーマンはさらに、国が雇ったデベロッパーがそのアプリを、ネットからダウンロードして無料で使えるコードを使用して設計した、と述べた(すなわちオープンソースのソフトウェアを使ったようだ)。しかし彼女は、使用されたコードやそのメッセージングサービスの名前を挙げることを拒(こば)んだ。

先週の終わりごろZDNetが、フランス政府はTelegramのようなアプリの使用を別のもので置き換えたがっている、と報じた。しかしTelegramは、大統領のEmmanuel Macronも大ファンらしい。

その記事は、フランスのデジタル大臣Mounir Mahjoubiの発言を引用している: “今、安全な公共的メッセージングを開発している。それは私権のある提供物に依存しないものになる”。

報道によるとフランス政府はすでに、国防関連とIT関連のサプライヤーThalesが作った安全なメッセージングプロダクトを一部で使用している。ThalesのWebサイトには、スマートフォンのインスタントメッセージングアプリCitadelが載っていて、“プロフェッショナルたちが信頼しているメッセージング”であり、“多くの消費者向けメッセージングアプリのものと同じと分かる機能”を提供するとともに、“スマートフォンやコンピューター上の安全なメッセージングサービスと、エンドツーエンドの暗号化された音声通話やファイル共有など多くの関連機能がある”、と説明している。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

アプリストアのデベロッパー虐待でフランスがAppleとGoogleを提訴へ

フランスの経済相Bruno Le Maireが、AppleのApp StoreとGoogleのPlay Storeのやり方をめぐって、両社を批判した。彼によると、GoogleとAppleはアプリのデベロッパーに対して揮う権力があまりにも強大すぎる。Le Maireはその判断を法廷に求め、必要なら巨大テクノロジー企業に罰金を課すつもりだ。

“デベロッパーがアプリを開発してそれらをGoogleやAppleから売ろうとすると、それらの企業が価格を決め、一部のデータを取得し、デベロッパーとの契約を一方的に変更することもある”、とLe MaireはRTLで述べている。“これらはどれも、受け入れられない。これは、われわれが望む経済ではない”。

フランスの政府高官がApp StoreとPlay Storeを問題視するのは、これが初めてではない。先月はARCEP(電子通信郵便規制庁)のSébastien Soriano総裁が、ネット中立性はキャリアとISPだけにとどまるべきでない、という記事を共有した。大手テクノロジー企業も、インターネットの中立性に関して責任がある、というのだ。

Sorianoはそのとき、“スマートフォンのユーザーが直面しているすべての制約を初めてリストアップした”、と述べている。“ユーザーの意味は、消費者と、アプリをストアへ提出するデベロッパーの両方だ”。

デベロッパーには、App StoreやPlay Storeのルールに従う以外の選択肢はない。AppleやGoogleに売上の30%(会員制のアプリなら会費収入の15%)を払う以外の選択肢はない。

AppleやGoogleがストアからアプリを削除しても、事前の契約があるから法に訴えることはできない。ただし契約内容を、交渉によって変えられる可能性はある。

“GoogleとAppleを虐待的事業実践の罪でパリ商業裁判所に訴えるつもりだ”、とLe Maireは言っている。罰金はおそらく数百万ユーロぐらいだから、GoogleとAppleにとっては痛くも痒くもない額だ。しかし、公的訴訟としてはなかなかおもしろい。

大手テクノロジー企業に対するEUの徴税計画は、Le Maireによると2018年の終わりごろに発効する。今月初めに彼は、数週間後に詳細を発表する、と述べた

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

チャレンジャーバンクの波が法人にも――仏Qontoが1130万ドルを調達

フランス発のスタートアップQontoが、既存株主のValar VenturesAlven Capitalから新たに1130万ドル(1000万ユーロ)を調達した。現在彼らは法人向けサービスも提供しており、ウェブサイトからフランスの法人口座を簡単に開設することができるようになっている。

Qontoの目標はN26の法人版のような存在になることだ。リテールバンキングはここ数年間そこまで大きな変化を見せていないが、ビジネスバンキングの状況はさらに悪く、昔からほとんど何も変わっていない。手数料は高く、何をするにも時間がかかってしまう。

同社のサービスはデスクトップ版とモバイル版の両方が準備されており、ユーザーは口座への送金・入金を含め全てを管理することができる。利用料はフランス銀行口座(IBANも付与される)にMasterCardが1枚付いて月額9ユーロだ。

もしも新しいカードが必要であれば、1枚あたり月額5ユーロ、さらにバーチャルカードであれば月額2ユーロで発行できる。ユーザーの管理も一括で行えるため、新しい営業担当者を雇った際には、新しいカードの発行を依頼するだけでよく、モバイル端末やパソコンからその明細を確認できる。

さらにモバイルアプリには、カードのブロックや解除、暗証番号の変更、カードが使われたときにリアルタイムで通知を送る機能が搭載されているほか、限度額の変更や会計会社との明細共有も簡単に行える。

レシートをアップロードして対応する経費に紐付ける機能などもこれから導入される予定のため、会計会社や経理担当者は大助かりだろう。他通貨での送金プロセスも今後簡素化されるようだ。

今後Qontoの口座はStripe、PayPal、GoCardlesといったサードパーティーのフィンテックサービスとも接続される予定で、ユーザーはさまざまなプラットフォームの支払情報を一括管理できるようになる。

Qontoはバックエンドの処理をパートナー企業のTreezorにアウトソースしており、彼らがユーザーのお金を実際に動かしている。また、当座預金口座の開設やデビットカードの発行もTreezorが行っており、Qontoはユーザーエクスペリエンスや顧客との関係維持など、フロントサイドの業務を担当している。

細かな違いはありながらも、フランスのiBanFirst やアメリカのSeed、イギリスのTideなども似たようなサービスを提供しており、Tideは昨日1400万ドルを調達したと発表したばかりだ。市場の細分化が進んでいるように見える一方で、このような大型資金調達のニュースを聞くということは、法人向け金融サービスに大きなチャンスが眠っているということなのだろう。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

Einrideが自動運転EVトラックを開発――スウェーデンからT-Podのプロトタイプ登場

スウェーデンのテクノロジー・スタートアップ、EinrideはT-Podのフルスケールのプロトタイプを発表した。これは自動運転の電気自動車で、Einrideでは小型のパレットを運送するトラックの役割を果たすことを狙っている。エネルギー容量は200kWhで航続距離は200km、遠隔操作で積荷の処理が可能だ。

T-Podは写真でわかるとおりたいへんユニークなデザインだ。Einrideでは自動運転と積荷の遠隔操作のためにゼロからデザインしたという。つまり荷物を取扱うためのクルーが乗車する必要はない。この車両は積荷を無人で効率的に運送するために最適化されている。T-Podは2020年までにスウェーデンの2都市、イエテボリ〔ヨーテボリ〕とヘルシンボリを結ぶルートに200台のT-Podを投入する考えだ。同時に充電ステーションも建設される。

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T-Podのネットワークは年間で200万個の荷物パレットを運送することを目指している。Einrideによれば、これはCO2の排出に換算して40万台の自家用車が同じ距離を走った場合に相当するという。Einrideでは需要さえあればネットワークを予定より早く拡大することは可能だとしている。

現在、トラックに関しては既存のセミトレーラーに自動運転機能を後付する方法が主流だが、T-Podのように自動運転電気トラックをゼロから開発するというのは興味ある方向だ。積荷のリモコン処理について、Einrideでは「人間の柔軟な判断力が自動運転を補う」としている。一人のオペレーターが複数のT-Podを同時にコントロールできるという。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

パリの超巨大インキュベーション施設Station Fに行ってきた――約3000社のスタートアップやVCが入居予定

先週木曜日の夜、世界最大のインキュベーション施設が正式にオープンした。これから約3000社のスタートアップがこの巨大な建物の中にオフィスを構えることになる。エマニュエル・マクロン仏大統領や政府関係者が参加した同施設の開所式にTechCrunchも参加した。

「この建物はStation Fと呼ばれ、Station FranceやStation Femmes(フランス語で女性の意)、Station Founder、Station Fressinetといった意味が込められている。Freyssinetは素晴らしい建築家であり、優秀な起業家でもあった」と億万長者で仏通信大手Iliadのファウンダーでもあるグザヴィエ・ニールはマクロン大統領に説明した。

Station Fはもともと1920年代にウジェーヌ・フレシネによって建設され、2011年には取り壊される予定だった。しかし、2013年にニールは奇想天外なアイディアを思いつく。彼らはこの建物を購入し、3万4000平方メートルもの広さをもつ巨大なスタートアップキャンパスへとリノベーションしようと考えたのだ。

その結果、数年が経った今も建物はそのまま残り、内部には何千個もの机や巨大なガラスの壁、明るい照明や地中海の木々が並んでいる。「リノベーション前とは見違えるほどだ。もともとは薄暗い、ただの廃駅だった」とニールは話す。

今週の月曜日から1100社のスタートアップがこの施設に入居しており、そのうちの多くはStation Fのパートナーたちが選んだ企業だ。VCも20社ほどが入居を予定しており、そのほかにも郵便局や大きなレストランが数か月のうちにできるとのこと。

海外人材や多様性へのフォーカス

簡単な施設の紹介が終わると、ニールとマクロン大統領はすぐに見学に訪れていたZenlyの共同ファウンダーをはじめとする起業家に話しかけ始めた。なお、開所式にはパリ市長のアンヌ・イダルゴやフランスのデジタル担当大臣ムニール・マジュビ、Station Fディレクターのロクサンヌ・ヴァルザブリジット・マクロン大統領夫人も参加していた。

施設の見学中に、大統領はある起業家に英語で話しかけた。彼はFrench Tech Ticketを利用し、起業のためにフランスに移り住んだのだという。それに関連し、大統領は起業家やエンジニア、投資家向けに最近ローンチされた特別なビザ、French Tech Visaについても言及した。

「ひとつひとつの執務スペースはヴィレッジ(村)と呼ばれ、各ヴィレッジには60個程の机が置いてあり、コラボレーションを促すようにデザインされている」とヴァルザがオフィススペースについて説明する。

その後、別の起業家がマクロン大統領に英語で挨拶し、続けて完璧なフランス語で話し始めた。フランス人なのか外国人なのかを尋ねられた彼は「フランスには(ニールが運営するコーディングスクールの)42のために来た。もともと生物学を勉強していたが、大統領のビデオを見てフランスへの移住を決めた」のだと語った。

それを聞いて、42の卒業生の一部は現在大統領官邸で働いていると聞いたことがあるとジョークを言うニール。

その後、ヴァルザは新しくローンチされたFighters Programについても説明した。このプログラムは、マイノリティのファウンダーに対して無料のデスクスペースを提供するというものだ。「彼らはFounders Programの人たちと肩を並べることになる。私たちは両者の交流を図りたいと考えているのだ」と彼女は話す。

既に2億3000万ドル(2億ユーロ)をStation Fの建設に投じたニールだが、さらに5700万ドル(5000万ユーロ)を使ってイヴリー=シュル=セーヌに最大600人が住める居住施設を建設予定だという。「42のモデルと似たモデルを考えている。Station Fに入居したスタートアップのファウンダーたちは親からの援助を期待できず、住むところが問題になるというのもわかっている」と彼は話す。

引き続き施設を見学していると、あるStation Fのスタッフがマクロン大統領に近づき、10秒前後の動画を撮影してよいかと尋ねた。「私たちは今日パリのStation Fに来ています。自分のスタートアップを立ち上げ、投資し、成長させたいと思っている人にはピッタリの施設です」と携帯電話に向かって話し始めた大統領は、撮影を終えると動画が32秒になってしまったと謝りながら、スタッフに携帯電話を返した。

それから見学者グループはステージに戻り、ヴァルザやイダルゴ、マクロン大統領のスピーチを聞くことに。大統領は集まった2000人の聴衆の一部と握手したり、一緒にセルフィーを撮ったりしながらステージへと向かった。

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ファウンダーの代わりにStation Fについて語った参加者たち

個々のスピーチ内容は、全体の構成に比べるとそこまで興味をひくようなものではなかった。ヴァルザがまずStation Fのパートナー企業(Facebook、Zendesk、Vente-Privée、HEC、Microsoftなど)や協力者(アンヌ・イダルゴ、Jean-Louis Missika、Jean-Michel Wilmotte、Station Fのチームなど)を紹介し、起業とは白人男性だけのものではなく、Station Fは業界の多様化に向けて努力していくと語った。

彼女が話し終わってニールに謝辞を述べると、聴衆は大いに湧き上がり数分間拍手が続く。その様子はライブ会場でアンコールを待つ観客のようだった。

ニールが若い世代の起業家にとってのロールモデルになったということに疑いの余地はない。彼は通信企業を立ち上げて大金持ちになってから、コーディングスクールを設立し、さらにはKima Venturesと共にシードファンドを立ち上げ、これまで世界的にも有名なシリコンバレーのスタートアップ(Square、Nest、Snap、Airbnb、Uberなど)に投資してきた。その他にも、彼は新聞社を買収し、Station F設立のために何百億ドルという資金を投じている。

しかし、そのニールがステージ上で話すことはなかった。

ヴァルザに続いて市長のアンヌ・イダルゴは、パリにとってのStation Fの意義について「パリは芸術都市としての側面以外の何かを求めていた」と語った。

最後にステージを飾ったマクロン大統領は、彼の政治家としてのキャリアと起業家の人生を比較しながら、他の人は自分のやろうとしていることに共感しないかもしれないが、だからといってそれを諦める必要はないう旨のスピーチを行った。

「今日の私たちをつなぎ合わせているのは起業家精神だ。周りの人は、私がどんな人生を歩むべきかについて口を挟もうとしていたが、私は彼らとは違う道を選んだ。自分の人生を他人に決めさせてはならない」

その後大統領は、VivaTechでのスピーチに沿った形で格差問題に言及し、起業家は積極的に多様性を受け入れ、社会全体に貢献していかなければならず、もしもテック業界が国を分断してしまうようなことがあれば、それは業界全体の失敗ということになると語った。

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Station Fの本当のスタート

これから数日間のうちに何千人という人がStation Fにオフィスを構える予定だ。ここまでくるのには何年間もかかったが、これはStation Fにとってのスタート地点でしかない。

同施設がパリのテックエコシステムを根本から変えるられるかどうかはまだわからないが、フランスが国内外から人材や企業、投資を誘致する上で、Station Fが素晴らしいマーケティングツールとして機能するのは間違いない。

ニールは他の人もStation Fに投資できるよう、将来的には財団を設立しようとしており、彼はこの施設から利益を得ようとは思っていないと話していた。スタートアップコミュニティの人々は、きっとニールは彼らの味方なのだと感じることだろう。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

留守中でもネコの出入りを管理できるIoTペットドア

ネコと暮らす人に嬉しいニュースだ。離れているときでもネコたちの行動を把握することができるよう、ペット用のドアもアプリケーションと連動するようになったのだ。

ペットドアの開閉状況をチェックして、ネコがうちの中にいるのか、それとも外出中なのかを把握したり、あるいはペットドアをロックしたり解除するようなこともできる。大荒れの天気の日などに、外出禁止にすることができるわけだ。出入りの様子をビジュアルにまとめる機能もあり、昼夜の行動パターンを把握することもできるようになっている。自宅のドアを管理する権限は、他の人と共有することもできるようになっている。ペットシッターに管理を任せるようなことも、かんたんにできるわけだ。

開発したのは、イギリスのペット関連テックプロダクトを開発しているSureFlapだ。本プロダクトについては以前からアナウンスしていた。このペットドアは、もちろん小型犬でも利用可能だ。まずは自社のウェブサイトを通じての販売となった。希望小売価格£160(2万3000円ほど)で、家庭内ネットワークに接続するためのWi-Fiハブもついている。

SureFlapによれば、アメリカおよびその他6カ国に向けては年内中にも販売を開始する予定であるとのことだ。

ちなみにドアは登録したネコが近づいた場合にのみ開くようになっており、識別はマイクロチップないしRFIDタグを埋め込んだ首輪で行うようになっている。見ず知らずのネコがやってきて、餌をタダ食いされてしまうようなこともないわけだ。

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(翻訳:Maeda, H

EU圏内のローミング手数料が原則無料化――デジタル単一市場の構築に向けた大きな一歩

EU全域でローミング手数料が撤廃されたことを受け、加盟国(28か国)の人々は国をまたいで移動するときも制限なくモバイル端末を使えるようになった。

6月14日に公開された欧州委員会、欧州議会、欧州理事会の共同声明の中で、これは「EU市民にとっては具体的かつポジティブな」変化だと記されている。

しかし、いわゆるパーマネントローミング(通信料の安い国で契約を結び、自国に戻ってからもローミング状態でサービスを利用し続けること)を防ぐために一定の制限が設けられており、極めて価格の低いプランに関しては(上限付きの)ローミング手数料が発生する可能性がある。データ通信量が無制限のプランについても、他のEU加盟国でデバイスを使用するときには何かしらの制限や追加料金が発生するかもしれない。

とはいえ平均的なユーザーであれば、EU圏内の他の国にいるときも自国にいるときと同じ価格でモバイル通信を利用できるはずだ(詳細は欧州委員会のウェブサイトに掲載されているFAQを参照してほしい)。

さらに各国のキャリアは、ローミング手数料がなくなるからといって国内の通信料を上げることはないとされている(実際どうなるかは今後の動きを見ていくしかないが)。

昔は涙が出るほど高かったローミング手数料のせいで、消費者は仕事や休暇でEU圏内を移動する際もネットサービスの利用を控える傾向にあった。そのため、EU全域でのデジタルビジネスの障壁を下げ、競争力を高めようとするデジタル単一市場の構築を目指す欧州委員会にとって、ローミング手数料の撤廃は10年単位の一大プロジェクトだった。

ローミング手数料撤廃に向けた最後のハードルは、今年4月に欧州連合の3機構(欧州委員会、欧州議会、欧州理事会)が各国キャリアのローミング手数料に上限を設けると合意したことでクリアされた。

「私たちは欧州連合が高額なローミング手数料の撤廃に踏み切ったことを誇りに思っていますし、このゴールを実現する上での課題を乗り越えるために努力してくれた人たちに感謝しています」と3機構の上級代表は共同声明の中で語った。

「さらにEUはローミング手数料を廃止しつつも、各加盟国内の通信料を競争力のある水準に保つことができました。各キャリアは2年間の準備期間を経て今回の変更を反映しており、顧客の利益のためにも彼らは新しいルールがもたらすチャンスを利用することになるでしょう」

対象となるEU加盟28か国は次の通りだ。オーストリア、ベルギー、ブルガリア、クロアチア、キプロス、チェコ、デンマーク、エストニア、フィンランド、フランス、ドイツ、ギリシャ、ハンガリー、アイルランド、イタリア、ラトビア、リトアニア、ルクセンブルグ、マルタ、オランダ、ポーランド、ポルトガル、ルーマニア、スロバキア、スロベニア、スペイン、スウェーデン、イギリス。

なお、ブレグジット(イギリスのEU離脱)の影響で再びイギリスでローミング手数料が導入されるかどうかについてはまだわかっていない(今年の3月から2年間の離脱プロセスは始まっている)。

これもまたブレグジットの不確定要素のひとつということになるが、少なくとも実際にイギリスがEUを離脱するまでは、同国の市民もローミング手数料なしで携帯電話を使えるようになった。

(日本版注)プリペイドSIMについてもローミング手数料が原則撤廃されるため、EU圏外からの旅行者も加盟国内でSIMカードを購入すればこの制度変更の恩恵にあずかれる。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

Mrs. Wordsmithが200万ポンドを調達――絵で単語を覚える新サービス

何かが間違っているような気がする。ニュースフィードは、不愉快で不安になるブレグジットやトランプに関する報道や、広告収益に関する方針に不機嫌な顔をしている若者の写真で溢れかえっている。私たちは大事なことを忘れてしまったようだ。それは、文字の力だ。「新語法(Newspeak)」に関する記述の中で、ジョージ・オーウェルは言葉を操る者こそが世界を操ると綴っている。

「新語法の目的は思考の範囲を狭めることだと気づいていないのか? 最終的には思考犯罪を行うのに必要な言葉さえ存在しないような世の中になろうとしているんだよ。必要な概念は全て意味が限定された一語で表現され、その言葉に付随する他の意味は全て消され、忘れ去られてしまうんだ……このプロセスは僕や君が死んだ後もずっと続くだろう。毎年言葉の数は減っていき、思考の範囲も狭まっていってしまう。だからといって、現時点では思考犯罪を犯す理由や言い訳があるということではない。全ては自制心や現実管理の問題だ。でも、最終的にはその必要さえなくなってしまう……遅くとも2050年までには今僕たちがしているような会話をできる人は1人もいなくなってしまうということをWinston、君は分かっているのかい?」

――ジョージ・オーウェル『1984年』

上記のような世界が現実にならないことを祈っている。今ならそれを防ぐことができるはずだ。神経科学の分野では、人間が新しい情報を習得する際、見慣れない、もしくは面白い情報と一緒に学習することで、記憶の定着度が上がると言われている。であれば、そのような形で学習を支援するプラットフォームをつくることで、子どもが喜んで言葉を学習するようになり、『1984年』が描くディストピア世界の到来を防ぐことができるのではないだろうか。

1年前に設立されたエドテック企業のMrs. Wordsmithは、まさにそんなプラットフォームをつくろうとしている。高品質なビジュアルコンテンツの制作を行っている同社は、この度シードラウンドで200万ポンドを調達した。ロンドンを拠点とするKindred Capitalがリードインベスターを努めた今回のラウンドには、アメリカでエドテック企業への投資を行うReach CapitalやSaatciNvest、Raopart Asse Managementらが参加した。Mrs. Wordsmithの狙いは、月額制のプログラムで言語教育をディスラプトすることだ。

現状、同社のサービスは全て紙ベースで提供されている。サービス内で紹介される語彙は、教育機関が読み書きの能力の向上に繋がると判断した、比較的使用頻度が少なく難しい単語1万語に含まれているものだ。

エドテック企業が集うThe Europasにて資金調達のニュースを伝えた、Mrs. WordsmithファウンダーのSofia Fenichellは、「私たちが対象としているような語彙のビジュアル化を試みた出版社はこれまで存在しませんでした。Mrs. Wordsmithはどの単語を教えるかだけでなく、単語と紐づいたイラストや間隔反復の技術を利用し、新しい教育方法を考えだしたのです」と語った。

自分の子どもの書く力を育てるために、2016年にCEOのFenichellが設立したMrs. Wordsmithは、子どもが単語を学習し、覚え、使うまでの過程を変えようとしている。さらに、最終的にはその効果が言語能力や成績の向上という形で表れると同社は考えている。

語彙力が学業的な成功につながるというのは、全くその通りだ。しかし、読み書きの力を増幅させる1万語もの語彙の学習を、Mrs. Wordsmithのように効率的に支援する方法はこれまでほぼなかった。

同社はサブスクリプション制の語彙習得プログラムを開発し、視覚的で覚えやすい方法で子どもの学習を支援しようとしている。見慣れない情報と組み合わさることで記憶の定着率が上がるという神経科学の考え方に基いて、各単語は映画『マダガスカル』や『モンスター・ホテル』の制作にも携わり、数々の賞に輝いたCraig Kellman(Mrs. Wordsmithではアートディレクターを務める)のチームによってイラスト化された。

同社は今回調達した資金を使い、ユーザーに人気の紙ベースのプロダクトをさらに進化させると共に、テクノロジー部隊を構築して、消費者と学校の両方をターゲットに海外展開を進めていく予定だ。

Kindred CapitalのLeila Zegnaは「世界中の子どもたちの学習を支援するためにMrs. Wordsmithが考案したユニークなアプローチや、彼らの野心的なビジョンにはとてもワクワクしています。最初のプロダクトは大成功をおさめ、ユーザー数と売上が大きく伸びました。しかも、ユーザーベース拡大の大部分は口コミの力によるもので、Mrs. Wordsmithが短期間のうちに築いたブランドの強さを証明しています。紙ベース版・デジタル版の両方にまだまだ大きな可能性があると私たちは考えています」と話す。

さらに、Reach CapitalのWayee Chuは「Mrs. Wordsmithは視覚的な学習方法と高品質なコンテンツを求める市場の声に応えようとしています。私たちはこれまで、彼らほどの学習用ビジュアルコンテンツをつくっている企業を見たことがありません。さらに教育者・消費者の両方を対象に、彼らはサービス開始早々から素晴らしいトラクションを残してきました。ユーモアと取り組みやすさ、そして学習効率を兼ね備えた彼らのプロダクトは、アメリカでもきっと受け入れられることでしょう。今年中を予定している、Mrs. Wordsmithのアメリカでのローンチに携われるのを楽しみにしています」と語った。

今回のラウンドを受けて、Kindred CapitalのLeila Zegnaと、ゲーム会社PlayifhとSuperCellの株主でもあるエンジェル投資家のBasma AlirezaがMrs. Wordsmithの取締役会に参画したほか、ケンブリッジ大学の自然言語情報処理研究所を率いるTed Briscoe教授が顧問に就任した。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

ゼラチン製の食べられるロボットの研究―、患部に直接届く薬としての応用可能性も

スイス連邦工科大学ローザンヌ校(EPFL)の研究者らは、この度ゼラチン製のアクチュエータに関する論文を発表した。このテクノロジーを応用すれば、将来食べられるロボットが誕生するかもしれない。

食べられるロボットの開発というのは、一見奇妙な夢のように感じられる。実際に、アクチュエータの開発に関わっていたチームも、現段階ではこのテクノロジーの使い道を完全には見いだせないでいる。EPFLの知能システム研究室(Laboratory of Intelligent Systems)でディレクターを務めるDario Floreanoも、TechCrunchの取材に対し、この研究は通常とは逆のプロセスで進んでいったと認めている。どうやら今回の研究は、何か特定の問題を解決するためではなく、新しいものを創り出すということを目的に行われたようなのだ。

「1年前に(大学院生で論文を共著したJun Shintakeが)私のところに来て、『私たちは生物にインスパイアされたロボットの研究をしていますが、生物は食べられるのに、ロボットは食べられませんよね』と、とても面白いことを言ってきたんです」と彼は説明する。「食べ物とロボットの制限・属性は全く違います。それが何に使えるかはさておき、このふたつを組み合わせることができるのかというのはとても面白いテーマだと思ったんです」。

暖かい/涼しい場所に自ら移動できる食べ物や、人間や動物に向かって進んでくる食べ物などを、食べられるロボットの応用の可能性としてFloreanoは挙げる。しかし、その中でも最もインパクトが大きそうなのが、動く医薬品としての応用だ。最近のRecodeの記事でもこの点が触れられており、これがEPFLの研究を世に広めるきっかけとなった。

「薬への応用はかなり面白いと思います。患部に直接薬を運べるようになるかもしれませんからね」とFloreanoも語っている。

昨年には、MITが豚の腸からできた折り紙のようなロボットの開発について発表していた。このロボットは、誤飲された電池など有害なものを人体から取り除くために、体内で自動的に開くようになっている。EPFLの研究がMITと異なる点は、人間の体がアクチュエータの全てのパーツを分解できるということだ。

このアクチュエータは、ソフトロボティクスと呼ばれる、周りの環境に合わせて形を変えられるロボット扱う分野の研究の一環として開発され、応用例には掴むものに合わせて変形できるロボットグリッパーなどがある。

一旦体内に入ったロボットは、化学反応を動力として利用できるかもしれない。さらに、最近食べられる電子機器の研究も盛んに行われており、人体に無害なバッテリーであれば、消化はされないものの、体に影響を与えずに体外へ排出されるので、動力源の別の選択肢として利用できるかもしれない。

現段階では、EPFLのゼラチン製の食べられるアクチュエータには全く味が付いていないが、研究チームは、ホスピタリティの分野では世界レベルの学校で、EPFLの近くにあるÉcole hôtelière de Lausanneとタッグを組み、美味しいロボットの研究も進めようとしている。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

Airbnbのようにオフィスをレンタル―、ドイツのOptionspaceが正式ローンチ

ベルリン発のスタートアップOptionspaceが、”オフィススペースのAirbnb”といった感じのサービスと共に、本日正式にローンチした。

具体的なサービス内容として、オフィス用の物件を探している企業(ここにはもちろんスタートアップも含まれる)は、Optionspaceのサイトを使うことで、最短1ヶ月から家具付き/家具なしのオフィススペースを借りることができる。

既にベルリン、ミュンヘン、ハンブルグ、フランクフルトの4都市でサービスを開始しているOptionspaceだが、「今後数週間のうちに」他のドイツの都市にもサービスを展開していく予定とのこと。

「オフィススペースの賃貸契約のほとんどは、長期契約を前提にしており、柔軟性に欠けます。一方オフィスを借りる企業は、そこまで長い期間に及ぶ計画を具体的に立てられないことが多いため、長期契約は彼らにとって大きな金銭的リスクに繋がる可能性があるのです」とOptionspaceの共同ファウンダーでCEOのMoritz ten Eikelderは話す。なお彼は以前、Rocket Internet傘下の清掃代行サービスHelplingで、フィナンス部門のグローバルヘッドを務めていた。

しかしOptionspaceのマーケットプレイスには、従来のオフィス契約とは対照的に、フレキシブルな契約内容の物件しか掲載されていない。中には契約の終了日が決まっておらず、解約通知の期間が短いものもある。さらにユーザーは、物件のタイプやオフィスで働く人の数、最小敷地面積などから物件候補を絞り込めるようになっている。契約までのやりとりは基本的に全てオンラインで行われるが、必要に応じて事前に希望物件を内覧することもできる。

「物件を掲載している側の顧客にはふたつのタイプがいます。ひとつめが、オフィススペースに余りがある企業で、彼らは使っていない部屋を貸し出すことで、収益をあげることができます。そしてふたつめのタイプが物件の所有者や資産管理会社で、彼らはフレキシブルな契約内容を提示することで、通常よりも高めの値段設定で物件を貸し出すことができます」とEikelderは付け加える。

Opetionspaceのビジネスモデル自体は、そこまで目新しいものではない。一旦ユーザー間で賃貸契約が結ばれると、同社は月々の賃貸料の10%を最大12ヶ月間、貸し主から徴収するようになっている。

競合サービスについてEikelderは、「フレキシブルなオフィススペースの選択肢を見てみると、ビジネスセンターやコーワーキングスペースが私たちの主な競合サービスにあたるとわかります。しかし、私たち自身も何ヶ月間かそのような場所で仕事をしたことがありますが、完全にオフィスにとって代わるような気はしませんでした。料金が高めに設定されているということもありますが、ほとんどのビジネスセンターやコーワーキングスペースは、ある程度の社員数がいる企業のニーズを満たしきれていません」と語る。

Optionspaceの投資家には、Vito One(Viessmann Group内でシード投資を専門に行っている組織)や、シード期前の段階にある企業への投資を積極的に行っているMakers、FactoryファウンダーのUdo Scholemer、Helpling共同ファウンダーのBenediktFrankeとPhilip Huffmann、Andrew Goldstein(LMU Entrepreneurship Centerの共同ファウンダー)、Paul Bauwens-Adenauer、Patrick Adenauer博士(BAUWENS Unternehmensgruppeオーナー)が含まれている。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

モバイル専門銀行Atom Bankが1億ドル超を調達―、ミレニアル層をターゲットにしたサービスを展開

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イギリス発のスタートアップで、18〜34歳の消費者をターゲットとしたモバイル専門銀行を立ち上げたAtom Bankは、スペインの銀行BBVAが中心となったラウンドで新たに8300万ポンド(1億200万ドル)を調達した。なお、BBVAはAtomと似たサービスを提供している米Simpleの親会社でもある。今回のラウンドをうけて、Atom Bankの評価額(ポストマネー)は2億6100万ポンド(3億2000万ドル)に達したことが、同社との確認の結果わかった。またBBVAは、2015年11月に行われたAtomの1億2800万ドルのラウンドでも、リードインベスターを務めていた。

調達資金は、ユーザーベースとサービスの拡大、さらには貸出の原資として使われる予定だ。Atomは2016年4月に正式にローンチし、顧客はiOSAndroidの両OSに対応したアプリから同社のサービスを利用している。今日では、中小企業に対して住宅ローンやFixed Saver口座(金利固定の定期預金口座)、担保貸付といったサービスも提供されている。

今回のラウンドに関する発表の数週間前には、自分でスタートアップまで設立し、イノベーションの力を使ってファンを築こうとしている、テック起業家兼ミュージシャンのWill.i.amが、Atomの株式と引き換えに、コンサルタント兼顧問として同社に参加しようとしていると報じられていた。さらにこのニュースを報じたSky Newsは、Atomが1億ポンド近い資金を調達中だとも記していた。

Atomの広報担当者は、Will.i.amの件についてはコメントを控えているが、近々さらなる資金調達について発表予定だと話しており、もしかしたら追加調達元の投資家にWill.i.amが含まれているのかもしれない。

リードインベスターのBBVAは2940万ポンドを出資し、ポストマネーでも29.5%の持株比率を維持すると話している。前回の資金調達時の評価額は1億5250万ポンド(2億ドルちょっと)だったため、今回はかなりのアップラウンドだった。これでAtomの累計調達額は、2億1900万ポンド(2億6800万ドル)になる。

BBVAの持株比率が30%を下回っているのには理由がある。イギリス法のもとでは、30%以上の株式を保有している株主は、強制的に買収オファーを提示しなければならないのだ。

ブレグジットの影響で、イギリスの金融機関の行く末は未だハッキリしていないながらも、BBVAが限界点ギリギリで株式を保有し続けていることから、まだ何かが起きる可能性がある。

フィンテックはイギリスのテック業界の中で1番将来有望な分野だ。多くのスタートアップがその波に乗って、インターネットや携帯電話など新しいチャンネルを利用してプロダクトを提供しつつ、コスト削減を図っている。Atomにいたっては、マーケティング資料の中で初期の顧客のことを「ファウンダー」と呼んで彼らの機嫌を伺っているくらいだ。

Atom以外に類似サービスを提供している企業としては、Monzo(先日大型の資金調達を実施)、Starling、Tandemなどが存在する。

しかし全て企業にチャンスが残されている。イギリスの消費者は貯蓄講座などの金融商品に対して、長らく積極的に手を出してこなかったため、Metro Bankのような競合企業を含め、フィンテックスタートアップが従来の銀行に挑戦しようとしているのだ(AtomのCEOであるMark Mullenは、いわゆる「チャレンジャーバンク」のオンライン専門銀行First DirectのCEOを以前務めていた)。

Atomはサービスの利用状況に関して何の指標も公開していないが、まだサービスは初期段階にあり、ユーザー数もそこまで多くはないようだ。TechCrunchの取材に対し、現在のユーザー数は1万4000人で、その数は急速に伸びていると同社は語っていた。ちなみにイギリスの人口は6600万人で、Atomが特定の層を狙っているとはいえ、他の消費者の利用を制限しているわけではない。

いずれにせよ、将来的にユーザーベースを拡大できるよう、今のところ彼らは資金力の増強に力を入れているようだ。

「投資家からの反応には大変満足しています」とAtomのファウンダーで会長のAnthony Thompsonは語る。なお彼はAtom以前にも、Metro Bankを立ち上げてイギリスの銀行業界にディスラプションを起こそうとしていた。「Atomが著名な投資家からの支援を受けているということは、顧客にとってもプラスになります。彼らからの投資は、Atomの成長と将来へのプランに対する期待の表れです。これまでいくつかの施策に取り組んできましたが、銀行取引に対する私たちの新しいアプローチの革新性はまだ発揮されはじめたばかりです。Atomにはまだまだこれからも期待してほしいですね」。

今回のラウンドには、既存株主のWoodford Investment ManagementやToscafund Asset Management、他にも名前が公表されていない複数の投資家が参加していた。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

イギリスのMonzoがシリーズCのクローズへ―、ヨーロッパで増え続ける”チャレンジャーバンク”

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最近増えているネット専門銀行(またはチャレンジャーバンク)のひとつで、イギリスに拠点を置くMonzoは、現在シリーズCのクローズ間近で、早ければ今週中にも資金調達が完了する予定だ。

複数の情報筋によれば、アメリカのThrive Capitalがこのラウンドのリードインベスターを務めているようだ。しかし調達額についてはまだわかっておらず、3000万ポンドという情報もあれば、それより少ないが2000万ポンドは超えるという情報もある。さらに、Monzoが近いうちに2回目のエクイティクラウドファンディングのキャンペーンを開始するということもわかっている。

Monzoの共同ファウンダー兼CEOのTom Blomfieldに、シリーズCの存在やリードインベスターについて尋ねたところ「現段階ではコメントすることはできません」という反応が返ってきた。

興味深いことに、イギリス人のシンガーソングライターTom OdellがMonzoに投資しているかもしれないという情報も入ってきている。ラッパー・プロデューサー兼テック起業家のWill.I.amが、イギリスの別のチャレンジャーバンクAtomとチームを組もうとしており、さらにAtomへ投資するかもしれないというSky Newsの報道を考えると、この話は一層面白くなる。

Monzo以外にも、ニューヨークに拠点を置くThrive Capitalから投資を受けたヨーロッパのフィンテック企業は存在する。Josh Kushnerが設立したThrive Capitalは、最近行われた独RaisinのシリーズCでもリードインベスターを務めていた。なおRaisinは、ヨーロッパ全体で利用できる貯蓄口座を提供している

Monzo(以前はMondoという名前で活動していた)はインターネット専門銀行、もしくはBlomfieldの言葉を借りれば「スマートバンク」として、今年中にユーザーが当座預金口座を開設できるよう準備を進めており、昨年8月にはイギリスの規制団体FCAおよびPRAから「条件付きで」バンキングライセンス取得した。

現在のところ、10万人以上のユーザーがMonzoのプリペイド版のMasterCardと、iOS・Android両OSに対応したモバイルアプリを利用している。Monzoユーザーは、リアルタイムでの出金記録や、カードの利用場所の地図表示、支出金額のカテゴリー別け、全ての出金情報がまとまったタイムラインといったサービスも利用できる。

Monzoはこれまでの資金の一部をクラウドファンディングから、そして大部分をロンドンのアーリーステージVCであるPassion Capitalから調達しており、累計調達額は1280万ポンドに及ぶ。昨年10月に公表されたブリッジファンディング(つなぎの資金調達)では480万ポンドを調達しており、その際の評価額は5000万ポンドだった。

一方で昨年末には、Monzoが大手銀行からの巨額買収提案を却下したと噂されていた。先週のインタビュー中にBlomfieldにこの件を尋ねたところ、彼はこの話が真実だと認めた。

提案を却下した理由について彼は、「彼らには別の目的がありましたし、そもそもとても厄介な会社なんです」とその銀行の古びたITシステムや、文化、考え方などを例に挙げながら話した。「古い体制が残っているとリスクをとらなくなり、根本的にはイノベーションが止まってしまいます。これこそが問題なんです」

さらにBlomfieldは、売却の可能性は完全には否定できないものの、スタートアップ銀行にとって早い段階で他社に事業を売却するということは、救済策をとることに等しいと言う。「早い段階での売却は、設立当初の目的を達成できなかったと言っているも同然です」

一方でシリーズCは依然進行中のため、Blomfieldや彼のチームの前にはまだ長い道が続いている。

Monzo共同ファウンダーTom Blomfieldとのインタビューの様子はこちらから。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter