Appleが中国に新しい研究センターを設立、投資額は5億ドル

Appleは世界中に研究センターを設立することで、ローカルな才能を活用しようとしている。MacRumorsで伝えられたように、Appleは中国のウェブサイト上で、上海と蘇州に2つの新しいR&Dセンターを設立することを発表した。

35億元(5億ドルを少々上回る)の投資はAppleにとって重要な投資になるだろう。同社はすでに、北京と深圳の研究センターについての発表も行っている。このため、中国には合計4つのセンターができることになる。Appleはまた、フランス、イスラエル、英国、日本、そしてスウェーデンにチームを持っている。

Appleによれば、そうしたエンジニアたちの一部は、サプライチェーンの改善に取り組むと述べている。ほとんどのAppleの製品は、中国で製造されている。そして1年に何千万台ものデバイスを出荷することを可能にする、世界最高のエレクトロニクスエンジニアの一部もまた中国に住んでいる。

中国のローカルチームを通して、中国の独特のプロトコルと仕事を進めた方がやりやすいということもあるだろう。Appleは、そのデバイスが、中国のすべてのネットワーク上で動作することを確実にする必要がある。

なので、Appleが自分自身で研究センターを構築し、中国の地元企業との単なる提携関係から先に踏み出そうという動きは、ロジカルなものに見える。こうすれば、Appleは大地にしっかりと立ち、両方の良い部分を手に入れることになる。

また副作用として、Appleは中国経済に投資する意思があることを示すことになる。それは自身が好意を寄せるに足るものであることを、中国政府に納得させるための有力な方法だ。

Appleは既に、中国国内で多数の店舗を展開している。Appleはまた、Oppo、Huawei、そしてVivoに続く、中国第4のスマートフォンメーカーである。中国はAppleにとって重要な市場であり、今日(北京時間17日)の新しい研究センターに関する発表は、再びそれを証明するものだ。

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(翻訳:Sako)

中国のデーティングアプリ「Momo」が最高益を記録 ― ライブストリーミングが好調

注:本稿は元々TechCrunchのオフィシャルパートナーであるTechNode(中国)に掲載されたものである。

位置情報を利用した中国のネットワーキング・アプリ「Momo」が発表した最新の決算によれば、同社のユーザー数は昨年から急激に成長し、ビジネスを支える財務の状態も良好だということだ。Alibabaも資本参加しているMomoは、2014年12月にNasdaqに上場を果たしている。

同社の収益は昨年同期比で524%もの成長を見せ、2億4610万ドルとなっている。年間の収益は313%増の5億5310万ドルだ。Q4における1株あたり当期純利益は0.44ドル(Non-GAAPベース)で、決算年度を通した1株あたり当期純利益は0.87ドルとなった。

決算以外の数字も見てみよう。MomoのMAU(月間アクティブユーザー数)は2015年の6980万人から2016年12月には8110万に増えている。これは同社が2015年初頭に達成した最高記録に近い数字だ。2015年後半はユーザー数が伸び悩んだことを考えれば、これは素晴らしい成果だと言えるだろう。

このユーザー数の伸び悩みの原因として同社は、スマートフォン販売の減速やソフトウェアアップデートの遅れを挙げていた。しかし、同社が注力してきた新しいビジネス領域 ― 具体的にはライブストリーミングビジネス― のおかげで、彼らはもう一度中国人ユーザーの心を掴んだようだ。

デーティングからソーシャルエンターテイメントへ

今では、Momoは収益の80%をライブストリーミングビジネスから得ている。しかし、彼らはそれを本業にしようとしているわけではない。彼らは単なる出会いの場を提供する企業から、別の種類のエンターテイメントを提供する企業へと進化しようとしているのだ。

現在、同社のプラットフォームには様々なソーシャル機能やエンターテイメント機能が備えられている。1対1のコミュニケーションをはじめ、グループチャット、様々なフォーマットによる近況の投稿機能、そしてもちろん、ライブのブロードキャスティング機能や短いビデオの投稿機能もある。

ライブストリーミングが成長を加速

Momoはこれまでに8四半期分の決算を公表している。しかし、彼らが急速に成長しはじめたのは2016年になってからだ。他の中国のソーシャルネットワーキング・サービスと同じく、同社の成長を加速させているのはライブストリーミングである。Q4だけを見てみても、このビジネスは1億9480万ドルを稼ぎ出している。ライブストリーミングが同社のサービスに加わった2015年Q3以降、このビジネスはMomoの主要な収益源へと成長した。そして今では、同サービスが市場で独占的な地位を得るまでになっている。

ライブストリーミングという機能そのものがお金を生み出すわけではない ― 「ビジネス」の出番はここでやってくる。中国ではいま、バーチャルなギフト機能を備えたビデオストリーミング・ビジネスがとても好調だ。ここで言うところのバーチャルギフトとは、配信者の興味を引いたり、感謝の気持ちを伝えたりするために送られる「仮想の」アイテムのことを指す。Momoのライブストリーミングビジネスも同様のマネタイズ方式を採用しており、同サービスでは配信者である歌手たちにバーチャルギフトを贈ることが可能だ。アイテムから得た利益は配信者とMomoのそれぞれに分配される。

彼らがいま注力しているのはユーザーベースの拡大だ。しかし、同社にはプラットフォーム拡大のためのより大きな計画もある。

「私たちはまだマネタイズの初期段階にいると考えていて、さらなる成長加速のためのチャンスはまだ豊富にあると思っています。(中略)2016年の時点では、新サービスへのユーザー流入を既存のユーザーベースに頼っていました。それにより、2016年12月までにメインのアプリユーザーの23%がライブストリーミングサービスに流入する結果となりました。2017年の目標は、Momoプラットフォームの外側からユーザーを獲得することです」とCEOのTang Yan氏は語る。

Momoの2016年度決算(単位:1万USD、画像提供:Sina Tech)

ソーシャルネットワーキング、マーケティング、ゲーミング

収益の他の部分は、デーティング・ビジネスの会員料金、ソーシャルネットワーク上のギフト、マーケティングおよびゲームビジネスから得たものだ。

2016年Q4におけるソーシャルビジネスからの収益は合計1910万ドルで、この大半は会員料とバーチャルギフト収益だ。同社はこの結果について、プレミアムVIP会員とトータルユーザー数の伸び、そしてバーチャルギフト販売の好調さを理由に挙げている。

2016年Q4におけるモバイルマーケティング部門の収益は昨年同期比29%増の1970万ドルとなった。この成長は主に、新規顧客の獲得やセールス部門が獲得した新規案件数の伸び、そしてインフィード広告のeCPMの増加が要因だ。

Momoのモバイルゲーム部門も、いくつかのゲームタイトルのおかげで急速に成長している。「Momo Craft」や「Momo Fight the Landlord」などがその例だ。2016年、Momoはそれまで組織していたジョイントベンチャーを解消し、独自開発へと方針をシフトしている。この戦略による効果は明らかで、2016年Q4におけるモバイルゲーム部門の収益は昨年同期比で45%増の1130万ドルとなっている。

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(翻訳:木村 拓哉 /Website /Facebook /Twitter

終わらない中国の配車サービス戦争―、DidiのライバルUCARが10億ドルを調達へ

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【編集部注】オリジナルの英語記事は、中国におけるTechCrunchのパートナーメディアTechNodeからの転載。

Uberの中国事業買収を経て、Didi Chuxingは中国の配車サービス業界に残った唯一のプレイヤー、つまり広大な中国市場を掌握する企業になったと考えられていた。しかしDidiの成功は、同時に競合企業に新たなチャンスをもたらすことになった。たとえDidiであっても、どうやらひとつの企業が中国市場全体を支配するというのは不可能なようだ。

Didiの中国における有力なライバルUCARは、中国の銀行システムを運営しているUnionPayを含む4社から、合計46億中国元(6億7000万ドル)を調達したと今週発表した。同社の株主には、Warburg PincusやJack Maといったビッグネームも含まれている。

さらにUCAR会長のLu Zhengyaoは現地メディアに対し、追加調達資金を含めた合計調達額は70億中国元(10億2000万ドル)を超える予定だと話している。彼によれば、調達資金はマーケティングや採用、オフラインでのプレゼンス向上や車両の購入に充てられるという。

UCARは過去にも巨額の資金を調達しており、昨年10月には100億中国元(14億5000万ドル)をプライベートプレースメント(私募)で調達した。これは素晴らしい数字である一方、資金調達に関してDidiは他社に大きくリードしている。同社は最近行われた73億ドルのラウンド(Apple、Tencent、Alibaba、Softbankなど大手IT企業が参加)を含め、これまでに105億ドルを投資家から調達しているのだ。

Didiはドライバーをクラウドソースで集め、個人の車を使って営業しているのに対し、UCARは自社で車を保有し、タクシー業のライセンスを持ったドライバーが業務にあたっている。認可を受けたドライバーを売りに、UCARは今後利益を拡大できる可能性があると共に、彼らは規制面でのトラブルを回避するという重要な役割も担っている。

Shenzhou Zhuancheと呼ばれる配車サービスに加え、UCAR傘下で香港株式市場に上場しているCar. Incが提供しているレンタカーサービス、その他にも自動車のオンラインマーケットプイス、自動車ローンとUCARは現在4種類のビジネスを運営している。業務内容には既にかなり広がりがあるように見えるが、CEOのCharles Luはさらに新しい分野へ進出していきたいと言う。現状のまま行けば4つのビジネス全てが今期黒字になる予定で、新たなビジネスとしては自動車製造業という案が挙がっている。

多くの中国発テック系スタートアップ同様、UCARも中国の店頭取引(OTC)市場に上場している。彼らは昨年9月に、配車サービス企業としては初となる上場を果たし、現在の時価総額は409億3000万中国元(59億5000万ドル)に達している。一方Didiはまだ上場しておらず、具体的なIPOの計画についても発表されていない

厳しい競争環境や政府の締め付けにも関わらず、中国の配車サービス市場を狙う現地企業は後を絶たない。LeEcoの投資先であるYidaoは、長引いているDidiのUber中国事業買収が完了したタイミングで生まれるギャップを狙っており、2015年には10億ドルの評価額で7億ドルを調達した。

他には、中国トップのネット企業Meituanも、最近自社のアプリに配車機能を追加し、自動車メーカーのGeelyは、Caocao Zhuancheと呼ばれる配車サービスの営業範囲を拡大させた。

2015年のDidi DacheとKuadi Dacheの合併や、現在進行中のDidiとUberの話など、大手企業の統合が進む中、中国の配車サービス業界における戦いは終わったというのが大方の見方だった。しかし、UCARの資金調達のニュースからもわかる通り、市場は成熟しつつありながらも、戦いはまだ終わっていないようだ。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

中国で新たなユニコーン企業が誕生―、オンデマンドレンタサイクルのOfo

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ユニコーン企業なしに業界は盛り上がらない。最近中国で投資が集中している、オンデマンドで自転車を借りられるサービスを提供する企業の中から、初めて評価額が10億ドルを超える企業が誕生した。

オンデマンドレンタサイクル業界には、今年だけでもこれまでに3億ドル以上のお金が集まっており(しかもその投資は1社に集中している)、Ofoはついに誰もが待ち望んでいた、この業界初となる評価額10億ドルを達成した。北京に拠点を置く同社は、DSTが中心となったシリーズDで4億5000万ドルを調達したと本日発表した。

配車サービスで中国トップのDidi Chuxingは、昨年Ofoと投資契約を結んでおり、今回のラウンドでもその存在感を発揮していた。Didi以外でOfoのシリーズDに参加した投資家は、全てDidiにも投資したことがある企業だったのだ。具体的には、リードインベスターのDST、Matrix China、CITICがそうで、今回のラウンドではDidi自体も投資を行った。

Ofoと競合サービスの戦いは、DidiとUberの戦いと似ている部分が多いため、Ofoへの投資はDidiらしく映る。なお、DidiとUberの対決の結果はご存知の通りで、Uberが負けを認め中国事業をDidiに売却することになった

一方Ofoは、Tencent、Xiaomi、Sequoia China、シンガポールの政府系ファンドTemasekなどから資金を調達したライバルMobikeと、助成金・資金調達バトルを繰り広げている。Mobikeは、年明け1月にシリーズDで2億1500万ドルを調達し、その後FoxconnTemasekからの戦略的投資として少なくとも8500万ドルを追加調達した。MobikeはOfoに先んじて、レンタサイクル業界でもっとも多くの資金を集めたスタートアップだと主張していたが、今度はOfoが「初のユニコーン企業」というタイトルで反撃した。

あまり深い意味を持たない形だけのタイトルや自賛は置いておいて、彼らのビジネスモデル自体にはさまざまな疑問が浮かんでくる。Uberが考案しDidiが中国でスケールしたライドシェアサービスには、長期的な利益率に関して問題があると思っている人もいるかもしれないが、MobileとOfoの話は全く別物だ。

両社とも表向きは、テクノロジーを使って誰でも自転車を借りれるような環境をつくろうとしている。自転車にはGPSチップが搭載されているので、どこかにまとめて駐輪しておく必要がなく、ユーザーはモバイルアプリを使って簡単に自転車を借りられる。この仕組みは、ロンドンの「Boris Bikes」や世界中の国々で公的機関が提供しているレンタサイクルサービスとほぼ同じだ。

仕組み自体は大変便利だが、1時間当たり1中国元(0.15ドル≒17円)という利用料でどのくらいの利益が出ているのかはよくわかっていない。さらに自転車を壊そうとする人(どこにでも嫌な人はいるものだ)の問題やデポジットの取り扱いに関する問題もある。TechCrunchのパートナーサイトTechnodeの最近の報道によれば、レンタサイクルを提供している規模の小さな企業の中には、デポジットを資金繰りに利用しているところまであるという。

スケールに関しては、昨年6月からこれまでに2000万人の登録ユーザーに対して、100万台を貸し出したとOfoは発表している。さらに同社は中国の40都市で営業しており、現在はアメリカ、イギリス、シンガポールなどへの進出に向けた初期段階にあるという。

一方Mobikeは、これまでに1000万人のユニークユーザーが、2億回以上も同社のサービスを利用したと最近発表した。彼らは大都市を対象にサービスをスタートさせたが、その後拡大を続け、今では北京、上海、広州、深センを含む国内21都市をカバーしている。さらにOfo同様、Mobikeも今年中にアジア、ヨーロッパ、北米といった海外市場へ進出しようとしている。

Uberの中国事業の買収によって、Didiはひとつの戦いを終わらせることができたかもしれないが、またすぐに新たな戦いが起きようとしている。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

Alipayが韓国のKakao Payに2億ドルを出資 ― 韓国のEコマース、モバイルペイメント市場に攻勢をかける

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AlibabaグループのAnt Financialが新たなM&Aを発表した。同社は、韓国のKakaoが展開するフィンテックプロジェクトに2億ドルを出資する。Kakaoは韓国でメッセージング業界で独占的な地位を確立しており、企業価値は50億ドルにものぼる。

AlipayやAlibabaのデジタルバンキング事業を運営するAnt Financialは、近日ローンチ予定のKakao Payに出資することを決めた。このディールにより、Ant FinancialはKakao Payを通して同社の金融サービスを韓国でも展開する。また、オンラインのペイメントサービスだけでなく、オフラインの金融サービスにもビジネスを拡大する構えだ。

Kakao Talkのユーザーは合計で4800万人。韓国では、95%のスマートフォンにKakao Talkがインストールされていると言われている。以前からKakao Talkにはモバイルペイメント機能は備わっていた。しかし先月、Kakaoの取締役会は同社の金融サービス部門の子会社化を決定。Kakao Payが誕生することとなった。Kakao Talkでは、店頭での支払機能、P2P送金機能、各種料金の支払機能、Webバンキング機能などが利用できる。また、今後はローンの借り入れ機能なども追加する予定だ。

Kakao Payが提供する各種機能は、これまでにAnt Financialが中国で提供し、成功してきた分野だ。そのため、このパートナーシップは両社に大きな戦略的価値を与えるものだと言えるだろう。Kakaoの成長を加速させることはもちろん、Alibabaにも大きなメリットがあるのだ。このパートナーシップにより、Alibabaは韓国のEコマース市場に攻勢をかけることが可能になるだけでなく、韓国を訪れる中国人観光客がAlipayを使いやすくなるというメリットもある。

Ant Financialは現在、30億ドルのデットファンディング・ラウンドを実施している最中だ。同社はこの資金を利用して他社への出資や買収を積極的に行っていくと話しているが、すでにその戦略は動き出している。Ant FinancialはアメリカのMoneyGramを8億8000万ドルで買収しただけでなく、最近ではタイのAscend Money、フィリピンのMynt、インドのPaytm、シンガポールのM-Daqなどに資本参加している。今回のKakao Payへの出資も含め、これらの動きはすべて戦略的な理由にもとづいたものだ。今後も同様の動きが見られることだろう。

[原文]

(翻訳: 木村 拓哉 /Website /Facebook /Twitter

Baiduが音声アシスタントのRaven Techを買収してAI色を一層強める

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Baiduがこのほど、音声アシスタントを開発している中国のスタートアップRaven Techを買収して、AIへの進出をさらに一歩前進させた。Baiduは、Ravenの技術と製品と60名のスタッフすべてを買収したことを確認した。

Baiduは1か月前に、以前Microsoftにいた、AIのエキスパートとして著名なQi Luを雇用し、COOとGroup Presidentの座に据えた。Raven Techの買収額は公表されていないが、同社はMicrosoft Venture AcceleratorとY Combinatorの出身であり、DCM VenturesやZhenfundなどのVCから1800万ドルを調達している。

Raven TechのFlowは中国のSiriと言われつつ、ビジネスとしては離陸できなかった。Tech In Asiaの指摘によると、そのアプリは中国のApp Storeで700位よりも下を一貫して低迷、一方Siriは標準中国語をサポートし、またXiaomiやBaiduのような有力企業からもライバル製品が登場していた。

Baiduによると、この買収を機に同社はデジタルアシスタントDuerや、それと関連する拡張現実製品に特化した新たな事業部門を作る。Raven TechのCEO Cheng LuはBaiduのスマートホームデバイス部門を率い、また、“新製品開発に関してDuerのチームと協働する”。Cheng Luは、Qi Luの配下になる。

BaiduのAIおよび機械学習路線は、CourseraのファウンダーAndrew Ngがそのトップであり、彼はカリフォルニアにあるBaiduの研究部門の長でもある。先月Baiduはそこへ拡張現実の研究グループを加え、さらにこの研究部門にはディープラーニングとビッグデータの研究グループも前からある。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

中国・アメリカを股にかける投資家のトランプ政権に対する思い

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ドナルド・トランプ大統領は、中国に対して何度も貿易戦争をはじめると脅しをかけており、中国も段々それを真剣にとりはじめた

シリコンバレーに拠点を置きながら15年以上も中国企業へ積極的に投資を行ってきたGGV Capitalでは、マネージング・ディレクターのHans Tungが、その攻防を戸惑いながらもじっと見つめている。

Tungは、GGVがオフィスを置く上海や北京を含む、彼のネットワークから情報を集めているという。「中国は(まだトランプ大統領のことを)そこまで心配していません。トランプ大統領は今日右を向いていても、支持を勝ち取るためであれば、明日は左を向くような人物だと思われています。とりあえず実際に何か動きがあるまで静観しよう、というのが大方の考えのようです。私は(中国政府が)いかなるときも過剰反応したくないと考えているのだと思います」

Tungの世界の状況に関する考えは、初期にGGVから投資を受けていたEC大手Alibaba(GGVはAlibabaが2014年に上場する前に株式を売却した)のファウンダー兼CEOであるJack Maの考えと同じだ。先週ダボスで行われた世界経済フォーラムでMaは、「貿易戦争は世界全体に破滅的な結果をもたらすだろう」と述べ、中国はトランプが落ち着くまで少し待った方がよいと話していた。

さらにMaは、もしもAlibabaを存続させるか貿易戦争に突入するか選ぶならば「Alibabaをたたむ」とさえ考えるほど、この問題を真剣に考えていると語った。彼の発言に芝居がかった様子はない。Maは8月にもCNNで貿易戦争に関する不安を述べていた。「私たちはグローバリゼーションの道を進み続けるべきだと思います。グローバリゼーションは良いことですしね……貿易がストップすれば、戦争が起きるでしょう

昨日Tungは、トランプが中国をスケープゴートのように扱っているか、少なくともそうしようとしているように見えると示唆した。中国政府は「これまでアメリカ政府が、雇用の創出やラストベルトの復興の代わりに、イラク戦争やその他のことにどのくらいお金をつぎ込んでいるかを確認しています。中国はこれまで一度もアメリカ人から仕事を奪おうとしたことはありません。もしもアメリカ政府がうまく再投資を行い、多国籍企業が利益を母国に返還していれば、もっとアメリカは良い状態にあったはずです」

中国とアメリカの間にある、何十万マイルもの距離を毎年行き来しているTungにとって最も重要な問題は、トランプ政権と中国の冷え切った関係が、どのくらい急に彼の仕事に影響を及ぼす可能性があるのかということだ。

今の時点では彼は本当に心配していないようで、GGVは概ね「待ちの状態」にあると話す。さらにTungは、特にGGVが投資しているいくつかのEC企業については、地政学的にどのような状況の変化があっても「そのままにする」と語った。

彼の言うEC企業には、モバイルECアプリのWishも含まれている可能性が高い。Wishは主に中国から雑貨を底値で販売しており、投資家のJoe Lonsdaleによれば、年間「約50億」ドルのランレートを記録している。

さらにTungが早くから評価していたGGVの投資先企業には、英語でRed、中国語でXiaohongshu(小红书:小さな赤い本)と呼ばれるスタートアップがある。同社はソーシャルECプラットフォームを運営しており、中国のユーザーをターゲットに、海外からブランド品を割引価格で購入できるようなサービスを提供している。

Tungは、中国の現状は簡単に言えば「通常営業」だと話し、GGVはそれよりも、トランプ政権からのビジネスフレンドリーな話にフォーカスしようとしているようだ。

アメリカ国内からは、中国とアメリカの関係がどう動いているのかよくわからないが、「今後は規制が緩和され、業界統合が進んでいくと思います」とTungは語る。「M&Aはこれからやりやすくなるでしょうね」

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

Xiaomiが販売台数の公開を中止、長期的な成長に重きを置くことに

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Xiaomiが毎年行っている前年度のスマートフォン販売台数の発表を取りやめた。販売台数を公開することで、Xiaomiはこれまで多くのニュースの見出しを飾っていたが、本日同社のCEOはXiaomiが「早すぎる」成長を経て新たな段階に突入しようとしていると語った。

2016年の1月に、同社が2015年の販売台数が「7000万台以上」だったと発表したときには、既にこの戦略の変更がある程度予想されていた。スマートフォンの販売速度が世界中で落ちていることを考慮すると、2015年の結果も素晴らしいものだったと言えるが、この数字は当初の1億台から下方修正された8000万台という目標にも届いていない。

アナリストのレポートからも、2016年が人気企業Xiaomiの成長にとって素晴らしい年にならなかったことは明らかだった。売上では中国国内でトップに近い成績を残しており、同社が注目している新興市場インドの状況も堅調だったが、成長速度は以前に比べて落ちていた。ちなみに2012年に720万台だった販売台数は、2013年に1870万台、2014年には6100万万台へと急増していた。

Xiaomiの担当者は、TechCrunchに対して2016年の販売台数が公開されないことを認めた。

この変更は種々の状況を考えても予想できることだった。爆発的な成長を継続することが難しいことはもちろんだが、ハードウェアのコンポーネント化やオンライン限定での販売戦略など、Xiaomiを差別化していた要素が業界全体に広まってしまった。結果的にXiaomiはブランド力に頼らざるを得ず、これは”手頃な”デバイスを販売している企業としてはとても困難な課題であった。中国でAppleがXiaomiを突き放して人気ブランドの座についていることを考えるとなおさらだ。

しかしXiaomiにもその原因はある。同社は大胆な予測を立て、成長速度を誇示する宣伝を繰り返していたのだ。共同ファウンダー兼CEOのLei Junも、本日Xiaomiの戦略が拙速であったと認めている。

「最初の数年間は先を急ぎ過ぎていたため、短期的には奇跡的な成長を遂げることができましたが、長期的な成長が一部でないがしろにされてしまっていました。だからこそスピードを緩め、いくつかの点を改善し、長期的な未来のために持続可能な成長ができるような対策をとっていかなければならないと考えています」とLeiは従業員向けの文章に記した。

しかしLeiの思いがXiaomiの評価額に反映されているかどうかはハッキリとしない。同社の評価額は2014年12月の11億ドル規模のラウンドを受けて450億ドルに達したが、専門家の多くはXiaomiがそれ以後この金額を正当化できるほどのことをやっていないと感じている。

従業員向け文書には彼の正直な思いが綴られていたが、そのトーンはむしろ明るく、Leiは従業員に対して「困難の時は過ぎ去った」と記している。

売上に関する情報は発表されていないものの、Xiaomiはその他のさまざまな指標を公開し、そこからは最近採算が取れていないとXiaomi自体も認めていたスマートフォン販売だけでなく、今後どのように成長していくかを描こうとした同社の思いを感じることができる。

以下がLeiの文書に記載されていた情報だ。

  • インドにおける年間売上額が初めて10億ドルを突破
  • 現在54軒あるXiaomiのオフラインストアのうち、3店舗で2016年の流通総額が1億人民元(1450万ドル)を突破し(流通総額にはパートナープロダクトの売上も含まれている)、2017年には新たに200店舗、2020年までにはさらに1000店舗のオフラインストアを設立予定
  • ”Mi Ecosystem”にスマートTVやフィットネストラッカーなどを含む、5000万台のデバイスが接続しており、そこからの売上が150億人民元(22億ドル)を記録
  • 世界中で1万6000件の特許を申請しており、これまでにその中の3612件が認定される
  • 「インターネットサービス」からの売上が2016年に倍増(実際の数値は公表されていないが、2015年のロイターのレポートをもとにすると、初めて10億ドルを突破)

さらに興味深いことに、Leiは今後Xiaomiのオフラインストア網を拡大していきたいと考えている。これは読み違えではなく、オンライン限定販売モデルの先駆者であるXiaomiが、旧来の販売方法に力を入れようとしているのだ。

Leiは、現在の流通モデルに限りがあることからXiaomiは販売網を拡大する必要があると話しているが、もうひとつの要因としては”競争の激化”が考えられる。

私たちのEC戦略にも課題が浮上してきました。現在オンライン販売はXiaomiの中国における小売売上高の10%強しか占めておらず、スマートフォン市場全体に占めるオンライン販売の割合は20%しかありません。Xiaomiは壮大な野望を持っており、私たちはただのECスマートフォンブランドという地位に満足していないため、今後は現在の小売モデルを進化させ、オフラインの店舗を新たな小売戦略に含めていかなければいけません。

さらに彼は「インターネットサービス」の収益モデルが確立されたと感じており、このビジネスを進化させて売上を拡大していくための次のステップとして、プロダクトをより広域に販売していかなければならないと考えているようだ。

店舗網の拡大の以外にも、Xiaomiは顔認識システムに既に導入されているAIの開発に注力していくほか、海外でのプレゼンスを高め、2017年中にフィンテックソリューションを開発しようとしている。既に同社はApple Payの競合サービスを提供しており、中国でのデジタルバンキングサービスのローンチに向けて準備を進めている

スマートフォンの販売台数に関しては明確な目標を設定しないが、Lei Junは2017年の「控えめな目標」として売上額1兆人民元(145億ドル)を目指していると話す。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

”物流界のUber”Lalamoveがアジア100都市以上での営業展開を目指し3000万ドルを調達

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香港に拠点を置きオンデマンド物流サービスを提供しているLalamoveは、上場を視野にこの度シリーズBで3000万ドルを調達した。

3年前にEasyVanという名前で設立された同社は、現在中国の50都市と東南アジアの5都市で営業しており、今回調達した資金を使って2017年中にさらに中国・アジアの60都市以上へとビジネスを展開していく予定だ。

今回のラウンドをうけ、Lalamoeはこれまでに合計6000万ドル以上を調達したことになる。シリーズBでは、Baiduで以前M&A部門のトップを務めていたHesong Tangによって新たに設立された、北京に拠点を置くVCのXianghe Capitalがリードインベスターとなった。そのほかにも既存の投資家であるMindWorks VenturesやCrystal Streamに加え、新規にBlackhole Capitalが同ラウンドに参加していた。

Lalamoveにて国際部門担当マネージング・ディレクターを務めるBlake Larsonは、TechCrunchとのインタビューで同社は損益分岐点に到達する寸前だと話していた。

「特にオンデマンドサービス界隈では資金調達が難しい今、今回のラウンドによってLalamoveは間違いなくビジネスを成長させる上で有利なポジションに立つことができます。既に複数の都市では黒字化できているほか、キャッシュフローもポジティブなため、今年中には全社的に採算がとれるようになるでしょう」とLarsonは語る。

「現在資金は十分にあるため再度資金を調達する必要はありませんが、今後全く資金調達をしないというわけではありません。私たちは既にもうかるビジネスモデルを持っており、上場は可能性の問題ではなく、時間の問題です。ハッキリと言うことはできませんが、現在の財務状況を考えると、2年から2年半のうちに上場することができると考えています」と彼は付け加える。

上場先の市場など、IPOについてはこれ以上Larsonは明かさなかった。

Lalamoveは、Uberのようなオンデマンドの交通サービスからヒントを得た複数存在する物流会社のひとつだ。しかしUberと違い、彼らは単価が高く利用頻度も安定している法人ユーザーを主な顧客としている。一方Lalamoveのアプリは誰でも使うことができ、ユーザーは同社のバイクやバンを利用して、食品や雑貨、オフィス用品を中心にさまざまなモノの配送を依頼できる。

「物流市場の規模は大きく、中国の市場規模は1兆7000億に達するほか、東南アジアの一部の国ではGDPの最大27%を占めています。その上、この業界はモバイルインターネットの世界ではあまり注目されていません。私たちのユーザーは、それぞれの街でより早くてシンプルな配送手段を求めており、Lalamoveは何でも1時間以内に配送できるということを証明してきました」とLalamoveのファウンダー兼CEOのShing Chowは声明の中で述べている。

現状Lalamoveのビジネスの中心は中国にあるが、全ての地域を勘案するとプラットフォーム上には50万人のドライバーと500万人のユーザーが登録されており、これまでに1500万回もの配送を行ってきたと同社は話す。Uberも2年前に香港で似たようなビジネスを展開しようとしたが、昨年Uber Cargoはサービスを停止した。

Uberと同社の中国におけるライバルであり、Uberの中国事業を買収予定のDidi Chuxingが今後数年の間に上場するかについては、さまざまな憶測が飛び交っているが、専門家のほとんどは両社ともまだ事業を黒字化できていないと考えている。

しかし、資金調達の難しさからオンデマンド物流界に残る数少ないプレイヤーのひとつであるとLarsonが話すLalamoveは、今年中の黒字化を狙っている。その原動力はターゲットとしている顧客層と、価格よりもサービス品質を重視した同社の戦略だ。

「私たちのオペレーションは表層部では(Uberと)似通っているかもしれませんが、コンシューマー市場のスイッチング・コストはとても低い水準にあります。そのため顧客ロイヤルティを保つのが、エンタープライズ市場に比べ難しくなってしまいます。(Lavamoveのように)法人顧客が中心の場合、顧客は短期的な金銭的メリットがあっても、他社に乗り換える可能性が低いんです。これは法人顧客がプロモーションに疎いというわけではなく、彼らは価格だけでは動かないということです」とLarsonは説明する。

昨年LalamoveはLINEと契約を結び、同社のチャットアプリ上のオンデマンドサービスをサポートすることになった。なおこの契約は、まずLINEのメイン市場のひとつであるタイで締結された。LINEがタイで提供しているLINE MANは、4年早くサービスを開始していたRocket InternetのFoodPandaを既にデリバリーボリュームで上回っているとLarsonは話す。さらに彼によれば、Lalamoveは現在LINEと似たようなサービスを東南アジアで展開している企業との将来的なパートナーシップの可能性を模索している。

「次のパートナーはチャットアプリを運営する企業ではないかもしれませんが、ソーシャルコマースサービスのように、今後一緒に仕事ができる可能性のあるプラットフォームはまだまだ存在します。特にオペレーション面のリソースに欠ける規模の大きなプラットフォーム(をLalamoveはサポートすることができます)」と彼は話す。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

中国最大のオンライン旅行会社Ctripが、フライト検索会社のSkyScannerを17億4000万ドルで買収

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スコットランドを拠点とするフライト検索会社Skyscannerが、中国の大手オンライン旅行会社Ctripによって買収された。価格は14億ポンド(およそ17億4000万ドル)である。

買収は主に現金で行われ、今年の終わりまでには完了する予定だ。買収完了後も、SkyScannerはCtripとは独立して運営されることを、双方が表明している。

1999年に設立されたCtripは、中国最大のオンライン旅行会社だ。本日発表された2016年第3四半期の売上は、前年比75%増の56億人民元(8100億ドル)で、利益はわずかに400万ドルである。最近Ctripは、転換社債の販売で10億ドル近くを調達しているが、この調達はSkyscannerの取引のために行われたものと思われる。

このニュースは、10箇所の事業所に700人以上のスタッフを抱えるSkyscannerが、今年の1月に世界展開を目指して1億9200万ドルの資金調達ラウンドを行ってから1年足らずの内にやってきた。それは、2年以上にわたる同社の歴史の中で初めての資金調達だった。そのときの投資家には、Khazanah Nasional Berhad、マレーシア‐政府の戦略投資ファンド、ヤフー・ジャパン、ファンドマネージャーArtemis、投資ファームBaillie Gifford、未公開株式ファームのVitruvian Partnersなどが名を連ねていた。Sequoiaは既存の支援者だ。

そのラウンドでは、SkyScannerの価値は16億ドルと報告されていた。同社は2017年のIPOを広く期待されていたので、以前の評価額とさほど変わらない価格での今回の買収は、一種の驚きをもって迎えられた。Skift のレポートによれば、SkyScannerの収益の成長はゆっくりとしたペースだった、しかし同社はそれをマーケティングではなく、増大するプロダクトへの投資のせいだと見なしている。

いずれにせよ、これは欧州における、これまでで最大のトラベルテック買収である。SkyScannerはアジアに力点を置いていた — ヤフージャパンと提携し中国の旅行検索スタートアップYoubibiの買収も行った — しかし、今回の取引はCtripがビジネスを国際市場に広げることを助けることになる。

「Skyscannerは世界レベルにおける私たちの位置付けを補完するものとなるでしょう、そしてCtripは私たちの経験、技術、予約能力をSkyScannerに活用する予定です」と、Ctripの共同創業者兼会長のJames Jianzhang Liangが声明の中で述べている。

ビデオ声明の中で、SkycannerのCEO兼共同創業者のGareth Williamsは、この取引によって、旅を「より簡単な」ものにするための豊富なリソースに、彼の会社がアクセスすることが可能になると述べている。

拡大のためのM&Aを追求してきたCtripにとって、ここ1年ほどは忙しい年だった。最大のライバルQunarとの株式交換合意から1年以上が経過した、それによってCtripは自身の議決権の25パーセントと引き換えに、Qunarの45パーセントの議決権を獲得した。

今年の1月には、Ctripは、インドのMakeMyTripの約4分の1を購入するために1億8000万ドルを使い、その一方で、9400万人の乗客を運んでいると主張する、国営航空会社中国東方航空の一部を取得するために、4億6300万ドルを豪気に支払っている

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(翻訳:Sako)

LeEcoが6億ドルを追加調達、電気自動車プロジェクトには陰りが見える

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電気自動車、スマートフォン、スマートTVなどを開発する、中国の野心的なテック系企業のLeEcoに関する良いニュースと悪いニュースが両方報じられた。

同社のCEOでビリオネアのYuenting Jiaが、同社の早すぎる国際展開を戒めるために企業内部に送った手紙がリークしたことで、LeEcoが新たに6億ドルを調達したことが明らかとなった。しかし同時に、同社がアメリカで展開する電気自動車事業にはブレーキがかかっているようだ。

Reutersが報じたところによれば、LeEcoの中国親会社であるLeShiは、10社以上の中国企業から追加で資金を調達している。同社のスポークスパーソンは出資に参加した企業を明かさなかったが、TechCrunchが取材をしたところ、今回の出資者はすべてJiaが通っていたCheung Kong Graduate School of Businessのクラスメートだと教えてくれた。

今月初め、Jiaは同社が抱える1万人以上のスタッフに手紙を送り、複数の新事業を次々に立ち上げることで成り立っているLeEcoの成長は不安定なものであるという旨の警告をしている。LeEcoはスマートTV事業とNetflixに似たサービスを開始したところだが、この他にもスマートフォン事業や、米Faraday Futureと共同の電気自動車事業にも手を広げている。

この手紙のリークによって、LeEcoの米国向けビジネスと、Faraday Futureと共同で展開する電気自動車ビジネスが危機に陥っていると考える者も多い。しかし、LeEcoの北米事業を率いるBrian Huiは先週開催したTechCrunch Beijingに登壇し、この手紙は北米事業に悪影響を与えるものではないと主張している。さらに彼は、電気自動車ビジネスは同社にとって「最重要事項」であり、このビジネスから撤退することはないと強調した。その一方でHuiは、LeEcoが新しいフェーズに突入したことは認めている。つまり、より少ない事業により大きな投資をするというフェーズだ。同社が20億で買収したVizioなどがその例である。

今回の報道によって、打倒Teslaを掲げるLeEcoの電気自動車ビジネスに切実な資金需要があることが分かった以上、6億ドルの資金調達は成すべき時に成されたものだと言えるだろう。

Jalopnikは、LeEcoとFaradayの2社が18億ドルを投じたネバダ州の製造工場の建設工事が中断していると報じた。さらに、その建設業者への支払いも滞っているようだ

私たちはこの工事の状況について尋ねたが、同社はコメントを控えている。Reutersによれば、今回LeEcoが調達した6億ドルのうち、その半分の3億ドルは今月末までに支払いが完了する予定だという。その資金は、Faraday Futureとのパートナーシップ、米国で始まったばかりのLeMall事業、LeEcoのハードウェアを販売するEコマース・プラットフォームに供給される見通しだ。

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(翻訳: 木村 拓哉 /Website /Facebook /Twitter

TechCrunch Beijing 2016の優勝者が決定:IoT開発プラットフォームのRuff

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TechCrunch Beijing 2016の勝者に輝いたのは、IoTの開発プラットフォームを展開するRuffだ。同社のプラットフォームを利用すれば、さまざまなデバイスで機能するJavaScriptのコードを簡単に開発することができる。Webデベロッパーがすでに持つ知識や、彼らが学習しやすい開発ツールを利用することで、簡単にIoTの開発ができるプラットフォームを提供するというアイデアだ。

Ruffがステージで発表したプレゼンテーションによれば、同社のプラットフォームはすでに大勢のディベロッパーに利用されており、IoTのハードウェアでよく利用されるセンサー、カメラ、LEDなどのデバイスに対応したライブラリやレポジトリも豊富に用意されているという。

また、同社のプラットフォームではクロスコンパイルをしたり、カーネルの開発をしたりする必要がないため、開発プロセスをシンプルにまとめることができる。IoTアプリケーションに使われるコードの開発をシンプルにすることで、ディペロッパーはコンセプトの現実化や、コードを素早く開発して作動可能な状態まで持っていくことに集中することが可能だとRuffは話している。

第2位に輝いたのは全方位カメラのStaroだ。Staroのカメラには数多くのセンサーが組み込まれているため、画像をキャプチャするために魚眼カメラを利用する必要がない。これにより、消費者向けの全方位カメラがこれまで抱えていた、画像の歪みや変色などといった問題を解決することができる。Staroのカメラはすでに出荷が始まっている。

[原文]

(翻訳:木村 拓哉 /Website /Facebook /Twitter

中国のタクシー配車サービス大手Didi、今度は自転車シェアリングに出資

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中国最大の自動車配車サービス会社Didi Chuxing(滴滴出行)が、自転車分野にも進出するかもしれない。正確にいえば、自転車シェアリングだ。Uberの中国ビジネス部門を買収締結中の同社は、米国時間9月26日、自転車の貸出サービスを提供する新手のスタートアップOfoに出資したと発表した。

今回の出資規模は何億ドル規模ともいわれているが、Didiの持分がどれだけかは不明だ。Ofoは今月すでに400万ドルの出資を受けたと伝えられているが、Didiの資金がそのラウンドの一部であったのか、あるいはその追加分であったのかは定かではない。

実際のところ、両社とも多くは語っておらず、Didiによる発表も1段落のみにとどまった。しかしどちらも今回の出資を「多層的なパートナーシップ」の一部であると呼んでいる。我々はこの言葉の真意について、またOfoとの提携プランについて追加情報の提供を依頼したが、Didiからの回答はなかった。

しかし行間を読むならば、Didiはこのタイアップによって、Ofoを自社アプリのオプションとして提供することで自転車業界へ進出する機会を得られる可能性がある。Didiの提供サービスは認可済みドライバーによるプライベートなタクシーサービスにとどまらず、運転代行、テストドライブ、コミュニティーバスサービスなどにも対応している。Uberなどの同業他社がすでに提供しているサービスにも同様に着手することになれば、学生軍団が漕ぐ自転車によるフードデリバリーや荷物の宅配のようなサービスが街中に広がるかもしれない。

Ofoは2年前に、北京大学のスタートアッププログラムの一環として設立された。中国の20都市に自転車7万台を保有し、150万人の登録ユーザーによって毎日50万回の利用があるという。中国における自転車の人気は絶大だ。北京のみでも900万台あるといわれ、それに着想を得たポップソングすら存在している。自転車の利用者は特に学生層が多い。

Didiによるその他の投資先をたどれば、さらに明確な戦略が「線」となって浮かび上がってくる。同社にはUberのライバルであるLyft(米国)Ola(インド)Grab (東南アジア) に、「成功事例」の共有や、各国を旅行するユーザーに各サービスの利用を促進するなどの連帯的連携の一部として出資した過去がある。しかし、DidiによるUberの中国部門の買収は、この提携関係を不確実性へと投げ入れた。 今回の取引によってこの中国企業はUberの投資者となり、代わりにUberがDidiの株主となるからだ。

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(翻訳:Ayako Teranishi / website

Alibabaが急成長、モバイル売上が初めてデスクトップを越える

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Alibabaが2016年度Q2に記録的な成長を遂げた。同時期に、中国の小売マーケットプレイスが急成長し、モバイルユーザーの売上が初めてデスクトップユーザーを上回ったのだ。

売上額は前年同期比で59%増となる322億元(48億ドル)に達し、これはアメリカ史上最大となった2014年9月のAlibabaのIPO以来最高となる成長率だ。

中国経済の減速が噂される中、Alibabaの中国ビジネスにはその影響がなかったようだ。同社の中国におけるマーケットプレイスでの売上は、前年同期比49%増の234億元(35億ドル)を記録している。このうち75%にあたる175億元(26億ドル)の売上はモバイルデバイス経由で発生しており、昨年度から119%の伸びを見せた。

Alibabaの中国でのマーケットプレイスは昨年の時点で既にモバイル売上がデスクトップを上回っていたが、この度モバイルユーザーの平均売上額がデスクトップユーザーを超え、ついに同社の成長源がビジネス全体でモバイルにシフトすることとなった。IPO以前、モバイルへの移行は投資家にとって大きな不安材料であったが、Alibabaの経営陣もこの移行スピードには驚きを隠せなかった。

売上額の増加は間違いなくAlibabaの経営陣にとってのハイライトである一方、昨年発生したAlibaba Pictures関連会社からの一過性収益の影響で、純利益は前年同期比で76%減少し71億4200万元(11億ドル)となった。その他の指標については、同時期に非GAAPベースの純利益が28%増、営業利益が71%増と素晴らしい実績を残している。

主要事業以外では、Alibabaはこれまでクラウドコンピューティングにそのリソースを費やしてきた。そしてAlicloudは、前年同期比で2倍以上となる12億元(1億8100万ドル)の売上と、57万7000人の有料会員数を記録している。

しかし、Alicloudのビジネスは未だ発展途上にある。同社の営業損失は4億39000万元(6600万ドル)へと改善しており、AlibabaのヴァイスプレジデントであるJoe Tsaiは、アナリストとの電話でAlicloudが「損益分岐点に向けて前進している」と語った。

Alibabaはこれまで財務諸表の分かりにくさを非難されており、証券取引員会は、Alibaba関連の物流企業Cainaoや、O2Oプラットフォームを運営するKoubei、ビデオプラットフォームのYouku Tudou、ペイメントプラットフォームのAnt Financialなどの会計処理に関する調査を行っている

それに応えるように、Alibabaは財務に関する情報量を増やし、デジタルメディアやクラウドコンピューティング、フードデリバリーなどの売上や損益を含む情報を初めて公開した。

今の時点では下記の表の通り赤字であるものの、Alibabaはこれらの関連会社が将来的にコアビジネスを支えるような存在になると信じている。

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さらにAlibabaは、新たに大きな賭けを新興市場で行おうとしている。

同社は今年に入ってから、Rocket Internetの投資先でもある東南アジアのEC企業Lazadaに対して10億ドルを投資し、インドではモバイルウォレットやEC事業を運営するPaytmや、EC界のユニコーンのSnapdealに出資している。

「私たちは、5億人もの現地顧客候補が存在する東南アジア市場でサービスを提供しようとしています。東南アジアは今後私たちにとって極めて重要な市場になってくるでしょう」とTsaiは語った。

さらにインドに「戦略上とても重要なアセットを配置することを決め、今後はモバイルと決済サービスがインド市場でのAlibabaにとって重要になってくると考えています」と彼は付け加えた。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

渋滞時に誰もが夢見た「あの乗り物」、中国が本気で現実化

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Facebookなどのソーシャルメディア上でいろいろなビデオを眺める習慣のある人ならば、きっと「車の上を超えていく乗り物」のコンセプトビデオを見たことがあると思う。ビデオは中国が制作したもので、乗り物は電車とバスのハイブリッドのような感じだ。

写真やビデオはあちこちに出回っていた。ただしそれらは合成によるもので、ほとんどの人はアイデアとしてはありだけれど実現するわけはないと考えていたと思うのだ。

しかし、中国がやってみせてくれた

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中国の新華社通信によると、実際の路上テストも行う段階なのだとのこと。名前はTransit Elevated Bus(TEB)というそうだ。実験は秦皇島市で行われた。ブレーキングによる燃費性能の変化に関する調査も行ったのだとのこと。

このTEBは電気で動く。長さは72フィート(22mほど)で幅25フィート(8m弱)だそうだ。すなわち複数レーンをまたいで走ることになる。定員は300名(複数台をつなげてより多くの人を運べるようにする考えもあるらしい)だ。実用走行時には時速40マイル(時速65kmほど)を考えているらしい。路上公共交通機関として、十分な速度だといえそうだ。

今回紹介されたものは、あくまでも実験段階のものだ。しかしそうであるにせよ、こんなものを実際に作ってしまうのは面白い。ブラジルやフランス、インド、あるいはインドネシアなどが導入も視野に興味を示しているのだとのこと。

新華社通信のサイトには、走行実験の様子を示すビデオも公開されている。

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(翻訳:Maeda, H

DidiによるUber China買収で先行きが不安な「アンチUber同盟」

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メディアやテック業界にいる人の多くが、中国現地法人をライバルであるDidi Chuxingに売却するというUberの決断が失敗であったと捉えている。Uber Chinaを1番のライバル企業に売却するというのが、メンツを保つための行為であり、逆境に打ち勝って中国での成功を試みていたアメリカ企業にとって避けられない結末だったと考えるのは簡単だ。

しかし、取引の詳細についてもっと詳しく見てみると、今回の事業売却が、両社どちらにとっても上手く出来た話のように見えてくる。

まず、今回の話が急にまとまったものだと思わないでほしい。売却の噂は、両社が否定する中、1ヶ月に渡って広まっていた。さらに、交渉内容に詳しい情報筋によれば、この話はUberとDidiの間に既に2度も行われていたが、上手くいってなかった。つまり、今回の話が3度目の正直だったのだ。さらにもっと大切なことに、事業売却はUberがメンツを保とうとしているというよりも、両社がアライアンスを組もうとしていることを意味する。

同様に、Didiが親切心から買収をしようとしているとも思わないでほしい。Didiは、Uberが中国で数十億ドル規模の投資をし続け、弱っていくのを傍観することもできたのだ。Appleを投資家に含むラウンドで73億ドルもの膨大な資金を調達し、Didiはその資金調達力を見せつけたが、中国やその他の地域でのUberの脅威を取り除くために、彼らから何かを奪おうとしていたのだ。つまり、今回の話には、Uberの戦略的な撤退以外の双方にとっての利点がある。

それでは交渉はどのように進むのだろうか?

まず、もちろんUberは、同社のCEOいわく毎年10億ドルものコストがかかっているという中国事業と引き換えに、中国のライドシェアリング業界において支配的な立場にあり、評価額が350億ドルにおよぶDidiの(恐らく)20%近い株式を取得することになる。なお、350億ドルという評価額は、2015年の合併後にDidiが誕生したときから比べると、約11倍の額だ。

しかし、もっと大きな成長余地がそこにはある。

今年の夏のはじめに、Didiで国際戦略部門のシニアディレクターを務めるLi Zijianは、同社が中国のタクシー市場で1.1%しかシェアをとれていないとの推計を発表した中国の新たな規制により、UberやDidiのサービスは11月から合法化されることから、今回のUber Chinaとの統合と合わせるとDidiのビジネスが何倍にも成長することが見込まれる。さらにUberも同社の最大の単一株主として、その利益を享受することになる。

Didiの株式を保有することで、Uberはバランスシートから現金を食い荒らしていた中国事業を取り除くことができ、待望のIPOに向けて前進することができる。さらに、Didiは自社のIPOの計画に関するニュースをこれまで否定していたものの、膨大な成長可能性を持つDidiの株主となることが、今後大きな利益に繋がる可能性が高い。

中には、Uberがこのような潜在的な財務利益を求めていたなら、単純にもっと早い段階でDidiへ投資することで時間とお金を節約できていたのではないかと主張する人もいる。しかし、もっと早い段階でDidiへ投資するためには、まず合併前のDidi KuaidiとDidi Dacheどちらへ投資するのか選ばなければならなかった。また、もっと重要な点として、Uberとの競争が無くともDidi Chuxingは今日の姿にまで成長することができたと考えるのは賢明ではない。

一例として、Uberは2014年末にPeople’s Uberを発表し、中国におけるP2Pサービスの先駆者となった。それ以前には、Uberが行ったスケールのP2Pサービスは存在しなかったのだ。Didiはその当時まだ準備段階にあったためその波に乗り遅れてしまい、People’s Uberの発表から6ヶ月程経った後に自社のライドシェアリングサービスを発表した。Didiは、当初ライセンスを持ったタクシーのみを利用しており、この例から、Uberとの競争が明らかにDidiのビジネスを形作り、その成長を支えていたと分かる。

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Didi同盟に広がる不透明感

統合の本当にネガティブな影響は、アメリカのLyft、インドのOla、東南アジアのGrabからなるDidi同盟におよぶことになりそうだ。

これら4つの企業は、「アンチUber同盟」と呼ばれる同盟を昨年組み、ユーザーが旅行時に各企業のサービスを利用できるようにしたり、ノウハウを共有したりと、事業におけるシナジー効果を狙っていた。それと同時に、Didiは他3社に対して投資を行っており、Lyftへは1億ドルを出資し、昨年行われたOlaの5億ドルのラウンドと、1年前に行われたGrabの直近となる3億500万ドルのラウンドでは、それぞれ金額非公開のマイノリティ出資を行っていたのだ。

宣伝効果を狙ったものと見られることが多いが、この連合によって、Didiの同盟企業は結束力を高め、Didiからのサポートを受けることができ、さらには投資家を安心させることができたと考えられている。気まぐれに数10億ドル規模の資金調達ができるほどの力を持っているとされるUberのように、グローバルで活躍する大手企業と戦う上で、これらの要素は重要になってくる。

しかし、今回のUberとDidiの統合を受け、同盟関係は良くとも不安定、悪ければ混乱状態にあるように見える。

Didiが天敵であるUberと統合し、株式の相当量を渡してしまっただけではなく、Uberのグローバルビジネスに対しても、Bloombergが10億ドルにのぼると発表している詳細不明の投資を行ったのだ。Uberにとっては、これまでの調達資金額を考慮するとわずかな額でしかないが、Bloombergの数字が正しいとすると、これはDidiが同盟企業に対して出資した額の何倍にもなる。

それだけにとどまらず、Uber CEOのTravis KalanickがDidiの取締役に就任し、さらにはDidi CEOのCheng WeiもUberの取締役となったのだ。

私自身を含む多くの人が、同盟自体やDidiの同盟企業への出資を、海外進出に向けた買収の第一歩として見ており、当時の状況にもマッチしていた。しかし、Uberとの統合により、全てが論争に投げ込まれることとなる。つまり、東南アジアを例にすると、今やUberと同盟を組むことになったDidiは、Grabをどのようにサポートしていくのだろうか。両社を戦わせ合って、買った方と同盟を組むのかもしれない。

これはもちろん仮説だが、昨日までは考えることも出来ない話だった。

Didi同盟企業の反応

Grabはこのニュースを楽観的に捉えており、CEOのAnthony Tanは取引が確定する前から肯定的な態度を示していた。Tanは、TechCrunchが入手した社内向けのメモに、Uberの撤退は各地域のローカル企業でもUberを打ち負かすことができるという証拠だと述べていた。

「一度負けを味わったUberを、私たちがもう一度負かせよう」とTanは社員に向けて語った。

まさしくケンカの売り言葉のようだが、Uberを撤退に追いやった中国の状況と、東南アジアの状況は異なるため、単純比較はできない。ほぼ間違いなく、補助金合戦は中国に比べずっと穏やかなものになるであろうし、Uberは東南アジアへの進出を本格化しはじめたばかりだ。

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Tanは、公の場では社員たちを元気づけていたが、影では今回の出来事の成り行きにがっかりしていたことだろう。

一方Lyftは、UberとDidiの取引について、もっと落ち着いた様子のコメントを発表した。

「今後数週間の間に、Didiとのパートナーシップに関する評価を行っていきます。私たちは、中国の規制面から、Didiに大きなアドバンテージがあるといつも思っていました。」とLyftの広報担当者はWall Street Journalに語った

インドのOlaは、統合に関する公のコメントを求める度重なる依頼に応じなかった。

状況がハッキリして、今回の統合が世界のライドシェアリング経済にどのような影響をもたらすのか分かるまで様子を見ていきたいと思うが、現時点では、多くの人が考えるよりもUberは断然有利な立場にあるようだ。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

確定:DidiがUber Chinaを買収、Uberブランドは継続

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中国のDidi ChuxingとUberの両社は、DidiがUberの中国事業であるUber Chinaを買収することに合意したと認めた。損失を出している両方のオンデマンド交通ビジネスが利益を出す会社になるためだ。少し前からこの合意に関する噂が流れていた。

どちらも両社の独立したブランド、アプリ、ビジネスオペレーションを維持するが、バックエンドは統合するようだ。Didiは「マネジメントとテクノロジー体験、そして両チームの専門性を統合していく」としている。

Didiが発表した財政面での説明では、Uberは新しく統合した会社の5.89%、そして Didi Chuxingの経済的利益の17.7%に相当する優先株を保有する。既存のUber Chinaの投資家で、中国における主要格の検索企業Baiduは、新事業の2.3%を保有することになる。

一方、UberのCEOであるTravis Kalanickにとって、Uberがサービスを展開する市場の全てで勝者になることはできないと認めたのにかなり近い状態と言えるだろう。

「UberとDidi Chuxingは両社とも中国で何十億ドルもの資金を費やしていますが、どちらもまだ利益を確保できていません」と、ブログ投稿に記している。「利益が確保できる体制を構築することは、中国の乗客、ドライバー、都市にサービスを長期にわたって提供するための持続可能なビジネスを構築する唯一の方法です」。

Didi側の公式な発表でも、この取引における正確な金額は明示されていない。Didiは中国において1500万人のドライバー、3億人のユーザーがいるとし、「Uberの少量株主持分を取得することになります」と述べるにとどまった。

しかし、この取引について第一報を伝えたBloomberg によると、DidiはUberのグローバルビジネスに10億ドルを出資するという。参考までに書くと、Uber Chinaはこのセクターで「勝者」になるための全ての指標においてDidiに遅れをとっていた。Didiの方が調達金額が多く、評価額も高い上、彼らの主張によるとUber Chinaより広く普及しているという。

最後のポイントについて両社は議論しあっていたが、今回のニュースを受けて、PRにおける両社の緊張関係は解けたようだ。Kalanickが投稿した別のFacebookポストでは、直接的にDidiの数字と比較していないものの、Uberでは毎週4000万回の移動があり、Uberブログには月に1億5000万回の移動があると伝えている。

直近では、Uber Chinaの評価額はおよそ70億ドルで、Didiの評価額は280億ドルだった。

この取引は、少なくとも1ヶ月前から話し合われていた。もしかすると、それより前からかもしれない。7月の始めにはそのような噂が聞かれていたが、事実確認をすることはできなかった。

また、人事異動もある。 Didi Chuxingのファウンダーで会長のCheng Weiは、Uberの役員会に参加し、代わりにUberCEOのTravis KalanickはDidiの役員会に参加する。

ChengはUberとの熾烈で高額な競争期間を終え、落ち着きのある勝者となった。

「Didi ChuxingとUberは、急成長を遂げる中国経済の中で過去2年間、互いから多くのことを学びました。中国に深く根ざしたテクノロジーリーダーとしてDidi Chuxingは、常にイノベーションの最前線を突き進み、人々の交通手段の未来を構築してきました」と声明で伝える。「このUberとの合意は、モバイル交通業界をより健全な状態に整え、さらに高次の成長につながる持続的な道を開きます。Didi Chuxingは監督期間、ユーザー、パートナーと協力し、私たちの都市における交通、環境、雇用の課題を解決することに全力を注ぎます」。

Didiの会長であるJean Liuは、今回の合意についてDidiがグローバルな野望から遠ざかるものではないとした。

人、車、ライフスタイルをつなげるDidiのオープンなシェアベースのエコシステムには、1500万人のドライバー、3億人の登録ユーザーが参加しています。Uber Chinaの経験と優秀な人材が加わることで、Didi Chuxingは中国の人たちにサービスを提供するにあたり、確固たる地位を築くことができます。Didi Chuxingはまた、海外展開の戦略も拡張していきます。私たちは自国、そして国外のパートナーと協力し、ドライバー、乗客、コミュニティーに対してさらなる価値を創出していきます。

競争関係の行方

今回の発表は、この合意における直接的な影響、そして将来的にUberにどのような影響があるかに関して多くの疑問が浮かぶ。

まず気になるのが、UberのCEOがDidiの役員会にいて、DidiのCEOがUberの役員会にいることで、中国以外の市場における競争環境にどのような影響があるかということだ。Didiは、Uberがサービスを展開する主要地域の競合他社の全てに投資している。Lyft(アメリカ)、Ola(インド)、Grab(東南アジア)だ。現時点で分かっていることは、この中国企業はUberとの合意後も「グローバルパートナーと引き続き協力していく」と言っていることだ。

また、この取引に関してUberの部分的な投資家となる企業がある。Didiの投資家にはAlibaba、Apple、DST、Softbank、Tencentなどが含まれる

さらにこのような事業を構築するにあたり、ビジネスモデルに関しても疑問が湧く。Uberはグローバル市場でサービスを展開するために、何百億ドルもの資金を調達した。Uberは別会社としてUber Chinaを設立し、個別に調達を行ってきた。しかし、何十億ドルを費やしてもDidiとの競争に勝つのには十分ではなかった。

中国生まれのUberのライバルは、サービスを展開する200の地域で利益を出していると最近伝えた。だが、360の地域全てで利益を確保できているのではない。これは規模があっても、利益面で最終的につじつまが合うかどうかは時間が経たなければ分からないということだ。興味深いことに、主要なライバルを飲み込んでしまうことで、競争に伴う割引やマーケティング施策を削減し、投資額が少なくてすむようになる。

これがどのような結果をもたらすかは時間が経たなければ分からないが、Uberが苦戦を強いられている地域で、市場の勝者となるために投資しすぎていると判断した場合においてUberがどのように立ち回るかに関しても注目したい。

Uberは、食品配達などの新たなカテゴリーにも参入していて、荷物であれ人であれ、あらゆるものの輸送手段に対応するワンストップ・サービスとなるための野望に向かう施策を打っている。

Uberは各市場で圧倒的なライバルであると証明してきたが、Uberの戦略変更、そして競合を押しつぶすための投資が見合わないと判断した場合には、競合との合併を選んだことによる影響はどうだろうか?これは、投資額がエスカレートする競争で勝つのが不可能に思えたUberの競合にとって、活路となるかもしれない。交通手段のライバルの1社であるGrabは、Uberとのライバル競争は負け戦ではないという声明をすでに出している

<Uberの声明は原文をご参照ください>

[原文へ]

(翻訳:Nozomi Okuma /Website

中国の2大ライドシェア企業、Uber ChinaとDidi Chuxingが合併か

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中国のライドシェア業界から大きなニュースが飛び込んできた。Didi Chuxingが、ライバルであるUber Chinaとの合併に合意し、競争に終止符を打つようだ。中国で設立予定の合併会社の評価額は350億ドルとなる見込みだ。

この噂は1ヶ月前から聞かれていて、両社とも否定していた。だが、実際に合意に至るようだ。 BloombergWall Street Journalも、情報筋からこの合併に同意したという話があったという。このタイミングは興味深い。何故なら、中国政府は11月1日からタクシー配車サービスを合法にするという規則提案を先週リリースしたばかりだからだ。

大型資金調達を行った後で70億ドル以上の現金を持つDidiは、Uber Chinaのオペレーションを担うUberのグロバールビジネスに10億ドルを出資するとBloombergは伝えている。Uber ChinaとBaiduを含む同社の投資家は、中国に設立する新会社の20%を獲得する。

この合併により、Didiは地球上に存在する全てのライドシェアリング企業に投資したことになる。以前にLyft、インドのOla、そして東南アジアのGrabにも出資していた。

TechCrunchはUberとDidiにコメントを求めている。情報が入り次第、記事をアップデートしたい。

中国のタクシー配車業界で起きた大規模合併は、これが初めてではない。 Didi Chuxing自体もDidi DacheとDidi Kuaidiが、過激なドライバーへの支援金戦争を終わせるために、昨年合併した。合併した会社の評価額はおよそ60億ドルだ。

Uberは何十億ドルも中国で費やしている。Bloombergによると、同社は中国でこれまでに20億ドルの損失を出したという。どうやら、2回目となる合併も同じ理由で行われるようだ。けれでも、その結果は全く異なる影響をもたらすだろう。Uberにとって中国事業を切り離すことは、ようやく上場会社となる道筋に着くことにつながるかもしれない。アメリカ事業は、先月、すでに欧米市場で利益を出していると伝えたが、中国での事業は、多額の資金を費やしているにも関わらず、競合に押されている市場だ。この合併が実行されれば、Uberの事業に対する最大の懸念材料を取り払うことができるだろう。

アップデートがあり次第、更新予定

[原文へ]

(翻訳:Nozomi Okuma /Website

ベンチャーキャピタルがみつめる中国のフィットネスブーム

This photo taken on June 19, 2016 shows Chinese enthusiasts practicing yoga at Futian sports park in Shenzhen, south China's Guangdong province.  
June 21 marks the International Yoga Day. / AFP / STR / China OUT        (Photo credit should read STR/AFP/Getty Images)

【編集部注】本記事はJenny Lee氏とHaojun Li氏によって共同執筆されたもの。Lee氏はGGV Capitalのマネージングパートナー。Li氏は上海を拠点に活動する、GGV Capitalのヴァイスプレジデント。

過去10年間で中国経済が急成長を遂げる中、無数の中産階級が誕生した。そして中国人はより豊かになっているだけでなく、より健康になっているのだ。どうやら中国ではフィットネスブームが巻き起こっており、ベンチャー投資家にとっては新興の健康系テック企業に投資する一世一代のチャンスだと言える。

健康にこだわる若者文化

とりわけ、18〜35歳の若者にあたる中国の巨大なミレニアル世代の人口(3億8500万人超)においては、記録的な数の人たちが、ジム通いやマラソンへの挑戦、エクササイズクラスへの参加やスポーツへの参加・観戦を行っている。彼らは、「新しい」資本主義下の中国で育った最初の世代で、親が体験したよりよっぽど多くのものを自分たちの人生に期待している

マズローの欲求段階説の通り、彼らは、共産主義の支配下で物不足に苦しんでいたこれまでの世代の人たちとは違い、住む場所と食べるものがあるという簡素な生活では満足できないのだ。高学歴で、インターネットに精通し、海外旅行を体験している中国の若者の欲求は、健康面を含めてとどまるところを知らない。特に若い女性は、健康的で引き締まった体型を保つことに必死で、そのスリムな体の写真をソーシャルメディア上で公開している。

中国の若者のフィットネスへの熱中具合は、中国のジム・フィットネスクラブ関連企業の売上が過去5年間で倍増し、今年はその額が50億ドル以上に達するという調査会社IBIS Worldの予測からも見て取れる。アメリカにおける同業界の市場規模である約250億ドルには届かないものの、中国の健康・フィットネス業界の方がずっと若く、成長スピードも桁違いだ。

「たった数年前までは、ウエイトリフティングに汗を流したり、きついエクササイズに息を切らす中国人女性はなかなかいませんでした」と中国のフィットネスブームに関する最近のWall Street Journalの記事には書かれている。それが今では、Nike、Under Armour、AdidasそしてThe North Faceといったブランドが、猛烈な勢いで中国に出店しその売上を伸ばしている。

多岐に渡る投資チャンス

中国で何かが流行すると、その人口サイズの影響から参加者は膨大な数になる。これが、ベンチャーキャピタルが特に3つのカテゴリーのスポーツ・フィットネススタートアップに強気の投資を行っている背景だ。

フィットネス・ヘルスアプリ。この大きなカテゴリーには、健康アプリや、フィットネストラッカー、健康に関する情報やコミュニティなど、モバイル主導の消費者向け健康プラットフォームが含まれる。これらのアプリは、特に2億8000万人に及ぶ中国の15〜25歳のスマートフォンと共に育った世代に人気だ。中国の若者は、ファッションに高い関心を寄せており、見た目を良くし、健康だと感じたいという一心からヨガ、ピラティス、マラソンなど世界のフィットネスの流行を追っている。

中国のミレニアル世代は、より健康で幸せになるための新たな手段を模索し続けるだろう。

彼らはアプリを使ってフィットネスのビデオを見て、グループエクササイズに参加し、進捗をトラッキングしながら食べるものを管理するのだ。特にゲームのようにゴール設定がされ、フィットネスを楽しめるアプリが中国のミレニアル世代の間で人気を博している。このカテゴリーには、ソーシャルエクササイズアプリのKeep(GGVの投資先)、Daily Yoga、ランニングアプリのCodoonやランニンググループの検索・スケジューリングができるYuepaoquanが含まれる。中国の若者は、段々とスポーツ鑑賞にも興味を持ちだしており、アプリを利用してお気に入りのチームの情報を追ったり、コメントしたりしている。

スマートフィットネスとスポーツデバイス。歩数や消費カロリーを計測するウェアラブル端末からゴルフスウィングやサッカーのキックフォームを向上させるためのデバイスまで、中国の消費者はフィットネスに参加するにあたって自分たちのデータを集めるのが大好きだ。投資家にとっては、このようなデバイスを開発する企業に投資することは「データ遊び」の一環だと言える。

デバイスを開発する企業が、集められたデータを使って健康や節約、減量といったユーザーにとってのゴールを達成する方法を解明できれば、「ガジェット」企業の枠を飛び出し、消費者・市場調査会社にその姿を変えることとなる。中国でこの業界を引っ張っているのが、FirbitMi BandMisfit、そしてNike+といったアメリカ・中国企業だ。

大自然と自由。今日の中国の若者は、自由の精神を信じている。彼らは、車や家を買うことで自由が奪われるのを恐れ、友人や趣味やキャリアにおける選択の自由を求めているのだ。この精神が、中国の若者のスポーツやアウトドアレクリエーションへの参加の仕方にも影響を与えている。

人々を「外出させる」のを促進するようなサービスを開発するテックスタートアップの市場は今後成長が期待できる。参加可能な地元のサッカーやバスケットのリーグを探すアプリや、短期集中トレーニングセッションの参加者をまとめるアプリがその例として挙げられる。

たった30年前の中国の若者は、十分な食料配給チケットがもらえるかどうかを心配していた。

さらに、このカテゴリーには最先端のテック企業も含まれている。GGVの投資先のひとつであるNiuは、中国都市部のミレニアル世代に人気の電動スクーターを製造しており、同社のスクーターは、入り組んだ北京の街中を移動するだけでなく、スモッグやストレスが溢れる環境から逃れるのにも使われている。週末には、山やビーチへNiuのスクーターを走らせる人の姿を見かけることがよくある。ハイキングやロッククライミング、サーフィンは全て、中国の若い消費者がどうしても体験したいと感じているスポーツなのだ。同様に台湾企業のGogoroは、スマートスクーターと専用のバッテリー充電インフラを販売している。

北京の街中に立ち並ぶジムやピラティススタジオ、さらにはThe North Faceのジャケットを着て山道でハイキングを楽しむ若者のグループを見ていると、たった30年前の中国の若者は、新しいLululemonのウェアを着れるくらい体が引き締まっているかよりも、十分な食料配給チケットがもらえるかどうかを心配していたという事実を忘れそうになる。

しかし、中国は驚くべきスピードで変化を遂げており、今日の中国の若者は他の先進国の若者となんら変わりなく、自己実現や個人の成功を求めているのだ。中国のミレニアル世代が、より健康で幸せになるための新たな手段を模索し続ける中で、投資家は中国のフィットネスブームが今後持続するだけでなく加速していくことをハッキリと見込んでいる。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

救命活動から環境汚染のモニタリングまで、ドローンが支える中国経済

Drones  Putting China’s economy on autopilot   TechCrunch

【編集部注:本稿の執筆者、は元ファイナンシャルアナリストで軍人】

世界のドローン市場は、テクノロジーセクターにおける主要な柱として現れつつあり、ドローンファンといえる顧客を魅了し急速に拡大してきた。

ドローンの利用、生産の観点から非常に急速な盛り上がりが見られる1つの国は中国だ。中国はすでに他の航空宇宙機の中間部パーツの生産に多大な投資を行ってきた。ドローン製造の世界の工場、そして購買欲旺盛な消費者拠点であることを証明し始めている。

2015年に中国で1.3兆元(GDPの2%超を構成する)の投資がなされるテクノロジーイノベーションの有望な部門として、ドローンは将来中国経済の成長を支えることになる。

ドローンと経済成長

ドローンはテクノロジーイノベーションの1つの柱で、中国が経済成長を促進するために必要なこと(大量生産の使い捨て商品の対極として)であるので、中国の経済成長を支え続けるだろう。行政、民間企業の両方で、テクノロジーセクターにおけるイノベーションを狙いとする「国産イノベーション」施策やプログラムが開始されている。

米国の投資家はすでに、この中国の市場に経済成長の可能性を見ている。インテルは2015年8月に中国のメーカーYuneecに6000万ドルの投資を行っている(他にも8社の中国ドローン企業に対して6700万ドルの投資をしている)。CBInsightsは2015年にはドローン部門単独で5億ドル近い投資がなされたと報告している。

さらに、ZDNetは2015年の中国のドローンの輸出は合計して4億1300万ドル以上だと報告する。その額は継続して増加していくと予測される。中国はテクノロジーイノベーションを取り入れることで、国内のテクノロジー研究開発においてドローンは継続的に増加するセクターとなった。また、ドローンが将来の中国のGDPを増やす重要なセクターとなることは必然だ。

政府のサポート

組織全体でテクノロジーの変化を積極的に活用し、ドローンが中国社会に非常に円滑に適応できた主要な要因は中国政府にある。中国政府は新しいテクノロジーに対して即座に訴訟を起こしたり、禁止するかわりに規制することを選択してきた。2016年早く、中国の民間航空局は一連の規制を発表した。無人航空機(UAV=Unmanned aerial vehicle)を重量とサイズに基づいて7つの階層に区分し、人口密集地域での飛行についての規則を設定した。

ドローンのイノベーションはハイテクなアプローチを遅れた農業経済に導入することになる

中国の民間人や政府によるドローンの利用普及が経済成長に貢献する。中国政府はドローンを市町村から国家レベルのあらゆる業務に利用している。中国の個々の人々はドローンを航空写真、建設現場、不動産の撮影目的、中でも、中国企業は石油燃料やガスの利益を守ること、そして農業を促進するためにドローンを利用している。

行政サービス

市町村レベル

中国の市町村はドローンを活用することで、ローカルレベルでの行政サービスが大幅に改善している。すでにローカルレベルにおいて始まっている救急医療サービスと治安維持で最も改善が見られる。

2014年、マグニチュード6.1の地震が中国の南西の雲南省に位置する魯甸県を直撃した。この地震は12000軒以上の家屋の倒壊させ、600人以上の死亡者を出し、20万人以上の人々が避難せざるえなくなった。

山間地域にはがれきや植物が密生しているので、中国医学救援協会(CADERM)は生存者の急速な探索、損害の調査のために民間のドローンのチームを組織した。これらの無人航空機は救援者に損害の鳥瞰図を提供し、探索と救援の優先順位づけを可能にする。

ドローンの探索と緊急対応における利用で、CADERM率いる地方行政は「地震で形成された下流を洪水の脅威にさらす堰き止め湖の地図の作成や監視ができるようになりました」と中国人民解放軍予備役のエンジニアXu Xiaokun氏は言う。またそれは命を救う適切な時間、リソースの配分を可能にする結果となった。

ドローンは中国の警察庁によって市町村レベルで利用されている。航空警察局補佐官Lin Daolin氏は25省において、警察官が行くことが難しい地域のパトロールの支援のために300の警察用ドローンが利用されていると報告する。中国南東の例えば広東省、恵東県はデートレイプ・ドラッグのケタミンの有力な生産拠点である。中国全土のドラッグの流通の3分の1を占めている。

中国の地方警察はドラッグの中枢への手入れのための調査データ、有力な証拠をドローンを使って入手してきた。1000人以上の警察官を動員したその手入れで多くのドラッグ、ドラッグの生産者を摘発しただけでなく、ドラッグトレードから利益を得ている地方政府の役人も摘発した。これは中国人が地方を守るためにどのようにドローンを活用しているかを示す1つの例だ。

省レベル

省レベルにおいて中国のドローン利用は環境汚染のモニタリングサービス、国境パトロールのツールとして利用されてきた。市町村レベルまでに地元密着ではなく、中華人民共和国全土で実施されるものではないが、省レベルでのドローンの利用実施で通常はアクセス出来ない地域のモニタリング、調査、重要なデータを提供することで省政府を大いに助けてきた。

中国は省レベルで野生動物保護法の徹底と監視のためにドローンを利用している。北東に位置する吉林省の琿春で、琿春森林公安局は128億元(20億ドル)を絶滅危惧種のシベリアトラとアムールヒョウの保護のために投資している。4000平方キロメーター以上を監視では、野生動物保護の隊員だけでは地域をカバーしきれないでいる。

ドローンを活用することで、野生動物保護の隊員は、不法な密猟を防ぐのと同時に、地表で人と動物が遭遇した時にどちらにも被害が出ないよう安全を確保することができる。ドローンは中国のドローン経済の成長を支えるのと同様に、中国の野生動物の保護を変革する可能性を持っている。

米国の投資家はすでに、この中国の市場に経済成長の可能性を見ている。

国境パトロールは中国の省レベルのドローンコミュニティーの新たな焦点となってきた。チベット自治区、新彊ウイグル自治区、云南における中国の国境パトロール部隊はドローンを航空調査のために利用している。人員のみ、または国家レベルの利用のための人工衛星でカバーするのは難しく、国境パトロール部隊は国境の監視の難しさに直面していた。

物体の存在や国境の範囲を探知する電子光学デバイスと適合しているドローンは国境パトロール部隊が高い水準で機能することを可能にする。さらに、これらのドローンは24時間年中機能する。これは部隊にドラッグの取引、中国の国境を横断して行われる不法行為と戦う力を与える。

国家レベル

全国的な行政サービスは中国においてはは様々だ。地域ごとに異なる資金の制限がある。しかしながら、ドローンの利用はこれらの制限を変える。以前はアクセスできなかった地域の視察、監視が行政にとって可能になる(とりわけ環境汚染のモニタリングと軍用に使用される)。

環境汚染は中国において大きな問題になっている(世界で最も汚染された大気だった)。中国の環境保護省は環境汚染の監視をドローンの利用に委ねた。高解像度のカメラを装着した無人航空機は、汚染問題に大きく関与している疑わしい工場、作業現場を監視する力を与える。通常、中国は地上点検、衛星による遠隔測定を利用してきた。

しかしながら、これらのリソースは地域に局在している、もしくは国家レベルでの利用となっている。中国は省レベルでギャップを抱えていたのだ。ドローンはそのギャップを埋める手助けをする。企業に中国の環境保護法に準拠を徹底させることができる。これらの省レベルのプログラムに参加している省は中国の北東の 陝西省、同じく北東の山東省、中部の河南省などを含む。実際に、環境保護省は環境保護に違反しているために、254の工場のうち25%以上の工場がさらに追加点検されるべきだという予備調査結果を発表した。

中国はドローン製造の世界の工場であることを証明し始めている。

中国軍は無人航空機をかなり高い比率で軍用利用してきた。Chengdu Aircraft Industry GroupのWing Loong、China Aerospace Science and Technology CorpのCH-3、CH-4Bのような中国のドローンは防衛武器として開発してきた。それらのドローンは情報収集とともに軍事行動としてミサイルの発射や爆弾の投下も可能だ。

中国がこれだけ早いペースでテクノロジーを取り入れることに熱心なのは、テクノロジーを開発するのと同じだけ早く導入、運用することを欲していることの証拠だ。さらに、中国企業EHangが人をのせることのできるドローンを登場させ、EHangの184が戦場から兵士を輸送するための中国軍に使われるのではとの推測が広がった。

サービスセクター

中国はサービスセクターにおいて、とりわけ航空写真、建設現場、不動産、配達において重用してきた。

航空写真と映画製作

中国人によってドローンは写真、映画製作のために利用されている。ウェディングの写真家たちのWebサイト上ではドローンでの写真撮影のサービスを新郎新婦に売り込んでいる。地上で撮影したワイドな写真とは比べものにならない写真を撮影できる。ドローンは比較的少ない投資で高額な機材でしか撮れないような写真撮影を可能にする。この写真撮影は中国のウェディング業界のブームにうまく乗ることができた。

さらに、写真家は世界中で見られる壮大な写真展示を作るためにドローンを利用している。たとえば香港の写真家Andy Yueng氏は中国の巨大建築物の100枚の写真がInternational Photograph Awards One Shot Competitionにおいて優勝した。

建設現場、不動産

中国においてドローンは建設現場と不動産サービスのために利用されてきた。ドローンメーカーのDJIによって設立されたスタートアップのDroneBaseはドローンとパイロットを貸し出している。DJIが報告するところによると「不動産のプロモーション、建設現場、地図作成、地形のモデル化」が典型的なリクエストだそうだ。これはドローンの鳥瞰図がこれまで人がやっていたい仕事をコスト、信頼性の点で大きく優れているからだ。さらに、ドローンは通常の測量者よりも遠く、高い地域もカバーできる。

大規模な産業

中国の石油燃料とガス、農業の大規模な産業もまたドローンの利用からべネフィットを得ている。

石油燃料とガス

中国は石油燃料とガス資源を支配下におくためにドローンを利用している。中国は非常にエネルギー資源に渇望しているのだ。エネルギー資源のための調査は中国、アフリカ圏内の辺境にまで拡大している。中国企業はドローンを潜在的なパイプラインが存在する地域の調査のために利用している。とりわけローカルエリアなどのアクセスが簡単ではない中国農村部などだ。

さらには、中国政府は中国の石油燃料とガス供給の多くを占めるナイジェリアにおいて、リソースの管理と支配をドローンを使って強めている。ドローンは中国がリーチすることが難しい地域で存在を示し、エネルギー資源を確保することを可能にする。

農業

農業を対象とするドローンが中国企業によって開発、発表されている。ドローン首位企業のDJIは1時間に7~10エーカーの土地に2.6ガロンの農薬をまくことができる農薬散布用のドローンを発表した。XAircraft Technologyはドローンテクノロジーを中国の農業市場に導入しようと試みている70社以上の企業のうちの1社だ。

中国政府は自然農業の持続的な発展計画を通して農業のドローン市場におけるイノベーションを奨励している。中国はドローン市場を開拓するために、1億2000万ヘクタールを超える農場を活用する。また、中国はドローン開発を行うために何百万もの資金を投入している。農業は中国経済の背骨であったし、ドローンのイノベーションはハイテクなアプローチを遅れた農業経済に導入することになる。

まとめ

中国のドローンを日常生活にすんなり取り入れることができていることは、中国政府の新しい技術を導入する意欲とこの種のテクノロジーを取り入れることができる中国人の新たな富の両者の存在を指し示している。

中国のテクノロジーへの関心はまだそこまで育っていない。テクノロジーの成長とイノベーションの可能性は巨大だ。現在、ドローン市場はいくらかニッチなものの1つである。しかし、正しく使えば、今後に続く中国経済の土台になるだろう。

現在、中国はドローンの世界首位メーカー、デペロッパー、消費者だ。スマートフォン、ソーラー発電車の国産のイノベーションと同様にドローン関連のイノベーションが次にこないと誰が言えるだろう?

原文

(翻訳:Shinya Morimoto)