シードラウンドで破格の約54億円を調達、機械学習技術のVianaiとは?

シードラウンドで5000万ドル(約54億円)を調達できるスタートアップはあまりない。Vianai(ヴィアナイ)は、Infosysのマネージングディレクター兼SAPエグゼクティブだったVishal Sikka(ビシャール・シッカ)氏が立ち上げたスタートアップだ。潤沢な資金と独自のビジョンで機械学習技術の変革を目指す。

今週、Oracle Open Worldで同社はカミングアウトパーティーを開催し、シッカ氏は基調講演で製品のデモを披露した。Infosysを辞めた後の2年間、シッカ氏はAIと機械学習が社会へ与えるインパクトとその実現方法について考えた。AIを取り巻く状況に彼は不満を持っていた。

シッカ氏は1996年にスタンフォード大学からAIの専門分野で博士号を取得しており、AIは未知の領域ではない。当時と比べて変わったのは計算能力の増大とデータ量の増加で、その二つによってAIがビジネスで利用される現在のブームが起きたと彼は言う。企業によるAIと機械学習の導入事例を調べていくと、多くのツールが必要以上に複雑であることが分かった。

コードでぎっしりつまったJupyter Notebookが眼の前にあった。典型的な機械学習モデルからコードをすべて削除すると、モデルの基礎となる一連の数式が浮かび上がってきた。シッカ氏のビジョンは、もっと数学的な視点からモデルを構築するとともに、高度に視覚的なデータサイエンスプラットフォームを一から構築するというものだった。

同社は昨年1年間かけて、新しいソリューションを生み出すべく試行錯誤を繰り返した。念頭に置いたのは探索可能性と説明可能性の2つの基本原則で、データとその分析結果の表示との連携がポイントになる。現在世の中にあるどのモデル構築ツールよりもユーザーが早く目標を達成できるようにその連携をデザインする。

「目指すシステムは、ユーザーが行っていることに正しく反応し、完全に探索可能であると同時に、システムの中で何が起こっているのかを開発者が極めて簡単に検証できるものだ。説明可能性を備えるということは、データとモデルを行き来できることを意味し、データに潜んでいる意味のある何かをモデルを通して理解することだ」とシッカ氏はTechCrunchに語った。

シッカ氏が想定するツールはデータサイエンティストだけが使うのではなく、ビジネスユーザーとデータサイエンティストが共に試行錯誤して答えを探すために使うものだ。求める答えは、例えば顧客の解約率を減らす方法や不正を発見する方法だ。純粋なデータサイエンスだけの世界から使えるモデルは生まれない。モデルはビジネスの成功のためにある。AIを使って企業が成功するために、シッカ氏が必要だと考える唯一の方法は、ビジネスユーザーとデータサイエンティストの両方が膝を突き合わせながらソフトウェアを使って問題を解決することであり、互いの専門知識を生かすことが欠かせない。

これはシッカ氏にとって、解決すべき問題を正しく定義することを意味する。「AIは問題を解決するためにあるが、その前に人間がすべき仕事がある。ビジネスにとって重要性があり、また組織にとって価値のある問題を見分け、明確にすることだ」。

シッカ氏のビジョンは明快だ。人間をAIに置き換えるつもりはないが、AIを使用して人間の知能を高め、人間が直面する問題を解決したい。Vianaiの製品は自動機械学習(AutoML)ではないとシッカ氏は断った。「データサイエンティストの実務を自動化したいわけではない。データサイエンティストの能力を高めたいのだ」。

今回の大型シードラウンドに至ったのは、ビジョンの実現には多額の資金が必要で、しかも前もって調達すべきとシッカ氏が考えていたからだ。調達には自身の評判とコネクションを利用する考えだった。資金を調達してしまえば自分は製品と会社に集中できる。幸運にも彼のビジョンを信じる投資家がいた。初期の事業計画が現実という試練をくぐり抜けることはないにも関わらずだ。シッカ氏は投資家の名前は公表せず、友人や裕福な有名人、機関投資家とだけ言及するにとどめた。Vianaiの広報担当者は、現時点では投資家のリストを公開していないと重ねて断った。

今やVianaiには新しい製品と十分な資金があり、収益性向上の準備は整った。シッカ氏は、究極の目標は収益性であると言う。彼には大規模な組織を経営することもできたが、多くのスタートアップの創業者のように、問題を見つけ、また解決するアイデアもあったため、挑戦せずにはいられなかったようだ。

画像クレジット:iMrSquid / Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi)

AI構築のサプリメント安全性データベースが無料で登場

栄養サプリメントは、役に立つかどうかの証拠が乏しいときがあっても、多くの人たちによって使われている。だが、他のサプリメントや薬物との間の有害な相互作用の可能性に関する文書も不足している。Supp.aiと呼ばれる新しいツールが、長年にわたる健康研究論文を調査して、他のどこにも記載されていないような潜在的な競合問題を抽出してくれる。

だが、それは恐怖を利用する反サプリメント運動のようなものではない。単純な事実としては、サプリメントは同じ規制でコントロールされておらず、厳密に研究されてもおらず、処方薬に比べて医学的な文書化が不足しているのだ。そのことは、あまり知られていないサプリメントが一般的に服用されていない薬物に対して持つ、危険な相互作用への扉を開けてしまうという恐ろしい状況につながる。

一部の人たちには知られているかもしれない、避けるべきひと握りの共通相互作用があっても、その多くは医療業界の有償情報として隠され、おそらくまったく報告もされていない。しかし、それらが簡単に報告として読めないからといって、そうしたものがかつて発見されなかったというわけではない。その情報は、手に入るおびただしい量の論文のどこかに埋もれているだけなのだ。それをどうやって見つければいいだろう?

幸いなことに、Allen Institute(アレン研究所)のAI部門(AI2)の研究者たちは、すでにその作業の大部分を、Semantic Scholar(セマンティ・スカラー、意味+学者)というシステムを開発することで済ませている。Semantic Scholarは膨大な数の論文を取り込み、キーワード、結果、その他の側面を特定する自然言語処理システムであり、それらを簡単に検索したり相互参照できるようにする。

関連記事:Allen Institute for AIの科学文献インデクサーSemantic Scholarにバイオメディカルの論文数千万点が加わる

チームはこの成果の一部を再利用して、調整と拡張を行い、サプリメントと他の薬との間の相互作用の証拠を発見して、それを単一の検索可能なデータベースとしてまとめた。それがSupp.aiである。

「サプリメントと薬物はどちらも薬理学的実体です、その区別は機能の違いというよりもマーケティングと社会的圧力に由来するものです」と、新しいシステムについて説明した論文の研究者は述べている。「そして、そのやや恣意的な区別のために、サプリメントの情報は薬学実体に関するデータベースの中に十分に反映されていませんし、それらの相互作用に関する情報もあまり公にはされていません。私たちの仕事は、このギャップを埋めようとする試みなのです」。

例えば、糖尿病の人口の断面を見るいくつかの論文の奥深くには、グルコサミンのサプリメントを摂取している人は血流へのインシュリンの取り込みが遅くなっていることを示す文章があるかもしれない。実際、ツールの上でグリコサミンを検索したときに、私は数十件のそのような文章を発見した。

gluco suppai

Supp.AIは、検索用語とGlcNなどの略語を認識できるほど十分に賢く、証拠の文を柔軟に解釈するので、必要以上に文章を集めてしまう。インタラクションは大きいかもしれないし小さいかもしれない。あるいは有用かもしれないし有害かもしれない。だが大切なことはそれが文書化されていて、ユーザーがその文書を意識できるようなっていることだ。

断片が論文から抜き出されているが、その内容は自分の飲んでいるサプリメントに関する情報を探している一般人にとっては理解することが難しい。しかし、ここでの意図はこうした潜在的な相互作用への認識を高めて、ユーザーが医師に尋ねたり、心配される可能性のある特定の組み合わせを検索したりできるようにすることだ。

「現在、消費者がサプリメントが他の薬と相互作用するかどうかを判断するための、包括的なツールはありません。サプリメント企業がラベルにサプリメントと薬物の相互作用を明記することを義務付ける法律はないため、この情報は特に重要なのです」とハーバードのPieter Cohen(ピーター・コーエン)氏は述べている。彼はこの問題に以前取り組み、今回AI2がその論文のレビューを依頼した人物だ。

彼は、「Supp.aiが『消費者にとって不可欠なリソース』になることを示唆し、特定の相互作用をより深く掘り下げるために薬物=サプリメントまたはサプリメント=サプリメントのペアを選択できるようになることは自然な方向だ」と語った。

Supp.aiは無料で使用でき、新しい論文がデータベースに追加されるたびに「定期的に」新しい情報で更新されるはずだ。そしてサービスを構築するために使われたデータも自由に利用できることから、利用者が自分自身のバージョンを作成したり、コーパスを自身で調査したくなったりもするだろう。

画像クレジット:Palau (opens in a new window)Shutterstock

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(翻訳:sako)

インドではGoogleアシスタントをネット接続なしで使えるように

Googleアシスタントは、スマートフォンやラップトップ、そしてスマートスピーカーで利用できる。今年の初めに同社はKaiOSと提携して、フィーチャーフォンでもインターネットアクセスがあればアシスタントを使えるようにした。そして今回Googleはさらに一歩前進して、インターネットアクセスのない携帯電話で仮想的に使えるようにした。まず、インドから。

9月19日にニューデリーで開催されたイベントで、同社は24×7、すなわち年中無休の電話サービスを発表した。利用できるのはVodafone-Ideaの契約ユーザーのみだが、000-800-9191-000へダイヤルすると質問に答えてもらえる。有料サービスになるが。

Googleの副社長であるManuel Bronstein(マニュエル・ブロンステイン)氏によると、この事業によって同社は、まだスマートフォンもインターネットアクセスもない何億人ものインドの人々にサービスを提供したいのだそうだ。

インドでは5億人あまりがインターネットにアクセスでき、約4億5000万人がスマートフォンを持っているが、全人口13億人の半分以上が接続のない状態だ。

しかし全世界に次の10億人のユーザーを求めているシリコンバレーの企業にとって、インドは最後の巨大な成長市場のひとつだ。

関連記事:Google chases businesses to maintain its payments lead in India(インドで決済アプリ首位のGoogleが企業を狙う、未訳)

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

かくれんぼで遊んでいたAIが道具の使い方やルールの破り方を自分で発見

OpenAIの最新の研究は、機械学習エージェントに かくれんぼで遊ばせ、相手を見つけ出す目的のために、オブジェクトの意外な使い方など創意工夫を競い合わせることを目指すものだ。こうした自己学習型AIは、現実世界にも役立てることができる。

この研究は、機械学習エージェントが研究者の介入や手助けなしに、高度な現実世界で応用できる技術を習得する可能性を見極めるもので、見事に実証された。

写真に写っている物を定義したり、本物らしい人の顔を作るといった作業は困難ながら役に立つ。しかしAIのやり方は、私たちが現実世界で行うときの方法をそのまま引き継いでいるわけではない。AIはとても頭がいいため、コンピューターの中だけで非常に効率的にものごとを熟すと思われがちだ。

ところが、カップを持ってソーサーの上に置くといった作業をロボットアームで行うようAIに教えるのは想像以上に難しい(しかも、非常に限定された状況でのみ可能となる)。現実の物理世界は大変に複雑で、コンピューターの中だけでの純粋に知的な学習でのみ作業を習得することは、まずもって不可能だ。

同時に、現実世界を完全に写すわけではないが、それでも現実で有意義となる中間的な作業もある。簡単な例では、複数の重要な物や人に出会ったときに、どちらにロボットの向きを変えるかといった問題がある。自分自身またはカメラの向きを変えて両方同時に見る、あるいは片方ずつ見ればいいことに気付くまでに、1000回も試行錯誤する必要はない。

赤ちゃん機械学習エージェントにかくれんぼで遊ばせるというOpenAIの試みは、この路線に従っている。そこは、Polyworld(ポリワールド)と呼ばれる単純なルールだけの、それでいて現実に近い物理法則や情報のあるゲーム環境だ。AIがその単純化された世界を歩き回ることを自己学習できれば、そこで学んだスキルは、ちょっと手を加えれば本物の現実世界でも使えるはずだ。

この実験の背後にはそうした考えがあるものの、それ自身が見て楽しいものになっている。ランダムに壁やオブジェクトが設置された小さな3Dアリーナで、2組に分かれたエージェントたちが対戦する。いくつかのエージェントがそこに出現し、隠れる側の者たちには、環境になじんで隠れるまでの猶予が与えられる。彼らはオブジェクトを動かすこともできる。押してどかしたり、固定したりが可能だ。次に鬼が登場し、隠れている者を探し出すまでの時間が与えれる。

どの機械学習プログラムにも、基本的な感覚だけが教えられる。各エージェントは世界を見る視覚と、近くのオブジェクトの位置を感知するライダーのような感覚、そしてオブジェクトは動かせるという知識が与えられている。しかしそれ以外に、探す側にも隠れる側にも、仕事を達成したときにポイントが与えられる。それが彼らのモチベーションになる。

この基本的な設定から、驚くほど面白い結果が導き出された。最初は、チームはただランダムに動いているだけだったが、数百万回も繰り返すうちに、隠れる側はある法則で動けばポイントがもらえることを学ぶ。露骨に逃げ回るのだ。そうして競い合いが始まった。

隠れる側は逃げ回るので、鬼はより構造的な追跡行動を開発する。しかし、そこに道具が現れる。

隠れる側は、環境内に置かれているオブジェクトを押したり引いたりできることを知り、それを使って砦を作り始める。

鬼は、落ちていた坂道を拾ってきてオブジェクトを乗り越え、砦を破壊する。

そのうち隠れる側は、鬼がまだ数を数えているうちに坂道を探し出し、それを盗んできたり、その場に固定したりするようになった(固定したオブジェクトは敵のエージェントには動かせなくなる)。面白いことに、そこにはある程度の作業の分担が見られる。時間が足りないため、隠れる側は砦作りと坂道探しの両方ができない。そのため、一人が砦を作っている間に、もう一人が坂道を探しにいくのだ。

OpenAIの研究者たちは、そこが限界だろうと考えたのだが、鬼たちは、このゲーム世界で想定していなかった機能を利用し始めた。箱に載ったまま押しせることを発見したのだ。つまり、坂道の近くに箱を持っていき、箱の上に載っかり、フィールド内をサーフボードを乗り回すように移動して、ずる賢く隠れている連中を探し出した。

当然のことながら、隠れる側は、砦に使用しないすべてのオブジェクトを固定するという対策に出た。これで、このゲームの戦略としては最終段階まで来たかと思われた。

この研究の要点はなんだったのだろう?論文の著者は、これは私たちが辿ってきた道だと話す。

地球の膨大な複雑性と多様性は生物間の共進化や競争によって変化し、自然淘汰によって方向付けられた。新しい有効な戦略や突然変位が現れると、近くのエージェント同士で問題を解決するための暗黙のタスク分配が変更され、適応のための新たな圧力が生まれる。この進化的軍拡競争は、潜在的なオートカリキュラ(Autocurricula、自己教育)を生み出し、競い合うエージェントたちは、継続的に互いのための新しいタスクを作り出す。

物理的な無限に広がる環境に自己教育を取り入れれば、人間にとって有用なスキルを無数に習得できるようになる。

言い換えれば、管理者のいない環境でAIモデル同士を競争させるほうが、環境を探索したパーセンテージのような意味のない数字を積み上げて一人でよちよち歩きをさせるよりも、有用でしっかりとしたスキルの開発には、ずっといいということだ。

AIの能力のあらゆる側面を、パラメーター化して環境との関わり合いを制御する形で人間が直接管理することは、次第に困難さを増し、さらには不可能になってきている。たとえば、混雑した環境内をロボットが移動するといった複雑な作業には非常に多くの要素が含まれるため、エージェントが日常的に歩き回るのに十分なまでの高度な行動は、人間にはもう決してデザインできない。

しかしAIエージェントは、今回の実験や敵対的生成ネットワークでも見られるように、互いに教え合うことができる。そこでは2組の敵対するAIが、現実的な媒体を作り上げたり感知したりして相手に打ち勝とうとする。OpenAIの研究者は、マルチエージェントオートカリキュラ、つまり自己学習型エージェントこそが他の方法があまりにも遅く、または体系化されすぎた数多くの状況で前に進める方法だと断言している。彼らはこう締めくくっている。

「この結果は、より広大で多様な環境において、マルチ・エージェントの力学が、非常に複雑で、人間と関わる行動に道を拓くという自信をもたらした」。

この研究は部分的にオープソースとして公開されている。実験を解説した論文の全文はこちら

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(翻訳:金井哲夫)

データストレージのCloudianがエッジデータ分析特化の新事業を日本で立ち上げ

企業の大量のデータを保存して管理するサービスCloudian(クラウディアン)は米国時間9月17日、大きなデータセットのエッジ分析にフォーカスする新たな事業部門であるEdgematrix(エッジマトリックス)のローンチを発表した。EdgematrixはCloudianが株式の多くを持つ子会社で、最初はEdgematrixの本社が置かれた日本でサービスを開始する(Coudianの本拠地はカリフォルニア州サンマテオ)。

同社は900万ドルのシリーズAを、NTTドコモ、清水建設、日本郵政キャピタルなどの戦略的投資家およびCloudianの共同創業者でCEOのMichael Tso(マイケル・ツォ)氏と取締役のJonathan Epstein(ジョナサン・エプスタイン)氏らから調達した。資金は製品開発とそのデプロイメント、および営業マーケティングに充当される。

Cloudian自身は、昨年の9400万ドルのシリーズEを含めて計1億7400万ドルを調達している。同社の製品は、企業が数百TBものデータをオンプレミスで保存できるHyperstoreプラットホームおよび、データ分析や機械学習のソフトウェアなどだ。Edgematrixも大規模なデータセットの保存にはHyperstoreを利用し、独自のAIソフトウェアとハードウェアによりネットワークの「エッジ」におけるデータ処理を行う。エッジは、センサーのようなIoTデバイスからのデータが実際に集まる場所に近い。

同社のソリューションは、リアルタイム分析が必要な状況に向いている。たとえば、高速道路上の車のメーカーや車種や年式などを検出して、ドライバーに向けて表示される広告の最適なターゲティングがリアルタイムでできるだろう。

ツォ氏によると、Edgematrixが生まれたのは、Cloudianの共同創業者で社長の太田洋氏と彼のチームが、顧客のデータの処理や分析をより効率化する技術の研究開発に取り組んだ経験からだ。

ツォ氏は「最近では、IoTのデータをはじめとして、ますます多くのデータがエッジで作られ、しかもリアルタイムのデータ分析や意思決定をエッジの近くで行いたいというニーズが拡大している。データをどこかへ運んでからでは、通信費用やレイテンシーがどうしても発生する。最初はCloudianのチームが小さなAIソフトウェアによるソリューションを開発して成功し、同社のトップレベルの顧客たちの注目を集めた。そこでわれわれは、その成功を核として戦略的投資家たちによる子会社を作るのがベストだ、と決断した」と語る。

Edgematrixを日本で立ち上げるのは、AIシステムへの支出が今後どこよりも大きく伸びると期待されるからだ。IDCによると、その予想成長率は2018年から2023年までの5年間で45.3%にもなる。

ツォ氏は「日本はAI技術のアーリーアダプターとしてトップを走ってきた。政府と民間部門の両方が、AIを生産性向上に欠かせないと見ている。Edgematrixは、少なくとも次の1年間は日本市場に注力し、結果が良好なら北米とヨーロッパに拡張したい」とコメントした。

画像クレジット: Hiroshi Watanabe/Getty Images

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

人によるコントロールと機械学習を融合したスマート義手

義肢は年々良くなっているが、それらの強度と精度が使いやすさや能力(実際にできること)に貢献していないこともあり、とくに手足を切断手術した人たちがごく初歩的な動作しかできない場合が多い。

スイスの研究者たちが調べた有望と思われるやり方では、手動では制御できない部分をAIが引き受ける。

問題の具体的な例として、腕を切断した人が膝の上でスマート義手を制御する場合を考えてみよう。残存する筋肉に取り付けられたセンサーなどからの信号で、義手はかなり容易に腕を上げ、ある位置へ導き、テーブルの上の物をつかむ。

でも、その次はどうなる?指をコントロールするたくさんの筋肉と腱はない。そして義手の人工的な指を、ユーザーが望む曲げ方や伸ばし方ができるように解析する能力もない。ユーザーにできることが、単に総称的な「握る」や「放す」の指示だけなら、実際に手でできていたことを実行するのほぼ不可能だ。

そこが、スイス連邦工科大学ローザンヌ校(École polytechnique fédérale de Lausanne、EPFL)の研究者の出番だった。義手に「握れ」と「放せ」と命令したあと、それから先の動作を特に指示しなくても最良の握り方を見つけられるなら問題はない。EPFLのロボット工学の研究者たちは長年、「握り方の自動的な見つけ方」を研究してきた。だから今の義手の問題を解決するには、彼らがうってつけなのだ。

epfl roboarm

義手のユーザーは、本物の手がない状態でさまざまな動きや握りをできるだけうまく試みながら、そのときの筋肉信号を機械学習のモデルに解析・訓練させる。その基礎的な情報で、ロボットの手は自分が今どんなタイプの把握を試みているのかを知り、目的物との接触領域を監視して最大化することによって、手はリアルタイムで最良の握りをその場で作り出す。落下防止機構も備えており、滑落が始まったら0.5秒以内に握りを調節できる。

その結果、目的物はユーザーが基本的には自分の意思でそれを握ってる間、しっかりとやさしくその状態を維持する。目的物の相手をすることが終わってコーヒーを飲んだり、ひと切れのフルーツをボウルから皿に移したりするときは、その目的物を「離し」、システムはこの変化を筋肉の信号で感知して実際に離す行為を実行する。

関連記事:SmartArm’s AI-powered prosthesis takes the prize at Microsoft’s Imagine Cup【AIで動く義肢がMicrosoftのImagine Cupを勝ち取る、未訳)

MicrosoftImagine Cupを取った学生たちのやり方を思い出すが、それは手のひらにカメラを付けた義手の腕が目的物のフィードバックを与え、正しい握り方を教えていた。

一方こちらはまだまだ実験段階で、サードパーティ製のロボットアームと、特別に最適化していないソフトウェアを使っている。でもこの「人とAIとの共有コントロール」には将来性が感じられ、次世代のスマート義手の基盤になるかもしれない。チームの研究論文はNature Machine Intelligence誌に掲載されている。

画像クレジット:EPFL

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

企業のAI導入を支援するカナダのElement AIが約163億円を調達

グーグルやアマゾンのようなテクノロジーの巨人が、自身のビジネスの成長のために多数の人工知能アプリケーション開発に向け投資している一方で、あるスタートアップがテクノロジービジネスを本業としない会社のAI導入を支援するために巨額の資金調達を行った。

Element AIは、幅広いネットワークを有する資金潤沢なカナダのスタートアップだ。人工知能ソリューションの開発と実装を支援するためのAIシステムインテグレーターで、機械学習、ニューラルネットワークベースのソリューション、画像認識の分野における「アクセンチュア」だといえるだろう。本日(カナダ時間9月13日)、2億カナダドル(約163億円)の調達を発表した。調達した資金は、新しいAIソリューションなどの研究開発や製品化に使う予定だ。

「AIの実用化は現在、業界で最も困難な課題だ。プルーフ・オブ・コンセプト(実現可能性が検証された新しい理論や概念)を研究室から取り出し、戦略的に企業のビジネスに組み入れ、実際のビジネスインパクトを生み出すことに成功している企業はほとんどない」とElement AIのCEOであるJean-François Gagné(ジャン・フランソワ・ガネー)氏は言う。「このような課題をよく理解している新しい出資者と協力し、AIソリューションを市場に投入する際にお互いの専門知識を活用できることを嬉しく思う」。

同社は資金調達の発表でバリュエーションを開示せず、ほかの場で公表したこともないが、PitchBookは前回2017年の1億200万米ドル(約110億円)調達したラウンドでポストマネーのバリュエーションが3億米ドル(約324億円)だったとレポートしており、Element AIに近い情報筋からも確認が取れた。筆者の理解では、現在のバリュエーションは6億米ドルから7億米ドル(約648億円から756億円)であり、これはElement AIの成長を示すものだが、同社の動向がこれまで静かだったことを踏まえると非常に興味深い。

本ラウンドはケベック州貯蓄投資公庫(CDPQ)がリードし、McKinsey&Company(やデータアナリティクス会社のQuantumBlackに加え、ケベック州政府も参加した。既存の株主には、DCVC、Hanwha Asset Management、BDC(カナダ産業開発銀行)、Real Venturesなどがいる。同社はこれまで総額3億4000万カナダドル(約276億円)を調達した。また、ストラテジックインベスターとして、Microsoft、Nvidia、Intelが投資している。

Element AIは次のような前提に立って創業された。AIはコンピューティングそのものだけでなくビジネスの現場においても大きな転換をもたらす。しかし、すべての企業がテクノロジーを本業としているわけではないため、企業間で格差が生じる。それは、AIの開発に投資して、AIを使って解決可能な問題を見つけられる企業と、そうではない企業の間の格差だ。

Element AIは、テクノロジーを本業としない企業をターゲットとした「AIショップ」としてスタートした。企業がAIを使ってビジネスをもっとうまく進められる領域を見つけ、AIソリューションを開発して実行するのを手助けをする。現在提供する製品は、保険、金融サービス、製造、物流、小売などの業種向けだ。今回の資金調達によって支援する業種の幅はより広がるだろう。

Element AIの難点を一つ挙げるなら、顧客リストの公表に消極的なことだ。支援先としてBank of CanadaやGore Mutualがすでに知られているが、ウェブサイトにケーススタディや顧客に関する情報はほとんど掲載されていない。

想像するに、これは、Element AIとその顧客の両方が、競争相手に知られずに事を進めたいということの表れなのだろう。実際、Element AIと連携して長期にわたって製品を開発・利用している大企業が多数あるようだ。また、本ラウンドに投資した大企業(特にマッキンゼー)が投資をきっかけに自社の顧客をElement AIに紹介した結果、Element AIの顧客が増えているとのことだ。受注金額は現時点で「数十億円規模」となったようだ。

「今回我々は、Element AIを変革するのにふさわしい他の投資家とともに、資金と専門知識を提供する。Element AIを、顧客のニーズに応えるAI製品を開発して、ビジネスとして成り立つ企業に変えていく」と語るのは、CDPQのEVPでケベック州投資・グローバル戦略企画ヘッドのCharles Émond(シャルル・エモン)氏だ。CDPQは今年AIファンドを立ち上げた。今回の投資はこのファンドからの資金で、この地域で生み出され開発されるAIの技術と知的財産の輸出を支援することが狙いだ。「CDPQはこのファンドを通じて、人工知能分野におけるケベックのグローバルな存在感の構築・強化に積極的に貢献したい」。

マッキンゼーのようなコンサルティング会社は基本的にElement AIの競争相手だが、実際のところはElement AIの顧客としての立ち位置になりつつある。従来のシステムインテグレーターは、コンピューティングの新領域で必要とされる深い専門知識を持ち合わせていないことが多いからだ(マッキンゼー自身も、たとえばアナリティクス会社であるQuantumBlackを買収するなど、この領域の専門能力を高めるために投資している)。

「マッキンゼーにとってこの投資の狙いは、我々の顧客がAIと機械学習の可能性をもっと引き出し、業績を向上させるよう支援することだ」。マッキンゼーのシニアパートナーであり、モントリオールのマネージングパートナーであるPatrick Lahaie(パトリック・ラエ)氏はこう説明する。「我々は、Element AIの優秀なチームとカナダだけでなく世界中で密接に協力し、最先端の思考と技術からAIソリューションを生み出し、幅広い産業やセクターを変革するという共通の目標に向かって共に前進することを楽しみにしている。この投資は、2015年にQuantumBlackを買収したマッキンゼーの長期的なAI戦略に合致している。QuantumBlackは、買収以来大幅に成長しており、弊社グループを代表してElement AIとのコラボレーションをリードしていく」。

画像クレジット:sorbetto / Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi)

コーエーテクモが今秋リリース予定のアプリ「三国志ヒーローズ」、「将棋ウォーズ」で知られるHEROZのAI「臥龍」を搭載

左から、コーエーテクモホールディングス代表取締役社長の襟川陽一氏、HEROZ代表取締役COOの高橋知裕

オンライン将棋対戦「将棋ウォーズ」などで知られるAIスタートアップのHEROZは9月12日、コーエーテクモゲームスとの共同開発により、AIバトルボードゲームの「三国志ヒーローズ」をスマホ向けアプリとして2019年秋に配信することを発表。狙いはこのスマホゲームによりHEROZのAI技術をより多くの人々に届けることだ。

三国志ヒーローズは、三国志をテーマとしたターン制バトルボードゲーム。HEROZいわく、「テーブルゲームの手軽さと、eスポーツの競技性を併せ持ち、将棋や囲碁のようにプレイヤーの知略が勝利に直結する」。

ポイントは、シングルプレイのモードでプレイヤーの相手となるAIとして、HEROZが生み出した「臥龍(GARYU)」が搭載されていること。HEROZは、将棋の電王戦で史上初めてプロ棋士を破り、その後名人にも勝利した「Ponanza(ポナンザ)」や、世界コンピュータ将棋選手権で1位を獲得した「Apery(エイプリー)」などのAI開発者を擁する。

「臥龍」はHEROZの「HEROZ Kishin」をベースに、三国志ヒーローズ専用に特別なチューンアップを行った戦略戦特化型のAI。「プレイヤーのスキル上達に合わせ、入門レベルから上級レベルまで、さまざまな難易度でプレイが可能」だという。

コーエーテクモホールディングス代表取締役社長の襟川陽一氏は東京ゲームショウ2019にて、「私からHEROZ様に、一緒にゲームを作りましょうとお願いをした。AIをゲームにも活用できないか、というところが出発点だった」と共同開発にいたる経緯を説明。

HEROZ代表取締役COOの高橋知裕氏は「弊社のメンバーは機械学習を使って将棋のソフトから囲碁、麻雀まで、ボードゲームのAIを強くすることをずっと集中してやってきた。他の産業に適応していきたいという思いはずっと持っていた」と話す。

「将棋などの頭脳ゲームにおいて、考えて考えて勝利を勝ち取るのは、人間にとって非常に面白いこと。より多くの人に(そのような面白さを)届けたい。一方で、将棋となると少し難しいと思う人もいるかもしれない。このゲーム(三国志ヒーローズ)ではその難しさを極力なくしているが、脳みそで戦う。ファン層を広げていきたい」(高橋氏)。

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サッカーの試合をAIカメラで全場面録画するVeoが米進出を狙う

デンマークのコペンハーゲンのVeoは、アマチュアのサッカーチームがもっと容易にビデオを撮ったり試合をストリーミングしたりできるための「AIカメラ」を提供している。同社はこのほど、シリーズAで600万ドルの資金を調達した。

このラウンドを支えたのは米国のCourtsideVCとフランスのVentech Capital、そしてデンマークのVC Seed Capitalだ。Veoによると、この新たな資本は米国進出のために使う。

2015年にHenrik Teisbæk氏、Jesper Taxbøl氏、そしてKeld Reinicke氏の三氏が創業したVeoは、複数のカメラオペレーターや映像ミキサーが要らないようにして、サッカーの試合や練習の映像記録を誰にでもできるようにしたいと考えた。

そのためにまずやるのは、一台でピッチ全体を撮影できる4Kレンズのカメラを使うことだ。カメラは高さ7メートルの三脚に載せ、撮った映像をAIを使ったビデオ技術で処理する。そうするとVeoのカメラは仮想的なパンやズームでアクションを追い、まるで複数箇所のテレビカメラが動く選手たちを追ってるような映像が得られる。

Veo Måløv

前の記事でも書いたように、そのためには映像の各部分を頻繁にトリミングする。全体として解像度は落ちる。でも最初が4Kだから、スマートフォンやタブレットなど小さなスクリーンなら画質はまあまあだ。

VeoのCEO Henrik Teisbæk氏は、今回の資金調達に関連して次のように述べた。「至近の目標は米国に足場を作ることだ。投資の多くがそのために使われるだろう。長期的には米国からさらに世界のフットボール市場の主役になりたい。そして願わくば、ほかのスポーツを手がけることも」。

Teisbækによると、手始めに米国を選んだのは、そこが最大で最もエキサイティングなサッカー市場の一つだからだ。そして北米のサッカー選手や監督、チームなどはとてもデータを大事にするし、新しいテクノロジーに対して積極的だ。つまりVeoにとってそこは、ポテンシャルが大きい。

一方Veoによると、同社は昨年50か国1000チームの25000試合を見て録画した。今コペンハーゲンの本社には35人の社員がいて、Veoのソフトウェアとハードウェアを開発している。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

AIによる経費精算自動チェックシステム開発のAppZenが約54億円を調達

いまやAIは社内業務のあらゆる場面に関わっている。会社のコアビジネスから、顧客とのやり取り、何か新しいことの創出、あふれかえる書類仕事やバックオフィス業務の支援まで。 米国時間9月9日、バックオフィス業務支援の分野で急成長しているスタートアップが資金調達ラウンドを発表した。会社の財務部門の業務をAIで自動化するツールを開発するAppZen(アップゼン)が、5000万ドル(約54億円)を調達した。Coatue Managementがリードインベスターとなり、既存株主であるRedpoint VenturesとLightspeed Venture Partnersも参加した。

情報筋によると、本ラウンドのバリュエーションは5億ドル(約538億円)だった。急激に評価が上昇しているようだ。昨年10月にLightspeedがリードインベスターとなった3500万ドル(約38億円)のラウンドにおける同社のポストマネーのバリュエーションは1億7500万ドル(約188億円)だった。

シリーズCとなる本ラウンドで同社の調達総額は1億ドル(約108億円)を超えた。資金はプラットフォームの機能拡張に使用されると、CEOのAnant Kale(アナント・ケール)氏はインタビューで語った。ケール氏は同社のCTOであるKunal Verma(クナル・ヴァーマ)氏と共同で会社を創業した。

AppZenの最大のプロダクトは、経費精算自動チェックシステムだ。例えば従業員からの旅費精算の申請を出張の履歴と比べ(他にも比較可能なデータが数多くある)、整合するか確認する。また、経費が社内規程に準拠しているか確認し、準拠していない場合はフラグを立てる。

同社が大企業から多くの契約を勝ち取ったのはこのプロダクトであり、現在顧客は1500社を数える。これは2018年10月の顧客650社の2倍以上だ。AppZenユーザーには、Amazon、Nvidia、Salesforce、米国の上位10銀行のうち3社、メディア企業上位10社のうち4社、製薬メーカー上位10社のうち3社、航空宇宙企業の上位5社のうち2社、その他多数のソフトウェア会社に加え、Verizon(TechCrunchの親会社)が含まれる。

この経費精算システムが今後も引き続き会社の成長を引っ張っていくと見込まれるが、今後は財務部門の他の仕事にこのシステムの仕組みを応用することが検討されている。例として、ビジネスに必要な支払いのプロセスと売り上げ代金の請求・回収プロセスで活用することが挙げられる。

「会社の財務部門で役に立つような新しいツールが何十年も開発されてこなかった」とケール氏は語る。

この分野には非常に大きなビジネスの機会がありそうだ。調査会社ガートナーは、法人向けIT全体で今年1兆ドル(約108兆円)の市場になると予測する。市場が大きいため、AppZenが競合する企業の数もまた非常に多い。自動化とAIによって経費をチェックする分野の企業だけでなく、 ロボット・プロセス・オートメーション(RPA)など他の分野にも競合他社が多い。例えばRPAは、画像認識技術をベースとする業務支援ツールだが、もっと幅広くバックオフィスのニーズに対応できるツールへと進化しつつある。そしてさらにSAPなどの巨大企業が提供する経費管理ソフトウェアが、AppZenのプロダクトと正面から競合する。

これまでは、AppZenは急速に成長しており、顧客から信頼されるパートナーとしてのポジションを確保している。

「AppZenによってこれまで不可能だったことが可能になる。今の経理チームの人数を増やさずに支払いの100%をチェックすることができる。AIによって企業が支出を劇的に減らし、社内規程を遵守し、業務プロセスをスリム化することができる」と、Coatue Managementでシニアマネージングディレクターを務めるThomas Laffont(トーマス・ラフォント)氏は述べる。「アナントやクナル、彼らのチームと出会ったとき、財務部門の変革に関するビジョンとAIの専門知識に感銘を受けた。もちろん、ビジネスにおいて明確かつ迅速に打ち手を実行していく能力については言うまでもない」。

人工知能は人類に大きな進歩をもたらしたが、扱いが難しい部分というものは常に残る。従来人間が行なっていた業務や計算のうち、同じ作業を反復するようなものについては、自動化によって社内のオペレーションコストが間違いなく削減されるはずだ。業務プロセスもスピードアップするだろう。だがAIが常に完璧というわけではない。人間の仕事をAIを使ったシステムが行うようになった後で、問題が発生した時、原因を突き止めるのが難しくなってしまったということが起こっている。

「我々の目標はすべての会社の従業員が大きなフラストレーションを感じないようにすることだ」とケール氏は言う。この目標は、こういったシステムを開発している企業だけではなく、購入する企業の目標にもなり得るものだ。

画像クレジット:Adam Gault

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(翻訳:Mizoguchi)

Googleが差分プライバシーライブラリのオープンソースバージョンをローンチ

Google(グーグル)は米国時間9月4日、同社の主要プロダクトで使っている差分プライバシーライブラリ(参考:日本語ブログ記事)のオープンソースバージョンをリリースした。デベロッパーはこのライブラリを使って独自のツールを作り、社内社外に個人を特定できる情報を明かすことなく、集積されたデータを利用できる。

同社のプライバシーとデータ保護部門のプロダクトマネージャーであるMiguel Guevara(ミゲル・ゲネヴァラ)氏は「あなたが、都市計画のプランナーや、中小企業の経営者、ソフトウェアデベロッパーなど、どんなお仕事をしていても、データから有益な知見が得られれば仕事の質を向上し、重要な疑問に答えが得られるようになる。しかし強力なプライバシー保護がないと、あなたは一般市民や顧客、そしてユーザーの信頼を失うリスクを負う。差分プライバシーによるデータの分析は道義にかなったアプローチであり、企業などの組織が多くのデータから学べると同時に、それらの結果から絶対に個人のデータが識別されたり、特定されないようにする」とコメントしている。

Googleの注記によると、このApacheライセンスによるC++ライブラリは、スクラッチから作ることが通常は困難な機能にフォーカスし、デベロッパーが必要とする標準的な統計関数が多く含まれている(計数、和、平均、分散、などなど)。さらに同社は、このライブラリに「厳密なテスト」のための補足的ライブラリが含まれていることを強調している。差分プライバシーを正しく得ることは、難しいからだ。その他PostgreSQLエクステンションやデベロッパーの仕事をサポートするレシピ集なども含まれている。

最近では、同じ文の中に「Google」と「プライバシー」があると、思わず注目してしまう。それも当然だ。Googleの社内にはこの問題をめぐって相当な軋轢があるのだろうけど、でも今回のオープンソース提供は疑問の余地なくデベロッパーの役に立つし、デベロッパーもユーザーも、人びとのプライバシーを侵す心配なく、彼らが作るツールでデータを分析できるようになる。差分プライバシーはかなり専門知識を要する技術だから、これまでは手を出さないデベロッパーが多かった。でもこのようなライブラリがあれば、差分プライバシーを実装しない言い訳がなくなる。

画像クレジット: Bloomberg/Getty Images

関連記事:Appleは差分プライバシー技術を利用して個人データに触らずにSafariの閲覧データを収集
参考記事:一般人が差分プライバシーを理解するためのスライド

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グーグル検索で映画やテレビ番組を調べると個人化されたお勧めが出る

これからはGoogle(グーグル)の検索が、次のお楽しみを見つける手助けをしてくれる。同社の米国時間9月5日朝の発表によると、お勧め作品を個人化するその新しい機能は、テレビ番組とムービーの両方を対象とし、そのコンテンツを見られる場所を教える。

今でもGoogleのウェブ検索には、テレビ番組や映画に関する情報のありかを教える機能があるが、今回はその拡張だ。

すでにGoogle検索でテレビ番組や映画のタイトルを検索すると、検索結果の上部に「Knowledge Panel」(知識パネル)というボックスが出てその概要や格付け、レビュー、キャストなどを見られた。そして2017年の春には、それらの作品がストリーミングされているところや、購入できるところを教えてくれるようになった。

でも今度のお勧め機能は、特に見たいものが決まってないユーザーが、検索欄に「面白いテレビ番組」などとタイプするユーザーが対象だ。それから「Top picks for you」(お勧め作品集)のカルーセルでスタートボタンを押し、お気に入りのテレビ番組や映画を格付けすると、Googleはあなたの好みを理解する。

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また、今自分が会員になっているサブスクリプションを指定すると、お勧めをさらにカスタマイズできる。それらは、Netflix、Hulu、HBO GO、HBO NOW、Prime Video、Showtime、Showtime Anytime、CBS All Access、Starzなどなどのサブスクリプションサービスだ。

米国の場合は、ケーブルテレビや衛星放送のサブスクリプションも指定できる。また番組や映画をiTunesやPrime Video、Google Play Movies & TV、そしてVuduなどのマーケットプレースや、ABC、Freeform、Lifetime、CBS、Comedy Central、A&E、Historyなどのネットワークアプリでレンタル、購入、または無料ストリーミングできることもわかる。

各作品の格付け評価は、デートアプリのTinderみたいにスワイプで行う。左スワイプは「好き」、右なら「嫌い」だ。どちらも指定しなかったら、知らないとか、意見があるなどの意味になる。

そうやってGoogleにあなたの好みに関するデータを与えたら、次の検索からは自分の好みに合ったお勧めが提供される。

Googleは「この情報はお勧め機能だけが利用し、広告主に渡されることはない。あくまでも人びとが求める情報を提供することが、Googleの究極の目標である」とコメントしている。

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さらにまた、「80年代のホラー映画」とか「登山に関する冒険アドベンチャー」といった具体的なリクエストもできる。内容はわかっているけど題名を思い出せない映画を、ばっちり見られるだろう。

検索の結果は最初は提案作品のリストだが、どれかを指定すると、それをどこで見られるか買えるかなどが分かる。

映画やテレビ番組を見つけるためにGoogle検索を利用する人がとても多いことを、同社は検索の上位項目のデータからよく理解している。今度から同社は、各個人の好みまで知ることになる。

この新しいお勧め機能は、米国のモバイルユーザーを皮切りに本日から提供される。

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Facebookが10億円超を投じてディープフェイクの識別に賞金

一般に「ディープフェイク」と呼ばれるディープラーニングを利用してデジタル画像、動画を捏造するテクノロジーは我々の社会に対しすでに深刻な脅威となっている。こうした捏造を退治するためには我々自身が捏造を見破る能力を保たねばならない。火をもって火と戦うというわけだ。

Facebook(フェイスブック)、Microsoft(マイクロソフト)などのトップテクノロジー企業は共同で、デープフェイクを識別する機械学習システムを開発中だ。こうした努力の一環としてFacebookが興味深いプロジェクトを立ち上げた。

ディープフェイクは比較的新しいテクノロジーだが、我々はすでに捏造力と識別力の軍拡競争に投げ込まれている。毎日新たな、ますます真に迫ったディープフェイクが登場している。大部分は無害なものだが、誰かの映像を細工して極めて不都合な場面を捏造することが可能だ。そしてリベンジポルノのように悪用するものがいる。政治家、俳優を含めて多くの著名人がすでにディープフェイクの被害にあっている。

FacebookはMicrosoft、オックスフォード大学、カリフォルニア大学バークレー校、マサチューセッツ工科大学などで構成されるAIパートナーシップに参加している。Facebookはその一環としてディープフェイク識別テクノロジーの改善のために大型プロジェクトを立ち上げた。Facebookの最高技術責任者であるMike Schroepfer(マイク・シュレーファー)氏は米国時間9月4日の電話記者会見で次のように述べた。

最近のAIテクノロジーの進歩に関連して興味ある点はAIの達成レベルを計測するためにベンチマークとなるデータセットが用意されるようになったことだ。画像認識テクノロジーをテストするためには数百万件の画像のセットが用意され、音声テキスト化のためにも異なった音声のサンプルが何時間分もデータセットとして利用できる。しかしディープフェイク識別の場合はそのようなデータセットが存在しない。

今年初めに開催されたロボティクスとAIについてのTechchCrunchセッションで我々はすでにこの問題を取り上げている。下のビデオでは私(Coldeway)がバークレーのAlexei Efros(アレクセイ・エフロス)教授、ダートマスのHany Farid(ハニー・ファリド)教授にインタビューしている。

ビデオの冒頭でディープフェイクのサンプルとしてバラク・オバマ大統領のビデオを加工して「言っていないことを言わせる」ビデオが流される。ディープフェイクが民主主義に与える脅威が容易に想像できるだろう。

こうした脅威に対抗するため、Facebookは1000万ドルのリソースを投入してディープフェイク識別コンテストを開催する。FacebookはAIパートナーシップのメンバーと協力してまず大量のディープフェイクのサンプルを作ることにしたという。上の電話記者会見でSchroepfer氏は次のようにその背景を説明した。

ディープフェイクを識別するためのベンチマークとなるデータベースを作るのは非常に困難な事業となる。その理由のひとつはディープフェイクのターゲットなった人物がデータベース化に同意している必要があるからだ。そうでないとベンチマークに使われたことに抗議される可能性がある。現実にインターネットに拡散されたディープフェイクの場合、被害者になんらの同意も求めていないのが普通だ。このため少なくともアカデミックな研究に用いることはできない。

まず必要になるのはディープフェイクのソースとなるビデオ素材だ。次にその画像に重ねる人物の各種の特徴を記録したデータでベースだ。そこからディープフェイクの実行となる。ここでは最新、最強のディープフェイク技術をして現実には存在しなかったビデオや音声を作り上げる。

ではFacebookはその素材をどこから入手するのかと疑問を持つ読者も多いだろうが、安心していい。素材には報酬を支払ってプロの俳優を起用している。

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ディープフェイクのデータセットはディープフェイク識別テクノロジーを進歩させる能力、意思のあるグループに提供される。結果はリーダーボード形式で共有される。識別力に応じて賞金が提供されるというが、詳細はまだ発表されていない。賞金の額によっては大学や各種組織の研究者の間に健全な競争を巻き起こすかもしれない。

メリーランド大学のRama Chellappa(ラマ・チェラッパ)教授はプレスリリースでこう述べている。

マルチメディアの捏造という深刻な脅威に対抗し識別力を高めるためには研究者コミュニティの全面的な協力が必須だ。ディープフェイクについての知見を深め発見のためのシステムを構築するためのオープンな環境とシステムが求められる。特に必要なのは現実の素材とそれを加工した素材の大規模なコーパスだ。(Facebookから)発表されたチャレンジは研究者コミュニティにエキサイティングな刺激を与え、一丸となってこの脅威に立ち向かうきっかけを与えるに違いない。

ディープフェイク識別のためのデータセットは、まず10月に予定されているコンピュータビジョンに関するカンファレンス、ICCV(International Conference on Computer Vision)で発表される。さらに12月に予定されているニューラル・コンピューティングのカンファレンス、NeurIPSでさらに詳しい発表があるはずだ。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

GVA TECHの次の一手は「エンタープライズ向け」、大手の“法務格差解消”目指し「AI-CON Pro」α版リリース

AI契約書レビュー「AI-CON」や法人登記支援サービスの「AI-CON 登記」を提供するGVA TECH。2017年1月設立のLegalTech(リーガルテック)スタートアップである同社の次の一手は「エンタープライズ向け」。GVA TECHは9月2日、エンタープライズ向け“⾃社専⽤”のAI契約法務サービス 「AI-CON Pro」のα版をリリースした。

開発の背景に関して、GVA TECH代表取締役の山本俊氏は「AI-CONはスタートアップ、中小企業向けに提供を想定していたものの、エンタープライズからの問い合わせも非常に多かった」と話す。GVA TECHの理念は「法務格差を解消すること」。今後はスタートアップや中小だけでなく、エンタープライズにおける「法律業務の民主化」もGVA TECHのミッションとなった。

「エンタープライズにおいても法務部と事業部間での法務格差はもちろんのこと、法務部内でも知識や経験の差があるため、法務格差が生じていることがわかった。そこで、大手企業の中でのノウハウや方針を生かしてエンタープライズ企業内での法務格差の解消を行うことにより、法務を企業の中に浸透させることができればと考えている」(山本氏)

山本氏いわく、大手企業からの問い合わせでは「自社の基準を反映させたいという要望が非常に多かった」という。そのため、従来のAI-CONでは「GVA TECHの設定による法務基準」でリスク判定をしていたが、AI-CON Proでは「自社の法務基準で契約書レビューがしたい」という大手企業からの要望に応えた。「顧客企業が使用している契約書の雛形や法務知識をGVA TECHのAIにセットアップすることで、導入企業の法務基準に則した契約書レビューを実現した」そうだ。

「スタートアップや中小企業と違い、内部にノウハウがあるエンタープライズ企業は内部に法務知見があるため、知見を集約して法務部間の法務格差を解消することを当初の目標とし、その後は経営や事業部に一部法務機能を移管することを目指している。また、法務部の時間も効率化や移管によって増加するため、アメリカのように経営や事業に密着した創造的な法務を生み出すことができるようにしたい」(山本氏)

GVA TECHいわく、AI-CON Proでは以下の付加価値を提供することが可能になるという。

  1. 法務担当者の業務効率化および契約書レビュー期間を短縮することができる
  2. 法務担当者の知識をAIにセットアップして自社の法務部門へ共有することで、契約書レビューの精度を標準化し、属人化を防止することができる
  3. 法務部門だけではなく、法務知識が浅い各部門も「AI-CON Pro」を使用することで、契約書をレビューする際の観点がわかる

GVA TECHは年内にはAI-CON Proの正式版をリリースする予定だ。山本氏はこれまでにリリースしてきたプロダクトに関し、次のようにコメントしている。「AI-CONについては多様な企業の利用が増えている。今後はよりスタートアップや中小企業のニーズにマッチするような機能や価格帯により特化していく予定。 AI-CON登記は評判が非常に良く、毎月利用が伸びている。本日も商号変更対応機能が追加されたが、今後も登記事項を随時増加していく予定だ」(山本氏)

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MITの自動操船ロボは複数の船の自動編隊が可能に

完全自動操縦のロボット船、ここで駄洒落を言うなら「ロボート」を作る努力がMITで続いている。今回彼らが試みたのは、個々の船が自分の位置を自分で変えて、全体として船隊の形を自動的に変える能力だ。

この前TechCrunchが「ロボート」を見たときは、ふつうの航行ができるほどの自律性は持っていたし、複数の船がお互いをつかまえて基本的な形の船隊を作ることができた。しかし今度は、相手をつかまえて接続するだけでなく、相手から離れて違う形の船隊を自力で作れる。

自動編隊を実現するロボートのために研究者たちが考えたアルゴリズムは、ロボット船がお互いから離れて、他船に衝突しない航路をたどり、他の船と再接続して別の形の船隊を作るまでの過程を、すべて自分で計画する。彼らはそれを、シミュレーションとMITのプールの両方で見せてくれたが、そこでは上図のような矩形の平底船のロボットが、自分たちを直線状や矩形、そしてL字形にさえも編成した。

つまり彼らはテトリスの基本形をマスターしたのだが、でもそれは、ロボット船が自分たちの力で、いろんな形とサイズの橋や海に浮く台座、はしけなどになれるための、重要なステップだ。容易に海上作業ができるようになれば、都市再開発の仕事もはかどるだろう。

船隊の形を自由に変える能力には、「ワーカー」と「コーディネーター」という2つのタイプのロボット船が貢献している。両者が組み合わさることによって船隊の形が決まり、そのときGPSと測定器のあるコーディネーターが、お互いの相対的な向きや移動速度を決める。ワーカーにはアクチュエータがあって、船全体の操縦を助ける。コーディネーターはお互いに協調しながら、現在の並び方を常時チェックし、目標とする形と比較する。比較に基づいて各船に動きの指示を出し、新しい隊形を達成する。

実験に使われたロボット船は90cm×45cm程度の大きさだが、今後はその4倍になる。でも、船が大きくなってもアルゴリズムは変わらない。アルゴリズムが一定であることは、今後巨大な実用船を作って動かす場合などにとても重要だ。その当面の目標は、アムステルダムのネモ科学博物館の60mの運河の上を、歩いて渡れる浮橋を来年作ることだ。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

AI活用のデータ分析支援のThoughtSpotがシリーズEで262億円調達

ThoughtSpotは、データの検索機能を活用しようと考えた元Google社員のグループによって創業された。7年経った今、同社は急速に成長していて20億ドルに迫るバリュエーションが付き、さらにIPOの可能性を模索している。 そして米国時間8月28日、同社はその模索を続ける中で2億4800万ドル(約262億円)の大型資金調達となるシリーズEラウンドを発表した。

投資家には、既存の投資家であるLightspeed Venture Partners、Sapphire Ventures、Geodesic Capitalとともに、Silver LakeのレイトステージファンドであるSilver Lake Watermanが含まれる。 ThoughtSpotによれば、本日の資金調達によって資金調達総額は5億5400万ドルとなった。

同社は、SQLクエリの作成方法がわからなくても、データに関する自然言語による質問に答えることで、顧客がデータ分析を迅速に行えるように支援したいと考えている。 ユーザーが質問を入力すると、ThoughtSpotはその質問をSQLに変換し、質問に関連するデータを含むチャートをほぼ瞬時に表示する(少なくともデモでは)。

それだけではない。人工知能を利用して、質問の意図を理解し、求めている正しい答えを導き出す。 ThoughtSpotのCEOであるSudheesh Nair(スディーシュ・ナイル)氏は、人工知能が土台になっている点が同社製品の鍵だと述べている。 彼が説明するように、「ポートランドにおける赤い靴の利益率は?」といった特定の質問に対する答えを探している場合、複数の答えはない。答えは1つだけ、というケースでこそ、人工知能が本当に力を発揮する。

「こういった種類の答えを導くためにクリアすべきハードルは非常に高く、そのためには、質問の意図を理解することが重要だ。 そのためにAIを使用する。人間は『ポートランドにおける赤い靴の状況は?』と尋ねるかもしれないし、『ポートランドにおける赤い靴の利益率は?』と尋ねるかもしれない。システムは両方が同じ質問だと理解する必要がある。質問の意図を理解するために背後でAIが駆使されている」とナイル氏は語る。

画像: ThoughtSpot

ThoughtSpotは、HR、CRM、ERPなどのさまざまな内部システムに接続することによってクエリへの答えを取得し、それらシステムのデータをすべて利用して可能な限り質問に答える。 これまでのところうまく機能しているようだ。 同社は約250社もの大企業顧客を抱え、1億ドル近い売上高を見込む。

ナイル氏によれば、まだ1億ドルが銀行に残っているため必ずしも資金調達が必要だったわけではないが、目の前に現れた資金調達の機会を利用した。今回調達した資金によって、足りないピースを埋めるための買収やプラットフォームの機能を拡張したりするなど、今後柔軟な対応が可能になる。成長を加速することもできる。彼は、来年資本市場がタイトになる可能性があると考えていて、チャンスを生かしたかったとのことだ。

ナイル氏は間違いなく将来株式公開することを視野に入れている。「こうした種類のリソースが手元にあることで、我々が望むあらゆる種類のIPOを行う機会が開かれる。 私たちのビジネスの大部分を占めるグローバル2000にランクインしている顧客は、公開会社が備える透明性と安定性を高く評価しているため、我々は上場することで恩恵を受けることができるはずだ」。

そして「銀行に3億5000万ドルあれば、IPOは十分可能だ。1年半後に株式を公開する準備ができていれば、ダイレクトリスティングを含む全ての選択肢が可能となる。ダイレクトリスティングを行うと言っているのではなく、手元にある資金によってすべての選択肢が利用可能になると言いたいのだ」と付け加えた。

画像クレジット:Stuart Kinlough / Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi)

BBCが独自の音声アシスタントを開発中:コードネームは“ビープ”

BBC、別名英国放送協会、別名ザ・ビープ、別名アーンティー(おばちゃん)は、音声アシスタントに参戦しようとしている。

ガーディアンは、“ビープ”(Beep)という仮称を与えられた、このアレクサのライバルの開発計画を報じたが、巨大ハイテク企業にくらべてBBCの開発資源が細身であることから、機能的には明らかに軽量級だ。

BBCのニュースサイトによれば、このデジタル音声アシスタントは来年にローンチされる予定だが、これを使うための専用のハードウェアは持たず、「あらゆるスマートスピーカー、テレビ、モバイル」に対応するという。

しかしなぜ、公的資金で運用されているこの放送局が、アマゾンのアレクサ、Googleアシスタント、アップルのSiri、それにサムスンのビクスビーなどなど民間企業の製品がひしめく市場に向けたAI開発に投資することにしたのだろう。その狙いは、「誰かに許可をもらって決められた方法でやるのではなく、新しいプログラム、機能、体験を自分たちで作る実験」だとBBCの広報担当者はBBCニュースで語っていた。

BBCは、職員に参加してもらって音声データを集め、AIをトレーニングし、方言の宝庫であるイギリスの言葉に対応できるようにしたようだ。

「BBC iPlayerのときと同じく、この新しいテクノロジーの恩恵を誰もが受けられるように、そしてエキサイティングな新しいコンテンツ、プログラム、サービスをみんなに届けられるようにしたいのです。それも、信頼できる簡単に使える方法で」と広報担当者は言い加えた。「これは、公的サービスの価値が音声認識機能の中でも保たれることを確かにする、新たな一歩となります」

この動きは一見すると、すでに長年にわたり民間企業との最先端の音声AIの開発に投資をしてきたことへの反動のようでもあり、守りの態勢のようでもあるが、BBCにはライバルの巨大ハイテク企業にはない強みがある。地方の方言に精通していることに加えて、サービスとしての愛される人格を提供できる音声アシスタントのデザインに、ニュースや娯楽の膨大なアーカイブを利用できることだ。

ドクター・フー』を演じたトム・ベイカーの声で(宇宙の)天気を知らせてくれたら、どんな感じだろう。または『ダッズアーミー』の登場人物が今日の予定を話してくれたら、または『アーチャーズ』の最新エピソードの要約を、アンブリッジのお馴染みの住民の声で聞かせてくれたら、どんなだろう。

あるいは、ビープに心地よい、またはドラマチックなサウンド効果を鳴らすよう教えて、子どもたちを喜ばせることができたら?

ある意味、音声AIは最新の配信メカニズムだ。BBCはそこに目を付けている。音声コンテンツに事欠かないことは確かだ。それを再パッケージ化して声による命令でオーディエンスに届け、人を楽しませ喜ばせるパワーを拡張できる。

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BBCがデジタル音声アシスタントを計画していると知って楽しみにしている。その膨大な音声ライブラリーは、洗練された競争力のあるユーザー体験を作り出すだろう。在来団体の賢い一手だ。

豊富なコンテンツとなれば、音声AIの先駆者である巨大ハイテク企業にも及ばないところだ。

無理矢理ユーモアを突っ込んだり(悪いジョークを吐くAI)や、キャラクターをねじ込んでみたりといった試みがなされたが、ほとんど自爆した。合成音声を本物の人が話しているように偽装するという、倫理的に怪しいものまであった。エンターテイナーではない技術系企業だけに、それらはすべて予想どおりの結果となった。彼らの本分はメディアではなく、あくまで開発なのだ。

BBCが音声アシスタントというコンセプトに辿り着いたのは、意外な方向からだった。BBCの番組をもっとたくさん送り出すための、現代の受話器と彼らは考えたのだ。

そのためビープは、アレクサなどと同じ技術水準の機能で戦おうとはしていない。それでもBBCは、彼らに勝利し人々に影響を与える手を持っていることを巨大ハイテク企業に見せつけることができる。

いちばん少なく見積もっても、彼らは、みんなが切望するクリエイティブな競争力を合成音声に与えてくれるだろう。

ただ、その試作AIに“アーンティー”と命名したとき以上に、ビープが私たちを笑わせてくれなかったのは残念だ。もっとパリッとした2音節のトリガーワードのほうが発音し辛くて面白かったのに……

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(翻訳:金井哲夫)

中国の顔認証ユニコーンMegviiが香港に上場へ

顔認証のFace++で知られる北京拠点の人工知能スタートアップであるMegvii Technology(メグビー・テクノロジーズ)が香港証券取引所に上場のための書類を提出した。

目論見書には株式公開の価格や時期は示されていないが、ロイターはMegviiが5〜10億ドルの調達と、今年第4四半期の株式公開を計画していると報じている。Megviiの投資家には、Alibaba、Ant Financial、そして中国銀行が含まれる。直近の資金調達は5月に行われたシリーズDの7億5000万ドルで、これにより企業価値は40億ドル超になったとされている。

清華大学卒業生3人によって2011年に設立されたMegviiは、中国のAIスタートアップを引っ張る存在で、同業他社(ライバル)としてはSenseTimeやYituがいる。そしてAlibabaやAnt Financial、Lenovo、China Mobile、中国政府企業をクライアントに抱える。

香港に上場するというMegviiの決断は、景気低迷、そして香港ハンセン株価指数基準のスランプの原因となっている民主主義運動を含む政情不安に直面している。先月、Alibabaは政治的、経済的環境が好ましいものになるまで香港上場を見合わせること決めたと報道された。

Megviiの目論見書では、売上の急成長と損失の拡大の両方が示されている。これらは好ましい株価の公定価格と研究開発への投資に貢献する。同社の売上高は2016年に6780万人民元だったのが、2018年には14億2000万人民元に成長し、これは年間成長率359%に相当する。2019年上半期は9億4890万人民元を売り上げた。しかしながら2016年から2018年にかけて損失は3億4280万人民元から33億5000万人民元に拡大し、今年上半期でMegviiはすでに52億人民元の損失を出している。

投資リスクとして、かなりのR&Dコスト、米国・中国間の貿易戦争、顔認証に関するネガティブな見方などをMegviiは挙げている。今年初め、人権NGOのHuman Rights Watchは、中国警察と当局が新疆ウイグル自治区の監視に使用しているアプリにFace++が関係しているとするレポートを出した。しかし、後にMegviiのテクノロジーはアプリに使用されていないと訂正した。Megviiの目論見書では、訂正されたもののレポートがいまだに評判を著しく傷つけていて、完全な挽回は難しいとHuman Rights Watchのレポートに言及した。

Megviiはまた、同社の技術の誤使用を防ぐための内部手段を有しているにもかかわらず、そうした手段が「いつも効果的である」と投資家を安心させることができない、とした。そしてAI技術のリスク・課題として、“ユーザーの認識や世論、受け入れに影響するかもしれない、不適切な目的でのサードパーティによる誤使用、意図的な情報漏洩、中国や他の管区における該当法律や規制の違反、先入観の適用、監視”を挙げた。

マクロ経済学的視点からすると、Megviiの投資リスクには現在進行形の貿易戦争の一環として、中国から米国への輸出品にかけられている規制や関税が含まれる。また、Megviiは米政府が貿易ブラックリストに加えるかもしれない中国テック企業の1社である、とのレポートも引用した。「我々はこの文書を発行する時点で我々がそのような規制の対象になるのかは知らないし、通知も受け取っていないが、そのようなメディアの報道の存在そのものが我々の評判を傷つけ、経営の注意をそらした」と目論見書には書かれている。「我々が経済・貿易制限のターゲットになるのかどうかというのは我々の手に負えることではない」。

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(翻訳:Mizoguchi)

バックアップした写真の中から目的の顔を見つけ出せる顔認識APIをIDriveがローンチ

この発表を初めて見たときには、思わず二度見してしまった。クラウド上でストレージとバックアップのサービスを提供しているIDriveは米国時間8月23日、AWSRekognitionなどと競合する顔認識APIを立ち上げた。

しかし、バックアップサービスと顔認識なんて、どんな関係があるのだろうか。実際のところ、IDriveはここしばらく顔認識技術に首を突っ込んでいた。昨年同社はIDrive Peopleというサービスを立ち上げており、バックアップしている写真に写っている自分や友人の顔をユーザーが見つけられるようにした。しかし今回のサービスでIDriveは、APIビジネスという新しいビジネスの分野に踏み込んだ。

そのAPIサービスはIDrive Faceと呼ばれ、静止画像の中に複数の顔を見つけたり分析したりする標準的なツールが含まれている。顔認識APIなら必ずあるような機能だ。そのためにAPIは、通常のバウンディングボックス(境界ボックス)とすべての顔のメタデータを提供している。また顔や性や年齢や顔に表れている気分などで人を特定するための、比較や検証の機能もある。気分の検出は、このAPIの独自の機能だ。APIへのリクエストはすべて暗号化され、またAPIの使い方はかなり単純明快なようだ。

IDriveは、そのツールの精度と性能がAWS Rekognition並みであるが安くなると約束している。料金はデベロッパープランでは月額49.5ドル。1トランザクションあたり0.0001ドル、最大毎分75トランザクションまで、ストレージ容量は無制限だ。ビジネスプランは月額124.5ドル。1トランザクションあたり0.0001ドル最大毎分500トランザクションまでだ。オーダー規格のエンタープライズプランもあり、また無料で試用もできる。

AWSの料金体系は例によって複雑だが、月額料金はない。また、人の顔しか認識できないIDriveと違って、テキストやオブジェクト、風景、セレブの人たちなど、いろんなものを認識するRekognitionのほうを、高くても使うユーザーもいるだろう。

GenderAge Detection

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

AIチャットボット開発の空色が約6.5億円を調達

空色は8月22日、総額約6.5億円の資金調達を発表した。WiL、NTTドコモ・ベンチャーズ、S5(エスファイブ)1号投資事業有限責任組合、みずほキャピタル、三菱UFJキャピタルを引受先とした第三者割当増資による調達となる。累積資金調達額は約10億円。

写真に向かって左から、空色で取締役CSO兼CFOを務める瀧 直人氏、代表取締役を務める中嶋洋巳氏

同社は、ウェブ接客ソリューション「OK SKY」、AIチャットボットソリューション「WhatYa」(ワチャ)を開発・提供する、2013年10月設立のスタートアップ。

今回の調達した資金は、これまでに蓄積した会話データを活用した購買促進を目的とした会話標準化モデルの実現、顧客接点拡大に伴うウェブ接客ソリューションの発展と開発体制の構築、新事業領域への参入および海外事業展開を目的としたマーケティング、事業拡大に伴う全職種における採用活動の強化などに投資する計画だ。人材採用も強化し、2020年度末をめどに累計導入企業数500社を目指す。同社によると、現在の導入企業数は累計約80社で、流通、小売、メーカー、インフラなどの業種が採用しているとのこと。

同社ではすでに、コールセンターに代わるチャットセンター事業の拡大に向け、伊藤忠商事や三井物産、ベルシステム24などの事業会社と資本業務提携を結んでいる。今後は、大量に保有するチャットログデータの解析およびAI開発、チャットログデータのマーケティング活用に向けた事業提携も検討しているという。

OK SKYは、LINEやFacebook Messenger、SMS、サイト内チャットなどを横断して顧客とやり取り可能できるのが特徴。チャットの内容を蓄積してAIが解析することで、有人チャットと組み合わせた効率的な顧客サポートが可能になる。2018年10月には、こども服大手のファミリアが「OK SKY Chat Bot」を導入している。そのほか、朝日新聞デジタル、レイクALSA、ベルメゾンなどにも導入されている。

WhatYaは、多言語対応のAIチャットボットで、2018年7月に近畿日本鉄道ではウェブサービス「近鉄ご利用ガイド」に試験導入されている。日本語、英語に対応しており、利用者から寄せれた質問をAIが学習して自動回答を行う。

同じく7月に髙島屋京都店でも店内案内にWhatYaを導入。こちらは、日本語、英語、中国語の3カ国対応だ。店内案内に掲載されている二次元コードをスマートフォンなどで読み取れることでウェブサイトにアクセスでき、ブランド名やカテゴリー名などのキーワードを入力すると目的の売場の場所情報を受け取れるというものだ。