トヨタ、BMW、ブリヂストンの迷い、環境に配慮したモビリティは必要だがそのコストは誰が払う?

国連が採択したSDGsや、ESG投資に注目が集まる中、自動車業界にも環境への配慮が求められるようになってきた。フロスト&サリバン主催「インテリジェントモビリティサミット2021 ゼロへのイノベーション」においても、今後のモビリティを考える上で「循環型経済」がテーマとして挙げられている。同サミットでは、トヨタ・ダイハツ・エンジニアリング&マニュファクチャリング上級副社長兼一般財団法人トヨタ・モビリティ基金アジア・パシフィック地区担当プログラムディレクターのPras Ganesh(プラス・ガネシュ)氏、BMW Groupサーキュラーイニシアチブ担当役員のIrene Feige(アイリーン・フェージュ)氏、ブリヂストンGサステナビリティ推進部門長の稲継明宏氏、フロスト&サリバンヴァイスプレジデントのVijayendra Rao(ヴィジャンドラ・ラオ)氏が対談。フロスト&サリバンでアジア太平洋地区モビリティ部門担当アソシエイト・パートナーを務めるVivek Vaidya(ヴィヴェック・ヴァイジャ)氏をモデレーターとなり、循環型経済の重要性や実現可能性について語った。

本記事はフロスト&サリバン主催「インテリジェントモビリティサミット2021 ゼロへのイノベーション」中のセッションの一部講演を編集、再構成したものとなる

循環型経済は何から手をつけるべきか

対談はヴァイジャ氏の「循環型経済にはどんな意味があるか?」という問いから始まった。

ガネシュ氏は「循環型経済は、トヨタで30年以上テーマとなっています。二酸化炭素の削減には部分的なアプローチではなく、より大きな視点での全体的なアプローチが必要です」という。さらに同氏は、トヨタが持続可能な社会の実現に貢献するための新たなチャレンジ「トヨタ環境チャレンジ2050」を2015年に発表したことに触れ「循環型経済はトヨタにとっては新しいものではありません」と強調した。

では、循環型経済を実現するにあたり、何から着手すべきなのか。

稲継氏は「循環型経済はブリヂストンにとって、ビジネス機会だと捉えています。そこで重要になるのが資源の効率化です。当社のパートナーと協力し、必要なエコシステムを構築する必要があります」と話す。

一方、ガネシュ氏は車両寿命とリサイクルに注目すべきだと考える。車両寿命は地域ごとに差があり、アジアの車両寿命は10〜20年だという。同氏は「現状、使わなくなったクルマをリサイクルに出すよりも、売り払った方が所有者にとって得なことが多い。それでは循環が進まないので、政府のサポートを得ながら、リサイクルを促進したり、リサイクルしやすいように車体を分解しやすいデザインにしていくことが重要です」という。

フェージュ氏は、使用する材料を減少させるためのエコシステムの見直しの必要性を重要視している。同氏は「着手しやすいのは、金属の再利用です。もちろん、再利用品であれ、新品であれ、質が高くなければいけないのは大前提ですが、今後のクルマの生産では金属を再利用し、新品の金属を使用する際には、それを正当化するような仕組みが必要です」と語る。

リサイクルの壁

ヴァイジャ氏の次の質問は「循環型経済を考えた時、EV(電気自動車)はどういう意味を持つのか?」だった。

フェージュ氏は「持続可能性はEVによってもたらされます」と断言。車体やバッテリーの分解・再利用を視野に入れ、サプライチェーン全体を見直さなければいけないと見ている。

ガネシュ氏もリサイクルの重要性を認め「バッテリーのリサイクルモデルができ上がれば、クルマの価格を下げることに繋がります」と話す。しかし、同氏はリサイクルには壁もあると考える。例えば、アジアではほこりや湿度の関係で、バッテリーの再利用に限界がある。さらに、リサイクルに関わるテクノロジーはまだ発展途上で、変化が多い。生産からリサイクルまでのプロセスを最初から考えなければいけないという。

稲継氏は「ブリヂストンにとっては、クルマに関わるリサイクルというと、タイヤのリサイルを意味します。そしてタイヤリサイクルはビジネスだと捉えています。リサイクルとは、資源の循環ですので、やはりパートナーとの協力関係の構築と、エコシステムの見直しが鍵ですね」という。

循環型経済へのマイルストーン

ここまでで循環型経済に向けた課題が見えてきた。しかし、実現までのマイルストーンはどう設定していけば良いのか。

ガネシュ氏は先述の「トヨタ環境チャレンジ2050」を挙げ、トヨタは循環型経済の実現目標を2050年に定めていることに言及した。同時に、実現のために考えなければいけないことは多いとも語る。

同氏は「実現には戦略が不可欠です。例えば、カーボンニュートラルはどれくらいの規模でやるのか?トヨタだけでやるのか?政府と組むのか?何か他の組織と協力するのか?など考えなければいけません。トヨタには26カ国 / 地域に50の海外製造事業体があります。それぞれの国にはそれぞれの状況があります。つまり、カーボンニュートラルは一度やっておしまいではなく、それぞれの国でそれぞれの段階で進めなければいけません」と話す。

一方フェージュ氏は「カーボンニュートラルはBMWのゴールです」という。マイルストーンとしては、使用する金属の見直しや、市場の金属供給の精査がまず必要だという。

では、日本のモビリティにおけるカーボンニュートラルのマイルストーンはどうなのだろうか。

ガネシュ氏は、日本政府のサポートが強いことを指摘する。天然資源にそれほど恵まれていない日本では、循環型経済は喫緊の課題であるため、政府の支援も受けやすいという。

稲継氏は「日本の政府とコラボレーションするということは、規制のあり方を考えることでもあり、重要なことです」とガネシュ氏を補足した。

誰がコストを払うべきか

循環経済を実現するには、リサイクル技術の開発や、これまでと異なるプロセスを組み込むことでコストが発生する。ヴァイジャ氏は「こうしたコストや、コストによる自動車価格への影響はどうするべきなのでしょうか」と他の参加者に質問した。

稲継氏は「エコシステム全体でコストを分かち合う必要があると思います」と回答。

フェージュ氏は「素材の再利用で全体プロセスにかかるコストは下げられると思います。新品の素材でも再利用の素材でも、同じ質を担保することが課題となります」と答えた。

ガネシュ氏は「循環型経済のために自動車の価格が変動したら、その変動分を調整しないといけません。では誰が調整するのか?政府でしょうか?顧客でしょうか?自動車メーカーでしょうか?」と問題を提起。さらに、循環型経済は素材の再利用でコストが下がる可能性もあると指摘し「循環型経済で増加したコスト」と「循環型経済で下げられたコスト」のバランスがしばらく変化し続けるだろうと予測する。

さらに、同氏は発展途上国での循環型経済実現はより難しいであろうとも考える。そういった地域では、ロジスティクス用の車両を農業用に作り替えるなどして、1台のクルマに対し1回目の使い方、2回目の使い方、といったふうに複数回の用途を考えることが着手しやすいと指摘した。

「ただし、顧客がこういった車の使い方を望んでいるのか?お金を払いたいのか?というのも考えないといけません」とガネシュ氏は最後に付け加えた。

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コロナ禍でモビリティも変化、いま押さえておくべき5つのトレンドとは?

カテゴリー:モビリティ
タグ:トヨタBMWブリヂストン循環型経済二酸化炭素リサイクル電気自動車

コロナ禍でモビリティも変化、いま押さえておくべき5つのトレンドとは?

人の移動を支えるモビリティは、日々変化している。移動のあり方、移動のニーズも変わってきた。Frost & Sullivan(フロスト&サリバン)でアジア太平洋地区モビリティ部門担当アソシエイト・パートナーを務めるVivek Vaidya(ヴィヴェック・ヴァイジャ)氏は「コロナ禍はモビリティトレンドを変化させました」と語る。

ヴァイジャ氏が明かす、5つのモビリティトレンドとは何か。本記事はフロスト&サリバン主催『インテリジェントモビリティサミット2021 ゼロへのイノベーション』中のセッションの一部講演を編集、再構成したものとなる。

「三密回避」で広がった「脱通勤」のライフスタイル

ヴァイジャ氏が最初に挙げる最初のトレンドは「脱都市化」だ。新型コロナウイルスが広まってからというもの、三密回避のために多くの人が「家で働く」ライフスタイルを始めた。企業のマインドセットも変わり、ワークライフバランスの定義も変わった。

同時に、在宅ワークを可能にするツールの活用が進み、働くためのオフィスは必須ではなくなったため、オフィスの縮小やシェアオフィスの活用も進んでいる。生活エリアとして都市部ではなく、郊外を選ぶ人も出てきている。

通勤が必要なくなると、移動の目的が変わり、移動の形にも影響する。また、公共交通機関の需要も変わる。

ヴァイジャ氏は「通勤が減ると、公共交通機関で運ばれる人数が減ります。そのため、シェアードモビリティなど、需要に合わせて運用できるソリューションの必要性が高まります。さらに、より細かな目的に即したモビリティの需要が高まり、自転車やバイクなど、規模の小さな移動手段の需要も出てきます」と語る。

モビリティの競争が変革される

2つ目のトレンドは「新しい価値創造モデル」だ。

現在、モビリティ周辺の競争のありようは変化しており、ティア1企業は現状より広い役割を果たそうとしている。スタートアップの競争も激化している。さらに、製品の差別化要素はクルマ自体のパワーから、コネクティビティと自動運転へと変化しているという。

ヴァイジャ氏は「モビリティにおける競争の中心は製品そのものではなく、サービスやソリューションに移り変わっています」と指摘する。

また、テクノロジーのライフサイクルはどんどん短くなりながら、そのコストは上がってきている。研究に対するリソースの重要性は増し、自動車メーカーにとって規模の経済の重要性は増すばかりだが、同時に成功の不確実性は高まっている。

「この状況を打開するには、競合企業の協力が不可欠です。コネクティビティと自動運転はバリューチェーンとテクノロジーの中で進化していますが、競合企業同士が手を組むことで、さらに成長しようとしているのです」とヴァイジャ氏。

「新しい価値創造モデル」は、こうした競合企業同士の協力関係の構築から生まれているという。多様なバリューチェーンが集結し、企業の垣根を越えたコラボが活発化している。

モビリティもサブスクリプションモデルへ

3つ目のトレンドは「ビジネスモデルの改革」だ。

これまでの自動車産業では、クルマを販売した自動車メーカーの利益、自動車メーカーに部品を販売したティア1企業の利益というように、バリューチェーンの1つ1つがそれぞれで利益を出していた。しかし、この形に問題が生じてきている。

ヴァイジャ氏は「まず、バリューチェーンの利益が圧力にさらされています。サービスや部品に対する利益が縮小。さらに在宅ワークが増え、通勤が減ったことなどの影響で、これまでの自動車を徐々に買い替え、車種のグレードを上げていくような消費スタイルが変化しつつあります。それにともない自動車メーカーはビジネスモデルを変革する必要があるのです」と問題を指摘する。

では、どのように変革していけば良いのか。ヴァイジャ氏は「サブスクリプション型サービスの導入が鍵です」という。

実際、自動車メーカーはAndroidベースのOSや独自OSを導入してハードウェア、ソフトウェア、アプリケーションのシームレスな統合を果たそうとしている。こうした統合ができれば、自動車メーカーは顧客と長期間、直接的な関係を持つことができる、

ヴァイジャ氏は「例えば、顧客がクルマを買って、そこに駐車アプリがインストールされており、そのアプリに対してサブスクリプション料金が発生するといったモデルが可能です」という。

では自動車メーカーとティア1企業は何をすべきなのか。サブスクリプション型モビリティビジネスの鍵はコネクテッドカーとサービスだ。自動車メーカーはコネクテッドカーに焦点を当て、コネクテッドカーの普及率上昇に務める必要がある。

「コネクティビティのための装置や関連するコストは、コストではなく投資と捉えるべきです。これがあれば自動車メーカーもティア1企業も顧客とつながり続けることができ、マネタイズの機会を持ち続けられます」とヴァイジャ氏。

このような装置から得られたデータを活用し、適切なアプリケーションを提供することで、自動車メーカーとティア1企業はアプリケーションをインストールした車両から継続的なキャッシュを手にすることができる。

ヴァイジャ氏は「こうした方法で既存のビジネスモデルのリスクを回避し、キャッシュフローを改善することができます」と話す。

「自動車産業」のマインドセットから「モビリティ」のマインドセットに

4つ目のトレンドは「カスタマーインターフェイスの再構築」だ。

現在、自動車メーカーはカスタマーインターフェイスをコントロールできる立場にいる。そのため、自動車メーカーは自社のブランドの特徴などを意のままに世に送り出すことができる。しかし、EV(電気自動車)が広まることで新しいプレイヤーが市場に登場し、伝統的な自動車メーカーに挑むようになってきた。さらに、シェアードモビリティやMaaS関連企業がカスタマーインターフェイスの主導権を握ろうとしている。その上、顧客がこれまで「運転すること」で得てきたブランド体験を、自動運転車がなくそうしている。

ヴァイジャ氏は「この状況に対応するには、まず『自動車産業』のマインドセットから『モビリティ』のマインドセットに切り替えることが必要です。これはつまり、製品中心の考えから、サービス中心の考えに移行することです。スタートアップとコラボレーションし、新しいバリュープロポジションに投資し、技術と自動運転を受け入れて独自のサービスを提供することで、サブスクリプション型のビジネスに変化することができるでしょう」と対応方法を提示した。

あらゆる『ゼロ』が唯一の未来

5つ目のトレンドは「ゼロカーボンフットプリント」だ。これを推進しているのはスマートシティだ。「自動車メーカーはこれを無視することはできない」とヴァイジャ氏はいう。再生可能エネルギーへの投資額は上昇し、持続可能性は無視できないテーマだからだ。

「ICE(内燃エンジン車)も2040年くらいまでには使われなくなるでしょう。あらゆる『ゼロ』が唯一の未来です。カーボンフットプリントもゼロ。事故もゼロ。死者もゼロ。100%でリサイクルのゴミもゼロ。欠陥ゼロ。リコールゼロ。100%ESGに則る。企業は倫理を問われているのです。紹介した5つのトレンドを見直し、『何が問われているのか』『何をみられているのか』を考えながら、今後のモビリティを前進させてください」とヴァイジャ氏は語った。

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カテゴリー:モビリティ
タグ:新型コロナウイルス電気自動車自動運転サブスクリプションカーボンフットプリント二酸化炭素ESGコネクテッドカー

BMW i Venturesが持続可能な技術への投資を目的とした約336億円の新ファンドを発表

BMWグループのベンチャーキャピタル部門であるBMW i Venturesは、輸送、製造、サプライチェーンをより持続可能にする技術への投資を促進するため、新たに3億ドル(約336億円)のファンドを設立するとを発表した。

このファンドは、従来のコーポレートベンチャーキャピタルとしては運営されておらず、ドイツの自動車メーカーであるBMWの全面的な支援を受けながら、BMWから独立して活動している。2016年のシリコンバレー移転時に発表した1つ前の5億ユーロ(約660億円)のファンドは、新規投資の期間が終了した。今後、新規投資はファンドIIから行われる。

ファンドIでは、自律走行車やデジタル車両技術、カスタマーエクスペリエンス、先進的な生産に重点を置いていた。例えば、先週、BMW i Venturesからの投資を発表した自律走行トラックのKodiak Robotics(コディアック・ロボティクス)は、このファンドの投資先だった。ファンドIIでは、自動車のコア技術に特化して投資するのではなく、自動車の設計、製造、製造に至るすべての分野で、持続可能性とゼロエミッションをさらに重視していく。

「持続可能なサプライチェーンは、我々が今、本当に関心を寄せていることの1つです」と、BMW i VenturesのマネージングパートナーであるMarcus Behrendt(マーカス・ベーレント)氏はTechCrunchに話した。「BMWは二酸化炭素排出量を大幅に削減したいと発表しました。そのため、自動車からの排出だけでなく、自動車の製造や開発の際に発生する排出も含めて、あらゆる形態の二酸化炭素排出を視野に検討しています」。

BMW i Venturesは、2019年末にこうした持続可能な投資に足を踏み入れ始め、スマートな電気モーターシステムを開発しているTurntide Technologies、固体電池技術のSolid Power、金属産業の脱炭素化を目指すBoston Metalに投資した。ベーレント氏によれば、最近の投資はファンドIIがもたらすものを示唆している。新ファンドの最初の投資先は、英国の中古車販売会社であるMotorwayだ。

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「我々には今、2つの目標があります。第1は財務的な目標で、これは我々の最も重要な原動力です」と、BMW i VenturesのマネージングパートナーであるKasper Sage(カスパー・セイジ)氏はTechCrunchに語った。「世の中のコーポレートベンチャーキャピタルには、投資収益率を気にせず、投資にともなう事業上の取引から利益を得ようとするところもありますが、それは実際には投資先のビジネスを傷つける可能性があります。我々の目標は、その会社をできる限り成功させることです」。

第2の目標は「母艦」であるミュンヘンのBMWグループに戦略的価値を提供することだ。主にアーリーステージの企業に投資することで、早期に市場のシグナルをつかみ、それをBMWに伝えることができる。

「場合によっては、こういう新しい技術が存在し、あなたにも関係のあることかもしれないということを認識してもらうだけです」とセイジ氏はいう。「例えば、当社はLimeに投資しましたが、これはマイクロモビリティであり、自動車との接点はありません。しかし、これは人々がAからBへ移動する方法に関する未来の一部であることを理解することが重要です」。

ベーレント氏とセージ氏はいずれも、BMW i Venturesは投資先を買収する意図はなく、将来的にBMWや他の業界と協力できる可能性の高い企業を見つけるために最前線に立っていたいと話した。

セイジ氏によると、同社はこれまでに12社のイグジットを行い、加えて現時点で6社の上場企業と、最近S-1を申請し、間もなく上場する予定の1社に投資しているという。

「投資をするのに会社の賛同は必要ありません」とベーレント氏はいう。「デューデリジェンスのためにエンジニアに相談したり、他のスタートアップとつながりを持ったりしています。我々は両方の良いところを組み合わせようとしています。つまり、当社はファイナンシャルVCのように行動し、取締役会に席を確保し、ラウンドをリードし、迅速な決断を下すことができます。また、当社は組織内のあらゆるコネクションを企業に提供しています」。

BMW i Venturesが投資するスタートアップ企業は、BMWのエンジニアや社員とのネットワークを築くことができ、また、自動車のエコシステムがどのように機能するかをレガシー企業から学ぶことができるというメリットがある。ベーレント氏によると、Solid Powerのように技術の確立がさらに4、5年先になる企業の場合、BMWの事業部門との間に、そうした企業の成長を支援する強い協力関係があるという。

「これはWin-Winの状況です」とベーレント氏は話す。「当社は彼らを紹介し、会社に連れて行きます。彼らは適切なエンジニアと話をすることになります。契約を獲得できるという保証はありませんが、一緒に仕事をして、模索して、サポートを得て、もしかしたらすばやい解決策で助けてくれるかもしれません」。

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カテゴリー:VC / エンジェル
タグ:BMW持続可能性二酸化炭素排出量二酸化炭素投資ファンド

画像クレジット:MW i Ventures

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Nariko Mizoguchi

ナノ加工された「十四面体」がケブラーを凌ぐ防弾性能を発揮

マサチューセッツ工科大学(MIT)とカリフォルニア工科大学(Caltech)の研究者は、ケブラーや鋼鉄よりも強靭なナノエンジニアリング素材を開発した。この素材は相互に連結した炭素の「十四面体」でできており、微小な弾丸の衝撃を見事に吸収した。

MITのCarlos Portela(カルロス・ポルテラ)教授が主導したこの研究は、ナノメートル単位で設計・製造されたナノアーキテクチャ材料が、超強靭なブラストシールドやボディアーマーなどの保護面として有効な手段となり得るかどうかを調べることを目的としている。

もっとも、十四面体をベースにした材料のアイデアは新しいものではない。複雑な14の面を持つ多面体(約15億通りのバリエーションがある)は、19世紀にLord Kelvin(ケルビン卿)によって、空間をそれ自体の複製で埋めるのに最も効率的な方法の1つとして提案された。

このような多面体を小さな空間にたくさん詰め込み、相互に連結することができれば、効率的なショックアブソーバーとして機能するのではないかと、ポルテラ教授たちは考えた。このような素材は、ゆるやかな変形ではテストされているが、弾丸や微小隕石のような強力な衝撃ではテストされたことがない。

そこで研究チームは、ナノリソグラフィ技術を用いて素材のブロックを組み立て、できあがった構造体を純粋な炭素になるまで焼き上げた。そして、この炭素構造体を、音速をはるかに超える幅14ミクロンのシリコン酸化物の弾丸で撃ったのだ。

画像クレジット:MIT/Caltech

特に密度の高いこの炭素構造体は、衝撃を非常によく吸収し、粒子の動きを止めた。重要なのは、粉々にならずに変形したことだ。

今回の発見についてポルテラ教授は、ニュースリリースで次のように述べている。「ナノスケールの支柱構造による衝撃圧縮の仕組みにより、この素材が大きなエネルギーを吸収できることがわかりました。ナノアーキテクチャではない、完全に高密度なモノリシック構造の素材と比較してということです。同じ質量のケブラーよりも、我々の素材の方が、はるかに効率的に弾丸を止めることができるでしょう」。

興味深いことに、研究者たちは、惑星の表面に衝突する隕石を描写するために一般的に用いられている方法が、衝撃と損傷を最もうまくモデル化できることを発見した。

今回発表されたのは初期実験の結果であり、今すぐに兵士が十四面体の防弾チョッキを着ることはないだろう。しかしこの実験は、このアプローチの有望な将来性を確実に示している。研究チームがこの素材を大規模に製造する方法を発見できれば、あらゆる産業分野で役立つ可能性がある。

この研究は、学術誌「Nature Materials(ネイチャーマテリアルズ)」に掲載された。

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カテゴリー:その他
タグ:マサチューセッツ工科大学カリフォルニア工科大学ナノエンジニアリング炭素

画像クレジット:MIT/Caltech

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

「カーボンKPI」でウェブサイトのカーボンフットプリントを測定するRyte

Ryteの創業者チーム

故郷であるこの惑星に我々が及ぼす影響についての意識が高まり、あらゆることに対してCO2の影響が測定されるようになっている。例えば、つい最近までストリーミングのNetflixが測定可能な影響を環境に与えているとは誰も思わなかっただろう。しかしインターネットの相当な部分をウェブサイトやストリーミングサービスが占めると考えると、何らかの影響はあるはずだ。

その影響を測定する方法を確立した新しいサービスが登場し、スケールするための資金を調達した。

RyteはWebsite User Experience Platformを構築する資金として、非公開だった2021年前半のラウンドで850万ユーロ(約11億2000万円)を調達した。このラウンドはミュンヘンのBayern KapitalとロンドンのOctopus Investmentsが主導した。

Ryteは「Ryte Website Carbon KPI」を発表した。同社は、これにより2023年までに全ウェブサイトの5%をカーボンニュートラルにできるとしている。

Ryteは、データサイエンティストや環境の専門家と協力してウェブサイトが二酸化炭素に関して及ぼしている影響を正確に測定できる機能を開発したと説明している。カーボントランジションのシンクタンクであるThe Shift Projectによると、我々のガジェット、インターネット、そしてこれらを支えるシステムのカーボンフットプリントは、世界の温室効果ガス排出量のおよそ3.7%を占めるという。しかもこの数値は、特にコロナ禍以降のデジタル化社会の影響で急速に上昇しつつある。

Ryteにはデータサイエンティストで気候科学と地球温暖化に関する博士号を持つKatharina Meraner(カタリナ・メラナー)氏が関わっている。またClimatePartnerの協力も得てこの新しいサービスを開始する。

RyteのCEOであるAndy Bruckschloegl(アンディ・ブラックシュルグル)氏は次のように述べている。「現在、アクティブなウェブサイトは1億8900万あります。我々はアクティブなウェブサイトの5%、950万サイトが、我々のプラットフォームと強力なパートナー、ソーシャルメディアの活動などを通じて2023年末までに排出ガス実質ゼロになることを目指しています。残された時間は刻々と減っていきますが、ウェブサイトをカーボンニュートラルにすることは他の産業やプロセスに比べればずっと簡単です」。

Ryteはニカラグアのサンホセで実施されている緑化プロジェクトにも協力しており、Ryteの顧客は気候証明書を購入することにより排出ガスをオフセットすることができる。

Ryteによれば、独自のアルゴリズムを用いてウェブサイト全体のコード、ページサイズの平均、チャネルごとの月間トラフィックを測定し、そのサイトのCO2を計算するという。

似たようなサービスは確かにあるが、他のサービスはアドホックでプラットフォームと結びついていない。Googleを検索すればWebsitecarbonEcosistantなどのサイト、そして学術論文が簡単に見つかる。しかし筆者が知る限りでは、これらのスタートアップはこうしたサービスをプラットフォームに組み込んでいるわけではない。

ClimatePartnerの共同CEOであるTristan A. Foerster(トリスタン・A・フォステル)氏は「Ryteとの協力は、情報テクノロジーが気候変動にどう貢献するかについての認知度を高め、同時に今後を変えるツールを提供することになるでしょう。業界をリードするRyteの二酸化炭素計算機能によって、多くのウェブサイトの運営者が自分たちのカーボンフットプリントを理解し、やむを得ない排出ガスをオフセットすれば、結果として包括的な気候変動対策における戦略の基盤となるでしょう」とコメントした。

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カテゴリー:EnviroTech
タグ:Ryte資金調達二酸化炭素カーボンフットプリント

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(文:Mike Butcher、翻訳:Kaori Koyama)

個人で使えるモジュール状の炭素回収デバイスをHoly Grailが開発・試験中、巨大プラントの時代は終わる

2年前にカリフォルニア州マウンテンビューで生まれたHoly Grailの創業者たちは、炭素の回収という特大サイズの問題をミクロな技術で解決しようとしている。

これは、発電所や工業施設などの大規模な集中排出源から二酸化炭素を回収することを目的とした米国内外の数十のプロジェクトとは異なるものだ。Holy Grailの共同設立者であるNuno Pereira(ヌーノ・ペレイラ)氏は、このアプローチによってコストが削減され、許可や資金調達の必要性がなくなるとTechCrunchに語っている。

Holy Grailの前途には長い開発と試験の段階が待っているが、その考え方は著名な投資家とシリコンバレーの創業者たちの関心とお金を捉えた。Holy Grailは最近270万ドル(約3億円)のシード資金をLowerCarbon CapitalとGoat Capital、Stripeの創業者Patrick Collison(パトリック・コリソン)氏、Charlie Songhurst(チャーリー・ソングハースト)氏、Cruiseの共同創業者Kyle Vogt(カイル・フォークト)氏、Songkickの共同創業者Ian Hogarth(イアン・ホガース)氏、Starlight Ventures、および35 Venturesから調達した。従来の投資家であるDeep Science VenturesとY Combinator、そしてCruiseが買収した自動運転車のVoyageの共同創業者であるOliver Cameron(オリバー・キャメロン)氏らも投資に参加している。

ペレイラ氏によると、その炭素回収デバイスはまだプロトタイプで、サイズや稼働時間など、多くの具体的な問題がまだ残っているという。空気から低コストで二酸化炭素を分離することは、難解なものだ。同社はその技術の特許を出願中であり、使用している素材をはじめ、あまり細部を話せないようだ。しかしそれでもペレイラ氏は、炭素回収に関するこれまでとはまったく異なるアプローチの技術だ、と強調している。

「現在の技術は複雑すぎるものです。基本的に、温度や圧力を利用して炭素を回収するためコンプレッサーや煆焼炉など多くの設備機器を必要とします」とペレイラ氏はいう。従来の技術はポンプや極低温空気分離器などの部品、さらに大量の水とエネルギーなどさまざまな要素がある。対してペレイラ氏たちが使用するのは、二酸化炭素を固定する化学反応を制御するための電気だ。同氏によると、Holy Grailのデバイスはコスト低減を達成するためにスケールメリットに依存しないという。また、モジュール構造なので、積み重ねたり顧客の要件に応じて構成ができる。

ペレイラ氏が「scrubbers(スクラバー)」と呼ぶそのデバイスは、二酸化炭素の変換(二酸化炭素を燃料に変換すること)ではなく、二酸化炭素を「そのまま」取り出す。説明によると、まだ最終製品の姿は未定ではあるが、Holy Grailのユニットがいっぱいになったら同社が回収するようになるとのこと。ただし、炭素がその後どうなるかは未定だ。

同社は、まずカーボンクレジットの販売を開始する。その際、同社のデバイスを炭素削減プロジェクトとして利用する。最終目標はスクラバーを商業利用する顧客に販売し、将来的には個人にも販売する。そうHoly Grailは、あなたにも自分用の炭素回収装置を買って欲しいのだ。そして、家の裏庭に置いて欲しい。とはいえ、そこまでの道のりはまだ相当長いようだ。

「もはや、私たちはメガトン級のプラントを作ってプロジェクト管理をするという規模では物事を考えません。スクラバーは、消費者プロダクトを作るときと同じような組み立てラインで生産します」とペレイラ氏は語る。

同氏によると、大気中の二酸化炭素量を減らすという大きな問題は、「あまりにも大きな問題」であるため複数のアプローチで解決に取り組むことが必要だという。

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カテゴリー:EnviroTech
タグ:Holy Grail二酸化炭素資金調達

画像クレジット:Holy Grail

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hiroshi Iwatani)

ソラコムが施設内の二酸化炭素濃度をIoTセンサーで計測するスターターキットを提供開始

ソラコムが施設内の二酸化炭素濃度をIoTセンサーで計測するスターターキットを提供開始

「IoTテクノロジーの民主化」を目指し、誰もが簡単に活用できるIoTプラットフォームを提供するソラコムは6月15日、CO2(二酸化炭素)・温度・湿度センサーを備えたIoTデバイスとIoT SIM(LTE-M)をパッケージ化した「LTE-M CO2 センサー RS-LTECO2 スターターキット」の提供を開始したと発表した。公式通販サイト「SORACOM IoTストア」において、価格1万9800円(税込、送料別)で購入できる。なお、7月31日までのキャンペーン中は1万7820円(税込、送料別)としており、キャンペーンは在庫限りで終了の予定。

ソラコムが施設内の二酸化炭素濃度をIoTセンサーで計測するスターターキットを提供開始

LTE-M CO2センサー RS-LTECO2

同デバイスは、SORACOMプラットフォームとあらかじめ連携済みとなっており、データの収集と蓄積、ダッシュボード作成と共有までが、SORACOMコンソール画面で設定できる。また、このデバイスを使ってIoTシステムを学習したいというユーザーのために、センシングからデータ可視化までの流れを習得できる2つの支援策が用意されている。

1つは、デバイス専用の「サンプルダッシュボード」の公開。これは、PCやスマートフォンで閲覧できるグラフィカルなダッシュボードを作成共有するためのサービス「SORACOM Lagoon」(ラグーン)用のテンプレートだ。ソースコードのコピー&ペーストだけでデータを可視化できる。

もう1つは、必要な機材一式と開発手順を詳しく解説する「SORACOM IoT DIYレシピ」の提供。ここに、新たに「IoTで、CO2と温湿度を計測し換気促進」が追加された。

同キットの内容やRS-LTECO2仕様は次のとおり。

「LTE-M CO2センサー RS-LTECO2 スターターキット」セット内容

  • LTE-M CO2センサー RS-LTECO2
  • SORACOM IoT SIM(plan-D nanoデータ通信のみ)
  • SORACOMサービス利用料1800円分のクーポン(6ヶ月有効)

「LTE-M CO2センサー RS-LTECO2」仕様

  • 通信方式:LTE-M対応バンド(B1/B2/B3/B4/B5/B8/B12/B13/B18/B19/B20/B28/B39)
  • CO2濃度センサー:SENSIRION SCD40(PASens®方式)
  • 温度・湿度センサー:SENSIRION SHTC3
  • LED:10連LED CO2濃度レベル表⽰、状態・エラー表⽰
  • 電源:USB(USB ACアダプター付属)

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カテゴリー:IoT
タグ:IoT(用語)ソラコム(企業・サービス)炭素 / 二酸化炭素(用語)DIY(用語)日本(国・地域)

KiaとUberが提携し欧州20マーケットのドライバーにEV車両を割引価格で提供

Kia(起亜自動車)のe-Niroとe-Soulの購入、リース、ローン、レンタルにかかる特別ディールを欧州の20マーケットに住むUberドライバーに提供するためにUber(ウーバー)とKia Europeがタイアップする。配車サービス大手Uberの二酸化炭素排出抑制の目標達成に向けた最新の取り組みだ。

Uberは2030年までに欧州全体でゼロエミッションモビリティプラットフォームになることに注力していて、同年までにドライバー3万人にKiaのBEV車両に乗り換えて欲しいと考えている。KiaはUberがドライバーに電気自動車の割引価格を提供する取り組みに加わる最新の自動車メーカーとなる。2021年5月にUberは、配車サービスドライバー向け専用電気自動車の生産でEVメーカーArrivalとの提携を発表した。そして2020年9月にはUberはカナダと米国のドライバーに全電動Chevrolet Boltを割引価格で提供すべくGM(ゼネラル・モーターズ)と提携した

関連記事:配車サービス用のEV生産に向けUberとArrivalが提携

欧州連合が最近制定した法律は、2030年までに二酸化炭素排出量を1990年代に比べて少なくとも55%削減することを目指している。UberのKiaとの提携は、欧州で二酸化炭素排出に関する規制がますます厳しくなることを予想してのことだ。規制に対応するためにUberはまた、2025年までに欧州のプラットフォームでEV10万台超を所有し、アムステルダム、ベルリン、ブリュッセル、リスボン、ロンドン、マドリッド、パリでの走行の半分をゼロエミッション車によるものにすることを目指している。

Kiaは2026年までに11種のEVモデルを発売する準備を進めていて、自社のBEV普及のために今回の提携を活用したいと考えている。e-Niroクロスオーバーは航続距離239マイル(約384km)で、DC急速充電を使えば54分でリチウムイオンバッテリーの80%を充電できる。可愛らしい小型デザインのサブコンパクトクロスオーバーe-Soulの航続距離は243マイル(約391km)だ。

しかし割引があっても、Uberのロンドン拠点ドライバーがEVを購入できるポータルのPartnerPointで提供されているKiaモデルはまだかなり高価だ。Kiaが提供している割引幅は8%で、一方日産の割引幅は13%、Hyundai(現代自動車)は22%だ。Kiaの割引後の車両価格は2万9877.40ポンド(約463万円)〜3万6471.40ポンド(約565万円)で、これはロンドンのドライバーの年間給与とほぼ同額だ。

にもかかわらず、ドライバーはこの割引と、5%のローン利子やClean Air Feeなどその他のインセンティブを活用しているようだ。Clean Air FeeはEVのコストにあてるために1回の乗車あたり3ペンスを集めるというもので、Uberによるとドライバーは年平均3000ポンド(約46万円)を節約できる。

2019年にClean Air Planが導入されて以来、ロンドンでは完全電気自動車の乗車が350万回以上あった。ロンドンのプラットフォームに加わる新しい車の50%ほどが今では完全EVで、広域マーケットではこの数字は8%だ。過去1年でUberプラットフォーム上のEV台数は700台から2100台に増えた。同社は2021年末までにさらに倍増させたいと考えている。

今回の発表ではUberはまた、乗客が排気ガスの少ない車両の配車をリクエストでき、一方でドライバーがそうした乗車にかかるサービス料金の15%割引を受けられるUber Greenという取り組みを2021年末までに欧州60都市に拡大する計画だと述べた。このサービスは現在、ロンドンのゾーン1内から乗車する客にのみ提供されているが、今こそドライバーがプラットフォームを通じて安い維持費とさらなる潜在的な収入を手にするときだとUberは話す。

欧州のUberドライバーはドライバーアプリ、ダイレクトメール、ドライバー向けウェビナーでEVについての情報を収集できる、と同社は述べた。車両の価格はドライバーのローケーションによって異なることはない。

カテゴリー:モビリティ
タグ:UberKia電気自動車二酸化炭素ヨーロッパ

画像クレジット:Kia

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Nariko Mizoguchi

新興EVメーカーFiskerは2027年までに気候変動に影響を与えないEVの製造を目指す

電気自動車メーカーのFisker Inc(フィスカー)は、2027年までに同社初のクライメイトニュートラルな(気候変動に影響を与えない)自動車を作り上げるというムーンショット目標を掲げている。

フィスカーはまだ実際にクルマを販売していない(クライメイトニュートラルであろうとなかろうと)ので、この目標は野心的と言える。「Fisker Ocean(フィスカー・オーシャン)」と名づけられた完全電気自動車のSUVは、2022年11月の生産開始を目指していまだ開発が続けられている途中にあるが、クライメイトニュートラルになるのはこのクルマではなく、Henrik Fisker(ヘンリック・フィスカー)CEOによれば、まだ発表されていない別のクルマになるという。同氏は米国時間6月8日、投資家向け報告の中でこの目標を明らかにした。

ヘンリック・フィスカー氏は、Aston Martin V8 Vantage(アストン マーティンV8ヴァンテージ)や、Aston Martin DB9(アストン マーティンDB9)、BMW Z8など、印象的なクルマのデザイナーとして有名になったシリアルアントレプレナーだ。同氏は投資家向けオンライン会見で、他にもいくつかの最新情報を提供した。フィスカー・オーシャンの航続距離は、これまで推定されていた300マイル(約483キロメートル)を超え、最大350マイル(約563キロメートル)になるという。株主に配布された年次報告書によると、オーシャンには3月の時点で1万4000件以上の予約が入っているとのことだ。

2020年10月に特別買収目的会社のApollo Global Management (アポロ・グローバル・マネジメント)との合併により29億ドル(約3170億円)の評価額で上場したフィスカーは、2025年までに4台の新型車を市場に投入することを目指している。そのうちの1台は、同社のFM29プラットフォーム・アーキテクチャーを採用した「UFO」と呼ばれる高級車になる可能性があると、フィスカーは火曜日に示唆した。

フィスカーのカーボンニュートラル計画

これまでさまざまな業界で多くの企業が、カーボンニュートラルの実現という公約を掲げてきた。ヘンリック・フィスカー氏は、そのクライメイトニュートラルという目標を達成するために、カーボンオフセットを購入するつもりはないことを、投資家に強調した。カーボンオフセットとは、企業がプロジェクトや製品でCO2削減を「主張」するために購入できるクレジットのことだ。代わりにフィスカーでは、サプライヤーと協力して、気候変動に影響を与えない材料や製造プロセスを開発すると述べている。

同社のウェブサイトでは、提案している戦略の一部が紹介されている。そこでは自動車のライフサイクルを「調達」「製造・組立」「物流」「使用段階」「廃車」という5つの段階に分け、それぞれの段階でいくつかのポイントを上げている。例えば「製造の現地化」とか「100%再生可能エネルギーの使用」などだ。しかし、このような計画を立てても、自動車生産においてクライメイトニュートラルを実現することは非常に難しい。例えば、自動車には脱炭素化が困難なことで知られる鉄鋼などの素材や部品が使われているからだ。

フィスカーによると、同社の製造パートナーはそれぞれにクライメイトニュートラルを目標として掲げており、それは自動車の受託生産会社であるMagna Steyr(マグナ・シュタイヤー)にも当てはまる。欧州でフィスカー・オーシャンを独占的に製造する契約を結んでいる同社は、欧州では2025年までに、グローバルでも2030年までにクライメイトニュートラルを実現する目標を立てている。また「Project PEAR(プロジェクト・ペアー)」と呼ばれるフィスカーが2番目に発売予定のより低価格なクルマで主要なパートナーとなるFoxconn(フォックスコン)も、今世紀半ばまでにゼロエミッションの実現を目指している。

このようなムーンショット目標は、製造プロセスの革新を促進し、他の自動車メーカーやサプライヤーが同じ目標を目指すことを助長する可能性がある。他の自動車メーカーのPolestar(ポールスター)やPorsche (ポルシェ)は、いずれも2030年を期限とするカーボンニュートラルを約束しており、Mercedes(メルセデス)はその目標を2039年に設定している。

フィスカーは、EV用バッテリーが使用できなくなった際のリサイクルや再利用の方法も考えているようだ。同社は推定15年とされる車両の寿命の全期間に渡るリースプログラムの拡張を計画しており、これが実際に導入されれば、理論上では、寿命を迎えた多くの車両をフィスカーが所有することになる。

関連記事:フォックスコンと米Fiskerが電気自動車製造に関する正式契約を締結

カテゴリー:モビリティ
タグ:Fisker Inc気候変動クライメイトニュートラル電気自動車カーボンニュートラル二酸化炭素

画像クレジット:Fisker

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

牧場経営者のCO2排出量削減を支援、家畜用の新しい環境アセスメントサービス

持続可能な畜産 / 農業において、測定作業は、食糧システムを炭素排出源から炭素吸収源へと転換するプロセスの、最初のそして時には最も困難なステップだ。

そこで、農業を中心とした食糧システムに科学的に注力するDSMと、持続可能性のためのデータ分析を行うコンサルティング会社Blonk(ブロンク)が共同開発したのがSustell(サステル)だ。これは、牧場主が自らの農場経営の持続可能性を理解し、改善するための、ソフトウェアと実践的なサービスを組み合わせたものだ。

持続可能で再生可能な農業の定義は統一されていいないが、通常、土壌中の炭素をより多く回収するための土地管理方法の工夫、より環境に優しい家畜飼料の使用、トラクターなどの農機具による化石燃料使用量の削減など、さまざまな変更が行われる。目標は、温室効果ガスの約14.5%にあたる、畜産業から排出される7.1ギガトンのCO2を削減することだ。

DSMのサステナビリティ&ビジネスソリューション担当副社長のDavid Nickell(デビッド・ニッケル)氏は「動物生産の状況を個々の農場レベルまで正確に把握することが強く求められています」という。「もちろん個々の農場の状況は極めて異なっています。そして、実際の農場のデータを使用して、その農場の正確な姿を把握できるシステムが必要なのです」。

このシステムは気候変動、資源利用、水不足、流出、オゾン層破壊など、19種類のカテゴリーについて、対象の農場の活動が環境に与える影響を分析する。農家は飼料の成分や使用量、糞尿の管理方法、動物の死亡率、電力システムなどのインフラ、輸送ロジスティックス、ガス浄化装置や余熱循環システムなどの緩和技術などの、日々のオペレーションに関するデータを提供するが、場合によってはそれらはソフトウェアにパッケージングされる。

そして、Blonkの環境フットプリント技術は農場のライフサイクルアセスメントを作成する。これは、家畜の飼育開始から農場のゲートを出るまでの環境影響を分析するものである。DSMとBlonkは、鶏、豚、乳製品や卵の生産など、ほとんどの陸上の農場家畜用にSustellモジュールを作成しており、今後は牛や水産養殖にも拡大していく予定だ。

Blonk Consultants(ブロンク・コンサルタンツ)ならびにBlonk Sustainability Tools(ブロンク・サステナビリティ・ツールス)のCEOであるHans Blonk(ハンス・ブロンク)氏は「本当に重要なのは、これまで開発されてきた方法論や基準の流れの上に乗せることができたことです」と語る。

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Blonkは、国連食糧農業機関や欧州委員会などの農業環境基準を1つにまとめ、そのソフトウェアが有用で実用的な洞察を得るために必要な、基礎データの膨大なライブラリを作成した。

「現在のお客さまは、ご自身が何をしているのかを理解したいと思っていらっしゃいます」とニッケル氏はいう。「ご自身のベースライン(フットプリント)を理解し、それをランク付けしたいと考えていらっしゃるのです。何が良くて、何が良くないのかを理解なさりたいということです。お客さまは、国や業界のベンチマークなど、他のベンチマークと比較して自分たちがどのような評価を受けているのかを知りたがっていらっしゃいます」。

Sustellソフトウェアによって農場の排出量が明らかになると、農家は改善すべき点を特定し、DSMは排出量を削減する方法の実施を支援します。これにより、顧客にエンド・ツー・エンドのサービスを提供し、地球に良い影響を与えることができるのだ。

「実践的な介入によって、変化を起こすことができます」とニッケル氏はいう。「私たちは、家畜製品生産のフットプリントを削減する技術に投資してきました。サービスの内容は測定であり、それを変化を生み出すソリューションと結びつけることです。これこそが、この切実な変化を実現するための完全なソリューションなのです」。

しかし、Sustellがその変化を生み出すためには、広く採用され、競合他社との間で学びを共有する必要がある。現在のDSMや、ある意味では資本主義のシステムは、それに対応できるようには作られていない。

ニッケル氏によれば、DSMはまず、Sustellを大手総合畜産会社に持ち込むことに焦点を当てている。これは、革新的な新しい環境技術が、資金や資源のある大手農業コングロマリットや協同組合に採用されて、小規模な家族経営の農場は取り残されてしまうという普遍的な課題となる。しかし、ニッケル氏は、Sustellを小規模な農場にも対応できるようにしたいと考えている。

2つ目の問題は、データの共有だ。ニッケル氏は、Sustellがデータのプライバシーや所有権に関する規則を遵守することを明確に述べているが(これは通常良いことだ)、実際、本当に意味のある環境変化を起こすためには、透明性が重要だ。競合他社同士は、その排出量削減のための最良の方法を、皆が採用して地球を救うために共有する必要があるが、多くの企業はデータを強く囲い込んでいる。

「データ共有は、時間の経過とともに進んでいくと思います」とニッケル氏はいう。「まだその段階には達していないのです。おそらく、より多くのお客様がフットプリントとその報告についての透明性を高められることで、そうしたレベルになるのかもしれません」。

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カテゴリー:EnviroTech
タグ:農業畜産二酸化炭素持続可能性カーボンフットプリント

画像クレジット:NitiChuysakul Photography / Getty Images
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(文:Jesse Klein、翻訳:sako)

EUがゲイツ氏のBreakthrough Energyと提携、クリーンテックの開発・浸透加速へ

欧州委員会は、今後5年間(2022〜2026年)で最大10億ドル(約1095億円)をクリーンテックと持続可能なエネルギープロジェクトへ新たに投資することを目的に、Bill Gates(ビル・ゲイツ)氏の持続可能エネルギー投資ビークルとの提携を発表した

この提携がフォーカスする欧州連合(EU)ベースのプロジェクトはまず、欧州域内の二酸化炭素排出の大幅削減をもたらす可能性がある以下の4つの部門に絞られる。

  • グリーン水素
  • 持続可能な航空燃料
  • ダイレクトエアキャプチャー(大気中のCO2を直接回収するテック)
  • 長期間のエネルギー貯蔵

化石燃料ベースの既存のテクノロジーと競うには現在あまりにも高価であるテクノロジーを大規模展開するのが目的だ。

両者は今後、11月に開催される国連気候サミットCOP26会議で何か発表することを視野に入れながらプログラムの計画に引き続き取り組むと述べた。

欧州委員会とゲイツ氏のBreakthrough Energy(ブレークスルーエナジー)が持続可能な投資で協業するのは今回が初めてではない。しかし最新の提携の規模は、EUが2019年にBreakthrough Energyのベンチャー投資部門と設置した1億ユーロ(約134億円)のファンドを大きく上回る。

そして今、欧州委員会は低炭素社会を支えるのに必要なテクノロジーの開発と浸透を加速させることを目的とするゲイツ氏のBreakthrough Energy Catalystと提携した。クリーンテクノロジーのための大規模な商業実証プロジェクトを構築するのに、先の基金の10倍超の規模の資金を動員するためだ。

もちろん重要な目標は、パリ協定に沿ってCO2排出を大幅に削減するためにクリーンテックのコストを下げ、展開を加速させることだ。

欧州はCO2排出の主要地域だが、欧州グリーンディールの下で2050年までにネットゼロエミッションを達成することを約束している。

一方、2015年に設立したBreakthrough Energyビークルについてのゲイツ氏の哲学は、壊滅的な気候変動を回避するにはリニューアブル(再生可能)だけでは十分でなく、ハイリスクではあるが大きな効果をもららす可能性のあるさまざまなテクノロジーへの投資も必要、というものだ。

しかしこの手の投資のリターンを得るのは長期戦であることを考えると、官民の提携は資金調達パズルの重要な一部のようだ。

提携発表に関するコメントとして、 欧州委員会の委員長Ursula von der Leyen(ウルズラ・フォン・デア・ライエン)氏は声明文で次のように述べた。「欧州グリーンディールで、欧州は2050年までに初の気候中立大陸になりたいと考えています。そして欧州は気候イノベーションの大陸になるすばらしい機会も手にしています。このために欧州委員会は今後10年で、新しい、そして転換中の産業にかなりの投資を集中させます。だからこそ、Breakthrough Energyと手を組むことをうれしく思っています。提携はEUの企業やイノベーターが二酸化炭素排出を減らすテクノロジーの恩恵を受け、明日の雇用を生み出すのをサポートします」。

別の声明文でBreakthrough Energy創設者であるゲイツ氏は次のように述べた。「世界経済の脱炭素化は世界が今までに目にしてきたイノベーションにおいて最大の機会です。欧州は気候、そして科学、エンジニアリング、テクノロジーにおける長年のリーダーシップに早期から一貫したコミットメントを示してきて、今後も重要な役割を果たします。この提携を通じて欧州はクリーンテクノロジーが皆にとって信頼がおけ、利用可能で、そして利用しやすいものになるというネットゼロの未来のために確固たる土台を築きます」。

EU側では、提携のための資金はEUの主要R&D基金、Horizon Europe、そしてInvestEUプログラムのフレームワーク内の低炭素にフォーカスしたInnovation Fundから拠出される見込みだ。

Breakthrough Energy Catalystはいくつかの選ばれたプロジェクトの資金をまかなうために同額の民間資金と慈善事業基金を注ぐ。

提携はまた、InvestEUを通じてあるいはプロジェクトレベルでEU加盟国による国家の投資にもオープンだ、と欧州委員会は指摘した。InvestEU実行パートナーになるという意思表示は2021年6月まで受け付ける、とも付け加えた。

再生可能エネルギーと(これまで以上に)クリーンな運輸は、欧州委員会が2020年まとめた7500億ユーロ(約100兆3237億円)という巨額の「Next Generation EU」コロナ復興基金においても注力している分野だった。欧州委員会はコロナ復興のために債券発行を通じて金融市場で借金する、と述べた。コロナ復興基金は2021年から2024年の間にEUプログラムを通じて使われる。

欧州議員たちはまた、主要な投資が向かう他のエリアのデジタル化とAIテクノロジーが欧州のグリーン移行において大事な役割を果たすとの考えも示した。

カテゴリー:EnviroTech
タグ:EUビル・ゲイツBreakthrough Energy二酸化炭素

画像クレジット:Mark Lennihan / AP

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Nariko Mizoguchi

南アフリカの自動車サブスクリプション会社Planet42がカーボンニュートラルを目指す理由

UberやBoltのような配車サービス企業が交通業界の在り方を覆して以来、彼らの悩みの種となってきたのは交通渋滞と公害だ。調査によると、自家用車よりも配車車両による移動の方が排出量が多いことが示されている。

二酸化炭素排出量を削減して後者の問題を解決するべく、両社はライドシェアリングや、自転車やスクーターのシェアリングサービスといった他の交通モデルの構想を打ち出してきた。また、公共交通機関のスケジュールに合わせたサービス提供や、ドライバーに電気自動車への切り替えを促すインセンティブの提供などにも取り組んでいる。しかし、これらのモデルはほとんど成功していない。

2018年、Lyftはさらに一歩踏み込んで、カーボンニュートラルの実現を宣言した。Atlanticによると、Lyftはサンフランシスコに拠点を置くサステナビリティ企業3Degreesからカーボンクレジットを購入することで、その取り組みを実行する計画を立てた。

Lyftは2019年の一年間で、240万エーカーの木を植樹するのに匹敵する量の炭素を削減したと発表した。同社は206万2500トンのカーボンオフセットを購入してこれを達成したが、2020年には従来の路線に回帰している。

このプログラムによってLyftはカーボンニュートラルを実現したものの、これはコストのかかるプロセスだった。同社は、配車サービスによって排出される正味の炭素排出量は長期的に見て引き続き増加するだろうと主張した。そのためLyftは2030年までに乗車の提供を電気自動車に限定すると宣言した。これは世界中の大半の自動車会社と同じであり、各社とも将来的に電気自動車を通じてカーボンニュートラルを達成することを約束している。

一方、南アフリカに拠点を置く自動車会社Planet42は、カーボンニュートラルを将来的にではなく今現在達成することを目指している。だがPlanet42は配車サービス会社ではない。ディーラーから中古車を購入し、サブスクリプションモデルで顧客に貸し出すサブスクリプションサービスを展開している。

関連記事:Polestarが2030年までに温暖化ガスの排出量をすべて見直して初の「クライメートニュートラル」なEV開発を目指す

Marten Orgna(マルテン・オルグナ)氏とEerik Oja(エリック・オジャ)氏によって設立されたPlanet42は、新興市場の個人をターゲットにしているが、その事業展開はアフリカに限定されている。同社はこれまでに南アフリカで3000台近くの車を調達しており、今後数年間で10万台に増やし、2025年までに全世界で100万台にする計画だ。

こうしたことからPlanet42は、配車サービスを提供しておらず、本来ならクルマを所有していない人々にクルマを提供するという点で社会的に大きなプラスの影響を与えているにもかかわらず、そのクルマから生じる排出ガスによって、限定的ではあるが環境上マイナスの影響をもたらしている。

多くの自動車会社はカーボンニュートラルになることに無気力になっているようだが、Planet42は間接的にどのように排出量に貢献するかを検証し、2020年行動に踏み切った。

「カーボンニュートラルになるという目標は価値がないと主張する人はほとんどいないと思いますが、世界はカーボンニュートラルに向けて十分な速さで進んでいないように感じました」とオジャ氏はTechCrunchに語った。「そこで私たちは、2040年までにカーボンニュートラルになるといった空虚な大構想を打ち出すのではなく、現時点でカーボンニュートラルを実現することを決断しました」。

画像クレジット:Planet42

電気自動車はアフリカではほとんど普及しておらず、植林にはコストがかかるが、同社はどのように取り組んでいるのだろうか。

Lyftの植林プロジェクトを支援する前に、3Degreesはいくつかの風力発電所の事業に関わり、また埋立地プロジェクトから温室効果ガスを回収した。Planet 42は風力発電所事業によるカーボンニュートラルの実現を選んだが、この取り組みに向けては南アフリカの現地企業と協力している。

最初のプロジェクトは南アフリカのノーザンケープ州にある風力発電所で、カーボンオフセットクレジットからの資金により、Planet 42はこの発電所に何カ月にもわたって資金の提供をすることができた。風力タービンから発電される電力は、石炭を燃やしたり、低炭素世界経済を支えるなど、他のより有害なエネルギー生産方法を相殺する。

「当社が及ぼすマイナスの影響を相殺するため、当社が事業を展開している市場でカーボンオフセットプロジェクトに投資しています。言い換えれば、当社がカーボンニュートラルに投資することは、自ら課した税に相当します。当社が率先して取り組むことで、アフリカやその他の地域の企業が追随してくれることを願っています」。

融資と株式で2000万ドル(約22億円)を調達した同社が最初にローンチしたときは、カーボンニュートラルを達成することは将来的な構想でさえもなかった。しかし今では、Natural Capital Partnersによってカーボンニュートラル企業として認定されただけでなく、投資家たちがこのプロジェクトに大きな関心を寄せている。

オジャ氏によると、同社の次の目標は、究極的には電気自動車によってカーボンニュートラルを達成することだが、その実現性は十分にあるだろう。アフリカにおける電気自動車の導入は、米国、欧州、さらにはその他の新興市場が抱える問題とは異なる別の問題に直面している。まず電力料金が高く不安定な電力供給が行われているという深刻な燃料上の問題がある。さらに、税制上の優遇措置、補助金、政策が全般的に欠如しているということ、そして平均的なアフリカの自動車所有者には高価すぎるという事実があげられる。

例えば、米国では100万台以上英国では31万7000台以上の電気自動車が走っているが、Planet42の主要な市場であり、アフリカでトップの電気自動車市場である南アフリカではその数は約1000台にとどまっている。したがって、電気自動車が主流になるまでは、風力発電は同社のカーボンニュートラルへの取り組みに欠かせないものとなる。

「理想的には、私たちが実現を目指しているのは当社の車が電気自動車になることであり、それこそが私たちが将来に向けて計画していることです。そうすることで日々のオフセットは必要なくなりますが、私たちはまだそこに至っていません。最終的には電気自動車が理想的であることを誰もが理解しています。しかし、その未来は手元にあるものではないため、今すぐ行動していく必要があります」とCEOは語っている。

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カテゴリー:EnviroTech
タグ:南アフリカPlanet42カーボンニュートラル二酸化炭素中古車電気自動車

画像クレジット:Planet42

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(文:Tage Kene-Okafor、翻訳:Dragonfly)

サプライチェーンの温室効果ガス排出量計測・管理をAIで自動化するEmitwiseがシード約3.5億円を追加調達

AIプラットフォームで企業とそのサプライチェーンからの温室効果ガス排出量を測定できるとするスタートアップのEmitwiseは、シードラウンドに320万ドル(約3億5000万円)を追加し、これで同社が調達したシード資金の総額は660万ドル(約7億2000万円)となった。320万ドルの追加調達はArcTern Venturesが主導した。また、Schroders(シュローダー)のCEOであるPeter Harrison(ピーター・ハリソン)氏、テトラパックのファミリー後継者Magnus Rausing(マグナス・ラウシング)氏、そしてUber(ウーバー)の共同創業者Ryan Graves(ライアン・グレイブス)氏の投資会社であるSaltwaterなどのエンジェル投資家も参加した。その他の投資家には、True Ventures、Social Impact Capital、Lightbird Venturesなどが含まれている。

同社はこのプラットフォームにより、サプライチェーン全体のカーボンアカウンティング(炭素会計)の自動化、排出ホットスポットの特定、ERPシステムとの統合、CDP、GHG、TCFDなどの監査・開示システムへの準拠を実現するとしている。

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Emitwiseの共同創業者兼CEOであるMauro Cozzi(マウロ・コッツィ)氏は、次のように述べている。「きたるCOP26気候サミットで各国首脳が気候変動への取り組みを強化する中、企業や投資家の間では、『炭素イコール コストとリスク』という確信がかつてないほど高まっています。ネットゼロに合致したモデルは、利益・効率性・耐性を代弁するものであり、当社は企業が変革により大きな経済的利益を実現できるよう支援することを約束します」。

ArcTern VenturesのMarc Faucher(マーク・フォーシェ)氏は次のように述べた。「企業は顧客、投資家、そして規制当局から正確な環境データを開示するように迫られています。Emitwiseは、効果的な緩和策やインセンティブを導入する上で重要となる、サプライチェーンのカーボンを明確に把握できるようにします。ArcTern Venturesでは、Emitwiseのソフトウェアプラットフォームは、世界共通のカーボンフットプリント報告の新しい基準となるゲームチェンジャーだと信じています」。

EmitwiseはWatershedsやPlan Aなどを含むこの分野の他のスタートアップとある程度競合しており、これらの企業も最近資金調達を行った。

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タグ:温室効果ガス人工知能Emitwise資金調達カーボンアカウンティング二酸化炭素

画像クレジット:Emitwise team

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(文:Mike Butcher、翻訳:Dragonfly)

多数の著名投資家が支援するカーボンオフセットマーケットPachamaが約16億円調達

世界の森林の復元と保全は、大気中の温室効果ガスを減らす最も簡単でコストも安く、シンプルな方法の1つだと長い間考えられてきた。

脱炭素、あるいは事業から排出される炭素の相殺に向けた長い道のりにおいて、簡単な最初のステップを模索している企業にとっては圧倒的に人気の手法だ。しかしこのところ、Bloombergの爆弾のような報道のおかげで、数多くの森林オフセットの効率、妥当性、そして信頼性には疑問の目が向けられてきた。

森林カーボンクレジットのためのマーケットプレイスを構築しているPachama(パチャマ)の財務を投資家が補強することになったというのは、この不確実な背景に反するものだ。このマーケットプレイスについて同社は、衛星画像と機械学習テクノロジーのおかげで透明性があり、検証可能だと話す。

そうした主張は新規ラウンドで1500万ドル(約16億円)をもたらした。共同調達した資金はプロダクト開発とマーケットプレイスの拡大に使われる、と創業者でCEOのDiego Saez Gil(ディエゴ・サエズ・ギル)氏は話した。

わずか1年前に創業されたPachamaは著名な顧客や投資家を獲得してきた。(Amazonがどれくらいマイナスの影響を地球に及ぼしたか考えると)他ならぬJeff Bezos(ジェフ・ベゾス)氏が、役職を間もなく離れるCEOとして株主に宛てた手紙でPachamaに言及した。南米最大のeコマース企業Mercado Libreは持続可能性に向けた広範な取り組みの一環として80万ドル(約8700万円)のオフセットプロジェクトの管理でPachamaを選んだ。

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AmazonのClimate Pledge Fundは最新ラウンドに出資している。この最新ラウンドはBill Gates(ビル・ゲイツ)氏の投資部門Breakthrough Energy Venturesがリードした。他の投資家にはLowercarbon Capital(Uberへの投資で成功したエンジェル投資家のChris Sacca[クリス・サッカ]氏の気候専門のファンド)、元Uber幹部Ryan Graves(ライアン・グレーブズ)氏のSaltwater、MCJ Collectiveが、そして新規投資家としてTim O’Reilly(ティム・オライリー)氏のOATV、Ram Fhiram(ラム・フィラム)氏、Joe Gebbia(ジョー・ゲビア)氏、Marcos Galperin(マルコス・ガルペリン)氏、NBAスターのManu Ginobili(マヌ・ジノビリ)氏、James Beshara(ジェームズ・ベシャラ)氏、Fabrice Grinda(ファブリス・グリンダ)氏、Sahil Lavignia(サヒール・ラヴィニア)氏、Tomi Pierucci(トミ・ピエルッチ)氏がいる。

これは同社の投資家のフルリストではない。Pachamaの成功の理由はGoogle、Facebook、SpaceX、Tesla、OpenAI、Microsoft、Impossible Foods、Orbital Insightsなどの企業からトップの人材を引きつける能力と併せて、十分に理解された森林オフセットマーケットに気候ミッションを適用していることだ、とサエズ・ギル氏は話した。

「自然の回復は気候変動の最も重要なソリューションの1つです。森林、海洋、その他のエコシステムは膨大な量の二酸化炭素を大気から隔離するだけでなく、多様な生物に重要な生息地を提供し、世界中のコミュニティの暮らしの源です。当社は誠実さ、透明性、そして効率性をもって資金をこうしたエコシステム回復と保全に振り分けられるようにするのに必要なテクノロジーを構築しています」とサエズ・ギル氏は説明した。「我々のミッションを信じ、長期的に成長を喜んで支えようという気持ちを示している、信じられないような投資家のグループからサポートを得ることができ、名誉に思うと同時に興奮しています」。

南米以外の顧客もまたPachamaのオフセットマーケットプレイスへのアクセスを求めている。Microsoft、Shopify、SoftBankも有料の顧客だ。

これはY Combinator、Social Capital、Tobi Lutke、Serena Williams、Aglaé Ventures (LVMHのテック投資部門)、Paul Graham(ポール・グレアム)氏、AirAngels、Global Founders、ThirdKind Ventures、Sweet Capital、Xplorer Capital、Scott Belsky(スコット・ベルスキー)氏、Tim Schumacher(ティム・シューマッハ)氏、Gustaf Alstromer(グスタフ・アルストロマー)氏、Facundo Garreton(ファクンド・ガレトン)氏、Terrence Rohan(テレンス・ローハン)氏が、Pachamaの2020年の創業以来の調達資金2400万ドル(約26億円)の支援を約束できたもう1つの理由だ。

「Pachamaは大気から二酸化炭素を取り除く自然の潜在能力をフルに引き出すべく取り組んでいます」とBreakthrough Energy VenturesのCarmichael Roberts(カーマイケル・ロバーツ)氏は声明で述べた。「Pachamaのテクノロジーベースのアプローチは、インパクトのあるカーボンニュートラルイニシアチブを認証、モニター、測定するための森林分析に機械学習モデルを使うことで巨大な相乗効果を生み出します。Pachamaのチームが短期間に成し遂げた成果に感銘を受け、彼らのユニークなソリューションをグローバル展開するために協業することを楽しみにしています」。

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タグ:Pachamaカーボンオフセット資金調達二酸化炭素

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(文:Jonathan Shieber、翻訳:Nariko Mizoguchi

水素燃料電池飛行機へのZeroAviaの野望は技術的な課題が残るが大志は今なお空のように高い

2020年9月、ZeroAvia(ゼロアビア)の6人乗り航空機が英国クランフィールド空港から離陸して8分間の飛行を終えた時、同社は、商用サイズの航空機で史上初の水素燃料電池飛行を行うという「非常に大きな偉業」を成し遂げたと断言した。

この航空機はPiper Malibu(パイパーマリブ)プロペラ機を改造して作られており、同社によると、水素を燃料とする航空機の中では世界最大のものである。「水素燃料電池を使用して飛行する実験的な航空機はいくつかあったが、この機体の大きさからすると、完全にゼロエミッションの航空機に有償旅客を乗せる時代が目前に迫っている」と、ゼロアビアのCEOであるVal Miftakhov(ヴァル・ミフタコフ)氏は付け加えた。

しかし、水素を燃料としているといっても、実際にはどのような状況なのだろうか。乗客の搭乗はどの程度現実味を帯びているのだろうか。

ミフタコフ氏は飛行直後の記者会見で「今回の構成では、動力をすべて水素から供給しているわけではなく、バッテリーと水素燃料電池を組み合わせている。しかし、水素だけで飛行することも可能な組み合わせ方だ」と述べた。

ミフタコフ氏のコメントはすべてを物語っているわけではない。TechCrunchの調査では、今回の画期的なフライトに必要な動力の大半がバッテリーから供給されたこと、そしてゼロアビアの長距離飛行や新しい航空機で今後もバッテリーが大きな役割を果たすことがわかった。また、マリブは技術的には辛うじて旅客機と言えるかもしれないが、大型の水素タンクやその他の機器を収容するために、5つの座席のうち4席を撤去しなければならなかったのも事実だ。

ゼロアビアは、ピックアップトラックでの航空機部品のテストから始めたが、4年も経たないうちに英国政府の支援を得るまでになり、Jeff Bezos(ジェフ・ベゾス)氏やBill Gates(ビル・ゲイツ)氏、そして先週にはBritish Airways(ブリティッシュエアウェイズ)などからも投資を呼び込んだ。現在の問題は、ゼロアビアが主張している軌道を進み続け、本当に航空業界を変革できるかどうかだ。

離陸

航空機が排出する炭素の量は、現在、人類の炭素排出量の2.5%を占めているが、2050年までには地球のカーボンバジェット(炭素予算)の4分の1にまで拡大する可能性がある。バイオ燃料は、その生産によって木や食用作物が消費し尽くされる可能性があり、バッテリーは重すぎるため短距離飛行にしか使用できない。それに対し、水素は太陽光や風力を使用して生成でき、大きな動力を生み出すことができる。

燃料電池は水素と空気中の酸素を効率的に反応させて結合させるもので、生成されるのは電気、熱、水だけである。ただし、既存の航空機に燃料電池をすぐに搭載できるかというと、話はそう単純ではない。燃料電池は重くて複雑であり、水素には大型の貯蔵庫が必要だ。このようにスタートアップが解決しなければならない技術的な課題は多い。

ロシア生まれのミフタコフ氏は、1997年に物理学博士号の取得を目指して勉強するために渡米した。いくつかの会社を設立して、Google(グーグル)で勤務した後、2012年に、BMW 3シリーズ用の電気変換キットを製造するeMotorWerks(EMW、eモーターワークス)を設立した。

しかし2013年、BMWは同社の商標を侵害しているとしてEMWを非難した。ミフタコフ氏はEMWのロゴとマーケティング資料を変更すること、そしてBMWとの提携を示唆しないことに同意した。ミフタコフ氏はまた、BMWオーナーからの需要が落ち込んでいることにも気づいていた。

EMWはその後、充電器とスマートエネルギー管理プラットフォームの提供にビジネスの軸を移した。この新しい方向性はうまくいき、2017年にはイタリアのエネルギー会社Enel(エネル)がEMWを推定1億5000万ドル(約162億円)で買収した。しかしミフタコフ氏はここでも法的問題に直面した。

EMWのVPであるGeorge Betak(ジョージ・ベタック)氏はミフタコフ氏に対して2件の民事訴訟を起こし、ミフタコフ氏が特許からベタック氏の名前を除外したり、報酬を渡さなかったり、さらにベタック氏が自分の知的財産権をEMWに譲渡したように見せかけるために文書を偽造したりした、などと主張した。後にベタック氏は請求を一部取り下げ、2020年夏にこの訴訟は穏便な和解に至った。

2017年にEMWを売却してから数週間後、ミフタコフ氏は「ゼロエミッション航空」という目標を掲げ、カリフォルニア州サンカルロスでゼロアビアを法人化した。ミフタコフ氏は、既存の航空機の電気化への関心がBMWのドライバーよりも高い航空業界に期待していた。

第1段階:バッテリー

ゼロアビアが初めて公の場に登場したのは、2018年10月、サンノゼの南西80キロメートルにあるホリスター空港だった。ミフタコフ氏は、1969年型エルカミーノの荷台にプロペラ、電気モーター、バッテリーを据え付け、電気を動力として75ノット(時速140キロメートル)まで加速させた。

12月にゼロアビアは6人乗りのプロペラ機であるPiper PA-46 Matrix(パイパーPA-64マトリックス)を購入した。このプロペラ機は後に英国で使用することになる航空機と非常によく似ている。ミフタコフ氏のチームは、モーターと約75キロワット時のリチウムイオンバッテリーをこれに搭載した。このバッテリーは、テスラのエントリーレベルのモデルYとほぼ同じ性能である。

2019年2月、FAAがゼロアビアに実験的耐空証明書を発行した2日後、電気だけを動力とするパイパーが初飛行に成功した。また、4月中旬には最高速度と最大出力で飛行していた。これで水素にアップグレードする準備は整った。

輸入記録によると、3月にゼロアビアは炭素繊維製水素タンクをドイツから取り寄せている。マトリックスの左翼にタンクを搭載した写真が1枚存在するが、ゼロアビアは飛行している動画を公開したことがない。何か不具合が起こっていたのだ。

ゼロアビアのR&Dディレクターが、パイパーオーナー向けのフォーラムに次のようなメッセージを投稿したのは7月のことだ。「大事に扱ってきたマトリックスの翼が破損しました。損傷が激しく、交換しなければなりません。すぐにでも部品取り用に販売される『適切な航空機』をご存知の方はいませんか」。

ミフタコフ氏は、今までこの損傷について明言してこなかったが、今回、ゼロアビアが航空機に手を加えている最中にこの損傷が発生したことを認めた。この損傷の後、その航空機は飛行しておらず、ゼロアビアはシリコンバレーにおけるスタートアップとしての活動を終えようとしていた。

英国に移る

ミフタコフ氏は、ゼロアビアの米国での飛行テストを中断し、英国に目を向けた。英国のBoris Johnson(ボリス・ジョンソン)首相が「新たなグリーン産業革命」に期待しているからだ。

2019年9月、英国政府が支援する企業であるAerospace Technology Institute(航空宇宙技術研究所)(ATI)は、ゼロアビアが主導するプロジェクト「HyFlyer(ハイフライヤー)」に268万ポンド(約4億100万円)を出資した。ミフタコフ氏は、水素燃料電池を搭載し、飛行可能距離が450キロメートルを超えるパイパーを1年以内に完成させると約束した。出資金は、燃料電池メーカーのIntelligent Energy(インテリジェントエナジー)および水素燃料供給技術を提供するEuropean Marine Energy Centre(EMEC、ヨーロッパ海洋エネルギーセンター)との間で分配されることになっていた。

当時EMECの水素マネージャーだったRichard Ainsworth(リチャード・エインズワース)氏は「ゼロアビアは、電動パワートレインを航空機に組み込むというコンセプトをすでに実現しており、電力はバッテリーではなく水素で供給したいと考えていた。それがハイフライヤープロジェクトの中核となる目的だった」と述べている。

ATIのCEOであるGary Elliott(ゲイリー・エリオット)氏はTechCrunchに対し、ATIにとって「本当に重要」だったのは、ゼロアビアがバッテリーシステムではなく燃料電池を採用していたことだと述べ「成功の可能性を最大限に高めるには、投資を広く印象づける必要がある」と語った。

ゼロアビアはクランフィールドを拠点とし、2020年2月に、損傷したマトリックスと似た6人乗りのPiper Malibu(パイパーマリブ)を購入した。同社は6月までにマリブにバッテリーを取り付けて飛行したが、政府は安心材料をさらに求めていた。TechCrunchが情報公開請求によって入手したメールに対し、ある政府関係者は「ATIの懸念を確認し、それに対して我々ができることを検討したいと考えている」と書いた。

インテリジェントエナジーのCTOであるChris Dudfield(クリス・ダッドフィールド)氏はTechCrunchに対し、ハイフライヤープログラムは順調に進んでいるが、同社の大型燃料電池が飛行機に搭載されるのは何年も先のことであり、同氏はゼロアビアの飛行機を見たことさえもないと語った。

ゼロアビアは、インテリジェントエナジーとの提携により、英国政府から資金を確保しやすくなったが、マリブの動力の確保は進まず、燃料電池の供給会社を早急に見つける必要があった。

第2段階:燃料電池

ゼロアビアは8月、政府関係者に「現在、水素燃料による初の飛行に向けて準備を進めている」と文書で伝え、国務長官を招待した。

ミフタコフ氏によると、ゼロアビアのデモ飛行では、航空機としては過去最大となる250キロワットの水素燃料電池パワートレインが使用された。これはパイパーが通常使用している内燃機関と匹敵する出力であり、飛行において出力を最も必要とする段階(離陸)においても十分な余力が残る数値である。

ゼロアビアは燃料電池の供給会社を明かしておらず、250キロワットのうちどの程度が燃料電池から供給されたのかも詳しく説明していない。

しかし、デモ飛行の翌日、PowerCell(パワーセル)というスウェーデンの企業が、プレスリリースで、同社のMS-100燃料電池が「パワートレインに不可欠な部品」だったことを発表した。

MS-100の最大出力はわずか100キロワットであり、残りの150キロワットの供給源は不明である。つまり、離陸に必要な電力の大部分は、パイパーのバッテリーから供給されたとしか考えられない。

ミフタコフ氏は、TechCrunchのインタビューにおいて、9月のフライトではパイパーが燃料電池だけで離陸できなかったことを認めた。同氏によると、飛行機のバッテリーはデモ飛行中ずっと使用されていた可能性が高く「航空機に予備的な余力」を供給した。

燃料電池車でも、バッテリーを使用して、出力変化を安定させたり一時的に出力を高めたりするものは多い。しかし、いくつかのメーカーは、動力源について高い透明性を持たせている。飛行機に関していうと、離陸時にバッテリーを利用する上での問題点の1つは、離陸時に使用したバッテリーを着陸まで積載し続けなければならないことだ。

Universal Hydrogen(ユニバーサルハイドロジェン)は、別の航空機向けに2000キロワットの燃料電池パワートレインを共同開発している企業である。同社のCEO、Paul Eremenko(ポール・エレメンコ)氏は「水素燃料電池航空機の基本的な課題は重量だ。バッテリーはフルスロットル時のみに使用されるものであり、これをいかに小さくするかが軽量化の鍵になる」と述べている。

2月、ゼロアビアのVPであるSergey Kiselev(セルゲイ・キセレフ)氏は、バッテリーを完全になくすことが同社の目標だと語った。また、Royal Aeronautical Society(王立航空協会)に対し「離陸時の余力を確保するためにバッテリーを利用することは可能だ。しかし、航空機に複数の種類の駆動力や動力貯蔵システムを使用するとなると、認証の取得が著しく困難になるだろう」と話した。

今回、ゼロアビアは、出力の大部分をバッテリーから供給することで、投資家や英国政府から注目を集めたデモ飛行を成功させることができた。しかし、これにより、有償顧客を乗せた初飛行が遅くなる可能性がある。

排熱の問題

熱を排出する装置がなければ、燃料電池は通常、過熱を防ぐために空冷または水冷の複雑なシステムが必要になる。

「これこそが鍵となる知的財産であり、単に燃料電池とモーターを購入して接続するだけではうまくいかない理由なのです」とエレメンコ氏はいう。

ケルンにあるGerman Aerospace Center(ドイツ航空宇宙センター)では、2012年から水素燃料電池航空機を飛ばしている。特注設計された現在の航空機HY4は、4人の乗客を載せて最大で720キロメートル飛行できる。65キロワットの燃料電池には、冷却用の通風を確保するために、空気力学的に最適化された大きな流路を利用した水冷システムが搭載されている(写真を参照)。

画像クレジット:DLR

100キロワットの同様のシステムでは、通常、HY4のものより長く、3割ほど大きい冷却用インテークが必要になるが、ゼロアビアのパイパーマリブには追加の冷却用インテークがまったくない。

「離陸時の対気速度や巡航速度に対して、開口部が小さすぎるように見えます」というのは、ゼロアビアと共通する取引企業があることを理由に匿名でコメントを述べた航空燃料電池エンジニアである。

「熱交換器の配置や設定を試す必要はありましたが、熱を処理するために航空機の形状を再設計する必要はありませんでした」とミフタコフ氏は反論した。また同氏は、飛行中に燃料電池は85〜100キロワットの出力を供給していたと主張した。

ゼロアビアは、TechCrunchのインタビューに答えた後、パイパーの燃料電池が地上試験中に最大70キロワットの出力を供給している様子を示すビデオを公開した。地上試験中の70キロワットは、飛行中であればさらに高出力になる。

もちろん長距離飛行での実証は必要だが、ゼロアビアは、他のエンジニアを何年も悩ませてきた排熱問題を解決したのかもしれない。

次の飛行機:規模と性能の拡大

9月には、Robert Courts(ロバート・コート)航空大臣がクランフィールドでデモ飛行を見学し、飛行後に「ここ数十年間の航空業界で最も歴史的な瞬間の1つであり、ゼロアビアの大きな成果だ」と語った。タイム誌は、2020年の最大の発明の1つとしてゼロアビアの技術を挙げた。

ハイフライヤーの長距離飛行はまだこれからだというのに、12月、英国政府はハイフライヤー2を発表した。これは1230万ポンド(約18億4000万円)のプロジェクトであり、ゼロアビアが大型の航空機に600キロワットの水素電気パワートレインを提供するというものだ。ゼロアビアは、19人乗りの飛行機を2023年に商業化することで合意している(現在は2024年に変更されている)。

同日、ゼロアビアは2130万ドル(約23億円)のシリーズAの投資家陣営を発表した。これには、Bill Gates(ビル・ゲイツ)氏のBreakthrough Ventures Fund(ブレイクスルーベンチャーズファンド)、Jeff Bezos(ジェフ・ベゾス)氏のAmazon Climate Pledge Fund(アマゾン気候誓約基金)、Ecosystem Integrity Fund(エコシステムインテグリティファンド)、Horizon Ventures(ホライゾンベンチャーズ)、Shell Ventures(シェルベンチャーズ)、Summa Equity(スマエクイティ)が参加している。3月下旬には、これらの投資家からさらに2340万ドル(約25億3000万円)の資金を調達することを発表した。これにはAmazonは参加していないが、英国航空が参加している。

ミフタコフ氏によると、マリブはこれまで約10回のテスト飛行を終えているが、新型コロナウイルス感染症のため、英国での長距離飛行は2021年後半に延期されたという。また、ハイフライヤー2については、当初はバッテリーと燃料電池を半分ずつ使用する予定だが「認定取得可能な最終飛行形態では、600キロワットすべてを燃料電池でまかなう」とのことだ。

19人乗りの航空機から始まり、2026年には50人乗り、2030年には100人乗りと、約束した航空機を完成させることが、ゼロアビアにとって厳しい挑戦となることは間違いない。

水素燃料電池トラックの公開デモを誇張し、株価の暴落やSECによる調査を招いたスタートアップであるNikola(ニコラ)のせいで、水素燃料電池にはいまだに胡散臭いイメージがある。ゼロアビアのような野心的なスタートアップにとって最良の選択肢は、投資家や、持続可能な空の旅の可能性に期待している人たちの期待を弱めることになっても、現在の技術と今後の課題について透明性を高めることだ。

ポール・エレメンコ氏は「ゼロアビアの成功を切に願っている。我々のビジネスモデルは非常に相補的であり、力を合わせれば、水素航空機を実現するためのバリューチェーンを築くことができると考えている」と述べている。

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(文:Mark Harris、翻訳:Dragonfly)

ホンダは2040年までに北米における販売の100%EV達成を目指す

本田技研の新しい目標は、2050年までにカーボンニュートラルを達成するという大目標の一環として、2040年までに北米における販売台数の100%をEVにすることだ。CEOの三部敏宏氏は、内燃機関からの移行計画を4月23日の記者発表で述べたが、それは彼が2021年4月初めに同社最高位役員になってから初めての発表だった。

このところ伝統的な自動車メーカーは相次いで、無公害車の生産比率を上げてカーボンニュートラルを達成すると発表しているが、今回はその最新のケースとなる。GM(ゼネラルモーターズ)は2035年までに北米規格の軽負荷車輌からガソリン車とディーゼル車を廃止する計画だ。マツダ、三菱および日産はいずれも、2050年までに炭素排出量をゼロにすると述べている。本田技研の目標は日本の電化計画にも沿うものであり、そこでは2030年までに排出量を46%カットするとなっている。

本田技研はこの計画にすぐに着手し、2030年までに販売台数の40%、2035年までに主要市場のすべてで80%をEVにする予定だ。2020年代の後半には、この日本で2番目に大きい自動車メーカーは北米で、同社のプラットフォームに基づく一連の新しいEV車種を立ち上げる。このプラットフォームは、ホンダの広報担当者によれば「ボディーとEVの三大部位であるバッテリーとモーターとインバーターの共用性を増し、同時に高いスペース効率とバッテリー搭載効率を実現した」というものだ。

本田技研と同社アキュラ事業部はまた、2024年にGMのUltium(アルティウム)バッテリーを用いる大型EVを2車種を導入する。同社とGMのコラボレーションは今後さらに深まり、本田技研は商用トラックや電源装置など一連の製品にGMの燃料電池技術を適用していく予定だ。

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カテゴリー:モビリティ
タグ:honda電気自動車カーボンニュートラルGM二酸化炭素

画像クレジット:Drive Oregon

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Hiroshi Iwatani)

NASAが初めて火星の大気からの酸素生成に成功、将来の有人探査に向けた実証実験

NASAが初めて火星の大気からの酸素生成に成功、将来の有人探査に向けた実証実験

NASA/JPL-Caltech

2月18日に赤い大地に降り立ってから60日が経過した最新の探査ローバーPerseveranseが、火星の大気から酸素を生成することに成功したと、NASAが発表しました。

酸素を生成するのは、トースターほどの大きさであるMOXIE(Mars Oxygen In-Situ Resource Utilization Experiment)と称する機器。96%がCO2という火星大気を酸素と一酸化炭素に分離します。

将来的にこれを改良した装置が、火星にやってきた飛行士が現地で酸素を手に入れる手段を提供するために重要な役割を果たすことになるかもしれません。

「これは火星の二酸化炭素を酸素に変換するための重要な第一歩です。MOXIEにはまだ課題がありますが、今回の技術実証の結果には、人類が火星に降り立つという将来の目標に向け、大きな期待が寄せられます。酸素はわれわれが呼吸するためだけのものではなく、ロケット推進用燃料の燃焼にも必要です。将来の探査機は火星で生成した酸素を使用して地球へ帰還することになるでしょう」とNASA宇宙技術ミッション局の副局長ジム・ロイター氏は述べています。

NASAによると、ロケット推進のためには推進剤に対して重量比で5倍の酸素が必要になります。一方で、飛行士が火星で生活するだけならそれほどまでに大量の酸素は必要ではなく、年間1トンほどで済むとのこと。

ただし、CO2から酸素を取り出すには約800℃という高い温度が必要となります。そのためMOXIEは非常に高度な耐熱構造になっています。

MOXIEは1時間に最大10gの酸素を生成可能で、これは飛行士が20分程度呼吸できる量とのこと。Perseveranseは火星における1年(地球の時間では約2年)の間に、少なくともあと9回は酸素生成を実施する予定です。

NASAはMOXIEの技術によって火星の大気からロケットの推進剤や飛行士の呼吸用酸素を作るだけでなく、できあがった酸素と水素を反応させて水に変換することもできるとしています。

なお、NASAは今週、火星での初の航空機(回転翼機)であるIngenuityの飛行に成功しています。IngenuityもMOXIEもいまは概念実証的な段階ですが、いずれもいつか飛行士が火星を歩くときには必要な技術です。

(Source:NASAEngadget日本版より転載)

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豊田中央研究所が36cm角実用サイズ人工光合成セルで世界最高の太陽光変換効率7.2%を実現

カテゴリー:宇宙
タグ:炭素 / 二酸化炭素(用語)NASA(組織)惑星探査車 / ローバー(用語)

豊田中央研究所が36cm角実用サイズ人工光合成セルで世界最高の太陽光変換効率7.2%を実現

豊田中央研究所が36cm角実用サイズ人工光合成セルで世界最高の太陽光変換効率7.2%を実現、植物を大きく上回る

36cm角の人工光合成セル

トヨタグループの豊田中央研究所(豊田中研)は4月21日、太陽光のエネルギーを利用しCO2(二酸化炭素)と水のみから有用な物質を合成する人工光合成について、実用太陽電池サイズ(36cm角)セルで実現し、同クラスでは世界最高の太陽光変換効率7.2%を達成したと発表した。将来的には、工場などが排出するCO2を回収し、この人工光合成で再び資源化するシステムの実現を目指す。

豊田中研の人工光合成は、半導体と分子触媒を用いた方式でCO2の還元反応と水の酸化反応を行う電極を組み合わせ、常温常圧で有機物(ギ酸)を合成するクリーンな技術。

2011年、豊田中研による世界初の原理実証時には太陽光変換効率は0.04%だったという。しかし2015年には、1cm角サイズで、植物を大きく上回る変換効率4.6%(当時の世界最高)を実現した。

また人工光合成セルの社会実装には、変換効率を低下させず実用サイズに拡張することが必要が必要となるものの、技術的には困難とされてきたという。

そこで人工光合成の基本原理はそのままに、太陽光で生成した多量の電子を余すことなくギ酸合成に使用する、新しいセル構造と電極を考案した。その特徴は、太陽電池で生成した電子量とのバランスが良いサイズに電極面積を拡張するとともに、ギ酸合成に必要な電子、水素イオン、CO2を電極全面に素早く途切れることなく供給し、ギ酸合成を促進するものとしている。

36cm角実用サイズ人工光合成セル

人工光合成の基本原理

その結果、36cm角の実用サイズで、同クラスでは世界最高の変換効率を実現した。新セル構造は、より大きなサイズにも適用できるとしている。

36cm角実用サイズ人工光合成セル

カテゴリー:EnviroTech
タグ:人工光合成(用語)炭素 / 二酸化炭素(用語)太陽光 / 太陽光発電 / 太陽電池(用語)豊田中央研究所(組織)日本(国・地域)

Open Network Lab第22期デモデーを開催、社内向け動画ツールやCO2削減サービスなど4社が登場

2021年4月20日、デジタルガレージは同社が主催する起業家支援プログラム「Open Network Lab」 の第22期デモデーを開催した。2020年4月に開始したOpen Network Labは2021年で11年目を迎える。2021年3月にOpen Network Labが公開したインフォグラフィックスによると、これまでに投資したスタートアップの累計は132社で、そのうちの5社がM&A、1社がIPOを達成しているそうだ。

第22期となる今期は134社から応募があり、そのうち1次面談と最終面談を通過した5社が採択された。デモデーに登場したの次の4社だ。

社内向け音声・動画プラットフォーム「IMA」

リモートワークで社員同士の会話が減り、会社のミッションや価値観を共有しづらくなった。「IMA」はテキストでは伝えきれない声や表情を音声と動画を通じて発信できるようにすることで、社内のコミュニケーション不足、情報連携不足の解決を目指す。特徴は、Slackなどのツールと連携してすぐに音声や動画を撮影し、同僚や部署に共有できること。インタビュー形式や対談形式での撮影や画面共有機能に加え、動画の自動文字起こし、検索、コメント機能などを備えている。

不動産オーナー向けESG推進支援SaaS「EaSyGo」

国連の調査によると世界の温室効果ガスの約50%が不動産と不動産を起点とした移動、交通から排出されているという。しかし、不動産が排出する85%はテナントの活動が主体であるため、ビルオーナーは残りの15%分しか把握できていない。EaSyGoはビルオーナーがテナントによるCO2排出量の収集・解析の機能を提供することでCO2排出量を可視化し、CO2排出量を削減するためのサービスである。

EaSyGoは今回のデモデーのベストチームアワードとオーディエンスアワードを受賞した。

ウェルビーイングな活動の習慣化をサポートするコミュニティプラットフォーム「nesto」

新型コロナウイルスの影響で、生活習慣の改善に対する意識が高まっている。だが、生活習慣を改善しようと思っても1人では続けるのが難しい。nestoは価値観の合う会員と時間に合わせて、互いにウェルビーイングな習慣ができるようサポートするコミュニティプラットフォームだ。それぞれの活動は「リズム」と呼ばれ、各リズムのホストが中心となって体操や瞑想といった活動やメンバーを集めた対話イベントなどを開催する。nestoは入会金と月会費の30%を得るビジネスモデルを採用している。

「nesto」は今回のデモデーの審査員特別賞を受賞した。

中小企業向けの貿易金融プラットフォーム「Nu-Credits」

80%の貿易取引が融資を活用しているが、中小の輸出入業者の場合は信用情報が足りず、融資を受けられないことが多い。融資する銀行側も、書類の情報漏洩や改ざんリスク、融資判断に必要な情報の不足、複雑な債権回収プロセスといった課題を抱えている。Nu-Creditsは中小の貿易業者向けに、複雑な請求業務を解消するファクタリングサービスやブロックチェーンを用いた与信管理サービスを提供することでこうした問題の解決を目指している。

カテゴリー:イベント情報
タグ:デジタルガレージOpen Network Lab日本IMAリモートワークEaSyGo不動産二酸化炭素nestoウェルビーイングNu-Creditsイベント

画像クレジット:デジタルガレージ

炭素会計プラットフォームのPersefoniが10.6億円調達

炭素会計と管理のプラットフォームを開発するPersefoniは、国際的な事業展開や製品開発、採用活動を支援するために970万ドル(約10億6000万円)の資金を追加調達した。

このラウンドをリードしたのはRice Investment Groupで、NGP ETPが参加している。NGPは石油・ガス・電力にフォーカスした投資ファンドの、電力、再生可能エネルギー、持続可能性に特化した投資部門で、8月にローンチしてからわずか6カ月後での調達となった。

2020年1月に設立されたばかりのPersefoniは、組織の二酸化炭素排出量を収集し、計算し、管理し、報告するツールを提供している。

Persefoniのソフトウェアはスコープ1から3の排出量(企業の直接操業、電力の購入、およびサプライヤーの排出によって発生する排出量)をリアルタイムで報告することができる。

「世界中の政府、資産運用会社、および組織からのネット・ゼロを宣言したこの年に、私たちはベンチャーおよびソフトウェア投資家のコミュニティがSarbanes Oxley(サーベインス・オクスレー)法の導入以来、最大の規制コンプライアンス・ソフトウェア市場の形成に目覚めたのを目の当たりにしました」と、PersefoniのCEO兼共同創業者のKentaro Kawamori(ケンタロウ・カワモリ)氏は声明で述べている。「私達は炭素および気候に関する開示要件を導入している世界中の金融規制当局の努力を賞賛します。このような規制は、企業が二酸化炭素排出量を算定し、削減するための最も効果的な方法の1つです」。

PersefoniのサービスにはTPGのようなプライベート・エクイティ・ファームが参加しており、NGPのプリンシパルであるGreg Lyons(グレッグ・ライオンズ)氏はが同社の取締役会に就任する。

他の投資家には、Carnrite GroupとSallyport Investmentsが含まれる。

Sallyport Investmentsの創業者かつオーナーのDoug Foshee(ダグ・フォシー)氏は「Sallyportは業界に大きなインパクトを与えるために、成長著しい企業との提携を目指しています」と声明で述べている。

Persefoniの顧問にはSustainability Accounting Standards Boardの創設者であるRobert G. Eccles(ロバート・G・エクルズ)氏が就任し、同社の環境・社会・コーポレート・ガバナンスへの貢献が期待されている。

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カテゴリー:EnviroTech
タグ:Persefoni資金調達炭素

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(文:Jonathan Shieber、翻訳:塚本直樹 / Twitter