EdTechユニコーンGoStudentが英Seneca LearningとスペインのTus Media Groupを買収

欧州のEdTechユニコーンGoStudent(ゴースチューデント)は、英国のSeneca Learning(セネカ・ラーニング)とスペインのTus Media Group(タス・メディア・グループ)を買収し、これまでこのドイツのユニコーンが手をつけていなかった分野にも進出している。Senecaはアルゴリズム学習コンテンツを提供し、Tus Mediaはオープンな家庭教師マーケットプレイスを運営している。買収の条件は明らかにされていない。

買収された両社は、現在のリーダーシップチームのもと、確立されたブランド名で引き続き独立して事業を継続する。CrunchBaseによると、2016年に立ち上げられたSeneca Learningは、これまでベンチャーキャピタルの支援を受けてこなかった。Tus Mediaも、個人所有の企業で、バルセロナを拠点とする投資家Redarbor(レダーバー)から不特定多数の支援を受けてきたのみだ。

今回の動きは、GoStudentがシリーズD資金調達で3億ユーロ(約388億円)を調達した1カ月後に行われ、GoStudentが2021年にオーストリアのオールインワン学校通信ソリューションであるFox Education(フォックス・エデュケーション)を買収したことに続くものである。

Seneca Learningは、英国で「フリーミアム」の宿題と復習のプラットフォームで、700万人の生徒が利用している。子どもたちは、KS2、KS3、GCSE & A-Levelのコースから選ぶことができる。

GoStudentのCEO兼共同創設者であるFelix Ohswald(フェリックス・オースワルド)氏は「英国はGoStudentの中核地域の1つであり、市場のリーダーとなることを目指しています。お客様のニーズに耳を傾け、当社のコアサービスにコンテンツプラットフォームを加えることは、当社にとって重要な戦略的ステップであり、学習提供のさらなる充実とポートフォリオの多様化を可能にします」と述べている。

Seneca Learningの共同創業者兼CEOであるStephen Wilks(スティーブン・ウィルクス)は「フェリックスとGoStudentチームと協力することで、Senecaの無料コンテンツと個別学習体験を、世界中のさまざまな国の数百万人以上の学生に届けることができるようになります。チームは、英国での成功を基に、より多くの子どもたちがすばらしい無料教育を受けられるよう、当社の製品を世界的に展開することに興奮しています」。と述べている。

2011年に設立されたTus Mediaは、400万人の生徒にサービスを提供する家庭教師のためのオープンマーケットプレイスを提供しており、スペインだけでなく、ヨーロッパやラテンアメリカのいくつかの国で教師が働いている。

Tus Media Groupの創設者兼CEOであるAlbert Clemente(アルベルト・クレメンテ)氏は「GoStudentの買収により、Tus Mediaとそのすべてのブランドを新しい市場でさらに拡大し、より地理的に大きな範囲に拡大することができるようになりました」。と述べている。

GoStudentのCOO兼共同創業者であるGregor Müller(グレゴール・ミュラー)氏は「アルベルト・クレメンテは、私たちがこれまでに出会った中で最も情熱的で熱心な教育分野の起業家の1人です。彼とパートナーとして協力し、互いに学び合うことで、世界No.1の学校に一歩近づくことができるでしょう」。とコメントしている。

Tus Mediaの元投資家であるRedarborの創業者兼CEO、David González Castro(ダビド・ゴンサレス・カストロ)氏は、次のようにコメントしている。「2018年、私たちはTus Mediaの20%、後に30%の参加権を取得しました。GoStudentによる買収後、私たちは株式保有を離脱することになります。アルベルト・クレメンテとのコラボレーションと価値創造で達成したすべての成功を非常に誇りに思っています」。

GoStudentは現在、およそ30億ユーロ(約3879億8300万円)の評価額を持っている。フェリックス・オースワルドCEOとグレゴール・ミュラーCOOにより2016年にウィーンで設立され、会員制モデルを用いて小中高生に有料のマンツーマン、ビデオベースの授業を提供している。Prosus Ventures(プロサス・ベンチャーズ)やSoftBank Vision Fund 2(ソフトバンク・ビジョン・ファンド2)などの投資家から5億9000万ユーロ(約763億2100万円)の資金を調達している。

オースワルド氏は「この2社は、GoStudentにとって非常に相性の良い会社です。Senecaは、非常に優れたコンテンツ企業を築き上げました。彼らは、英国の学校のカリキュラムに合わせてカスタマイズしたコンテンツを作成し、何千人もの教師と何百万人もの子どもたちが利用していますが、これは私たちが持っていないものです。私たちは過去に一度もコンテンツを作ったことがありません。そのため、彼らは私たちに欠けているコンテンツの要素をもたらし、私たちは相乗効果を築きながら、彼らがより多くの国でビジネスを拡大するのを助けたいと思っています」と電話で述べた。

さらに「Tus Mediaの側では、彼らはすばらしいSEOを駆使した会社を作りました。だから、彼らのマーケットプレイスで発生するトラフィックはすべて、マーケティング費用をかけずにSEOでもたらされるのです。これは、私たちが過去に達成できなかったことです。彼らと一緒になれば、私たちも学ぶこともできますし、彼らがより早くスケールアップできるよう支援することもできるのです」。とも話してくれた。

画像クレジット:GoStudent

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(文:Mike Butcher、翻訳:Akihito Mizukoshi)

大手メーカーがコンテンツ重視のアプローチを強化する中、ヘルスケアウェアラブルWithingsがワークアウトアプリ8fitを買収

現地時間2月2日、フランスのヘルスケアウェアラブル企業であるWithingsが、ワークアウトと食事プランアプリの8fitを買収したと発表した。AppleやSamsung、Peloton、Mirrorといったハードウェアメーカーがフィットネス分野でコンテンツ重視のアプローチを強化する中での今回の買収だ。

ベルリンを拠点とする8fitは2014年に創業し、HIITやボクシングなどのワークアウト、ヨガ、瞑想、そしてレシピに至るまで、フィットネスに関するあらゆることを提供するサービスにまで成長してきた。同社は2017年の700万ドル(約8億円)のシリーズAなど、これまでに合計1000万ドル(約11億4500万円)を調達した。シリーズAの際に我々が取材してお伝えした通り、その時点でサブスクリプションプランによってすでに毎月100万ドル(約1億1500万円)を超える収益を上げていた。

スマートウォッチ、体重計、フィットネストラッカーといったさまざまなヘルスケアハードウェアを開発してきたWithingsとしては、今回の買収はかなりわかりやすいものだ。8fitを買収することで、Withingsはコンテンツの重要なレイヤーを提供できるようになり、しかもこれまでのようにまずハードウェアを売り、その後でさらに収入を得ることにもつながる。

WithingsのCEOであるMathieu Letombe(マチュー・レトンベ)氏は発表の中で次のように述べている。「我々は現在、『プロダクト – サービス – データ』の時代へ進んでいくことが重要であると感じています。個人のヘルスケアデータとその人に合わせたウェルネスのプランを組み合わせて、誰もが長期的に見てもっと健康になれるように支援するという我々のミッションをさらに実行していきます。8fitの買収により、エレガントにデザインされたヘルスケアデバイス、幅広いヘルスケアのデータ、シンプルで受け入れやすく我々のお客様に特化した経験豊かなアドバイスを組み合わせた戦略をお届けできるようになります」。

この買収によってWithingsは同社の既存ソフトウェアに8fitのサービスを統合し、Withingsのデバイスから収集された豊富なデータに基づいて、実行に移せる知見を提供するものと見られる。Withingsはコネクテッドフィットネスのサービス構築にさらに3000万ドル(約34億3500万円)を投資する計画であるとしている。

8fitのCEOであるLisette Fabian(リゼット・ファビアン)氏は「我々が提供しているサービスからすると、ユーザーが健康のゴールを達成するための支援をするというWithingsと8fitの方向性は一致しています。正確で質の高いデータを収集するコネクテッドヘルスケアデバイスにおけるWithingsの専門性と、我々のフィットネスや食事プランを組み合わせることに期待しています。両社は協力してユーザーに対し包括的なヘルスケアサービスを提供し、ユーザーがさらに健康で幸せな生活を送れるよう支援します」と述べた。

近年、フィットネスウェアラブルメーカー各社はコンテンツ分野への投資を増やしている。コロナ禍のためジムに行かずにワークアウトをしたいユーザーが増える中、Appleは2021年にFitness+を開始した。Googleに買収されたFitbitは月額10ドル(約1150円)のプレミアムサービスを提供し、ワークアウトと詳しいデータを連携できるようにしている。8fitが現在提供しているサービスはそれよりも高価で、月額25ドル(約2860円)または年額80ドル(約9160円)だ。

価格について8fitは次のように説明している。

我々は無料のアプリではありません。無料のアプリなどというものは存在しないからです。アプリに登場する人は8fitで働いていますし、登場こそしませんがアプリの向こう側にはもっとたくさんの人がいます。そして我々はその人たちの働きに対して公正に報酬を支払うという信念を持っています。毎月20〜30種類の新しいワークアウトを作成し、20〜30本の新しい記事を公開し、これらをすべてアプリに組み込むプログラミングには、たいへんな労力がかかっています。

画像クレジット:Withings

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(文:Brian Heater、翻訳:Kaori Koyama)

NetlifyがQuirrelを買収、サーバーレスファンクションの管理をプラットフォームのメニューに

Netlifyは多くの点で資金状態も良好で、以前はJamstack運動を始めた企業でもあるが、米国時間2月1日はQuirrelを買収したことを発表した。ここはサーバーレスのファンクションを管理し実行するオープンソースのサービスだ。

Quirrelの創業者であるSimon Knott(サイモン・ノット)氏は、広く使われているReactフレームワークBlitz.jsのメンテナーでもあるが、この買収の前にQuirrelは一度も外部資金を調達していない。Netlifyの投資家の1人がQuirrelを紹介し、そのあと、2021年の半ばに秘かに買収が行われた、とNetlifyのCEOであるMatt Biilmann(マット・ビルマン)氏がいう。

かなりの額を調達しているNetlifyが、買収によって成長を加速しプロダクトを拡張することは、目下のところ当然だろう。数年前にはNetlifyはまだJamstackのコンセプトをいちいち説明しなければならなかったが、現在ではいろいろな競合他社が存在し、中でもVercelは11月に1億5000万ドル(約171億5000万円)のシリーズDを発表、その前の6月には1億200万ドル(約116億6000万円)のシリーズCを発表している。

これはNetlifyにとって3度目の買収だ。最初は同社はY Combinatorが支援する、デベロッパーコラボレーションサービスFeaturePeekを5月に買収した。11月には、これまたY Combinator卒のGraphQLスペシャリストOneGraphを買収。その少し前にNetlifyは、1億500万ドル(約120億1000万円)のシリーズDを発表している。

画像クレジット:Netlify

「私たちがどこにいたいのか、どこへ行きたいのかは非常にはっきりしている。だからもちろんその、ウェブはこうあるべきだという私たちの目的意識に合致したとてもクールで小さなスタートアップを見つけたときには、うれしい。それらの一部は、提携して一緒に仕事をするほうがいいだろう。あるいは今回のように、一緒になってしまう方が良いケースもある」とビルマン氏はいう。

買収後もオープンソースプロジェクトはQuirrelという名称のままだが、Netlifyはすでに、その背後にあるアイデアの多くを自分のプラットフォームに統合する作業を開始している。同社がそのサーバーレスのプラットフォームをローンチしたのは2018年だ。その後、同社のサービスの中核的な機能になったが、しかしファンクションとバックグラウンドのタスクを一定のスケジュールで実行するためのスケジューリングは、Netlifyのデベロッパーたちにとってやや難題だった。

画像クレジット:Netlify

「デベロッパーが実現したい目的にとって、そうした種類のジョブはとても重要です。Quirrelのサイモンはそれを、大量の構成や古めかしいcronジョブのリストにしないやり方を見つけた。彼にはそれが、普通にコードを書くような感覚でできるのです」とビルマン氏は説明する。

しかしNetlifyとQuirrelとではスケールが違うため、デベロッパー体験をQuirrelの本来のビジョンに合わせるために、インフラストラクチャの多くを再構築しなければならない。ビルマン氏はそれを、第一原理から行うと説明する。同社のスケールが違うからではなく、Netlifyの哲学として、そのサービスの中核的な抽象化は特定のプラットフォームに依存していてはならないからだ。Quirrelの場合は、Blitz.jsが特定のプラットフォームだろう。

Quirrelのユーザー体験に基づくNetlifyの新しいスケジューリング機能は、Netlify Labsから無料で利用できる。Labsは、同社が新しい機能のベータテストをする場所だ。ということは、機能の一部が今後変わるかもしれないし、課金の方針も決まるだろう。でも今のところは、デベロッパーたちがこのサービスをどのように使うかを見て、プロダクトを調整していきたいのだ。

画像クレジット:Yuichiro Chino/Getty Images

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:Hiroshi Iwatani)

年老いた仮想化の巨人CitrixをVistaなどが約1.9兆円で買収、TIBCOと合併してSaaSの大企業に

IT業界では、ハイブリッドな働き方が定着したこの世界で幅広いニーズに対応する「ワンストップショップ」を求める企業の新たな需要に応えるため、さらなる統合が進んでいる。

クラウドコンピューティングへゆっくりと移行を進めている年老いた仮想化の巨人Citrix(シトリックス)は、PE(プライベート・エクイティ)企業のVista Equity Partners(ビスタ・エクイティ・パートナーズ)と、Elliott Investment Management(エリオット・インベストメント・マネジメント)の関連会社であるEvergreen Coast Capital(エバーグリーン・コースト・キャピタル)に、165億ドル(約1兆9000億円)で買収されることになった。Vistaでは、2014年に43億ドル(約4900億円)で買収したTIBCO(ティブコ)と、Citrixを統合することを計画している。全額現金による取引には、Citrixの負債の引き受けも含まれると、両社は述べている。

今回の買収は、Citrixをめぐる長期の憶測の末に行われることになったもので、同社は少なくともこの5カ月間、複数の戦略的な選択肢を検討してきた。2021年12月にはこの憶測も頂点に達し、VistaとElliottが130億ドル(約1兆5000億円)で同社を買収するという報道があった。

現在、Citrixの株はNASDAQで取引されているが、今回の買収により同社は非公開企業となる。同社によると、Citrixの株主は「VistaとEvergreenによる入札の可能性に関する報道がなされる前の最後の取引日 」である2021年12月20日の終値に24%のプレミアムを加えた、1株あたり104ドル(約1万1900円)の現金を受け取ることになるという。なお、Evergreenが今回の買収の前に、すでにCitrixへの投資を行っていたことは注目に値するだろう。

PE企業は、VCと同様に、投資が必要な瞬間のために膨大な資金を抱えている。これに対処するための1つの明白な方法は、リストラや統合を必要としている大規模なテクノロジー企業を買収することだ。

CitrixとTIBCOを統合することで、後者のアナリティクスと前者の仮想化およびクラウドコンピューティングのサービスを、抱き合わせ販売することが可能になる。これは多くのバイヤー、つまり企業が、よりシンプルなサプライヤーとのパートナーシップや、新型コロナウイルス流行の影響を受けてリモート勤務が増えている従業員のためのITサービスに関する財務状況の改善を求めている時期とも合致する。

合併後の会社は、当初から大きなビジネスを展開することになる。CitrixによればFortune(フォーチュン)500社の98%を含む40万社の顧客を持ち、世界100カ国に1億人のユーザーを抱えることになるという。

Citrixの取締役会議長であり、暫定的な最高経営責任者兼社長であるBob Calderoni(ボブ・カルデローニ)氏は「過去30年間にわたり、Citrixは安全なハイブリッドワークの明確なリーダーとしての地位を確立してきました。市場をリードする当社のプラットフォームは、従業員が業務を遂行するために必要なすべてのアプリケーションと情報への安全で信頼性の高いアクセスを、どこでも必要とする場所へ提供します。TIBCOとの統合により、我々はこのプラットフォームとお客様の成果を拡大していきます」と、声明で述べている。「TIBCOと一緒になることで、我々はより大きなスケールで事業を展開することができるようになり、より多くのお客様に幅広いソリューションを提供し、デジタルトランスフォーメーションを加速させ、ハイブリッドワークの未来を実現させることが可能になります。我々は非公開会社として、DaaSなどの高成長の機会に投資し、進行中のクラウド移行を加速するための財務的および戦略的な柔軟性を高めることができます」。

VistaとCitrixは、今回の取引の前から何かと縁があった。Citrixは1年前に22億5000万ドル(約2580億円)を支払って、プロジェクト管理プラットフォームのWrike(ライク)をVistaから買収している。また、TIBCOにも売却の噂があったが、Vistaは別の道を選んだようだ。TIBCOをCitrixと組み合わせることで、企業が現代のITをどのように評価し、購入しているかを物語るような、より興味深い資産の使い方ができるかもしれない。

TIBCOのCEOであるDan Streetman(ダン・ストリートマン)氏は「コネクテッド・インテリジェント・アナリティクスのビジネスを展開する上で、今ほど良い時代はありません。業界をリードする当社のソリューションを、Citrixのグローバルな顧客に提供できることに興奮しています」と、声明の中で述べている。「勤務場所は常に変化しており、あらゆる企業が、自社と従業員、そして彼らのエコシステムで利用可能な、ますます膨らむ大量のデータから、より速く、より賢い洞察を得るために、リアルタイムにアクセスできることを必要としています。両社のビジョンの融合にはこれ以上ないほど期待しており、強力なパートナーシップが築けることを楽しみにしています」。

Vistaのフラッグシップ・ファンドの共同責任者であり、シニア・マネージング・ディレクターを務めるMonti Saroya(モンティ・サロヤ)氏は、声明の中で「私たちはCitrixのことを、業界の状況を変えた数多くのカテゴリーを構築・定義してきた真のテクノロジー・パイオニアであると考えてきました」と述べている。「非公開会社として、Citrixはより多くのリソースとサポートを利用できるようになるだけでなく、最新で安全なリモート・ハイブリッド・ワークを支持するトレンドを背景に、長期的な強い追い風を利用して、統合された顧客基盤にサービスを提供し、高成長市場に投資するためのさらなる柔軟性を持つことになるでしょう」。

画像クレジット:Blue Planet Studio / Getty Images

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

人気ワードパズルゲーム「Wordle」をニューヨーク・タイムズが買収

世界中のユーザーを虜にしている人気パズルゲーム「Wordle」が、The New York Timesに買収されたこと明らかになった。同ゲームは「7桁ドル(数億円)前半」の非公開の価格で買収されたという。The New York Times Companyによると、Wordleは当面の間、新規および既存のプレイヤーは無料でプレイできるとのこと。また、同社への移行にともない、ゲームプレイに変更はないとしている。

The New York Times Companyはプレスリリースで「『The Times』が毎日パズルでより多くの解答者を楽しませようとしている中、特にこの不安な時代に、刺激的で人t気のある日常的な単語ゲームで文化的な現象となっているWordleの買収を発表できることをうれしく思っています」と述べている。「プレイヤーに5文字の謎の単語を6回推測させるWordleは、New York Times Gamesのオリジナルパズルゲームのポートフォリオに加わります」。

このゲームは、ブルックリン在住のソフトウェアエンジニアJosh Wardle(ジョシュ・ウォードル)氏によって、2021年10月にリリースされた。それ以来、このゲームは爆発的な人気を博している。11月1日には90人がプレイしていたが、その2カ月後には30万人のユーザーを獲得。今では毎日数百万人がプレイしている。

ウォードル氏は2022年1月初め、TechCrunchの取材に対し、もともとワードパズル愛好家であるパートナーのために2021年にワードルを作り、一緒に遊べるようにしたと語った。Wordleは、彼が他の創作活動の拠点として何年も前から持っているウェブサイト(英国にいたころのpowerlanguage.co.uk)でホストしており、ウォードル氏はこのゲームを何気なく家族と共有していた。その後、数人の気心の知れた友人に教えたところところ、どんどん人気が出てきたという。

「The New York Timesと、Wordleの運営を引き継ぐことで合意に達したことを発表できて、とてもうれしく思っています」とWardleはツイートで述べている。「もしあなたがWordleのストーリーを一緒に追ってきたなら、NYTのゲームがその起源において大きな役割を果たしていることをご存知でしょう。ゲームがNYTのサイトに移動したら、誰でも無料で遊べるようになります。NYTと協力してプレイヤーの勝利と連勝記録が確実に保存されるようにしています」という。

画像クレジット:Bryce Durbin

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(文:Aisha Malik、翻訳:Katsuyuki Yasui)

ソニー、ゲーム「Halo」「Destiny」の開発Bungieを約4140億円で買収

ゲーム界の2大シリーズである「Halo」と「Destiny」の制作を手がけたスタジオBungie(バンジー)がソニーに買収される。これは、次世代ゲーム(とメタバース、それが何であれ)が盛り上がりを見せる中で繰り広げられている統合と縄張り争いの1つだ。

このニュースは米国時間1月31日朝に両社から発表され(業界関係者のJason Schreier[ジェイソン・シュライアー]氏がいち早く報じている)、買収額は36億ドル(約4140億円)だ。Microsoft(マイクロソフト)が最近行った600億ドル(約6兆9035億円)でのActivision Blizzard(アクティビジョン・ブリザード)買収に比べればわずかな額かもしれないが、Bungieはゲーム界における伝説に勝るとも劣らない存在だ。

忘れられた旧作であるFPSゲーム「Pathways Into Darkness」や影響力のある「Marathon」でMacに特化したスタジオとして90年にスタートしたBungieは「Halo」でゲーム界の勢力図を変えようとした。Apple(アップル)がゲームに真剣に取り組むのに役立つことを目的としており、Steve Jobs(スティーブ・ジョブズ)氏もこの波に乗った。

しかし、MicrosoftがBungieを買収し「Halo」を新しいXboxコンソールの独占タイトルにすると発表した。これにApple(アップル)はかなり失望し、App Storeで成功を収めるまで、ゲームを完全にあきらめていたようだ。

HaloはXboxの主力シリーズの1つに成長したが、いくつかの続編の後、MicrosoftがHaloブランドを保持する一方で、BungieはオリジナルIPを追求するために独立企業としてスピンアウトした。2013年、独立したBungieが公開した「Destiny」は大ヒットとなり、2017年にはその続編がデビューし、現在も展開されている。

Bungieは2019年から長年のパブリッシャーであるActivision(アクティビジョン)との関係を継続し、さらに自社を自由にすることで……買収されることになった。いずれにせよ、このような事態は避けられなかったと思われ、自分の好きなようにやって良かったのかもしれない。

今回の買収は、ライバルのコンソールゲーム会社が次の戦いに向けて準備を進めている中で、ソニーによる明らかな領地収奪だ。ゲーム・アズ・ア・サービス(GaaS)、いわゆるライブサービスゲームは、業界にとって儲けの多い新モデルの1つとなっており「Destiny 2」はその最も成功した例の1つだ。ゲームを販売し、コンテンツの定期的な「シーズン」、新たな美的アップデート、その他のアイテムでさらに収益をあげるGaaSモデルは、MMO(多人数のプレイヤーが同時にアクセスできるオンラインゲーム)に倣っている。

おそらく「Destiny 2」の人気が下火になり「Destiny 3」の発売も間近に迫っていることから、今回の買収は非常にタイムリーなものだ。最大のGaaSシリーズの 1 つを所有し、関連するマルチメディアにも投資する(Netflix番組はいまや避けられないようだ)ことで、ソニーは次世代ゲームの収益に向けて態勢を整えている。「Destiny 3」が前作同様クロスプラットフォームになる可能性は高いと思われるが、MicrosoftのGame Passに対抗して大幅リニューアルされると噂されているソニーの定額制サービス加入者向けの特典を阻止するものは何もない。

「今日、Bungieは世界的なマルチメディアエンターテインメント企業になるための旅を開始します」とCEOのPete Parsons(ピート・パーソンズ)氏は買収発表のブログ投稿に述べている。「我々の運命は我々が握っています。これからも独自にゲームを発表し、クリエイティブな開発を続けていきます。SIE(ソニー・インタラクティブエンターテインメント)の支援を受け、我々の野心的なビジョンを支えるために、スタジオ全体で人材の採用を加速させることが即座に目にする変化となるでしょう」。

同社は、期待される続編だけでなく、新規IPの開発にも取り組んでいると報じられている。もしかしたら、独立と新たなリソースによって、カルトヒットとなった「Marathon」が復活するかもしれない。同社に「Marathon」を覚えている人が残っていればの話だが。

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Nariko Mizoguchi

韓国の不動産テックZigbangがSamsung SDSのIoTスマートホーム事業を買収

不動産取引サービスを提供する韓国の不動産テックスタートアップのZigbang(ジグバン)は現地時間1月27日、Samsung SDS(サムスンSDS)のホームIoT(internet of things)部門を買収し、スマートホーム業界へ進出すると発表した。

Samsung SDSは、傘下唯一のB2C事業であるIoTスマートホーム部門を売却し、B2Bに集中する。同部門の主な製品は、ユーザーのスマートフォンに接続するデジタルドアロックやウォールパッドなどだ。Samsung SDSは2016年、IoTスマートホーム部門をアイルランドのAllegion(アレジオン)に売却しようとしたが、合意に至らなかったと報じられた

IoTはどうしても利幅が薄く、簡単なビジネスではないため、長期にわたり業界にとどまりたいプレイヤーは、より多くのスケールメリットを求めてライバルをすくい取っていく。

Zigbangは、IoTスマートホーム事業を買収することで、技術的なシナジーを生み出し、市場シェア拡大を狙う。

「Zigbangの住宅コンテンツとSamsung SDSの住宅IoTハードウェアを組み合わせ、私たちはスマートホーム市場に革命を起こします」とZigbangのCEO、Sung-woo Ahn(スンウー・アン)氏は声明で述べた。

同社のSunwoong Lyuh(スンウー・リュー)副社長はTechCrunchに対し、Samsung SDSのIoT部門は現在16カ国以上で堅実な収益を上げているため、今回の買収により、Zigbangは世界のスマートホーム市場に参入し、成長を加速させることができるだろうと語った。

1月27日に買収契約を締結したZigbangは、2022年第2四半期の買収完了を目指すとリュー氏は述べた。同社は、買収取引の評価額についてはコメントを避けた。メディアの報道によると、取引規模は1000億ウォン(約97億8000万円)と推定されている。

Zigbangは、不動産取引からスマートホームデバイスまで、生活空間のすべてをデジタル化したいと考えている。また、セルフストレージや住宅の検査・修理サービスにも参入する計画だ。

Zigbangは2018年以降、買収拡大路線を歩んでいる。

2018年に韓国のプロップテックスタートアップHogangNoNoを、2019年には「co-living(コリビング)」プラットフォームの WooZooと、商業仲介プラットフォームのSugarhillを買収した。また、2021年には住宅管理サービスプラットフォームのMovillを買収した。

Zigbangによると、同社のユーザー数は合計3350万人、月間アクティブユーザー数は810万人だという。現在、600人の従業員数を擁している。

直近では2019年7月に1600億ウォン(約152億円)を調達し、これまでの資金調達総額は2265億ウォン(約216億円)に、評価額は7000億ウォン(約660億円)に達した。韓国の中小ベンチャー企業省が1月27日に発表した報告書によると、Zigbangの2021年6月の評価額は1兆1千億ウォン(約1044億円)だった。

画像クレジット:Zigbang

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(文:Kate Park、翻訳:Nariko Mizoguchi

アトラシアンが自然言語理解のための独自のAIエンジンを開発するPercept.AIを買収

Atlassian(アトラシアン)は米国時間1月27日、Percept.AI(パーセプトエーアイ)を買収したことを発表した。Percept.AIはY Combinator(ワイ・コンビネーター)の2017年夏のバッチに参加したAI企業で、自然言語理解のための独自のAIエンジンをベースに、自動化されたバーチャルエージェントサポートソリューション(基本的にはチャットボット)を提供する。Atlassianはこのバーチャルエージェント技術を、ITチームが従業員や顧客に対してより良いサービスを提供するためのツールであるJira Service Management(ジラ・サービス・マネジメント)に統合する予定だ。

Crunchbase(クランチベース)によれば、Perceptは今回の買収に先立ちシードラウンドを実施し、Hike Ventures、Builders VC、Cherubic Ventures、Amino Captial、Tribe Capital、Y Combinatorなどから金額非公開の資金を得ていた。両社は、今回の買収の金額的詳細については明らかにしていない。

画像クレジット:Atlassian

AtlassianがJira Service Managementに多大な投資をしていることは間違いない。2020年には、企業のアセット管理を行うMindville(マインドビル)に加えて、Slack(スラック)ファーストのヘルプデスクチケッティングサービスを提供するHalp(ヘルプ)を買収した。また2021年にはAtlassianは、Jira Service Managementを強化するために、ノーコード / ローコードのフォームビルダーであるThinkTilt(シンクティルト)を買収した(これは、近年のJiraエコシステムに関する数多くの買収に続くものだ)。

AtlassianのIT ソリューション製品責任者である Edwin Wong(エドウィン・ウォン)氏は、サービスを拡大するためには買収だけに賭けているわけではないと語った。

「無機質な投資を行うだけではありません。私たちが行ってきたことは有機的に統合されているのです」とウォン氏はいう。「何かを買ってきて接続するだけではなく、もっと考え抜かれた戦略が必要です。何がフィットするかを考え、これまでに作られたものの上に構築して、1つの製品として統一された体験を生み出すのです。ですから『6つの異なるものを用意しました』と差し出して、お客様に『これらをまとめるには何が必要なのだろうか?』と考えていただく必要はありません。私たちが目指しているのは統合された体験を生み出すことなのです」。

画像クレジット:Atlassian

しかし、ITチームは、パンデミックの厳しい影響下でも、これまで以上に優れた顧客サービスを提供しなければならないというプレッシャーにさらされていることは間違いない。いまや企業顧客であっても一般消費者のような体験を求めているからだ。理想的にいけは、Percept.aiのような製品は、サポート質問の大部分を処理しつつユーザーにすばらしい体験を提供し、ITチームがより複雑なタスクに集中できるようにすることができるだろう。

それがJira Service Managementのような製品の目標であり、ウォン氏が述べたように、このサービスは現在、ほぼすべての業界から3万5000以上の顧客を集めている。

ウォン氏は、チームがPerceptに惹かれた理由として、サポートクエリの背後にある多くの文脈を理解できるエンジンの能力を挙げている。エンジンは内容、意図、感情を分析し、ユーザーのプロファイルと組み合わせて、パーソナライズされた応答を提供することができる。バーチャルエージェントが応答の限界に達すると、自動的に人間にインタラクションを移行する。チームは、ノーコードツールを使ってサービスの設定や調整を行うことができるが、これもPerceptがアトラシアンにとって魅力的である機能の1つだ。

今後その技術を、Jira Service Managementの中にネイティブに統合していく予定だ。一方、Atlassianはこのサービスの機能を拡張することも計画している。

「もう少し先を見据えた私たちのより広いビジョンは、あらゆる形態のサポートやサービスデスクのための統一プラットフォームを作ることです。それが私たちの究極の目標なのです」とウォン氏は説明する。「私たちは、そうした拡張が本当にさまざまな種類の製品、さまざまな機能をカバーすると信じています。例えばConfluence(コンフルエンス、JiraのWiki)スペースやそこに書かれた記事の知識を利用して、さまざまな質問に答えることはできないでしょうか?例えばTrello(トレロ、タスク管理)ボードなどの情報を利用することはできないのでしょうか?今回の買収はもちろん、お客様に優れたエクスペリエンスを提供するという、Atlassian全体のより広範な長期的ビジョンの一環なのです」。

今回の買収は短期間で行われたため(ウォン氏によると、両社は2021年末に話を始めたとのこと)、Percept.AIの既存顧客が今後どうなるかはまだわかっていない。

関連記事:AtlassianがHalpを買収、JiraやConfluenceとの統合を進める

画像クレジット:Peter Dazeley/Getty Images

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:sako)

長年にわたり物議を醸す犯罪追跡アプリのCitizenが災害対策アプリのHarborを買収

犯罪監視アプリのCitizen(シチズン)は米国時間1月26日、防災アプリや技術を扱うHarbor(ハーバー)を買収すると発表した。Citizenにとって初めての買収だが、同社は金額などを明らかにしていない。

「公共安全の変革は大規模な事業です。私たちのミッションをグローバルに加速させるために、すばらしいチームと一連の製品が必要となります。Harborの買収は、その技術、製品、チームを含め、私たちにとって大きな喜びです」とCitizenの創業者でCEOのAndrew Frame(アンドリュー・フレーム)氏はプレスリリースで述べた。

公開されている911(日本の110番に相当)の記録簿をもとに、スタッフが検証したデータによると、Citizenは米国内の60都市で毎日2000万件以上の緊急通報を配信しているという。以前は、ユーザーがCitizenに直接事件を報告することができたが、現在は同社のウェブサイトで、代わりに911に電話するように勧めている。

1年半ほど前にシードラウンドで500万ドル(約5億7500万円)を調達したHarborは、火災や地震などの危機に備えるプロセスをゲーム化した。2020年10月にスタートしたこのアプリは、ユーザーに郵便番号の入力を求める。そして、どのような災害が自分に降りかかる可能性が高いかを教えてくれる(ちょっと恐い感じがするが)。

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Harborはユーザーに、数分でできる準備作業を毎週提示する。処理すべき大量の緊急事態リストを一度に押しつけることはしない。最初は煙探知機のチェックや非常持ち出し袋の準備などから始まり、徐々にCPR(心肺蘇生法)の習得など、より時間のかかる安全対策に取り組んでもらう。

「私たちのチームがCitizenと、同社が掲げる世界をより安全な場所にするという使命に参加できることは、これ以上ない幸せです」とHarborのCEOであるDan Kessler(ダン・ケスラー)氏は話す。同氏は、Citizenに最高事業責任者として加わる。「モバイルセーフティーに関わる新しい技術カテゴリーを構築し続けるために、私たちが一緒にできることはたくさんあります」。

この買収は、Citizenがユーザーに、近隣で起きた事件に関して不安を煽るような警告を送らずに、安全を維持する方法を提供するのに役立つ可能性がある。同社は最近、月額20ドル(約2300円)のサービスProtectを開始した。ユーザーは、危険を感じるものの911に電話するほどではない場合に、Citizenのエージェントに連絡できる。同社はTechCrunchに、Protectのユーザー数は現在10万人だと述べた。

現在、無料アプリ全体で1000万人のユーザーを抱えるCitizenは、長年にわたってさまざまな論争に巻き込まれてきた。2016年から、このアプリ(以前は「Vigilante」と呼ばれていた)は、危険や身体的被害につながる可能性のある活動を奨励したとして、App Storeから削除された(このアプリの開発で示唆したのは、一般人は犯罪の問題に「グループで」アプローチすることだと、同社は立ち上げ時に記している)。

またこのアプリは、後日無実と判明した放火犯容疑者の情報に対して3万ドル(約345万円)を支払うと提案したり、通報があった犯罪の現場を調べるために民間の警備員を送ろうとしたことでも、非難を浴びたことがある。

画像クレジット:Bloomberg / Contributor / Getty Images

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(文:Amanda Silberling、翻訳:Nariko Mizoguchi

Activision Blizzard、同社の未来を決める新たなサバイバルゲームを開発中

今でもまだ組織の混乱や組合いじめ、史上最大のゲーム企業買収がニュースの大見出しになってるようだが、当のActivision Blizzardは次のオリジナルゲームで忙しいらしい。

具体的な発表はまだほとんどないが、同社は今週、その「未発表のサバイバルゲーム」は「まったく新しい宇宙におけるサバイバルゲームだ」などと前宣伝している。その発表は求人ページにリンクしており、そこでは新しいゲームのアートをいくつか紹介している。

私たちはまったく新しい宇宙でのサバイバルゲームを作っています。私たちと一緒に次の章を書きましょう。https://t.co/yf7W5p9ERQ

そのアートの中では、毛皮を着て頭蓋骨の兜をかぶったハンターが膝をついて、おとぎ話の国の入り口の近くで何かを追っている。もう1つのコンセプトアートは、2人の人が、その魔法の国の別の入り口を覗き込んでいる現代的なシーンだ(自転車もある)。

このアートからわかることはあまりないが、そのコンセプトにはそそられるものがある。いずれにしても同社は、クリエイティブでシームレスなマルチプレイヤー世界を作るのが得意だ。しかもサバイバルという視点は、Twitchで人気になった「Fortnite(フォートナイト)」や「Rust」のようなゲームのジャンルへの、新鮮でおそらく洗練された参入になるだろう。Blizzardによる最新のフレッシュな大型IPといえば、eスポーツの大ヒットコンテンツ「Overwatch(オーバーウォッチ)」だが、その続編は制作は遅れており、リリースは2023年になるらしい。

「Call of Duty(コール オブ デューティ)」シリーズ、「オーバーウォッチ」「World of Warcraft」などのヒットゲームを発売しているActivision Blizzardは、2021年に同社でのセクハラと差別を主張するカリフォルニア州での訴訟のニュースで明らかになったスキャンダルに巻き込まれたままだ。

同社は証券取引委員会にも調べられており、手始めに2021年後期には従業員が召喚された。一方、この手広い企業を統括するのはCEOのBobby Kotick(ボビー・コティック)氏で、彼は同社の職場における不祥事や、それを放置したことの責任をよく自覚している。Bloombergの記事によるとコティック氏はMicrosoftによる買収が完了すれば現職を辞し、同社でXboxを担当していたPhil Spencer(フィル・スペンサー)氏がMicrosoft GamingのCEOとして同社を率いる。

この渦中にありながら、いや、だからこそMicrosoftは2022年1月、同社を687億ドル(約7兆8764億円)で買収する計画を発表した。この記録的な金額で複数の大型コンテンツが最大のゲーム機メーカーの傘下になり、国と州の規制当局が、やみくもに独占しようとしているテクノロジー企業に対しれ神経を尖らせているこの時期に、自らの運を賭けることになる。

もうこれ以上、見出しのネタに困ることはないが、しかしActivision Blizzardはさらに、同社の事業部であるRaven SoftwareのQAテスターたちが作った組合を認めないと宣言した。Ravenのグループは1カ月ほど前に、12人の契約労働者を解雇したことに抗議してストライキをしていた。

Twitter上で複数のBlizzardの従業員たちが、オーナーが変われば会社は安定すると楽観視している。もっと良い軌道に乗り、有害な職場文化を後にすることができる、と彼らは期待している。Microsoftによる買収が成立すれば、このゲーム大手は世界でもっとも安定確立したテクノロジー企業が采配を振るうことになり、その成熟と安定が、次の大型IPOを目指す企業にとって害になることはないだろう。

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画像クレジット:Chesnot

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(文:Taylor Hatmaker、翻訳:Hiroshi Iwatani)

NVIDIAとArmの買収契約が失敗に終わったら、それはビッグテックのM&Aにどのような意味があるのだろうか

NVIDIAとArmの400億ドル(約4兆5862億円)の契約は、これまでで最も高額なテクノロジー業界における契約の1つだが、危機に瀕しているというニュースが昨日、いくつも出てきた報道によると、NVIDIAは規制当局からの圧力を受けて撤退する準備が整っているという。問題は、この取引が失敗に終わった場合、それはテック企業のM&Aにとって何を意味するのかということだ。

2021年の今頃、Visaが53億ドル(約6077億円)を投じてPlaidを買収する計画を、米国司法省がクレジットカードの巨人にとって快適とはいえないほど綿密に検討した結果、中止させたことを忘れてはならない。2021年12月には、英国の反トラスト法委員会が、Microsoftが提案した200億ドル(約2兆2937億円)規模のNuance Communicationsの買収を保留すると発表したばかりだ。この買収は、Microsoftがどうするか決めるまで宙に浮いたままであり、同国の競争・市場庁(CMA)も同様に調査を開始する可能性もある。

注目すべきは、EU当局が2021年12月にこの取引を無条件で承認したことだ。

問題となっているNVIDIAの買収案件は、複数の国の規制当局による企業合併によって半導体市場の均衡的競争条件が変わる恐れという懸念が絡んでいるだけに、審査も厳しいだろう。

アナリスト企業CCS InsightのCEOであるGeoff Blaber(ジェフ・ブラバー)氏は、この取引は発表されたときから規制の厳しい逆風に直面していたため、NVIDIAが抜ける気になったとしても意外ではない、という。

「NVIDIAとArmの取引は最初から厳しい精査と圧力に直面していたため、崩壊の危機に瀕していても不思議ではありません。取引の価値を維持し、400億ドルの値札を正当化しながら、規制当局をなだめる方法を見つけることは、これまでも圧倒的な難題でした」とブラバー氏はいう。

彼によると、同社は別のイグジットをトライできたかもしれないが、それには投資家が最初に期待したほどのリターンがないだろうという。「Armとそのエコシステムにとっては破壊的であることが証明されています。IPOもあり得たかもしれませんが、それがArmの筆頭投資家であるSoftbankにほぼ同じ額のリターンをもたらすことは、ありえないでしょう」。

Moor Insight & Strategiesの創業者で主席アナリストのPatrick Moorhead(パトリック・ムーアヘッド)氏は、それがArmをより困難な財務的立場に置くだろうという点では合意しているが、彼の見方では、NVIDIAは欲しかった企業が得られなくてもほとんど無傷だろうという。

「ArmにとってはそれはIPOと、NVIDIAの資本のないやや弱い企業であることを意味する。NVIDIAにとっては、いつもどおりのビジネスがあるだけです。NVIDIAは、買収ができなくてもアーキテクチャのライセンスは得られますが、ライセンス料金を払わずに済めば独自のカスタムCPUを作ることができます」。どちらに転んでも、同社によって良い状態にあることを意味する。

規制当局の監視が厳しいNVIDIAが、もはや努力する価値がないと判断したのは、この点が大きいかもしれない。特に、NVIDIAは基本的にケーキを手にしてそれを食べることができ、400億ドルを他の分野の投資に回して、将来の成長を促進することができたのだから。

これはユニークな状況であり、M&Aの全体像にはあまり影響しないかもしれないが、取引に対する監視がより慎重になり、米国では大手ハイテク企業が反トラスト法への取り組みを続けていることから、官僚的なプロセスに嫌気がさした一企業以上のものがここにあるように感じられる。

しかし、EUがMicrosoftとNuanceの取引を承認したように、各取引の仕組みや関係する企業、特に競争バランスへの影響に依存する可能性がある。

画像クレジット:Bloomberg/Getty Images

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(文:Ron Miller、翻訳:Hiroshi Iwatani)

NVIDIA、Arm買収を断念か、ソフトバンクによる上場計画の噂も

Bloombergの情報筋によると、NVIDIAは400億ドル(約4兆5560億円)でのArm(アーム)買収について、規制当局の承認取得がほとんど進んでおらず、内々に買収を断念する準備を進めているという。一方、Armの現オーナーであるソフトバンクは、買収の代替案としてArmを上場させる計画を進めているようだ、とこの件に詳しい別の関係者は述べている。

NVIDIAは2020年9月にこの買収を発表し、CEOのJensen Huang(ジェンスン・フアン)氏は「AIの時代に向けてすばらしい位置にいる企業が誕生する」と宣言した。Armの設計は、Apple(アップル)、Qualcomm(クアルコム)、Microsoft(マイクロソフト)、Samsung(サムスン)、Intel(インテル)、Amazon(アマゾン)といった企業によってほぼ全世界でスマートフォンなどのモバイル機器にライセンス使用されている。

買収発表後すぐに反発が始まった。Armが拠点を置く英国は2021年1月に買収に関する反トラスト調査を、11月にはセキュリティ調査も開始した。米国では、データセンターや自動車製造などの産業における競争を「阻害」するとの懸念から、FTC(連邦取引委員会)が買収を阻止すべくこのほど提訴した。また、他の規制当局が買収を阻止しなければ、中国が買収を阻止すると報じられている、とBloombergの情報筋は話す。

我々は、最新の規制当局への提出書類で詳細に述べられている見解、すなわちこの取引はArmを加速させ、競争とイノベーションを促進する機会を提供するとの見解を引き続き持っている。

Intel、Amazon、Microsoftといった企業が、規制当局にこの取引を中止させるのに十分な情報を与えたと、情報筋は話している。これら企業は以前、NVIDIA自身がArmの顧客であるため、Armの独立性を保つことができないと主張した。つまり、Armのライセンス取得者のサプライヤーと競合社の両方になる可能性もある。

このような厳しい逆風にもかかわらず、両社は依然として買収を進める姿勢にある。NVIDIAの広報担当者Bob Sherbin(ボブ・シェルビン)氏はBloombergに対し「我々は、この取引がArmを加速させ、競争とイノベーションを促進する機会を提供するという見解を引き続き持っています」と述べた。ソフトバンクの広報担当者は「当社はこの取引が承認されることを変わらず望んでいます」と声明で付け加えた。

後者のコメントにもかかわらず、ソフトバンクの一部の派閥は、特に半導体業界がこれほど熱狂していることから、買収の代替案としてArmのIPOを推進していると伝えられている。また、NVIDIAの株価が買収発表後2倍近くに上昇し、実質的な買収価格が上昇していることから、買収を継続したいとの考えも一部にはあるようだ。

最初の契約は2022年9月13日に失効するが、承認に時間がかかる場合は自動更新される。NVIDIAは、この取引は約18カ月で完了すると予想していたが、今となってはこの期限は非現実的のようだ。

編集部注:本稿の初出はEngadget。執筆者のSteve DentはEngadgetの共同編集者。

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(文:Steve Dent、翻訳:Nariko Mizoguchi

天気予報AccuWeatherが大気汚染データのスタートアップ仏Plume Labsを買収

天気予報会社のAccuWeather(アキュウェザー)がフランスのスタートアップPlume Labs(プルームラブズ)を買収する。買収条件は非公表。2014年の創業以来、Plume Labsは徐々に提供プロダクトを拡大し、大気汚染データに特化した3種類のプロダクトを展開している。

Plume Labsはまず、iOSとAndroid向けに、空気の質に関する情報を提供するモバイルアプリを立ち上げた。当初は、シンプルな都市レベルの大気汚染予測アプリだった。さまざまなソースからのデータを集約し、大気汚染が時間とともにどのように変化するかを予測していた。

その後、同社は予測能力を向上させ、現在では数日先の大気環境を予測することができる。同社は、予測にいくつかの機械学習モデルを使用している。また、通りごとの情報を含む詳細な地図も提供するようになった。これにより、自転車や原付バイクで通勤している人は、避けた方がいい特に交通量の多い通りがわかるようになった。

そしてPlume Labsは、空気質のトラッキングを視覚的かつ実用的にすることで、ユーザーが行動に移せるようにしたいと考えた。そこでBluetooth Low Energyを利用してスマートフォンに接続する、独自の大気質トラッカーを設計した。

この第2世代の装置は、粒子状物質(PM1、PM2.5、PM10)および汚染ガス(二酸化窒素、揮発性有機化合物)を追跡することができる。現在、政府が支援するモニタリングステーションよりもPlume Labsのデバイスは多く使用されており、比較的成功している。

最後に、Plume Labsは大気汚染データをAPIとして提供し始めた。同社は、世界中の何千もの環境モニタリングステーションを集約し、このデータに機械学習モデルを適用している。こうすることで、Plume Labsの顧客は、自社の製品に大気汚染データを統合したい場合に一歩先に進められる。異なるデータソースを扱い、これらのデータセットを1つのセットに統合する必要はない。同様に、大気汚染に適用する機械学習にリソースを割り当てる必要もない。

AccuWeatherは2020年1月にPlume Labsのデータを自社の天気予報プロダクトに統合した。AccuWeatherはその機会を利用してPlume Labsの株式を取得した。そして今回はさらに一歩踏み込んで、残りの株式を買収する。

「大気質は、人命救助と人々の繁栄を支援するというAccuWeatherのミッションにおいて本質的な役割を担っています。今回の買収により、ユーザーや顧客に、よりパーソナライズされた体験と、天候が健康に与える影響に関する360度理解を提供することができます」と、AccuWeather社長のSteven R. Smith(スティーブン・R・スミス)氏は声明で述べた。「2社の提携は、ユーザーが健康をこれまで以上にコントロールできるようサポートするという約束を実現し、この新しい戦略的方向性によって、目標にさらにしっかりとコミットしています」。

Plume Labsは、AccuWeatherの気候・環境データのセンターとなる。この買収は、大気汚染が多くの産業にとって重要な指標になりつつあることを証明している。

Plume Labsの共同創業者でCEOのRomain Lacombe(ロメイン・ラクーム)氏は「7年前、David Lissmyrと私は、誰もが大気質情報を利用できるようにするためにPlume Labsを設立しました。それ以来、私たちの活動は、気候変動の健康への影響を身近なものにすることで、きれいな空気を求める闘いに刺激を与えてきました。今、AccuWeatherと力を合わせることは、私たちの影響を地球規模で増幅し、世界中で15億人が大気汚染を回避するのを助ける特別な機会です」と声明で述べた。

今後、Plume Labsのチームと技術の運用は続き、山火事など他の環境リスクにも取り組む予定だ。気候リスク予測はまだ初期段階だが、今回の買収は時間の経過とともにその重要性が増していくことを裏付けている。

画像クレジット:Plume Labs

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(文:Romain Dillet、翻訳:Nariko Mizoguchi

IBMが医療データ管理「Watson Health」事業の大半をFrancisco Partnersに売却

拍子抜けするような結末だが、IBMは米国時間1月21日、Watson Health事業部門のデータ資産をプライベートエクイティ企業のFrancisco Partners(フランシスコ・パートナーズ)に売却した。両社は買収額を明らかにしていないが、以前の報道では約10億ドル(約1137億円)とされていた。

今回の取引でFranciscoは、Health Insights、MarketScan、Clinical Development、Social Program Management、Micromedex、イメージングソフトウェア製品など、Watson Health部門のさまざまな資産を取得する。これによりFrancisco Partnersは、幅広い医療データを傘下に収めることになる。

IBMは2015年にWatson Healthを立ち上げた際、データ駆動型の戦略に基づいてユニットを構築することで、この分野を支配することを望んでいた。そのために、PhytelやExplorysをはじめとする医療データ企業の買収を開始した。

その後、Merge Healthcareに10億ドル(約1137億円)を投じ、翌年にはTruven Health Analyticsを26億ドル(約2955億円)で買収した。同社はWatson Healthが人工知能(AI)の推進に役立つと期待していたが、この事業部門は見込まれていた成果を上げることができず、2019年にGinni Rometty(ジニー・ロメッティ)氏に代わってArvind Krishna(アルビンド・クリシュナ)氏がCEOに就任した際には、クリシュナ氏の優先順位は異なっていた

Francisco Partnersはこれらの資産をもとに、独立した新会社を設立することを計画している。この部門が期待通りの成果を上げられなかったことを考えるとやや意外な動きではあるが、少なくとも今のところは、同じ経営陣を維持する予定だという。

Francisco PartnersのプリンシパルであるJustin Chen(ジャスティン・チェン)氏は、新会社がその潜在能力を発揮できるよう、さらなるサポートを提供する予定だという。「Francisco Partnersは、企業と提携して部門のカーブアウトを実行することを重視しています。我々は、優秀な従業員と経営陣をサポートし、スタンドアロン企業がその潜在能力を最大限に発揮できるよう、成長機会に焦点を当てて支援し、顧客やパートナーに高い価値を提供することを楽しみにしています」と同氏は声明で述べている。

IBMがこの売却を行うのは、ヘルスケア分野が盛り上がっている中でのことだ。2021年、Oracle(オラクル)は280億ドル(約3兆1825億円)で電子カルテ企業のCernerを買収し、Microsoft(マイクロソフト)は200億ドル(約2兆2733億円)近くと見積もられる取引でNuance Communicationsを買収した。どちらの取引も規制当局の承認を得ていないが、大手企業がいかに医療分野を重視しているかを示している。

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そのため、この動きはMoor Insights & Strategyの主席アナリストであるPatrick Moorhead(パトリック・ムーアヘッド)氏を驚かせたという。「傾向としてはより垂直なソリューションに移行しているので、非常に驚いています。それを考えると、いかに同部門の成績が悪かったかを潜在的に示しているともいえるでしょう」。

いずれにしても、今回の買収は規制当局の承認を待って行われ、第2四半期中に完了する予定だ。この取引には機密性の高い医療データが含まれていることから、さらに精査される可能性もある。

画像クレジット:Carolyn Cole / Getty Images

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(文:Ron Miller、翻訳:Dragonfly)

Rocket Labが宇宙用太陽光電池を手がけるSolAeroを約91.6億円で買収

Rocket Lab(ロケット・ラボ)は、宇宙ソリューションの垂直統合というミッションに取り組んでいる。米国時間1月18日、この打ち上げ・宇宙システム企業は、宇宙用太陽光発電製品および精密航空宇宙構造物のサプライヤーであるSolAero Holdings(ソルエアロ・ホールディングス)を現金8000万ドル(約91億6000万円)で買収完了したことを発表した。

1998年に創立されたニューメキシコ州に本拠を置くSolAeroを買収したことで、Rocket Labは衛星製造のための重要なサプライヤーを社内に持つことになる。同時に、Rocket Labのリソースを利用することができるようになったSolAeroは、大量生産と規模拡大に必要な製造能力を得ることができ、他の顧客への供給を強化することが可能になる。

今回の買収は、宇宙市場のさらなる獲得を目指すRocket Labを支援し、その長期的なビジョンを後押すると、広報責任者のMorgan Bailey(モーガン・ベイリー)氏はTechCrunchに語った。

「例えば、Rocket LabがElectron(エレクトロン)やNeutron(ニュートロン)で特定の宇宙機を打ち上げることはないかもしれませんが、ソーラーパネルや、スタートラッカー、リアクションホイール、フライトソフトウェア、分離システムなどのコンポーネントを供給することによって、収益を得ることができ、ミッションの一翼を担うことができます」と、ベイリー氏はいう。「もちろん、SolAeroの技術は、Rocket Lab自身ののPhoton(フォトン)宇宙船にも組み込まれ、当社の垂直統合戦略をさらに後押しすることになります」。

今回の買収は2021年12月に一定の閉鎖条件を前提に発表されたもので、Rocket Labはその数カ月前に、コロラド州のAdvanced Solutions, Inc. (ASI、アドバンスト・ソリューションズ)という宇宙用ソフトウェア会社を4000万ドル(約45億8000万円)で買収することを発表している。ASIの買収は、Rocket Labが宇宙システム部門を構築し、宇宙船の製造、衛星のサブシステム、フライトソフトウェア、地上運用、打ち上げまでを網羅した「エンド・ツー・エンド」の宇宙企業になるという目標の達成を支援することが目的だという。

関連記事:Rocket Labが宇宙飛行ソフトウェア・ミッションシミュレーション企業ASIを45億円超で買収

SolAeroの合併は、Rocket Labが2021年12月に買収した宇宙機分離システム会社のPlanetary Systems Corporation(プラネタリー・システムズ・コーポレーション)と、2020年4月に買収した衛星部品メーカーのSinclair Interplanetary(シンクレア・インタープラネタリー)に続くものだ。

「SolAeroは、Rocket Labの垂直統合型ビジネスモデルを高度に補完するものであり、我々の顧客に完全な宇宙ミッションソリューションを提供することを可能にします」と、Rocket LabのCEOで創業者のPeter Beck(ピーター・ベック)氏は声明の中で述べている。「これまで1000回以上のミッションを成功させた経験を持つSolAeroのチームは、James Webb(ジェイムズ・ウェッブ)宇宙望遠鏡や、InSight(インサイト)とIngenuity(インジェニュイティ)を含む火星でのミッションに、宇宙太陽光発電ソリューションを提供するなど、先駆的なミッションを実現してきました」。

InSight火星探査機は、火星表面に展開された史上最大の太陽電池アレイであり、Ingenuityは2021年4月に火星での飛行に初めて成功したヘリコプターである。

SolAeroの製品は、NASAのParker Solar Probe(パーカー・ソーラー・プローブ)宇宙探査機や、国際宇宙ステーションへのCygnus(シグナス)補給ミッションに電力を供給してきた。また、OneWeb(ワンウェブ)のブロードバンド衛星コンステレーションにも電力を供給しており、NASAのArtemis(アルテミス)月面探査計画では、将来の火星探査を可能にするSolar Power Modules(ソーラー・パワー・モジュール)の供給元に選ばれている。

SolAeroで働く425名のチームがRocket Labに加わることで、同社ではカリフォルニア、バージニア、コロラド、メリーランド、トロント、ニュージーランド、そして今後は(SolAeroの)アルバカーキの施設をを含め、合計1100名以上の従業員が働くことになる。SolAeroチームは引き続き、社長兼CEOのBrad Clevenger(ブラッド・クレベンジャー)氏が指揮を執る。

画像クレジット:Rocket Lab

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

テスラ株主、マスク氏がSolarCity買収を取締役会に強要と裁判で主張

Tesla(テスラ)の株主は、CEOのElon Musk(イーロン・マスク)氏が2016年に同社の取締役会にSolarCity(ソーラーシティ)を買収するよう強要したと裁判官に認定するよう求めている。この買収取引は、マスク氏が筆頭株主だった破綻したソーラー会社の「救済」だったというのが株主グループの主張だ。米国時間1月18日に行われたZoomでの公聴会で、株主らはマスク氏に買収取引で受け取った株式の返還とTeslaへの130億ドル(約1兆4918億円)の支払いを命じるよう求めた。

全株式による買収取引は当時26億ドル(約2983億円)と評価されたが、Teslaの株価はその後、大きく上昇した。

マスク氏は2021年7月に買収をめぐる10日間の訴訟で証言し、弁護団はマスク氏が当時85%の株主が承認したSolarCity買収に関連する取締役会の議論や交渉に関与しなかったと述べている。この買収についてマスク氏が不適切な影響力を行使したかどうか、また同氏や他の取締役が買収に関する情報を株主に隠していたかどうかが争点となっている。

関連記事:イーロン・マスク氏がSolarCity買収に関する訴訟で買収の正当性を主張

ロイター通信によると、株主側の弁護士Randy Baron(ランディ・バロン)氏は公聴会で「この訴訟は常に、SolarCityの買収がイーロン・マスク氏が巧妙に仕組んだ財政難からの救出、救済だったのかどうかが争点になっている」と述べたという。

組合の年金基金や資産運用会社による訴訟では、SolarCityは「一貫して利益を上げることができず、負債が膨らみ、持続不可能な速度で現金を使っていた」とし、同社が10年の歴史の中で30億ドル(約3442億円)超の負債を積み上げ、そのほぼ半分が2017年までに返済期限を迎えていたと指摘した。

マスク氏の弁護士は2021年7月、この買収はTeslaをエネルギー会社に変えるというマスク氏の長期ビジョンの一部だったと主張した。マスク氏は、SolarCityとTeslaを合体させることが、Teslaの蓄電製品「Powerwall(パワーウォール)」と太陽光発電パネルを組み合わせるというビジョンの鍵だった、と述べている

1月18日の公聴会で、マスク氏の弁護士の1人であるEvan Chesler(エヴァン・チェスラー)氏は、この取引は救済措置ではなく、SolarCityの財務は多くの高成長中のテック企業と同レベルだったと主張した。

ロイター通信によると、チェスラー氏は「SolarCityは何十億ドル(何千億円)もの長期的価値を築いていた」と述べた。

株主側の弁護士のLee Rudy(リー・ルディ)氏が、デラウェア州大法院のJoseph Slights(ジョセフ・スライツ)代理大法官に、宣誓証言と裁判の過程で株主側弁護士を繰り返し侮辱したマスク氏に対する侮辱罪を検討するよう求めたことから、その場は少し緊張した雰囲気になった。

スライツ氏は約3カ月後、自身の引退と同時期に判決を下す見込みだと述べた。マスク氏の巨額報酬に異議を唱える関連株主訴訟は、スライツ氏から別の判事に移管された

画像クレジット:Joshua Lott / Getty Images

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Nariko Mizoguchi

マイクロソフト、7.8兆円でゲーム大手Activision Blizzardを買収へ

ゲーム大手のActivision Blizzard(アクティビジョン・ブリザード)は、セクハラ問題や経営陣の混乱で投資家から非難を浴びていたが、脱出カプセルのスイッチを押した。Microsoft(マイクロソフト)による687億ドル(約7兆8200億円)での現金買収に合意したのだ。

Activision BlizzardのCEOであるBobby Kotick(ボビー・コティック)氏は、1万人近い従業員を抱える同社でSECの調査やセクハラスキャンダルが続く中で、退任が噂されていた(2021年、現・元社員の2000人以上が、差別訴訟に対する同社の対応を「忌まわしく侮辱的だ」とする書面に署名、さらに最近、1000人以上の社員がコティック氏の退任を求める署名を行っている)。Wall Street Journalは、コティック氏が自社でのセクハラやレイプ疑惑について何年も前から知っていたにもかかわらず、行動を起こさなかったと報じている。だがMicrosoftは、今回の買収でコティック氏がCEOにとどまると述べている。この先Activision Blizzardは、全体としてはMicrosoft Gaming(マイクロソフト・ゲーミング)のCEOでXbox(エックスボックス)の責任者であるPhil Spencer(フィル・スペンサー)氏に報告することになる。

スペンサー氏は米国時間1月18日のブログで「Microsoftは企業として、社員とプレイヤーの双方を含め、ゲームのあらゆる側面でのインクルージョンを目指すことを約束します」と書き、暗にActivision Blizzardで進行中の騒動に言及しました。「また、創造的な成功や自律性は、すべての人に尊厳と敬意をもって接することと密接に関係していると考えています。私たちはこのコミットメントを、すべてのチームとすべてのリーダーに対して課しています。私たちは、積極的なインクルージョンの文化を、Activision Blizzardのすばらしいチームへと広げていきたいと考えています」。

もしコティック氏がトップの座にとどまるのなら、この買収のニュースが従業員たちの懸念を和らげることはなさそうだ。Activision Blizzardの従業員は、現在進行中の性的不祥事だけでなく「Call of Duty(コール オブ デューティ)」の品質保証担当者の解雇に抗議して、数回のデモを行っている。シニアテストアナリストのJessica Gonzalez(ジェシカ・ゴンザレス)氏は、ABetterABK労働者同盟のリーダーとして登場し、会社の変革を求める最も大きな社内の声の1人として名を馳せていたが、2021年11月末に辞任を表明していた。

ゴンザレス氏がActivision Blizzardの社内Slack(スラック)に投稿し、Twitter(ツイッター)でも公開された辞任メッセージには「あなたの無策と説明責任の拒否が、優れた人材を追い出し、あなたがCEOの地位から解任されるまで、製品は苦労を強いられることになるでしょう」と書かれている。「厳しいことをいうようですが、あなたには文化を修正するための猶予が何年もあったはずです。それなのに現在の会社の状況を見てください」。

11月にスペンサー氏は、Xboxのスタッフに宛てた電子メールの中で、同社に対する疑惑を踏まえ「Activision Blizzardとの関係をあらゆる側面から評価し、継続的に積極的な調整を行っています」と述べている。Activision Blizzard買収のニュースがまだ知られていなかった先週、スペンサー氏はNew York Timesの取材で、汚名を着せられたゲーム大手と自社の関係について質問された。

「私たちXboxにとってこの件は、他社をどうこういうための材料にはなりません」とスペンサー氏は述べている。「Xboxの歴史もまっさらなものではないからです」。2016年のゲーム開発者会議におけるMicrosoftのパーティーで、同社は女子学生ダンサーを雇ったことで、ゲーム業界全体の女性との間に多くの問題を起こしている同じ「男子学生」ノリ文化を露呈したことがあるのだ。スペンサー氏は「あれはXboxの歴史の中でも痛恨の極みでした」と付け加えた。

プレスリリースによれば、この取引によりMicrosoftは、Tencent(テンセント)、Sony(ソニー)に続き、売上高で世界第3位のゲーム会社となる。Activision Blizzardは「World of Warcraft」「Call of Duty(コール オブ デューティ)」「Candy Crush(キャンディクラッシュ)」などのメガタイトルを擁し、Microsoft GamingはXboxコンソールを製造している。Microsoftは、先日2500万人の加入者を達成したクラウドゲーム配信サービスGame Passに、Activision Blizzardのゲームを含めることを発表した。一方、Activisionのゲームは、4億人近い月間アクティブユーザーを誇っている。

Microsoftの数十億ドル(数千億円)を超える規模の買収は、この買収だけではない。2020年末に、Microsoftは、「Edler Scrolls」「Doom」「Fallout 」などの人気ゲームを制作したBethesda(ベセスダ)ゲームスタジオなどの親会社であるZeniMax Media(ゼニマックスメディア)を買収する計画を発表していた。そのため、Activision Blizzardの買収に対しては、Microsoftによる独占への懸念が司法省から示される可能性がある。例えば、Meta(メタ)は現在、成長中のVR事業に関する独占禁止法違反の訴訟を起こされている。しかし皮肉なことに、この買収によって、Metaにとってはバーチャルリアリティの分野での競争が少し激しくなるかもしれない。

Microsoft会長でCEOのSatya Nadella(サティア・ナデラ)氏は「エンターテインメントの世界の中で、現在ゲームはすべてのプラットフォームに対して最もダイナミックでエキサイティングなカテゴリーです。そしてメタバースプラットフォームの発展において重要な役割を果たすことになるでしょう」と述べている。

MicrosoftとActivision Blizzard両社の取締役会は、この買収を承認しているが、買収そのものは、Activision Blizzardの1株当たりの価値を時価を上回る95ドル(約1万1000円)で、2023年に完了する予定だ。

画像クレジット:Troy Harvey/Bloomberg/Getty Images

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(文:Amanda Silberling、翻訳:sako)

ソーシャルロボティクスFurhatがSpheroのスピンアウト企業Misty Roboticsを買収

Misty(ミスティ)はとんでもない旅をしてきた。Foundry(ファウンドリ)とVenrock(ヴェンロック)から1150万ドル(約13億1600万円)を調達し、自社のパーソナルロボットでクラウドファンディングをした後、同社は一連の難題にぶつかった。現地時間1月17日、スウェーデンのソーシャルロボット企業であるFurhat Robotics(ファーハット・ロボティクス)は、同社によると、全額現金での取引で、この低迷するスタートアップに安らかな終着点を提供する。Furhatはこの買収の金銭的詳細について口を閉ざしているが、この買収は Furhatにハードウェア面での優位性を与え、同社のソーシャルロボティクスソフトウェアを新しいプラットフォームで活用することを可能にするためのものだという。

Furhat Roboticsという不思議な名前の会社は、Misty Roboticsがあるコロラド州を米国での事業拠点とする予定で、2つの技術を統合する方法を模索するため、同社のシニアスタッフ8人を残しておくそうだ。

Furhat RoboticsのCEOで共同設立者のSamer Al Moubayed(サマー・アル・モバイード)氏は「我々はシニアチームを維持し、オペレーション、エンジニアリング、ビジネス開発、そしてシニアソフトウェア開発者の責任者が参加します。Mistyは、中国の有名なパートナーによって製品を製造し、非常にスケーラブルな生産オペレーションを構築する上ですばらしい仕事をしてくれました」と語っている。

両社は「統一されたビジョン」に基づいて運営されていると主張し、Furhat RoboticsがMisty Roboticsブランドを引き続きサポートし、製品群の開発と拡大を支援するとともに、FurhatとMistyの機能を統合して将来のソーシャルロボットを強化すると語っている。

「ソーシャルロボットの世界では、買収は非常に珍しいことです。実は歴史上初めてのことかもしれません。まだ業界の初期段階ですから」とアル・モバイード氏はいう。「この会社は、Sphero(スフィロ)からスピンアウトした会社です。このロボットのユニークなところは、おもちゃのように見えるかもしれませんが、とても好感が持て、親しみやすいところです。それでいて、非常に高度な機能を持っています。Misty Roboticsが成功したのは、世界最高の技術を、非常に親しみやすいロボットに搭載したことです」。

Furhatチームは、自社の背面投影型アニメーション顔のロボットが、空港や駅、医療用途など、大人の人格を必要とするソーシャルロボットに最適であると提案している。Mistyが加えるのは、はるかに拡張性があり、小さな腕と表情でより表現力のあるものだ。しかし、Furhatのチームは、この2つのロボットは見た目はまったく違うが、共通点も多いと説明する。

「Mistyは、私たちに欠けていたパズルのピースなのです。例えば、教育分野に特化したより大きな市場にアクセスするのに役立ちます」と、アル・モバイード氏は買収の経緯を説明しながら語っている。「技術は非常によく似ています。しかし、Mistyはハードウェアに強く、私たちはソフトウェアに強いのです。教育用に新しいロボットを作るのではなく、Furhatは別のソリューションを探し始めることにしたのです」。

「Furhat Roboticsはこの分野における真のパイオニアです」。とMisty Roboticsの創業者で製品責任者のIan Bernstein(イアン・バーンスタイン)氏はコメントしている。「私たちは、ロボットアプリケーションの未来を現在にもたらすために力を合わせます。私たちの専門分野の組み合わせにより、近い将来、このすばらしい技術の実生活におけるさらに驚くべき応用を目にすることになるでしょう。ソーシャルロボットはすでに私たちの生活の中で重要な役割を果たしており、私たちの専門知識を組み合わせて現実世界の問題を解決することで、まさに無限大の可能性を秘めているのです」。

画像クレジット:Furhat Robotics

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(文:Haje Jan Kamps、翻訳:Akihito Mizukoshi)

クラウドファンディングGoFundMeが非営利団体向け寄付プラットフォームClassyを買収

米国時間1月13日、クラウドファンディングプラットフォームのGoFundMeが、非営利団体や事業のための資金を集めているClassyを買収すると発表した。財務内容は明らかにされていないが、これは全株式の買収だ。

GoFundMeも地域のチャリティ食堂や、コミュニティメンバーの援助など非営利の目的で使えるが、Classyは直接非営利団体そのものに協力を提供する。2010年のシードラウンド以降、ClassyはVCから合計1億8350万ドル(約209億6000万円)を調達したが、それには2021年4月のNorwest Venture Partnersがリードした1億1800万ドル(約134億8000万円)のシリーズDが含まれている。この公益法人は200名のチームを雇用しており、今後はGoFundMeの子会社として、GoFundMeとは別の法人実体として稼動するが、トップはGoFundMeのCEOであるTim Cadogan(ティム・カドガン)氏が務める。

「GoFundMeとClassyが個人や団体のためにこれまで合わせて200億ドルを調達してきたことを誇りに思っていますが、私たちが持つユニークな機会により、もっと大きなインパクトを作り出せるはずだと認識しています。米国だけでなく全世界的なインパクトになるでしょう」とカドガン氏はブログで述べている。

カドガン氏は、この買収により、個人の寄付者と非営利団体への寄付の機会を結びつけることができるようになると期待している。

「これによって、災害救助を求めている個人に誰かが寄付をすると、その人は、災害の原因である気候変動の対策活動をしている非営利団体に接続できることになる」とカドガン氏は書いている。

2021年にはGoFundMeとClassyを合わせて50億ドル(約5711億8000万円)の資金が集まったとのこと。GoFundMeは募金者から(標準的な取引手数料は別として)プラットフォーム利用料を徴収しないが、人々がキャンペーンに寄付する際、GoFundMeの運営維持に役立つチップをオプションで追加することが可能だ。デフォルトでは、チップは寄付額の15%に設定されている。

画像クレジット:GoFundMe

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(文:Amanda Silberling、翻訳:Hiroshi Iwatani)

アプリ統合プラットフォームJitterbitがローコードサービスのPrimeAppsを買収

APIトランスフォーメーションカンパニーのJitterbit(ジタービット)は、トルコのローコードアプリケーション開発サービストルコPrimeApps(プライムアプス)を買収したことを米国時間1月12日に発表した。Jitterbitは自社のAPIプラットフォームをPrimeAppsと組み合わせることで、非技術者がビジネスアプリを簡単に作れるエンド・ツー・エンド・プラットフォームを提供する。ビジネスアプリには、ほぼまちがいなく、複数のデータソースの統合が関与している。この新しいプラットフォームは2022年4月に提供開始される予定だ。

両社は、本件の金額面の詳細を公表していない。JitterbitのCEOであるGeorge Gallegos(ジョージ・ガレゴス)氏は「数十億ドル(数千億円)の取引と比べてお買い得で」と信じているとだけ語った。

Jitterbitはちょっとした買収まつりの状態にある。2021年11月には中南米をターゲットにしているエンタープライズ向けiPaaS(サービスとしての統合プラットフォーム)プロバイダー、Wevo(ウィボ)を買収、5月にはこれもiPaaSサービスでオンプレミスあるいはクラウドベースのeコマースとCRMシステムの間でデータ統合を可能にするeBridgeを買収した。こうした動きを可能にした理由の一部は、未公開株式投資会社Audax(オーダックス)が2020年に行った同社への投資だ。

Jitterbitは最近、自社プラットフォーム上にノーコードあるいはローコードサービスを載せることにチャンスを見出した。ガレゴス氏によると、会社は設立当初からビジネスプロセスの自動化に焦点を合わせてきた。多くの場合、この種の統合や新しいワークフローから生まれるユーザー体験は、デベロッパーが作らなくてはならない。「これが繰り返し起きていることに気づきました。それを自分で開発するか誰かを探すかを考えていた時にPrimeAppsを見つけ、それはすばらしく最適な組み合わせでした」とガレゴス氏は言った。「これは当社の現行顧客がエンド・ツー・エンド・ソリューションを1つだけもてばよいようにするという私たちの能力を加速するための鍵です」。

PrimeAppsは、Serdar Turan(サーダー・トゥーラン)氏が2015年に設立して以来、外部資金調達を一切行っていない。同社の従業員25名は全員Jitterbitに移る。「以前から世界に進出する機会を常に伺っていました。しかし、簡単ではなく、現実は厳しいものでした」とトゥーラン氏はいう。「Jitterbitの訪問を受けた時、彼らはすでにこの分野でかなり大きく、私たちに欠けていたものを見事に補っていました。私はチャンスだと感じ、力を合わせて成長を目指すことにしました」。

PrimeAppsブランドはこの契約の一環で消滅し、サービスはJitterbitに完全に統合され、顧客も時間をかけて移行される、とトゥーラン氏は言った。

Jitterbitのガレゴス氏によると、同社はMuleSoft(ミュールソフト)やBoomi(ブーミ)などとiPaaSビジネス分野で競合している。そして、これらの会社はJitterbitが今回PrimeAppsとの統合によって実現したエンド・ツー・エンド・ソリューションの類を提供していないため、今後彼らが似たような動きをしてもおかしくない。

「ローコード開発の未来は現実になりつつあります。Jitterbitと一緒になることで、私たちはこの革命を進める先駆者となり、それによって仕事の進め方は大きく変わります」とトゥーラン氏は語る。「Jitterbitの高度なiPaaSとAPI管理ソリューションを得ることで、当社のプラットフォームは、顧客の一番近くにいる一般人デベロッパーに、多数のITエンジニアの力を借りることなく迅速にビジネス課題を解決する新たなデジタル体験を作り出す力を与えます」。

画像クレジット:blackred / Getty Images

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:Nob Takahashi / facebook