ビジネスサービスこそがVRのキラーアプリだ

【編集部注】著者のChris Youngは、B2BソフトウェアのアーリーステージベンチャーファンドであるRevel Partnersの、マネージングジェネラルパートナーである。

仮想現実(VR)と拡張現実(AR)は、2016年に現実的な試練に晒された。膨大な投資と業界でのもてはやされ方にもかかわらず、予測されたVR/ARの大量採用は決して現実のものとはならなかった。しかし、その水面下では、地味で目立たない領域からではあるが、この技術の確実な動きが始まっていることがわかる。

B2Bとエンタープライズアプリケーションに於けるVR/ARの活動は、表面的には目立たずとも非常に活発な年だった。そしてその勢いは2017年も続いている。実際に、今やエンタープライズVRからのアプリケーション収益は、2020年までにはコンシューマーエンターテイメント収益を上回ると予測されている。しかも誇大宣伝は抜きで。

ゲームやエンターテイメントのためのVR/ARの早期の試みは、今だに初歩的な状況にあるままだ。Mark Zuckerbergでさえ、この技術が主流になるまでには、丸々10年はかかると見積もっている。不恰好で高価なハードウェアや、ヒット商品の欠如、そして消費者自身の関心の欠如などにその原因を求めることはできるが、業界による2025年までに7000億ドルの売上という予想は、少々野心的に思える。消費者向けのVR/ARが、いつか「やってくる」のはほぼ確実だが、一方業界の規模がどれ位のものになるのか、いつどのように成長が始まるのかは重要な疑問として残されたままだ。

調査会社のTracticaによれば、VR/ARの企業支出は、ハードウェア関連の収益を除いても、2020年までに消費者たちがVR/ARエンターテイメントに対して行う支出よりも約35%大きくなると予想されている。Tech Pro Researchによれば、彼らの調査に回答した企業のうち67%が現在ARの利用を検討しており、47%がVRをの利用を検討している。デジタルトランスフォーメーションは、VRハードウェアのコストの低下と共に、注目度が上がっている。関連するソフトウェア、システム、ツールの進歩との組み合わせと、企業による採用が、業界のための最も現実的な発射装置として成長しつつある。

2017年には、VR/ARのユースケースが、イノベーター、起業家、スタートアップたちが取り組むさまざまなビジネス分野で拡大し続けている。ヘルスケア、教育、CPG/FMCG(Consumer packaged goods / Fast-moving consumer goods:トイレットペーパーや洗剤のように安価かつ短いライフサイクルで大量に消費者に売られる商品のこと)、テレコム、広告、不動産などはすべて、VRもしくは強化現実(enhanced reality)から恩恵を受け始めている。何百もの3Dビジュアライゼーションと拡張のための、クリエイティブなアプリケーションたちが登場している。

スマートな起業家たちと開発者たちは、早期成功の鍵となる要素を特定し、その教訓を、B2Bに焦点を当てた消費者関連産業に応用するだろう。

マーケティングおよび広告セグメントには、VRスタジオ、アプリケーション開発者、流通ネットワークがひしめいている。多くの場合、彼らは広告代理店やブランドを支援して、販売やマーケティングのための没入型ブランド体験を提供している。たとえば、Outlyer Technologiesは、360度のモバイル広告フォーマットを使用して、ユーザーの関心を引きつけようとしている。最近のSXSW(サウス・バイ・サウスウエスト)では、メトロアトランタ商工会議所が、Foundry 45の技術を利用してアトランタの仮想体験を提供し、求職者の候補を募った。特に、アトランタではVR/AR企業が急増しており、数年前には1ダース程だった企業数が現在では50程になっている。

これらのタイプのユースケースが急成長しているのは、マーケティングと広告分野だけに限らない。製造業では、WorldVizが、その企業向けのVizardとVizmove VRアプリケーションスイートを使い、ビジュアライゼーションとテスティングのリーダーとなっていて、P&G、Philips、3M、Perkins & Willなどの多くの企業で採用されている。オープンソースで拡張可能なライブラリにより、大企業や中小企業は、現実世界のシナリオで、新製品を迅速に設計、操作、そしてテストすることができる。

教育での利用は — それが従業員訓練でも、初等教育でも、そして先進的研究だとしても — 大量のデータを視覚化したり、遠隔地で学生の教育を行なうことのできるVRの能力から恩恵を受けている。GoogleのProject Expeditionは、仮想的な探検と、没入型世界旅行を教室にもたらす。アイスランドのSólfarStudiosは最近、エベレストVRプロジェクトを英国王立地理学会に寄付したAlchemy VRUnimersiv、そしてCuriscopeなどは、没入型で経験型のカリキュラム、ツール、トレーニングで急速に教育の世界を変えつつある。

ヘルスケアのVRは、患者のケア、遠隔医療、リハビリ、そしてトレーニングにまで及んでいる。実際、2016年はVRカメラを使用した手術が行われた最初の年として記憶された。医学生たち(および一般の人びと)は、Mativisionの手術視覚化アプリケーションでVRを使用する医師と共に、手術の現場に立ち会うことができた。VisitUは、ヘッドセットと家庭内の360度カメラを通して、病院の子供たちを自分の部屋につなぐことができる。The Virtual Reality Medical Centerは、恐怖症や他の慢性的なメンタルヘルスの問題を持つ患者を支援するために、サイバー心理学の中で急速に成長している医療実践の1つだ。

業界全体では、7000億ドルもの規模に達するだろうと予測する専門家もいる。こうしたエンタープライズ分野におけるイノベーションを促進する新規用途の例は、この技術の意義ある収益への明確な道筋を示している。確かに、この分野は消費者向けの分野で、発達し発展を続けるだろうが、今や企業とB2Bのケースが急速に成長している。スマートな起業家たちと開発者たちは、早期成功の鍵となる要素を特定し、その教訓を、B2Bに焦点を当てた消費者関連産業に応用するだろう。そここそが、このテクノロジーがその基盤を見出し、大量採用への扉を開く場所なのだ。

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(翻訳:Sako)

HTC ViveのE3出場は今年で二年目、メジャーはまだ遠いけどトリプルAには来たか

HTCが、ゲームの万博E3に、その二年生として戻ってきた。一年生の昨年は、VRヘッドセットViveの消費者向けローンチの直後だった。HTCのVR担当VP Dan O’Brienに、今年のE3の会場で話を聞いた。同社はその市場をどう見ているのか。そこでの同社の役割とVRの現況は、必ずしも新人ではなくなった今年、どうなるのか。

大型ゲームがどんどんVR化することが重要、という点で彼とぼくの意見は一致した。たとえばBethesdaのDoom and FalloutのVRバージョンのように。Mario Kartも、Vive対応が東京のゲーセンに登場するらしい…これも重要だ。Viveの出だしの人気ではインディーたちのサポートに感謝しているO’Brienも、今後の本格的な普及となると、メジャーなゲームのVR化と、それに伴うゲーマーたちの‘VR意識革命’に期待するしかない。今ゲーマーは、VRについて、‘様子見’という段階だ。

Viveは、ハードウェアとしても進化した。O’Brienがとくに挙げるのは、新しいDeluxe Audio StrapとIntelの次期製品WiGigワイヤレスアダプターキットだ。これらはE3の会場で試すことができる。またVive Trackerは、ゲームの世界にほかのものを持ち込むが、これも一部のゲームに統合した形で展示されている。ヘッドセットそのものは昨年と変わっていないが、ユーザー体験の部分では、ハードウェアとソフトウェアの両方で大きく充実したようだ。

VRはまだ、大ヒットには遠いが、PS VRのようなゲーム専用機と結びつくことによって、その敷居はViveなどよりも低くなっている。でもO’Brienは、決して現状を肯定することなく、まだまだやるべきことが多いことを自覚している。たとえば最近のGoogleなどとのパートナーシップが示すように、VRの普及には多面的なアプローチが必要なのだ。

HTCの二度目のE3におけるViveのキーノートでも、派手な発表は何もなくて、でもSonyやBethesda、Nintendoからのビッグな発表には、HTCがしっかりと相乗りしている。弱冠二年生にしては、悪くないね。



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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

【ビデオ】根っからのゲーマーたちはVRを本当はどう思っているのか?

VRの未来への可能性は、とてつもなく大きい。教育、エンターテイメント、ビジネス、そしてソーシャルと、あらゆる分野で多様なユースケースが育つだろう。

でも、新しい技術の常として、VRもゲートウェイドラッグが必要だ。そしてこれまでは、普及の入り口となるユースケースはゲームだった。Sonyは、ひとにぎりのゲームでもって、PlayStation VRを推している。一部は既存のゲーム、そのほかは新作だ。NintendoもVRを推すためにMario KartをVR化している。一方Microsoftは、今年のE3でVR関連の発表をまったくしなかった

でも、ゲームのコミュニティはどうだろう? デベロッパーやストリーマーや実際にVRを作っている人たちは、VRを本当はどう思っているのか?



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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

マリオカートもVRで楽しめる「VR ZONE SHINJUKU」、歌舞伎町に7月14日オープン

攻殻にエヴァ、マリオカートまで体験できるーーそんなVR施設「VR ZONE SHINJUKU」が東京・歌舞伎町に7月14日オープンします。入場日時予約制で、6月16日正午より予約チケットの販売を開始します。


マリオカートにエヴァ、攻殻もVRで楽しめる

VR ZONE SHINJUKUは、広さ1100坪のVR施設です。エヴァ、攻殻、マリオカートなど13種類のVRアトラクション。そして、VRゴーグルを装着しない2つのアトラクション「巨大風船爆発ルーム PANIC CUBE」「バーチャルリゾートアクティビティ」などを楽しめます。

チケットは税込4400円の「1day4チケット」などを用意。こちらは通常800円の入場料と、4種類のアトラクションの体験料金がセットになったもの。事前WEB予約で購入できます。

エヴァンゲリオンVR The 魂の座

極限度胸試し ハネチャリ

ドラゴンボールVR 秘伝かめはめ波

マリオカートはかなりの高臨場感

最大4人対戦が可能な「マリオカート アーケードグランプリVR」

VR ZONE SHINJUKUのプレスイベントで、筆者はひと足早くマリオカートを体験。すると、「VRゲームの一線を超えた」と思える臨場感に驚きました。周囲にぜひプレイしたほうがいいと勧めたくなるほどの出来です。体験レポートは別途公開します。

(2017/06/13/18:00更新)体験レポート公開

VR版『マリオカート』を先行体験。自分の手で甲羅を投げ、相手をクラッシュさせる楽しさ(Engadget 日本版)

アトラクションの一覧は下記の通りです

  • エヴァンゲリオンVR The 魂の座
  • マリオカート アーケードグランプリ VR
  • 極限度胸試し ハネチャリ
  • ドラゴンボールVR 秘伝かめはめ波
  • 釣りVR GIJIESTA
  • 恐竜サバイバル体験 絶望ジャングル
  • 近未来制圧戦アリーナ 攻殻機動隊ARISE Stealth Hounds (8月に稼働)
  • 巨大風船爆発ルーム PANIC CUBE
  • バーチャルリゾートアクティビティトラップクライミング/ナイアガラドロップ
  • その他お台場のVR ZONE Project i Canから継続設置のアクティビティ

内部には飲食エリアも完備

お台場にあった初代VR ZONEとの違いは?

VR ZONEといえば、初代施設が東京・お台場に期間限定オープンし話題になりました。その後継施設となる「VR ZONE SHINJUKU」では、お台場での運営ノウハウを活かしているといいます。

左からバンダイナムコ 常務取締役の浅沼誠氏、執行役員 AM事業部 事業部長の堀内美康氏、「Project i Can」エグゼクティブプロデューサーの小山順一郎氏、同マネージャーの田宮幸春氏

「お台場との大きな違いは、みんなで楽しめるアトラクションが増えたことです。高所恐怖SHOWは一人で楽しむアトラクションでした。今回はみんなで一緒に遊ぶために、通信システムを活用。4〜8人で、みんなで一緒に遊べるアトラクションが増えています。1人で来場しても上手にマッチングする優秀なスタッフがいるので、心配はいりません」(担当者)

小規模なVR施設「ポータル」も各地にオープン予定

またバンダイナムコは、VRアミューズメント施設の多店舗展開も実施します。

「ポータル」と呼ばれる小規模なVR施設を、今後各地にオープンする予定。広さは30〜70坪程度と、1100坪のVR ZONE SHINJUKUに比べると小規模。設置するアトラクションも3〜4種類程度としています。いわば街中のゲームセンターのVR版といったところ場所や時期などは未定です。

VR ZONE SHINJUKUの場所は東京都新宿区歌舞伎町1−29−1。JR新宿駅東口から徒歩7分、西武新宿駅から徒歩2分。営業時間は10時〜22時で、最終入場時間は21時までです。

前述の通り入場予約制。予約チケットの販売は6月16日正午より開始します。

Engadget 日本版からの転載

Nomadicが小売店用のモジュール的位置対応VRシステムで$6Mのシード資金を獲得、今後は一般の娯楽施設にも

仮想現実(virtual reality, VR)は家庭用にはまだ高価すぎるかもしれないが、しかし専門店の集客手段としては、検討の価値があるだろう。

ユーザーが体感できる位置対応の小売体験を追究してきたNomadicが、新たな資金を手にした。同社は今日(米国時間6/12)、Horizons Ventures率いるラウンドにより600万ドルの資金を調達したことを発表した。Presence Capital, Maveron, Vulcan Capital, そしてVerus Internationalがこのラウンドに参加した。

ユーザーは、VRヘッドセットとバックパックに収めたPCを装着し(上図)、店内を歩きまわって、各位置に仕組まれたゲームを体験する。そのVRの中に椅子が見えたら、ユーザーは実際にその椅子に座れる。またゲーム中のさまざまなオブジェクトも、赤外線マーカーとカメラのおかげで、そこに実在する物を手に取ることができる。その体験は全体として、90年代のキッチュな4D映画の意図的な焼き直しみたいだが、体感と物理的なスペースや物を利用しているから、より没入的(イマーシブ, immersive)なVRになっている。

ぼくもそれを実際に体験したことがあるけど、そのときの一部始終はこの記事に書いた。

位置対応のVR体験は、The Voidなどの競合企業が、たとえばニューヨークのGhostbusters体験館のような、専用の倉庫みたいな施設で提供しているが、Nomadicの場合はインストールの容易なモジュール方式で、既存の小売店が導入できるようにしている。

Nomadicが専門店の客寄せ以外に狙っているのは、映画館、ショッピングモール、リゾート、空港、カジノ、テーマパークなどにおける、没入的なエンターテイメントの提供だ。まだ具体的なパートナーシップは発表されていないが、日程だけはなぜか具体的で、同社の位置対応VRによるエンターテイメントの‘初封切り’は2018年の第一四半期だそうだ。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

Walmart、全米でVRトレーニングを開始予定――将来的には店舗への導入も

世界最大の小売企業Walmartは、マネジメントやカスタマーサービスといった種々のテーマの従業員向けトレーニングに近々VRテクノロジーを活用し始める予定だ。

このVRインストラクションは、同社がアメリカ中の200か所に開設している”Walmart Academy”というトレーニングセンターへ今年中に導入され、年間推定15万人が参加する同プログラムの効率化を目指す。各トレーニングセンターには、VRコンテンツを利用するためOculus RiftとゲームPCが設置される予定だ。

全てが360度動画ベースのWalmartのVRインストラクションは、参加者がさまざまな場面に直面し、目の前に表示されるインタラクティブな選択肢から自分がとるべき行動を選ぶような仕組みになっている。シナリオの中には、カスタマーサービスやマネジメントに関するもの、さらにはブラックフライデーの混雑具合を再現したものなど季節的な設定も含まれている。

また、ひとつひとつのインストラクションは30秒から5分程度の長さで、従来のトレーニング内容を補完するようなつくりになっている。

WalmartはVRトレーニング環境の開発にあたり、STRIVR Labsと呼ばれる比較的知名度の低いVR企業とタッグを組んだ。同社はこれまで、主に大学生やプロのアスリートのためのVRトレーニングの開発を行ってきた。

一体両社のコラボレーションはどのように始まったのだろうか? 全ては、Walmartのオペレーション部門の幹部が、アーカンソー大学のフットボールチームで使われているSTRIVR製のVRトレーニングを見かけたときに始まった。その後、STRIVRのCEO Derek Belcherにとって「思いがけない問い合わせ」がWalmartから寄せられ、本格的な議論が始まった。そして、今年の1月終わりには国内のトレーニングセンター30か所でパイロットプログラムがスタートしたのだ。パイロットプログラムの期間中、両社は協力しながらWalmartのトレーニングに合うVRコンテンツを模索していたとBelcherは話す。

「VRを使うことに意味があると思えるものは、全て組み込もうとしました」と彼は話す。「その結果、袋詰作業から店長としての仕事まで、さまざまな役職に合ったコンテンツが整っています」

Walmartとの契約締結からは数か月しか経っていないものの、既にSTRIVRには金融サービス企業や大手自動車メーカーなど、数社から引き合いがきているようだ。

「文字通り世界最大規模の企業を初めての法人顧客に迎えるというのは、かなりの大事ですからね」とBelcherはTechCrunchに対して語った。

注目すべきことに、STRIVRは既に黒字化を果たしている。細かな数字は明らかにされなかったが、Belcherは過去2年間で同社が「数百万ドルの売上」を計上しており、実際の数字は1000万ドル強だと話していた。なお、STRIVRはInsignia Venture PartnersやBMW i Ventures、Advancit Capital、Presence Capitalからこれまでに500万ドルを調達している。

現状の契約はトレーニングセンターだけに関するものだが、Belcherいわく、Walmartは最終的にアメリカ国内の5000店舗にVRヘッドセットを導入したいと考えているようだ。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

VRソーシャルアプリを正式開始したclusterが、エイベックスやDeNAから2億円を資金調達

VRスタートアップ企業のクラスターは今日、エイベックス・ベンチャーズユナイテッドDeNASkyland Venturesおよび個人投資家らからシリーズAラウンドで2億円を資金調達したことを明らかにした。これでクラスターの累計調達額は2.6億円となる。過去のラウンドで投資しているVCにはEast Venturesも含まれる。Skyland Venturesは今回追加投資しており、新たにエイベックスやDeNAが投資家として加わった形だ。エンタメ系コンテンツを持つエイベックスや子会社にネットアイドルのライブ配信サービス「SHOWROOM」を持つDeNAとは事業シナジーを見込む。

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クラスターについては、過去にTechCrunch Japanでもお伝えしている通り、リビングやオフィスの打ち合わせスペースなどをVR空間上に3Dで再現して場を共有するサービス「cluster.」を提供する。ユーザーはVRデバイスを使うか、通常のPCを使って、このVR空間に「入る」ことで利用する。別地点から入ってきているほかの参加者と音声や身振りによるコミュニケーションが可能だ。今日正式ローンチしたclusterには10弱の部屋が用意されていて、誰でも無料で利用できる。また、clusterには有料・無料のチケット決済システムが実装されていて、オンライン・イベントにも活用できる。


clusterの特徴は多くの同時接続が実現できることのほかに、きわめてシンプルな3Dモデルで表現されるアバターを使った他のユーザーとのインタラクションができることが挙げられる。アバターは比較的簡素なポリゴンで表現されている。これは意図的なデザインチョイスで、仮想空間内で実際に交流することを考えたときに重要なのは「精巧な3Dモデル」ではないというのがクラスター創業者の加藤直人CEOの考えだそうだ。

「FacebookのSpacesはインタラクションがありません。例えばVR空間にあるペットボトルには触れない。これが3Dモデルだと触れるのです。会うとか集まるといった体験を提供するにはインタラクションが重要です」

想定しているのはアイドルや声優のファンイベントだが、どの程度本人に似た3Dアバターを用意するのだろうか?

「テレプレゼンスで実際に会っているような感覚を得るためには、3Dモデルがどれだけクオリティーが高いかよりも、どれだけインタラクションが可能かのほうが大切なんです。人間そのものじゃなく、キャラクターだけでも明確にコミュニケーションは成立する、というのが私の大きな仮説です」

「ひきこもりを加速する」を会社のスローガンに掲げる加藤CEOは、アイドルのファンは生身の人間そのものではなく、キャラクターに恋しているのではないかと、さらに踏み込んだ仮説を語る。「アイドルもキャラクターだと思っています。キャラクター文化の一環だと思っているんです」(加藤CEO)

数少ないポリゴンでアバターを表示するのは、帯域やクライアントの処理性能の制約を考えるとエンジニアリング上のテクニックなのかもしれないが、実際には「それで十分」ということらしい。一方で、今回調達した資金は、VR空間やアバターをリッチにしていくコンテンツ制作に使っていくという。3Dモデルはコンテンツもノウハウも流用が効くため、ここで差別化をはかり、そのことでコミュニティーを育てていきたい考えだ。

2次元のカメラ映像や音声を使った従来の「テレプレゼンス」とは一線を画すVR空間ソーシャルサービスとして、ユーザーが納得するものが作れるのか、あるいは実際にチケット代を払って「VR空間に会いに行く体験」を作っていけるのか。エイベックスという強力なコンテンツパートナーと、DeNAというオンラインコミュニティービジネスで知見を持つパートナーを得たことでクラスターは良いスタートラインに立ったと言えそうだ。

YouTube VRの中ではチャットによる対話形式/会話形式のコメントが可能に、安全なルームならね…

YouTubeにコメント書いてる人と、実際に会いたいと思ったことある? そう、ぼくもないね。

ところが、どっこい! 今日のGoogle I/OのYouTube VRに関する説明では、コメントは従来のようにテキストで書くだけでなく、VRの中にチャットルームができるので、そこでいろいろとお話ができるようになる。それ以上詳しいことはまだ分からないんだけど、音声によるスパムが猛威を揮ったりしたら、おとろしいだろうね。

そのシステムは、Oculus Roomsとほとんど同じのようだ。それは、友だちと一緒にルームに入ってビデオを一緒に見る、という機能だ。

YouTubeのこのシステムでは、あなたはアバターになって360度のスペースに飛び込み、ビデオについてチャットする。それはFacebookがF8で見せたソーシャルネットワーキングアプリSpacesとまったく同じと思えるけど、モバイルのVRではソーシャルな対話の機能が限られてしまうだろう。

でもモバイルのVRに関しては、GoogleにとってYouTubeの価値と意義が大きい。これまでもGoogleは、そうであることを隠そうとしなかった。モバイルVRは確かに、友だちが集まるためのすばらしいソーシャルプラットホームだ。でも、きちんと荒らし対策を実装してからでないと、安心して使えないだろうね。



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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

ソフトバンクがVR/AR開発ツールのImprobableに出資――調達総額は5億200万ドル

仮想世界やシミュレーションの開発ツールを手がけるロンドンのImprobableは米国時間5月11日、新たに資金を巨額な調達して同社のプロダクトおよびディベロッパー・エコシステムの拡大を図ると発表した。サンフランシスコにもオフィスを構えるImprobableは、リード投資家のソフトバンク、そして既存投資家のAndreessen HorowitzとHorizons Venturesなどが参加する調達ラウンドで合計5億200万ドルを調達した。

同社はバリュエーションを公開していないが、共同創業者兼CEOのHermann Narula氏によれば、今回投資家が入手した株式は全体の過半数に満たない数だという。今回の資金調達以前にImprobableが調達したのは5000万ドルのみ。当時のバリュエーションはおよそ10億ドルだった。

いくつかの数字付きで今回の資金調達のうわさが最初に流れたのは数週間前のことだった。

Narula氏が私に話してくれたところによると、今回のソフトバンクによる出資はVision Fundを通して行なわれたものではない。Vision Fundは1000億ドル規模の巨大ファンドで、Appleもパートナーとして参加している ― ただし、このファンドに関する正式なアナウンスはまだ行なわれていない。将来的にはVision Fundからの出資を受ける可能性もあるとNarula氏は加えた。

今回の資金調達によって、Improbableは大きな一歩を踏み出したことになる。VR/AR業界の他社と比べると話題にのぼることが少なかった同社のことを見て、「improbable(日本版注:起こりそうにもないの意)」だと感じた人もいるだろう。

「機は熟しました」とNarula氏は語る。「コアとなるソリューションを提案することができる状態になりました。エコシステムとテクノロジーに大きく投資するべき時が来たのです」。

Improbableの名を世に知らしめたのは、同社が開発したSpatialOSと呼ばれるプラットフォームの存在だ。昨年ローンチしたSpatialOSを使うことで、ディベロッパーは機械学習テクノロジーが利用された分散クラウドコンピューティング・ストラクチャーを用いて仮想現実の世界を細部まで作りこみ、構築することができる。

Google VRやUnreal Engineと同じように、SpatialOSは仮想現実世界の構築を加速するための方法を提供しているといえる。近い将来、私たちは様々なサービス―実用的なものから、そうでないものまで―を仮想現実の中で利用することになるだろう。

「私たちの目標は、巨大なスケールの仮想現実世界の構築方法を再定義する、巨大なスケールのインフラストラクチャーをつくり上げることです」とNarula氏は話す。

今のところ、SpatialOSによって作られたのはVR/ARゲームが多い―マルチプレイヤー・ゲームのWorlds Adriftなどがその例だ。Narula氏は、ゲーミング分野は今後も大きな市場になると話している:彼はSupercellとの協力関係は「今のところはない」と話しているが、Improbableがソフトバンクとのコネクションを獲得したことで同社とSupercellのあいだに良い関係が生まれる可能性はあるだろう。

Improbableとソフトバンクが手を組んだことは財務的な意味だけをもつものではない。これにより、Improbableは他のビジネス領域へとつづく扉を開けることができたのだ―その例が交通分野であり、次世代のマッピング技術や自動運転技術は現代のテックゲームの主役だ。Improbableのプラットフォームによって作られる仮想世界と同じように、同社にとっての市場機会は巨大なのだ。

今回の出資により、ソフトバンクのマネージング・ディレクターであるDeep Nishar氏がImprobableの取締役に就任する。

「Improbableがもつ技術は革新的なものであり、彼らのプラットフォームは世界中のゲーム業界にとって欠かせないものとなるでしょう」と彼は話す。「可能性はゲームだけではありません。彼らが生み出した巨大なスケールでのシュミレーションによって私たちがより良い意思決定を下せるような世界になるかもしれません」。

[原文]

(翻訳:木村拓哉 /Website /Facebook /Twitter

Googleが不動産販売のMatterportとパートナーして屋内ストリートビューの360度3D画像を一挙に充実

知らない場所へ行くときには、事前にGoogleのストリートビューを見ると、だいたいの様子が分かる。しかしそれが屋内の場所なら、そのやり方が通用しない。

でも最近のストリートビューでは、一部の家やお店、企業などの建物の中に入って見れるようになった。それが今日(米国時間5/9)、GoogleがMatterportとパートナーしたおかげでさらに増えた。

Matterportは不動産会社で、顧客がその家を実際に見に行くか行かないかの判断材料として、3Dスキャンの画像を作って提供している。同社は最近、Qualcomm Ventures, Greylock Partners, そしてY Combinatorからの約6500万ドルの資金調達を公開した。

【3D画像】

〔ここに3D画像が表示されない場合は、原文のページを見てください。〕

ストリートビューの場合と同じように、クリックしたりドラッグしたりして建物内を3D/360度で見て回れる。画像中の二重丸のようなボタンをクリック(タップ)すると、特定のアイテムの前でとまる。

このような屋内見学は、すでにGoogleが360度写真家たちとのパートナーシップである程度実現しているが、Matterportとのパートナーシップでそれが一挙に50万箇所あまりに拡大した。それらはWebのほかに、VRのヘッドセットでも見ることができる。Matterportも個人の写真家と契約しているので、内容の充実は今後の彼らの活躍にかかっている。でも同社は、不動産販売のお客用以外の画像も今後大きく増やしていく、と言っている。

GoogleがストリートビューのAPIを公開しているのはMatterportだけではないが、360度スキャンに加えて3Dの画像も提供するのは同社だけだ。GoogleもVR(仮想現実)などの新しい技術に意欲的だから、そのための強力な画像や映像が今後さらに充実していくだろう。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

Googleがウェブ上に仮想現実アートギャラリーを開設

Googleのバーチャルリアリティ用スケッチ/ペイント/モデリングソフトウェアであるTilt Brushは、初心者VRユーザーだけでなく、仮想現実を新しいメディアとして探求する方法を探しているアーティストたちをも引き寄せてきた。

本日(米国時間4月28日)から、他のTilt Brushユーザーの3D VRキャンバスをウェブ上で見ることができるようになり、あなた自身の作品もオンラインでシェアできるようになった。気に入った作品を見つけたならば、アプリの中に飛び込んで、あなた自身のスタイルを既存の作品に付け加えることもできる。

Tilt BrushアプリはVRの世界における「Microsoft Paint」のようなものだ。アプリを開発しているGoogleのチームは、クリエイターたちに、新しいブラシとツールで更なるコンテンツデザインの自由を提供するために、数多くのクールな機能を追加してきた。

2月にはGoogleは、Oculus Rift + TouchのユーザーたちのためのTilt Brushサポートを開始した。このアプリはHTC Viveヘッドセットの発売と同時にデビューし、今ではそのプラットフォーム上で最も人気のある体験の1つとなっている。

全ての作品はTilt Brushサイトの新しいSketchesセクションに置かれていて、モバイルやデスクトップから3D作品を探索することができる。

ウェブ上で3Dオブジェクトを魅力的なやり方で閲覧できるようにすることは、Googleにとっても興味深い提案だった。今回のアップデートは、特にアートワークに焦点を当てているが、同社がウェブ上で見ることができるようにしようとしているのは、最終的にはユーザーの作った3Dコンテンツ全般だ。

SnapやFacebookのような企業たちに推進されている拡張現実(AR)プラットフォームは、基本的にユーザーが世界に配置して見ることのできる、クールな3Dコンテンツの有無に依存している。これまでGoogleのTilt Brushは、ユーザーたちに別世界を想像させながら、ほぼクリエーションだけに焦点を当ててきた。しかしこの最新のアップデートで、VRヘッドセットを持っていない人たちでも、3DアートやVRアーティストたちによる作品を眺めることができるようになったのだ。

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(翻訳:Sako)

VR/ARコラボツール開発のCynack、福岡のF Venturesから500万円のシード資金を調達

VR/ARを活用したコラボレーションツールを開発するCynackが今日、福岡と東京で活動する独立系VCのF Venturesからシードラウンドとして500万円の資金調達を行ったことを明らかにした(発表は今日だが、資金調達の実施タイミングは2016年12月)。

Cynackの前身となるチームは2016年9月にIBMが福岡で主催したハッカソンで優勝していて同年11月に起業。このときはメンバー全員が高校生だったというから、きわめて若いチームだ。現在はIBMの事業化支援を受けながら「Cynack」の開発を行っているという。Cynack創業者の吉村啓氏は高校を卒業して上京し、この4月からは慶應大学に通う大学生となっている。現在Cynackは6人で開発しているが、エンジニアとデザイナーの人員強化を予定しているそう。

CynackはIBM主催イベントでのα版の展示を行う予定というから、まだプロダクトはこれから、ということのようだ。次のような特徴を持つVR/ARプロダクトを目指しているという。

・Oculus RiftやHTC ViveといったVRデバイス、Microsoft HoloLensなどMRデバイス対応
・スマホやPCでも利用可能
・オープンなSNSのような複数人でのチャット、もしくはフレンド指定によるクローズドなチャット
・文書、表計算、プレゼン資料などのドキュメント共有による共同編集機能
・チャンネル単位での独自ドメイン取得

完成度についてはCynack CEOの吉岡氏は「現在α版という状況で、ローカルファイルを空間内に引っ張り出し、展開・編集することができます。引っ張り出されたファイルは瞬時にコラボレーションツールの方でも共有されるというイメージです」と話している。

VR空間を舞台にしてソーシャルなインタラクションを行うプラットフォームとしては、大御所FacebookのSpacesが先日のF8で発表になったばかりでTechCrunch Japanでもお伝えしてる。ほかに日本発の「cluster.」もあり、5月の正式ローンチを控えている。これら2つが友だちや家族との交流を念頭に置いたソーシャルVRである一方、Cynackが解決するのは「マルチ空間内での共同作業ということになります。後にVRのOS的な位置付けになればと考えてます」(吉岡CEO)という。

Facebookが簡単なVRアプリを作るためのJavaScriptフレームワークReact VRをオープンソースでローンチ

Facebookは今日(米国時間4/18)、同社のデベロッパーカンファレンスF8で、React VRのローンチを発表した。これは、JavaScriptで仮想現実体験を構築できるためのJavaScriptフレームワークだ。Webアプリケーション用の同社のフレームワークがReactであるのに対し、仮想現実用のReactという意味でReact VRという名前になっている。つまりReactと同様の宣言型の書き方で、360度体験のアプリケーションを作れるのだ。

当然ながらReact VRは、WebGLやWebVRといった既存のWeb技術を利用して仮想現実体験やセンサー群との対話を実装している。現状はまだ、複雑なVRゲームを作れるレベルではなく、3Dモデルを記述できるとはいっても、2DのUIやテキストや画像に360度のパノラマを容易に組み合わせることができる、という程度だ。

Reactで何かを作った経験のある人なら誰でも、React VRを楽に使えるだろう。またもちろん、Reactのエコシステムにある既存のツールの多くを利用できるだろう。

ふつうのモバイルアプリよりもきついのは、VRアプリが60fps(できればそれ以上)の描画を要することだ。すでにReact NativeがJavaScriptでは難しいとされる問題の多くに対応しているから、React VRのチームはそのアプリケーションの高速高性能化に、それほど苦労せずに済んだようだ。

React VRのコードはGitHubで入手できる。何か作ってみたくなった人は、ここでドキュメンテーションを読もう。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

感情を読み取れるVRヘッドセット―、ユニコーン企業MindMazeが新製品MASKを発表

ソーシャルVRには、人間のコミュニケーションの境界に大きな変化をもたらす可能性がある。Facebookが同分野に何十億ドルもの資金を投じたのもそんな背景があったからだ。

しかしVRを通じたコミュニケーションを意義あるものにするためには、話している相手の感情が分かるようにしなければならない。そこでMindMazeは、VR空間にいるユーザーの表情から感情を読み取れる、MASKと呼ばれるデバイスを本日発表した。

今回私は、CEOのTej Tadiに話を聞くと共に、この感情トラッキングデバイスを試すことができた。そして実際にMASKを顔に装着してみたところ、スクリーン上のアバターがものすごい反応速度で私の感情を再現できることがわかった。

このプロダクトの素晴らしいところは、天才的なデザインにある。複数の電極が、ユーザーの顔に当たるパッド部分に取り付けてられているため、ヘッドセットを装着すると、パッドと共に電極もユーザーの顔にピッタリくっつくようになっているのだ。この電極が顔の筋肉の動きを感知しており、ユーザーの表情が変わる1000分の数秒前に感情を予測することさえできる。

このデバイスが感知できる感情(表情)は、現時点では笑顔、しかめっ面、ウィンク、不敵な笑み、驚いた顔くらいだが、ここにボディーランゲージが加われば、かなり多彩な感情をVR空間で伝えられるようになるだろう。さらに、ここに大手VRヘッドセットメーカーが現在開発中のアイトラッキング技術が合わされば、VR空間でのエクスペリエンスがもっとリッチなものになる。

このデバイスを開発したMindMazeは、昨年10億ドルの評価額で1億ドルを調達し、VR企業としては初のユニコーン企業となった

さらに同社は、VR業界にいるほとんどの企業と比べても恵まれた立場にある。というのも、彼らは自社開発したヘッドセットを病院に販売しているため、コンシューマー市場やOculusの販売台数などを気にしなくても良いのだ。

「プレッシャーは少し和らぎましたね」とTadiも認めている。

MindMazeは、既にヨーロッパやアジアにある50軒もの病院に導入され、脳しんとう患者や手足を失った人たちのリハビリに利用されている。

MindMazeによるコンシューマー市場進出には不安要素もあるが、TadiはMASKが「脳・VR間のインターフェースの商業化」という、MindMazeの本業である医療機関向けプロダクトのゴールに適っていると主張する。

MindMazeがソーシャルハードウェアを発表する以前の昨年末には、Facebookがプラットフォームの拡張について発表していた。Facebookのデモでは、可愛らしいアバターがユーザーの感情に合わせて表情を変える様子が紹介されていたが、その後、アバターはユーザーの腕の動きに合わせて笑ったり驚いたりしているだけだったということが明らかになった。

一方MindMazeは、人の表情を直接読み取ることで、より多くの消費者をひきつけようとしている。

MASKのデザインは素晴らしく、同社は最終的に一般販売されたときのMASKの価格は40ドル以下になるだろうと語っている。しかし、VR機器を直接消費者向けに販売するというのがなかなか難しいビジネスであることを考えると、彼らにとっての主要な課題は、いかに大手VRヘッドセットメーカーにMindMazeの技術を採用させるかということになってくるだろう。実際にTadiは既に複数のメーカーと話を進めていると語ったが、企業名は明かされなかった。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

GoogleのWeb仮想現実アプリケーション‘Speak to Go’は音声で検索しながら地球を旅する

今日(米国時間4/12)からGoogleが、同社の実験的WebページWebVR Experimentsで、たくさんのVR Webアプリケーションを見せている。それらは、音声検索で探検できる。

その“Speak to Go”アプリケーションは、GoogleのDaydreamやCardboardのヘッドセットで楽しめるほか、ヘッドセットなしでスマートフォンやPCからでも体験できる。Chromeブラウザーでマイクロフォンをonにしておくと、音声検索が使える。

スペースバーをタップしてアドレスを言うと、それがStreet Viewのデータにマッチしていれば、そこへ連れてってくれる。たとえば都市や国の名前を言うと、そのWebアプリケーションはユーザーをそれらの国や町のどこかランダムな場所へ運び、そこから景観を探求できる。

それはデスクトップではGoogle Mapsの音声検索の変形にすぎないが、でもGoogle Cardboardのヘッドセットでは世界がそこだけに限定されるので、本格的な探検気分になる。孤独な探検者ユーザーは、独り言を言いながら歩きまわるのだ。

そのアプリケーションは、WebVRの強みを見せつける。ユーザー体験が自然でシームレスで直感的なのだ。WebVRはその名のとおり、ブラウザー上でURLを指定するだけで仮想現実を体験できる。

11月にGoogleは、HTCのViveプラットホーム上にGoogle Earthアプリケーションを持ち込んだが、今回の最新アップデートは、そのビューの一部をCardboardとDaydream上のモバイル360度映像に仕立てた。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

VR動画は360度でなくてもいい―、VR動画の配信サービス「360Channel」が対応端末を追加

2016年末までにVRヘッドセットが出揃い、360度動画をみかけることも増えてきたが、VR動画を楽しむのに360度全部を撮影してある必要はないのかもしれない。360度動画の配信サービス「360Channel」で経営企画/プロデューサーを務める中島健登氏は、動画コンテンツによっては180度分を写すだけでも十分な場合もあると話す。

例えば、360Channelで提供している下記の猫の動画は前の180度だけで、背面は撮影していない。この動画はYouTubeで人気の猫ぶるるとべるるだ。

360度動画の視聴データを解析してみると、ユーザーは思ったほど後ろを振り返ってまで動画を見ないことが分かったと中島氏は説明する。私もPlaystation VRでこの猫の動画を視聴してみたが、見たい対象が目の前にあるので、背面に映像がないことはまるで気にならなかった。確かに動画の途中で横を向くと、画面と背景の境目を確認することができるが、HMDを付けて座っている状態だと振り返るのがちょっと難しいし、前を向いて動画を視聴する方が自然だろう。この動画をPCで見る限りYouTubeとそう変わらないと思った人もいるかもしれないが、VRヘッドセットで見ると、単に動画を見ている時とは違い、自分が猫たちと同じ空間にいて、おやつをあげている気分になれるのがVR動画の良さだ。

一方で、音楽ライブなどのコンテンツは、パフォーマーだけでなく、背面の観客の様子も撮影することで臨場感のあるコンテンツになると中島氏は説明している。

360度動画では今後、動画内のものを操作したり、ストーリーが分岐したりなど、ユーザーが動画と関わることができるようになるだろうと中島氏は話す。「将来的には360度動画とVRゲームとの境界線は曖昧になると思います」と言う。360Channelでもそうしたインタラクティブなコンテンツを提供することを視野に入れているそうだ。

360Channelは2015年11月に設立し、2016年5月から360度動画の配信サービスを提供している。360Channelが提供している360度動画はOculus Rift、Gear VR、簡易HMD(Google Cardboardやハコスコ)での視聴に対応している。HMDがない場合でも、iOSとAndroidの専用スマホアプリやPCから360度動画の視聴が可能だ。本日より360ChannelはPlaystation VRにも対応し、新たに50本の動画コンテンツを追加すると発表している。

GoogleがSoundStageのデベロッパーLogan Olsonを同社のVRチームに引き抜く

ゆっくりと、しかし確実に、Googleは強力なVR企業になりつつある。今週、そのDaydreamのメーカー〔==Google〕は、HTC ViveのVR音楽スタジオとして好評だったSoundStageの作者、Logan Olsonをスカウトした。

これは最初はThe Vergeの特ダネだったが、Googleは本誌にも彼の雇用を確認した。“GoogleのVRチームにLoganを迎えたことは、喜ばしい。SoundStageで、VRの創造と発想のリーダーであることを示した彼とその作品から、VRとクリエティビティについてわれわれが学ぶところは大きい”、と言っている。

Olsonは、2013年以来GoogleでVRを手がけ、2016年の初めにはこの部門のトップになったClay Bavorと同格の職階になる。2016年といえばGoogleがCardboad(ボール紙性VRヘッドセット)を出して、VRに本腰を入れ始めた年だ。

その後GoogleのVRは、Daydreamが主役になり、SamsungのGear VRなどに対応するコンテンツが多くなった。メーカーやデバイスを特定しないという路線だが、最近ではそれをあまり強調していない。

Olsonのチームは、先月、Steam上のSoundStageの1.0を出したばかりだ。音楽を作るVRというその革新的なアプリケーションは、好評だった。

Olsonを迎えたGoogleは、SoundStageの今後の開発を継続せず、メンテナンスのみとするだろう。同社は彼のこれまでの仕事の全容を足場にして、新しいVRコンテンツを開発すると思われる。

その具体的な計画は発表されていないが、彼のチームは2015年にTilt Brushを作っており、したがって今後についても、単純にゲームだけではなく、クリエティビティとコンテンツの創造が中心になるだろう。

なお、今週はGoogleのゲームデザイナーのトップが同社を去り、今後は“複数のゲームの合流化や、 神経科学、そしてVR”を探求したい、と言っている。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

セカンドライフはなぜ失敗したのか、そしてclusterはVRリビングルームで何を目指すのか?

2000年代後半に一大センセーションを巻き起こした「Second Life」を覚えているだろうか? 凄まじい勢いでブームが燃え広がり、そしてほぼ何も起こらずに忘れさられていった、あの3Dアバターたちの住む「仮想世界」だ。

Second Life内の住人たち(image source: Wikipedia)

Second Life内では商行為も想定されていた。これは健康関連のアドバイス(image source: Wikipedia)

1990年代後半に登場したMMORPGは多数のプレイヤーが仮想世界で一緒に冒険に出たり戦ったりする多人数参加型ゲームだった。それまで技術的に不可能だった多数の同時接続とGPU進化を背景とした3Dグラフィックスの高い表現力によって、リアルな仮想世界(メタバース)が生まれた。そして2003年にスタートしたSecond Lifeは、このメタバースをゲーム目的以外で使った野心的なプロジェクト(スタートアップ)だった。Second Lifeという名称が示すとおり、そこはユーザーがアバターとして住まい、もう1つの人生を生きる世界。常識的に考えて人生に目的など存在しないが、Second Lifeも「無目的な仮想世界」だった。ドラゴンを倒すとか敵地を攻略するといった目的がなかったのだ。ただ、そこにはリンデンドルという仮想通貨があり、経済活動らしきものが存在した。だから「これは特大のビジネスチャンス到来!」とばかりにビッグウェーブに乗ろうとする人たちが(日本からも含めて)大挙してSecond Lifeのメタバースに乗り込んだ。そして、これといって何も起こらずに忘れられていった。

Second Lifeは何故失敗したのか? こういう問いに対して、そもそも何か有用なものが生まれるとなぜ思ったのか、と皮肉に問い返す人も少なくないだろう。ただ、日本のVR関連スタートアップ企業であるクラスター創業者の加藤直人氏のSecond Life失敗の分析と、いまその反省を取り入れて取り組もうとしている新しい仮想世界の考え方は傾聴に値すると思うのだ。

アバター密度の低さがSecond Life衰退の原因

クラスターが開発・運営する「cluster.」は、VRを使って多地点から参加できる仮想的なイベント開催プラットフォームだ。TechCrunch Japanでも過去2度ほど、そうお伝えしている。そのクラスターが2016年4月の5000万円の資金調達を挟んで準備を進めてきたプラットフォームを5月上旬にオープンするべく、本日より事前登録を開始した。VRで利用するにはHTC ViveかOculus Riftが必要だが、PC版クライアントもWindows、Mac用とも用意されている。

これまでクラスターの加藤CEOの話では、clusterは大規模イベントを仮想空間で行うためのプラットフォームという話だった。HTC ViveやOculus Rift、Gear VRなどのHMDをかぶって仮想空間で開催するイベント会場に「入って」いく。すると、そこには別地点から「入って」きているほかの参加者がいて、同じ発表者の画面を見ながらアバター同士でユーザーが交流ができる。そういう話だった。実際、昨年にはアルファ版サービスの段階で900人同時接続の仮装イベントを実現したという。以下のようなものだ。

サーバー側の処理能力的には1000人程度までは同時アクセス可能なので(ボトルネックはサーバーの帯域とクライアントの描画能力だそうだ)、物理的な会場を用意することなく大規模イベントが行えるプラットフォームというのが売りだった。

このコンセプト自体は有効であるものの、今回改めて加藤CEOに話を聞いたところ、仮想イベントとは違った世界観のサービスを5月リリースに向けて準備中だった。東京・五反田にあるクラスターの拠点でぼくが体験させてもらったのは、むしろ以下の画面のような「仮想リビングルーム」なのだった。

クラスター創業者 加藤直人氏

「弊社が提案するイベントも含めて、リリース初期には500〜1000人程度のイベントをやっていきたいと考えています。ただ、イベントはトリガーでしかありません。むしろ本命と考えているのは、少人数で長時間使うユースケース。clusterでは、誰でも仮想的な部屋を作れます。これはバーチャルのレンタルルームサービスなんです。そのバーチャルルームのVRポータルを狙っています」(クラスター加藤CEO)

加藤CEOの見立てでは、Second Life失敗の最大の理由は「過疎りやすい構造」だ。

「Second Lifeでは1つのワールド(シムと呼ぶ)に最大50人しか入れませんでした。さらに、ユーザーが自由に空間が作れたので(アバター)密度が低くなりがちだったのです」

Second Lifeでは同時刻にユーザーたちが集まる仕組みもなかったのでセレンディピティー頼みだった。延々と仮想世界をアテもなくさまよえるのは一部の熱狂的なユーザーだけだった。

一方、clusterは誰かがバーチャルルームを作ると、そこに人が集まる仕組み。まず生成された部屋にはユニークなURLが発行される。このURLは十分に長いハッシュ値を含んでいて、そこそこ機密性の高い部屋となる。ソーシャルでURLをシェアすると、これを見た人たちは誰でも部屋に入ってこれる。でも、特定の友人のみにメッセでURLをシェアすれば、ほかの誰もその部屋を発見することはできない(偶然にハッシュ値が発見されることは、まずない)。

このバーチャルルームは部屋を作った人が退室すると消えるようになっている。つまり存在する時間が区切られている。基本的に目的ベースで部屋を作ることを想定しているそうだ。Second Lifeと違い、場所も空間も限定されているのだ。

「集まるためのシステムを用意したいんです。これまでにもSkypeなどで4、5人でしゃべるというのはありました。でも、あくまで『ネット越しの体験』だったんです。VRで同じ部屋に入れば違います。その場に集まる、という体験を提供したいんです」

誰かの誕生日に家族や友人が集まったり、友だちとカラオケやゲーム、映画を楽しむといった用途、あるいは少人数の会議やセミナーをやるといったユースケースを想定しているそうだ。

「例えばゲームをしながら4人くらいでダラダラと話すような利用層。そこが大きいと思っています。そうなれば課金ポイントは変わってくるはず。コアな長時間ユーザーにプレミアムで課金してもらえる。最終的には場所貸しビジネスです」(加藤CEO)

密なコミュニケーションにはPCよりもVRが向く

5月のローンチ時には部屋は数個のテンプレートを用意するが、将来的にはカスタマイズや3Dオブジェクトのマーケットプレイス開設などもあり得るという。蓋を開けてみないと分からないものの、「例えば性的マイノリティーの方々が集まるとか、人気ブロガーがサロン的なものを開催するといったこともあるかもしれません。こちらが想定していない使い方が出てくるはず」(加藤CEO)

企業ユースなら朝会とか社内勉強会をclusterでやったりといったこともある。実際クラスターでは朝会は仮想空間の会議室でやるそうだ。

仮想空間内では巨大スクリーンを好きな位置に配置して、「みんなで見る」ことができる。音声は距離に応じた範囲で届く。マイクを握れば参加者全員に声が届く。この辺りは実際の物理的な世界に近い。ちなみにログは残すが録画はしない方針という。

サロンなどだと参加希望者の多くはVRデバイスを持っていないだろう。PS VRが売れているといっても、まだ出荷実績は100万〜200万台のレンジ。Oculus RiftもHTC Viveも100万台にも届いていない。加藤CEOはモバイルVRこそ本命とみていて「VRは(接続概念として)Apple Watchに近いものになる。ペアリングして使うメガネのようなデバイスがiPhone向けに出てくるのではないか」と予想しているそう。ただ、当面はVRデバイスを前提にはできない。このためclusterではPCでの参加も可能になっている。

開催側もPCでもオッケーだ。面白いのは「VRで入る」のと「PCで見る」ことのニュアンスの違いだ。

「密にコミュニケーションが取りたいならVRのほうががいいんです。でも、受動的にコンテンツを受け取るような、参加感が不要のときはPCでも構いません」(加藤CEO)

PCで参加すると自分のアバターは第三者視点で表示されている。自分で自分をみれる。ところがVRで入ると一人称視点になる。これが単なる「視聴」と異なることは、次のようなエピソードでも良く分かる。

「仮想空間のイベントで何百人というユーザーが集まったとき、みんな他のアバターと適度な距離を置くんですよ。実際にはアバター同士は(衝突せず)すり抜けるので、同じ位置に立ってもいいんですが、やっぱり気持ちが悪い。パーソナルスペースはVR空間でも存在しています」(加藤CEO)

配信サーバーに多数の視聴者がぶら下がる「ウェビナー」では参加者同士の交流というのはあまりない。でも、VRで同じ空間を共有していると、参加者同士がヒソヒソ話をすることもできるのだという。親しい人とテレビを見ながら感想を言ったり、感想を言わないまでも顔を見合わせるコミュニケーションというのがある。あれもコンテンツ視聴の重要な体験の一部だと思うが、そうしたものが徐々にVRで再現できるようになるのかもしれない。

clusterのバーチャルルームの利用は無料提供を予定している。マネタイズは有料イベントなどのチケット販売の30%課金ということを考えているそうだ。法人向け大規模イベントや、たくさんの人が集まるところをメイン市場と見ていないことについては、「人気コンテンツは人が集まるでしょう。でも、例えば人気スポーツ配信の放映権を取得したところで、そうやって集まる視聴者はプラットフォームには定着しません。すぐに離れていくでしょう」(加藤CEO)と考えているそう。また主催者側からミニマムチャージなどは課金しない。これはUstreamがプラットフォームとして失敗した原因だと考えているそうだ。

グローバル市場で見ればBigscreenAltspaceVRといった競合サービスがある。部屋の中に巨大ディスプレイがあるかのようなVR空間を提供するBigscreenは15万ユーザーと先を行っている。ただ、加藤CEOは「VRは最初から世界を取りにいかないと駄目だと考えています」と話していて、日本を足がかりに早い段階で世界市場に打って出たい考えだ。

「いよいよ方向性が見えてきた」gumiがVRゲーム開発のよむネコをグループ会社化したワケ

    gumi代表取締役社長の國光宏尚氏(左)とよむネコ代表取締役の新清士氏(右)

3月に発表した2016年度第3四半期決算で、営業利益が12億4000万円(前年同期は16億2300万円の赤字)、経常利益が13億5100万円(同16億6600万円の赤字)という黒字転換の業績を発表したgumi。2016年6月には代表取締役副社長の川本寛之氏が主力となるゲーム事業を担当し、創業者で代表取締役社長の國光宏尚氏が新規事業(VRなど)を担当する両代表制に移行したが、ゲーム事業が好調に推移した結果で黒字化を達成したことになる。

そして今度はVR領域でも大きな発表があった。gumiは3月23日、VRゲームの企画、開発を行うよむネコの株式を取得。gumiの持分法適用会社としたことを明らかにした。またこれに合わせて國光氏はよむネコの取締役会長(非常勤)に就任した。

国内外で投資やインキュベーションを展開

gumiはゲーム事業でのマネタイズを進める一方で、これまで投資やインキュベーションを通じてVR領域への進出を進めてきた。LP出資する5000万ドル規模のVR特化ファンドであるThe Venture Reality Fund(VR Fund)は、日本、米国、韓国での投資を実施している。

投資の中心はVR向けのオーサリングツールが中心で、そのほかに広告やゲーム制作のスタートアップが続く。「VRで流行るのに必要なのは、『VRならでは』のハイエンドな体験を作ること。今ある2DのコンテンツをVRで見ても仕方ない。かといってただ立体視ができるという3Dテレビとは体験が違う。例えば空を見上げれば鳥が飛んでいて、周囲を見渡せば味方と敵が戦っている中にいる、そういうことがVRならではの体験。だがそんなコンテンツを1から生むのは大変」(國光氏)。そんな状況だからこそ、コンテンツを制作するようなツールが重要になるのだという。「モバイルゲームの時もUnityやアナリティクスツールが登場して状況が変わったように、ゴールドラッシュで金を掘るでのはなく、つるはしを売り、鉄道を作っている」(國光氏)

また一方で韓国では、VR FundのLPでもあるゲーム大手のYJM Gamesと組んで2016年11月よりインキュベーションプログラムを展開している。またこれに先駆けるかたちで2015年11月には、VR特化のインキュベーションプログラム「Tokyo VR Startups」を日本ではよむネコの代表取締役であり、デジタルハリウッド大学大学院准教授、ゲームジャーナリストの新清士氏とともに立ち上げた。第1期プログラムの参加企業5社中4社が次の資金調達を実施するに至っている。3月末には第2期のプログラムのデモデイも控えているところだ。

VR Fundのポートフォリオ

売上1億円超えタイトルも登場、「いよいよ方向性が見えてきた」

「1年半の(VR関連の)活動を通して、いよいよ方向性が見えてきた」——國光氏はこう語る。前述の通り、VRの市場自体が黎明期ということもあり、開発ツールのニーズは高まっている。一方でOculus RiftやHTC Viveといった端末は、PCと繋ぐケーブルや、位置を計測するセンサーといった物理的な制約、そして何より本体価格の高さもあって販売台数はさほど伸びていない状況だ。だが両社ともにPCとの接続を必要としないスタンドアロン型端末をリリースすると明言している。またゲームプラットフォームを見てみると、売上1億円以上になるVRゲームコンテンツも合計10本以上になっているという。

「トップゲームで4、5億円取れるとなると、もう『市場が来るかどうか』という話ではない。今はViveが(販売台数)40万台程度というが、スタンドアロン版も登場し、スマートフォンVRも本格的にやってくれば、市場が立ち上がることになる」(國光氏)——そんなVRコンテンツ市場への期待を込めたgumiとしての(コンテンツ面で)最初のチャレンジがよむネコでのゲームの提供ということだろう。

よむネコの設立は2013年4月。Tokyo VR Startupsのインキュベーションプログラム第1期に採択されているVRスタートアップだ。2016年12月には、米Oculusのコントローラー「Oculus Touch」のローンチタイトルとして、VR脱出ゲーム「エニグマスフィア〜透明球の謎〜」をリリースしている。エニグマスフィアはVR空間上でプレイできる脱出ゲームで、2人数プレイも可能なのが特長だ。フィールドテストを経て、大阪・梅田にある梅田ジョイポリスでアーケード版の稼働もスタートしている。

「1カ月間のテストで1000人にプレイしてもらい、1回800円という価格設定ながら(アンケートで)5点満点中4点以上という結果を得た。実はこれが刺さったのは、ITのヘビーユーザーでなくいわゆる『リア充』。VRは興味あって体験したいけど買えないという層の評判が良かった」(新氏)

一方でビジネス面での課題も見つかった。日本のVR市場が形成されることは見越しているが、立ち上がりは新氏が想定するよりも遅いという。また、米国へアプローチするにしても、よむネコ単体のリソースには限界があった。それであればgumiのグループに入って勝負するべきだと考えたのだという。

今後よむネコは、gumiのエンジニアとも人材交流をしつつ、エニグマスフィアのアップデートを進める。3月中にはHTC Vive版もリリースする予定だ。将来的には新タイトルの提供も検討する。

「米国では、VRゲームは家庭用ゲーム系とゲームセンター・ロケーションベース系の2つのビジネスモデルが見えてきた。今までの家庭用ゲームといえば2年で制作して60ドルで販売するというモデルが中心だったが、今は1時間程度のコンテンツを15ドルとか安い値段でリリースして、それ以後はユーザーの声を聞きながらアップデートを繰り返す、いわば『疑似Free to Play』のモデル」(國光氏)

「一方でロケーションベース系は、1回やったら800円といったもの。だから今のままであれば回転率をあげる必要が出てくる。だが多分この形にはならなくて、ネットカフェのようにルームごとに『1時間いくら』というかたちでチャージすることになる。実は韓国のネットカフェは、収益の半分が飲食。日本でもカラオケみたいにワイワイ騒ぐのであれば、(エニグマスフィアのように)みんなで楽しめるゲームが必要になる」(國光氏)

自分そっくりのアバターでVRを楽しむ「EmbodyMe」が本日ローンチ、9000万円の資金調達も

今あるVRコンテンツは1人で楽しむゲームや動画といったコンテンツが多いが、他人とコミュニケーションを楽しむソーシャルVRのコンテンツも少しづつ出てきているようだ。本日Paneoは顔写真から3Dモデルのアバターを作成して、他のユーザーと交流できるアプリ「EmbodyMe」をSteamOculus Storeで無料配信を開始した。また、本日インキュベイトファンドから9000万円の第三者割当増資を行ったことを発表している。

EmbodyMeはスマホで顔写真を撮影して取り込むと、数十秒ほどでVR空間で動く3Dモデルのアバターを作成でき、VR空間内で他のユーザーとコミュニケーションが取れるアプリだ。このアバターはユーザーの実際の動きや表情も反映し、現実に近いコミュニケーションが取れるという。ただ、表情の部分はカメラで読み取っているのではなく、手の動きから推測して笑顔や怒っている顔をアバターに反映させているのだそうだ。現状では体型の3Dモデルまでは作成できないが、サービス内で体格を変えることはでき、洋服も男女それぞれ数十種類から選ぶことができる。「ユーザーはなりたい自分になれ、その人が本当にその場にいるかのようにコミュニケーションが取れます」とPaneoの代表取締役を務める吉田一星氏は説明する。

EmbodyMeのVR空間は「孤島の研究室」をイメージしているのだそうだ。室内には積み木やダーツがあり、それを使って遊ぶことができる。これらは現実世界にもあるものだが、EmbodyMeではVRならではの体験も用意しているという。例えば、VR空間の薬を使うと顔が不細工になったり、矢を取って投げるとユーザーのアバターに刺さったりする。今は数種類の体験しか用意していないが今後「現実にある体験とともに現実にないコミュニケーションのあり方も追求していく」と吉田氏は話す。

他にもVR空間で友人と写真や動画を撮影してそれをFacebookやTwitterでシェアできる機能がある。EmbodyMeで撮影した写真や動画は専用ページにもまとめている。

吉田氏はヤフーの出身で、Paneoを2016年6月に創業した。ヤフーでは、スマホのインカメラでキャラクターや他の人物になりきれるアプリ「怪人百面相」を開発していたという。これはSnowやSnapchatで使えるようなフィルターに近いもので、吉田氏はVRでもこうした技術を活かせると考えPaneoを創業するに至ったと話す。

今回調達した資金は、プロダクト開発と人材採用に充てる予定だという。今後の展開としてはアバターのSDKを提供し、ソーシャルサービスやビジネスで使えるプラットフォームを目指す考えだ。例えば、ゲームで自分のアバターが使えたり、会社のミーティングをVR空間で行えるようにしていくことを考えていると吉田氏は話している。